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歯科医師の確定申告と節税について【詳細解説】


1.歯科医師は確定申告をする必要があるか

 歯科医師の方が医療活動を行うことにより得る収入について、確定申告をする必要があるのでしょうか?今回は歯科医師に焦点を当て、検討を行いたいと思います。

 歯科医師は歯科診療所などに勤める場合や、個人クリニックの経営など、医師と同じく様々な働き方があります。確定申告が必要かどうかを判断するうえで、医師の方が得る収入が所得税法上どの所得に該当するかを考慮する必要があります。例えば、個人クリニックの経営をされている場合は、クリニックでの収入は事業所得に該当するため、個人事業主として事業所得の確定申告をする必要があります。

 歯科診療所等に勤めている場合は給与所得となるのですが、一か所のみで給与の支給を受けているか、二か所以上で給与の支給を受けているかに区分されます。一か所のみで給与を受け取っており、かつ年末調整がされている場合は、他に収入がなければ、確定申告の義務はありません。もし二か所以上の診療所から給与を受けとっている場合は、すべての収入額を合算した金額をもって給与所得について確定申告をする必要があります。ただし、一か所からのみの給与であっても、収入金額が年間を通して2,000万円を超えると年末調整の対象から外れてしまうため、確定申告をする必要が生じます。

 申告の義務がない場合においても、申告が要件となっている特例を受けるため確定申告を行うことにより税制面で優遇され、有利になることもあります。確定申告を行うか否かの判断は、確定申告をすることが法律上義務付けられているか否かのみによらず、確定申告を行うことで優遇を受けることができるものがあるかを確認することも重要となってきます。

2.歯科医師の労働形態と収入の取り扱い

 歯科医師には様々な働き方があり、「勤務医」「開業医」に大別されます。それぞれのケースにおいて得る収入が所得税法上どの所得に該当するのかを見ていきましょう。

(1) 勤務医で、給与として収入を得る場合

 勤務医として病院や診療所と雇用契約を結ぶことにより、被雇用者として診療に従事している歯科医師がその病院等から給与の支給を受けた場合、その収入は「給与所得」に該当することとなります。給与所得が一か所からのみであり、この給与が2,000万円以下であり、この給与のほかの所得が20万円以下である場合は年末調整がされることにより、確定申告をする義務はありません。

 主たる給与支払者からの給与で年末調整がされてあっても、他にも給与の支払いを得ている場合は、二か所以上の給与を受けていることとして確定申告を行う必要があります。

 給与所得は源泉徴収票に記載されている、支払金額の合計額がその年の収入金額となります。

なお、所得税は課税にあたって超過累進税率を採用しており、収入が少ない人は低い税率を、収入が多い人に対しては高い税率が適用されます。主たる給与支払者以外から少額でない(100万円を超えるような)給与を得ている場合は、確定申告によって100万円単位、収入額によっては税率の上昇により100万円を超える納税が必要になってくることもあります。

 給与の源泉徴収については、その月の支払い額を1年分に換算した場合の収入金額の税額をベースとし、給与の支払いのつど所得税を控除する制度で、年末調整により、その年最後の支払いの際に最終的な年間の収入金額を元に正しい所得税額を計算し、納付することとなります。月々の源泉徴収税額はやや多めに設定されていることから、年末調整の際は還付されることが一般的となっております。歯科医師等の医業についても同様ですが、二か所以上の給与の支払いを受けている場合、最終的な収入金額によって税率が高くなることにより、最終的な納税額は30万円なのに、年末調整で一度10万円の還付があり、確定申告で40万円の納付となるケースも少なくありません。

 残念ながら年末調整は主たる給与支払者側の義務規定となっていることから、原則として年末調整を受けないということはできません。このことから、年末調整による跳ね返りの納税は税制上やむを得ず生じてしまうため、該当しそうな場合は確定申告による納税を視野にいれ、資金繰りに注意を払う必要があるでしょう。

(2)勤務医で、病院との業務委託契約により収入を得る場合

 勤務医の中には、複数の病院に勤めており、そのうちいくつかの病院とは雇用契約ではなく業務委託契約を結び医療行為を行っているという方もいらっしゃるかと思います。

 業務委託により得る収入は、事業所得になるケースと、雑所得になるケースとに分かれます。事業所得に該当する場合は、青色申告書での申告による特典や、赤字となったときに給与所得等の他の所得にその赤字分を充当すること(損益通算といいます)などができますが、雑所得の場合はこれらの恩恵を受けることができません。事業所得に該当するか雑所得に該当するかは、事業の規模や継続性、事業遂行のための投資の有無など、様々な観点から総合的に判断されることとなります。

 例えば、講演会の講師を依頼された場合や、スポットで大きな業務をたまたま請け負った場合などは、継続性の観点から雑所得と判断される可能性が高くなります。継続的に業務を請け負う契約がある場合はほぼ間違いなく事業所得として認められますが、単発的に生じた収入に関しては所得の種類に十分注意する必要があります。

 また、勤める病院等が一か所のみの場合、その病院と業務委託契約を結んでいても事業所得と認められずに給与所得であると判断される可能性が高くなります。

(3)開業医として個人で診療所等を経営している場合

 開業医とは、みずから診療所等の経営をする歯科医師をいいます。一般的には個人事業主を指す場合が多く、この記事においても個人事業主として言及していくこととします。自身の経営する診療所等で得た収入は事業所得に該当しますので、確定申告の義務があります。
なお、事業所得は、収入金額の合計額から必要経費を差し引いた金額となります。

 事業所得は、黒字・赤字に関わらず1月1日から12月31日までの1年間の収入および費用を集計し、原則として翌年の2月16日から3月15日までの間に確定申告をすることとなります。

 また、事業所得が生じる者は、正しい所得税額の計算のため、白色・青色申告に関わらず、収入金額や必要経費に関する日々の取引の状況を記帳し、かつ書類を保存する義務があります。国税庁のタックスアンサーにおいては記帳義務として「売上げなどの収入金額、仕入れや経費に関する事項について、取引の年月日、売上先・仕入先その他の相手方の名称、金額、日々の売上げ・仕入れ・経費の金額等を帳簿に記載」することを要求しています。また、保存義務として、これらに関わる帳簿・書類は5年(収入金額や必要経費に関する重要な帳簿は7年)の間、保管することが定められています。

次に、歯科医師の実務における収入と必要経費の計算についてご説明いたします。

3. 事業所得の収入計算

 医療収入には、まず社会保険診療と自由診療の二つの区分が必要となる点に注意が必要です。自由診療分については、患者側の全額負担となるため、窓口受取額がそのまま収入金額となります。社会保険診療分については、患者側が3割分、保険収入が7割分となることから、窓口収入と社会保険診療報酬支払基金からの支払いを受ける保険収入額を合算した金額をもって収入金額とする必要があります。

 社会保険診療については、レセプトの作成・提出から実際に社会保険診療報酬支払基金からの支払いによる保険収入があるまでの期間が空くこととなりますが、窓口収入があった時に全額の収入があったものとし事業所得の計算をしなければなりません(権利確定主義)。そのため、年末に診療をし、年明けに支払いを受けた場合であっても、診療をした年に全額を収入計上する必要があります。これは、未収分の診療報酬に係る源泉徴収も診療時に徴収されたものとみなされるため、確定申告時の源泉徴収税額への記載漏れも収入額同様に気を付ける必要があります。

 また、必要経費については、医療による「収入を得るために要したもの」が対象となります。個人経営の場合、配偶者の方を歯科助手とし給与を支払っている場合も少なくないでしょう。所得税は収入が増えるほどに税率が高くなる超過累進税率を採用していることから、生計を一にする家族(一つのお財布で生活費をやりくりしている=生計一というイメージとなります)での分散を防止するための規定があります。そのため、配偶者の方への給与は第三者への給与と異なり、事前の届出等がないと実額を費用として認められないことや、算式によって出された概算額のみが費用として認められないこととなります(事業専従者控除・青色事業専従者給与)。この制度に関する詳細な説明は省略させていただきますが、受取った側の配偶者の方につきましては給与所得となり、こちらも場合によって確定申告の必要が生じることがあります。

4. 医師の必要経費の計算(社会保険診療報酬の所得計算の特例)

 必要経費については、先日公開させていただきました記事「医師の確定申告【詳細解説】」に原則的な取り扱いをケースごとに掲載いたしましたので、具体例はこちらをご参照いただき、今回の記事では必要経費の特例についてご紹介させていただきます。

 医業・歯科医業につきましては、煩雑な事務処理に時間を割かず、医業に専念し、経営の安定化や良質な医療を提供できる環境を作ることを目的として制定された特例があります。この特例は「社会保険診療報酬の所得計算の特例」というもので、収入をもとに概算で社会保険診療に係る必要経費を計算することが認められるものです。この制度を適用することにより、実際の支払額より多くの経費を認められる可能性や、日々の経費の実際額の計算が不要になることでの経理業務の負担軽減につながります。ただし、こちらの特例の適用有無の検討をせず、申告後に有利だったことに気づいたとしても、特例適用での申告し直しとしての更正の請求は認められないため、有利不利という点で適用を考慮する場合は、申告前の慎重な検討が必要といえます。

 この特例の適用要件は、①その年の社会保険診療報酬の額が5,000万円以下であること、②歯科医業から生ずる事業所得に係る総収入金額に算入すべき金額の合計額が7,000万円以下であることであり、これらを満たすと、以下の算式によって必要経費を計上することができます。

     必要経費 = 社会保険診療報酬(税引前)× 経費率

 経費率は社会保険診療報酬の額に応じ、以下となります。

社会保険診療報酬の額 (A) 必要経費の額
2,500万円 以下 (A)×72%
2,500万円 超 3,000万円 以下 (A)×70% + 50万円
3,000万円 超 4,000万円 以下 (A)×62% + 290万円
4,000万円 超 5,000万円 以下 (A)×57% + 490万円

この特例を適用した場合の必要経費の計算の流れは、以下となります。

【例1】
[前提]
社会保険診療収入: 2,700万円
自由診療収入等:  600万円

<判定>
2,700万円 ≦ 5,000万円
2,700万円 + 600万円 = 3,300万円 ≦ 7,000万円 
∴ 適用あり
2,700万円 × 70% + 50万円 = 1,940万円 ← 概算必要経費

 

 この場合ですと、実際の経費が1,940万円に達しないときは概算経費の特例を適用することが有利となります。収入が低いほど経費率は高くなりますので、開業したての軌道に乗るまでの間は経費を多く計上し節税し、さらに経理業務の負担を軽減させることが可能となります。資金の流出をおさえ、かつ医業に専念する時間の確保が実現できます。

 ただし、自由診療収入等の社会保険診療収入以外の経費については概算の特例がございませんので、こちらは実額の計算が必要となります。実額計算の場合、従業員の給料、固定資産税等の社会保険診療・自由診療の様にどちらに要した費用か区分が困難な共通の経費は、使用薬価の比等をもって合理的に按分した金額を計上することとなります。なお、社会保険診療収入には事業税が課されませんので、事業税については全額が社会保険診療報酬以外の必要経費として計上することとなります。

以上をまとめた、必要経費の計算パターンは以下となります

【例2】
 [前提]
社会保険診療収入:2,700万円
自由診療収入等:600万円
直接経費(社保分):500万円
直接経費(社保以外):150万円
  共通経費:1,000万円
  按分割合:社会保険診療:社会保険診療以外 = 80:20

必要経費
 A 社会保険診療分
(a) 実額経費
① 共通経費 1,000万円 × 80% = 800万円(社会保険診療に係る共通経費)
② 直接経費 500万円
③ ①+② = 1,300万円

(b) 概算経費
<判定>
2,700万円 ≦ 5,000万円
2,700万円 + 600万円 = 3,300万円 ≦ 7,000万円 
∴ 適用あり
2,700万円 × 70% + 50万円 = 1,940万円
(c) (a) < (b) ∴ 1,940万円 (社会保険診療に係る必要経費)

  B 社会保険診療分以外
① 共通経費 1,000万円 × 20% = 200万円(自由診療等に係る共通経費)
② 直接経費150万円(事業税含む)
③ ①+② = 350万円 (自由診療に係る必要経費)

  C A + B = 2,290万円 (必要経費 合計額)

 さらに、社会保険診療報酬の所得計算の特例を適用した場合、青色申告の特典である「青色申告特別控除額」の計算も異なることとなります。原則では控除後にマイナスにならないように青色申告特別控除前の所得金額と、控除額の比較のみとなりますが、特例適用の際は①青色申告特別控除額と、②社会保険診療分以外の部分の控除前所得金額との比較したいずれか低い金額が控除額となります。

【例3】
[前提]
自由診療等収入:600万円
付随収入(学校医手当等):100万円
社会保険診療分以外の必要経費:380万円
青色申告特別控除額:65万円

青色申告特別控除額
① 65万円
② *700万円 – **380万円 = 320万円
*  600万円 + 100万円 = 700万円(社会保険診療分以外の収入金額)
** 380万円(社会保険診療分以外の必要経費)
③ ① < ② ∴ 65万円

以上の3つの例をまとめると以下となり、事業所得の計算パターンが示されます。

【例4】
[前提]
社会保険診療収入:2,700万円
自由診療収入等:600万円
付随収入(学校医手当等):100万円
社会保険診療分以外の必要経費:380万円
青色申告特別控除額:65万円

(1) 総収入金額
① 社会保険診療収入 2,700万円
② 自由診療収入等 600万円
③ その他の付随収入 100万円
④ ①~③の計 3,400万円

(2) 必要経費
 A 社会保険診療分
(a) 実額経費
① 共通経費 1,000万円 × 80% = 800万円(社会保険診療に係る共通経費)
② 直接経費 500万円
③ ①+② = 1,300万円

(b) 概算経費
<判定>
2,700万円 ≦ 5,000万円
2,700万円 + 600万円 = 3,300万円 ≦ 7,000万円 
∴ 適用あり
2,700万円 × 70% + 50万円 = 1,940万円
(c) (a) < (b) ∴ 1,940万円 (社会保険診療に係る必要経費)

  B 社会保険診療分以外
① 共通経費 1,000万円 × 20% = 200万円(自由診療に係る共通経費)
② 180万円(事業税含む)
③ ①+② = 380万円 (自由診療に係る必要経費)

  C A + B = 2,320万円 (必要経費 合計額)

(3) 青色申告特別控除額
① 65万円
② *700万円 – **380万円 = 320万円
* 600万円 + 100万円 = 700万円(社会保険診療分以外の収入金額)
** 380万円(社会保険診療分以外の必要経費)
③ ① < ② ∴ 65万円

(4) 事業所得金額
(1) – (2) – (3) = 1,015万円

 こちらの金額から、扶養控除等の所得控除をした後の「課税総所得金額」に超過累進税率を乗じた金額がその年分の所得税額となります。ここから、既に控除された源泉所得税や、予定納税額を控除した残額が確定申告によって納付すべき所得税額となります(マイナスとなった場合は、マイナス分の税金の還付を受けることができます)。

 確定申告による納税額が20万円を超える場合は、翌年に予定納税の必要が生じます。こちらは、多額の所得税を確定申告時に一時に支払うことの負担を分散させるため、前年の所得税の1/3相当額を7月と11月に支払い、確定申告においてその年分の残額の支払い(もしくは過払いぶん還付を受ける)制度です。

 こちらは前年と比べ所得金額が大きく減る場合は、予定納税額を引き下げる手続きをとることも可能となっております。

 また、今回紹介した社会保険診療報酬の特例ではなく、原則を適用する場合においては、医療用機器の特別償却という特例もあります。この特例は、一台500万円以上の医療用機器で一定のものについては、取得価額の12%相当額を通常の減価償却として必要経費に加えることができるものとなります。治療用の歯科用ユニット、診断用のエックス線装置、歯科医療用の可搬型手術用顕微鏡等が対象となり、該当する機器がどうかの詳細は国税庁の法令解釈通達のページに例示があがっています。

 今回ご紹介した概算経費の特例は必ずしも有利となるわけでない点にはご注意下さい。収入金額が多かったことにより概算による経費率が低くなる場合や、医療用機器の特別償却の対象となるような高額の資産を購入した場合など、実額の経費の方が多額となると見込まれるときは原則での経費計算が有利となりますので、期中においても今後の動向を考慮しつつ、慎重な判断を要すると言えるでしょう。

5. 歯科医師が確定申告を行う場合の手順

 以下では、歯科医師の方々が確定申告を行う際の一般的な手順について具体的にご紹介させていただきます。納付までの一連の作業を3月15日までに完了する必要があるため、前もって準備を整えておくことが大切です。

(1)確定申告のための申告用紙を入手する

 まず、税務署または国税庁ホームぺージから確定申告書の用紙を入手、ないしホームページ上の確定申告書等作成コーナーにアクセスすることからスタートします。様々な用紙がありますが、以下のような種類となります。

・確定申告書A
主に給与所得者や年金所得者のための確定申告書です。
⇒勤務医として病院から給与の支給を受けている医師の方はこの確定申告書Aを利用する場合があります。なお、給与所得がある場合であっても、他の病院等で業務委託を受けている場合や土地などの譲渡があった場合などについては、確定申告書Bを利用することとなります。

・確定申告書B
主に個人事業者や分離課税対象の所得がある人のための確定申告書です。
⇒開業医としてクリニック等の経営を行っている場合や、業務委託により医療行為を行っている場合などは、この確定申告書Bを利用することとなります。

・分離課税用(確定申告書Bとセットで使用)
土地建物等・株式等を譲渡した場合の所得(譲渡所得)や退職所得がある人のための確定申告書です。
⇒歯科医師の方で上記の所得がある場合にはこちらも入手する必要があります。

・損失申告用(確定申告書Bとセットで使用)
事業所得金額が赤字になる人のための確定申告書です。
⇒一か所の病院等から給与の支給を受け、他の病院で業務委託報酬を受けるというようなケースにおいて、業務委託に係る損益がマイナスとなる場合、損益通算を行うことでその赤字部分を給与所得に充当することができる場合があります。

(2)確定申告書を作成するための必要情報・必要書類を集める

 歯科医師の方が確定申告を行うために必要となる情報や書類は、ケースバイケースなので一概には言えませんが、例えば以下のような書類が必要となります。

◎病院等からの支払調書又は源泉徴収票(勤務医・業務委託の勤務医の場合)

※ 事業所得の場合は「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」、給与所得の場合は「給与所得の源泉徴収票」が病院等から発行されます。

※ 歯科医師の方が講演会などを依頼されて受領した報酬についても支払調書を受け取ることとなりますが、こちらも申告が必要です。

◎レジ等の窓口収入の記録や、帳簿など(開業医の場合)

※ 開業医の場合、自由診療と、保険診療の患者負担分については窓口で患者から支払いを受けることとなるため、その際のレジ等の記録等から収入金額を把握することとなります。

◎収入の入金や、必要経費の出金が確認できる通帳(開業医・業務委託の勤務医の場合)

※ プライベート用口座と事業用口座は、分けた方が管理が楽になります。
※ 開業医の場合、上記の窓口収入と、各支払機関から受ける収入の合計額を売上として認識することとなります。

◎必要経費の領収書や請求書等

※ 家賃や車両費、携帯電話料金など、プライベート部分と事業部分とを完全に分けることが難しく、100%を必要経費にしづらいものについては、経費算入した割合についての説明も必要となります。青色申告の場合は、合理的に明確に記帳することにより経費算入することが可能となります。

◎各種控除のための証明書類(生命保険料控除証明書等)

 これらの情報・書類を集めたうえで、そのすべてをエクセル等のデータにまとめる必要があります。歯科医師の方々の中には仕事が一段落するシーズンがないという方も少なくありませんので、この必要書類を集めてまとめる作業が特に負担となります。もちろん、書類ごと税理士に渡して確定申告をお願いするという歯科医師の方もいらっしゃるかと思いますが、ご自身で行う場合はご家族やご友人などの協力が不可欠かもしれません。

(3)確定申告書を作成する

 必要書類が集まりましたら確定申告書を作成していきます。確定申告書は提出用と控え用の2部を作成する必要があり、提出の際には様々な明細を添付する必要があります。控え用の確定申告書は融資を受けようとする場合やお子様の奨学金などの申請をする場合に提出が求められるケースがあります。また、翌年以降確定申告書を作成するうえでの参考にもなります。

 ご自身で手書きする場合、税務署に用意されている確定申告用紙は複写式になっているため記入は一回で済みますが、国税庁のホームぺージからダウンロードし入手した場合は二部印刷し、二回記載する必要が生じます。

 また、国税庁のe-taxのホームページから確定申告書等作成コーナーより、PCで作成・データの保存をすることも可能となります。申告期間中は、税務署の申告書作成コーナーにて資料の整理や簡単な質問、作成の仕方を聞きながら進めることもできます。基本的には平日の税務署の開庁時間のみ、申告期間に数度のみ週末に申告書作成会場が設けられます。なお、作成したデータはセキュリティ上の観点より税務署等で読み込むことができない点にご注意ください。

 事業所得の確定申告には「白色申告」と「青色申告」の二種類があり、それぞれ提出するべき書類が異なってきます。

 白色申告はいくつかの税制上の恩恵を受けられない代わりに、簡便な経理処理での申告を認めるというもので、作業の負担が軽くなります。

 青色申告は事前に所轄税務署に「所得税の青色申告承認申請書」を提出し承認を受けることでいくつかの恩恵を受けられる一方で、複式簿記による記帳が求められるなど、作業の手間が増えることとなります。青色申告の特典の一つの「青色申告特別控除」は、一定の要件を満たした会計帳簿を作成することにより10万円の、厳密な会計帳簿を作成することにより65万円の特別控除(事業所得からの控除)の適用を受けることができます。所得税の税率は5%から45%ですので、最大で65万円×45%の30万円弱の所得税を減らすことが可能となります。

(4)作成した確定申告書を税務署に提出する

 作成した確定申告書は提出時の住所地を管轄する税務署に提出することとなります。年の途中や、1月1日から申告書提出までの間で引越した場合でも、引越し後の住所を管轄する税務署に提出することとなります。その場合には、引越し前の管轄税務署に「納税地の異動に関する届出書」という書類を忘れずに提出する必要があります。

 確定申告は毎年対象となる年の翌年2月16日から3月15日までの期間内に行う必要があります。なお、所得税の還付を受けるための確定申告書の場合には、1月1日から提出することが可能です。税務署は、確定申告期間の期限が近づくにつれ非常に混み合いますので、早めの時期に提出するとスムーズに申告ができるでしょう。

提出方法としては、税務署に直接持参する方法のほかに、郵送で送付することも可能です。郵送する場合は控えの申告書を返送してもらうため、切手を貼った返信用封筒を同封することを忘れないようにしましょう。なお、郵送の際は消印有効ですので提出期限の最終日の消印がもらえれば期限内申告として認められます。期限後申告になりますと、青色申告特別控除額の65万円控除が10万円になるほか、無申告加算税や延滞税などのペナルティがあるので注意が必要です。

(5)所得税の納付をする、あるいは還付を受ける

 所得税の納付期限は確定申告期限と同じ3月15日となっています。確定申告の結果、納付する必要がある場合においては、所得税の確定申告書を提出する際、同時に納付書に金額を記載のうえ、税務署や銀行等の金融機関で納付をします。一方、還付申告の場合には確定申告書を提出してから1~2ヶ月ほどで指定口座に還付されることとなります(電子申告では処理が迅速に行われるため、2~3週間で還付されるケースもあります)。

なお、住民税は前年分の所得を基礎として計算されるため、申告した所得税確定申告書をもとに5月までに決定され6月から納付を開始することとなります。したがって、所得の10%相当額である住民税の納付書が突然自宅に届くということに備え、納税資金を確保しておく必要があります。なお、給与所得のみの場合で確定申告をした場合は、12ヶ月に按分した金額が給与から控除されることとなります。なお、諸事情によりご自身で納付したい場合、確定申告書の2枚目右下部分にある住民税の項目にて、「自身で納付する」欄に〇印をつけることで、給与からの控除を避けることも可能となります。

6.おわりに

 確定申告は年に一度であることから、何をしたらいいのか、どんな書類を集めればいいのか、どのように書けばいいのかなど、不安になることも多いのではないでしょうか。確定申告についてお困りの際はお気軽にご相談下さい。ご自身のことを客観的に見つめ確定申告を行うことはとても難しいと思います。是非、弊社の経験豊富な税理士がお手伝いをさせていただければ光栄です。


 

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