ビットコイン等の仮想通貨の利益が事業所得になる場合とは?

1.仮想通貨の取引等の所得区分は事業所得になるか?

2017年9月6日に国税庁のHPにおいて仮想通貨取引に関するタックスアンサーが公表されました。その中で、「事業所得等の各種所得の基因となる行為に付随して生じる場合を除き」とありました。こう書かれますと、何とか雑所得ではなく事業所得で申告をしたいという方々は、この論点について深く検討したいと思うことでしょう。

さて、ビットコイン等の仮想通貨の取引から得られた所得が事業所得に区分される場合はどのような場合なのでしょうか。これまで、仮想通貨の取引から生じる利益は原則として雑所得にあたると解説させていただきました。そして、雑所得は最も納税者にとって過酷な所得区分でありまして、節税が困難になります。

では、仮想通貨の取引が事業所得となるとどんなメリットがあるでしょうか?仮に仮想通貨の取引が事業所得となった場合には、以下のようなメリットがあります。

①事業所得から生じてしまった損失は、給与所得や不動産所得などの他の所得と損益通算できる
②①で損益通算してもまだ残った純損失については3年間繰越しをすることができる
③青色申告特別控除(65万円又は10万円)を利用して所得を圧縮することができる
④青色事業専従者として届出をしたうえで親族に給与を支給することで経費にすることができる

したがって、仮想通貨の取引をある程度本腰入れて取り組んでいる皆様の関心が極めて高い論点だと思いますので、以下ではビットコイン等の仮想通貨の取引から生じる利益が事業所得となるケースについてみていきたいと思います。

2.事業所得となるための要件とは?

雑所得か事業所得かという所得区分についての論点は大昔から日本においてバトルされている古典的論点です。例えば、
・趣味のようなレベルのゴルフスクールを事業にしたい(ゴルフ道具を経費で落としたい・・・)
・趣味のようなレベルのオークションでの商品販売を事業にしたい(パソコン代など経費で落としたい・・・)
・趣味のようなレベルの料理教室を事業にしたい(食材を経費で落としたい・・・)
と考えた先人は数知れず。結論から申し上げますと趣味だとだめです。趣味が実益を兼ねていても趣味だとだめというのが我が国におけるルールです。

しかし、これらについて事業所得で申告し、その後仮に税務調査が入らなくて、そのままというケースの場合、決してその処理が正しかったとは言えませんので注意が必要です。たまたま税務署の職員の目に触れる機会がなかっただけです。したがって、事業所得となるかどうかについては、しっかりと要件ごとに検討を行う必要があることでしょう。そして、最終的には総合的な判断となることでしょう。

個人で営む事業が趣味のレベルを脱していなくて「雑所得」として簡易な扱いを受けるのか、あるいは、ちゃんと事業規模であるとして認められ「事業所得」となるのかで、かなり税務的な特典が異なります。個人で営む事業の所得が事業所得となり、個人事業主となりえるためには、次のような要件を満たすことが必要です。

事業所得とは、自己の計算と危険において独立して営まれ、
①営利性・有償性の有無
②継続性・反復性の有無
③自己の危険と計算における事業遂行性の有無
④その取引に費やした精神的・肉体的労力の程度
⑤人的・物的設備の有無
⑥その取引の目的
⑦その者の職歴・社会的地位・生活状況
などの諸点を総合して、社会通念上事業といい得るか否かによって判断する。

(最高裁判所昭和56年4月24日第二小法廷判決(昭和52年(行ツ)第12号所得税更正処分取消請求上告事件、以下「昭和56年最高裁判決」という。)及び平成11年10月15日裁決(名裁(所)平11第18号)で示された事業所得にあたるかどうかの基準)

3.仮想通貨の取引が事業所得となるためにはどうすればよいか?

仮想通貨の取引が事業所得となるためには上述した要件を満たす必要があります。すべて満たさなくても良いのですが、最後は総合的な判断です。これはケースバイケースですので一概にはお示しできません。よって、1つ1つの要件をしっかり満たしていくことが無難であります。

(1)営利性・有償性の有無

この要件に関しては、仮想通貨取引を行う方々営利を目的として資金を投下して仮想通貨の取引を行っているので要件を満たすことはできるケースが多いと思われます。裁決事例を見ても、この営利性・有償性でNGとなっているケースは少ないようです。仮想通貨取引を行う方々は利益を求めて行っていると思いますので、この要件はクリアできると思います。

(2)継続性・反復性の有無

この要件に関しては、単に思い立った時や休み時間に仮想通貨の売買や使用を行うだけでは要件を満たすことは難しいと思われます。何度何度も、それも数カ月ではなく数年間繰り返し儲けのために取引をして、そして、それを継続する必要があります。「数年間」といわれても、まだ仮想通貨元年の2017年でございますので、そのあたりの期間については今後判断されていくことでしょう。

(3)自己の危険と計算における事業遂行性の有無

この要件に関しては、自らの貴重な資金を投下して自分のリスクで仮想通貨の取引を行うことが必要です。また、「事業遂行性」ということから副業の範囲を超えて事業として仮想通貨の取引を遂行する明確な意思が必要になると思われます。追って裁決事例を見ますが、「副業であるか否か」が結構重要なポイントです。それにあたってこの要件も関連してまいります。

(4)その取引に費やした精神的・肉体的労力の程度

この要件に関しては、一定の精神的・肉体的労力が必要であるという要件であるため、ワンショットで大きく仮想通貨で儲けたというケースや、中長期保有で仮想通貨を購入して寝かしておきたまに売買するというケースのように、精神的・肉体的労力がさほどかからない場合では要件を満たさないことでしょう。追って裁決事例を見ますが、「副業であるか否か」が結構重要なポイントです。それにあたってこの要件も関連してまいります。

(5)人的・物的設備の有無

この要件に関しては、例えば人を雇用して仮想通貨の取引を組織的に行ったり、仮想通貨の取引の事業のために必要なトレードのためのオフィスや充実したモニター・PC等を準備して事業を行ったりすることが求められます。裁決事例では施設や人の雇用が必要であるとされています。個人的には、IT業界はそもそもオフィスも人も最小限で、パソコンが1台あればスタートできるという事業ですので違和感があります。

(6)その取引の目的

この要件に関しては、仮想通貨の取引の目的が単なる趣味、勉強、研究等ではなく、それを生活の基盤として本気で利益を獲得することを目的としているかという点です。(7)にも関連します。

(7)その者の職歴・社会的地位・生活状況

この要件に関しては、仮想通貨による取引が副業ではなく主たる事業であるといえる者であって、その事業からの収入により生活の基盤が確保されていることなど、また、仮想通貨の取引に関する書籍の出版、ブログの執筆、セミナーの開催など客観的な活動が存在していることなどが求められます。

4.事業所得ではなく雑所得になってしまった国税不服審判所の裁決事例

実際に、事業所得として認められず、雑所得になってしまった国税不服審判所の裁決事例を見ていくことにより理解が深まると思います。もちろん仮想通貨に関連する国税不服審判所の裁決事例や判例はありません。あくまで部分部分を参考にしていただければ幸いです。

(1)請求人は貸金業の登録はしているものの、請求人の金銭の貸付行為は、営利を目的とした社会通念上の事業として行われているとは認め難いとした事例

裁決事例集 No.44 – 41頁:平成4年12月9日裁決

金銭の貸付行為が所得税法上の事業に該当するか否かは、その貸付先との関係、貸付けの目的、貸付金額、貸付利息の収入状況、担保権設定の有無、貸付資金の調達方法、貸付けのための広告宣伝の状況その他諸般の事情を総合して判断すべきであると解されるところ、請求人は貸金業の登録はしているものの、[1]貸付先は、請求人が大株主で代表取締役をしている同族法人2社のみであり、担保権の設定等貸付金の保全措置を講じていないこと、[2]貸付金に係る受取利子の金額よりも当該貸付資金調達のための借入金に対する支払利子の金額が多額であること、[3]事業所と称する程度の店舗を有していないこと及び[4]金融業の看板の掲示及び広く一般に顧客を求めるための広告宣伝を行ったことを証明するに足る証拠がないことから、請求人の金銭の貸付行為は、所得税法上の事業には該当しない。

上記の国税不服審判所の裁決事例によりますと、要件①営利性・有償性の有無、要件②継続性・反復性の有無、要件⑤人的・物的設備の有無、要件⑥その取引の目的などに照らして、事業所得とは認められていません。

(2)有価証券の売買による所得が事業所得ではなく雑所得であるとした事例

裁決事例集 No.21 – 19頁:昭和55年11月3日裁決

株式の取引が事業に当たるか否かは、一般社会通念に照らして判断するほかはないが、そのためには事業としての社会的客観性が問われるべきであり、この観点からすれば、その取引の種類、取引におけるその者の役割、取引のための人的、物的設備の有無、資金の調達方法その他諸般の状況等を総合勘案して判断すべきものであり、単に所得税法施行令第26条第2項各号に規定する株式の売買回数及び売買株数を充足しているだけでは足りず株式のために投下若しくは動員された資金の額及び人的物的設備等が相当程度の規模によっていることを要すると解されるところ、請求人の株式取引のために費やした精神的、肉体的労力の程度、取引のための資金調達の方法、その人的、物的設備の組織的な利用状況、請求人の社会的地位等から判断して、本件の株式取引は事業に当たるとする社会的客観性を有しているものとは認められないので、当該株式取引から生じた損失の額を、雑所得を生ずべき営利を目的とした継続的行為から生じた損失の額と認定した原処分は適法である。

上記の国税不服審判所の裁決事例は、仮想通貨の取引においてもかなり参考となるものです。裁決事例においては、要件③自己の危険と計算における事業遂行性の有無、要件④その取引に費やした精神的・肉体的労力の程度、要件⑤人的・物的設備の有無、要件⑥その取引の目的、要件⑦その者の職歴・社会的地位・生活状況などに照らして、事業所得とは認められていません。

人的・物的設備がなくとも仮想通貨の取引は十分にできますので、このような昭和55年の裁決事例が現在ではどの程度有効なものなのかはわかりかねますが、要件について検討する際のポイントの1つにはなることでしょう。

(3)有価証券の売買及び商品先物取引により生じた損失を雑所得を生ずべき業務から生じた損失の額と認定した原処分を適法とした事例

裁決事例集 No.38 – 36頁:平成元年12月25日裁決

一定の具体的取引行為が「事業所得を生ずべき事業」に該当するか否かは、結局一般社会通念に照らし当該取引が事業として行われているか否かによって決せられるべきものであるが、有価証券の売買及び商品先物取引は投機性の強いものであるから、その判断においては、単に当該取引の営利性、有償性、継続性及び反復性の有無のみならず、事業としての客観性の有無が問題とされるべきであり、この観点からは、当然にその取引のための人的・物的設備の有無、資金調達方法、取引に費やした精神的、肉体的労力の程度、その者の職歴、社会的地位などのほか、当該取引によって相当期間継続して安定した収益を得られる可能性があるかどうかについて考察せざるを得ないものというべきである。
本件において、請求人が、長期間にわたって有価証券の売買及び商品先物取引を大規模、かつ、継続的に反復して行っていたことが認められ、取引に費やした精神力、肉体的労力の程度も軽視し難いものがあったことは認められるものの、請求人は大規模な病院を経営し、その傍ら本件有価証券の売買及び商品先物取引を行っていたものであり、結局、請求人の趣味と実益を兼ねた投機により損失を被ったにすぎないから、本件有価証券の売買及び商品先物取引は、いまだ社会通念上事業と認められるに足りるものとはいえず、所得税法上の事業には該当しないものというべきであり、したがって、本件有価証券の売買及び商品先物取引から生じた損失を雑所得を生ずべき業務から生じた損失の額と認定した原処分は適法である。

上記の国税不服審判所の裁決事例は、仮想通貨の取引においてもかなり参考となるものです。裁決事例においては、各種要件について総合的に検討していますが、「相当期間継続して安定した収益を得られる可能性があるかどうか」についても触れられています。そういわれてしまうと、有価証券もFXも仮想通貨も競馬も何もかもが安定した収益を得られる可能性があるとはいいがたいものです。ですが、これほど事業環境が激変する昨今において「安定した収益を得られる可能性がある」と言い切れるビジネスなどあるのでしょうか。

上記裁決事例においては、「長期間にわたって有価証券の売買及び商品先物取引を大規模、かつ、継続的に反復して行っていたことが認められ、取引に費やした精神力、肉体的労力の程度も軽視し難いものがあったことは認められるものの」とちゃんとそれを検討した上で、病院経営者であるということから非常に厳しい判断をしています。「請求人の趣味と実益を兼ねた投機により損失を被ったにすぎない」とまで言い切っています。

この裁決事例においては何か別で考慮すべき内容があったのではないでしょうか。この裁決事例を読む限りは、ほとんどの仮想通貨の取引は、副業レベルでは事業所得とならないと読めるのですが、少々極論な裁決事例であるという感想です。平成元年の裁決事例ですが、昨今副業が少しずつ市民権を得ています。時代背景はこの裁決事例の時からだいぶ変わっているといえます。

(4) 商品先物取引の所得について、事業所得ではなく雑所得に当たるとした事例

裁決事例集 No.18 – 17頁:昭和54年5月31日裁決

請求人の商品先物取引は、取引回数、取引数量等からみると、営利性・有償性及び継続性・反復性が認められるが、それが事業というためには、更に事業としての社会的客観性を要するものと解されるところ、商品の先物取引は投機性の強いものであって本来事業になじみ難い性格を有すること、請求人は生活の資のほとんどを畳製造業からの所得により得ていたこと、商品先物取引は商品取引所取引員所属の外務員の勧奨を受けて始め、その助言を受けて行っていたこと、商品の先物取引を行うために特別の人的物的施設を設けていなかったこと、必要経費も当該取引に直接要した費用以外に通常事業に付随する必要経費をほとんど要しなかったこと等の諸点を総合勘案すると、請求人の商品の先物取引程度のものは、一般社会通念に照らし、いまだ事業とは認められないものと解するのが相当である。

上記の国税不服審判所の裁決事例によりますと、要件①営利性・有償性の有無、要件②の継続性・反復性の有無は満たしていても、要件⑤人的・物的設備の有無、要件⑥その取引の目的、要件⑦その者の職歴・社会的地位・生活状況などに照らして、事業所得とは認められていません。

上記をそのまま読むと、仮想通貨の取引を行うためには、オフィスを賃貸して、人を雇用する必要があると示唆しています。もっぱら、そのようなことをしなくてもビジネスができる世の中になってきたのではと思うのですが・・・。IT業界なんてそもそもオフィスも人も最小限でスタートできるというのがポイントですので違和感があります。昭和54年の裁決事例です。

(5) 商品先物取引により生じた損失の所得区分は雑所得に属するとした事例

裁決事例集 No.35 – 19頁:昭和63年6月30日裁決

請求人は、本件商品先物取引に係る所得は、[1]営利性、有償性、[2]継続性、反復性、[3]自己の危険と計算による企画遂行性、[4]精神的、肉体的労力の程度、[5]人的、物的設備、[6]資金調達方法及び[7]職業、経歴及び社会的地位からみて事業所得であると主張するが、請求人の社会的地位(商品先物取引が禁止されている登録外務員であり、かつ、商品先物取引業を営む会社の役職ある地位にある)及び商品先物取引が一般的に極めて投機性の強い射こう的な取引であって、元来、事業としてなじみ難い取引であること等から総合的に判断すれば、本件商品先物取引は所得税法にいう対価を得て継続的に行う事業とは認められず、本件商品先物取引に係る損失は、雑所得に属する。

上記の国税不服審判所の裁決事例によりますと、要件⑦その者の職歴・社会的地位・生活状況により、そして、商品先物取引が一般的に極めて投機性の強い射こう的な取引であって、元来、事業としてなじみ難い取引であることから、事業所得として認められず雑所得となっています。商品先物取引も仮想通貨取引もその点では一緒です。

「商品先物取引が禁止されている登録外務員であり、かつ、商品先物取引業を営む会社の役職ある地位にある」というところは、法律違反ではあるもの税法違反ではないと思うので、この論点が持ち出されている事には若干違和感を覚えますが、総合判断ということなのでしょう。

(6) 本件競走馬の保有等は事業所得の基因となる事業に当たらないとした事例

裁決事例集 No.39 – 69頁:平成2年2月2日裁決

請求人の保有する競走馬の頭数は各年分とも極めて少なく、また、競走馬の保有等に係る所得は、請求人が自らこれを申告し始めた年分以降、損失を計上するのみであったことからみると、請求人が競走馬の保有等により継続的に相当程度安定した収益を得ていたものということはできず、むしろ請求人が代表取締役を務める会社からその地位に基づいて受ける給与収入により生計を賄っていたことが明らかであること等からすると、請求人の競走馬の保有等は、事業所得の基因となる事業といえるための諸要素を欠くものというほかなく、いまだ所得税法施行令第63条第12号の定める「対価を得て継続的に行う事業」とはいえないというべきである。

上記の国税不服審判所の裁決事例によりますと、主に要件⑥その者の職歴・社会的地位・生活状況などに照らして、事業所得とは認められていません。「競走馬の頭数は各年分とも極めて少なく」とありますが、一頭所有するだけでもかなり大変だと思うのですが・・・。

実は、「競走馬の保有等に係る所得は、請求人が自らこれを申告し始めた年分以降、損失を計上するのみであった」という部分がとても重要なのだと思います。ずっと損失というのは事業としては認められないという点がポイントでしょう。

(7)本件競走馬の保有は事業所得の基因となる事業に当たらないとした事例

裁決事例集 No.62 – 65頁:平成13年9月14日裁決

請求人は、本件競走馬の保有に係る所得は事業所得に該当すると主張する。
しかしながら、競走馬の保有に係る業務が所得税法第27条第1項にいう事業に該当するかどうかは、単に、その営利性、有償性、継続性、反復性の有無のみならず、業務に費やした精神的・肉体的労力の程度、業務のための人的・物的設備の有無、投下資本の調達方法、その者の職業(職歴)、社会的地位、生活状況及び当該業務から相当程度の期間継続して安定した収益が得られる可能性が存するか否か等を総合的に検討し、一般社会通念に照らして判断するのが相当であるところ、平成6年から平成10年までの間における請求人の保有する本件登録馬の頭数は、登録期間が6月以上のものは1頭ないし3頭と少数である上、請求人は、本件競走馬の保有に当たり、特別な事業所や設備は設置していなく、請求人は、専属の従業員も雇用しておらず、その管理運営は専ら第三者に委託していること、請求人は、主として建設工事業の業務に基づく所得により生計を賄っていたこと、請求人の本件競走馬に係る所得は、平成10年分こそ利益を計上したが、平成5年分ないし平成9年分は専ら損失の金額を計上するのみであったこと等からすると、本件競走馬の保有は、事業所得の基因となる事業といえるための諸要素を欠くものというほかなく、いまだ所得税法施行令第63条第12号に規定する「対価を得て継続的に行う事業」とは認められないというべきである。

上記の国税不服審判所の裁決事例も非常に厳しい内容です。1頭から3頭では少ないと言い切っており、また、設備はともかく従業員を雇用する代わりに第三者に業務委託をしているところを指摘されてもいます。人を採用せず業務をアウトソースすることは至極当然だと思うのですが。

興味深いのは、「平成10年分こそ利益を計上したが、平成5年分ないし平成9年分は専ら損失の金額を計上するのみであった」というところでして、5年間赤字の後やっと黒字になったのですが、そのストーリーというのはすごく自然であって、先行投資をしていたのかなとポジティブに解釈しうるケースもあると思います。ただ、本件総合的な判断により、事業所得とは認められていません。

判例には、「諸点を総合して」と、また、「社会通念上」とあります。したがって、形式上すべてを満たしても事業所得として認められないケースもありますし、すべてを満たしていなくても総合的判断により、事業所得として認められるケースもあろうかと思います。

やはり個人的には、副業レベルで仮想通貨の取引を行っている方でしたら、上記の要件についてかなり理論武装しておかない限りは、その取引から生じる利益が事業所得と認められないものと考えられます。「仮想通貨の取引等に関する所得が雑所得か事業所得か」という裁判の判例もいつかは出てくることでしょうが、しばらくは曖昧で個別判断な時代が続くものと思います。ただし、これらの裁決事例の多くはかなり昔のものになります。新たな解釈等が表れても不思議ではないかなと思います。

※この記事は2017年11月15日時点の情報に基づいています。

 

ビットコイン(BTC)をはじめとした暗号通貨やICO(Initial Coin Offering)に関する取引を行っている個人・法人の皆様にとって、仮想通貨やICOに関する税務はとても関心のあるテーマとなっております。もしお困りのことがございましたらお問い合わせよりどうぞお気軽にご相談下さい。また、お電話の場合は03-6228-5505までお願い致します(平日9:00~21:00)。汐留パートナーズグループの仮想通貨やICOに精通した経験・実績豊富な税務コンサルタントからご連絡をさせていただきます。

 

前川 研吾

北海道大学経済学部卒、公認会計士(日米)・税理士。汐留パートナーズ税理士法人代表社員。アーンスト・アンド・ヤング(Ernst & Young)メンバーファームである新日本有限責任監査法人監査部門にて製造業、小売業、情報サービス産業等の上場会社を中心とした法定監査に従事。また、同法人公開業務部門にて株式公開準備会社を中心としたクライアントに対する、IPO支援、M&A関連支援、デューデリジェンスや短期調査等のFAS業務等の案件に数多く従事。汐留パートナーズグループ社設立後は、公認会計士・税理士・弁護士・社会保険労務士等のプロフェッショナルによるワンストップサービスを行っている。現在、汐留パートナーズ株式会社にて仮想通貨及びICOに関する取引を行っている。


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