IAS2号 棚卸資産
1.概要
IAS第2号では一部を除くすべての棚卸資産についての会計処理について定めています。ただし以下については他の基準において定められているためにここから除かれます。
【除外対象】
①未成工事原価(IAS第11号「工事契約」)
②金融商品(IAS第32号「金融商品:表示」、IAS第39号「金融商品:認識及び測定」)
③生物資源及び農産物(IAS第41号「農業」)
2.棚卸資産の定義
IAS第2号では棚卸資産を以下のように定義しています。
・販売目的で保有されている資産であること
・製造過程にある資産であること(いわゆる仕掛品)
・原材料や貯蔵品であること
3.棚卸資産の原価
IAS第2号では棚卸資産の原価について以下のように定めています。
棚卸資産の原価には、①購入原価(purchase costs)、②製造原価(conversion costs)、③現在の場所や状態に至るまでに生じたその他の原価(other costs incurred in bringing the inventories to present location and condition)をすべて含まなければならない。
(1)原価に含めるもの
①購入原価
・購入代価
・輸入関税及びその他の税金
・完成品、原材料及び役務の取得に直接関係する運送費、荷役費
・値引きや割戻しは当該購入原価から控除
※日本の実務とほぼイコールです。
②製造原価
・直接労務費等、生産に直接関係する費用
・工場・機械等の減価償却費・維持費・事務管理費等の規則的な固定製造間接費配賦額
・間接材料費、間接労務費等の規則的な変動製造間接費配賦額
③現在の場所や状態に至るまでに生じたその他の原価
・非製造間接費や特定顧客のために製品設計した費用など
(2)原価に含めないもの
①仕損に係る材料費、労務費又はその他製造費用のうち異常な金額
②製品の保管費用
③販売費用 など
4.棚卸資産原価の算定方式
IAS第2号によると、個別法(specific identification)、先入先出法(first-in,first out formula;FIFO)、加重平均法(weighted average cost formula)による棚卸資産の原価算定が容認されています。ただし、後入先出法(last-in,first-out method;LIFO)の使用は禁止されています。
※加重平均法は現在の日本の実務でいう、総平均法や移動平均法をさします。
5.棚卸資産の評価
IAS第2号よると、棚卸資産の評価額には低価法が適用され、以下のように規定されています。
棚卸資産は、原価と正味実現可能価額とのいずれか低い額により測定しなければならない。
※日本の基準では、時価として原則は正味実現可能価額を採用しますが、原材料のように正味実現可能価額を把握しにくい場合には、再調達原価を採用することができます(再調達原価が販売価格と歩調を合わせて変動している場合)。この点がIAS第2号と異なります。
なお、次の①②の場合には、当初の評価減の額を限度として評価減の戻入れを行うことができます。
①低価法による評価減の原因となった従前の状況がもはや存在しない場合
②経済的状況の変化により正味実現可能価額の増加が明らかである証拠がある場合
6.実務上の留意点
(1)開示
企業は財務諸表において以下について開示しなければなりません。
①原価算定方式を含む棚卸資産の評価にあたって採用した会計方針
②棚卸資産の帳簿価額の合計額及び企業が分類した項目ごとの帳簿金額
③販売費用控除後の公正価値で計上した棚卸資産の帳簿価額
④会計期間に費用として認識した棚卸資産の帳簿価額
⑤会計期間に費用として認識した棚卸資産の評価減金額
⑥会計期間に費用として認識した棚卸資産の評価減の戻入金額
⑦棚卸資産の評価減の戻入をする原因となった状況及び事象
⑧担保提供している棚卸資産の帳簿価額
7.重要な用語
・低価法(Lower of Cost and New Realisable Value)
資産の取得原価と時価のいずれか低い額を資産の評価額とする方法
・正味実現可能価額(Net Realisable Value)
見積販売価格から見積原価および販売費用を差し引いた額
・公正価値(Fair Value)
独立第三者間取引において、取引の知識がある自発的な当事者が、資産を交換又は負債を決済するであろう金額
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