IAS1号 財務諸表の表示
1.概要
IAS第1号では、企業の財務諸表の年度間比較及び他の企業の財務諸表との比較可能性を確保するために、財務諸表の表示を規定しています。
IAS第1号は、財務諸表の表示に関する全般的な規定、財務諸表の構成についての指針及び内容について最小限の規定を定めています。
2.財務諸表の目的
財務諸表は、企業の財政状態、経営成績、キャッシュ・フローについての情報を提供し、財務諸表利用者の経済的意思決定に役立つものであるとされています。また、経営者に委託された資源に対する経営者の職務遂行の成果を示す役割を果たします。
IAS第1号では、財務諸表は、自己の特別な情報ニーズに合うように作成された財務諸表を要求する立場にない利用者のニーズを満たすことを目的として作成されるものであるとされています。
3.財務諸表の構成要素
財務諸表は以下の完全な一式で構成されます。
①財政状態計算書
資産、負債、株主持分から構成され、企業の財政状態を表示します。
②包括利益計算書
1会計期間の当期損益とその他の包括利益の増減額で構成される包括利益を表示します。
③株主持分変動計算書
1会計期間の株主持分のすべての変動を表示します。
④キャッシュ・フロー計算書
1会計期間のキャッシュ・フローの変動実績に関する情報を表示します。
⑤重要な会計方針の要約とその他の説明情報から構成される注記
⑥会計方針の遡及適用をする場合、遡及的修正再表示を行う場合、財務諸表での組替をする場合における一番早い比較年度の期首の財政状態計算書
2007年に改定が行われ、従来の貸借対照表という名称から財政状態計算書という名称に変更されました。従来の損益計算書という名称から包括利益の概念を取り入れて、包括利益計算書という名称に変更されました。しかし、IAS第1号で示されている名称をそのまま用いる必要はなく、これまで通りの貸借対照表という名称を使用し続けることができます。
4.財政状態計算書
資産及び負債の認識についてですが、資産は、企業に将来の経済的便益の流入する可能性が高く、かつ、信頼性をもって測定できる原価または価値を有している場合に、財政状態計算書において認識されます。一方、負債は、現在の債務を履行することによって経済的便益を有する資源が企業から流出する可能性が高く、かつ、弁済が行われる金額が信頼性をもって測定できる場合に、財政状態計算書において認識されます。
資産及び負債の金額の測定については、取得原価、現在原価、実現可能(決済)額、現在価値等、の測定基礎の中から選択されます。
資産及び負債は、流動項目と非流動項目に分類して別々の区分に表示しなければなりません。
5.包括利益計算書
包括利益は、1会計期間の損益とその他の包括利益の増減額で構成されますが、その他の包括利益とは、以下のものから構成されます。
・再評価剰余金の変動
・給付建制度の保険数理差異
・在外事業体の財務諸表の換算による損益
・売却可能金融資産の再測定による損益
・キャッシュ・フロー・ヘッジにおけるヘッジ手段から生じた損益のうち有効部分
連結包括利益計算書において、企業が非支配持分を有する場合には当期損益と当期包括利益について、親会社株主に帰属する金額と非支配持分に帰属する金額に配分した情報を追加で開示する必要があります。
収益及び費用の認識についてですが、収益は、資産の増加または負債の減少に関連する将来の経済的便益の増加が生じ、かつ、信頼性をもって測定できる場合に認識されます。一方、費用は、資産の減少または負債の増加に関連する将来の経済的便益の減少が生じ、かつ、信頼性をもって測定できる場合に認識されます。また、費用は費用収益対応の原則から、特定の収益と関連のある費用が当期の費用として選び出され認識されます。
6.株主持分変動計算書
IAS第1号は、株主持分変動計算書に以下の項目を含むことを要求しています。
・親会社と非支配持分のそれぞれに帰属する当年度の包括利益
・遡及的適用及び遡及的再表示による影響額
・当期損益、その他の包括利益、所有者との取引によりもたらされる持分の構成項目の期首と期末の帳簿価額の変動額の調整
7.財務諸表に係る全般的な考慮事項
・財務諸表がIFRSに準拠している企業は、注記においてIFRSに準拠している旨を明示的かつ十分に記載しなければなりません。
・清算や営業停止を経営者が意図している場合を除いて、財務諸表を継続企業の前提により作成しなければなりません。
・キャッシュ・フロー情報を除いては、発生主義会計により財務諸表を作成しなければなりません。
・金額的または質的に重要な項目の脱漏や誤表示は財務諸表利用者の経済的意思決定に影響を与えるおそれがあります。
・原則として資本と負債間、収益と費用間での金額の相殺処理は禁止されています。
・財務諸表は少なくとも1年に1度は作成しなければなりません。
・前期との比較情報の開示が求められています。
・財務諸表上の項目と表示の分類は、継続していなければなりません。
8.重要な用語
資産(Assets)
過去の事象の結果として、企業が支配し、かつ将来の経済的便益が企業に流入することが期待される資源。
負債(Liabilities)
過去の事象から発生した企業の現在債務であり、これを決済することにより経済的便益を有する資源が企業から流出する結果になると予想されるもの。
株主持分(Equity)
企業のすべての負債を控除した残余の資産に対する請求権。
収益(Income)
資産の流入、増加または負債の減少による経済的便益の増加であり、持分参加者からの拠出に関連するもの以外の持分の増加を生じさせるもの。
費用(Expenses)
資産の流出、減少または負債の増加による経済的便益の減少であり、持分参加者への分配に関連するもの以外の持分の減少を生じさせるもの。
損益(Profit or loss)
収益から費用を控除した合計額。
継続企業の前提(Going-concern assumption)
企業が将来に渡って事業を継続するであろうという前提。
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