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代表司法書士 石川宗徳の 所長ブログ&コラム

一人遺産分割協議と相続登記

相続登記

相続登記とは、不動産の所有者である登記名義人が亡くなったことにともない、当該登記名義人から相続人(のうち当該不動産を取得した者)に登記名義人を変更する手続きをいいます。こちらの記事もご参照ください。

≫相続した不動産の名義変更手続き
≫相続登記-お済ですか?

相続登記と遺産分割協議

例えば、次のような4人家族がいたとします。

  • A夫(自宅の所有者であり登記名義人)
  • B妻(A夫の妻)
  • C男(A夫の子、長男)
  • D子(A夫の子、長女)

A夫が亡くなった場合、不動産の相続登記には主に次の3つの方法があります。

①法定相続分に応じた持分

法定相続人には、その地位に応じて相続財産における相続割合が定められています。上記例の場合、B妻が2分の1、C男とD子がそれぞれ4分の1ずつ、が法定相続割合となります。

不動産の相続登記において、B妻・C男・D子それぞれ誰でも単独で、A夫名義の不動産の登記名義人を、A夫からB妻(持分2分の1)、C男(4分の1)、D子(4分の1)と変更する登記申請をすることは可能です。しかし、次の点からこのような登記申請はお勧めしておりません。

1) 登記申請人以外の相続人に対して登記識別情報が発行されない。

法定相続分による相続登記申請は、相続人の誰でもすることが可能ではありますが、当該申請人以外の相続人に対して登記識別情報が発行されません。登記識別情報とはいわゆる「権利証」のことであり、不動産を売却したり、担保に提供したりする際に必要となるものです。登記識別情報がない=不動産の所有者ではない、ということではなく、登記識別情報が無くても不動産を売却したりすることは可能です(登記識別情報があるときに比べてやや行う手続きが多くなります)。

C男が単独で法定相続分による相続登記申請をした場合、C男にはC男持分4分の1に対する登記識別情報が法務局から発行されますが、B妻、D子の登記識別情報は発行されません。なお法定相続分による相続登記申請はB妻、C男、D子の3者全員で行うことも可能であり、そうであれば全員分の登記識別情報が発行されます。

2)不動産の共有化は、長いスパンで考えるとマイナスな点が多い。

とりあえず不動産を共有状態にしておく、と考える人も多いですが、当事務所では不動産の共有化はお勧めしておりません。不動産を処分する際にも全員の協力が必要となったり、共有者が死亡することにより共有者が増えていく可能性があったり、共有者の1名が自己破産をした場合に処分する必要が出てくる可能性があったりするからです。こちらの記事(≫相続した不動産の名義変更手続き)の「不動産は単独名義にしておくことをお勧めします」もご参照ください。

②遺産分割による相続登記

相続人にはその地位に応じた相続割合がありますが、相続人同士の話し合いによりその割合を変えることができます。この話し合いを遺産分割協議といったりします。

B妻、C男、D子が遺産分割協議を行い、本件不動産はC男が取得することにする、と決めればC男の単独名義とすることが可能です。

③遺言による相続登記

相続人にはその地位に応じた相続割合がありますが、被相続人(亡くなった人のことをいいます)が遺言をのこすことによりその割合を変えることができます。A夫が生前に、不動産はC男に相続させる、という遺言をのこせばC男の単独名義とすることが可能です。なお遺言を作成する際は、いくつもの注意点がありますのでご注意ください。

≫遺言を書こうと思った方に読んで欲しいページ

A夫が亡くなった後にB妻も亡くなった場合

A夫が亡くなり相続登記が未了のままB妻も亡くなった場合、C男とD子はともにA夫とB妻の両方の相続人であるため、A夫の相続財産につき、本来はB妻、C男、D子で遺産分割協議をするところ、その代わりにB妻の相続人たるC男、B妻の相続人たるD子、C男、D子、つまりはC男とD子で遺産分割協議をすることが可能です。

そして、相続登記申請も当該遺産分割協議(不動産はC男が取得する)を添付することにより、C男の単独名義とすることができます。

法定相続分による場合

遺産分割協議を行わず、法定相続分に応じた登記申請を行う場合は、次の2つの登記申請をします。登記申請は2つになりますが、結局はC男(2分の1)、D子(2分の1)の共有ということになります。

1) 亡A夫分 ⇒ 亡B妻(2分の1)、C男(4分の1)、D子(4分の1)
2) 亡B妻分 ⇒ C男(4分の1)、D子(4分の1)

登記申請が2つになってしまう分、1回で単独名義にするのに比べて(司法書士に依頼した場合)司法書士報酬が上がったり、登録免許税が1.5倍かかってしまったりします。

当初相続人が複数名いたが、最終的な相続人が1名となった場合

ようやく本記事の本題です。上記例では子が2名(C男、D子)がいました。では最初から子がD男1名だった場合はどうなるでしょうか。話を単純化するために、最初から子が1名だった場合とはD子がそもそもいなかった場合をいいます。

  • 法定相続分による相続登記
  • B妻、C男が遺産分割協議を行い相続登記
  • A夫の遺言による相続登記

では、特に変更点はありません。

A夫が亡くなった後にB妻も亡くなった場合

A夫が亡くなり相続登記が未了のままB妻も亡くなった場合、C男が一人で遺産分割協議を行いそのことによりA夫からC男へ直接相続登記をすることができるのでしょうか。

C男はA夫の相続人であり、A夫の相続人たるB妻の相続人ではあるので、A夫の相続財産につき直接相続分2分の1、B妻経由分2分の1でA夫の財産を相続している状況です。つまりC男という同一の人物ではありますが、相続人たる地位が異なるので、その地位に基づいて一人でも遺産分割協議が行えるのかどうかという問題があります。C男が一人で、A夫の相続財産は全てC男が相続する、と決めてその遺産分割協議書をもってA夫の不動産を直接C男名義に変更できるかどうか。

もし可能であれば、相続登記という手続きにおいては亡B妻名義を経由することが不要となりますので、経由するときと比較して手続きが簡素化され、登録免許税も2/3で済みます。

一人での遺産分割協議は不可

結論から申し上げますと、残念ながらC男が一人で遺産分割協議をして、A夫からC男へ直接相続登記を申請することはできません(申請をしても却下されてしまいます)。たしか、以前は行うことができていたと思いますが、これを違法とする東京高裁の判例(東京高判平成26年9月30日)が出てしまい、この判例により以降はできなくなってしまいました。

相続人が一人になった場合は、遺産の共有状態ではなくなったため遺産分割を行うことはできない、遺産分割という考えが入り込むことはないということのようです。

つまり上記の例では、次の2つの登記申請をするしかありません。
1) 亡A夫分 ⇒ 亡B妻(2分の1)、C男(2分の1)
2) 亡B妻分 ⇒ C男(2分の1)

一番最初の例でD子がいるケース

最初のA夫、B妻、C男、D子という家族構成のケースでも、A夫名義の不動産の相続登記が未了のままB妻、D子が亡くなった場合は、C男が単独で遺産分割協議を行い、直接A夫からC男へ名義変更する相続登記を申請することはできません。

B妻が亡くなる前にB妻とC男で遺産分割協議をしていた

A夫、B妻、C男という家族構成のケースで、A夫が亡くなった後にB妻、C男が遺産分割協議(不動産はC男が取得する)を実際に行っていた場合はどうでしょうか。

この場合は、当該遺産分割協議書などを提出してA夫からC男名義に直接変更することができます。

では遺産分割協議は行ったが遺産分割協議書の作成はしていなかったら。
そのときは遺産分割協議があったことを証する遺産分割協議証明書をC男が作成して、それをもってA夫からC男へ直接名義を変更することができます。


この記事の著者

司法書士
石川宗徳

代表司法書士・相続診断士 石川宗徳 [Munenori Ishikawa]

1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)

2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。

2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。

また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。

RSM汐留パートナーズ司法書士法人では、
商業登記不動産登記相続手続き遺言成年後見など、
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