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代表司法書士 石川宗徳の 所長ブログ&コラム

株式会社の3つの公告方法とメリット・デメリットを紹介します

会社には公告義務があります

会社法によって会社には公告を行う義務が課されており、公告を怠った場合は行政罰として100万円以下の過料が科されることになっています。

公告とは、公に告知することをいい、会社から利害関係者への通知・お知らせのようなものです(利害関係者以外も見ることは可能です)。

どのような方法で公告をするのかは会社法で定められており、また公告をする方法は登記事項であるため、全ての会社の登記簿にはその会社の公告方法が記載されています。

定款に公告方法を定めることはできますが、定款に公告方法を定めていないときは「官報」がその会社の公告方法となります。

≫定款に公告方法を定めない

どのようなときに公告するか

公告には、「決算公告」と「決定公告」の2種類の公告があります。

決算公告とは、決算の承認をした定時株主総会後に遅滞なく、貸借対照表の内容またはその要旨を記載する公告のことをいいます。なお、合同会社や有限会社には決算公告を行う義務はありませんが、一般社団法人には決算公告をする義務があります。

決定公告とは、合併や吸収分割、資本金の額の減少などを行う際にする公告のことをいいます。

公告方法

会社の公告方法は、会社法第939条1項によると以下のとおりです。

会社法第939条1項
(会社の公告方法)
会社は、公告方法として、次に掲げる方法のいずれかを定款で定めることができる。
1. 官報に掲載する方法
2. 時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法
3. 電子公告

1.官報に掲載する方法

官報とは、法律や政令等の制定・改正の内容、破産等の裁判内容が掲載されている、国が発行している新聞のようなものをいいます。

記載例
(公告方法)
第○条 当会社の公告は、官報に掲載する方法により行う。

直近の官報は、インターネットでも閲覧をすることができます。
≫インターネット版官報

紙ベースの官報が販売されている、官報販売所はこちらです。
≫官報販売所一覧

官報公告は、決算公告であれば申し込みから掲載されるまで約2週間程度(10営業日程度)かかり、貸借対照表(の要旨)を掲載しない場合の決定公告は、約1週間程度(5営業日程度)かかります。

また、決算公告の掲載費用は約7万円+くらいが目安となっていますので、毎年決算公告をしっかり行うと、毎年その費用がかかってくることになります。

多くの会社が官報を公告方法として選択している印象です。

2.時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法

どの日刊新聞紙に掲載するのか、あらかじめ登記簿に記載しておく必要があります。全国紙でも地方紙でもかまいません。

記載例
(公告方法)
第○条 当会社の公告は、日本経済新聞に掲載する方法により行う。

官報に比べると掲載費用が高く、この公告方法を選択している会社は多くはありません。新しく設立する会社で、日刊新聞紙に掲載する方法を会社の公告方法とする会社はほとんどないと思います。

ただし、合併や減資等の機会に決定公告を行うときに、各債権者への催告を省略するための、いわゆるダブル公告を行う場合にスポット的に利用されることはあります。

ダブル公告についてはこちらの記事をご参照ください。

≫いわゆるダブル(二重)公告

3.電子公告

電子公告とは、特定のアドレスのウェブページに公告内容を掲載する方法で、当該アドレスは登記事項とされています。

記載例
(公告方法)
第○条 当会社の公告は、電子公告とする。ただし、事故その他やむを得ない事由によって電子公告による公告ができない場合は、官報に掲載してする。

※定款にはURLの記載はなくても問題ありません。また上記のように、やむを得ない事由によって電子公告ができないときの代替方法を定めることもできます。

電子公告のメリット

電子公告の特徴として、サーバー代やドメイン代を除き費用がかかりませんので、他の公告方法に比べて会社のランニングコストは低くなります。ただし、決定公告については下記デメリットをご参照ください。

決算公告については、調査会社の調査は不要とされています。

電子公告のデメリット

自社でホームページを用意しない場合、公告掲載用のページを業者から借りると毎月数百円~数千円の費用が発生します。

決算公告をするときに、官報や日刊新聞紙は貸借対照表の要旨を掲載すれば済みますが、電子公告では貸借対照表の全文を掲載しなければなりません。さらに、電子公告では決算公告を5年間掲載し続けなければなりません。

合併等の際に決定公告を行う場合は、その登記申請の添付書類として「公告をしたことを証する書面」が必要となりますが、基本的にはそれを調査会社に発行してもらう必要があり、その費用として数万円~十数万円以上かかります(調査会社によって金額が異なります)。

また、公告掲載中にサーバーがダウンしてしまう可能性もゼロではなく、会社側の落ち度無しに公告が途切れてしまう可能性も否定できません。

さらに、公告期間が満了しても、調査会社は即日に電子公告がされていたことの証明書を出してくれるわけではありませんので、新設合併等の登記自体が効力発生日となっているケースでは、その証明書が発行されるまでの期間を考慮したスケジュールを立てなくてはなりません。

4.官報公告+電子公告(決算のみ)

決算公告のみを電磁的方法(ウェブページ)によることもできます(電子公告)。つまり、決定公告は官報で、決算公告はウェブページで行う、と定めることも可能です。この場合、定款における公告方法の定めは「官報に掲載する方法により行う。」のままで構いません。

決算公告をウェブページで行う場合は、登記簿にその旨と決算公告を掲載するウェブページのアドレスを記載しておく必要があります。

定款変更の効力は発生したけれども、その変更登記をせずに変更後の公告方法で決算公告を行ったとしても、その決算公告に効力はありません。

どの公告方法が良いのか

費用面で一番安くなるのは、官報公告+電子公告(決算のみ)です。

ただし、決算の内容につき貸借対照表の要旨ではなく、貸借対照表の全文を掲載する必要がありますので、それを良しとしないのであれば公告方法は官報公告(のみ)ということになります。

合同会社であれば決算公告の義務はありませんので、官報公告を会社の公告方法としておくケースが多いのではないでしょうか。合同会社でも公告費用が安いから電子公告を選択しているという方がたまにいらっしゃいますが、決算公告義務がないことを考えると、決定公告においては官報公告の方が安くなるケースも少なくありません。

※公告の調査会社の費用も段々と下がってきており、官報公告より安い調査会社も増えてきています。

なお、本記事は主に対象を中小の規模である株式会社・合同会社を対象としております。


この記事の著者

司法書士
石川宗徳

代表司法書士・相続診断士 石川宗徳 [Munenori Ishikawa]

1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)

2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。

2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。

また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。

RSM汐留パートナーズ司法書士法人では、
商業登記不動産登記相続手続き遺言成年後見など、
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