IPO準備会社の創業者株式を資産管理会社へ譲渡する場合の株価

ビジネスの話

スタートアップ等のIPO準備会社において、経営者から「すで資金調達を実行したのですが、今更ですが自分の持株を資産管理会社へ譲渡したいのですが、極力低い価格で譲渡することはできませんか?」というご質問を頂くことがよくあります。

「本当は持株の50%くらいを資産管理会社へ移しておけば、節税対策にもなるのにな・・・。時すでに遅し。でも何かいい方法はないだろうか?」と経営者の皆様はお考えになり、そして色々とお調べになり、インターネットや人を介して汐留パートナーズにたどり着くことがあるようです。

さて、IPO準備会社の株価算定には複数の方法があります。例えば
・ディスカウンティド・キャッシュフロー法(DCF法)
・マルチプル法
・時価純資産法
などの方法です。細かく分けると色々な方法があります。

上記のご質問のように、すでにエンジェルラウンドやシリーズA等のファイナンスを実行している場合には、自社の株式のバリューエーションは非常に高くなっております。株価算定方法としては、DCFで計算をしているケースが多いことでしょう(VC等がバリューエーションの算定方法を明らかにしてないケースもありますが)。

マルチプル法は利益が計上されていないタイミングでは利用しにくい部分もありますので、DCFで算定することが多いように感じていますが、これはあくまで経営者の描く、時にはバラ色の中長期事業計画をもとにして株価を算定しますので、基本的には非常に高い株価となるケースが一般的です。

ゆえに、資金調達時においては経営者としてDCFで算定をした株価をもとに、色々な投資家とお話をされるのですが、一方で、「資産管理会社に株式を譲渡したい」ですとか、「辞めた役員や従業員から株式を買い取りたい」というようなニーズにおいては、極力低い株価で行いたいということとなります。

自分の会社の株価が上がったり下がったりする・・・

一般的な感覚の経営者の方々は、ファイナンスや税務に詳しくなくても「あれ?なんかリスクありそうじゃない?」と思うことでしょう。

極力低い株価で株式を譲渡する場合にはどのような問題が生じるかですが、やはり一番大きなリスクは株式の売買に伴う税務リスクです。本件ですと、創業オーナーである個人が、資産管理会社である法人に低廉な価格で株式を譲渡するわけですが、ここでいう低廉とは一般的に時価の2分の1未満で譲渡するケースを指します。

<株式を2分の1未満の時価で譲渡した個人>
原則として買主の法人はオーナーからすると同族会社ですので、時価によって譲渡が行われたものとみなされ所得税等が課されるリスクがあります。

<株式を2分の1未満の時価で取得した法人>
時価と譲渡価額の差額については受贈益となり法人税等が課されるリスクがあります。

さて、ではこのようなケースにおいて、極力リスクを抑えて低い株価で株式を譲渡するためにはどうすればよいかですが、「低い株価→しっかりと合理的に算定された時価」という論理的な裏付けが必要です。すなわち「低くない」と主張する必要があります。基本的にはDCF法ではなく時価純資産法で算定することになります。

そのためには、外部の公認会計士による株価算定書の取得はマストですが、では、どのようなロジックで進めていけばいいかというのは毎度非常に神経を使います。正解はないので答えにたどり着くことができない場合もありますし、反対に、素晴らしいご提案ができるケースもあります。

資金調達、資本政策、過去の株価の推移等に応じて最良の方法を模索することになります。最近はベンチャーキャピタル等からの資金調達において、残余財産分配請求権付の優先株式を発行するケースが多くございます。このような種類株式と普通株式が混在しているケースでは、普通株式の株価は種類株式のより株価よりも相対に低くなると考えられます。

よって、このポイントに着目して株価算定を行うケースがあります。

税務上、普通株式と種類株式がどちらも同じ評価となるのか、それとも異なる評価となるのかという点については、明確に評価方法は規定されていませんが、以下の種類株式について、国税庁が「種類株式の評価について(情報)」により評価方法を示しています。

①配当優先無議決権株式:普通株式の評価額から5%評価減
②社債類似株式:社債に準じて評価(既経過利息の額に相当する配当金の加算しない)
③拒否権付株式:普通株式と同じで拒否権を考慮せずに評価

実態に即して考えますと、普通株式と優先株式は残余財産分配請求権をはじめとした各種の優先条項により、明確にその価値に差があるため、優先株式の評価額が相対的に高く、普通株式の評価額が相対的に低くなることには一定の合理性があると考えます。

上記の見解はあくまで私見でございます。なお、「IPO準備会社で株式譲渡をなるべく低い株価で行いたいケース」についての記事も書いています。合わせてお読みいただければ幸いです。

汐留パートナーズグループの株価算定業務やIPOコンサルティングに興味がありましたらお気軽にお問い合わせください。

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