金融庁はビットコイン等の仮想通貨を支払手段として認めてはいますが、仮想通貨は税務上はまだ通貨とはされていません。すなわち「モノ」です。この度2017年9月6日に国税庁のHPにおいて、「ビットコインを使用することにより利益が生じた場合の課税関係」についてタックスアンサーが公表されました。

タックスアンサー (TAX ANSER) は、国税庁のホームページ上のQ&Aのようなもので税法の条文や通達ではありませんが、記載内容はわが国の税に関する取扱いの公式見解でもあり、これに従った税務処理が求められることとなります。

このタックスアンサーが公表される前には、ビットコインで儲けた利益に対する課税は、「譲渡所得になるのではないか?」という見解もありましたが、このタックスアンサーにより、ビットコインを使用することにより生じる損益については原則、「雑所得」に区分されることが明確となりました。本日は個人がビットコイン等の仮想通貨で利益を得た場合の確定申告について解説させていただきます。

1.国税庁タックスアンサー「ビットコインを使用することにより利益が生じた場合の課税関係」

2017年9月6日に国税庁のHPにおいて以下のタックスアンサーが掲載されました。

No.1524 ビットコインを使用することにより利益が生じた場合の課税関係
[平成29年4月1日現在法令等]
 ビットコインは、物品の購入等に使用できるものですが、このビットコインを使用することで生じた利益は、所得税の課税対象となります。このビットコインを使用することにより生じる損益(邦貨又は外貨との相対的な関係により認識される損益)は、事業所得等の各種所得の基因となる行為に付随して生じる場合を除き、原則として、雑所得に区分されます。(所法27、35、36)
URL:https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1524.html

このタックスアンサーは非常に内容がシンプルなもので、仮想通貨全般に関するたくさんの問い合わせが国税庁にあったため、取り急ぎ大まかな方針について公表したというところかと思います。

まず確実にわかることとしては、「ビットコインを使用することにより利益が出ると、確定申告をしなければならず、その所得区分は原則として雑所得になる」という点です。

一方で、上記タックスアンサーが非常に限定的な内容なものでもあるため、その解釈についてさまざまな見解があり、いくつかの疑問点も生じてきます。

(1)ビットコイン(BTC)についてしか記載がないが、それ以外の仮想通貨(アルトコイン、オルトコインともいう)、例えばイーサリアム(ETH)やリップル(XRP)等の使用から生じた利益の取り扱いについてはどのようになっているのだろうか?
(2)「事業所得等の各種所得の基因となる行為に付随して生じる場合を除き」とあるが、ビットコインの取引が事業所得に区分される場合はどのような場合いだろうか?
(3)そもそもビットコインの「使用」という概念が詳しく定義されていないが利益が生じることの起因となる「使用」という行為はなんだろうか?

これらの疑問点についても、現時点では明確な回答はできないため私見とはなりますが、見解を述べつつ解説させていただければと思います。なお、ビットコイン以外の仮想通貨(オルトコイン)については【国税庁QA】仮想通貨の所得計算の具体例のFAQ3にてビットコインと同様の取り扱いになることが明らかとなりました。また、仮想通貨のマイニング(採掘)については【国税庁QA】仮想通貨の所得計算の具体例のFAQ9にて雑所得又は事業所得になると明記されました。

2.確定申告における所得の種類⇒雑所得が原則

(1)雑所得って何?

上述した通り、ビットコインの使用により利益が出る場合には、原則として雑所得の区分にて確定申告を行うこととなります。「雑所得ってなんだろう?」と思われる方も多いと思いますので、まずは雑所得について解説をさせていただきます。

No.1500 雑所得 [平成29年4月1日現在法令等]
1 雑所得とは
雑所得とは、他の9種類の所得のいずれにも当たらない所得をいい、公的年金等、非営業用貸金の利子、著述家や作家以外の人が受ける原稿料や印税、講演料や放送謝金などが該当します。
2 所得の計算方法
雑所得の金額は、次の(1)と(2)との合計額です。
(1)公的年金等
 収入金額 – 公的年金等控除額 = 公的年金等の雑所得
(注)公的年金等控除額は、受給者の年齢、年金の収入金額に応じて定められています。
(2)公的年金等以外のもの
 総収入金額 – 必要経費 = その他の雑所得
3 税額の計算方法
雑所得の金額は、給与所得などの他の所得の金額と合計して総所得金額を求めた後、納める税額を計算します。(以下省略)
国税庁HPのURL:https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1500.html

雑所得とは、所得税法35条で「利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得および一時所得のいずれにも該当しない所得」と規定されています。結局その他の所得ということになります。

その他というとわかりにくいので、投資・資産運用回りで例を挙げると、営利を目的として継続的に行われているが事業とはいえないことを前提に(事業所得に当たらないことを前提に)、以下のような所得が雑所得となります。後述する総合課税に当たるものと当たらないものについての説明はここでは割愛しますが、【国税庁QA】仮想通貨の所得計算の具体例のFAQ8においても一部明確化されていました。

①外貨投資における為替差益
②FX(外国為替証拠金取引)に関わる所得
③先物取引に関わる所得
④店頭FX・店頭CFDなどの店頭デリバティブ取引に関わる所得

(2)ビットコインの使用から生じる雑所得の計算方法

ビットコインの使用により生じた利益については、上記「2 所得の計算方法(2)公的年金等以外のもの」
にあたりますので、「総収入金額 – 必要経費 = その他の雑所得」という計算により所得を計算することになります。しかしながら、総収入金額という言葉からはイメージが沸きにくいため、「売却金額-(取得金額+必要経費)」と分けて考えたほうがわかりやすいと思います。

①売却金額

売却金額とは、一般的なケースを想定しますと、ビットコイン等の仮想通貨を売却した際に得られる円金額、あるいは、ビットコイン等の仮想通貨を使用して商品やサービスを購入した際の商品やサービスの円金額のことです。

②取得金額

取得金額とは、一般的なケースを想定しますと、ビットコイン等の仮想通貨を購入するために要した円金額、あるいは、ある仮想通貨で別の仮想通貨を購入する際の時価の円換算金額額のことです。ビットコイン等の取得金額をどのように把握するのかという点が極めて重要なポイントです。売買を繰り返していたり、複数の取引所やウォレットを利用している場合、複数の仮想通貨を取引している場合など色々なケースが想定されます。

購入だけでなく、何らかの事情で仮想通貨を無償で取得することもあるでしょうし、ブロックチェーンが分裂して無償でコインが付与されることも考えられます。この場合に、移動平均法、総平均法により平均取得金額を計算することは重要なのですが非常に煩雑な作業となることが想定されます。なお、【国税庁QA】仮想通貨の所得計算の具体例のFAQ4において移動平均法と総平均法について触れられました。

③必要経費

必要経費とは、易しい言葉に言い換えるならば、「収入を得るために要した費用」ですが、この金額が多ければ多いほど、収入から経費を差し引いた所得は下がります。所得が下がると税金が下がります。「必要経費」はとても重要な項目です。

しかしながら、仮想通貨の取引に関する必要経費としては、あまり多くは想定されないことでしょう。事業所得となる場合の方が広く認められると思われますが、雑所得の場合には主たる事業というよりは副業的な位置づけが大きいため、直接的なものに限られると思われます。

以下では仮想通貨の取引に関する必要経費項目をご紹介します。なお、以下の項目の全額が必要経費とはならず、事業割合のみが必要経費となることにはご注意ください。

取引手数料 ビットコイン等の仮想通貨を取引所で購入したり売却したりする際の手数料です。これについては必要経費となります。
書籍代・セミナー代 書籍を購入したりセミナーに参加して勉強する費用については必要経費となります。
電気代 マイニング(採掘)を行う場合には、マイニングに関する電気代も必要経費になります。
通信・インターネット関連費 仮想通貨の取引に関する携帯電話代、固定電話代、ファックス代、インターネット代、葉書・切手代などがあれば必要経費になります。
PC関連費 スマートフォン・タブレット・パソコンの購入費は割合はさておき必要経費となります。関連するソフトウェアや、印刷する用紙などPC関連の費用も必要経費となります。
税理士・会計事務所等の報酬 税理士等の専門家と契約している場合には、支払っている報酬については必要経費となります。

上記以外にも「この経費がないと仮想通貨の取引からの利益を獲得できないんだ!」という項目もあるものと思います。そのような場合には、税理士・会計事務所に相談しながら必要経費となるかならないかを慎重に検討していく必要があります。

なお、上記の必要経費についてはインターネット上で証拠書類(エビデンス)が残るものはそのPDF等を、それ以外の紙ベースのものは領収書や請求書等を、確定申告においてしっかりと保存をしておく必要があります。電子帳簿保存法に関する申請を行っていない限りは、原則として紙ベースでの書類保管が必要となります。

なお、同一課税期間において売却益と売却損が生じた場合には、売却益だけに課税されることはありませんのでご安心ください。売却損と相殺した後の売却益部分について課税されることとなります。

(3)ビットコインの使用から生じる雑所得は税金計算上どうなるのか?

雑所得の金額は、他の所得と合算して、総所得金額を構成します。この総所得金額に応じて適用される税率が決まることとなります。総所得金額が高いと我が国では累進課税制度ゆえに、最高で所得税率45%+住民税率10%の合計55%もの税金が課せられることとなります。

所得税の税率は、分離課税に対するものなどを除くと、5%から45%の7段階(平成19年分から平成26年分までは5%から40%の6段階)に区分されています。課税される所得金額(千円未満の端数金額を切り捨てた後の金額です。)に対する所得税の金額は、次の速算表を使用すると簡単に求められます。

【所得税の速算表】
※住民税は別途10%です。

課税される所得金額 税率 控除額
195万円以下 5% 0円
195万円を超え 330万円以下 10% 97,500円
330万円を超え 695万円以下 20% 427,500円
695万円を超え 900万円以下 23% 636,000円
900万円を超え 1,800万円以下 33% 1,536,000円
1,800万円を超え 4,000万円以下 40% 2,796,000円
4,000万円超 45% 4,796,000円

※1 例えば「課税される所得金額」が700万円の場合には、求める税額は次のようになります。700万円×0.23-63万6千円=97万4千円
※2 平成25年から平成49年までの各年分の確定申告においては、所得税と復興特別所得税(原則としてその年分の基準所得税額の2.1%)を併せて申告・納付することとなります。
国税庁HPのURL:https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/2260.html

例えば5000万円以上の仮想通貨の含み益を年内に利益確定(業界では「利確」とよく言います。)したら、半分近くは税金で消えてしまいます・・・。投資の税金としてはなんて高額なんだろうって思ってしまいます。年収が5000万円の方が仮想通貨の含み益の利確をすると、いくらであっても少額なのに半分は税金になってしまいます。

また、ビットコインの取引で不運にも損失を計上してしまうこともあるでしょう。この損失であるマイナスの雑所得はなんと損益通算をすることができません。損失が出ると切り捨てられてしまいますので、給料や不動産所得等の他の所得と相殺することもできませんし、翌年の所得と相殺することもできません。

ビットコインの使用から生じる雑所得が雑所得となってしまったことは、取引をされている方からしてみますと最悪の所得区分になってしまったと言わざるを得ません。【国税庁QA】仮想通貨の所得計算の具体例のFAQ7においてもこのことが明確になっています。

【雑所得となってしまうことによるマイナスポイント】

①雑所得は総合課税であり累進課税制度のため、最高で所得税率45%+住民税率10%の合計55%もの税率が課されてしまう。
②マイナスの雑所得は損益通算できないので損失が出ると切り捨てられてしまうため、他の所得や翌年の所得と相殺することができない。

以下、所得控除等を度返しして、上記雑所得となってしまうことによるマイナスポイントにつき簡単な例をお示しいたします。

(例1)仮想通貨の取引により5000万円の雑所得を得た。

A 所得税=50,000,000円×45%-4,796,000円=17,704,000円
B 復興特別所得税=17,704,000円×2.1%=371,784円
C 住民税=50,000,000円×10%=5,000,000円
税金総額=A+B+C=23,075,784円(税負担率46.15%)

(例2)仮想通貨の取引により5000万円の雑所得を得た次の年に、仮想通貨の取引で5000万円の損をしてしまた。

前年の納税額 → 23,075,784円
当年の納税額 → 0円(損失は切り捨て、前年の納税額を還付してもらうことも不可能)

3.20万円以下の雑所得は確定申告が不要?

給与等の収入金額が2,000万円以下である給与所得者は、1か所から給与等の支払を受けており、その給与について源泉徴収や年末調整が行われる場合において、給与所得及び退職所得以外の所得金額の合計額が20万円以下であるときは、原則として確定申告を要しないこととされています。

しかし、この規定は確定申告を要しない場合について規定しているものであり、確定申告を行う場合にも、この20万円以下の所得を申告しなくてもよいという規定ではありません。したがって、給与所得及び退職所得以外の所得金額の合計額が20万円以下であることにより、給与所得者が確定申告を要しない場合であっても、例えば、医療費控除の適用を受けるための還付申告を行う場合には、その20万円以下の所得も併せて申告をする必要があります。
国税庁HPのURL:https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1900_qa.html

サラリーマン等で給与所得者の場合、年末調整で基本的には1年間の所得確定及び税額確定が行われます。したがって、ビットコイン等の仮想通貨による取引から生じた利益が20万円以下であれば、確定申告を行わなくていいということになります。

気を付けなければならないのは、2箇所以上の会社等から受け取る給与収入は、合算して確定申告する必要があります。年末調整をする会社は扶養控除等申告書を提出する本業の会社1箇所分だけであるためです。副業として行っている経済活動が給与収入である場合、20万円以下であっても確定申告をする必要はありますので注意が必要です。

なお、【国税庁QA】仮想通貨の所得計算の具体例のFAQ前文においてもこのことが明確になっています。

4.仮想通貨の取引から生じる利益が事業所得にあたるケース

これまで、仮想通貨の取引から生じる利益は原則として雑所得にあたること、雑所得は最悪の所得区分であり極めて不利な税務ポジションとなること等について解説させていただきました。では、仮想通貨の取引から生じる利益を何とかして事業所得にすることはできないだろうかと皆さん考えられると思います。

そこで、仮想通貨の取引から生じる利益が事業所得にあたるケースとはどのような場合かについてみていきたいと思います。なお、【国税庁QA】仮想通貨の所得計算の具体例のFAQ6にて、「雑所得以外に区分される場合には、どのような場合がありますか。」というQがありましたが、「事業所得者が、事業用資産としてビットコインを保有し、決済手段として使用している場合、その使用により生じた損益については、事業に付随して生じた所得と考えられますので、その所得区分は事業所得となります。 このほか、例えば、その収入によって生計を立てていることが客観的に明らかであるなど、その仮想通貨取引が事業として行われていると認められる場合にも、その所得区分は事業所得となります。」という内容のみが明記されていました。

したがってより詳細に検討を行って見たいと思います。

(1)事業所得となるための要件

まず、雑所得か事業所得かという所得区分についての論点は、かなり昔から我が国において議論がなされている古典的なものです。個人で営む事業が雑所得として簡易な扱いを受けるのか、又は、しっかりとした事業として認められて事業所得となるのかというものです。個人で営む事業の所得が事業所得となるためには、一般的には以下のような要件を満たすことが必要です。

事業所得とは、自己の計算と危険において独立して営まれ、
①営利性・有償性の有無
②継続性・反復性の有無
③自己の危険と計算における事業遂行性の有無
④その取引に費やした精神的・肉体的労力の程度
⑤人的・物的設備の有無
⑥その取引の目的
⑦その者の職歴・社会的地位・生活状況
などの諸点を総合して、社会通念上事業といい得るか否かによって判断する。

これは、最高裁判所昭和56年4月24日第二小法廷判決(昭和52年(行ツ)第12号所得税更正処分取消請求上告事件、以下「昭和56年最高裁判決」という。)及び平成11年10月15日裁決(名裁(所)平11第18号)で示された事業所得にあたるかどうかの基準です。

したがって、仮想通貨の取引という事業が
①営利性・有償性の有無
②継続性・反復性の有無
③自己の危険と計算における事業遂行性の有無
④その取引に費やした精神的・肉体的労力の程度
⑤人的・物的設備の有無
⑥その取引の目的
⑦その者の職歴・社会的地位・生活状況
などの要件を満たす必要があります。

(2)仮想通貨の取引が事業所得となるかどうかの具体的な考察

仮想通貨の取引が事業所得となるかどうか具体的に考察してみたいと思います。

①営利性・有償性の有無
こちらについては、営利を目的として資金を投下して仮想通貨の取引を行っているので要件を満たすことはできるケースが多いと思われます。

②継続性・反復性の有無
こちらについては、単に思い立った時に仮想通貨の売買や使用を行うだけでは要件を満たすことは難しいと思われます。何度何度も繰り返し儲けのために取引をして、そして、それを継続する必要があります。

③自己の危険と計算における事業遂行性の有無
こちらについては、自らの貴重な資金を投下して自分のリスクで仮想通貨の取引を行うことが必要です。また、「事業遂行性」ということから副業の範囲を超えて事業として仮想通貨の取引を遂行する明確な意思が必要になると思われます。

④その取引に費やした精神的・肉体的労力の程度
こちらについては、一定の精神的・肉体的労力が必要であるという要件であるため、ワンショットで大きく仮想通貨で儲けたというケースや、中長期保有で仮想通貨を購入して寝かしておきたまに売買するというケースのように、精神的・肉体的労力がさほどかからない場合では要件を満たさないことでしょう。

⑤人的・物的設備の有無
こちらについては、例えば人を雇用して仮想通貨の取引を組織的に行ったり、仮想通貨の取引の事業のために必要なトレードのためのオフィスや充実したモニター・PC等を準備して事業を行ったりすることが求められることでしょう。
 
⑥その取引の目的
こちらについては、仮想通貨の取引の目的が単なる趣味、勉強、研究等ではなく、それを生活の基盤として本気で利益を獲得することを目的としているかという点です。 

⑦その者の職歴・社会的地位・生活状況
こちらについては、仮想通貨による取引が副業ではなく主たる事業であると言える者であって、その事業からの収入により生活の基盤が確保されていることなど、また、仮想通貨の取引に関する書籍の出版、ブログの執筆、セミナーの開催など客観的な活動が存在していることなどが求められます。

 

判例にも、「諸点を総合して」と、また、「社会通念上」とありますので、形式上すべてを満たしても事業所得として認められないケースもありますし、すべてを満たしていなくても総合的判断により、事業所得として認められるケースもあろうかと思います。

ただ、やはり副業レベルの仮想通貨の取引が事業所得と認められることには、かなりハードルが高い言わざるを得ないと思います。過去、「雑所得か事業所得か」とう論点については何度も裁判で争われているという点については頭に入れておくべきです。「仮想通貨の取引等に関する所得が雑所得か事業所得か」という裁判の判例もいつかは出てくることでしょう。なお、「ビットコイン等の仮想通貨の利益が事業所得になる場合とは?」の記事で過去の不服審判等の判例について中心に書かせていただきました

(3)仮想通貨の取引が事業所得となるとどんなメリットがあるのか?

もし、仮想通貨の取引が事業所得となった場合には、以下のようなメリットがあります。

①事業所得の損失は給与所得や不動産所得などの他の所得と損益通算できる
②①で損益通算してもまだ残る純損失は3年間の繰越しができる
③青色申告特別控除(65万円又は10万円)を利用できる
④青色事業専従者として親族に給与を支給して経費とすることができる

6.仮想通貨を使用することによる利益とは?

当然ながら、単にビットコイン等の仮想通貨を購入しただけ、また購入した仮想通貨を保有しているだけという状態では、課税対象とはなりませんので、確定申告を行う必要はありません。ビットコイン等の仮想通貨を「使用」して利益を得た場合に課税されますので、使用の「範囲」が重要です。単に保有しているだけでは課税されません。

以下、「使用の範囲」について考えてみますと、例えば次の①~⑥が考えられます。

(1)ビットコインを売却して円に変えた場合

ビットコインを売却して円に換えた場合には、「売却金額-取得金額ー必要経費」が売却益として課税対象となります。

(2)ビットコインをアルトコインに交換した場合

ビットコインをアルトコインに交換した場合には、「アルトコインの取得金額-ビットコインの取得金額」が課税対象となります。

(3)アルトコインAをビットコインに交換した場合

アルトコインAをビットコインに交換した場合には、「ビットコインの取得金額-アルトコインAの取得金額」が課税対象となります。

(4)アルトコインAを別のアルトコインBに交換した場合

アルトコインAを別のアルトコインBに交換した場合には、「アルトコインBの取得金額-アルトコインAの取得金額」が課税対象となります。

(5)ブロックチェーンが分裂して無償でコインが付与され、それを売却して円に変えた場合

ブロックチェーンが分裂して無償でコインが付与され、それを売却して円に変えた場合の処理については【国税庁QA】仮想通貨の所得計算の具体例のFAQ5にて明らかにされました。無償で入手したコインについて取得金額を0円とするという考え方になることが明確になり、課税対象となる金額は「売却金額-取得金額-必要経費」で計算されます。

(6)ビットコイン等の仮想通貨を用いて商品やサービスを購入した場合
ビットコイン等の仮想通貨を用いて商品やサービスを購入した場合には、一見利益が生じていないように見えますが、一度日本円に換金してそれで商品やサービスを購入したと考えなければなりません。したがって、課税対象となる金額は「商品・サービスの購入金額-取得金額-必要経費」で計算されます。

上記の内容について表にまとめますと、以下のとおりです。

使用とみなされるケース 所得の計算
ビットコインを売却して円に変えた場合 売却金額-取得金額ー必要経費
ビットコインをアルトコインに交換した場合 アルトコインの取得金額-ビットコインの取得金額
アルトコインAをビットコインに交換した場合 ビットコインの取得金額-アルトコインAの取得金額
アルトコインAを別のアルトコインBに交換した場合 アルトコインBの取得金額-アルトコインAの取得金額
ブロックチェーンが分裂して無償でコインが付与され、それを売却して円に変えた場合 売却金額-取得金額ー必要経費
ビットコイン等の仮想通貨を用いて商品やサービスを購入した場合 商品・サービスの購入金額-取得金額-必要経費

(7)ビットコイン等の仮想通貨をもらった場合

ビットコイン等の仮想通貨を無償でもらった場合、入手時の時価で評価して贈与税の課税対象となる資産に含めることになります。

7.仮想通貨で利益を得て確定申告を行う場合の手順

仮想通貨で利益を得た方は確定申告を行う必要がありますが、ここでは個人の方々が確定申告を行う際の一般的な手順について解説させていただきます。仮想通貨で利益を得た方が確定申告を行う際の一般的な流れは以下の通りです。

(1)そもそも確定申告を行う場合とは?

確定申告を行う必要があるかの判断基準についてご紹介します。ビットコイン等の仮想通貨の取引により利益を得た方が、確定申告を行う必要があるかどうかについては判断する場合には、以下について検討する必要があります。

(1)個人事業主としての事業所得が発生しているか?
(2)給与の年間収入金額が2,000万円を超えているか?
(3)給与を2か所以上から受けていて、かつ、その給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、年末調整をされなかった給与の収入金額と、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く。)との合計額が20万円を超えているか?
(4)その他確定申告を行う必要がある一時所得や不動産所得や「雑所得」などが発生しているか?

上記のいずれかに該当する場合皆様は、次のステップに従って確定申告を行うこととなります。

(2)確定申告のための申告用紙を入手する

 最初に最寄りの税務署または国税庁ホームページから確定申告書の用紙を入手することからスタートします。いろいろな用紙があってわかりづらいですが簡単に紹介しますと以下のような種類となっています。

・確定申告書A
確定申告書Aは主に給与所得者や年金所得者の確定申告書ですが、ビットコイン等の仮想通貨の使用による雑所得がある場合にも用います。
⇒ビットコイン等の取引を法人を設立して口座を開設して行っている方で、役員報酬を受け給与所得者となっている場合にはこの確定申告書Aを利用する場合があります。

・確定申告書B
確定申告書Bは主に個人事業者や分離課税対象の所得がある人のための確定申告書です。もしビットコイン等の使用による事業所得がある場合にも用います。
⇒ビットコイン等の使用による事業所得と認めてもらうには上述のとおり一定のハードルはありますが、もし事業所得となる場合には、通常はこの確定申告書Bを入手することとなります。

・分離課税用(確定申告書Bとセットで使用)
土地建物等・株式等を譲渡した場合の所得(譲渡所得)や退職所得などがある人の確定申告書です。
⇒上記の所得がある場合にはこれも入手する必要があります。
・損失申告用(確定申告書Bとセットで使用)
所得金額が赤字になる人の確定申告書です。
⇒ビットコイン等の仮想通貨の取引が事業所得と認められるケースで、損失が出てしまった場合には、当該損失について損益通算を行う場合にはこれを用います。。ビットコイン等の仮想通貨の取引からの収入では食べて行けずアルバイトで生計を立てているという場合には、損益通算を行うことでアルバイトで得た給与に課されている所得税の還付を受けることができる場合があります。

なお、最近は国税庁のウェブサイトである確定申告書作成コーナーからも確定申告書を作成することができますので、以前よりは確定申告書の用紙を入手して手書きで記載する方は少なくなっております。

(3)確定申告書を作成するための必要情報・必要書類を集める

ビットコイン等の仮想通貨により利益を得た方等が確定申告を行うために必要となる情報や書類は、ケースバイケースなので一概には言えませんが、例えば以下のような書類が必要となります。
・仮想通貨取引所から抽出できる取引履歴が確認できる書類
・ウォレットなどで仮想通貨を管理・使用している履歴が確認できる書類
・事業所得者の場合、必要経費の領収書や請求書等
 ※家賃や車両費や携帯電話料金など100%を必要経費にしづらいものについては経費算入した割合についての説明も必要です。
・各種控除のための証明書類(生命保険料控除証明書等)

この中で特に大変なのは、「仮想通貨取引所から抽出できる取引履歴が確認できる書類」、「ウォレットなどで仮想通貨を管理・使用している履歴が確認できる書類」としてどのようなものを準備すればよいかです。2017年は仮想通貨による正式な確定申告が始まる最初との年といっても過言ではありません。

また、事業所得者の場合には、必要経費の領収書や請求書等を整理しEXCELにまとめる等の作業もです。もちろん領収書ごと税理士や会計事務所に渡して確定申告をお願いするという方も多いと思いますが、ご自身で行う場合には、しっかりとまとめておく必要があります。MF会計やfreeeなどのクラウド会計ソフトをインターネットバンキングやクレジットカード情報と接続しておくことで容易に管理をすることもおすすめです。

(4)確定申告書を作成する

必要な情報や書類が集まりましたら確定申告書を作成していきます。確定申告書には色々な明細を添付する必要があります。そして提出用と控え用と2部作成する必要があります。何かあった場合の確認や翌年以降に確定申告書を作成する上での参考となります。この作業は3月15日までに行うこととなります。

ここで事業所得者についてのみの話とはなりますが、白色申告と青色申告で作成する書類が一部異なってきます。白色申告の場合にはいくつかの税務上の恩恵は得られないが貸借対照表を作成する必要がなく経理処理が必要に楽です。一方で青色申告は事前に税務署に「所得税の青色申告承認申請手続」を提出することで、いくつかの恩恵を受けられますが貸借対照表を作成するなど作成する明細が多くなります。青色申告と白色申告の違いについては別の機会でご紹介させていただきます。

先日仮想通貨を取引して生計を立てている方からご相談がありました。質問内容は「確定申告書には職業欄がありますが、ビットコイン等の仮想通貨で生計を立てている場合には、職業欄に何と書くのでしょうか?」というものでした。回答としては、「特に決まりがないため自由ですがお仕事の内容がわかるように記載するべきでしょう」とさせていただきました。弊事務所では、「トレード事業」「投資事業」あるいは少し抽象的ですが「自営業」などの中からお客様に選んでいただいております。

(5)作成した確定申告書を税務署に提出する

作成した確定申告書は提出時の住所地を管轄する税務署に提出することとなります。なお、年の途中で引越した場合には、引越し後の住所を管轄する税務署に提出することになります。その場合には、引越し前の管轄税務署と、引越し後の管轄税務署の両方に忘れずに「納税地の異動に関する届出書」という書類を提出する必要があります。

確定申告は毎年対象となる年の翌年2月16日から3月15日までに行う必要があります。毎年2月16日には芸能人が確定申告書を税務署に提出しに行くシーンがテレビで放送されたりもします。実際には税務署の窓口に自ら提出に行かれる方は以前よりは減っております。なお、所得税が還付されることとなる確定申告書の場合には、2月16日を待たずしてなんと1月1日からすぐに提出することができます。

提出方法としては、もちろん税務署に直接持参しても大丈夫ですが、郵送にて送ることも可能です。郵送の場合には控えと切手を貼った返信用封筒を同封することに忘れないようにします。なお郵送の際は消印有効ですので提出期限の最終日の消印がもらえれば期限内申告となります。期限後申告となりますとペナルティがあります。なお、よく芸能人の方がテレビで「e-tax(電子申告)で確定申告をしています」とPRしていますが、実際には個人でe-taxを利用して電子申告を行うことはなかなか大変だというのが実情です。

(6)所得税の納付をしたり、または、還付を受ける

所得税の納期限は確定申告期限と同じ3月15日となっています。所得税の確定申告書を提出する際に、同時に納付書に金額を記載の上、税務署、銀行、郵便局、信用金庫等で納付をします。還付申告の場合には確定申告書を提出して1か月くらいしますと指定口座に還付されることとなります。なお還付申告の場合の指定口座はネット銀行の口座は対応していない場合があるので注意が必要です。

なお、住民税の納付については申告した所得税確定申告書をもとに5月までに決定され6月から納付を開始することとなります。したがって、住民税の巨額な納付書が突然自宅に届くということに備えてしっかりと納税資金を確保しておく必要があります。

確定申告においては「何をしたらいいんだろう?」「どんな書類を集めればいいのだろう?」「どうやって書けばいいのだろう?」と不安になることも多いと思います。確定申告についてお困りの際はお気軽にご相談下さい。ご自身でご自身のことを客観的に見つめ確定申告を行うことはとても難しいと思います。また、ちまたのTwitterなどで税理士や会計事務所ではない方々のツイートを見ておりますと、「ばれないんじゃないの?」「ばれたら支払えばいいんじゃないの?」というコメントを見ることがありますが、これは当然のことながら脱税となり罰金・懲役の対象となります。ビットコイン等の仮想通貨による取引は極めて匿名性が高いものであることは周知の事実ですが、それと利益に対する申告及び納税は関係はしないものございます。是非、確定申告を行う際や資産管理会社・資産運用会社等を設立される場合には、弊社の経験豊富な税理士や税務コンサルタントがお客様のお手伝いをさせていただければ光栄です。

※この記事は2017年12月1日時点の情報に基づいています。


ビットコイン(BTC)をはじめとした暗号通貨やICO(Initial Coin Offering)に関する取引を行っている個人・法人の皆様にとって、仮想通貨やICOに関する税務はとても関心のあるテーマとなっております。もしお困りのことがございましたら03-6228-5505までお願い致します(平日9:00~21:00)。汐留パートナーズグループの仮想通貨やICOに精通した経験・実績豊富な税務コンサルタントからご連絡をさせていただきます。


前川 研吾

北海道大学経済学部卒、公認会計士(日米)・税理士。汐留パートナーズ税理士法人代表社員。アーンスト・アンド・ヤング(Ernst & Young)メンバーファームである新日本有限責任監査法人監査部門にて製造業、小売業、情報サービス産業等の上場会社を中心とした法定監査に従事。また、同法人公開業務部門にて株式公開準備会社を中心としたクライアントに対する、IPO支援、M&A関連支援、デューデリジェンスや短期調査等のFAS業務等の案件に数多く従事。汐留パートナーズグループ社設立後は、公認会計士・税理士・弁護士・社会保険労務士等のプロフェッショナルによるワンストップサービスを行っている。現在、汐留パートナーズ株式会社にて仮想通貨及びICOに関する取引を行っている。