経営者のための生命保険コラム

従業員の退職金制度と生命保険の活用について

 せっかく育った優秀な人材が流出してしまうことは会社にとって大きな損失です。従業員の離職率をいかに低く抑えるかが大きな経営課題といえます。これは、非常に難しいテーマであり、数多くの検討要素がありますが、1つの対策として従業員の退職金制度を構築する方法が挙げられます。退職金が保証されていない状態では、将来への不安により、会社に対する帰属意識やモチベーションの低下など、悪影響が懸念されます。ベンチャー企業であっても事業規模が拡大し、組織体制が整ってきた段階で退職金制度の導入を検討する必要がでてきます。
 この退職金制度を構築するための検討ポイントとして2つあります。1つ目は退職金制度の運用の根拠となる退職金規程をどのように作るか、2つ目はその退職金規程により支給される退職金の財源準備をどのように行うかです。今回は退職金規程の考え方およびその財源準備方法について説明をしたいと思います。

退職金規程について

 退職金規程を作るうえで、もっとも重要な点は退職金額の計算方式をどのように設定するかです。退職金規程を作成し、従業員に周知した場合は、その規定の効力が生じます。規定に従い会社に退職金の支払義務が生じ、また一度定めた退職金額の計算方式を減額することは、規定の不利益変更にあたり、従業員の同意が必要になります。
 そのため、退職金額の計算方式をどのようにするか、また、水準をどの程度にするかについては、シミュレーションを重ねるなど慎重に判断しなければなりません。ここで、計算方式のパターンをご説明させていただきます。計算方式は大きく分けると4つあります。

【基本給・勤続年数方式】

 この方式は基本給に勤続年数による係数を乗じて計算する方式であり、もっとも一般的で多くの会社に導入されている方式です。メリットとしては、基本給という会社に対する貢献度が一定程度反映される点、退職金の計算が簡単であるため、従業員が理解しやすいという点です。デメリットとしては、退職時期の基本給により退職金が計算されるため、基本給の上昇に伴い、退職時に会社の支払能力を超えてしまう可能性があるという点、退職時期の基本給で判断するため、在籍期間中の従業員の貢献度をすべて反映できていない点です。

【金額テーブル方式】

 この方式は、勤続年数に応じて退職金額を固定するという方式です。例えば、勤続10年で300万円、勤続20年で600万円など勤続年数により一律の金額とするものです。メリットとしては、シンプルでわかりやすい点、基本給と連動してないため、支払能力を超えるリスクは少なくない点です。デメリットとしては、勤続年数により金額が一律のため、従業員の会社に対する貢献度が退職金に反映されず、不公平感がでてしまう点です。

【ポイント方式】

 この方式はわりと新しいものですが、勤続年数や役職などをポイントに置き換え、そのポイントの合計額により退職金額を決定するという方式です。例えば、主任2ポイント×在任年数3年+係長2ポイント×5年+課長3ポイント×10年=46ポイント 46ポイント×100,000円=4,600,000円などの計算になります。メリットとしては、基本給と連動していないため、支払能力を超えるリスクが少なくなる点、在籍期間中の従業員の会社に対する貢献度が反映されることから納得性が高いという点です。デメリットとしては、従業員ごとの入社から退職までの人事待遇の管理が必要になり、管理面で工数がかかる点です。
 このポイント方式は「基本給・勤続年数方式」と「金額テーブル方式」のデメリットをカバーできる優れた計算方式といえ、既存の「基本給・勤続年数方式」からの転換も含め、この「ポイント方式」を採用する会社が増えております。

【各種制度を利用した方式】

 この方式は、確定拠出年金制度(401K)や中小企業退職金共済制度(中退共)に加入し、退職金規程とリンクさせる方式です。毎月従業員ごとの掛金を拠出し、その従業員が退職時に共済制度により積立てられた金額を退職金とするというものになります。退職金規程としては、役職ごとに毎月の掛金額を定める形になり、退職金額は退職時期までの累計の積立額になるという内容になります。メリットとしては、退職金規程と退職金の財源準備方法がリンクしており、支払能力を超えることがない点、役職等ごとに拠出額を定めることから、会社に対する貢献度を反映させることができる点です。デメリットとしては、退職金額が掛金の累積+運用損益になるため、金額がわかりにくい点、制度運営団体から直接従業員に退職金が支給されるため、懲戒解雇等の場合であっても基本的には支給が止められない点が挙げられます。
 支払能力を超えない点が最大のメリットとなり、中退共は小規模法人など財務基盤が安定していない会社が導入するケースが多いです。

退職金の財源準備の方法

 退職金の支給時期において、実際に退職金が支給できないということがないよう財源準備をしておく必要があります。退職時期が重なると支出が多額になるケースもあります。運転資金とは、別に財源準備を計画的に行う必要があります。財源準備の方法としては、いくつかの方法があります。

① 社内積立て
② 確定給付企業年金
③ 確定拠出型年金(401K)
④ 中退共、特退共
⑤ 生命保険

※③④については先ほど説明した「各種制度を利用した方式」であり、財源準備と退職金規程がリンクされるものになります。

【社内積立て】

 銀行の預貯金等により社内で退職金の原資を積立てておく方法です。毎月定額で退職金積立専用の口座に資金移動するなどが一般的になります。社内積立てのメリットとしては、あくまで社内で積立てをするため、資金の流動性が高く、資金繰りが厳しい時など不足の事態に対応ができる点、管理手数料などが発生しない点です。デメリットとしては、積立金額を税務上損金処理できず法人税の節税効果がない点です。

【確定給付企業年金】

 仕組みとしては退職金規程に基づいた退職金額を支給するための必要な掛金を、予定利率や平均余命などを用いた年金数理計算により算出して毎月拠出し、退職時に制度運営団体から退職金として年金もしくは一時金で支給するものです。 この確定給付企業年金は、銀行や保険会社で取扱いをしております。メリットとしては、定期的に積立不足が生じないよう掛金の調整があるため、退職金の積立不足が生じないという点、掛金を全額損金処理ができる点です。デメリットとしては、年金数理計算等が発生するため、管理手数料が高くなってしまう点になります。
 管理手数料の関係から大規模法人でなければ、難しいものになります。

【確定拠出年金(401K)】 ※上述の「各種制度を利用した方式」
 仕組みとしては、毎月退職金規程の掛金額に基づき、掛金を支払い、その従業員が退職時に制度運営団体から積立てられた金額を退職金としして一時金もしくは年金で支給するものです。最大の特徴として、従業員が掛金の運用先を指定することになり、運用益がでれば退職金に上乗し、逆に損失が生じると退職金が減額されることになります。運用結果は従業員の自己責任となり、会社側で補填する必要はありませんが、会社側で最低年1回以上401K制度に対する教育を行う必要があります。401Kは銀行や保険会社で取扱いをしております。
 メリットとしては、掛金を損金処理できる点です。デメリットとしては、従業員への教育コストや管理手数料が発生する点です。また、60歳前に退職した場合は、転職先で401Kを導入していなければ、60歳まで個人型に401Kに移管し、据え置く必要がある点がデメリットになります。

【中退共・特退共】 ※上述の「各種制度を利用した方式」
 仕組みとしては、毎月従業員ごと掛金を拠出して、その従業員が退職時に制度運営団体から積立てられた金額を退職金として支給するものです。中退共は独立行政法人勤労者退職金共済機構が運営しており、銀行や保険会社などで取扱いしております。メリットとしては、掛金を全額損金処理できる点、初年度掛金の半額の助成がある点(中退共の場合)です。デメリットとしては、本人受取りとなることから懲戒処分など退職金の支給要件を満たさない場合であっても支給が止められない点です。

【生命保険】

 生命保険による財源準備方法はいくつかありますが、代表的な手法として養老保険のハーフタックスプランになります。一定要件を満たすことで、法人税法上保険料の一定額の損金処理が可能となります。各生命保険会社で取扱いをしておりますが、最近では、より高利回りを求めてドル建て養老保険による制度設計も増えております。
 生命保険のメリットとしては、掛金(保険料)を2分1損金処理できる点、保険会社に積立てた退職金の準備金の受取りが法人である点、従業員それぞれに死亡保障が付き、労災補償の上乗せとしても活用できる点です。デメリットとしては、契約後一定期間は元本割れが発生する点、確定給付企業年金のように退職金規程にリンクして掛金調整がないため、退職時に積立不足が発生するリスクがある点になります。

まとめ

上述したそれぞれの退職金の財源準備方法のメリット・デメリット等をまとめると次のとおりです。

財源準備方法 掛金の損金性 管理運営手数料 退職金の融通性 積立利率 助成の有無 死亡保障 導入法人規模
社内積立て ×
全額資産計上

不要

法人受取

元本割れリスクなし
×
なし
×
なし
小~大規模法人
確定給付企業年金
全額損金
×
必要
×
従業員直接受取

元本割れリスクなし
×
なし
×
なし
大規模法人
確定拠出年金
(401K)

全額損金
×
必要(年1回教育も含め)
×
従業員直接受取

運用結果は従業員の自己責任
×
なし
×
なし
大規模法人
中退共
全額損金

不要
×
従業員直接受取

元本割れリスクなし

初年掛金の半分の助成あり
×
なし
小~中規模法人
生命保険
(養老保険)

2
分1損金

不要

法人受取

一定期間元本割れあり
×
なし

満期保険金と同額の死亡保障あり
小~大規模法人

 このようにそれぞれの準備方法で特色があり、メリット・デメリットがありますので自社にとってどの方法が良いのかを検討する必要があります。
 社内積立ては、簡単な方法であり小~大規模法人で利用されているおりますが、損金処理ができないことから積極的に選択するものではないと考えます。納税による社外流失分を運転資金や設備投資に充てた方が有益になることは言うまでありません。
 また、確定給付年金や401Kは管理手数料が高額になるケースも多く、また社内での管理事務が発生するため、大規模法人向けの方法といえます。
 小~中規模法人では、掛金の損金性から中退共もしくは生命保険を選択するのが良いと考えられます。ただし、中退共のデメリットとして、従業員直接受取りという点、生命保険のデメリットとしては、元本割れリスクがある点がありますので、それぞれのデメリットをカバーするために中退共と生命保険を併用することが有効といえます。例えば、割合を決め、掛金の半分は中退共で準備し、もう半分は生命保険で準備するなど併用です。退職金規程としては、基本給・勤続年数方式やポイント方式などの計算方式としつつ、中退共で本人直接支給された額を差引いた残額を会社から一時金で退職金として支給する規定とします。この方法であれば、わかりやすく納得性の高い退職金規程としつつ、財源準備においてリスクを軽減することができます。
 また、財務基盤が整っていないなどの理由で退職金規程の策定に踏み切れない会社については、最初は中退共制度を利用した退職金規程としつつ、事業規模が拡大し財務内容に余裕が出てきた段階で退職金規程の見直しを行い、生命保険により財源準備を行うなど段階的な対応をとることが望ましいと考えます。
 当社では、退職金規程作成のコンサルティングからその財源準備方法まで幅広く、ご支援できますので、お困りのことがございましたら、お問い合わせくださいませ。

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