テレワークが経営資源にもたらす変化と課題 – 1.ヒト

1.概要

多くの企業にとって、「テレワーク」は検討の時間を与えられずに実施を迫られた、衝撃の記憶が残っているでしょう。

当記事のリリース時点では緊急事態宣言は解除され、それに伴ってテレワークの活用を一時取りやめた企業も多くありますが、未だ関心度は低下していません。今後、各種検討や制度整備が進むことでフレックスタイム制と同様に働き方の選択肢として広まることが予想されます。

テレワークの特殊性は、単なる働き方に留まらず、各企業の経営資源のポートフォリオに影響を与え、時としてこれまでの常識を覆しうるということでしょう。

そこで、『テレワークが経営資源にもたらす変化と課題』をテーマとし、
第1回 ヒト
第2回 モノ
第3回 カネ
第4回 情報
と全4回に分けて、経営資源4要素ごとのテレワークの影響を取り上げます。

今回はヒトに関連して、想定される変化、背景と展望、課題と対策を考察していきます。

▼目次

変化
通勤ストレス低下による従業員の健康増進・集中力の向上
労働人口の都市集中緩和
新卒・若年層の志向変化

背景・展望
家庭の事情に対する、就労継続・退職に変わる第3の選択肢となる
若年労働者の就職先の選好にテレワークが加わる

 

 

2.変化

テレワークによるヒトに関連する変化として、
・通勤ストレス低下による従業員の健康増進・集中力の向上
・労働人口の都市集中緩和
・新卒・若年層の志向変化
などが考えられます。

従来、労働の大前提というべきものであった通勤とそれに伴ういくつかのデメリットは具体的な解決策が多くない状況でしたが、テレワークによってその解決を見込むことができます。

 

3.背景・展望

これまでの労働では、勤める企業への出社が大前提であったため、通勤そのものや通勤を可能とするための転居などが当然でした。

これらのデメリットは、
・通勤の恒常的ストレスによる従業員へのダメージ
・労働人口の都市圏集中
といったものがあり、特に後者は長らく解決策が模索される社会問題でした。

テレワークは通勤と転居のいずれについても必要性を低減させることから、上記デメリットの解消や低減を期待できます。加えて、育児・介護・配偶者の転勤といった家庭の事情に対し、「継続就労」「退職」に変わる、第3の選択肢ともなりえます。このことは優秀な人材の企業・経済社会からの流出を防ぎうるという点で大きなポイントとなるでしょう。

また、株式会社マイナビによる『マイナビ 2021年卒大学生就職意識調査』によれば、新卒者の就職観は、下記の状況になっています。

上記の通り、就職観において「楽しく働きたい」「個人の生活と仕事を両立させたい」という項目が上位2位となっています。

これは新卒を中心とするとする若年層の労働環境重視の意識強さを表しているということができます。2020年卒の回答比率から数ポイント下がってはいるものの、少なくとも今後数年程度はこの傾向が続くとみていいでしょう。

若年層が重視する「労働環境」は、テレワークによって実現する居住・暮らしの自由度の向上は関連性が高く、今後若年層の就職先選好基準に、テレワークなどの労働の自由化に関する志向が加わることも自然な流れとして考えられるでしょう。

 

4.課題・対策

ヒトに関連する課題としては、
①コミュニケーションの最適化
②業務の最適化
③出勤時の対応
などが多くみられるでしょう。

①コミュニケーションの最適化

現在の業務に関連するコミュニケーションでは、対面を前提に、テキストベースのコミュニケーションを補助として使う、という使い分けを無意識に行っている人が多いことに注目すべきでしょう。

対面によるニュアンスの伝達がないことを意識せず、従来のスタンスでテキストベースのコミュニケーションを使ってしまうと、
・表現の印象がきつく感じられる
・伝達したいことの意図が汲み取れない
という事態が起き得ます。

こうしたことの積み重ねは、コミュニケーションに恐怖を感じる従業員が増える・信頼関係が崩れるといったことの原因となりえるため、テキストベースのコミュニケーションをメインとするにあたり、従来行わなかった伝え方の工夫が必要であることを自覚する必要があります

・「ありがとう」や「お願いします」といった一言を意識的に使う
・印象を柔らかくするためにチャットの絵文字を使う
・必ず反応を返す
など様々な手段が考えられるでしょう。

また、情報伝達についても、「伝えたから理解して」「伝わるように伝えて」という自分本位ではなく、「伝えるために言葉を尽くす」「理解するために考える」という相手本位の姿勢が、より重要性を増すことになります。

こうしたテキストベースのコミュニケーションの弊害に対しては、ビデオ会議や電話など音声コミュニケーションの有効活用や、Google社が社内で開催している各種イベントのように、社員が集まる機会を設けるなど、人間関係自体を希薄化させないための工夫を行うことも有効な手段の一つとなるでしょう。

言うまでもなく、信頼関係構築における対面によるコミュニケーションの意味は大きく
・チームワークの醸成
・企業風土の伝達
・タスク管理
などを的確に行うために、コミュニケーションは更なる変化を必要とするでしょう。

②業務の最適化

特に経理総務部門の紙・印鑑に関連する処理は、テレワーク時の課題として緊急事態宣言期間にも話題になりました。

会計や経費、各種申請がクラウドソフトなどによってオンライン化されている企業の中にも、請求書業務に紙が残っている企業が多くみられます。

その背景には、社内ではデジタル化・オンライン化できていても、
・取引先から紙での請求書の送付を求められる
・紙の請求書が来てしまう
といったことがあります。

これによって、経理担当者など紙を扱わなければならない特定の従業員のみが出社を強いられるという状況に繋がり、担当者が不公平感を抱く原因にもなりえます。

請求書をはじめとする紙仕事のデジタル化・オンライン化に向けてクラウドソフトなどのITツールの導入を進めていくことが得策でしょう。

また、並行して取引先にも請求書のデジタル化の打診も行う必要があります。

現行制度の変更の打診に抵抗を覚えることもあるかと思いますが、緊急事態宣言発令という非常事態に、紙・印鑑に関する課題は多くの企業が共有した認識であるため、少なくとも一回の打診が即座に関係悪化に繋がる可能性は低いと言えるでしょう。

加えて、この部分の対応を柔軟化せず、紙・印鑑へのこだわりなどから他社の打診を断るなどすることが、関係悪化や取引終了に繋がる新たなリスクとなりえます。

クラウドソフトの導入に際して、セキュリティ面などの懸念事項がある際には、こちらのコラムも併せてご覧ください。

③出勤時の対応

テレワークが可能であっても全く出社しないという形はほとんどの企業にとって当面は難しいのが現状でしょう。

そのため、
・出社が必要になった
・プロジェクト遂行のために、連日の出勤が必要になった
などのケースでは、居住地域によって従業員の扱いに不公平感が出ないようにする必要があります。

例えば九州出身の従業員が、九州に在住のまま東京の企業に就職するという極端な活用は、様々な地域にサテライトオフィスを設置できる企業でない限り難しいと言えるでしょう。

上記は極端な例ではありますが、止むを得ず出勤が必要になった場合に出勤が可能である範囲に居住することなど、制度面の整備は必須事項です。

具体的には、
・各種交通機関による通勤時間又は運賃の上限
・事務所からの距離の上限
などが考えられます。

また、テレワークに際して定期券を購入しない従業員が出る場合には、一か月など、ある一定期間の交通費支給の上限を設けることなどにより、従業員間の公平性を担保する必要があります。

 

5.おわりに

緊急事態宣言に伴い、2020年4月から5月にかけてテレワークを実施した企業とその従業員への各種媒体によるアンケート結果には、テレワークへの課題や違和感に関する回答が多く見られ、事実テレワークの中で体感した方も多いのではないでしょうか。

こうしたアンケート結果は自社でのテレワーク導入にあたって参考となるものである一方、緊急事態宣言下のテレワークは突発的な対処であったという前提条件には注意が必要です。

突発的であったがゆえに、
・不慣れな従業員が多かった
・準備が十分とは言えない企業が多かった
などの各企業・各従業員の背景がアンケートの結果にも反映されています。

そのため、アンケート結果を利用する際には、「慣れ」が解決する課題もあることを踏まえることで、自社における課題解決のための有効な材料とすることができるでしょう。

今後広まりを見せるであろうテレワークを積極的に利用することによって、より多くのメリットを享受するために、構想・検討を始めていくことが重要になるのではないでしょうか。

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