海外に本拠を置いている企業が日本に進出する場合、どのような点に注意が必要でしょうか。こちらのページでは、海外企業が日本に進出する場合の留意すべき点についてご紹介いたします。
1.特殊な市場環境
日本は欧米とは違って、市場の特殊性があるということは常に言われていることです。欧米の人気商品をそのまま日本に並べても、まったく売れないといったことは日常的に起こりうることです。多様な商品を求める日本の独特な風土に、店舗の運営形態を合わせることができず、撤退をしてしまった外資系企業はたくさんあります。
ファッションブランド大手のForever21は2009年に日本に初上陸し、東京・原宿の1号店オープン時には開店前に大行列ができるなど大きな話題を呼び、瞬く間に人気店となりました。その後も各地のショッピングモールに出店するなど勢いを強め、一世を風靡しました。しかし、H&MやZARAなど同じ外国ブランドで同じく低価格を売りにするファッションブランドや、ユニクロやGUなどの日本の安くてバリエーション豊富なブランドとの激戦に敗れ2019年に日本市場から撤退しました。特に、日本ではファッションに限らず、流行り廃りが非常に速いため、これに対応出来なければ、日本市場からの撤退を余儀なくされます。
2.日本人に受け入れられるものを提供
例えば、海外のレストランやカフェ、ファーストフードが日本に進出する場合、外国で人気の商品そのままで日本市場において勝負しようとすることがあります。もちろん、時にはそのままの商品が日本でも受け入れられることがあります。
しかし、例えば、2006年に日本初上陸したクリスピークリームドーナツは、一時は約65店舗まで店舗を拡大しましたが、日本進出から10年後には約45店舗と店舗が激減しました。この背景には日本の流行り廃りの速さや、コンビニ業界もドーナツ事業に乗り出したことなどももちろん原因としてありましたが、「甘過ぎる」と日本人の口に合う味でなかったことが最も大きな原因でした。この結果を受け、同社では甘さ控えめに変更するなど、日本で受け入れられる商品の開発に力を入れ、事業拡大に向けて再始動しています。
実際、マクドナルドやスターバックスなど日本で長く愛されている企業は、日本独自の商品やサービスを提供し続けることによって日本社会に受け入れられています。
飲食店を例に書きましたが、これは他の商品やサービスについても、もちろん同じことが言えます。日本で事業を展開しようとする場合は、柔軟な対応が求められます。
3.トラブルが命とり
トラブルが発生した場合、対処に追われるだけでなく、イメージダウンにより売り上げが落ち、撤退というリスクもあります。
例えば、スイスに本社のあるシンドラーエレベータの場合、2003年から2014年にかけ、誤作動が発生して人がエレベーターに挟まれて死亡したり、閉じ込められたりといった事故が10件以上も発生しました。最初の死亡事故の時点でエレベーター製品の評価は下落し、日本国内でエレベーターの新規受注はなくなりました。自国で起きた事故の場合、時間がたてば信頼が回復し、再出発できることもあるかもしれませんが、日本においては過ちに対して向けられる目は非常に厳しいものであるため、海外企業においては特に、問題を起こすと信頼や売上が大暴落し、やり直しがきかないというくらいの思いで臨む必要があるでしょう。
もちろん、日本市場においても、失敗したら2度と成功しないということではありません。実際、マクドナルドは2014年に期限切れの鶏肉を使っていたなど、使用していた肉に様々な問題が発覚したことにより、消費者が離れ、売上は大きく落ち込み閉店する店舗も続出しました。しかし、その後、経営体制を刷新し、原材料と品質管理を強化するなど様々な対策を講じたことで、消費者の信頼が徐々に回復し、目覚ましいV字回復を遂げ、ついには2019年の売上において過去最高を記録しました。
しかしながら、問題が発覚した後、このように事業を継続できること、ましてやV字回復を遂げることは日本企業であっても極めて難しく、海外法人の場合は尚更ですので、くれぐれも過ちを起こさないよう注意が必要です。