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# RSM汐留パートナーズ
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- [Home](https://shiodome.co.jp/) - RSM汐留パートナーズは、公認会計士、税理士、社会保険労務士等をはじめとした幅広い知見を有するプロフェッショナルが、BPOサービス、財務コンサルティング、IT・クロスボーダー・バイリンガルなどの一般的な士業では対応が困難な領域まで、真のワンストップ・アドバイザリーサービスをご提供します。
- [シンガポール進出に関する税務コンサルティング](https://shiodome.co.jp/services/global-consulting/outbound/asia-pacific/singapore/tax/)
- [シンガポール進出コンサルティング](https://shiodome.co.jp/services/global-consulting/outbound/asia-pacific/singapore/)
- [シンガポール法人設立コンサルティング](https://shiodome.co.jp/services/global-consulting/outbound/asia-pacific/singapore/incorporation/)
- [沖縄事務所概要](https://shiodome.co.jp/okinawa/)
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- [グループ概要](https://shiodome.co.jp/group/) - RSM汐留パートナーズ概要 RSM汐留パートナーズ株式会社概要 アクセス 詳しいアクセスはこちら 受付方法はこちら RSM汐留パートナーズ株式会社、RSM汐留パートナーズ税理士法人、RSM汐留パートナーズ社会保険労務士法人、RSM汐留パートナーズ行政書士法人、RSM汐留パートナーズ司法書士法人 〒105-7133 東京都港区東新橋一丁目5番2号 汐留シティセンター33階 JR線 「新橋駅」汐留口(徒歩3分)東京メトロ銀座線 「新橋駅」2番出口(徒歩3分)都営浅草線 「新橋駅」汐留(シオサイト)方面出口(徒歩2分)都営大江戸線 「汐留駅」JR・ゆりかもめ新橋駅方面出口(徒歩1分)新交通ゆりかもめ 「新橋駅」(徒歩1分)
- [グループ沿革](https://shiodome.co.jp/history/) - 2007年7月 前川研吾が東京都港区海岸1丁目に「前川公認会計士事務所」を設立 2008年4月 コンサルティング事業を行う「汐留パートナーズ株式会社」を設立前川公認会計士事務所が「汐留パートナーズ会計事務所」に改称 2009年3月 前川研吾が「汐留行政書士事務所」を設立 2009年9月 東京都港区新橋1丁目にグループ本社移転 2012年8月 汐留パートナーズ会計事務所が佐藤隆太税理士事務所と合併し「汐留パートナーズ税理士法人」へと法人化 2012年12月 汐留パートナーズ・沖縄事務所開設 2014年6月 汐留行政書士事務所が「汐留行政書士法人」へ法人化 2015年8月 石川宗徳が「汐留司法書士事務所」を設立 2016年4月 汐留パートナーズ株式会社が増資(資本金5000万円) 2018年3月 東京都中央区銀座7丁目にグループ本社移転 2018年6月 国際的なアカウンティングネットワークであるPKF Internationalに加入 2018年11月 汐留行政書士法人が「汐留パートナーズ行政書士法人」に改称 2019年1月 汐留パートナーズ税理士法人と協同税理士法人が合併 2019年4月 汐留パートナーズ税理士法人とロックハート会計事務所が経営統合 2020年9月 SP社会保険労務士事務所が「汐留パートナーズ社会保険労務士法人」へ法人化 2020年12月 汐留司法書士事務所が「汐留パートナーズ司法書士法人」へ法人化 2022年3月 汐留シティセンタービル33階にグループ本社移転 2022年4月 汐留パートナーズ社会保険労務士法人とノータス経営労務事務所が経営統合 2022年10月 汐留パートナーズ税理士法人と中本国際税理士法人が経営統合 2022年11月 世界120ヶ国以上に展開するグローバルネットワークであるRSM Internationalに加入。同時にRSM加入の5法人が社名変更によりRSMブランドに社名統一。 RSM汐留パートナーズ株式会社 RSM汐留パートナーズ税理士法人 RSM汐留パートナーズ社会保険労務士法人 RSM汐留パートナーズ行政書士法人 RSM汐留パートナーズ司法書士法人 2023年1月 RSM汐留パートナーズ税理士法人とWARC LIGHT税理士法人が経営統合 2023年6月 札幌事務所開設 2024年9月 大阪事務所開設 2025年1月
- [オランダ進出コンサルティング](https://shiodome.co.jp/services/global-consulting/outbound/europe/netherlands/)
- [オランダ法人設立コンサルティング](https://shiodome.co.jp/services/global-consulting/outbound/europe/netherlands/incorporation/)
- [オランダ進出に関する税務コンサルティング](https://shiodome.co.jp/services/global-consulting/outbound/europe/netherlands/tax/)
- [管理会計DX・経営レポート可視化支援](https://shiodome.co.jp/services/advisory/management-accounting-dx/) - 予実・KPI管理がExcel依存で属人化していませんか。Power BIを活用した管理会計DXで経営レポートを可視化し、経理業務を効率化。会計・税務・労務の専門家がワンチームで対応するのが強み。RSM汐留パートナーズへ。
- [暗号資産の会計・税務・ブロックチェーン監査支援](https://shiodome.co.jp/services/advisory/blockchain-digital-assets/) - 暗号資産の会計処理や税務、ブロックチェーン監査でお悩みの企業へ。会計・税務の専門家がワンチームで対応し、グローバルなRSMネットワークを活かしWEB3.0事業を多角的に支援します。まずはRSM汐留パートナーズへご相談ください。
- [株価算定・財務デューデリジェンス費用](https://shiodome.co.jp/services/advisory/valuation-dd/) - M&Aや組織再編における株価算定・財務デューデリジェンスの費用や進め方にお悩みの企業様へ。RSM汐留パートナーズは会計・税務の専門家がワンチームで、PPA・減損テストまで一貫支援。お気軽にご相談ください。
- [IFRS導入・任意適用支援](https://shiodome.co.jp/services/advisory/ifrs/) - IFRS(国際会計基準)の任意適用・導入を検討する企業向けに、インパクト調査から会計方針策定、開示書類作成、監査法人対応まで一貫支援。会計・税務の専門家がワンチームで対応するのが強み。導入費用のご相談はRSM汐留パートナーズへ。
- [英文開示・決算短信英訳の費用と義務化対応支援](https://shiodome.co.jp/services/advisory/en-disclosure-ir/) - 英文開示の義務化への対応や決算短信の英訳、費用面でお悩みの上場・IPO準備企業へ。会計・税務の専門家がワンチームで、英文開示・IR実務をRSM汐留パートナーズが支援します。
- [開示書類作成の外注・代行支援](https://shiodome.co.jp/services/advisory/disclosure/) - 有価証券報告書や決算開示の外注・アウトソーシングをお考えの上場・IPO準備会社へ。会計・税務・労務の専門家がワンチームで対応し、開示書類作成を支援します。RSM汐留パートナーズにご相談ください。
- [内部監査DX支援 Power BI・効率化](https://shiodome.co.jp/services/advisory/internal-audit/dx/) - 内部監査の属人化や手作業にお悩みではありませんか。RSM汐留パートナーズの内部監査DX支援は、Power BIによるデータ可視化やサンプル選定の自動化でリスク評価を高度化・効率化します。会計・税務の専門家がワンチームで支援。まずはご相談ください。
- [内部監査アウトソーシング・体制構築支援](https://shiodome.co.jp/services/advisory/internal-audit/) - 内部監査の人材不足や多拠点・海外拠点の監査体制でお悩みの企業へ。内部監査のアウトソーシング・コソースから体制構築、費用設計まで一気通貫で支援します。会計・税務・労務の専門家がワンチームで対応。RSM汐留パートナーズにご相談ください。
- [J-SOX対応・内部統制コンサルティング](https://shiodome.co.jp/services/advisory/jsox/) - IPO準備会社・上場会社のJ-SOX対応や内部統制の整備・運用評価でお悩みですか。会計・税務の専門家がワンチームで対応するRSM汐留パートナーズが、評価範囲の見直しから内部監査アウトソーシングまで支援します。費用もご相談ください。
- [原価計算コンサルティング](https://shiodome.co.jp/services/advisory/cost-accounting/) - 原価計算の導入や原価管理の改善に課題はありませんか。RSM汐留パートナーズは原価計算フローと管理会計システムの構築から運用まで一貫支援。会計・税務の専門家がワンチームで対応します。原価計算コンサルの費用もお気軽にご相談ください。
- [IPO準備コンサルティング](https://shiodome.co.jp/services/advisory/ipo/) - IPO準備を進める企業のスケジュール管理や内部管理体制構築の課題に、会計・税務・労務の専門家がワンチームで対応。RSM汐留パートナーズが費用面も含めIPO支援を伴走します。
- [マルタEU拠点活用コンサルティング|EU進出の足がかりとして](https://shiodome.co.jp/services/global-consulting/outbound/europe/malta/eu-hub/)
- [マルタ持株会社(Holding Company)活用ガイド|EU進出・欧州統括](https://shiodome.co.jp/services/global-consulting/outbound/europe/malta/holding-company/)
- [チャイナデスク](https://shiodome.co.jp/china-desk/) - RSM汐留パートナーズは、世界120ヶ国500か所以上に活動拠点を有する国際会計ネットワークの一つ、RSM Internationalの日本メンバーファームであり、国際的なネットワークのリソースにより、グローバル化・複雑化するクライアントのニーズに応えるとともに、最先端の高度な情報に基づき高品質かつ効率的な各種サービスを提供します。 中華圏でビジネス展開をする日系企業は、文化・言語の壁のみならず、様々な経営課題に直面しています。当グループのチャイナデスクは、中国語・英語を活かし、RSM Chinaのみならず、RSM International各国のチャイナデスクと連携し、クライアント企業の中華圏進出をサポートしております。
- [マルタ進出に関する税務コンサルティング](https://shiodome.co.jp/services/global-consulting/outbound/europe/malta/tax/)
- [マルタ法人設立コンサルティング](https://shiodome.co.jp/services/global-consulting/outbound/europe/malta/incorporation/)
- [マルタ進出コンサルティング](https://shiodome.co.jp/services/global-consulting/outbound/europe/malta/)
- [Doing Business in ASEAN(ASEAN進出ガイド)](https://shiodome.co.jp/services/global-consulting/outbound/asean/)
- [Thank You](https://shiodome.co.jp/services/global-consulting/outbound/asean/thank-you/)
- [プライバシーポリシー(個人情報保護方針)](https://shiodome.co.jp/privacy/) - RSM汐留パートナーズグループ(以下「当社グループ」といいます。)は、個人情報の重要性を認識し、個人情報保護法および関連法令を遵守するとともに、以下のとおりプライバシーポリシーを定め、個人情報の適切な取扱いおよび保護に努めます。 本ポリシーは、当社グループの各法人に共通して適用されます。なお、当社グループの構成法人は以下のとおりです(各法人を以下「各社」といいます。)。 RSM汐留パートナーズ株式会社 RSM汐留パートナーズ税理士法人 RSM汐留パートナーズ社会保険労務士法人 RSM汐留パートナーズ行政書士法人 RSM汐留パートナーズ司法書士法人 汐留ビジネスソリューションズ株式会社 汐留キャッシュマネジメント株式会社 Shiodome Partners (Philippines) Inc. 1. 取得する個人情報 当社グループは、業務の遂行にあたり、以下のような個人情報を取得することがあります。 氏名、住所、電話番号、メールアドレス等の連絡先情報 顧客企業の役職員に関する情報 業務依頼・お問い合わせに関する情報 ウェブサイト利用時に取得される情報(Cookie、広告識別子、アクセスログ等) 個人識別符号(マイナンバー、パスポート番号等)を含む情報 社会保険、税務、在留資格手続等に関連して取得する個人情報 なお、当社グループは、本人からの提供、業務委託先からの提供、公開情報の取得等の方法により個人情報を取得します。 2. 個人情報の利用目的 取得した個人情報は、以下の目的の範囲内で利用します。 当社グループのサービスの提供および業務遂行 お問い合わせ・ご相談への対応 契約の履行、請求・支払等の事務手続 サービス品質の向上・改善 法令に基づく対応 3. 個人関連情報の取扱い 当社グループは、Cookie、広告識別子等の個人関連情報を取得することがあります。これらの情報を第三者から取得し、個人データとして利用する場合には、法令に基づき、本人の同意を取得する等、適切な対応を行います。 4. 第三者提供 当社グループは、法令に基づく場合を除き、本人の同意なく個人情報を第三者に提供しません。当社グループは、グループ各社間において、業務遂行に必要な範囲で個人情報を共同利用する場合があります。この場合の利用目的は本ポリシーに定める範囲内とし、共同利用する範囲は当社グループ各法人とし、管理責任者はRSM汐留パートナーズ株式会社とします。共同利用される個人データの項目は、第1条に記載の個人情報の範囲とします。また、第三者提供に関する記録の作成および保存を、法令に基づき適切に行います。 各法人は、それぞれ個人情報取扱事業者として、自らの業務における個人情報の取扱いについて責任を負います。 5. 外国にある第三者への提供 当社グループは、外国にある第三者に個人データを提供する場合には、以下のいずれかの措置を講じます。 本人の同意を取得すること 個人情報の保護に関する法律第24条に定める基準に適合する体制を整備している第三者への提供であること 個人情報保護委員会規則で定める国・地域に所在する第三者への提供であること また、当社グループは、RSM Internationalのネットワークにおける海外メンバーファームとの間で、業務遂行に必要な範囲において個人データを提供する場合があります。 なお、当社グループが利用するクラウドサービス等において外国に所在するサーバーが利用される場合があります。この場合、当社グループは委託先の適切な管理・監督を行います。提供先の国・地域および個人情報保護体制に関する情報は、下記お問い合わせ窓口までご請求ください。 6. 業務委託 当社グループは、利用目的の達成に必要な範囲で個人情報の取扱いを外部に委託することがあります。この場合、委託先について適切な監督を行います。 7. 安全管理措置 当社グループは、個人情報の漏えい、滅失または毀損を防止するため、組織的・人的・物理的・技術的な安全管理措置(アクセス制御、ログ管理、従業員教育等)を講じるとともに、継続的な見直しを行います。 8. 仮名加工情報・匿名加工情報
- [アジア・パシフィックへの進出コンサルティング](https://shiodome.co.jp/services/global-consulting/outbound/asia-pacific/)
- [ニュージーランド法人設立コンサルティング](https://shiodome.co.jp/services/global-consulting/outbound/asia-pacific/newzealand/incorporation/)
- [ニュージーランド進出に関する税務コンサルティング](https://shiodome.co.jp/services/global-consulting/outbound/asia-pacific/newzealand/tax/)
- [ニュージーランド進出コンサルティング](https://shiodome.co.jp/services/global-consulting/outbound/asia-pacific/newzealand/)
- [労務デューデリジェンス(労務DD)](https://shiodome.co.jp/services/hr-labor-management/labor-due-diligence/)
- [国内労務コンサルティング](https://shiodome.co.jp/services/hr-labor-management/hr-jp/)
- [労務監査・ショートレビュー](https://shiodome.co.jp/services/hr-labor-management/labor-audit/)
- [社員研修・人材育成サービス](https://shiodome.co.jp/services/hr-labor-management/employee-training/)
- [人事労務DXコンサルティング](https://shiodome.co.jp/services/hr-labor-management/hr-digital-transformation/)
- [IPO(株式上場)に関する労務コンサルティング](https://shiodome.co.jp/services/hr-labor-management/hr-ipo/)
- [人事デューデリジェンス(人事DD)](https://shiodome.co.jp/services/hr-labor-management/hr-due-diligence/)
- [マイナンバー管理サービス](https://shiodome.co.jp/services/hr-labor-management/mynumber-management/)
- [人事アドバイザリー](https://shiodome.co.jp/services/hr-labor-management/hr/)
- [人権デューデリジェンス(人権DD)](https://shiodome.co.jp/services/hr-labor-management/human-rights-due-diligence/)
- [人事制度設計構築サービス](https://shiodome.co.jp/services/hr-labor-management/hcm-hrm-system/)
- [就業規則・規程作成](https://shiodome.co.jp/services/hr-labor-management/employee-policy-development/)
- [労務アドバイザリー](https://shiodome.co.jp/services/hr-labor-management/labor/)
- [社会保険事務代行](https://shiodome.co.jp/services/hr-labor-management/social-insurance/)
- [M&Aに関する労務コンサルティング](https://shiodome.co.jp/services/hr-labor-management/hr-mergers-and-acquisitions/)
- [国際労務コンサルティング](https://shiodome.co.jp/services/hr-labor-management/hr-global/)
- [給与計算代行](https://shiodome.co.jp/services/hr-labor-management/payroll/)
- [エナジー・ユーティリティ](https://shiodome.co.jp/industry/energy-utilities/) - エナジー・ユーティリティ業界は、電力、ガス、水道、再生可能エネルギー関連設備など、社会・経済活動を支える基盤として、安定供給と持続可能性の両立が強く求められる分野です。需要構造の変化や既存インフラの老朽化を背景に、更新・再整備の必要性が高まる中、人材確保、技術承継、保守運営体制の維持といった構造的課題にも直面しています。 加えて、脱炭素化やエネルギー転換の進展に伴い、制度対応、コスト管理、供給責任、事業ポートフォリオの見直しを含む総合的な経営判断が重要となっています。 さらに、ICTやデータ活用の進展は、設備管理や需給調整、現場運営の高度化を後押ししており、変化に柔軟に対応しながらインフラ更新と成長機会を捉えることが、今後の競争力強化につながります。 私たちは、エナジー・ユーティリティ分野に関する知見と、インフラ関連事業に対する実務理解を踏まえ、事業運営上の課題への対応から中長期的な成長基盤の整備まで、総合的なサポートを提供しています。 サービス内容 RSM汐留パートナーズでは、200名を超える専門家が、様々な分野においてプロフェッショナルサービスを提供しております。私たちは、日本で専門家の枠を超えた「ワンストップサービス」を期待するクライアントのサポートを行っています。クライアントの成功を第一に考えた上で、以下のサービスを提供しています。 会計税務・人事労務サービス 税務申告書をはじめとした書類の作成 税務コンプライアンス 国際税務・海外税務 人的資本(ヒューマンキャピタル) 労務管理・労務コンプライアンス BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング) 私たちは、包括的なBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)サービスを提供し、会社のバックオフィス業務を合理化して業務受託し、クライアントがコアビジネスに集中できるようにサポート致します。国家資格を有する会計、税務、人事、労務、法務のスペシャリストをはじめとするチームが、クライアントのすべての重要なビジネスニーズに対してコストパフォーマンスの高い高品質のソリューションを提供します。 帳簿作成 キャッシュマネジメント インボイス関連サービス 給与計算サービス 社会保険・労働保険手続 会社設立・許認可 その他企業法務 ファイナンシャル・アドバイザリー・サービス 財務はすべてのビジネスの健全性を図る上で重要な指標であり、ビジネスの成功を助ける場合もあれば、阻害する場合もあります。私たちの会計・財務コンサルティングチームは、クライアントの置かれている状況に応じた、専門的かつ実践的なソリューションを提供します。 IPO(株式公開)支援 原価計算コンサルティング JSOX(内部統制評価制度) 内部監査 開示書類作成 IFRS(国際財務報告基準) デューデリジェンス・株価算定 ビジネスサポートソリューション 今日企業が直面する課題は多様であり、また常に変化しています。クライアントのビジネスが激変する環境に適切に対応するために、私たちは、クライアントのニーズを理解し、目標を達成するために役立つ革新的なビジネスソリューションを提供します。 M&A支援 アウトバウンドサポート(海外進出支援) インバウンドサポート(日本進出支援) 資金調達支援 生命保険代理 不動産サービス
- [RSM汐留パートナーズ・アラムナイ](https://shiodome.co.jp/alumni/)
- [グループCEO挨拶](https://shiodome.co.jp/ceo-message/) - RSM汐留パートナーズのホームページにアクセスいただきましてありがとうございます。 RSM汐留パートナーズは、現在、コンサルティング・BPOサービスを提供いたします「RSM汐留パートナーズ株式会社」、会計税務コンサルティングサービスを提供いたします「RSM汐留パートナーズ税理士法人」、人事労務コンサルティングサービスを提供いたします「RSM汐留パートナーズ社会保険労務士法人」、在留資格(ビザ)・許認可業務を行う「RSM汐留パートナーズ行政書士法人」、商業登記・不動産登記・相続登記手続き関係を行う「RSM汐留パートナーズ司法書士法人」等のプロフェッショナル・ファームからなっております。 当グループは、アーリーステージであるベンチャー企業から、エクセレントカンパニーである大企業まで、クライアントの各ステージに合わせた企業支援を可能とするプロフェッショナル・ファームとして、独自のサービスを提供しております。また、英語や中国語が堪能なバイリンガルスタッフが多数在籍しており、国際的な事業展開を行うクライアントに対するサービスを行っております。 思い返せば汐留パートナーズ株式会社が設立された2008年はリーマンショックの年でした。世界経済が混沌とする中、この頃に米国Apple社がiPhoneを発売しました。当グループは2023年に15周年を迎えましたが、この15年間で世の中は劇的に変化しました。そして現在、AI、VR、AR、IoT、ブロックチェーン、自動運転など最先端技術が私たちの未来をまた大きく違うものに変えていこうとしています。 私どもは、時代の流れが劇的に変化する中で、プロフェッショナル集団として、クライアントに対して何ができるのか常に考え行動しております。コンプライアンスをはじめとした企業の在り方に対する社会の関心は今まで以上に高いものとなり、各種のビジネスサポートは単独ではなく、融合された形で提供されなければ、劇的な変化を遂げる時代の流れについていけなくなると思われます。 当グループは、公認会計士をはじめとして、税理士、社会保険労務士、行政書士、司法書士、ITコンサルタント、人材コンサルタント等のプロフェッショナルのネットワークを最大限に生かし、時代の流れに常に合致し、かつ、クライアントニーズに最大限に合致した企業支援を行ってまいります。 私どもは、設立10年で2018年にはPKFインターナショナルに加盟し国際業務を拡大してまいりました。そして設立15年目の2022年には、世界120ヶ国以上に展開するグローバルネットワークであるRSMインターナショナルに加盟しリブランディングを行い、更なる成長遂げております。今後も『クライアント第一主義』をモットーに、更なる進化を遂げるべく、一層の研鑽に励んでまいります。今後とも一層のご理解、ご支援を賜りますようお願い申し上げます。 2025年4月1日RSM汐留パートナーズ グループCEO 前川研吾
- [特徴・独自性](https://shiodome.co.jp/our-identity/)
- [コリアンデスク](https://shiodome.co.jp/korea-desk/) - RSM汐留パートナーズは、世界120ヶ国500か所以上に活動拠点を有する国際会計ネットワークの一つ、RSM Internationalの日本メンバーファームであり、国際的なネットワークのリソースにより、グローバル化・複雑化するクライアントのニーズに応えるとともに、最先端の高度な情報に基づき高品質かつ効率的な各種サービスを提供します。 韓国でビジネス展開をする日系企業は、文化・言語の壁のみならず、様々な経営課題に直面しています。当グループのコリアンデスクは、韓国語・日本語・英語を活かし、RSM Koreaのみならず、RSM International各国のメンバーファームと連携し、クライアント企業の韓国進出をサポートしております。
- [欧州デスク](https://shiodome.co.jp/europe-desk/) - RSM汐留パートナーズは、世界120ヶ国500か所以上に活動拠点を有する国際会計ネットワークの一つ、RSM Internationalの日本メンバーファームであり、国際的なネットワークのリソースにより、グローバル化・複雑化するクライアントのニーズに応えるとともに、最先端の高度な情報に基づき高品質かつ効率的な各種サービスを提供します。 欧州圏でビジネス展開をする日系企業は、文化・言語の壁のみならず、様々な経営課題に直面しています。当グループの欧州デスクは、英語を活かし、RSM International各国のメンバーファームと連携し、クライアント企業の欧州圏進出をサポートしております。
- [旅行・観光・ホスピタリティ](https://shiodome.co.jp/industry/travel-tourism-hospitality/) - 旅行・観光・ホスピタリティ業界は、訪日外国人旅行者の増加、消費者ニーズの多様化、デジタル化の進展を背景に、大きな変化の局面を迎えています。 宿泊、旅行関連サービス、観光体験、レジャー、滞在支援などが相互に影響し合う中、個人向け宿泊サービス、オンライン予約、体験型観光といった新たな形態も広がっています。 こうした環境のもと、企業には、多様化する旅行・滞在ニーズを的確に捉え、カスタマーエクスペリエンス(CX)の向上、ブランド価値の強化、新たなサービス開発を進めていくことが求められています。 一方で、人材確保の難しさや運営コストの上昇といった課題も顕在化しており、変化に柔軟に対応しながら持続的な成長につなげていくことが重要となっています。 私たちは、旅行・観光・ホスピタリティ業界に関する知見と実務理解を踏まえ、事業運営上の課題への対応から成長戦略の実行支援まで、総合的なサポートを提供しています。 サービス内容 RSM汐留パートナーズでは、200名を超える専門家が、様々な分野においてプロフェッショナルサービスを提供しております。私たちは、日本で専門家の枠を超えた「ワンストップサービス」を期待するクライアントのサポートを行っています。クライアントの成功を第一に考えた上で、以下のサービスを提供しています。 会計税務・人事労務サービス 税務申告書をはじめとした書類の作成 税務コンプライアンス 国際税務・海外税務 人的資本(ヒューマンキャピタル) 労務管理・労務コンプライアンス BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング) 私たちは、包括的なBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)サービスを提供し、会社のバックオフィス業務を合理化して業務受託し、クライアントがコアビジネスに集中できるようにサポート致します。国家資格を有する会計、税務、人事、労務、法務のスペシャリストをはじめとするチームが、クライアントのすべての重要なビジネスニーズに対してコストパフォーマンスの高い高品質のソリューションを提供します。 帳簿作成 キャッシュマネジメント インボイス関連サービス 給与計算サービス 社会保険・労働保険手続 会社設立・許認可 その他企業法務 ファイナンシャル・アドバイザリー・サービス 財務はすべてのビジネスの健全性を図る上で重要な指標であり、ビジネスの成功を助ける場合もあれば、阻害する場合もあります。私たちの会計・財務コンサルティングチームは、クライアントの置かれている状況に応じた、専門的かつ実践的なソリューションを提供します。 IPO(株式公開)支援 原価計算コンサルティング JSOX(内部統制評価制度) 内部監査 開示書類作成 IFRS(国際財務報告基準) デューデリジェンス・株価算定 ビジネスサポートソリューション 今日企業が直面する課題は多様であり、また常に変化しています。クライアントのビジネスが激変する環境に適切に対応するために、私たちは、クライアントのニーズを理解し、目標を達成するために役立つ革新的なビジネスソリューションを提供します。 M&A支援 アウトバウンドサポート(海外進出支援) インバウンドサポート(日本進出支援) 資金調達支援 生命保険代理 不動産サービス
- [プロフェッショナルサービス・BPO](https://shiodome.co.jp/industry/professional-services-bpo/) - プロフェッショナルサービス・BPO分野は、企業活動の高度化・複雑化を背景に、その重要性を一段と高めています。 経理・財務、人事・労務、法務、会社運営支援を含むバックオフィス機能には、正確性と効率性に加え、高い専門性と柔軟性が求められており、近年では外部の専門家やBPOサービスと連携しながら運営する動きも広がっています。 あわせて、単なる業務代行にとどまらず、業務プロセスの標準化、管理体制の高度化、レポーティングの充実、継続的な改善支援、クロスボーダー対応まで含めた付加価値の高い支援が重要になっています。 一方で、人材確保や品質管理、標準化と個別対応の両立も課題であり、テクノロジー活用と専門性の両立が今後の競争力を左右します。 私たちは、プロフェッショナルサービス・BPO分野に関する知見と実務理解を踏まえ、業務運営上の課題への対応から、管理体制の高度化、効率化、成長基盤の整備に至るまで、総合的なサポートを提供しています。 サービス内容 RSM汐留パートナーズでは、200名を超える専門家が、様々な分野においてプロフェッショナルサービスを提供しております。私たちは、日本で専門家の枠を超えた「ワンストップサービス」を期待するクライアントのサポートを行っています。クライアントの成功を第一に考えた上で、以下のサービスを提供しています。 会計税務・人事労務サービス 税務申告書をはじめとした書類の作成 税務コンプライアンス 国際税務・海外税務 人的資本(ヒューマンキャピタル) 労務管理・労務コンプライアンス BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング) 私たちは、包括的なBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)サービスを提供し、会社のバックオフィス業務を合理化して業務受託し、クライアントがコアビジネスに集中できるようにサポート致します。国家資格を有する会計、税務、人事、労務、法務のスペシャリストをはじめとするチームが、クライアントのすべての重要なビジネスニーズに対してコストパフォーマンスの高い高品質のソリューションを提供します。 帳簿作成 キャッシュマネジメント インボイス関連サービス 給与計算サービス 社会保険・労働保険手続 会社設立・許認可 その他企業法務 ファイナンシャル・アドバイザリー・サービス 財務はすべてのビジネスの健全性を図る上で重要な指標であり、ビジネスの成功を助ける場合もあれば、阻害する場合もあります。私たちの会計・財務コンサルティングチームは、クライアントの置かれている状況に応じた、専門的かつ実践的なソリューションを提供します。 IPO(株式公開)支援 原価計算コンサルティング JSOX(内部統制評価制度) 内部監査 開示書類作成 IFRS(国際財務報告基準) デューデリジェンス・株価算定 ビジネスサポートソリューション 今日企業が直面する課題は多様であり、また常に変化しています。クライアントのビジネスが激変する環境に適切に対応するために、私たちは、クライアントのニーズを理解し、目標を達成するために役立つ革新的なビジネスソリューションを提供します。 M&A支援 アウトバウンドサポート(海外進出支援) インバウンドサポート(日本進出支援) 資金調達支援 生命保険代理 不動産サービス
- [スポーツ・エンタメ業](https://shiodome.co.jp/industry/sports-and-entertainment/) - スポーツ・エンターテインメント業界は、世界中で成長著しい市場です。 e-スポーツなどの新しいスポーツの機会も探求と搾取を求めて開催されています。日本で人気のあるスポーツは、伝統的に特定のものに限定される傾向にありましたが、近年、より多様なスポーツへの関心が高まっています。しかし、この分野の管理職の不足など、直面する課題もあります。伝統的な日本のスポーツコンテンツのグローバル化はまだ完全ではありません。 スポーツ・エンターテインメント業界は今後も成長を続けることが期待されています。インターネットへのアクセスがますます一般的になり、世界中のファンを地元のニッチなゲームイベントに引き付けています。これらの成長による経済波及効果は、スポーツコンテンツ関連の販売やスポーツツーリズムなどの他の関連分野にも及ぶと予想されます。 私たちは、スポーツ・エンターテインメント業界との連携に精通しており、あなたのビジネスの成功を支援することができます。 サービス内容 RSM汐留パートナーズでは、200名を超える専門家が、様々な分野においてプロフェッショナルサービスを提供しております。私たちは、日本で専門家の枠を超えた「ワンストップサービス」を期待するクライアントのサポートを行っています。クライアントの成功を第一に考えた上で、以下のサービスを提供しています。 会計税務・人事労務サービス 税務申告書をはじめとした書類の作成 税務コンプライアンス 国際税務・海外税務 人的資本(ヒューマンキャピタル) 労務管理・労務コンプライアンス BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング) 私たちは、包括的なBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)サービスを提供し、会社のバックオフィス業務を合理化して業務受託し、クライアントがコアビジネスに集中できるようにサポート致します。国家資格を有する会計、税務、人事、労務、法務のスペシャリストをはじめとするチームが、クライアントのすべての重要なビジネスニーズに対してコストパフォーマンスの高い高品質のソリューションを提供します。 帳簿作成 キャッシュマネジメント インボイス関連サービス 給与計算サービス 社会保険・労働保険手続 会社設立・許認可 その他企業法務 ファイナンシャル・アドバイザリー・サービス 財務はすべてのビジネスの健全性を図る上で重要な指標であり、ビジネスの成功を助ける場合もあれば、阻害する場合もあります。私たちの会計・財務コンサルティングチームは、クライアントの置かれている状況に応じた、専門的かつ実践的なソリューションを提供します。 IPO(株式公開)支援 原価計算コンサルティング JSOX(内部統制評価制度) 内部監査 開示書類作成 IFRS(国際財務報告基準) デューデリジェンス・株価算定 ビジネスサポートソリューション 今日企業が直面する課題は多様であり、また常に変化しています。クライアントのビジネスが激変する環境に適切に対応するために、私たちは、クライアントのニーズを理解し、目標を達成するために役立つ革新的なビジネスソリューションを提供します。 M&A支援 アウトバウンドサポート(海外進出支援) インバウンドサポート(日本進出支援) 資金調達支援 生命保険代理 不動産サービス
- [公共・非営利セクター](https://shiodome.co.jp/industry/public-nonprofit-sector/) - 公共・非営利セクターは、財政運営の高度化、説明責任の強化、社会課題の多様化を背景に、大きな変化の局面を迎えています。 公共部門では、組織構造の見直し、会計手法の導入、情報開示の拡充、内部統制の強化、民営化や業務委託の進展などを通じて、より高度な運営・管理が求められています。非営利組織においても、限られた財源の適切な配分、継続的な活動基盤の確保、人材や専門性の維持が重要な課題となっています。福祉、地域支援、文化、教育関連組織など公共性の高い領域では、制度対応、資金管理、組織運営を適切に進めながら、社会的価値の実現と持続可能な運営を両立することが重要です。 私たちは、公共部門および非営利組織に関する知見と実務理解を踏まえ、制度対応から運営基盤の整備まで総合的なサポートを提供しています。 サービス内容 RSM汐留パートナーズでは、200名を超える専門家が、様々な分野においてプロフェッショナルサービスを提供しております。私たちは、日本で専門家の枠を超えた「ワンストップサービス」を期待するクライアントのサポートを行っています。クライアントの成功を第一に考えた上で、以下のサービスを提供しています。 会計税務・人事労務サービス 税務申告書をはじめとした書類の作成 税務コンプライアンス 国際税務・海外税務 人的資本(ヒューマンキャピタル) 労務管理・労務コンプライアンス BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング) 私たちは、包括的なBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)サービスを提供し、会社のバックオフィス業務を合理化して業務受託し、クライアントがコアビジネスに集中できるようにサポート致します。国家資格を有する会計、税務、人事、労務、法務のスペシャリストをはじめとするチームが、クライアントのすべての重要なビジネスニーズに対してコストパフォーマンスの高い高品質のソリューションを提供します。 帳簿作成 キャッシュマネジメント インボイス関連サービス 給与計算サービス 社会保険・労働保険手続 会社設立・許認可 その他企業法務 ファイナンシャル・アドバイザリー・サービス 財務はすべてのビジネスの健全性を図る上で重要な指標であり、ビジネスの成功を助ける場合もあれば、阻害する場合もあります。私たちの会計・財務コンサルティングチームは、クライアントの置かれている状況に応じた、専門的かつ実践的なソリューションを提供します。 IPO(株式公開)支援 原価計算コンサルティング JSOX(内部統制評価制度) 内部監査 開示書類作成 IFRS(国際財務報告基準) デューデリジェンス・株価算定 ビジネスサポートソリューション 今日企業が直面する課題は多様であり、また常に変化しています。クライアントのビジネスが激変する環境に適切に対応するために、私たちは、クライアントのニーズを理解し、目標を達成するために役立つ革新的なビジネスソリューションを提供します。 M&A支援 アウトバウンドサポート(海外進出支援) インバウンドサポート(日本進出支援) 資金調達支援 生命保険代理 不動産サービス
- [PE・VC・投資ファンド](https://shiodome.co.jp/industry/pe-vc-investment-funds/) - PE・VC・投資ファンド業界は、日本企業の成長支援、事業承継、事業再編、スタートアップ育成を支える重要な分野です。近年では、後継者不足を背景とした事業承継ニーズの高まり、非中核事業の切り出し、成長資金の確保、海外展開の加速などを受け、投資ファンドの活用機会が広がっています。 PEファンドによる企業価値向上支援、VCによる新産業・新技術への投資、各種ファンドによる柔軟な資本供給は、日本企業の成長戦略においてますます重要な選択肢となっています。一方で、投資実行後の価値創造、ガバナンス整備、適切なモニタリング、Exitを見据えた成長戦略の策定など、投資先・運営主体の双方に高度な対応が求められています。 私たちは、本業界に関する知見と実務理解を踏まえ、ファンド運営から投資先支援まで総合的なサポートを提供しています。 サービス内容 RSM汐留パートナーズでは、200名を超える専門家が、様々な分野においてプロフェッショナルサービスを提供しております。私たちは、日本で専門家の枠を超えた「ワンストップサービス」を期待するクライアントのサポートを行っています。クライアントの成功を第一に考えた上で、以下のサービスを提供しています。 会計税務・人事労務サービス 税務申告書をはじめとした書類の作成 税務コンプライアンス 国際税務・海外税務 人的資本(ヒューマンキャピタル) 労務管理・労務コンプライアンス BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング) 私たちは、包括的なBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)サービスを提供し、会社のバックオフィス業務を合理化して業務受託し、クライアントがコアビジネスに集中できるようにサポート致します。国家資格を有する会計、税務、人事、労務、法務のスペシャリストをはじめとするチームが、クライアントのすべての重要なビジネスニーズに対してコストパフォーマンスの高い高品質のソリューションを提供します。 帳簿作成 キャッシュマネジメント インボイス関連サービス 給与計算サービス 社会保険・労働保険手続 会社設立・許認可 その他企業法務 ファイナンシャル・アドバイザリー・サービス 財務はすべてのビジネスの健全性を図る上で重要な指標であり、ビジネスの成功を助ける場合もあれば、阻害する場合もあります。私たちの会計・財務コンサルティングチームは、クライアントの置かれている状況に応じた、専門的かつ実践的なソリューションを提供します。 IPO(株式公開)支援 原価計算コンサルティング JSOX(内部統制評価制度) 内部監査 開示書類作成 IFRS(国際財務報告基準) デューデリジェンス・株価算定 ビジネスサポートソリューション 今日企業が直面する課題は多様であり、また常に変化しています。クライアントのビジネスが激変する環境に適切に対応するために、私たちは、クライアントのニーズを理解し、目標を達成するために役立つ革新的なビジネスソリューションを提供します。 M&A支援 アウトバウンドサポート(海外進出支援) インバウンドサポート(日本進出支援) 資金調達支援 生命保険代理 不動産サービス
- [飲食業](https://shiodome.co.jp/industry/foodservice/) - 飲食業界は、消費者ニーズの多様化、デジタル化の進展、インバウンド需要の拡大を背景に、大きな変化の局面を迎えています。予約サイトや口コミプラットフォームの普及、テイクアウト・デリバリーの拡大、モバイルオーダーの導入により、顧客接点や提供形態は多様化しており、各事業者には、業態や立地に応じた運営体制の見直しと、継続的に選ばれる店舗・ブランドづくりが求められています。 とりわけ日本では、訪日外国人の増加を背景に、訪日客も意識したメニュー設計やサービス体制の整備が重要性を増しています。一方で、人材不足やオペレーション負荷の増大といった課題も続いており、業務効率化と安定的な運営基盤の構築が競争力強化の鍵となっています。 私たちは、飲食業界に関する知見と実務理解を踏まえ、日々の事業運営における課題への対応から、成長に向けた経営基盤の整備まで、総合的なサポートを提供しています。 サービス内容 RSM汐留パートナーズでは、200名を超える専門家が、様々な分野においてプロフェッショナルサービスを提供しております。私たちは、日本で専門家の枠を超えた「ワンストップサービス」を期待するクライアントのサポートを行っています。クライアントの成功を第一に考えた上で、以下のサービスを提供しています。 会計税務・人事労務サービス 税務申告書をはじめとした書類の作成 税務コンプライアンス 国際税務・海外税務 人的資本(ヒューマンキャピタル) 労務管理・労務コンプライアンス BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング) 私たちは、包括的なBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)サービスを提供し、会社のバックオフィス業務を合理化して業務受託し、クライアントがコアビジネスに集中できるようにサポート致します。国家資格を有する会計、税務、人事、労務、法務のスペシャリストをはじめとするチームが、クライアントのすべての重要なビジネスニーズに対してコストパフォーマンスの高い高品質のソリューションを提供します。 帳簿作成 キャッシュマネジメント インボイス関連サービス 給与計算サービス 社会保険・労働保険手続 会社設立・許認可 その他企業法務 ファイナンシャル・アドバイザリー・サービス 財務はすべてのビジネスの健全性を図る上で重要な指標であり、ビジネスの成功を助ける場合もあれば、阻害する場合もあります。私たちの会計・財務コンサルティングチームは、クライアントの置かれている状況に応じた、専門的かつ実践的なソリューションを提供します。 IPO(株式公開)支援 原価計算コンサルティング JSOX(内部統制評価制度) 内部監査 開示書類作成 IFRS(国際財務報告基準) デューデリジェンス・株価算定 ビジネスサポートソリューション 今日企業が直面する課題は多様であり、また常に変化しています。クライアントのビジネスが激変する環境に適切に対応するために、私たちは、クライアントのニーズを理解し、目標を達成するために役立つ革新的なビジネスソリューションを提供します。 M&A支援 アウトバウンドサポート(海外進出支援) インバウンドサポート(日本進出支援) 資金調達支援 生命保険代理 不動産サービス
- [ヘルスケア・ライフサイエンス](https://shiodome.co.jp/industry/healthcare-life-sciences/) - ヘルスケア・ライフサイエンス業界は、医療・介護サービス、医薬品、バイオテクノロジー、医療機器、診断領域などを含む、社会的・事業的に重要性の高い分野です。高齢化の進展や医療・介護ニーズの多様化に加え、ICT、AI、IoT、データ活用の高度化を背景として、業界全体は大きな変革の局面を迎えています。 テレヘルスや在宅医療など新たなサービスモデルの広がりが進む一方で、人材不足、再編・統合、規制対応、研究開発と事業化の両立、持続可能な運営体制の確保など、多面的な課題にも直面しています。他方で、再生医療、デジタルヘルス、医療機器、診断技術、予防・健康増進領域の進展は新たな成長機会を広げています。 私たちは、本業界に関する知見と実務理解を踏まえ、課題対応から成長戦略の実行支援まで総合的にサポートしています。 サービス内容 RSM汐留パートナーズでは、200名を超える専門家が、様々な分野においてプロフェッショナルサービスを提供しております。私たちは、日本で専門家の枠を超えた「ワンストップサービス」を期待するクライアントのサポートを行っています。クライアントの成功を第一に考えた上で、以下のサービスを提供しています。 会計税務・人事労務サービス 税務申告書をはじめとした書類の作成 税務コンプライアンス 国際税務・海外税務 人的資本(ヒューマンキャピタル) 労務管理・労務コンプライアンス BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング) 私たちは、包括的なBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)サービスを提供し、会社のバックオフィス業務を合理化して業務受託し、クライアントがコアビジネスに集中できるようにサポート致します。国家資格を有する会計、税務、人事、労務、法務のスペシャリストをはじめとするチームが、クライアントのすべての重要なビジネスニーズに対してコストパフォーマンスの高い高品質のソリューションを提供します。 帳簿作成 キャッシュマネジメント インボイス関連サービス 給与計算サービス 社会保険・労働保険手続 会社設立・許認可 その他企業法務 ファイナンシャル・アドバイザリー・サービス 財務はすべてのビジネスの健全性を図る上で重要な指標であり、ビジネスの成功を助ける場合もあれば、阻害する場合もあります。私たちの会計・財務コンサルティングチームは、クライアントの置かれている状況に応じた、専門的かつ実践的なソリューションを提供します。 IPO(株式公開)支援 原価計算コンサルティング JSOX(内部統制評価制度) 内部監査 開示書類作成 IFRS(国際財務報告基準) デューデリジェンス・株価算定 ビジネスサポートソリューション 今日企業が直面する課題は多様であり、また常に変化しています。クライアントのビジネスが激変する環境に適切に対応するために、私たちは、クライアントのニーズを理解し、目標を達成するために役立つ革新的なビジネスソリューションを提供します。 M&A支援 アウトバウンドサポート(海外進出支援) インバウンドサポート(日本進出支援) 資金調達支援 生命保険代理 不動産サービス
- [運輸・物流](https://shiodome.co.jp/industry/transport-logistics/) - EC産業の着実な台頭に伴い、運輸・郵便産業は着実に成長しています。しかし、市場拡大の恩恵を受けながらも、労働力不足や長時間労働などの問題が依然と発生しています。運輸・郵便業界自体も、革新し、成長し続けることを期待しています。多くの企業が輸送コストの効率を向上させるためにIoTやAIなどのITソリューションに目を向けており、在庫と人材を効果的に管理することで、直面する問題に対応しています。 EC業界の見通しは明るいままであり、オンラインショッピングの増加は郵便活動の需要を後押しするでしょう。日本を訪れる観光客の増加は、旅客輸送の利用を促進し、輸送関連のインバウンド消費レベルを増加させるという副次的作用もあると予想されます。 私たちは、運輸業界や郵便業界での仕事に精通しており、あなたのビジネスの管理をサポート致します。 サービス内容 RSM汐留パートナーズでは、200名を超える専門家が、様々な分野においてプロフェッショナルサービスを提供しております。私たちは、日本で専門家の枠を超えた「ワンストップサービス」を期待するクライアントのサポートを行っています。クライアントの成功を第一に考えた上で、以下のサービスを提供しています。 会計税務・人事労務サービス 税務申告書をはじめとした書類の作成 税務コンプライアンス 国際税務・海外税務 人的資本(ヒューマンキャピタル) 労務管理・労務コンプライアンス BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング) 私たちは、包括的なBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)サービスを提供し、会社のバックオフィス業務を合理化して業務受託し、クライアントがコアビジネスに集中できるようにサポート致します。国家資格を有する会計、税務、人事、労務、法務のスペシャリストをはじめとするチームが、クライアントのすべての重要なビジネスニーズに対してコストパフォーマンスの高い高品質のソリューションを提供します。 帳簿作成 キャッシュマネジメント インボイス関連サービス 給与計算サービス 社会保険・労働保険手続 会社設立・許認可 その他企業法務 ファイナンシャル・アドバイザリー・サービス 財務はすべてのビジネスの健全性を図る上で重要な指標であり、ビジネスの成功を助ける場合もあれば、阻害する場合もあります。私たちの会計・財務コンサルティングチームは、クライアントの置かれている状況に応じた、専門的かつ実践的なソリューションを提供します。 IPO(株式公開)支援 原価計算コンサルティング JSOX(内部統制評価制度) 内部監査 開示書類作成 IFRS(国際財務報告基準) デューデリジェンス・株価算定 ビジネスサポートソリューション 今日企業が直面する課題は多様であり、また常に変化しています。クライアントのビジネスが激変する環境に適切に対応するために、私たちは、クライアントのニーズを理解し、目標を達成するために役立つ革新的なビジネスソリューションを提供します。 M&A支援 アウトバウンドサポート(海外進出支援) インバウンドサポート(日本進出支援) 資金調達支援 生命保険代理 不動産サービス
- [テクノロジー・メディア・通信](https://shiodome.co.jp/industry/technology-media-communications/) - テクノロジー・メディア・通信業界は、企業活動と社会インフラの双方を支える重要な領域として、継続的な進化を遂げています。近年では、クラウド、AI、データ基盤、IoTなどの先端技術の進展に加え、オンラインメディアの高度化や5Gをはじめとする通信ネットワークの整備が進み、業界全体の変革を加速させています。 テクノロジー、メディア、通信の各領域は相互に影響し合いながら新たな付加価値を創出し、その変化は他産業の業務プロセスや顧客接点、事業モデルにも広く波及しています。一方で、サイバーセキュリティ対応、急速な技術変化への継続投資、競争激化の中での収益化、多様化する顧客ニーズへの対応は重要な経営課題です。 私たちは、本業界に関する知見と実務理解を踏まえ、課題対応から成長戦略の実行支援まで総合的にサポートしています。 サービス内容 RSM汐留パートナーズでは、200名を超える専門家が、様々な分野においてプロフェッショナルサービスを提供しております。私たちは、日本で専門家の枠を超えた「ワンストップサービス」を期待するクライアントのサポートを行っています。クライアントの成功を第一に考えた上で、以下のサービスを提供しています。 会計税務・人事労務サービス 税務申告書をはじめとした書類の作成 税務コンプライアンス 国際税務・海外税務 人的資本(ヒューマンキャピタル) 労務管理・労務コンプライアンス BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング) 私たちは、包括的なBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)サービスを提供し、会社のバックオフィス業務を合理化して業務受託し、クライアントがコアビジネスに集中できるようにサポート致します。国家資格を有する会計、税務、人事、労務、法務のスペシャリストをはじめとするチームが、クライアントのすべての重要なビジネスニーズに対してコストパフォーマンスの高い高品質のソリューションを提供します。 帳簿作成 キャッシュマネジメント インボイス関連サービス 給与計算サービス 社会保険・労働保険手続 会社設立・許認可 その他企業法務 ファイナンシャル・アドバイザリー・サービス 財務はすべてのビジネスの健全性を図る上で重要な指標であり、ビジネスの成功を助ける場合もあれば、阻害する場合もあります。私たちの会計・財務コンサルティングチームは、クライアントの置かれている状況に応じた、専門的かつ実践的なソリューションを提供します。 IPO(株式公開)支援 原価計算コンサルティング JSOX(内部統制評価制度) 内部監査 開示書類作成 IFRS(国際財務報告基準) デューデリジェンス・株価算定 ビジネスサポートソリューション 今日企業が直面する課題は多様であり、また常に変化しています。クライアントのビジネスが激変する環境に適切に対応するために、私たちは、クライアントのニーズを理解し、目標を達成するために役立つ革新的なビジネスソリューションを提供します。 M&A支援 アウトバウンドサポート(海外進出支援) インバウンドサポート(日本進出支援) 資金調達支援 生命保険代理 不動産サービス
- [消費財・流通](https://shiodome.co.jp/industry/consumer-products-distribution/) - 消費財・流通業界は、少子高齢化の進展、消費者ニーズの多様化、販売・流通チャネルの高度化を背景に、大きな変化の局面を迎えています。加えて、原材料価格の上昇、人手不足の深刻化、海外製品の流入拡大、海外企業の日本市場への参入加速などにより、事業環境は一層複雑化しています。 こうした環境のもと、企業には、多様化する消費者層の価値観や購買行動を的確に捉え、市場変化に柔軟に対応することが求められています。新たな商品・サービスの開発、ECやオムニチャネルを含む販売体制の最適化、ビジネスモデルの高度化、ブランド価値の向上に継続的に取り組むことが、競争力の維持・強化において重要です。 私たちは、消費財・流通分野に関する知見と実務理解を踏まえ、事業運営上の課題への対応から成長戦略の実行支援まで、総合的なサポートを提供しています。 サービス内容 RSM汐留パートナーズでは、200名を超える専門家が、様々な分野においてプロフェッショナルサービスを提供しております。私たちは、日本で専門家の枠を超えた「ワンストップサービス」を期待するクライアントのサポートを行っています。クライアントの成功を第一に考えた上で、以下のサービスを提供しています。 会計税務・人事労務サービス 税務申告書をはじめとした書類の作成 税務コンプライアンス 国際税務・海外税務 人的資本(ヒューマンキャピタル) 労務管理・労務コンプライアンス BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング) 私たちは、包括的なBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)サービスを提供し、会社のバックオフィス業務を合理化して業務受託し、クライアントがコアビジネスに集中できるようにサポート致します。国家資格を有する会計、税務、人事、労務、法務のスペシャリストをはじめとするチームが、クライアントのすべての重要なビジネスニーズに対してコストパフォーマンスの高い高品質のソリューションを提供します。 帳簿作成 キャッシュマネジメント インボイス関連サービス 給与計算サービス 社会保険・労働保険手続 会社設立・許認可 その他企業法務 ファイナンシャル・アドバイザリー・サービス 財務はすべてのビジネスの健全性を図る上で重要な指標であり、ビジネスの成功を助ける場合もあれば、阻害する場合もあります。私たちの会計・財務コンサルティングチームは、クライアントの置かれている状況に応じた、専門的かつ実践的なソリューションを提供します。 IPO(株式公開)支援 原価計算コンサルティング JSOX(内部統制評価制度) 内部監査 開示書類作成 IFRS(国際財務報告基準) デューデリジェンス・株価算定 ビジネスサポートソリューション 今日企業が直面する課題は多様であり、また常に変化しています。クライアントのビジネスが激変する環境に適切に対応するために、私たちは、クライアントのニーズを理解し、目標を達成するために役立つ革新的なビジネスソリューションを提供します。 M&A支援 アウトバウンドサポート(海外進出支援) インバウンドサポート(日本進出支援) 資金調達支援 生命保険代理 不動産サービス
- [社外CISO(最高情報セキュリティ責任者)サービス](https://shiodome.co.jp/services/it-consulting/ciso/)
- [海外現地法人向けコンサルティング](https://shiodome.co.jp/services/global-consulting/outbound/1-2/)
- [海外進出の検討・戦略コンサルティング](https://shiodome.co.jp/services/global-consulting/outbound/1-1/)
- [海外進出支援](https://shiodome.co.jp/services/global-consulting/outbound/)
- [アドバイザリー](https://shiodome.co.jp/services/advisory/)
- [イミグレーション](https://shiodome.co.jp/services/immigration/)
- [人事・労務](https://shiodome.co.jp/services/hr-labor-management/)
- [会計・税務](https://shiodome.co.jp/services/tax-accounting/)
- [スポーツビジネス支援](https://shiodome.co.jp/services/sports-business/)
- [外国籍コーチ/トレーナー/通訳向け 就労ビザ取得・更新支援](https://shiodome.co.jp/services/sports-business/woking-visa/)
- [外国籍選手向け 在留資格(興行)取得・更新支援](https://shiodome.co.jp/services/sports-business/entertainment-visa/)
- [スポーツ団体向け インテグリティ&コンプライアンス体制構築(不祥事予防)支援](https://shiodome.co.jp/services/sports-business/integrity-compliance/)
- [スポーツクラブ向け 労務監査(労務DD/リスク診断)支援](https://shiodome.co.jp/services/sports-business/labor-audit/)
- [選手・コーチ向け税務・資産管理支援](https://shiodome.co.jp/services/sports-business/tax-assetmanagement/)
- [スポーツチーム向け税務・会計支援](https://shiodome.co.jp/services/sports-business/tax-accounting/)
- [USビザ(アメリカビザ)申請代行サービス](https://shiodome.co.jp/services/immigration/us-visa/)
- [E-1/E-2ビザ(貿易・投資駐在員ビザ) ](https://shiodome.co.jp/services/immigration/us-visa/e-visa/)
- [B-1ビザ(商用短期滞在ビザ)申請代行サービス](https://shiodome.co.jp/services/immigration/us-visa/b-visa/)
- [人権尊重への取り組み支援](https://shiodome.co.jp/services/esg-sustainability/human-rights/)
- [防犯・安全セキュリティ支援](https://shiodome.co.jp/services/solutions/safety-and-security/)
- [スポーツチーム向け経営・業務改善支援](https://shiodome.co.jp/services/sports-business/management-business-improvement/)
- [富裕層向け移住コンサルティングサービス](https://shiodome.co.jp/services/family-business-consulting/wealthy-individual-relocation/)
- [同族会社のガバナンス強化支援](https://shiodome.co.jp/services/family-business-consulting/governance/)
- [地域/社会貢献・情報開示支援](https://shiodome.co.jp/services/family-business-consulting/social-impact-disclosure/)
- [次世代経営者育成プログラム](https://shiodome.co.jp/services/family-business-consulting/successor-development/)
- [経営診断・経営顧問サービス](https://shiodome.co.jp/services/family-business-consulting/management-advisory/)
- [ファミリーオフィス設立・運営支援](https://shiodome.co.jp/services/family-business-consulting/family-office/)
- [ファミリービジネスに関する税務コンサルティング](https://shiodome.co.jp/services/family-business-consulting/tax-advisory/)
- [オーナー資産の承継支援](https://shiodome.co.jp/services/family-business-consulting/asset-succession/)
- [オーナー企業の承継支援](https://shiodome.co.jp/services/family-business-consulting/business-succession/)
- [ソリューション](https://shiodome.co.jp/services/solutions/)
- [フィロソフィ・経営理念構築/浸透コンサルティング](https://shiodome.co.jp/services/solutions/philosophy/)
- [サイバー攻撃被害対応支援](https://shiodome.co.jp/services/it-consulting/cyber-attack/)
- [M&Aコンサルティングサービス](https://shiodome.co.jp/services/ma-consulting/ma/)
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- [税務デューデリジェンス(税務DD)](https://shiodome.co.jp/services/tax-accounting/dd/)
- [日本進出に関する税務コンサルティング](https://shiodome.co.jp/services/tax-accounting/inbound/)
- [国際税務コンサルティング](https://shiodome.co.jp/services/tax-accounting/tax-management/)
- [経営管理ビザ申請代行](https://shiodome.co.jp/services/immigration/business-management/)
- [資金調達サービス](https://shiodome.co.jp/services/solutions/business-financing/)
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- [SaaS導入支援](https://shiodome.co.jp/services/it-consulting/saas/)
- [内部監査DXサービス説明資料 ダウンロード](https://shiodome.co.jp/services/advisory/internal-audit/dx/resume-download/)
- [Thank You](https://shiodome.co.jp/services/advisory/internal-audit/dx/resume-download/thank-you/) - この度は、内部監査DXサービス説明資料についてお問い合わせをいただき、誠にありがとうございました。ご記入いただいたメールアドレス宛に、PDFを添付したメールを送信いたしました。ご確認いただけますと幸いです。
- [ITコンサルティング](https://shiodome.co.jp/services/it-consulting/)
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- [特定技能ビザ申請代行](https://shiodome.co.jp/services/immigration/specified-skills-visa/)
- [ERP導入支援](https://shiodome.co.jp/services/it-consulting/erp/)
- [デジタルゲートウェイ支援](https://shiodome.co.jp/services/it-consulting/digital-gateway/)
- [日本進出支援](https://shiodome.co.jp/services/global-consulting/inbound/)
- [SSBJ開示支援](https://shiodome.co.jp/services/esg-sustainability/ssbj/)
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- [CDP開示支援](https://shiodome.co.jp/services/esg-sustainability/cdp/)
- [SBT認定取得支援](https://shiodome.co.jp/services/esg-sustainability/sbt/)
- [人的資本情報開示(ISO30414認証取得)支援](https://shiodome.co.jp/services/esg-sustainability/iso30414/)
- [ESG・サステナビリティ経営支援](https://shiodome.co.jp/services/esg-sustainability/esg-business-management/)
- [GHG排出量管理支援](https://shiodome.co.jp/services/esg-sustainability/ghg/)
- [LCA/CFP算定支援](https://shiodome.co.jp/services/esg-sustainability/lca-cfp/)
- [ESGデューデリジェンス(ESG DD)支援](https://shiodome.co.jp/services/esg-sustainability/esg-dd/)
- [カーボンクレジット・再エネ証書利活用支援](https://shiodome.co.jp/services/esg-sustainability/carbon-credits/)
- [有価証券報告書/統合報告書作成支援](https://shiodome.co.jp/services/esg-sustainability/integrated-report/)
- [非営利団体](https://shiodome.co.jp/industry/not-for-profit-organization/) - 非営利団体が資金を調達する際に直面する課題の1つは、それらの資金を適切に配分する方法です。多くの非営利団体は、主にボランティアを労働力として利用しているため、適切な資格のある人材を確保することも困難です。 しかし、非営利団体を支援することへの関心は年々高まっています。日本では、非営利団体への年間寄付総額が7,000億円を超えました(2016年)。非営利団体は、政府や企業が対応できない社会的原因を支援する責任を負っており、その社会的意義は非常に高いと考えられます。この責任に加えて、政府は非営利団体に影響を与える新しい法律を作成し続けています。今日の世界を見ると、優秀な学生が可能性を秘めた非営利団体への参加を選択することは珍しくありません。成熟社会のなかで、非営利団体は将来の発展が期待できる分野のひとつであるといえます。 私たちは、非営利団体との連携に精通しており、あなたのビジネスの管理をサポート致します。 サービス内容 RSM汐留パートナーズでは、200名を超える専門家が、様々な分野においてプロフェッショナルサービスを提供しております。私たちは、日本で専門家の枠を超えた「ワンストップサービス」を期待するクライアントのサポートを行っています。クライアントの成功を第一に考えた上で、以下のサービスを提供しています。 会計税務・人事労務サービス 税務申告書をはじめとした書類の作成 税務コンプライアンス 国際税務・海外税務 人的資本(ヒューマンキャピタル) 労務管理・労務コンプライアンス BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング) 私たちは、包括的なBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)サービスを提供し、会社のバックオフィス業務を合理化して業務受託し、クライアントがコアビジネスに集中できるようにサポート致します。国家資格を有する会計、税務、人事、労務、法務のスペシャリストをはじめとするチームが、クライアントのすべての重要なビジネスニーズに対してコストパフォーマンスの高い高品質のソリューションを提供します。 帳簿作成 キャッシュマネジメント インボイス関連サービス 給与計算サービス 社会保険・労働保険手続 会社設立・許認可 その他企業法務 ファイナンシャル・アドバイザリー・サービス 財務はすべてのビジネスの健全性を図る上で重要な指標であり、ビジネスの成功を助ける場合もあれば、阻害する場合もあります。私たちの会計・財務コンサルティングチームは、クライアントの置かれている状況に応じた、専門的かつ実践的なソリューションを提供します。 IPO(株式公開)支援 原価計算コンサルティング JSOX(内部統制評価制度) 内部監査 開示書類作成 IFRS(国際財務報告基準) デューデリジェンス・株価算定 ビジネスサポートソリューション 今日企業が直面する課題は多様であり、また常に変化しています。クライアントのビジネスが激変する環境に適切に対応するために、私たちは、クライアントのニーズを理解し、目標を達成するために役立つ革新的なビジネスソリューションを提供します。 M&A支援 アウトバウンドサポート(海外進出支援) インバウンドサポート(日本進出支援) 資金調達支援 生命保険代理 不動産サービス
- [月次・四半期決算サービス](https://shiodome.co.jp/services/tax-accounting/monthly-quarterly/)
- [各種税務申告書作成](https://shiodome.co.jp/services/tax-accounting/tax-return/)
- [税務調査立会・税務意見書作成](https://shiodome.co.jp/services/tax-accounting/support-inspection-opinion/)
- [ESG・サステナビリティサービス](https://shiodome.co.jp/services/esg-sustainability/)
- [建設業](https://shiodome.co.jp/industry/architecture-and-engineering/) - 日本の建設業は、90年代に80兆円を超える収益を記録して以降、衰退の一途を辿っています。日本の人口も減少傾向にあることから、新規建設プロジェクトの数も同時に減少することが予想されます。さらに、建設業界は、プロジェクトを時間通りに完了しなければならないというプレッシャーのために、長時間にわたる過度の労働などが強いられているという問題もあります。 新しい住宅建設プロジェクトの数はすぐに限界に達するかもしれない一方で、1960年代の「建設ブーム」の間に建設された既存の建物や道路などのインフラストラクチャーの再構築と解体については安定した需要が見込めます。また、近代建築やデザインを使って社会問題を解決するというコンセプトも求められており、都市デザインやコミュニティデザインの分野が発展するだろうと期待されています。 行うべき事は「前進」することです。今後、建設業はより柔軟になることが求められます。人材育成に焦点を当てることは、来るべき変化の重要な推進力となるでしょう。 私たちは、建設業との連携に精通しており、お客様のビジネス管理を支援します。 サービス内容 RSM汐留パートナーズでは、200名を超える専門家が、様々な分野においてプロフェッショナルサービスを提供しております。私たちは、日本で専門家の枠を超えた「ワンストップサービス」を期待するクライアントのサポートを行っています。クライアントの成功を第一に考えた上で、以下のサービスを提供しています。 会計税務・人事労務サービス 税務申告書をはじめとした書類の作成 税務コンプライアンス 国際税務・海外税務 人的資本(ヒューマンキャピタル) 労務管理・労務コンプライアンス BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング) 私たちは、包括的なBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)サービスを提供し、会社のバックオフィス業務を合理化して業務受託し、クライアントがコアビジネスに集中できるようにサポート致します。国家資格を有する会計、税務、人事、労務、法務のスペシャリストをはじめとするチームが、クライアントのすべての重要なビジネスニーズに対してコストパフォーマンスの高い高品質のソリューションを提供します。 帳簿作成 キャッシュマネジメント インボイス関連サービス 給与計算サービス 社会保険・労働保険手続 会社設立・許認可 その他企業法務 ファイナンシャル・アドバイザリー・サービス 財務はすべてのビジネスの健全性を図る上で重要な指標であり、ビジネスの成功を助ける場合もあれば、阻害する場合もあります。私たちの会計・財務コンサルティングチームは、クライアントの置かれている状況に応じた、専門的かつ実践的なソリューションを提供します。 IPO(株式公開)支援 原価計算コンサルティング JSOX(内部統制評価制度) 内部監査 開示書類作成 IFRS(国際財務報告基準) デューデリジェンス・株価算定 ビジネスサポートソリューション 今日企業が直面する課題は多様であり、また常に変化しています。クライアントのビジネスが激変する環境に適切に対応するために、私たちは、クライアントのニーズを理解し、目標を達成するために役立つ革新的なビジネスソリューションを提供します。 M&A支援 アウトバウンドサポート(海外進出支援) インバウンドサポート(日本進出支援) 資金調達支援 生命保険代理 不動産サービス
- [情報・通信業](https://shiodome.co.jp/industry/information-communications/) - 私たちの日常生活やビジネスの中核的なサービスプロバイダーとなった情報通信産業は、常に革新を続けています。スマートフォンを使わずに一日を過ごすことなど、もはや想像できないのではないでしょうか。インターネットが出現して以降、他のすべての産業に対する電気通信セクターの影響力は甚大です。近年、オンラインメディアの進歩、5Gネットワークの導入、その他の革新が、この業界の主な発展になっています。 一方で、情報・通信業セクターは、サイバーセキュリティの脅威や、どのように収益化するかという課題に直面しています。競争の激しい情報・通信業界では、顧客のニーズを満たす革新的なサービスを作り続ける必要があります。また、情報通信業界で発生するイノベーションは、しばらくの間、他の業界の進歩に直接影響を及ぼすことも心しておく必要があるでしょう。 私たちは、情報通信業界との連携に精通しており、あなたのビジネス管理をサポートいたします。 サービス内容 RSM汐留パートナーズでは、200名を超える専門家が、様々な分野においてプロフェッショナルサービスを提供しております。私たちは、日本で専門家の枠を超えた「ワンストップサービス」を期待するクライアントのサポートを行っています。クライアントの成功を第一に考えた上で、以下のサービスを提供しています。 会計税務・人事労務サービス 税務申告書をはじめとした書類の作成 税務コンプライアンス 国際税務・海外税務 人的資本(ヒューマンキャピタル) 労務管理・労務コンプライアンス BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング) 私たちは、包括的なBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)サービスを提供し、会社のバックオフィス業務を合理化して業務受託し、クライアントがコアビジネスに集中できるようにサポート致します。国家資格を有する会計、税務、人事、労務、法務のスペシャリストをはじめとするチームが、クライアントのすべての重要なビジネスニーズに対してコストパフォーマンスの高い高品質のソリューションを提供します。 帳簿作成 キャッシュマネジメント インボイス関連サービス 給与計算サービス 社会保険・労働保険手続 会社設立・許認可 その他企業法務 ファイナンシャル・アドバイザリー・サービス 財務はすべてのビジネスの健全性を図る上で重要な指標であり、ビジネスの成功を助ける場合もあれば、阻害する場合もあります。私たちの会計・財務コンサルティングチームは、クライアントの置かれている状況に応じた、専門的かつ実践的なソリューションを提供します。 IPO(株式公開)支援 原価計算コンサルティング JSOX(内部統制評価制度) 内部監査 開示書類作成 IFRS(国際財務報告基準) デューデリジェンス・株価算定 ビジネスサポートソリューション 今日企業が直面する課題は多様であり、また常に変化しています。クライアントのビジネスが激変する環境に適切に対応するために、私たちは、クライアントのニーズを理解し、目標を達成するために役立つ革新的なビジネスソリューションを提供します。 M&A支援 アウトバウンドサポート(海外進出支援) インバウンドサポート(日本進出支援) 資金調達支援 生命保険代理 不動産サービス
- [教育業](https://shiodome.co.jp/industry/education/) - 教育業界が提供する主流サービスの焦点は、以前は大学の試験準備でした。現在、教育業界は市場の進化するニーズを満たすためにサービスを多様化しています。このような環境では、企業は、オンラインツールの使用や、生徒にアピールする教師のサービスの確保など、新しい方法を分岐しつつ適用する必要があります。 子供や学生向けのサービスを提供する企業は、日本の少子化によって影響を受ける可能性があります。しかし、個々人に対する教育コストは増加しています。近年では、英語やプログラミング科目の授業が人気を集めています。社会人のためのさらなる教育機会も、将来発展する産業といえるでしょう。進化し続ける現在の社会では、人々が新しいスキルを学び続けることが期待されています。総合的に見た場合、教育業界の市場は成長していくだろうと予想されています。 私たちは、教育業界での仕事に精通しており、あなたのビジネスの管理をサポートいたします。 サービス内容 RSM汐留パートナーズでは、200名を超える専門家が、様々な分野においてプロフェッショナルサービスを提供しております。私たちは、日本で専門家の枠を超えた「ワンストップサービス」を期待するクライアントのサポートを行っています。クライアントの成功を第一に考えた上で、以下のサービスを提供しています。 会計税務・人事労務サービス 税務申告書をはじめとした書類の作成 税務コンプライアンス 国際税務・海外税務 人的資本(ヒューマンキャピタル) 労務管理・労務コンプライアンス BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング) 私たちは、包括的なBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)サービスを提供し、会社のバックオフィス業務を合理化して業務受託し、クライアントがコアビジネスに集中できるようにサポート致します。国家資格を有する会計、税務、人事、労務、法務のスペシャリストをはじめとするチームが、クライアントのすべての重要なビジネスニーズに対してコストパフォーマンスの高い高品質のソリューションを提供します。 帳簿作成 キャッシュマネジメント インボイス関連サービス 給与計算サービス 社会保険・労働保険手続 会社設立・許認可 その他企業法務 ファイナンシャル・アドバイザリー・サービス 財務はすべてのビジネスの健全性を図る上で重要な指標であり、ビジネスの成功を助ける場合もあれば、阻害する場合もあります。私たちの会計・財務コンサルティングチームは、クライアントの置かれている状況に応じた、専門的かつ実践的なソリューションを提供します。 IPO(株式公開)支援 原価計算コンサルティング JSOX(内部統制評価制度) 内部監査 開示書類作成 IFRS(国際財務報告基準) デューデリジェンス・株価算定 ビジネスサポートソリューション 今日企業が直面する課題は多様であり、また常に変化しています。クライアントのビジネスが激変する環境に適切に対応するために、私たちは、クライアントのニーズを理解し、目標を達成するために役立つ革新的なビジネスソリューションを提供します。 M&A支援 アウトバウンドサポート(海外進出支援) インバウンドサポート(日本進出支援) 資金調達支援 生命保険代理 不動産サービス
- [IPO(株式上場)に関する税務コンサルティング](https://shiodome.co.jp/services/tax-accounting/ipo/)
- [ヘルス・ソーシャルケア業](https://shiodome.co.jp/industry/health-social-care/) - ヘルスケア・ソーシャルケア業界では、IoT (Internet of Things:モノのインターネット) やビッグデータ技術の活用から、テレヘルスや在宅医療などの新しい医療の導入に至るまで、さまざまな変化が見られます。 健康や社会福祉サービスを提供する企業も増え、競合他社との競争は激化しているといってよいでしょう。 ヘルス・ソーシャルケア業界は、人材の不足や病院統合の増加などの問題にも直面しています。ヘルス・ソーシャルケア産業と私たちの日常生活との密接な結びつきにより、この分野はさらに多くの課題に直面しています。 しかし、ヘルス・ソーシャルケア産業と社会産業の成長に対して大きな期待があることも忘れるわけにはいきません。世界市場は引き続き強気の拡大を続けています。 iPS細胞(人工多能性幹細胞)、介護ロボット、予防薬などの再生医療の開発は、どの分野からも大きな期待がかけられています。政府は、将来の社会保障費を削減するために、健康的な平均余命を促進するための産業発展に対してさまざまな法律や規制を設けています。医療機器や医薬品については、外国企業も日本市場に参入しています。 私たちは、ヘルスケアおよびソーシャルケア業界との連携に精通しており、あなたのビジネスの管理をサポートします。 サービス内容 RSM汐留パートナーズでは、200名を超える専門家が、様々な分野においてプロフェッショナルサービスを提供しております。私たちは、日本で専門家の枠を超えた「ワンストップサービス」を期待するクライアントのサポートを行っています。クライアントの成功を第一に考えた上で、以下のサービスを提供しています。 会計税務・人事労務サービス 税務申告書をはじめとした書類の作成 税務コンプライアンス 国際税務・海外税務 人的資本(ヒューマンキャピタル) 労務管理・労務コンプライアンス BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング) 私たちは、包括的なBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)サービスを提供し、会社のバックオフィス業務を合理化して業務受託し、クライアントがコアビジネスに集中できるようにサポート致します。国家資格を有する会計、税務、人事、労務、法務のスペシャリストをはじめとするチームが、クライアントのすべての重要なビジネスニーズに対してコストパフォーマンスの高い高品質のソリューションを提供します。 帳簿作成 キャッシュマネジメント インボイス関連サービス 給与計算サービス 社会保険・労働保険手続 会社設立・許認可 その他企業法務 ファイナンシャル・アドバイザリー・サービス 財務はすべてのビジネスの健全性を図る上で重要な指標であり、ビジネスの成功を助ける場合もあれば、阻害する場合もあります。私たちの会計・財務コンサルティングチームは、クライアントの置かれている状況に応じた、専門的かつ実践的なソリューションを提供します。 IPO(株式公開)支援 原価計算コンサルティング JSOX(内部統制評価制度) 内部監査 開示書類作成 IFRS(国際財務報告基準) デューデリジェンス・株価算定 ビジネスサポートソリューション 今日企業が直面する課題は多様であり、また常に変化しています。クライアントのビジネスが激変する環境に適切に対応するために、私たちは、クライアントのニーズを理解し、目標を達成するために役立つ革新的なビジネスソリューションを提供します。 M&A支援 アウトバウンドサポート(海外進出支援) インバウンドサポート(日本進出支援) 資金調達支援 生命保険代理 不動産サービス
- [製造業](https://shiodome.co.jp/industry/manufacturing/) - 製造業は現在、「インダストリー4.0」として知られる第4次産業革命を経験しています。近い将来、製造業の状況は大きく変化すると予想されます。業界は、IoTとAIをはじめとしたITの採用により効率化されるとともに、データに関しては完全にデジタル化されるでしょう。残念ながら人材の確保はまだ不十分であるなど、事業主が自ら取り組む必要のある様々な問題も残っています。 製造業は常に日本の主要産業の1つです。かつて世界一と評価された日本は、今でも高品質な製品の供給者であり、独自の技術やアイデアの源泉として知られています。勤勉さと正確さなどで表現される日本人の特徴や評判は、今でも十分に世界から評価されています。変化や顧客のニーズに柔軟に対応できる企業は、さらなる発展が期待できるでしょう。 私たちは、製造業との連携にも精通しており、お客様のビジネス管理をお手伝いできます。 サービス内容 RSM汐留パートナーズでは、200名を超える専門家が、様々な分野においてプロフェッショナルサービスを提供しております。私たちは、日本で専門家の枠を超えた「ワンストップサービス」を期待するクライアントのサポートを行っています。クライアントの成功を第一に考えた上で、以下のサービスを提供しています。 会計税務・人事労務サービス 税務申告書をはじめとした書類の作成 税務コンプライアンス 国際税務・海外税務 人的資本(ヒューマンキャピタル) 労務管理・労務コンプライアンス BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング) 私たちは、包括的なBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)サービスを提供し、会社のバックオフィス業務を合理化して業務受託し、クライアントがコアビジネスに集中できるようにサポート致します。国家資格を有する会計、税務、人事、労務、法務のスペシャリストをはじめとするチームが、クライアントのすべての重要なビジネスニーズに対してコストパフォーマンスの高い高品質のソリューションを提供します。 帳簿作成 キャッシュマネジメント インボイス関連サービス 給与計算サービス 社会保険・労働保険手続 会社設立・許認可 その他企業法務 ファイナンシャル・アドバイザリー・サービス 財務はすべてのビジネスの健全性を図る上で重要な指標であり、ビジネスの成功を助ける場合もあれば、阻害する場合もあります。私たちの会計・財務コンサルティングチームは、クライアントの置かれている状況に応じた、専門的かつ実践的なソリューションを提供します。 IPO(株式公開)支援 原価計算コンサルティング JSOX(内部統制評価制度) 内部監査 開示書類作成 IFRS(国際財務報告基準) デューデリジェンス・株価算定 ビジネスサポートソリューション 今日企業が直面する課題は多様であり、また常に変化しています。クライアントのビジネスが激変する環境に適切に対応するために、私たちは、クライアントのニーズを理解し、目標を達成するために役立つ革新的なビジネスソリューションを提供します。 M&A支援 アウトバウンドサポート(海外進出支援) インバウンドサポート(日本進出支援) 資金調達支援 生命保険代理 不動産サービス
- [不動産業](https://shiodome.co.jp/industry/real-estate/) - 現在、日本の不動産業界はさまざまな課題や変化に直面しています。人口の減少による不動産価格の二極化や自然災害の脅威、専門的なスキルを持つ人材の不足が主な内容です。 不動産業界は、他の業界と協力してサービスを提供したり、ITとビッグデータを活用したり、不動産業者とその顧客の間の情報の非対称性を排除したりすることにより問題に対応したりすることで解決を図っています。不動産業界は、他の業界セクターと個人の両方に大きな影響を与える可能性を秘めていることに加え、社会のインフラストラクチャーにも大きな責任があります。 今後は、不動産を単に保有するだけでなく、企業が所有する不動産を有効活用することへの関心が高まると考えています。インバウンド需要については、過去に発生した好調な売上がようやく落ち着き始めたところです。ただし、他の世界の大都市圏に比べて価格が一般的に低いため、日本の不動産の人気は引き続き続くだろうと予想できます。また、この不動産人気が地方に拡大する可能性も期待できます。 私たちは、不動産業界との連携に精通しており、お客様のビジネス管理をお手伝いできます。 サービス内容 RSM汐留パートナーズでは、200名を超える専門家が、様々な分野においてプロフェッショナルサービスを提供しております。私たちは、日本で専門家の枠を超えた「ワンストップサービス」を期待するクライアントのサポートを行っています。クライアントの成功を第一に考えた上で、以下のサービスを提供しています。 会計税務・人事労務サービス 税務申告書をはじめとした書類の作成 税務コンプライアンス 国際税務・海外税務 人的資本(ヒューマンキャピタル) 労務管理・労務コンプライアンス BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング) 私たちは、包括的なBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)サービスを提供し、会社のバックオフィス業務を合理化して業務受託し、クライアントがコアビジネスに集中できるようにサポート致します。国家資格を有する会計、税務、人事、労務、法務のスペシャリストをはじめとするチームが、クライアントのすべての重要なビジネスニーズに対してコストパフォーマンスの高い高品質のソリューションを提供します。 帳簿作成 キャッシュマネジメント インボイス関連サービス 給与計算サービス 社会保険・労働保険手続 会社設立・許認可 その他企業法務 ファイナンシャル・アドバイザリー・サービス 財務はすべてのビジネスの健全性を図る上で重要な指標であり、ビジネスの成功を助ける場合もあれば、阻害する場合もあります。私たちの会計・財務コンサルティングチームは、クライアントの置かれている状況に応じた、専門的かつ実践的なソリューションを提供します。 IPO(株式公開)支援 原価計算コンサルティング JSOX(内部統制評価制度) 内部監査 開示書類作成 IFRS(国際財務報告基準) デューデリジェンス・株価算定 ビジネスサポートソリューション 今日企業が直面する課題は多様であり、また常に変化しています。クライアントのビジネスが激変する環境に適切に対応するために、私たちは、クライアントのニーズを理解し、目標を達成するために役立つ革新的なビジネスソリューションを提供します。 M&A支援 アウトバウンドサポート(海外進出支援) インバウンドサポート(日本進出支援) 資金調達支援 生命保険代理 不動産サービス
- [小売・卸売・流通業](https://shiodome.co.jp/industry/retail-wholesale-distribution/) - 流通業界は近年、大きな変化を遂げています。 顧客のニーズの変化と販売および配送チャネルの多様化に伴い、流通業界の従来のプロセスは消えつつあります。 また、労働力の枯渇は、企業が生き残るために戦略的レベルでさまざまな問題に取り組む必要があることを意味します。 一方で、訪日外国人観光客は着実に増えています。 政府はまた、観光客を増やすための政策に力を入れると明言しており、インバウンド消費は間違いなく将来の日本経済を支える柱になると考えられます。 カスタマーエクスペリエンス(CX)の提供とその価値の最大化に重点を置く企業がさらに発展し、その利益が周辺の業界に広がることでしょう。 私たちは、小売、卸売、流通業界との連携に精通しているため、あなたのビジネス管理をサポート可能です。 サービス内容 RSM汐留パートナーズでは、200名を超える専門家が、様々な分野においてプロフェッショナルサービスを提供しております。私たちは、日本で専門家の枠を超えた「ワンストップサービス」を期待するクライアントのサポートを行っています。クライアントの成功を第一に考えた上で、以下のサービスを提供しています。 会計税務・人事労務サービス 税務申告書をはじめとした書類の作成 税務コンプライアンス 国際税務・海外税務 人的資本(ヒューマンキャピタル) 労務管理・労務コンプライアンス BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング) 私たちは、包括的なBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)サービスを提供し、会社のバックオフィス業務を合理化して業務受託し、クライアントがコアビジネスに集中できるようにサポート致します。国家資格を有する会計、税務、人事、労務、法務のスペシャリストをはじめとするチームが、クライアントのすべての重要なビジネスニーズに対してコストパフォーマンスの高い高品質のソリューションを提供します。 帳簿作成 キャッシュマネジメント インボイス関連サービス 給与計算サービス 社会保険・労働保険手続 会社設立・許認可 その他企業法務 ファイナンシャル・アドバイザリー・サービス 財務はすべてのビジネスの健全性を図る上で重要な指標であり、ビジネスの成功を助ける場合もあれば、阻害する場合もあります。私たちの会計・財務コンサルティングチームは、クライアントの置かれている状況に応じた、専門的かつ実践的なソリューションを提供します。 IPO(株式公開)支援 原価計算コンサルティング JSOX(内部統制評価制度) 内部監査 開示書類作成 IFRS(国際財務報告基準) デューデリジェンス・株価算定 ビジネスサポートソリューション 今日企業が直面する課題は多様であり、また常に変化しています。クライアントのビジネスが激変する環境に適切に対応するために、私たちは、クライアントのニーズを理解し、目標を達成するために役立つ革新的なビジネスソリューションを提供します。 M&A支援 アウトバウンドサポート(海外進出支援) インバウンドサポート(日本進出支援) 資金調達支援 生命保険代理 不動産サービス
- [情報セキュリティ](https://shiodome.co.jp/security/) - 情報セキュリティの取り組み ISO27001認証取得 RSM汐留パートナーズ株式会社は、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の国際規格である「ISO/IEC 27001」の認証を取得しております。 ISO 27001は、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の構築、運用、および認証に関するプロセスと管理策を定めた、世界的に認められた基準であり、企業が財務情報、知的財産、従業員情報、さらには第三者から預かった情報に関するセキュリティリスクを特定・管理し、最小化するための体系的な方法と枠組みを確立していることを保証するものです。 近年の増加するサイバー攻撃に対応するため、当社では現行のセキュリティ管理をより一層厳格にし、クライアントに対してセキュリティへの強いコミットメントを示し、また社内におけるセキュリティ意識を高める文化の推進も行っております。 最高水準の情報セキュリティ管理を実現するため、更なる情報セキュリティの向上に努め、クライアントの皆様の信頼に応えていく所存です。 情報セキュリティ基本方針 RSM汐留パートナーズ株式会社は、ワンストップサービスを提供するプロフェッショナルファームとして、お客様の信頼と社会への責任を果たすため、情報セキュリティの向上と維持は重要課題の一つであると考え、以下の通り情報セキュリティ基本方針を定めます。 情報セキュリティに関する社内体制の整備情報セキュリティ維持及び改善のために組織を設置し、情報セキュリティの向上と対策を継続的に整備し続けます。 社内研修・教育の取り組み従業員は、情報セキュリティのために必要とされる知識、技術を習得して情報セキュリティへの意識向上に努めます。 法令等の遵守情報セキュリティに関わる法令、規則、契約上の義務を遵守します。 情報資産の保護情報資産の取り扱いについて、機密性、完成性及び可用性を保護するために組織的に合理的な対策を講じます。またそれらを維持するための定期的な評価と見直しを行います。 認証登録概要 登録組織 RSM汐留パートナーズ株式会社 東京本社 認証範囲 税務・会計(各種ビジネスソリューション、アウトソーシング[BPO])、アドバイザリー(ビジネスコンサルティング、財務コンサルティング)、グローバル・コンサルティング(入国管理・許認可申請)、キャッシュマネジメント(銀行管理・支払業務)、人事労務(給与計算・社会保険) 適用規格 ISO/IEC 27001:2022 認証登録番号 IND.25.6030/IS/U
- [国際コンサルティング](https://shiodome.co.jp/services/global-consulting/)
- [Thank You](https://shiodome.co.jp/thank-you/) - この度は、お問い合わせいただき、誠にありがとうございました。内容を確認次第、担当者からご連絡差し上げます。
- [ヨーロッパ・中東への進出コンサルティング](https://shiodome.co.jp/services/global-consulting/outbound/europe/)
- [フィロソフィ](https://shiodome.co.jp/philosophy/) - 当グループにはフィロソフィがあり全役職員が拠り所としているものです。汐留フィロソフィの「企業理念」、「経営理念」、「行動理念」、「行動指針」をご紹介させていただきます。 企業理念 私たちは、従業員とその家族のWell-beingを経営の根幹とし、ワンストップサービスを通じてクライアントが自信を持って前進できるように努め、豊かな地域・社会の実現に貢献します。 ※Well-being(ウェルビーイング)とは、「幸せ」「健康」「福利」などと和訳されますが、人々が、精神的、身体的、社会的に「よきあり方」「よい状態」であることをいいます。 経営理念 従業員と家族の幸せを大切にするクライアントのよきパートナーであり続けるために、常に進化をし夢を持って働ける職場を目指し、従業員と家族の幸せを大切にします。 クライアント第一主義クライアント第一主義をモットーに、そのために我々が果たすべき責任や貢献に必要な一切の努力を惜しみません。 プロフェッショナルとして社会に貢献プロフェッショナルとして、常に高い志と使命感を持ち、国籍、人種、文化などを超え社会に貢献することを目指します。 行動理念 専門性我々は、すべての構成員が、それぞれの職務において知識と実務能力の研鑽に努め、スペシャリストであり続けることを目指します。 誠実性我々は、すべての構成員が、熱いハートと倫理観を持ち、あらゆるステイクホルダーに対して誠実であり続けることを目指します。 革新性我々は、すべての構成員が、革新的に考え行動し、クライアントのあらゆるニーズを満たすべくチャレンジし続けることを目指します。 行動指針 上記の3つの経営理念と3つのビジョンをブレイクダウンしたものとして、9つの行動指針を定めています。クライアントの皆様に常にクオリティ高く、コストパフォーマンス良く、感動を与えられるようなサービスを提供し続けてまいります。 目標を設定して行動する 自分を磨く行動をする 利益とコストに対する意識を持って行動する 仲間を大切にする お客様を大切にする セキュリティー・プライバシー・コンプライアンスの遵守 自発的に行動する マーケットインの発想を持つ 感動を与える
- [ESG・サステナビリティ](https://shiodome.co.jp/esg-sustainability/) - RSM汐留パートナーズでは、変化の激しい世の中において、企業や事業がサステイナブル(持続可能)である世界を実現するため、ESG「Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)」を重要なテーマとしています。 ESGとは、「環境(Environment)」、「社会(Social)」、「ガバナンス(Governance)」を意識した取り組みのことで、気候変動問題や地域間における経済格差等に関する社会課題が、顕在化している中、企業自身の売上や利益だけでなく、企業が社会的に提供できる価値も含めて、企業を評価するという仕組みです。 RSM汐留パートナーズにおいても、自社及びクライアントが関係する領域に関して、常にESG・サステナビリティを念頭に様々な活動を実施しています。 環境(Environment) 持続的な発展のための具体的な目標 我々RSM汐留パートナーズは、環境面に対する具体的な成果を生み出すために2030年までに企業として排出する二酸化炭素排出量を大きく削減しつつ、下記の具体的な目標の達成を通して、“ネットゼロ”な企業を2030年までに目指してまいります。 ガス使用の削減 紙の使用量を大幅に削減 埋め立て廃棄物の削減 電気総消費量を削減すると共に、使用する電気のすべてを再生可能エネルギーに転換 各種、業務に関する移動の削減 紙媒体の使用削減 RSM汐留パートナーズは、紙資源の大量消費が地球環境に及ぼす悪影響に対し深く懸念しています。私たちはBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)サービスを提供するプロフェッショナルファームであり、自社の業務におけるほぼすべての業務に関してペーパーレス化を推進しています。見積書や顧客管理等に関わる各種書類・情報の電子化、電子署名の導入、情報共有に関するオンラインプラットフォームの構築など、現代のIT技術を活用し、引き続き環境に配慮して業務に従事していきます。 テレワークの推進 昨今の新型コロナウィルスの蔓延を受け、IT技術を活用したテレワークは世界的に広く普及致しました。RSM汐留パートナーズは、感染症が収まった場合においても、社員の通勤などから生じる二酸化炭素の排出の削減のために、積極的にテレワークを推進していきます。 社会(Social) 誰もが活躍できる職場 RSM汐留パートナーズは、変化の激しい現代において、多様性が生み出す可能性を信じています。そのため、様々なバックグランドを有する人々がRSM汐留パートナーズの役職員として従事しており、社内・社外で誰もが活躍できる環境を整備しています。RSM汐留パートナーズにおける、男女比は概ね1:1であり、20代~60代まで幅広い人材が活躍しております。また、英語圏・中国語圏を主として、外国籍の役職員も多く活躍しており、社内の多様性はもちろんのこと、対応できるクライアントや案件の幅の多様化にも努めています。 また、RSM汐留パートナーズは多機能型就労支援事業所「Branch for pro」を運営する特定非営利活動法人Forestと障がい者就労支援事業に関する分野で業務提携を結んでおります。具体的な取り組みとしては、Forestに所属しているメンバーが、当グループ札幌事務所にて直接就労することを目指す持続可能なプログラムを展開しています。当グループはForestのメンバーに多様な業務を委託し、各メンバーのスキル向上を図り、彼らが将来的に一般就労の場を見つけるための支援をしています。 特定非営利活動法人Forest:https://forest-japan.org/多機能型就労支援事業所Branch for pro:https://branch-for-pro.site/ メンバー1人1人の目的を支援 RSM汐留パートナーズは、メンバー1人1人の活動を支援することを通じて、社会の発展に寄与できると考えています。自らのキャリアの多様性を確保するため、より高度な資格の取得を目指し学習するメンバーに対し、資格取得のための学費貸付、試験休暇(5日+試験日)、自習室の開放や学習相談などの制度を整備することで環境面からもバックアップしています。また、テレワーク、フレックス制度、産休・育休制度など働き方に関する各種支援も実施し、各個人が自らの状況に応じて柔軟に働くことをデザインできる環境を整備しています。社員1人1人が、様々な経験を通して多面的に物事を見られるようになることは、日々の業務における品質の向上から、社会的なイノベーションの創造まで、様々な点において重要であると考えています。 世の中を担う人材のキャリア教育支援 我々RSM汐留パートナーズは今後、日本及び世界が持続的に発展していくためには、未来を担う学生の教育が非常に重要であると考えています。このような考え方から、提携先の大学から学生をインターンという形で定期的に受け入れています。RSM汐留パートナーズで活躍している、公認会計士、税理士、社会保険労務士、行政書士、司法書士など各種士業のプロフェッショナルとの交流を通して、技術的な理解だけでなく、将来を担う人材として必要なメンタリティの成長にも大きく寄与しています。今後も人材輩出を目的として、上記の活動を続けてまいります。 ESG・サステナビリティの社会的波及 RSM汐留パートナーズにおいては、ESG・サステナビリティの考え方を大切にし、持続的な社会のために日々活動している企業や、これから活動していきたい企業に対し様々な支援を実施しています。社会の発展に寄与する可能性のある、シード段階のスタートアップ企業に対する資金提供や、事業の中でESG・サステナビリティの考え方をいかに取り入れていくか悩みを抱えている企業に対して、アドバイスを行っています。 ガバナンス(Governance) 伝統的な業務を通した企業支援 私たちRSM汐留パートナーズは、士業をはじめとしたプロフェッショナル集団であり、その中心的な業務には、財務会計や企業法等の専門的な知識を活かした、ガバナンスの構築支援が含まれます。今後も、創業以来培ってきた知見を活用し、クライアント企業がESGの考え方を取り入れ、数十年・数百年先も存続できる体制の構築を目指していきます。 コンプライアンス対応に関わる体制の構築 RSM汐留パートナーズは、企業として公正・公平な業務を通して、社会の発展に貢献するため、情報セキュリティ、コンプライアンス、ハラスメント等に関して厳格な社内規程を整備し運用しています。また独立した社外監査役を設置し、社内における問題に関する内部通報や、対外的な不祥事に関する情報の収集・伝達を目的とした窓口体制を整備しています。 RSM汐留パートナーズは、3つの経営理念「従業員と家族の幸せを大切にする」、「クライアント第一主義」、「プロフェッショナルとして社会に貢献する」を掲げています。同時に、行動指針においても「知識と実務能力の研鑚に努めスペシャリストであり続けること」、「ステークホルダーに対して誠実であり続けること」、「クライアントのあらゆるニーズを満たすべくチャレンジし続けること」を目指しており、社会・クライアント・会社が三方良し(Well-being)であり続けることをうたっています。 この経営理念や行動指針を根底として、各役職員が地球市民であること(Global Citizenship)を強く認識し、また私たちと関わりのあるクライアント・従業員・家族というステークホルダーに対し、自らの知見や経験を活用し誠実に接していくことで、RSM汐留パートナーズはESG・サステナビリティ分野にも大きく寄与してまいります。 またテクノロジーの進化が著しい世の中においても、「他士業連携によるワンストップサービス×多言語対応×IT活用」により、持続的なESGの推進及びクライアントの経営管理業務全般に関する課題解決に貢献し、社会に対して専門家としての責任と役割を果たすよう努めてまいります。 以上の考えのもと、私たちRSM汐留パートナーズは積極的に物事に取り組み、社会とともに持続的な成長・発展を実現させることを、使命として日々行動してまいります。
- [インダストリー](https://shiodome.co.jp/industry/)
- [金融業](https://shiodome.co.jp/industry/financial-services/) - 経済は間違いなく金融業界に影響を与えており、絶えず大きな変化に直面していると言えます。1990年代後半から21世紀初頭にかけて行われた経済システム改革は、日本の金融業界を完全に変革しました。近年、仮想通貨やAI(人工知能)を介した資産運用を含むフィンテック(金融技術)の導入や拡大、他産業からの金融サービスの導入など、さまざまな進展がみられます。銀行業界の従来のビジネスモデルは、これらの変化に適応するために見直しや修正が図られる必要があります。 一方で、他の業界からすると、金融セクターは潜在的な可能性に満ちていると見られています。利用可能な外国資本を所有するさまざまな産業部門が日本の証券サービスを導入し、この変化の中で成功を収めている企業もあります。 行うべきは「前進」することです。 既存の金融機関には、積極的に海外事業に参入し、新技術を活用した革新的なサービスを創出するよう圧力がかかるでしょう。私たちは、金融業界に精通しています。あなたの経営に関するサポートを致します。 サービス内容 RSM汐留パートナーズでは、200名を超える専門家が、様々な分野においてプロフェッショナルサービスを提供しております。私たちは、日本で専門家の枠を超えた「ワンストップサービス」を期待するクライアントのサポートを行っています。クライアントの成功を第一に考えた上で、以下のサービスを提供しています。 会計税務・人事労務サービス 税務申告書をはじめとした書類の作成 税務コンプライアンス 国際税務・海外税務 人的資本(ヒューマンキャピタル) 労務管理・労務コンプライアンス BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング) 私たちは、包括的なBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)サービスを提供し、会社のバックオフィス業務を合理化して業務受託し、クライアントがコアビジネスに集中できるようにサポート致します。国家資格を有する会計、税務、人事、労務、法務のスペシャリストをはじめとするチームが、クライアントのすべての重要なビジネスニーズに対してコストパフォーマンスの高い高品質のソリューションを提供します。 帳簿作成 キャッシュマネジメント インボイス関連サービス 給与計算サービス 社会保険・労働保険手続 会社設立・許認可 その他企業法務 ファイナンシャル・アドバイザリー・サービス 財務はすべてのビジネスの健全性を図る上で重要な指標であり、ビジネスの成功を助ける場合もあれば、阻害する場合もあります。私たちの会計・財務コンサルティングチームは、クライアントの置かれている状況に応じた、専門的かつ実践的なソリューションを提供します。 IPO(株式公開)支援 原価計算コンサルティング JSOX(内部統制評価制度) 内部監査 開示書類作成 IFRS(国際財務報告基準) デューデリジェンス・株価算定 ビジネスサポートソリューション 今日企業が直面する課題は多様であり、また常に変化しています。クライアントのビジネスが激変する環境に適切に対応するために、私たちは、クライアントのニーズを理解し、目標を達成するために役立つ革新的なビジネスソリューションを提供します。 M&A支援 アウトバウンドサポート(海外進出支援) インバウンドサポート(日本進出支援) 資金調達支援 生命保険代理 不動産サービス
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- [エスワティニ(スワジランド)進出コンサルティング](https://shiodome.co.jp/services/global-consulting/outbound/africa/eswatini/)
- [ナミビア進出コンサルティング](https://shiodome.co.jp/services/global-consulting/outbound/africa/namibia/)
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- [ハンガリー進出コンサルティング](https://shiodome.co.jp/services/global-consulting/outbound/europe/hungary/)
- [チェコ進出コンサルティング](https://shiodome.co.jp/services/global-consulting/outbound/europe/czech/)
- [デンマーク進出コンサルティング](https://shiodome.co.jp/services/global-consulting/outbound/europe/denmark/)
- [インド法人運用サービス](https://shiodome.co.jp/services/global-consulting/outbound/asia-pacific/india/service2/)
- [香港進出の形態](https://shiodome.co.jp/services/global-consulting/outbound/asia-pacific/hongkong/style/)
## コラム
- [内部統制のDX・効率化|Power BI活用で評価工数を削減しモニタリングを高度化する方法](https://shiodome.co.jp/column/58893/) - 「毎期、同じようにサンプルを抜き出して証憑を確認しているが、これで本当にリスクを捉えられているのか、手法の網羅性に確信が持てない」「評価作業の量に押されて、肝心の分析や改善に充てる時間が確保しにくい」——内部統制報告制度(いわゆるJ-SOX)の評価を担当されている方から、こうしたお声をよくいただきます。 評価業務は、毎期決まった手続きを着実に積み上げていく、正確性と継続性が問われる業務です。だからこそ、サンプリングと手作業の証憑確認を中心とした従来型の進め方では、対象が増えるほど工数が膨らみ、「確認したという記録を残すこと」自体が目的化しているように感じられる場面も出てきます。一方で、近年は会計・基幹システムに蓄積されたデータを活用し、BI(Business Intelligence)ツールなどでデータドリブンに例外を抽出したり、対象を全件モニタリングしたりする取り組みが広がりつつあります。これは単なる作業の置き換えではなく、評価工数の削減と、評価の実効性向上(形骸化の防止)を両立させる手段として注目されています。 この記事では、会計・監査・内部統制の実務に携わる立場から、従来型評価の限界がどこにあるのか、Power BIに代表されるデータ活用がなぜ効率化と高度化を同時に実現しうるのか、そして導入をどのようなステップで進め、どう定着させていくかを整理します。ツールの操作方法ではなく、内部統制の実務に「データ活用をどう組み込むか」という考え方の地図としてお読みいただければ幸いです。 ※本記事はJ-SOX(金融商品取引法に基づく内部統制報告制度)の一般的な仕組みを前提とした解説です。評価手法の採否や評価範囲・サンプル件数の考え方などは、制度の枠組みと会社の状況により異なります。具体的な運用や監査対応については、「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準・実施基準」および自社の監査法人にご確認ください。 なぜ今、内部統制のDX・効率化が求められているのか J-SOXの目的は、財務報告の信頼性を確保することにあります。その手段として、財務報告に関わる作成プロセスに組み込まれた内部統制が有効に機能しているか——すなわち整備状況と運用状況の両面——を経営者が評価し、報告します。この目的と手段の関係そのものは、制度の導入以来変わっていません。 変わってきたのは、評価を取り巻く環境です。事業のグローバル化やグループ再編により評価対象は広がり、会計・基幹システムの高度化によって扱うデータ量は増え続けています。一方で、評価を担う人員は潤沢とはいえないことが多く、決算業務との繁忙期の重なりもあって、限られたリソースで評価の質を保ち続けることが共通の課題になっています。 ここで効率化が必要なのは、単に「楽をするため」ではありません。評価に費やす工数を適正化できれば、その分のリソースを、不備の是正や業務プロセスそのものの改善、リスクの高い領域の深掘りといった、より付加価値の高い活動に振り向けられます。DX・効率化は、評価を縮小するための手段ではなく、評価の実効性を高めるための投資として位置づけると、取り組みの意義が明確になります。 J-SOX対応の全体像(目的・仕組み・進め方)については、ハブ記事で体系的に整理していますので、制度の前提から確認したい場合はあわせてご覧ください(J-SOX(内部統制報告制度)対応とは?仕組み・進め方・実務のポイントを内部統制担当者向けに徹底解説)。 従来型評価(手作業・サンプリング中心)の限界 データ活用の意義を理解するうえで、まず従来型の評価が抱える構造的な特性を整理しておきます。ここで述べるのは、担当者の取り組み方の問題ではなく、手法そのものに内在する制約です。 サンプリングは「一部」しか見られない 運用状況の評価では、対象とする統制(キーコントロール)について、母集団からサンプルを抽出し、証憑を確認して統制が機能していた証拠を残していくのが一般的な手続きです。これは合理的かつ確立された手法ですが、性質上、母集団の一部を確認するものであり、抽出されなかった取引の中に潜む例外を直接捉えるものではありません。 サンプルの件数や抽出方法は、リスクや統制の頻度に応じて設計されるものであり、具体的な件数や考え方は実施基準の枠組みと監査法人との協議によります。重要なのは、サンプリングである以上、「確認した範囲では問題がなかった」という結論にとどまる、という手法上の特性を理解しておくことです。 手作業の証憑確認は工数が積み上がる 手作業による統制は、運用テストのたびに証憑を集め、一件ずつ目視で照合する必要があります。対象とするキーコントロールの数が増えれば、その分だけ確認の手間が比例して増えていきます。証憑の収集や台帳への記録、突合といった作業に多くの時間が割かれ、結果として「なぜその統制が重要なのか」を考える時間が圧迫されやすくなります。 期末への偏りと「点」の評価 運用評価は、期中の一時点や特定期間のサンプルを対象とすることが多く、期末に作業が集中しがちです。これは、年間を通じた統制の状況を連続的に把握するというより、いくつかの「点」で確認する構造になりやすいことを意味します。期中に生じた異常や一時的な統制の逸脱が、評価のタイミングと噛み合わなければ、検出が後手に回る可能性があります。 形骸化が生じやすい構造 これらが重なると、評価が「証憑を集めてチェックマークを付ける作業」に近づき、本来の目的であるリスクの把握から遠ざかっていく——いわゆる形骸化の懸念が生じます。これは担当者の姿勢の問題ではなく、手作業とサンプリングを前提とした手法が、量の増加に対してスケールしにくいために起きる構造的な現象です。だからこそ、手法そのものにデータ活用を組み込むことで、この構造を変えていく余地があります。 データドリブンな評価とは|全件モニタリングと例外抽出 従来型の限界を踏まえると、データ活用がどこに効くのかが見えてきます。鍵となるのは、「サンプルを見る」発想から「データ全体を見て、例外に集中する」発想への転換です。 全件モニタリングという考え方 会計・基幹システムには、仕訳、購買、販売、在庫の移動など、業務の記録がデータとして蓄積されています。これらのデータを直接分析できれば、サンプルではなく対象データの全件を見渡し、定義したルールから外れる取引(例外・アノマリー)を抽出することが可能になります。 たとえば、承認限度額を超えた取引、休日や深夜に計上された仕訳、業務分掌で定められた担当者以外が起票した仕訳、マスタに存在しない取引先への支払いなど、「統制が効いていれば本来起きにくいはずのパターン」を条件として定義し、全データに当てはめて該当件数を抽出する、という進め方です。これにより、確認の網羅性が高まると同時に、人の目を向けるべき対象が例外に絞り込まれます。 ※ここで挙げた抽出条件はあくまで考え方の例示です。どのような分析が運用評価上の手続きとして認められるか、サンプリングの代替・補完としてどう位置づけられるかは、各社の状況によって様々であり、監査法人との協議によります。手法の採否は「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準・実施基準」および自社の監査法人にご確認ください。 例外抽出が効率化と高度化を両立させる理由 全件を機械的にスクリーニングし、例外だけを人が精査する——この役割分担が、効率化と高度化を同時に成り立たせます。網羅的にデータを見ることで「全体を見ている」という実効性が高まり(高度化)、人手をかける対象が例外に限定されることで証憑確認の総量が抑えられます(効率化)。サンプリングが「一部を深く」見る手法だとすれば、データ活用は「全体を広く見て、怪しい一部を深く」見る手法といえます。 継続的モニタリングへの発展 さらに、この分析を期末の一回限りではなく、月次や日次など定期的に回す仕組みにできれば、年間を通じた継続的なモニタリングに発展します。期中に生じた異常を早期に把握できれば、是正も早く着手でき、「点」の評価から「線・面」の把握へと近づきます。これは、評価のためだけでなく、業務管理そのものの質を高める効果も期待できます。 なお、こうした取り組みは内部監査によるモニタリングと親和性が高く、J-SOX評価と内部監査の役割分担を整理することで、データ活用の効果をより広く活かせます。両者の違いと連携の考え方は別記事で整理しています(J-SOXと内部監査の違い・関係|役割分担と体制構築のポイント)。 Power BIを活用した内部統制DXの具体像 データドリブンな評価を実現する手段の一つが、Power BIに代表されるBIツールの活用です。ここでは、なぜBIツールが内部統制の文脈で有用なのか、どのような形で使われるのかを整理します。 BIツールが評価業務に向いている理由 BIツールは本来、社内に散在するデータを取り込み、加工・集計し、ダッシュボードとして可視化することを目的としたものです。この特性が、内部統制評価のいくつかの課題と噛み合います。 複数データソースの統合:会計システム、基幹システム、各種台帳など、形式の異なるデータを取り込んで一元的に扱えます。 加工処理の自動化・再現性:一度作り込んだデータ取り込みと集計の手順を、毎期・毎月そのまま再実行できます。手作業の集計と違い、手順が記録され、再現性が確保される点は、評価の証跡という観点でも意味があります。 可視化による異常の発見しやすさ:数値の羅列ではなくグラフやダッシュボードで示すことで、傾向や外れ値を直感的に捉えやすくなります。 明細へのドリルダウン:全体像から個別取引の明細まで掘り下げられるため、例外として抽出された取引の精査にそのまま移行できます。 内部統制での活用イメージ 内部統制の評価・モニタリングにおける活用は、たとえば次のような形が考えられます。 例外取引のダッシュボード化:前章で挙げたような「統制が効いていれば起きにくいパターン」を抽出する条件を組み込み、該当取引を一覧・件数で可視化する。 統制の運用状況の傾向把握:承認の遅延、未処理の滞留、特定部署・特定科目への偏りなどを時系列で追い、異常の兆候を捉える。 評価作業の進捗管理:評価対象のキーコントロールごとに、テストの実施状況や不備の検出・是正状況を可視化し、年間スケジュールの管理に役立てる。 証憑収集・集計の自動化:これまで手作業で集計していた数値を自動で更新し、準備工数を削減する。 内部統制DXに不可欠なIT全般統制の視点 ここで見落とせないのが、データ活用そのものが信頼できる前提を整えておく必要がある、という点です。分析の元になるデータが改ざんされうる状態であったり、ダッシュボードのロジックが管理されないまま変更されたりすれば、その分析結果自体の信頼性が揺らぎます。 具体的には、データを抽出する元システムのIT全般統制(アクセス管理、変更管理、運用管理など)が適切に機能していること、BIツール上のデータ取り込みロジックや分析定義が管理・統制されていることが、データドリブン評価の土台になります。ツールを導入するだけでなく、その分析を内部統制の手続きとして成立させるには、こうしたIT統制の整備とあわせて設計することが欠かせません。ここは内部統制とITの双方の知見が交わる領域であり、専門的な検討を要する部分です。 ダッシュボード構築でつまずきやすい点と対処 BIツールの活用は、ダッシュボードを「作る」こと自体は難しくありませんが、内部統制の手続きとして機能させる過程でいくつかのつまずきが生じやすい点に注意が必要です。あらかじめ典型的なパターンを把握しておくと、試行段階での手戻りを減らせます。 第一に、誤検知(フォールスポジティブ)の多さです。例外を抽出する条件を素直に作ると、業務上は問題のない正常な取引まで大量に「例外」として拾ってしまうことがあります。たとえば「深夜に計上された仕訳」を異常とみなす条件は、夜間バッチで自動計上される仕訳を一律に拾ってしまいがちです。こうした正常パターンを除外する条件を重ねたり、金額や頻度の閾値を組み合わせたりして、人が精査すべき件数が現実的な範囲に収まるよう調整していく作業が欠かせません。誤検知が多いまま運用を始めると、結局すべてを目視する従来型に逆戻りし、効率化の効果が失われてしまいます。
- [J-SOXと内部監査の違い・関係|役割分担と体制構築のポイント](https://shiodome.co.jp/column/58888/) - 「J-SOX対応も内部監査も、どちらも『内部統制』に関わる仕事だが、両者は何がどう違うのか」「経営者評価のためのチームと内部監査部門は、それぞれどこまでを担えばよいのか」——内部統制の実務を担当していると、この二つの関係をどう整理すべきか、いちど立ち止まって考えたくなる場面があります。 J-SOX(内部統制報告制度への対応=経営者による内部統制の評価)と内部監査は、どちらも組織のガバナンスを支える機能で、扱う対象も重なります。一方で、制度上の位置づけ・目的・役割は明確に異なります。この違いを押さえておくと役割分担を設計しやすく、限られた人員でも重複や抜け漏れのない体制を組めます。 本記事では、J-SOXと内部監査の目的・位置づけの違いを整理したうえで、両者の役割分担、連携・相互活用、そして体制構築のポイントを、内部統制担当者・内部監査担当者の視点で解説します。 ※本記事は制度の一般的な考え方を整理したものです。内部統制報告制度の評価範囲・評価手続・運用の詳細、内部監査との連携の可否や程度は、企業の状況や監査の前提により異なります。最新の取扱いや個別の判断については、「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準・実施基準」および自社の監査法人にご確認ください。 そもそもJ-SOXと内部監査は別の概念 「J-SOX内部監査違い」を考えるとき、まず避けたいのは、両者がそもそも異なる文脈から生まれた別々の機能であることの見落としです。重なる領域があるため一体で語られがちですが、出発点が違います。 J-SOX(内部統制報告制度対応)とは J-SOXは、金融商品取引法に基づく内部統制報告制度への対応を指す通称です。中心にあるのは、経営者が、財務報告に係る内部統制の有効性を自ら評価し、内部統制報告書として開示する仕組みです。 ここで目的と手段を区別しておくと整理しやすくなります。 目的:財務報告の信頼性を確保すること。 手段:財務報告の作成プロセスに組み込まれた内部統制が、整備状況・運用状況の両面で有効に機能している状態。 J-SOX対応は、この手段が機能しているかを経営者の責任で評価し、報告する制度対応です。評価する有効性は、整備状況(必要な統制が適切に設計され、業務に組み込まれているか)と運用状況(設計どおりに継続して運用されているか)の両面から判断します。 J-SOX対応の全体像(仕組み・進め方・実務のポイント)については、別記事(J-SOX(内部統制報告制度)対応とは?仕組み・進め方・実務のポイントを内部統制担当者向けに徹底解説)で詳しく解説しています。本記事はその個別論点として、内部監査との関係に焦点を当てます。 内部監査とは 一方の内部監査は、特定の法律で一律に義務づけられたものではなく、組織が自らのガバナンスを健全に保つために設ける独立的な機能です。IIA(内部監査人協会)の2024年の新基準(Global Internal Audit Standards)では、内部監査は取締役会と経営者に対し、独立した立場からアシュアランス(保証)・コンサルティング(助言)・インサイト(洞察)・フォーサイト(将来予見)を提供し、組織が価値を創造・保全・維持する力を高めることを目的とする、と位置づけられています。事後的なチェックにとどまらず、前向きなアドバイザリーまでを含む点が、近年の内部監査の特徴です。 具体的には、業務執行から一定の独立性を保った立場で、業務・リスク管理・コンプライアンス・内部統制などが適切に機能しているかを点検・評価(アシュアランス)するとともに、改善に向けた助言(コンサルティング)も行います。この独立性は、内部監査部門が取締役会(監査委員会等)への報告ラインを通じて組織的に確保するのが基本です。 対象は財務報告に限りません。業務の有効性・効率性、法令遵守、資産の保全、ITガバナンスなど組織運営の広い領域が視野に入り、財務報告に係る内部統制はその一部にすぎません。 つまり、J-SOXが「財務報告の信頼性確保」に絞られた制度対応であるのに対し、内部監査は組織全体を見渡す広範な機能です。この違いを、次に目的・根拠・位置づけの観点で整理します。 目的・根拠・位置づけで違いを整理する J-SOXと内部監査の違いは、「目的」「根拠」「対象範囲」「位置づけ」の観点で対比すると理解しやすくなります。 対比で見る4つの観点 特に押さえたいのは位置づけの違いです。J-SOXの評価は経営者自身の責任で行う自己評価であり、経営者が「自社の財務報告に係る内部統制は有効である」と評価し、報告書として開示します。一方、内部監査は業務執行から独立した客観的な立場で点検する独立的モニタリングで、その独立性は取締役会(監査委員会等)への報告ラインを通じて確保されます。なお、内部統制そのものに対する責任は経営者・取締役会にあり、内部監査が点検・保証することでその責任が移るわけではありません。この「自己評価」か「独立的モニタリング」かの違いが、後述する役割分担の基礎になります。 J-SOXと内部監査は連携・相互活用できる ここまで違いを強調してきましたが、両者は対立する機能ではありません。むしろ適切に連携・相互活用することで、限られた人員でも質の高い内部統制を維持できます。重なり合う部分があるからこそ、設計次第で相乗効果が生まれます。 内部監査の知見をJ-SOX評価に活かす 内部監査は日頃から組織全体の業務プロセスやリスクを俯瞰し、どこにどんなリスクが潜むか、過去にどんな問題が起きたか、といった知見を蓄積しています。こうした知見は、J-SOX対応の評価範囲の検討やリスクの識別に活かせます。財務報告に重要な影響を及ぼし得るプロセスはどこか、どのキーコントロールに着目すべきか——こうした判断は、組織全体を見てきた内部監査の視点が加わることで的確になります。 J-SOXの評価成果を内部監査に活かす 逆に、J-SOX対応の成果も内部監査に有用です。J-SOXで整備する3点セット(業務記述書・フローチャート・リスクコントロールマトリクス(RCM))とその評価結果は、業務プロセスの現状とリスク・統制の対応関係を体系的に示すもので、内部監査がテーマを選定し着眼点を定める際の出発点として活用できます。両者は情報や成果物を双方向に活用でき、共有し合うことで組織全体の把握が深まり、二重作業も減らせます。 連携の効果を高めるためのDX・効率化 連携を実効的にするには、情報を共有・可視化する仕組みも欠かせません。評価結果やモニタリングの状況が各部門に閉じたままでは、相互活用が進みません。近年はPower BIなどのツール活用によるデータの可視化・分析も広がっており、評価の進捗や不備の状況を共通基盤で見える化しておくと、内部統制評価(J-SOX対応)部門と内部監査部門が同じ事実をもとに対話しやすくなります。具体的な進め方は、別記事(内部統制のDX・効率化|Power BI活用で評価工数を削減しモニタリングを高度化する方法)で解説しています。 体制構築のポイント J-SOXと内部監査の違いと関係をふまえ、実務として両者をどう組み合わせて体制を組むか、ポイントを整理します。 1. 役割と責任を明文化する まず、誰が(どの部門が)どの機能を担うのかを明文化します。各部門の役割、内部統制評価(J-SOX対応)の主管部門、内部監査の所管、報告ルートを規程や体制図に整理しておくと、属人化を防ぎ、引き継ぎもしやすくなります。 2. 評価範囲・着眼点を共有し、二重作業を避ける 内部統制評価(J-SOX対応)部門と内部監査部門が計画段階で評価範囲や着眼点を共有しておくと、同じ業務プロセスを別々に点検する二重作業を避けられます。互いの成果を活用し合う前提で計画を立てれば、限られた工数を効果的に配分できます。 3. 体制の成熟度に応じて見直す 内部統制の体制は、一度つくれば完成というものではありません。組織の成長や事業環境の変化に応じて役割分担や評価範囲を継続的に見直すと、制度対応と組織の実態のずれを防げます。とくにIPO(新規上場)を目指す企業では、上場後のJ-SOX対応を見据えて早い段階から内部統制と内部監査の体制を整えておくと、移行がスムーズになります。上場準備における体制整備については、IPOコンサルティングもあわせてご参照ください。 まとめ J-SOXと内部監査の違い・関係について、本記事の要点を整理します。 J-SOX(内部統制報告制度対応)は、財務報告の信頼性の確保を目的に、財務報告の作成プロセスに組み込まれた内部統制の有効性(整備状況・運用状況)を、経営者の責任のもとで評価・報告する取り組みです。 内部監査は、法定の一律義務ではなく、組織が自律的に設ける独立的な機能で、独立・客観的なアシュアランス(保証)とコンサルティング(助言)を通じて、財務報告を含む組織運営全般を対象とします。 J-SOX対応(内部統制評価)は経営者による自己評価、内部監査は業務執行から独立した立場でのモニタリングであり、両者は機能として別物です。 両者は対立せず、知見・成果物を双方向に活用できます。内部監査の知見は評価範囲やリスク識別に、J-SOXの3点セットや評価結果は監査の着眼点の選定に活かせます。 体制構築では、役割の明文化・評価範囲の共有・成熟度に応じた見直しがポイントになります。 ※評価範囲・評価手続の具体的な設定、内部監査との連携の可否や程度は、企業の状況により異なります。最新の取扱いや個別判断については、「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準・実施基準」および自社の監査法人にご確認ください。 内部統制と内部監査の体制づくりは、RSM汐留パートナーズにご相談ください
- [内部統制のアウトソース・コソースとは?委託範囲とメリット・選び方](https://shiodome.co.jp/column/58881/) - ——「J-SOX対応の評価業務を、すべて自社の人員でまわし続けるのは正直きびしい。とはいえ、どこまで外部に任せてよいものか」。内部統制の評価を担う部署では、こうした声が毎年のように聞かれます。決算や監査対応と評価の繁忙期が重なるなか、外部の専門家を活用する選択肢が現実味を帯びてきます。 このとき挙がるのが、評価業務の「アウトソース(外部委託)」「コソース(共同実施)」、そして「内製」という三つの選び方です。本記事では、内部統制(J-SOX)評価業務におけるこの三つの違い、委託できる業務範囲、それぞれのメリット・デメリット、コソースの位置づけ、委託先選びの観点を、内部統制担当者・経理部長の視点で整理します。 ※本記事は内部統制報告制度(J-SOX)に関する一般的な考え方を、実務目線で整理したものです。制度の細目や運用は改正・解釈の更新があり得ます。評価範囲・委託範囲・評価手続の妥当性を含む個別の判断は、「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準・実施基準」および自社の監査法人にご確認ください。 なぜいま「内部統制のアウトソーシング」が検討されるのか 内部統制報告制度(J-SOX)では、財務報告に組み込まれた内部統制が有効に機能しているかを、整備状況・運用状況の両面から経営者自らが評価し報告することが求められます。この「経営者による評価」の実務を担うのが、内部統制担当部署です。 評価業務は一度きりではありません。3点セット(業務記述書・フローチャート・リスクコントロールマトリクス)の整備・更新、整備状況評価、運用状況評価、不備の集計と是正、監査人とのコミュニケーションが毎期くり返され、事業やシステムの変化に応じて見直しも必要になります。 ここで多くの企業が直面するのが、評価に求められる専門性(内部統制の枠組み、リスクの考え方、IT全般統制の評価、サンプリングなど)と、確保できる社内リソースとのギャップです。こうした専門人材を恒常的に社内に抱えることは、評価対象が限られる企業やIPO準備段階の企業には負担が大きくなりがちです。 このギャップを埋める選択肢が、評価業務の一部または全部を外部に委託する「アウトソース」と、社内チームと外部専門家が分担して共同で進める「コソース」です。J-SOX対応の全体像や進め方は別記事(J-SOX(内部統制報告制度)対応とは?仕組み・進め方・実務のポイントを内部統制担当者向けに徹底解説)で体系的に解説しています。 アウトソース・コソース・内製の違い 評価業務の進め方は、委託の度合いと社内・社外の役割分担の違いとして、大きく三つに整理できます。 内製(インソース) 評価業務を原則として自社の人員だけで完結させる形です。3点セットの整備から各評価、不備の評価・是正までを社内チームが担います。社内に知見が蓄積し、業務やシステムへの理解が深いことが強みである一方、専門人材の確保・育成と繁忙期の業務量の平準化が課題になります。 アウトソース(外部委託) 評価業務の特定領域、あるいは大部分を外部の専門家に委託する形です。運用状況評価のサンプルテストや3点セットの新規整備といった負荷の大きい部分を切り出すのが代表的で、社内リソースを他業務に振り向けられ、専門性を機動的に補えます。 ただし、J-SOXの「経営者による評価」という制度上の責任は、作業を委託しても経営者に残ります。評価範囲の決定や評価結果の最終判断は経営者・内部統制担当部署が担う、という役割分担を明確にしておくことが大切です。 コソース(co-source/共同実施) 社内チームと外部専門家が役割を分担し、同じチームとして共同で評価を進める形です。作業を切り出して外に出すアウトソースに対し、コソースは外部専門家がチームの一員として加わるイメージで、内製とアウトソースの中間に位置づけられます。社内に知見を残しながら専門性を補える点が特徴です(後段で詳述します)。 これらを前提に、自社の体制や評価対象の規模に応じて組み合わせを考えていくことになります。 委託できる業務範囲はどこまでか 「アウトソーシング」と一口にいっても、委託する中身はさまざまです。評価のプロセスに沿って、どの作業が委託の対象になりやすいかを整理します。何をどこまで委託できるかは自社の体制や監査人との協議によって変わるため、一般的な整理として捉えてください。 文書化(3点セットの整備・更新) 業務記述書・フローチャート・リスクコントロールマトリクス(RCM)の作成・更新は、委託対象になりやすい領域です。新規上場準備での一からの整備や、業務プロセスの大幅な見直しに伴う改訂では、専門家のフォーマットや進め方が効率化に役立ちます。ただし文書は自社の業務とリスク・統制を写し取ったものである必要があり、現場へのヒアリングや内容確認には社内が主体的に関わる形が望まれます。 整備状況評価 統制が適切に設計され、業務に組み込まれているか(整備状況)を評価する作業です。ウォークスルーや設計上の不備の検討が含まれます。統制の設計をリスクと照らして評価する視点が求められるため、専門家の関与が効果を発揮しやすい領域です。 運用状況評価 設計された統制が期間を通じて意図どおりに運用されているか(運用状況)を評価する作業です。証憑の閲覧やサンプルテストなど件数を要する作業が中心で負荷が大きいため、アウトソース・コソースで切り出されることが多い領域です。サンプル件数や評価手続の設計は、実施基準の考え方を踏まえ監査人と協議して決める事項であり、本記事で件数や閾値を断定することはしません。 IT統制(IT全般統制・IT業務処理統制)の評価 IT全般統制(ITGC)やIT業務処理統制の評価は、専門性が特に求められる領域です。アクセス管理・変更管理・運用管理・システム開発の評価視点や、財務報告に関連するシステム範囲の考え方には、IT監査の知見が活きます。IT統制の評価人材を社内に厚く抱えにくい企業が、この領域から外部の関与を検討するケースはよく見られます。 不備の集計・評価のサポート 識別された不備を集計し、財務報告への影響度の観点から評価する作業のサポートです。ただし、ある不備が「開示すべき重要な不備」に該当するかの最終判断は経営者の判断事項であり、実施基準の考え方を踏まえ監査人との協議を要します。外部専門家は論点の整理や提示を支援できますが、最終判断を肩代わりするものではありません。 委託になじみにくい領域 一方、評価範囲(スコープ)の決定や、内部統制の有効性に関する経営者の最終的な評価(結論)は、経営者の責任に直結します。外部の助言は受けられても、判断の主体は社内に残ります。委託の検討では「作業として外に出せる部分」と「判断として社内に残すべき部分」を切り分けると、役割分担が整理しやすくなります。 なお、評価業務とよく混同される内部監査は、目的も位置づけも異なります。委託範囲を設計する際にも両者の役割を区別しておくと整理しやすくなります。詳しくは別記事(J-SOXと内部監査の違い・関係|役割分担と体制構築のポイント)をご参照ください。 アウトソースのメリット・デメリット 評価業務を外部に委託することには、利点と留意点の両面があります。 メリット 第一に、専門性を機動的に補えること。内部統制の枠組みやIT統制の評価視点といった専門知識を必要なタイミングで活用でき、同等の人材を恒常的に確保・育成する負担を抑えつつ評価品質を保ちやすくなります。第二に、社内リソースの最適配分。負荷の大きい作業を切り出すことで、社内チームは評価範囲の検討や監査人対応、是正の推進といった判断・調整を要する業務に注力できます。 加えて、評価の山場が決算・監査対応と重なる繁忙期の負荷を平準化できること、第三者の視点で自社では見えにくい論点に気づけることも利点です。 デメリット・留意点 一方、評価を外部に大きく依存すると、ノウハウが社内に残りにくく、委託先への依存度が高まります。これは後述のコソースのように社内が主体的に関わる設計で緩和できます。また、自社の業務やシステムの理解を委託先と共有し、評価の前提を合わせる初期のコミュニケーションも見込んでおく必要があります。 費用面では、委託範囲が広がるほどコストは増えるため、内製の人件費・育成コストとの比較で考えることが大切です。費用の構成要素や内製・アウトソースのコストの考え方は別記事(J-SOX対応の費用の考え方|内製・アウトソースのコストを構成する要素)で整理しています。 内製のメリット・デメリット 外部委託と対比すると、内製の特徴もはっきりします。 メリット 内製の最大の強みは、評価の知見が社内に蓄積されることです。評価を毎期くり返すなかで自社の業務・リスク・統制への理解が深まり、文書や評価手続を実態に即して継続的に改善できます。業務・システムへの理解が深いため変化への対応も機動的で、評価結果や論点を社内で直接把握できるぶん、経営者・関連部署との連携や是正の推進も進めやすくなります。 デメリット・留意点 一方、内部統制評価に必要な専門人材の採用・育成と組織的な維持には、相応の時間とコストがかかります。担当者の異動・退職で知見が途切れるリスクにも備えが必要です。また、評価の山場が他業務と重なる繁忙期に、社内人員だけでピークを吸収するのは負担が大きくなりがちです。 内製を基本としつつ、専門性が特に求められる領域や負荷の高い時期だけ外部を組み合わせる——この柔軟な設計が、次に述べるコソースの考え方につながります。 コソースという選択肢の位置づけ アウトソースと内製の中間に位置づけられるのが、コソース(共同実施)です。実務では内製か全面委託かの二択ではなく、このコソースの形が選ばれる場面が少なくありません。 コソースとは 社内チームと外部専門家が役割を分担し、同じチームとして共同で評価を進める形です。たとえば、評価範囲の検討や監査人とのコミュニケーションは社内が主体的に担い、サンプルテストの実施やIT統制の評価といった専門性・作業負荷の高い領域を外部専門家が分担します。 コソースが選ばれる理由 内製とアウトソース双方の利点を取り込めるのが強みです。社内が主体的に関わることで知見が社内に残りやすく、専門性・作業負荷の高い部分は外部が補える。委託先への過度な依存を避けつつ、評価の品質とリソース配分のバランスを取りやすくなります。協働を通じて評価の進め方やドキュメントの作り方といった実務知見が社内に移転していく点も利点です。立ち上げ期は外部の関与を厚めにし、知見が蓄積するにつれ内製の比重を高める段階的な移行も、現実的な選び方の一つです。 コソース設計のポイント
- [J-SOX対応の費用の考え方|内製・アウトソースのコストを構成する要素](https://shiodome.co.jp/column/58873/) - 「来期のJ-SOX対応の予算を組みたいが、何にいくらかかるのか見当がつかない」「外部委託を検討しているが、内製と比べてどちらが妥当なのか判断できない」——内部統制報告制度(いわゆるJ-SOX)の運用や体制見直しを担当されている方から、こうしたお声をよくいただきます。 J-SOX対応の費用は、システム導入のように「製品の定価」が存在するわけではありません。評価範囲の広さ、拠点やプロセスの数、自社のリソース状況、そして内製・アウトソース・コソースといった体制の選び方によって、コストの構造そのものが変わります。だからこそ、金額の多寡だけで比較しようとすると判断を誤りやすく、まずは「費用が何で構成されているのか」「何によって変動するのか」を整理することが、適切な予算検討の出発点になります。 この記事では、会計・監査・内部統制の実務に携わる立場から、J-SOX対応の費用を構成する主な要素、コストを動かす変動要因、内製とアウトソース・コソースそれぞれの費用の考え方、そして費用対効果を高めるためのポイントを整理します。具体的な金額を提示するものではなく、自社の状況に当てはめて予算を見積もるための「考え方の地図」としてお読みいただければ幸いです。 ※本記事はJ-SOX(金融商品取引法に基づく内部統制報告制度)の一般的な仕組みを前提とした解説です。評価範囲の決定基準や開示すべき要件などの最新の要件は、「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準・実施基準」および自社の監査法人にご確認ください。 J-SOX対応コストを構成する主な要素 まず押さえておきたいのは、J-SOX対応の費用は「単一の作業の対価」ではなく、複数の活動が積み上がった総コストだという点です。年間を通じて発生する作業を機能ごとに分解すると、おおむね次のような要素に整理できます。 1. 整備状況の評価・文書化に関わるコスト J-SOX対応の基礎となるのが、業務プロセスや全社的な内部統制を文書化し、統制(コントロール)が適切に設計されているかを評価する作業です。代表的な文書として、業務の流れを図示する「業務記述書・フローチャート」、リスクと統制の対応関係を整理する「リスク・コントロール・マトリクス(RCM)」などがあります。 これらの文書は一度作れば終わりではなく、組織変更・システム更改・業務フローの見直しがあるたびに更新が必要です。初年度や大きな見直しの年は文書の新規作成・全面改訂で工数が膨らみ、安定運用期は維持・更新が中心になる、という特性があります。 2. 運用状況の評価(テスト)に関わるコスト 設計された統制が、実際に期中を通じて運用されているかを確かめる「運用評価(運用テスト)」も、毎期発生する中核的な作業です。サンプルを抽出して証憑を確認し、統制が機能していた証拠を残していく地道な作業であり、対象とする統制の数(キーコントロールの数)に比例して工数が増えます。 ここには、評価実施そのものの人件費だけでなく、テスト計画の策定、サンプリング、不備が見つかった場合の追加検証や是正状況の確認まで含まれる点に注意が必要です。 3. 不備の評価・是正・改善に関わるコスト 評価の結果、統制の不備が検出された場合には、その不備が「開示すべき重要な不備」に該当するかどうかの評価、原因分析、是正措置の検討と実行、そして是正後の再評価が発生します。不備が多い、あるいは是正に業務プロセスやシステムの見直しを伴う場合は、当初想定より工数が増える要因になります。 4. プロジェクト管理・全体統括に関わるコスト 評価範囲の決定、年間スケジュールの管理、関係部署との調整、経営者および監査役・内部監査部門・監査法人とのコミュニケーションなど、対応全体を取りまとめる管理工数も無視できません。担当者一人に属人化しているか、複数名でチームを組んでいるかによって、見えにくいこのコストの大きさは変わってきます。 5. 教育・引き継ぎ・体制維持に関わるコスト 担当者の育成、評価実施者への研修、引き継ぎ資料の整備といった、体制を維持するための投資もコストの一部です。後述するように、ここを軽視すると属人化のリスクという形で「将来のコスト」として潜在的な負債となることもありえます。 6. システム・ツールに関わるコスト 評価作業を支える文書管理ツール、証憑の収集・保管の仕組み、近年では評価工数の削減やモニタリングの高度化を目的としたBI(Business Intelligence)ツールなどの導入・運用費用も、費用構成の一要素です。 年間のスケジュールに沿って、これらの要素がどのタイミングで発生するかを把握しておくと、予算の山と谷が見えてきます。評価プロセス全体の流れは別記事で詳しく整理していますので、あわせてご確認ください(J-SOX対応の進め方|年間スケジュールと評価プロセスを5ステップで整理)。 評価範囲・拠点数・プロセス数による変動要因 同じ「J-SOX対応」でも、企業によって費用が大きく異なるのは、対応の「量」を決める変動要因が会社ごとに違うためです。予算を見積もる際は、自社がどの要因をどれだけ抱えているかを棚卸しすることが重要になります。 評価範囲(スコープ)の広さ J-SOXでは、財務報告に重要な影響を及ぼす範囲を対象に評価を行います。連結ベースで一定の重要性を持つ事業拠点や、売上・売掛金・棚卸資産といった重要な勘定科目に関連する業務プロセスが評価の中心となるのが一般的です。 この「どこまでを評価対象とするか」というスコープの判断が、工数を左右する最大の変数です。対象拠点が増えれば評価作業はその分積み上がり、逆にリスクに応じて範囲を適切に絞り込めれば工数は抑えられます。スコープの決定はリスク評価に基づく専門的な判断を伴うため、過大にも過小にもならないよう監査法人と認識を合わせておくことが、結果的にコストの最適化につながります。 ※評価範囲の具体的な決定基準(重要性の判断指標など)は制度の枠組みに基づきますが、運用は会社の状況により異なります。最新の要件は「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準・実施基準」および自社の監査法人にご確認ください。 拠点数・子会社数 グループ会社や事業拠点の数は、コストに直結する分かりやすい要因です。拠点ごとに業務プロセスやシステムが異なれば、文書化も評価も拠点の数だけ必要になります。海外子会社が含まれる場合は、言語・時差・現地の業務慣行への対応が加わり、調整コストが増す傾向があります。 逆に、グループ内で業務やシステムが標準化・共通化されている場合は、共通の文書や評価結果を活用しやすく、拠点数の増加ほどには工数が膨らまないこともあります。 業務プロセス数とキーコントロール数 評価対象となる業務プロセス(販売、購買、在庫、固定資産、決算・財務報告プロセスなど)の数、そしてその中で重点的に評価する「キーコントロール」の数が、運用評価の工数を直接決めます。プロセスが複雑で、手作業による統制が多いほど、評価する統制の数も証憑確認の手間も増えやすくなります。 ITへの依存度(IT全般統制・業務処理統制) 会計・基幹システムの種類や数、システム間の連携、アクセス管理や変更管理といったIT全般統制の状況も変動要因です。利用システムが多い、あるいは個別開発が多い環境では、IT統制の評価工数が増える傾向があります。 組織変更・M&A・システム更改の有無 その期に組織再編、新規取得した子会社、基幹システムの入れ替えなどがあると、文書の改訂や新規範囲の整備が一時的に発生し、コストが上振れします。安定運用期と「変化のある期」では、必要な予算が変わることを織り込んでおくと安心です。 これらの変動要因を一覧化し、自社の現状を当てはめてみることで、概算の規模感をつかむ準備が整います。どこから手をつけるべきか整理したい場合は、着任時・初年度向けのチェックリストも参考になります(J-SOX対応を何から始める?初年度・担当着任時のはじめ方チェックリスト)。 内製コスト(人件費・教育・属人化リスク)の考え方 J-SOX対応を自社の人員で完結させる「内製」は、外部委託費が発生しないため一見コストを抑えられるように見えます。しかし、内製のコストは目に見える支出ではなく、社内リソースの形で発生するため、可視化しにくいという特徴があります。予算を正しく比較するには、内製にかかる「実質的なコスト」を分解して捉えることが大切です。 人件費(機会コストを含む) 内製の中心は、評価業務に従事する社員の人件費です。ここで見落とされがちなのが、専任担当者の給与だけでなく、各業務部門が証憑提出やヒアリング対応に費やす時間、管理部門が調整に使う時間も実質的なコストだという点です。 さらに重要なのが「機会コスト」です。評価業務に追われることで、本来注力すべき決算業務の高度化や経営管理の改善に手が回らなくなれば、その逸失分も広い意味でのコストといえます。とくに繁忙期と評価のピークが重なる時期は、この負荷が顕在化しやすくなります。 マネジメント(教育・育成)コスト 内部統制評価には、制度の理解、リスク評価の考え方、評価手続きやサンプリングの知識など、一定の専門性が求められます。担当者を一人前に育てるには時間がかかり、研修費や、経験者がノウハウを伝える時間もマネジメントコストとして発生します。 属人化リスクという「見えない将来コスト」 内製で最も注意したいのが、属人化のリスクです。J-SOX対応の知識や評価のノウハウが特定の担当者に集中すると、その方の異動・退職によって、評価品質の低下や引き継ぎの混乱といった問題が生じかねません。 属人化は、平時にはコストとして表面化しません。しかし、いざ担当者が抜けたときに、外部支援を急遽手配したり、評価をやり直したりといった形で、将来の追加コストとして跳ね返ってくる可能性があります。文書化の整備や複数名体制の構築は、この将来リスクを抑えるための「保険」としての投資と位置づけられます。 内製が向いているケース
- [J-SOX対応を何から始める?初年度・担当着任時のはじめ方チェックリスト](https://shiodome.co.jp/column/58857/) - 「内部統制の担当に着任したものの、J-SOX対応を何から手を付ければよいのか分からない」——これは、初年度の対応担当者や、前任者から急に引き継いだ方から最も多く寄せられる悩みです。J-SOX(金融商品取引法に基づく内部統制報告制度)は、関連する文書の量が多く、専門用語も独特で、全体像をつかむまでに時間がかかります。さらに、評価には決められたサイクルがあるため、「気づいたときには時間が足りない」という状況にも陥りがちです。 この記事では、着任直後・初年度対応の担当者が、不安を最小限にしながら確実に着手するための手順を、チェックリスト形式で整理します。具体的には、(1)まず把握すべき自社の現状、(2)評価範囲とリスクの棚卸し、(3)全社的な内部統制と業務プロセス統制の整理、(4)前任者・監査法人からの引き継ぎポイント、(5)つまずきやすい論点と初年度の優先順位、(6)自社対応か専門家活用かの見極め——という流れで解説します。読み終えるころには、「今週、自分が最初に何をすべきか」が具体的に見えるはずです。 ※本記事はJ-SOX(内部統制報告制度)の一般的な仕組みと進め方を整理したものです。評価範囲の決定基準や開示の細かな要件は改正や運用見直しが行われることがあります。最新の要件は、「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準・実施基準」および自社の監査法人にご確認ください。 まず把握すべき自社の現状(既存文書・前年度評価結果) J-SOX対応で最初にやるべきことは、新しい作業に着手することではありません。「自社が今、どこまでやっているのか」を正確に把握することです。J-SOXは多くの企業で複数年にわたって運用されており、前任者が積み上げてきた成果物が必ず存在します。それを無視してゼロから作り直すのは、時間の浪費であり、監査法人との認識のズレも生みます。 既存文書の所在と最新版を確認する まず、過去の対応で作成された文書がどこに、どのバージョンで保管されているかを洗い出します。最低限、次の文書群の有無と最終更新日を確認しましょう。 3点セット:業務記述書、フローチャート(業務の流れ図)、リスク・コントロール・マトリクス(RCM)。業務プロセス統制を評価する際の基礎資料です。 全社的な内部統制の評価資料:チェックリストや評価調書、その根拠資料。 評価範囲の決定資料:どの拠点・どの勘定科目・どのプロセスを評価対象にしたかを示す資料。 不備管理の記録:過年度に検出された不備(開示すべき重要な不備を含む)とその是正状況の一覧。 内部統制報告書:実際に提出した報告書のデータファイル。 ここで重要なのは、「最新版がどれか」を確定させることです。フォルダに複数の版が混在していたり、個人のPCにしか最新版がなかったりするケースは珍しくありません。バージョン管理が曖昧なまま作業を進めると、古い記述に基づいて評価してしまう事故につながります。 前年度の評価結果から「弱点」を読み取る 過年度の評価結果は、自社の内部統制の「健康診断結果」です。特に次の点に注目してください。 検出された不備の内容と原因:同じ不備が複数年続いていないか。是正が「対応済み」とされていても、実際に運用が定着しているかは別問題です。 評価範囲の前提条件:前年度に「重要な事業拠点」「重要な勘定科目」をどう判断したか。事業の構成が変わっていれば、範囲も見直す必要があります。 監査法人からの指摘・コメント:監査の過程で受けた指摘事項や改善提案は、今年度の優先課題を示す貴重なヒントです。 チェックリスト:現状把握 3点セット(業務記述書・フローチャート・RCM)の最新版を特定した 全社的な内部統制の評価調書を確認した 前年度の評価範囲決定資料を入手した 過年度の不備一覧と是正状況を確認した 監査法人からの指摘事項リストを確認した 各文書の保管場所とアクセス権限を整理した 年間の作業全体がどう流れるのかをまだつかめていない場合は、評価プロセスを時系列で整理した記事もあわせてご覧ください(J-SOX対応の進め方|年間スケジュールと評価プロセスを5ステップで整理)。 評価範囲とリスクの棚卸し 現状を把握できたら、次は「今年度、どこを評価するのか」を確定させる作業です。J-SOXでは、すべての業務を一律に評価するわけではなく、財務報告に重要な影響を及ぼす範囲に絞り込んで評価を行うのが基本的な考え方です。この絞り込みを「評価範囲の決定」と呼びます。 評価範囲は「重要性」で絞り込む 評価範囲は、財務報告に与える影響の大きさ(重要性)を基準に決めていきます。一般的には、次のような観点で対象を選びます。 重要な事業拠点の選定:連結ベースで売上高などの一定割合を占める拠点を対象にする考え方が用いられます。 重要な勘定科目に関連するプロセス:売上、売掛金、棚卸資産など、財務報告への影響が大きい勘定科目に関わる業務プロセスを選びます。 重要な虚偽記載のリスクが高い項目:見積りや経営者の関与度が高い項目、不正が起きやすい領域など、定量基準だけでは拾えないリスクも加味します。 ※評価範囲の決定に用いる「一定割合」などの具体的な基準値は、制度の運用見直しによって変わることがあります。自社にあてはめる際は、必ず「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準・実施基準」および自社の監査法人にご確認ください。 「前年度のまま」を疑う視点を持つ 着任直後の担当者がやりがちなのが、前年度の評価範囲をそのまま踏襲してしまうことです。しかし、次のような変化があった場合は、範囲の見直しが必要になります。 M&Aや新規事業による拠点・取引の増加 事業撤退や子会社の整理による構成の変化 業務システムの入れ替えや業務プロセスの大幅な変更 組織再編による職務分掌・業務プロセスの変更 これらの変化を見落とすと、「評価すべき範囲を評価していなかった」という重大な漏れにつながります。前年度との差分を意識して棚卸しすることが、初年度担当者にとっての肝です。 チェックリスト:評価範囲とリスク 前年度の評価範囲と今年度の事業構成の差分を確認した 重要な事業拠点の選定根拠を整理した 重要な勘定科目とそれに関連するプロセスを洗い出した 見積り・不正リスクの高い領域を特定した 評価範囲の妥当性について監査法人と認識をすり合わせる予定を立てた 全社的な内部統制と業務プロセス統制の整理 J-SOXの評価対象は、大きく「全社的な内部統制」と「業務プロセスに係る内部統制」に分けられます。この2つの違いと関係を理解することが、評価作業を効率的に進める前提になります。 全社的な内部統制(全社統制)とは 全社的な内部統制は、企業全体に影響を及ぼす統制で、経営者の姿勢、組織体制、方針・規程、リスク評価の仕組み、モニタリング、IT統制の方針などが含まれます。いわば、会社全体の「土台」となる統制です。 全社統制の評価結果は、業務プロセス統制の評価範囲や深さにも影響します。全社統制が有効に機能していれば、業務プロセス統制の評価を一定程度簡素化できる場合があります。逆に、全社統制に弱点があると、より広く・より深い評価が求められることになります。だからこそ、全社統制の整理は早めに着手する価値があります。 業務プロセスに係る内部統制(業務処理統制)とは 業務プロセス統制は、個々の業務の流れの中に組み込まれた統制です。たとえば、受注から売上計上、請求、入金までの一連の流れの中で、「承認なしに出荷されない」「二重計上が防止される」といったコントロールが該当します。これを可視化したものが、前述の3点セット(業務記述書・フローチャート・RCM)です。 IT統制も忘れずに整理する
- [J-SOX対応の進め方|年間スケジュールと評価プロセスを5ステップで整理](https://shiodome.co.jp/column/58853/) - 「J-SOX(内部統制報告制度)への対応を任されたが、何から手をつければよいのか分からない」「全体像が見えないまま、文書化や評価の作業だけが先行してしまっている」——上場企業やこれから上場を目指す企業の経営管理・内部監査・経理の現場では、こうした悩みが繰り返し聞かれます。J-SOX対応は、単発の作業ではなく、計画から評価、報告までが一連の流れとしてつながった「年間サイクル」で動く業務です。この全体像を最初に押さえておかないと、個々のタスクが断片的になり、評価範囲の漏れや手戻り、監査法人との認識ズレといった問題につながりやすくなります。 この記事では、J-SOX対応の進め方を「計画→評価→報告」という大きな流れで捉えたうえで、実務を5つのステップに分解して整理します。評価範囲の決定、3点セットによる文書化、整備状況評価、運用状況評価とサンプリング、不備の評価と内部統制報告書の作成——それぞれのステップで「何を」「いつ」「どこまで」やるのかを、年間スケジュールのイメージとともに解説します。あわせて、監査法人との連携タイミング、社内体制づくりと外部活用をどう判断するかについても触れます。初めて担当する方が全体の地図を持てるよう、できるだけ平易にまとめました。 なお、内部統制報告制度の具体的な要件(評価範囲の判定指標や評価対象の考え方など)は実務指針や運用の見直しによって変わり得ます。本記事は一般的な仕組みの解説を目的としており、最新かつ正確な要件は「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準・実施基準」および自社の監査法人にご確認ください。 J-SOX対応の全体プロセス(計画→評価→報告) J-SOX(内部統制報告制度)は、上場企業の経営者に対して、自社の「財務報告に係る内部統制」が有効に機能しているかどうかを自ら評価し、その結果を内部統制報告書として開示することを求める制度です。さらに、その報告書は監査法人による監査(内部統制監査)の対象となります。つまりJ-SOX対応とは、経営者自身による「自己評価」のプロセスであり、その質と証跡が監査法人のチェックを受ける、という構造になっています。 3つの局面で捉える J-SOX対応の1年は、大きく次の3つの局面に分けて考えると整理しやすくなります。 計画(Plan):評価範囲を決め、評価のスケジュールや体制を組み立てる局面。期初〜上半期前半に重心があります。 評価(Do/Check):文書化を整え、整備状況・運用状況を実際に評価する局面。年間を通じて進みますが、運用評価は期末に近づくほど重みを増します。 報告(Report):評価結果を取りまとめ、不備を評価し、内部統制報告書を作成する局面。期末〜決算・有価証券報告書の提出に向けて集中します。 この流れの中で、後述する5つのステップが進行します。重要なのは、運用状況評価を期末にまとめてやろうとしないことです。運用状況評価は一定期間の運用実績(証跡)を確認するものであり、期末に一括して進めると、作業が決算繁忙期に集中するだけでなく、証跡の欠落や統制の不備に気づくのが遅れ、是正が間に合わないという事態に陥りやすくなります。計画段階で1年の作業配分を設計しておくことが、J-SOX対応の進め方の出発点になります。 評価対象となる内部統制の3つの範囲 評価の対象となる内部統制には、一般に次の3つの種類があります。 全社的な内部統制:企業集団全体に関わる統制環境やリスク評価、モニタリングなど、組織の土台となる統制。 決算・財務報告プロセスに係る内部統制:決算整理や財務諸表の作成、開示に関わるプロセスの統制。全社的な観点を持つものとして重視されます。 業務プロセスに係る内部統制:売上、仕入、在庫、固定資産といった個別の業務プロセスに組み込まれた統制。 このうち全社的な内部統制の評価結果は、業務プロセスの評価範囲や評価の深さの判断にも影響します。全社的な内部統制が良好であれば、業務プロセスの評価を効率化できる場合があり、逆に弱い部分があればより慎重な評価が求められます。全体最適の視点で、どこに評価リソースを割くかを設計することが、効率的な進め方のカギになります。 J-SOX対応をこれから立ち上げる、あるいは担当に着任したばかりという方は、まず着手手順を整理したチェックリストから確認すると迷いにくくなります(J-SOX対応を何から始める?初年度・担当着任時のはじめ方チェックリスト)。 ステップ1:評価範囲(重要な事業拠点・勘定科目)の決定 J-SOX対応の進め方の第一歩は、「どこまでを評価対象とするか」という評価範囲の決定です。すべての事業拠点・すべての勘定科目・すべての業務プロセスを評価対象にするわけではありません。財務報告に対する影響度の大きさを踏まえ、評価範囲を合理的に絞り込んでいきます。この絞り込みの考え方が、その後の作業量と監査法人との議論の前提を決めるため、最初の局面で最も慎重さが求められるところです。 重要な事業拠点の選定 企業集団に複数の拠点(子会社・事業部門など)がある場合、まず財務報告への影響が大きい「重要な事業拠点」を選びます。一般的には、連結ベースの売上高などの一定割合をカバーするように、金額的に重要性の高い拠点から積み上げて選定していく考え方が用いられます。本社・主要子会社が対象になりやすい一方、規模の小さい拠点は対象外とできる場合があります。 ここでの判断指標(どの割合を目安にするか等)は実務指針の改訂や運用の見直しによって変わり得る論点であり、画一的な数値で機械的に決めるべきものではありません。自社の事業構造に即して合理的な根拠を持って範囲を設定し、その考え方を監査法人と早期にすり合わせておくことが重要です。 重要な勘定科目・業務プロセスの特定 重要な事業拠点を選んだら、その中で財務報告に重要な影響を及ぼす勘定科目を特定します。一般に、企業の事業目的に大きく関わる売上・売掛金・棚卸資産といった科目が重視されることが多く、それらに関連する業務プロセス(販売プロセス、購買・在庫プロセスなど)が評価対象として浮かび上がってきます。 加えて、虚偽記載のリスクが相対的に高いと考えられる項目——たとえばリスクが大きい取引や見積りや経営者の予測を伴う重要な勘定科目、非定型・不規則な取引等、不正リスクが懸念される領域——については、金額の大小だけでなくリスクの観点から個別に評価範囲へ含めるかを検討します。 評価範囲は「決めて終わり」ではない 評価範囲は期初に一度決めたら固定、というものではありません。年度の途中で大きな組織再編、M&A、新規事業の立ち上げ、システム刷新などがあれば、範囲の見直しが必要になります。範囲決定の根拠と、その後の変更履歴を文書として残しておくことが、監査対応上も社内の引き継ぎ上も役立ちます。範囲設定の妥当性は監査法人が最初に確認するポイントの一つでもあるため、計画局面のうちに合意形成を済ませておくと、後工程がスムーズになります。 ステップ2:3点セット等による文書化 評価範囲が固まったら、対象となる業務プロセスの内部統制を「見える化」する文書化のステップに移ります。J-SOX実務で広く使われるのが、いわゆる「3点セット」と呼ばれる3種類の文書です。 3点セットとは 業務記述書:対象プロセスの一連の業務の流れを、誰が・いつ・何を・どのように行うかを文章で記述したもの。 フローチャート:業務の流れと情報・帳票の流れを図で表したもの。承認・照合・記録などの統制がどこに組み込まれているかを視覚的に把握できます。 リスク・コントロール・マトリックス(RCM):各プロセスに潜むリスクと、それに対応する統制(コントロール)を一覧化し、リスクと統制の対応関係を整理したもの。 このうち実務上の核となるのがRCMです。RCMでは、「どのようなリスクがあるか」「そのリスクを低減する統制は何か」「その統制がどの財務報告上の要件(実在性、網羅性、評価の妥当性、期間帰属など)をカバーするか」を対応づけます。RCMの精度が、後続の整備状況評価・運用状況評価の質をそのまま左右します。 文書化で陥りやすい落とし穴 文書化の段階でよくあるのが、「現場の実態とずれた文書を作ってしまう」ことです。担当者へのヒアリングが不十分なまま既存資料や前年の文書を踏襲すると、紙の上ではそれらしい統制が描かれているのに、実際の運用と乖離している、という状態になりかねません。これは運用状況評価の段階で露呈し、手戻りや不備の指摘につながります。 また、統制(キーコントロール)を絞り込みきれず、評価対象が膨らみすぎるのも非効率の典型です。リスクを実質的に低減する重要な統制(キーコントロール)に評価を集中させ、すべての作業を網羅的にやろうとしないことが、限られた工数で制度対応を回すうえで大切です。 文書化は一度作れば終わりではなく、業務やシステムの変更に合わせて都度メンテナンスしていく対象です。担当者の異動で文書の背景が分からなくなる「属人化」を避けるためにも、更新ルールを定めて運用することをおすすめします。 ステップ3:整備状況評価 文書化したRCMをもとに、いよいよ評価の局面に入ります。最初に行うのが整備状況評価(デザインの評価)です。これは、「リスクを低減するための統制が適切に設計され、どのように業務に組み込まれているか」を確認する作業です。 整備状況評価で確認すること 整備状況評価では、主に次の点を確かめます。 RCMに記載された統制が、対象とするリスクを十分にカバーする設計になっているか。 その統制が、実際に業務の中に組み込まれ、機能し得る状態にあるか。 統制の証跡(承認の記録、照合の記録、システムのログなど)が残る仕組みになっているか。 確認の方法としては、担当者へのヒアリングや関連資料の閲覧に加え、ウォークスルー(1件の取引を業務の始まりから終わりまで追いかけて、文書どおりに統制が動いているかを実地で確かめる手法)などが用いられます。 「設計はあるが証跡が残らない」を見つける 整備状況評価で見つかることがあるのが、「統制自体は存在するが、それを後から確認できる証跡が残っていない」というケースです。特に初めて文書化に取り組む企業や、新たに評価対象に加えたプロセスでは、こうした状態が見られることがあります。たとえば、上長が内容を確認しているものの確認した記録(押印・署名・システム上の承認操作など)が残らない、という状態です。この場合、運用状況評価の段階でサンプルを抽出しても「統制が運用された証拠」を示せず、不備と判断されかねません。 整備状況評価は、運用状況評価に進む前の「設計のチェックポイント」です。ここで設計上の弱点や証跡不足を洗い出し、必要なら統制やその記録方法を改善しておくことで、後工程での不備指摘を未然に防げます。整備の不備は運用の不備より早期に・低コストで直せるため、この段階を丁寧に行うことが結果的に全体の効率化につながります。 整備状況評価の結果は、業務プロセスの管掌部門(プロセスオーナー)にフィードバックし、改善が必要な点は運用状況評価までに是正できるよう、早めのスケジュールで進めることが望ましいといえます。 ステップ4:運用状況評価とサンプリング 整備状況評価で「統制が適切に設計されている」ことを確かめたら、次は運用状況評価(オペレーションの評価)です。これは、「設計された統制が、評価対象期間を通じて継続的に、想定どおりに実行されていたか」を検証するステップです。J-SOX対応の中でも最も工数がかかり、年間スケジュールの組み方が問われる局面です。 サンプリングの考え方 運用状況評価では、対象期間に発生した取引の中から一定数を抽出(サンプリング)し、各サンプルについて統制が確かに実行されていたか(証跡があるか)を確かめます。サンプル件数は、統制の実行頻度に応じて考えるのが一般的です。日次や取引のたびに行われるような高頻度の統制ほど確認すべき件数が多くなり、月次・四半期・年次といった低頻度の統制では確認件数は少なくなります。具体的なサンプル件数の目安は監査・実務上の慣行や統制の性質によって異なるため、抽出方法と件数の考え方は監査法人と事前にすり合わせておくとよいでしょう。
- [J-SOX(内部統制報告制度)対応とは?仕組み・進め方・実務のポイントを内部統制担当者向けに徹底解説](https://shiodome.co.jp/column/58836/) - 「内部統制報告制度(J-SOX)の担当になったが、何から手をつければよいか分からない」「毎年同じように評価作業を回しているが、本当にこのやり方で正しいのか不安だ」「監査法人から指摘を受けたが、対応の優先順位がつけられない」——上場企業の内部統制担当者の方から、こうしたお悩みをよく伺います。 J-SOX対応は、いったん仕組みができあがると毎年のルーティンになりがちです。しかし、その「ルーティン化」こそが、形骸化・属人化を招き、いざというときに評価の前提が崩れるリスクを抱える原因にもなります。制度の趣旨と全体像を正しく理解したうえで、自社の状況に合った進め方を設計することが、効率的かつ実効性のある内部統制対応の出発点です。 この記事では、内部統制報告制度(J-SOX)の仕組みから、会計監査との違い、評価の対象範囲の考え方、年間スケジュール、整備・運用評価の流れ、不備への対応、そして形骸化を防ぐ運用改善のポイントまで、内部統制担当者が押さえておくべき全体像を網羅的に解説します。「自社のJ-SOX対応をどう設計し、どこを改善すべきか」の見取り図が描けるようになることを目指します。 なお、本記事は制度の一般的な仕組みを実務目線で整理したものです。具体的な数値基準や最新の要件は改正等で変わり得るため、適用にあたっては必ず「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準・実施基準」および自社の監査法人にご確認ください。 J-SOX(金融商品取引法の内部統制報告制度)とは何か 制度の概要と目的 J-SOXとは、金融商品取引法に基づく「内部統制報告制度」の通称です。米国のSOX法(Sarbanes-Oxley法)にならって導入された日本版という意味で、実務の現場では「J-SOX」と呼ばれています。 この制度の核心は、上場企業の経営者が、自社の財務報告に係る内部統制が有効に機能しているかを自ら評価し、その結果を「内部統制報告書」としてまとめて開示することにあります。そして、その経営者による評価結果について、監査法人(公認会計士)が監査を行い、意見を表明します。 なぜこのような制度が必要なのでしょうか。投資家は、企業が開示する財務諸表(決算書)を信頼して投資判断を行います。その財務諸表が正しく作成されるためには、その「作られ方」、つまり日々の業務プロセスや経理処理の仕組み自体が信頼できるものでなければなりません。J-SOXは、財務報告の信頼性を、結果としての数字だけでなく「その仕組み(作成プロセス)に組み込まれた統制が有効に機能しているか」という観点から担保しようとする制度だといえます。 「財務報告に係る内部統制」という範囲 ここで重要なのは、J-SOXが対象とするのが「財務報告に係る内部統制」に限定されている点です。 そもそも「内部統制」という言葉は非常に広い概念で、一般には次の4つの目的を達成するための仕組みを指すとされています。 業務の有効性および効率性 財務報告の信頼性 事業活動に関わる法令等の遵守 資産の保全 このうちJ-SOX(内部統制報告制度)が直接の評価対象とするのは、原則として2つ目の「財務報告の信頼性」に関わる部分です。コンプライアンス全般や業務効率の改善そのものを評価するわけではありません。まず押さえておきたいのは、「J-SOXは会社のあらゆる統制を点検する制度ではなく、財務報告の信頼性という軸で範囲が切られている」という点です。この理解が、後述する「評価対象範囲の絞り込み」の前提になります。 内部統制を構成する基本的な要素 内部統制は、一般に複数の基本的要素から成り立つと整理されています。具体的には、統制環境(組織の気風・土台)、リスクの評価と対応、統制活動(承認・照合・職務分掌などの具体的な手続)、情報と伝達、モニタリング(日常的・独立的な監視)、ITへの対応、といった要素です。 J-SOX対応では、これらの要素が、全社的なレベルと個々の業務プロセスのレベルの双方で機能しているかを評価していくことになります。「承認印を押す」「ダブルチェックする」といった個々の手続だけでなく、それを支える組織の風土や情報伝達の仕組みまでを含めて「内部統制」として捉える、という視点が出発点です。 J-SOXと会計監査(財務諸表監査)の違い・関係 実務で混同されやすいのが、「J-SOX(内部統制監査)」と「会計監査(財務諸表監査)」の関係です。どちらも監査法人が関与し、決算の時期に並行して進むため、現場では一体のものとして感じられがちですが、目的と対象が異なります。 何を対象にするかが違う 財務諸表監査:できあがった財務諸表(数字そのもの)が、適正に表示されているかについて意見を表明するための監査です。いわば「結果」を見ます。 内部統制監査(J-SOX):その財務諸表を作り出す内部統制(仕組み・プロセス)が有効かどうかについて、経営者の評価を前提に意見を表明する監査です。いわば「作られ方」を見ます。 たとえるなら、財務諸表監査が「出てきた料理が注文どおりか」を確かめるものだとすれば、内部統制監査は「その料理を作るための仕込みから盛り付けまでの手順とチェック体制」を確かめるもの、というイメージです。 「経営者評価が先」という関係性 J-SOXのもう一つの特徴は、まず経営者が自ら内部統制を評価し、その評価結果に対して監査人が監査するという二段構えになっている点です。財務諸表監査が監査人による直接の検証であるのに対し、内部統制監査は「経営者の自己評価をチェックする」構造をもっています。 このため、内部統制担当者の実務は、経営者評価のための一連の作業を会社側として遂行することが中心になります。評価範囲の決定、文書化、整備状況・運用状況の評価、不備の集計と是正——これらは原則として会社(経営者)側の責任で行う作業であり、監査法人がやってくれるものではありません。この役割分担を押さえておくことが重要です。「監査法人が評価してくれるはず」という前提で進めると、会社側の準備が後ろ倒しになりかねません。 両者は密接に連携する とはいえ、両者は完全に独立して動くわけではありません。内部統制が有効であれば、財務諸表監査における実証手続の範囲に影響することもあり、監査全体が効率的に進むという関係があります。逆に、内部統制に重要な不備があれば、財務諸表監査の手続もより慎重になります。会社にとっては、内部統制を実効的に整備・運用しておくことが、監査対応全体の負担軽減にもつながる、という視点を持っておくとよいでしょう。 なお、内部統制と並んで語られることの多い「内部監査」との役割分担については、別記事で詳しく整理しています(J-SOXと内部監査の違い・関係|役割分担と体制構築のポイント)。 内部統制の3点セットと評価対象範囲の考え方 3点セットとは J-SOX対応の文書化の中心となるのが、いわゆる「3点セット」と呼ばれる文書です。業務プロセスに係る内部統制を可視化するために作成されるもので、一般的に次の3種類を指します。 業務記述書:対象プロセスの一連の業務の流れを、誰が・いつ・何を・どのように行うかを文章で記述したもの。 フローチャート:業務の流れと情報・帳票の流れを図で表したもの。承認・照合・記録などの統制がどこに組み込まれているかを視覚的に把握できます。 リスク・コントロール・マトリックス(RCM):各プロセスに潜むリスクと、それに対応する統制(コントロール)を一覧化し、リスクと統制の対応関係を整理したもの。 特にRCMは、「どのリスクに対して、どのコントロールが、どのアサーション(財務情報の正確性・網羅性・実在性などの観点)を満たすために存在しているか」を整理する役割を担います。評価作業は、このRCMに記載されたコントロール(キーコントロール)が、設計どおりに整備され、期間を通じて運用されているかを確かめていく流れになります。 評価対象範囲は「重要なところに絞る」 J-SOXでよく誤解されるのが、「会社のすべての業務プロセスを文書化し、評価しなければならない」という思い込みです。実際には、内部統制報告制度はリスク・アプローチに基づいており、財務報告に重要な影響を及ぼす範囲に評価対象を絞り込むことが想定されています。すべてを完璧に評価するのではなく、メリハリをつけることが制度の趣旨に沿った対応です。 評価対象範囲は、一般的に次の3つの層で考えられます。 全社的な内部統制:会社全体に関わる統制(経営方針、組織体制、規程、モニタリングの仕組みなど)。原則として全社・全拠点を対象に評価します。 決算・財務報告プロセス:決算整理や連結・開示にかかわるプロセス。財務報告の信頼性に直結するため、重要性が高い領域として扱われます。 業務プロセスに係る内部統制:販売、購買、棚卸資産、固定資産といった、勘定科目に結びつく日常業務の統制。ここで、金額的・質的な重要性に基づいて評価対象とする事業拠点や勘定科目を選定します。 範囲決定は監査法人との協議が前提 評価対象範囲の決め方には、一定の判断基準(事業拠点の重要性や勘定科目の重要性など)が用いられますが、その具体的な閾値や考え方は、自社のリスク評価と監査法人との協議を踏まえて決定するのが実務です。本記事では断定的な数値基準は示しません。最新の要件や自社に適した範囲の考え方は、「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準・実施基準」および監査法人にご確認ください。範囲設定は評価工数を大きく左右する論点なので、毎年「前年踏襲」で済ませず、事業環境の変化を踏まえて見直す姿勢が重要です。 J-SOX対応の年間スケジュールと進め方の全体像 J-SOX対応は、決算期末に向けて一年を通じて計画的に進める業務です。締め直前に慌てて着手すると、大量の証憑チェックが期末の繁忙期に集中して終わらない、不備の是正が間に合わないといった問題が起きます。ここでは年間の大きな流れを整理します。詳細なステップ分解は別記事(J-SOX対応の進め方|年間スケジュールと評価プロセスを5ステップで整理)で扱います。 期初〜上期:計画と整備状況評価 年度の初めには、その期の評価計画を立てます。評価対象範囲の見直し、前年からの業務やシステムの変更点の洗い出し、評価スケジュールと担当の割り当てを行います。 続いて、整備状況評価に着手します。3点セットを最新の業務実態に合わせて更新し、コントロールが「設計上、リスクを適切に低減できる形になっているか」を確かめます。組織変更や新規事業、システム入替えがあった場合は、この段階で文書を改訂しておくことが後工程の精度を左右します。さらに踏み込めば、こうした変更を事後に把握して文書へ反映するのではなく、内部統制担当部門が関連部門の定例会議や稟議のプロセスに早い段階から関与し、変更の発生を即時にキャッチできる体制を築いておくのが理想です。 下期〜期末:運用状況評価 整備状況に問題がないと確認できたコントロールについて、運用状況評価を行います。これは「設計どおりに実際に運用されているか」を、証憑のサンプルなどを使って確かめる作業です。運用評価は一定期間の運用実績を必要とするため、計画的にサンプル抽出のタイミングを設計しておく必要があります。 期末後:評価結果の取りまとめと報告
- [フィリピン進出を成功させる日本企業のための実務ガイド― 外資規制・投資優遇・会計税務・労務まで、RSMのプロフェッショナルが解説 ―](https://shiodome.co.jp/column/59456/) - はじめに:フィリピン進出で確認すべき事業機会と実務上の留意点 フィリピンは、若い人口構成、英語人材の厚み、旺盛な国内消費を背景に、ASEANの中でも成長期待の高い市場の一つです。製造業に加え、テクノロジー、エネルギー、BPO、インフラ、物流などの分野でも事業機会が広がっており、日本企業にとっては、現地市場の成長を取り込む拠点としてだけでなく、海外向けサービスやバックオフィス機能を担う拠点としても検討しやすい国といえます。特に、半導体、電気自動車、再生可能エネルギー、IT・金融・ヘルスケア分野のアウトソーシングでは、日本企業が有する技術力や管理ノウハウを活かせる余地があります。 一方で、フィリピンで事業を行うには、成長市場としての魅力だけで判断するのではなく、会社設立、外資規制、税務登録、財務報告、労務管理、投資優遇措置の適用要件などを総合的に確認する必要があります。法人設立の可否や最低資本金、税制優遇の対象、源泉税・VATの取扱い、労働法上の義務は、事業形態や取引内容によって大きく変わります。 本稿では、RSM Philippinesから提供された情報をもとに、フィリピンへの新規進出を検討している日本企業、および既にフィリピンで事業を展開している日本企業に向けて、ビジネス・経済・会計・税務・金融・労務の主要論点を整理します。 1. フィリピン経済・ビジネス・産業の概要 フィリピン経済の大きな特徴は、国内消費の強さ、都市化の進展、そして若く英語力のある労働力にあります。人口規模が大きく、平均年齢も比較的若いため、消費財やサービス関連産業に加え、住宅不動産、金融、ヘルスケア、教育、デジタル関連サービスなど、多くの分野で内需拡大が期待されています。日本企業にとっては、製造拠点としてだけでなく、現地市場を対象とした販売・サービス拠点としても検討しやすい国といえます。 近年は、政府によるインフラ整備や人的資本への投資も進められており、輸送・物流や再生可能エネルギーの分野では、長期的な事業機会が見込まれます。また、日本とフィリピンは、製造業、不動産、エンターテインメント、電子機器、自動車部品、機械関連などで長年の関係を有しており、日系企業が参入しやすい土台があります。 フィリピンのもう一つの強みは、BPO産業の発展です。英語対応力と比較的競争力のある労働コストを背景に、IT、金融、ヘルスケア、カスタマーサポート、データ処理などの業務で海外企業からのアウトソーシング需要を取り込んできました。日本企業にとっても、バックオフィス業務、顧客対応、データ分析、ITサポートなどを現地拠点で担う選択肢があります。 もっとも、フィリピン進出では、成長分野に該当するかどうかだけでなく、自社がどの機能をフィリピンに置くのかを明確にすることが重要です。製造、販売、BPO、地域統括、駐在員事務所では、必要な許認可、資本金、税務、雇用管理が異なります。市場の成長性だけで判断するのではなく、拠点機能、収益モデル、契約形態、人員計画を一体として検討することが求められます。 2. 日本企業が遵守すべき会社・会計・租税・金融・労働法 フィリピンで事業を行う日本企業は、証券取引委員会(SEC)、内国歳入庁(BIR)、中央銀行(BSP)、労働雇用省(DOLE)など、複数の当局に関係する制度を遵守する必要があります。進出形態としては、現地法人、支店、駐在員事務所、地域統括会社などが考えられますが、いずれを選択するかによって、登録要件、資本金、税務上の取扱い、実施できる活動の範囲が変わります。 会社法制では、改正会社法に基づき、一定の要件を満たす者が法人を設立することができます。法人設立にはSECへの登録が必要であり、定款には会社の基本事項を記載します。社長、財務役、秘書役などの役員体制を整えることも必要であり、事業内容によっては、通常の法人設立手続きに加えて、追加の許認可や資本金要件が求められる場合があります。 税務面では、法人所得税、VAT、源泉税、印紙税などを確認する必要があります。標準的な法人所得税率は25%ですが、一定規模以下の中小零細企業には20%の軽減税率が適用される場合があります。課税年度終了後には年度所得税申告を行う必要があり、会計期間の選択や申告期限は、日本本社の決算スケジュールにも影響します。 財務報告については、フィリピン財務報告基準(PFRS)および関連規制に従って財務諸表を作成し、公認会計士による監査を受けたうえでSECへ提出する必要があります。PFRSはIFRSに準拠していますが、日本基準と完全に同じではありません。そのため、日本本社の連結決算や管理会計と整合させるには、設立初期から月次決算、証憑管理、監査対応の体制を整えておくことが重要です。 労務面では、フィリピン労働法を中心に、雇用契約、最低賃金、労働時間、福利厚生、社会保障制度を遵守する必要があります。人件費の安さだけを前提に採用計画を立てるのではなく、最低賃金、社会保険、住宅・医療関連の負担、現地の雇用慣行まで含めて、実際の人件費と管理コストを見積もることが望まれます。 3. 日本企業に適用される投資優遇措置 フィリピンでは、外国投資を促進するため、税制優遇措置、投資保証、投資家保護などの制度が整備されています。実務上は、CREATE法に基づく優遇措置、戦略的投資優先計画(SIPP)、投資委員会(BOI)やフィリピン経済特区庁(PEZA)への登録制度を中心に、自社の事業が優遇対象となるかを確認することになります。 主な税制上の恩典としては、登録から一定期間にわたって法人所得税の支払い義務が免除される「所得税免除期間(ITH)」があります。免除期間が終了した後は、追加控除制度(EDR)または特別法人所得税率(SCIT)のいずれかを選択して適用を継続することができます。ただし、EDRとSCITを同時に受けることはできません。適用期間や選択肢は、事業内容・所在地・登録機関(BOI・PEZA・FIRBなど)によって異なるため、自社の事業モデルに即した確認が不可欠です。 SIPPでは、雇用創出や製造、農林水産、戦略的サービス、ヘルスケア、インフラ、環境・気候変動対応、グリーン関連、食料安全保障、研究開発、先進デジタル技術など、幅広い活動が投資対象として整理されています。日本企業が半導体、再生可能エネルギー、IT、BPO、製造高度化などの分野で進出する場合には、優遇措置の適用可能性を早い段階で確認する価値があります。 また、日本・フィリピン経済連携協定(JPEPA)により、物品・サービス貿易、投資、技能労働者の移動、知的財産保護、ビジネス環境整備などの分野で両国間の協力が進められています。さらに、日比租税条約により、配当、利子、ロイヤリティについて源泉税率の軽減を受けられる場合があります。ただし、条約の適用には要件確認や必要書類の整備が必要となるため、契約締結前に税務コストを試算しておくことが望まれます。 4. 日本企業に影響する会社・会計・租税・金融・労働法の最新改正 近年の重要な改正として、納税簡易化法(EOPT)があります。同法は、税務行政を近代化し、納税者がより簡便に申告・納付できる環境を整えることを目的としています。申告・納付場所の柔軟化、納税者分類の見直し、VATインボイス要件の簡素化、年間登録料の廃止などは、日常的な税務コンプライアンスや経理実務に影響する可能性があります。 特にVATについては、サービス取引の課税基準やインボイス要件の変更が、請求書発行、仕入税額控除、システム設定、月次決算に関係します。フィリピン現地法人が顧客にサービスを提供する場合や、日本本社・海外関連会社との間で管理サービス、ITサービス、ライセンス取引を行う場合には、契約書と請求実務を最新の制度に合わせる必要があります。 労働法制では、最低賃金の改定に注意が必要です。マニラ首都圏では産業区分に応じた日額最低賃金が定められており、事業内容によって適用される取扱いが異なる場合があります。人員拡大を予定している企業は、採用単価だけでなく、将来の賃金改定、社会保険、福利厚生、残業管理を含めた人件費計画を作成することが重要です。 5. 日本企業が注意すべき会社・会計・租税・金融・労働に関する法令違反の潜在的リスク フィリピン現地法人を運営するうえでは、制度を理解するだけでなく、期限管理、帳簿管理、証憑管理、雇用管理を日常業務として定着させることが重要です。税務申告や納税が遅れた場合、加算税や延滞税が課される可能性があります。悪質な場合には刑事責任が問題となることもあり、未納税額についてはBIRによる徴収手続が行われるリスクもあります。 このようなリスクを抑えるためには、正確な会計帳簿の作成、申告期限の管理、納税額の確認、取引記録の整備が欠かせません。取引量が増える企業では、会計システムや承認フローを整備し、税務申告と本社報告の基礎となるデータを早期に安定させる必要があります。 財務報告面では、PFRSと日本基準の違いにも注意が必要です。収益認識、測定基準、表示、連結、注記などの取扱いが本社側の想定と異なる場合、決算時に調整が必要となります。設立初年度から監査人や会計専門家と確認し、現地基準と本社基準の差異を把握しておくことが望まれます。 労務面では、最低賃金、労働時間、職場環境、福利厚生、社会保障関連の要件を遵守する必要があります。従業員数が増えるほど、雇用契約、就業規則、給与計算、社会保険手続、勤怠管理の不備がリスクになりやすくなります。現地任せにせず、本社側でも最低限の労務コンプライアンスを把握し、定期的な確認体制を持つことが重要です。 6. フィリピン進出手続き フィリピンで外国企業が事業を行う場合、まず進出形態を選択し、SECで事業体を登録します。その後、BIRで納税者番号を取得して税務登録を行い、事業を行う市または自治体で必要な事業許可を取得します。業種によっては、これらに加えて特別な許認可や登録が必要となる場合があります。 外国投資法(FIA)では、外国資本による国内市場企業への投資に関して最低資本金や外資規制が定められています。一般に、払込資本金が20万米ドル未満の零細・小規模の国内市場企業は、フィリピン国民向けとされ、外国資本の参入が制限される場合があります。一方で、輸出市場企業や特定の事業形態では、より低い資本金要件が適用される場合もあります。 小売業については、小売業自由化法により、外資企業が小売業に参入するための最低払込資本金や店舗ごとの投資額が定められています。消費市場を対象とする日本企業にとっては、販売代理店を活用するのか、自社で小売拠点を設けるのか、ECや卸売を中心とするのかによって、必要な資本金や許認可が異なります。 外国投資ネガティブリストには、憲法・法令上の理由から外資参入が禁止または制限される事業と、安全保障・公衆衛生・中小企業保護の観点から制限される事業の2類型があります。メディア、資源開発、公共事業、教育、広告などが代表的な制限分野として挙げられますが、制限の程度は分野によって異なり、一定比率までの外資参入が認められるケースもあります。進出前には、自社事業がリスト上の規制対象に該当するかを専門家とともに確認し、資本構成・事業目的・許認可・投資優遇申請を一体として検討することが求められます。 おわりに:RSMとともに、フィリピン進出の不確実性を確実性へ フィリピンは、若い労働力、英語対応力、国内消費の成長、BPO産業の発展、インフラ投資、再生可能エネルギー分野の拡大など、日本企業にとって多くの事業機会を有する市場です。製造業だけでなく、サービス、IT、物流、エネルギー、小売、地域統括機能の面でも、進出の選択肢は広がっています。 一方で、フィリピン進出を成功させるためには、会社設立、外資規制、投資優遇、税務、会計監査、労務、許認可を個別に確認するだけでは不十分です。これらの論点は、資本構成、事業開始時期、契約条件、価格設定、人員計画、親会社への資金還流に相互に影響します。 本稿の作成にあたり、RSM PhilippinesのSenior PartnerであるMildred R.Ramos氏をはじめとする専門家チームより、現地の実務に基づく貴重な知見をご提供いただきました。RSM Philippinesは、外国投資家向けの税務・会計・コンサルティングに豊富な実績を持つ、フィリピンにおけるRSMのメンバーファームです。 当社は、RSM Philippinesをはじめとする現地専門家と連携し、日本企業のフィリピン進出・現地事業運営をサポートしています。現地法人設立の検討、投資優遇措置の確認、税務コストの試算、会計・監査体制の整備、労務管理、親子会社間取引の整理など、フィリピンビジネスに関わる各局面で支援が可能です。フィリピンでの事業展開をご検討の際は、まずはお気軽にご相談ください。
- [タイ進出を成功させる日本企業のための実務ガイド― 外国人事業法・BOI奨励・会計税務・労務まで、RSMのプロフェッショナルが解説 ―](https://shiodome.co.jp/column/59462/) - はじめに:タイ進出で確認すべき事業機会と実務上の留意点 タイは、ASEANにおける主要な製造・輸出拠点の一つであり、日本企業にとって長年にわたり重要な投資先として位置付けられてきました。自動車、電気・電子、機械、金属・素材、食品、サービスなど、幅広い分野で日系企業の集積があり、現地でのサプライチェーン、工業団地、専門人材、金融・専門サービスの基盤も一定程度整っています。 一方で、タイでの事業展開では、成長市場としての魅力だけでなく、外国人事業法、BOIによる投資奨励、JTEPAの活用、法人所得税、VAT、源泉税、会計監査、労務管理、外国送金規制など、複数の制度を踏まえた事前検討が必要です。特に、日本企業がタイ法人を設立する場合、資本構成や事業内容によっては、外資規制や許認可の影響を受ける可能性があります。 本稿では、RSM Thailandから提供された情報をもとに、タイへの新規進出を検討している日本企業、および既にタイで事業を展開している日本企業に向けて、ビジネス・経済・会計・税務・金融・労務の主要論点を整理します。 1. タイ経済・ビジネス・産業の概況 タイ経済の特徴は、安定した産業基盤、輸出競争力、そして国内消費市場の存在にあります。製造業を中心に外国直接投資を受け入れてきた歴史があります。日本企業も、タイにおける主要な投資主体の一つとして、長年にわたり現地経済と深く結びついてきました。 近年のタイ経済は、観光需要の回復、サービス部門の改善、政府支出、民間消費、公共・民間投資の継続により、緩やかな回復基調にあります。日本企業にとっては、タイを単なる生産拠点として見るだけでなく、消費市場、サービス市場、周辺国展開の地域拠点として捉える視点も重要です。 特に、観光、物流、デジタルサービス、保守・修理、コンサルティング、外食・小売などの分野では、現地需要を取り込む余地があります。一方で、自動車産業では、世界的なEV化や環境規制の影響を受け、従来型の自動車部品・内燃機関関連ビジネスだけでは中長期的な成長を見通しにくい局面も生じています。タイ政府もEV・HEVの普及や関連産業の育成を進めており、既にタイに拠点を持つ日本企業にとっては、既存製品の需要動向、現地調達、設備投資、研究開発機能の見直しが課題となります。 新規進出企業においても、現在の市場規模だけで判断するのではなく、産業政策、サプライチェーン再編、環境対応の方向性を踏まえ、タイ拠点にどのような機能を持たせるかを検討することが重要です。 2. 日本企業が遵守しなければならないタイの会社・会計・税務・金融・労働法 タイで事業を行う日本企業は、会社法制、会計税務、金融規制、労働法制を総合的に確認する必要があります。一般的な進出形態としては、タイ民商法に基づく非公開株式会社の設立が考えられます。非公開株式会社の設立には、原則として複数の発起人・株主が必要となり、設立後も株主構成、取締役、定款、会計期間などを適切に管理しなければなりません。 会計面では、会計期間ごとに財務諸表を作成し、公認監査人による監査を受ける必要があります。会計期間は原則12か月であり、設立初年度や決算期変更を行う場合には、現地当局の取扱いを確認することが重要です。日本本社への連結パッケージ提出や月次レポーティングを行う場合には、現地法定決算と本社管理会計の双方に対応できる体制を早期に整えておくことが望まれます。 税務面では、タイで事業を行う法人には原則として法人所得税が課されます。また、物品販売・サービス提供、輸入取引、国外事業者から提供されるサービスの国内利用などについては、VATや源泉税の検討が必要となる場合があります。税率だけで判断するのではなく、契約条件、請求書発行、申告・納税時期、資金繰りへの影響まで含めて確認することが重要です。 労務面では、タイ労働者保護法を中心に、労働時間、休日、休暇、賃金、時間外労働、解雇補償、福利厚生などに関するルールを遵守する必要があります。日本本社の就業規則や雇用慣行をそのまま適用するのではなく、現地法令に即した雇用契約、就業規則、賃金制度、勤怠管理体制を整備することが求められます。 3. 日本企業に適用されるタイの投資優遇措置 タイでは、外国投資を促進するため、BOIによる投資奨励、タイ工業団地公社に関する制度、日本・タイ経済連携協定(JTEPA)など、複数の投資優遇制度が設けられています。これらの制度は、進出初期の税負担、設備投資、土地利用、外国人従業員の就労、輸入コストに大きな影響を与える可能性があります。 BOIの投資奨励を受けることができれば、法人所得税の免除・減免、機械・原材料の輸入関税の免除、外国人専門家の就労許可、土地所有に関する特例など、税制・非税制の両面でメリットを享受できる場合があります。ただし、BOIの適用可否は、対象業種に該当するかどうかだけで決まるものではありません。最低投資額、負債資本比率、使用する機械の状態、所在地、技術移転、雇用計画、環境対応など、プロジェクトごとに要件を確認する必要があります。 また、日本企業の場合、JTEPAの活用可能性も検討対象となります。JTEPAの適用を受けることで、サービス業・販売業を中心とした一定の事業について、通常の外国人事業許可証取得手続きではなく、より簡便な外国人事業証明書の取得によって事業を行える場合があります。ただし、各事業には出資比率や資本金、取締役構成、技術移転義務などの個別要件が設けられているため、制度名だけで判断せず、自社の事業実態が要件を満たすかを専門家とともに確認することが不可欠です。 さらに、JTEPAを利用した関税の免除・軽減を検討する場合には、原産地証明書の取得、部材調達、製造工程、輸入時の書類整備など、取引ごとの管理体制も求められます。 4. 日本企業に関連するタイの会社・会計・税務・金融・労働法の改正 タイでは、会社法、会計基準、税務、労働法の分野で制度改正が行われています。会社法制では、企業結合や事業運営の柔軟性を高める観点から、タイ民商法の改正が行われています。企業再編、合併、資本政策を検討する日本企業にとっては、従来より柔軟な選択肢が生まれる一方、登記手続や株主・債権者対応の確認が必要です。 会計・税務面では、タイ財務報告基準およびタイ会計基準の改訂が継続しています。会計上の見積り、会計方針の開示、繰延税金、TFRSの改訂などは、現地法人の財務諸表だけでなく、日本本社の連結決算にも影響を与える可能性があります。特に、重要な会計処理や税効果会計に関する論点は、監査対応の段階で初めて検討するのではなく、月次決算や四半期決算の段階から確認しておくことが望まれます。 労働法制では、最低賃金や出産関連休暇など、従業員保護を強化する方向での改正が行われています。最低賃金は地域によって異なるため、複数地域に工場や拠点を置く企業では、人件費の見通しを地域別に把握する必要があります。また、出産関連休暇や有給部分の取扱いなどは、就業規則、給与計算、社会保険手続にも影響するため、制度改正に合わせた社内規程の見直しが必要です。 5. 日本企業が注意すべきタイの会社・会計・税務・金融・労働法の主要論点 タイ現地法人を運営するうえでは、制度を理解するだけでなく、日常取引や本社とのやり取りの中で、どのように運用するかが重要になります。特に、契約、請求、送金、雇用管理は、会計税務や労務上の問題が発生しやすい領域です。 税務面では、VATと源泉税の取扱いに注意が必要です。契約金額にVATを含めるのか、別途請求するのかが曖昧なまま契約を締結すると、後に利益率や資金繰りに影響する可能性があります。また、日本本社や海外関連会社との役務提供、ソフトウェア利用、ライセンス、保守・管理サービスなどについては、源泉税やVATの課税関係を契約締結前に確認しておく必要があります。 金融規制についても、税務処理と切り離して考えることはできません。タイへの外貨送金や国外送金に関しては、送金目的、証憑、外貨口座の管理、タイバーツへの両替など、一定のルールがあります。配当、ロイヤリティ、サービスフィー、親子ローン返済などを予定している場合には、契約書、請求書、税務申告、銀行提出書類の整合性を確保することが重要です。 労務面では、従業員数の増加に応じて、就業規則や社内規程の整備が必要になります。正規従業員が一定数以上となる場合、タイ語による就業規則の作成・掲示が求められます。また、雇用条件を変更する場合には従業員の同意が問題となることもあるため、設立時には小規模であっても、将来の人員拡大を見据えた制度設計を行うことが望まれます。 6. タイへの進出手続き タイで非公開株式会社を設立する場合、一定の条件下では外国人が100%出資することも可能です。しかし、外国人事業法(FBA)上、外国人が行うことを禁止または制限される事業が定められているため、資本構成だけでなく、実際に行う事業内容を確認する必要があります。 FBAでは、タイ国籍を有しない自然人やタイ国外で登記された法人だけでなく、外資比率や支配関係によってはタイで登記された会社も「外国人」として扱われる場合があります。そのため、出資構成の設計段階から外資規制の観点を組み込むことが重要です。 FBAが規制する事業は、外国人による営業が禁止されるもの、条件付きで許可されるもの、許可証を取得すれば営むことができるものの3段階に分かれています。サービス業、販売業、保守・修理、コンサルティング、物流関連などは、日本企業が想定する事業内容と規制区分が必ずしも一致しない場合があるため、進出前に専門家とともに確認することが不可欠です。 BOIの投資奨励を受ける場合には、外国人事業許可証が不要となるケースもありますが、その場合でも外国人事業証明書の取得など、別途手続きが必要となることがあります。したがって、タイ進出の初期段階では、法人設立、資本構成、許認可、BOI・JTEPAの活用可能性を並行して検討し、後から事業内容や出資構成を修正する事態を避けることが重要です。 おわりに:RSMとともに、タイ進出の不確実性を確実性へ タイは、日本企業にとって引き続き大きな事業機会を有する市場です。製造業の集積、消費市場の成長、観光・サービス需要の回復、投資優遇制度の存在など、進出を後押しする要素は数多くあります。 一方で、タイ進出を成功させるためには、会社設立、外資規制、投資優遇、税務、会計、労務、外国送金をそれぞれ別個に確認するだけでは不十分です。これらの論点は、事業開始時期、資本構成、契約条件、価格設定、人員計画、親会社への資金還流に相互に影響します。 本稿の作成にあたり、RSM ThailandのLegal DirectorであるPardorn Suchiva氏をはじめとする専門家チームより、現地の実務に基づく貴重な知見をご提供いただきました。RSM Thailandは、外国投資家向けの税務・会計・コンサルティングに豊富な実績を持つ、タイにおけるRSMのメンバーファームです。 当社は、RSM Thailandをはじめとする現地専門家と連携し、日本企業のタイ進出・現地事業運営をサポートしています。現地法人設立の検討、投資優遇措置の確認、税務コストの試算、会計・監査体制の整備、労務管理、親子会社間取引の整理など、タイビジネスに関わる各局面で支援が可能です。タイでの事業展開をご検討の際は、まずはお気軽にご相談ください。
- [競馬騎手における確定申告の実務と税務上の留意点|進上金の適正な処理および経費計上の指針](https://shiodome.co.jp/column/59607/) - 日本中央競馬会(JRA)や地方競馬全国協会(NAR)から免許を交付され、週末のレースや平日の調教に臨む騎手(ジョッキー)は、競馬という競技の主役として多くのファンを魅了する存在です。JRAに所属する騎手はわずか150名ほどしかおらず、その狭き門を勝ち抜いた者だけがサラブレッドと共に大舞台に挑むことができます。人馬一体となって勝利を目指す姿は多くの感動を呼びますが、その華やかな舞台の裏側で、一人の職業人として直面しなければならないのが、税務管理および毎年の確定申告という複雑な実務となります。騎手の収入や経費の構造は、一般的な会社員はもちろんのこと、他のプロスポーツ選手と比較しても極めて特殊な性質を持ち合わせています。そのため、税務上の正しい知識を持たずに確定申告を行ってしまうと、適正な経費の計上漏れが生じたり、税務調査において予期せぬ指摘を受けたりするリスクがあります。本記事では、騎手特有の収入構造である進上金の取り扱いから、経費のボーダーライン、そして将来を見据えた税務管理までを簡単に解説いたします。 1. 騎手の確定申告における基本構造 まず前提として深く理解しておくべき点は、騎手がどのような立場で収入を得ているのかという基本的な構造です。騎手は競馬会から免許を付与され、あるいは特定の厩舎に所属して活動を行っていますが、競馬会や厩舎に雇用されている正社員や職員ではありません。税務上の取り扱いにおいては、騎手一人ひとりが独立した「個人事業主」として判定されるのが一般的です。したがって、騎手としてレースに騎乗し獲得した各種の収入は「給与所得」ではなく「事業所得」として区分されます。 一般的な給与所得者であれば、所属する企業が毎月の給与から所得税などを天引きし、年末調整という手続きを通じて一年間の税額を計算および精算してくれるため、原則として自身で確定申告を行う必要はありません。しかし、個人事業主である騎手の場合は事情が異なります。一年間(1月1日から12月31日まで)に得たすべての事業収入から、事業を行う上で直接必要となった経費を自ら差し引き、その利益(所得)に対して課される所得税を自身で計算し、期限内に国へ申告・納付する義務を負っています。 さらに、騎手の収入は毎月固定で支払われるものではなく、レースへの騎乗回数やその結果(着順)に直接的に連動するという特徴があります。勝てば多額の報酬を得られる一方で、成績が振るわなければ収入が大きく落ち込むという厳しい実力主義の世界に身を置いています。このような特有の収入構造を持つ騎手にとって、自らの事業の状況を正確に把握し、適正な税額を算出するための確定申告は、単なる義務を超えた重要な経営管理の一環です。 2. 進上金・騎乗手当・賞金関連収入をどう整理するか 騎手の確定申告において最も重要かつ中心的な作業となるのが、レース結果などに応じて発生する多岐にわたる収入源を正確に把握し、漏れなく事業所得として整理することです。その中で最大の収入の柱となるケースが多いのが「進上金(しんじょうきん)」と呼ばれる賞金に関連する収入です。進上金とは、騎乗した競走馬がレースで上位に入着し、馬主が本賞金を獲得した際に、その賞金の中から一定の割合が騎手に対して支払われる成功報酬を指します。中央競馬の平地競走であれば一般的に本賞金の5%、障害競走であれば7%などと規定されており、G1などの重賞レースで優勝すれば数千万円から億円単位の賞金が動くため、それに伴う進上金も極めて高額となり、騎手の年間の所得水準を大きく左右する決定的な要素となります。現に国内最高額のジャパンカップや有馬記念の1着賞金は5億円に達しており、勝利すれば騎手には2,500万円もの進上金が入る計算になります。近年は天皇賞や宝塚記念、大阪杯といった主要GIレースでも2025年から1着賞金3億円への引き上げが実施されるなど、この世界で動く金額の規模は年々拡大を続けています。 また、レース結果にかかわらず、レースに騎乗すること自体に対して支払われる「騎乗手当」や、騎乗に伴う「騎手奨励手当」なども、安定した収入基盤を形成する重要な要素となります。さらに、週末のレースだけでなく、平日の早朝に行われる調教に騎乗した際に支払われる調教騎乗手当などもあります。これらはすべて、騎手としての事業活動から生じた収入であるため、事業所得の総収入金額に含めて計算する必要があります。 これらの収入に関して税務上特に注意すべき点は、競馬会等から報酬が支払われる際、あらかじめ一定の所得税が「源泉徴収」として差し引かれているのが一般的です。この源泉徴収された税金は、あくまで仮払いとして国に納められているものに過ぎません。確定申告を行う際には、手取り額ではなく源泉徴収される前の「総額」を収入として計上した上で一年間の最終的な正しい税額を算出し、すでに差し引かれている源泉徴収税額との精算手続きを行うプロセスが求められます。したがって、支払調書や支払通知書などの明細を一年分確実に保管し、総収入と源泉徴収税額を正確に集計することが、適正な申告手続きの根幹を成します。 3. 厩舎・馬主・騎乗依頼仲介者との関係をどう捉えるか 他のプロスポーツ競技と異なり、騎手という職業において特筆すべき点は、「騎乗依頼をどのように受けるか」という仕事の受注プロセスと、それに伴う関係者との深い繋がりです。騎手はデビュー当初は特定の調教師の厩舎に所属し、そこでの調教や提供される騎乗機会を中心に経験を積むケースが多くありますが、実績を重ねるにつれて特定の厩舎に縛られないフリーランスの騎手として独立し、活動の幅を広げていく傾向があります。フリーとなった場合、どのレースでどの馬に騎乗するかは、馬主や各厩舎の調教師からの個別の依頼によって決定されるため、関係者との良好な信頼関係の構築が自身の収入機会に直結します。 この複雑な騎乗依頼の調整において、現代の競馬界で極めて重要な役割を担っているのが「騎乗依頼仲介者(通称:エージェント)」の存在です。レースや調教で多忙を極める騎手に代わって、調教師や馬主との間で騎乗馬の調整や交渉を行うエージェントに対して、騎手は自身の獲得した収入の中から一定の報酬を支払う契約を結ぶことが一般的となっています。このエージェントに対する支払いは、騎手としての事業活動を円滑に進め、新たな収入機会を獲得するために直接的かつ不可欠な支出であると解釈できるため、確定申告において必要経費として計上できる可能性が高い項目です。 また、馬主や調教師、生産牧場の関係者などとの関係構築や情報交換を目的とした会食費用、あるいは関係者への贈答品の購入費用なども、将来の騎乗依頼に繋がる事業の遂行上必要不可欠な範囲内であれば「接待交際費」として経費と認められる場合があります。しかしながら、これらの費用が単なる個人的な付き合いやプライベートな飲食と混同されないよう、いつ、誰と、どのような目的で支出したのかを明確に記録し、客観的かつ合理的な説明ができる状態を保っておくことが強く求められる領域でもあります。 4. 必要経費として認められやすい支出と、判断が分かれやすい支出 事業所得の確定申告において、獲得した収入から差し引くことができる「必要経費」を正しく選別することは、税務リスクを抑えつつ適正な納税額を導き出すための最も重要なステップの一つです。騎手の場合、競馬という競技の特殊性や体重管理の厳しさから、一般的な事業主とは異なる多種多様な支出が発生し、その経費性の判断が分かれやすい項目が多くあります。以下の表に、騎手において必要経費として認められやすい支出と、税務上の判断が分かれやすいボーダーライン上の支出の一般的な傾向を整理いたしました。 表に示した通り、鞍や鞭、など、競馬の競技にのみ使用することが明らかな物品に関しては、事業との直接的な関連性を主張しやすいため、経費としての根拠を示しやすい項目です。騎乗依頼仲介者(エージェント)への報酬も、騎乗機会の獲得に直接必要な支出として必要経費に該当しやすい項目といえます。その一方で、体重を極限まで落とすための費用や、日々の身体のケアに関する支出は、プライベートな生活費である「家事関連費」との線引きが極めて困難になります。税務調査等においてこれらの経費性を否認されないためには、領収書の保存を徹底することはもちろんのこと、その支出が騎手としての業務にどのように直結し、不可欠なものであったのかを、客観的な事実に基づいて論理的に説明できる状態を平時から整えておくことが有効です。 5. 開催日ごとの収入と支出をどう記録するか 騎手の事業活動は、週末に開催されるレースを中心に一週間のサイクルが回っており、収入と支出もその開催日ごとに細かく、そして頻繁に発生するという特徴を持っています。そのため、確定申告の時期が近づいた年末や翌年の初頭になってから、一年分をまとめて帳簿に記録しようとすると、記憶が曖昧になり、経費の計上漏れや私的な支出の混入といった深刻なミスを引き起こす原因となりかねません。適正な確定申告を行うための最も有効な対策は、開催単位での日々の帳簿管理を習慣化することに尽きます。 具体的には、毎週末のレース開催が終了した段階で発行される騎乗明細や支払通知書の内容を確認し、その週に獲得した進上金や騎乗手当、調教騎乗手当、そして差し引かれた源泉徴収税額を定期的に帳簿に入力していく作業が基本です。それと同時に、その週の遠征で発生した交通費や宿泊費の領収書、購入した騎乗道具のレシートなどを整理し、どの開催に向けた支出であったのかを関連付けて記録しておくことが望ましいです。 また、個人事業主にとって税制上の非常に大きな利点となる「青色申告制度」の適用を受けることも強く推奨される選択肢です。一定の要件を満たす正規の簿記の原則に従って日々の取引を帳簿に記録し、期限内に申告を行うことで、現行で最大65万円を所得から差し引くことができる青色申告特別控除を受けられるなど、多くの節税面でのメリットを享受できます。日々の細かな記帳作業は、多忙な騎手にとって負担に感じるかもしれませんが、プライベート用の口座とは完全に切り離した事業用の銀行口座とクレジットカードを作成し、近年普及しているクラウド会計ソフトと連携させることで、入出金履歴の取り込みを自動化し、事務処理の手間と心理的なハードルを大幅に軽減できます。なお、令和8年度税制改正により、令和9年分から青色申告特別控除の要件が見直され、e-Taxによる申告や帳簿の電磁的記録保存等の一定のデジタル対応を満たす場合には、控除額が最大75万円へ拡充される方向です。一方で、紙の書類に依存した管理を続ける場合には控除面で不利になる可能性もあるため、開催日ごとの騎乗明細、源泉徴収税額、遠征費などをクラウド会計や電子保存で一元管理する体制を早期に整えることが重要です。 6. 騎乗停止・落馬・怪我・騎乗数の波を踏まえた税金対策 競馬は時として時速60キロを超えるスピードで馬群が密集して走る、常に危険と隣り合わせの過酷な競技であり、騎手は他のプロアスリート以上に多様かつ深刻なリスクを抱えて事業を営んでいます。レース中の斜行などのルール違反によって騎乗停止処分を受けた場合、その期間はレースに騎乗できなくなるため、騎乗手当や進上金といった収入の源泉が完全に途絶えます。実際に近年は、調整ルームにおける通信機器の不適切な使用を理由とする騎乗停止処分が相次いでおり、30日間、事案によっては半年を超える長期の騎乗停止に至った例もあります。処分期間中は進上金も騎乗手当も一切発生しないため、コンプライアンスの徹底はそのまま収入基盤の防衛につながります。さらに深刻な事態となるのが、レース中の落馬事故や調教中の不慮の事故による重傷です。骨折などで数ヶ月間から半年以上にわたる長期離脱を余儀なくされた場合、その間の収入が激減するという極めて厳しい現実に直面します。 日本の所得税は、所得額が高くなるほど適用される税率も段階的に高くなる累進課税制度を採用しています。そのため、前年にG1レースを制覇するなどして多額の進上金を獲得し、過去最高の所得を記録していた場合、万が一その翌年に怪我で収入が途絶えたとしても、前年の高い所得に基づいた高額な所得税や住民税の支払いが容赦なく求められます。このように収入の波が激しく、かつ予測不可能な離脱リスクを伴う事業において、手元に十分な納税資金を確保しておかないことは、自身の生活基盤を根本から脅かす致命的な事態を招きかねません。収入が高かった年に浮かれて資金を散財するのではなく、あらかじめ予測される税額分を別口座に確保しておくといった、最悪の事態を想定した堅実な資金管理とリスクへの備えが不可欠です。 また、進上金や騎乗手当だけでなく、スポンサー契約、メディア出演、競馬関連イベントへの参加などの収入が増える場合には、消費税やインボイス制度への対応も重要な確認事項となります。インボイス発行事業者として登録した場合、これまで免税事業者であった騎手であっても消費税の申告・納税義務が発生します。免税事業者から課税事業者となった小規模事業者向けの「2割特例」は、令和8年(2026年)9月30日を含む課税期間までが対象とされ、個人事業主の場合は2026年分の申告が最後の適用となります。その後、令和8年度税制改正により、個人事業者の令和9年分・令和10年分について、売上税額の3割を納税額とする「3割特例」が設けられています。騎乗数や重賞での成績によって売上規模が大きく変動する職業であるからこそ、インボイス登録の要否、簡易課税制度との比較、届出期限の管理を年度ごとに確認することが望ましいです。 7. 競馬に集中するための申告体制と長期的な備え 騎手にとって最大の使命であり存在意義は、自身が騎乗する競走馬の能力を極限まで引き出し、無事にレースを終えて最高の着順を勝ち取ること、そして競馬ファンに最高のパフォーマンスを届けることです。そのためには、日々の徹底した体重管理、各馬の癖や特徴の把握、複雑なレース展開のシミュレーションなど、心身のすべてを競技に集中できる環境を整えることが何よりも優先されます。個人事業主である以上、確定申告や税金対策は絶対に避けては通れない義務ではありますが、複雑な税務判断や領収書の整理に膨大な時間を奪われ、コンディショニングや休息に支障をきたしてしまっては、アスリートとして本末転倒であると言わざるを得ません。 そのため、第一線で長きにわたって活躍し続ける多くのトップジョッキーは、税務に関する日々の記帳業務や確定申告書の作成を、税理士などの専門家に委託する体制を構築しています。競馬界特有の商習慣や特殊な経費の判断基準に精通した税理士と密接に連携することで、適法かつ有利な税務申告を確実に行えるだけでなく、万が一税務署からの問い合わせや税務調査が入った際にも、代理人として専門的な見地からの対応を任せることができます。これにより、騎手自身は安心して本業である競馬に全力を注ぐことができる環境を手に入れることができます。 さらに、どれほど優れた技術を持つ騎手であっても、現役生活にはいつか必ず終わりが訪れます。引退後に調教師としての厳しい試験を突破して自身の厩舎を開業するにせよ、調教助手として裏方から馬を支えるにせよ、あるいは競馬評論家としてメディアの道に進むにせよ、現役時代からしっかりとした財務基盤を築いておくことは非常に重要です。たとえば、将来の退職金代わりとして利用できる「小規模企業共済」などの制度を活用すれば、掛金を所得控除として差し引きながら引退後の資金を着実に積み立てることが可能になります。毎年の確定申告を、単なる納税のための煩わしい事務作業として捉えるのではなく、自身の事業活動を数字で客観的に振り返り、引退後のセカンドキャリアを見据えた長期的な人生設計の一環として位置づけることが、騎手としての成功と引退後の豊かな人生を両立させるための確かな道筋になるでしょう。
- [JETRO(ジェトロ)の目的・業務内容と対日投資促進のための活動とは](https://shiodome.co.jp/column/7581/) - 1. JETRO(ジェトロ)の目的と役割 JETROは、日本の貿易振興と経済協力の促進を目的として設立された独立行政法人です。2020年代後半に入り、世界情勢の不確実性が増す中で、その役割は「日本の優れた産品の輸出支援」と「海外からの革新的な技術・資本の呼び込み(対日投資促進)」の両輪を支える拠点として再定義されていると考えられます。 主なミッションとしては、以下の5点です。 対日直接投資の促進 外国企業の日本誘致を通じた国内経済の活性化。 農林水産物・食品の輸出促進 日本企業の海外販路開拓支援。 日本企業の海外展開支援 スタートアップの海外進出や、中堅・中小企業のグローバル化。 調査研究による企業活動への貢献 最新の海外ビジネス情報を日本企業に広く提供し、日本企業におけるビジネスの環境改善。 地方の創生支援 日本の地方と海外を直接つなぐ具体的成果に繋がる支援。 2. 主な業務内容の体系 JETROの活動範囲は広く、国内外に展開するネットワークを活用した多面的な支援が行われているとされています。 調査・情報提供業務 世界各国の経済情勢、法制度、市場動向の調査を行い、レポート等を通じて広く公開しています。2026年現在では、AIやDX(デジタルトランスフォーメーション)、GX(グリーントランスフォーメーション)に関連する各国の規制動向や市場分析に注力している傾向が見受けられます。 海外展示会・商談会の支援 日本企業の海外販路開拓のため、主要な国際見本市における「ジャパン・パビリオン」の設置や、オンラインでのビジネスマッチングを支援しています。 外国企業の日本進出支援(対日投資促進) 日本での拠点設立を検討する外国企業に対し、コンサルティングから実務的なオフィス提供までを一貫して行っています。 3. 対日投資促進のための具体的活動 対日投資促進は、現在の日本経済における重要課題の一つと位置づけられています。JETROでは、外国企業が日本市場に参入する際のハードルを下げるため、以下のような具体的な支援策を展開していると考えられます。 IBSC(対日投資ビジネスサポートセンター)の運営 東京や大阪などの主要都市に設置されたIBSCでは、日本進出を検討する外国企業に対し、無料のテンポラリオフィス(一時的な拠点)の提供や、専門のアドバイザーによるコンサルティングを行っています。 登記・ビザ・税務の相談 会社設立に付随する法務や在留資格、税制に関する情報の提供。 ワンストップでの情報提供 日本のビジネス環境やコスト、各地域の産業集積に関するデータの共有。 J-Bridge(ジェイ・ブリッジ)による協業支援 日本企業と外国企業(主にスタートアップやテック企業)のオープンイノベーションを推進するプラットフォームです。デジタル、グリーン、ライフサイエンスなどの重点分野において、資本提携や業務提携を加速させるためのマッチング支援が行われているとされています。 地域エコシステムへの外資誘致プログラム 顕著な動向として、東京一極集中を避け、地方の特色ある産業(半導体、バイオ、再生可能エネルギー等)に外国企業を呼び込む「地域エコシステム誘致」が強化されています。地方自治体と連携し、地域特有のインセンティブやビジネス環境を海外へ発信する活動が活発化している傾向にあります。 4. 注目動向 近年の法改正や政府方針を受け、JETROの活動には以下のような変化が生じていると推察されます。 重要物資のサプライチェーン強化 半導体や蓄電池といった戦略的分野において、海外の有力企業を日本国内に誘致するための支援が、安全保障の観点からも重視されるようになっています。 行政手続きのデジタル化と簡素化 外国企業が日本で事業を開始する際の諸手続きをオンラインで完結させる「ワンストップ・デジタル化」の推進において、JETROが関係省庁との橋渡し役を担うケースが増えていると考えられます。 スタートアップ支援の拡充 創業前後のシード期にある海外スタートアップの日本での事業化を支援するプログラム(JEAP等)が展開されており、起業家に対する在留資格の取得支援等も含めた包括的なアプローチが見られます。 5. まとめ JETROは単なる情報の窓口に留まらず、外国企業が日本で持続可能な事業を展開するための「伴走型支援」を行う機関へと深化を続けていると考えられます。 特に対日投資促進の分野では、登記やビザといった初期の設立手続きに関する基礎情報の提供から、進出後のパートナー探し、さらには地域社会への定着支援まで、その活動範囲は多岐にわたります。日本経済において、海外の活力を取り入れるための不可欠なインフラとしての役割を担っていると言えるでしょう。
- [外国人留学生等のアルバイト雇用と週28時間の時間制限の留意点](https://shiodome.co.jp/column/7920/) - 日本に在留する「留学」の在留資格を持つ外国人がアルバイトを行う場合、学業に支障をきたさない範囲での活動が求められます。そのため、出入国管理及び難民認定法(入管法)に基づき、就労時間には厳格な制限が設けられています。 近年の法規制や審査基準を踏まえ、留学生のアルバイト雇用における「週28時間ルール」の解釈と、雇用主が遵守すべき留意点について詳しく解説します。 1. 資格外活動許可の確認 留学生がアルバイトを行うためには、あらかじめ管轄の出入国在留管理局より「資格外活動許可」を受けている必要があります。 雇用主は、採用時に必ず在留カードの裏面を確認し、「資格外活動許可」の欄に「許可:原則週28時間以内・風俗営業等の従事を除く」といった記載があることを確認しなければなりません。この許可がない状態で就労させた場合、不法就労助長罪に問われる可能性があるため、慎重な確認が求められます。 2. 「週28時間」の正しい計算方法 実務上、最も注意が必要なのは時間のカウント方法です。入管法における「1週間」の定義は、単なるカレンダー上の月曜日から日曜日までを指すものではないと考えられています。 遡及(そきゅう)計算の原則 入管の審査や行政指導においては、「どの7日間を切り取っても、合計労働時間が28時間以内であること」が基準とされるのが一般的です。例えば、水曜日から翌週の火曜日までの合計が28時間を超えている場合、違反とみなされる恐れがあります。 残業時間の合算 28時間の制限には、法定時間外労働(残業)も含まれます。実労働時間が1分でも超過すれば形式上は違反となるため、余裕を持ったシフト管理が推奨されます。 複数箇所での就労(ダブルワーク) 留学生が複数の職場でアルバイトを掛け持ちしている場合、すべての職場の労働時間を合算して28時間以内でなければなりません。自社での勤務が短時間であっても、他社との合計が上限を超えていれば、雇用主も責任を問われるリスクがある点に留意が必要です。 3. 長期休業期間中の特例 大学や専門学校が学則で定める「長期休業期間(夏休み、冬休み、春休み等)」に限っては、就労時間の上限が緩和されます。 制限緩和の内容 1日8時間以内 留意点 学則等で「学校が定めた期間」であることが条件です。学生個人が授業のない日や、個人的な旅行期間などは対象外となります。 雇用主は、対象の学生が通う学校の「学年暦(アカデミーカレンダー)」の写しなどを提出してもらい、期間を正確に把握しておくことが望ましいと考えられます。 4. 従事できない業務(風俗営業等の禁止) 資格外活動許可を得ていても、以下の業務に従事させることは法律で禁止されています。 キャバレー、スナックなどの接待を伴う飲食業 パチンコ店、ゲームセンター、マージャン店 性風俗関連特殊営業に該当する業務 これらの業種では、清掃や皿洗い、ビラ配りといった直接的な接客以外の業務であっても、同一施設内での就労は一律に禁止されていると解釈されるのが通例です。 5. 違反時の罰則とリスク 2025年6月の法改正を経て、不法就労に対する罰則はより厳格化されています。 雇用主側のリスク 不法就労助長罪 上限時間を超えて就労させた場合、雇用主には「不法就労助長罪」が適用される可能性があります。 罰則 5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金、またはその併科(2026年現在の規定) 社会的影響 企業のコンプライアンス違反として公表されたり、将来的な外国人雇用の申請において不利な影響を受けたりする可能性があります。 留学生側のリスク 在留資格の取り消し・不許可 制限を超えて働いた留学生は、在留資格の更新や変更(就職時の「技術・人文知識・国際業務」への変更など)が不許可となるほか、最悪の場合、退去強制(強制送還)の対象となることも想定されます。 6. まとめ マイナンバーと所得情報の連携が進んだことで、入管当局による就労実態の把握は以前よりも容易になっていると考えられます。 雇用主としては、本人からの申告を鵜呑みにせず、在留カードの確認、ダブルワークの有無のヒアリング、そして正確なシフト記録の保存を徹底することが、企業と外国人スタッフ双方を守るための重要な実務となります。
- [在留資格「宗教」に関する日本における資格要件と留意点とは](https://shiodome.co.jp/column/7775/) - 日本で宗教活動に従事しようとする外国人が検討すべき在留資格が「宗教」です。この資格は、外国の宗教団体から派遣される宣教師や司教、僧侶といった宗教家を対象としています。 本記事では、在留資格「宗教」の取得に必要な要件や、申請時に留意すべき点について詳しく解説します。 1. 在留資格「宗教」の概要 在留資格「宗教」は、日本の出入国管理及び難民認定法(入管法)において、「外国の宗教団体により本邦に派遣された宗教家の行う布教その他の宗教上の活動」と定義されています。 対象となる活動には、宣教のほか、儀式への参列、宗教教育、宗教上の管理運営などが含まれます。一方で、単なる信者としての活動や、宗教団体に雇用されて事務作業等のみを行う場合は、この資格の対象外とされるのが一般的です。 2. 主な資格要件 在留資格「宗教」の許可を受けるためには、主に以下の要件を満たす必要があると考えられています。 外国の宗教団体からの派遣であること この在留資格の大きな特徴は、「外国の宗教団体から派遣されていること」が前提となっている点です。日本国内の宗教団体が独自に雇用する形態ではなく、海外の本部や関連組織からの派遣状(派遣証明書)が必要となります。 申請人が「宗教家」としての実態を有すること 申請人は、宣教師、牧師、司祭、僧侶、修道士などのように、当該宗教において特定の地位や職責を有している必要があります。これらを証明するために、宗教家としての経歴や資格を証明する書類の提出が求められます。 活動内容が宗教活動であること 日本での活動目的が、布教や儀式執行といった宗教本来の目的であることが必要です。学術調査や単なるボランティア活動、あるいは営利目的の活動が主であると判断された場合、許可を得ることは困難になると考えられます。 滞在中の生計維持能力 「宗教」の在留資格では、原則として日本国内の組織から報酬を得ることは禁止されていませんが、派遣元の外国団体、または受け入れ側の国内団体から、日本で安定して生活できるだけの十分な資金(報酬や滞在費)が支給されることが求められます。 3. 申請における留意点 申請を円滑に進めるためには、以下の点に特に留意する必要があります。 組織の実態と継続性の証明 受け入れ側となる日本の宗教団体(支部や教会など)が、実態のある組織であることを証明しなければなりません。 宗教法人の場合 登記事項証明書や規則などの提出。 法人格を持たない任意団体の場合 団体の規約、活動実績、決算報告書、施設利用の証明(賃貸借契約書等)など、詳細な説明資料が必要になる傾向があります。 報酬と「資格外活動」について 宗教家が生活費を補うために、例えば語学教師などの副業を行うことを希望するケースが見受けられます。しかし、在留資格「宗教」の活動範囲を超えて報酬を得る活動を行う場合は、事前に「資格外活動許可」を受ける必要があります。 ただし、本来の宗教活動が疎かになると判断された場合や、活動内容が不適切とみなされた場合には、許可されない可能性があるため注意が必要です。 派遣の必要性の説明 なぜその人物を日本に派遣する必要があるのか、日本での活動計画が具体的かつ合理的であるかを説明する資料(理由書など)が、審査において重要な役割を果たすとされています。 4. 在留期間と更新 在留資格「宗教」で付与される期間は、「5年」「3年」「1年」「3月」のいずれかです。 初回申請では1年が付与されるケースが多いですが、活動の実績や団体の安定性が認められるにつれて、より長い期間が許可される可能性が高まります。更新時には、これまでの宗教活動の実績や、納税などの公的義務の履行状況も確認されることになります。 5. まとめ 在留資格「宗教」の申請では、個人の資質だけでなく、派遣元・受け入れ先となる団体の信頼性や、日本での具体的な活動実態が厳格に審査されます。 特に新興の宗教団体や、過去に派遣実績が少ない組織からの申請については、疎明資料の準備が合否を分ける重要なポイントとなります。最新の審査傾向を踏まえ、正確な書類作成と論理的な説明を心がけることが、円滑な許可取得へ近づくと言えるでしょう。
- [力士の確定申告実務と税務上の留意点|懸賞金および後援会からのご祝儀の取り扱いと経費計上の指針](https://shiodome.co.jp/column/59475/) - 大相撲は、日本古来の神事や武術を起源とし、長い歴史と伝統を誇る国技として多くの人々に親しまれています。その厳しい勝負の世界に身を置く力士たちは、日々の過酷な稽古を通じて心技体を鍛え上げ、本場所の土俵で観客を魅了する存在です。近年は、2025年10月に34年ぶりとなるロンドン公演がロイヤル・アルバート・ホールで開催され、2026年6月にはパリのアコー・アリーナにおいて約30年ぶりのパリ公演が実現するなど、大相撲の国際的な広がりも一段と進んでいます。外国出身力士が横綱・大関をはじめ上位の番付に名を連ねる状況も定着して久しく、土俵上では多様な国籍の力士たちが競い合う光景が当たり前のものとなりました。しかし、土俵上の華々しい活躍の裏側で、一人の職業人として直面しなければならないのが、税金に関する管理と毎年の確定申告という複雑な実務です。力士の収入や経費の構造は、一般的な会社員はもちろんのこと、他のプロスポーツ選手と比較しても極めて特殊な性質を持ち合わせています。さらに、相撲界の国際化は、海外公演に伴う所得の取り扱いや外国出身力士の居住者判定、母国に家族を残す力士の扶養控除の適用など、従来以上に複雑な論点をもたらしています。そのため、税務上の正しい知識を持たずに確定申告を行ってしまうと、適正な経費の計上漏れが生じたり、税務調査において予期せぬ指摘を受けたりするリスクがあります。本記事では、税理士法人の専門的な視点から、力士特有の収入構造から後援会による支援の取り扱い、経費のボーダーライン、そして将来を見据えた税務管理までを詳細に解説いたします。 1. 力士の確定申告における基本構造 日本相撲協会に所属する力士の税務上の位置づけは、他のプロスポーツ選手とは異なる独特な構造を持っています。多くのプロスポーツ選手が完全な個人事業主として活動しているのに対し、力士は日本相撲協会という組織に所属し、そこから定期的な給与を受け取るという「給与所得者」としての側面を併せ持っています。具体的には、十両以上の関取になると、相撲協会から毎月決まった額の月給が支給されます。この月給は給与所得に該当するため、相撲協会側で源泉徴収が行われ、年末調整の対象にもなり得ます。なお、幕下以下の力士養成員には月給はありませんが、本場所ごとに支給される「養成員場所手当」や「幕下以下奨励金」も、給与所得に該当し、関取の月給と同様、雇用に類する継続的な関係に基づく所得として扱われます。 しかしながら、力士の収入は相撲協会からの月給だけに留まりません。本場所での活躍に応じて獲得する懸賞金や、後援会からのご祝儀など、多岐にわたる収入源があります。これらの月給以外の収入に関しては、給与所得ではなく「事業所得」「一時所得」または規模等により「雑所得」として扱われるのが一般的であり、力士自身が個人事業主としての立場で確定申告を行う必要があります。つまり、力士の確定申告は、給与所得と事業所得・一時所得等という複数の異なる性質の所得を総合的に計算し、正確に申告しなければならないという複雑な構造の上に成り立っています。 2. 月給・場所手当・懸賞金・賞金をどう整理するか 力士の収入構造において最も特徴的なのは、番付によって収入の形態が劇的に変化するという点です。十両以上の関取には毎月の給与や各種手当が支給されますが、幕下以下の力士養成員には月給が存在せず、本場所ごとに支給される場所手当などが主な収入源となります。このように、番付という厳格な階級制度が収入体系の根本を決定づけていることを理解することが、税務管理の出発点となります。 その上で、確定申告において慎重な整理が求められるのが、本場所の土俵上で獲得する懸賞金や各種賞金の扱いです。懸賞金は、指定された取組に勝利した力士に対して企業等から提供されるものであり、一般的には相撲協会からの給与ではなく、力士個人の事業所得等に該当します。懸賞金が土俵上で手渡される際には、あらかじめ相撲協会によって事務費や源泉所得税などが控除された後の金額が渡される仕組みとなっていることが多いため、確定申告の際には手取り額ではなく、控除前の総額を収入として計上し、すでに引かれている税金等を正確に精算する処理が求められます。 また、幕内最高優勝を果たした際の優勝賞金や、殊勲賞、敢闘賞、技能賞といった三賞の賞金については、実務上、「表彰金及び名誉賞」として一時所得に区分されます。これらの賞金や懸賞金は、開催場所や取組の成績によって大きく変動するため、年間を通じてどの場所でいくらの収入があったのかを明細書等に基づいて正確に帳簿に記録していくことが、適正な確定申告を行うための不可欠な作業となります。 3. 後援会からのご祝儀・差し入れ・支援金をどう考えるか プロ野球やサッカーなど他のプロスポーツと比較して、大相撲という競技において際立っているのが、後援会やタニマチと呼ばれる支援者との密接な関係性です。力士が昇進した際や本場所で勝ち越した際などには、後援会の関係者から多額のご祝儀や激励金、あるいは高価な品物が贈られることが少なくありません。これらの支援を税務上どのように捉えるかは、力士の確定申告において最も判断が難しく、かつ重要なポイントです。 一般的に、個人から個人への金銭の贈与は「贈与税」の対象となります。力士が後援会等から受ける祝儀のうち、法人から受けるものは一時所得、個人から受けるものは贈与税の対象と区分されます。また、後援会という組織から受ける金品全般については、一時所得として整理します。 したがって、法人であるスポンサー企業からご祝儀を受け取った場合は、個人からの贈与ではないため贈与税の対象にはなりませんが、一時所得として整理されます。 さらに、現金ではなく、高級食材の差し入れや反物などの物品提供を受けた場合も、それらが一定の経済的価値を持つ以上、収入として認識すべきかどうかの慎重な判断が必要です。このように、私的な支援と事業収入の境界線が非常に曖昧になりやすいのが相撲界の特徴であるため、支援の実態や名目を正確に把握し、税務当局に対して合理的な説明ができる状態を保っておくことが有効です。 4. 必要経費として認められやすい支出と、判断が分かれやすい支出 力士が事業所得の確定申告を行うにあたり、懸賞金やご祝儀などの収入から差し引くことができる「必要経費」を正しく選別することは、適正な税額を算出するための重要なプロセスです。力士の場合、その巨大な身体そのものが資本であり、相撲という伝統文化を体現するための特殊な支出が多く発生します。以下の表に、力士における必要経費として認められやすい支出と、税務上の判断が分かれやすいボーダーライン上の支出の傾向を整理いたしました。 表に示した通り、化粧まわしや着物など、相撲界のしきたりや規定に直接結びつく支出に関しては、一般の事業主とは異なり、経費としての正当性を主張しやすい側面があります。一方で、力士にとって身体を大きくすることも重要な仕事の一部ですが、日常の飲食代や多量の食費は、生活費との区別がつかない「家事関連費」に該当するケースが多いため、経費計上には慎重な判断が求められます。 経費性を否認されないためには、領収書の保存はもちろんのこと、その支出が相撲という事業にどのように直結しているのかを客観的に説明できる証拠を残しておくことが不可欠です。 5. 部屋生活と個人負担が交錯する場面をどう整理するか 力士の税務において特筆すべきもう一つの要素が、相撲部屋という特殊な共同生活の場における費用の切り分けです。一般のプロスポーツ選手は自身の自宅を拠点として活動しますが、力士は原則として所属する相撲部屋で親方や他の力士たちと寝食を共にします。部屋からは、ちゃんこと呼ばれる食事や居住スペースが提供されるため、基本的な生活基盤は相撲協会や部屋からの支援によって成り立っています。 この共同生活という前提がある中で、力士個人が負担した費用をどこまで事業の経費として認められるかを整理することが重要になります。たとえば、地方場所へ移動する際、部屋全体での移動費や宿舎の費用は部屋が負担するのが一般的ですが、関取が自身の付け人を伴って個別に行動する際の交通費や、付け人に対して個人的に渡す小遣い、食事代などを関取本人が負担した場合、これらを事業の必要経費として計上できるかどうかが論点となります。 付け人は関取の身の回りの世話や稽古のサポートを行う重要な役割を担っており、関取が本場所で万全の状態で相撲を取るためには不可欠な存在です。したがって、付け人に対する慰労や食事の提供にかかった費用は、事業を円滑に遂行するための福利厚生的な支出、あるいは交際費に準ずるものとして経費性が認められる場合があります。しかし、それが単なる個人的な奢りや私的な遊興費とみなされないよう、いつ、誰と、どのような目的で支出したのかをこれまで以上に丁寧に記録しておく必要があります。相撲部屋の共同生活で賄われている部分と、関取として個人的に持ち出している部分の境界線を日頃から意識し、明確に切り分けておくことが、正確な帳簿作成の鍵となります。 6. 番付変動・休場・引退後を見据えた税金対策と資金管理 相撲の世界は完全な実力主義であり、15日間の本場所の成績によって翌場所の番付が決まります。十両以上の関取と幕下以下の力士養成員とでは、相撲協会から支給される月給の有無という点で待遇に天と地ほどの差があります。負け越しが続いて関取の地位から陥落してしまえば、それまで得ていた固定の給与収入が突然ゼロになるという極めて厳しい現実が待ち受けています。また、取組中の大怪我によって休場を余儀なくされた場合も、番付の降下とそれに伴う収入の激減は避けられません。 このように、力士の収入は番付の変動や怪我のリスクによって極端な波を描く場合があります。日本の所得税は累進課税制度を採用しているため、ある年に大活躍して多くの懸賞金や賞金を獲得し所得が急増すると、適用される税率も跳ね上がり、翌年に納付すべき所得税や住民税の負担が非常に重くなります。 関取に昇進して収入が増えたからといって、後援会への返礼や見栄のために資金を使い果たしてしまうと、怪我で陥落した翌年に高額な税金の請求が来た際に、支払いが滞るという深刻な事態に陥りかねません。そのため、懸賞金や給与が振り込まれた段階で、あらかじめ翌年の税金を見越した金額を別口座によけておくなど、将来の番付変動というリスクを常に念頭に置いた堅実な資金管理体制を構築することが、力士としての生活を守る最大の防衛策です。 また、懸賞金、後援会からの支援、出演料など、給与所得以外の収入を事業所得として継続的に管理する場合には、青色申告制度の活用も検討対象となります。正規の簿記に基づく帳簿作成や期限内申告などの要件を満たすことで、現行では最大65万円の青色申告特別控除を受けられる場合があります。なお、令和8年度税制改正により、令和9年分からは青色申告特別控除の要件が見直され、e-Taxによる申告や帳簿の電磁的記録保存等の一定のデジタル対応を満たす場合、控除額が最大75万円へ拡充されます。相撲部屋や後援会との関係の中で収入・支出の流れが複雑になりやすい力士ほど、紙の領収書だけに頼らず、日頃から取引記録を電子的に保存・管理する体制を整えておくことが重要になります。 さらに、知名度の上昇に伴い、後援会関連の収入、CM・イベント出演料、物品提供、グッズやSNSを通じた収入などが一定規模に達する場合には、消費税やインボイス制度への対応も無視できません。インボイス発行事業者として登録した場合、免税事業者であったとしても消費税の申告・納税義務が発生します。免税事業者から課税事業者となった小規模事業者向けの「2割特例」は、令和8年(2026年)9月30日を含む課税期間までが対象とされ、個人事業主の場合は2026年分の申告が最後の適用となります。また、令和8年度税制改正では、個人事業者の令和9年分・令和10年分について、売上税額の3割を納税額とする「3割特例」が設けられました。番付や露出の変動により収入が急増する局面では、インボイス登録の要否や簡易課税制度の適用との比較検討も含め、早めに税理士へ相談しておくことが望ましいでしょう。加えて、近年は外国出身の力士が増加しており、モンゴルをはじめ、ウクライナやジョージアなど、さまざまな国の出身力士が土俵を沸かせています。こうした外国出身の力士の税務には、日本人力士にはない論点がいくつも潜んでいます。 たとえば、来日からの年数によっては「非永住者」という特有の区分に該当し、国外の所得の扱いが通常の居住者とは異なってきます。また、母国側でも居住者として扱われて日本と母国の双方の居住者となる場面や、母国に残した家族に関する控除の要件など、いずれも判断を誤りやすい専門的な論点です。 こうした国際的な税務は、個々の事情によって結論が変わりやすい領域です。外国出身の力士やその関係者においては、自己判断で処理する前に、早めに専門家へ相談することが何より重要といえます。 7. 競技に集中するための申告体制と長期的な備え 力士にとって最も重要な使命は、土俵の上で持てる力のすべてを出し切り、ファンに感動を与える相撲を取ることです。毎日の厳しい稽古、身体のケア、そして本場所での極度の緊張感の中で戦い続けるためには、心身ともに相撲に集中できる環境を整えることが不可欠です。しかし、関取となって収入が増加し、後援会との付き合いも広がるにつれて、確定申告に向けた領収書の整理や複雑な帳簿作成といった事務作業の負担は飛躍的に増大していきます。 これらに貴重な時間と精神力を奪われてしまっては、力士としての本分を果たすことが難しくなってしまいます。また、海外公演の増加や外国出身力士の増加により、国際的な税務論点への対応も今後さらに重要性を増していくと考えられます。そのため、トップクラスの関取の多くは、所属する相撲部屋の親方やおかみさんと相談しながら、税務の専門家である税理士に記帳代行や確定申告書の作成を委託する体制を整えています。相撲界特有の商習慣や特殊な経費の判断基準に精通した税理士と連携することで、税務上のリスクを最小限に抑えつつ、青色申告制度などを活用した適正な税務申告を行うことができます。 また、力士としての現役生活は決して長くはありません。引退後に親方として相撲協会に残るにせよ、飲食店経営など全く新たな道へ進むにせよ、現役時代からしっかりとした納税意識を持ち、堅実な資産形成を行っておくことは、セカンドキャリアへのスムーズな移行を支える重要な基盤となります。毎年の確定申告を単なる義務としてではなく、力士としての自身の活動を数字で客観的に見つめ直し、将来の人生設計を考えるための大切な機会として位置づけることが、長く厳しい相撲道を歩み切った先にある豊かな人生へと繋がっていくものです。
- [古物商許可制度の基礎知識:営業形態・対象品目・申請手続の全体像](https://shiodome.co.jp/column/27114/) - 皆さまの中には、ご自身で使っていた衣類や電化製品などのいわゆる中古品をオークションやそのような売買を仲介するアプリを利用し売った経験をお持ちの方がいるかと思います。2023年のリユース市場規模は前年比7.8%増の3兆1227億円でした。市場の拡大は今後も続く見込みで、2030年には4兆円規模になると試算しているところもあります。拡大を続けるリユース市場ですが、アプリを利用した個人の売買など広く一般消費者にも浸透しております。中古品の売買を含む取引にはどのような規制があるのでしょうか?この記事では中古品の売買をはじめとする古物営業を開始するための古物商の許可についてご説明いたします。 古物営業を開始する為には、古物商の許可を取得することが必要です。手続きとしては古物営業を行う営業所の所在地を管轄の警察署に必要な書類を準備して申請することとなりますが、そもそも古物営業とはどういう取引か? 大きく分けると以下の3種類に分類されます。 古物を自ら又は他人の委託を受けて、売買又は交換をする営業(古物商) 古物商間での古物の売買又は古物の交換のための市場を経営する営業(古物市場主) 古物の売買をしようとする者のあっせんを競りの方法(政令で定める電子情報処理組織を使用する競りの方法その他政令で定めるものに限る。)により行う営業(古物競りあっせん業) 一般的に中古車ビジネスを始めたい、日本国内で買い取った古着を海外で販売したいなどのケースは1の古物商に該当します。 また2の古物市場主とは古物商許可を得ている業者を対象に、古物市場という名の取引場所提供していて、その取引を管理している者をいい、一般消費者が利用するフリーマーケットは古物市場ではありません。 次に、古物営業法でいう「古物」とは何か? 大きく分けると以下の3種類を指します。 一度使用された物品 使用されない物品で、使用のために取り引きされたもの これらの物品に幾分の手入れをしたもの 1の一度使用された物品は代表的な古物であり、皆さん想像ができると思います。2は意外に思う方もいるかもしれません。つまり例え新品であっても、使用する目的で購入し、一度も使用していない状態のものは古物に該当します。3は本来の性質を変化させないまま、補修や修理を行ったものをいいます。 これら古物は具体的に古物営業法施行規則で次の13品目に区別されています。 一 美術品類(書画、彫刻、工芸品等)二 衣類(和服類、洋服類、その他の衣料品)三 時計・宝飾品類(時計、眼鏡、宝石類、装身具類、貴金属類等)四 自動車(その部分品を含む。)五 自動二輪車及び原動機付自転車(これらの部分品を含む。)六 自転車類(その部分品を含む。)七 写真機類(写真機、光学器等)八 事務機器類(レジスター、タイプライター、計算機、謄写機、ワードプロセッサー、ファクシミリ装置、事務用電子計算機等)九 機械工具類(電機類、工作機械、土木機械、化学機械、工具等)十 道具類(家具、じゅう器、運動用具、楽器、磁気記録媒体、蓄音機用レコード、磁気的方法又は光学的方法により音、影像又はプログラムを記録した物等)十一 皮革・ゴム製品類(カバン、靴等)十二 書籍十三 金券類(商品券、乗車券及び郵便切手並びに古物営業法施行令(平成七年政令第三百二十六号)第一条各号に規定する証票その他の物をいう。) 許可が必要かどうかを判断するためにはまず扱うものが古物であるか、営業が古物商などに該当するかチェックします。古物商又は古物市場主は営業所又は古物市場ごとに管理者を選任しなければなりません。管理者になるためには資格は不要ですが未成年者や欠格事由に該当する者はなれません。並行して、役員(個人許可申請の場合は本人)が欠格事由に該当しないか確認も必要です。その点を確認し問題なければ必要な書類を集めて管轄の警察署に申請をします。余談ですが古物担当の方は、各警察署に1名か2名の場合が多いです。提出する予定日が立ったら、事前に警察にアポイントを取ることをお勧めします。アポイントをしないで申請に行くと、古物担当者が不在の場合、受付できない可能性も考えられるからです。 無事に申請が受け付けられた後、許可証の交付までに要する審査期間は都道府県によって異なりますが概ね40日から60日くらいです。許可が出ると警察署から連絡を頂くので、許可証を受け取り手続きは完了します。以上が古物の概要と許可取得のおおままかな流れの説明となります。次の記事では許可取得時の条件や注意すべき点を詳細に説明してまいります。
- [「NetSuite(ネットスイート)」導入における留意点 ~外資系企業の日本子会社として~](https://shiodome.co.jp/column/19023/) - 1. はじめに 会計ソフトウェア「NetSuite(ネットスイート)」を外資系企業の日本子会社が導入する際には、いくつかの留意点があります。本国の親会社がNetSuiteを用いているので、日本の子会社においても導入が必須となるというケースも多いのです。その際には、言語の問題や日本の消費税の複雑な処理など、日本での導入・運営において留意すべき点も少なくありません。 本日はそれら留意点の内容についてご紹介します。 2. NetSuiteとは? NetSuite(ネットスイート)は、ビジネスのあらゆる側面を包括的に管理するための一元化された統合型ビジネスソフトウェアです。クラウドベースのプラットフォームとして提供され、財務、会計、顧客管理、在庫管理、購買、生産、人事など、多岐にわたる業務プロセスを統合的にサポートします。 NetSuiteはOracle Corporationによって買収され、Oracleのクラウド事業部門に統合されたという経緯があります。日本市場においては、NetSuiteを含むOracleの製品とサービスを日本オラクル株式会社が提供しており、統合型会計ソフトウェア(EPR)の導入とサポートをしています。 弊社RSM汐留パートナーズはRSMの日本におけるメンバーファームであり、日本におけるインバウンド案件、すなわち欧米に本社がある外資系企業の日本子会社の支援を行っています。そして、NetSuiteを導入するという意思決定はすでに本国で行われているケースもあり、弊社は日本におけるその導入・運用のコンサルティング業務を行っております。 3. NetSuiteの特徴 NetSuiteは、企業がビジネスを効率的に運営し、成長を促進するために必要なツールや機能を提供します。 以下は、NetSuiteの5つの主要な特徴です。 ・統合性とリアルタイムデータ 異なる部門やプロセス間でデータを一元化し、リアルタイムで情報を共有できる環境を提供⇒意思決定の迅速化、データの正確性向上 ・カスタマイズと拡張性 企業の固有の要件に合わせてカスタマイズでき、新たな機能やモジュールを容易に追加可能⇒成長に対応できる柔軟性 ・クラウドベース クラウドベースのため、インフラストラクチャの管理やセキュリティの向上に貢献、リモートアクセスを可能に ・セキュリティとコンプライアンス データセキュリティに高い基準を設け、規制要件に準拠するためのツールを提供⇒データの機密性と法的コンプライアンスの確保 ・スケーラビリティ 企業の成長に合わせてスケールアップでき、大規模な組織にも対応可能 4. NetSuite導入における留意点 外資系企業の日本子会社が業務効率化と財務管理の向上を目指すなら、クラウドベースの統合型会計ソフトウェア「NetSuite」が有力な選択肢です。しかし、その導入には注意すべきポイントがあります。 以下、そのポイントを8つ挙げます。 (1)ビジネスプロセスの理解 NetSuiteは業務全体を包括的にサポートするため、導入前にビジネスプロセスを詳細に理解することが不可欠です。どの部門がどの機能を利用し、どのデータが必要かを明確に把握する必要があります。 (2)カスタマイズの必要性 NetSuiteはカスタマイズ可能なプラットフォームですが、必要なカスタマイズが導入時に実行されるかどうか確認する必要があります。個々のビジネス要件に合わせた調整が必要な場合、専門家の支援を検討します。特に日本においては消費税関連の設定が複雑になることから、カスタマイズが必要かの検討が重要です。 (3)トレーニングとサポート システムの効果的な利用を保証するために、NetSuiteのトレーニングを受け、サポート体制を整えることが重要です。スタッフがシステムを活用できるよう支援が必要です。トレーニングとサポートは、英語に関連する部分の負荷についても検討する必要があります。 (4)セキュリティとコンプライアンス NetSuiteには貴重なビジネスデータが格納されます。そのため、セキュリティ対策と規制要件を厳密に遵守することが不可欠です。データの保護と法的コンプライアンスの確認も重要となります。 (5)システムのスケーラビリティ 将来の成長に備えて、NetSuiteのスケーラビリティを検討する必要があります。ビジネスが拡大するにつれて、システムもスムーズに対応できるようにすべきです。 (6)コストとROIの評価 NetSuiteの導入には初期コストやランニングコストがかかります。導入前にこれらのコストと将来的なリターンを評価し、投資の妥当性を確認する必要があります。 (7)プロジェクトマネジメント NetSuiteの導入プロジェクトは計画的に進行させる必要があります。プロジェクトマネージャーを指名し、タイムラインと目標を明確にすることが重要です。 (8)データ移行とテスト 既存のデータを新しいシステムに移行する段階で、エラーを最小限に抑えるためのテストプロセスを確立する必要があります。データの完全性を確保することが重要です。 5. 日本子会社がNetSuiteを導入・運用する上での具体的な負荷 日本の会計ソフトやEPRの導入と比較して、外資系企業の日本子会社がNetSuiteを導入するには一定の負荷や課題があります。 以下で、その負荷や課題を4点取り上げます。 ・言語とカルチャーの適応 NetSuiteは英語ベースのソフトウェアであるため、日本子会社がこれを導入する場合、日本語表示ができるとしても一定の習熟が必要になります。また、システムへの文化的適応も重要です。日本の業務慣行やビジネス文化に合わせてプロセスを修正していく必要があります。 ・日本特有の処理と規制要件 日本の税金や会計規則は複雑で、NetSuiteに合わせた設定と処理が必要です。例えば、日本の消費税の設定やその後の集計については負荷がかかることが予想されます。また、日本の給与計算は複雑であり、社会保険や厚生年金の計算、源泉所得税の控除、給与明細書の発行などについて、日本固有のソフトウェアよりも小回りが利かないケースもあります。 ・トレーニングと教育 NetSuiteを効果的に活用するために、スタッフにトレーニングを提供する必要があります。日本ではNetSuite の操作に習熟している従業員は少ないため、このトレーニングには時間とコストがかかります。
- [中小企業も狙われる時代——サイバー攻撃から守るために](https://shiodome.co.jp/column/42339/) - 「うちは中小企業だから狙われないだろう」——そんな風に考えていませんか? 残念ながら、サイバー犯罪者にとって企業の大小は関係ありません。狙われるのは、大企業だけでなく、中堅・中小企業(SME)や特定業種に限られることもなく、あらゆる組織が標的となり得ます。むしろ防御体制が十分でない企業ほど攻撃の被害を受けやすいのが現実です。 そこで今回は、サイバーセキュリティを守るために抑えるべき考え方(PPT)、最低限押さえておきたい5つの基本対策をご紹介します。 1. セキュリティにおけるPeople・Process・Technology(PPT) 情報セキュリティを効果的に実現するためには、People(人)・Process(プロセス)・Technology(技術)の3要素をバランスよく組み合わせることが不可欠です。いずれか一つが欠けると、セキュリティ体制は脆弱になり、サイバー攻撃や内部不正への耐性が低下します。 1. People(人) セキュリティの最前線に立つのは「人」です。いかに高度な技術を導入しても、利用者が不適切な操作や不注意を行えば、攻撃者に付け入る隙を与えてしまいます。そのため、従業員教育や意識向上、役割に応じた責任の明確化が重要です。経営層から現場社員まで、全員がセキュリティ文化を共有することが組織防御の基盤となります。 2. Process(プロセス) 組織的なルールや仕組みを整備することで、セキュリティ対策は継続的かつ再現性を持って機能します。アクセス権限管理、インシデントレスポンス手順、定期的な監査・レビューなど、明確なプロセスを策定・実行することにより、安定したセキュリティ水準を維持が期待できます。 3. Technology(技術) 技術はセキュリティを支える強力なツールです。ファイアウォール、EDR/XDR、暗号化、多要素認証、脆弱性管理ツールなど、最新の技術を活用することで高度化する攻撃に対抗できます。ただし、技術はあくまで支援手段であり、PeopleやProcessと連携して初めて最大の効果を発揮します。 People(人) 基本対策1 フィッシングメールを見抜く力を養う 最も多い侵入経路のひとつがフィッシング攻撃です。「人」が第一の防衛線であることを忘れてはいけません。従業員に定期的なセキュリティ研修を行うことで、怪しいメールを見抜き、重大な被害を未然に防ぐことができます。 Process(プロセス) 基本対策2 退職者のアクセス権限を即時削除 セキュリティ上の盲点となりやすいのが、退職者や異動者のアカウントです。アクセス権限を放置すると、不正利用や情報漏えいのリスクにつながります。人事異動や退職のタイミングで、即時に権限を削除するルールを徹底することが大切です。 基本対策3 インシデント対応計画を準備しておく どれだけ対策を講じても、攻撃や事故を「ゼロ」にすることは困難です。そのために必要なのが インシデントレスポンス計画です。あらかじめ手順を明確にし、定期的に訓練を行っておくことで、被害を最小限にとどめることができます。時間・コスト・信用を守る最後の砦といえるでしょう。 Technology(技術) 基本対策4 多要素認証(MFA)の導入 従来の「IDとパスワード」だけでは防御力は不十分です。MFA(Multi-Factor Authentication)を導入することで、システムやアカウントに対する不正アクセスを大幅に減らすことができます。追加の認証プロセスが、サイバー攻撃に対する強固な壁となります。 基本対策5 自動バックアップの仕組みを構築(クラウド+ローカル) ランサムウェアやシステム障害に備えるには、バックアップが不可欠です。バックアップは「あるだけ」でなく、定期的に動作確認をすることが重要です。クラウドとローカルの両方に自動バックアップを設定することで、いざというときの保険となります。 2. RSM汐留パートナーズのサイバーセキュリティサービス サイバー攻撃の脅威は日々進化しており、個別の対策だけでは不十分なケースも多くあります。RSM汐留パートナーズでは、現状のセキュリティ診断、リスクアセスメント、運用改善支援、そしてグローバル基準に対応した高度な対策提案まで、一貫してサポートしています。 特に当社のITコンサルティングチームは、単なる技術的対策にとどまらず、業務フローやガバナンスまでを含めた包括的なアプローチを得意としています。 「自社がどの程度リスクにさらされているのか分からない」「何から手をつけるべきか判断できない」といったお悩みをお持ちの方も、まずはお気軽にご相談ください。
- [中堅企業がデータドリブン経営を実現する方法~Microsoft Power BIの最大活用化~](https://shiodome.co.jp/column/42417/) - 1. はじめに:Power BIとは何か? Power BI(パワービーアイ)は、Microsoft社が提供するBI(ビジネス・インテリジェンス)ツールで、複数のデータを連携・収集・分析・加工を行い、グラフやレポート形式の視覚的な情報に出力し、企業内に眠るデータを価値ある形に変換し、経営における情報をより活発にするプラットフォームです。 Power BIの実力を示す証拠として、世界的な経済誌 Fortuneが選出する大手企業ランキング上位500社のうち、95%以上がこのツールを導入しているという事実があります1)。この高い採用率は、かつて大企業だけが手にできた高度なデータ分析環境が、今や中堅企業でも手の届く範囲で活用できる時代になったことを示しています。さらに、業界の専門調査会社ガートナー社が提供する、Magic Quadrantによる評価でも、Power BIはLeader(市場をリードする位置づけ)を獲得しており、国際的な企業が求める厳格なセキュリティ要件やガバナンス基準、そして処理性能の面で非常に高い水準を達成していることが認められています2)。 Power BIのシステム構成は、データの加工・分析を行う「Power BI Desktop」、作成したレポートをオンラインで共有する「Power BI Service」、そしてスマートデバイスからアクセスする「Power BI Mobile」などの複数のプロダクトによって構成されています。特に中堅企業にとっては、既にご利用中のMicrosoft 365環境とスムーズに連携できるため、大規模なシステム投資をせずに高度なデータ分析環境を構築できる点が大きな魅力となっています。 2.「感覚経営」から脱却できない日本企業の実態 最新の中小企業白書が明らかにした課題は、日本の中堅・中小企業におけるデータ活用の遅れという深刻な現実です3)。この問題の本質は単にITツールの導入が遅れているということではなく、企業経営において「データを体系的に収集し、整理・分析して、具体的な意思決定に反映する」という一連の流れが根付いていないことにあります。 この状況は様々な経営場面で表面化しています。同白書の調査によれば、自社製品・サービスの価格設定において「市場分析と自社の差別化戦略に基づいて決定している」と回答した企業は全体のわずか12.9%にとどまります3)。多くの企業では、競合の動向に合わせるか、経営者の直感で価格を設定するにとどまっているのが実情であり、データ分析を用いた経営は中堅企業・中小企業ともに少数であることが判明しています。特に憂慮すべきは、原材料や人件費の高騰という厳しい経営環境にあっても、自社の正確なコスト構造を把握し、それを取引先との価格交渉に活かせていない企業が大半を占める点です。背景には、原価データの収集や分析の仕組みが整っていないため、「勘や経験」ではなく「具体的な数値」に基づいた説得力のある交渉ができないという課題があります。 このようなデータに基づく意思決定の文化を定着させるためには、日常業務に直結した形で、小さくても成功体験を積み重ねていくことが重要です。具体的な内容は「管理会計×データ分析で実現する、見える経営と意思決定のDX」の記事でも記載していますが、経営層自らが重要な経営指標を数字で語り、データに基づいて判断する姿勢を示すことで、組織全体のデータ活用意識も高まっていきます。このような変革を支援するツールとして、導入の敷居が低く、すぐに効果を実感できるPower BIは、中堅企業のデータ活用促進に大きく貢献する可能性を持っています。こちらに関しては「管理会計・経営レポートDX支援」のサービスページをご覧ください。 3. Power BIを活用する利点 Power BIは、前述したような中堅・中小企業特有の課題解決に最適化された機能を多数備えています。継続的な進化を経て、現在のPower BIは中堅企業のニーズに応える完成度の高いプラットフォームへと成長しました。 業務効率の飛躍的な向上 Power BIに搭載されたデータ処理エンジンを活用すれば、これまで担当者が何時間もかけて行っていたデータ収集・加工作業を自動化でき、手作業による工数・入力ミスが削減できます。初期設定さえ完了すれば、その後はPower BIが自動的に月次の経営報告資料や予算実績管理表、人員配置状況など、様々なレポートを瞬時に作成できます。これにより、スタッフはデータ入力や集計といった単純作業から解放され、データの分析や戦略立案といった付加価値の高い業務に集中できるようになります。「Power BI デモ」のページで弊社が提供しているサービスのデモを確認できます。 経営情報の一元管理とリアルタイム把握 Power BIは様々なシステムと連携が可能であり、Microsoftのサービス・豊富な外部サービス(例 : Salesforce, など)・社内のシステムに直接接続し、それらの情報を統合的に可視化することができます。経営者や管理職は、パソコンやモバイル端末から、いつでもどこでも最新の経営指標や財務状況、人事情報などを対話的に確認できます。これにより、現場の最新状況を正確に把握した上で、迅速かつ的確な意思決定を行うことが可能になります。 データの信頼性向上とガバナンス強化 手作業によるデータ処理を排除することで、入力ミスや計算エラーを大幅に削減し、常に正確で信頼性の高い情報を提供します。また、「どのデータをソースとして」「どのような処理手順で」レポートが作成されたかという過程が明確に記録されるため、情報の透明性が高まります。これは監査対応や内部統制の強化にも大きく貢献する要素です。 組織全体のデータ活用文化醸成 Power BIで作成したレポートは、クラウド環境で簡単に共有でき、アクセス権限の設定も柔軟に行えます。経営層から現場担当者まで、組織内の様々な立場の人々が同じデータを見ながら議論できるようになることで、部門間の壁を越えた協働が促進され、組織全体でデータを活用する文化が根付いていきます。 4. RSM汐留パートナーズが選ばれる理由 Power BIは確かに強力なツールですが、その真価を発揮するためには「何をどのように可視化するか」という業務への深い理解が不可欠です。多くのIT企業がツール導入そのものを目的としている中、私たちの提供価値は全く異なる視点から生まれています。当社は会計税務、人事労務、法務のプロフェッショナル集団として、テクノロジーを活用しながらクライアントの皆様の本質的な経営課題を解決します。 当社の最大の特長は、クライアントの皆様自身もまだ気づいていない潜在的な課題や事業機会を、データ分析を通じて見出す「発見力」にあります。 例えば: 会計・税務分野では、単に月次決算を早く完了させるだけでなく、特定の勘定科目における異常値の自動検出や、資金繰り悪化を予測する先行指標など、税務リスクや経営危機に直結する重要な情報を視覚化します。 人事労務分野では、勤怠データと給与計算の突合せにとどまらず、労働法令に準拠した適切な労働時間管理や、組織別・職種別の生産性指標など、コンプライアンスと人材戦略の両立を支援する情報基盤を構築します。
- [中堅企業におけるDX加速化のガソリン~ローコード開発プラットフォーム「Power Apps」~](https://shiodome.co.jp/column/46851/) - 1. はじめに:Power Appsとは何か? Microsoft Power Appsは、プログラミングの専門知識がなくても、自社の業務に合わせたアプリケーションを迅速に開発できる「ローコード開発プラットフォーム」です。2015年の発表以来、多くの企業で利用されているMicrosoft 365(旧Office 365)とシームレスに連携する「Microsoft Power Platform」の中核を担っています。 Power Appsの最大の特徴は、視覚的なデザインツールと豊富なテンプレートを活用したドラッグ&ドロップのインターフェースにより、IT部門以外の業務部門の担当者でも短期間でアプリケーション開発が可能な点です。まるでPowerPointでプレゼン資料を作成するような感覚で、画面上に必要な要素(ボタン、入力フォーム、データ表示エリアなど)を配置し、機能を組み立てていくことができます。 また、キャンバスアプリとモデル駆動型アプリの2種類の開発方式に対応し、用途に応じた最適なアプローチを選択できます。キャンバスアプリは自由度の高いUI設計が可能で、モバイル向けの点検アプリや報告書作成アプリなどに適しています。一方、モデル駆動型アプリはデータモデルを基に自動的にUIが生成されるため、顧客管理や案件管理など、データベース中心の業務システムの構築に向いています。下記に、二種類アプリの違いを比較表に簡単に整理したものです(3)。 カテゴリ モデル駆動型アプリ キャンバスアプリ プラットフォーム Dataverseのみ Dataverse+コネクタ使用 UI設計 制限付き 制限なし UX設計 コードなしの設計中心 Power Fx(ローコード関数言語)使用でプロパティの自主操作可能 環境移行 操作簡単 データソース更新の可能性により、複雑 作成工数 工数短い 設計により工数変動 整合性 高い(場合による) 低い(場合による) 応答 自動応答 設計により応答性が高い テーブル間のナビゲーション 自動指定 Power Fx使用で自主設計 ユーザー補助機能 組み込み 自主設計 さらに、1000以上のコネクタ(標準版とプレミアム版の制限・条件あり)により、SharePoint、Excel、SQL Server、Salesforce、Google Sheetsなど、社内外の多様なデータソースと接続可能です(2)。開発したアプリは、PC、タブレット、スマートフォンなど様々なデバイスでも利用でき、場所を選ばない柔軟な業務環境を実現できます。 2024年にForrester Research社が発表した調査レポート「The Total Economic Impact Of Microsoft
- [Microsoft Intuneで実現する中堅企業のセキュリティ対策と働き方改革](https://shiodome.co.jp/column/46957/) - 1. はじめに:Microsoft Intuneとは何か? テレワークやハイブリッドワークなど、従業員の働き方が大きく変わった今、企業の「セキュリティの不安」を解消するためにMicrosoftが提供しているのが、Microsoft Intune(マイクロソフト インチューン)です。 Microsoft Intune(以下Intune)は、スマートフォン、タブレット、PCを一元的に管理するMDM(Mobile Device Management)の一種です。従来は端末ごとに手作業で行っていた設定やソフトウェアインストールを行っていましたが、Intuneを使えば、従業員がどこにいてもインターネット経由で アプリケーションの一斉配布・自動更新 セキュリティポリシー適用(パスワード強制、端末暗号化など) セキュリティパッチの配布・自動適用 紛失・盗難時の遠隔ワイプ 条件付きアクセスによる制御 などを集中制御できます。これらの機能を用いることで、情報システム部門の運用コストの低減を図りながら、一律のポリシーを適用することが可能となり、企業におけるセキュリティリスクの低減を図ることも考えられます。 また、Microsoft 365ファミリーの一部であることから、 Microsoft Entra ID (旧Azure AD)とネイティブ連携し、ID管理からアクセス制御、マルチデバイス運用までをシームレスに実現が可能です。管理者はブラウザ上の専用コンソールを操作するだけで、社内外を問わず統一したセキュリティ基盤を構築できます(1)。 さらに、Intuneは、Windows OS、macOS、iOS、Android、Linuxなど、様々なOSのデバイスに対応しています。そのため、会社所有のデバイスだけでなく、従業員の個人デバイス(BYOD:Bring Your Own Device)も管理できます(1)。BYODの場合、業務のデータを個人の領域へコピーする行為(ファイルコピー・文字のコピー・スクリーンショットの撮影)を禁止することが可能であり、BYOD端末の利便性を享受しながら、リスク低減を図ることが可能になります。 (出所:Microsoft公式サイト「What is Microsoft Intune – Microsoft Intune | Microsoft Learn 」を参考にRSM汐留パートナーズが独自で作成) 2. 現状として見過ごしている経営リスク クラウド型統合エンドポイント管理を活用せずに従来の手作業や分散管理を続けていると、以下のような課題が日常的に放置され、企業の信用失墜や法的責任問題に直結する「経営リスク」に発展する恐れがあります。自社の状況と照らし合わせ、例としてあげている下記の項目の中に該当するものがないか今一度ご確認ください。 A. セキュリティリスク – 私物スマートフォン/タブレットを用いた社内メールやファイルに無制限アクセス。情報の持ち出しが出来てしまう点– パッチ適用が一元管理されず担当者任せの結果、既知の脆弱性を用いた攻撃が成功してしまう可能性– 機密データが端末内に残存し、情報漏えいリスク– 複雑度の低いパスワード設定や多要素認証未導入により、アカウント乗っ取り被害の誘発 B. テレワーク/リモートワーク対応の課題 – VPNに依存し、設定負荷・サポート依頼が増大。結果として接続が遅延し業務生産性が低下– 社外ネットワークからの接続をIP制限だけで運用し、盗聴や不正アクセスの温床に– 個人端末と業務データを隔離できず、紛失時の情報流出対策が不十分 C.
- [Power Automateで変わる経営現場–競争力強化と業務自動化のDX戦略](https://shiodome.co.jp/column/47240/) - 1. はじめに:Power Automateとは何か? Microsoft Power Automateは、ビジネスプロセスを自動化するためのクラウドサービスです。以前は「Microsoft Flow」という名称でしたが、現在はPower Platformの一部として提供されています。このツールを使用すると、プログラミング知識がなくても、ドラッグ&ドロップの直感的な操作でワークフローを作成し、業務を自動化することができます1)。 Power Automateには大きく分けて二つのバージョンがあります。クラウドベースの「Web版」と、デスクトップアプリケーションとして提供される「デスクトップ版(Power Automate for Desktop)」です1)。Web版はクラウド上のサービス間連携に特化しており、コンピュータを起動せずとも、自動化の処理が実施可能です。一方、デスクトップ版はWindows PC上で動作し、RPAに対応していないソフトウェアの操作を自動化(RPA:ロボティック・プロセス・オートメーション)することが可能で、プログラミングの知識がないユーザであっても、比較的容易にプログラムを開発することができます。 特徴としては、Office 365やDynamics 365だけでなく、他社製品であるSalesforce、Google サービス、X(旧Twitter)などの外部サービスと連携できる点が挙げられます。これらの連携は「コネクタ」と呼ばれる機能を通じて実現されます。そのまま使用できる認定コネクタは、1400種類以上用意されています1)。ただし、一部の高度なプレミアムコネクタは有料ライセンスが必要となる点には注意が必要です。また、利用できるフローの数やAPIコール回数(実行回数)にも、ライセンスによって制限があります1)。 業界のアナリストからも高い評価を受けており、Forrester Consultingの調査によれば、Power Automateを導入した企業は平均で388%のROI(投資収益率)を達成し、自動化されたプロセス1件あたり平均26,100ドルのコスト削減を実現しています。さらに、3年間の総経済効果は9,010万ドルにのぼるとされています2)。特に注目すべきは、Power Automateを活用した企業57社では、従業員一人あたり年間約26,660時間 の作業時間を削減できたという点です4)。これは、単純作業の自動化により、従業員がより創造的で価値の高い業務に集中できるようになったことを示しています。また、自動化によりミスや再作業が77%減少したという調査結果も出ており、業務の品質向上にも大きく貢献していることがわかります2)。 2. DX推進に悩んでいる日本企業の現状と課題 中小企業白書2025によれば、日本の中小・中堅企業におけるDX推進の最大の課題は「ITに詳しい人材の不足」と「導入コストの負担」となっています3)。特に業務プロセスの自動化については、売上が10億円以下の企業の中に「取り組んでいる」と回答したのは全体の1.5%のみで、デジタル化の遅れが顕著です3)。また、同白書では中小企業の経営者の高齢化や後継者不足も指摘されており、業務ノウハウの属人化が進んでいる現状も浮き彫りになっています3)。 日本企業特有の課題としては、白書が指摘する「前例踏襲の企業文化」や「変化への抵抗感」も自動化ツール導入の障壁となっています3)。結果、限られた人材が単純作業に追われ、人的ミスの発生、データ連携の不足による意思決定の遅れ、業務の属人化によるノウハウ流出リスクの増大など、多くの問題が生じています。Power Automateのような低コストで導入できる自動化ツールの活用は、これらの課題解決の有効な手段となり得ます。 3. Power Automate活用のメリット Power Automateの導入により、上記の課題を効果的に解決し、様々なメリットを得ることができます。以下では業務の具体例を挙げながら、そのメリットを詳しく説明します。 まず、業務プロセスの自動化による時間短縮が挙げられます。Power Automateを活用することで、繰り返し行われる定型業務を自動化し、社員の作業時間を大幅に削減できます。これにより、より創造的で付加価値の高い業務に集中することが可能になります。 次に、システム間のシームレスな連携が実現します。異なるシステム間でのデータ連携を自動化することで、情報の分断を解消し、組織全体でのデータの一元管理が可能になります。これにより、迅速で正確な意思決定をサポートする基盤が整います。 また、手作業によるデータ入力やファイル管理を自動化することで、ヒューマンエラーを大幅に削減できます。これにより、業務の品質と信頼性が向上し、ミスによる損失を防ぐことができます。 さらに、Power Automateはノーコード/ローコードのプラットフォームであるため、IT専門知識がなくても、直感的な操作で業務自動化のフローを作成できます。これにより、業務部門の担当者自身が必要な自動化を実現できるようになり、IT部門への依存度を下げることができます。 【具体的な活用例】 1. 会計税務での活用 Power Automateの活用により大幅な効率化が期待できます。例えば、請求書処理の自動化では、受信した請求書のPDFからOCR技術を用いてデータを抽出し、会計システムに自動入力することが可能です。承認ワークフローも同時に自動化できるため、処理時間の短縮とミス防止につながります。 決算業務においても、月次や四半期の決算において複数システムからのデータ集計や仕訳作成を自動化し、作業時間を大幅に削減できる可能性があります。税務申告書類の作成においても、会計システムからのデータを自動的に税務申告書フォーマットに変換し、申告書作成作業を効率化することが可能です。 2. 人事労務業務での活用 採用プロセスでは、Power Automateを通して応募者からのエントリー情報を自動的に人事システムに取り込み、選考ステータスに応じた自動メール配信を行うことで、採用担当者の負担を軽減し、応募者への迅速な対応が可能になります。 社員オンボーディングプロセスでは、新入社員の入社手続きにおいて必要書類の作成や関連部門への通知、アカウント発行依頼などを自動化し、スムーズな入社プロセスを実現します。また、人事評価プロセスにおいても、評価時期になると自動的に上司に評価依頼を送信し、提出された評価データを人事システムに自動登録することで、評価業務の効率化と正確性向上に貢献できます。 3. 法務業務での活用 契約書管理の自動化では、契約書の作成依頼から、テンプレートを用いた自動生成、承認プロセスの管理、期限管理までを一貫して自動化することがPower Automateを活用することで実現できます。これにより、契約業務の迅速化とコンプライアンスの強化を同時に実現できます。 法的リスク監視においては、関連法令の改正情報を自動的に収集し、影響を受ける可能性のある社内規定や契約書を特定して担当者に通知する仕組みを構築できます。コンプライアンス報告業務では、各部門からのコンプライアンス状況報告を自動的に集約し、定型レポートを作成することで、報告業務の負担を軽減できます。
- [Power Queryで整える中堅企業におけるデータ活用の第一歩](https://shiodome.co.jp/column/47391/) - 1. Power Queryとは:データ変換の革新ツール Microsoft Power Queryは、ExcelやPower BI、Power Platformに統合されたデータ収集・変換・整形のためのツールで、近年のデータ活用において欠かせない存在となっています(1)。2010年代初頭にExcelのアドイン(追加機能 )として登場し、現在ではMicrosoft製品群全体に幅広く組み込まれており、専門知識がなくても複雑なデータ処理が直感的な操作で可能となりました。Power Queryの最大の特徴は、プログラミングの知識を必要とせずに、ドラッグ&ドロップやメニュー操作を通じてデータの整形や結合、抽出などを自動化できる点です。一度作成した処理手順は「クエリ」として保存され、データ更新時には同じ手順が自動的に適用されるため、日々繰り返される定型作業の効率化に大きく貢献します。また、処理手順が明確に記録されることから、再現性のある安定したデータ処理が可能であり、担当者が変わっても同じ成果を得られる点も重要です。 さらに、Power Queryは多様なオンプレミス・クラウドのデータに接続できる点も特筆されます。ExcelやCSV、テキストファイルといった一般的な形式に加え、SQL Server、Oracle、SharePoint、Microsoft社以外が提供する製品(Salesforceなど )へのデータベースやクラウドサービスへ接続することが可能です。さらにはWebページやJSONファイルにも対応しており、異なるシステムやサービスによって異なるフォーマットを一元的に収集・統合できるため、分析基盤の構築が容易になります(1)。特に、中堅企業では複数システムから出力されるデータの形式が異なることが多く、手作業での統合作業に多大な時間がかかっていましたが、Power Queryを活用することで、こうした課題を解消し、業務担当者自身が迅速にデータを整備できるようになりました。 2. アナログによる業務現場の課題 総務省「情報通信白書2025」や中小企業白書など各種調査によれば、多くの中堅企業では依然としてExcelを中心とした手作業のデータ処理が行われており、業務担当者は日々のルーティン作業に多くの時間を費やしています。特に、複数システムから出力されたデータを統合する際の作業負荷が高く、月次決算や予算実績管理の度に手作業で調整するケースが少なくありません(2)(3)。 具体的には以下の課題があります。 データ形式の不一致会計システム、販売管理システム、在庫管理システムなど、複数のシステムから出力されるデータのフォーマットが異なるため、手作業で列の並べ替えや書式調整を繰り返す必要があります。結果として、データ統合にかかる時間が月次や四半期ごとに膨大となります。 データクレンジングの負荷空白や重複、入力ミスの修正、表記ゆれの統一などが必要で、特に複数担当者が関わるデータ入力では「株式会社」と「(株 )」や全角半角の混在などの表記揺れが頻発します。この整理に多くの人的リソースが割かれ、分析に回せる時間が減少しています。 属人化と再現性の欠如データ加工のノウハウが特定担当者に集中し、手順が文書化されていない場合、担当者不在時に作業が滞るリスクがあります。また、手作業では処理手順が記録されず、監査対応や後からの検証が困難です。特に財務データや規制対象データを扱う業務では、コンプライアンス上のリスクになります。 意思決定の遅延データ処理に時間がかかることで、分析や意思決定のスピードが低下します。結果として、ビジネスチャンスの逸失やリスク対応の遅れが生じる可能性があります。 これらの課題は単なる作業効率の問題に留まらず、企業の競争力に直結する重大な経営課題となっています。 3. Power Queryにできること Power Queryを活用することで、中堅企業が抱えるデータ処理の課題を効果的に解決し、業務効率とデータ活用の質を大幅に向上させることができます。まず、クエリを設定しておけば、データ更新時に同じ手順が自動的に適用されるため、月次決算や予算・実績分析などの定期作業にかかる時間を大幅に削減できます。これにより、担当者はルーティン作業から解放され、より戦略的で創造的な業務に時間を割くことが可能となります。また、処理手順がすべて記録されるため、誰が作業しても同じ結果を得られ、業務の属人化を防ぎながら、再現性のある安定したデータ処理が実現します。 実務における活用例としては、会計・財務部門では、異なるシステムから出力されたデータを自動的に標準形式に変換し、統合することで決算作業や差異分析の効率化が図れます。マーケティング部門では、CRMやWebアクセスログ、SNSデータを統合することで、顧客行動分析やキャンペーン効果測定を迅速に行えます。また、人事部門では、勤怠・給与・人材管理データを統合し、部門別の残業時間分析や採用活動の効果測定、従業員満足度と業績データの複合分析などが可能です。このように、Power Queryは多様なデータを統合し、自動化、標準化、透明性を確保することで、データ活用の幅を大きく広げ、業務全体の生産性向上に直結するツールとして中堅企業における第一歩を支える存在となっています。 4. RSM汐留パートナーズが提供できる付加価値 当社の「データ取得・整形支援(Power Query)」は、単なるツール導入にとどまらず、クライアント企業のデータ活用全体を最適化するソリューションです。会計税務・人事労務・法務などの専門知識を持つコンサルタントが、業務特有のデータ処理課題を深く理解し、業種や業務に最適化されたデータ変換フローを構築します。 特に、当社では、初期要件定義からデータ変換ソリューション設計、実装とテスト、そして知識移転までの一連のプロセスを体系的にサポートします。具体的には、ビジネス要件とデータ分析目標の明確化から始まり、最適なデータ変換フローの設計、Power Queryエディタでの実装と検証、そして詳細なドキュメント作成まで、データ活用の基盤構築をトータルに支援します。 当社のアプローチの強みは、単なる技術支援を超えた「業務理解に基づくソリューション提供」にあります。例えば、会計データの処理においては、単に技術的なデータ変換だけでなく、会計基準やコンプライアンス要件を踏まえた適切なデータ処理手法を提案します。また、データガバナンスやセキュリティ面でのベストプラクティスも併せて提案し、安全かつ効率的なデータ活用環境の構築をサポートします。 「データ取得・整形支援(Power Query)」の詳細については、当社が提供しているMicrosoft Power Platform導入・運用支援のサービスページをご確認ください。また、Power BI(データ分析・可視化)、Power Automate(業務プロセス自動化)、Power Apps(業務アプリ開発)に関する専門コラム記事も公開していますので、統合的なデータ活用についてさらに詳しく知りたい方は当社のコラムをぜひ随時ご覧になってください。 参考資料: Power Query とは – Power Query | Microsoft
- [Microsoft 365はなぜ選ばれるのか?ハイブリッドワーク時代の生産性とセキュリティを最大化する基盤](https://shiodome.co.jp/column/53696/) - 1. はじめに:Microsoft 365とは? かつて、ビジネスツールといえば、PCにインストールして数年間使い続ける「買い切り型」のWordやExcel(Office 2016, 2019など)が主流でした。しかし、働き方の多様化やセキュリティ脅威の複雑化に伴い、ビジネス基盤の在り方は大きく変わりました。 これに対応するために進化したのが、Microsoft社が提供するサブスクリプション型クラウドサービス「Microsoft 365」です。以前は「Office 365」という名称で親しまれていましたが、2020年より「Microsoft 365」へとブランドが統合されました(一部プランを除く)。 これは単なる名称変更ではありません。従来の「WordやExcelといった事務アプリ(Office)」の提供にとどまらず、「Windows(OS)」や「エンタープライズ級のセキュリティ(EMS)」、そして「AIを活用したクラウドサービス」を包括的に提供するプラットフォームへと進化したことを意味しています1)。 また、Microsoft 365が世界中で選ばれている理由は、単なる利便性だけに止まりません。その導入効果は、客観的な数値によって如実に証明されています。米国Forrester Consulting社が2025年に発表した最新の調査レポートによると、本ソリューションを導入した企業(複合組織モデル)は、以下の劇的な成果を上げています2)。 223%の投資対効果(ROI)導入から3年間で、投資額の2倍以上のリターンを生み出すことが実証されました。 6ヶ月未満での投資回収システム導入にかかったコストは、運用開始から半年足らずで回収され、その後は純粋な利益を生み出し続けます。 1日ごとの生産性向上Teams、OneDriveやSharePointによるコラボレーションの効率化や共同編集機能により、従業員一人あたり1日約14分~23分の業務時間を節約できることが明らかになっています。 セキュリティリスクの15%低減高度なセキュリティ機能により、データ侵害のリスクを大幅に引き下げ、潜在的な損害コストを回避しています。 これらのデータは、Microsoft 365が単なる「事務ソフトの利用料」ではなく、企業の利益と安全性を最大化するための「戦略的な投資」であることを裏付けています。 2. 多くの企業が抱える「見えない損失」とセキュリティリスク では逆に、Microsoft 365のような統合型クラウド基盤を導入せず、旧来のオンプレミス型Officeや、バラバラの無料ツールを使い続けている場合、企業はどのようなリスクを負うことになるのでしょうか。 ① IT管理者の疲弊と「見えないコスト」の増大 まず挙げられるのが、社内システムの維持にかかる莫大な手間です。 調査によれば、多くの中小企業では専任のIT担当者が1名、あるいは兼任で対応しており、メールサーバーの管理やトラブル対応だけで手一杯になっています2)。また、自社でサーバー環境を維持しようとすることには、ハードウェアの増設・保守費用・メンテナンス費用など、経営層からは認識されにくい「見えないコスト」が発生し続けているケースもあります。 ② レガシーシステムの停止リスクとランサムウェア被害 オンプレミス(自社運用)サーバーへの依存は、自然災害にあった際の事業継続性の観点からもリスクとなります。さらにセキュリティ対策においても。自社で対策をする必要があり、従業員の運用負荷の高い環境では最新の脅威を防ぎきれません。 ③ コミュニケーションの分断と「バージョンの混乱」 現場の従業員にとって最大のストレスは、コラボレーションの非効率さです。 旧来の環境では、「メールにファイルを添付して全員に送り、修正版を送り返してもらう」という作業が繰り返されます。 「誰がいつ更新したのか追跡できず、バージョン2、バージョン3とファイルが増え続け、どれが最新かわからなくなる」といった事態は、多くの現場で常態化しています。情報共有の遅れだけでなく、ファイルを探す時間、バージョンを統合する手間といった「付加価値のない作業」に、貴重な業務時間が奪われているのです。 ④テレワーク対応の遅れとシャドーITの誘発 セキュリティと利便性のバランスが崩れている点も見逃せません。 社外から社内サーバーへアクセスするためには一般的にVPNを利用していることが多く、通信速度の遅延によるWeb会議ツールの遅延やVPN装置の脆弱性対応など管理面・業務効率面での効率低下が考えられます。また、会社が定める標準的なクラウドツールを用意していない場合、社員は業務を遂行・効率化のために個人のSNSツール(例:LINE,Kakao Talk)やGoogleドライブを無断で使用し始める懸念があります。 管理者が把握できない場所で機密情報がやり取りされる状態は、コンプライアンス上、極めて危険な状態とも言えます。 3. Microsoft 365にできること・導入のメリット 中小企業が新たなITツールを導入する際に最も重視される要素の二つは、「導入のハードルの低さ」と「コストパフォーマンスの高さ」です。スタートアップではコスト効率と導入の容易さが決定的な要因として、Microsoft 365は「設定が簡単で構成次第で費用を抑えられる」、「パートナーや顧客との連絡に必要な基本ツールを即座に利用できる」と評価されています2)。特に、複雑な操作を必要とせずコミュニケーションや資料作成が可能な点が、リソースの限られた企業にとって重要となっているようです。 次に、既存システムとの連携性が導入の成否を分けます。クラウドから端末までを一元管理できる標準化されたソリューションが不可欠です。Excelと会計ソフトの連携を例に、互換性のないファイル形式を使うとデータ変換の手間が生じます。そこで、Microsoft 365は標準化されたプラットフォームとして機能し、非標準化された環境と比べて作業効率が大幅に向上させます。 また、ユーザーの適応性も重要な要件です。従業員がすぐに使いこなせるツールでなければ、教育コストが増大します。Microsoft 365について「操作が直感的でトラブル対応も容易」と評価されています2)。この「使いやすさ」はITリテラシーのばらつきを吸収し、全社的な生産性向上に寄与します。 これらの要件を満たすソリューションを導入した結果、企業は業務効率化、コスト削減、競争力強化といった効果を得られます2)。統合プラットフォームの採用により部門間連携が円滑化し、クラウド活用による運用負荷の軽減も実現します。一方で、導入後のサポート体制やクラウド依存のリスク管理など、中長期的な課題も浮かび上がっています。中小企業がIT投資の効果を最大化するには、こうした選定基準と効果・課題の両面を踏まえた戦略的な判断が求められます。 4. RSM汐留パートナーズが提供する付加価値 「Microsoft 365を契約したが、結局メールとExcelしか使っていない」「セキュリティ設定が難しくてデフォルトのまま放置している」。このようなケースは少なくありません。 Microsoft 365は非常に多機能であるため、「自社の業務に合わせてどう設定し、どう使いこなすか」という導入後の設計が成功の鍵を握ります。 RSM汐留パートナーズは、単なるライセンス販売や初期設定代行に留まらず、クライアントのビジネス環境に合わせた「安全で生産性の高いワークプレイスの構築」をご支援します。 私たちは、ITの専門家としての知見と、バックオフィス業務への深い理解を組み合わせ、以下のフェーズでご支援を行います。 現状分析・プラン選定支援 移行・環境構築支援(SharePoint/Exchange
- [ISO27001を取得してもセキュリティが完璧になるわけではないそれでもISMSを取得する理由とは](https://shiodome.co.jp/column/53706/) - 企業における情報セキュリティの強化において、ISO27001(ISMS認証)は情報セキュリティ対策の代表的な指標として広く認知されています。しかし、ISO27001を取得したとしても、組織があらゆるサイバーリスクから完全に防御できるわけではありません。それにもかかわらず、多くの企業が時間とコストを投じてISMSに取り組むのはなぜでしょうか。本稿では、その理由と価値を紐解きます。 1. ISMSとは何か ISMS(Information Security Management System)とは、情報資産を適切に管理し、漏えい・改ざん・破壊といったリスクから守るためのマネジメントシステムです。 ISMSは特定のセキュリティ製品やツールを導入する行為ではなく、以下の要素を重要視しています。 統制ルールの策定 運用プロセスの整備 従業員教育 定期的な改善活動(PDCA) 上記一連の仕組みを通じ、組織全体のセキュリティレベルを継続的に高めていくことを目的としています。 2. ISMSは「技術」ではなく「判断基準」である ISMSの本質は、脅威への対応を場当たり的な対策ではなく、体系的な判断基準に基づくプロセスとして整理する点にあります。 ISO27001は、組織が「何を脅威と捉え」、「どの資産を守り」、「どのような対策を選択し」、「どのように改善を続けるのか」、というサイクルを明確化させる枠組みです。そのため認証取得後も、ISMSでは継続的審査などを通じてプロセスが適切に回っているかを定期的に評価します。 3. ISMSの核心は「棚卸し」と「リスク評価」 ISMS運用の中核となるのが、情報資産の棚卸し(資産特定)とリスク評価です。高価な製品や最新のセキュリティ技術を導入しても、守るべき資産を把握できていなければ、未管理の端末や委託先経由で侵害を受ける可能性が残り続けます。 情報資産とは、サーバや端末だけではありません。契約書、設計書、ノウハウ、認証情報、人の権限、そして外部委託先など「組織が価値を持つと判断するものすべて」が対象に入ります。 しばしば、「ISMSはプロセス中心だから技術は不要」と誤解されることがありますが、実際には アクセス制御 ログ管理 暗号化 脆弱性診断 バックアップ といった複数の技術要素が適切に実施されているか、評価項目として判断する際に必須の要素となります。 従って、ISMSは技術と切り離された概念ではなく、技術を「選択する判断力」を組織に与える枠組みとも言えます。 4. 企業がISMSを取得する「本当の理由」 ISO27001を取得しても、セキュリティが完全に担保されているわけではありません。それでも企業がISMSの認定を取得する理由は、次の価値を発揮することが大きな要因として挙げられます。 情報セキュリティに関する責任と統制を体系化できる 属人的な運用から脱却し、継続的改善が文化として根付く 技術投資の優先順位を合理的に判断できる 客観的な第三者認証により、取引先・市場からの信頼を獲得できる 「守るためのルール」ではなく、経営判断の質を高めるための仕組みが確立できることから、多くの企業はISMSを取得する大きな要因として考えられます。 5. RSM汐留パートナーズの取り組み RSM汐留パートナーズでは、ISO27001を取得し、情報資産保護のためのプロセスを組織的に運用しています。 さらに、各従業員が利用する端末や各リソースには以下の製品を導入しています。 MDM(Mobile Device Management) EDR(Endpoint Detection and Response) NGAV(Next Generation Anti-Virus) DLP(Data Loss Prevention) 複数の製品を組み合わせ、技術面からもセキュリティを担保しています。これらのプロダクトは、外部ベンダーやコンサルタントに依存することなく、社内に在籍する専門家が技術適合性・コスト効率・運用設計の観点から総合的に評価し、構築・運用まで一貫して選定しています。
- [ISO42001:AIの使い方に国際ルールを入れるためのISO](https://shiodome.co.jp/column/53700/) - 1. はじめに:AIにも「免許」が必要な時代へ ChatGPTをはじめとする生成AIの登場により、私たちのビジネス環境は劇的な変化を遂げました。議事録の作成からプログラミングのソースコードの生成、マーケティングコピーの作成までツールなど、AIはもはや「未来の技術」ではなく、日々の業務に欠かせない「道具」となっています。 しかし、その圧倒的な利便性の裏側で、企業は新たな不安やリスクに直面しています。 AIは必ずしも正確な情報を出力するわけではなく、「差別的な回答をしたらどう責任を取るのか?」 「入力した顧客情報や機密情報が、勝手に学習に使われてしまわないか?」 「AIの判断ミスで損害が出た場合、開発者と利用者のどちらが責任を負うのか?」など、これまでとは全く異なったリスクが存在します。 AI開発や利用に関するルールは、これまで、企業ごとの自主的なルールや、各国が独自に定めるガイドラインに委ねられている部分が多く、基準となる明確なルールが存在しない状況でした。しかし、国境を越えてボーダレスに展開されるAIビジネスにおいて、バラバラの基準のままでは、各国が求める法規程の遵守が難しく、結果としてAI利用における信頼性を担保することが難しくなっています。 そこで2023年12月、満を持して発行されたのが、世界初のAIマネジメントシステムに関する国際規格「ISO/IEC 42001」です。本記事では、ISO 42001とは一体どのような規格なのか、なぜ今これほどまでに注目されているのか、そして企業がこの規格に取り組むことで得られる経営的なメリットについて、背景にある社会課題とともに詳しく解説します。 2. ISO 42001(AIMS)とは何か? ISO/IEC 42001は、組織が責任を持ってAIシステム開発、提供、または使用するためのマネジメントシステム(AIMS: Artificial Intelligence Management System)の要件を定めた国際規格です。簡単に言えば、「人工知能を安全・安心・公正に使うための仕組み作り」における国際的な基準といえます。ここでは、その具体的な特徴を3つのポイントで解説します。 ① AI特有の「ライフサイクル」と「継続的学習」への対応 品質管理の「ISO 9001」や情報セキュリティの「ISO 27001」と同様に、ISO 42001もPDCAサイクル(計画・実行・評価・改善)を回すことが基本です。しかし、AIには従来のシステムとは異なる特徴があります。それは、運用開始後もデータを学習し続け、挙動が変化する可能性がある点です。 ISO 42001は、AIシステムのライフサイクル全体(企画・設計・データ収集・開発・テスト・展開・運用・廃棄)をスコープとしており、運用中のモニタリングや再学習時のリスク管理まで含まれています。「一度作って終わり」ではなく、進化し続けるAIに合わせて管理体制もアップデートし続けることが求められます(1)。 ② 「リスクベースアプローチ」の徹底 この規格の核心は、画一的なルールを押し付けるのではなく、組織やAIの用途に応じた「リスクベースアプローチ」を採用している点にあります。 例えば、人命に関わる医療AIや自動運転AIと、社内向けのチャットボットでは、求められる管理レベルが全く異なります。ISO 42001では、自社のAI利用がもたらすリスク(個人の権利侵害、公平性、安全性など)を特定・評価し、そのリスクの大きさに応じた適切な管理策(コントロール)を実装することを求めています。 ③ 対象は「開発者」だけでなく「利用者」も 最も重要な点は、適用範囲の広さです。この規格は、AIを開発するITベンダーやテック企業だけのものではありません。 ・他社のAIモデルを利用して自社サービスを提供する企業 ・人事評価や経理業務などでAIツールを活用する一般企業(ユーザー企業) これらすべてが対象となります。つまり、「ビジネスプロセスの中でAIに関わるすべての組織」に関係する規格です。経済産業省も本規格の発行を大きく取り上げており、日本国内においても今後のAIガバナンスの要となる基準として位置づけられています。 3. なぜ今、ISO 42001が必要とされるのか? AI技術の進化スピードは、法規制や倫理観の整備スピードを遥かに上回っています。この「技術とルールのギャップ」こそが、現代企業が直面する最大の経営リスクの一つであり、ISO 42001が必要とされる背景には、複雑に絡み合う社会的課題が存在します。 まず挙げられるのが、高度なAI特有の「ブラックボックス化」とそれに伴う倫理的なリスクです。ディープラーニングなどは高度な技術により構成され、常に学習し続けることと評価のプロセスが不透明であることから、無意識のうちに特定の性別や人種を差別する「AIバイアス」や、事実に基づかない回答をする「ハルシネーション」といった問題を引き起こしかねません。こうした制御不能なリスクに対し、企業が「どのように管理・監督しているか」を客観的に証明できなければ、たった一度のミスで社会的な信頼を一瞬で失墜させる危険性を孕んでいます。 さらに、企業内部に目を向ければ「シャドーAI」の問題も深刻化しています。現場の従業員が業務効率化を急ぐあまり、会社の許可なく無料のAIツールを使用した結果、機密情報を漏洩させてしまうケースが後を絶ちません。しかし、リスクを恐れて全面禁止にすれば、AIを用いた業務革新は停滞し、結果として、競争力を失うことになります。「禁止か、放任か」という二元論ではなく、適切なガバナンス下で技術を活用するための指針が、今まさに求められています。 4. ISO 42001導入の重要性と期待できる効果 では、企業がコストと労力をかけてISO 42001に取り組むメリットはどこにあるのでしょうか。単なる「認証取得」というステータス以上の、実質的な経営的価値について解説します。 メリット①:ステークホルダーからの「信頼」の獲得 AIに対する社会的な不安感が根強い中、ISO 42001認証を取得していることは、「この企業はAIを適切に管理し、倫理的に扱っている」という客観的な証明になります。また企業によっては、自社に関するデータをAIツールへのデータ入力を禁止しているケースも存在することから、顧客や投資家、取引先に対し、AIに対する適切な対応が取れている点や、自社のAIサービスや社内システムが国際基準の安全性を持っていることをアピールできる点など、ブランディングや競争優位性の確保に直結します。今後、官公庁の入札要件や、大手企業のサプライチェーン選定基準として、「ISO 42001への準拠」が必須化されていく可能性は極めて高いでしょう。 メリット②:経営層の「説明責任」とリスク回避 仮に自社のAIが差別的な判断や事故を起こした際、「現場の担当者に任せていた」「AIが勝手に処理を行った」などでは説明責任を果たすことは出来ず、明確な要因を追求する必要があります。ISO 42001は、トップマネジメント(経営層)の関与と責任を明確に求めており、規格に沿ってリスクアセスメントを行い、対策を講じ、その記録を残しておくことは、万が一の事故や訴訟リスクが発生した際に、企業が「やるべき注意義務(デューデリジェンス)を果たしていた」ことを証明する強力な盾となります。 メリット③:イノベーションの加速 ルールを作ると開発スピードが遅くなることは事実である一方で、明確なガードレール(安全基準)がない状態では、現場は「どこまでやっていいかわからない」ため、上述したシャドーITによる意図しない情報漏えいなどのリスクが生じます。ISO 42001によって「ここまでは安全、ここからは要確認」という基準が明確になることで、開発者や利用者は安心してAI活用に挑戦できるようになり、結果としてDX(デジタルトランスフォーメーション)が加速します。 メリット④:既存のマネジメントシステムとの統合
- [ローコードで加速するDXの最適解Microsoft Power Platformがビジネス変革の鍵となる理由とは](https://shiodome.co.jp/column/53716/) - 昨今のビジネスシーンにおいて、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」や「業務効率化」は避けて通れない課題となっています。しかし、多くの企業が人材不足やITコストの増大といった壁に直面し、思うように改革が進まないのが実情です。 そうした中で、世界中の先進企業が導入を進めているソリューションがあります。それが、Microsoft社が提供するローコードプラットフォーム「Microsoft Power Platform」です。 本記事では、Power Platformが現在どれほど評価されているのか、導入していない場合に生じる組織的課題、そして具体的な活用メリットについて解説します。さらに、単なるツール導入に留まらない、データを競争力に変えるための当社の支援アプローチについてもご紹介します。 1. はじめに:Power Platformとは何か? Microsoft Power Platformは、プログラミングの専門知識をほとんど必要としない「ローコード」技術を用いて、アプリケーション開発、業務自動化、データ分析、AIチャットボット構築などを実現する統合プラットフォームです。 主に以下の製品群で構成されています1)。 Microsoft Power Apps業務アプリの作成 Power Automate業務プロセスの自動化(RPA/DPA) Power BIデータの可視化・分析 Power PagesビジネスWebサイトの構築 Microsoft Copilot StudioAIアシスタント・チャットボットの作成 その評価の高さは、単なる評判だけでなく、客観的な経済効果としても証明されています。 世界的なITアドバイザリー企業であるForrester Consulting社が2024年に発表した調査レポートでは、実際に本プラットフォームを導入した企業の意思決定者への詳細なインタビューを実施し、その財務的影響を複合的に分析しました。この調査により、複合組織(モデル企業)において以下の劇的な成果が得られることが明らかになっています1)。 224%の投資対効果(ROI): 導入から3年間で、投資額を大きく上回るリターンを達成。 6ヶ月未満での投資回収: システム導入にかかったコストを半年足らずで回収するという驚異的なスピードを実現。 最大80%の開発コスト削減: 従来のプロコード開発や外部委託と比較し、1年目に40%、2年目に60%、3年目には80%まで縮減。 さらに、Fortune 500企業の97%がPower Platformを採用しているという事実2)は、このプラットフォームが一部の先進企業だけのものではなく、ビジネスの現場における「世界標準」であることを裏付けています。 2. 現状業務・業界が抱える「見えない損失」 では、Power Platformのような統合プラットフォームを導入していない場合、企業はどのような課題に直面し続けることになるのでしょうか。多くの日本企業が抱える「現状の課題」を3つの視点から浮き彫りにします。 ① 「データのサイロ化」と意思決定の遅延 多くの現場では、データが散在しています。会計システム、SFA(営業支援システム)、そして個人のPC内にある無数のExcelファイルなど、これらが連携されていないため、経営層がレポートを求めた際、担当者が手作業でデータを集計・加工することになります。 結果として、リアルタイムな状況把握ができず、意思決定のスピードが鈍化します。いわゆる「データはあるが、活用できない」状態です。 ② アナログ業務による「2025年の崖」と人材不足 紙の請求書処理、メール添付ファイルの転記、システム間のコピーアンドペースト作業……こうした定型業務に多くの時間を割いている企業は依然として少なくありません。 労働人口が減少する中、こうした低付加価値な作業に貴重な人的リソースを消費することは、企業の競争力を著しく低下させます。また、レガシーシステム(古い基幹システム)がブラックボックス化し、新しいビジネスモデルへの対応を阻害する「2025年の崖」問題も深刻化しています。 ③ 「シャドーIT」のリスクと開発のボトルネック 現場部門が業務改善を求めてIT部門にシステム開発を依頼しても、IT部門はリソース不足で対応に時間がかかるというケースは珍しくありません。待ちきれない現場が、独断でセキュリティの弱い無料ツールや個人のスクリプトを使い始めると、「シャドーIT」となり、情報漏洩のリスクが高まります。 「現場のスピード感」と「ITガバナンス」のバランスが取れていないことが、多くの組織が共通する悩みです。 3. Power Platformにできること・活用のメリット Power Platformを導入することで、前述の課題はどのように解決されるのでしょうか。最大の特長は、「データの収集・統合・分析・アクション」を一気通貫で実現できるエコシステムにあります2)。 ① ビジネスユーザーを「開発者」へ:IT部門待ちの解消 従来のシステム開発では、現場が要望を出してからIT部門の実装を待つまでに数ヶ月かかることが一般的でした(ITバックログの問題)。 Power Platformは、ドラッグ&ドロップの直感的なインターフェースで、プログラミング経験のないビジネスユーザーでもアプリ作成やレポート生成を可能にします。
- [AI導入成功への道標:準備度チェックリストで自社の課題を見える化](https://shiodome.co.jp/column/53720/) - 1. はじめに: AI(人工知能)の導入は、競争力を維持するために不可欠な要素となりつつあります。世界的に見ても、企業のAI活用は急速に進展しており、ビジネスのあらゆる領域でその影響が顕著になっています。しかし、多くの経営者は、AIのユースケースをテスト段階から抜け出すことができず、規模拡大、ガバナンス、ビジネスインパクトの測定方法が分からずに苦戦しているのが現状です。 こうした状況を踏まえ、本稿ではAI導入に向けた準備状況を評価するためのチェックリストをご紹介します。このチェックリストは、ビジネスと戦略、プロセス、技術アーキテクチャ、データ、人材とスキル、ガバナンスとポリシー、セキュリティとリスク、組織の連携という、AI導入において重要な8つの側面から準備状況を評価するものです。現状を正しく理解し、具体的なアクションプランを策定するための羅針盤として、ご活用していただければ幸いです。 2. AI導入の現状:世界と日本の動向 総務省「情報通信白書」(令和7年版)によれば、AIの導入・活用はグローバル規模で見ると米国が先行し、中国が猛追している状況です(1)。 日本国内においては、AIの導入・活用は諸外国に比べて遅れているものの、近年その動きは加速しており、特に大企業を中心に業務効率化や顧客サービス向上を目的としたAI導入が進んでいます。 しかしながら、中小企業においてはAI導入に必要な知識・スキル、コストなどが障壁となり、導入が進んでいないのが現状です。 実際、中小企業全体の6割以上(64.4%)が生成AIとの付き合い方に悩んでいるというデータもあります(1)。AI導入の効果を最大限に引き出すためには、データ利活用体制の整備、セキュリティ基盤の強化、初期導入コストの抑制などが不可欠ですが、これらは日本企業全体が抱える課題と言えるでしょう(1)。 3. AIレディネス(Readiness)が導入活用の成功を左右する 人工知能は、組織の運営方法を大きく変革する可能性を秘めています。 行動すべきかどうかではなく、組織が自信を持って行動できる準備ができているかどうかが、AI導入の成否を分けると言えるでしょう。 以下に、AI導入の準備状況を評価するためのチェックリストをご紹介します。 各項目の質問に答えることで、現状を把握し、改善すべき点を見つけることができます。 4. チェックリストで発見された課題に対応するために 上記チェックリストの結果、課題が明確になった場合、どのように対応すれば良いのでしょうか。 企業がAI導入を成功させるためには、さまざまな側面からのアプローチが必要です。 以下では、チェックリストの項目ごとに、当社が提供できる課題解決を支援するサービスをご紹介します。 A. ビジネスと戦略の準備、B.プロセス準備に関する課題:業務DXサービス、SaaS導入支援 AI導入の成否は、明確な戦略と、それを支える業務プロセスの最適化にかかっています。AI戦略がビジネス戦略と整合しているか、具体的な目標が明確に定義されているか、既存の業務プロセスがAIの統合に対応できる状態にあるかなどを確認し、課題があれば、以下のサービスが有効です。 業務DX支援: 独自のITシステム診断表「ITヘルスチェック」により、業務課題だけでなくITインフラ基盤の課題まで網羅的に抽出・可視化します。経営者のコミットメントを支援し、まずはできるところから始めてDXの成功体験を積み重ね、社内の理解と推進力を高めます。オフィス移転やレイアウト変更などの大規模な変革プロジェクトにも対応可能です。 SaaS導入支援: 会計・経理、人事・労務、法務に関する豊富な専門知識と実務経験を基に、最適なSaaSを提案し、計画~導入~運用~定着化まで一貫して支援します。5~10年後の成長を想定しながら、現在だけでなく未来の価値創出を共に考えます。 C. 技術アーキテクチャ、D.データ準備に関する課題:MS Power Platform導入・運用支援、ERP導入支援 AI活用には、AIシステムを支える強固な技術基盤と、高品質なデータが不可欠です。 スケーラブルなインフラストラクチャが整っているか、AIモデルのトレーニングに必要なデータが揃っているかなどを確認し、課題があれば、以下のサービスをお勧めします。 MS Power Platform導入・運用支援: Power Platformは、ローコード開発で業務効率化とデータ活用を促進する統合ツールです。アプリ開発、自動化、データ分析を容易にし、データと情報を最大限に利用することで企業全体の生産性向上につながります。Power Platformコネクタで数多くの既存システムと接続することも可能で、ビジネス全体のデジタル変革を加速します。 ERP導入支援: 業界・業務ごとに異なるプロセスや商慣習などを深く理解し、それぞれの業界・業務特性に応じた最適なERP設計を支援します。ERPシステムの導入を単なる「仕組みの導入」ではなく「経営・業務改革の共創」と位置づけ、クライアント主体の共創型アプローチで支援します。 E. 人材とスキル、F.ガバナンスとポリシーに関する課題:情報セキュリティ(ISO/IEC 27001:2022認証取得)支援 AIを安全かつ倫理的に活用するためには、組織全体のAIリテラシー向上と、適切なガバナンス体制の構築が不可欠です。 AI関連タスクを実行するために必要なスキルを習得できるよう、AIトレーニングプログラムがあるか、データプライバシー、セキュリティ、コンプライアンスに関する要件を遵守するためのAIガバナンスフレームワークがあるかなどを確認し、課題があれば、以下のサービスが対応できます。 情報セキュリティ(ISO/IEC 27001:2022認証取得)支援: 情報セキュリティリスクを経営リスクと捉え、まずはクライアントの情報セキュリティ体制の現状を客観的に評価する『ISMSアセスメント評価サービス』から始めます。アセスメントを通じて、潜在的なリスクやISMS規格要求事項とのギャップを正確に洗い出し、その結果に基づいて、企業の情報資産を守るための最適な仕組み(ISMS)の構築と継続的改善を包括的に支援します。 G. セキュリティとリスク、H.組織の連携に関する課題:サイバーセキュリティ導入支援、デジタルゲートウェイ(戦略的WEB・SNS制作)支援 AIシステムのセキュリティ対策は、企業の信頼を維持するために必要です。 また、AI導入を成功させるためには、組織全体の連携と協力が不可欠です。 AIシステムへの不正アクセスを防ぐためのインシデント対応計画があるか、AI戦略とイニシアチブについて組織全体で合意形成ができているかなどを確認し、課題があれば、以下のサービスがサポートできます。 サイバーセキュリティ導入支援: サイバーセキュリティリスクを経営リスクと捉え、クライアントの情報セキュリティとも連動して、IT資産を守る仕組みを構築し、継続的改善を進め、リスクを軽減するためのサポートをします。サイバー攻撃の高度化、クラウドサービスの増加、リモートワークの普及などによる情報漏えいのリスクに備え、ゼロトラストセキュリティとの統合も重要だと考えています。 デジタルゲートウェイ(戦略的WEB・SNS制作)支援: 企業のフィロソフィー、ブランディング、マーケティングを一貫・統合した戦略的なWEB・SNS制作を支援することにより、差別化戦略を実現します。企業のフィロソフィーを正しく理解し、WEB・SNSのデザイン、ビジュアル、コンテンツに反映することで、ターゲットユーザーの共感度を高め、ブランドロイヤリティを高めることができます。 5. まとめ:AIの可能性を最大限に引き出すために AI導入は、ビジネスの未来を切り拓くための強力な武器となりえます。 しかし、その力を最大限に発揮するためには、周到な準備が不可欠です。 本稿でご紹介したチェックリストは、そのための第一歩に過ぎません。 AI導入に向けて何から始めれば良いのか、どのような課題があるのか、迷われている企業もいらっしゃるかもしれません。 そんな時は、ぜひご相談ください。 多様な課題に対応できる専門知識と豊富な経験を持つ私たちが、個々の状況に合わせて最適なソリューションをご提案し、AI導入の成功を全力でサポートいたします。 参考資料:
- [「アンチウイルスだけ」では企業を守れない時代:Microsoft Defender for Endpointが選ばれる理由と導入戦略](https://shiodome.co.jp/column/54026/) - 1. Microsoft Defender for Endpointとは?市場を牽引する圧倒的な評価 「ウイルスの検知ソフトは入れているから大丈夫」。 もし、セキュリティ対策に対してこの認識でいる場合は、非常に危険な状態にあるといえるかもしれません。昨今のサイバー攻撃は非常に巧妙化しています。メールの添付ファイルを開かなくても感染する「ファイルレス攻撃」や、正規のシステムツールを悪用して検知をすり抜ける手口が一般化し、従来のアンチウイルスソフト(EPP:Endpoint Protection Platform)だけでは防御しきれない事例が急増しています。 こうした脅威に対抗するために、多くの企業で導入が加速しているのが、Microsoft社が提供しているエンタープライズ向けエンドポイントセキュリティプラットフォーム「Microsoft Defender for Endpoint」です。 Microsoft Defender for Endpoint(以下、MDE)は、WindowsPCに標準搭載されていたアンチウイルスである「Windows Defender」に加えて、企業に必要な機能を内包したより強力なプロダクトとなります。MDEは、ウイルスの侵入を防ぐ「予防(EPP)」と、侵入後の脅威を検知して対応する「EDR(Endpoint Detection and Response)」を統合した包括的なセキュリティプラットフォームです。さらに、Microsoft社のクラウドパワーとAI(人工知能)を活用し、世界中から収集される膨大な脅威インテリジェンス(Microsoft Threat Intelligence)を基に、リアルタイムで検知・防御することもできます。 その他、市場評価も極めて高く、Gartner社が公開する「Magic Quadrant for Endpoint Protection Platforms」では長年にわたり「リーダー」の座を維持してきました(1)。さらに 2025 年 5 月、AV-Comparatives が実施したAnti-Tampering Testにおいて、MDEはあらゆる改ざん試行を完全に阻止し、最高評価を獲得しています(2)。攻撃者がレジストリ改変やサービス停止、マルウェア除外設定の挿入などを試みても、MDEの組み込みアンチタンパリング機能がユーザー権限や管理者権限を問わず不正操作を封じ、攻撃後の隠蔽活動を未然に防ぐことが可能となります。 2. MDEを使用していない企業が抱える「見えないリスク」と課題 では、MDEのような高度なEDRソリューションを導入していない場合、企業や現場はどのような課題に直面し続けることになるのでしょうか。 課題①:「侵入されたことに気づけない」サイバー潜伏のリスク 従来のアンチウイルスソフトは、「既知のウイルス」をブロックすることには長けていますが、近年主流となっているファイルレスマルウェアなど、従来のパターンマッチングに該当しないケースには無力です。また、ランサムウェア攻撃の多くは、侵入してからデータを暗号化するまでに数週間から数ヶ月の「潜伏期間」を設けることがよく見られます。この間、攻撃者は社内ネットワークを探索し、機密データを盗み出す行為など、いくつもの要素があるため、従来のEPPのパターンマッチング「対象ファイルが不審かどうか」を判断するだけでは、脅威を完全に認識することが難しくなっています。結論として、EDR機能を持たない環境では、この「潜伏している攻撃者」を可視化できません。被害が発生し、画面がロックされて初めて「攻撃されていたこと」に気づく状況だと、対応としては遅れが生じてしまいます。 課題②:セキュリティツールの乱立による「運用疲れ」とコスト増 多くの企業では、以下のような「継ぎ接ぎ」の対策が行われています。 PCにはA社のウイルス対策ソフト サーバーにはB社のセキュリティ製品 脆弱性管理にはC社のスキャンツール ログ管理にはD社のシステム このように統合されていないツールが存在することで、ライセンスコストの増加だけではなく、管理画面を行き来するIT担当者の負荷(運用コスト)も肥大化してしまいます。 課題③:ハイブリッドワーク環境における「境界型防御」の限界 これまでは社内にファイアウォールやUTM(Unified Threat Management)、IPS/IDS (Intrusion Prevention / Detection System) を設置し、「社内ネットワークは安全、社外は危険」という境界線を引く対策が主流でした。しかし、テレワークやハイブリッドワークが普及した現在、社員は自宅やカフェからクラウドサービスに直接アクセスすることが一般的になっています。 従って、従業員が業務をする環境・場所によって、統一されたセキュリティポリシーが適用されず、端末の安全性を確保することが困難になります。 3. MDEにできること・導入の主要メリット
- [「人事労務のDX」が経営を変える ─ SmartHRが実現する業務改革](https://shiodome.co.jp/column/54425/) - 企業経営において、人事労務管理は事業運営の根幹を支える重要な業務です。しかし、令和の時代になっても、多くの企業では依然として紙ベースの手続きや手作業による管理が残っており、担当者の負担増大や業務効率の低下、ひいては経営判断の遅れを招いています。働き方改革の推進、労働関連法規の頻繁な改正、そして人材獲得競争の激化という環境下において、人事労務業務のデジタル化は、単なる効率化の手段ではなく、避けて通れない経営課題といっても過言ではありません。 本コラムでは、クラウド人事労務ソフト「SmartHR」について、その概要と市場での評価、導入によって解決できる課題、そしてRSM汐留パートナーズが提供する導入支援サービスの価値について詳しく紹介します。 1. SmartHRとは─人事労務の常識を変えたクラウドサービス SmartHR(スマートエイチアール)は、株式会社SmartHRが提供するクラウド型人事労務ソフトウェアです。2015年のサービス開始以来、入社手続き、雇用契約、年末調整、社会保険・雇用保険の届出など、煩雑な人事労務業務をペーパーレス化し、効率的に管理できるプラットフォームとして急成長を遂げてきました。 特徴としては、従業員自身がスマートフォンやPCから個人情報を入力し、その情報がそのまま各種届出書類に反映される仕組みにあります。これにより、人事担当者が手作業で情報を転記する必要がなくなり、入力ミスの防止と業務時間の大幅な削減を同時に実現できます。加えて現在は、e-GovAPIと連携した電子申請、マイナンバー暗号化保管、ISO/IEC27001及びSOC2TypeⅡ認証の取得など、セキュリティ・コンプライアンス面でも万全の体制が取られています(1)。 SmartHRは、人事労務ソフト市場において圧倒的なシェアと高い評価も獲得しています。2025年に公開している情報によれば、SmartHRの登録企業数は7万社以上に達し、利用継続率は99%以上を維持しています(1)。この継続率の高さは、導入企業が実際に業務改善効果を実感し、サービスに満足していることの証左といえるでしょう。クラウド人事労務ソフト市場におけるシェアについても、SmartHRは7年連続でシェアNo.1を獲得しています(1)。競合製品がひしめくSaaS市場において、トップランナーとして走り続けている事実は、製品としての完成度と顧客満足度の高さを客観的に証明しています。 2. SmartHRがない社会─企業が抱える人事労務の課題 SmartHRのようなクラウド人事労務ソフトが存在しない、あるいは導入されていない環境では、企業はどのような課題に直面するのでしょうか。ここでは、従来型の人事労務管理が抱える問題点を整理したうえ、特徴のある数点をあげます。 紙書類による非効率な業務プロセス 従来の人事労務管理では、入社手続き、雇用契約書の締結、扶養控除申告書の回収など、膨大な「紙とハンコ」のやり取りが発生します。人事担当者は、従業員から提出された書類の内容を目視で確認し、不備があれば電話やメールで修正を依頼し、正しい情報をシステムへ手入力し、最後に役所への届出書類を作成して郵送や持参で提出する──この一連のアナログ作業を延々と繰り返さなければなりません。特に年末調整の時期や4月の入社シーズンには、人事担当者の残業時間が大幅に増加し、本来注力すべき採用活動や制度設計といった「コア業務」が完全にストップしてしまうケースも珍しくありません。労働人口が減少する中、貴重なバックオフィスの人材リソースを「単なる作業」に浪費することは、企業にとって大きな損失です。 情報の分散と管理の煩雑さ 紙ベースの管理では、従業員情報が複数の書類やファイルに分散して保管されることになります。住所変更があった場合、給与システム、勤怠システム、社会保険関連書類など、複数の場所で情報を更新する必要が生じます。この作業の抜け漏れは、届出ミスや給与計算の誤りにつながるリスクがあります。また、過去の書類を参照する必要が生じた際に、保管場所を探し出すまでに時間を要することも少なくありません。紙書類の保管スペースの確保も、オフィスコストの観点から無視できない課題の一つです。 法改正への対応負担 労働基準法、社会保険関連法規、マイナンバー制度など、人事労務に関連する法令は頻繁に改正されます。これらの改正に適切に対応するためには、最新の法令知識を習得し、社内の運用ルールや書類様式を都度アップデートする必要があります。専任の人事担当者を配置することが難しい中小企業にとって、この対応負担は特に大きいです。法改正への対応が遅れた場合、届出の不備や法令違反につながる可能性があり、企業としてのコンプライアンスリスクを抱えることになります。 3. SmartHR導入のメリット─人事労務業務を根本から変革 SmartHRの導入は、これらの課題を一掃し、人事労務のあり方を根底から変革します。 ①ペーパーレス化による業務効率の飛躍的向上 SmartHRを導入することで、入社手続き、雇用契約、年末調整といった主要な人事労務業務がすべてオンラインで完結します。例えば入社手続きでは、内定者に招待メールを送るだけで、本人がスマホから必要情報を入力してくれます。人事担当者はその情報を確認し、クリック一つで社会保険・雇用保険の電子申請まで行うことができます。実際にSmartHRを導入した企業では、入社手続きにかかる時間を3分の1以下に短縮できた、あるいは年末調整のペーパーレス化により数千枚の紙を削減できたといった事例が多数報告されています(1)。これにより、人事部は「作業」から解放され、「人に向き合う時間」を創出できます。 ②「自然と集まる」最新の従業員データベース SmartHRの優れた点は、「手続きを行うことで、自然と最新の社員データが蓄積される」という仕組みにあります(1)。従業員自身がマイページから住所変更や扶養変更の手続きを行うため、データベースは常に最新かつ正確な状態に保たれます。人事担当者は、変更申請の内容を確認し承認するだけで手続きが完了するため、メンテナンスの手間がかかりません。氏名、住所、家族情報だけでなく、外国人材の在留資格情報や異動履歴なども一元管理できるため、「ここを見れば社員のすべてが分かる」という信頼できるデータベースが構築されます。 ③法改正への自動対応とコンプライアンス強化 クラウドサービスであるSmartHRは、法改正に応じてシステムが自動的にアップデートされます(1)。届出書類の様式変更や年末調整に関する制度改正についても、すべてサービス提供側で対応されるため、ユーザー企業側で個別に対応内容を把握・反映する必要はありません。これにより、人事担当者は煩雑な法改正対応に時間を取られることなく、常に最新の法令に準拠した運用を実現でき、結果としてコンプライアンスリスクの大幅な低減につながります。 ④従業員体験(EX)の向上 ユーザー層を問わず「使いやすさ」も大きなメリットとして挙げられます(1)。SmartHRは、マニュアルがなくても直感的に操作できるユーザーインターフェースを追求しています。従業員はスマホ一つで入社手続きや年末調整を完了でき、給与明細や源泉徴収票もいつでもWeb上で閲覧できるようになります。紙を配布されたり、ハンコを押すために出社したりする必要がなくなり、従業員の利便性と満足度(従業員体験)の向上に寄与します。 4. RSM汐留パートナーズが提供する付加価値 SmartHRは極めて優れたツールですが、ツールはあくまで「手段」であり、導入するだけで自動的に会社の課題がすべて解決するわけではありません。「自社の就業規則に合わせた設定はどうすればいいのか」「既存の給与ソフトとの連携はどう設計すべきか」「法的な観点から見て、現在の運用フローに問題はないか」。こうした実務的・専門的な課題は、ツール導入時や運用フェーズにおいて必ず浮上します。 ここで、私たちRSM汐留パートナーズの強みが発揮されます。当社は、会計事務所として長年にわたりクライアント様の給与計算、社会保険手続き、年末調整業務を支援してきた実績を持つ総合ファームです。単にSmartHRのライセンスを販売・設定代行するだけでなく、人事労務の「実務」と「法律」の両面から、クライアント様をサポートいたします。 人事労務業務のデジタル化は、単なる効率化にとどまらず、従業員体験の向上、コンプライアンス強化、戦略人事の実現など、多方面にわたる効果をもたらします。SmartHRは、その実現を支援する強力なツールとして、多くの企業から選ばれ続けています。人手不足が深刻化し、限られたリソースで成果を上げることが求められる時代において、人事労務業務の改革は経営課題の一つです。 SmartHR導入を少しでも興味がございましたら、ぜひ一度当社が提供している「SaaS導入支援」サービスをご確認していただけたら幸いです。 参考資料: (1)https://smarthr.jp/
- [クラウド時代のデータ保護─ Barracuda Microsoft 365向けクラウドバックアップ](https://shiodome.co.jp/column/54473/) - デジタルトランスフォーメーション(DX)の加速に伴い、企業のITインフラは劇的な変化を遂げました。かつて社内のサーバールームに鎮座していた業務基盤は、今やクラウド上へと移行し、特に「Microsoft 365」はビジネスコミュニケーションのOSとして不動の地位を築いています。場所やデバイスを選ばない働き方が実現した一方で、クラウドへの依存度が高まるにつれ、新たなリスクも浮上しています。「データがクラウドにあるから安全だ」「マイクロソフトが守ってくれる」という認識は、現代のサイバーセキュリティにおいて最大の脆弱性となり得ます。 Microsoft 365をはじめとするクラウドサービスは、インフラの可用性は保証していますが、ユーザーデータの保護については利用者側の責任とされています。つまり、誤って削除したファイルやランサムウェアに暗号化されたデータの復旧は、自社で備えておかなければならないことです。 今回はその解決策の一つとして、クラウドバックアップソリューション「Barracuda Cloud-to-Cloud Backup」について、なぜ今このような措置が必要なのかを含めて詳しくご紹介します。 1. Barracudaとは ─ セキュリティ業界で信頼を築いてきた実績 Barracuda Networks(バラクーダネットワークス)は、2003年に米国カリフォルニア州で設立されたサイバーセキュリティ企業です。創業以来20年以上にわたり、メールセキュリティ、ネットワーク保護、データ保護の分野でソリューションを提供し続けてきました。現在、世界中で20万社以上の企業がBarracudaのソリューションを導入しています(1)。その顧客基盤は中小企業から大企業まで幅広く、特にメールを起点とした脅威対策においては業界をリードする存在として知られています。Barracudaが提供するソリューションは大きく分けて以下の領域をカバーしています。 メールセキュリティ: フィッシング、スパム、マルウェアなどメール経由の脅威から組織を保護 アプリケーションセキュリティ: WebアプリケーションやAPIへの攻撃を防御 ネットワークセキュリティ: 拠点間接続やリモートアクセスの安全性を確保 データ保護: Microsoft 365やAzureなどクラウド環境のバックアップと復旧 また、Barracudaの優位性は、客観的な市場評価によっても裏付けられています。CRN®が発表した「Products of the Year」では、Barracuda Email ProtectionがEmail & Web Security Product of the Yearを受賞し、チャネルパートナーにも最も収益性の高いメールセキュリティ製品として評価されました。CRNによれば、 「AI を活用した多層防御がフィッシングやランサムウェアを効果的に遮断する」 「BarracudaONE ダッシュボードは可視性と制御を一元化し、一括修復により対応時間を最大 10 倍短縮する」といった点が受賞理由に挙げられています(2)。 2. なぜ今、クラウドバックアップが必要なのか ─ 企業が直面するデータ消失リスク 多くの企業がMicrosoft 365を導入する際、「データはマイクロソフトが自動的に守ってくれる」という誤解を抱きがちです。しかし、ここに現代企業が直面する大きな落とし穴があります。 Microsoftは、Microsoft 365のサービス基盤(データセンター、ネットワーク、アプリケーション)の可用性については責任を負いますが、ユーザーが作成・保存したデータの保護については、利用者側の責任と明確に定めています。これは「責任共有モデル」と呼ばれる考え方で、クラウドサービス全般に共通するものです(3)。つまり、たとえ以下のような事態が発生した場合、データの復旧は利用企業が自ら対処しなければなりません。 従業員が誤ってファイルを削除してしまった 退職者のアカウントを削除したら、重要なデータも消えてしまった ランサムウェアに感染し、OneDriveやSharePoint上のファイルが暗号化された 悪意のある内部者によってデータが意図的に削除された ランサムウェア攻撃の多くはメール経由で開始されており、企業の受信トレイが攻撃の最初の侵入口となっています(4)。それに加え、被害が拡大する背景には「時間」の要素も大きく、侵害発覚から 9 時間を超えて対応が遅れた組織は、79 % の確率でランサムウェアに発展したと指摘しています(4)。さらに、メール侵害 1 件あたりの平均対応コストは 217,068 米ドルに達し(フォレンジック調査・復旧・ダウンタイムを含む)、41 % の組織が評判失墜による商機喪失を経験したことも明らかになっています(4)。 Share Point Onlineなどに搭載されている「バージョン管理機能」は、あくまでバージョン管理機能であり、完全なバックアップを保証しません。また、「ごみ箱機能」も、誤って削除したファイルを復元する機能ではあるものの、通常93日程度でデータは完全に消去されてしまうことから、完全なバックアップにはなり得ません。何よりランサムウェア攻撃者が管理者権限を奪取した場合、ごみ箱の中身ごと完全に削除されるリスクがあります。「標準の復元機能があるから大丈夫」という考えは、経営リスク管理の観点からは極めて危険な状態と言わざるを得ません。 3. Barracuda Cloud-to-Cloud Backup ─ Microsoft 365を丸ごと守る
- [情報セキュリティ・インシデント対応マニュアルは、いまや「必須の経営文書」](https://shiodome.co.jp/column/54615/) - 1. なぜ今「情報セキュリティ・インシデント対応」が重要なのか デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展に伴い、企業活動とITシステムは不可分なものとなりました。しかし、それは同時に、サイバー空間におけるリスクが経営の根幹を揺るがす最大の脅威へと変貌したことを意味します。 IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が発表した最新の「情報セキュリティ10大脅威 2025」においても、「ランサムウェアによる被害」や「サプライチェーンの弱点を悪用した攻撃」が依然として組織向け脅威の最上位に位置付けられています(1)。かつての愉快犯的なウイルス拡散とは異なり、2025年の現在における攻撃は、明確に「事業停止」や「身代金」を狙った標的型攻撃へと高度化しています。もはや従来の境界防御だけで「侵入を100%防ぐ」ことは現実的ではないと考えられます。 このような「侵入されることを前提(Assume Breach)」としなければならない過酷な環境下において、企業に求められるのは「防御力」以上に、インシデント発生時の「対応力(レジリエンス)」です。攻撃者は侵入後、わずかな時間でシステム全体へ横展開を行います。このとき、初動対応が遅れるほど、被害額は幾何級数的に増大します。 したがって、インシデント対応は単なるIT部門の技術課題ではありません。システム停止の判断、法的対応、取引先への説明責任など、極めて高度な経営判断が求められる総力戦となります。こうした背景から、有事の際に組織が迅速かつ的確に動くための全体設計図――すなわち「情報セキュリティ・インシデント対応マニュアル」の整備は、現代企業にとって必須の経営基盤となってきます。 2. インシデント対応マニュアルが担うべき基本構造 では、実効性のあるインシデント対応マニュアルとは、具体的にどのようなものであるべきでしょうか。 米国国立標準技術研究所(NIST)のガイドライン(SP800-61)でも推奨されている通り、マニュアルは「統治」「識別」「防御」「検知」「対応」「復旧」というサイバーセキュリティの成果を最大限に発揮する6つの機能をカバーし、組織の意思決定プロセスを具現化したものである必要があります(2)。そのために不可欠なのが、「定義」「評価」「伝達」という3つの柱です。 第一の柱は「インシデントの定義と通知基準」の明確化です。現場で最も時間を浪費するのは、「これは報告すべき問題か否か」という迷いです。外部からの不審な通信やシステム挙動の違和感をどこまでインシデントの予兆として捉えるか、また、どのレベルに達したら経営層や監督官庁へ通知するかという「トリガー」を事前に定義する必要があります。これを曖昧にしておくと、現場担当者が問題を抱え込み、報告が上がった時には手遅れになっている事態を招きます。 第二の柱は「評価と重大度分類」です。インシデントの影響度に基づき、「低(Low)・中(Middle・高(High)・危機(Critical)といったランク付けを行う仕組みが望まれます。専門機関も推奨するように、影響範囲(全社か一部か)や情報の機密性(個人情報か公開情報か)をマトリクス化し、限られたリソースをどこに集中投下すべきかという経営判断を実現できます。 第三の柱として、「エスカレーションと通知フロー」の設計が挙げられます。それは具体的、誰が、誰に、どのタイミングで情報を伝えるかという経路(フロー)の確立を指します。初期対応者からIT責任者、法務、経営層へと、情報が歪曲や遅滞なく伝達される構造を作らなければなりません。これら3つの要素が有機的に結合して初めて、マニュアルは生きた手順書として機能することが期待られます。 3.「準備していること」が企業の信用を守る 上記の概要だけ踏まえると、情報セキュリティ・インシデント対応マニュアルの整備は、社内統制のためだけの施策だと認識されがちです。実は、それだけでなく、具体的な「コスト削減」と「信用の保護」にも直結します。 IBM Securityが発表した最新の「データ侵害のコストに関する調査レポート 2025」によると、インシデント対応(IR)チームを設置し、かつ定期的なテスト(訓練)を行っている組織は、そうでない組織に比べて、データ侵害のコストを大幅に低く抑えられたという結果が出ています(3)。これは、マニュアルに基づいた迅速な初動対応(First Response)がいかに被害拡大(=コスト増大)を防ぐかを如実に物語っています。準備不足は、そのまま企業の財務リスクに直結することが明らかになっています。 サイバー攻撃を受けた事実そのものは、被害者としての側面もあります。しかし、その後の対応において、迅速に状況を把握し、透明性のある説明ができるかどうかは、企業の「準備の質」に依存します。準備がある企業はステークホルダーに対して「危機管理能力が高い」という安心感を与え、ブランド価値の毀損を最小限に抑えることが可能です。 また、経済産業省の「サイバーセキュリティ経営ガイドライン Ver 3.0」においても、経営者がリーダーシップを取って対策を進めることが強く求められており、サプライチェーン全体のリスク管理として、取引先選定の要件に「インシデント対応体制の有無」が問われるケースも増えています(4)。最新のガイドラインに準拠したマニュアルを整備し、有事に備えていること自体が、ビジネスパートナーとしての適格性を証明する重要な材料となってきました。 4. 実務で機能する体制作りのポイント 完成度の高いマニュアルを策定しても、実際のインシデント発生時にそれが機能しなければ意味がありません。実効性を高めるためには、以下の3つのポイントを意識した体制作りが必要です。 (1)役割と責任の明確化 インシデント対応は組織全体で取り組むべき総力戦である一方、「全員で対応する」という曖昧な体制はむしろリスクになり得ます。関係者が増えるほど意思決定権限や役割分担が不明確になりやすく、その結果、判断の停滞や対応の重複が発生し、インシデント復旧プロセスの遅延を招く可能性があるためです。RACI(実行責任、説明責任、相談先、報告先)といったフレームワークを用い、インシデントマネージャー、技術担当、法務担当、広報担当など、誰が何の権限を持つかを可視化します。これにより、有事の際に指揮系統が乱れることを防げます。 (2)継続的な評価と学習(PDCA) マニュアルや判断基準は、定期的に見直し、アップデートし続ける必要があります。また、マニュアルの実効性を検証するために、定期的な「机上訓練(Tabletop Exercise)」を実施することも極めて重要です。訓練を通じてプロセスの不備を洗い出し、改善していくサイクルこそが、組織の対応能力を真に高められます。 (3)外部専門家との連携 フォレンジック調査(デジタル鑑識)や高度な法的判断は、外部の専門家の知見が不可欠な領域です。いざという時にスムーズに支援を受けられるよう、平時からセキュリティベンダーや弁護士との連携手順をマニュアルに組み込んでおくことが、迅速な解決への近道となります。 5. 支援ニーズが高まる今こそ整備の好機 情報セキュリティ・インシデント対応体制の構築は、火事が起きてから消火器を買いに行くような泥縄式の対応では間に合いません。平時の今だからこそ、冷静な視点でリスクを洗い出し、組織全体を俯瞰したマニュアル・ガイドラインを整備することができます。「何か起きてから」では遅く、「何も起きていない今」こそが、将来のリスクを大幅に低減させる最大の好機です。 しかし、実効性のあるガイドライン策 定には専門的な知見が必要であり、社内のリソースだけで完遂するのは容易ではありません。そのため、多くの企業が外部専門家による支援を積極的に導入しています。当社には、セキュリティの最前線を熟知したプロフェッショナルが揃っており、単なるマニュアル作成に留まらず、実効性の高い運用設計から、万が一のインシデント対応体制の確立まで徹底サポートします。 「備えあれば憂いなし」という言葉通り、強固なインシデント対応体制は、企業が安心してビジネスに邁進するための土台です。体制整備にお悩みであれば、ぜひRSM汐留パートナーズの専門家に一度ご相談ください。お客様の情報セキュリティ対応力を飛躍的に高め、信頼という資産を守り抜くためのパートナーとして、私たちが全力でサポートいたします。 【引用・参考文献】 (1)情報セキュリティ10大脅威2025|情報セキュリティ|IPA独立行政法人情報処理推進機構 (2)セキュリティ関連NIST文書について|情報セキュリティ|IPA独立行政法人情報処理推進機構 (3)2025年データ侵害のコストに関する調査|IBM (4)サイバーセキュリティ経営ガイドラインと支援ツール(METI/経済産業省)
- [バックオフィスDXの最適解─ジョブカンの実力と活用戦略 ](https://shiodome.co.jp/column/54908/) - 労働人口の減少、働き方改革関連法の施行、そしてリモートワークの定着。日本企業を取り巻く環境は激変しており、バックオフィス業務にはかつてないほどの「スピード」と「正確性」が求められています。もはや、勤怠管理や経費精算、稟議決裁といった業務を「紙とハンコ」や「Excel」で処理することは、単なる非効率というだけでなく、企業のコンプライアンスリスクや成長阻害要因になりつつあります。こうした課題に対し、多くの企業が最適解として選んでいるのが、クラウド型バックオフィス支援システム「ジョブカン」です。 本コラムでは、クラウド型バックオフィス支援システム「ジョブカン」の市場評価や、導入が企業にもたらす本質的な変革、そして私たちが提供する専門家としての付加価値について詳述します。 1. ジョブカンとは何か ジョブカンは、株式会社DONUTSが提供するバックオフィス向けクラウドサービスシリーズの総称です。2010年に勤怠管理サービスとして提供を開始して以降、経費精算、ワークフロー、労務管理、給与計算、会計へと機能領域を拡大し、現在では管理部門の主要業務を一通りカバーする統合型プラットフォームへと成長しています。個別最適ではなく、業務全体の流れを意識した設計が特徴です。 その普及状況は国内SaaS市場でも突出しており、ジョブカンシリーズの累計導入社数は30万社を超えています(1)。さらに、SaaS比較サイトにおいても複数のサービスが主要カテゴリーで高い評価を獲得しており、勤怠管理分野をはじめとする11部門で1位に選出されています(1)。導入実績と第三者評価の両面から見ても、バックオフィス業務を支える基盤として高い信頼を得ているサービスと言えます。 2. ジョブカンなき企業の現実 ジョブカンのようなクラウド型の統合システムを導入せず、従来の手法を続けている企業では、具体的にどのような問題が起きているのでしょうか。多くの現場で「慣習」として残っているアナログ業務は、実は経営を圧迫し、企業の成長を阻害する大きな要因となっています。 働き方改革関連法の施行により、企業は従業員の労働時間を客観的かつ適正に把握する義務を負っています。しかし、タイムカードや手書きの出勤簿、あるいは自己申告制のExcel管理では、リアルタイムな労働時間の把握は不可能だと断言できます。「月末にまとめて集計してみたら、法定残業時間を大幅に超えていた」という事態が頻発し、これは労働基準監督署からの是正勧告や、最悪の場合は送検といった重大なコンプライアンス違反に直結します。また、36協定の超過アラートを出すことも難しく、管理者が気づかないうちに「隠れ残業」が常態化し、従業員のメンタルヘルス不調や離職リスクを高める温床となりかねません。 勤怠管理と並んで課題となりやすいのが、社内の意思決定プロセス、すなわち「ワークフロー」です。紙の稟議書にハンコを押して回覧するスタイルでは、承認者が不在や出張中である場合に、そこで意思決定が数日間ストップしてしまいます。テレワーク環境下においては、ハンコを押すためだけに出社するという本末転倒な状況も生まれます。ビジネスのスピードが加速する現代において、意思決定の遅れは致命的な機会損失です。競合他社がデジタル承認で即断即決している間に、自社は書類の所在確認に追われていませんか。このスピード感の欠如は、企業の競争力を徐々に、しかし確実に削いでいきます。 システムが分断されていることによる業務負荷も深刻です。タイムカードの集計結果を給与ソフトに手入力し、経費精算の紙データを会計ソフトに入力する。こうした「転記作業」は、何ら付加価値を生まないばかりか、入力ミスというヒューマンエラーのリスクを常に孕んでいます。月末月初の経理・総務担当者が、膨大な紙の山と格闘し、1円単位の数字合わせに疲弊している状況は、貴重な人材リソースの浪費であり、戦略的なバックオフィス業務への転換を阻む最大の障壁となってしまいます。 3. ジョブカン導入のメリット ─ 業務効率化と経営の可視化 「ジョブカン勤怠管理」をはじめとするシリーズ製品を導入することで、これらの課題は根本から解決されます。煩雑な事務作業を自動化し、経営の透明性を高めることで、バックオフィスは「守り」から「攻め」へと転換します。 ① 多様な打刻方法とリアルタイムな労務管理 「ジョブカン勤怠管理」は、ICカードや端末による打刻などあらゆる働き方に合わせた打刻方法に対応しています。また、打刻の不正対策として、GPSに打刻時の位置情報を取得する機能や、生体認証による不正防止もあります。 営業職は外出先から、内勤者はデスクで、スムーズに打刻することが可能です。最大のメリットは、労働時間の「リアルタイム可視化」です。管理画面を見れば、今誰が働いているか、今月の残業時間がどれくらい積み上がっているかが一目瞭然となります。さらに、所定の残業時間を超えそうな従業員とその上長へ自動で警告メールを送る機能もあり、法律違反になってから慌てるのではなく、違反を「未然に防ぐ」プロアクティブな労務管理が実現します。 ② 意思決定のスピードアップとペーパーレス化 「ジョブカン勤怠管理」に加え、「ジョブカンワークフロー」や「ジョブカン経費精算」を組み合わせることで、社内の承認プロセスも劇的に変わります。稟議書や経費申請はすべてクラウド上で行われ、承認者は外出先からでもスマホで承認・決裁が可能になります。物理的な書類がなくなることで、保管スペースやコストの削減はもちろん、過去のデータ検索や監査対応も瞬時に行えるようになります。「承認待ち」による業務の停滞をゼロにし、ビジネスのスピードを加速させます。 ③ シリーズ連携による「データ入力ゼロ」への挑戦 ジョブカンの真価は、シリーズ間のスムーズな連携にあります。例えば、勤怠管理で集計した労働時間データは、ワンクリックで「ジョブカン給与計算」へ連携され、複雑な給与計算が自動化されます。同様に、経費データも会計ソフトへ自動連携が可能です。さらに、SlackやChatworkといったビジネスチャットや、SmartHRなどの外部サービスとも連携できます。このエコシステムにより、ミスのもととなる「データの二重入力」や「転記作業」は極限まで削減され、バックオフィス業務全体がひとつの滑らかなフローとして統合されるのです。 4. RSM汐留パートナーズが提供する付加価値 ジョブカンは非常に使いやすいシステムですが、「導入すれば終わり」ではありません。特に勤怠管理や給与計算は、労働基準法や税法といった専門的な法律知識と密接に関わっています。「変形労働時間制の設定はどうすればいいのか」「就業規則とシステムの設定に矛盾はないか」「複雑な承認ルートをどうシステムに落とし込むか」。こうした課題に対し、システムベンダーのサポートだけで自社の運用に完全にフィットさせることは難しい場合もあります。 ここで、RSM汐留パートナーズの強みが発揮されます。私たちは、公認会計士、税理士、社会保険労務士を擁する総合ファームとして、単なるツールの導入支援にとどまらない、実務と法務に裏打ちされたソリューションを提供します。 勤怠管理システムの導入は、自社の就業規則や労働実態を見直す絶好の機会です。当社の社会保険労務士が、クライアント様の就業規則を確認した上で、法的に正しく、かつ実務運用がスムーズに回るジョブカンの設定を代行・支援します。「固定残業代の計算が複雑で設定できない」「独自の休暇ルールがある」といった難易度の高いケースでも、専門家の知見で解決策を提示します。 そのほか、私たちはシステム導入だけでなく、その後の給与計算や記帳代行といったアウトソーシング(BPO)サービスも提供しています。「ジョブカンの運用は自社で行い、計算業務はプロに任せる」あるいは「入力から計算まですべて任せる」など、クライアント様のリソース状況に合わせた柔軟な切り分けが可能です。ジョブカンという共通プラットフォームを使用することで、アウトソーシング時のデータのやり取りもスムーズになり、コストパフォーマンスの高いバックオフィス体制を構築できます。 これまで見てきたように、勤怠管理の非効率性やコンプライアンスリスク、ワークフローの停滞といった課題は、ジョブカンの導入によって大きく改善できます。しかし、その効果を最大限に引き出すためには、専門知識に基づいた適切な設定と運用が不可欠です。アナログ管理からの脱却を目指す、法令対応に不安を抱える、業務効率化が思うように進まないといった課題をお持ちの経営者様、ご担当者様は、ぜひ一度当社の「SaaS導入支援サービス」をご検討ください。 参考資料 (1)すべての企業の成長基盤に「ジョブカン」
- [AI活用時代に求められる「脅威モデリング」という考え方](https://shiodome.co.jp/column/55135/) - 生成AIや機械学習技術の進化は、ここ数年で劇的なスピードを見せています。かつては一部のテック企業や研究機関のものであったAI技術は、今や多くの企業にとって、日々の業務を支える不可欠なインフラになってきました。社内ナレッジを検索・回答するRAG(検索拡張生成)システムや、顧客対応を自動化するチャットボット、あるいは高度な需要予測モデルなど、AIは業務効率化の枠を超え、新たな付加価値を創出する源泉として注目されています。 しかし、光が強ければ強いほど、そこに落ちる影もまた濃くなります。AIの活用範囲が広がるにつれ、従来の情報セキュリティ対策ではカバーしきれない新たなリスクが顕在化してきました。「AIが社外秘の情報を学習してしまい、競合他社に漏洩する」「悪意ある入力によってAIが不適切な発言をし、ブランドが毀損される」といった事故は、現実に普通に起こり得る経営リスクです。 こうした背景の中で、今、世界的に注目されているのが「AI脅威モデリング」という考え方です。これは、AIシステム特有の脅威を開発・導入の初期段階で洗い出し、構造的にリスクを把握・軽減していくためのアプローチです。本コラムでは、AI時代におけるリスク管理の要となるこの手法について、経営視点を交えて詳しく解説します。 1. なぜ今、AIに「脅威モデリング」が必要なのか AIシステムは、従来のWebシステムや業務アプリケーションと比較して、その構成要素が複雑であり、挙動がブラックボックス化しやすいという特徴を持っています。そのため、これまでのセキュリティ対策の延長線上だけでは守り切れない領域が急速に拡大しています。なぜ今、AIに特化した脅威モデリングが必要とされるのか、その理由は大きく3つの視点で整理できます。 まず認識すべきは、AIには従来とは性質の異なるリスクが存在するという点です。これまでのセキュリティ対策は、不正侵入やウイルスといった外部攻撃を防ぐことが中心でしたが、AIでは学習データや指示内容そのものが攻撃の対象となり、判断の誤りや情報漏えいを引き起こす可能性があります。こうしたリスクは従来の対策だけでは十分に防ぎきれません。実際に、日本のサイバーセキュリティ政策を担う情報処理推進機構(IPA)も、「情報セキュリティ10大脅威」において「AIの利用をめぐるサイバーリスク」を2026年に初めて取り上げており(1)、AI活用の拡大と同時に、リスクへの体系的な備えが企業全体に求められていることが示されています。 次に重要な視点は、AIが単なる業務支援ツールを超えて、企業の「意思決定基盤」になりつつあるという事実です。現在のAIは単なる業務効率化ツールではなく、判断や選別、意思決定を支える役割を担い始めています。もしAIの判断が誤ったり、意図せず偏った結果を出した場合、その影響は業務トラブルにとどまらず、法的リスクや信用低下など、経営レベルの問題に発展しかねません。AIのリスクは、IT部門だけでなく、経営やガバナンスの視点で捉える必要があります。 そして3つ目の理由は、脅威モデリングが「事後対応」ではなく「事前予防」のための最良の方法論であるところです。設計段階で「どんなリスクがあり得るのか」「どこが弱点になり得るのか」を整理し、先回りして対策を考えることが非常に重要です。事後対応ではなく、事前に考える。このような姿勢が、安全で持続的なAI活用を支えられます。 2. AI脅威モデリングで整理すべき基本構造 では、具体的にどのようにして見えないリスクを可視化していけばよいのでしょうか。AI脅威モデリングにおいて最も重要なのは、AIシステムを単体の「点」として見るのではなく、データ、インフラ、利用者を含めた一つの「エコシステム(生態系)」として捉える視点です。 ① AIシステムの範囲と構成要素の明確化 AIシステムは、モデル単体で動いているわけではありません。ユーザーからのデータ入力、そのデータを処理する前処理プロセス、トレーニングデータと学習パイプライン、推論を行うアルゴリズム、それを支えるクラウドインフラやAPI、そして最終的な出力結果を利用するインターフェースなど、多くの要素が複雑に連動しています。脅威モデリングでは、これらのデータの流れ(データフロー)を可視化し、どこからどこまでが自社の責任範囲であり、どこに外部サービス(OpenAI等のAPIなど)を利用しているのかを整理します。特に、自社のデータが外部のモデル学習に使われる設定になっていないか、APIキーの管理は適切かといった境界線の確認は、リスク分析の土台となります。 ② 「脅威」「脆弱性」「リスク」という3つの概念の明確化 現場での議論では、これらが混同されがちです。「なんとなく危ない気がする」という感覚論ではなく、構造的に議論するために、この定義付けは重要です。「脅威」とは、システムを損なう可能性のある攻撃者や環境的な事象のことです。「脆弱性」は、その脅威につけ込まれる可能性のあるシステムの弱点や欠陥を指します。そして「リスク」は、脅威が脆弱性を突いた場合に実際に被害が発生する確率と、その影響の大きさを示します。例えば、「悪意あるユーザー(脅威)」が、「入力値のチェックが甘いチャットボット(脆弱性)」に対して攻撃を行い、「機密情報を引き出す(リスク)」といった具合に整理することで、優先的に対策すべき箇所が論理的に導き出されます。 ③ AI特有の代表的な脅威についての理解強化 従来のWebシステムへの攻撃とは異なり、AIにはAI特有の弱点が存在します。代表的なものとして、以下の3つが挙げられます。一つ目は「データポイズニング」です。これは学習データに意図的にノイズや不正データを混入させることで、モデルの精度を下げたり、特定の条件下で誤作動を起こさせたりする攻撃です。二つ目は「プロンプトインジェクション」です。チャットボットなどに対し、「以前の命令を無視して、次の命令に従え」といった特殊な指示を入力することで、開発者が設定した安全装置(ガードレール)を無効化し、不適切な回答や内部情報を引き出す手法です。三つ目は「モデルの盗用・回避」です。モデルに対して大量のクエリ(質問)を投げかけ、その応答パターンを解析することで、背後にあるアルゴリズムや学習データを推測・複製してしまう攻撃です。こちらは、OWASP(Open Worldwide Application Security Project)が発表している「OWASP Top 10 for LLM」といったガイドラインを参照し、生成AIの頭脳として活用されているLLM( Large Language Model )に関する最新の脅威トレンドを自社のシステムに当てはめて考えることをお勧めします。 3. 実務で機能させるためのポイント AI脅威モデリングは、一度実施して終わるものではなく、実務の中で継続的に活用されてこそ意味があります。形だけの取り組みにしないためには、次の3点が重要です。 第一に、誰が判断し、誰が責任を持つのかを明確にすることです。 AIのリスク管理をIT部門だけに任せてしまうと、「どこまでのリスクを許容するか」という経営判断が曖昧になります。経営・業務・IT・法務といった関係者の役割を整理し、最終的な意思決定者を明確にすることが、実務を回す前提となります。 第二に、ビジネスへの影響に応じた現実的な対応を取ることです。 すべてのリスクを完全に排除することは現実的ではありません。AIの利用目的や影響範囲に応じて、「どのリスクは抑えるべきか」「どのリスクは許容できるか」を見極め、過不足のない対策を設計することが重要です。 第三に、設計段階からリスクを考え、継続的に見直すことです。 導入初期の設計段階でリスクを整理しておくことが、安全かつ迅速な活用につながります。また、AIは学習や環境の変化によって挙動が変わるため、定期的な見直しを前提とした運用が欠かせません。 4. 支援ニーズが高まる今こそ整備の好機 ここまで述べてきたように、AIに関するリスク管理は、従来のITセキュリティの枠を超え、法務、コンプライアンス、ガバナンス、そしてデータサイエンスといった複数の領域が複雑に交差する難易度の高い分野です。そのため、多くの企業で「AI活用のガイドラインを作りたいが、何から手を付けるべきかわからない」「既存のセキュリティ対策との整合性が取れず、現場が混乱している」「社内でリスクに関する共通言語が持てない」といった悩みが深刻化しています。 当社では、AI技術とセキュリティガバナンスの両面に精通した専門家が、企業様の状況に合わせたリスク整理や体制構築を支援しています。単なるツールの導入支援ではなく、「経営視点でのリスク許容度の策定」から「現場レベルでの脅威モデリング実施」まで、組織全体を俯瞰した伴走型のサポートを提供いたします。 AIという強力なエンジンを、安全かつ最大限に活用するために。リスク管理体制の構築や、専門家による助言が必要だと感じられた方は、ぜひ一度当社の「社外CISO(最高情報セキュリティ責任者)支援サービス」をご覧ください。AI活用を成功に導くための盤石な土台作りを、私たちが全力でサポートいたします。ください。AI活用を成功に導くための盤石な土台作りを、私たちが全力でサポートいたします。 【参考資料】 (1)情報セキュリティ10大脅威 2026 | 情報セキュリティ | IPA 独立行政法人
- [GビズID取得:行政手続きの電子化に対応するための第一歩](https://shiodome.co.jp/column/56020/) - 1. GビズIDとは――その定義と、背景にある行政のデジタル化 GビズIDは、法人・個人事業主が一つのIDとパスワードで複数の行政サービスにログインできる共通認証の仕組みです。国が整備する事業者向けオンライン手続きの「入口」として設計されており、行政DXを支える基盤インフラの一つに位置づけられています。 従来、行政手続きでは省庁・自治体ごとに異なるIDが求められ、書類の作成・押印・郵送や窓口提出が必要でした。GビズIDを取得すれば、複数の行政サービスへ同一アカウントでアクセスでき、手続き全体のオンライン完結が可能になります。単なる利便性の向上にとどまらず、企業活動のスピードを阻害していた事務負担を構造的に軽減する仕組みです。 この背景には、行政のデジタル化を加速させる国の方針があります。2021年に発足したデジタル庁は、行政手続きの標準化・オンライン化を強力に推進しており、いわゆる「書面主義」「押印文化」からの脱却を通じて、事業者の負担軽減と社会全体の生産性向上を図っています。 GビズIDは単なるログイン情報ではなく、なりすまし防止や本人確認を前提としたセキュアな認証基盤です。いわば、インターネット上における「法人の身分証明書」と言えます。現在では補助金の電子申請、社会保険関連手続き、各種届出など対応サービスが拡大しており、事業運営における実務インフラとしての存在感を高めています。 2. なぜGビズIDが必要とされるのか 近年、GビズIDが「急いで取るべきもの」とされる最大の理由は、補助金申請の電子化です。経済産業省・中小企業庁を中心とする補助金の多くは、電子申請システム「jGrants」に一本化されており、原則として最上位アカウントであるGビズIDプライムがログインの前提になります。 たとえば、IT導入補助金、ものづくり補助金、事業再構築補助金など、採択されれば事業の成長に大きく寄与する支援制度は、いずれも申請の第一ステップとしてGビズIDプライムが必須です。言い換えれば、GビズIDの有無が、公的資金調達のスタートラインになりつつあると言えます。 この動きは補助金に限らず、他の行政手続きのオンライン化と連動しています。社会保険や雇用保険の届出、各種申請書類の提出など、バックオフィス業務のデジタル化が進む領域において、GビズIDは効率的なオンライン手続きの鍵となっています。これにより、導入コストを抑えつつ、社内の手続き負担や時間的コストの削減につなげることが可能です。 さらに政府は、行政手続きのオンライン化を徹底する計画を掲げています。現時点では紙とオンラインの併用が認められているケースでも、今後の制度見直しによりオンライン中心の仕組みへ移行する可能性が高まっています。こうした動きを踏まえると、GビズIDを早期に取得しておくことは、将来の制度変更への備えとしても合理的です(1)。 3. GビズID「未取得」による実務上のリスク GビズIDを保有していないことの影響は、単なる「手続きが面倒」という水準にとどまりません。とりわけ現在の行政手続きのデジタル化の流れを踏まえると、経営上の機会や効率性、さらには内部統制の観点にも影響が及びます。主な論点は次の3点です。 ① 機会損失の発生 補助金の多くには厳格な公募期間が設けられています。GビズIDの発行には審査期間(通常数週間程度)が必要なため、公募が開始されてから慌てて申請しても、締切に間に合わないケースが多々あります。これは事務ミスではなく、明確な経営判断の遅れによる機会損失です。 ② 事務コストの累積 紙ベースの手続きには、印刷費や郵送費といった直接コストに加え、書類作成、押印、投函、控えのファイリングといった人的リソースがかかります。一件ごとは些細でも、年間を通じれば無視できないコストになります。競合他社がデジタル化によってバックオフィスを効率化している中、アナログな手続きに時間を取られ続けることは、中長期的な競争力の低下につながります。 ③ ガバナンスと業務継続性への影響 電子申請システムでは申請履歴や通知がデジタルデータとして残るため、進捗管理が容易です。一方、紙での運用は情報が属人化しやすく、担当者の不在や退職時に「どの書類をいつ出したか分からない」といった引継ぎトラブルを招きがちです。GビズIDによる一元管理は、内部統制の強化にも寄与します。 4. 申請プロセスと、つまずきやすい留意点 GビズIDの申請自体は難解ではありません。しかし、本人確認や記載内容に不備があると差し戻しとなり、発行まで想定以上に時間を要することがあります。 現在、GビズIDプライムの取得方法はオンライン申請と書類郵送申請の2通りあります。代表者がマイナンバーカードと読み取り可能なデバイスを持参していれば、数日で発行可能ですが、以下のようなケースでは郵送申請が現実的な選択肢になります。 代表者がマイナンバーカードを保有していない 電子証明書の利用環境が整っていない IT環境の制約がある そして、郵送申請の場合の基本フローは次のとおりです(2)。 申請サイトで基本情報を入力し、申請書を作成 印鑑証明書(発行後3か月以内)を準備 申請書類と印鑑証明書を郵送 運用センターによる確認・審査 発行後、初回ログイン設定(二要素認証設定など) そのうえで、実務上つまずきやすいポイントを整理します。 4-1. アカウント種別の選択 GビズIDには「エントリー」「プライム」「メンバー」の3種類があります。補助金申請など主要な手続きを行うには、印鑑証明書による審査を経た「プライム」が必須です。メールアドレスだけで即時発行できる「エントリー」では対応できないケースが大半ですので、最初からプライム取得を目指すのが確実です。 4-2. 印鑑証明書との完全一致 もっとも多い差し戻し理由が、入力情報と印鑑証明書の不一致です。 住所の表記(例:「一丁目2番3号」と「1-2-3」) 会社名の略称入力 旧字体・異体字(例:髙、﨑など) 実務では「だいたい同じだから大丈夫だろう」という感覚は通用しません。必ず印鑑証明書原本を手元に置き、記載どおり正確に転記することが鉄則です。 4-3. 運用体制の整備 申請にはSMSを受信できる携帯電話番号が必要です(固定電話不可)。また、登録するメールアドレスは担当者個人のものではなく、組織として管理できるアドレス(経理部等のグループアドレスなど)が推奨されます。担当者の退職によってログインできなくなるトラブルを防ぐためです。 5. まとめ:確実な取得と運用のために GビズIDは、行政手続きがオンラインへ移行する時代の「基盤インフラ」です。補助金の活用、労務手続きの効率化、将来の制度変更への備え。いずれの観点でも、早期取得は企業にとって合理的な投資といえます。 一方で、プライム申請には厳格な要件があり、入力ミスや表記ゆれによる差し戻しで時間を失うケースも少なくありません。公募締切が迫るなかでの再提出は、経営機会の毀損につながり得ます。また、取得後の運用設計も軽視できません。「誰がログインするのか」「SMSを受信する端末をどう管理するのか」「パスワード共有を避けた権限設計をどう構築するのか」といったセキュリティを考慮した内部設計が必要です。 煩雑な事務対応に時間を割くのではなく、本来注力すべき事業活動へリソースを集中させるためにも、専門的な支援の活用は有効な選択肢です。GビズIDの取得・運用体制の整備についてご検討の際は、ぜひご相談ください。 参考資料 (1)デジタル社会の実現に向けた重点計画|デジタル庁 (2)https://gbiz-id.go.jp/top/manual/manual.html
- [データの品質と統合 ― AI時代における競争力の源泉](https://shiodome.co.jp/column/56619/) - 1. はじめに 現代のビジネス環境において、生成AIをはじめとするテクノロジーの進化は目覚ましいものがあります。多くの企業がこの技術革新の恩恵を受け、ビジネスの競争力を高めようと模索しています。しかし、実際の導入現場では、ある本質的かつ深刻な課題に直面するケースが増えています。それが「データの品質」と「統合」の問題です。 どれほど高度なAIモデルや高価な分析ツールを導入したとしても、そのシステムに供給されるデータそのものが不正確であったり、部門ごとに分断されていたりすれば、期待するような成果は決して得られません。ITの世界で昔から言われている「Garbage In, Garbage Out(ゴミを入れればゴミが出てくる)」という原則は、高度なデータ処理が求められるAI時代において、企業にとってより致命的なリスクとなっています。 本コラムでは、なぜ今、単なるデータ収集ではなく「データ自動化」と「統合戦略」が企業の競争力を左右するのか、日本の市場環境と照らし合わせながら解説していきます。 2. データ品質への要求が高まる背景 今日、企業におけるデータ活用の重要性は広く認識されています。しかし、日本の多くの企業が直面しているのは、複雑化・老朽化したレガシーシステムと、それに伴う「データのサイロ化」という現実です。部署ごとに異なるツールを利用した結果、異なるフォーマットで管理されることにより、全社的な統合がなされていない状態に陥り、経営の迅速な意思決定が極めて困難な状況になっています。 特に近年、生成AIや予測分析ツールの導入が進むにつれて、データに対する「品質」の要求水準は劇的に高まっています。従来のBIツールの運用であれば、データに多少の異常値や欠損、重複があっても、人間がレポートを見る段階で違和感に気づき、経験則から脳内で補正したり、手作業で修正したりすることが可能でした。 しかし、AIモデルの学習や自動推論のプロセスにおいては、人間の介在なしに大量のデータが瞬時に処理されるため、入力されるデータの質がそのまま出力結果に直結します。重複や欠損を含む不正確なデータ、あるいはフォーマットが統一されていない整備不良のデータを入力すれば、AIは誤った洞察を導き出したり、もっともらしい嘘をつく「幻覚(ハルシネーション)」を引き起こしたりするリスクが高まります。つまり、AIやデータ分析ツールをビジネスの武器として真に活用するためには、その大前提として「クリーンで統合された、信頼できるデータ」を整備することが絶対条件となります。 3. データ統合がもたらす価値 変化の激しい市場環境や労働力不足といった外部要因の中で、企業が持続的に成長するためには、生データを即座にアクション可能な洞察へと変換する能力が求められます。高品質なデータは、単なる記録の集合体ではなく、組織全体に価値をもたらす「資産」として機能します。 オペレーション領域での価値 正確なデータに基づくプロセス自動化は、生産性を向上させるだけでなく、KPI管理の適正化にも寄与します。長年、担当者の「勘と経験」に頼っていた業務をデータ化し、自動化を進めることは、技術継承や業務効率化の観点からも重要です。データが整理されていれば、「ダッシュボードが更新されない」「集計ロジックが属人化している」といった問題が解消され、現場が事実に基づいた改善サイクル(PDCA)を高速に回せるようになります。 ガバナンス領域での価値 信頼できるデータが存在することで、リスク管理とコンプライアンス監視、監査対応の精度が飛躍的に向上します。特にAIガバナンスへの関心が高まる中、AIがどのようなデータに基づいて判断を下したのかという透明性は、企業の社会的信用を担保する基盤となります。データの出所や加工履歴が追跡可能であることは、内部統制上の必須要件です。 戦略・成長領域での価値 アクションにつながるデータ戦略があれば、定量的な財務データに加えて、市場動向などの定性情報も含めた統合的な分析が可能になります。これにより、投資判断のスピードが上がり、施策の優先順位付けが明確になります。データ戦略は単なるIT施策ではなく、収益機会の発見と機会損失の抑制を同時に進める経営の基盤といえます。 イノベーション促進の価値 信頼できるデータの蓄積量が増えるほど、企業はカスタマーサービスの自動化や機械学習、高度なAIツールをより効果的に活用できるようになります。逆に言えば、データ基盤が整っていない状態で先進的なツールを導入しても、その真価を発揮させることは難しいでしょう。 4. システムによるデータ品質と統合のサポート データの品質担保と統合を全社レベルで実現するためには、現場の努力や精神論に頼るのではなく、適切なテクノロジーの導入・運用が不可欠です。ここで注目されるのが、最新のアプリケーション統合ソリューションやiPaaS(Integration Platform as a Service)といったプラットフォームです。これらは、AI時代の企業がデータ品質を維持し、ビジネスを成功に導くための強力なデジタル基盤となります。 従来のシステム統合といえば、多額のコストと長い開発期間を要するプロジェクトが一般的でした。しかし、最新の統合ソリューションは、ローコードまたはノーコードで利用できる直感的なインターフェースを備え、クラウドやオンプレミスが混在する複雑な環境でも柔軟に展開できるという特徴を持っています。 こうしたシステムを導入する最大の目的は、社内にSSOT(信頼できる唯一の情報源)を確立することにあります。社内に散在するビジネスアプリケーションをシームレスに連携させ、データのフォーマット変換やクレンジングをシステム上で自動化することで、AIや分析ツールが求める「信頼できる高品質なデータ」を安定的に供給するパイプラインを構築できます。 具体的には、以下のようなアプローチでデータの品質と統合の課題を解決します。 高度なデータ統合と準備の加速: 複雑なAPI接続を簡素化し、システム間のデータの断片化を解消します。テンプレートなどを活用することで、データ収集から経営インサイトを得るまでの時間を短縮し、ビジネススピードを加速させる体制を支援します。 ヒューマンエラーの徹底的な排除: データの抽出からデータウェアハウスへのロードまで、管理されたデータパイプラインを構築します。手作業によるデータの受け渡しや目視チェックを減らすことで、人為的な入力ミスや加工ミスを防ぎ、データの正確性と鮮度を保ちやすくします。 セキュリティとガバナンスの強化: 機密データの暗号化やアクセス制御をシステムレベルで適用することで、データガバナンスの実践を支援します。これは、安全かつコンプライアンスを遵守した形でAIを活用するための準備(AIレディネス)を整える意味でも有用です。 システムによる自動化によってデータの質が恒久的に担保されれば、近年注目を集めているインテリジェントなAIエージェントによるワークフローの自律的な実行なども現実味を帯びてきます。企業はデータの収集や整形といった煩雑な準備作業から解放され、より創造的な業務や高度な分析に人的リソースを集中できるようになります。 5. まとめ AIツールが急速に進化し、ビジネスの力学を根本から変えつつある現在、企業が競争力を維持し続けるための絶対条件は、信頼性が高く、スケーラブルで、リアルタイムな「高品質データ」を確保することです。 しかし現実には、手作業によるサイロ化されたデータプロセスから抜け出せず、不整合なデータや遅れた洞察によって組織内の連携や意思決定に支障をきたしてしまうケースも見受けられます。従来の硬直的なシステム環境や、担当者の属人的な努力に依存した管理体制のままでは、現代のビジネススピードや、AIが要求するデータ品質の基準に対応することは徐々に困難になりつつあります。 「データの品質と統合」という足元の課題から目を背けず、データを自動化し、全社で正しく管理・活用できる体制を整えること。それこそが、AI時代において企業が長期的価値とビジネスインパクトを創出し続けるための、最も確実な道と言えるでしょう。
- [【CRO必読】企業価値を高めるAI戦略:ガバナンス・コンプライアンス・セキュリティの最前線](https://shiodome.co.jp/column/57153/) - 1. はじめに:中堅企業におけるAI戦略の必要性 AI技術の急速な進化により、企業経営のあらゆる領域でAI導入が加速しています。とりわけリスク管理の領域では、AIの活用が競争力を左右する重要なテーマとなりつつあります。RSMの調査によると、アメリカとカナダの中堅企業のほとんどがすでに何らかの形でAIを業務に取り入れているという結果が出ています(1)。一方で、生成AIを導入・実装した企業の53%は「AI導入にあたり準備が十分とはいえなかった」と感じており、さらに70%が「AIツールを最大限に活用するには外部の支援が必要」と回答しています(1)。この数字が示すのは、AI導入そのものは広がっているものの、その運用やリスク管理において多くの企業が課題を抱えているという現実です。 日本の中堅企業においても、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進と相まってAI活用が進む一方で、ガバナンス体制の構築が後手に回っているケースが散見されます。各国の規制環境の目まぐるしい変化、データプライバシーへの懸念、そしてサイバーセキュリティリスクの高度化といった複雑な環境下において、的確なAI戦略を策定・実行できるかどうかが、企業の持続的成長を直接的に担保する時代に入りました。 こうした背景から、最高リスク責任者(Chief Risk Office、以下:CRO)やそれに準ずるリスク管理部門のリーダーが果たすべき役割は、かつてないほど重要性を増しています。本コラムでは、CROが主導すべき「守り」のガバナンスをいかにして「攻め」の企業価値向上へと転換させるか、その具体的な戦略とフレームワークを紐解きます。 2. 現場に潜むリスク:シャドーAI・データ品質・バイアスの壁 CROが全社的なAI戦略を描き、ガバナンスを効かせる前に、まずは現場で実際に起きている「見えないリスク」の現実を理解する必要があります。なぜなら、経営陣の与り知らないところで、AI活用のリスクはすでに組織の深部にまで浸透し始めているからです。 「シャドーAI」と情報流出のリスク 社内で正式な承認やセキュリティ評価を経ていないAIツールが、現場の判断で日常的に使用されているケースは少なくありません。たとえば、業務効率化のために広く使われている無償の文章校正ツールや翻訳ツールの多くは、入力した情報を学習情報として利用されることが規約で明記されており、意図せぬ機密情報や個人情報の流出を招くリスクが潜んでいます。オープンな生成AIモデルと、セキュアな社内専用AI環境が混在する中で、従業員のリテラシーに依存しないシステム的なアクセス制御とリスクの可視化が急務です。 「データ基盤の品質」 AIモデルの出力の質は、入力されるデータの質に完全に依存します。質の低いデータや偏ったデータをAIに読み込ませても、優れたビジネス成果は期待できません。日本企業に多く見られるレガシーシステムに起因するデータの分断(サイロ化)や品質問題の解消は、AI導入の成否を分ける最も基本的な要素となります。詳細は当社が公開している「データの品質と統合 ― AI時代における競争力の源泉」のコラムをご確認ください。 AIに潜む「バイアス(偏り)」 学習データそのものが偏っている「データバイアス」、ユーザーが無意識に偏ったプロンプト指示を行う「ヒューマンバイアス」、特定の属性データしか集められない組織的制約から生じる「倫理的バイアス」などがあります。AIを活用して特定のビジネス上の結果を期待するあまり、その結果に合致する都合の良いデータばかりを恣意的に選択・投入してしまうリスクには細心の注意が望まれます。 サードパーティー(外部ベンダー)連携のリスク 外部のAIソリューションを業務プロセスに統合する場合、責任分担モデルの構築、ベンダーのAI開発プロセスの透明性確保、データプライバシーへの配慮、そして自社の倫理観や規制要件との整合性確認が欠かせません。ブラックボックス化された外部ツールへの無防備な依存は、予期せぬコンプライアンス違反の温床となりがちです。 3. リスクを統制し価値を生む:CROが主導すべき「4つの柱」 現場に蔓延するこれらの課題を放置すれば、AIは競争力の源泉どころか致命的なリスクの温床になる可能性があります。この混乱を収束させ、AIを真のビジネス価値に変えるため、CROは従来のリスク管理という枠を超え、全社最適の視点でAI戦略を主導するプロデューサーとしての役割を担わなければなりません。 課題を克服し、強固なガバナンスを構築するための戦略は、以下の「4つの柱」に整理されます。 整合性 AIガバナンスやデータ戦略が、自社の経営目標、企業理念、および各種規制要件と完全に一致していること。ここが乖離すると、コンプライアンス違反を招く恐れがあります。 一貫性 データの取り扱いやガバナンスの基準を、全社レベルで統一すること。部門ごとに異なるルールが存在する「サイロ化」を打破し、質の高いデータ基盤を構築します。 役割と責任の明確化 AIモデルの評価基準、監視体制、サードパーティーツールを含むすべてのAIシステムに対して、「誰が・どのような責任を負うのか」を事前に定義すること。 情報に基づく意思決定 AIツールには先入観を排したフラットな姿勢で向き合い、出力結果を客観的なテストデータで遡って検証するプロセスや、インシデント発生時の対応手順を全社的なルールとして定着させること。 そして、この「4つの柱」を支える中核となるのが、マスターデータ管理(MDM)です。効果的なMDMシステムは、データプライバシーの確保、KPIに基づくデータ品質の可視化、データ出所の追跡、システム間の一貫性維持といった多岐にわたる基盤となります。これを実現するには、事業部門、リスクチーム、IT部門のサイロを打破した部門横断的な連携が不可欠です。また、リスク組織内でAIユースケースを承認する前段階として「システム影響評価」を徹底し、AIの目的、想定される用途、潜在的リスクとメリットを体系的に特定することが、的確なモニタリング基準の策定に直結します。 4. AIモデルの健全性を維持する:自律化への対応と継続的モニタリング AIを安全かつ効果的に活用し続けるためには、導入して終わりではなく、稼働後の継続的なモニタリングと監査の体制が不可欠です。経済産業省および総務省が統合・策定した「AI事業者ガイドライン」が示す通り、AIのライフサイクル全体を通じて、プライバシーリスクの事前特定や、影響評価を計画的に実施し、適切なガバナンス体制を構築する必要があります(2)。 昨今、人間の指示を待たずに自ら目標を設定し、自律的にタスクを実行する「AIエージェント」の実用化が進む中、ガイドラインの改訂議論においても新たなリスクへの対応が急務となっています。ここでCROが特に留意すべきなのが、「最終的な判断は人間が下す(Human-in-the-loop)」という原則です。AIにプロセスを完全にブラックボックスとして委ねるのではなく、重要な意思決定のフェーズにおいて人間が適切に介入・監督する体制をあらかじめ業務プロセスに組み込むことが、予期せぬ暴走や重大なコンプライアンス違反を防ぐ防波堤となります。 さらに、CROが慎重に判断すべき課題として「AIモデルのスケーリング(横展開)」が挙げられます。一つの業務プロセスで成功したAIモデルが、別のプロセスでも同様に機能するとは限りません。既存のAI能力を組織内で拡大するには、安易な横展開を避け、必要な労力、データ品質の要件、制約条件、そして拡張に伴う新たなリスクを都度評価し直す慎重な姿勢が求められます。 5. まとめ:未来を見据えたAIリスク管理――「守り」から「攻め」の武器へ AIによるリスク管理のあり方は、技術の進化とともに大きく変貌していくことが予想されます。AIモデルの高度化に伴い、リスクの検知や予測はよりリアルタイムかつ精緻なものになる一方で、未知の新たなリスクカテゴリーも生まれ続けます。 規制環境もグローバルレベルで急速に整備が進んでおり、日本国内においても経済産業省や総務省を中心にAIガバナンスに関するガイドラインの策定が急ピッチで進んでいます。CROには、目前の課題に対処するだけでなく、こうした技術的進歩と規制動向の数年先を見据え、自社のリスク管理フレームワークを柔軟かつ継続的にアップデートしていく先見性が求められます。 AIの活用はもはや一時的なトレンドではなく、ビジネスとプロセスの変革を目指す企業にとって避けて通れない必然の取り組みです。それに伴う複雑性と不確実性から、AIガバナンスはCROをはじめとするリスクリーダーにとって「最重要の経営課題」となっています。たとえ社内にAIに関する十分な知見があったとしても、最新の規制動向に準拠したフレームワークの構築や自社に最適なソリューション選定において、外部の専門的な支援が必要となる場面は少なくありません。外部の客観的な視点を取り入れることは、ガバナンス戦略の可視性を高め、予期せぬレピュテーションリスクや財務リスクの低減に直結します。 CROが果たすべき真の役割とは、リスクを恐れてAI導入を抑制することではありません。責任あるAI活用(Responsible AI)を推進し、強固なコンプライアンス基盤を構築することで企業全体のリスク管理の質を底上げし、組織の信頼性を高めることです。AI戦略を単なる「守り」のためだけでなく、企業価値を最大化する「攻め」の武器として活用できるかどうか。それこそが、次世代のビジネス競争を勝ち抜くための、CROに問われる最も本質的かつ戦略的なアプローチと言えるでしょう。 参考資料 (1) RSM Middle Market AI Survey 2025: U.S. and Canada(2) AI事業者ガイドラインの令和7年度更新内容.pdf
- [産業廃棄物収集運搬業許可の概要と手続きの留意点とは](https://shiodome.co.jp/column/13015/) - 1. 産業廃棄物収集運搬業許可とは 産業廃棄物を「収集・運搬」を行うためには、都道府県に許可を申請する必要があります。ここでは、「産業」廃棄物の「収集運搬業」の許可申請について、概要や注意事項を中心に説明します。廃棄物(不要物)は、「産業廃棄物」と「一般廃棄物」に大別されます(廃棄物処理法第2条)。事業活動で発生したもののうち、指定の20種類の廃棄物の処理に該当する場合、その廃棄物は、「産業廃棄物」と区分されます。※「産業廃棄物」のうち特に指定された有害なものを「特別管理産業廃棄物」と呼び、通常の産業廃棄物とは異なる扱い・申請となりますが、ここでは割愛します。)※産業廃棄物以外のものを「一般廃棄物」といいます。 (1)処理業上の区分と積替保管 産業廃棄物を処理するためにはいくつかの工程があります。大まかに、1)排出、2)収集・運搬、3)最終処分の流れで産業廃棄物は処理されますが、産業廃棄物をA地点(排出元)からB地点(運搬先)へ移動する業務が、産業廃棄物収集運搬業許可の対象です。産業廃棄物収集運搬業において、ポイントとなるのは、収集・運搬した廃棄物を、申請主体の責任で特定の場所で中間処理(分別、減量化、再資源化)を行うかどうかという点です。この中間処理を行うことを産業廃棄物収集運搬事業において、俗に「積替保管」を行うといい、この「積替保管」を行うかどうかで、申請に係る工数、要件、関係法令が大きく異なることになります。当然、「積替保管」がある産業廃棄物収集運搬業許可の場合、申請自体の難易度が上がり、準備期間も長く要します。 (2)廃棄物の種類 廃棄物処理法(第3条)では、「事業者は、その事業活動に伴つて生じた廃棄物を自らの責任において適性に処理しなければならない」とあります。これは、換言すれば、法律で産業廃棄物の種類は定義されているものの、実務上は産業廃棄物かどうかの判断は事業者が自ら行い、処理しなければならないということになります。申請時にどの種類の廃棄物を扱うか明示する必要があるため、産業廃棄物として指定される20種類のうちどの種類の廃棄物を取り扱うのか事前に確認が必要です。(例えば、「くず」と名の付くものでも、紙くず、木くず、繊維くず、ゴムくず、金属くず、ガラスくず、コンクリートくず、陶磁器くずのように、細かく種類分けされています。) 2. 許可を得る手順とは 産業廃棄物収集運搬業許可の申請手続きの流れは、下記の通りです。先述のとおり、産業廃棄物の中間処理を行ういわゆる「積替保管」を行わない申請の場合は、基本的には下記の手続きのうち、1)~3)を経ず、申請書類を提出する内容審査から始まることが一般的です。事前相談事前計画書の審査現地審査内容審査許可証の発行 3. 注意事項 申請又はその準備段階の際に、下記について特に注意が必要です。 (1)自治体ごとに申請手続きに差異がある。 申請先は、各都道府県となりますが、地方自治体は地域の実情・環境等を考慮して、自主的・自律的な判断で産業廃棄物処理法を運用できるため、申請基準や手続きについては、都道府県で判断が異なる場合があります。 (2)産業廃棄物の種類を確認する。 許可申請では、許可を受けようとする産業廃棄物の種類を申請書に記載する必要があるため、どういう業種の排出先から出た産業廃棄物であるか、またそれらがどの種類の廃棄物に該当するのか事前に確認する必要があります。 (3)複数の許可が必要な場合がある。 産業廃棄物を積み込む場所(排出先)と降ろす場所(運搬先)が異なる都道府県である場合、原則、両方の都道府県知事の許可が必要となります。先述のとおり、都道府県によって申請基準が異なる場合があるため、事前に排出先と運搬先の住所を確認する必要があります。 (4)許可の更新と期限について留意する。 産業廃棄物収集運搬業の許可の有効期限は一部例外を除き5年です。許可の有効期限が切れる前までに更新の手続きを行わないと、許可が失効してしまいますので、ご注意ください。
- [マンション管理と行政書士の関係と東京都の条例制定に関する留意点](https://shiodome.co.jp/column/13012/) - 1. マンション管理と行政書士の関係 マンション管理と行政書士はなかなか結びつかないと思います。マンション管理の専門家といえば「マンション管理士」という資格が有名です。そもそも行政書士とはどのような業務を行う人たちなのでしょうか?行政書士法第一条の二に「行政書士は他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類その他権利義務又は事実証明に関する書類を作成することを業とする」とありこれが行政書士の独占業務とされております。つまり様々な行政機関に対して提出する許認可等の書類、契約書などの権利義務が発生する書類、会社定款などの事実証明に関する書類に関して独占的に報酬を受けて業務を行えるということです。一方、マンション管理士にはこの独占業務というものがありません。つまり、マンション管理士でなければできない業務というものが存在しないのです。しかしながら、マンション管理士には当然、マンション管理に関する豊富な知識を有していることはいうまでもありません。 (1)マンション管理における行政書士の存在 それではマンション管理における行政書士の存在とはどのようなものなのか?前述のとおり、書類作成業務は行政書士業務ですのでマンションの管理規約、使用細則、専有部分の修繕等に関する細則、専用庭使用細則、駐車場使用細則、自転車置場使用細則、集会室使用細則、ペット飼育細則、開口部改良工事に関する細則、管理費等の徴収及び滞納処理細則、管理組合業務委託細則、会計処理細則、防犯カメラ運用細則、大規模修繕工事専門委員会運営細則、理事会運営細則、帳票等の保存期間、組合名簿の取扱いに関する細則、居住者名簿の取扱いに関する細則、要援護者名簿の取扱いに関する細則等の作成ができ、取り扱える書類は多岐にわたります。 (2)街の法律家としての活用も 行政書士は「街の法律家」といわれ、法律手続きを行う身近な存在とされております。マンション全体にかかわる問題だけでなく、住民の様々な問題にもお付き合いさせていただけます。例えば、管理費等の滞納者について困っているという場合には内容証明郵便等を作成し滞納者へ事実を通知します。この他にも理事会・通常総会の運営支援や議事録の作成、住民の方の遺言の相談や相続手続き(相続登記は司法書士業務ですが弊社のグループ司法書士法人が対応可能です)など、身近な法律手続きについて相談または手続きをすることが可能です。 2. 東京都の条例制定 マンションの老朽化、住民の高齢化に伴い管理組合の管理不全の予防・改善のため、管理組合の機能強化を図る、より踏み込んだ施策が必要として、東京都は「マンションの適正な管理の促進に関する条例」を制定しました。この条例は次の3つの柱で構成されております。 都や管理組合、事業者等の責任の明確化 管理組合による管理状況の届出 管理状況に応じた助言・支援等の実施 このうち管理組合に実際に必要な手続きとしてかかわってくるのが2の管理組合による管理状況の届出です。 管理組合による管理状況の届出 届出を求めるマンション(昭和58年の区分所有法改正以前に新築されたマンションのうち、6戸以上のもの)の管理組合は、5年ごとに管理状況を届け出ることが必要です。届出方法は以下の2つの方法から選ぶことができます。〇管理状況届出システムへの入力(推奨)〇マンションが所在する市区町村への届出書の提出 3. 注意事項 届出書のうち、「管理不全を予防するための必須事項」の欄の何れか1つに「なし」がついている場合、都庁の職員による個別訪問の対象となり得るので管理不全を予防するための必須事項は必ず履行しているように注意することが必要です
- [倉庫業の種類・登録基準と許認可の取得方法の論点とは](https://shiodome.co.jp/column/13002/) - 1. 倉庫業とは 「寄託(預け頼むこと)を受けた物品の倉庫における保管を行う営業」を倉庫業と定義されており(倉庫業法第2条第2項)、倉庫業を行うには、国土交通大臣の行う登録を受けなければなりません(同法第3条)。ここでは、倉庫業の概要、要件、注意事項等について説明します。※上記かっこ内の定義の表現を平易にすれば、「お客様の荷物を(一定期間)責任をもって保管することで報酬を得ること」となります。一般的に、「倉庫」といいますと、大きいものですといわゆる物流倉庫、小さいものですとトランクルームを思い浮かべる方も多いかもしれません。当然、条件を満たせば、これらについても、倉庫業法における「倉庫」に該当しますが、実際に建物はなくとも、木場のように水上に原木等を浮かせておく場合(水面倉庫)や、鋼材・瓦などを屋外の広場で野積みする場合(野積倉庫)も、同法における「倉庫」に当てはまり、登録が必要になることがあります。 (1)倉庫業として登録を要するものとしないもの 倉庫業の登録が必要かどうかについては、保管様態や扱うものについて一定の基準があります。具体的には、1)他人の物品を保管し、2)寄託契約が存在し、3)一時的な預かりではなく、4)銀行法等で定める有価証券などの保護預かりでないのであれば、倉庫業法第3条に該当し、倉庫業の登録が必要となりますが、1)~4)のいずれかにあてはまらない場合には、同登録は不要となります。たとえば、寄託契約が存在しても、コインロッカーや駐車場などは、一時的な預かりとして、倉庫業の倉庫には該当しませんし、貴金属を保管する場合も通常は管轄所管が財務省であるため、国土交通省における倉庫業の登録は不要となります。 (2)「倉庫」の種類 倉庫業法における営業倉庫の種類は次の8種類です。 一類倉庫、二類倉庫、三類倉庫、野積倉庫、貯蔵槽倉庫、危険品倉庫、冷蔵倉庫、水面倉庫 どの営業倉庫に当てはまるかによっても、申請書類や倉庫基準が異なりますので事前に確認が必要となります。(保管物品制限がない倉庫であって10℃以下の保管物品を扱わない一般的な倉庫は「一類倉庫」に該当し、登録件数が一番多い営業倉庫です。) (3)「倉庫業」の登録基準 倉庫業の登録基準としては、先述のとおり営業倉庫の種類により違いはありますが、次の3点に注意する必要があります。1) 倉庫業申請者として欠格事由に該当していないどうか2) 倉庫候補の建物等が営業倉庫の施設設備基準に該当しているどうか倉庫となる予定の建物が建築確認申請を完了していることだけでなく、用途制限がある土地に立地していないかどうかも事前に確認が必要です。土地の用途(住居系、市街化調整区域でないかどうか)に関しては事前に市区町村役場にて確認することができます。3) 倉庫管理主任者になる者がいるかどうか倉庫における火災の防止とその他倉庫施設の管理(メンテナンス)及び保管・荷役業務の管理を行う者を倉庫管理主任者として選任しなければなりません。実務経験等で倉庫管理主任者の要件を満たさない場合は、事前に国土交通省の定める講習を修了する必要があり、定員に達すると予約終了となってしまうため、注意が必要です。 2. 登録手順 倉庫業の登録手続きの流れは、下記の通りです。一番重要なのは、1)の事前準備です。この段階で、候補物件及び候補立地で倉庫業を登録の申請を進める上で障害はないか、そもそも倉庫業の登録が必要となる様態か等を確認します。土地・建物が決定後の変更は経済的・時間的に大きな損失となり得ますので、土地・建物に関する契約・購入等をする前にお問い合わせ頂ければ確実です。1) 事前準備2) 登録申請書の作成・提出3) 審査(標準処理期間:申請書提出から概ね2カ月)4) 審査完了、登録通知書の受領5) 登録免許税の納付(登録免許税:9万円)6) 営業開始及び倉庫料金の届出 3. その他 倉庫業を取得することで、税制上の特例措置(①事業所税資産割の控除、②事業所税従業員割の控除)を受けることができる場合があります。弊社の税理士法人内には、この分野に精通した税理士等が多数在籍していますので、登録申請だけでなく登録による税務上のメリットに関するシミュレーション等の情報提供も可能です。
- [特殊車両通行の許可申請の概要及び特殊車両の定義と申請普及背景](https://shiodome.co.jp/column/12833/) - 1. 特殊車両とは 「特殊車両」とは、道路交通法、道路構造令及び車両制限令等の関連規定により、許可なしでの公道の走行を規制されている車両(※下記詳細定義)のことです。具体的には、タンクローリーや大型トラックなど一車両にあたるタイヤ数が左右併せて6つ以上ある車が「特殊車両」に該当することが多い傾向にあります。 「特殊車両」は日常生活ではあまり馴染みがない方が多いかもしれませんが、インフラや日本の産業を支える上で大切な役割を担う車です。一方で、通常の車両よりも基本的に大型になるので、通常の自家用車よりも走行に関して制限が加えられております。※車両構造が特殊な車両、あるいは特殊な貨物輸送する車両で、「幅」、「高さ」、「長さ」、「重量」のいずれかが、車両制限令で定める一般制限値を超えている車(または、橋、高架道路、トンネル等において、道路構造令で定める走行に関する制限値を超える車)。 (画像の参照元はこちら) 2. 特殊車両通行許可申請の概要 特殊車両を通行させる者(運送事業者等)は、道路管理者(国・地方自治体等)に対して、特殊車両通行許可申請を行い、許可を経たのち、該当の道路を特殊車両が走行できることになります。複数の道路管理者にまたがる申請経路の場合、申請を受けた道路管理者で一括して手続きを行っています。 許可期間→車両や貨物の重さ、通行形態等によりますが、初回申請時で最長で2年間付与され、都度更新が必要です。(更新時では最長で4年間) 申請方法→平成16年より窓口の他、オンライン申請が可能となりました。 審査期間→約1か月 (画像の参照元はこちら) 3. 道路構造物の現状及び申請普及背景 全国の特殊車両通行許可の申請数は2004年時には20万件未満でしたが、2018年にはおよそ3倍の56万件にも及んでおります。特にここ5年間では、増加率が高くなっており、今後もこの傾向が続くと見込まれています。これは、道路構造物の老朽化に伴う崩落などの事故回避のために、国土交通省より関係業者に許可取得の必要性などの周知徹底を積極的に行っていることが背景にあります。一般的に、橋梁の耐用年数は50年程度と考えられていますが、高度成長期に建設を行った橋梁が日本には多く、近年、耐用年数を迎える構造物が多いのが実情です。例えば、関東地方整備局管内の橋梁のうち、建設後50年を超えるものは、特に今後20年の間に急増します。(2016年-25%、2026年-46%、2036年-65%) 特殊車両に分類される大型の車両の走行は、道路構造物に与える影響が大きく、構造物の劣化を早めるとされています。未然の事故防止、構造物の劣化の軽減のため、今後も許可に関する指導は強化されていくものと予想されますので、許可の申請・取得もれなどにはご注意ください。(平成25年3月から「特殊車両の通行に関する指導取締要領」が一部改正され指導、取締りが強化されています)※次回は、当該許可申請の具体的な手続き、注意事項をご案内します。
- [特殊車両通行の許可申請の申請の流れと通行条件、罰則の注意点](https://shiodome.co.jp/column/12765/) - 1. 申請手続きの流れ 特殊車両通行許可申請の申請手続きは主に下記の流れになります。前回コラムで記載しましたとおり、審査期間はおよそ1カ月ですが、事前確認や申請準備も含めると約2カ月要することが標準的です。 (1)事前確認・アセスメント ※1)許可申請の必要性の有無、2)対象車両、3)申請先などの事前確認が必要です。 (2)申請準備 ※対象車両や通行経路の情報や資料を準備します。 (3)申請・審査 (4)許可通知 ※許可証と同時に交付される「条件書」及び「通行経路表」に記載されている内容を十分ご確認ください。 (5)更新申請 ※許可された期間に応じて更新申請が必要です。(また、申請内容に変更がある場合は、許可期限前であっても変更申請が必要です。) 2. 通行許可証の通行条件 審査の結果、道路管理者が通行をすることがやむを得ないと認めるときには、通行に必要な条件を附して許可を与えます。この条件を通行条件といい、重量や寸法によって4つの区分に分かれています。(A、B、C、Dの順で条件が厳しくなります) 連行禁止・・・2台以上の特殊車両が縦列をなして同時に橋、高架の道路等を渡ることができない。誘導車・・・カーブや交差点などを通過する際に周りの車の交通安全を確保するための誘導処置又は橋の設計荷重を超えないよう道路構造を保全する目的の車。 出典:国土交通省 3. 罰則 特殊車両に関する罰則等は下記のものがあります。 出典:国土交通省 Press Release 令和3年7月5日 特殊車両の取締りを行いました(今年度1回目) 「告発」は、許可自体が取消しになることもあり、また、両罰(違反行為者:個人だけでなく違反事業者:法人にも罰則を適用される)規定もあります。 4. 注意点 違法に交通する大型車両の取締りのため、道路脇に設置された取締基地や車両重量自動計測装置などで、違反を繰り返す事業者等に対しては指導警告書や措置命令書が発出されます。 事前審査よりも、許可後のICT(情報通信技術)によるモニタリングで走行確認を重視(事後重視)することが国土交通省方針で示されていますので、許可を取得したから安心するのではなく、許可後法令等の順守が今後より求められます。 申請に関して、許可基準の緩和や許可申請の簡素化の動きも同時に進められています。例えば、複数台のトラクタをまとめた申請(包括申請)は、車種、荷物、通行期間が同一の場合でも認められていませんでしたが、平成31年の法改正により、包括申請が可能になりました。
- [建設業の概要、許可が必要な場合、営業所の所在地に応じた許可について](https://shiodome.co.jp/column/18856/) - 1. 建設業とは 建設業法でいう建設業とは、元請、下請その他いかなる名義をもってするかを問わず、建設工事の完成を請け負う営業をいいます。ここでいう請負とは、当事者一方が仕事を完成することを約束し、相手方がその仕事の結果に対して報酬を与えることを約束する契約のことをいいます。建売住宅の売買、委託契約や研究等のための調査、物品の販売などは請負には該当致しません。しかしながら物品の販売であっても発注者に対して建設工事を請け負うような契約は建設業を営むものと解される場合があります。 2. 許可が必要な場合 建設業を営む場合、すべて許可が必要であるかといわれればそうではありません。1件の請負代金が500万円未満の工事(建築一式工事以外)であれば建設業許可を有していなくても、行うことが可能です。建築一式工事の場合は1500万円未満の工事または木造住宅で延べ面積が150㎡未満の工事(木造住宅とは、主要部分が木造で、延べ面積の1/2以上を住宅の用に供するもの)となります。これらの規模の工事を「軽微な工事」といい建設業の許可を取得することなく施工することが可能です。このような規定があると契約を分割すればよいのではと考えたくもなりますが、1つの工事を2以上の契約に分割して請け負うときは、各契約の請負代金の額の合計額となります(正当な理由に基づく場合を除く)。また建設業法の適用は日本国内であるため、外国での工事等には適用されません。外資系企業も要件を満たせば建設業の許可の取得は可能です。 許可を受けなくてもできる工事(軽微な建設工事) 「国土交通省 建設業の許可」をもとに作成 3. 国土交通大臣許可と知事許可 複数の都道府県に営業所がある場合は国土交通大臣許可。1つの都道府県のみに営業所がある場合は知事許可となります。営業所とは請負契約の締結に係る実体的な行為(見積・入札・契約等)を行う事務所をいいます。事務作業のみを行う連絡事務所等は営業所に該当しません。知事許可だからといって1つの都道府県しか工事ができないわけではありません。例えば東京都知事の許可を受けた建設業者が都内の営業所で契約を締結し、他の都道府県で工事を行うことは可能です。東京都内にある知事免許を取得した建設業者が他の都道府県に営業所を移設する場合は他の都道府県の建設業の許可が必要です。また同じく東京都内にある知事免許を取得した建設業者が他の都道府県に営業所を増設する場合、国土交通大臣許可が必要になります。外資系企業が日本に進出して建設業を行う場合、営業所をよく考えず申請をすると後に移転をした際に他の都道府県の許可が必要になったりするので慎重な判断が必要になります。
- [古物商の許可の概要、申請手続き、注意点、「古物」の分類及び具体的な区分](https://shiodome.co.jp/column/19101/) - 皆さまの中には、自分で使っていた洋服や家電などいわゆる中古品をオークションで売った経験をお持ちの方がいるかと思います。現在はネットでの取引が非常に活発で、今後もその流れは止まることなく古物市場はより拡大するものと予想されます。一方で安全な流通取引を図るべく中古品販売には古物商の許可が必要になるケースがあります。この記事では古物営業を開始するための古物商の許可についてご説明いたします。 前述のとおり古物営業を開始する為には、古物商の許可を取得することが必要です。手続きとしては管轄の警察署に必要な書類を準備して申請することとなりますが、その前提として以下の点を検討する必要があります。そもそも古物営業とはどういう取引か?大きく分けると以下の3種類を指します。 なお本記事では1.に記載の『古物商』をメインに説明します。 古物を自ら又は他人の委託を受けて、売買又は交換をする営業(古物商) 古物商間での古物の売買又は古物の交換のための市場を経営する営業(古物市場主) 古物の売買をしようとする者のあっせんを競りの方法(政令で定める電子情報処理組織を使用する競りの方法その他政令で定めるものに限る。)により行う営業(古物競りあっせん業) 次に、古物営業法でいう「古物」とは何か? 大きく分けると以下の3種類を指します。 一度使用された物品 使用されない物品で、使用のために取り引きされたもの これらの物品に幾分の手入れをしたもの さらに、具体的には古物営業法施行規則で次の13品目に区別されています。 美術品類(書画、彫刻、工芸品等) 衣類(和服類、洋服類、その他の衣料品) 時計・宝飾品類(時計、眼鏡、宝石類、装身具類、貴金属類等) 自動車(その部分品を含む。) 自動二輪車及び原動機付自転車(これらの部分品を含む。) 自転車類(その部分品を含む。) 写真機類(写真機、光学器等) 事務機器類(レジスター、タイプライター、計算機、謄写機、ワードプロセッサー、ファクシミリ装置、事務用電子計算機等) 機械工具類(電機類、工作機械、土木機械、化学機械、工具等) 道具類(家具、じゅう器、運動用具、楽器、磁気記録媒体、蓄音機用レコード、磁気的方法又は光学的方法により音、影像又はプログラムを記録した物等) 皮革・ゴム製品類(カバン、靴等) 書籍 金券類(商品券、乗車券及び郵便切手並びに古物営業法施行令(平成七年政令第三百二十六号)第一条各号に規定する証票その他の物をいう。) なお予定しているビジネスが古物営業に該当することを確認しつつ並行して、役員(個人許可申請の場合は本人)や管理者が古物営業の許可を受けられない者に該当しないか確認も必要です。その点を確認し問題なければ必要な書類を集めて管轄の警察署に申請をします。なお、古物担当の方は、各警察署に1名か2名の場合が多いです。提出する予定日が立ったら、事前に警察にアポイントを取ることをお勧めします。警察は110番の緊急対応もあり、アポイントをしないで申請に行くと、受付できない可能性も考えられるからです。 最後に、無事に申請が受け付けられた後、許可証の交付までに要する審査期間は都道府県によって異なりますが概ね40日から60日くらいです。許可が出ると警察署から連絡を頂くので、許可証を受け取り手続きは完了します。以上が古物の概要と許可取得のおおまかな流れの説明となります。次の記事では許可取得時の条件や注意すべき点を詳細に説明してまいります。
- [建設業の許可の分類「一般建設業」及び「特定建設業」の概要、組み合わせの検討、許可の有効期限](https://shiodome.co.jp/column/19077/) - 1. 建設業許可には一般と特定がある 建設業の許可は一般建設業と特定建設業があります。まず元請けを行わないのであれば一般建設業となります。元請けを行う場合は以下の条件によって一般建設業と特定建設業に分かれます。 (出典:東京都都市整備局市街地建築部建設業課 建設業許可申請/変更の手引) 元請けとして下請けに出す場合の契約金額によって特定建設業、一般建設業の区分がかわります。特定建設業は4,500万円以上(建築一式工事は7,000万円以上)、一般建設業は4,500万円未満(建築一式工事は7,000万円未満)となっております。 2. 組み合わせの検討 例えば内装仕上工事は元請けとして下請契約金額が4,500万円以上になりそうだが、建具工事は4,500万円未満となりそうな場合、どのような許可区分で申請をするのでしょうか。 この場合、内装仕上工事は特定建設業、建具工事は一般建設業で申請をします。もちろん、建具工事も特定建設業で申請をすることが可能ですが、特定建設業を取得できる資格者の確保など建具工事に関し特定建設業を満たす要件を揃えなければならないため、検討課題が増えます。 専任技術者が一級建築施工管理技士の資格をお持ちの場合、その資格だけで取得できる特定工事業が建築一式工事、大工工事、左官工事、とび・土工・コンクリート工事、石工事、屋根工事、タイル・れんが・ブロック工事、鋼構造物工事、鉄筋工事、板金工事、ガラス工事、塗装工事、防水工事、内装仕上工事、熱絶縁工事、建具工事、解体工事(H27年度までの合格者は解体工事に関する実務経験1年以上の証明又は登録解体工事講習の受講が必要)と17もあります。 そのため、実際工事を行わない工事業に関しても将来を見越してこれらすべてを申請する建設業者もおります。 許可後には特定工事業を一般工事業へ一般工事業を特定工事業へ変更する「般・特新規」も可能です。施工できる工事業が増えそうな場合は「業種追加」という形で申請します。 3. 許可の有効期限 許可の有効期限は5年です。引き続き、建設業を営もうとする場合、東京都では期間が満了する2か月前から30日前までに更新許可の手続きを取らなければなりません。また5年の途中でも「業種追加」や「般・特新規」を行うことは可能です。
- [建設業の論点~許可を受けるための要件としての「営業所」の「概要及び求められる要件」と自宅兼営業所の可否~](https://shiodome.co.jp/column/18927/) - 1. 独立性のあるオフィスの確保 営業所とは、工事請負契約を締結するにあたり見積、入札、契約等を行う事務所のことをいい、独立性が確保されていることが求められます。独立性の確保とはわかりやすく言えば専有の部屋があるレンタルオフィスや自己所有のオフィスがこれに該当します。一方、コワーキングスペースなど専有の部屋がないような場合は建設業でいう営業所には該当しません。 オフィスが自己所有の場合は登記事項証明書、レンタルオフィスの場合は賃貸借契約書を提出します。また同一フロアに他法人がある場合も営業所として申請は可能です。ただし営業所のスペースが他の法人と明確に区分されていることが必要で、申請の際には入口から事務所までの動線、間取図や写真でこれを証明することが求められます。 2. 営業所にもとめられる要件 外部から来客を迎え入れ、請負契約の見積り、入札、契約締結等の実体的な業務を行なっていること 電話・机・各種事務台帳等を備え、契約の締結等ができるスペースを有し、他法人又は他の個人事業主の事務室等とは間仕切り等で明確に区分されていること 経営業務の管理責任者、令第3条の使用人、専任技術者が常勤していること 営業用事務所として使用権限を有していること 看板、標識等で外部から建設業の営業所であることが分かる表示があること 1について:執務スペースの他に来客用のスペースの確保も求められます。 2について:電話は固定電話が必須です。 3について:専任技術者など建設業許可に必要な要件を満たした人材が常勤していなければなりません。またこれら建設業許可に必要な人材は営業所へ通勤することが可能な圏内に居住していることがもとめられます。 4について:自己所有の物件でも構いません。またレンタルオフィスの場合は賃貸借契約書の締結が必須です。 5について:通常はポストや郵便受け、営業所の入口部分に商号等を掲示します。 3. 住宅の一部を営業所にすることは可能か 住宅の一部を営業所にすることは可能です。ただ営業所と居住部分が明確に区分されており且つ、動線で被らないなどの注意が必要です。賃貸住宅の場合、使用目的が居住用に限定されている場合は営業所にすることはできません。同一フロアに他法人がある場合と同様、申請の際には入口から事務所までの動線、間取図や写真で営業所と居住部分が明確に区分されていることを証明することが必要です。
- [古物商の論点~許可を取得する際の要件としての「主たる営業所」、「常勤の管理者」、「欠格事由」、外国人が管理者になる場合~](https://shiodome.co.jp/column/19109/) - 前回の記事は古物の定義と許可取得のおおまかな流れの説明でしたが、今回は許可取得時の条件や注意すべき点をピックアップして、より詳細に説明してまいります。 1. 主たる営業所を設けること 古物営業を実際に行う拠点を主たる営業所と定める必要があります。その営業所は賃貸でも自己所有の物件でも構いません。注意点として管轄の警察署によっては営業所の使用権原を確認するため、賃貸なら賃貸借契約書の写し、自己所有なら登記簿などを求めることもローカルルールとしてあるようです。 2. 営業所ごとに常勤の管理者を設置すること 管理者とは古物営業取引を行う上でのいわゆる責任者を指します。役員との兼務は可能です。管理者は常勤となりますので通勤圏内に居住していなければなりません。また複数の営業所を兼務することも原則できません。注意点として複数の営業所が物理的に近い場合は1人の管理者で複数の営業所を管理することが認められうる場合もあります。このケースは事前に管轄の警察署に相談が必要です。 3. 欠格事由に該当しないこと 欠格事由とは要求されている資格を欠くことを言います。古物営業法で定める欠格事由に役員や管理者が該当しないか確認する必要があります。具体的には『暴力団員』、『住所の定まらない者』や『破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者』などに該当すると古物営業の許可を受けることができません。役員と管理者の中で1人でも該当すると許可は受けることができませんので注意が必要です。この欠格事由に該当しないことを誓約する誓約書を役員と管理者は提出します。 なお、外国人が役員や管理者になる場合で誓約書に記載の日本語を理解できない場合、誓約書を外国語に翻訳をしてその翻訳した誓約書を必要書類とすることもあります。このケースは事前に管轄の警察署に相談が必要です。 4. 外国人が管理者になる場合 外国人の方でも管理者になることは可能です。前述のとおり前提として欠格事由に該当しないことが必要です。許可申請時に必要な書類について、役員全員と管理者は『身分証明書』という書類が必要となります。ただし外国人の方はこの書類を役所で取得することができませんので不要です。なお、『身分証明書』とはパスポートなどの本人確認書類という意味ではありません。「破産宣告の通知を受けていない」などを証明する書類を意味しますのでご注意ください。さて、外国人の方は『身分証明書』の代わりとなる書面が必要になるか否かについてですが、このケースも事前に管轄の警察署に相談が必要です。必要な場合は「破産宣告の通知を受けていない」などの内容を盛り込んだ誓約書や外国人の署名証明書(署名が本人のものであることについて本国官憲が作成した証明書)などを求められることが多いです。 以上のように外国人の方が役員や管理者になるケースなど管轄の警察に事前相談が必要なことも多いです。警察署のホームページに記載されている書類だけでは申請が受け付けされないこともありますので、ご心配な方は専門家である行政書士へご相談ください。
- [建設業の論点~許可を受けるための要件としての「経営業務の管理を適正に行うに足りる能力」の概要~](https://shiodome.co.jp/column/19228/) - 1. 許可を受けるための要件 建設業の許可を受けるために満たさなければならない要件は以下の6つです。 経営業務の管理を適正に行うに足りる能力 専任技術者に関する要件 財産的基礎に関する要件 誠実性に関する要件 欠格要件に該当しない 社会保険への加入に関する要件 2. 経営業務の管理を適正に行うに足りる能力 企業は建設業の経営業務の管理を適正に行えることを一定の要件を満たした単独の人物もしくは一定の要件を満たした複数の人物をもってこれを証明しなければなりません。 【単独の人物:以下に当てはまるいずれか1人】 建設業を営む会社等(個人事業主含む)で5年以上役員等としての経験がある 建設業を営む取締役会設置会社で取締役会の決議を経て取締役会又は代表取締役から具体的な権限委譲を受けた執行役員等としての経験が5年以上ある その他の準ずる地位にある者としての経験が6年以上ある 【複数の人物:以下に当てはまる2名以上】 建設業の経営経験を2年以上有し、これとあわせて役員等又は役員等に次ぐ職制上の地位にあったものとしての経験を5年以上有していること 建設業の経営経験を2年以上有し、これとあわせて他の業種での経営経験を5年以上有していること上記1もしくは2の人物に加えて以下の人物が必要となる。 建設業に関し財務管理、労務管理、業務運営の業務経験を5年以上有する者(申請会社での業務経験であり、他社での業務経験は不可です)。この3の規定に関しては同一人でも構いません。ただし、1及び2と兼ねることはできません。
- [建設業の論点~許可を受けるための要件としての「専任技術者」の概要、要件及び専任性・常任性~](https://shiodome.co.jp/column/19252/) - 1. 許可を受けるための要件 建設業の許可を受けるために満たさなければならない要件は以下の6つです。 経営業務の管理を適正に行うに足りる能力 専任技術者に関する要件 財産的基礎に関する要件 誠実性に関する要件 欠格要件に該当しない 社会保険への加入に関する要件 2. 専任技術者の要件 1では「経営業務の管理を適正に行うに足りる能力」を単独もしくは複数の人物で要件を備えていることを立証します。つまり許可の取得・維持にはそういう人物の存在が必要なわけですが、2ではさらに建設工事について専門的知識を備えた人物が必要になります。それが専任技術者です。営業所ごとに許可を受けようとする建設業に関して一定の資格又は経験を有する専任技術者の設置が必要になります。一般建設業、特定建設業の区分に従いそれぞれ求められる専任技術者の要件が異なります。 一般建設業: 建設業に関する指定学科を専攻し高校等を卒業した後、実務経験が5年以上または建設業に関する指定学科を専攻し大学・高等専門学校等を卒業した後、実務経験を3年以上有する者 許可を受けようとする建設業に関して10年以上の実務経験を有する者 許可を受けようとする建設業に関する国家資格を有する者もしくは国土交通大臣の認定を受けた者 特定建設業: 許可を受けようとする建設業に関する国家資格を有する者 一般建設業の2、3に該当する者で2年以上の指導監督的な実務経験を有する者 大臣の認定を受けた者 それぞれの建設業に必要な国家資格については都道府県庁の建設業に関する手引き等に掲載されているのでご確認ください。 実務上では国家資格を有する者が専任技術者になるケースが圧倒的に多いと感じます。実務経験10年などの申請では疎明資料の取得が困難なケースがあるからです。例えば建設業許可を有していなかった会社で実務経験を証明する場合には以下のような書類が必要です。 業種内容が明確にわかる期間通年分の工事請負契約書・工事請書・注文書又は請求書の写し等(請求書、押印のない工事請書・注文書等については入金が確認できる資料による補足が必要です。) 証明期間の常勤を示す書類として健康保険証の写しなど 3. 専任性、常勤性について 文字通り「専任」なので専らその職務に就くことが必要で他の営業所の専任技術者と兼ねることはできません。一方、1級建築施工管理技士のように建築一式工事、大工工事、左官工事など複数の業種の技術資格要件を1人で満たすものがいる場合、同一の営業所内であれば複数業種の専任技術者となることができます。専任技術者には常勤性も求められますので、常識上通勤不可な者は認められません。一般的に専任技術者の住所から営業所まで2時間以上かかると疑義が生じると考えられます。専任技術者と常勤役員等を兼任することについては同一営業所内においては両者を1人で兼ねることができます。
- [旅行業の論点~区分毎の業務範囲及び登録要件、許可の申請手続きの流れと注意事項~](https://shiodome.co.jp/column/13006/) - 1. 旅行業登録とは 旅行業法においては、報酬を得て法律の定める一定の行為を行う事業を営もうとする者は、観光庁長官又は都道府県知事による旅行業の登録を受けなければならないとされています(旅行業法第2条及び第3条)。ここでは、「旅行業」の許可申請について、概要や注意事項を中心に説明します。 「旅行業」は、業務範囲に応じて「第1種」、「第2種」、「第3種」、「地域限定」と登録種類が4種類に区分されます。このうち「第1種」は観光庁長官が登録申請先で、それ以外の種類は(主たる営業所の所在地を管轄する)都道府県知事となります。 なお、「旅行業」と違い「旅行業者代理業」は旅行業者から委託された他社の商品を代理で販売することだけが許され、自社の企画商品も販売できる「旅行業」の業務範囲とは大きく違います。また登録の申請方法も「旅行業」とは異なる扱いとなりますので、「旅行業者代理業」についてはここでは割愛します。 (1) 旅行業の区分と業務範囲 まず、観光庁のHPにて旅行業の区分、業務範囲や登録要件などがまとめられた図(一部抜粋)がありますので、その図を基に原則を説明していきます(参照元)。 出典:国土交通省 観光庁 旅行業法概要 旅行業の登録制度①(種類・登録業務範囲) 前述のとおり、「旅行業」は、業務範囲に応じて4種類に区分されます。その業務範囲とは大きく3種類に区分されるので、以下種類ごとに説明致します。まず、1)「募集型企画旅行」こちらは、旅行業者が、予め旅行計画を作成し、旅行者を募集するもの(ex.パッケージツアー)。次に、2)「受注型企画旅行」こちらは、旅行業者が、旅行者からの依頼により、旅行計画を作成するもの(ex.修学旅行)。最後に、3)「手配旅行」こちらは、旅行業者が、旅行者からの依頼により宿泊施設や乗車券等のサービスを手配するもの。となります。 以上の3種類に業務範囲が大別され、「募集型企画旅行」の中でもさらに海外旅行と国内旅行の取り扱いの違いで登録種類が異なります。具体的には、海外旅行を取り扱う場合は、「第1種」の登録が必要である一方、国内旅行のみを取り扱う場合は、「第2種」の登録が必要です。「第3種」はパッケージツアーを組まず、いわゆるオーダーメイドである「受注型企画旅行」だけを取り扱う場合に該当します。最後に、「地域限定」は営業所のある市町村と隣接市町村を範囲とする区域に限って企画旅行(募集型企画旅行のうち海外旅行は取扱不可)、手配旅行が実施できる旅行業です。 (2) 登録要件 登録要件は大きく「営業保証金(弁済業務保証金)」、「基準資産」、「旅行業務取扱管理者の選任」に大別され、順に説明致します。まず、「営業保証金(弁済業務保証金)」とは制度趣旨として旅行業者と取引した旅行者の保護を図るため、旅行業法は旅行業者に一定の金額を営業保証金として供託することを義務付けています。また、上記の図の通り登録種類に応じて供託金額が設定されています。なお、「営業保証金」を供託する代わりとして「弁済業務保証金」という制度が存在します。こちらの詳細については「3.注意事項」で後述致します。次に、「基準資産」とは制度趣旨として旅行業者が事業を遂行するための財産的基礎を有しているか観光庁長官又は都道府県知事が確認するためのものです。こちらも登録種類に応じて金額が設定されています。なお「旅行業」は5年毎の更新が必要で、更新の際にも定められた「基準資産」を満たしている必要があります。最後に、「旅行業務取扱管理者の選任」についてですが、「旅行業」の登録種類に関わらず管理監督者として営業所毎に1人以上選任することが必要です。また「旅行業務取扱管理者」は国内外の業務を取り扱うことが出来る「総合旅行業務取扱管理者」、国内の業務のみ扱うことが出来る「国内旅行業務取扱管理者」、隣接市町村までの業務のみを扱うことが出来る「地域限定旅行業務取扱管理者」の3種類に分かれます。なお、旅行業務取扱管理者として選任できる者は、旅行業者の営業所の扱う業務の範囲により、必要な資格を有する者が異なっていますので注意が必要です。 2. 許可を得る手順とは 旅行業許可の申請手続きの流れは、登録種別で多少異なりますが、ここでは第2種の旅行業登録を行うことを想定した流れをご案内します。 1)事前相談2)申請書類の作成3)内容審査(営業所の調査含む)4)登録通知受領5)新規登録手数料の納付6)登録の通知を受けた日から14日以内に下記手続きを行うこと。 ① 旅行業協会へ加入しない場合登録通知受領後、所要の営業保証金を法務局に供託し、届け出る。 ② 旅行業協会へ加入する場合登録通知受領後、所要の弁済業務保証金分担金を旅行業協会へ納付し、届け出る。 ③ 登録票・旅行業務取扱料金表の用紙を購入し、必要事項を記載のうえ掲示する。 3. 注意事項 (1)「弁済業務保証金」について 旅行業協会の所属社員(旅行業者)が本来の営業保証金の5分の1に当たる額の弁済業務保証金分担金を納付し、旅行業協会がこの分担金を一元的に弁済業務保証金として供託することで、所属社員相互で本来の営業保証金に相当する額を連帯保証させるというもので、各所属社員が本来供託義務を負っている営業保証金の負担を軽減させる働きがあります。 (2)「旅行業務取扱管理者制度の改正」について 上記制度の改正について説明する前に、前提として旅行業務取扱管理者になる為には、今まで「総合旅行業務取扱管理者試験」又は「国内旅行業務取扱管理者試験」に合格した者である必要がございました。それが平成29年11月の改正に伴い、地域に限定した知識のみで取得可能な「地域限定旅行業務取扱管理者試験」が創設され、なおかつ1名の「旅行業務取扱管理者」による複数営業所兼務の解禁(「地域限定」の旅行業者に限る)があり「旅行業務取扱管理者」の営業所への配置に関する規制が緩和されました。
- [旅館業の論点~種別毎の基準及び相違点、許可の申請手続きの流れと注意事項~](https://shiodome.co.jp/column/12998/) - 1. 旅館業とは 旅館業法においては、「旅館業」とは、宿泊料又は室料を受け、人を宿泊させる営業のことをいい、「宿泊」とは、寝具を使用して旅館業の施設を利用することをいいます。 法の目的としては、旅館業の業務の適正な運営を確保すること等により、旅館業の健全な発達を図るとともに、旅館業の分野における利用者の需要の高度化及び多様化に対応したサービスの提供を促進し、もって公衆衛生及び国民生活の向上に寄与することを目的(旅館業法第一条)としています。 さて旅館業の種類には、「旅館・ホテル営業」、「簡易宿所営業」、「下宿営業」と3種類の種別(以前は「旅館営業」と「ホテル営業」と種類が別れていましたが統一されました)となっており設備の基準等も異なります。一方共通事項としては旅館業を経営する場合は、管轄の保健所長の許可が必要です。 種類のうち「旅館・ホテル営業」は言葉通りで一般の方も理解しやすいですが、聞き慣れない「簡易宿所営業」とは、例えばカプセルホテルをイメージして頂ければわかりやすいです。また、「下宿営業」は一月以上の期間を単位とする宿泊料を受ける宿泊施設を指しますが、現在ではほとんど需要がなく施設数も他と比べ少ないため本件では説明を割愛致します。 一方、新たなビジネスとして「民泊」がございます。法令上の明確な定義はありませんが、宿泊料を受け、人を宿泊させる営業のことをいい、外国人旅客の受け入れ先としてホテルなどに宿泊する場合と比較し、安価な費用で滞在でき需要が高まっています。また民泊と言っても「旅館業の許可を取得した民泊」、「特区民泊」、「住宅宿泊事業法に基づく民泊」と種類が別れていて、根拠法令がそれぞれ異なり、宿泊日数や客室の床面積など基準も異なります。そのため「旅館業」とは異なる扱いとなりますので、注意が必要です。 2. 旅館業の種別ごとの主な基準 まず、東京都のHPにて旅館業の種別、基準や主な相違点などがまとめられた図がありますので、その図を基に補足致します。 出典:東京都島しょ保健所 旅館業のてびき(旅館・ホテル営業、簡易宿所営業 20230601版) 客室面積について「旅館・ホテル営業」の一客室の床面積については、原則7㎡以上が必要ですが、ベッドを設置する場合はベッドのスペース分を考慮し9㎡以上を必要としています。客室数については、「ホテル営業」は10室以上、「旅館営業」は5室以上を必要としてましたが、現在は法改正で最低客室数は撤廃されてます。一方「簡易宿所営業」は、1つの客室を多人数で共用することが想定されるため客室の延べ床面積は33㎡以上(宿泊者数10人未満:1人あたり3.3㎡以上)であることが基準で設けられています。もし階層式寝台(つまり2段ベッド)を設ける場合は、上段と下段の間隔は、概ね1㎡以上であるという基準もあります。なお、基準については各自治体によって多少が違いがありますので注意が必要です。 3. 申請手続きの流れとは 旅館業許可の申請手続きの流れを簡潔に説明致します。 (1)事前相談 保健所、消防署、建築審査課へ場所や構造設備等の図面を持参して相談 (2)許可申請 許可申請書類一式と手数料(ホテル・旅館業は30,600円又は簡易宿所営業・下宿営業は16,500円※市町村毎で異なります。)が必要です。なお、申請前に近隣住民への事前周知が必要なケースもあります。 (3)書類審査・中間検査・最終審査 旅館業営業許可申請内容と一致しているか、施設検査を行います。教育関係施設がある場合や施設の基準に適合するか否かの判断が早めに必要な場合等に中間検査を実施します。竣工後は、宿泊できる準備が整った段階で最終的な審査を実施します。また関係機関への照会なども行われ、追加書類の提出が指示されることもあります。 (4)許可 書類審査及び検査により、基準に適合していることが確認されると、検査後、2週間位で保健所長より営業許可書が発行されます。許可されるまでは営業できません。 4. 注意事項 (1)申請者要件 申請者が旅館業法第3条第2項各号の規定により、申請者(法人の場合は役員を含む)が3条各号のいずれかに該当する場合(例えば破産して復権を得ていない者や法律等に違反し刑に処せられ一定の期間を経ていない者など)は、申請があっても許可を与えない又は営業の許可後に許可の取消等を行う場合がありますので、申請手続き前に注意が必要です。 (2)「宿泊者名簿の取り扱い」について 営業開始後、法律で宿泊者名簿の備え付けが必要です。私たちがお客様としてホテルなどにチェックインする際にホテル側から宿泊者名簿に名前や住所の記載を求められると思います。宿泊者名簿は、感染症が発生したときや感染症患者が宿泊した ときに、その感染経路を調査するために宿泊者名簿を必要としています。要点は以下の通りです。 ①記載内容について 宿泊者の氏名、住所、職業 宿泊者が日本国内に住所を有しない外国人の場合は、その国籍及び旅券番号 性別、年齢、前泊地、行先地、到着日時、出発日時、室名、連絡先電話番号 ②警察や保健所職員から要求があったときは、これを提示しなければならない。 ③保管期間は、3年間である。なお電子データでの保存も可。
- [住宅宿泊事業法(新法民泊)の概要と「民泊」に係る論点~届出、営業日数の制限及び住宅を提供する3者の役割体制~](https://shiodome.co.jp/column/12994/) - 1. 住宅宿泊事業法の概要とは 住宅宿泊事業法いわゆる新法民泊に関する法律は、平成30年施行された法律であり制定の背景としては大きく分けて次の3つ、①近年、民泊サービスが日本でも急速に普及。②多様化する宿泊ニーズや逼迫する宿泊需要への対応。③公衆衛生の確保、地域住民とのトラブル防止、無許可で旅館業を営む違法民泊への対応があげられますが、その他健全な民泊の普及を図るため、民泊に関する一定のルールを定める必要性が出てきたことも法整備の一因と言えます。そもそも「民泊」とは、法律上で定義されていませんが、住宅宿泊事業法の民泊サービスとは住宅の全部又は一部を使用して、宿泊サービスを提供するものとすると考えられています。また民泊と言っても「旅館業法(簡易宿所営業)」、「国家戦略特別区域法の旅館業法の特例(特区民泊)」、「住宅宿泊事業法(新法民泊)」と種類が別れていて、次の比較表(大阪府作成のものを抜粋:参照元)のとおり根拠法令がそれぞれ異なり、宿泊日数や客室の床面積など基準も異なります。 2. 住宅宿泊事業法の民泊とは ここでは「住宅宿泊事業法(新法民泊)」についてポイントを3つに絞り具体的に説明していきます。 ①新法民泊は旅館業法上に規定する営業者以外の者が人を宿泊させる事業を行いたい方(住宅宿泊事業者)向けに届出制として創設された制度です。届出先は原則住宅の所在地を管轄する都道府県知事となり住宅宿泊事業者の監督機関となります。ただし、政令市、中核市、特別区は都道府県に代わり監督(届出受理含む)・条例制定措置を処理できるものとなっています。 ②民泊の営業日数に制限があることが特徴であり、宿泊させる日数は上限が年間180日以内と定められています。これは1年の過半は居住の用に供されていることを想定していることから日数制限を設けています。また年間宿泊数の算定方法は4月1日正午から翌年4月1日の正午までを算定期間と定めています。 ③住宅を提供する「住宅宿泊事業者」に加え「住宅宿泊管理業者」「住宅宿泊仲介業者」(以下、これらの事業者をまとめてここでは3者といいます)の役割体制についてです。この3者についてそれぞれ簡単に説明しますと、まず「住宅宿泊事業者」については「家主居住型」と「家主不在型」にさらに分かれるのですが、個人の生活の本拠である(原則住民票がある)住宅であり、住宅提供日に提供者も泊まっている住宅の場合は、「家主居住型」といいます。一方、個人の生活の本拠でない、又は個人の生活の本拠であっても住宅提供日に提供者が泊まっていない住宅である場合は、「家主不在型」といいます。「家主不在型」の場合と届出住宅の居室数が5室超の場合は、次に説明する「住宅宿泊管理業者」に管理の委託を義務付けています。管理委託の対象となるものは衛生確保措置、騒音防止のための説明、苦情への対応、宿泊者名簿の作成・備付けなどが挙げられます。一方、「家主居住型」の場合はこれらの対応を住宅宿泊事業者自身が行っていく必要があります。最後に、「住宅宿泊仲介業者」とは「住宅宿泊事業者」から物件情報の提供を受け、宿泊申込者からは希望する物件の予約・支払決済業務の対応を請け負う者です。3者の基本的な枠組みがわかる次の図(観光庁作成のものを抜粋:参照元)で各事業者の位置づけはイメージしやすいと思います。 出典:国土交通省 観光庁 住宅宿泊事業法(民泊) 3. 住宅宿泊事業の届出 前述のとおり住宅宿泊事業を営む旨の届出をする方法については、原則住宅の所在地を管轄する都道府県知事を届出先として行うものとなりますが、 届出にあたっては、観光庁の民泊制度ポータルサイトからオンラインで申請するシステムを利用して行うことを原則とします。また届出の際の添付書類として、主に次のものを省令で規定しています。①住宅の図面、②登記事項証明書、③住宅が賃貸物件である場合、転貸の承諾書、④住宅が区分所有建物である場合、管理規約の写し等の提出が必要となります。最後に、関連する話として「住宅宿泊管理業者」及び「住宅宿泊仲介業者」についてですが、それぞれの業を営もうとする者は、「住宅宿泊管理業者」は国土交通大臣の登録が、「住宅宿泊仲介業者」は観光庁の登録がそれぞれ必要となり監督を受けることとなります。また3者それぞれは業務上課せられている履行義務を果たしていない場合などは、住宅宿泊事業法に罰則が設けられており、健全な民泊の普及を目的としてこうした一定のルールを定めています。
- [外国人が日本で古物におけるビジネスを開始するまでのステップとは](https://shiodome.co.jp/column/19736/) - 今回は外国に住んでいる外国人がこれから日本で古物商の許可が必要になるビジネスをはじめるまでの一般的な流れについて、より詳細に説明してまいります。 1. 会社の設立 古物商の許可は個人でも会社でも取得することは可能です。ただビジネスとしてある程度の規模をもって取引をするのであれば会社として許可を取ることが多いでしょう。そのためここでは会社として許可を取得することを前提に話を進めます。 さて、まず何から始めるのか。それは日本に会社を設けることです。具体的には本店所在地を管轄する法務局へ登記の手続きをすることになります。全体的な所要期間の目安は1か月ほどです。登記申請のための書類を作成し、日本の法務局へ必要書類を添付して申請するのですが、本人が申請することは現実的に難しいので、専門家へ依頼して手続きをすることが多いでしょう。 なお、登記をする前に営業所としてのオフィスを決めておく必要があります。オフィスの内見や賃貸契約をするために短期で来日される方はもちろんおりますが、来日せず海外にいたままで内見や賃貸契約を完結できる物件もあります。 2. 古物商許可の取得 会社の設立登記が無事に完了すると、次には古物商の許可を取得する手続きに入ります。所要期間の目安は2か月ほどです。許可の取得にあたっての注意点や流れは以前の記事で説明申し上げておりますので、ぜひそれらの記事も併せてご覧ください(https://shiodome.co.jp/column/19101/)。本記事では管理者についてだけ説明させて頂きます。ここでいう管理者とは古物取引に関する業務の管理監督する責任者を指します。管理者は常勤であることが要件ですので、営業所から通勤可能な日本の住所を有する必要があります。そのため外国に住んでいる外国人が管理者になることはできません。また古物商に関する業務を管理するため法令の理解や警察等との連携が必要なことから日本語を理解し、喋れる必要があります。 3. ビザの取得 日本でビジネスを行うためには在留資格(この記事では便宜上、ビザという)を取得するお手続きが必要になります。ご本人が会社の代表者になることが多いと想定されるので、会社経営の活動ができる『経営・管理』というビザを取得するためのケースで説明いたします。所要期間の目安はこの記事の投稿日時点で3か月~6か月ほどです。ビザの申請には会社の事業計画書が必要です。提出書類を見て継続性や明確性を出入国在留管理局が審査します。その際に出入国在留管理局の審査官は許認可を必要とする事業について、許認可の取得の有無を確認します。そのため古物商の許可はビザの前に取得することが望ましいです。 なお、予め日本に管理者を準備することができない場合は、外国人経営者が在留資格を取得後、日本へ来日し自ら管理者として古物商許可の申請をすることが可能です。この場合は上記2と3の順番が前後します。 以上、外国人が古物のビジネスをはじめるまでの簡潔な流れになります。会社設立後に、実際は銀行へ会社の法人口座を申し込んだり、税務署や年金事務所への届出も必要です。ただし、この記事では外国人特有の話にフォーカスしているので、設立、許認可、ビザの3点に絞って詳細に説明いたしました。弊社ではこれらの手続きをまとめてサポートします。ぜひご相談ください。
- [古物商の許可が必要か否かについて:警察庁が公開している具体的な基準とは](https://shiodome.co.jp/column/19741/) - 今回は古物に関わるビジネスをはじめるにあたり、古物商の許可が必要か否かについて悩まれる方が多いことから警察庁が公開している具体的な基準を一部紹介いたします。現在、日本最大のフリマサービスであるメルカリやヤフオクなどのオークションサイトを通じて、手軽にネットで中古品を売買できる環境が備わっています。そのためメルカリなどは日本人だけでなく、日本に住む外国人の方も多く利用されているようです。ぜひ安心して古物の取引ができるように正しく基準を理解し運用して頂ければ幸いです。 なお、前提として古物に関しては古物営業法(以下、法という)という法律が存在し、盗品の売買の防止、盗品の速やかな発見を図るため、必要な規制を行い、窃盗その他の犯罪の防止を図り、及びその被害の迅速な回復を目的としたルールが定められています。 1. 「古物」について 法第2条第1項では「古物」とは、一度使用された物品もしくは使用されない物品で使用のために取引されたもの又はこれらの物品に幾分の手入れをしたものをいう、という趣旨の内容が定められています。 さて、法の文中「使用のために取引されたもの」とは、自己が使用し、又は他人に使用させる目的で購入等されたものを意味します。したがって、小売店等から一度でも一般消費者の手に渡った物品は、それが未だ使用されていない物品であっても「古物」に該当する。例えば、消費者が贈答目的で購入した商品券や食器セットは、「使用のために取引されたもの」に該当するという基準があります。 他に法の文中「幾分の手入れ」とは、物品の本来の性質、用途に変化を及ぼさない形で修理等を行うことを意味します。例えば、絵画については表面を修補すること、刀については研ぎ直すことであるという基準があります。 2. 「古物営業」について 法第2条第2項第1号では「古物営業」とは、古物を売買し、若しくは交換し、又は委託を受けて売買し、若しくは交換する営業であって、古物を売却すること又は自己が売却した物品を当該売却の相手方から買い受けることのみを行うもの以外のもの、と定められています。 さて、基準ではいわゆるリサイクルショップやバザー、フリーマーケットにおいて行われている取引が古物営業に該当するかどうかについては、その取引の実態や営利性等に照らし、 個別具体的に判断する必要があると説明されています。 例えば、無償又は引取料を徴収して引き取った古物を修理、再生等して販売する形態のリサイクルショップは、法第2条第2項第1号の「古物を売却すること」のみを行う営業として法の規制の対象から除外されるが、古物の買取りを行っている場合には、古物営業に該当する。一方、いわゆるバザーやフリーマーケットについては、その取引されている古物の価額や、開催の頻度、古物の買受けの代価の多寡やその収益の使用目的等を総合的に判断し、営利目的で反復継続して古物の取引を行っていると認められる場合には、古物営業に該当する。と定められています。 以上のように規準を定めていますが、フリーマーケットでの取引が古物営業に該当するか否かは総合的に判断するとしています。この論点は多くの方が注目しているはずなので、もう少し話を深堀します。 法第2条第2項第1号の内容から「古物を売却すること」のみを行う営業は古物営業に該当しないと考えられるので、自分自身が使用するために購入した洋服を、最終的にフリーマーケットやネットオークションで売却することは古物営業に該当しないため、古物商の許可が不要になりそうです。 ただし基準には古物の価額や、取引の頻度などを総合的に見るとフリーマーケットなどで売却することを目的として古物を買い取り(ここでは洋服を購入すること)する、いわゆる転売目的の取引と判断され古物営業に該当するので古物商の許可が必要になるという結論になります。 以上、警察庁が公開している解釈基準についてです。古物の取引はシンプルなためビジネスとしても始めやすいと言われています。また最初は自分が使用した物で不用品となった物をフリーマーケットで売り始めたことがきっかけで、それが自然に取引量が増加しビジネスへと繋がることもしばしばです。 そうした手軽に始められるビジネスであることから古物商の許可が必要であるか否かあいまいな状態にしたまま、またはそもそも許可自体の存在を認識していない方もいらっしゃいます。 もし、心配な方は気づかぬ間に法律に違反することがないように、事前に警察署や専門家へ相談してみると良いでしょう。
- [古物営業許可申請に必要な要件と欠格事由に関する実務上の注意事項](https://shiodome.co.jp/column/27118/) - 前回の記事は古物営業法におけるそれぞれの定義と許可取得のおおまかな流れの説明でしたが、今回は許可取得に必要な事項や注意すべき点に焦点を当ててより詳細に説明してまいります。 【許可取得に必要な事項と注意点】 1. 主たる営業所を設けること 古物営業を実際に行う拠点を主たる営業所と定める必要があります。その営業所は賃貸でも自己所有の物件でも構いません。注意点として管轄の警察署によっては営業所の使用権原を確認するため、賃貸なら賃貸借契約書の写し、自己所有なら登記簿などを求めることもローカルルールとしてあるようです。 2. 営業所ごとに常勤の管理者を設置すること 管理者とは古物営業取引を行う上でのいわゆる責任者を指します。役員との兼務は可能です。管理者は特に資格は必要ありませんが常勤である必要があるので通勤圏内に居住していなければなりません。また複数の営業所を兼務することも原則できません。注意点として複数の営業所が物理的に近い場合は1人の管理者で複数の営業所を管理することが認められうる場合もあります。このケースは事前に管轄の警察署に相談が必要です。 3. 欠格事由に該当しないこと 欠格事由とは要求されている資格を欠くことを言います。古物営業法で定める欠格事由に役員や管理者が該当しないか確認する必要があります。具体的には以下のものが欠格事由の例としてあげられます。 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者破産者は、一部の資格や職業が制限されるため、古物商の許可を受けることができません。復権とは破産者でなくなることです。 禁固刑や一定の罰金刑などを受けた者禁固とは身柄を拘束されることです。日本の刑罰は重い順に死刑、懲役、禁固、拘留、罰金、科料です。禁固刑以上の刑を受けた場合は欠格事由になります。ちなみに懲役は労役義務があり、禁固には労役義務はありません。拘留も身柄を拘束される刑罰ですが30日未満で、禁固と懲役は1か月以上です。また一定の刑法の窃盗、古物営業法に規定される罰金は欠格事由になります。 暴力団員又はその関係者暴力団員や過去に暴力団員であって5年を経過していない者など現に暴力団員に該当しないものも欠格事由に該当する場合があります。また、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律による命令や指示を受けた者も欠格事由に該当します。 住居の定まらない者常時住所がない者は責任追及などが困難になることから欠格事由に該当します。 古物商許可を取り消された者法人が古物商の許可が取り消されたときは、5年間は許可を取得できません。 心身の故障により古物商又は古物市場主の業務を適正に実施することができない者精神機能により古物商又は古物市場主の業務を適正に実施するにあたって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者を役員と管理者の中で1人でも該当すると許可は受けることができませんので注意が必要です。この欠格事由に該当しないことを誓約する誓約書を役員と管理者は提出します。なお、外国人が役員や管理者になる場合で誓約書に記載の日本語を理解できない場合、誓約書を外国語に翻訳をしてその翻訳した誓約書を必要書類とすることもあります。このケースは事前に管轄の警察署に相談が必要です。 4. 外国人が管理者になる場合 外国人の方でも管理者になることは可能です。前述のとおり前提として欠格事由に該当しないことが必要です。許可申請時に必要な書類について、役員全員と管理者は『身分証明書』という書類が必要となります。ただし外国人の方はこの書類を役所で取得することができませんので不要です。なお、『身分証明書』とはパスポートなどの本人確認書類という意味ではありません。「破産宣告の通知を受けていない」などを証明する書類を意味しますのでご注意ください。さて、外国人の方は『身分証明書』の代わりとなる書面が必要になるか否かについてですが、このケースも事前に管轄の警察署に相談が必要です。必要な場合は「破産宣告の通知を受けていない」などの内容を盛り込んだ誓約書や外国人の署名証明書(署名が本人のものであることについて本国官憲が作成した証明書)などを求められることが多いです。 以上のように外国人の方が役員や管理者になるケースなど管轄の警察に事前相談が必要なことも多いです。警察署のホームページに記載されている書類だけでは申請が受け付けされないこともありますので、ご心配な方は専門家である行政書士へご相談ください。
- [外国人による日本国内での古物営業開始に必要な手続:法人設立・許認可・在留資格](https://shiodome.co.jp/column/27125/) - 今回は外国に住んでいる外国人がこれから日本で古物商の許可が必要になるビジネスをはじめるまでの一般的な流れについて、より詳細に説明してまいります。 1. 会社の設立 古物商の許可は個人でも会社でも取得することは可能です。ただビジネスとしてある程度の規模をもって取引をするのであれば会社として許可を取ることが多いでしょう。そのためここでは会社として許可を取得することを前提に話を進めます。 さて、まず何から始めるのか。それは日本に会社を設けることです。具体的には本店所在地(オフィスの住所)を管轄する法務局へ登記の手続きをすることになります。全体的な所要期間の目安は1か月ほどです。登記申請のための書類を作成し、日本の法務局へ必要書類を添付して申請するのですが、本人が申請することは現実的に難しいので、専門家へ依頼して手続きをすることが多いでしょう。 なお、登記をする前に営業所としてのオフィスを決めておく必要があります。オフィスの内見や賃貸契約をするために短期で来日される方はもちろんおりますが、来日せず海外にいたままで内見や賃貸契約を完結できる物件もあります。オフィスは古物商の許可に必要なだけでなく後述のビザの取得にも関係してきます。 2. 古物商許可の取得 会社の設立登記が無事に完了すると、次には古物商の許可を取得する手続きに入ります。所要期間の目安は2か月ほどです。許可の取得にあたっての注意点や流れは以前の記事で掲載しているので、ぜひそれらの記事も併せてご覧ください。本記事では古物商許可に必要な管理者についてだけ説明させて頂きます。管理者は常勤であることが要件ですので、営業所から通勤可能な日本の住所を有する必要があります。そのため外国に住んでいる外国人が管理者になることはできません。また古物商に関する業務を管理するため法令の理解や警察等との連携が必要なことから日本語を理解し、喋れる必要があります。 3. ビザの取得 日本でビジネスを行うためには在留資格(この記事では便宜上、ビザという)を取得するお手続きが必要になります。ご本人が会社の代表者になることが多いと想定されるので、会社経営の活動ができる『経営・管理』というビザを取得するためのケースで説明いたします。出入国在留管理局における審査所要期間の目安はこの記事の投稿日時点で3か月~6か月ほどです。ビザの申請においては会社の事業計画書が重要で、事業の継続性や明確性を出入国在留管理局が審査します。その際に出入国在留管理局の審査官は許認可を必要とする事業について、許認可の取得の有無を確認します。そのため古物商の許可はビザの前に取得することが望ましいです。 なお、予め日本に管理者を準備することができない場合は、外国人経営者が在留資格を取得後、日本へ来日し自ら管理者として古物商許可の申請をすることが可能です。この場合は上記2と3の順番が前後します。 以上、外国人が古物のビジネスをはじめるまでの簡潔な流れになります。会社設立後に、実際は銀行へ会社の法人口座を申し込んだり、税務署や年金事務所への届出も必要です。ただし、この記事では外国人特有の話にフォーカスしているので、設立、許認可、ビザの3点に絞って詳細に説明いたしました。弊社ではこれらの手続きについてまとめてサポートします。ぜひご相談ください。
- [古物商許可が必要となる取引類型に関する法的解釈と適用実務](https://shiodome.co.jp/column/27130/) - 今回は古物に関わるビジネスをはじめるにあたり、古物商の許可が必要か否かについて悩まれる方が多いことから警察庁が公開している具体的な基準を一部紹介いたします。現在、日本最大のフリマサービスであるメルカリやヤフオクなどのオークションサイトを通じて、手軽にネットで中古品を売買できる環境が備わっています。そのためメルカリなどは日本人だけでなく、日本に住む外国人の方も多く利用されているようです。ぜひ安心して古物の取引ができるように正しく基準を理解し運用して頂ければ幸いです。なお、前提として古物に関しては古物営業法(以下、法という)という法律が存在し、盗品の売買の防止、盗品の速やかな発見を図るため、必要な規制を行い、窃盗その他の犯罪の防止を図り、及びその被害の迅速な回復を目的としたルールが定められています。 1. 「古物」について 法第2条第1項では「古物」とは、一度使用された物品もしくは使用されない物品で使用のために取引されたもの又はこれらの物品に幾分の手入れをしたものをいう、という趣旨の内容が定められています。 さて、法の条文中「使用のために取引されたもの」とは、自己が使用し、又は他人に使用させる目的で購入等されたものを意味します。したがって、小売店等から一度でも一般消費者の手に渡った物品は、それが未だ使用されていない物品であっても「古物」に該当します。例えば、消費者が贈答目的で購入した商品券や食器セットは、「使用のために取引されたもの」に該当するという基準があります。 また「幾分の手入れ」とは、物品の本来の性質、用途に変化を及ぼさない形で修理等を行うことを意味します。例えば、絵画については表面を修補すること、刀については研ぎ直すことであるとされております。 2. 「古物営業」について 法第2条第2項第1号では古物営業とは、「古物を売買し、若しくは交換し、又は委託を受けて売買し、若しくは交換する営業であって、古物を売却すること又は自己が売却した物品を当該売却の相手方から買い受けることのみを行うもの以外のもの」と定められています。 解釈基準によれば「古物を売却すること」だけでは古物営業に該当しません。例えば自身が使用していたものを売る場合、古物商許可は不要です。古物営業に該当する典型例は古物を買って、売る行為です。「また自己が売却した物品を当該売却の相手方から買い受けることのみを行うもの」も古物営業に該当しません。これはAがBに売った商品をAがBから買い戻すというようなもので、AがBに売った商品をBからCを介在させて買い受ける行為はこれに該当しません。 また、解釈基準ではいわゆるリサイクルショップやバザー、フリーマーケットにおいて行われている取引が古物営業に該当するかどうかについては、その取引の実態や営利性等に照らし、 個別具体的に判断する必要があると説明されています。例えば、無償又は引取料を徴収して引き取った古物を修理、再生等して販売する形態のリサイクルショップは、法第2条第2項第1号の「古物を売却すること」のみを行う営業として法の規制の対象から除外されるが、古物の買取りを行っている場合には、古物営業に該当する。 一方、いわゆるバザーやフリーマーケットについては、その取引されている古物の価額や、開催の頻度、古物の買受けの代価の多寡やその収益の使用目的等を総合的に判断し、営利目的で反復継続して古物の取引を行っていると認められる場合には、古物営業に該当する。と以上のように解釈基準を定めていますが、フリーマーケットでの取引が古物営業に該当するか否かは総合的に判断するとしています。 上記については多くの方が注目しているはずなので、もう少し話を深堀します。法第2条第2項第1号の内容から「古物を売却すること」のみを行う営業は古物営業に該当しないと考えられるので、自分自身が使用するために購入した洋服を、最終的にフリーマーケットやネットオークションで売却することは古物営業に該当しないため、古物商の許可が不要になりそうです。ただし基準には古物の価額や、取引の頻度などを総合的に見るとフリーマーケットなどで売却することを目的として古物を買い取り(ここでは洋服を購入すること)する、いわゆる転売目的の取引と判断され古物営業に該当するので古物商の許可が必要になるという結論になります。 以上、警察庁が公開している解釈基準についてです。古物の取引はシンプルなためビジネスとしても始めやすいと言われています。また最初は自分が使用した物で不用品となった物をフリーマーケットで売り始めたことがきっかけで、それが自然に取引量が増加しビジネスへと繋がることもしばしばです。そうした手軽に始められるビジネスであることから古物商の許可が必要であるか否かあいまいな状態にしたまま、又はそもそも許可自体の存在を認識していない方もいらっしゃいます。もし、心配な方は気づかぬ間に法律に違反することがないように、事前に警察署や専門家へ相談してみることも良いでしょう。
- [高度な外国人材獲得新制度「J-Find」「J-Skip」の概要、要件及び優遇措置](https://shiodome.co.jp/column/19208/) - 2023年4月、日本政府は海外からの優秀な人材を呼び込むため、新たな在留資格制度の運用を開始しました。それが、「J-Skip(特別高度人材制度)」と「J-Find(未来創造人材制度)」です。 これらは、従来の「高度専門職」などのポイント制とは異なるアプローチで設計されており、世界的な人材獲得競争に対応するための重要な施策とされています。本記事では、これら2つの新制度の概要、申請要件、および付与される優遇措置について、最新の規定に基づき解説します。 1. J-Skip(特別高度人材制度)とは J-Skip(ジェイ・スキップ)は、高度な専門知識や技能を持つ外国人材に対し、従来の「高度専門職」ポイント制よりも簡素化された要件で在留資格を付与する制度です。正式名称は「特別高度人材」となります。 これまでのポイント制では、学歴、職歴、年収、年齢などを点数化し、合計70点以上が必要でしたが、J-Skipでは「学歴または職歴」と「年収」という2つの基準を満たせば、高度専門職としての在留が認められる仕組みとなっています。 J-Skipの対象となる活動類型と要件 J-Skipは、以下の3つの活動類型において、それぞれの要件を満たす必要があります。 ① 高度専門・技術活動(研究者・技術者など) アカデミックな分野や技術開発に従事する人材が対象です。以下のいずれかの要件を満たす必要があります。 修士号以上の学位を取得し、かつ年収が2,000万円以上であること 従事しようとする業務に10年以上の実務経験があり、かつ年収が2,000万円以上であること ② 高度経営・管理活動(経営者・企業幹部など) 企業の経営や管理に従事する人材が対象です。 事業の経営または管理について5年以上の実務経験があり、かつ年収が4,000万円以上であること J-Skipの主な優遇措置 J-Skipとして認められた場合、「高度専門職1号」の在留資格が付与されるとともに、通常の高度専門職よりもさらに拡充された優遇措置が適用される可能性があります。 「高度専門職2号」への移行期間短縮通常、高度専門職1号から無期限の在留資格である「2号」へ移行するには3年の活動が必要ですが、J-Skipの場合は1年で移行が可能となります。 配偶者の就労要件の緩和一般的な在留資格では配偶者の就労に制限がありますが、J-Skip認定者の配偶者は、学歴や職歴などの要件を満たさない場合でも、「研究」「技術・人文知識・国際業務」などの活動が可能となる場合があります。 家事使用人の帯同要件の緩和世帯年収要件(3,000万円以上)などの一定条件下で、最大2名までの外国人家事使用人の雇用が認められるケースがあります。 大規模空港等における優先レーンの使用プライオリティレーンを使用できるため、出入国の手続きがスムーズになります。 2. J-Find(未来創造人材制度)とは J-Find(ジェイ・ファインド)は、優秀な海外大学を卒業した若手人材が、日本での就職活動や起業準備活動を行うために滞在できる制度です。正式名称は「未来創造人材」となります。 これまでの「短期滞在」や「特定活動(就職活動)」とは異なり、世界トップレベルの大学卒業者を対象に、最長2年間の滞在を認めることで、日本社会への定着を促進する狙いがあります。 J-Findの申請要件 J-Findを利用するためには、以下の3つの要件をすべて満たす必要があるとされています。 ① 対象大学の卒業 世界大学ランキング(QS、THE、上海ランキング)のうち、2つ以上で100位以内にランクインしている大学を卒業していること、またはその大学院の課程を修了していることが求められます。 ※対象大学リストは出入国在留管理庁により定期的に更新されます。 ② 卒業からの期間 対象となる大学・大学院を卒業・修了してから5年以内である必要があります。 ③ 生計維持能力 滞在当初の生計維持費として、20万円相当額以上の預貯金を所持していることが求められます。 J-Findの主な特徴と優遇措置 J-Findの大きな特徴は、活動の自由度と滞在期間の長さにあります。 最長2年間の滞在が可能在留期間は「1年」または「6ヶ月」が付与され、更新により最長で2年間まで滞在が可能です。これにより、じっくりと就職先を探したり、起業の準備を進めたりすることができます。 家族の帯同が可能配偶者や子どもの帯同が認められています。家族とともに日本での生活基盤を築く検討が可能です。 活動資金を補うための就労が可能就職活動や起業準備を行いつつ、そのための資金を補う目的であれば、就労が認められています。これまでの就職活動ビザに比べ、経済的なハードルが低いといえます。 3. 従来制度との比較まとめ 新たに導入された2つの制度と、従来の高度人材制度の違いを整理すると以下のようになります。 4. まとめ 「J-Skip」と「J-Find」は、日本のイノベーションを加速させるための重要な制度です。 J-Skipは、すでに世界で実績を上げているトップレベルの研究者や経営者にとって、日本での活動開始をスムーズにし、生活環境を整えやすくするメリットがあります。一方、J-Findは、優秀な若手人材が日本というフィールドを選び、キャリアをスタートさせるための大きなインセンティブとなるでしょう。 これらの制度はまだ開始されて間もないため、運用の細則や解釈については、個別のケースごとに慎重な判断が求められる場面も想定されます。申請にあたっては、出入国在留管理庁の最新情報を確認し、要件への適合性を十分に精査することが推奨されます。
- [優遇措置に見る在留資格「高度専門職」と在留資格「企業内転勤」の相違](https://shiodome.co.jp/column/19127/) - 海外にある本社や支店から、日本の拠点へ外国人社員を呼び寄せる際、主に検討される在留資格(ビザ)として「企業内転勤」と「高度専門職」が挙げられます。実務上、「どちらの在留資格を申請すべきか」というご相談は多く見受けられます。手続きの要件こそ異なりますが、両者の最大の違いは、許可された後の「優遇措置」の有無にあると言っても過言ではありません。本記事では、在留資格「高度専門職」に付与される優遇措置に焦点を当て、「企業内転勤」との決定的な違いについて解説します。 1. 2つの在留資格の基本的な位置づけ 比較に入る前に、それぞれの在留資格の基本的な性質について確認します。 在留資格「企業内転勤」とは 「企業内転勤」は、海外の本店・支店等から、日本にある事業所へ期間を定めて転勤する外国人を対象とした在留資格です。学歴要件が比較的柔軟である一方、活動内容は「技術・人文知識・国際業務」に相当するものに限られます。 在留資格「高度専門職」とは 「高度専門職」は、高度な専門能力を持つ人材の受入れ促進を目的とした在留資格です。「高度人材ポイント制」により、学歴・職歴・年収などをポイント換算し、合計が70点以上の場合に認定されます。この資格の最大の特徴は、出入国管理上の様々な優遇措置が受けられる点にあります。 *高度専門職は、1号と2号に大別され、それぞれ(イ)(ロ)(ハ)に細分化されます。(ロ)は従業員の方向けの区分であって、「技術・人文知識・国際業務」と「企業内転勤」の上位の在留資格に該当します。本記事における「高度専門職(1号)」とは、「企業内転勤」との比較上、「高度専門職1号(ロ)」を指します 2. 優遇措置における主な相違点 「企業内転勤」と比較した場合、「高度専門職(1号)」には主に以下のようなメリットが存在します。 ① 永住許可要件の緩和 最も大きな違いの一つが、永住権取得までの期間です。 企業内転勤の場合原則として、引き続き10年以上日本に在留することが求められます。 高度専門職の場合ポイントが70点以上の場合は3年、80点以上の場合はわずか1年の在留で永住許可申請の対象となる特例があります。将来的に日本への永住を視野に入れている駐在員の方にとっては、非常に大きなメリットとなるでしょう。 ② 在留期間の付与 一度の許可で与えられる在留期間の長さも異なります。 企業内転勤の場合「5年、3年、1年、3月」のいずれかが決定されます。初回申請時などは1年や3年となるケースも少なくありません。 高度専門職の場合法律上、一律で「5年」の在留期間が付与されます。在留期間が長ければ、更新手続きの頻度が減り、企業・本人双方の事務負担が軽減されることが期待できます。 ③ 配偶者の就労活動 帯同する配偶者の活動範囲についても、大きな違いが見られます。 企業内転勤の配偶者通常、「家族滞在」の在留資格となります。就労するためには「資格外活動許可」が必要であり、原則として週28時間以内のパートタイム労働に限られます。フルタイムで働くには、配偶者自身が学歴等の要件を満たし、就労ビザを取得する必要があります。 高度専門職の配偶者一定の要件(世帯年収等)を満たす場合、学歴や職歴などの要件を満たさなくても、「研究」「教育」「技術・人文知識・国際業務」などに該当する就労活動(フルタイム勤務等)を行うことが認められます。 ④ 親の帯同および家事使用人の帯同 「企業内転勤」を含む一般の就労ビザでは、原則として親や家事使用人の帯同は認められていません。しかし、「高度専門職」では一定の条件下(世帯年収や子の年齢等)において、これらが許可される場合があります。特に、小さなお子様がいらっしゃる家庭においては、親の帯同が可能かどうかが日本赴任の大きな判断材料となることがあります。 3. 比較まとめ:どちらを選択すべきか これまでの相違点を整理すると、以下のようになります。 「高度専門職」を選択する視点 ポイント計算で70点以上が見込まれ、かつ中長期的な日本滞在や家族の就労、あるいは早期の永住権取得を希望される場合は、「高度専門職」への変更や認定申請を検討する価値が高いと言えます。 「企業内転勤」を選択する視点 一方で、高度専門職は審査において年収証明などの立証資料が多岐にわたる傾向があります。短期のプロジェクトでの来日である場合や、ポイントが要件に満たない場合は、従来の「企業内転勤」の方が手続きが円滑に進む可能性も考えられます。また、「企業内転勤」においては、申請人の学歴が不問です。高等教育機関を未修の場合であっても他の要件を満たせば申請できる余地があることも特筆すべき点です。 4. まとめ 在留資格「高度専門職」と「企業内転勤」は、実務上の活動内容は類似していても、付与される権利や将来の展望には大きな「相違」があります。特に「高度専門職」の優遇措置は、外国人材の日本への定着を後押しする強力な制度です。しかし、申請にあたってはポイントの疎明資料など、入念な準備が必要となることにも留意が必要です。企業の戦略やご本人のキャリアプランに合わせて、最適な在留資格を選択することが重要となります。
- [日本における駐在員による在留資格「企業内転勤」の取得に必要な要件~出向元在籍歴、業務内容及び報酬~ ](https://shiodome.co.jp/column/18923/) - 海外に拠点を持つ企業が、日本国内の事業所へ外国人社員を転勤させる場合、一般的に検討される在留資格(ビザ)が「企業内転勤」です。 この在留資格は、学歴要件が緩和されるなどのメリットがある一方で、転勤前の勤務実態や転勤後の待遇について厳格な審査基準が設けられています。 本記事では、入管法(出入国管理及び難民認定法)および最新の実務運用に基づき、在留資格「企業内転勤」の取得において特に重要となる「出向元の在籍歴」「業務内容」そして「報酬」の要件について解説します。 在留資格「企業内転勤」の概要と対象 「企業内転勤」とは、日本に本店、支店、その他の事業所がある公私の機関の外国にある事業所の職員が、期間を定めて日本の事業所に転勤し、特定の業務に従事する場合に付与される在留資格です。 いわゆる「駐在員」のための在留資格ですが、すべての転勤者が該当するわけではなく、以下の2点が大前提となります。 転勤の定義:同一企業内の異動だけでなく、親会社・子会社・関連会社間の出向なども対象となり得ます。資本関係等の結びつきが求められます。(また、先述の「日本の事業所」には法人格を伴わないが物理的なオフィススペースを有したいわゆる「駐在員事務所」も含まれます。) 期間の定め:あくまで一時的な転勤であるため、勤務期間が決まっていることが前提となります。 1. 出向元における在籍期間(「1年以上」のルール) 「企業内転勤」の申請において、最も基本的かつ重要な要件の一つが、転勤前の在籍期間です。 継続して1年以上の勤務実績 申請人は、日本への転勤の直前に、外国にある本店、支店、その他の事業所において「継続して1年以上」勤務している必要があります。 この「1年以上」には、直近の勤務先だけでなく、資本関係のある関連会社間での異動を含めた期間を通算できる場合があります。しかし、以下の点には注意が必要です。 直前であること:日本へ転勤する直前の期間が対象となります。過去に1年働いていたとしても、直近で退職し、期間が空いている場合は要件を満たさない可能性があります。 業務内容の関連性:この1年間の勤務は、後述する「技術・人文知識・国際業務」に相当する業務に従事していた期間であることが求められます。単なるアルバイトや単純労働としての期間は、原則として算入されません。 2. 日本における業務内容の専門性 「企業内転勤」で認められる活動は、どのような業務でも良いわけではありません。日本において従事する業務は、在留資格「技術・人文知識・国際業務」に該当するものである必要があります。 具体的には、以下のいずれかに分類される業務であることが求められます。 自然科学または人文科学の分野に属する技術・知識を要する業務いわゆるホワイトカラーとしての専門業務です。 技術系:システムエンジニア、機械設計、品質管理など 人文知識系:企画、営業、経理、人事、法務、マーケティングなど 外国文化に基盤を有する思考・感受性を必要とする業務 国際業務:通訳・翻訳、語学の指導、広報、海外取引業務など 単純労働の禁止 工場でのライン作業、建設現場での作業、清掃業務などのいわゆる「単純労働」は、「企業内転勤」の活動としては認められません。現場研修として一時的に従事する場合を除き、主たる業務が単純労働であると判断された場合、許可が下りない可能性が高くなります。 3. 日本人と同等額以上の報酬 外国人材を安価な労働力として利用することを防ぐため、報酬額についても明確な基準があります。 日本人が従事する場合と同等額以上 転勤者が日本で従事する業務と同等の業務に、日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受ける必要があります。 報酬の支払い元:報酬は、日本の事業所から支払われる場合だけでなく、外国の事業所から支払われる場合、あるいはその両方から支払われる場合も含まれます。合計額が基準を満たしているかが審査されます。 手当の扱い:通勤手当や住宅手当などの実費弁償的な性格を持つ手当は、原則として報酬額には含まれない傾向にあります。基本給や賞与などで判断されることが一般的です。 社内の賃金規程や、同等の地位にある日本人社員の給与水準と比較し、不当に低い金額設定となっていないかを確認することが重要です。 4. まとめ 在留資格「企業内転勤」は、学歴要件が問われない点で、実務経験豊富な社員を日本へ呼び寄せる際に有用な選択肢となり得ます。 しかし、その許可を得るためには、「転勤直前の1年以上の専門業務経験」「日本での業務の専門性(単純労働不可)」「日本人と同等以上の報酬水準」という要件をクリアし、それらを立証資料によって客観的に説明することが求められます。 企業ごとの資本関係や個別の契約形態によって、準備すべき書類や立証のポイントが異なる場合がありますので、最新の法令に基づいた慎重な準備が推奨されます。
- [YouTuber・VTuberの在留資格「興行3号」取得ガイド ― 審査のポイントと実例を解説](https://shiodome.co.jp/column/54839/) - 「興行」という在留資格をご存じでしょうか。海外アーティストが日本で行うライブやテレビ出演、プロ野球やJリーグの外国人選手などは「興行」の在留資格を取得したうえ日本で活動を行うのが原則です。ただ、この「興行」という在留資格は非常に複雑です。前述した活動のみではなく、様々な活動を内包し、「技術・人文知識・国際業務」など一般的就労資格との違いも多々あります。 今回は日本で動画配信活動をおこなういわゆるYouTuberやVTuber(以下、「動画配信者」という)などについて弊社が「興行」の在留資格を取得した例についてご紹介しようと思います。 1. 在留資格「興行」の概要 「興行」という在留資格とはどのようなものでしょうか。出入国在留管理及び難民認定法の別表には在留資格別の活動内容が定められており「興行」は以下のように記載されております。 「演劇、演芸、演奏、スポーツ等の興行に係る活動又はその他の芸能活動(この表の経営・管理の項の下欄に掲げる活動を除く。)」 大きく分けると「又は」の前が興行に係る活動で後が興行に係る活動以外の活動となります。 興行に係る活動は興業1号及び2号、興行に係る活動以外の活動は3号に該当するので動画配信者としての活動は興行3号のその他芸能活動に該当します。 2. 動画配信者が興行3号として認められるためには その他の芸能活動といえるためには招へいする外国人本人が芸能活動を行える能力を有していなければなりません。それでは動画配信者はその能力を有しているのでしょうか? その点については出入国在留管理局の審査要領に「基準3号の芸能活動に従事する場合に、外国人から申告された経歴が、インターネット上で行われた活動のみであったとしても、本邦の招へい機関等がインターネット上での活動実績や知名度を評価し、商品等の宣伝に係る活動を行わせる目的で契約することも想定されることから、これまでの活動がインターネット上で行われたものであることのみをもって、芸能活動を行う能力を有していないと評価することは適切ではない。外国人から申告された経歴が、インターネット上で行われた活動のみであった場合、その活動の態様や状況等から、芸能活動を行う能力を有しているか判断する」とあります。 つまり、動画配信者であっても芸能活動を行う能力は認められうるということです。 次に興行3号を取得するには招へいする外国人が日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けることが必要です。 最後に最も重要な点として、企業と契約関係にあることが挙げられます。本来、興行3号は日本の受入機関との契約の締結は求められておりません。ただ、動画配信者として許可されるには法律では定められていないものの、運用上企業との契約が必要になっております。 契約は雇用契約に限られず、業務委託契約でも問題ありません。また電子での契約書でも構いませんが、出入国在留管理局に提出する際には締結した証明も添えて提出いたします。 3. その他注意点 興行3号で申請をして日本に在留している途中に、イベントに参加する場合はどうなるのでしょうか?興行で在留している外国人の在留カードには「興行」とのみ記載されており、3号など細かい分類は記載されておりません。しかしながら、興行3号で申請をして許可された場合、日本で行うことのできる活動は申請した3号の活動のみで、イベントに参加するための興行1号の活動を行うことはできません。この場合の対応方法の1つとして、3号の活動のほかにあらかじめ1号の活動が予定されている場合には在留資格認定証明書交付申請の時に申請書の1号の該当する部分と3号の部分にチェックを入れて両方の活動に関する疎明資料を添付して申請し、許可されれば3号での活動の途中にイベントに参加して1号の活動を行うことができます。 ここが「興行」が他の在留資格と異なる性質の部分で「技術・人文知識・国際業務」の場合、申請した業務内容が「翻訳・通訳」であっても、大学での専攻との関連性や実務経験と関連性のある業種であれば「法人営業」など違う「技術・人文知識・国際業務」で認められる範囲内の活動を行うことは可能です。その点、興行では申請した活動のみしか原則行うことしかできません。 4. まとめ 「興行」の案件は一般的な就労資格である「技術・人文知識・国際業務」に比べ少ないため、経験を積んでいる行政書士も少ないのではないでしょうか。弊社では数多くの「興行」案件を申請し、その申請数もさることながら、取り扱う興行の種類もバラエティに富んでおります。とりわけ、興行の案件はスケジュールが厳しいことがよくありますので、相談した際に的確かつスピーディーに対応できる専門家が必要です。お困りの際にはお気軽に問い合わせいただければと存じます。
- [eスポーツで在留資格「興行2号」を取得するポイント ― 選手・監督からマネージャーまで実例解説](https://shiodome.co.jp/column/54847/) - 「興行」という在留資格をご存じでしょうか。海外アーティストが日本で行うライブやテレビ出演、プロ野球やJリーグの外国人選手などは「興行」の在留資格を取得したうえ日本で活動を行うのが原則です。ただ、この「興行」という在留資格は非常に複雑です。前述した活動のみではなく、様々な活動を内包し、「技術・人文知識・国際業務」など一般的就労資格との違いも多々あります。 今回は動画配信プラットフォームを用いて人気ゲームのリアルタイム対戦を行うことにより世界的コンテンツに発展したeスポーツについて、弊社が「興行」の在留資格を取得した例についてご紹介しようと思います。 1. 在留資格「興行」の概要 「興行」という在留資格とはどのようなものでしょうか。出入国在留管理及び難民認定法の別表には在留資格別の活動内容が定められており「興行」は以下のように記載されております。 「演劇、演芸、演奏、スポーツ等の興行に係る活動又はその他の芸能活動(この表の経営・管理の項の下欄に掲げる活動を除く。)」 大きく分けると「又は」の前が興行に係る活動で後が興行に係る活動以外の活動となります。 興行に係る活動は興業1号及び2号、興行に係る活動以外の活動は3号に該当し、eスポーツはスポーツ等の興行に係る活動として興行2号に該当します。 2. eスポーツ選手が興行2号として認められるためには 興行2号を取得する代表格はスポーツ選手です。スポーツ選手というと一般的にはプロ野球選手、Jリーガー、Bリーガーなどですが、eスポーツ選手は興行2号に該当するのでしょうか?スポーツ等の興行に係る活動といえるためには日本で開催される大会等が興行性のあるものでなければなりません。そのため実業団のように企業の広告塔としての活動の対価として会社から選手に報酬が支払われている場合にはプロスポーツ選手に該当しません。興行を行うことを目的とし、興行収入(スポンサー収入含む。)で運営されているチームに所属する選手については「興行」に該当します。 eスポーツの所属チームは興行収入(スポンサー収入含む。)で運営されているチームを編成しているので所属する選手は「興行」の在留資格を取得することが可能です。eスポーツは大会別にレギュレーションがありますが、私の経験したものによると外国人選手の場合は在留資格の取得を義務付けてあったり、報酬についても日本人選手と一律の取り決めがあったりと運営そのものが細部にわたって配慮していることがうかがえました。興行2号には報酬について日本人が従事する場合に受ける報酬と同等以上の報酬を受けるという規定があります。 3. その他注意点 eスポーツには選手のほかに監督やコーチとして外国人を招へいするケースがあります。果たして監督、コーチは在留資格を取得できるのでしょうか? この点について出入国在留管理局の審査要領によると「監督、コーチ、トレーナーなど選手と一体不可分な関係にある者も興行に係る活動に該当する」とあり、興行の在留資格を取得することができます。eスポーツでは元選手が監督やコーチとして活躍することがあるようです。 さらにこの一体不可分な関係がどこまで認められるかという限界事例ともとれるケースをご紹介します。とあるeスポーツ選手として日本で活躍していた外国人をeスポーツ選手のマネージャーとして雇いたいという依頼でした。「技術・人文知識・国際業務」など、一般的な在留資格を検討しましたが、選手目線から大会運営やスケジュールについて熟知し、その経験を活かして選手を最良の状態でマネジメントする役割を担うとして一体不可分な関係であることを主張した結果、「興行」の在留資格を取得できたという経験がございます。 また、チーム移籍がある場合は、契約の終了と新たな所属機関との契約の締結を出入国在留管理局に知らせるため、所属機関等に関する届出を提出しなければなりません。長きにわたり活躍さえる場合は在留期間更新許可申請を行う必要があります。申請に際には住民税の課税証明書、納税証明書の提出も必要なので源泉徴収されていない場合は確定申告を忘れることのないよう注意が必要です。国民健康保険料など必要なものの加入、納付も重要です。 4. まとめ 「興行」の案件は一般的な就労資格である「技術・人文知識・国際業務」に比べ少ないため、経験を積んでいる行政書士も少ないのではないでしょうか。弊社では数多くの「興行」案件を申請し、その申請数もさることながら、取り扱う興行の種類もバラエティに富んでおります。とりわけ、興行の案件はスケジュールが厳しいことがよくありますので、相談した際に的確かつスピーディーに対応できる専門家が必要です。お困りの際にはお気軽に問い合わせいただければと存じます。
- [在留期間更新許可申請等に際して特例期間前に別途手続きが必要な銀行口座とマイナンバーカード](https://shiodome.co.jp/column/19216/) - 在留期間更新許可申請や在留資格変更許可申請を在留期限の直前に行う場合、審査中に元来の在留期限が到来することがあります。 この場合、いわゆる「特例期間」として、在留期限後も最大2ヶ月間は適法に日本に在留できます。しかしこの期間中、日常生活に欠かせない、「銀行口座」と「マイナンバーカード」の取り扱いにおけるトラブルが生じるケースが散見されます。 本記事では、特例期間に入る前に確認しておくべき、銀行および自治体での手続きについて解説します。 1. 特例期間(特例期間規定)について 最初に、「特例期間」について解説します。 在留期間の満了日までに更新または変更の申請を行えば、または在留期間満了日から2ヶ月を経過する日までは、引き続き従前の在留資格をもって日本に在留することができます(入管法第20条第6項等)。 この期間中、在留カードの表面に記載された「在留期間(満了日)」は過ぎている状態となりますが、在留カード裏面に「在留期間更新許可申請中」などのスタンプが押されることで、適法な在留であることを証明します。 しかし、入管法上の在留資格は維持されていても、民間サービスや他の行政サービスにおいては、別途の手続きを行わないと利用制限がかかる場合があります。 2. 銀行口座に関する注意点と手続き 近年、マネー・ロンダリング対策の強化に伴い、金融機関は在留カードの有効期限管理を厳格化しています。 1. 口座凍結のリスク 金融機関によっては、顧客情報として登録されている在留期間が満了すると、口座の利用を一部制限(ATM利用停止や送金制限など)するシステムを導入しています。 「入管で申請中だから自動的に銀行も分かってくれるだろう」と考えて何もしないままでいると、給与の引き出しや公共料金の引き落としができなくなるリスクがあります。 2. 必要な手続き 在留期限が到来する前に、取引のある金融機関へ連絡または訪問し、以下の対応を行うことが一般的です。 申請中であることの届出 在留カードの裏面に押された「申請中」のスタンプを提示し、現在審査中であることを銀行側に伝えます。 「在留カード有効期間更新(猶予)依頼」 銀行によっては、特例期間中の口座凍結を防ぐために、暫定的に登録上の有効期限を延長する処理を行ってくれる場合があります。 3. 金融機関による対応の差異 近年では、窓口へ行かずとも、Webサイトやアプリ経由で在留カードの画像をアップロードすることで手続きが完了する銀行も増えています。一方で、必ず窓口での提示を求める銀行もあります。 特例期間に入る(在留カード表面の期限が切れる)数週間前には、利用している金融機関からの通知を確認し、指定された方法で手続きを行うことが推奨されます。 3. マイナンバーカードに関する注意点と手続き マイナンバーカード(個人番号カード)の有効期限は、外国人住民の場合、原則として「在留期間の満了日」までとされています。そのため、在留手続きとセットで管理する必要があります。 1. 有効期限切れのリスク 在留期間更新許可申請中であっても、マイナンバーカードの有効期限は自動的には延長されません。 マイナンバーカードの表面に記載された有効期限(=在留期限)を1日でも過ぎてしまうと、マイナンバーカード自体が失効してしまいます。 カードが失効すると、以下の不都合が生じます。 身分証明書として利用できなくなる コンビニエンスストアでの住民票等の取得ができなくなる 電子証明書を利用したオンライン申請(e-Taxなど)ができなくなる 再発行には手数料がかかり、写真の撮り直しや申請書への記入など、新規発行と同様の手間と時間がかかる 2. 特例期間に伴う延長手続き 特例期間の適用を受ける場合でも、必ずマイナンバーカードの有効期限内に、お住まいの市区町村役場の窓口で「マイナンバーカードの有効期間変更(延長)」の手続きを行う必要があります。 この手続きを行うことで、特例期間に合わせて最大2ヶ月間、マイナンバーカードの有効期限を延長することが可能です。 3. 手続きに必要なもの マイナンバーカード 在留カード(裏面に申請中のスタンプがあるもの、または申請受付票) その他、市区町村が定める本人確認書類等 新しい在留カードが交付された後には、改めて市区町村役場でマイナンバーカードの有効期間を新しい在留期限に合わせて更新する手続きが必要となります。つまり、特例期間を挟む場合は、合計2回の手続きが必要になる点に注意が必要です。 まとめ 在留期間更新等の申請を行っても、銀行や市区町村のデータが自動的に連動して更新されるわけではありません。 銀行: 口座が凍結される前に、申請中であることを銀行所定の方法で届け出る。 マイナンバーカード: カードの有効期限(在留期限)が切れる前に、役所で2ヶ月の延長手続きを行う。
- [デジタルノマドビザの申請方法、対象国その他要件など直近の状況](https://shiodome.co.jp/column/21796/) - 場所にとらわれず、IT技術を活用して国を渡り歩きながら働く「デジタルノマド」という働き方が世界中で広がりを見せています。こうした潮流を受け、日本政府も2024年4月1日より、いわゆる「デジタルノマドビザ(在留資格:特定活動)」の運用を開始しました。 本記事では、制度開始以降の状況を踏まえ、デジタルノマドビザの概要、対象国、具体的な要件、および申請手続きの流れについて解説します。 1. 日本のデジタルノマドビザ(特定活動)とは 一般的に「デジタルノマドビザ」と呼ばれていますが、日本の出入国管理及び難民認定法(入管法)上の正式な在留資格は「特定活動」(告示53号)となります。これは、外国の法令に準拠して設立された法人等に雇用されている者、あるいは外国において個人事業主として活動している者が、日本に滞在してリモートワーク等を行うための在留資格です。 観光ビザ(短期滞在)では90日までの滞在しか認められず、就労も原則として禁止されていますが、このデジタルノマドビザでは最長6ヶ月間の滞在が可能となり、所定の範囲内での就労活動が認められる点が大きな特徴です。 2. 申請に必要な主な要件 本制度を利用するためには、申請人が以下の要件を満たしている必要があります。特に年収要件については厳格な基準が設けられています。 ① 対象国・地域の国籍を有していること 申請人は、日本と租税条約を締結しており、かつ査証(ビザ)免除措置を実施している国・地域の国籍を有している必要があります。 2024年の制度開始時点で、アメリカ、イギリス、オーストラリア、シンガポール、韓国、台湾などを含む50以上の国・地域が対象とされています。 ※対象国の最新情報は外務省の発表を確認してください。 ② 年収要件(1,000万円以上) 申請人の年収が1,000万円以上であることが求められます。 この年収は、申請時点での直近の年間収入(税引き前の額)で判断されることとなります。単に貯蓄があるだけではなく、継続的な収入があることを証明する必要があります。 ③ 民間の医療保険への加入 滞在予定期間中の死亡、負傷、疾病をカバーする民間の医療保険(海外旅行傷害保険等)に加入している必要があります。 日本の公的医療保険(国民健康保険等)への加入対象とはならないため、万が一の事態に備え、ご自身で十分な補償額の保険を手配することが必須条件とされています。 3. 申請方法と手続きの流れ デジタルノマドビザの申請は、申請人が日本以外の国にいる場合は、原則として海外にある日本の大使館または総領事館で行います。一般的な就労ビザのように、日本の入管で事前に「在留資格認定証明書(COE)」を取得するプロセスとは異なる場合が多いため注意が必要です。 申請の基本的なステップ 必要書類の準備 パスポート、写真、査証申請書に加え、以下の疎明資料などを準備します。 年収を証明する書類(銀行の取引明細書、確定申告書、雇用契約書など) 活動内容を証明する書類(雇用主からの証明書、請負契約書など) 民間の医療保険への加入証書 在外公館での申請 居住地を管轄する日本大使館または総領事館へ申請書類を提出します。一部の公館では、オンラインでの査証申請や代理申請機関を通じた申請を受け付けている場合があります。 審査・発給 審査を経て、問題がなければ査証(ビザ)が発給されます。 日本への入国 ビザ発給後、日本へ入国します。空港の入国審査にて「特定活動(デジタルノマド)」の在留資格が付与されます。 4. 制度利用にあたっての注意点 本制度は従来の就労ビザとは性質が異なるため、以下の点についてあらかじめ理解しておくことが重要です。 在留カードは交付されません デジタルノマドの在留資格で日本に滞在する人は「中長期在留者」には該当しないため、在留カードは交付されません。 そのため、日本国内での銀行口座開設や携帯電話の契約、不動産賃貸契約などの場面で、身分証明の手続きが煩雑になる、あるいは契約自体が困難となるケースが想定されます。 在留期間の更新はできません デジタルノマド向けの在留資格「特定活動」で日本に滞在できる期間は、最長6か月間であり、在留期間の更新は認められません。再度デジタルノマドビザを申請するためには、出国から6ヶ月以上経過している必要があります。 同伴家族について デジタルノマドビザ取得者の配偶者および子についても、要件を満たせば「特定活動」(告示54号)として帯同が認められます。この場合も、家族分の民間医療保険への加入が必要です。 5. まとめ 日本のデジタルノマドビザは、高スキルなリモートワーカーが日本での生活を体験しながら働くための新しい門戸として注目されています。 一方で、年収要件や保険加入、在留カードが交付されない点など、独自のルールが設けられており、申請にあたってはこれらを正確に把握し、適切な書類を準備することが求められます。制度は変更される可能性があるため、申請を検討される際は、必ず外務省や出入国在留管理庁の公式情報を確認することをお勧めします。
- [外国人雇用の法務 ~受入れ検討時~【総論】](https://shiodome.co.jp/column/17832/) - はじめに 人手不足の解消やグローバル展開の足掛かりとして、外国人の雇用を検討する企業が増加しています。 しかし、外国人の雇用は、日本人を雇用する場合と異なり、適用される法律や手続きが複雑化する傾向にあります。法的な留意点を理解しないまま採用活動を進めると、意図せず法令違反(不法就労助長等)に問われるリスクも否定できません。 外国人雇用を法的に整理すると、大きく分けて二つの側面が存在します。 「入管法(出入国管理及び難民認定法)」の遵守 その外国人が日本で働くことができる資格(在留資格)を持っているか、または取得できるか。 「労働関係法令(労働基準法等)」の適用 国籍を問わず、適正な労働条件で雇用しているか。 この二つは車の両輪のような関係であり、どちらか一方が欠けても適正な雇用とはいえません。 本記事では、外国人を受入れる検討段階において、企業の担当者が必ず押さえておくべき法務の全体像について、入管法および労働関係法令の視点から解説します。 1. 入管法上の留意点と在留資格制度の理解 外国人雇用の検討において最も特徴的なのが「在留資格(一般的にビザと呼ばれるもの)」の存在です。日本に滞在するすべての外国人は、その活動内容や身分に応じた在留資格を有しています。 在留資格と業務内容の適合性(就労資格の有無) 日本には30種類以上の在留資格がありますが、すべての外国人が自由に働けるわけではありません。以下の3つの区分を理解することが重要です。 活動に制限がない在留資格(就労制限なし) 永住者 日本人の配偶者等 永住者の配偶者等 定住者 これらの資格を持つ方は、日本人と同様に、職種や労働時間の制限なく就労することが可能です(単純労働も可)。 活動内容が指定される在留資格(就労ビザ) 「技術・人文知識・国際業務」「特定技能」「企業内転勤」「高度専門職」など 許可された範囲内の業務(主に専門的・技術的分野)にしか従事できません。自社の業務内容が、これらの資格要件に合致しているかの確認が必須となります。 原則として就労が認められない在留資格 「留学」「家族滞在」「短期滞在」など ただし、「留学」や「家族滞在」については、「資格外活動許可」を取得することで、週28時間以内(長期休業期間中は1日8時間以内)のアルバイトが可能になります。 在留カードの確認 実際に雇用を正式に開始する前に、必ず「在留カード」の現物を確認する必要があります。 カード表面の「在留資格」「在留期間(満了日)」を確認するほか、裏面の「資格外活動許可欄」の記載有無も重要なポイントです。 2. 労働法上の留意点 労働法務の観点からは、外国人だからという理由で差別的な取り扱いをすることは禁止されています。 労働基準法第3条(均等待遇) 労働基準法第3条では、国籍を理由として、賃金、労働時間、その他の労働条件について差別的取扱をすることを禁じています。 最低賃金の適用はもちろんのこと、残業代の支払い、有給休暇の付与など、すべての労働条件において日本人従業員と同じ法律が適用されます。 社会保険・労働保険の適用 社会保険(健康保険、厚生年金保険)および労働保険(労災保険、雇用保険)についても、国籍を問わず、加入要件を満たす場合は加入義務が生じます。 「外国人だから加入しなくてよい」「本人が希望しないから加入させない」といった対応は認められない可能性があります。 特に、在留期間更新許可申請の際、入管当局は外国人の公的義務の履行状況(納税や社会保険料の支払い)を厳しく審査する傾向にあります。会社が適切に社会保険に加入させていない場合、結果として本人のビザ更新に悪影響を及ぼすことも考えられます。 3. 採用選考時における注意点 求人募集や面接を行う際にも、法的な配慮が求められます。 求人票の記載内容 職業安定法に基づき、原則として国籍を限定した募集(例:「〇〇人歓迎」「外国人は不可」など)は行うべきではありません。 ただし、業務の性質上、特定の言語能力や海外の商習慣への理解が必要不可欠な場合など、合理的な理由がある場合に限り、その能力を要件とすることは可能です。 採用内定と在留資格の条件付け 就労ビザが必要な外国人を採用する場合、たとえ内定を出しても、入管から在留資格の許可が下りなければ働くことはできません。 そのため、雇用契約書には「在留資格が許可されることを条件として採用する(停止条件付雇用契約)」旨の条項を設けることが一般的です。 4. 雇用後の行政への届出義務 外国人を雇用した際(雇入れ時)および離職した際(離職時)には、すべての事業主にハローワーク(公共職業安定所)への届出が義務付けられています(労働施策総合推進法)。 雇用保険の被保険者でないアルバイト等の外国人を雇用する場合でも、届出は必要です。 この届出を怠ったり、虚偽の届出を行ったりした場合には、罰則の対象となる可能性があるため、確実な履行が求められます。 まとめ
- [学歴及び実務経験要件、契約主体、就労場所にみる在留資格「企業内転勤」と在留資格「技術・人文知識・国際業務」の相違](https://shiodome.co.jp/column/19112/) - 外国人を日本で雇用しようとする際、最も頻繁に検討される就労系の在留資格として、「技術・人文知識・国際業務」と「企業内転勤」の2つが挙げられます。 これらは、日本で行うことができる活動内容(業務内容)においては重なる部分が多く、実務上、どちらを選択すべきか判断に迷うケースが少なくありません。しかし、その許可要件、特に「申請人の経歴」「契約関係」「就労場所の制限」には相違点があります。 本記事では、この2つの在留資格の違いについて、実務上の重要ポイントに絞って解説します。 1. 2つの在留資格の基本的な内容 最初に、それぞれの在留資格の基本的な部分について説明します。 「技術・人文知識・国際業務」 日本の公私の機関(企業等)との契約に基づいて、理系分野の技術、文系分野の知識を必要とする業務、または外国人特有の感性を活かした業務に従事するための在留資格です。一般的に、日本企業による新規採用や中途採用で用いられます。 「企業内転勤」 外国に本店や支店がある企業から、日本にある事業所(本店、支店、駐在員事務所など)へ期間を定めて転勤し、上記「技術・人文知識・国際業務」に該当する業務に従事するための在留資格です。 次に、具体的な相違点について確認していきます。 2. 学歴及び実務経験要件の相違 最も大きな違いは、申請人(外国人本人)に求められる学歴と職歴の要件です。 「技術・人文知識・国際業務」の場合 原則として、従事しようとする業務に関連した「学歴」または「実務経験」のいずれかが必要です。 学歴要件: 大学、短期大学、または日本の専門学校(専門士、高度専門士の学位が必要)を卒業していること(専攻内容と業務内容に関連性が必要です)。 実務経験要件: 学歴要件を満たさない場合、担当する業務について10年以上の実務経験(国際業務区分の場合は3年以上)が必要です。 「企業内転勤」の場合 学歴要件は問われません。 大学等を卒業していなくても、申請の対象となり得ます。 その代わりに、転勤直前の勤務実績が厳格に求められます。 勤務実績要件: 外国にある本店や支店等で、転勤の直前に「継続して1年以上」、「技術・人文知識・国際業務」の業務に該当する活動に従事している必要があります。 このため、学歴要件を満たさない社員を日本へ呼び寄せる場合、「技術・人文知識・国際業務」では許可取得が困難であっても、「企業内転勤」であれば許可される可能性があります。 3. 契約主体の相違 日本の入管法では、就労系在留資格の要件として「本邦の公私の機関との契約」が求められますが、その契約形態の解釈に違いがあります。 「技術・人文知識・国際業務」の場合 通常は、日本の受入れ機関(日本法人や日本支店)と申請人が直接、雇用契約等を締結します。給与も原則として日本の機関から支払われる形態が一般的です(派遣契約の場合を含む)。 「企業内転勤」の場合 「転勤」という性質上、必ずしも日本の機関と新たな雇用契約を結ぶ必要はありません。 外国の機関(転勤元)との雇用契約を維持したまま、日本支店等への「転勤命令書」や「辞令」に基づいて日本で勤務する形態が認められます。 したがって、給与の支払い主体が外国法人にある場合や、日本と外国の双方から支払われる場合であっても、日本での生計維持に足る十分な報酬額が証明できれば、要件を満たすと考えられます。 4. 就労場所(活動範囲)の相違 許可後の活動範囲、特に将来的な配置転換や転職の自由度に関しては、大きな違いがあります。 「技術・人文知識・国際業務」の場合 許可された在留資格の活動範囲内(例:エンジニア、通訳、営業など)であれば、勤務先が変わっても(転職しても)、在留資格を変更することなく活動を継続できる場合があります。 ※ただし、転職先の業務内容が現に有する在留資格に該当するかどうかは、別途確認が必要です(就労資格証明書交付申請の活用など)。 「企業内転勤」の場合 活動の場所は、転勤先である当該事業所に限定されます。 例えば、転勤期間が終了した後、日本にある全く別の企業へ転職することは、この在留資格のままでは認められません。もし他社へ転職する場合は、「技術・人文知識・国際業務」など、別の在留資格への変更許可申請を行い、許可を得る必要があります。 この点は、「企業内転勤」が特定の企業間の異動を前提とした資格であることに由来する重要な制限といえます。 これまでの内容を表にまとめると以下のようになります。 まとめ 「技術・人文知識・国際業務」と「企業内転勤」は、いずれも専門的な業務に従事するための在留資格ですが、要件や活動の制約には明確な違いがあります。 特に、学歴要件を満たさないベテラン社員を海外から呼び寄せる場合には「企業内転勤」が有力な選択肢となりますし、将来的に日本国内での幅広い活躍を視野に入れている場合は、要件を満たしていれば「技術・人文知識・国際業務」を選択する方がメリットが大きい場合もあります。 申請にあたっては、申請人の経歴だけでなく、企業の事業計画や人事戦略に照らし合わせ、どちらの在留資格が適切かを慎重に検討することが重要です。
- [在留資格「企業内転勤」の概要、申請手続き全体像及び在留資格認定証明書の電子化 ](https://shiodome.co.jp/column/18620/) - はじめに グローバル化が進む現代において、海外に拠点を置く企業が、人材育成や事業拡大のために外国人社員を日本へ転勤させるケースが増加しています。この際に必要となるのが、在留資格「企業内転勤」です。 本記事では、この在留資格の基本的な要件から、申請から来日までの具体的な手続きフロー、そして近年の大きな変更点である「在留資格認定証明書の電子化」について解説します。 1. 在留資格「企業内転勤」の概要 在留資格「企業内転勤」は、外国に本店や支店を有する公私の機関の外国の事業所から、日本の事業所(本店、支店、営業所など)へ期間を定めて転勤し、特定の業務に従事する外国人を対象としています。 対象となる活動 日本で行うことができる活動は、在留資格「技術・人文知識・国際業務」に相当する業務に限られます。 具体的には、理学・工学・自然科学分野の技術を要する業務(エンジニア等)、または法律・経済・社会学などの知識を要する業務(企画、営業、マーケティング等)、あるいは翻訳・通訳などの国際業務が該当します。 いわゆる単純労働や、現場作業のみに従事することは認められません。 2. 主な許可要件 転勤直前の勤務歴外国の事業所において、転勤の直前に継続して1年以上、「技術・人文知識・国際業務」の業務に従事している必要があります。 報酬の同等性日本人従業員が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受ける必要があります。 期間の定め「転勤」であるため、日本での勤務期間が決まっていることが前提となります(数年ごとの更新は可能です)。「転勤」であるため、日本での勤務期間が決まっていることが前提となります(数年ごとの更新は可能です)。 在留期間許可される在留期間は、5年、3年、1年、または3月のいずれかとなります。活動の予定期間や企業の規模、事業の安定性などに基づき入管が決定します。 3. 申請手続きの全体像(フロー) 海外にいる社員を日本へ呼び寄せる場合、一般的に「在留資格認定証明書交付申請(COE申請)」を行います。手続きの全体像は以下の通りです。 申請の準備・提出日本の受入れ機関(日本法人や支店)の所在地を管轄する地方出入国在留管理官署へ申請を行います。近年では、オンライン申請システムの利用も普及しており、窓口へ行くことなく、自宅やオフィスから電子申請することも可能です。主な必要書類: 申請書、転勤命令書、過去1年間に従事した業務内容及び地位、報酬を明示した転勤の直前に勤務し た外国の機関の文書、外国法人の概要資料、日本拠点の概要資料(登記簿謄本、決算書等)、本人の経歴書、パスポートの写しなど。 審査・結果の通知入管による審査が行われます。標準的な処理期間は1ヶ月〜3ヶ月程度とされていますが、時期や個別案件によって異なります。審査の結果、許可されると「在留資格認定証明書(Certificate of Eligibility: COE)」が交付されます。 ビザ(査証)の発給申請在留資格認定証明書が交付されたら、次は海外にいる本人が手続きを行います。 来日・上陸許可ビザが発給された後、日本へ渡航します。日本の空港等の入国審査カウンターにて、パスポート、ビザ、認定証明書を提示し、上陸許可を受けると、「在留カード」が交付され、日本での活動が可能となります。 4. 在留資格認定証明書(COE)の電子化について これまで在留資格認定証明書は「紙」の原本が郵送で交付されていましたが、デジタル化の推進により、2023年3月17日より電子メールでの交付が可能となっています。 この変更により、実務における利便性が大きく向上しています。 従来は、日本にいる代理人が紙の証明書を簡易書留等で受け取り、それを国際郵便(EMSやDHL等)で海外にいる本人へ原本郵送する必要がありました。これには郵送コストと、数日〜数週間のタイムラグが発生していました。 電子化(メール交付)を選択することで、以下のメリットがあります。 タイムラグの解消: 審査完了後、速やかにメールで結果を受け取れます。 郵送コスト・リスクの削減: 国際郵便での紛失リスクや配送料がなくなります。 転送の簡便さ: 受信したメール(またはCOEの画像データ)を、海外にいる本人へ転送するだけで済みます。 電子COEの利用方法 申請時: 申請書の所定欄またはオンライン申請システム上で、電子メールによる交付を希望する旨を選択・入力します。 受取時: 入管から「在留資格認定証明書電子交付のお知らせ」という件名のメールが届きます。メール本文内のURLから証明書をダウンロード、またはメール自体が証明書の代わりとなります。 ビザ申請時・入国時: 本人は、スマートフォン等の画面で「在留資格認定証明書交付メール」を提示するか、あるいはメール画面をプリントアウトしたものを提示することで、手続きが可能となります。 国や地域の大使館・領事館によっては、運用が異なる場合があります。事前にプリントアウトした紙を持参するよう案内される可能性があるため、印刷して携行することが推奨されます。 まとめ 在留資格「企業内転勤」の手続きは、申請人本人の要件確認だけでなく、出向元機関と出向先機関の関係性の立証、そして在留資格認定証明書の交付後の迅速な連携が求められます。 特に、在留資格認定証明書の電子化は、企業のリードタイムを短縮する有効な手段です。従来の紙ベースの手続きにとらわれず、最新の運用フローを理解して準備を進めることで、より円滑な駐在員受け入れが可能になると考えられます。
- [外国人の日本語能力検定「JLPT」と「BJT」の概要と選択肢の比較](https://shiodome.co.jp/column/7866/) - 外国人が日本で働く際に一番の壁となるのが「言語」です。日本語は「ひらがな」「カタカナ」「漢字」の3つで構成されています。日本人でさえ長年かけて漢字を学習してきているのですから、外国人にとって漢字を含めた日本語をスラスラと読むことは簡単ではありません。 しかし、雇った外国人がまったく日本語ができないのでは業務に支障がでることもあるでしょう。できることならば、簡単な日本語が読める外国人を雇用したいと考える企業も多いと思います。そこで今回は、外国人が日本語を一定の水準で使うことができることを示す日本語検定「JLPT」とビジネスに特化した日本語能力テスト「BJT」について詳しく紹介します。 1. 外国人は日本語が話せなくても日本で働ける? 外国人が日本で働く際に「日本語が話せる」「日本語の文章が理解できる」ことは必ずしも必須のことではありません。日本で外国人を雇用するからにはそれなりの理由があるからで、英語でコミュニケーションがとれれば仕事には差し支えないことがほとんどです。しかしながら、職種によってはそうはいえなくなります。たとえば昨今の教育現場で活躍する「外国人英語講師」は、主に英語で授業を行うため、英語が話せれば仕事はこなせます。しかし、英語が話せない児童とコミュニケーションが図れず、関係性の構築に困難を抱える人も多いといいます。そのため、職種や仕事内容によっては、できる限り日本語が話せる・理解できる外国人を雇用したいと考える企業も多いと思います。しかし、日本語が話せるという基準は非常に曖昧です。外国人本人は日本語に自信があっても、実はまったくコミュニケーションがとれないということも起こりえます。そのような問題を解決するために役に立つのが「JLPT」や「BJT」です。これらの検定や試験に合格、もしくは高得点を取っているようであれば、ある程度日本語に精通している外国人だと判断することができます。外国人を採用する際の1つの基準にするとよいでしょう。 2. 日本語能力検定試験JLPTとは? それでは、外国人にとって日本語の力を示す基準となるJLPTの詳細について紹介していきます。 JLPTの概要と世界での状況 JLPTとは「Japanese-Language Proficiency Test」の略で日本語では「日本語能力試験」と呼ばれます。国際交流基金と日本国際教育支援協会によって運営・実施されており、2018年は85の国と地域(249都市)で実施されました。2019年の受験者数は約120万人に達するなど、日本語を学ぶ外国人の間で大きな注目を集めている試験です。N5からN1まで5つのレベルに区分されており、各レベルに見合った言語知識・読解・リスニングが行われます。それぞれのレベルが要求する目安は以下の通りです。 N3やN2に合格している外国人であれば、ある程度の日常会話やビジネストークが可能になります。N1の合格基準は非常に高く、日本人であっても難しいと感じるほどの難易度ですので、N1レベルであれば外国人とは思えないほどスムーズにコミュニケーションがとれるでしょう(ただしJLPTにはスピーキングテストは含まれていません)。N5やN4レベルではビジネス現場においてスムーズなコミュニケーションを図ることは難しいですが、日本語が読める、複数の単語やあいさつを知っているという点においてまったく日本語がわからない外国人よりも優れたコミュニケーションを発揮します。国別の受験数では、香港・マカオを含む中国人の受験生が圧倒的多数を占め、次いで台湾、韓国、ベトナムの受験者が多くなっています。アジア圏で特に人気の日本語検定といえます。 JPLTの受験に関して 海外の特定の都市や日本の指定場所にて受験が可能です。日本では7月と12月の年2回、全国の主要都市で実施されています。書店などで願書を購入して郵送する方法とインターネットから出願する方法があり、日本国内で受験をする場合の受験料は6,500円(税込)です。海外で受験する場合、受験料や試験実施日は国や地域によって異なり、また、時期により試験の開催都市が異なるため、詳細は受験を予定している国・地域の試験実施機関へ直接確認するのがおすすめです。試験実施機関などにつきましては、JLPTのWebサイトから確認することができます。なお、海外受験のための申込代行を行っている日本語学校などもありますので、ご自身で出願が困難な場合は、申込代行サービスを利用することもひとつの方法です。 JLPTに合格するメリット 日本には、在留に関して「高度な技術や専門性で日本に貢献する事のできる良質な人材」を認める高度人材ポイント制による出入国管理上の優遇制度という制度があります。高度外国人材の受入れを促進するため、高度外国人材に対し、ポイント制を活用した出入国管理上の優遇措置を講ずる制度が平成24年5月7日より導入されました。高度外国人材の活動内容を「高度学術研究活動」「高度専門・技術活動」「高度経営・管理活動」の3つに分類。それぞれの特性に応じて「学歴」「職歴」「年収」などの項目ごとにポイントを設け、ポイントの合計が申請要件である点数(70点)に達し高度外国人材と認められた場合、在留期間5年が一度に与えられるなど、いくつかの出入国管理上の優遇制度を与えられます。N1に合格しているとそれだけで15ポイントを得ることができるため有利だといえます。また、起業に必要な勉強をするために国費留学する場合などは、日本人が海外留学する際にTOEFLやIELTSが必要なのと同様、N1の合格が受験資格の一つになります。さらに外国大学医学部卒業生が日本の医師国家試験を受ける場合でも、N1取得が受験資格となります。獣医や介護福祉士など、その他の国家資格受験にもN1合格が前提となります。 3. ビジネス日本語能力テスト「BJT」とは またJLPT以外に、最近注目されている日本語検定としてBJT(Business Japanese Proficiency Test)があります。日本語では「ビジネス日本語能力テスト」と呼ばれ、日本漢字能力検定協会が主催となって実施しています。日本語に関する知識はすでに取得しているという前提の元で実施され、ビジネスコミュニケーション、情報処理に関する能力を評価します。試験内容は聴解テスト、読解テスト、及びこの2つを複合した聴読解の3つの形式から構成されており、満点は800点です。点数をもとに、6段階で評価をします。それぞれの得点と主な日本語力は以下の通りです。 6段階のうち、600点以上が必要なJ1+が最高レベルです。JLPTのN1合格者であってもBJTでは300点から700点の間であることが多く、J1+レベルに達している人はごく僅かです。 JLPTのN1に合格した日本語の語彙・文法など知識が多くある人でもビジネス場面での運用能力には大きな開きがあることがBJTで明らかとなっています。語彙力や文法力だけでなく、ビジネスシーンでの日本語スキルを測りたい、または証明したい方は、BJTの受験を検討するとよいでしょう。試験はJLPTと同様に日本国内・海外いずれでも受験が可能です。試験実施日・実施場所が限定されているJLPTと異なり、BJTは各地のテストセンターで受験可能で、自身の都合に応じて日時と会場を選ぶことができます。また、結果は即日判明します。尚、日本国内で受験する場合の受験料は7,000円(税込)で、インターネットから出願可能です。 4. おわりに 今回は、外国人が日本で働く際に必要となる「日本語能力」をはかる指標として人気のJLPTとBJTについて紹介しました。外国人を雇用する際には、まずはその人物に対して日本語の能力を求めるかどうかを検討することが重要です。また、どの程度のレベルが必要であるかについてもしっかりと設定した上で必要な人材を雇用するようにしましょう。弊社では外国人の雇用やビザに関するトータルサポートを実施しています。もし外国人の雇用やビザについてお困りのことがございましたら、お気軽にお問い合わせください。
- [グローバル化において外国人労働者が感じる日本文化の特徴とは](https://shiodome.co.jp/column/7864/) - グローバルの波が比較的遅かった日本ですが、昨今急激にグローバル化が進み、日本で働く外国人は増加しています。2020年には外国人労働者数が過去最高を記録し172万人を突破しました(厚生労働省しらべ)。 しかしながら、日本で働いている外国人は、日本での勤務を必ずしも肯定的に捉えているわけではありません。たとえば、転勤命令などにより自身の意思に反して日本で就労することになった外国人もいるのが実際です。 外国人が日本で気持ちよく働き、力を発揮してもらうためには、外国人が日本をどのように感じているのかを知ることが重要です。そこで本記事では、外国人が抱いている日本の印象について紹介します。 1. 外国人が感じる日本の疑問点 株式会社エイムソウルは、外国人が感じる日本の疑問点について調査を行っています(参照)。その結果、以下のような結果が得られたとのことです。 日本の特徴ともいえる職場ルールがずらっと並んでいるといったところでしょうか。外国人の多くは、日本の会社が持つこれらのルールに対して疑問を感じているようです。 外国人の中で特に話題になるのは日本人の「働き過ぎ」についてです。“Karoushi/Karoshi”という言葉が海外にも広まっており、日本人は働き過ぎというイメージをもたれています。そのこともあり、日本での仕事を敬遠したがる人々もいるのが実情です。 日本では効率的に働くことよりも、ただ長く働くことが評価されるという意見を海外の掲示板で見かけることがあります。筆者も海外でタクシーに乗ったとき、日本人のイメージは働き過ぎと言われました。このような長時間労働のイメージや実態は、日本で働きたいと考えている外国人の意欲を削ぐことになりかねません。 また、日本の通勤ラッシュ時の動画を目にした外国人の中には、ドアが開いて人混みの中に自ら埋まっていく日本人の姿や、駅員が乗客を押して社内に押し込んでいる様子に衝撃を覚えた人も多いようです。人口が集中している都市部の交通機関は、外国人にとって避けたいことの1つかもしれません。 2. 外国人が感じる日本のよさ 外国人が感じる日本の疑問点を紹介しましたが、日本を賞賛する肯定的な意見ももちろんあります。例えば、以下の様なものです。 日本人は礼儀正しい 日本人は秩序を守って行動する 日本はインフラが整備されている 日本では電車やバスが時刻表通りに運行されている 日本は経済的に豊かである これらが高く評価され、日本に居住することに対して安心感を覚える外国人も多いようです。外国人と働く際に、相手の文化や考え方を尊重することは重要ですが、迎合してしまうと日本人の性格や考え方に魅力を感じている外国人が失望してしまう要因となるため、あくまでも相互理解を基本とし、互いに尊重し合うことが大切といえそうです。 3. 外国人に立ちはだかる言語の壁 外国人が来日を躊躇う要因のひとつとして、やはり言語の壁があります。 日本語では「ひらがな「カタカナ」「漢字」の3種類全てが日常的に使われています。ひとつの言語で異なる文字が複数使われているというのは世界的に見ても稀であり、外国人にとっては極めて複雑に見えるため、日本語学習で戸惑う外国人が多いようです。 実際には漢字が多く使われているため、中国語圏など漢字が使われている国の出身者にとっては比較的ハードルは低いようですが、欧米などアルファベットが根付いている国の出身者にとっては極めて高い壁となります。 更に、日本人の英語力も外国人にとっては言語の壁となっています。英語が世界共通語になって久しいですが、日本の英語レベルが低いことは有名です。また、外国人観光客が街中で日本人に英語で話しかけても、意思疎通が出来ず助けを得られなかったという話も海外では広く知られているようです。 この言葉の壁をなくす、または、低くできれば、優秀な外国人材が日本で働くという選択をしやすくなるでしょう。そのためには、日本での就労を検討している、または就労している外国人が日本の文化や日本語を学ぶことと合わせ、日本社会全体が外国語への理解を深めることも大切です。 4. おわりに 本記事では、外国人が抱く日本の印象について紹介しました。日本を高く評価する声と、疑問に感じる声のどちらも存在するというのが実際のところです。もしあなたの会社で外国人人材を雇用しようとしているのならば、外国人が感じる日本の特徴についても理解しておくとよいでしょう。 文化や言語の異なる外国人を雇用することは、慣れていない企業にとっては予想以上に大変です。もし外国人の雇用やビザに関してお困りのことがございましたら、外国人雇用に関してトータルサポートを提供している弊社まで、お気軽にお問い合わせください。
- [日本における生活で外国人労働者が不便に感じることとは](https://shiodome.co.jp/column/7863/) - 外国人は、日本は治安が良くて安全、また秩序が守られていて生活しやすいと感じることが多いようです。その一方で、さまざまなことに対して「不便だ」と感じている外国人もいるといいます。 文化が違えば、不便さを感じる場所はもちろん異なります。しかし、日本が今後、多くの外国人観光者や従業員、外資系企業を受け入れていくことを考えると、外国人が何に対して不便と感じているのかを確認しておくことは非常に重要です。そこで今回は、外国人が日本の生活で不便だと感じること7選を紹介します。 1. 外国人が感じる日本の不便なところ7選 では早速、外国人が感じる日本の不便なところ7選を紹介していきたいと思います。 (1)言葉 まず挙げられるのが「言葉」です。多くの外国人は日本で言葉の壁を感じ、不便だと感じるといいます。 日本でもグローバル社会に向けて英語に力を入れる人材が増えていますが、日本人の英語レベルはまだまだ低いのが現実。国際語学教育機関「EFエデュケーション・ファースト」が2019年に英語を母語としない国を対象に行った英語力調査では、韓国や中国、シンガポールやマレーシアなどアジア各国が50位以内にランクインする中、日本は100ヶ国中53位で、先進国の中で見たら最下層に位置しています。 これにより、外国人が意思疎通を図ろうとしても会話にならないことが多々あるといいます。 かといって、外国人に日本語の力を求めるのはなかなかに困難です。日本語はひらがな、カタカナ、漢字の3つの文字があるため、外国人にとって読み書きが非常に難しいといわざるをえません。また、発音や語順、尊敬語や謙譲語など、独特のルールも多くあります。そのため、ビジネス目的の外国人も、観光目的の外国人も、言葉の壁に対して不便さを感じているようです。 (2)電車の乗り換え 日本の首都圏では、電車や地下鉄が非常に細かく張り巡らされており、移動が簡単という利点があります。しかしながら、路線が多くなることで生じた問題が「駅の複雑化」です。どの路線に乗ればよいのか、どの電車が目的地にたどり着くのかがわからず、外国人は苦しむといいます。 たとえば、日本で最大の利用者数を誇る新宿駅や、巨大なターミナルである東京駅において、読者のみなさんも迷子になったことがあると思います。日本人でもわかりづらく、不安を感じる日本の駅事情は、外国人にとってはより怖い場所だと考えられます。 確かに最近では、日本語表記の上下に英語表記がされていることが一般的ですが、表札は読めてもわからない、というのが外国人の生の声です。もし、みなさんが外国人と駅で待ち合わせをする際に、おそらくわかるだろうと手短に説明した場合、外国人は大きな不安と戦っているかもしれません。日本の駅は、外国人にとって非常に複雑と感じているようです。 (3)賃貸契約が難しい 短期の場合はホテルなどを利用すれば良いのですが、長期の滞在となると、日本でアパートやマンションを借りることがほとんどです。しかし、外国人が住居を借りるのは、日本人とは比べものにならないくらい複雑な場合があります。 まず、住居によっては、外国人の入居が不可です。これは、何か問題が起こった場合にすぐに対応できないなどが理由です。また、外国人でもどこの国から来たのか、収入はどれぐらいあるのかなどを厳しくチェックされます。なぜなら、収入が少ない場合、家賃を払ってもらえない場合があるからです。 このように日本側にもれっきとした理由はあるのですが、総じて外国人の住宅探しは難航します。そのため、住居探しが非常に不便だと感じる外国人が多くいます。 (4)ビジネス文化 「空気を読む」や「オブラートに包む」などの言葉がある通り、日本では直接的に意見などを言うことはほとんどありません。そして婉曲的な表現や、相手の様子や雰囲気などから情報を得て相手の真意を理解します。 日本人同士でももちろん難しい場合がありますが、外国人にとってはより一層難しいと予想されます。入社の際に「感じたことがあったら何でも言ってね」と言われたため意見を述べたら、周りから冷たい目をされたという経験がある外国人は多いようです。 外国人からすると「日本人はハッキリしない。何を考えているか分からない」と感じるようです。一方、日本人はストレートに物事を言う外国人に対して「思いやりが欠けている。協調性がない。失礼な人」などの印象を持ちます。その結果、お互いに円滑にビジネスを進めたいと思いながらも歯車が合わず、良好な関係を築くことが難しくなります。 また、日本では社内や取引先との関係構築のため、飲み会や接待がごく当たり前ですが、そのような文化や考え方がない外国人は困惑することもあるようです。特に『仕事以外の時間は家族と一緒に過ごしたい』『自分のために時間を使いたい』と考えている外国人にとっては、飲み会や社内イベントはプライベートな時間を妨げるものとして苦痛に感じることがあるようです。 (5)宗教 日本では年末にクリスマスを祝い、年始にお寺や神社へ初詣に行くなど宗教に関連する行事が行われています。しかし、それらは信者として行っているものではなく、単なるイベントとして行っていることがほとんどです。そのため、イベントに宗教的な意味や価値を置く外国人から見ると、不思議に感じるようです。 また、日本では宗教的な理由によって禁止された食材がほとんどありません。最近ではハラル認証やハラルフードという言葉も増えつつありますが、まだまだ宗教に対応した食事や飲食店が少ないのが現実であり、外国人は食事選びにおいて不便さを感じることがあります。 (6)温泉・タトゥー 日本人同様、温泉が好きという外国人も多くいます。日本ではタトゥーや入れ墨は反社会的勢力が入れるものとして認識されているため、温泉や銭湯など公衆浴場ではタトゥーを入れている人の入浴はお断りとされています。 しかし、海外ではオシャレとしてタトゥーを入れる人も多く、ファッションの1つとして親しまれています。しかしながら日本では、タトゥーが理由で、温泉や大衆浴場での入浴が拒否されます。これはタトゥーというものに対する見方、考え方の違いが主な原因ですが、日本独特のタトゥーの考え方に対し、不便さや不満を感じる外国人も多いようです。 (7)役所での手続き 外国人が何かの申請のために役所に出向いたときに、さまざまな不便さを感じるといいます。たとえば、質問をしようとしても英語が話せるスタッフがおらず、数時間待たさせることがあります。また、書類は日本語で準備されており外国人は読めません。さらには英語で名前を記載したら、日本語で書いてくださいと言われることまであるといいます。 日本で生活するための書類を得る際もですが、ビジネスに関する書類を集めるのはもっと大変といいます。外国人が日本でビジネス関連書類を集める際には、時間に余裕を持ち、しっかりと準備をしたうえで臨んでください。 2. おわりに 今回は、外国人が感じる日本の不便なところ7選を紹介しました。日本人であれば当たり前でも、外国人にとっては非常に不便と感じることが多くあります。もし外国人のサポートをしたり、外国人とビジネスをする際には、ぜひ参考にしてください。 弊社では外国人の雇用やビザに関するトータルサポートを実施しています。もし外国人の雇用やビザについてお困りのことがございましたら、お気軽にお問い合わせください。
- [外資系企業の日本法人設立におけるプロセスと論点とは](https://shiodome.co.jp/column/7561/) - 本記事では、外資系企業が日本に進出する際の1つの形態となる日本法人設立について詳しく説明いたします。別の形態となる日本支店や日本駐在員事務所との違いについても詳しく説明いたします。 1. 日本法人とは? 外国会社が日本で活動をする際には、会社は必ず日本に活動の拠点を持たなければなりません。拠点には、日本法人(子会社)、日本支店、日本駐在員事務所の3つがあります。 この中の日本法人は、外国会社が出資者となり、日本に独立した法人を設立することを言います。市場調査、情報収集、物品の購入、宣伝広報活動、本社への情報の提供などを行う駐在員事務所と違って、日本法人は日本支店と同様に、直接的な事業活動ができることになります。 但し、日本法人は日本支店と違って、独立した法人格を持ちますので、日本法人から生じた債権債務は、そのまま日本法人に帰属することになります。債権債務が外国会社の本社に帰属する日本支店とは、この点が大きく違います。 2. 日本法人と日本支店、日本駐在員事務所の違いは? 日本法人と日本支店、日本駐在員事務所の違いには、大きく分けて3つあります。 まず1つ目は、登記です。日本駐在員事務所は登記の必要はありませんが、日本法人は独立した法人格を持ちますから、設立登記しなければなりません。また日本支店にも、登記の義務があります。 2つ目は、営業活動です。先ほどご説明したように、日本法人は営業活動を行うことができますが、日本駐在員事務所は営業活動ができず、あくまでも市場調査、情報収集、物品の購入、宣伝広報活動、本社への情報の提供などに限定されます。なお、日本支店は日本法人と同様に、営業活動ができます。 最後の3つ目は、事業体です。日本法人は日本支店と同様に、事業体として認められますが、駐在員事務所は認められません。但し、事業体として認められている日本法人と日本支店には、以下のような違いがあります。 日本法人は、外国会社本社とは別の企業体として扱われます。従って、外国会社本社と別の取締役、監査役を選んで、就任してもらう必要があります。先ほどもご説明したように、営業活動によって生じた債権債務は全て日本法人に帰属し、外国会社本社には無関係なものとして取り扱われます。 一方で、日本支社は日本の法人としてみなされますが、日本支店はあくまでも外国会社と同一の事業体です。日本支店は、外国会社に従属するものと言う考え方ですから、日本支店で発生する債権・債務はすべて外国会社が負担することになります。当然、取締役、監査役、株主総会などの機関も、日本支店に設置する必要はありません。 日本支店設置についてはこちら 日本駐在員事務所設置についてはこちら 3. 日本法人を設立する手続きとは? 日本法人を設立する手続きは、以下のような流れで行います。(1)設立事項の内容を検討・決定する。(2)外為法の事前届出の必要性を検討する。(3)外国会社本社から書類を取り寄せる。(4)定款を作成し、認証を受ける。(5)出資金を払い込む。(6)設立登記を申請する。(7)各種届出、報告を行う。 日本法人を設立する場合、まず法人の内容を検討し、決定します。決めるべき事項は、日本法人の名称(商号)、本店所在地、役員、事業内容、資本金の額などです。また、許認可が必要な事業を予定していれば、その申請の準備を行わなければなりません。さらに、外国人を役員として迎える予定がある場合には在留資格を申請する準備を行います。外国人が代表取締役に就任する場合には、「経営管理」の在留資格が必要です。 次に、日本法人の事業内容によっては外国為替及び外国貿易法(外為法)に基づく事前届出が必要となる場合があります。仮に事前届出が必須の場合には、届出後30日経過するまで設立登記ができませんので、事前の調査はかなり重要です。事前届出が必要な場合は、設立登記申請日より前6ヶ月以内に届出を行います。また、事前届出が不要な場合には、日本法人設立後に事後報告を行います。 さらに、外国会社本社から必要書類を取り寄せなければなりません。日本法人を設立する場合、一般的に外国会社が子会社を設立することになりますから、定款の認証を受ける際に公証役場に外国会社本社の「登記事項証明書」を提出する必要があります。他にも「設立証明書」、「営業許可証」などを外国会社本社から取り寄せ、さらに必要に応じて「宣誓供述書」を作成し本国で認証を受けます。これらの書類も定款認証の際に公証役場に提出することになります。 その後、日本法人の基本事項を記載した「定款」を作成します。そして、作成した定款に法的に問題がないというお墨付きをもらう必要があります。これが定款の認証です。公証役場に行って定款と必要書類を確認してもらい、公証人に定款の内容を確認してもらい、認証を受けます。 定款作成後に、出資金を出資する人(出資者)から銀行口座に払い込みを行います。なお、この場合の銀行口座の名義人は日本法人の発起人または設立時の代表取締役となります。また、出資金の払い込みを行う銀行は日本国内の銀行本支店(外国銀行も含む)、または日本の銀行の海外支店です。 必要な書類が揃ったら法務局に提出し、設立登記の申請を行います。登記の申請日が日本法人の設立日となります。登記は申請日から1~2週間程度で完了します。 設立登記が終わったら税務署への届け出、社会保険の加入手続きなどを行います。また、外国会社の支店設置は外為法に規定されている「外国投資家による対内直接投資等」に該当しますので、業種によっては事前または事後に財務大臣及び所轄官庁大臣に対して報告書を提出しなければなりません。 また、日本法人に常勤で滞在する人を海外から招へいする場合には、在留資格を取得する必要があります。例えば、本国の本社などに1年以上勤務した人が本国から派遣される場合には、「企業内転勤」の在留資格が必要です。また、日本で採用されて日本法人に勤務する場合には「技術・人文知識・国際業務」の在留資格が必要です。なお、雇用する外国人が既に「永住」、「定住者」、「日本人の配偶者等」といった就労制限のない在留資格を持っている場合には、新たに在留資格を申請する必要はありません。 4. おわりに 本記事では、外資系企業が日本進出を図る際の拠点の1つとなる日本法人設立について紹介しました。そのほかの形態となる日本支店や日本駐在員事務所とは、登記や営業活動、事業体などの面で違いがありますので、よく検討した上で進める必要があります。 弊社では、日本に進出を考えている企業のためのトータルサポートを実施しています。もし、日本進出をよりスムーズに進めたいとお考えでしたら、弊社までお気軽にお問い合わせください。
- [日本支店設置における駐在員事務所や日本支社との違いとは](https://shiodome.co.jp/column/7563/) - 外資系企業が日本に進出する際の1つの形態が「日本支店設置」です。本記事では日本支店について詳しく説明するとともに、他の進出形態である日本駐在員事務所や日本支社の設置との違いについても紹介します。 1. 日本支店とは? 外国会社が日本で活動をする際には、会社は必ず日本に活動の拠点を持たなければなりません。拠点には、日本支社、日本支店、日本駐在員事務所の3つがあります。 この中の日本支店は、外国会社が日本に設置する営業所のことです。従って、市場調査、情報収集、物品の購入、宣伝広報活動、本社への情報の提供などを行う駐在員事務所と違って、日本支店では直接的な事業活動ができることになります。 なお、日本支店と日本支社は日本で事業活動を行うことができますが、日本支店は日本支社と違って、独立した法人格ではなく、あくまでも外国会社の本社の法人格に従属するものという考え方です。但し、日本支店として登記をしなければなりません。 2. 日本支店と日本駐在員事務所、日本支社の違いは? 日本支店と日本駐在員事務所、日本支社の違いには、大きく分けて3つあります。 まず1つ目は、登記です。日本駐在員事務所は、登記の必要はありませんが、日本支店は支店の場所について登記しなければなりません。また日本支社にも、登記の義務があります。 2つ目は、営業活動です。先ほどご説明したように、日本支店は、営業活動を行うことができますが、日本駐在員事務所は営業活動ができません。なお、日本支社は日本支店と同様に、営業活動ができます。 最後の3つ目は、事業体です。日本支店は日本支社と同様に、事業体として認められますが、駐在員事務所は認められません。但し、事業体として認められている日本支店と日本支社には違いがあります。 日本支社は日本の法人としてみなされますが、日本支店はあくまでも外国会社と同一の事業体です。日本支店は、外国会社に従属するものと言う考え方ですから、日本支店で発生する債権・債務はすべて外国会社が負担することになります。当然、取締役、監査役、株主総会などの機関も、日本支店に設置する必要はありません。 日本支店を開設する場合には、日本における代表者及び営業所を定めて、支店開設登記が必要になります。登記が必要な点では、日本支社と同様です(駐在員事務所は不要)。 日本法人設立についてはこちら 日本駐在員事務所設立についてはこちら 3. 日本支店を設置する手続きとは? 日本支店の設置の流れは、以下のとおりです。(1)日本支店の代表者を決める。(2)支店の住所及び商号を決定する。(3)登記の申請を行う。(4)日本支店で働く外国人に必要な在留資格を申請する。 外国会社が日本に支店を設置しようとする場合、まず代表者を決める必要があります。代表者は日本人でも外国人も構いませんが、代表者になる人は、必ず日本に住所を定めなければなりません。外国人が代表者となる場合には「企業内転勤」または「経営管理」の在留資格が必要です。 代表者が決定したら、支店として活動する物件を探し、賃貸契約を結ぶことになります。また、支店の商号を決めることになりますが、既に同じ商号が日本にないか調査しなければなりません。 支店の代表者、住所、商号が決まったら、登記申請の手続きを行います。必要な書類は、以下のとおりです。・本店の存在を認めるに足る書面・日本における代表者の資格を証する書面・定款または会社の性質を識別するに足る書面 この他にも書類を要求される場合もあります。また、外国会社の本国の法制度によっては追加書類が必要なこともあります。また、設立登記の際には日本支店の代表者印の届出も合わせて行います。但し、設立登記の申請には、一般的に上記の証明文書の代わりに、登記に必要な事項を記載した「宣誓供述書」を提出します。 宣誓供述書とは、本国の管轄官庁、あるいは日本における領事などの外国官憲によって認証された書類のことです。具体的には、定款、業務方法書、議事録、任命書、契約書、会社案内、その他本国官庁による証明書を基に日本支店の概要を書類に記載し、外国の公証人や在日大使館領事等の認証権限がある人の前で宣誓を行い、本国の外国会社の代表者または日本における代表者が署名することになります。この手続きによって、公的に認証されます。 その後、必要書類を支店の住所を管轄する法務局に提出し、設立登記の申請を行います。登記が完了するまでは、支店の事業活動を行うことができません。登記申請書の提出から登記の完了までは、1~2週間程度です。但し、書類の不備や追加書類が必要な場合などは、この期間よりも長くなります。 最後に、支店に常勤で滞在する人を海外から招へいする場合には、在留資格を食する必要があります。例えば、本国の本社などに1年以上勤務した人が、本国から派遣される場合には「企業内転勤」の在留資格が必要です。また、日本で採用されて駐在員事務所に勤務する場合には、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格が必要です。 なお、雇用する外国人が、既に「永住」、「定住者」、「日本人の配偶者等」と言った就労制限のない在留資格を持っている場合には、新たに在留資格を申請する必要はありません。その他にも設立登記が終わったら、税務署へ届け出、社会保険の加入手続きなどが必要です。また、外国会社の支店設置は、外国為替及び外国貿易法に規定されている「外国投資家による対内直接投資等」に該当しますので、業種によっては事前または事後に、財務大臣及び所轄官庁大臣に対して、報告書を提出しなければなりません。 4. おわりに 本記事では、外国会社が日本進出を図る際の1つの形態となる日本支店設置について紹介いたしました。日本支店は、駐在員事務所と違って直接的な事業活動ができるなどの特徴があります。自社にとって相応しい進出形態を選ぶようにするとよいでしょう。 弊社では日本に進出を考えている企業のトータルサポートを実施しています。もし企業の日本進出に関してお困りでしたら、お気軽にご相談ください。
- [国際結婚に必要な「婚姻要件具備証明書」の取得方法と論点](https://shiodome.co.jp/column/7854/) - 日本人が外国人と結婚する際にはさまざまな書類を集める必要がありますが、そのうちの1つが「結婚要件具備証明書」です。結婚要件具備証明書は、日本人同士の結婚では必要の無い書類のため、情報を集めるのに苦労している人もいることでしょう。 そこで今回は、国際結婚の際に必要な書類である婚姻要件具備証明書についてご紹介します。 1. 婚姻要件具備証明書とは 「婚姻要件具備証明書」とは、外国人の婚約者が、その方の本国の法律が定めている結婚できる要件を満たしていることを証明する公的文書で、各国の政府が発行します。日本では健康具備証明書のことを、独身証明書といったりもします。海外では別の言い方をすることもありますので注意してください。 2. なぜ婚姻要件具備証明書が必要なのか 日本人と外国人が日本で婚姻する際には、市区町村の戸籍届出窓口に婚姻届を提出した後、両当事者(夫と妻)に結婚できる要件が備わっているかが審査されます。この審査は、主に当事者の本国の法律に照らして行われます。 たとえば、婚姻できる年齢について、日本人は民法が定めている年齢に達しているかどうかが審査され、外国人はその方の本国の法律が定めている年齢に達しているかが審査されます。また、すでに結婚を経験したことがある場合、適切な手続きで離婚が成立していなければ再婚できないことがほとんどです。対象者が今、正式に結婚できる状態であるかどうかについても審査されます。 両者が結婚できる要件を満たしているかを確認するのが市区町村の戸籍届窓口の役割ですが、各窓口が世界各国の法律を把握するのは困難です。そのため、結婚できる要件を満たしていることを本国の政府が証明する婚姻要件具備証明書を提出することが求められます。 日本人同士の結婚であれば、戸籍窓口の担当者が条件を満たしているかどうかをすぐに確認できるため、婚姻要件具備証明書は必要ありません。そのため、結婚要件具備証明書は、国際結婚の際に必要な公的書類と覚えておくとよいでしょう。 3. 婚姻要件具備証明書の取得方法 基本的には、日本国内にある外国の大使館や領事館で取得可能です。必要書類等は国によって異なりますので、事前に大使館等にご確認ください。本国の出生証明書が必要となるなど、書類を揃えるのに時間がかかることもありますので、時間に余裕を持って準備を進めるようにしてください。 4. 婚姻要件具備証明書の制度がない国の場合 国によっては婚姻要件具備証明書を発行する制度がない場合があります。その場合には次のような代わりの書類を用意することになります。 どのような代替書類が必要になるのかは国によって異なります。大使館に問い合わせるか、もしくは弊社までご連絡ください。 (1)領事が署名した宣誓書 外国人が日本に駐在する本国の領事の前で本国の法律で定める結婚年齢に達していること,日本人との結婚について法律上の障害がないことを宣誓し、領事が署名した宣誓書を発行してもらいます。この宣誓書が婚姻要件具備証明書に代わるものとして認められる場合があります。 (2)本国の法律の写しとパスポート等 (1)の宣誓書も用意できない場合には、次のような書類が求められる場合があります。 外国人の本国の法律の写し(出典を明らかにし、日本語訳を添付する) 外国人のパスポートなど 5. おわりに 本記事では、日本人が外国籍の方と結婚する際に必要となる結婚要件具備証明書について紹介しました。国際結婚に限定した書類のため、周りで知っている人がおらず、情報を集めるのが困難な場合もあると思います。 もし外国の方に関する各種手続きでお困りのことがございましたら、外国人手続きのトータルサポートを行っている弊社までお気軽にお問い合わせください。
- [退去強制手続の詳細と出国命令制度について](https://shiodome.co.jp/column/7840/) - 不法就労やオーバーステイ等、出入国管理及び難民認定法(入管法)が定めるルールを違反した外国人については、強制的な国外退去の手続きがとられます。それが「退去強制手続」と「出国命令制度」です。こちらのページでは、退去強制手続と出国命令制度についてご紹介します。 1. 退去強制手続と出国命令制度の違い 撤去強制手続と出国命令制度は、いずれも国外退去であるという点は同じですが、次のような違いがあります。 退去強制手続では国外退去まで入管に身柄を収容されますが、出国命令制度では収容されることがありません。また、日本への入国禁止期間も、出国命令制度であれば最短の1年間になります。ルールを違反した外国人に対しては通常は退去強制手続がとられますが、後述の条件を満たす場合に特例として出国命令制度がとられます。 2. 退去強制手続の詳細 入管の摘発等でルール違反が発覚すると、違反についての調査がなされ、当該調査に基づいて審査が行われたのち強制送還が決定されます。 (1)対象となるルール違反 退去強制手続の対象となるルール違反は入管法第24条に列挙されています。代表的なものは次のとおりですが、特例である出国命令制度の対象となるのは不法残留だけです。 不法入国・・・パスポートを持たずに、または偽造パスポートで入国不法在留・・・オーバーステイ不法就労・・・ルールに反して働いて収入や報酬を得る刑罰法令違反・・・懲役又は禁錮の実刑に処せられる (2)最大3段階の審査 審査の結果、強制送還となった場合、外国人は「審査結果が誤っている」という異議や、「審査結果は誤ってはいないが、特別に日本での在留を認めてほしい」という希望を、2回まで申し出ることができます。 第1段階 違反審査↓(意義等を申し出る)第2段階 口頭審査↓(意義等を申し出る)第3段階 法務大臣の裁決 (3)在留特別許可 第3段階の法務大臣裁決の際、本来であれば強制送還されるべき外国人に対して,特別に在留を許可すべき事情があると認めるときに、法務大臣は特例として在留の許可を与えることができます。これは「在留特別許可」と呼ばれ、本許可を受けた外国人は引き続き滞在できるようになります。 3. 出国命令制度 入管法が定めるルールを違反のうち、オーバーステイの外国人が帰国を希望して自ら入管に出頭した場合、一定の条件を満たすことを条件に、出国命令制度が適用されます。なお、自ら出頭することが必要ですので、入管や警察が摘発した場合は、出国命令制度の対象者にはならず、退去強制手続がとられます。 (1)満たすべき条件 出国命令制度が適用されるには、以下の要件を満たす必要があります。 オーバーステイ以外のルール違反がない 過去に退去強制手続や出国命令制度により国外退去になったことがない (2)出国命令制度の流れ 退去強制手続と同様、まずは違反についての調査がなされます。当該調査に基づいて審査が行われ、出国命令制度の対象者として認められると、15日を超えない範囲内で出国期限が定められます。外国人はその期間内に出国します。 4. おわりに 本記事では退去強制手続と出国命令制度それぞれの詳細を紹介するとともに、両者の違いについて紹介しました。どちらが適用されるかによって、身柄収容の有無や入国禁止期間などに違いが生じます。もちろん、これらに当てはまらないのが一番ですが、もし上記のような条件に当てはまる場合には、適切な対応を取ることが大切です。 弊社では、外国人の雇用や在留資格に関するトータルサポートを実施しています。もし外国人の在留資格関連でお困りのことがございましたら、お気軽にお問い合わせください。
- [外国人従業員を雇う際の日本における送金・持ち出し制限とは](https://shiodome.co.jp/column/7958/) - 外国人を雇った際、外国から日本へのお金の送金方法や持ち出しに関するルールを聞かれることもあると思います。また、日本に会社を設立する場合には、多額のお金を送金する必要もあるでしょう。本記事では、日本への海外送金、持ち出し制限に関する基本なルールについて紹介します。 1. 日本が定める送金・持ち出し・持ち込み制限 まず海外から日本への送金やお金の持ち込み、持ち出しについて、日本がどのような対応を取っているのかについて紹介します。 日本と外国の間でのお金のやりとりに関しては、外国為替及び外国貿易法という法律にて上限額が決まっています。それによると「100万円相当額を超える現金などの海外への持ち出し、海外からの持ち込みをする場合には、日本税関において所定の届け出が必要」です。 「現金など」という記載があるとおり、現金だけではなく、トラベラーズチェックや有価証券、小切手類にも適応されることに注意してください。 ただし、これはあくまでも届け出をしなかった場合です。日本税関および対象国の税関にて必要な手続きを済ませれば100万円相当額を超える金額を日本に持ち込むことが可能になりますので、覚えておくとよいでしょう。 2. 外国が定める送金・持ち出し制限 自国から海外への送金や現金の持ち出しに制限を設けている国は多くあり、しばしば日本で会社設立を考えている人を悩ませる原因となります。 例えば中国では、年間で送金できる金額は原則として1人あたり5万米ドルまでと決められています。しかし、5万米ドル以下であっても送金が認められず、年間で2万米ドルしか送金できなかったという事例もあります。 また中国では、現金での持ち出しについても制限を設けています。中国から海外へ現金を持ち出す場合は、申請をしない場合は中国元は1人1回2万元まで、外貨の場合は1人1回5,000米ドル相当までとなっています。 もし5,000米ドル~10,000米ドル相当を持ち出す場合は、銀行が発行した『外貨携帯出国許可証』を外貨を購入する銀行で申し込み、持ち出し時に提出する必要があります。また、持ち出し額が10,000米ドル相当を超える場合は、事前に外貨管理局へ申請が必要となります。 同様に韓国から海外送金する場合も送金制限があり、認められる送金額は基本的に5万米ドルまでです。 また、中国や韓国以外にも各国が独自の送金制限を設けています。日本で会社を設立するために大きな金額をお金を送金もしくは持ち込みたいとお考えの場合は、対象国のルールについて早めに確認しておくとよいでしょう。 3. 終わりに 今回は、海外から日本にお金を送金もしくは持ち込む際のルールについて紹介しました。高額のお金の送金・持ち込みなどに関しては、日本のルールと対象国のルールをどちらも調べる必要があります。 たとえ日本への進出計画を順調に進めたとしても、お金の送金が滞ってしまえば事業をスムーズに進めることができません。にもかかわらず、海外送金・持ち出し制限のルールは多くの企業が見落としやすいところですので、ぜひご注意ください。 弊社では外国人の雇用やビザに関するトータルサポートを実施しています。もし外国人の雇用やビザについてお困りのことがございましたら、お気軽にお問い合わせください。
- [不動産賃貸をめぐる外国人とのトラブルと解決のポイントとは](https://shiodome.co.jp/column/7955/) - 本記事では、不動産賃貸に関する外国人とのトラブルについてご説明いたします。日本では、いわゆる「外国人(入居)お断り」の物件が多いのが現状です。また、外国人の入居が可能な物件であっても、入居の際の審査が日本人に比べ厳しいことが多いため、外国人が居住用の物件を借りることは容易ではありません。 無事に賃貸契約を締結できたとしても、近隣住民や物件のオーナーとトラブルになることも多いため、外国人を雇用する会社は、生活面を含めた指導やサポートをする必要があります。もちろん、ルールや秩序、礼儀を重んじて生活している外国人も数多くいます。以下は、現実に起きうるトラブルの例です。 1. 契約違反トラブル 外国人と不動産オーナーの間でよく起こるトラブルが「契約違反トラブル」です。居住者1人での契約にも関わらず、その契約に反して、複数人で共同生活を行う場合があります。その原因としては、外国人が契約内容を正しく理解していないこと、生活費をできるだけ浮かせたいと考えていること、あるいは異国の地(日本)に1人きりで生活することに不安を感じ、知人・友人同士で支え合いたいと思っていることなどが考えられます。 しかし、いかなる理由であっても契約違反であることに変わりはありませんから、賃貸契約を打ち切られ、その結果として外国人自身が住む場所を失うことにもなりかねません。 このような事態を避けるためには、必要に応じて母国語を用いて説明をしたり、生活の悩み相談に応じたりするなど、外国人が日本の慣習などを正しく理解し安心して生活できるようなサポートを企業サイドでも実施することが求められます。 2. 騒音にまつわるトラブル 続いては「騒音にまつわるトラブル」です。昨今、日本人の間でも騒音トラブルが問題となっていますが、外国人が住人である場合には、特に起こりやすい問題の一つだと言えます。 国によってはホームパーティーなどで複数人が集まって飲食したり、あるいは情報交換の場や交流を深めるために皆で楽しく食事をしたりすることがあるかもしれません。もちろん、このような場を設けることで、気持ちが豊かになり、明日への活力を得る場として重視されていることは十分理解できます。しかし、日常的に自宅でパーティーをする習慣がない日本人にとって、やはり迷惑だと感じる人は少なくありません。 騒音がトラブルの原因となるだけでなく、「うるさい迷惑な外国人」と思われ、困った時に近隣の助けを得られなかったり、地域で孤立したりすることにもなりかねません。 外国人には「郷に入っては郷に従え」の考え方を伝えるとともに、個室付きの居酒屋やカラオケなどの代替施設を使うように周囲が促すことも、外国人の日本での生活を支える上では重要となります。 3. 生活ルールにまつわるトラブル 最後に紹介するのが「生活のルールにまつわるトラブル」です。たとえば、ごみの分別が当てはまります。国によってゴミの分別が異なることはもちろんですが、日本国内においても、自治体により分別の決まりや指定ゴミ袋の有無などが異なります。また、同じ地区であっても番地によって収集の曜日が異なることもありますから、道路を挟んだ場所で収集日が違うというケースもあります。 分別の厳しい地域から厳しくない地域へ移り住んだ場合、特に苦労はないかもしれません。しかし、逆の場合には、何がどの分類にあたるのかをその都度確認しなくてはいけないため、大変な労力を強いられます。 特に、外国人の場合は分別をしたくても正確に理解できず、正しく分別できないというケースも考えられます。また、近くに住む外国人コミュニティ内で情報を共有した結果、かえって間違った収集日で認識してしまうなど、外国人の故意でなくてもトラブルの要因を生み出してしまう場合も想定されます。 外国人本人に悪気がなく、むしろ一生懸命取り組んでいるにも関わらず、ごみのルールの分かりづらさゆえに正しくごみ捨てができず、「これだから外国人は…」と後ろ指をさされることほど、外国人にとって悲しいことはないでしょう。 最近では、多言語でごみ分別の資料を作成したり、地域指定のごみ袋にも多言語表記及び絵を用いたりするなど、外国人にも分かりやすく情報提供を行っている自治体も多くあります。しかし、外国人の居住地の自治体が、必ずしも外語供御対応を行っているとは限らず、また外国語対応している場合でも、本人が理解できる言語で記載がないケースも考えられます。 そのため、外国人の努力が無駄にならないように、外国人を雇用する事業者が、地域社会と一体となって生活面でもサポートしていくことが大切です。 4. おわりに 本記事では、外国人が日本で生活をする際に頻繁に発生する不動産関連のトラブルについて紹介しました。外国人を雇用する企業は、外国人は日本で不動産を借りるのが簡単ではないことを知るとともに、必要なサポートを行うことが求められます。 弊社では、外国人の雇用やビザに関するトータルサポートを実施しています。もし外国人の雇用やビザに関してお困りのことがございましたら、お気軽にお問い合わせください。
- [外国人が考える日本の変わったビジネスルール:日本と海外のビジネス上の違いとは](https://shiodome.co.jp/column/7954/) - 独特のビジネス文化を持つと言われる日本。日本の常識は世界での非常識であるとも言われるほどです。本記事の読者の中には、外国人を雇う上で、もしくは外国の企業と共に働く上でビジネス上の違いを知っておきたいと方が多いと思います。 そこで本記事では、ビジネスにおける日本と海外の違いや気をつけるべきポイントについて紹介します。 弊社では外国人の雇用や在留資格に関するトータルサポートを提供しています。もし外国人の雇用やビザについてお困りのことがございましたら、お気軽にお問い合わせください。 1. 外国人が考える日本の変わったビジネスルール 株式会社日本廣告工藝社が運営している「社会人の教科書」では、日本と海外のビジネスマナーの違い30選を紹介しています(参照)。そのうちのいくつかを紹介します。 「目標達成の可能性」の捉え方 決断のスピード ミーティングに関する考え方 テレビ会議などのテクノロジー導入への積極性 退職に対する考え方 ライフワークバランスに対する考え方 お辞儀・礼儀に対する考え方 飲み会に関するルール 敬語の複雑さ 従業員同士の距離感 これらからわかるように、日本と海外では、ビジネス上のルールやマナーに大きな違いがあります。違いがあることはマイナスではなくプラスでもありますが、より効率良く仕事を進めるためにも、お互いの考えは理解しておくとよいでしょう。 2. 日本と海外でのビジネス上の違いについて 日本と海外では、ビジネスマナーに関するさまざまな違いがあります。その中でも、特に注意が必要な項目について紹介します。 ビジネス上のマナーや礼儀が異なる 海外では初対面の際に名刺交換と同時に握手をすることがありますが、日本は名刺交換と共にお辞儀をするのが一般的です。 日本の慣習に慣れていない外国人が取引先で挨拶をする際、海外のマナーを用いてしまった場合、取引先から驚かれたり、場合によってはマイナスの印象を持たれることがあります。 よくありがちなのが「日本で就労経験があるから日本のビジネスマナーを知っているだろう」と思い、何も指導しないことです。その後の交渉に悪影響を及ぼす可能性もあるため、日本のビジネスマナーについてはきちんと伝えておくとよいでしょう。 従業員間の関係性の違い 海外でももちろん上司や部下のような上下関係はありますが、日本とは雰囲気が少し異なります。先輩後輩の上下関係が小さく、年齢やポジションにかかわらず気さくに話すのが海外流です。 その一方で、日本では上下関係が非常に重んじられます。例えば日本社会では、上司の決定やアイデアに新入社員が意見を言うのはダメという暗黙の了解があります。また、上司が部下を評価することはあっても、部下が上司を評価する制度を導入している会社は極めて稀ではないでしょうか。 一方海外では、自国特有のビジネスマナーを重んじた上で部下が上司に誤りを指摘するということはよくあります。また、部下が上司を評価する制度も多く取り入れられています。 このように、上司や部下に関する関係性が大きく違うのが海外です。そのため、外国人を雇った際には、上司を敬わない、あまりにもフレンドリーすぎるなどと感じる人も多いようです。 飲み会文化 日本では、同僚や取引先との飲み会は全く珍しいものではなく、むしろ当たり前として受け入れられていると思います。しかし、海外では飲み会文化がないことの方が多く、仕事が終われば個人の時間になることが一般的です。そのため「飲み会」に驚いたり違和感を持ったりする外国人が多いようです。 飲み会は基本的には自由なイベントであるものの、企業によっては暗黙の了解で参加を強制されるところもあると思います。外国人の中には参加したくないと感じる人もいることは、企業として理解しておく必要があります。 残業に対する考え方 日本にはサービス残業という言葉があったり、日本の過労死について海外でも話題になったりすることもあり、外国人からすると「日本人は働き過ぎ」と感じるようです。 一方で海外では所定時間の勤務を終えたらすぐに退社というのが一般的です。そのため、日本の残業の習慣は理解できないだけでなく、効率の悪い働き方をする人達と考える人も多いと聞きます。 日本では当たり前であっても外国人にとっては当たり前でなく、残業文化は奇妙にうつります。残業をさせる場合は、必要に応じて残業が必要な理由や待遇(手当)などについて説明の上、双方の合意に基づき依頼することが大切です。 特に、雇用契約で残業について明確な記載がなく時間外に業務をさせる場合は、トラブルになりかねないため、十分注意するようにしてください。 3. おわりに 本記事では、日本と海外のビジネス上の違いについて紹介しました。日本独自のビジネスマナーや慣習は、世界から大きな評価を受けている一方で、実際に働く外国人からは奇妙にうつることが多いようです。 日本のビジネスルールを外国人に適用されるだけでは、外国人の力を十分に発揮することはできません。外国人の力を最大限に活かすには、彼らの理解を得つつルールを作っていることが重要になるでしょう。 弊社では外国人の雇用やビザに関する各種サービスを実施しています。もし外国人の働き方に関してお悩みのことがございましたら、お気軽にお問い合わせください。
- [日本に進出した中国企業3社と中国で人気の銀聯カードの概要](https://shiodome.co.jp/column/7792/) - 昨今、日本進出が非常に活発になっているのが中国企業です。中でもインターネットやゲーム関連企業の日本進出は急速に増加しており、最先端のテクノロジーが比較的安い価格で楽しめるとあって、多くの日本人ファンを獲得しています。中国企業の日本進出は今後ますます進むと考えてよいでしょう。 本記事では、日本へ進出を果たした中国企業を紹介するとともに、中国企業が世界に進出することで注目が集まる「銀聯カード」についても紹介します。 弊社では外資系企業の日本進出に関するトータルサポートを提供しています。もし日本進出に関してお困りのことがございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせください。 1. 中国企業にとって日本進出が狙い目である理由は? 海外進出をしたい中国企業にとって、日本進出は非常に狙い目であるといえます。その理由として、地理的条件、言語的条件、文化的条件などが整っていることが挙げられます。 まず地理的条件として中国から日本までは物理的距離が非常に近く、人材の移動や物資の移動に関する費用を抑えることができます。 次に言語的条件として、日本語と中国語はもちろん異なる言語ですが、同じ漢字を利用しているということもあり、言語を介したコミュニケーションが比較的容易にできます。 最後に文化的条件として、日本は歴史的に見ても中国からさまざまな影響を受けており、私生活の中に自然に取り入れられている文化も多くあります。海外進出の際には、文化や人々の考え方を考慮したマーケティングである「ローカライズ」が非常に重要になりますが「日本-中国間」であれば、このローカライズが比較的容易に行えます。 これらの理由から日本は中国企業が海外進出するのに非常に優れた国といえるため、昨今中国企業の日本進出が相次いでいます。今後もこの傾向はさらに続くと考えてよいでしょう。 2. 日本進出を果たした中国企業の紹介 では早速、日本進出を果たした注目の中国企業3選を紹介します。 (1)ByteDance 「ByteDance」と聞いてもわからない人が多いと思いますが、「TikTok」を運営している会社といえば身近に感じるかと思います。ByteDanceはTikTokやBuzzVideo、Toitiao(日本非対応)といった人気アプリの開発・運営を行っている会社です。 ByteDanceは2018年に資金調達を行っていますが、その際の時価総額は約8兆5,000億円と試算されるなど、世界的に見ても非常に大きな企業です。売上に関してもここ数年で劇的に増加しており、中国を代表する企業の1つとして認知されています。 日本法人を東京都新宿区に設けており、従業員は100名を超えると言われています。ITエンジニアやデザイナー、ビデオディレクターなどを積極的に採用していることからもわかる通り、IT分野に特化したサービスを提供しています。 今後より大きく成長することも考えられるため、注目したい中国企業の1つです。 (2)Kingsoft 続いて紹介するのが、インターネット分野で日本に進出した中国企業としてはもっとも古いといわれている「Kingsoft」です。1994年に北京に設立されたPCソフトの会社で、マイクロソフトのオフィス製品に似た商品を提供。値段が手頃であることから、世界で多くのファンを獲得しています。 日本には2005年に「Kingsoft Japan」を立ち上げました。Kingsoft JapanはKingsoft社の日本子会社ではなく、本社と日本現地のパートナーが一緒に作った会社だと言われています。現在では100名程度の従業員が勤務しており、日本人に対してPCソフトの提供やサポートを行っています。 日本に非常に早い時期に進出し、成功を収めた例の1つといえるため、今後日本進出をしたいと考えている中国企業にとっては参考にできることも多いと思います。 (3)NetEase 最後に紹介するのが、ゲームソフト分野で大きな成功を収めている「NetEase」です。中国では昨今、ゲーム開発に非常に力を入れており、NetEaseもそのうちの1つです。多くの人気アプリを配信してきましたが、2017年に配信された「荒野行動」は中でもダントツの売上を達成し、多くの日本人ゲーマーを魅了しました。 NetEaseが日本進出に成功した理由の1つとして、徹底的なローカライズが挙げられます。日本語に翻訳するのはもちろんのこと、東京決戦という地図を作り日本人の関心を高めることに尽力。東京タワーや渋谷でバトルロイヤルができるとあって、多くの日本人が熱狂しました。 ゲームが世界的ブームになるタイミングで日本進出を果たし、徹底的なローカライズによって日本人ファンを獲得したNetEaseの戦略は、これから日本進出を考えている中国企業にとって学びが多いと思います。 3. 中国企業の進出によって注目が集まる銀聯カードとは? 銀聯カードとは「中国国内で圧倒的なシェアを誇るデビットカードの機能を持ったカード」のことをいいます。 最近では日本国内でも「銀聯」マークのついた百貨店やショッピングセンターをよく見かけるようになりましたが、これは「爆買中国人」をターゲットにした戦略の一つでもあります。そもそも中国人が日本に旅行する際、一定金額以上の人民元の持ち出しは規制がかかっています。つまり、海外旅行に行く際には現金だけでは金額的に足りないというのが現状です。 日本に来る中国人が増加するにつれて日本に進出する中国企業が増加しますが、日本進出した中国企業が増加すればするほど銀聯カードを目にする機会も増えることでしょう。 クレジットカードと銀聯カードの違い 日本人の感覚であれば、クレジットカードで買い物をすれば良いのにと思うかも知れません。しかし中国では、クレジットカードを作成できない人が大勢います。これは「クレジット=信用」を基にした借金であることに起因しています。今でこそ先進国の仲間入りを果たした中国ですが、数年前までは発展途上国でした。 そんな中、クレジットカードを持てるのはごく一部の富裕層に限られていました。経済が発展した今もなお、与信によるクレジットカードの発行よりも、預金残高を上限としたデビットカード、つまり銀聯カードの利用が主流となっているのが中国の実態です。 銀聯カードの利便性 上述の通り、最近多くの日本企業も銀聯カード対応に積極的です。これは、中国人の爆買の恩恵にあやかるためです。実際、銀聯カードの加盟店は急拡大しており、いたるところで銀聯マークを目にします。 さらに、一部の企業ではこの銀聯カードを使った優待特典を実施して、中国人観光客の囲い込みを実施しています。決済として銀聯カードを使えるだけでなく、そのカードに優待特典を提供することで、他社との差別化を図ろうとしています。 また、銀聯カードはデビットカードですので、中国の口座に預金があれば高額な商品でも決済可能となります。銀聯カードの上位ステータスを持っている顧客にはヘリコプターが買えるような会報誌が送られ、いまだ中国バブルを反映しているような印象を受けます。 今後の銀聯カードの広がり 直近では円高局面になり、中国人による爆買も陰りを見せているような報道もありますが、一部の富裕層たちの購買行動には異様さを感じるものがあります。中国企業が日本、そして世界へ進出していくにつれて、銀聯カード対応のカウンターを見かけることも増えると思います。中国ビジネスに関わる方であれば、銀聯カードのことは知っておくとよいでしょう。 4. おわりに 今回は、日本に進出した中国企業の紹介と、中国企業が世界に進出することで広がると考えられる銀聯カードについて紹介しました。中国にとって日本は比較的進出のしやすい国です。しかし、日本のややこしい税制や手続きに対応することが企業の負担になることも多くあると思います。 弊社では、日本への進出に関するトータルサポートを提供しております。もし中国企業の日本進出に関して不明な点がありましたら、お気軽にお問い合わせください。
- [日本の企業と業務提携している外資系企業の事例とその成果とは](https://shiodome.co.jp/column/7783/) - 日本に進出する方法の1つに「業務提携」があります。業務提携により海外に拠点を設けたり、お互いの得意を活かすことで資材を安く手に入れたりすることができるようになります。本記事では、業務提携とは何かを詳しく説明するとともに、日本企業と外資系企業が行った業務提携の事例3選を紹介します。 弊社では外資系企業の日本進出に関するトータルサポートを提供しています。もし日本進出に関してお困りのことがございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせください。 1. 業務提携とは? 業務提携とは「資金の移動を伴わない提携」を指します。企業と企業が合同で事業を行うことで、お互いが資金や技術、人材などを提供し合い、相乗効果を得ながら事業の強化を図ることを言います。 業務提携には一般的に以下の様なものがあります。 技術提携 生産提携 販売提携 仕入れ提携 調達提携 業務提携のメリットは、すでに存在する資源を利用するため時間を節約することができ、事業にかかる費用を抑えられることです。ある国の企業がゼロから海外進出をしようとすれば、それにかかるコストは莫大なものになります。業務提携という方法を用いることによって、海外進出のハードルを下げることができます。 海外の企業が日本に進出する際の方法として今回紹介した「業務提携」も1つの方法となりえることを覚えておくとよいでしょう。 2. 日本の会社と業務提携している外資系企業3選 過去に日本の企業と業務提携をした外資系企業を3つ紹介いたします。 (1)ユーロテック 「ユーロテック」はスーパーコンピュータなどの電子部品の製造販売を行うイタリアの電子部品メーカーで、1983年に設立されました。ユーロテックと業務提携したのが岡山県に本社を持つ「株式会社アドバネット」です。株式会社アドバネットは、産業用ボードコンピュータなどの電子部品の製造販売を手掛けるメーカーです。 業務提携により製品ラインナップを相互に補完することが可能になり、販路の拡大とコストの低減化が実現しました。提携先事業者の製品取り扱いやラインナップの充実、製品開発体制の整備により、さらに多くのルートでの輸送や販売が可能になりました。 また、お互いの関連会社を活用することで必要な資材の低コスト調達が可能になるとともに、海外とつながりを持つことで従業員の意識改革にもつながりました。 (2)日本カンタム・デザイン 「日本カンタム・デザイン(米国カンタム・デザイン日本法人)」は測量・測定機器を行うアメリカの会社で1997年に設立されました。日本カンタム・デザインと業務提携したのが「アイカンタム株式会社」です。アイカンタム株式会社は東京に本社を置く電子計測システムメーカーで、両者の業務提携によって、顧客対応の迅速化や柔軟性の向上及び製造コストの削減を実現しました。 業務連携により企業の導線が複雑になる事例も多く発生していたため、本業務提携においては事前に戦略を練り、事業連携がプラスに働くように十分な配慮がなされていました。これにより十分な部品在庫の保持が可能となり、納期の迅速化を実現しました。 (3)ルピン 「ルピン」はジェネリック医薬品の研究開発や製造販売を手掛けるインドの会社です。ルピンと業務提携したのが「共和薬品工業株式会社」で、ジェネリック医薬品の研究開発や製造販売を行っています。 この2社は共同研究開発段階から信頼関係を構築しており、最終的に投資提携を行う運びになりました。積極的な投資により売上の増加を実現することに成功しました。 ルピンが持つグローバルなネットワークの活用によって、安価な原料調達や製品のライセンスが好調。また、共和薬品も人材や設備、研究開発など、ルピンの経営方針に基づく積極的な投資を行い、インフラを強化することができました。 3. おわりに 日本に進出する方法にはさまざまなものがありますが、日本企業と外資系企業の業務提携は比較的やりやすいのに加え、成果を残している企業も多くあります。まずは気になる企業と業務提携をしてみて、様子をみるのも1つの手です。 もし業務提携の手続き等でお困りでしたら、海外進出に関するトータルサポートを提供している弊社まで、ぜひお気軽にお問い合わせください。経験豊富なスタッフがあなたからの連絡をお待ちしています。 お問合せはこちら
- [日本における古物商の許認可申請に関する留意点とは](https://shiodome.co.jp/column/7574/) - こちらのページでは、日本のビジネスにおける古物商の許認可についてご紹介いたします。 1. 古物商の許認可とは 古物商許可申請は、主たる営業所を管轄する都道府県の警察署にて行います。古物商許可は法律に則って基本的な規定があるのですが、細かい点で警察署ごとのローカルルールがあると言われています。したがって、まずは主たる営業所を管轄する警察署に行き事前相談を行ってから、その後で古物商許可の取得について手続きを進めるという流れになります。また、個人申請と法人申請とで違いがあります。 2. 個人申請の場合 個人申請の場合は、個人事業主としての営業です。したがって、警察署はその人個人に対して古物商許可を出します。そのため、その個人が亡くなると古物商許可はなくなります。子供等がお店を継いでいる場合でも、あらためてその方が古物商許可を取る必要があります。 3. 法人申請の場合 法人申請の場合は、会社としての許可なので会社がなくならない限り続きます。申請をする時には、添付書類として役員全員の略歴書、誓約書、住民票、本籍地発行の身分証明書が必要になります。監査役も含めて役員全員の提出が必要であることに注意する必要があります。 また、会社の資料として登記簿謄本や定款の写しも必要です。そして、会社の目的欄には、古物営業を行うことが読み取れる記載も必要となります。さらに、警察署によっては、自社ビル以外の営業所の賃貸契約書のコピーも必要とするローカルルールを定める警察署に注意が必要です。 尚、管理者いわゆる営業所の責任者の選任が必要で、管理者も申請時に住民票など添付書類を要しますが、管理者はその営業所ごとに定める必要があり、原則は複数の営業所を兼任することができないという点にも注意しなければなりません。
- [共同投資事業における外国人投資家に向けた経営管理ビザの論点とは](https://shiodome.co.jp/column/7945/) - 外国人が共同で事業を起こした場合で、これら複数の外国人がそれぞれ日本法人の役員に就任するようなケースでは、それぞれの外国人が従事しようとする具体的な活動の内容から、その在留資格の該当性や、上陸基準の適合性の審査が行われることになります。取締役などの役員に就任しているということだけでは当該在留資格に該当するものとはいえませんので注意が必要です。 1. 外国人全員が「経営・管理」の在留資格に該当すると判断されるためには? 複数の外国人が事業の経営又は管理に従事するという場合、それぞれの外国人の活動が「経営・管理」の在留資格に該当するといえるためには、当該事業の規模、業務量、売上高等の状況を勘案して、事業の経営又は管理を複数の外国人が行う合理的な理由があるものと認められる必要があります。例えば、事業の規模、業務量、売上高等が小さい場合には1名の外国人で事業の経営又は管理を行うことができると考えられますので、他の外国人役員が行う活動が「技術・人文知識・国際業務」などの他の在留資格に該当する場合、当該在留資格で申請をすることが適切であるとされます。それぞれの外国人全員について「経営・管理」の在留資格に該当すると判断される可能性が高い場合についてご紹介します。 事業の規模や業務量等の状況を勘案して、それぞれの外国人が事業の経営又は管理を行うことについて合理的な理由が認められること 事業の経営又は管理に係る業務について、それぞれの外国人ごとに従事することとなる業務の内容が明確になっていること それぞれの外国人が経営又は管理に係る業務の対価として相当の報酬額の支払いを受けることとなっていること 2. 法務省が例示する外国人全員が「経営・管理」の在留資格に該当すると判断される事例 これらの条件が満たされている場合には、その他の内容と合わせて総合的判断にはなりますが可能性が高いといえるでしょう。参考まで出入国在留管理庁のホームページでは、例示として以下の2つが示されています。 【事例1】 外国人A及びBがそれぞれ500万円を投資して、日本において輸入雑貨業を営むX社を設立したところ、Aは通関手続をはじめ輸出入業務等海外取引の専門家であり、Bは輸入した物品の品質・在庫管理及び経理の専門家である。Aは海外取引業務の面から、Bは輸入品の管理及び経理面から、それぞれにX社の業務状況を判断し、経営方針については共同経営者として合議で決定することとしている。A及びBの報酬は、事業収益からそれぞれの投資額に応じた割合で支払われることとなっている。 【事例2】 外国人C及びDがそれぞれ600万円及び800万円を投資して、日本において運送サービス業を営むY社を共同で設立したところ、運送サービスを実施する担当地域を設定した上で、C及びDがそれぞれの地域を担当し、それぞれが自らの担当する地域について事業の運営を行っている。Y社全体としての経営方針は、C及びDが合議で決定することとし、C及びDの報酬は、事業収益からそれぞれの投資額に応じた割合で支払われることとなっている。
- [日本における外国人の資格外活動許可申請手続きの論点とは](https://shiodome.co.jp/column/7928/) - 本日は、「資格外活動許可申請」についてご紹介します。 1. 資格外活動許可申請とは? 資格外活動許可申請とは、在留資格で定められている活動以外の活動を行い、報酬を受ける場合等に事前に必要となる手続をいいます。例えば、在留資格「留学」や「家族滞在」で日本に在留している外国人は、日本では当該在留資格により仕事をして収入を得ることは禁止されています。 ただし、資格外活動許可申請をして許可を受けることができれば、本来の在留活動を阻害しない範囲内で、アルバイト等の仕事ができるようになります。 この手続きを行わずにアルバイトをした場合には「出入国管理および難民認定法第19条」に違反することとなることから「不法就労」となり、雇用した企業は不法就労助長罪に問われる可能性があります。 2. 資格外活動許可の種類 (1) 包括許可 代表的な例は「留学」「家族滞在」で在留中の方がアルバイト等の活動に従事することがあげられます。1週間に28時間以内の就労が可能です(「留学」には学則で定められた長期休暇の間は1日8時間就労可能です)。3にあげられる一般原則のうち、③を除くいずれにも該当する場合は、1つの勤務先にとらわれず、包括的に許可されます。 外国人の扶養を受ける配偶者若しくは子、又はそれに準ずる者として扶養を受ける者として日常的な活動を指定されて在留している方の「特定活動」。継続就職活動又は内定後就職までの在留を目的とする「特定活動」。「教育」、「技術・人文知識・国際業務」又は「技能(スポーツインストラクターに限る)」のうち、地方公共団体等との雇用契約により活動する方も包括許可の対象となります。 (2) 個別許可 原則として3の一般原則に該当する必要があります。包括許可の範囲外の活動について許可の申請があった場合や就労資格を有する方が、他の就労資格に該当する活動を行う時は、個々に許可されます。 許可の対象となる例は①留学生がインターンシップに従事して週28時間を超える資格外活動に従事する場合、②大学で稼働する「教授」の在留資格の方が民間企業で語学講師として稼働する場合(「技術・人文知識・国際業務」の在留資格に該当する活動を行う場合)、③個人事業主として活動する場合や客観的に稼働時間を確認することが困難である活動に従事する場合 3. 資格外活動の要件(一般原則) 以下の要件にいずれにも適合する場合に資格外活動を行う相当性が認められ、許可されます。 申請人が申請に係る活動に従事することにより現に有する在留資格に係る活動の遂行が妨げられるものではないこと 現に有する在留資格に係る活動を行っていること 申請に係る活動が法別表第一の一の表又は二の表の在留資格の下欄に掲げる活動(「特定技能」及び「技能実習」を除く)に該当すること 申請に係る活動が次のいずれの活動にも当たらないことア 法令(刑事・民事を問わない)に違反すると認められる活動イ 風俗営業若しくは店舗型性風俗営業が営まれる営業所において行う活動又は無店舗型性風俗特殊営業、映像送信型性風俗特殊営業、店舗型電話異性紹介営業もしくは無店舗型電話異性紹介事業に従事して行う活動 収容令書の発付又は意見聴取通知書の送達若しくは通知を受けていないこと 素行が不良ではないこと 本邦の公私の機関との契約に基づく在留資格に該当する活動を行っているものについては、当該機関が資格外活動を行うことについて同意していること
- [不法就労者と知らずに雇用をした場合の雇用者側に課される罰則とは](https://shiodome.co.jp/column/7821/) - 当ページでは、不法就労者と知らずに雇用をした場合に雇用者側にも罰則が科されてしまうのかという点ついて事例を挙げてご紹介致します。 1. 不法就労者とは? 日本で滞在している外国籍の方はその者が行う活動に応じて適法に在留資格が与えられ、在留資格で定められた活動内容・活動範囲で日本に滞在することが認められています。不法就労とは、日本で就労可能な在留資格をもっていない外国籍の方が日本で働くことをいいます。不法就労である外国籍の方が就労活動を行うことを不法就労活動といい、その者を不法就労者といいます。不法就労者による不法就労活動は退去強制事由に該当し、当該不法就労者は一定期間日本に再入国できなくなります。 2. 不法就労者を雇用してしまった場合(不法就労助長罪)の罰則 不法就労者を雇用して働かせた場合、雇用者は不法就労助長罪に問われます。入管法(第73条の2)には、不法就労助長罪として以下の通り定義づけされています。不法就労者自身にも罰則が科されますが、善意の(うっかりしていた)場合を含め、その者を雇用している雇用者側にもペナルティーが科される仕組みです。 入管法(第73条の2) 次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。 一 事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせた者 二 外国人に不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下に置いた者 三 業として、外国人に不法就労活動をさせる行為又は前号の行為に関しあつせん した者 また、不法就労助長罪の具体的な主な例としては、以下のパターンがあります。 不法滞在者・被退去強制者を就労させた場合 就労が認められていない在留資格の者を働かせた場合 在留資格で許可された範囲を超えて働かせた場合 1は、密入国者や在留期限切れなど、本来日本に滞在することが認められていない者を働かせた場合であり、2は、「短期滞在」「留学」「家族滞在」など本来就労をすることが認められていない在留資格者(ただし、「資格外活動許可」を得て定められた範囲で就労している者をのぞく)を働かせた場合です。3は、例えば、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格保有者が、製造業の工場で単純労働を行う場合などです。なお、単純労働とは、一般的には、専門的な知識や技能を必要とせず比較的短期間の訓練で行うことが可能な労働をいいます。 3. 雇用した外国人が不法就労者だと知らなかったら 雇用した外国籍の者が不法就労者であるということを認識していなくとも、状況から見て可能性があると十分に判断されれば、雇用者にも過失があるとされ、罰則は免れませんので、注意が必要です。ただし、雇用者に過失がない場合(精巧に偽造された在留カードを当該外国籍の者が意図的に雇用者に提示し、明らかに雇用者が騙されていた、または気が付くような要素が無いと判断された場合など)には、雇用者の責任問題は問われないとされています。
- [在留資格「法律・会計業務」に関する日本における資格要件と留意点とは](https://shiodome.co.jp/column/7773/) - 当ページでは、在留資格「法律・会計業務」についてご紹介致します。 1. 在留資格「法律・会計業務」とは この「法律・会計業務」という在留資格は、外国法事務弁護士、外国公認会計士その他法律上資格を有する者が行うこととされている法律又は会計に係る業務に本邦にて従事する活動に対して該当する在留資格です。 有資格者の具体例としては、弁護士、司法書士、土地家屋調査士、外国法事務弁護士(注1)、公認会計士、外国公認会計士、税理士、社会保険労務士、弁理士、海事代理士、行政書士の計11種類が挙げられます。 この在留資格は上記有資格者が当該独占業務に従事する場合の在留資格であることから、例えば、独占業務の規定が存在しない「中小企業診断士」が行う業務は当該在留資格の活動に該当しません。一方で、独占業務を有する資格者が行う活動に対して、もれなくこの在留資格が該当するということではなく、例えば、不動産分野における資格である、「宅地建物取引士」や「不動産鑑定士」については、独占業務は存在するものの当該在留資格の対象とはなっておりません。 2. 他の在留資格との関連性 「技術・人文知識・国際業務」の在留資格との関連性 本邦企業の法務部などで法務関係業務に従事するものの、独占業務以外の業務のみを行う場合、「法律・会計業務」に規定されている11種類の有資格者であっても、申請しうる在留資格は「技術・人文知識・国際業務」などの在留資格となります。 「経営・管理」の在留資格との関連性 弁護士、公認会計士等の資格知識をもって経営又は管理に従事するものの活動は、一般的に「経営・管理」の在留資格に該当しますが、弁護士、公認会計士等の資格を有していなければ行うことができないとされている事業の経営や管理に従事する活動は、「経営・管理」ではなく、原則、「法律・会計業務」の在留資格に該当します。 「高度専門職2号」の在留資格との関連性 「高度専門職」の在留資格所有者は、その優遇措置の一つとして、主活動に加え併せて別の活動を行える場合があります。高度専門職2号では主活動以外の併せて行える活動として、高度専門職1号より広範囲に定められており(1号は関連事業の活動のみ)、高度専門職2号の在留資格を有する者は「法律・会計業務」の活動も在留資格の変更なしで行うことが許容されています。 3. その他留意点 当該在留資格は「日本」の法律に基づく独占業務を有する資格者を前提としています。外国の法律に基づく資格を有する者は、当然、その資格で本邦にて独占業務を行うことが認められていませんので、外国にて取得した11種類の類似の資格だけでは当該在留資格を申請することはできません。 資格試験に合格し、対象となる資格を有していたとしても、所定の機関等において未登録の場合は、資格者とうたって業務を行うことは認められておりませんで、試験合格者及びその合格証があることだけでは、当該在留資格を申請することはできません。 外国法事務弁護士とは、自分が資格を有する国(原資格国)の法律と一定条件の下で日本以外の第三国の法律(指定法等)事務を行うことを業務とする弁護士をいい、日本弁護士連合会にて所定の登録をすませる必要があります。
- [会社設立前から節税対策で準備することと留意点とは](https://shiodome.co.jp/column/7615/) - 会社を設立する前に、節税対策で準備すること、気をつけることとは何でしょうか。それは、「資本金額」「事業年度」「創立費・開業費」の3つです。本記事では、会社設立前の節税対策について詳しくご紹介いたします。 弊社では外資系企業の日本進出に関するトータルサポートを提供しています。もし日本進出に関してお困りのことがございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせください。 1. 資本金額について 会社を設立する際には、資本金の額を決定しなければなりませんが、節税の観点から資本金の額は重要な要素となります。具体的には、「資本金1,000万円未満」にするのか、あるいは「資本金1,000万円以上1億円以下」にするのかによって、節税の効果が違ってきます。 (1)資本金1,000万円未満の場合 会社を設立する際に、資本金を1,000万円以上にした場合、会社設立の初年度と2年目は消費税の課税事業者となってしまいます。もし設立初年度から消費税の納税が見込まれるような事業計画であれば、設立後2年(2期)は免税事業者となるように、資本金1,000万円未満で会社を設立する方が、消費税を免除されることになります。 (2)資本金1,000万円以上1億円以下の場合 日本では、資本金が1億円以下の会社であれば、以下のような税務上の優遇を受けることができます。 ① 年800万円以下の所得に対して、軽減税率(15%)を適用できる。② 年800万円以下の交際費は、全額損金算入(経費に計上)できる。③ 青色申告書を提出する中小企業等は、欠損金の繰戻還付ができる(前年度に繰り戻して、法人税の還付請求ができる)。④ 30万円未満の少額減価償却資産を全額損金算入できる(一事業年度300万円が上限)。⑤ 法人事業税の外形標準課税(事業規模に応じた課税制度)の対象外になる。⑥ 留保金課税(内部留保金に対して行われる追加課税)の適用対象から除外される。⑦ 各種特別償却や特別控除を適用できる。⑧ 貸倒引当金(将来の貸倒に対して備える引当金)の法定繰入率を適用できる。※ただし親会社の資本金が5億円以上であり、日本法人がその完全子会社である場合には、①、②、③、⑥、⑧は適用されません(グループ法人税制)。 なお、資本金が1,000万円以下と1,000万円超では法人住民税の均等割の金額が変わってきます。例えば東京都では、資本金が1,000万円以下の場合の均等割の金額は年間7万円ですが、資本金が1,000万円を1円でも超えてしまうと均等割の金額は年間14万円となってしまいます。 2. 事業年度について 会社を設立する際に、事業年度をいつにするのか検討する必要があります。一般的な会社は、国や地方自治体の会計年度に合わせて、「4月1日~翌年3月31日」を事業年度にしていますが、個別の事情により、「1月1日~12月31日」など、自由に設定することができます。 この事業年度の設定は、消費税を節税する観点から重要です。前述のとおり、資本金を1,000万円未満で会社を設立した場合には、設立の初年度と2年目は消費税の免税事業者となりますが、設立2年目には「特定期間」における課税売上高が1,000万円を超えた場合には課税事業者となり、消費税を納める義務が生じます。特定期間とは、その事業年度の前事業年度開始の日以後6ヶ月の期間を言います。 例えば、事業年度を「4月1日~翌年3月31日」とした資本金1,000万円未満の会社が、令和2年6月1日に設立した場合を考えてみます。 前述のように、初年度(令和2年度)と2年目である令和3年度は、消費税の免税事業者となります。しかし、令和3年度については、前事業年度開始の日以降6ヶ月間、つまり「令和2年6月1日~11月30日」の間が特定期間となり、この期間に課税売上高が1,000万円を超えた場合には、2年目から課税事業者となるのです。但し、課税売上高に代えて、特定期間中に支払った給与等の金額によって、判定することもできます。 なお、「短期事業年度」という特例があり、これに該当すれば、特定期間とならず、2年目も原則どおり、免税事業者となります。 短期事業年度とは、次のいずれかに該当する前事業年度をいいます。①前事業年度が7ヶ月以下である場合②前事業年度が7ヶ月を超え8ヶ月未満の場合であって、前事業年度開始の日以後6ヶ月の期間の末日の翌日から前事業年度終了の日までの期間が2ヶ月未満の場合 短期事業年度となる前事業年度は、特定期間に該当しないため、仮に初年度の6か月間に課税売上高が1000万円以上あっても、例えば1期目が7ヶ月間、2期目が12ヶ月間であれば、最大19ヶ月間が消費税の免税期間となります。 このように、会社を設立する際には、初年度の課税売上高と共に、特定期間がどれくらいになるかを考えて事業年度を設定しないと、設立2年目から消費税の課税事業者になってしまうのです。 3. 創立費・開業費について 会社の設立に係る創立費や、会社の開業準備に係る開業費は、繰延資産として資産に計上し、その後任意に償却できる(経費として計上できる)項目となっています。創立費や開業費を一度に経費として計上してしまうと、会社の設立1年目から大きな赤字となり、経営を圧迫することになります。 そこで、支出効果が1年以上にも及ぶ創立費や開業費については、複数年に渡って、経費として計上することになるのです。但し、創立費、開業費ともに、5年以内に償却しなければなりません。 創立費とは、会社の設立前に会社が負担することとなる設立のための費用です。例えば、定款や諸規程を作成するための費用、株式を募集するための費用、株式申込書や株券の印刷費用、金融機関の取扱手数料、創立総会の費用、法人設立登記費用などが、創設費に該当します。 開業費とは、法人を設立した後、事業をスタートするまでにかかった開業準備のための費用です。例えば、事務所の家賃、従業員の給与、広告宣伝費、消耗品費など、いろいろな経費が、開業費に該当します。 創立費や開業費は会社設立前や事業開始前に生じる費用ですが、これらの費用は設立した法人の損金となる項目です。したがって、必ず領収書等の証憑(取引があったこを証明する書類)を入手・保存して、経費計上することで節税が図れます。 4. おわりに 本記事では、会社設立前の段階で検討しておくべき節税対策について紹介しました。会社設立前の節税対策は非常に見逃しやすく、後で後悔する会社設立者も多くいます。ぜひ早め早めに検討し、最善の策をとっておきましょう。 もし会社設立前の節税対策でお困りのことがありましたら、弊社までお気軽にお問い合わせください。実績豊富なスタッフが丁寧にサポートいたします。
- [日本における外国人従業員の雇用管理・在留資格手続のポイント](https://shiodome.co.jp/column/13115/) - 当ページでは、在留期間の更新や在留資格の変更申請及び届出について、事例を挙げてご紹介致します。 1. 外国人従業員の雇用継続において必要な在留資格手続 雇用している外国人従業員を例にご説明します。従業員としての活動状況や在留期間に応じて、在留期間の更新申請や在留資格の変更申請が必要になります。 更新申請とは、従業員の在留期間を超えて引き続き従業員として雇用する場合に在留期間を更新するために行う申請です。変更申請とは、行おうとする活動に変化が生じたことにより必要になる申請です。たとえば、従業員としての立場で例を挙げると『技術・人文知識・国際業務』を持って活動していた外国人が、その上位資格で様々な優遇措置を受けられる『高度専門職』のポイント要件を満たしたため、変更をする場合などが該当します。 また例を変えて日本人配偶者との婚姻関係に基づき、『日本人の配偶者等』という在留資格を持ち日本で在留していたものの、離婚したため在留資格の変更が必要な場合など結婚・離婚などの婚姻関係に基づくものも例として挙げられます。 結婚の場合、在留資格を変更するか否かは自由に決められますが、離婚の場合、離婚後も日本に在留したい場合は必ず変更申請が必要となります。 特に、在留期間が残り少ない場合で継続して日本に在留を希望する方を対象に前提として申し上げると、どのような手続きをするのか、スケジュール管理と必要書類の把握も含めて速やかに対応することが重要になります。そのまま必要な手続きを踏まずに在留期間を超えてしまった場合は、在留期間満了に伴い外国人は出国しなければならなくなります。 また、申請できた場合でも、申請に必要な書類が不足していた場合は、変更申請が許可されず万が一にも外国人が在留資格を失い、日本に在留できなくなることは避けたいものです。話は戻りますが、雇用している外国人従業員の在留資格には常に注意が必要です。 2. 申請種別 まず、在留期間が近づいた際に必要な更新申請の流れをご紹介致します。 【更新申請の流れ】 在留期間3カ月前がいつに当たるかを確認。※在留期間3カ月前から更新申請が可能です。期限間近に焦ることのないよう注意が必要です。 申請書類の作成、手配 申請書類へサイン、押印 外国人自らパスポートと在留カードを持って、出入国在留管理局(旧入国管理局)へ申請※取次行政書士等、申請取次が可能な人へ委任する場合を除きます。 申請結果の通知※出入国在留管理局における一般的な審査期間は更新申請の場合2週間~1カ月です。 新しい在留カードの受け取り※申請許可時は、出入国在留管理局で新しい在留カードの受け取りが必要です。 勤務継続 次に、環境等の変化により申請が必要な場合の変更申請の流れをご紹介致します。 【変更申請の流れ】 婚姻関係等に基づく状況の変化を把握 申請書類の作成、手配 申請書類へサイン、押印 外国人自らパスポートと在留カードを持って、出入国在留管理局へ申請※取次行政書士等、申請取次が可能な人へ委任する場合を除きます。 申請結果の通知※出入国在留管理局における審査期間は変更する在留資格で異なります。 新しい在留カードの受け取り※申請許可時は、出入国在留管理局で新しい在留カードの受け取りが必要です。 活動継続 また、この他、新しく外国人従業員を雇用する場合は、状況に応じて認定申請、変更申請、更新申請いずれかが必要となります。新たな外国人雇用の申請について、ご不明な点がある方はお問い合わせください。 3. 変更事由発生時に必要な届出 これらの各種申請の他にも、配偶者との婚姻関係に基づく在留資格を持っている外国人従業員が離婚した場合には、離婚した日から14日以内に『配偶者に関する届出』、会社の名称や所在地に変更があった場合などは、変更から14日以内に『所属機関に関する届出』など、申請以外にも適宜必要な届出があるため、忘れずに手続が必要です。
- [日本における外国人の募集・採用の流れと留意点](https://shiodome.co.jp/column/13111/) - 外国人を雇用する場合、日本人と異なりビザ(在留資格)が関係するため、 在留資格を考慮した上で採用情報を決定する必要があります。 このページでは状況ごとの申請種別、手続き(オンライン申請ではなく通常の申請でご説明します)の流れ、申請書類についてご案内致します。 1. 申請種別 【認定申請の流れ】 求人条件の精査※在留資格を申請する上で、予定している雇用条件で問題ないかを確認します。 求人募集 採用試験 内定候補者の選定 在留資格取得可否の確認 内定通知書または労働条件通知書の発行、雇用契約書の締結 在留資格認定申請 申請結果の通知※「技術・人文知識・国際業務」の平均的な審査期間は1~2カ月です。 ビザ発給手続※許可が下り、認定証明書の受領後に外国人自ら在外公館にて手続が必要です。 ビザ発給後、入国し在留資格取得 住民登録 就労開始 次に、すでに日本で在留資格を持っているものの就職に伴い、在留資格の変更が必要な場合に行う変更申請の流れをご紹介致します。この申請は、『留学』の在留資格を持って日本の学校に留学している留学生を、卒業に伴い雇用する場合などに必要な申請です。 【変更申請の流れ】 求人条件の精査※在留資格を申請する上で、予定している雇用条件で問題ないかを確認します。 求人募集 採用試験 内定候補者の選定 在留資格取得可否の確認 内定通知書または労働条件通知書の発行、雇用契約書の締結 在留資格変更申請 申請結果の通知※「技術・人文知識・国際業務」の平均的な審査期間は1~2カ月です。 新しい在留カードの受け取り※許可後は、出入国在留管理局で新しい在留カードの受け取りが必要です。 就労開始 留学から就労資格に変更する場合、在留資格の変更申請の他、学校を卒業したことに伴う『所属機関に関する届出』が必要です。 最後に、国内である企業の従業員がすでに在留資格を持って働いており、同じ職務内容で転職しようとする際に在留期間が迫っているため、在留期間の更新が必要な場合に行う更新申請の流れをご紹介致します。 【更新申請の流れ】 求人条件の精査※在留資格を申請する上で、予定している雇用条件で問題ないかを確認します。 求人募集 採用試験 内定候補者の選定 在留資格取得可否の確認 内定通知書または労働条件通知書の発行、雇用契約書の締結 在留期間更新許可申請 申請結果の通知※「技術・人文知識・国際業務」の平均的な審査期間は2週間~1カ月です。ただし、転職に伴う申請の場合は、1カ月ほどかかります。 新しい在留カードの受け取り※許可後は、出入国在留管理局で新しい在留カードの受け取りが必要です。 就労開始 なお、同じ職務内容で転職する場合、在留期間が残っている場合、更新申請は必要ありませんが、転職先の活動内容によっては事前に『就労資格証明書交付申請』を行うことが転職を容易にすることもございます。また、在留資格の変更申請と同様に転職した際は『所属機関に関する届出』の手続が必要です。 2. 申請に必要な書類と申請時の注意点 このようにケースにより申請種別が異なり、申請に必要な書類は在留資格の種類と申請種別によって決まります。中でも、認定申請や変更申請の場合は、必要書類が多いです。さらに、従業員の就労ビザの場合は、会社側・外国人側それぞれで必要な資料があります。いずれかに不備があると申請が許可されないため、双方とも不足なく資料を用意することが重要です。 なお、出入国在留管理庁のサイトに掲載されている申請に必要な書類一覧は、最低限必要なもののみで、ケースに応じた補足資料や追加資料の提出が必要な場合も多いため、注意が必要です。 在留資格の専門家以外の方が、これらの申請内容の精査、申請書類の準備などをすべて完璧に行うのは大変難しく、時間と手間も要することから、その他の業務の妨げになることも予想されます。さらに、一生懸命に準備して申請したにも関わらず、不備や不足により申請が不許可になってしまうことのないように、ぜひ専門家へご相談ください。
- [在留資格「芸術」に関する日本における資格要件と留意点とは](https://shiodome.co.jp/column/7778/) - 当ページでは、在留資格「芸術」についてご紹介します。 1. 在留資格「芸術」とは 「芸術」の在留資格の該当範囲となる活動とは、“本邦において次に掲げる者が行う収入を伴う芸術上の活動”です。 1創作活動を行う作曲家、作詞家、画家、彫刻家、工芸家、著述家、写真家等の芸術家 2音楽、美術、文学、写真、演劇、舞踊、映画その他の芸術上の活動について指導を行う者 活動の内容を明らかにする資料として、活動内容、期間、地位及び報酬が記載された公私機関又は個人との契約書の写し(そのような契約書が存在しない場合は、収入の見込額が記載された文書)を添付して申請することになります。 また、大学等において、研究の指導又は教育を行う活動である場合には、「教授」の在留資格、その活動が興行の形態で行われる場合(クラッシックコンサートのオーケストラ指揮者としての活動など)は「興行」の在留資格に該当しないか事前に検討が必要です。 2. その他留意点 収入について 「芸術」の在留資格を取得するためには、申請人が日本で「芸術」の在留資格に該当する活動を行うだけでなく、収入伴う活動であることが必要です。例えば、報酬を伴わない芸術上の活動の場合には、一般的には「文化活動」の在留資格になります。 カテゴリーと必要書類 「芸術」の在留資格は、2023年5月現在、カテゴリーによる区別はありません。したがって他の在留資格のようにカテゴリーによって必要書類が異なるようなことはありません。例えば、在留期間の更新申請の際は、もれなく直近の申請人個人の課税・納税証明書の提出が必要です。(課税・納税証明書が諸事情により発行されない場合は、その説明も原則必要となります)
- [日本における建設業法の基準と許認可取得のためのポイントとは](https://shiodome.co.jp/column/7609/) - 日本に建設事業での参入をお考えの方もいると思います。そのような方に事前に知っておいていただきたいのが、日本の「建設業法」に関してです。日本の建設業法は、世界的に見ても非常に厳しい基準になっていますので、それに対応できるのならば参入の可能性がありといえます。本記事では、日本における建設事業の可能性と、建設業法のポイントや建設業の許可について紹介します。 弊社では外資系企業の日本進出に関するトータルサポートを提供しています。もし日本進出に関してお困りのことがございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせください。 1. 建設工事が必要な場所が、日本にはまだまだ多く存在する 世界各国と比べても、日本は建設工事がとても盛んに行われている国だと言えます。なぜ日本が建設工事に力を入れているのかと言えば、インフラ整備こそが日本の経済の根源を支えているという考えが強いからです。 日本には、多くの道路があるというイメージが強いかもしれません。しかし、主要な道路という観点から見れば、まだまだ不足する地域が多いのが現状です。また、日本は地震が多い国ということもあって、まだ国土の整備などを行う必要のある国だとも言えるでしょう。 こうした建設工事が盛んな日本において、建設工事ビジネスにおけるルールが定めれているのが建設業法です。日本で建設事業に参入したいと考えている場合は、建設業法について正しく理解することが重要です。 2. 厳しい日本の建設業法の基準 日本の建設業法は、海外から見ても、とても厳しい基準になっています。特に、安全管理や品質管理に関する規定は、建設工事が盛んな中国や韓国と比較しても、その違いは歴然としています。 これほどまでに厳しい基準が設けられているのは、日本が地震や水害などの災害が多い国であるということがその理由です。 建設業法は非常に長い法律ですので、今回は紹介するのは省きます。詳しく知りたい方は国土交通省の該当ページをご参照ください。 3. 日本で建設業許可を取得する際のポイント 日本で建設業許可を取得する場合「施工管理技士」が必要になります。施工管理技士には、大きく分けて建築工事と土木工事の専門分野に分けられますが、それぞれ建設業許可を取得する際には、必要である業種の資格を取得しておく必要があります。 会社だけではなく、請負金額によっては社員個々がこうした資格を取得しておかなければ、建設業法上の仕事はできません。まずは建設業許可を取得する前に、個々で資格を取得しておく必要があります。 また、資格を取得すればすぐに建設業許可を取得できるわけではなく、経験も必要になります。建設業許可の取得の段階でもこれほどまでに厳しい建設業法が関わってきますので、建設業許可の取得までは簡単な道のりではないことがわかります。 4. 完璧な施工管理が求められる日本の建設業 日本の建設技術はとてもレベルが高く、現場の施工管理だけではなくその施工管理に付随する書類管理についても、完璧な管理が求められます。書類管理については、建設業法で求められる将来的な瑕疵(工事の欠陥など)を目的とされています。 つまり、責任の所在を将来においてまで、しっかり把握できるようにしておくことが必要とされているのです。これほどまでに徹底した管理が行われる日本の建設業法は、どの国から見ても、とても厳しい基準であることは間違いないでしょう。 以上のことから、外資系企業が日本の建設工事にビジネス参入することは、簡単ではないということがわかります。 5. おわりに 本記事では、日本の建設業法などを見ながら、外資系企業が日本での建設事業に参入する際のポイントを見てきました。日本の建設業法は世界的に見ても非常に厳しいものがあり、日本の建設事業に参入することは簡単ではありません。 しかし、もしどうしても参入したいとお考えでしたら、弊社が全面的なサポートをさせていただきます。外資系企業の日本進出に関してお困りのことがありましたら、いつでもお気軽にご相談ください。
- [在留資格「教授」に関する日本における資格要件と留意点とは](https://shiodome.co.jp/column/7779/) - 当ページでは、在留資格「教授」についてご紹介します。 1. 教育機関で就労している外国人総数は? 2022年6月現在において、日本で在留している外国籍の方の総数は約296万人と公表されております。そのうち日本の教育機関で就労している外国籍の方の総数はどれくらいでしょうか。前述同時期集計で、在留資格ごとの人数は、「教授」が6958人、「教育」が13019人ですので、確認できるだけで約2万人程度の外国籍の方が日本の教育機関で就労していることになります。(就労制限のない、いわゆる身分系の在留資格で就労している外国籍の方などもいるので、実数は2万人より多くなります)今回はそのうち「教授」という在留資格についてご紹介します。 2. 在留資格「教授」とは 「教授」の在留資格は“本邦の大学若しくはこれに準ずる機関又は高等専門学校”の“学長、所長、校長、副学長、副校長、教頭、教授、准教授、講師、助手等”として“研究、研究の指導、又は教育をする活動”が資格の該当範囲とされています。ここで注意が必要と思われる点は以下の通りです。 「日本の大学に準ずる機関」として定められている教育機関はどのようなものがあるか。 「教授」という職名でなくとも、在留資格は「教授」に該当する場合がある。 研究のみをする場合でも在留資格は(「研究」ではなく)「教授」に該当する可能性がある。 3. その他留意点 収入について 「教授」の在留資格を取得するためには、申請人が日本で「教授」の在留資格に該当する活動を行うだけでなく、この活動によって安定的、継続的に日本で在留するうえで必要かつ十分な収入を得られることが必要です。例えば、日本の大学において研究に従事するものの報酬を受けない場合には、一般的には「文化活動」の在留資格にすることになります。 カテゴリーと労働形態 大学等において常勤職員として勤務する場合は、カテゴリーが1となり、一方、非常勤勤務の場合には、カテゴリーが2となります。他の在留資格と同様にカテゴリーによって必要書類が異なりますので、申請準備をする前にどのカテゴリーに属するのか判断が必要です。例えば、カテゴリーが2の場合の当該在留資格の在留期間更新申請の際には、立証資料として住民税の課税・納税証明書などが追加されます。
- [対日投資・ビジネスサポートセンター(IBSC)の概要とサポート分野とは](https://shiodome.co.jp/column/7607/) - 対日投資・ビジネスサポートセンター(IBSC)は、外資系企業、外資系企業が日本に進出する際に、日本の市場に参入するためのサポートや拠点設立を支援する機関です。本記事では、IBSCの概要やサポート分野などについて詳しく説明いたします。 弊社では外資系企業の日本進出に関するトータルサポートを提供しています。もし日本進出に関してお困りのことがございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせください。 1. 対日投資・ビジネスサポートセンター(IBSC)とは? 日本貿易振興機関(JETRO)が運営するIBSCは「Invest Japan Business Support Center」の略称です。 IBSCは、外資系企業や外資系企業が日本に進出する際に、様々なサポートを行う機関です。 また、既に日本に進出している外資系企業が事業を拡大する際に、人員増大、地方への事業展開、拠点設立などについてのサポートも行っています。 現在、東京、横浜、名古屋、大阪、神戸、福岡の6ヶ所に事務所があり、外資系企業に対する情報の提供や個別コンサルティングなどについて、基本的に無料でサポートを行っています。 このようなサービスの提供が可能なのは、JETROが広いネットワークを持っており、会社設立や事業拡大を行う上でのスペシャリストを用意することができるからです。 また、IBSCは日本に拠点を持たない企業に対して、拠点となるオフィスを一時的に提供することもあり、日本に進出した外資系企業・外資系企業の中には、IBSCのサポートを受けている企業も多くあります。 2. IBSCのサポート分野 IBSCが行うサポート分野は、4つに分類することができます。 まず1つ目が「会社設立に関わるサポート」です。最初の拠点づくりはどのように行ったら良いか、また担当する司法書士や税理士などに対して、日本で経営をする上でのアドバイスや規制、インセンティブなどの説明を行います。そして登記、税務関係の手続きなどをサポートして、その際に必要となる税理士の紹介、さらに銀行口座の開設などのサポートも行います。 2つ目は「人材関連のサポート」です。日本での雇用における法律関係や、社会保険労務士のアドバイスなどを行います。また、人材確保の上で必要な情報などを提供した上で、実際に人材を探す際にもサポートを行います。もちろん、企業に相談すべき社会保険労務士がいなければIBSCから紹介し、面談アレンジも行います。 3つ目は「オフィス関連の設置サポート」です。前述したように、限定的にオフィスを提供した後で、新たなオフィスを探す際にもお手伝いします。 そして4つ目は、最も重要な「ビザに関するサポート」です。在留資格(ビザ)の相談、駐日代表者の決定や在留資格の申請などもサポートしています。 以上から分かるように、IBSCでは、外資系企業・外資系企業が日本で会社を設立し、企業としてスタートするために必要な事柄について、ほぼすべてをサポートできる有能な機関だと言えるでしょう。 もちろん、いくら優秀な企業家であっても、海外での成功と日本での成功が結びつくかどうかは分かりません。また、日本でどのように経営していけば良いのか、不明な点も多いはずです。 従って、IBSCのような機関は、海外からの対日投資をより活発化させたい政府としては、ぜひとも必要な機関として存在しているのです。 3. RSM汐留パートナーズとJETRO(IBSC)の関係 RSM汐留パートナーズはJETROと懇意にしており、さらにIBSCと同じようなサポートを外国人・外資系企業に向けて提供しております。RSM汐留パートナーズもいくつかの分野でJETROに登録し、プロフェッショナルとしてのご支援をしております。 ただ残念なことに、IBSCでは個々の専門家をバラバラにご紹介することになっています。国の機関であることから、公平性・公益性を保つために、「すべてワンストップでできるRSM汐留パートナーズを紹介します」とは言えないため、弊社では「税務」の分野でJETROへの登録を行っています。 JETROへ登録している税務以外にも、弊社では設立・ビザ・会計・労務・法律などすべての専門家がそろっており、ワンストップでサポートが可能なことに加え、英語・中国語のバイリンガルスタッフも多数在籍しております。ワンストップサービスをご希望の方や日本語に自信のない方の充実したサポートをお約束します。ご興味がありましたら、ぜひお問い合わせください。 4. おわりに 本記事では、日本進出を考えている人にとって大きな力となるIBSCについて紹介しました。日本進出のサポートを無料でしてくれる機関をお探しでしたら、まずはIBSCに当たってみるのがよいのではないかと思います。 その一方で、もし広い分野をワンストップで対応してくれるところをお探しでしたら、弊社が大きな力になることができると思います。日本進出に関してお困りでしたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。
- [日本での会社設立時に必要な「本人確認」に関する手続きの論点](https://shiodome.co.jp/column/7575/) - こちらのページでは、日本に会社を設立して事業を始めたいという方々が求められる「本人確認」についてご紹介致します。 1. 犯罪による収益の移転防止に関する法律と本人確認 マネー・ローンダリング(資金洗浄)及びテロ資金供与対策のための「犯罪による収益の移転防止に関する法律」に基づき、例えば会社設立のため登記申請の代理を司法書士に依頼する場合は、「本人確認書類」の提示が必要となります。これは日本人のみならず外国人も同様ですので注意が必要です。 弊事務所の場合は、法律を遵守しサポートさせて頂くため、設立登記などの際に運転免許証等の本人確認書類の写しをお預かりし、登記申請前に司法書士より直接の対面かお電話で本人確認をさせて頂いております。 2. 本人確認書類の提示が必要となる手続 具体的に司法書士を例にとり、以下の手続きは、本人確認書類の提示が必要です。 (1)宅地または建物の売買に関する行為または手続 (2)会社等の設立、組織変更、合併、会社分割、株式交換、株式移転、定款の変更、代表取締役・取締役の変更に関する行為または手続 (3)200万円を超える現金、預金、有価証券その他の財産の管理、処分。ただし、税金・罰金・反則金の納付、成年後見人等の裁判所又は主務官庁により選任された者が職務として行う他人の財産管理・処分、任意後見契約の締結は除きます。 本人確認は、取引内容に応じて司法書士の他、行政書士、弁護士、税理士、公認会計士によって行われます。なお、弁護士については、行政書士等の例を準じて日本弁護士連合会の会則により定めるとされております。 3. 本人確認書類の例示 本人確認書類については以下とされております。 (1)個人が依頼される場合 運転免許証、健康保険者証、在留カード、マイナンバーカード、旅券など (2)会社や法人の方が依頼される場合 法人の登記事項証明書又は法人の印鑑証明書に加え、代表者等の個人確認書類(上記(1)で例示したもの)の両方が必要となります。
- [外国人・外資系企業における日本進出に関するFAQ](https://shiodome.co.jp/column/13680/) - 外国人の方、もしくは外資系企業が日本で会社を設立する際によく聞かれる質問について以下にまとめました。日本進出を検討している方はぜひ参考にしてください。 1. 日本法人設立について Q. 外国人や外資系企業が日本で会社を設立するにあたっての注意点を教えて下さい。 A. 事務所がなくては会社を設立出来ません。物件オーナーによっては外国人への賃貸を行っていない場合があり、また、賃貸契約のために来日が必要なケースもあります。そのため、ご自身の状況で借りることが出来るオフィスを見つける必要があります。 Q. 日本法人の会社名をローマ字で登記することは可能ですか? A. はい、可能です。ただし、ABC Inc.のように英語名だけで登記することは出来ず、ABC株式会社や合同会社ABCのように形態を表す日本語と合わせ、登記する必要があります。 Q. 日本法人の資本金はどれくらい必要でしょうか? A. 日本では会社法の施行により最低資本金制度が廃止され、資本金は1円以上で任意に決められます。しかし、資本金額が小さい場合、金融機関から信用を得られず、法人口座を開設できない場合があるため、自身の事業に必要な金額を見込み資本金とする必要があるでしょう。 Q. 日本では取締役1人だけで株式会社を設立できますか? A. 取締役1人でも設立することができます。居住地や国籍の制限はないため、海外在住の外国人1人のみでも設立は可能です。 Q. 自宅を日本法人の本店の所在地として登記しても問題ないですか? A. 戸建ての持ち家であれば、基本的に問題ありませんが、賃貸物件や分譲マンションの場合は、家主やマンション規約等で事務所としての登記が可能かを確認する必要があります。尚、ビザが関係する場合、戸建ての持ち家でも事務所に出来ないこともあります。 Q. 登記をするとき、会社の本店住所には、ビル名は入れなくてもいいのでしょうか? A. ビル名は必須でないため、入れないことも可能です。 2. RSM汐留パートナーズについて Q. 海外にいるためSkypeやメールなどで連絡をしたいのですが可能ですか? A. もちろん可能です。お客様のご都合に合わせて柔軟に対応致します。上記ツールの他、電話やZoom、LINEなどでもご対応が可能です。 Q. RSM汐留パートナーズは外国人の会社設立支援の実績はどのくらいありますか? A. 2020年1月時点で、外国人及び外国法人の日本での会社設立を年間100件以上、累計で700件以上サポートした実績があります。 Q. RSM汐留パートナーズでは外国語による対応は可能でしょうか? A. もちろんです。RSM汐留パートナーズには英語や中国語が堪能なバイリンガルスタッフが多数在籍しております。 Q. RSM汐留パートナーズの会社設立支援に関するサービスの料金体系について教えて下さい。 A. プランや状況により異なるため、ご希望などを伺った上でご案内させて頂きます。是非、お気軽にお問い合わせ下さい。 Q. RSM汐留パートナーズに会社設立を依頼した場合、支払いはいつすれば良いでしょうか? A. 弊事務所の報酬は前払いにてお支払い頂いております。 Q. RSM汐留パートナーズに税務署やハローワーク等の手続きの代行をすべてお願いできるのですか? A. 日本の各種官公庁の手続の代行が可能です。 Q.
- [外資系企業が日本に進出する際の留意点とその対策とは](https://shiodome.co.jp/column/7576/) - 海外に本拠を置いている企業が日本に進出する場合、どのような点に注意が必要でしょうか。こちらのページでは、外資系企業が日本に進出する場合の留意すべき点についてご紹介いたします。 1. 特殊な市場環境 日本は欧米とは違って、市場の特殊性があるということは常に言われていることです。欧米の人気商品をそのまま日本に並べても、まったく売れないといったことは日常的に起こりうることです。多様な商品を求める日本の独特な風土に、店舗の運営形態を合わせることができず、撤退をしてしまった外資系企業はたくさんあります。 ファッションブランド大手のForever21は2009年に日本に初上陸し、東京・原宿の1号店オープン時には開店前に大行列ができるなど大きな話題を呼び、瞬く間に人気店となりました。その後も各地のショッピングモールに出店するなど勢いを強め、一世を風靡しました。しかし、H&MやZARAなど同じ外国ブランドで同じく低価格を売りにするファッションブランドや、ユニクロやGUなどの日本の安くてバリエーション豊富なブランドとの激戦に敗れ2019年に日本市場から撤退しました。特に、日本ではファッションに限らず、流行り廃りが非常に速いため、これに対応出来なければ、日本市場からの撤退を余儀なくされます。なお、Forever21は2023年に日本のアパレル会社の運営の下、日本再上陸を果たしています。 2. 日本人に受け入れられるものを提供 海外のレストランやカフェ、ファーストフードを例に日本に進出する場合、外国で人気の商品そのままで日本市場において勝負しようとすることがあります。もちろん、時にはそのままの商品が日本でも受け入れられることがあります。 一方で、例えば、2006年に日本初上陸したクリスピークリームドーナツは、一時は約65店舗まで店舗を拡大しましたが、日本進出から10年後には約45店舗と店舗が激減しました。この背景には日本の流行り廃りの速さや、コンビニ業界もドーナツ事業に乗り出したことなどももちろん原因としてありましたが、「甘過ぎる」と日本人の口に合う味でなかったことが最も大きな原因でした。この結果を受け、同社では甘さ控えめに変更するなど、日本で受け入れられる商品の開発に力を入れ、事業拡大に向けて再始動しています。 実際、マクドナルドやスターバックスなど日本で長く愛されている企業は、日本独自の商品やサービスを提供し続けることによって日本社会に受け入れられています。 飲食店を例に書きましたが、これは他の商品やサービスについても、もちろん同じことが言えます。日本で事業を展開しようとする場合は、柔軟な対応が求められます。
- [日本進出する外資系企業に向けたセクレタリーサービスの概要](https://shiodome.co.jp/column/13868/) - 多言語(英語・中国語)にて会社の法務・庶務周りをはじめとした様々な業務を代理・代行致します。 弊社でご提供しているサービスにつきましては、下記をご参照ください。 法人の謄本、印鑑証明書等の取得代行取得に伴う申請、法務局での取得を代行致します。 個人の住民票や納税課税証明書などの取得代行市区町村役場での書類取得を代行致します。 支払代行法人口座からお振込み先へ振り込むための振込設定を行います。 通訳(同行可)外国人の役員・従業員と意思疎通が困難な場合や通訳の同行をご希望の場合に、弊社スタッフがご対応致します。※ご対応可能言語:英語・中国語 その他日本での生活におけるご相談対応外国人従業員が日本で在留する中でお困りのことや質問を解決するサポートを致します。 印鑑・通帳などの管理・保管業務法人印鑑や印鑑カード、通帳などの貴重品を弊社金庫にて保管致します。自社オフィスに金庫がないなど貴重品保管に不安のある方もご安心ください。 書類の郵送手配業務国内外への郵送手配を行います。郵送準備自体は簡単ですが、宛名の記入、料金計算、郵便局窓口での手続など時間を要する工程が複数あるため、郵送物が多い場合は、郵送手配に要する時間が長くなってしまいます。当サービスをご利用頂くと、単純作業を減らし本業に専念して頂くことが可能です。
- [在留資格「報道」に関する日本における資格要件と留意点とは](https://shiodome.co.jp/column/7774/) - 当ページでは、在留資格「報道」についてご紹介します。 1. 在留資格「報道」とは 「報道」の在留資格の該当範囲となる活動とは、“次に掲げる者が外国の報道機関との契約に基づいて行う取材その他の報道上活動”です。 外国の報道機関に雇用されている者で、当該報道機関から報道上の活動を行うために本邦に派遣されたもの 特定の報道機関に属さず、フリーランサーとして活動する記者等で、外国の報道機関と契約を締結して当該報道機関のために報道上の活動を行うもの 「外国の報道機関」とは、外国に本社を置く、新聞社、通信社、放送局などの報道を目的とする機関をいい、民営・公営は問われません。また、「取材その他の報道上の活動」には、報道を行う上で必要となる撮影や編集、放送等一切の活動が含まれるとされていますので、原則的に、記者以外にも、編集長、編集者、カメラマン、アナウンサーなどの活動も「報道」の在留資格に該当することになります。 なお、他の就労系の在留資格と同様に、申請人が本邦で「報道」の在留資格に該当するだけでなく、当該活動によって、安定的・継続的に本邦に在留する上で必要かつ十分な収入を得られることも求められます。 2. その他留意点 他の在留資格に該当する可能性がある事例 テレビ番組制作等に係る活動は「興行」等他の在留資格に該当する可能性がある。 報道上の活動であっても、外国人が日本の報道機関との契約に基づいて行う活動で、当該外国人が従事する活動が社会学、政治学、経済倫理等人文科学の知識を必要とする場合には、一般的に「技術・人文知識・国際業務」に該当する。 カテゴリーと必要書類 申請人が、外務省報道官から外国記者登録証を発行された者を雇用する外国の報道機関に雇用されている場合は、カテゴリー1となり、それ以外はカテゴリー2となります。カテゴリー2の場合には、申請人の活動内容を明らかにする書類や外国の報道機関の概要(代表者名、沿革、組織、施設、職員数、報道実績等)を明らかにする資料を添付して申請することになりますが、カテゴリー1の場合にはこれらは原則不要です。(代わりに、申請人を雇用する外国の報道機関が、外務省報道官から外国記者登録証を発行された社員を雇用していることを証明する文書の添付が必要です)
- [外国人雇用におけるビザ申請の論点と代行サービスの概要](https://shiodome.co.jp/column/13862/) - 弊社では外国人の雇用を希望される会社や外国人従業員を雇用している企業の一助となれるよう、在留資格申請手続き代行サービスを提供致しております。「外国人雇用が初めてで、申請に必要な書類や手順がわからない」という法人や、「外国人従業員の在留資格変更が必要だけれども、手続がわからない」、「外国人従業員数が多くなり、在留資格関連業務の負担が大きく困っている」という人事ご担当者は、是非、弊社サービスをご活用下さい。在留資格取得サポート経験豊富な弊社スタッフがサポートさせて頂きます。 弊社で申請代行を行っている在留資格種別及びサービス内容 <弊社でサポートしている主な就労資格>『技術・人文知識・国際業務』、『高度専門職』『企業内転勤』『経営・管理』など <就労資格以外にサポートしている主な在留資格>『家族滞在』『日本人の配偶者等』『永住者の配偶者等』『永住』など <一部サービスの紹介> 在留資格申請書などを含む申請書類の作成在留資格・申請種別に応じて、作成が必要な書類を弊社にて作成致します。 市役所・区役所などで発行される公的書類の交付申請・受取代行弊社で作成した委任状にご署名頂き、弊社で書類を取得致します。 更新・変更許可後の在留カード受け取り更新、変更申請が許可された場合、入管で新しい在留カードの受け取りが必要です。時間帯や時期にもよりますが、受け取りの待ち時間は2~6時間程です。 外国語書類の翻訳在留資格申請において提出が必要な書類で英語・中国語の資料(卒業証明書など)を日本語に翻訳致します。※全文翻訳ではなく、入管が確認したい内容のみ厳選し必要な箇所のみ翻訳致します。 申請書類のチェック自社で作成された申請書類のチェックや修正箇所の助言を致します。 1. 【在留資格申請が未知の領域で、確実な在留資格取得が最優先な場合のサービス利用例】 申請書類の作成から申請までをすべてお任せ頂く申請フルサポートを利用し、確実に在留資格を取得。在留資格取得後、在留期限が近付いた際に必要な更新申請は、認定申請より必要書類は少ないものの手続の流れが認定申請と異なるため、1回目の更新申請は同じく申請フルサポートを利用。2回目以降の更新申請や2人目の外国人雇用に伴う認定申請は、会社の方針に基づき、すべて内製化、一部内製化・一部外注、引き続きフルサポートを利用からいずれにするのかを決定。 <フルサポートサービスをご利用頂く場合の認定申請の流れ> 2. 【時間はかかってもコストを最小限に抑え、許可の確率を高めたい場合のサービス利用例】 『日本法人を設立して間もない』や、『会社の規模が比較的小さい』などの事情により、申請にかかる対応はできる限り自社で行いたいけれども、申請が許可される確率は高めたいため、自社で準備した申請書類のチェックのみ依頼。会社の規模拡大や好調な業績に伴い、『業務が増え申請準備に手が回らない』や『外国人雇用を積極化しており、時間をかけて申請準備をできなくなった』など状況の変化に応じて、利用サービスをフルサポートへ移行。 全体的・部分的サービスいずれをご利用頂く場合も、弊社スタッフが英語・中国語いずれかの言語で外国人ご本人と直接やりとりし、申請準備を進めることも可能ですので、言語面でご不安のある場合もご安心ください。 弊社には行政書士のほか、外国人雇用管理士や外国人雇用管理主任者など、在留資格や外国人の雇用に精通したスタッフが多数在籍しておりますので、在留資格のことでお困りのことがございましたら、お気軽にお問い合わせください。 なお、在留資格申請手続代行サービスとは別に、在留資格についてご質問・ご相談がある場合にご利用頂ける『外国人雇用アドバイザリーサービス 』や、自社で雇用している外国人従業員の在留期限が迫った際に弊社より在留期限のご案内を差しあげる『在留資格管理サービス』もご提供しております。 また、外国人を雇用する場合は、労務面においても日本人とは異なる手続が必要なものがございます。弊社では、労務サービスもご提供しておりますので、労務についてもお知りになりたい方は以下の労務コンサルティングのページをご参照ください。
- [日本における飲食店経営の許認可の条件と書類提出の論点とは](https://shiodome.co.jp/column/7578/) - 外国人や外資系企業の皆様が、将来日本において飲食店を始めたいと考えている場合、どのような手続が必要なのでしょうか。こちらのページでは、日本における飲食店の許認可についてご紹介いたします。 1. 建築基準法上の制限の確認 まず、前提知識として、日本における都市計画法、そして建築基準法によって、用途地域ごとに建築できる建築物が制限されています。たとえば、その用途や、容積率などが制限されています。また、新しく建物を建築する場合の内装工事等の内容も、飲食店としての建築基準があり、これをクリアする必要があります。飲食店を経営するためには、まずはこのような建築基準法上の制限があることを知っておかなければいけません。 2. 営業許可を受けるための条件 飲食店や喫茶店などを開業するためには、食品衛生法という法律に基づいて、施設の所在地を管轄している保健所などに営業許可をあらかじめ得ておく必要があります。飲食店の営業許可を受けるためには一定の条件があります。 食品衛生責任者を一人置くこと 規定された基準に合致している施設をつくること この2つの条件に当てはまっている場合、飲食店の営業許可を得ることができます。こちらの食品衛生責任者についてですが、たとえば調理師や栄養士などといった調理関係の国家資格を所持している場合には、そのまま何も資格を取得する必要はありません。しかし、これらの資格を有していない場合には、食品衛生責任者養成講習会を受講する必要があります。また、施設の基準については細かい条件がありますので、計画段階で図面を準備し保健所に事前相談をする必要があります。 3. 営業許可申請書類の提出 営業許可申請書類の提出については、施設が完成する10日ほど前に提出をすることとなっています。その後保健所による実地調査が入り、調査で問題がないとされれば、営業許可を得ることができます。 なお、飲食店といっても種類があり、たとえば深夜に酒を提供するお店の場合は、管轄警察署へ深夜における酒類提供飲食店営業の届出を同時に行う必要性があります。また、一定以上の広さの店舗の場合も、消防署に防火管理者選任届を提出しなければなりませんので注意が必要です。
- [在留資格「医療」に関する日本における資格要件と留意点とは](https://shiodome.co.jp/column/7770/) - 当ページでは、在留資格「医療」についてご紹介します。 1. 在留資格「医療」とは 「医療」の在留資格の該当範囲となる活動とは、法律上我が国の医療関係の資格を有しなければできない職業(いわゆる業務独占の資格職業)に係る在留資格であり、医師、歯科医師、薬剤師、保健師、助産師、看護師、准看護師、歯科衛生士、診療放射線技師、理学療法士、作業療法士、視能訓練士、臨床工学技士、義肢装具士の資格をもってこれらの業務に従事する活動です。 なお、歯科技工士、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師又は柔道整復師については、これらの有資格者が「医療」の在留資格で活動することは想定されておりません。 2. その他留意点 「臨床訓練」に係る取扱いについて 臨床訓練とは、外国において本邦の医師又は歯科医師に相当する資格を持つ外国医師又は外国歯科医師が、本邦の厚生労働大臣の許可を受けて行う臨床の場における医療研修のことをいいますが、この研修は「医療」在留資格には該当しないものとされています。 カテゴリーと必要書類 申請人が、医師又は歯科医師の場合はカテゴリー1となり、それ以外はカテゴリー2となります。カテゴリー2の場合には、在留期間更新申請時には、従事する職務の内容及び報酬を証明する在職証明書その他の所属機関の文書や勤務する機関(病院、診療所等)の概要が明らかになる資料が必要となります。またカテゴリーに問わず在留期間更新申請時には、直近の住民税の課税・納税証明書を添付することになっています。
- [日本における会社設立時の銀行口座開設と留意点とは](https://shiodome.co.jp/column/7583/) - こちらのページでは会社設立時の銀行口座について紹介いたします。 1. 口座名義人について 発起人が設立時発行株式全てを引き受けて株式会社を設立する場合、発起人自身が持つ(銀行)口座に資本金を払い込むことが原則となります。また、発起人が払い込み先として利用可能な口座を持っていない場合、設立時取締役の口座への払い込みが認められていました。 更に2017年3月より、発起人及び設立時取締役の全員が日本国内に住所を有していない場合の特例として、第三者の口座に資本金を払い込むことで会社設立が出来るようになりました。この場合の第三者の口座名義人は個人に限らず法人口座も可能とする運用へ変更しました。 2. 払込取扱機関について 資本金の払い込みは内国銀行の国内本支店だけでなく、海外支店及び外国銀行の日本国内支店も可能です。但し、外国銀行の日本国内支店の場合は内閣総理大臣の認可を受けて設置された銀行に限ります。また、外国銀行の海外本支店は含まれないため注意が必要です。以下に内容をまとめています。 【払込取扱機関】 内国銀行の日本国内本支店 外国銀行の日本国内支店(内閣総理大臣の認可を受けて設置された銀行) 内国銀行の海外支店 【必要な記載内容】 金融機関の名称(口座が開設された支店名まで) 出資金の払込みの履歴 口座の名義人 但し、預貯金通帳の写しの記載が外貨預金の場合には、払い込まれた金額を証する書面に追加で記載が必要な内容があります。 【必要となり得る記載内容】 払い込みがあった日の為替相場 払い込まれた金額を払い込みした日の為替相場に基づき換算した日本円の金額 3. 法人設立後の法人口座開設の注意 資本金の払い込みに利用する口座の口座名義人範囲が拡大したことにより、非居住者による会社設立要件が緩和され、非居住者だけでの会社設立は容易になりました。しかしながら、非居住者による法人設立後の法人口座開設は依然として難しくなっています。設立後、速やかに事業を始めるためには、法人口座開設について事前に金融機関へ確認しておくことが望ましいです。
- [在留資格「研究」に関する日本における資格要件と留意点とは](https://shiodome.co.jp/column/7769/) - 当ページでは、在留資格「研究」についてご紹介します。 1. 在留資格「研究」とは 「研究」の在留資格の該当範囲となる活動とは、本邦の公私の機関との契約に基づいて行う研究を行う業務に従事する活動です。「研究」の在留資格で滞在している外国籍の方の総数は2022年6月末時点で1300人程度であり、ここ数年千人台で推移しています。 2. 他の在留資格との関連性 「技術・人文知識・国際業務」の在留資格との関連性 専ら研究を目的とする機関以外の機関において、当該機関の活動の目的となっている業務の遂行に直接資(ちょくせつし)するものである場合は、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格に一般的には該当するものとされています。例えば、民間の缶詰製造会社が所属機関となる場合において、商品開発のための基礎的・創造的な研究を長期間行う場合は、「研究」在留資格に該当する可能性が高いですが、それ以外の業務(当然、単純労働は除きます)については、「技術・人文知識・国際業務」に該当する可能性の方が高いことになります。 「教授」の在留資格との関連性 本邦の大学若しくはこれに準ずる機関又は高等専門学校において、報酬を受けて研究を行う場合(実費の範囲を超える額の奨学金、手当を受ける場合を含む。)は「教授」の在留資格に該当します。 「文化活動」の在留資格との関連性 報酬を受けずに研究を行う場合(実費の範囲内で受ける奨学金・手当がある場合も含む)は「文化活動」の在留資格に該当します。 3. その他留意点 カテゴリーと必要書類 「技術・人文知識・国際業務」のように所属機関の規模によって、カテゴリーが1~4に分類され、カテゴリーに応じて必要書類が異なり、規模が大きい所属機関であればあるほど書類は簡素化されます。カテゴリー3又は4の場合ですと、申請人の活動内容等を明らかにする資料、申請人の学歴及び職歴その他経歴を明らかにする資料だけでなく、所属機関の事業内容を明らかにする資料や直近の決算書などの資料の準備が原則必要となります。
- [在留資格「教育」に関する日本における資格要件と留意点とは](https://shiodome.co.jp/column/7765/) - 当ページでは、在留資格「教育」についてご紹介します。 1. 在留資格「教育」とは 「教育」の在留資格の該当範囲となる活動とは、本邦の小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、専修学校、各種学校(又は~以下省略)における語学教育その他の教育をする活動です。2022年末時点で、「教育」の在留資格の所有者は13,400人程度であり、高度専門職(ロ)及び企業内転勤の在留資格保有者とほぼ同数です。 ※「専修学校」とは理論を学ぶ大学とは異なり、社会に出た際に役立つ専門的な知識や技術の習得を中心としたカリキュラムとなっています。主に、専門課程、高等課程、一般過程という3つの過程に分類され、「専門過程」を設置する専修学校を一般的に「専門学校」と呼ばれています。 2. 他の在留資格との関連性 「技術・人文知識・国際業務」の在留資格との関連性 語学教師であっても、英会話スクールなど一般企業と契約して語学講師としての活動を行う場合には、原則的には「技術・人文知識・国際業務」の在留資格に該当します。また、幼稚園についても上述の該当範囲に記載されている教育機関ではありませんので「教育」の在留資格ではなく、こちらも原則的には「技術・人文知識・国際業務」が適した在留資格となります。なお、上述の教育機関(小学校~各種学校)に所属する教師が、当該教育機関の指示により一般企業等に派遣されて教育活動を行う場合は、「教育」の在留資格の活動に含まれるとされています。 3. その他留意点 カテゴリーと必要書類 現在、「教育」の在留資格のカテゴリーは3つに分類されています。非常勤勤務の場合はカテゴリー3となり、認定証明書交付申請時には所属機関の直近年度の決算文書の写しが必要となるなど必要書類は多くなります。一方、常勤勤務であって、小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校が所属機関となる場合はカテゴリー1となり、それ以外の教育機関(専修学校、各種学校)が所属機関となる場合はカテゴリー2となります。(カテゴリー1は所属機関の事業内容を明らかにする資料が原則不要であるなど最も必要書類が簡素化されています。)
- [日本における帰化と永住の違いとその特徴や条件とは](https://shiodome.co.jp/column/7582/) - 日本に長期在留している外国人の中には、今後も日本で生活をしていく予定であるものの、数年ごとの在留資格手続きが手間であるなどの理由により、帰化または永住権の取得をお考えの方が多くいます。こちらのページでは、帰化及び永住についてご紹介致します。 1. 帰化と永住の違いについて 帰化と永住で大きく異なるポイントは、「国籍の違い」です。多重国籍を認めている国が多々ある中、2023年現在、日本では多重国籍はもちろんのこと二重国籍も認められていません。帰化とは日本国籍を取得することなので、帰化申請が許可されれば日本国籍の取得と引き換えに元の国籍を喪失することになります。一方、永住では、国籍はそのままで在留資格そのものの更新はなく、日本に在留することができる資格です。 2. 帰化の特徴と条件について 帰化することで、選挙権の取得など日本人と同じ権利を得ることができます。また、公務員の仕事に就く事もできますし、就職などにおいても国籍を気にする必要がありませんので、まさに日本人として生活することができます。 永住申請の場合、一般的に継続して10年以上の居住要件がありますが、帰化申請の場合は継続して5年以上の居住要件のため、一見すると永住よりも簡単なように思われます。しかし、申請に際して、出生から現在に至るまでの詳細を記した書類が必要であったり、申請後に複数回、日本語での面接があったりと申請準備及び申請中の手間が非常に大きいといえます。更に審査期間は永住と比べ長くなることが多いので、精神的な負担が大きいともいえるでしょう。 3. 永住の特徴と条件について 一般的な就労資格である『技術・人文知識・国際業務』や『経営・管理』、『企業内転勤』などの場合、従事可能な業務に制限があります。しかし、永住の場合は、活動に制限がないため、就労資格では認められていない単純労働やアルバイトも行えるようになります。 法律上の要件の1つとして、原則引き続き10年以上本邦に在留していること。ただし、この期間のうち、就労資格(在留資格「技能実習」及び「特定技能1号」を除く。)又は居住資格をもって引き続き5年以上在留していることを必要としています。特に、通算ではなく継続が求められるという点で、そもそも申請要件を満たすこと自体ハードルが高いとも言えます。 尚、永住申請をする際の注意点として、審査期間中にその時点で持っている在留資格の在留期限が到来する場合は、必ず、その在留資格の更新申請が必要です。もし、更新を行わず、永住申請中にその時点で持っている在留資格の期限が切れた場合は、不法滞在とみなされるため、その点も忘れないよう注意が必要です。
- [対日貿易投資交流促進協会「MIPRO」の活動内容とは](https://shiodome.co.jp/column/7584/) - こちらのページでは、MIPROについてご紹介します。 1. MIPROとは? MIPROとは対日貿易投資交流促進協会(英文名:Manufactured Imports and Investment Promotion Organization)の英訳の頭文字を取った略称で、諸外国の対日輸出を促すための経済産業省所管の財団法人です。歴史は古く1978年に輸入促進機関として、輸入製品の拡大を図り、国内に外国産の商品が普及し、貿易黒字を生み出すために生まれた公益法人でした。 2. MIPROの事業内容 事業内容は大きく分けると二つあります。一つ目は対日投資支援事業、二つ目は対日アクセス支援事業です。また、その他の事業としては、知的財産権や製品安全等に対する取り組み、開発途上国支援事業も行っております。 3. 対日投資支援事業 対日投資支援事業は、外国資本を日本国内に取り入れることによって、地方も含めた全国的な経済成長を促すような事業発展を図ることを目的としています。そのため、展示会や見本市の開催、関連情報の提供、海外諸国の産業、文化の紹介、そして交流会などの手広い事業を行って、日本国内の企業と外資系企業とのつながりを作り、製品輸入の拡大を目指しています。 4. 対日アクセス支援事業 対日アクセス支援事業として、輸入ビジネスの起業、開業を目指す個人や中小の卸売、小売店を対象とした、小口の輸入を中心とした輸入ビジネスの情報提供を行っています。大口の輸入ビジネスだと、大手の企業が中心となってしまい、地方にまでお金が回り辛いということが懸念されるので、より多くの外資を地方に巡らせるためにも、MIPROは地方を対象とした小口輸入に関わる支援をより強めているのです。
- [日本に進出する外資系企業における日系企業の特徴とは](https://shiodome.co.jp/column/7605/) - こちらのページでは、日本進出する外国会社にぜひ知っていてほしい「外資系企業と日系企業の違い」についてご紹介いたします。 1. 外資系企業と日系企業の違いとは? 外資系企業は日本企業よりも自由な雰囲気で仕事ができ、きちんと結果さえ出せば自分なりのやり方や工夫が上司に認められるので、向上心の強い人には向いていると言われています。以下、外資系企業と日本企業の違いとして、一般的によく挙げられる点について見ていきたいと思います。 2. 外資系企業は給料が年俸制であることが多い 日本では給料を決める際に毎月の「基本給」があり、ボーナス時に何ヵ月分かがもらえる様になっている企業が多いです。もちろん、会社の景気が悪い場合には基本給が下がったり、ボーナスがカットされる可能性もありますが、基本的には毎月一定の給与額とボーナスが保証されます。 しかし、外資系企業の場合、その多くは年俸制であり、一般的には1年に1度の上司との交渉で年俸が決められ、その確定した金額が毎月分割され支給されます。1年の途中で急に給料の金額が変わったり、ボーナスがなくなるということは基本的にはありません。 3. 外資系企業は12月決算であることが多い 日本企業の場合、会計年度は4月~翌年3月である大企業が多いです。これは国や地方公共団体等の公的機関の会計年度が4月から翌年3月までになっていることが影響していると言われています。一方で、外資系企業の会計年度は一般的には1月~12月が多いです。最近では国際化の流れの中で、12月を決算月にしている日本企業も増加傾向にあるようです。 4. 外資系企業は実力主義が基本 日本の企業では同じ年度に入社した従業員は同期となり、先に入社した従業員から順番に昇進していくという、いわゆる年功序列型となっていることが多いです。 一方、外資系企業は年齢や性別に関わらず、能力があればどんどん昇進が可能です。30代の課長や部長の下で50代の一般社員が働いているということも珍しくありません。中途採用をする場合も基本的には能力で選ばれるため、新しく入社した上司が自分より若かったということも多々あるようです。 5. 外資系企業は労働組合がないことが多い 日本企業の大きな特徴は、社歴の長い大企業には労働組合があり、従業員の雇用が守られているという点です。会社が不当な労働行為を強いることがない様に労働組合が監視しています。昇給率やボーナスに関しても労働組合が会社と交渉し決めている会社もあります。 しかし外資系企業にはほとんど労働組合というものは存在せず、自分の身は自分で守ることが原則です。仕事内容や労働環境に対して不満があれば自ら会社と交渉しなければなりません。昇給に関しては、1年間の自分の成果を元に上司と面談を行い、個人ごとに決定します。 また、会社の業績が悪くなれば急に解雇されることがあるのも外資系企業の特徴です。一方で、日本企業は一度入社すると組織の風土や慣習に寄り添い流れに乗って勤務していくことが比較的容易です。しかし、外資系企業の場合、1年に1度自分の雇用を確保するために自分自身が全力で会社・上司に対してアピールを行わなければなりません。能力がある人ならば年収アップやキャリアアップが存分にできる可能性が高いのですが、雇用の安定性が少し欠けており、この点は表裏一体であるといえるでしょう。
- [日本での会社設立と外国人の在留資格(ビザ)取得の論点とは](https://shiodome.co.jp/column/7560/) - 当ページでは、「外国人が日本で会社を設立する場合には在留資格は必要ですか?」というよくあるご質問について、具体例を提示してご紹介致します。 外国人が日本で起業したり、日本法人の代表者等に就任したりする場合には、『経営・管理』の在留資格の取得が必要になるケースが多いといえます。 『経営・管理』の在留資格の取得する要件の1つとして、①日本に居住する常勤の従業員(従業員については要件あり)を2名以上雇用するパターン、あるいは、②資本金の額又は出資の総額が500万円以上の事業規模を確保するパターンです。実務としては②のパターンで検討することが多いようです。 1. 共同出資による『経営・管理』の取得 2名以上の外国人が共同で起業した場合に、2名とも『経営・管理』を取得したいというご相談が多数寄せられるので、以下、共同出資のパターンをご紹介します。 2名以上の外国人が共同で起業し、他に従業員がいない状況で、それぞれ役員に就任しようとする場合、必ずしもそれらの外国人全員に『経営・管理』の在留資格が認められるとは限りません。なぜなら、『経営・管理』の在留資格は、事業の経営または管理に実際に携わることが要件となるため、役員に就任しているだけでは、『経営・管理』の在留資格に該当しているとみなされないためです。 それぞれの外国人の活動が『経営・管理』の在留資格に該当するといえるためには、事業の規模、従事することとなる業務内容、受け取る予定の役員報酬額、売上等を総合的に判断した上で、当該事業の経営や管理を複数の外国人が行う合理的な理由があると認められる必要があります。 どのような場合に認められるのかについては、該当する事例が出入国在留管理庁より公表されています。 ケース1 外国人A及びBがそれぞれ500万円出資して、本邦において輸入雑貨業を営む資本金1000万円のX社を設立したところ、Aは、通関手続をはじめ輸出入業務等海外取引の専門家であり、Bは、輸入した物品の品質・在庫管理及び経理の専門家である。Aは、海外取引業務の面から、Bは、輸入品の管理及び経理面から、それぞれにX社の業務状況を判断し、経営方針については、共同経営者として合議で決定することとしている。A及びBの報酬は、事業収益からそれぞれの出資額に応じた割合で支払われることとなっている。 ケース2 外国人C及びDがそれぞれ600万円及び800万円を出資して、本邦において運送サービス業を営む資本金1400万円のY社を共同で設立したところ、運送サービスを実施する担当地域を設定した上で、C及びDがそれぞれの地域を担当し、それぞれが自らの担当する地域について、事業の運営を行っている。Y社全体としての経営方針は、C及びDが合議で決定することとし、C及びDの報酬は、事業収益からそれぞれの出資額に応じた割合で支払われることとなっている。 2. 外国人が法律を遵守し日本で会社を設立・経営するためには? 外国人が日本で会社を設立して経営するには、在留資格の問題があるため、会社法のみならず入管法も含め、色々なルールを遵守する必要があります。特に入管法に関しては深い知見が必要です。したがって日本人が起業するよりも、外国人が起業するハードルは高いといわざるを得ません。 しかしながら、RSM汐留パートナーズは年間100件以上の外国人の会社設立サポート実績があり経験が豊富です。更に、在留資格の取得につきましても、『経営・管理』をはじめ、『技術・人文知識・国際業務』等の就労在留資格の取得においてアジア・オセアニア・ヨーロッパ・アメリカ大陸など、様々な国籍の方をサポートしております。たくさんの外国人起業家が日本で活躍できるよう、RSM汐留パートナーズは、会社設立から、在留資格、会計税務、人事労務、法務までワンストップでサポートさせて頂きます。
- [在留資格「外交」に関する日本における資格要件と留意点とは](https://shiodome.co.jp/column/7666/) - 当ページでは、在留資格「外交」についてご紹介します。 1. 在留資格「外交」とは 「外交」の在留資格の活動範囲は、日本国政府が接受する(受け入れる)外国政府の外交使節団若しくは領事機関の構成員、条約若しくは国際慣行により外交使節と同様の特権及び免除を受ける者又はこれらの者と同一の世帯に属する家族の構成員としての活動です。滞在期間は具体的に設定されておらず、「外交を行う期間」とされています。 2. その他留意点 外交旅券所持者が全て外交ビザ(在留資格:外交)を取得できるわけではありませんのでご注意ください。公務以外の目的(休暇、観光、通過等)で来日する場合には、短期滞在(滞在期間15日、30日又は90日)の在留資格が付与されます。 「外交」の在留資格申請の際は、口上書(相手国に対してある意向を伝えるため、口頭で述べる代わりに文書にして渡すもの)その他外国政府又は国際機関が発行した身分及び用務を証する文書が必要となります。
- [日本における国籍の概要と3種の取得方法~「出生」、「届出」及び「帰化」~](https://shiodome.co.jp/column/7704/) - 本日は、「国籍の定義及び国籍取得の三つの方法について」についてご紹介します。 1. 国籍とは何か? 国家が成立するためには、国民と領域と政府(定義によっては、4つ目の要素として他国との外交力が加わることもあります)という要素が不可欠です。この「国民」について、どこの国の人なのかを明確にするため、個人と特定の国家を法的に結びつけられた特定の国家の構成員である資格を国籍といいます。(パスポートを所持している場合、Nationalityの欄がありますが、そこに記載されている国がその方の国籍を表しています) 国によってどの範囲の人をその国の国民として認めるかという考え方には違いがあります。国籍に関する具体的な考え方はその国の歴史や伝統、文化や政治・経済状況などによって異なっており、それぞれの国が自らの責任で国籍について決定することができるようになっています。 国籍という概念はどの国にもありますが、国そのものが、ある個人が他の国の国籍を有するかどうかまでを決めることはできません。そのため日本では国籍法によって、日本国籍の取得や喪失の原因について定めています。 2. 国籍取得や喪失の手続きについて 日本国籍の取得・喪失の具体的な手続きや相談については、住所地を管轄する法務局や地方法務局や在外公館(日本大使館又は日本領事館)で行うことができます。 日本に住所がある人は住所地を管轄する法務局・地方法務局にて国籍の取得や離脱の手続きやそれらの相談が可能ですし、外国に住所がある人は在外公館(日本大使館又は日本領事館)で当該手続等ができます。 3. 日本国籍を取得する方法について 日本国籍を取得する方法には、出生、届出、帰化の3つがあります。 (1)出生 出生については国籍法第2条に定められており、以下の三種類です。日本国籍を取得する方法としては最も一般的であるのが出生による取得です。 出生の時に父または母が日本国民である時 出生前に亡くなった父が死亡の時に日本国民であった時 日本で生まれ父母が両方とも不明である又は無国籍の時 (2)届出 届出による国籍の取得は、一定の要件を満たす人が法務大臣に届け出て、日本国籍を取得する方法です。これには認知された子の国籍の取得や、国籍の留保(以下、詳細)をしなかった人が国籍を再取得する場合や、その他の場合の国籍の取得などがあります。 「国籍の留保」とは・・・外国で生まれた子で、出生によって日本国籍と同時に外国国籍も取得した子は、一定の期間内に、日本国籍を留保(≒保持)する意思表示をしなければ、その出生の時にさかのぼって日本国籍を失うこととされています(国籍法第12条、戸籍法第104条)。子の日本国籍を失わせないためには、国籍の留保の届出をする必要があります。 (3)帰化 帰化については、国籍法第4条から第9条までの条文に定められています。帰化は、日本国籍の取得を望む外国人からの意思表示で、法務大臣の許可があった場合に日本の国籍が与えられる制度です。外国人の場合、日本に滞在する場合は何かしらの在留資格が必要となりますが、帰化後日本国籍を取得しますと、日本国民となりますので、在留資格を要せず日本に滞在することができます。
- [日本における医薬品等の製造販売に係る許認可申請~事前確認事項、適用される法律、その目的及び規制~](https://shiodome.co.jp/column/7644/) - 日本における医薬品等製造販売の許認可についてご紹介いたします。 1. 薬事法から医薬品医療機器等法へ 1943年に制定された「薬事法」が約70年経って、内容と名称を変更し、2014年11月に「医薬品医療機器等法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)」(以下「同法」とします)として施行されました。 同法は医薬品などについて品質及び有効性・安全性の確保並びに危害発生やその拡大の予防について規制をすることにより、保健衛生の向上を目的としています。つまり、医薬品などを使用する人の健康を保つことを目的とする法律です。許可の有効期間は5年間で、その都度更新をしなければなりません。また許可を取得した後、また登録が完了した後に申請事項に変更が生じた場合や販売製造業を廃止する場合は届出が必要です。 2. 申請の準備に取り掛かる前に 申請にあたって実際書類の作成、必要資料の取得をする前に下記について入念に確認する必要があります。そもそも申請自体が不要であったり、申請をしても不許可になるようなことを避けるため、許認可申請において一番肝要な段階といえるでしょう。 製品及び業態が同法の許認可申請の対象であるのかどうか 許認可申請対象に該当するとして、どの種類に該当するのか 申請における要件を満たしているのか たとえば、②について日本国内で製造・販売される絆創膏を例にご説明します。同法を対象とする製品は、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器、体外診断用医薬品(検査キットなど)、再生医療等製品に大きく分類されます。さて、絆創膏は、上記のどの分類に該当するのでしょうか。なお、医薬品と医薬部外品の違いは、簡単にいうと前者は主に病気の治療を目的される製品であり、後者は主に衛生や予防を目的とされる製品です。 絆創膏は、成分(特にパッドの部分に含まれている薬剤)によって、「医薬品」「医薬部外品」「医療機器」のいずれかに当てはまる可能性があります。つまり製品名やその用途が分かっても使われている薬剤の成分などによっては申請する種類が異なることになり、「絆創膏」だけではどの種類に該当するかは確定的なことはいえないことになります。当然、申請の種類が異なれば、要件や準備する書類なども変わってしまいますので注意が必要です。 3. その他留意点 虚偽広告、誇大広告の禁止と課徴金の導入 同法の法改正(2021年8月施行)により、医薬品などに関する虚偽広告や誇大広告は、課徴金の対象とされるようになりました(同法66条、75条5の2)。課徴金の割合は、虚偽広告などで得た利益の4.5%です。ただし、対象となる売上金額が5,000万円未満の場合には、課徴金は免除されます。この規制の対象の主語は「何人」であるため、医薬品などの製造業者でなかったとしてもこの規制の対象になりうる点は注意が必要です。
- [在留資格「経営・管理」に係る申請に必要な事業計画書の概要、記載内容及び作成時の留意点](https://shiodome.co.jp/column/7554/) - こちらのページでは、『経営・管理』の申請において必要な事業計画についてご紹介致します。 事業計画書とは 『経営・管理』においては、審査の際に事業の安定性や継続性が見られるため、事業に関する資料が必要です。既に事業を行っている会社であれば、履歴事項全部証明書(謄本)や決算報告書、法定調書合計表などで示すことになり、新設法人の場合は、事業計画書にて示すことになります。 (1) 事業計画書とは? 一般的に事業計画書は、本来、経営・管理ビザの申請のために作成する資料ではなくて、事業を成功させるために何をしなければいけないか明確にするために作成する事業の羅針盤のようなものです。 事業計画書の作成方法には決まった形式はありません。インターネット上で様々なフォーマットが出回っていますので、それらを参考に作れば良いのではないかと思われます。 (2) 経営・管理ビザ申請のための事業計画書とは? 一方『経営・管理』ビザの申請上も事業計画書は提出すべき重要な書類になります。しかし、出入国在留管理局では事業計画書に記載すべき詳細を明らかにしていないため、必要となりえる情報を推測して事業計画書を作成していくことになります。 また例えば、事業計画書を出入国在留管理局と銀行にそれぞれ提出すると仮定したら、知りたい情報が異なるので事業計画書に反映させる内容を変更し、それぞれの用途に応じた事業計画書を作成すべき必要があります。簡潔に申し上げると『経営・管理』ビザの申請では、事業の安定性と継続性を証明する情報が必要です。 (3)『経営・管理』ビザの事業計画書で記載すべきこと 事業計画書への記載内容は入管からは具体的に指定されていませんが、以下のような項目について記載する必要があると推測されます。 会社概要 申請人の経歴 創業背景(日本で事業を行う理由) 事業内容 ビジネスモデル 市場環境とメインターゲット 自社の商品・サービス 取引先(仕入れ先や販売先など) 競合他社分析(差別化) 組織体制/人員計画 収支計画 事業計画書を通じ審査では以下のような点が確認されますので、疑念を抱かれないよう説得力のある事業計画書を作成する必要があります。 申請人はどういう人か?(人物像) なぜ日本でこの事業を行いたいのか? 予定している事業が実現可能なプランであるのか? どのような組織体制でどのように営業活動を行うのか? 数年間の収支の見通しは立っているのか? 事業計画書の作成は時間と労力がかかりますが、自分の事業計画をアピールできる資料でもあります。動機や計画がしっかりとしていることや、本気度が高いことを入管に示せば『経営・管理』が許可される確率は高まります。入管が求めるポイントをおさえつつ、事業の詳細を明らかにした事業計画書を作成しましょう。 最後に、このようなビザの申請手続を専門家に任せると、入管が求める資料を準備できる上、お客様は開業準備に使える時間を増やすことができ、事業をスムーズに開始できる可能性が高まりますので、ご自身での書類作成が不安な方や集中的に事業運営に向けた準備に取り組みたい方は、専門家への依頼を検討されてはいかがでしょうか。
- [日本の法律専門職制度とは?海外の弁護士制度との違い](https://shiodome.co.jp/column/26580/) - 世界のビジネス環境がますますボーダレスになる中で、外国企業や投資家が日本に進出する機会も増えています。その際にしばしば直面するのが、日本独自の「法律専門職制度」に対する戸惑いです。 欧米では“Lawyer”があらゆる法的業務を担うのが一般的ですが、日本では「弁護士」「司法書士」「行政書士」など、役割ごとに資格制度が分かれており、それぞれが異なる領域を担っています。 本コラムでは、日本の法律専門職制度の仕組みを整理しながら、アメリカ・イギリス・中国の制度と比較し、その違いや背景について解説します。企業活動に携わる読者の皆様にとって、日本法務の理解が深まる一助となれば幸いです。 1. 日本:法律専門職の「分業制」 弁護士(Bengoshi) 裁判・契約・交渉・企業法務などを担当 日本の“Lawyer”に該当 刑事事件・民事紛争からM&Aや内部通報対応まで対応範囲は広い 司法書士(Shihō Shoshi) 不動産登記・商業登記のスペシャリスト 裁判所への提出書類作成、一部簡易裁判所の代理権あり 会社設立時や不動産取引で多く活躍 行政書士(Gyōsei Shoshi) 官公署への書類提出代理、許認可・在留資格申請などに対応 企業の立ち上げ支援や外国人雇用において重要な役割を果たす このように、日本では各専門家がそれぞれの業務領域に特化しており、「必要な時に、必要な専門家に依頼する」ことが前提となっています。 2. アメリカ:幅広くカバーする“Attorney at Law” アメリカでは、法的業務は基本的にすべてAttorney(弁護士)が担当します。業務内容は多岐に渡り、民事・刑事・企業法務・登記・移民手続き・行政訴訟など、日本の弁護士・司法書士・行政書士の業務をすべて包含しています。 アメリカの特徴: 各州ごとに弁護士資格が必要(州試験制Bar-Admitted Attorney) 小規模事務所で“General Practitioner”という幅広い分野を担当する弁護士がいる一方、特定の専門分野に特化される弁護士は多い また、アメリカの公証人制度(Notary Public)は、各州の法律の枠組みの中で運営されています。公証人の主な職務は、署名の認証、本人確認、文書の合法性の保証です。公証人は法律代理や法的助言を提供しませんが、法律文書や手続きの実行において欠かせない役割を果たしています。公証人になるためには、通常、研修と試験を受け、州政府の承認を得る必要があります。 3. イギリス:SolicitorとBarristerの「二層制」弁護士と法的専門職 イギリスはアメリカと異なり、法曹資格が二分化されています。 通常は、企業や個人はまずSolicitorに相談し、訴訟が必要な場合にBarristerを起用する形になります。近年では垣根が薄まりつつあるものの、伝統的な制度として根付いています。Solicitor-Advocate: Solicitorは現在、Solicitor-Advocateという資格を持つことができ、これにより一部のSolicitorは直接法廷に出廷し、訴訟を行うことができます。これにより、従来Barristerが担っていた役割を一部のSolicitorが担うことが可能となりました。また、登記や許認可申請に関しては、Solicitorや専門事務所が対応します。 それ以外、「法務執行官(Chartered Legal Executive)」は、イギリスの法律業界における専門職で、弁護士(Solicitor)と同様の業務を一部担いながら、弁護士資格を持たない法律専門家です。企業設立や商業契約、移民手続きなど、日常的な法的事務を担当します。ある程度、日本のような「司法書士」の制度と類似します。更に、イギリスの公証人(Notary Public)は、法的資格を有する専門職で、文書認証や署名証人などを行います。公証人は法的代理業務や訴訟には関与しませんが、法的訓練と試験を受けて資格を得ており、法的な文書の認証や署名の有効性の確認など、法的手続きにおいて重要な役割を果たします。 4. 中国:弁護士中心+公証制度が特徴 中国では、弁護士(律师 / lǜshī)が法務業務を総合的に担います。民事・商事・刑事すべてをカバーしており、企業法務においても契約書レビュー、訴訟代理、知財支援、労務問題などを担当します。 また中国には、日本やアメリカに見られない「公証人(公证员)制度」が強く機能しています。契約書・宣誓供述・登記書類などの公証(Notarization)が重視され、対外的な証拠力を持たせるために公証手続きを行うことが一般的です。 中国の特徴: 弁護士以外に独立した「司法書士」や「行政書士」のような資格は存在しない 公的文書の信頼性を重視し、「法務=弁護士+公証」の二本柱 比較表:各国制度の違い 5. まとめ:日本の「分業制」は企業支援の強みになり得る こうして比較してみると、日本の法律専門職制度は世界的に見て特異な構造であることがわかります。しかし、分業により高い専門性が確保されるというメリットもあります。 特に企業にとっては、業務ごとに最適なプロフェッショナルを活用することで、効率的かつ的確な対応が可能となります。日本におけるビジネス展開を検討されている海外企業の皆さまには、ぜひ日本独自の制度を正しく理解し、有効に活用していただきたいと考えています。
- [「経営・管理」在留資格に係る審査基準および提出書類に関する制度改正案の概要(厳格化)について](https://shiodome.co.jp/column/42210/) - 1. はじめに 2025年8月26日、「出入国管理及び難民認定法第7条第1項第2号の基準を定める省令等の一部を改正する省令案」について意見公募手続き(パブリックコメント)が実施されました。 新聞記事やオンライン記事などの先行報道では、「経営・管理」に関する資本金に係る基準が500万円から3,000万円に変更になり、かつ常勤の従業員1名以上の雇用が求められるなど「経営・管理」が厳格化されるとありましたが、この公表された改正案をみるとさらに厳しい基準を設けることとなっております。 現在のところパブリックコメントの段階ですが、施行予定日が2025年10月中旬となっており、期限が迫っております。今回は公表された改正案の内容の詳細を紹介したいと思います。 2. 基準省令の改正について 「経営・管理」の基準を定めた出入国管理及び難民認定法第7条第1項第2号の基準を定める省令を次のとおり改正するとしています。 1.申請する事業の規模について 【現在】 以下のいずれかに該当すること。 ア その経営又は管理に従事する者以外に本邦に居住する2人以上の常勤の職員が従事して営まれるものであること。 イ 資本金の額又は出資の総額が500万円以上であること。 ウ ア又はイに準ずる規模であると認められるものであること。 【改正後】 以下のいずれにも該当すること。 ア 常勤の職員の数について1人以上従事すること イ 資本金の額又は出資の総額が3,000万円以上であること 従来の資本金等の額が500万円から3,000万円に引き上げられるだけでなく、常勤の職員1名以上の雇用が求められることとなりました。 2.経営に従事する者の学歴又は職歴に関する基準の創設 ア 経営管理に関する分野又は申請に係る事業の業務に必要な技術又は知識に係る分野において博士の学位、修士の学位又は専門職学位を有していること。 イ (申請人が事業の経営に従事しようとする場合においても、)事業の経営又は管理について3年以上の経験(特定活動の在留資格(出入国管理及び難民認定法第7条第1項第2号の規定に基づき同法別表第1の5の表の下欄に掲げる活動を定める件で定める活動のうち本邦において貿易その他の事業の経営を開始するために必要な事業所の確保その他の準備行為を行う活動を含む活動を指定されたものに限る。)をもって本邦に在留していた期間がある場合には、当該期間を含む。)を有してい ること。 従来から「経営・管理」の管理業務に従事する者には実務経験が求められており代表取締役、取締役などの経営の業務に従事する者には学歴および実務経験は求められておりませんでした。しかし今回の改正では経営の業務に従事する者には学歴または実務経験を求めることとなっております。 3. 提出書類の改正について 提出書類も以下のように改正するとしております。 1.事業計画書に専門家の評価が必要になる 在留資格認定証明書交付申請時及び在留資格変更申請等、「経営・管理」を取得する際の事業計画書について、経営に関する専門的な知識を有する者による評価を受けたものを提出しなければならないことを定めるとされております。専門的な知識を有する者が具体的にどのような人物をさすかまだ確認できておりませんが公認会計士や中小企業診断士などが想定されます。なお、現行では事業計画書の提出が必要とされているのはカテゴリー3とカテゴリー4の会社となっております。 2.事業の規模に係る提出資料について 【現在】 以下のいずれかを提出する。 ア 当該外国人を除く常勤の職員の総数を明らかにする資料並びにその数が二人以上である場合には、当該二人の職員に係る賃金支払に関する文書及び住民票、在留カード又は特別永住者証明書の写し イ 資本金の額又は出資の総額を明らかにする資料 ウ その他事業の規模を明らかにする資料 【改正後】 以下のいずれも提出する。 ア 当該外国人を除く常勤の職員の総数を明らかにする資料並びに当該職員に係る賃金支払に関する文書及び住民票、在留カード又は特別永住者証明書の写し イ 資本金の額又は出資の総額を明らかにする資料ウ 学歴または職歴を証する文書の提出 改正後は事業の経営または管理に従事するいずれの場合にも学位を有することを証する文書または職歴その他の経歴を証する文書を提出しなければなりません。 3.在留期間更新許可申請時について 事業の規模に係る提出資料について以下のように改正されました。 【現在】 以下のいずれかを提出する。 ア 当該外国人を除く常勤の職員の総数を明らかにする資料並びにその数が二人以上である場合には、当該二人の職員に係る賃金支払に関する文書及び住民票、在留カード又は特別永住者証明書の写し イ 資本金の額又は出資の総額を明らかにする資料 ウ その他事業の規模を明らかにする資料 【改正後】 以下のいずれも提出する。 ア 当該外国人を除く常勤の職員の総数を明らかにする資料並びに当該職員に係る賃金支払に関する文書及び住民票、在留カード又は特別永住者証明書の写し イ 資本金の額又は出資の総額を明らかにする資料 4. 結び 今回の改正案により「経営・管理」の基準が非常に厳格化される見通しとなりました。すでに旧基準で許可を受けた方の今後の更新許可申請等についてはまだ発表はありません。 新しく日本で会社を設立して「経営・管理」の在留資格を取得するには法人設立には司法書士、在留資格の取得は行政書士、事業計画書の評価は公認会計士や中小企業診断士等といった専門家の協力が今後ますます必要になります。弊社はこれら一連のサービスをワンストップで提供できる体制を整えております。何かご質問やご依頼があれば是非ご連絡いただければ幸いです。
- [在留資格「企業内転勤」の申請要件や雇用契約給与支払いの注意点とは](https://shiodome.co.jp/column/7892/) - 企業のグローバル化に伴い、海外の本店や支店から日本の拠点へ外国人社員を呼び寄せるケースが増加しています。このような人事異動の際に検討される代表的な在留資格が「企業内転勤」です。 本記事では、企業の人事担当者様や海外事業部の責任者様に向けて、在留資格「企業内転勤」の該当性、申請における重要要件、そして実務上で論点となりやすい「雇用契約」や「給与支払い」の形態について、最新の法制度に基づき解説いたします。 1. 在留資格「企業内転勤」とは 在留資格「企業内転勤」は、日本に本店・支店・その他の事業所がある公私の機関の「外国の事業所」の職員が、日本にある事業所に期間を定めて転勤し、当該事業所において専門的な業務に従事する場合に付与される在留資格です。 単純労働(現場作業など)は認められておらず、従事する業務内容は、いわゆる就労ビザである「技術・人文知識・国際業務」のカテゴリーに含まれるものである必要があります。 具体的には、以下のいずれかに該当する業務が対象となります。 技術: 理学、工学その他の自然科学の分野に属する技術や知識を要する業務(例:システムエンジニア、機械設計など) 人文知識・国際業務: 法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する知識を要する業務、または外国の文化に基盤を有する思考や感受性を必要とする業務(例:マーケティング、通訳・翻訳、デザイナーなど) 2. 「企業内転勤」の主な申請要件 許可を得るためには、出入国管理及び難民認定法(入管法)等の定める基準を満たす必要があります。主な要件は以下の通りです。 (1)転勤元と転勤先の関係性 外国の事業所と日本の事業所との間に、資本関係等の密接な関係があることが求められます。具体的には以下のような関係性が該当すると解されています。 本店と支店間の異動 親会社と子会社間の異動 子会社間の異動(孫会社を含む関連会社間も対象となる場合があります) 単なる業務提携や取引関係のみでは、この要件を満たさない可能性が高いため注意が必要です。 (2)勤務期間の要件(「1年」のルール) 申請人が、転勤の直前に外国にある本店、支店、その他の事業所において「1年以上継続して」該当する業務に従事している必要があります。 この「1年」には、過去に日本で勤務していた期間は原則として含まれません。あくまで「外国の事業所」での勤務実績が問われます。 (3)報酬の要件 日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受ける必要があります。これは、安価な労働力としての外国人受け入れを防ぐための規定です。地域の賃金水準や同僚となる日本人社員の給与と比較して妥当性が判断されます。 3. 実務上の論点①:雇用契約の形態 一般的な就労ビザ(技術・人文知識・国際業務など)では、日本の受入れ機関と申請人が直接雇用契約を結ぶことが一般的です。しかし、「企業内転勤」においては、雇用契約の形態がより柔軟に解釈される傾向にあります。 日本法人との新たな契約は必須ではない 「企業内転勤」の場合、必ずしも日本の事業所と新たに雇用契約書を締結する必要はありません。外国の事業所(転勤元)との雇用契約を維持したまま、日本の事業所へ「出向」や「転勤」という辞令に基づいて配置転換されるケースが多く見られます。 疎明資料としての辞令等の重要性 申請時には、雇用契約書の代わりに、転勤命令書(辞令)、派遣状、あるいは転勤に関する合意書等を提出し、以下の点を明確にする必要があります。 転勤の期間 日本での地位・職務内容 日本での報酬額 特に「期間を定めて転勤する」ことが要件であるため、いつまで日本に滞在する予定か(あるいは任期の定めがあるか)が明確であることが望ましいと言えます。 4. 実務上の論点②:給与支払いの場所と方法 「企業内転勤」においてよく質問が寄せられるのが、「給与をどちらの国で支払うべきか」という点です。結論から申し上げますと、以下の3つのパターンのいずれも認められる可能性があります。 外国の会社が全額支払う 日本の会社が全額支払う 外国と日本の会社で分担して支払う 海外払いのみでも認められるケース 「企業内転勤」の大きな特徴として、外国法人(転勤元)に籍が残っている場合、給与の支払元が外国法人であっても認められる点が挙げられます。ただし、日本での生活費を賄うのに十分な額が支払われていることの証明が必要です。 また、海外で支払われる場合であっても、日本の税法上の居住者となる場合は、日本での納税義務が発生する可能性があるため、税務上の取り扱いについては別途税理士等への確認が推奨されます。 5. 「技術・人文知識・国際業務」との違いと使い分け 実務上、どちらの在留資格を選択すべきか迷うケースがあります。主な違いは以下の通りです。 6. まとめ 在留資格「企業内転勤」は、グループ企業間の人事交流を円滑にするための重要な資格です。学歴要件が問われない等のメリットがある反面、「直近1年の海外勤務」や「資本関係の証明」など、特有の要件をクリアする必要があります。 また、給与支払いの形態や雇用契約の内容が複雑になりやすいため、申請にあたっては立証資料の整合性を慎重に確認することが求められます。個別の事例における判断については、専門的な知識を要するため、ご不安な点は専門家へご相談されることをお勧めいたします。
- [外国人従業員を解雇する際のルールと外国人特有の留意点とは](https://shiodome.co.jp/column/7867/) - 外国人を雇用する際には、何か問題が生じたときに契約を打ち切る「解雇」についても考えておく必要があります。しかしながら、雇用時に解雇に関するルールを示しておらず、外国人と揉めてしまう企業も多いと聞きます。 本記事では、解雇に関する一般的なルールと外国人特有の留意点について紹介します。 1. 日本人・外国人に共通する解雇のルール 日本人であっても、外国人であっても、、原則日本国内の法令が等しく適用されるため、解雇に関する大抵のルールは同じです。解雇を言い渡す際には、明確な基準に沿った理由の説明が必要です。また、雇用した際に解雇の条件を伝えるとともに、誰が見てもわかるような明確な理由や根拠を示す必要があります。 (1) 解雇事由の明示 就業規則と労働契約書(労働条件通知書)に、「どんなときに解雇されることがあるか」という解雇事由をあらかじめ示し、その事由に合致することが必要です。 (2) 客観的合理的理由と社会的相当性 (1)の方法で解雇事由を明示していても、必ず解雇できるとは限りません。労働契約法第16条によれば、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合には、労働者を解雇することができません。 たとえば「体調が悪く連絡できないまま無断欠勤した」といったやむを得ない理由がある場合や、単に「商品を壊した」「服装がだらしない」といった理由だけで解雇することはできません。したがって、解雇にあたっては慎重な対応が必要となります。 (3) 解雇するときは予告が必要 (2)に示す合理的な理由があっても、従業員の意思に反し、事業主の判断で解雇する時には、解雇する日の30日前に解雇の予告をしなければなりません。予告の日数が30日に満たない場合には、不足日数分の平均賃金を、解雇予告手当として支払う必要があります(労働基準法第20条)。これに違反すると、罰則が発生します。ただし、(3)の例外として、下記のような場合は解雇予告制度が適用されません。 ア 従業員が以下の場合 使用期間中(使用期間の上限は14日) 契約期間が2ヶ月以内 イ 従業員側に問題行為があった場合 あくまで(3)が適用にならないだけで、(1)(2)のルールは適用されることに注意して下さい。また、上表「イ」については、解雇前に労働基準監督署長の認定を受ける必要があります。 解雇は上述のようなルールに則って行われる必要があり、これは日本人・外国人に共通するものです。また、以下の場合は不正解雇にならないとも言われますが、専門的な知識に基づいた判断を伴うため、これらに当てはまる場合には社会保険労務士に相談することをおすすめします。 会社の業績が極めて悪化している場合(リストラ) 復職のめどが全然立たない長期の入院の場合 勤務態度が社会通念を超えて極めて悪い場合 重大な経歴の詐称があった場合 重大な問題を引き起こし懲戒処分となった場合 2. 外国人特有の解雇に関する留意点 外国人を雇用する場合には、上記のルールに加え、外国人特有の解雇に関するルールが適用されます。 (1)国籍による差別の禁止 国籍を理由とする解雇は労働基準法第3条により認められていません。 (2)日本と外国の文化や雇用慣行のギャップ 解雇の正当性は国によって大きく感覚の異なる部分です。そのため項番1のような解雇のルールを就業規則に具体的な事例を交えて記載し、事前に説明しておくことが必要です。 また、外国人従業員本人が「自分はなぜ解雇されたのか」がわからずにトラブルにつながる場合もあります。解雇をするときはきちんと理由を説明することも必要です。 (3)解雇予告は早めに 外国人が新たな仕事を見つけるには時間がかかることがあります。そのため、事業主が解雇を決定した場合、その事実を早めに告げる必要があります。そうすることで今の職場を去る前に転職活動を行うことができ、新たな職場への転職がスムーズに行われるようになります。 (4)再就職の援助 解雇する外国人従業員が再就職を希望するときは、関連企業等へのあっせん、求人情報の提供等当該外国人従業員の在留資格に応じた再就職が可能となるよう、必要な援助を行うことも重要です。厚生労働省が定めた「外国人雇用管理指針」の中で事業主が努めるべきこととして、この再就職の援助が挙げられています。 (5)外国人雇用状況の届出 外国人従業員の離職の際には、氏名、在留資格などについて、ハローワークへ届け出ることが義務づけられています(労働施策総合推進法第28条)。 3. 解雇された外国人従業員の現実 解雇された外国人従業員が、引き続き日本で働くことを希望する場合、慣れない国で就職活動をすることになります。資格外活動の許可を受けることで、再就職までアルバイトで生活費を稼ぐことは可能ですが、1週について28時間以内の就労に制限されるため、非常に厳しい事態に追い込まれます。 会社の業績や、従業員の能力不足・成績不良などでどうしても解雇しなければいけない時はあると思いますが、解雇された外国人の立場や将来についても考慮し、ふさわしい決定を下すことが求められます。 4. 解雇に伴うトラブルを避けるためにできること 「働きぶりを見てダメだったら、解雇すればよいだろう」など安易に雇用・解雇をした結果、それが事業主の評価となり、今後有能な外国人を雇いにくくなる事態に陥る可能性もあります。解雇に伴うトラブルを避けるために、外国人従業員とすれ違いや誤解が生じないよう相互理解に努めることが重要です。 外国人雇用に関してより詳しく知りたい方は、以下のページもご覧ください。 外国人雇用と就労ビザ申請手続のよくある質問Q&A 5. おわりに 本記事では、外国人を解雇するときの注意点について紹介しました。日本人であっても外国人であっても、解雇に関しては多くの共通のルールが適用されます。もし会社がこれを守らずに解雇を実施した場合は処罰を科せられる場合があるため注意が必要です。また、外国人にのみ適用されるルールもあります。 外国人を採用する際には、同時に解雇に関する規定も作成し、採用時に本人の承諾を得る必要があります。もし、外国人の雇用や解雇に関してお困りでしたら、外国人雇用のトータルサポートを実施している弊社まで、お気軽にお問い合わせください。
- [外資系企業の日本における駐在員事務所設置の手続きの論点とは](https://shiodome.co.jp/column/7562/) - 日本に進出を考えている企業であれば、どのような形態で進出するべきか検討していると思います。日本進出する形態として日本支社の設置、日本支店の設置、日本駐在員事務所の設置の3つがあります。 本記事では、いくつかの制限はあるものの、もっとも容易に日本進出が果たせる「日本駐在員事務所設置」について紹介いたします。 1. 日本駐在員事務所とは? 外国会社が日本で活動をする際には、会社は必ず日本に活動の拠点を持たなければなりません。拠点には、日本支社、日本支店、日本駐在員事務所の3つがあります。 この中の駐在員事務所は、外国会社が日本で事業活動を行うために準備する機関として設置されるものです。従って、市場調査、情報収集、物品の購入、宣伝広報活動、本社への情報の提供などはできますが、直接的な事業活動は禁止されています。 もし、日本で事業活動を行う必要があれば、外国会社の支店を設置したり、外国会社の子会社(日本法人)を設立させたりしなければなりません。 2. 日本駐在員事務所と日本支社、日本支店の違いは? 日本駐在員事務所と日本支社、日本支店の違いには、大きく分けて3つあります。 まず1つ目は、登記です。日本支社、日本支店には設立登記の義務がありますが、日本駐在員事務所にはありません。基本的には、駐在員事務所の代表者と事務所の場所を決めれば良いということになります。 2つ目は、営業活動です。先ほどご説明したように、日本駐在員事務所は営業活動ができませんが、日本支社、日本支店はできます。この営業活動とは、課税を伴う直接的な営業活動のことですから、駐在員事務所は税務署への届出も、原則として必要ありません。 ただし、雇用する従業員の給与や保険に関する税務署の手続きについては、行わなければなりません。また、外国会社の業種によっては、駐在員事務所の設置について、届出をしなければなりません。 例えば、銀行法では、外国銀行が日本国内に駐在員事務所を設置しようとする場合、事前に内閣総理大臣へ届出をしなければならないとされています。 3つ目は、銀行口座や賃貸契約の名義です。日本駐在員事務所は、外国会社の一部として取り扱われます。従って、事務所の諸経費などは、外国会社の会計に含まれることになります。つまり、駐在員事務所は、一つの独立した会社とはみなされませんので、銀行口座を開設したり、事務所の賃貸契約を結んだりする場合には、事務所代表者の個人名義で行うことになります。 一方、日本支社や日本支店は、一つの独立した法人ですから会社名義で銀行口座を開設したり、契約を結んだりすることになります。 日本法人設立についてはこちら 日本支店設置についてはこちら 3. 日本駐在員事務所を設置する手続きとは? 日本駐在員事務所の設置の流れは、以下のとおりです。(1)駐在員事務所の代表者を決める。(2)駐在員事務所の営業所の所在地を決める。(3)駐在員事務所で働く外国人に必要な在留資格を申請する。 外国会社が日本に駐在員事務所を設置しようとする場合、まず代表者を決める必要があります。外国人を代表者にする場合には、「企業内転勤」、あるいは「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を持った人でなければなりません。 なお「企業内転勤」の在留資格を取得するには、直前1年以上、本社その他に在職している必要があります。また、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を取得するには、原則として大学を卒業していることが必要です。但し、活動内容に応じて10年間または3年間以上の職歴がある場合、大学を卒業している必要はありません。 代表者が決まれば、駐在員事務所として活動する物件を探し、賃貸契約を結ぶことになります。この場合、先ほどもご説明したように、駐在員事務所は一つの会社として見なされませんから、代表者の個人名義で契約を結ばなければなりません。また、駐在員事務所は法人格を持っていませんから、法務局への登記申請は不要です。 最後に、駐在員事務所に常勤で滞在する人を海外から招へいする場合には、在留資格を取得する必要があります。例えば、本国の本社などに1年以上勤務した人が、本国から派遣される場合には、「企業内転勤」の在留資格が必要です。また、日本で採用されて駐在員事務所に勤務する場合には、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格が必要です。 なお、雇用する外国人が、既に「永住」、「定住者」、「日本人の配偶者等」と言った就労制限のない在留資格を持っている場合には、新たに在留資格を申請する必要はありません。 4. おわりに 本記事では、外資系企業が日本進出を行うための1つの形態である日本駐在員事務所の設置について説明しました。日本駐在員事務所にはいくつかの制限があるものの、もっとも進出が容易な形態であるため、しっかりと理解しておくとよいでしょう。 弊社では日本進出を考えている企業に向け、トータルサポートを実施しています。日本への進出をお考えでしたらお気軽にお問い合わせください。
- [在留資格「家族滞在」の取得要件や取得後の留意点とは](https://shiodome.co.jp/column/7896/) - 外国人が日本に滞在するためには、出入国管理及び難民認定法(入管法)が定める在留資格を有する必要があります。日本に中長期間在留する外国人の扶養家族のための在留資格が「家族滞在」です。 こちらのページでは、在留資格「家族滞在」についてご紹介します。 1. 在留資格「家族滞在」とは 「家族滞在」は、就労資格や「留学」など何らかの在留資格を持って日本で中長期滞在する外国人の配偶者や子供に対して与えられる在留資格です。 2. 在留資格「家族滞在」の要件 在留資格「家族滞在」を申請するためには、以下の要件を満たす必要があります。 (1) 扶養する外国人(扶養者)についてv 扶養者が一定の在留資格を有する必要があります。代表的な在留資格を、家族滞在の要件に該当するか否かで分類すると下記のようになります。 「家族滞在」の要件に該当する扶養者の在留資格高度専門職、経営・管理、技術・人文知識・国際業務、企業内転勤、技能など 「家族滞在」の要件に該当しない扶養者の在留資格短期滞在、文化活動など 就労系の在留資格の多くは要件に該当しますが、「短期滞在」や「文化活動」については、制度上、家族の帯同が認められていないため、要件に該当しません。 (2) 扶養される家族(被扶養者)について 被扶養者として「家族滞在」の在留資格が認められるのは、配偶者と子どもです。親や兄弟は仮に扶養されているとしても「家族滞在」の在留資格を得ることはできません。配偶者は法的に有効な婚姻を経た配偶者のことで、内縁の配偶者は含まれません。子どもには、実子のほかに養子も含まれます。そして、これら配偶者や子どもは扶養者に養われることが必要です。経済的に独立している場合は「家族滞在」の在留資格は認められません。 なお、「家族滞在」の在留資格における「子ども」は扶養される未成年(18歳未満)が原則対象とされています。つまり、民法上成人された18歳以上の子どもについては、日本の大学等に進学をする場合は「留学」に、就職する場合は就労系の在留資格(「技術・人文知識・国際業務」など)に変更申請を行うことになります。 3. 「家族滞在」の就労について 「家族滞在」では就労は認められていませんが、資格外活動許可を得ている場合に限り、週28時間以内のアルバイトが可能です。 4. 扶養者の帰国や扶養者との離婚等について 「家族滞在」は日本に滞在する扶養者の存在が基礎となる在留資格です。そのため、扶養者が先に帰国した場合や扶養者と離婚や死別をした場合は、その基礎が失われることになります。こうした事態に伴い、ただちに「家族滞在」の在留資格が取り消されるわけではありませんが、引き続き日本での滞在を希望する場合は、適切な在留資格に変更することが必要になります。なお、扶養者と離婚や死別をした場合には、14日以内に出入国在留管理庁へその旨を届け出ることも必要です。 5. おわりに 本記事では、在留資格「家族滞在」とは何か、また取得の要件等について紹介しました。家族滞在はほかの在留資格とは異なる滞在期間が設けられているなど、独特な条件を持つ在留資格です。しっかりと理解した上で、適切な手続きをするようにしましょう。 もし在留資格のことでお困りでしたら、外国人の在留資格に関するトータルサポートを提供する弊社まで、お気軽にお問い合わせください。
- [外国人従業員に課せられる届出の法的義務と在留資格の取消制度](https://shiodome.co.jp/column/7869/) - 外国人従業員の退職や転職があった場合には、所属機関等に関する届出が義務づけられています。しかし、条件によって異なる手続きが必要になることから、どうすればよいかでお困りの方もいるかと思います。本記事では、退職・転職に伴う「所属機関等に関する届け出」について詳しく説明するとともに、在留資格の取り消し制度についても紹介いたします。 弊社では外国人の雇用や在留資格に関するトータルサポートを提供しています。もし外国人の雇用やビザについてお困りのことがございましたら、お気軽にお問い合わせください。 1. 退職・転職に伴う「所属機関等に関する届出」について 「技術・人文知識・国際業務」、「企業内転勤」及び「高度専門職」等の在留資格を有する外国人は、退職や転職をしたら14日以内に出入国在留管理局(以下「入管」)に所属機関に関する届出を行う必要があります。この届出制度は、平成21年の出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」)の改正により、在留管理を強化するために新たに設けられた規定で、条文としては以下のとおりです。 入管法 第19条の16より引用 中長期在留者であって、次の各号に掲げる在留資格をもつて本邦に在留する者は、当該各号に掲げる在留資格の区分に応じ、当該各号に定める事由が生じたときは、当該事由が生じた日から十四日以内に、法務省令で定める手続により、出入国在留管理庁長官に対し、その旨及び法務省令で定める事項を届け出なければならない。 一 教授、高度専門職(別表第一の二の表の高度専門職の項の下欄第一号ハ又は第二号(同号ハに掲げる活動に従事する場合に限る。)に係るものに限る。)、経営・管理、法律・会計業務、医療、教育、企業内転勤、技能実習、留学又は研修 当該在留資格に応じてそれぞれ別表第一の下欄に掲げる活動を行う本邦の公私の機関の名称若しくは所在地の変更若しくはその消滅又は当該機関からの離脱若しくは移籍 二 高度専門職(別表第一の二の表の高度専門職の項の下欄第一号イ若しくはロ又は第二号(同号イ又はロに掲げる活動に従事する場合に限る。)に係るものに限る。)、研究、技術・人文知識・国際業務、介護、興行(本邦の公私の機関との契約に基づいて当該在留資格に係る活動に従事する場合に限る。)、技能又は特定技能 契約の相手方である本邦の公私の機関(高度専門職の在留資格(同表の高度専門職の項の下欄第一号イに係るものに限る。)にあっては、法務大臣が指定する本邦の公私の機関)の名称若しくは所在地の変更若しくはその消滅又は当該機関との契約の終了若しくは新たな契約の締結 上記の条文を見ただけでは分かりづらいので、少し解説を加えつつ、具体的な手続きについて説明します。 まず、入管法第19条の16の規定を見ると、在留資格の区分により第1号及び第2号の2通りの届出があることが分かりますので、それぞれの届出について見ていきたいと思います。なお、19条の16の第3号は、家族滞在等に関する事項ですから、ここでは説明を省略いたします。 2. 入管法第19条の16の第1号の規定について これは、活動機関に関する届出と言われるもので、以下の(1)に該当する在留資格を有する外国人は「活動機関が消滅」「活動機関からの離脱」「活動機関からの移籍」があった場合には、以下の(2)の届出事項について14日以内に入管に届け出る必要があります。(活動機関とは、就労活動を行っている法人や個人事業主を指します。) (1)対象となる在留資格 ①「企業内転勤」 、②「高度専門職1号ハ」(注)、③「高度専門職2号(ハ)」、④「教授」、⑤「経営・管理」、⑥「法律・会計業務」、⑦「医療」、⑧「教育」、⑨「技能実習」、⑩「留学又は研修」※(注)活動区分としては、イ・ロ・ハあるが、届出対象はハの活動に係る機関のみである。 (2)届出事項 ① 活動機関の消滅した場合 活動機関が消滅した年月日 消滅した活動機関の名称及び消滅時の所在地 ② 活動機関からの離脱した場合 活動機関から離脱した年月日 離脱した活動機関の名称及び所在地 ③ 活動機関からの移籍した場合 新たな活動機関に移籍した年月日 移籍する前の活動機関の名称及び所在地 新たな活動機関の名称及び所在地 新たな活動機関における活動の内容 ④ 活動機関の名称変更・所在地変更の場合 活動機関の名称、所在地の変更年月日 新名称又は新所在地 (3)届出書の様式 届出は文書で提出しますが、届出書については法務省のホームページにおいて参考様式が掲載にされていますので、必要に応じてダウンロードして使用することができます。(参考様式のダウンロード) 届出書については入管法の施行規則では定められておらず、任意の様式でも提出は可能ですが、届出事項について記載漏れがないようにするためには以下の参考様式で届出することをお勧めします。 また、参考様式は、届出事由によって様式が異なりますので、届出事由に応じた様式を選ぶ必要があります。 (活動機関に関する届出書) ① 活動機関が消滅 → 「参考様式1の1」② 活動機関からの離脱 → 「参考様式1の2」③ 新たな活動機関への移籍 → 「参考様式1の3」④ 活動機関からの離脱及び新たな活動機関への移籍 → 「参考様式1の6」⑤ 活動機関の名称、所在地の変更 → 「参考様式1の1」※ 転職で新旧の活動機関について同時に届出するときには、④の参考様式を使用すれば便利です。 (4)届出人 届出は、外国人本人、届出代理人である雇用主(従業員含む)、取次行政書士等が行うことができます。 (5)届出の方法 上記(3)の届出書を以下のいずれかの方法により、提出することができます。① 最寄りの入管窓口に直接持参② 郵送
- [入管法第22条の2の「在留資格の取得」に関する概要と許可申請の論点](https://shiodome.co.jp/column/7950/) - 外国人が日本に滞在するためには、出入国管理及び難民認定法(入管法)が定める在留資格を有する必要があります。しかしながら、海外からの上陸などを経ずに日本に滞在することになる外国人もいます。そのような場合に実施する手続きが「在留資格の取得」です。本記事では在留資格の取得に関する基本と、在留資格取得の主な対象者について紹介します。 1. 在留資格の取得について 通常であれば、外国人が空港などで上陸の手続きをする際に在留資格が与えられます。しかし、外国人夫婦が日本で生んだ子どもなど、上陸手続を経ずに日本に滞在することになる外国人もいます。こうした外国人が在留資格を得るための手続きが「在留資格の取得」です。 2. 在留資格取得の対象者について 在留資格取得手続の対象となる外国人は以下のとおりです。 (1)日本の国籍を離脱した者 日本国内にいた日本人が、外国籍への帰化等により日本の国籍を失った場合、その時点で日本人から外国人となります。その場合、日本に滞在するためには在留資格の取得手続きが必要になります。 (2)出生により上陸手続を経ずに日本に滞在する外国人 外国人夫婦が日本で子どもを生んだ場合、その子は生まれながらに日本に滞在する外国人になります。その場合、日本に滞在するためには在留資格の取得手続きが必要になります。 (3)その他の事由で上陸手続を経ずに日本に滞在する外国人 在日米国軍人やその家族は、日米地位協定(SOFA)により在留資格を持たずに日本に滞在していますが、除籍等により協定の該当者でなくなると、その時点から在留資格を必要とする外国人になり、それ以降日本に滞在するためには在留資格の取得手続きが必要になります。 3. 在留資格取得許可の申請について 上記の対象者全員が、即座に在留資格取得許可の申請をしなければならない、ということはありません。日本国籍離脱、出生、米軍除籍などに該当する人物は、その日から60日以内は在留資格を有することなく日本に滞在することが認められます。そのため、当該期間内に日本から出国する場合は、在留資格取得の申請は不要です。 一方、60日を超えて日本に滞在することを希望するのであれば、在留資格取得の申請が必要になります。その場合、日本国籍離脱、出生、米軍除籍などの日から30日以内に出入国在留管理庁に申請します。申請をしないまま60日が経過すると、在留資格を持たない不法残留者となりますので注意が必要です。 なお、出生の場合、30日以内ではパスポートや自国政府からの出生証明書が発給されていないことも考えられます。その場合であっても、日本の出生届受理証明書等があれば申請可能なため、期限を守って申請するようにしてください。 4. おわりに 本記事では入管法第22条の2「在留資格の取得」の詳細について説明しました。在留資格の取得が必要になるケースはまれですが、正しい申請をしないと不法残留者となってしまうため、きちんと理解した上で正しい行動をとることが重要です。 弊社では、外国人の雇用や在留資格に関するトータルサポートを実施しています。もし外国人の在留資格や雇用に関してお困りでしたら、お気軽にお問い合わせください。
- [日系人の特徴と在留資格、雇用する際のポイントとは](https://shiodome.co.jp/column/7960/) - 外国人の雇用を考えている企業であれば、日本の文化に精通し、日本語にも精通している可能性のある「日系人」を雇いたいと考える人も多いと思います。 しかし、日系人という名前はよく聞く一方で、「日系人とはそもそも何?」と疑問に思う方も多いと思います。本記事では、日系人とは何かを紹介するとともに、日系人の在留資格や、日系人を雇う際のポイントについて紹介します。 1. 日系人とは? 恐らく、誰もが日系人という言葉を一度は耳にしたことがあると思います。「日本にルーツを持つ人」という認識の方も多いと思いますが、正確な定義を説明すると「日本から海外へ移住し、その国の国籍などを取得した日本人及びその子孫」を日系人といいます。 例えば、ブラジルには多くの日系人がいると言われています。1900年代に約20万人もの日本人がブラジルに移住し、ブラジル人と結婚し、家庭を築きました。ブラジル人と日本人の間にできた子どもが日本国籍ではなく、ブラジル国籍を取得した場合、日系人と呼ばれます。現在では200万人を超える日系人がブラジルに住んでいると試算されています。 このように、日系人といえば移住先において日本人と外国人の間にできた子どもで、日本国籍ではなく外国の国籍を取得した人々を指すことが一般的です。 2. 日系人の特徴 日系人にもさまざまなタイプがいます。たとえば、父親か母親が日本人の場合は日本とのつながりも強く、日本の文化に精通していたり、日本語を流ちょうに話せたりすることが多いです。 その一方で、祖父母や曾祖父母が日本人の場合、日本人の血は受け継いでいるけれども、日本とはほとんど関係なく過ごしていることも多々あります。その場合、日系人だからといって日本語が堪能に話せるわけではありません。 たとえば筆者の知り合いは、祖父が日本人であるため、日本語名も持っており、必要に応じて使い分けています。しかし、日本には行ったことがなく、日本語もいくつかの単語を知っている程度です。このように、日系人の経歴や背景、特徴などはさまざまであることを覚えておくとよいでしょう。 3. 日系人の在留資格 日系人は多くの場合、外国の国籍を所有しているため、日本に居住するには在留資格が必要です。外国人が日本で働く場合には就労資格を得ることが一般的ですが、日系人またはその配偶者であれば就労制限のない「定住者」の資格を得られる可能性があります。 もちろん日系人が就労資格を申請することも可能ですが、就労資格では従事できる業務に制限がある一方で、「定住者」には制限がなく自由に仕事を選べます。 もしご自身または配偶者が日本国籍にルーツを持つ場合は、該当する在留資格をリストアップし、必要書類やそれぞれの要件を確認した上で、申請する在留資格を決定するのがよいでしょう。 4. 日系人を雇う際のポイント 最後に日系人を雇う際のポイントについて紹介します。まず、日系人の中には「日系人」という言葉を嫌う人もいます。日系人という分類で関わるのではなく、あくまでも「尊重すべき一個人」として関わるようにしましょう。 また、日系人は上記でも紹介したように、さまざまな背景を持ちます。中には戦争中に外国に住んでいたため、地元住民から迫害を受け、非常に苦しい生活を送っていた日系人もいます。それらの背景を知らずに関わると、会話のふとした際に相手を傷つけてしまうことも起こりえます。 日系人だから日本文化に精通している、日本語が上手に話せるはずだという決めつけもよくありません。日本語能力が高い外国人を採用したい場合は、日系人という基準で選ぶのではなく、その個人がどのような能力を持っているかという視点で選ぶことが大切です。 5. おわりに 本記事では、日系人とは何かを説明するとともに、日系人の在留資格や日系人を雇う際のポイントなどを紹介しました。日系人の雇用やビザ申請に関して何かお困りのことがございましたら、日系人の雇用に対応している弊社までお気軽にお問い合わせください。
- [外国人が日本に滞在するための在留資格(ビザ)の種類と取得手続きの論点とは](https://shiodome.co.jp/column/7868/) - 外国人が日本に滞在するためには、出入国管理及び難民認定法(入管法)が定める在留資格を有することが必要です。また、在留資格には、永住者を除き、在留期間が付与されています。外国人は、在留資格・在留期間の範囲内で日本に滞在できます。つまり、在留資格を持たずに滞在している場合や、在留期間を経過して滞在している場合は、不法な滞在となり、刑罰や強制退去の対象になります。 外国人が適法に日本に滞在できるように、当ページでは、在留資格の種類についてご紹介致します。 1. 在留資格の種類 入管法では大きく分けて29種類の在留資格を定めています(2025年12月現在の「在留資格一覧表」はこちら:在留資格一覧表 | 出入国在留管理庁)。先に述べたとおり外国人は、在留資格の範囲内で日本に滞在できます。日本でどんな活動をするのか、「日本で働く」のか、「日本で学ぶ」のか等、その活動内容に該当する在留資格を得る必要があります。 2. 在留資格の分類 29種類の在留資格を「就労(働いて収入や報酬を得ること)ができるか、できないか」という観点で分類すると、次のとおりになります。 (1)業務限定で就労可能な在留資格 19種類 外交、公用、教授、芸術、宗教、報道、高度専門職、経営・管理、法律・会計業務、医療、研究、教育、技術・人文知識・国際業務、企業内転勤、介護、興行、技能、特定技能、技能実習 これらは一定範囲に限って就労できる在留資格です。たとえば、翻訳・通訳業務を行う「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を有する外国人は、報酬を得て飲食店での調理業務を行うことはできません。 (2)制限なく就労可能な在留資格 4種類 永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者 これらは就労できる範囲に制限がない在留資格です。よく目にするのは「永住者」ですが、原則として10年間の在留が要件となっているため、取得するには非常に高いハードルがあります。また「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」は、血縁や婚姻関係によるものですので、誰もが取得できる資格ではありません。 (3)就労不能な在留資格 5種類 文化活動、短期滞在、留学、研修、家族滞在 これらは就労できない在留資格です。ただし、「留学」や「家族滞在」の在留資格を有する外国人が、別途、資格外活動の許可を受けることで、1週について28時間以内の就労が可能になります。また、就労とは意味合いが異なりますが、「短期滞在」の在留資格を有する外国人は、日本国外で行われる主たる業務に関連して、従たる業務に従事する活動を短期間日本で行う場合など一定の事項に該当した場合、商用目的での在留が可能です。商談や会議・会合への参加などがこれに該当します。 (4)例外ケース 1種類 特定活動 「特定活動」の在留資格を有する外国人が就労できるか、できないかは、法務大臣が指定する活動内容によって決まります。たとえば、インターンシップの活動を行う外国人学生が「特定活動」の在留資格を有する場合は、インターンシップ先となる受入機関で就労することができます。 3. 在留資格を得るための手続きについて 在留資格を得るためには所定の手続きで申請を行う必要があります。大きく分けて下表のとおりに分類できます。 (※)「短期滞在」の在留資格とは、査証(ビザ)を必要としない(パスポートのみで入国可能)措置を実施している国のことです。本記事執筆時点では68の国・地域が該当します。なお、新型コロナウイルス感染症に対する水際対策のため、米国、カナダ等の9か国を除いて、査証免除措置が当分の間停止されています。 在留資格を得るための手続きは以下となります。 A日本の空港等で上陸審査を受け、パスポートに許可の証印を受ける→「短期滞在」の在留資格を取得 B在外日本大使館・領事館に対して、短期滞在査証の発給を申請する→査証を受けたパスポートを提示して、日本の空港等で上陸審査を受け、パスポートに許可の証印を受ける→「短期滞在」の在留資格を取得 C出入国在留管理庁へ在留資格認定証明書の交付申請をする(※)在外日本大使館・領事館に対して、査証発給を申請する→査証を受けたパスポートを提示して、日本の空港等で上陸審査を受け、パスポートに許可の証印を受ける→「短期滞在」の在留資格を取得 (※)在留資格認定証明書の交付を受けずに、外国人が直接、在外日本大使館等に対して査証の発給を申請する方法もありますが、在留資格認定証明書の交付を受けた後の査証発給申請とは違い多数の資料を提出することになるうえ、処理に長期間(数か月)を要することになるため一般的には行われません。一方、Cの方法であれば、査証の発給が受けやすくなります。 たとえば、外国人が日本の会社で就労することになった場合は、上表のCに該当しますので、就労予定先の会社を通じて出入国在留管理庁へ在留資格認定証明書の交付申請をし、当該証明書が交付された後に、査証発給を受けて入国という上記の流れが一般的です。なお、在留資格認定証明書の交付申請に係る標準処理期間は1~3か月です。 在留資格の取得に関し、より詳しく知りたい方は、以下のページもご覧ください。 入管法第22条の2の「在留資格の取得」とは? 4. おわりに 本記事では、外国人が日本に滞在するための在留資格の種類について紹介しました。まずは日本に滞在するための目的を明確化し、それに必要な手続きをすることが必要です。 もし日本人の在留資格に関してお困りでしたら、弊社までお気軽にお問い合わせください。経験豊富な弊社スタッフが対応させていただきます。
- [在留資格に関する「届出」と「申請」の違いとオンラインシステムとは](https://shiodome.co.jp/column/7898/) - 在留資格に関わる方であれば、在留資格の「届出」と「申請」の違いについて気になっているかもしれません。本記事では、届出と申請が必要なケースについて詳しく説明するとともに、オンラインで届出と申請が可能な「出入国在留管理庁電子届出システム」と「在留申請オンラインシステム」の詳細について紹介します。 1. 在留資格に関する「届出」と「申請」について 在留資格関連の手続きには、大きく分けて「届出」と「申請」があります。「申請」は、入管で審査が行われた後、結果の通知が届きます。それに対し「届出」には審査はなく、提出して手続き完了です。申請は入管窓口での申請の他に一部の申請を除きオンラインでの申請が認められておりますが、届出は入管窓口の他、郵送やオンラインでも手続きが可能です。 (1)届出 届出内容に対して、入管での審査はありません。届出によって手続きが完了します。届出を行う代表的な事例は次のとおりです。 (2)申請 申請内容に対して、入管は審査を行い、許可・不許可を判断します。申請を行う代表的な事例は、現在の在留資格から別の在留資格に変更する「在留資格変更許可申請」や、現在の在留期間を更新する「在留期間更新許可申請」、新たに外国人を日本に呼び寄せるために在留資格認定証明書を取得する「在留資格認定証明書交付申請」などです。 2. 出入国在留管理庁電子届出システムについて 出入国在留管理庁電子届出システムとは、上記で紹介した在留資格の「届出」を、オンラインで行えるようにしたものです。従来は窓口に持参するか郵送により届出をしていましたが、このシステムを利用することでオンラインでの届出が可能になりました。 1)利用者 届出をする外国人本人 2)利用方法 外国人が自ら利用者情報の登録をすることで、利用できるようになります。 3)注意点 このシステムを使って届出を行えるのは、原則として外国人本人に限られます。届出を代理人に依頼する場合には、従来の方法で行うことになります。 3. 在留申請オンラインシステムについて 在留申請オンラインシステムは、上記で紹介した在留資格の「申請」をオンラインで行えるようにしたものです。従来は申請待ちで3時間以上、入管の窓口で待機するということも全く珍しくありませんでしたが、このシステムを利用すれば窓口に出向く必要がなくなります。 先に紹介した在留資格変更許可申請、在留期間更新許可申請、在留資格認定証明書交付申請はいずれもこのシステムで申請できます。ただし、「短期滞在」「外交」「公用」といった一部の在留資格はシステムの対象外です。 1)利用者 このシステムは外国人本人が利用できることに加え、外国人を雇用する会社である所属機関の職員の方(申請等取次者としての承認を受けている又は、承認要件を満たしている必要があります。)やその会社から依頼を受けた申請取次行政書士等が利用できるシステムです。 2)利用方法 利用するには事前の利用申出と入管からの承認が必要になります。利用申出から承認を得るまで1~2週間程度かかります。 3)注意点 在留期限の最終日(在留期間満了日の当日)に在留申請オンラインシステムで申請することはできません。 4)メリット ・地方出入国在留管理局の窓口に出向く必要はありません。 ・自宅やオフィスから、24時間、365日申請可能です。 ・システムの利用料金はかかりません。 ・在留カードを郵送でも受領できます。 4. おわりに 本記事では、在留資格の「届出」と「申請」の違いを詳しく説明するとともに、待ち時間なく手続きが完了できるオンラインシステムについて紹介しました。在留資格の届出や申請については、最新のやり方を知っていれば短時間で終わせられる一方で、知らなければ数時間待ち続けることにもなります。 もし在留資格をはじめとした、外国人雇用等に関しお困りのことがございましたら、トータルサポートを提供している弊社まで、お気軽にお問い合わせください。
- [在留資格「技術・人文知識・国際業務」の必要要件や申請の論点](https://shiodome.co.jp/column/7884/) - 日本に滞在するための在留資格にはさまざまなものがありますが、日本で就労している外国人が取得している2番目に多い在留資格が「技術・人文知識・国際業務」です。本記事では在留資格「技術・人文知識・国際業務」の詳細について詳しく説明するとともに、申請要件や一般的な必要書類についても紹介いたします。 1. 「技術・人文知識・国際業務」とは? 「技術・人文知識・国際業務」とは、出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」)で規定されている29種類の在留資格の一つです。 この資格は、大卒等の学歴のある者または一定以上の実務経験を有する外国人が、学校で学んだ専門や実務経験に関連した一定以上の専門性を必要とする業務を行うため、または外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務に属する活動を行うために取得できる在留資格です。 2025年6月末時点で、この在留資格をもって約45万人もの外国人が日本に居住しています。「技能実習」の44万人を抜き19種類ある就労系の在留資格の中では現在最も多い在留者数となっています。 この「技術・人文知識・国際業務」という在留資格ですが、名称が長くて言いづらく、また覚えづらいこともあり、よく「技人国」(ぎじんこく)と略して呼ばれています。一度は耳にされたことがあるのではないでしょうか。 (1)「技人国」は統合された在留資格 この「技術・人文知識・国際業務」という在留資格は、もともとは「技術」と「人文知識・国際業務」という独立した在留資格でした。それが2014年6月の入管法の一部改正により、「技術・人文知識・国際業務」とういう在留資格に統合され、翌年の2015年4月に施行され今に至っています。在留期間は、5年、3年、1年、3ヶ月の4種類あります。 入管のホームページには、改正入管法の施行にあたり以下のような通知が掲載されています。 「専門的・技術的分野における外国人の受入れに関する企業等のニーズに柔軟に対応するため、業務に必要な知識の区分(理系・文系)に基づく「技術」と「人文知識・国際業務」の区分をなくし、包括的な在留資格「技術・人文知識・国際業務」へと一本化します。 これだけでは法改正の経緯が良くわかりませんので、改正前の「技術」と「人文知識・国際業務」の在留資格について、どのような取り扱いがなされていたのか、その一部を以下のとおり紹介します。 (2)業務内容が理系か文系か 日本人が理系の大学を卒業して総合職のような事務系の業務に就く場合や、その反対に文系の大学を卒業してシステムエンジニアとしての業務に就く場合、何ら支障なく就職できます。これは今も昔も変わりはありません。 ところが、留学生が上記のようなケースで就職のために「留学」から「技術」や「人文知識」の在留資格へ変更申請をしても許可されなかったのです。 入管では、外国人が従事しようとする業務に必要な技術又は知識について、理系か文系に明確に区分していました。事務系の業務であれば文系の大学を卒業していること、また、情報処理関係の業務であれば理系の大学を卒業していることを要件としていたため、一部の留学生は「技術」又は「人文知識・国際業務」の在留資格を取得することができませんでした。 その後、一部の運用が緩和され、文系の大学卒業者であっても情報処理関係の業務に従事する場合は「人文知識・国際業務」の在留資格をもって許可するようになりました。 しかしながら、依然として一部の留学生が在留資格を取得できずに就職できない状況が続いていたため留学生を社員として受け入れたい企業等からの要望もあり法改正がなされました。 (3)在留資格の該当範囲 法改正により統合された「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で行うことのできる活動は、以下のとおり規定されました。 理系と文系が統合されたことが分かります。 これにより、申請者は従事しようとする業務が「技術」又は「人文知識・国際業務」に該当する業務であるか迷うことなく、希望する在留資格を「技術・人文知識・国際業務」として申請することが可能となりました。 2. 在留資格「技術・人文知識・国際業務」に該当する業務と要件について 「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で行うことのできる活動については前述1のとおりですが、この在留資格に該当する業務として概ね以下のような業務であれば認められています。 「技術・人文知識・国際業務」に該当する活動として認められる業務の典型的事例については、法務省入国管理局(当時)が2008年3月(2015年3月改訂)に「『技術・人文知識・国際業務』の在留資格の明確化等について」という文書で公表していますのでそちらをご参照下さい。 在留資格への該当性が認められれば、次の要件としては、法務省の基準省令に適合する必要があります。基準省令で規定している基本的事項は以下のとおりです。 尚、従事しようとする業務内容が「技術・人文知識」と「国際業務」のどちらに該当するかにより、要件が異なりますので、注意が必要です。 【基準省令】 本邦の公私の機関との契約に基づいて行う自然科学、人文科学、外国の文化に基盤を有する思考や感受性を必要とする業務に従事する活動 (「契約」には、雇用のほか、委任、委託、嘱託等も含まれますが、継続的なものでなければいけません。) (1)「技術・人文知識」に該当する場合の要件 以下の業務内容に加え、学歴または実務経験の要件いずれかを満たしている必要があります。 ① 業務内容 自然科学または人文科学の分野に属する知識を必要とする業務に従事する活動 ② 学歴要件(次のいずれかに該当) 大学卒業者 業務に関連する科目を専攻し卒業している者であること。大学卒業者には、大学のほか、日本または海外の短期大学、大学院、大学の付属の研究所を卒業している者が含まれます。*ただし、情報処理の業務に従事しようとする場合で、法務大臣告示で定める情報処理技術に関する資格者は学歴要件を満たす必要はありません。 専修学校修了者 業務に関連する科目を専攻して日本の専門課程を修了し、「専門士」または「高度専門士」の称号を付与されている者であること。 ③ 実務経験 業務について10年以上の実務経験を有し必要な知識を修得している者であること。*大学、高等専門学校等において、業務に関連する科目を専攻していた場合は、その期間は実務経験に含めることができます。 単純労働や肉体労働ではなく、自然科学または人文科学分野に属する専門性や知識、技術を必要とする業務に従事する必要があります。そのため、実際に仕事をする場所が工場内や作業場であるような場合は、入管から単純労働と疑われないよう一定の知識や技術を必要とする業務内容であることを立証する必要があります。 規模の大きい会社では、幹部候補生として採用した者を会社の業務を幅広く経験させるために、入社当初に研修として現場での単純労働をさせることもあると思います。このような場合は、キャリアプランと研修計画を作成し、現場での業務は入社直後の短期間に限られること、今後のキャリア形成のためにそのような業務を経験する必要があることを書面で説明することが求められます。 規模の小さい会社の場合、その説明に説得力を持たせることは難しいですが、不可能ではありませんので丁寧な説明を心がけるようにしてください。 この点については、法務省入国管理局 (当時)が2015年12月に策定した文書「ホテル・旅館等において外国人が就労する場合の在留資格の明確化について」を合わせてご参照下さい。 (2)「国際業務」に該当する場合の要件 以下の業務内容及び実務経験のいずれにも該当していることが必要です。翻訳、通訳、語学の指導に係る業務に従事する者の場合は、実務経験要件を満たしていない場合でも、業務内容及び学歴要件いずれも満たしていれば対象となります。 ① 業務内容 外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務に該当すること。具体的には、翻訳、通訳、語学の指導、広報、宣伝又は海外取引業務、服飾若しくは室内装飾に係るデザイン、商品開発その他これらに類似する業務であること。 ② 実務経験 国際業務に関連する実務経験が3年以上あること。 ③ 学歴要件大学卒業者であること。大学卒業者には、大学のほか、日本または海外の短期大学、大学院、大学の付属の研究所を卒業している者が含まれます。 (3)報酬(給与)に係る要件 「技術」「人文知識」「国際業務」いずれの分野においても、日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受ける必要があります。
- [在留資格における「身元保証人」の概要と身元保証人の法的責任とは](https://shiodome.co.jp/column/7899/) - 在留諸申請の提出書類として「身元保証書」が求められることがありますが、そもそも身元保証人とは何なのでしょうか?本記事では、在留資格における身元保証人の役割や必要となるケース、身元保証人に課せられる責任などについて詳しく説明いたします。 1. 在留資格における身元保証人とは 在留資格における身元保証人は、日本に滞在する外国人について、以下のことを法務大臣に約束します。 (1)滞在費 外国人が日本での滞在費を確保できなくなった場合に、代わりに負担する。 (2)帰国旅費 外国人が帰国時に自分で渡航費用を払えない場合に、(1)の滞在費同様、代わりに負担する。 (3)法令遵守 外国人が日本の法令に違反をしないよう指導する。 2. 身元保証人を求められるケース 主に「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」といった、血縁や婚姻関係をベースとする在留資格を取得したり、在留期間を更新したりする場合に求められます。また永住許可申請の際にも身元保証人を求められます。その際の身元保証人は、本人が本邦に在留中、本邦の法令を遵守し、公的義務を適正に履行するため、必要な支援を行うことを保証することになります。 3. 身元保証人の責任 身元保証人は項番1の約束について、法的な責任を求められることはありません。たとえば、滞在費や帰国旅費について、強制的に負担を強いられることはありませんし、外国人が犯罪行為をした場合も、指導不足を理由に罰せられるということはありません。ただし、約束を履行しないことで、身元保証人としての信用を失うことにはなるため、他の外国人の身元保証人を引き受けようとすると不適格と判断される可能性があります。 4. おわりに 本記事では、在留資格における「身元保証人」とはどういうものかについて紹介しました。法的な責任を求められることはないとしても、引き受けた以上は責任をもって対応するのがよいでしょう。 弊社では、在留資格や関連する事項に関するトータルサポートを実施しております。もし在留資格関連でお困りのことがございましたら、お気軽にお問い合わせください。
- [日本における「ビザ」の概要と申請・発給基準・発給拒否の論点](https://shiodome.co.jp/column/7900/) - 日本に外国人を呼び寄せる、あるいは日本で活動を継続する場合、避けて通れないのが「ビザ(査証)」と「在留資格」の手続きです。 一般的にはこれらを総称して「ビザ」と呼ぶことが多いですが、厳密には法的な役割が異なります。また、申請を行えば必ず認められるというものではなく、国が定める一定の「発給基準」をクリアしていることが求められます。 本記事では、日本におけるビザ制度の全体像と、申請時の審査ポイント、そしてどのような場合に「発給拒否」となるのか、その論点について詳しく解説します。 1. 日本における「ビザ」と「在留資格」の違い 実務上、混同されやすい言葉ですが、まずはその定義を明確にする必要があります。 査証(ビザ): 外務省(在外公館)が発行する、いわば「日本への入国を推薦する証明書」です。パスポートに貼付されるシールのような形式が一般的です。 在留資格(ステータス): 法務省(出入国在留管理庁)が管轄する、日本に上陸し滞在するための「資格」です。日本での活動内容(就労、留学、結婚生活など)に応じて約30種類存在します。 日本に入国する際は、「有効な査証(ビザ)」を持って空港等で上陸審査を受け、その結果として「在留資格」が付与されるという流れが原則となります。 2. ビザ申請の標準的なプロセス 海外にいる外国人を呼び寄せる場合、実務上は「在留資格認定証明書(COE)」を利用するルートが一般的です。 在留資格認定証明書(COE)の申請: 日本の代理人(企業や親族)が、管轄の出入国在留管理庁へ申請します。 査証(ビザ)の申請: COEが交付された後、本人が現地の日本大使館・領事館へ提出します。 審査と発給: 外務省側で最終的な審査が行われ、問題がなければパスポートに査証が貼付されます。 3. ビザの発給基準(外務省の審査基準) 外務省は、原則として以下のすべての基準を満たし、かつビザの発給が適当であると判断される場合に発給を行うとしています。 原則的な発給基準 申請人が有効な旅券(パスポート)を所持しており、かつ日本への再入国の権利・意志が確保されていること。 提出書類が真正なものであること。 日本で行おうとする活動、または申請人の身分・地位が、入管法の「在留資格」のいずれかに該当し、かつ「上陸許可基準」に適合していること。 申請人が、入管法第5条第1項(上陸拒否事由)に該当しないこと。 4. ビザが発給拒否となる主な論点 申請を行っても、残念ながらビザが発給されない(拒否される)ケースが存在します。主な論点として考えられるのは以下の項目です。 1. 虚偽の申告や偽造書類の提出 過去の経歴や犯罪歴、あるいは日本での活動内容について、事実と異なる記載がある場合です。書類に不備があるだけでなく、意図的な隠蔽や偽造があると判断された場合、深刻な不利益を被る可能性があります。 2. 上陸拒否事由への該当 入管法第5条には、日本への入国を認めない事由が定められています。 1年以上の懲役・禁錮に処せられたことがある(薬物犯罪は期間を問わず)。 過去に強制送還(退去強制)され、上陸拒否期間中である。 感染症や精神障害等により、公衆衛生上のリスクがあると判断される場合。 3. 日本での滞在費用の支弁能力 日本滞在中の生活費や帰国費用を十分に確保しているかが問われます。特に親族訪問や短期滞在、あるいは就労ビザの初期段階において、経済的な基盤が不安定とみなされると、不許可のリスクが高まります。 4. 招へい理由・活動内容の不透明性 なぜ日本に来る必要があるのか、どのような活動をするのかという点について、合理的な説明がなされていない場合です。就労ビザであれば「職務内容の必要性」、親族訪問であれば「訪問の緊急性や必要性」などが厳格に審査されます。 5. 留意すべきポイント:拒否後の再申請制限 ビザの発給が拒否された場合、注意すべき重要なルールがあります。 原則として、拒否の日から6ヶ月間は、同一の目的での再申請は受理されません。 これは、短期間に何度も同じ内容で申請することを防ぐためのルールです。一度拒否されると、半年間の計画遅延が確定してしまうため、最初の申請時に万全を期すことが極めて重要です。また、拒否の具体的な理由は開示されないのが一般的であり、専門的な知見に基づいた自己分析が求められます。 5. まとめ 日本におけるビザの申請は、形式的な書類提出にとどまらず、法的な基準への適合性をいかに立証するかが鍵となります。 査証(ビザ)と在留資格の役割の違いを理解すること。 外務省の発給基準と、入管法が定める上陸許可基準の両方を満たすこと。 虚偽のない、真正な書類による立証を徹底すること。 これらの要素を一つひとつ精査することで、発給拒否のリスクを最小限に抑えることが可能となります。制度や基準は国際情勢や政策転換により変更されることがあるため、常に最新の公式情報を確認しながら手続きを進めることが推奨されます。
- [在留資格「定住者」に関する定住者の要件や申請方法の論点とは](https://shiodome.co.jp/column/7838/) - 在留資格「定住者」は、法務大臣が特別な理由を考慮して一定の在留期間を指定して居住を認める資格です。 他の在留資格(就労ビザや「日本人の配偶者等」など)に該当しない場合でも、人道上の理由や特別な事情がある場合に許可される可能性があるため、非常に重要な在留資格といえます。しかし、その対象範囲は多岐にわたり、要件も複雑です。 本記事では、在留資格「定住者」の基本的な分類である「告示定住」と「告示外定住」の違い、および主要な要件や申請時の論点について解説します。 1. 在留資格「定住者」の2つの分類 「定住者」の在留資格は、大きく分けて「告示定住」と「告示外定住(非告示定住)」の2種類に分類されます。申請を検討する際、対象者がどちらに該当するかを把握することが第一歩となります。 ① 告示定住(法務省の告示に定められているもの) 法務省があらかじめ「定住者告示」として定めている類型です。要件を満たしていることが立証できれば、許可される可能性が高い類型といえます。 主な対象は以下の通りです。 日系人(日系3世など)とその配偶者: 日本人の孫にあたる方などが該当します。 「日本人の配偶者等」などの実子(連れ子): 日本人と結婚した外国人の連れ子(未婚・未成年)などが該当します。 定住者の配偶者: 日系人などの「定住者」ビザを持つ方と結婚した配偶者などが該当します。 ② 告示外定住(告示にはないが、特別な事情で認められるもの) 告示には記載されていないものの、個別の事情により人道上の配慮が必要と認められるケースです。審査は法務大臣の広範な裁量に委ねられるため、難易度は比較的高くなる傾向にあります。 代表的なケースは以下の通りです。 日本人や永住者と離婚・死別した外国人: 婚姻期間が長く、日本での定着性が認められる場合など。 日本人との間の実子を監護・養育する外国人親: 離婚後も日本で実子を育てる場合など。 2. 「定住者」取得における主要な要件と論点 「定住者」の許可を得るためには、対象となる身分関係(日系人であること、実子であること等)の証明に加え、日本で安定して生活できる基盤があることが重要視されます。 素行善良要件(素行が不良でないこと) 過去に日本の法令に違反していないことや、社会生活においてトラブルを起こしていないことが求められます。特に、懲役や禁錮などの刑を受けた経歴がある場合や、入管法違反歴がある場合は、審査において消極的な要素となる可能性があります。 独立生計要件(生活を維持する能力) 日本において、公的負担(生活保護など)にならずに生活できる資産や収入があることが求められます。 申請人本人に十分な収入がない場合でも、世帯単位で生計が維持できていれば認められる場合があります(例:夫が扶養する場合など)。申請時には、課税証明書や納税証明書、在職証明書などで経済基盤を立証する必要があります。 身元保証人の確保 原則として、日本に居住する身元保証人が必要となります。通常は、日本人の親族、雇用主、あるいは日本在住の親族などが身元保証人となります。 3. ケース別の留意点(離婚・連れ子など) 実務上、相談が多いケースにおける特有の論点について触れます。 離婚・死別後の「定住者」への変更 日本人配偶者と離婚または死別した後、引き続き日本に住み続けたいと希望する場合、「日本人の配偶者等」から「定住者」への変更申請を検討することになります。 この場合、単に離婚したという事実だけでなく、以下の点が総合的に審査される傾向にあります。 婚姻期間: 一般的に3年以上の正常な婚姻生活が継続していたか。 日本への定着性: 日本での生活歴が長く、生活基盤が確立しているか。 生計能力: 離婚後も自活できる収入があるか。 連れ子(「日本人の配偶者等」の実子)の呼び寄せ 外国人が日本人と再婚し、本国の子供(連れ子)を呼び寄せるケースです。 この場合、子供が「未婚」かつ「未成年」であることが要件となります。「未成年」の定義については、本国の成人年齢ではなく日本の法令が基準となる点に注意が必要です。また、子供を扶養する親(申請人またはその配偶者)に十分な扶養能力があるかが厳しく審査されます。 4. 申請方法と必要書類 「定住者」の申請方法は、申請人が現在どこにいるかによって異なります。 在留資格認定証明書交付申請(海外からの呼び寄せ) 日系人や配偶者、連れ子などを海外から呼び寄せる場合に行います。 告示外定住(離婚定住など)の場合は、既に日本に在留しているケースがほとんどであるため、この申請方法は主に「告示定住」のケースで利用されます 在留資格変更許可申請(国内での資格変更) 離婚や死別により「日本人の配偶者等」から変更する場合や、他の就労ビザから変更する場合に行います。特に離婚定住などの「告示外定住」では、変更申請の際に詳細な「理由書」を添付し、人道的な配慮が必要な事情を論理的に説明することが重要です。 理由書の重要性 「定住者」申請、特に告示外のケースにおいては、申請に至った経緯や日本に在留しなければならない理由を記した「理由書」の内容が審査の行方を左右することがあります。客観的な事実に基づき、入管法の趣旨に沿った主張を行うことが求められます。
- [在留資格「高度専門職1号」に関するメリットや申請時の注意点](https://shiodome.co.jp/column/7882/) - 日本政府は、専門的な知識・技術を持つ優秀な外国人材を積極的に受け入れるため、「高度人材ポイント制」を導入しています。この制度に基づき、一定の基準を満たした外国人に付与される在留資格が「高度専門職1号」です。 一般的な就労ビザ(「技術・人文知識・国際業務」等)と比較して、様々な優遇措置が設けられていることから、申請を希望する方が増加傾向にあります。 本記事では、在留資格「高度専門職1号」の概要、具体的なメリット、および申請に際して注意すべきポイントについて解説します。 1. 「高度専門職1号」とは 「高度専門職1号」は、高度な資質・能力を有する外国人材に対し、ポイント制を活用して出入国管理上の優遇措置を与える在留資格です。 活動内容は以下の3つのカテゴリー(イ・ロ・ハ)に分類され、学歴、職歴、年収、年齢などの項目ごとにポイントを計算し、合計が70点以上に達する場合に認定される可能性があります。 高度専門職1号イ(高度学術研究活動): 研究者、教育者など 高度専門職1号ロ(高度専門・技術活動): エンジニア、企業のスペシャリストなど(※最も一般的な類型です) 高度専門職1号ハ(高度経営・管理活動): 企業の経営者、役員など 2. 「高度専門職1号」を取得する主なメリット 通常の就労ビザと比較し、高度専門職1号には主に以下のような特例や優遇措置が認められています。 ① 複合的な在留活動の許容 通常、在留資格は許可された一つの活動のみを行うことができますが、高度専門職1号の場合、複数の在留資格にまたがる活動を行うことが認められる場合があります。 例えば、大学で研究活動を行いながら(1号イの活動)、自身でベンチャー企業を経営する(経営・管理の活動)といった働き方が可能となるケースがあります。 ② 在留期間「5年」の付与 法律上の最長在留期間である「5年」が一律に付与されます。更新の手間が減るだけでなく、生活基盤の安定性を示す要素ともなります。 ③ 永住許可要件の緩和 多くの申請者にとって最大のメリットとされるのが、永住権取得までの居住歴の短縮です。 通常、永住許可を受けるには原則として引き続き10年以上の在留が必要ですが、高度専門職としての活動については、以下の通り大幅に緩和されます。 70点以上を有している場合:3年以上継続して在留していること 80点以上を有している場合:1年以上継続して在留していること ④ 配偶者の就労 高度専門職の配偶者は、「教育」「技術・人文知識・国際業務」などに該当する活動を行う場合、学歴や職歴などの要件を満たしていなくても、それらの在留資格に係る活動を行うことが可能です(特定活動)。 ※ただし、あくまで就労可能な在留資格の範囲内に限られ、単純労働等は認められない点に留意が必要です。 ⑤ 一定条件下での親の帯同 原則として、就労ビザで滞在する外国人の親の帯同(呼び寄せ)は認められていません。しかし、高度専門職1号の場合、以下の条件を満たすことで、本人または配偶者の親(養親を含む)の入国・在留が認められる場合があります。 高度専門職本人または配偶者の7歳未満の子(養子を含む)を養育する場合 高度専門職本人または配偶者の妊娠中の介助などを行う場合 世帯年収が800万円以上であること 高度専門職本人と同居すること ※原則として、どちらか一方の親に限られます。 ⑥ 一定条件下での家事使用人の帯同 世帯年収が1,000万円以上あるなどの一定の要件を満たす場合、本国から家事使用人を帯同することや、日本国内で家事使用人を雇用することが認められる場合があります。 3. 申請・変更時の注意点 多くのメリットがある一方で、高度専門職1号ならではの注意点や制限も存在します。 所属機関(勤務先)に紐づく資格であること 「高度専門職1号」は、申請時に指定された所属機関(勤務先)で就労することを前提とした在留資格です。 したがって、転職をした場合は、在留期限が残っていたとしても、現在の在留資格のまま新しい会社で働くことはできません。 転職先の会社を所属機関として、改めて「在留資格変更許可申請」を行い、再度ポイント計算をして70点以上を満たしていることを証明する必要があります。 ポイントの立証責任 ポイント計算表で70点以上あったとしても、それを客観的に証明する資料(疎明資料)が提出できなければポイントとして認められません。 例えば、職歴をポイントに加算する場合、過去の勤務先からの在職証明書等が必要となりますが、本国の企業から適切な書類を取り寄せるのに時間を要するケースがあります。 年収の下限基準
- [高度専門職2号と永住者の違いとそれぞれの特徴・メリットとは](https://shiodome.co.jp/column/7870/) - 日本で就労する外国人材の方々、特に「高度専門職1号」の在留資格をお持ちの方にとって、将来的な在留ステータスの目標として「高度専門職2号」への移行か、「永住者(永住許可)」の取得か、どちらを選択すべきか悩まれるケースは少なくありません。 両者ともに「在留期限が無期限になる」という共通点がありますが、活動の範囲や家族への優遇措置などに明確な違いが存在します。 本記事では、高度専門職2号と永住者の法的な違い、それぞれのメリット・デメリット、そして自身のライフプランに合わせてどちらを選択すべきかの判断基準について解説します。 1. 高度専門職2号とは 「高度専門職2号」とは、高度専門職1号の在留資格をもって3年以上活動を行った方を対象とした在留資格です。 高度専門職1号のポイント制による優遇措置を維持・拡充しつつ、在留期間が無期限となるのが最大の特徴です。 2. 永住者とは 「永住者」とは、在留期間の制限がなく、かつ就労活動の制限も一切ない在留資格です。 原則として10年以上の在留が必要ですが、高度専門職の方が規定されたポイント を満たす場合、例外的に短期間(1年または3年)での申請が可能となる場合があります。 3. 高度専門職2号と永住者の比較ポイント 両者の違いを理解するために、特に重要となる5つのポイントを解説します。 1. 就労活動の自由度(職種の制限) 【高度専門職2号】 「高度専門職1号」で認められる活動のほか、その活動と併せて就労ビザのほぼ全ての活動を行うことが可能です。 ただし、あくまでも「高度な専門性を持つ活動」を行うことが前提となるため、単純労働(コンビニエンスストアのレジ打ちや工場のライン作業など)のみに従事することは認められないと考えられます。また、長期間(原則6ヶ月以上)にわたり高度専門職としての活動を行わない場合、在留資格取消の対象となる可能性があります。 【永住者】 活動内容に制限がありません。職種を問わず働くことが可能であり、単純労働に従事することも、あるいは就労せずに過ごすことも認められます。会社を辞めても在留資格に影響がないため、より自由度が高いといえます。 2. 親の帯同(呼び寄せ) 【高度専門職2号】 高度専門職1号と同様の優遇措置が継続されます。 一定の要件(世帯年収800万円以上、7歳未満の子の養育など)を満たす場合、本人または配偶者の親の帯同が認められる場合があります。これは高度専門職ならではの大きなメリットです。 【永住者】 原則として、親の帯同は認められません。 高度専門職から永住者へ変更した場合、それまで同居していた親の在留資格更新ができなくなり、帰国を余儀なくされるリスクがあるため、注意が必要です(※親が「特定活動(告示外)」などで個別に許可されるケースは極めて限定的です)。 3. 家事使用人の帯同 【高度専門職2号】 一定の要件(世帯年収1,000万円以上など)を満たす場合、家事使用人の帯同が認められる場合があります。 【永住者】 原則として、家事使用人の帯同は認められません。 4. 配偶者の就労 【高度専門職2号】 配偶者は「特定活動」の在留資格を得ることで、「技術・人文知識・国際業務」などの就労ビザに該当する業務(いわゆるフルタイム勤務)に就くことが可能です。この際、配偶者自身の学歴や職歴要件は問われません。また、週28時間以内という制限もありません。 【永住者】 配偶者が「永住者の配偶者等」の在留資格を取得した場合、就労制限はなくなります。単純労働を含め、どのような仕事に就くことも可能です。 ただし、配偶者自身も永住申請を行い許可された場合は「永住者」となり、同様に制限はありません。 5. 社会的信用(住宅ローンなど) 【高度専門職2号】 在留期限が無期限であるため、一般的な就労ビザに比べれば信用度は高いとされますが、金融機関によっては永住者を優遇する傾向があります。 【永住者】 日本の在留資格の中で最も信用度が高いとされます。多くの金融機関で、住宅ローンの審査において「永住者であること」を条件、あるいは有利な条件として設定しているケースが見受けられます。 4. 違いのまとめ(比較表) 5. どちらを選択すべきか?判断の目安 それぞれの特徴を踏まえると、ご自身の状況に合わせて以下のような選択が推奨されます。 6.
- [在留資格「技能」に適用される9つの職種や申請時のポイントとは](https://shiodome.co.jp/column/7951/) - 日本国内で、外国特有の料理を提供するレストランや、特殊な加工技術を要する工場などで外国人を雇用する場合、検討されるのが在留資格「技能」です。 しかし、「技能」は数ある就労ビザの中でも、特に「実務経験」の証明が厳格に求められる在留資格の一つといわれています。また、近年新設された「特定技能」と名称が似ているため、混同されるケースも少なくありません。 本記事では、在留資格「技能」に該当する9つの具体的な職種分野と、申請の許可・不許可を分ける重要なポイントについて解説します。 1. 在留資格「技能」とは 在留資格「技能」とは、「産業上の特殊な分野に属する熟練した技能を要する業務」に従事する外国人のための在留資格です。 簡単に言えば、「日本人の代替が困難な、外国特有のスキルを持つ職人や専門家」を受け入れるための資格といえます。そのため、単なる労働力不足を補うための単純労働や、未経験者を受け入れることは原則として認められません。 2.「特定技能」との違い よく似た名称に「特定技能」がありますが、これは人手不足の解消を主目的とした別の制度です。「技能」ビザは、あくまでも高度な熟練した技術(プロフェッショナル)に対して付与される点が大きな違いです。 在留資格「技能」に該当する9つの職種分野 出入国管理及び難民認定法(入管法)の基準省令では、在留資格「技能」に該当する活動として、以下の9つの分野が定められています。 もっとも代表的なものは「調理師」ですが、それ以外にも多岐にわたる専門分野が含まれます。 1. 調理師(外国料理の調理) 「技能」ビザの中で最も申請件数が多い分野です。中華料理、フランス料理、インド料理、タイ料理など、外国等の独特の料理を調理する技能が対象です。 ※日本料理や、日本独自に発展したラーメン、カレーライスなどは、原則として対象外となる傾向にあります。 2. 建築技術者(外国特有の建築・土木) 日本にはない、外国特有の様式による建築や土木工事を行う技能です。 (例:ゴシック建築、中国式建築の修復や内装工事など) 3. 外国製品の製造・修理 日本国内では一般的ではない、外国特有の製品を製造したり修理したりする技能です。 (例:ヨーロッパ特有のガラス製品の製造、ペルシャ絨毯の修理など) 4. 宝石・貴金属・毛皮の加工 宝石、貴金属、毛皮の加工を行う熟練した技能です。一般的な加工技術ではなく、高度かつ専門的な技術が求められます。 5. 動物の調教 動物の調教を行う技能です。 (例:ショービジネスのための動物調教、競馬の厩務員など) 6. 石油探査・地熱開発等の掘削 海底鉱物探査のための海底掘削や、地熱開発のための掘削を行う技能です。高度なボーリング技術などが該当します。 7. パイロット(航空機の操縦) 航空機の操縦を行う技能です。定期運送用操縦士などの資格を持ち、一定の飛行時間を有する場合などが該当します。 8. スポーツ指導者 スポーツの指導を行う技能です。 (例:オリンピック出場経験のあるコーチ、武術の指導者など) ※プロスポーツ選手として試合に出場する場合は「興行」ビザになるため、区別が必要です。 9. ソムリエ(ワイン鑑定等) ワインの鑑定や評価、提供を行う技能です。国際的なソムリエコンクールでの入賞歴など、高い実績が求められます。 3. 申請における最大の壁「実務経験年数」の要件 在留資格「技能」の許可を得る上で、最もハードルが高いとされるのが「実務経験年数」の立証です。 職種ごとに求められる経験年数は異なりますが、原則として「10年以上の実務経験」が必要とされるケースが大半です。 4. 職種ごとの必要経験年数(目安) 5. 教育機関での期間も「経験年数」に含まれる 上記の「10年」には、外国の教育機関でその専攻科目を学んだ期間を含めることが可能です。 例えば、本国の調理師専門学校で2年間学び、その後レストランで8年間勤務していれば、合計10年となり要件を満たす可能性があります。
- [中長期間に渡り日本に在留する外国人の住居地の届出手続きの論点](https://shiodome.co.jp/column/7842/) - 日本に中長期間在留する外国人(中長期在留者)には、出入国管理及び難民認定法(入管法)に基づき、自身の住居地を法務大臣(市区町村の窓口を経由)に届け出る義務が課せられています。 この手続きは、単なる行政上の事務手続きにとどまらず、在留資格の維持や更新において極めて重要な意味を持ちます。本記事では、住居地の届出に関する具体的な手続きの流れ、期限、および実務上の論点について解説します。 1. 住居地の届出の対象者と時期 中長期在留者 <中長期在留者の範囲>入管法上の在留資格をもって我が国に中長期間在留する外国人で,次の①~⑤のいずれにも該当しない人 ① 「3月」以下の在留期間が決定された人 ② 「短期滞在」の在留資格が決定された人 ③ 「外交」又は「公用」の在留資格が決定された人 ④ ①から③の外国人に準じるものとして法務省令で定める人 ⑤ 特別永住者 新規入国時の届出(住居地を定めたとき) 新たに中長期在留者として日本に入国し、住居地を定めたときは、その住居地を定めた日から14日以内に届出を行う必要があります。 対象者: 新規上陸後の中長期在留者 提出先: 住居地の市区町村の窓口 必要書類: 届出書及び在留カード又は後日在留カードを交付する旨の記載を受けた旅券の提示 転居時の届出(住居地を変更したとき) 既に住居地を届け出ている者が、転居により住居地を変更した場合も、同様に転居の日から14日以内に新住所地の市区町村窓口へ届け出る必要があります。 2. 実務上の重要な論点と留意点 住居地の届出においては、期限の遵守だけでなく、以下の点について正しく理解しておく必要があります。 14日以内の期限と在留資格への影響 住居地の届出を怠った場合、あるいは虚偽の届出をした場合には、罰則が科される可能性があるだけでなく、在留資格の取消事由に該当するおそれがあります。 在留資格取消の可能性: 正当な理由なく、新規入国から90日以内に住居地の届出を行わない場合、または転居後90日以内に新住居地の届出を行わない場合、在留資格が取り消される対象となり得ます。 更新・変更審査への影響: 次回の在留期間更新許可申請や在留資格変更許可申請において、居住実態と届出状況の整合性が確認されます。届出が遅延している場合、法令遵守の姿勢が問われ、審査にマイナスの影響を与える可能性が否定できません。 「住居地」として認められる場所 住居地として届け出る場所は、生活の本拠である必要があります。 短期滞在用施設の扱い: ホテルやウィークリーマンションなどは、一時的な滞在先とみなされ、生活の本拠としての住居地届出が受理されない場合があります。 実態の伴わない住所: 実際に居住していない知人宅や会社所在地を住所として届け出ることは、虚偽届出とみなされるリスクがあるため、避けるべきであると考えられます。 3. 手続きの簡素化(ワンストップ化) 現在、住居地の届出は住民基本台帳法に基づく「転入届・転居届」と一体化されています。 通常、市区町村の窓口で住民票の転入・転居手続きを行う際に在留カードを提示することで、入管法上の住居地届出も同時に完了したとみなされます。 4. 届出が遅延した場合の対応 万が一、14日の期限を過ぎてしまった場合でも、速やかに届出を行うことが重要です。 遅延理由書の提出: 市区町村の窓口や入管当局から、遅延した理由の説明を求められることがあります。病気や災害など「正当な理由」がある場合は、それを証明する資料を準備することが望ましいです。 正当な理由の判断: 仕事が多忙であった、あるいは制度を知らなかったといった理由は、一般的に「正当な理由」としては認められにくい傾向にあります。 5. 在留カードを所持しない場合の特例 入国時に空港等で在留カードが交付されず、パスポートに「在留カードを後日交付する」旨の記載がなされた場合でも、住居地の届出義務は発生します。
- [在留資格「短期滞在」の更新及び活動可能内容等に係る留意点](https://shiodome.co.jp/column/7553/) - 日本を訪れる外国人の多くが利用する在留資格が「短期滞在」です。観光や知人訪問、短期の商用など、その利用目的は多岐にわたります。 しかし、その手軽さゆえに、活動範囲の制限や在留期間の更新(延長)について誤った認識を持たれているケースも少なくありません。「短期滞在」は他の就労資格等とは異なり、更新や変更に関して原則として厳格な運用がなされています。 本記事では、入管法(出入国管理及び難民認定法)および実務上の運用に基づき、「短期滞在」で認められる活動範囲と、期間更新の可否に関する留意点について解説します。 1. 在留資格「短期滞在」で認められる活動範囲 「短期滞在」の在留資格で日本に滞在する際、最も注意すべき点は「収入を伴う事業を運営する活動」や「報酬を受ける活動」が禁止されていることです。 具体的にどのような活動が認められ、何が禁止されているのかを整理します。 認められる主な活動(具体例) 入管法別表第一の三には、以下の活動が掲げられています。 観光、保養: 旅行、温泉巡りなど スポーツ、競技会への参加: アマチュアとしての参加 親族・知人の訪問: 親族訪問、冠婚葬祭への参列など 見学、視察: 工場見学、展示会の視察など 短期の商用: 会議への出席、業務連絡、契約調印、市場調査、アフターサービスなど 報酬を受ける活動の禁止 「短期の商用」が含まれているため混同されやすいですが、日本国内の企業や機関から報酬を受けて業務に従事することは認められません。 例えば、日本の企業内で短期間であっても実質的な労働に従事し、その対価として給与や報酬が支払われる場合は、「技術・人文知識・国際業務」や「企業内転勤」など、適切な就労資格を取得する必要があります。 ただし、業として行うものではない講演に対する謝金や、滞在に伴う実費弁償(交通費や宿泊費など)を受け取ることは、許容される場合があります。 2. 在留期間の更新(延長)に関する原則と例外 「短期滞在」の在留期間は、15日、30日、または90日と定められています。期間満了後も引き続き日本に滞在したい場合、在留期間更新許可申請を検討することになりますが、これには高いハードルがあります。 原則:更新は認められない 法務省のガイドラインにおいて、「短期滞在」の在留期間更新は、「人道上の真にやむを得ない事情」または「これに相当する特別の事情」がある場合に限り許可されるとされています。 単に「もっと観光したい」「商談が少し長引いている」といった理由だけでは、原則として更新は認められにくい傾向にあります。当初許可された期間内で目的を達成し、帰国することが前提とされているためです。 例外:許可される可能性があるケース 以下のような、本人の責めに帰すべきでない事情や人道的な理由がある場合には、例外的に更新が認められる可能性があります。 疾病・負傷: 日本滞在中に病気や怪我をし、治療のため移動(帰国)が困難である場合(医師の診断書等が必要)。 婚姻手続き: 日本人と結婚し、配偶者としての在留資格へ変更申請を行うための準備期間が必要な場合(事案によります)。 実父母の看護: 日本に在留する実父母が重篤な状態になり、緊急に看護が必要となった場合。 これらはあくまで例示であり、個別の事情や立証資料の有無によって判断が分かれる点に留意が必要です。 3. 「短期滞在」から他の在留資格への変更 日本に「短期滞在」で入国した後、そのまま就労ビザや配偶者ビザなどに切り替えたい(在留資格変更許可申請)という相談は少なくありません。 「やむを得ない特別の事情」の必要性 入管法第20条第3項において、「短期滞在」からの変更は、「やむを得ない特別の事情」がない限り認められないと規定されています。 一般的に、在留資格認定証明書(COE)の交付を受けている場合であっても、それだけでは「やむを得ない特別の事情」とはみなされない運用が基本です。原則としては、一度帰国し、査証(ビザ)を取得した上で再入国する手続きが求められます。 ただし、日本人や永住者との婚姻が成立した場合など、身分関係に基づく変更については、「やむを得ない事情」として変更申請が受理・許可されるケースも存在します。 4. まとめ 在留資格「短期滞在」は、取得が比較的容易である反面、活動内容の制限や更新・変更のハードルが高く設定されています 日本国内で報酬を得る活動はできない。 在留期間の更新は、病気等の「やむを得ない事情」がない限り原則不可。 他の在留資格への変更も、原則として一度帰国が必要。 これらの原則を理解せず、安易に滞在延長や資格変更を計画すると、不法残留や申請不許可といったリスクを招くおそれがあります。個別の事情において更新や変更が可能かどうかについては、最新の法令や運用に基づいた慎重な判断が求められます。
- [外国人雇用に関する課題と外国人雇用コンサルティングサービスの概要](https://shiodome.co.jp/column/13864/) - 少子高齢化に伴う労働力不足が深刻化する中、日本国内での外国人雇用は、かつての「労働力の補填」から「事業継続のための不可欠な戦略」へと変わりつつあります。特に2025年は、技能実習制度の廃止と新制度「育成就労」への移行準備、そして特定技能制度の運用見直しなど、制度の大きな転換点にあります。 本記事では、外国人雇用において企業が直面する現代的な課題と、それらを解決するためのコンサルティングサービスの役割について、最新の法規や市場動向に基づいて解説します。 2025年における外国人雇用の主要な課題 外国人材の活用には多くのメリットがある一方で、法規制の複雑化や社会環境の変化に伴い、企業側には新たな対応が求められています。主な課題は以下の4点に集約されます。 1. 新制度「育成就労」への移行準備 2024年に成立した改正法により、技能実習制度は廃止され、2027年4月より「育成就労制度」が本格始動することが決定しました(2025年9月閣議決定)。 2026年現在は、現行の技能実習から新制度へのスムーズな移行に向けた準備期間にあたります。新制度では「人材育成」と「人材確保」が明確な目的となります。(一定の条件下での「転籍(転職)」が認められるようになる可能性がありますが、現在運用指針等で調整中です。)これにより、企業には「選ばれる職場づくり」という新たな課題が生じています。 2. コンプライアンスと行政指導の厳格化 2025年4月より、特定技能制度をはじめとする在留諸申請において、届出体制の変更やオンライン化の促進、提出書類の省略ルールの見直しが行われました。また、社会保険の加入状況や税金の納付状況に対する入国管理局の審査は年々厳格化しています。不法就労助長罪の適用リスクを避けるためには、在留資格の有効性だけでなく、実働時間(特に留学生のアルバイト)や報酬基準の整合性を常に監視する必要があります。 3. 人材の定着とキャリアパスの構築 特定技能2号の対象分野拡大により、家族の帯同や永住権取得への道が広がったことで、外国人材側も「長く働ける環境」を重視する傾向が強まっています。一方で、言語の壁や文化の違いによるコミュニケーション不足が原因となり、早期離職や現場でのトラブルに繋がるケースも少なくありません。日本人社員を含めた受け入れ体制の整備が、定着率向上の鍵となっています。 4. コスト負担の増加 円安の影響や、新制度における日本語教育支援の義務化、送り出し機関への手数料適正化などにより、外国人材の採用・維持コストは上昇傾向にあります。限られたコストの中で、いかに質の高い人材を確保し、生産性を高めるかが経営上の課題です。 外国人雇用コンサルティングサービスの概要 上述のような複雑な課題に対し、法務・労務の両面から一貫した支援を行うのが「外国人雇用コンサルティング」です。主なサービス内容は以下の通りです。 1. 制度設計・採用戦略の立案 企業の事業内容や将来の展望に合わせ、どの在留資格(技術・人文知識・国際業務、特定技能、育成就労など)を活用するのが最適かを診断します。 日本人との同等報酬基準の算出と賃金体系のアドバイス 職務内容と学歴・職歴の照合 中長期的な人員計画に基づいたビザ戦略の策定 2. コンプライアンス監査と書類整備 入管法や労働法に抵触しないよう、社内の管理体制を整えます。 雇用契約書、就業規則の多言語化および適正化 在留カードの管理体制の構築 定期報告・随時報告などの行政届出の管理代行 3. 教育・定着支援(マネジメント支援) 現場でのトラブルを未然に防ぎ、戦力化を促すためのソフト面の支援です。 日本人管理職・スタッフ向けの異文化理解研修 外国人社員向けのビジネスマナー教育・日本語学習支援の設計 生活支援(銀行口座開設、住居確保のアドバイス等)の体制構築 4. 法改正に伴うアップデート支援 2027年の新制度移行に向けたスケジューリングや、随時行われる入管運用の変更に対する情報提供を行います。常に最新の情報を経営に反映させることで、法的リスクの回避を図ります。 まとめ 2026年現在の外国人雇用は、単なる手続きの枠を超え、企業のコンプライアンス姿勢や組織文化そのものが問われる局面に入っています。新制度「育成就労」の開始を見据え、2026年中に既存の体制を点検し、中長期的な活用戦略を再構築することが、将来の安定的な人材確保に繋がると考えられます。 外部の専門家によるコンサルティングは、これらの複雑なプロセスを整理し、法的安全性を確保しながら、外国人材が最大限の能力を発揮できる環境を構築するための有効な手段の一つといえます。
- [在留資格変更許可申請とは 手続きの流れと審査の重要なポイント](https://shiodome.co.jp/column/7889/) - 日本に在留する外国人が、現在の活動内容や身分関係を変更して引き続き日本に在留しようとする場合、「在留資格変更許可申請」を行う必要があります。 この手続きは、単なる形式的な届け出ではなく、法務大臣の裁量による「許可」が必要となる重要な手続きです。要件を満たしていない、あるいは立証が不十分であると判断された場合、不許可となる可能性も十分に考えられます。 本記事では、在留資格変更許可申請の概要、具体的な手続きの方法、そして審査において重要となる論点について解説します。 1. 在留資格変更許可申請の概要 在留資格変更許可申請(Application for Change of Status of Residence)とは、すでになんらかの在留資格を持って日本に在留している外国人が、その在留目的を変更して別の在留資格に該当する活動を行おうとする場合に行う手続きです(入管法第20条)。 実務上、多く見られるのは以下のようなケースです。 留学生の就職: 「留学」から「技術・人文知識・国際業務」などへ変更 転職による職種変更: 教育職からITエンジニアへ転職する場合など(活動内容が変わる場合) 身分関係の変更: 日本人と結婚した場合の「日本人配偶者等」への変更、または離婚した場合の「定住者」への変更など 申請のタイミング 原則として、在留目的が変わる時、かつ現在の在留期間が満了する前に申請を行う必要があります。 なお、変更許可を受ける前に新しい活動(例:資格外活動許可の範囲を超えた就労など)を始めてしまうと、不法就労や資格外活動違反に問われる可能性があるため注意が必要です。 2. 申請手続きの方法と流れ 手続きは、申請人の住居地を管轄する地方出入国在留管理官署(入管)またはオンライン上で行います。 申請ができる人 申請人本人 法定代理人 申請取次者(行政書士や弁護士など、一定の要件を満たす者) 標準処理期間(審査期間) 入出国在留管理庁が公表している標準処理期間は2週間から1ヶ月超とされています。 ただし、これはあくまで目安であり、申請内容の複雑さや入管の混雑状況によっては、数ヶ月を要する場合もあります。特に就職シーズン(1月〜4月頃)は審査が長期化する傾向にあります。 手数料 許可された場合に、収入印紙代として6,000円(オンライン申請の場合は5,500円)が必要です。 特例期間について 在留期間の満了日が迫っている場合でも、満了日までに申請を受理されれば、元の在留期間が経過した後も、従前の在留期間満了日から2ヶ月を経過する日」までは、適法に日本に在留することができます。これを「特例期間」と呼びます。 3. 必要書類について 必要書類は、変更前・変更後の在留資格の種類によって大きく異なりますが、一般的に求められるものは以下の通りです。 在留資格変更許可申請書(在留資格の種類ごとに様式が異なります) 写真(縦4cm×横3cm) パスポート及び在留カード(提示のみ) 理由書(変更を必要とする理由を詳細に説明した文書) カテゴリー別の立証資料 就労資格の場合: 雇用契約書、会社の登記簿謄本、決算書、給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表、申請人の履歴書・卒業証明書など 身分系資格の場合: 戸籍謄本、婚姻届受理証明書、住民票、スナップ写真、生計維持能力を証明する資料など ※入管HP等で案内されている書類は「最低限の必須書類」です。個別の事情に応じて、追加の説明資料や補強資料を提出することが、円滑な審査のために望ましいと考えられます。 4. 審査の論点(許可・不許可の分かれ目) 在留資格変更許可申請において、入国審査官は主に以下のポイントを審査します。 ① 在留資格該当性(Activity) 申請人が日本で行おうとする活動が、入管法別表に掲げる「在留資格」の定義に当てはまっているかどうかという点です。
- [日本の査証(ビザ)に関する政策や種類、ビザ免除措置の論点](https://shiodome.co.jp/column/7841/) - ポストコロナ時代を迎え、日本政府は観光立国の推進や労働力不足の解消を目的として、査証(ビザ)および在留資格に関する制度の柔軟な見直しを進めています。 本記事では、専門的な実務において混同されやすい「査証」と「在留資格」の定義を明確にした上で、主要なビザの種類、および近年議論されているビザ免除措置にまつわる新たな制度導入の動きについて解説します。 1. 「査証(ビザ)」と「在留資格」の法的性質と違い 日本の入管行政において、正確な理解のためにまず重要となるのが「査証(ビザ)」と「在留資格」の違いです。一般的にはどちらも「ビザ」と呼ばれますが、法的な役割と管轄省庁は異なります。 査証(Visa) 管轄: 外務省(在外公館) 性質: 「そのパスポートが有効であるという確認」および「その所持人が日本に入国しても支障がないという推薦」としての性質を持ちます。 効力: 原則として、日本に入国する(上陸審査を受ける)段階でその役割を終え、使用済みとなります(数次有効査証を除く)。 在留資格(Status of Residence) 管轄: 法務省(出入国在留管理庁) 性質: 外国人が日本に在留し、活動を行うための法的根拠です。「許可された活動内容」と「在留期間」が定められています。 効力: 日本に滞在し続ける限り効力を持ちます。 実務上、「ビザの申請」という言葉が、海外にある日本大使館等への「査証申請」を指すのか、日本の入管への「在留資格認定証明書交付申請」を指すのかを区別することは非常に重要です。 2. 現在の日本のビザ・在留資格政策のトレンド 日本政府は現在、高度人材の獲得と人手不足への対応を二つの大きな柱として政策を進めています。 高度専門職と特別高度人材(J-Skip) 学歴や職歴、年収などのポイント制で優遇措置が受けられる「高度専門職」に加え、さらに高年収・高スキルの人材を対象とした「特別高度人材(J-Skip)」制度が運用されています。これにより、審査期間の短縮や帯同家族の就労範囲の拡大など、世界的な人材獲得競争に対応する動きが見られます。 特定技能の拡大 国内の労働力不足を補うための「特定技能」制度についても、対象分野の追加や、特定技能2号(家族帯同が可能で、在留期間の上限がない区分)への移行ルートの整備が進められています。 新しい働き方への対応(デジタルノマド) 2024年4月より、IT技術を活用して場所にとらわれずに働く外国人を対象とした「特定活動(デジタルノマド)」の制度が開始されました。6ヶ月以下の滞在が可能となるもので、在留カードの発行はございません。 3. 主な在留資格の種類と分類 現在、日本の在留資格は多岐にわたりますが、以下の4つに分類されるのが一般的です。 (1) 就労が認められる在留資格(活動に基づく資格) 日本で報酬を得て働くことが可能な資格です。職務内容や本人の経歴(学歴・実務経験)との適合性が厳格に審査されます。 代表例: 技術・人文知識・国際業務、高度専門職、経営・管理、技能(調理師等)、特定技能、企業内転勤など。 (2) 身分・地位に基づく在留資格 日本人と結婚している方や日系人など、身分関係に基づいて付与されます。活動内容に制限がなく、単純労働を含めた就労が可能です。 代表例: 日本人の配偶者等、永住者、永住者の配偶者等、定住者。 (3) 原則として就労が認められない在留資格 日本での活動が主目的であり、就労は原則不可です(資格外活動許可を得れば、一定範囲でのアルバイト等は可能です)。 代表例: 留学、家族滞在、文化活動、短期滞在。 (4) 指定される活動による在留資格 法務大臣が個々の外国人について特に指定する活動です。 代表例: 特定活動(外交官の家事使用人、インターンシップ、ワーキングホリデー、本邦大学卒業者など)。 4.
- [日本進出した外資系企業が注意すべき「外国人雇用」とは](https://shiodome.co.jp/column/7713/) - グローバル化の進展に伴い、海外企業が日本市場へ参入し、拠点を設立するケースが増加しています。それに伴い、本国から駐在員を派遣したり、日本国内で優秀な外国人材を採用したりする機会も増えています。しかし、外資系企業が日本で事業を行う際、本国のルールや慣習をそのまま持ち込むことで、日本の「入管法(出入国管理及び難民認定法)」や「労働基準法」に抵触してしまうトラブルが散見されます。 本記事では、日本に進出した外資系企業が、外国人を雇用・受け入れする際に特に留意すべきポイントについて、法的な観点から解説します。 1. 「駐在員」と「現地採用」で異なる在留資格の選定 外資系企業における外国人雇用は、大きく分けて本国からの「転勤(駐在)」と、日本での「現地採用」の2パターンがあります。それぞれ適切な在留資格(ビザ)が異なるため、活動内容と照らし合わせた慎重な選定が必要です。 本社からの転勤(駐在員)の場合 本国の社員を日本支社等の管理者やスペシャリストとして派遣する場合、主に以下の在留資格が検討されます。 「企業内転勤」: 本店と支店間の異動などが対象です。学歴要件は比較的緩和されていますが、転勤直前に本店等で1年以上の勤務実績があることなどが要件となります。 「経営・管理」: 日本拠点の代表者や取締役として経営に従事する場合に必要となります。資本金額や事業所の確保など、事業の安定性・継続性が厳格に審査される傾向にあります。 日本での現地採用の場合 日本国内で外国人を採用する場合、業務内容に応じた就労ビザが必要です。 「技術・人文知識・国際業務」: エンジニア、営業、マーケティング、通訳翻訳など、専門的な知識を要する業務が対象です。 注意点: 学歴(大学卒業等)や職務経歴と、従事する業務内容に関連性があることが求められます。単なる現場作業や単純労働では許可が下りない可能性があるため、職務記述書(ジョブディスクリプション)の作成には注意が必要です。 2. 日本の労働法制の適用と「解雇」のハードル 外資系企業が最も戸惑う点の一つが、日本の労働法の適用範囲とその厳格さであると言われています。 労働法は「属地主義」が原則 たとえ外国企業であっても、日本国内で労働者を使用する限り、原則として日本の労働基準法等の労働関係法令が適用されます。 「本国との雇用契約だから日本の法律は関係ない」という認識は、コンプライアンス上のリスクとなる可能性があります。 解雇規制の違い 欧米諸国等で一般的な「Employment at Will(随意雇用)」の考え方は、日本では原則として適用されません。 日本では、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない解雇は無効とされる傾向にあります(労働契約法第16条)。能力不足や業績不振を理由とした解雇であっても、日本法の下では極めて慎重なプロセスが求められることがあります。 ビザの更新時期に雇用契約を終了させようとするケースも見受けられますが、労働契約上の問題と在留資格の問題は分けて考える必要があります。 3. 社会保険への加入義務 日本に駐在する外国人社員についても、要件を満たす場合は、日本の社会保険(健康保険、厚生年金保険)および労働保険(労災保険、雇用保険)への加入が義務付けられています。 二重払いを防ぐ「社会保障協定」 本国と日本の両方で社会保険料を支払う「二重払い」の問題が生じる場合があります。日本と相手国の間で「社会保障協定」が締結されている場合、加入免除の証明書を取得することで、二重払いを回避できる制度があります。 出身国が協定締結国か否か、また協定の内容を確認し、適切な手続きを行うことが推奨されます。 4. 雇用後の届出義務とコンプライアンス 適切な在留資格で外国人を雇用した後も、企業側にはいくつかの届出義務が課されています。 外国人雇用状況の届出 外国人を雇い入れた場合、および離職した場合には、ハローワークへ「外国人雇用状況の届出」を行うことが法律で義務付けられています。 これは、雇用保険の被保険者でない場合(役員など)であっても提出が必要となるケースがあるため、注意が必要です。 在留期限の管理 在留期限の管理は本人任せにするのではなく、企業側(人事担当者等)でも把握しておくことが重要です。万が一、在留期限が切れた状態で就労させた場合、企業側も不法就労助長罪に問われるリスクが生じる可能性があります。 5. まとめ 外資系企業が日本で事業を成功させるためには、ビジネスモデルのローカライズだけでなく、人事労務やコンプライアンス(法令順守)における「日本基準への適応」が不可欠です。 特に、在留資格の手続きと労働法の遵守は密接に関連しており、本国のヘッドクォーター(本社)に対して、日本特有の法規制や手続きの時間を正しく説明し、理解を得ることがスムーズな組織運営の鍵となります。
- [就労ビザ申請を自分で行う場合と行政書士に依頼するメリット・デメリット](https://shiodome.co.jp/column/7586/) - 日本で外国籍の方が働くために必要な「就労ビザ(正しくは在留資格)」の申請手続きは、非常に複雑で専門的な知識が求められます。企業の人事担当者様や外国人ご本人の中には、「コストを抑えるために自分で申請したい」と考える方もいれば、「確実性を求めて専門家に任せたい」と考える方もいらっしゃるでしょう。 この記事では、就労ビザの申請を「自社(または自分)で行う場合」と「行政書士に依頼する場合」それぞれのメリット・デメリットについて、最新の実務傾向を踏まえて解説します。 1. 就労ビザ申請の基本と現状 まず前提として、就労ビザの申請は、単に「書類を揃えて提出すれば許可が下りる」というものではありません。出入国在留管理庁(入管)の審査基準は細かく規定されており、申請人の経歴と業務内容の関連性や、企業の経営安定性などが厳格に審査されます。また、近年ではオンライン申請も普及し始めていますが、利用登録の手間やシステムへの理解が必要となるため、依然として窓口での申請も多く行われています。 2. 自分(自社)で申請する場合 企業の人事担当者や外国人本人が自ら申請を行うケースです。 メリット 費用の節約 最大のメリットは、外部委託コストがかからないことです。行政書士への報酬が発生しないため、許可時に納付する収入印紙代や、公的書類の取得実費、交通費のみで済みます。 社内ノウハウの蓄積 繰り返し申請を行うことで、どのような書類が必要か、入管が何を重視しているか、といった知見を得ることで社内でのノウハウの蓄積が可能です。 デメリット 多大な時間と手間の発生 申請書の作成だけでなく、立証資料(理由書、雇用契約書、決算書、登記事項証明書など)の収集・作成に多くの時間を要します。また、管轄の入管へ出向く場合、混雑状況によっては数時間待たされることも珍しくありません。申請時と結果受取時の最低2回は足を運ぶ必要があります。 許可率への懸念と補正対応 専門的な知識が不足している場合、本来許可されるべき案件であっても、書類の不備や説明不足により不許可となるリスクがあります。また、審査途中で入管から「資料提出通知書(追加書類の要請)」が届いた際、適切な対応ができずに審査が長期化するケースも見られます。 最新法令への対応 入管法や審査要領は頻繁に改正されたり、運用方針が変わったりすることがあります。常に最新の情報をキャッチアップしていないと、古い知識で申請してしまい、トラブルになる可能性があります。 3. 行政書士に依頼する場合 入管業務を専門とする行政書士(申請取次行政書士)に依頼するケースです。 メリット 申請手続きの代行(出頭免除) 「申請取次」の資格を持つ行政書士に依頼すれば、原則として申請人本人が入管の窓口に行く必要がありません。書類作成から提出、結果の受け取りまでを一任できるため、本人は業務に専念でき、人事担当者の負担も大幅に軽減されます。 許可率の向上とリスク回避 行政書士は、過去の事例や最新の審査傾向に基づき、個別の案件に最適な書類を作成します。特に重要となる「採用理由書」において、入管法に合致した論理的な説明を行うことで、スムーズな審査と許可率の向上が期待できます。 不許可要因の事前診断 申請前にプロの目線で要件を確認するため、「そもそも許可が下りる可能性が低い」ケースを事前に判別できます。無理な申請による不許可歴が残るリスクを避けることができます。 複雑な案件への対応 「本人の専攻と業務内容の関連性が薄い」「過去にオーバーワーク(資格外活動違反)がある」「転職回数が多い」といった難易度の高い案件についても、法的根拠に基づいたリカバリー策を検討することが可能です。 デメリット 費用の発生 専門家に依頼するため、報酬(手数料)が発生します。相場は事務所や依頼内容(認定、変更、更新)によって異なりますが、およそ10万円〜20万円程度が一般的とされています。 行政書士による品質のばらつき 行政書士であれば誰でも入管業務に精通しているわけではありません。実績の少ない事務所に依頼した場合、期待通りのサポートが得られない可能性もあります。入管業務を専門、または主力としている行政書士を選ぶことが重要です。 4. どちらを選ぶべきか? 判断のポイント 以下のチェックリストを参考に、自社やご自身の状況に合わせて検討されることをお勧めします。 行政書士への依頼を検討すべきケース 初めて外国人を雇用するため、手続きが全くわからない。 本人の学歴と、任せたい業務内容が一致しているか不安がある。 過去に自分で申請して不許可になったことがある。 本人が日本語を十分に理解しておらず、書類作成が困難。 本業が忙しく、平日の日中に時間を取ることが難しい。 絶対に許可を取りたい重要な人材である。 自分で申請しても問題が少ないケース 単純な「在留期間更新」であり、職務内容や勤務先に変更がない。 社内に経験豊富な法務・人事担当者がおり、最新の入管法にも通じている。 カテゴリー1(上場企業等)に分類される、提出書類が大幅に簡素化されている企業・団体である。 時間に十分な余裕があり、万が一不許可になっても再申請の対応ができる。 5. まとめ
- [在留資格変更許可申請の概要と申請手続きと審査のポイント](https://shiodome.co.jp/column/7962/) - 日本に在留する外国人が、現在の在留資格(ビザ)で許可されている活動とは異なる活動を行う場合、あるいは身分関係に変更が生じた場合には、「在留資格変更許可申請」を行う必要があります。 本記事では、この申請の概要から具体的な手続きの流れ、そして出入国在留管理庁(以下、入管)による審査の重要なポイントについて解説します。 在留資格変更許可申請とは 在留資格変更許可申請とは、いずれかの在留資格で在留している外国人の方が、在留目的とする活動を変更して別の在留資格に該当する活動を行おうとする場合に、新しい在留資格に変更するために行う申請手続きです(出入国管理及び難民認定法第20条)。 日本には現在、活動内容や身分に基づいて約30種類の在留資格が存在します。それぞれの資格には行ことができる活動範囲が厳格に定められているため、その範囲を超える活動を行うことになった場合、速やかに変更の手続きを行わなければなりません。 よくある変更のケース 頻繁に見受けられる変更事例としては以下のようなものがあります。 「留学」から「技術・人文知識・国際業務」へ 留学生が日本の大学や専門学校を卒業し、日本企業に就職する場合。 「技術・人文知識・国際業務」から「日本人配偶者等」へ 就労ビザで働いている方が日本人と結婚し、身分系の資格へ変更する場合。 「技能実習」から「特定技能」へ 技能実習を良好に修了し、同分野で引き続き就労する場合。 申請手続きの流れと方法 申請は、原則として変更後の活動を始める前に行う必要があります。 1. 申請提出ができる人(申請人) 申請人本人(外国人) 申請人本人の法定代理人 申請取次者(行政書士や弁護士など、地方出入国在留管理局長に届け出た者) 2. 申請先 申請人の住居地を管轄する地方出入国在留管理官署で手続きを行います。また、近年ではマイナンバーカードを利用したオンライン申請も普及しており、窓口に出向かずに申請することも可能です。 3. 必要書類 希望する在留資格によって必要書類は大きく異なりますが、一般的に以下の書類が求められます。 在留資格変更許可申請書 変更しようとする在留資格に対応した様式を使用します。 写真(縦4cm×横3cm) 申請前3ヶ月以内に撮影されたもの。 パスポート及び在留カード 窓口申請の場合は提示が必要です。 申請理由書 なぜ在留資格を変更する必要があるのかを詳細に説明する文書です。必須ではありませんが、審査を円滑に進めるために提出が推奨されるケースが多くあります。 カテゴリー別の立証資料 就労系の場合: 雇用契約書、会社の登記簿謄本、決算書、本人の卒業証明書など。 身分系の場合: 戸籍謄本、婚姻届受理証明書、住民票、所得課税証明書など。 ※日本での活動内容(所属機関の規模等)によって提出書類が区分されているため、入管の公式ウェブサイト等で最新情報を確認する必要があります。 審査における重要なポイント 入管による審査は、提出された書類に基づいて行われます。主な審査基準は以下の通りです。 1. 在留資格該当性(活動内容との適合性) 申請人が日本で行おうとする活動が、入管法で定められた「在留資格」のいずれかに該当しているかどうかが審査されます。 例えば、就労ビザへの変更であれば、従事する業務内容と、本人の大学での専攻内容や実務経験に関連性があるかが厳しく確認される傾向にあります。単純労働とみなされる業務内容では、専門的な技術・知識を要する在留資格への変更は認められない可能性があります。 2. 上陸許可基準適合性(基準への適合) 一部の在留資格には「上陸許可基準(基準省令)」が設けられています。 例えば、「技術・人文知識・国際業務」であれば、「日本人と同等額以上の報酬を受けること」などの基準を満たしている必要があります。 3. 在留状況の良好性 これまでの日本での在留状況も審査の対象となります。 素行が善良であるか(犯罪歴や交通違反の有無など) 納税義務(住民税、所得税など)や社会保険料の支払いを履行しているか
- [在留資格「特定活動」に関する申請手続きと取得後の注意点](https://shiodome.co.jp/column/7891/) - 日本の在留資格制度において、「技術・人文知識・国際業務」や「留学」などの一般的なカテゴリーに当てはまらない活動を受け入れるための受け皿となるのが、在留資格「特定活動」です。 この在留資格は、法務大臣が個々の外国人について特に指定する活動を行うためのものであり、その内容は多岐にわたります。近年では、日本の大学を卒業した留学生の就職支援や、高度人材の親の帯同、さらにはデジタルノマドなど、新しいニーズに対応する形で活用の幅が広がっています。 本記事では、複雑な「特定活動」の分類や申請手続きの概要、そして許可取得後に特に注意すべき点について解説します。 1. 在留資格「特定活動」の分類と特徴 「特定活動」は、大きく分けて以下の3つの種類に分類されると考えられます。申請準備を進めるにあたり、自身がどのカテゴリーに該当するかを正確に把握することが第一歩となります。 (1) 告示特定活動 法務大臣があらかじめ官報により定めた活動です。すでに要件が明確化されており、該当すれば許可される可能性が高いものです。代表的なものとして以下が挙げられます。 特定活動46号: 日本の大学を卒業し、高い日本語能力(JLPT N1等)を持つ者が、幅広い業務に従事する場合。 特定活動9号: インターンシップ。 特定活動51号: J-Find(未来創造人材)。 (2) 告示外特定活動 あらかじめ官報で定められてはいないものの、人道上の理由や特別な事情を勘案して法務大臣が許可するものです。個別の事情に応じて判断されるため、一般的に申請の難易度は高いとされています。 高齢の親の呼び寄せ: 本国に身寄りがなく、扶養が必要な高齢の親を呼び寄せるケース。 就職活動(継続): 「留学」からの変更など、大学卒業後に日本で就職活動を継続する場合。 (3) 特定研究等活動・特定情報処理活動 特定の研究活動や情報処理活動に従事する場合などが該当しますが、近年では高度専門職等のカテゴリーに吸収・整理されている側面もあります。 2. 「特定活動」の申請手続きと必要書類 特定活動は活動内容によって必要書類が大きく異なりますが、一般的な申請の流れと主要な書類は以下の通りです。 申請の流れ 基本的には、海外から呼び寄せる場合の「在留資格認定証明書交付申請」か、すでに日本に在留している場合の「在留資格変更許可申請」のいずれかを行います。 一般的な必要書類 活動内容により変動しますが、共通して求められる傾向にある書類は以下の通りです。 申請書: 活動内容に応じた様式を使用します。 理由書: 特に「告示外特定活動」の場合、なぜ日本に在留する必要があるのか、どのような活動を行うのかを詳細かつ論理的に説明する必要があります。 経費支弁能力を証する書類: 申請人本人または扶養者の預金残高証明書、課税証明書・納税証明書など。 活動内容を疎明する資料:就労系の場合:雇用契約書、会社の登記簿謄本、決算書など。身分系の場合:戸籍謄本、出生証明書、診断書(病気療養等の場合)など。 ※2024年4月から運用が開始された「デジタルノマド(特定活動53号)」など、新しい制度については、加入している民間医療保険の証書などが求められるケースもあります。最新の情報を入管庁のガイドラインで確認することが重要です。 3. 「指定書」の重要性について 特定活動の在留カードを取得した際、最も重要なのが「指定書(Designation)」です。 在留カードの表面には「特定活動」としか記載されていませんが、パスポートに貼付(または交付)される「指定書」には、その外国人が日本で行うことができる具体的な活動内容が記載されています。 この指定書の内容が、その方の活動範囲を決定づける法的根拠となります。したがって、在留カードだけでなく、指定書の内容を正確に理解し、保管しておくことが求められます。 4. 取得後の注意点とリスク管理 特定活動の許可が下りた後も、安定して日本に在留し続けるためには、いくつかの重要な注意点があります。 (1) 就労活動の制限を厳守する 特定活動には、「就労が認められるもの」と「認められないもの」があります。また、就労が認められていても、「指定書に記載された機関(特定の会社)でのみ就労可能」という制限がついているケースが多く見られます。 例えば、インターンシップやEPA(経済連携協定)に基づく看護師候補者などは、指定された受入れ機関以外で働くことは認められません。転職をする場合は、たとえ職種が同じであっても、再度「在留資格変更許可申請」を行い、新しい指定書を取得する必要があるケースが一般的です。 (2) 更新時の審査基準
- [日本における査証(ビザ)の政策の概要と種類・免除の論点 ](https://shiodome.co.jp/column/7580/) - はじめに 国際的な人の往来が活発化する中、日本における外国人の受入れ政策は大きな転換期を迎えています。観光立国の推進に加え、労働力不足を背景とした就労目的の受入れ拡大など、制度は年々複雑化かつ柔軟化しています。 日本における「査証(ビザ)」と「在留資格」の法的な定義の違い、主要な在留資格の種類、近年議論されている査証免除措置(ビザ免除)にまつわる新たな制度導入の動きについて、解説します。 1. 「査証(ビザ)」と「在留資格」の法的な定義と違い 日本の入管実務において、最も混同されやすいのが「査証(ビザ)」と「在留資格」の違いです。日常会話ではどちらも「ビザ」と呼ばれることが一般的ですが、法的な役割と管轄する行政機関は明確に異なります。 査証(Visa) 管轄: 外務省(海外にある日本大使館・領事館) 役割: パスポートが有効であることの「確認」と、その所持人が日本に入国しても支障がないという「推薦」の性質を持ちます。 効力: 原則として、日本に入国する際(上陸審査時)にその役割を終えます(数次有効査証を除く)。 在留資格(Status of Residence) 管轄: 出入国在留管理庁(法務省) 役割: 外国人が日本で行うことができる活動等を類型化したもので、法務省(出入国在留管理庁)が外国人に対する上陸審査・許可の際に付与する資格です。 効力: 日本に滞在している間、許可された期限まで効力が継続します。 実務上は、まず日本の入管で「在留資格認定証明書」の交付を受け、それを海外の日本国大使館へ提示して「査証」の発給を受け、日本への上陸時に「在留資格」が付与される、という流れが一般的です。 2. 近年のビザ・在留資格政策の傾向 日本政府は現在、高度人材の獲得と人手不足への対応、新しい働き方への適応という観点から、制度の見直しを進めています。 (1) 高度人材・特別高度人材(J-Skip / J-Find) 学歴や年収などのポイント制で優遇される「高度専門職」に加え、さらに高年収・高スキルの人材を対象とした「特別高度人材(J-Skip)」や、世界ランキング上位大学の卒業生が就職活動を行える「未来創造人材(J-Find)」などの制度が運用されています。これらは世界的な人材獲得競争に対応するための施策といえます。 (2) 特定技能制度の拡大 国内の人手不足を補うための「特定技能」制度についても、対象分野の追加や、家族帯同が可能となる「特定技能2号」への移行ルート整備が進められています。長期的なキャリア形成を見据えた受入れ体制へのシフトが見受けられます。 (3) デジタルノマド(特定活動) 2024年3月31日より、場所にとらわれずに働くIT人材等を対象とした「特定活動(デジタルノマド)」の制度が開始されました。6ヶ月以下の滞在が可能となるもので、観光以上・移住未満の層を取り込む政策として注目されています。 3. 在留資格の主な種類と分類 現在、日本の在留資格は多岐にわたりますが、活動内容や身分に基づいて大きく以下の4つに分類されます。 (1) 就労が認められる在留資格 日本で報酬を得て働くことが可能な資格です。職務内容と本人の経歴(学歴・実務経験)の適合性が審査されます。 代表例: 技術・人文知識・国際業務、高度専門職、経営・管理、技能(調理師等)、特定技能、企業内転勤など。 (2) 身分・地位に基づく在留資格 日本人と結婚している方や日系人など、身分関係に基づいて付与されます。活動内容に制限がなく、単純労働を含めた就労が可能です。 代表例: 日本人の配偶者等、永住者、永住者の配偶者等、定住者。 (3) 原則として就労が認められない在留資格 原則として報酬を得て働くことはできない。 (資格外活動許可を得れば、一定範囲でのアルバイト等は可能です)。 代表例: 留学、家族滞在、文化活動、短期滞在。 (4) 指定される活動による在留資格(特定活動) 法務大臣が個々の外国人について特に指定する活動を行うための資格です。 代表例: 外交官の家事使用人、インターンシップ、ワーキングホリデー、本邦大学卒業者、デジタルノマドなど。 4. ビザ免除措置と「日本版ESTA(JESTA)」の導入論点 観光等の目的で短期滞在する場合、日本は多くの国・地域に対して査証免除措置(ビザ免除)を実施しています。しかし、近年この制度に関して新たなセキュリティ対策の導入が検討されています。 査証免除の現状 米国、英国、韓国、台湾など、約70の国・地域(2024年時点)のパスポート所持者は、商用や観光、親族訪問などを目的とする短期間の滞在であれば、事前に査証を取得することなく日本に入国することが可能です。 日本版ESTA(JESTA)の導入検討 一方で、査証免除措置を利用して入国した外国人による不法就労や不法残留などの問題に対処するため、政府は2028年を目処に「日本版ESTA(仮称:JESTA)」の導入を検討しています。 この制度は、米国のアメリカ電子渡航認証システム(ESTA)と同様に、査証免除対象国・地域の出身者であっても、渡航前にオンラインで氏名や旅券番号、渡航目的などを申告し、渡航認証を受けることを義務付けるものです。これにより、水際対策の強化と円滑な入国審査の両立が図られる見込みです。 まとめ 日本の査証・在留資格政策は、経済状況や国際情勢の影響を受けやすく、頻繁に法改正や運用の変更が行われます。 特に現在は、デジタルノマドのような新しい在留資格の新設や、JESTAのような国境管理の厳格化など、アクセシビリティの向上とセキュリティ確保の両立を目指す動きが顕著です。申請や渡航を検討される際は、外務省や出入国在留管理庁が発信する最新の情報を確認し、目的に合致した適切な手続きを行うことが重要です。
- [【人事担当者向け】日本における外国人従業員の在留資格管理に関する主要な論点と実務上の注意点 ](https://shiodome.co.jp/column/13866/) - 日本国内で働く外国人労働者の数が増加の一途をたどる中、企業における「在留資格(ビザ)」の管理体制は、コンプライアンス上の最重要課題の一つとなっています。日本人従業員の雇用管理とは異なり、外国人従業員の場合は入管法(出入国管理及び難民認定法)に基づいた厳格な管理が求められます。万が一、適切な管理を怠った場合、企業側が予期せぬ法的責任を問われるリスクも否定できません。本記事では、日本における外国人従業員の在留資格管理について、企業が押さえておくべき主要な論点と実務上の注意点を解説します。 1. 企業に求められる「確認義務」と不法就労助長罪のリスク 外国人従業員の雇用において、最も根本的な論点は「不法就労を防止する義務」が企業側にあるという点です。 不法就労助長罪の適用可能性 企業が不法就労であることを知らなかったとしても、、「不法就労助長罪」に問われる可能性があります。これには、5年以下の懲役または500万円以下の罰金が科されることがあり、企業名が公表されるケースも存在します。したがって、企業は採用時のみならず、雇用期間全体を通じて、当該従業員が適法に就労できる状態にあるかを確認し続ける必要があります。 2. 在留カードの確認における実務的な論点 在留資格管理の基本は「在留カード」の確認ですが、単にカードの有無を見るだけでは不十分といえます。以下の項目を詳細に確認することが推奨されます。 就労制限の有無 在留カードの表面には「就労制限の有無」という欄があります。ここには大きく分けて以下のパターンが存在します。 「就労制限なし」: 永住者、日本人の配偶者等などが該当します。日本人と同様にあらゆる業務に従事可能です。 「在留資格に基づく就労活動のみ可」: 技術・人文知識・国際業務、特定技能などが該当します。許可された範囲内の業務にしか従事できません。 「就労不可」: 留学、家族滞在などが該当します。原則として就労はできませんが、裏面に「資格外活動許可」の記載があれば、週28時間以内のアルバイト等が認められます。 在留期間(有効期限)の管理 在留カードには有効期限が記載されています。期限が1日でも過ぎてしまえばオーバーステイ(不法滞在)となり、当然ながら就労も不法就労となります。更新許可申請中であれば、従前の在留期間が満了しても特例期間として適法に在留・就労が可能ですが、この「申請中であること」を企業側が把握していないケースも散見されます。更新申請を行った際には、在留カード裏面の「在留期間更新等許可申請中」のスタンプを確認するか、あるいは申請受付票の提示を求めるなどの対応が重要となります。 3. 業務内容と在留資格の不一致(単純労働の禁止等) 在留資格管理において特に判断が難しい論点が、「業務内容と在留資格の整合性」です。 「技術・人文知識・国際業務」の該当性 オフィスワーク等のホワイトカラー職種で一般的な「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を持っていても、現場での単純労働や、本人の大学等での専攻・実務経験と関連のない業務に従事させることは認められないとされています。例えば、通訳として採用した従業員を、恒常的に工場のライン作業や飲食店のホール業務に従事させた場合、資格外活動として摘発されるリスクがあります。人事異動や配置転換を行う際には、新しい業務内容が現有の在留資格で認められる範囲内であるか、慎重に検討する必要があります。 4. 留学生・家族滞在者のアルバイト管理(28時間ルール) 「留学」や「家族滞在」の在留資格を持つ者をアルバイトとして雇用する場合、「資格外活動許可」を得ていることの確認に加え、就労時間の管理が重要な論点となります。 週28時間の制限: 原則として週28時間以内の就労に限られます。これは残業時間を含み、他社とかけ持ちしている場合は合算で判断されます。 長期休業期間の特例: 留学生の場合、学則で定められた長期休業期間中(夏休み等)は1日8時間までの就労が認められる場合があります。 企業側としては、自社での労働時間だけでなく、他社での就労状況についても本人に申告させるなどの管理体制が必要となるでしょう。 5. 転職者採用時の「就労資格証明書」の活用 中途採用(転職者)の場合、前の会社で取得した在留資格が、自社の業務内容にも適合するかどうかは自動的には保証されません。在留期限が残っていたとしても、業務内容が変わる場合、次回の更新時に不許可になるリスクがあります。このような不確実性を回避するための手段として、「就労資格証明書」の取得を本人に依頼することも一つの有効な方法です。これにより、自社での就労が法的に問題ないかを入管に事前に確認してもらうことが可能となります。 まとめ 外国人従業員の在留資格管理は、単なる期限管理にとどまらず、従事する業務内容との適合性や、更新申請状況の把握など、多岐にわたる視点が必要です。また、法改正や入管の運用方針の変更も頻繁に行われるため、常に最新の情報をキャッチアップしておくことが望まれます。コンプライアンス違反を未然に防ぎ、安定的な雇用環境を維持するためには、社内で統一された管理ルールの策定と、定期的な運用状況のチェックが不可欠といえるでしょう。
- [【Q&A】日本における外国人雇用&ビザ管理について](https://shiodome.co.jp/column/13210/) - 日本国内での労働力不足に伴い、外国人材の活用は企業にとって欠かせない選択肢となっています。しかし、外国人雇用には入管法(出入国管理及び難民認定法)をはじめとする複雑なルールが存在し、適切な管理が行われていない場合、企業側が不法就労助長罪などの法的責任を問われるリスクも想定されます。本記事では、企業の人事担当者様や経営者様から頻繁に寄せられる質問をもとに、外国人雇用と在留資格(ビザ)管理に関する実務上の重要ポイントをQ&A形式で解説します。 Q1. 外国人を採用する際、最初に確認すべき書類は何ですか? A. 「在留カード」の現物を確認し、就労の可否を判断する必要があります。 採用面接等の段階で、「在留カード」の現物を確認することが推奨されます。特に以下の3点は必須の確認事項といえます。 在留カードの有無と有効性: カードの表面右上の「有効期間の満了日」を確認し、在留期限が切れていないかをチェックします。また、出入国在留管理庁の「在留カード等番号失効情報照会」サイトを利用し、カード自体が失効していないか確認することも有効です。 在留資格の種類: 「永住者」「日本人の配偶者等」などは就労制限がありませんが、「技術・人文知識・国際業務」などは許可された範囲内の業務に限られます。 就労制限の有無: カード表面の「就労制限の有無」欄を確認します。「就労不可」と記載されている場合(留学生や家族滞在など)は、裏面に「資格外活動許可」の記載がある場合のみ、時間制限付きで就労が可能です。 Q2. 「技術・人文知識・国際業務」のビザを持つ外国人に、現場作業(工場のラインや品出し等)を任せることはできますか? A. 原則として認められません。在留資格と業務内容の不一致は不法就労となる可能性があります。 「技術・人文知識・国際業務」の在留資格は、基本的には大学等で学んだ専門知識または専門性のある関連業務の一定年数以上の経験を活かす業務に従事するためのものです。したがって、それらと関連性のない単純労働とみなされる業務(工場のライン作業、建設現場の作業員、飲食店のホール・厨房の専従など)に従事させることは、原則として認められていません。ただし、入社直後の研修期間として一時的に現場を経験させる程度であれば許容される場合もありますが、その期間や目的には合理性が求められます。恒常的に現場作業に従事させた場合、資格外活動として摘発されるリスクがあるため、配置転換や業務内容の変更には慎重な判断が必要です。 Q3. 留学生をアルバイトとして雇用する場合の注意点を教えてください。 A. 「資格外活動許可」の確認と「週28時間以内」という労働時間の厳守が求められます。 留学生(在留資格「留学」)は本来、就労が認められていませんが、入管から「資格外活動許可」を得ている場合に限りアルバイトが可能です。管理上の注意点は以下の通りです。 週28時間の制限: 残業時間を含め、週28時間以内でなければなりません。複数のアルバイトを掛け持ちしている場合、その合計時間が週28時間以内である必要があります。 長期休業期間の特例: 学則で定められた夏休みや冬休みなどの長期休業期間中は、1日8時間(週40時間)までの就労が認められる場合があります。 この制限を超えて働かせてしまった場合、本人だけでなく雇用主も不法就労助長罪に問われる可能性があるため、シフト管理の徹底が重要です。 Q4. 従業員の在留期間更新申請中に、在留カードの有効期限が過ぎてしまいました。このまま働かせても問題ありませんか? .A. 更新申請が受理されていれば、「特例期間」として適法に就労を継続できる場合があります。 在留期間の満了日までに更新申請または変更申請を行っている場合、たとえ新しい許可が下りる前に有効期限が到来しても、最大2ヶ月間は、従前の在留資格をもって日本に在留し、活動を継続できる特例期間が適用されるのが一般的です。この場合、在留カードの裏面に「在留期間更新等許可申請中」というスタンプが押されているか、あるいはオンライン申請等の受付票(受領証)があるかを確認することが重要です。ただし、結果が出ないまま特例期間も経過してしまうことのないよう、審査状況を適宜確認することが望まれます。 Q5. 最近話題の「育成就労」制度と、これまでの「技能実習」制度は何が違うのでしょうか? A. 人材育成の目的が「国際貢献」から「人材確保・育成」へと明確にシフトしています。 従来の技能実習制度は、開発途上国への技術移転(国際貢献)を目的としていましたが、実態として労働力確保の手段となっているとの指摘がありました。これを受け、2024年の法改正により新設された「育成就労」制度(※施行時期等の詳細は最新の法令をご確認ください)は、明確に「人材の確保と育成」を目的としています。大きな違いの一つとして、育成就労制度は原則として3年間の就労を通じ、一定の日本語能力と技能試験に合格することで「特定技能1号」への移行を目指す仕組みとなっている点が挙げられます。これにより、企業としてはより長期的な視点でのキャリアパスを提示しやすくなると考えられています。 Q6. 採用した外国人が退職した場合、会社として何か手続きは必要ですか? A. ハローワークへの届出が必要です。また、入管への届出が必要な場合もあります。 外国人を雇用した場合と同様に、離職した場合もハローワークへ「外国人雇用状況届出」を行う義務があります。これは雇用保険の被保険者でない場合でも必要です。また、在留資格の種類によっては(「高度専門職」など)、本人または所属機関が入管に対して契約終了の届出を行うことが規定されている場合があります。義務違反には罰則が設けられていることもあるため、退職時の手続きについても社内フローを整備しておくことが重要です。 まとめ 外国人雇用における在留資格管理は、入管法のみならず、労働法制とも密接に関わっており、そのルールは非常に細かく規定されています。個別の事案によって判断が分かれるケースも多いため、インターネット上の情報だけで判断せず、法改正などの最新情報を常に確認し、一つひとつのケースにおいて慎重にコンプライアンスを確認する姿勢が求められます。
- [「再入国許可申請」や「みなし再入国」の概要と論点とは](https://shiodome.co.jp/column/7886/) - 日本に在留する外国籍の方が、一時帰国や海外出張、旅行などで日本を離れ、再び日本に戻って活動を継続しようとする場合、適切な「再入国」の手続きを経て出国することが不可欠です。もし、必要な手続きを行わずに出国してしまった場合、現在保有している在留資格(ビザ)は消滅してしまいます。再び日本で働くためには、一から「在留資格認定証明書交付申請」を行わなければならず、多大な時間と労力を要することになります。本記事では、日本からの出国時に必須となる「再入国許可」と「みなし再入国許可」の制度概要、その違い、そして実務上注意すべき論点について解説します。 1. 原則的な考え方と二つの制度 日本の入管法(出入国管理及び難民認定法)において、在留資格を有する外国人が出国する場合、原則としてその在留資格は消滅するとされています。これを防ぎ、同じ在留資格のまま日本に戻れるようにするための制度として、以下の2種類が存在します。 再入国許可(通常の再入国許可) みなし再入国許可 実務上は、出国期間の長さによってこの2つを使い分けることが一般的です。 2. みなし再入国許可(Special Re-entry Permit)の概要 現在、中長期在留者の多くが利用しているのがこの制度です。事前の申請が不要で、空港での手続きのみで完了するため、利便性が高いのが特徴です。 対象者と要件 有効な旅券(パスポート)と在留カードを所持している中長期在留者が対象となります。 有効期間 出国の日から1年以内(在留期限が出国の日から1年を経過する前に到来する場合は、その在留期限まで)に日本に再入国する場合に適用されます。 手続き方法 地方出入国在留管理局へ行く必要はありません。出国当日、空港の出国審査場において、再入国出国記録(EDカード)の「みなし再入国許可による出国を希望します」というチェック欄にチェックを入れるだけで手続きが完了します。手数料もかかりません。 3. 再入国許可(Re-entry Permit)の概要 みなし再入国許可の要件(1年以内の再入国)に当てはまらない長期の不在が見込まれる場合に利用される制度です。 対象者と要件 主に、海外赴任や留学などで1年以上日本を離れる予定がある方が対象となります。 有効期間 最長で5年間(在留期限が5年を経過する前に到来する場合は、その在留期限まで)有効です。 許可の種類として、1回限り有効な「シングル(一次)」と、有効期間内であれば何度でも使用できる「マルチ(数次)」があります。 手続き方法 出国前に、住居地を管轄する地方出入国在留管理局等において申請を行う必要があります。パスポートに再入国許可の証印シールが貼付されます。申請には手数料(収入印紙)がかかります。 4. 実務上の重要な論点と注意点 これら二つの制度は便利な反面、誤解や手続きのミスによりトラブルに発展するケースも散見されます。ここでは主要な論点を挙げます。 論点①:空港でのチェック漏れ(みなし再入国) 最も頻発するトラブルの一つが、空港での手続きミスです。 「みなし再入国許可」を利用するつもりであったにもかかわらず、出国審査場にあるEDカードの該当欄(みなし再入国許可希望のチェックボックス)にチェックを入れ忘れて出国してしまうケースです。 この場合、法的には「単純出国」として扱われるため、保有していた在留資格は即時に消滅してしまいます。出国後に気づいても遡って許可を得ることはできないとされるため、出国時の確認は極めて重要です。 論点②:海外での有効期間延長の可否 予期せぬ事情で海外滞在が長引いた場合の対応も大きな論点です。 みなし再入国許可の場合: 原則として、海外で有効期間を延長することはできません。1年(または在留期限)以内に帰国しない場合、在留資格は失効します。病気や交通遮断などの真にやむを得ない事情がある場合でも救済されるハードルは高いとされています。 通常の再入国許可の場合: 有効期間内に再入国できない相当の理由がある場合、現地の日本国大使館・領事館において、有効期間の延長(最大1年を超えない範囲)が認められる可能性があります。ただし、有効期間が経過している場合は、原則としてその延長はできません。 論点③:在留期限との関係 「再入国許可の有効期間」は、「在留資格の有効期限」を超えることはできません。 例えば、在留期限があと2年残っている人が、5年の再入国許可を取得したとしても、再入国許可の有効期限は「2年後(在留期限満了日)」までとなります。 「5年の再入国許可を取ったから、在留期間も5年延びた」と誤解されるケースがありますが、両者は別の概念であるため注意が必要です。 まとめ 「みなし再入国許可」と「再入国許可」は、外国籍従業員の円滑な海外渡航を支える重要な制度です。しかし、その選択を誤ったり、空港での些細なチェック漏れがあったりするだけで、安定した在留地位を失うリスクを孕んでいます。 企業側においても、外国人従業員が海外へ渡航する際には、「いつ戻る予定か」「在留カードの期限はいつか」を確認し、適切な手続きについてリマインドを行う等のサポート体制が、リスク管理の観点から推奨されます。
- [日本における「在留カード」の概要と外国人を雇用する際の論点・注意点](https://shiodome.co.jp/column/7846/) - 近年、日本国内で働く外国人の数は増加傾向にあり、多くの企業にとって外国人人材の確保は重要な経営課題の一つとなっています。しかし、外国人を雇用する際には、日本人を雇用する場合とは異なる法的な確認手続きが求められます。その中心となるのが「在留カード」の確認です。本記事では、入管法(出入国管理及び難民認定法)の基礎知識に基づき、在留カードの概要、正しい見方、および雇用主が留意すべき論点について解説します。 1. 在留カードとは何か 在留カードは、日本に中長期間在留する外国人に対して、出入国在留管理庁長官がその在留許可に伴って交付するカードです。これは、その外国人が適法に日本に滞在しており、かつどのような活動(就労など)が認められているかを証明する「許可証」としての性質を持っています。 交付の対象者 原則として、3ヶ月を超える在留期間が付与された中長期在留者が対象となります。したがって、観光目的の「短期滞在」や、外交官などの「外交」「公用」の在留資格を持つ者には交付されません。 携帯・提示義務 中長期在留者には、在留カードの常時携帯が法律で義務付けられています。また、入国審査官や警察官等から提示を求められた場合には、提示する必要があります。 2. 外国人雇用における「在留カード」確認の重要性 企業が外国人を雇用する際、最も避けなければならないリスクの一つが「不法就労助長罪」です。雇用しようとする外国人が就労可能な在留資格を持っていない場合や、許可された範囲を超えて働かせてしまった場合、事業主も処罰の対象となる可能性があります。知らなかった場合でも、確認を怠った過失があれば免責されないケースがあるため、在留カードによる厳格な確認が求められます。 3. 在留カードの正しい見方とチェックポイント 採用面接や雇用契約の締結時には、在留カードの原本(コピー不可)を確認することが推奨されます。特に以下の項目は、就労の可否を判断する上で重要な論点となります。 ① 「就労制限の有無」の確認 在留カードの表面には「就労制限の有無」という欄があります。ここの記載内容によって、その外国人がどのような条件で働けるかが決まります。 「就労制限なし」永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者などが該当します。日本人と同様に、職種や労働時間の制限なく就労が可能とされています。 「在留資格に基づく就労活動のみ可」「技術・人文知識・国際業務」や「特定技能」などが該当します。許可された在留資格の範囲内の業務に限り従事することができます。例えば、エンジニアとして許可されている外国人を、工場の単純労働や飲食店のホールスタッフとして雇用することは、原則として認められません。 「指定書により指定された就労活動のみ可」「特定活動」などが該当します。具体的な活動内容はパスポートに添付される「指定書」を確認する必要があります。 「就労不可」「留学」や「家族滞在」などが該当します。原則として働くことはできませんが、後述する「資格外活動許可」を得ている場合は、一定の範囲内で就労が可能となります。 ② 裏面の「資格外活動許可欄」の確認 表面で「就労不可」となっていても、カード裏面の「資格外活動許可欄」に以下の記載がある場合は、アルバイト等での雇用が可能となります。 「許可(原則週28時間以内・風俗営業等の従事を除く)」 留学生などをアルバイトとして雇用する場合は、この記載の有無と、週28時間以内という労働時間の上限管理が重要となります。 ③ 在留期間(有効期限)の確認 在留カードには有効期間があります。有効期間満了日を過ぎているカードは失効しているため、その時点で不法滞在となっている可能性があります(ただし、更新申請中である場合を除く)。採用時だけでなく、雇用継続中も期限管理を行うことが望ましいと言えます。 4. 在留カードの偽造対策と有効性の確認方法 近年、精巧に偽造された在留カードが出回っている事例が報告されています。目視での確認に加え、デジタルツールを用いた確認を行うことで、リスクを低減できると考えられます。 出入国在留管理庁の「在留カード等番号失効情報照会」 出入国在留管理庁は、Webサイト上で「在留カード等番号失効情報照会」サービスを提供しています。在留カード右上の「在留カード番号」と「有効期間満了日」を入力することで、そのカード番号が失効していないかを確認することができます。 また、ICチップを読み取るスマートフォンアプリも公式に提供されており、これによりカード券面の情報とICチップ内の情報が一致しているかを確認することも有効な手段とされています。 5. 雇用後の行政への届出義務 外国人を雇い入れた場合、および離職した場合には、事業主は「外国人雇用状況の届出」を行うことが法律で義務付けられています。 雇用保険の被保険者の場合: ハローワークへ雇用保険被保険者資格取得届(様式第2号)又は雇用保険被保険者資格喪失届(様式第4号)を提出することで、外国人雇用状況の届出を行ったこととなります。届出期限は、雇用保険被保険者資格取得届又は雇用保険被保険者資格喪失届の提出期限と同様です(雇入れの場合は翌月10日までに、離職の場合は翌日から起算して10日以内)。 雇用保険の被保険者でない場合: ハローワークへ外国人雇用状況届出書(様式第3号)を提出してください。届出期限は、雇入れ、離職の場合ともに翌月末日までです。(インターネットでの届出も可能です)。 この届出を怠ったり、虚偽の届出を行ったりした場合には、罰金等の対象となる可能性があるため、確実な手続きが求められます。 6. まとめ 外国人を雇用する際は、人物等の評価だけでなく、在留カードを通じた「就労資格の適法性」を確認することが極めて重要です。特に以下の3点は基本的な確認事項と言えます。 在留カード原本の確認(写真との同一性、偽造の有無) 就労制限の有無と内容の確認(自社の業務内容と合致するか) 在留期限の管理 制度は複雑であり、法改正も頻繁に行われる分野です。判断に迷う場合や、特定技能などの複雑な手続きを要する在留資格の申請については、専門的な知識を持つ行政書士等の専門家へ相談することも、コンプライアンス遵守の観点から有効な選択肢の一つと言えるでしょう
- [留資格「日本人の配偶者等」とは?対象者や就労・申請時の重要ポイントを解説](https://shiodome.co.jp/column/7897/) - 国際結婚をして日本で暮らす場合や、海外で生まれた日本人の子供が来日する場合など、多くの場面で取得が検討されるのが在留資格「日本人の配偶者等」です。一般的に「配偶者ビザ」や「結婚ビザ」と呼ばれることもありますが、正式名称には「等」が含まれており、配偶者以外も対象となる場合があります。本記事では、この在留資格の該当範囲、就労におけるメリット、そして申請時に審査官が重視する傾向にあるポイントについて、最新の実務情勢を踏まえて解説します。 1. 在留資格「日本人の配偶者等」の対象者 この在留資格に該当するのは、主に以下の3つの身分関係にある外国人の方です。単に日本人と結婚しているだけでなく、法的な要件を満たしている必要があります。 ① 日本人の配偶者 現に日本人と婚姻関係にある方が対象です。 ここでいう婚姻関係は、法的に有効な婚姻であり、かつ実態を伴うものである必要があります。事実婚(内縁関係)や、同性婚(現行の日本の法律上)の場合は、この在留資格の対象外となり、「定住者」や「特定活動」など別の在留資格を検討することになります。 また、相手方の日本人が死亡した場合や離婚した場合は、配偶者としての身分を失うため、在留資格の変更が必要となるケースが一般的です。 ② 日本人の特別養子 普通養子縁組ではなく、家庭裁判所の審判によって成立する「特別養子縁組」による養子が対象です。 年齢制限(原則15歳未満など)や実親との親族関係終了など、民法上の厳格な要件を満たした養子縁組である点がポイントです。なお、一般的な「普通養子」の場合は、「定住者」等の在留資格に該当する可能性があります。 ③ 日本人の子として出生した者 日本人の実子として生まれた方で、出生時に父または母が日本国籍を持っていた場合が対象となります。 これには、出生時点で日本国籍を有しており、その後に日本国籍を離脱した元日本人も含まれます。また、認知された非嫡出子も含まれますが、出生後に父親(日本人)から認知された場合については、別の要件や手続き(国籍取得の届出など)が関係する場合があるため、個別の確認が必要です。 2. 「日本人の配偶者等」の就労と活動範囲 この在留資格の最大の特徴でありメリットと言えるのが、原則として活動内容や就労に対する制限がない点です。 就労制限がない 「技術・人文知識・国際業務」などの就労ビザでは、許可された職種以外での就労は認められませんが、「日本人の配偶者等」にはそのような職種制限がありません。 また、「留学」や「家族滞在」のように「週28時間以内」といった就労時間の制限もありません。したがって、正社員、アルバイト、パートタイム、派遣社員など、どのような雇用形態でも働くことが可能です。また、ご自身で会社を設立して経営を行うことも認められています。 単純労働も可能 就労ビザでは許可が下りにくいとされる、工場でのライン作業や建設現場、飲食店のホールスタッフ、コンビニエンスストアの店員といった、いわゆる単純労働に従事することも可能です。 この自由度の高さから、企業側にとっても採用しやすい在留資格であると言えます。 3. 申請・審査における重要ポイント 入出国在留管理庁の審査では、形式的な書類が揃っているかだけでなく、その身分関係が「真実であるか」が慎重に判断されます。特に配偶者として申請する場合、以下の3点が重要な審査基準となると考えられます。 ① 婚姻の信憑性(実態) 最も重視されるのが、「偽装結婚ではないか」という点です。近年、就労目的のための偽装結婚が問題視されている背景があり、審査は厳格化の傾向にあります。 そのため、以下のような資料を用いて、交際の経緯や婚姻の実態を具体的に立証することが求められます。 スナップ写真: 二人で写っている写真、双方の親族との写真、結婚式や旅行の写真など。 通信記録: LINEやメールの履歴、通話記録など、継続的な交流を示すもの。 質問書: 入管指定のフォーマットに従い、出会いから結婚に至るまでの経緯を詳細かつ矛盾なく記載する必要があります。 ② 生計の安定性 日本で夫婦が安定して生活していけるだけの経済力があるかも審査されます。 これには、日本人配偶者の収入だけでなく、申請人(外国人)本人の収入や、世帯全体の資産状況も考慮されます。 もし日本人配偶者が無職であったり、収入が少なかったりする場合は、身元保証人による支援や就職活動の状況などを参考資料として提出することで、生活基盤の安定性を示すことができます。 ③ 素行の善良さ 申請人の過去の在留状況や、日本での法令遵守状況も確認されます。 過去にオーバーステイ歴がある場合や、納税義務(住民税・年金・健康保険など)を果たしていない場合は、審査においてマイナス要因となる可能性があります。特に、他の在留資格からの変更申請の場合は、これまでの在留状況が良好であったかが問われる傾向にあります。 4. 在留期間について 許可された場合に付与される在留期間は、「5年」「3年」「1年」「6月」のいずれかです。 初回申請時や、婚姻期間が短い場合、あるいは生計の安定性に若干の不安があると判断された場合は、「1年」が付与されるケースが多い傾向にあります。 その後、更新申請を重ね、婚姻生活の安定性や日本での定着性が認められれば、「3年」や「5年」へと期間が伸長される可能性があります。「3年」以上の在留期間を得ることは、将来的に「永住者」への在留資格変更(永住権申請)を行うための要件の一つともなっています。 5. まとめ 在留資格「日本人の配偶者等」は、就労制限がなく、日本社会に定着して生活するための強力な基盤となる資格です。しかし、そのメリットの大きさゆえに、申請時の審査は慎重に行われます。特に「婚姻の真正性」と「経済的な基盤」については、申請者側が積極的に証明資料を提出し、疑義を持たれないように説明を尽くすことが、許可への近道であると言えます。個別の事情により必要な書類が異なる場合も多いため、不安な点がある場合は、専門的な知識を持つ行政書士等に相談し、適切な準備を進めることが推奨されます。
- [日本で働く外国人が知っておくべきビジネスマナーと社会保険制度](https://shiodome.co.jp/column/7835/) - 日本で就労する外国人の数は年々増加しており、多様な国籍の方が日本の企業で活躍しています。しかし、文化や習慣の違いから職場で戸惑いを感じたり、給与明細を見て「なぜこんなに引かれているのか」と疑問を抱いたりするケースは少なくありません。本記事では、日本企業で円滑に仕事を進めるための代表的な「ビジネスマナー」と、日本で働くすべての人が加入すべき「社会保険制度」の仕組みについて解説します。 1. 日本独特のビジネスマナー 日本の職場には、明文化されていなくとも「常識」として共有されている独自のルールが存在します。これらを理解しておくことは、職場の同僚との信頼関係を築く上で非常に重要です。 時間厳守の考え方 多くの日本企業では、時間は非常に厳格に管理される傾向にあります。 始業時刻(仕事が始まる時間)とは、「会社に到着する時間」ではなく、「すぐに仕事に取り掛かれる状態になっている時間」を指すと解釈されるのが一般的です。そのため、始業の5分〜10分前には職場に到着し、準備を整えておくことが推奨されます。 また、会議や待ち合わせに遅れることが分かった時点で、数分の遅れであっても事前に連絡を入れることがマナーとされています。 「報・連・相(ホウ・レン・ソウ)」の徹底 日本のチームワークの基本とされるのが「ホウ・レン・ソウ」です。これは以下の3つの言葉の頭文字を取ったものです。 報告(Houkoku): 仕事の進捗状況や結果を上司に伝えること。 連絡(Renraku): 決定事項や事実を関係者に伝えること。 相談(Soudan): 判断に迷ったときやトラブルが起きたときにアドバイスを求めること。 あくまで一般的な比較ですが、欧米などの企業文化では「結果(成果)」が重視され、個人の裁量が大きい場合がありますが、日本の企業では「プロセス(過程)」の共有が重視される傾向にあります。自分ひとりで判断せず、細かく情報を共有することが、仕事への責任感の表れとして評価されることが多くあります。 挨拶とコミュニケーション 「おはようございます(Ohayou gozaimasu)」「お疲れ様です(Otsukaresama desu)」といった挨拶は、単なる礼儀以上の意味を持ちます。これらは、職場のコミュニケーションを円滑にするための潤滑油のような役割を果たしています。出社時や退社時、すれ違う際などに自分から積極的に声をかけることで、周囲に好印象を与えやすくなります。 2. 給与から引かれる「社会保険」と「税金」 日本の企業で正規雇用(あるいは一定条件を満たす雇用)として働く場合、給与からいくつかの保険料や税金が天引き(控除)されます。手取り額が額面より少なくなるため驚かれることもありますが、これらは万が一の際に生活を守るための重要な制度です。 4つの社会保険 一般的に、会社員が加入する社会保険は以下の4種類(40歳以上は介護保険を含め5種類)です。会社と本人が保険料を負担し合います。 健康保険(Health Insurance): 病気や怪我をした際、医療機関での窓口負担が原則3割で済みます。会社を休んだ際の手当(傷病手当金)なども含まれます。 厚生年金保険(Welfare Pension Insurance): 老後の生活資金や、障害を負った際、死亡した際に給付されます。雇用保険(Employment Insurance): 失業した際に、一定期間給付金を受け取るための保険です。 労災保険(Workers' Accident Compensation Insurance): 仕事中や通勤中の怪我や病気に対して補償されます。これは全額会社負担であり、従業員の給与からは引かれません。 知っておきたい「脱退一時金」制度 将来、日本を離れて母国へ帰国する場合、「厚生年金」を掛け捨てにしないための制度があります。 日本国籍を持たない方が、厚生年金等に6ヶ月以上加入しており、受給資格期間(原則10年)を満たさずに帰国した場合、出国後2年以内に請求を行うことで、加入期間に応じた「脱退一時金」が支給されます。この制度を知っておくことは、安心して日本で働くためのポイントの一つと言えます。 住民税に関する注意点 社会保険ではありませんが、多くの外国人が戸惑うのが「住民税」です。 住民税は「前年の所得」に対して課税され、翌年の6月から支払いが始まります。そのため、概ね入社1年目は引かれないことが一般的ですが、2年目から手取り額が減る、あるいは帰国に際して未払いの税金を一括で請求されるといったケースが発生します。この仕組みをあらかじめ理解し、準備しておくことが推奨されます。 3. まとめ 日本で働く上では、業務スキルだけでなく、日本独自のビジネスマナーや社会制度への理解が求められます。 「時間は厳守する」「こまめに報告・相談する」といった行動は、周囲からの信頼を高め、結果としてご自身のキャリアアップにつながりやすくなります。また、社会保険制度は複雑に感じられますが、日本の医療水準の高さやセーフティネットを支える仕組みです。不明な点がある場合は、会社の担当部署や専門家に確認し、正しい知識を持って日本での就労生活を送ることが大切です。
- [日本における外国人の帰化・永住の違いや要件、申請時の留意点](https://shiodome.co.jp/column/7851/) - 日本に長期間在留している外国人の方々にとって、将来的な選択肢として挙がるのが「日本国籍の取得(帰化)」と「永住許可の取得(永住権)」です。どちらも日本に安定して住み続けられるという点では共通していますが、法的な地位や権利、審査の管轄などは大きく異なります。本記事では、帰化と永住の基本的な違い、それぞれの申請要件、および実務上重要となる申請時の留意点について解説します。 1. 「帰化」と「永住」の根本的な違い まず理解しておくべきは、帰化は「国籍の変更」であり、永住は「在留資格の一つ」であるという点です。 帰化(日本国籍の取得) 帰化とは、外国人が元の国籍を喪失し、日本国籍を取得することです。許可されると日本人として扱われるため、戸籍が作成され、日本のパスポートを持つことになります。また、参政権(選挙権・被選挙権)が得られ、就職における公務員等の国籍条項の制限もなくなります。なお、元国籍の喪失の扱いは国によって異なり、別途離脱手続きが必要な場合があります。いずれにしても、日本国籍取得後は元の国に対して外国人として入国手続き(査証取得等)が必要となる場合があります。 永住(永住者在留資格の取得) 永住とは、外国籍のまま日本に無期限で在留できる資格のことです。国籍は変わらないため、母国のパスポートを維持し、参政権はありません。また、あくまで外国人であるため、重大な法令違反等があれば退去強制(強制送還)の対象となり得ますし、在留カードの更新手続き(通常7年に1度)も必要です。しかし、就労活動の制限がなくなり、住宅ローンの審査などで有利になるなど、生活上のメリットは非常に大きいと言えます。 2. 永住許可申請の要件と最新の傾向 永住許可は、出入国在留管理庁が管轄します。「永住者」の在留資格は、在留資格の中で最も広範な活動と安定した地位が認められるため、審査は厳格に行われる傾向にあります。 基本的な3つの要件 法律上、原則として以下の3つの基準を満たす必要があります(入管法第22条)。 素行善良要件法律を遵守し、日常生活においても住民として社会的に非難されることのない生活を営んでいること。前科や繰り返す交通違反などはマイナス評価となります。 独立生計要件日常生活において公共の負担にならず、その有する資産または技能等から見て将来において安定した生活が見込まれること。世帯単位で判断されます。 国益適合要件原則として引き続き10年以上日本に在留し、そのうち5年以上は就労資格(または居住資格)をもって在留していること。納税義務、公的年金および公的医療保険の保険料の納付義務を適正に履行していること。現に有している在留資格について、最長の在留期間をもっていること。 近年の審査における留意点 近年、特に重視されているのが「公的義務の履行状況」です。住民税、国民年金、国民健康保険などの支払いが、納期限通りに行われているかが厳しくチェックされます。「未納はないが、遅れて払ったことがある」という場合でも不許可の理由となる事例が見られます。また、法改正により、永住許可取得後であっても、税金や社会保険料の滞納は在留カードの有効期間の更新において不利に働くほか、悪質な場合には在留資格全体(再入国・変更・家族の申請等)に影響する可能性があります。なお、永住許可の取消し制度については現時点では限定的な場合に限られています。 3. 帰化許可申請の要件と特徴 帰化許可申請は、法務局(法務省)が管轄します。要件は国籍法に定められていますが、広範な裁量権が認められているのが特徴です。 主な7つの要件(国籍法第5条) 住所条件引き続き5年以上日本に住所を有すること。 能力条件成年(18歳以上)で、本国法によって行為能力を有すること。 素行条件素行が善良であること。納税状況や前科・交通違反歴などが審査されます。 生計条件自己または生計を一にする配偶者その他の親族の資産または技能によって生計を営めること。 重国籍防止条件日本国籍の取得によって元の国籍を失うべきこと(または離脱できること)。 憲法遵守条件日本国憲法や政府を暴力で破壊することを企てたり主張したりしたことがないこと。 日本語能力(実務上の要件)法律上の明文規定はありませんが、実務上、小学校3〜4年生程度の日本語の読み書き・会話能力が求められるとされています。 4. 帰化と永住の比較まとめ それぞれの違いを整理すると以下のようになります。 5. 申請時における重要な論点とリスク 実務上、申請を検討する際に特に注意すべきポイントは以下の通りです。 交通違反の頻度と内容 軽微な交通違反(駐車違反など)であっても、直近数年間で回数が多い場合は「素行が善良でない」と判断されるリスクがあります。特に帰化申請においては、過去数年分の運転記録証明書を提出する必要があり、詳細にチェックされます。 家族の状況と「生計の一体性」 申請者本人だけでなく、配偶者や同居家族の状況も審査対象となります。例えば、配偶者が「家族滞在」の在留資格でオーバーワーク(資格外活動許可の時間を超えた就労)をしている場合、申請者本人の監督責任や法令遵守の姿勢が問われ、不許可となるケースがあります。 長期出国の影響 「引き続き○年以上」という居住要件については、年間の出国日数が一定数を超えると「居住の実績がリセット」されたとみなされる場合があります。長期の海外出張や里帰りが多い方は注意が必要です。 6. まとめ 帰化と永住は、どちらも日本での生活基盤を確固たるものにする手続きですが、その法的効果や要件には明確な違いがあります。 永住: 国籍を変えず、ライフスタイルを維持しながら制限なく働きたい方。 帰化: 日本人として、参政権も含めた権利義務を持ち、永続的に日本に根を下ろしたい方。 どちらを選択すべきかは、ご本人のライフプランや母国の事情によって異なります。また、申請には膨大な書類収集と、個々の事情に合わせた理由書等の作成が必要となります。ご自身の経歴や状況において、どちらの要件を満たしているか、どのようなリスクがあるかを正確に把握するためには、専門家への相談も有効な手段であると言えます。 補足 2025年後半より、在留資格の要件等の改正が多くなっており、永住権と帰化についてもその例外ではありません。法律の改正自体はなくとも運用上の変更が行われることもあるため常に最新情報にふれておくようにすることを推奨いたします。
- [日本において外国人留学生をアルバイトで雇用する際の留意点とは](https://shiodome.co.jp/column/7855/) - 人手不足が深刻化する日本において、外国人留学生は貴重な戦力として、コンビニエンスストアや飲食店など多くの現場で活躍しています。 しかし、留学生の本分はあくまで「学業」であるため、入管法(出入国管理及び難民認定法)によって就労活動には厳格な制限が設けられています。雇用主がルールを十分に理解していない場合、知らず知らずのうちに「不法就労」の状態となり、事業主自身も処罰の対象となるリスクがあります。 本記事では、留学生をアルバイトとして雇用する際に、事業主や人事担当者が押さえておくべき法的な留意点について解説します。 1. 最重要:在留カードと「資格外活動許可」の確認 留学生が保有している在留資格「留学」は、原則として就労が認められていない資格です。したがって、アルバイトを行うためには、入国管理局から「資格外活動許可」を得ていることが大前提となります。 確認すべき箇所 採用面接時には在留カードの原本を確認してください。 在留カードの裏面:下部にある「資格外活動許可欄」を見ます。 ここに「許可(原則週28時間以内・風俗営業等の従事を除く)」という記載があれば、アルバイトとしての雇用が可能です。 この記載がない場合、または在留期間が切れている場合は、たとえ1時間であっても働かせることはできません。 2. 厳守すべき「週28時間」ルールの詳細 資格外活動許可には労働時間の上限があります。最も違反が起きやすく、注意が必要なのがこの「時間管理」です。 原則:週28時間以内 留学生が働ける時間は「週28時間以内」と定められています。 ここで注意すべき点は、「週」の定義です。これは特定の曜日(例:月曜から日曜)だけを指すのではなく、「どの曜日から起算しても1週間の労働時間が28時間以内でなければならない」と解釈されています。 複数のアルバイトを掛け持ちしている場合 この「28時間」は、1社あたりの時間ではなく、留学生本人が働く全てのアルバイトの合計時間です。 例えば、他社ですでに週20時間働いている留学生を雇用する場合、自社で雇用できるのは週8時間までとなります。 雇用契約を結ぶ際には、他社での就労状況を確認し、申告させる仕組みを整えることが推奨されます。 特例:長期休業期間中は「1日8時間」まで可 留学生が在籍する学校の規則(学則)で定められた「長期休業期間(夏休み、冬休み等)」にある期間中は、特例として「1日8時間以内(週40時間以内)」まで就労可能時間が拡大されます。 注意点: あくまで「学校が定める長期休業期間」に限られます。単に「授業がない日」や「個人的に休みを取った期間」は対象外であり、通常通り週28時間の制限が適用されます。この判断を誤らないよう、学校の年間カレンダー等で確認することが望ましいでしょう。 3. 従事が禁止されている業務(風俗営業等) 資格外活動許可を得ていても、全ての業種で働けるわけではありません。「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」(風営法)で定める営業所での就労は厳格に禁止されています。 具体的な禁止例 キャバクラ、ホストクラブ、スナック等の接待飲食業 パチンコ店、麻雀店、ゲームセンター等 ラブホテル等の店舗型性風俗特殊営業 重要な点は、「業務内容に関わらず働けない」ということです。 例えば、パチンコ店でのホール業務だけでなく、開店前の清掃業務や、店内の厨房での皿洗いであっても、風営法の許可を受けている店舗内での業務であれば、留学生を雇用することはできません。 4. 雇用後の届出義務(外国人雇用状況届出) 留学生をアルバイトとして雇い入れた場合、および離職した場合には、すべての事業主に「外国人雇用状況の届出」が義務付けられています(労働施策総合推進法)。 手続きの方法 届出先: 管轄のハローワーク(公共職業安定所) 期限: 雇入れ・離職の翌月末日まで(雇用保険被保険者とならない外国人の届出の場合) 対象: アルバイトを含むすべての外国人労働者(特別永住者を除く) 留学生アルバイトの場合、週の労働時間が短く雇用保険に加入しないケースが多いですが、その場合でも「外国人雇用状況届出書(様式第3号)」の提出が必要です。未届けや虚偽の届出には罰金が科される可能性があるため、忘れずに手続きを行う必要があります。インターネットからの届出も可能です。 5. 卒業後・退学後の就労について 留学生の雇用において見落としがちなのが、学籍を離れた後の扱いです。 卒業後の継続雇用 留学生が学校を卒業した場合、たとえ在留カードの有効期限が残っていても、「留学」の在留資格に伴う活動は終了しています。原則として、卒業後は資格外活動許可(アルバイト)の効力も失われると解釈されるのが一般的です。 卒業後も継続して雇用したい場合は、就労可能な在留資格(「技術・人文知識・国際業務」や「特定技能」など)への変更許可が得られているか、あるいは就職活動のための「特定活動」ビザに変更し、かつ新たな資格外活動許可を得ているかを確認する必要があります。 退学・除籍となった場合 学校を中退や除籍となった場合、「留学」の在留資格の根拠がなくなります。この状態でアルバイトを続けると不法就労となる可能性が高いため、在学状況の定期的な確認(学生証の有効期限確認など)もリスク管理の一つと言えます。 6. まとめ:コンプライアンスを守った雇用を
- [日本における外国人の飲食店開業に係る論点](https://shiodome.co.jp/column/7550/) - 日本食への世界的な関心の高まりやインバウンド需要の回復を背景に、日本国内で飲食店を開業しようとする外国籍の方は増加傾向にあります。しかし、日本でのビジネス展開には、特有の法規制や商習慣が存在します。 本記事では、外国人が日本で飲食店を立ち上げる際に直面する主な論点について、実務的な観点から解説します。 1. 在留資格(ビザ)の確保:経営・管理ビザの要件 外国人が日本で飲食店を経営する場合、まず検討すべきは適切な在留資格の取得です。一般的には「経営・管理」の在留資格が必要となります。 主な許可基準 ①事業を営むための事業所(本件では飲食店舗)が本邦に存在すること。事業開始前においては当該事業を営むための事業所として使用する施設が本邦に確保されていること。 ②資本金の額等が3,000万円以上であること ③1名以上の常勤職員(日本人や永住者など)を雇用すること ④申請者⼜は常勤職員のいずれかが相当程度の⽇本語能⼒を有すること ⑤申請者が、経営管理⼜は申請に係る事業の業務に必要な技術⼜は知識に係る分野に関する博⼠、修⼠若しくは専門職の学位を取得していること、⼜は、事業の経営⼜は管理について3年以上の職歴を有すること ⑥申請人が事業の管理に従事しようとする場合は、日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること。 事業の継続性・安定性について 事業計画書を通じて、収益が見込める安定した事業であることを証明する必要があります。さらに経営・管理に関する専門的な知識を有する者による評価を受けた事業計画書が必要です。 2. 物件の賃貸借契約における留意点 飲食店開業において、物件選びと賃貸借契約は最大の難所の一つと言われています。特に外国籍の方の場合、以下のような課題が生じることがあります。 審査と保証人 日本の不動産取引では、賃貸保証会社の利用が一般的ですが、外国籍の方の場合、緊急連絡先として日本居住者を求められるケースが多く見られます。また、オーナー(家主)によっては、言語の壁や文化的な違いから契約に慎重になる傾向も否定できません。 契約の目的 居住用ではなく「事業用(店舗用)」としての契約が必要となります。また、飲食店の場合は「重飲食(煙や臭いが出る調理)」が可能かどうかの確認が不可欠です。 「法人」か「個人」か 在留資格「経営・管理」の取得を目的とする場合、原則として法人名義での契約が望ましいとされていますが、会社設立前は個人名義で仮契約を行い、設立後に法人へ名義変更を行うといったスキームが一般的です。 3. 飲食店営業許可の取得 店舗物件が確保できたら、管轄の保健所から「飲食店営業許可」を受ける必要があります。 施設基準の遵守 保健所が定める施設基準(手洗い場の設置、二槽シンク、扉付きの食器棚など)を満たす必要があります。内装工事を始める前に、設計図面を保健所に持参し、事前相談を行うことが推奨されます。 食品衛生責任者の設置 各店舗に必ず1名は「食品衛生責任者」を置かなければなりません。調理師免許を持っていない場合でも、自治体が実施する講習会を受講することで資格取得が可能です。 4. 開業に必要な資金の目安と調達 日本での飲食店開業には、多額の初期費用がかかる傾向にあります。 必要な資金の内訳 物件取得費用 保証金(敷金)、礼金、仲介手数料などで賃料の6〜10ヶ月分程度が必要になることもあります。 内装・設備費用 厨房機器や家具、内外装工事費です。居抜き物件を活用することでコストを抑える手法も一般的です。 運転資金 開業後数ヶ月分の原材料費や人件費、広告宣伝費を確保しておく必要があります。 資金調達の選択肢 自己資金に加えて、日本政策金融公庫(JFC)による融資や、各自治体の創業支援融資制度が検討対象となります。ただし、融資の審査においても、在留資格の期限や日本での実績が厳しく評価される傾向があります。 5. 日本の飲食業界の現状 現在の日本の飲食業界は、大きな変革期にあると考えられています。 インバウンド需要の拡大 観光庁のデータによれば、訪日外国人による消費額において「飲食費」は大きな割合を占めています。多言語対応やキャッシュレス決済、ヴィーガン・ハラール対応など、多様なニーズに応える店舗が注目されています。 労働力不足とDXの推進 深刻な人件費の高騰と労働力不足への対策として、モバイルオーダーシステムや配膳ロボットの導入といったデジタル・トランスフォーメーション(DX)が進んでいます。 コスト高への対応 原材料費や光熱費の上昇により、適切な価格転嫁と付加価値の提供が経営の安定に直結する状況にあります。 6. まとめ 日本での飲食店開業は、法的な手続き、不動産慣習、資金繰り、そして業界トレンドの把握など、多角的な準備が求められます。特に外国籍の方にとっては、在留資格の維持と事業運営の両立が重要です。 各ステップにおいて、最新の法令やガイドラインを確認し、必要に応じて専門家の知見を参考にしながら計画を進めることが、成功につながると考えられます。
- [在留資格「公用」に係る日本における資格要件及び申請に必要な文書等その他留意点](https://shiodome.co.jp/column/7665/) - 日本における在留資格制度の中で、外国政府の公務を遂行する方々に付与されるのが在留資格「公用」です。この資格は、外交官に準ずる公的な活動を支える重要な枠組みであり、一般的な就労ビザとは異なる特殊な性格を有しています。 本記事では、在留資格「公用」の概要、該当する活動の範囲、申請に必要な書類、および実務上の留意点について、最新の情報に基づき解説します。 1. 在留資格「公用」の概要と該当する活動 在留資格「公用」は、出入国管理及び難民認定法(入管法)において、「日本政府の承認した外国政府若しくは国際機関の公務に従事する者又はその者と同一の世帯に属する家族の構成員として行う活動(外交の項に掲げる活動を除く)」と定義されています。 該当する主な対象者 (1)外国政府の職員 外交官(在留資格「外交」)以外の、大使館や領事館の事務職員、技術職員、役務職員など。 (2)国際機関の職員 日本政府が承認した国際機関の公務に従事する方。 (3)上記の方の家族 「外交」が特権免除を伴う外交官等を対象とするのに対し、「公用」はそれ以外の公務従事者を対象としている点に特徴があります。 2. 資格要件と審査のポイント 在留資格「公用」の取得にあたっては、以下の点が主な要件になると考えられます。 公務の性質と所属機関 従事する活動が、外国政府または日本政府が承認した国際機関の「公務」であることが必須です。民間企業の業務や、個人的な営利活動は含まれません。 派遣の正当性 当該外国政府や国際機関から正式に派遣されていること、あるいは雇用されていることを証明する必要があります。これらは通常、派遣元政府等が発行する公文書によって判断されます。 3. 申請に必要な主な書類 「公用」の申請(交付申請、変更申請、更新申請)においては、派遣元政府等の公的な証明が極めて重要視されます。 基本的な提出書類 在留資格認定証明書交付申請書(または変更・更新申請書) 規定の規格を満たした顔写真 口上書(Note Verbale) 派遣元の外国政府または国際機関が発行したもの。派遣される方の氏名、官職、任務の内容、予定される在留期間などが明記されている必要があります。 (参考資料として)派遣元政府の発行した証明書や、国際機関の職員証の写しなど。 ※家族の場合 上記のほか、戸籍謄本や婚姻証明書、出生証明書など、世帯主との関係を証する公的書類(日本語訳の添付が必要とされる場合があります)。 ※個別の事案により、追加の疎明資料が求められる場合があります。 4. 在留期間と更新 在留資格「公用」に付与される在留期間は、「5年」「3年」「1年」「3月」「30日」または「15日」のいずれかとなります。 公務の遂行期間に合わせて決定されるのが一般的ですが、期間を超えて滞在が必要な場合には、在留期間更新許可申請を行う必要があります。この際も、引き続き公務に従事することを証明する新たな口上書の提出が求められる傾向にあります。 5. 実務上の留意点 「公用」の在留資格を取り扱う際には、以下の点に留意が必要と考えられます。 営利活動の禁止 在留資格「公用」は、あくまで特定の公務を行うための資格です。原則として、その本来の活動を妨げない範囲であっても、資格外活動許可を得てアルバイト等の営利活動を行うことは想定されていないのが一般的です。 家族の範囲と活動 「同一世帯に属する家族」として認められるのは、原則として配偶者や子です。家族として「公用」の在留資格を有している間は、原則として就労は認められないと解されるため、就労を希望する場合には適切な在留資格への変更を検討する必要が生じる可能性があります。 退職・任務終了後の手続き 公務を退き、引き続き日本に滞在(観光や他の就労など)を希望する場合は、速やかに他の在留資格への変更申請を行う必要があります。「公用」の身分を喪失した状態で滞在を続けることは、在留資格の取消事由に該当するおそれがあるため、注意が求められます。 6. まとめ 在留資格「公用」は、外国政府や国際機関との円滑な関係を維持するための重要な制度です。申請にあたっては、派遣元政府発行の「口上書」の内容が審査の根幹を成すため、その記載内容に不備がないよう確認することが肝要です。 また、オンライン申請の普及等により手続きの利便性は向上していますが、公的な身分に関わる手続きである以上、正確な書類準備と制度への理解が求められると考えられます。
- [在留資格「文化活動」に関する日本における資格要件と留意点とは](https://shiodome.co.jp/column/7762/) - 日本特有の文化や技芸を深く学びたい、あるいは日本において無報酬で学術・芸術活動に従事したいと考える外国籍の方にとって、有力な選択肢となるのが在留資格「文化活動」です。 本記事では、在留資格「文化活動」の該当範囲、許可を得るために必要とされる要件、申請時の必要書類、および実務上の重要な留意点について解説します。 1. 在留資格「文化活動」とは 在留資格「文化活動」は、出入国管理及び難民認定法において、以下のいずれかの活動を行う場合に付与されるものと規定されています。 収入を伴わない学術上若しくは芸術上の活動 日本特有の文化若しくは技芸について専門的な研究を行う活動 外国人の方が専門家の指導を受けて日本特有の文化又は技芸を修得する活動 この在留資格の大きな特徴は、原則として「日本国内で報酬を得る活動を行わないこと」を前提としている点にあります。 具体的な該当例 外国の大学教授が無報酬で行う調査研究、無報酬で創作活動を行う画家や音楽家など。 茶道、華道、日本舞踊、日本料理、柔道、空手、合気道、盆栽、禅の修行などの日本特有の文化・技芸の修得。 2. 許可を受けるための主な資格要件 「文化活動」の在留資格を取得するためには、主に以下の要件を満たす必要があると考えられます。 活動の専門性と継続性 単なる趣味や、一時的な体験レベルの活動では許可を得ることは難しいとされています。申請にあたっては、その道に精通した「専門家」からの指導を受けることや、活動に相応の「専門性」があることが客観的に証明されなければなりません。 経費支弁能力(資金の証明) 日本での活動が無報酬であるため、滞在中の生活費をどのように捻出するかが厳格に審査される傾向にあります。 【自己資金の場合】 本人名義の預金残高証明書。 奨学金の受給証明書。 【経費支弁者の場合】 日本在住の知人や親族が費用を負担する場合、住民税の課税(又は非課税)証明書及び納税証明書 経費支弁者が外国にいる場合は、経費支弁者名義の銀行等における預金残高証明書 受入機関・指導者の信頼性 指導を受ける師匠や家元、あるいは所属する研究機関が、当該分野において十分な実績と信頼性を有していることが求められます。 3. 申請に必要な主な書類等 申請の形態(認定、変更、更新)により異なりますが、一般的に以下の書類が重要視されます。 活動内容を証する文書 申請人又受入機関が発行した、活動の期間、内容を記載した書類。 申請人が当該活動を行おうとする機関の概要を明らかにする資料 指導者の経歴書(活動実績や資格を証明するもの )。 経費支弁能力を証する文書 学術上又は芸術上の業績を明らかにする資料(入賞、入選等の実績 、関係団体からの推薦状 、過去の活動に関する報道 など。) 日本での活動実績(更新時) これまでの習得状況や研究の進捗を示す資料。 4. 実務上の留意点 「文化活動」の在留資格を検討・保有する際には、以下の点に注意が必要であると推察されます。 就労の制限と資格外活動許可 「文化活動」は本来、就労を目的とした資格ではありません。そのため、原則として日本国内での就労は認められていません。 ただし、生活費を補う必要があるなどの合理的な理由がある場合に限り、「資格外活動許可」を取得することで、週28時間以内の範囲でアルバイト等を行うことが検討可能です。しかし、本来の目的である文化活動がおろそかになると判断されれば、許可されない、あるいは在留期間の更新に影響を及ぼす可能性も否定できません。 留学・研修との違い 留学:学校教育法に定める「学校」等での教育を受ける活動。 研修:技能・技術・知識を「実務を伴わずに」修得する活動(主に企業研修など)。 文化活動:学校以外の場所で、日本特有の技芸等を「専門家」から学ぶ活動。 どの資格が最適かは、受入先が「学校」なのか「個人(師匠)」なのかによって判断が分かれるため、注意深い検討が求められます。 在留期間の構成 付与される在留期間は、「3年」「1年」「6月」または「3月」のいずれかです。活動の予定期間に合わせて決定されますが、当初の計画以上に時間がかかる場合は更新が必要となります。
- [IT部門最適化におけるAIの活用可能性―コストセンターから事業成長の推進役へ](https://shiodome.co.jp/column/57142/) - 1. 受け身のIT部門からの脱却:AIが切り拓く新たな成長戦略 近年、中堅・中小企業はイノベーション創出と業務効率化を推進するため、AIの導入をかつてないスピードで加速させています。米国やカナダの中堅企業を対象としたRSMの調査によれば、AIの採用は中堅市場全体ですでに普遍的なものとなり、多くの組織がIT部門を含むビジネス全体へのAI統合に向けて急速に動き出しています。 一方、日本のIT市場に目を向けると、より切実な背景が存在します。深刻化するIT人材の不足や、国を挙げて推進されている働き方改革への対応が急務となっており、これらの構造的な課題を乗り越えるためにAI技術の活用がもはや避けて通れない状況にあります。総務省の最新の関連調査レポートにも明確に反映されているように、日本企業における生成AIの導入率は年々着実に上昇しており、単なる業務の代替にとどまらない、新たなビジネス価値創出に向けた取り組みが各所で活発化しています(1)。 現代の企業において、IT責任者たちは複雑化するインフラ・システムの維持管理やサイバーセキュリティの確保から、イノベーションの促進に至るまで、絶えず増加し続ける要求に直面しています。これらすべてに人間のリソースだけで対処することはもはや不可能に近く、その解決の強力な糸口としてAI技術が大きな注目を集めています。特に日本では、経済産業省がかつて提唱した既存システムの老朽化・ブラックボックス化問題がまさに現実のものとなる時期を迎えており、全社的なデジタルトランスフォーメーションの推進が急務となっています。クラウドサービスの普及とともに、AI機能が組み込まれた業務ソリューションの導入が進んでおり、高度な専門知識がなくても恩恵を受けられる環境が整いつつあります。 しかしながら、生成AIの業務利用が広がるほど、情報漏えいや既存コンテンツの著作権侵害、学習データの偏り、そして問題発生時の説明責任といったリスクも現実味を帯びてきます。だからこそ、企業は表面的な便利さだけで導入を急ぐのではなく、コンプライアンスとガバナンスを大前提に優先順位を設計し、現場業務に定着する形で段階的に価値を出していくことが極めて重要です。 2. IT運用を劇的に最適化する7つの実践アプローチ IT部門においてAIの導入効果を最大化するためには、具体的な業務領域に対してどのようにAIを適用していくかを明確にする必要があります。AIは主に7つの領域で具体的な価値を提供します。 定型業務の自動化 AI活用の最も即効性のあるメリットは、反復的な定型業務の徹底的な自動化にあります。監視アラートの一次切り分け、従業員からのパスワードリセット、パッチ適用、インシデントチケットの分類など定常的に発生する作業を人間の介入なしに処理します。運用プロセスをAIで標準化できれば業務の属人性が下がり、繁忙期の対応品質も安定します。また、作業ログが蓄積されることで改善すべき業務が可視化され、運用品質向上にもつながります。 サイバーセキュリティの強化 AIによる高度な異常検知を中核とするセキュリティの高度化も極めて重要です。膨大なログや通信データを機械学習で解析し、不審な挙動を早期に検出することで初動の遅れを劇的に減らします。AIをSOCやEDR、SIEMといった既存のセキュリティ基盤に組み込み、アラートの優先順位付けを自動化することで、限られた人員でも確実に対処可能な状態を作れます。国内でもランサムウェア被害が深刻化しており、情報処理推進機構(IPA)の「情報セキュリティ10大脅威 2026」においても、組織における脅威の第1位に挙げられています(2)。 予知保全の実現 現在のIT部門はサーバーやクラウド基盤など保守が必要なシステムを管理しています。障害発生後の事後対応では業務影響と復旧コストが大きく膨らみます。AIを用いてシステム性能やログの傾向を継続的に学習し、故障の兆候を早期に捉えられれば、計画停止での対処やクラウドリソースの最適化へと移行できます。 ITサービスマネジメントの効率化 AI搭載の高度な仮想アシスタントは、サービスデスク運営にパラダイムシフトをもたらします。一次問い合わせの受付からナレッジ検索、チケット起票までを統合し、ユーザーの体験価値を改善できます。社内利用が急増するSaaSの操作方法やアカウント関連の質問は定型化しやすく、対応時間の短縮と満足度向上を同時に狙えます。さらに問い合わせの自動集計により、教育やシステム改善が必要な業務を客観的に特定でき、積極的な改善サイクルを回せます。 データ分析による意思決定の高度化 IT部門は稼働率や運用費用など膨大なデータを収集しますが、それらを統合的に理解することは容易ではありません。AIを用いてこれらのデータを横串で分析し、コスト最適化の候補やリスクの高いシステム構成を提示できれば、経営層や業務部門との合意形成がスムーズに進みます。特にクラウド費用が増大する現在、FinOpsの観点で利用状況と費用を継続監視し、削減余地を提示する取り組みは非常に効果的です。 ソフトウェア開発の加速 開発と運用の現場でも生成AIが実務に入り始めています。コードの自動補完、テスト作成、障害調査の要約、運用手順書である運用手順書(Runbook)の作成などにAIを組み込むことで、リリース速度と品質を高いレベルで両立できます。深刻なエンジニア不足を背景に、日本国内でも導入が急速に進んでおりますが、生成されたコードを採用する際は、セキュリティ要件や品質基準に照らした熟練の人間によるレビュー工程を必ず残す設計が重要です。 ナレッジマネジメントの促進 IT環境が複雑化するにつれ、暗黙知や過去の対応履歴(ナレッジ)を共有することが極めて重要になっています。特にリソースが限られる中小企業ほどこの効果は絶大です。AIはドキュメントの自動整理や高度な情報検索を通じてナレッジマネジメントを強力にサポートします。担当者交代で知見が散逸しやすいため、運用手順書や過去の障害記録をAIで検索可能にし、誰もが情報に辿り着ける状態を作ることで、引き継ぎコストと復旧時間を下げ、業務の過度な属人化を防ぐことができます。 3. リスクを制御し価値を最大化するコンプライアンス主導の導入戦略 AI導入を真の成功に導くための優先順位は、「導入効果や利益が大きい順」ではなく、「潜在的なリスクを制御しながら安全に継続利用できる順」に置くのが現実的です。企業が最初に取り組むべきは、社内規程と運用ルールの整備です。システムに入力してよい情報、自社データの学習への利用可否、生成された出力物の取り扱い方針を明確に定義し、全社に適用します。機密情報を含む業務では、データ分類とマスキング、厳格なアクセス権限管理を前提としたシステム設計を行う必要があります。 外部のクラウドベースのAIサービスを利用する場合は、入力データがAIの学習対象となるか、国外へ移転する可能性はあるかといったデータガバナンスに関わる点を契約条項でしっかりと押さえましょう。優先度の高い実装領域としては、社内FAQに基づく一般的な手順案内チャットボットなど、機密情報を扱いにくい安全な範囲から小さな成功体験を重ねるのが鉄則とされています。その上で組織の習熟度に合わせて段階的に高度なログ分析や開発支援へと広げ、最終的に経営層の意思決定支援へと発展させる流れをお勧めします。 企業は、AIが生成したテキストが既存の著作権を侵害していないか、機密情報が学習データとして漏洩していないかといった多様なリスクに対し、厳格なガバナンス体制を構築しなければなりません。これは、消費者やパートナーからの強固な信頼獲得が長期的なビジネス成功の鍵を握ることを意味します。したがって、企業はAI導入の初期段階から法務部門と緊密に連携し、全従業員への継続的なAIリテラシー教育に取り組むことが望ましいといえます。 4. まとめ:IT部門を「事業推進の立役者」へと導くAIとの共創 人工知能という革新的なテクノロジーは、より俊敏で効率的かつ戦略的な組織へと自らを進化させようと努力するすべてのIT部門に対し、業務基盤を根本から変革する計り知れない可能性を提供しています。日々の定型業務の自動化から、サイバーセキュリティ防御網の強化、データに基づく客観的な意思決定の高度化、次世代ソフトウェア開発の支援に至るまで、AIは企業のIT運用を飛躍的に理想的な最適解へと近づけます。同時に、技術の倫理的な使用や法的なコンプライアンス対応を経営の最優先事項として位置づけることで、ビジネスリスクを最小限に抑えつつ、革新的な恩恵を安全に社会へ還元しやすくなります。 日本のIT市場が直面する深刻な労働力不足やインフラの複雑化といった課題を乗り越えるためには、AIテクノロジーを単なる効率化のツールとしてではなく、企業全体のビジネス価値を新たに創出する不可欠な戦略的パートナーとして明確に位置づける必要があるでしょう。AIを活用することで、ITチームはシステムに問題が起きてから対応する受け身の組織から完全に脱却できます。そして、自ら先を見据えて企業の成長をプロアクティブにリードする「事業推進の立役者」へと生まれ変わることが期待されます。 企業がこれからの厳しい市場競争力を維持し、次世代のイノベーションへと確実につなげていくうえでは、部門の壁を越えた全社的なAIの活用を推進することが不可欠です。それと同時に、安全で責任ある運用体制との両立に向けて、具体的かつ戦略的な一歩を、今すぐ踏み出していくことが望ましいといえます。 参考文献 (1) 総務省の「令和6年版情報通信白書」(2) 情報セキュリティ10大脅威 2026 | 情報セキュリティ | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
- [「シンガポール法人」と「シンガポール支店」の比較](https://shiodome.co.jp/column/7888/) - シンガポールに進出する場合に、よくご質問をいただくのがこのテーマです。シンガポール法人を設立して進出するべきか、日本法人のシンガポール支店という形で進出するべきか、というご質問です。 法人と支店は事業体としての根本的な考え方が違います。したがってシンガポール進出の際には一番最初に慎重に検討しなければならない項目です。シンガポール法人とシンガポール支店の比較についてまとめました。 1. シンガポール法人とは? シンガポール法人とは、シンガポールの法律に基づいて成立した法人です。シンガポール法人は、日本法人とは事業体として別個の存在となります。自然人と同じようにシンガポール法人自体が全ての権利義務の帰属主体になります。したがってシンガポール法人は自らが法的行為を行うことができます。 2. シンガポール支店とは? シンガポール支店とは、シンガポールの法律に基づいて外資系企業(ここでは日本企業)の拠点として登録されたものをいいます。シンガポール支店を設置する場合は、シンガポール支店において代表者を定めて登録をする必要があります。シンガポール支店での意思決定や、債権債務に関する責任は最終的には日本の本店にあり、シンガポール支店はあくまで日本起業に内包されるものとして扱われることとなります。また、当該支店と日本の本店は、同一の企業内部における独立した会計単位となります。 3. シンガポール法人のメリット・デメリット ① メリット シンガポール法人設立のメリットとしては以下があげられます。 シンガポール法人は日本法人から法的に独立しており、シンガポール法人に対して発生した負債はシンガポール法人の払込資本までの有限責任となる。 シンガポール法人の利益はシンガポールの税率によって課税されるため、低税率の恩恵を受けることができる(別途、タックスヘイブン対策税制や移転価格税制の検討は必要です)。 シンガポールで工場を建設したり、特殊なビジネスを行う場合には、シンガポールで必要となる許認可取得の関係でシンガポール法人の方が受け入れられやすい。 ② デメリット シンガポール法人設立のデメリットとしては以下があげられます。 シンガポール法人が赤字の場合、日本法人の利益と相殺することはできない。 シンガポール法人と日本法人との金銭のやり取りについては、資金貸借(貸付金・借入金など)として取り扱う等の検討が必要。 シンガポール法人が日本法人に配当として送金する場合課税される場合がある(ただし外国子会社配当金益金不算入制度の適用あり) 4. シンガポール支店のメリット・デメリット ① メリット シンガポール支店設立のメリットとしては以下があげられます。 支店が赤字の場合、本店の利益と相殺して本店で節税することができる。 本支店間の資金移動は自由であり配当として課税されることはない。 シンガポール支店はにおいては株主総会や取締役会等の開催が不要となり、本店で迅速な意思決定が可能となる。 コンプライアンスのため必要な作業は法人よりも支店の方が簡易である。 シンガポール支店の閉鎖(撤退)は比較的容易である。 ② デメリット シンガポール支店設立のデメリットとしては以下があげられます。 シンガポールで生じた法的責任・訴訟等の影響が日本の本店まで及んでしまう。 日本の本店(日本法人)の定款や履歴事項証明書(登記簿謄本)等を英語に翻訳する必要がある。 支店設立後に法人への移行はできないので、改めてシンガポール法人の設立を行う必要がある。 シンガポール支店の利益は、シンガポールと日本とで二重課税が生じる可能性がある。仮に外国税額控除により二重課税が解消されても、シンガポールの所得に対して日本の法人税等の税率が課せられるため節税メリットは享受できない。 5. まとめ 上記を踏まえますと、日本や世界での信頼、社歴、ブランド力などを上手く活用できる銀行・航空会社等の大企業であれば支店を設立することにメリットがあると考えられますが、シンガポールに進出する日本の中小企業であればやはりシンガポール法人を設立することが一般的です。 一方で策定したシンガポールビジネスに関する事業計画において、当初赤字が見込まれる場合にはシンガポール支店としてビジネスをスタートしたほうが、この赤字を日本の本社の利益と相殺することが可能です。タックスプランニングの観点からシンガポール支店を設立することもあります。しかしながら、シンガポールで利益が計上されてきた場合には、当該赤字の金額(繰越欠損金)は、シンガポール法人で計上される利益ともちろん相殺可能ですので、この点も検討すべきです。 「法的観点」「事務処理的観点」「税務的観点」などを総合的に勘案し、シンガポール法人とすべきか、シンガポール支店とすべきかを検討する必要があるといえるでしょう。メリットやデメリットに注目するのみならず、中長期的な海外事業成功の視点で形態を決定することも重要です。 日本企業のシンガポール支店の設立については対応できるコンサルティング会社が少ないのが現状です。RSM汐留パートナーズではシンガポール在住の取締役が精通しており対応が可能ですので、時々ご支援をさせていただいております。といいましても95%くらいの日本企業のお客様はシンガポール法人の設立を選択されています。
- [効果的なAIビジネス戦略の構築方法](https://shiodome.co.jp/column/57135/) - 現代のビジネス環境において、AI(人工知能)テクノロジーは目まぐるしいスピードで進化を続けています。数年前までは、高度なAIは一部の巨大テック企業が扱うものと思われがちでした。しかし現在では、生産性の向上や業務効率化、そして新たな価値創出を支える技術として、企業規模を問わず多くのビジネス現場に浸透しつつあります。 従来のITシステムが主に「記録と計算」を得意としていたのに対し、近年の生成AIをはじめとする技術は「推論と創造」の領域をサポートするまでに成長しています。定型業務の自動化から高度な意思決定の支援に至るまで、AIは企業のあり方そのものを変革する可能性を秘めています。 本コラムでは、北米市場の先行する調査データと日本国内の現状を比較しながら、多くの企業が直面しやすいAI導入の壁を整理します。そのうえで、効果的なAIビジネス戦略をどのように構築し、実行していくべきか、その現実的な道筋について紐解いていきます。 1. データで見るAI導入の現在地:北米と日本のギャップ まず、世界的な視点で見ると、AIのビジネス利用は着実に広がりを見せており、 RSMが実施した中堅企業向けAI調査レポートによると、北米の対象企業の91%が業務において何らかの形でAIを使用していると回答しました。これは、業種を問わずAIがビジネスインフラの一部として定着し始めている傾向を示しています(1)。 一方、日本国内の状況は北米市場とは異なり、帝国データバンクが実施した調査結果によると、日本企業でも生成AIに対する関心は非常に高いものの、業務で「活用している」と回答した企業は全体の1〜2割程度にとどまり、「活用を検討している」層を含めてようやく半数に満たすケースが多く報告されています(2)。また、総務省の「情報通信白書」においても、日本のデジタル化(DX)の課題として「人材不足」や「費用対効果の不透明さ」が上位に挙げられており、AIの実業務への本格的な導入・定着には依然として慎重な姿勢が見受けられます(3)。 しかし、ここで注目すべきは日米で共通している課題の存在です。AI先進国に見える北米の先鋭的な企業であっても、すべてがスムーズに導入できているわけではありません。前述のRSMの調査では、AI導入企業の実に92%が何らかの壁に直面しており、62%が「生成AIの導入は予想以上に困難だった」と吐露しています(1)。 これらの課題は、日本企業も同様に抱えており、日本特有のビジネス環境においてはより深刻な障壁となり得ます。例として、部門ごとにデータがExcelなどで個別管理されている「データのサイロ化」や、長年現場に根付いている紙ベースのアナログな業務プロセスが残っているケースは枚挙にいとまがありません。こうした現状が、AI活用の大前提となる「クリーンなデータの整備」を阻む大きな足かせとなっていると考えられます。 2. 戦略なき導入は頓挫する:アセスメントの重要性 多くの企業が陥りがちな罠があります。それは、「他社が続々と導入を始めたから」「話題の最新技術だから乗り遅れてはいけない」といった焦りから、明確な経営戦略を持たずにAIツールの導入を急いでしまうことです。 例えば、「とりあえず全社員に生成AIのアカウントを付与してみたものの、一部のITリテラシーが高い社員しか使っておらず、組織全体の業務効率化にはまったくつながっていない」という失敗ケースは、日本企業でも頻繁に耳にします。これは典型的な「手段の目的化」と言えるでしょう。 RSMの調査でも、AI導入企業の半数以上が「準備不足のまま導入してしまった」と感じており、70%が「AIソリューションから効果を引き出すには外部専門家の支援が必要」と回答しています(1)。これは、AIの活用が単なるソフトウェアのインストールではなく、組織や業務プロセスの見直しを伴う取り組みであることを読み取れます。 AIの潜在能力を安全かつ効果的に引き出すためには、具体的なツール選びに走る前に、以下の2つのステップを確実に踏むことが強く推奨されます。 AI戦略の策定 自社のビジネス目標(売上の拡大、コストの削減、リスクの回避など)を明確にし、それに直結する具体的なユースケース(活用シナリオ)を特定します。目的が不明確なままAIを導入しても、現場で使われずに終わってしまうリスクが高まります。 準備状況のアセスメント(Readiness Assessment) 自社のデータ基盤、ITインフラ、そして従業員のスキルレベルを客観的に評価します。データガバナンスやセキュリティの社内ルールが未整備のまま走り出せば、情報漏えいや不適切なデータ利用といった思わぬリスクを抱えることになりかねません。 3. AIによる価値創造:期待される4つの柱 事前の準備を整え、戦略的にAIを活用することで、企業は具体的にどのような価値を得ることが期待できるのでしょうか。主に以下の4つの柱に整理されます。 売上の創出 顧客データを分析し、パーソナライズされた提案や柔軟な価格設定(ダイナミックプライシング)を行うことで、顧客単価や成約率の向上を図ります。人口減少が懸念される国内市場において、顧客生涯価値(LTV)の最大化を支援することが期待されます。 コストの削減 手作業の自動化による時間的コストの削減にとどまらず、エネルギー効率の最適化やリソース配分の見直しを通じて、中長期的な固定費の削減に寄与できます。 効率性の向上 膨大なデータから人間では気づきにくい洞察を導き出し、意思決定をサポートします。物流・建設業界などで人手不足が深刻化する「2024年問題」などに直面する日本企業にとって、AIによる在庫管理や配送ルートの最適化は、有力な解決策の一つとなります。 品質の安定と向上 ヒューマンエラーを減らし、製造業における外観検査やサービス業における対応品質を均一化することで、ブランドへの信頼性を高める効果が予想できます。 4. 成功へ導くための実践的フレームワーク AI導入に「これをやれば必ず成功する」という決めたルートはありませんが、リスクを抑えながら成果に近づくための現実的なステップは存在します。 5. まとめ:AIを経営戦略の一要素として捉え直す AIテクノロジーが今後どのように発展していくか、その全貌を正確に予測することは誰にもできません。しかし確かなことは、AIという新しい力を活用して自社の業務プロセスを根本から見つめ直し、データに基づいた新たな価値を生み出そうと試行錯誤する企業努力が、今後の厳しいビジネス環境を生き抜くための基礎体力になるということです。 日本企業が長年抱えてきた労働力不足やレガシーシステムの壁を乗り越え、持続的な成長を遂げていくためには、AIを単なる「一部の部署が使う便利なツール」として扱うのではなく、「全社的な経営戦略を実現するための中核要素」として捉え直す視点が求められます。 強固なデータ基盤の構築や高度なAI人材の育成を、すべて社内のリソースだけで解決しようとすることは非現実的かもしれません。変化の激しい時代においては、最新の知見と実装経験を持つ外部の専門パートナーの伴走支援を活用し、ノウハウを吸収していくことも選択肢の一つです。 AIの波は、様子見をする未来の出来事ではありません。今こそ、確固たる「戦略」と、自社の現状を直視する「アセスメント」という土台の上に、企業にとって最適なAI活用の道筋を描き始めてみてはいかがでしょうか。 参考資料 (1)RSM Middle Market AI Survey 2025: U.S. and Canada(2)生成AIの活用に関する企業アンケート|株式会社 帝国データバンク[TDB](3)総務省|令和6年版 情報通信白書
- [シンガポールの会社の法人税率・税金納付について](https://shiodome.co.jp/column/7852/) - シンガポールに進出するメリットの1つに、シンガポールが非常に低税率であることがあげられます。以下、シンガポールの法人税率・税金納付についてについてご紹介します。 1. シンガポールの法人税率 シンガポールでは、法人所得税の税率が徐々に下がってきており、現在は17%となっています。シンガポールは中小企業にとって多くの税の恩恵を受けることができる魅力的な国です。 以下の要件を満たす新設のシンガポール法人は、最初の3年間は100,000SGDまでの課税所得は免税となります。 シンガポールにて設立された法人であること シンガポールの税務上の居住であること 株主が20名以下であること 少なくとも1名が10%以上の株式を保有していること シンガポールでは地域によって税率が異なるようなことはありません。1つの都市国家として地方税がないため、国税のみが課税されます。 2. シンガポールの法人税の納付方法 シンガポールにおいては、インターネットバンキングか、GIROかによる納付を行います。GIROとはシンガポールで用いられる銀行口座振替制度です。なお納付は、1回払いか分割払いかになります。
- [クラウド会計ソフト「freee」がもたらすバックオフィスの変革](https://shiodome.co.jp/column/57122/) - ビジネス環境が急速に変化し、慢性的な人手不足が叫ばれる昨今、多くの企業にとって「バックオフィス業務の効率化」は、もはや後回しにできない喫緊の経営課題となっています。かつて、経理や人事、総務といった間接部門は、直接的に利益を生まない「コストセンター」として見なされがちでした。しかし、労働人口が減少し続ける現代の日本において、これらバックオフィス部門の生産性をいかに高めるかが、企業が市場で生き残り、さらなる成長を遂げるための重要な鍵を握っています。 本コラムでは、現在多くの企業で導入されているクラウド会計ソフト「freee(フリー)」に焦点を当てます。また、当社の強みである「会計税務・人事労務・法務サービス」とfreeeを組み合わせることで実現できる、本質的なバックオフィス改善策も併せてご紹介します。 1. クラウド会計ソフト「freee」とは?その市場価値と選ばれる理由 フリー株式会社が提供する「freee会計」は、単なる「パソコンで帳簿をつけるための単体ソフト」ではありません。「スモールビジネスを、世界の主役に。」というミッションのもと、企業の経理だけでなく、人事労務、販売管理、経費精算などをクラウドで一元的に管理できる「統合型クラウドERP」を目指して開発されています。 現在のクラウド会計市場において、freeeは常にトップクラスのシェアと人気を誇っています。他システムと比較しながらも、個人事業主から上場企業に至るまで、幅広い規模・業種の企業に選ばれ続けていることが分かります(1)。 その高い市場価値を支える最大の要因は、「会計の専門知識やITの深い知識がない人でも直感的に使えるデザイン(UI)」にあります。これまでの従来の会計ソフトは、簿記の知識があることを前提に作られており、画面には「借方」「貸方」といった専門用語がズラリと並んでいました。しかしfreeeは、家計簿アプリの延長のような親しみやすい操作感を実現しました。現場の営業担当者や、数字を把握したい経営者自身が、分厚いマニュアルを読み込むことなく、自然と経営の「今」の数値を把握できる仕組みを作り上げました。この「誰にでも分かりやすく、扱いやすい」という点こそが、IT化にハードルを感じている多くの日本企業に高く評価され続けている理由です。 2. freeeのない会社はどのような課題に直面しているか?そこから読み取れる社会問題 では逆に、freeeのようなクラウド型システムを導入せず、従来のやり方を続けている企業は、どのような課題に直面しているのでしょうか。大きく分けると、以下3つの「見えないコスト」と「経営リスク」を抱えています。 ① アナログな手作業による膨大な時間的コスト 紙の領収書を一枚ずつ集め、エクセルに手入力し、銀行の通帳の記帳内容と見比べながら入金確認を行う。月末月初になると、経理担当者が夜遅くまで残業して電卓を叩き、営業担当者は経費精算のハンコをもらうためだけに出社する。こうした光景は、現在では明らかに企業の生産性を低下させ、従業員の貴重な時間を奪う要因となっています。 ② 業務の属人化とブラックボックス化 「このエクセルのマクロは、作ったAさんにしか直せない」「この帳簿の付け方は、長年経理を担当しているBさんの頭の中にしかない」という状態は、企業にとって非常に危険な状態です。担当者の急な退職や病気による休職が発生した途端、たちまち会社の血液である「お金の管理」がストップしてしまうリスクを常に抱えていることになります。 ③ 「2025年の崖」と人材不足 これらの課題の根底には、日本社会全体が直面している「少子高齢化と深刻なIT人材不足」があります。経済産業省が公開した関連レポートで早くから警告されていた通り、古いシステム(レガシーシステム)や紙ベースの業務フローから脱却できない企業は、維持管理に莫大なコストがかかるだけでなく、データを経営に活かすことができず、市場競争から転落するリスクを抱えています。また、最新の調査結果からも読み取れるように、DXに成功して業績を伸ばす企業と、アナログな業務から抜け出せず人材確保に苦しむ企業との「二極化」は、年々明確になりつつあります(2)。バックオフィスのデジタル化は、「便利だから導入する」というフェーズをとうに過ぎ、「企業が生き残るために必須の生存戦略」となっているのです。 3. 代表的なシステムとの比較でわかるfreeeの活用方法 企業のバックオフィス改善を検討する際、freeeのほかに「マネーフォワード」や「弥生会計」などその他の会計システムと迷われるケースが非常に多く見られます。また、「Salesforce(セールスフォース)」や「ジョブカン」といったシステムとの違いについてご質問をいただくことも少なくありません。ここでは、それぞれの特徴を比較することで、freeeの独自性と活用方法をより明確にします。 ① マネーフォワード・弥生との比較:「誰が」使うシステムか マネーフォワードや弥生会計は、これまで「借方・貸方」などの仕訳をきっちり切ってきた「経理のプロ」にとっては、非常に馴染みやすく使い勝手の良い素晴らしいシステムです。しかし、ITや簿記の知識がない経営者や現場の営業担当者が触るには、少しハードルが高い側面があります。対してfreeeは、「そもそも簿記を知らなくても経営数値が作れる」ことを目指して設計されています。専門的な経理部隊を持たない企業や、現場のスタッフ自らが経費精算や請求書発行を行う企業にとって、freeeの「直感的な使いやすさ」は圧倒的なメリットとなります。 ② 他領域システム(Salesforce、ジョブカン等)とは対立ではなく「連携」する 一方で、世界的な営業支援システムである「Salesforce」や、勤怠管理に特化した「ジョブカン」などは、そもそも会計ソフトではありません。これらは比較対象というよりも、freeeと「連携して効果を最大化する」ためのパートナーとなります。例えば、Salesforceで獲得した受注データをfreeeに自動連携させれば、営業担当者が入力したデータがそのまま経理の請求書発行や売上計上に直結します。「営業と経理の壁」を取り払い、他社の優れたシステムとも柔軟に繋がりながら全社的なデータの一元化を実現できる点も、拡張性の高いクラウドERPであるfreeeの大きな強みです。 4. RSM汐留パートナーズが提供できる価値 ここまで、freeeの優れた機能や特徴について解説してきました。しかし、「どんなに優れたシステムでも、ただ導入しただけでは企業の課題は完全に解決しない」ということも、念頭に置く必要があります。 多くの企業が陥りがちな罠は、新しいシステムを導入したにもかかわらず、その後の「日々の運用」や「専門的な判断」を自社の限られたリソースで抱え込んでしまうことです。どれほど入力が自動化されても、最終的な税務申告の妥当性判断や、複雑な給与計算、法務的なリスクチェックなどは、専門知識を持つ「人」の手が不可欠です。 ここがまさに、当社が企業様にご提供できる最大の「付加価値」です。当社は、単にfreeeの初期設定をお手伝いするだけのITベンダーではありません。「会計税務」「人事労務」「法務」という大きく3つの領域において、専門家による専門的なコンサルティングサービスを提供し、バックオフィス業務を丸ごとサポートいたします。 「システム(freee)」が定型業務を自動化し、「専門家(RSM汐留パートナーズ)」が高度な判断や複雑な実務を代行する。この強力なタッグにより、導入企業はITの専門知識や、経理・労務の採用難に悩まされることなく、自社のバックオフィスを完全に最適化することができます。 企業様が本当に注力すべきなのは、領収書の整理でも、給与計算のダブルチェックでもありません。自社の「本業」を通じて売上を上げ、事業を成長させることです。「自社にはITや管理部門に詳しい人材がいない」「日々の事務作業に追われて本業に集中できない」と悩まれている経営者様やご担当者様。現在の業務体制に少しでも限界や課題を感じていらっしゃる場合は、ぜひ一度、当社の「SaaS導入支援サービス」をご確認いただければ幸いです。企業様のビジネス成長を、当社の専門家チームが全力で伴走支援いたします。 参考資料 (1)freee 会計とは?価格・機能・使い方を解説|ITトレンド(2)「DX動向2025」本文
- [シンガポールの税務調査について](https://shiodome.co.jp/column/7992/) - 本日は、シンガポールの税務調査についてご紹介いたします。 1. シンガポールの確定申告とは? シンガポールは、日本と同様、国民には納税の義務があります。しかし、日本とシンガポールでは、さまざまな点において、納税方法や、確定申告、また税務調査の内容などもそれぞれ異なります。また、シンガポールは、日本と比較すると法人税率がとても低く設定されているのが特徴です。 まず、日本では、確定申告の場合、納税者自身が申告を行わなければなりません。そして、その申告をした金額により、それぞれが納税をするという形になります。もしも、申告をした金額に誤りがあれば、日本の場合には税務当局で確認が行われる形になります。そしてその後、個人で修正申告を行うことが必要となります。 一方で、シンガポールの場合、納税者は個人の年間の所得を申告するだけで、その課税額は税務当局が決定するという形になります。そのため、課税額が決定すれば、納税者にその時点で通知がされます。そして納税するという流れになるのです。 2. シンガポールの税務調査とは? 日本の税務調査と、シンガポールの税務調査は、全く異なっています。日本の場合には、税務調査のため調査官が会社を訪れることがあります。また関連する書類などを閲覧したりすることもあります。 しかし、シンガポールでは税務調査などのために調査官が会社を訪れたり、また関連した書類を閲覧したり、こういったことはほとんどありません。シンガポールの税務調査は、主に机上調査、そして実地調査・査察調査という風に決められているのです。 このためシンガポールでは、法人そして個人所得税に関する税務調査については、直接調査官が会社を訪れたりするといったようなことはなく、書面上でのやりとりとなるのです。もしも税務調査で疑問点や不明点があれば、文書などをやり取りし、そして解決をするという方法になります。 3. 税務調査の対象期間は? シンガポールでの税務調査の対象期間ですが、2007年以前の会計書類の場合には6年間、2008年度以降の会計書類の場合には4年間というように定められています。これらの期間は税務調査の対象となりますので注意をすることが必要です。書類などは破棄しないようにし、しっかりと保管をすることが義務付けられているのです。 また納税を怠ると追徴課税などがかかってきてしまうのは日本と同じですので、しっかりと納税をするようにしましょう。
- [シンガポールのビジネスライセンス(許認可)](https://shiodome.co.jp/column/7829/) - 進出先として人気を得ているアジアの国の一つがシンガポールです。暮らしやすいことや同じアジアの先進国であることから、多くの日本人が移住を検討する国でもあります。またビジネスも盛んであり、この地を拠点としてビジネスを拡大していこうと考えている企業もたくさんあります。 しかし外国でビジネスをスタートさせることは、決して容易なことではありません。進出して行う事業の内容にもよりますが、その国でその仕事をしてよいというビジネスライセンス(許認可)を取得し、その後ビジネスに必要な準備を行っていかなければなりません。 本日はどのような業種でどのようなビジネスライセンスが必要なのかをご紹介いたします。 1. 職業の種類とライセンスについて シンガポールでのビジネスライセンスと許可申請機関の例についてご紹介します。 ・スーパーマーケットなどでの販売業 ⇒国家環境庁のライセンス ・包装機器の販売業 ⇒メディア開発庁のライセンス ・携帯電話をはじめとする通信機器の販売業 ⇒情報通信開発庁のライセンス ・医薬品・化粧品・タバコの販売業 ⇒健康科学庁のライセンス ・製造業 ⇒経済開発庁のライセンス ・建設業 ⇒専門技術者庁のライセンス ・銀行業・保険業・証券の取り扱い業 ⇒金融庁のライセンス ・学校経営 ⇒教育省のライセンス ・旅行業 ⇒観光局のライセンス ・不動業 ⇒都市再開発庁のライセンス 2. ライセンス取得に伴う絶対条件とは どこの国の場合でも基本的に同様ですが、シンガポールでのビジネスライセンスの取得も決して容易なものではないといえます。 ライセンスを取得できる個人は取締役のみとなります。当該取締役はいくつかの講義等を受講しなければならず、その後でなければライセンスは与えられません。つまりシンガポール法人の取締役がシンガポールに住んでいない限り、講義のために何度もシンガポールを訪れる必要があり、交通費や宿泊費が必要となります。 加えて金融関係のビジネスライセンスに関しては、資本金や過去の実績が重要視されます。また建築関係や商社の場合には大量の資金や信用が必要となります。そのため、日本の企業がこれらのビジネスをシンガポールで展開していくためには、慎重で綿密な計画が必要となります。 シンガポールはアジア圏内の国だけではなく、世界中から注目されるビジネス国です。そのため事業の大幅拡大を目指し、この国に拠点を置くことには大きなメリットがあるといえます。そのためにはビジネスライセンスが必要となることがあるので、状況をきちんと把握した上で必要なビジネスライセンスの取得に臨むべきです。
- [海外進出コンサル会社の種類と得意領域](https://shiodome.co.jp/column/7963/) - 海外進出を検討する際に利用するコンサルティング会社やコンサルタントについて、コンサルティングファームの種類やサービスの特徴についてご紹介させていただきます。また、数あるコンサルティングファームの中から、自社にマッチした最適なコンサルティングファームの選び方ついてもご紹介させていただきます。 1. 海外進出支援コンサルについて 各コンサルティング会社が海外進出に関するどの分野に精通し、具体的にどのようなサービスを提供しているのかについて把握しておくことが必要です。まず、海外進出に関するコンサルティング会社を下記の7つに分類したいと思います。 (1)市場調査系(2)会社設立・法務系(3)ビザ・移住系(4)会計・税務系(5)人事・労務系(6)不動産系(7)経営戦略系 2. 各タイプの特色について (1) 市場調査系コンサルティング会社 海外進出をする場合には、まず”商品・サービスは現地に受け入れられるのだろうか”、“競合他社にはどういったところがあるのだろうか”という点について関心があるかと思います。そのような場合には、市場調査系・マーケティング系のコンサルティング会社に依頼しましょう。 市場調査とは、消費者の需要を調査して分析し、人々に求められる商品やサービスを選定することです。コンサルティング会社の中でも、現地に移住した日本人が運営している会社や、日本から調査を行う会社など、様々です。 製品・サービスの現地での展開にあたり、許認可が必要になってくる場合もありますので、そういった事情に詳しいコンサルタントに相談することを推奨いたします。 (2) 会社設立・法務系コンサルティング会社 海外進出が決定しましたら、法人の設立などを代行しているコンサルティング会社を選定します。現在はインターネット上で自分で設立手続を完結できてしまう国もありますが、確実性を考えるならば代行している会社へ依頼することが堅実でしょう。また、海外では現地の法律事務所が法人設立代行サービスを行っていることが一般的です。 (3) ビザ・移住系コンサルティング会社 将来的な移住も視野にいれて、海外進出を検討されている方もいらっしゃると思います。移住に必要な要件や、ビザ取得の難易度については国によって様々です。億単位の資金が必要となる国の一方、日本人であればビザがなくても1年間ほど滞在できる国もあります。 各国のビザを取得する場合には、ビザ&移住系コンサルティング会社に相談されることを推奨いたします。こちらも企業派遣ビザの専門家や、富裕層の移住の専門家など、会社によって様々な特色があります。 (4) 会計・税務系コンサルティング会社 法人を運営していくためには、財務会計・税務の外部サポートを利用するか、会計税務業務に精通した人材を雇用する必要があります。設立直後の人材採用は条件や文化それぞれの面でハードルが高いので、まずは海外と日本の両方の税金を理解した上で経理・財務業務、節税対策等のコンサルティングを提供している、会計・税務コンサルティング会社を利用するのが得策でしょう。 日本国内では、「公認会計士」や「税理士」が一般的にはこのような会計税務サービスを提供しています。海外では「税理士」にあたる資格がない国もあり、その国の会計士が記帳から税務申告まで全て行っている場合もあります。 その他の会計税務系コンサルティング会社の領域としては、海外進出や事業拡大における現地の会社のM&A(事業買収・企業買収)を検討する場合のアドバイザリー業務などがあります。 (5) 人事・労務系コンサルティング会社 海外進出した後に、人材を採用する場合は人事・労務系のコンサルティング会社に依頼することとなります。「外国人1人あたりの雇用につき、現地人を〇人雇用すること」といったことが法律で決まっている国もあります。こちらでは、人材の採用・確保、雇用契約の締結、社会保険・労働保険の各種手続、給与計算、人事・制度設計など広範な業務を提供しています。採用業務を行わず、給与計算業務だけを必要とする場合は、(4)の会計・税務系コンサルティング会社が対応可能な場合もあります。 日本では、国家資格を有する社会保険労務士へ人事に関する手続を依頼することが一般的かと思いますが、海外ではこちらに相当する資格がある国はあまりありません。 (6) 不動産系コンサルティング会社 海外移住や出店において、不動産の契約・取得は欠かせません。現地の商慣習は日本と異なる点も多いため、海外においても日本語で相談し、詳細を確認しながら慎重に進めていくことができるのが一番です。日系の不動産賃貸仲介会社が進出している国や、現地在住の日本人が経営している会社があれば、そちらに依頼できれば安心だと思います。 また、現地では日本人といえども融資が難しい場合もありますので、一定額の現金を用意しておく必要があります。 (7) 事業系コンサルティング会社 事業コンサルティング会社は、事業戦略の立案から実行支援までを行います。戦略系コンサルティング会社ともいわれます。グローバルに展開する著名なコンサルティングファームには、マッキンゼー・アンド・カンパニー(McKinsey & Company, Inc.)、ボストンコンサルティンググループ(BCG)、アクセンチュア(Accenture)などがあります。 ただ、一般的にはこういったコンサルティングファームの報酬は高額なため、コンサルティングファームに依頼するか、それとも自分たちの足で稼いだ情報を使い、人脈を広げながら事業を行っていくかという検討をする必要があるかもしれません。市場自体がそこまで大きくない国への進出の場合は、地道にコネクションを広げながら事業を成功されている企業が多いように感じます。 3. RSM汐留パートナーズについて 海外進出コンサルティングサービスを提供しているRSM汐留パートナーズ株式会社は、グローバルな視点から会計・ビジネスのアドバイザリーを提供する RSM Internationalの日本メンバーファームです。 RSM Internationalは、世界120ヶ国以上に展開するグローバルネットワークである会計事務所グローバル・ネットワークです。56,000人を超すプロフェッショナルメンバーが属しており、監査、税務及びフィナンシャルアドバイザリーサービス等の各種高品質な専門サービスを独自のネットワークを通じて各国で提供しています。 業務内容としましては、主に本コラム(2)(3)(4)(5)の範囲を強みとしております。海外進出に関する会社設立手続から、その後の会計・税務、労務、法務サービス、その他ビジネスソリューションをご提供させていただきます。まずはお気軽にご連絡ください。
- [海外での法人銀行口座開設の手続概要・注意点について](https://shiodome.co.jp/column/7964/) - 日本企業の海外進出において、まずは会社設立の手続を最初に行い、その後に法人口座の開設といった形で進める場合が一般的でしょう。今回は、RSM汐留パートナーズの海外進出プロジェクトの経験をもとに、法人銀行口座開設の一般的な流れと注意点についてご紹介させていただきます。また、実際は進出先の国や業種等によりケースバイケースとなる点、どうかご了承ください。 提出書類について 例えば、日本の会社が現地法人を設立する場合、主に次のような書類を準備する必要があります。 (1)定款や納税番号の発行通知など、新設法人に関する書類(2)親会社の決算書や履歴事項証明書(英訳したもの)(3)代表者や取締役のパスポートの写し、住所証明 提出書類は国によって様々ですが、上記3つについては共通して必要となる印象です。また、最近はマネーロンダリング防止等のため、提出書類は増加傾向にあり、審査も厳格化しています。(2)については、さらに英訳後の書類へ代表者が署名したものを提出する必要がある場合や、日本において公証役場で公証を受けてから、設立先の国へ書類を提出する場合もあり、書類の準備に想定外に時間がかかってしまうこともあります。余裕をもったスケジュールで進めていくことが大切です。 1. 法人口座開設の一般的な流れ 続いて、法人口座開設の一般的な流れについてご紹介いたします。時差や日程調整などの理由から、1~2か月程度はかかります。 (1)提出書類の準備 上記「1.提出書類について」をご確認ください。 (2)インタビュー 口座開設に関する面接(インタビュー)があります。インタビューでは、現地での事業内容の概要、売上見込み・経費の内容などについて確認されます。口座の署名権者の他に、現地での事業内容の詳細を把握している方の出席が必要となるでしょう。 インタビューの実施方法については、主に次のようなパターンに分けられます。なるべく負担のない方法を選びましょう。 口座の署名権者が実際に現地へ渡航してインタビューを受ける必要がある国 Skypeなどのツールを使用し、オンラインでインタビューを行うことが可能な国 現地居住者の取締役などに委任し、インタビューが不要となる国 (3)デポジットの入金 インタビューが完了し、法人口座開設の審査に通りましたら、デポジット(口座最低維持金額)の入金です。海外では、口座維持や会社設立のために一定額を入金する必要がある国が多いです。また、法人設立手続の一環として、資本金の何割かを入金することが求められる国もあります。 2. 口座開設の注意点 法人口座開設についての必要書類や一連の流れについてご紹介させていただきました。全体的に、マネーロンダリング防止の観点等から、口座開設の審査は年々厳しくなっているのが実際のところです。RSM汐留パートナーズでは、会社設立手続の一環として、現地のRSM Internationalの事務所と連携して口座開設サポートを行っておりますが、実際に審査がおりなかったこともあります。口座開設は決して簡単ではない点、どうかご留意いただければと思います。 3. RSM汐留パートナーズについて 海外進出コンサルティングサービスを提供しているRSM汐留パートナーズ株式会社は、グローバルな視点から会計・ビジネスのアドバイザリーを提供するRSM Internationalの日本メンバーファームです。 RSM Internationalは、世界120ヶ国以上に展開する会計事務所グローバル・ネットワークです。56,000人を超すプロフェッショナルメンバーが属しており、監査、税務及びフィナンシャルアドバイザリーサービス等の各種高品質な専門サービスを独自のネットワークを通じて各国で提供しています。 海外進出に関する会社設立手続(本コラムでご紹介した銀行法人口座開設サポートを含みます)から、その後の会計・税務、労務、法務サービス、その他ビジネスソリューションをご提供させていただきます。まずはお気軽にご連絡ください。
- [香港法人のBR更新&AR提出の手続き](https://shiodome.co.jp/column/8018/) - 香港法人の運営上、毎年必ず行わなければならない手続きがあります。香港法人が年次でどのような手続きを行う必要があるのかをご紹介します。 1. 年度更新手続(BRの更新) 事業登録証明書(Business Registration、略称BR)とは香港で事業を行う際に必要となるものであります。社名、法人番号、住所、業務内容、有効期間などが記載されています。ただし、日本でいう履歴事項証明書(登記簿謄本)とは異なり、有効期限は通常1年となっており毎年更新が必要となります。 2. 年次報告書提出手続(ARの提出) 年次報告(Annual Return、略称AR)とは、香港法人が香港会社登録所に提出する年1回の報告資料です。ARには、社名、法人番号、住所、株主、株式数、取締役情報、秘書役情報などが記載されています。これも日本の履歴事項証明書(登記簿謄本)とは性質が異なっておりますが、しいてあげるならばこのARが履歴事項証明書(登記簿謄本)に当たると思われます。香港法人は設立後1年たつとARを香港会社登録所に提出する必要があります。正確には毎年度の登録周年日から42日以内が提出期限となっております。 3. 年度更新を忘れてしまった場合 事業登録証明書(BR)の年度更新を失念していた場合、滞納期間に応じた利子や罰金が発生します。また、年次報告書(AR)については、提出期限である42日を過ぎると、提出遅延の程度に応じたペナルティーが課せられます。長期的に滞納が続くと、銀行口座の閉鎖や政府からの督促状が届くこともあります。
- [香港滞在ビザの種類や概要について](https://shiodome.co.jp/column/8020/) - 日本人が香港を訪問する場合は通常、自動的に90日間の訪問ビザが発行されます。しかし、このビザは就業が許可されていません。また、香港に90日以上滞在するためにはビザを取得しなければいけません。 そこで、旅行者や留学生以外の日本人が香港で会社を設立したり、香港法人に就業する場合には、就業可能なビザを申請することとなります。 なお、一般就業政策の就業可能なビザの発行には明確な審査基準があります。このような基準を設けることで政府は香港住民の雇用の確保と経済の環境保全を図っています。 ビザにはたくさんの種類があり、自分の目的にあったビザを取得する必要があります。本日は香港に滞在するためのビザの種類や概要についてご紹介します。 1. 香港滞在ビザの概要 香港のビザの種類には、就労ビザや投資ビザのように香港において報酬を得て仕事をすることが可能なビザと、訪問ビザや学生ビザのように就業が不可能なビザとがあります。香港に会社を設立して、ビザのことを検討される場合には、就労可能なビザについて一通りの知識を身につけておく必要があります。 香港の就業関連のビザの申請には申請者自身のステータスだけでなく、受け入れ先の香港法人自体も審査対象となっているといえます。資本金がある程度の金額であるか、日本の関係法人では社歴や実績があるか、経営者は事業に関して十分な知見を有しているかなど、様々な審査項目があります。 2. 香港で就業が可能なビザについて 以下では、香港で仕事をすることが可能なものとして代表的な「就労ビザ」と「投資ビザ」についてご紹介します。通常日本人が香港法人を設立して、ビザを取得して香港で働きたいという場合には、この2つのビザについて検討することとなります。 ①香港の就労ビザ 就労ビザは、原則として香港法人へ赴任・転勤するか、香港法人に就業する際に必要になります。ただし、就労ビザを取得することは少し大変な作業です。就労ビザを発行するための条件は厳密に決められていますので、要件を満たしていない場合には就労ビザを発行してもらいたいと思っていても簡単にはいきません。その理由としては、もし簡単に就労ビザを発行してしまえば、香港に住んでいる住民の就業確保が難しくなってしまうからです。 そのため、就労ビザを申請し取得するためには、その申請者が香港政府から見て有益になるような人物であり、なおかつ、専門的な技術や経験を有していることが絶対的な条件になります。 ②香港の投資ビザ 次に投資ビザについてですが、このビザは就労ビザよりも取得が難しいのが現状です。投資ビザを取得したいのであれば香港にある法人の株主として就業しなければなりません。ただし株主となれば社会的にも大きな責任を背負うことになるのでその申請者が信用する人物に値するのかどうかという点について香港入国管理局は審査を行います。 加えて、いかに申請人が香港の経済に貢献できるかを示すためにいくつかの書類の作成・提出が必要になります。例えば事業計画書や投資計画書を具体的かつ現実的な内容にて作成する必要があります。 3. その他のビザについて ここまでは、日本人にとっても香港法人運営上知っておくべき、「就労ビザ」と「投資ビザ」の2つについてご説明させていただきました。以下では、その他のビザとして代表的な「扶養家族ビザ」、「トラベルパス」、「無条件ビザ」、「研修ビザ」、「学生ビザ」、「ワーキングホリデー」についてご紹介します。 ①扶養家族ビザ まず扶養家族ビザについてですが、家族内に就労ビザや研修ビザを保持している人がいれば申請することができます。なお、扶養家族ビザを取得すれば就労することもできるのでかなり便利です。 ②トラベルパス 次にトラベルパスについてですが、このビザの有効期間は3年間と比較的長いのですが、一回の滞在は2カ月以内にしなければなりません。したがって、長期的に滞在をしたいと考えている方には向いていないビザだといえます。 ③無条件ビザ 次に無条件ビザについてですが、このビザは香港に継続して7年以上滞在していなければ申請ができません。したがって、このビザを取得する前に就業ビザなどの長期滞在を許可されたビザを保持している必要があります。そのことから、このビザの取得はかなり難易度が高いといえます。 ④研修ビザ 次に研修ビザについてですが、このビザの申請資格は香港企業や研究機関での研修やスキルの習得目的とする最長12か月の短期のビザで、研修受け入れ先の企業などの研修計画書が必要とされています。これは研修やスキルを取得するために香港への入国が必要な場合に申請するもので、香港でなければ習得できない業務上の研修を目的とする外国人が申請者となります。したがって、このビザを申請する人は比較的少ないです。 ⑤学生ビザ 次に学生ビザについてですが、このビザは香港での就学を希望している人が申請するビザです。このビザでは就業はできませんが、長期滞在をすることができ、比較的取得難易度は低いです。 ⑥ワーキングホリデー 最後にワーキングホリデーについてですが、このビザは18歳から30歳未満の人限定で申請することができます。このビザの良いところは、香港内で何をしてもいいというところです。お金が欲しければ働いてもいいですし、勉強をしたければ学校に通うことも問題ありません。ただし滞在期間は最長1年間です。 4. ビザの発給に関する香港入国管理局の審査 ①就労ビザ 就労ビザの発給条件は、申請者が香港にとって有益な人物であって、香港にはない業務上の知識や技術、経験を有する者に限定されています。審査は申請者本人の業務経験や知識、職位、業績の推移や香港人の現地人材の雇用の有無なども含まれていますので、専門職と管理職以外の外国人が香港で就労ビザを取得することは難しいといえます。一般就業政策の主な就労ビザの期限は1年間であり、その後延長することが可能です。 ②投資ビザ 投資ビザは香港法人の株主として就業する外国人が取得するビザです。投資ビザは、会社設立という投資形態に限定されますが、投資移民制度(CIES)という香港の有価証券と金融資産に投資経験のある投資家に居住権が与えられる制度とは異なっています。 投資ビザは社会的責任が重く、就労ビザよりも審査基準が厳しくなり、申請に当たっては所定の申請書類の提出が必要です。申請書類には、香港に居住権を持つビザスポンサーが必要で、事業計画書や投資計画書、雇用に関する書類など、香港への経済的貢献を証明する書類が必要となります。 そして、毎年の投資ビザの更新申請時に決算書の提出が義務付けられています。投資ビザの更新は、初年度に提出した事業計画の進捗状況や決算内容を審査して決定される1年更新を原則としています。 5. 香港で就労ビザを取得せず就業した場合の罰則等 もし、外国人が就労ビザを取得せず就業した場合には不法就労となり罰則が適用されます。不法就労は密入国や売春などの犯罪の温床になると考えられております。 したがって、アルバイトやお手伝いといった簡単な就労といえども、労働者と雇い主が罰金刑だけでなく禁固刑に処されることもある重罪です。したがって、香港で就業したり現地採用されたりする場合には就労ビザの取得は大前提とお考えいただければと思います。 このようにビザには沢山の種類がありますので、自分の目的に合わせてしっかりと準備をして申請をすることで取得しやすくなります。不法就労の罪は重く、ビザに関しては決しておろそかにしてはならない項目であることに留意していただければと思います。
- [香港の税務調査について](https://shiodome.co.jp/column/8046/) - 本日は、香港の税務調査についてご紹介します。 1. 香港の税務調査の特徴とは? 香港の税務調査の特徴として、まずは税務調査そのものが、大変簡略化されているということがあげられます。日本では、税務調査は実地調査含め徹底して行われており、大きい企業であれば毎年または2~3年に一回、中小企業の場合には、利益を計上している場合には3~5年ごとに税務調査が入ることが一般的です。香港と比較すると日本の税務調査はとても多く、香港の場合は税務調査がシンプルで実地調査は比較的少ないというのが実態です。 2. 実地調査が少なく質問状による調査が大半 香港の税務調査においては、税務当局の調査官などが実地調査を行うことは比較的少ないため、日本と比べると税務調査そのものが大変簡略化されているということが特徴ですが、ではどのように税務調査を行っているのでしょうか。 まず香港では、税務当局より発行される「税務質問状」というものがあります。こちらの税務質問状で何か不明な点について質問を都度行っておりまして、税務質問状による税務調査というのが香港では一般的です。 3. 香港で税務調査が簡略化されている理由 香港で税務調査が簡略化されている理由ですが、まず、香港法人は香港の公認会計士により会計監査を受けるということが義務付けられているということが理由としてあげられます。 日本では中小企業では一般的には会計監査は義務付けられていませんので、税務当局による税務調査が必要となるケースが多いと思います。香港の場合にはこのような会計監査が実施されているため、税務調査が簡略化されています。ただし、会計監査といっても日本や欧米の会計監査の法定監査ほど大掛かりなものではありません。 なお、香港では税務調査がこのように簡略化されているからといって、申告漏れがあってはいけません。もし香港において税務調査で仮に申告漏れなどが指摘されてしまった場合には厳しい追及を受けることとなります。法人のみならず個人の確定申告においても同様です。たとえば香港駐在員であった日本人が香港での申告所得額が過小でであった場合、当該駐在員は帰国後も一定期間に遡及しての未納税額を支払うことになります。 香港では、税務当局はもし不正行為や悪質な所得隠しなどを発見した場合には、通常6年間とされている遡及上限を超え、課税年度の終了より10年間についても税務調査を行うことが可能と定められています。また、香港ではペナルティが大きく、税務当局は未納税額の最高3倍までの罰則金を課すことが可能となっています。
- [香港での事業に必要なビジネスライセンス](https://shiodome.co.jp/column/8056/) - 香港の会社では基本的にどのような事業も行うことができます。しかし、商業登記証(Busuness Registration)には主な業務を記載する必要があり、会社を設立する際には事業目的が必要となっています。そして、飲食業や医療関係、金融業などの一部事業にはライセンス(許可)が必要な事業もあり、該当する場合は会社設立後にライセンスの取得が必要となります。 本日は香港での事業に必要なビジネスライセンスについてご紹介いたします。 1. 事業を行うためのライセンス 金融業や不動産業、飲食業などはライセンスの取得が必要とされています。例えば、不動産業ではEstate Agency Authorityの営業許可証が必要とされ、取締役がEAQE試験を合格していることが条件です。飲食業では、General Restaurant License(飲食店営業許可証)やLiquor License(アルコール提供許可証)などが必要です。金融業ではSFCライセンス(香港証券先物委員会)やPIBAライセンス(香港保険業協会)CIBライセンス(香港保険顧問協会)が必要とされます。 2. 不動産仲介業 香港で不動産仲介業を行う場合は、個人や法人問わずに、地産代理管監局が主管するEstate Agent’s Licenceの取得が必要です。これは、日本の宅地建物取引主任者の資格に相当し、不動産取引の専門知識をもつ人材が不可欠なライセンスです。また、Salesperson’s Licenceは営業活動を行うためライセンスで、このライセンスの取得は就業ビザ取得の条件でもあります。就業ビザ申請は、ライセンスがない場合は営業活動以外の業務しか担当できません。 3. 飲食業 香港で飲食店を運営する会社や店舗は食物衛生管理署が主管するライセンスの取得が必要です。業態に応じ、General Restaurant Licence、Light Refreshment Restaurant Licence、Food Factory Licence、Bakery Licence等を取得します。就労ビザの申請はライセンス取得を許可要件としており、投資規模や現地雇用が大きい場合はライセンスの申請が行われていることが前提となって、就業ビザ許可が行われる場合もあります。ビザの申請の際は、ビザ申請者の経験に応じて申請するビザの種類を検討することとなります。 日本では調理師免許などの資格がありますが、香港では資格制ではなく、料理人としての経験に審査の重点が置かれています。世界の有名レストランなどで勤務経験がある場合は有利になる傾向があるといわれています。レストラン運営会社が複数の店舗にわたって運営されている場合、就労はビザを取得した店舗だけしか行えません。しかし、管理職としての就業ビザを取得した場合は、複数店舗の業務に携わることが可能です。
- [現地法人・支店・駐在員事務所、海外進出形態はどれにするべき?](https://shiodome.co.jp/column/7949/) - 海外進出を計画するにあたり、どのような進出形態を選択するべきでしょうか。今回は、比較検討されることが多い、現地法人(子会社)/支店/駐在員事務所の3つの形態の特徴をご紹介いたします。 1. 現地法人とは 現地法人は、営業活動は可能です。定款や規定については、本社とは別のものを改めて作成します。事業内容や給与体系についても自由に決定することができるため、コスト面や事業展開上のメリットも大きいです。外国子会社合算税制等注意する点はありますが、進出する国によっては現地の低い税率のメリットを受けることができます。 2. 支店とは 支店の場合も、営業活動は可能です。定款や規定などは、本店のものを利用します。決算だけではなく税務も本店と連携して行います。そのため、支店の損金を本店と相殺できるというメリットもある一方、支店の所得には日本の税率が適用される点には注意が必要です。 3. 現地法人と支店、どちらがメリットがあるのか 日本の親会社を主体としたほうが有利と判断される業種や本支店間の送金が頻繁に行われる場合には、支店を推奨する場合もありますが、一般的に現地法人での設立の方がメリットが大きいと考えられています。例えばハワイ(米国)で法人設立をして訴訟が起きた場合、現地法人の場合は日本の親会社への影響を避けられますが、支店の場合は日本の本店が対応する必要があります。その他、各種外資規制(外資系企業が100%株主になることができない、外国人1人に対し現地人〇人を雇用する規定がある等)がある国がありますので、事前に把握しておく必要があります。 4. 駐在員事務所とは 駐在員事務所は、現地法人や支店に比べると活動が大きく限定される進出形態であり、将来の本格的な進出のための準備や調査のために使われることが一般的です。マーケティングや市場調査などの販売促進活動や情報収集は行うことができ、現地での納税の必要もありません。一方で、営業活動(契約交渉・受注・請求・支払金の徴収など)は行うことができません。 5. RSM汐留パートナーズについて 海外進出コンサルティングサービスを提供しているRSM汐留パートナーズ株式会社は、グローバルな視点から会計・ビジネスのアドバイザリーを提供するRSM Internationalの日本メンバーファームです。 RSM Internationalは、世界120ヶ国以上に展開する会計事務所グローバル・ネットワークです。56,000人を超すプロフェッショナルメンバーが属しており、監査、税務及びフィナンシャルアドバイザリーサービス等の各種高品質な専門サービスを独自のネットワークを通じて各国で提供しています。 海外進出に関する会社設立手続から、その後の会計・税務、労務、法務サービス、その他ビジネスソリューションをご提供させていただきます。まずはお気軽にご連絡ください。
- [海外法人を設立する際の会社秘書役とは?](https://shiodome.co.jp/column/7957/) - 海外に法人を設立する際には、「会社秘書役(Company Secretary)」を選任するのが一般的です。ただ、日本にない職種のため馴染みがない方も多いのではないでしょうか。今回は、会社秘書役の役割についてご紹介いたします。 1. 会社秘書役の役割 会社秘書役は日本にはない職種とご紹介しましたが、大まかにいうと日本でいうところの「司法書士」や「行政書士」の役割にあたります。以下のような行政への手続や法人のコンプライアンス面の管理を行い、必要に応じて経営者や株主への助言も行います。 株主・取締役の変更手続や書類管理 取締役会・株主総会の招集や議事録作成 年次報告書など行政機関への届出 その他会社法・定款に関すること 2. 会社秘書役の資質・設置義務・費用 会社秘書役になるための資質や設置義務は国により様々です。会社秘書役になるための試験があったり、公的な秘書役協会が組織されているなど厳しい基準を設けている国もあります。そうでない国についても、会社法や行政手続に精通している方を選任しましょう。ちなみに、弊社の海外進出プロジェクトの際には、現地RSM事務所の法務部門(法務部門がない際は、提携先の法律事務所)の社員や法律事務所を会社秘書役として選任しています。 設置義務については、設立する国と事業規模によって異なり、常勤の秘書役が必要になる場合もあれば、設置義務自体がない場合もあります。費用については、年間10万円~数十万円程度が一般的です。 3. RSM汐留パートナーズについて 海外進出コンサルティングサービスを提供しているRSM汐留パートナーズ株式会社は、グローバルな視点から会計・ビジネスのアドバイザリーを提供するRSM Internationalの日本メンバーファームです。 RSM Internationalは世界120ヶ国以上に展開する会計事務所グローバル・ネットワークです。56,000人を超すプロフェッショナルメンバーが属しており、監査、税務及びフィナンシャルアドバイザリーサービス等の各種高品質な専門サービスを独自のネットワークを通じて各国で提供しています。 海外進出に関する会社設立手続から、その後の会計・税務、労務、法務サービス、その他ビジネスソリューションをご提供させていただきます。まずはお気軽にご連絡ください。
- [ナイジェリアにおけるスタートアップ事情概観](https://shiodome.co.jp/column/17291/) - 2億人超の人口とアフリカ最大のGDPを誇るナイジェリア(2022年時点)は、アフリカ随一のスタートアップ企業のハブ(集積地)として知られています。本記事では、スタートアップ企業の一大拠点としてのナイジェリアについてとりあげます。 1. スタートアップ市場規模 ナイジェリアのスタートアップ企業による資金調達額は2021年に急激に増加しています。これはフィンテックによる資金調達が好調であったことによります。特に、ソフトバンクグループによるOPayへの出資、米国の投資ファンドTiger GlobalやAvenir Growth CapitalによるFlutterwaveへの出資などが寄与しました。 2. 主要スタートアップ企業の事業領域 ナイジェリアにおける主要スタートアップ企業は2022年時点で481社存在するとされ、そのうち、金融(フィンテック)が全体の1/3強を占めています。一方で、2億人を超える人口に支えられた厚い消費者層を背景にEコマース、ナイジェリアにおける長年の社会的課題の解決を目指してヘルスケア、教育及び農業といった事業領域に取り組むスタートアップ企業も存在しています。 3. スタートアップ企業とのビジネスディベロップメント ナイジェリアのスタートアップ企業は多くの場合、確りしたホームページを持ち、各種SNSでの情報発信にも積極的です。そのため、オンラインで接点を持つことも比較的容易と考えられます。また、ラゴスでは毎年、主要なスタートアップ企業が多く参加するコンファランスであるLagos Startup ExpoやLagos Startup Weekといったイベントが開催されており、これらの場を活用した接点を持つことも考えられます。 4. ナイジェリア現地法人設立 ナイジェリアのスタートアップ企業とリレーションを更に深化させるためには、ナイジェリアに現地法人を設立することも有力な選択肢となります。ナイジェリアでは国外に居住する取締役のみを設置して法人を設立することも認められており、また、法人設立の手続きもスムーズに進めば3カ月程度で行うことが可能です。一方で、法人の設立手続や駐在員を派遣する場合のビザ手続は、ナイジェリアの法令・実務慣行に精通した経験豊富な現地専門家と進めることが必要不可欠です。 5. RSM汐留パートナーズについて 海外進出コンサルティングサービスを提供している当社、RSM汐留パートナーズ株式会社は、グローバルな視点から会計・ビジネスのアドバイザリーを提供するRSM Internationalの日本メンバーファームです。 RSM Internationalは、世界120ヶ国以上に展開する会計事務所グローバル・ネットワークです。56,000人を超すプロフェッショナルメンバーが属しており、監査、税務及びフィナンシャルアドバイザリーサービス等の各種高品質な専門サービスを独自のネットワークを通じて各国で提供しています。 当社は、ナイジェリアの大手会計事務所と提携しており、日本企業のナイジェリア法人設立(ナイジェリア進出)をサポートさせて頂いた実績がございます。ナイジェリア進出に関する会社設立手続から、その後の会計・税務、労務、法務サービス、その他ビジネスソリューションをご提供させていただきます。まずはお気軽にご連絡ください。
- [ポーランド進出を通じたウクライナへのアクセス](https://shiodome.co.jp/column/17286/) - ポーランドはウクライナと約530kmにわたり国境を接しており、歴史的な繋がりも深いです。また、ロシアによるウクライナ侵攻以降、ポーランドはNATOによるウクライナ支援の最前線となっており、今後はウクライナ復興支援の拠点となることも予想されます。 1. ウクライナ復興支援に向けた世界の動き 2023年6月21日・22日、ロンドンでウクライナ復興支援会議が開催され、①パートナー国による総額600億ドルの追加支援、②世界銀行に対する英国の30億ドルの追加保証、③EUによる最大500億ユーロの資金供与、④米国による13億ドルの追加援助策が取りまとめられました。また、民間企業の関与促進に向けて「ビジネスコンパクト」という枠組みが発表されました。 2. ビジネスコンパクトとは ビジネスコンパクトとは、ウクライナ復興支援への賛同を示す民間企業による枠組みです。本枠組みの意義としては、「(適切なタイミングを捉えて)ウクライナに関する貿易、投資、同業者間の知見共有及びプロボノ活動の機会を探すことでウクライナ復興を支援することにコミットすること」とされています。具体的なアプローチとしては、①ウクライナにおける事業機会への投資、②ウクライナを拠点とする企業との協業、③各企業の事業目的に合致する範囲で、ウクライナ全土の発展と経済成長の支援が挙げられています。 世界42カ国から約500社が本枠組みに署名しており、署名した企業リストも公表されています。日本企業としては、富士通、富士フィルムのオランダ法人、日立製作所、IHI、日本工営、楽天グループ、東洋エンジニアリング及び日本たばこ産業のウクライナ法人の名前がリストから確認できます。また、会計事務所としてはデロイト、KPMG及びE&Yが署名をしているようです。 3. 日本の動き 日本政府としては、戦時下における武器提供といった直接的な支援ができないこともあり、ウクライナ復興支援に積極的に関与する姿勢を示しています。具体的には、既に世界銀行が設置する基金への資金拠出、世界銀行からウクライナに対する融資への保証提供等を行っています。 また、地雷対策、エネルギー、水衛生保健、教育、農業といった分野で、スタートアップを含む日本の企業の貢献を期待しているようです。 4. ウクライナ進出の前段階としてのポーランド進出 今後、世界、そして、日本の民間企業によるウクライナの復興支援に向けた準備は、徐々に進んでいくものと思われます。一方で、本記事の執筆日現在、ウクライナ全体には外務省の退避勧告が出されており、ウクライナ現地での活動は現実的ではありません。また、ウクライナ法人の設立・ビザ取得といった手続も平時とは異なる状況です(※現在、当社でもウクライナの法人設立支援等はお受けしておりません)。そのため、まずは、ウクライナと距離的に近く、かつ、経済的・文化的な繋がりが深いポーランドに現地法人を設立し、情報収集にあたるといったアプローチもあり得るかと考えます。 5. RSM汐留パートナーズについて 海外進出コンサルティングサービスを提供している当社、RSM汐留パートナーズ株式会社は、グローバルな視点から会計・ビジネスのアドバイザリーを提供するRSM Internationalの日本メンバーファームです。 RSM Internationalは、世界120ヶ国以上に展開する会計事務所グローバル・ネットワークです。56,000人を超すプロフェッショナルメンバーが属しており、監査、税務及びフィナンシャルアドバイザリーサービス等の各種高品質な専門サービスを独自のネットワークを通じて各国で提供しています。 当社は、ポーランドのRSMメンバーファームはもちろん、その他大手会計事務所とも協働可能であり、日本企業のポーランド法人設立(ポーランド進出)をサポートさせて頂いた実績がございます。ポーランド進出に関する会社設立手続から、その後の会計・税務、労務、法務サービス、その他ビジネスソリューションをご提供させていただきます。まずはお気軽にご連絡ください。
- [中小企業退職金制度の概要と加入のメリット・デメリット](https://shiodome.co.jp/column/12291/) - 本記事では「中小企業退職金制度(以下:中退共制度)」の概要と、活用するメリット・デメリットについて詳しく説明します。 1. 中退共制度とは? 中退共制度は、単独で退職金制度を設置することが困難な中小企業を助成するために制定された制度です。退職金制度を設置するためには、大きな時間的・金銭的負担が発生します。これらを軽減するために中退共制度が設けられました。 中小企業が退職金を支払うことができれば優秀な人材を獲得しやすくなることから、中小企業の振興と発展に寄与することを目指しています。 2. 中退共制度の概要 中退共制度の概要について説明します。 対象企業 中退共制度に加入できるのは、以下の条件を満たす企業のみです。従業員数または資本金・出資金額の要件のいずれかに該当した場合には加入条件を満たしたことになり、申請できます。 なお、中退共制度加入後、従業員数増などにより条件から外れてしまった場合には、一定の要件を満たすことで確定拠出年金制度などを実施する他の退職金共済団体等に退職金相当額を引き継ぐこともできます。 全従業員の加入が必須 中退共制度を利用するには、全従業員が中退共制度に加入する必要があります。従業員数に応じて掛金を拠出することになるため、従業員の数は資金繰りに深く影響します。ただし、雇用期間が決まっている雇用者や使用期間中の従業員、短時間労働者、休職者等は加入させる必要はありません。 3. 中退共制度の仕組み 掛金の設定・拠出 加入した企業は月額の掛金を選択します。金額は5千円から3万円の間で16種類設定されており、企業は従業員ごとに月々の掛金の金額を選択し、その全額を負担します。 新規に中退共制度に加入する企業は加入後4カ月目から1年間、国からの助成を受けることができ、掛金の額が低くなります。月額掛金の2分の1(5千円を上限)が助成され、短時間労働者の場合は、さらに上乗せされて助成されます。 さらにもうひとつ助成制度があり、1万8千円以下の掛金から増額する場合には、掛金の増額に対してその月から1年間、増額分の3分の1が助成されます。 上記ふたつの助成制度は併用可能で、加入の手助けとなります。 従業員が退職した際の手続き 従業員が退職した際には一定の手続きをとることで、退職者への退職金の支払いが行われます。従業員の退職が決定した場合、事業主は「被共済者退職届」に必要事項を記入・押印の上、中小企業退職金共済(以下「中退共」)本部に送付します。送付後に、中退共本部は退職する従業員の掛金振替を中止します。 退職した従業員は、企業から「退職金共済手帳」という請求書を受け取ります。これを中小企業退職金共済本部に提出することにより退職金が支給されます。 この手続きからもわかる通り、退職金に関する手続き等はすべて中退共が実施してくれるため、企業は退職金に関する手続きを実施する必要がほとんどありません。業務削減の面からみても様々なメリットがあるといえます。 4. 中退共加入によるメリット 中退共に加入した場合のメリットについて紹介します。 ①掛金を損金扱いにできる 企業が中退共に支払う月額の掛金は、法人税法の規定により全額が損金に計上されます。そのため、利益が出ている企業にとっては法人税額を減額できます。 ②雇用状態が安定する 中退共制度は国の中小企業対策の一環として設けられた制度で「中小企業退職金共済法」に基づいています。国が管理している制度のため、退職金が確実に支払われると考えてよいでしょう。将来に対して不安を抱える従業員が多い昨今、従業員の安心を高めてくれる制度といえます。 中退共制度により支給される退職金は「基本退職金」と「付加退職金」の合計額で支払われます。長期加入者ほど恩恵を受ける仕組みのため、従業員の離職防止にも効果が期待できます。 ③負担なく退職給制度を創設できる 中退共制度は中退共本部から退職金が支給されるため、退職金の管理を会社自体がする必要がありません。そのため、企業内部に積立金を積み立てることも、退職時にまとまったお金を用意する必要もありません。退職金に関する手続きなどをしなくてもよいため、企業負担を軽減できます。 ④福利厚生サービスが受けられる 中退共に加入することで、一部の福利厚生サービスが受けられます。例えば、中退共本部が提携しているホテル・施設を割引料金で利用できます。従業員の福利厚生まで手が回らない企業にとっては、福利厚生の一環としてアピールできます。 5. 中退共加入によるデメリット 中退共にはもちろんデメリットも存在します。中退共加入のデメリットについて紹介します。 ①定期的なキャッシュの流出を伴う 中退共制度では月額の掛金を支払います。毎月決まった額を支払う必要のある中退は、資金繰りの厳しい企業にとってリスクとなる場合もあります。長期にわたって月額の掛金を支払えるかどうかは、加入前に確実に確認しておいたほうがよいでしょう。 ②掛金の減額が困難 掛金の額を減額するためには、従業員の同意又は厚生労働大臣の認定が必要です。従業員からの同意は、将来の受取金額減少につながるため、同意を得られないことがほとんどです。また、厚生労働大臣の認定は、申請書を厚生労働省に提出しその承認を受けなくてはなりません。加入後の掛金減額は簡単ではないことから、計画的に利用することをおすすめします。 ③掛捨ての危険性 中退共制度では、掛金の納付が1年未満の場合には退職金が支給されません。また、1年以上2年未満の場合は掛金の総額を下回る金額の支給となります。一度拠出した掛金は返還されることが一切ないため、早期退職した場合には拠出した金額に対して退職者が受ける恩恵が少なくなり、掛捨・掛損となってしまう可能性があります。 6. おわりに 本記事では、自社だけで退職金制度を設けるのが難しい中小企業者向けの制度である「中退共制度」について詳しく説明しました。退職金の仕組みを簡易に利用できる一方で、気をつけなければリスクを負うことになりかねません。加入するかどうかは慎重に決めるとよいでしょう。もし中退共制度に関して相談がございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせください。
- [年末調整について:平成30年分からの変更事項についても紹介](https://shiodome.co.jp/column/12300/) - 企業が年末に実施すべき業務の1つが年末調整です。本記事では、年末調整とはそもそも何かについて詳しく説明すると共に、平成30年の主な変更点について紹介します。 1. 年末調整とは 年末調整とは、源泉徴収として毎月支払った税額と、実際に支払う必要がある税額を比較し、過不足額を徴収または還付し、清算する手続きです。もう少しわかりやすく説明します。 会社員であれば、毎月の給料から所得税が源泉徴収として差し引かれています。しかしながら、この源泉徴収額はあくまでも試算された額であって、個人が支払うべき税を確実に反映したものではありません。個人が支払うべき税とは、給与に控除額を加味した上で算出した額のことです。つまり、源泉徴収では控除が加味されていないため、実際の徴収額とは異なります。 そこで、1年間の給与総額が確定する年末に、源泉徴収した税額と実際に支払うべき額を比較し、必要に応じて追加支払いを行ったり、申請により還付を受けたりします。これが年末調整です。要件を満たす企業であれば、年末に必ず実施しなければならない業務のため、しっかりと理解した上で行いましょう。 2. 年末調整の対象となる人とは? 年末調整の対象となるのは以下の条件を満たす人です。 一年を通じて勤務している人 年の途中まで就職し、年末まで勤務している人 一方で、年末調整の対象とはならないのは以下の条件を満たす人です。 主たる給与の収入金額が2,000万円を超える人 災害減免法の規定により、本年分の給与に対する源泉所得税及び復興特別所得税の徴収猶予又は還付を受けた人 非居住者 日雇労働者 3. 対象となる給与は? その年の1月1日から12月31日までに支払うことが確定した給与が年末調整の対象となります。実際には支払われていなくても、給与が確定したものであればその年の年末調整の対象となります。 4. 配偶者控除または配偶者特別控除 年末調整に適応できる主な控除の1つが「配偶者控除」です。納税者に所得税法上の控除対象配偶者がいる場合に申請できます。一方で「配偶者特別控除」は、配偶者に38万円を超える所得があるが、設定された上限は超えない場合に申請できる控除です。詳しくは後述します。 5. 年末調整に関する平成30年分の主な変更点 平成30年分の年末調整から様々な変更が加えられています。 控除申告書が2枚に 控除申請書類に変更がありました。平成29年分は控除申告書が1枚でしたが、平成30年分からは以下の2種類の申請書を提出する必要があります。 給与所得者の保険料控除申告書 給与所得者の配偶者控除等申告書 控除証明書の電子的交付が可能 平成30年分より、生命保険料控除および地震保険料控除に関する証明書が電子データで提出できるようになりました。 配偶者控除及び配偶者特別控除の適用範囲 平成30年分より、配偶者控除及び配偶者特別控除の適用範囲が変更されました。 まず、合計所得金額が1,000万円を超える所得者は、配偶者控除および配偶者特別控除の適用を受けられなくなります。また、配偶者特別控除が適用できる配偶者の所得額が76万円未満から123万円以下に引き上げられました。これまで配偶者特別控除が受けられなかった人も申請できる可能性があるため、しっかりと確認するとよいでしょう。 6. おわりに 本記事では、年末調整について詳しく説明すると共に、平成30年分より変更された内容について紹介しました。今回の変更により、配偶者特別控除が申請できるようになった人も多くいると思いますので、早め早めの準備を心がけましょう。
- [日本でも番号法(マイナンバー法)が施行。施行の意図とは](https://shiodome.co.jp/column/7953/) - 諸外国にかなり遅れをとりましたが、日本でも2015年10月5日に「番号法(マイナンバー法)」が施行されました。施行と前後して、各省庁等からマイナンバーに関する最新情報が提供されています。こちらのページでは、日本におけるマイナンバー制度についてご紹介いたします。 1. 本人に交付する源泉徴収票や支払通知書等への個人番号の記載について 日本では所得税法施行規則等が改正され、「本人に交付する源泉徴収票や支払通知書等には、個人番号の記載は必要ない」旨が規定されました。 これは、本人交付が義務付けられている源泉徴収票などに個人番号が記載されることによって、交付の際に個人情報の漏えいや滅失等の防止のための措置を講ずる必要が交付する側に生じるためです。それにより、従来よりもコストを要したり、郵便事故等による情報流出のリスクが高まったりするといった声に対して配慮した措置です。 2. 個人番号の提供を拒否された場合の対応について 特定個人情報保護委員会が公表している「特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン(事業者編)」に関するQ&Aが最新版に更新され「個人番号の提供を拒否された場合の対応」が明らかになりました。 これによると、法定調書作成などに際し、従業員から個人番号の提供を受けられない場合でも個人番号を記載していない書類を提出することは極力控え、相手方に対して個人番号の記載は法律で定められた義務であることを伝え提供を求める必要があるとしています。 それでもなお個人番号の提供を受けられない場合は、提供を求めた経過等を記録・保存するなどして、単なる義務違反でないことを明確にしておかなければなりません。経過等の記録がないと、個人番号の提供を受けていないのか、あるいは提供を受けたのに紛失したのかが判別できないためです。 3. 年金機構に添付書類として提出する住民票について 日本年金機構がマイナンバーに関する文書(日本年金機構に提出する住民票についてのお願い)を公開しました。それによると、年金請求時などに必要な書類(添付書類)として、住民票を同機構に提出する場合には、「個人番号(マイナンバー)が記載されていない住民票を提出する必要がある」旨が明記されています。 これは、一連の「不正アクセスによる情報流出事案」の影響により、当分の間同機構においては個人番号(マイナンバー)の利用ができなくなっているためです。 4. おわりに 日本でも少しずつマイナンバー制度が浸透しつつありますが、クリアしなければならない課題は山積みというところです。現在は日本に住民票のある外国人はマイナンバーの対象となるため、外国人従業員を雇っている企業はマイナンバーの動向にも注意する必要があるでしょう。 弊社では外国人の雇用やビザに関するトータルサポートを提供しています。もし外国人のことでお困りのことがございましたら、お気軽にお問合せください。
- [日本の年金制度の仕組みとその一部を構成する現在の企業年金制度の種類、概要、メリット・デメリット](https://shiodome.co.jp/column/12295/) - 本記事では、企業年金を始めとした年金制度について詳しく紹介します。年金の仕組みについて知りたい方、企業で年金を取り扱う部署の方はぜひ参考にしてください。 1. 日本における年金制度の仕組み(階層) 日本では現在、年金制度は一般的に「3階建て」と表現されます。1階層が「国民年金」、2階層が「厚生年金」、3階層が「企業年金」や「年金払い退職給付」です。各年金の詳細を以下に示します。 1階層目は日本に住む国民すべてが加入する国民年金です。日本に居住する20歳以上であれば加入が原則義務付けられます。続いて、会社員や公務員が加入するのが2階部分の厚生年金です。厚生年金は所得金額に応じて支払金額が変わる一方で、年金受取額もそれに応じて増加します。そして最後の3階部分が企業年金や年払い退職給付です。一部の会社員や公務員が加入します。 上の階層に行くほど、年金受給額は増加します。しかし、企業年金は企業にとっても負担が大きいことから、導入している企業は一部に限定されます。国は企業年金制度が多くの企業に導入しやすいものになるよう、時代の変化に合わせて随時変更を行っています。 2. 年金の受取金額のしくみ 受給対象者となった場合には、加入していた部分からの給付のみを受け取ります。階層構造となっていることからもわかるように、2階層に加入している人は「1階層+2階層」、3階層に加入している人は「1階層+2階層+3階層」から年金を受け取ります。つまり、上に行けばいくほど、将来受け取れる額は増える仕組みです。そのため、勤務予定の企業が企業年金を取り扱っているかどうかは求職者の大きな関心となります。 また、これまでの年金制度は受給権の保護が十分にされなかったり、原資を拠出する企業の負担が大きくなったりといった問題がありました。これらを変えるべく、新たな企業年金の仕組みが定められました。平成13年には、掛け金を拠出した段階で企業の責任が完結する「 確定拠出年金 」が、平成14年には受給権の保護が厳しく規定された「 確定給付企業年金 」が創設されるなど、年金に関する制度に様々な変化が加えられています。 3. 現在の企業年金制度 現在の企業年金には、従来からあった「厚生年金基金」に、上記で紹介した「確定拠出年金」と「確定給付企業年金」が加わりました。それぞれについて詳しく紹介します。 厚生年金基金 厚生年金基金は、企業が厚生労働大臣からの認可を受けて法人を設立し、年金の運用を行っていく制度です。2階層目の厚生年金において支給される報酬比例部分(在職中の報酬に比例して支給額が決定する部分)をこの厚生年金基金において代行し、それに加えて企業独自の年金を上乗せ支給します。本来であれば報酬比例部分を国に納付する必要が生じますが、厚生年金基金を実施することによりその義務が免除されます。 昭和41年に始まった古い制度ですが、運用環境の悪化によりその継続が難しくなり、代行している報酬比例部分を国に返納する「代行返上」をしたうえで確定拠出年金、確定給付企業年金への移行をする企業が増えてきています。さらに、2014年4月以降からの新規設立が認められなくなったため、いずれは廃止となることが想定されます。 確定拠出年金 確定拠出年金はその名の通り、 拠出額があらかじめ確定している年金制度です。企業が拠出を行う「企業型」と、個人事業者などが利用する「個人型」に分かれますが、企業としてこの制度を導入する際は「企業型」に該当していくこととなります。企業の定める規定によっては、従業員が独自に個人型を利用し、企業型と個人型を併用することもできます。制度の発足にあたっては厚生労働大臣の承認を受ける必要があります。 拠出額は確定していますが、 給付額については運用の成果により変動します。拠出をした時点で企業側の責任は果たされたこととなり、運用は加入者個人が指図をして行うため、加入者個人が金融商品や経済全般について学びを深める必要があります。企業の責任は拠出のみとなりますが、加入する従業員に対する投資教育は最低限果たすべき努力義務です。 加入者は企業から投資教育や制度に関する説明を十分に受けたうえで、投資信託や保険商品などの運用商品を選び、運用指図を行います。給付金は老齢給付金、障害給付金、死亡一時金、脱退一時金の4種類があり、それぞれの条件を満たした際に支給されます。 確定拠出年金の主なメリットとデメリット 確定拠出年金の主なメリットとデメリットは以下の通りです。 (メリット) 企業において、拠出額を全額損金に算入できる 従業員において、拠出額が所得税における所得控除の対象となる 運用が好調であれば受給額の増額に繋がる 各加入者が常に残高を確認できる 拠出額が確定しているため、予測がつきやすく、計画が立てやすい (デメリット) 投資リスクを加入者個人が負う(運用が好調でなければ受給額が減る) 給付額が事前に確定しない 原則60歳まで受給ができない 確定給付企業年金 確定給付企業年金はその名の通り、従業員が受け取る給付額があらかじめ確定している企業年金制度です。給付額が確定しているという点において厚生年金基金と似ていますが、報酬比例部分の代行がありません。厚生年金基金の移行先として利用されることが多く、 現在もっとも普及している企業年金制度です。確定拠出年金とは異なり、その運用は企業側で行われ、運用状況を加入者に対して開示することが求められており、従来の制度に比べ受給者の権利が厳しく保護されています。 企業と契約を交わした受託金融機関等が運用・給付を行う「規約型」と、企業が設立した企業年金基金が運用・給付を行う「基金型」とに分かれており、それぞれ手続き等が異なります。なお、どちらの制度においても 企業の外部に年金用の資産を積み立てることにより、企業に万が一のことがあっても 受給者の資産が守られます。 規約型 規約型の企業年金制度を創設する場合、企業は従業員と制度設立の労使合意を交わし、厚生労働大臣の承認を受け、 生命保険会社、信託銀行または投資顧問会社に年金用の資産の運用・給付を委託 します。受託した金融機関等は企業からの定期的な拠出を受け、それを管理・運用し、必要に応じて企業の従業員に対して支給します。 理事会や代議員会の設置が必要ではない分、企業と労働者との間で定期的に運用状況等を報告することなどを定め、必要に応じて労働者側からの意見を反映できるような体制作りが必要となります。 基金型 基金型の企業年金制度を創設する場合、企業は従業員と制度設立の労使合意を交わし、厚生労働大臣の承認を受け、企業年金基金として特別法人を設立します。設立した企業年金基金は企業からの定期的な拠出を受け、それを管理・運用し、必要に応じて企業の従業員に対して支給します。現在運用されているのはほとんどが厚生年金基金からの移行であり、ゼロから基金型の確定給付企業年金を創設するケースはほとんどありません。 基金の運営には 理事会・代議員会の設置が必要 であり、その構成員については企業側および労働者側からそれぞれ同数を選出し、労働者側からも意見を述べる機会が増えるよう配慮されています。 確定給付企業年金の主なメリットとデメリット
- [従業員給与の法定控除項目及び納付期限及び業務委託に係る源泉徴収の留意点](https://shiodome.co.jp/column/19231/) - 1. はじめに 給与明細の詳細について理解している方は意外と少ないかもしれません。従業員に対して給与を支払っている場合、そして業務委託で外注費として対価を支払っている場合などは、源泉徴収をしっかり理解する必要があります。今回は従業員給与と業務委託に係る源泉徴収について確認します。 2. 従業員給与 (1)従業員給与とは? まず、従業員給与について解説します。詳しい計算は社労士事務所などに委託し、社労士より受領した数字をなんとなく仕訳入力しているというケースも多いのです。しかし本来は、入退社や扶養家族の変更といった社員の状況を把握しにくい社外の人より、社内のメンバーのほうが人件費計算のミスに気づけます。そのため、社内の管理部門メンバーによる基本の理解がとても重要です。 給与明細はおおむね以下の形式です。 多数の項目がある給与明細の中でも注意が必要な給与情報は控除に関する項目です。様々な控除の項目が要因の一つとなり、給与計算を複雑にしています。ここからはその項目を確認します。 (2)法定控除項目 法定控除項目には「社会保険料」と「個人の所得にかかる税金」があります。 【社会保険料】 法定控除項目となる「社会保険料」には以下の4つがあります。 ・健康保険料 まずは健康保険料です。全国健康保険協会や各健康保険組合が運営している健康保険に対して、会社と折半して支払われます。この支払いにより、健康保険証を提示した医療機関において、3割負担で医療サービスを受けることができます。健康保険組合の種類は多様で、企業ごとに独立している組合や、業種ごとにいくつかの企業が集まって作られている組合も存在します。 ・介護保険料 介護保険は、介護の必要な方に対する介護サービスの費用を、社会全体で賄う制度です。一般的には、健康保険の加入者(介護保険第2被保険者)が支払う保険料として、満40歳から満64歳まで介護保険料が徴収されます。 ・厚生年金保険料 厚生年金は、国民年金に対して上乗せで将来給付される年金として積み立てるものです。厚生年金適用事業所に勤務するすべての従業員は厚生年金に加入し、その保険料が徴収されます。国籍、性別、賃金の額に関係はありません。原則、その従業員は会社に入社した時点から70歳まで厚生年金に加入でき、その中で70歳以上の人は健康保険のみの加入になります。給付の開始は65歳からです。 ・雇用保険料 雇用保険とは、労働者が失業して所得がなくなった場合に生活の安定や再就職促進を図るために、失業給付などを支給する保険です。加入者からは雇用保険料が徴収されます。上記の「社会保険料」の他に控除される代表的なものは以下の「個人の所得にかかる税金」です。 【個人の所得にかかる税金】 「個人の所得にかかる税金」には所得税と住民税があります。 ・所得税 所得(会社員の場合、給与)に対して課税されます。基本給および手当が課税対象とされており、住宅手当や地域手当なども合計した金額に対して税率を掛けた金額が控除されます。 ・住民税 都道府県民税と市町村民税を合わせたものが住民税です。通常は会社が預かり、本人に代わって納税します。(特別徴収)ただし、事情がある場合には給与から控除せず、従業員本人が各々都道府県に直接納税します。 (3)給与の仕訳例 ここで、給与の仕訳の具体例を示します。例では社会保険料の当月徴収翌月払いを想定しています。また、数値は簡略化しており、実際の算定額とは異なるものです。項目が多く一見複雑ですが、給与確定時に未払給与とともに各控除項目である未払費用が計上され、支払時点で未払費用が消し込まれています。 (4)納付期限 各種控除にかかる預り金などの納付期限は以下の通りです。 ・源泉所得税 原則は支払月の翌月10日払いとなります。一定の要件を満たしていれば特例徴収(年2回払い)にすることも可能です。 ・社会保険料(雇用保険料を除く) 翌月末です。 ・労働保険料 毎年6月1日から7月10日に支払確定した前年度(4月1日から3月31日分)の給与をもとに、一括して申告と納付を行います。一定の要件を満たせば、7月10日、10月31日、1月31日の3回に分割して支払いを行うことが可能です。いずれにせよ、労働保険料は、毎月で概算額が計上され、3月で確定額が算定されます。そして、確定額の算定時点で概算計上額と確定額の差額を法定福利費に計上します。 3. 業務委託(外注費)にかかる源泉徴収 給与所得以外に、税理士への対価・原稿料・広告のデザイン料などの報酬にかかる支払については、源泉徴収が必要となるため留意が必要です。また基本的に、源泉徴収が必要なのは、報酬などの支払を受ける者が個人の場合です。 原稿料や講演料など 弁護士、公認会計士、司法書士等の特定の資格を持つ人などに支払う報酬・料金 社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬 プロ野球選手、プロサッカーの選手、プロテニスの選手、モデルや外交員などに支払う報酬・料金 映画、演劇その他芸能(音楽、舞踊、漫才等)、テレビジョン放送等の出演等の報酬・料金や芸能プロダクションを営む個人に支払う報酬・料金 ホテル、旅館などで行われる宴会等において、客に対して接待等を行うことを業務とするいわゆるバンケットホステス・コンパニオンやバー、キャバレーなどに勤めるホステスなどに支払う報酬・料金 プロ野球選手の契約金など、役務の提供を約することにより一時に支払う契約金 広告宣伝のための賞金や馬主に支払う競馬の賞金 (国税庁HPより)源泉徴収額は国税庁のHPで最新版を確認できます。 4. おわりに 今回は給与(人件費)計算のうち、従業員給与と業務委託に係る源泉徴収について説明しました。冒頭で述べましたが、給与計算は複雑であり、社労士事務所等の専門家に頼るのが合理的です。しかし、基本的なことは理解して、社労士事務所の計算結果を大まかにチェックできる体制を構築することが理想です。 ※労働保険 労働保険とは雇用保険と労災保険を合わせた呼称になります。労災保険は、パート・アルバイトを含め労働者を1人でも雇った場合加入します。一方雇用保険は、1週間の所定労働時間が20時間以上であり、かつ31日以上の雇用見込があれば必ず加入します。 雇用保険は雇用者と被雇用者で負担しますが(負担割合は年度によって異なる)、労災保険は、全額が雇用者負担となるため、給与計上時の従業員からの預り金に含まれません。そのため、労災保険は法定控除項目ではありません。ちなみに、雇用保険と労災保険以外の社会保険料は現状、雇用者と被雇用者の負担は50%ずつのため、給与明細から控除されている額の倍額がこれら社会保険料として納められています。
- [日本の年次有給休暇はどう計算されるでしょうか? そして、買い取りは可能なのでしょうか?](https://shiodome.co.jp/column/21268/) - 年次有給休暇は、日本企業における人事労務管理の重要な要素です。 本稿では、日本の年次有給休暇制度におけるコンプライアンス要件と留意点を紹介します。 1. 日本の法律における年次有給休暇の規定と実施状況 日本の労働基準法第39条によると、労働者は入職後6ヶ月間連続して勤務し、その勤務日数が6ヶ月間の勤務日数の8割以上であれば、法律に基づき年次有給休暇を取得することができます。 厚生労働省の調査報告によると、日本の労働者1人当たりの年休取得日数は、最初の5年間(2023年)の平均日数は17.6日で、そのうち労働者が自ら申請した年休の平均日数は10.9日(残りは使用者指定分)であり、年休取得率は62.1%と過去最高水準に達しています。 日本の法制度において、年次有給休暇は、使用者の権利と義務の両方を規定しています。ここでいう権利とは、使用者の時季変更権のことであり、主に従業員の年次有給休暇と事業運営のバランスをとり、従業員の休暇集中による事業運営への支障を防止することを目的としています。また、義務とは、日本の働き方改革関連法の規定に基づき、日本の職場における年次有給休暇政策の実施が困難になること(日本の職場文化において、従業員が年次有給休暇を取得する権利を行使しないことを好むという現象が長年存在している)を回避するためです。 義務として、日本の働き方改革関連法では、日本の職場における年次有給休暇政策の実施が困難になることを避けるため、雇用主は年間5日の年次有給休暇を指定する権利を有します。 使用者の年次有給休暇の時季指定は、就業規則に明確に規定されていなければならないので注意が必要です。 では具体的に、日本の年次有給休暇の日数はどのように計算すればよいのでしょうか。 2. 年次有給休暇の日数はどのように計算されますか? 日本企業の正社員か有期雇用契約者かを問わず、また管理監督者か一般社員かを問わず、フルタイム労働者の場合、法律上の年次有給休暇の基本は以下の通りです: ここでいう継続勤務とは、定年退職後の再雇用を含め、同一企業での継続勤務年数のことです。 同時に、従業員が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休養した期間、法定育児休暇や介護休暇のための休暇期間は、単年度の年次有給休暇の計算上、通常の出勤とみなされます。 また、会社都合により業務が停止した場合、年次有給休暇の取得基準を判断するためには、原則としてその停止期間を全労働日から除外しなければなりません。 パートタイマーの場合は年次有給休暇を比例付与する必要があります。 具体的な計算方法や適用条件については割愛しますので、必要に応じて社会保険労務士にご相談ください。 3. 年次有給休暇で何ができますか? 労働基準法に基づく従業員の権利として、従業員が自分の好きな時期に休暇を申請することが認められています。 しかし、休暇を取得する権利と会社の運営とのバランスを取るため、法律は季節的なスケジュールを変更する権利も会社に与えています。同時に、同じ年に年次有給休暇を5日未満しか取得しない従業員において年次有給休暇を取得する権利の実現を促進するため、法律では、雇用主が従業員の年次有給休暇をこの時季に指定する義務、すなわち、雇用主は労働者が年次有給休暇を5日(5日未満付与の場合は年次有給休暇残存日数)取得する時季を指定しなければならないと規定しています。 この場合、使用者は就業規則において、時季指定が適用される労働者の範囲や指定の方法などを定める必要があります(関連注:日本における人事労務管理のための就業規則の作成について(条文予定))。 また、使用者は、時季指定に際し、できる限り労働者の個別の意見を聴くことが義務付けられています。 次に、日本では年次有給休暇を具体的にどのように取得できるのでしょうか。 年次有給休暇は一元的に連続取得しなければならないのでしょうか。 それとも個別に取得できるのでしょうか。 日本の法律では、年次有給休暇は原則として1日単位で取得することになっていますが、一定の条件(下表参照)を満たせば、他の方法で取得することもできます。 厚生労働省「年次有給休暇の起算日(5日)の正確な取得に関する解説」4より 注意点としては、年次有給休暇の付与開始日やその年の計算基準日については会社によって様々な形の規定があるため、年次有給休暇の取得期間が重複するケースも考えられます。 この場合、取得すべき年次有給休暇の計算方法については会社独自の人事管理制度に基づき社会保険労務士のサポートが必要となります。 4. 年次有給休暇を取得しないとどうなりますか? 年次有給休暇はどのように発生しますか? 年次有給休暇を買い取ることはできますか? 未取得の年次有給休暇はどうすればいいのでしょうか? 前述の通り、日本の雇用主は従業員に最低5日間の年次有給休暇を与える義務があります。 それを超えて未消化の年次有給休暇は、合算して翌年の年次有給休暇にカウントすることが認められています。 ただし、年次有給休暇の清算期間(時効)は法律上2年であることに注意してください。 法律上の年次有給休暇の目的は労働者に自己啓発のための休暇を与えることであるため、制度が実質的に空洞化することを避けるための年次有給休暇の買い取り契約は認められていません。 未取得の年次有給休暇を補助することで従業員の利益を保護できると認められるのは、以下のような場合のみです: 法定基準を超える未使用の年次有給休暇 消滅時効を超える未取得の年次休暇 退職時に残っている未取得の年次休暇 上記の年次有給休暇の補助は、労働者の年次有給休暇を取得する権利を侵害してはならないという条件付きであるという事実に注意を払うことが重要です。 言い換えれば、補助行為自体が従業員の休暇申請の障害となってはいけません。 同時に、労働契約や就業規則において、年次有給休暇の日数を補助・購入できることを明示的に合意していない場合もあります。 一方、雇用主は年次有給休暇を買い取る法的義務はありません。 従って、年次有給休暇の実施には、使用者が社内の人事管理制度において最善を尽くす必要があります。 年次有給休暇を現金に換算する際の換算基準はどのようなものになるでしょうか? 大きく分けて2つのアプローチがあり、従業員の給与率に基づくものと、使用者が就業規則で固定給付を定める方法があります。 前者の給与率の場合、基礎となる賃金は次の3つの中から選択することができます: 従業員の平均賃金 健康保険法に定める標準報酬月額 所定労働時間内に実際に働いた後に支払われる通常の賃金
- [外資系企業が知るべき日本の労働時間制度について](https://shiodome.co.jp/column/21816/) - 労働時間制度は、労働法の遵守や報酬体系の作成などにおいて、人事労務管理の最も重要な要素の一つです。実際、日本の労働時間制度は諸外国と似ており様々な選択肢があります。日本の労働時間制度を理解し適法性を担保しながら上手に活用することで、企業・従業員双方の満足度を大きく高め労使WinWinの実現が可能となります。今回は、日本の労働時間制度についてご紹介します。 本稿の内容は以下の通りです。 1. 日本の労働時間制度の概要 日本の労働時間制度は、標準労働時間制と特殊な労働時間制度の2つに大別されます。 標準労働時間制とは、法定労働時間制とも呼ばれ、労働基準法第32条に規定されている、1日8時間、週40時間(休憩時間を除く)の労働時間制のことです。標準労働時間制では、法定労働時間を超える部分は時間外労働として法的に認められ、企業は法律に従って残業手当を支払う必要があります。この労働時間制度はシンプルで統一的であり、生産リズムや事業リズムがあまり変わらない企業にとっては人員管理の面で都合がよいのです。 しかし、閑散期と繁忙期の差があったり、季節的な影響を受けたり、さらには業務内容によって勤務形態が決まったりと、客観的には標準労働時間制の適用範囲を超えて運用されている企業もまだまだ多くあります。そこで、標準労働時間制よりも柔軟な変形労働時間制や、従業員に自主性の要望に応えるみなし労働時間制など、特殊な労働時間制度が設けられています。以下、日本の労働法におけるこれらの特殊な労働時間制度について紹介します。 2. 日本の特殊な労働時間制度 日本の特殊な労働時間制度を簡単に分類すると、(1)変形労働時間制(一定期間内変形労働時間制、フレックスタイム制)、(2)みなし労働時間制(事業場外みなし労働時間制、裁量労働制(専門業務型裁量労働制、企画業務型裁量労働制))、および(3)高度プロフェッショナル制度の3つに大別されます。 1. 変形労働時間制 変形労働時間制とは、主に、ある一定期間の労働時間を繁忙期と閑散期に応じて調整することにより、その期間全体の労働時間を法定労働時間の要求に合致させる労働時間制のことです。具体的には、特定期間を週単位の変形労働時間制、月単位の変形労働時間制、年単位の変形労働時間制、フレックスタイム制に分けることができます。1週間単位の変形労働時間制が適用される企業の範囲は限定的であるため、以下では主に1ヶ月単位、1年単位の変形労働時間制とフレックスタイム制について説明します。 厚生労働省の「令和4年就労条件総合調査」[1]1によると、変形労働時間制を導入している日本企業の割合は64%に達し、中でも1年単位の変形労働時間制が最も多く、導入企業の34.3%を占めています。同時に、日本の政府部門も変形労働時間制を積極的に推進しています。 (1) 1年単位の変形労働時間制 1年を単位として導入された変形労働時間制では、繁忙期に法定労働時間の上限を変更することができます。1日の労働時間の上限は10時間、1週間の労働時間の上限は52時間であり、同時に、上記変更後の労働時間の後、従業員は最大6日間連続して働くことができます。 この6日間は労使協定の特定期間でもあり、特別な規定を設ける必要があります。実際には、連続する2週間の休日を期間の最初と最後に配置した場合、従業員の連続労働時間の上限は12日と理解することができ、これも上記労働時間の上限を超えて労働時間制度を変形することになり、結果として残業代の支払い義務が生じます。 また、変形労働時間制が適用される3ヶ月を超える期間については、その期間の労働日数が1年間に280日を超えてはならず、1週間当たり48時間を超える連続した労働週の上限は3週間であることが法的に義務付けられています。変形労働時間制が適用される3ヶ月単位の変形労働時間制では、各3ヶ月単位で48時間を超える労働週は3週間以内でなければなりません。 (2) 1ヶ月単位の変形労働時間制 1ヶ月以内の特定の期間に短期間の繁忙期と閑散期が存在するために変形労働時間制を導入する場合、適用期間中の1週間の平均労働時間が法定労働時間(週40時間、特例適用事業の場合は週44時間)を超えないことが法的に義務付けられています。同時に、週1日または4週4日の休日を確保しなければなりません。 (3) フレックスタイム制 フレックスタイム制とは、3ヶ月以内の総労働時間を定め、従業員が出社・退社時間を自主的に決定する労働時間制度です。通常企業は、フレックスタイム制では従業員が同時に勤務することで会社の正常な運営を確保するため、コアタイムを定めることができます。 3ヶ月以内の週平均労働時間は40時間を超えてはならず、清算期間が1ヶ月に満たない場合は清算期間中の週平均労働時間は52時間を超えてはいけません。 備考 *労使協定または就業規則の規定によることができる。**従業員10人未満の場合は、同様の社内規程を提出する必要がある。***対象期間が3ヶ月を超える場合は、労働日数を年間労働日数の上限280日に基づいて換算して算出する。 注意すべき点として、上記の変形労働時間制を実施するためには、登録手続き(労使協定の締結、就業規則の変更等)を行う必要があり、変形労働時間制の下でも残業が発生する場合には、三六協定に関する手続きを行う必要があります。詳しくは、社会保険労務士に確認することをお勧めします。 2. みなし労働時間制 前述のとおり、みなし労働時間制には事業場外みなし労働時間制と裁量労働制(専門業務型裁量労働制、企画業務型裁量労働制)があります。このうち、事業場外みなし労働時間制とは、職場外で業務を行う場合労働時間の算定が困難であることから、原則として所定労働時間により労働時間を認定する制度です。 裁量労働制は、主にその性質上、従業員の裁量で行う必要がある業務に適用されます。この制度は、会社と労働者との間の労使協定または労働委員会の決議に基づいてみなし労働時間を定め、従業員の書面による同意を得て適用されます。裁量労働制は、企画業務型裁量労働制と専門業務型裁量労働制に分けられます。 以下、裁量労働制を中心に、日本のみなし労働時間制について解説します。 (1) 定義と適用範囲 企画業務型裁量労働制とは、業務の性質上、会社の運営に関わる業務の企画、立案、調査、分析について労働者の裁量を大きくする必要があることから、会社の労働委員会の決議と労働基準監督署への届出によって実施される裁量労働制です。 専門業務型裁量労働制は、業務の専門性から、その性質上働き方や労働時間の取り決めについて具体的な指示を行うことは客観的に困難で労働者の裁量に委ねざるを得ない特殊な労働時間制度です。この点、労使協定により実際に労働者が労働を提供した場合には、協定で定められた労働時間内に労働したものとみなされます。 2024年の法改正により、専門業務型裁量労働制の適用業種・職種は、(1)新製品・新技術の研究開発、(2)情報処理システムの分析・設計、(3)報道・出版業、ラジオ・テレビジョン放送法(放送法)の取材・編集・番組制作、(4)アパレル、インテリア、工業製品、広告などのクリエイティブ職、(5)ラジオ・テレビ番組、映画制作などの演出・脚本職、(6)広告などのコピーライター職、(7)情報システムコンサルティング業、(8)インテリアデザイン、(9)ゲームソフト制作、(10)証券アナリスト業、(11)金融商品開発業、(12)高等教育機関における科学研究職、(13)M&Aコンサルタント(2024年新設)、(14)会計士、(15)弁護士、(16)建築士(一級、二級建築士および木造建築士)、(17)不動産鑑定士、(18)弁理士、(19)税理士、(20)中小企業診断士の20種類となりました。 (2) 手続的要素 日本の法律では裁量労働制を適用するための手続要件も厳格に規定されています。自社で企画業務型裁量労働制を適用しようとする場合、この特殊な労働時間制度の合法性と有効性を確保するために手続要件を理解し遵守する必要があります。 企画業務型裁量労働制を適用するためには、対象となる職種に関して、労働委員会の5分の4以上の決議と労働基準監督署への届出手続きが必要です。専門業務型裁量労働制の場合は、企業は労働者の過半数からなる労働組合または労働者代表と労使協定を締結し、労働基準監督署に届け出ることが義務付けられています。また、当該制度の適用を受ける従業員との間で就業規則や労働契約を改善する必要があります。 なお、企画業務型裁量労働制と専門業務型裁量労働制の両制度の適用には注意が必要です: 3. 高度プロフェッショナル制度 高収入の専門職のための特別な労働時間制度として、日本の労働法にも「高度プロフェッショナル制度」が定められています。年収1,075万円の高度専門職員に適用されます。この特殊な労働時間制度の下では、労働基準法上の労働時間、休憩、時間外労働に関する規定は原則として適用されなくなります。ただし、労働者の心身の健康を保護する観点から、高度プロフェッショナル制度が適用される従業員には、年間104日の休日と4週間ごとに4日の休日を確保する必要があります。また、高度プロフェッショナル制度の適用には、従業員の書面による同意が必要です。同時に、職務以外の業務に常態として従事してはなりません。 手続き的要素として、高度プロフェッショナル制度の適用には、労働委員会の決議と、労働基準監督署への報告手続きの完了が必要です。 3. まとめ 以上、日本の特殊な労働時間制度について紹介しました。在日外資系企業の担当者が日本の特殊な労働時間制度を正しく理解し、企業内部の人事管理に合理的に適用することができれば、人件費の低減と人材のパフォーマンスの向上を両立しやすくなるでしょう。
- [残業制度と残業給与の計算方法について](https://shiodome.co.jp/column/22908/) - 今回は、残業の話題についてみてみます。 残業とは、法定労働時間を超える労働のことで、平日に発生するものを「時間外労働」、休日に発生するものを「休日労働」と呼びます。日本では、法定労働時間を延長する必要がある場合、日本の労働基準監督署に法定の届出手続きを行う必要があります(社会保険労務士と36協定の締結や届出などの手続きを確認してください)。 残業の問題は会社の人事にとって二つの側面に関わります。一つは労働時間の計算と休息規定の遵守(労働者の安全と健康の配慮義務を含む)、もう一つは残業に対する労働対価の計算(残業代)です。 1. 残業時間の法的制限 日本の労働基準法によれば、日本の法定労働時間は週40時間(または44時間)、1日8時間であり、1週間に1日の休日を設ける必要があります。しかし、法定労働時間を超えて労働者に残業や休日労働をさせる必要がある場合、36協定(残業の特別集団契約)を所轄の労働基準監督署に届出なければなりません。36協定には残業に関わる労働の種類や残業時間の上限が明確に規定されなければなりません。 厚生労働省の行政規定によると、36協定には適用期間(一定期間)が規定されていなければなりません。この期間は1年となっています。また、特別な事由がない限り、残業時間の具体的な上限は以下の通りです。 表I-標準労働時間の残業時間上限 表II-変形労働時間の残業時間上限 それでも、法律上は臨時的な特別事由の下で上記の残業上限を超えることが許されていますが、実際には日本社会の残業状況は非常に深刻で、過度の残業が労働者の心身に損害を与え、過労死や過労自殺の発生を促しているため、社会全体として再び残業制度を見直しています。 2019年4月に日本で成立した「働き方改革法」は、日本社会が高齢少子化社会に直面し、労働年齢人口が減少していることを背景に、働き方の多様化を促進し、個人の職業成長と所得分配の良好な環境を整備することを目指しています。また、長時間労働による労働者の健康被害や仕事と家庭のバランスが取れないことによる人口減少に対応するため、残業制度を改革し、女性や高齢労働者の就業率を高め、全社会の労働者の仕事と生活のバランスを図ることを法律の改正点としています。 臨時的な特別事由として濫用されやすいケース(突発的な製品仕様変更、機械故障の対応、大量の苦情対応など)についても、「働き方改革法」では以下のように残業時間の上限基準を明確にしました。 残業時間は年間で720時間を超えてはならない 平日残業と休日残業を合わせて月100時間を超えてはならない 平日残業と休日残業を合わせた場合、2ヶ月平均、3ヶ月平均、4ヶ月平均、5ヶ月平均、6ヶ月平均のいずれでも、月80時間を超えてはならない 臨時的な特別事由がある場合、月の残業時間が45時間を超える期間は6ヶ月を超えてはならない 臨時的な特別事由の法律規定の上限を超えた場合、刑事責任が発生する可能性があり、6ヶ月以下の拘禁または30万円以下の罰金が科されることがあります。また、臨時的な特別事由の下での残業については、雇用者は労働者の健康福祉対策を講じる義務があり、医師の指導を受ける、深夜残業の回数を制限する、補休や特別休暇を与える、健康診断を実施する、心理相談を受ける、産業医の指導や助言に従うなどの措置を講じる義務があります。 2. 標準労働時間制の残業代 残業労働に対してより高い労働対価を支払うことは、多くの国の法律で通常の慣行とされています。日本では、厳密には残業代は二種類に分けられます。一つは企業が定める労働時間を超える残業代(残業手当)、もう一つは法定労働時間を超える残業代(時間外手当)です。日本の労働法では法定労働時間を超える残業代のみが規定されていますのでご注意ください。便宜上、本記事では後者の時間外手当のみに言及します。 現行の法律に基づく日本の残業代の計算基準は以下の通りです。 表III-標準労働時間制の残業代計算基準 ここで言う基礎賃金とは、月給の場合、月給を1年の月平均労働時間数で割ったものです。月平均労働時間数は法定労働時間ではなく、会社が定める労働時間を指します。また、月給には通常、家族手当、交通費、住宅補助、臨時手当は含まれません。ただし、これらの手当が会社がすべての従業員に一律に支払うものである場合は、月給に含めて残業代を計算する必要があります。 3. 特殊な労働時間制度の残業代 特殊な労働時間制度では、法定労働時間の上限が異なるため、残業代の計算に影響を及ぼします。変形労働時間制の場合、まず残業時間を確定する必要があります。 変形労働期間中、労使協定または就業規則で規定された1日の労働時間が法定の8時間を超える場合、規定された労働時間を超えた部分が残業時間として計算されます。1日の労働時間が規定されていない場合は、8時間を超えた部分が残業時間として計算されます。 同様に、週の労働時間についても、変形期間中の労使協定または就業規則で規定された週の労働時間が法定の40時間(または44時間)を超える場合、規定された週の労働時間を超えた部分が残業時間として計算されます。週の労働時間が規定されていない場合は、40時間(または44時間)を超えた部分が残業時間として計算されます。 以上の手順で判断した後、変形労働時間制における法定労働時間の上限も以下の通りです。 表IV:1ヶ月単位の変形労働時間制度の法定労働時間上限 4. 代休と振替休日 法定休日の残業について、代休を設けることで残業代を支払わずに済むかどうかは、多くの人事担当者が知りたいことかもしれません。ここでまず明確にしていただきたいのは、日本の法定休日は土日祝日の総称ではないということです。日本の労働基準法では、雇用者は毎週1日の休日を設ける必要があり(変形労働時間制では4週に4日の休日を設ける)、法定休日は就業規則に明記されている休日を指します。 したがって、法定休日の残業について、代休(代替休暇)を設けた場合でも、法的に残業代を支払う必要があります。しかし、事前に法定休日と他の労働日を調整し、事前または事後に代休を設けた場合(振替休日)、法定休日が既に調整されているため、残業代を支払う必要はありません。 注意すべき点は、法定休日の残業について、残業時間が法定労働時間の8時間を超える場合、残業代は重複して計算されず、一律135%の残業代が支払われます。しかし、深夜労働の場合は、深夜労働の加算率が適用されます。 最後に、代休の意味は、1ヶ月に60時間を超える残業を調整するメカニズムとしても利用できることです。就業規則にこのような場合の代休が明記されている場合、実際の代休時間に基づいて、最終的に適用される残業代率が異なる場合があります。 5. 固定残業代制度とみなし労働時間制 固定残業代制度についても、顧客からよく問い合わせがあります。固定残業代制度は、従業員に残業や休日労働があるかどうかに関わらず、一定時間数の残業が発生することを見越して、毎月の基本給にこの部分の残業代を含める制度です。このため、実際に従業員が残業や休日労働をしていなくても、固定残業代の支払いには影響しません。この制度では、会社が定める固定残業時間に基づいて、正確に固定残業代を計算する必要があります(通常の残業代率の125%で計算)。固定残業代がこの金額を下回る場合は、差額を補填する必要があります。また、残業が深夜や法定休日に発生した場合は、深夜残業や法定休日残業の基準に従って残業代を補填する必要があります。 みなし労働時間制は、労働時間を管理しない従業員に対して、法定労働時間を提供したとみなす制度です。この制度では、具体的な労働時間は従業員の自己管理に委ねられます。残業、深夜労働、法定休日の残業が発生した場合も、法的に残業代を支払う必要があります。この点もご注意ください。 6. まとめ 日本の残業法制度は複雑です。残業は従業員の仕事と生活の時間を再分配するものであり、実際には雇用者が従業員の安全と健康を配慮する義務の履行にも関わります。残業時間の認定と残業代の計算には専門知識が求められ、会社内部の出勤管理や就業規則の策定にも高い要求があります。社会保険労務士に相談または委託して対応することを強くお勧めします。 この記事の内容にご質問がある場合や、関連する計算業務の委託をご希望の場合は、いつでもお気軽にご連絡ください。高品質な専門サービスで御社のコンプライアンスニーズに確実に対応いたします。
- [シャドーペイロール(Shadow Payroll)とは:仕組みの解説及び運用方法や事例、導入時の注意点](https://shiodome.co.jp/column/24413/) - グローバル化が進む現代のビジネス環境では、企業が従業員を海外に派遣するケースが増えています。その際に重要になるのが、「シャドーペイロール(Shadow Payroll)」という仕組みです。この制度は、派遣先国の税務および社会保険の義務を適切に果たしながら、派遣元企業と従業員の双方を保護する役割を担っています。本記事では、その仕組みを詳しく解説し、運用方法や具体例、導入時の注意点についても深掘りします。 1. シャドーペイロールの基本概要 シャドーペイロールとは、実際の給与支払いが派遣元国で行われる一方で、派遣先国の税務・社会保険要件を満たすために、仮想的な給与計算を行う仕組みです。この制度を活用することで、派遣先国での法的リスクを回避し、税務・社会保険のコンプライアンスを確保できます。 ポイント 派遣先国では、現地の税務および社会保険負担を目的とした「仮想給与」の計算が必要となることがあります。 派遣先国の規定に沿った税金や保険料の支払いが、企業と従業員を法令違反から守る重要な手段となります。 日本から海外に派遣された場合で、派遣先国で給与支払いが行われる場合であっても、従業員が日本の健康保険や厚生年金を含む社会保険制度を継続したいと希望することがあります。この場合、派遣先国での給与を基に仮想給与を設定し、日本の社会保険料計算基礎額として用いることが可能です。さらに、企業年金制度も継続される場合、本人負担部分を引き続き負担する仕組みが組み込まれることがあります。 このように、シャドーペイロールは、各国の異なる規制や制度に対応しながら、従業員の福利厚生を維持し、企業のコンプライアンスを確保するための柔軟なソリューションとなっています。 2. シャドーペイロールが必要な理由 シャドーペイロールが重要視されるのは、グローバルに事業を展開する企業が直面するさまざまな課題を解決するためです。以下に、その理由を詳しく説明します。 (1) 税務コンプライアンスの確保 多くの国では、従業員がその国で一定期間働く場合、所得税等の税金の納付が義務付けられています。(派遣先国から給与が支給されていないからといって、派遣先で納税しなくて良いわけではありません。)シャドーペイロールを利用することで、派遣先国の税務要件に従った正確な納税が可能になります。 (2) 社会保障の適用 派遣先国の社会保険制度に基づき、保険料を適切に計算し支払うことで、従業員の福利厚生を確保できます。 (3) 二重課税や罰則の回避 シャドーペイロールを導入することで、派遣元国と派遣先国間の二重課税を防止し、税務当局からの罰則リスクを最小限に抑えることができます。 また、シャドーペイロールは、タックスイコライゼーション(Tax Equalization)と連携して運用されることが多くあります。この場合、派遣される従業員の税負担を派遣前の本国基準で公平に保つために、仮想税額(Hypothetical Tax)が設定されます。これにより、シャドーペイロールで実際の税額を計算・申告する際にも、タックスイコライゼーションの目的である公平性が保たれます。 3. シャドーペイロールが発生する主な状況 シャドーペイロールが適用される状況には、以下のようなケースがあります。 (1) 派遣元国で給与を受け取りつつ派遣先国での勤務がある場合 例えば、日本の企業から派遣され、給与は日本で支払われるが、派遣先国で所得税や社会保険料を負担する必要がある場合です。 (2) 派遣元国での社会保険を継続したい場合 派遣先国の給与額を仮想的に日本基準に変換し、社会保険料を計算する仕組みが必要です。 (3) 多国籍勤務の場合 複数の国で働く従業員について、各国の勤務日数や給与額に基づき、税務および社会保険料を適切に分配します。 4. シャドーペイロールの具体的な運用方法 シャドーペイロールを効果的に運用するには、以下のステップを踏む必要があります。 (1)従業員情報の収集 給与データ、派遣期間、勤務日数、派遣先国の税法や社会保険要件を把握します。 (2)派遣先国の要件確認 現地の税務登録や社会保険加入要件を確認します。 (3)仮想給与の設定 派遣先国での税金や保険料を計算するために、仮想給与額を設定します。 (4)納税・保険料の支払い 計算された税金や保険料を現地の税務当局および社会保険機関に支払います。 (5)税務申告の提出 必要な税務申告書を準備し、派遣先国での提出を行います。 仮想給与の設定は、タックスイコライゼーションと連携して行われる場合、派遣される従業員が本国基準での税負担(Hypothetical Tax)を維持できるよう調整されます。これにより、派遣先国での税負担と本国基準の税負担との差額を明確化し、企業が補助する仕組みが構築されます。 5. メリットと課題 シャドーペイロールには、さまざまなメリットと課題が存在します。まずメリットとして、税務コンプライアンスの確保が挙げられます。これは、各国の税法や規制に準拠することで法的リスクを回避できる点で、企業にとって重要な利点です。また、社会保険の継続が可能になる点も見逃せません。従業員が国外で働く場合でも、福利厚生を維持することで安心感を提供し、モチベーションの維持や採用力の向上にもつながります。
- [タックスイコライゼーション(Tax Equalization, TEQ)とは:概要や必要性、適用される状況及び手続きについて解説](https://shiodome.co.jp/column/24420/) - 国際派遣が増加するビジネス環境において、企業が派遣従業員の税負担を公平に保つ仕組みの一つが 「タックスイコライゼーション(Tax Equalization, TEQ)」です。本記事では、この制度の概要から必要性、適用される状況、手続きなどをわかりやすく解説します。 1. タックスイコライゼーションとは? タックスイコライゼーションとは、企業が派遣従業員の税負担を調整し、派遣先国で働く間も、派遣前(本国)の税負担と同程度に保つ仕組みです。 ポイント 派遣従業員の税負担が派遣国の高税率の影響を受けないようにする。 本国基準の税負担を維持し、派遣による不公平感をなくす。 追加の税負担は企業が負担し、派遣従業員のモチベーションを維持。 なお、この仕組みの中核を担うのが、ハイポタックス(Hypothetical Tax, 仮想税額)です。ハイポタックスとは、派遣前の本国で想定される税額を基準として設定される仮想的な税負担額を指します。これにより、派遣先国の税制度に関わらず、従業員は本国基準の税額のみを負担することができます。 2. なぜタックスイコライゼーションが必要なのか? (1) 派遣従業員の不安を軽減 派遣国によって税率が異なるため、高税率の国に派遣された場合、従業員にとって母国で勤務を続ける場合と比べて不利益となり、モチベーションが低下する可能性があります。タックスイコライゼーションを導入することで、派遣による税負担の変化を回避できます。 (2) 公平性の確保 同じ業務を行う従業員間で税負担の差が出ると、不公平感が生じます。タックスイコライゼーションを適用することで、社内での公平性を維持します。 (3) グローバル人材派遣の促進 従業員が派遣先国の税負担を気にすることなく国際経験を積むことができるため、企業の国際的な事業展開を支援します。 3. タックスイコライゼーションが適用される状況 企業が海外派遣者に対してタックスイコライゼーションを適用するのは、特定の状況下において派遣者の税負担を調整する必要がある場合です。この制度は、派遣者が海外赴任前の母国で勤務を続けていた場合と同等の税負担水準を維持し、公平性を確保することを目的としています。以下に、タックスイコライゼーションが適用されやすい具体的なケースを挙げます。 (1)高税率の派遣先国への赴任 海外派遣先国の税率が母国と比較して著しく高い場合、赴任者が過度な税負担を負わないよう、企業が補填を行うことがあります。たとえば、北欧諸国や一部のアジア諸国では高額な所得税が課されることがあり、派遣者の経済的な負担を軽減するためにタックスイコライゼーションが採用されることが一般的です。 (2)二重課税のリスクがある場合 海外派遣者が派遣先国および母国の双方で所得税を課される状況では、二重課税の問題を回避するためにタックスイコライゼーションが活用されます。これにより、赴任者の税負担が不当に増加するのを防ぎ、派遣中の経済的な安定性が確保されます。特に、租税条約が不完全な国間では、企業による調整が重要となります。 (3)長期派遣や管理職派遣 長期間にわたる派遣や高額所得を得る管理職の派遣では、所得に対する税負担が大きくなる傾向があります。この場合、タックスイコライゼーションを適用することで、赴任者が税金面で不利になることを避けることができます。特に管理職は高い報酬を得ることが多いため、この制度の恩恵を受けやすい層と言えます。 4. タックスイコライゼーションの仕組み (1) 基本的な考え方 タックスイコライゼーションの基本的な考え方は、派遣従業員の税負担を派遣前の本国で支払っていた税額と同等に保つことです。具体的には、派遣前の本国基準で計算された仮想税額(Hypothetical Tax)を基準とし、それを超える税負担を企業が補填することで、派遣従業員の税負担が公平に保たれるよう設計されています。この仕組みにより、派遣従業員は派遣先国の異なる税制による不公平感や経済的な負担を感じることなく、安心して業務に集中することができます。 (2) 具体的な計算方法 タックスイコライゼーションの計算は、以下の手順に基づいて行われます。 ①本国での税負担を基準に設定: 派遣前の所得税率や住民税、社会保険料を基に仮想的な基準税額を計算します。この仮想税額はHypothetical Taxと呼ばれ、派遣従業員が本国で勤務を継続していた場合に支払うべき税額を想定して設定されます。 ②派遣先国での税負担を計算: 派遣先国の税率や税制に基づいて実際の税額を算出します。この際、所得税、住民税、社会保険料、さらには現地特有の税金など、派遣先国の全体的な税負担を考慮します。 ③差額を企業が負担: 派遣先国での実際の税負担が本国基準の仮想税額を上回る場合、その差額を企業が負担します。これにより、派遣従業員が想定外の追加税負担を強いられることを防ぎ、税負担の中立性を保ちます。 (3) 従業員の負担 従業員は、派遣先国においても引き続き本国基準の税額を支払うことが求められます。これは、ハイポタックスとして計算されるものであり、本国での生活を継続する場合と同様の税負担を維持するための仕組みです。このようにすることで、派遣先国での税負担が過大または過小となることを回避し、税制の公平性を確保します。 5. 日系企業におけるネット保証(手取保証)とは
- [在留資格「永住者の配偶者等」に関する申請方法や就労可否の論点~就労制限のない身分系在留資格のメリットと取得要件の解説~](https://shiodome.co.jp/column/7952/) - 日本に永住許可を受けて在留している外国人の方(永住者)が、配偶者やお子様と共に日本で暮らすことを希望する場合、検討すべき在留資格が「永住者の配偶者等」です。この在留資格は、就労ビザなどの活動に基づく資格とは異なり、個人の身分関係に基づく「身分系在留資格」に分類されます。そのため、活動内容に制限が少なく、日本で生活基盤を築く上で非常に有利な条件が整っています。本記事では、これから申請を検討されている方に向けて、「永住者の配偶者等」の該当範囲、就労に関する規定、そして申請に際して重要となる実務上のポイントについて解説します。 1. 「永住者の配偶者等」の対象となる範囲 この在留資格の対象となるのは、主に以下の身分関係にある方です。 (1) 永住者の配偶者 現に婚姻関係にあることが要件となります。 ここで重要となるのは、法律上の婚姻関係が必要であるという点です。事実婚や内縁関係のパートナーは、原則としてこの在留資格の対象とはなりません。また、相手方である永住者が死亡した場合や離婚した場合は、該当性(在留資格の根拠)を失うことになります。 (2) 永住者の子 以下の要件を満たすお子様が対象となります。 永住者の子として日本で出生し、その後も継続して日本に在留していること。 ※実務上の注意点(海外で出生した子の場合) 「永住者の配偶者等」における「子」の要件は、「日本で出生したこと」が前提となっています。永住者の子であっても、海外で出生し、日本に呼び寄せる場合は、在留資格「永住者の配偶者等」ではなく、「定住者」の在留資格に該当するケースが一般的です。この区分けは混同されやすいため、申請前に正確な判断が必要です。 2. 就労可否と活動範囲のメリット 「永住者の配偶者等」を取得する最大のメリットの一つは、就労活動に制限がないことです。 職種や時間の制限がない 一般的な就労ビザ(「技術・人文知識・国際業務」など)では、許可された職務内容以外の仕事をすることは認められません。また、「家族滞在」や「留学」の場合は、資格外活動許可を得ても「週28時間以内」という制限があります。しかし、「永住者の配偶者等」にはこれらの制限がありません。 単純労働を含む幅広い職種での就労が可能です。 フルタイム(正社員)、パートタイム、アルバイトなど、雇用形態を問いません。 自ら会社を設立して経営を行うことも可能です。 もちろん、専業主婦(主夫)として就労しない選択も可能です。 このように、日本人配偶者と同様に、日本社会において自由な経済活動が認められているのが大きな特徴です。 3. 申請における主要な要件と審査ポイント 申請にあたっては、単に身分関係があることの証明だけでなく、日本での安定した生活が見込まれるかどうかが審査されます。 (1) 婚姻の実態(配偶者の場合) 法律上の婚姻手続きが完了していることに加え、「同居し、互いに協力し扶助し合っている社会通念上の夫婦の実態」が求められます。 別居をしている場合や、交際経緯に不自然な点がある場合は、偽装結婚を疑われないよう、合理的な理由の説明や立証資料(スナップ写真、通信記録等)が重要視されます。 (2) 生計維持能力 世帯として、日本で公共の負担にならずに生活できるだけの資産や収入があることが求められます。 申請人本人に収入がなくても、配偶者である永住者側に十分な扶養能力があれば問題ありません。ただし、近年は住民税や年金などの公的義務の履行状況(納税証明書等)が厳格に確認される傾向にあります。 4. 申請手続きの方法 現在の状況に応じて、以下のいずれかの手続きを行います。 (1) 海外から呼び寄せる場合(在留資格認定証明書交付申請) 海外に住んでいる配偶者を日本に招へいする場合の手続きです。 日本の入管に対して「在留資格認定証明書」の交付申請を行い、許可された後に現地の日本公館で査証(ビザ)の発給を受け、来日するという流れになります。 (2) 他のビザから変更する場合(在留資格変更許可申請) すでに「就労ビザ」や「留学」、「家族滞在」などで日本に在留している方が対象です。 例えば、就労ビザを持つ外国人が永住者と結婚した場合や、永住権を取得した方の配偶者が「家族滞在」から切り替える場合などが該当します。「家族滞在」から「永住者の配偶者等」への変更は、就労制限が解除されるため、変更のメリットが非常に大きい手続きと言えます。 5. よくある論点と注意点 「家族滞在」との違い 永住者の配偶者であっても、要件を満たせば「家族滞在」のままでいることも可能です。しかし、「家族滞在」には就労制限(週28時間以内)があります。将来的にフルタイムで働く可能性がある場合や、より安定した在留資格を希望する場合は、「永住者の配偶者等」への変更が推奨されます。 離婚後の在留資格について 万が一、永住者と離婚(または死別)した場合、「永住者の配偶者等」の更新は原則として認められなくなります。 引き続き日本への在留を希望する場合は、実子を監護養育する場合や、婚姻期間が一定期間(目安として3年以上など)継続していた場合などに、「定住者」への変更が認められる可能性があります。これらは個別の事情による判断が大きく影響するため、慎重な対応が必要です。 6. まとめ 在留資格「永住者の配偶者等」は、就労制限がなく、日本で安定した生活を送るために非常に強力な資格です。一方で、申請にあたっては、海外出生子の「定住者」該当性や、納税義務の履行状況など、専門的な知識に基づく判断が必要な場面も少なくありません。これから結婚される方、あるいは既に日本にお住まいで在留資格の変更を検討されている方は、ご自身の状況に合わせた適切な申請準備を行うことが、許可への近道となります。
- [【Q&A】外国人の雇用と就労ビザ申請手続きや留意点について](https://shiodome.co.jp/column/7956/) - 企業が外国人を雇用する場合、日本人の採用とは異なり、入管法(出入国管理及び難民認定法)に基づいた適切な手続きが求められます。 しかし、制度は複雑であり、「どのような手順で進めればよいのか」「何に注意すべきか」と悩まれる担当者様も少なくありません。 本記事では、外国人の雇用や就労ビザ(在留資格)の申請手続きに関して、よくあるご質問をQ&A形式で解説いたします。最新の法制度に基づき、実務上の留意点をまとめましたので、採用計画にお役立てください。 1. 基礎知識・ビザの種類について Q1. 「就労ビザ」という名前のビザがあるのでしょうか? 一般的に「就労ビザ」と呼ばれていますが、法律上は「就労ビザ」という単一の名称の資格は存在しません。 日本に滞在し活動するための「在留資格」のうち、就労が認められているものの総称として「就労ビザ」という言葉が使われています。 代表的なものには、以下のような種類があります。 技術・人文知識・国際業務: エンジニア、通訳、翻訳、営業、経理、デザイナーなど 技能: 外国料理の調理師など 特定技能: 介護、建設、製造業など、人手不足の産業分野 高度専門職: 高度な専門能力を持つ人材(ポイント制で優遇される資格) 経営・管理: 会社の経営者や管理者外国人の職務内容や学歴、職歴によって、申請すべき(又は申請可能な)在留資格の種類は異なります。 Q2. 留学生をアルバイトとして雇う場合も、就労ビザが必要ですか? 留学生の本来の在留目的は「学業」であるため、原則として就労は認められていません。しかし、出入国管理局から「資格外活動許可」を得ている場合に限り、アルバイトとして雇用することが可能です。 この場合、原則として「週28時間以内」という就労時間の制限が設けられています。これを超過して働かせた場合、不法就労助長罪に問われる可能性があるため、勤怠管理には十分な注意が必要です。 2. 申請手続き・流れについて Q3. 海外にいる外国人を日本に呼び寄せて採用する際の手続きは? 海外から外国人を呼び寄せる場合は、原則として以下のステップを踏むことになります。 雇用契約の締結: 企業と外国人の間で雇用契約を結びます。 在留資格認定証明書(COE)交付申請: 企業(または行政書士等の代理人)が、日本の出入国在留管理庁へ申請を行います。 証明書の送付: 審査が許可されCOEが発行されたら、原本を海外の本人へ送ります。(現在、運用上は紙の証明書ではなくメールそのものを証明書として取り扱う方法が一般的です) 査証(ビザ)の発給申請: 本人が現地の日本国大使館・領事館でビザの申請を行います。 来日・就労開始: 日本の空港で在留カードを受け取り、入国します。(入国時在留カードを受取ることができる空港は限定されていますので、事前に在留カードが受取可能な空港であるか入国前にご確認ください。) Q4. すでに日本に住んでいる留学生を新卒採用する場合の手続きは? 留学生を採用する場合は、在留資格を「留学」から、就労可能な在留資格(例:「技術・人文知識・国際業務」など)へ変更する必要があります。これを「在留資格変更許可申請」といいます。 変更申請は、入社予定日の前に行う必要があります。例年、卒業シーズン前の12月から1月頃より申請を受け付ける傾向にありますが、審査には時間を要するため、余裕を持ったスケジュールでの申請が推奨されます。 Q5. 申請から許可が出るまでの期間はどれくらいですか? 審査期間は、申請の内容や申請時期、管轄する出入国管理局の混雑状況によって大きく変動します。 在留資格認定証明書交付申請(呼び寄せ): 概ね1ヶ月から3ヶ月程度 在留資格変更許可申請(変更): 概ね2週間から1ヶ月程度 上記はあくまで目安であり、追加資料の提出を求められた場合などは、さらに期間を要することがあります。入社日に間に合うよう、早めの準備を行うことが重要です。 3. 審査基準・採用のポイントについて Q6. ビザ申請の際、入管はどのような点を審査していますか? 審査のポイントは多岐にわたりますが、主に以下の3点が重要視される傾向にあります。 職務内容と本人の経歴の整合性(関連性) 大学や専門学校での専攻内容(または実務経験)と、日本で行う予定の業務内容に関連性があるかが審査されます。例えば、文系の学部を卒業した外国人が、未経験で専門的なプログラミング業務に従事する場合などは、説明の難易度が高まる可能性があります。 日本人と同等以上の報酬額 外国人であることを理由に、不当に低い賃金を設定することは認められません。同じ職務を行う日本人社員と同等、もしくはそれ以上の給与水準である必要があります。
- [外国人を雇用する際に注意が必要な不法就労と不法就労助長:不法就労助長にならないための対策とは](https://shiodome.co.jp/column/7848/) - 近年、人手不足の解消やグローバル化への対応として、外国人を雇用する企業が増加しています。しかし、複雑な入管法(出入国管理及び難民認定法)のルールを十分に理解しないまま採用活動を行った場合、知らず知らずのうちに法律違反となってしまうリスクがあります。 特に注意が必要なのが、企業側(事業主)に責任が問われる「不法就労助長罪」です。本記事では、どのようなケースが不法就労にあたるのか、企業が不法就労助長に問われないために講じるべき具体的な対策とはどのようなものか、について解説します。 1. 不法就労となる3つのケース まず、どのような状態が「不法就労」に該当するのかを整理します。不法就労とは、入管法に基づき就労が認められていない外国人が日本で働くことを指し、大きく分けて以下の3つのパターンがあります。 ① 不法滞在者による就労 在留期間を経過した後も日本に居座っている場合(オーバーステイ)や、密入国した外国人が働くケースです。有効な在留資格を持っていないため、いかなる就労活動も認められません。 ② 就労不可の在留資格での就労 観光や親族訪問を目的とした「短期滞在」や、「留学」「研修」など、本来働くことが認められていない在留資格で日本に滞在している外国人が、許可なく働くケースです。 ※「留学」や「家族滞在」の在留資格であっても、「資格外活動許可」を得ていれば、定められた時間の範囲内で働くことが可能です。 ③ 認められた範囲を超えた就労 有効な就労ビザを持っている場合でも、許可された活動の範囲を超えて働くケースです。 例えば、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を持つ外国人が、単純労働(工場のライン作業や飲食店のホール係など)に従事することは、原則として認められていません。また、留学生が週28時間を超えてアルバイトをした場合も、これに該当する可能性があります。 2. 企業側に問われる「不法就労助長罪」とは 外国人が不法就労を行った場合、本人だけでなく、雇用した企業側も処罰の対象となることがあります。これを「不法就労助長罪(入管法第73条の2)」といいます。 不法就労助長罪の対象となる行為 具体的には、以下の行為を行った事業主などが処罰の対象となり得ます。 不法就労となる外国人を雇い入れた場合 外国人に不法就労活動をさせた場合 外国人に不法就労をあっせんした場合 「知らなかった」では済まされない可能性 この法律の重要な点は、「外国人が不法就労であることを知らなかった」としても、事業主が処罰される可能性があるということです。 雇用する際に在留カードを確認しなかったなど、事業主側に過失(確認義務を怠った等)があると認められた場合は、処罰を免れることは難しいとされています。 罰則としては、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金、またはその両方が科される規定となっており、企業にとっては社会的信用の失墜にもつながる重大なリスクといえます。(2024年の法改正を受け、2025年6月より罰則が厳格化されました。) 3. 不法就労助長にならないための対策・確認ポイント 企業が不法就労助長のリスクを回避するためには、採用時に適切な確認を行うことが極めて重要です。ここでは、実務上の具体的な確認対策を紹介します。 ① 在留カードの原本確認 面接等の採用選考時には、必ず「在留カード」の原本を確認するようにしてください。コピーや写真では偽造を見抜くことが難しいため、原本での確認が原則とされています。 【表面の確認ポイント】 在留資格の種類: 応募職種で働くことが可能な資格かを確認します。(例:「永住者」「定住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」であれば就労制限はありません) 在留期間(満了日): 有効期限が切れていないかを確認します。 【裏面の確認ポイント】 資格外活動許可欄: 留学生などをアルバイトとして雇う場合は、裏面の「資格外活動許可欄」に「許可」の記載があるかを確認する必要があります。 就労制限の有無: 就労ビザの場合でも、具体的な活動内容に制限があるかどうかが記載されている場合があります。 ② 在留カード等番号失効照会の活用 精巧に偽造された在留カードが出回っている事例も報告されています。そのため、出入国在留管理庁が提供しているWebサイト「在留カード等番号失効照会」を活用することをお勧めします。 在留カード番号と有効期間を入力することで、そのカードが有効なものかどうかを即座に確認することができます。 ③ 「指定書」の確認(特定活動、高度専門職の場合) 在留資格が「特定活動」の場合は、在留カードだけでは就労の可否や可能な業務範囲が判断できないことがあります。 この場合、パスポートに添付されている「指定書」を確認することで、具体的にどのような活動が認められているかを把握する必要があります。なお、「高度専門職」の在留資格においても上記と同様「指定書」が交付され、活動な所属機関が指定されていますので、就労開始前に指定書の内容をご確認ください。 ④ 雇用後の「外国人雇用状況の届出」 外国人を雇用した場合(および離職した場合)、事業主にはハローワークへの「外国人雇用状況の届出」が義務付けられています。
- [外資系企業向け:日本における育児と仕事の両立支援制度―育児支援制度とグローバル人事実務(2026年時点)―](https://shiodome.co.jp/column/57802/) - 日本の育児支援制度は、休業・給付・社会保険・自治体制度が相互に関係しており、海外各国の人事・労務制度とは異なる運用が多く見られます。そのため、日本で事業を開始・拡大する外資系企業が制度設計や海外本社への説明で戸惑いやすい論点について、外国人専門家の視点で記事を執筆しました。 近年、グローバル企業において、育児と仕事を両立する従業員への支援は単なる福利厚生制度ではなく、DEI(Diversity, Equity & Inclusion)、従業員のウェルビーイング、人材定着、ESG等とも密接に関連する重要な経営テーマとして位置付けられるようになっています。特に、共働き世帯の増加や高度専門人材の流動化が進む中で、育児とキャリア形成の両立支援は、日本国内企業のみならず、外資系企業・クロスボーダー組織においても重要性を増しています。 一方、日本の育児関連制度は、海外企業から見ると独特な制度構造を有しています。例えば、 「休業制度」と「所得補償制度」が分かれている 給与ではなく雇用保険給付として支給される 保育園入園状況によって休業延長可否が左右される 男性育休制度が近年急速に拡大している 国・自治体双方による支援制度が存在する 等、日本独自の制度運用が見られます。 海外制度と比較すると、日本の育児関連制度は比較的複雑かつ独特な運用が多いと言えるでしょう。そのため、海外本社主導でグローバル人事ポリシーを設計する際、日本制度とのギャップが生じるケースも少なくありません。 本稿では、日本における育児と仕事を両立する従業員への支援制度について、グローバル人事・給与計算・社会保険実務の観点から整理します。 1. 育児と仕事の両立支援は「福利厚生」から「経営課題」へ 欧米企業を中心として、近年は「従業員を単なる労働力ではなく、複数の社会的役割を持つ存在として捉える」という考え方が広がっています。従業員は、専門職、親、介護者、パートナー等、複数の役割を同時に担っています。そのため近年のグローバル人事では、育児支援、柔軟な働き方、復職支援、従業員のウェルビーイング、DEI等を、「従業員体験」の一部として統合的に設計する傾向が見られます。育児と仕事の両立支援を単なる福利厚生制度ではなく、「人材戦略」や「組織競争力」の一部として位置付ける企業も増えてきました。 日本でも、少子化対策や女性就業継続支援の観点から、育児関連制度の改正が継続的に行われています。 2. 「休業」と「給付」が別制度である日本 海外本社から最も質問を受けやすいポイントの一つが、「育児休業中の所得補償は、誰が負担しているのか」という点です。実務上は、「給与計算で処理するのか」「政府給付なのか」「会社負担なのか」等について、海外本社側から確認を受けるケースも少なくありません。 日本では、育児休業そのものは労働法上の権利である一方、育児休業中の所得補償は、原則として雇用保険制度から支給されるという整理になっています。そのため、多くの場合、会社が給与として支払うのではなく、一定要件を満たした場合に、従業員本人へ「育児休業給付金」が支給されます。また、日本では原則として子が1歳になるまで育児休業を取得できますが、一定条件下では1歳6か月、さらに2歳まで延長できるケースがあります。代表的な例としては、保育園へ入園できない場合、または配偶者の事情変更等が挙げられます。海外企業からは、「なぜ保育園事情が休業期間へ影響するのか」という疑問が生じるケースもありますが、日本では育児支援政策と雇用継続支援が比較的密接に結びついている点が特徴と言えます。 3. 2022年導入の「産後パパ育休」と男性育休の拡大 2022年4月施行の育児・介護休業法改正により、「出生時育児休業(いわゆる産後パパ育休)」制度が導入されました。この制度により、男性従業員についても、子の出生直後に柔軟な休業取得が可能となっています。 従来、日本では、長時間労働、性別役割分担、「育児は女性中心」といった企業文化が比較的根強く存在していました。しかし現在は、男性育休取得率の公表義務、ESG対応、DEI推進、人材定着施策等とも関連し、企業側にも育児と仕事の両立支援体制の整備が求められています。もっとも、制度が存在することと、実際に取得しやすい環境が整っていることは、必ずしも一致しません。特に日本では、制度上は取得可能であっても、チーム体制、人員配置、マネジメント層の理解度等によって、実際の利用しやすさに差が生じるケースも見られます。 実務上は、 チーム内業務調整 マネジメント層とのコミュニケーション 復職支援 キャリア継続支援 等も含めた運用が重要となります。 4. 近年の制度改正と育児と仕事の両立支援の拡大 日本では、近年も育児・介護休業法関連制度の見直しが継続しています。例えば、子の看護等休暇については対象範囲拡大が進められており、従来の病気・けが対応のみならず、学校行事等への対応も含めた柔軟な制度設計が議論されています。また、小学校低学年段階までを視野に入れた両立支援の必要性も、実務上重要視されるようになっています。さらに、育児と就業継続の両立支援として、日本では短時間勤務制度も広く利用されています。例えば、所定労働時間短縮、時差勤務、柔軟な働き方等の制度運用が行われています。 加えて、自治体レベルでの支援も拡大しています。例えば東京都では、一定条件下において、育児に伴う短時間勤務による収入減少への支援制度が導入されています。そのため、企業側としては、法定制度のみならず、自治体支援制度を含めた情報把握が求められる場面もあります。また、日本では少子化対策財源の確保に向けた制度整備も進められており、2026年4月からは「子ども・子育て支援金制度」も開始されています。 このように、日本の育児と仕事の両立支援制度は、単なる企業福利厚生に留まらず、社会保障制度、雇用政策、ESG、人材戦略等とも密接に関連している点が特徴と言えるでしょう。 5. グローバル人事・給与計算実務との接点 育児と仕事の両立支援は、単なる福利厚生制度ではなく、給与計算、社会保険、雇用保険、勤怠管理、海外本社制度などとも密接に関係しています。例えば、育児休業給付申請、社会保険料免除、時短勤務管理、復職後給与調整、海外赴任者等に関する取扱い、海外本社への制度説明等、多くの実務論点が存在します。特に外資系企業では、グローバル人事ポリシー、日本ローカル制度、給与計算ベンダー、人事システム間で制度理解に差異が生じるケースも少なくありません。そのため、日本実務に即した制度運用・社内規程整備・給与計算対応が重要となります。 また、外資系企業やクロスボーダー組織においては、海外本社のグローバル人事ポリシーや福利厚生制度を、日本の労働法・社会保険制度・実務運用へどのように落とし込むかが課題となるケースも少なくありません。特に、育児・介護関連制度については、日本独自の制度設計や運用実務も多いため、就業規則・各種社内規程との整合性を含めた検討が必要となる場合があります。 近年では、法定制度対応のみならず、「育児と仕事を両立する従業員が継続的に働ける組織設計」自体を、企業競争力の一部として捉える動きも広がっています。そのため、制度理解のみならず、日本特有の実務運用や組織文化も踏まえたグローバル人事対応が、今後さらに重要になると考えられます。当社では、外資系企業における人事労務・給与計算・海外赴任者等への対応を含め、多言語環境下での制度整備・実務運用支援を行っております。
- [外資系企業向け:日本の「所定」と「法定」がグローバル人事で誤解されやすい理由―外資系企業が理解しておきたい日本給与計算実務―](https://shiodome.co.jp/column/57818/) - 日本の人事・給与計算実務では、諸外国と異なり、「所定」と「法定」を区別して管理する場面があります。そのため、日本で事業を開始した外資系企業や海外本社の人事担当者が制度設計や運用面で戸惑うことが少なくありません。本稿では、こうした日本独自の労務・給与計算実務について、外国人専門家の視点も踏まえて整理します。 外資系企業の日本進出やグローバル人事統合プロジェクトにおいて、しばしば論点となるのが、日本独特の「所定」と「法定」という考え方です。 例えば、海外本社側や地域統括の人事担当者から、 「契約時間を超えているのに、なぜ法定残業ではないのか」 「土曜日出勤なのに、なぜ休日労働割増が発生しないのか」 「代休を付与したのに、なぜ休日手当が必要なのか」 といった質問を受けるケースも少なくありません。 これは、日本の労務管理において、法律上の基準(法定)と、会社と従業員との間で定める勤務条件(所定)を区別して管理するという特徴があるためです。もっとも、この考え方は海外企業にとって必ずしも直感的なものではありません。 米国では、FLSA(Fair Labor Standards Act/公正労働基準法)を中心として、主に週単位で時間外労働を管理する実務が一般的であり、日本のように「法定休日」と「所定休日」を区別したうえで割増賃金を整理するケースは限定的です。また、管理職区分(適用除外/非適用除外)による取扱いの違いも大きく、日本のように多層的な休日区分を前提とする制度設計とは考え方が異なる場合があります。 欧州においても、EU Working Time Directive(EU労働時間指令)等を通じて、労働時間の上限規制や最低休息時間等は定められていますが、日本のような「所定休日」「法定休日」の区分管理を中心とした給与計算実務とは制度趣旨が異なるケースが見られます。 さらに、中国実務においては、「標準工時制」「総合計算工時制」「不定時工時制」等の工時管理制度は存在するものの、日本ほど「所定労働時間」という概念を独立した給与計算上の管理概念として厳密に運用するケースは一般的ではありません。 そのため、海外本社主導でグローバル人事ポリシーや勤怠システムを設計する際、日本特有の「所定」と「法定」の考え方が、実務上のギャップとして顕在化するケースも少なくありません。 日本の労働基準法では、原則として、1日8時間・週40時間を法定労働時間としています。これは、法律上の上限時間という位置付けです。一方、所定労働時間とは、会社が就業規則や雇用契約等で独自に定める勤務時間を意味します。 例えば 9:00〜17:30(休憩1時間) 1日7.5時間勤務 と定めている場合、この「7.5時間」が所定労働時間となります。 つまり、日本実務では、法定労働時間=法律上の基準、所定労働時間=会社と従業員との約定という二層構造で労働時間管理が行われています。この点は、海外企業にとって理解しづらいポイントの一つと言えます。 例えば、 所定労働時間:7.5時間 実労働時間:8時間 の場合、0.5時間分は会社の所定労働時間を超えています。 しかし、法定労働時間(1日8時間)は超えていないため、この0.5時間は直ちに法定時間外労働とはなりません。 日本実務では、所定外労働と法定外労働を区別して管理するケースがあります。さらに、日本では休日についても、法定休日と所定休日を区別して管理することが一般的です。例えば、土日休みの会社であっても、 日曜日=法定休日 土曜日=所定休日 として運用されるケースがあります。 そのため、「土曜日出勤=直ちに法定休日労働」とは限りません。このような整理は、割増賃金計算や給与計算システムの設定に直接影響します。例えば、所定外労働、法定外労働、深夜労働、法定休日労働では、適用される割増率が異なる場合があります。特に、海外本社主導でグローバル人事システムや勤怠システムを導入する場合、日本独自の「所定」と「法定」の区別を考慮せずに制度設計を行うと、日本給与計算実務との間で運用上の問題が発生するケースも見受けられます。 また、時間外労働や休日労働への対応方法としては、割増賃金支払だけではなく、「振替休日(振休)」や「代休」といった制度運用が採用されるケースもあります。もっとも、日本では「振休」と「代休」は異なる制度として整理されており、割増賃金支払義務への影響も異なります。例えば、事前に休日と労働日を入れ替える「振替休日」の場合、休日労働自体が発生しない整理となるケースがあります。一方、休日労働後に休暇を付与する「代休」の場合には、休日労働自体は既に発生しているため、法定休日労働割増の支払が必要となるケースがあります。 この点は、海外企業における“Time Off in Lieu(代替休暇)”の考え方とは異なる場合があり、グローバル人事運用上の誤解が生じやすい論点の一つです。 なお、「所定」と「法定」の概念をどのように整理する場合であっても、法定労働時間を超える時間外労働や休日労働を行わせる場合には、原則として36協定(時間外・休日労働に関する協定届)の締結・届出が必要となります。 特に外資系企業では、日本法人設立直後であること、海外本社主導で制度設計を行っていること、日本独自のルールへの理解が十分ではないこと等の理由から、36協定や就業規則整備が後追いとなるケースも見受けられます。 日本において適切な労務運用を行うためには、単にグローバルポリシーを導入するだけではなく、日本の労務実務・給与計算運用・社会保険実務との整合性を踏まえた制度設計が重要となります。 RSM汐留パートナーズでは、外資系企業・グローバル人事対応を含む人事労務支援、就業規則整備、36協定対応、給与計算運用支援等を行っております。また、クロスボーダー人材管理や海外本社ポリシー対応に関連する税務論点についても、税務チームと連携したサポートが可能です。日本実務との整合性にお困りの際は、お気軽にご相談ください。
- [外資系企業向け:国際異動・海外赴任人材における報酬パッケージの多様化と日本人事労務実務―欧米型報酬パッケージと日本給与計算・社会保険実務の接点―](https://shiodome.co.jp/column/57823/) - 外資系企業が日本で国際異動・海外赴任人材を受け入れる際、欧米型の報酬パッケージと日本の給与計算・社会保険・人事労務実務との接続で戸惑うことが少なくありません。本稿は、こうした国際人事・報酬設計上の実務ギャップについて、外国人専門家の視点も踏まえて整理します。 近年、外資系企業やクロスボーダー組織の拡大に伴い、国際異動・海外赴任人材や海外役員に対する報酬制度は、大きく多様化しています。従来、日本企業における報酬制度は、月額給与・賞与・退職金等を中心とした比較的シンプルな構成が一般的でした。しかし、欧米系企業を中心とするグローバル企業では、基本給与に加え、株式報酬、各種インセンティブ、赴任支援、税負担調整等を組み合わせた「総合報酬パッケージ」として設計されるケースが一般化しています。特に、海外赴任者、地域統括責任者、APAC統括責任者、高度専門人材等においては、単純な給与支給に留まらず、複数国にまたがる報酬・福利厚生・インセンティブ制度を横断的に管理する必要性が高まっています。 一方、日本実務においては、海外本社の制度をそのまま導入するだけでは十分とは言えません。 人事労務・給与支払業務・社会保険実務の観点からは、 何が「賃金」に該当するか 何が社会保険上の「報酬」と整理されるか どこまでを福利厚生として扱うか 日本法人がどの範囲まで管理主体となるか 等について、日本独自の整理が必要となる場面も少なくありません。 本稿では、国際異動・海外赴任人材において実務上頻繁に見られる欧米型報酬パッケージを概観するとともに、日本人事労務実務との接点について整理します。 1. 国際異動・海外赴任人材における報酬パッケージの特徴 欧米企業における役員・高度専門職向け報酬制度では、「給与」だけではなく、複数のインセンティブや補助制度を組み合わせて設計されることが一般的です。特に国際異動・海外赴任人材の場合、以下のような特徴が見られます。 本国と赴任国の双方で報酬が管理される 給与支給が複数国に分かれる 海外親会社主導で株式報酬制度が設計される 赴任に伴う住宅・教育・生活支援が含まれる 税負担調整制度が導入される このような制度は、欧米企業においては比較的一般的である一方、日本企業や日本型人事制度においては、必ずしも一般的とは言えません。そのため、日本法人側では、「どのように給与計算・社会保険・労務管理へ接続するか」が実務上の重要論点となります。 2. 入社一時金・リテンションボーナスと日本実務 (1)入社一時金 欧米系企業では、採用時に入社一時金が支給されるケースがあります。これは、①前職退職によるインセンティブ喪失補填、②他社からの引抜き、③海外赴任に伴う負担補償、④高度専門人材確保等を目的として支給されることが多く、日本企業における「入社祝い金」とは位置付けが異なる場合があります。また、一定期間内に退職した場合には返還義務が設定されるケースも少なくありません。 日本実務上は、労働条件通知書との整合性、返還条項の合理性、賃金性の整理、給与計算上の支給方法等について検討が必要となる場合があります。 (2)リテンションボーナス リテンションボーナスは、一定期間の在籍継続や特定プロジェクト完遂を条件として支給されるインセンティブです。例えばM&A後のPMI、海外拠点立上げ、IPO準備、組織再編等の局面において導入されることがあります。 日本企業においては、従来型の賞与制度との区別が曖昧となる場合もあり、支給条件、在籍要件、評価連動性、退職時取扱い等を明確化しておくことが望まれます。 3. RSU・ストックオプション等の株式報酬制度 近年、グローバル企業ではRSU(Restricted Stock Unit/譲渡制限付株式ユニット)やストックオプション等の株式報酬制度が急速に普及しています。これらは単なる短期賞与ではなく、中長期的なインセンティブとして設計されることが一般的です。特に欧米企業では、「会社価値向上への参加」、「株主との利害一致」、「長期的な人材定着」を目的として導入されるケースが多く見られます。 (1)日本法人勤務者への海外親会社付与 実務上特に多いのが、①海外親会社がRSUを付与、②従業員は日本法人所属、③日本で給与支給というケースです。 この場合、日本法人が直接の支給主体ではないとしても、給与計算・人事管理上、一定の情報把握が必要となる場面があります。また、権利確定期間中の国際異動、赴任・帰任、退職時の権利処理等により、管理実務が複雑化するケースも少なくありません。 (2)「給与」と「株式報酬」の境界 日本実務では、株式報酬制度が従来型人事制度と必ずしも整合しないケースがあります。例えば、会社法上の整理、就業規則との整合性、人事評価制度との関係、社内説明等について、日本側で追加対応が必要となる場合があります。特に、海外本社側ではグローバルポリシーとして統一的に設計されている制度であっても、日本側では実務運用上の調整が必要となるケースも見られます。 4. 住宅手当・赴任支援パッケージと社会保険実務 国際異動・海外赴任人材向けの赴任支援として、住宅手当、赴任・移転支援、生活費調整手当、教育費補助、一時帰国費用等が支給されることがあります。欧米企業では、これらを包括的な「海外赴任者向けパッケージ」として管理するケースも一般的です。 一方、日本実務では、各支給内容について、福利厚生、実費精算、現物給与、報酬のいずれとして整理するかが問題となる場合があります。特に住宅関連支援については、現金支給、借上社宅、法人契約、一部自己負担等、運用形態によって実務上の取扱いが異なるため、慎重な整理が必要となります。 また、国際異動・海外赴任人材向け手当については、社会保険上の「報酬」該当性が論点となる場合もあり、日本の給与計算実務との接続方法を含めた検討が求められます。 5. 日本型雇用との制度的ギャップ 欧米型報酬制度では、職務、成果、インセンティブを重視する設計思想が中心となる傾向があります。一方、日本企業では依然として、長期雇用、安定給、在籍性、福利厚生重視を前提とした制度設計も多く見られます。そのため、海外本社の制度をそのまま日本へ適用した場合、就業規則、賞与制度、人事評価制度、労働条件通知等との整合性が課題となる場合があります。特に、日本においては、「制度として存在すること」と「実際に運用可能であること」が必ずしも一致しないケースもあるため、日本実務に即した制度調整が重要となります。 6. おわりに 国際異動・海外赴任人材に対する報酬制度は、単なる「給与計算」の範囲を超え、人材戦略・グローバルガバナンス・インセンティブ設計・海外赴任管理等を含む包括的な領域へと拡大しています。 また、日本側においても、単純な給与計算処理のみならず、社会保険、労務管理、海外本社制度との調整、グローバルポリシー対応、株式報酬管理等を横断的に理解することの重要性が高まっています。 今後、クロスボーダー人材活用がさらに進展する中で、日本人事労務実務においても、国際異動・海外赴任対応力の高度化がより求められていくものと考えられます。
- [企業が知っておくべき印紙税の仕組みと対象文書](https://shiodome.co.jp/column/12299/) - 契約書や領収書の作成時に「収入印紙」を利用したことがある人も多いと思います。しかし、どのような場面で印紙税が発生するのかわからず、お困りの方も多いようです。本記事では印紙税とは何かについて説明するとともに、企業が知っておくべき印紙税事情についてまとめます。 1. 印紙税(収入印紙)とは 印税士とは、契約書や領収書、手形などの文章作成者に対して課せられる国税です。印紙税法によって定められた課税対象物を作成した際に支払い義務が生じます。納付は、収入印紙を対象文書に貼り、消印することで完了します。 2. 課税文書の確認方法 印紙税が必要かどうかは、印紙税法別表第一(課税物件表)に該当するかどうかにより決まります。ただし、文書の種類だけで決まるのではなく、条件に当てはまるかどうかが判断要因となることに注意する必要があります。例えば、同じ種類の書類であっても、記載する内容や個別の事例に応じて印紙税が対象となるかどうかが決まります。 印紙税の課税対象となっているのは以下で紹介する20種類の文書等です。 なお、課税文書のうち、国や地方公共団体、その他非課税法人などが作成するものは非課税文書とされ、課税対象となりません(印紙税法第5条)。また、金額が少額なものも課税対象から除かれます。文章によって条件が異なりますが、例えば第1号や第2号に該当する文書においては契約金額が1万円未満のもの、第17号に該当する文書においては受取金額が5万円未満のものは課税対象から除かれます。 3. 領収書の印紙税について 印紙税対象の文書の中で最も身近なものはおそらく「領収書」でしょう。領収書は上記の台17号「売上代金に係る金銭又は有価証券の受取書」に該当するため、条件によっては印紙税の対象となります。 領収書の印紙税は、少額であれば印紙税の対象とはなりません。具体的には、領収書の金額に応じて以下の印紙税が適用されます。 消印について 印紙税は文書に収入印紙を貼り「消印」することで納付されたと認められます。よって消印を忘れてしまうと納付したとは認められず、税務調査で指摘を受けてしまう可能性があります。消印方法は、文書の作成者又は代理人、使用人その他従業員の印章又は署名です。 領収書を再発行した場合 領収書を再発行する場合において、たとえ金銭の受領が1回であっても、その受領事実を証明する目的で作成されるものである限り課税対象となります。また納税義務者は再発行を要請した得意先ではなく、受取書の作成者です。繰り返しの課税が発生しないように、領収書の再発行には企業としてルールを設けるなど、事前に対策を図る必要があります。 クレジットカード、電子マネーの支払の場合 クレジットカード決済の場合は、信用取引による売買に該当するため、印紙税の課税対象とはなりません。しかしながら、電子マネーで支払いを受けた際に領収書を発行した場合は、金銭又は有価証券の受取書に該当するので印紙税の課税対象となります。 電子マネー等の支払いで領収書が電子データとなる場合は、紙の文書ではないため印紙税の対象とはなりません。 4. 印紙税の過怠税 印紙税の納付漏れや金額のミス等があった場合には、印紙税の過怠税を支払う必要が生じます。過怠税の額は、納めなかった印紙税額の1~3倍程度です。印紙税の納付漏れが悪質であると判断された場合には、通常の印紙税よりも大きな税が追加徴収されるため、気をつけましょう。 5. おわりに 本記事では、印紙税の仕組みや該当文書、領収証と印紙税の関係などについて紹介しました。印紙税は該当の文書を扱う際には必須である一方で、企業が忘れがちな税制でもあります。印紙税を正しく理解し、過怠税が発生しないように事前の対策を図りましょう。 もし税制に関することでお困りでしたら、弊社までお気軽にお問い合わせください。困りごとをしっかりとヒアリングした後、最適な解決策を提案させていただきます。
- [税務調査の今後の見通しについて](https://shiodome.co.jp/column/11938/) - 2020年の税務調査は、新型コロナウイルスの影響で新規調査の先送りがなされていましたが、10月よりいよいよ本格的に再開されました。コロナ禍で税務調査のやり方等に変化が生じていますので、本記事で詳しく紹介します。 1. 税務調査に関する基本的情報 まずは税務調査に関して理解を深めていきましょう。 税務調査とは 税務調査とは、国税庁や税務署が納税者の税務申告が法律に基づいて正しく実施されているかを確認し、誤りがあれば是正を求める一連の調査です。 日本では国税のほどんど(所得税、法人税、消費税、相続税)が「申告納税方式」によって行われています。申告納税方式とは、納税者自らが税法を正しく理解し、所得に基づいて税額を決定し、納付する制度を指します。 そのため、納付者は自身の所得や税額を計算し、税務申告を行う必要があります。税務調査は、所得を正しく申告しているか、計算方法は正しいか、虚偽の申告はないかなどを確認し、必要であれば是正を求めます。 税務調査の実施時期 税務調査は一年を通して実施されますが、特に多いのが8月から年末ごろといわれています。その理由として、国税庁では人事異動が終わる7月に新事務年度が始まることになっているため、7月以降が新体制での活動に都合がよいためです。他にも、日本で多い3月決算の会社の確定申告が5月末までのため、7月ごろが税務調査に最適という理由もあります。 税務調査の種類 税務調査には「任意調査」と「強制調査」の2種類があります。 任意調査は、納税者の同意の上で行われる調査を指します。電話や文章で1週間以上前に事前通知があり、スケジュールが合わない場合には日程変更も受け付けてくれます。 一方で強制調査は、巨額の脱税や悪質な隠蔽工作の疑いがある場合に、裁判所の令状を得て共生的に実施する調査です。ニュースなどで脱税の疑いで強制調査が行われたと報じられた場合には、こちらの調査を指します。 どちらの調査においても、調査官は強い権利を有していますが、強制調査においては納税に関する資料を押収できるなど、より強い権限があります。脱税行為が特定された場合には検察庁に告発され、刑事事件として処理されます。 2. コロナ禍での税務調査の概要 コロナ禍では税務調査が一時的にストップしていましたが、10月より再開されました。ただし、新型コロナウイルスが拡大している現状もあり、9月18日に国税庁より公表され「国税庁における新型コロナウイルス感染症の感染防止策について」に従って実施されています。 具体的には以下のような取り組みが実施されます。 身体的距離の確保 マスクの着用 手洗いの徹底 検温の実施 咳・発熱の有無の再確認 3密の回避 職員人数と滞在時間の縮小 また、テレワークが実施されている現状を踏まえ、スケジュール調整については以前よりも柔軟性が高くなっています。 現地での調査が制限される一方で、電話や書面による調査はより厳しく実施されているようです。現在行われている調査の変更は、新型コロナウイルスの拡大による一時的な変更といえますが、ウィズコロナ以降の税務調査にも大きな影響を与えるであろうことから、今後の動きにも注目が集まります。 3. 税務調査のデジタル化 新型コロナウイルスによる現地調査の困難性と、将来に向けたデジタル化の観点から、税務調査にも変化が見られます これまでは調査対象者の預貯金情報に係る国税当局と金融機関とのやり取りは書面で行われていましたが、その一部をデジタル化し、オンラインでのやりとりを可能にしています。これにより、人的負担や郵送コストを削減できるとともに、タイムラグを少なくし、迅速な確認が可能になります。 現在はまだ実証実験の最中であり、対象機関は東京国税局、仙台国税局、神奈川県管内及び福島県管内税務署のみですが、今後は全国に拡大していくと考えられています。将来的には、税務調査のデジタル化、オンライン化が実施されるとみて間違いないでしょう。 4. おわりに 本記事では、コロナ禍における税務調査の現状と、コロナ後の税務調査の予想について紹介しました。今後は税務調査がデジタル化、オンライン化されていくと考えられます。今後の動きにも注目してまいりましょう。
- [令和3年度税制改正①DX投資促進税制・カーボンニュートラル投資促進税制・繰越欠損金の控除上限の特例](https://shiodome.co.jp/column/7547/) - 12月10日に「令和3年度税制改正大綱」が公表されました。今回はそれらの中でも、注目度が高いと考えられる「DX投資促進税制」「カーボンニュートラルに向けた投資促進税制」「繰越欠損金の控除上限の特例」の3つについて紹介します。 「住宅ローン控除の拡充」「同族会社発行の社債利子等の総合課税化」「短期退職手当等の課税強化」については別の記事で紹介しておりますので、そちらをご覧ください。 1. デジタルトランスフォーメーション(DX)投資促進税制 デジタルトランスフォーメーション投資促進税制(以下、DX投資促進税制)とは、DXに積極的に取り組もうとする企業に対する優遇税制です。新型コロナの拡大により、多くの企業が軌道修正する必要に迫られました。また、ウィズコロナの時代を企業が生き抜くには、デジタル技術を活用した企業変革、つまりDXが必要です。 今回のDX投資促進税制では、DXに積極的に取り組む企業が特別償却と税額控除を受けられます。優遇税制を受けるためには主務大臣からの認定を受ける必要がありますが、もし令和3年度にDXに取り組みたいと考えている企業は積極的に検討するとよいでしょう。 DX投資促進税制の詳細 DX投資促進税制を適用するには、事業認定計画の認定が必要です。主務大臣が実施するデジタル要件と企業変革要件の確認を通過し、認定を受ける必要があります。それぞれの要件について経済産業省のWebサイトに掲載されていますので紹介しておきます。 DX投資促進税制の認定要件 (出典)経済産業省: 令和3年度(2021年度) 経済産業関係 税制改正について 2. カーボンニュートラルに向けた投資促進税制 カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させることをいいます。世界的に環境問題が大きく取り上げられていますが、日本でも温室効果ガス排出量削減のために、国家ぐるみの戦略が取られます。そのうちの1つがカーボンニュートラルに向けた投資促進税制です。 カーボンニュートラルに向けた投資促進税制は、脱炭素化効果の大きな製品の生産設備や、脱炭素化と付加価値向上を両立する設備の導入に対して税制支援措置が行われます。 カーボンニュートラルに向けた投資促進税制 比較的大がかりな設備投資等が必要になるため、企業の事業計画などと連携させながら実施する必要があります。もし、現在大がかりな設備投資を考えている場合は、カーボンニュートラルに向けた投資促進税制の観点から再検討してみるのもよいでしょう。 3. 繰越欠損金の控除上限の特例 コロナ禍の苦しい経営状況であっても、国の経済成長を維持するためには企業の投資が必要不可欠です。事業再構築等に果敢に取り組む企業の投資に対し、繰越欠損金の控除上限を最大100%まで引き上げる措置が「繰越欠損金の控除上限の特例」です。 この特例を活用することで、企業の経営状況が悪い状況であっても積極的な投資が可能になります。現状を打破する重要なきっかけとなり得るため、経営に行き詰まっている企業は検討してみるとよいでしょう。 繰越欠損金の控除上限の特例について詳しく知りたい方は、経済産業省のWebサイトをご覧ください。コロナ禍の損失をどのように改善していくのかについてのイメージ図が示されています。 経済産業省: 令和3年度(2021年度) 経済産業関係 税制改正について 4. おわりに 今回は、令和3年度税制改革の中でも、多くの企業が興味を持つであろう「DX投資促進税制」「カーボンニュートラルに向けた投資促進税制」「繰越欠損金の控除上限の特例」の3つについて詳しく紹介しました。 政府の税制改正を学び、正しく適用することで大きな節税等につながる場合があります。政府の対策についてもしっかりと確認するようにしてください。 もし、税制に関するサポートが必要でしたら、弊社までお気軽にお問い合わせください。フットワークの軽いプロフェッショナルが迅速にサポートさせていただきます。
- [令和3年度税制改正②:住宅ローン控除の拡充・同族会社発行の社債利子等の総合課税化・短期退職手当等の課税強化の紹介](https://shiodome.co.jp/column/7548/) - 12月10日に「令和3年度税制改正大綱」が公表されました。新型コロナウイルスの様々な影響を受け、様々な税制改正が行われています。 前回の記事では「DX投資促進税制」「カーボンニュートラルに向けた投資促進税制」「繰越欠損金の控除上限の特例」の3つについて紹介しましたが、今回は「住宅ローン控除の拡充」「同族会社発行の社債利子等の総合課税化」「短期退職手当等の課税強化」の3つについて紹介します。 前回の記事はこちら 1. 住宅ローン控除の拡充 控除期間13年間の住宅ローン控除の特例措置が延長されることになりました。この措置は元々、消費税10%への引き上げに伴う反動減対策として導入されたものです。2以前の住宅ローン控除の期間は10年間でしたが、2019年より13年間に伸びました。この特例措置が延長されたのです。 延長後は、新築の場合は2021年9月末までに、それ以外の場合は2021年11月末までに提携契約を行い、2022年12月末までに入居した対象者が控除期間13年の特例を適用できます。 延長した部分に限り、合計取得金額が1,000万円以下の場合、床面積40〜50㎡の住宅も対象となります(従来は床面積50㎡以上の住宅のみが対象でした)。これにより、床面積が40㎡台で控除対象にならなかった層も住宅ローン控除の特例措置が受けられます。住宅の購入を検討している方には非常に魅力的な税制改革といえます。 住宅ローン控除の拡充内容 2. 同族会社発行の社債利子等の総合課税化 同族会社発行の社債利子等に関するルールが変更となります。 社債利子は原則として、利子所得として源泉分離課税(所得税率15.315%+地方税率5%=20.315%)が適用されますが、同族会社が発行した社債の利子の場合、その同族会社の役員等が支払いを受けるものについては、総合課税の対象とされていました。 今回の改正においては「同族会社が発行した社債の利子で、その同族会社の判定の基礎となる株主でつまり法人と特殊の関係のある個人及びその親族等が支払いを受けるものについて、総合課税の対象とされる」ことが明記されました。 利子所得等の課税方法として、分離課税が廃止され、総合課税に変更されます。同族会社間で社債利子等が発生している場合は適切な対応が必要になるため、十分注意するようにしてください。 3. 短期退職手当等の課税強化 短期退職手当等に関する課税の仕組みにも変更がありました。具体的には、5年以下の従業員に対する300万円超の部分に対する1/2課税の適応が廃止されます。 一部の企業では、給与を少なくする代わりに退職金額を多くし、従業員の税制負担を軽減するケースが見られたためです。 2013年以降は、勤続年数が5年以下の従業員等は退職所得課税の適応外とされていましたが、今回の税制改正を受け、5年以下の従業員であっても退職所得課税が適応されます。 多くの企業が当てはまる分野になるため、詳細についてしっかりと確認しておくとよいでしょう。 4. おわりに 本記事では、令和3年度税制改正で注目の「住宅ローン控除の拡充」「同族会社発行の社債利子等の総合課税化」「短期退職手当等の課税強化」について紹介しました。新型コロナの影響を受け、日本では様々な税制対策や一部仕様の変更が行われています。 正しい知識がなければ優遇政策を受けられなかったり、税制面でマイナスとなってしまったりすることがあり得ます。もし企業の税制等を見直し、適切化することで節税を図りたいとお考えでしたら、弊社までお気軽にお問い合わせください。
- [インボイス制度について](https://shiodome.co.jp/column/7545/) - 2023年10月1日より「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」が開始されます。これに伴い、2021年10月1日より「適格請求書発行事業者」の登録申請が開始されました。インボイス制度を正しく理解していない場合、「仕入税額控除」が受けられなくなる可能性があるため注意が必要です。 本記事では、インボイス制度がよく理解できていない方に向け、インボイス制度の基本や申請方法、スケジュール等について紹介します。 1. インボイスとは インボイス制度を説明する前に、まずは「インボイス」について理解しましょう。本記事で紹介している「インボイス」とは適格請求書を指します。売り手が買い手に対し、正確な適用税率や消費税等を伝えるための書類です。請求書や納品書、これに類する書類等がインボイスに当てはまります。 国税庁のWebサイトでは、以下のように説明されています。 適格請求書(インボイス)とは、売手が買手に対して、正確な適用税率や消費税額等を伝えるものです。具体的には、現行の「区分記載請求書」に「登録番号」、「適用税率」及び「消費税額等」の記載が追加された書類やデータをいいます これまでは区分記載請求書が利用されてきましたが、これに登録番号や適用税率、消費税率等を加えたものがインボイスです。英語でインボイスというと請求書や送り状などを意味しますが、これらの意味とイコールでない点には注意するとよいでしょう。 2. インボイス制度とは インボイス制度とは、2023年10月1日から開始される新しい消費税仕入税額控除の方式です。これまでの「区分記載請求書等保存方式」から「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」に変更されます。インボイス制度を正しく利用しなければ、仕入税額控除が受けられなくなるため注意する必要があります。 インボイス制度の大きな特徴として、税額控除を受けるためのインボイスを発行できるのが「適格請求書発行事業者」に限定されたことが挙げられます。つまり、取引先の事業者が適格請求書発行事業者に認定されていない場合、仕入税額控除が受けられません。 適格請求書発行事業者になるためには、税務署長に申請を行い、登録を受ける必要があります。この適格請求書発行事業者の登録申請が2021年10月1日よりスタートしました。インボイス制度が適用される2021年10月1日から必要な控除を受けるためには、特別な事情がある場合を除き、2023年3月31日までに登録書類を提出する必要があります。 登録方法と登録申請スケジュールについては、国税庁が公開しているリーフレットの情報を参考にするとよいでしょう。 参照元:令和3年10月1日から登録申請書受付開始!(リーフレット)(国税庁) 3. 覚えておきたいインボイス制度のポイント インボイス制度の適用にあたっては、以下のポイントについても抑えておく必要があります。 インボイス制度の下では、適格請求書発行事業者が交付するインボイス等の保存が仕入れ税額控除の必須条件となる 売手である登録事業者は、買手である取引相手からインボイスの発行を求められた場合、それに応じなければならない。また、交付したインボイスの写しを保存しておく義務が生じる 従来の区分記載請求書の書式に加え、「登録番号」「適用税率」「適用税率ごとの消費税額等」の記載が必要 適格請求書発行事業者以外からは原則として仕入税額控除を受けることができない 4. おわりに 本記事では、2023年10月より適用されるインボイス制度についての基本事項や現行の区分記載請求書等保存方式からの違いなどについて紹介しました。 もし現在の取引事業者が適格請求書発行事業者の申請をしていない場合は、取引事業者に早めに連絡することをおすすめします。もしインボイス制度についてサポートが必要でしたら、税務サポートの実績が豊富なRSM汐留パートナーズまでお気軽にお問い合わせください。
- [ウィズコロナ時代の働き方は課税の対象になる?項目毎に紹介](https://shiodome.co.jp/column/7543/) - 新型コロナウイルスの影響で、私たちの働き方は大きく変わりました。中でも特徴的だったのは、これまではオフィスで働くことが当たり前だったのに対し、自宅やカフェなどから働くリモートワークが増えたことです。 リモートワークを一時的な働き方としている企業もあれば、将来的に積極的に導入しようとしている企業もあります。1つ確実なのは、ウィズコロナ時代には、過去とは異なる働き方が増えていくということです。 新しい働き方が増えれば、新たに生じた費用等に対して課税されるのかどうかが大きな論点となります。そこで本記事では、国税庁の資料をもとに、リモートワークと関連が深い支出等に対する課税の有無やルール等について紹介します。 1. コロナによる働き方の変化 東京都が毎月実施している「テレワーク実施率調査」によれば、2021年10月のテレワーク実施企業率は55.4%だったと報告されています。最大であった65.0%と比べると下がったものの、2020年3月の時点では24%だったことを考えると2倍以上の実施率です。 今後もテレワークやリモートワークを取り入れていこうと考えている企業は多くあります。また、海外で人気のワーケーションやブレジャーという、ビジネスと休暇、レジャーなどを組み合わせた新しい出張方法を取り入れる企業も増えつつあります。 これ以外にも、ウィズコロナ時代には様々な働き方が生み出させる可能性が多いにあります。 2. ウィズコロナによる働き方と課税の有無 新しい働き方が生まれれば、そこに新しい支出も生まれ、それが課税されるかどうかに頭を悩まされる方も多いと思います。今回は、新しい働き方と関連した支出等について課税されるのかどうかについて、国税庁の資料をもとに紹介します。 (1)在宅勤務手当 リモートワークを開始したことで、在宅勤務手当を支給する企業も増えたことと思います。一部の例外を除き、在宅勤務手当は課税対象となります。通常の給与と同様に扱われます。 ただし、リモートワークの環境を整えるために物品等を購入し、領収書による実費精算した場合には課税されません。 通勤手当は不課税であったため、通勤手当の代替として導入された在宅勤務手当が課税されているのに困惑している方もいるようです。在宅勤務手当は基本的には課税されますので、間違えないようにしてください。 (2)電気料金や通信費 電気や通信費に関しては、ある条件の範囲内であれば課税対象にはなりません。ただし、以下の条件を満たす必要があります。(参照元:国税庁HP) 電気料金 【算式】業務のために使用した基本料金や電気使用料=従業員が負担した1か月の基本料金や電気使用料×業務のために使用した部屋の床面積/自宅の床面積×その従業員の1か月の在宅勤務日数/該当月の日数×1/2 通信費 【算式】業務のために使用した基本使用料や通信料等=従業員が負担した1か月の基本使用料や通信料等×その従業員の1か月の在宅勤務数/該当月の日数×1/2 業務外で利用した費用等が加算されないように、細かい条件が設けられています。電気代や通信費などを非課税にするためには、この条件をしっかりと加味した上で申請を行う必要があります。 (3)事務用品等の支給 パソコンを含む事務用品を支給することもあると思います。まず、企業が所有する事務用品等を従業員に貸与する場合は課税されません。しかしながら、所有者が従業員に移る、つまり現物給与をする場合には課税されます。所有者が企業のままであるか、もしくは所有者が従業員なのか、によって変わってきます。 そのほか、従業員が立て替え払いをし、物品を購入する場合もあると思います。領収書を企業に提出し精算をしていれば、非課税となります。 (4)ワーケーションやブレジャーの旅費交通費 ワーケーションやブレジャーの旅費も迷いやすいため注意が必要です。所得税法上は「職務遂行のために支出された旅費」に関しては課税されないことになっています。しかしながら、ワーケーションやブレジャーはビジネスと休暇・レジャーがかけ合わさった造語です。休暇やレジャーは職務遂行のために支出された旅費には当てはまらないため課税されます。 ただし、職場から出張先までの旅費に関しては、例え一部に休暇やレジャーが組み込まれていたとしても課税対象とならないのが一般的です。観光庁のWebサイトでは、条件別の課税・非課税について紹介されています。こちらも参考にするとよいでしょう。(参照元:観光庁HP) (5)レンタルオフィス 自宅でのリモートワークが難しい場合、従業員が個人でレンタルオフィスを借りる場合もあるでしょう。レンタルオフィスの利用料に関しては、領収書を発行してもらい企業に提出し代金が精算された場合には非課税となります。つまり、事務用品と同じ扱いだと考えるとよいでしょう。 3. おわりに 今回は、リモートワークで新たに必要となった支出に対する課税の有無について紹介しました。基本的にはこれまでと同様のルールが適用されると考えてよいものの、通勤手当の代わりの自宅勤務手当が課税対象である点などには注意したいところです。 今後、さらなる新しい働き方が生まれることで、これまでにはなかった費用負担の項目が生まれる可能性もあります。課税対象かどうかについては、ぜひ最新の情報を得ながら慎重に検討するとよいでしょう。
- [時価の算定に関する基準(時価算定基準)の改定ポイント](https://shiodome.co.jp/column/7542/) - 2019年に「時価の算定に関する会計基準(以下、時価算定基準」)が公表され、2021年4月1日以降に開始する事業年度から適用開始されています。本記事では、時価算定基準が導入された背景やこれまでとの違い、覚えておきたいポイントなどについて紹介します。 1. 時価算定基準の基本情報 2019年に公表された「時価の算定に関する会計基準(時価算定基準)」が2021年4月1日以降に開始する事業年度から適用されます。時価算定基準は、国際財務報告基準(IFRS)13号にならって作成されているため、理解するのに時間を要することもあるでしょう。新たな時価算定基準に関し、少しずつ説明していきます。 2. 時価算定基準の導入背景 時価算定基準が導入されたのは、日本の基準を世界に合わせるためです。日本ではこれまで、取得原価主義を会計処理の原則として用いてきました。取得原価主義は支払額によって確定された金額であるため、客観性が高いと考えられてきたためです。しかしながら、取得原価は過去の一時点での価値であり、現在の価値を正しく示すものではありません。 これらの理由により、世界では、現在の価値である時価を会計処理に利用する流れが中心となりつつあります。時価を正しい方法で開示しながら会計作業を進めます。 日本でも時価会計の導入は進められてきましたが、「時価をどのように算定するのか」という具体的な規定はありませんでした。そこで今回の時価算定基準が導入されることになりました。 この変更により、日本の会計は国際的な会計に近づいたともいえます。現状は多くの企業が変更に戸惑っているかと思いますが、将来的には時価算定基準が一般化していくと考えられるため、今のうちに対応できるようにしておくとよいでしょう。 3. そもそも時価とは?時価の再定義 そもそも時価とは何か?と疑問に思う方もいると思います。これまでの時価は、「金融商品に関する会計基準」における以下の定義が一般的でした。 時価とは(金融商品に関する会計基準) これに対し、「時価算定基準」では以下のように定義されています。 時価とは(時価算定基準) 両者を比較すると、市場での取引価格に基づくという点は同じです。しかしながら、時価算定基準では対象資産・負債を手放す場合の売却価格や支払い価格に基づくとしている点に違いがあるため注意する必要があります。 4. 時価算定基準の適用範囲 時価算定基準は、以下の2項目に対して適用されます。 (1)「金融商品に関する会計基準」で定められている金融商品(2)「棚卸資産」でトレーディング目的で保有する棚卸資産 特に注意が必要なのは、時価を把握することが極めて困難であるとされる金融商品です。金融商品の時価を正しく算定するためには後で紹介する評価技法を適用する必要があります。 5. 時価算定の評価技法 会計基準に時価を利用する場合、時価を正しく算定する必要があります。それを可能にするのが時価算定の評価技法です。時価算定基準では評価技法の例として「マーケット・アプローチ」と「インカム・アプローチ」が挙げられています。 マーケット・アプローチとは、同一または類似の資産・負債に関する市場で成立価格を参考に評価する技法です。客観性が高いことで知られています。 インカム・アプローチは、将来得られる収益力をベースに評価する技法です。対象資産の固有の価値を評価に反映することができるため、広く利用されています。 上記はあくまでも評価技法の一例であり、必ずしもこれらに限定されているわけではありません。例えば、コスト・アプローチなどの評価技法でも問題ありません。ただし、国際的に利用されている客観性の高い評価技法を用い、できるかぎり確かな時価を導き出す必要がある点は押さえておくとよいでしょう。 6. おわりに 時価算定基準の適用により、会計がより複雑になったと感じる方も多いと思います。今後どのような流れになるのかはわかりませんが、現状、日本の会計基準も国際的な会計基準に近づいていくと考えられるため、少しでも早く移行準備を進めることをおすすめします。 弊社では、最新の法律を熟知したプロフェッショナルが会計に関する各種コンサルティングを実施しております。もし、会計に関することでお困りでしたら、弊社までお気軽にお問い合わせください。
- [会計上の見積りとは?「会計上の見積りの開示に関する会計基準」の制定についても紹介](https://shiodome.co.jp/column/7540/) - 2021年3月31日以降に終了する事業年度から「会計上の見積りの開示に関する会計基準」が強制適用となりました。本記事では、会計上の見積りとは何かについてわかりやすく紹介するとともに、企業が理解しておくべきポイントについて紹介します。 1. 会計上の見積りとは? 「会計上の見積り」と聞いてもよくわからない方が多いと思います。会計上の見積りとは、資産や収益などが不確実である場合に、入手可能な情報に基づいて合理的な金額を算出することをいいます。企業会計基準委員会の企業会計基準第24号によれば、以下のように定義されています。 もう少し簡単に説明すると、会計上の見積りとは、財務諸表作成日時点で確定できない数値について、様々な根拠をもとに企業(経営者)の判断で金額を算定する行為のことです。現時点ではわからないからと空白にしたのでは、読み手にできる限りの情報を伝えることはできません。そのため、根拠を元にできる限り正しい数値を見積もり、記載することがここで言う会計上の見積りとなります。 2. 「会計上の見積りの開示に関する会計基準」の適用について この会計上の見積りに関する重要な変更がなされました。会計上の見積りは企業や経営者が様々な根拠をもとにして算出した数値です。しかしながら、あくまでも不確実性のある数値であり、この会計上の見積りをどの程度信用して良いものかという声が多くありました。 そこで、「会計上の見積りの開示に関する会計基準」が適用されることになりました。会計上の見積りは不確実性のある数値であることは承知した上で、会計上の見積りに関する詳細を開示することが求められます。この変更は、2021年3月31日以降終了する事業年度から強制適用されます。 国際財務報告基準(IFRS)適用企業では既にIAS 1号「財務諸表の表示」に従い会計上の見積りに関して詳細な注記がなされていましたが、日本基準でも同様の表記や開示などが必要となります。 3. 「会計上の見積りの開示に関する会計基準」の概要 今回の変更をさらに詳しく理解するために、企業会計基準第31号「会計上の見積りの開示に関する会計基準」の概要を確認していきます。 (1)開示する項目等に関して 会計上の見積りに関する開示する項目については、①当年度の財務諸表に計上した金額が会計上の見積りによるもののうち、②翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクがある項目における会計上の見積りの内容について、③財務諸表利用者の理解に資する情報を開示することと記載されています。 これはつまり、あくまで①当年度に「計上されている金額に関するもの」を開示すればよく、当年度に計上しないこととなった金額については任意です。例えば減損損失を見積もった結果計上する必要がなかった、というような場合には開示は自由です。 また、②財務諸表に重要な影響を及ぼす範囲を翌年度に限定している点もポイントです。開示に係る期限が長くなるほど開示に必要な項目の範囲は広がります。これにより特定の資産又は負債について行われる開示の具体性や信頼性が失われるため、あえて期間を限定しています。 ③財務諸表利用者に資する情報としては開示する項目として以下の例を挙げています。 当年度の財務諸表に計上した額 会計上の見積りの内容について財務諸表利用者の理解に資するその他の情報 当年度の財務諸表に計上した金額の算出方法 当年度の財務諸表に計上した金額の算出に用いた主要な仮定 翌年度の財務諸表に与える影響 各企業の2021年3月期決算をみる限り、日本基準採用企業では多くの企業でこの項目に沿った開示となりました。形式を満たすことが目的となってしまい企業の状況を適切に表現できていないのではという指摘もあるため、次年度以降、これに修正が加えられる形になると予想されます。 (2)記載の方法について 会計上の見積りの開示に関しては、会計上の見積りに注記を加えるとともに、必要な情報を注記に記載するよう指定されています。 4. 金融庁の有報レビューから読み解く適切な会計上の見積りとは 金融庁は毎年、有価証券報告書の記載内容の適切性確保のために、有価証券報告書レビューを行っています。令和2年度の有報レビューの審査結果の中で、会計上の見積りに関する指摘がありました。参考にできることもあると思いますので、ここで紹介いたします。 参照元:令和2年度 有価証券報告書レビューの審査結果及び審査結果を踏まえた留意すべき事項 MD&Aでは「詳細は経理の状況の注記を参照」とあるにもかかわらず、注記の経理の状況を確認しても法令で求められている内容を読み取ることができないと指摘されています。今後、会計上の見積りに関するチェックがさらに厳しくなってくると予想されるため、今のうちからしっかりと確認しておくとよいでしょう。 5. おわりに 今回は、2021年3月31日以降に終了する事業年度から適用される「会計上の見積りの開示に関する会計基準」について詳しく見てきました。現在はまだ探り段階の実施ですが、徐々にチェックが厳しくなっていくと予想されます。会計上の見積りの開示や注記の方法について正しく理解し、実践していきましょう。 RSM汐留パートナーズでは、最新の法令に精通した税理士が税務に関することをトータルでサポートいたします。もし税務のことでお困りでしたら、まずはお気軽にご相談ください。
- [国際税務とは?国際税務の重要な概念・規定・制度について](https://shiodome.co.jp/column/13624/) - 国際税務とは、国境を越えて取引を行うなどの国際間の税務全般をいいます。企業が国境を越えて取引を行う場合には、その取引は「国際取引」となります。国際取引から生じた利益に対してどちらの国で課税されるのか、あるいは両国で課税され二重に課税されることとなるのかなど、国際取引だから生じるさまざまな税制を管理し、正しく手続きするのが国際税務です。 昨今、グローバル化の波に乗り、多くの企業が海外進出を果たしています。ある統計によれば年間で1,000社が海外進出を行っているとのこと。そのような企業がつまづくのが国際税務への理解です。居住者・非居住者の区分、課税地の判定、二重課税の問題、租税条約など国際税務特有の知識が必要となります。しかしながらほとんどの企業が国際税務に関する知識を持ちません。 国際税務は国内の税務に比べても非常に煩雑で、海外子会社との取引によって予期せぬ多額の追徴課税をされてしまうケースもあります。さらには税金の滞納などにより、事業自体がストップしてしまうこともあります。海外展開を図るには国際税務に関する知識や制度を事前にしっかり把握することが必要です。 国際税務の分野は多岐にわたりますが、最低限このコラムにある概念、規定、制度については覚えてことをおすすめします。居住地国課税・源泉地国課税、租税条約・外国税額控除、外国子会社配当益金不算入制度、タックスヘイブン対策税制、移転価格税制、過少資本税制などについて一定の理解がある事により、自社が海外取引や海外進出を行う際に、リスクに感知することができたり、専門化との議論がより深く活発に行えます。 1. 国際税務に関する重要な概念・規定・制度 国際税務の分野は多岐にわたりますが、以下の概念や規定、制度については最低限覚えておく必要があります。 (1)居住地国課税・源泉地国課税 国際取引から得られた所得に対して課税する際には「居住地国課税」と「源泉地国課税」という2つの課税方式があります。「居住地国課税」とは、国内だけでなく、海外で得た所得も課税の対象となることを指します。「源泉地国課税」とは、たとえ外国人であっても国内で得た所得に課税を行うことを指します。国際税務では、この2つの課税方式が関係してくるため、居住地国と源泉地国の2カ国で課税されるという「二重課税」が生じてしまうケースがあります。 (2)租税条約・外国税額控除 居住地国課税と源泉地国課税により発生する二重課税を排除することを目的として「租税条約」と「外国税額控除」という制度が存在します。 「租税条約」とは、2国間または多国間で締結する条約で、居住地国と源泉地国の二重課税を調整するために、所得に対する税率に上限を設けたり、一定の税金を免除する規定が設けられたりしています。なお、「租税条約」は締結している国の間で自動的に適用されるわけではなく、「租税条約に関する届出書」を提出する必要があります。日本は現在約70か国との間で租税条約を締結しています。 「外国税額控除」とは、2つの国で課税された場合に外国で納付した外国税額を一定の範囲で自国の税額から控除する制度です。国際取引を行う際には、外国税額控除の適用を受けつつ、二重課税を排除していく必要があります。 (3)外国子会社配当益金不算入制度 外国子会社配当益金不算入制度とは、内国法人が外国子会社から受ける配当のうち一定の要件を満たすものは、益金不算入にできる制度です。平成21年度税制改正により導入されました。 日本企業が海外子会社から配当を受ける場合には、その配当金額の95%が益金不算入となります。ただし、この制度の対象となる配当に係る源泉税については、外国税額控除の対象外となり損金の額にも算入されません。また、適用となる外国子会社とは、出資比率が25%以上でかつ、株式保有要件が6ヶ月以上であるという要件を満たす必要があります。 (4)タックスヘイブン対策税制 タックスヘイブン対策税制とは、日本では昭和53年度税制改正により導入された、タックスヘイブン(軽課税国)の利用により国際的な租税回避を図る行為を排除する制度となります。 タックスヘイブンに移転した所得は現地の低い税率により課税されるため、配当等を行わない限りは日本よりも多くの利益を留保することが可能です。そこで、ペーパーカンパニーの設立などにより日本の法人税負担に比べ税負担が著しく低い国の外国子会社等に利益を留保しようした場合に、一定の要件により日本の株主の所得に合算し日本で課税し、租税回避を防ぐ制度がタックスヘイブン対策税制です。タックスヘイブン対策税制の対象となる法人及び個人は、外国関係会社(外国法人で日本資本の割合が50%超であるもの)のうち、法人の所得に対する税負担が20%以下である法人(特定外国子会社等という)の株式を単独又は同族で10%以上保有している株主となります。 この制度はペーパーカンパニー等の利用による租税回避を防止するために設けられているため、特定外国子会社等が独立企業としての実体を備え、かつ、その国で事業を行うことにつき十分な経済合理性がある場合にはタックスヘイブン対策税制の適用除外となります。適用除外となる場合は、具体的には、①事業基準、②実体基準、③管理支配基準、④非関連者基準又は所在地国基準の要件をすべて満たす場合となります。ただし、上記の要件をすべて満たす場合であっても、資産性所得(特定の配当、利子、ロイヤルティなど)を有する場合には、その資産性所得については日本の株主の所得に合算して課税されるため注意が必要です。 また、タックスヘイブン対策税制に類似したコーポレート・インバージョン対策税制というものがあります。この制度は、三角合併が可能になったことによりタックスヘイブンに所在する外国法人を親会社とし、日本法人を子会社とすることによりタックスヘイブン対策税制の適用を逃れ、租税回避を行うことを防止するためのものです。一定の要件を満たす場合にはタックスヘイブン対策税制と同様に外国法人の所得を日本の所得に合算して課税されることとなります。なお、タックスヘイブン対策税制とコーポレート・インバージョン対策税制のどちらも適用となるケースでは、タックスヘイブン対策税制が優先して適用されることとなります。 (5)移転価格税制 移転価格税制とは、法人が国外取引により所得を他の国に移転させることを防止するために設けられた制度です。多国籍企業においては、親子会社間や兄弟会社間で取引を行うケースも多く、そのような取引では取引価格を自由に決めることも可能です。そのように第三者間で行われる取引価格とは異なる価格で取引を行うことにより、不当に所得を他の国に移転させることができてしまいます。 そこで、日本法人が国外関連者(親子関係や兄弟関係のある外国法人又は実質的な支配関係のある外国法人など)と取引を行った場合に、国外関連者から支払いを受ける対価の額が独立企業間価格に満たないとき、又は国外関連者に支払う対価の額が独立企業間価格を超えるときは、その取引は独立企業間価格で行われたものとみなすことにより、所得の移転を防止する制度となります。 なお、独立企業間価格とは、第三者間において通常取引されるであろう価格であり、独立価格比準法、再販売価格基準法、原価基準法などにより算定することとなります。移転価格税制においては、この独立企業間価格の算定が難しく、十分に検討し取引価格を設定しなければなりません。 (6)過少資本税制 過少資本税制とは、内国法人が国外支配株主等(株式の50%以上を保有する外国法人など)から資金提供を受ける場合に、出資金に比較して多額の借入を行うことにより、租税回避を行うことを防止するために設けられた制度です。 出資により調達した場合には出資者に対し見返りとして配当金を支払うため配当金は内国法人の損金に算入されません。しかしながら借入により調達した場合にはその見返りとして利息を支払うため、利息は内国法人の損金に算入されます。 このように効果は同じでも調達方法の違いにより意図的に租税回避を行うことができてしまいます。そこで、①国外支配株主等に係る平均負債残高が、その国外支配株主等の資本持分の3倍を超える場合、②総負債に係る平均負債残高が自己資本の額の3倍を超える場合の2つの要件を満たすときは、国外支配株主等へ支払う利息のうち一定の金額を損金の額に算入しないことにより租税回避を防ぐことが可能です。 (7)日本の中堅・中小企業の国際税務への対応状況 近年、大企業のみならず中堅・中小企業の海外進出も増加傾向にあります。中堅・中小企業も、外資系企業との激しい価格競争の影響により、製造コスト削減や安価な人件費確保のため海外に拠点を求めるようになりました。また、国内市場の限界により新たな市場を開拓するために海外に進出するケースもあります。 海外進出には、様々なリスクがあり、また、国際税務に関する十分な知識が必要となります。国際税務に関する知識が不足したまま海外進出をしてしまうと、思わぬ問題に直面し海外進出自体が失敗に終わってしまうケースもあります。そのような事態を防ぐため、海外進出の際には、しっかりとした国際税務の知識を持ち事前準備をしっかりと行った上で事業戦略を立てる必要があります。 中小企業では税務担当を雇えないことが多いため、外部の会計事務所・税理士事務所などの専門家に依頼するケースが一般的です。ただし、海外進出が一般的になってきたとはいえ、通常会計事務所は国内の税務業務がメインであるため国際税務については対応していないことが多々あります。 2. おわりに 国際取引で必須となる国際税務について説明しました。海外進出を行う際には国際税務の知識が必要不可欠です。もし自社内だけでは対応できない場合は、外部に依頼することを考えるとよいでしょう。 弊社では、海外に複数の拠点を持ち、海外進出をお考えの企業のサポートを数多く実施してきました。予算面に関しても相談に応じられます。海外進出・国際税務について興味のある方は、お気軽にRSM汐留パートナーズまでご相談ください。
- [日本での法人と個人の所得税率はどのようになっているのか?](https://shiodome.co.jp/column/7618/) - 日本進出を考えている方の中には、複雑とされる日本の税制について詳しく知りたいと考える人もいると思います。本記事では、法人(会社)と個人にかかる「所得税率」について詳しくご説明いたします。 弊社では外資系企業の日本進出に関するトータルサポートを提供しています。もし日本進出に関してお困りのことがございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせください。 1. 法人の課税所得にかかる税金 日本で法人にかかる税金には、法人税、地方法人税、法人住民税(都道府県税、市区町村税)、法人事業税、消費税、固定資産税、事業所税、印紙税等があります。このうち、法人の所得(売上金額-経費)にかかる税金は、法人税、地方法人税、法人住民税、法人事業税で、一般的にこれらの税金をまとめて、法人税等といいます。 法人税等の実効税率とは、法人の所得に対する負担割合のこと、つまり税金は所得金額の何割になるかということです。 なお、日本の税法上では、事業税の損金算入(必要経費の計上)が認められるため、単純にこれらの税金の率の合計が、そのまま実効税率ということにはなりません。従って、課税所得に対する法人税、法人住民税、法人事業税の表面税率を所定の算式にて計算し合計したものが実効税率になります。企業規模や所得金額等により異なりますが、一般的に法人税等、全体の負担割合は、課税所得の約30%となります。 2. 個人の課税所得にかかる税金 日本で個人の所得にかかる税金には、所得税、事業税、住民税があります。一般的にこれらをまとめて、所得税等と言います。 個人の所得税等について、日本では累進課税制度を採用しています。これは、所得額が高い人ほど税率が高くなり、多くの税金を負担する仕組みです。所得税率は5~45%、住民税率は10%になっております。但し、所得金額が一定金額以下の人には課税されないため、一般的に個人の所得税等全体の率は、課税所得の0%~55%ということになります。 なお、個人の税金を考える際に、所得税等以外の社会保険料についても考慮する必要があります。日本では、社会保険料は税金には含まれませんが、アメリカの「社会保障税」と同じような捉え方をすることができます。 雇用されている個人については、基本的に報酬月額(給与)に保険料料率をかけた金額を社会保険料として納める必要があります。なお、日本では、雇用されている個人が所得税等や社会保険料を税務署や社会保険庁に自ら納める方法ではなく、法人が給与から所得税等や社会保険料を差し引いて個人に給与として支払い、所得税等や社会保険料をまとめて関係機関に納めるという方法を取っています。これを「源泉徴収」と言います。 3. おわりに 日本での法人と個人の所得税率について説明しました。税制は国ごとに異なるため、海外進出を考えている企業にとっては大きな悩みの種となります。もし本来やるべき業務に集中したいとお考えでしたら、税務のスペシャリストにサポートを依頼するのがよいでしょう。 弊社では、日本への進出に関するトータルサポートを提供しております。もし外資系企業の日本進出に関して不明な点がありましたら、お気軽にお問い合わせください。
- [役員報酬の金額はどうやって決定すればよいのか?](https://shiodome.co.jp/column/7616/) - 役員報酬の金額はどうやって決定すればよいのでしょうか?役員報酬は、法人税等、所得税等、社会保険等、在留資格更新等の観点から総合的に決定する必要があります。本日は、役員報酬の決め方や、適切な金額の設定方法等についてご紹介いたします。 弊社では外資系企業の日本進出に関するトータルサポートを提供しています。もし日本進出に関してお困りのことがございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせください。 1. 法人税等及び所得税等の観点 もし100%株主であるオーナーと役員が同一人物でなければ、株主であるオーナーは役員報酬の金額は当該役員の貢献に応じた妥当な金額、あるいは、それよりも低い金額に設定することが一般的であり、当該役員にとってみれば役員報酬は高ければ高いほどうれしいことでしょう。 一方100%株主であるオーナーと役員が同一人物であれば、法人に留保するお金も個人に留保するお金も広い意味では一緒のため、極力税金として納付する金額が少なくなるように役員報酬を決定することが合理的です。 最初に述べたとおり、日本では法人の所得に係る実質的な税金の率、すなわち実効税率は、約30%となっています。一方で、個人の所得に係る税金の率は、0%~55%であるといわれます。 そのことから、役員報酬の金額が高いため個人の所得に係る税金の率が30%を超えてくると、例えば税率が50%となるような高い役員報酬の金額を設定してしまうと、法人と個人とを合わせて多く納税を行うことになってしまいます。 したがって、法人税等及び所得税等の観点からは、法人・個人の所得金額が調整できるほど十分にあることを前提として、法人税等と所得税等の税率がだいたい同じくらいになるような役員報酬の金額とすることで、極力税金として納付する金額を少なくすることができます。 なお、個人の扶養の状況などの所得控除額に応じて妥当な役員報酬の金額は変動するため一概には言えませんが、法人税等と所得税等の税率がだいたい同じくらいとなる役員報酬の金額は年間1800万円~2400万円程度と考えておけばよいでしょう 2. 手取保証契約の観点 外資系企業の日本拠点の駐在員の場合には、しばしば所得税、住民税の他に、社会保険料の個人負担金額も含め計算した手取りベースで、これまでと変わらない待遇を約束していることがあります(手取保証契約)。 外資系企業の日本拠点の駐在員のことをエクスパッツ(Expats)といいますが、エクスパッツの給与を計算する際には、所得税、住民税、社会保険料を日本の会社が負担するという前提で、何度もシミュレーションを行い、支給額をアップさせて給与計算するグロスアップを行うことになります。 しばしば、外国人を役員として登用したり、従業員として雇用する場合には、提示した報酬金額が「額面」なのか「手取り」なのかでトラブルになるケースがあります。したがって海外では、手取りベースで待遇を保証をするという慣習があることを理解しておくことは重要です。 3. 在留資格更新等の観点 経営管理ビザの審査においては、事業経営の安定性や継続性が見られることから、黒字経営は非常に重要です。ところが、黒字経営が重要だからといって経費を減少させ利益をあげるために、役員報酬を極めて低い水準にしてはいけません。月額で20万円程度は役員報酬を確保できるように事業計画を策定し実行していく必要があります。 つまり外国人オーナー経営者にとっては「会社=個人」です。入国管理局も会社と個人をセットで見るため、合わせて考える必要があります。これは日本の金融機関の融資審査上の見方と一緒ですが「会社の利益+役員報酬」が、その会社の本当の体力になります。経営管理ビザの更新においては「会社の利益+役員報酬」を見ているとも考えるべきです。 例えば、物価の高い東京で月額20万円で生活していくのはなかなか大変ではありますが、新卒のお給料と比較して、生活ができないということはないと思いますので、あくまで最低ラインではありますが20万円が役員報酬の目安にはなります。役員報酬は高ければ高いほど「経営・管理」ビザの更新において評価は高くなることでしょう。 4. 定期同額の概念 日本には、役員報酬について考える際には、「定期同額給与」という概念があります。定期同額給与(国税庁タックスアンサーNo.5209) 定期同額給与とは次に掲げる給与です。 (1)その支給時期が1か月以下の一定の期間ごとである給与(以下「定期給与」といいます。)で、その事業年度の各支給時期における支給額が同額であるもの (2)定期給与の額につき、次に掲げる改定(以下「給与改定」といいます。)がされた場合におけるその事業年度開始の日又は給与改定前の最後の支給時期の翌日から給与改定後の最初の支給時期の前日又はその事業年度終了の日までの間の各支給時期における支給額が同額であるもの イ その事業年度開始の日の属する会計期間開始の日から3か月を経過する日までに継続して毎年所定の時期にされる定期給与の額の改定。ただし、その3か月を経過する日後にされることについて特別の事情があると認められる場合にはその改定の時期にされたもの ロ その事業年度においてその法人の役員の職制上の地位の変更、その役員の職務の内容の重大な変更その他これらに類するやむを得ない事情(以下「臨時改定事由」といいます。)によりされたその役員に係る定期給与の額の改定(イに掲げる改定を除きます。) ハ その事業年度においてその法人の経営状況が著しく悪化したことその他これに類する理由(以下「業績悪化改定事由」といいます。)によりされた定期給与の額の改定(その定期給与の額を減額した改定に限られ、イ及びロに掲げる改定を除きます。) (3)継続的に供与される経済的利益のうち、その供与される利益の額が毎月おおむね一定であるもの この定期同額給与の概念に当てはまらない改定が行われると、役員報酬の一部が損金算入できなくなってしまうので注意が必要です。 役員報酬改定決議が決算日から3カ月以内に行われていれば、改定した役員報酬の支給が4カ月目からとなっても定期同額給与と認められます。また3カ月「以内」ですので決算日の翌月から役員報酬を改定しても定期同額給与と認められます。 例えば12月決算の会社であれば、決算日から3カ月以内に株主総会を開催し役員報酬改定決議を行います。したがって「1月から」、「2月から」、「3月から」、「4月から」と変更のタイミングは4パターンあります。 5. おわりに 本記事では、日本に進出している企業や外資系企業で度々問題になる役員報酬の決め方について説明しました。 役員報酬を決める際には、さまざまな角度から検討する必要があります。企業内だけで決めることももちろん可能ですが、後々後悔しないようにしたいとお考えでしたら、専門家に意見を聞くのが良いと思います。 弊社では、役員報酬に関してもサポートを実施しております。もし役員報酬に関して何かお困りのことがございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。
- [日本における「居住者」「非居住者」と税務に関する取扱いの論点](https://shiodome.co.jp/column/7617/) - 税金に関して、税金を納めなければならない人(納税義務者)を確定させることは重要です。それは、確実に税金を徴収することはもちろん、二重取りを防止することになるからです。納税義務者について、日本の法律ではどのように規定されているのでしょうか?また、国際間の取り決めでは、どのように規定されているのでしょうか?詳しくご説明いたします。 弊社では外資系企業の日本進出に関するトータルサポートを提供しています。もし日本進出に関してお困りのことがございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせください。 1. 国内法による納税義務者の取り扱い 日本では、所得税法によって、納税義務者(個人)を居住者(さらに永住者、非永住者)と非居住者に分けています。居住者は、基本的に国内外全ての所得に課税されますが、非居住者は、国内で生じた所得(国内源泉所得)に対して課税されます。 所得税では、非居住者は「居住者以外の個人」、居住者は「国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人」と定義されています。 このことから、所得税における居住者と非居住者を分けるポイントは、「住所」と「居所」の定義だということが分かります。 まず「住所」ですが、これは「人の生活の本拠をいい、生活の本拠であるかどうかは、客観的事実によって判定する」とされています。もっと分かりやすく表現すれば、長い間留守にすることはあっても「いずれはそこに帰ってくる場所」ということです。また、「居所」とは、「その人の生活の本拠ではないが、その人が現実に居住している場所」とされています。 実際問題として、居住者・非居住者の違いは非常に難しいものですが、上記の条件を総合的に判断し、居住者であるのか、非居住者であるのかを判断することになります。 なお、法人については、本店所在地がどこにあるかによって、内国法人又は外国法人の判定が行われます。これを一般に「本店所在地主義」といいます。 2. 租税条約による取り扱い 国際間の取り決めである租税条約では、日本と異なる定めをおいている国との間での二重課税を防ぐため、個人・法人を含めた居住者の判定方法を定めています。一般的には、個人については、次の順序で「居住者」の判定を行います。 (1)恒久的住居の場所(2)利害関係の中心的場所(3)常用の住居(4)国籍 また法人の納税地についてですが、相手国が法人を実質的に管理する場所がどこにあるかによって、内国法人か外国法人かの判定を行っている方法(「管理支配地主義」といいます)を取っている場合には、前述の本店所在地主義と矛盾するものになってしまいます。 つまり、双方居住という「二重課税」の恐れが生じることになります。そこで、このような場合には、その法人を実質的に管理する場所のある国の「居住者」とみなすなどの措置を取り、租税条約を適用することによって、この問題をクリアできる場合があります。 3. おわりに 日本における納税義務者は法律で定義が決まってはいるものの、非常にややこしく、個人の判断だけでは大きなミスを犯してしまうことが多々あります。そのため、心配な方は一度、自分が居住者にあたるのか、もしくは非居住者にあたるのかを確認しておくとよいでしょう。 もし納税の義務に関し、何かお困りのことがございましたら、ぜひ弊社までお気軽にお問い合わせください。日本だけでなく、海外の納税にも詳しい弊社スタッフが丁寧に対応させていただきます。
- [租税条約と日本が租税条約を締結している国について](https://shiodome.co.jp/column/7613/) - 租税条約とは、二重課税の排除や脱税の防止等を目的として、国と国の間で結ばれる条約のことです。日本は、2021年4月1日現在143か国・地域との間で、79条約等の租税条約を締結しています。ここでは、租税条約について詳しく解説いたします。 弊社では外資系企業の日本進出に関するトータルサポートを提供しています。もし日本進出に関してお困りのことがございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせください。 1. 租税条約とは まずは租税条約について詳しく説明していきます。 例えば、日本のA会社が、B国に子会社を設立した場合に、日本でもB国でも課税されれば、二重課税になってしまいます。従って、どのような場合に、どちらの国で課税されるのかを二国間であらかじめ決めておく必要があります。これが、租税条約の目的です。 つまり租税条約とは、二重課税の調整、脱税及び租税回避への対応等を通じて、二国間の健全な投資経済交流の促進に資することを主な目的とした租税に関する条約ということになります。 租税条約には、OECD(Organisation for :Economic Co-operation and Development:経済協力開発機構)の加盟国を中心とした「OECDモデル租税条約」というものがあります。この条約は、OECD加盟国を中心として、租税条約を締結する際のひな型として利用されています。日本も、この条約に沿った規程を採用し、諸外国と租税条約を締結しています。 2. OECDモデル租税条約の主な内容 OECDモデル租税条約の主な内容について紹介します ①二重課税の調整租税条約の目的の1つは、二重課税の排除です。租税条約では、源泉地国(所得が発生する国)が課税可能な所得の範囲を確定しています。例えば、事業所得は、支店等の活動により得た所得のみに課税されます。また、投資所得(配当、利子、使用料)については、それぞれの国と地域で課せられる税率の上限を設定しています。 ②脱税及び租税回避への対応こちらも、租税条約の目的の1つです。それぞれの国の税務機関の間で、納税者に関する銀行機密を含む情報の交換が行われます。一般的には、源泉地国で課税された税金を自国の税金から控除する外国税額控除という方法、または源泉地国で生じた所得を課税の対象から除外する所得免除という方法によって、二重課税の排除を行っています。日本では、前者の外国税額控除という方法を採用しています。 3. 租税条約のメリット 外国の企業が日本に進出した際に、租税条約を利用するメリットには、以下のようなものがあります。 (1)二重課税の排除 まず1つ目のメリットとしては、日本に進出する外資系企業が、日本への投資や事業から得た利益に対する二重課税を避けることができるという点です。日本の法定実効税率(所得に対する課税率)は、諸外国と比較すると決して低くはありません。従って、二重課税となってしまうと、投資や事業から生じる所得から納税した後に残る利益は、大幅に減少することになります。 (2)租税に関する不当な取り扱いに関する調停 もし外資系企業が日本において、税制面で不当な扱いを受けた時には、両国間で設けられた協議機関へ申し立てを行うことができます。この点も、メリットの1つです。 (3)配当や利子への課税の軽減 外資系企業が日本において得た受取配当や受取利子への課税が軽減される点も、メリットとして挙げられます。 3. 租税条約適用のための手続き 例えば、日本の企業がC国に子会社を設立した場合、利子、配当、使用料などについて、C国から原則として20.42%の源泉所得税が課されます。この場合、支払者(日本企業の子会社)が、その課税義務を負うことになります。 一方で、租税条約を適用することによって、C国に納める源泉所得税の減免を認められる場合があります。 この減免措置が適用されるには、「租税条約に関する届出書」を対象となる所得の支払の前日までに、支払者の納税地の所轄税務署長に提出しなければなりません。 4. 日本が租税条約を締結している国・地域 財務省のウェブサイトによると、日本は2021年4月1日現在143か国・地域と79条約等を締結しています(財務省ウェブサイト)。なお、※がついている国・地域とは、租税に関する情報交換を主たる内容とする条約(いわゆる情報交換協定)を締結しています。 (1)北米・中南米(34カ国・地域) アメリカ、エクアドル、カナダ、ジャマイカ、チリ、ブラジル、ペルー、メキシコ、ケイマン諸島(※)、英領バージン諸島(※)、パナマ(※)、バハマ(※)、バミューダ(※) (執行共助条約のみ)アルゼンチン、アルバ、アンギラ、アンティグア・バーブーダ、ウルグアイ、エルサルバドル、キャラソー、グアテマラ、グレナダ、コスタリカ、コロンビア、セントクリストファー・ネーヴィス、セントビンセント及びグレナディーン諸島、セントマーティン、セントルシア、ターコス・カイコス諸島、ドミニカ共和国、ドミニカ国、バルバトス、ベリーズ、モンセラット (2)欧州(46カ国・地域) アイスランド、アイルランド、イギリス、イタリア、エストニア、オーストリア、オランダ、クロアチア、スイス、スウェーデン、スペイン、スロバキア、スロベニア、チェコ、デンマーク、ドイツ、ノルウェー、ハンガー、フィンランド、フランス、ブルガリア、ベルギー、ポルトガル、ポーランド、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルク、ルーマニア、チェコ、ガーンジー(※)、ジャージー(※)、マン島(※)、リヒテンシュタイン(※) (執行共助条約のみ)アルバニア、アンドラ、北マケドニア、キプロス、ギリシャ、グリーンランド、サンマリノ、ジブラルタル、セルビア、フォロー諸島、ボスニアヘルツェゴビナ、マルタ、モナコ、モンテネグロ (3)ロシア・NIS諸国(12カ国・地域) アゼルバイジャン、ウズベキスタン、ジョージア、ベラルーシ、アルメニア、カザフスタン、タジキスタン、モルドバ、ウクライナ、キルギス、トルクメニスタン、ロシア (4)アジア・大洋州(27カ国・地域) インド、インドネシア、オーストラリア、韓国、シンガポール、スリランカ、タイ、中国、ニュージーランド、パキスタン、バングラデシュ、フィジー、フィリピン、ブルネイ、ベトナム、香港、マレーシア、サモア(※)、マカオ(※)、台湾 (執行共助条約のみ)クック諸島、ニウエ、バヌアツ、モンゴル、ナウル、ニューカレドニア、マーシャル諸島 (5)中東(9カ国・地域) アラブ首長国連邦、クウェート、イスラエル、サウジアラビア、オマーン、トルコ、カタール (執行共助条約のみ)バーレーン、レバノン (6)アフリカ(15カ国・地域) エジプト、南アフリカ、ザンビア (執行共助条約のみ)ウガンダ、ケニア、ナイジェリア、ガーナ、セーシェル、ナミビア、カーボベルデ、セネガル、モーリシャス、カメルーン、チュニジア、モロッコ (注1)税務行政執行共助条約が多数国間条約であること、及び、旧ソ連・旧チェコスロバキアとの条約が複数国へ承継されていることから、条約等の数と国・地域数が一致しない。 (注2)条約等の数及び国・地域数の内訳は以下のとおり。 租税条約(二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止を主たる内容とする条約):66本、75か国・地域
- [外資系企業における日本法人の法人税等の申告に関する論点とは](https://shiodome.co.jp/column/7612/) - 日本では法人が納める税金、例えば、法人税・法人事業税・法人住民税・消費税・事業所税は、法人の決算日から2ヶ月以内に税務署へ申告しなければなりません。但し、法人税・法人事業税・法人住民税については申告期限をさらに1ヶ月延長することも可能です。本記事では、日本における法人の税申告のスケジュールについて詳しく解説いたします。 弊社では外資系企業の日本進出に関するトータルサポートを提供しています。もし日本進出に関してお困りのことがございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせください。 1. 法人が納める税金に関する原則的な申告期限 日本では、法人が納める税金について、決算日の翌日から2ヶ月以内に申告・納付しなければなりません。 例えば、A社の決算日が3月31日の場合、翌日は4月1日です。その4月1日から数えて2ヶ月以内に当たる5月31日が、法人税等の申告・納付期限ということになります。この期限を過ぎて、申告・納付をするとペナルティが科され、無申告加算税や延滞税を納めなければなりません。 但し、法人税・法人事業税・法人住民税(都道府県民税、市町村税)に限っては、さらに申告の期限を1ヶ月延長することもできます。しかし、消費税については、申告期限の延長ができないので、注意が必要です。 2. 申告期限の延長と納税 税の申告期限を1ヶ月延長するためには、あらかじめ延長の適用を受けようとする事業年度終了の日まで(上記A社の場合は3月31日まで)に、「申告期限の延長の特例の申請書」を税務署へ提出する必要があります。この特例は、一度申請すれば翌年以降も適用されます。 なお、法人税(地方法人税含む)の届出のみならず、法人事業税・法人住民税の届出も合わせて行うことが一般的ですので、くれぐれも提出漏れがないように注意しましょう。 なお、申告期限の延長が可能な税目であっても、納税を延長することはできません。あくまでも、決算日から2ヶ月以内に納税を行う必要がありますので、この点は十分留意しなければなりません。 もし2ヶ月以内に納税できなければ、利子税がかかります。この利子税は、先程説明した無申告加算税や延滞税とは違いペナルティには当たりません。また、利子税は損金算入(経費として計上)できますから、法人の課税所得を減らすことができ、結果的に法人税の減額になります。 3. おわりに 日本法人の法人税等の申告スケジュールについて紹介しました。基本的には決算日の翌日から2ヶ月以内に申告・納付しなければなりませんので、覚えておきましょう。 企業の状況によっては税金の申告や納付に時間を割けないということもあると思います。その場合には期限を延長する方法もありますので、適切に活用してください。 もし、税務に関する手続きを簡単に済ませたければ、弊社のような会計法人に依頼することも選択肢に入れるとよいでしょう。弊社は日本に進出した外資系企業のサポート実績が豊富にございます。日本の税務に関してお困りのことがございましたら、いつでもお気軽にご相談ください。
- [個人で所有している不動産を法人所有に変更すると税務上のメリットはあるか?](https://shiodome.co.jp/column/7610/) - 個人が所有している土地や建物などの不動産を法人が所有することになった場合、税法上のメリットはあるのでしょうか。答えは、メリット有りです。それは「個人と法人の税率格差によって節税できる可能性がある」からです。 不動産を法人所有に変更した際のメリットについて、詳しく紹介します。 弊社では外資系企業の日本進出に関するトータルサポートを提供しています。もし日本進出に関してお困りのことがございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせください。 1. 個人で所有している不動産を法人所有に変更した際の税務上のメリットとは? 日本では、法人の所得に係る実質的な税金の率、すなわち「実効税率」は、課税所得額の約30%となっています。一方で、個人の所得に係る税金の率は、日本居住者を前提とすると、課税所得額の0%~55%であると言われています。 このように、個人の所得に係る税金の率が法人の実効税率よりも高い場合には、個人で所有している不動産を法人所有に変更すれば、賃貸収入となる不動産所得に関しては、節税としてのメリットを得ることができます。 2. 不動産を売却した際にかかる税金について なお、不動産を売却した際にかかる税金についても、合わせて検討しておく必要があります。 譲渡した不動産を所有していた期間が5年超であれば、長期譲渡所得となり、所得税は「譲渡所得×20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)」となります。一方で、不動産を所有していた期間が5年以下であれば短期譲渡所得となり、所得税は「譲渡所得×39.63%(所得税30%+復興特別所得税0.63%+住民税9%)」です。 なお、「譲渡所得」は、単純に不動産が売れた価格とはなりません。その不動産を売るまでに、幾らか費用がかかっているはずです。例えば不動産を買った時の価格や費用(登記や購入手数料等)、また売る時にかかる費用(売却手数料等)などです。 これらの費用を不動産が売れた価格から差し引いたものが、譲渡所得となります。これを数式にすると、「譲渡所得=収入金額-取得費-譲渡費用」となります。 3. おわりに 以上のように、将来的な不動産売却により短期譲渡所得の発生が予想されている場合には、不動産を法人の所有に変更することで、節税することができます。一方で、長期譲渡所得の発生が予想されている場合には、不動産を法人所有にしないほうが、節税できることになります。 この辺りのルールは非常に複雑ですが、きちんと理解し対策することで大きな節税効果が見込めます。 もし会社設立に関する不動産についてお困りのことがございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせください。
- [【国際税務Q&A】非居住者に対する報酬の源泉徴収の要否](https://shiodome.co.jp/column/16726/) - 1. 質問 非居住者に対するデザイン・ブランディング業務に係る報酬について、源泉徴収は必要でしょうか。 2. 回答 PEがないことを前提として、源泉徴収は不要と判断できます。 3. 重要用語 質問及び回答にて使用されている「非居住者」及び「PE」という用語は、国際税務の最重要用語であるため、今一度ここで確認したいと思います。 非居住者 所得税法では、「非居住者」の対になる「居住者」を定義し、「非居住者」は「居住者以外の個人」と定義しています(所得税法2条1項三、五)。 「居住者」とは、国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人とされています(所得税法2条 1項三)。 所得税法における「住所」とは生活の本拠のことをいい、客観的事実によって判定され、「居所」とは、生活の本拠というまでには至らないものの、相当期間継続して居住している場所をいいます。 また、「居住者」も更に「非永住者以外の居住者」と「非永住者」に区分され、各区分によって、課税対象となる所得の範囲や税率が異なります。居住者・非居住者の定義及び課税対象となる所得の範囲についてまとめると《図表1》の通りです。 《図表1》 PE PE(Permanent Establishment、恒久的施設)とは、事業を行う一定の場所等をいい、非居住者や外国法人の課税関係を決める上での重要な指標となります。非居住者や外国法人が自国内で事業を行っていても、自国内にPEを有していない場合には、その非居住者や外国法人の事業所得が自国で課税されることはない(「PEなければ課税なし」)という国際課税の原則があります。 PEの範囲は国内法、租税条約の各々に規定があり、国内法上は《図表2》の通り3種類に区分されています。(No.2883 恒久的施設(PE)|国税庁参照)租税条約において、国内法上のPEの範囲と異なる定めがある場合には、租税条約が国内法に優先されます。 《図表2》 4. 根拠 1. 国内法(所得税法)による判定 非居住者は、所得税法161条1項に規定される17種類の収入、即ち、国内源泉所得だけに課税されます。よって当該報酬が、所得税法161条1項に規定される収入に該当するか否かが 第一の判断ポイントとなります(No.2878 国内源泉所得の範囲(平成29年分以降)|国税庁参照)。 本件については、デザイン・ブランディング業務に係る報酬ということで、著作権の使用料又はその譲渡対価(所得税法161条1項十一ロ)、もしくは個人による人的役務の提供(所得税法161条1項十二イ)に該当するか否かが論点となります。 著作権に関しては著作権法に規定する著作物に該当するか 否かの確認が必要となりますが、著作物に該当する場合、当該著作権の使用料又はその譲渡対価は国内源泉所得となり、課税対象となります。 国内源泉所得の課税方法には、総合課税(所得税法164条1項)と分離課税(所得税法164条2項)の2つの方法があり、分離課税の場合は源泉徴収の方法にて行われます(所得税法169条、212条)。 本件の著作権の使用料又はその譲渡対価が課税される場合は、分離課税(源泉徴収)による課税がなされます(所得税法164条2項二)。 一方、人的役務の提供に関しては、国内において行われたもののみが国内源泉所得として認められますので、非居住者によるデザイン・ブランディング業務が、国外にて行われた場合は、国内源泉所得には該当せず、日本での源泉徴収は不要となります。 仮に国内において行われたものがあり、国内源泉所得に該当すると判断された場合には、上記の著作権の使用料又はその譲渡対価と同様に、分離課税(源泉徴収)による課税がなされることとなります(所得税法164条、2項二)。 ここまでは、国内法からの課税の要否を見てきましたが、日本の所得税法上、国内源泉所得に該当し、課税対象となった場合にも、租税条約による軽減・免除がなされる場合が相当程度あります。この減免については租税条約毎に異なるため、個々の租税条約を確認する必要があります。 2. 租税条約(日本対ドイツ)による判定 PEが存在しない場合、それぞれ以下のように判断されます。 ①当該報酬を著作権の使用料によるものと考える場合、租税条約第12条(使用料)にて、著作権の使用の対価の支払を受ける者の居住地国(この場合ドイツ)においてのみ課税できる旨の記載があり、日本においては免税となります。 ②当該報酬を著作権の譲渡対価によるものと考える場合、租税条約第13条(譲渡収益)にて、居住者(この場合ドイツ)が財産の譲渡によって取得する収益については、日本での課税を免除する旨の記載があります。 ③当該報酬を人的役務提供によるものと考える場合、租税条約第7条(事業利得)にて、利得を得た国(この場合 ドイツ)において課税され、日本での課税を免除する旨の記載があります。 以上より、いずれの場合においても、結果的に日本とドイツの租税条約により、免税措置が取られるため、当該非居住者に対するデザイン・ブランディング業務に係る報酬については、源泉徴収は不要と判断できます。ただし、免税措置の適用については、所定の手続きが必要となる点、留意が必要です。
- [役員給与の分類と損金算入要件:税務・会社法の視点から](https://shiodome.co.jp/column/53387/) - 1.はじめに 本コラムでは、役員に支払われる給与について、税務上の取り扱いを中心に解説していきます。まず、会社法の取扱いに従うと、通常、株主総会の決議や取締役会における協議を通じて役員給与が決定されます。しかし、会社法上で適法に決議された役員給与であっても、法人税法上の損金算入要件を満たさなければ、法人税法上は損金の額に算入することができません。従業員給与と同様に、役員給与についても原則として損金算入を認めると、利益調整に利用されるなど、適正な課税計算ができない可能性があるためです。 このため、法人税法では所定の要件を満たさない役員給与は、原則として損金不算入として取り扱われます。また、要件を満たしていても、不正計算や、支給額が不相当に過大と判断される場合には、これについても損金算入が認められません。 このように、税務においては、役員給与を損金として算入するための各種要件が規定されているため、支払者である法人は、役員給与の支給に際して十分な注意が必要とされます。 2.役員給与の税務上の区分と損金算入要件の実務 税務上、損金算入が認められる役員給与は大きく3つの区分に分けられており、それぞれに個別の制限やルールが設けられています。例えば、一般の従業員給与とは異なり、役員給与は容易に支給額を増減することができません。もし自由に増減が可能であれば、会社が利益を恣意的に操作できる余地が生まれ、適正かつ公平な課税が保たれなくなるためです。そのため、所定の要件を満たさない場合には、経理や会計上では経費として処理されていても、法人税の計算上では損金算入が認められません。 ここからは、「定期同額給与」「事前確定届出給与」「業績連動給与」という3つの区分について、それぞれの内容を詳しく解説していきます。 (1)定期同額給与 「定期同額給与」とは、原則として毎月同一金額で継続的に支給される役員給与を指します。 税務上は「各支給時期における支給額が同額であるもの」が重要な要件とされており、この要件を満たす場合に限り、当該支給額は損金算入が認められます。 例えば、決算期末において当期の利益水準を踏まえ、期中の役員給与額を恣意的に調整することは認められていません。具体的には、利益が多額となった場合に給与を増額して利益を圧縮する行為や、逆に利益が少ない場合に給与を減額して利益を引き上げる行為はいずれも否認対象となります。これらの増減によって生じた差額部分は、損金算入が認められず、税務上は損金不算入の扱いとなります。以下では、決算月を12月とする法人を例に具体的なケースを示します。 ケースA 期中で役員給与を増額した場合 ⇒12月に計上した100万円のうち、増額した30万円は損金不算入 ケースB 期中で役員給与を減額した場合 ⇒減額した差額が損金不算入(150万円=30万円×5か月) (1月~2月の支給額で前年の支給額を引き継いでいる場合には、同月分については定期同額) 定期同額給与については、原則として毎月の支給額が同額であることが要件となるため、期中における支給額の改定が認められていません。ただし、実務上は、やむを得ない事情により報酬額の改定が必要となる場合も想定されます。そのため、改定の理由が「臨時改定事由」または「業績悪化改定事由」のいずれかに該当する場合には、期中の支給金額に増減があっても、その全額について損金算入が認められます。 臨時改定事由として認められるケースは、主に次の3類型に分類されます。 役員の職制上の地位に変更が生じた場合 役員の担当業務や職務内容に重大な変更があった場合 上記に準ずるやむを得ない事由が発生した場合 一方で、業績悪化改定事由としては、以下の3つが典型的な例とされています。なお、業績や資金繰りの悪化が実際に生じていたとしても、目標の未達等の理由や利益調整が主な目的とされる場合にはこれには該当しません。 法人の業績や財務状況が著しく悪化し、株主との関係上、経営責任の観点から役員報酬の減額が不可避と判断される場合 取引金融機関との返済条件変更(リスケジュール)交渉等において、役員報酬の減額が不可避と判断される場合 経営環境の悪化や資金繰りの逼迫により、取引先など利害関係者との信用維持・確保を目的として経営改善計画が策定され、その一環として役員報酬の減額を盛り込まれた場合 上記のように特別な事情により期中に役員報酬を変更する場合を除き、「定期同額給与」の改定は、原則として事業年度開始から3か月以内に行います。また、会社法上、定款に取締役報酬に関する規定が存在しない場合には、報酬額の変更について株主総会の決議を経る必要があります。このため、実務上は、多くの企業が定時株主総会のタイミングに合わせて報酬改定を行っており、3月決算の会社であれば6月末までに開催される株主総会で決議するケースが一般的です。 (2)事前確定届出給与 「事前確定届出給与」は、一般的には役員に対する賞与に相当するものを指します。名称のとおり、支給日および支給額をあらかじめ株主総会の決議によって確定し、その決議日から1か月以内、または事業年度開始日から4か月以内のいずれか早い日までに、所轄税務署へ届出を行うことが求められます。なお、届出内容と実際の支給日・支給額に相違がある場合には、その支給額の全額が損金算入の対象外となる点に注意が必要です。 (3)業績連動給与 「業績連動給与」とは、企業の業績指標(利益や株価など)を基準として算定される役員給与を指します。ただし、この規定の適用を受けるには、法人が「非同族会社」であり、かつ「有価証券報告書の提出会社」であることが前提条件となります。業績連動給与は、その性質上、支給額が事前に固定されておらず、利益操作の手段として用いられる可能性があるため、税務上の要件は厳格に設定されています。このため、中小企業においては制度の導入例はとても限られており、実務的には「定期同額給与」および「事前確定届出給与」が主に採用されているのが実情です。 3.おわりに 本稿では、役員給与に関する基本的な考え方と税務上の取り扱いについて解説しました。役員給与は従業員給与とは異なり、税法上多くの制約が設けられているほか、会社の財務状況や株主との合意形成といった観点も踏まえて設定・改定する必要があります。そのため、金額を見直す際には、税務・法務両面を意識した慎重な対応が求められます。 また、役員給与であっても従業員給与であっても、生活において重要な所得であることに変わりはありません。支給額がどのような制度やプロセスを経て決定され、最終的な手取りに反映されているのかを、支払者側と受給者側の双方の視点から見直すことで、新たな気づきや改善のきっかけを得ることができるでしょう。
- [【国際課税Q&A】非居住者に対するストックオプションの税務上の取扱い](https://shiodome.co.jp/column/17176/) - 1. 質問 日本法人が、日本にPEを有しない海外居住者(ベトナム)である従業員に対して、税制非適格ストックオプション(以下、SO)又は税制適格SOを発行した場合の従業員に対する日本の税務上の取扱いについて教えてください。 2. 回答 日本国内での勤務期間がないことを条件に、税制非適格SO・税制適格SO共に、SO付与時、権利行使時、株式譲渡時のいずれの場合においても、日本での課税はないものと判断できます。 3. 重要用語 質問及び回答にて使用されている「税制非適格SO」及び「税制適格SO」について、今一度確認したいと思います。 そもそもSOとは、新株予約権の1つであり、新株予約権とは、将来の一定期間内(権利行使期間)に、事前に決められた価格(権利行使価額)で会社の株式を取得することができる権利をいいます。 SOは、新株予約権のうち、会社が自社又は子会社の従業員、役員等に対して、会社全体の業績向上へのインセンティブや権利行使までの一定期間、優秀な人材を引き留める効果を期待して付与するものをいいます。 SOの種類としては、まず有償で発行されるか、無償で発行されるかにより、「有償SO」と「無償SO」に分類されます。さらに、無償SOは、ストックオプション税制の適用を受ける「税制適格SO」とその適用を受けない「税制非適格SO」に分けられます。税制適格SOの要件として主なものは、下記の表の通りです(出典:ストックオプション税制(METI/ 経済産業省))。 税制適格SOは、権利行使時の取得株式の時価と、権利行使価額との差額に対する給与所得課税が株式売却時まで繰延べられ、株式売却時に売却価格と権利行使価額との差額を譲渡益課税とできます。 税制非適格SOでは権利行使時に、現金としての利益を得ていない時期に給与所得課税が発生しますが、税制適格SOではこのタイミングでの給与所得課税は行われず、株式売却時のみの譲渡益課税となるといった税務メリットがあります。 ※社外高度人材活用新事業分野開拓計画の認定に従って事業に従事する外部協力者 4. 根拠 今回の質問は、ベトナム居住者に対するSO発行に係る税務上の取扱いについてですが、日本居住者に対するSO発行のケースと比較しながら、判断根拠を見ていきたいと思います。 1. 税制非適格SOの場合の課税関係 前項の表の通り、日本の場合は、①権利行使時に、権利行使益部分(権利行使時の株式時価 -権利行使価格)が給与所得等として、②株式譲渡時に譲渡益部分(株式売却価額-権利行使時の株式時価)が譲渡所得として、計2回の課税がなされます(所得税法施行令84条③)。 ベトナムの場合も、日本の場合と同様に、①権利行使時の権利行使益部分は、その従業員や役員の役務提供の対価と考えられ、日本勤務期間に対応する部分(役員の場合は全額)が国内源泉所得として課税対象となり(所得税法161条①十二、所得税基本通達161-41)、適用税率は20.42%とされます(所得税法169条、170条)。 一方、②株式譲渡時の株式譲渡益部分は、当該非居住者が日本にPEを有しておらず、会社の特殊関係株主等に該当しない場合は、国内源泉所得には該当せず、日本での課税はなされません。 2. 税制適格SOの場合の課税関係 上表の通り、日本の場合は、SOの権利行使益に対する課税は、取得した株式の譲渡時まで繰り延べられ、株式譲渡時に譲渡所得として課税されます(租税特別措置法29条の2①)。これについては適用税率20.315%による申告分離課税となります。 非居住者に対する税制適格SOの場合も、国内法上は日本の場合と同様に、権利行使益部分に対しては、権利行使時に課税されず(租税特別措置法29条の2①)、株式譲渡時に国内にある資産の譲渡により生ずる所得として税率15.315%にて課税されることとなります(所得税法161条①二、所得税法施行令281①四ロ、租税特別措置法施行令19条の3㉓)。 但し、非居住者の居住地国と日本との間に租税条約が締結されている場合には、国内法に優先して租税条約の規定が適用されます。 PEを有しない非居住者が税制適格SOの権利行使後、それにより取得した株式を譲渡した場合、当該株式譲渡益を①SO付与から行使までの間に対応する利益と、②行使から株式譲渡までの間に対応する利益に分解した上で、①については租税条約上の給与所得条項、②については譲渡所得条項を適用の上、課税関係を判断するという事例があります。 この場合、①について、日本は日本勤務期間に対応する部分に対してのみ課税権を有し、PEを有しない非居住者の株式譲渡に係る国内源泉所得として15.315%の税率による申告分離課税の対象となり、②については、租税条約の譲渡所得条項が、居住地国課税を取る場合には日本での課税はなく、所得源泉地国課税を取る場合は日本でも15.315%の税率で課税がなされることになります。 本件では、日本の法人の従業員であるベトナムの居住者に日本国内での勤務期間がないことから、①については課税対象なし、②についてもベトナム・日本間の租税条約では、第13条6項より、株式の譲渡益は原則的に居住地国でのみ課税されることが示されていることから(居住地国課税)、日本での課税はなされないと判断できます。 国際税務Q&A_非居住者に対するストックオプションの税務上の取扱い(PDF)
- [固定資産管理の重要性と実務の基本ステップ:メリットと手順を体系的に整理](https://shiodome.co.jp/column/53376/) - 1.はじめに 本稿では、固定資産管理の導入によって得られる主な効果と、実務の基本的なプロセスについてご紹介します。 多くの事業者は、実務において固定資産管理専用のソフトウェアを導入して運用していますが、Excelなどを用いて手作業で管理しているケースもあります。Excelを使って手作業で計算している場合、固定資産管理で重要な償却計算が複雑になるため、人的ミスが生じやすいという課題があります。一方、専用の固定資産管理ソフトを利用すれば、より精緻で正確な償却計算が可能になりますが、その反面、ソフト上の固定資産台帳と会計帳簿の数値にずれが生じるケースも少なくありません。 こうした課題を解消するためにも、固定資産管理の利点と基本的な手順をしっかりと把握しておくことが重要です。 2.固定資産の基本的な分類と管理対象の整理 企業会計原則では、固定資産は「有形固定資産」「無形固定資産」「投資その他の資産」の3つのカテゴリに大別されます。 有形固定資産は、建物や土地、機械設備、什器、パソコン、社用車といった物理的な形を持つ資産を指します。一方、形のない資産は無形固定資産に分類され、ソフトウェア(自社利用・販売目的を含む)、営業権、特許権などが該当します。また、これら以外の資産として「投資その他の資産」があり、投資有価証券や長期貸付金、関係会社株式、長期前払費用、繰延税金資産などが含まれます。固定資産管理の対象となるのは、主に有形固定資産と無形固定資産です。 3.固定資産管理によって得られる4つの主なメリット 固定資産管理を行うことで得られる主な利点を、4つの観点から解説します。 (1)正確な会計処理の実現 土地を除くほとんどの有形固定資産は、耐用年数に基づいて減価償却が行われます。 固定資産への投資は、一度に多額の支出を伴うケースが多いものの、その効果は単一の会計期間にとどまらず、長期的に発現することを前提としています。そのため、会計上は投資額を資産の耐用年数に応じて分割し、減価償却によって費用化します。こうすることで、収益と費用の対応関係が保たれ、正確な利益計算が実現されます。さらに、仮に多額の固定資産を購入時に一括で費用計上できてしまうと、利益の過度な圧縮が可能となり、適正な納税が担保されなくなる恐れがあります。こうした理由から、税務上も資産の耐用年数に応じた費用配分を行い、正確な税額計算を行うことが求められています。 (2)固定資産税の正確な計算と税負担の適正化 固定資産には、土地や建物に課される固定資産税に加え、機械設備や器具備品などに対して課税される償却資産税があります。 実務上は、過去に取得した資産をそのまま保有しているものの、現在は使用していないケースも少なくありません。こうした未使用資産に対して、償却資産税を支払い続けている事例も見受けられます。 固定資産を適切に把握し、使用されていない資産を特定・処分することで、不要な税負担を削減し、納税額の適正化を図ることが可能です。 (3)コスト削減の実現 近年では、ソフトウェアやクラウドサービスなどを一度契約した後、利用状況を十分に確認しないまま自動更新を続けている企業が増えています。サブスクリプション型のサービスを一時的に利用したものの、その後使われなくなっているにもかかわらず、契約を残したままにしているケースも少なくありません。また、同様の機能を持つサービスを重複して契約している例も多く見られます。 このような無駄な支出を防ぐためには、契約内容や利用状況を定期的に見直し、不要な契約を整理・解約することが効果的です。 (4)資産の滅失リスクの防止 固定資産が盗難や滅失の被害に遭っても、管理体制が不十分な場合には気付かないまま放置されてしまうことがあります。特に、すでに減価償却が完了している資産は帳簿上の動きが少なく、実態との乖離が発生しやすいため注意が必要です。思わぬ損失や事故を未然に防ぐためにも、定期的かつ適切な管理の実施が重要です。 4.固定資産管理の基本プロセス:5つのステップで押さえる実務の流れ ここからは、固定資産管理の基本的なプロセスを5つのステップに分けて解説していきます。 (1)固定資産取得時の登録手続 新たに取得した固定資産については、会計処理や実物管理の基礎となる情報を、稟議書や請求書などの資料をもとに固定資産台帳システムへ登録します。 ※システムを使用していない場合は、Excelなどで管理します。 登録すべき主な情報は以下の通りです。 資産名 資産コード 取得年月日 事業供用開始日 設置場所 管理部門 取得価額 数量 償却方法 耐用年数 さらに、事業供用開始日と取得価額を基に、会計システムへ取得仕訳を入力します。 (2)ラベルの貼付 取得した固定資産を識別できるようにするため、固定資産台帳に登録された資産コードを印字したラベルを作成し、現物に貼り付けます。 (3)除却・売却の登録 資産を除却または売却する際には、稟議書などの関連資料をもとに、固定資産台帳システムへ除却日を入力します。併せて、除却日までの減価償却額を確認し、除却や売却に伴う費用も考慮したうえで、会計上の損益(除却損益・売却損益)を算定します。これに基づき、会計システムで仕訳を起票し、都度または決算整理仕訳として登録します。 (4)固定資産の実査(棚卸)の実施 一般的に、年に1〜2回の頻度で固定資産台帳と現物資産の状況を突き合わせ、整合性を確認します。 【確認の主なポイント】 現場の判断で不要資産が無断で処分されていないか 台帳に未登録の新規備品が購入されていないか 遊休状態となっている資産が存在しないか 破損などにより稼働できない資産がないか 実査の結果、固定資産台帳と実際の資産に差異がある場合は、その内容を確認・整理し、固定資産台帳システムへ反映します。 例えば、無断で処分されていた資産が見つかった場合には除却登録を行い、台帳と実態の整合性を確保します。 (5)減価償却費の計算と整合性の確認 固定資産台帳システム上で自動計算された、またはExcelで手計算した減価償却費をもとに、会計システムへ仕訳を入力し、両システム間で最終的な残高が一致しているかを確認します。 もし固定資産台帳と会計システムの金額に差異が生じた場合は、関連資料を精査し、原因を特定します。 例えば、固定資産の除却処理を会計システムには反映したものの、台帳側への登録を失念していたケースなどが典型例です。 5.おわりに
- [【国際課税Q&A】外国法人から受けるコンサルティングサービスに係る課税の取扱い](https://shiodome.co.jp/column/17495/) - 質問 日本に恒久的施設(PE)を有していない外国法人が、日本法人に対して経営に関するコンサルティングサービスの提供を行った場合の、日本における法人税(源泉所得税含む)及び消費税上の取扱いについて教えて下さい。 回答 法人税・源泉所得税 外国法人が日本国内にPEを有していなければ、コンサルティングサービスの提供に対する日本での課税はなされないものと判断できます。 消費税 コンサルタントが日本に来日せず、国外にて役務提供がなされる場合は、消費税の課税対象外と判断できます。 根拠 法人税・源泉所得税 1.国内法による判定外国法人に対しては非居住者と同様に、日本での課税は法人税法138条に規定される「国内源泉所得」のみに限定されます。よって、今回の外国法人の日本法人に対するコンサルティングサービスの提供による収入が、国内源泉所得に該当するか否かが第一の論点となります。 通常、経営コンサルティングサービスの提供は、人的役務の提供事業に該当すると判断されることから、国内において行われるもののみが国内源泉所得として扱われます(法人税法138条1項4号)。それゆえ、日本国内にPEを有さない外国法人が、本社など、国外で当該サービス提供を行う場合には、その収入は国内源泉所得には該当せず、日本における法人税の対象外となります。 一方、コンサルタントが来日し、サービス提供が日本国内で行われる場合には、当該役務提供に係る収入は国内源泉所得に該当します(法人税法138条1項4号)。この場合は、PEを有していなくても外国法人は日本での法人税の申告が必要となります(法人税法141条、144条の6第2項)。 源泉所得税の取扱いも法人税と同様に、この場合は、対価を支払う日本法人は支払いの際に20.42%の源泉徴収を行う必要があります(所得税法161条1項6号、212条1項、213条1項)。 2.租税条約による判定外国法人の居住国と日本の間で租税条約が締結されている場合には、国内法による判定後、租税条約による判定が必要となります。 多くの国の租税条約においては、OECDが作成した「モデル租税条約」の構成が踏襲されています。OECDモデル租税条約では、人的役務の提供事業から生じる所得については「事業利得」に含まれ、7条にて記載がなされています。7条(事業利得)では、「一方の締約国の企業の利得に対しては、その企業が他方の締約国内にある恒久的施設を通じて当該他方の締約国内において事業を行わない限り、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。」という記載がなされています。本件に置き換えてわかりやすく転換すると「非居住者や外国法人の事業所得に対しては、非居住者等が日本にPEを有し、これを通じて日本において事業を行わない限り日本では課税されない(PEなければ課税 なし)」という内容です。 よって、当該外国法人が日本においてPEを有し、コンサルティングサービスの提供がPEを通じた取引である場合を除いて、租税条約上は、日本での課税はなされないものとされます。租税条約は国内法の規定に優先して適用されるため、国内法上、課税対象と判断された場合においても、租税条約が締結されている場合には、当該租税条約7条を持って、法人税及び源泉所得税のいずれについても、日本での課税が免除されることになります。 また、租税条約による判断において重要な要素であるPEについては、日本に一定の活動拠点がある場合には、慎重な検討が必要です(国内法上のPEの種類、定義については【国際税務Q&A】非居住者に対する報酬の源泉徴収の要否 | RSM汐留パートナーズの重要用語を参照)。 今回のケースでは、外国法人が日本においてPEを有さず、提供されるコンサルティングサービスが、①国外にて提供される場合には、国内源泉所得に該当せず、日本での課税対象外となり、②コンサルタントが来日し、国内にて提供される場合においては、国内源泉所得に該当し、日本での課税が必要となりますが、租税条約が締結されている場合、最終的には租税条約7条を持って日本での課税は免除されることになります。なお、コンサルティング業務に付随して著作権の使用料等を受け取る場合には、別途検討が必要となる場合があります。 消費税 消費税においては租税条約はなく、国内法のみで判定がなされます。消費税は、原則として、①国内において、②事業者が事業として、③対価を得て行う、④資産の譲渡、資産の貸付け及びサービスの提供に対して課税されます(消費税法4条1項)。よって、当該コンサルティングサービスの提供が上記4つの要件に該当するか否かという視点で判断することになります。 この点、②~④については②外国法人が事業として、③対価を得て、④サービスの提供を行うという点で容易に該当するものと判断することができます。それゆえ、外国法人から受けるコンサルティングサービスにおいて論点になるのは、「①国内において」という役務提供の場所に関わる条件の部分になります。 役務提供地が「国内」「国外」のいずれか明確な場合、もしくは契約書等で明記され、それが実態に即している場合は簡単です。役務提供地が「国内」の場合は、上記の①の条件に合致し、消費税課税取引となります。逆に「国外」の場合は条件に合致せず、消費税の対象外となります。 一方、国内及び国外にわたって行われるサービスの提供や、契約書等でサービス提供地が特定できない場合など、役務提供地を1ヶ所に特定できない場合は、「役務提供を行うものに係る事務所等の所在地」で判定することとなります(消費税法施行令6条2項六)。 よって、国内に事業所等を有さない外国法人が日本法人に対してサービス提供を行った場合は、電気通信利用役務の提供と呼ばれる取引に該当しない限り、一般的に国外取引として、消費税の課税対象外となります。 まとめ 以上より、外国法人から受けるコンサルティングサービスに係る課税関係については、コンサルタントが来日するか否か(役務提供地)が重要な判断基準になるということがわかります。 即ち、法人税(源泉所得税を含む)でも、消費税でも、国内で役務提供がなされたものについては課税対象となり、国外で役務提供がなされたものについては課税対象外となります。課税対象とされる法人税及び源泉所得税については、そのうえで租税条約による免税の余地を検討することとなります。 国際税務Q&A_外国法人から受けるコンサルティングサービスに係る課税の取扱い(PDF)
- [役員給与と使用人兼務役員の取扱い――建設業における税務区分と実務上の留意点](https://shiodome.co.jp/column/53381/) - 1.はじめに 役員に支払う給与には、一般の従業員給与とは異なる多くの税務上の制約が設けられています。そのため、簡単に増減させることはできません。定められた要件を満たさない場合、支給した役員報酬の一部が税務上の損金として認められず、結果として法人税の負担が増加する可能性があります。 一方で、役員に対する給与であっても、「使用人兼務役員」として勤務する役員に支払う使用人部分の給与については、通常の役員給与のような税務上の制限は設けられていません。特に建設業のように、役員自身が従業員と同様に現場で業務に従事するケースが多い業種では、この点が重要になります。そこで本稿では、一般的な役員給与の取扱いと、現場業務に従事する役員への給与の違いについて解説します。 2.役員給与の税務上の区分と取扱い――定期同額給与・事前確定届出給与・業績連動給与の整理 はじめに、法人税法上の役員給与の基本的な考え方を整理しておきましょう。税務上、損金に算入できる役員給与は大きく3つの区分に分けられ、それぞれに異なる制限が設けられています。これらは従業員給与とは異なり、容易に期中で増減させることができない仕組みになっています。もし期中に自由に金額を変更できると、企業が利益操作を行う余地が生じ、課税の公平性が損なわれる恐れがあるためです。したがって、各区分ごとに定められた要件を満たさない場合、その役員給与は損金算入が認められません。 また、各要件を満たす場合でも、その役員の職務内容などを勘案した結果、役員給与の支給額が不相当に高額と認められる場合は、その高額とされる部分の損金算入は認められません。 ① 定期同額給与 定期同額給与とは、基本的に毎月一定額を支給する形態の給与を指します。税務上は「支給額が同額であること」が要件とされており、この条件を満たしていれば損金算入が認められます。 したがって、決算期が近づいてからその期の利益状況に応じて支給額を増減することは原則として認められません。もし増額または減額を行った場合、その差額分は法人税法上の損金に算入できない点に注意が必要です。 例)12月決算法人の場合 ⇒12月に100万円計上。このうち、増額した30万円は損金不算入 ⇒減額した場合も差額が損金不算入(150万円=30万円×5か月(3月~7月))※2月の定時株主総会決議で前年報酬額が据え置かれたケース 前述のとおり、定期同額給与は原則として期の途中で報酬額を変更することは認められていません。ただし、実務上はやむを得ない事情から報酬額を改定せざるを得ないケースも想定されます。こうした場合に備え、税務上は「臨時改定事由」と「業績悪化改定事由」という2つの例外が設けられています。これらの要件を満たす場合には、期中の改定であっても改定後の報酬を引き続き損金算入することが可能です。 臨時改定事由として認められるのは、以下の3点です。 役員の職制上の地位の変更 役員の職務内容の重大な変更 上記に類するやむを得ない事情 一方、業績悪化改定事由には、次のようなケースが該当します。 株主との関係上、業績や財務状況の悪化に対する経営上の責任を踏まえ、役員報酬の減額が避けられない場合 取引金融機関との借入金返済スケジュールの見直し協議において、役員報酬を引き下げる必要がある場合 業績や資金繰りが悪化し、取引先などの利害関係者からの信用維持・確保を目的として、経営改善計画を策定し、その中で役員報酬の減額が盛り込まれている場合 上記に類するやむを得ない事情 上記のような特別な事由に該当しない場合、定期同額給与の改定は事業年度開始日から3か月以内に行うことが原則とされています。また、会社法上、定款に取締役の報酬に関する規定がない場合には、報酬を変更する際に株主総会での決議が必要となります。こうした法令・税務上の要件を踏まえ、多くの企業では定時株主総会の時期に合わせて取締役報酬の改定を行います。 ②事前確定届出給与 事前確定届出給与とは、定期同額給与とは別に、所定の時期に確定額を支給する給与を指します。あらかじめ金額を確定させる必要がありますが、特定の月に増額支給できるため、役員に対する賞与(ボーナス)のように利用されることも多くあります。 従業員に支給される賞与は、通常、業績への貢献度や勤務態度など、一定期間の評価結果を踏まえて金額が決定されます。これに対し、役員に対する事前確定届出給与は、定期同額給与と同様に、あらかじめ支給額を確定しておくことが損金算入の前提条件となります。 具体的には、支給日および支給額をあらかじめ株主総会で決議したうえで、その内容を原則として決議の日から1か月以内、または事業年度開始日から4か月以内のいずれか早い時期までに税務署へ届け出る必要があります。もし届出内容と実際の支給額や支給日が一致しない場合、その全額が損金として認められず、損金不算入の扱いとなる点に注意が必要です。 ③業績連動給与 業績連動給与とは、会社の利益や株価といった一定の指標を基準に算定される役員給与のことを指します。従業員の賞与と性質が近い一方で、事前確定届出給与のようにあらかじめ金額を定めるものではなく、支給額は固定されていません。 ただし、利益操作に利用されるリスクがあるため、税務上は損金算入の要件が厳しく設定されています。例えば、非同族会社であることや、有価証券報告書の提出会社であることなど、一定の条件を満たす必要があります。 3.使用人兼務役員の位置付けと給与区分における実務上の留意点 使用人兼務役員とは、役員としての立場と従業員としての役割を併せ持つ人を指します。税法上は、「役員のうち部長、課長、その他法人の使用人としての職制上の地位を有し、かつ、常時使用人としての職務に従事する者」と定義されています。例えば、取締役営業部長、取締役工場長などがその例です。ただし、代表取締役や副社長といった、使用人兼務役員になれない役員についても税法上の細かい規定がありますので注意が必要です。 使用人兼務役員には、役員としての職務に対する報酬と、従業員としての職務に対する給与をそれぞれ区分して支給することが可能です。このうち、役員給与部分については通常の役員と同様に取り扱われます。他方、使用人給与に相当する部分は、通常の役員給与には該当しないため、定期同額などの各種の税務上の制限を受けません。そのため、他の使用人と同様、期中の昇給、業績に応じた賞与の支給なども柔軟に行うことができます。 また、使用人兼務役員であれば、通常は役員が対象とならない雇用保険への加入が認められる場合があり、さらに原価計算の面でも区分管理がしやすくなるといったメリットがあります。 建設業では、工期が複数年度にまたがる工事も多く、期末時点で未完成の案件にかかる労務費を「仕掛品」として資産計上し、翌期へ繰り越す処理は一般的に行われています。しかし、役員報酬を労務費として扱い、年度をまたぐ際に仕掛品へ計上する例は通常ありません。そのため、役員が現場業務に携わった場合、その工事原価を正確に把握するには、申告用の税務会計とは別に、損益管理を目的とした管理会計の仕組みを構築する必要があります。 一方で、使用人兼務役員が現場業務を行い、その業務分を使用人給与として支給した場合には、その金額を仕掛品として資産計上することが可能です。これにより、案件ごとの原価や損益の計算がより容易かつ明確になります。 留意すべき重要な点として、使用人兼務役員に支給する「使用人分の給与」については、その業務従事の実態や金額算定の根拠を明確に説明できる必要があります。これは、適切な裏付けがなければ、使用人分の給与を利用して恣意的に利益を調整することが可能になってしまうためです。実際に、使用人分の給与額や昇給額、賞与額の算定過程や基準について合理的な説明ができない場合、税務調査の際にその給与が役員報酬とみなされ、損金算入が否認されるリスクがあります。したがって、使用人業務への従事割合や算定方法を客観的に示せるよう、日頃から記録や根拠の整備を行っておくことが重要です。 また、建設業においても近年の人手不足の影響を受け、賃金水準の引上げは重要な課題となっています。このような中、企業の税務対策として所得拡大促進税制の適用可否は避けて通れないテーマといえるでしょう。もっとも、この制度を検討する際に注意すべき点として、使用人兼務役員に対して支払われる給与は、その対象となる給与等には含まれない点が挙げられます。役員としての職務に関連して支給される報酬だけでなく、使用人としての立場で支払われる給与についても対象外とされているため、実務においては対象人員の範囲を正確に把握することが重要です。 このような事情を踏まえると、役員が実際に現場業務に従事しているケースで、使用人兼務役員として給与を区分して支給することを検討する際には、まずは顧問税理士へ相談することをおすすめします。 4.おわりに 今回は、役員給与の基本的な仕組みと、使用人兼務役員に対する給与の取り扱いについて説明しました。建設業では、役員が現場業務に直接関与するケースも少なくありません。しかし、実際の税務調査などの場面においては、必ずしも使用人兼務役員として認められるとは限らない点に注意が必要です。 近年、建設業界では賃金の引き上げに向けた動きが顕著になっています。この流れを受け、従業員給与の見直しと合わせて役員給与の水準も再検討し、その中で使用人兼務役員の該当可否を検討する企業も出てくる可能性があります。 役員報酬の金額を決定する際には、税務上のルールを満たすことはもちろん、会社の財務状況に見合っているか、株主や従業員からの理解・納得が得られる水準であるかといった観点も重要です。状況によっては、税理士など専門家に相談しながら進めることをおすすめします。
- [【国際課税Q&A】日本に恒久的施設(PE)を持たない外国法人が日本法人に著作権を譲渡した場合の対価に係る日本における源泉所得税及び消費税上の取扱い](https://shiodome.co.jp/column/18279/) - 1. 質問 日本国内に支店等の恒久的施設(PE)を有していない香港の法人が、日本法人向けにアプリ用のキャラクター(著作権法上の著作物に該当)を作成し、日本法人に譲渡した場合、当該著作権の譲渡に対する日本における源泉所得税及び消費税上の取扱いについて教えてください。 2. 回答 香港法人が日本国内にPEを有していなければ、著作権の譲渡に対しての源泉徴収は不要であり、消費税についても課税対象外と判断できます。 3. 根拠 源泉所得税 1. 国内法による判定今回の香港法人の日本法人に対する著作権の譲渡による収入が、日本で主に源泉徴収の方法で課税対象とされる国内源泉所得に該当するか否かが第一の論点となります。 外国法人が得る著作権の使用料又はその譲渡による対価については、所得税法161条1項11号ロにおいて、それを国内において業務を行う者から受ける場合は、国内源泉所得に該当するとされています。それゆえ、国内法上は、著作権の譲渡対価を外国法人に支払う場合には、税率20.42%による源泉徴収が必要となります(所得税法5条4項、179条1号、212条1項、213条1項1号)。 2. 租税条約による判定外国法人の居住国と日本との間で租税条約が締結されている場合には、国内法による判定後、租税条約による判定が必要となります。租税条約による判定は国内法による判定に優先して適用されるためです。 日本と香港との租税条約に相当する日・香港租税協定上、著作権の譲渡から生ずる収入については、日・香港租税協定第12条の「使用料」の条項ではなく、第13条の「譲渡収益」の条項を適用するものと考えられます。 即ち、著作権に関しては第13条6項が適用され、居住地国課税の考えから、譲渡者である香港法人が居住する香港で課税がなされ、日本での源泉徴収は不要となります。 4. 参考:租税条約によって異なる結論 著作権等の譲渡対価に対する源泉徴収の要否については、租税条約によって結論が異なることから、留意が必要です。 今回の日・香港租税協定では、著作権の譲渡対価は、第12条の「使用料」ではなく、第13条の「譲渡収益」に含めるといった判断がなされましたが、租税条約によっては、著作権等の知的財産権の譲渡対価を「使用料」に含める場合があるからです。この場合は、使用料条項内に、著作権等の知的財産権の譲渡から生ずる収入についても、使用料と同様に取り扱う旨の明示的な記載があることが多いです。 それゆえ、多くの租税条約で第12条にて記載がなされている「使用料」の条項を丁寧に読み取ることが重要となります。なお、著作権の譲渡対価が「使用料」に含まれる場合は、源泉徴収の対象となりますが、その税率は国内法上の20.42%よりも軽減される場合がほとんどです。 著作権等の知的財産権の譲渡対価を「使用料」に含め、源泉徴収が必要となる場合として、シンガポール(日星条約第12条5項にて明示)、韓国(日韓条約第12条5項にて明示)、ベトナム(日越条約第12条5項にて明示)などが挙げられます。いずれも源泉税率は10%に軽減されます(各租税条約第12条2項にて記載)。 一方、香港との租税条約のように、著作権等の知的財産権の譲渡対価を「使用料」としてではなく「譲渡収益」に含めると解され、日本での源泉徴収不要となるケースとしては、アメリカ、イギリス、インドなどが挙げられます。 以下、著作権の譲渡対価を第12条の「使用料」に含める場合の代表例として、日本とシンガポールの租税条約の第12条5項での明示部分を示します。今後、租税条約の該当箇所を見る際の参考にしてみてください。 日星租税条約第12条(使用料) 1. -省略- 2. -省略- 3. この条において、「使用料」とは、文学上、美術上若しくは学術上の著作物(ソフトウエア、映画フィルム及びラジオ放送用又はテレビジョン放送用のフィルム又はテープを含む。)の著作権、特許権、商標権、意匠、模型、図面、秘密方式若しくは秘密工程の使用若しくは使用の権利の対価として、産業上、商業上若しくは学術上の設備の使用若しくは使用の権利の対価として、又は産業上、商業上若しくは学術上の経験に関する情報の対価として受領するすべての種類の支払金及び船舶又は航空機の裸用船契約に基づいて受領する料金(第8条で取り扱うものを除く。)をいう。 4. -省略- 5. 1、2及び4の規定は、文学上、美術上若しくは学術上の著作物(ソフトウエア、映画フィルム及びラジオ放送用又はテレビジョン放送用のフィルム又はテープを含む。)の著作権、特許権、商標権、意匠、模型、図面、秘密方式又は秘密工程の譲渡から生ずる収入についても、同様に適用する。 5. 消費税 消費税については租税条約ではなく、国内法のみで課税の要否が判定されます。 著作権を含む知的財産権は無形であるため、役務提供と類似しているように思われますが、知的財産権は資産であることから、その資産の譲渡や貸付けに係る消費税の内外判定基準は、原則として「取引が行われる時にその資産が所在していた場所」です。 しかし、無形資産は有形資産と異なり、資産の所在場所を目で見て確認できるものではないため、消費税上、知的財産権は、以下の通り大きく2つに区分された上で、内外判定基準が定められています。 上表より、著作権は「創作により自動的に発生する権利」であり、その内外判定基準は「著作権等の譲渡又は貸付けを行う者の住所地」となります。それゆえ、今回の事例に当てはめると、香港法人が著作物を作成し、日本法人に譲渡を行っていることから、「著作権等の譲渡又は貸付けを行う者の住所地」は香港であり、国外取引となり、消費税の課税対象外となります。 国際税務Q&A_外国法人による著作権の譲渡に係る課税の取扱い (PDF)
- [事業所税の納税管理人に係る概要、虚偽の申告等に関する罪、不申告に関する過料](https://shiodome.co.jp/column/7746/) - 1. 事業所税の納税管理人とは? 地方税法第701条の37は、「事業所税の納税管理人」について定めています。 事業所税の納税義務者は、納税義務を負う指定都市等の区域内に住所、居所又は事業所等(以下本項において「住所等」という。)を有しない場合には、納税に関する一切の事項を処理させるため、当該指定都市等の条例で定める地域内に住所等を有する者のうちから納税管理人を定めてこれを指定都市等の長に申告し、又は当該地域外に住所等を有する者のうち当該事項の処理につき便宜を有するものを納税管理人として定めることについて指定都市等の長に申請してその承認を受けなければならない。納税管理人を変更し、又は変更しようとする場合においても、また、同様とする。 2 前項の規定にかかわらず、当該納税義務者は、当該納税義務者に係る事業所税の徴収の確保に支障がないことについて指定都市等の長に申請してその認定を受けたときは、納税管理人を定めることを要しない。 2. 事業所税の納税管理人に係る虚偽の申告等に関する罪とは? 地方税法第701条の38は、「事業所税の納税管理人に係る虚偽の申告等に関する罪」について定めています。 前条第1項の規定によつて申告すべき納税管理人について虚偽の申告をし、又は偽りその他不正の手段により同項の承認若しくは同条第2項の認定を受けた者は、30万円以下の罰金に処する。 2 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者がその法人又は人の業務又は財産に関して前項の違反行為をした場合には、その行為者を罰するほか、その法人又は人に対し、同項の罰金刑を科する。 3 人格のない社団等について前項の規定の適用がある場合には、その代表者又は管理人がその訴訟行為につき当該人格のない社団等を代表するほか、法人を被告人又は被疑者とする場合の刑事訴訟に関する法律の規定を準用する。 3. 事業所税の納税管理人に係る不申告に関する過料とは? 地方税第701条の39は、「事業所税の納税管理人に係る不申告に関する過料」を定めています。 指定都市等は、第701条の37第2項の認定を受けていない事業所税の納税義務者で同条第1項の承認を受けていないものが同項の規定によつて申告すべき納税管理人について正当な理由がなくて申告をしなかつた場合には、その者に対し、当該指定都市等の条例で10万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができる。
- [固定資産税の納税管理人に係る概要、虚偽の申告等に関する罪、不申告に関する過料](https://shiodome.co.jp/column/7745/) - 1. 固定資産税の納税管理人とは? 地方税法第355条は、「固定資産税の納税管理人」について定めています。 固定資産税の納税義務者は、納税義務を負う市町村内に住所、居所、事務所又は事業所(以下本項において「住所等」という。)を有しない場合においては、納税に関する一切の事項を処理させるため、当該市町村の条例で定める地域内に住所等を有する者のうちから納税管理人を定めてこれを市町村長に申告し、又は当該地域外に住所等を有する者のうち当該事項の処理につき便宜を有するものを納税管理人として定めることについて市町村長に申請してその承認を受けなければならない。納税管理人を変更し、又は変更しようとする場合においても、また、同様とする。 2 前項の規定にかかわらず、当該納税義務者は、当該納税義務者に係る固定資産税の徴収の確保に支障がないことについて市町村長に申請してその認定を受けたときは、納税管理人を定めることを要しない。 2. 固定資産税の納税管理人に係る虚偽の申告等に関する罪とは? 地方税法第356条は、「固定資産税の納税管理人に係る虚偽の申告等に関する罪」について定めています。 前条第1項の規定によつて申告すべき納税管理人について虚偽の申告をし、又は偽りその他不正の手段により同項の承認若しくは同条第2項の認定を受けた者は、30万円以下の罰金に処する。 2 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者がその法人又は人の業務又は財産に関して前項の違反行為をした場合においては、その行為者を罰する外、その法人又は人に対し、同項の罰金刑を科する。 3. 固定資産税の納税管理人に係る不申告に関する過料とは? 地方税法第357条は、「固定資産税の納税管理人に係る不申告に関する過料」について定めています。 市町村は、第355条第2項の認定を受けていない固定資産税の納税義務者で同条第1項の承認を受けていないものが同項の規定によつて申告すべき納税管理人について正当な事由がなくて申告をしなかつた場合においては、その者に対し、当該市町村の条例で10万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができる。
- [市町村民税の納税管理人に係る概要、虚偽の申告等に関する罪、不申告に関する過料](https://shiodome.co.jp/column/7744/) - 1. 市町村民税の納税管理人とは? 地方税法第300条は、「市町村民税の納税管理人」について定めています。 市町村民税の納税義務者は、納税義務を負う市町村内に住所、居所、事務所、事業所又は寮等を有しない場合においては、納税に関する一切の事項を処理させるため、当該市町村の条例で定める地域内に住所、居所、事務所若しくは事業所を有する者のうちから納税管理人を定めてこれを市町村長に申告し、又は当該地域外に住所、居所、事務所若しくは事業所を有する者のうち当該事項の処理につき便宜を有するものを納税管理人として定めることについて市町村長に申請してその承認を受けなければならない。納税管理人を変更し、又は変更しようとする場合においても、また、同様とする。 2 前項の規定にかかわらず、当該納税義務者は、当該納税義務者に係る市町村民税の徴収の確保に支障がないことについて市町村長に申請してその認定を受けたときは、納税管理人を定めることを要しない。 2. 市町村民税の納税管理人に係る虚偽の申告等に関する罪とは? 地方税法第301条は、「市町村民税の納税管理人に係る虚偽の申告等に関する罪」について定めています。 前条第1項の規定によつて申告すべき納税管理人について虚偽の申告をし、又は偽りその他不正の手段により同項の承認若しくは同条第2項の認定を受けた者は、30万円以下の罰金に処する。 2 法人の代表者(人格のない社団等の管理人を含む。)又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者がその法人又は人の業務又は財産に関して前項の違反行為をした場合においては、その行為者を罰するほか、その法人又は人に対し、同項の罰金刑を科する。 3 人格のない社団等について前項の規定の適用がある場合においては、その代表者又は管理人がその訴訟行為につき当該人格のない社団等を代表するほか、法人を被告人又は被疑者とする場合の刑事訴訟に関する法律の規定を準用する。 3. 市町村民税の納税管理人に係る不申告に関する過料とは? 地方税法第302条は、「市町村民税の納税管理人に係る不申告に関する過料」について定めています。 市町村は、第300条第2項の認定を受けていない市町村民税の納税義務者で同条第1項の承認を受けていないものが同項の規定によつて申告すべき納税管理人について正当な事由がなくて申告をしなかつた場合においては、その者に対し、当該市町村の条例で10万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができる。
- [法人の道府県民税の納税管理人に係る概要、虚偽の申告等に関する罪、不申告に関する過料](https://shiodome.co.jp/column/7743/) - 1. 法人の道府県民税の納税管理人とは? 地方税法第29条は、「法人の道府県民税の納税管理人」について定めています。 法人の道府県民税の納税義務者は、納税義務を負う道府県内に事務所、事業所又は寮等を有しなくなつた場合においては、納税に関する一切の事項を処理させるため、当該道府県の条例で定める地域内に住所、居所、事務所若しくは事業所を有する者のうちから納税管理人を定めてこれを道府県知事に申告し、又は当該地域外に住所、居所、事務所若しくは事業所を有する者のうち当該事項の処理につき便宜を有するものを納税管理人として定めることについて道府県知事に申請してその承認を受けなければならない。納税管理人を変更し、又は変更しようとする場合においても、また、同様とする。 2 前項の規定にかかわらず、当該納税義務者は、当該納税義務者に係る法人の道府県民税の徴収の確保に支障がないことについて道府県知事に申請してその認定を受けたときは、納税管理人を定めることを要しない。 2. 法人の道府県民税の納税管理人に係る虚偽の申告等に関する罪とは? 地方税法第30条は、「法人の道府県民税の納税管理人に係る虚偽の申告等に関する罪」について定めています。 地方税法第29条第1項の規定によつて申告すべき納税管理人について虚偽の申告をし、又は偽りその他不正の手段により同項の承認若しくは同条第2項の認定を受けた者は、30万円以下の罰金に処する。 2 法人の代表者(人格のない社団等の管理人を含む。)又は代理人、使用人その他の従業者がその法人の業務又は財産に関して前項の違反行為をした場合においては、その行為者を罰するほか、その法人に対し、同項の罰金刑を科する。 3 人格のない社団等について前項の規定の適用がある場合においては、その代表者又は管理人がその訴訟行為につき当該人格のない社団等を代表するほか、法人を被告人又は被疑者とする場合の刑事訴訟に関する法律の規定を準用する。 3. 法人の道府県民税の納税管理人に係る不申告に関する過料とは? 地方税法第31条は、「法人の道府県民税の納税管理人に係る不申告に関する過料」について定めています。 道府県は、地方税法第29条第2項の認定を受けていない法人の道府県民税の納税義務者で同条第1項の承認を受けていないものが同項の規定によつて申告すべき納税管理人について正当な事由がなくて申告をしなかつた場合においては、その者に対し、当該道府県の条例で10万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができる。
- [事業税の納税管理人に係る概要、虚偽の申告等に関する罪、不申告に関する過料](https://shiodome.co.jp/column/7741/) - 1. 事業税の納税管理人とは? 地方税法第72条の9は、「事業税の納税管理人」について定めています。 事業税の納税義務者は、納税義務を負う道府県内に住所、居所、事務所又は事業所(以下本項において「住所等」という。)を有しない場合においては、納税に関する一切の事項を処理させるため、当該道府県の条例で定める地域内に住所等を有する者のうちから納税管理人を定めてこれを道府県知事に申告し、又は当該地域外に住所等を有する者のうち当該事項の処理につき便宜を有するものを納税管理人として定めることについて道府県知事に申請してその承認を受けなければならない。納税管理人を変更し、又は変更しようとする場合においても、また、同様とする。 2 前項の規定にかかわらず、当該納税義務者は、当該納税義務者に係る事業税の徴収の確保に支障がないことについて道府県知事に申請してその認定を受けたときは、納税管理人を定めることを要しない。 2. 事業税の納税管理人に係る虚偽の申告等に関する罪とは? 地方税法第72条の10は、「事業税の納税管理人に係る虚偽の申告等に関する罪」について定めています。 前条第1項の規定によつて申告すべき納税管理人について虚偽の申告をし、又は偽りその他不正の手段により同項の承認若しくは同条第2項の認定を受けた者は、30万円以下の罰金に処する。 2 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者がその法人又は人の業務又は財産に関して前項の違反行為をした場合においては、その行為者を罰する外、その法人又は人に対し、同項の罰金刑を科する。 3 人格のない社団等について前項の規定の適用がある場合においては、その代表者又は管理人がその訴訟行為につき当該人格のない社団等を代表するほか、法人を被告人又は被疑者とする場合の刑事訴訟に関する法律の規定を準用する。 3. 事業税の納税管理人に係る不申告に関する過料とは? 地方税法第72条の11は、「事業税の納税管理人に係る不申告に関する過料」について定めています。 道府県は、地方税法第72条の9第2項の認定を受けていない事業税の納税義務者で同条第1項の承認を受けていないものが同項の規定によつて申告すべき納税管理人について正当な事由がなくて申告をしなかつた場合においては、その者に対し、当該道府県の条例で10万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができる。
- [役員給与の税務上の3分類「定期同額給与」「事前確定届出給与」「業績連動給与」と必要となる各制限](https://shiodome.co.jp/column/19030/) - 1. はじめに 今回のコラムでは、役員給与の解説をします。税務上、実質的に利益処分たる賞与とみなされる可能性があるなど、過大役員報酬については留意すべきです。 2. 役員給与とは? 税務上の役員給与は以下の3つに分類され、それぞれに異なった制限があります。いずれも従業員給与とは違い、簡単に増額や減額ができません。自由に増額や減額がなされると、会社の利益を操作できてしまい、適切・公平な課税が担保されないからです。結果として、一定の要件を満たさない場合は損金算入できません(費用として認められません)。 ここから、上記の3つ「定期同額給与」「事前確定届出給与」「業績連動給与」を詳しくみていきます。 ① 定期同額給与 一般的に、「定期同額給与」は月々に支払われる給与を指します。税務上「支給額が同額であるもの」と規定されているところがポイントです。つまり、毎月同額であれば損金として認められます。 具体的には、決算を締める段階で、その年度の利益が大きかったため期中の役員給与を増額して利益を圧縮すること。逆に、利益が少なかったため、給与を減額して利益を増大させること。これらは双方とも認められません。いずれも増額又は減額した差額について損金不算入となります。以下に、12月が決算の会社である場合の具体例を挙げます。 ケースA 期中で役員給与を増額した場合 ⇒12月に計上した100万円のうち、増額した30万円は損金不算入 ケースB 期中で役員給与を減額した場合 ⇒減額した差額が損金不算入(210万円=30万円×7か月) 基本的に、役員給与の増減は上記のルールにより制限を受けます。しかし、やむを得ない事情により報酬金額を改める必要があるような状況も想定されます。そのため、臨時改訂事由と業績悪化改訂事由のいずれかに該当すれば、金額に変動があった場合にも全額損金算入できます。 臨時改訂事由は以下の3通りです。 役員の職務上の地位を変更した場合 役員の職務内容を変更した場合 上記に類するもの そして、業績悪化改訂事由は以下の4通りです。 株主との関係上、業績や財務状況の悪化について、役員としての経営上の責任から役員給与の額を減額せざるを得ない場合 取引銀行との間で行われる借入金返済のリスケジュールの協議において、役員給与の額を減額せざるを得ない場合 業績や財務状況又は資金繰りが悪化したため、取引先等の利害関係者からの信用を維持 確保する必要性から、経営状況の改善を図るための計画が策定され、これに役員給与の額の減額が盛り込まれた場合 これらの事由がなく報酬額を変更するには届出が必要です。税務上、「定期同額給与」の変更は事業年度開始の日から3か月以内となります。また会社法上、定款に取締役の報酬に関する定めがない場合、報酬を変更するには株主総会決議が求められます。そのため、多くの会社では定期株主総会(3月決算会社であれば6月末までに開催)で取締役報酬の改定を行っています。 ② 事前確定届出給与 一般的に、「事前確定届出給与」はボーナスを指します。「事前確定届出給与」はその名の通り、事前に賞与の支給日と支給額を株主総会で決議し、それから1か月以内、もしくは事業年度の開始日から4か月以内に税務署に届出が必要です。届出と支給実態が異なる場合は全額損金不算入となります。 ③ 業績連動給与 「業績連動給与」は、利益や株価等の指標を基礎に算定される給与です。ただし、これを損金算入するにはまず、非同族会社かつ有価証券報告書提出会社でなければなりません。「業績連動給与」は金額が固定されておらず、利益操作に用いられやすい性質があるため、損金算入のためのハードルが高くなっています。したがって、中小企業では導入している事例は少なく、「定期同額給与」と「事前確定届出給与」がメインであると思われます。 3. おわりに 今回は役員給与について解説しました。役員報酬は従業員と異なり、税務上さまざまな制約があります。また、会社の財政上適切な金額であるか、株主や社員の同意を得られる金額であるか、といった観点も考慮しなければなりません。そのため、月々の給与や賞与の金額を変更する際は計画的に進めていく必要があります。 役員報酬にしても従業員給与にしても、生活上給与は必要です。その給与についてどういった制度と調整の下で手取り額が算定されているかなど、会社視点・従業員視点の双方から考えてみると、意外な視点を得るきっかけになるかもしれません。
- [自社が免税事業者を維持している場合と取引先が免税事業者の場合におけるインボイス制度の影響と留意点](https://shiodome.co.jp/column/19040/) - 1. はじめに インボイス制度を理由とした不用意な値下げ交渉などは、自社が課税業者の場合、独占禁止法や下請法等の違反になる可能性があります。今回のコラムでは、どのような場合にインボイス制度の影響が出るかを解説します。 2. 免税事業者を維持しても影響がない場合とは? まず、自社が免税事業者を維持している場合、消費税を受け取っても納税する必要がなく、少ない納税額で済みます。一方で、取引先に影響が出ると、取引を再考される恐れが生じます。そこで、取引先がどのような場合には影響が出ないのか確認します。 ケースA 消費者 自社の取引先が消費者である場合、消費者は仕入税額控除が不要なため、適格請求書を必要とせず、消費者には影響はありません。 ケースB 免税事業者 自社の取引先が免税事業者である場合は、ケースAと同様の理由で影響はありません。 ケースC 簡易課税制度を選択している課税事業者 自社の取引先が課税事業者で簡易課税制度を選択している場合は、みなし仕入率で消費税納税額を算出するため適格請求書が必要ありません。 上記の3ケースであれば、免税事業者から適格請求書発行業者(課税業者)に変更するメリットはありません。 3. 免税事業者から仕入を行う側が気をつけること 対して、免税事業者から仕入を行っている会社側への影響に言及します。インボイス制度が導入されれば、適格請求書を発行できない免税事業者からの仕入は仕入税額控除を適用できないため、消費税の納税額が増額します。 その影響を考慮して設けられた経過措置があります。具体的には、免税事業者からの仕入れも、制度実施後3年間は消費税相当額の8割、その後の3年間は5割の仕入税額控除を可能とする措置です。現状、2029年10月1日以降、免税事業者からの仕入税額控除が全くできなくなる見込みです。 4. 独占禁止法・下請法上気をつけること 上記のように経過措置がありますが、事実として課税事業者にとって経済的負担の増加があります。そのため、取引先が免税事業者であることを理由に取引条件を見直す必要性が生じます。その必要性が直ちに問題になるわけではありませんが、免税事業者は小規模事業者であるケースがほとんどであり、取引条件の交渉において弱い立場にあることも多々あります。 自己の取引上の地位が相手方に優越している一方の当事者が、取引の相手方に対し、その地位を利用して、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることは、「優越的地位の濫用」として、独占禁止法や下請法上の問題となるおそれがあります。この場合は、下記の6点に留意して取引条件の見直しを行わなければなりません。 1. 取引対価の引下げ 仕入税額控除できないことを理由に優越した立場にある事業者(買手)が取引価格の引下げを要請したとします。この場合、再交渉し双方納得の上で取引価格を設定すれば問題ありません。 しかし、再交渉が形式的なものに過ぎず、優越した立場にある事業者(買手)の都合のみで著しく低い価格を設定し、免税事業者が負担していた消費税額も払えないような価格を設定した場合には、独占禁止法上問題となります。 2. 商品・役務の成果物の受領拒否等 優越した立場にある事業者(買手)が仕入先から商品を購入する契約をしたとします。その後、仕入先が適格請求書発行業者でないことを理由に商品の受領を拒否した場合は問題となります。 3. 協賛金等の負担の要請等 優越した立場にある事業者(買手)が免税事業者に対し、取引価格を据置く代わりに、別途、協賛金や販売促進費といった名目で金銭の負担を要請したとします。当該負担の算定根拠等が明確でなく、仕入先にあらかじめ計算できない不利益を与えるようなものである場合は問題になります。 4. 購入・利用強制 優越した立場にある事業者(買手)が免税事業者に対し、取引価格を据置く代わりに、当該取引に係る商品・役務以外の商品・役務の購入を要請したとします。その仕入先が事業遂行上必要としない商品・役務であり、又はその購入を希望していない場合は問題となります。 5. 取引の停止 事業者はどの事業者と取引しても基本的に自由です。しかし、優越した立場にある事業者(買手)が、インボイス制度の実施を契機として、免税事業者である仕入先に対して、一方的に、免税事業者が負担していた消費税額も払えないような価格など著しく低い取引価格を設定するなどしたとします。そして、これに応じない相手方との取引を停止した場合には、独占禁止法上問題となるおそれがあります。 6. 登録事業者となるような慫慂(しょうよう)等 取引先の免税事業者に対し、課税事業者になるよう要請すること自体は、独占禁止法上問題ありません。しかし、課税事業者にならなければ、取引価格を引き下げるとか、それにも応じなければ取引を打ち切ることにするなどと一方的に通告することは、独占禁止法上又は下請法上、問題となるおそれがあります。 また、課税事業者となるに際し、例えば、消費税の適正な転嫁分の取引価格への反映の必要性について、価格の交渉の場において明示的に協議することなく、従来どおりに取引価格を据え置く場合についても同様です。この点、もう少し具体的に解説します。 優越した立場にある事業者(買手)Aが仕入税額控除を行うために取引先の免税事業者Bに適格請求書発行業者になるよう要求したとし、以下の状況になったと仮定します。 Bが課税事業者に転換し、適格請求書発行事業者となる⇒ BはAに対して消費税額の転嫁分の価格交渉を依頼⇒ Aは協議をおこなうことなく拒否し、価格据え置き 上記の場合、Bは課税業者になったにもかかわらず消費税分を請求額に転嫁しないと手取金額が減少します。Aが協議せずに優越した立場を利用して価格を据置かせたのであれば下請法の「買いたたき」に該当する可能性があります。 5. おわりに 今回はインボイス制度の注意点を解説しました。自社が免税事業者であり続ける場合でも、取引先に影響がないかについての理解が重要です。また、インボイス制度導入前から課税事業者である場合でも、取引先に免税事業者がいる場合はその取引条件の交渉の仕方に留意が必要です。 免税事業者は小規模なケースがほとんどであり、取引条件を決める際も一般的に不利な立場ですが、それを双方が理解した上で交渉されるのが理想的です。現実的には難しいこともありますが、今回ご紹介した法制度の存在も理解した上で、フェアな取引を心がけてください。 ※独占禁止法・下請法に抵触する2条件 (値下げ交渉を行う)行為者の地位が相手方に優越していること 免税事業者が今後の取引に与える影響等を懸念して、行為者による要請等を受け入れざるを得ないこと
- [固定資産管理の対象とメリット~固定資産台帳と実際の資産と会計システム間の不一致を防止する為の具体的な管理の流れ~](https://shiodome.co.jp/column/19034/) - 1. はじめに 固定資産管理のメリットや実際の流れを、今回のコラムではご紹介します。実務では、固定資産管理専用のソフトを使用して固定資産管理されている事業者が多いですが、Excelファイルなどを使用して手動で管理されている場合もあります。 Excelで手計算を行っている場合は、固定資産管理において重要になる償却計算が複雑な為、人為的ミスの発生可能性が高くなります。一方で、固定資産管理の専用ソフトを使用する場合は、より正確な償却計算が可能ですが、ソフトで作成された固定資産台帳と会計帳簿の数値の不整合がよく見受けられます。これらの問題に対処するためにも、固定資産管理のメリットと流れを押さえていきます。 2. 固定資産とは? 会計上、固定資産は「有形固定資産」「無形固定資産」「投資その他の資産」の3つに分類されます。 「有形固定資産」とは、形のある資産です。例:建物、土地、機械設備、什器、パソコン、社用車 一方で、形のない資産は「無形固定資産」に分類されます。例:ソフトウェア(自社利用・販売目的含む)、営業権、特許権 それ以外の分類として「投資その他の資産」があります。例:投資有価証券、長期貸付金、関係会社株式、長期前払費用、繰延税金資産 主な固定資産管理の対象は有形固定資産と無形固定資産です。 3. 固定資産管理のメリット 固定資産管理のメリットを4つ紹介します。 i) 適正な会計管理の達成 土地以外の有形固定資産はほぼ償却計算されます。多くの場合、固定資産に一時に多額の投資(購入)をしたとしても、投資の効果をその会計期間の売上のみに期待しているわけではありません。会計上、投資額を利用期間で按分して費用化して初めて会社の売上と費用(減価償却費)を期間対応させることができます。 また、多額の固定資産を一括で費用化出来てしまうと利益圧縮が可能となり、適切な納税も担保されません。したがって、税務上も、適切な期間での費用按分による正確な納税額の算定が求められます。 ii) 適正な固定資産税の算定 建物や土地に固定資産税が課されます。一方で、機械や装置などの固定資産には償却資産税が課されます。以前に購入して保有し続けている一方で不使用である資産の償却資産税を、そのまま払い続けているケースがあります。この場合、不使用の資産を把握・処分することで納税額を適正化できます。 iii) 経費の削減 近年、ソフトウェア等のサービスを一度契約して、その後自動更新し続けているというケースが増えています。サブスクのような買い切りでないソフトウェアを一時期使用し、その後未使用になっているなどして似たようなサービスを重複して契約している事例が多く見受けられます。こうした不要な支払いをしないためにも、契約などの整理がおすすめです。 iv) 滅失の回避 固定資産の滅失・盗難にあっても気づけない場合があります。特に見えづらいのは、償却が終わった資産などです。思わぬ事故を防ぐためにも、適切な頻度で管理を行う必要があります。 4. 固定資産管理の一連の流れ ここからは、固定資産管理の一般的な流れを5つに分けてご紹介します。 (1)新規取得した固定資産の登録 会計処理や実際の資産の確認で必要となる以下の情報を、稟議書や請求書に基づき固定資産台帳システムに登録。※システム不使用の場合はExcelに記載 資産名 資産コード 取得年月日 事業供用年月日 設置場所 管理部門 取得価額 数量 償却方法 耐用年数 また、事業供用年月日と取得価額に基づき、会計システムにも取得の仕訳を入力。 (2)ラベル貼付 該当の固定資産を識別するため、固定資産台帳の資産コードが記載されたラベルを現物に貼付。 (3)除却・売却の登録 除却があった場合、稟議書などに基づき固定資産台帳システムに除却年月日を登録。除却までの償却計算を確認、除却に要した費用を加味し、会計上の除却損益(売却損益)を算定。会計システムにも仕訳を起票。起票の都度登録、または決算整理仕訳として登録。 (4)固定資産実査(棚卸)の実施 通常年に1〜2回、固定資産台帳と実際の資産の状態を照合。 –照合のポイント– 現場の判断で不要になった資産が勝手に処分されていないか 把握していない新しい備品が購入されていないか 遊休資産はないか 壊れているなど稼働できない資産はないか 固定資産台帳と実際の資産の状態に違いがないか調査の上、固定資産台帳システムに登録。例:勝手に処分されていた資産などがあれば除却。
- [送金の方向別手数料発生タイミング別の海外送金の手数料と時間の目安](https://shiodome.co.jp/column/7750/) - 1. 海外送金にかかる手数料 日本から海外への送金、または海外から日本への送金の業務を行うのは政府ではなく、それぞれが利用する銀行です。銀行が業務として送金を行う以上、手数料が発生します。 そして、この手数料はある程度は銀行ごとに決められています。日本の銀行から海外の銀行へ送金を行う場合は、楽天銀行は750円、ゆうちょ銀行は3,000円、三菱UFJ銀行は最低2,500円、新生銀行は最低2,000円、三井住友銀行は最低3,000円、ソニー銀行は3,000円、みずほ銀行は最低1,500円、りそな銀行は最低2,000円と、定められています。 また、送金を行う人の中には海外に行って、お金を送金した銀行からお金を受け取ることになる方もいらっしゃるかと思いますが、その際にももちろん、受け取り側の銀行からも手数料を取られます。一般的にその手数料の金額は10ドル~30ドルと言われています。 日本からお金を送るだけでも、大手の銀行を利用すればかなりのお金がかかってしまうのに、受け取るのにもまたお金がかかると考えると、手数料だけでも相当な値段です。ですが、中には口座を持っていると直接送金が可能なために、手数料が変わるような場合もありますし、銀行によって変わるのは手数料の値段だけではなく、送金にかかる時間も変わりますので、手数料だけで決めるというのは焦り過ぎた判断になることもあります。 海外から日本に送金をする場合ですが、こちらも銀行によって違います。手数料の相場は大体50から70ドルと言われています。 また、こちらの場合でも受け取りの際に手数料が掛かるものもあります。三菱UFJ銀行は2,500円、みずほ銀行は最低1,500円などかかります。中には受け取り手数料がない銀行もあります。 また、中継銀行などを経て指定の口座へ送金がなされるような場合には、中継の際の手数料として10ドルから30ドルほどの料金がかかります。そのような中継銀行の手数料は、送金料金などから自動的に差し引かれることがありますので、料金が減っていたとしたら、中継手数料が掛かったということになります。 2. 送金にかかる時間について 送金にかかる時間も、前述した通り銀行ごとに変わりますが、それだけではなく、送金をする銀行がどの国かによっても変わります。だいたい全ての銀行では1日から14日、最低でも2週間以内には送金が完了される場合が多いです。
- [外形標準課税の導入経緯と算出方法の詳細・対象法人について](https://shiodome.co.jp/column/12302/) - 外形標準課税は、要件を満たした企業に対して課税される法人事業税です。本記事では、外形標準課税について詳しく説明すると共に、課税額の算出方法等について紹介します。 1. 外形標準課税とは? 外形標準課税は、原則資本金が1億円を超える法人に対し、「付加価値割」及び「資本割」という外形基準によって法人事業税を課税する制度を指します。法人事業税は「所得割」「付加価値割」「資本割」の3つからなりますが、そのうちの付加価値割および資本割の部分は法人の所得以外を課税標準として課税されます。地方税法の改正により、平成16年4月1日以後に開始する事業年度から取扱いが開始されました。 外形標準税導入の経緯 以前の法人事業税は原則として法人の所得のみでした。よって、どんな大企業であったとしても、赤字であった場合には事業税の支払いが免除され、これが度々問題になることがありました。企業は活動を行うにあたり、地方自治体から様々な公共・行政サービスを享受しています。たとえ事業が赤字だったとしても、企業は地方行政からサービスを受けていることに変わりはありません。外形標準課税を設定することで、公共・行政サービスを享受する企業から確実に税を回収できるように変更することになりました。 付加価値割について 付加価値割の課税標準は「付加価値額」=「収益配分額」±「単年度損益」です。「収益配分額」とは「報酬給与額(給与・賞与・手当・退職金等の合計額)」、「純支払利子(支払利子から受取利子を差し引いた額)」、「純支払賃借料(支払賃借料から受取賃借料を差し引いた額)」の合計で計算されます。単年度損益に欠損金が生じた場合は「収益配分額」から「単年度損益」を差し引きます。 資本割について 資本割の課税標準は「資本金等の額」です。「資本金等の額」とは、法人税法に規定する資本金等の額(又は連結個別資本金等の額)に無償増減資がある場合の加減算をした金額と、資本金及び資本準備金の合算額又は出資金の金額とを比較して大きい金額をいいます。よって一般に「資本金」及び「資本準備金」に組織再編等、自己株式取得、資本の払戻し等の一定の調整を行った金額と考えられます。 外形標準課税の対象法人 外形標準課税の対象法人は、所得に課税される法人で事業年度終了の日における資本金の額又は出資金の額が1億円を超える法人です。ただし、公共法人等、特別法人、人格のない社団等、みなし課税法人、投資法人、特定目的会社、一般社団法人及び一般財団法人は課税対象ではありません。 中間申告について 外形標準課税の対象法人は、法人税において中間申告義務がなくとも、事業年度の期間が6月を超えるときは法人事業税について中間申告を行う義務を負います。予定申告又は仮決算に基づく中間申告のどちらかの方法によって実施します。連結法人については予定申告のみ利用可能です。 2. おわりに 本記事では、外形標準課税について紹介しました。導入の経緯を理解すると共に、申告漏れがないように正しく報告しましょう。もし税制等に関してお困りでしたら、弊社までお気軽にお問い合わせください。あなたの悩みをしっかりとヒアリングした後、最適なサービスを提供させていただきます。
- [「グループ通算制度」活用サービスQ&A:具体的な導入スケジュールと検討課題](https://shiodome.co.jp/column/13626/) - クライアント様から頻繁にいただくグループ通算制度関連の質問をまとめました。グループ通算制度に興味のある方の一助になれば幸いです。 Q. グループ通算制度導入のメリットは何ですか? A. 最も大きなメリットとしては、連結グループ内に赤字法人と黒字法人が混在する場合、各会社間の課税所得を損益通算することが可能となる点です。 Q. 具体的にどのようなスケジュールでグループ通算制度の導入をしていくのですか? A. 2~3年程度の導入期間において詳細なスケジューリングを立て導入していきます。RSM汐留パートナーズでは例えば以下のような月次ベースのスケジュールをご提案させていただいております。 Q. RSM汐留パートナーズは、グループ通算制度活用に関連する実績が豊富ですか? A. グループ通算制度を導入している企業はまだ決して多くはありませんが、RSM汐留パートナーズでは上場会社をはじめとしたお客様のグループ通算制度導入の実績が多数ございます。以下のような会社のサポートを実施いたしました。 Q. グループ通算制度導入に当たって検討すべき課題は何ですか? A. 費用対効果、実務上の負担及び早期決算対応についての検討は必須です。 (1)費用対効果(コスト・ベネフィット) グループ通算制度導入による税負担減少額(ベネフィット)の測定 グループ通算制度導入による費用負担増加額(コスト)の測定 (2)実務上の負担及び早期決算対応 連結申告作業の担当の決定 連結申告作業の具体的方法の決定 各法人で用意すべき情報のリストアップ 時価評価法人の準備 四半期決算ごとのスケジュール Q. RSM汐留パートナーズ税理士法人の強みは何ですか? A. 「作業代行も可能」、「圧倒的なコストパフォーマンス」、「IFRS対応」です。 (1)急を要する場合にも作業補助・代行(アウトソーシング)が可能 時間が限られた四半期・本決算業務に対してもフレキシブルにご対応可能です。人手不足の場合には、作業補助・代行まで含めてご支援が可能です。 (2)圧倒的なコストパフォーマンス 少数精鋭のコンサルタントによるご支援のため、無駄な固定費をかけず、圧倒的なコストパフォーマンスを維持しております。 (3)IFRSへの対応を視野に入れた税務サービスが可能 税理士が公認会計士の資格を有しており、また、IFRSのセミナー等の開催、執筆に力を入れており、今後のIFRS対応まで視野に入れた税務サービスのご支援が可能です。
- [グループ通算制度導入の背景及び導入のメリット・デメリット](https://shiodome.co.jp/column/13625/) - 「グループ通算制度」とは、完全支配関係にある企業グループ内の各法人を納税単位として、各法人が個別に法人税額の計算および申告を行い、その中で、損益通算等の調整を行う制度です。 ※これまでは「連結納税制度」と呼ばれていましたが、2020年の税制改正により「グループ通算制度」に改められました。2022年4月1日以後開始する事業年度から適用されることになっています。 ※グループ通算制度は、国税の申告・納付にだけ採用が認められる制度であり、地方税(住民税・事業税)の申告・納付は、各法人ごとに行います。 1. グループ通算制度導入の背景および趣旨 【導入】 我が国の法人税法は、従来独立した個々の法人ごとに申告、納付する単体納税制度を採用してきましたが、近年の経済情勢の変化を踏まえ、主要先進国が既に導入している連結納税制度を平成14年8月の税制改正により創設しました。 【グループ通算制度の導入により期待できること】 企業グループを一体として考えることにより、実態に合った適切な課税が可能 組織再編成を促進することが可能 国内企業の競争力を強化 2. 申告及び納税の流れ 【申告・納付】 グループ内の各法人が個別に法人税額の申告・納付を行います。 3. グループ通算制度導入のメリット・デメリット グループ通算制度導入のメリット・デメリットとして以下があげられます。 【メリット】 通算グループ内に赤字法人と黒字法人が混在する場合、各会社間の課税所得を損益通算することが可能です。 含み損のある時価評価対象資産を保有する場合には、課税所得と相殺することが可能です(一部対象外)。 赤字法人であってもグループ内に黒字法人がある場合に、将来減算一時差異等のうち法人税相当分について繰延税金資産を計上することができる可能性が増えます。 通算親法人の繰越欠損金の期限切れ(最長9年)への対応策となりえます。 【デメリット】 子会社に関して、中小企業の特例等(交際費の損金不算入制度・貸倒引当金の法定繰入率・欠損金の繰戻し還付制度)は、通算グループ内に中小法人でない法人がいる場合は使用できなくなります。 一般的には、連結親法人の税務担当者の負担が増加します。
- [「連結納税制度」から新制度「グループ通算制度」へ移行した背景と双方の相違点](https://shiodome.co.jp/column/7541/) - 令和2年3月に交付された「所得税法等の一部を改正する法律(令和2年法律第8号)」において、これまで実施されてきた「連結納税制度」を見直し、グループ通算制度に移行することが決まりました。令和4年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。 本記事では、グループ通算制度になった背景やグループ通算制度の概要等について詳しく説明します。 1. 連結納税制度からグループ通算制度へ 令和4年4月1日以後に開始する事業年度より、連結納税制度ではなく、グループ通算制度が適用されます。これまで連結納税制度を活用していた方、もしくは今後連結納税制度を利用しようとしていた方は、グループ通算制度について理解を深める必要があります。 ただし、名前が変わったからといって制度の中身が大きく変わったわけではありませんので安心してください。 2. グループ通算制度移行の背景とは? そもそも連結納税制度とは、平成14年に創設された制度で、グループ全体の損益を通算することで納税額の削減ができるというものでした。しかしながら複雑な手続きが必要となることから、利用している企業は有価証券報告書提出会社のうち約2割にとどまっています。 この現状を改善するべく打ち出された制度がグループ通算制度です。グループ通算制度は、連結納税の損益通算という目的は維持しつつ、複雑な手続きを除外したものです。そのため、しっかりと理解して利用すれば、連結納税制度と同様のメリットを、以前よりも簡単に受けられます。そのため、しっかりと理解し、積極的に活用していくことをおすすめします。 3. グループ通算制度の概要 まずグループ通算制度の基本として、すでに連結納税制度を利用している企業では、令和4年4月1日以降に、自動的にグループ通算制度に移行されます。もし連結納税制度を維持したい場合は特別の手続きが必要になるため注意してください。 グループ通算制度の適用範囲や各種条件は以下の通りです。連結納税制度の条件についても同様に記載します。 納税主体については、連結納税制度では親法人への負担が大きくなっていましたが、グループ通算制度では親会社と子会社がそれぞれ納税主体となります。親会社の負担は少し減りますが、その分子会社もグループ通算制度について理解を深める必要があります。 開始/加入時の時価評価・繰り越し欠損金については、グループ通算制度でも大枠としての仕組みは残ります。ただし、時価評価対象となる法人は以前より限定的になったといえます。 損益通算は、今回の制度移行を受けて大きく変更されました。連結納税制度では個別に計算された所得金額を合算する方法で連結所得金額が算出されていましたが、グループ通算制度では欠損金額を所得法人の所得金額に応じて配賦する方式がとられています。 4. おわりに 連結納税制度は手続きが複雑であるため、事務等のコストを考えた上で採用を断念していた企業も多いと思います。しかし、今回グループ通算制度に移行したことで、より多くの企業が導入しやすくなりました。 とはいえ、グループ通算制度を適切に運用するためには専門的な知識が必要です。もしグループ通算制度の利用に関してお困りでしたら、弊社までお気軽にお問い合わせください。
- [納税管理人としての事例:日本に恒久的施設(PE)を持たない外国法人の納税の要否](https://shiodome.co.jp/column/7734/) - 本日は、RSM汐留パートナーズ税理士法人が納税管理人を務めさせていただいている外国法人の事例をご紹介いたします。 1. 日本に進出した大手自動車部品メーカー(ドイツ法人) RSM汐留パートナーズ税理士法人は、外国法人である大手自動車部品メーカー(ドイツ法人)の納税管理人に選任していただいております。 こちらのクライアントは、ドイツ法人ですが日本には子会社や支店がありません。そのため、恒久的施設(PE)を持たない外国法人となります。そのため法人税や法人住民税・事業税は納税義務はありません。 しかしながら、日本で消費税法に規定する国内取引が発生しているため、消費税の納税義務が生じています。したがって、毎年会計帳簿を作成して、消費税申告書を作成・提出し、消費税の納付を行う必要があります。 2. 日本に進出した航空会社(中国法人) RSM汐留パートナーズ税理士法人は、外国法人である大手航空会社(中国法人)の納税管理人に選任していただいております。 こちらのクライアントは、中国法人ですが日本には子会社や支店がありません。日本には法律的な拠点がないものの、飛行機が日本に就航しております。 当該航空会社は、恒久的施設(PE)を持たない外国法人となりまして、そのため大手自動車部品メーカー(ドイツ法人)と同様に、先ほどの法人税や法人住民税・事業税は納税義務がないのですが、日本で消費税法に規定する国内取引が発生しているため、消費税の申告義務が生じています。 当該航空会社は、日本国内で経費の支払い等が発生しており、仕入れ税額控除が取れますので、毎期消費税が還付申告となります。毎年会計帳簿を作成して、消費税申告書を作成・提出し、消費税の還付請求を行う必要があります。 3. ご提供させていただいているサービス (1)納税管理人業務 非居住者である外国法人は、様式通達第9号様式を提出し納税管理人を選任する必要があります。RSM汐留パートナーズ税理士法人では消費税の納税管理人を担当させていただいております。基本的には毎年1年ごとの契約をさせていただいております。(参考)国税庁ホームページ「非居住者である外国法人に係る申告手続等の方法」 (2)外国語対応業務 お客様からのご質問等に対して、英語又は中国語でのご質問に直接ご対応しております。日本にPEがないお客様は、日本語ができるスタッフを抱えていないケースがとても多く、弊事務所のバイリンガルスタッフが外国語にて外国法人のサポートをさせていただいております。 (3)消費税申告関連業務 消費税の申告にあたって必要な会計帳簿の作成と消費税申告書を作成しております。消費税の納付となるか、還付となるか、その時の状況によりまちまちですが、会計帳簿が適正な税務申告の基礎となりますため、とても重要な業務です。英語による帳簿作成も行っています。 (4)税金納付・還付代行業務 消費税の納付・還付代理業務を行っております。消費税の納付が必要な場合には、お客様からいったん弊事務所の日本の銀行口座に海外送金でご入金をしていただき、納税を行います。還付となる場合には、いったん弊事務所の日本の銀行口座に税務当局から還付をしていただき、海外送金でお客様の海外銀行口座へお振込みいたします。 このように、RSM汐留パートナーズ税理士法人では外国法人・外資系企業の経理部門向けに納税管理人をはじめとしたさまざまな税務や経理サポートを行っております。どうぞお気軽にお問い合わせください。
- [仮想通貨に対する出国税課税の当否と租税回避の可能性の指摘](https://shiodome.co.jp/column/7729/) - 本日は、仮想通貨と出国税の関係について解説させていただきます。※この記事は2023年10月1日時点の情報に基づいています。 1. 仮想通貨とは? 仮想通貨とは、暗号通貨ともいい、法定通貨に対する言葉です。法定通貨とは違い国家による価値の保証を持っていない通貨ですが、インターネット等を通じて物品やサービスの対価の支払いに使用できる通貨です。 もっとも有名なものはビットコイン(Bitcoin)ですが、その他、イーサリアム(ETH)、リップル(Ripple)、ネム(NEM)、イーサリアムクラシック(Ethereum Classic)、ライトコイン(Litecoin)、ダッシュ(DASH)、モネロ(Monero)、ジーキャッシュ(Zcash)、オーガー(Augur)、リスク(Lisk)、ビットコインキャッシュ(Bitcoin Cash) などのアルトコインと呼ばれる多数の仮想通貨が取引されています。 金融庁はビットコイン等の仮想通貨を支払手段として認めてはいますが、仮想通貨は税務上はまだ通貨とはされていません。すなわち「モノ」という扱いです。 2. 出国税(国外転出時課税制度)の対象となる資産は? 出国税(国外転出時課税制度)の対象となる資産は以下のとおりです。 以下の対象資産の価格などの合計額が1億円以上であること(時価ベース)(a)国外転出時に保有している所得税法に規定する有価証券、匿名組合契約出資金の価格(b)国外転出時に契約している未決済デリバティブ取引などのみなし決済損益の金額 これを見る限りは、仮想通貨は出国税の対象となる資産ではないことがわかります。今後税制改正により、出国税の対象となる可能性はありますが、現時点では仮想通貨の含み益に対して出国税が課税されることはないと言えます。 したがって、今日本を出国して日本の非居住者になれば、すなわち海外に移住すれば、ビットコイン等の仮想通貨の含み益に対して出国税はかからないこととなります。 3. キャピタルゲイン課税がない国での仮想通貨の売却 海外には、シンガポールや香港のように、金融資産の売却損益(キャピタルゲイン)に対する税金が非課税である国もあります。 もし仮想通貨の売却損益に対する課税がない国に移住して、仮想通貨を売却し利益確定すれば税金はかからないことになります。ただし、移住先の国で仮想通貨がどのように取り扱われるかについては移住前に調査が必要です。 なお、一時的に日本を出て海外に行き、そこで仮想通貨を売却したとしても、日本居住者のままであるとみなされるケースがあるので注意が必要です。ご自身の生活の拠点が日本と海外のどちらにあるのかなど日本居住・非居住の判断は総合的なものとなるためです。安易な渡航と渡航後の売却は租税回避とみなされてしまう可能性が高いので注意が必要です。
- [日本国外に転出する際に課せられる出国税(国外転出時課税制度)の概要と納税猶予制度](https://shiodome.co.jp/column/7730/) - 正式には「国外転出時課税制度」といい、既に2015年度の税制改正において導入され、2015年7月1日から適用されています。国外に転出する1億円以上の株式などを有する資産家などを対象に、その含み益に対して所得税を課税するという制度です。 改正以前は租税条約上、一定の場合を除き、株式などを売却して得られた利益に対する課税権は売却した者が居住している国にあるとされていました。そのため、大きな株式などの含み益を有する個人がシンガポールや香港などの非課税国に出国し、その後に株式などを売却することで課税を逃れるケースが多々あり、このような租税回避行為は問題視されていました。 1. 「国外転出時課税制度」の概要 ① 課税対象となる場合 日本居住者である個人が国外転出する場合のほか、贈与・相続・遺贈により含み益を有している株式などを日本非居住者に譲渡させた場合も含まれます。 ここでいう国外転出とは、日本国内に住所及び居住がないことを指し、上記の場合は株式などにかかる未実現の含み益が実現したとみなされるため、所得税及び復興特別所得税の課税の対象となります。(贈与の場合は、贈与時の価格で売却したものとして含み益を計算して確定申告を行い、相続の場合は、亡くなった人の所得について相続人が準確定申告を行います。) ② 課税される適用対象者 国外に転出する日本居住者が、以下2つの要件を満たす場合には出国税の適用対象者となります。 a) 以下の対象資産の価格などの合計額が1億円以上であること(時価ベース)・国外転出時に保有している所得税法に規定する有価証券、匿名組合契約出資金の価格・国外転出時に契約している未決済デリバティブ取引などのみなし決済損益の金額 b) 国外転出の日の前10年以内に、国内に住所などを有していた期間の合計が5年間であること ③ 出国税の税率 出国税として適用されるのは原則として15.315%(所得税及び復興特別所得税)となっています。なお、住民税の5%については翌年1月1日時点で日本国内に住所を有していないため課税されません。 ④ 出国税の申告・納付手続き 株式などの未実現利益(含み益)の譲渡所得などに対する申告及び納税は、国外転出する日までに納税管理人(詳しくは「納税管理人とは?」をご覧ください)を選任して届出を提出している場合と、そうでない場合とで異なります。 a) 納税管理人の届出がある場合 申告期限は翌年の確定申告期限である3月15日までとなります。納付期限についても通常は3月15日までとなりますが、担保提供を行う場合など納税猶予の適用を受けることも可能です。 b) 納税管理人の届出がない場合 申告期限は国外転出日となり、納付期限においても同様です。 2. 出国税の猶予と納税管理人の選任 出国税の課税対象となる場合、所得税の確定申告などの手続きを行う必要がありますが、上記で軽く触れさせていただいたように、一定の要件のもとで納税猶予制度や税額の減額などの措置を受けることができます。 様々な減額措置がありますが、いずれの措置を受ける場合も、国外転出までに「納税管理人」を選出すること、所轄税務署へ届出書の提出をすることが必須となっています。以下、特に重要な出国税の猶予についてご紹介させていただきます。 ① 出国税の納税猶予 以下3つの要件を全て満たした場合に限り、出国税の納税猶予が認められます。通常は5年間、申請によってはさらに5年間延長することも可能で、最大で10年間の猶予が認められることになります。 a) 国外転出の日の属する年分の確定申告書に納税猶予を受けようとする旨の記載があり、納税猶予分の所得税額の掲載に関する明細などの添付があることb) その年分の確定申告書の申告期限までに猶予する所得税額に相当する担保を提供することc) 国外転出時までに納税管理人を選任して届出を行うこと ただし、納税猶予期間については利子税がかかるので注意が必要です。 ② 納税の猶予を受ける場合に猶予される金額 国外転出の日の属する年分の確定申告における所得税及び復興特別所得税の金額から、国外転出時課税制度の適用がないと仮定した場合において課される所得税及び復興特別所得税を控除した金額となっています。すなわち原則としては、出国税の全額について措置を受けることができるということです。 ③ 納税猶予における「継続適用届出書」 納税猶予を受けている方は、選任した納税管理人を通じて毎年12月31日(「基準日」といいます)時点の納税猶予にかかる対象資産に関する継続適用届出書を提出する必要があります。提出期限は基準日の翌年の確定申告期限である3月15日までとなっています。期限内に提出しなかった場合は、その4ヵ月後に納税猶予期間が終了してしまいます。
- [【国際課税Q&A】日本非居住者に対する翻訳料の源泉徴収の要否と著作権](https://shiodome.co.jp/column/19142/) - 1. 質問 ドイツ在住の非居住者に対して翻訳料を支払っている場合、当該翻訳料に源泉徴収は必要でしょうか。 2. 回答 PEがないことを前提として源泉徴収は不要と判断できます。 3. 根拠 1. 国内法による判定 翻訳料が、所得税法161条1項十一ロの「著作権の使用料又はその譲渡対価」に該当する場合は、国内源泉所得となり、国内法上、税率20.42%による源泉徴収が必要となります(所得税法164条12項二、212条1項、213条1項1号)。 一方、翻訳料が上記「著作権の使用料又はその譲渡対価」に該当せず、所得税法161条1項十二イの「人的役務の提供」に該当する場合、人的役務の提供に関しては、国内において行われたもののみが国内源泉所得として認められるため、ドイツ在住の非居住者が行う翻訳業務は国内にて行われていないことから、国内源泉所得には該当せず、日本での源泉徴収は不要となります。 以上より、国内法による判定上、翻訳料が所得税法161条1項十一ロの「著作権の使用料又はその譲渡対価」に該当するか否かが重要な判断ポイントになるといえます。 それゆえ、今回は最後のパートにて「著作権」に関して少し深堀りして見ていきます。 2. 租税条約による判定 国内法による判定で、翻訳料が「著作権の使用料又はその譲渡対価」に該当しない場合は、もとより国内源泉所得には該当せず、源泉徴収不要となることから租税条約による判定は不要となります。 一方、翻訳料が「著作権の使用料又はその譲渡対価」に該当する場合には、上述の通り、国内法上は税率20.42%の源泉徴収が必要となりますが、日独租税条約によって、以下の通り免税となるものと判断できます。 翻訳料を著作権の使用料によるものと考える場合、日独租税条約第12条(使用料)にて、著作権の使用の対価の支払を受ける者の居住地国(この場合ドイツ)においてのみ課税できる旨の記載があり、日本においては免税となります。 翻訳料を著作権の譲渡対価(翻訳物の譲渡対価)によるものと考える場合、日独租税条約第13条(譲渡収益)にて、居住者(この場合ドイツ)が財産の譲渡によって取得する収益については、日本での課税を免除する旨の記載があります。 以上より、ドイツ在住の非居住者に支払う翻訳料については、著作権の使用料又はその譲渡対価として、国内法で源泉徴収が必要と結論づけられても、日独租税条約により最終的に免税措置が講ぜられ、源泉徴収は不要と判断できます。 なお、免税措置の適用については、所定の手続きが必要となる点に留意が必要です。 4. 【参考】著作権について 1. 国内源泉所得としての著作権使用料又はその譲渡対価 所得税法第161条1項十一ロでは、国内において業務を行う者から受ける著作権(出版権及び著作隣接権その他これに準ずるものを含む)の使用料又はその譲渡に係る対価で当該業務に係るものは、国内源泉所得に該当する旨を規定しています。 ここでいう「著作権」については、所得税法等の租税法規において特に定義されていないことから、著作権法に規定する著作権(出版権及び著作隣接権を含む)を指すものと解されています。 2. 著作権法にて規定する著作権 著作権法2条1項1号にて、著作物とは「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」とされています。著作物の例としては、著作権法10条1項にて以下のように示されており、「事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道」は、著作物に該当しないものとされています(著作権法10条2項)。 また、著作権法2条1項11号において、「著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案することにより創作した著作物」を二次的著作物として定義しており、翻訳物はこの「二次的著作物」に区分されるものといえます。よって翻訳対象が著作物である場合には、その翻訳物も二次的著作物として、著作物と判断することができるものと考えられます。 3. 著作権法上、保護を受ける著作物 著作権法第6条では、著作物は、次の①~③のいずれかに該当するものに限り、著作権法による保護を受けるとしています。 日本国民(わが国の法令に基づいて設立された法人及び国内に主たる事務所を有する法人を含む)の著作物 最初に国内において発行された著作物(最初に国外において発行されたが、その発行の日から30日以内に国内において発行されたものを含む) ①②のほか、条約によりわが国が保護の義務を負う著作物③に示される通り、著作物は、国境を越えて利用されることが多いため、世界各国で著作物を相互に保護するための国際条約が締結されています。以下のベルヌ条約もその1つです。 4. ベルヌ条約 文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約パリ改正条約(以下「ベルヌ条約」)の第1条では、「この条約が適用される国は、文学的及び美術的著作物に関する著作者の権利の保護のための同盟を形成する。」と規定されており、2023年2月末現在、179ヵ国が加入しており、日本は1899年より加入しています。 ベルヌ条約第5条(1)により、著作物が同盟国間で国境を越えて利用される場合でも著作物として保護されることが示されており、第5条(2)においては、著作物の使用に対する法律の適用に関して、例えば、日本の著作物が米国で利用される場合には米国の著作権法が適用され、逆に米国の著作物が日本で利用される場合には日本の著作権法が適用されるといった属地主義を用いることが示されています。 5. 著作権に関する判断 以上より、国外で生じた著作物に対しても、日本国内において使用される場合には、日本の著作権法が適用され保護対象となること、また、所得税法161条1項十一ロの「著作権の使用料又はその譲渡対価」における著作権の範囲は、租税条約上、著作権法上の著作権と異なる定義がない限り、著作権法の規定により判断するものと考えられます。 それゆえ、著作権法に規定する著作権に該当するか否かの判断にあたっては、弁護士等の専門家に相談しつつ対応していくことが必要と考えます。 国際税務Q&A_非居住者に対する翻訳料の源泉徴収の要否_20231004 (PDF)
- [納税管理人とは:役割及び依頼が必要となるケース並びに依頼の際に注意すべきポイント](https://shiodome.co.jp/column/7732/) - 本日は、納税管理人を依頼された場合の注意点についてご紹介させていただきます。 1. 納税管理人の役割とは? 長期の海外出張や海外への移住で日本を離れていても、日本に不動産があり、そこから収入が得られると、日本での所得税の納税義務が発生します。 不動産が無い場合でも、相続税や贈与税を納めなくてはいけないことが起きることもありえます。通常は手続きを行うために日本に帰国しなければいけないのですが、その手続きを代行してくれる人を指定することもできます。わかりやすく申しますとこれが納税管理人です。 納税管理人には税理士や弁護士だけでなく、そうした資格を持たない人も指定できるため、親族や友人に依頼するというケースも少なくありません。RSM汐留パートナーズ税理士法人でも納税管理人のお仕事をお受けしているのですが、まれにご自身で・・・という方もいらっしゃいますので、突然、納税管理人を依頼された時に困らないよういくつかの注意点をご説明できればと思います。 2. 基本的な決まりと注意点について 納税管理人が行うのは、依頼者(日本を離れた人)の確定申告書の提出と、税金の納付です。その他、税務署から送られてくる書類を受け取ったり、還付金を受け取ったりと、海外に住む依頼者の家のポストと日本の税務署をつなぐ役割も果たします。 ポイントは「提出と納付」という部分で、納税管理人には帳簿を確認したり、確定申告書を記入したりすることまでは求められていません。基本的には、確定申告書とその他の書類を受け取ったら依頼者の所に送り、その指示通りに提出や納税を行えば最低限は大丈夫です。 特に、納税管理人が税理士や弁護士でない場合は、それ以外の作業をいくら得意だから、報酬がもらえるからといって、積極的に行ってしまうと法律に触れてしまうため、注意する必要があります。また、依頼者が納税管理人を選任したことは、きちんと税務署に知らせなければいけません。 もし依頼者がこの手続きをせずに出国してしまった場合には、納税管理人が代わりに納税管理人選任の届出手続きをする必要があります。納税管理人の届け出を出国前にすませておけば「申告の期限が伸びる」というメリットも得られますので、できれば出国前にどちらかが手続きをしてしまうのがベストです。 3. その他個別に知っておきたいこと 「管理」という言葉はついていますが、仮に依頼者が納税を行わなかったとしても、納税管理人が「管理不行き届き」として罰を受けることはありませんのでご安心ください。 脱税の責任はあくまでも納税を行うべき依頼者にあり、借金の保証人のように連帯責任で税金を払わされたり、財産を差し押さえられたりすることはありません。一方、税務署が申告内容について調査を行う場合には、納税管理人は他人事として無視することはできません。 この時も、納税管理人が税務代理を認められていない一般の方(税理士ではない方)の場合は注意が必要です。税理士の資格を持たない方が依頼者の代理として税務署の調査に対応してしまうのも、やはり法律上問題があるためです。余計なトラブルを避けるべく、依頼者に一時帰国してもらうか、別途やはり税理士に相談した方が安心でしょう。
- [海外から日本への送金規制に係る留意点とその背景](https://shiodome.co.jp/column/7733/) - 本日は、RSM汐留パートナーズ税理士法人が納税管理人を務めさせていただいているお客様からよくご相談をいただく、海外から日本への送金規制についてご紹介いたします。納税管理人を設置して海外に赴任したり移住されたりする方、中には出国税を納付して海外に出られる方におきましても、引き続き日本と海外とで送金を行うことはよくありますので、とても重要な論点になります。 1. 一部の国は制限を設けている!? 中国やロシアのように海外に送金するときには特別な手続きを必要としている国があります。例えば、多額の送金をしようとすると、なぜこれだけ送金する必要があるのかと聞かれてしまい、内容によっては認められませんと言われることもあります。また、日本に対して厳しい視線を持っている国の場合は、送金を規制する可能性もあります。 一方で、新興国のようにお金を出すこと自体が難しいとされている国もあります。こうした国から大金を送金しようと思っても、それはそもそも不可能ですと断られてしまうことがあります。新興国の場合は、自国の通貨を守るために、海外送金を規制していることがあるので、問題を起こしているか否かにかかわらず、送金すること自体ができないというケースもあります。 2. 法人登記などの問題によって行えないケース 法人が送金元や送金先の場合、その国での法人登記の正確さ等の問題によって、海外送金ができなくなる問題もあります。もし法人登記が明確になっていなくて、法人として送金・受領することを正式な法人設立証明書等により証明できない場合には送金できなくなるケースがあります。送金窓口である銀行側が当事者が何の目的のために送金をするのかを認識し記録して報告することができなくなってしまうためです。 3. エビデンスの内容が不十分 例え国家に提出はしなくても、船舶などを利用して輸送することを前提にしているものに関しての海外送金の場合、エビデンスとなる証明書関係の内容が不十分な場合に、銀行に送金を止められてしまうことがあります。契約書やインボイスやLCなど各種証明書や取引証拠書類の内容は明確になっている必要があります。 RSM汐留パートナーズ税理士法人では外国法人・外資系企業の経理部門向けに納税管理人をはじめとしたさまざまな税務や経理サポートを行っております。どうぞお気軽にお問い合わせください。
- [税務署からの海外送金のお尋ねとは:目的・対応方法・国外送金等調書記載内容について](https://shiodome.co.jp/column/7735/) - 本日は、弊事務所のお客様で、納税管理人サービスや出国税対応サービスをご提供させていただいているお客様からご相談の多い内容でもある、「税務署からの海外送金のお尋ねへの対応方法」についてご紹介したいと思います。 1. 税務署からの海外送金のお尋ねとは? 納税管理人を立てて海外に出国する方などは、日本の企業や親族との間で資金の送金を行うことがあると思います。そのような関係者の皆様方において、海外へお金を送金した場合に、送金者の元へお尋ねがくることがあります。この「お尋ね」とは税務署からのお尋ねを指しております。 海外へ送金した際には100万円を超えるような送金であった場合には、銀行は必ず国外送金等調書を税務署等へ提出する義務があります。このお尋ねにより、税務署は納税者の海外送金を含めた資金関係の情報を捕捉しています。 2. お尋ねが来た際の対処方法 お尋ねが来た場合には、送金理由などを全て正確に書く必要があります。投資のために送金を行ったのであれば、具体的に投資対象物や出資先など取引内容を記入する必要があります。お尋ねが来たからって、そのこと自体は特段驚くべきことではなく、現時点で税金を支払うこととは同義ではありません。お尋ねの目的はあくまでも現時点での事実確認であり、それ以上の意味合いはありません。 ただし、お尋ねに対する対応を行った結果、税務署の指摘で課税すべき事項と判断されてしまえば当然納付する必要のあった税金に加えて無申告などのペナルティが加えられてしまいます。例えば、海外にロイヤリティを支払う場合には必要な源泉所得税を差し引いて送金する必要がありますが、その徴収漏れがある場合などです。 また、お尋ねでは、確定申告の有無や、具体的な送金などの取引内容を確認されます。また、送金明細や取引内容の分かる書類のコピーの添付も要求される場合があります。昨今では、国外送金等調書の提出数はかなり増加傾向にあります。そもそも、そのような義務が生じているということを知らないという方もやはり多いために、情報を捕捉するために送付される機会も多いようです。 3. 銀行の調書に書かれている内容について 銀行が作成して、税務署に提出される国外送金等調書には例えば以下のことが記載されています。 <調書の事項>・国外送金又は国外からの送金の受領の別・国外送金者又は受領者の氏名又は名称・国外の銀行等の営業所の名称・取次金融機関の営業所の名称・国外送金等にかかる相手国・本人口座の種類・口座番号・国外送金の金額・外貨種類・円換算額・送金原因など RSM汐留パートナーズ税理士法人では外国法人・外資系企業の経理部門向けに納税管理人をはじめとしたさまざまな税務や経理サポートを行っております。どうぞお気軽にお問い合わせください。
- [租税条約の海外進出企業に対する影響と国際税務戦略](https://shiodome.co.jp/column/17249/) - 1. はじめに 国際ビジネスを展開する日本企業にとって、「租税条約」は重要な要素です。租税条約とは、国と国との間で税金に関するルールや取り決めを定めた法的な枠組みのことを指します。これにより、海外進出企業は二重課税を回避し、税務上の不確実性を減少できます。 2. 租税条約のメリットと海外進出企業への影響 以下で、租税条約の利点と海外進出の際の影響を解説します。 二重課税回避と税務リスクの軽減 海外進出企業は、事業の本社国と進出先国の両方で課税されるリスクに直面します。しかし、租税条約によって、二重課税を回避できることで、事業利益を最大化することが可能となります。また、異なる国の税法を把握することで、税務上のリスクを最小限に抑えることもできます。 源泉税の軽減 租税条約により、海外で得られる収益に対する源泉税の軽減が可能となります。これは非常に重要であり、海外進出企業にとって、キャッシュフローベースで獲得できる金額の最大化につながることを意味します。 税制変更への対応と投資環境の安定性 進出先国での税制変更によって、企業の事業計画や利益が大きく左右されることがあります。現地国の税制について理解しておくことに加え、租税条約をしっかり活用することにより、投資環境の安定性の向上に繋がります。 3. 租税条約の活用ポイント 租税条約を活用するうえでのポイントを3つ挙げます。 専門家のアドバイスを受ける 国際税務には複雑なルールや例外が存在し、理解が難しいこともあります。海外進出企業は、税理士や国際税務の専門家と連携し、租税条約の解釈や適用についてアドバイスを受けることが重要です。 進出先国の租税条約を理解する 進出先国ごとに異なる租税条約が存在します。海外進出企業は、各国の租税条約を理解し、自社の事業に適した条件を持つ国において事業をすすめることが重要です。 事前にリサーチと計画を行う 海外進出を検討する企業は、租税条約を意識したリサーチと計画を行うことで、税務リスクを低減し、事業展開の成功を促進できます。進出先国のビジネス環境や税制について詳細な情報を収集し、それを活用した戦略を立てることが必要です。 4. 国際税務におけるトレンドと今後の展望 国際税務は絶えず変化しており、新たなトレンドや規制が現れることがあります。海外進出企業は、常に最新情報を把握し、ビジネス戦略を適切に調整していくことが求められます。 5. おわりに 海外に進出する日本企業にとって、「租税条約」は国際税務における重要な要素です。二重課税の回避や税務リスクの軽減に役立ち、海外進出の成功に大きく寄与します。専門家のアドバイスを得ながら、進出先国の租税条約を理解し、事前のリサーチと計画を行うことで、安定したビジネス展開が可能となります。国際税務のトレンドにも注意しつつ、柔軟に対応していくことが、海外進出企業の競争力を高める鍵となるでしょう。
- [租税条約の国際ビジネスにおける重要性と税務対策の論点とは](https://shiodome.co.jp/column/17242/) - 1. はじめに 国際ビジネスにおいて、外資系企業が日本に進出する際には、税務面での課題が様々に存在します。特に、二重課税を防ぐために異なる国々との間で締結される「租税条約」は、日本進出を検討する際に重要です。本記事では、外資系企業が日本市場に進出する際に活用したい租税条約の基本と、国際ビジネスにおける税務対策について解説します。 2. 租税条約とは? 租税条約は、異なる国々との間で二重課税を回避し、課税権を適切に分配するための法的枠組みです。外国との間でビジネスを展開する企業が得た課税所得や利益に対して重複して課税されることを防ぐため、この条約は必要な存在となります。 3. 国際ビジネスにおける重要性 外資系企業が日本に進出する際に、租税条約は大きな意味を持ちます。国によって所得税や法人税などの納税義務を果たす場所や税率が異なります。そのため、同じ課税所得や利益に対して複数回の課税が発生してしまう恐れがあります。しかし、租税条約が締結されている場合、課税所得や利益の課税権が適切に配分されるため、二重課税を回避できます。 4. メリット 租税条約によるメリットは税金の節税効果です。この租税条約によって適用される税率は通常の国内法よりも低い場合があります。これにより、企業はより有利な条件でビジネスを展開することができます。 5. 留意点 一方で、租税条約を活用する際には注意すべき点も2つ存在します。 条約上の条件を満たすため、企業は特定の要件を満たす必要があること 税務申告において正確な情報の提供が必要であること 誤った情報提供は税務当局とのトラブルの原因となるため、専門家のアドバイスを仰ぐことが重要です。 6. 税務対策 租税条約を活用するためには、税務面での専門的知識が欠かせません。外資系企業が日本進出を検討する際には、税理士と綿密な相談を行いながら、最適な税務戦略を立てることが肝要です。適切な税務対策を講じることで、企業はリスクを最小限に抑えながら日本市場での成功を目指すことができます。 7. おわりに 国際ビジネスにおいては、租税条約の理解と適切な活用が成功の鍵となります。日本進出を考える外資系企業は、税理士と連携し適切な税務対策を講じることで、より安定したビジネス展開が可能となるでしょう。
- [外資系企業の日本進出における税務課題と税務対策のポイントとは](https://shiodome.co.jp/column/17227/) - 1. はじめに 日本は、多くの外資系企業にとって魅力的なビジネス市場です。日本進出には数多くの機会がありますが、その際に重要な要素の一つが税務対策です。外資系企業が日本で成功を収めるためには、適切な税務戦略を立てることが必要となります。この記事では、外資系企業が日本に進出する際に考慮すべき税務のポイントを詳しく解説します。 2. 外資系企業の日本進出とは? 外資系企業とは、親会社が日本国外にある企業のことを指します。そして日本進出とは、日本国内でのビジネス展開を意味します。日本は、外資系企業にとって非常に魅力的な投資先となっています。先進的なインフラストラクチャーと市場規模の大きさ、高い消費力などの特徴があるためです。 3. 税務課題 日本に進出する際に外資系企業が直面する主な税務課題を4つ列挙します。 法人税への対応 日本における法人税は、利益に対して課税されます。外資系企業は、日本法人として現地法人を設立するか、日本支店を開設するかの選択が求められます。双方に異なる税務上のメリットとデメリットがありますので、慎重な検討が必要です。 源泉徴収税への対応 日本で収益を上げる場合、一部の所得は源泉徴収税として扱われます。これは外国からの支払いに対しても同様なため、海外からの資金移動には注意が必要です。 消費税への対応 日本の消費税は基本的に10%ですが、一部の商品やサービスには軽減税率が適用されます。外資系企業は日本の消費税制度を理解し、適切に対応する必要があります。 国際税務 外資系企業は、親会社の本国と日本の双方で税金を適切に申告・納税する必要があります。国際的な税務規則にも精通し、二重課税を回避するために適切な手続きを行うことが重要です。 4. 税務対策のポイント 外資系企業が日本進出を成功させるためには、以下の4つのポイントに注意が必要です。 事前の税務調査と計画 日本進出を検討する前に、専門の税理士やコンサルタントと連携し、企業の状況に合わせた適切な税務計画を立てることが重要です。税務上のメリットを最大限に活用するため、事前の調査が欠かせません。 適切な企業形態の選択 日本進出にあたり、日本法人としての設立か、日本支店としての進出かの企業形態を検討します。それぞれには税務上の違いがありますので、企業の状況に合わせた最適な選択が重要です。 専門家との連携 外資系企業にとって、日本の税法や規則を理解することが難しい場合もあります。税務に関する専門家と連携し、適切なアドバイスを得ることで、税務リスクを軽減できます。 税務申告と税務調査・監査対応の備え 企業の信頼性を高める上で、正確な税務申告および税務調査ならびに親会社等からの監査への対応は非常に重要です。適切な記録の保持と申告書類の適時提出の徹底が重要です。 5. おわりに 外資系企業が日本に進出する際には、日本の税務環境を理解し、適切な対策をとることが成功の鍵です。法人税、源泉徴収税、消費税、国際税務など、多岐にわたる税務要素を適切に管理することで、企業の成長と利益の最大化が期待できます。専門家との協力を得ながら、税務リスクを最小限に抑えたビジネス展開を進めましょう。
- [日本に進出した中国企業における会計税務の重要性と中国語対応可能な会計事務所・税理士に依頼するメリットとは](https://shiodome.co.jp/column/19348/) - 1. はじめに (1)中国企業が日本市場へ進出する背景 中国企業が日本市場へ進出する背景には、様々な要因が影響していますが、まず日本は経済規模、高度な技術、消費市場の魅力などで世界的にも先進的な国家であり、これらの要素が中国企業にとって魅力的であると言えるでしょう。日本市場での成功を目指す企業にとって、会計と税務の適切な理解や運用は不可欠です。 日本市場の魅力日本市場は近年多様なニーズを持つ消費者層を抱え、高度な技術とイノベーションが花開き、また比較的安定した政治環境となっております。これらの要素が組み合わさり、中国企業にとって日本市場は非常に魅力的な市場の1つとなっています。 多様な消費者層日本市場は近年多様な消費者層により構成されてきており、異なるニーズと好みに対応できる製品やサービスに市場が開かれています。 高度な技術とイノベーション日本は技術とイノベーションの分野で世界的なリーダーの一翼を担っており、多くの分野で新たなビジネスチャンスが生まれています。 政治の安定比較的政治環境が安定しているため、ビジネスの予測がつきやすく、長期的な投資に適しています。 (2)会計と税務の適切な運用 新たな市場への進出には、多くの課題とリスクが伴います。特に、日本の会計と税務に関する適切な理解と運用は重要です。正確で適切な会計処理と税務戦略が企業の長期的な成功に直結し、また、法的リスクを最小限に抑え、資産の効率的な運用と収益の最大化を実現するためです。 この記事では、中国企業が日本に進出する際に直面する会計税務の課題とリスク、中国語対応可能な会計事務所・税理士に委託するメリット、成功事例等に焦点を当てます。すでに日本へ進出した中国企業、または日本への進出を検討している中国企業にとって、この記事が日本子会社の経営に関して一助となれば幸いです。 2. 中国企業の日本進出における会計税務の課題 (1)日本の税制の概要 中国企業が日本市場に進出する際に直面する最初の課題の一つが、日本の税制の複雑さです。日本の税制はさまざまな税金や法令から成り立っており、その構造が外国企業にとって理解しにくいことがあります。 法人税日本の法人税率は世界的に見ても高く、また、収益の種類によって税率が異なることがあります。したがって、中国企業は税法に準拠して自社の収益に対する適切な税金の計算と納税を行う必要があります。 消費税日本の消費税は8%から10%に引き上げられ、また、2023年10月よりインボイス制度も導入されました。そのためより一層正確な消費税計算と申告が求められます。特に、消費財や飲食業界に進出する中国企業にとっては、これは理解が難しいポイントになります。 (2)日本における税務の特徴と困難性 複雑な税制日本の税制は、特に外国企業にとっては複雑で理解が難しい場合があります。これら複雑な日本の税法を理解して適正な申告・納税を行うためには、十分な知識を有しておく必要があります。しかしながら後述しますが、他国の税制についての理解は難しいことから、信頼できる専門家の確保が不可欠です。 文化と言語の違い言語や文化の違いによるコミュニケーションの課題が存在します。中国企業が円滑に日本市場に参入し、適切な税務戦略を策定するためには、これらの課題を克服する必要があります。中国出身者で日本での文化に慣れ親しんでいる協力者の存在も不可欠でしょう。 (3)異なる業界とビジネスモデルに応じた税務戦略 異なる業界やビジネスモデルに応じて適切な税務戦略を調整する必要があります。中国企業は自社の業界やビジネスモデルに合わせて税務戦略を適用し、日中両国の税務に関連するリスクを最小限に抑える必要があります。 3. リスク管理とコンプライアンス (1)税務コンプライアンス 税務コンプライアンスは企業の健全な運営と成長に不可欠な要素です。税務コンプライアンスを適切に実施することで、企業は法的なリスクを最小限に抑え、適切な税金の計算・納付を行います。 税務申告と書類提出の期限まずはなによりも税務申告と書類提出の期限を守ることが非常に重要です。適切な期限を守らない場合、企業は税務当局より加算税等の罰金を課せられる可能性があります。税金の申告と納付は正確かつタイムリーに行わなければなりません。 罰則税務コンプライアンスを怠ると、企業は加算税等の罰金だけでなく、国税当局との法的トラブルに直面する可能性も高まります。適切な記録の保持と正確な申告手続きは不可欠です。 (2)中国と日本の違い 中国と日本の税制やビジネス文化の違いについて理解し、リスクと課題を解説します。これにより、中国企業が日本市場で成功するために必要な認識を高めることができます。 税法の違い中国と日本の税法は異なり、それぞれ独自の規定と要件を持っています。これらの違いを理解し、適切な税務戦略を策定する必要があります。自国の当たり前の制度が外国においては当たり前ではないということが頻繁に起こります。 言語と文化の違い中国と日本の言語と文化の違いによるコミュニケーションの課題が存在します。中国企業が日本市場に進出する際、言語スキルと文化の理解が重要です。税務当局や税務の専門化との付き合い方についても留意する必要があります。 4. 中国語対応の会計事務所・税理士の役割 (1)主な業務内容 中国語対応の会計事務所や税理士は、日本に進出する中国企業に対して会計や税務の業務を中心としたサービスを提供します。法人向けサービスを提供する事務所と個人向けサービスを提供する事務所とで異なる部分もありますが、以下は主な業務内容の一部です。 経理業務のアウトソーシング中国企業は日本市場での経理業務をアウトソーシングすることで、日本の会計に精通している専門家のサポートを受けつつ、同時に内部のリソースを節約できます。これにより、正確な財務データの管理を行うことができ、営業・マーケティングや研究開発等のコア業務に注力することができます。 税務コンサルティング中国語対応が可能な税理士は、中国企業に対して適切な税務アドバイスを提供し、各種税法を遵守するための支援を行います。例えば、中国とは異なる源泉所得税、法人税、消費税などの制度に関して中国語で解説することができることでしょう。 法務領域に関するサポートアドバイス日本の法律に関するアドバイスと法的支援に関しては弁護士や司法書士の領域ですが、中国語ができる弁護士などの法律専門家は多くはないため、中国語対応可能な税理士やコンサルタントが間に入ることにより、クライアントの法的リスクを最小限に抑えることに貢献することができます。 (2)日本における税務戦略 中国企業向けの税務コンサルティングの役割についてご説明します。適切な税務戦略を策定することは、税務リスクを最小限に抑え、同時に、最適なタックスプランニングを組むことに繋がります。 日本において税法を遵守することは、企業のコンプライアンスの観点からも非常に重要です。中国企業は、日本の会計基準や税法に依拠し、正しい決算、申告、納税手続きを行う必要があります。 5. 中国語対応が可能な会計事務所の選び方のポイント 中国語対応が可能な会計事務所を選ぶ際には、以下のポイントを考慮することをお勧めします。クライアントのニーズに合った専門家と契約し、密に連携することが成功の鍵となります。 評判の確認 中国語対応可能な会計事務所の評判を調査し、過去のクライアントの評価を確認します。すべての事務所の実績について確認することは難しいとは思いますが、より信頼性の高い事務所を選ぶことが重要です。 専門性と経験 中国語対応可能な会計事務所の国際税務に関する専門知識と中国企業とのビジネス経験を評価し、クライアントの業界に適した専門家を選びます。面談時にこれまでの経験についてヒアリングすることが重要です。 コミュニケーション能力 中国語と日本語の双方を流暢に話す専門家とのコミュニケーションが円滑に行えることを面談時に確認します。適切なコミュニケーションが行われることで、会計基準や税法に関する誤解を防ぎ、提供されるサービスによる効果を高めます。 提供サービス クライアントのニーズに合致するサービスを提供する会計事務所を選びます。どの会計事務所が自社の要望に柔軟に対応できるか検討すると良いでしょう。事務所の規模にもよりますが、税務だけしか提供できない事務所もあれば、会計・労務・法務など広範なサービスを提供できる事務所もあります。 6. 成功事例
- [建設業における収益認識に係る内部統制リスクを収益認識の各ステップ毎に紹介](https://shiodome.co.jp/column/19408/) - 1. はじめに 今回は監査・保証実務委員会研究報告第34号「建設業及び受注制作のソフトウェア業における収益の認識に関する監査上の留意事項」を参考に、収益認識の各ステップに存在するリスクをご紹介します。 2. 収益認識における5つのステップ 収益認識のステップは以下のようになっています。 契約の識別 履行義務の識別 取引価格の算定 取引価格を履行義務へ配分 履行義務の充足に対応した収益の認識 次節からそれぞれのステップの詳細と考えられるリスクについて説明していきます。 3. 各ステップの内部統制リスク (1)契約の識別 このステップにおけるリスクは、取引条件について取引開始後に合意するとき発生します。 ここで、建設業の通常の契約は収益認識基準での「契約」にあたると思われます。しかし、中には取引開始のあと徐々に合意が形成される場合も考えられます。この場合、事後的に要件を満たした時点で収益認識基準を適用することになるため、その処理が漏れるリスクがあります。なお、収益認識基準における契約とは、下記の5要件を満たしている場合に認められます。 当事者が、書面、口頭、取引慣行等により契約を承認し、それぞれの義務の履行を約束していること 移転される財又はサービスに関する各当事者の権利を識別できること 移転される財又はサービスの支払条件を識別できること 契約に経済的実質があること(すなわち、契約の結果として、企業の将来キャッシュ・フローのリスク、時期又は金額が変動すると見込まれること) 顧客に移転する財又はサービスと交換に企業が権利を得ることとなる対価を回収する可能性が高いこと (2)履行義務の識別 このステップにおけるリスクは、履行義務の識別が恣意的になる可能性があることです。 解体工事と新築工事を1つの契約で請け負うような場合、履行義務の性質が一目ではわかりにくいことがあります。例えば、解体工事と新築工事を別個の履行義務として認識すべきところを1つの収益認識単位とした場合、解体工事の義務を履行した時点で新築工事の履行義務も充足したことになり、収益を認識してしまいます。これは極端な例示ですが、履行義務の識別を誤ることで、その後の収益認識も間違ったものになってしまいます。 また、建設業において収益認識基準の適用するとき変更が生じることが多いため注意すべきなのが、本人と代理人の区分です。収益認識基準では特定の財又はサービスの顧客への提供において関与しているのが本人なのか代理人なのか、個々の取引の態様によって判断する必要があります。 例えば、建材や機器等を販売しているケースでは、本人であれば通常の売上高と同様に売上と仕入を総額で計上しますが、代理人であれば売上と仕入を総額ではなく純額で収益を認識します。このように本人と代理人の区分によって、収益認識の金額を誤るリスクがあります。 (3)取引価格の算定 工事契約等では、当初の契約金額は、契約書等により確定しているものですが、契約の追加が合意されたものの、対価についての変更が契約書等によって適時に確定できていないことがあります。また、スライド条項等による事後的な値引き又は値増し、契約条件に基づくペナルティー又はインセンティブ等により、契約金額が増額・減額されることもあり得るでしょう。こうした変動対価を見誤った場合には収益を不適切に増額・減額させるリスクがあります。 (4)取引価格を履行義務へ配分 複数の履行義務に関し包括契約を結んだ場合、個別性が高く独立販売価格を直接確認できないことがあります。適切に見積もられていない独立販売価格の比率に基づき取引価格が配分される場合、または、値引き及び変動対価の履行義務への配分を誤った場合、実態とは異なる配分になる可能性があります。 (5)履行義務の充足に対応した収益の認識 履行義務の充足に係る進捗度を見積る方法には以下に挙げたアウトプット法とインプット法の2つがあります。財・サービスに対する支配を顧客に移転する際に選択される方法は、企業の履行を適切に描写する方法でなければなりません。 ・アウトプット法 その時点までに完了した履行の調査・マイルストーンによって、進捗度を測定する方法をいいます。進捗を出来高で把握するので実態と乖離しにくい一方、出来高を定量的に測定できるルール構築が必要です。プロセスを細分化させ工程ごとに作業負荷等を加味させるなど、測定が恣意的にならないような客観的で詳細なルールの整備・運用などが必要です。 ・インプット法 その時点で発生したコストや労働時間を基に進捗度を測定する方法をいいます。発生したコストや労働時間に基づくため恣意性は低いといえますが、高額な費用が特定のタイミングで発生するようなプロジェクトでは、費用の発生と履行義務の進捗がずれる可能性があります。また、発生する見込みの原価総額が適切に見積もれない状況では進捗度の誤った計算がなされるため、インプット法の選択は好ましくありません。一般的に工事契約は、工事の途中で契約の変更が行われることがあります。事情の変化に関する情報が適時・適切に反映されていないことにより、工事原価総額の見積りも変更されず、結果収益認識を誤ることにつながります。また、発生したコストの不適切な振替・付替が行われるリスクも考えられます。 工事進行基準、収益認識基準のどちらも、適用に際しては見積りや主観的な判断を要する部分が多くなるでしょう。そういった部分にはリスクがつきものです。まずは、そのリスクの性質や重要性によって、コントロールの整備が必要かどうかの判断を要します。コントロールが必要になるときにも、見積りや主観的な判断を伴う場面では、客観的な根拠証憑と突き合わせるなどのコントロールの実施が困難になるでしょう。そういったリスクに対する主なコントロールのためには、担当者とは別の責任者または部署が担当者の行った見積りの検討・承認をする、という業務フローを設けます。そこには専門的知識を要することが多いため、チェックをする側とされる側の双方が、チェックに求められる知識を備える必要があります。 5. おわりに 今回は建設業での内部統制のうち収益認識に関するリスクについてご紹介しました。 実際にこれらを実行するにあたっては実施できる人材が限られており、社内のリソースだけでは難しいかもしれません。内部統制は、場合によっては事務負担が増大し、業務効率を低下させてしまうこともありますのでバランスが重要になってくるでしょう。 結果的に社内リソースを投入できないとしても、建設業界は会計処理に際して見積りや主観的な判断が必要になることが多いため、どういったリスクが存在するのか一度把握することは有益でしょう。場合によっては専門家に相談するなど、アウトソーシングを利用することも1つの手です。
- [【国際課税Q&A】外国法人側の源泉税納付が未了の場合の外国税額控除の可否](https://shiodome.co.jp/column/19383/) - 1. 質問 3月決算の日本法人が、外国の会社に自社が著作権を有するゲームアプリの利用許諾を行ったことで得るロイヤルティに相当する対価が入金される際、源泉税が徴収されていました。 当該外国法人は8月末に源泉税について納付予定であり、今回の源泉徴収に係る納付も8月に行う予定とのことです。 この際、3月決算の日本法人の申告時に外国法人側で対応する源泉税の納付が完了していなくとも、外国税額控除を取ることは可能でしょうか。 2. 回答 日本法人側で外国税額控除を取ることは可能と判断できます。 3. 重要用語 今回の質問及び回答にて使用されている「外国税額控除」という用語は、国際税務の重要用語の1つであるため、今一度、ここで取り上げて確認したいと思います。 外国税額控除とは、端的に言えば、国際的二重課税の解消のため、外国で支払った税金のうち、一定額を日本の税金から差し引くことができる制度です。 日本の居住者や内国法人は、所得の生じた場所が国内であるか、国外であるかを問わず全ての所得について日本で課税されます(全世界所得課税)。ただし、国外で生じた所得については、外国の法令でも所得税や法人税に相当する租税の課税対象とされることがあるため、日本と海外の双方で二重課税となる場合があります。当該国際的な二重課税を調整するために、一定額を日本の所得税又は法人税の額から差し引くことができることにした制度を、外国税額控除制度といいます。 外国税額控除は、「控除限度額」を超えない範囲で行うことができます。法人の場合、「控除限度額」は次の式で計算されます。 計算式 控除限度額=その年分の法人税の額×(その年分の国外所得金額 / その年分の所得総額) 即ち、「全世界所得」に対する「国外で生じた所得」の割合を出し、日本の法人税額に乗じることで、その年度の控除限度額が算出されることになります(法人税法施行令142条)。 控除しきれなかった外国税額は3年間繰り越すことができ、また反対に、外国税額の控除後にもなお控除限度額の枠に余裕がある場合も、3年間繰り越して控除枠を利用することが可能となります(法人税法69条2項3項、法人税法施行令144条145条)。 外国税額控除制度を利用する場合、外国税額は損金の額に算入されません(法人税法41条)。 外国税額控除を利用しない場合は、外国税額を損金処理することが可能ですが、課税所得の計算上、支払外国税額について損金に算入し、所得から差し引いた上で税率を乗じて国内での支払税額を算定することから、他の一般経費と同様に、「外国税額×税率」の金額分しか二重課税を排除できないため、一般的には税額控除を利用した方が、会社の日本における法人税の負担が少なくなります。 4. 根拠 (1) 外国での源泉徴収が適切か否かの確認 外国の会社にて行われた源泉徴収について、問題がなかったかを確認します。外国税額控除を取るにあたっては、国際的二重課税の根拠となる外国法人税(所得税)が、適切なものであったか否かを確認することが重要です。その際には両国間の租税条約の確認も必須です。この時点で不要な源泉徴収がなされていたり、源泉徴収されている金額が過大であったりする場合には、日本における外国税額控除の可否の検討以前の段階で、取引相手への指摘、もしくは相手国への源泉税率の減免申請が必要となるためです。 (2) 外国税額控除の適用時期 次に本題である、外国で対応する源泉税を納付していない状況で、日本の申告時に外国税額控除を取ることができるか否かという点を見ていきます。 第一に、法人税基本通達16-3-5において、外国税額控除は「外国法人税を納付することとなる日の属する事業年度において適用」とされています。 第二に、同上通達逐条解説にて「外国法人税を納付することとなる日=納付すべき租税債務が確定した日」と解説されていることから、「外国税額控除は、納付すべき租税債務が確定した日に適用することが可能」と読み取ることができます。 最後に、通則法15条1項~3項において、源泉徴収による所得税は、源泉徴収をすべきものとされている所得の支払の時に、租税債務の確定がされるものと扱われています。 以上より、外国の源泉税においても、所得支払日=租税債務確定日として整理できるものと考えられます。 よって今回の事例のように、未だ外国で源泉徴収税分の納付がなされていない場合においても、源泉税控除後の金額にて日本法人に入金がなされている時点で、既に納付すべき租税債務が確定されていると考えられ、日本の申告においてこの分の外国税額控除を取ることは可能と判断できます。 (3) 外国税額控除適用時に保存が必要な書類 外国税額控除適用時に保存が必要な書類の詳細に関しては、法人税法施行規則29の4及びそれを受けた法人税基本通達16-3-48において規定がなされています。 具体的には、源泉徴収の場合、「源泉徴収の外国法人税に係る源泉徴収票その他これらに準ずる書類」が含まれており、日本の支払調書のような書類があれば、根拠資料になると考えられます。 申告時に納税証明等を得ることができない場合の取り扱いについては法令上明確ではありませんが、まずは会社が対価の支払い時に源泉徴収を行ったことを確認できる書類等を保存するとともに、その源泉税納付が完了次第、速やかに「源泉徴収の外国法人税に係る源泉徴収票」に相当する書類も取得し、保存しておくことが必要と考えられます。 国際税務Q&A_外国税額控除の可否_202311 (PDF)
- [副業における企業側の対応と税務申告上の留意点](https://shiodome.co.jp/column/19799/) - 1. はじめに 近年「働き方改革」やコロナ禍によって残業の削減や勤務形態の柔軟化などが急速に普及してきており、企業側も対応することが求められます。一方で、会社側から残業を制限されるなどの事情から残業代といった収入が減ることになります。こうした収入が減少するなどの事情やコロナ禍では休日に外出を控える巣籠りが増加した背景から、副業を行う人も増加しました。このような事情に伴い、懸念されるのは副業収入に関する無申告です。 今回は、副業に関する現状や、副業収入により確定申告が必要になる場合、副業にかかる確定申告の手続で改正された点について説明します。 2. 副業とは? 副業には様々な定義が存在しています。現在は唯一の定義といえる明確な基準は存在せず、個人や企業によって様々な判断がされています。 時間や収入の額について、契約締結の後先や、働き手自身の認識だけでなく、「兼業」という言葉との区別の有無など様々な定義があります。 また国・経団連でも下記にまとめたように、定義にばらつきがある状況です。 3. 副業を認める企業の割合 新型コロナウィルスの流行に伴いリモートワークが促進され、削減できた通勤時間を副業・兼業にあてているという人も少なくありません。中には、勤めている企業には何も伝えず副業を行っている場合もあるようです。 経団連が2020年に実施した調査では副業・兼業を認めている企業の割合は22%となっています。容認している割合を業種別にみると、情報通信業では5割を超えていますが1割程度に留まっている業界もあります。そのため、業界ごとに大きなばらつきがある状態となっています。例えば、ドライバーに対して休憩時間に対する規制がある運輸業・郵便業や肉体的に厳しい作業の多い建設業は、本業の身心の負担が大きい業種といえます。そのため、副業を認める事に対して躊躇する要因とされています。 (出典:「2020年 労働時間等実態調査M」経団連) 4. 副業収入の税務申告について 日本は納めるべき所得税は自分で計算し、納税する申告納税方式を採用しています。そのため、原則は自分で確定申告を行う必要があります。会社員であり収入が本業のみの場合は、会社が納税手続を行うため自分で確定申告を行う必要はありません。 副業による収入がある場合は確定申告を行う必要があるかどうかに関しては基準が存在します。簡単に説明すると、本業による給与以外の「所得」が20万円を超える場合、自身で確定申告を行う必要があります。所得とは所得税の課税対象となる金額です。収入額からその収入に関わる費用を差し引くことで、課税対象額となる所得を求めることができます。例えば、副業として翻訳作業による収入を得た際に参考書籍を購入するなどした場合、書籍の金額分を経費として収入から差し引くことで所得金額が算出されます。ただし、副収入が給与所得である場合は経費の計上は認められません。 収入補填として副業を始める人や、フリマサイトでの売買により収入を得る人が増加しています。それに伴い、申告漏れや確定申告の必要があるという意識もなく無申告である人の増加が懸念されています。 (出典:「インターネット取引を行っている者の調査状況」 国税庁) 無申告や申告漏れが税務調査で発覚した場合、無申告加算税や過少申告加算税が課されます。 5. 令和4年度からの改正事項 副業の多くは雑所得に該当するケースが多いと思われます。一方で、一定の要件に該当する場合は、令和4年度から請求書等の書類を5年間保存することが義務付けられました。 ここで、雑所得に関して3つの区分があります。 公的年金等の雑所得 雑所得を生ずべき業務にかかる雑所得 その他の雑所得 ②と③については法令等で明示されていないため区分が困難となっています。この点、③については個人年金保険や暗号資産取引等による収入を想定しているといわれています。そのため一般的に、副業は②に該当すると判断されるでしょう。 令和4年分以降の確定申告を行う際に、「②雑所得を生ずべき業務に係る雑所得」に該当し、かつ、前々年度の「②雑所得を生ずべき業務に係る雑所得」が300万円を超える場合、総収入金額と経費に関する「現預金取引等関係書類(請求書や領収書等)」を確定申告後5年間保存することが義務となりました。 2020年の副業所得が300万円を超えており、2023年も副業による所得を申告する場合などは、副業に関する請求書や領収書の保存が義務付けられます。これは、副業による雑所得の申告漏れや無申告が増加する中で、申告内容を効率よく積極的に確認しようとしている姿勢の表れといえます。 6. 考察 日本での副業は、働き方改革からコロナ禍を経て急速に普及し始めています。そのため、法律も含め制度の整備はまだ追い付いていないのが現状です。社会的にも、ようやく副業のメリット・デメリットを冷静に考慮できるようになってきた段階といえます。そのため、雇用者・被雇用者のどちらにおいても課題は少なくありません。 雇用者側の場合、副業制度を導入したモデルケースが少ないため、制度整備に時間が掛かることが想定されます。そのため、制度の整備に時間が掛かってしまうのはデメリットになると言えます。また、副業を認める際に、就労規則等の整備、従業員の健康管理、労働保険関係の整理・確認といった、人的コストがかかります。さらに、副業を行う従業員について、本業に支障が出ていないか継続してチェックを行う仕組みも必要になるでしょう。 反面、雇用者側で副業を認めることでメリットが生まれる場合もあります。本業とは違う経験に基づく従業員による新しいアイデアの創造や、副業でできた人的ネットワークの活用可能性といったメリットです。また、副業によって自由なライフスタイルの確立を重視する層が増えると、副業を認める企業は人材獲得で有利になることも考えられます。社外の副業人材の活用により、事業の発展があり得ることも大きなメリットと言えるでしょう。 他方、被雇用者側で注意すべきデメリットとしては、健康管理や申告といった自己管理に関わる部分です。特に副業では昼間に本業の業務を行った後、夜間に副業の時間を投下することが多いため、長時間労働になりやすい点に注意が必要です。 反面、デメリットとの折り合いがつけば、コロナ禍のような不測の事態で収入が減るリスクの対策になるだけでなく、複数のコミュニティに関わることで精神的な充足に繋がるといったメリットを、被雇用者側は享受できます。何より、本業とは違う経験を積むことで、多様性のある人材として成長する糸口を掴むことにも繋がるでしょう。 7. おわりに 日本の副業はまだ黎明期といえます。そのため、税制をはじめ法制度等の改正が進んでいくのはこれからです。 収入を増やせるからと気軽に副業を始めはしたが、忘れた頃に税務調査の対応が必要になるといったこともあり得ます。 このような事態を防ぎながら副業のメリットを受けるためには、副業に関連してどのような論点があるのか学ぶことが重要です。その意味では、企業・個人ともに、厚生労働省の設置する相談窓口や各種セミナーなども助けになるでしょう。
- [地域企業の付加価値を向上させるためのローカルベンチマークの概要と活用方法](https://shiodome.co.jp/column/19808/) - 1. はじめに ローカルベンチマーク(通称:ロカベン)は地域企業の付加価値を向上させるための手段として、2021年6月に経済産業省が公表しました。自社の分析を行い、現状把握を促進することを目的としています。経済産業省のページからダウンロードできるExcelを使用し、自社の情報を入力することで分析を行うことができます。 元々は2015年に地域産業の活性化を目指す「ローカル・アベノミクス」を推進する施策として、「中小企業団体、地域金融機関等による地域企業に対する経営支援等の参考となる評価指標・評価手法(ローカルベンチマーク)」の策定が盛り込まれました。その後、検討を経て公表されました。 ローカルベンチマークが従来の財務分析評価指標と異なる特徴は、財務情報だけでなく非財務情報も洗い出し、企業の実態を把握する点です。今回はローカルベンチマークの概要と活用について説明します。 2. 知的資産経営 企業活動において、現状や自社の強みを把握していることは非常に重要です。 2010年代の中頃からは、インターネット活用が拡大や、今まで以上に進展するグローバル化等で世界的に変化が激しくなっています。Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取り、「VUCA(ブカ)の時代」と表現されるまでになりました。 また、現状の変化に関してはコロナ禍や、コロナウィルスとの共存といった事柄も外すことはできません。 現在は未来予測が難しい時代で、さらに、コロナ禍のような突発的な事象が重なっています。その中で、現状把握や自社の強みを時代や状況に合わせて方向転換をすることは重要であり、その重要性は増し続けています。 経済産業省は、会社の強みを把握し、それを活かして業績に結びつける経営を「知的資産経営」と定義しています。「知的資産経営」のメリットとして以下の5つが掲げられています。 経営者や従業員が自社の強みに気づくきっかけになる。 従業員が会社の戦略を理解することに繋がり、一体感が向上する。 外部の人(金融機関・取引先・地域など)に対して会社の強みを明確に説明できる。 会社の魅力と方向性を伝えやすくなり、会社のマッチする人材の確保に繋がる。 後継者に会社の全容を伝えることができ、事業承継が円滑になる。 (引用:https://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/sangyokinyu/locaben/pdf/kigyo.pdf) 3. ローカルベンチマークにおける財務情報分析 ローカルベンチマークでは3枚のシートを入力します。そのうちで財務情報を入力するのは1枚のみになります。財務情報分析は売上や営業利益などの項目を入力する作業となるため、直近三期分の決算書があれば時間はほとんどかからずに作成できます。 図① ローカルベンチマーク(ロカベン)シート (METI/経済産業省) 図①にある黄色部分に入力を行うと、自動で業種や事業規模に応じた業界基準値と比較され、評価点が割り出されます。また、売上持続性、収益性、生産性、健全性、効率性、安全性については過去3期分までの推移を分析できます。 図② ローカルベンチマーク(ロカベン)シート (METI/経済産業省) 4. ローカルベンチマークにおける非財務情報分析 ローカルベンチマークの全部で3枚あるシートのうち残り2枚は非財務情報になります。入力する情報量の違いから分かりますが、ローカルベンチマークは財務情報よりも非財務情報の分析を重要視しています。実際にローカルベンチマーク活用例では、財務分析を見たときには平均よりも良いとはいえない状況であっても、非財務情報の分析により自社の強みや対応施策が明確になる事例もあります。その結果、金融機関と自社の強みを共有できたことで、新たな資金調達ができています。 非財務情報は以下の図③にある【商流・業務フロー】と図④で示した【4つの視点】の2枚に入力を行います。 図③ 非財務ヒアリングシート(商流・業務フロー)~記載例~ 図④ 非財務ヒアリングシート(4つの視点)~記載例~ ただし、非財務情報は客観的な判断を行うのは難しいものです。経営者だけで客観的で納得感のある分析をするのは簡単ではありません。可能であれば、従業員や社外の専門家、金融機関担当者を交えて取り組むことが望ましいでしょう。経済産業省から公表されているローカルベンチマークガイドブックでは、他者と共に取り組むファシリテートのコツや企業の魅力を再発見するための対話のコツなども掲載されているため参考になるでしょう。 5. 地域経済分析 事業には地域性が大きく関係しているため、経済産業省は、自社分析の前提に地域経済の現状を把握する重要性を強調しています。地域経済を考慮することでより正確に強みと弱みを分析することができます。ローカルベンチマークの紹介でも、作成を行う際にRESASというサイトを併用ツールとして紹介しています。RESASとはRegional Economy Society Analyzing Systemの略で、日本語では地域経済分析システムと表されています。このツールには、官公庁のデータとともに民間企業のデータも提供されており、9種のマップ・81メニューを無料で利用することができます。 RESASは地方公共団体の地方創生支援を目的に作成されたデータベースですが、民間企業でも高い利用価値があります。このようなツールは、地域の産業構造や自社が属する産業の現状・先行きを分析するために非常に有効な手段です。 6. おわりに コロナ禍やコロナウィルスとの共存などにより現状維持が非常に難しくなりました。経済や業界把握の重要性の再認識や、新たな解決策の模索をしている企業も多いでしょう。業務フロー、販路の見直し、新規事業創出およびデジタルトランスフォーメーション(DX)のようなIT活用など、解決策は様々なものがあります。優先順位の判別や策を機能させる検討を行う場合に、重要なのは正確な現状把握といえます。 ローカルベンチマークは金融機関での認知度は94%となっており、活用割合でも4割に上るといわれています。また金融庁でも、担保や保証に依存せず、非財務情報を含めた事業性評価に基づく融資を促進しています。そのため、ローカルベンチマークは企業と取引金融機関との意思疎通とともに共有ツールとしての役割が期待されています。さらに、補助金等を受ける際にもローカルベンチマークで分析を行っていると申請がよりスムーズになる、といったケースが一層増加すると考えられます。
- [貸倒引当金における会計上の考え方と税務上の留意点](https://shiodome.co.jp/column/19826/) - 1. はじめに 長く続いたコロナ禍やその他の影響もあり、今後も中小企業の倒産が増えると見込まれています。債権の回収ができないリスクに備え、「貸倒引当金計上」について、会計上の考え方と税務上の留意点について説明をします。 2. 会計上の債権区分 会計上では債務者の財政状態等により、債権を3区分に分け、その区分に応じた貸倒引当金を計算します。 「金融商品に関する会計基準」に基づくと、債権は次の3つのどれかに区分されます。 一般債権=経営状態に重大な問題が生じていない債務者に対する債権 貸倒懸念債権=経営破綻の状態には至っていないが、債務の弁済に重大な問題が生じている又は生じる可能性の高い債務者に対する債権 破産更生債権=経営破綻した又は実質的に経営破綻に陥っている債務者に対する債権 しかし、実務上は個々の債務者の財政状態等を一般的な事業会社が把握することは困難です。そのため簡便な方法として、債権の計上月や弁済月からどれだけ時間が経過しているかに応じて債権を区分する方法も認められています。多くの会社おいて、債権管理の一環として一定期間で区分し管理をする売掛金年齢表(エイジングリスト)を作成していると思います。この売掛金年齢表が債権区分の根拠資料になります。 3. 会計上の貸倒引当金算定方法 ①一般債権について、「金融商品に関する会計基準」では「債権全体又は同種・同類の債権ごとに、債権の状況に応じて求めた過去の貸倒実績率等合理的な基準により貸倒見積高を算定する」と記載されています。同種とは、売掛金や未収入金といった勘定科目ごとの区分です。同類とは、同種よりも大きな区分で、営業債権と営業外債権、または短期と長期の期間別といった区分です。 一般債権に対する貸倒引当金は、一般債権残高に貸倒実績率を乗算して算定します。この算定で重要な要素となる「貸倒実績率」について、「金融商品に関する実務指針」では「債権の状況に応じて求めた過去の貸倒実績率」に関して以下の記載があります。 「与信管理目的で債務者の財政状態・経営成績等に基づいて債権の信用リスクのランク付け(内部格付)が行われている場合に、当該信用リスクのランクごとに区分して過去の実績から算出した貸倒実績率」 一般的に実務上、「合理的な基準」は過去3年分の算定年度にかかる貸倒実績率の平均値です。また、資本金が1億円以下の中小法人等の場合、税務上認められた法定繰入率で計上することが多いです。この繰入率については後ほど説明します。 ②の貸倒懸念債権の定義の中にある、「債務の弁済に重大な問題が生じている」に該当するケースには次3つが挙げられます。 弁済がおおむね1年以上にわたって滞っている 弁済期間の延長や弁済の一部棚上げを行っている 元金又は利息の一部免除など弁済条件の大幅な緩和を行っている 貸倒懸念債権に対する貸倒引当金の算定方法は、財務内容評価法とキャッシュ・フロー見積り法の2つです。 財務内容評価法 債権残高から担保処分見込額や保証による回収見込額を除いた残額について、債務者の財政状態、経営成績を考慮し貸倒見積高を算定する方法です。債務者の財政状態は、事業の状況、金融機関等の支援状況、再建計画の実現可能性などの情報を収集しなければなりません。そのため、一般事業会社では難しい場合が多いでしょう。そこで簡便な方法として、残額の50%を引き当て、翌年度以降に毎期見直しを行う方法も認められています。 キャッシュ・フロー見積り法 元利回収が予定通りに行われないと見込まれるような場合に、回収可能性の判断に基づき入金可能な時期と金額を反映した将来キャッシュ・フローの見積りを行います。もしくは、支払状況の緩和が行われるような場合はそれに基づく将来キャッシュ・フローを算定し、債権の発生当初の約定利子率または取得当初の実効利子率で割り引きます。そして、将来キャッシュ・フローの見積りは必ず毎期見直しを行う必要があります。 ③の破産更生債権の定義にある「実質的に経営破綻に陥っている債務者」とは、「金融商品に関する実務指針」において、「法的、形式的な経営破綻の事実は発生していないものの、深刻な経営難の状態にあり、再建の見通しがない状態にあると認められる債務者である」と補足がされています。 算定方法は財務内容評価法により行います。担保と保証の取扱いは貸倒懸念債権で説明した財務内容評価法の場合と同様です。清算配当等により回収が可能と認められた場合は、担保物の処分見込額と同様の扱いです。 4. 税務上の債権区分 最初に、税務上で貸倒引当金の損金算入が認められるのは以下の3つの法人に該当する場合のみという前提があります。 前提1資本金1億円以下の中小法人等(大法人との間に完全支配関係があるものを除く) 前提2銀行、保険会社その他これらに準ずる法人 3つの条件に当てはまった法人は貸倒引当金の計上が認められています。ただし、損金計上できる繰入限度額は決められています。税務上の仕組みとして、回収が難しいと判断される額を回収不能見込額とし、その見込額を限度として損金計上が認められています。 税務上は貸倒引当金繰入限度額の算定する際には、まず、債権を一括評価金銭債権と個別評価金銭債権の2つに区分します。 一括評価金銭債権とは、売掛金、貸付金およびそれらに準ずる金銭債権です。注意すべき点として、前払費用や一時的な立替金等は含みません。 個別評価金銭債権とは、通常の債権回収が難しいと判断される債権です。債務者に生じている事由によって回収不能見込額の計算方法は違います。さらに、個別評価金銭債権は、債務者に生じている事由によって以下の4つに分類できます。 事由1更生計画認可の決定等の事由に基づいてその弁済を猶予され、又は賦払により弁済される場合 事由2債務超過の状態が相当期間継続し、かつ、その営む事業に好転の見通しがないこと等の事由が生じていることにより、その個別評価金銭債権の一部の金額につき、その取立て等の見込みがないと認められる場合 事由3更生手続開始等の申立て等の事由が生じている場合 事由4外国の政府、中央銀行又は地方公共団体に対する個別評価金銭債権につき、これらの者の長期にわたる債務の履行遅滞により、その経済的な価値が著しく減少し、かつ、その弁済を受けることが著しく困難であると認められる事由が生じている場合 5. 税務上の貸倒引当金算定方法 まず、一括評価金銭債権と区分された場合、事業年度末の一括評価金銭債権に貸倒実績率を乗じた金額を限度額として貸倒引当金を計上できます。この貸倒実績率は原則として以下の算式で求めます。 (引用:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5501.htm) 資本金が1億円以下の中小法人等の場合は簡便的に以下の方法で計算することも可能です。 (注)法定繰入率に関しては、以下の表にまとめた通りです。 (引用:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5501.htm) 一方、個別評価金銭債権に区分された場合は、前項の税務上の債権区分で分類した事由1~事由4のどこに当てはまるかにより繰入限度額が異なります。 事由1の繰入限度額 会社更生法の更生計画認可の決定等の特定事由が発生した事業年度終了の日から5年を超えて支払われる金額です。そのため、5年以内に回収が予定されている金額は貸倒引当金として計上できません。 事由2の繰入限度額 金銭債権の金額から担保物処分見込額等の金額を差し引いた金額を貸倒引当金(回収不能見込み額)として計上できます。 事由3の繰入限度額 金銭債権の額から実質的に債権とみられない金額、および担保物処分見込額等を差し引いた金額に50%を乗じた額を限度として貸倒引当金を計上できます。実質的に債権とみられない金額とは、例として対象となる債務者に対して債権者側も債務をもっている場合、当該金額は債権と債務が相殺され実質的に債権とはならないため金銭債権金額から控除します。 事由4の繰入限度額 算定方法は事由3の繰入限度額と同じです。 6. おわりに
- [【国際課税Q&A】自由職業者(弁護士)に対する報酬の源泉徴収の要否](https://shiodome.co.jp/column/20389/) - 1. 質問 弁護士に対する報酬の支払いにあたっては、源泉徴収は必要でしょうか。弁護士が、①居住者である場合と、②非居住者である場合に分けて教えてください。 2. 回答 ①居住者である場合、所得税法第204条1項に挙げられる報酬に該当するため、源泉徴収が必要となります。②非居住者である場合、所得税法第161条十二項1項イに該当し、源泉徴収の対象となりますが、租税条約の適用により免税となるケースが多いと言えます。 3. 重要用語 居住者と非居住者 質問及び回答で登場している「居住者」及び「非居住者」について簡単に説明しますと、国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人を「居住者」といい、居住者以外の個人を「非居住者」といいます(所得税法2条1項三、五)。これらの定義及び各々の課税所得の範囲については、以前のコラムにて説明していますので、【国際税務Q&A】非居住者に対する報酬の源泉徴収の要否|RSM汐留パートナーズをご参照ください。 4. 根拠 1. 弁護士が居住者である場合 居住者に対しては、原則として全世界で生じた所得に対して日本で課税がなされていて(全世界所得課税)、源泉徴収が必要な報酬の種類については所得税法第204条1項にて列挙されています。 報酬の種類をまとめると次の通りで、居住者である弁護士に対して支払う報酬に対しては、10.21%の源泉徴収が必要となります(所得税法第204条1項2号、205条:100万円を超える部分の金額については、源泉徴収率は20.42%)。 2. 弁護士が非居住者である場合 国内法(所得税法)による判定非居住者に対しては、所得税法161条1項に規定される17種類の国内源泉所得だけに課税されます。本件については、弁護士に対する報酬ということで、所得税法161条1項十二イの「人的役務の提供」に該当するものと考えられます。人的役務の提供に関しては、国内において行われたもののみが国内源泉所得として認められるため、非居住者である弁護士による業務が国外にて行われた場合には、国内源泉所得には該当せず、日本での源泉徴収は不要となります。逆に、当該弁護士業務が国内にて行われた場合には、国内源泉所得として、日本で源泉徴収の対象となります。昨今は、国外から弁護士等の専門家を招き、講演等を依頼するケースも少なくないと思われます。このような場合には、非居住者である弁護士に対する支払報酬は、国内法上は源泉徴収の対象となることにご留意下さい。 租税条約による判定国内法上、国内源泉所得に該当し、非居住者に対する報酬が日本での課税対象となった場合にも、租税条約による軽減・免除がなされる場合が相当程度あります。よって、必ず個々の租税条約を確認する必要があります。一般的なOECDモデルの租税条約において、弁護士という職業は、「自由職業」に該当するものと判断できます。そして、多くの場合は租税条約上、自由職業者に対しては免税規定があり、「租税条約に関する届出書」をその報酬の支払者を経由して所轄税務署に提出している場合には、源泉徴収が不要となるケースがほとんどです。以下、例示として(1)韓国と(2)アメリカとの租税条約について見てみます。(1) 韓国日本と韓国との租税条約には、第14条(自由職業所得)が規定されており、第14条に【韓国】と【日本】という国を読み替えてわかりやすく示すと以下の通りです。第14条(自由職業所得)1. 【韓国】の居住者が自由職業その他の独立の性格を有する活動について取得する所得に対しては、次の⒜又は⒝に該当する場合を除くほか、【韓国】においてのみ租税を課することができる。(a) その者が自己の活動を行うため通常その用に供している固定的施設を【日本】に有する場合(b) その者が当該暦年を通じて合計183日以上の期間【日本】に滞在する場合以上より、韓国居住者の弁護士が日本国内で業務を行った場合の報酬に対しては、当該弁護士が日本国内にPEを有しておらず、且つ日本滞在日数が183日以内であれば、日本での課税が免除されるものと判断できます。(2) アメリカ韓国のケースとは異なり、日本とアメリカとの租税条約には、自由職業所得に係る条項は設けられていません。しかし、第3条(一般的定義)第1項(I)にて「『事業』には自由職業その他の独立の性格を有する活動を含む。」といった定義がなされており、自由職業所得については、第7条(事業利得)を参照できるものと解されます。よって、第7条の事業所得条項では、PEなければ課税なしの規定となっているため、アメリカ居住者の弁護士が日本国内で業務を行った場合の報酬に対しても、最終的に日本では課税が免除されると解されます。以上より、非居住者である弁護士が日本国内で行った業務に対して報酬を支払う場合、国内法上は所得税法161条1項に規定される国内源泉所得に該当し、課税対象となりますが、租税条約により、免税扱いにすることができる場合が多いと解されます。参考:【自由職業所得に係るOECDモデル租税条約の変遷】従来、OECDモデル租税条約では、自由職業所得についての 規定が設けられていましたが、2000年のOECDモデル租税条約の改正で、当該規定は削除されました。そして、自由職業その他の独立の性格を有する活動は「企業」及び「事業」に含まれ、自由職業所得には事業所得条項が適用されることになりました。日本の租税条約では、2004年日米租税条約改正前の租税条約においては、原則として、自由職業所得条項を設けていますが、それ以後の租税条約はOECDモデル改正後の形式のものが多くなっています(相手国の要請により、本条項を規定するものもあり)。 国際税務Q&A_自由職業者(弁護士)に対する報酬の源泉徴収の要否_20240109 (PDF)
- [【国際課税Q&A】衛星回線使用料に対する報酬の源泉徴収の要否](https://shiodome.co.jp/column/21144/) - 1. 質問 当社は、国内でコンテンツを制作(又は購入)し、世界各国に配信するため、海外の配信サービス会社にコンテンツ配信を委託しています。配信にあたって日本国外で利用する衛星回線(中継機器)の使用料を配信サービス会社に支払っていますが、当該報酬は日本での源泉徴収所得税の対象になるのでしょうか。 2. 回答 衛星回線使用料を中継機器(機械装置)の使用料と捉える場合、国内法では「使用地主義」に基づき日本国外で業務の用に使用されている機器であれば、源泉所得税の対象外と判断されますが、租税条約が「債務者主義」を採用する場合には、対価の支払いを行う法人の所在地がある日本での課税となり、源泉所得税の対象となる場合があります。 衛星回線使用料を役務提供の対価と捉える場合、国内法では国内での役務提供に該当しなければ課税対象外となり、租税条約においても日本における課税対象外と判断されます。 3. 参考にされる考え方 1. 衛星回線使用料に係る契約 海外の配信サービス会社にコンテンツ配信を委託する契約には、配信に必要な衛星回線(中継機器)の使用に関する内容が含まれます。この中継機器の使用に係る対価が日本での源泉所得税の対象になるか否かは、当該使用料が所得税法161条1項各号に規定される「国内源泉所得」のいずれかに該当するか否かによって判断されることとなります。 実際には、契約書の文言や内容を個別具体的に検討し、事実認定する必要があります。 2. 中継機器の使用料に対する考え方 中継機器の使用料に対する考え方については、国内法上の法令等には明確な規定等はないものと思われますので、現在のOECDモデル租税条約(2017年版)コメンタリー12条パラグラフ2に関する9.1における考え方についてここで紹介します。コメンタリーでは、次のように解説されています。 「放送事業者や電気通信事業者は、海外に放送等を送信するために、衛星オペレータを所有する衛星中継装置の容量を使用する中継装置リース契約を締結することがある。 典型的な中継装置リース契約では、対価は衛星中継装置の伝送容量を使用するために支払われる。その際に、衛星オペレーターの衛星技術は放送事業者や電気通信事業者等の顧客に移転されていないので、情報又は秘密工程の使用又は使用する権利の対価とみることはできない。したがって、このような対価は使用料を構成しない。 ただし、産業上、商業上又は学術上の設備(ICS設備)のリースを使用料の定義に含む租税条約では、契約内容により使用料となる場合がある。多くの場合、中継装置のリースという名称を使っているが、借手は、中継装置を物理的に占有できるわけではなく送信容量が割り当てられるだけである。貸手が衛星を運営し、借手は割り当てられている中継装置にアクセスできない。このような場合、支払は、ICS設備の使用又は使用の権利の対価ではなく、第7条が適用されるサービスの対価の性質を持つ。(以下省略) 」 したがって、OECDモデル租税条約においては、中継機器リース契約の対価は基本的には第12条の使用料ではなく、第7条の事業所得が適用されるとしています。 3. 根拠 1. 衛星回線使用料を中継機器の使用料と考える場合 (1) 国内法による判定 所得税法第161条1項11号は、「国内において業務を行う者から受ける次に掲げる使用料又は対価で当該業務に係るもの」と規定し、 「当該業務に係るもの」とは、国内において業務を行う者に対し提供された同号イ、ロ又はハに規定する資産の使用料又は対価で、当該資産のうち国内において行う業務の用に供されている部分に対応するものをいうとしています(所得税基本通達第161-33)。 即ち、国内法においては、いわゆる「使用地主義(資産や権利等が使用された場所を所得源泉地とする考え方)」が採用されているといえます。したがって、「使用地主義」のもとでは、中継機器は日本国外で業務の用に使用されているという観点から、日本での源泉所得税の対象外と判断されます。 (2) 租税条約による判定 国内法と租税条約の源泉規定が異なる場合には、国内法の源泉規定を租税条約上の規定に置き換えて、国内源泉所得を取り扱う(源泉置換規定)ことになります。 日本が締結している租税条約の中には、使用料について源泉徴収が必要な場合に「使用地主義」ではなく、「債務者主義(使用料等を支払う者の居住地を所得源泉地とする考え方)」により源泉地の判定を行う条約もありますので、必ず配信サービス会社の所在する国との間で締結されている租税条約を確認する必要があります。 「債務者主義」を採用する租税条約が適用される場合には、中継機器の使用地が海外であるにも関わらず、その使用料の対価の支払者、つまり債務者が日本居住者であるため、所得源泉地は日本となり、日本における源泉所得税の対象と判断されます。 なお、この場合には租税条約上の限度税率が定められているため、租税条約に係る届出書を提出することにより、当該限度税率に基づく源泉所得税を徴収することになります。 また、本件の中継機器のような設備の使用料を租税条約上の使用料条項に含める国と、含めない国が存在しているため、この点からも個別の租税条約の検討が必要となります。 2. 衛星回線使用料を役務提供の対価と考える場合 (1) 国内法による判定 衛星回線の使用を、役務の提供に該当すると判断する場合は、一定の人的役務提供事業が国内で行われているときは、源泉徴収対象となる国内源泉所得として扱われます(所得税法161条1項六) 。それゆえ、衛星回線の使用が国外で行われている場合は、国内源泉所得には該当せず、日本における課税対象外と判断されます。 (2) 租税条約による判定 OECDモデル租税条約では、上記の源泉徴収が必要となる 一定の人的役務の提供事業から生じる所得は「事業利得」に含まれ、7条にて記載がなされています。7条(事業利得)においては、非居住者や外国法人の事業所得に対しては、非居住者等が日本に事業拠点(PE)を有し、これを通じて日本において事業を行わない限り、日本では課税されない(PEなければ課税なし)という内容が示されています。 本ケースのように、衛星回線の使用は国外にて行われている場合、租税条約上も日本での課税対象外と判断されます。 国際税務Q&A_衛星回線使用料に対する報酬の源泉徴収の要否 (PDF)
- [【国際課税Q&A】過少資本税制の適用](https://shiodome.co.jp/column/21480/) - 1. 質問 米国法人(親会社)により、各々100%保有される日本法人(当社)とシンガポール法人(兄弟会社)があります。 当社がシンガポールの兄弟会社から借入を行った場合、これに係る支払利子は、過少資本税制の対象となるでしょうか。 過少資本税制の対象となる場合、損金不算入となる支払利子部分に対しても源泉徴収は必要でしょうか。 2. 回答 原則として、兄弟会社も国外支配株主に該当し、負債資本比率が3:1超などの要件を満たす場合は、過少資本税制の対象となります。 基本的に源泉徴収は支払う利子全額に課されるため、損金不算入部分も含めた支払利子に対して源泉徴収が必要となります。ただし、租税条約により源泉税率の減免がなされる場合があります。 3. 重要用語 質問及び回答にて言及されている「過少資本税制」という制度は、国際税務における重要な制度の1つであるため、ここで掘り下げて確認したいと思います。 1. 制度趣旨及び概要 企業が海外の関連企業から資金を調達するのに際し、出資(関連企業への配当は損金算入できない)を少なくし、貸付け(関連企業への支払利子は損金算入できる)を多くすれば、日本での税負担を軽減することができます。 過少資本税制は、海外の関連企業との間において、出資に代えて貸付けを多くすることによる租税回避を防止するため、外国親会社等の資本持分の一定倍率(原則として3倍)を超える負債の平均残高に対応する支払利子の損金算入を認めないこととする制度です。 2. 適用要件 以下の2つの要件を満たす場合に、過少資本税制が適用され、国内企業から海外の関連企業への支払利子の損金算入に制限がかかることになります。また要件に出てくる「国外支配株主等」「資金供与者等」についても以下を参照して下さい。 2要件 国外支配株主等(*1)及び資金供与者等(*2)に対する平均負債残高 > 国外支配株主等の資本持分×3 総負債に係る平均負債残高 >自己資本の額×3 まず、(1)の要件を判定し、該当する場合は(2)の要件にも該当するかの判定を行うことになります。 国外支配株主等(*1) 国外支配株主等とは、非居住者等で内国法人との間に次の関係があるものをいいます(租税特別措置法第66条の第5項1号、租税特別措置法施行令第39条の13第12項)。 内国法人の発行済株式等の50%以上を直接又は間接に保有する非居住者等 内国法人の発行済株式等の50%以上を直接又は間接に保有する者によって、その発行済株式等の50%以上を直接又は間接に保有される外国法人 内国法人の事業の方針の全部又は一部につき実質的に決定できる関係にある非居住者等 よって、①②の持株基準を回避したとしても、③の実質支配基準により借入金の大部分を非居住者等から調達している場合には、国外支配株主等に該当するケースが多いと考えられます。 資金供与者等(*2) 資金供与者等とは、内国法人に資金を供与する者及びその資金の供与に関係のある者をいいます。 3. 損金不算入となる支払利子額 過少資本税制が適用される場合、以下の算定式により支払利子の損金不算入額が算定されます。 <算定式>支払利子等の額×(国外支配株主等に係る平均負債残高-国外支配株主等の資本持分×3)÷国外支配株主等に係る平均負債残高 4. 根拠 1. 過少資本税制が適用になるか否かの判定 兄弟会社は、上述の「国外支配株主等」の説明における②「内国法人の発行済株式等の50%以上を直接又は間接に保有する者によって、その発行済株式等の50%以上を直接又は間接に保有される外国法人」に該当するものと考えられます。本件では、米国法人(親会社)による日本法人(当社)とシンガポール法人(兄弟会社)保有率が各々100%となっているため、兄弟会社であるシンガポール法人は当社にとって国外支配株主となります。 それゆえ、上述の過少資本税制の適用2要件(負債資本比率が3:1超)を満たす場合には、過少資本税制の対象となります。 2. 損金不算入部分の支払利子に係る源泉徴収 過少資本税制の適用により、日本における支払利子の損金算入が否認されたケースにおいても、海外の関連企業への支払利子の全額に、原則として20.42%の源泉所得税が課されることに変わりはありません。 一方で、租税条約により源泉税率の減免がなされる場合があるため、本件に関しては、シンガポールと日本の租税条約を確認する必要があります。以下租税条約のうち、該当部分を抽出します。 日星租税条約 第11条(利子) 一方の締約国内において生じ、他方の締約国の居住者に支払われる利子に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。 1の利子に対しては、当該利子が生じた締約国においても、当該締約国の法令に従って租税を課することができる。その租税の額は、当該利子の受領者が当該利子の受益者である場合には、当該利子の額の10パーセントを超えないものとする。 -略- 上記第11条(利子)第2項より、本件の場合は、源泉税率は10%以内に減免されることとなります。 国際税務Q&A_過少資本税制の適用
- [【国際課税Q&A】eスポーツ選手に対する報酬の源泉徴収及び確定申告の要否](https://shiodome.co.jp/column/21729/) - 1. 質問 韓国人のeスポーツ選手が日本で活動して日本の法人から報酬を得る場合、その報酬に対する日本での源泉徴収及び確定申告の要否について教えてください。 2. 回答 日本での課税は、当該韓国人eスポーツ選手が日本の税法上の「居住者」又は「非居住者」であるかによって異なります。 居住者である場合、その報酬が所得税法第204条1項各号のいずれかに挙げられる報酬に該当する場合には、源泉徴収が必要となります。また、税額の過不足を調整すべく、確定申告が必要となります。 非居住者である場合、所得税法第161条1項12号イの「人的役務の提供に対する報酬」に該当し、eスポーツ選手を運動家と税務上考える場合には、日韓租税条約17条においても、日本での課税権を認めているため、20.42%の源泉徴収が必要となります。これについては源泉分離課税となり、日本での確定申告は不要となります(所得税法第169条)。 3. 居住者と非居住者 質問及び回答で登場している「居住者」及び「非居住者」について簡単に述べると、国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人を「居住者」といい、居住者以外の個人を「非居住者」といいます(所得税法第2条1項三、五)。これについては、以前のコラム、【国際税務Q&A】非居住者に対する報酬の源泉徴収の要否 | RSM汐留パートナーズ もご参照ください。 根拠 1. 韓国人eスポーツ選手が居住者である場合 居住者に対しては、原則として全世界で生じた所得に対して日本で課税がなされ、源泉徴収が必要な報酬の種類については所得税法第204条1項各号に列挙されています(下表参照)。 所得税法第204条1項4号の「プロ野球選手、プロサッカーの選手、プロテニスの選手…」というカテゴリーがあり、これらは限定列挙と一般的には考えられていますが、eスポーツ選手はこのカテゴリーには列挙されていません。 しかし、eスポーツ選手という職業が4号に該当しないとしてもeスポーツ選手の活動が他のカテゴリー(5号のテレビ出演料や8号の広告宣伝目的の賞金等)に該当する可能性があり、この場合は報酬金額に応じて10.21%又は20.42%の源泉徴収が必要になると考えられます(所得税法第205条)。 その上で、翌年の確定申告期限までに確定申告を行い、必要に応じて追加の納税又は過払分の還付を受けることとなります。 2. 韓国人eスポーツ選手が非居住者である場合 ①国内法(所得税法)による判定 非居住者に対しては、所得税法第161条1項に規定される国内 源泉所得だけに課税されますが、eスポーツ選手に対する報酬は、所得税法第161条1項12号イの「人的役務の提供に対する報酬」に該当するものと考えられます。 人的役務の提供に関しては、国内において行われたもののみが国内源泉所得として認められますが、本件の場合は、eスポーツ選手の日本での活動に対する報酬であることから、国内において行われたものであり、国内源泉所得として日本での源泉徴収の対象となります。 ②租税条約による判定 国内法上、国内源泉所得に該当し、非居住者に対する報酬が日本での課税対象となった場合にも、租税条約による軽減・免除がなされる場合が相当程度あるため、個々の租税条約を確認する必要があります。 本件の場合、日韓租税条約において、eスポーツ選手という職業が、第14条の自由職業所得とみるか、第17条の運動家・芸能人でみるかという点で論点となります。この点、日韓租税条約自体の解説ではないものの、日韓租税条約17条に対応するOECD条約第17条に関するコメンタリーにビリヤードやチェスのような娯楽要素がある活動も運動家に該当するという記載があることを参照すると、eスポーツ選手も運動家に該当し、日韓租税条約第17条の運動家・芸能人のカテゴリーに含まれる可能性が高いのではないかと考えられます。 この場合、日韓租税条約第17条は、滞在日数に関わらず日本での課税権を認めています。よって、20.42%の源泉徴収の対象とされますが、この部分については、源泉分離課税となるため、後日、日本での確定申告は不要となります。 4. リバースチャージ方式による消費税の申告 韓国人eスポーツ選手が非居住者である場合の報酬に関しては、消費税についてはリバースチャージ方式の申告が必要となる点にも留意が必要です。 リバースチャージ方式(逆課税制度)とは、通常、商品やサービスの売り手が納付する消費税を、買い手が直接納税するシステムをいいます。この方式は国際的なサービス取引や、特定業界における取引、電子サービス取引などに対して適用されます。リバースチャージの主な目的は、税逃れを防ぎ、税制の公平性を保つことにあります。 リバースチャージ方式が適用される取引の一つに、「特定役務の提供」があります。「特定役務の提供」に該当するものとしては、具体的に以下のものが挙げられます。 国外事業者が、対価を得て他の事業者に対して行う 芸能人としての映画の撮影、テレビへの出演 俳優、音楽家としての演劇、演奏 スポーツ競技の大会等への出場 それゆえ、本ケースの韓国人eスポーツ選手の活動が上記のいずれかに該当する場合には「特定役務の提供」に該当するものといえます。 特定役務の提供を受けた課税事業者は、リバースチャージ方式による申告納税を行うこととなります。その際には、特定課税仕入れに係る支払対価(受けた特定役務の提供の対価の額)が消費税の課税標準となり、特定課税仕入れは通常の課税仕入れと同様に、仕入控除税額の計算の基礎にもなります(国外事業者が行う芸能・スポーツ等に係る消費税の課税方式の見直しについて | 国税庁 参照)。 なお、特定役務の提供を受けた課税事業者の課税売上割合が95%以上である場合等は、リバースチャージは適用されません。 国際税務Q&A_eスポーツ選手に対する報酬の源泉徴収及び確定申告の要否 (PDF)
- [【国際課税Q&A】eスポーツ選手に対する報酬の 源泉徴収及び確定申告の要否 Vol.2(法人経由)](https://shiodome.co.jp/column/21806/) - 1. 質問 前回コラム(【国際課税Q&A】eスポーツ選手に対する報酬の源泉徴収及び確定申告の要否 | RSM汐留パートナーズ)に引き続き、韓国人のeスポーツ選手が日本で活動し、それに対する報酬を韓国のマネジメント会社から受け取る場合、日本での源泉徴収と確定申告の要否について教えて下さい。 【前提条件】 ①韓国のマネジメント会社は、日本に支店(PE)を有していない。 ②報酬の支払いの流れは、日本法人から韓国のマネジメント会社を経由し、韓国人eスポーツ選手へと行われる。 2. 回答 1. 日本法人から韓国法人への報酬 韓国のマネジメント会社は、所得税法第161条1項6号の人的役務提供事業を担っていると判断でき、所属する韓国人のeスポーツ選手が日韓租税条約上の運動家に該当する場合、日韓租税条約17条においても、日本での課税権を認めているため、日本での20.42%の源泉徴収が必要となります。 2. 韓国法人から韓国人eスポーツ選手への報酬 ①eスポーツ選手が非居住者の場合、追加の源泉徴収は不要となり、確定申告も不要と考えられます。 ②eスポーツ選手が居住者の場合、源泉徴収は不要となりますが、確定申告は必要になると考えられます。 3. 根拠 1. 日本法人から韓国法人への報酬 ①国内法(所得税法)による判定 韓国のマネジメント会社は、eスポーツ選手を派遣することを事業としていると考えられることから、本件の日本法人から韓国法人へのeスポーツ選手の国内での活動に関する報酬は、eスポーツ選手を職業運動家と考える場合、所得税法第161条1項6号の「国内において人的役務の提供を主たる内容とする事業で政令で定めるものを行う者が受ける当該人的役務の提供に係る対価」に該当するものと考えられます。よって、国内源泉所得として日本での源泉徴収の対象となります。 ②租税条約による判定 eスポーツ選手は、前回コラムで検討した通り、日韓租税条約の第14条(自由職業所得)ではなく、第17条(芸能人)と考えるものと判断できるため、それに係る韓国法人の事業に係る報酬も、通常の事業所得を規定する第7条としてではなく、第17条(芸能人)2項に従って考えるものと判断できます。 日韓租税条約第17条2項aを参照すると、以下の通りです。 日韓租税条約 第17条(芸能人) 2(a) 一方の締約国(注:本件の場合は日本)内で行う芸能人又は運動家としての個人的活動に関する所得が当該芸能人又は運動家以外の他方の締約国(韓国)の居住者である者に帰属する場合には、当該所得に対しては、第7条、第14条及び第15条の規定にかかわらず、当該芸能人又は運動家の活動が行われる当該一方の締約国(日本)において租税を課することができる。 よって、日韓租税条約を考慮しても、日本に課税権があるものと判断できます。ここでは税率軽減に関する記載もないため、国内法の原則に従って、税率20.42%が適用されることとなります。 その上で、本件のように日本にPEを有しない外国法人においても、人的役務提供事業については、原則として、法人税の確定申告において徴収された源泉徴収税について、その法人から所属するeスポーツ選手に支払われる報酬に係る源泉所得税とみなされる金額を除き、精算ができるものと考えられます(法人税法第141条2号、第144条、第144条の6 第2項)。 2. 韓国法人から韓国人eスポーツ選手への報酬 韓国のマネジメント会社から報酬を受ける韓国人eスポーツ選手が、日本の税法上の非居住者であるか、居住者であるかで日本での課税の取扱いは異なります。 ①eスポーツ選手が非居住者の場合 eスポーツ選手に対する報酬は、所得税法第161条1項12号イの「人的役務の提供に対する報酬」に該当するものと考えられます(前回コラム参照)。 その上で、本件では、eスポーツ選手が韓国法人から報酬を受領する前に、韓国法人が日本法人から報酬を受領する段階で、既に源泉徴収がされているとみなす規定が存在しています。よって韓国法人からeスポーツ選手に報酬が支払われる際には、所得税法第215条(以下参照)の規定により、追加での源泉徴収は不要と判断できます。また、日本での確定申告も不要と判断できます(所得税法第164条2項、169条)。 所得税法 第215条 非居住者の人的役務の提供による給与等に係る源泉徴収の特例 国内において第161条第1項第6号(国内源泉所得)に規定する事業を行う非居住者又は外国法人が同号に掲げる対価につき第212条第1項(源泉徴収義務)の規定により所得を徴収された場合には、政令で定めるところにより、当該非居住者又は外国法人が当該所得税を徴収された対価のうちから当該事業のために人的役務の提供をする非居住者に対して、その人的役務の提供につき支払う第161条第1項第12号イ又はハに掲げる給与又は報酬について、その支払の際、第212条第1項の規定による所得税の徴収が行われたものとみなす。 ②eスポーツ選手が居住者の場合 国内法上、国内源泉所得に該当し、非居住者に対する報酬が日本での課税対象となった場合にも、租税条約による軽減・免除がなされる場合が相当程度あるため、個々の租税条約を確認する必要があります。 所得税法第215条は条文的には「当該事業のために人的役務の提供をする非居住者に対してその人的役務の提供につき支払う第161条第1項第12号イ又はハに掲げる給与又は報酬」を払う場合の取り扱いなので、eスポーツ選手が居住者である場合には、第215条の適用とはならないと考えられます。 一方で、前回コラムで検討した通り、eスポーツ選手という職業に基づき得る報酬は、所得税法第204条1項4号(職業運動家:プロ野球選手、プロサッカーの選手、プロテニスの選手、モデルや外交員などに支払う報酬・料金)又は5号(芸能人:映画、演劇その他芸能、テレビジョン放送等の出演等の報酬・料金や芸能プロダクションを営む個人に支払う報酬・料金)に該当する可能性があり、この場合、本来は源泉徴収が必要になると考えられます(所得税法第205条)。 しかしながら、韓国法人が日本の居住者に報酬を払う場合は、国外支払いとなり、204条の対象外と整理することが可能と考えます。それゆえ、韓国法人が日本居住者に対して報酬を支払う際には、日本の源泉徴収は不要であると解釈できるものといえます。 ただし、韓国法人から受領した報酬であったとしても、eスポーツ選手が居住者である場合には、当然、日本における確定申告による納税が必要となります。 国際税務Q&A_eスポーツ選手に対する報酬の源泉徴収の要否(vol.2:法人経由)
- [グローバル・ミニマム税制の国内法導入と日本の外資系企業の必要な対応について](https://shiodome.co.jp/column/21839/) - グローバルミニマム課税とは、経済協力開発機構(OECD)において合意された課税ルールのことです。どの国でビジネスを行ったとしても最低税率15%以上の法人税の課税を確保することを目的としています。韓国は2022年12月に世界で初めてとなる立法を行ったほか、ドイツ、イギリス等も法案を用意しています。またEUやグローバルサウス諸国は法案準備を進めているなど、グローバルミニマム税導入国(特に国内ミニマム税導入国)は今後一気に広がりそうです。本稿では、日本におけるグローバルミニマム税制の導入が外資系企業に及ぼす影響とその対応について解説していきます。 1. 日本におけるグローバルミニマム税制とその適用時期について ①OECDで合意したグローバルミニマム税を構成する3ルール 日本において2023年3月28日に「所得税法等の一部を改正する法律」が創設されています。昨年度のOECDで合意したグローバル・ミニマム課税のルールのうち、所得合算ルール(Income Inclusion Rule:IIR) に係る法制化として、各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税が創設されました。なお、他のルールである軽課税所得ルール(Under Taxed Profits Rule:UTPR) 及び国内ミニマム課税(Qualified Domestic Minimum Top-up Tax:QDMTT) 等は今年度以降の法制化が検討されています。 Ⅰ.所得合算ルール(IIR:Income Inclusion Rule) 参照元:国税庁(https://www.nta.go.jp/publication/pamph/hojin/kaisei_gaiyo2023/pdf/I.pdf) 所得合算ルールとは、子会社等の税負担がグローバルミニマム課税の最低税率である15%未満である場合、上乗せ課税額を最終親会社に課し最終親会社居住国にて納税するルールのことです。日本では、2025年4月1日以後に開始する対象会計年度から適用されます。 Ⅱ.軽課税所得ルール(UTPR:Undertaxed Profits Rule) 参照元:国税庁(https://www.nta.go.jp/publication/pamph/hojin/kaisei_gaiyo2023/pdf/I.pdf) 軽課税所得ルールとは、親会社等の税負担が最低税率の15%未満である場合、子会社等の所在地で15%に至るまで上乗せ課税額の課税を行うルールのことです。 Ⅲ.国内ミニマム課税(Qualified Domestics Minimum Top-up Tax) 参照元:国税庁(https://www.nta.go.jp/publication/pamph/hojin/kaisei_gaiyo2023/pdf/I.pdf) 国内ミニマム課税とは、日本国内に所在を持つ企業等の税負担が15%未満である場合、最低税率である15%に至るまで課税を行う制度のことです。 国内ミニマム課税によって、グループ関連企業が最低税率まで課税をされた場合、X国の税務当局から「所得合算ルール」や「軽課税所得ルール」に則った課税は行われないのが特徴です。つまり日本国が15%分の課税を行い、X国による課税は行われません。 ②日本における「各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税」の創設 グローバル・ミニマム課税のルールのうち、所得合算ルールに係る法制化として、日本において、「各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税」が創設されました。この各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税は、グループの全世界での年間総収入金額が7億5,000 万ユーロ以上の多国籍企業グループを対象にしており、実質ベースの所得除外額を除く所得について国ごとに基準税率15%以上の課税を確保する目的で、下図のように、子会社等の所在する軽課税国での税負担が基準税率15%に至るまで、日本に所在する親会社等に対して上乗せ(トップアップ)課税を行う制度です。 日本における「国際最低課税額」に関連する税法の改正点の概要は以下の通りです。特定多国籍企業グループに属する内国法人は、国際最低課税額をその持分に応じて計算し、対象会計年度終了後1年3か月以内に国際最低課税額に基づく法人税の申告を行い、申告書の提出期限までに税金を納付する必要があります。 そして国際最低課税額に対する法人税は、課税標準に特定の税率を乗じて計算されます。関連して、「特定基準法人税額に対する地方法人税」が新設され、これに関する申告及び納付が必要です。また、特定多国籍企業グループに属する構成会社等は、国別の実効税率やグループ国際最低課税額などの情報を税務当局に提供する制度が創設されました。 ※グローバル・ミニマム課税の導入に伴い、特定外国関係会社に係る合算課税の適用を免除する基準が見直され、一定の条件を満たす場合には、関連する書類の添付が不要となります。 2. OECDで合意したグローバルミニマム課税の国内法導入による外資系日本企業への影響 グローバルミニマム課税が導入されることで、多国籍企業は世界中のどこで事業を行っていたとしても、必ず15%の税負担が求められます。つまり、これまで税負担の少ない国であるタックスヘイブンへの租税回避ができなくなることを意味します。 しかし今回日本におけるグローバルミニマム課税の導入適用についてはIIRのみとなります。現状UTPRの導入がないため、 国外親会社の視点から今回の日本での税制改正における影響はほとんどないと考えられます。 また、日本の法人税実効税率が他国と比し相対的に低くなく基準税率15%に対しても余裕があり、今後も外資系日本企業に対し日本国内法にグローバルミニマム課税の導入による影響は限定的と考えられます。 一方で、欧米諸国は日本よりもタックスヘイブンによる利益移転が多いとされているため、日本においてグローバルミニマム課税が導入されると、欧米企業の負担増は避けられないものと考えられています。 ①事務負担の軽減措置 グローバルに事業を展開している多国籍企業グループは、進出している国に合わせて税額を計算する事務負担が発生しています。企業の事務的な負担が大きくなることが懸念されますが、進出国が数十カ国にもなる場合、事務負担軽減のため適用免除基準が設けられています。 適用免除基準とは、以下のいずれかの条件を満たす場合、その構成会社等の所在地国の国別国際最低課税額は0(ゼロ)とされ、国際最低課税額の計算が不要になることです。適用免除基準が用いられることで、グローバルに展開している企業であっても、事業規模の小さい国については、税額算定が免除されるため、事務負担の軽減につながります。 適用免除基準 構成会社等が各種投資会社等に該当しない。 多国籍企業グループ等のその国における収入金額(直近3年間の平均額)が 1,000
- [外国企業の日本進出時に検討すべき資金拠出形態(資本金・貸付と過少資本税制)](https://shiodome.co.jp/column/21835/) - 1. はじめに 外国企業が日本に進出する際、子会社を日本に設立するというのが最もオーソドックスな進出形態となります。その際、日本現地子会社の経営において資金が必要となるため、親会社による資本金拠出や貸付による資金調達が行われます。一見、いずれの資金拠出形態においても優劣はないと感じられますが、税務上の優劣などでその後の経営上の違いが生じます。そのため、本記事においては資本拠出形態について決定するにあたって考慮すべき事項を解説いたします。 2. 資金拠出形態と税金 先に述べたように資本金として拠出した場合、拠出した外国企業は株主として子会社より配当金を受け取ることになります。一方、貸付金として資金拠出した場合、外国企業は貸付金に対する利息を子会社より受け取ることになります。子会社にフォーカスすると、支払配当金については、税務上損金算入はできませんが、支払利息については、損金算入が可能です。そのため、多くの国で借入金により資金拠出を受け支払利息により還元する方が税務上有利となります。そこで、資金拠出形態の割合を調整することで子会社の納税額を調整することにより不当に税金逃れができてしまうスキームを制限するために、多くの国では過少資本税制を導入しており、日本も例外ではありません。 3. 過少資本税制 過少資本税制は基本的な考え方、目的は貸付による資金拠出によっての税金逃れを規制することですが、国によって具体的な規定内容は異なります。日本における過少資本税制について規制内容を解説させていただきます。 日本における過少資本税制計算方法(規制対象判定) 日本における過少資本税制では、国外親会社からの借入金額が資本金額の3倍を超える場合に規制対象となります。つまりデット・エクイティ・レシオ(負債資本比率)が3:1を超えて負債比率が高い場合に子会社における利息の支払額損金算入に制限がかかってくることになります。 反対に、全負債額(外国親会社に対する負債のみではない)と純資産額を用いたデット・エクイティ・レシオが3:1を超えない場合は規制免除となります。この場合の資本については、子会社の純資産額において計算されます。そのため、子会社の業績によって毎期規制対象となるか否か変動してくることとなります。過年度規制対象外であっても日本子会社の業績悪化に伴い急に規制対象となる可能性があるので留意が必要です。 なお、デット・エクイティ・レシオ計算時には負債・資本いずれも期中平均額を使用します。 日本における過少資本税制計算方法(損金不算入金額算定) 日本において過少資本税制の対象となった場合、原則として外国親会社に支払う利息のうち、デット・エクイティ・レシオが3:1を超える部分に該当する利息分が損金不算入となります。具体的な計算式は以下の通りです。 損金不算入額=外国親会社への支払利息×平均超過額/外国親会社からの平均借入額※平均超過額=外国親会社からの平均借入額-外国親会社からの資本金額×3※規制対象判定、損金不算入金額算定いずれも個別の状況により若干計算方法は変わってきますが基本の考え方、計算ロジックは上記の通りとなります。 4. 資金拠出形態とバランス決定における考慮事項と対策 日本進出の際、過少資本税制による税務上の論点のみならず、会社法、ビザなど資本金額に対する規制は多岐にわたるため、総合的に検討していく必要があります。このうち過少資本税制については規制対象になったとしても規制違反というわけではないため検討せずとも会社設立自体は可能ですが、設立後の会社経営に大きく影響してくるので設立段階より検討することを推奨します。 日本進出後の過少資本税制への対策 日本子会社設立時に過少資本税制の対象から外れるよう資金拠出形態の割合を調整したとしても、日本子会社の業績が芳しくなく過少資本税制の規制にかかることが見込まれる場合、対策を打たなければ支払利息の一部が日本の法人税計算上損金不算入処理されてしまいます。借入金の割合を減らすことでデット・エクイティ・レシオを規制の範囲内に調整することも一つ対策としてありますが、多くのケースで子会社の業績が芳しくない中での返済は現実的ではありません。そこで効果的な対策として検討されることをおすすめしたいのは「増資」、もしくは「デット・エクイティ・スワップ(DES)」です。デット・エクイティ・スワップ(DES)は借入金を資本金に振り替える処理で、その結果、負債資本比率が低下します。 まず増資・DESに共通して注意すべき点としては、外資規制との兼ね合いです。税務面での過少資本税制を回避するためにこれらを資本再編検討する際には、会社法など法務面の調査も必要となります。たとえば外資規制で外資比率が規制されているケースなどは多くの国で見受けられますが、資本再編により外資比率が増すため、この点税務法務両側面での評価が必要となります。また何かしらの恩典を受けており、当該恩典の条件に外資比率が指定されているなどのケースもあります。過少資本税制への対策は資本構成の変動が伴うため、多方面への影響に気を配りながら慎重に考える必要があります。 さらに、日本においては過大支払利子税制の規制が別途存在し、資本再編によって過少資本税制の規定内のデット・エクイティ・レシオ(負債資本比率)に調整したとしても支払利息が損金不算入となるケースもあります。そのため、会社法などの法務面や外資規制、過少資本税制以外の税制との兼ね合いを総合的に評価したうえで、資本再編により過少資本税制対策の効果を検討していく必要もあります。 5. おわりに 外国企業が日本進出する際の重要な論点となってくる資金拠出の形態について主に税務面との関連性について解説をさせていただきました。日本子会社設立時のみならずその後の日本子会社経営においても資金注入方法を検討する必要があります。さらに日本子会社サイドの法務面、税務面のみならず親会社居住国における取り扱いも含めて総合的に検討・判断する必要があり、それらを包括的・継続的にアドバイスできるコンサルティング会社に委託することが重要になります。そして、コンサルティング会社に任せると同時に貴社グループ内でもポイントを抑えてグループ会社全体の経営上のベストソリューションを導き出していくことも重要です。
- [日本における年間の税務業務とスケジュール:外資系日本法人特有の留意点とは](https://shiodome.co.jp/column/21976/) - 1. はじめに 外資系日本法人が事業を開始する際、親会社居住国の制度との違いで日常的なオペレーションに苦労するケースが多々あります。日本での事業・オペレーションは日本人を雇用し対応している会社も多いようですが、親会社サイドで日本のオペレーションを把握していないことによる弊害が生じる場合があります。例えば連結財務諸表作成時に日本のオペレーションが親会社サイドにも影響を及ぼす可能性や、親会社が進出意思決定をした際に想定していた以上の業務負担などが生じ、当初の想定から変更せざるを得なくなる可能性もあります。 日本進出においては、オペレーションに直結する主な制度を親会社サイドでも理解しておくことが非常に重要です。そこで本記事では、外資系企業が日本進出時に年間で対応すべき税務の主な事項や業務、スケジュールについて解説します。 2. 日本における基本的な税務業務スケジュール 日本においては個人にかかる税務業務スケジュールは法人の決算期の影響を受けませんが、法人にかかる税務業務スケジュールは法人の決算期によりスケジュールが変わってきます。日本では法人の会計決算期は自由に設定ができ、多くの内資日本法人は3月決算を選択します。一方、外資系日本法人の多くは連結親会社の決算期に合わせ12月を決算期として設定するのが一般的です。そのため、本記事では12月を決算期として設定している外資系日本法人の税務業務スケジュールを解説します。 【法人税関連】 日本では、会計上の利益に加算調整、減算調整を入れ、税務上の所得である課税所得を算出し、法人税率を乗じて法人税額が算定されます。法人確定申告・納税のタイミングで法人税に加え、法人住民税、地方法人税、法人事業税、特別法人事業税の申告納税が必要です。そのため、法人税等と表現することもあります。以下、法人税等に関連する申告・納税スケジュールです。特に確定申告については期末日後2か月以内に申告・納税する必要があり、国際的にみても比較的タイトなスケジュールといえます。また、日本では国内取引に関し源泉所得税の対象となる取引は国際的にみると多くありませんが、海外取引については配当金、支払利息、使用料等の国際支払いなどについて源泉所得税の対象となってくるケースがあります。外資系日本法人の場合、海外取引が多く生じると想定されるため、源泉所得税の申告納税期日や租税条約の適用申請タイミング(後述)について該当取引が多数発生する可能性があり留意が必要です。 法人税等確定申告および納税:2月末期限(年1回)※申告については、1か月の延長可能源泉所得税の納付:翌月10日期限(年12回)法人税等中間申告および納税:8月末期限(年1回)※1※1:日本においては中間法人税は前期法人税額が20万円を超えている場合に必要となります。 【消費税関連】 日本においては、消費税は課税事業者登録した事業者に対して申告・納税が課せられます。一定の条件を満たした会社は予定申告・納付も必要となります。以下、消費税に関連する申告・納税スケジュールです。 消費税確定申告および納税:2月末期限(年1回)※※申告については、1か月の延長可能消費税予定申告および納付(A会社):8月末期限(年1回)消費税予定申告および納付(B会社):5月末、8月末、11月末期限(年3回)消費税予定申告および納付(C会社):確定申告月以外の毎月末期限(年11回)※消費税の予定申告および納付の頻度については以下の会社分類に応じ上記のスケジュールが適用されます。 A会社:前期の課税期間の税額が48万円超、400万円以下の会社B会社:前期の課税期間の税額が400万円超、4,800万円以下の会社C会社:前期の課税期間の税額が4,800万円超の会社 (補足)日本ではインボイス制度が2023年10月以降導入されており、非課税事業者への支払いについて仕入税額控除が認められなくなりました。取引相手が課税事業者か否かで意思決定や事務処理、会計処理が変わってくるなどオペレーションへの影響も大きい新制度導入です。そのため、インボイス制度を熟知しているバックオフィススタッフが必要になるなど、人員の面でも留意する必要があります。 【その他税金】 固定資産税の納税:年4回※2※2:日本では、固定資産税は毎年1月1日時点で対象資産(土地や家屋)を所有している個人・法人に課される税金であり、毎年4~5月ころに市町村から届く納税通知書をもとに納税します。納税期日は自治体によって異なりますが、多くの場合以下の通りです。4月(第1期)、7月(第2期)、12月(第3期)、2月(第4期) 3. 外資系日本法人特有の税務業務 【法人税確定申告関連】 移転価格文書作成・提出 移転価格税制とは、法人が国外取引により所得を他の国に移転させることを防止するために設けられた制度です。多国籍企業においては、親子会社間や兄弟会社間で取引を行うケースも多く、そのような取引では取引価格を自由に決めることも可能です。そのように第三者間で行われる取引価格とは異なる価格で取引を行うことにより、不当に所得を他の国に移転させることができてしまいます。 そこで、日本法人が国外関連者(親子関係や兄弟関係のある外国法人又は実質的な支配関係のある外国法人など)と取引を行った場合に、国外関連者から支払いを受ける対価の額が独立企業間価格に満たないとき、又は国外関連者に支払う対価の額が独立企業間価格を超えるときは、その取引は独立企業間価格で行われたものとみなすことにより、所得の移転を防止する制度となります。 作成が必要となる主な文書として、国別報告書(CbCR)、マスターファイル、ローカルファイルがあり、日本では以下の条件により提出が求められます。 国別報告書(CbCR):多国籍企業グループの直前会計年度の連結総収入金額が1,000億円以上の場合、最終親会社の会計年度終了の日の翌日から1年以内にe-Tax(※3)により税務署に提出が必要となります。※3:日本における国税庁が運営する、国税にかかる申告・申請・納税にかかるオンラインサービスの愛称です。 マスターファイル:多国籍企業グループの直前会計年度の連結総収入金額が1,000億円以上の場合、最終親会社の会計年度終了の日の翌日から1年以内にe-Taxにより税務署に提出が必要となります。 ローカルファイル:国外関連者との間の前事業年度の取引金額が50億円以上、かつ無形資産取引金額が3億円以上の場合、法人税確定申告書の期限までに作成し、税務当局より提出を求められた日より45日以内の税務署指定の日までに提出が必要となります。それ以外の会社は同時文書化義務が免除されますが、その場合でも税務当局より提出を求められた日より60日以内の税務署指定の日までに提出が必要となります。 過少資本税制 過少資本税制とは、内国法人が国外支配株主等から資金提供を受ける場合に、出資金に比較して多額の借入を行うことにより、租税回避を行うことを防止するために設けられた制度です。日本における過少資本税制では、国外親会社からの借入金額が資本金額の3倍を超える場合に規制対象となります。つまりデット・エクイティ・レシオ(負債資本比率)が3:1を超えて負債比率が高い場合に日本子会社における国外親会社への利息の支払額損金算入に制限がかかってくることになります。この過少資本税制の制限にかかる場合、法人税申告の際に当該税制の影響を考慮し課税所得額・法人税額を計算し申告・納税する必要があります。 【源泉所得税関連】 海外取引にかかる源泉所得税と租税条約の適用申請 日本では源泉所得税は翌月の10日が申告納税期限となりますが、海外取引にかかる源泉所得税に関しても当該期日は同様です。海外取引にかかる源泉所得税は租税条約を適用することにより、日本国内法と租税条約それぞれに規定されている税率のうちいずれか低い方が適用されます。海外取引の相手居住国との租税条約内容によりますが、多くのケースで租税条約を適用することにより源泉所得税率が低減されるため、租税条約を適用することは経営上重要です。注意すべき点として、当該租税条約は自動的に適用されるわけではないという点で、以下の対応が必要となります。 支払いを受ける外国居住者(法人)が、源泉徴収をおこなう日本企業(支払い側)を通じて日本の税務署へ租税条約適用に関する申請書を提出する必要がございます。具体的には支払い者の所轄税務署に提出することとなります。申請タイミングとしては適用申請したい取引にかかる支払日の前日までとなります。適用を受ける所得の種類(サービス料、配当、利子、使用料など)によって届出が必要な書類が異なりますのでご注意ください。各所得における届出に必要となる書類は下記国税庁ホームページより確認・取得できます。 https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/joyaku/mokuji2.htm 届出が必要な書類の中で特に重要な書類が居住者証明書です。これは外国居住者(法人)が当該外国の居住者であることを証明するための書類となります。日本とどこの国との取引かによって適用する租税条約が変わります。そのため、租税条約適用申請する外国居住者(法人)がどこの国の居住者なのかを証明することによって適用する租税条約が特定されます。この居住者証明書については国によっては発行に数ヶ月を要することもあるため、余裕をもって準備するようにしてください。 4. まとめ 日本における一般的な法人に関連する税務スケジュールおよび外資系日本法人が留意すべき税務スケジュールについて大枠を解説しました。日本法人サイドの担当者は当然把握しておく必要がありますが、親会社担当者においても最低限押さえておいていただきたい内容となります。ぜひ本記事をご活用いただき、日本の税務業務、スケジュールの大枠を把握していただけると幸いです。
- [日本における源泉徴収制度の概要と重要性:外資系企業が注意すべき論点とは](https://shiodome.co.jp/column/22000/) - 1. はじめに 日本の税制は複雑で理解しづらいかもしれません。特に源泉徴収制度は、企業の財務運営に大きな影響を及ぼす重要な要素です。本記事では、日本の税法になじみのない外資系企業の経営者にもわかりやすく、日本の源泉徴収制度の概要を解説し、注意すべきポイントを具体的に紹介します。 2. 日本における源泉徴収制度の概要 日本における源泉徴収とは、給与や報酬などを支払う会社が、支払いの際に税金を差し引いて国に納める制度です。源泉徴収制度は、納税の透明性と公平性を保つために欠かせないものです。企業が適切に源泉徴収を行うことで、従業員の納税義務が確実に履行されます。 日本のオフィスワーカーを例にもう少し詳しく見ていきましょう。 日本のオフィスワーカーの給料は、会社が支給する金額と実際に手元に入る金額が異なります。支給額から税金が差し引かれた後の金額が手取り額になります。日本の税法に基づき給料から一定の税額が差し引かれ、会社は月ごとに差し引く税額を計算し、税務署に納付します。 このように、会社が給料を支払う際に、決まった割合の金額を差し引いて預かり、それを納税者に代わって納める仕組みを「源泉徴収」と呼びます。日本のオフィスワーカーから見れば、収入のすべてが一つの会社からの給料である限り、一切手続きをせず自動的に納税手続が完了します。 3. 日本の源泉徴収の仕組み 日本ではすべての収入が源泉徴収の対象になるわけではありません。源泉徴収の対象となる代表的な収入は以下の通りです。 給与 賞与(ボーナス) 退職金 役員報酬 利子所得 配当所得 源泉徴収税率は、日本の税法に基づいて収入の種類ごとに異なります。例えば、給与にかかる源泉徴収税率は累進課税の仕組みにより、高所得者ほど高い税率が適用されます。累進課税とは、所得が増えるほど税率も上がる仕組みです。具体的には、所得が多い人ほど高い税率で税金が引かれます。 源泉徴収の実施時期については、毎月の給与支払い時に行われるほか、賞与の支給時にも行われます。給与や賞与が支払われるたびに、源泉徴収が実施され、税金があらかじめ引かれます。これにより、年末に大きな税金をまとめて支払う必要がなく、納税がスムーズに行われます。また、企業は従業員の給与から税金を引いて国に納付する義務があります。 このような源泉徴収の仕組みによって、税金の徴収が確実に行われるとともに、従業員が一度に多額の税金を支払う負担が軽減されます。したがって、源泉徴収は日本の税制において重要な役割を果たしています。 4. 日本における源泉徴収後のプロセス 日本では年間を通して給与の支払い時に源泉徴収が行われますが、会社は12月のみ年末調整という手続を行う必要があります。年末調整とは、1年間に支払われた給与に対する税額を再計算し、過不足を調整する作業です。これにより、1年間の税金が正確に計算されます。過不足があった場合、その差額は通常12月の給与で精算されます。 例えば、日本では医療費や住宅ローンを負担している者の税金を軽減する措置があるため、それらを考慮すると月々の給与支払時に過剰に税金を徴収されているケースがあります。そこで、1年間の税金が正確に計算し過剰に徴収された税金がある場合、その金額は給与を通じて還付されます。このプロセスにより、納税者は適正な税額を支払い、過不足を解消することができます。 5. 外資系企業が気をつけるべきポイント 外資系企業は、日本の源泉徴収制度に関する法規制を厳守する必要があります。これを怠ると、罰則やペナルティが課される可能性があります。日本の税法に従い、適切な手続きを行うことが重要です。 また、源泉徴収の計算は正確に行う必要があります。計算ミスが発生すると、追加の納税や罰則が発生するリスクがあります。特に外資系企業は、本国の税制とは異なる日本の税制を理解し、適用することが求められます。これには専門知識が必要な場合もあります。 加えて、年末調整は、1年間の給与に対する税額を再計算し、過不足を調整する重要な手続きです。特に外資系企業は、年末調整の具体的な手順や必要な書類に注意を払う必要があります。適切な年末調整を行うことで、従業員の税負担を適正に管理し、企業としての法的義務を果たすことができます。 上記のポイントを守ることで、外資系企業は日本の税制に対応し、法的リスクを回避することができます。必要に応じて専門家のアドバイスを受けることも検討すると良いでしょう。 6. 源泉徴収の外注について 外資系企業は、源泉徴収に関しては外部の専門家に外注するというのも選択肢の一つです。 税務の専門家を利用することには多くの利点があります。まず、税務に関する専門知識を持つプロフェッショナルに依頼することで、源泉徴収の計算ミスや手続きの不備を防ぐことができます。税務の専門家は最新の税法に精通しており、法規制に対応した正確な処理を行います。 これにより、企業は税務関連のトラブルを避けることができ、コンプライアンスリスクを低減することができます。また、専門家による効率的な業務遂行により、時間とリソースの節約が可能となり、企業全体の効率性が向上します。外注先を選定する際には、いくつかの重要な基準を考慮する必要があります。 まず、信頼性が重要です。信頼できる外注先を選ぶことで、安心して業務を任せることができます。次に、経験も重要な要素です。過去の実績や専門知識が豊富な外注先を選ぶことで、質の高いサービスを受けることができます。 また、日本の税制に精通していない外資系企業は、外注を利用することで、企業はコアビジネスに集中することができます。源泉徴収などの税務業務を外部に委託することで、社内のリソースをより重要な業務に振り向けることができます。これにより、企業の生産性と効率性が向上し、競争力を高めることができます。また、専門家による外注は、業務のスピードと正確性を高めるため、結果的に全体の業務効率が改善されます。 7. 日本と類似している世界の源泉徴収制度 世界には日本における源泉徴収制度と類似した制度がある国もあります。具体的には、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツがあげられます。ドイツに関しては日本の源泉徴収制度と同様に年末調整も企業側が行う必要があります。一方で、アメリカ、イギリス、フランスに関しては納税義務者が過不足があった場合の手続きを実施する必要があります。 8. おわりに 日本における源泉徴収は、国家の税収を確保し、納税義務を確実に履行するために不可欠な制度です。この仕組みを通じて、企業は従業員の給与から税金を天引きし、国へ納付します。これにより、従業員が自ら税金を納める手間が省かれ、税金が確実に徴収されるため、税収の安定性が確保されます。また、源泉徴収は、所得税の前払い的な役割を果たし、納税者が一度に大きな税額を負担することを防ぎます。 企業が源泉徴収制度を適切に運用するためには、いくつかの重要なステップを踏む必要があります。まず、法規制を遵守することが最優先です。税法や関連法規に従い、正確に源泉徴収を行うための体制を整えることが求められます。具体的には、従業員の給与や賞与から適切に税金を天引きし、正確な金額を税務当局に納付するプロセスを確立することが重要です。 さらに、企業は従業員に対して源泉徴収の仕組みやその重要性を説明する責任もあります。従業員が自分の給与からどのように税金が引かれているのかを理解することで、納税に対する理解が深まり、納税義務を果たすことの重要性を認識することができます。 また、源泉徴収に関連する業務を効率的に行うためには、専門知識を持つスタッフの育成や、外部の専門家の助言を活用することも有効です。特に外資系企業や日本の税務に詳しくない企業にとっては、税務専門家のサポートを受けることで、ミスを防ぎ、法令遵守を徹底することができます。 これらを通じて、企業全体で源泉徴収の重要性を理解し、適切な運用を心がけることが、長期的な成功への鍵となります。
- [日本における追徴課税とは?日本進出する外資系企業の留意点](https://shiodome.co.jp/column/22043/) - 1. はじめに 現在、多くの国において国税の税額確定に関し申告納税制度が採用されていますが、日本においても同様に申告納税制度が採用されています(一部、賦課課税制度が採られている税金あり)。この申告納税制度は、納税者の一人ひとりが自ら税務署へ所得等の申告を行うことで税額が確定し、確定した税額を自ら納付する制度であり、この制度が適正に機能するためには、納税者の高い納税意識と税法へのコンプライアンスが必要です。また、それに反する者に対する抑止施策の一つとして追徴課税があり、納税者による申告納税が適切に履行されなかった場合に追徴課税を課すことにより、当該申告納税制度を実行性のある制度として成り立たせています。 本記事においては、当該追徴課税の内容を解説し、また多くのケースで追徴課税のトリガーとなる税務調査、外資系日本企業が指摘されやすいポイントおよび対応策について解説します。 2. 日本における追徴課税の種類と料率 日本において追徴課税は、①更正処分や修正申告により計算された本来納税すべき額と実際に申告納税した額との差額(納税不足額)、②延滞税、および③加算税の3つに大きく区分されます。③の加算税はさらに③-1過少申告加算税、③-2無申告加算税、③-3不納付加算税、③-4重加算税の4つに区分されます。②延滞税および③加算税はペナルティであり、課税所得計算上も損金算入できません。以下②延滞税および③加算税の内容、料率や計算方法を解説します。 ②延滞税 延滞税は納付が遅れた本税に対する利息に相当するもので、法的納期限の翌日から完納する日までの期間に課せられます。遅延期間計算は日数計算となり、料率は法定納期限の翌日から2か月を経過する日までは年率7.3%、それ以降は年率14.6%となります。 一方、上記料率が市中金利の実勢よりかけ離れたものとなる可能性を鑑み、法定納期限の翌日から2か月を経過する日までは年率7.3%と(延滞税特例基準割合+1%)のいずれか低い料率、それ以降は年率14.6%と(延滞税特例基準割合+7.3%)のいずれか低い料率が適用されます。国税庁HPにおいて自動計算ツールが公開されておりますので、こちらに諸条件を入力することで延滞税を試算することが可能です。参考資料:国税庁HP 延滞税の計算方法(https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/entaizei/keisan/entai.htm) ※延滞税はあくまで本税を対象に料率を乗じて計算されるもので、加算税に対して当該税金は課せられません。 ※延滞税特例基準割合とは、各年の前々年の9月から前年の8月までの各月における銀行の新規の短期貸出約定平均金利の合計を12で除して得た割合として各年の前年の11月30日までに財務大臣が告示する割合に、年1パーセントの割合を加算した割合をいいます。令和6年における延滞税特例基準割合は1.4%と公表されています。 ③加算税 以下各加算税の概要を解説します。自主的に修正等を行うことによって加算税が低減・免除されるケースもあり、過去税務業務が杜撰で脱税等の懸念があるという会社は、税務調査が入る前に状況を正確に把握し、自主的に修正申告をするということも選択肢として有効です。 ③-1 過少申告加算税 期限内に申告を実施している場合について、その後修正申告・更正があった場合における加算税です。課税割合は増差本税に対し10%(期限内申告時における納税額と50万円のいずれか多い額を超える部分については15%)となります。当該過少申告課税は納税者自らミスに気付いて修正申告するといった更正を予知しない自主的な修正申告の場合は、不適用として課税されないため、ミスに気づいた際は自主的に修正申告することが有効です。 ③-2 無申告加算税 期限内に申告を実施しなかった場合の加算税です。期限後ではあるものの自主的に期限後申告をした場合、課税割合は増差本税に対し5%となります。しかし、税務署から指摘を受け期限後申告をする場合、課税割合は増差本税に対し15%(50万円を超える部分に対しては20%、300万円を超える部分に対しては30%)となります。無申告加算税は非常に高い料率によるペナルティが課せられますが、これは先に述べた申告納税制度の根幹を揺るがす無申告という申告義務違反に重いペナルティを課すことで制度の定着と発展を図っているという背景があります。 ③-3 不納付加算税 源泉徴収税について法定納期限(原則翌月10日)内に納付されなかった場合の加算税です。課税割合は増差本税に対し10%です。当該不納付について、納税者が自主的に気付き納付する場合、課税割合は増差本税に対し5%となります。ただし、法定納期限から1月以内にされた一定の期限後の納付の場合は、不適用として課税されません。源泉徴収税は支払いを受ける側の税金について支払いを行う側にあらかじめ源泉徴収・代行納税させる制度ですが、源泉徴収義務は支払側にあるという点が重要です。源泉徴収義務は支払側にあるため、源泉徴収漏れに対するペナルティも支払側に課せられます。 ③-4 重加算税 仮装隠ぺいが発覚し、税務署により脱税を指摘された場合における加算税です。③-1過少申告課税、③-3不納付課税に代えて課税割合は増差本税に対し35%です。また、無申告の場合、③-2無申告課税に代えて課税割合は増差本税に対し40%です。 ※加算税に関する詳細につきましては、以下財務省より資料が公表されております。参考資料:財務省 加算税の概要(https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/tins/n04_3.pdf) 3. 日本における税務調査 多くのケースで税務調査の対象となる期間は過去3年間分です。しかし、国税通則法第70条第1項には過去5年間分まで遡ることができるとされており、また脱税や不正還付といった虚偽が疑われる場合、最長7年間分まで税務調査対象となる可能性がある点には留意が必要です。脱税や不正還付といった虚偽が疑われ、7年間分まで税務調査対象となると重加算税に加え延滞税を合わせると非常に高額なペナルティ負担になりえます。 通常、税務調査の前に税務署から事前通知を受けることとなります。通知を受けた際には速やかに顧問税理士に報告し対応方法の判断を仰ぐことが重要となります。特に以下にて解説する指摘されやすいポイントについてはあらかじめ顧問税理士と打ち合わせし、資料に不備や漏れがないかを確認することをおすすめします。 4. 外資系日本企業に対する税務調査の動向 国税庁より公表されている「令和4事務年度 法人税等の調査事績の概要」によると、当事務年度における主要な取組として①消費税還付申告法人に対する取組、②海外取引法人に対する取組、および③無申告法人に対する取組の3点を公表しています。 ③は申告納税制度を成り立たせるための根幹を揺るがす無申告納税者に対する取組であり、日本で事業を行うすべての納税者が対象となるものです。一方、①消費税還付申告法人に対する取組は主なケースとして海外売上の免税売上が生じ還付となっているケースが本概要にて挙げられています。また、本概要の別表5にまとめられているように、②海外取引法人等にかかる実地調査件数が令和3年6,676件(前年対比146.1%)、令和4年10,394件(前年対比155.7%)とここ数年急増し、税務署が海外取引に関する消費税、法人税に対する取組に重きを置き強化していることが推測され、外資系日本企業に対する税務調査としては近年税務トピックとなっていると考えられます。さらに②海外取引法人等に対する取組を細かく見ていくと、主な調査事例として移転価格に関連する調査、海外居住者(個人・法人とも)への支払いに対する源泉徴収漏れに関連する調査が明示されています。 参考資料:国税庁 「令和4事務年度 法人税等の調査事績の概要」(https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2023/hojin_chosa/pdf/01.pdf) 5. 外資系日本企業に対する税務調査で指摘されやすいポイント 外資系日本企業に対する税務調査の動向で見てきた様に、海外取引が税務署の取組強化のトピックとなっていると考えられる中、特に指摘されやすいポイントとしては、やはり「令和4事務年度 法人税等の調査事績の概要」にて明示されている移転価格に関連した指摘、および源泉徴収漏れに関連した指摘になってくると考えられます。実際にこれらは今までも外資系日本企業に対する税務調査の指摘ポイントではあったのですが、動向を見るにさらに強化されていると考えられるため、これまで以上に税務調査に備えた対応が必要です。 1. 移転価格 全世界的にトピックとなっている移転価格税制というものがあり、これは法人が国外取引により所得を他の国に移転させることを防止するために設けられた制度です。多国籍企業においては、親子会社間や兄弟会社間で取引を行うケースも多く、そのような取引では取引価格を自由に決めることも可能です。そのように第三者間で行われる取引価格とは異なる価格で取引を行うことにより、不当に所得を他の国に移転させることができてしまいます。 そこで、日本法人が国外関連者(親子関係や兄弟関係のある外国法人又は実質的な支配関係のある外国法人など)と取引を行った場合に、国外関連者から支払いを受ける対価の額が独立企業間価格に満たないとき、又は国外関連者に支払う対価の額が独立企業間価格を超えるときは、その取引は独立企業間価格で行われたものとみなすことにより、所得の移転を防止する制度です。日本の税務署としては日本の所得が不当に国外に移転されていないかという視点で調査してくるため、外資系日本企業としては、国外関連者との取引価額が妥当なものであり、不当に所得が国外に流出していないことを示す必要があります。 2. 源泉徴収漏れ(特に使用料の支払いに関する源泉徴収漏れ) 源泉徴収漏れに関しましては、使用料以外については特に判断が必要とされる箇所は少なく、基本的にはミスによる源泉徴収漏れを指摘されます。そのため、こちらに対しては源泉徴収漏れの原因を把握し、漏れをなくしていくことが有効となります。一方、使用料については、該当取引が使用料(ロイヤリティ)に該当するか否かの判断が難しいケースが多く、税務調査にて該当取引を使用料認定され源泉徴収漏れという指摘を受けてしまうケースが見受けられます。 6. 外資系日本企業が税務リスクを低減させる方法 先に述べた外資系日本企業の税務調査で特に指摘されやすいポイントに対し、有効な対応策を解説します。 1. 移転価格に関する指摘に対する税務リスクを低減させる方法 移転価格に関する指摘に対する有効な手段として、移転価格税制で作成が要求される文書を適時適切に作成し、また文書の精度を上げることが重要となります。移転価格文書作成には非常に高度なスキルが要求されるため、専門家に依頼することが一般的ですが専門家によっても文書のクオリティ、説得力が大きく異なってくる非常に難易度の高い文書となります。そのため、専門家の選定の段階で既に税務調査対応が始まっているといっても過言ではないです。片方の国(日本)の事情のみを考慮して作成できるものではなく、両国間の事情を考慮に入れて文書化していく必要があるため、国際税務に明るく、かつ両国への知識を有した経験豊富な専門家が適任です。 2. 源泉徴収漏れに関する指摘に対する税務リスクを低減させる方法 源泉徴収漏れは主に①源泉徴収対象取引の認識漏れ、および②租税条約適用申請漏れにより生じます。 ①の源泉徴収対象取引の認識漏れを防ぐために海外居住者(個人・法人ともに)へ支払いを行う場合には源泉徴収の必要性について都度確認を行うことをおすすめします。日本国内取引では源泉徴収の対象とならない性質の取引であっても海外取引であれば源泉徴収となるケースが多々あり注意が必要です。また、申告納税期日については日本では源泉所得税は翌月の10日が申告納税期限ですが、海外取引にかかる源泉所得税に関しても当該期日は同様です。 次に②の租税条約適用の申告漏れについてですが、海外取引にかかる源泉所得税は租税条約を適用することにより、日本国内法と租税条約それぞれに規定されている税率のうちいずれか低い方が適用されます。海外取引の相手居住国との租税条約内容によって異なりますが、多くのケースで租税条約を適用することにより源泉所得税率が低減されますため、租税条約を適用することは経営上においても重要です。注意すべき点は、当該租税条約は自動的に適用されるわけではないという点で、上記の通り、租税条約を適用することにより、源泉徴収税率を低減させることが可能ですが、一方、適用申請を失念し低減税率にて源泉徴収を行ってしまっている場合、源泉徴収漏れとなります。租税条約を適用するか否かは任意ですが、適用申請しないのであれば国内法に従った源泉徴収が必要になる点留意が必要です。 主な源泉徴収漏れは以上の①、②の通りですが、もう1点付け加えると、使用料(ロイヤリティ)に関する源泉徴収漏れの指摘が多くなされます。これは、租税条約における使用料に該当するか否かが明確でないケースが多く、判断の余地があるためです。会社は当該取引について使用料ではなくサービス料の支払いと判断し租税条約を適用することにより源泉徴収無しとして処理した一方、税務調査において当該取引を使用料として税務署に認定され、源泉徴収漏れとして追徴課税の指摘をうけるケース等があります。海外支払取引については送金前に都度顧問税理士に確認をすることや、使用料か否か判断の余地のある性質の取引については顧問税理士と相談し契約書の記載内容を検討し、取引の性質を明確にしておくなどの対応策が有効になります。 7. まとめ 本記事にて見てきた通り日本の税務署として税務調査のトピックは海外取引であると言えるため、必然的に海外取引が多い外資系日本企業はこれまで以上に税務リスクを認識し対処する必要があります。海外取引について税務調査で指摘を受け、外資系日本企業において追徴課税されたとしても、相手国サイドで自動的に当該是正が反映されるわけではないため、グループ間における移転価格や源泉徴収漏れなどに起因する指摘についてはグループ全体で二重課税となってしまう可能性があります。また、グループ間以外の源泉徴収漏れであっても、源泉徴収漏れが生じた金額について相手先より返金を受けるということも簡単ではないケースが多く、ペナルティに加え、本税についても支払側で負担せざるを得なくなるケースも生じえます。 そのため、規定ペナルティ料率以上に負担を強いられる可能性を秘めていることを認識し、本記事にて解説した対策を講じていくことが重要になります。また、事前に自主的な修正申告をすることにより不適用となる加算税もあるため、過去の税務業務に不安がある場合においてもまずは会社の状況を正確に把握したうえで、必要に応じて修正申告の必要性も選択肢にいれながら顧問税理士と対応について検討していくことをおすすめします。
- [外資系企業の日本における会計基準の適用について](https://shiodome.co.jp/column/22340/) - 1. はじめに 外資系企業が日本に子会社等を設立した際に、当該子会社は日々発生した取引について会計処理をおこない財務報告を行う必要がありますが、その会計処理は具体的にどの基準に準拠するのかが問題となります。本稿では、日本進出を考慮している外資系企業が日本において準拠すべき会計基準及びその具体的内容、さらに税務との関係も含めて解説していきます。 2. 外資系企業が日本において採用できる会計基準について 日本の上場会社の場合適用可能な会計基準は下記のとおりです。一方上場会社等でない法人等の場合、自国基準において財務報告を行うことが可能です。 JGAAP(Japan Generally Accepted Accounting Principles:日本において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準) USGAAP(USA Generally Accepted Accounting Principles:米国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準) IFRS(International Financial Reporting Standards:国際会計基準) JMIS(Japan’s Modified International Standards:修正国際基準) ⅰ. 日本会計基準(JGAAP) 日本会計基準は、日本国内で広く一般的に使われている会計基準です。1949年に制定された企業会計原則をベースに作られており、「一般原則」「損益計算書原則」「貸借対照表原則」の3つの原則から成り立っています。財務諸表の損益計算書は損益計算書原則、貸借対照表は貸借対照表原則に準拠します。 ⅱ. 米国会計基準(USGAAP) 米国会計基準は国際会計基準と並ぶ世界的な会計基準であり、日本の会計基準も米国を参考としています。そのため両者は基本的に類似している傾向があります。日本の企業で、かつ、米国SECの登録企業についてはUSGAAPによって財務諸表を公表することが認められています。 ⅲ. 国際会計基準(IFRS) 国際会計基準は世界110以上の国と地域で用いられている会計基準です。非常に多くの国で採用されており、原則主義、貸借対照表重視、注記が多いなどの特徴がみられます。2009年に金融庁は「我が国における国際会計基準の取扱いについて(中間報告)」を発表しました。これは日本のIFRS導入に向け、2010年3月から国際的な活動を行う上場企業の連結財務諸表にIFRSを任意適用することを認めました。 ⅳ. 修正国際会計基準(JMIS) 修正国際会計基準とは、国際会計基準審議会(IASB)が作成、公表した会計基準(国際会計基準)に、日本の会計実務を加味して一部「削除又は修正」を行った会計基準です。一定の要件を充足する上場会社等は「修正国際基準特定会社」として、修正国際基準により連結財務諸表を作成することができます。 (1)外資系企業が日本の上場会社を取得し子会社化することにより日本に進出する場合 この場合、当該子会社は当然に日本基準を採用することができます。またIFRSは任意適用が認められているため、IFRSも採用することができます。ただし、現在IFRSに基づいて財務報告が可能なのは連結財務諸表のみであり、単体財務諸表は日本基準に基づいて財務報告が必要です。また、当該日本子会社が米国SECに登録している場合、IFRSと同様に連結財務諸表に限り米国基準により財務諸表を作成し財務報告をすることが可能です。修正国際基準は、一定の要件を充足した企業の場合適用が可能ですが、2023年3月末時点において適用企業は存在しないため一般に採用することはないものと考えられます。 (2)外資系企業が、日本において子会社等を新規設立する又は非上場会社を取得する場合 新会社の設立及び非上場会社の場合は、上記4つの会計基準に準拠しての財務報告が可能で、かつ、自国の会計基準に基づいて財務報告を行うことも可能です。 しかし、日本国に所在する法人である以上、日本国で税務申告する必要あり、当該税務申告は日本の法人税法等に準拠する必要があります。日本の税法上、法人税申告書は日本基準による計算書類の税後利益から調整を実施し課税所得を計算する確定決算主義の考え方を採用しています。そのため、まずはIFRSや米国基準又はその他自国の会計基準を採用しLocal bookを作成している外資系企業は、それらの会計基準から日本基準に変換するGAAP調整が必要となります。 3. 日本基準とIFRS、USGAAPにおける相違点について (1)日本基準とIFRSについて 日本基準とIFRSとの相違については非常に多岐にわたるため、相違ある論点を列挙するにとどめます。 (2)日本基準と米国基準について 米国基準と日本基準の主な相違点としては、無形資産の評価、特に「のれん」の評価方法があります。日本基準では20年以内の毎期定期償却を原則としていますが、米国基準(IFRSも同様)では定期償却は実施せずに毎期減損テストを実施することが要求されています。また研究開発費でも相違があり、日本基準では発生時に全額費用処理されますが、米国基準(IFRSも同様)では、研究部分は発生時に費用処理をする一方で、開発部分は資産計上を行い毎期償却することが求められています。なおその他の論点においても多くの相違点が存在するため、包括的に日本基準との相違点を把握しておく必要があります。そのうえで、前述のとおり税務申告を行う際には日本の会計基準に合わせて調整(GAAP調整)する必要があります。 (3)日本における法人税法の所得計算規定と企業会計の関係について 日本では、法人税法における所得金額の計算規定は「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」が補完する構造となっており、両者は完全に一致するものではないことになります。そのため、GAAP調整したとしても、それだけでは日本の法人税等の申告書を作成することはできません。 具体的には、交際費、寄附金、役員給与などは企業会計上の費用又は損失とされていても、法人税法上損金に算入されないことが多々あります。このため日本進出時には、日本の企業会計基準に精通するだけでなく、日本の企業会計基準と法人税法等との相違項目にも精通しておく必要があります。 4. その他日本進出時における税務上の論点について 企業の所得の計算上、支払利子が損金に算入されることを利用して、関連者間の借入れを恣意的に設定し、過大な支払利子を損金に計上することで、税負担を減少させることが可能です。これらの租税回避行為を封じる措置として、以下の3つの制度が整備されています。 過大な利率設定の制限(移転価格税制) 資本に比べ過大な負債(過少資本税制) 所得の金額に比して過大な支払利子の損金算入制限(過大支払利子税制) (1)過少資本税制 上記ⅱ.の過少資本税制とは、外国企業の日本子会社の資本構成に関して、利子の損金算入につき一定の制限を課す制度です。過少資本税制は、Thin
- [四半期開示の「一本化」と制度変更の実務的留意点](https://shiodome.co.jp/column/54609/) - 1.はじめに 2024年4月以降に始まる事業年度から、金融商品取引法(以下、金商法)に基づく四半期報告制度が廃止されました。上場企業などでは、監査法人による四半期レビューを経て四半期報告書を公表する従来の対応から、新制度への移行が進み、多くの企業で初年度の実務対応を終えています。本コラムでは、開示制度の定着を踏まえた情報発信の在り方を再確認していきましょう。 2.企業開示の基本4類型と最新の制度変更について 企業による情報開示は多岐にわたりますが、基本的には以下の4つの類型に分けることができます。 (1)会社法に基づく開示 この区分は、会社債権者や株主といった利害関係者の保護を目的とするものです。すべての会社が対象となり、計算書類などが典型的な開示資料にあたります。本来、会社債権者と株主の間には相反する利害が存在しますが、こうした計算書類等の情報開示を通じて、その調整が図られます。 (2)金商法に基づく開示 この制度は、有価証券の流通を適正かつ円滑に進め、健全で活発な資本市場を維持・発展させることを目的としています。有価証券報告書や四半期報告書が代表的な開示書類です。 金商法による開示では、正確性と網羅性が特に重視されており、他の制度に基づく開示と比べて情報量が多く、内容も詳細です。その分、企業側の開示作業は大きな負担となる傾向があります。 (3)証券取引所の規則に基づく開示 上場企業が所属する証券取引所の規則に基づく開示は、投資者を保護することを目的としています。決算短信や業績予想の修正など、投資判断に影響を及ぼす重要な情報を投資家へ迅速かつ適切に伝えることが求められます。適時開示は、「決定事実(例:新株発行)」「発生事実(例:訴訟提起)」「決算情報」の3区分に整理されています 。 (4)任意開示 任意開示は、特定の法律や規制に基づかず、企業が自主的に行う情報開示を指します。代表的な例としては、アニュアルレポートなどが挙げられます。企業によっては、PRの一環として、財務データなどの定量的な情報に加え、経営方針や戦略といった定性的な情報も積極的に発信するケースが増えています。これまでは、有価証券報告書が企業情報を把握するための主要な情報源とされてきましたが、近年では任意開示の重要性が高まり、企業・投資家双方の注目が集まっています。 今回の改正の対象となるのは、(2)の金融商品取引法に基づく開示です。第1・第3四半期については、原則として金商法による開示が廃止され、(3)の取引所規則に基づく四半期決算短信に一本化されることになりました。次の項目で、この変更点について詳しく見ていきます。 3.金商法と取引所規則による四半期開示の整理と統合方針 金融商品取引法に基づく開示のうち、四半期報告書は情報の迅速な提供を重視しており、決算日から45日以内に提出することが義務付けられていました。これに対し、取引所規則に基づく四半期決算短信も同様に45日以内の開示が求められていますが、可能であれば30日以内の公表が望ましいとされています。そのため、企業は短い期間の中で二重の開示対応を行う必要がありました。 四半期決算短信は注記の量こそ少ないものの、開示内容に類似している情報も多いとの指摘が以前よりありました。こうした状況を踏まえ、両者の開示を統合する方針が打ち出されています。ただし、この「一本化」の対象となるのは第1四半期および第3四半期に限られるため、この点には注意が必要です。 4.四半期決算短信への注記移行と追加開示項目の整理 制度改正によって四半期報告書の提出義務が廃止され、記載すべき注記項目は削減されました。その代わりに、四半期決算短信において一部開示項目が拡大されるなど、情報提供の内容が補強されています。 「セグメント情報等の注記」については、改正前から多くの企業がすでに決算短信上で開示していたこともあり、制度変更による影響は限定的と考えられます。一方、「キャッシュ・フローに関する注記」は、キャッシュ・フロー計算書を併せて開示する場合には記載義務がなくなります。ただし、第1・第3四半期については、そもそもキャッシュ・フロー計算書を作成していない企業が大半と想定されます。そのため、四半期ごとにキャッシュ・フロー計算書を新たに作成することが負担となる場合は、注記を追加して対応することになります。 5.四半期決算短信におけるレビュー義務と任意対応の見直し 従来の四半期報告書制度では、会計監査人によるレビューが必須とされていましたが、制度改正によりこのレビューは任意対応へと変更されました。ただし、以下に該当する企業については、四半期決算短信に対するレビューが引き続き義務付けられます。 直近の有価証券報告書・半期報告書・四半期決算短信(レビューを行う場合)において、無限定適正意見(結論)以外の場合 直近の有価証券報告書において、内部統制監査報告書における無限定適正意見以外の場合 直近の内部統制報告書において、内部統制に開示すべき重要な不備がある場合 直近の有価証券報告書・半期報告書が当初の提出期限内に提出されない場合 当期の半期報告書の訂正を行う場合であって、訂正後の財務諸表に対してレビュー報告書が添付される場合 任意でレビューを依頼する場合、監査法人の作業完了を待ってしまうと、決算短信の持つ速報性が損なわれる可能性があります。そこで、レビューが終わる前にまず四半期決算短信を公表し、後日レビュー報告書を添付した修正版を開示するという、二段階方式が認められています。この方法を取る際は、監査法人との綿密なスケジュール調整が欠かせません。 6.おわりに 決算に関する実務は限られた期間の中で進行するため、対応に苦労している企業も少なくありません。今回の制度改正は第1・第3四半期に限定されたものではありますが、これにより業務負担を軽減できる企業も多いと考えられます。 一方で、実務負担の軽減を重視するあまり、開示内容を安易に省略してしまうと、企業情報の開示水準が全体的に低下し、日本の株式市場の活力が損なわれる可能性があるとの懸念も指摘されています。こうした事態を避けるため、任意開示においても情報提供の質を維持する姿勢が重要となります。
- [【国内税務Q&A】税制適格ストックオプションに係る事例 ①](https://shiodome.co.jp/column/22679/) - 1. 質問 A社は、税制適格ストックオプションを自社の取締役に発行する予定です。このストックオプションが税制適格要件を満たすため、以下の3つの個別論点について教えてください。 個別論点① 権利行使価額はどのように設定するか。 個別論点② 契約締結後の後発事象に基づき、権利行使価額を減額する契約変更が行われた場合、税制適格要件を満たさなくなるのか。 個別論点③ 契約で定められた年間の権利行使限度額(1,200万円)を超えて権利行使した場合の超過部分に係る税務上の取扱いはどのようになるのか。 【前提条件】 A社株式は取引相場の無い株式である。 概ね6ヶ月以内において売買実例がない。 A社は従業員数が200人以上であり、財産評価基本通達178で規程する大会社に該当する。 2. 回答 個別論点① A社の状況(取引相場のない株式、売買実例なし、大会社)より、契約締結時の株式の価額は財産評価基本通達に従い、純資産価額方式や類似業種比準方式等(特例方式)を用いて算定された株価以上で権利行使価額を設定すれば、税制適格要件を満たすこととなります。 個別論点② 後発事象に基づく権利行使価額の修正は税制適格要件を満たさないものと判断できます。 個別論点③ 年間の権利行使限度額を超過した部分については、原則として通常の給与所得として課税されることになります。 3. 重要用語 個別論点の考察の前に、質問及び回答にて言及されている「ストックオプション」や「税制適格ストックオプション」について、簡単に確認したいと思います。 ストックオプション ストックオプションは、特定期間内に決められた価格で会社の株式を取得できる権利で、会社が取締役や従業員に業績向上のインセンティブや優秀な人材確保のために付与するものです。権利行使により株式を取得し、株価上昇時に売却することで利益を得られるため、特にIPO準備企業や上場企業で利用されます。 ストックオプションは以下のように分類されます。 有償ストックオプション:対価を支払って取得 無償ストックオプション:無償で取得 税制適格ストックオプション:特定の税制優遇あり 税制非適格ストックオプション:通常の課税 税制適格ストックオプション 税制適格ストックオプションは、権利行使時には課税されず、株式売却時にのみ譲渡所得として課税されるという点で、税制上の優遇措置を受けることができます。即ち、権利行使時に総合課税により最大税率55%の課税がなされる税制非適格ストックオプションと比較して、課税のタイミング及び税負担率の2点で優遇されているといえます。 ストックオプションの種類と税務上の取扱いをまとめると下表の通りです。 また、税制適格ストックオプションとして認められるための税制適格要件として主なものは以下の通りです。 4. 根拠(質問に関する判断) 個別論点① 租税特別措置法29条の2では、税制適格ストックオプションの権利行使価額について、「当該新株予約権の行使に係る1株当たりの権利行使価額は、当該新株予約権に係る契約を締結した株式会社の株式の当該契約の締結の時における1株当たりの価額に相当する金額以上であること。」と規定されています。即ち、ストックオプションの付与に係る契約時の株価以上でなければなりません。この株価については算定ルールが明示されておりませんでしたが、令和5年7月に租税特別措置法通達29の2-1が新設され、本件のように取引の相場がなく、概ね6ヶ月以内に売買実例のない株式である場合には、通達に掲げる一定の条件の下、財産評価基本通達によって算定することができる旨明らかとなっています。本件A社は財産評価基本通達178で規定する大会社に該当するため、財産評価基本通達に基づいて算定する場合には、以下の類似業種批准方式又は純資産価額方式等によることとなります。 類似業種比準方式:発行会社と事業の種類が同一又は類似する複数の上場会社の株価の平均値に基づいて株価を算定 純資産価額方式:発行会社の純資産価額(相続税評価額の時価ベース)を発行済株式数で除して株価を算定 個別論点② 租税特別措置法29条の2では、「~当該付与決議に基づき当該株式会社と当該取締役等又は当該特定従事者との間に締結された契約により与えられた当該新株予約権を当該契約に従つて行使することにより当該特定新株予約権に係る株式の取得をした場合」に限り、税制適格ストックオプションとして株式取得に係る経済的利益について所得税を課さない旨規定しています。即ち、「契約に従って行使」されることが前提とされています。この点、国税庁のストックオプションに対する課税(Q&A)では、一定条件下では「通達改正後に権利行使価額を引き下げる契約変更」が認められると記載がありますが、この見解を広く解釈し、あらゆる状況でも契約変更を認めるものではありません。よって、本件の契約締結後に発生した後発事象に基づく権利行使価額の変更は、原則として税制適格ストックオプションの要件を満たさないと判断できます。 個別論点③ 税制適格ストックオプションの要件の一つに、年間の権利行使による経済的利益の合計額が原則として1,200万円を超えないことがあります。この限度額を超えた場合、超過部分は税制非適格ストックオプションとして扱われ、課税対象となります。権利行使による経済的利益に対する課税は、原則として「給与所得」として扱われます。これは、ストックオプションが雇用関係又はそれに類する関係に基づいて付与されたという考え方によるものです。この点、権利行使時に退職していた場合も、付与時の関係に基づいて給与所得として課税されるものと考えられます。但し、以下の場合は「雑所得」と扱われる可能性があります。 ストックオプション取得後、短期間で退職が予定されていた場合 退職後の権利行使で得られる利益の大部分が、長期間の株価上昇によるものである場合 また、付与者の営む業務に関連してストックオプションが付与された場合(例:特定従事者への特定新株予約権の付与)は、事業所得又は雑所得として課税される可能性があります。 国内税務Q&A_税制適格ストックオプションに係る事例①
- [FP&Aの全体像:戦略的役割・実務領域・必要スキル](https://shiodome.co.jp/column/54605/) - 1.はじめに 「FP&A」という用語をご存じでしょうか。 FP&Aは “Financial Planning & Analysis” の略称で、日本語では「財務計画・分析」などと訳されますが、厳密な定義は存在していません。近年、FP&Aは財務会計および管理会計の分野において徐々に認知が広がっており、日本企業においてもその重要性は今後一層高まっていくと見込まれます。 本稿では、FP&Aという職種・機能について、その概要と背景を体系的に解説します。 2.財務知見と事業理解を兼ね備えたFP&Aの戦略的役割 FP&Aの導入は、資生堂、NEC、味の素といった大手企業を中心に着実に拡大しています。主な業務領域としては、経営戦略の立案、予算策定および管理、業績の見通し作成、投資意思決定のサポートなどが挙げられます。外資系企業では従来から一般的な職種であり、多くの場合、CFO(最高財務責任者)の直下に配置されるケースが多く見られます。ただし、企業によっては複数の部門を横断的に担当し、複数の上長の下で業務を遂行する体制が採られることもあります。 日本ではまだ広く定着していない職種であるため、具体的な役割を思い描きにくい面もあるかもしれません。しかし、この職種には会計・財務の専門知識に加え、企業全体の戦略や事業構造を深く把握する力が求められます。 たとえば新規の投資案件が持ち上がった場合、これまでは各事業部の担当者が投資計画を作成し、案件の規模や重要性に応じて管理職や経営層が最終的な判断を下すというプロセスが一般的でした。しかし実際には、投資計画の策定を担う事業部担当者は会計・財務の専門知識を十分に備えていないケースが多く、計画の精度を高めることには限界があります。一方で、専門知識を有する経理・財務部門の担当者が計画策定を担うことも現実的ではありません。事業内容や将来の市場動向を十分に理解していない状態で、将来予測やリスク(潜在的な損失)の織り込みを行うのは極めて困難だからです。すなわち、会計・ファイナンスの知見と事業の深い理解の双方を兼ね備えていなければ、投資計画の信頼性は担保されません。信頼性の低い計画を前提としては、適切な投資判断を行うことも難しくなります。こうした状況下で重要な役割を果たすのが、FP&Aの存在です。 3.企業経営を支えるFP&Aの実務領域 FP&Aの業務内容や担当範囲は企業ごとに異なりますが、以下では一般的に想定される主な業務領域について整理していきます。 (1)予算策定と業績予測の立案機能 市場動向や将来の複数のシナリオを踏まえ、中長期的な経営計画の基盤となる業績予測を立案するとともに、経営戦略に沿ったキャッシュフロー計画を含む年間予算の策定を行います。 (2)予算実績差異の分析と意思決定支援 策定した予算や計画と実績との乖離を分析し、その結果や傾向をレポートとしてまとめるほか、経営層の意思決定を支援するための資料作成も行います。従来の経理・財務部門が担当する場合、単なる数値の対比にとどまるケースが多い一方で、FP&Aは事業への深い理解を基盤として、より踏み込んだ具体的なアウトプットを提供する点が特徴です。 (3)投資案件の評価と戦略的判断への貢献 新規事業プロジェクトへの投資やM&A案件などにおいて、財務的なリターンの分析・評価を行い、意思決定に向けた判断やレポーティングを実施します。 一見すると経営企画部門や経理・財務部門の業務と類似していますが、FP&Aはコーポレート機能内にとどまらず、事業部や生産拠点など現場にも配置される点が特徴です(形式上の所属は異なる場合があります)。このように、部門最適と全社最適の双方を踏まえた視点で業務を遂行する点が、他部門との大きな違いとなります。 4. FP&Aに求められるスキルと専門性 近年、FP&Aは「ミニCFO」と称されることもあります。それでは、この分野で専門的に活躍していくためには、具体的にどのようなスキルが求められるのでしょうか。 まず前提として、会計および財務に関する基礎的な知識は不可欠です。財務諸表を正確に読み取り、分析できる程度の理解は最低限求められます。 次に求められる重要な能力が分析力です。財務モデリングや各種の財務分析手法について理解したうえで、自社の状況に最も適した指標を選定し、分析・評価に活用できることが重要となります。 さらに、コミュニケーション能力もFP&Aにとって欠かせない重要なスキルです。FP&Aは、マトリックス組織(縦横の系列を組み合わせた組織形態)やクロスファンクショナルチーム(複数部門の人材で構成されるチーム)で業務を行うケースが多く、異なるバックグラウンドを持ち、共通言語を持たないメンバーと協働する場面が少なくありません。また、事業部とコーポレート部門といった複数の上司に対してデュアルレポーティングを行う立場になることも多く、両者の間で調整役を担う場面も発生します。こうした環境下では、客観的な分析力と柔軟かつ的確なコミュニケーション能力が極めて重要な役割を果たします。 5.おわりに FP&Aは、高度な判断力が求められる場面が多く、AIによって代替されにくい高付加価値な職種として位置づけられています。経営層と密接に関わる機会が多く、企業全体を俯瞰しながらビジョンや戦略の策定に携わることができる点も特徴です。そのため、高い専門性を活かして大きなやりがいを得られると同時に、報酬水準も比較的高いケースが多く見られます。海外では、CFO(最高財務責任者)への昇格ルートの一つとしてFP&Aを志向するキャリアパスも一般的です。将来のキャリア形成の選択肢として、あるいは企業として的確な経営判断を行うための基盤としても、FP&Aの知識やスキルを習得しておくことは大きな価値があります。
- [【税務Q&A】税制適格ストックオプションに係る事例 ②](https://shiodome.co.jp/column/23002/) - 1. 質問 A社は設立5年未満の非上場会社であり、B社の株式を100%保有しています(B社はA社の100%子会社 ) 。この度、A社がB社の取締役に対して税制適格ストックオプションを付与しました。これについて、以下の3つの個別論点について教えてください。 個別論点① 設立5年未満のストックオプションの税制適格要件 A社が設立5年未満であることを踏まえ、ストックオプションの権利行使期間を「付与決議日後2年~15年」とし、権利行使限度額を年間2,400万円を上限とした場合、税制適格要件を満たすことができるでしょうか。 個別論点② 吸収合併後の税制適格要件の適用 ストックオプション付与後、B社がA社を吸収合併する予定です。その場合、個別論点①で示した設立5年未満に関する税制適格要件は、引き続き適用されるでしょうか。 個別論点③ 吸収合併後の権利行使価額の見直し 個別論点②にて、吸収合併が行われた場合、ストックオプションの権利行使価額の見直しが必要となるのでしょうか。 2. 回答 個別論点① A社が設立5年未満の非上場会社であることから、令和5年度税制改正による権利行使期間の延長及び令和6年度税制改正による権利行使限度額の上限引き上げにより、本条件にて税制適格要件を満たすものと判断できます。 個別論点② ストックオプション付与決議日に契約を締結したのがA社である場合、A社が設立5年未満である限り、税制適格要件は継続して適用されるものと判断できます。 個別論点③ 吸収合併が発生した場合でも、権利行使価額の見直しは必要ないものと判断されます。 3. ストックオプション税制に関する税制改正内容 税制適格ストックオプションとして認められるためには、租税特別措置法第29条の2の要件を満たす必要があります。当該税制適格要件の主なものについては、前回コラム「税制適格ストックオプションに係る事例①」で確認しました。 今回の個別論点①は、その要件のうち、令和5年度及び令和6年度の税制改正によって変更された部分に関係するため、当該税制改正について少し詳細を掘り下げていきます。これらの改正は、企業がストックオプションを付与する際の条件を緩和し、より多くの企業が制度を活用できるようにすることを目的としています。主な変更点は以下の通りです。 令和5年度税制改正の主な変更点 権利行使期間の延長 設立5年未満の非上場会社の場合、権利行使期間が「付与決議日後2年を経過した日から付与決議日後10年を経過する日まで」から、「付与決議日後2年を経過した日から付与決議日後15年を経過する日まで」に延長されました。これにより、従業員がより長期的な視点で企業に貢献でき環境が整い、人材の定着促進が期待されます。 令和6年度税制改正の主な変更点 権利行使限度額の引き上げ 権利行使限度額が、設立5年未満の会社は1,200万円から2,400万円に、設立後5年以上20年未満の非上場会社・上場後5年未満の会社は3,600万円に引き上げられました。これにより、特にスタートアップ企業における人材獲得力の向上が期待されます。 株式の保管・管理に関する要件の緩和 譲渡制限付株式について、発行会社と一定の要件を満たす株式管理契約を締結することで、証券会社等への保管委託が不要となり、非上場会社でも活用の幅が拡大します。 社外高度人材の付与要件の緩和・認定手続の軽減又は撤廃 社外高度人材に対する要件が緩和され、より幅広い人材にストックオプションを付与できるようになりました。 4. 質問に関する判断 個別論点① 令和6年度改正後の租税特別措置法第29条の2に基づき、設立5年未満の非上場会社が新株予約権を発行する場合、以下の条件を満たす必要があります。 権利行使期間が付与決議日後2年から15年の間であること 権利行使限度額が年間2,400万円を超えないこと 従って、本件では、A社が上記の条件を満たした上でストックオプションを発行する場合、税制適格要件を満たすと考えられます。 個別論点② 税制適格ストックオプションを発行した会社が吸収合併により消滅した場合、国税庁の質疑応答事例(源泉所得税)「吸収合併により消滅会社のストックオプションに代えて存続会社から交付されるストックオプションについて権利行使価額等の調整が行われる場合」では、以下のように示されています。 「吸収合併が行われた場合、消滅会社のストックオプションは吸収合併の効力が生ずる日において消滅し、その消滅会社のストックオプションに代えて、存続会社のストックオプションが交付されたとしても、存続会社において新たに交付するストックオプションに係る株主総会の決議(会社法第238条第2項)が行われるものではなく、消滅会社における付与決議に基づくストックオプションの内容に従って交付されるものであることから、その新株予約権の行使は当初の付与契約の内容に従って行使するものと認められます。」 即ち、本件において付与決議日に契約を締結したのはA社であり、存続会社であるB社は合併に伴い、消滅会社であるA社のストックオプションに代えてB社のストックオプションを交付したに過ぎず、新たな付与決議が行われたわけではありません。よって、A社が付与決議時点で設立5年未満であった場合、存続会社であるB社のストックオプションも継続して税制適格要件を満たすと考えられます。 個別論点③ 租税特別措置法第29条の2第3項において「新株予約権の行使に係る1株当たりの権利行使価額は、当該新株予約権に係る契約を締結した株式会社の株式の当該契約の締結の時における1株当たりの価額に相当する金額以上であること」と規定されています。 このため、吸収合併があった場合でも、権利行使価額の見直しは認められないものと考えられます。また、個別論点②で確認した国税庁の質疑応答事例(源泉所得税)においても、以下の記載がなされています。 「吸収合併に当たってストックオプションの付与株数及び権利行使価額を合併比率によって調整することは、ストックオプションの権利者に対してのみ有利になるような恣意的なものでなければ、株式分割等の場合の権利行使価額の調整と同様に、経済的価値を同額にするための付与株式数と権利行使価額の数字上の調整に過ぎませんので、引き続き税制適格要件を満たすものとして差し支えありません。」 つまり、吸収合併に伴い、合併比率に基づいてストックオプションの付与株数及び権利行使価額を調整することは、経済的価値を同額に保つための調整に過ぎないため、税制適格要件を引き続き満たすことを意味します。従って、吸収合併後にストックオプションの権利行使価額の見直しは不要と判断できます。 国内税務Q&A_税制適格ストックオプションに係る事例②
- [【税務Q&A】税制適格ストックオプションに係る事例 ③](https://shiodome.co.jp/column/23262/) - 1. 質問 A社は、自社の執行役員(委任型)に対してストックオプションを発行する予定です。当該ストックオプションは税制適格ストックオプションとして認められるでしょうか。 【前提条件】 対象となる執行役員は経理部長の立場にあり、経営会議等への参加はなく、経営に従事していない。 2. 回答 当該執行役員は、租税特別措置法第29条の2における税制適格ストックオプションの付与対象者になり得る「使用人」に含まれると解釈できます。したがって、税制適格ストックオプションの他の要件(無償発行、権利行使期間、権利行使価額、権利行使限度額、譲渡禁止など)を満たす場合は、税制適格ストックオプションとして認められると判断できます。 3. 税制適格ストックオプションの付与対象者 個別論点の考察に入る前に、税制適格要件の1つである付与対象者について掘り下げて見てみたいと思います。 租税特別措置法第29条の2第1項では、税制適格ストックオプションの付与対象者を、「発行会社およびその子会社の取締役・執行役・使用人であること」と規定しています。 これらを基本として、付与対象者に関する留意点は以下の通りです。 監査役は付与対象者から除外されます。 原則として、社外の人材は付与対象者から除外されますが、後述する例外規定があります。 大口株主も一定の条件下で付与対象者から除外されます。 【社外高度人材の例外】 ②の例外として、社外高度人材が挙げられます。税制改正を経て、一定の条件下で社外の高度人材も税制適格ストックオプションの対象となりました。この改正は、スタートアップ企業が社外の高度人材を機動的に獲得し、成長することを後押しするものです。 税制優遇措置を受けるためには、(1)認定対象企業に対する要件、(2)社外高度人材に対する要件、(3)専門性と貢献内容の関連性の3つの観点から各々の要件を満たす必要があります。以下にその主なものを示します。(詳細は、経済産業省:ストックオプション税制に関する認定制度(社外高度人材活用新事業分野開拓計画)を参照) (1)認定対象企業に対する要件(全て満たすこと) 設立10年未満 資本金10億円以下、又は従業員数2,000人以下 非上場 ハンズオン支援を行うベンチャーキャピタル等からの出資がある 大規模法人グループの所有に属さない (2)社外高度人材に対する要件(いずれかを満たすこと) 高度な資格:博士号の保有や、国家資格(弁護士・会計士など)の取得者 実務経験:上場企業での経営経験、または特定分野での実務経験(取締役、執行役員等) 先端分野への貢献:新規事業分野の開発や、革新分野(イノベーション)に貢献できる人材 過去の業績:過去10年間に製品開発や販売、調達業務に2年以上従事した実績があること (3)専門性と貢献内容の関連性(いずれかを満たすこと) 製品・サービスの開発に貢献すること 事業拡大や販路拡大に貢献すること 組織拡大に伴うガバナンス体制構築等に貢献すること その上で、申請企業は「社外⾼度⼈材活⽤新事業分野開拓計画」を策定し、主務⼤⾂による認定を受ける必要があります。 【大口株主の制限】 ③に示した、付与対象者から除外される大口株主は、以下の通りです。 未上場会社の場合:発行済株式総数の1/3(33.3%)超を保有する大口株主 上場会社の場合:発行済株式総数の1/10(10%)超を保有する大口株主 また、これらの大口株主の特別関係者(親族や配偶者など)も対象から除外されます。この制限は、ストックオプション制度の本来の目的である従業員等へのインセンティブ付与を確保し、大口株主による制度の濫用を防ぐために設けられていると考えられます。 4. 質問に関する判断 A社が自社の執行役員に発行するストックオプションが、税制適格ストックオプションに該当するか否かの判断は、当該執行役員が税制適格ストックオプションの付与対象者として認められるかどうかがポイントとなります。これについては、以下のように考察されます。 「使用人」の解釈 租税特別措置法第29条の2における「使用人」の範囲は明確に定義されていませんが、一般的には会社に雇用されている従業員を指すと解釈されています。税務上問題となるのは、主に「役員」の範囲で、対象者が税務上の役員(みなし役員を含む)に該当しない限り、「使用人」に含めて解釈できます。 執行役員の位置づけ 執行役員は会社法上の機関ではなく、租税特別措置法第29条の2で規定されている「取締役」や「執行役」には該当しません。多くの場合、執行役員は従業員としての地位を保持しながら、一定の経営責任を負う立場にあります。よって、基本的に「使用人」に含めて差し支えないと考えられます。 経営への関与度 執行役員が会社の経営に実質的に従事する立場にある場合、税務上の役員(いわゆる「みなし役員」)と判断される可能性があります。しかし、本件の執行役員については、以下の点から「使用人」に含められると解釈できます。 経理部長の立場にあり、特定の部門の責任者である 経営会議等への参加がなく、全社的な意思決定に関与していない 経営に直接従事していない 以上のことから、当該執行役員は税務上の役員(みなし役員を含む)には該当せず、「使用人」として扱うことが適切だと判断できます。したがって、税制適格ストックオプションの付与対象者として認められると判断できます。 ただし、税制適格ストックオプションとして認められるためには、付与対象者の要件に加え、他の要件(無償発行、権利行使期間、権利行使価額、権利行使限度額、譲渡禁止など)も全て満たす必要があります。 国内税務Q&A_税制適格ストックオプションに係る事例③
- [東京証券取引所の市場区分とIPO準備フレーム:N-2期から上場申請まで](https://shiodome.co.jp/column/54598/) - 1.はじめに 本コラムでは、上場を目指す企業に向けて、各市場の特徴や上場までの基本的なプロセスについて、基礎からわかりやすく解説していきます。 2.東京証券取引所における市場区分の概要と各市場の機能 2022年4月、東京証券取引所(東証)は市場区分の見直しを行い、新たに「プライム」「スタンダード」「グロース」の3市場体制へ移行しました。これにより、それぞれの市場の機能と位置づけが明確化され、市場全体の透明性や効率性を高め、投資家の関心を引き出すことが狙いとされています。ここでは、まず東証が定める各市場の基本的な役割を整理していきます。 (1)プライム プライム市場は、多数の機関投資家が主な投資主体となる株式市場です。企業が長期的な価値向上を図るとともに、海外からの資金調達をスムーズに行い、日本株式市場全体の国際的な競争力を高めることを目的としています。その性格上、コーポレートガバナンス体制や情報開示の水準には厳格な基準が設けられており、高い透明性と信頼性が求められます。投資家との継続的な対話を重視し、長期的な視点で企業価値を高めていくことを志向する企業に適した市場といえるでしょう。 (2)スタンダード スタンダード市場は、将来的にプライム市場への移行を目指す中堅規模の企業が多く上場している区分です。プライム市場に比べて上場基準が比較的柔軟に設定されている点が特徴で、投資家の層も幅広く、多様な資金源からの調達が可能となっています。 (3)グロース グロース市場は、高い成長ポテンシャルを持つベンチャー企業が数多く集まる、イノベーション推進において重要な役割を担う市場です。投資主体は機関投資家や個人投資家にとどまらず、ベンチャーキャピタルによる出資も活発である点が特徴です。短期間で急速な事業拡大が期待できる一方で、事業リスクも相対的に高い企業を対象としています。 3.東証各市場の上場基準とグロース市場における上場要件の概要 ここまでで各市場の概要を確認してきましたが、実際にどの程度の規模の企業がそれぞれの市場に上場しているのか、数値で把握するとより具体的なイメージがつかめます。各市場には、上場に際してクリアすべき明確な数値基準が定められており、以下にその主な内容を示します。 プライム スタンダード グロース 出典:東京証券取引所HP 新たに上場する企業の多くは、まずスタンダード市場またはグロース市場を選択するケースが一般的です。特に近年は、IPO全体の約7割がグロース市場への上場となっており、その存在感が際立っています。ここでは、IPOの中心的な舞台となっているグロース市場について、もう少し詳しく見ていきましょう。 グロース市場では、数値的な上場基準に加えて、合理的な根拠に基づいて事業計画を立案・説明できる能力や、それを実行に移すための事業基盤が重要な要件となります。コーポレート・ガバナンスについては、ベンチャー企業特有の柔軟な経営スタイルを尊重し、すべての原則の完全な遵守までは求められていません。一方で、事業運営上のリスクに関する情報開示については、他市場以上に重視される点が特徴です。 4. IPO準備プロセスの体系的整理:N-2期以前から上場申請までの実務フロー IPOは、監査法人や証券会社と契約を結んだからといって、すぐに実現できるものではありません。通常は少なくとも2〜3年、場合によっては5年以上の準備期間を要する企業もあります。多くの企業は2〜3年を目安にスケジュールを立てますが、実際には計画が後ろ倒しになるケースも少なくありません。進行が遅れる要因としては、業績の伸び悩みやタスク過多などが挙げられます。そのため、必要に応じて基準期の設定を後ろにずらすといった柔軟な対応も視野に入れて進めることが重要です。 IPOの準備においては、申請対象となる基準期を「N期」、その1年前を「N-1期」、さらにその前の期を「N-2期」と呼ぶのが一般的です。以下では、それぞれの段階について順を追って解説していきます。 (1)N-2期以前 IPO準備の最初のステップとして重要なのが「ショートレビュー」の実施です。ショートレビューとは、監査法人やIPO支援に精通したコンサルティング会社など、専門家によって自社の上場準備状況を診断してもらうプロセスを指します。経営管理や利益管理、会計処理、業務管理といった複数の観点から、上場基準に不足している部分を洗い出します。法的な義務はありませんが、この診断結果をもとに一つずつ課題へ対応していくことで、効率的にIPO準備を進めることが可能です。そのため、多くの企業がIPOを目指す過程でショートレビューを活用しています。 この段階では、監査法人の選定を進めるとともに、IPO準備をサポートするアドバイザーとの契約を結んでおくことが望ましいとされています。必須の手続きではありませんが、実際には多くの企業が社内リソースだけで上場準備を完結させるのは難しく、N-2期に向けて会計監査を受けられる体制を整えるため、アドバイザー契約を締結するケースが一般的です。契約先は、ショートレビューを依頼した監査法人やコンサルティング会社である場合もあれば、別の専門機関を選定することも可能です。ただし、独立性の確保という観点から、アドバイザリー業務と会計監査を同一の監査法人が同時に担うことは認められていない点に注意が必要です。 (2)N-2期 原則として、会計監査の対象となるのはN-2期からです。この時点で上場基準をすべて満たしている必要はありませんが、N-1期までには基準に沿った管理体制の「整備」を完了し、実際の「運用」を開始していることが求められます。「整備」と「運用」という言葉は聞き慣れないかもしれませんが、簡単に説明すると、「整備」は適切なルールや仕組みを設けることを意味し、「運用」はそのルールが日常的にきちんと実践されている状態を指します。これらは内部統制の構築プロセスで頻繁に使われる重要な概念ですので、押さえておくと良いでしょう。 (3)N-1期 この段階に入ると、期首の時点から上場企業と同等の水準での管理体制が求められます。一定の要件を満たす新規上場企業については、内部統制報告監査について最長3年間の免除措置が設けられていますが、免除されるのは監査手続きのみであり、内部統制報告書そのものの提出義務は残ります。さらに、内部統制の整備・運用・文書化には多くの時間と労力を要するため、この時期から監査法人やコンサルティング会社のサポートを受けつつ、計画的に対応を進めることが重要です。 (4)N期 上場申請にあたっては、まず必要となる各種書類を準備・作成し、正式な申請を行います。とくに有価証券報告書を初めて作成する企業にとっては、大きな負担となる工程です。申請後は、証券取引所による審査への対応が待っています。通常は、事前に証券会社の審査を経ているため、主要な課題はこの段階で解消されているケースが多いものの、証券会社の審査を通過した後でも、取引所の審査で否決される可能性は残っています。最終審査を無事に乗り越えることで、ようやく上場が実現します。 5.おわりに 本稿では、東証における各市場の概要と、上場に至るまでの一般的なプロセスについて解説しました。上場を目指す市場が定まった段階では、IPOに必要となるコストを踏まえた中期的な経営計画を策定し、最適な資金調達のタイミングや準備開始の時期を検討することが重要です。実際には予定よりスケジュールが後ろ倒しになるケースも少なくないため、その点も見越した計画づくりが求められます。
- [【税務Q&A】非上場株式譲渡時における税務上の時価](https://shiodome.co.jp/column/23477/) - 1. 質問 非上場会社であるA社の社長であるB氏が、発行済株式の55%を保有しています。この度、B氏が保有する株式を新設する資産管理会社へ譲渡することになりました。この際の株式の税務上の時価の算定方法について教えてください。 【前提条件】 新設する資産管理会社は、B氏が100%株式を保有し、代表を務める会社である。 A社は従業員数が70人以上であり、財産評価基本通達178における「大会社」に該当する。 A社株式の売買実例は存在しない。 2. 回答 A社にとってB氏は中心的な同族株主であり、譲渡先が同族関係者に該当する資産管理会社であることから、A社株式は「小会社」として評価すべきと判断されます(所得税法基本通達59-6、法人税法基本通達9-1-14)。 具体的には、以下のいずれかの評価方法で、より低い価額を採用することができます。 純資産価額方式 類似業種比準方式と純資産価額方式の併用方式(類似業種比準価額50%+純資産価額50% ) 3. 非上場株式譲渡時における税務上の時価 非上場株式の税務上の時価とは、市場で取引されていない株式の適正価値を算定するための基準価格をいいます。非上場株式は株式市場に上場していないため、株価が公開されておらず、市場価格に基づいた評価が困難です。そのため、税務上の時価を算定する際には、会社の財務状況や事業の収益力を考慮した特定の評価方法が用いられます。 4. 税務上の時価を考慮する理由 非上場株式を譲渡する際に、税務上の時価が重要となる理由は以下の通りです。 みなし譲渡課税のリスク 譲渡価額が時価よりも低い場合、売手(個人)には実際に得ていない利益に対して課税されることがあります。これをみなし譲渡課税と呼びます(所得税法第59条)。 受贈益課税のリスク 買手(法人)が時価よりも低い価額で株式を取得した場合、その差額について受贈益課税が課される可能性があります(法人税法第22条第2項)。 5. 非上場株式の評価方法の決定手順 本件について具体的に考察する前に、非上場株式の税務上の時価算定方法について、一般的にどのような手順で決定されるのかを見ていきたいと思います。 売買実例の確認最近の適正と認められる売買価額がある場合、それを採用。 公開途上の株式の確認公開途上の場合、公募価格等を参考に評価。 株主の区分同族株主か少数株主かを判定。 評価会社の規模区分財産評価基本通達178に基づき、評価会社を「大会社」「中会社」「小会社」に分類。 評価方法の選択種類原則容認大会社類似業種比準方式純資産価額方式中会社類似業種比準方式と純資産価額方式の併用方式純資産価額方式小会社純資産価額方式類似業種比準方式と純資産価額方式の併用方式少数株主配当還元方式大・中・小会社の区分に応じた原則的評価方法 特定資産の評価土地や上場有価証券などについては時価評価が必要。 ⑤で挙げられている「類似業種比準方式」「純資産価額方式」「配当還元方式」についてこちらで説明します。 類似業種比準方式 評価対象会社と事業内容が類似している上場会社の株価を参考に株価を算定する方法 類似業種の上場企業の株価平均に、配当、利益、純資産の3要素を比較して調整を加える(財産評価基本通達180)。 主に大会社や中会社に適用されることが多い。 純資産価額方式 会社の純資産額を基に株式価値を算定する方法。 会社の資産から負債を差し引いた純資産額を発行済株式数で割り、1株当たりの価額を算出する。 主に小規模な会社や財産保有会社に適用されることが多い。 会社の清算価値に近い評価額となる傾向がある。 配当還元方式 将来の配当収入を現在価値に割り引いて株式価値を算定する方法。 少数株主が保有する株式評価に多く用いられる。 配当実績がない、又は低配当の場合は適用が難しい。 6. 質問に関する判断 本件において、売手(B氏)と買手(資産管理会社)によるA社株式の税務上の時価評価は、「所得税法基本通達23~35共-9」及び「法人税法基本通達4-1-5」に基づいて行われます。 売買実例価額が存在しない場合、評価は「1株又は1口当たりの純資産価額等を参酌して、通常取引されると認められる価額」によって行われます。 この「純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額」の算定に際しては、通常の評価とは異なる条件が「所得税法基本通達59-6」及び「法人税法基本通達9-1-14」によって定められています。 本件では、株式を譲渡するB氏と譲渡を受ける資産管理会社が同族関係にあり、譲渡後もA社の議決権の50%超を保有することが見込まれます。そのため、A社は「小会社」として評価されます。 純資産価額方式 類似業種比準方式と純資産価額方式の併用方式(類似業種比準価額50%+純資産価額50%)
- [【税務Q&A】種類株式発行時の非上場株式の税務上の時価及び税制適格ストックオプションの権利行使価額](https://shiodome.co.jp/column/23656/) - 1. 質問 非上場会社であるA社は、普通株式と種類株式(無議決権株式)を発行しており、直近で種類株式の発行により資金調達を行いました。以下の2つの論点について教えてください。 個別論点① A社の社長であるB氏は、自身が保有する普通株式(株式保有割合は55%)を、新設する資産管理会社に譲渡することとしました。この際の株式の税務上の時価の算定方法について教えてください。 個別論点② A社のように普通株式と種類株式を発行している法人が、普通株式を対象とする税制適格ストックオプションを発行する際の権利行使価額として使用する税務上の時価の算定方法について教えてください。 【前提条件】 新設する資産管理会社は、B氏が100%株式を保有し、代表を務める会社です。 A社は従業員数が70人以上で、財産評価基本通達178における「大会社」に該当します。 2. 回答 個別論点① A社では、種類株式により直近で資金調達を行っていますが、譲渡対象となる普通株式については売買実例がないため、売買実例のない株式として評価することになります。 また、A社にとってB氏は中心的な同族株主であり、譲渡先の新設資産管理会社はB氏が100%株式を保有し、代表を務める同族関係者に該当するため、A社株式は「小会社」として評価すべきと判断されます(所得税法基本通達59-6、法人税法基本通達9-1-14)。 評価方法としては以下の2つがあり、いずれか低い価額を採用することが求められます。 純資産価額方式 類似業種比準方式と純資産価額方式の併用方式(類似業種比準価額50%+純資産価額50% ) 個別論点② A社が普通株式を対象とする税制適格ストックオプションを発行する際の権利行使価額として使用する税務上の時価は、取引相場がないことから、財産評価基本通達に基づき、類似会社の株価や純資産価額を基に算定することが可能です。その際の手順は以下の通りです。 財産評価基本通達に基づき、類似業種比準方式、純資産価額方式、又は併用方式を使用してA社全体の株式価値を算定 純資産価額方式を採用する場合、全体価値から種類株式の価値を控除し、普通株式の残余価値を算定 普通株式の残余価値を普通株式の発行済株式数で割り、1株あたりの時価を算出 算出した普通株式の時価以上の価格を権利行使価額として設定 3. 種類株式とは 本件について具体的に考察する前に、質問及び回答にて言及されている「種類株式」について簡単に確認します。 種類株式とは、会社法(第108条)に基づき、普通株式とは異なる権利内容が設定された株式を指します。配当、残余財産の分配、議決権、譲渡などに関する事項に特典(優先)又は制限を柔軟に設計することが可能であり、企業の資金調達の効率化や経営権の安定化を目的に利用されることが多いです。例えば、新規投資家に対して高い配当を保証するための「優先株式」を発行したり、経営権を守るために「無議決権株式」を発行することなどが考えられます。 種類株式の主な種類としては、①剰余金の配当に関する種類株式、②残余財産の分配に関する種類株式、③議決権制限株式、④譲渡制限株式、⑤取得請求権付株式、⑥取得条項付株式、⑦全部取得条項付種類株式、⑧拒否権付株式、⑨役員選任権付株式があります。ただし、委員会設置会社及び公開会社では、⑨役員選任権付株式の発行はできません。 4. 質問に関する判断 個別論点① (1) 売買実例の判断 A社は直近で種類株式の発行により資金調達を行っていますが、このように種類株式が発行されている会社の場合に株式の種類ごとに売買実例の有無を考えてよいかが論点となります。この点、株式の種類ごとに売買実例の有無を判断することは、財産評価基本通達や国税庁の見解に照らして適切と考えます。 本件に関しては、普通株式の取得者(資産管理会社)と種類株式の取得者が利害関係のない純然たる第三者であることが前提ですが、権利内容の差異やそれぞれの立場(経営的参画・資本的参画)による経済的合理性を勘案すれば、種類株式と普通株式を独立して評価することに問題ないものと判断できます。 なお、国税庁の所得税基本通達の解説の(4)イ(注)(https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/kaisei/230707/pdf/03.pdf)においても、株式の種類ごとの独立評価が認められています。 よって、A社では、種類株式については直近で売買実例がありますが、普通株式については売買実例がないため、「売買実例なし」として評価することで問題ないものと考えます。 (2) 会社規模の判定と同族関係の考慮 財産評価基本通達178は、大会社、中会社、小会社の区分を定めています。A社は従業員数70人以上の「大会社」に該当しますが、A社にとってB氏は中心的な同族株主であり、譲渡先が同族関係者に該当する資産管理会社であることから、A社株式は「小会社」として評価すべきと判断されます(所得税法基本通達59-6、法人税法基本通達9-1-14)。 (3) 評価方法の選択 財産評価基本通達179は、小会社の株式評価について、純資産価額方式又は類似業種比準方式と純資産価額方式の併用方式のいずれか低い価額によって評価すると規定しています。 以上より、A社普通株式は売買実例のない株式、且つ「小会社」として、純資産価額方式又は類似業種比準 方式と純資産価額方式の併用方式(類似業種比準価額50%+純資産価額50%)のいずれか低い価額で評価するものと判断できます。 個別論点② (1) 税制適格ストックオプションの権利行使価額の要件 税制適格ストックオプションでは、権利行使価額は発行時の時価以上である必要があります(租税特別措置法29条の2)。 (2) 評価方法の選択 取引相場のない株式の場合、この時価は財産評価基本通達の例(類似業種比準方式、純資産価額方式、併用方式のいずれか)により算定することができます。 (3)
- [日本の法人形態がもたらす税務上の影響について:株式会社と合同会社の違いやアメリカのLLCとパススルー課税もまとめて解説](https://shiodome.co.jp/column/23780/) - 1. 株式会社と合同会社の基本的な違い 日本で事業を始める際、法人形態の選択は重要なステップです。特に「株式会社(Kabushiki Kaisha, KK)」と「合同会社(Gōdō Kaisha, GK)」は、多くの企業が検討する主要な選択肢です。両者には法的に違いがあり、それが事業運営に影響を与える場合があります。 まず株式会社は、日本で最も一般的な法人形態であり、特に大企業や上場企業が採用する形態です。株式会社の特徴は以下の通りです。 【株式会社の特徴】 信頼性: 株式会社は取引先や金融機関からの信用を得やすく、特に株式発行による資金調達を目指す企業に適しています。 設立コスト: 定款認証が必要で、公証人手数料や登録免許税などの設立費用が高めです。 所有と経営の分離: 株主が所有権を持つ一方、取締役が経営を行います。これにより、資本と経営が分離し、明確な責任分担が可能です。 運営の透明性: 株主総会の開催義務や決算公告義務があり、ガバナンスが重視されます。 一方、合同会社は2006年の会社法改正により導入された法人形態で、柔軟な運営が可能です。合同会社の特徴は以下の通りです。 【合同会社の特徴】 設立コスト: 定款認証が不要であり、設立費用が抑えられるため、スタートアップ企業や中小規模のビジネスで用いられる傾向があります。 所有と経営の一致: 出資者(社員)が直接経営に関与することができるため、迅速な意思決定が可能です。 柔軟な内部規則: 定款に自由なルールを設定できるため、利益配分や業務執行権限を柔軟に定められます。 ガバナンス要件の軽減: 株主総会の義務がなく、決算公告も不要なため、運営コストが低いです。 総合すると、株式会社は規模の大きなビジネスや信用力を重視する場合に適しているのに対して、合同会社はコストを抑え柔軟な運営を目指す、中小企業やスタートアップ企業に適していると考えられます。 なお、選択した法人形態は後から変更することも可能ですが、その際には定款の変更や登記手続きなどが必要となるため、初期段階で十分に検討しておくことが望ましいでしょう。 これら2つの法人形態は法的には異なりますが、日本では税務処理の観点で見ると、基本的に同じルールが適用されます。 2. アメリカのLLCと日本の合同会社の比較 日本の法人形態のうち、合同会社はアメリカのLLC(Limited Liability Company)と呼ばれる法人形態にならって導入されました。したがって、アメリカのLLCと日本の合同会社はそれぞれ似た特徴を持つ法人形態になります。両者の主な共通点は以下の通りです。 出資者は有限責任:LLCも合同会社も、出資者(LLCではメンバー、合同会社では社員)の責任は出資額に限定され、個人資産がビジネスの債務に対して保護されます。 設立の容易さ:両社とも設立コストが比較的低く、運営規則が柔軟に定められるため、小規模ビジネスやスタートアップに向いています。 反対に、相違点として最も大きなものとして両者の税務処理が挙げられます。 アメリカのLLC:アメリカのLLCでは「パススルー課税(Pass-Through Taxation)」と呼ばれる課税方法を選択することで、節税効果を得ることができます。 日本の合同会社:日本の合同会社には法人税法が適用され、通常の法人と同じように課税されます。 このパススルー課税についてもう少し詳しく解説します。 3. パススルー課税の仕組みとその利点 アメリカで広く利用されているパススルー課税(Pass-Through Taxation)は、法人レベルでの課税を回避し、利益を直接個人に配分する仕組みです。この仕組みにより、二重課税を回避できるという大きな利点があります。 具体的には、C Corporation(C Corp)のような通常の株式会社の場合、企業レベルで法人税が課税された後、株主への配当にも課税されるため、二重課税が発生します。 一方、LLCやS Corporation(S Corp)のような小規模株式会社の場合、企業の利益にたいして法人税は課税されずに出資者に対して所得税のみが課税されます。 この仕組みは中小企業や家族経営のビジネスにとって、特に有利とされています。日本の合同会社の場合には、このパススルー課税の制度がないため、通常の法人と同じように法人税が課税され、利益の分配があれば出資者に対して所得税も課税されることになります。 4. 株式会社と合同会社の税務処理の共通点
- [「会計」を正しく理解するために:3つの会計と財務三表の役割](https://shiodome.co.jp/column/53361/) - 1.はじめに 私たちが日常的に何気なく使っている「会計」という言葉ですが、この「会計」には大きく分けて「財務会計」「税務会計」「管理会計」という3つの種類があります。日々の業務の中では、これら3つの会計の違いを意識する機会はあまり多くないかもしれません。本コラムでは、その基本に立ち返り、会計の種類について整理していきます。特に、会計の基盤となる「財務会計」をしっかり理解することが重要ですので、財務会計の中心的な要素である財務三表について、重点的に解説していきます。 2.会計の三本柱を押さえる:企業・税務・管理の基本と違い 会計は、大きく分けて「財務会計」「税務会計」「管理会計」の3つの領域に区分されます。 財務会計は、他社との財務情報の比較を可能にするため、法律や各種規則に基づいた共通の基準で作成しなければなりません。企業会計の中で中心的な役割を果たすのが「財務会計」です。財務会計は、株主・債権者・税務当局・取引先など、企業の外部にいる利害関係者へ財務状況を開示・報告することを目的とした会計手法であり、その基盤となる財務諸表は、主に「貸借対照表」「損益計算書」「キャッシュ・フロー計算書」の3つによって構成されています。企業は、出資や融資などを行う立場にある利害関係者からの信頼を得るために、財務会計に基づいて作成された財務諸表を活用し、自社の経営状況を開示・報告します。これらの財務諸表は、過去の取引記録を体系的にまとめたものであり、企業の現在の財務状態を示す役割を担っています。 税務会計は財務会計と多くの共通点を持ちますが、その根拠となるルールは税法にあります。一般的には、財務会計で算出された数値を基に、税法上の規定に沿って各種調整を施し、税務上の金額を確定します。これは、公平な課税を実現するためのものであり、税法に基づき正確な課税所得を確定することを目的としています。代表的な例として貸倒引当金が挙げられます。財務会計では、企業が将来の貸倒れの発生を予測し、回収不能の可能性が高いと判断されたものを貸倒引当金として見積計上します。他方、税務会計では、企業の恣意的な見積りを排除し、 課税の公平性を確保する観点から、 貸倒引当金の計上については厳格な要件を定め、要件を満たす場合にのみ、その計上を認めています。そのため、財務会計と比べると、費用を計上する時期は相対的に遅くなる傾向があり、より発生が確実であることが重視されます。 管理会計は、財務会計や税務会計とは性質が大きく異なります。社内の意思決定や経営分析のために活用される内部向けの資料であるため、法的・制度的な統一基準は設けられていません。そのため、企業ごとに目的や状況に応じて、分析しやすい形式で柔軟に作成することが可能です。財務会計の数値は、業種や企業の形態にかかわらず共通の基準に基づいて作成されますが、管理会計では、各企業の戦略や組織体制に合わせて、意思決定に役立つ形式で柔軟に資料を作成することが可能です。管理会計の最大の目的は、過去の実績データを踏まえて将来の状況を分析・予測することにあります。その性質上、社外に公表されることはほとんどありません。さらに、数値データだけでなく、顧客満足度などの非財務的な情報も活用対象に含まれる場合があります。 3.財務三表の構成要素とそれぞれの役割 財務三表は、「貸借対照表」「損益計算書」「キャッシュ・フロー計算書」の3つから成り立っています。貸借対照表は特定時点における企業の財政状態を示すものであり、個々の取引内容までは反映しません。取引の報告をする役割は、損益計算書とキャッシュ・フロー計算書が担っています。損益計算書では現金の動きを伴わない取引も含めて計上しますが、キャッシュ・フロー計算書は現金の流れに着目して作成されます。 4.貸借対照表 貸借対照表では、右側に「負債」と「純資産」が配置されます。負債は他人から調達した資金(他人資本)、純資産は企業自身の資金(自己資本)を示しており、返済義務の有無という違いはありますが、いずれも資金の調達源を表している点では共通しています。 一方、左側には「資産」が記載されます。これは調達した資金をどのような形で運用・投資しているかを示す部分です。さらに、資産は上から順に、現金や預金など流動性の高いものが優先的に並べられるのが一般的な特徴です。 5.損益計算書 損益計算書では、企業が一定期間に獲得した「収益」と、それに対応する「費用」が記録されます。ここで計上される費用は収益との対応関係によって認識されるため、実際に支払いがあったからといって、必ずしも費用として認識されるわけではありません。例えば、10年間使用する予定の生産設備に1億円を支払った場合、その支出全額を購入年度の費用として処理することはありません。これは、その設備が今後10年間にわたり収益を生み出す前提で投資されたものであるためです。したがって、1年あたりの売上に対応する費用としては、1億円を10年で按分した1,000万円を減価償却費として計上するのが適切という考え方になります。さらに、損益計算書では、営業利益や経常利益など、企業の主たる事業活動による利益と、それ以外の活動による利益を区分して表示します。 6.キャッシュ・フロー計算書 キャッシュ・フロー計算書は、財務三表の中でもなじみが薄いと感じる人が多い書類です。貸借対照表や損益計算書に比べて、仕組みや意味、さらに作成方法も分かりにくいといった声もよく聞かれます。この計算書は、「営業活動」「投資活動」「財務活動」という3つの区分で構成され、それぞれ次の内容を示します。 営業活動によるキャッシュ・フロー:本業による資金の獲得額 投資活動によるキャッシュ・フロー:投資に充てた資金 財務活動によるキャッシュ・フロー:資金の借入や返済の状況 企業の成長段階によって理想的なキャッシュ・フローの形は異なりますが、一般的には、本業で着実に利益を生み出しつつ、外部からの資金調達を活用して成長のための投資を行っている企業が健全とされています。具体的には、「営業活動」と「財務活動」によるキャッシュ・フローがいずれもプラスであり、「投資活動」によるキャッシュ・フローがマイナスになっている状態が理想的とされています。 先ほどの例のように、損益計算書上では1億円の投資を行っても、当期の費用としては1,000万円しか計上されません。一方で、キャッシュ・フロー計算書は実際の資金の流れを示すため、投資活動によるキャッシュ・フローの項目には、1億円の支出がそのまま記録されることになります。 7.おわりに 経理業務に携わっている方の中には、財務三表の作成経験があったり、日常的に目にしている方も少なくないでしょう。今や、仕訳入力から決算書の作成までを自動で行える便利な会計ソフトが普及し、会計の仕組みを十分に理解していなくても処理自体は可能になっています。しかし、取引の性質を正しく判断したり、キャッシュフローの異常を読み解いたりするには、会計の根本的な考え方を理解しておくことが不可欠です。こうした理解があれば、財務諸表を経営判断や資金繰り分析に活かし、数字の背景を理解し説明できる力も身につきます。 本稿がその一助となり、皆さまの業務に役立てていただければ幸いです。
- [日本進出を狙う中国企業が知っておきたい日本の監査制度について](https://shiodome.co.jp/column/24125/) - 中国企業が日本進出に際し子会社を設立する際に、最も重要な課題の一つが「監査制度の理解」です。 中国では全企業に年次監査が義務付けられる一方、日本では一定の基準を満たす企業のみが法定監査を必要とします。 本記事では、監査義務の有無判断から実務対応まで、日本に子会社を設立しようとする企業のCFO・経理部長が押さえるべきポイントを網羅的に解説します。 日本特有の法制度を踏まえた具体的なアドバイスを通じ、コンプライアンスと効率的な事業運営を実現するためのガイドとしてご活用ください。 1. 中国と日本の監査制度の違い 中国では、企業の規模や業種を問わず、毎年の監査が法的に義務付けられています。これは、国家財政の透明性確保や外資規制の一環として制度化されたもので、監査報告書の提出が税務申告や営業許可の更新に直結します。 一方、日本では会社法と金融商品取引法に基づき、大会社や上場企業など一部の企業にのみ監査が義務化されています。中小企業は原則として監査不要ですが、自主的に任意監査を実施するケースもあります。 【主な違いのまとめ】 2. 監査対象基準の詳細解説 日本において監査義務が発生するかは、以下のいずれかを満たすかで決まります。 (1)会社法上の大会社 会社法により、資本金5億円超または負債総額200億円超の企業は監査義務が発生します。 (2)上場企業(金融商品取引法) 東京証券取引所・名古屋証券取引所などに株式を上場している企業は監査を受ける必要があります。 (3)親会社の監査義務の波及 外資系企業の子会社の場合、親会社が本国で監査義務を負っていると日本子会社も連結対象として監査が必要になる可能性があります。 そのほかにも、銀行や保険会社、公益法人など特定の業種においては業種別の規制によって法定監査が必要となるケースがあります。 3. 法定監査の対象となる企業とは 日本で法定監査が義務付けられる企業は、会社法と金融商品取引法に基づき明確に定義されています。 (1)会社法上の大会社(会社法第2条) 資本金または負債総額が一定規模を超える企業は、「大会社」として監査義務が発生します。 基準の詳細は以下の通りです。 資本金5億円超:設立時または増資後の資本金が5億円を超える場合。 負債総額200億円超:貸借対照表の負債合計が200億円を超える場合(※連結ベースでなく単体ベースで判定する)。 【具体例】 資本金6億円の日本子会社:監査対象。 資本金3億円だが負債総額250億円の会社:監査対象。 ※親会社が大会社でも、子会社単体が上記の基準を満たさなければ監査不要になります。 (2)上場企業(金融商品取引法第193条の2) 日本の証券取引所に上場している企業は、投資家保護の観点から法定監査が必須です。 対象取引所としては、東京証券取引所(プライム・スタンダード・グロース)、名古屋証券取引所などが挙げられます。 また、上場企業には以下の事項も追加で監査が義務付けられています。 中間監査または四半期レビュー:上場企業は最低でも半期ごとに監査法人のチェックを受ける必要があります。 内部統制報告書:財務報告に関わる内部統制の有効性を監査法人が評価します。 (3)特定業種の企業 銀行や保険会社など企業の属する業種によっては、業法や特別法で追加の監査が義務付けられます。公益法人もまた収益規模により法定監査を実施する必要がある場合があります。 4. 監査義務がない場合の対応策 監査義務のない中小企業でも、以下の対策で財務の信頼性を高めることが可能となります。 自主的な任意監査の実施:監査費用はかかるものの、取引先や投資家からの信頼向上、内部統制の強化につながります。 内部監査体制の構築:不正やエラーを早期発見するための定期的なチェックを行う体制を整備することで信頼性を向上できます。 クラウド会計ツールの活用:freeeやMFクラウドなどに代表されるクラウド会計ツールを利用し自動化を図ることで、不正や改ざんを防止することが可能になります。 5. Bookkeepingと監査の役割と連携 Bookkeeping(簿記)と監査は、企業の財務管理において密接に関連しています。簿記は、企業の日常的な取引を記録し、財務状況を把握するためのプロセスです。 これに対して、監査はその記録が正確であるかどうかを独立した立場から検証するプロセスです。監査は、企業の財務報告が正確であり、適正であることを保証する役割を担っています。 Bookkeepingと監査は、単独で行われるものではなく、相互に連携することでスムーズな業務運営が可能になります。Bookkeepingが適切に行われていない場合、監査はその記録の正確性を確認できなくなります。 一方、監査によって指摘された問題をBookkeepingで改善することで、次回の監査に向けての準備が整います。この連携は、企業の透明性と信頼性を高め、効率的な業務運営を支える要素となります。 日本で監査を受ける際には、Bookkeepingと監査の連携を意識し準備を進めることが求められます。 6. 監査準備のためのポイント 監査を受けるためには、いくつかの準備が必要です。以下に、監査準備のためのポイントをいくつか挙げます。
- [インボイス制度における経過措置や特例の適用方法について -税抜経理時の注意点や保存要件について仕訳例や具体的な取引例を用いてご紹介-](https://shiodome.co.jp/column/24210/) - 1. はじめに 令和5年10月よりインボイス制度がはじまり、多くの事業者が経過措置や特例を利用していることでしょう。その多くは適用可能期間が定められているもの、適用可能対象が決められているもの、記帳の条件が決められているものがあります。今回はその中でも最も影響額が大きい仕入税額控除の経過措置について確認していきます。 2. 仕入税額控除の経過措置 仕入税額控除の経過措置では、適格請求書発行事業者以外の事業者からの仕入を行った場合、本来はその仕入にかかる消費税は全額仕入税額控除が認められませんが、救済措置として以下のように暫定的に控除されます。 経過措置を適用するためには、以下の①~⑦の記載事項に加え、個々の取引ごとに「80%控除対象」というように、この経過措置を受ける取引であることを記録する必要があります。 ≪区分記載請求書等保存方式における記載事項≫ 発行者の氏名または名称 取引年月日 取引内容 取引金額 交付を受ける者の氏名または名称 軽減税率の対象品目である旨 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜または税込) また、上記の経過措置に関して令和6年10月1日から見直しがされています。具体的には、適格請求書発行事業者以外の事業者からの税込課税仕入額の合計がその事業年度で10億円を超える場合、その超過分についてはこの経過措置が認められません。 3. 税抜経理時の注意点 税抜経理で仕入税額控除を適用するとき、同じ1,100,000円の資産として購入した場合でも、適用期間に応じて以下のような違いが生まれます。 ケースA【適格請求書発行事業者からの仕入】→全額控除 ケースB【非適格請求書発行事業者からの仕入 令和5年10月1日~令和8年9月30日】→80%控除 ケースC【非適格請求書発行事業者からの仕入 令和8年10月1日~令和11年9月30日】→50%控除 ケースD【非適格請求書発行事業者からの仕入 令和11年10月1日以降】→全額控除不可 このように、仕入先のインボイス登録状況、仕入れ時期によって資産計上額が変わります。このときの処理として雑損失を使う方法があり、例えば仕入税額控除80%のときは以下のようになります。 (資産取得時) (決算時) ※5年定額法であると仮定して減価償却計算 この場合の減価償却費ですが、法人税法上の資産取得価額はあくまで1,020,000円となります。そのため、減価償却限度額が204,000円(1,020,000÷5年)であるのに対して、損金計上している金額が20,000+200,000=220,000円なので、この差額16,000円(220,000-204,000=16,000)は減価償却超過額として加算調整が必要です。このように、企業会計と税務会計の数値が異なると管理の負担が増えることにもなりますので、その兼ね合いを考えて処理方法を決定するとよいでしょう。 4. 帳簿のみの保存で保存要件を満たす取引 インボイス制度の下では、原則適格請求書の保存が必要になりますが、以下に挙げる取引については、書類の交付が困難であるため帳簿への保存のみで適用が認められます。 税込価額3万円未満の公共交通機関(船舶、バス、鉄道)による旅客の運送 税込価額3万円未満の自動販売機又は自動サービス機による商品の購入等 郵便切手を対価とする郵便サービス(ポストに投函されたものに限ります。) 簡易インボイスの必要事項が記載された入場券等が、その使用の際に回収されてしまう取引 古物営業、質屋又は宅地建物取引業を営む事業者が、適格請求書発行事業者でない者から、古物、質物又は建物を棚卸資産として取得する取引 事業者が、適格請求書発行事業者でない者から、再生資源又は再生部品を棚卸資産として購入する取引 従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費、宿泊費、日当等及び通勤手当ただし下記については適格請求書を保存しない場合、帳簿に記載すべき追記事項があります。 ■上記の①~⑦の取引の内、どれに該当するかを記載する(「○○への入場券」)■次の取引にかかる相手方の住所又は所在地 上記⑤の取引のうち、古物台帳など、その業務に関する帳簿等へ「相手方の氏名及び住所」を記載する必要があるもの(税込 1 万円以上の買取等) 上記⑥の取引のうち、事業者から購入するもの 5. おわりに 今回は、令和5年10月から適用開始となったインボイス制度について、間違えやすい点、令和6年度より変更になった点を中心にご紹介しました。 消費税はインボイス制度の下でさらに複雑化していますので、特例を適用するときには要件の確認を慎重に行い、処理するよう注意しましょう。
- [日本の消費税を徹底解説:欧米の税制度との比較と外資系企業への影響](https://shiodome.co.jp/column/24195/) - 1. 消費税と付加価値税(VAT)の違い 消費税(Consumption Tax)と付加価値税(Value-Added Tax, VAT)は、消費に課される間接税として多くの国で採用されていますが、その仕組みや運用には大きな違いがあります。 日本の消費税は1989年に導入され、現行では単一税率である10%(一部食品などは軽減税率8%)が採用されています。 一方、欧州諸国で広く採用されている付加価値税は、加盟国ごとに異なる複数税率を特徴としており、事業者間の取引でも税が課されるものの、各段階での税額控除により最終消費者の負担となります。 日本の消費税のもう一つの特徴は、輸出取引に対する免税制度です。これは、国内で生産された商品やサービスが海外で消費される場合、消費税を課さないというシンプルなルールを提供しています。 付加価値税を採用する国では、輸出免税手続きが複雑になることが多く、事業者にとっての事務負担が増えることがあります。 例えば、EU諸国では輸出免税を適用するために、輸出書類や仕入れに関する適切な帳簿管理が求められます。これにより、管理の煩雑さが増し、特に中小規模の企業にとっては大きな負担となります。 一方、日本では免税手続きが付加価値税と比較すると簡易であるため、輸出を積極的に行う企業にとっては有利な面があります。 2. アメリカの売上税(Sales Tax)の仕組み アメリカでは消費に課される税として売上税(Sales Tax)が採用されていますが、その仕組みは日本やヨーロッパとは大きく異なります。 売上税は各州や地方自治体で定められるため、税率や課税対象が州ごとに異なります。例えば、カリフォルニア州では一般的な税率が約7.25%ですが、テキサス州では6.25%と異なる税率が適用されます。また、オレゴン州やデラウェア州など、一部の州では売上税が存在しないケースもあります。 さらに、売上税は一般的に最終消費者が購入する際に課税され、事業者間の取引には適用されません。 この仕組みは一見シンプルに見えますが、州間取引やオンライン販売に関する税務処理が課題となっています。特に2018年のWayfair判決以降、多くの州がオンライン販売事業者に対して州外への販売にも売上税の徴収義務を課すようになりました。 これにより、外資系企業がアメリカ市場で事業を展開する際、複数州での規制対応が求められるようになり、税務管理の負担が増加しています。 3. 免税事業者の選択と影響 日本の消費税制度において免税事業者(Tax-Exempt Businesses)とは、基準期間(通常は2年前)の課税売上高が1,000万円以下である場合、納税義務を免除される事業者を指します。 これにより、小規模事業者の事務負担が軽減される一方で、課税事業者との取引においては適格請求書の発行ができないという課題があります。 特に2023年に導入されたインボイス制度により、免税事業者の選択は企業の取引先との関係に直接影響を及ぼすようになりました。適格請求書がない場合、取引先での仕入税額控除が認められないため、免税事業者との取引を控える企業も増加する可能性があります。このような背景から、免税事業者であることの利点と欠点を慎重に検討することが重要です。 免税事業者のままでいることには、事務処理の簡便さという利点がありますが、取引先のニーズに対応できないことで、取引機会を損失するリスクが伴います。 一方で、課税事業者になることで、税務処理の負担が増加しますが、取引先との関係を維持できるというメリットがあります。企業は、自身の事業規模や取引構造を見極めながら最適な選択をする必要があります。 4. インボイス制度導入の背景と影響 インボイス制度(適格請求書等保存方式)は、日本の消費税制度における透明性と公平性を高める目的で導入されました。この制度では、適格請求書発行事業者として登録された事業者のみが適格請求書を発行でき、受領側はその適格請求書を保存することで仕入税額控除を受けることができます。 この新制度は、特に外資系企業にとって日本の消費税処理を複雑化する要因となる可能性があります。例えば、適格請求書の適正な管理や、取引先の事業者区分の確認が必要となり、従来以上に詳細な税務プロセスが求められます。 一方で、インボイス制度には長期的なメリットもあります。具体的には、適正な課税関係が明確化されることで、税務調査のリスクを軽減できる点や、取引先間の信頼性が向上する点が挙げられます。 5. 越境取引における税務の注意点 日本で事業を行う外資系企業にとって、越境取引における消費税の取り扱いは重要なテーマです。輸出取引では消費税が免除されますが、その適用を受けるには正確な記録と証明書類の整備が求められます。また、輸入取引においては輸入消費税が課され、これを適切に申告し控除を受ける手続きが必要です。 ヨーロッパの付加価値税では、EU内での越境取引においても各国の規制や税率が異なるため、複雑な税務処理が発生します。例えば、取引ごとに適切な税率を適用する必要があるほか、リバースチャージ制度の適用範囲も国ごとに異なります。これに対し、日本の消費税制度は比較的シンプルですが、最新の規制に基づく適切な対応が不可欠です。 特に外資系企業が日本での輸出入取引を管理する場合、税務リスクを軽減するために、専門家の助言を受けながら適切なプロセスを構築することが求められます。具体的には、通関手続きの正確性や、輸入時の課税価格計算方法の見直しなどが挙げられます。 6. 消費税制度の国際比較 日本の消費税、ヨーロッパの付加価値税、アメリカの売上税の比較から、日本の消費税制度はそのシンプルさが際立っています。 単一税率、輸出免税、課税事業者の区分などの特徴は、外資系企業が日本市場に参入する際の一つの利点といえるでしょう。 しかし、インボイス制度の導入や免税事業者の取り扱いなど、近年の改正により複雑さも増しています。一方、ヨーロッパの付加価値税は、複数税率や各国間の調整が必要であり、特に越境取引において管理コストが高くなる傾向があります。アメリカの売上税は州ごとに異なるルールを持ち、規制遵守の負担が事業者にとって大きな課題です。 7. 日本での税務処理の実務ポイント 外資系企業が日本で税務処理を行う際には、以下のポイントに注意する必要があります。 インボイス制度への対応:適格請求書発行事業者として登録および適格請求書の発行・保存の体制を整える。 免税事業者との取引確認:取引先の事業者区分を把握し、仕入税額控除に影響がないようにする。 輸出入取引の適正処理:輸出免税の要件を満たす証明書類を整備し、輸入消費税の申告手続きを正確に行う。 最新の税制改正情報の把握:法令の変更に迅速に対応するため、専門家との連携が重要です。 また、日本での税務処理を効率的に行うためには、税務ソフトウェアや専門の税理士を活用することが推奨されます。 特に外資系企業の場合、日本独自の税務ルールに対応したシステムや、国際的な税務知識を持つ専門家のサポートが重要です。 8. 令和6年度事業者免税制度に関する改正
- [外資系企業が知るべき資本金5億円以上の日本法人のメリット・デメリット](https://shiodome.co.jp/column/24215/) - 日本市場でのビジネス展開は、グローバル企業にとって大きな成長の可能性を秘める一方、独自の制度や規制の複雑さが障壁となることも少なくありません。 特に、日本での会社設立に際しては、資本金の設定が単なる数字の問題ではなく、企業の信用力、資金調達力に直結する重要な要素となります。 本記事では、資本金5億円以上という水準がどのような基準で評価されるのか、またその設定によって得られるメリットとともに、企業運営上のリスクや課題についても詳しく解説します。 1. 日本での会社設立における資本金5億円以上の基準と背景 日本において株式会社を設立する際、法的な最低資本金の規定は存在しません。 1円から設立可能な状況ではありますが、企業の信用力や将来的な成長、資金調達の観点から、実務上はある程度の資本金が求められる傾向にあります。 日本の会社法においては、資本金の額そのものが事業の安定性や企業規模の象徴として機能しており、5億円以上の企業は「大会社」として分類されます。 大会社に該当すると、会計監査人の設置、内部統制の整備、定期的な情報開示など、一定の法的義務が課されるほか、外形標準課税の適用対象となるなど、税務面でも特有の影響を受けることになります。 2. 大会社化のメリット:信用力と利点 資本金5億円以上で設立された会社は、様々な面でメリットを享受できます。主な利点は以下の通りです。 信用力の向上:事業運営の安定性や経営基盤の強固さを示す指標として捉えられ、現地の取引先、金融機関、さらには投資家に対して、信用力向上に直結します。資本金が大きいということは、事業運営の安定性や経営基盤の強固さを示す指標として捉えられ、結果として有利な取引条件や融資条件が得られる可能性が高まります。 資金調達力の強化:資本金が充実している企業は、自己資本比率が高いと評価されやすく、銀行や投資家からの資金調達がスムーズに行われる傾向にあります。 経営の安定性・継続性:大規模な資本金は、短期的な資金繰りだけでなく、長期的な経営の安定性をも意味します。市場の変動や景気の変化に対しても、十分な自己資本があれば、柔軟な対応が可能となります。 3. 大会社化のデメリット:負担とリスク 一方で、資本金5億円以上の大会社となることには、いくつかのデメリットやリスクも伴います。具体的には以下の通りです。 税務負担の増加:日本では、資本金が一定額以上になると外形標準課税と呼ばれる事業税の対象となり、企業の規模に応じた税務負担が課されます。たとえ利益が低い場合でも、資本金の規模を基準にした税金が発生するため、税務戦略の観点からは注意が必要です。また、法人税や地方税においても、企業規模が大きいことで税率や課税基準が厳しくなる可能性があります。 会計監査人の設置義務:大会社に該当すると、監査法人または公認会計士のような会計監査人を設ける義務が生じます。また、この会計監査人によって計算書類と呼ばれる会社が作成した決算書について監査を受けなければなりません。したがって、会計監査人に対して一定の費用が発生することになります。 4. 資本金額決定時の考慮ポイント 資本金の設定は、単に数字の大きさだけではなく、企業の中長期的な成長戦略や資金需要と直結する重要な経営判断です。 まず、初期投資や運転資金、技術開発、マーケット拡大、さらにはM&Aなど、将来的な事業展開に必要な資金需要を正確に見積もることが重要です。 また、取引先や金融機関が求める信用水準に合わせることにより、企業イメージの向上が期待されます。 一方、過大な資本金設定は内部管理の複雑化や経営の硬直化を招く可能性があるため、適切なバランスを見極める必要があります。 さらに、税務負担の最適化や将来的な増資計画、資本政策との整合性を検討するため、場合によっては税務専門家や会計コンサルタントとの連携も必要になるでしょう。 5. 日本において期中増資を行う際の手続きと注意点 企業が成長戦略や追加資金調達の手段として期中増資を実施することがあります。具体的な流れは以下の通りです。 投資家と新株の発行内容について協議する 株主総会を開催し、新株の募集要項を決議する 投資家と株式総数引受契約を締結する 投資家から出資を受ける 法務局に登記申請する 日本における増資の注意点として、増資の変更登記申請は総数引受契約書で定めた払込期日(払込期間を定めた場合は期間の末日)から2週間以内に必ず行う必要があります。増資の手続きは複雑で影響が大きいため、現地の専門家に依頼することが一般的です。 6. 外資系企業特有の課題と解決策 外資系企業が日本で子会社を設立する際、本国と日本の会計基準や税務ルールの違い、さらには言語や文化の壁といった独自の課題に直面します。こうした課題を解決するためには、現地の税務・会計専門家との連携が不可欠です。 現地スタッフの採用や定期的な研修、通訳・翻訳サービスの活用により、社内外のコミュニケーションを円滑にし、現地事情に即した運営体制の構築が求められます。 また、グローバルな会計基準との整合性を維持するため、現地のコンサルタントや会計事務所との協力体制を強化し、内部統制やリスク管理の充実を図ることが、外資系企業の競争力向上に直結するでしょう。 7. 日本の会社法が与える影響 資本金5億円以上の大会社となる場合、日本の会社法に基づく厳格なガバナンス体制が要求されます。 内部統制システムの整備、会計監査人の設置、決算公告の拡充など、各種法令遵守は企業の透明性と信頼性を大きく向上させる一方、これらの手続きに伴う運営コストや管理工数の増加という側面も否めません。 特に外資系企業の場合、本国との連携やグローバルな基準との調整が必要となるため、現地法令に精通した専門家の助言を仰ぎ、適切な内部体制を構築することが重要です。 8. まとめ 本記事では、外資系企業が日本で子会社を設立する際に考慮すべき、資本金5億円以上の設定に関する基準と背景、ならびにそのメリット・デメリットについてまとめました。 まず、日本では法定最低資本金は存在しないものの、信用力や資金調達、事業成長を見据え、実務上は一定水準以上の資本金が求められます。 特に、資本金5億円以上となると会社法上の大会社として扱われ、内部統制の整備や会計監査人の設置、法定開示義務など、通常の中小企業にはない厳格な法令遵守が要求され、これが運営コストや管理体制の複雑化といったデメリットを伴います。 一方で、大規模な資本金は、信用力の向上や資金調達力の強化、経営の安定性を確保する上で大きなメリットとなるため、企業の中長期的な成長戦略や市場での競争力向上に寄与します。 さらに、増資手続きや現地特有の課題への対策、外資系ならではのグローバル基準との調整など、実務面での注意点も多岐にわたることが明らかとなりました。 こうした各要素を総合的に検討し、専門家との連携を強化することで、外資系企業は日本市場での持続的な成長と安定経営を実現できるでしょう。
- [事案例:租税条約について](https://shiodome.co.jp/column/11525/) - Q.当社では自社のコンテンツを海外に提供することにより収益化に成功しつつあります。取引を行う前には、租税条約について確認する必要があると聞きました。租税条約とは何でしょうか? A.二重課税の調整、脱税及び租税回避への対応等を通じ、二国間の健全な投資・ 経済交流の促進に資するものであり、日本は平成24 年4 月末現在、64 カ国・地域で53 条約を締結しています。 租税条約の概要 租税条約には、OECD(Organisation for Economic Co-operation and Development:経済協力開発機構)加盟国を中心にしたOECD モデル租税条約があり、OECD 加盟国を中心に、租税条約を締結する際のひな型となっています。日本もこれに沿った規定を採用しています。 OECD モデル租税条約の主な内容 二重課税の調整源泉地国(所得が生ずる国)の課税できる所得の範囲を確定しています。事業所得は、支店等の活動により得た所得のみに課税されます。投資所得(配当、利子、使用料)は、税率の上限を設定しています。 脱税及び租税回避への対応 税務当局間の納税者情報(銀行機密を含む)の交換が行われます。通常、源泉地国で課税された租税を自国の租税から控除する方法(外国税額控除)または源泉地国で生じた所得を課税の対象から除外する方法(所得免除)によって二重課税の排除を行っており、日本では、外国税額控除方法を採用しています。 租税条約のメリット 租税条約のメリットとしては、海外進出する企業は外国への投資や事業から得た利益に対する二重課税を避けることができる点や、税制面で不当な扱いを受けた時に両国間で設けられた協議機関へ申し立てを行うことができる点などが挙げられます。 また、政府は二ヵ国間での投資を促進させることにより事業の拡大がなされるなどの期待をしています。さらに、配当や利子への課税が軽減される点もメリットとして挙げられます。 租税条約適用のための手続 日本から海外に対して利子や配当、使用料などを支払う場合には、原則として20%の源泉所得税が課税され、支払者がその源泉徴収義務を負うことになります。しかし、租税条約の適用によって、海外への支払に対する源泉所得税の減免が認められることがあります。 減免の申請を行うには、「租税条約に関する届出書」を対象となる所得の支払の前までに、支払者の納税地の所轄税務署長に提出する必要があります。
- [なぜ会計・給与計算・支払業務をアウトソースすべきなのか?](https://shiodome.co.jp/column/12166/) - 1. アウトソーシングとは? アウトソーシングとは、本業であるコア業務に関連するノンコア業務を外部の会社や個人に依頼して行ってもらう事をいいます。アウトソースをするときには、社内で従業員を雇用して行うべきか、外部の会社や個人に依頼する方がよいかという比較検討になります。 時々、アウトソーシングとオフショアリングを混同している方がいますが、これらは全く異なる概念です。オフショアリングは賃金の安い国に自社の子会社等を設立し、その場所で経理や給与計算業務を行う事です。そのためあくまで自前ですべてを構築しマネージしなければなりません。一方でアウトソーシングは企業が必要な特定のサービスについて、外部の会社や個人に委託するため、自社でその組織構築や運営を行う必要がありません。 2. アウトソーシングの5つのベネフィット コスト削減 会計・給与計算・支払業務をアウトソースすることでこれらに関係する従業員の人件費や税金や福利厚生費などを大きく削減することができます。昨今は日本では労働人口が著しく減少しており、適切な人材の採用や教育に関するコストも非常に大きくなっています。こちらのメリットについては後ほど詳しく解説いたします。 リスクマネジメント 日本で事業を行う上で各種税制やレギュレーションに従うことは極めて重要ですが、リソースが限られた企業にとってこれらを独自で行っていくことは難しいといえます。会計や給与計算等の処理を専門家がいる会社にアウトソースすることで、コンプライアンスを遵守しリスクを最小限に抑えることができます。こちらのメリットについては後ほど詳しく解説いたします。 高いクオリティ 我が国は各種業務に関連する国家資格がいろいろとあり、公認会計士、税理士、社会保険労務士等のライセンスホルダーの力を借りることが品質向上のためには不可欠です。これらの専門家を有する会社に会計や給与計算等の業務を委託することで、クオリティの高いサービスを受けることが可能となります。 時間の節約 タイムリーに専門家が会計や給与計算等の処理を行うことで、管理部門の従業員は時間を節約し別の業務を行う時間を作ることができます。より委託不可能なコア業務でもあり付加価値の高い仕事にフォーカスすることができるようになります。 カスタマイズ 会計や給与計算等の処理を日々行っている会社には相当なノウハウがたまっております。そのため、通常クライアントの様々なリクエストに対して、ソフトウェア、言語、報告方式、報告方法などの観点からベストソリューションを提供することができるため、ストレスなく業務をアウトソースすることが可能です。 アウトソーシングのベネフィットについて、より具体的に解説をさせていただきます。 会計をアウトソースするベネフィット 給与計算をアウトソースするベネフィット 支払業務をアウトソースするベネフィット コスト削減の観点からのベネフィット リスクマネジメントの観点からのベネフィット 経理部門や労務部門におけるベネフィット 上記について実例を交えながらご紹介いたします。 3. 会計をアウトソースするベネフィット 我が国で事業を行う上では、日本での納税のためにも、ステークホルダーへの報告のためにも財務諸表を作成することは不可欠です。しかしながら、会計基準(JGAAP、USGAAP、IFRS等)と税務基準の間には差異があるため、これらの差異について精通した経理人材を採用して会計帳簿を作成し決算業務を行う必要があります。外資系企業であればコミュニケーションのためには英語が堪能な経理人材を採用したいところです。ところが、近年優秀な会計人材の採用は大変難しく、経理業務の人的リソースが不足している時には、自社で記帳を行うことが困難となってしまう場合があります。その際に、記帳業務をアウトソースすることができれば、メンバーは自社のコア業務に専念いただくことができるためベネフィットが大きいといえます。また、記帳業務のみならずその上流のプロセスから業務を外部委託することで一層の業務効率化とコストダウンを図ることができます。 そのため、例えば以下のような業務と組み合わせることにより大きなベネフィットを得ることができます。 支払業務(現金・振込) 請求書発行業務 給与計算業務 社会保険事務業務 これらの業務は最終的には記帳業務につながっていくものであるため、これらの業務を含めてアウトソースすることでより一層効果的かつ効率的な結果を生み出すことが可能です。 4. 給与計算をアウトソースするベネフィット 給与計算をアウトソースするベネフィットとしては以下のようなものが挙げられます。 (1) 給与計算に関わる人件費を削減できる(2) 給与計算担当者の退職等による業務の混乱を避けられる(3) 法改正にしっかりと対応して給与計算を行う(社会保険料率は毎年改正されます)(4) 個人情報(給与額)が社内に流出することを防止できる 給与計算のやり方がわからず気が重くなってしまう人事担当者の方も多く、また、従業員がいるのに所得税の計算、雇用保険料率、社会保険料について詳しい理解がない・・・など悩んでいる方も多いのが実情です。最も大きな問題としては給与計算を行えるスタッフを採用したにも関わらず、そのスタッフが退職してしまった場合に、再度同じようなスキルを有するスタッフを採用することが簡単ではないという点です。近年労働人口が不足している上に、人事周りのスキルを優するスタッフが非常に不足しているためです。 給与計算はどの業種の企業でも必ず毎月発生する業務です。ところがその給与計算の処理には上述したものも含めて、下記のような問題が発生することが一般的です。 (1) 給与担当の入退社が多い(2) 給与計算が適正かどうかわからない(3) 給与計算のために人事担当の従業員を採用するコストを削減したい(4) 機密保持のためにも、社内の人間には給与計算はさせたくない(しかし自分で担当する時間はない)(5) 給与計算の手間が本業を邪魔している(6) 法改正の情報が入ってこない(7) 保険料の料率がよくわからない これらを総合的に判断すると、給与計算業務を社会保険事務手続きまで含めて専門家にアウトソースすることがお勧めです。 5. 支払業務をアウトソースするベネフィット 支払業務は、間違いが許されないセンシティブな業務の1つです。また、採用して日が浅いスタッフに会社の資金を委ねることが難しいことは往々にしてございます。支払業務は主に、「振込」と「窓口支払」の2つに分かれますが、会社の現金預金を動かすことになるため、重要かつ神経を使う業務です。 原則として1名の担当者が資金を扱うことは危険であり、最低でも2名以上による相互牽制が必要であり、どんなに小さな法人といえども、内部統制を構築することは重要ですが、そのためには相応のコストを負担する必要があります。 支払業務をアウトソースすることで、メンバーは自社のコア業務に専念いただくことができるためベネフィットが大きいといえます。 6. コスト削減の観点からのベネフィット 近年多くの企業は激しい企業競争にさらされています。そのためコスト削減についてもマネジメントが関心を寄せるテーマの1つです。アウトソーシングのベネフィットとして重要なものの1つに、コスト削減が可能であるという点があります。クライアントが会計税務・給与計算・社会保険手続・支払業務のパッケージでアウトソーシングサービスを利用した場合についてどのくらいコストダウンができるかという事例をご紹介します。 (1)アウトソーシングサービス業務の流れと要点 (2)どのくらいコストが削減できるか 当社が日本に進出した外資系企業を支援させていただいたときの事例についてご紹介します。 ドイツに本社があるIT企業の日本子会社であり、日本法人社長、営業マネージャーと数名の営業担当者により事業はスタートしました。 管理部門についてですが、英語が堪能な会計税務マネージャーと人事労務マネージャーを採用するためには、最低でもそれぞれ年収8,000,000円、6,000,000円が必要となります(昨今の労働市場においてはこの金額でも難しいかもしれません)。その他に支払い事務を担当するスタッフ(年収4,000,000円)を雇用する必要があります。これらを合計して合計コストは18,000,000円とします。 一方で私達が提供した会計税務サービス、給与計算・社会保険手続サービス、支払代行サービスの報酬はそれぞれ、年額4,000,000円、2,000,000円、2,000,000円で合計8,000,000円(消費税は含まない)でした。そのため、シンプルな計算ではありますが、このクライアントは年間約1000万円程度の金額的な費用削減ベネフィットを得ることができています。コストが低い上に安定してサービスを受けられることから、このクライアントは大変満足してくれています。なお、これらの従業員給与については社会保険料会社負担分、福利厚生、コンピューター、机や椅子などのオフィス用品、採用のためのコストなどは含んでいないため、この金額よりもさらに多くの金額的ベネフィットを享受することができるといえるでしょう。
- [日本でのビジネスをサポートする士業(会計士、税理士、社労士、弁護士、行政書士、司法書士)の役割と違い](https://shiodome.co.jp/column/22161/) - 1. はじめに 日本でのビジネス活動を成功させるためには、関連する法律や会計・税務の知識が不可欠です。これを支えるのがいわゆる「士業」と呼ばれる専門職です。 士業とは、「○○士」のような国家資格を有した専門的な職業を意味します。 日本の代表的な士業として以下の6つがあげられます。 公認会計士 税理士 社会保険労務士 弁護士 行政書士 司法書士 この記事では、これら日本における主要な6つの士業の役割とその違いについて詳しく説明します。 2. 公認会計士 公認会計士は日本では一般的に会計士と呼ばれ、主に企業の財務諸表の監査業務を行います。監査業務とは、企業の財務諸表が適正に作成されているかどうかを独立した立場から検証することであり、投資家や金融機関に対する信頼性の向上に寄与します。その他にも、会計士は財務アドバイザリー業務やコンサルティング業務も手掛けることがあり、企業の経営戦略や内部統制の強化にも役立ちます。 このうち、監査業務については公認会計士の独占業務であり、日本では公認会計士以外が監査業務を行うことができません。 公認会計士は後述する税理士と混同されますが、その違いは主に業務範囲にあります。公認会計士は監査業務が中心であり、税務申告の代理は行いません。一方、税理士は税務申告や税務相談を専門としています。 3. 税理士 税理士は、企業や個人の税務申告を代行し、税務相談を行います。日本の税制は複雑で頻繁に改正されるため、専門知識を持つ税理士のサポートが不可欠です。また、税理士は節税対策や税務調査対応など、クライアントの税務リスクを最小限に抑えるための助言も行います。 税理士にも公認会計士と同様に独占業務があり、「税務の代理」「税務書類の作成」「税務相談」がそれに該当します。 税理士は上述の会計士とは異なり、業務範囲が税務に特化しています。会計士が財務諸表の監査を主な業務とするのに対し、税理士は税務申告や税務相談を中心に行います。 4. 社会保険労務士 社会保険労務士は、日本では社労士と略されて呼ばれることもあります。 労働基準法や社会保険法令に基づく手続きの代理や相談を行います。具体的には、労働条件の整備や就業規則の作成、労働保険・社会保険の手続き代行、人事・労務管理のコンサルティングなどです。社会保険労務士の業務は、企業の人事労務部門の負担軽減や労働問題の未然防止に役立ちます。 労働及び社会保険に関する法律に基づいて申請書や帳簿の作成・提出手続の代行が社会保険労務士の独占業務となります。 社会保険労務士の業務は会社の人事労務に特化しています。弁護士が法律全般に関する業務を行うのに対し、社会保険労務士は労働法や社会保険法に特化しています。 5. 弁護士 弁護士は、法律に関する幅広い業務を担当します。企業法務、訴訟代理、契約書の作成・チェック、法律相談などが主な業務です。企業法務では、取引先との契約締結やトラブルの予防、訴訟リスクの分析などを行います。 弁護士は法律全般を扱うのに対し、他の士業は特定の分野に特化しています。例えば、行政書士は書類作成を専門とし、司法書士は不動産登記や商業登記を専門とします。 6. 行政書士 行政書士は、行政手続きに関する書類の作成や提出代行を行います。具体的には、許認可申請書や契約書、定款の作成などです。行政書士は、ビジネスの立ち上げや運営に必要な各種許認可の取得をサポートします。 行政書士は書類作成とその手続き代行に特化しており、法的代理権を持ちません。弁護士や司法書士とは異なり、裁判所での代理人として活動することはできません。 7. 司法書士 司法書士は、不動産登記や商業登記の手続き、簡易裁判所における訴訟代理などを行います。不動産取引の際の登記手続きや、会社設立時の商業登記手続きをサポートすることで、企業の法的安定性を確保します。また、相続手続きや遺言書作成の支援も司法書士の重要な業務です。 日本で会社を設立しようとした際に、登記に関しての手続の代理で手続を行えるのは司法書士のみになります。 司法書士は主に登記手続きを専門とし、弁護士とは異なり、簡易裁判所での訴訟代理に限定されています。弁護士が法律全般を扱うのに対し、司法書士は登記手続きに特化しています。 8. 各士業の海外との比較 各士業について、海外ではどのように呼ばれ、どのような位置づけになっているのでしょうか。 公認会計士 海外では、会計士は一般的にCPA(Certified Public Accountant)と呼ばれ、企業の財務諸表監査や税務相談、経営コンサルティングを行います。米国や欧州では、会計士が幅広い業務を担当することが一般的です。 税理士 税理士に相当する職業は、米国ではTax ExpertやEnrolled Agentと呼ばれます。税務に特化した業務を行い、税務申告や税務相談を担当します。 社会保険労務士 社会保険労務士に相当する職業は、米国ではHuman Resources
- [海外から日本に赴任した駐在員のためのグロスアップ計算とは?](https://shiodome.co.jp/column/26756/) - グローバルに展開する企業にとって、海外から日本に赴任する駐在員への対応は、人材管理の中でも特に繊細な分野です。税制や社会保険制度が異なる国からの駐在員に対して、日本での給与をどのように設計し、公平性や納税義務を担保するかは、大きな課題の一つとなります。その中でも重要なのが「グロスアップ計算(Gross-up Calculation)」です。本コラムでは、その考え方や必要性、関連制度との関係について解説します。 1. グロスアップ計算とは グロスアップ計算とは、企業が駐在員の税負担や社会保険料を負担する場合に、本人が受け取るべき「手取り額」を確保するために支給額を調整する仕組みです。つまり、企業が税金等を肩代わりすることを前提に、あらかじめその分を加味して給与総額を増やす、という調整方法です。 2. グロスアップ計算が必要となる背景 たとえば母国と日本とで税率が大きく異なる場合、赴任者の手取りが大幅に減少してしまうことがあります。会社事情で赴任するにもかかわらず、これでは本人にとって不利益となってしまい、赴任意欲や業務パフォーマンスに影響を与えかねません。企業としては、赴任者が安心して業務に専念できるよう、手取り水準を母国勤務時と近づける必要があり、それを実現する手段がグロスアップ計算です。 3. グロスアップ計算の方法 グロスアップ計算では、まず「本人が手取りとして受け取るべき金額」を先に設定し、それに対して源泉徴収される所得税や住民税、社会保険料を逆算して、総支給額を導き出します。この際、以下のようなステップを踏みます。 想定手取り額の設定 税率・社会保険料率の確認 仮の総支給額に基づいた控除額の試算 手取りが目標に達するよう総支給額を調整 この一連の計算を繰り返して、最終的に正確な支給額を算出します。 4. 関連制度との接続①タックスイコライゼーション グロスアップ計算と密接に関わる制度の一つが「タックスイコライゼーション(Tax Equalization)」です。これは、赴任者が赴任先の税制によって過剰な税負担を負わないようにする仕組みで、母国での税負担額を基準にし、差額を企業が調整します。赴任者が赴任先で本来より多くの税金を負担することがないようにし、税制の違いによる不公平感を取り除くことが目的です。詳しくは「タックスイコライゼーション(Tax Equalization, TEQ)とは:概要や必要性、適用される状況及び手続きについて解説」をご覧ください。 5. 関連制度との接続②シャドーペイロール もう一つ押さえておきたいのが「シャドーペイロール(Shadow Payroll)」です。これは駐在員が日本の企業から給与を受け取りつつ、現地国の法令に従って税務処理を行うために設けられる、いわば「仮想的な給与計算」の仕組みです。日本に赴任する外国人駐在員に対しても、こうしたシャドーペイロールを構築して適正な納税を確保することが求められるケースがあります。詳しくは「シャドーペイロール(Shadow Payroll)とは:仕組みの解説及び運用方法や事例、導入時の注意点」をご覧ください。 6. グロスアップ計算の簡易モデル たとえば、駐在員が日本で年間1,000万円の手取りを希望する場合、所得税や社会保険料を差し引いた後でこの金額に達するように総支給額を設定しなければなりません。 仮に税率と社会保険料率の合計が30%とすると、手取り額 = 総支給額 × (1 – 0.3)1,000万円 = 総支給額 × 0.7総支給額 = 約1,428万円 同様に、手取り額として2,000万円を目標とする場合、税率と社会保険料率の合計が40%と仮定すると:手取り額 = 総支給額 × (1 – 0.4)2,000万円 = 総支給額 × 0.6総支給額 =
- [コロナで需要高まる組織再編と知っておきたい組織再編税制](https://shiodome.co.jp/column/7544/) - 新型コロナウイルスの影響もあり、多くの企業が経営資源の活用や事業強化のために「組織再編」を検討しています。組織再編には様々な方法があり、関わってくる法律や税制も複雑です。組織再編を実施したものの、大きな税の支払いが発生し、事業の継続が難しくなる場合もあります。 本記事ではコロナによって需要が高まる組織再編と、節税のために重要な組織再編税制について説明します。 1. 組織再編とは 組織再編とは、事業拡大やスリム化、事業の方向転換などのために、事業の分割や統合などを行うことを指します。「会社法」では、組織再編には合併、株式交換、株式移転、会社分割の4つの方法があるとされています。 新型コロナウイルスの拡大に伴い、多くの企業が大きな方向転換を迫られました。そこで多くの企業は経営戦略の見直しとともに組織再編に取り組んでいます。今後も新型コロナウイルスの影響により不安定な情勢が続けば、組織再編を図る企業は増えていくでしょう。 2. 組織再編税制とは 組織再編税制とは、組織再編に関わる税制について包括的に定めた制度です。一般的に資産を移転する際には「移転資産の譲渡損益」に対して課税がなされます。組織再編においても同様に、移転する資産・負債は時価評価され、課税されます。しかしながら合併や会社分割などのすべてにおいて時価評価に対して課税された場合、多額の税金が発生し、組織再編が阻害される可能性があります。 これに対応するために設けられているのが組織再編税制です。組織再編税制には、一定の要件(税制適格要件)を満たす組織再編については資産・負債を簿価で引き継ぎ、課税関係を継続させ、課税が生じないよう優遇措置が取られています。そのため、組織再編を行う際には組織再編税制の理解と効果的な利用が非常に重要です。 3. 「適格組織再編」と「非適格組織再編」 組織再編税制では、税制適格要件を満たすかどうかで異なる課税方式がとられています。税制適格要件を満たす組織再編(適格組織再編)では、資産や負債を帳簿価額で引き継ぐことが可能であり、課税が生じません。一方、税制適格要件を満たさない組織再編(非適格組織再編)では、資産や負債を時価で引き継ぐことから譲渡損益が生じ、課税が発生します。 4. 税制適格要件の内容 税制適格要件は、会社間の資本関係に応じ、以下の3パターンのうちのどれかが適用されます。 ① 完全支配関係(100%グループ内再編)② 支配関係(50%超グループ内再編)③ 共同事業(持分割合が50%以下の法人間再編) ①→②→③の順番に要件が多くなり、税制適格へのハードルが高まります。組織再編を行う際には、その事案が上記のどれに当てはまるのかを事前に確認しておくようにしてください。 5. おわりに 本記事では、組織再編と組織再編税制について詳しく紹介しました。新型コロナウイルスの脅威は依然として続いていることからも、今後組織再編を検討する企業は増えてくると思います。 組織再編では「適格組織再編」か「非適格組織再編」によって課税が大きく異なります。組織再編税制に関する知識が無い場合、大きな落とし穴にはまる可能性もあります。もし組織再編をお考えでしたら、組織再編のサポート実績も豊富な弊社までお気軽にお問い合わせください。状況に応じ、迅速にサポートさせていただきます。
- [【国内税務Q&A】被合併法人の繰越欠損金の引継の可否](https://shiodome.co.jp/column/22346/) - 1. 質問 A社は、資本関係のないB社の株式をすべて取得し(完全支配関係)、その3ヶ月後にB社を被合併法人とする吸収合併(無対価合併)を行いました。この場合、B社の繰越欠損金をA社にて引き継ぐことは可能でしょうか。 【前提条件】 A社: 資本金:1,000万円 事業内容:医薬品開発 B社: 資本金:1,000万円 事業内容:医薬品開発 繰越欠損金:10億円 完全支配関係発生後にB社の代表取締役は退任し、A社の代表取締役がB社の代表取締役に就任 2. 回答 本合併は適格合併に該当し、且つみなし共同事業要件を満たすことから、B社の繰越欠損金をA社に引き継ぐことが可能と判断できます。 3. 重要用語 質問及び回答にて言及されている「合併」「無対価合併」「適格合併」「完全支配関係」「みなし共同事業要件」という用語・条件は、組織再編税制において重要な概念であるため、ここで簡単に確認したいと思います。 合併 2以上の法人が、契約により1つの法人になることをいいます。合併により、被合併法人の権利義務のすべてが合併法人に包括承継されます。 無対価合併 被合併法人の株主に対して、合併法人株式や現金などの対価が一切交付されない形態の合併をいいます。 適格合併 一定の要件(税制適格要件)を満たす合併であり、被合併法人の資産及び負債を合併法人に簿価で引き継ぐことが可能となります。税制適格要件は、合併法人と被合併法人の合併直前の資本関係等に応じて異なります。 完全支配関係 一の者(法人・個人)が、法人の発行済株式の全部を直接又は間接に保有する関係をいいます。例えば、親会社が子会社のすべての株式を保有することで、子会社を完全に支配している状態がこれに該当します。完全支配関係がある場合の税制適格要件は、以下の2点となります。 1.金銭等不交付要件 合併の対価として合併法人株式又は 合併親法人株式のうち、いずれか一つの株式以外の資産の交付がないこと(無対価合併も含まれる)をいいます。 2.完全支配関係継続要件 合併後も完全支配関係が継続 することを要件とします。親会社が子会社を吸収合併する等の場合には、合併により一つの法人となりますので、合併後の完全支配関係の継続は求められません。 みなし共同事業要件 支配関係がある場合の適格合併で、合併後に被合併法人の繰越欠損金を合併法人が引き継ぐことができるか否かを判定するための基準の一つです。具体的には、以下の要件が あります。 ①事業関連性要件 合併前の両法人の主要な事業が相互に関連するものであること。 ②事業規模要件 合併前の両法人の事業規模が極端に異ならないこと。具体的には、売上金額、従業者の数、資本金の額又はこれらに準ずるものの規模の割合が、おおむね5倍を超えないこと。 ③事業規模継続要件 両法人の主要な事業が支配関係発生時から合併の直前まで継続して営まれており、且つ支配関係発生時と適格合併の直前におけるそれぞれの事業の規模の割合が、おおむね2倍を超えないこと。 ④特定役員引継要件 被合併法人及び合併法人の合併前の特定役員が、合併後も引き続き特定役員として在任することが見込まれること。上記②、③を満たさない場合に必要となる要件。 4. 根拠(質問に関する判断) 1. 合併の適格判定 本合併前において、A社は、B社の発行済株式の全部を保有していることから、合併法人であるA社と被合併法人であるB社との間にはA社による完全支配関係があるものといえます。また、本合併は無対価合併であり、合併前にA社がB社の発行済株式の全部を保有する関係であることから、完全支配関係がある場合の税制適格要件を満たし、「適格合併」に該当することとなります。 2. 繰越欠損金の引継制限の判定 内国法人を合併法人とする適格合併が行われた場合には、原則として、被合併法人の未処理欠損金額は合併法人に引き継がれることとされています(法人税法57条2項)。 一方で、繰越欠損金を多く有する法人を買収した後に適格合併を行うことにより、当該繰越欠損金を不当に利用し、節税を行うといった租税回避行為が考えられます。これに対応するため、被合併法人の繰越欠損金を合併法人に引き継ぐことに対する一定の制限が設けられています(法人税法57条3項)。 具体的には、次のイからハのいずれにも該当しない場合、合併法人は被合併法人の未処理欠損金額について引継制限を受けることとなります(法人税法施行令112条3項、4項)。 イ当該適格合併がみなし共同事業要件を満たす場合(法人税法施行令112条3項)。 ロ被合併法人と合併法人との間に、当該合併法人の適格合併の日の属する事業年度開始の日の5年前の日から継続して支配関係がある場合(法人税法施行令112条4項一)。
- [【税務Q&A】無対価吸収分割と税制適格要件について](https://shiodome.co.jp/column/23965/) - 1. 質問 B社はA社から単独新設分社型分割によって、A社の事業の一部を承継して設立された会社です。そのため、B社はA社の100%子会社となります。 この度、A社がB社に移管した事業を戻すべく、B社を 分割法人、A社を分割承継法人とする吸収分割を行い ます。また、当該会社分割は無対価(資産負債を譲り受けるA社側では、新株発行その他いかなる対価も支払わない)による吸収分割を想定しています。 当該吸収分割が税制適格要件を満たす会社分割(適格分割)に該当するかご教示ください。 2. 回答 本件の吸収分割は、分割前にA社がB社の発行済株式を全て所有する完全支配関係下にあり、且つ無対価分割であることから、金銭等不交付要件及び完全支配関係継続要件を満たしているため、適格分割に該当すると判断できます。 3. 重要用語 質問及び回答で言及されている「会社分割」「新設分割」「吸収分割」「分社型分割」「分割型分割」「適格分割」などの用語は、組織再編税制における考察を進める上で重要な要素です。ここで簡単に確認しておきたいと思います。 会社分割 会社の事業の一部又は全部を他の会社に承継する組織再編の一形態です。ここで、事業を他の会社に承継させる会社を「分割法人」、分割法人から事業を承継する会社を「分割承継法人」といいます。 会社分割は、事業を移転する先の会社によって以下の2つに分類されます。 新設分割既存の会社(分割会社)が、新たに設立する会社(新設会社)にその事業の一部又は全部を承継する形式。 吸収分割既存の会社(分割会社)が、他の既存の会社(分割承継会社)にその事業の一部又は全部を承継する形式。 また、分割時に分割承継法人の株式が誰に交付されるかによって、以下の2つに分類されます。 分割型分割分割法人の株主に分割承継法人の株式が割り当てられる形式。 分社型分割分割法人自体に分割承継法人の株式が割り当てられる形式。 以上より、会社分割は以下の4つの形式に大別することができます。 新設分社型分割 新設分割型分割 吸収分社型分割 吸収分割型分割 適格分割 適格分割とは、一定の要件(税制適格要件)を満たした場合に、分割法人の資産や負債を分割承継法人に簿価で移転でき、事業移転に伴う譲渡損益が繰延べられる税制優遇措置が適用される会社分割を指します。 会社分割の税制適格要件は、分割法人と分割承継法人の間の支配関係によって異なり、以下の3つのパターンに分類されます。 ①完全支配関係(支配率100%) 一の者(法人・個人)が他法人の発行済株式のすべてを直接又は間接に保有する関係をいいます。 【適格要件】 金銭等不交付要件対価として金銭やその他の資産を交付しないこと。ただし、分割承継法人の株式やその完全親会社の株式の交付は認められる。 完全支配関係継続要件分割前後で完全支配関係が継続していること。 ②完全支配関係(支配率50%超~100%未満) 分割承継法人が分割法人の発行済株式の50%超から100%未満を保有している関係をいいます。 【適格要件】 金銭等不交付要件対価として金銭やその他の資産を交付しないこと。ただし、分割承継法人の株式やその完全親会社の株式の交付は認められる。 主要資産等引継要件移転する事業の主要な資産・負債を引き継ぐこと。 従業員引継要件分割事業に関わる従業員の80%以上を引き継ぐこと。 事業継続要件分割事業を継続する見込みがあること。 支配率維持要件50%超~100%未満の持株比率を維持すること。 ③共同事業(支配率50%未満) 分割法人と分割承継法人とが共同で事業を行うための分割をいいます。 【適格要件】 金銭等不交付要件対価として金銭やその他の資産を交付しないこと。ただし、分割承継法人の株式やその完全親会社の株式の交付は認められる。 主要資産等引継要件移転する事業の主要な資産・負債を引き継ぐこと。 従業員引継要件分割事業に関わる従業員の80%以上を引き継ぐこと。 事業継続要件分割事業を継続する見込みがあること。 事業関連性要件分割する事業と承継会社の事業に関連性があること。 事業規模要件又は特定役員引継要件(選択要件)一定の事業規模を超えないこと、又は双方の役員が経営参画すること。 株式継続保有要件分割承継法人の株式が継続して保有されること。 このように、会社分割における税制適格要件は、分割法人と分割承継法人の間の支配関係によって異なります。完全支配関係では比較的簡潔な要件を満たすだけで適格分割と認定されますが、支配関係や共同事業の場合は追加要件が求められます。 4. 質問に対する判断
- [【税務Q&A】自己株式取得に伴うみなし配当の益金不算入について](https://shiodome.co.jp/column/24237/) - 1. 質問 A社は非上場会社であり、B社はA社の発行済株式総数の40%を単独で継続して保有しています。 この度、A社はB社からの相対取引により自己株式を取得することになりました。取引によりB社にはみなし配当が生じますが、そのみなし配当額は受取配当金等の益金不算入の対象に該当するかご教示ください。 2. 回答 B社はA社の発行済株式の40%、すなわち発行済株式の3分の1超を継続保有していることから、B社が保有するA社株式は関連法人株式等に該当すると考えられます。 従って、A社による自己株式の取得により生じたみなし配当の金額から支払利息相当額を控除した部分が、益金不算入となるものと判断できます。 3. 重要用語 質問及び回答で言及されている「みなし配当」「受取配当金の益金不算入」について説明します。 みなし配当 会社法上は配当に該当せず、株主が会社から実際に配当金を受け取っていない場合でも、税法上は利益分配がなされたとみなされ、課税対象となる金額を指します。みなし配当が発生するケースとしては、以下のようなものが考えられます。 自己株式の取得 会社が自己株式を取得し、その取得対価が当該株式に対応する資本金等の額を超える場合、その超過額はみなし配当として扱われます。ただし、証券取引所での取得は除外されます。 非適格合併 合併が行われた際、税法上の「適格要件」を満たさない場合、みなし配当が発生することがあります。具体的には、消滅法人の株主が合併法人の株式ではなく金銭を受け取る場合、その金額が資本金等の額を超える部分について、みなし配当として扱われます。 非適格分割型分割 企業が分割型分割を実施し、分割元法人の株主が新設法人又は分割先法人の株式を取得する場合、分割元法人の資本金等の額を超える利益分配部分は、みなし配当として扱われます。 資本の払戻し 会社が株主に対して、資本剰余金を原資として金銭を払い戻す場合、払戻金額のうち資本金等の額を超える部分は、みなし配当として扱われます。 残余財産の分配 会社が解散し、株主へ残余財産を分配する場合、分配額のうち資本金等の額を超える部分は、みなし配当として扱われます。 受取配当金の益金不算入 内国法人が他の法人から受け取る配当金について、一定の要件を満たす場合、その全額又は一部が益金の額に算入されず、法人税が課されない仕組みです。これは、二重課税を回避することを目的とした制度です(法人税法23条)。 益金不算入額は、保有する株式等の持株比率に応じて、次の4つに分類されます。 ① 完全子法人株式等(持株比率100%) 定義:発行済株式の100%を直接又は間接的に保有し、配当の計算期間の初日から末日まで、継続して完全支配関係がある場合。 益金不算入額:配当等の額×100% ② 関連法人株式等(持株比率3分の1超 100%未満) 定義:発行済株式の総数の3分の1超から100%未満を、配当の計算期間の初日から末日まで引き続き保有している場合。 益金不算入額:配当等の額から、関連法人株式等に係る負債利子額を控除した金額。 ③ その他の株式等(持株比率5%超 3分の1以下) 定義:①完全子法人株式等、②関連法人株式等、④非支配目的株式等(後述)のいずれにも該当しない場合。 益金不算入額:配当等の額×50% ④ 非支配目的株式等(持株比率5%以下) 定義:発行済株式の総数の5%以下を、配当等の基準日等において保有している場合。 益金不算入額:配当等の額×20%% 特に、完全子法人株式等及び関連法人株式等については、配当の計算期間全体を通じた保有状況が重要な判定要素となる点に留意が必要です。 また、②関連法人株式等に係る配当等の益金不算入額は、配当等の額から関連法人株式等に係る負債利子額を控除した金額となりますが、この負債利子額の計算方法は、令和4年4月1日以後に開始する事業年度より変更されています。 具体的には、配当等の額の4%相当額とされています(法人税法23条1項、法人税法施行令19条1項)。ただし、法人が借入金等の利子を支払っている場合、その事業年度における支払利子等の額の10%相当額を上限とすることができます(法人税法施行令19条2項)。 4. 質問に対する判断 B社に生じるみなし配当は、配当等の額から負債利子額を控除した後の金額が益金不算入の対象となります。その根拠は以下の通りです。 1. みなし配当の発生 A社がB社から自己株式を取得する際、その対価のうちA社の資本金等の額を超える部分がみなし配当となります(法人税法24条1項5号)。 2. 関連法人株式等の判定
- [ミドルマーケットM&Aを動かす2026年の4つの潮流――資本の消化圧力、景気の綱引き、そしてAIが「買われるもの/買い方」を塗り替える](https://shiodome.co.jp/column/56074/) - 2026年は、ミドルマーケット(中堅・中小企業を含む中堅領域)にとって、慎重さが求められる一方で、動きやすさも戻ってくる――そんな移行期になりそうです。金融環境は、(地域差はありつつも)金利がピークアウトし、「低下〜安定」局面への移行が意識され始めています。他方で、地政学リスク、インフレの再燃・沈静化の揺り戻し、貿易摩擦などの不確実性は残り、楽観一色にはなりにくい。つまり「守りの視点は必須」ですが、条件が整う案件は、以前よりも意思決定が進みやすい局面が増える可能性があります。 とりわけ注目したいのは、(1)資金の厚みと(2)AIの実装です。AIはもはや“将来のテーマ”ではなく、案件の評価軸やデューデリジェンス(DD)、PMI(統合)に入り込み、何が買われるのか/どう買われるのかを同時に変え始めています。5年前なら「そこまで高値にはなりにくい」と見られていた事業でも、データ整備やオペレーション改善の余地、AI活用の伸び代が“実装の証拠”として見える場合は、評価が上振れする――そんな場面が増えるかもしれません。 ここでは、2026年のディールメイキングを押し上げると考えられる4つのトレンドを整理します。 1. PEの「未投資資金」が生む“消化圧力”――ただし資金は選別的に動く 2026年のM&A市場を語るうえで、PE(プライベートエクイティ)資金の「使いどころ探し」は外せません。未投資資金(ドライパウダー)は世界で約2.2兆ドル、米国だけでも1兆ドル超と推計され、運用側には「投資先を見つけ、リターンを出す」というプレッシャーが強くかかりやすい状況です。資金が潤沢であること自体は追い風になり得ますが、同時に「何でも買う」フェーズとは限りません。むしろ、“良い案件に資金が集中する”傾向が強まり、勝負どころでは価格とスピードが一段と重要になる可能性があります。 この環境下で増えやすい動きとしては、たとえば次の3つが挙げられます。 出口(エグジット)の前倒し市場の窓が開くタイミングを逃さず、売却を進める 継続ファンド(コンティニュエーション・ファンド)等での流動性確保保有継続と資金回収の両立を図る “投資後に伸ばす”前提での案件形成買収時点の完成度より、改善余地・伸び代を価値に変える設計 PEの強みは、買収して終わりではなく、価格戦略・サプライチェーン・人材配置・IT投資などを束ね、企業価値を高める“運用の型(プレイブック)”を持ち込みやすい点にあります。2026年は特に、DX・AIは単なる効率化ではなく、ポートフォリオ横断の価値創造手段として組み込まれていくでしょう。 日本では、事業承継問題を背景に外部資本活用への心理的ハードルも低下傾向にあります。ただし資本が入れば、数値管理やガバナンスの水準は確実に引き上げられます。ここで重要になるのが、後述する「基礎整備(ハイジーン)」です。 複数社を束ねて規模と効率を作るロールアップは、引き続き有力な「型」になり得ます。個社の完成度より、統合後に標準化・省人化・データ統合で価値を作れる領域ほど、資金が集まりやすくなります。 2. 事業会社は“穴埋め”のために動く――ポートフォリオ再設計が前提に 2026年は、事業会社による買収も活発化しやすい年になる可能性があります。ポイントは、単なる規模拡大というより、ポートフォリオの再設計が前提になっているケースが増えそうだという点です。企業は「伸ばす領域に資源を寄せ、合わない資産は手放す」という動きを強めやすく、その結果、買い手にも売り手にも回る場面が増えることが見込まれます。 買収対象として狙われやすいのは、次のような“ギャップ補完”のテーマです。 AI・データ分析など、内製化が難しいケイパビリティ デジタル変革(顧客接点のデジタル化、業務自動化、データ基盤) 地域展開・海外展開を含む地理的な補完 サイバーセキュリティや法規制対応など、レジリエンス強化 ここで増えやすいのが、いわゆるアドオン(追加買収)です。中核となる事業基盤を強化するために周辺機能や顧客基盤を取り込み、“スピードを買う”発想が強まりやすい。ゼロから作るより、時間を買うほうが合理的――そう判断される場面が増える可能性があります。 日本企業の文脈では、東証改革や資本効率への意識の高まり、コーポレートガバナンスの浸透も追い風になり得ます。「保有しているだけの事業・資産」を見直し、ROICや成長戦略に照らして組み替える動きは、大企業だけでなく中堅企業にも波及しつつあります。その結果として、「選択と集中」の手段としてのM&Aがより一般的になっていくことも想定されます。 3. “基礎整備(ハイジーン)”が価格とスピードを分ける――派手さより、整っている強さ 2026年のM&Aで差がつきやすいのは、派手なストーリーというより、基本の整備かもしれません。ここでいうハイジーン(基礎整備)とは、財務・税務・法務・オペレーション・データの整理整頓を指します。買い手にとって、監査やデューデリジェンス(DD)に耐える水準の財務情報、整った契約管理、説明可能なKPI、そして一貫したデータは、いまや強く重視される前提条件になりつつあります。 売り手側は、単に「業績が良い」だけでなく、次のような運営の強さも見られやすくなります。 数字の根拠が追える(売上・粗利・案件別採算が説明できる) コスト増(人件費・原材料・物流費)への対応が体系化されている 仕入れ・調達が属人化しすぎていない(供給途絶に耐える) 主要顧客・主要人材への依存度が把握でき、対策がある 日本の中堅企業で起きやすいのは、「実態は強いのに、資料が整っていない」という課題です。現場は回っていても、数字が部門ごとにばらばら、マスタが統一されていない、契約更新の履歴が追えない――こうした“もったいない状態”は一定程度見受けられます。ただ、M&Aの場面では、それが価格交渉で不利に働きやすい。逆にいえば、整理整頓を進めるだけで評価が上がる余地もあります。2026年は選別が進む分、基礎整備の差が価格差・スケジュール差として表れやすい年になる可能性があります。 4. AIは「プロセス」だけでなく「値付け」も変える――“実装の証拠”が評価軸に入る AIはディールメイキングの“補助輪”ではなく、徐々にエンジンになりつつあります。まずプロセス面では、DDの効率化、契約レビューの高速化、統合計画の精度向上、リスク検知の高度化など、M&Aの各工程でAI活用が進む可能性があります。早期にAIで示唆を得られる買い手ほど意思決定が速く、統合の見通しも立てやすいため、結果としてスピードと確度が競争力になりやすい局面です。 ただし、より重要なのは「何にプレミアムが付くか」です。2026年は、AIについて“資料上の構想”を語るだけでは評価されにくく、次のような実装と運用の証拠が値付けに影響しやすくなると見込まれます。 どんなデータがあり、どの品質で、誰が管理しているか AIでどの業務が何%短縮でき、どんなKPIが改善したか 生成AIの利用ガイドラインや情報管理が整っているか AIは魔法の杖ではなく、データと業務の上にしか乗りません。つまり、基礎整備(ハイジーン)と表裏一体です。加えて、AI活用が広がるほど、クラウド、データ基盤、セキュリティ、権限管理、そして人材育成への投資も重要になります。変革に遅れるコストが大きく感じられる局面では、「早く動くことのリスク」よりも「動かないことのリスク」が重く意識され、投資判断が前倒しになるケースもあり得ます。日本でも人手不足が深刻化するなか、AIは“攻め”だけでなく、省人化・標準化・属人化解消のための現実的な選択肢として導入が進む可能性があります。 5. まとめ:2026年は「資本×規律×変革」を乗りこなす年 2026年のミドルマーケットM&Aは、資金が潤沢である一方で選別が進み、AIが評価軸と実務の両方に影響を与えていく――そんな一年になり得ます。勝ち筋になりやすいのは、単に案件を見つけるだけでなく、買収後の実行(PMI)まで見据え、数字とデータの規律を整え、変革を具体的に進められる組織です。 要点を整理すると、次の3つに集約できます。 未投資資金の消化圧力で案件は増え得る一方、良い会社に資金が集中しやすい 事業会社のポートフォリオ再編が進み、買いも売りも増える可能性がある 基礎整備(ハイジーン)とAI実装の“証拠”が、価格とスピードを左右し得る 「うちはまだM&Aは先」と考えている企業でも、2026年は“準備の差”がそのまま選択肢の差につながる可能性があります。財務・契約・データを整え、AIの使いどころを見つけ、いざという時に動ける状態にしておくことが、次の成長や承継を有利にする近道になるかもしれません。
- [内部監査の基本と重要性](https://shiodome.co.jp/column/19264/) - 1. 内部監査の定義と目的 「内部監査」とは、その名の通り、社内の担当部署による自社の監査です。代表取締役の直下に設置される「内部監査室」が、社内の監査を行います。上場会社、大会社では義務付けられている他、上場を目指すIPO準備会社においてもIPOプロジェクトの中で必要になってきます。 内部監査の目的は、「自社の企業価値の向上」です。 監査という言葉から、自社のダメ出しやチェックばかりを行うようなイメージを持たれがちかと思います。実際に、内部監査においては、自社の業務が諸法令に触れる可能性の有無や、業界・社会情勢に照らしたリスクの検証なども行いますが、同時に業務効率や有効性のチェックも行います。 第三者視点から自社をチェックするというのは、外部が行う監査も内部監査も共通していますが、内部監査は、リスクや非効率業務の洗い出しや管理などを行う「自社の企業価値を維持・向上の一環」と言い換えることが出来ます。 2. 監査の役割 企業価値の維持・向上という目的に対し、内部監査室の担う役割は、第三者視点から自社をチェックすることです。 前述の通り、業務に法令違反やその原因となるものが無いか、業界的なリスクを把握できているか、時代や組織体制の変化に伴う業務の非効率化が起きていないか、といったことを確認するために、様々な論点で社内をチェックします。 ごく一部ですが、チェック項目の代表的なものを紹介します。 必要なルールが存在するか 必要な業務フローが整備されているか 業務上のリスクを把握する体制は整っているか 自己承認等、形骸化した業務フローが無いか 業務体制にそぐわない業務が残っていないか 企業は規模の拡大や体制変更の様な大きなものは勿論、日々の業務の中でも絶えず変化しています。時として、現場の判断でチェックを省略したり、効率の為にフローがなあなあにされたり、ということが、やむを得ず生じることもあるでしょう。 しかし、そうした現場のだれを放置してしまうと、法令違反に繋がったり、組織内のコンプライアンス意識の低下を生じさせたりと、様々なトラブルやアクシデントの原因となります。こうした気の緩みも含め、社内の体制を定期的にチェックすることで、トラブルやリスクの抑制だけではなく、適切な社内の実態の把握も行うことが出来ます。 また、内部監査の役割を考える上では、組織内で生じるパワーを考慮することも必要です。経営層や特定の部署が大きな発言力を持ったことや、組織内の同調圧力など、様々な要因から、組織構成員が組織に対する指摘をするのが難しくなるケースは珍しくありません。特に組織の規模が大きくなればなるほど、様々なパワーや利害関係が組織内で発生し、複雑に絡みあうようになります。 こうしたパワーや利害関係で結ばれた会社内が組織だけになると、非効率な業務やルール違反などが放置されることも考えられます。 このように、組織のパワーや利害関係の中に置かれた立場では難しい自社に対するチェックを行うのが、内部監査のミッションです。こういった役割を果たすため、どの組織とも利害関係を結ばぬよう、内部監査室は代表取締役の直下に設置されることが一般的です。 3. 内部監査のメリット 内部監査のメリットとしては、大きく下記の二つが挙げられます。 企業のリスクヘッジ 社内の業務効率化 まず多くの方がイメージしやすいメリットとして、社内を定期的にチェックすることによる、リスク低下が挙げられます。 フローをチェックすることによる直接的なアクシデントの防止効果もありますが、定期的な監査によって現場の意識を引き締め、組織内のコンプライアンス意識を高める意味でも、様々なリスク低下に寄与します。 また、社内の業務を総ざらいするため、業務ツールの導入や規模の拡大などによって生じやすい、業務の重複や不整合といった、非効率業務を発見することが出来ます。 こうした非効率な部分を一覧化し、各部署に対して指摘をすることで改善したり、経営層に伝えることで外部のコンサルタントの支援につなげることで改善の契機となったりと、直接的に改善を行うわけではありませんが、組織を効率化する役割を担います。 昨今はビジネス環境や社会情勢が目まぐるしく変化しているため、定期的に社内の業務を見直し、時代に取り残されることを防止する効果も期待できます。 4. 内部監査の留意点 ここまで内部監査の役割やメリットを見てきましたが、内部監査がメリットを産めなくなる原因を確認します。 まず、経営者が内部監査を軽視することです。内部監査はその性質上、自社の様々な業務についてヒアリング・指摘・改善指示を行いますが、これら内部監査への対応を社業の減速要因として捉えられるケースが一定数存在します。内部監査の進行に必要となる指摘等への対応は、タスクを増加させる側面は確かに否めません。しかしそのタスク増を嫌った結果、内部監査が形骸化すると、いつの間にか自社に法令違反のリスクを抱え込んでいる、といったことになりかねません。 また、前述の通り社内には様々なパワーが存在しますが、内部監査室には一定以上のパワーが必要になります。というのも、内部監査室は時として経営層が絡む業務フローについても指摘を行う必要があります。この時、内部監査室のパワーが弱かったり軽視されたりすると、指摘がされるだけで無視され、やはり内部監査が形骸化することに繋がります。 更に、内部監査の必要性の周知が不足することによって、内部監査を厄介者扱いする雰囲気が組織に定着してしまうと、内部監査室とそれ以外の部署とで衝突が起きることにも繋がります。 その為、内部監査室を創設するようなフェーズから、経営者が正しく内部監査の重要性を認識し、内部監査の遂行に必要となる適切なパワーを与え、自社従業員に対して内部監査の必要性を周知する、といったソフト面のフォローが極めて有効になります。 5. まとめ 今回は内部監査の基本とメリット、更には留意点について確認しました。 内部監査が形骸化しないためには、あらゆる部署で内部監査に対する一定の対応が必要となり、ただの負担増になる印象を持たれるかもしれません。しかしながら、自浄作用を正しく機能させ、健全な経営を行っていくことは、先々の発展や取引先との信頼関係の構築にも繋がりますし、何より定期的なチェックによって、社業の発展に寄与します。 自社の企業価値の継続的な発展のためにも、是非内部監査の積極的な活用をご検討ください。
- [内部監査計画と実施のポイント](https://shiodome.co.jp/column/19296/) - 監査計画の策定と実施のステップ 内部監査に自社内で初めて取り組むとなった場合、どこから手を付けていいか分からないというケースが往々にしてあるかと思います。また、作業そのものは弊社のような外部コンサルタントに委託することも可能ですが、その場合も監査業務における要点は会社内で理解しておく必要があります。 今回は、内部監査の計画策定とその実施時に押さえておくべきポイントを中心に解説していきます。 1. 内部監査計画の策定 内部監査は監査計画に基づいて実施されますが、その中身や項目について法的な制限や要求はなく、会社ごとに自由に設定することになります。しかし自由度の高さゆえに、どういった内容を定めればいいか迷われている会社も多いというのが実情です。今回は監査計画の策定から実施におけるポイントを解説していきます。 まず、監査計画に織り込むべき事項として、一般的には下記の5つが挙げられます。 監査対象事業部門や拠点など、内部監査が実施される単位 監査目的内部監査を実施することで期待される効果 監査スケジュール往査やヒアリングを実施する日程と、監査報告書の提出予定日など 監査実施者往査やヒアリングを実施する担当者と、その責任者の氏名 監査項目監査目的(②)を達成するための具体的な確認内容(=チェックリスト) これらは監査の実施前に定めることになりますが、策定の時期についても法的な要件はありません。そのため事業年度がスタートする前と後、いずれの場合であっても問題はなく、会社ごとに適切と考えるタイミングでの策定となります。 そして上記のうち、特に監査項目(⑤)を検討するうえで重要となるのがリスクアプローチという考え方です。これは『企業活動において存在するリスクを識別&評価し、それに対するコントロールが有効か』を確認する項目を決定していく方法となります。 ここで言うリスクとは、企業の組織運営にマイナスの影響を与える要因のことで、ハラスメントなどのコンプライアンスリスクや横領などによる財務リスク、さらには自然災害によるハザードリスクなど多岐にわたります。どの企業にも共通で存在するリスクもあれば、事業に応じて発生する固有のリスクもあるため、まずは自社の抱えるリスクを可能な限り網羅的に識別することが必要となります。 次に、識別された個々のリスクに対して、それらを評価することが必要です。この評価は『発生可能性』と『影響度』の2軸で実施されることが多いです。『発生可能性』はリスクがどの程度の頻度で発生し得るか、『影響度』はリスクが発生(顕在化)してしまった場合に損失額はどの程度になり得るか、をそれぞれ数値によって表します。そしてこの2つを掛け合わせて算出された数値の大小を以て、リスクの評価を行います。 算出された数値が大きい(=リスクが大きい)と判断された場合には、そのリスクに対するコントロールが有効かを確認することが必要となり、この確認のために監査項目(⑤)が設定されることになります。なお、リスクの発生可能性と影響度の完全な数値化は困難であるため、事前に経営者や監査対象部署と協議し、その精度に関する合意を取っておくことが望ましいです。 また上記の他にも、経営者による関心事や、前期の内部監査における発見事項などが監査項目に織り込まれることがあります。これらは監査計画の策定に先立ち、経営者や監査対象部署へのインタビューなど(予備調査)を実施することで対応可能です。 2. 内部監査の手法 監査計画が策定されたら、いよいよ監査の実施となります。 監査人は監査項目に記載したコントロールが機能しているかどうかを確認するために、対象部署から監査証拠を収集します。これらは監査報告書の作成における根拠になるため、信頼性があり、かつ監査項目との関連性を持っている必要があります。 監査証拠の収集における手法として、主に下記の3つが挙げられます。 質問監査対象部署に対するヒアリングによる確認であり、最もベーシックな監査手法です。現状を把握したり、予備調査において事前に把握されていた懸念点についての事実確認をしたりするために実施されます。また、コントロールが有効に機能していないといったことが発見された場合にはそれを指摘するだけに留まらず、今後の対処や改善案の方向性について協議する場となることもあります。なお、質問を通して得た回答(情報)だけでは監査証拠としては不十分なケースもあるため、その場合は補完するための監査証拠を別の監査手法を用いて収集する必要があります。余談になりますが、監査対象部署との直接的なコミュニケーションとなるため、内部監査への理解を深めてもらうと共に、発見事項への改善などに対する前向きな協力を得られるような関係性を構築できるとベターであると言えます。 査閲コントロールの実在性を確認するため、監査項目それぞれに関連した規程類や業務マニュアル、あるいは伝票や請求書、勤怠記録などの文書証拠を確認する監査手法です。どういった資料を確認するかは監査項目によって変わってくるため、事前の予備調査で必要な資料をピックアップしておくとよいでしょう。なお、査閲の対象となる資料が電子化されサーバやシステム内に保存されていることも当然あり得ます。こういった場合はその閲覧権限のみを付与してもらい、監査人がデータを更新・編集してしまうことのないように注意する必要があります。 立会業務プロセスが運用されている現場に立ち会うことで、実際にコントロールが機能しているかを確認する監査手法です。特に棚卸資産や有形固定資産を保有している会社の場合は、これらの現物資産に対する棚卸プロセスなどに同席し、ルールやマニュアル通りに運用されているかを確認することが有用です。なお、現金や現金同等物などについては、その実際有高と現金出納帳や管理台帳の残高とが一致しているかを実査で確認することもあります。具体的にどういった資産を実査の対象とするかは、その重要性などを鑑みて、監査計画の策定時点で検討していくことになります。 3. 監査証拠のサンプリング 監査証拠の収集にあたっては、コントロールが機能していると判断できるだけの十分な監査証拠を集める必要があり、その方法は精査と試査(=サンプリング)に分類されます。どちらの方法を採用するか、あるいはそれらを組み合わせるかは、限られた監査資源の効率的な活用という点も考慮しながら決定することになります。 精査:母集団から全ての項目を抽出して、それに対して監査手続きを実施 試査:母集団からその一部の項目を抽出して、それに対して監査手続きを実施。抽出はサンプリングと呼ばれ、下記の2つに大別される。 無作為抽出(ランダム)による試査 特定項目抽出(作為的抽出)による試査 そして、サンプリングによって監査証拠を収集する場合は、以下のような点を事前に検討していく必要があります。 母集団監査を行う目的に応じた範囲 エラーの内容抽出した資料におけるエラー内容(問題点) サンプリングリスク試査を実施することによる不可避的なリスクの影響 サンプリング方法無作為抽出(統計的サンプリング)や特定目的抽出(非統計的サンプリング)など複数あるサンプリング方法から、それぞれが包含するリスクや有効性、また監査資源に基づいての検討 サンプル数母集団の規模(取引数や業務の発生頻度など)に応じての検討 なお、統計的なサンプリングを厳密に実施しようとすると、その煩雑さや手間が過大となってしまう場合があります。そのため、内部監査人の主観による非統計的なサンプリングも現実的には選択肢となり、想定されるリスクとのバランスを見て、監査証拠の収集をしていくことになります。 4. まとめ 内部監査には法律的な要件がないため、監査人あるいは会社ごとの判断が大きく介在することになり、それゆえお困りになられているケースが多くなっています。今回は監査計画の策定時と実施時のポイントに絞った解説を致しましたが、監査調書や報告書の作成ポイントについても、別の記事でご紹介できればと思います。
- [内部統制とリスク管理の基本](https://shiodome.co.jp/column/19341/) - 1. 内部統制とは 「内部統制」とは、不正、誤謬、情報漏洩等の事故の防止を目的とした仕組みを整備し、運用することです。これを内部、即ち各企業が自社内で行う為「内部統制」と呼称されます。この活動によって、企業が健全な状態で維持されることが目指されます。 上場準備会社では内部監査と並んで、大きなトピックの一つであり、対応に苦慮する論点の一つです。 本コラムでは、内部統制の基本を確認し、その中で、上場準備会社に限らず、全ての企業で重要になるリスク管理について確認します。 尚、本コラムにおいては、企業会計審議会の定義する「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準」(以下「内部統制基準」。)の内容を中心にご説明します。 2. 内部統制の目的 まず、内部統制の目的について確認します。冒頭に確認した通り、業務事故の防止を大目的としていますが、内部統制基準においては、よりブレークダウンした4項目を目的として明記しています。 (1) 内部統制の目的1/4 業務の有効性及び効率性 業務が適切かつ効率的に行われることを目指すことを指します。適切な承認フローが設けられて稼働している、必要な監査が適切に行われる、といった、組織・業務が適切に、無駄なく回る体制を構築することが求められます。 (2) 内部統制の目的2/4 財務報告の信頼性 財務諸表を中心とする財務報告が適切に行われることを指します。財務諸表に重要な影響を及ぼす情報が社内で適切に取りまとめられ、投資家をはじめ、社会に対して正確な財務諸表として開示することが求められます。申告漏れや脱税等とも密接な関りがあるため、非常に重要視される論点です。 (3) 内部統制の目的3/4 事業活動に関わる法令等の遵守 いわゆる「コンプライアンス」です。企業は利益追求と企業の継続を前提としますが、その前提として業務関連法や労働関連法、情報関連法等、遵守すべき法令を当然のこととして遵守していることが求められます。 (4) 内部統制の目的4/4 資産の保全 企業活動の前提となる資産が適切に管理されることを指します。資金の管理が適切に行われ、取得した資産等が無駄な使途に用いられないことなど、無駄遣いを防止することが求められます。 これらの目的は独立していますが、相互に関連しているというのを意識していただくことが大切です。まとめると、法に則り、適切なルールを敷くことで会社の財産を守り、業務成果を適切に財務諸表として開示することで、健全な企業体を作り上げることが、内部統制の目的であると解釈できます。 3. 内部統制の要素 続いて、内部統制の実施に当たって、求められる「要素」を確認します。内部統制基準に係る説明の場面では、よく「内部統制の4つの目的と6つの要素」などと総称されます。ここでいう要素とは、前述の目的をどのように実現するかの具体的手法、のようなイメージを持っていただければ良いかと思います。 詳細な説明は割愛し、まずは下記の6つで構成されることをご理解ください。 統制環境 :不正を防止する組織風土や内部統制を正しく行う意識作り リスクの評価と対応 :リスクを適切に把握・評価し対応すること 統制活動 :構築した統制活動を日々の業務の中で適切に行うこと 情報と伝達 :必要な情報が組織内部で適切に伝達されること モニタリング :構築された統制が有効であることをチェックすること ITへの対応 :業務上必要なITが適切に この6つが適切に構築されているかを、4つの目的それぞれの視点で確認することで内部統制が有効である状態を目指します。 4. 「リスクの評価と対応」のプロセス 内部統制の目的を達成するには前項の6つの要素が全て必要になりますが、ここからは、「②リスクの評価と対応」にフォーカスし、そのプロセスについて深掘りしていきます。「②リスクの評価と対応」は会社にどのようなリスクが存在し、それにどう対処するかを判断する(対処しないという判断も含まれます)非常に重要なプロセスであり、上場会社や上場準備会社でなくとも理解しておくと有用です。 内部統制におけるリスクとは、非常に広義の意味を持つ言葉で、会社組織の運営や目標達成に影響する要素を全てリスクとして識別します。実務上、どのレベルまでのリスクを統制対象とするかという議論はなされますが、基本的にあらゆるリスクが検討対象になりえます。 内部統制の場面では、リスク管理は大きく、リスク評価とリスク対応の2ステップに分けられます。それぞれについて、簡単にまとめます。 (1) リスク評価 リスク評価は次の4ステップによって行われます。 リスクの識別:リスクとなり得る事象を認識する リスクの分類:識別したリスクを、影響する範囲や過去にもあったか等で分類する リスクの分析:分類したリスクについて、発生可能性や発生時の影響度を分析する リスクの評価:分析結果を参考に、リスク対応について計画する (2) リスク対応 上記の手順で評価を行ったリスクに対しては、次の4種いずれかの対応が検討されます。 回避:リスクの回避を目指し、リスクを孕んだ事業の見合わせや撤退などを行う
- [内部監査と外部監査の違い](https://shiodome.co.jp/column/19437/) - 1. 内部監査と外部監査の目的 IPOの検討を開始すると、「監査」という言葉をよく聞くようになります。内部監査、会計監査、監査役監査の3つでしょう。会計監査は「外部監査」とも呼称されるため、特に内部監査と対比されます。 内部監査の目的は、「自社の企業価値の向上」です。 監査という名称の通り、自社の業務プロセスについて法令違反の可能性の有無やリスク検証を行いますが、その目的はあくまでチェックを行った後に問題点の解消や効率化を行うことです。 一方の外部監査の目的は、「投資家の保護」です。 外部監査(=会計監査)では、その名称の通り、主に企業が作成・公開する財務情報が監査の対象になります。経営者は「正しい情報を説明する責任(アカウンタビリティ)」を負っていますが、その責任を果たすため、開示される情報が正確であることを、独立した公認会計士又は監査法人に証明してもらうのが、外部監査です。 上場企業の有価証券報告書には必ず監査報告書が含まれています。有価証券報告書の妥当性を監査報告書が担保することで、当該企業に投資を行う投資家を保護する、という仕組みです。 上場企業の有価証券報告書には必ず監査報告書が含まれています。有価証券報告書の妥当性を監査報告書が担保することで、当該企業に投資を行う投資家を保護する、という仕組みです。 2. 役割と範囲の違い ここからは、内部監査と外部監査の違いについて、役割と範囲の二つの側面から深掘りしていきます。 内部監査の役割は、企業価値の向上のためにチェックを行い、同時に社内のコンプライアンス意識を引き締めることです。また、範囲には、会計処理を含む社内のあらゆる業務フローが含まれます。 内部監査は自社の業務フローを第三者視点でチェックするものです。その為、法令違反が無いか、必要なルールが存在するか、といったチェックは行います。しかしながら、監査とは言っても社内の人員によるものである以上、外部に対して何らかの証明を行うことは難しく、IPOにおいて適切に行われていることを説明する以外は、社内向けの意味合いが強くなります。 監査と企業価値の向上、は一見結びつきが見えづらいですが、リスクになり得る要素を是正することで、先々のトラブルを防止し、将来的な企業価値の棄損を防止したり、非効率な業務を発見し、是正提案を行うことで業務工数の削減、ひいては粗利の向上に貢献したりすることが出来ます。 一方の外部監査の役割は、外部に対して開示される財務情報の正確性を証明することです。監査範囲についても、財務情報に関連する領域に限られます。 外部監査は、開示される財務情報について、各勘定科目の金額の妥当性を検証することによって、当該財務情報の正確性を検証します。勘定科目毎の残高の正確性を検証することで、開示される財務情報の正確性を担保する、という仕組みです。 ここで押さえておくべきは「重要性の原則」です。これは監査対象とする勘定科目について、金額や科目の性質から、最終的な利益に与える影響が乏しい科目については、簡便な処理を行って構わない、とするものです。 例えば利益が数十億円、数百億円という単位の企業にとって、期中取引額が数十万円、数百万円の科目は開示される情報に大きな影響を与えないため、簡便な処理で良いと判断されます。 金額基準が明確に示されているわけではありませんが、一般的には税引前当期純利益の5%未満の額の科目は重要性が無いと判断されるケースが多いです。但し、前述の通り、科目の性質も考慮されるため、当該会社のビジネスの根幹にかかわる科目である場合には、金額にかかわらず監査対象になります。また、赤字の場合も重要性の原則は適用されません。 このように外部監査も、優先順位付けを行うことで、実効性と効率を両立する形で監査が行われます。 3. 独立性と中立性 ここまで内部監査と外部監査の違いにフォーカスしてきましたが、最後に共通するポイントについても解説します。それが、独立性と中立性です。 監査対象をチェックする、という性質上、監査対象から独立した立場で、中立の視点から監査を行えなければ意味がありません。その為、監査対象と監査人との間には利害関係が存在しないように監査業務が行われる必要があります。 外部監査においては、例えば監査を担当する会計士と会社に不正な関係があれば粉飾等を意図的に見逃すなどの犯罪行為に発展しますし、内部監査においても、内部監査室と各部署に上下関係や評価に影響する項目があっては監査が円滑に進まなかったり形だけの監査になったりします。 その為、外部監査では会社と利害関係の無い公認会計士又は監査法人が監査を行いますし、内部監査においても、内部監査室は代表取締役直下の部署として、他の部署と独立した位置づけで設置されます。 4. まとめ 今回は、内部監査と外部監査の違いを中心にまとめました。 内部監査と外部監査は目的、役割、範囲等の違いはご理解頂けたかと思いますが、あくまでこの違いは役割上の違いであって、それぞれが独立したものというわけではありません。冒頭に触れた監査役監査も含んで「三様監査」と呼称されるように、企業のコンプライアンス遵守の為、それぞれの監査は密接に連携するものです。 本稿で触れた違いや共通点をご理解いただき、三様監査のより効果的な連携を推進頂ければ幸いです。
- [J-SOXとUS-SOXの違い](https://shiodome.co.jp/column/23600/) - 1. 米国のSOX法とは(US-SOX) SOX法(サーベンス・オクスリー法)は、企業の会計不正行為や不透明な決算報告を防止し、投資家保護と企業の透明性を向上させることを目的としたアメリカの法律です。正式名称は「2002年上場企業会計改革および投資家保護法(Public Company Accounting Reform and Investor Protection Act of 2002)」であり、法案を提出したポール・サーベンス議員とマイケル・オクスリー議員の名前に由来しています。 SOX法制定の背景には、エンロン事件やワールドコム事件といった不正会計スキャンダルがあります。これらの事件では、不正な財務報告により株主や従業員に大きな被害が及びました。このような不正を防ぐため、以下の要件が設けられました。 経営者の責任:財務報告の正確性を保証する義務。 内部統制の整備:リスク管理のための内部統制システム構築。 外部監査の強化:独立した監査人による内部統制の評価。 これにより、投資家の信頼を回復し、企業経営の透明性向上が図られました。一方で、厳格な規制により企業にとっては高いコンプライアンスコストが課題となっています。 2. 日本のSOX法とは(J-SOX) J-SOX(内部統制報告制度)は、アメリカのSOX法をモデルに日本の実情に合わせて改良された法律です。2006年に制定された金融商品取引法の一部として導入され、2008年から適用が開始されました。 制定の背景には、企業の不正会計や株式名義偽装などの事件があり、企業のコンプライアンス意識向上と財務報告の信頼性確保が目的です。J-SOXの主な要件は以下の通りです。 内部統制の整備と運用:財務報告の信頼性確保のため、内部統制システムを整備し、その有効性を評価。 内部統制報告書の提出:有価証券報告書と共に内閣総理大臣へ提出義務。 監査人の評価:外部監査人が内部統制の適正性を確認。 罰則規定:虚偽申告に対し、個人および法人に罰則。 J-SOXの導入により、リスクの早期発見や企業価値向上が期待されています。 3. J-SOXとUS-SOXの相違点 J-SOXとUS-SOXは内部統制の強化を目的としている点で共通していますが、それぞれの制度は異なる市場環境や企業文化を反映しています。主な相違点は以下の通りです。 (1) 内部統制の目的 US-SOXは不正会計の防止が主目的ですが、J-SOXはこれに加え、以下の4つが目的として明記されています。 業務の有効性と効率性 財務報告の信頼性 事業活動に関する法令遵守 資産の保全 (2) 内部統制の基本要素 J-SOXでは、ITへの対応が基本要素に追加されています。これにより、IT環境の整備が企業内部統制の一環として重視されています。 (3) 是正の評価区分 US-SOX:重要な欠陥、重大な不備、軽微な不備(3区分)。 J-SOX:重要な欠陥、不備(2区分)。 J-SOXは簡略化され、手続き効率化が図られています。 (4) ダイレクトレポーティングの有無 US-SOX:監査人が内部統制の有効性を直接評価(ダイレクトレポーティング)。 J-SOX:経営者の評価結果を監査人が確認(インダイレクトレポーティング)。 (5) 評価対象範囲 US-SOX:財務諸表上の全ての重要な事項が評価対象。評価範囲が広い。 J-SOX:主に売上や売掛金など特定の勘定科目に重点。範囲が限定的。 4. J-SOXからUS-SOXへの移行対応 米国市場での上場を目指す日本企業は、J-SOXからUS-SOXへの対応を求められる場合があります。移行時に考慮すべき主なポイントは以下の通りです。
- [株式公開と株式上場の違いとは?](https://shiodome.co.jp/column/11370/) - 株式公開と株式上場。違いはあるのでしょうか? 実は現在、株式公開と株式上場の違いは全くありません。株式上場も株式公開も「今までその企業の関係者のみが保有していた自社の株式を、証券取引所を通じて売買できるようにすること」を意味します。 しかし2004年以前は、意味が異なっていました。2004年はJASDAQ証券取引所が発足した年であり、株式公開と株式上場の意味の変化には、JASDAQの歴史が大きく関わります。 JASDAQの歴史は、1963年までさかのぼります。 株取引は証券取引所でしか行うことができない現在と違い、当時は、店頭登録制度(東京店頭・大阪店頭)により、企業が発行する株式の売買価格の公表や、企業の資料などを公開することを認めていました。の「店頭登録制度」こそ、JASDAQの前身となる制度でした。 この店頭登録制度において自社の株式を取引対象とするための手続きを、株式上場に対して「株式公開」と呼称していました。 1983年、新興企業向けの市場として、JASDAQは店頭市場(正確には店頭売買有価証券市場といい、証券取引所の補足のような存在として位置付られていました)となりました。 そして2004年、株式会社ジャスダックは内閣総理大臣が交付する証券取引所開設の免許を取得し、株式会社ジャスダック証券取引所となります。この時、店頭市場で扱っている全ての株式をJASDAQが引き受けることになり、店頭市場という売買方法とは消滅しました。これと同時に株式公開と株式上場の意味の差も消滅した形です。 2004年からしばらくは東京証券取引所とJASDAQで重複上場する企業もありました。しかし株式取引が活発な東証での上場に絞る為にJASDAQの上場を廃止する企業が増え、JASDAQは2013年に東京証券取引所の一部となりました。 まとめると①店頭登録制度(後の店頭市場)が創設され、「株式公開」という言葉が生まれた②2004年にJASDAQが証券取引所となったことで店頭市場が消滅③株式上場と意味が同一になった株式公開という言葉のみが残ったといった流れで、株式上場と株式公開という同一の意味の言葉が存在することとなりました。
- [なぜ今後ESGへの取り組みが必要となるのか:企業における重要性とその影響、背景とは](https://shiodome.co.jp/column/22481/) - 1. ESGとは ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)の頭文字を取ったもので、企業の持続可能な成長を評価するための基準です。ESGは、企業の環境への配慮、社会的な責任、そしてガバナンスの質を評価し、投資家やステークホルダーが企業の長期的な健全性を判断するための指標として使われます。具体的には以下の通りです。 環境(Environment) 企業が気候変動対策や資源管理、廃棄物の削減など、環境保護にどのように取り組んでいるかを評価します。再生可能エネルギーの利用やカーボンフットプリントの削減が重要な要素です。 社会(Social) 労働環境の改善や人権の尊重、地域社会への貢献など、企業が社会に対してどのような影響を与えているかを評価します。多様性やインクルージョンの推進、コミュニティ支援も含まれます。 企業統治(Governance) 企業の透明性やコンプライアンス、取締役会の独立性、経営陣の倫理観など、企業の内部統制や経営の質を評価します。ガバナンスの質は、企業の信頼性や長期的な安定性に直結します。 ESGは、企業が持続可能な成長を実現し、長期的な企業価値を向上させるための重要な枠組みとなっています。投資家は、ESGの各要素を考慮することで、リスク管理や長期的なリターンの最大化を図ろうとしています。 2. ESGが必要とされる背景 ESGが注目されるようになった背景には、さまざまな要因があります。 第一に、気候変動や環境破壊が深刻化する中で、企業には環境負荷を低減する取り組みが求められています。地球温暖化に対する取り組みは、国際的な規制や協定(例えば、パリ協定)によっても強化されています。 第二に、労働環境の改善や人権尊重、地域社会への貢献が求められています。企業が社会に対して与える影響が注目され、ステークホルダーの期待も高まっています。 さらに、投資家が短期的な利益だけでなく、長期的な持続可能性を重視するようになっていることも背景の一つとして考えられます。ESG評価は、投資判断において重要な要素となっており、ESGファンドの注目も高まっています。 最後に、各国政府や国際機関がESGに関する規制を強化しており、企業に対する透明性と報告義務が拡大しています。これにより、企業はESGに関する情報を公開し、ステークホルダーに対して説明責任を果たす必要性がより一層増しています。 このように「地球温暖化と環境問題」、「社会的責任の増大」、「投資家の意識変化」、「規制の強化」を背景に、ESGが必要とされるようになりました。 3. 企業におけるESGの重要性とその影響 このようにESGが必要とされる中で、企業がESGに取り組むことの重要性はどこにあるのでしょうか。企業におけるESGの重要性は以下の点にあると考えます。 リスク管理 ESGに取り組むことで、環境リスクや社会的リスクを予防し、企業の持続可能性を高めることができます。例えば、気候変動対策を講じることで、災害リスクを軽減し、事業継続性を確保することができます。 ブランド価値の向上 ESGに積極的に取り組む企業は、消費者や投資家からの信頼を得やすくなり、ブランド価値が向上します。消費者は、環境や社会に配慮した製品やサービスを選ぶ傾向が強まっており、企業のESGへの取り組みが競争優位性をもたらします。 コスト削減 エネルギー効率の改善や資源の有効活用により、運営コストを削減することができます。例えば、再生可能エネルギーの導入や省エネ対策は、長期的に見てコスト削減に繋がります。 投資家の評価向上 ESG評価が高い企業は、投資家からの評価が向上し、資金調達が容易になります。ESG投資ファンドの増加により、ESGに積極的に取り組む企業への投資が促進されています。 4. ESGとSDGsの違い ESGとよく混同される用語として「SDGs」というものがあります。 SDGsとは、 “Sustainable Development Goals”の略称であり、「持続可能な開発目標」を意味します。ESGとSDGsは、いずれも持続可能な社会を目指す枠組みですが、両者には以下のような違いがあります。 ESGは企業の持続可能な成長を評価する基準で、主に投資家が企業の健全性を判断するために用いられます。一方、SDGsは国連が設定した国際的な目標で、貧困や環境問題など、地球規模の課題を解決するための指針です。 また、ESGが企業の持続可能性を評価するための基準であり主に企業や投資家が対象となるのに対し、SDGs国連が設定した17の目標を達成するための国際的な指針であり政府・企業・NGO・市民社会など幅広いステークホルダーが対象となります。 評価方法に関しても、ESGが環境、社会、ガバナンスの3つの観点から評価されるが、SDGsは17の目標と169のターゲットに基づく多面的な評価が行われます。 5. 日本におけるESGの現状 現在の日本においても、ESGへの取り組みはいくつか見受けられます。 例えば、日本政府はESG投資の促進やサステナビリティに関する規制の強化を進めています。例えば、金融庁は「スチュワードシップ・コード」を導入し、投資家に対してESG要素を考慮した投資判断を求めています。また、上場している大企業を中心に、ESGレポートの発行やESG戦略の策定が進んでいます。例えば、トヨタ自動車などの大企業は、ESGの取り組みを強化し、持続可能な経営を目指しています。さらに、日本の機関投資家もESG評価を重視するようになり、ESGファンドの運用が増加しています。日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、ESG投資を積極的に推進しています。 課題としては、中小企業の取り組みが大企業と比較して遅れていることや、具体的な実施方法に対する知識や実務慣行が不足していることが挙げられます。 したがって、今後は中小企業へのESGの浸透を図るための支援が求められるでしょう。 6. ESGへの取り組みの具体的な影響 企業がESGに取り組むことで様々な影響をもたらします。 環境への影響については、企業が環境への配慮を強化することで、エネルギー効率の向上や温室効果ガスの排出削減が実現します。例えば、再生可能エネルギーの導入や省エネルギー技術の採用により、環境負荷を低減できます。これにより、企業は気候変動対策に貢献し、環境リスクを低減することが可能です。 また、社会への影響に関しては、ESGに取り組む企業は労働環境の改善や人権の尊重、地域社会への貢献を重視します。例えば、労働条件の向上や多様性の推進は従業員の満足度を高め、生産性の向上に寄与します。また、地域社会への積極的な貢献活動は、企業の社会的評価を高め、地域との良好な関係構築に繋がります。 加えて、企業統治に関しても影響があります。ガバナンスの強化は、企業の透明性やコンプライアンスの向上に繋がります。例えば、取締役会の独立性を確保し、内部統制を強化することで、企業はより信頼性の高い経営を行うことができます。これにより、企業はリスク管理能力を高め、長期的な安定性を確保できます。 その他にも、ESGに積極的に取り組む企業は、投資家からの評価が高まり資金調達が容易になることで資本コストの低減を実現するなど、各方面で持続可能な成長を実現することが可能になると考えます。 7. ESGに取り組む企業の事例紹介 以下は、ESGに積極的に取り組む企業の事例になります。
- [TCFD提言の理解と実践:気候関連財務情報開示における動向](https://shiodome.co.jp/column/22593/) - TCFDの開示は、企業の持続可能性に関する重要な要素の一つです。ESG(環境・社会・ガバナンス)全般に関する詳しい情報は「なぜ今後ESGへの取り組みが必要となるのか:企業における重要性とその影響、背景とは」の記事を合わせてご覧ください。 1. TCFDとは TCFDとは、“Task Force on Climate-related Financial Disclosures”の略称であり、気候関連財務情報開示タスクフォースと呼ばれます。この組織は2015年に金融安定理事会(FSB)によって設立され、気候関連の財務情報開示の標準化を目指しています。 TCFDは、気候変動が金融市場に及ぼす影響を評価し、企業がそのリスクと機会を適切に報告するための枠組みを提供することを目的としています。これにより、投資家やその他のステークホルダーが、気候変動の影響を理解し、より良い意思決定を行うための情報を得ることができます。 2. TCFD提言の概要 TCFDはこれまでに関連するガイダンスや刊行物など様々なものを発表しています。そのうち最も主要なものは「Final Report: Recommendations of the Task Force on Climate-related Financial Disclosures(気候関連財務情報開示タスクフォースによる提言 最終報告書)」であり、これはTCFD提言と呼ばれています。 このTCFD提言では、気候関連に関しては以下4つの要素を開示することを企業に対して推奨しています。 ガバナンス 戦略 リスク管理 指標と目標 それぞれ詳しく見ていきましょう。 ガバナンス ガバナンスでは、関連リスクと機会に対する組織のガバナンス体制を開示することが求められます。具体的には、取締役会が気候関連リスクと機会をどのように監督し、経営陣がどのように評価し、管理しているかを明示します。 戦略 戦略では、気候関連リスクと機会が組織の事業、戦略、および財務計画にどのように影響を与えるかを開示することが求められます。短期、中期、長期の視点から、気候変動が事業活動に与える影響を評価し、それに基づいた戦略を立案することが重要になります。 リスク管理 リスク管理では、気候関連リスクをどのように特定、評価、管理するかを開示することが求められます。企業は、気候関連リスクを他のリスク管理プロセスと統合し、一貫性を持たせる必要があります。 指標と目標 指標と目標では、気候関連リスクと機会を評価し、管理するために使用する指標と目標を開示することが求められます。具体的には、温室効果ガス(GHG)排出量、エネルギー消費量、その他の関連指標を用いて、目標を設定し、その進捗状況を報告することが求められます。 3. TCFD提言の有価証券報告書への影響 TCFD提言は有価証券報告書の記載にも影響を与えています。法改正によりサステナビリティに関する開示が義務化され、有価証券報告書の記載項目に「サステナビリティに関する考え方及び取組」が新設されることになりました。この項目では、TCFD提言の考え方に基づき、それぞれの要素を記載・開示することが求められています。具体的には、TCFD提言の4つの要素のうち、「ガバナンス」と「リスク管理」についてはすべての企業が開示する必要があり、一方で「戦略」と「指標と目標」については重要性を勘案して開示する項目になっています。 4. TCFD提言に基づく開示の重要性 TCFD提言に基づく開示は、投資家やその他のステークホルダーにとって重要な情報を提供します。気候関連リスクと機会の透明性が高まることで、以下のようなメリットがあります。 投資判断の改善:投資家は、企業の気候関連リスクと機会を評価し、持続可能な投資先を選定するための情報を得ることができます。これにより、投資ポートフォリオのリスクを適切に管理し、長期的なリターンを最大化することが可能になります。 リスク管理の強化:企業は、気候関連リスクを適切に評価し、対策を講じることで、将来的なリスクを軽減することができます。これには、物理的リスクに対する適応策の導入(防災対策、インフラの強化など)、移行リスクに対する戦略の策定(炭素排出削減目標の設定、低炭素技術の導入など)が含まれます。 信頼性の向上:透明性の高い情報開示は、企業の信頼性を高め、ステークホルダーとの関係を強化します。投資家、顧客、従業員、コミュニティなどのステークホルダーは、企業が気候変動に対して責任ある行動を取っていることを確認でき、企業のレピュテーションを向上させることができます。 5. TCFD提言に準拠した開示事例 TCFD提言に準拠して情報開示を行っている企業の事例は、各業界にわたって多岐にわたります。例えば、以下のような企業がTCFD提言に準拠した開示を行っています。 【トヨタ自動車】 ガバナンス:取締役会は、気候関連リスクと機会を監視し、戦略と行動計画を監督しています。取締役会は燃費・排出ガス規制、低炭素技術の進捗をモニタリングし、2023年には電動車の電池投資やパワートレーン技術の研究開発を承認しました。最終的な意思決定も取締役会が行い、複数の会議体がリスクと機会を評価・管理します。 戦略:「マルチパスウェイ戦略」を採用し、地域とお客様に対応した多様なモビリティを提供します。短期的にはエネルギーセキュリティを確保しつつ、再生可能エネルギー、電気、水素などに対応するモビリティを提供します。2019年にTCFD提言に賛同し、1.5℃と4℃のシナリオ分析を実施しました。 リスク管理:グローバルな事業活動に関わるリスクを特定、評価、対応しています。リスクは「影響度」と「脆弱性」の観点で評価され、各部署がリスクを抽出し対応策を実行します。「CN戦略分科会」や「サステナビリティ分科会」でリスク評価を実施し、取締役会に報告します。 指標と目標:GHG削減目標を設定し、プロジェクト関連の財務計画に反映しています。電動車の販売台数目標や次世代電池技術の開発を進め、水素事業戦略では関連商品の開発・生産を加速します。また、カーボンニュートラル燃料の導入を視野に入れ、液体燃料やバイオ燃料対応車両の投入を進めています。 (参考 トヨタ自動車-有価証券報告書:https://global.toyota/jp/ir/library/securities-report/)
- [タグアロングとドラッグアロング](https://shiodome.co.jp/column/11335/) - 1. タグアロング(Tag Along right)とは? タグアロングとは、株式を売却する条項の1つで、特定の株主が株式売却の際、他の株主も同条件で買手に売却する権利を持つことをいいます。日本語に訳すならば「売却参加権」となります。意味合いとしては直訳すると「一緒にしがみついて売却させて」ということです。タグアロンとも呼ばれます。 資本政策において、少数株主の保護としてタグアロングが利用される場合があります。例えば、大株主が企業に大きな影響力を及ぼしている場合、当該大株主のExitによる離脱は企業価値に大きな影響を及ぼすため、少数株主が大株主の売却条件と同条件で買手に自己の株式を売却する場合などです。これにより少数株主は被害を最小限に抑えることができます。 少数株主に与えられたプロテクションであり、特にシリコンバレーのIPO関連実務では、Co-sale rightと呼ばれることも多く、「共同売却権」と呼ばれることもあります。 2. ドラッグアロング(Drag Along right)とは? ドラッグアロングとは、大株主の株式売却に際して、他の株主も同条件で売却をしなければならないという条項をいいます。日本語に訳すならば「強制売却権」となります。意味合いとしては直訳すると「引きずり込んで一緒に売却しなさい」ということです。ドラッグアロンとも呼ばれます。 複数の株主による共同出資において、少数株主の利害調整を行うことなく、全株式の売却を実行することを可能にします。例えば優先株主の総議決権の3分の2以上の承認等の一定の要件を満たす場合に、他の株主に対して買収に応じるべきことを請求できる権利ですね。 3. タグアロングとドラッグアロングの違い タグアロングは権利であり、ドラッグアロングは義務であるということが、両者の大きな相違点です。いずれも、投資家株主間の問題として、「少数株主の保護」と「大株主(支配株主)のエグジット」を調整し実行するための権利調整です。 IPO業界で税務面・法律面まで見れる士業グループは少ないのが現状です。汐留パートナーズの税務&IPO支援に興味がありましたらお気軽にお問い合わせください。
- [ESGコンサルタントの重要性:具体的な役割や依頼することによるメリットとは](https://shiodome.co.jp/column/22796/) - 企業経営において、ESG(環境・社会・ガバナンス)は今や欠かせない要素となりました。持続可能な社会を築くために、企業が果たすべき役割は増していますが、ESGへの取り組みは多岐にわたり、専門的な知識が不可欠です。 そこで、注目されるのが「ESGコンサルタント」の存在です。彼らは企業の持続可能な成長を支援し、リスク管理やステークホルダーとの信頼構築をサポートします。 本記事では、ESGコンサルタントの具体的な役割や依頼することのメリット、そしてその選ぶ際のポイントについて詳しく解説します。 1. ESGコンサルタントとは ESGコンサルタントとは、企業が環境、社会、ガバナンスの観点から持続可能な成長を実現するために必要な専門的な支援を提供するコンサルタントを指します。 ESGは、企業が持続可能な成長の基盤であり、投資家や消費者の判断基準にもなります。 しかし、ESGの取り組みは複雑で多岐にわたるため、専門的な知識や経験が求められます。ここで登場するのが、ESGコンサルタントです。彼らは、企業の現状を分析し、ESGに基づいた経営戦略の策定から実行までを包括的にサポートします。急速に変化する規制や市場の動向を踏まえ、企業が適切な対応を行えるようにアドバイスを提供します。ESGコンサルタントの存在は、単なるガイド役にとどまらず、企業の競争力を強化し、持続可能な社会の実現に向けた重要なパートナーとしての役割を担っています。 2. ESGコンサルタントの具体的な役割 ESGコンサルタントの役割は多岐にわたりますが、その中でも特に、 以下の5つの分野で企業をサポートします。 ESG戦略の策定 リスク管理とコンプライアンス支援 ESGレポーティングとデータ分析 ステークホルダーとのコミュニケーション ESG文化の醸成 それぞれ詳しく見ていきましょう。 ESG戦略の策定 ESGコンサルタントは、企業のビジョンやミッションに基づいてESG戦略を策定します。これには、企業の事業活動における環境への影響を評価し、削減策を提案することや、社会的な責任を果たすための方針確立が含まれます。また、企業ガバナンスの強化を図るための施策も提案します。 リスク管理とコンプライアンス支援 企業が抱えるESGリスクを特定し、それに対する効果的な管理策を提案します。気候変動リスクの評価や、労働基準法に準拠した人事制度の整備などが挙げられます。また、企業がESGに関する法規制に準拠するための支援も行います。これにより、企業は法的リスクを回避し、社会的な信頼を維持できます。 ESGレポーティングとデータ分析 ESGコンサルタントは、企業がESGパフォーマンスを適切に報告できるよう、データの収集や分析をサポートします。これには、国際的なESG評価機関による評価基準に準拠したレポート作成や、企業のESG活動に関する透明性を確保するための取り組みが含まれます。 ステークホルダーとのコミュニケーション 企業がステークホルダー(投資家、顧客、従業員、地域社会など)と効果的にコミュニケーションを図り、持続可能な価値を創造するための支援を行います。ステークホルダーとの対話や関係構築は、企業のESG戦略を成功させるために重要です。 ESG文化の醸成 企業内部にESGの価値観を浸透させ、社員がESGの重要性を理解し、実践できるよう支援します。これには、ESGに関する教育プログラムやトレーニングの提供が含まれます。 3. ESGコンサルタントを依頼するメリットとデメリット 企業がESGコンサルタントを依頼することには、いくつかのメリットとデメリットが存在します。これらを理解することで、企業はより効果的にESGコンサルタントを活用できるでしょう。 メリット ESGコンサルタントを依頼するメリットとしては、以下の4点が挙げられます。 専門知識の提供 効率的なリソース配分 ブランド価値の向上 リスク管理の強化 専門知識の提供 ESGは多岐にわたる分野をカバーしており、専門知識が不可欠です。ESGコンサルタントは、最新の業界トレンドや規制動向を熟知しており、企業に対して最適な戦略や施策を提案することができます。 効率的なリソース配分 企業がESGに関する全ての業務を内部で処理するのは、専門知識を必要とするため業務負担が大きいです。そこで、ESGコンサルタントを活用することで、リソースを効率的に配分し、ESG施策を迅速かつ効果的に実施することができます。 ブランド価値の向上 ESGに積極的に取り組む企業は、消費者や投資家から高い評価を受ける傾向があります。ESGコンサルタントの支援、企業のブランド価値を向上させ、競争優位性を強化することが可能です。 リスク管理の強化 気候変動や社会的な不平等、ガバナンス問題などのリスクは、企業にとって重大な影響を与える可能性があります。ESGコンサルタントは、これらのリスクを効果的に管理し、企業の持続可能な成長をサポートします。 デメリット 反対に、ESGコンサルタントを依頼するデメリットとしては、以下の3点が挙げられます。 コストの負担 外部依存のリスク コンサルタントの質に依存 コストの負担 ESGコンサルタントのサービスには一定の費用がかかります。特に中小企業にとっては、コンサルタントへの依頼が経済的な負担となる場合があります。費用対効果を十分に考慮した上での依頼が必要です。 外部依存のリスク ESGコンサルタントに過度に依存すると、企業内部でのESGに対する知識や意識が十分に醸成されない可能性があります。コンサルタントのサポートを受けつつも、将来的には内製化も見据えつつ内部リソースの強化を図ることが重要です。 コンサルタントの質に依存
- [ESGと人的資本経営の関係性:日本の人的資本経営における重要性及び課題と今後の展望](https://shiodome.co.jp/column/22806/) - 近年、企業の持続可能な成長を支える要素として、ESG(環境・社会・ガバナンス)が注目されています。 特に人的資本経営は、ESGと密接に関連し、企業が競争力を維持しながら社会的責任を果たすために不可欠な戦略となっています。 本記事では、人的資本経営の概要、日本における課題、そして事例や今後の展望について解説します。 1. 人的資本経営とは 人的資本経営とは、人材を「資本」と捉え、その価値を最大限引き出すことにより、中長期的な企業価値の向上を目指す経営手法です。従業員のスキルや知識、経験を最大限に活用することで、企業の競争力を高め、持続的な成長を実現することが目的です。 これまでの人材戦略は、人材を「資源」と捉えて、短期的な業績目標を達成するための人材配置やコスト管理に重点を置いていました。これは、労働力を一つの「コスト」として捉え、必要なスキルを持つ人材を適時に採用・配置し、効率的に運用することが主な目的でした。 一方、人的資本経営では、単なる雇用管理を超えて、従業員の能力開発やキャリアパスの提供、働きやすい環境の整備などが含まれます。また、従業員のモチベーションやエンゲージメントを高める施策も重要な要素です。人的資本経営を実践する企業は、組織全体のパフォーマンス向上やイノベーションの促進を目指し、企業価値の向上に貢献します。 2. ESGと人的資本経営の関係性 ESG(環境・社会・ガバナンス)は、企業の持続可能な成長を支えるために重要な三つの要素。人的資本経営は、特にESGの「社会(Social)」と深く結びついています。ESGの「社会(Social)」は、企業が社会に対してどのような影響を与えるかを評価する要素であり、これは主に従業員に対する取り組みで反映されます。この点、人的資本経営は、従業員を「資本」として捉え、彼らの育成、労働環境の改善、多様性の促進などを行います。 したがって、人的資本経営を強化することは、ESGのうち「社会(Social)」の要素を高めることになり、企業の社会的評価や持続可能な成長に繋がります。 3. 人的資本経営の情報開示 近年、ESGの視点から投資先を選定するESG投資が注目を集めています。それに伴い、投資家に対して人的資本に関する情報を開示するニーズも高まってきています。なぜなら、上述した通り人的資本経営はESGと密接に関係しているためです。 その影響を受けて、2021年にはコーポレートガバナンスコードが改正され、企業に対し人的資本情報開示が求められるようになりました。また、2022年には内閣官房による「人的資本可視化指針」(URL:https://www.cas.go.jp/jp/houdou/pdf/20220830shiryou1.pdf)が公表され、人的資本の情報開示に関する指針を明らかにしました。具体的には、人的資本開示に関する7分野に分けて、合計19項目を推奨しています。 育成分野 リーダーシップ 育成 スキル/経験 エンゲージメント分野 従業員エンゲージメント 流動性分野 採用 維持 サクセッション ダイバーシティ分野 ダイバーシティ 非差別 育児休業 健康・安全分野 精神的健康 身体的健康 安全 労働慣行分野 労働慣行 児童労働/強制労働 賃金の公正性 福利厚生 組合との関係 コンプライアンス/倫理分野 コンプライアンス/倫理 なお、すべての分野と項目を開示することが求められているわけではありません。 4. 日本におけるESGと人的資本経営の課題 日本におけるESGと人的資本経営にはいくつかの課題が存在します。具体的には以下の3点が挙げられます。 多様性の推進 日本の企業は依然として性別や年齢に関する偏見が強く、女性や外国人の登用が十分ではありません。多様性の推進が進まないと、ESGのうち「社会(Social)」の要素が満たされないだけでなく、企業の競争力にも悪影響を及ぼす可能性があります。 労働環境の改善 長時間労働や過労死など、日本の労働環境には依然として問題が多く、人的資本経営を実践する上で大きな課題となります。従業員の健康や働きやすさを確保するための制度改革が必要です。 人材育成の不足 技術革新が進む中で、新しいスキルや知識が求められていますが、企業によっては人的資本の育成に十分な投資が行われていない場合があります。これにより、ESGに関連する目標達成が難しくなります。 これらの課題に対処することで、より効果的な人的資本経営とESG戦略が実現されるでしょう。 5. 日本企業における人的資本経営の事例
- [令和時代の養老保険を活用した節税対策とは?【2019年税制改正対応】](https://shiodome.co.jp/column/11315/) - 令和元年の税制改正により生命保険を活用した法人税の節税に遂にメスが入りました。新ルールでは定期保険の支払保険料の取扱いについて最高解約返戻率により損金算入割合を決定するという統一的なルールとなりました。このルールは従来のように保険期間や保障額の推移(逓増定期保険)などの商品構成から損金算入割合を決定するものではないため、保険会社の商品開発力をもってしても今後この新ルールを掻い潜る保険商品の開発は困難と思われます。 今まで税務当局が通達を発遣するたびに保険会社がその通達で制限できない新しい保険商品を発売するといったイタチごっこがようやく終焉したといえます。全損での定期保険や2分の1損金での逓増定期保険は税制改正後には登場しないと思われます。同族会社で決算対策などの節税手法として生命保険は王道であったため、同族会社にとっては手厳しい内容です。 税制改正後に新たに注目されているのが、養老保険のハーフタックス(福利厚生)プランになります。養老保険は非常に貯蓄性の高い商品になるため、原則法人加入の場合は保険料を全額資産計上することになりますが従業員の福利厚生目的としての加入であれば保険料の2分の1を福利厚生費として損金算入することが認めれます。ドル建ての養老保険商品では満期時返戻率が100%を大幅に超えるにもかかわらず、保険料の2分の1が損金になるため節税効果は従来の定期保険と同等レベル、それ以上といえるかと思います。 ただし、2分の1損金とするためには福利厚生要件を満たす必要があります。要件は大きく2つあります。 1つ目は契約形態で満期保険金受取人を法人、死亡保険金受取人を被保険者の遺族に設定することです。 2つ目の要件としては、被保険者として従業員を普遍的に加入させるということです。福利厚生の目的のため特定の役員や従業員のみを加入させることは福利厚生とは認められません。一般的な法人税法上の福利厚生費の基準(例えば健康診断の費用負担や慶弔見舞金)と同様の考え方になります。そのため特定の役員や従業員のみが加入すると、保険料の2分の1相当額が現物給与の扱いになってしまいます。 そのため従業員の退職金制度として導入する目的ではなく、節税を主たる目的とする場合には大多数の従業員の同意が必要なことや従業員の入退社の都度手続きが必要なることなど現実的に難しいことが多いかと思われます。 税制改正後の保険会社や保険代理店の動きを見ると利益が出ている少人数の同族会社をターゲットにして提案するケースが多い印象です。少人数であれば比較的容易にこの福利厚生要件を満たすことができるからです。 また、提案手法について子会社を設立して本体法人の役員等の幹部を転籍させ少人数の組織をつくり、子会社でこのハーフタックスプランに加入するというスキームも出てきております。子会社で明確に事業実態を作ることが前提にはなりますが、消費税の免税点の利用や中小法人の特例としての法人税の軽減税率、交際費の枠の活用なども合わせることで節税メリットは倍増します。 特にIT企業であればグループ会社間取引の実態を成立させやすく、同スキームを利用しやすいかと思われます。グループ会社間取引について税務上寄付金の該当の有無、満期時や解約時の出口対策など検討すべきことは多いですが、上場目指していない利益の出ているIT企業は検討の余地が大きいと思われ、税制改正後に一種の抜け道としてドル養老保険が活用されるケースが増えている印象です。 弊社グループでも保険代理店業を行っているため、税制改正後に話題になっている養老保険ハーフタックスプランについては研究しております。ご興味ございましたらお問い合わせいただければと思います。
- [年末調整の電子化に関するまとめ](https://shiodome.co.jp/column/11935/) - 新型コロナウイルスの影響により、年末調整の申請に関しても大きな変化が生じています。従来の紙ベースの手続きでは、申請書の配布・回収だけで多くの時間を費やす可能性があります。 そこで本記事では、2020年10月からスタートした年末調整の電子化について詳しく紹介します。早めに準備をしておくことでスムーズに手続きを進められます。 1. 年末調整の電子化がスタート 2020年10月から、年末調整手続きの電子化がスタートしました。これは2018年の税制改正によって決められたもので、新型コロナウイルスの拡大とは無関係にスタートします。しかし、電子化によって密集した空間を作らずに申請が行える点でタイミングが良かったといえるのではないでしょうか。 年末調整の電子化によって、これまで書面で提出していた書類を電子データで提出可能です。新しいやり方を覚える負担があるとはいえ、今後、よりスピーディに年末調整手続きを完了できる可能性を秘めています。 2. 年末調整とは何? 年末調整について説明します。年末調整とは、1年間の給与総額が確定する年末に、控除等を加味してその年に納めるべき税額を正しく計算し、それまでに源泉徴収した所得税との過不足額を徴収・還付によって調整する手続をいいます。もう少し簡単にいえば、1年間で払いすぎた、もしくは支払いが不足していた税金を調整する手続きです。 給与所得者の収入に対しては、配偶者控除や扶養控除、生命保険などの保険料控除、住宅ローン控除などの適用が可能です。しかしながら、所得税は毎月の給与から天引きされています。そこで、年末にこれらすべての控除項目を加味し、再計算し申請することで、払いすぎていた税金を受け取れる仕組みです。 逆に、個人事業主などは所得税が毎月の給与から天引きされないため、年末調整時に申請を行い、必要な税の支払いを行います。 3. 電子化による年末調整手続きの概略 電子化により、紙ベースでの書類作成や提出が減ります。これまで実施していた手作業での転記作業もなくなります。一方で、データの保管や送付については注意を払う必要があります。 電子化される前(従来の紙ベースでの申請)と電子化後の手続きや仕組みを以下にまとめました。 従来と電子化後の年末調整手続きの違い (※)「年調ソフト」とは、国税庁が無償で提供する年末調整用のソフトウェア。年末調整申告書等について、従業員が控除証明書等データを活用して簡便に作成し、会社に提出する電子データ又は書面を作成する機能を有している。その他、民間のソフトウェアもあり。 年末調整の電子化による従業員側のメリット年末調整を電子化することで、従業員側に以下のようなメリットがあります。 手書きによる手続き(控除額の計算や年末調整申告書の記入など)が不要 書類管理の必要性がなくなり、書類紛失の心配が必要なし これまでは書き方がわからずに時間を要したり、書類紛失により再発行を依頼したりする場合がありましたが、電子化することでそれらの心配がなくなります。 年末調整の電子化による会社側のメリット年末調整を電子化することで、会社側にも以下のようなメリットがあります。 年調ソフトの利用により、控除額の検算が不要 控除証明書等との照合作業が不要 自動計算による記載誤りの減少及び従業員への問い合わせ事務の減少 書類保管コストの削減 会社側としては、重要書類の保管や従業員への記入説明の負担が減るという大きなメリットがあります。ただし、データの保管や取扱いには特段の注意が必要です。 年末調整手続きの電子化に向けた準備会社として年末調整の電子化を取り入れる場合には、計画的に進める必要があります。中途半端に実施した場合には混乱が生じる場合もあるため、会社としてどの程度電子化を進めるのかを明確に決めた上で実施するとよいでしょう。 電子化する場合には、会社は以下の流れで行います。①電子化の実施方法の検討②従業員への周知③給与システム等の改修④税務署への届出 気をつける点として、電子化は自社内だけで完結するものではなく、各従業員が保険会社等に高所証明書等のデータを依頼するなどの手続きが必要となります。また、マイナポータルを活用する場合には、マイナンバーの取得も必要です。そのため、従業員の理解や協力が得られないまま実施してしまった場合、大きな混乱が生じます。時間に余裕を持ち、無理のないスケジュール感で実施するとよいでしょう。 4. おわりに 本記事では、2020年10月から採用された年末調整の電子化について紹介しました。今後は電子化手続きが主流になっていくと考えられるため、今のうちから理解を深めておくことをおすすめします。 もし年末調整の電子化に関して不安なことがありましたら、弊社までお気軽にお問い合わせください。
- [ESGにおけるDEIの重要性:企業がDEIに取り組む必要性と日本における課題とは](https://shiodome.co.jp/column/23192/) - 企業経営において、持続可能性を追求するESG(環境・社会・ガバナンス)の観点はますます重要視されています。 その中で、DEIの取り組みは、企業の競争力を強化し、社会的責任を果たすための鍵となります。 本記事では、DEIとは何かからESGにおけるDEIの重要性を解説し、日本における課題と具体的な取り組みについて考察します。 1. DEIとは DEIとは、「Diversity, Equity, and Inclusion」の頭文字を取ったもので、多様性、公平性、そして包括性を意味します。近年、企業の経営においてこれらの概念がますます重要視されています。 多様性(Diversity)は、年齢、性別、民族、宗教など、様々なバックグラウンドを持つ人々が共存することを指します。公平性(Equity)は、個々のニーズや状況に応じた支援や機会の提供を通じて、全ての人が平等に扱われることを目指します。包括性(Inclusion)は、多様な人々がその能力を最大限に発揮できるような環境を整えることを指します。 これらの要素は、組織内での平等な機会の提供と多様な視点の活用を通じて、より創造的で革新的な組織文化を育むために不可欠です。また、DEIは単なる倫理的な義務としてだけでなく、企業の持続可能な成長や競争力強化にも寄与する要因として、注目されています。 2. ESGにおけるDEIの重要性 ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の観点から企業の持続可能性を評価するフレームワークです。この中で、社会(Social)の側面は、労働環境、人権、地域社会との関係など、企業がどのように人々やコミュニティに対して責任を果たしているかを評価する重要な要素です。DEIはこのうち「社会(Social)」の側面に深く関連しています。 企業が多様性を尊重し、公平性を追求し、包括的な環境を提供することで、従業員のエンゲージメントが高まり、イノベーションが促進されます。多様なバックグラウンドや視点を持つチームは、問題解決や意思決定の際により広範で創造的なアプローチを生み出すことができます。また、DEIを実践する企業は、ステークホルダーからの信頼を得やすくなり、社会的評価も向上します。これにより、長期的な企業価値の向上が期待されます。 3. DEIとD&Iの違い DEIとよく似た言葉としてD&Iというものがあります。 D&Iとは、「Diversity & Inclusion」の略称であり、DEI(Diversity, Equity & Inclusion)の違いは、主に「Equity(公平性)」の有無にあります。 D&Iは、主に多様性と包括性に焦点を当て、組織が様々な背景を持つ人々を受け入れ、その人々が安心して働ける環境を作ることを目指しています。一方で、DEIはこれに加えて、公平性を強調します。公平性とは、個々のニーズや状況に応じた支援や資源の分配を通じて、全ての人が平等な機会を得られるようにすることです。すなわち、DEIはD&Iよりも一歩進んだ概念とも言うことができます。単に多様な人々を受け入れるだけでなく、その人々が平等に成長できる環境を整えることが求められます。この違いは、組織がDEIをどのように実践し、効果的に運用するかを考える上で重要です。 4. DEIとDEIBの違い 最近では、欧州を中心にDEIより一歩進んだDEIBというものが注目されつつあります。 DEIBとは、DEIに帰属意識(Belonging)が追加された考えた方になります。帰属意識(Belonging)は、従業員が組織内で自分が受け入れられ、価値を感じる環境を重視します。従業員が安心して自己を表現できる環境を作り、全員が組織の一員であると感じることを目的としています。 5. 企業がDEIに取り組む重要性 企業がDEIに取り組むことの重要性は、単なる社会的責任の範囲を超えて、多くのメリットをもたらします。 まず、DEIに取り組むことで、企業はより広範な人材プールから優秀な人材を採用できるようになります。多様なバックグラウンドや視点を持つ人材が集まることで、企業はより創造的で革新的な解決策を生み出す力を持つようになります。さらに、DEIは従業員のエンゲージメントと満足度を向上させる要因ともなります。包括的な職場環境は、従業員が自分の意見やアイデアを自由に表現できる場を提供し、結果として生産性や業績が向上するでしょう。また、消費者や取引先、投資家などのステークホルダーも、企業がDEIに取り組んでいるかを注視しています。これらのステークホルダーとの信頼関係を築くことは、企業のブランド価値や長期的な競争力を高めるために欠かせない要素となります。 6. 日本におけるDEIの課題 日本においては、DEIの取り組みが進んでいる企業も増えてきていますが、依然として多くの課題が存在します。 その一つは、多様性の認識の違いです。日本社会は比較的均質であり、他国と比べて文化的な多様性が少ないとされています。そのため、企業内での多様性の重要性が十分に理解されていない場合があります。また、性別や年齢、障がいの有無などに関するステレオタイプが根強く残っており、これがDEIの推進を阻む要因となっています。また、公平性の概念についても、欧米諸国と比べて理解が進んでいないことが多いと考えられます。日本企業は、平等を重んじる傾向がありますが、それが必ずしも公平性を意味するわけではありません。例えば、全員に同じ待遇を提供することが公平であると考えられがちですが、実際には個々のニーズや状況に応じた支援が必要です。この点において、企業がどのようにDEIを進めていくかが問われています。 7. DEIの具体的な取り組み 企業がDEIを推進するためには、具体的な取り組みが必要です。 まずは、DEIに関する明確なポリシーを策定し、それを全従業員に共有することが重要です。このポリシーには、差別やハラスメントを認めない姿勢や企業文化、多様な人材を採用・育成するための具体的な方針が含まれるべきです。また、経営陣や管理職がDEIの重要性を理解し、リーダーシップを発揮することも不可欠です。定期的な研修やワークショップを通じて、DEIに関する知識やスキルを高めることが推奨されます。さらに、企業文化としてDEIを根付かせるために、日常的なコミュニケーションや行動の中で多様性と包括性を意識した取り組みを行うことが求められます。最後に、DEIの進捗状況を定期的に評価し、改善点を見つけるためのモニタリングも重要です。これには、従業員のフィードバックを活用した調査や、DEIに関連するデータの分析が含まれます。こうした取り組みを通じて、企業は持続的にDEIを向上させることが可能になることでしょう。 8. 今後の展望 今後、DEIの重要性はさらに高まると予想されます。グローバル化が進む中で、企業は多様な市場や顧客層に対応する必要があります。そのため、多様性を尊重し、包括的な企業文化を構築することが、競争優位性を確保するための鍵となります。また、若い世代の労働者は企業の社会的責任やDEIへの取り組みに敏感であるケースもあり、DEIが採用や従業員の定着率に影響を与えることも考えられます。さらに、気候変動や社会的不平等などのグローバルな課題が深刻化する中で、企業のESGへの取り組みが重要視されています。 DEIは、こうした課題に対処するための重要な要素であり、企業が持続可能な未来を築くためには欠かせない視点です。 9. まとめ ESGにおけるDEIの重要性は、企業の持続可能な成長や競争力の強化に直結しています。多様性、公平性、包括性を重視した企業文化は、従業員のエンゲージメントを高め、イノベーションを促進する力を持っています。しかし、日本においては、DEIの理解や実践において多くの課題が残されています。企業がこれらの課題に真摯に向き合い、具体的な取り組みを進めることで、より公正で持続可能な社会の実現に貢献できるでしょう。DEIの推進は、単なる倫理的な義務を超えて、企業の長期的な成功を左右する重要な要素です。今後もDEIの重要性が高まり続ける中で、企業がどのようにこれを取り入れていくかが、持続可能なビジネスモデルの構築において鍵となるでしょう。
- [決算短信の45日ルールとは【企業開示の重要な期限】](https://shiodome.co.jp/column/16663/) - 上場会社は、株主や投資家に対して決算結果や経営状況を公開するため、決算短信を作成し開示する義務があります。そしてその開示は、決算期末後の45日以内に行われる必要があります。これが一般に「決算短信の45日ルール」と呼ばれますものです。このルールは、上場会社が適切に市場への情報開示を行うために重要な役割を持っています。 決算短信は、企業の決算結果を要約し、株主をはじめとするステークホルダーに、迅速に情報提供するための重要な報告書です。市場の透明性を高め、投資家が株取引や投資の意思決定を行う上で、重要な情報源となります。本記事では、決算短信の概要と45日ルールについて詳しく解説します。 1. 決算短信の概要 決算短信は、上場会社が決算後に作成し、市場へ開示する報告書です。内容としては企業の決算結果、経営状況を要約したもので、その大きな意義はステークホルダーに対して迅速に情報を提供することにあります。決算短信には以下のような情報が含まれます。 1. 決算結果の要約 営業収益、経常利益、純利益など、企業の経営成績に関する要約情報が記載されます。これにより、投資家は企業の業績を把握することができます。 2. 財務状況の要約 資産、負債、純資産など、企業の財政状態が含まれます。投資家は、企業の財務健全性や安定性を判断するための重要な指標としてこれらの情報を利用します。 3. リスク要因の開示 決算短信には、企業の業績や財務に関連するリスク要因が開示されます。これには、市場変動、競争状況、法規制の変更など、企業に影響を与える要素が含まれます。 4. 重要事項の強調 決算短信では、特に投資家や利害関係者に重要な事項が強調されます。具体的には、業績の改善、新たな戦略の導入、事業拡大の計画などが該当します。 5. その他の情報 決算短信には、企業の経営方針、事業展望、関連会社の情報など、決算に関連するさまざまな情報が含まれます。 2. 決算短信の開示期限「45日ルール」 上場会社の決算情報は、投資家の投資判断の基礎となる最も重要な会社情報であることから、東証では、決算短信の開示について、早期の開示を要請しています。 具体的な日数として、決算期末後45日以内に開示することを上場規程では求めています。また、更なる早期開示目標として、30日以内の開示が望ましいとも規定されています。なお、決算短信の開示が決算期末後50日を超えてしまう場合には、開示が遅延した理由及び翌年の決算短信の開示時期の見込みを開示することが義務付けられています。 四半期決算短信の開示については、金融商品取引法に基づく四半期報告書の法定提出期限が45日とされていることから、上場規程ではあえて早期開示要請の対象とされていません。なぜならば、上場会社は、四半期決算が定まったときに、その内容を直ちに開示することが義務付けられており、意図的に開示時期を遅延させることもできないため、遅くとも、金商法に基づく四半期報告書の提出(45日以内)までには、四半期決算短信の開示を行うことになると考えられるからです。 こうした背景から、上場会社においては、決算の内容の早期開示に向けて社内体制の整備と充実に取り組むことが求められます。 3. 45日ルールの意義と目的 45日ルールの目的は、投資家の目線では迅速な情報提供を受けること、会社の目線では自社の信頼性を高めること、市場の目線では市場の透明性を高めることです。 迅速な情報提供の重要性 決算短信は企業の決算結果や財務状況を要約してステークホルダーに提供する重要な文書です。迅速な情報提供は、以下のようなメリットを持ちます。 株主や投資家に最新の企業情報を提供し、投資判断や意思決定をサポートする 積極的な情報開示によって投資家の信頼を維持・向上させる 適時な開示と情報の信頼性は、公正な市場の形成と健全な投資環境の維持に寄与します。 4. 遅延開示のリスクと対策 万が一、決算短信の45日ルールを守れないと、以下のようなリスクが発生する可能性があります。45日ルールを遵守できるよう、適切な対策を講じることが重要です。 リスク1: 投資家の不安感と市場への影響 決算短信が遅れると、ステークホルダーは企業に対して不安感を抱く可能性があります。情報の遅延により、市場の透明性が低下し、株式市場において自社に不利な影響を及ぼす可能性があります。 リスク2: 株主や投資家からの信頼喪失と訴訟リスク 情報の遅延は、株主や投資家からの信頼喪失につながる可能性があります。また、適切な情報開示の義務を果たさないことで、訴訟や法的紛争につながる可能性もあります。 こうしたリスクを未然に防ぐためには、以下のような対策を講じ、45日ルールを遵守できる体制を構築することが重要です。 対策1: プロセスの改善とリソースの適切な配置 決算短信の作成にかかるプロセスを見直し、効率的かつスムーズに進行するように改善します。必要なリソースを適切に配置し、作業の優先順位を明確にすることで、作成が適切に進むように業務を設計します。 対策2: 内部コミュニケーションとチームワークの強化 関係部署間のコミュニケーションを強化し、情報共有や作業の進捗管理を円滑に行います。チームワークを醸成し、各担当者が役割と責任を適切に分担することで、スケジュールを遵守しやすい体制とすることが肝要です。 対策3: 開示プロセスのアウトソースによる体制の強化 専門的な知識・経験を持つ外部のコンサルタントに開示業務をアウトソースすることも有効です。スキルや経験の不足、リソースの制約などを解消し、迅速かつ正確な開示を実現します。 5. 有価証券報告書との違い
- [会社法に基づく事業報告書の重要性とその役割](https://shiodome.co.jp/column/22790/) - 1. 会社法に基づく事業報告書とは 事業報告書とは、会社法に基づき株式会社がその事業年度ごとに作成する文書です。この報告書は企業の経営状況や事業活動に関する情報を詳細に提供し、株主総会に提出されます。事業報告書の作成は法的義務があり(会社法435条)、企業の透明性を確保し株主や投資家等に対する説明責任を果たすための重要な文書です。本記事では、事業報告書について概説し、その役割や目的について説明します。特に、企業の信頼性を高めるための手段としての事業報告書の位置づけを理解することが重要です。 2. 事業報告書の作成目的:企業の透明性と説明責任 事業報告書の主な作成目的は、企業の透明性と説明責任を確保することです。具体的には、以下の点が挙げられます。 透明性の確保 事業報告書は、企業の経営状況や財務状況を株主や投資家等に対して明確に示すための重要なツールです。これにより、企業の経営透明性が向上し、ステークホルダーの信頼を得ることができます。 説明責任の履行 企業は、株主や投資家等に対して説明責任を負っています。事業報告書は、この説明責任を果たすために必要不可欠なものであり、企業の活動や成果を詳細に報告することで、株主や投資家等が正確な情報に基づいた判断を行えるようにします。 経営状況の報告 事業報告書は、企業の年間の経営活動を総括し、その成果を報告する文書です。具体的には、売上高、利益、主要なプロジェクトの進捗状況など、企業の経営成績を明示します。 財務健全性の把握 企業の財務状況についても詳細に報告することが求められます。これには、資産、負債、純資産、キャッシュフローなどの情報が含まれ、投資家は企業の財務健全性を評価するための重要なデータを得ることができます。 リスク情報の提供 事業報告書には、企業が直面しているリスクや今後予測されるリスクについても記載されます。これにより、投資家は企業のリスク管理の状況を把握し、リスクを考慮した投資判断を行うことができます。 将来の見通しの提示 企業の将来の戦略や計画についても報告されます。これには、今後の市場展望、新たな事業展開、研究開発の方向性などが含まれ、株主や投資家等に対して企業の成長戦略を示します。 法的義務の履行 事業報告書の作成および提出は、会社法に基づく法的義務です。この義務を履行することで、企業は法令遵守の姿勢を示し、コンプライアンスを強化します。 投資家とのコミュニケーション強化 事業報告書は、企業と投資家等との間のコミュニケーションツールとしても重要です。企業の現状や将来のビジョンについての情報を共有することで、投資家との信頼関係を築き、株主価値の向上を図ります。 3. 事業報告書の具体的内容 事業報告書の記載内容は会社法施工規則第118条から126条に定められており、以下の内容が含まれます。 会社の概況 会社の基本的な情報、事業内容、重要な組織変更、主要な事業の概要などが記載されます。これにより、株主や投資家は企業の全体像を把握することができます。 業務の経過および成果 その年度における重要な業務の進捗状況や達成した成果について具体的に報告します。例えば、 売上高の増加、新たな市場への参入、製品の改良などの実績が含まれます。 財産および損益の状況 企業の財務状況や損益の概要を示します。これには、貸借対照表や損益計算書の主要項目が含まれ、企業の財政健全性を評価するための重要な情報が提供されます。 事業の見通し 将来の事業展開や、予測されるリスクについて説明します。これにより、株主や投資家は企業の将来の成長戦略や市場環境の変化について理解することができます。 リスク要因の開示 企業の業績や財務に関連するリスク要因が開示されます。これには、市場変動、競争状況、法規制の変更など、企業に影響を与える要素が含まれます。これにより、株主や投資家は企業のリスク管理の状況を理解し、投資判断を行う際の参考とすることができます。 重要事項の強調 その年度における特に重要な事項について強調されます。例えば、主要なプロジェクトの成功、新たな戦略の導入、事業の拡大計画などが含まれます。これにより、株主や投資家は企業の重要な動向を把握することができます。 CSR(企業の社会的責任)活動 環境保護、社会貢献活動、労働環境の改善など、企業が行っている社会的責任に関する取り組みが報告されます。これにより、企業の持続可能性や社会的影響についての理解が深まります。 ガバナンス 企業のガバナンス(経営管理)体制についての情報が含まれます。取締役会の構成、監査体制、コンプライアンスの取り組みなどが記載され、企業の管理体制や経営の透明性についての情報が提供されます。 関連会社の情報 企業グループの一員である関連会社の概要や、これらの会社との取引関係などが報告されます。これにより、グループ全体の戦略やシナジー効果についての理解が得られます。 4. 事業報告書の提出 事業報告書は、定時株主総会に提出され、企業の経営状況や財務状況を報告するための重要な文書です。株主総会は通常、事業年度終了後3か月以内に開催され、事業報告書は招集通知に添付して株主に配布されます。これにより、株主は事前に内容を確認し、総会での議論や決議に備えることができます。 5. まとめ 事業報告書は、企業の財務状態や経営状況を株主や投資家等に伝えるための重要な文書です。これを通じて、企業は透明性を確保し、信頼を築くことができます。企業の業績や戦略、リスク管理の状況を詳しく説明することで、関係者に対して企業の現状を正確に伝えることができます。 事業報告書の作成には、経営陣のコメント、将来の展望など、多岐にわたる情報が含まれます。これにより、株主や投資家等は企業の状況や成長可能性を評価するための重要な材料を得ることができます。事業報告書の重要性を理解し、企業は事業報告書を通じて、ステークホルダーとの信頼関係を強化し、持続的な成長を目指していくことが期待されます。 6. 関連リンク 事業報告書に関連する追加の情報源や規制当局のガイドラインへのリンクを以下に記載します。 経団連
- [ESG投資と将来の展望について:ESG評価機関やグリーンボンド・サステナビリティボンドについて解説](https://shiodome.co.jp/column/23196/) - ESG投資は、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の観点から企業の持続可能性を評価し、投資判断を行う新たなアプローチです。企業の財務状況だけでなく、長期的な成長や社会的影響を重視するこの投資スタイルは、近年注目を集めています。 本記事では、ESG投資の基本概念や、企業の持続可能性を評価するESG評価機関、グリーンボンドやサステナビリティボンドの仕組み、さらにはESG投資の将来展望について詳しく解説します。 1. ESG投資とは ESG投資とは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の観点から企業の持続可能性を評価し、投資判断を行うアプローチを指します。 従来の投資は、企業の財務データや経済指標を重視していましたが、ESG投資は、それに加え、長期的な社会的価値や持続可能な成長を重視します。ESG投資は、投資家が気候変動や労働環境、企業統治の透明性など、企業が直面するリスクをより包括的に評価できるようにすることで、長期的な投資リターンの向上を図るものです。ESG投資の普及は急速に進んでおり、環境問題や社会的課題への関心が高まる中で、投資家や企業にとって重要なトレンドとなっています。国際的な規制の強化や、消費者・投資家の意識の変化により、ESG要素を考慮した投資が拡大しているのです。また、ESG投資は、投資家だけでなく、企業自体にも競争力の強化やリスク管理の改善につながるとの期待が寄せられています。 2. ESG評価機関とスコアリング ESG投資において、企業の持続可能性を評価するためにESG評価機関が果たす役割は非常に重要です。これらの機関は、企業のESG要素をスコアリングし、投資家にとって参考となる指標を提供します。評価機関は独自の基準に基づき、企業の環境影響、労働条件、企業統治の健全性などを数値化し、投資判断に寄与します。代表的なESG評価機関として、S&P Global、MSCI、Sustainalytics、FTSE Russellなどが挙げられます。これらの機関は、各企業のESGリスクとパフォーマンスを評価し、投資家に対して信頼性の高いデータを提供しています。しかし、各機関の評価基準は異なるため、同じ企業でも機関によって評価が異なることがあります。したがって、投資家は複数の評価を比較し、総合的な判断を下すことが求められます。 ESGスコアリングは、企業にとっても重要な指標となっています。スコアが高い企業は、ESGリスクに対する対応力が高いと見なされ、投資家からの支持を集めやすくなります。そのため、多くの企業はESGパフォーマンスの向上に努め、持続可能なビジネスモデルの構築を目指しています。 3. グリーンボンドとサステナビリティボンド ESG投資の一環として注目されているのが、グリーンボンドやサステナビリティボンドです。これらの債券は、持続可能な開発や環境に配慮したプロジェクトに資金を提供する手段として発行されます。 グリーンボンドは、主に環境保護や気候変動対策を目的としたプロジェクトに資金を供給するために発行される債券です。例えば、再生可能エネルギーの導入、エネルギー効率の向上、廃棄物管理、水資源保全など、環境に直接的な利益をもたらすプロジェクトに資金が使われます。グリーンボンドは、企業や政府が持続可能な活動を促進するための資金調達手段として、急速に普及しています。 サステナビリティボンドは、グリーンボンドに加えて、社会的な課題にも対応するプロジェクトに資金を供給することを目的としています。貧困の削減、雇用創出、教育の改善、ヘルスケアの提供など、広範な社会的利益をもたらすプロジェクトが対象となります。サステナビリティボンドは、環境と社会の両面での持続可能性を追求する企業や団体にとって、重要な資金調達手段となっています。 これらの債券は、投資家にとっても魅力的な選択肢です。なぜなら、環境や社会に貢献するプロジェクトに資金を提供することで、社会的責任を果たしながら、安定したリターンを期待できるからです。また、グリーンボンドやサステナビリティボンドは、透明性が高く、資金の使途が明確であることから、信頼性の高い投資先として評価されています。 4. ESGファンドの事例紹介 ESG投資が拡大する中、世界中で多くのESGファンドが設立されています。ここでは、いくつかの代表的なESGファンドの事例を紹介します。 1. ブラックロック ESGファンドシリーズ ブラックロックは、世界最大の資産運用会社であり、ESG投資の分野でも重要なプレイヤーです。「ブラックロック・グローバル・インパクト・エクイティ・ファンド」などのESGファンドは、環境問題や社会的課題に取り組む企業に重点を置いて投資しています。気候変動対策や持続可能なエネルギー分野での投資が特徴です。 2. ヴァンガード ESGファンド ヴァンガードは、低コストで幅広いESGファンドを提供している点で人気があります。代表的なファンドである「ヴァンガードESGインターナショナルストックETF」は、世界中のESGに積極的な企業に分散投資を行い、長期的なリターンを追求しています。透明性の高い運用とESG基準に基づいた厳しい選別プロセスが特徴です。 3. PIMCO ESGグローバルボンドファンド 債券投資の世界で高い評価を得ているPIMCOは、ESG原則に基づいたグローバルな債券ファンドを提供しています。このファンドは、気候変動、労働基準、人権などの問題に積極的に取り組む国や企業の債券に投資しています。特に、ESG評価基準を用いてポートフォリオを構築し、環境および社会に配慮した投資を行う点が評価されています。 これらのファンドは、ESGの要素を取り入れることで、単なる財務的な成功だけでなく、持続可能な社会の構築に貢献しています。投資家にとっても、社会的な役割を果たしながら利益を追求できる魅力的な選択肢となっています。 5. ESG投資の将来展望 ESG投資の将来は、非常に明るいと見られています。世界各国での規制強化や企業の透明性向上が進む中、ESG投資は今後さらに主流化するでしょう。 まず、気候変動や持続可能な開発目標(SDGs)に対する国際的な取り組みが強化される中、企業や投資家に対してESGの要素を考慮するプレッシャーが増しています。これにより、企業は環境や社会に配慮したビジネスモデルを構築し、ESGリスクに対する対応力を強化することが求められます。また、消費者や投資家の意識の変化も、ESG投資の成長を後押ししています。特にミレニアル世代やZ世代の若年層は、企業の社会的責任を重視し、ESGに積極的な企業を支持する傾向が強いです。この世代が経済の中心となる将来、ESG投資の需要はさらに拡大するでしょう。さらに、技術の進展もESG投資の発展に寄与する要因です。デジタル技術の進化により、企業のESGパフォーマンスの評価がますます詳細に行われるようになり、投資家はより透明性の高い情報を基に投資判断を下せるようになります。また、AIやビッグデータを活用したESG分析の精度向上により、企業のリスクと機会をより正確に把握することが可能となるでしょう。 6. まとめ ESG投資は、企業の持続可能性と長期的な成長を促進する重要なアプローチとして、ますます注目されています。ESG評価機関によるスコアリングや、グリーンボンド・サステナビリティボンドのような金融商品は、投資家にとって信頼性の高い情報と選択肢を提供しています。また、ESGファンドは社会的責任と経済的リターンの両立を目指し、将来の投資の主流となる可能性を秘めています。 今後、ESG投資はさらに普及し、企業と投資家の両方にとって不可欠な要素となるでしょう。気候変動への対応や社会的課題の解決に向けて、ESG投資は持続可能な未来を築くための鍵を握っています。
- [管理会計×データ分析で実現する、見える経営と意思決定のDX](https://shiodome.co.jp/column/32976/) - 1. はじめに:管理会計の可視化・分析の重要性 IPO準備中の企業や、上場後まもない企業が直面する課題のひとつが「管理会計体制の未整備」です。 「数字はあるけど、意思決定に活かせていない」 「経営指標が属人的に作られている」 「投資家に納得感ある説明ができない」 ――このような悩みは、実は多くの成長企業が抱えているものです。 近年、経営管理においても“データドリブン経営”の重要性が高まっており、その中心にあるのが管理会計の可視化と分析のDX化です。本稿では、専門的なITスキルがなくても実践できる、管理会計におけるデータ利活用の第一歩をご紹介します。 2. 経営管理が属人的だと何が問題なのか? IPOを控える企業では、決算体制の整備に目が向きがちですが、同時に問われるのが月次の業績管理やKPIの把握体制です。 部門別の損益がExcelで都度手作業で集計 担当者によってKPIの定義がバラバラ 月次で報告される数字の粒度やタイミングが不統一 予算作成の根拠数値の集計に膨大な時間がかかっている これでは、経営層が「今、何が起きているのか」を正確に把握できず、判断が遅れたり、不要な投資やリソース配分ミスが発生してしまう可能性が高まります。 3. 管理会計の“見える化”が生み出す効果 管理会計の目的は、過去を分析することではなく未来の意思決定をサポートすることにあります。この役割を果たすためには、リアルタイムかつ部門別・プロジェクト別の損益やKPIを定量的に把握できる体制が不可欠です。たとえば、次のような可視化があるだけでも、現場と経営層の間での議論がまったく変わってきます。 例:KPIダッシュボードでの可視化(Power BI) ・売上/粗利の月次推移(前年同月比や予算比の色分け) 部門/商品カテゴリ別の利益率ヒートマップ 広告費/人件費などの販管費と売上の相関グラフ これらをPower BI(*1)やTableau(*2)などのBIツールで構築すれば、Excel集計と比べて圧倒的にスピーディーかつ視覚的に状況が把握可能になります。 4. 管理会計のデータ分析でよく使われる手法例 特別な分析スキルがなくても、以下のようなシンプルな視点で十分に効果があります。 ① 予算比や前年比の“ブレ”を捉える(差分分析) 売上や利益が予算と比べてどれほど乖離しているか、時系列で確認します。→ 特定部門や月だけ著しく乖離していれば、追加分析の対象に。使用ツール:Excelの差分関数 or Power BIのDAX式 ② 指標間の関係性を探る(相関・分布分析) 例え例えば、「広告費と粗利率の相関」や「人員数と売上高の関係」など、どのKPIが業績に効いているかを散布図や相関係数で分析します。使用ツール:Excelの散布図、BIツールの散布図チャート 5. 分析よりも大切な“定義”と“継続性” データ分析を始めるうえで、実は最も重要なのは「何をKPIとするか」「どう切り口を設定するか」「誰がどの数字を見るのか」を定義することです。 つまり、分析の前に必要なのは“共通言語としての管理会計設計”です。 以下のような観点を整理するだけでも、データ分析の意味合いがぐっと明確になります。 KPIは何か?(例:受注件数、平均単価、解約率、稼働率) どの単位で管理するか?(部門別・顧客別・プロジェクト別など) 誰がいつ見るか?(週次?月次?経営会議用?) この整理があることで、単なる“ダッシュボードのお披露目”に終わらず、現場で数字が生きる管理会計に進化していきます。 6. まとめ:データ分析は“管理会計の民主化”を進める 管理会計は、もはや経理部門だけのものではありません。 営業部門も、開発部門も、経営陣も、同じ数字を見ながら意思決定ができる環境こそが、これからの強い組織に不可欠です。 身近なツールで十分、まずは可視化から始める KPIと分析軸の“定義”こそが成否のカギ スモールスタート+継続的改善がDXの第一歩
- [税制適格ストック・オプションとは 新株予約権の概要と活用](https://shiodome.co.jp/column/17081/) - 新株予約権とは、将来の特定の時点に、特定の価額で株式を購入する権利のことです。従業員等の自社へのコミットメントの向上やモチベーションアップの方策は様々ありますが、中でも新株予約権を従業員に付与することは、従業員の頑張りと会社の成長が結びつくため非常に有効な手段となります。 本記事では、新株予約権の中でも特にIPOを検討する企業で検討される税制適格ストック・オプションについて、概要から会計や税務処理、活用を検討する上での論点まで解説します。 1. 新株予約権の概要 新株予約権は、将来のある時点に特定の価額で株式を購入できる権利で、概ね、企業から従業員や役員に付与されます。新株予約権では、3つの時点が重要となるため、まずはこれらの定義を確認します。 付与時点 :新株予約権を付与され、将来行使する際の購入価額が定められる時 権利行使時点:新株予約権を行使し、株式を購入する時 株式売却時点:新株予約権を行使して取得した株式を売却し、売却益を得る時 新株予約権は下記の様に分類でき、IPOを目指す企業においては、主にストック・オプションを指して新株予約権と呼称することも一般的です。 ストック・オプションは、権利行使を行う際に、付与時に定められた価額よりも株価が高ければ、その差額分安く株式を購入することができ、株式売却時点で行使価額を売却時点の株価が上回っていれば、その差額分の利益を得ることができます。 ストック・オプションの報酬発生イメージ このようにストック・オプションは単なる報酬ではなく、従業員の意欲を刺激するインセンティブとしての側面も有します。 株価は様々な要因で変動しますが、売上の上昇などは株価を高くする方向に働きます。従業員にストック・オプションを付与すると、自身の保有するストック・オプションの価値を向上させるために、従業員の業務に対するモチベーションが高まります。結果、従業員のモチベーションを長期にわたり高く維持する要因となり、従業員と会社とでウィンウィンの状況を作ることができます。 2. ストック・オプション発行の流れ ここからは、ストック・オプションを発行するまでの流れを確認します。大まかな流れは以下の通りです。尚、これ以降、特に記載のない場合は取締役会設置会社且つ非公開会社を前提として解説します。 発行決議 通知・申込 割当決議 契約締結 登記 この5ステップについて、それぞれどういったことを行うかを順に見ていきます。 1. 発行決議 ストック・オプションの発行と募集に係る具体的な内容を決定します。非公開会社においては、株主総会の特別決議が必要となる論点です。但し実際には、株主総会では発行に係る大枠について決定し、詳細については取締役会に委任するケースが多く見られます。 2. 通知・申込 決定した募集事項を従業員等の付与対象者に通知し、申し込みを受け付けます。 3. 割当決議 付与対象者の内、誰に何個付与するかについて、取締役会で決議を行います。 4. 契約締結 付与対象者と新株予約権割当契約書を締結します。 5. 登記 新株予約権の発行を行い、当該発行について登記を行います。 3. ストック・オプションの会計処理と税務処理 ここからは、発行したストック・オプションの会計処理と税務処理について確認していきます。 1. 会計処理 まず会計処理について確認します。ストック・オプションは、企業会計基準第8号「ストック・オプション等に関する会計基準」(以下、会計基準)及び企業会計基準第11号適用指針「ストック・オプション等に関する会計基準の適用指針」(以下、適用指針)が適用されます。また、会計基準第2項における用語の定義は以下の通り。 2. ストック・オプションの会計処理 次に、ストック・オプションの会計処理を見ていきます。簡単に会計処理を箇条書きにすると次の4ステップとなります。 これを踏まえ、X2年3月期に付与したストック・オプションがあると仮定し、仕訳例と共に詳しく見ていきます。 まず、X2年3月期からX4年3月期中のX3年6月にわたり、発行するストック・オプションの公正価値の総額を月数で按分して各期に純資産項目科目である新株予約権と販管費科目である株式報酬費用がそれぞれ計上されます。 その後、権利行使期間に入った後、ストック・オプションを付与された従業員は、行使価額となる1個当たり7,500円を会社に払い込むこととなります。その際、貸方に積上げた新株予約権が借方に計上され、同時に新株予約権と払込額が現金として借方に計上されます。そして、当該新株予約権と現金の合計額が資本金として計上される処理となります。 3. 税務処理 続いて税務上の処理について確認します。 まず、上記で確認した会計上の株式報酬費用を計上する時点では、損金不算入となります。その後、権利行使時点で積みあがった株式報酬費用が全額損金算入されます。 権利行使時点で損金算入されるのは、新株予約権を行使する従業員への課税とタイミングを揃えるためです。前述の通り、従業員が新株予約権を行使するタイミングで給与課税が行われます。即ち、会社から給与を支給した時と同じ処理を行うこととなります。この課税に合わせる形で、会社側も給与を支給した時と同じように損金算入を行います。 以上が、ストック・オプションの標準的な会計処理と税務処理です。
- [ESGに関する情報開示について:ESGレポートやサステナビリティレポートについて解説](https://shiodome.co.jp/column/23203/) - 企業の社会的責任や持続可能性への取り組みが注目される中、ESG(環境・社会・ガバナンス)情報の開示は、企業価値を評価する重要な要素となっています。投資家や消費者は、財務情報だけでなく、企業の環境や社会への貢献、健全な経営体制を重視するようになり、これに応える形でESGレポートやサステナビリティレポートが普及しています。 本記事では、ESG情報開示の重要性とその主要な内容、作成する理由や国際基準に基づいた報告手法、実際の企業事例を交え、具体的に解説します。 1. ESGに関する情報開示の形態について ESG(環境・社会・ガバナンス)に関する情報開示は、企業の透明性を高め、投資家や消費者に対して企業の持続可能性や社会的責任を示す手段です。この情報開示の形態には、主にESGレポート、サステナビリティレポート、統合報告書といった複数の形式があります。 ESGレポート ESGレポートは、企業が環境・社会・ガバナンスに関する具体的な取り組みや結果を中心に記述した報告書です。環境面では、企業のCO2削減や再生可能エネルギーの活用といった活動が、社会面では、労働環境や地域社会との関係性が、ガバナンス面では、経営体制やコンプライアンス(法令遵守)が主な内容となります。 サステナビリティレポート サステナビリティレポートは、企業の持続可能性に対する取り組みを総合的に記述した報告書です。サステナビリティ(持続可能性)とは、企業が自然環境や社会に対して負の影響を抑えつつ、長期的な経済的成功を目指す活動を指します。このレポートでは、ESGの三つの要素を広く扱い、企業が将来にわたり健全に発展するためのビジョンと計画が示されます。 統合報告書 統合報告書は、財務情報と非財務情報(ESG情報)を組み合わせた報告書で、投資家に企業の全体像を伝えるために作成されます。これにより、企業の財務的な強さと、環境・社会・ガバナンスの取り組みが一体となって評価され、企業の長期的な成長可能性が示されます。 このように、ESGに関する情報開示には様々な形態があり、企業の透明性を確保し、ステークホルダー(株主、顧客、従業員など)の信頼を得るために重要な役割を果たします。企業は、これらの報告書を通じて、自身の持続可能性に関する取り組みを明確に示す必要があります。 2. ESGレポート・サステナビリティレポートの主要な報告内容 ESGに関する報告内容は、企業の活動における環境・社会・ガバナンスの側面を具体的に説明することが求められます。以下のような項目が主な報告内容として挙げられます。 環境(Environment) CO2排出量の削減、水資源の管理、廃棄物の処理、エネルギー効率、再生可能エネルギーの使用など、企業の環境への影響に関する指標が含まれます。特に、気候変動対策や持続可能な資源管理に関する取り組みは、環境セクションで重要な位置を占めます。 社会(Social) 従業員の福利厚生、ダイバーシティ・インクルージョン(D&I)の推進、労働環境の改善、地域社会への貢献、サプライチェーンの倫理性など、社会的責任に関する情報が含まれます。また、企業がどのように従業員や顧客、地域社会と良好な関係を築いているかも重要な報告ポイントです。 ガバナンス(Governance) 企業の経営体制やコンプライアンス、リスクマネジメント、取締役会の構成、役員報酬の透明性、企業倫理の遵守状況がガバナンスの報告内容として含まれます。特に、内部統制の仕組みや、株主やステークホルダーとのコミュニケーションなどが評価されます。 これらの要素は、企業のリスク管理能力や長期的な成長ポテンシャルを評価するうえで、ますます重要視されており、ESG情報を充実させることが企業の競争力強化に寄与します。 3. ESGレポート・サステナビリティレポートを作成する理由 企業がESGレポートやサステナビリティレポートを作成する背景には、いくつかの理由があります。 まず、投資家や金融機関の関心の高まりが挙げられます。ESG投資の普及により、投資家は財務情報だけでなく、ESG情報を基に企業を評価するようになっています。ESGレポートは、投資家に対する企業の説明責任を果たす手段として位置付けられています。 また、ESG情報の開示は企業のブランドイメージの向上にも寄与します。社会的責任を果たし、持続可能な成長を追求する企業は、消費者や取引先からの信頼を得やすく、結果として企業価値の向上につながります。特に、若い世代やサステナビリティを重視する消費者層にとって、企業の社会的責任は購買行動に大きく影響する要因となっているため、企業の社会的・環境的な取り組みを積極的にアピールすることが重要です。 さらに、企業内部においても、ESG情報の整理と公開は、持続可能な経営戦略を策定し、組織全体で共有するためのプロセスとなります。これにより、従業員のモチベーション向上や、サプライチェーン全体での責任ある経営が促進される効果も期待できます。 なお、ESGにおける情報開示の重要性は、別コラム「サステナビリティ情報開示の重要性:情報開示の背景と企業価値の向上の鍵とは」でも詳しく解説しております。 4. 国際基準とガイドライン ESGレポートやサステナビリティレポートを作成する際には、国際的なガイドラインや基準に基づくことが重要です。以下に代表的なガイドラインを紹介します。 GRI(Global Reporting Initiative)の基準 GRIは、ESG報告の最も普及しているフレームワークの一つで、企業が社会的・環境的影響について報告するための基準を提供しています。GRIの基準に従って報告することで、透明性の高い報告が可能となります。 SASB(Sustainability Accounting Standards Board)の基準 SASBは、業界別のサステナビリティ基準を提供しており、投資家が企業の持続可能性に関する情報を比較しやすくするための基準を提供しています。この基準に沿った非財務情報を提供することで、投資家は財務諸表への影響を評価することが可能になります。 TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)の基準 TCFDは、気候変動に関するリスクと機会を財務的な観点から開示するためのガイドラインを提供しています。気候変動が企業に与える影響を評価し、その対応策を報告することで、投資家に対する情報提供を強化します。 これらの基準を活用することで、企業は国際的な水準でのESG情報開示を実現し、グローバルな投資家やステークホルダーとのコミュニケーションを促進することができます。 5. レポートの活用方法 ESGレポートは、単に情報を開示するだけでなく、企業戦略の策定や実行においても活用されます。以下のような方法でレポートを活用することが考えられます。 企業の評価向上 ESGレポートは、投資家や金融機関に対する企業の透明性を高め、企業価値の向上に寄与します。ESG情報の充実は、ESG投資を行う投資家にとって重要な評価基準となり、長期的な資金調達の面でも有利に働くことがあります。 企業内部での活用
- [信託型ストックオプションに関する課税関係の概要とスタートアップの対応方法](https://shiodome.co.jp/column/17925/) - 税制適格ストックオプション(以下、税制適格SOという。)には一定の要件が課されていること等を背景として、実務上、上場前のIPO準備会社が信託を利用して新株予約権を発行する、信託型ストックオプション(以下、信託型SOという。)の仕組みが発展してきました。信託型SOについては、実務上、受託者から従業員等がSOの行使により取得した株式を譲渡したタイミングで「一般株式等に係る譲渡所得等」又は「上場株式等に係る譲渡所得等」として税率20.315%で申告分離課税等となると考えられていました。 しかし、今年の5月30日国税庁は、「ストックオプションに対する課税(Q&A)最終改訂令和5年7月」(以下、Q&Aという。)を公表し、従業員等がSOを権利行使して株式を取得した場合、経済的利益が給与所得として課税され、発行会社は源泉徴収義務を負うことが示されました。さらに行使済みの場合に発行会社が源泉所得税の納付をしていない場合には、速やかに源泉所得税を納付する必要がある旨も示されています。 以下では、信託型SOの概要から国税庁の最新見解及びこれに対する対応等を含めて解説していきます。 1. 信託型SOとは (1)SOについて SOとは、株式会社の従業員等に対して予め設定された価格で、自社株式を購入することができる権利を報酬として付与するものを指します。なお、従業員等には、使用人、取締役、会計参与、監査役及び執行役並びにこれに準ずる者を指します。(企業会計基準第8号 ストックオプション等に関する会計基準2項(1)~(3))。 (2)SOの種類 SOは、下記の種類に分類されます。なお下記記載の「税制適格」については(3)にて解説します。 ①無償税制適格SO無償税制適格SOとは、無償SOの中でも、付与対象者や行使期間などの厳しい適格要件をクリアすることで、権利行使時の給与所得課税が免除されるという税制優遇措置が施された報酬制度です。 ②無償税制非適格SO無償税制非適格SOは、付与対象者や行使期間に関して厳しい適格要件が設定されていない代わりに、権利行使時に給与所得課税(最大地方税と合わせて55.945%)が課されます。 ③株式報酬型SO(1円SO)株式報酬型SOとは、行使価額を1円など低価格に設定した無償税制非適格SOを指し、1円SOと称されることもあります。 ④有償SO有償SOとは、権利が付与される際に金銭負担が生じる報酬制度です。付与対象者である従業員等が発行価額を支払い、SOを購入します。そして一定期間経過後に、従業員等が行使価額を支払い、権利を行使することで自社株式を取得することができます。 (3)税制適格SOの主な要件 税制非適格SOを利用する場合には、権利行使時に給与所得課税が行われるところ、給与所得については地方税も合わせると最大 55.945%の税率での課税がなされることとなり、株式譲渡時に初めて課税がなされ、しかも 税率が 20.315%にとどまる税制適格SOの方が相当に有利と言ってよいでしょう。このような税制上の優遇措置があることから、税制適格と判断されるためには下記の要件をすべて満たす必要があります。 ※1 社外高度人材活用新事業分野開拓に従事する社外高度人材に対しても発行することが可能ですが、その場合には税制優遇を受けるための要件が加重されます。※2 非上場会社においては、発行済株式総数の3分の1を超える数の株式を保有する株主を指します(租税特別措置法施行令第19条の3第3項)。 なお、上記のうち③~⑦は、SOにかかる契約に定める必要がありますので、この点に留意が必要です。 上記⑥の譲渡制限については、SOにかかる契約において、SOを譲渡してはならない旨を定めておく必要があります。契約書上に譲渡禁止が定められていなければ、仮にその後一切譲渡することがなかったとしても、上記⑥の要件を満たさないことになります。 (4)信託型SO SOについての上記までの知識を前提として、信託型SOについて解説します。 信託型SOとは、有償SOの一種であり、委託者(オーナー経営者等)から資金の拠出を受けた「受益者等の存在しない信託」(法人課税信託)の受託者が、当該資金により発行会社の新株予約権をその時の公正な評価額(時価)で取得した上で、後に発行会社の指定により受益者となった役職員等に当該新株予約権を交付するスキームです。具体的には、発行したSOを信託に預け、信託期間満了まで保管してもらいます。そして、業績への貢献度合い等に応じてSOに交換できるポイントを従業員等に付与し、信託期間満了時にポイント数に応じてSOが割り振られます。 なお、受益者等の存在しない信託とするためには、信託を変更する権限を現に有し、かつ、信託財産の給付を受けることとされるものが存在しないことが求められる(法人税法12条2項)ことから、信託型SOに関する信託契約においては、合意により信託の内容を変更できない旨の規定が見られます。また、受益者等の存在しない信託については、委託者であるオーナー等が金銭を拠出する信託の設定時に、受贈益として法人税が発生(法人税法22条2項)し、また、受託者たる信託会社に対する報酬も別途必要とされます。 2. 従来の信託型SOに関する税務の定説 まず、信託会社がSOの付与を受ける時点においては、信託会社は時価によりSOの付与を受けていることから、(商品等を購入した場合と同様に)課税は発生しないことになります。 次に、従業員等が当該SOの交付を受ける時点においても、所得税法 67 条の3第1項及び第2項によって、受益者等の存在しない信託から交付を受ける従業員等は当該SOを簿価で引き継ぐことが可能であり、また、当該引継ぎにより生じた収益については、役職員の総収入金額には算入しないこととされているから、この時点においても課税は発生しないことになります。 さらに従業員等がSOの行使を行う時点においても、有償型SOと同様に株式時価と権利行使価額との差額の利益が給与所得として総合課税されず、売却時の株式譲渡所得の分離課税のみで完結できるというのが従来の見解です。つまり、受託者である信託が、発行会社に代金を払い込んでいるため、実質的に有償と考えられるため、有償SOと同様の取扱いがされるというのが従来の税務の定説になります。 「ストックオプションに対する課税(Q&A)(情報)」(国税庁)をRSM汐留パートナーズが加工して作成 3. 信託型SOの税務上の取り扱いに関する国税庁の最新見解 これに対して、国税庁は、信託型SOについて、上記とは異なる見解をQ&Aの中で公表しています。具体的には、信託会社がSOの付与を受ける時点及び従業員等がSO交付を受ける時点においては、見解を異にしていませんが、従業員等が信託SOの権利を行使して株式を取得した時点で、会社からの実質的な給与とみなされるという定説とは異なる見解を示しました。 これは、信託内においてSOを付与される従業員自体が直接SOの対価を支払っておらず、結果的に無償で付与されていることから、権利行使時の経済的利益は労務の対価に当たり「給与として課税される」ことが妥当であるとの見解にたっています。 Q&Aでは、信託型SOに係るスキームを、「税制非適格SO(信託型)」と呼称した上で、信託型SOについては、発行会社が従業員等に対して、従業員等の経済的負担なくSOを付与しているものと認定し、SOの発行や行使、譲渡の場面において以下のような課税関係になることを示しています。 信託型SOの国税庁最新見解における各段階のおける課税関係(④のみ従来から変更) 4. 国税庁の最新見解による影響と信託型SOの発行会社及び行使済従業員等の今後の対応 (1)発行会社の対応 上記国税庁の最新見解によると、行使時に、従業員等は株式時価と権利行使価額との差額の利益が給与所得として総合課税されることになります。 Q&A は、信託型SOの行使に係る経済的利益に係る源泉所得税を納付していないことが判明した場合の課税関係について、発行会社は、SOの行使による株式の交付の際に、給与所得に係る源泉所得税を徴収して納付する必要があること、および既に信託型SOの行使が行われ、源泉所得税を納付していない場合には、速やかに源泉所得税を納付することが必要であることを明らかにしています。 なお、「信託型ストックオプションの課税上の取扱いについて 令和5年6月6日鈴木財務大臣提出資料」の中で、「~国税庁としては、いわゆる信託型SOについても、役職員等へのSOの付与を目的としたものであることから、従来からSOの行使時に給与課税との立場~」としており、今回の国税庁の見解はあくまでも「当初から給与課税」であることを明確にしています。このため、実務上、過去に行使済みの従業員等に対して、会社側がさかのぼって源泉徴収をする必要があります。なお会社が先に代替納付した場合、納付した源泉所得税は、SOを行使した者に求償することができます。 また、当該源泉所得税について納付期限を超過していることから、本税以外に延滞税等の附帯税についても課せられる可能性があります。ただし、源泉徴収は5年の時効があること。源泉徴収税を一時に支払うことができない場合については、税務署に申請を行うことにより、原則として 1年以内の期間に限り、納税の猶予等が認められる場合があるとしています。 なお、発行会社が、その源泉所得税について、SOを行使した者に求償しないこととした場合には、SOを行使した者に債務免除に係る経済的利益を与えたことになり、その求償しないこととした時において、その税額に相当する金額の税引き後の手取額で給与や報酬の追加払いをしたものとし、その支払ったものとなる金額に係る源泉所得税を計算(グロスアップ計算)することとなります(所基通 221-1、所基通 181-223 共-4)ので注意が必要です。但し、不納付加算税や延滞税といった附帯税は、求償権が及ばないと解されています。(最判昭和45年12月24日民集24巻13号2243ページ) また、これまで、信託型SOは従業員等の株式報酬費用ではないとして、会計上、費用計上していなかった場合、上記国税庁の見解を踏まえて税務上の取扱いに従って株式報酬費用として、過年度分の費用として計上すべきであったとして、過年度分の決算を修正する必要があると判断される可能性もあり得ます。過年度決算の修正が必要となるかは、監査法人との協議が必要になると考えられます。 今回の国税庁の見解に関して直近の例では、ある上場会社は「信託型ストックオプションへの対応と関連損失(特別損失)の計上に関するお知らせ」として適時開示を行っています。
- [GHG排出量検証および開示における第三者保証の重要性](https://shiodome.co.jp/column/23491/) - 気候変動対策が国際的に進展する中、企業のGHG(温室効果ガス)排出量の管理と透明性は、経営の持続可能性を左右する重要な要素となっています。 GHG排出量の正確な測定と開示は、環境リスクの評価だけでなく、投資家など利害関係者との信頼関係の構築にも直結します。特に、第三者保証を受けたデータは信頼性が向上し、企業のESG評価を強化する要因となります。 本記事では、GHG排出量の第三者保証の重要性と導入における課題について詳しく解説します。 1. GHG(温室効果ガス)排出量の影響とその重要性 地球温暖化がもたらす環境への影響が深刻化する中、GHG(Greenhouse Gasの略称であり温室効果ガスを指す)の排出削減はグローバルな優先課題となっています。 GHGには、二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、一酸化二窒素(N2O)などが含まれ、人間の活動によって大気中に蓄積され、地球の気温上昇を促進しています。これにより、異常気象や海面上昇、生態系の崩壊など、広範な環境変化が進行しています。そのため、GHG排出量の削減は、地球の持続可能な未来の実現に向けた課題であり、企業もまたその対応が求められています。具体的には、企業が自社のGHG排出量を正確に把握し、それに基づいて削減目標を設定・実施することが重要になってきます。 2. GHG排出量検証と開示の背景 気候変動が世界的な課題として認識される中、企業のGHG排出量の測定と開示は、持続可能な経営を進める上で重要な役割を果たしています。 国連が掲げるパリ協定により、各国は産業や事業活動におけるGHG排出削減の目標を設定し、2050年までのカーボンニュートラル実現に向けた取り組みを進めています。そのため、企業にも排出量の管理や削減が求められ、正確なデータを基にした報告や開示が重視されています。また、GHG排出量の開示はESG評価にも直結し、企業の持続可能性や社会的責任を測る尺度となっています。投資家や消費者は、環境負荷の低い企業を支持する傾向もあり、適切な開示が資金調達や市場競争力の維持・向上に寄与します。加えて、多くの国で開示義務化が進む中、透明性のある報告と正確なデータが企業の信頼構築において不可欠な要素となっていると考えます。 3. GHGに関する情報開示の第三者保証とは 第三者保証とは、企業が報告するGHG排出量データの信頼性を独立した第三者が検証するプロセスを指します。これにより、企業が開示するGHGデータの正確性が保証され、利害関係者はそのデータを信頼して利用することができます。具体的には、企業が使用する算定基準や方法が適正かどうか、報告が透明で一貫しているかを企業外部の専門機関が確認します。 このような第三者保証を利用することで、企業は透明性の高い報告を通じ社会的信頼とESG評価の向上を期待できます。 4. 第三者保証の重要性 企業が開示するGHG排出量に対する第三者保証は、以下の理由により重要と考えられます。 信頼性の向上 第三者機関による検証を受けたデータは、投資家や規制当局からより信頼されます。内部による自己評価だけでは、意図的なデータ操作や報告ミスの懸念が残るため、独立した第三者が関与することで情報の正確性が担保されます。 規制対応とグローバルスタンダaードの順守 多くの国や地域で企業のGHG開示が義務化される中、第三者保証は規制要件への対応に不可欠です。また、国際的に標準化された保証基準に沿うことで、他国の基準とも整合性が取れ、グローバル展開をする企業にとって一貫性のある開示が可能となります。 環境目標の達成に向けた支援 第三者保証によりデータの正確性が高まることで、企業が設定する排出削減目標の進捗が明確になります。これにより、サプライチェーン全体での削減目標達成に向けた具体的な計画の策定が容易になり、目標達成への信頼性を確保できます。 5. 国際的な第三者保証基準 企業のGHG排出量の開示に対する信頼性を確保するため、国際的に認められた第三者保証基準が整備されています。これらの基準は、企業が環境データを透明かつ一貫性をもって提供するために重要であり、利害関係者や投資家に対して信頼性を保証する役割を果たしています。 以下に代表的な第三者保証基準、その特徴そして選定基準について詳しく説明します。 ISO14064(国際標準化機構) ISO14064は、国際標準化機構(International Organization for Standardization)によるGHGの算定、報告、第三者検証を包括的にカバーする国際規格です。ISO14064-1が企業によるGHG排出量の測定基準、ISO14064-3が第三者による検証プロセスを規定しており、これらの利用により、企業のGHG報告が透明かつ整合性の取れたものとなります。 ISOは幅広い分野で国際的に認知されているため、信頼度の高い基準として広く利用されています。また、この規格に準拠することで、企業は報告内容が国際水準で保証されるというメリットがあります。 ISAE 3410(国際保証業務基準) ISAE 3410は、国際保証業務基準(International Standard on Assurance Engagements)第3410号「温室効果ガス報告に対する保証業務」の略称であり、GHG排出量に関する情報の検証を行う際に利用されます。公認会計士や監査法人が保証業務を提供する際に利用するこの基準は、信頼性と透明性を重視しており、企業の報告が利害関係者にとって正確で信頼できるものであることを保証する基準です。ISAE 3410は、合理的保証と限定的保証の2つの保証レベルを提供しており、報告の粒度や企業のニーズに応じて柔軟に選択が可能です。 GHGプロトコル GHGプロトコルは、WRI(世界資源研究所)とWBCSD(世界環境経済人協議会)によって策定された基準であり、GHGの算定と報告に関するグローバルな標準として広く採用されています。具体的には、スコープ1(直接排出量)・スコープ2(間接排出量)・スコープ3(その他の排出量)といった排出源の分類を明確にし、企業が自社の活動全体にわたってGHGを包括的に把握・報告できるようにしています。 6. 第三者保証における課題と対策 第三者保証を導入する際には、具体的に、コストの増加・データの整合性・基準の多様性といった課題が存在しています。課題の詳細とその対策は以下の通りです。 コストの増加 第三者保証を受けるために、企業は費用を負担する必要があります。特に中小企業にとって保証のコストが大きな負担となり得ます。対策としては、保証の範囲を限定的なものに絞り、コストを最小限に抑えることが考えられます。 データの整合性 GHG排出量の測定には、企業が使用するエネルギーや排出プロセスに関する詳細なデータが必要です。しかし、業界や地域によってデータの質や基準が異なるため、第三者保証を受ける際にはデータの整合性確保が重要となります。デジタルツールの活用やデータ管理の強化が解決策として有効となるでしょう。 基準の多様性 GHG排出量の報告基準は、国際的に統一されていない場合があります。そのため、企業が採用する基準によって、第三者保証の方法や内容が異なることがあります。企業は、国際的に認知された基準(例:IASAE3410、ISO
- [国税庁の最新見解により明確になった税制適格ストックオプションに関する普通株式の価額算定](https://shiodome.co.jp/column/17935/) - 1. 税制適格ストックオプションに係る付与契約時の株価算定ルールの明確化とは 株式公開前の上場準備会社において重要なインセンティブであるSOのうち、税制適格ストックオプション(以下税制適格SOと記載)の要件の一つとして、1株当たりの権利行使価額として、その新株予約権に係る契約(付与(割当)契約)を締結した時における発行会社の1株当たりの価額に相当する金額(時価)以上であることが必要とされています。 この点につき、従前、種類株式(優先株式)を発行しているIPO準備会社が、普通株式を目的とする税制適格SOを発行する際の普通株式の1株当たりの価額に相当する金額(時価)の算定ルールが明確ではありませんでした。 これに対して、自民党スタートアップ小委員会による「『スタートアップ育成5か年計画』の実現に向けた中間提言」において、米国の内国歳入庁が設けている解釈指針(セーフハーバー)である、いわゆる「409Aセーフハーバー」の日本版として、ガイドラインや国税庁通達等の形でルールや指針を策定することが求められていました。 これを受けて国税庁は、2023年5月30日に「租税特別措置法に係る所得税の取扱いについて(法令解釈通達)の一部改正(案)を公表、その後同年7月7日に租税特別措置法第29条の2第1項第3号における契約の締結の時における一株当たりの価額の算定方法について、明確化を図るものとして、租税特別措置法関係通達29の2-1を創設しています。当該通達によると、株式公開前IPO上場準備会社等の未上場会社が発行する税制適格SOの1株あたりの権利行使価額は、これまでの実務に比べて相当低額に抑えることが可能となります。以下では、より詳細に内容を解説していきます。 (1)税制適格SOとその要件 下記7要件を満たすようなSOを税制適格SOと呼びます。税制適格SOの場合、当該SOを行使して株式を取得した日の給与課税を繰り延べ、その株式を譲渡した日の属する年分の株式譲渡益として所得税の課税対象とすることができます(措法 29 の2)。このため、給与所得の税率よりも株式譲渡益の税率が低い場合には、税負担が軽減されることになります。 今回の論点は下記要件④の条件に関するものになります。上記で述べたとおり、これまで、「契約の締結の時における1株当たりの価額相当額」に関し、取引相場のない株式については株価算定ルールが明示されておらず、税制適格ストックオプションの発行において不安定な税務実務となっていました。株式公開を目指す上場準備会社、またIPOを目指していない会社も含め未上場会社の株価算定ルールを明確化することで当該不安定な税務実務の解消を狙ったものといえます。 (2)税制適格SOの主な要件について 発行会社の取締役等に無償で付与されたものであること。 ストックオプションの行使は、その契約の基となった付与決議の日後2年を経過した日から その付与決議の日後 10 年(発行会社が設立の日以後の期間が5年未満の株式会社で、金融商 品取引所に上場されている株式等の発行者である会社以外の会社であることその他の要件を 満たす会社である場合には 15 年)を経過する日までの間に行わなければならないこと。(注)付与決議の日とは、ストックオプションの割当てに関する決議の日をいいます。 ストックオプションの行使の際の権利行使価額の年間の合計額が 1,200 万円を超えないこと。 ストックオプションの行使に係る1株当たりの権利行使価額は、当該ストックオプションの 付与に係る契約を締結した株式会社の当該契約の締結の時における1株当たりの価額相当額以上であること。(注)「当該契約の締結の時」については、ストックオプションの付与に係る契約の締結の日が、 ストックオプションの付与決議の日やストックオプションの募集事項の決定の決議の日か ら6月を経過していない場合には、これらの決議の日として差し支えありません。 取締役等において、ストックオプションの譲渡が禁止されていること。 ストックオプションの行使に係る株式の交付が、会社法第 238 条第1項に定める事項に反しないで行われるものであること。 発行会社と金融商品取引業者等との間であらかじめ締結された取決めに従い、金融商品取引業者等において、当該ストックオプションの行使により取得した株式の保管の委託等がされること。 2. セーフハーバールールについて セーフハーバールールとは、当該ルールに従わなくても直ちに違法となるものではないものの、そのルールに従って行動する限り、法令違反を問われることがないという効果を明確化するものを意味します。今回の税制適格SOに関する普通株式の価額算定に関していえば、財産評価基本通達により取引相場のない株式の株価を算定している場合には、これにより算定した株価を下回らなければ税制適格として取り扱うということになります。 従来、未上場株式については取引相場がなく、1株当たりの価額を容易に算定することができないという実務上の問題が存在しました。このため、実務において税務当局に当該税制適格を否認されることをおそれ、企業は保守的に権利行使価額を高めに設定することが行われていました。このため、将来的な株式譲渡益となる金額も低くなり、従業員等が享受するメリットが小さくなっていました。今回のルール導入は、株価算定を容易にし、税制適格の否認リスクの回避を可能とするものです。 3. 純資産価額方式による株価算定の結果権利行使価額が1円でもよいのか (1)純資産価額方式について 取引の相場のない株式でかつ売買実例のない株式(概ね6ヶ月以内において売買の行われた株式をいい、1事例であっても売買事例に当たります。なお、増資は売買事例として取り扱いますが、その株式を対象とした新株予約権の発行や行使は、売買事例には該当しません)であって、税制適格SOの権利行使価額に関する要件に係る付与契約時の株価の算定に限り、株式の価額として、特例方式を選択することができます。この特例方式による算定方法における評価方式の一つとして純資産価額方式が存在します。 (2)純資産価額方式による株価算定 純資産価額方式による具体的な株価算定手順は下記になります。 まずSOの付与に係る契約時における会社の資産及び負債の価額について相続税評価額の時価ベースで算定します。 次に上記1で算定した資産の価額から負債の価額を差し引いて純資産価額を算定します。 最後に上記2で算定した純資産価額をSOの付与に係る契約時における発行済株数で除して、1株当たりの価額を算定します。 なお、純資産価額については、直前期末の決算に基づき算定して差し支えありませんが、次のような場合には、ストックオプションの付与に係る契約時に仮決算を組んで算定する必要があります。 ストックオプションの付与契約日が直前期末から6月を経過し、かつ、その日の純資産価額が直前期末の純資産価額の2倍に相当する額を超えている場合 直前期末からストックオプションの付与契約日までの間に、株式を発行している場合(aに該当する場合を除きます。) なお、bの場合には、直前期末の純資産価額に、株式の発行の際に払い込みを受けた金額を資産の額に加算して、純資産価額を算定して差し支えありません。 (3)権利行使価額について 税制適格SOの権利行使価額については、SOの付与に係る契約締結時の株価以上とする必要があります。上記のとおり特例方式を選択し、評価方法として純資産価額方式を取り入れる場合は、上記3(2)の1~3の方法で算定した金額を最低限度額として権利行使価額とする必要があります。この際に1~3の方法で算定した金額が著しく低い金額であったり、マイナスになることも考えられます。 こうした状況は、上場準備会社の場合、資本金・増資で調達した資金を広告宣伝費や役員の給与等で支払ってしまうことも多いことから発生することが想定されます。マイナスになった場合、株式の価額は0円となりますが、権利行使価額は備忘価額の1円以上の任意の額とすることになります。(国税庁 令和5年5月【最終改訂令和5年7月】 ストックオプションに対する課税(以下、Q&Aという)問8)。日本のSOは、非上場会社においては権利行使価額を1円以上に定める必要があるため、普通株式に係る1株当たりの時価以上に設定しようとすると、最も低い権利行使価額は1円ということになります。 計算例1 ①直前期末の純資産価額(相続税評価額ベース):50万円②発行済株式数:普通株式1,000株(1株当たりの発行価額:1,000円)③特例方式(純資産価額方式)による評価
- [オープンイノベーション促進税制について](https://shiodome.co.jp/column/17979/) - 「オープン・イノベーション」という言葉の本来の意味は、企業内部のアイデアと外部のアイデアとを有機的に結合させ、価値を創造することを指し、ハーバードビジネス・スクールのヘンリー・チェスブロウ助教授(当時)が提唱した概念です。 一方で、「クローズド・イノベーション」とは、研究開発から製品開発まで一貫して自社内部の経営資源だけを活用して価値を創造することを意味します。これまでの日本企業は高度経済成長と共に築き上げられた高い技術力を誇り、自前主義と言われるクローズド・イノベーションが主流でした。長年蓄積された自社ならではのノウハウにより高品質のプロダクトを多数開発し世に送り出してきました。 しかし、グローバル化や最新の技術によるデジタル化、顧客ニーズの多様化など急激なビジネス環境の変化に伴い、自社のノウハウやリソースのみではその変化に対応していくことが困難となってきています。こうした経営環境の変化を受けて国レベルでオープンイノベーションを促進するものとして導入されたのがこの記事で解説するオープンイノベーション促進税制です。以下では、本税制の概要からメリットや適用対象法人、出資の要件、適用期限について順次解説していきます。 1. オープンイノベーション促進税制とは オープンイノベーション促進税制とは、一定の条件下でスタートアップ企業への投資額の25%の所得控除(損金算入)を受けられる制度です。 従来は新規発行株式の取得(以下、「新規出資型」という。)に限られていましたが、令和5年度税制改正により、2023年4月1日以降にスタートアップ企業の成長に資するM&A(議決権の過半数の取得)を行った場合、その取得した発行済株式についても税制の対象とする(以下、「M&A」型という)こととしました(措法66の13、措令39の24の2、措規22の13)。 ここで本税制が定義する意味での「オープンイノベーション」とは、対象法人がスタートアップ企業の革新的な経営資源を活用して、高い生産性が見込まれる事業や新たな事業の開拓を目指す事業活動をいいます。具体的には、以下の3点を満たすことが必要です。 表1 オープンイノベーションの要件 オープンイノベーション促進税制(M&A型)申請ガイドライン(経済産業省)をもとにRSM汐留パートナーズが一部追加・修正・加工して作成 なお、純投資やそれに類似するような出資、具体的には次のいずれかのみを目的とした出資は、本税制の対象外となることに留意する必要があります。ただし、①~③が出資又はM&Aの目的の一部に含まれるだけであれば、対象から除外されません。 ① スタートアップ企業の株式を将来売却することにより利益を受けること ② スタートアップ企業から将来配当を受けること ③ 投資契約又は株式譲渡契約を結んだ後、スタートアップ企業への継続的関与を伴わずにスタートアップ企業から利益(物品リース料、不動産賃貸料、金融商品等の取引による運用益など)を受けること (1)新規出資型の概要図 オープンイノベーション促進税制(新規出資型)の概要(経済産業省)をもとにRSM汐留パートナーズが一部追加・修正・加工して作成 (2)M&A型の概要図 オープンイノベーション促進税制(M&A型)の概要(経済産業省)をもとにRSM汐留パートナーズが一部追加・修正・加工して作成 2. オープンイノベーション税制のメリット (1)出資企業の節税効果 オープンイノベーション税制のメリットとしてまず挙げられるのは、出資企業の節税効果です。当該税制による節税効果は下記計算例のとおり、所得控除によりもたらされます。 計算例(新規出資型を仮定。) 出資企業:所得額30億円、資本金2億円のA社を想定。簡便的に法人税率(国税)23.20%のみを仮定する。 ①オープンイノベーション促進税制を利用しない場合 法人税:6億9,600万円(30億円×23.20%)。 ②オープンイノベーション促進税制を利用して4億円をIPO準備会社等に出資。 出資額4億円の25%である1億円が所得から控除。課税所得=30億-1億円=29億円法人税:29億円×23.20%=6億7,280万。 ⇒A社が4億円の出資をした場合、法人税について2,320万円の節税効果となる。 (2)企業規模に応じた出資額 新規出資型の場合、大企業の場合、1件当たりの出資金額下限は1億円ですが、中小企業にあっては1件あたり、1,000万円以上から可能となります。大企業に比べて、10分の1の出資金額でオープンイノベーション促進税制が適用されるのは、中小企業にとって大きなメリットになります。 なお、本税制における「中小企業」とは、租税特別措置法第42条の4第19項第7号に規定される「中小企業者」であり、具体的には、以下①~③までのいずれかに該当する法人以外の法人をいいます。 表2 中小企業者に該当しない法人 (3)出資先企業との相乗効果 オープンイノベーション促進税制では、将来有望な未上場企業に投資します。自社の事業とのシナジー効果を考慮することにより出資先企業を選択し投資することで、出資先企業の技術等を取り入れられます。そのため自社の技術を革新したり、研究開発ができたりと、投資収益以外のメリットを得ることができる可能性があります。オープンイノベーション促進税制を使って投資をすることで、自社の事業自体にもイノベーションを起こし、自社をさらに成長させる要因となる可能性があります。 3. 適用対象法人 (1)出資法人の要件(「新規出資型」、「M&A型」共通) 本税制の対象法人は、青色申告書を提出する法人で、スタートアップ企業とのオープンイノベーションを目指す、株式会社その他これに類する法人です。加えて、対象法人が主体となるCVCが出資する場合も対象となります。 対象法人の要件①青色申告書提出法人であること②スタートアップ企業とのオープンイノベーションを目指していること③以下のいずれかの法人形態であること 株式会社 相互会社 中小企業等協同組合 農林中央金庫 信用金庫及び信用金庫連合会 対象となるCVC上の対象法人が出資割合の過半数(出資割合の計算に当たっては、対象法人が他のLPSを通じて行う当該CVCに対する出資の金額は除外します。)を有する以下の組合 ④投資事業有限責任組合(LPS)のうち 対象法人の国内完全子会社が無限責任組合員(GP)であるもの 対象法人が単独の有限責任組合員(LP)であるもの ⑤民法上の組合 (2)スタートアップ企業の要件 対象となるスタートアップ企業は次のすべての要件を満たす法人です。「新規出資型」については外国法人であっても対象となりますが、「M&A型」については内国法人に限定されます。(①から⑨は、新規出資型・M&A型共通)
- [IPO準備会社特有の税務論点とは](https://shiodome.co.jp/column/18018/) - 資本主義社会において上場企業は社会の公器であるといわれます。このため、IPO審査を受けるにあたって、決算書は税務基準でなく企業会計基準で作成が求められます。またIPOによる金銭的獲得利益は莫大になることが多く、これによりオーナー及びその一族、従業員等、株主間において多くの利害関係が発生します。こうしたことに起因し、IPO準備会社特有の税務論点が発生します。この記事では、IPO準備会社特有の税務論点のうち、重要性の高い論点について解説していきます。 1. IPO準備会社特有の税務論点 上場準備会社にとって資本政策は極めて重要であり、株主構成や発行済株式数を最適にしておく必要があります。このため、IPO上場準備会社は、上場に先立ち株式異動、増資、関係会社の持合関係の解消等を行うのが一般的です。上場審査及び上場後のことも視野にいれ、IPO準備会社は適切な株主構成が求められています。株主構成を変更する方法としては、発行済株式を譲渡又は贈与したり、増資を行い新たな株主を加えたりします。 このため、IPOを目指す上場準備会社における特有の税務論点が存在します。またIPO準備会社では、ストックオプションを導入することが多く、税制適格要件を満たすか否かで課税上の取扱いが大きく異なることから、IPO準備会社特有の税務論点といえます。ストックオプションの税務に関しては下記、「ストックオプションの税務」において詳細を解説しています。 (1)株式の譲渡における税務 株式の上場に際して、上場基準を充足するため、あるいは上場時の初値を円滑に形成するため、更には、創業者利潤をもたらすためなど様々な目的のために、株式上場時にほとんどの大株主等が株式を一部売却します。個人が株式を譲渡した場合には、申告分離方式によって課税され、税率は20.315%となります。 (2)株式の贈与における税務 個人から個人へ株式等を贈与した場合には、受贈者側に贈与税が課されます。贈与税の税率については、下記になります。 No.4408贈与税の計算と税率(暦年課税)(国税庁)より また、後に詳細を解説しますが、オーナー一族の相続税対策として、IPO上場準備前の段階で資産管理会社を設立し、オーナー保有の株式を売却することもあります。 相続税の税率については、下記になります。 No.4155相続税の税率(国税庁)より (3)自己株式の取得における税務 IPO準備会社の株式の場合、相対取引により売買がなされます。この場合、1株当たりの交付金銭等の額が1株当たりの取得資本金等の金額を超える場合の、その超える部分の金額については、みなし配当とされます。なお、非上場会社からの配当所得については分離課税ではなく、総合課税となります。このため、最大で地方税と合わせて55.945%が課される可能性があることに留意する必要があります。また、1株当たりの取得資本金等の金額が帳簿価額を超える場合、当該超過部分については、譲渡益として20.315%で課税されることになります。 (4)増資における税務 第三者割当増資によって、特定の者に対して募集株式の割当をする場合には、既存株主の利益保護の見地から、適正な価額で割当なければ株主間の不平等を招き、課税の問題が発生します。有利発行割当をした場合には、発行会社は資本取引のため税務上の問題は発生しませんが、割当を受けた株主については、原則として、個人株主は所得(一時所得あるいは給与所得)、法人株主は受贈益として課税されます。 このとき、「適正な価額」、「有利不利」の判断基準が問題となります。これについては、確定的な方法はなく、現況の会社の財政状態、経営成績、成長性、株主構成、過去における売買事例など様々な事項を考慮し総合的に判断し、主に下記の方法から最適なものを選び株価を算定し、当該株価をもとに判断することになります。 純資産方式(簿価純資産法、再調達時価純資産法、清算処分時価純資産法など) 収益(または利益)還元法 DCF法(ディスカウント・キャッシュ・フロー・メソッド) 配当還元方式 類似業種比準方式 併用方式 非上場会社の相続税・贈与税における評価方法として「取引相場のない株式の評価方式」 (5)関係会社の持合関係における税務 人的、資本的関係会社がある場合には、投資者保護、役員の公私混同の防止、適正な開示という観点から、財務状況及び取引関係等が厳しく審査されます。そのため問題となるグループの企業を再編する場合、原則として、資産を移転した法人において資産の譲渡損益が計上され、また株主に対するみなし配当や譲渡損益の問題が発生しますが、一定の税制適格条件に該当する場合には、これらの課税が繰り延べられることとされています。 ①株式交換・株式移転に関する税務 株式交換とは、子会社になる会社の株主が、その保有する株式を親会社になる会社に拠出し、その拠出した株式に見合う親会社株式を取得することをいいます。 一方、株式移転とは、会社の株主が、完全親会社を設立するために、その保有する株式を拠出して、新設完全親会社の株式の割当を受けることをいいます。 株式交換・株式移転は、原則的には「株式の譲渡」ととらえ、交換・移転時点で含み損益が実現したものとして課税されますが、一定の要件を満たせば、交換・移転時点では課税損益を認識せず、交換・移転により取得した株式を売却するまで課税が繰り延べられます。 ②合併・会社分割に関する税務 企業グループ内の合併・会社分割が行われた場合、資産の引継ぎについては、原則として時価による移転として譲渡損益を認識することとなっています。ただし、税制適格要件に該当する合併・分割については、移転資産が帳簿価格で引き継がれ、譲渡損益が繰り延べられます。 また、被合併会社又は分割法人の株主に対するみなし配当(交付株式等の額の合計額が、その法人の資本等の金額のうち交付株式に対応する部分の金額を超える部分)・株式譲渡課税については、下記のようになりますが、会社法における子会社分割は物的分割(法人税法の「分社型分割」)に統一され、人的分割(法人税法の「分割型分割」)は「物的分割」と「剰余金の配当」を同時に行うことになりました。 (株主における課税の取扱い) 2. 会計監査と申告期限の延長について (1)会計監査について IPOを目指す上場準備会社は、上場申請の直前々期(N-2期)、直前期(N-1期)、申請期(N期)において、監査法人又は複数の公認会計士(以下、「監査法人等」という。)による準金商法監査の監査証明業務を受ける必要があります。 未上場会社のうち、貸借対照表の資本金の額が5億円以上または負債の合計額が200億円以上の会社は、会社法監査を受けますが、株式上場(IPO)を目指す企業は、証券取引所の規則により、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に準ずる監査(以下、「準金商法監査」という。)監査法人等から受ける必要があります。 上記表は、プライム市場・スタンダード市場・グロース市場共通です。なお、各市場とも、申請事業年度から作成される四半期財務諸表等に対しては、無限定の結論であることが必要です。 準金商法監査の対象となる財務諸表等は、投資家等に有用な情報を提供することが目的とされ、連結財務諸表規則及び財務諸表等規則に基づく作成が要請されているため、会社法に基づく作成書類(連結計算書類及び計算書類等)よりも詳細な記載が必要となります。 (2)申告期限の延長について 通常、法人税の確定申告は、決算期末の翌日から2か月以内と定められていますが、決算書は株主総会で承認を受けたものでなければなりません。3月決算の上場企業を例にとれば、その多くは、株主総会を6月に開催しています。株主総会で決算書が承認を得るのを待っていると、申告書の提出期限には間に合いません。 このため、法人税の申告期限を1か月延長することが認められており、3月決算の上場会社の場合、株主総会が終わった6月末まで申告期限を延長することができます。法人税の申告期限を延長することができるケースとしては、主に下記の場合に認められています。(法人税法第75条の2第3項、同法第144条の8、所得税法等の一部を改正する法律(令和2年法律第8号)による改正前の法人税法第81条の24第2項、法人税法施行規則第36条の2、法人税法施行規則等の一部を改正する省令(令和2年財務省令第56号)による改正前の法人税法施行規則第37条の14) 会計監査人の監査を受けなければならないため、事業年度終了の日から2か月以内に決算が確定しない会社 会計監査人の監査を必要としないが定款において事業年度終了の日から3か月以内に株主総会を開催する旨を定めている会社 災害その他やむを得ない理由により決算が確定しないため提出期限までに申告書を提出できない場合 なお、申告期限を延長した場合、延長期間に利子税が課税されます。そのため、本来の納付期限までに見込納付をし、確定申告時に差額を納付する必要があることに留意する必要があります。ただし③の災害が原因の場合は、利子税の免除措置があります。 消費税についても、法人税と同様、申告期限の1ヶ月の延長が認められています(消費税法第45条の2第1項又は第2項、消費税法施行規則第23条の2第1項)。 この際、法人税の申告期限の延長の適用を受ける法人であること(消費税法基本通達15-2-8)が要求され、延長を受けたい課税期間の属する事業年度中に「消費税申告期限延長届出書」を提出する必要があります。3月決算の場合、進行期の3月31日までに届出書を提出する必要があります。なお、当該制度は法人税の申告期限の延長を前提とした制度ですので、法人税の申告期限の延長の許可を受けた後に届出します。消費税についても、延長期間に対して利子税が発生することに留意が必要です。 3. ストックオプションの税務 ストックオプション(以下、「SO」という。)とは、従業員や取締役などが、自社の株式に対して決められた価格で購入できる権利のことを指します。 IPO準備会社においては、大企業に比べて資金力に乏しく、VC等から多額の資金を調達しても事業投資に投下する必要性から人件費に多くの資金を配分することが困難な状況になっていることが多く見られます。このため、IPO準備会社では、SO制度を導入し、これを報酬として付与することで優秀な人材を獲得する手段としてSOが用いられています。
- [CDPの情報開示がESG投資家の意思決定に及ぼす影響とその基準とは](https://shiodome.co.jp/column/23496/) - 近年、気候変動や持続可能な社会への関心が高まり、企業の環境対応が投資判断において重要視されています。その中で、CDP(Carbon Disclosure Project)の情報開示は、ESG投資家にとって企業の環境リスク管理や持続可能性を評価するための重要な指標となっています。 本記事では、CDPとは何か、その開示基準や投資家の意思決定にどのような影響を与えるかについて、具体的な事例を交えながら詳しく解説します。 1. CDPとは CDPとは、Carbon Disclosure Projectの略称であり、企業や都市が環境リスクにどのように対応しているかを評価する非営利団体を指します。 評価する手順としては、まずCDPが企業に対して質問書を送付し、企業が回答を行います。その回答結果を受けてCDPが企業を評価し、情報開示が行われます。CDPは特に温室効果ガスの排出削減や気候変動への適応、水資源管理、森林保全などに関する情報の提供を求めています。CDPの質問書に回答する企業は、その結果に基づいてスコアリングされ、投資家にとって企業の環境リスクとその管理能力を評価するための基準となります。また、CDPは企業が持続可能な経済を実現するための具体的な行動を促し、その行動の透明性を確保するために重要な役割を果たしています。 2. CDP情報開示の重要性 CDPの情報開示は、企業が自社の環境への取り組みを透明かつ体系的に示すための重要な手段です。特に、気候変動や環境への配慮がますます重視される現在、企業が環境リスクにどのように対応しているかを示すことは、投資家にとって大きな意味を持ちます。情報開示を通じて、企業は利害関係者に対して責任を果たしていることを示すだけでなく、長期的な持続可能性を確保するための取り組みを可視化します。これにより、投資家や金融機関は企業の将来的な成長性とリスク管理の能力を評価することが可能となります。また、企業が具体的な環境目標を設定し、それに向けた進捗を示すことができれば、信頼性の向上にもつながります。 3. CDPが開示する主な項目 CDPは企業からの質問書に対する回答結果に基づいて情報開示を行います。この質問書の内容は、気候変動・フォレスト・水セキュリティの3つに大きく区分されています。 気候変動 温室効果ガス(GHG)排出量に関する情報を中心に、Scope 1(自社直接排出)、Scope 2(購入電力等の間接排出)、Scope 3(サプライチェーン全体の間接排出)の各カテゴリで報告が求められます。また、企業の気候変動に対するリスクと機会の認識、排出削減目標、具体的な戦略、管理体制の有無も評価の対象です。 フォレスト 企業がサプライチェーン全体で森林に及ぼす影響や、森林破壊リスクへの対応が求められます。特に、パーム油、木材、牛肉、大豆などの森林伐採に関連する商品についての情報が開示され、企業の森林保護活動やサステナブルな調達方針が重視されます。 水セキュリティ 水資源の利用に関するリスクと管理方針が評価されます。水の利用量や効率化に加え、水ストレス地域での使用状況やリスク管理の詳細が報告され、将来の水供給の不確実性にどう対処しているかが問われます。 これらの情報は、企業が環境リスクにどのように対応し、持続可能な経営を行っているかを示す重要な指標になります。 4. 投資家が重視するCDPスコアの要素 CDPスコアは、企業の環境への取り組みを評価する重要な指標であり、投資家はこれを用いて企業の持続可能性やリスク管理能力を判断します。CDPスコアはA~Fまでの9段階に区分され、企業の回答内容によって格付けが行われています。具体的には以下の通りです。 引用:CDP 2024コーポレート完全版質問書 スコアリングイントロダクション(URL: https://japan.cdp.net/disclosure/companies-discloser) 投資家はこれらをもとに企業の持続可能性とリスク管理能力を総合的に評価し、投資判断を行います。スコアの高い企業は環境問題に対する対応能力が高いとみなされ、長期的な成長が期待されます。 5. CDPの情報開示が投資家の意思決定に与える影響 ESG投資家は、企業が持続可能な成長を実現できるかどうかを判断するために、CDPの情報開示を重要な指標として活用しています。 企業のCDPスコアは、投資家の意思決定に次のような影響を与える要因となります。まず、企業が高スコアを獲得している場合、その企業は環境リスクへの対応が優れているとみなされ、長期的に持続的なリターンが期待できると判断されます。これにより、投資家はその企業に対する投資に積極的になるでしょう。一方で、スコアが低い企業は、リスク管理が不十分と判断され、投資の対象外とされることもあります。 さらに、投資家はCDPスコアを他のESG評価と組み合わせて活用することも多く、全体的な企業評価の一環として利用しています。このため、企業が持続可能なビジネスモデルを実現し、環境リスクに積極的に対応することが投資家の意思決定に大きな影響を与えると考えられます。 6. 事例の紹介 実際にCDPスコアが高い企業は、どのような取り組みを行っているのでしょうか。CPDから高く評価を受けている日本企業の事例を紹介します。 【花王株式会社】 花王株式会社は、4年連続でCDPの気候変動(脱炭素)、水セキュリティ、フォレストの3部門においてトリプルAを獲得しています。「2040年カーボンゼロ、2050年カーボンネガティブ」の目標を掲げ、持続可能な生産活動を推進しています。スペインの工場にバイオマスを活用するプラントを建設し、CO2排出量を削減しています。また、食器用洗剤のボトルの肉厚を薄くし、プラスチック使用量を削減するなど、製品ライフサイクル全体での環境負荷低減に努めています。 【積水ハウス株式会社】 積水ハウス株式会社は、国内住宅・建設業界で初めてCDPのトリプルAを獲得し、持続可能な住宅の提供に力を入れています。2022年度時点で戸建て住宅の93%をZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)化し、2023年以降の分譲マンションもすべてZEH仕様にすることで、住宅の脱炭素化を推進しています。さらに、住宅の庭に生態系に配慮した樹木を植える「5本の樹」計画を実施し、地域の自然環境保護にも寄与しています。 7. まとめ CDPの情報開示は、企業が環境リスクにどのように対応しているかを示すための重要な手段であり、ESG投資家の意思決定に影響を与えています。CDPスコアは、企業の持続可能性を評価するための指標であり、投資家はこれを通じて企業の環境への取り組みを判断します。 企業の目線に立って考えてみると、積極的にCDPに参加し高いスコアを獲得することは、持続可能なビジネスを実現するための重要なステップとなり得るかもしれません。環境への取り組みを強化し、CDPを通じて情報開示を行うことで、ESG投資家の支持を得ることができ、長期的な成長を実現する可能性が高まります。 これからもCDPは、企業と投資家の間の重要な橋渡し役を果たし続けるでしょう。
- [IPO準備会社に税務調査が入った際に想定されるリスクとその対応](https://shiodome.co.jp/column/18049/) - 株式公開をすれば、非上場時に比べて比較にならないほどの多くの利害関係者が生じることになります。当該利害関係者に損失等を被らせないため①企業の継続性及び収益性、②企業経営の健全性、③企業のコーポレートガバナンス及び内部管理体制の有効性、③企業内容等の開示の有効性、④企業内容等の開示の適切性、⑤その他公益又は投資者保護の観点から取引所が必要と認める事項、という観点からから上場審査が実施され、上場企業としての適切性が判定されることになります。 IPO準備会社に税務調査が入り、仮に税務当局から一定の処分があった場合、上記審査方針の観点から最悪上場延期、上場中止になってしまう可能性があります。以下ではそのリスクと対応について解説していきます。 1. 税務調査とは 税務調査とは、質問検査権に基づき、会社の申告内容を確認する⾏為をいいます。税務調査には任意調査と強制調査の2種類があります。 ①任意調査 任意調査は、税務署職員が実施するもので、税務調査の大半がこれに該当します。法令上罰則が設けられており、会社には受任義務が課されています。このため、原則として拒否することができません。一般的には事前に電話で通知があり、2~5日間ほどかけて帳簿などが調べられます。なお、帳簿書類の隠蔽や改ざんといった不当な行為の可能性があったり、調査の適正な遂行が難しかったりするなど、国税通則法74条の10に該当する場合は、無予告調査として事前通知がないものもあります。ただし、無予告調査で調査対象になった理由を税務署職員に確認し、後日通知のうえで調査を依頼することが可能です。 ②強制調査 強制調査は、国税局査察部が実施する調査で、これは犯罪調査でもあります。裁判所の令状をもって事前連絡なく強制的に行われるもので、調査対象となった場合は拒否できません。立件を目的とした犯罪捜査の一種で、巨額の脱税の疑いがある場合に行われます。 税務調査の結果、申告漏れが発⾒された場合、本税(申告漏れ所得に対応する税額)に加え、追徴税額を⽀払う必要があります。この追徴税額には、主に次に記載する加算税が含まれます。 税務調査の実地調査率は5%未満で推移していますが、現実には、3年に1度税務調査が来る会社もあれば、何年も調査が入っていない、中には創業以来一度も調査が入ったことがない会社も存在します。会社の中には明らかに税務調査に入られやすい会社というものが存在します。 このような会社というのは例えば、過去に不正があった会社、売上高増に対して利益・所得が大幅減など勘定間に明らかな矛盾的傾向が存在しかつ金額が多額な場合や特定の勘定に著増減が存在する場合、国税局による重点調査業種である、ことなどに該当する特徴が見られます。IPO準備会社の場合、売上・利益が急拡⼤していくケースも多く、また売上急拡⼤に対して、会社内部の管理体制が追い付かず財務報告に係る内部統制が破壊されてしまうリスクや税務基準から企業会計基準への変更に対して会計処理の誤謬が多発するリスクがあります。このため、IPO準備会社は税務調査が入りやすい傾向にあります。 税務調査が入った場合、現実としておよそ4社に3社(約75%)が追徴税額を⽀払っており、追徴なしで済むことは一般に困難な状況となっています。税務調査が入った場合、IPO準備会社の場合、絶対に避けなければならないのが重加算税による追徴課税です。株式公開を達成するには当然に上場審査を乗り越える必要があります。 取引所は、最初に記載したとおり、市場ごとに5つの適格要件を定めています。その中の③「コーポレートガバナンス及び内部管理体制」の中に、「法令遵守体制の整備・運⽤、法令違反の可能性の排除」という項⽬があり、税務調査において重加算税が課されると、審査上、当該要件を充⾜していないのではないかとの疑念が⽣じます。このため、株式公開に影響を及ぼし、最悪の場合、上場延期や上場中⽌があり得ます。これはIPO準備会社にとって最悪の結末になります。また仮に、数年後、再び審査に臨む際にも過去に重加算税処分があった企業というレッテルは消えず、以後税務調査が入りやすくなり、再審査をする上でも不利になることも否めません。このため、IPO準備会社は、特にこの点を留意しておく必要があります。 上場審査基準 「上場審査の内容」より (JPX) 2. 修正申告について 法定申告期限後に、すでに提出した確定申告の申告額に誤りがあった場合で、申告をした税額等が実際より少なすぎた場合や還付される税金が多すぎた場合に、これらの金額を正しい額に訂正する必要があります。当該修正手続きのことを修正申告といいます。修正申告は、税務署の更正が行われるまでに可能な手続きです。 税務署の更正とは、税額の計算などが税法の規定に適っていなかった場合、税務署長が調査を行うことで納税額などが改められることをいいます。自ら誤りに気が付き自主申告を行った場合は延滞税が発生しますが上記で記載した加算税は課されません。税務調査が入った場合で指摘が発生した場合、まず誤りがある箇所に関して修正申告を行うよう税務署に告げられます。この時点で納税者が修正申告をすれば、指摘レベルに応じて加算税も納付する必要があり、場合によっても重加算税もあり得ます。 一方で、納税者が修正申告を実施しない場合は、税務署側が更正を実施するという流れになります。この場合、更生の結果により場合によっては重加算税処分もあり得ます。税務署側の更生に不服が存在した場合、不服申立てをすることができます。ここで不服申立てとは、税務署による指摘に納得できない場合に国税不服審判所などに訴訟を起こすことです。なお修正申告の場合は、自ら過ちを認めたことを意味するので不服申立てはできないことになります。 3. 決算訂正・企業会計基準第24号と再表示 非上場会社は、税務基準により日々の会計処理を行い、決算書も税務基準により作成しています。しかし上場会社は税務基準ではなく、企業会基準により日々会計処理を実施し、決算書を作成することが厳格に求められています。IPO準備会社は当然ながら税務基準から企業会計基準への変更が必要となります。当該変更は、資産・負債及び損益に金額的影響を与えるのが一般的です。このため決算訂正を行う必要があります。 企業会計基準第24号について 決算訂正とは、過年度の決算で発覚した誤りを当期の決算書で修正することを指し、従来は過年度の決算の誤りを「前期損益修正」の勘定科目で当期の決算書に計上する手法が一般的でした。しかし、企業会計基準第24号 会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準(以下、「過年度遡及会計基準」という)が平成21年12月4日企業会計基準委員会により公表され、現状の実務で適用されることにより「前期損益修正」の勘定科目で当期の決算書に計上する手法は行われず、過去の誤謬の訂正という処理を実施することになりました。 なお決算訂正に金額的・質的重要性が認められない場合については、従来のように当期の決算書において修正して問題ないと判断されます。なお、IPO準備会社の場合、上場審査の他、監査法人等による会計監査も求められていることから、重要性の判断については実務上、社内で判断した後、監査法人等との協議を行うことが通常です。 過年度遡及会計基準の概要 (下記用語の説明:企業会計基準第24号 会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準 用語の定義4.(1)~(11)) 「会計方針」とは、財務諸表の作成にあたって採用した会計処理の原則及び手続をいう。 「表示方法」とは、財務諸表の作成にあたって採用した表示の方法(注記による開示も含む。)をいい、財務諸表の科目分類、科目配列及び報告様式が含まれる。 「会計上の見積り」とは、資産及び負債や収益及び費用等の額に不確実性がある場合において、財務諸表作成時に入手可能な情報に基づいて、その合理的な金額を算出することをいう。 「会計上の変更」とは、会計方針の変更、表示方法の変更及び会計上の見積りの変更をいう。過去の財務諸表における誤謬の訂正は、会計上の変更には該当しない。 「会計方針の変更」とは、従来採用していた一般に公正妥当と認められた会計方針から他の一般に公正妥当と認められた会計方針に変更することをいう。 「表示方法の変更」とは、従来採用していた一般に公正妥当と認められた表示方法から他の一般に公正妥当と認められた表示方法に変更することをいう。 「会計上の見積りの変更」とは、新たに入手可能となった情報に基づいて、過去に財務諸表を作成する際に行った会計上の見積りを変更することをいう。 「誤謬」とは、原因となる行為が意図的であるか否かにかかわらず、財務諸表作成時に入手可能な情報を使用しなかったことによる、又はこれを誤用したことによる、次のような誤りをいう。 財務諸表の基礎となるデータの収集又は処理上の誤り 事実の見落としや誤解から生じる会計上の見積りの誤り 会計方針の適用の誤り又は表示方法の誤り 「遡及適用」とは、新たな会計方針を過去の財務諸表に遡って適用していたかのように会計処理することをいう。 「財務諸表の組替え」とは、新たな表示方法を過去の財務諸表に遡って適用していたかのように表示を変更することをいう。 「修正再表示」とは、過去の財務諸表における誤謬の訂正を財務諸表に反映することをいう。 4. 金額的・質的影響が大きい場合に上場準備に与える影響 決算訂正事項に金額的・質的重要性が存在する場合には、原則として上場申請書類の全開示対象期に遡及して修正する必要が生じてきます。また、上場申請書類上の5期間の比較可能性については、5年間の決算数値を比較可能な数値にすることになります。また、過去の会社法上の計算書類の訂正については、直前々期の会計方針が決まり、過去の決算数値を遡及修正する必要が生じた場合、できるだけ早い時期に臨時株主総会を開催して、過去の計算書類を一括して訂正するのが一般的です。さらに過去の決算修正の税務上の取扱いについては、修正申告すべきか否かについて、内容に応じて顧問税理士と相談の上、修正申告の有無を判断すべきですが、修正が必要な場合には、少なくとも直前々期の法人税の申告書上で過去の決算修正の影響の反映を完了させる必要があります。 5. 未然に防ぐための方法 (1) 優秀なCFOや管理部長の登用 IPOにおける上場審査では上記で記載したとおり、税務基準から企業会計基準への変更が求められます。このため、求めれる会計スキルが大幅に上昇します。またこれまでと異なり会計上と税務上の差異が発生することになり特有の税務調整が必要なり税務処理も各段に難度が上昇することが一般的になります。 このため、専任の担当者を採用又は指名する必要があります。ただ、当該経理業務はこれまでの税務基準とは求められるレベルが異なることから十分に経験を積んだ優秀な人材を配置する必要があります。このような人材は一般に、IPO準備会社においては、プロパー社員では存在しないことが多いことから、多くのIPO準備会社は外部から新規に採用をしているのが現状です。
- [ESG経営におけるサステナブルサプライチェーン構築の重要性と運用方法](https://shiodome.co.jp/column/23554/) - ESG経営が重要視される中、企業におけるサステナブルサプライチェーンの構築は、持続可能な成長を実現するための不可欠な要素となっています。製品やサービスのライフサイクル全体で環境負荷を軽減し、社会的責任を果たすことが求められる現在、効率的なサプライチェーン運営に加え、その持続可能性の確保がますます重要になっています。 本記事では、サステナブルサプライチェーンとは何か、現状と動向、構築方法、そしてリスクや企業事例を通じて、その重要性と実践方法を解説します。 1. サステナブルサプライチェーンとは サステナブルサプライチェーンとは、製品やサービスのライフサイクル全体にわたり、ESG(環境、社会、ガバナンス)を考慮しながら運営されるサプライチェーンを指します。これは、製造、流通、販売に至るすべてのプロセスで持続可能性を追求することを目的としています。 従来のサプライチェーンは効率性やコスト削減を重視していましたが、サステナブルサプライチェーンでは、これに加えて環境への負荷軽減や、労働環境の向上、コミュニティへの影響なども考慮します。サステナブルサプライチェーンは、企業が環境や社会に与える影響を最小限に抑えるための重要な手段となり、企業の社会的責任(CSR)や、持続可能な開発目標(SDGs)達成のための具体的なステップとして位置づけられています。 特に、グローバル化が進み供給網が広範囲にわたる中で、企業がサプライチェーン全体を管理しサステナビリティを実現することは、ビジネス成功の鍵となります。 2. ESGとサプライチェーンの関係性 ESGとサプライチェーンは密接に関連しています。 環境(Environment)の視点では、製品やサービスが作られる過程での温室効果ガス(GHG)排出や資源消費が問題となり、社会(Social)の視点では、サプライヤーの労働環境や人権問題が焦点となります。また、ガバナンス(Governance)の視点では、サプライチェーン全体の取引や運営において、不正や違法行為が行われないような体制を企業自ら適切に整備できているかどうかが問題となります。 例えば、サプライチェーンの最下層で劣悪な労働条件が存在する場合、その企業は社会的責任を果たしていないと見なされ、ブランドの評判を損なう可能性があります。また、環境に優しい素材を使用していない場合や、サプライチェーン全体のエネルギー使用量が多い場合、環境負荷の高い企業として批判されることがあります。そのため、ESG要素を統合したサプライチェーンの構築は、企業のリスク管理や長期的な競争優位性を確保するために重要と言えるでしょう。 3. サステナブルサプライチェーンの現状と動向 近年、企業のサステナブルサプライチェーンへの関心が急速に高まっています。特に、消費者や投資家からの圧力が強まり、企業は持続可能性への取り組みを強化せざるを得ない状況にあります。 グローバル企業は、環境負荷を軽減するために、再生可能エネルギーの利用や、リサイクル可能な材料の使用を推進しています。また、労働条件の改善や、地元コミュニティとの協力によって、社会的価値を高めようとしています。 具体的な動向としては、サプライチェーンのデジタル化が進んでいます。デジタル技術を活用することで、サプライチェーンの透明性や追跡性を向上させ、問題の早期発見や対応が可能になります。また、カーボンフットプリントの削減を目指す企業は、サプライヤーに対しても同様の目標を求め、サプライチェーン全体での持続可能な取り組みを推進しています。 4. サステナブルサプライチェーンの構築方法 サステナブルサプライチェーンを構築するためには、いくつかのステップがあります。 具体的には以下のようなステップが考えられます。 サステナブルサプライチェーンを推進する組織体制の構築 まずは全社横断的にサステナブルサプライチェーンを推進していく必要があります。経営陣はサステナブルサプライチェーンを支援・監督し、ESG関連部門をはじめ関連部署はその役割や責任を整理します。必要に応じて、専門組織や委員会など設置してサステナブルサプライチェーンを推進するような体制を整備します。 目標の設定と共有 企業がサステナブルサプライチェーンに関する目標を設定し、それを外部関係者に共有し、企業の方針を示します。ここでいう外部関係者とは、サプライチェーンの各工程におけるサプライヤーやメーカー、ベンダーなどの企業外部の関係者を指します。 外部関係者の整理 各工程における外部関係者を洗い出し、重要度やリスクによって分類します。その結果を踏まえ、会社はどのような対応が適切かサプライチェーン全体を考慮しながら検討します。 外部関係者の評価 外部関係者に対してアンケートや実地調査を実施し、具体的なリスクを特定します。適切な評価方法を確立し、評価結果のフィードバックが適切に行われているかどうか確認します。 外部関係者とのコミュニケーション 評価結果を踏まえ外部関係者にフィードバックを行い、改善していくことが重要となります。そのためには外部関係者と円滑にコミュニケーションを図り、サプライチェーン全体で協力していくことが求められます。 改善状況のモニタリングと開示 定期的に外部関係者をモニタリングし、改善状況を確認します。また、その活動を統合報告書やサステナビリティレポートなどで開示することも有効です。 5. サプライチェーンにおけるリスクと課題 サプライチェーンにおいては、さまざまなリスクや課題が存在します。主なリスクとしては、以下のものが挙げられます。 環境リスク サプライチェーンが長く複雑な場合、エネルギー消費量やGHG排出量が増大しやすくなります。また、気候変動による資源供給の不安定化もリスク要因です。 社会的リスク 労働力の搾取や人権侵害が問題になることがあります。特に、低コストを求めて発展途上国から原材料を調達する場合、倫理的な問題が発生しやすくなります。 サプライチェーンの中断リスク 自然災害や地政学的リスクによって、供給網が中断する可能性があります。例えば、新型コロナウイルスのパンデミックでは、グローバルなサプライチェーンに大きな影響が及びました。 6. サプライチェーンにおける企業事例 サステナブルサプライチェーンを導入している企業の例として、以下が挙げられます。 【NTTグループ】 NTTグループは、持続可能な社会の実現に向けたサステナブルサプライチェーン構築を推進しています。同社は「調達基本方針」および「サプライチェーンサステナビリティ推進ガイドライン」に基づき、人権保護、環境負荷削減、公正取引など7分野で具体的要請を行い、サプライヤーとの信頼構築に努めています。また、第三者機関によるESG評価や直接対話を通じてリスク管理を強化し、必要に応じて是正措置を求めています。さらに、温室効果ガス削減の取組みを評価する仕組みを導入しています。調達部門スタッフへのESG教育や国際連携も実施し、2022年には国際的な環境分野の非政府組織CDPから最高評価を受けました。 参考:NTTグループHP(https://group.ntt/jp/sustainability/social/supply-chain/) 7. まとめ サステナブルサプライチェーンの構築は、企業がESG目標を達成し、社会的責任を果たすための重要な要素です。サプライチェーン全体での持続可能性を追求することで、企業はリスクを抑え、長期的な競争優位性を確保することができます。環境、社会、ガバナンスの観点からサプライチェーンを見直し、持続可能な未来に向けた行動が企業に求められています。
- [IPO準備会社が整えるべき税務に関する社内体制](https://shiodome.co.jp/column/18276/) - IPO準備会社は、概して人材が不足傾向であり、数少ない人材リソースを主たる営業活動に投入せざるを得えずおのずと管理部門である税務領域には十分な人材を配置できない状態にあります。このため、多くのIPO準備会社では、税務領域について外部の税理士法人等に申告書作成等の作業を外部委託していることが多い傾向があります。 以下では、IPO準備会社が税務領域において外部委託を行う場合に際しての留意点や自社内で有しておくべき社内体制について解説していきます。 1. IPO準備のための税務体制整備の重要性 IPO準備のための税務体制整備の重要性IPO準備会社の多くは、株式公開を意識し本格的なIPOに向けての準備をする前段階においては、「中小企業の会計に関する指針」を採用し、決算書を作成しています。一方で上場会社は一般に公正妥当と認められる企業会計の基準にしたがって決算書を作成しています。 株式公開を目指す企業は、上場申請の直前々期 (N-2期)、直前期 (N-1期)、申請期 (N期) において、監査法人等による準金商法監査(金融商品取引法第 193 条の 2 第1項の規定に準じて、IPOを目指す企業に対して行われる監査)の監査証明業務を受けます。さらに上場申請書類上、5期間について、5年間の決算数値を比較可能な数値にする必要があります。このため、上場前の段階から、「中小企業の会計に関する指針」から企業会計基準に変更する必要があります。 当該変更は、過去の誤謬の訂正として、原則として上場申請書類の全開示対象期に遡及して修正する必要が生じてきます。当該変更は一般的に金額的・質的にも重要性がある場合が多く、資産・負債及び損益に影響を及ぼし、これに伴い税務上の処理も要求されます。 上場準備会社が株式公開を達成するためには、当然のことながら取引所の審査を突破する必要があります。取引所は、上場審査において市場ごとに5つの適格要件を定めています。具体的には下記の5つになります。 企業の継続性及び収益性 企業経営の健全性 企業のコーポレートガバナンス及び内部管理体制の有効性 企業内容等の開示の適切性 その他公益又は投資者保護の観点から取引所が必要と認める事項 上記③「コーポレートガバナンス及び内部管理体制」の中に、「法令遵守体制の整備・運⽤、法令違反の可能性の排除」という項⽬があり、税務調査において重加算税(税金を納める額を少なくするなどのために意図的に隠ぺいしたり、仮装したりした場合にかかるもの(国税通則法第68条))が課されると、審査上、当該要件を充⾜していないのではないかとの疑念が⽣じます。このため、株式公開に影響を及ぼし、最悪上場延期や上場中⽌があり得ます。 しかもIPO準備会社は一般に売上高・利益が拡大している傾向が多くみられることから、税務調査が入る可能性が一般の非上場会社に比べて高くなる傾向があります。会社の成長性などに特段の問題がなくともこうした税務上のコンプライアンスの問題から上場が頓挫してしまうことがあり得ます。こうした税務リスクを上場準備の早い段階から意識するとともに社内に税務体制を整備しておくことが必要です。 2. 税務領域に関する望ましい社内体制 税務領域に関する社内体制を整備する上で最も基礎になるのが経営者の関与・指導になります。これは経営者自身が、高度な税務知識を身につけるということではなく、経営者自身が率先して、税務コンプライアンスに関する意識を社内・全従業員に徹底させることを意味します。 (1) 税務コンプライアンスの維持・向上に関する事項の社訓、コンプライアンス指針等への掲載 経営者自身の税務コンプライアンス意識を社内に浸透させるために、コンプライアンスに関する社訓や指針等に税法遵守、原始記録の適正保存、不正な会計処理の禁止などの事項を明記することが有効です。コンプライアンスに関する社訓や指針等自体が存在しない場合は、内部統制上の問題からもこれらを設けることが望ましいと考えられます。その他税務に特化した指針等を策定することも有効です。 (2) 税務コンプライアンスの維持・向上に関する方針の経営者による発信 上記⑴の社訓や指針等の社内周知・浸透を図るため、経営者からの発信状況及びその浸透度を確認することが望ましいです。具体的には、役員が子会社・営業所・支店などを巡回し、税法遵守を指導することや社内 LANへの掲載、研修、コンプライアンス・ハンドブックの配布等により全社員に周知を行う、企業グループとしてコンプライアンス指針を策定し、グループ内企業で共有することなどの対応を行うことが必要です。 (3) 税務方針等の社内公表・明確化 企業(グループ)としての税務に対する取組方針を明確化するため、税務方針やタックスポリシー等を従業員とともに共有することが望ましいです。税法遵守、適正納税に向けた体制整備、適正なグループ内取引の実施などを明記した税務方針を社訓等とは別に策定して社内に公表するなどの方法が考えられます。 (4) 社内に対する税務調査への適切な対応に関する経営者からの指示 税務当局との信頼関係を構築していく上では、経営者が税務に対して協力的であることが重要になります。税務調査開始前に、調査対応を優先するよう指示文書を発信することや税務調査中に指摘された是正すべき事項に類似する取引の有無について、全社に徹底調査を指示するなどの対応をとる必要があります。 (5) 税務調査の経過や結果の経営者への報告 経営者が適切な関与・指導を行うため、税務調査の経過や結果の報告状況を確認する必要があります。また税務調査の対応に当たっている担当者は、税務調査の結果だけでなく、適時調査状況を経営者に報告する必要があります。 (6) 監査や税務調査等で税務上の問題事項が把握された場合における、その再発防止策に関する経営者の指示・指導 再発防止策の実効性を高めるため、経営者の指示・指導の下、経理担当部署等が再発防止策を策定・運用状況を管理・徹底した再発防止を社長メッセージとして電子メールや社内LAN等により指示することが望ましいです。 3. 経理担当部署等の体制・機能 次に、実際に税務実務を担当する経理担当部署等の体制・機能としては下記のような体制を整備しておくことが望ましいです。 (1) 税務(経理)担当部署の 体制整備 IPO準備会社においては、各事業部からの相談に対する回答や税務調査に適切に対応するため、CFOや管理部長が税務について精通していることが望まれます。また、これらの管理者が人材育成を積極的に行い経理部のレベルの底上げを日々実施していく必要があります。また積極的に外部研修等も活用する必要があります。 (2) 会計処理手続の明確化 会計処理手続を、事業内容の変化に応じて適宜改訂するとともに、マニュアルを社内
- [IPO準備会社の創業オーナーの株式を資産管理会社に移転させる際の税務上の留意点](https://shiodome.co.jp/column/18294/) - IPO準備会社のオーナーが保有する株式は、自身が経営する会社が急成長するにつれ、その財産的価値は急激に上昇します。IPO後に至っては創業時の数百倍になる可能性も十分にあり得ます。このため、オーナーが保有する株式に関してその価値の高さから税務上の問題が発生します。 当該税務上の問題が厄介な点は、経営者の死後、相続時において発生する相続税の問題を含んでいる点です。相続税は、オーナー死後のことであり遠い将来の事になる可能性もありますが、対策のためには、なるべく早い段階から事前準備をしておく必要があります。具体的な対策としては、まず資産管理会社を設立し、当該会社にオーナーが保有する株式を移転させることから始まります。以下ではその具体的な解説を行っていきます。また、会社が配当を実施する場合、配当に関する税務上の問題も大きいことからこれについても解説します。 資産管理会社とは 資産管理会社とは、設立目的を不動産や株式等の所有及び管理として設立された法人を指します。IPO上場準備会社のオーナーの場合、その多くが資産管理会社を設立しています。その最たる理由が、オーナー創業家の相続税及び配当金の節税対策にあります。オーナーが亡くなった場合、資産管理会社を設立せずに、そのまま当該企業の株式を相続した場合、莫大な相続税がかかります。相続税は10か月以内に現金納付が要求されることから資金繰りに窮する可能性が高くなります。 こういった状況を避けるため、多くの創業者は資産管理会社を設立しています。また、配当についても資産管理会社に株式を移転せずに、個人のまま保有し配当を受け取った場合適用される税率が異なり税制上、有利になります。 資産管理会社を設立するメリット (1)相続税の節税 企業オーナーが所有する株式については、その企業が所有する資産の価値に対して相続税が計算されます。企業オーナーの相続税の算出の流れは下記のとおりです。(純資産価額方式を仮定) 保有している株式を時価評価します(時価と帳簿価額との差額が含み益となります)。 ①に法人税率を乗じて、仮にその株式を売却したとしたら課税される法人税(法人税等相当額)を算出します。 ①から②を差し引いた金額に、その他の財産を足した金額を評価額として、相続税を算出します。 なお①における時価評価については、下記「株価算定の必要性」にて詳細を解説します。 具体例 創業者であるA氏が資産管理会社B社を設立。B社の資本金は100万円。A氏は上場準備会社X社の創業者。 A氏がB社にX社株式を売却。売却価額は株価算定を実施した結果3億円と算定され、当該金額で売却。結果、B社の貸借対照表は下記のとおりとなった。資産:X社株式3億円 負債:2.99億円(借入金) 資本金100万円(0.01億円)X社はIPOを達成。株価は順調に上昇。その後創業者が死去。相続発生。 相続発生時のX社株式時価100億円。含み益は100億円-3億円=97億円。当該金額に対する法人税37.0%相当額→97億円×37%=35.89億円。 含み益97億円から法人税等相当額35.89億円を差し引いた金額(37%控除。)61.11億円にX社株式購入額3億円を加算し、A氏が持つ本来の財産である約64億円を算出します。これが相続税を計算する上での評価額となります。もしもA氏が資産管理会社B社を持たずX社株式を持ち続けていた場合は、X社株式の含み益である約100億円がそのまま評価額となります。相続税はA氏の財産に対して最大55%の税金がかかります。 財産が100億円なら相続税は55億円、財産が64億円なら相続税約35億円ですので、資産管理会社を活用することで、この差額である約20億円を節税できることになります。上記の例では資産管理会社の株主は創業者であるA氏本人ですが、創業者に子供がいる場合には子供を資産管理会社の株主にすることも検討する必要があります。オーナー本人を株主とする場合に比べて、さらなる相続税の節税メリットが得られます。 ただし、子供を株主とする場合には、財産権と経営権を切り離して財産権のみ子供に渡し、経営権はオーナーが持ち続ける仕組みを採用するかどうか、子供が株主として会社を設立する手続きを具体的にどうするのか、など検討すべき項目が多岐にわたりますので慎重に検討する必要があります。 (2)配当金に関する税金の節税 まず、配当金に関する税金の取扱いについて、上場株式とIPO準備会社等の非上場会社では下記表のとおり、取扱いに差異があることに留意する必要があります。 配当所得は、配当等の支払の際に次に掲げる株式等の区分に応じて所得税等が源泉徴収されます。源泉徴収された所得税等は、原則として、その年分の納付すべき所得税額等を計算する際に差し引きます。 (所法24、181、182、措法8の2、8の4、8の5、9の3、37の11の6、復興確法28) 次に税額の計算方法について見てみると下記のとおりとなります。 ※1一回に支払を受けるべき配当等の金額が、次により計算した金額以下である場合(少額配当である場合)には、確定申告不要。10万円×配当計算期間の月数÷12(所法24、181、182、措法8の2、8の4、8の5、9の3、37の11の6、復興確法28) 上記よりIPO準備会社のオーナーが受け取る配当金は、総合課税対象の配当所得となり最大で55%程度の税金がかかることになります。資産管理会社に対しては法人税が課されることになりますが、株式保有割合に応じて全部又は一部が非課税となります。株式保有割合が5%超3分の1以下の場合は約50%が非課税となりますので、法人税の税率を約30%と仮定すると、受け取る配当金に課せられる税金は約15%となります。 具体例 1億円の配当金をオーナー個人で受ける場合を仮定する。資産管理会社を設立しない場合の税金:1億円×55%=5,500万円。手元残高4,500万円。資産管理会社設立した場合の税金:1億円×15%=1,500万円。手元残高8,500万円。→資産管理会社設立による節税額:4,000万円。 スキームを実行する上での税務上の留意点 (1)株価算定の必要性 資産管理会社を利用して主に相続税及び配当金について節税メリットをオーナーが享受するには、まず自身の保有株式を資産管理会社に売却する必要があります。売却する場合、その時点の時価で売却する必要があります。ここで問題になるの売却対象である株式が非上場株式であるため、上場会社のように客観的に観察可能な時価が存在しないことです。 このため、当該時価についての算定プロセスを明確化し、税務調査が入った場合などでも理路整然と説明ができる必要があります。このため、当該時価としての株価をどのように算定する必要があるのかが問題となります。 (2)株価の算定方法 株価の算定方法については、確定的な方法はなく、現況の会社の財政状態、経営成績、成長性、株主構成、過去における売買事例など様々な事項を考慮のうえ総合的に判断し、主に下記の方法から最適なものを選択することになります。 類似業種比準方式 純資産価額方式 配当還元方式 収益(または利益)還元法 DCF法 (3)税務上の留意点 株価次第では、当該株価が本来あるべき理論値より低額であるとして、「低額譲渡」に該当するとみなされるリスクに留意する必要があります。ここで「低額譲渡」とは、時価の2分の1未満の著しく低い価額で株式を譲渡した場合を指します。 仮に低額譲渡とみなされた場合、譲渡側であるオーナーは、時価により譲渡があったものとみなして所得税が課税されることになります(所法59条①二・所令169条)。一方で受領者側の法人は、時価と取得価額との差額が受贈益となり、法人税が課税されることなります(法法22条②)。 法人側の具体例 時価1000の株式を400で取得した場合有価証券 1000 / 現金預金 400受贈益 600→法人税課税対象 仮に無償で株式を譲り受けた(贈与を受けた)場合有価証券 1000 / 受贈益 1000→法人税課税対象 IPO準備会社のオーナーには、資産管理会社への株式売却時に発生する譲渡所得課税額を減額したい誘惑にかられ不当に算定株価を低くするリスクが存在します。資産管理会社への株式売却時期が遅れてしまい、IPO準備会社が成長した後では算定株価が相当高額になり多額の譲渡所得が発生する場合には、特にそのリスクが高くなります。仮に株価を意図的に低い水準で算定し、譲渡を実施した場合、税務調査で当該事項が判明した場合、重加算税の処分リスクも否定できません。 IPO準備会社は売上・利益ともに急拡大している傾向が多く、他の非上場会社と比べると税務調査が入る可能性は高い傾向になります。仮に重加算税の追徴課税処分を受けた場合、上場審査において大きな問題となることが多く、最悪上場延期又は中止という可能性も否定でないこととなります。IPO準備会社のオーナーはこのことを十分に留意しておく必要があります。 まとめ IPO準備会社のオーナーは、上場後のことさらには、自身の死後のことまで見据えて事前準備を入念にしておくことが求められます。創業者オーナーが、構築した経営基盤を相続税など税務上の問題で揺るがすことがないように、なるべく早い段階から専門家に相談し万全の対策を講じておく必要があります。
- [IPO準備会社におけるショートレビューと労務の論点](https://shiodome.co.jp/column/18040/) - IPO準備会社における労務の重要性 IPO(Initial Public Offering)とは株式上場とも言われ、自社の株式を証券取引市場で自由に売買できるようにすることですが、東証の上場審査においては、「従業員・労務の状況」等に関しても説明資料として提出が求められており、労務管理が適切になされているかという点は、非常に重要な審査項目となります。 主幹事証券会社の審査をパスし、監査法人から2決算期の適正意見の監査証明を受けることができることとなり、上場審査に臨んだにもかかわらず、取引所の上場審査において承認がおりず、IPOの延期やIPOの中止を余儀なくされた企業は一定数存在します。 この点について、企業が実施した人事労務管理に関するショートレビューが「労働法制を遵守しているか否かだけのコンプライアンス調査」にとどまっており、適切なIPOのための労務関連の調査が実施されたとはいえず、労務管理上の問題を看過したことで、上場が承認されなかった可能性があります。 「労働法制上の違反性は認められない」と労務のショートレビューで評価されても、取引所の上場審査では、「労働者の保護」という観点からもサステナビリティ(持続可能性)の面からも課題があると評価される企業の上場は承認しないと考えられます。 これを裏付ける資料として、グロースへの新規上場時に求められる「新規上場申請者に係る各種説明資料」の「2.経営管理体制等の(18)従業員・労務の状況について」があります。 同資料は平成30年12月27日に改訂されていますが、「長時間労働の防止のための取組み」、「安全衛生に係る取組み」、そして「懲戒処分の状況」の項目が新設されたことや、従来は「労使協定の締結状況(協定の内容を含みます。)」とされていたものが「時間外及び休日労働並びにみなし労働時間制に係る労使協定の締結状況(協定の内容を含みます。)」とされるなど、単に労働法制を遵守するのみならず、投資家が、労働時間、賃金、労働安全衛生、差別、ハラスメント等の人権問題への取組みに熱心な企業を選別する傾向がある中で「労働者の保護」に対する注目度が高まっていることがうかがえます。 上場審査時に提出を要請される資料に着目し、当該資料から人事労務管理に関して上場審査で重視されると思われる事項は以下の通りであり、これらの項目を人事労務管理に関するショートレビュー時の調査項目とすることでより実効性のある調査を行うことができると思われます。 組織図、および直近1年間で部署等の責任者が退職した場合、その職位、退職理由、退職による業務上の影響および対応状況(他の人物の昇進、採用等) 勤怠管理方法および、未申告の時間外労働発生防止のための取組み 時間外・休日労働に係る労使協定の締結状況(特別条項を含む) みなし労働時間制に係る労使協定の締結状況(協定の内容を含む) 直近1年間および申請事業年度における「部署ごとの各月の平均時間外労働時間の推移」と「36協定に違反している従業員が存在する場合、当該従業員の時間外労働の状況」 長時間労働の防止のための取組み 「賃金未払いの発生状況・その後の顛末」と「賃金不払い残業の発生を防ぐための取組状況」 労基法上の管理監督者の状況 労働災害の発生状況および安全衛生に係る取組み 直近3年間における企業グループの労働基準監督署からの調査の状況 直近3年間における懲戒処分の状況 上場審査においては、労働法制上のコンプライアンスに問題がないことや賃金不払い残業がないことは当然のこと、賃金不払い残業の発生や長時間労働防止のために効果的な取組みがなされているか、労働災害の発生状況や安全衛生に係る教育・訓練、再発防止のために工夫している取組みは何か、内部統制の不備等により生じたことによる懲戒処分の状況等を確認した上で、適正な労務管理を行っているかを判断していると考えられます。 社会保険労務士によるショートレビュー(短期調査)の必要性 IPO準備会社は、監査法人と監査契約を締結し、2決算期の監査証明を得て上場審査に臨みます。したがって、上場するためには、監査法人との監査契約の締結が必要となります。ただし、依頼したIPO準備企業において、会計処理の根拠となる資料が検証可能な状態で整理されていない体制下では、そもそも監査法人が監査をすることができません。 そこで、監査法人は、当該IPO準備企業と監査契約の締結可否を判断するため、ショートレビュー(短期調査)を行い、監査を受けるための体制が整備されているか等を事前に確認した後、正式に監査契約を締結します。しかしながら、監査法人のショートレビューにおいては労務に関する領域についてそこまで深堀をすることはありません。 社会保険労務士による人事労務管理に関するショートレビューもIPO準備においては非常に重要であり、労働法制が遵守されているか否か、上場会社として相応しい人事労務管理が実施されているか否かを評価する場合、労働者名簿や賃金台帳等が適法に調製されず、労働時間管理が適正に行われていないような体制では、そもそも調査を実施することはできません。したがって、人事労務管理に関するショートレビューを行い、IPOに向けて現状においてどの程度、労務管理体制が整備されているかを確認する必要があります。 ショートレビュー項目の例 人事労務管理に関するショートレビュー項目としては、以下のような項目があります。 人事労務制度の整備及び運用状況 賃金制度 賞与制度 退職金制度 人事考課制度 育児・介護休業制度 定年後の再雇用制度 変形労働時間制・フレックス制 労働時間管理 就業規則の整備及び運用状況 絶対的記載事項と相対的記載事項 付属規程との整合性・網羅性 労働基準監督署への届出 管理監督者の実態 各種協定の締結・届出 育児・介護休業 定年後の再雇用 法定帳簿類の整備及び運用状況 労働条件通知書・雇用契約書 賃金台帳 出勤簿・タイムカード 有給休暇管理簿 労働安全衛生法関連 安全管理者・衛生管理者 産業医 健康診断 労災保険・雇用保険関連
- [ESGデューデリジェンス(ESG DD)のポイント:投資判断と事業運営における重要要素](https://shiodome.co.jp/column/26646/) - 近年、環境・社会・ガバナンス(ESG)への注目がますます高まっています。このトレンドは、企業や投資家にとっても非常に重要な意味を持ち、投資判断や事業運営における重要な要素として認識されています。本記事では、ESGデューデリジェンス(以下、ESG DD)のポイントを網羅的に解説します。 1. 環境リスク評価とエネルギー移行 (1)環境リスク管理の重要性 企業における環境リスクの評価は、ESG DDの基盤となる要素です。 Scope 1、2、3排出量の追跡:直接排出(Scope 1)、電力使用による間接排出(Scope 2)、およびバリューチェーン全体の排出(Scope 3)を網羅的に測定する必要があります。この測定は、企業の環境負荷を具体的に把握し、削減策を立案するための出発点となります。 気候シナリオ分析:将来的な気候変動リスクをシミュレーションし、事業戦略に反映させる取り組みが求められます。たとえば、異常気象や海面上昇による事業拠点への影響を予測することで、適切なリスク管理が可能になります。 生物多様性影響の緩和:企業活動が環境に与える影響を最小化し、長期的な生態系保全への貢献が求められます。具体的には、土地開発時の環境アセスメントや、生物多様性保護のための地域社会との協力が重要です。 (2)エネルギー移行への対応 持続可能なエネルギー利用を推進することは、環境リスク管理の重要な柱です。 再生可能エネルギーの採用:太陽光や風力エネルギーの利用を最大化することで、化石燃料への依存を減らす努力が求められます。さらに、自社施設だけでなくサプライヤーやパートナー企業にも再生可能エネルギーの導入を促進することで、影響力を広げることが可能です。 低炭素技術への投資:イノベーションを通じて、事業全体の脱炭素化を推進します。具体例としては、製造プロセスのエネルギー効率化や、電気自動車(EV)の導入が挙げられます。 サプライチェーンの脱炭素化:取引先を含むバリューチェーン全体の脱炭素化目標を設定し、実行します。これには、輸送手段の最適化やエネルギー効率が高いパートナーの選定が含まれます。 2. コーポレートガバナンスと戦略的整合性 (1)ガバナンス構造の健全性 ガバナンス構造は、企業の透明性や信頼性を確保する重要な要素です。 取締役会の構成と多様性:取締役会がESG課題に対応するためのスキルと多様性を備えているかを評価します。たとえば、女性やマイノリティの参加がどの程度反映されているか、また外部専門家の活用が行われているかを確認することが重要です。 経営陣の報酬とESG目標の連動:経営陣のインセンティブがESGパフォーマンスに基づいて設定されているかを確認します。これにより、ESG目標達成への具体的な動機付けが期待できます。 内部告発と倫理報告メカニズム:従業員が不正や倫理的問題を匿名で報告できる体制が整備されていることが重要です。これにより、組織全体の信頼性向上につながります。 (2)戦略的コミットメント 企業の長期的な成長においてESGがどのように統合されているかを分析します。 国際的な枠組みとの整合性:企業がパリ協定や国連SDGsに沿った取り組みを行っているかを検討します。たとえば、温室効果ガス排出削減目標を設定し、グローバルな基準に準拠することが求められます。 重要性評価プロセスの整備:ESGに関連する重要な課題を特定し、優先順位を明確にするプロセスがあるかを確認します。このプロセスは、ステークホルダーの期待や事業リスクを的確に反映するための鍵となります。 3. 社会的影響評価と多様性促進 (1)労働慣行の向上 従業員やサプライチェーンにおける労働条件の改善が、ESG DDで重要な評価ポイントとなります。 人権保護と労働条件:現代奴隷制防止方針や適切な労働条件が整備されているかを確認します。特に、児童労働の防止や安全な労働環境の確保が重要です。 公平な報酬とキャリア開発:従業員が公平な報酬を受け取り、キャリアアップの機会が提供されているかを評価します。また、スキルアップ研修や資格取得支援プログラムの有無も注視すべきポイントです。 (2)多様性と包括性(DEI) 多様性、公平性、包括性(DEI)に関する取り組みは、企業の社会的価値を高める重要な要素です。 リーダーシップにおける多様性:経営層や管理職に多様性が反映されているかを評価します。特に、女性リーダーの割合や国際的な視点を持つ人材の活用が重要です。 採用と昇進の公平性:包括的な採用プロセスや昇進基準が整備されているかを確認します。これには、バイアスを排除するための評価基準の透明性が求められます。 (3)地域社会への貢献 企業が地域社会にどのように影響を与えているかを検討します。 社会貢献活動の透明性:地域社会への投資や社会的インパクト測定が行われているかを確認します。これには、教育プログラムや医療支援への寄与が含まれます。 消費者の健康と安全への配慮:製品やサービスが消費者に対して安全であるか、またその説明責任が果たされているかを評価します。 4. 規制遵守とリスク管理 (1)報告と開示の透明性 企業がESGに関する情報を正確かつ透明に開示しているかが評価されます。 TCFDおよび統合報告の質:企業の気候関連財務情報の開示が、国際基準に準拠しているかを確認します。また、情報の具体性や定量的データの提供も重要です。 第三者認証と監査:ESGパフォーマンスに対する独立した第三者の認証を受けているかを検討します。これにより、報告の信頼性が向上します。 (2)規制リスクの管理 新たな環境規制や炭素価格への対応能力が企業の競争力を左右します。 炭素価格への準備:炭素排出に関連するコストへの対応が計画的に行われているかを評価します。 環境許可の遵守状況:過去の環境規制違反の履歴や現在の遵守状況を確認します。違反履歴がある場合は、その是正措置についても詳細に評価します。
- [日本初のサステナビリティ開示(SSBJ)基準を紐解く・その1:枠組みと位置づけ](https://shiodome.co.jp/column/26558/) - 1. ポイント 2025年3月、財務会計基準機構(FASF)内に日本のサステナビリティ開示基準を開発すること等を目的として2022年に設立された「サステナビリティ基準委員会」は、パブリックコメントを踏まえて日本初の「サステナビリティ開示基準」(SSBJ)を公開しました。 この動きは、国際会計基準財団(IFRS財団)がこれまでに「国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)」を設置し「全般的な開示要求事項(S1基準)」および「気候関連開示(S2基準)」を発表した流れを受けたものです。 SSBJは基本的にプライム上場企業の適用を想定して策定されていますが、それ以外でも推奨される動きが出てくるでしょう。また、現時点でSSBJは現時点では強制力のあるものではありませんが、金融庁のワーキング・グループを通して法改正を含めて義務化の検討が進められています(詳細下記3.および5.参照)。こうした動きは、欧州各国を中心とした海外でのISSB実施の動きに目を向けたものとなっています。ISSBおよびSSBJは、今後ビジネス界の標準の方向に進んでいくものと考えられます。 尚、ISSBまたはSSBJは基本的に、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言における4つの構成要素(ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標)を、気候から全てのサステナビリティ関連のリスクと機会に拡大するための、またこれまでのTCFDへの企業の取り組みをさらに強化するための基準と捉えることができます。 このように位置づけられる基準を踏まえると、企業が気候変動や自然資本との関わりの中で経営視点からサステナビリティをどう考えていくのか、またその考え方を、人的資本をはじめとする他の資本との関係を含めて経営の中にどう織り込んでいくのか等について、「ガバナンス」の検証が益々求められることになるでしょう。 その検証の中で、企業の見通しと、サステナビリティ関連のリスク及び機会とのあいだの「つながり」をしっかりと見据えることが一つのポイントとなっていくと言えます。 2. ISSB/SSBJの背景と目的 ISSBは、2021年11月3日、グラスゴーで開催されたCOP26において設立されました。ISSBは公益のために、投資家と金融市場のニーズに焦点を当てた、高品質で包括的なサステナビリティ開示のグローバル・ベースラインをもたらす基準を開発することを目的としています。 サステナビリティが、投資の意思決定の主流になりつつある中で、関連するリスクと機会について、質の高い、世界的に比較可能な情報を提供することを企業に求める声が高まっていました。特に、企業と投資家の双方にコスト、複雑性、リスクをもたらしている関連基準や要求事項の断片化に対処することが、強く望まれていたという背景があります。 そのようにして、ISSBは、G7、G20、証券監督者国際機構(IOSCO)、金融安定理事会、アフリカ財務大臣、40カ国以上の財務大臣、中央銀行総裁の支持を受け、サステナビリティ基準の策定に取り組んでおり、国際的な支援を受けています。 こうした背景を受け、日本においても国際基準との整合性を確保しつつ日本企業の実態に沿った開示基準を作成するために、2022年7月にSSBJが設立されました。 英国ではISSB基準と概ね同一の基準の適用が勧告されており、カナダにおいてもISSB基準に整合するサステナビリティ開示基準の最終化が公表されています。 3. SSBJの構成と適用 具体的に、SSBJの構成と適用(対象/範囲・時期・方法)の基本について、下記に見てみましょう。 【SSBJの構成】 SSBJの基本的な構成は、次のように示されています。 SSBJ基準は、サステナビリティ開示ユニバーサル基準「サステナビリティ開示基準の適用」(「適用基準」)、サステナビリティ開示テーマ別基準第1号「一般開示基準」(「一般基準」)、サステナビリティ開示テーマ別基準第2号「気候関連開示基準」(「気候基準」の3本柱で構成されている(詳細3参照)。 SSBJの「適用基準」は、ISSBのIFRS S1の基本となる事項を定めた部分に相当し、「一般基準」は、同じくIFRS S1の「コア・コンテンツ」に、「気候基準」はISSBのIFRS S2に相当する。 【適用】 適用全体の詳細については、「適用基準」を見ていく必要がありますが、ここでは適用対象/範囲、適用時期、適用方法についてのみ、端的に記しておきます(「適用基準」の詳細については、次号コラムで取り上げます)。 適用対象/範囲 SSBJの対象として、端的にいえば、基本的にはプライム上場企業を対象として策定されているものの、プライム上場企業以外の企業への適用可能性も考慮に入れられています。一方、そのいずれの対象企業について、現時点では強制的なものではありません。他方、サステナビリティ関連財務開示の対象として、報告企業自体だけでなく、「バリュー・チェーン」も対象とします。その「バリュー・チェーン」とは、「報告企業のビジネス・モデル及び当該企業が事業を営む外部環境に関連する、相互作用、資源及び関係のすべて」(適用基準第4項(12))と定義されています。したがって、製品又はサービス提供や供給、流通、消費に至るまでの、相互作用、資源及び関係、たとえば、材料及びサービスの調達、製品及びサービスの販売及び配送などについても、基準の対象として考慮が必要ということになります。 適用時期 現時点で強制適用時期は定められていません。しかし既に、2024年2月に金融審議会において「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ(WG)」が新設され、具体的な適用対象や(強制)適用時期が検討されていることに留意する必要があります。同ワーキング・グループ第4回資料によると、時価総額3兆円以上の企業には2027年3月期から義務化し、1兆円以上の企業は2028年3月期から義務化、さらに時価総額5,000億円以上の企業には、2029年3月期から義務化、2030年以降、プライム全企業適用義務化の案が明らかになっています。 適用方法 どのように適用するかについては、基準の中で下記のように定められています。 「サステナビリティ関連財務開示は、関連する財務諸表と同じ報告企業に関するものでなければならない」(適用基準第5項) 「関連する財務諸表を特定できるようにしなければならない」(適用基準第7項) サステナビリティ関連財務開示は、基本的に、「関連する財務諸表と同時に報告し(適用基準67項)、関連する財務諸表と同じ報告期間を対象としなければならない(適用基準第68項)。 4. SSBJの3本柱 前述のように、2025年3月に発表されたSSBJは次の3つの柱から成ります。ここでは、その柱3本の、キーワードになるものを示しておきます(それぞれの柱の詳細については、次号以降のコラムをご覧ください)。 柱1:サステナビリティ開示ユニバーサル基準「サステナビリティ開示基準の適用」(「適用基準」)キーワード:質的特性、つながりのある情報、リスクと機会、不確実性、ガバナンス 柱2:サステナビリティ開示テーマ別基準第1号「一般開示基準」(「一般基準」)キーワード:リスクと機会、ビジネス・モデル、バリュー・チェーン、影響、レジリエンス、評価 柱3:サステナビリティ開示テーマ別基準第2号「気候関連開示基準」(「気候基準」)キーワード:気候関連のリスクと機会、ビジネス・モデル、バリュー・チェーン、影響、気候レジリエンス、評価、TCFD、温室効果ガス排出 5. SSBJと既存の関連基準との関わり ISSBは、国際的なサステナビリティ開示基準の開発にあたり、白紙の状態から基準の開発を始めるのではなく、既存の基準やフレームワークを基礎としてきました。したがって、SSBJは既存の関連基準をバラバラではなく束ね、よりサステナビリティと経営との結びつきを強めていくための基準と捉えることができます。 SSBJとISSBとの関係について、上記に述べたことに加え、次の点に留意が必要です。 SSBJは、基準を適用した結果として開示される情報が、国際的な比較可能性を大きく損なわせないものとして策定された。 原則として、ISSB基準の要求事項がすべて取り入れられている(主として基準の読みやすさを優先して順番や用語を言い換えあり)。 したがって、SSBJ基準独自の取扱いを選択しなければ、ISSB基準に準拠したことになるように意図して作成されている(ISSB基準の要求事項に代えてSSBJ基準独自の取扱いを選択した場合、ISSB基準に準拠することになる場合もあれば、準拠しないことになる場合もある)。 6. SSBJの実施に向けて SSBJは、サステナビリティ開示基準を開発する基準設定主体であり、SSBJ基準に準拠した開示かどうかを保証する際の「保証基準」については、金融審議会を中心に検討が進められています。2022年12月公表された金融審議会ディスクロージャーWG報告では、「…企業によって社会全体へのインパクトが異なることや様々な業態があること、企業負担の観点、欧米では企業規模に応じた段階的な適用が示されていることを踏まえると、我が国では、最終的に全ての有価証券報告書提出企業が必要なサステナビリティ情報を開示することを目標としつつ、今後、円滑な導入の方策を検討していくことが考えられる」と提言がなされました。 その後、前述の新設「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するWG」では、法改正を視野に入れた検討が進められ、第四回WGでは具体的に2028年3月期から保証制度を導入することが提案されています。 こうした動きを見定めながら、個別ルール・規制対応に終始することに留まらず、中長期的な視野をもって、経営とサステナビリティの視点から「ガバナンス」をもう一度見直すことが、あらゆる企業に求められていくことになりそうです。
- [日本初のサステナビリティ開示(SSBJ)基準を紐解く・その2:柱1「適用基準」](https://shiodome.co.jp/column/26712/) - 1. ポイント 前回のコラム「日本初のサステナビリティ開示(SSBJ)基準を紐解く・その1:枠組みと位置づけ」に続いて、本コラムはその2として、SSBJを構成する3本柱の1つ、サステナビリティ開示ユニバーサル基準「サステナビリティ開示基準の適用」(「適用基準」)を紐解いていきます。 「適用基準」は、基本的な事項によって構成されている一方、「質的特性」「つながりのある情報」「測定の不確実性」など、即座には捉え難い用語も使われていますが、そうした用語は本基準のキーワードとも捉えることができます。なぜその用語が使われているのか、その本質を見極めると、決して特異な用語ではなく、逆にSSBJの意義とも密接に結びついた、合理的で本質を突いた用語であるとも捉えることができるでしょう。 全体を通して、自動的に聞かれたことだけ数字を入手して情報を提供すればよいということではなく、企業の全体(ガバナンス)と部分(戦略、リスク管理並びに指標及び目標など)の両方を見渡し、そのつながりを精査した上で抽出されるエッセンスを記述するような基準となっている、ということに留意が必要かと思われます。 2. 目的・範囲 まず「適用基準」の目的は、「サステナビリティ関連財務開示を作成し、報告する場合において、基本となる事項を示すこと」(適用基準1項)にあり、その範囲として、SSBJ基準に従って「サステナビリティ関連財務開示を作成し、報告するにあたり、適用しなければならない」(適用基準2項)として、サステナビリティ関連財務開示全般に関わる、基本的でありながら必須事項として位置付けられています。 3. 概念的基礎:「有用なサステナビリティ関連財務情報の質的特性」 「適用基準」の中の主なる構成の1つに、「有用なサステナビリティ関連財務情報の質的特性」があります。この中に含まれる幾つかの鍵となる用語に着目しながら、その概念的基礎をここで示したいと思います。 その「質的特性」の基本的な説明として、サステナビリティ関連財務情報は「関連性があり、表現しようとしている対象を忠実に表現するものでなければならない」(適用基準17項)とし、また「比較可能で、検証可能で、適時で、理解可能であれば、その有用性が補強される」(適用基準18項)と言及されています。 つまり「関連性及び忠実な表現」を重視することによって、有用なサステナビリティ関連財務情報の基本的な質的特性を担保することができ、さらに「比較可能性、検証可能性、適時性及び理解可能性」を重視することによって、質的特性をさらに補強することができることを示しています。 「関連性」 では、上記でいう「関連性」とは何でしょうか?それに関して「重要性は、関連性の企業固有の一側面であり、当該企業のサステナビリティ関連財務開示の文脈において、その情報が関連する項目の性質若しくは規模(又はその両方)に基づくものである。」と規定されています(適用基準25項)。 「重要性」 上記にある「重要性」について、「国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)」基準を参照して確認してみると、英語でいうMateriality(マテリアリティ)に相当します。尚、その「マテリアリティ」について、国際会計基準IFRSを参照すると、ある「情報が意思決定に影響を与えること」を指して、「Materialityマテリアリティ」を用いており、日本語ではそれが「重要性」と訳されています。 その上で、適用基準28項では、「重要性がある情報を重要性がない情報で不明瞭にしたり、類似していない重要性がある項目を集約したりすることによって、サステナビリティ関連財務開示の理解可能性を低下させてはならない」ことが述べられています。 「予測価値」/「確認価値」 さらに、上述の「関連性」について、「サステナビリティ関連財務情報は、予測価値、確認価値又はこれら両方を有する場合に、利用者の意思決定に相違を生じさせることができる」(「適用基準」別紙A6**この別紙も、上記「適用基準」17項及び18項の詳細を説明するもので、「適用基準」を構成**)とし、「予測価値」、「確認価値」が投資家などの意思決定に影響を及ぼすことになり得ることを示唆しています。 その「予測価値」「確認価値」の詳細について、下記のように説明されています。 「予測価値」:「主要な利用者が将来の結果を予測するために用いるプロセスへのインプットとして使用できる場合に、予測価値を有する」(A7) 「確認価値」:「過去の評価に関するフィードバックを提供する(確認する又は変更する)場合には、確認価値を有する」(A8) なお留意したいのは、サステナビリティ関連財務情報が予測価値を有するためには、予測又は予想される必要はないという点です。つまり、「予測価値のあるサステナビリティ関連財務情報は、主要な利用者が自らの予測を行うにあたり」(A7)その予測過程のインプットとして使用されることが想定されている点にあります。 また、予測価値と確認価値の相互関連性についても触れられています。「予測価値を有する情報は、確認価値も有することが多い」(A9)とし、意思決定者(利用者)が予測するための基礎となる情報は、過去の予測と比較することもでき、そうした現在と過去の比較の結果は、過去の予測に使用されたプロセスを利用者が修正し改善することにも役立つことが、示唆されています。 4. つながりのある情報 さらに「適用基準」の主なる構成の一つであり、キーワードとしても捉えられる「つながりのある情報」について見ていきます。まず、その「つながり」の意味合いについて、「次の種類のつながりを理解できるように情報を開示しなければならない」として、適用基準29項で以下のように示されています。 「つながりのある情報」とは その情報が関連する項目の間のつながり(企業の見通しに影響を与えると合理的に見込み得る、さまざまなサステナビリティ関連のリスク及び機会の間のつながりなど) サステナビリティ関連財務開示内の開示の間のつながり(ガバナンス、戦略、リスク管理並びに指標及び目標に関する開示の間のつながりなど) サステナビリティ関連財務開示と、その他の財務報告書(関連する財務諸表など)の情報との間のつながり さらに別紙BC53および56をみると、次のような詳細がうかがえます。 記述的な情報と定量的な情報との間のつながり(関連する指標及び目標並びに関連する財務諸表に含まれる情報などを想定)も含む。 上記(1)のさまざまなサステナビリティ関連のリスク及び機会に関する開示の間のつながりについて、例えば、サステナビリティ関連のリスク及び機会のそれぞれについての個別の開示ではなく、統合されたガバナンスの開示を提供することが考えられる。 企業のサステナビリティ関連のリスク及び機会並びに企業の戦略が、短期、中期及び長期にわたり企業の財政状態、財務業績及びキャッシュ・フローに与える複合的な影響についての説明も含まれる。 サステナビリティ関連のリスク及び機会に対応する戦略を策定するにあたり、企業が評価した代替案の記述も含まれる。 このように、一言で「つながり」といっても、項目間のつながりから時間的つながりに至るまで、様々なレベルにおける縦横のつながりに関する情報開示が求められることになります。また多様なつながりを単に示すだけでなく、そのつながり同士が、どのようにガバナンスにつながっているかを必要があります。つまり「木を見て森も見る」のイメージです。 また上記(3)については、あらためて適用基準30項で「サステナビリティ関連財務開示の作成に用いるデータ及び仮定は、関連する財務諸表の作成にあたり準拠した会計基準を考慮したうえで、可能な限り、関連する財務諸表の作成に用いるデータ及び仮定と整合させなければならない」と強調しています。 「つながりのある情報」の提供方法 さらに、そうした整合をとる方法も含めて、「つながりのある情報を提供するにあたり、次のことを行わなければならない」として、具体的な方法について述べています(適用基準31項)。 開示の間のつながりを明瞭かつ簡潔に説明する。 サステナビリティ開示基準が共通の情報項目の開示を要求する場合、不必要な繰り返しを避ける。 サステナビリティ関連財務開示を作成するにあたり用いたデータ及び仮定と、関連する財務諸表を作成するにあたり用いたデータ及び仮定との間の重大な差異に関する情報を開示する。 「つながりのある情報」を重視する理由 なぜ「つながりのある情報」を重視するのでしょうか?別紙BC54~55にその理由が示されています。 企業が特定のサステナビリティ関連の機会を追求し、その結果、企業の売上高が増加した場合、つながりのある情報は、企業の戦略と財務業績との間の関係を描写する。 企業が、自身がさらされている2つのサステナビリティ関連のリスクの間にトレードオフを識別し、当該トレードオフの評価を基礎として行動した場合、つながりのある情報は、それらのリスクと企業の戦略との間の関係を描写する。 企業が特定のサステナビリティ関連の目標の達成を約束しているが、財務諸表の作成にあたり準拠した会計基準における認識規準を満たしていないため、当該約束がまだ企業の財政状態又は財務業績に影響を与えていない場合、つながりのある情報は、その関係を描写する。 5. サステナビリティ関連のリスク及び機会に関する情報の開示 既に、「つながりのある情報」の中に何度も出てきている「リスクおよび機会に関する情報」について、適用基準のもう一つの主なる構成になっていることから、ここで詳細のポイントを見ていきたいと思います。 まず、適用基準34項で「サステナビリティ関連財務開示は、企業の見通しに影響を与えると合理的に見込み得るサステナビリティ関連のリスク及び機会に関する情報を開示しなければならない」と示されています。 次に、適用基準35項で、「企業の見通しに影響を与えると合理的に見込み得るサステナビリティ関連のリスク及び機会に関する情報を開示するにあたり、次のことを行わなければならない」としています。 企業の見通しに影響を与えると合理的に見込み得るサステナビリティ関連のリスク及び機会の識別
- [IPO準備会社がバックオフィス業務についてアウトソースできること・できないこと](https://shiodome.co.jp/column/18450/) - IPO準備会社は、急成長する場合が多く会社規模の拡大に比べて人材が追いついていかないことが多い傾向にあります。限られた人材は、営業部門などのキャッシュを直接稼ぐ部門に優先的に充てざるおえず、中でも管理部門における人員配置は後手になる場合が多いです。このため、いわゆるバックオフィス業務と呼ばれる業務についてはアウトソーシングを活用することが珍しくありません。 しかし、すべてのバックオフィス業務を外部に出してしまうことには問題があります。以下では、IPO準備会社がアウトソーシングできる業務とできない業務について詳細に解説をしていきます。 1. IPO準備会社のバックオフィス業務の概要 バックオフィス業務は、管理部門と呼ばれる総務部、人事部、経理部、情報システム部といった部門が担う業務になります。ただIPO準備会社と上場企業、また上場企業でも売上高数兆円規模の会社では、これらの部門が担当する業務範囲も相当に異なります。 IPO準備会社でいうバックオフィス業務とは、主に総務部(許認可申請業務、在留資格業務など)、経理業務(税務申告書業務、年末調整・法定調書作成業務など)、人事業務(給与計算業務、社会保険加入・脱退手続業務、労働保険加入・脱退業務、退職関連業務など)を指します。 2. バックオフィス業務のアウトソーシングのメリット IPO準備会社がアウトソーシングを行うことにより主に下記のようなメリットがあります。 (1) 経営資源の有効活用 アウトソーシングを導入することにより、IPO準備会社は売上高・利益獲得に直結するいわゆるフロント部門の仕事に限られた人員を集中配置することが可能となります。当然のことながら、管理部門も上場のためには決して疎かにすることはできませんが、そもそも売上高・利益が獲得できなければIPOどころか会社の維持すらできません。 アウトソーシングを導入することで管理部門の作業工数を減らし、その分をフロント業務に費やすことが可能となります。 (2) 業務スピードと品質の向上 上場にあたり、IPO準備会社は上場申請の直前々期(N-2期)、直前期(N-1期)、申請期(N期)において、監査法人等による準金商法監査(金融商品取引法第 193 条の 2 第1項の規定に準じて、IPOを目指す企業に対して行われる監査)の監査証明業務を受けます。このため、一定期間内に、税務基準ではなく上場企業に適用されている企業会計基準に従った決算書を作成する必要があります。企業会計基準による会計処理は、税務基準による会計と比べると遥かに複雑です。また決算書が企業会計基準に従って作成されていることから、税務と会計に差異が発生し税務申告書の作成も、従来に比べ複雑になります。 このためIPO準備会社の管理部のみで、一定期間内に監査法人による会計監査に耐えられる決算書を作成することは一般に困難です。これらの業務についてアウトソーシングを利用することで、質の高い成果物を一定期間内に入手することが可能となります。 (3) コスト削減 IPO準備会社が、企業会計基準による決算書や税務申告書の作成が可能な従業員を採用する場合、一般に高額な人件費が発生します。このため管理部門には、CFO又は管理部長に関しては高度な会計・税務知識をもった人員を配置し、その他のメンバーについては、高度の専門知識は求めず、人員数も少数におさえアウトソーシングを活用し管理部門のコストを抑えるといった方法を採用することが可能となります。 3. アウトソースできる業務 上記のとおりIPO準備会社は、管理部門業務についてアウトソーシングを活用することにより、一般に業務が効率化できますがすべての管理業務についてアウトソースすることは困難です。管理業務の中には、社内のビジネスモデルの理解が必要である業務や社内の内部事業の習熟が求められる業務などが存在するためアウトソーシングすることで却って業務の効率性が悪化する可能性があります。以下ではまず、アウトソース可能な業務について説明します。 (1) 税務申告書作成業務 税務申告書の作成は、決算書を基に作成します。税務申告書の作成はこの決算書をベースにして税務上の特有の処理を加えて作成するため、作成に必要な情報さえあれば、あとは税務の専門知識さえ有していれば作成することが可能です。 このためIPO準備会社の多くは、税務申告書作成業は、税理士法人等にアウトソーシングしていることが一般的です。なお、IPO準備会社だけでなく上場会社の中にも、税務申告書作成業務をアウトソーシングしている会社は多く存在します。 (2) 給与計算・年末調整業務 給与計算は、アウトソーシング先に社員の入社時に雇用通知書や労働条件通知書を送付し、アウトソーシング先が従業員マスタに個人情報を入力し、各月ごとに各従業員の残業時間情報を送付、退職時には退職届等を送付すれば、アウトソーシング先は給与計算を実施するこができます。 年末調整業務についても、扶養控除等(異動)申告書や配偶者控除等申告書などをアウトソーシング先に提出すればアウトソーシング先が業務を実施できます。なおこちらも、IPO準備会社だけでなく上場会社の中にも、税務申告書作成業務をアウトソーシングしている会社は多く存在します。 (3) 社会保険手続業務 社会保険加入・脱退手続は、アウトソーシング先が、事業所の状況(強制適用又は任意適用)、従業員の状況を把握できれば、健康保険、厚生年金保険、新規適用届や健康保険、厚生年金保険、被保険者資格取得届など必要書類を代理で作成し提出することが可能です。このため、アウトソースできる業務となります。 (4) 在留資格業務 在留資格業務は、IPO準備会社が外国人を雇用する場合に必要となります。アウトソーシング先に対象者の情報提供を行い、在留資格に応じた申請書を提出することで業務をアウトソーシング先が当該業務を実施することが可能となります。 (5) 許認可業務 許認可業務は、IPO準備会社の実施する業務が行政機関からの許認可が必要な特定業務を実施する際に必要となる業務です。この場合も、アウトソーシング先がIPO準備会社の実施業務を把握すれば、必要書類を代理作成・提出できるためアウトソースが可能な業務となります。 4. 部分的にアウトソースできる業務 次に部分的にアウトソース可能な業務について解説していきます。 (1) 税金計算業務 税金計算業務は、申告書作成業務を実施しているアウトソーシング先も実施しますが、IPO準備会社もエクセルなどを使用し、大まかな理論納付額を独自に算出しておく必要があります。具体的な別表などの詳細な申告書は完全にアウトソーシング先が作成することになりますが、納付額はIPO準備会社自身も理論値を算出し、アウトソーシング先が申告書で算出した金額と大幅な乖離がないかを確認する必要があります。大きな差異が発生していた場合、アウトソーシング先の算出結果をむやみに受け入れるのではなく、当該差異要因を分析し、最終的にIPO準備会社が納得した納税額とする必要があります。 (2) 内部監査業務 内部監査とは、IPO準備会社の内部統制の一部であり、IPO準備会社の内部統制が正常に機能しているかどうかを確認することです。当該業務を実施するのは、上場会社では、内部監査部門が設けられていることが多く、当該部門が内部監査を実施することになります。当該部門は、他部門と独立していることが求められ、会社組織図では、社長直属下に配置されます。IPO準備会社の場合、人材リソースの限りから当該部門が存在しないことが多く、自社で実施する場合、管理部門の従業員が兼務で実施する可能性が高く、独立性の観点からも問題となる可能性があります。このためIPO準備会社では、当該業務をアウトソースしている会社が見られます。 しかし、内部監査業務をアウトソーシングする場合は公正・独立性は担保されると考えられますが、完全にアウトソーサー任せにすることは上場審査において問題になる可能性があります。社長等が内部監査の重要性を認識したうえで、定期的にアウトソーシング先から報告を直接受けるなど、主体的に関与していくことが必要となることに留意する必要があります。 (3)
- [IPO準備会社のIFRS対応と税務論点](https://shiodome.co.jp/column/18464/) - 2013年6月に、IFRS適用要件が緩和され、①上場企業要件の削除 ②国際的な財務活動・事業活動要件が削除されました。これにより、IPO準備会社、再上場準備会社についても、IFRSを任意適用した上場スキームが可能となりました。IFRSを任意適用することは、世界中の人が共通で使える、高品質で単一の会計の物差し(会計基準の世界標準)で連結財務諸表を作成することです。もちろん、グローバルオファリングや海外投資家の投資を容易にするメリットもあります。一方、IFRSを任意適用することは、2つの会計基準を並行して適用することとなり、取引所審査への準備も労力を要するものとなります。 下記では、IPO準備会社がIFRSを導入する場合の具体的な対応及び税務上の論点について解説していきます。 1. IFRSとは IFRSは、「国際財務報告基準 (International Financial Reporting Standards)」の略語であり、国際会計基準審議会 (International Accounting Standards Board:IASB) が策定する会計基準です。 前身の国際会計基準委員会 (International Accounting Standards Board:IASC) 時代に作られた会計基準は「国際会計基準 (International Accounting Standards:IAS)」と呼ばれていました。IASはIASBに継承され、一部は現在も有効です。個々のIFRS及びIASはIASBが定款に定められた適切なデュープロセスに基づいて順次改訂、見直しを行っています(IASBプロジェクト計画表)。なお、全ての基準を総称するときにも、「IFRS」と総称されます。 米国、日本等においては、自国基準を保持しながら、自国基準とIFRSとの差異を縮小することによってIFRSと同様な会計基準を採用しようとする「コンバージェンス」が進められてきましたが、欧州連合 (European Union:EU) がEU域内上場企業の連結財務諸表にIFRSの適用を義務付け、域外上場企業にも「IFRS又はこれと同等の会計基準」の適用を義務付けたことを契機に、IFRSを自国の基準として採用する「アドプション」を表明する国が急速に増加し、世界的に「アドプション」ないしは「フル・コンバージェンス」への方向転換が加速化しています。 2. IFRSの採用がIPOに与える影響とは (1) IFRSの採用 現在、日本においてはIFRSの適用は上場・非上場、企業規模に関係なく、強制されていません。このためIPO準備会社がIFRSを採用することは、任意適用になります。IFRSの任意適用とは、決算開示書類をIFRSに基づいて作成して報告・提出することを意味します。連結財務諸表はIFRSが適用される一方、単体財務諸表は日本基準が適用されるため、2つの会計基準を並行して適用する必要があります。これにより、利益計画、予算実績分析なども2つの会計基準により実施することになります。 (2) 上場審査に与える影響について 取引所の実質基準上場審査は、有価証券上場規程第207条における下記5つの適用要件への適合状況に対して上場判断がなされますが、IFRSを任意適用させた場合でも、これらの適用要件に大きな変更点はありません。 ①IFRSを導入する理由について IFRSの任意適用に関して、「実態に即した会計基準を採用し、必要な会計組織が、適切に整備、運用されている状況にあること」、「企業内容の開示に係る書類が法令等に準じて作成されているか、かつ、投資家の投資判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項や主要な事業活動の前提となる事項について適切に記載されていること」について確認されます。その審査の過程で、IFRS導入の経緯、任意適用した理由について質問・確認されます。IPO準備会社は、企業グループにとって、IFRS導入のメリットを説明できる必要があります。 ②IFRSベースでの予算管理 上場審査では、予算統制に関して、「予算の策定が組織的に、かつ合理的に行われているか」について確認されます。この場合の予算は、「中期事業計画、年度予算、四半期、月次の単位でどのようなプロセスで作成されているか」、「上場後の公表する情報として有用なものか」について検討されます。連結財務諸表、四半期連結財務諸表がIFRSで作成される場合、当然予算もIFRSで作成することが要請されます。 ここで重要な点は、いつの時点からIFRSベースの予算を作成するかです。予算策定の信頼性を最も重視する期間は、申請期です。ただし、信頼性の確認には、策定根拠の妥当性のみならず、過去の予算と実績の乖離度合いも検討されます。過去の予算乖離の検討では、直前期のみならず、直前々期からのIFRSベースの予算作成と運用が望まれます。さらに、予算管理の審査では、「予算と実績の差異に関する分析及び予算達成のためのアクションが適切にとられているか (経営判断を含む)」、「予算統制スケジュールが適時開示上に支障がないか」、また「その後の事業活動や予算作成に反映されているか」について検討することになります。 申請会社単体では、日本基準での予算と実績の差異分析を行い、企業グループではIFRS基準で予算と実績の差異分析を行うため、両者の相関性が重要視されます。IFRS導入プロセスにおいて、申請会社単体の会計制度と企業グループの会計制度の差異をできるだけ排除することが望まれます。また、申請期では、月次での予算と実績の差異分析が求められます。タイムリーなIFRSベースの月次決算体制の確立と有効な分析の運用状況が要請されます。取引所審査の前で行われる主幹事証券審査もありますので、直前期からIFRSベースの月次決算体制の導入と、予算と実績の差異分析の実施が必要となります。 ③「のれん」に関する事項ついて IFRSの会計処理のうち日本基準と大きく異なる処理として、「のれん」の償却処理があります。日本基準の「のれん」償却に関する会計処理は、20年以内のその効果の及ぶ期間にわたって償却する一方で、減損の兆候がある場合には、減損損失を認識するかを判定します。IFRSの「のれん」償却に関する会計処理では、償却は行わず、減損の兆候の有無にかかわらず、最低毎期1回減損テストを行います。日本基準とIFRSで「のれん」の償却方法が大きく異なるため、「のれん」償却の金額が多額となる場合、利益に与えるインパクトが大きくなります。このため、「のれん」の審査では、開示の適正性、利益に与えるインパクト等を検討するために以下の事項が特に確認されます。なおこれらは、監査法人等による準金商法監査(金融商品取引法第 193 条の 2 第1項の規定に準じて、IPOを目指す企業に対して行われる監査)でも主要な監査論点となります。 「のれん」の発生の理由及び経緯 当初計上額の算定方法 減損テストの具体的方法 「のれん」関連の開示 3. IFRS対応における税務上のポイント
- [日本初のサステナビリティ開示(SSBJ)基準を紐解く・その3:柱2(テーマ別1)「 一般基準」](https://shiodome.co.jp/column/26815/) - 1. ポイント 本コラムシリーズ・その3では、SSBJ基準の2本目の柱、サステナビリティ開示テーマ別基準第1号「一般開示基準」(「一般基準」)を紐解いていきます。 本コラムシリーズ・その1でも触れたように、「一般基準」は、ISSBのIFRS S1の「コア・コンテンツ」に相当し、TCFD(「気候関連財務開示に関するタスクフォース」)による提言を基礎としています。その「コア・コンテンツ」とは、「ガバナンス・戦略・リスク管理・指標及び目標」の4つの構成要素を指し、それに基づくサステナビリティ情報開示が求められます。 TCFDとの関連では、既に日本において2023年1月に「企業内容等の開示に関する内閣府令」が改正され、上場会社等に対して、2023年3月期の有価証券報告書から新設されたサステナビリティの記載欄において、4つの構成要素に基づく開示を行うことが求められています。また、東京証券取引所が公表する「コーポレートガバナンス・コード」では、2021年6月の改訂において、プライム上場企業に対し、TCFD又はそれと同等のフレームワークに基づく開示の質と量の充実を進める必要があるとの考えが示されてきました。 一方これまでにTCFD等への対応を通して、上記4つの要素について馴染みがある場合でも、これまでと同じことをやっていればよい、ということにはならなさそうです。その理由の1つとして、一般開示基準の隠れたキーワードにもなっている「レジリエンス(Resilience)」があります。 「一般基準」では、レジリエンスを「サステナビリティ関連のリスクから生じる不確実性に対応する企業の能力」(一般基準24項)と定義しています。レジリエンスはTCFDにも含まれていますが、「一般基準」では、戦略やビジネス・モデルにおけるレジリエンス評価が求められるなど、これまでの取り組みにさらに一歩踏み込んだレジリエンス対応が求められることに、留意する必要があると言えるでしょう(詳細は7.参照)。 2. 「一般基準」目的・範囲 まず全体として、SSBJ「一般基準」の目的は、「財務報告書の主要な利用者が企業に資源を提供するかどうかに関する意思決定を行うにあたり有用な、当該企業のサステナビリティ関連のリスク及び機会に関する情報の開示について定めること」(一般基準1項)にあり、「企業の見通しに影響を与えると合理的に見込み得るサステナビリティ関連のリスク及び機会に関する情報を開示し」(一般基準2項)、そうとは「見込み得ないサステナビリティ関連のリスク及び機会に関する情報については、開示する必要はない」(一般基準2項)としています。 また、その範囲に関連して、「本基準は、サステナビリティ開示基準に従ってサステナビリティ関連財務開示を作成し、報告するにあたり、適用」(一般基準3項)するものであって、「本基準以外のサステナビリティ開示基準が、サステナビリティ関連のリスク及び機会に関する情報の開示について具体的に定めている場合、これに従わなければならない」(一般基準4項)と定めています。 なお、この一般基準のガバナンス~指標に至るまで一貫して使われている「サステナビリティ関連のリスク及び機会」について、本コラムシリーズのコラム2で注目した「適用基準」の中の「つながりのある情報」の視点から、その範囲を捉えておく必要があります。 3. ガバナンス 上記を留意しつつ、「コア・コンテンツ」の4つの構成要素それぞれに沿って、具体的なサステナビリティ情報の開示方法について、主な点を見ていきましょう。 まず、ガバナンスについて、サステナビリティ関連のリスク及び機会をモニタリングし、管理し、監督するために企業が用いるガバナンスのプロセス、統制及び手続を理解できるように、(1)監督責任を担う機関または個人、および(2)経営者の役割に関して、それぞれ次を含む情報を開示するよう求めています(一般基準8項~10項)。 (1)サステナビリティ関連リスク及び機会の監督に責任を負うガバナンス機関又は個人に関して リスク及び機会の監督に責任を負うガバナンス機関又は個人に与えられた役割・権限・義務などに関する記述に、サステナビリティ関連のリスク及び機会に関する責任がどのように反映されているか 上記リスク及び機会に対応するために定めた戦略を監督するための適切なスキル及びコンピテンシーについて、上記の機関又は個人がどのように判断しているか 上記の機関又は個人が、上記のリスク及び機会について、どのようにどの頻度で情報を入手しているか 上記の機関又は個人が、企業の戦略・主要取引に関する意思決定・当該企業のリスク管理プロセスなどを監督するにあたり、上記のリスク及び機会をどのように考慮しているか 上記機関又は個人が、上記リスク及び機会に関連する目標の設定をどのように監督し、それらの目標の達成に向けた進捗をどのようにモニタリングしているか (2)経営者の役割に関して サステナビリティ関連のリスク及び機会をモニタリングし、管理し、監督するために用いるガバナンスのプロセス、統制及び手続における経営者の役割に関して、役割が具体的な経営者等又は経営者等が関与する委員会その他の機関に委任されている場合、その詳細 その経営者等又は委員会その他の機関に対し、どのように監督が実施されているか 経営者が上記監督を支援するために、所定の統制及び手続を用いている場合、その統制及び手続は、その他の内部機能とどのように統合されているか 4. 戦略 次に、戦略について、具体的には、次の事項を開示しなければならないとしています(一般基準12項)。 企業の見通しに影響を与えると合理的に見込み得るサステナビリティ関連のリスク及び機会 上記(1)のリスク及び機会が企業のビジネス・モデル及びバリュー・チェーンに与える影響 上記(1)のリスク及び機会の財務的影響 上記(1)のリスク及び機会が企業の戦略及び意思決定に与える影響 上記(1)のリスクに関連する企業の戦略及びビジネス・モデルのレジリエンス 特に12項(1)のサステナビリティ関連のリスク及び機会のうち、相互に関連し合う複数のリスク及び機会については、「適用基準」29項(1)に従い、「関連する項目の間のつながりを理解できるように情報を開示しなければならない」と、強調されています。 なお、上記(2)の「バリュー・チェーン」については、コラム1で述べたように、「報告企業のビジネス・モデル及び当該企業が事業を営む外部環境に関連する、相互作用、資源及び関係のすべて」(適用基準4項(12))を指します。 また、上記(5)の戦略とビジネス・モデルのレジリエンスについては、「サステナビリティ関連のリスクに関連する、報告期間の末日における戦略及びビジネス・モデルの」レジリエンスに関する定性的評価および定量的評価(「一般基準」24項)などが求められることに、留意が必要です(詳細7.参照)。 5. リスク管理 さらにリスク管理について、(1)サステナビリティ関連のリスク及び機会を識別し、評価し、優先順位付けし、モニタリングするプロセスを理解すること、(2)企業の全体的なリスク・プロファイル及び全体的なリスク管理プロセスを評価することができるように、次のような情報を開示するよう求めています(一般基準28~29項)。 企業がサステナビリティ関連のリスクを識別し、評価し、優先順位付けし、モニタリングするために用いるプロセス及び関連する方針に関する、下記を含む情報サステナビリティ関連のリスクを識別し、評価し、優先順位付けし、モニタリングするため用いるインプット等に関する情報(例えば、データの情報源及び当該プロセスの対象となる事業の範囲に関する情報) サステナビリティ関連のリスクを識別するためのシナリオ分析に関する情報 サステナビリティ関連のリスクの影響の性質、発生可能性及び規模の評価方法に関する情報(例えば、定性的要因、定量的閾値又はその他の規準を考慮しているかどうか) サステナビリティ関連のリスクの優先順位付けに関する情報 サステナビリティ関連のリスクをモニタリングする方法に関する情報 プロセスの変更に関する情報 6. 指標および目標 指標について サステナビリティ関連のリスク及び機会に関連する企業のパフォーマンスを理解できるようにするため、企業の見通しに影響を与えると合理的に見込み得るサステナビリティ関連のリスク及び機会のそれぞれについて、次の事項の情報開示が求められます(一般基準32項)。 適用されるサステナビリティ開示基準が要求している指標 次のものを測定し、モニタリングするために企業が用いている指標 識別したサステナビリティ関連のリスク又は機会 識別したサステナビリティ関連のリスク又は機会に関連する企業のパフォーマンス
- [日本初のサステナビリティ開示(SSBJ)基準を紐解く・その4:柱3(テーマ別2)「気候基準」](https://shiodome.co.jp/column/27011/) - 1. ポイント 本コラムでは、SSBJシリーズで公開しているその1~3のコラムに続いて、SSBJの三本目の柱「気候基準」を紐解いていきます。 大きな構成の観点からみますと、コラム3で扱った「一般基準」も「気候基準」も、TCFD(「気候関連財務開示に関するタスクフォース」)による提言を基礎としているだけに、どちらも「ガバナンス・戦略・リスク管理・指標及び目標」の4つの構成要素から成り、中身的にも対象がサステナビリティ情報開示か、気候関連情報開示かの違いに留まり、規定項目そのものは「一般基準」と「気候基準」は重なっている箇所も多く見られます。 一方「気候基準」は、気候関連のリスク(物理的と移行リスクの両方)その関連の機会に焦点を当て、企業の事業に影響し得る気候リスク・機会および「気候レジリエンス」(詳細後述)に関わる情報開示のための、詳細で具体的なガイダンスを提供しているところが、「気候基準」と「一般基準」の大きな違いとなります。他方、「気候基準」と「適用基準」及び「一般基準」とは一体のものであり、これらは同時に適用しなければならないとしていること(「気候基準」100項参照)に留意が必要です。 注目したいのは「気候基準」では、「気候レジリエンス」という言葉がキーワードの一つとして使われている点です。その「気候レジリエンス」について、「気候関連の変化、進展又は不確実性に対応する企業の能力」と定義され(5項(2)参照)、この定義に関わる具体的な解釈について、次のような示唆がなされています。 上記でいう企業の能力とは「気候関連のリスクを管理し、気候関連の機会から便益を享受する能力(気候関連の移行リスク及び気候関連の物理的リスクに対応し、適応する能力を含む)が含まれると考えられる」(別紙BC76)。 「気候レジリエンス」には、気候関連の変化、進展又は不確実性に対応する企業の戦略上のレジリエンスと、企業の事業上のレジリエンスの両方が含まれると考えられる(BC77)。 そうした理解を踏まえ、特に「戦略」に関する項目の中で、気候関連のシナリオ分析および気候レジリエンスの評価の詳細、さらに「指標および目標」に関する項目の中で細かなガイダンスが織り込まれているため、それらに着目していく必要があります。 下記では、一般基準と重なっている部分は最小限の記述に留めつつ、一般基準との「関係性」に焦点を当て、また上記で見るような「気候基準」の特徴をハイライトして紐解いていきます。特に4.「戦略」と6.「指標と目標」を重点的に紐解きます。 2. 目的・範囲 まず、「気候基準」の目的は、「財務報告書の主要な利用者が企業に資源を提供するかどうかに関する意思決定を行うにあたり有用な、当該企業の気候関連のリスク及び機会に関する情報の開示について定めること」にあります(1項)。その上で、「企業の見通しに影響を与えると合理的に見込み得る気候関連のリスク及び機会に関する情報を開示」しなければなりません(2項)。 この基準の範囲として、ここで求められる情報開示の対象は、「企業がさらされている気候関連のリスク(気候関連の物理的リスク及び気候関連の移行リスクを含む。)及び企業が利用可能な気候関連の機会」(3項)です。 なお、上記でいう「気候関連の物理的リスク」とは、「気候変動によりもたらされるリスクで、事象を契機とすることがあるもの(急性の物理的リスク)又は気候パターンの長期的な変化によるもの(慢性の物理的リスク)」を指します(4項(2))。さらに「気候関連の移行リスク」とは、「低炭素経済に移行する取組みから生じるリスク」を指し、その移行リスクには、政策、法律、技術、市場及びレピュテーション・リスクが含まれます(4項(3))。また、「気候関連の機会」については、例えば、消費者のニーズ又は選好の変化に応じて、自社ブランドの評判を高める新製品及び新サービスを開発することなどが考えられます(BC27)。 気候リスクといえば、一般的に、大規模洪水やハリケーンなど急性の物理的リスクをイメージすることが多いですが、顕在化しにくい慢性の物理的リスクも含みますし、あらゆる側面から移行リスクや機会も捉えておく必要があることが、留意点と言えるでしょう。 3. ガバナンス 「気候基準」のガバナンスに関する定めは、全体として「一般基準」のガバナンスの定めと整合しており、「一般基準」における「サステナビリティ関連のリスク及び機会」という用語を「気候関連のリスク及び機会」に置き換えたうえで、全文が示されています(BC38)。 その上で、「気候基準」ガバナンスに関する開示において、「不必要な繰り返しを避けること」が言及されています(12項)。つまり、この言及は「一般基準」と「気候基準」が重なっていることと関連しているのでしょう。具体的には、気候関連のリスク及び機会について、他のサステナビリティ関連のリスク及び機会とは区別せず、全体的にガバナンスのプロセスや管理体制を構築している場合は、ガバナンスに対する全体的なアプローチを記述し、気候関連のリスク及び機会について採用するアプローチに関しては、具体的な記述を追加することが適切であるといったケースが考えられます。 4. 戦略 「気候基準」の「戦略」は、13項から39項までカバーされています。まず、一般基準と同様に、「気候関連のリスクおよび機会」の情報開示するにあたり、「企業の見通しに影響を与える合理的に見込み得る気候関連のリスクおよび機会を識別すること」が要求されています。その際、ISSBが公表される「産業別ガイダンス」に定義される開示トピックを参照し、その適用可能性を考慮することを求めています(17項)。また開示の際、「一般基準」でも強調されたように、短・中・長期の時間軸などについて考慮することが必要になります(19項(3))。 さらに「一般基準」と同様に、「ビジネス・モデル」および「バリューチェーンに与える影響」、「財務的影響」を踏まえた開示が求められています(20項~24項)。なお、その財務的影響の開示において、「定量的情報の開示とその免除」についても規定が設けられています(25項~27項)。 その後の「企業の戦略及び意思決定」の項目では、「一般基準」と同様の記載として、「企業の見通しに影響を与えると合理的に見込み得る気候関連のリスク及び機会について、次の事項を開示しなければならない」とする中で、「企業の戦略及び意思決定において、気候関連のリスク及び機会にどのように対応してきたか、また、今後対応する計画であるか」(28項(1))などが求められていますが、「気候基準」には具体的にさらに次のことが求められています。 「報告期間の末日において資源を確保している方法および将来において資源を確保するための計画の内容を含める」(28項(2))。 28項(1)について、具体的には、次の事項を開示しなければならない(29項)。 気候関連のリスク及び機会に対処するために、現在のビジネス・モデル(資源の配分を含む。)を変更している場合には、その内容。また、将来におけるビジネス・モデル(資源の配分を含む。)の変更が予想される場合には、その内容 気候関連のリスク及び機会に対処するために、現在、直接的及び間接的な緩和及び適応の取組みを実施している場合には、その内容。また、将来における直接的及び間接的な緩和及び適応の取組みが予想される場合には、その内容 気候関連の移行計画がある場合、当該移行計画の内容(移行計画の作成に用いた主要な仮定並びに移行計画を実現するうえで不可欠な要因及び条件に関する情報を含む。) 気候関連の目標(温室効果ガス排出目標を含む。)(92項から99項参照)がある場合、当該目標を達成するための計画の内容 さらに、上述した「気候レジリエンス」の項目の中で、「気候関連のシナリオ分析」と「気候レジリエンス評価」について、詳細が述べられています(その詳細については、後述7.を参照ください)。重要な点として、「気候関連のシナリオ分析」は、「最低限、戦略計画サイクルに沿って更新しなければならない」とされ、報告期間ごとに実施することは要求していない(30項参照)一方、「気候レジリエンスの評価」については、「報告期間ごとに実施しなければならない」(30項参照)とされている点に、留意が必要です。 つまり、気候レジリエンスについて最新の状況を毎年評価し、その都度報告に反映することが要求される、という点を理解しておく必要があります(BC94参照)。このような規定は、気候レジリエンスの在り方はそれだけ、企業の重要な見通しに結びつくことを重視したものと見ることができるでしょう。 5. リスク管理 「気候基準」のリスク管理に関する定めは、「一般基準」の定めと整合しています。40項及び41項の定めについては、「一般基準」における「サステナビリティ関連のリスク及び機会」という用語を「気候関連のリスク及び機会」に置き換えたうえで、省略することなく全文が示されています(BC103)。また上記ガバナンスの場合と同様に、不必要な繰り返しを避けることを要求しています(42項)。 6. 指標および目標 この項目については、43項~99項までかなり長い規定になっており、またテクニカルな指示が多いことから、極めて重要な点のみ2点指摘したいと思います。 1点目は、「一般基準」第32項(1)において定められているとおり(コラムその3参照)、本基準が明示的に開示を要求している指標については、企業がこれらの指標を事業において用いていない場合においても開示することが要求されているということです。このため、特に実際に温室効果ガス排出の測定および情報開示をはじめとする気候関連の指標については43~99項および別紙のテクニカルな指示事項について熟知しておく必要があります。 ただし、当該定めは、主要な利用者にとって有用となる可能性が高い情報を入手できるようにすることを確保することを目的としており、本基準に示されている指標を用いて事業を管理することは要求されないと考えられます(BC106)。 2点目は、TCFDとの違いに関わるものです。 TCFDの提言では、いわゆるスコープ3排出量について「企業は、可能な範囲で、スコープ1、スコープ2、および適切な場合にはスコープ3の温室効果ガス(GHG)排出量を開示すべきである」とされ、スコープ3の開示は企業の判断に委ねられ、任意であり、企業が自らの状況に応じて判断することが許容されています(注:スコープ1~3の規定については、ESG分野では広く周知されていると考えられることからここでは詳細を省きます)。これに対し、一方、SSBJの「気候関連開示基準」では、スコープ3排出量の開示がより具体的に求められています。 具体的には、「企業は、スコープ1、スコープ2、およびスコープ3のGHG排出量を開示しなければならない」(47項)とされ、スコープ3については、GHGプロトコルのスコープ3基準に従って、基本的には15のカテゴリー(6項(13)、BC114, BC149参照)に分類して開示すること求められています。これは、企業にとってより厳格な開示要件となっている点に、留意する必要があります。 7. 「気候レジリエンス」について 最後に、「戦略」の中で述べた「気候レジリエンス」の詳細のポイントを見ておきましょう。 まず、気候レジリエンスの評価は、気候関連のシナリオ分析に基づく必要があるとし、また上述のように、その気候レジリエンス評価は、報告期間ごとに実施しなければならない(30項)ことを前提としています。その上で、識別した気候関連のリスク及び機会を考慮し、次の事項を開示しなければならない(31項)として、以下を挙げています。 実施した気候関連のシナリオ分析の手法及び実施時期(33項~38項参照) 報告期間の末日における気候レジリエンスの評価(第39項参照) 下記では、上記(1)(2)の詳細について詳細を見ていきます。 気候関連のシナリオ分析 気候関連のシナリオ分析に対して用いるアプローチを決定するにあたり、次の事項を検討しなければならないとしています(35項)。 気候関連のシナリオ分析に対して用いるインプットの選択
- [日本初のサステナビリティ開示(SSBJ)基準を紐解く・その5:傾向と今後の方向性](https://shiodome.co.jp/column/27283/) - 1. 企業を取り巻くサステナビリティ基準を取り巻く傾向 SSBJ基準を紐解くシリーズとして、コラムその1~その4までを振り返ってみます。SSBJは、これまでにも述べてきましたように、一言でいうと、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言における4つの構成要素(ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標)を、気候から全てのサステナビリティ関連のリスクと機会に拡大するための、またこれまでのTCFDへの企業の取り組みをさらに強化するための基準と位置付けることができます。その中身を俯瞰して(鳥の目と虫の目で)見渡しますと、傾向として大きく2点、挙げることができます。 第一に、企業の見通しと、サステナビリティ関連のリスク及び機会とのあいだ、および気候に関わるリスク及び機会とのあいだの「つながり」を多面的視点から捉え、その構造と関係性をしっかり見据える必要性が強まっています。具体的には、下記のような側面の「つながり」が重視される傾向があります。 三本の矢のつながり:企業の見通しと環境・社会・ガバナンス(ESG)と気候対応、いわば三本の矢のつながり 外部環境とのつながり:外部環境、より具体的には「バリュー・チェーン」、つまり、「報告企業のビジネス・モデル及び当該企業が事業を営む外部環境に関連する、相互作用、資源及び関係のすべて」(適用基準第4項(12))とのつながり 情報間のつながり:「つながりのある情報」(適用基準29項)を軸に次のことが含まれる さまざまなサステナビリティ関連のリスク及び機会の間のつながり ガバナンス、戦略、リスク管理並びに指標及び目標に関する開示の間のつながり サステナビリティ関連財務開示と、その他の財務報告書の情報との間のつながり 記述的な情報と定量的な情報との間のつながり 気候レジリエンス評価などに使うシナリオ分析のための個々のインプット情報のつながり(情報を組み合わせて得られる情報) このように多面的な「つながり」を重視し、そのつながりの構造と関係性を継続的に捉えることによって、企業のサステナビリティ視点と財務的視点の両方を同時に見据えたガバナンスや戦略の在り方を含めて定期的に見直すことにつなげていく——。こうしたサステナビリティ関連情報開示の在り方が、SSBJの本質的な狙いになっていくだろうと考えられます。 第二に、企業は、サステナビリティに関わる「不確実性」への対応が求められる傾向にあります。この不確実性は、既に顕在化している気候変動の影響(極端気象、大洪水、海面上昇、熱波、山火事など)や、今後も益々顕在化していくと考えられる気候危機にも関わります。さらに、気候のみならず、サステナビリティ全体に関わる環境や社会が、気候リスクとも絡まって様々な負の連鎖が見られることにも関連します。こうした時代において、明日どこで何がどのように起きるかも予測が難しいことなどを含めた「不確実性」に対して、企業はどのようなアプローチをとるのか、それが企業の事業や社会の持続可能性にも関わってくる——。それへの対応が企業に大きく問われる傾向にあると見ることができます。 上記アプローチに関連して、具体的には、コラムその3やその4でハイライトしてきたように、「サステナビリティ関連のリスクから生じる不確実性に対応する企業の能力」としての「レジリエンス」を定期的に評価し、その評価に基づいて企業の対応を更新することが求められていくようになるでしょう。 2. 今後の方向性 ISSBまたはSSBJのサステナビリティ基準は、今回発表されもので完結したわけではありません。実際、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)は、既に2024年4月に「生物多様性・生態系・生態系サービス(BEES)」および「人的資本」に関するリスクと機会の開示に焦点を当てた新たなリサーチ・プロジェクトを開始しています。 上記の動きは、言い換えれば、自然資本については、気候関連情報開示をさらに一歩踏み込んで、より具体的に企業活動と生物多様性や生態系への影響との関係、生物多様性劣化や生態系崩壊が企業の事業に及ぼす影響、つまりTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)に関わる範囲、またはそれを超える範囲も、射程に入れていく方向性にあると理解することができます。また人的に資本に関連して、そのようにBEESを射程に入れることは、従業員のスキル、経験、健康、エンゲージメントなども高めていくことに関係するようになっていくでしょう。 このように自然資本と人的資本を、財務資本や社会的資本と並行して、企業ガバナンスや戦略の根幹に取り込み、サステナビリティ情報開示を進めていく方向性にあるといえます。 なお上記BEESと人的資本に関するリスクと機会の開示に焦点を当てたプロジェクトについて、ISSBは2025年6月に、フィードバックへの対応及び今後2年間の作業計画とあわせて、アジェンダ協議に関するフィードバックの要約を公表する予定としています。 3. 企業に今後求められるもの これまでに述べてきたことを踏まえ、企業に今後求められるものとして、大きく3点挙げることができます。1点目は、上記1.企業を取り巻くサステナビリティ基準を取り巻く傾向に対して、紙面上だけでない、本質に根ざした対応です。 特に、1.1)で取り上げた、企業の見通しと環境・社会・ガバナンス(ESG)と気候対応という三本の矢は、もともと重なっているところが多くありますが、それらを「戦略的な」視点からもう一度その「関係性」を社内で見直し、その「関係性」を捉え直した上で企業の見通しを立てることが、極めて重要と考えられます。また1.2)については、SSBJ基準全体が、報告企業自体だけでなく、バリュー・チェーンにも適用されることから(適用基準第4項(12)にも適用されることから、製品又はサービス提供や供給、流通、消費に至るまでの「つながり」を捉え直すことが不可欠になります。 2点目として、1点目とも関連しますが、つながりを見極めたり、関係性や構造を捉えたり、詳細と全体を同時に見るという思考が、重要になってきます。ある程度のつながりは、AIでもピックアップできるかもしれませんが、その企業の関係者だからこそ、実際に経営や運営をしているからこそ、実践知から捉えることができるというように、現場の人材の知識や思考やスキルが関与することが必須になってきます。 上記に関連して、ISSB(国際サステナビリティ基準審議会)は「統合思考(Integrated Thinking)」を重要視しています。この統合という言葉は誤解を生みやすい言葉でもありますが、上からコントロールするという意味合いではありません。 これに関連して、IFRS財団による説明(ISSB設立時の文書:IFRS Foundation Press Release, Nov 2021)の中で、「ISSBは、Value Reporting Foundationによって開発された統合報告フレームワーク(の作業を基礎とする」と言及しています。ここでいう「Value Reporting Foundation(VRF)」は、統合報告(International Integrated Reporting Council, IIRC)とSASBを統合した団体で、のちにIFRS財団に合流しています。ISSBはこのIIRCの「統合思考」の概念を出発点の一つとしています。 そのIIRCは、統合思考を「組織が、そのさまざまな運営単位や機能単位と、組織が使用したり影響を与えたりする『複数の資本』との関係を、積極的に考慮すること」と定義しています。「資本間の関連性(connectivity)」や「長期的価値創造における戦略との整合性」を意識したもので、統合思考に基づくアプローチと明示的に呼ばれています。 こうした統合資本は、別の言葉でいえば、いわゆるシステム思考や、コラムシリーズで繰り返し述べた「木を見て森も見る」思考と関連します。詳細な部分だけに目を奪われずに、全体を見渡しながら詳細との関係性を捉える力、「木を見て森も見る」力が、企業に、そして企業を構成する人材に求められているといえます。 3点目として、1点目や2点目と深く関わることとして、従来通りでない人材育成が今後、企業に求められていくといえるでしょう。ガバナンスや戦略上においても、こうした統合的思考、「木を見て森も見る」思考ができる人の関与が必要ですし、SSBJに関わる実務上においても、レジリエンス評価をしたり、そのレジリエンス評価のためのシナリオ分析をしたりする人材において、統合的思考力、あるいは「木を見て森も見る」思考力といった、スキルまたは能力が、益々求められる時代に入っています。 4. まとめ このように、SSBJは、紙上の対応に留まらず、企業全体のプロセスや体制にも大きく関わってきます。ある意味この機会に、ここで述べたような観点から事業全体や、ガバナンス・戦略の在り方などを見直すいいチャンスかもしれません。 法的な仕組としてはその1でも記載しましたが、現時点では強制適用時期は定められていません。しかし既に、「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ(WG)」によって、時価総額3兆円以上の企業には2027年3月期から義務化し、1兆円以上の企業は2028年3月期から義務化、さらに時価総額5,000億円以上の企業には、2029年3月期から義務化、2030年以降、プライム全企業適用義務化の案が明らかになっています。 このように、あっという間にそうしたことが法的にも義務付けられる時に近づきそうです。国外に目を向けると欧州各国のみならず、アジア太平洋地域でも既に導入または導入を進める動きが顕著にみられます。 こうした内外の動きに留意しながらも、最終的にはやはり自社のビジネスが今、そして今後、財務資本のみならず、その財務資本に影響し得る、自然資本・人的資本・社会資本といった多様な資本をどう生かし、持続可能な企業価値をどのように創造していきたいかという、戦略的ビジョンをどう描くかが、重要になってくるのではないでしょうか。
- [IPO準備会社が求められる財務会計への変更に関するポイント](https://shiodome.co.jp/column/18601/) - 上場会社が作成する決算書は、非上場会社とは異なり、外部公表されます。このため当該決算書は、投資家目線の観点から作成される必要があります。一般に非上場会社の決算書は、課税当局の目線から作成されており、IPOを行う上で、外部公表を前提とした会計に変更する必要があります。以下では、IPO準備会社に求められる会計への変更について解説していきます。 1. 財務会計と税務会計の違いとは 財務会計は、会計基準を遵守して、財産や利益を正しく計算することが目的であり、利用者は株主や債権者、投資家などを想定しています。また法律の観点から財務会計をさらに会社法会計と企業会計に分類することができます。会社法会計は、株主及び債権者保護を目的とし、分配可能利益限度額の計算に関する会計を規制します。企業会計、とりわけ金融商品取引法下での企業会計は、投資者保護を目的とし、情報提供機能の観点から企業の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に関する会計を規制します。 他方、税務会計は、法人税法に基づいた課税の公平を目的とし、課税標準額の計算に関する会計を規制し、利用者は課税当局を想定しています。 上記のような相違から、会計の観点から企業取引を処理するにあたり、財務会計と税務会計では採用する概念が異なります。財務会計では、「収益」「費用又は損失」を用いて「利益」を計算するのに対して、税務会計では、「益金」「損金」を用いて「所得」を計算することになります。両者は完全に別個の概念ではなく、例えば、法人税法第2条(定義)第二十五号において、「損金経理」とは、「法人がその確定した決算において費用又は損失として経理することをいう。」と定義されています。つまり、財務会計において費用又は損失として処理することを指しており、税務会計は、財務会計を起点として成立している会計制度ということができます。 しかし、財務会計と税務会計で決定的に相違するのが、「期間」と「限度額又は範囲」の問題になります。「期間」の問題については、税務会計では、債務確定主義を採用していることになります。各事業年度の所得の金額の計算上、その事業年度の損金の額に算入される金額は、別段の定めのあるものを除き、売上原価等の額、販売費、一般管理費その他の費用の額、損失の額とされています。このうち、「販売費、一般管理費その他の費用」については、その事業年度の販売費、一般管理費その他の費用のうち、償却費以外の費用でその事業年度終了の日までに債務が確定しているものに限られています。 この償却費以外の費用でその事業年度終了の日までに債務が確定しているものとは、別に定めるものを除き、次に掲げる要件のすべてに該当するものをいいます。 その事業年度終了の日までにその費用に係る債務が成立していること。 その事業年度終了の日までにその債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること。 その事業年度終了の日までにその金額を合理的に算定することができるものであること。(法法22、法基通2-2-12) この債務確定主義のため、詳細は後述しますが、例えば、退職給付引当金繰入額などは繰入額を計上した事業年度においては、損金の金額に算入することができません。退職金を実際に支払った事業年度において、損金経理をした場合は、その支払った事業年度において損金の額に算入することになります。このように財務会計と税務会計では差異が発生することになります。 次に「限度額」の問題ですが、例えば「交際費」の場合、税務会計では、期末の資本金の額または出資金の額が1億円以下である等の法人を除いて全額損金の額に算入できないことになっています(法法66、措法61の4、措令37の5、措規21の18の4、平26改正法附則77、令2改正法附則78、令4改正法附則39、平元.3直法2-1)。このため、財務会計では全額費用処理している一方で、税務会計では全額、損金算入できず、両者に差異が発生することになります。 2. 差異が生じる具体的なポイント 下記において、上記で述べた財務会計と財務会計の具体的な差異について主要な論点ごとに解説していきます。 (1)収益の計上時期の差異について 会計上は、約束した財又はサービスを顧客に移転することにより履行義務を充足した時又は充足するにつれて収益を認識しますが、税務上も基本的に同様の処理となります。そのため、収益の計上時期について基本的には会計と税務で相違はありません。 なお、収益認識基準に対応し、法人税法第22条の2の第1項で目的物の引渡日又は役務提供日に税務上、収益認識するという大原則が掲げられ、基本通達2-1-21の2~6で履行義務の充足に関する規定が制定されています。 (2)収益の計上額の差異について (ⅰ)返品権付き販売(論点:変動対価)返品権付き販売において、財務会計と税務会計上の収益計上額において差異が発生します。財務会計上は、収益認識基準では、商品又は製品の返品権付き販売が行われた場合、返品されると見込まれる対価の額は収益として認識せず、「返金負債」として認識することとなります(適用指針85項)。また、返品に伴い顧客から商品又は製品を回収する権利については、「返品資産」として計上することになります(適用指針88項)。「返金負債」「返品資産」の額は毎決算期に見直し、変動額を認識します(適用指針87項)。 一方で税務会計の場合、法人税では、資産の販売等の対価の額につき買戻しの可能性がある場合、買戻しが見込まれる額を収益の額からは控除しません。返品権付きの販売であったとしても、販売した資産の買戻しの可能性があるかどうかは、資産の時価とは全く関係がないため、返品見込額を考慮せずに益金の額を算定することになります(法22の2⑤)。したがって、会計上計上した「返金負債」「返品資産」については、将来減算一時差異又は将来加算一時差異として税務調整する必要があります。 (ⅱ)工事契約法人税法、および法人税基本通達においては、工事契約に係る収益につき、工事の完成・引渡しの日の属する事業年度の益金に算入することを原則としつつ、収益認識基準を適用し、「一定の期間にわたり充足される履行義務」に該当するものについて、履行義務充足の進捗度に応じ収益の額を計上することが認められています(法人税基本通達2-1-21の4)。また、原価回収基準、および契約の初期段階における代替的な取扱いについて、税務上も同様に取り扱われていますので(法人税基本通達2-1-21の5)、基本的に申告調整は不要です。 ただし、収益認識基準により一時点で充足される履行義務として判定された工事契約につき、工事期間が1年以上、請負金額が10億円以上など税務上の「長期大規模工事」の要件に該当する場合、税務上は工事進行基準が強制適用されますので、工事収益・原価に係る申告調整が必要となります(法人税法64条1項、法人税法施行令129条1項2項)。 (3)金融商品に関する差異 財務会計と税務会計との差異が生じる主な金融商品としてここでは有価証券を取り上げます。有価証券の評価方法の比較は下記のとおりとなります。 財務会計上、その他有価証券(上場株式)は時価評価を行いますが、税務上は取得原価で評価します。このため両社に差異が発生します。また有価証券の減損処理において財務会計と税務会計では、要件が相違していることから税務上否認され両者の会計処理に差異が発生する可能性があります。 (4)固定資産の減損会計に関する差異 固定資産の減損とは、資産の収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった状態であり、減損処理とは、そのような場合に、一定の条件の下で回収可能性を反映させるように帳簿価額を減額する会計処理をいいます。 一方で税務上、減損損失について直接の規定はなく、類似する取扱いとして「評価損」に関する定めが設けられています。資産の評価損は未実現の損失なので、原則として損金不算入とされ、例外的に一部のケースで損金算入を認めています(法法33②、法令68①三)。 税務上の評価損は、特殊なケースで資産価値が低下したものに限定され、単なる時価の下落や陳腐化を理由とした評価減は認められません。具体的には下記の場合となります。(法令68①三) イ 当該資産が災害により著しく損傷したこと。ロ 当該資産が1年以上にわたり遊休状態にあること。ハ 当該資産がその本来の用途に使用することができないため他の用途に使用されたこと。ニ 当該資産の所在する場所の状況が著しく変化したこと。ホ イからニまでに準ずる特別の事実※例えば、法人の有する固定資産がやむを得ない事情によりその取得の時から1年以上事業の用に供されないため、当該固定資産の価額が低下したと認められることが含まれます。 (昭55年直法2-8「三十一」により追加、平12年課法2-7「十六」、平12年課法2-19「十三」、平17年課法2-14「九」、平19年課法2-3「二十一」、平21年課法2-5「七」により改正) 土地(非償却性資産の場合)土地を減損処理したとき、損失計上額はそのまま別表4で加算します。また、土地勘定の簿価が過少となっているので、その分、別表5(1)で利益積立金が計上されます。減損後にその簿価が引き上げられることは通常ありません。したがって、その土地を売却等するまで、利益積立金はそのまま残ります。減損損失(評価損)が「実現損失」となり、財務会計と税務会計上の差異が解消すれば、税務上認容されます。別表4で減算が生じ、別表5(1)の利益積立金は消滅します。 建物(償却性資産の場合)建物等で計上した減損損失は、税務会計上、「償却費として損金経理をした金額」に含まれます(法基通7-5-1(5)の(注))。いわゆる「みなし償却」の取扱いによって、償却限度額を計算する際、当期償却費に減損損失計上額が含まれます。その結果、減損損失は償却超過額となり、別表4で加算されます。さらに、この金額分だけその固定資産の簿価が過小となっているので、それが利益積立金として別表5(1)に計上されます。減損後、財務会計上の償却費は減少しますが、税務会計上は減損後も従来どおりに償却計算を行います。そこで償却不足額が生じるので、以後の年度において毎年、それを別表4で認容(減算)することになります。また、別表5(1)において利益積立金が同額だけ減少していきます。最終的には土地の場合と同様、売却等によって減損損失(評価損)が“実現損失”となり、別表4で残額の減算が生じ、別表5(1)の利益積立金は0となります。 (5)資産除去債務に関する差異 「資産除去債務」とは、有形固定資産の取得、建設、開発又は通常の使用によって生じ、当該有形固定資産の除去に関して法令又は契約で要求される法律上の義務及びそれに準ずるものをいいます。この場合の法律上の義務及びそれに準ずるものには、有形固定資産を除去する義務のほか、有形固定資産の除去そのものは義務でなくとも、有形固定資産を除去する際に当該有形固定資産に使用されている有害物質等を法律等の要求による特別の方法で除去するという義務も含まれます(企業会計基準第18号資産除去債務に関する会計基準「以下、会計基準という。」)3項)。 財務会計上、資産除去債務は、有形固定資産の取得、建設、開発又は通常の使用によって発生した時に負債として計上します(会計基準第4項)。資産除去債務の発生時に、当該債務の金額を合理的に見積ることができない場合には、これを計上せず、当該債務額を合理的に見積ることができるようになった時点で負債として計上します(会計基準第5項)。 一方、法人税法上、損金は「債務確定主義」によって計上され、「債務の確定しないものを除く」と規定されています(法法22③二かっこ書き)。この観点からすれば、処分費用は資産の購入時点で債務が確定しているとは認めがたく、実際の資産除去の時点で損金算入されます。したがって、資産除去債務相当額に対する減価償却は認められず、また、割引計算による利息費用にも損金性はありません。 財務会計上これらを費用計上したときは、いずれも別表4で加算し、課税所得はその分増加します。また、財務会計上の貸借対照表に計上される資産除去債務ならびに資産の帳簿価額の上乗せ額についても、税務上は認められず、別表5(1)で調整する必要があります。 (6)引当金に関する差異 財務会計上、引当金を計上するには下記の4要件を満たす必要があります(企業会計原則注解(昭和57年4月20日企業会計審議会)の注18)。 将来の特定の費用又は損失であること。 発生が当期以前の事象に起因していること。 発生の可能性が高いこと。 金額を合理的に見積ることができること。 上記4要件を満たしている場合に引当金を計上しなければ、適正な期間損益計算ができていないことになり財務会計上問題となります。 一方で税法上は、債務確定主義に基づいて損金が確定されます。まだ、費用として支出が確定していない見積金額である引当金は原則として税務上認められません。このため、財務会計において頻繫に計上されることになる、貸倒引当金や賞与引当金、退職給付給付引当金、役員退職慰労金引当金などは、原則として引当金繰入額を計上した事業年度において損金算入することは認められておらず財務会計と税務会計において差異が発生します。ただし税務上も貸倒引当金については、下記会社に該当する場合、一定の範囲内において税務会計上も貸倒引当金の計上が認められています。(法法52、66、法令96、措法57の9、措令33の7、法基通11-2-16~18・20、平31改正法附則54、令3改正措令附則16) (7)税効果会計に関する差異 税効果会計とは、企業会計上の収益又は費用と、課税所得計算上の益金又は損金の認識時点が異なることから、会計上の資産・負債と課税所得計算上の資産・負債の額に相違がある場合に、法人税その他所得を課税標準とする税金を適切に期間配分することにより、法人税等(法人税、住民税、所得を課税標準とする事業税及び地方法人特別税)を控除する前の税引前当期純利益と税金費用を合理的に対応させることを目的とする会計手法です。このため、財務会計と税務会計の差異の内、「期間」の部分を対象とするものです。「限度又は範囲」の差異については対象となりません。 税効果会計では、財務会計と税務会計の差異を、「一時差異」と「永久差異」の2つに分類します。ここで、「一時差異」とは、財務会計上の資産及び負債の金額と課税所得計算上の資産及び負債の金額との差額を指します(税効果適用指針4項(3))。さらに一時差異は「将来減算一時差異」と「将来加算一時差異」に分類されます(税効果適用指針4項(4)、79項)。これらに対して、「限度又は範囲」に関する差異を「永久差異」といいます。 税効果会計が適用されることにより、会計上の利益に見合った税金費用が計上されるようになり、「財務会計」と「税務会計」の期間に関する差異が調整されます。なお調整されるのは期間に関する差異だけであるため、「限度又は範囲」に関する差異は永久差異として調整されないことになります。 3. 顧問税理士に求められる対応 財務会計と税務会計では、目的が異なりこれにより会計処理が両者の間で相違する論点が数多くあります。IPO準備会社では、会計帳簿は上場に向けて外部公表の財務諸表を作成する必要があるため財務会計で作成する必要があります。この上で決算書を確定させて、税務会計で税務申告書を作成する必要があります。
- [NASDAQ(ナスダック)上場の概要とその留意点](https://shiodome.co.jp/column/19416/) - 1. はじめに (1) NASDAQ上場の背後にある意義 昨今日本企業のNASDAQ(ナスダック)上場が注目を浴びています。NASDAQ上場の意義は、企業にとって多岐にわたります。まず、NASDAQは世界で2番目に大きな株式市場であり、上場企業にとって広範な投資家層へのアクセスを提供します。これにより、資金調達と成長の機会が増加し、企業の発展が可能となります。 また、NASDAQ上場は企業の知名度を向上させ、評判を高める効果があります。これは新たな提携やビジネス機会の拡大につながり、企業価値の向上に寄与します。NASDAQは高い流動性を持つ市場であり、株価の正確な反映が期待されるため、投資家にとっても魅力的な場所となります。 (2) NASDAQ上場の概要(NASDAQとは何か、歴史、上場メリット等) 本コラムは、NASDAQとは何か、その歴史や上場することのメリット等について解説します。NASDAQへの上場には、IPO以外に、ダイレクトリスティングやSPACなどもありますが、ここではIPOについてご紹介します。 上場承認プロセスや上場要件・規制についても理解を深め、上場企業が直面するリスクについても触れています。日本市場よりも早期に上場でき、資金調達金額も大きくなることから、NASDAQ上場は注目を浴びていますが、費用面についても米国弁護士の報酬をはじめ非常に高額になることについては留意しておく必要があります。日本で上場するよりもスムーズに進んでも2倍程度は要するとも言われます。NASDAQ上場の未来と可能性を検討する際の一助になれば幸いです。 2. NASDAQの概要 NASDAQ(ナスダック)とは、「National Association of Securities Dealers Automated Quotations」の頭文字を取った略称であり。アメリカの主要な株式市場の一つを指し、主にハイテク企業やIT関連企業などの新興企業向けの株式市場になります。代表的な銘柄には、アップル、アマゾン、アルファベット、メタプラットフォームズ、マイクロソフト、テスラ、インテル、コムキャスト、ペイパル、シスコシステムズなどが挙げられ、現在では日本企業も数社NASDAQに上場しています。 NASDAQは1971年に設立され、全米証券業協会(National Association of Securities Dealers)が運営する電子株式市場として始まりました。この新しい取引所は、伝統的な取引所と異なり、電子取引を導入しました。それに伴い、世界初の電子株式市場としての地位を確立し、証券の取引が迅速かつ効率的に行えるようになりました。 また、新興企業向けの株式市場であることから、成長産業やテクノロジー企業の上場をサポートする場として急速に成長しました。今では多くのIT企業が上場先としてNASDAQを選択し、その成功により市場の重要性が高まりました。日本企業もNASDAQ上場を通じて国際市場での認知度を高め、資金調達の機会を活用しています。 3. NASDAQ上場のメリット NASDAQへの上場には、以下のメリットがあります: 上場準備期間が短い:日本と比較して、NASDAQは上場までの準備期間が短く、一定の基準に満たない企業は内部統制監査が一定期間免除されるため、早く上場を実現できます。 多額の資金調達額が可能:調達資金も日本の市場に比べて多く調達できることが一般的です。そのため、多くの企業がNASDAQ市場を選択し、成長と国際展開を実現しています。 グローバル展開と知名度向上:米国市場でのIPOにより、企業の国際的な知名度と信用力が向上し、国際展開が迅速に進む可能性が高まります。 国際機関投資家へのアクセス:米国を中心に活動する国際的な機関投資家とのアクセスが容易になり、調達資金が増加します。 優秀な人材の確保:インセンティブプランの導入により、優秀な人材を採用しやすくなります。 高い株式流動性:上場後の株式の取引が活発に行われることから、株式の流動性が高まり流通時価総額も大きくなります。 利益が出ていなくても上場可能:成長中の企業は、利益を上げていなくてもNASDAQに上場できます。 議決権株式の活用:優先株式や無議決権株式など、複数の議決権株式を利用している企業もNASDAQに上場可能です。 買収の柔軟性:上場している自社株式を使った株式交換等の手法により、現金を支払わずに海外企業を買収することが可能です。 新たな産業の上場:新たな産業分野(例: 暗号資産、ブロックチェーン関連企業)に対しても他の株式市場と比較し相対的に上場しやすい傾向にあります。 4. NASDAQ上場のプロセス (1) NASDAQ上場申請から承認までのステップ 上場申請から承認までのステップは以下の通りです。主にSEC(米国証券取引委員会; U.S. Securities and Exchange Commission)とのやり取りが中心になります。 英文の目論見書「Form F-1」をSECに提出 SECによる審査開始 SECからコメントレターを受領 コメントレター対応 SECによる承認
- [IPOによるNASDAQ(ナスダック)上場事例:ハートコア](https://shiodome.co.jp/column/19753/) - 日本企業がIPOによってNASDAQ上場した事例として、ハートコアを取り上げて深堀りしていきたいと思います。会社概要・上場概要から申請書類の提出スケジュール、上場時の財務数値をまとめています。 1. 会社概要 NASDAQに上場したのはハートコア株式会社の親会社である「HeartCore Enterprises, Inc.」という会社になります。しかし、こちらは持株会社であり実際に事業を行っているのは子会社であるハートコア株式会社であるため、会社概要はハートコア株式会社を中心に見ていこうと思います。 ハートコアは、東京を拠点とする主要なソフトウェア開発企業であり、2つの事業部門を通じてソフトウェアを提供しています。 1つ目の事業部門は、カスタマーエクスペリエンス事業です。当該ビジネスはマーケティング、セールス、サービス、およびコンテンツ管理システムなどから成る「CXMプラットフォーム」を含み、企業がカスタマーエクスペリエンス全体で顧客を引き付け、関与させるためのツールや統合機能を提供しています。また、CXプラットフォームを活用して成功するための教育、サービス、およびサポートも提供しています。 2つ目の事業部門は、デジタルトランスフォーメーション事業です。ロボティクスプロセスオートメーション、プロセスマイニング、タスクマイニングを提供し、企業のデジタルトランスフォーメーションを加速させています。また、大企業の特定のニーズをサポートするソフトウェアを開発するための技術革新チームも運営しています。 また、実際に上場した親会社「HeartCore Enterprises, Inc.」は2021年5月18日にデラウェア州で設立され、子会社であるハートコア株式会社を通じて事業活動を行っています。 2. 上場概要 ハートコアは2022年2月にNASDAQ Capital Marketへ新規上場しました。上場の方法としては、米国の持株会社であるHeartCore Enterprises, Inc.がIPOした形になります。日本のハートコア株式会社はその子会社として事業を行っています。 ティッカーシンボルは「HTCR」で、発行される株数は3,000,000株となっています。(オーバーアロットメントオプション行使時に最大で3,450,000株)。公開価格は1株$4.00から$6.00の範囲で、上場申請時においては1株$5.00を前提としています。 IPO前の普通株式の発行済み株式総数は2022年2月8日時点で15,915,943株であり、IPO後は発行済み株式数18,915,943株になる予定です。調達した資金の用途は、技術開発、他社の買収(M&A)、運転資金、一般的な企業目的に充てられる見込みと上場申請書類には記載されています。 また、公開後12か月間は、会社、取締役および役員全員、発行済み証券の1%以上を所有する者は、代表の事前の書面による同意なしに普通株式を売却しないことに同意しています。配当ポリシーについては、IPO後普通株式に現金配当を実施する予定はないようです。 なお、上場の際の外部関係会社は以下の通りです。 証券会社:Boustead Securities, LLC 弁護士法人:Anthony L.G., PLLC 監査法人:MaloneBailey, LLP 3. 上場申請書類の提出スケジュール ハートコアの上場申請書類の提出スケジュールは以下の通りです。 出典:EDGARを基に作成 このように最初に書類を提出してから約3か月間SECとやり取りを行い、複数回にわたって申請書類修正し、上場が承認されました。 4. 上場時の財務数値 ハートコアが提出した上場申請書類S-1に記載されている上場時の財務数値は次の通りです。 出典:HeartCore Enterprises, Inc.S-1のSELECTED HISTORICAL CONSOLIDATED FINANCIAL DATA から抜粋 5. 上場の背景 上場時にハートコア株式会社の代表取締役社長 神野純孝氏は以下のようにコメントしています。 「当社は日本で設立し、事業展開してまいりました。そのような中、日本経済を活性化させるためにグローバル展開が必須と感じ、この度の上場によりシリコンバレーを中心としたIT技術を日本にも展開し、日本経済も活性化させたいと考えております。また技術だけでなく、働き方・給与体系についてもグローバルで戦える体制を整えてまいります。」 引用:ハートコアHP(https://www.heartcore.co.jp/news/20220214.html) このようにNASDAQ上場の背景には、事業のグローバル展開・日本経済の活性化が挙げられています。 6. その他
- [サステナビリティ情報開示の重要性:情報開示の背景と企業価値の向上の鍵とは](https://shiodome.co.jp/column/27193/) - 1. 情報開示が求められる背景‐社会意識の変化‐ 昨今、企業に対してサステナビリティ情報の開示が求められるようになっています。その背景には、気候変動や人権問題などに対する社会全体における関心の高まりがあります。 とりわけ、2015年に国連で採択されたSDGs(Sustainable Development Goals)は、人々のサステナビリティに対する意識を高める契機となりました。SDGsは、それまで漠然と語られていた社会的課題を、17のゴールと169のターゲットとして具体化し、明確な行動指針を示した点で大きな意義を持ちます。加えて、社会課題の解決に向けて、民間企業や個人に対しても主体的に関与する必要性を訴求しました。 こうした流れを受けて、企業経営においても、社会課題の解決に積極的に取り組む姿勢が強く求められるようになっています。あわせて、企業がこれらの課題にどのように向き合い、それをどのように経営に反映しているかについて、透明性のある情報開示が社会から期待される時代となっているのです。 2. 情報開示の必要性 ‐ESG投資の拡大‐ そうした中で、企業の社会課題解決への対応姿勢を評価する指標とされているのがESGです。ESGとは、以下の3つの頭文字をとったものです。 E(Environment/環境):気候変動対策、資源の有効活用、汚染防止 など S(Social/社会):労働環境、ダイバーシティ、人権、地域社会との関係 など G(Governance/ガバナンス):経営の透明性、公正な意思決定、内部統制 など 投資家は、これらESGの各指標を重視して投資判断を行います。こうした投資のことを「ESG投資」と呼びます。そしてこのESG投資は、国内外を問わず着実に拡大を続けており、今や投資の主流の一つとなりつつあります。 なお、ESGへの取り組みの必要性については、別コラム「なぜ今後ESGへの取り組みが必要となるのか:企業における重要性とその影響、背景とは」でも詳しく解説しています。 下記(図表1)は、PRI(責任投資原則)の署名機関数に関するデータです。PRIとは、機関投資家がESG要素を投資分析や意思決定プロセスに組み込むことを誓約する国際的な枠組みです。法的拘束力はありませんが、その署名数は年々増えており、2024年3月末時点で5345の署名数に達し、その運用資産総額は120兆ドルを超えています。 図表1:PRIの署名機関数の推移と運用資産総額青線:署名機関数(件)/緑線:運用資産総額(兆ドル) (出所)PRIウェブサイトのAnnual Report 2024よりRSM汐留パートナーズが独自に作成 また、下記(図表2)は国内におけるサステナブル投資残高の推移です。こちらも右肩上がりに推移しており、2024年には投資合計額は625兆6,096億1,100万円(前年比+16.6%)で、総運用資産残高に占める割合も63.5%におよんでいます。 図表2:サステナブル投資残高の推移 (単位:兆円) (出所)日本サステナブル投資白書(2024年)よりRSM汐留パートナーズが独自に作成 なお、ESGにおける情報開示の重要性は、別コラム「ESGに関する情報開示について:ESGレポートやサステナビリティレポートについて解説」でも詳しく解説しております。 3. 情報開示手段の概要‐「法定開示」と「任意開示」‐ では、企業のサステナビリティ情報は、どのような手段によって開示されているのでしょうか。まず情報開示のタイプは、大きく二つに分類されます。一つは「法定開示」です。これは、法令や制度に基づいて企業に開示が義務づけられているもので、所定の制度やルールに沿って開示されます。もう一つは「任意開示」です。こちらは企業の自主的な判断により行われるもので、ステークホルダー・エンゲージメント強化などを目的として、独自の形式や手段で情報が発信されます。 以下、それぞれの開示手法について紹介していきます。 法定開示(義務的開示) 有価証券報告書における開示(金融商品取引法に基づく義務) 2023年3月期以降、有価証券報告書においてサステナビリティ関連の情報の記載が義務化されました。対象となるのは、上場企業をはじめとする、金融商品取引法の適用を受ける企業です。有価証券報告書において求められているサステナビリティに関する情報開示は主に3つあります。一つは、『サステナビリティに関する考え方及び取組み』です。TCFD 提言にもとづく「ガバナンス」「リスク管理」「戦略」「指標及び目標」のフレームに沿った情報が求められます。二つ目は、『多様性に関する指標』で、女性管理職比率、 男女間の賃金格差、男性の育児休業取得率を開示します。そして、最後に、『人的資本に関する情報』です。ここでは人材育成や社内環境整備の方針、またそれらの目標や実績などについて記述します。 任意開示(自主的開示) 次に、法的義務はなく、ステークホルダーとの対話や信頼性向上を目的として自主的に行われる情報開示です。代表的なものは以下の通りです。 統合報告書(統合レポート) サステナビリティレポート(CSR報告書) その他、国際的なサステナビリティ情報開示基準に準拠した情報開示 以下、それぞれについて簡単に解説を加えます。 統合報告書(統合思考に基づく情報開示) 統合報告書とは、財務情報と非財務情報(サステナビリティ情報)を統合する形で開示するレポートです。IIRC(国際統合報告評議会)などが示すフレームワークに準拠して作成されるのが一般的です。 法的な発行義務はありませんが、主に中長期志向の投資家に対して企業のサステナビリティに対する姿勢を示す有効な手段として、その発行に取り組む企業は年々増加しています。 サステナビリティレポート(CSR報告など) サステナビリティレポートとは、企業のサステナビリティに関する方針や取り組み、実績などを中心にまとめた報告書です。 統合報告書と異なる点としては、統合報告書は、主に投資家に対して、財務情報と非財務情報との関連性(つながり)を示し、中長期的な企業価値の創造ストーリーを示すことが求められていますが、サステナビリティレポートは、投資家に限らず顧客や取引先などひろくステークホルダーに向けて、サステナビリティに関する取組みを紹介し、主に信頼構築や透明性の確保を目的としています。 また、サステナビリティレポートはGRI(Global Reporting Initiative)などのガイドラインを参考にするケースが多く、「ダブルマテリアリティ 」の考え方を重視している点も特徴です。本レポートも発行義務はありませんが、企業の信頼性を高める情報開示手段として、自主的に取り組む企業が増えています。 その他 国際的開示基準および外部認証 その他にも、国際的には、目的や開示対象に応じた多様な開示基準やガイドラインが存在します。企業によっては、それらの基準を統合報告書に組み込む、あるいは個別に情報発信するケースも見られます。 さらに近年では、自社の取り組みに対する信頼性を高める手段として、第三者機関による外部認証を取得し、対外的に示す手法も一般化しつつあります。
- [ADRによるNASDAQ(ナスダック)上場事例:シーラテクノロジーズ](https://shiodome.co.jp/column/19758/) - 日本企業がADRによってNASDAQ上場した事例として、シーラテクノロジーズを取り上げて深堀りしていきたいと思います。会社概要・上場概要から申請書類の提出スケジュール、上場時の財務数値などについてまとめています。 1. 会社概要 NASDAQに上場したシーラテクノロジーズの会社概要は次の通りです。 「テクノロジーとスマートな資産運用を活用し、100年寿命時代において世界中の不動産投資を民主化し、人々の生活をサポートし豊かにすること」をミッションに掲げ、主に3つの事業に取り組んでいます。 利回りくん事業:個人を対象にした資産管理プラットフォーム「利回りくん」を運営しています。不動産クラウドファンディングや不動産の売買、自社で建設した太陽光発電所の販売などを促進しています。 利回りくんプロ事業: 法人投資家、機関投資家、および富裕層を対象とした資産管理プラットフォーム「利回りくんプロ」を運営しています。自社開発の物件や他社の幅広い物件を展示し、これらの物件を投資家に仲介しています。 資産運用事業:不動産のリース、仲介、管理、太陽光発電所の運用および保守など、資産管理に関わっています。賃貸物件の管理、建物のメンテナンス、太陽光発電設備の運用および保守、自社所有の太陽光発電所から得られる賃貸収入および電力販売の管理などが含まれます。また、2022年6月30日現在、仮想通貨およびマイニング機器市場の悪化を受け、マイニング機器事業からの撤退を決定しました。 2. 上場概要 シーラテクノロジーズは2023年3月にNASDAQ Capital Marketへ上場しました。上場の方法としては、ADR(米国預託証券)の発行によるものになります。預託銀行としてはThe Bank of New York Mellonが担当しています。 ティッカーシンボルは「SYT」の予定で、発行される株数は1,875,000株になります。(アンダーライターがオーバーアロットメントオプションを完全に行使する場合は最大2,156,250 株)。なお、IPO前の普通株式は239,489株でした。 資金の用途は、他社の取得(M&A)、運転資金、一般企業目的に充てられる見込みと上場申請書類には記載されています。また、IPO完了後12ヶ月間は、会社・取締役および役員全員、発行された証券(または普通株式に転換可能な証券)を代理人の事前の書面による同意なしに売却しないことに同意しています。 配当ポリシーについては、将来の普通株式の配当は取締役会の裁量に依存し、過去には配当を行ったことがありますが、今後も行うかどうかは未定とのことです。 なお、上場の際の外部関係会社は以下の通りです。 証券会社:Boustead Securities, LLC 弁護士法人:Anthony L.G., PLLC 監査法人:MaloneBailey, LLP 3. 上場申請書類の提出スケジュール シーラテクノロジーズの上場申請書類の提出スケジュールは以下の通りです。 出典:EDGARを基に作成 このように最初に書類を提出してから約6か月間SECとやり取りを行い、複数回にわたって申請書類修正し、上場が承認されました。 4. 上場時の財務数値 シーラテクノロジーズが提出した上場申請書類F-1に記載されている上場時の財務数値は次の通りです。 出典:SYLA TECHNOLOGIES CO., LTD.-F-1のYLA TECHNOLOGIES CO., LTD. CONSOLIDATED BALANCE SHEETS及びSYLA TECHNOLOGIES CO., LTD. CONSOLIDATED STATEMENTS
- [有価証券報告書におけるサステナビリティ開示制度化の経緯と概要](https://shiodome.co.jp/column/27502/) - 今回より「有価証券報告書におけるサステナビリティ情報開示」に焦点を当て、本コラムでは、まずその制度化に至る経緯や全体概要について解説します。 1. コーポレートガバナンス・コードの改定 コーポレートガバナンス・コード(以下:CGC)をご存じでしょうか。CGCとは、主に上場企業に対し、株主をはじめとするステークホルダーの利益を守り、企業価値を中長期的に高めるための経営行動の指針を示すものです。発祥はイギリスであり、その後世界的に普及しました。日本では2015年に東京証券取引所が中心となり、「日本版コーポレートガバナンス・コード」が策定・公表されました。 策定当初のCGCは主にガバナンス体制の整備に重点を置いた内容でしたが、2021年6月の改定においては、国際的なSDGsやESG投資への関心の高まりを背景にサステナビリティに関する言及が多く加えられます。 2. ディスクロジャーワーキングと開示府令 CGC(コーポレートガバナンス・コード)は、「コンプライ・オア・エクスプレイン(comply or explain)」の原則に基づいています。「コンプライ・オア・エクスプレイン」とは、記載された内容を「遵守(コンプライ)する」か、遵守しない場合にはその「理由を説明(エクスプレイン)する」ことを意味します。 すなわち、CGCの内容は法的な義務ではなく、企業が自主的に取り組むことを促すガイドラインとしての性格を持っています。そのため、企業によるサステナビリティへの取り組みや情報開示により“実効性”を持たせるため、2021年9月に金融庁の有識者会議「ディスクロージャーWG」が発足します。 議論を経て、2022年に報告書が公表され、その中で有価証券報告書にサステナビリティに関する情報を記載することが具体的に提言されました。これを受けて、2023年1月に「有価証券報告書の開示事項を規定する開示府令」が発令され、サステナビリティ情報の開示が正式に義務付けられました。対象は、有価証券報告書の提出が義務付けられている上場企業であり、2023年3月期以降が適用開始となりました。以上が一連の経緯です。 3. 情報開示制度の概要 ここからは、サステナビリティに関する開示制度の概要について解説を進めていきます。まず、有価証券報告書で開示が求められるサステナビリティに関する主なテーマは3つあります。それは、「サステナビリティ」「人材の多様性」「人的資本」に関する情報です。これらのテーマの記述欄は、大きく2つの節に分かれています。(図表1参照) (図表1)有価証券報告書のサステナビリティ情報開示 イメージ図 (出所)サステナビリティ情報の記載欄の新設等の改正について(解説資料)をもとにRSM汐留パートナーズが作成(https://www.fsa.go.jp/policy/kaiji/sustainability-kaiji.html) (1)従業員の状況(充実) 有価証券報告書の第1節 従業員の状況に、これまでの情報(従業員数や平均年齢、勤続年数など)に加えて、人材の多様性に関する以下3項目の開示が求められるようになりました。 女性管理職比率 男性育児休暇取得率 男女間賃金格差 これらについては定性的な内容ではなく「定量的」な数値での開示が必要です。これらの数値を通して、投資家が企業のダイバーシティ推進状況や人的資本強化の実態を客観的に把握できるようにすることが狙いと考えられます。 (2)サステナビリティに関する考え方及び取組欄(新設) 有価証券報告書の第2節 事業の状況には、新たな項として「サステナビリティに関する考え方及び取組」欄が新設されました。 この欄では、自社のサステナビリティに関する考え方や具体的な取り組み内容について説明することが求められます。テーマとしては、気候変動などの環境問題への対応、人権侵害への配慮、生物多様性の確保、人的資本に対する取り組み(人材の多様性を含む)、サイバーセキュリティ対応など、幅広い分野が含まれます。 また、情報開示の方法としては、TCFD※に基づき、4つの要素に沿った説明が求められます。(※TCFD提言の詳細については、別コラム「TCFD提言の理解と実践:気候関連財務情報開示における動向」をご参照ください。) TCFD開示に基づく4つの要素 ガバナンス :リスク及び機会に対するガバナンス体制 戦略 :リスク及び機会に対処する取組み リスク管理 :リスク及び機会を識別・評価・管理するために用いるプロセス 指標及び目標:リスク及び機会の実績を評価・管理するために用いる情報 その中でも、全企業に対して必須要素として求められているのが「ガバナンス」と「リスク管理」です。一方で、「戦略」と「指標及び目標」については企業がその重要性を判断し、記載するか否かを選択できます。記載しない場合にはその判断根拠を示すことが求められますが、必ずしも開示が義務付けられているわけではありません。 しかし、人的資本(人材の多様性を含む)に関する情報については重要性に関係なく、「戦略」および「指標及び目標」が必須要素とされています。(図表2参照) (図表2)「サステナビリティに関する考え方と取組」の概観 (出所)サステナビリティ情報の記載欄の新設等の改正について(解説資料)をもとにRSM汐留パートナーズが作成(https://www.fsa.go.jp/policy/kaiji/sustainability-kaiji.html) 4. シングルマテリアリティに基づく情報開示 その他、有価証券報告書におけるサステナビリティ情報開示の大きなキーワードとして「マテリアリティ」があります。「マテリアリティ」とは簡単に言うと、企業が優先して取り組むべき「重要性」を意味します。そして、このマテリアリティには2つの種類があります。 一つは「シングルマテリアリティ」であり、これは「環境や社会が企業に与える影響」を指します。もう一つは「ダブルマテリアリティ」と呼ばれるもので、「企業が社会や環境に与える影響」を指します。(図表3参照) 有価証券報告書は「金融商品取引法」に基づき、投資家保護を目的とした開示書類です。そのために基本は「シングルマテリアリティ」を重視しています。これは、シングルマテリアリティが企業の財務状況や将来の収益力に合理的に影響を及ぼすため、投資家の意思決定において重要な情報となるからです。 近年ではEUをはじめとする国々で「ダブルマテリアリティ」の考え方も重視されつつあります。特に、投資家以外の消費者や取引先といった多様なステークホルダーに対して情報を開示する際には、企業活動が環境や社会に与える影響も含めた「ダブルマテリアリティ」の視点が求められるようになってきました。 今後、国際基準の進展や日本国内の制度動向により開示の枠組みが変化する可能性はありますが、現時点では有価証券報告書の情報開示では「シングルマテリアリティ」に基づくことが基本です。 したがって、開示する情報は、単に企業の社会的貢献活動や倫理的取り組みを紹介するものではありません。たとえば気候変動リスクを開示する際には、単に「環境に配慮しています」といった説明では不十分です。気候変動リスクや将来的なCO₂排出規制によるコスト増加が事業収益にどのように影響を及ぼすのか、あるいは再生可能エネルギー市場の拡大が自社のビジネスモデルにどのような成長機会をもたらすのかなど、財務的影響に直結する視点での説明が求められます。 さらに、サステナビリティに関するさまざまなテーマや人的資本への取り組みについても、単に個々の活動を列挙するのではなく、それらの取り組みがどのように関連し合い、自社の経営戦略とどのように結びついているのかを示すことが重要となります。 (図表3)2つのマテリアリティについて (出所)「第2回 金融審議会ディスクロジャーワーキング・グループ(令和3年度)事務局説明資料②」より引用https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/disclose_wg/siryou/20211001/02.pdf 5. まとめ 本コラムでは、有価証券報告書におけるサステナビリティ開示の意義をより深く理解していただくために、制度化に至る経緯および概要について解説しました。先述の通り、有価証券報告書は「金融商品取引法」に基づき作成・提出が義務付けられている法定開示書類です。もし虚偽記載や重要な不記載があった場合には行政処分や刑事罰の対象となる可能性があります。そのため、有価証券報告書における情報開示にはルールに基づいた正確性が求められます。 また、コラム「有価証券報告書「サステナビリティに関する考えおよび取組」‐サステナビリティテーマと「ガバナンス」に関する開示ポイント‐」にて実際の記述事例も交えながら、より具体的に解説しています。
- [SPACによるNASDAQ(ナスダック)上場事例:A.L.I. Technologies](https://shiodome.co.jp/column/19762/) - 日本企業がSPACによってNASDAQ上場した事例として、A.L.I. Technologiesを取り上げて深堀りしていきたいと思います。会社概要・上場概要から申請書類の提出スケジュール、上場時の財務数値をまとめています。 1. 会社概要 SPACを通じてNASDAQに上場したA.L.I. Technologiesの会社概要は次の通りです。 A.L.I. Technologiesは「空から社会を変革する」というミッションを掲げ、車、バイク、およびドローンが自由に飛行できる「エアモビリティ社会」を実現することを目指しています。 新しい技術の挑戦とそれを社会に実装することを通じて、誰もが安全かつ便利に空域を利用できるようにするインフラを提供し、エアモビリティ社会をリードするグローバルカンパニーとして社会に貢献することを目指して、エアモビリティ事業を展開しています。 具体的には、有人エアモビリティ、無人エアモビリティ、コンピューターパワーシェアリングの3つの領域で事業を展開しています。 有人エアモビリティ:災害時などに通行困難な地域を低空で浮遊するホバーバイクの販売および開発。 無人エアモビリティ:産業用ドローンを活用したソリューションの提供(R&D、航空機、オペレーター、運用管理、および他のソフトウェアの統合)。 コンピューターパワーシェアリング:ブロックチェーンの検証やAIアルゴリズム生成などのサービスを、迅速で安価かつ安全な方法で提供。 2. 上場概要 A.L.I. Technologiesは、米国の親会社であるAERWINS Technologies Inc.が、NASDAQ上場済みのSPACであるPONO Capital Corp.に買収され、NASDAQ Capital Marketへの上場を達成しました。 合併前のAERWINS Technologies Inc.の企業価値は約6億ドルであったが、SPACによる買収により、償還がない場合は合併後の企業価値は約7.5億ドルになる見込みでした。 この合併によって得られる資金は、償還および取引経費の支払いを経て、製品製造、企業の運営資金、成長の支援、および一般的な企業の運用目的に使用される予定と公表されております。 SPACであるPONO Capital Corp.の株主が償還を行わない場合、AERWINS Technologies Inc.の現在の株主が合併後の発行済み株式の約80%を所有するのが当初のスキームです。 なお、上場(買収)の際の外部関係会社は以下の通りです。 弁護士法人:NELSON MULLINS RILEY & SCARBOROUGH LLP 監査法人:Marcum LLP /TAAD LLP 3. 上場申請書類の提出及び合併のスケジュール SPACであるPONO Capital Corp.の申請書類の提出スケジュールは以下の通りです。 出典:EDGARを基に作成 このようにSPACが上場して対象会社を買収するまでに約2年ほど経過しており、買収が完了し買収したAERWINS Technologies Incの上場が承認されました。 4. 上場時の財務数値 A.L.I.Technologiesはその会社自身が実際にNASDAQに上場したわけでなく、その親会社「AERWINS
- [IPOパズル~初日の異常なリターン、長期パフォーマンスの低下、ホット・コールドの市場のサイクルの謎~](https://shiodome.co.jp/column/20359/) - IPOパズル(IPO Puzzle)という言葉をお聞きになったことはありますでしょうか。私自身はこれまでIPOパズルに関する理論研究や実証研究を行ったことはありませんが、IPO関連業務に20年以上従事するコンサルタントとして、IPOパズルについては数多く体験し体感してきましたので、その内容について整理してみました。 1. IPOパズル(IPO Puzzle)とは? 「IPOパズル」とは、金融市場、特にIPOにおける現象や謎に焦点を当てた用語です。IPOに関する研究においては、①アンダープライシング(株価の低設定)から生じる株式公開初日の異常なリターン、➁他の株式と比較した場合のIPO企業の株価の長期的なアンダー・パフォーマンス、③IPO件数に周期的なサイクルがあること等が、IPO業界におけるパズル(謎)とされています。 これまで、世界的にIPOパズルに関する研究は数多く行われてきました。株式公開初日時の価格設定、市場の効率性、法的な枠組み、情報の非対称性、投資家行動に関する心理学など、そのテーマは多岐にわたります。この分野の研究においては特にアジアの資本市場での現象が注目されています。例えばオークション方式が普及しないのはなぜかというテーマから始まり、投資家がIPOに魅力を感じる心理的要因などに焦点を当てた研究が行われています。 2. アンダープライシングから生じる株式公開初日の異常なリターン 多くのIPOにおいては、株式公開初日に異常に高いリターンを記録します。すなわち、IPO企業の株式が市場価値を下回る価格で初期公開されることで投資家に高いリターンを提供することとなる現象です。なぜ株式公開初日に公募価格が市場価値よりも低い価格で設定されるのかという疑問が生じます。 その理由としては、まず、IPO企業に関する株価形成の情報は限られており、適切な市場価格を設定するのが難しいためと考えられます。したがって、アンダーライターである主幹事証券会社は投資家の需要を引き出しやすくするために、意図的に低めの価格を設定する傾向があると考えられます。 そして、上場初日に株価が大幅に上昇すると、そのIPO企業に対する注目度が高まります。これは、IPO企業にとって無料の宣伝広告ともなるため、意図的に低価格設定が行われます。またその逆で企業のレピュテーション悪化から、公募割れを避けるインセンティブともなります。 3. 他の株式と比較した場合の株価の長期的なアンダー・パフォーマンス IPO企業の長期的なパフォーマンスは他の株式に比べてしばしば低いことが研究によって示されています。これは、初期のアンダープライシングや初日の異常な取引パフォーマンスとは対照的な現象です。初日の高リターンにもかかわらず、多くのIPO企業の株価は長期的には低迷し、平均的な市場パフォーマンスを下回ることがあります。 その理由としては、まず、IPOの際、投資家はIPO企業に対してしばしば過剰な期待を持ちがちです。この初期の過大評価は、長期的には現実的な企業のパフォーマンスに合わせて調整されるため、結果的に株価が下落することがあります。 次に、IPO後、経営陣や初期の投資家には、しばらくの間株式を売却することができない「ロックアップ期間」が設けられています。この期間が終わると、これらの株主が大量に株を売却することがあり、その結果、株価が下落することがあります。加えて、多くのIPOは成長段階にある企業によって行われます。これらの企業は初期には大きな成長を遂げる可能性があるものの、成熟するにつれて成長率が低下し、それが株価に反映されることとなります。 4. IPO件数に周期的なサイクルがある IPO市場には「ホット(活発)」と「コールド(不活発)」の期間が交互に訪れる傾向があります。ホットな市場では多くの企業がIPOを行いますが、コールドな市場ではIPOの数が大幅に減少します。これは、IPOがマクロの経済状況や投資家心理と密接に関連していることを示しています。 その理由としては、まず、IPO市場は大きく市場参加者の感情に影響を受けます。投資家が楽観的な時は新しい投資機会を積極的に求め、IPOに対する需要が高まります。逆に、投資家が悲観的な時はリスクを避け、新規株式の需要が減少します。 次に、マクロ経済の波があるためIPO市場にも波が生じます。経済が成長している時、企業は拡大のチャンスを捉えようとしてIPOを行うことが多くなります。しかし、不況期には企業の業績が悪化し、IPOを行う企業が減少します。 5. その他のパズル 以上3つが代表的なIPOパズルですが、その他にもIPO業界にはいくつかの謎があります。 例えば、IPOをするためには、監査法人や証券会社への支払報酬、IPOに耐えられる内部管理体制を構築するための優秀な人材の採用など、大きなコストを要します。企業がこれほどの高コストを負担する理由は何でしょうか。特に他の資金調達方法が利用可能な場合には、直接金融の調達コストとリターンが見合っているか疑問の余地があります。 また、2000年以降、IPOの数が顕著に減少しています。経済環境の変化、製品市場競争の増加、プライベートエクイティからの資金調達の増加、公開企業になることの財務面でのメリットの減少、無形資産の重要性の増加に伴う機密情報開示のデメリットの高まりなどもあるかもしれません。 6. 情報の非対称性からのアプローチ なぜ公開初日の公募価格と初値が大きく乖離するのかという疑問については、伝統的なファイナンス理論では、単に大きくリスクを取ったから大きくリターンを得られるという回答になるかもしれません。一方、情報の非対称性による説明も可能であると考えます。 まず、IPOプロセスでは、売り手(企業)は買い手(投資家)よりも多くの情報を持っています。この情報の非対称性は、IPOの価格設定とパフォーマンスに影響を与える可能性があります。 次に、企業は自身の価値を最大限に高く見せようとするため、投資家が実際のリスクや価値を適切に評価できない可能性があります。この結果、IPO企業が過剰評価され、長期的にはパフォーマンスが市場平均以下になることがあります。 さらに、良い品質の企業と悪い品質の企業が混在している場合、投資家は区別がつかず、平均的な価格に落ち着いてしまう傾向があります。これにより、良い品質・高い成長の企業は市場(例:東証)から離れる可能性があり、結果として低品質・低成長の企業のみがIPOを行う「逆選択」が発生することがあります。 7. まとめ 日本の IPO の主幹事は大手証券会社等の引受比率が高い割合を占めており、海外のIPO市場と比較しても寡占状態であります。また,IPO企業の株式の割り当てについても、日頃懇意にしている資産家(顧客)への裁量による配分が多いように感じます。そのため、主幹事証券会社による影響力が非常に大きいのが実情です。 上述の通り、IPOパズルは一つの問題ではなく、いくつかの相互に関連する謎から成り立っています。これらのパズルの存在について知っておくことは、IPO業界に従事するすべての人々にとって重要であると考えています。実際にIPOを実現することで得られるメリットや達成感もありますが、一方でIPOにはこのような謎が多いというのも、IPOの不思議な魅力になっているのかもしれません。
- [労務問題が原因でIPO(株式上場)が延期あるいは中止になる事例](https://shiodome.co.jp/column/21874/) - 「IPO準備会社におけるショートレビューと労務の論点」では、グロース市場上場のために必要な「新規上場申請者に係る各種説明資料」(有価証券上場規程施行規則第231条第1項第4号に規定する提出書類)で求められる記載事項を踏まえて、人事労務管理に関する短期調査(ショートレビュー)で重視すべき調査項目について概括しました。 このコラムでは、新規上場審査に深刻な影響が出る可能性が高い5つの項目に着目し、IPO延期またはIPO中止を回避するために重要となる要素について解説します。 1. 未払い賃金問題 未払い賃金に関する問題は、新規上場審査において最も重要視される項目の1つとされています。「新規上場申請者に係る各種説明資料」で記載が求められている項目のうち、賃金に関する言及が複数に及んでいることからも、取引所が未払い賃金に関する申請会社の対応を重要視していることがわかります。これは、プライム及びスタンダード上場の際に提出が求められる「新規上場申請のための有価証券報告書(IIの部)」でも同様です。 未払い賃金については、IPO時に過去3年分の清算が完了していることが必要です(退職者も含む)。これは、労働基準法115条及び労働基準法附則143条3項の定めにより、退職手当を除く賃金請求権の消滅時効が当分の間3年(本来は5年)とされていることが根拠となっています。なお、退職手当の請求権の消滅時効は5年ですので、退職手当に未払いがある場合は過去5年分について清算が必要です。清算に加え、対象となる社員にその他の未払い賃金債権が存在しない旨の確認を書面で取り付け、リスクコントロールに万全を期すべきでしょう。 このように、未払い賃金問題の解消には非常に大きな労力が必要となることから、上場申請直前に未払い賃金問題が発覚した場合には特に致命的になり得ます。IPO(株式上場)準備に取り掛かる際には、賃金制度に詳しい社会保険労務士の助言を得るなどして、できるだけ早期に未払い賃金問題の解消に着手すべきといえます。 2. 不適切な勤怠管理 IPO(株式上場)において最も重要な項目の1つである未払い賃金問題が表面化してしまう主な要因に、不適切な勤怠管理が挙げられます。そもそも、賃金の正確な支払いは、その根拠となる労働時間が正確に記録されていることが大前提となりますが、適正な勤怠管理がなされていない場合、労働時間の把握は著しく困難となり、結果として未払い賃金が発生する原因となります。 勤怠管理(労働時間の把握)については、タイムカードによる記録やパーソナルコンピュータ等の電子計算機の使用時間の記録等、客観的な方法で行わなければなりません(労働安全衛生法66条の8の3及び労働安全衛生規則第52条の7の3)。実際の運用に際しては、厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」を十分に踏まえた労働時間管理を講じることが必要です。 なお、正確な労働時間の把握は、いわゆる法定三帳簿の1つである賃金台帳(労働基準法108条)の調製のためにも必要となります(※賃金台帳、労働者名簿、出勤簿を法定三帳簿とよび、これに加え、年次有給休暇管理簿を加えて法定四帳簿と呼ぶ場合があります)。基本的な労働法令を遵守しているかどうかという観点からも、毎日の勤怠管理が適正な形で行われているかどうか改めて点検することが望ましいでしょう。 3. 長時間労働 新規上場審査においては、「長時間労働の防止のための取組み」についてはもちろん、「最近1年間及び申請事業年度における部署ごとの各月の平均時間外労働時間の推移」や「最近1年間及び申請事業年度において、36協定(特別条項を締結している場合には当該条項の内容)に違反している従業員が存在する場合、当該従業員の時間外労働の状況」について具体的な説明が求められます。このように、取引所は長時間労働についても相当な注意を払っているものと推察されます。 長時間労働の抑制に関する近年の法規制の動きを俯瞰すると、特筆すべき転換点は、2018年に制定された働き方改革関連法による労働基準法の改正により、時間外労働の上限時間が初めて設定されたことにあります。これにより、大企業については2019年4月1日から、中小企業については2020年4月1日から、それぞれ時間外労働の上限規制が適用されています。また、2024年4月1日からは、上限規制の適用が猶予されていた建設事業、自動車運転の業務、医師についても上限規制の適用が開始されています。 長時間労働に関する法規制がこれだけ進んでいる背景には、長時間労働を原因とする過労死等が相次いでいる(※例えば令和4年度については、過労死等に関する労災申請が3,486件なされ、このうち、904件が労災認定されています)ことや、働き過ぎによるメンタルヘルス不調などの健康障害の発生、さらにはワークライフバランスの悪化など、長時間労働が労働者の心身に深刻な悪影響を及ぼしている現状があります。 このように、長時間労働の改善が株式市場における企業の健全な発展のために最優先で取り組まなければならない人事労務管理の要素の1つであることは明白です。IPO時に長時間労働に関する詳細な調査がされることは当然の帰結、といえるでしょう。 4. 管理監督者・裁量労働制 いわゆる「管理監督者」とは、労働基準法第41条2号が定める「監督もしくは管理の地位にある者」のことを指します。管理監督者には、労働基準法上の労働時間、休憩、休日に関する規定が適用されないことから、割増賃金の支払いも対象外となります。 他方で、労働基準法第41条2号の「監督もしくは管理の地位にある者」が具体的に意味するもの(すなわち、管理監督者の定義)は必ずしも明らかにされておりません。行政通達や裁判例の積み重ねにより一定の考え方は確立されてはいるものの、実務上はその判断は難しく、本来であれば通常の労働者として処遇すべき者を管理監督者として処遇してしまっているケースも散見されます。 新規上場審査の際、管理監督者については、「管理監督者の状況(部署ごとに、申請会社で定義(認識)している管理監督者(管理職)の数と、労働基準法で定めるところの管理監督者の数を一覧にして記載してください。なお、差異が発生している場合にはその理由も記載してください。」との説明が要請されています。これは、仮に株式上場後に管理監督者性が否認されるような状況に発展した場合、その帰結として管理監督者として処遇されていた社員の割増賃金が最大で過去3年分(※「1.未払い賃金問題」の章の消滅時効に関する記載を参照)未払いの状態となることから、場合によっては莫大な財務的インパクトとして顕在化する可能性があるからです。同様に、いわゆる「裁量労働制」とよばれ、実際の労働時間に関わらず一定の時間働いたものとみなされる専門業務型裁量労働制(労働基準法第38条の3)及び企画業務型裁量労働制(労働基準法第38条の4)についても、法定要件を充足しない場合、結果として割増賃金の未払い状態が発生することになります。 このように、管理監督者及びみなし労働時間制の運用に際しては、社会保険労務士による助言も得つつ、新規上場申請前に総点検をしておく必要があるでしょう。 5. 労働基準監督署からの調査 労働基準監督書からの調査状況についても、IPO(株式上場)の際の説明項目の1つとなります。具体的には、「最近3年間及び申請事業年度における企業グループの労働基準監督署からの調査の状況(調査日、調査内容、指導及び是正勧告の有無並びにその内容等。企業グループのうち記載が困難な会社がある場合には、その理由を示し、記載を省略することができます。)」について説明が求められます。 労働基準監督署による調査のことを「臨検」とよびますが、臨検の結果法令違反が認められた場合は、労働基準監督官から「是正勧告書」が交付され、是正を求められることになります。法令違反に至らない場合でも、改善が必要な項目に対しては「指導票」が交付され、一定の是正が求められます。なお、労働基準監督署からの是正勧告を放置していた場合、最終的には検察庁に送検されることになります。令和4年労働基準監督年報によれば、令和4年の送検件数は783件となっており、このうち、266件が実際に起訴されています。 取引所が労働基準監督署からの調査の状況を報告させる意図としては、IPO申請会社の法令遵守に対する姿勢が上場会社としてふさわしいものか確認するところにあると推察されます。臨検が発生すること自体は必ずしも会社がコントロールできる範囲ではありませんが、労働基準監督署に法令違反の状態について指摘された際、具体的にどのような是正措置を講じて改善を図ったかについては、会社の遵法精神が如実に現れるポイントとなります。臨検を受けても指摘事項がないように普段から法令遵守を徹底することはもちろんですが、仮に指摘を受けた場合であっても、迅速かつ誠実に対応することが大切です。取引所は、会社が実施した具体的な是正措置の内容が実態を伴っているかについても説明を求めるでしょう。
- [IPO(株式上場)の準備と労務デューデリジェンス(短期調査):未払賃金の発生](https://shiodome.co.jp/column/22006/) - 「労務問題が原因でIPO (株式上場)が延期あるいは中止になる事例」では、新規上場審査で取引所が最も重要視する項目の1つとして「未払賃金問題」を挙げています。このコラムでは、IPO(株式上場)の準備に向けた未払賃金の解消について重要なポイントを解説します。 1. IPO(株式上場)準備会社において未払賃金の発生がないかの検討が重要な理由 グロース市場上場のために提出が必要な「新規上場申請者に係る各種説明資料」(有価証券上場規程施行規則第 231 条第 1 項第 4 号に規定する提出書類)では、賃金に関して以下の項目についての説明が要求されます。 勤怠の管理方法及び未申告の時間外労働(いわゆるサービス残業)の発生防止のための取組み 時間外及び休日労働並びにみなし労働時間制に係る労使協定の締結状況(協定の内容を含みます。) 最近 1 年間及び申請事業年度における従業員に対する賃金未払いの発生状況(発生時期、期間、件数、金額)及びその後の顛末 管理監督者の状況(部署ごとに、申請会社で定義(認識)している管理監督者(管理職)の数と、労働基準法で定めるところの管理監督者の数を一覧にして記載してください。なお、差異が発生している場合にはその理由も記載してください。) 以上の4項目は、「新規上場申請者に係る各種説明資料」の作成ガイダンスである「新規上場申請者に係る各種説明資料の記載項目について」(2024年4月1日改訂版)から、賃金に直接的または間接的に関係する部分を抜粋したものです。これを見るだけでも、取引所が未払い賃金について非常に高い関心を持って審査に臨んでいることがおわかりいただけると思います。 新規上場審査に向けては、少なくともこれら4項目については十分な説明ができるよう、未払賃金についての状況を徹底的に精査し、必要な措置を講じることが必要です。以下、具体的な留意点について確認します。 2. 「勤怠の管理方法及び未申告の時間外労働の発生防止のための取組み」について IPO(株式上場)に向けて、適正な賃金の支払いを実現し未払賃金の発生を防止するためには、少なくとも以下I〜IIIの3つの要素が満たされていることが必要です。 その事業所で有効な就業規則で規定された労働時間制度と、現実に運用されている労働時間管理の実態が合致していること。 毎日の稼働について抜け漏れがない勤怠管理が行われており、客観的な方法で正確な労働時間の実績が把握されていること。 当該労働時間の実績に基づいて、法定通りまたは法定以上の割増賃金が支払われていること。 Iについて、会社によっては、事業所や所属部署の違い、さらには社員種別によって異なる労働時間制度(変形労働時間制など)が適用されている場合がありますが、その運用は就業規則で定められた労働時間制に関する規定と合致させておく必要があります。 例えば、現場ではいわゆる「フレックス制」(労働基準法第 32条の3)が適用されているのにも関わらず、就業規則上は法定要件を欠いているような場合(例えば、始業及び終業の時刻をその労働者の決定に委ねる旨の記載がない場合など)や、労使協定が未締結の場合は、フレックス制が成立せず、通常の計算方法による割増賃金の支給義務が生じ、結果として未払賃金が発生する原因となります。 このように、就業規則上の規定と実際の労働時間管理の運用実態は常に一致させておく必要があります。 IIについて、労働時間の把握に関する事業者の義務については、労働安全衛生法66条の8の3及び労働安全衛生規則第52条の7の3が規律しています。これらの規定は、必ずしも賃金の適正な支払いを確保することを主眼とした規制ではなく、安全衛生管理の観点から労働時間の把握を要請するものですが、いずれにせよ、正確な労働時間の把握は事業者の法的な義務であることに留意しなければなりません。 実際の運用に際しては、厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(平成29年1月20日基発0120第3号)に沿った労働時間管理を講じることが望ましいでしょう。特に、労働者の自己申告による労働時間の把握が行われている場合は客観性が保たれていないと指摘される可能性が高まりますので、運用方法の見直しを検討すべきでしょう。 なお、時間外労働の未申告については、どのように防止を図るべきでしょうか。究極的には、PCログ管理ツール等を用いて業務用PCの使用時間を把握し、実際の勤怠記録と突合させて正しい労働時間が申告されているかを確認する、という方法を取ることが可能です。ただし、それだけでは十分とはいえません。例えば、割増賃金の支払いを抑制を目的として、勤怠の記録を思い止まらせるような不当な圧力(実態としてサービス残業を強制するような言動等)を管理者が現場にかけていないか、等についても丁寧な点検が必要となるでしょう。 IIIについて、給与計算の結果算出された賃金が、法定の割増率を満たしているか改めて確認をすることが必要です。割増率については直近でも法改正があり、2023年4月1日以降は、大企業・中小企業いずれも月60時間を超える残業に対する割増率が50%(法改正前は25%)となっており、当該法改正が計算結果に正確に反映されているかについては特に留意が必要です。 また、よくある間違いとして、労働基準法第41条2号が定めるいわゆる「管理監督者」に対して深夜割増(25%)が支払われていない場合が散見されます。管理監督者は時間外割増と法定休日割増の対象外ではありますが、深夜割増は対象外ではありませんのでご注意ください。 3. 「時間外及び休日労働並びにみなし労働時間制に係る労使協定の締結状況」について IPO(株式上場)の際は、時間外労働・休日労働やみなし労働時間制(特に裁量労働制)に必要となる労使協定が適正に締結されているかについても十分な確認が必要です。 この場合、労使協定が締結されているかどうかというそもそもの事実関係を確認するべきことは当然のことながら、最も留意すべきは、労使協定の締結当事者が労働組合ではなく「過半数代表者」(労働基準法施行規則第6条の2)であった場合に、当該過半数代表者の選出プロセスが法定要件(労働基準法施行規則第6上の2)を満たしているか、という点です。 具体的には、過半数代表者は、①いわゆる「管理監督者」(労働基準法第41条第2号)ではないこと、②投票・挙手等の方法により選出されていること、③使用者の意向に基づき選出されていないこと、の要件を満たしていることが必要です。このうち、特に気をつけたいのは、②投票・挙手等の方法により選出されていること(いわゆる民主的選出の要件)が確実に確保されているかという点です。 例えば、過半数代表の選出時に、実際には投票をしていないのにも関わらず候補者が過半数代表として選出された旨を一方的に社内に公表していた場合や、一応投票はしているがその手続きに重大な瑕疵がある場合(形式上は投票とはしているが投票できる社員が不当に限定されていた場合や、投票をしなかったことを一律的に賛成とみなして処理するような場合など)は、法定要件を満たしていないとして過半数代表の法的地位が否定される可能性があります。 この場合、例えば時間外労働・休日労働については当該過半数代表が関与した36協定が無効となり、全ての時間外労働・休日労働が違法状態となることから、重大なコンプライアンス上の問題が生じてしまいます。なお、36協定が無効となった場合であっても割増賃金の支払い義務が消滅する訳ではなく、時間外労働が発生しているのであれば必ず割増賃金は支払わなければなりません。 4. 「最近 1 年間及び申請事業年度における従業員に対する賃金未払いの発生状況及びその後の顛末」について 未払賃金が実際に発生していたことが判明した場合には、 IPO(株式上場)に向けて速やかに清算をした上で、「発生時期、期間、件数、金額」について正確に報告できるよう記録を取りまとめておくことが必要です。この作業については非常に労力がかかることはもちろん、計算上の正確性も求められますので、できる限り早期に着手することが必要です。 未払賃金については、IPO時に、過去3年分の清算が完了していることが必要です(現職の従業員だけではなく、退職者も含みます)。これは、労働基準法115条及び労働基準法附則143条3項の定めにより、退職手当を除く賃金請求権の消滅時効が当分の間3年(本来は5年)とされていることが根拠となっています。なお、退職手当の請求権の消滅時効は5年ですので、退職手当に未払いがある場合は過去5年分について清算が必要です。 なお、未払賃金の清算時の留意点としては、対象となる社員にその他の未払い賃金債権が存在しない旨を必ず確認し、その旨を客観的な記録として残しておくということが非常に重要です。未払賃金を清算したとしても、場合によっては、会社が把握していない時期の時間外労働や休日労働について事後的に突然主張され、その部分についての支払いが完了していないことを争われる可能性があります。 このような紛争が新規上場審査の直前に表面化してしまうと大きなリスクとなるため、その他の未払賃金債権が一切存在しないことは確実に担保しておく必要があります。実務上は書面でやりとりすることが多いですが、文面については弁護士等によるリーガルレビューを行い、リスクコントロールに万全を期すことが必要です。 5. 「管理監督者の状況」について いわゆる「管理監督者」とは、労働基準法第41条2号が定める「監督もしくは管理の地位にある者」のことを指します。管理監督者には、労働基準法上の労働時間、休憩、休日に関する規定が適用されないことから、割増賃金の支払いもなされません(深夜割増は除く)。 未払賃金との関係では、管理監督者は大きな論点の1つとなります。すなわち、会社が認識している管理監督者が、実際には法的な管理監督者の条件を満たしておらず、結果として割増賃金が未払いとなってしまう、というケースです。 この問題の難しさは、労働基準法第41条2号の「監督もしくは管理の地位にある者」が具体的に意味するもの(すなわち、管理監督者の定義)が法文上必ずしも明らかにされていない、という点にあります。
- [IPO(株式上場)の準備と労務DD(短期調査):労働時間の把握の重要性](https://shiodome.co.jp/column/22170/) - 「IPO(株式上場)の準備と労務DD(短期調査):未払賃金の発生」では、新規上場審査で取引所が最も重要視する項目の1つである未払賃金問題について、重要な留意点を解説しました。労働時間の把握は、適正な賃金支払いのための大前提となる要素ですので、新規上場審査においても厳しく確認されることになります。このコラムでは、未払賃金問題と深い関連性にある労働時間の把握について、IPO(株式上場)を見据えて留意すべき点について解説します。 1. 法令上の義務としての労働時間の把握 まず、労働時間の把握についての法的な規制について確認しましょう。これまで、事業者に労働時間の把握を直接的に義務付ける法律は存在せず、行政通達において一定の方針が示されるに留まっていました。いわゆる「46通達」とよばれる「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準について」(平成13年4月6日基発339号)や、46通達をアップデートする形で発出された「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドラインについて」(平成29年1月20日基発0120第3号)がそれに該当します。もっとも、労働基準法第108条で調製が義務付けられている賃金台帳については、労働基準法施行規則第54条1項により労働時間を記載することとされていることから、事実上、労働基準法が労働時間の把握義務を課しているということはできるでしょう。 このような中、職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的とする労働安全衛生法が、働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(いわゆる「働き方改革関連法」)により2018年に改正されました。改正後の労働安全衛生法では、2019年4月1日以降、客観的な方法により労働者の労働時間の状況を把握することが事業者の義務として新たに規定され(労働安全衛生法66条の8の3及び労働安全衛生規則第52条の7の3)、これにより、労働時間の把握については正式に法的な義務となりました。 改正後の労働安全衛生法が定める労働時間の把握義務は、主に労働安全衛生管理の観点からの要請です。このため、時間外割増や休日割増が適用除外となっているいわゆる「管理監督者」(労働基準法第41条2号が定める「監督もしくは管理の地位にある者」)についても、労働安全衛生法上は一般従業員と同様に労働時間を把握しなければなりません。そして、実際の労働時間に応じて、労働安全衛生法が定める適切な措置(長時間労働者への医師による面接指導の実施など)を講じる必要があります。 このように、未払賃金問題と深い関連性にある労働時間の把握はIPO(株式上場)審査において重要であることはもちろんですが、その前提として、法的な義務であることに十分留意しなければなりません。 2. 労働時間の概念 労働時間の把握が法令上の義務であることはわかりましたが、では、そもそも労働時間とはどのような概念なのでしょうか。 まず、雇用関係における労働時間とは、一般的に、労働者が働かなければならない時間(所定労働時間)のことをいいます。例えば、労働時間(始業及び終業の時刻並びに休憩時間)は、就業規則において絶対的明示事項とされている(労働基準法第89条第1号)ほか、労働契約の締結に際しても、労働者に書面での明示が求められているところです(労働基準法第15条第1項及び労働基準法施行規則第5条第1項第2号等)。このようにして明示された労働時間について、労働者は、労働契約上働く義務を負うことになります。 他方で、労働安全衛生法が把握することを求めている労働時間とは、このような労働契約上の取り決めを前提として実際にその労働者がどれくらいの時間働いたか、という実労働時間になります。そして、この場合の労働時間とは、「労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に決まるもの」であって、「労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんにより決定されるべきものではない」(※三菱重工業長崎造船所事件)とされています。すなわち、就業規則や雇用契約書上で定められた労働時間(所定労働時間)とは関係なく、その労働者が実際に使用者の指揮命令下に置かれていた時間が把握すべき労働時間となります。 例えば、就業規則で始業時間が朝8時と定められている会社で、毎朝、朝7時50分から朝礼が行われていたと仮定します。この場合、始業時間の前に始まっているので一見すると労働時間ではないように思えますが、その時間が実質的にみて「使用者の指揮命令下に置かれていた」と判断される場合は、労働時間として賃金支払いの対象となります。具体的には、その朝礼への参加が管理者から義務付けられていたり、参加は一応任意としていながらも参加しないと人事評価で不利になるというような運用がされていた場合には、「使用者の指揮命令下」にあったと判断される可能性が極めて高くなります。他にも、業務開始前の制服への着替えのための更衣時間や、お昼時間の交代制の電話当番(いわゆる手待時間)、更には終業時間外に行われる全員参加の研修など、実質的に見て「使用者の指揮命令下」にあったと判断される可能性があるケースは非常に多いです。 このように、使用者の指揮命令下に置かれているかどうかは形式的に判断するのではなく、実態としてその行為が管理者から義務付けられていたのか、という観点で考える必要があります。本来であれば労働時間として把握すべき時間をカウントせずに運用しているような状況がある場合は、正確な労働時間が記録できておらず、結果として未払い賃金の発生に繋がることとなりますので、IPO(株式上場)審査の前に総点検することが望ましいでしょう。 3. 労働時間の客観的な把握 改正後の労働安全衛生法では、「タイムカードによる記録、パーソナルコンピュータ等の電子計算機の使用時間の記録等の客観的な方法その他の適切な方法」で労働時間を把握しなければならない、とされています(労働安全衛生規則第52条の7の3)。基本的に、自己申告制による労働時間の把握は、どうしても客観的な方法をとることが難しい例外的な場合に限って許容されることとなります。 近年では、クラウド上で利用ができる勤怠システムが普及するなど、電子的に労働時間を把握することが容易になっています。例えば、直行直帰など事業所で働かない場合であったとしても、出先から勤怠システムにアクセスすることやパソコンを操作することは必ずしも不可能ではなく、仮にそのような状況が発生したとしても、同行している管理者がその場で現認して労働時間を把握することも一応は可能です。このため、近年において労働者の自己申告に頼らざるを得ないケースというのは極めて例外的な場合と考えられるため、あくまでも客観的な方法をとることを優先して正確な労働時間の把握に努めるべきでしょう。 どうしても自己申告制で労働時間を把握せざるを得ないような場合には、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドラインについて」(平成29年1月20日基発0120第3号)を踏まえた措置が必要です。すなわち、 自己申告を行う労働者や労働時間の管理者に対して自己申告制の適正な運用について十分な説明を行うことや、 自己申告により把握した労働時間と入退場記録等を突合して著しい乖離がある場合には実態調査を実施すること、更には、労働者が自己申告できる時間数の上限を設けるなど適正な自己申告を阻害する措置を設けないことなどが必要です。また、労働時間を管理する立場にある管理者に対して、労働時間管理に関する十分な教育を施すことも重要でしょう。 このように、自己申告制を取らざるをえない場合は、それを正当化できるだけの徹底した措置を講じる必要があります。このような措置を取らずに漫然と自己申告制を続けていた場合は、記録されている労働時間の客観性に重大な疑義が生じ、上場審査の際の大きなリスクとなるでしょう。
- [IPO(株式上場)の準備と労務DD(短期調査):変形労働時間制の運用](https://shiodome.co.jp/column/22199/) - このコラムでは、労働基準法上の「変形労働時間制」の運用について、IPO(株式上場)を見据えて留意すべき点について解説します。 1. 労働時間の基本的なルール まず、変形労働時間制を考える上で前提となる、労働時間についての原則的なルールを確認しましょう。労働時間については、労働基準法第32条において、以下のとおり原則的なルールが定められています。 休憩時間を除き、1週間について40時間を超えて、労働させてはならない。 休憩時間を除き、1日について8時間を超えて、労働させてはならない。 この規定により、原則として、週40時間を超える労働、そして、1日8時間を超える労働については、それぞれ法律上禁止されている、ということになります。これが労働時間に関する基本的なルールとなります。 そして、この基本的なルールの例外を定めたものが、いわゆる「36協定(サブロク協定)」とよばれるものです(労働基準法第36条)。労使協定である36協定を締結し行政官庁(労働基準監督署)に届け出た場合は、例外的に、労働基準法第32条が定める原則的なルールを超えて労働させることができる、とされています。 なお、この場合、36協定は単に締結するだけではなく、労働基準監督署に届け出をしないと効力は生じません。また、労使協定の締結当事者が過半数代表(労働者の過半数を代表する者)である場合は、その過半数代表の選出プロセスが法令の要件を満たしたものであることが大前提となります。(過半数代表者については、コラム「 IPO準備と労務DD(短期調査):未払賃金の発生 」もご覧ください) 2. 変形労働時間制とは 以上を前提に、変形労働時間制について確認します。まず、変形労働時間制とは、一般的に、以下の4つを指します。 1か月単位の変形労働時間制(労働基準法第32条の2) 1年単位の変形労働時間制(労働基準法第32条の4) 1週間単位の非定型的変形労働時間制(労働基準法第32条の5) フレックスタイム制(労働基準法第32条の3) これらの変形労働時間制とは、労働基準法32条が定める原則的なルール(週40時間・1日8時間)を満たしているかどうかを、一定の単位(期間)で変則的に判断することを許容する仕組みです。例えば、1か月単位の変形労働時間制であれば、1か月以内の期間を平均して1週間の労働時間が40時間(原則ルール)を超えない限りは、それぞれの週や日で原則ルールの時間を超えて労働させてもよい、ということになります。 原則的なルールでは、あくまでも、毎週40時間・毎日8時間を守る必要があります。しかし、変形労働時間制を採用した場合には、一定の期間の平均で週40時間を超えていなければ、特定の週や日においてそれぞれ40時間または8時間を超える労働をさせることができます。このように、変形労働時間制を導入することで、特定の週や日に集中的に忙しい、といった現場のニーズに応じて柔軟な労働時間管理ができるようになるのです。 ところで、36協定と変形労働時間制はどのような関係にあるのでしょうか。結論としては、36協定というのは、労働時間の基本ルール(労働基準法第32条)や、その例外である変形労働時間制(労働基準法第32条の2〜5)を超えて労働させる場合に必要なものということになります。このため、変形労働時間制を採用している場合であっても、一定の期間を平均して週40時間を超える場合は、36協定を締結及び届け出しない限り、違法となりますので、注意が必要です。 3. 変形労働時間制の導入 それぞれの変形労働時間制を実際に導入するためには、法令上の要件を満たさなければなりません。例えば、1か月単位の変形労働時間制を採用しようとした場合、就業規則または労使協定において、以下の事項を定める必要があります。 4. 対象労働者の範囲 法令上、対象労働者の範囲について制限はありませんが、その範囲は明確に定める必要があります。 5. 対象期間および起算日 対象期間及び起算日は、具体的に定める必要があります。 6. 労働日および労働日ごとの労働時間 シフト表や会社カレンダーなどで、対象期間すべての労働日ごとの労働時間をあらかじめ具体的に定める必要があります。この場合、対象期間を平均して、1週間あたりの労働時間が40時間を超えてはなりません。 ※フレックス制については異なる要件あり 7. 労使協定の有効期間 労使協定の有効期間は、対象期間より長い期間にする必要があります。 これらの手続きを全て踏んだ上で初めて1か月単位の変形労働時間制が有効となります。同様に、その他の変形労働時間制においても、労使協定において必要な法定要件(それぞれ異なります)を明確に規定する必要があります。これらの法定要件を満たさずに導入された変形労働時間制は効力が生じませんので、導入の際の手続きには社会保険労務士などの専門家の助言を得るべきでしょう。 8. IPO(株式上場)審査を踏まえた留意点 IPO(株式上場)審査を見据えた場合に最も留意しなければならないポイントは、変形労働時間制を導入するための法定要件が確実に満たされているか、という点です。 そもそも、変形労働時間制とは、前述のとおり、労働基準法32条が定める原則的なルール(週40時間・1日8時間)を満たしているかどうかを、一定の単位(期間)で変則的に判断することを許容する仕組みのことです。すなわち、この条件を満たしている限り、特定の週や日で原則ルールの時間を超えて労働させていたとしても、割増賃金の支払い義務は発生しないことになります。 他方で、変形労働時間制を導入するための前提であるそれぞれの法定要件が満たされていなかった場合は、当然の帰結として、その変形労働時間制には効力が生じません。その結果、特定の週や日で原則ルールの時間を超えて労働させていた場合は、その超えている部分について全て時間外労働時間として割増賃金の対象となってしまいます。仮に、この状態が賃金請求権の消滅時効期間である3年間にわたって継続していたような場合(※時効期間について原則5年であるが、当面の間は3年とされています。)は、支払い対象となる割増賃金も莫大な額になることが予想され、上場直前の致命的なリスクとなり得るでしょう。(賃金請求権の消滅時効については、コラム「 IPO準備と労務DD(短期調査):未払賃金の発生 」もご覧ください) 実際に、最近の裁判例においても、法定要件を満たしていなかったことを理由として変形労働時間制の適用を否認するケースが出ています。このケースは、大手外食チェーンでの裁判例ですが、就業規則に全てのシフトが記載されていなかったために、1か月単位の変形労働時間制が無効となったものです。全国各地に多数の店舗を展開する大手外食チェーンのような業態では、それぞれの店舗ごとにシフトパターンが何通りも存在することはよくあることですが、そのような場合であっても、全てのシフトを明確に就業規則に記載しなければ、最終的に裁判で無効とされる可能性が高いことを示唆しています。 変形労働時間制は一定の範囲で柔軟な労働時間管理を可能にするものではありますが、前述のとおり、その導入には非常に厳格な手続きが必要であり、これに不備があった場合は最終的に未払い賃金として表面化してしまう可能性が非常に高くなります。この点は、IPO(株式上場)審査との関係では特に留意が必要です。 既に変形労働時間制を導入している場合は、導入のための法定要件を確実に満たせているかの再点検を実施し、仮に不十分な点があるのであれば、早急に是正する必要することが必要となるでしょう。
- [IPO準備企業でも実践可能!内部監査に効くデータ分析のはじめ方](https://shiodome.co.jp/column/32969/) - 1. はじめに:内部監査DXの可能性 IPOを目指す企業や、上場直後の企業にとって避けて通れないのが「内部統制の整備」と「内部監査の仕組み作り」です。 とはいえ、「監査部門に割くリソースがない」「内部統制評価の仕方が分からない」といった声も多く聞かれます。特に人員やシステムが限られる小規模な企業では、「監査の高度化を目指したいが何から手を付ければ良いのか分からない」という漠然とした悩みを抱えられているパターンも多く見受けられます。 しかし実は、ExcelやPower BI(*1)など身近なツールを使った“見える化”によって、少ないリソースで内部監査の質を大きく向上させることが可能です。本稿では、データ分析の経験がない企業でも取り組める、内部監査への活用法を具体例とともに紹介します。 2. なぜ今、データ分析が内部監査に必要なのか? 従来の内部監査は、紙やPDFベースの資料確認や、インタビュー中心の属人的なアプローチが主流でした。しかしこうした手法には以下のような限界があります。 処理件数が多い業務では、全件を確認できない 記録として残っていても、異常の検知が主観的 調査対象の選定に、属人的な偏りが生じやすい 一方、日常業務で発生する取引データ(仕訳、精算、取引データ等)を定量的に扱うことで、網羅的かつ客観的な監査が可能になります。特に外部審査や経営層へ報告においては、「内部統制の運用実績」として、数値や事実に基づく根拠が求められるため、データの活用は大きな強みになります。 3. データで“違和感”を可視化する:よくあるパターンと対応 ここでは、実務でよくある不正リスクやミスに対して、簡単な分析で違和感を浮かび上がらせる方法を紹介します。 ■3.1. 経費精算の異常検知(ヒストグラム分析) 特定社員の精算金額が、10万円、99万円などの“キリの良い金額”に集中していないかをヒストグラム(階級別集計)で分析することで、「上限ギリギリを狙った申請」が見えてきます。 使用ツール:Excelの“データ分析”機能またはPower BIのビン分割グラフ 目的:意図的な金額調整の傾向を把握 ■3.2. 入出金データの異常点(曜日・時間帯別) 土日・深夜など通常業務時間外に処理された伝票や入出金がないか、処理時間・曜日と金額でピボット図を作成すると、明らかな異常値を視覚的に検出できます。 使用ツール:ExcelやPower BIのピボットビジュアル 目的:手続き逸脱・作業タイミングの異常検出 ■3.3. 不正兆候の“点数化”:スコアリングによるリスクランキング もう一歩踏み込むと、定義したリスクシナリオごとにスコアを設定し、取引単位で「不正の可能性スコア」を集計する方法もあります。 例:スコア設定ルール シナリオ条件スコア01金額が100万円以上+302処理が休日または深夜+203同一担当者が起票・承認を兼任+504頻繁に使われる汎用的な摘要(例:顧客訪問)+1 これらのスコアを加算し、「スコアの高い順に上位3名をレビュー対象にする」といった効率的な抽出が可能になります。 Power BIでは、条件スコアを定義して列を追加し、ランキングで表示できます。 属人的な「怪しい」から脱却し、共有された目線でのリスクベースのレビュー体制を作ることが可能となります。 4. まとめ:内部監査DXは“仕組み化”が鍵。小さく始めて継続を データの“見える化”によって、違和感の早期発見が可能に 小規模な企業でも、ExcelやPower BIで十分に実現可能 IPO準備中・上場後の統制評価にも有効なエビデンスを提供 まずは、1つのデータから、1つの気づきを。そこから始まる改善のサイクルこそ、リスクを“見える化”し、未然に防ぐ仕組みを育てていくための出発点です。 小さな実践の積み重ねが、強い内部監査・内部監査構築へとつながっていきます。 5. 用語解説 *1:Power BI Microsoftが提供するBIツールのサービス名です。BIツールのBIとは「ビジネス インテリジェンス (Business Intelligence)」の略で、例えば売上実績など、企業の膨大なデータを分析、ひと目で分かるように可視化して、ビジネスの迅速な判断・意思決定に役立つソフトウェアのことです。
- [欠損金繰延制度の全体像と各国比較:外資系企業が知るべき税務戦略](https://shiodome.co.jp/column/24436/) - 1. 欠損金の繰延制度とは:基本概要 企業活動において、一時的な赤字、すなわち欠損金が発生することがあります。欠損金の繰延制度は、発生した赤字を将来の黒字と相殺することで、税負担を平準化し、実際の経済実態に沿った課税を実現する仕組みです。 制度の根底にある考え方は、事業年度ごとに生じる一時的な損失を、企業全体の所得を正しく把握するために将来年度の利益と相殺し、適正な税負担へと転換することにあります。 また、欠損金は将来の税額軽減という意味で、会計上は「繰延税金資産」として扱われることが多く、資金繰りの改善にも寄与します。 企業が欠損金の繰延制度を活用するには、欠損金が発生した年度に適切な申告を行い、その後も継続して税務申告を行う必要があります。これにより、企業は景気や事業環境の変動に左右されず、長期的な経営計画の中で税負担をコントロールするメリットがあります。 2. 日本の繰延制度の仕組みと特徴 日本における欠損金の繰延制度は、法人税法に基づき、原則として欠損金を翌期以降10年間にわたって繰り越し、各事業年度の所得計算上、損金として計上することが認められています。欠損金の発生年度に青色申告の承認を受け、その後も継続して申告することが条件となります。 さらに、企業の規模に応じて控除限度額が異なります。資本金1億円以下の中小法人の場合は欠損金全額を翌期以降の黒字と相殺できるのに対し、大企業ではその年度の所得の50%が控除上限となります。これにより、企業規模に応じた公平な課税が図られる仕組みとなっています。 また、日本では欠損金を利用するための申告要件や継続性の要件が厳格に運用され、税務上のリスクを回避するための内部管理体制が求められます。 3. 各国の繰延年数の比較と違い 欠損金繰延制度は、国ごとに特徴が異なります。外資企業のCFOや経理部長にとっては、自国と日本の制度の違いを把握することが節税戦略上重要です。 【アメリカ】 アメリカでは2017年の税制改正により、欠損金の繰越期間が原則無期限となりました。これにより、過去に生じた欠損金を将来の黒字と無期限に相殺することが可能です。ただし、1年あたりの利用可能額はその年度の課税所得の80%までに制限されています。この80%ルールにより、いくら欠損金があっても、毎期一定割合の黒字には必ず税金がかかる仕組みとなっています。 【イギリス】 イギリスでは欠損金の繰越制度自体には明確な期間制限はありません。赤字は事業が継続している限り無期限に繰り越し可能ですが、実際の利用にあたっては、年間の黒字額に応じた控除枠の上限が設けられている場合があります。たとえば、一定の黒字額までは全額控除できる一方で、黒字が大きくなるとその超過部分については50%までしか控除できないケースも存在します。こうした制限は、損失利用を通じた過度な節税を防ぐためのものです。 【ドイツ】 ドイツでは欠損金の繰越自体に期間制限はなく無期限に利用可能です。しかし、欠損金の利用は年次の控除額が一定の割合に制限されるほか、組織再編により、過去の欠損金が消滅するルールが適用される場合があります。これにより、計画的な損失の利用が求められ、企業は慎重な管理を行う必要があります。 【シンガポール】 シンガポールでは欠損金の繰越期間は無制限ですが、株主が大幅に変更されると過去の欠損金が失効する場合があります。 このように、各国の制度は「無期限」と見える場合でも、実際には毎年の利用制限や引継条件などのルールが設けられており、単純に「いつでも全額控除できる」わけではありません。 海外進出を志す企業は、自国と海外の制度の違いを十分に理解し、グローバルな税務戦略を立案する必要があります。
- [TNFD提言の理解と実践:その1・自然関連財務情報開示の概要と意義](https://shiodome.co.jp/column/27543/) - 1. はじめに:なぜ今TNFDか 自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)は、あらゆる規模の企業と金融機関に対し、自然関連課題を特定し、評価し、管理し、そして適切な場合は開示するためのリスク管理と開示の枠組みを提供することを目的としています。しかし、この表現だけではそのTNFDの本質的な意味合い、「なぜTNFDか」を幅広く企業の担い手に伝えることは難しいでしょう。そこに近づくために、「自然関連財務情報開示タスクフォースの提言」(2023年9月)の序文にあるTNFD共同議長のメッセージを下記に着目してみましょう。 「地球上のすべての生き物の未来、そして私たちの将来の繁栄は、自然のレジリエンスにかかっている。自然の減少は私たちの社会の安全を脅かし、気候変動への緩和・適応能力を含め、ビジネスや投資家にとってのリスクを増大させる。自然界と生物多様性のレジリエンスを持続的に向上させることは、現在と将来の世代の繁栄を確実にするために不可欠である。(中略)将来のキャッシュフローは、自然がもたらすこれらの生態系サービスのレジリエンスにかかっている。9つのプラネタリーバウンダリーのうち6つがすでに限界を超え、気候変動のみならず、自然リスクが財務リスクであることがますます明らかになっている。現状維持はもはや実行可能な選択肢ではなく、自然は企業の社会的責任(CSR)の問題ではなく、戦略的リスク管理の問題として捉えられなければならない。」 このメッセージは、「なぜTNFDか」に直球で答えているように思われます。少し言葉を加えて解説してみましょう。 自然は本来、何らかの外的変化が起きても適応する力を備えており、自然システムの中で再生する力(レジリエンス)を有していますが、長年人間が自然界の中に過度に介入続けてきた結果、自然はそのレジリエンスを失いかけているという事実があります。その事実は、世界の科学者たちにより長年様々な科学的検証によって示されてきました。 上述されているプラネタリーバウンダリーは、2009年にストックホルムの環境学者ヨハン・ロックストロームを中心とする研究グループがはじめたもので、正にその科学的検証を国際社会に示し警鐘を鳴らしてきた代表的なものの一つです。生態系、水・森林環境などが本来持っているレジリエンス(この場合、自然に回復する力)が限界値を超えると、壊滅的な状態に達する危険性があるため、気候変動、生物圏の一体性損失(生物多様性の喪失と種の絶滅)、土地利用の変化、海洋酸性化、新規化学物質を含む9つの領域について、その限界値を示し、現状について数値を示し、更新し続けてきたのです。その「プラネタリー・バウンダリー(Planetary Boundaries)」の研究を踏まえ、既に生物圏の一体性損失などについて、生物の絶滅速度は既に取返しのつかないレベルにまで達していると報告がなされています。 上記は何を意味するのかといいますと、端的にいえば、暮らしや営みを支える生態系サービスが機能しなくなる方向に進んでいるということ。ひいては、企業の営みに大きな打撃を及ぼす方向に向かっているということ。つまり、自然リスクが企業の財務リスクにもなり、経営にも影響を与え得るということ、と捉えることができるでしょう。さらに一歩踏み込めば、自然のレジリエンスを壊さないラインまで、また限界を超えてしまった自然のレジリエンスを再び機能することを促すラインまで、事業の在り方を見直さなければならない、という言い方もできるでしょう。 こうした事態への、企業の関与を仕組み化するために、TNFDがはじまりました。 2. 誕生の背景と国際的動向 TNFDは、トップダウンでつくられた規制とは異なり、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)やグローバル・レポーティング・イニシアティブ(GRI)を含む既存の枠組みや基準をベースとし、市場参加者やその他のステークホルダーがアイデアを持ち寄り、オープン・イノベーションのアプローチを用いて開発されたという特徴を持ちます。 TNFDを後押ししたのは、2022年12月に開催された生物多様性条約第15回締約国会議です。そこで196カ国が「昆明・モントリオール生物多様性枠組」に合意し、2030年までに自然の損失を食い止め、反転させ、2050年までに自然と共生するための世界各国のコミットメントが示されました。その中で、この移行を可能な限り秩序だったものにし、ビジネスや金融を含む社会のあらゆる分野の潜在能力を最大限に引き出して、ネイチャーポジティブという成果に貢献するために、このTNFDが動き出したのです。 なお、SSBJシリーズその5に触れたように、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)基準は、生物多様性や生態系といった、TNFDのスコープも視野に入れた新しいプロジェクトをはじめており、そのうちにTNFDも日本サステナビリティ開示(SSBJ)基準の中に取り込まれていく可能性があることに留意が必要です。 3. TNFD提言と枠組み TNFDは過去10年にわたる気候関連報告に関する市場の経験や、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の作業を踏まえ、投資家やその他の資金提供者に対して、企業が明確で比較可能な一貫性のある情報を提供することを促進するという役割を果たすことに主眼を置いています。具体的にはTNFDは次のような14項目の開示を提言し(下記①~⑭は本稿便宜上付したもの)、測定指標のセットおよび一連のガイダンスを提供しています。 【ガバナンス】自然関連の依存、影響、リスクと機会の組織によるガバナンスの開示。 ①自然関連の依存、影響、リスクと機会に関する取締役会の監督について②自然関連の依存、影響、リスクと機会の評価と管理における経営者の役割について③自然関連の依存、影響、リスクと機会に対する組織の評価と対応において、先住民族、地域社会、影響を受けるステークホルダー、その他のステークホルダーに関する組織の人権方針とエンゲージメント活動、および取締役会と経営陣による監督について 【戦略】自然関連の依存、影響、リスクと機会が、組織のビジネスモデル、戦略、財務計画に与える影響について開示。 ④組織が特定した自然関連の依存、影響、リスクと機会を短期、中期、長期ごとに説明⑤自然関連の依存、影響、リスクと機会が、組織のビジネスモデル、バリューチェーン、戦略、財務計画に与えた影響、および移行計画や分析について⑥自然関連のリスクと機会に対する組織の戦略のレジリエンスについて、さまざまなシナリオを考慮して説明⑦組織の直接操業において、および可能な場合は上流と下流のバリューチェーンにおいて、優先地域に関する基準を満たす資産および/または活動がある地域を開示 【リスクと影響の管理】組織が自然関連の依存、影響、リスクと機会を特定し、評価し、優先順位付けし、監視するために使用しているプロセスを説明。 ⑧直接操業における自然関連の依存、影響、リスクと機会を特定し、評価し、優先順位付けするための組織のプロセス⑨上流と下流のバリューチェーンにおける自然関連の依存、影響、リスクと機会を特定し、評価し、優先順位付けするための組織のプロセス⑩自然関連の依存、影響、リスクと機会を管理するための組織のプロセス⑪自然関連リスクの特定、評価、管理のプロセスが、組織全体のリスク管理にどのように組み込まれているかについて 【測定指標とターゲット】マテリアルな自然関連の依存、影響、リスクと機会を評価し、管理するために使用している測定指標とターゲット ⑫組織が戦略およびリスク管理プロセスに沿って、マテリアルな自然関連リスクと機会を評価し、管理するために使用している測定指標⑬自然に対する依存と影響を評価し、管理するために組織が使用している測定指標⑭組織が自然関連の依存、影響、リスクと機会を管理するために使用しているターゲットと目標、それらと照合した組織のパフォーマンス なお、上記のリストは、項目として羅列的に見るよりもむしろ、これらを企業の戦略面からどのように捉えるかという視点が重要になるでしょう。そうした視点から、TNFDに取り組む上で重要と思われる点を2つ挙げておきます。 第一に、企業が自然資本(生態系サービスなど)にどれだけ「依存」しているかと、企業活動が自然にどのような「影響」を与えているかの両方の側面を、バリューチェーン全体(直接的なオペレーションだけでなく、上流、下流を含めて)を通して評価することが求められています。 「依存」については、企業が自然資本や生態系サービスにどれほど依存しているかを評価します。たとえば、水資源に依存している、気候の安定に依存している、などが挙げられるでしょう。 「影響」については、企業の活動が自然にどのような影響を与えてしまうのかという点です。この影響については、企業活動が及ぼす、森林伐採、水質汚染、生物多様性の損失、土地利用による自然破壊または自然環境への影響などが挙げられます。 こうした依存と影響が強調されているのは、冒頭の「プラネタリーバウンダリー」と大きく関係します。長年にわたる人間社会の営みが極めて深く自然界を侵してきた結果としての現状に鑑み、その侵された病を少しでも良くするための前提として、どれだけこれまでの人間社会の営みが自然に依存してきたかを可視化し、どのような影響が自然に及ぼされているかを把握するというように、病の根幹を捉えることが要求されているのです。このため、直接的なことだけでなく、間接的な依存、影響も含めて、さらに直接的なオペレーションだけでなく、上流、下流を含めて見ていく必要があるということになります。 第二に、TNFDは、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)を基礎としており、TCFD提言における4つの構成要素(ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標)を基礎に置いていることに違いはありません。また前述のISSB基準/SSBJ基準もTCFDを基礎にしています。したがって、TCFD、TNFD、SSBJと、別々に基準遵守に追われるよりむしろ、これらを戦略的な観点から全社的に俯瞰的に(木も見て森も)捉えていくことが重要になると考えられます。 4. LEAPアプローチ 上述のような枠組みに沿って企業は、出来る限り一次情報を社内で収集・統合・分析し、情報公開することが求められるわけですが、その際に活用が推奨されるガイダンスも幾つも公開されています。そのガイダンスのうちの主だったものの一つに、LEAPアプローチ(自然関連課題の特定と評価のためのアプローチ)があります。このアプローチは、240以上の組織がパイロットテストを行い、その結果に基づき公表されています。 LEAPアプローチと聞くと、何か特別なことにように想像されるかもしれませんが、基本的に、スコーピング(Scoping)を経て⇒Locate(<自然との関係性を>位置づける)⇒Evaluate(<自然への依存・影響を>評価する)、Assess(<リスクと機会の>アセスメントを行う)⇒Prepare(準備する)のステップを指します。基本的ながら、実際にはなかなか組織内で徹底が難しい重要なプロセスをあらためて提示したものと言えるでしょう。 他方、それぞれの項目では、細かなガイダンスが様々詳しく提供されており、その中でも特徴的なことを2つに絞って挙げておきます。 1点目として、「場所」が重視されていることが特徴的です。具体的には、「Locate(位置づける)」の中で、3つのフィルター(セクター、バリューチェーン、地理的位置)を用いて自然に関連する潜在的な問題を絞り込み、優先順位をつけることを推奨しています。自然関連の依存関係や影響、リスク、機会は場所特有のものであるため、これらを特定、評価、管理する上でその文脈や「場所」が非常に重要であることが強調されています。 なぜ場所が重要なるのでしょうか?一言でいえば、自然関連のリスクや影響は場所によって大きく異なるためです。例えば企業が晒される現場として、水ストレスの高い地域での工場操業、生物多様性ホットスポットでの土地開発など、が考えられます。 具体的には、自社の施設やサプライヤーがどの自然資本と接しているかを地図で可視化すること、またはそれぞれの場所での生態系サービスの状況や脆弱性を分析することなどが、こうした重要項目への対応としては必要になってきます。 2点目として、Science Based Targets Network(SBTN)によって開発された「AR3T」フレームワークを導入している点が特徴的です。TNFDは「Prepare(準備する)」、つまり現状把握を元に対応策を決定する際の指針として、「AR3T」フレームワークの採用を推奨しています。このAR3Tとは、「回避(Avoid)」→「軽減(Reduce)」→「再生(Regenerate)」&「回復(Restore)」というように、企業対応において連続的にアクションが必要とされる4つのタイプのアクションに加え、こうした一連のアクションを可能にするための「変容行動(Transformative Action)」を重視しており、それぞれの英語の頭文字をとって表現したものです。 特に、LEAPアプローチは、この「AR3T」フレームワークを介して、「自然への負の影響を回避するまたは最小化するためのアクションは、既存の負の影響を補完的方法などで回復するためのアクションよりも先ず優先されるべきアクション」であることを強調しています。さらに「自然への負の影響を軽減することと、ネイチャーポジティブ(正の成果を生み出すこと)とは、同じではない」と言い切ります。つまりは、それほど自然への負の影響を回避する、軽減するためのアクション無くしては何も始まらないということ。言い換えると、その回避・軽減ためのアクションは、全てのTNFDの土台になり、そのアクションを興してこそ、ネイチャーポジティブも可能になるし、そこから企業の機会も生まれるという点が、重視されていると言えるでしょう。 5. TNFDをとりまく企業の動向 2024年10月のCOP16時点で、TNFDの推奨に沿った自然関連リスクの報告を開始することを表明した企業・金融機関は502社に達し、2024年1月から57%増加しました。世界全体でも参画する企業は54 の国・地域、62の業種にわたり、上場企業の時価総額は6.5兆ドル、金融機関の運用資産総額は17.7兆ドルに上ると言われています。 興味深いことに、上記502社のうち日本企業および金融機関の数は約133社に達し、国別で世界最多となりました。全体502社のうち約26%を占めていることになります。この数字は、2024年1月時点での80社から大幅に増加しており、TNFDの枠組みに基づく自然関連リスク・機会の開示に対する日本企業の関心と取り組みの強化を示していると言えるでしょう。日本政府の支援や、企業のサステナビリティへの取り組みの強化、国際的なESG投資家からの期待の高まりなどが背景にあると考えられます。 一方、全体的な企業のTNFD実施状況につき、一般的な観点から次のような課題を挙げることができます。 データ不足と精度のばらつき自社やサプライチェーンの自然資本への「依存」や「影響」を把握するためのデータが不十分。特にグローバルな調達先や小規模サプライヤーに関する情報が乏しく、リスク評価が困難。 評価手法の統一性欠如生物多様性や水資源などの影響評価において、共通の尺度やガイドラインが不足。ENCORE やSBTNなどのツールもありますが、適用に専門知識が必要で、企業によって対応に差。
- [会計期間の決定に関する有利不利:日本独自の慣行と実務上のポイント](https://shiodome.co.jp/column/24471/) - 外資系企業が日本市場に進出する際、経理・会計の運用においては、現地独自の事情を十分に把握することが重要です。特に会計期間の設定は、税務申告や監査、連結決算といった各局面で影響を及ぼします。 本記事では、会計期間の基本的な概念から、なぜ日本では4月スタートが主流なのか、また税理士受託やIPO監査法人選定における影響、さらに親会社との連結に関する留意点まで、外資系企業のCFOや経理部長の方々が押さえるべきポイントを解説します。 1. 会計期間の基本と日本の慣行 会計期間とは、企業が一定期間の経営成績や財政状態を集計・報告するための期間を指し、通常は1年間を単位とします。 日本では、多くの企業が4月から翌年3月までを会計期間として採用しており、これは税務申告や行政手続きとの整合性が背景にあります。 日本独自の決算・税務のルールは、法人税法や商法、各種会計基準などに基づいており、これらが企業の経営判断や報告体制に大きな影響を与えます。 たとえば、決算期の選定は、経理部門の内部管理だけでなく、外部の監査法人や税理士との連携においても重要な要素となっています。 2. 4月スタートが主流となる背景 日本社会全体が4月スタートとなっている背景には、歴史的・社会的な理由が存在します。戦後の再建期以降、4月を新年度の始まりとする慣行が定着し、行政機関や学校、企業の予算編成が一斉に始動する体制が構築されました。 こうした統一的なタイムラインは、各種手続きや情報共有、内部統制の面で大きなメリットをもたらすと同時に、業界全体での調整や連携が円滑に行える環境を整えることにも寄与しています。 結果として、4月スタートの会計期間は、取引先や監査、税務申告における共通認識の形成に役立ち、企業間の信頼性向上にもつながっています。 3. 税理士受託での会計期間の影響 会計期間の設定は、税務申告や経営判断のタイミングに直結するため、税理士との契約時に大きな影響を及ぼします。 税理士は、企業の経理状況を的確に把握し、最適な申告・節税対策を講じるために、会計期間を考慮に入れたアドバイスを行います。 たとえば、決算期が業界標準の4月スタートであれば、情報の集約や比較が容易となり、税務戦略を立てやすくなる一方、企業固有の事情を反映した最適な期間設定が求められるケースも少なくありません。 また、税務上の特例措置や損益通算のタイミングなども、会計期間の設定により変動するため、税理士との連携は重要です。 4. IPO準備時における監査法人選定に関する有利不利 IPO準備時における監査法人の選定では、会計期間の始まりを何月かにすることによって、何か有利になるもしくは不利になるということは基本的にはありません。 ただ、上述したように日本企業の多くが会計期間を4月始まりにしているため、標準的な4月から3月に会計期間を設定することは、監査法人側にとって監査スケジュールや上場スケジュールが計画しやすいというメリットはあります。 したがって、監査法人選定という観点からすると、外資系企業が日本進出に伴い日本法人を設立する場合は、日本企業の標準的な会計期間である4月から3月にしておくのが無難といえるでしょう。 5. 親会社連結との整合性のポイント 外資系企業が日本で事業を展開する場合、現地法人の会計期間と親会社との連結決算との整合性が大きな課題となります。 親会社が海外に所在する場合、連結決算を行う際には各子会社の決算期とのズレが連結調整や内部統制に影響を及ぼす可能性があります。 日本では4月スタートが主流であるため、親会社側が異なる会計期間を採用している場合、調整作業や情報開示において追加の手間がかかることが考えられます。 また、連結ベースの決算書作成に際して、各子会社の業績を適切に統合するための内部手続きや監査の視点からも、統一感のある会計期間の採用は大きなメリットを持ちます。 結果として、親会社との連結においては、現地法人の会計期間を標準化することで、内部統制の効率化や透明性の向上が期待できるのです。 6. 会計期間設定のリスクと最適化 会計期間の設定は、企業の事業計画や税務戦略、監査体制に大きな影響を与えるため、リスクマネジメントの一環としても捉える必要があります。 標準的な4月スタートの会計期間を採用することで、各種手続きのスムーズな実施が期待できる一方で、業界や企業固有の事情を無視した一律の設定が、将来的な成長戦略や海外展開の際に柔軟性を欠くリスクも存在します。 たとえば、急速な事業拡大やM&Aを視野に入れた場合、決算期の変更が必要となるケースもあります。このような場合、内部管理システムの再構築や関係各所との調整が不可避となるため、変更前のリスク評価と変更後の効果測定を慎重に実施することが求められます。 また、税制改正や会計基準の改正も会計期間設定に影響を及ぼす要因として重要なポイントです。 7. 事例に学ぶ効果的な会計期間の決定 会計期間の設定、すなわち1年の決算期間をどの月からスタートさせるかは、企業の内部統制、税務手続、さらには監査法人との連携に大きな影響を及ぼします。 以下、具体的な事例をいくつかご紹介します。 【事例1:グローバル企業A社の場合】 A社は連結決算を行う外資系企業ですが、海外にある現地子会社の会計期間がA社と大きく異なる状況にありました。結果、連結決算時に過去年度との比較や内部調整が困難となり、監査法人からも指摘されました。 そこでA社は、現地子会社の会計期間をA社の標準である4月スタートに統一する決定を下しました。これにより、各社間の情報の整合性が向上し、内部統制が強化され、IPO準備時にも監査法人から高い評価を受ける結果となりました。 【事例2:中堅企業B社のケース】 B社はM&Aを通じて子会社を複数抱える外資系企業です。買収後、子会社間で会計期間がバラバラであったため、グループ全体での業績比較が難しく、経営判断に支障をきたしていました。そこで、B社は各子会社の会計期間を統一し、連結決算の際にスムーズにデータを集約できる体制を整備しました。 この取り組みにより、経営陣はリアルタイムでグループ全体の業績を把握できるようになり、税務申告や内部統制も効率化。結果、株主や投資家からも信頼性が向上し、IPO準備段階でも監査法人からの評価が高まりました。 これらの事例からも、会計期間の標準化は必ずしも単独で決定的な要因ではありませんが、内部統制の強化、連結決算の効率化、そして市場や監査法人からの信頼性向上に寄与する重要な判断材料であると考えられます。 企業は自社の成長戦略やグループ構造を踏まえ、最適な期間設定を検討することが求められます。 8. まとめ 本記事では、会計期間の設定が税務申告、税理士受託、IPO準備時における監査法人選定、そして親会社との連結決算といった各局面でどのような影響を及ぼすかについて解説しました。 会計期間は企業の経営成績や財政状態を正確に把握するための基本単位であり、日本では4月スタートが一般的である背景には、歴史的・社会的要因が深く関係しています。 会計期間の設定は、税務やIPO監査、親会社との連結という観点からも影響があるため慎重に検討する必要があります。 また、企業固有の事情や将来の戦略を考慮すれば、場合によっては会計期間の柔軟な設定も必要となるため、リスク評価と最適化のバランスが求められます。
- [日本市場に挑戦する外資系企業のための資金調達ガイド](https://shiodome.co.jp/column/26547/) - 近年、日本市場への進出や子会社設立を検討する外資系企業が増加しています。日本における事業運営において、適切な資金調達は事業拡大と持続的成長のための重要な要素です。本記事では、日本における資金調達の基本概要やその重要性、各調達手段の特徴、さらにはスタートアップ企業にとって有利なスキームを徹底的に分析します。 1. 日本での資金調達の基本概要と重要性 日本市場における資金調達は、企業の成長戦略の基盤をなす重要なファクターです。外資系企業が日本で子会社を設立する際には、以下のような資本調達手段が挙げられます。 銀行融資 親会社からの出資 ベンチャーキャピタルやプライベートエクイティファンド など 資金調達は単なる資金供給だけでなく、経営資源としての信用力やパートナーシップの構築、さらには市場環境に合わせた柔軟な調達方法の選定が求められます。 たとえば、日本では伝統的に銀行融資が根強い基盤を持つ一方、スタートアップ企業向けには政府の支援制度やファンドからの投資が急速に拡大している現状があります。企業の事業フェーズや成長戦略に応じて最適な組み合わせを構築することが重要です。 2. 日本における銀行融資:安定性と制約 日本の銀行融資は、長年にわたり企業の資金調達手段として確固たる地位を築いています。金融機関は、企業の信用力や担保、事業計画の堅実さを重視し、一定の審査基準のもとで融資を行います。 【安定性】 銀行融資は、調達金額が大きく、金利も比較的低水準であることが多く、長期にわたる返済計画が組みやすい点が魅力です。また、信用力が確立している企業にとっては、銀行との取引実績が今後の事業展開にもプラスの影響を与え、信頼関係の構築につながります。 【制約】 一方で、スタートアップや新規事業に対しては、銀行側がリスク回避の姿勢を取るため、厳しい審査基準や高い担保・保証要件が課されるケースが多いです。返済義務が確実に発生するため、景気変動や業績悪化時には資金繰りが逼迫するリスクも考慮しなければなりません。日本の銀行は伝統的なビジネスモデルを重視する傾向があり、革新的なビジネスモデルや急速な成長を目指すスタートアップには、柔軟な対応が難しい場合もあります。 このように、銀行融資は安定性が高い反面、企業の成長フェーズやリスクテイクに応じた柔軟性が求められる現代のビジネス環境では、慎重な利用が必要となります。 3. 親会社からの資金調達の特徴 親会社からの資金調達は、グループ全体の経営戦略に基づいて行われることが多く、外資系企業が日本市場で事業展開する際にも注目される手法です。 この方法におけるメリットとデメリットは以下の通りです。 【メリット】 親会社による出資や貸付は、外部の金融機関による厳しい審査を回避できるため、迅速な資金調達が可能です。 親会社の経営ノウハウやネットワークを活用できる点は、子会社の事業運営に大きなプラスとなります。 資金供給だけでなく、経営に対する一定の支援や戦略的アドバイスが受けられるため、初期段階での事業基盤構築に有効です。 【デメリット】 親会社からの資金調達は、親子間の経営統制や意思決定プロセスに影響を及ぼす可能性が高く、独立性の確保が課題となります。 親会社の経営方針や出資意向が強く反映されるため、子会社としての自主性が損なわれるリスクも存在します。 出資比率が高い場合、将来的な資本政策や株主構成の再編において、外部投資家の参入が難しくなる可能性が考えられます。 親会社との関係性をどのように維持・発展させるかは、資金調達手段としての親会社出資の成功に直結するため、慎重な戦略立案が求められます。 4. ファンドからの資金調達の利点 近年、日本でもベンチャーキャピタル(VC)やプライベートエクイティ(PE)といったファンドからの資金調達が活発化しています。特に革新的なビジネスモデルを持つスタートアップにとっては、ファンドからの出資は魅力的な資金源となっています。 利点としては以下の点が挙げられます。 資金提供と成長支援:ファンドは、資金供給のみならず、経営改善や市場拡大のための戦略策定、ネットワーク構築など、総合的なサポートを提供することが一般的です。 迅速な意思決定:外部投資家との交渉により、迅速かつ柔軟な資金供給が実現され、急速な市場展開や技術革新を支援します。 資本コストの最適化:出資により経営権の一部が希薄化するリスクはあるものの、借入に比べてキャッシュフローへの負担が少なく、長期的な成長を見据えた資金戦略が可能となります。 一方、注意すべき点もいくつかあります。 出資を受ける際には、投資家との間で経営に関する影響力のバランスを慎重に調整する必要があります。 企業価値の評価方法やEXIT(出口戦略)の構築についても、事前に十分な議論と合意形成が求められます。 このように、ファンドからの資金調達は、特に成長段階にある企業にとって、事業拡大とイノベーションを促進する有力な手段となり得ます。 5. スタートアップに有利なスキームとは 急速な市場変化に対応するため、スタートアップ企業は従来型の資金調達方法に加え、より柔軟でリスクを分散できるスキームを模索しています。以下に、スタートアップ企業にとって有利なスキームについて解説します。 【エクイティファイナンス】 株式発行による資金調達は、返済義務がないためキャッシュフローの負担が軽減されます。出資者が経営に参加することで、事業戦略やネットワークの構築支援が期待できる一方、株主構成の希薄化や経営権の調整が必要となります。 【コンバーチブル・ノート(転換社債)】 初期段階では借入金として扱われ、将来的な株式転換が可能なため、事業の成長に応じた資本政策が実現できます。資金調達時点での企業評価に柔軟性があり、スタートアップの成長スピードに合わせた条件設定が可能です。 【アクセラレーター・プログラムとの連携】 政府や民間が主導するアクセラレーター・プログラムは、出資だけでなく、経営ノウハウ、マーケットアクセス、ネットワークの提供など多角的な支援が受けられます。こうしたプログラムは、事業初期のリスクヘッジや市場参入の迅速化に寄与し、スタートアップ企業の成長を後押しします。 これらの手法は、スタートアップ企業が初期の成長段階で資金調達と市場拡大を両立させるために、柔軟性や迅速性を追求する上で有効な資金調達スキームとなっています。 6. ユニコーン企業の成功事例分析 ユニコーン企業とは、評価額が10億ドル以上の未上場企業を指し、急激な成長を遂げた企業として注目されています。 日本国内でも、近年では革新的な技術やビジネスモデルを武器に、ユニコーン企業への道を歩むスタートアップが増加しています。
- [【税務Q&A】株式交換に係る課税関係](https://shiodome.co.jp/column/24507/) - 1. 質問 B社を株式交換完全親法人、C社を株式交換完全子法人とする株式交換を、A社とB社の間で締結した場合の課税関係について教えてください。なお、本件は完全子会社同士の株式交換であり、B社からA社へは無対価とし、株式交換後に新たな組織変更の予定もありません。 【前提条件】 A社、B社、C社は内国法人である。 A社は、B社及びC社の完全親会社である。 B社とC社は、A社を完全親会社とする兄弟会社である。 2. 回答 本株式交換は、完全支配関係にある内国法人間で行われるものであり、以下の税制適格要件を満たすことから、適格株式交換に該当します。よって、法人税等の課税は生じないと判断できます。 金銭等不交付要件:無対価であるため 完全支配関係継続要件:株式交換前後で完全支配関係が維持されるため 3. 重要用語 質問及び回答で言及されている「株式交換」「株式交換完全親法人」「株式交換完全子法人」「適格株式交換」の用語や、株式交換の税制適格要件に関して、ここで簡単に確認しておきたいと思います。 株式交換 企業の組織再編手法の一つであり、一社が他の会社の株式を取得して完全親会社となり、取得される側が完全子会社となる取引を指します。 株式交換には適格株式交換と非適格株式交換があり、適格株式交換の場合は税制上の優遇措置が適用されます。 株式交換完全親法人 株式交換により、完全子会社の株式を取得し、完全親会社となる法人を指します。本件ではB社が該当します。 株式交換完全子法人 株式交換により、完全親会社の支配下に入る法人を指します。本件ではC社が該当します。 適格株式交換 一定の要件(税制適格要件)を満たす株式交換であり、株式を譲渡する株式交換完全子法人の株主は、株式交換時点では譲渡益課税が発生せず、課税繰延べの税制優遇措置が適用されます。 また、株式交換完全子法人は固定資産等の時価評価損益を認識しなくてよい点も、大きな特徴です。 株式交換の税制適格要件 ① 完全支配関係(支配率100%)の場合 金銭等不交付要件:株式交換の対価は株式のみであり、対価として金銭やその他の資産を交付しないこと。 完全支配関係継続要件:株式交換前後で完全支配関係が継続すること。 ② 支配関係(支配率50%超~100%未満)の場合 金銭等不交付要件:株式交換の対価は株式のみであり、対価として金銭やその他の資産を交付しないこと。 従業員引継要件:子会社の従業員の大部分が親会社に移行すること。 事業継続要件:子会社の主要な事業が株式交換後も継続すること。 支配率維持要件:親会社の持株比率が50%超を維持すること。 ③ 共同事業(支配率50%未満)の場合 金銭等不交付要件:株式交換の対価は株式のみであり、対価として金銭やその他の資産を交付しないこと。 従業員引継要件:子会社の従業員の大部分が親会社に移行すること。 事業継続要件:子会社の主要な事業が株式交換後も継続すること。 事業関連性要件:親会社と子会社の事業に関連性があること。 事業規模要件又は特定役員引継要件(選択要件):親会社と子会社の事業規模が一定以上を超えないこと、又は子会社の特定役員が親会社の経営に参加すること。 株式継続保有要件:完全子会社の株主が取得した完全親会社の株式を継続して保有すること。 完全親子関係継続要件:株式交換後も一定期間、完全支配関係又は支配関係が継続すること。 4. 質問に対する判断 1. 適格株式交換の判断 本件の株式交換は、完全支配関係下における株式交換であり、以下の2つの要件を満たすことから、適格株式交換に該当します。 金銭不交付要件(法人税法2条12の17)A社はB社から対価を受け取らない(無対価)ため、本要件を満たします。 完全支配関係継続要件(法人税法施行令4の3第18項第2号)株式交換前は、A社がB社及びC社を完全支配しており、株式交換後は、A社がB社を完全支配し、B社がC社を完全支配することとなります。以上のことから、完全支配関係は維持されているため、本要件を満たします。 2. 各当事者の税務処理 株式交換完全子法人(C社)本株式交換は適格株式交換に該当するため、資産・負債の時価評価替えが不要となり、課税所得は発生しません。よって、課税は生じないといえます。
- [建設業界における賃上げの現状と課題:他業種との比較と税制活用の視点から](https://shiodome.co.jp/column/53354/) - 1.はじめに 日本では、1990年代後半をピークに実質賃金が約30年間ほぼ横ばいで推移し、国際的にも低賃金が際立つ状況が続いてきました。この停滞が、現在の賃金問題の根底にあります。近年、こうした課題を解決するため、賃上げを促進する税制措置や春闘による賃金引き上げが注目されています。2024年度末に厚生労働省が公表した国内賃金動向に関する調査結果によると、賃金は過去に例を見ない水準で増加したことが示されています。 賃金の状況は、業種や企業の規模によって大きな差があります。今回は建設業界と他の産業を比較しつつ、賃上げ税制などの関連制度についても改めて整理していきたいと思います。 2.全体的な賃金上昇の動向 厚生労働省は毎年「賃金構造基本統計調査」を実施しており、この調査では産業別や年齢層ごとの賃金の状況が明らかにされています。 2024年度速報値によると、一般労働者の平均月収については33万200円と示されています。これは1976年の公表開始以来、最も高い水準を記録しました。前年比の増加率も3.7%に達し、名目賃金は過去最高の伸びとなっています。名目賃金とは、物価の影響を考慮しない「数字上の賃金」です。 しかし、同年の消費者物価指数も約2.5%上昇していたため、物価を差し引いた「実質賃金」の改善幅はわずかでした。つまり、データ上では賃金が着実に増えているものの、物価も上がっているため、生活実感としては賃上げの恩恵を感じにくい状況が続いています。 ※参考:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/chinginkouzou.html?utm_source=chatgpt.com) 3.建設業界における現状 それでは、建設業の賃金は他の業種と比べてどのような水準にあるのでしょうか。国税庁が公表している業種別の平均給与データをもとに確認してみましょう。 (出典:国税庁「民間給与実態統計調査」より) また、全産業における企業の資本金規模別に平均給与を見てみると、以下のように規模が大きいほど平均給与が高くなっています。 ※参考:国税庁「民間給与実態統計調査」 (https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan/top.htm?utm_source=chatgpt.com#b-02) 国土交通白書2023によると、建設業全体のうち、個人事業主を除いた資本金5,000万円未満の企業が約82%を占めています。この事業規模を前述の国税庁の調査結果に照らし合わせると、平均給与はおおよそ450万円程度となります。そのため、企業規模に対して比較的高い給与水準が維持されている業界と捉えることもできるでしょう。 4.賃上げ促進のための税制措置について 大企業では賃上げの動きが一段落している印象があります。一方、中小企業では今後賃上げの実施を検討する動きが残っているものの、賃金引き上げは企業にとって大きなコスト負担となります。そのため、財政面の負担を軽減するためにも、活用可能な税制優遇措置をうまく取り入れることが重要です。 現在、賃上げを促進する税制措置として、前年度比で一定以上の人件費増加があった場合に、その増加分の一部を法人税または所得税から控除可能とする「賃上げ促進税制」が整備されています。 下表では、個人事業主を含む「中小企業向け賃上げ促進税制」の概要をまとめました。 ※中小企業者等や、青色申告を行っている常時使用する従業員が1,000人以下の個人事業主については、賃上げを実施した年度に控除しきれなかった金額を最長5年間にわたり繰り越すことが認められています。 厚生労働省は、賃上げに関する情報を集約した特設ページを開設しており、地域別・業種別・職種別の平均賃金を検索できるほか、賃上げの具体的な取り組み事例も紹介されています。昇給の進め方や適切な昇給額を検討するうえで、実践的な参考資料として活用できる内容となっています。 5.おわりに 今回は、国の公的データをもとに、賃上げの現状についてご紹介しました。為替変動などの不確定要因が多いなか、特に中小企業にとっては賃上げの実施が一層困難になる可能性もあります。しかし、慢性的な人手不足に直面している建設業においては、採用競争力を高める上でも、賃金水準の見直しが避けられない局面にあるかもしれません。そのような判断を行う際には、賃上げに伴う税制優遇措置を確実に活用できるよう、事前に税理士などの専門家に相談することを推奨します。
- [【税務Q&A】国外転出時課税の適用と納税猶予の活用](https://shiodome.co.jp/column/26809/) - 1. 質問 日本在住のA氏は、時価1億5,000万円相当の上場株式を保有しています。A氏は過去10年間のうち5年以上日本に居住しており、今後5年から10年程度の米国への移住を計画しています。このようなケースでは「国外転出時課税」が適用されると聞きましたが、課税されずに済む方法はあるか教えてください。 2. 回答 国外転出時課税の対象となることは避けられませんが、一定の手続きを行うことで、出国時のキャッシュアウトを回避し、将来の帰国時に課税を取り消すことも可能です。 具体的には「納税猶予制度」を利用し、5年以内(延長により最大10年以内)に帰国した上で、帰国後4ヶ月以内に更正の請求を行うことで、出国時の課税を取り消すことができると判断できます。 3. 国外転出時課税とは 質問及び回答で言及されている「国外転出時課税」について説明します。 制度の概要 国外転出時課税制度は、一定の日本居住者が国外へ転出する際に、保有する金融資産について譲渡があったものとみなして課税される制度です。平成27年度税制改正により創設され、平成27年7月1日以降の国外転出から適用されています(所得税法60条の2)。 この制度の背景には、富裕層が含み益のある株式等を売却する前に国外へ移住し、日本での課税を免れることを防ぐという、租税回避の防止目的があります。 適用対象者(所得税法60条の2第5項) 以下の2要件を満たす場合、国外転出時課税の適用対象者となります。 国外転出時に所有する対象資産の時価の合計額が1億円以上であること 過去10年間のうち5年以上日本に居住していたこと(ただし、短期滞在や一部の在留資格による滞在期間は除かれる場合がある) 対象資産の時価の判定時期は、申告のタイミングにより以下の通り異なります(所得税法60条の2第1項)。 国外転出後に確定申告を行う場合:国外転出「当日」の時価 国外転出前に確定申告を行う場合:国外転出予定日の3ヶ月前の時価 ②の場合、3ヶ月前以降に新たに取得した資産がある場合には、その取得時の時価で加算されます。また、含み損のある資産についても、評価損益の有無を問わず、時価で価額合算の対象となります。 対象資産(所得税法60条の2第1~3項) 以下の3種類が「対象資産」とされます。 有価証券等(上場株式・非上場株式、投資信託、匿名組合出資持分など) 未決済信用取引等(信用取引、発行日取引など) 未決済デリバティブ取引(先物、オプション、スワップなど) NISA口座内の上場株式等も、対象資産の価額判定に含まれます。一方で、譲渡制限のある特定株式や税制適格ストックオプション等、一部の資産は除外されます。 課税内容 出国時点で資産を譲渡したものとみなして、含み益に対して所得税及び復興特別所得税が課税されます。実際に売却していなくても課税される点が大きな特徴です。 納税猶予制度 出国までに所轄税務署へ「納税管理人の届出書」を提出し、確定申告書に所定の付表を添付して提出するといった一定の手続きを行うことで、最大10年間(初回5年+延長5年)の納税猶予が認められます。 また、納税猶予を受けるには担保の提供が必要であり、一般的には上場株式などの流動性の高い資産が望まれます。非上場株式や匿名組合出資持分などは評価が難しく、猶予が認められにくい場合もあるため、慎重な対応が求められます。 猶予期間中は対象資産を継続して保有し、毎年「継続適用届出書」を提出する必要があります。 課税取消制度(所得税法60条の2第6項) 以下の要件をすべて満たす場合、国外転出時の課税を遡って取り消すことができます。 国外転出後5年以内(延長により最大10年以内)に 帰国すること 帰国時まで対象資産を継続して保有していること 帰国後4ヶ月以内に更正の請求(又は修正申告)を行うこと(所得税法151条の2、同法153条の2) 納税猶予の特例の適用を受けずに所得税を納付していた場合であっても、5年以内に帰国し、課税の取り消しを請求することで、納付済の税金が還付される場合があります。 4. 質問に対する判断 本件に関して、国外転出時課税制度の適用性及び対応策について、掘り下げて考察します。 1. 国外転出時課税の適用要件との照合 以下の点から、A氏は国外転出時課税の適用対象者に該当すると判断できます。 対象資産性:A氏が保有する上場株式は、所得税法上の有価証券に該当し、課税対象資産に含まれます。 金額要件:評価額は1億5,000万円とされており、1億円以上の基準を満たしています。 居住要件:A氏は過去10年間のうち5年以上日本に居住しており、適用対象の「居住者」に該当します。 国外転出要件:今回の移住計画は「5年~10年程度の米国移住」とされており、1年以上の海外滞在が予定されているため、「国外転出」に該当します(短期出張や旅行は除かれます)。 2. 納税猶予制度と課税の取り消しの可能性 納税猶予制度出国前に納税管理人の届出、担保の提供、確定申告を行うことで、最大10年間(5年+5年の延長)の納税猶予を受けることができます。 課税の取り消し移住後5年以内(延長時は最大10年)に帰国し、且つ対象資産を継続して保有している場合、帰国後4ヶ月以内に更正の請求を行うことで、課税を取り消すことが可能です。 以上より、A氏は国外転出時課税制度の適用要件を満たしており、課税自体は原則として避けられません。
- [日本における税務申告の全手順:外資系企業の日本法人設立と税務対応のポイント](https://shiodome.co.jp/column/27304/) - 1. 日本の税務申告の基本知識 日本で事業を行う法人が納める主な税金には、法人税(国税)、消費税(国税+地方消費税)および地方税(法人住民税・法人事業税など)があります。 法人税は企業の所得(利益)に対して課される税金で、資本金や所得額に応じて税率が決まります(例えば中小法人は年800万円まで15%、超過部分は23.2%)。 地方税には都道府県や市区町村に支払う法人住民税・法人事業税があり、法人住民税には会社規模に応じた「均等割」(赤字でも支払う定額部分)と法人税額に連動する「法人税割」が含まれます。そのため、たとえ利益が出ていない年度でも一定額の法人住民税の納付義務があります。法人事業税は法人税と同じ所得を課税ベースとする地方税ですが、支払った法人事業税は翌年度以降の経費(損金)に算入できる点が特徴です。 一方、消費税は日本国内で商品・サービスの提供に対して課される間接税です。標準税率は10%(一部軽減税率は8%)で、企業は預かった消費税から支払った消費税を差し引いた差額を納付します。消費税は売上に対して課税されますが、2期前の課税売上高が1,000万円以下などの条件を満たす法人は納税義務が免除される「免税事業者」となります。つまり、新設法人や小規模法人では一定要件下で消費税を納めなくてもよいケースがあります。ただし、免税事業者は仕入れに含まれる消費税の還付を受けられないため、事業計画によっては課税事業者を選択した方が有利な場合もあります。 2. 日本における子会社の法人登録の手順 外国企業が日本で子会社(日本法人)を設立する場合、まず会社形態を選択して法務局で登記を行います。設立登記が完了すると、その法人には国税庁から法人番号(13桁)が指定されます。法人番号は一法人につき一つ割り当てられる識別番号で、税務申告書や法定調書の提出の際に記載が必要になる重要な番号です。 設立後は、この法人番号を用いて税務署や自治体への各種届出を進めます。法人番号は国税庁のウェブサイト上で公表されており、誰でも確認できる公開情報になります。設立後に必要な税務手続として、まず所轄税務署に法人設立届出書を提出します。これは設立登記日から原則2ヶ月以内に提出し、定款や登記事項証明書の写しなどの添付が求められます。 同時に、税務上のメリットを享受するために青色申告の承認申請書も提出するのが一般的です。青色申告の承認を受けることで欠損金の繰越控除(赤字の繰越控除)などの特典が得られるため、新設法人であっても設立から最初の事業年度開始日以降3ヶ月以内(または最初の事業年度終了日の前日まで、早い方)に申請します。 また、日本で従業員に給与支払いを開始する場合には、給与支払事務所等の開設届出書を1ヶ月以内に税務署へ提出し、源泉徴収税の納付方法(例えば納期の特例適用など)についても手続きを行います。 これらの手続きは税務署への届出が中心ですが、地方税(法人住民税・事業税)のために都道府県税事務所や市区町村役所にも法人設立届出書(地方税用)を提出する必要があります。設立直後の各種届出を漏れなく行い、税務当局から発行される書類(納税用の書類や電子申告用のID/PWなど)が確実に受け取れるようにしておきましょう。 3. 日本での税務申告プロセスの確立法 日本法人設立後は、速やかに社内の会計・税務申告プロセスを構築することが重要です。まず日々の取引を正確に記録するために、適切な会計システムの導入を検討します。近年はクラウド会計ソフトなども普及しており、専門知識がなくても設定・運用しやすいものがあります。また、会社として青色申告の承認を受けている場合は、正規の簿記(複式簿記)に従った記帳と帳簿書類の保存が義務づけられます。 日本の税法では、青色申告法人は適切な会計帳簿を備え付け、7年間保存しなければなりません。この保存には紙の帳簿だけでなく電磁的記録も含まれ、基本的には日本国内の事務所で管理することが求められます。特に税務調査に備えて、請求書・領収書などの証憑も含め一定期間(原則7年、場合によっては10年)の保管義務があります。 税務申告までの基本的なフローは以下の通りです。 日々の記帳 期末の決算(帳簿締切と決算書類の作成) 税額計算・申告書類の作成 申告書の提出・納税 まず決算期末に貸借対照表や損益計算書などの決算書を作成し、そこから法人税等の課税所得や税額を計算します。税額計算については減価償却費や引当金等、税法上調整が必要な項目があれば別表で加算・減算し、最終的な課税所得を算出します。法人税の申告書類一式とともに、税務署には決算書類一式も提出(または電子申告で送信)します。その後、確定申告期限までに確定した税額を納付します。 なお、法人税や消費税には中間申告・中間納付の制度もあり、前年度の税額が一定額を超える場合は事業年度の中間時点でも予定納税が必要です。また、毎月発生する源泉所得税や社会保険料なども含め、年間の税務カレンダーを作成して期限管理を徹底すると良いでしょう。 社内で対応が難しい場合には会計事務所に記帳代行や申告書作成を委託し、ダブルチェック体制を整えることも検討すべきです。 4. 提出期限を守るポイント 日本の税務申告では提出期限の遵守が非常に重要です。法人税および地方法人税、法人住民税・事業税の確定申告書の提出期限は、原則として事業年度終了日の翌日から2ヶ月以内と定められています。 消費税の確定申告期限も法人の場合、事業年度終了日の翌日から2ヶ月以内となります。そのため、消費税についても法人税と同じタイミングで申告・納税するのが基本です。なお、事業規模により中間申告・納付の頻度が異なります。 いずれにせよ、本社の決算スケジュールやグループ全体の連結決算日程も考慮し、日本法人単体の税務カレンダーを作成して各税目の締切日を管理することが重要です。特に初年度は決算日から申告期限までの時間が限られるため、前もって必要データの収集や税理士との打ち合わせを行い、計画的に進めることが求められます。 5. 必要書類の準備方法 日本の税務申告では、多くの書類や添付資料の準備が必要です。法人税の確定申告に必要な書類としては、まず法人税申告書および地方法人税申告書(別表一式)があり、税額計算の本表や各種別表を含む書類セットです。これらは、所得金額の計算過程や各種税額控除・加算調整項目を示すために用いられます。 次に、決算書類一式(貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書など)や、勘定科目内訳明細書が必要です。勘定科目内訳明細書は、決算書の各科目の内訳を詳細に記載するもので、例えば「預金」「借入金」「売掛金」など主要科目ごとに、その内容や相手先、金額の内訳を一覧にしたものとなります。 さらに、法人事業概況説明書も作成し、会社の事業内容、従業員数、主要な科目の金額などを報告することが求められます。 消費税の申告に必要な書類は、採用する課税方式によって異なります。一般に、本則課税(原則課税)を採用している場合は「消費税及び地方消費税確定申告書(一般用)」と、その計算明細である「付表1:税率別消費税額計算表兼地方消費税の課税標準となる消費税額計算表」と「付表2:課税売上割合・控除対象仕入税額等の計算表」を提出します。 消費税申告書は法人税とは別に作成し、税務署に提出します。また、消費税の計算根拠となる課税売上高計算表や課税仕入高計算表などの内部資料も作成しておくと、申告書の数字との整合性確認に役立ちます。 地方税の申告書類については、自治体ごとに形式が異なりますが、概ね法人税の確定申告と同じタイミングで提出されます。東京23区の場合は、法人住民税・法人事業税・地方法人特別税をまとめた統一様式(第6号様式など)が用意されているため、そちらを使うのが一般的です。 書類作成にあたっては、漏れなく正確に記載することが求められ、可能であれば税務申告ソフトや税理士のチェックを活用し、必要書類がすべて揃っているかを提出前に確認することが望ましいでしょう。 6. 外資系企業特有の注意点 日本で子会社を運営する際には、外国親会社との取引に伴う税務上の留意点も存在します。まず、親子会社間での商品・サービスの提供、貸付金、ロイヤルティの設定などに際しては、移転価格税制に注意する必要があります。移転価格税制は、多国籍企業がグループ内で取引を行う際に、その取引価格を「独立企業間価格」と同等であるかのように適正に設定することを求める税制です。親会社と子会社の間の取引は、独立企業間価格で設定しなければならず、不適切な価格設定が認められた場合は、税務当局により課税所得が強制的に調整され、追徴課税を受けるリスクがあります。特に、グループ内での原材料や製品の売買、経営指導料などの取引においては、事前に価格設定の妥当性を検証し、英文契約書や価格算定根拠の文書を準備することが重要です。 また、一定規模以上の多国籍企業グループに対しては、移転価格文書化が義務付けられているため、該当する場合は適切な対応が求められます。さらに、外国親会社と日本子会社の関係では、恒久的施設(Permanent Establishment, PE)のリスクについても注意が必要です。通常、外国法人は日本にPE(支店などの事業拠点)がなければ、日本で法人税を課されません。しかし、実質的な営業拠点があると判断される場合は、親会社が日本での課税対象となるリスクがあります。 7. 日本の専門家の活用と連携方法 日本の税務制度や実務に不慣れな場合は、税理士や公認会計士などの専門家の活用が非常に有効です。日本の税理士は税務代理の資格を持ち、法人に代わって税務申告書の作成・提出、税務署との交渉を行うことができます。 特に国際税務分野は法律の規定が非常に複雑であり、二重課税の防止策など、専門知識が要求されるため、経営者やCFOが一から対応するのは困難です。専門家に依頼することで、申告ミスの防止だけでなく、各種税制優遇策の最適な活用が可能となります。 専門家の活用により、税務調査への対応や最新の法改正情報の入手が容易になり、電子帳簿保存法やインボイス制度などの改正にも迅速に対応できるため、日々の業務に集中することができます。 8. まとめ 日本で外資系企業の日本法人を運営し、適切な税務申告を行うためには、計画的な準備と専門知識の活用が不可欠です。法人設立時には必要な届出を期限内に行い、法人番号の取得や税務署への各種届出を確実に実施することが基本となります。 税務コンプライアンスを徹底するためには、信頼できる日本の税務専門家との連携が大きな助けとなります。専門家のサポートを受けることで、煩雑な手続きや法改正への対応が容易になり、正確な申告と節税対策が実現できます。日本市場でのビジネスを成功させるための土台として、事前の準備と計画、そして専門家との連携を密に行い、事業運営に専念できる体制を整えてみてはいかがでしょうか。
- [企業の人権への取り組みの背景・歴史・範囲・影響](https://shiodome.co.jp/column/27615/) - 人権とは、全ての人が生まれながらにして、人間らしく尊厳を持って幸せに生きる権利です。しかしながら、企業活動のグローバル化に伴い、その活動が地球環境、社会や人権等に及ぼす影響は大きくなってきました。特に1990年代、企業が自社の売上利益を優先し、ガバナンスの機能不全、コンプライアンス違反、人権への軽視等が原因で、環境破壊、製品・サービスの不具合や偽装、健康被害、贈収賄、ハラスメント、長時間労働、情報漏えい、プライバシー侵害等といった社会問題が多く発生しました。また、グローバル企業による発展途上国における強制労働、児童労働、環境破壊、先住民の土地収奪等の問題が多く発生しました。その結果、企業を取り巻くステークホルダーから、企業は人権尊重への責任を果たす為、その責任に真摯に向き合い、その取り組みを今まで以上に強化していくことが、これまで以上に求められるようになりました。 2011年に国連で採択された「ビジネスと人権に関する指導原則」(以下「指導原則」とする)は、「人権を保護する国家の義務」、「人権を尊重する企業の責任」、「救済へのアクセス」を三つの柱として提示し、国家のみならず企業も人権尊重の責任を担う主体として明示されています。指導原則はまた、この三つの柱に基づき、国際人権規範に沿って企業の事業活動を行うことを求めており、かつ責任の範囲も自社のみならずサプライチェーン全体に拡大しています。 その後、2015年に国連で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の中に掲げられた「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」いわゆるSDGsの17のゴール(目標)は、全て人権と関連したものになっています。 日本においても、政府は2020年に「『ビジネスと人権』に関する行動計画(2020-2025)」、さらに2022年に「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」を策定、公表しました。当該ガイドラインは法的拘束力を持ちませんが、日本国内で事業活動を行う企業は当該ガイドラインに沿って自社をはじめサプライチェーン全体で人権尊重へ取り組むことが求められています。 出典:法務省人権擁護局「今企業に求められる「ビジネスと人権」への対応(概要版)」 1. 企業が取り組むべき人権の範囲 (1)人権の主体(ライツホルダー) 企業は、自社事業に関わる全ての従業員(正社員のほか、契約社員、派遣社員、アルバイト・パート社員等を含む。)の人権だけでなく、取引先、調達先、顧客・消費者、事業活動が行われる地域住民を含む、自社の活動に関わる全ての人の人権を尊重することが求められています。 出典:法務省人権擁護局「今企業に求められる「ビジネスと人権」への対応(概要版)」 (2)負の影響の範囲 企業は、対応すべき人権の負の影響の種類を、「企業が人権への負の影響を引き起こしている場合(Cause)」、「企業が人権への負の影響を直接的又は間接的に助長している場合(Contribute)」、「企業の事業やサービスが取引関係を通じて人権への負の影響と直接関連している場合(Directly Linked)」の3つに分類することができます。 出典:法務省人権擁護局「今企業に求められる「ビジネスと人権」への対応(概要版)」 (3)人権に関するリスク 企業は、その事業活動(サプライチェーンにおける活動を含む)においてライツホルダー(企業が尊重すべき権利を保持する主体)が負の影響を受けるリスクを特定する必要があります。例えば、児童労働によるリスクは、こどもが教育を受ける機会や保護を受けて健康で安全な生活を送る権利が奪われることを意味します。このように、企業活動に関連して、人間が生まれながら当然に持つべき自由や権利を侵してしまう可能性があることから、そのリスクを網羅的に把握する必要があります。 また、企業、特に経営者が人権に関する取り組みを軽視または放置すると、訴訟や行政罰等による法務リスク・財務的損失、ハラスメント、人材流出、ストライキ、業務上の事故、不祥事、消費者による不買運動、SNSでの炎上、株価の下落、投資見合わせ等、企業にとって様々なリスクが顕在化する可能性があります。すなわち「人権に関するリスク」=「経営リスク」にもなり得ます。 以下の表において、企業の人権への取り組みの影響をとりまとめています。正の影響を(+)、負の影響を(−)と表記しています。 出典:法務省人権擁護局「今企業に求められる「ビジネスと人権」への対応(概要版)」 企業における人権への取り組みは、国際的な人権意識の高まりや、ビジネスと人権に関する国内外の規制策定を背景に、近年ますます重視されるようになっています。人権尊重は、労働環境の整備や児童労働・強制労働の排除などにとどまらず、サプライチェーン全体にわたる責任が問われる時代へと変化してきました。 企業が取り組むべき人権の範囲は広がっており、広範なステークホルダーへの配慮が求められています。こうした取り組みは、企業のブランド価値や信頼性の向上にもつながると同時に、国際的な規制対応や投資家からの評価にも直結する重要な経営課題となっています。 今後も、企業は自社の事業活動による人権への影響を的確に把握し、継続的なモニタリングと改善を通じて、持続可能な社会とビジネスの両立を図っていくことが求められるでしょう。 出典法務省人権擁護局:今企業に求められる「ビジネスと人権」への対応(概要版)朝日新聞 SDGs Action!:人権とは?憲法やSDGsとの関連性、身近な人権問題の例を解説
- [企業が想定すべき主な人権リスク(26類型)](https://shiodome.co.jp/column/27634/) - 企業が想定すべき主な人権リスクは、以下の図の通り、26の類型があります。ただ、人権リスクの類型は以下の26類型が全てではなく、社会や環境の変化に伴い、企業に求められる人権への取り組みも時代とともに変化していくことを想定する必要があります。 出典法務省「ビジネスと人権」に関する企業研修 投影資料(PowerPoint) 企業活動においては、事業の種類や地域、業務形態によってさまざまな人権リスクが潜在しています。特に、国際的な人権デューデリジェンスの潮流を受け、企業は従来のコンプライアンス対応にとどまらず、より包括的かつ実効的なリスク評価と対策が求められるようになっています。 本記事で紹介した26の人権リスク類型は、労働環境や多様性・差別、プライバシー、地域住民との関係、消費者保護など、幅広い分野にまたがっており、企業は自社の事業活動がそれらの権利にどのような影響を及ぼし得るかを丁寧に洗い出す必要があります。 実際のリスク管理においては、リスクの類型ごとに影響の程度や発生可能性を評価し、優先度を定めたうえで、予防措置や是正措置を講じることが重要です。また、ステークホルダーとの対話や情報開示の強化も信頼構築に不可欠な要素です。 今後、法的規制やサプライチェーン全体への責任が一層強まるなか、企業は人権リスクを単なるリスク管理にとどめず、持続可能な経営戦略の中核として据えることが求められるでしょう。
- [有価証券報告書「サステナビリティに関する考え方および取組」‐サステナビリティテーマと「ガバナンス」に関する開示ポイント‐](https://shiodome.co.jp/column/27696/) - 1.「サステナビリティに関する考え方および取組」記載欄の新設 改正前の有価証券報告書では、サステナビリティ情報の記載場所が明確に定められておらず、たとえば、第1部企業情報の「経営方針・経営環境および経営課題」や、第2部 事業の状況の「事業等のリスク」「CSR活動」「環境保全活動」などの複数の項目に分散して記載されているケースが多く見られました。 しかし、2023年制度改正により、新たに「サステナビリティに関する考え方および取組」欄が新設されたことで、サステナビリティに関する情報をどこに、どのように記載すべきかが明確に示されるようになりました。この結果、企業ごとの記載のばらつきが解消され、企業にとっては情報整理がしやすくなり、投資家にとっても内容の比較や理解が容易になりました。 2. サステナビリティテーマの開示動向 なお、「サステナビリティ」と言っても、その概念は非常に幅広く多岐に渡ります。開示府令のなかでは、「環境、社会、従業員、人権の尊重、腐敗防止、贈収賄防止、ガバナンス、サイバーセキュリティ、データセキュリティ」などが例として挙げられています。 もちろん、これらすべてを網羅的に記載する必要はなく、自社にとって影響度が高いと判断したテーマを開示することが求められています。以下は、実際に多く開示されているサステナビリティテーマです。 気候変動 最も多く取り上げられているのが「気候変動」に関する情報です。特に「温暖化」によるリスクや脱炭素経営の取り組みが多く見られます。 人的資本 次いで多いテーマが「人的資本」です。多様性の確保や活用に関する基本的な考え方、人材育成やリスキリングの具体的な取組み、またエンゲージメントの向上策などが記載されています。 人権 「人権」に関する情報も増加しており、企業内部のみならずサプライチェーン全体における人権尊重が重視されています。強制労働や児童労働の防止、取引先に対する人権デューデリジェンスの実施状況などが主な記載内容です。 サイバーセキュリティ・データセキュリティ まだ数は多くありませんが、「サイバーセキュリティ・データセキュリティ」に関する開示も増加傾向にあります。情報漏洩やサイバー攻撃リスクへの対応、セキュリティ管理体制やデータ保護対策などが主なトピックです。 その他 その他には、「知的財産」や「労働安全衛生」などのテーマに関する情報開示もあります。また今後の注目テーマとして、「自然資本」に関する情報開示が挙げられます。TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)が推進する自然資本全般(生物多様性、土壌、水資源など)に関する開示が増加すると予測されており、企業の環境リスク管理への関心が高まっています。 3. TCFD提言の「4つの構成要素」に基づいた開示 サステナビリティに関する考え方や取り組みを記載する際には、基本的にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に基づく4つの構成要素(ガバナンス、リスク管理、戦略、指標及び目標)を活用して情報を開示することが推奨されています(図表1参照)。なお、必ずしも4つの項目を個別に分けて記載する必要はなく、内容に応じて一体的に記載することも可能とされています。 このうち、「ガバナンス」と「リスク管理」については、すべてのサステナビリティテーマにおいて記載が必須です。一方、「戦略」および「指標及び目標」については、自社にとって重要なテーマに限り記載すればよく、記載しない場合には、その判断理由や根拠を明示することが求められます。 「人的資本(人材の多様性を含む)」に関しては、すべての企業にとってデフォルトで“重要”なテーマと位置づけられており、「戦略」および「指標及び目標」の記載が必須となります。加えて、「人材育成方針」や「社内環境整備方針」についても、具体的に記載することが求められています。 なお、開示にあたってはTCFDが基本的な開示の枠組みとされていますが、状況に応じて他のフレームワークを補完的に活用することも可能です。たとえば、SASB(持続可能な会計基準委員会)のガイドラインを併用する企業も見られます。また、必ずしも一つの枠組みに限定する必要はなく、自社の事業特性や業種ごとの重要課題(マテリアリティ)に応じて、複数のフレームワークを組み合わせて柔軟に活用することも有効です。 (図表1)TCFD提言の構成要素ごとの記載内容と開示義務 (出所)「企業内容等の開示に関する内閣府令等の一部を改正する内閣府令」をもとにRSM汐留パートナーズが作成 4.「ガバナンス」に関する開示ポイント それではまず、TCFDの4つの構成要素のうち、「ガバナンス」に関する開示に焦点を当てて解説を進めていきます。 図表1の通り、ガバナンス要素において求められている基本的な記載内容は、「サステナビリティ関連のリスクおよび機会を監視・管理するためのガバナンスの過程、統制および手続き」です。しかし、実際の開示状況を見ると、企業ごとに記載内容にばらつきが見られます。 例えば、サステナビリティに対する基本的な考え方や方針のみを抽象的に記載しているケースや、「サステナビリティ委員会を設置した」との事実のみを簡潔に触れるにとどまっているケース、あるいは社内の組織図を掲載するだけにとどまっているケースも散見されます。 こうした状況を受け、金融庁では情報開示の充実を促す目的で「有価証券報告書レビューの審査結果及び審査結果を踏まえた留意すべき事項等」(以下:レビュー)「記述情報の開示の好事例集」(以下:好事例集)といった資料を公表し、開示におけるポイントや具体例を示しています。 以下では、それらで示されているガバナンスに関する開示の留意点やポイントを整理するとともに、好事例集2024年において、ガバナンス記載の好事例として紹介されている 株式会社 荏原製作所(図表2)の例も参考にしながら解説していきます。 1. ガバナンス体制や役割など具体的に開示 まず、ガバナンス体制については、「監督体制」と「執行体制」に分けることが望ましいとされています。そのうえで、各機関や組織の位置付け、役割、相互の関係性を明確に示すことが重要です。あわせて、各機関の責任者だけでなく、構成メンバーがどのような人材で構成されているのか、また会議の開催頻度などできる限り具体的に記載することが求められます。 下記(図表2)の好事例として紹介されている荏原製作所の開示では、「監督」と「執行」の機能が明確に区分され、それぞれの役割や相互の関連性についても具体的に記載されています。これにより、ガバナンス体制における実効性と透明性の確保に向けた姿勢が明確に示されている点が評価されています。 (図表2)株式会社荏原製作所における「ガバナンス(推進体制)」に関する記載 (出所)株式会社荏原製作所 有価証券報告書(2024年12月期)より一部抜粋 2. 監督機関の情報入手プロセスや報告頻度の開示 また、監督機関(取締役会等)がサステナビリティ関連のリスクや機会に関する情報を、各機関・組織からどのようなプロセスを通じて、どの程度の頻度で入手しているのかについても、具体的に記載することが期待されています。 さらに、それらの報告内容が、経営の意思決定や戦略の策定にどのように活用されているのかについても、投資家にとって有益な情報となるため、可能な限り明示することが望まれます。 3. 目標管理とモニタリングプロセスの開示 さらに、監督機関がサステナビリティ関連の目標設定をどのように監督し、その進捗をどのようにモニタリングしているかを示すことも、開示において重要なポイントです。加えて、サステナビリティ目標の達成状況と役員報酬制度との関連性がある場合には、どのようなパフォーマンス指標(KPI)を設定しているかを明確にすることが有効です。こうした情報は、経営層がサステナビリティ課題にどの程度コミットしているかを示す重要な手がかりとなります。 下記(図表3)の株式会社荏原製作所の事例では、役員報酬制度に業績連動型報酬が組み込まれている点などが詳細に開示されており、サステナビリティ目標との連動性が明確になっています。こうした開示は、投資家が経営の実効性や将来性を評価するうえで有益な情報となります。 (図表3)株式会社荏原製作所における「ガバナンス(報酬制度)」に関する記載 (出所)同上 4. サステナビリティに関するスキル・コンピテンシーの開示 サステナビリティに関連するリスクおよび機会に的確に対応するためには、監督機関および執行機関におけるサステナビリティ分野の専門性の確保が重要な視点として着目されています。 そのため、サステナビリティに関する専門知識を有する役員や人材の有無、またはその育成計画について具体的に記載することは、企業のガバナンス体制の充実度や実効性を投資家に対して明確に示す上で有効です。 5. 監査役会や内部監査部門などの第三者チェックの開示
- [【外資系企業向け】日本の中小法人判定基準と税務上の影響を徹底解説](https://shiodome.co.jp/column/27372/) - 1. 日本の中小法人・中小企業者の定義 税法上の中小法人・中小企業者は主に資本金によって判定されます。 法人税法および関連の税制上は、資本金1億円以下の法人であれば多くの場合が中小法人等(中小企業者等)に該当します。ただし、資本金5億円以上のいわゆる大法人の100%子会社(完全支配下にある法人) は、資本金が1億円以下でも中小企業者等から除外されます。つまり、日本子会社自身の資本金が小さくても、親会社の規模が非常に大きい場合には中小法人 とはみなされない点に注意が必要です。 2. 親会社の資本金が与える影響 海外親会社の規模(資本金額)は、日本子会社が中小法人に該当するかどうかに直接影響します。前述の通り、日本の税法上は「資本金5億円以上」の大法人によって完全に支配されている子会社は中小法人の優遇から除外されます。ここでいう「完全支配」とは、大法人が日本子会社の発行株式の100%を直接または間接に保有する場合を指します。 例えば、海外親会社の資本金が5億円以上ある大企業で、その親会社が日本子会社の株式を100%保有している場合、日本子会社の資本金がたとえ1,000万円や1億円以下であっても中小法人とは認められません。これは日本の税制上、日本子会社を親会社グループ全体の一部とみなし、中小企業向けの優遇を適用しないためです。 一方、親会社の資本金が小さい 場合(5億円未満)や、親会社が日本子会社の株式を完全には保有していない場合には、この限りではありません。たとえば海外親会社そのものが中堅規模(資本金5億円未満)であれば、日本子会社は通常の資本金要件(1億円以下)を満たす限り中小法人と判定されます。また、日本子会社の株式を分散して保有しているケースや、一部を他の出資者が保有しているケースでは、「大法人による完全支配」には該当しなくなるため、日本子会社が中小法人に該当する可能性があります。 親会社が上場企業など大規模な場合でも、日本子会社の判定においては株主構成も考慮すべきポイントとなります。 3. 出資スキームの構築ポイント 日本子会社の設立にあたっては、資本金額や出資比率の設計によって中小法人のメリットを享受できるかが決まります。そのため、出資スキームを検討する際には以下の点に留意しましょう。 資本金額の設定:日本子会社の資本金はできる限り1億円以下に抑えることが基本です。資本金が1億円を超えると中小法人の範囲から外れてしまい、多くの税制優遇措置を受けられなくなります。 持株比率の調整:親会社が大法人に該当する場合(資本金5億円以上)、日本子会社を完全子会社(100%出資)にしないことで中小法人判定を維持できる可能性があります。 中間持株会社の活用:ケースによっては、海外親会社が直接日本の事業会社を持つのではなく、日本に小規模な中間持株会社(ホールディングス)を設立し、その傘下に事業運営会社を置くという手法も考えられます。 以上のように、出資額や持株比率の調整によって中小法人判定を受けられるかが変わります。日本進出時には、税務上有利な範囲で出資スキームを最適化することが重要です。複雑なスキームを用いる際は、専門の税理士と十分に検討し、日本の税務当局の解釈に沿った構成になっているか確認する必要があるでしょう。 4. 判定基準による税務優遇の変化 日本子会社が中小法人に該当するか否かで、税務上の優遇措置や負担額には大きな違いが生じます。中小法人と判定される場合、各種税制上のメリットを受けることができますが、該当しない(大法人扱いとなる)場合、それらの特例は適用されず一般の税率・税制が適用されます。 主な違いは以下の通りです。 法人税率の軽減措置:中小法人等には年間所得の一定額まで法人税の軽減税率が適用されます。現在、年間800万円までの所得については15%という低い税率が認められています。一方、大法人に該当する場合、法人税率は一律23.2%(標準税率)が適用され、低所得部分への優遇はありません。 欠損金の利用制限:大法人では、繰越欠損金を翌期以降に控除する際、その期の所得金額の50%を上限としてしか控除できません。つまり、黒字の半分までしか過去の赤字と相殺できず、残りはさらに翌期以降に繰り越すことになります。これに対し中小法人等であれば、当期の所得金額の100%まで欠損金で相殺することが可能です。 外形標準課税の適用: 資本金1億円を超える企業には法人事業税の外形標準課税が適用されます。外形標準課税とは、企業の所得だけでなく、資本金や従業員数(給与総額)といった事業規模に応じて課税される仕組みです。 以上のように、中小法人判定を受けられない場合、法人税率の上昇、欠損金控除の制限、地方税負担の増加など、トータルの税負担が重くなる傾向があります。事前に自社がどちらに区分されるかを把握し、シミュレーションしておくことが重要です。 5. 利用できなくなる主な優遇制度 日本子会社が中小法人に該当しない場合、中小企業向けの様々な税制上の優遇措置を利用できなくなります。以下に中小企業者等だけが享受できる代表的な優遇制度を挙げます。 法人税の軽減税率:前述のとおり、中小企業者等では年800万円以下の所得に対し15%の軽減税率が適用されます。 欠損金の繰戻し還付:中小企業は青色申告を行っていれば、赤字が発生した際に前年度の黒字と相殺して法人税の還付を受けること(欠損金の繰戻還付)が可能です。 中小企業投資促進税制:中小企業者等が一定の設備投資を行った場合に、取得価額の30%の特別償却できる制度です。 中小企業経営強化税制:生産性向上や業務効率化に資する一定の設備投資を行った場合に、中小企業が受けられる優遇制度です。対象設備について取得価額の100%を即時償却または一定額の税額控除の適用が受けられます。 交際費等の損金算入特例:中小法人には交際費について年800万円まで全額を損金算入できる特例があります。 少額減価償却資産の特例:中小企業者等では30万円未満の減価償却資産を取得した場合、年間の取得価額の合計300万円までは一定要件のもと損金算入(即時償却)できる特例があります。 その他の税額控除の優遇:中小企業にはこの他にも、研究開発税制における控除上限の引き上げや、賃上げ促進税制(所得拡大促進税制)の要件緩和・控除率上乗せ措置など、優遇規定がいくつか存在します。 以上のように、中小企業者等のみが享受できる優遇税制は多岐にわたります。日本子会社が大企業扱いとなってしまうと、これらの有利な制度が軒並み使えなくなるため、結果として税負担が増加するだけでなく、投資判断にも影響を及ぼす可能性があります。 6. 中小法人と大法人の税務負担比較 中小法人と大法人では具体的にどれほど税負担に差が出るのでしょうか。いくつかの観点で比較してみます。 【法人税率の比較】 中小法人は年間800万円までの所得に15%・超過部分23.2%の法人税率、大法人は全所得に一律23.2%の法人税率が適用されます。その結果、課税所得が少ない場合ほど中小法人の実効税率は低く抑えられます。例えば年間の課税所得が800万円の場合、中小法人の法人税額は約120万円ですが、大法人では約186万円となり、中小法人の方が約66万円の法人税負担が軽くなります。逆に課税所得が数億円規模に達するような場合は、800万円部分の軽減効果の割合が小さくなるため、法人税率の差はあまり問題となりません。 【法人事業税負担の比較】 資本金1億円超の企業には外形標準課税が課されるため、たとえ利益が出ていなくても一定の法人事業税を支払う必要があります。一方、中小法人であれば利益がゼロもしくは赤字であれば法人事業税はかかりません。つまり、業績不振時の下支えとしては中小法人の方が有利です。 このように中小法人と大法人では税負担構造が根本的に異なり、中小法人の方が法人税・法人事業税ともに負担が軽減される場面が多くなります。現行制度の下では、外資系企業であっても要件を満たせば中小企業の優遇を受けられるため、適用可否を十分確認し最適な形で活用することが求められます。 7. 海外親会社を持つ場合の注意点 海外親会社を持つ日本子会社は、中小法人判定に関して特有の留意点 があります。上述の通り「資本金5億円以上」の大法人によって完全に支配されている子会社は中小法人から除外されますが、海外親会社の場合この資本金が外貨建てであるため期末時点の為替相場が中小法人の判定に影響を与えます。 具体的には、海外親会社における外貨建ての資本金の額に期末の為替レートを乗じた金額が5億円以上であるかどうかによって、その子会社は中小法人に該当するかどうかを判定することになります。そのほかにも、移転価格税制や過少資本税制といった親子間取引に関連する税務リスクにも注意が必要です。 8. まとめ
- [外貨建取引の徹底解説:日本子会社運営の基礎知識と15%ルールの実務ポイント](https://shiodome.co.jp/column/27390/) - 1. 外貨建取引の基本知識と重要性 外貨建取引とは、日本の会計基準では、 取引金額や債権債務が外国通貨建てで行われる取引を指します。例えば、米ドル建てで製品を販売したり、ユーロ建てで借入を行ったりするケースです。日本企業の財務諸表は円建てで作成されるため、外貨建取引は適切な為替レートで円換算しなければなりません。 取引発生時には原則として取引日の為替相場(取引時レート)で円換算して仕訳計上し、決算時には未決済の外貨建債権・債務について決算日時点のレート(期末時レート)で評価替えを行います。その結果生じる為替差損益(為替レート変動による利益または損失)は企業の損益に直接影響する項目です。 外貨建取引の重要性は、グローバルに事業展開する企業ほど高まります。外資系企業の日本子会社では、本国との資金融通(増資や融資)、製品・サービスの輸出入決済など日常的に外貨建ての取引が発生します。適切な換算処理を怠ると財務報告の正確性を欠くだけでなく、税務上も誤った申告につながりかねません。したがって外貨建取引の基本を正しく理解し、適切に換算・処理することは会社のCFOや経理部長にとって重要なスキルと言えます。 2. 日本での子会社運営と外貨換算の関係 日本における子会社運営では、取引通貨と報告通貨の違いに常に留意する必要があります。日本子会社の法定通貨は円のため、たとえ実務上ドルやユーロで取引しても帳簿上は円建てに直す必要があります。例えば、親会社から日本子会社へのUSD建て融資があれば、日本子会社はその借入金を受領日の為替レートで円換算して計上し、期末には期末時レートを再評価します。また、海外顧客に対する売掛金や海外仕入先への買掛金も、決算時には最新のレートで円換算し直すことで、債権・債務の適正な評価額を反映します。 このように日本子会社の日常業務で発生する外貨建取引は、すべて期末時点で円換算され財務諸表に組み込まれるため、子会社の業績管理と外貨換算処理は切り離せない関係にあります。 3. 為替変動が与える影響とリスク管理 為替相場の変動は企業業績や財務に大きな影響を及ぼします。例えば、円安が進行すると外貨建負債の円換算額は増加し、評価損(為替差損)が発生します。逆に円高になると外貨建資産の円換算額が目減りし、評価損(為替差損)につながります。近年は為替変動が大きく、短期間で急激な円高・円安が生じるケースもあります。このような急激な変動は企業に予期せぬ巨額の為替差損益をもたらす可能性があり、為替変動リスクの管理は重要な経営課題です。 会社は為替リスクに対して予防的な管理策を講じる必要があります。一般的な手法として、為替予約(フォワード)やオプション取引によって将来の為替レートをあらかじめ固定し、変動影響をヘッジすることが挙げられます。また、外貨建ての収入と支出をバランスさせる手法も有効です(例:ドル建て売上に対してドル建て費用を充当する)。重要なのは、為替レートのシナリオ分析を行い、為替変動がどの程度利益や財務指標に影響するかを平時から把握しておくことです。 4. 外貨換算における適用基準と手続き 日本の会計基準では、外貨建取引について統一的な処理基準が設けられています。取引発生時には当該日の為替相場で円換算して記録し、決算時には外貨建ての金銭債権債務(預金、売掛金、買掛金、借入金など)を期末日の為替相場で換算し直すことが求められます。一方、在庫や固定資産などは取得時のレートで据え置き、期末には再換算しないのが原則です。 税務上は、会計とは別に法人税法で詳細なルールが定められています。外貨建資産・負債の評価方法として法定換算方法が項目ごとに規定されており、例えば短期の外貨預金は期末時レートで換算する方法が原則であり、長期の外貨預金は逆に発生時レート据置が原則とされています。 このように、税務では資産の種類や期間によってデフォルトの換算法が異なり、企業は必要に応じて事前届出や税務署長の承認を得ることで別の方法を選択できます。また、会計上の処理と税務上の処理が異なる場合には、税務申告の際に別表調整によって課税所得を修正する必要があります。 外資系企業の場合、本国の会計基準(IFRSやUS GAAP)が採用される場合がありますが、日本法人としての財務諸表と納税申告は日本のルールに則って適切に対応することが求められます。 5. 「15%ルール」とは何か:概要と適用例 為替相場の急変時に知っておきたいのが、法人税法上の「15%ルール」です。これは為替相場が著しく変動した場合の外貨建資産等の換算特例を指します。具体的には、期末時点の為替レートで換算した額と帳簿価額との差異が概ね15%以上生じている場合に適用できる特例措置です。そのような大幅な変動が発生した事業年度では、税務上の届出なしに決算時に外貨建取引を行ったものとみなして期末レートでの換算を行うことが認められます。 平時であれば発生時レートで据え置く長期債権債務についても、期末レートで評価替えして為替差損益を当期に計上できるという特例措置です。適用例として、1USD=108円時に調達した100,000ドルの借入金を考えてみます。 決算時のレートが1USD=135円まで円安に振れた場合、本来1,080万円(100,000ドル×108円)だった借入金の帳簿価額は、期末換算すると1,350万円(100,000ドル×135円)となり、約270万円の差額が発生します。この為替差異は約25%増に相当するため15%超の変動条件を満たし、会社はこの270万円を当期の為替差損として計上することが可能です(税務上損金算入できる)。 逆に大幅な円高で外貨建資産に15%超の評価減が生じた場合には、評価損を当期の損金に落とし込むこともできます。 15%ルール適用にあたっての留意点として、まず適用範囲の一括性が挙げられます。同じ外国通貨について期末換算差異が15%以上となる資産・負債が複数ある場合、その一部だけを選んで評価替えすることはできず全てに適用する必要があります。例えば、ドル建ての借入金AとBの両方が15%以上の差異となっている場合、Aだけ特例適用してBは適用しないという選択はできません。また、この特例の対象からは子会社株式などの一定の資産は除かれるため、15%ルール適用する際は適用対象かどうか留意する必要があるでしょう。 以上を踏まえ、15%ルールは為替変動による未実現損益を当期に反映できる有用な特例ですが、部分適用ができない点に注意しつつ、会社全体の状況を見て慎重に判断する必要があります。 6. 実務上の注意点と課題解決策 外貨建取引においては実務上の注意点がいくつかあります。具体的な注意点とその解決策は以下の通りです。 会計と税務の差異管理:会計では期末評価、税務では発生時レートを用いる場合があり、税務上は別表調整が必要となる。 為替レートの統一:取引・決算時のレートは社内で統一し、ERP等で自動処理するのが望ましい。 為替差損益の管理:本業のビジネスとは切り分けて管理し、発生要因を分析する必要があります。 15%ルールの適用判断:事前シミュレーションで全体損益を試算し、適用の是非を検討する。 平時の備え:為替予約や外貨ポジションの見直しなど、日常的な為替リスクの低減策が有効です。 7. 外資系企業が直面する主要課題 外資系企業が日本で外貨建取引の換算において直面しやすい課題として以下が挙げられます。 日本独自ルールへの対応: 本国の常識や基準のみで運用していると、日本の会計・税務ルールとのギャップにより誤った処理をしてしまう恐れがあります。日本独自の制度を正しく理解し、適切に手続きを実施することが求められます。 為替差損益による業績変動リスク: 為替変動による評価損益が大きく振れると、日本子会社単体の業績が本業と無関係に悪化したり、予算未達となる場合があります。為替リスクを低減するため、平常時から為替エクスポージャーを可視化し、必要なヘッジやポジションの見直しを行うことが重要です。 コミュニケーションギャップ: 日本の外貨換算処理や税務特例は海外本社の担当者には馴染みにくく、理解にギャップが生じることがあります。専門用語や制度の違いについて、現地経理チームから本社への丁寧な説明と報告が不可欠です。また、社内の経理システムや報告様式も、本国仕様に日本独自の調整事項を織り込む工夫をするのも一案です。 8. まとめ 外貨建取引の換算は、外資系企業の日本子会社における経理・財務実務の中核をなすテーマです。基本的な換算方法の理解から、会計・税務のルール、そして15%ルールのような特例制度まで、幅広い知識が要求されます。本記事で解説したように、為替相場の変動は企業業績や税負担に直接響くため、最新の制度・実務動向を把握しつつ、適切なリスク管理を行うことが重要です。 為替変動が激しい時代だからこそ、外貨換算に関する正しい知識と慎重な対応が、企業の財務健全性と国際競争力を支えるのかもしれません。
- [外資系企業のための日本会計システム導入ガイド](https://shiodome.co.jp/column/27579/) - 1. 日本で求められる会計対応 日本法人を運営するには、日本独自の会計基準や税制への対応が不可欠です。日本法人では親会社が採用する会計基準と日本基準の差異(GAAP差異)を理解し、必要に応じ期末に帳簿を日本基準へ組み替える作業も発生します。また、日本の税務申告や法定開示は基本的に日本語で行われ、日本の法人税法や会社法に準拠する必要があります。たとえ親会社がUS GAAPやIFRSで連結決算をしていても、日本子会社としては決算書や税務申告書類を日本の形式で提出しなければなりません。 さらに、日本には消費税があり、適格請求書等保存方式(いわゆるインボイス制度)が2023年から開始されるなど、請求書の様式や保存方法にも独自の要件があります。 要約すると、外資系企業であっても日本法人は日本の会計・税務ルールに従う必要があるということです。親会社が採用する会計基準との違いを認識し、日本基準に調整する決算体制が求められます。 2. 日本の電子帳簿保存法の概要 電子帳簿保存法は、税金に関連する帳簿書類を電子データで保存する際のルールを定めた法律です。電子帳簿保存法で定める保存対象は大きく3つに分類されます。 電子帳簿等保存:自社のPCや会計ソフトで電子的に作成した帳簿・決算書類のデータ保存(任意) スキャナ保存:紙で受領・発行した書類をスキャンして画像データで保存(任意) 電子取引保存:電子的に授受した請求書・領収書などのデータ保存(義務) このうち、「電子帳簿保存」と「スキャナ保存」は任意適用とされ「電子取引保存」は義務となります。保存期間は原則7年間(場合により10年)とされ、税務調査の際には電子データでの提示が必要です。電子保存では、記録の「真実性」と「可視性」を確保するため、以下の要件を満たす必要があります。 【電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存等を行う場合の要件の概要】 電子計算機処理システムの概要の書類備付け 見読可能装置の備付け 検索機能の確保 訂正削除に関する措置次のいずれかの措置を講じる必要があります。 タイムスタンプが付された後の授受 授受後遅滞なくタイムスタンプを付す データの訂正削除を行った場合に、その記録が残るシステム又は訂正削除ができないシステムを利用 訂正削除の防止に関する事務処理規程の備付け (参考:国税庁|電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】Ⅱ 適用要件【基本的事項】[https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/07denshi/02.htm#a009]) これらの要件により、電子取引の記録が改ざんされることなく、必要な時に誰でも確認・検索できる状態を維持することが求められています。規模を問わず全ての事業者が対応義務を負う法律であるため、日本でビジネスをする以上、電子帳簿保存法への順守は避けて通れません。 3. IoT対応が必須な理由(電子帳簿保存法・効率化・データ連携) 日本で会計業務を円滑に行うには、「IoT対応」つまりデジタル技術の活用が必須です。これは電子帳簿保存法への対応、業務効率化、さらには社内外システムとのデータ連携という観点から説明できます。 まず電子帳簿保存法への対応のため、紙の書類をデジタル化する手段が必要です。例えば紙の領収書や請求書は、スキャナやスマートフォンで撮影しOCR読み取りすることでデータ化・保存する運用が一般的です。こうした機器やシステムは広い意味でIoT(モノのインターネット)の一部と言えます。領収書画像にタイムスタンプを付与し、会計ソフト上で修正・削除履歴を自動記録するには、対応ソフトやクラウドサービスの導入が不可欠です。 次に業務効率化の面でも、IoT活用は大きなメリットをもたらします。従来、紙の書類をファイリングして保管庫から探し出す作業には多大な時間を要していましたが、電子データ化すれば数秒で検索・閲覧が可能です。また、書類の紛失リスクや保管スペースの問題も解消します。承認プロセスも電子ワークフロー化することでテレワーク下でも滞りなく進められ、働き方改革にも寄与します。 さらにデータ連携の観点からも、現代の会計システムには他のシステムとの自動接続が求められます。例えば銀行口座やクレジットカードの明細を自動取得して仕訳に反映したり、販売管理システム・ECサイトから売上データを取り込んだりする機能です。クラウド会計ソフトの多くはこれらの外部サービスとAPI連携しており、手入力を減らす自動仕訳を実現しています。 4. 日本における会社設立時の初期導入の課題と選択肢 外資系企業が日本に子会社を設立する際、経理システム初期導入には言語・操作性のギャップや本社ERPとの統一性、さらにはコスト面での課題があります。英語向けシステムは現地スタッフに馴染みにくく、日本製ソフトは外国人CFO向けの使い勝手に欠ける場合があるため、多言語対応や使いやすさの工夫が必要です。 また、本社ERPは大規模でオーバースペックとなることが多く、クラウド会計ソフトのような低コスト・短期間での導入が有利とされます。さらに、アウトソーシングや勘定科目の調整など、初期段階での柔軟な運用方法を検討することが求められ、各選択肢は本社連携や将来の拡張性も踏まえて最適なバランスを見極める必要があります。 5. オラクルやSAP、Xeroが不向きな理由 海外製ERPであるOracleやSAP、Xeroは高機能な反面、導入・運用が複雑で専門知識や高額なコンサル費用が必要なため、小規模な日本子会社には過剰な負担となります。日本独自の業務(消費税管理や法定調書作成)への対応や、英語ベースの画面表示による操作性の課題もあり、現場での適応が困難な場合があります。 また、日本特有の法制度(消費税、電子帳簿保存法など)への対応について、日本の会計ソフトの方が適時に行われるため、海外製品の導入メリットが少なく、結果として日本の会計ソフトが選ばれる傾向にあります。 6. 日本独自の会計システムの紹介(勘定奉行、PCA会計など) 日本には、古くから多くの企業に利用されてきた独自の会計ソフトウェアが存在します。代表的なものとして、勘定奉行(OBC社)、PCA会計(PCA社)、弥生会計(弥生株式会社)などが挙げられます。これらのソフトは、日本の商習慣や税制に合わせた設計となっており、国内で高いシェアを誇ります。それぞれの特徴は以下の通りです。 【勘定奉行】 中堅中小企業向けの定番会計ソフトです。操作画面や帳票レイアウトが日本の経理担当者にとって馴染みやすく、販売管理や給与ソフト(商奉行・給料奉行)との連携もスムーズです。近年はクラウド版「勘定奉行クラウド」も提供しており、最新の電子帳簿保存法にも対応しています。 さらに、Global Editionという英語対応のクラウド版も用意され、メニュー表示を英語化できるため、外資系企業でも利用しやすくなっています。国内での導入実績が豊富なため、税理士や会計士のサポートも受けやすい点が魅力です。 【PCA会計】 勘定奉行と並ぶ老舗の会計ソフトです。複数部門やプロジェクト別の管理など、高度な会計処理に対応可能なインストール版とクラウド版が提供されています。毎年の税制改正や法対応のアップデートが行われ、安心して使い続けられる設計です。 UIは伝統的な日本の会計ソフトに近く、簿記の知識があるユーザーには使いやすい一方、全自動化よりも手入力を許容する設計となっています。 【弥生会計】 中小企業・個人事業主向けに圧倒的な知名度を持つ会計ソフトです。デスクトップ版が長年支持され、直感的なインターフェースにより、簿記に不慣れな経理担当者でも扱いやすいと評価されています。 近年は「弥生会計オンライン」というクラウド版も登場しました。ただし、英語画面には対応しておらず、外資系企業で使用する場合は日本人スタッフ主体での運用になるケースが多いです。 7. freeeとマネーフォワードの特徴 近年、日本のクラウド会計市場ではfreeeとマネーフォワードが主導的な存在となっています。両社は、銀行明細の自動取得、領収書のOCR処理、他のクラウドサービスとの連携など先進的な機能を備え、バックオフィス業務全体の効率化を実現しています。 会計知識が不要な作業については、自動化・簡略化に重点を置いており、経費精算の入力から自動仕訳が生成されるため、操作の手間が大幅に軽減されます。反対に会計知識が必要な場面では、簿記知識のあるユーザーが直感的に入力できるUIも魅力的です。
- [【税務Q&A】現金対価のみで行う非適格合併における税務上の取扱い](https://shiodome.co.jp/column/27523/) - 1. 質問 A社がB社を吸収合併しました。合併の対価は現金10百万円のみであり、A社株式の交付はありません。この合併における、A社、B社、B社株主それぞれの税務上の取扱いについて教えてください。 <合併に関する詳細> 合併形態:支配関係のない法人間の吸収合併(共同事業要件等も満たさない非適格合併) 存続会社:A社 消滅会社:B社 B社の純資産:資本金10百万円のみ B社の資産内容:B社からB社株主への貸付金10百万円(帳簿価額=時価)のみ※合併直前のB/Sは、資産(貸付金)10百万円、負債なし、資本金10百万円 合併対価:現金10百万円のみの支払 2. 回答 本件は非適格合併に該当し、 A社は、B社の資産である貸付金を時価10百万円で取得することになります。 B社は、貸付金10百万円を時価評価でA社に移転することになり、帳簿価額と時価が同額であるため、譲渡損益は発生しません。また、合併対価(現金10百万円)は、株主への資本払戻しに充てられます。 B社株主は、株式取得価額と同額の現金を受領することになり、みなし配当も譲渡益も発生しません。 3. 非適格合併の概要 回答で言及されている「非適格合併」について説明します。 組織再編税制における適格・非適格の区分 企業組織再編(合併・会社分割・株式交換・株式移転等)においては、一定の税制適格要件を満たすかどうかによって、「適格組織再編」と「非適格組織再編」に分類されます。この区分により、再編時における資産・負債の移転に伴う課税の繰延べの可否が決定されます。 非適格合併となる場合 非適格合併と判断されるのは、法人税法上の「適格合併」の要件を一つでも満たさない場合です。主な判断基準は以下の通りです。 合併対価が株式のみでなく、現金やその他の資産が交付される場合(端株の整理や配当等、例外を除く。) 合併後に被合併法人の主要事業が継続されない場合、または被合併法人の従業員の80%以上が合併法人で引き続き従事する見込みがない場合。 合併法人と被合併法人の間に、完全支配関係(100%)や支配関係(50%超)がない場合、またはその支配関係が合併前後で継続しない場合。 共同事業型合併の場合、主要事業の関連性や役員・従業員の引継ぎなどの追加要件を満たさない場合。 このような適格要件(支配関係、事業継続、合併対価要件など)を一つでも満たさない場合、その合併は非適格合併とされます。非適格合併は、税務上は通常の資産譲渡・配当・株式譲渡と同様に課税が生じることとなります。 非適格合併の当事者別の税務上の取扱い 合併法人:被合併法人から取得した資産・負債を時価で取得したものとされます。 被合併法人:資産・負債を時価で譲渡したものとみなされ、譲渡損益が認識されます(法人税法62条)。 被合併法人の株主:受領する合併対価が株式取得価額を超える場合、その超過額についてみなし配当又は譲渡益の課税関係が生じる可能性があります。 株主課税のパターン 本件においては、合併対価・被合併法人の純資産(資本金等)・被合併法人株式の取得価額が全て同額であり、被合併法人の株主に課税関係は発生していません。 しかし例えば、合併対価の金額を12百万円、B社の資本金等を10百万円、B社株式の取得価額を8百万円とした場合には、株主に以下のような課税関係が生じます: みなし配当合併対価12百万円と資本金等10百万円の差額2百万円は、株主にとっては利益の分配であるとみなされるため、みなし配当に該当し課税が発生します。 株式譲渡益合併対価12百万円から上記みなし配当額2百万円を差し引いた10百万円は、B社株式の譲渡対価となります。B社株式の取得価額は8百万円であるため、差額の2百万円は株式譲渡益となり、課税の対象となります。 上記の通り、非適格合併により被合併法人の株主は課税を受けるケースもあるため、株主が保有する被合併法人株式の取得価額、合併により株主が取得する対価の金額及び被合併法人の合併直前の資本金等について注意深く確認し、税務上の影響額を事前に検討することが重要です。 4. 質問に対する判断 本件は「非適格合併」に該当し、A社、B社及びB社株主のそれぞれにおける税務上の取扱い(課税関係・税務仕訳)について、以下の通り考察します。 1. 合併法人A社の処理 合併法人は、被合併法人から承継した資産及び負債を、譲渡があったものとみなして、譲渡時の時価で取得したものとされます(法人税法第62条)。本件では、B社が保有する資産は貸付金10百万円のみであり、A社はその取得に対して同額の現金を交付しています。よって、税務上の仕訳は以下のとおりです: (貸付金)10百万円/(現金)10百万円 2. 被合併法人B社の処理 非適格合併により、被合併法人は資産を合併法人へ時価で譲渡したものとされ、譲渡損益が認識されます(法人税法第62条)。本件では、資産(貸付金)の帳簿価額と時価がともに10百万円であるため、譲渡損益は発生しません。税務上の仕訳は以下のとおりです:(現金)10百万円/(貸付金)10百万円 非適格合併において被合併法人が受け取った合併対価は、直ちに株主へ交付されるものとされます(法人税法第62条)。本件では、合併対価が現金のみであるため、以下の仕訳が考えられます:(資本金等)10百万円/(現金)10百万円 3. B社株主の処理 B社株主は、合併対価として金銭の交付を受けており、株主に対する資本の払戻しに該当します。法人株主等がその法人から資本の払戻しにより金銭の交付を受けた場合、その金額は有価証券の譲渡等として取り扱われます(租税特別措置法第37条の10第3項第4号)。本件では、B社株式の取得価額と払戻金が同額であるため、みなし配当も譲渡損益も発生しません。税務上の仕訳は以下のとおりです: (現金)10百万円/(B社株式)10百万円 4. 実務上の留意点
- [令和7年税制改正大綱のポイント-変更される特例措置の適用時期限や適用要件、防衛特別法人税やリース会計基準関連、適用時期について-](https://shiodome.co.jp/column/27564/) - 1. はじめに 令和7年度の税制改正大綱では、いわゆる「年収103万円の壁」、退職所得に関する課税の見直し、高校生などの扶養控除の見直しといった、私たちの生活に深くかかわる部分が注目を集めました。一方で、法人税法や消費税法については、目立った改正項目は見られませんでした。 本コラムでは、その中でも押さえておきたい法人課税と資産課税の改正点に焦点を当ててご紹介します。 2. 中小法人等に対する軽減税率の延長 中小法人の法人税は基本税率23.2%ですが、特例措置により、800万円までの所得については軽減税率15%でした。以下の見直しを追加した上で、この措置が2年間延長されます。これはリーマンショック時に始まった時限措置でしたが、賃上げや物価高などの状況を踏まえて延長が決定されました。 所得の金額が年10億円を超える事業年度について、所得の金額の内、年800万円以下の金額に適用される税率が15%から17%へ引き上げ グループ通算制度の適用をしている法人は特例の適用除外 3. 防衛特別法人税 日本の防衛力を強化する目的で、たばこ税が増税されますが、それに加えて新たに創設される法人税が「防衛特別法人税月1日以後に開始する事業年度からになっており、次のような計算で税額を求めます。 {(基準法人税額※1-500万円)×4%}-税額控除※2= 防衛特別法人税額 ※1 基準法人税額…以下の制度適用前の法人税額 所得税額の控除 外国税額の控除 分配時調整外国税相当額の控除 仮装経理に基づく過大申告の場合の更正に伴う法人税額の控除 戦略分野国内生産促進税制のうち特定産業競争力基盤強化商品に係る措置の税額控除及び同措置に係る通算法人の仮装経理に基づく過大申告の場合等の法人税額の加算 控除対象所得税額等相当額の控除 ※2 以下の税額控除 外国税額の控除 分配時調整外国税相当額の控除 控除対象所得税額等相当額の控除 仮装経理に基づく過大申告の場合の更正に伴う防衛特別法人税額の控除 4. リース会計基準に関する税制 令和6年9月13日に「リース取引に関する会計基準」等(以下、「新リース会計基準」)が公表されたことで、以下の表のように処理方法が変更されます。これは2027年4月以降開始の事業年度より適用予定です。 この変更ではオペレーティング・リースでのみ財務会計上処理が変更されます。これにより法人税法上の金額と差異が生まれることになり(赤字)、税務調整が必要になります。 5. 事業承継税制に関する特例措置 この税制の適用期限は個人版が令和10年12月末、法人版(特例措置)が令和9年12月末となっています。それぞれの適用期間が到来するまでの間 、より円滑な事業承継を促すために役員就任要件が次のように緩和されました。 6. 結婚・子育て資金の一括贈与の贈与税非課税措置の延長 少子化の要因の1つである経済的要因の軽減を目的として、父母・祖父母など直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けるときの贈与税について、非課税措置が設けられていましたが、その適用期限が2年間延長されることになりました。 (改正前)令和7年3月31日まで→(改正後)令和9年3月31日まで 7. おわりに 本コラムでは、令和7年度税制改正大綱のうち法人課税と資産課税に関する主なポイントをご紹介しました。法人課税では、「防衛特別法人税」が創設されましたが、それ以外には資産課税とともに大規模な制度改正は見られず、企業の業績や業務に大きな影響を及ぼすものは限定的とみられます。なお、「防衛特別法人税」は令和8年4月1日以降に開始する事業年度から適用予定のため、早い段階で必要な対応を検討し準備を進めていきましょう。
- [令和7年度 税制改正解説:個人所得税の見直しとその影響](https://shiodome.co.jp/column/27650/) - 1. はじめに 本稿では令和7年度税制改正大綱の中から、多くの関心を集めている個人所得税の改正内容について、ご紹介したいと思います。 2. 所得税基礎控除等の見直し いわゆる「103万円の壁」に関する改正について、物価上昇に伴う税負担の調整を目的として、以下の2点が見直されることとなりました。 1)基礎控除額の増額 合計所得金額が2,350万円以下の個人の方を対象に、現行の基礎控除額48万円が10万円増額され、58万円となります。 2)給与所得控除に関する改正(最低保障額の引上げ) 給与所得控除について、現在55万円とされている最低保障額が、10万円増額されて65万円になります。これにより、「103万円の壁」と呼ばれていた基準は、基礎控除58万円と給与所得控除65万円を合わせた「123万円の壁」へと引き上げられることになります。なお、この改正は令和7年度分の所得税から適用され、住民税については令和8年度分より反映される予定です。 3. 新設される「特定親族特別控除」について 配偶者における「103万円の壁」と同様に、大学生などの子どもにも同様の所得制限が存在し、アルバイトによる就労の妨げになっていると指摘されてきました。こうした状況を踏まえ、人手不足への対応策の一環として、先に述べた基礎控除の見直しと整合性を持たせる形で、新たに「特定親族特別控除」が導入されることになりました。 この控除の対象となるのは、生計を一にしている19歳以上23歳未満の親族(ただし、配偶者、青色事業専従者、および控除対象扶養親族は除く)を有する居住者であり、当該親族の合計所得金額が123万円以下である場合には、その居住者の総所得金額等から一定額の控除を受けることが可能となります。 ※参考:https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2025/07taikou_01.htm 4. 確定拠出年金制度に関する制度改正 企業年金の有無によって拠出限度額に差が生じないようにするため、私的年金等に関する課税の公平性を確保する観点から、次のような制度改正が行われます。 【企業型確定拠出年金(企業型DC)】 確定給付企業年金制度に加入している場合掛金の上限は月額6.2万円(現行:5.5万円)を上限として、加入している確定給付企業年金における掛金相当額を差し引いた額まで拠出可能となります。 確定給付企業年金に加入していない場合月額の拠出限度額は6.2万円(現行:5.5万円)に引き上げられます。 【個人型確定拠出年金(iDeCo)】 自営業者などの第1号被保険者掛金の上限は月額7.5万円(現行:6.8万円)へと増額されます。 企業年金に加入している会社員等月額6.2万円(現行:2万円)を上限とし、確定給付企業年金および企業型DCにおける掛金額を差し引いた範囲内で拠出可能です。 企業年金に加入していない第2号被保険者(第1号・第3号被保険者を除く)掛金の上限は月額6.2万円(現行:2.3万円)に引き上げられます。 【国民年金基金】 掛金の限度額は、 iDeCoと合わせて月額7.5万円(現行:6.8万円)となります。 5. 子育て世帯向けの生命保険料控除の見直し 23歳未満の扶養親族がいる居住者に対して、令和8年分における新生命保険料に係る一般生命保険料控除について、現行の控除限度額4万円に加え、さらに2万円が上乗せされ、合計で6万円まで控除可能となります。 なお、この見直しは令和8年分について適用される1年間の時限的措置で、新生命保険料および旧生命保険料を支払った場合の一般生命保険料控除の控除限度額も6万円となります。 ただし、一般生命保険料・介護医療保険料・個人年金保険料を合わせた全体の控除限度額(12万円)については現行から変更ありません。 6. 子育て世帯向け住宅ローン控除の優遇措置拡大 特例対象個人(※)が認定住宅などを新築等で取得し、令和7年中にその住宅へ入居した場合、住宅ローン控除における借入限度額が引き上げられます。 ※「19歳未満の子を有する世帯」又は「夫婦のいずれかが40歳未満の世帯」参考( https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001854843.pdf ) 7. おわりに 今回は、令和7年度税制改正に関する解説として、個人所得税に関する主要な改正ポイントをご紹介しました。特に「103万円の壁」に代表されるように、多くの方々に影響を及ぼす見直しが行われています。 年末調整や確定申告の時期には、今回の改正内容を改めて確認しておくことで、適切な対応が可能となります。制度を正しく理解し、必要に応じた対応を行うことが重要です。
- [今後の税制における論点 ~ギグエコノミーの広がりを踏まえて~](https://shiodome.co.jp/column/27658/) - 1. はじめに 令和7年度の税制改正大綱では、いわゆる「103万円の壁」に関する所得税の見直しが盛り込まれました。これにより、給与所得控除の上限額が引き上げられることとなりましたが、その一方で社会保険料の負担が増える可能性も指摘されています。結果として、必ずしも手取り収入が増えるとは限らない点に注意が必要です。 税制の見直しは、所得の再分配や課税の公平性を保つために、社会や経済の変化に応じて進められてきました。しかし近年、多様な働き方が急速に広がる中で、現在の税制がこうした現実に十分対応しきれていないとの指摘もあります。本稿では、こうした背景を踏まえ、「ギグエコノミー」と呼ばれる新たな就労形態と、それに伴う所得税制度上の課題について考察します。 2. 現行の所得税制度における利点と課題 ここでは、ギグエコノミーと特に関係が深い「所得税制度」について取り上げます。詳しく見ていく前に、現在の日本の所得税制度が持つ主な特徴を、基礎知識として整理しておきましょう。 表 所得税の特徴 このように、現行制度には利点と課題の両面が存在しており、社会の変化に応じて税制も柔軟に見直していくことが求められます。 3. ギグエコノミーと現行税制のギャップ 前の節でも述べたとおり、税制は労働構造の変化や経済状況に応じて見直されるべきですが、現実にはその対応が十分に追いついていない側面もあります。なかでも特に課題として指摘されているのが、ギグエコノミーに対する課税のあり方です。ギグエコノミーとは、インターネットなどを介して個人が単発・短期の仕事を受注する新しい就労形態およびその経済活動を指し、こうした働き方を選ぶ人々は「ギグワーカー」と呼ばれます。たとえば、Uber Eatsの配達業務や、クラウドソーシングサービスを通じて受注する仕事などがギグエコノミーに該当します。この働き方の大きな特徴は、企業に雇われるのではなく、自分の裁量で時間や場所を選びながら、スキルや知識を活かして業務に取り組める点にあります。フリーランスや副業の形で広がりを見せる一方で、現行の税制や社会保障制度とは整合しにくい部分があり、制度的なズレが課題として指摘されています。次の項では、その具体的な内容について見ていきましょう。 4. ギグエコノミーと税制における主な課題 ギグエコノミーに関連する所得税の取り扱いには、いくつかの制度的な問題が指摘されています。 ① 所得の把握が難しいこと ギグワーカーは複数のプラットフォームを通じて収入を得ることが一般的であり、その結果、所得が分散しやすくなっています。このような状況では、税務当局がそれぞれの収入を正確かつ網羅的に把握することが難しくなるとされています。特に、現金でのやり取りや、証拠が追跡しづらい海外経由の取引が含まれる場合には、その困難さは一層増します。 ② 納税意識および遵守率の低さ 会社員であれば、所得税や住民税、社会保険料といった負担は給与から天引きされるため、納税を特別に意識せずとも処理が完了します。一方で、ギグワーカーの場合は、これらの税金や保険料を自ら計算・納付しなければならず、その分、納税漏れや遅延が生じやすい傾向にあります。これは前述の所得把握の難しさとも関係していますが、特に税務に関する知識が乏しい場合、確定申告の誤りなどによるリスクも高くなります。 ③ 税負担の公平性と控除方式の違い 現在の税制では、会社員の給与所得には概算控除として、収入に応じた一定額の給与所得控除が自動的に適用され、個別に経費を申告することはできません。一方で、ギグワーカーなどの事業所得や雑所得については、必要経費の控除が認められており、業務に必要な支出を経費として具体的に申告することが可能です。このような控除方式の違いが、税負担の公平性という点で課題とされることがあります。また、正確には税ではないものの、実質的な手取りに大きく関わる社会保険料についても留意が必要です。会社員の場合、保険料は雇用主と労働者が折半で負担する仕組みですが、ギグワーカーはその全額を自身で負担する必要があります。こうした負担構造の違いも踏まえると、現行制度が税や社会保障の面で必ずしも公平とは言えないのではないか、という指摘がなされています。 5. おわりに 前述のような課題を解消するため、今後はより手軽に申告できる制度の整備が進められると見られています。その実現には、マイナポータルの活用が鍵を握ると考えられますが、インフラや運用体制の整備には時間を要するため、すぐに導入されるものではないかもしれません。それでも将来的には、給与所得者と事業所得者の間にある制度上の隔たりが縮まり、申告手続きの簡素化によって、申告漏れの防止にもつながることが期待されます。
- [日本の退職所得税制と税務リスク:外国籍役員が押さえておくべきポイント](https://shiodome.co.jp/column/27980/) - 1. 退職所得とは:日本の税制の基本 退職所得とは、日本の所得税における所得区分の一つで、主に退職金を受け取った際に生じる所得を指します。給与所得とは別枠で扱われ、退職金に対して税金の優遇が設けられている点が大きな特徴です。日本では長年勤め上げた従業員や役員に対し、その功労に報いるため退職時にまとまった退職金を支給する慣行があり、税制面でも一度きりの退職時収入に配慮した仕組みになっています。 退職所得の計算方法は、他の所得とは異なり優遇されています。具体的には、受け取った退職金額からまず勤続年数に応じた「退職所得控除額」(勤続年数に応じて定められた一定の控除額)を差し引きます。そして、その残額の2分の1だけが課税対象となる仕組みです。本来は長年の功労に報いるための制度ですが、税負担を軽くできる点を租税回避目的で不適切に利用しようとするケースもあるため、税務当局もこの分野を注視しています。 2. 日本の退職金制度と税務の仕組み 日本の退職金制度は、企業から従業員へ長期勤続の功労慰労として支払われる一時金が中心です。特に日系企業では、就業規則や役員退職金規程などで退職金の計算方法を定め、退職時に所定の金額を支給する慣習があります。税務上、退職金は前述のとおり退職所得扱いとなり、退職所得控除後に2分の1が課税されることでその恩恵を受けます。 計算式を整理すると「(退職金収入 - 退職所得控除額)×1/2」に税率を乗じる形です。この優遇により、仮に多額の退職金を受け取った場合でも、勤続年数によっては通常の給与として受け取るよりはるかに低い税額で済む可能性があります。 ただし近年、この退職所得の優遇措置について見直しが行われています。特に勤続5年以下の短期勤続者に対する退職金については、従来のような2分の1課税が一部または全部適用除外となるルールが導入されました。この改正は短期間で高額な退職金を支給して税負担を軽減するスキームへの対策であり、外資系企業の日本子会社に派遣された役員が派遣され数年で退職・帰任するようなケースに当てはまります。したがって、実際には期待した税制上の優遇を受けられない可能性がある点に注意が必要です。 3. 多額の退職金が引き起こすリスク 退職所得制度は魅力的ですが、支給される退職金の金額があまりに多額である場合、税務上のリスクが生じます。税務当局は、退職金が常識的な範囲を超えて高額になると、「妥当な退職金であるか?」と疑い、優遇税制の適用を否認することがあります。 特に役員に対する巨額の退職金は厳しい目で見られる可能性があります。適正水準を超える部分は、法人税法上は損金として認められず、受け取った個人にとっても退職所得ではなく給与所得として課税がなされるリスクがあります。 多額の退職金支給が引き起こす主なリスクを整理すると以下のとおりです。 税務調査での否認リスク 異常に高額な退職金は税務調査の際にチェックを受けやすく、場合によっては「不相当に高額」であるとして退職所得としての扱いを否認される可能性があります。 個人・法人双方への課税強化 退職所得の優遇が受けられないと判断された場合、その退職金は受給者個人にとっては通常の給与と同様に課税され、最高税率(所得税45%+住民税10%等)の適用を受けるかもしれません。さらに法人側でも、本来損金処理できるはずの退職金が損金不算入となり、法人税の課税所得が増加する可能性があります。個人と会社の双方で想定外の税負担が発生するわけです。 すなわち、「退職金だからいくら高額でも税優遇される」というわけではないという点が重要です。税務上適切と認められる水準を超えた退職金については、制度の趣旨を逸脱するとみなされ、思わぬ税コスト増加を招くことになります。 4. 税務否認の可能性とその背景 具体的にどのような場合に退職金が税務上否認され得るのでしょうか。「退職金として相応しくない」と判断されるケースには次のようなものが考えられます。 金額が功績や規程に照らして過大 退職金額が会社の業績や本人の貢献度に比べて明らかに大きすぎる場合です。客観的根拠なく巨額な金額を設定すると、税務上「不相当に高額」とみなされる恐れがあります。 社内手続の不備 会社法上、取締役など役員に退職金を支給するには株主総会決議など適切な承認手続きを経る必要があります。このプロセスを踏まずに支給された退職金は、たとえ金額が適正でも税務上問題視される可能性があります。 退職の事実が曖昧 形式上は会社を退職していても、該当の役員が実質的に引き続き会社に関与している場合には注意です。その場合、支給額が退職金ではなく役員報酬とみなされる可能性があります。 上記の背景には、退職所得制度の本来の趣旨を守り、恣意的な節税を防ぐという税務当局の考えがあります。日本の税制は長期勤続による功労に報いるため退職金を優遇していますが、それを逆手にとって短期間での高額支給や名目上の退任による節税が行われると制度の公平性が損なわれます。このため、税務当局は退職金の実態をチェックし、形式だけの退職や不相当に高額な支給については是正しているのです。 5. 外国との感覚の違いを理解する重要性 外資系企業のCFOや外国籍の役員にとって、日本と自国の退職金制度の違いは大きな課題です。日本では長期勤続の功労報酬として退職金が根付いていますが、欧米では明確な退職金制度は少なく、解雇補償金や業績連動インセンティブが主流です。この感覚の違いにより、日本の退職金優遇を正しく理解せず、高額支給を正当化すると誤解が生じやすくなります。 しかし、日本では社会通念を超えて支給した高額退職金は税務否認リスクが高く、また会社法上も役員への退職金は原則として株主総会決議が必要となります。米国などでは退職金に特別な税優遇がない一方、日本では節度ある範囲内でのみ優遇が認められる点に注意が必要です。日本の制度を丁寧に説明し、相互理解を図ることが重要になります。 6. 税務リスクを回避するための対策 退職金に関する税務リスクを回避するためには、外資系企業の経理・財務部門がいくつかの対策を講じることが重要です。 まず、退職金規程を整備し、支給額の算定方法や手続きを明文化することで妥当性を担保する必要があります。次に、会社法に基づく株主総会や取締役会での正式な承認手続きを遵守しなければなりません。また、支給額は業績や貢献度、市場相場を考慮して設定し、過大な金額にならないよう注意が必要です。 将来の税務調査に備えて、支給根拠や手続きを裏付ける資料を整備しておくことも有効です。金額が大きい場合は税務専門家に事前相談することで税務リスクと軽減できるでしょう。 7. 退職金に関連する事例と教訓 実際の事例から学べる退職金支給に関する教訓を紹介します。 【事例1:形式的な退任による退職金の否認】 概要:代表取締役から取締役への分掌変更に伴い支給された退職金について、実質的な退職と認められず、損金算入が否認された事例です。 ポイント: 臨時株主総会や取締役会の議事録が真正に作成されたものと認められなかった。 商業登記がされていなかった。 退任後も実質的に代表取締役としての業務を継続していた。 教訓:形式的な役職変更ではなく、実質的な退職であることを証明するため、適切な手続きと証拠の整備が必要です。 【事例②:高額な退職金の一部否認】 概要:死亡退職した代表者の遺族に支給された退職金が、不相当に高額であるとして一部否認された事例です。 ポイント: 業務上の死亡により退職した者に対しては、通常の退職給与より多額に支給されるのが一般的であると認められる。 比較法人の平均功績倍率により算定した通常の退職給与額に、業務上死亡の退職事情を考慮して税法の取扱いに準じ死亡時の普通給与の3年分を加算した金額をもって適正額とした。
- [国外転出時課税制度と外国籍役員の税務リスク](https://shiodome.co.jp/column/27974/) - 1. 国外転出時課税制度の基本概要 株式等のキャピタルゲインについて、キャピタルゲイン非課税国や軽課税国への移住による課税逃れを防止するため導入されたのが国外転出時課税制度です。これは、一定の条件を満たす個人が日本から国外に転出する際、その時点で保有する一定の金融資産について譲渡があったものとみなして所得税を課す仕組みです。なお、非居住者への贈与等を対象とした国外転出(贈与)時課税制度については、本コラムでは割愛し、出国時の課税をメインテーマとして取り扱います。国外転出時課税が適用されるのは、次の2つの条件をともに満たす場合です。 多額の資産保有者であること: 日本から出国する時点で、時価評価で合計1億円以上の対象資産(後述)を保有していること。 長期の日本居住者であること: 原則として、出国前10年以内に日本に住んでいた期間が合計で5年を超えていること。 上記を満たす個人が国外へ転出する場合、出国時に対象資産を時価で売却したものとみなして課税されます。 その際に対象となる金融資産は以下の通りです。 株式や投資信託などの有価証券 信用取引に係る未決済のポジション デリバティブ取引に係る未決済のポジション これらの合計評価額が出国時に1億円以上であるかどうかで判定されます。なお、現金そのものや日本国内外の不動産などはこの対象資産には含まれません。 この制度には、課税そのものを猶予できる制度も用意されています。対象者が一定の手続きを行えば、課税された所得税の納税を最長で出国後10年(当初5年+所定の延長申請でさらに5年)まで猶予することが可能です。 2. 国外転出時の譲渡所得とは 譲渡所得とは、不動産や株式などの資産を譲渡(売却)した際に生じる所得、つまり売却益を指します。通常、資産を実際に売却して初めて譲渡所得が確定し、その時点で所得税の課税対象となります。 「国外転出時の譲渡所得」とは、一定の条件を満たす居住者が日本から国外に移住(非居住者となること)する際に、その時点で保有する対象となる金融資産をあたかも売却したものとみなして発生した所得を指します。すなわち、実際には売却していない資産に対しても出国のタイミングで潜在的な譲渡益(含み益)に課税が行われることになります。 3. 日本での個人所得税と譲渡所得の関係 日本の所得税では、個人の所得は様々な種類に分類され、それぞれ異なる課税方法が定められています。譲渡所得もその一つであり、たとえば株式や投資信託を売却して利益(キャピタルゲイン)が生じた場合、その利益は譲渡所得として課税対象になります。 上場株式等の金融商品に係る譲渡益には、原則として約20%(所得税及び復興特別所得税15.315%、住民税5%)の税率で課税されるのが一般的です。これら金融資産の譲渡益は給与所得など他の所得と分離する申告分離課税とされています。 この点、日本の居住者が海外資産を売却して得た利益については、その居住者が非永住者に該当しない限り、原則として日本で課税されます。つまり、日本に長期居住している個人であれば、通常は海外の株式を売却した利益であっても日本の所得税の課税対象となり得ます。反対に、日本を離れて非居住者になった後に上場株式等を売却した場合、通常その譲渡益は日本の課税範囲外となります。 この違いゆえに、過去には日本で蓄えた資産を売却する直前に低税率の国へ移住し、日本の譲渡所得課税を免れるといった租税回避も行われてきました。 4. 外国籍役員が直面する税務リスク 国外転出時課税は日本国籍の有無にかかわらず適用される制度です。したがって、外国籍の役員であっても前述の要件(時価1億円以上の資産保有かつ5年超の居住)を満たせば課税の対象となり得ます。ただし、実務上、外国籍駐在員の方々については特例的な取扱いも存在します。日本の税法では、一定の在留資格(ビザ)で日本に滞在していた期間については、先の「10年以内に5年超居住」の判定から除外できることとされています。 注意すべきは、在留資格の種類によっては除外が適用されないケースがあるということです。そのため、外国籍役員であっても日本における滞在実態によっては国外転出時課税のリスクが存在します。「自分は課税対象外だと思い込んでいたが実は該当していた」という事態が最も注意すべきリスクと言えるでしょう。 5. 税務申告における必要書類と手続き 国外転出時課税の対象となる可能性がある場合、日本を離れる前後で適切な税務手続きを踏む必要があります。 まず、出国に際しては通常、税務署に「納税管理人」の届出を行います。次に、出国する年分の所得税について確定申告を行い、出国時の含み益を申告します。確定申告書には対象資産の含み益等を記載し、原則として翌年3月15日までに提出します。 前述の納税猶予制度を利用するには、確定申告書に猶予適用の旨を記載し、申告期限までに猶予税額に相当する担保を提供します。納税猶予が認められると、対象資産の含み益に係る所得税の納付が一時的に保留され、毎年末の資産状況の届出(継続適用届出書)を継続する限り5年間(延長申請により最大10年)猶予されます。仮に納税猶予期間中に帰国して資産を引き続き保有している場合は、所定の手続により課税を取り消すことができます。 6. 譲渡所得を巡る課税事例と対応策 実際に想定されるケースを取り上げ、国外転出時課税制度にまつわる問題点とその対応策について考えてみます。 【ケース:外国籍CFOが国外転出する場合】 日本で高額の株式など金融資産を保有したまま外国へ転出するケースでは、出国時に含み益に対して原則15.315%の譲渡所得税が課されます。例えばシンガポールのようなキャピタルゲイン非課税国へ移ったとしても、日本で税金を支払う必要があります。 対策として、転出前に一部の資産を売却して資産評価額を1億円未満に抑える方法や、納税猶予制度を活用して帰国まで納税を先送りする方法が考えられます。 ただし、転出先の国が譲渡益に課税する場合には二重課税のおそれもあるため、日本にいるうちにある程度含み益を実現しておく(日本で課税を済ませる)など、転出先の税制も見据えた計画が重要です。 7. 事前準備が鍵:リスク回避のポイント 国外転出時課税にまつわるリスクを最小限に抑えるには、事前の準備と計画が重要です。外国籍役員が実務上押さえておきたいリスク回避のポイントは以下の通りです。 早い段階で専門家に相談し資産状況を把握する 海外転勤や任期終了による転出の可能性が出てきたら、できるだけ早く国際税務の専門家に相談し、自身の対象資産の評価額や課税の対象となるかを確認しましょう。特に株式など多額の金融資産を保有している場合は、早期相談がリスク軽減の鍵になります。 在留資格と滞在歴の確認 自分の日本での滞在歴(居住期間)と在留資格の種別を確認し、国外転出時課税の居住要件に該当しうるか把握しておきます。外国籍駐在員の場合、自分の在留資格での滞在期間が居住期間判定から除外されるか否かを税務専門家に確認しましょう。 納税管理人の選任と書類準備 転出前に納税管理人の届出を済ませ、確定申告に必要な書類を整えておきます。特に出国時課税の対象となる資産がある場合、その取得価額や時価評価額を算出するための資料(購入時の契約書や証券会社の取引報告書、市場価格の評価明細など)を事前に揃えておきましょう。出国直前になり書類不備で正確な申告ができないといった事態を避けるためにも余裕を持った準備が必要です。 8. まとめ 国外転出時課税制度は、日本から海外へ資産を持ち出す際に発生し得る重要な税務上の論点です。本記事では、制度の概要から外国籍役員への影響、具体的な手続きや留意点、さらには想定ケースと対策まで幅広く解説しました。対象者に該当するケース自体は限られるものの、適用されれば多額の税負担が生じる可能性があり、準備不足による申告漏れ等には大きなリスクが伴います。 税務分野は専門性が高いため、社内外の専門家の助言を積極的に求めることも有効です。グローバルに活躍する外国籍役員にとって、日本と各国の税制をまたいだ資産管理と税務コンプライアンスは重要な課題です。そういった方々が国外転出に際して適切な計画を立て、税務リスクをコントロールする一助となれば幸いです。
- [【税務Q&A】受取配当金の益金不算入制度と関連法人株式等に係る実務判断](https://shiodome.co.jp/column/27968/) - 1. 質問 A社は、B社の発行済株式の25%を1年以上継続して保有しています。C社は、B社株式の10%を令和6年12月1日に取得しました。 なお、A社の発行済株式はX氏(X家)が100%保有しており、C社の発行済株式はY氏(X氏の子、X家)が100%保有していることから、A社及びC社は、いずれもX家が発行済株式を100%保有する法人に該当し、「一の者」による完全支配関係(法人税法第2条第12号の7六)に該当します。 このような状況のもと、A社は令和7年3月にB社から配当金の支払いを受けました(対象期間:令和6年7月1日~12月31日)。この受取配当金について、完全支配関係にあるC社と合算した保有割合が35%となることから、「関連法人株式等に係る配当金」に該当し、支払利息(負債利子控除額)を除いた部分について全額益金不算入として取り扱うことが可能でしょうか。 <補足前提> B社は12月決算で、年2回配当を実施しており、各配当の計算期間は①1月~6月、②7月~12月です。 2. 回答 A社は、B社株式を単独では25%しか保有しておらず、またC社との合算による持株比率(35%)についても、配当対象期間全体にわたる継続保有要件を満たしていないことから、当該株式は「関連法人株式等」には該当しません。したがって、A社が受け取った配当金は「その他株式等」に該当し、配当金額の50%を益金不算入とする取扱いが妥当と考えられます。 3. 受取配当金の益金不算入制度の概要 まず、本件の論点である「受取配当金の益金不算入制度」について、その全体像を整理してみたいと思います。 制度の趣旨 法人が他の法人から受け取る配当金は、原則として益金に算入され、法人税の課税対象となります。 しかし、その配当の原資となる利益については、出資先法人においてすでに法人税が課されているため、同一の利益に対して二重に課税されることになります。 このような経済的な二重課税を防止するため、一定の要件を満たす配当金については、その全部又は一部を益金に算入しない「益金不算入制度」が設けられています。 制度の仕組み及び要件 受取配当金の益金不算入割合は、持株比率や保有期間等に応じて異なります。主な類型は以下のとおりです。 完全子法人株式等 持株割合:100% 益金不算入額:配当金額×100% 要件:配当計算期間全体を通じて継続保有していること 関連法人株式等 持株割合:1/3超〜100%未満 益金不算入額:配当金額×100%-負債利子控除額* 要件:配当計算期間全体を通じて継続保有していること *負債利子控除額:配当金額×4%と、支払利子×10%のいずれか低い金額 その他株式等 持株割合:5%超〜1/3以下 益金不算入額:配当金額×50% 要件:配当基準日時点で保有していること 非支配目的株式等 持株割合:5%以下 益金不算入額:配当金額×20% 要件:配当基準日時点で保有していること なお、本制度の適用を受けるためには、確定申告書に益金不算入額及びその計算明細を記載した書類を添付する必要があります。 具体例 益金不算入額の算定イメージとして、「完全子法人株式等」の場合と「関連法人株式等」の場合を例に取り、以下に示します。 例1)完全子法人株式等の場合 甲社は、子会社である乙社の株式を100%保有しています。このような関係は、「完全子法人株式等」に該当します。この場合、甲社が乙社から1億円の配当を受け取ったとしても、その配当金は全額が益金不算入となり、法人税の課税対象から除外されます。また、「完全子法人株式等」に該当するため、借入金の支払利子との調整(負債利子控除)は不要となります。 例2)関連法人株式等の場合 甲社が乙社の株式を40%保有している場合、この関係は「関連法人株式等」に該当します。甲社が乙社から1億円の配当を受け取った際、その配当金は原則として全額が益金不算入の対象となりますが、株式取得に関連する負債利子がある場合には、一定の調整が必要です。 仮に、甲社が当期に1,000万円の関連借入金に対する支払利子を計上していた場合、益金不算入額は、以下のいずれか低い金額を控除した金額となります。 配当金額の4%(1億円×4%=400万円) 支払利子の10%(1,000万円×10%=100万円) このケースでは、より低い金額である100万円が負債利子控除額として配当金から差し引かれるため、甲社が受け取った1億円のうち、9,900万円が益金不算入額となります。 4. 質問に対する判断 本件において、A社はB社の発行済株式の25%を1年以上継続して保有しており、単独では「その他株式等」に該当します。 一方、A社及びC社は、いずれもX家が100%保有する法人であることから、法人税法上の「完全支配関係」に該当し、両社の持株割合を合算して「関連法人株式等」として取り扱える可能性もあります。 しかしながら、法人税法施行令第22条においては、「関連法人株式等」に該当するためには、合算対象となる株式保有割合が、配当の基準日等に係る期間全体を通じて継続して保有されていることが要件とされています。 今回の配当の対象期間は令和6年7月1日から12月31日ですが、C社がB社株式を取得したのは令和6年12月1日であり、期間全体を通じた継続保有の要件を満たしていません。 したがって、本件ではA社とC社の合算保有割合(35%)に基づき「関連法人株式等」とすることはできず、A社単独の保有割合(25%)に基づいて判断する必要があります。 このため、A社がB社から受け取った配当金は、「その他株式等に係る配当金」として取り扱われ、配当金額の50%が益金不算入の対象となると考えられます。
- [外資系企業が知っておくべき日本の税務調査の全体像と実務上の留意点](https://shiodome.co.jp/column/30226/) - 1. 税務調査とは:基本概要と目的 税務調査とは、企業や個人事業主が税務署に提出した申告内容が正しいかどうかを確認するために行われる調査です。 日本の税制は申告納税制度という納税者自ら税額を計算し申告・納付する制度を採用しているため、申告が正確であることを確認する目的で税務当局が定期的にチェックを行います。申告内容に誤りや不正がないかを確認し、もし問題があれば正しい申告に修正を求めることになります。 税務調査は多くの場合、定期的・横断的な確認作業の一環として行われ、必ずしも「悪いことをしている疑い」を意味するものではありません。ただし、仮に申告漏れや計算誤りがあれば追徴課税につながり、故意の隠ぺい・仮装があった場合には重い罰則が科される可能性もあります。 2. 任意調査と強制調査の違い 税務調査には「任意調査」と「強制調査」の2種類があります。 任意調査とは、納税者の協力のもと行われる税務調査を指します。税務署が事前に連絡のうえ訪問し、帳簿や証憑の確認、担当者への質問を行います。任意とはいえ基本的に拒否できるものではありません。対象年度は状況により拡大されることもあります。多くの企業が受ける税務調査はこの任意調査に該当します。 一方、強制調査は悪質な脱税が疑われる場合に裁判所の令状に基づき行われる税務調査を指します。こちらは強制力を持った調査であり、場合によっては捜査や証拠の差押えが行われます。健全な企業に強制調査が入ることは稀ですが、日頃から正確な帳簿管理と誠実な対応が求められます。 3. 税務調査の主な流れとスケジュール 税務調査のうち、任意調査は以下のステップで進行します。 1. 事前通知 税務署から調査実施の事前通知が届きます。その際に、調査の日時、場所、対象税目、調査対象期間、必要書類などが伝えられます。 2. 日程調整と社内準備 通知を受けた後は、税務調査官とやりとりし日程を確定します。社内では対象年度の帳簿類、証憑資料、契約書、稟議書など必要書類を整理します。顧問税理士に立ち会いを希望する場合はそちらの日程調整もしましょう。 3. 実地調査 調査当日は税務調査官が企業を訪問し、まずヒアリングを行います。続いて帳簿や証憑の確認が行われ、不明点があれば追加質問や資料提出が求められます。取引先への照会が行われることもあります。 4. 結果通知 税務調査が終了すると、後日その結果が企業に通知されます。問題がなければ「是認通知書」が発行され、申告内容が適正であったとされます。一方で申告漏れや誤りが指摘された場合は、基本的には修正申告と追加の納税が必要になります。 以上が税務調査における一連の流れです。仮に、税務調査の指摘事項に異議がある場合は、顧問税理士と協議した上で慎重な対応が求められます。 4. 調査頻度に影響を与える要因 「自社にはどのくらいの頻度で税務調査が入るのか?」は経営者やCFOにとって大きな関心事でしょう。税務調査の頻度は企業の規模や業種、申告内容の状況によって様々ですが、一般的には3〜10年に一度程度と言われます。比較的規模が小さく税務リスクも低い企業では10年以上調査が来ないこともあります。 一方で、売上高・社員数ともに大きいような大企業や、過去に調査で問題を指摘された履歴がある企業などはもっと短いスパンで定期的に調査が実施される傾向があります。 具体的に、調査頻度に影響を与える要因として次のようなものが挙げられます。 業績の極端な変動や異常値 売上や利益が前期比で大幅増減している企業は、その理由を確認するため調査対象になりやすくなります。一時的な景気変動や事業構造の変化による増減であれば説明可能ですが、そうでない場合は申告誤りや計上漏れを疑われる可能性があります。 業種・取引形態 業種によって歴史的に不正計上が多かった分野は重点的に調査される傾向があります。例えば現金商売が中心の業種などは売上除外や経費の私的流用が起きやすい業種として認識されています。 過去の調査状況 前回の税務調査で問題が指摘された企業は、その後数年以内にフォローアップ調査が入る可能性があります。逆に前回調査で問題がなく是認されている企業は、比較的調査の優先度が下がり、次回までの間隔が長くなる傾向があります。 以上のように、調査が行われる頻度やタイミングは様々な要因で決定されます。企業側は「いつ調査が来ても良いように備えておく」ことが重要であり、調査が長年来ていないからといって油断しないようにしましょう。 5. 税務調査が企業に与える影響 税務調査は企業にとって大きな影響をもたらします。まず、業務負担の面では、書類準備や調査当日の対応などに多くの時間と人手を要します。経理部門だけでなく関係部署への確認や追加資料の準備も必要であり、外資系企業の場合は本社への英語による報告や社内調整といった追加業務も発生します。 また、金銭的影響も見逃せません。調査で申告漏れや誤りが判明すれば、追徴税に加えて加算税や延滞税が課される可能性があり、場合によっては数千万円単位の負担になることもあります。重加算税が課されるほどの不正があれば、経営陣の責任問題や損害賠償に発展するリスクもあります。 さらに、企業の信用への影響も重要です。大規模な修正申告や重加算税があった場合は、上場企業であれば開示義務が生じる可能性もあり、報道により企業イメージが損なわれる恐れがあります。これにより株価の下落を引き起こしたり、金融機関の信用評価に影響を与えたりすることもあります。 しかし一方で、調査で問題なしとされた場合には、税務処理の適正性が認められたことになり、社内外に安心感を与える効果があります。また、指摘事項があった場合でも、それを機に社内ルールや業務プロセスを見直すことで、内部管理体制やガバナンスの強化につながるという前向きな捉え方もできます。適切な対応と日頃の準備が、税務調査の影響を最小限に抑える鍵となります。 6. 調査に備えるための実務ポイント 税務調査への備えとして、企業の経理担当者やCFOが押さえておくべき実務上のポイントは以下の通りです。 帳簿・証憑の適切な保存 日々の取引は漏れなく正確に複式簿記の方法により会計帳簿に記録し、関連する証憑書類は定められた期間しっかり保存しておきましょう。日本の税法では原則として帳簿や証憑類の保存は7年間と規定されているものの、欠損事業年度や会社法などの他の規定を考慮すると10年間の保存が必要です。特に外資系企業では本社が管理している資料もあるかもしれませんが、税法では帳簿書類等は納税地(日本国内)で保存することが義務付けられているため、保管場所や保管方法についても社内ルールを整備するなどの注意が必要です。 決算・申告内容のセルフチェック 年度の決算を組み税務申告を行ったら、その内容について自己点検しておきましょう。具体的には、前年度との財務数値の比較を行い、大きな変動がある項目には合理的な説明がつくか確認することが有効です。また、税務調査でよく確認されるポイントとしては、売上および仕入の計上漏れ・期ズレ、損金経理の適否、私的経費の混入の有無などが挙げられます。 税務専門家との連携 外資系企業に限らず、日本でビジネスを行う場合には日本の税務に精通した税理士と顧問契約を結んでいるケースが多いと思います。その場合は事前準備の段階で過去の申告内容を一緒に点検してもらいましょう。調査当日も可能な限り顧問税理士に立ち会ってもらうことをお勧めします。 調査後のフォロー 税務調査が終わった後も、指摘事項への対応や再発防止策の実施が必要です。もし修正申告を行った場合は、その内容を社内の経営陣や本社に報告し、今後の改善策を立案することが重要です。税務調査の結果得られた教訓を社内ルールに反映させることで、次回以降の税務調査に役立てましょう。
- [日本の附帯税制度とは何か:外資企業が押さえるべき税務リスク管理の実務](https://shiodome.co.jp/column/32537/) - 1. 附帯税とは:基本概要と役割 附帯税とは、本来納付すべき税額に対して付加的に課される税金で、申告期限までに確定申告をしなかった場合や納税期限までに税金を納めなかった場合に、ペナルティとして課されます。 日本の国税における附帯税は、延滞税・利子税・過少申告加算税・無申告加算税・不納付加算税・重加算税の6種類があります。これらはいずれも納税者に適正かつ期限内の申告納税を促すために賦課されます。 附帯税は申告漏れや納付遅れがあれば本税とは別に追加の税負担が発生する仕組みであり、企業としてはこれら附帯税を可能な限り回避することが健全な経営において重要になります。 2. 日本における附帯税の種類と税率(国税) 日本の附帯税には上記の6種類があり、それぞれ課される条件と税率が定められています。以下に附帯税の種類と概要をまとめます。 延滞税 納付遅延に対する利息相当の税金です。税金を期限までに完納しないと、法定納期限の翌日から完納日まで日数に応じて延滞税が計算されます。延滞税の年率は期間によって異なり、期限から2ヶ月以内の期間は最大年7.3%、2ヶ月超過後は最大年14.6%に引き上がります。 過少申告加算税 申告漏れによる追徴課税に対するペナルティです。期限内に申告したものの申告内容に誤りがあり、修正申告や更正によって追加納税が生じた場合に課されます。原則として追加で納める税額の10%が課税され、さらにその追加税額のうち「期限内申告税額または50万円のいずれか大きい方」を超える部分については5%を加算して課税されます。 無申告加算税 申告書を期限までに提出しなかった(いわゆる申告漏れ・申告忘れ)場合に、本税のほかに課されるペナルティです。税率は、原則として、納付すべき本税額に対して50万円までの部分が15%、50万円超~300万円の部分が20%、300万円超の部分が30%と段階的に課されます。 不納付加算税 源泉徴収した税金を法定納期限までに納付しなかった場合に課される附帯税です。納付すべき税額の10%が課税されますが、税務署からの指摘を受ける前に自主的に納付すれば5%に軽減されます。源泉徴収分の納付漏れは発生しやすいため注意が必要ですが、速やかな自主納付によりペナルティ率を半減できる点は押さえておきましょう。 重加算税 上記の各種加算税に該当する事態について、悪質な仮装・隠ぺいがあった場合に課される非常に重いペナルティです。具体的には、意図的な所得隠し等があった場合に過少申告加算税または不納付加算税に代えて35%、無申告加算税に代えて40%が本税に対して課されます。さらに過去5年以内に重加算税または無申告加算税があった場合は税率が追加で10%加重されます。 利子税 納税猶予など税務署に認められた正規の手続きにより納付期限が延長された場合に、その猶予期間に対応して課される利息のような税金です。事前申請に基づき納付を猶予する性質上、相対的に低めの利率が設定されています。 以上が日本の国税における附帯税の種類と税率です。日本の附帯税制度は細かく区分されていますが、共通して「自主的な適正申告・納付」を促すインセンティブが組み込まれており、期限後であっても早期に是正すれば一定の軽減措置が受けられる仕組みになっています。 3. 主要国の附帯税制度とその違い 日本以外の国でも税の申告漏れや納付遅延に対するペナルティ制度は存在しますが、その内容や重さは国によって様々です。 ここではアメリカ、シンガポールの附帯税制度を見てみましょう。 【アメリカの附帯税制度】 アメリカの税法では、申告や納付の遅延に対してそれぞれ明確なペナルティが定められています。まず、申告を期限までに行わなかった場合には、 パススルー課税の適用を受けない法人のケースでは通常未納税額に対して月額5%の罰金が課され、最大で25%(5ヶ月分)に達します。一方、納付の遅延には、一般的に未納税額に対し月額0.5%のペナルティが課され、こちらも上限は25%です。 これらに加え、未納税額には延滞利息が発生します。利率は毎年変動し、短期金利を基準に決定されるのが特徴です。また、過少申告に対しては、不足税額の20%がペナルティとして科されます。これは過失や計算ミスによる申告漏れが対象です。仮に、故意による脱税が認定された場合には、不足税額の75%という非常に重い罰則が科される仕組みになっています。 【シンガポールの附帯税制度】 シンガポールの法人税における附帯税制度は厳格で高率です。まず申告遅延や無申告には、未申告税額の最大200%の課徴金や罰金、場合によっては禁錮刑が科されます。 一方、納付遅延には、5%のペナルティが課され、その後も未納が続くと月1%ずつ追加されていきます。過少申告の場合も、意図の有無に応じて最大400%のペナルティや刑事罰が適用され、特に故意の脱税には厳罰が科されます。 各国とも、期限内の申告・納付と正確な申告を促すため、罰金や延滞税・加算税による経済的不利益を与える仕組みを整備しています。 4. 附帯税が企業経営に与える影響 附帯税は本税とは別に課される追加コストであるため、企業の財務・経営に無視できない影響を与えます。まず資金繰りの面では、追徴課税や延滞税の支払いによって予期せぬ現金流出が発生し、キャッシュフローを圧迫します。そのため場合によっては追加の資金調達を迫られたり、本来の事業投資資金を取り崩さざるを得なくなったりするでしょう。 また、附帯税の存在は税務リスクそのものでもあります。会社のCFOにとって、税務調査で申告漏れを指摘されることは追加の税負担だけでなく、ペナルティや延滞利息を含めた多額の納付を意味します。加えて、過去に重加算税など重大な違反があった企業は税務当局から重点的にマークされる可能性が高く、将来の税務調査頻度の増加や調査期間の長期化といった形で経営陣・経理部門への負担が継続的に増す恐れもあります。 総合すると、附帯税は企業経営において、金銭面・信用面の両リスクを孕む重要事項であり、CFOや経理責任者は常にその発生を未然に防ぐ管理が求められます。 5. 日本の附帯税制度の特徴と注意点 日本の附帯税制度には、他国と比べていくつか特徴的な点があります。 まず制度の細分化です。前述のように日本では附帯税が種類ごとに細かく規定されており、ケース(申告漏れなのか無申告なのか等)に応じて適用税率や軽減措置が異なります。例えば米国では申告遅延は一律5%/月のペナルティですが、日本では自主申告したか否かで無申告加算税が15%または5%と変わるなど、細分化された運用がなされています。 これは裏を返せば、日本の納税者にとって「どう行動するか」でペナルティが大きく変わることを意味し、納税者に自主的な是正を促す工夫とも言えます。 6. 附帯税リスク回避のポイント 以上のように各種の附帯税は企業にとって大きなリスクとなり得るため、未然防止策を講じておくことが大切です。以下に、外資系企業のCFOや経理責任者が実践すべき附帯税リスク回避のポイントを整理します。 適正かつ期限内の申告・納税を徹底する 申告漏れや納付遅れを起こさないことが最善策です。税務カレンダーを管理し、法人税・消費税・源泉税・社会保険料など各種納期限を社内で共有・リマインドする仕組みを作りましょう。申告内容についても複数人でチェックし、誤りを防止する内部統制を整備します。 早期の是正・修正 万一申告漏れや誤りに気付いた場合、できるだけ早く修正申告や期限後申告を行いましょう。税務調査で指摘を受ける前に自主修正すれば、日本では附帯税が軽減されます。 内部統制の強化 税務に関する社内ルールを明文化し、チェックリストやレビュー体制を構築しましょう。定期的な納税業務は担当者任せにせず、上長や別担当者が期限と金額を確認する仕組みを持つことが重要です。 税務専門家との連携 税理士事務所や税理士法人など外部の税務専門家をうまく活用することも有効です。とりわけ日本の税法・実務に不慣れな外資系企業の場合、申告業務を税理士に依頼することで重大なミスを避けられますし、万一問題が起きても早期に適切な対応策のアドバイスが得られるでしょう。 以上のポイントを実践することで、附帯税が発生するリスクを大きく減らすことができます。特に外資系企業では日本特有の申告・納税慣行に戸惑うこともあるかもしれませんが、社内体制と専門家ネットワークを駆使してコンプライアンスを守ることが、結果的にコスト削減につながるでしょう。
- [外資系企業のCFOが押さえておくべきIFRSとJ-GAAPの違い](https://shiodome.co.jp/column/32826/) - 1. IFRSとJ-GAAPの基本的な違い IFRS(International Financial Reporting Standards)はIASB(国際会計基準審議会)によって策定される国際的な会計基準で、欧州をはじめ多くの国で採用されています。 一方、J-GAAP(Japanese GAAP、 日本会計基準)は日本企業が主に使用する国内独自の会計基準で、主に企業会計基準委員会(ASBJ)が策定しています。 IFRSはグローバルな投資家にとって財務諸表を比較しやすくすることを目的としており、J-GAAPは日本の法制度や商慣習に適合するよう設計されています。 このIFRSとJ-GAAPは根底にある考え方も異なっています。具体的には、IFRSは原則主義の会計基準です。つまり、大枠となる原則のみが示され、具体的な適用方法や判断は各企業の専門的判断に委ねられます。これにより企業は実態に即した柔軟な会計処理が可能になりますが、その反面、各処理の根拠を注記などで丁寧に開示する必要があります。 一方、J-GAAPは細則主義で、取引や勘定科目ごとに詳細なルールや数値基準が定められています。同じ基準で処理されるため企業間比較はしやすい反面、日本独自のルールに沿っているため国際的な比較には向きにくいという側面があります。 2. BSアプローチの視点から見る差異 IFRSとJ-GAAPでは、財務諸表の中でも貸借対照表(Balance Sheet)と損益計算書(Income Statement)の捉え方に違いがあります。 IFRSは「資産・負債アプローチ」とも呼ばれ、貸借対照表上の資産と負債の定義・評価を重視し、その変動額として利益を捉えます。 一方、J-GAAPは「収益・費用アプローチ」を採用し、損益計算書上の収益と費用を照らし合わせて利益を算出します。 この違いは具体的な会計処理に表れます。IFRSではまず「資産や負債として計上すべき項目か」を検討し、その結果生じた増減で収益や費用を認識します。例えば売上の計上においても、IFRSでは契約に基づく履行義務をどの程度果たしたか(=貸借対照表上の契約資産・負債の変動)という視点で収益を認識します。 対してJ-GAAPでは伝統的に実現主義に基づき、商品やサービスの提供が完了し対価を受け取る権利が確定した時点で収益を計上する考え方が用いられてきました。 しかし近年、J-GAAPでも「収益認識基準」(2021年適用開始)が導入され、IFRS第15号と類似の5ステップモデルに沿って収益を認識するなど、収益認識に関しては両者の差はかなり縮まっています。 会計基準の国際調和が進み、J-GAAPでも貸借対照表と損益計算書の整合性に配慮した基準が増えていますが、根底のアプローチの違いから、なお細部での表示や認識タイミングに差異が残る会計論点もあります。 3. 公正価値評価の扱いとその影響 IFRSとJ-GAAPは資産や負債の評価方法にも大きな違いがあります。J-GAAPが主に取得原価主義(原価を基準に評価)を基本とするのに対し、IFRSは公正価値評価(市場価格に基づく評価)を広範に採用しています。 具体的には、IFRSでは金融商品や投資不動産など、多くの項目で時価評価や公正価値による評価替えが行われます。J-GAAPでも有価証券の時価評価や時価情報の注記は行われますが、公正価値評価の適用範囲はIFRSほどではありません。 これら公正価値評価や減損に関する相違は、企業の財務諸表に大きな影響を及ぼします。例えば、市場環境の変化によりIFRS基準では評価損益が直ちに財務諸表に表れやすく、業績が変動しやすい傾向があります。 CFOは、公正価値評価による資産・負債の増減が自社の財務指標に与えるインパクトを把握し、必要に応じて投資家や本社に十分な説明を行うことが重要です。 4. IFRS適用時の調整プロセス 日本基準で決算を行っている企業がIFRSに移行する場合、事前準備と周到な調整プロセスが欠かせません。IFRS初度適用時に企業のCFOや経理部長が直面する主なプロセスとポイントは以下の通りです。 差異の分析とプロジェクト計画 まず、現行J-GAAPとIFRSの差異(GAAP差異)を洗い出します。どの勘定科目・取引において調整が必要かを明確にし、プロジェクト計画を立てます。ここでは専門家の意見やベンチマーク企業の事例も参考になります。 IFRS会計方針の決定 IFRSには選択適用が認められる会計方針も多く存在するため(例:固定資産の減価償却方法や公正価値オプションの利用)、自社グループに適した会計方針を決定します。 比較情報の作成と修正開示 適用初年度には、前年度の財務諸表もIFRSに組み替えた比較情報を開示する必要があります。したがって、比較情報についてもIFRSベースの決算数値を用意しなければなりません。 社内体制・システム整備 IFRSレポーティングに対応するため、会計システムの勘定科目体系・設定を見直します。日本基準に存在しない科目(契約負債や使用権資産など)を追加したり、報告パッケージをIFRS仕様に変更したりします。また、経理スタッフや関連部門への教育・トレーニングも重要です。IFRS特有の会計論点について実務担当者が理解し、適切に処理できるようにします。 監査対応と開示チェック IFRS適用の財務諸表は国際基準に精通した監査人による監査を受ける必要があります。事前に監査法人と調整し、重要な会計方針や見積もりの変更について合意を得ておくとよいでしょう。開示面でも、IFRSでは要求される注記の範囲が広いため、必要な情報を収集し網羅的に開示できているかをチェックします。 ステークホルダーへの説明 IFRS移行により財務指標や計数が変動する場合、投資家や銀行、本社の経営陣に対してその理由を説明することが不可欠です。 以上のプロセスを経て、企業はIFRSに基づいた財務諸表を作成することになります。適用時は相当のリソースと時間を要しますが、綿密なプロジェクト管理と専門知識の活用によってスムーズな移行が可能となります。CFOとしては、これらステップを統括し、問題発生時には迅速に判断・対応する体制を整えることが求められます。 5. 日本におけるIFRS適用事例 日本でもグローバル企業を中心にIFRS適用が進んでいます。代表例はソフトバンクグループで、2014年3月期から連結決算にIFRSを導入しました。 主な特徴として、販売促進費が販管費ではなく売上高から控除、流動化債権のオンバランス化による資産・負債増加、のれん償却停止による利益増加、連結範囲拡大による財務規模の増加、優先出資証券の負債計上による負債比率の上昇などが挙げられます。 他にも日立製作所、丸紅、富士通など、多くの企業がIFRSを採用しており、日本の資本市場においてもその影響は大きくなっています。CFOにとって先行事例の分析は、IFRS導入時の影響予測やステークホルダー説明の重要な参考材料となります。 6. 差異が経営指標に与える影響 会計基準の違いは、企業の経営指標(KPI)にも影響を及ぼします。CFOは以下の主要な指標について、IFRSとJ-GAAPで数値がどう変わり得るかを把握しておく必要があります。 ROE(自己資本利益率) ROEは「当期純利益÷自己資本」で計算されます。IFRSでは前述のとおりのれん償却が無くなることや、研究開発費の資産計上による費用繰延効果などから当期純利益が増加する傾向があります。結果としてROEの数値はIFRSとJ-GAAPで異なり、一般にIFRS導入直後は純利益増によりROEが改善するケースが見られます。
- [【税務Q&A】学校法人の施設貸出収入の税務上の取扱い](https://shiodome.co.jp/column/32838/) - 1. 質問 私は学校法人を運営しています。校舎・教室等の施設を、学校休校中にテレビドラマの撮影場所として数日間貸し出し、今年度に100万円以上の収入がありました。 当法人は公益法人であり、収益事業に係る部分以外は法人税が課されないと理解していますが、この収入は課税対象となるのでしょうか。 2. 回答 今回の施設貸出収入は、法人税法上の「収益事業」に該当せず、法人税は課税されないと判断されます。 3. 公益法人の税制概要と学校法人への適用 1. 学校法人の法的位置づけ 学校法人は、法人税法第2条第6号及び別表第2に規定される「公益法人等」に該当します。これは公益社団法人・公益財団法人と並ぶ非営利法人であり、教育という社会的に重要な公益目的を担う法人として、税制上も特別な配慮が講じられています。 2. 公益法人等への課税 公益法人等に対しては、法人税法第4条第1項により、「収益事業から生じた所得」に限って法人税が課税されます。この「収益事業」は、法人税法第2条第13号及び法人税法施行令第5条第1項で定められた「34業種」に該当し、且つ「継続して」「事業場を設けて」行われる場合に限定されます。 代表的な収益事業には、以下のようなものがあります。 不動産貸付業(例:空き教室の反復貸出) 席貸業(例:有償の会議室運営) 物品販売業(例:常設売店の運営) 印刷業(例:有償での資料印刷提供) 技芸教授業(例:一般向け有料カルチャー教室) これらに該当する場合でも、臨時的・一時的な活動であり、事業場を設けていない場合は、収益事業には該当しません。 3. 公益目的事業としての非課税措置 「収益事業」に該当する場合であっても、その内容が社会全体の利益に資するものであると認められる場合には、「公益目的事業」として収益事業に含まれず、非課税となる場合があります(法人税法施行令第5条第2項第1号)。 また、次のものは、収益事業から除かれています。 出版業から除かれるものとして、「学術、慈善その他公益を目的とする法人がその目的を達成するため会報を専らその会員に配布するために行うもの」(法人税法施行令第5条第1項第12号) 貸席業から除かれるものとして、「私立学校法第三条に規定する学校法人若しくは同法第百五十二条第五項(私立専修学校等)の規定により設立された法人がその主たる目的とする業務に関連して行う席貸業」(法人税法施行令第5条第1項第14号) 4. 公益法人のその他の税制上の優遇措置 みなし寄附金制度の活用 収益事業利益のうち、公益目的事業に充当した支出を一定限度まで損金算入できます。実質的に課税所得を減らす効果があります。 金融収益の非課税 利子や配当等について、所定の条件を満たす場合には源泉徴収の対象とならず、非課税扱いとなります。 寄附者側の税制優遇 法人の場合は損金算入限度額の拡大、個人の場合は所得控除又は税額控除が認められるなど、寄附行為に対して税制上の支援がなされています。 5. 一般法人との違い 一般法人(普通法人)は、収益事業・非収益事業を問わず全ての所得が法人税の課税対象となりますが、公益法人等は収益事業から生じた所得に限り課税対象となり、公益目的事業・教育事業などについては非課税となります。 公益法人等には、寄附金控除、みなし寄附金制度、金融収益の非課税など、税制上の優遇措置が設けられていますが、一般法人には原則としてこうした優遇措置はありません。 4. 質問に対する判断 本件において、校舎等をテレビドラマの撮影場所として貸し出した件については、次のように判断されます。 該当施設は、通常は教育目的に使用されており、当該貸出は学校の休校日を利用した一時的な行為に過ぎません。 法人税法施行令第5条に定める34業種における「不動産貸付業」や「席貸業」に形式上近似する可能性はあるものの、継続して事業場を設けて行っているわけではないため、収益事業には該当しないと考えられます。 以上より、本件収入は法人税法上の収益事業に該当せず、法人税の納税義務は生じないと判断されます。 なお、今後こうした施設貸出を反復継続的に行い、年間契約や外部向けの募集・案内、専用の管理体制や収支管理が整備されるなど、独立した事業性が認められるような形態となった場合には、収益事業への該当性が生じる可能性があるため、継続的に実態に応じた判断が必要となります。 5.【参考】法人税法施行令第5条第1項に定める34業種 本文で記載の通り、法人税法施行令第5条第1項では、公益法人等に対する「収益事業」として課税対象となる34の業種が定められています。これらは「特掲34業種」とも呼ばれ、以下の通りです。 ① 物品販売業⑱ 代理業② 不動産販売業⑲ 仲立業③ 金銭貸付業⑳
- [米国関税政策の大転換と日本企業の対応~製造業のバックオフィス担当者が知っておくべき実務と戦略の視点~](https://shiodome.co.jp/column/32921/) - 2025年4月2日、米国政府は突如、関税制度の抜本的な見直しを発表しました。従来の平均2.5%という低関税体制から、すべての国・すべての品目に対して原則10%の関税を課す「ベースライン関税制度」への移行です。品目によってはそれをはるかに超える非常に高い関税が適用される例もあり、8月1日からの本格施行を前に、各国の輸出企業に大きな波紋を広げています。 本稿では、日本の製造業を中心に、関税政策変更に直面する企業の短期的な実務対応と中長期的な戦略的再構築の動きを整理し、今後の備えとすべき視点を提示します。なお、内容は執筆時点で得られた最新情報をもとに記載しています。 1. 米国の関税政策変更の背景とインパクト 2024年、米国の財・サービス収支の赤字は9,184億ドルで、2023年の7,849億ドルから1,335億ドル増加しました。輸出は3兆1,916億ドルで、2023年から1,198億ドル増加し、輸入は4兆1,100億ドルで、2023年から2,533億ドル増加しました。この赤字の是正を名目に、2025年に入ってから米国は保護主義的な政策への急転換を進めています。 特にアジア諸国、なかでも日本、中国、インドの企業は長年、米国市場向けの輸出を通じて成長してきた経緯があり、今回の関税引き上げはその構造に直撃しています。これにより、収益性の低下、価格競争力の喪失、取引先との関係悪化などが懸念されており、今後の米国の関税政策が本格化した場合、日本企業への影響は極めて大きくなると見られます。 2. 日本企業の短期的対応:契約・物流・体制の再点検 日本企業の対応はすでに始まっています。とくに短期的な施策として、以下のような動きが目立ちます。 (1)契約・価格の見直し 米国向け輸出に関する契約条項の再確認 FOB(本船渡し)条件からCIF(運賃保険料込)条件への切り替え 為替リスクを含めた価格条件の再交渉 (2)サプライチェーンと物流ルートの再構築 第三国経由のトランシップメント(積み替え)戦略の検討 輸送経路の多様化、港湾の変更による通関手続きの最適化 ボンデッド倉庫(保税倉庫)の活用による関税繰延 (3)社内体制の整備と強化 関税分類番号(HSコード)の再点検 米国向け書類作成プロセスの見直し 関連部門(貿易、経理、法務、税務)の連携強化 さらに、北米向けに進行中のプロジェクトに関しては、「継続すべきか、凍結すべきか、撤退すべきか」という判断が迫られており、一部では計画そのものの見直しも始まっています。 3. 米国現地化の加速と“攻め”の戦略 短期的な対処にとどまらず、日本企業の中には中長期的な戦略転換を進める動きも活発化しています。 【米国内への直接投資と現地生産】 米国での新工場設立やライン増設による「現地生産・現地販売」体制の構築 M&Aによる米国企業の買収(事業承継型の中堅企業が注目対象) 米国法人の新設による直接輸入・流通の確立 こうした動きはすでに大手企業にとどまらず、中堅・中小企業にも波及しており、関税回避だけでなく、米国市場での長期的な競争優位の確保を目的としています。 4. グローバル構造の見直し:リージョナル戦略の再定義 関税問題は米国に限った話ではなく、地政学リスク・通貨変動・原材料価格の高騰といった要因が複雑に絡み合っています。そのため、今後の海外戦略においては以下のような再設計が必要です。 サプライチェーンの地域分散(“China+1”から“Asia+Africa”へ) 各国税制や関税制度を踏まえた最適立地戦略の再構築 R&D・マーケティング機能を含むグローバルガバナンス体制の再設計 さらに、製品の差別化による「価格転嫁力」の強化や、高付加価値モデルの追求も重要です。単なるコスト削減ではなく、ブランド力と品質を活かした価値提供型のビジネスモデルへの転換が求められます。 5. 新興国市場への展開:グローバルサウスの可能性 日本企業の中には、関税リスクを回避するだけでなく、米国依存からの脱却を視野に入れた新興国市場への展開も模索しています。注目されるのが以下の地域です: ASEAN(東南アジア):安定した消費市場と製造拠点の両立 中東・アフリカ:インフラ需要と人口増による潜在成長力 中南米:FTA(自由貿易協定)網の活用と地域提携による優位性 これらの地域では長期的な市場育成が必要ですが、為替リスクや労働力の確保を含めた統合的な戦略があれば、日本企業にとって第二の成長エンジンとなる可能性があります。 6. まとめ:関税危機を「変革のチャンス」と捉える 関税という“外圧”は、日本企業にとって確かに痛手です。しかし、過去の貿易摩擦の歴史を振り返ると、こうした危機をきっかけに企業が体質を強化し、グローバル競争力を高めてきた事例も数多くあります。今回も同様に、守りの姿勢にとどまらず、前向きな構造改革や市場戦略の見直しへと舵を切ることが求められているのではないでしょうか。本コラムが、関税に悩む企業のご担当者の皆様にとって、少しでも実務と戦略のヒントとなれば幸いです。
- [TNFD提言の理解と実践:その2・自然関連財務情報開示の実践](https://shiodome.co.jp/column/27805/) - 1. 自然関連リスクと機会 TNFDの提言は、その1でも触れたように、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)を基礎にし、さらに国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)にも準じ、ひいては、SSBJの基準、またGRI基準も踏まえたものとなっており、そうした基準と整合する文言、構成が、アプローチが用いられています。これは何を意味するのでしょうか? 一言でいえば、企業の財務的影響と、企業活動が自然や社会に与える影響の両方を考慮する基準になっています。いわゆる「ダブルマテリアリティ」(つまり、2つの重要性に関する判断基準)の考え方が導入されています。逆にいえば、このダブルマテリアリティを用いることで、上記のようなTCFDからGRIに至るまでの世界各地の法域で現在採用されているマテリアリティがカバーされることになります。財務的評価という1側面だけではなく、それに加えて、企業の自然や社会に与える影響に対する評価も考慮に入れるという、2つの側面が、重視されるということになります。 特にTNFDでは、財務的視点から自然環境の変化(たとえば気候変動や生物多様性の劣化)が、企業に与える財務的リスクや影響を評価することに留まらないということ。企業の自然に対する「依存」と、企業が自然に対して及ぼし得る「影響」(自然に対して企業が引き起こす、または寄与するもの)を特定する必要があるということ。こうした「リスク」に対して、企業による自然への負の影響への緩和策も含めて「機会」を捉え、マテリアリティ(重要)情報の開示が求められることになるということです。 以上を前提に、実際にTNFD対応の実践的な側面から、「自然関連リスクと機会」の情報開示の基礎に関わる部分で次のような点を留意して対応していく必要があるといえるでしょう。 TNFDでいう自然とは自然界全体を指し、人間を含む生物の多様性、生物間の相互作用、環境との相互作用に重点を置きます。これに関してTNFDでは、4つの領域「陸、海洋、淡水、大気」を捉えるように指定されています。この4つの領域について、企業や人間がどのように自然に依存し、影響を与えているかを理解した上で、診断する必要があります。 「依存と影響」の診断において、個々を明らかにするだけでなく、TNFDの提言では「依存と影響は相互に影響し合い、時間の経過とともに複合化する」ことに留意が必要とされています。 2. 実践に向けたステップ ここでは実践に向けたステップとして、TNFD提言書およびそのガイダンス資料に基づき、TNFD対応において基本的に必要になる開始準備ステップと、特にパイロットテストに基づいて引き出された「TNFD対応上重要になる視点」に加え、実際に文書を作成していく上での「一般的要件」を、下記にまとめておきます。 【開始準備ステップ】 自然の基盤について理解を深める 自然に対するビジネスケースを策定し、取締役会や経営陣の賛同を得る 今目の前にあるものから開始し、他の仕事も活用する タイムラインに沿って進捗計画を立て、その計画とアプローチについて、社内でコミュニケーションを図る 社内全体の関与を推進する 進捗についてモニタリングし、評価する TNFD採用の意思を登録する 【TNFD対応上重要になる視点】 反復的なアプローチを取ること。 LEAPアプローチ(本コラムの前号その1参照)の各段階を通じて、何が重要であるか、何が可能であるかを学ぶこと。 スコープを再評価し、修正することを厭わないこと。例えば最初のスコーピングでは優先度が高いと考えられていた分野や地域は、ステークホルダーの関与やアセスメントを通じて、あまり適切でないと特定されるかもしれない。 多様なスキルや専門知識を調達することは質を向上させることができる。地域コミュニティの関与を通して、補完的で有用な洞察や視点を提供することができる。 内部の関与とクロスチェックが鍵。 複数の社内チームと連携すること、複数の社内チーム(例えば、サステナビリティ、調達、リスクなどに関わるチーム)をよりよく理解すること。 【一般的要件】 実際に文書作成に向けて準備をはじめる上で、TNFD開示提言の4つの柱、つまり1.ガバナンス、2.戦略、3.リスクと影響の管理、4.測定指標とターゲットすべてに、下記のような項目について記載すること、または記載方法に留意することが求められています。 マテリアリティ(重要性)の適用採用したマテリアリティ・アプローチを明示すること。 開示のスコープ自然関連の評価と開示のスコープ、およびそのスコープを決定する際にたどったプロセスを開示すること。特に関連のデータの制約や複雑さに鑑み、次のものを含めて説明すべきとされている。 組織の直接操業および上流と下流のバリューチェーンにおける活動と資産を、自然関連の依存、影響、リスクと機会について評価したもの 何を評価し、その結果として何を開示するかというスコープを決定する際にたどったプロセス 自然関連課題がある地域組織と自然との接点の地理的位置を開示すること。このことは、自然に対する依存と影響が特定の生態系で生じることを認識し、自然関連課題を評価する上で不可欠。 他のサステナビリティ関連の開示との統合自然関連の開示は、可能な限り、他のビジネスやサステナビリティに関連する開示と統合し、報告書利用者に組織の財務的な状況と見通しを統合的かつ全体的に示すこと。特に、組織は気候と自然に関する行動とターゲットの間の整合性、相乗効果、寄与、起こりうるトレードオフを明確に特定すること。 検討される対象期間組織は、組織の資産やインフラの耐用年数や、自然関連のリスクと機会はしばしば中長期的に顕在化するという事実を考慮し、関連する短期、中期、長期の対象期間としてどのようなものを考えているかについて説明すること。 組織の自然関連課題の特定と評価自然関連課題を確実に特定し、評価し、管理するためには、人との効果的で有意義なエンゲージメントが重要な要素となることに留意すること。 先住民族、地域社会と影響を受けるステークホルダーとのエンゲージメント自然関連課題を確実に特定し、評価し、管理するためには、人との効果的で有意義なエンゲージメント(関与)が重要な要素となることに留意。 伝統的知識・経験も含め、彼らの知識は、組織が自然関連の依存、影響、リスクと機会を特定、評価、管理するための貴重な情報源となりうる。 組織は直接操業とバリューチェーンにおける自然関連の依存、影響、リスクと機会における懸念と優先事項に関し、先住民族、地域社会と影響を受けるステークホルダーの参加を得るためのプロセスについて説明する必要がある。 3. 国内外の先進事例 一言で先進事例といっても選別するのは難しいため、ここでは、TNFDの「Adopter」として登録され、情報開示においてLEAPなどを使って確実に報告し、かつ地域連携に関する取り組みを明確に報告している国内外の例をご紹介します。なぜ、ここに地域連携を入れているかといいますと以下のような背景があります。 上記の一般的要件でいえば、地域連携は、「7)先住民族、地域社会と影響を受けるステークホルダーとのエンゲージメント」に相当するところに関連します。TNFDの開示項目でいえば、本TNFDシリーズ・その1で記載したガバナンスの項目に、「③自然関連の依存、影響、リスクと機会に対する組織の評価と対応において、先住民族、地域社会、影響を受けるステークホルダー、その他のステークホルダーに関する組織の人権方針とエンゲージメント活動、および取締役会と経営陣による監督について」開示が要件になっていることに関連します。日本の企業の文脈では、先住民族より地域社会というのが身近であるといえると思いますが、その地域社会と組織との関係性を明確に記載することが、実はTNFDの1つの特徴となっているのです。一方で、TNFDの実施状況に関連して、世界経済年次会議(ダボス会議)で、この部分が鍵になると言われているように、言い換えると、この部分をしっかり開示報告している企業は未だ少ないと見ることができます。 上記の理由から、情報開示においてLEAPなどを使って確実に報告し、かつ地域連携に関する取り組みを明確に報告している国内外の例をご紹介します。 伊藤忠商事株式会社(日本)TNFD Adopter登録状況:登録済み。情報開示の特徴:TNFDのLEAPアプローチに基づき、自然資本への依存と影響を評価し、リスクと機会を特定。生物多様性保全に関する具体的な取り組みを詳細に開示しています。地域連携の取り組み: 滋賀県との協働:滋賀県および滋賀県立琵琶湖博物館と連携し、絶滅危惧種「アユモドキ」の保全プロジェクトを実施。 小笠原諸島での活動:認定NPO法人エバーラスティング・ネイチャー(ELNA)と協力し、アオウミガメの保全活動を支援。 ボルネオ島での森林再生:WWFおよび現地政府と連携し、熱帯林の再生および生態系の保全活動を展開。 東急不動産ホールディングス株式会社(日本)TNFD Adopter登録状況:登録済み。情報開示の特徴:TNFD提言に基づき、ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標の各項目について詳細に開示。LEAPアプローチを活用し、自然資本への依存と影響を評価しています。地域連携の取り組み: 蓼科地域での活動:長野県蓼科地域において、地域循環型リゾート「TENOHA蓼科」を開発。地域の森林資源を活用し、地域コミュニティと連携した持続可能な観光地づくりを推進。 渋谷区での取り組み:広域渋谷圏における生態系ネットワークの形成を目指し、建物緑化や生物多様性に配慮した都市開発を実施。 スワイヤー・プロパティーズ(Swire Properties)(香港)TNFD
- [TNFD提言の理解と実践:その3・ガイダンスに見る地域・ステークホルダー連携](https://shiodome.co.jp/column/27852/) - 本TNFDシリーズのその2で触れましたが、地域・ステークホルダー連携は、TNFDの柱ガバナンスの中で3つの開示項目の1つに組み入れられています。また、一般要件の6つの柱のうちの1つにも組み込まれ、LEAPアプローチ(本TNFDシリーズコラムその1参照)全ての横断基盤としても描かれています。このように、単なる理念や標語としてではなく、TNFD実施におけるガバナンスおよび機能の中核として位置付けられていることが分かります。 このため、本コラムでは、TNFD発行のガイダンスGuidance on engagement with Indigenous Peoples, Local Communities and affected stakeholders Version 1 (2023)(下記、「当該ガイダンス」と総称)を土台に、TNFDを通してどのように、地域・ステークホルダーを組織のガバナンスと機能に落とし込んでいくかに焦点を当て、解説していきます(下記「」の部分は、当該ガイダンスからの引用)。 1. なぜ地域・ステークホルダー連携か 実は当初TNFDの草案では、地域・ステークホルダー連携は、ガバナンスの柱ではなく、戦略上の柱に位置付けられていました。しかし最終版では、ガバナンスの柱に据え置かれたという経緯があります。この変更に至った経緯は、次の3点を含めてTNFD草案へのグローバルなフィードバックと実証的検証を受け最終版に向けて枠組みを再検討した結果である、と見ることができます。 パブリックコメントによる強い反響 TNFDは多くの企業・金融機関と連携し、パイロット開示(実証的な開示テスト)を行っており、この過程で明らかになったことを反映 IFRS/ISSBや欧州のCSRD(企業持続可能性報告指令)との整合性を図った結果 この変更はどのような意味合いがあるのでしょうか。ここでは、経営的視点からの側面と、それが及ぼす実務的なインプリケーションの両面から解説していきましょう。 (1)経営的視点からの意味合い 経営的視点からみると、この変更が意味することは、地域・ステークホルダー(※)連携といった側面は「単なる手段ではなく、経営の中核的な要素である」とのメッセージと考えられます。具体的に、そのメッセージを紐解くと、次の2点を挙げることができます。 本質的な変化の必要性を示唆TNFDの根幹の1つである自然への依存と影響およびリスクと機会に大きく関わるからです。TNFD対応の前提として、「現在の社会と経済の現状と将来の見通しは、根本的に生態系の機能と自然が提供するサービスに依存している。これらのサービスには、淡水、食料、木材の供給、野生受粉者による作物の受粉、土壌の質、水の流れ、気候の調節、洪水や暴風雨などの自然災害の軽減などが含まれる」ことへの理解が必須になります。これを前提として、そうした生態系や生態系サービスに最も近い距離に位置する地域との連携は、TNFD対応に欠かせないと考えられます。このように従来の体制では間に合わない本質的な変化の必要性を示唆しているのです。 企業の信頼性や説明責任に関わる地域連携を含めてステークホルダーとの関係性が経営の意思決定にどう反映されているかを説明できなければ、透明性や持続可能性の信頼性が損なわれることになります。そのステークホルダーに、地域連携が重視されているということに留意が必要です。ESGや自然資本開示の潮流においては、こうした関係性が形式的でなく、統治構造に根ざしていることが評価されることに留意が必要です。 (2)実務へのインプリケーション(影響) 上記を踏まえ、実務へのインプリケーションについて、次の3点を挙げることができます。 経営陣や取締役会は、地域連携をはじめとするステークホルダー連携を単なるCSRや広報活動で済ませるのではなく、意思決定プロセスの正式な要素として統合する必要がある。 企業がTNFD対応を行う際は、地域連携を含めてステークホルダーとの関与がどのようにガバナンス構造の中に組み込まれているかを文書化し、説明できる体制づくりが求められる。 単に文書化に終わらず、なお、地域連携を含むステークホルダー・エンゲージメントの基本として、当該ガイダンスでも「双方向のコミュニケーション」が不可欠と強調されていることを、現場のプロセスに落とし込むことが不可欠。 ※ここでいうステークホルダーは、当該ガイダンスの中で「金融機関(投資家、その他の資本提供者、保険会社など)、政府機関、政策決定者、規制当局、国際機関、科学者、消費者、土地所有者、市民社会団体、同じ生態系と関わる他の企業やコミュニティ、先住民および地域コミュニティを含み」ます。 2. 国際基準・デューデリジェンスの視点から さらに当該ガイダンスを読み進めていくと、ここでいう「ステークホルダー・エンゲージメント」は、「人権デューデリジェンス(人権DD)と環境デューデリジェンス(環境DD)の一環」として位置付けられています。つまり、地域連携・ステークホルダー連携を、人権DD・環境DDとリンクさせて位置づけることにより、取締役・経営陣が主体的に関わる必要のある事項であることが、強調されているともいえます。 ここでいう「人権と環境DD」は、既に広く周知されているように、「国連ビジネスと人権に関する指導原則」(UNGPs)およびOECD「多国籍企業向け責任ある事業活動ガイドラインに定められた責任ある事業活動の国際基準」の中核でもあります。特にUNGPsの中で、上記「ステークホルダー・エンゲージメント」の基本として、組織は、影響を受ける可能性のあるステークホルダーの懸念を理解するために、言語や他の潜在的な関与の障壁を考慮した方法で、直接話し合いを行うことで、その懸念を理解するよう努めるべきである旨定められています。また、人権DDでは、組織がその事業モデルとバリューチェーン関係において、人々の基本的人権に及ぼす実際のおよび潜在的な負の影響を特定し、対応することが求められます。具体的には、関与する影響を回避し、防止し、軽減し、是正すること。さらにその取り組みの有効性を追跡し、報告し、説明責任を果たすことを含みます。こうしたことに関連して、TNFDガイドラインでは、「このことは、組織の自然関連の影響とそれに対する対応に適用され、これらの影響が地域コミュニティやステークホルダーの人権に影響を与える場合にも適用される」としています。 言い換えると、TNFDにおけるステークホルダー・エンゲージメントを、人権DDと環境DDに照らし合わせると、次のように捉えることができるでしょう。たとえば、どこかの地域の土地に企業が工場をつくる開発計画があるとします。その際、その地域コミュニティと直接コミュニケーションを通して話し合いの場を設けることが前提となります。さらにその際、単に一方的なコミュニケーションや文書通知で開発計画を伝えるのではなく、双方向のコミュニケーションを通じて、地域の人々にわかりやすい言葉を工夫し、ステークホルダーのコミュニケーションを阻むような障壁をできる限り取り払った上で、話し合いを行うこと。さらに、その開発を通して、その土地に住む地域の人々の基本的人権に及ぼし得る負の影響を特定し、回避し、防止し、軽減し、是正すること。さらにその取り組みの有効性を追跡し、報告し、説明責任を果たすことが求められることになります。 日本は、2020年「ビジネスと人権」に関する各省庁の行動計画を通して、人権DDを、また、環境省は、企業行動による環境への悪影響を特定・防止・軽減するための手段として、環境DDの普及と促進を行っており、こうした側面について既に重視して取り組んでいるとする企業も多いでしょう。 一方、当該ガイダンスでは、「こうした規制や施策に既に遵守しているからといって、TNFDが掲げていることに全て遵守しているとは限らないと」警告もしています。ポイントは、下記3や4に示すように、理念だけでなく、企業のガバナンス全体から、また機能面から、地域・ステークホルダー連携について見なおすということが、必要になると言えます。 3. エンゲージメント要件 上記のような地域コミュニティを含むステークホルダーに関わるエンゲージメントの要件とはいかなるものでしょうか。当該ガイダンスから次のポイントを引き出すことができます。 (1) 取締役会の積極的な関与 ガイドラインでは、取締役会が積極的な関与をする必要があるとして、世界経済フォーラムのグローバル・フューチャー・カウンシルが作成したガイドラインに基づき、組織の取締役会が影響を受けるステークホルダーとのエンゲージメントの適切性を判断する上でのチェック項目として次が示されています。 組織は、影響を受けるステークホルダーが誰であるかを把握していますか? 組織は、影響を受けるステークホルダーに対する潜在的な人権への悪影響を理解し、適切に対応するための適切なメカニズムを整備していますか? 取締役会は、これらのメカニズムの監督と効果性を確保するために十分に関与していますか? 取締役会は、これらのタスクを実施するための適切なスキル、経験、知識を有していますか? 取締役会は、これらのタスクを実施するための適切な監視とレビューメカニズムを整備していますか? (2) ガバナンス上のポリシー・プロセス・システムへの組み入れ 当該ガイダンスでは、次のように明記されています。「ステークホルダー・エンゲージメントは、組織のポリシー、プロセス、システムに正式に組み込まれる必要がある。」「それが効果的であるためには、地域コミュニティや影響を受けるステークホルダーとの関与に関する明確なポリシー枠組みを包含する必要がある。」特に次のことがポイントになります。 「その枠組みは長期的な視点を持ち、関係構築に焦点を当て、ステークホルダーへの負の影響を回避することに主眼を置くこと。ステークホルダーにとっての成果を創出するとともに、相互利益の機会を特定すること。」 「組織は、先住民族と地域コミュニティの権利を尊重し、先住民族、地域コミュニティ、および影響を受けるステークホルダーに対する強制、操作、威嚇、補償、および苦情を防止し、対処する強固なポリシーを確立すべきである。」
- [有価証券報告書「サステナビリティに関する考えおよび取組」‐「リスク管理」と「戦略」に関する開示ポイント‐](https://shiodome.co.jp/column/27898/) - 有価証券報告書『サステナビリティに関する考えおよび取組』では、TCFD提言に基づき、「ガバナンス」「リスク管理」「戦略」「指標及び目標」の4つの項目に整理して記載します。今回は「リスク管理」と「戦略」の開示ポイントについて解説します。 1.「リスク管理」に関する開示ポイント 「リスク管理」では「サステナビリティ関連のリスクおよび機会を識別・評価・管理するための過程」を記載することが求められています。 実際の開示では、リスク管理に対する一般的な考え方や対応策にとどまり、リスクや機会をどのように識別・評価・管理しているかというプロセスが十分に示されていないケースも見受けられます。 今回も、金融庁が発表している好事例集やレビューなどを参考に、「リスク管理」記載に関する留意事項やポイントを解説します。 1. リスク管理に至るプロセスを開示 リスク管理に関する開示では、単に一般的な方針や考えを抽象的に述べることや、リスク項目を列挙するだけでは不十分です。 多数存在するリスクや機会の中から、自社にとって重要なものを「どのように識別し、どのような基準で評価し、どのように優先順位を付け、どのようにモニタリングしているのか」という一連のプロセスを具体的に示すことが求められています。 好事例として紹介されている下記企業(図表1)では、重要課題の特定に至るまでのプロセスが簡潔に示されているとともに、各課題をどの組織が管理するのかが明示されています。 (図表1)住友金属鉱山㈱「リスク管理」に関する記載 (出所)住友金属鉱山株式会社 有価証券報告書(2024年3月期)をもとにRSM汐留パートナーズが独自に作成 2. 個別テーマごとのリスク管理に関する開示 多くの企業が、サステナビリティ全般や「気候変動」に関するリスク管理については記載していますが、それ以外にも、「人的資本」や「人権」「サイバーセキュリティ」など、企業にとって重要なサステナビリティ課題は数多く存在します。よって、可能な限り幅広いリスク項目を対象とし、それぞれのテーマごとに、リスクの識別・評価・管理といったプロセスを具体的に示すことが求められています。 好事例として紹介されている下記企業(図表2)では、全社的なサステナビリティ管理体制に加えて「サイバーセキュリティ」や「人権課題」に対応する委員会の役割、構成、位置づけまで詳細に記載されている点が評価されています。 (図表2)シンプレスクス・ホールディングス㈱「リスク管理」に関する記載 (出所)シンプレクス・ホールディングス株式会社 有価証券報告書(2024年3月期)をもとにRSM汐留パートナーズが独自に作成 3. 「リスク」と「機会」両面の開示 「リスク管理」というタイトルであっても、リスクに加え「機会」の観点をあわせて記載することが重要です。たとえば、気候変動はリスク要因ではありますが、CO₂削減に貢献する製品やサービスの開発といった形で、新たな機会(ビジネスチャンス)と捉えることも可能です。こうした視点は、気候変動に限らず、人的資本や人権、資源循環など他のサステナビリティ課題についても同様であり、企業競争力や企業価値の向上につなげていく姿勢が求められています。 なお「機会」についても、どのように識別し、自社にとっての重要性をどのような基準で評価・管理しているかといったプロセスを明示することが望まれます。 2. リスクの分類‐「移行リスク」と「物理的リスク」‐ 主に気候変動に関連するリスクを整理するために広く用いられているフレームワークですが、リスクは「移行リスク」と「物理リスク」の二つに大別されます。 まず、「移行リスク」とは、気候変動への対応として脱炭素社会へ移行する過程で、企業に生じるリスクを指します。以下の4つに分類されます。 移行リスク例政策・法規制のリスク炭素税の導入や排出規制の強化テクノロジーリスク新技術への対応遅れによる競争力低下市場のリスク再エネ志向の高まりによる需要構造の変化評判リスク脱炭素対応の遅れに対する投資家や消費者の評価悪化 一方、「物理的リスク」とは、気候変動そのものによって引き起こされるリスクを指します。次の2つに分類されます。 物理的リスク例急性リスク台風や洪水、熱波など突発的かつ極端な気象現象によるリスク例:工場の操業停止、物流の混乱慢性リスク気温や海面水温の上昇など、長期的・継続的な気候変動による影響例:原料供給・調達リスク、気温上昇によるエネルギーコスト上昇 これらのリスクは、企業にとってコストの増加や新たな設備投資の必要性をもたらすだけでなく、保有資産の価値下落や既存のビジネスモデルの抜本的な見直しを迫る要因にもなり得ます。そのため、企業がこうしたリスクを的確に把握・分類し、戦略的に対応していくことが不可欠です。 3.「戦略」に関する開示ポイント 続いて、「戦略」に関する開示ポイントについて解説します。ここでは、「短期・中期・長期にわたって、連結会社の経営方針・経営戦略等に影響を及ぼす可能性のあるサステナビリティ関連のリスクおよび機会に対処するための取組み」を示すことが求められています。 「リスク管理」の項目で説明したプロセスを踏まえつつ、特定されたリスクや機会に対してどのように対応し、それをどのように経営戦略に組み込んでいるかを明確に示す必要があります。ここでの開示を充実させるためのポイントは、以下の3点に整理できます。 1. シナリオ分析の実施 特に気候変動に関しては、リスクや機会が企業活動にどのような影響を及ぼすかを評価するために、シナリオ分析の実施が期待されています。 その一般的な手順は、まず自社固有の気候関連リスクおよび機会を洗い出すことから始まります。続いて、複数の将来シナリオを選定し、それぞれのシナリオにおいて自社に与える影響を評価します。 なお、企業が独自にシナリオを構築する必要はなく、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)やIEA(国際エネルギー機関)といった国際機関、あるいは業界団体が提示する代表的なシナリオを活用するのが一般的です。(例:1.5℃シナリオ、4℃シナリオ) こうしたシナリオに基づき、想定されるリスクや機会が顕在化した場合に事業へ与える影響の程度を、「大・中・小」などの重要度で分類・整理することで、そのインパクトの可視化を図ります。 2. 財務的影響などの定量的な開示 シナリオ分析により将来的なリスクや機会を評価する際には、その影響度を可能な限り定量的に示すことが望ましいとされています。 例えば、各シナリオ分析において、売上高や利益といった財務指標に与える影響を、具体的な金額や比率で開示することは、投資家の意思決定に資する有益な情報となります。 もちろん、テーマによっては定量化が難しく、定性的な評価にとどまるケースもあります。しかしながら、可能な範囲で定量的な分析や試算を行い、仮定や前提を明示したうえで財務的なインパクトを可視化する努力が求められます。 下記の好事例(図表3)では、財務的な影響額を営業利益へのインパクトとして定量的に示す工夫が見られます。 (図表3)青山商事㈱「戦略」に関する記載 (出所)青山商事株式会社 有価証券報告書(2024年3月期) 3. リスクおよび機会の経営戦略への統合 シナリオ分析の結果を踏まえ、企業は事業計画や経営戦略の見直し、対応策の検討を行い、それらをどのように戦略に反映しているかを明確に示す必要があります。 重要なのは、個別のリスクやシナリオ分析結果に対する対処にとどまらず、中長期的な経営戦略の中で、サステナビリティ課題をどのように位置づけているかを示すことです。 たとえば、「事業ポートフォリオの再構築」や「投資方針の転換」といった経営上の意思決定がなされる場合には、それがシナリオ分析の結果とどのように結びついているのかを説明することも大切です。 なお、こうした方針や戦略は、各部門レベルにまで展開されて初めて実効性を持つものとなります。そのため、策定された戦略の妥当性や実現可能性が適切に担保されているかどうかも、投資家にとっての重要な評価ポイントとなります。 4. マテリアリティ(重要課題)について
- [変動費と固定費を中心とした原価管理の基本構造 ~管理会計の視点による費用分類と配賦~](https://shiodome.co.jp/column/53349/) - 1.はじめに 「原価管理」という言葉を聞くと、財務会計の数値を社内用に調整したもの、というイメージを持つ方もいるかもしれません。しかし、原価管理の本質的な目的は、経営上の意思決定をサポートするための情報を提供することにあります。単に原価を算出することや、財務会計の補足として位置づけられるものではありません。 そこで今回は、的確な経営判断を行ううえで鍵となる管理会計の観点から、「変動費」と「固定費」の役割と混同しやすいポイント、配賦計算にまつわる論点について整理してみたいと思います。 2. 管理会計の本質と企業経営における活用可能性 日本管理会計学会によれば管理会計は「組織の目的達成を支援するために、経済的情報および非経済的情報を収集、処理、報告し、経営管理の意思決定、計画、統制、業績評価を支援する情報システムである」と要約できます。この定義からは、管理会計が扱う情報は財務データにとどまらず、非財務的な情報も含まれることがわかります。また、その役割も経営判断の支援に限らず、業績評価のための情報提供まで幅広くカバーしており、その適用領域は極めて多岐にわたります。財務会計と比べても、目的や対象とする情報の幅が広いため、管理会計には統一的な会計基準といった枠組みは設けられていません。そのため、各企業の実情やニーズに応じて柔軟に設計することが可能です。さらに、経営判断の迅速化はもちろん、現場の士気向上や生産性の改善につながるような原価算定を実現できる点も、大きな特徴といえるでしょう。 3. 生産性向上に向けた管理会計の必要性と財務会計との役割の違い 2025年、日本の名目GDPは世界第5位に後退しました。この要因としては、経済成長の鈍化や為替相場の変動に加えて、生産性の低さも指摘されています。こうした状況の中で、生産性の向上を図るには、まず現状を正しく把握することが不可欠です。その点で、管理会計は生産性の可視化と改善の推進において、重要な役割を果たします。一方、財務会計から得られる情報は、主に外部報告を目的としているため、生産性向上に必要なデータは極めて限定的です。 たとえば、売上高や売上総利益が同水準であっても、コスト構造の違いによって生産性には大きな差が生じます。下記の工場Aと工場Bは、財務会計上は同程度の成果を上げているように見えますが、A工場は変動費の抑制に成功しており、変動費率が低く抑えられています。その結果として、設備や人材への投資に資源を回すことができています。一方、B工場は将来に向けた戦略的投資が進んでおらず、持続的な成長には課題が残ります。 説明を目的としたやや極端な仮定に基づく例ではありますが、一般的に財務会計だけでは生産性や付加価値といった観点からの管理は難しく、こうした情報を的確に捉えるためには、管理会計による原価管理の導入が求められます。 4. 原価管理における費用分類の理解と混同しやすい概念の整理 原価管理を行う際に、混同されやすいのが「固定費」と「間接費」という2つの概念です。どちらもコスト分類の上で重要な要素ですが、それぞれ異なる視点に基づいて区分されています。 固定費とは、主に管理会計上の概念で、その名のとおり、生産量や稼働状況にかかわらず、一定期間中に金額が変動しない費用を指します。たとえば、製品の生産量に関係なく発生する工場の賃借料などがその代表例です。なお、原価計算の視点では、生産数量や稼働時間などを基準として、こうした固定費を各製品や工程に配賦します。固定的に発生する金額を基準に配分するため、生産量が増加すれば、1単位あたりの固定費は相対的に低くなります。 一方で、間接費とは、主に原価計算で使用される概念で、特定の製品や部門に直接結びつけて割り当てることが難しい費用を指します。複数の製品や部門にまたがって発生することが一般的であり、たとえば複数の製品ラインを扱う工場の賃借料などが該当します。このような間接費についても、固定費と同様に、あらかじめ設定した合理的な配賦基準に基づいて各対象へ按分する必要があります。なお、固定費と間接費は分類の視点が異なるため、同じ費用が両方に該当することもあります。 このように、どちらも配賦が必要となるため混同されがちですが、分類の基準は異なります。固定費は、費用が発生する際の活動量や生産量に応じて変動するか否かという視点から、変動費と対になる概念です。一方、間接費は、特定の製品やサービスなどのコストを対象に、直接的に費用を結びつけられるかどうかという点で判断され、直接費と区別されます。たとえば減価償却費は固定費ですが、それが特定製品専用の設備にかかるものであれば直接費となり、複数の製品に共通する設備にかかる場合は間接費として扱われます。 加えて、変動費と直接費も、しばしば混同されがちな概念です。たとえば電気料金のように使用量に応じて増減する費用であっても、それが特定の製品に対して明確にひもづけられる場合は直接費に、複数の製品にまたがる場合は間接費として扱われます。 混同されやすいこれらの費用の違いを要約すると、下表のようになります。 5. 固定費の配賦に関する課題と管理会計的視点による改善の方向性 財務報告目的の原価計算では、固定費についても一定の基準に従って配賦する全部原価計算が採用されるのが一般的です。しかし、原価計算を通じて生産性の向上を図る場合には、固定費を一律に配賦する手法が最適とは限らず、慎重な判断が求められます。 理由はいくつか考えられますが、第一に挙げられるのは、多くの現場社員が変動費に対しては削減の裁量を持っている一方で、固定費については関与できる権限を持たないケースが一般的である点です。こうした状況のもとで、現場に権限のない費用が混在した原価計算では、固定費を含んだ原価で評価が行われると、たとえ現場でコスト削減の努力がなされても、その効果が固定費の配賦によって見えづらくなり、コスト意識の醸成につながりにくい可能性があります。 そのため、売上から現場がコントロール可能な変動費のみを差し引いた限界利益を指標として用いる方が、より実行可能な目標設定が可能となり、現場の意欲向上にも寄与すると考えられます。 二つ目の理由は、固定費の配賦によって、経営判断を誤る可能性があるという点です。 たとえば、工場Aが歩留まり率の高い新型設備を導入して効率的な生産を行っている一方で、工場Bは老朽化した設備を使い続けているとします。実際の生産性は工場Aの方が高いにもかかわらず、配賦された固定費の影響によって、両工場の利益が同水準に見えてしまうと、工場Aの取り組みや効率性が正しく評価されない結果を招くおそれがあります。 このように、現場担当者が自らの裁量でコントロールできる費用と、管理者の判断によって変動する費用とでは、その性質に明確な違いがあります。そのため、意思決定の主体が異なるコストを一律に配賦するのではなく、それぞれの責任範囲に応じてコストを分類・分離して配賦することで、経営判断の精度向上や、現場における判断の迅速化につながる可能性が高まると考えられます。 このような考え方は、制度的な原価計算から管理会計的な視点へとシフトすることを意味しており、企業のコスト管理や業績評価の精度を高めるうえでも有効です。 6. おわりに 今回は、企業の生産性向上を目的とした管理会計の視座から、制度的な原価計算との違いや費用分類の考え方、固定費配賦に関する課題と改善の方向性について整理しました。管理会計における原価計算は、企業ごとに運用目的や実態に応じて柔軟に設計できる仕組みであり、決まった形式に縛られる必要はありません。 本稿でご紹介した内容はあくまで一つの参考例です。自社の目的や実態に応じて柔軟に見直しや再構成を行い、より実務に貢献する形へと発展させていくことが重要です。
- [日本独自の法人形態「合同会社」とは?外資系企業の事例も紹介](https://shiodome.co.jp/column/33238/) - 1. 日本における合同会社の基本概要 合同会社は、2006年の会社法改正によって導入された法人形態となります。この合同会社は株式会社と同様に法人格を持ち、出資者全員が有限責任社員(出資額を限度に責任を負う)となる点が特徴です。株式会社と異なる点としては、会社に出資をする人と会社を経営する人が一致している、いわゆる「所有と経営の一致」が挙げられます。 また、合同会社の設立にあたっては定款を作成し、所轄の法務局に登記申請することで設立できます。設立する際は、株式会社のように公証人による定款認証が不要であり、最低資本金の制限もないため1円から設立可能です。また出資者が1名でも会社を設立でき、スモールスタートに適した柔軟な制度となっています。 法的な位置づけとしては株式会社と同じ「会社」であり、税務上も原則として株式会社と同様に扱われます。ただし、組織構造や運営ルールに関して株式会社とは異なるシンプルな特徴を有しています。次に、その日本独自の制度的特徴と背景について見ていきます。 2. 日本独自の会社形態とは 日本の合同会社は、米国で一般的なLLC(Limited Liability Company)をモデルに導入されました。しかし、日本独自の制度であり、米国のLLCと完全に同一ではありません。 まず税制面では、米国のLLCが採用しているようなパススルー課税(事業体では課税せず構成員に課税する仕組み)は日本の法人税法上は適用されません。合同会社も株式会社と同様に法人として課税対象となり、日本での納税義務が発生します。 また組織運営という観点で見ると、日本の合同会社は会社法の定める範囲内で定款自治が認められている会社形態です。日本の法制度下では合同会社も法人格を持つ会社でありながら、株式会社よりは柔軟な運営が許容されています。 このように、合同会社は日本版のLLCといえますが、法的には日本固有の会社形態です。米国のLLCと名称が似ているため混同されがちですが、日本で合同会社を設立する際は国内法に基づく手続き・ルールに従う必要があります。外資系企業のCFOや経理責任者にとっては、日本の合同会社制度を正しく理解し、自社のニーズに適合するかを見極めることが重要です。 3. 合同会社の主なメリット 合同会社には、日本で子会社を設立・運営するうえで多くのメリットがあります。その代表的な点は次のとおりです。 設立・運営コストの低さ 株式会社に比べ合同会社は初期費用を大幅に抑えられます。さらに役員任期や決算公告の義務も無いため、設立後の維持コストや事務負担も軽減されます。 ガバナンスの簡素化と迅速な意思決定 出資者(社員)が直接経営に当たるため、株主総会や取締役会を経ずに重要事項を決定できます。親会社が100%出資する場合、親会社の意向をダイレクトに反映でき、グローバルな方針を迅速に実行可能な会社形態となります。 親会社側での税務メリット 日本国内の法人税は株式会社と同じですが、例えば米国企業が親会社の場合、日本子会社を合同会社にすることで親会社においてパススルー課税を適用できるケースがあります。これにより、日本で発生した損益に対する課税を親会社側に一本化し、グループ全体で税負担の最適化が期待できます。 4. 合同会社のデメリットと注意点 一方で、合同会社には留意すべきデメリットも存在します。具体的には以下の点が挙げられます。 知名度と信用力 合同会社は増加傾向にありますが、株式会社ほどは浸透していません。日本では株式会社の知名度が圧倒的に高い傾向にあります。法律上は株式会社と同じ法人格も持ちながらも、社名が「○○合同会社」であることで小規模企業のイメージを持たれ、取引先や金融機関から信用面で不利に見られる可能性もあります。 株式会社と合同会社に違いについては、以下の記事にて詳しく説明しておりますので、参考にしてください。 株式会社と合同会社の違い | RSM汐留パートナーズ司法書士法人 株式公開が不可 合同会社は株式を発行しないため、株式上場による資金調達ができません。将来的にIPOを計画する場合は、最初から株式会社を選択する必要があります。会社設立後に合同会社から株式会社への組織変更も可能ではあるものの、その際には追加の手続きやコストが発生します。 外部からの資金調達にかかる制約 株式発行による増資ができないため、大規模な第三者からの出資受入には不向きです。新規出資者を迎える場合も全社員の同意や持分譲渡の手続きが必要となり煩雑となります。また優先株式など多様なスキームが使えないため、ベンチャー投資家から敬遠されることもあります。 出資者が経営者ゆえのリスク 出資者全員が経営に携わるため、共同出資者間の対立が発生した場合にそのまま経営の停滞につながる恐れがあります。少数株主としての受け入れ形態がないに等しく、メンバー間の信頼関係が株式会社に比べて重要となるでしょう。 5. 有名企業が合同会社を選んだ事例 事例1. アマゾンの日本法人であるアマゾンジャパン株式会社は、2016年にアマゾンジャパン・ロジスティクス株式会社との吸収合併で合同会社に組織変更し、アマゾンジャパン合同会社になりました。 事例2. 日本の小売大手・西友は、米ウォルマート傘下で経営改革を進める中で2009年に株式会社から合同会社へ組織変更しました(※2022年に再度、株式会社へ組織変更を行った)。 6. 外資企業が合同会社を選ぶ理由とは? 企業が合同会社を選ぶ理由として、迅速な意思決定や親会社主導の運営実現・ガバナンスの簡素化・税負担の最適化などが挙げられます。 例えば米国からの参入の場合、株主総会や取締役会を持たない合同会社を日本に設立することで、米国本社の意思決定を迅速に日本事業へ反映でき、本社主導で機動的な経営が可能です。また税務面では、米国本社とのパススルー課税の適用によりグループ全体の課税効率を最適化できます。 さらに、本部と店舗の組織を簡素化することで、業務プロセスの効率化や毎日低価格(EDLP)戦略の徹底など、親会社の方針を迅速に現場へ浸透させる体制を整えることができます。完全子会社となることで上場企業としての複雑な機関設計や開示義務が不要になり、合同会社化によってガバナンスを本社に集中できることも魅力の1つです。 7. 外資系企業への適用性 以上の特徴を踏まえ、外資系企業が日本で子会社形態として合同会社を選ぶべきかどうかは、会社の目的や状況によります。一般的に、親会社の完全子会社として機動的に運営したい場合や将来上場を必要としない場合には、合同会社のメリット(コスト低減・ガバナンスの自由度)が有効に活かせます。一方、現地での信用力が重要な業種や第三者からの資金調達・上場を視野に入れる場合には、株式会社の方が適しているでしょう。 税務面では、日本国内では両形態で差はありませんが、米国企業などでは合同会社とすることによって親会社側でパススルー課税を利用できるといった利点があります。外資系企業のCFOが日本に子会社を設立する際は、このような点を比較しながら慎重に会社形態を選択することが求められるでしょう。 8. まとめ 日本における合同会社は、外資系企業の子会社形態としてコスト面・運営面で多くのメリットを提供します。特に、設立のしやすさ・経営の自由度・親会社との一体運営といった点で優れ、Amazonや西友などの事例が示すように、戦略次第では日本市場での成功を強力にサポートしてくれる器となりえます。一方で、将来の資金調達や上場の可能性といった観点では注意も必要で、すべての企業に万能とは言えません。
- [経理部が変える、経営を動かすデータ活用の力
~ルーチン業務から“気づき”と“価値”を生む組織へ~](https://shiodome.co.jp/column/32987/) - 1. はじめに:経理部は“記録係”ではなくなる時代へ 経理といえば「仕訳入力」「決算書作成」「税務申告」など、日々のルーチンワークが中心というイメージが根強いかもしれません。しかし今、経理部門に求められる役割は大きく変わりつつあります。 費用構造の変化を読み取り、コスト最適化を図る 連結レベルでの業績増減の要因を分析し、経営に報告する リスクの兆候をいち早く検知し、内部統制に活かす こうした「経営に資する経理」へのシフトが進む中で、注目されているのがデータ利活用の取り組みです。 数字を「整える」だけでなく、数字から何が読み取れるか、どんな行動につなげられるか。経理部は、いまや“記録係”から“経営のナビゲーター”へと進化するタイミングを迎えています。 2. 自動化はスタートライン。価値は「見える化」から 多くの企業では、経理のDX=業務の自動化と捉えがちです。たとえば… 領収書の読み取りをAI-OCRで 仕訳の登録をRPAで 伝票承認をワークフローで効率化 こうした取り組みは、間違いなく価値あるものです。ただし、それはあくまで「入力業務の省力化」に過ぎません。もう一歩踏み出すと、日々蓄積された会計データを、可視化・分析・経営レポートへと昇華させることが、経理部門の真の貢献につながります。 3. 経理の“見える化”が、経営のヒントになる ここで、実際に経理部門で取り組み可能な「見える化」施策の一例をご紹介します。 これらは決して“高度な分析”ではなく、ExcelやPower BI(*1)、会計システムといった既存のツールを活かすだけでも十分可能な内容です。 【経理部門の可視化・分析の実例】 部門別の費用推移 人件費・外注費・販促費など、主要費用の月次推移をグラフで可視化。前年対比や予算差異も一目で把握でき、コスト管理に活用。 勘定科目別の異常値検知 売上や販管費の増減率をアラートで表示し、システムの連携エラーや誤入力、過大な経費の使い込みや売上の不正計上といったリスクの早期発見を実現。 連結増減分析・経営報告レポートの自動化 複数子会社の増減分析を1つのレポートで可視化し、決算報告資料をワンクリックで生成。経営層の意思決定スピードが向上。 4. “粒度の細かい会計データ”こそ経理の武器 経理が扱うデータは、実は会社で最も詳細かつ信頼性の高い情報資産です。 請求書や経費精算の1明細ごとに「部門」「プロジェクト」「科目」が付与されている 仕訳には「時期」「取引先」「摘要」などの分析軸が含まれる 勘定科目の構成は、業績の構造そのものを表している これらを部門別/案件別/取引先別/月別に切り分けて集計・可視化すれば、原価構造や利益の源泉が浮かび上がってきます。 たとえば、仕訳データに「プロジェクトコード」を紐づけることで、プロジェクト別の収益性を明確化することができます。 これにより、「黒字のつもりが実は赤字」だった案件が洗い出され、次年度の予算策定や見積精度向上に寄与することが可能となるでしょう。 5. 決算業務効率化も、見える化の副産物 決算業務もまた、データ活用によって変革できます。 月次レポートのフォーマットをBIツールで標準化 決算数値と事業部資料の突合・整合性チェックの負担軽減 経営報告と開示書類の整合性を保ったまま、作業時間を短縮 このように、「見える化=経営のため」だけでなく、「自部門の業務効率化・精度向上」にも直結するのがデータ利活用の魅力です。 6. まとめ:経理が変われば、会社の意思決定が変わる 経理が、単に数字を集計・記録するだけの部署だった時代は終わりを迎えつつあります。今、経理には次のステージが求められています。それは、「数字を読み解き、経営に示唆を与える」役割。その実現に不可欠なのが、日々の会計データをベースとした、地に足のついたデータ利活用です。まずは、1つの科目、1つの取引、1つの分析から。日々の業務の中に、“未来を見通すヒント”を探してみてはいかがでしょうか。 7. 用語解説 *1:Power BI Microsoftが提供するBIツールのサービス名です。BIツールのBIとは「ビジネス インテリジェンス (Business Intelligence)」の略で、例えば売上実績など、企業の膨大なデータを分析、ひと目で分かるように可視化して、ビジネスの迅速な判断・意思決定に役立つソフトウェアのことです。
- [【税務Q&A】学校法人の収益事業用不動産の売却益の税務上の取扱い](https://shiodome.co.jp/column/33456/) - 1. 質問 私は学校法人を運営しています。当法人では、学校運営とは別にマンションの賃貸業を行っており、当該事業については収益事業として法人税の申告を行っています。このたび、10年以上所有していたマンションの一室を売却することになりました。この売却により生じた譲渡所得についても、収益事業の所得として法人税の課税対象となるのでしょうか。 2. 回答 マンション賃貸業が収益事業に該当することから、原則としてその用途に供していたマンションの一室の売却益も、収益事業の所得として法人税の課税対象となります。ただし、当該資産が「相当期間(おおむね10年以上)」保有されていた固定資産である場合には、法人税基本通達に基づき、課税対象外とすることが可能です。 3. 制度趣旨と背景 学校法人等の法人税課税の原則 学校法人や公益法人は、公益目的事業から生じる所得には法人税が課されず、収益事業(政令で定める34業種、【税務Q&A】学校法人の施設貸出収入の税務上の取扱い参照)から生じる所得のみが課税対象となります。不動産貸付業はこの収益事業(法人税法施行令第5条第1項第5号)に該当します。 売却益の課税関係 収益事業に供していた不動産の売却益は、原則として収益事業の所得に含めて法人税の課税対象となりますが、長期保有資産の一時的な処分については、公益性や資産形成の経緯を考慮し、課税の柔軟な取扱いが認められています。 4. 関係通達と解説 公益法人等が「収益事業」に供していた固定資産を処分した場合の課税関係は、主に「法人税基本通達15-2-10」及び「15-1-12」に基づき判断されます。 法人税基本通達15-2-10(固定資産全般) 公益法人等が収益事業に供していた固定資産(土地・建物等)を処分した場合の法人税上の取扱いを定めた通達です。 原則 収益事業に供していた固定資産(土地・建物等)の売却損益は、収益事業の損益に含め、法人税の課税対象となります。 例外 以下のいずれかに該当する場合は、売却損益を収益事業の損益に含めないことができます。 相当期間(おおむね10年以上)保有していた固定資産(土地・建物等)の譲渡・除却等による損益 収益事業の全部又は一部を廃止し、その事業に使用していた固定資産の譲渡・除却等による損益 実務上の留意点 この通達により、長期保有資産の一時的な処分については、収益事業に係る損益に含めず、非課税とする柔軟な対応が認められています。また、この特例は「適用できる」規定であるため、損失が発生した場合には、あえて収益事業の損益に含めて課税所得を圧縮することも可能です。 法人税基本通達15-1-12(土地譲渡と「不動産販売業」該当性) 原則 土地に集合住宅を建設したり、区画整理等の開発を行って分譲する場合は「不動産販売業」とみなされ、収益事業として法人税の課税対象となります。 例外 以下の両方を満たす場合には、「不動産販売業」には該当せず、キャピタル・ゲイン部分は課税対象外となります。ただし、造成等で生じた付加価値部分の利益は課税対象となります。 土地を相当期間(10年以上)固定資産として保有していたこと 建築・造成等が譲渡を容易にする目的で行われたにすぎないこと 補足:キャピタル・ゲインと付加価値益の区分 公益法人等が長期保有していた土地を売却する場合、その利益のうち、地価上昇など単なる資産価値の増加分についてはキャピタル・ゲインと考え、法人税の課税対象外とされます。 一方、造成や建築によって新たに付加された価値部分については、付加価値益と考え、収益事業の所得として課税対象とされます。 例えば、造成前の時価で売却した場合の利益相当額がキャピタル・ゲイン、造成等によって得られた追加利益が付加価値益とされます。建物を建設して分譲した場合の建物部分の利益は、全額が「不動産販売業」として課税対象となります。 借地権を設定して権利金を受け取った場合は、その権利金が更地時価の2分の1以上であれば、土地の一部譲渡とみなされ、キャピタル・ゲインとして非課税扱いとなることがありますが、2分の1未満の権利金しか受け取っていない場合は、不動産貸付業による収益事業とされ、課税対象になります。 実務上のポイント 「10年以上保有」の要件:適用要件としての「相当期間」とは、一般的に10年以上とされます。保有期間の確認は必須です。 複数資産売却時の一括適用:同一年度に複数の固定資産を売却した場合は、全ての損益について一括適用が必要です。売却益が出る資産だけを選んで適用することはできません。 付加価値部分の分離計算:土地の造成や建物建築による付加価値部分は、分離計算が求められます。実務上は、売却価額から造成前の時価を控除し、付加価値益を明確に区分する必要があります。 損失が出た場合の逆利用:特例は任意適用のため、売却損が生じた場合は、あえて損益に含めて課税所得を圧縮することも可能です。 5. 質問に対する判断 本件の学校法人が営むマンション賃貸業は、法人税法施行令第5条第1項第5号に規定する「不動産貸付業」として収益事業に該当します。したがって、この収益事業の対象となったマンションの一室の売却益は、原則として収益事業の所得となります。 しかしながら、売却対象が10年以上保有していた固定資産であることから、法人税基本通達15-2-10の例外規定が適用され、売却損益を収益事業に含めない(=法人税の課税対象外とする)ことが可能です。 なお、売却に伴い大規模なリノベーションや開発行為等があった場合には、法人税基本通達15-1-12の論点(不動産販売業該当性)も併せて検討する必要がありますが、今回は該当しないものとしています。 以上のように、公益法人等であっても、保有期間や売却の態様によっては不動産の売却益が非課税となる場合があるため、個別事情を踏まえた慎重な判断が求められます。 国内税務Q&A_学校法人の収益事業用不動産の売却益の税務上の取扱い ダウンロード
- [日本における役員給与の税務とその留意点](https://shiodome.co.jp/column/33500/) - 1. 役員給与の基本概要と日本のルール 役員給与とは、会社の取締役のような役員に対して支払われる報酬のことです。日本では、役員給与の金額や支給方法について税務上の厳格なルールが定められています。 これらのルールの背景には、役員給与を利用した利益操作(たとえば利益を役員報酬に振り替えて法人税を回避する行為)を防止する目的があります。一般社員への給与は通常ですと期中に増減しますが、役員給与を法人税法上の損金に算入するためには原則として事業年度中に自由に増減できません。役員給与の決定は通常、定款や株主総会の決議によって行われ、一度決めた金額は特別の事情を除いて年間を通じて維持する必要があります。 日本の法人税法では、会社が支払う役員給与のうち一定の範囲のものだけが損金(税務上の費用)に算入でき、その他の支出は損金不算入(税務上の費用として認められない)となります。損金に算入できない役員給与は、会社の課税所得を減らさないため法人税の負担が増えることになります。したがって、適切な形で役員給与を設定しないと、会社に余計な税負担やリスクが生じかねません。 以下では、役員報酬の設定に関する主要な税務上のルールとポイントについて詳しく説明します。 2. 報酬設定に関する3つの主要ルール 日本の税法上、役員給与が損金算入するためには、原則として次のいずれかの形態で支給される必要があります。具体的には、以下の3種類です。 ①定期同額給与②事前確定届出給与③業績連動給与の3つです。 この3種類に当てはまらない役員給与の支払いは、原則として法人税法上の損金として認められないため注意が必要です。なお、中小企業を含む未上場企業では、法人税法上、上記のうち①定期同額給与 と②事前確定届出給与のいずれかの方法しか認められていません。 それぞれの概要と要件は以下のとおりです。 定期同額給与最も基本的な形態で、毎月同じ金額を支給する役員給与です。月額固定の役員報酬がこれに該当します。例えば毎月25日に100万円ずつ支給するといった形で、事業年度内の各支給時期(毎月)の支給金額がすべて同額であれば定期同額給与となります。定期同額給与を改定する場合には、原則として期首から3ヶ月以内にその期の報酬額を決定し、その後は事業年度を通じて同じ額を支給し続ける必要があります。 事前確定届出給与事前に税務署へ支給額と支給時期を届け出た上で支給される役員給与で、定期同額給与と業績連動給与のいずれにも該当しない給与を指します。例えば役員に賞与を支給したい場合、事業年度開始から一定期間内に所轄税務署へ所定の届出書を提出し、あらかじめ確定した金額とその支給時期を宣言する必要があります。届出書の内容どおりに支給すればその支給額は損金算入が認められます。 業績連動給与会社の業績指標(例:利益額や株価など)に連動して支給額が決まる報酬です。業績目標の達成度合いに応じて変動するインセンティブ報酬と言えます。ただし、適用対象が主に上場企業とその完全子会社等に限られており、損金算入が認められる業績連動給与とするためには有価証券報告書への記載等種々の要件が設けられています。 以上の3つの類型に該当する役員給与は法人税法上の損金として認められます。逆に言えば、これらの類型以外の方法で支払われた役員への金銭や経済的利益は、たとえ実態として給与や賞与でも税務上は損金不算入となります。また、上記3つの類型に該当する役員給与であっても、不相当に高額な部分の金額は、損金の額に算入されないことにも留意が必要です。役員報酬の額や支給タイミングを決める際は、税法の規定に配慮しながら必ず上記いずれかの枠組みに沿うよう事前に計画しなければなりません。 3. 個人の確定申告が必要となるケース 次に、報酬を受け取った役員個人の税務手続きに焦点を当てます。日本では給与所得者の多くは年末調整によって年間の税額が確定するため、自ら確定申告をする必要はありません。しかし、外国籍役員のような高額所得者や特殊な所得状況の場合、年末調整だけでは完結せず確定申告が必要となるケースがあります。 外国籍の役員であっても、日本の税法に基づき以下の状況に該当すれば所得税の確定申告が義務付けられます。 年間の給与収入が2,000万円を超える場合年収が2,000万円超の給与所得者は年末調整の対象から除外されるため、確定申告を行い所得税を納める必要があります。 給与以外の副収入が一定額を超える場合給与所得および退職所得以外の所得の合計が年間20万円を超える場合は原則として確定申告が必要です。 外国籍の役員は、日本における給与所得の有無や金額だけでなく、日本での居住状況、海外からの収入や支払い形態にも留意し、自分が確定申告すべきかどうかを確認する必要があります。 4. 役員報酬と年金支払いの仕組み 日本で働く役員は、給与に対して所得税が課されるだけでなく、社会保険(厚生年金保険・健康保険)への加入義務にも直面します。役員であっても常勤で報酬を受け取る場合は、原則として会社の社会保険に加入しなければなりません。これは日本国籍・外国籍を問わず共通のルールです。 具体的には、代表取締役を含む常勤役員で報酬が支払われている場合、会社はその役員を厚生年金保険と健康保険の被保険者として届け出る必要があります。その結果、役員報酬から厚生年金保険料と健康保険料が天引きされることになります。 厚生年金保険に加入した役員は、在職中は毎月の給与・賞与に応じた保険料を納め、将来年金を受け取る権利を有します。 外国籍の役員であっても、一定の加入期間(原則10年以上)を満たせば、原則60歳以降に日本の年金を受給できます。ただし、多くの外国籍役員は日本に一時的に赴任しているケースもあり、長期加入せず帰国する場合もあるでしょう。 そのような場合に知っておくべき制度が「脱退一時金」です。 脱退一時金とは、日本での年金加入期間が短いまま帰国する外国籍の方向けに用意された年金の払い戻し制度です。日本で働く以上、社会保険料負担は避けられないため、会社のCFOや経理部長はそのコストを織り込んだ上で報酬パッケージを設計する必要があります。 また、役員本人としても、離任時に受け取れる脱退一時金について理解し、期間内に忘れず手続きすることが重要です。 5. 外国籍役員が注意すべき税務ポイント 日本で働く外国籍役員の税務上の取扱いで特に重要なのが、その人の居住区分と課税対象となる所得の範囲です。日本の所得税法では、個人を「居住者」と「非居住者」に区分しており、さらに居住者は「非永住者」と「非永住者以外」に細分化されます。これによって課税される所得の範囲が大きく異なるため、外国籍の役員は自分がどの区分に該当するか理解しておく必要があります。 居住者日本国内に住所(生活の本拠)を有するか、または現在まで引き続き1年以上日本に居所(継続的な滞在先)がある個人が原則として居住者に該当します。赴任などで日本に長期滞在する外国籍役員は通常この「居住者」とみなされます。居住者のうち、日本国籍があるか、過去10年以内に日本に5年超住んでいる者は「非永住者以外の居住者」となり、日本国内・国外を問わず全世界で得た所得が日本の課税対象となります。一方で非永住者は、居住者のうち日本国籍を持たず過去10年内の日本滞在が5年以下の居住者を指し、課税範囲が国内源泉所得と日本国内に持ち込まれる一部の国外源泉所得に限定されています。 非居住者上記の居住者に当てはまらない個人が非居住者に分類され、例えば海外に居住する人をはじめ、日本に住所を持たず1年未満の短期滞在者などは原則として非居住者に該当します。非居住者に対しては、日本国内源泉所得のみが課税対象となります。 以上を整理すると、外国籍役員の課税範囲は「居住者か非居住者か」「非永住者か否か」によって異なることになります。 6. 金額による税務リスクと回避策 役員給与の設定にあたっては、その金額の多寡によって生じる税務上のリスクにも注意が必要です。前述のとおり、不相当に高額な役員報酬は法人税法上損金算入が否認されることになります。ただし、税法上「不相当に高額」という規定は明確な基準が示されていないため、役員の職務内容や会社の業績規模、同業他社の同種役員報酬額などを総合考慮して判断されます。また、適正額を大幅に超える報酬は株主や他のステークホルダーから見ても不自然であり、税務リスクだけでなくガバナンス上の問題ともなりえます。 回避策としては、役員給与額の設定根拠を明確にし、会社の利益水準や業界相場に照らして妥当な範囲にとどめることが挙げられます。例えば、年度開始前に適正水準の報酬額を決定し、賞与やボーナスが必要であれば事前確定届出を行います。また、取締役会や株主総会の議事録に報酬決定過程や金額根拠を記録しておくことで、税務署から問合せがあった際にも適切に説明できるよう準備するとよいでしょう。 7. 事例に学ぶ適切な報酬設定の実践 実際にあった事例から役員に対する適切な報酬設定を確認してみましょう。事例として取り上げるのが、野村ホールディングス株式会社における役員報酬制度です。 同社は報酬の透明性とガバナンスを重視し、「基本報酬」「業績連動報酬」「株式報酬」の3本柱で構成された報酬制度を導入しています。2025年3月期には、ROE(自己資本利益率)などの目標を上回る業績を達成した結果、代表執行役社長の報酬は大幅に増額されました。 内訳の大半は事前に設定された指標に基づく業績連動賞与であり、法令に基づく開示や報酬委員会による手続きが適切に行われています。これにより、税務上の損金算入要件を満たす税務戦略とインセンティブ設計の両立を図った実践事例として学ぶべき内容といえます。 参考資料:野村グループのガバナンスへの取り組み(2025年5月) 8. まとめ 日本における役員給与の税務ルールは法令から通達まで細かな定めがあり、外国籍の会社幹部にとって馴染みが薄い部分も多いでしょう。 まず原則として、役員給与は定期同額給与・事前確定届出給与・業績連動給与のいずれかの形式で支給しなければ、法人税法上の損金として認められません。加えて、役員個人としても所得税の確定申告要否の基準や、居住者区分による課税範囲の違いを理解しておく必要があります。 役員給与の適正な設定・運用は単に税務リスクを避けるだけでなく、会社のガバナンス強化や役員の長期的なモチベーション維持にもつながります。税理士等の専門家の協力を得るなど、税制を十分に理解し、法令順守のもとで最善の報酬スキームを構築することが、外国籍役員と企業双方にとって最良の結果をもたらすでしょう。
- [外資系企業向け実務解説:日本の183日ルールと居住者判定](https://shiodome.co.jp/column/42278/) - 1. 183日ルールの概要と重要性 183日ルールとは、多くの租税条約に盛り込まれている短期滞在者の免税制度を指します。日本でも、外国から派遣された者が1年間に183日以下の滞在で一定の条件を満たす場合、日本での給与所得課税が免除される取り決めがあります。このルールは、二重課税を防ぎ国際的な人材派遣を円滑にするための重要な仕組みです。日本では租税条約は国内法に優先するため、183日ルールの要件を満たす場合には日本の税法上課税対象でも課税が免除されます。 外資系企業のCFOや経理部長にとって、このルールを正しく理解することは税務コストの管理上不可欠です。短期滞在者免税制度を利用することで、日本での所得税や確定申告義務を回避できる場合があります。ただし、183日という形式的な数字だけに頼るのは危険です。また、後述するように、日本の国内法上の居住者判定は形式的な住所の有無ではなく、滞在日数や生活拠点、滞在目的などをもとに実質的、かつ、総合的に判断が行われます。 条約上の183日ルールによる免税が適用されないケース(滞在日数超過、条約なし等)では、国内法で課税されるため、短期滞在者免税が適用されるケースとそれ以外の扱いを区別し計画することが重要です。 2. 非居住者判定の基準とプロセス 日本の税法上、個人は居住者か非居住者かに分類され、それによって課税範囲が異なります。居住者とは「国内に住所(生活の本拠)がある者」または「現在まで引き続き1年以上居所(住居)がある者」を指します。反対に、非居住者とはこのいずれにも該当しない者です この居住者判定は、日本に住所または居所を有するかどうかをベースに判定されるため、単なる滞在日数だけでなく様々な客観的事実を総合的に考慮して行われます。判断要素の例として、「年間の日本滞在期間の長さ」「日本における家族や住宅の有無」「主要な勤務先が日本にあるか」といった点が挙げられます。 特に誤解しやすいのは「日本での滞在が183日以下なら非居住者」と一概には言えないことです。例えば家族も含め生活の中心が日本にあれば、たとえ半年未満の滞在でも居住者と認定される可能性があります。最終的な判定は個々の状況を踏まえ、総合的な判断のもと決するため、納税者側と税務当局の見解が異なる場合には、税務リスクに発展することがあります。そのため、税理士等の税務専門家への相談も検討すべきでしょう。 3. 居住者判定に伴う所得税のリスク 「居住者」のうち「非永住者以外の居住者」と判定されると、原則として日本国内外を問わず発生した所得すべてが課税対象となります。つまり、日本で生じた所得だけでなく、外国で得た給与や投資収益も含めて日本の所得税の課税対象になります。 外国籍役員等の高額所得者が非永住者以外の居住者と判定されれば、日本で課税される所得が大幅に増え、予期せぬ税負担が生じる可能性があります。また、居住者と非居住者では適用される税率に大きな差が出ることも起こり得ます。非居住者は日本での所得について20.42%の源泉徴収課税で済むことが多くありますが、居住者になると原則として所得税は累進課税(最高45%)となり、さらに住民税(約10%)も課されます。 このように税率が倍以上になるケースもあるため、居住者判定によって税負担が大きく変動することが分かります。特に日本以外で所得を得ている経営幹部ほど影響が大きいため、居住者となる場合の税務インパクトを事前に把握し対応策を講じておくことが重要です。 4. 外国人が働く際の注意点と対策 外資系企業の日本拠点で外国籍スタッフや役員を受け入れる際には、183日ルールと課税関係に関して以下のポイントに注意する必要があります。 滞在日数の管理 派遣期間や出張日数が長期化し日本での滞在が183日を超えると、租税条約の短期滞在免税制度(183日ルール)が適用できなくなります。対象国との租税条約を確認し、海外からの短期派遣者や出張者の日本滞在日数は計画的に管理し、基本的には183日以内に収めることで日本での税金負担が免除されることになります。 給与の支払元 来日して短期滞在者免税の適用を受けるには、原則として「報酬が日本の居住者ではない雇用主から支払われ、日本の恒久的施設で負担されていないこと」が条件です。したがって、給与がどこから負担され、支払われるかが重要です。日本子会社から給与が直接支払われると、この免税制度を受けられなくなる点に注意が必要です。 5. スポーツ選手の事例に見る追徴課税の背景 近年、プロスポーツ界でも外国人選手の税法上の居住区分を巡るニュースが注目されました。 具体的にはサッカーリーグで、日本に在住していた外国人選手が本来「居住者」に該当するものの確定申告していない期間があるとして、巨額の追徴課税を受けた事例がありました。 選手本人や所属するクラブは契約期間から判断して非居住者と判断した可能性がありますが、日本でのプレー実態や家族の帯同などの事実関係を税務当局が総合的に判断した結果、日本居住者と認定したと見られます。 この事例は、日本の税務当局が契約期間という1つの形式ではなく、各種要素を総合的に判断して実態で居住者判定をする方向を示すものであり、企業の駐在員管理にも通じる教訓と言えるでしょう。なお、国税庁では類似の事例に係る判断基準をHPで掲載しています。 6. 企業幹部が直面する主な課題 日本と関わる外国籍の経営幹部が、183日ルールや居住者判定に関連する課題を整理します。 まず、居住者判定に関する誤解が挙げられます。183日ルールを「半年間(183日)さえ日本に居なければ非居住者だろう」と安易に考え、実際には日本に生活基盤が残っているのに出張日数だけで非居住者扱いしてしまうケースがあります。 前述のように日本では滞在日数だけでは居住区分は決まりません。家族が日本に居続けたり日本で自宅を維持していたりすれば、たとえ本人が183日未満しか日本に滞在していなくても居住者と判定される可能性があります。この誤解により税務計画を誤ると、後から税負担や追徴課税に直面するリスクが高まります。 また、外国籍の経営幹部にとって、日本の税務手続き自体の複雑さも課題です。日本の所得税は申告納税制度であり、ひとたび居住者となれば年末調整や確定申告、各種控除の適用など自国とは異なる税務手続を踏む必要があります。母国では確定申告をしたことがないという人も少なくなく、書式や必要書類が日本語であることもハードルになるでしょう。 さらに、税務署から届く書面や、雇用主から配布される源泉徴収票などの法定調書の読み取りにも苦労するケースが考えられます。 7. 税務リスクを回避するための戦略 183日ルールに関わる税務リスクを避けるため、企業側の主な戦略をまとめます。 赴任前の計画と税務専門家への確認 海外からの赴任・出張が決まった段階で、租税条約の適用可否(183日ルールや役員報酬条項など)や国内法上の居住者判定をシミュレーションします。税理士等の専門家に相談し、滞在期間や契約条件を調整することで想定外の課税を事前に防止します。 社内ルールの策定 海外への異動者について、滞在日数や給与支払方法に関する社内ルールを整備し、税務対応について明文化しておくことも重要です。例えば「183日ルールに抵触しそうな出張は事前に人事部や経理部等へ報告する」「赴任者は年次で税務相談を受ける」等のルールを設け、組織として早期に問題検知・対処できる体制を作ります。 税務専門家の利用 企業内に国際税務の専門知識が十分ない場合、税務専門家の支援を活用するのも賢明な戦略です。外国籍幹部の受け入れに際して事前に税務相談を行い、最適な税務対応策の提案を受けることでリスクを大きく低減できます。また赴任者本人に対しても、来日時や年度末に税務オリエンテーションを実施し、日本の税制・手続きのポイントを説明することは有益です。 以上のように、戦略を講じることで、企業は外国籍の幹部にまつわる税務リスクを抑えることが可能です。多額の税金が動くケースが多いため、経営陣として計画的・組織的な対応を行いましょう。 8. まとめ 日本の「183日ルール」に関する税務上の判断は、外資系企業のCFOや経理部長にとって避けて通れないテーマです。本記事では、その概要から居住者判定のプロセス、居住区分による課税範囲の違い、さらには実際の事例や対策を簡略化して説明しました。 最後に強調すべきは、183日ルールや居住者判定は「形式より実態で判断される」ということです。契約書上の期間や表面的な日数だけで判断せず、実際にどれだけ日本に生活し仕事をしているかという実態こそが税務上は重視されます。グローバルに人材を運用する外資系企業の税務リスク管理に、本記事が少しでもお役に立てば幸いです。
- [【税務Q&A】学校法人の収益事業利益を公益目的に支出する場合の税務上の取扱い](https://shiodome.co.jp/column/42370/) - 1. 質問 私は学校法人を運営しています。当法人では、学校運営とは別にマンションの賃貸事業を行っており、この事業については「収益事業」として法人税の申告をしています。このたび、この賃貸事業で得た利益の一部を学校会計に組み入れ、教育目的に充てたいと考えています。この場合、法人税法上の取扱いはどのようになるか教えてください。 2. 回答 公益法人等が収益事業(マンションの賃貸事業)で得た利益を、非収益事業(学校運営などの公益目的事業)に支出する場合、その支出は法人税法第37条第5項に基づき「収益事業に係る寄附金」として取り扱われます。この寄附金については、一定の損金算入限度額の範囲内で、収益事業の所得計算上、損金に算入することが可能です。 3. 法人税法第37条第5項の解説 本件でポイントとなるのは、法人税法第37条第5項の規定です。以下では、その条文の内容と制度趣旨について説明します。 条文の内容と「みなし寄附金」の考え方 法人税法第37条第5項には、次のように規定されています。 「公益法人等がその収益事業に属する資産のうちから、その収益事業以外の事業のために支出した金額(ただし、公益社団法人または公益財団法人の場合は、公益に関する事業で政令で定めるものに限る。)は、その収益事業に係る寄附金とみなして、第一項の規定を適用する。」 この規定により、公益法人等が収益事業(マンションの賃貸事業など)で得た利益を学校運営などの非収益事業に充てる場合、その支出は「寄附金」として取り扱われます。つまり、法人内部での資金移動であっても、税務上は「寄附」とみなされることから、これを「みなし寄附金」と呼びます。 制度趣旨:税制の公平性の確保 「みなし寄附金」制度が設けられている背景には、税制の公平性を確保するという考え方があります。まず、学校法人などの公益法人が行う公益目的事業(学校教育など)については法人税は課されません。一方、収益事業(マンションの賃貸事業など)は一般法人と同様に法人税の課税対象となります。 もし収益事業で得た利益を公益目的事業に自由に移し、全額が損金として認められる仕組みであれば、収益事業の課税所得を実質的にゼロにすることが可能になってしまいます。これでは、他の法人との間に著しい不公平が生じます。 そこで、収益事業から公益目的事業への支出は「みなし寄附金」として位置づけられ、損金算入には一定の限度が設けられています。これにより、公益法人の公益活動を尊重しつつも、収益事業については他の法人と同様の課税ルールを適用するという、バランスの取れた制度設計がなされています。 濫用防止規定 さらに、同項の末尾には次の但書が設けられています。 「ただし、事実を隠蔽し、又は仮装して経理をすることにより支出した金額については、この限りでない。」 これは、令和3年度税制改正により追加された部分となりますが、次のように説明されています。 「公益法人等が、収益事業に係る収入を収益事業以外の事業に係る収入に仮装して経理すること等の不正行為により課税所得を過少に計上していた場合には、その経理した金額は、外形的に収益事業に属する資産のうちからその収益事業以外の事業のために支出した金額となるため、事後に修正申告又は更正があった場合においてみなし寄附金制度が適用され得るところ、このような不正行為の場合にはみなし寄附金制度を適用することは、収益事業から得られた利益の一部が公益性の認められる事業にか充てられることへの配慮から設けられた本制度の趣旨を逸脱しており、適正公平な課税を妨げる誘因となり得ると考えられることから、これを不適用とするものです。」 したがって、公益法人が収益事業から公益目的への支出を行う際には、適正な会計処理が行われていることが不可欠といえます。 4. 質問に対する判断と実務上の取扱い 本件は、学校法人が行っているマンション賃貸業の利益の一部を学校会計に組み入れ、教育目的に使用するケースです。これは、法人税法第37条第5項に規定される「収益事業に係る寄附金」に該当します。 この場合、法人税法上は損金算入が認められますが、「みなし寄附金」についても一般の寄附金と同様に損金算入限度額が設けられています。ただし、公益法人等(学校法人を含む)の場合は、普通法人に比べて優遇された損金算入限度額が適用される点が特徴です。 具体的には、公益法人等においては事業年度の所得金額の50%または200万円のいずれか大きい額が、損金算入の上限となります(法人税法施行令第73条第1項第3号)。 例えば、課税所得が1,000万円、資本金等の額が1億円である場合、寄附金(指定寄附金や特定公益増進法人 への寄附を除く)の損金算入限度額は、次のように比較されます。 公益法人等(学校法人)の場合 ※損金算入限度額=所得金額×50%(ただし200万円に満たない場合は200万円が上限) 所得金額の50%:1,000万円×50%=500万円 定額:200万円 ∴損金算入限度額=500万円(大きい方を採用) 一般法人の場合 ※損金算入限度額={(期末の資本金等の額×当期の月数/12)×0.25%+(所得金額×2.5%)}×1/4 資本金基準額:1億円×12/12×0.25%=25万円 所得基準額:1,000万円×2.5%=25万円 ∴損金算入限度額=(25万円+25万円)×1/4=12.5万円 このように、公益法人等では最大500万円まで損金算入が可能であるのに対し、一般法人ではわずか12.5万円 にとどまります。この比較からも明らかなように、公益法人等には寄附金の損金算入限度額について、一般法人よりも大幅な優遇措置が設けられていることがわかります。 5. 補足:地方税の特例 法人税とは別に、地方税においても学校法人には特例が設けられています。 学校法人が収益事業で得た所得の90%以上を教育・研究等の公益目的に使用している場合、その収益事業は地方税法施行令第7条の4に基づき「収益事業に該当しない」とみなされ、法人住民税が非課税となります。 つまり、学校法人が収益事業から得た利益を公益目的に支出する場合、法人税と地方税とで取扱いが異なることになります。 法人税 収益事業から非収益事業(教育・研究等)への支出は「みなし寄附金」として扱われ、一定の限度額まで損金算入が認められるにとどまります。したがって、利益を全額公益目的に充てても、課税所得をゼロにすることはできず、原則として法人税が課税されます。 地方税(法人住民税) 収益事業の所得の90%以上を公益目的に使用している場合は、そもそも「収益事業」に該当しないとみなされ、課税対象から除外されます。 このように、法人税は「みなし寄附金」として損金算入額に制限がありますが、地方税では要件を満たせば一部の税目が課税対象外となります。したがって、収益事業の利益をどの程度公益目的に使用するかによって、法人税は課税が避けられない一方、地方税の一部については非課税となる可能性があります。 国内税務Q&A_学校法人の収益事業利益を公益目的に支出する場合の税務上の取扱い ダウンロード
- [日本で働く外国籍役員向け国外財産調書制度と個人所得税ガイド](https://shiodome.co.jp/column/42544/) - 1. 国外財産調書制度の基本概要 国外財産調書制度とは、日本の税務当局が海外に保有する財産を把握し適正に課税するために導入された制度です。日本の居住者(後述する非永住者を除く)が、その年の12月31日時点で国外に合計5,000万円を超える財産を持つ場合、翌年に税務署へその内容を報告する義務があります。報告には専用の様式「国外財産調書」を使用し、財産の種類・数量・価額などを記載します。 提出期限: 原則として翌年6月30日までに提出する必要があり、確定申告の時期と異なる点に注意してください。 対象者: 国内に住所を有する居住者で、年末時点の国外財産の時価合計が5,000万円超の方が対象となります。ただし、非永住者(日本国籍がなく過去10年で5年以下の滞在者)は制度の対象外です。 提出不要な場合: 年末の海外資産合計が5,000万円以下の場合や、そもそも税法上の非居住者で日本に住所がない場合は提出義務がありません。また非永住者に該当する外国籍駐在員等も提出は求められません。 制度の目的は、高額な海外資産を持つ富裕層による国外への所得隠し防止にあります。適正な申告を促すため、後述するように提出の有無で加算税に差がつく特例も設けられています。 2. 日本での個人所得税とその仕組み 日本の所得税は、個人の居住区分によって課税範囲が異なるのが特徴です。税法上は原則として1年以上日本に住所・居所があれば「居住者」となり、居住者以外の者は「非居住者」と判断されます。 さらに居住者のうち日本国籍がなく滞在期間が過去10年で5年以下の方は「非永住者」と分類されます。以下が各区分の課税範囲の概要です。 区分日本国内源泉の所得日本国外で生じた所得居住者(非永住者以外)課税対象課税対象居住者(非永住者)課税対象一部課税 (※日本で支払・送金された部分のみ課税)非居住者課税対象課税対象外 (非課税) ※「国内源泉の所得」とは、日本国内で働いて得た給与や日本企業からの報酬、国内不動産収入など、日本で発生した所得のことです。非居住者であっても、これら国内源泉所得には日本の所得税が課されます。 居住者(非永住者以外)の場合、日本国内外すべての全世界所得が課税対象となり、例えば海外の給与・利息・配当・不動産収入なども含めて、原則日本で申告し納税する必要があります。一方、非居住者であれば日本国内源泉所得に限って課税され、海外で発生した所得は日本では課税されません。また居住者のうち非永住者の場合は、日本国外で得た所得のうち日本に持ち込まれていない部分は課税されない優遇があります。 この非永住者の区分は外国籍の駐在員にとって重要で、初来日から5年以内であれば日本に持ち込まれない海外所得の一部が非課税となるメリットがあります。 所得税の計算は超過累進課税制度で行われ、課税所得金額に応じて税率5%から45%まで7段階の税率が適用されます(課税所得が増えるにつれ高い税率がかかる仕組み)。なお、これに加えて復興特別所得税(2.1%)と、地方税である住民税(約10%)がかかるため、個人の所得に対する実質的な最高税率は50%を超えることになります。 所得税の申告期間は毎年2月16日~3月15日で、この期間に前年1~12月分の所得について確定申告を行い、税額を確定させます。 3. 外国籍役員が知るべき確定申告の要点 日本で働く外国籍の会社役員が確定申告を行う際には、いくつか特有の留意点があります。まず申告に必要な主な書類とスケジュールを押さえましょう。 申告に必要な書類: 勤務先から交付される源泉徴収票(給与所得の証明)は必須です。加えて外国人の場合、在留カードの写しやマイナンバーの記載も求められることがあります。また扶養控除を海外の家族について受ける場合は、親族関係を証明する書類(戸籍謄本や出生証明書等)や親族のパスポート写しなどの添付が必要です。これらを事前に準備しておきましょう。 提出方法と期限: 確定申告書は税務署への持参や郵送、あるいは国税庁のe-Tax(電子申告)で提出できます。毎年3月15日が申告・納税の期限です。遅れると延滞税が発生するため注意してください。 国外所得の申告要否: 前項で述べた通り、自身の居住者区分に応じて国外所得の申告範囲が決まります。永住者(日本の税法上)であれば海外所得も全て確定申告に含める必要があります。例えば海外子会社からの役員報酬や海外投資収益も申告対象です。一方、非永住者である間は海外で発生し日本に送金していない所得は日本では原則申告不要となります。ご自身が来日何年目でどの区分かを確認し、それに沿って国外所得の申告要否を判断しましょう。不明な場合は税務専門家に確認することをおすすめします。 確定申告は日本語の書類作成や税法の理解が必要なため、外国籍の役員の方は税理士など専門家に依頼するケースも多くあります。社内に税務サポートがある場合は積極的に活用し、自身でも提出期限や必要書類を把握しておくことが重要です。 4. 国外財産調書が必要となるケース 国外財産調書の提出義務が生じるかどうかは、海外資産の評価額合計によって決まります。判断基準と具体例、ペナルティについて整理します。 まず資産額の基準と計算方法については、その年の12月31日時点で海外に所在する全ての財産の合計額が5,000万円を超える場合に提出義務が発生します。評価額は基本的に時価で算定し、外国通貨建て資産は円換算します(年末の為替レート等を使用する)。注意すべきは、ローンなどの負債は差し引かず総額で判定する点です。 例えば、海外に評価額6,000万円の不動産を持ち、5,000万円のローン残高があっても、「財産」の額は6,000万円となるため提出義務が生じます。実際に提出が必要な具体例として、年末時点で米国株や海外預金を合計して1億円相当保有していれば対象となります。 反対に、海外資産が4,000万円台で収まる場合は提出義務を免れます(しかし恣意的な資産移動には後述の注意点があります)。また前述のように非永住者は制度から除外されるため、外国籍役員でも来日5年目以内で非永住者に該当する場合、この調書提出は求められません。 仮に提出しなかった場合または虚偽の記載をした場合、「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」という刑事罰の適用があります。さらに税務上も不利な扱いとなり、過少申告加算税・無申告加算税が加算されます。一方、期限内に適正に提出していれば、万一申告漏れが見つかった場合でも加算税が5%軽減される特例があります。 このように提出の有無でペナルティに差が出るため、基準を超える場合は必ず期限内提出を行いましょう。 5. VISA取得と税務コンプライアンスの関係 日本で働く外国籍役員にとって、在留資格(ビザ)の取得・更新と税務コンプライアンスは無関係ではありません。入管当局(出入国在留管理庁)は近年、国税庁と情報連携し、在留審査において申請者の納税状況を慎重に確認しています。具体的に、以下の点に留意しましょう。 ビザ更新時の納税証明提出 就労ビザの延長申請では、自治体が発行する課税証明書および納税証明書の提出が求められます。ここで契約通りの報酬を得て適切に納税しているか、住民税や所得税に滞納がないかがチェックされます。 在留資格変更時の注意 就労ビザから経営者ビザへ変更、あるいは永住権申請などステータスを変更する際にも、過去の納税実績が重要視されます。永住許可申請では通常直近5年間の課税・納税証明書を提出する必要があり、毎年安定した一定以上の収入があり税金をきちんと納めていることが審査基準となっています。 税務コンプライアンスが与える影響 税務上の不備があると、短期的にはビザ延長が許可されない、もしくは在留期間を短くされるといった不利益を被る恐れがあります。長期的には日本での信用を損ない、キャリアにも影響しかねません。 要約すると、「日本で働き続けるためには、税金を適切に納めていること」が大前提になります。ビザ取得・維持のためにも、日本の税法に基づいて適切に納税することが重要です。 6. 未申告が引き起こすリスクと対策 確定申告を失念もしくは国外財産調書を提出しないままでいると、後で重大なペナルティやリスクに直面する可能性があります。未申告に関する主なリスクと対策は以下の通りです。 まず期限までに申告しなかった場合、本税とは別に無申告加算税が課されます。自主的に期限後申告をした場合でも原則税額の5%が課され、税務調査の通知後に申告すると10%(50万円超部分15%〜最大30%)に引き上げられます。 さらに納付が遅れれば延滞税も日割りで加算されます。また、隠蔽や仮装等の悪質な脱税行為に対しては、重加算税(35〜40%)が適用されることもあります。国外財産調書を出さないまま所得を隠していた場合は、前述のとおり過少申告加算税等がさらに5%上乗せされるため、合計で非常に重い負担となります。
- [日本の会計・税務ガイド:外資系企業が押さえるべきポイント](https://shiodome.co.jp/column/42557/) - 日本進出を果たす外資系企業にとって、日本の会計・税務には独自のルールや留意点があります。日本の制度は言語や文化の壁もあり複雑で、外国籍の方にとって一層難しく感じられることもあるでしょう。 しかし主要論点を把握し適切に対応すれば、効果的に日本ビジネスを展開することが可能です。本記事では、外資系企業向けに日本の会計および税務の重要ポイントをまとめました。日本でビジネスを行う際には、ぜひ参考にしてください。 1. 外資系企業の日本進出:会社設立と資金拠出のポイント 法人形態の選択 日本で事業を始める際、代表的な法人形態は株式会社と合同会社です。 株式会社は、所有と経営の分離が特徴で、従来より、日本で事業を営むほとんどの法人は株式会社を選択してきました。そのため、合同会社に比べると圧倒的に株式会社の件数が多く、知名度や認知度という観点では優位に立ちます。ただし、設立コストやガバナンス負担が合同会社に比べて大きい点に注意が必要です。 一方、合同会社は設立費用を抑えつつ出資者が経営に直接関与でき、柔軟な運営が可能なため中小企業やスタートアップに適しています。両者は法的構造に違いがあるものの、法人税や消費税など税務上の扱いは概ね同じです。また合同会社は米国のLLCを参考に導入されましたが、日本ではLLCのようなパススルー課税は認められていません。ただし、米国親会社から見ると日本子会社を合同会社とすることで本国で損益通算できる場合もあり、国際税務戦略上は有効となることがあります。 したがって法人形態の選択は、経営の柔軟性、設立コストやランニングコストに加え、国際税務上の影響も踏まえて総合的に判断することが求められます。 ▼詳細は以下の記事で解説しています▼ 日本の法人形態がもたらす税務上の影響について:株式会社と合同会社の違いやアメリカのLLCとパススルー課税もまとめて解説 資本金と初期投資 外資系企業は日本法人への投資額(資本金)も慎重に決める必要があります。なぜなら、資本金額により税務上の扱いが変わるためです。 典型的な論点としては、資本金1億円以下であれば中小法人とみなされ、法人税の一部軽減措置や地方税の負担が軽減されます。一方、資本金が1億円を超えるとこれらの中小法人向け優遇措置を受けられなくなり、一般的に税負担は増加します。さらに資本金5億円以上になると「大法人」と分類され、外形標準課税の適用や、地方税の均等割が増えるなど税金負担はさらに大きくなります。 また会社法上も資本金5億円以上または負債200億円以上で「大会社」となり、計算書類の公告義務や会計監査人の設置義務などガバナンス面でも要件が厳格化します。 適切な資本金設定は日本における税制上の優遇措置と会社法の遵守のバランスを取る上で重要と言えるでしょう。 ▼詳細は以下の記事で解説しています▼ 外資系企業が知るべき資本金5億円以上の日本法人のメリット・デメリット 【外資系企業向け】日本の中小法人判定基準と税務上の影響を徹底解説 日本における資金調達の環境 日本現地での資金調達も視野に入れる場合、銀行融資やベンチャーキャピタルからの資金調達環境について理解しておきましょう。 日本における主な資金調達手段には銀行融資、親会社からの出資・貸付、ベンチャーキャピタルやプライベートエクイティファンドからの投資があり、それぞれに特徴と留意点があります。 銀行融資は安定性が高く低金利で大口資金を得やすい一方、新規参入やスタートアップには審査が厳しく柔軟性に欠けます。 親会社からの資金は迅速で経営支援も得られる反面、子会社の独立性や将来の資本政策に制約をもたらす可能性があります。 ベンチャーキャピタルやプライベートエクイティファンドは資金供給だけでなく市場開拓や経営支援を提供し、スタートアップにとって魅力的ですが、経営権の希薄化や出口戦略の調整が必要です。 日本のスタートアップ企業はこの他にも、エクイティファイナンスやコンバーチブル・ノート、アクセラレータープログラムなどを活用し、より柔軟でリスクを分散できる資金調達スキームを模索しています。 ▼詳細は以下の記事で解説しています▼ 日本市場に挑戦する外資系企業のための資金調達ガイド 2. 日本の会計基準と監査への対応 会計基準の選択 日本法人の決算は一般的に日本の会計基準(J-GAAP)に従います。ただし親会社が国際財務報告基準(IFRS)や米国会計基準(US-GAAP)を使用している場合、連結報告用に日本子会社の数値を調整することがあります。 日本でもIFRSの任意適用が認められており、外資系企業の中には日本基準ではなくIFRSで個別財務諸表を作成するケースもあります。 基本的に未上場の中小規模の外資系子会社であれば日本基準で帳簿を作成し、本国の親会社へ報告するタイミングで差異を調整する方法が一般的です。 日本基準とIFRSの主な相違点として、減価償却方法や引当金計上、リース会計などに違いがあるため、日本基準特有の項目についてはあらかじめ親会社とすり合わせておくと決算時のギャップを減らせるでしょう。 ▼詳細は以下の記事で解説しています▼ 外資系企業のCFOが押さえておくべきIFRSとJ-GAAPの違い 会計期間の決定 会計期間の設定は、外資系企業が日本で事業を展開する際に大きな影響を及ぼす重要な要素です。 日本では歴史的背景から4月開始・3月終了が主流となり、行政手続きや税務申告、取引先との整合性を取りやすいメリットがあります。このような会計期間を採用すれば監査法人や税理士との調整も容易になりますが、親会社が異なる会計年度を持つ場合には連結決算で追加調整が必要になる点に注意が必要です。 IPO準備時においては期間自体が有利不利を左右することは少ないものの、日本では多くの企業が4月開始期を採用しているため、監査スケジュール上の観点からも会計期間を4月から3月とすることは無難な選択といえます。 また、企業固有の事業計画やM&A戦略によっては決算期を柔軟に設定する必要もあり、その場合には内部統制やシステム対応を慎重に検討する必要があります。 総じて、会計期間は税務戦略、連結決算の効率化、監査対応の観点から最適化を図るべき経営上の重要な判断になります。 ▼詳細は以下の記事で解説しています▼ 会計期間の決定に関する有利不利:日本独自の慣行と実務上のポイント 日本の監査制度 日本では、一定の大規模会社(資本金5億円以上または負債200億円以上等)には外部監査(会計監査人による法定監査)が義務付けられます。それ未満のケースであっても、上場準備をする場合や親会社の要請で任意監査を受ける会社もあります。 日本の監査基準や監査の進め方は海外と異なる面もあるため注意が必要です。例えば中国企業が日本に進出したケースでは、本国の監査基準とのギャップや、日本の監査人とのコミュニケーションに苦労することがあります。監査対応には日本語資料の整備や経理担当者の現地配置など準備が求められる点を押さえておきましょう。 ▼詳細は以下の記事で解説しています▼ 日本進出を狙う中国企業が知っておきたい日本の監査制度について 日本の会計システム 導入する会計システムについても、日本独自の要件に対応したシステムを導入する必要があります。例えば、日本の税法ではインボイス制度や電子帳簿保存法などにより企業は様々な対応を求められており、それに対応した会計システムが必要です。 会計システム導入に際しては、本社ERPとの統合や多言語対応、コストのバランスが課題となる一方、OracleやSAPなど海外製ERPは過剰投資となるケースが多く、通常は日本の会計ソフトが実務に適しています。勘定奉行・PCA会計・弥生会計といった老舗ソフトは国内要件に強く、近年はfreeeやマネーフォワードなどクラウド型が普及しています。 外資系企業は自社の規模や運用体制に応じた最適な選択が求められます。 ▼詳細は以下の記事で解説しています▼
- [税制改正を踏まえた固定資産関連優遇制度のポイント](https://shiodome.co.jp/column/46656/) - 1. はじめに 先般の参議院選挙では、消費税や社会保険料の負担軽減が主要な政策課題の一つとして取り上げられました。こうした政策は、消費者の負担を和らげるだけでなく、消費税の引き下げによる企業の設備投資促進や、社会保険料負担の軽減による企業コストの圧縮を通じて、最終的には給与の引上げにつながると主張されていました。中小企業にとっては、税制のわずかな変更であっても経営に大きな影響を与える可能性があるため、今後の動向を注視する必要があります。もっとも、税制は市場動向や政治情勢の変化に左右されやすく、先行きを見通すのは容易ではありません。一方で、現時点でも中小企業が活用できる各種税制優遇制度は整備されており、特に固定資産や設備投資に関連する税制優遇措置の中には、効果が大きいにもかかわらず十分に活用されていないものがあるのが実情です。本コラムでは、中小企業が現行税制の枠内で活用可能な固定資産関連の税制優遇措置をご紹介します。 2. 中小企業者等の少額減価償却資産の特例と適用範囲 この特例措置はこれまでの税制改正で繰り返し延長されてきており、令和6年度の改正により令和8年3月31日まで適用期間が延長されています。内容は、原則、従業員数500人以下で青色申告書を提出する中小企業者等(一定の所得制限あり)が、取得価額30万円未満の減価償却資産を購入した場合、その取得価額に相当する金額を損金として算入できるというもので、年間の限度額は300万円とされています。 限度額が「30万円未満」とされていますが、取得価額が10万円未満の資産は消耗品と同じ扱いで取得年度に全額損金算入できるため、実質的には10万円以上30万円未満の資産の合計額が対象となります。例えば、28万円の資産を11個、合計308万円を購入した場合、10個分の280万円まで適用を受けられます。限度額まで償却不足額はありますが、残りはこの適用を受けられないことになります。 また、30万円未満かどうかの判定は、企業が会計処理を税込方式で行っているか税抜方式で行っているかによって異なり、金額は1単位ごとに判定します。例えば、免税事業者の場合は税込処理しか認められていないため、税込金額で30万円未満かどうかを判定します。さらに1単位の判定は、「通常一単位として取引されるその単位」とされていますが、その具体的な内容は必ずしも明確ではありません。 国税庁の情報によれば、例えば以下のような例が挙げられています。 応接セット:椅子とテーブルが一組となって機能するため、「1組」として判定 カーテン:1部屋全体で機能することから、「1部屋分」を1単位として判定 このように、資産の機能性や関連性を踏まえて、1式または1組として判断することが求められます。単体で見れば30万円未満であっても、セットや一式での取引が一般的な場合には、合算して判定する必要がある点に留意しましょう。 さらに、所有権移転外リース取引に該当するリース資産も特例の対象となるため、この点についても再度検討してみることが望ましいでしょう。 3. 中小企業投資促進税制と中小企業経営強化税制の比較と活用ポイント 中小企業投資促進税制と中小企業経営強化税制は、いずれも主に青色申告書を提出する資本金1億円以下の中小企業者等を対象とする優遇税制で、名称や制度内容が似ているため混同されがちですが、実際にはいくつかの相違点があります。主な違いを整理すると、次の通りです。 中小企業投資促進税制中小企業経営強化税制節税メリット以下から選択 ①特別償却:取得資産の基準取得価額の30%を償却費として計上可能 ②税額控除:基準取得価額の7%(資本金3,000万円以下が対象)を法人税から控除可能以下から選択 ①即時償却:取得価額の全額を償却費として計上可能 ②税額控除:取得価額の10%(資本金3,000万円以下が対象 )または7%(資本金3,000万円超1億円以下が対象 )を法人税から控除可能対象資産特定機械装置等 (対象資産は比較的限定される) ・器具備品、建物付属設備等は対象外特定経営力向上設備等 (対象資産は広い) ・一定の器具備品、建物付属設備等も対象運用手続確定申告時の申告のみ「経営力向上計画」の事前認定が必要。A~D類型に応じて、工業会等の証明 中小企業経営強化税制は取得年度における節税効果がより大きい一方で、追加の手続が必要となります。また、いずれの制度も「税額控除限度超過額の1年繰越」が認められているだけでなく、減価償却による優遇を選択する場合、両制度には「特別償却」と「即時償却」という違いはありますが、いずれも償却不足額を翌期以降に繰り越せるという点は共通しています。取得年度に償却限度額まで減価償却費を計上せず、翌事業年度に残りの枠を用いて計上することが可能になるため、活用の幅が広く、実務上の利便性が高い制度といえます。 4. 中古資産の耐用年数 近年は、中古の固定資産を購入して活用するケースが増加傾向にあります。中古資産を購入した場合も、新品の資産と同様に国税庁が公表している耐用年数表に基づき法定耐用年数を適用している例が多く見られます。ただし、中古資産といっても状態や経過年数には幅があるため、税法でも法定耐用年数だけではなく、事業において使用を開始した時点から見積もられる使用可能期間を耐用年数として採用することも認められています。本来であれば、各資産の実態に応じて耐用年数を個別に設定することが望ましいと考えられますが、実務上ではその判断が困難な場合が大半を占めます。そのため、簡便法により算定した耐用年数を適用可能とする制度が設けられています。 簡便法による耐用年数は以下のように算定します。 ① 法定耐用年数を既に全て経過した資産 残存耐用年数 = 法定耐用年数 × 20% ② 法定耐用年数の一部を経過している資産 残存耐用年数 = (法定耐用年数 − 経過年数) + 経過年数 × 20% ①のケースでは減価償却率に大きな差異が生じやすいため、中古資産を購入した際は必ずご検討されることをお勧めします。 ただし、中古資産を事業で使用するために多額の資本的支出を行い、その金額が仮に新品を取得するとした場合の価額(再取得価額)の50%相当額を超える場合には、使用可能期間の見積りや簡便法で算定することは認められず、法定耐用年数を用いる必要があります。言い換えると、再取得価額の50%を超える資本的支出が行われた中古資産は、実質的に新品に近い水準で使用可能と判断されるため、法定耐用年数の適用が求められます。 5. おわりに 本コラムでは、中小企業を対象とした固定資産関連の税制優遇措置の一部を取り上げました。実際に各制度を適用する際には、制度ごとに対象法人の要件や適用条件など、詳細な規定が設けられています。そのため、制度の活用にあたっては慎重な判断が求められます。ぜひ、税理士等の専門家と十分に協議のうえ、貴社にとって最適な選択をしていただければ幸いです。
- [【税務Q&A】優先株式を発行している場合の税制適格ストックオプションの権利行使価額の考え方](https://shiodome.co.jp/column/46705/) - 1. 質問 当社はIPOを視野に入れたスタートアップであり、前期にベンチャーキャピタル(VC)へ優先株式を発行し、その際にバリュエーションを実施しています。 このたび、従業員向けに税制適格ストックオプションの付与を行うこととなりました。 税制適格要件を満たすための権利行使価額について、既に実施したバリュエーションの価格を考慮する必要があるのでしょうか。また、どのように設定するのが妥当でしょうか。 なお、当社の優先株式は、残余財産の優先分配を受ける参加型種類株式に該当します。 2. 回答 税制適格ストックオプションの権利行使価額要件は、ストックオプションの付与契約を締結した時点の株価以上であることが求められます。 対象株式が非上場株式(取引相場のない株式)の場合には、一定の条件の下で、財産評価基本通達の方法を用いて価額を算定すること(以下「特例方式」)が可能です。 なお、特例方式での算定にあたり、貴社が優先株式を発行している場合には、その内容を考慮したうえで、普通株式の価額を個別に算定する必要があります。 したがって、本件では、特例方式により財産評価基本通達をベースに算出した額から優先分配相当額を控除して算定した普通株式の価額以上であれば、セーフハーバールールが機能し、税制適格ストックオプションの権利行使価額要件を満たすことが可能です。 3. 制度の概要と趣旨 ストックオプション制度 ストックオプション制度とは、企業が役員や従業員などに対し、あらかじめ定めた価格で自社株式を購入できる権利(ストックオプション)を付与する仕組みです。 ◼ 企業側のメリット 付与時には原則として現金支出を伴わず、優秀な人材の確保やモチベーション向上の手段として活用できます。 ◼ 従業員側のメリット 自社の業績が向上すれば、株価の上昇により値上がり益を享受できるため、勤労意欲を高めるインセンティブ報酬として機能します。 このように、企業と従業員の双方にメリットがあることから、特にスタートアップ企業を中心に広く導入が進んでいます。 税制適格ストックオプション制度 ストックオプションは通常、権利行使時における時価と権利行使価額の差額が給与所得として課税されます。一方、一定の要件を満たす「税制適格ストックオプション」の場合には、課税タイミングが株式売却時まで繰り延べられるという特徴があります。 さらに、課税区分も給与所得ではなく株式の譲渡益となるため、給与所得等の税率よりも低い税率が適用されるケースがあります。その結果、税負担の軽減を見込むことが可能となります。 権利行使価額要件 税制適格ストックオプションに関する主な要件の一つに、権利行使価額に関する要件があります。 企業が税制適格ストックオプションを設定する際には、付与契約締結時における1株あたりの時価以上の価額で権利行使価額を設定しなければなりません。 この権利行使価額の設定は、従来より税務上の重要な論点とされています。時価を適切に算定できなかった場合には、税制適格要件を満たさず、結果として権利行使時に給与課税が生じるなどの税務リスクが発生する可能性があります。 そのため、税制適格要件を満たすうえで、1株あたりの時価の算定は非常に重要なテーマとなります。 時価算定とセーフハーバールール 上場企業とは異なり、非上場企業の株式の時価評価は容易ではありません。従来は明確な指針が存在せず、納税者にとって制度利用の大きな障壁となっていました。 この課題を踏まえ、国税庁は2023年に租税特別措置法関係通達29の2-1を新設し、「契約締結時における一株あたりの価額」の算定方法を明示しました。これにより、一定の条件を満たす場合には、当該評価額がセーフハーバーとして機能し、納税者が安心して制度を活用できる環境が整備されました。 セーフハーバールール セーフハーバールール(Safe Harbor Rule)とは、一定の条件を満たして行動することで、法的な責任や違反を問われないとされる「免責の枠組み」を指します。 グレーゾーンとなっていた基準が明確になることで、納税者が安心して制度を利用できるようになることが期待されています。 4. 関係通達と解説 租税特別措置法通達29の2-1(1株あたりの価額) 本通達は、上場企業及び非上場企業における税制適格ストックオプションの権利行使価額の設定に関し、最低限度の価額(いわゆるセーフハーバー)を評価する方法について定めたものです。 ◼ 原則方式 所得税基本通達(23~35共-9)に示された例に基づき、原則方式によって「1株あたりの価額」を算定することが規定されています。 ただし、非上場企業においては、この方式を適用できるケースが限られているため、実務上はあまり利用されていないのが現状です。 ◼ 特例方式 一定の条件を満たす場合には、財産評価基本通達(178~189-7)に基づく特例方式によって「1株あたりの価額」を算定することが認められています。 非上場企業においては、この特例方式が実務上、より現実的な評価手法として広く利用されることが想定されます。 ◼ 実務上の留意点 特例方式を用いる際、企業が種類株式を発行している場合には、その内容を勘案して、普通株式の「1株あたりの価額」を個別に算定する必要があります。 財産評価基本通達における非上場株式の評価の概要
- [令和6年度税制改正に伴う交際費の取扱いと実務上のポイント](https://shiodome.co.jp/column/46795/) - 1. はじめに 新型コロナウイルスの感染拡大による外出自粛や景気の後退を背景に、企業の交際費支出は一時的に縮小しました。しかし、コロナ禍の収束後、経済活動の再開や交流機会の増加により、交際費支出は回復傾向を示し、現在ではコロナ前を上回る水準に達しています。 令和6年度の税制改正では、税務上の交際費等から除かれる「飲食費」の上限が、従来の1人当たり「5,000円以下」から1人当たり「10,000円以下」までに引き上げられました。この改正も、交際費の増加傾向を支える要因となり得ます。 本稿では、交際費の基本的な考え方を整理しつつ、税務面で注意すべき点を確認していきます。 2. 交際費の実態と税務上の重要性 国税庁の資料によれば、令和5年度における企業の交際費等の支出額は4兆円を超え、過去10年間で最高額を記録しました。 業種別に見ると、支出額の合計ではサービス業が最多ですが、1社あたりの支出額では化学工業、金融保険業、建設業が上位3位を占めています。中でも建設業は、営業収入10万円あたり699円と、すべての業種の中で最も高い水準を示しており、例年から交際費支出が多い業種として際立った特徴を持っています。 交際費は税法上、原則として損金に算入することができない費用とされています。ただし、法人の規模や費用の性質に応じて、一定額の損金算入が認められるほか、交際費等から除外される費用も税法上で定められています。たとえば、一定の条件を満たす飲食費や会議費などは交際費に該当せず、損金算入が可能となる場合があります。 したがって、建設業をはじめ交際費支出の占める割合が大きい業種や企業においては、税務上の取扱いを正確に理解し、制度改正や実務運用に的確に対応することが極めて重要です。 出所:国税庁「 https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/kaishahyohon2023/pdf/kekka.pdf 」 3. 税務上の交際費の定義と判断の難しさ まず、税務上の交際費の定義がどこまで及ぶのかを押さえておきます。 税法上、交際費等とは「交際費、接待費、機密費その他の費用で、 法人がその得意先、仕入先その他事業に関係ある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するもの」と定義されています。したがって、一定の取引関係を有する事業関係者に対する接待費用などは、通常交際費等に含まれることになります。また、接待交際の対象となる「関係者」の範囲には、直接的な取引先だけでなく、間接的に利害関係のある者や、法人自身の役員・従業員・株主なども含まれます。 さらに、税法では交際費等のうち接待飲食費に関する取扱いや、従業員の慰安のために行われるイベント等が接待費等から除かれることも規定されています。 このように交際費の対象範囲や規定は多岐にわたり、実務では交際費に含めるべきかどうか判断に迷う場面も少なくありません。そこで、交際費と似た性質を持つ他の費目との違いを整理して確認していきます。 ①寄附金 税務上、事業に直接関係のない者に対して金銭、物品等の贈与をした場合において、それが寄附金であるか交際費等であるかは個々の実態により判定すべきとされています。ただし、金銭による贈与は原則として寄附金として取扱うことや、次のようなものは交際費に含まれないこととされています。 社会事業団体、政治団体に対する拠出金 神社の祭礼等の寄贈金 ②売上割戻 法人が得意先に対して、売上高や回収高に応じて金銭を支払う場合や、営業地域の事情・協力度合いなどを考慮して支払う金銭は、通常「売上割戻」として処理されます。 一方、同様の基準に基づく支出であっても、物品の交付や旅行・観劇等の招待を行うような場合は交際費に分類されます。 ただし、売上割戻と同じ基準により、少額の物品(3000円以下)を交付する場合には、交際費に含めなくても差し支えありません。 ③広告宣伝費 一見交際費の性質を有する支出であっても、不特定多数の主に一般消費者などに向けた宣伝目的の費用については、通常、広告宣伝費として取り扱います。これは、見本品や試供品の提供に限らず、景品の交付や抽選による旅行・観劇への招待なども含まれます。 ただし、こうした支出は、過度に高額にならず、一般的な相場の範囲内であることが原則です。 ④福利厚生費 前述のとおり、接待交際の相手方には従業員も含まれるため、従業員との飲食なども、原則的には接待交際費に該当します。 ただし、従業員の慰安を目的として実施される一定の社内行事などについては、接待交際費ではなく、福利厚生費として処理することが認められています。 この場合のポイントは以下のとおりです: 専ら従業員の慰安を目的としていること 全従業員に対して平等に参加の機会が提供されていること 支出額が社会通念上妥当な範囲内であること したがって、たとえ飲食の場に取引先と自社の従業員が同席していたとしても、従業員分だけを切り分けて福利厚生費とすることはできず、原則として全体を交際費として処理する必要があります。 ⑤会議費 税法上、会議に関連して提供される茶菓や弁当などの飲食物については、支出額が社会通念上妥当な範囲内であれば、接待交際費には該当せず、会議費として処理することが認められています。 ここでいう会議には、来客との商談や打ち合わせなども含まれ、社内や通常会議が行われる場所での開催が想定されています。会議費に該当する限りにおいては、飲食費の金額基準である「1人当たり1万円」を超える場合であっても、会議費として処理することが可能です。 ただし、支出の内容だけを見ると交際費と類似しているケースもありますが、両者を区別するうえで最も重要なのは「目的」です。会議費は、業務上必要な事項を話し合うために要する費用であり、飲食を通じた交流が主目的となる場合には、会議費として認められません。そのため、会議の実態や開催場所が業務にふさわしいものであるかどうかを検討する必要があります。 接待交際費との違いを明確にするためにも、会議の内容や参加者、開催場所などの実態を記録に残しておくことが重要です。 4. 交際費の税務上の原則と特例措置 税法上、交際費は原則として損金に算入できません。しかし、法人の規模に応じた特例が用意されており、その範囲内で一部を損金に算入することが認められています。 法人規模交際費等資本金等が100億円超の法人損金不算入資本金等が1億円超100億円以下の法人交際費等のうち飲食その他これに類する行為のために要する費用の50%まで損金算入可資本金等が1億円以下以下のうち、有利な方を選択し損金算入可800万円まで(800万円超は損金不算入)飲食その他これに類する行為のために要する費用の50%まで 冒頭で述べたように、交際費から除外できる少額の飲食費に関する規定が、令和6年度の税制改正により見直されました。従来は、1人あたり5,000円を超える飲食費については損金に算入できませんでした。しかし、改正により、令和6年4月1日以降の支出分については、その上限が1人あたり10,000円を超える場合に引き上げられ、損金に算入できる範囲が拡大しています。 実務上の会計処理では、1人あたり10,000円以内の飲食費については、交際費に含めず会議費などの科目で処理し、交際費とは区別して損金に算入する方法が採られることがあります。他方、交際費として処理したうえで、税務申告時に法人税申告書の別表上で損金算入額を調整する方法も想定されています。 なお、この規定を適用するには以下①~④を記載した帳簿書類を保存することが税法上で求められています。また、社内関係者を主たる対象とした飲食費や、飲食費に該当しない取引先への贈答品等については、金額の多寡にかかわらず本規定を適用することはできませんのでご注意ください。 (帳簿記載要件) 飲食等(飲食その他これに類する行為をいいます)のあった年月日 飲食等に参加した得意先、仕入先その他事業に関係のある者等の氏名又は名称及びその関係 飲食費の額並びにその飲食店、料理店等の名称及びその所在地 その他飲食費であることを明らかにするために必要な事項
- [有価証券報告書提出の早期化と日本の情報開示制度の課題](https://shiodome.co.jp/column/46812/) - 1. はじめに 有価証券報告書の提出期限を前倒しすることについては、これまで長年にわたり議論が行われてきたものの、具体的な成果は十分に得られていませんでした。 こうした中、2024年に岸田元首相が、定時株主総会よりも早い段階での提出を促進するため、金融庁を中心に関係省庁との連携を指示し、議論が加速されました。 本年3月には、金融庁より加藤金融担当大臣の名において、この早期化について上場企業に対する検討要請がなされ、同時に「有価証券報告書を定時株主総会前に提出する場合の留意点」が公表されました。本稿では、この有価証券報告書提出の早期化について解説していきます。 2. 有価証券報告書を含む法定開示書類の概要 はじめに、有価証券報告書の提出時期を取り上げる前段として、上場会社が開示しなければならない主な書類を以下にまとめます。 書類名根拠となる法令開示期限①決算短信証券取引所規則決算の内容が定まったら直ちに (遅くとも決算期末後45日以内が適当であり、30日以内がより望ましい)②事業報告及び計算書類会社法定時株主総会招集通知送付時 (株主総会の2週間前の日まで)③有価証券報告書金融商品取引法事業年度終了後3カ月以内 このように、決算日から3か月以内に3種類の書類を開示することが求められています。これら3つの書類は、一部に重複する内容が含まれるものの、それぞれに独自の情報も多く盛り込まれています。そのうち③の有価証券報告書は、2023年3月期からサステナビリティ情報の開示が強化され、記載項目は大幅に増加しました。 3. 有価証券報告書の総会前開示を要請する金融庁の新方針 金融庁が開示したデータによれば、2022年3月期~2024年3月期にかけて、株主総会前に有価証券報告書を提出・開示した企業は、全体のわずか2%にも満たない程度でした。 このような状況を受け、金融庁は2025年3月28日に全国の上場企業に対し、有価証券報告書の株主総会前開示を要請する文書を発出しました。 要請文では、株主総会の3週間以上前に開示するのが本来望ましいとしつつも、実現可能なステップとして、当面は総会前日から数日前までの開示を検討するよう求めています。 この方針を受け、2025年3月期決算を迎える約2,300社のうち、およそ55%が株主総会前に有価証券報告書を公表する見込みとなっています。最終的な調査結果はまだ確定していませんが、多くの企業が総会の前日または前々日までに提出する形になると見込まれています(参考文献:日本経済新聞「有価証券報告書、総会前の開示急増上場企業の5割超 銀行は大半」)。 4. 変化の背景と海外制度との比較で浮き彫りになる日本の情報開示の壁 このような変化の背景には、海外投資家からの要望や不満があるとされています。従来の日本企業では、有価証券報告書を株主総会の承認後、あるいは総会当日に公表するケースが大半を占めていました。しかし、海外の機関投資家からは、有価証券報告書を株主総会以降に開示する日本の慣行は極めて異例との意見もあり、総会で議決権を行使する際に、より詳細な情報源となる有価証券報告書が事前に開示されないことに対して強い不満が示されていたのです。有価証券報告書は、決算短信よりも充実した内容を備えており、サステナビリティ情報など投資判断や議決権行使の根拠となる情報を含んでいます。そのため、日本の開示体制はグローバルスタンダードと比較して遅れていると指摘され、これが海外投資家にとって日本市場への投資をためらわせる要因の一つとされていました。 こうした背景を受けて、金融庁は「有報の総会前開示に向けた環境整備協議会」を立ち上げ、今回のような施策を含む制度整備を進めています。 日本の情報開示体制に対して海外投資家から不満が出る要因の一つは、欧米諸国との制度的な違いです。欧米では、株主総会は決算日から4~5か月以内に実施されるのが一般的であり、開示が求められる法定書類も1種類に限られるケースが大半です。これに対し、日本では会社法による事業報告・計算書類と、金商法による有価証券報告書という2種類の書類が必要となるため、株主総会前に十分な情報を提供する余裕が確保しづらい状況にあります。例えば、米国の場合、10-K(年次報告書)は決算日から90日以内に開示する必要があり、時価総額が7億ドルを超える企業は60日以内とされています。実際には、規定よりも早く10-Kを公表する企業が多く見られます。また、株主総会については法律で「前回開催から13か月以内」と定められており、現実には決算日からおおむね4~6か月後に開催されるのが一般的です。このように欧米主要国では株主総会前に法定開示に集中でき、スケジュールも余裕がある法制度になっていることがほとんどです。このため、政府が掲げる「株主総会の3週間以上前に有価証券報告書を開示する」という目標を達成する手段として、金融庁は「総会前開示を実現する方法」を以下のように示しています。いずれも現行法の枠内で実施可能な方法ですが、日本の商慣習にそぐわない面や、会社側の事務負担が大きくなる点から、実現にはハードルが高い印象があります。 (出所:金融庁「https://www.fsa.go.jp/policy/kaiji/sokaimaekaiji02.jpg」) 5. 株主総会の承認を前提とした情報記載における留意点 有価証券報告書の中には、株主総会での承認を前提に記載される情報が存在します。したがって、総会より前に開示を行う場合には、該当する項目に関して株主総会での決議事項である旨や承認が未了である旨を明確にするために、「(予定)」といった注記を加える対応が求められると考えられます。 配当関係 主要な経営指標等の推移 配当政策 配当に関する注記事項(株主資本等変動計算書関係)ガバナンス関係 コーポレート・ガバナンスの概要 役員の状況 監査の状況 役員の報酬等 また、株主総会での決議に加え、その後の取締役会での決議を要する事項については、記載する文言や注書きの付し方に注意を払う必要があります。なお、報告書に「予定」として記載した内容が否決や修正された場合であっても、報告書自体を修正する必要はなく、臨時報告書を提出することで対応できると整理されています。 6. おわりに 今回の有価証券報告書の提出時期前倒しの背景には、海外の機関投資家から議決権行使に際して詳細な情報である有価証券報告書が事前に提供されないことに対し、強い不満が寄せられていたことがあります。言い換えれば、株主総会招集通知とあわせて送付される事業報告や計算書類だけでは、議決権行使に必要な情報として不足していると受け止められていた、ということだと考えられます。一方で、株主総会の運営を規律する会社法上、有価証券報告書の位置付けは明確にされていません。これは欧米でも同様の状況ですが、今後、企業の事務負担を増やさずに投資家へ有益な情報を適時に提供していくためには、将来的に計算書類と有価証券報告書を統合するような制度改革も検討課題となるかもしれません。
- [中小企業の成長戦略を支える税制優遇制度:投資促進税制と経営強化税制の制度比較](https://shiodome.co.jp/column/53332/) - 1.はじめに 企業経営において、設備投資は生産性向上や競争力強化のために欠かせない取り組みです。しかしながら、中小企業にとっては資金面やリスク面の負担が大きく、思うように投資を進められないケースも少なくありません。こうした課題を支援するために、政府は税制上の優遇措置としてさまざまな制度を設けています。その代表的なものが「中小企業投資促進税制」と「中小企業経営強化税制」です。 本稿では、「中小企業投資促進税制」と「中小企業経営強化税制」について、その内容と活用のポイントをわかりやすく解説します。 2.制度創設の背景:中小企業の設備投資促進と経営強化を支える政策的意図 詳細な制度内容に入る前に、まずはそれぞれの制度が設けられた経緯を確認しておきましょう。中小企業投資促進税制は、租税特別措置法に基づき、中小企業による設備投資を後押しする目的で創設された制度です。日本においては、中小企業が全体の約99.7%を占め、雇用の約7割と付加価値の過半を支えています。しかしその一方で、大企業と比べて生産性が低く、設備投資も老朽化対応の「維持・更新」に偏りがちで、生産性や効率性を高めるための前向きな投資が不足しているという課題がありました。 これに対し、中小企業経営強化税制は、平成29年度(2017年度)の税制改正によって新たに導入された比較的新しい制度です。この制度は「中小企業等経営強化法」を根拠としており、単なる設備投資の推進にとどまらず、経営基盤の強化や改革を伴う取り組みを支援する点に特徴があります。政策的にも、中小企業の持続的かつ中長期的な成長を後押しすることを明確な目的として位置づけられています。 3.両税制の比較:対象要件・資産区分・優遇内容の整理と活用の目安 両制度の適用対象となる法人や資産の種類、具体的な優遇内容を整理すると、次のような概要になります。両者には共通点もありますが、細部において異なる点がいくつか存在します。詳細はこの後の項で解説しますが、概要としては次のように捉えると分かりやすいでしょう。中小企業投資促進税制は、準備期間を十分に確保できない場合や、手続きの手間を抑えたい場合に、購入予定の資産が対象に該当するのであれば有効な選択肢となります。一方、事前に計画的な準備が可能な場合には、中小企業経営強化税制を活用することで、対象資産の幅が広がり、より大きな節税効果を得られる可能性があります。 比較項目 中小企業投資促進税制 中小企業経営強化税制 対象法人 中小企業者等(資本金1億円以下の法人、農業協同組合、商店街振興組合等) 従業員数1,000人以下の個人事業主が対象 中小企業者等(資本金1億円以下の法人等)で、中小企業等経営強化法による「経営力向上計画」の認定を受けた事業者 対象資産 新品の機械装置(単価160万円以上) 測定工具・検査工具(単価120万円以上、または単価30万円以上かつ合計120万円以上) 一定のソフトウェア(単価70万円以上または合計70万円以上) 貨物自動車(車両総重量3.5トン以上) 内航船舶(取得価格の75%が対象) 新品の生産等設備を構成する機械装置、工具、器具備品、建物附属設備、ソフトウェア。すべて所定の最低取得価額あり: 機械装置:160万円以上 工具・器具備品:30万円以上 建物およびその附属設備:1000万円以上 建物附属設備:60万円以上 ソフトウェア:70万円以上※貸付用資産、中古資産、特定のソフトウェア(開発研究用、サーバー用OSなど)は除外 措置内容 以下から選択※ただし資本金3,000万円超の法人は税額控除不可(特別償却のみ) 特別償却:取得資産の30%を費用として即時計上可能 税額控除:取得価格の7%(資本金3,000万円以下の中小企業が対象)を法人税から控除可能 以下から選択 即時償却:取得費用をその年度に全額経費として計上可能 税額控除:取得価格の10%(資本金3,000万円以下)または7%(資本金3,000万円超1億円以下)を法人税から控除可能 4.対象法人の違いと「経営力向上計画」活用のポイント それでは、各要素についてさらに詳しく見ていきましょう。まず対象法人の点では、どちらの制度も基本的に「中小企業者等」を対象としている点は共通しています。大きな違いは、「経営力向上計画」の認定を受けているかどうかという点にあります。経営力向上計画と聞くと、手続きが難しそうに感じる方もいるかもしれませんが、中小企業庁では主要な業種ごとに具体的な記載例を公開しています。そのため、それらの例を参考にしながら自社の実情を当てはめていけば、専門家に依頼せずとも作成することは十分可能です。さらに、作成を支援する「ローカルベンチマークツール」も提供されており、こうしたツールを活用することでよりスムーズに進めることができます。 5.対象資産と申請区分の変更点:令和7年度改正のポイント 中小企業投資促進税制の対象となる資産については、前掲の表に示した内容を基準として理解しておくと良いでしょう。中小企業経営強化税制についても同様に表の通りですが、申請区分としてA・B・D・Eの4類型が設けられています。なかでもE類型については、売上高100億円以上を目指す中小企業を対象として、令和7年度の税制改正により「合計額1,000万円以上の建物及び附属設備」という新たな区分が追加されました。一方で、令和6年度まで適用対象であったC型(デジタル化設備)は、令和7年度改正により制度対象から除外されていますので注意が必要です。 6.中小企業経営強化税制の4類型:A・B・D ・E(B拡充)類型の要件比較と特徴 中小企業経営強化税制には、A・B・Dの3つの類型に加え、売上高100億円以上を目指す中小企業を対象とした「E類型」が設けられています。これらの区分ごとに適用要件が異なるため、それぞれの特徴について順に確認していきましょう。 項目 A類型(生産性向上設備) B類型(収益力強化設備) E類型(B類型拡充型)(収益力強化設備) D類型(経営資源集約化設備) 適用要件 生産性が旧モデル比で年平均1%以上向上する設備※生産効率等の指標は単位時間当たり生産量、歩留まり率又は投入コスト削減率のいずれか 対象資産の販売開始期間が以下のもの機械装置:10年以内工具:5年以内器具備品:6年以内建物附属設備:14年以内ソフトウェア:5年以内 年平均7%以上の投資利益率が見込まれる設備 投資利益率が年平均7%以上 売上目標100億円超及び年平均10%以上の売上高成長率を目指すロードマップの作成 基準事業年度の売上高が10億円超90億円未満 設備投資額が、1億円と基準事業年度の売上高5%相当額とのいずれか高い金額以上 建物及びその附属設備の新設又は増設
- [インボイス制度における免税事業者再選択の実務――建設業を中心とした制度運用上の留意点と最新法令対応](https://shiodome.co.jp/column/53304/) - 1.はじめに インボイス制度は内容が極めて複雑であるため、制度開始から2年が経過した今でも、国税庁のQ&Aページでは更新が続けられています。掲載項目はすでに130件を超えており、その中から自社に関係する重要な情報を漏れなく把握するのは、簡単なことではありません。 特に消費税に関する各種の届出や申請は内容が複雑であり、提出期限も厳密に設定されています。そのため、わずかな記載ミスや提出の遅れが思わぬ不利益や損失につながることも少なくありません。 特に建設業界では、もともと「一人親方」などの免税事業者が多く存在し、課税事業者との取引も日常的に行われていました。そのため、インボイス制度の導入による影響を強く受けた業界のひとつといえるでしょう。 本稿では、インボイス制度に関するさまざまな論点のうち、「インボイス発行事業者として登録した後に再び免税事業者へ戻るケース」に焦点を当て、留意すべき重要なポイントをわかりやすく整理して解説します。 2.建設業界におけるインボイス登録の実務と免税事業者への再変更検討 建設業界では、元請企業が下請業者にインボイス登録を求めるケースが多く見られます。これは、下請業者が登録をしていない場合、元請側で仕入税額控除を受けられないためです。一方で、下請業者がインボイス登録を行うと、消費税の納税義務が生じるため、実質的な手取り額が減少するという問題があります。これは、今まで免税事業者に該当していた期間には、売上に付加される消費税相当額が手取りに含まれていたためです。 そのため、良識ある元請企業の中には、下請側の負担を軽減する目的で、消費税分を価格に上乗せして支払うなどの配慮を行う場合もあります。しかし、契約や支払いの段階になると、当初の説明どおりに価格転嫁が実施されず、トラブルに発展することも少なくありません。そのような状況に直面した際には、下請業者が再び免税事業者へ戻る手続きを検討するケースも見受けられます。 3.免税事業者への再変更にあたっての基準期間・特定期間の確認ポイント 免税事業者へ戻るための手続きを行う前に、まず確認すべきなのは「基準期間」における課税売上高が1,000万円を超えていないかどうかです。ここでいう基準期間とは、前々事業年度を指します。特に注意が必要なのは、基準期間中の途中でインボイス発行事業者(課税事業者)として登録した場合です。この場合、免税事業者であった期間の売上は税込で、インボイス登録後の売上は税抜で算出する必要があります。たとえば、下図のケースでは、免税期間中の売上が550万円(税込)、登録後の売上が410万円(税抜)であり、合計960万円となります。この場合、課税売上高が1,000万円以下であるため、免税事業者への変更が認められることになります。 ※ただし、基準期間における課税売上高が1,000万円以下であっても、前事業年度開始日から6か月間の「特定期間」において課税売上高が1,000万円を超えるなど、一定の条件に該当する場合には、その課税期間では免税の適用を受けられず、課税事業者として扱われる点に注意が必要です。 4.「2年縛り」ルールの概要と適用除外の条件 まず押さえておきたいのが、いわゆる「2年縛り」と呼ばれるルールです。インボイス発行事業者として登録するためには、前提として課税事業者である必要があります。つまり、本来は免税事業者である場合でも、インボイスを発行するには「課税事業者選択届出書」を提出し、課税事業者へ切り替えたうえで登録申請を行う手続きが求められます。ただし、令和5年10月1日から令和11年9月30日を含む課税期間までは、経過措置として手続きが簡略化されています。この期間中は、インボイス登録申請を行うだけで自動的に課税事業者とみなされ、インボイスを発行できる仕組みになっています。言い換えれば、「課税事業者選択届出書」を提出したものと同様の扱いを受けるということです。 この「課税事業者選択届出書」には、一度提出して課税事業者として登録すると、原則として2年間は免税事業者へ戻ることができないという制限があります。この仕組みは、仕入れが多い年度だけ課税事業者となって消費税の還付を受け、翌年は免税に戻るといった不当な節税行為を防止する目的で設けられたものです。 このルールは、前述のインボイス制度に関する経過措置を利用した場合にも同様に適用されます。つまり、免税事業者がインボイス発行事業者として登録した場合、登録後2年間は課税事業者としての状態を維持しなければならず、その期間中に免税事業者へ戻ることはできません。 また、この「2年間」というのは、登録日からちょうど2年が経過する日を含む課税期間の末日までを指します。そのため、結果的に3事業年度にまたがるケースもあります。たとえば、12月決算の企業が×1年度6月1日にインボイス発行事業者として登録した場合、2年経過日は×3年度5月31日となり、その日が含まれる課税期間の末日である×3年度12月31日まで、課税事業者として扱われることになります。 ただし、令和5年10月1日を含む課税期間にインボイス登録を完了している免税事業者については、この「2年縛り」の対象外となります。 また、インボイス登録を行った時点で、もともと基準期間の課税売上高が1,000万円を超えており、すでに課税事業者であった場合にも、この「2年縛り」は適用されません。 5.インボイス登録取消の期限と手続き上の注意点 登録取消の手続き期限についても注意が必要です。インボイス登録を取り消す場合は、翌課税期間の開始日から15日前までに(その日が土日祝日の場合は前倒しで)届出書を提出する必要があります。したがって、15日前の日が土日祝日であったとしても、これらの日の翌日とはならないことにご注意ください。 たとえば、12月決算の法人や個人事業主であれば、12月17日までに取消申請を行わなければなりません。もし17日が土日や祝日で、休み明けの12月20日に申請した場合は、免税事業者へ戻れるのは翌々事業年度からとなります。繰り返しになりますが、15日前に日付が土日祝日であっても、翌営業日提出では間に合いません。そのため、取消手続きはできるだけ早めに進めることが重要です。 また、前項で述べた「2年縛り」のルールは、インボイス登録自体には適用されません。したがって、令和6年1月1日にインボイス発行事業者として登録した個人事業主が、令和6年12月17日までに登録取消の届出を提出すれば、登録は取り消されます。ただし、登録から2年が経過していないため、令和7年度はインボイスを発行できない課税事業者として消費税申告の対応が必要となる点に注意が必要です。 6.おわりに インボイス制度に登録した後は、多くの場合そのまま課税事業者として継続することになりますが、将来的に売上規模の変化や取引条件の見直しなどにより、インボイス登録の解除や課税事業者からの変更を検討する場面が生じる可能性もあります。消費税の取扱いは、事前の届出が求められるケースが多く、手続きを行う時期を誤ると不利益を被ることもあるため、制度の仕組みや要件を正確に理解しておくことが大切です。さらに、インボイス制度は今後の税制改正などにより内容が変更される可能性もあります。常に最新の情報を確認し、状況に応じて適切に対応できるよう備えておくことが望まれます。
- [令和7年度年末調整の改正点ーー基礎控除・給与所得控除・特定親族特別控除の全貌](https://shiodome.co.jp/column/53295/) - 1.はじめに 年末調整の時期が到来しました。令和7年度の税制改正では、基礎控除・給与所得控除の見直しに加えて「特定親族特別控除」が新設され、令和7年12月1日から適用されます。本稿では、今年の年末調整について、これらの改正点を中心に解説します。 2.令和7・8年の基礎控除:特例加算の全体像と令和9年以降の扱い 合計所得金額が2,350万円以下の場合、基礎控除が48万円から58万へと引き上げられました。なお、合計所得金額とは、収入から必要経費や給与所得控除などを差し引いた後の金額で、平たく言えば、給与所得、事業所得、不動産所得など、1年間のすべての所得を合計したものです。また、合計所得金額が655万円以下の場合には、基礎控除に段階的な上乗せ(37万円、30万円、10万円、5万円)が適用されます。なお、30万円、10万円、5万円の上乗せは令和8年分までの時限措置です。 3.給与所得控除の改正ポイント:最低額65万円への引上げと年末調整・税額表の変更 給与所得の金額は、給与収入から、その給与収入に応じた給与所得控除額を控除して計算されます。令和7年度改正では、物価上昇への対応を含めて、給与所得控除の最低保障額が55万円から65万円に引き上げられました。あわせて、令和7年度分以後に用いる「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」および令和8年分以後の「源泉徴収税額表」も改正されています。 4.特定親族特別控除の新設と実務対応――対象要件・控除額・申告書の書き方 特定親族特別控除が創設されました。これは、所得者が特定親族を有する場合に、その所得者の総所得金額から、特定親族1人につき、その特定親族の合計所得金額に応じて次の金額を控除する制度です。 特定親族とは、年齢19歳以上23歳未満の親族(配偶者、青色専業専従者として給与の支払を受ける者及び白色事業専従者を除く)で、合計所得金額が123万円以下の人をいいます。なお、合計所得金額が58万円以下の特定親族に該当する場合には、従来の特定扶養控除(63万円)が適用されます。 この創設により、大学生年代の扶養親族がいて、その扶養親族の合計所得金額が85万円(給与収入150万円相当)以下であれば、これまでの特定扶養控除(63万円)と同額の控除が受けられます。また、85万円を超える場合でも、合計所得金額が123万円以下の範囲に該当していれば、段階的に所得控除を受けることが可能となりました。 また、控除対象扶養親族(一定の16歳以上の扶養親族)に加え、合計所得金額が100万円以下である特定親族は「源泉控除対象親族」に区分されます。これに伴い、令和8年1月以後に支払を受けるべき給与について提出する「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」および「従たる給与についての扶養控除等(異動)申告書」には、「源泉控除対象親族」を記載します。給与の支払者は、申告書に記載された「源泉控除対象親族」等をもとに、扶養親族等の人数を算定することになります。 5.扶養親族等の合計所得金額要件の改正 基礎控除の見直しに合わせて、扶養控除等の対象となる扶養親族についての所得要件(合計所得金額の基準)も、以下のとおり改定されました。 ※特定支出控除を適用する場合は、上記の金額とは異なる取扱いとなります。 6.年末調整における留意事項 新たに扶養親族等を有することになった場合の扶養控除等(異動)申告書令和7年12月1日から施行される給与所得控除額や扶養親族等の所得要件の改正により、新たに扶養控除等の対象となる扶養親族等を有することとなった場合は、その旨を記載した「令和7年分給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を、年末調整の実施までにあらためて提出する必要があります。記載方法については、扶養控除等申告書の「異動月日及び事由」欄に「令和7年 12 月1日 改正」 などと記載します。 なお、令和7年11月30日以前に支払う給与については、この所得要件の規定は適用されませんのでご注意ください。 特定親族特別控除申告書特定親族を有する方で特定親族特別控除の適用を受けようとする場合は、「給与所得者の特定親族特別控除申告書」を、年末調整の実施までに提出する必要があります。 なお、控除の対象となる親族が非居住者(国外居住親族) である場合には、特定親族特別控除申告書を提出する際に、親族関係書類と送金関係書類を給与の支払者に提出または提示する必要があります。 また、他の控除とも同様ですが、夫婦共働きなどで1人の特定親族について双方がこの控除の適用を受けることはできません。必ずどちらか一方のみの適用となるように注意しましょう。 7. おわりに 昨年の定額減税に続き、今年の年末調整でも基礎控除・給与所得控除の引上げや特定親族特別控除の創設など、多くの変更が加えられました。改正点を適切に把握し、円滑かつ正確に年末調整を進められるよう、早めに対応していただければ幸いです。
- [ファミリービジネスにおけるスリーサークルモデル:ビジネス、ファミリー、オーナーシップ](https://shiodome.co.jp/column/18939/) - ファミリービジネスは、経済的成功だけでなく、家族関係においても一意の課題を抱えています。これらの課題を解決するために、ファミリービジネスの専門家は「スリーサークルモデル」として知られるアプローチを提案しています。 このモデルは、ファミリービジネス研究者のRenato TagiuriとJohn Davisによって、ファミリービジネスの独特の課題とダイナミクスを理解し、解決策を提供するために設計されました。ビジネス、ファミリー、オーナーシップの3つの重要なサークルを区別し、それぞれの役割と課題を明確に定義することを目的としています。 1. ビジネスサークル(Business Circle) ビジネスサークルは、ファミリービジネスの中核です。このサークルは、企業の運営、成長、利益を追求することに焦点を当てています。主な特徴と課題は次のとおりです: 経営と戦略の確立ビジネスの成功に向けて、経営陣は適切な戦略を策定し、実行する必要があります。競争力を維持し、市場での地位を強化するための戦略を明確にすることが不可欠です。 効果的なガバナンスビジネスの運営において、組織のガバナンス、意思決定プロセス、リーダーシップの役割分担を確立し、透明性と責任を確保することが重要です。 業績評価と報酬ビジネスの成功は、成果に応じた報酬と業績評価を通じて従業員と経営陣に対して認識されるべきです。 2. ファミリーサークル(Family Circle) ファミリーサークルは、ビジネスオーナーとその家族の関係を指します。このサークルでは、家族関係、価値観、感情的な要素が中心になります。主な特徴と課題は次のとおりです: 家族関係の維持ビジネスと家族を切り離して考えることが難しく、家族関係がビジネスに影響を与えることがあります。コミュニケーション、調和、信頼の構築が必要です。 家族の期待管理家族の期待や役割分担を明確にし、家族メンバーがビジネスにどの程度関与すべきかを定義する必要があります。 相続プランニングビジネスの将来に向けた相続プランや承継計画を策定し、家族の財産を守りながら事業の持続可能性を確保することが重要です。 3. オーナーシップサークル(Ownership Circle) オーナーシップサークルは、企業の所有権に焦点を当てています。ビジネスの所有権は家族内で共有されることが多く、その管理や決定は独自の課題を持ちます。主な特徴と課題は次のとおりです: 所有権構造家族メンバー間での株式やビジネス資産の所有権構造を明確にし、株主の権利と責任を定義する必要があります。 意思決定プロセスビジネスの大きな意思決定(例:売却、株式譲渡)において、オーナー間での合意形成と決定プロセスを整備することが必要です。 コーポレートガバナンスビジネスの透明性と責任を保つために、オーナーサークルでコーポレートガバナンスの原則を確立することが重要です。 スリーサークルモデルは、ファミリービジネスが成功するために、ビジネス、ファミリー、オーナーシップの各サークルが協力し、課題を克服するための適切な戦略を開発する手助けを提供します。ファミリービジネスはこれらの3つのサークルの調和に成功することで、長期的な継続性と成功を確保できます。 このように、スリーサークルモデルは、ファミリービジネスの理解と課題の整理に役立つ有用なツールですが、いくつかの欠点や制約も存在します。 単純化の危険性スリーサークルモデルは、ビジネス、ファミリー、オーナーシップの3つの側面を分けて考えることを奨励しますが、実際のファミリービジネスはもっと複雑で多層的な関係を持つことがあります。このモデルは、複雑な状況を単純化しすぎる可能性があり、実際の問題に対処するのに不十分であることがあります。 相互依存性の無視スリーサークルモデルは各サークルを独立したものとして描写しますが、実際にはこれらのサークル間には相互依存性が存在します。たとえば、ファミリーの関係がビジネスの意思決定に影響を与えることがあり、オーナーシップ構造がファミリー関係に影響を及ぼすこともあります。 文化や地域の違いスリーサークルモデルは、ある程度一般的な原則に基づいていますが、文化や地域の違いを考慮していません。異なる文化や国でのファミリービジネスは、異なる課題や解決策を持つことがあります。 時間の変化ファミリービジネスは時間とともに変化します。スリーサークルモデルは静的なモデルであり、変化に適応する方法を提供するのが難しいことがあります。ファミリービジネスは世代を超えて続くことが多いため、時間の変化を考慮することが重要です。 実行の難しさスリーサークルモデルは理論的な枠組みであり、実務において実行することが難しいことがあります。具体的な課題に対処し、解決策を見つけるためには、モデルを実際の状況に合わせて調整する必要があります。 スリーサークルモデルは一般的に有用ですが、これらの欠点を認識し、個別のファミリービジネスの状況に適用する際には注意が必要です。ファミリービジネスの特定の課題に対処するために、より詳細なモデルやアプローチが必要な場合もあるでしょう。
- [ファミリービジネスの概要・特徴・強み・課題](https://shiodome.co.jp/column/19766/) - 1. ファミリービジネスとは ファミリービジネスは一般的に、特定の家族が経営を行い、株式を所有する会社のことをいい、日本語では「同族会社」、「同族経営」、「オーナー企業」と呼ばれることもあります。ここでの「家族」とは、血縁関係、結婚、または養子縁組によって繋がっている個人のグループを意味します。 ファミリービジネスは、小さな地域の企業から、国際的な大企業に至るまでさまざまな規模で存在しています。日本の大企業かつファミリー企業の例としては、トヨタ自動車(豊田家)、サントリー(鳥井・佐治家)、キッコーマン(茂木家)、キヤノン(御手洗家)、パナソニック(松下家)などがあり、日本を代表する企業も実はファミリービジネスとなっています。これらの企業は、家族の価値観やビジョンをビジネスに反映させながら、長期的な視点で経営されています。 さらに、ファミリービジネスは、特有の経営スタイルと文化を持っています。これらの企業はしばしば、家族の伝統や文化を大切にし、世代を超えてビジネスを継承することに重きを置いています。また、家族経営の企業は、長期的な関係構築や社会的責任を重視する傾向にあり、地域社会や業界における安定した存在となっています。このように、ファミリービジネスは、その特有の経営方法と文化を通じて、社会経済の多様性と豊かさに寄与しています。 2. ファミリービジネスの特徴 ファミリービジネスは一般の企業とどのような面で違いがあるのでしょうか。ファミリービジネスの特徴についていくつかご紹介します。 (1) 家族の所有と経営 ファミリービジネスは株式を所有する人(株主)と経営を行う人(経営者)が一致している場合が多いと言えます。一族のメンバーはしばしば経営陣に含まれ、戦略的な意思決定プロセスに参加します。したがって、一族から構成される経営陣の組織内における人的繋がりが強く、迅速な意思決定が行える環境が整っています。ファミリービジネスにおいては、企業の目指すべき方向性と政策に家族の影響が強く反映されます。 (2) 長期志向 ファミリービジネスは短期的利益の最大化ではなく、長期的にどれだけ成長・発展できるかという点に重点が置かれています。実際に日本で100年以上続く企業の9割である約25,000社がファミリービジネスであると言われています。企業の継続性と将来世代への引き継ぎを重要視するため、安定性と長期的な計画に焦点を当てます。 (3) 家族の価値観と文化 ファミリービジネスには、世代を超えて企業の理念が受け継がれます。そして、家族の価値観、伝統、信念は、企業の文化と運営に深く影響を及ぼします。長年築いてきた価値観などは、企業の倫理規範、社会的責任、社内の対人関係に反映されることが多いとされます。 (4) 経営者の交代 リーダーシップの交代は、ファミリービジネスにとって重要な課題です。一般的な企業の経営者は3~5 年ほどで変わる一方、ファミリービジネスでは20年ほど同じ経営者がトップで経営が行われることが多いです。事業承継者は経営者の同族であることがほとんどなので、承継準備を十分に行うことができる体制が整っています。一方で経営のバトンを次世代に渡す過程は、慎重な計画と準備を必要とします。適切な後継者の選定と育成は、企業の長期的な成功に不可欠です。 (5) コミュニケーションと対立 親と子の意見の対立によって親子間対立が起こってしまった事例があります。大塚家具創業者の大塚勝久氏と娘の大塚久美子氏は経営方針への方向性の違いで対立してしまった例としてよく知られています。このような意見の対立が起こると、事業承継の障壁となってしまいますし、なによりビジネスの健全な運営に影響を与えます。家族間の対立はビジネスの決定や運営に悪影響を及ぼす可能性があり、これを上手にマネジメントしていくことが重要です。 (6) 地域性と文化の影響 ファミリービジネスは、地域社会との緊密な関係を持ち、その地域の経済や文化に大きな影響を与えることが多いです。これらの企業は地域社会への貢献を重視し、様々な形で地域経済や社会に対してプラスの影響をもたらしています。特に地方のファミリー企業は、雇用創出・観光促進・伝統文化の保護や継承などに役立っていると言われています。 【ファミリービジネスの特徴】 4. ファミリービジネスの強み 一般的な企業と比較してファミリービジネスにはどのような強みがあるのでしょうか?ファミリービジネスはユニークな強みを持っていると言えます。これらの特徴は、ビジネスの成長、持続性、および組織の内部文化において重要な役割を果たしています。 (1) 長期的な視点と安定性 ファミリービジネスは、一般的に長期的な存続と繁栄を最優先の目的としています。短期的な成長や利益よりも、長期的な目標とビジョンに重きを置いた意思決定が行われることが多いです。これにより、安定した成長を達成しやすく、経済不況や市場の不確実性に対しても強い抵抗力を持つことがあります。また、長期的な視点は、持続可能なビジネスモデルの採用や、将来世代へのビジネスの引き継ぎ計画を慎重に策定することを可能にします。 (2) 家族の忠誠心とコミットメント ファミリービジネスには、代々受け継がれてきた企業理念と価値観が深く根付いています。家族メンバーは企業に対して強い忠誠心を持ち、ビジネスの成功と繁栄に深くコミットメントを示します。これにより、組織内で高い団結力が生まれ、社員間の信頼関係が強化されます。また、家族が共有する目標と価値観は、従業員のモチベーションと生産性の向上に寄与し、より効果的なチームワークと業務の遂行を可能にします。 このような環境は、従業員が企業の一員としての自己実現を感じやすくし、長期的なキャリアの構築を促進します。さらに、家族の経営参加は、顧客やビジネスパートナーとの関係構築において個人的なつながりともなり、より深い関係の構築を促進することがあります。このように、ファミリービジネス独自の強みは、企業の持続可能な成長と成功に大きく寄与しています。 (3) 柔軟性と迅速な意思決定 ファミリービジネスの最大の強みの一つは、所有と経営が一致していることによる柔軟性と迅速な意思決定です。所有者と経営者が同一、または密接に連携しているため、組織的な障壁が少なく、迅速に意思決定を行うことができます。これは、市場や社会の変化に迅速に対応する能力があることにもつながり、特に緊急事態や急激な市場の変化があった際に、素早く適応することを可能とします。また、中央集権的な意思決定プロセスは、戦略的変更や新たなビジネスチャンスの迅速な利用を可能にします。 (4) 家族の専門知識と経験の活用 ファミリービジネスは、世代を超えて蓄積された専門知識、技術、そして人脈を活用することができるという大きなメリットがあります。これらの知識や経験は、ビジネスの継続的な成長と発展の基盤となります。特に、事業承継を控えた後継者は、幼少期からビジネスに親しんでおり、親から直接技術や経営スタイルを学ぶ機会が豊富にあります。このような知識の伝承は、企業の核となる競争力を維持し、独自の専門分野でのリーダーシップを保持するためにも役立ちます。 (5) 独自の文化と価値観の継承 ファミリービジネスには、創業者の理念や価値観が深く根付いており、これが企業文化として何世代にもわたって受け継がれています。創業者や初期の経営陣によって確立された独自の文化は、企業のアイデンティティを形成し、従業員の行動や意思決定に影響を与えます。この強固な文化は、組織の一体感を強化し、社内のモチベーションを高めることができます。また、長期にわたってビジネスを存続させたいという共有された目標は、従業員にとって強い動機付けとなり、競争優位性をもたらします。 【ファミリービジネスの強み】 5. ファミリービジネスの課題 ファミリービジネスには強みがある一方、課題も存在します。課題は大きく分けると、「オーナーシップ」、「ファミリー」、「経営」の3点に分類されます。 (1) オーナーシップ面の課題 ①相続問題 ファミリービジネスでは、創業者や現オーナーの後継者選定や資産の相続が重要な課題となります。適切な後継者がいない場合や、相続に関する家族間での意見の不一致は、ビジネスの安定性と将来の成長に影響を与える可能性があります。相続プロセスがスムーズでない場合、企業の経営権に関する争いや財産の分割により、ビジネス運営に支障を来たすこともあります。
- [ファミリービジネスの成功のための7つのポイント](https://shiodome.co.jp/column/19780/) - 日本におけるファミリービジネスの割合は90%以上と言われており、日本企業の大半を占めています。100年以上続く老舗企業もファミリービジネスである割合が多いことから注目が高まり、日本においても研究が進んでいます。ファミリービジネスを成功させるためにどのようなことを意識したら良いのでしょうか。今回は7つのポイントについてご紹介していきます。 1. 明確なビジョンとミッションの確立 ファミリービジネスは経営者による影響力が強いため、ビジョンやミッションが浸透しやすい環境が整っています。そのため、明確なビジョンとミッションの確立はファミリービジネスを成功させるために非常に重要なものとなります。これにより、従業員同士の結び付きが強まり、チームの一体感にもつながります。 ビジョンを確立することで、企業の将来像を描くことができ、従業員に方向性を示すことに寄与します。例えば、環境に配慮した製品の開発や、地域社会への貢献といった具体的な目標を設定することで、従業員はより社会的な意義を感じながら仕事に取り組むことができます。また、ミッションは企業の基本的な価値観や目的を示し、組織のアイデンティティを形成することに寄与します。これにより、従業員は自身の仕事が組織全体の目標達成にどのように貢献しているかを理解しやすくなります。 さらに、明確なビジョンとミッションを持つことは、外部のステークホルダーに対しても企業の姿勢を明確に示すことができます。顧客、投資家、サプライヤーなど、さまざまな関係者が企業の目指す方向性を理解し、信頼を築く基盤となります。特にファミリービジネスでは、家族の価値観や伝統をビジョンやミッションに反映させることで、企業の独自性を強調し、競争優位性を高めることに繋がっていきます。 このように、明確なビジョンとミッションは、ファミリービジネスの内部結束を強めるだけでなく、外部との関係を築き上げるためにも非常に重要です。経営者はこれらを定期的に見直し、今日の激変する市場環境や社会的な要請に適応させることで、企業の持続可能な成長を実現しやすくなります。 2. ファミリーの影響力を維持・向上させるガバナンスの構築 ファミリービジネスにおけるガバナンスの構築は、家族関係やビジネスの方針を明確化し、効率的かつ効果的な意思決定を促進する上で非常に重要です。これには、ファミリーの影響力を維持・向上させるためのいくつかの要素が関わってきます。 まず、人的資本の側面からは、創業者の精神や倫理観が重要です。例えば、創業者が築いた企業の歴史や文化は、組織全体に影響を与え、後継者育成や人材教育の基盤となります。これらは企業のアイデンティティを形成し、社員のモチベーションや企業文化を強化する役割を果たします。 次に、経済的資本の面では、安定的な成長や累積的な内部留保、適切な配当政策や資本政策が必要です。これらは企業の財務安定性を保ち、投資家や株主に対する信頼を築く基盤となります。また、資産管理会社やファミリーオフィスの設立は、長期的な資産運用やリスク管理に役立ちます。 最後に、社会的資本の側面では、ファミリー関係の強化が重要です。家族間の強固な絆や信頼関係は、ビジネス上の意思決定をスムーズに進めるための基盤となります。また、安定株主の存在は、経営の安定性を高め、外部からの不測の影響を抑える役割を果たします。 これらの要素を統合することで、ファミリービジネスはその持続可能性を高め、家族の影響力を保ちながら、成長と発展を遂げることができると考えられます。 3. 後継者への事業承継計画の策定 後継者への事業承継計画は10年程度の期間を必要とすると言われています。事業承継には3つの難点があると言われています。この過程には3つの主要な課題が存在します。 まず、1つ目の課題としては、ファミリービジネスにおける3サークルモデル(家族、経営、所有)が入り組んだ関係性を有していることがあげられます。このモデルは、それぞれの領域で異なる要求と期待を持つことから、後継者への事業承継プロセスを複雑にします。なお3サークルモデルについては「ファミリービジネスにおけるスリーサークルモデル:ビジネス、ファミリー、オーナーシップ」というコラムにおいて詳細に解説していますので合わせてご覧ください。 2つ目の課題として、ファミリービジネスは多様な利害関係者を持つという特徴があります。これには家族メンバー、従業員、投資家、顧客、サプライヤーなどが含まれ、彼らの期待や要求はそれぞれ異なる場合があります。これらの関係者間のバランスを取りながら、適切な事業承継計画を立てることは容易ではありません。 3つ目の課題として、事業承継プロセスそのものが時間を要することがあります。これは、適切な後継者の選定、彼らの教育と準備、さらには経営や所有権の移譲に関する複雑な決定を伴うためです。これらのプロセスを慎重に進めることで、スムーズな事業承継とビジネスの継続性が保証されます。 これらの課題は、ファミリービジネスにおける事業承継の成功に重要な要素であり、各ステージでの慎重な計画と調整が必要です。このプロセスを通じて、ファミリービジネスはその伝統と価値を次世代に引き継ぎつつ、同時に新しい発展を遂げることができます。 さて、円滑な事業承継を行うためには、綿密な計画が不可欠です。この計画には、主に二つの重要な要素が含まれます。まず、経営承継の面では、承継の時期や対象範囲を明確に定めることが必要です。さらに、適切な承継候補者を選出し、彼らに対する準備プロセスを整えることも重要です。次に、ガバナンスの承継では、承継の時期と対象、さらに承継比率についての計画を立てる必要があります。また、役員持株会や従業員持株会の開設の検討もこの過程で考慮すべき点です。 これらの計画を策定する際には、将来の成長を見据えた転換点としての重要性を理解することが重要です。さらに、この複雑な事業承継プロセスを周囲の関係者と共有し、理解を深めることで、スムーズな事業承継が実現します。このようにして、事業承継計画を丁寧に策定することは、事業の継続性と将来の成功にとって欠かせないステップとなります。 4. コミュニケーションの重視 ファミリービジネスにおいてコミュニケーションは非常に大切な要素です。従業員との関係だけでなく、同族間や家族内での適切なコミュニケーションがなければ、大きな問題が生じる可能性があります。中でも、経営者と後継者、特に親子間のコミュニケーションが最も重要で難しいと言われています。 親子だから経営の事は話しにくい、身内だからこそ率直な意見を言いにくいなどコミュニケーション不足に陥る原因は多々存在します。ファミリービジネスの後継者は親の背中を見て育ち、事業について分かっていることが多い一方、言語化できていない暗黙知についてコミュニケーションが取れていない場合があります。 ファミリービジネスにおけるコミュニケーションは、事業の繁栄と継続性を確保するために欠かせない要素です。親子間のコミュニケーションを積極的に行い、開かれた対話の文化を築くことが、長期的な成功への鍵となります。 5. ファミリーオフィスの活用 近年、富裕層の個人や家族が資産を効果的に管理し、長期的な成長を促進するために選択する手段として、「ファミリーオフィス」というものが注目を集めています。ファミリーオフィスは、資産や財産を管理・運用するために設立された組織や仕組みを指します。資産を効果的に管理し、長期的な資産の保存と成長を促進することを目的とし、ファミリービジネスの継続的な発展をサポートします。 ファミリーオフィスは、富裕層の家族にとって多くのメリットをもたらします。その最大の利点の一つは、継続的かつ効果的な資産管理を可能にすることです。ファミリーオフィスを通じて、家族の財産は将来の世代にスムーズに移転されることができます。これにより、長期的な資産保全と運用が実現し、家族の財務的な安定性が確保されます。 また、ファミリーオフィスでは、資産運用の専門家が、家族のニーズやビジネスの特性に基づいたカスタマイズされた戦略を提供します。これらの専門家は、不動産投資、株式市場、慈善活動など、家族の関心や価値観に適した多様な投資オプションを提案します。彼らは家族の具体的なニーズや目標に合わせて、最適な投資成果を達成するための計画を策定します。 さらに、ファミリーオフィスには法務専門家や税務アドバイザーなどのプロフェッショナルも含まれています。彼らは、資産管理に伴う法的や税務に関する諸問題に関して、家族に包括的なサポートを提供します。これにより、家族は法務や財務の問題を効率的に解決し、リスクを最小限に抑えることが可能になります。また、市場動向や法規制の変更に適応した助言を行うことで、家族の資産を適切に保護し、成長を促進します。 総じて、ファミリーオフィスは、富裕層の家族が直面する独特な課題に対応するための効果的なソリューションを提供します。これにより、資産の保全と運用、そして家族の価値観や目標に沿った財産管理が可能になります。ファミリーオフィスの専門知識とリソースは、家族がその財産を最大限に活用し、将来世代にわたる繁栄を確保するための重要なものです。 6. テクノロジーの活用 経営のイノベーションを起こしにくく、時代の変化に対応しづらいと言われるファミリービジネスでは、テクノロジーの活用が効果的です。以下、テクノロジーがファミリービジネスにおいて果たす重要な役割に焦点を当て、その活用方法を探ります。 ・ビジネスプロセスの自動化テクノロジーを活用してビジネスプロセスを自動化することで、業務効率が大幅に向上します。例えば、より良い会計ソフトウェアや在庫管理システム、あるいはRPA(Robotic Process Automation)を活用することで、日々の繰り返しの業務を自動化し、従業員がより創造的で価値の高い業務に集中できるようになります。これは、従業員の満足度を高め、生産性の向上にも寄与します。 ・データ分析の活用データ分析により、顧客行動や市場動向の洞察を得ることができます。CRMシステムやビッグデータ分析ツールを利用することで、顧客のニーズや好みを深く理解し、ターゲティング・マーケティング戦略の精度を高めることが可能になります。このようなデータドリブン型のアプローチは、新しいビジネス機会の発見や製品・サービスの改善にも寄与します。 ・セキュリティへの投資デジタル化が進むにつれて、セキュリティはますます重要になっています。サイバーセキュリティ対策として、ファイアウォール、アンチウイルスソフトウェア、データ暗号化技術などを導入することが重要です。これにより、ビジネスデータや顧客情報を保護し、サイバー攻撃やデータ漏洩から企業を守ることができます。 このようにファミリービジネスがテクノロジーを活用することは、持続可能な成長への鍵となります。 7. 外部アドバイザーの活用 ファミリービジネスにおいては、客観的な視点を持った外部アドバイザーの必要性が高まっています。3サークルモデルの3要素である「家族」、「経営」、「所有」の課題が複雑に絡み合っているゆえ、ファミリービジネスの経営者は、ファミリービジネス特有の悩みを抱えています。 ファミリービジネス特有の悩みは家族と密接に関係している場合もあり、外部の人に相談しにくい悩みも少なくありません。こうした状況において、ファミリービジネスの課題に取り組むファミリービジネスアドバイザーは、重要なポジションとして位置付けられます。第三者視点でのアドバイスがほしい時は、外部アドバイザーの活用も視野に入れることをお勧めします。 外部アドバイザーは、家族経営に固有の問題に対して新しい視点を提供し、時には難しい決断を下すのを助けます。彼らは中立的な立場から、経営戦略の策定、財務管理、リスク評価、そして組織構造の最適化についての専門的なアドバイスを提供できます。また、ファミリービジネスの後継計画や、家族間のコミュニケーションの改善など、繊細かつ複雑な問題に対しても役立つアドバイスを提供することができます。 加えて、外部アドバイザーは市場動向や業界の最新トレンドに精通していることもあり、これらの情報を活用してファミリービジネスが競争力を維持し、成長を続けるための戦略を立案することもできます。また、技術の進歩や法的な変更に伴うリスクや機会を特定し、これらに対応するための計画を策定する際にも重要な役割を果たします。 このように、外部アドバイザーはファミリービジネスの成長と発展に不可欠な存在です。彼らは客観的かつ専門的な視点を提供し、ファミリービジネスが直面する課題を解決し、新たな可能性を開拓するのを助けることができます。
- [ファミリービジネスコンサルタントとは](https://shiodome.co.jp/column/21826/) - 1. はじめに ファミリービジネスコンサルタントとは、ファミリービジネスに関連した課題解決に特化した専門的なコンサルタントのことを指します。これらのコンサルタントは、ファミリービジネスの独特な課題や機会に対処するための専門知識と経験を有しています。 1つの方法として、ファミリービジネスの特徴を表しているスリーサークルモデル(ビジネス・オーナーシップ・ファミリー)から総合的に課題解決に向けてアプローチを行います。今回はファミリービジネスコンサルタントの役割や、依頼するメリットについてご紹介します。 2. ファミリービジネスコンサルタントの役割や活動内容 ファミリービジネスコンサルタントは、ファミリービジネス特有の課題を解決するために、経営の様々な側面で支援を提供しています。以下は、その主な支援内容です。 (1)ビジネスに関するサポート ① 経営助言 ファミリービジネスコンサルタントは、一族から詳細なヒアリングを行い、外部の専門家としての視点から具体的な経営アドバイスを提供します。このプロセスを通じて、経営陣の意思決定をサポートし、企業の目標達成を助けます。 ② 中期的な経営計画の策定支援 ファミリービジネスの持続可能な成長には、長期的な計画が不可欠です。コンサルタントは、その専門知識を活かして中長期的な経営戦略の立案に協力し、企業の将来ビジョンと目標設定を明確にします。 ③ 業績管理制度の構築と実行支援 多くの企業では経験に基づく業績管理が行われがちですが、それにより問題点が見過ごされることがあります。ファミリービジネスコンサルタントは、管理会計の原則に基づいて、効果的な業績管理制度の構築を支援し、その実行を通じて業績改善を図ります。 ④ 新規事業開発のサポート 時代の変化に対応し持続可能な経営を実現するためには、適切な事業多角化が有効です。コンサルタントは、新規事業のリスク評価や管理の複雑化を避けるための戦略立案を支援し、事業の方針から実行まで支援します。 ⑤ 後継者および経営幹部の育成支援 ファミリービジネスでは、後継者の早期育成が重要です。コンサルタントは、実践的なスキルトレーニングやリーダーシップ教育を提供し、後継者が効果的にビジネスを引き継げるよう支援します。 ⑥ コーポレートガバナンスの構築と実行支援 適切なガバナンス構造は、不正行為の防止と組織の透明性向上に寄与します。コンサルタントはファミリービジネスに合ったガバナンスフレームワークの開発と実装を支援し、健全な企業運営を促進します。 (2)オーナーシップに関するサポート ① 企業体制についての支援 次世代への株式譲渡をスムーズに行うため、ファミリービジネスの特性に深い理解を持つコンサルタントが企業体制の見直しをサポートします。このプロセスには、継承計画の策定、リスク管理、および継承後の経営安定化のための戦略が含まれます。ファミリービジネスコンサルタントは、ヒアリングから詳細な検討、具体的な実行計画の策定まで、一族の意向を尊重しつつ密接に協力して取り組みます。 ② 資産の承継支援 株式や不動産などの資産が次の世代に円滑に引き継がれるよう、適切な承継戦略の立案と実行のサポートを行います。このプロセスは、法的要件の確認、税務効果の最適化、さらには資産管理のための体系的なアプローチを包含します。承継プロセスの透明性を保ちながら、全体の家族の利益と企業の持続可能性を確保するための支援を提供します。 ③ 企業ガバナンスの支援 効果的なガバナンス構造の構築を通じて、企業の長期的な成功を支えます。株主構成の最適化、取締役会の機能強化、監査体制の整備など、ファミリー企業に特有のニーズに応じた組織作りを支援します。ファミリービジネスコンサルタントが、一族のビジョンと企業文化に根ざしたカスタマイズされたアプローチで、ガバナンスの確立を促進します。 (3)ファミリーに関するサポート ① 家族に対する取り決めの設定 ファミリービジネスでは、永続的な企業経営を実現するために、家訓や家族間の倫理規定を明確に設定することが重要です。これらの規定は、事業の基本的な価値観や運営方針を形成し、次世代のリーダーへ教育と伝承に不可欠です。ファミリービジネスコンサルタントは、企業独自の文化と価値を踏まえた家訓の策定を支援し、これを具体的な行動指針として機能させる方法を提案します。結果として、後継者たちは企業の理念を深く理解し、運営に活かすことが可能になります。 ② 家族間のコミュニケーションの支援 ファミリービジネスにおける透明性の高いコミュニケーションは、事業の成功に直接影響を及ぼします。定期的な家族会議や親族会議を設けることで、家族間のコミュニケーションを促進し、重要情報の共有と理解を深めます。会議では、事業の現状報告、将来戦略の設定、後継者問題の討議などが行われ、家族が共通のビジョンと目標に基づいて協力する基盤が構築されます。これにより、ファミリーガバナンスが強化され、経営の効率と効果が向上します。 ③ 家族問題についての相談 ファミリービジネスでは、家族構成員の期待やビジネス上の役割が複雑に絡み合うことで、特有の問題が生じることがあります。これらの問題は、未解決のままでは企業の成長や健全な運営を妨げる可能性があります。専門的なカウンセリングや中立的な立場からのアドバイスを通じて、家族内の対立や緊張を解消するための具体的な解決策が提供されます。このようなサポートにより、家族間の調和が促進され、ビジネスの持続可能性が向上します。 3. ファミリービジネスコンサルタントを活用するメリット 上述の通り、ファミリービジネスコンサルタントは広範なサポートを通じて、企業が直面する多様な課題に対応し、持続的な成長と成功を目指すファミリービジネスを効果的に支援しています。ここでは、ファミリービジネスコンサルタントを活用するメリットについて3つご紹介いたします。 (1)専門的かつ客観的なアドバイス ファミリービジネスを運営する家族は、後継者選びや内部の問題解決など、特有の課題にしばしば直面します。これらの問題は、家族だけの力で解決することが難しい場合があります。ファミリービジネスコンサルタントは、専門的な知識と客観的な視点を提供することで、感情に左右されがちな家族内の問題を効果的に解決へと導きます。外部の専門家に相談することで、プライバシーを守りつつ、適切な解決策を見つけることが可能です。 (2)事業承継のコスト削減 事業承継の過程で発生する相続税や贈与税などの税負担は、計画なしに進めると企業財政に重大な影響を及ぼすことがあります。ファミリービジネスコンサルタントは、これらの税金の最適化を図るために税理士と連携し、節税が可能な戦略を提案します。専門家のアドバイスにより、法的な規定を最大限に活用しながら、承継にかかるコストを効果的に削減することができます。 (3)後継者のサポート 事業承継を成功させるためには、現経営者と後継者間の思想の隔たりを埋め、円滑なバトンタッチを行うことが重要です。ファミリービジネスコンサルタントは、中立的な立場から両者の意見を調整し、後継者がリーダーシップを発揮できるようサポートします。コンサルタントの介入により、経営の連続性を保ちつつ、新しい視点を事業に取り入れることが可能となります。
- [ファミリービジネスの競争優位性の源泉である無形資産とは](https://shiodome.co.jp/column/21856/) - ファミリービジネスが成功していくためには企業文化、ブランド価値、および顧客関係などの無形資産が重要となります。今回は無形資産がいかに大切であり、そして競争優位性の源泉としてどのように機能するかについてご紹介します。 1. 無形資産とは何か 無形資産とは、具体的な形が存在しない資産のことを指し、その価値は見えにくいものの、企業価値を大きく左右する要素です。特にファミリービジネスにおいては、以下のような無形資産が重要な役割を果たしています。 (1)ブランド価値 ファミリービジネスのブランド価値は、しばしばその企業の象徴とされ、顧客の信頼と忠誠心を築く上で中心的な役割を担います。例えば、インターブランド社の調査によると、世界ランキングトップ100のブランドのうち52%がファミリービジネスによるもので、アマゾン、ルイ・ヴィトン、トヨタ、BMW、サムスン、シャネルなどが上位に名を連ねています。これらの企業は、創業家がブランドと深い結びつきを持ち、伝統と価値を守りながら成長を続けています。長年にわたる伝承と独自性が、模倣を困難にし、競争力を高める要因となっています。 (2)知識資本 知識資本は、ファミリービジネスにおける重要な資産の一つであり、従業員のスキル、経験、学びといった個人的な要素と、企業が保有するアイデア、ノウハウ、特許、ライセンス、ソフトウェアなどの組織的な要素から構成されます。これらの資源は、ビジネスの持続的な成長と革新を支えるための基盤となり、企業が競争力を持続し、市場での地位を確固たるものにするために不可欠です。 (3)文化資本 文化資本(カルチャルキャピタル)はファミリービジネスの根底に流れる無形の力であり、3つの主要な特性を持ちます。まず、蓄積可能であるという点です。これは、文化や価値観、知識や慣習が時間をかけて積み重ねられ、企業の資産として蓄えられることを意味します。次に、これらの文化的要素は従業員や経営者自身の評価やアイデンティティ形成において重要な役割を果たし、所有することで個人や組織の価値を高めます。最後に、この資本は世代から世代へと受け継がれることができ、その過程で組織のアイデンティティや核となる理念が保持され続けます。このようにして、文化資本は時代を超えてファミリービジネスを強固に支え、独自の企業文化として発展していきます。 (4)顧客関係 ファミリービジネスにおける顧客関係の構築は、世代を超えた絆と信頼に基づいています。一族が代々蓄積してきた人間関係は、単なる取引を超えた深いつながりを生み出し、顧客一人ひとりに対する理解と配慮が可能となります。このような関係性は、顧客のニーズに細やかに応えるパーソナライズされたサービスを提供することを容易にし、顧客満足度の向上に直結します。長期にわたる信頼関係は、リピート顧客の獲得や口コミによる新規顧客の推奨にもつながり、持続可能なビジネスモデルの構築に寄与しています。これが、ファミリービジネスが市場で独自の競争優位性を持つ理由の一つとなっています。 2. ファミリービジネスと無形資産の関係 上述の通り無形資産は、ファミリービジネスが持続的な成功を収める上で極めて重要な要素です。無形資産は、企業の競争力の源泉であり、特にファミリービジネスでは、その価値が顕著に表れることが多いです。以下、ファミリービジネスにおける無形資産の種類とその関係性について説明します。 (1)ブランド価値と伝統 ファミリービジネスはしばしば長い歴史と伝統を持ち、これがブランド価値の核となることがあります。長年にわたる事業の積み重ねが、消費者に対して信頼性や独自性を象徴するブランドイメージを築き上げます。例えば、何世代にもわたって家族経営が続いている企業は、その歴史や伝統を前面に出すことで、顧客の忠誠心や信頼を得やすくなります。これにより、新規顧客の獲得や既存顧客の維持につながり、市場での差別化を図ることができます。 (2)人的資本と知識 ファミリービジネスでは、家族が代々蓄積してきた経験、専門知識、スキルが企業の重要な資産となります。これらの資産は、特定の業界や市場での独自のノウハウや解決策を生み出し、企業の競争力を高める原動力となります。家族経営の企業は、家族成員間での緊密なコミュニケーションと教育を通じて、これらの知識を効果的に次世代に伝え、長期的なビジネス戦略の維持に寄与します。 (3)社会的資本と顧客関係 ファミリービジネスはしばしば地域社会との密接な関係を持ち、この関係が社会的資本となり得ます。地元のコミュニティや業界内で築かれた強固なネットワークは、信頼や誠実性を高め、事業の安定性と成長に寄与します。また、長期的な顧客関係は、繰り返しビジネスや口コミによる新規顧客の獲得を促進する重要な要素です。 (4)企業文化と価値観 ファミリービジネス固有の企業文化や価値観は、組織の行動様式や意思決定プロセスに深く影響を及ぼします。共有された価値観は従業員のモチベーションを高め、組織全体の一体感を促進します。また、これらの価値観は企業ガバナンスを強化し、倫理的なビジネス慣行の根付く土壌を提供します。企業が長期にわたって維持するためには、これらの文化的側面が非常に重要です。 3. ファミリービジネスの潜在能力について 日本のビジネス業界において、ファミリービジネスは非常に高い割合を占め、全企業の約90%が家族経営とされています。これは、長い歴史を通じて継承されてきたノウハウ、人脈、技術などが大きな強みとして機能しているためです。これらの要素は、ファミリービジネスが競争力を維持し、市場で成功し続ける基盤となっています。 ファミリービジネスの強さは、世代を超えて蓄積された知識と経験に裏打ちされています。これにより、企業は独自の競争優位性を築き上げ、持続可能な成長を実現することが可能です。特に、長期的な視野でビジネスを運営する姿勢は、安定した経営と戦略的な意思決定を促進します。また、家族間の強い絆や共有された価値観は、組織内の一体感を高め、変動する市場環境においても企業を一丸として前進させる力となります。 無形資産は、ただの情報やスキルにとどまらず、企業文化、ブランドの信頼性、顧客との深い関係性という形で表れます。これらの資産は、具体的な有形資産へと繋がる可能性を持っており、例えば、強固な顧客基盤は安定した収益を生み出し、これがさらなる投資や資産の拡大に寄与します。さらに、企業が培ってきた人間関係や社会的信用は、新しい市場機会の扉を開く鍵となり得るため、これらの要素は貴重な戦略的資源です。 このように、ファミリービジネスの潜在能力は無形資産の蓄積によって大きく形作られます。そのため、無形資産を効果的に管理し、世代を超えて伝えていくことが、家族経営企業にとって重要な課題であり、成功の鍵となります。世代交代のプロセスにおいても、これらの価値ある資産を如何にして保持し続けるかが、企業の持続可能性と成長に直結するのです。 4. 無形資産を活用して競争優位性を築く方法 ファミリービジネスが無形資産を活用して競争優位性を築く方法は多岐にわたります。以下はその具体的な戦略を紹介します。 (1)クライシスマネジメントと無形資産 経済の不安定性や市場の変動は避けがたい現実ですが、ファミリービジネスの固有の企業文化や顧客との強固な信頼関係は、こうした危機の際に大きな力を発揮します。長期間にわたる顧客との関係は、市場の変動に迅速かつ柔軟に対応する基盤を提供します。また、家族としての結束力は、内部の不安を最小限に抑え、組織全体のモラールを維持しながら効果的な問題解決策を迅速に実施する助けとなります。このように、無形資産を戦略的に活用することで、企業はクライシスを乗り越え、さらなる結束を固めることができます。 (2)技術革新と無形資産 デジタルトランスフォーメーション(DX)は現代のビジネスに不可欠ですが、ファミリービジネスでは、これを既存の企業文化と調和させながら進めることが重要です。新しい技術を取り入れることで、ブランド価値を現代化し、未開拓の顧客層へのアプローチが可能になります。しかし、伝統と革新のバランスを保ちつつ進めることで、長い歴史を持つ企業の価値を維持しながら、新しい市場環境に適応することが可能です。また、技術革新を通じて、製品やサービスの改善、効率化を図ることができ、これが直接的に競争力の強化につながります。 (3)グローバル市場での適応 グローバル市場への進出はファミリービジネスにとって重要な成長機会です。この過程で、ブランドのグローバルなメッセージングと地域に根ざしたマーケティング戦略のバランスが求められます。地域社会との積極的な関与や現地人材の活用は、新たな市場における信頼性と知名度を高めることに寄与します。さらに、各地域の文化的背景に敏感であり、その違いを理解し適応する能力は、国際的なビジネス展開において競争優位性をもたらします。現地での持続可能な関係構築を通じて、グローバルな規模での事業拡大を目指すことが可能になります。 これらの戦略は、ファミリービジネスが持つ独特の無形資産を活用し、不確実なビジネス環境においても持続可能な成長を達成するためのものです。無形資産の効果的な活用により、ファミリービジネスはその潜在能力を最大限に引き出し、新たな競争優位性を築くことができます。 5. おわりに 今回はファミリービジネスにおける競争優位性とその源泉として無形資産の重要性についてご紹介しました。物質的な資産だけではなく、企業の文化、ブランド価値、人脈などの無形の要素が、競争力を高めるために不可欠であることでしょう。一族が持つ無形資産を適切に活用することで、ファミリービジネスは持続的な成功を収めることができるでしょう。
- [ファミリービジネスを考える上で重要となるファミリーオフィスとは?](https://shiodome.co.jp/column/21861/) - 1. はじめに 近年、裕福な個人や家族が資産を有効に管理し、持続可能な成長を促進するために利用する手段として、「ファミリーオフィス」が注目を浴びています。今回はファミリービジネスを考える上で重要となるファミリーオフィスについてご紹介いたします。 2. ファミリーオフィスの概要 ファミリーオフィスは、ファミリービジネスの一形態であり、ファミリーのアイデンティティと価値観を保持し育てつつ、投資、税務、資産管理、キャッシュフロー管理などの業務を担当する組織です。これは、顧客である各家族の独自性に応じてカスタマイズされるサービスを提供することを目的として設立されています。 ファミリーオフィスは、資産規模が一定水準(例えば100億円以上)を超える富裕層の同族や一族を対象に、その資産や財産の管理および運用を専門的に行う組織です。このようなオフィスの主な目的は、クライアントの資産を効率的かつ効果的に管理し、これを通じて資産の長期的な保全と成長を促進することにあります。ファミリーオフィスは、投資戦略の策定、資産のリスク管理、税務の最適化、財産継承計画など、多岐にわたるサービスを提供します。これにより、資産家はその複雑な財務状況を専門家が適切に管理することで、自らのビジネスや他の個人的な活動に専念することが可能となります。 3. ファミリーオフィスの起源と歴史 ファミリーオフィスは、家族の財産を守り、成長させるための重要な仕組みとして、長い歴史を持ち、時代と共に進化してきました。この章では、その起源と発展の歴史に焦点を当てます。 6世紀には、ヨーロッパの王室が自身の資産を管理するための仕組みとして、ファミリーオフィスが形成され始めました。これが現代のファミリーオフィスの原型と考えられています。 19世紀には、アメリカでロックフェラー家がファミリーオフィスを設立し、これが富裕層の間で広く知られるようになりました。これにより、ファミリーオフィスの概念が一般化し、富の管理と継承のための重要な手段として認識されるようになりました。 近年では、「アルケゴス・ショック」と呼ばれる事件が発生しました。個人資産を管理するファミリーオフィス「アルケゴス・キャピタル・マネジメント」が投資に失敗し、多数の金融機関が損害を受けました。この事件は、ファミリーオフィスへの注目を一層高めるきっかけとなりました。 現在、アメリカには数千のファミリーオフィスが存在し、ヨーロッパやアジアでもその数と関心が増しています。ファミリーオフィスは、多様な経済環境において家族の財産を効果的に守る中核的な役割を果たし続けており、その国際的な重要性は日々高まっています。 4. ファミリーオフィスの種類と役割 (1)ファミリーオフィスの種類 ファミリーオフィスには2種類あると言われています。多くの富を得たファミリービジネスが、自社の資産を管理するためにシングル・ファミリーオフィスを立ち上げ、その後規模を拡大し他社の資産を管理するようになるとマルチ・ファミリーオフィスとなります。2種類のファミリーオフィスについては下記の通りです。 ① シングル・ファミリーオフィス(SFO) シングル・ファミリーオフィス(SFO)は、特定の一家族の資産を専門的に管理する組織です。このタイプのオフィスは、その家族固有のニーズに応じたパーソナライズされたサービスを提供することに特化しています。SFOでは、資産管理、投資戦略の策定、タックスプランニング、法務サポート、相続計画など、家族の財務的な目標と願望に基づいた包括的なアプローチが取られます。また、家族構成の変化や市場環境の変動に柔軟に対応し、資産の保護と成長を図ります。これにより、家族は自身の事業や他の個人的な関心事に専念することができ、財務的な安心感を持つことが可能です。 ② マルチ・ファミリーオフィス(MFO) マルチ・ファミリーオフィス(MFO)は、複数の家族の資産を管理する組織で、それぞれの家族に合わせた資産管理サービスを提供します。MFOは、シングル・ファミリーオフィスに比べて、より広範なリソースと専門知識を活用することができます。これにより、複数の家族に対して、投資管理、税務効率の最適化、リスク管理、財産継承計画など、多岐にわたるサービスを効率良く提供することが可能です。また、MFOはクライアント間でのベストプラクティスの共有や、投資機会における規模の経済を実現することがあります。このような共同投資は、個々の家族ではアクセスしづらいような高額な投資案件に参加する機会を提供することもあります。 (2)ファミリーオフィスの主な役割 ファミリーオフィスが持続可能な成長を促進するために行う主な役割や機能は以下の通りです。 ① 財務教育と資産管理のアドバイス ファミリーオフィスは、ファミリーメンバーに対して財務面での教育を提供することで、資産管理や投資、税務などの基本的な知識を身につけさせます。これにより、ファミリーが資産の持続可能な運用・保全を学び、将来の経済的な自立を確保することが可能になります。 ② 投資戦略の策定とポートフォリオ管理 富裕層のファミリーオフィスは、個々の投資家のリスク許容度や投資目標に基づき、適切な投資戦略を検討し実行します。専門家が市場調査と分析を行い、最も有望な投資先を選定し、継続的にポートフォリオを管理することで、資産の最大化を目指します。 ③ 税務最適化と法務サポート タックスプランニングと法務事務周りのサポートは、ファミリーの資産の保護と増加に不可欠です。ファミリーオフィスは税法の変更に常に注目し、税務効率の良い戦略を提供することで、税務及び法務面の問題がファミリーの財産に及ぼす影響を最小限に抑えます。 ④ 資産継承とファミリーの資産承継計画 富裕層ファミリーにとって資産継承の計画は極めて重要です。ファミリーオフィスは、遺言の作成や信託の設立を通じて、次世代へのスムーズな資産移行をサポートします。このプロセスは、法的な障害を避け、税負担を最適化するための戦略的アプローチを含みます。 ⑤ 総合的な財産管理と資産保全 ファミリーオフィスは富裕層の財産を効率的かつ効果的に管理し、将来に渡って資産の保全を促進します。これには、資産の内容に関する詳細な分析と保全戦略の実施が含まれます。経済状況の変動に応じた適切な対応により、資産は安全に保たれ、成長が促されることが期待されます。 ⑥ 高品質なライフスタイルサポート ファミリーオフィスは、家族の日常生活に関連する様々なサポートを提供します。プライベートジェットの手配から国際的な移動サポート、教育や健康管理のアドバイスまで、家族メンバーの生活品質の向上に貢献するサービスが含まれます。 これらのサービスを通じて、ファミリーオフィスは富裕層の家族がその財産を守り、増やし、次世代へと継承する手助けをします。 5. ファミリーオフィスが直面する規制の動向と求められるコンプライアンス このような役割を担っているファミリーオフィスを活用することは非常に有益ですが、近年、ファミリーオフィスに関する国際的な規制が厳格化されています。規制の目的は税務に関する透明性の強化や、資金洗浄などの金融犯罪(マネーロンダリング)を防止することにあります。 これらの規制によりファミリーオフィスの負担が増す可能性があります。一方で、適切なリスク管理とコンプライアンスにより、不正行為のリスクを減少させ、持続可能な運営を支援することにもつながります。以下はそれらの規制についての紹介です。 (1)共通報告基準 国際的な取り組み、特にOECDの共通報告基準(CRS)の導入により、ファミリーオフィスは、税務情報を自動交換する国との間で、情報共有が必要となりました。つまり、顧客の税務居住国に報告を行うことが義務付けられ、その結果課税逃れを防ぐための措置がなされています。 (2)資金洗浄防止規制 FATF(金融活動作業部会)の基準に従い、多くの国は、資金洗浄(マネーロンダリング)リスクを管理するための厳格なプロセスを導入しています。そのため、ファミリーオフィスはその顧客認知(KYC)プロセスを強化し、資金の出所を明確にする必要があります。この強化には、顧客とその資産の徹底的なバックグラウンドチェックが含まれており、不審な取引は適切な規制当局に報告する義務があります。 (3)クロスボーダー規制 多国籍で運営されるファミリーオフィスは、異なる司法管轄の間でも一貫したコンプライアンスフレームワークを維持することが求められます。これは、異なる国々の法規制と規制環境を把握し、各国の法律を遵守する体制の整備を含みます。
- [ファミリービジネスにおいてなぜガバナンスが重要であるのか](https://shiodome.co.jp/column/21867/) - 1. はじめに ファミリービジネスでは、経営が家族の関係性や共有された価値観に基づくことが多いですが、これがファミリービジネス特有の問題を引き起こすこともあります。例えば、家族間の対人関係がビジネスの意思決定に影響を与えたり、後継者問題につながったりすることがあります。これらの課題に対処し、ファミリービジネスを健全に運営するためには、強固なガバナンス体制の構築が非常に重要です。 ガバナンスは、組織の統治、支配、管理を意味し、企業運営の透明性や公正性を高める役割を担います。日本では、2000年初頭に発覚した複数の企業不祥事がガバナンスの重要性を浮き彫りにしました。 具体的なガバナンス構築のための施策としては、組織の内部統制を強化しリスク管理を改善するための特別な部門の設置や、職務の役割と指示系統を明確化する体制整備などがあげられます。今回は、ファミリービジネスにおけるガバナンスの必要性に焦点を当てて解説していきます。 2. 専門性と効率性の向上 効果的なコーポレートガバナンスを構築するには、適切な監視体制と透明性のある情報開示体制が不可欠です。これにより、組織内の業務レベルの専門性が向上し、各職務がより効果的かつ効率的に遂行されるようになります。ガバナンス体制の整備は、単にリスク管理とコンプライアンス遵守を強化するだけでなく、企業の全体的な運営能力の向上に寄与します。 具体的には、組織内のモニタリング機能を強化することで、業務の透明性が高まり、信頼性のある情報が経営層にタイムリーに届くようになります。これにより、経営判断の質が向上し、不正行為やミスのリスクも減少します。また、透明性のある情報開示体制により、外部のステークホルダーに対しても企業の誠実性と信頼性をアピールすることができるでしょう。 加えて、ガバナンスの強化は労働環境の改善にもつながります。具体的には、従業員の業務範囲や責任を明確に定めることで、業務の見落としや重複を防ぎ、責任者による効果的な監督が可能となります。これにより、業務効率が向上し、従業員一人一人の満足度(ES)が高まります。さらに、整理された指示系統は、従業員が複数のタスクに同時に追われることなく、それぞれが自身の役割に集中できるようにすることで、企業活動全体のスムーズな流れを支援します。 3. 対立の解消とリスク管理 ファミリービジネスは、しばしば家族内の対立やいわゆる「お家騒動」と直面することがあります。これらの問題は、ファミリーガバナンスが不十分な場合に特に顕著になります。健全なガバナンス体制が存在しないと、家族間の利害が衝突し、組織全体の効率と生産性にマイナスの影響を及ぼす可能性があります。多くの場合、問題が表面化するまでガバナンスの欠陥は無視されがちですが、一度問題が顕在化すると解決はかなり困難になります。 歴史あるファミリービジネスにおける事業承継プロセスは非常に複雑です。適切なガバナンス体制が整っていない場合、ファミリー内のコミュニケーション不足が起こり、スムーズな事業承継が妨げられることがあります。このような状況は、ファミリー内で意見が分かれるだけでなく、ノンファミリー経営陣との間にも緊張を生じさせることがあり、結果として企業価値の低下につながる恐れがあります。また、資産分配に関するファミリー内の争いがさらなる対立を引き起こす原因となります。 これらのリスクを適切に管理し、発生した対立を効果的に解消するためには、強固なファミリーガバナンスの構築が必要です。これには、全ファミリーメンバーに対して明確で一貫したコミュニケーションチャネルを確立すること、意思決定プロセスの透明性を高めること、そして公平かつ公正な利益配分を行うことが含まれます。さらに、将来のリーダーシップ育成と経営陣の強化も重要です。このプロセスでは、継続的な教育プログラムとリーダーシップのメンタリングを提供することで、次世代の経営者が効果的に事業を引き継げるように準備します。 最終的に、これらの施策を通じて、ファミリービジネスは次世代にスムーズに事業を移行できるようになり、家族間の不和を最小限に抑えることができます。効果的なファミリーガバナンスは、単に対立を管理するだけでなく、企業の持続可能な成長と繁栄のための基盤を築くためにも不可欠です。 4. 透明性と信頼性の向上 ガバナンスの整備は経営の透明性と信頼性を高めるという重要な役割を果たします。強固なガバナンス体制が確立されることで、よりレベルの高い経営戦略の策定が可能となり、また、財務状況やリスク管理が明確になります。このように、組織のプロセスや決定が公開されることで、内部不正やリスクの発生が大幅に減少します。 また、強固なガバナンス体制は適切な情報の開示を促し、経営陣に現在の市場環境や企業の状況に応じた戦略的な意思決定を行うための基盤を提供します。この透明性は、組織に対する各ステークホルダーの信頼を獲得することに直接的に寄与し、投資家、クライアント、従業員、そして社会全体からの評価を向上させます。 透明性が高いと評価される企業は、一般的にその信頼性により社会的信用を得やすくなります。これにより、新たなビジネスチャンスの創出、資金調達の容易化、優秀な人材の獲得など、事業運営の多くの面でメリットを享受することができます。特に資金調達においては、高い透明性が投資家に安心感を提供し、より有利な条件での支援を受ける可能性を高めます。 5. 世代間のスムーズなバトンタッチ ファミリービジネスにおいては、「スチュワードシップ(受託者責任)」の概念が非常に重要です。この概念は、現世代が企業を次世代に引き継ぐ際の意識を高め、持続可能な経営を目指すために新規事業の種をまくなどのアクションを含みます。このような環境では、次期経営者への事業承継の準備が整い、家族間での知識と経験の伝達がスムーズに行われ、次期経営者の教育が効果的かつ早期に開始されることが期待されます。 しかし、世代を重ねるごとに企業の経営が衰退するという現象は、「長者三代」の言葉に象徴されるように、日本だけでなく世界中で共通の認識となっています。中国では「富不过三代」、アメリカでは「Shirtsleeves to shirtsleeves in three generations」という表現で同様の現象が語られます。これらの言い伝えは、ファミリービジネスが多世代にわたる承継を成功させることの困難さを示しており、多くの場合、経営の質が低下してしまう可能性が指摘されています。 このような背景から、ファミリービジネスにおいては、強固なガバナンス体制の構築が非常に重要です。適切なガバナンスが整っていれば、事業承継プロセスにおける潜在的な衝突を最小限に抑え、経営の透明性を保ちながらスムーズな世代間のバトンタッチが実現可能となります。ガバナンスを通じて、次世代のリーダーが経営理念と経営戦略を深く理解し、現世代の成果を継承しつつ、新たなビジョンを形成することができます。 6. 持続的な成長のために ガバナンスの強化は、企業が社会からの信頼を得るために非常に重要です。信頼を基盤として企業の競争力を高めることで、持続可能な成長を促進することができます。良好なガバナンスが構築されると、企業は外部のステークホルダーや投資家に対して透明性と責任を持って行動していると認識され、それが長期的なビジネス関係の構築や新たな投資機会の創出に繋がります。 また、組織内での権限と責任の明確化は、効果的な意思決定プロセスの基盤を築きます。各役職やポジションに対して具体的な役割と責任が定義されることで、従業員は自分たちの責務に対する理解が深まり、その結果、個々の業務の効率が向上します。結果として、組織全体として迅速かつ正確な意思決定が行えるようになり、市場の変動や緊急事態に迅速に対応する能力も高まります。 このようにガバナンスをしっかり構築することで、企業内部の組織力を高め、外部からの評価も上がるため、持続的な成長を実現するための環境が整います。経営の透明性を高めることで得られる社会的な信用は、資金調達の容易化、優秀な人材の確保、消費者の信頼獲得など、多方面でのメリットに繋がり、企業が長期的に繁栄する土台を築くことができます。これらの効果は、企業が直面する様々なビジネスチャレンジを乗り越え、安定した成長を続けるために不可欠です。 7. ファミリービジネスとESG ファミリービジネスにおいても、ESG(環境、社会、ガバナンス)の視点は持続可能なビジネス戦略として重要です。特にガバナンスの観点から、ESGの視点がもたらす企業運営への有効性を検討することは、企業の長期的な成功と社会的責任を同時に推進する上で非常に有意義です。以下ファミリービジネスにおいてESGの視点を取り入れるメリットを4つあげます。 (1)リスク管理の強化 ESGの枠組みを組織運営に取り入れることで、環境や社会、ガバナンスに関連するリスクを効果的に特定し、対応策を迅速に講じることが可能になります。このアプローチにより、企業は予期せぬ事態や将来のリスクに前もって対処できるようになり、その結果、事業の持続可能性が向上します。例えば、気候変動に関連するリスクを事前に評価し、適応策を計画的に実施することが、企業のレジリエンスを高める一助となります。 (2)ステークホルダーとの関係強化 ESGに基づく透明性の高いガバナンス体制は、消費者、投資家、従業員などのステークホルダーとの信頼関係を築く上で重要です。これにより、企業は社会的な信用を得やすくなり、その信頼はブランド価値の向上、投資機会の拡大、市場での好感度の増加に直接的に寄与します。透明性が高く信頼される企業は、危機時にも支持を得やすく、ビジネスの持続可能性が確保されやすくなります。 (3)確実な規制遵守 国際的に、環境保護や社会的責任に関する規制が強化されています。ESGの各種原則を組み込んだガバナンス体制を構築することで、これらの厳しい規制基準を遵守し、法的な問題から企業を守ることができます。このような体制整備は、潜在的なビジネスリスクを減少させ、長期的に企業の安定した運営を支援します。 (4)事業継続性の確保 環境や社会を尊重する経営姿勢は、自然災害や社会的な危機からの回復力を強化すると同時に、企業の持続可能な成長を促します。さらに、次世代の消費者や労働力にとって魅力的な企業であることを維持することで、企業の未来への引き継ぎがスムーズに行われます。これは、次世代に安心して事業を引き継ぐための土台となり、長期的な事業継続性を確保する上で極めて重要です。 8. おわりに ファミリービジネスにおいて適切なガバナンスが重要である理由について深く掘り下げていきました。ガバナンスの不備はファミリー内の対立や経営上の混乱を招き、企業の持続可能性に影響を及ぼす可能性があります。そのため、適切なガバナンス体制の構築は、ファミリービジネスを成功させ、成長するために不可欠です。ファミリービジネスにおけるガバナンスの重要性を理解するとともに、外部のアドバイザーの活用や一族での話し合いなど、適切な対策を行うことも重要です。
- [ファミリーオフィスにおけるAI活用:戦略的な準備体制へ](https://shiodome.co.jp/column/55868/) - 近年、生成AIをはじめとする人工知能技術は急速に進化しており、その影響は資産管理や事業承継を担うファミリーオフィスの領域にも確実に及んでいます。 多くの企業が予測分析や自動意思決定といった先進的な活用事例に注目する一方で、ファミリーオフィスにとって本質的に重要なのは、こうした技術を安全かつ実務的に活用するための「準備」です。 本コラムでは、米国市場の最新動向を踏まえながら、ファミリーオフィスにおけるAIの現状、実務上の価値、そして戦略的な導入に向けた準備の在り方を整理します。 1. ファミリーオフィスとAIの現状 ファミリーオフィスとは、富裕層一族の資産管理、投資運用、税務・法務対応、さらには次世代への事業承継までを一元的に担う組織です。その特徴の一つとしては、一般的な資産運用会社とは異なり、一族固有の価値観や長期的な方針に基づいた、極めて個別性の高いサービスを提供するところにあります。 現在、ビジネスの現場ではAIに関する議論が日常的に行われています。「AIエージェント」「予測分析」「自動化された意思決定」といった言葉は広く浸透していますが、実際にシステムへ導入するための準備や運用面の検討は十分とは言えません。 AIはすでに将来の概念ではなく、現実の業務を支える技術となっています。会計システムや投資レポート作成ツールなど、ファミリーオフィスが日常的に利用するプラットフォームにもAI機能が組み込まれ始めており、基本的な業務プロセスそのものに変化が生じつつあります。したがって、論点は「AIが影響を与えるかどうか」ではなく、「どのように安全かつ責任ある形でAIと関わるか」に移っています。 一方で、ファミリーオフィスの現場は、プライバシー保護、機密保持、そして長年使い続けられてきたレガシーシステムという制約の中にあります。クラウドサービスが登場した際、当初はセキュリティへの懸念から導入が躊躇されたものの、やがて必要不可欠なインフラとして定着したように、AIもまた、既存システムのアップデートを通じて業務の根幹に入り込み始めています。重要なのは、この流れを受動的に受け入れるのではなく、組織として主体的に管理する姿勢です。 2. AIがもたらす実務上の価値 では具体的に、AIはファミリーオフィスの実務にどのような価値をもたらしているのでしょうか。現時点では、主に以下の領域でその効果が顕著に現れています。 まず「会計・財務」の領域では、取引の自動分類、照合、異常値の検出、そして仕訳ドラフトの作成が可能になり、決算処理の迅速化が進んでいます。また、「請求書管理」においては、コード入力や分類の自動化に加え、重複払いや不整合の検出機能が強化され、支出管理のガバナンス向上に寄与しています。 さらに「資産管理・レポーティング」の分野では、複数の金融機関からの明細取り込みやデータ補完、レポート生成といった一連のプロセスがAIによって支援され、手作業の削減とタイムリーな情報提供が実現しています。「ドキュメント管理」においても、膨大な法的文書や契約書の自動分類・要約が可能となり、情報の検索性が飛躍的に向上しました。 しかし、ここで認識すべき課題もあります。現在のAI機能の多くは、各ソフトウェアベンダーが個別に実装しているため、システム間を横断した連携をする場合、非常に複雑な構成を設計する必要があります。情報の「サイロ化(分断)」は依然として解消されておらず、組織全体を俯瞰するような高度な分析には、まだハードルが残されています。 3. 戦略的導入に向けた5つの柱 AIが業務環境へ本格的に組み込まれていく中で、ファミリーオフィスに求められるのは「導入するか否か」という判断ではなく、どのような統制のもとで安全かつ持続的に活用するかという視点です。その準備体制は、主に次の5つの柱によって構成されます。 第一に、データの完全性とガバナンスです。 AIは大量の情報を前提として分析や洞察を提示しますが、その結果の信頼性は基礎データの品質に大きく依存します。法人構造、所有権情報、資本勘定データといったコア記録の正確性と可用性が担保されていなければ、AIの出力は意思決定に耐え得るものにはなりません。したがって、AI活用に先立ち、まずデータ品質の評価・整備に着手し、統合的なガバナンスフレームワークを確立することが不可欠です。AIの精度は、入力されるデータの質によって決まるという原則を押さえておく必要があります。 第二に、権限管理とアクセス制御です。 AIツールが多様なデータソースへ接続する環境では、ユーザーの役割に応じた厳密なアクセス設計が求められます。適切な権限管理を行うことで、機密情報の意図しない開示や内部不正のリスクを抑制できます。これはサイバーセキュリティの基本原則に沿った運用であると同時に、ファミリーの信頼を守るための基盤でもあります。「誰が、どの情報に、どこまでアクセスできるか」を明確にしておくことが、AI時代におけるリスク管理の出発点です。 第三に、保持およびプライバシーポリシーの明確化です。 どのデータを収集し、どの期間保存し、どの条件で削除するのか。こうしたルールを体系的に定義する必要があります。これは単なる規制対応にとどまりません。ファミリーの意思や長期的な資産管理方針とも整合させるべき重要な領域です。とりわけAIサービスにおけるデータ保持や再利用の扱いについては、各提供事業者によって異なることから継続的な確認が欠かせません。外部AIに入力された情報がどのように蓄積・活用されるかを把握しておくことで、企業が守るべきリソースを明確にすることが、AI活用においての大前提です。 第四に、AI利用ポリシーの整備です。 専門スタッフだけでなく、ファミリーメンバーを含む関係者全体に適用される、明確な利用基準を定めなければなりません。たとえば、公開型のAIサービスに機密文書を入力しないといった具体的な禁止事項や、利用可能なツール範囲の定義など、実務レベルで機能するルール設計が大事です。ポリシーが曖昧なまま各自がAIを利用すれば、情報漏洩や誤った判断の温床となりかねません。組織として統一された方針を持つことが、AI活用の信頼性を支えます。 第五に、ベンダーおよび企業リスク管理の強化です。 AI機能の多くは外部プラットフォームを通じて提供されます。そのため、契約条件やデータ利用範囲、モデル学習への影響などを精査し続ける体制が求められます。AI導入に伴い高まるベンダー依存リスクを可視化し、継続的にモニタリングするプロセスを再構築することが不可欠です。外部サービスの仕様変更やポリシー改定が自社のデータ管理にどう影響するかを常に把握しておくことが、安定的な運用の前提条件として認識する必要があります。 これら5つの柱は、単なる技術導入のチェックリストではなく、ファミリーオフィスがAI時代において信頼性と持続性を維持するための経営基盤そのものと言えます。十分な準備と統制を伴わないAI活用は、新たな効率化をもたらす一方で、ガバナンスや信用の毀損という別種のリスクを生みかねません。だからこそ、戦略的視点に立った段階的な整備が鍵になります。 4. まとめ:技術への備えと「人」による判断 AIの統合は、もはや遠い未来の構想ではなく、急速に現実の業務基盤となりつつあります。しかし、その価値を最大化できるかどうかは、技術そのものの性能ではなく、それを受け入れる組織側の「準備」にかかっています。 AIは効率化や新たな洞察をもたらしますが、最終的な解釈や、ファミリーの価値観・リスク許容度に基づいた意思決定を行うのは、依然として「人」です。AI任せにするのではなく、AIが出した答えを検証し、監督する能力こそが、これからの専門家には求められます。 強固なガバナンスと戦略的な先見性を持つことで、ファミリーオフィスは基本原則を守りながら、自信を持ってAIという新たな力を味方につけることができるはずです。AI活用に向けたガバナンス整備や導入方針の検討についてお悩みの際は、ぜひお気軽にご相談ください。状況に応じた最適なアプローチをご提案いたします。
- [【税務Q&A】配当優先株式がある場合の配当還元方式](https://shiodome.co.jp/column/54376/) - 1. 質問 相続により、非上場会社A社の配当優先株式を5,000株取得することになりました。少数株主に該当するため、配当還元方式による評価を検討しています。取得した株式は配当優先の種類株式ですが、通常の取引相場のない株式の評価方法とは異なる点や留意すべきことがあれば教えてください。なお、当該配当優先株式には議決権はありません。 【前提条件】 発行済株式数:100,000株(普通株式70,000株、配当優先株式30,000株) 資本金等の額:8,000万円(1株当たり資本金等の額800円) 年間配当金額直前期:普通株式5,000千円 / 配当優先株式6,000千円直前々期:普通株式4,500千円 / 配当優先株式6,000千円 2. 回答 非上場会社の株式評価では、会社の規模に応じて「類似業種比準価額方式」、「純資産価額方式」またはこれらの併用方式で評価します。これを原則的評価方式といいます。しかし、少数株主(同族株主以外の株主等)に該当する場合は、特例的評価方式である「配当還元方式」を適用することが認められています。 今回取得した株式は、配当優先の種類株式であり、議決権を有していませんが、少数株主である限り、配当還元方式による評価が可能です。評価にあたっては、配当について優先・劣後のある株式の種類ごとに、その株式に係る配当金(資本金等の額の減少によるものを除く。以下同様。)に応じて評価を行います。 3. 関係通達と解説 配当還元方式について 配当還元方式とは、直前2年間の平均配当金額から算出した年配当金額を一定の利率(10%)で還元して価額を評価する方法であり、収益還元方式の一種です。この方式による評価額は、一般的に原則的評価方式による評価額よりも低くなる傾向があります。 【算式】 ※年配当金額が2円50銭未満の場合は、2円50銭とします。 配当優先株式の評価上の留意点 1株当たりの資本金等の額の計算種類株式ごとに区分せず、全体の資本金等の額を基準に計算します。 年配当金額の計算種類株式ごとに、その株式に係る配当金額を計算します。 無議決権株式の評価上の留意点 ◼ 原則 無議決権株式と議決権のある株式を発行している場合、原則として議決権の有無を考慮せず評価します。 ◼ 選択適用 一定条件を満たす場合、納税者の選択で、無議決権株式の評価額から5%を控除し、その控除額を議決権株式の価額に加算する調整計算が認められています。 4. 質問に類する計算例 1.普通株式の配当還元方式による評価額 1) 年配当金額 2) 配当還元価額 2.配当優先株式の配当還元方式による評価額 1) 年配当金額 2) 配当還元価額 5. 実務上の留意点 無議決権株式を発行している場合の同族株主の判定 同族株主に該当するかの判定は、持株割合ではなく議決権割合によって判定を行います。 そのため、同族株主グループに属していても、中心的な同族株主以外で、議決権割合が5%未満かつ役員に該当しない株主は、無議決権株式を保有していても同族株主には該当しません。 この場合、その株主が所有する株式については、通常、特例的評価方式である配当還元方式による評価が認められます。 社債類似株式について 社債類似株式とは、形式上は株式ではあるものの、その経済的実体が社債に近い性質を持つ株式をいいます。社債類似株式に該当する場合は、利付公社債の評価方法に準じて評価を行い、発行会社の株式評価においては、社債類似株式を社債として取り扱います。 次の条件を満たす場合には、社債類似株式として取り扱います。 【条件】 配当優先の種類株式であり、非参加型であり、累積型の配当金に該当する 残余財産の分配は発行価額を超えない
- [移転価格税制と独立企業間価格の算定方法について解説 - 国際税務の重要性とOECDガイドライン](https://shiodome.co.jp/column/17257/) - 1. はじめに グローバルに事業を展開する企業にとって、移転価格税制は避けて通れない重要な税務テーマの一つです。特に、海外の関連会社との国際取引において独立企業間価格を適切に算定することは、課税当局との認識の相違による税務リスクを回避するために欠かせません。移転価格の設定が不適切な場合、追徴課税やペナルティが課される可能性があるため、企業には制度への正確な理解と実務対応が求められます。 本記事は、海外取引を行う企業の経営者や経理・税務担当者の方を主な対象としています。移転価格税制の基本的な考え方を整理したうえで、日本における独立企業間価格の算定方法について分かりやすく解説します。あわせて、国際税務において重要な役割を果たすOECD(経済協力開発機構)の移転価格ガイドラインにも触れ、実務上押さえておくべきポイントを紹介します。 2. 移転価格税制とは何か? 移転価格税制とは、多国籍企業が海外の関連会社などとグループ内取引を行う際に、その取引価格が独立した第三者間で行われる取引価格(独立企業間価格)と同等であるかを基準に、適正な価格設定を求める税制です。グループ内取引では、通常の市場取引とは異なり、企業の裁量によって取引条件や価格を調整できる余地があります。そのため、取引価格が市場実勢から乖離すると、特定の国や地域に利益が集中し、本来納めるべき税額が不当に減少するおそれがあります。 移転価格税制は、こうした状況を防ぐために、グループ内取引であっても市場価格に基づく適正な価格設定を行い、正しい課税所得を算定することを求めています。この制度により、企業が意図的に利益を移転して課税を回避する行為(いわゆる利益移転)を抑制し、国際的な課税の公平性を確保することが目的とされています。 3. 独立企業間価格の重要性 独立企業間価格とは、企業グループに属さない独立した第三者同士が、同様の取引条件のもとで行う場合に成立すると考えられる取引価格を指します。移転価格税制においては、この独立企業間価格を基準として、グループ内取引の価格が適正かどうかを判断します。 グループ内取引では、資本関係や支配関係が存在するため、取引価格が市場実勢から乖離しやすいという特徴があります。そこで、独立企業間価格を用いることで、取引条件を客観的に評価し、利益が特定の国や法人に過度に移転することを防止します。もしグループ内取引の価格が市場価格と大きく乖離している場合、税務当局は利益の不当な移転が行われている可能性を指摘し、課税所得の修正や移転価格調整を求めることがあります。 そのため、独立企業間価格の考え方を正しく理解し、合理的な根拠に基づいて取引価格を設定することが、税務リスク管理の観点からも非常に重要です。 4. 日本における独立企業間価格の算定方法 日本の移転価格税制においては、対象となる企業は、グループ内取引について独立企業間価格を合理的な方法により算定することが求められます。独立企業間価格の算定にあたっては、取引内容や機能、リスクの分担、利用する資産などを踏まえ、最も適切と認められる方法(最適方法)を選択する必要があります。日本では、以下の6つの算定方法が認められており、①〜③は一般に「基本三法」と呼ばれています。 独立企業間価格の算定方法一覧 独立価格比準法 再販売価格基準法 原価基準法 取引単位営業利益法 利益分割法 ディスカウンティッド・キャッシュ・フロー法(DCF法) ①独立価格比準法(Comparable Uncontrolled Price Method – CUP法) 同じ製品やサービスを提供する独立した企業間の価格を比較し、価格を算定します。類似の商品やサービスが市場で取引されている場合に有用です。 ②再販売価格基準法(Resale Price Method – RP法) 親会社と関連会社間の商品の再販売価格を基準にして、利益を算定します。再販売価格から一定の利益率を差し引いた価格を設定することが一般的です。 ③原価基準法(Cost Plus Method – CP法) 原価基準法では、親会社が関連会社に提供する商品やサービスの製造コストに一定の利益率を加えて価格を設定します。この方法は製造業やサービス業に適しています。 ④取引単位営業利益法(Transactional Net Margin Method – TNMM) 取引単位営業利益法では、関連会社の売上高や利益率を基に、取引単位での営業利益を算定します。他の独立企業との比較により、適切な価格を導き出します。 ⑤利益分割法(Profit Split Method – PS法) 利益分割法は、関連会社が共同で創出した利益を分割する方法です。各企業の寄与度に基づいて、利益を適切に分配します。その分配された利益に基づいて独立企業間価格を算定する方法をいいます。 ⑥ディスカウンティッド・キャッシュ・フロー法(DCF法) DCF法では、将来のキャッシュフローを現在価値に割り引いて、企業間の価格を算定します。将来のキャッシュフローの予測に基づいて、適切な価格を評価します。 5. 国際税務とOECDガイドライン 国際税務の分野では、国ごとに異なる税制や課税ルールを前提としつつ、二重課税や課税の不公平を防ぐための調整が不可欠です。こうした国際的な税務調整において、重要な役割を果たしているのがOECD(経済協力開発機構)の移転価格ガイドラインです。 OECDは、移転価格税制に関する国際的な指針として、独立企業間原則を基礎とした考え方や算定方法、実務上の留意点を体系的に示しています。このガイドラインでは、独立企業間価格の算定方法に加え、国境を越える取引における機能・リスク分析や文書化の重要性などについても詳細に解説されています。
- [プロスポーツ選手の消費税申告|「簡易課税」の落とし穴と節税のポイント](https://shiodome.co.jp/column/54434/) - プロ野球やプロサッカーなどのプロスポーツ選手にとって、毎年の確定申告は避けて通れない重要なタスクです。その中でも、売上高が一定規模を超えると発生する「消費税」の申告は、仕組みが複雑で判断に悩まれる方も多いのではないでしょうか。 今回は、多くのプロスポーツ選手が利用を検討する消費税の「簡易課税制度」と、実務上のチェックポイントを整理して解説します。 1. プロスポーツ選手と消費税の関係 プロスポーツ選手は通常、球団やクラブと契約を結ぶ「個人事業主」として活動しています。そのため、消費税の納税義務については、原則として「2年前(前々年)の課税売上高が1,000万円を超えているか」で判定されます。 「特定期間」による納税義務の早期発生2年前の売上高が1,000万円以下であっても、前年上半期(1月〜6月)の売上高が1,000万円を超えた場合、その年から課税事業者になるルールがあります。 ただし、この判定において「売上高に代えて、給与支払額で判定することもできる」という点は非常に重要です。従業員等への給与が1,000万円以下であれば、納税義務を回避できる可能性があるため、精緻な確認が求められます。 2. 節税の鍵となる「簡易課税制度」とは? 消費税の納税額は、本来「受け取った消費税」から「経費として支払った消費税」を差し引いて計算します(原則課税)。しかし、スポーツ選手のように仕入税額が比較的少ない職種の場合、「簡易課税」を選択した方が納税額を抑えられるケースが多くあります。 簡易課税の仕組み 2年前の売上高が5,000万円以下であり、事前に「届出書」を提出している場合に限り、実際の経費を計算せずに、売上金額に一定の「みなし仕入率」を掛けて納税額を算出できます。 【参考】みなし仕入率の区分表 事業内容によって、以下の6つの区分に分けられています。 他の所得区分への波及リスク 簡易課税制度の適用は、事業ごとではなく「事業者単位」で行われます。そのため、プロスポーツ選手としての報酬(事業所得)について簡易課税を選択すると、それ以外の所得区分に含まれる課税売上についても、自動的に簡易課税が適用されます。 例えば、プロ選手が副業として不動産賃貸業(不動産所得)や、講演料、原稿料など(事業所得・雑所得)を得ている場合、それらすべてが簡易課税の計算対象となります。 「2年縛り」と還付の放棄 簡易課税を適用するには、原則として適用年度の「開始前日」までに届出が必要です。また、一度選択すると原則2年間はやめられないという制約があります。そのため、高額な投資を行う予定がある場合、簡易課税だと消費税の還付が受けられず大きな損失になる可能性があるため、事前のシミュレーションが不可欠です。 2割特例との選択 現在はインボイス制度導入に伴う激変緩和措置として、簡易課税(50%控除)よりも有利な「2割特例(80%控除)」が選択できる期間(令和8年分まで)があります。いずれも適用要件の確認は必須ですが、安易に簡易課税を選択せず、どちらが有利か慎重な判断が必要です。 取りやめの判断・タイミング 制度を利用する上で、選択届出書と同じくらい重要なのが「取りやめる際の手続」です。取りやめの届出(選択不適用届出書)の提出タイミングには慎重な判断が求められます。提出漏れにより原則課税よりも不利になるケースや、還付を受けられないことも考えられます。また、売上高が毎年安定して5,000万円を超えた後にも簡易課税制度を選択したままにすることで、予期せぬ課税が発生することもあるので注意が必要です。 3. プロスポーツ選手は「第何種」に該当するのか? 簡易課税を適用する際、プロスポーツ選手がどの区分に該当するかは納税額に直結するため非常に重要です。 結論から言うと、国税庁の見解ではプロスポーツ選手は「第五種事業(サービス業等)」に該当し、みなし仕入率は50%として取り扱われます。 なぜ「第四種(60%)」ではないのか? 一部では「プロスポーツ選手は日本標準産業分類に明記されていないため、その他の事業(第四種)に該当し、より高い控除率(60%)を適用できるのではないか」という議論があります。しかし、税務当局は以下の理由からこれを認めていません。 ① 他の表現者・クリエイターとの公平性 世の中には、特定の技能や才能を武器に活躍する個人事業主が数多く存在します。 フリーランスの俳優 落語家や演芸家 小説家、作詞家、作曲家 これらの職業はすべて、自身のスキルを提供して報酬を得る「サービス業」の側面が強く、簡易課税では一律に第五種事業(50%)と定められています。もし、同様に高い専門性を持ってパフォーマンスを提供するプロスポーツ選手だけを第四種(60%)として優遇すると、これらの職種との間で税負担の公平性が保てなくなります。 ② 産業分類の解釈と「実態」の重視 日本標準産業分類では、例えばフリーランスの俳優が「劇団(8023)」に含まれる一方で、芸能事務所に所属する個々の俳優が明記されていないケースがあります。これは産業分類が統計調査を目的としており、すべての個人事業主を網羅していないためです。 そのため、プロスポーツ選手についても、単独の項目がないからといって「サービス業ではない」と判断するのではなく、その「事業の実態」で判断します。 プロ選手は、契約に基づいて試合に出場し、観客に対して「スポーツという娯楽」を提供しています。この実態は、産業分類上の「演芸・スポーツ等興行団(8025)」(大分類N:生活関連サービス業、娯楽業)に準じるものとみなされるため、第五種に分類されるのです。 取引ごとの区分集計 簡易課税を適用する場合、原則として、すべての売上取引を内容ごとに正しい事業区分へ振り分けて集計しなければなりません。 取引ごとの判定: 「 選手報酬(50%)」「車両売却(60%)」「不動産賃貸(40%)」と、1件ずつの取引ごとに正確な判定が必要です。 例: 事業用車両の売却は「第四種(60%)」です。区分を怠り第五種(50%)で一括処理すると不利益を被ります。 区分経理を怠った場合の不利益: 複数の区分があるにもかかわらず一括で集計してしまうと、「その中で最も低いみなし仕入率」を全体に適用しなければならないという厳しいルールもあります。 例: 選手報酬(50%)と不動産収入(40%)を区分していない場合、全体に40%が適用され、多額の過払いが生じる可能性があります。 4. 複雑な税務処理は専門家への相談を
- [芸能人に確定申告は必要か。個人事業主としての義務と判断基準](https://shiodome.co.jp/column/55319/) - 本日は、芸能界で活動される皆様に向けた確定申告の実務と、その重要性について詳しく解説いたします。 1. 芸能人は個人事業主として申告義務を負うのか? 芸能活動と一口に言っても、タレント、俳優、声優、アーティスト、モデル、インフルエンサーなど、その形態は非常に多岐にわたります。ここで重要なのは、活動の対価として受け取る報酬が「給与所得」として年末調整で完結するものなのか、それとも「事業所得」として自ら確定申告を行う必要があるのかという点です。 (1)所得区分の考え方:給与所得か事業所得か 芸能活動に従事する方が一律にどちらの区分に該当するかを断定することはできません。しかし、実態としては多くの方が個人事業主(独立した事業者)として活動しており、事業所得として確定申告を行っています。事務所との契約書の内容に左右されますが、特別な雇用関係にない限りは、個人事業主としての申告が必要であると捉えて差し支えありません。 (2)芸能プロダクションとの契約実態 理解を深めるために、大手お笑い系事務所などに所属する芸人の立場を例に考えてみましょう。若手芸人がメディアで「1回の出演料が数百円である」といったエピソードを披露することがありますが、もし彼らが事務所の「従業員」として雇用契約を結んでいるのであれば、労働基準法における最低賃金の規定に抵触する恐れがあります。 しかし、実際には所属タレントと事務所の間で結ばれているのは「雇用契約」ではなく、マネジメントを委任する「委任契約(専属タレント契約など)」であるケースがほとんどです。事務所の職員(マネージャーや事務スタッフ)は従業員ですが、タレント自身は独立した事業者として、事務所から「報酬」を受け取っているという解釈になります。 バラエティ番組などの密着企画で、芸人の方々が会食やタクシー移動の際に「領収書を必ず受け取る」という姿勢を見せるのは、彼らが自営の「一人親方」であり、経費管理が自身の生活と納税に直結しているからです。一方で、テレビ番組等で「完全月給制」であることを公表しているタレントの方などは、給与所得者に該当し、事務所側で年末調整が行われている場合もあります。 (3)確定申告の要否を判断する基準 自身が確定申告を行うべきかどうかは、主に以下の項目を精査して判断します。 個人事業主としての事業所得がある: 事務所から支払調書を受け取っている場合などが該当します。 給与年収が2,000万円を超える: 給与所得者であっても、高額所得の場合は自身での申告義務が生じます。 副業所得が20万円を超える: 給与を1箇所から受け取り、かつそれ以外の所得(事業所得、不動産所得など)の合計が20万円を超える場合。 複数箇所からの給与: 2箇所以上の事務所等から給与を受け取っており、年末調整をされていない給与とその他の所得の合計が20万円を超える場合。 2. 芸能活動における「必要経費」の範囲と重要性 確定申告において、納税額を適正に算出するために最も重要なのが「必要経費」の計上です。経費とは「売上を得るために直接要した費用」を指します。これを適切に申告することで、課税対象となる所得金額が抑えられ、結果として税負担を軽減することが可能です。 芸能界は特殊な職業柄、プライベートとの境界が曖昧になりやすい項目が多く、税務上の判断には細心の注意が必要です。 主要な経費項目の一覧 3. 確定申告の実務手順 芸能人が事業所得者として申告を行う際、一般的には以下のステップで進めていきます。 (1)申告用紙の選定と入手 申告は税務署または国税庁の「確定申告書作成コーナー」で行います。 申告書第一表・第二表: 確定申告で使用する一般的な様式です。 申告書第四表(損失申告用): 活動初期で経費が収入を上回り、赤字となった場合に使用します。アルバイト等の給与所得がある場合、損益通算によって源泉徴収された税金の還付を受けられる可能性があります。 (2)必要書類の整理 支払調書: 事務所から発行される、年間報酬と源泉徴収税額が記載された書類。 領収書・レシート: 経費の証憑として、Excel等で集計し、整理保管します。 通帳: 報酬の振込や経費の引き落とし履歴を確認します。 控除証明書: 社会保険料や生命保険料の控除を受けるための書類。 (3)書類の作成と提出 白色申告と青色申告の選択により、作成する決算書(収支内訳書または青色申告決算書)が異なります。なお、確定申告書の職業欄には「芸能人」「俳優」「タレント」など、自身の活動実態を反映した名称を記載します。 (4)青色申告制度 事業所得のある方は、一定水準以上の帳簿を備え、適正な申告を行うことで、税務上の特典が受けられる青色申告制度の適用を受けることができます。 青色申告では、原則として複式簿記による記帳が求められる一方、損失の繰越や最大65万円の青色申告特別控除など、税務上の各種の恩恵を受けることが可能です。青色申告の適用を受けるためには、原則として、その承認を受けようとする年の3月15日までに、納税地の税務署に青色申告承認申請書を提出する必要があります。 (5)提出と納税・還付 確定申告書の提出期間は原則として毎年2月16日から3月15日です。還付が発生する場合は、1月1日から提出が可能です。提出は税務署窓口、郵送(消印有効)、またはe-Taxによる電子申告が選択できます。 納税が必要な場合は3月15日までに納付します。一方、住民税については申告した所得に基づき、5月以降に決定通知が届き、6月から納付が始まります。高額な報酬を得た翌年は住民税の負担が大きくなるため、納税資金の確保に留意が必要です。 (6)消費税申告 前々年の売上高が1,000万円を超えている方や、インボイス制度の登録をされた方は、所得税に加えて消費税の申告義務が生じます。個人の消費税の申告期限は3月31日であり、所得税の期限(3月15日)とは異なりますが、資料整理や計算工程が重なるため、確定申告と同時進行で準備を進めるのが最も効率的です。近年の制度改正により、消費税は計算方法の選択肢が増え、判断には一層の専門性が求められます。適正な申告のためにも、お早めに専門家へ相談されることをお勧めいたします。 4. 弊所によるサポート体制
- [芸能人・タレントに係る確定申告実務の指針|必要経費の考え方と適正な節税対応](https://shiodome.co.jp/column/56654/) - 芸能人・タレントの確定申告は、一般的な会社員の申告と比べて、収入の形が多様で、必要経費の判断も個別性が高いため、早い段階から整理しておくことが重要です。所属事務所からマネジメント契約に基づき支払われる報酬がある一方で、番組出演料、イベント出演料、広告出演料、印税、講演料、SNS・配信関連収入など、契約や支払名目の異なる収入が併存することが少なくありません。また、支払時に源泉徴収がされているからといって、そのまま申告が不要になるとは限らず、年間の所得区分、必要経費、各種控除を踏まえて最終的な税額を精算する視点が欠かせません。 とりわけ「芸能人確定申告」というテーマで多くの方が迷いやすいのは、何が必要経費になるのか、どの収入をどの所得区分で整理すべきか、青色申告を選ぶべきか、という三つの論点です。実務では、この三つがつながっています。所得区分が事業所得になるのか、雑所得になるのかによって、使える制度や節税余地が変わり、帳簿の作り方や申告書類も変わってくるためです。したがって、芸能人・タレントの確定申告では、単にレシートを集めるだけでは足りず、収入の性質と活動実態を踏まえた整理が必要になります。 1. 所得区分の判定と税務上の取り扱い 芸能人・タレントの収入は、見た目が似ていても、税務上は同じ扱いになるとは限りません。所属先との雇用関係に基づいて支払われるものであれば給与所得として整理されることもありますが、独立した立場で反復継続して芸能活動を行い、その活動が社会通念上「事業」といえる規模と実態を備えていれば、原則として事業所得として整理されます。他方で、単発の原稿料、講演料、放送出演料などは、事業所得に該当する場合を除き、原則として雑所得として扱うのが国税庁の基本的な考え方です。 この違いは、芸能人の確定申告において非常に重要です。なぜなら、青色申告特別控除は、不動産所得または事業所得を生ずべき事業を営んでいる場合に認められる制度であり、雑所得にはそのまま適用されないからです。また、帳簿保存の状況も、事業所得と雑所得の判断に影響を及ぼし得ます。収入が一定規模に達していても、実態に比して記帳・保存が不十分であれば、期待していた税務メリットを受けにくくなることがあります。芸能活動が本業として継続している方ほど、契約書、請求書、支払明細、入出金記録をそろえ、年間を通じて帳簿化しておくことが望まれます。 2. 業務関連性に基づく必要経費の判断基準 芸能人の確定申告で最も相談が多いのが、必要経費の範囲です。所得税法上、必要経費に算入できるのは、総収入金額を得るために直接要した費用と、その年に生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用です。逆にいえば、芸能活動に関係があるように見えても、私生活上の支出が含まれている場合には、そのまま全額を経費にできるわけではありません。自宅兼事務所の家賃や通信費、水道光熱費のような家事関連費は、取引の記録等に基づき、業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる金額に限って必要経費になります。 芸能人・タレントに多い支出項目を、実務上の考え方に沿って整理すると、次のようになります。 この表のとおり、芸能人の必要経費は「業務で使った気がする」ではなく、「その収入を得るために必要であったと客観的に説明できるか」で判断するのが基本です。特に、被服費、美容費、飲食費、交際費、家賃、スマートフォン代は私的支出と重なりやすく、税務上も説明が求められやすい項目です。領収書の保存だけでなく、案件名、出演日、使用目的、按分根拠まで一緒に残しておくと、申告の精度が大きく変わります。 3. 青色申告制度の適用による節税対策の基盤構築 芸能人の確定申告で節税効果を高めたい場合、最初に検討すべきなのは、むやみに経費を広げることではなく、青色申告を適切に使える体制を整えることです。個人が青色申告の承認を受けるには、原則としてその年の3月15日までに青色申告承認申請書を提出する必要があり、その年の1月16日以後に新たに業務を開始した場合には、開始日から2か月以内が提出期限です。さらに、青色申告特別控除は、一定の要件を満たせば55万円、e-Taxによる申告または優良な電子帳簿保存の要件を満たせば65万円、簡易な記帳でも10万円の控除が認められます。 なお、令和8年度税制改正では、控除額の引上げとともに適用要件の改正が盛り込まれました。本改正では、電子申告の利用や一定水準以上の帳簿作成など、主にITへの対応を満たす納税者に対して節税効果を拡充(最大75万円控除の導入等)する一方、書面申告についてはメリットを縮小させる内容となっています。本改正の適用は令和9年分以後の確定申告からとなりますが、電子申告や会計帳簿のデジタル化は、節税メリットのみならず煩雑な事務の効率化にもつながり、納税者本人にとって有益な内容となります。将来的な制度変更を見据え、今のうちからデジタル化への対応を検討してみてはいかがでしょうか。 ここで大切なのは、青色申告は「事業としての芸能活動」を前提とする制度である点です。したがって、単発的な出演や副業的な活動が中心で雑所得として整理される場合には、同じような収入形態でも青色申告特別控除を前提にした節税設計は取りにくくなります。反対に、年間を通じて継続的に芸能活動を行い、請求、入金、経費、契約、在庫や固定資産の管理まで事業として整えている方は、青色申告を軸にした税務設計が有効になりやすいといえます。帳簿と申告が整っている芸能人ほど、節税は結果として自然に効いてくる、というのが実務上の実感です。 また、家族に仕事を手伝ってもらっているケースでも、処理を誤ると節税どころか否認リスクにつながります。生計を一にする配偶者や親族に支払う給与は、原則として必要経費にはなりませんが、青色申告者で、一定の要件を満たす青色事業専従者給与であれば、労務の対価として相当と認められる金額を必要経費に算入できます。白色申告にも事業専従者控除の制度はありますが、青色事業専従者給与のほうが貢献度に合わせて給与額を決定できるなど、実務上の柔軟性が高いといえます。芸能活動の裏方業務が実際に家族によって継続的に担われているなら、青色申告制度のもと青色事業専従者給与を活用し、形式だけでなく実態に合った制度設計を行うことが重要です。 4. 報酬に係る源泉徴収の適切な取り扱いと留意点 芸能人・タレントの報酬では、支払時に源泉徴収が行われることが多くあります。国税庁の資料では、報酬・料金等に該当するものは、謝礼や取材費など別の名目で支払われていても、実態が報酬・料金等であれば源泉徴収の対象となり得ることが示されています。また、報酬・料金等の一般的な合計税率として10.21%が示され、同一人に対する1回の支払額が100万円を超える部分については20.42%となる類型もあります。芸能関連の報酬も、内容によってこの枠組みに乗ることがあります。 ただし、ここで注意したいのは、源泉徴収された金額がその年の最終税額そのものではないという点です。実際の確定税額は、年間の所得区分、必要経費、青色申告特別控除の可否、医療費控除や寄附金控除などの各種控除を反映して決まります。そのため、源泉徴収が多めになっていれば還付になることもありますし、逆に複数の支払先があり、経費整理や控除反映が不十分だと追加納税になることもあります。芸能人の確定申告では、入金額だけを見るのではなく、税込報酬、源泉徴収税額、振込手数料控除の有無まで確認して、年間売上を正しく再構成する視点が必要です。 5. 申告業務の精度向上に向けた実務フローの確立 所得税の確定申告時期は、例年2月16日から3月15日まで(休日の場合は翌開庁日)と定められています。直近の令和7年分の申告・納付期限は令和8年3月16日(月)でした。もっとも、芸能人の確定申告は2月に入ってから領収書を集め始めるような進め方では間に合いにくく、年内から月次で整理しておくほうが現実的です。 実務では、まず支払先別に年間売上を集計し、契約実態に応じた所得区分(給与、事業、雑所得等)ごとに収入を分類します。次に、源泉徴収税額を支払先別に整理し、必要経費は月別または案件別に集計します。そのうえで、家賃や通信費などの家事関連費(按分項目)について合理的な基準を決め、医療費控除や寄附金控除などの所得控除を反映し、最後に青色申告決算書または収支内訳書を作成する流れが基本になります。白色申告であっても、日々の取引の記帳と帳簿書類の保存は必要であり、売上や経費の記載内容が不十分だと、税務調査時の否認リスクや後からの修正負担が大きくなります。 なお、ふるさと納税をしている芸能人・タレントは、もともと確定申告をする前提で考えたほうが整理しやすい場面があります。マイナポータル連携(e-Tax)を利用すれば寄附データは自動入力されますが、確定申告を行うとワンストップ特例の申請は法的にすべて無効になるため、必ず申告書上ですべての寄附が反映されているか確認しなければなりません。連携漏れの自治体がある場合などは、改めて手入力が必要です。芸能人は収入の変動が大きいことも多いため、見込み所得に応じた寄附額の管理まで含めて、年内の段階から税額予測をしておくと過不足が起こりにくくなります。 6. 確定申告実務において散見される誤謬 芸能人の確定申告で目立つ誤りとしては、第一に、報酬の名目だけで所得区分を決めてしまうことが挙げられます。実態が給与であるのに外注費感覚で処理したり、反対に継続的な事業活動であるのに雑所得のまま放置したりすると、申告全体の整合性が崩れやすくなります。第二に、衣装代、美容費、飲食費、家賃、スマートフォン代など、私的要素を含む支出を十分な根拠なく全額経費にしてしまうケースです。第三に、青色申告の承認申請の期限を過ぎてから節税を考え始めるケースも少なくありません。特に令和9年分から導入される最大75万円控除のような高額な青色申告特別控除を受けるには、事前の申請だけでなく、年初からの優良な電子帳簿保存への対応が不可欠です。 芸能人の節税は、申告書作成時だけで完結するものではなく、年初からの制度選択と記録体制づくりが前提になります。 7. 総括 近年、デジタルプラットフォームを通じた投げ銭、会費、物販、動画配信などの多角的な収益について、申告漏れや計算誤りが目立っています。収益獲得が一般化した一方、源泉徴収の要否や消費税の扱いが特殊であるなど、実務上の取扱いは極めて複雑です。銀行への入金額をそのまま売上と誤認せず、自ら納税資金を確保し、漏れなく申告する体制を整える必要があります。 こうした変化を踏まえ、芸能人・タレントの確定申告は、単に経費を多く入れればよいというものではなく、収入の性質を正しく見極め、必要経費を根拠ある形で整理し、青色申告や各種控除を適切に使うことが重要です。とくに「芸能人確定申告」というテーマでは、所得区分、源泉徴収、必要経費、家事按分、青色申告の五つを一体で設計できるかどうかが、申告の精度を左右します。 また、本稿で扱った所得税に加え、実務上は消費税やインボイス制度への対応も重要論点です。自身の登録状況や経過措置の適用期限を把握し、所得税の最終的な税負担だけでなく消費税の納税まで見据えた、包括的な資金管理を検討することをお勧めします。 芸能活動は案件ごとの契約条件や働き方が異なりやすいため、税務上も画一的な処理ではなく、実態に即した判断が求められます。継続的に活動している方ほど、月次で帳簿を整え、証憑を保存し、年内から着地を見ながら進める体制を整えておくことが、結果として最も堅実な節税対応につながります。 参考文献 [1] 国税庁「令和7年分確定申告特集」 [2] 国税庁「No.2210必要経費の知識」
- [スポーツ選手の確定申告に関する実務対応と税務上の留意点適正な必要経費計上と専門家活用の重要性](https://shiodome.co.jp/column/56867/) - 1. はじめに スポーツ選手にとって、確定申告は単なる年1回の事務手続ではありません。競技活動を通じて得る収入は、チームや所属先からの報酬だけで完結しないことが多く、試合報酬、スポンサー契約、イベント出演料、解説業務、指導料、広告出演料など、複数の収入源が並行して発生しやすい特徴があります。さらに、これらの収入の中には支払時に源泉徴収されるものもありますが、源泉徴収が行われているからといって、そのまま確定申告が不要になるわけではありません。スポーツ選手の税務では、まず「どの収入がどの所得区分に該当するのか」を整理し、そのうえで必要経費を適切に把握し、最終的な所得金額と納税額を正確に算定する視点が重要になります。 また、同じ種目の競技者であっても、あるいは同じチームに所属する選手間であっても、契約形態や収入構成、居住形態等の個別事情により税務上の取り扱いは必ずしも一律ではありません。本稿では一般的な指針を解説しますが、最終的な判断にあたっては各々の実態に基づいた厳密な精査が求められる点に留意が必要です。 2. スポーツ選手の収入構造と所得区分の考え方 とりわけ「スポーツ選手確定申告」というテーマで実務上問題になりやすいのは、収入の性質が一律ではないことです。スポーツ選手がクラブや球団から受ける報酬は原則として事業所得に該当しますが、雇用関係に基づいて支払われる場合は給与所得として整理されます。 さらに、所得区分の判定は競技特性によっても異なります。プロ野球やプロサッカー選手の報酬は、原則として、「事業所得」として扱われます。一方で大相撲の力士については、実務上の指針により、受ける報酬の名目別に給与所得や一時所得、事業所得等に細かく分類される取り扱いが確立されています。こうした法的性格の違いは、源泉徴収の仕組みや確定申告の実務プロセスに決定的な差を生んでいます。 他方、個人としてスポンサー契約を締結して受ける対価、独立した立場で行う講演や競技指導、メディア出演、SNS発信に関連する広告収入などは、事業所得または業務に係る雑所得として検討されることがあります。所得区分の判定においては、その活動が営利性、継続性、独立性を備え、社会通念上「事業」と称するに至る程度で行われているかが実務上の判断基準となります。 そのため、スポーツ選手の税務では、単に「競技に関係する収入だから同じ扱い」と考えるのではなく、契約形態、継続性、独立性、人的・物的設備の有無、帳簿書類の整備状況などを総合的に勘案しなければなりません。特に本業以外の広告収入やSNS収益については、実務上の取り扱いや基準に照らし、事業所得と業務に係る雑所得の厳格な峻別が求められます。 3. スポーツ選手に多い収入項目と実務上の整理 以下の表は、スポーツ選手に多い収入項目について、一般的な整理の方向性をまとめたものです。実際の課税関係は契約内容や実態により異なるため、個別事情に即した確認が必要ですが、実務上の見取り図としては有効です。 4. 必要経費の考え方と適正計上の重要性 確定申告で特に重要になるのが、必要経費の考え方です。スポーツ選手は競技活動の維持・向上のため、一般的な会社員よりも多様な支出を負担しやすい立場にあります。しかし、競技に関連しているように見える支出が、常にそのまま必要経費として認められるわけではありません。 税務上の原則として、必要経費に算入できる金額は、その年において債務が確定した金額に限られます。このほか、当該年分の収入との対応関係、あるいは業務と関連があるかという「対価性」と「必要性」についても厳格に問われます。 また、家事関連費(私生活と業務の両方に関わる支出)については、単に「使っている」という主張だけでは不十分です。業務遂行上直接必要であったことを、使用割合や頻度などの客観的な基準に基づき、区分・按分して説明できる根拠が求められます。 5. 経費計上で迷いやすい支出と判断の視点 実務上は、その支出が競技活動や関連業務から生じる収入の獲得に通常必要であったかという視点で見直すことが有効です。たとえば、スポンサー案件の撮影のために必要となったヘアメイク代やスタイリング費用、競技用具のメンテナンス費、競技映像の解析ソフトの利用料などは、内容によっては業務との関連性を説明しやすい支出と考えられます。これに対し、日常生活でも消費する衣服代、美容費、飲食費、家賃、交際費などは、競技活動との結びつきが明確でなければ、全額を経費とすることは慎重に検討すべきです。特にトップ選手ほど「自己投資」と「私的支出」の境界が曖昧になりやすいため、必要経費としての正当性を客観的に説明するためにも、契約書、請求書、領収書、移動記録、スケジュール、案件内容などの客観資料を残しておくことが重要です。 なお、必要経費の判断は競技種目や契約形態により大きく異なります。同じチームの選手間であっても、個別の実態に即した慎重な検討が不可欠である点に留意してください。 6. 青色申告を活用する意義 また、スポーツ選手の確定申告では、青色申告の活用は大きな意味を持ちます。事業所得に該当する収入がある場合には、青色申告によって帳簿付けと申告を適正に行うことで、青色申告特別控除の適用や、青色事業専従者給与、純損失の繰越しといった制度の活用余地が広がります。青色申告特別控除は、現在は電子申告(e-Tax)等の要件を満たすことで最大65万円の控除が認められていますが、令和8年度税制改正では、控除額の引上げ(最大75万円)とともに適用要件の改正が盛り込まれました。 さらに、青色申告者が生計を一にする配偶者や親族に青色事業専従者給与を支払う場合には、事前の届出を前提に、適正額であれば必要経費算入が認められる仕組みがあります。加えて、事業所得などに赤字が生じた場合には、一定の要件のもとでその純損失を翌年以後3年間繰り越す制度も用意されています。収入の波が大きいスポーツ選手にとって、単年だけで税負担を考えるのではなく、数年単位で収支と税務を設計する視点は実務上きわめて重要です。 7. 帳簿・証憑管理の実務上のポイント 青色申告の優遇措置を適用する上での要件は、適正な記帳と証拠資料の保存です。帳簿や決算関係書類は7年間、領収書や受取書などは5年間の保存が義務付けられています。これらは単なる事務記録ではなく、申告内容の正当性を裏付ける重要な根拠となります。 スポーツ選手は、試合や遠征、メディア対応、スポンサー業務などで日々の予定が不規則になりやすく、多忙な日常の中で、個々の支出の理由を後から特定するのは容易ではありません。確定申告直前に整理するのではなく、月次で収支を管理し、使途を記録しておく習慣が、税務調査等において確実な説明を可能にする備えとなります。 8. 確定申告が必要となるケースと判断上の注意点 所得の構成が複雑なスポーツ選手にとって、申告の要否判断は一般の給与所得者以上に慎重さが求められます。所得税法の規定では、確定申告の期間は原則として翌年2月16日から3月15日までとされており、給与所得者であっても給与以外の所得金額の合計が一定基準を超える場合などには申告義務が生じます。仮に、所属チームから給与を受け年末調整が済んでいる選手であっても、スポンサー収入やイベント出演料などの所得が発生していれば、その金額次第で別途申告が必要になります。ここで留意すべきは「副収入が20万円以下なら気にしなくてよい」という誤解から生じるリスクです。この規定はあくまで給与所得がある者を前提とした所得税申告の簡便的な取り扱いに過ぎず、住民税には適用されないほか、医療費控除や寄附金控除を適用する場合、あるいは複数の場所から給与を受けている場合など、前提条件によって判断が分かれます。収入源が多岐にわたる選手ほど、全体を俯瞰した正確な確認が不可欠です。 9. 海外収入があるスポーツ選手の税務上の留意点 さらに、海外大会への出場や国外クラブへの所属、あるいは海外スポンサー契約や国外広告配信など、国際的な活動を伴う選手は一層慎重な検討が必要です。日本の居住者については、原則として国内外を問わずすべての所得が課税対象となる全世界所得課税の考え方が適用されます。そのため、海外で受け取った賞金、出演料、スポンサー料なども、適切に日本の確定申告へ反映させなければなりません。他方で、外国で既に税が課されている場合には、二重課税を避けるための外国税額控除の適用が重要な論点となります。契約相手国、支払地、居住者判定など、国内だけでは完結しない複雑な要素が重なるため、単なる国内申告の延長線上として捉えるのではなく、国際税務の視点を取り入れた戦略的な管理が求められます。 10. スポーツ選手にとって専門家選びが重要となる理由 確定申告において専門家選びが重要となる最大の理由は、税額計算以上に、所得区分の法的整理、必要経費の妥当性判断、そして契約実態の精緻な読み解きといった「実務の前段における戦略的判断」が税務リスクを決定づけるからです。スポーツ選手の収入は、同じ「報酬」という言葉であっても、給与、事業、雑所得のいずれとして構成するかにより、適用可能な税制や経費の容認範囲は大きく変動します。 特に競技活動とブランド活動が一体化している近年では、広告宣伝案件、SNS案件、肖像利用、ファンクラブ運営、オンラインサロン、グッズ販売など、従来の「競技収入」だけでは整理しきれない収益構造も増えています。こうした状況では、スポーツビジネスや個人課税に理解のある税理士と連携し、単年の申告だけでなく、収支管理、法人化の要否、家族を含めた運営体制、海外案件への備えまで含めて設計していくことが、安定した競技活動にもつながります。個々のライフステージやキャリアの変化に並走し、幅広い経験と多角的な視点をもって一貫した支援を提供できるパートナーの存在こそが、競技生活を長期的に支える強固な財務基盤となります。 11. おわりに スポーツ選手の確定申告では、「収入があるから申告する」・「領収書があるから経費にする」という単純な発想では十分ではありません。重要なのは、どの収入がどの所得に当たり、どの支出がその所得に対応しているのかを、契約実態と証拠資料に基づいて一貫して説明できる状態を作ることです。適正な申告は、不測の税務トラブルを回避するだけでなく、キャリアの進展に合わせた持続的な資産形成にもつながります。実績や知名度の向上とともに税務も複雑化しやすいからこそ、早期から信頼できる専門家と連携し、早い段階から申告体制を整え、必要経費の管理と証憑保存を習慣化し、必要に応じて専門家の助言を受けることが、結果として最も合理的な税務対応になりやすく、競技パフォーマンスに最大限集中するための最良の選択となります。 参考文献 [1] 国税庁「No.2020確定申告」[2] 国税庁「No.2210必要経費の知識」[3] 国税庁「No.2792源泉徴収が必要な報酬・料金等とは」[4] 国税庁「No.2070青色申告制度」[5] 国税庁「事業所得と雑所得の区分について」[6] 国税庁「No.2010納税義務者となる個人」[7] 国税庁「No.1240居住者に係る外国税額控除」
- [芸能人・スポーツ選手における領収書・レシート紛失時の必要経費計上と確定申告上の実務対応](https://shiodome.co.jp/column/57210/) - 1. はじめに 芸能人やスポーツ選手の確定申告では、一般の給与所得者に比べて、現場対応や移動、撮影、遠征、打合せ、トレーニング、衣装準備などに伴う支出が多く、しかも日々のスケジュールが不規則になりやすいため、領収書やレシートを紛失してしまう場面が少なくありません。とりわけ、現金払いで精算した交通費、小規模な備品代、撮影現場周辺での支出、急な現場対応に伴う立替費用などは、後から見返したときに証憑が揃わず、「領収書がない経費はすべて計上できないのか」と不安に感じる方も多いと思われます。 しかし、税務実務では、単に領収書の有無だけで判断するのではなく、その支出が本当に収入を得るために必要であったのか、金額や時期、相手先、内容がどこまで客観的に確認できるのか、そして帳簿にどのように記録されているのかという点を総合して整理することが重要です。国税庁は、必要経費に算入できる金額について、総収入金額を得るために直接要した費用や、その年に生じた業務上の費用であることを示しています。 芸能人・スポーツ選手の仕事は、出演契約、スポンサー案件、試合報酬、肖像利用、指導料、イベント登壇料など、収入源が複数に分かれやすい一方で、仕事と私生活の境界が重なりやすい支出も多いという特徴があります。そのため、領収書やレシートを紛失した場合には、「ないから終わり」と考えるのでも、「仕事で使ったはずだから大丈夫」と楽観するのでもなく、取引事実をどう補強し、どう説明可能な状態に戻すかという視点で対応することが実務上重要です。 2. 領収書がない場合にまず押さえたい必要経費の基本原則 必要経費の判断は、支出の名称ではなく、その支出がどのような収入と結び付いていたかによって行われます。たとえば、同じ現金払いでも、広告撮影のために急きょ購入した小道具費と、日常生活でも通常使用する私物の購入費とでは、税務上の見え方は大きく異なります。国税庁は、必要経費になるものとして、総収入金額を得るために直接要した費用の額、およびその年に生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用の額を掲げています。さらに、家事関連費については、取引の記録などに基づいて、業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる金額に限って必要経費になるとしています。 この考え方からすると、領収書を紛失したかどうか以前に、そもそもその支出が業務のためのものだったのか、私的支出が混ざっていないかが前提として問われます。芸能人であれば、撮影用のスタイリング費、現場用の消耗品、作品準備のための資料代、営業用プロフィール撮影に伴う支出などが問題になりやすく、スポーツ選手であれば、試合や遠征に伴う移動費、競技用具の補修費、スポンサー撮影に伴う現場費用、競技映像の解析やトレーニング記録に関する支出などが検討対象になりやすいといえます。もっとも、それらが実際に必要経費として認められるかどうかは、支出の実態と証拠の積み上げによって差が出ます。 3. 領収書がないからといって直ちに一切経費にできないわけではない理由 実務上、領収書やレシートは重要な証拠ですが、それだけが唯一の証拠というわけではありません。税務申告は、日々の取引を帳簿に記録し、その取引内容を後から確認できる状態にしておくことが基本です。国税庁も、所得金額を正しく計算して申告するためには、収入金額や必要経費に関する日々の取引の状況を記帳し、取引に伴い作成したり受け取ったりした書類を保存しておく必要があると示しています。 このため、領収書を紛失した場合であっても、取引年月日、支払先、金額、内容、業務との関係が他の資料から合理的に確認できるのであれば、税務上の説明可能性が直ちにゼロになるわけではありません。反対に、領収書そのものは残っていても、何のための支出か説明できず、私的支出との区別もつかないのであれば、必要経費としての説得力は弱くなります。芸能人・スポーツ選手のように現場対応が多い職業では、「証憑の有無」だけでなく、「支出の事実をどれだけ立体的に復元できるか」が重要な差になります。 4. 芸能人・スポーツ選手が領収書を紛失しやすい支出の典型例 領収書紛失が起きやすい支出には一定の傾向があります。たとえば、撮影現場周辺での小口支出、現場までの電車・バス移動、急なタクシー利用、コンビニでの備品購入、会場近くでの消耗品調達、遠征先での少額立替、現地スタッフとの打合せに伴う小規模な支出などは、慌ただしい流れの中で証憑管理が後回しになりやすい項目です。芸能人であれば、衣装補修用品やメイク用品の一部、資料出力費、現場で必要となった雑費などが該当しやすく、スポーツ選手であれば、競技前後の応急的な備品調達やトレーニング関連の少額支出が該当しやすいといえます。 もっとも、これらの支出は、領収書を失いやすい一方で、私的支出と混同されやすいという特徴もあります。そのため、後から帳簿に計上する際には、「現金で支払った」「仕事のときに使った」という抽象的な説明では足りず、その支出がどの案件、どの現場、どの競技活動、どの収入獲得行為に対応していたのかを整理する必要があります。ここを曖昧にしたまま処理すると、税務調査などの場面で説明が困難になります。 5. 領収書・レシート紛失時に代替資料として整理したいもの 領収書がない場合、実務上は代替資料の積み上げが重要になります。たとえば、現金引出しの記録、預金通帳、クレジットカードや電子マネーの利用明細、スケジュール表、出演依頼メール、撮影香盤表、遠征日程、会場案内、契約書、請求書、納品書、メッセージのやり取り、当日の写真、メモ、関係者への確認記録などは、取引事実を補強する資料になり得ます。国税庁は、請求書、納品書、送り状、領収書などの書類を保存対象として示しており、また帳簿には取引年月日、相手方の名称、金額などを記載することを求めています。 したがって、たとえば「〇月〇日に都内スタジオで広告撮影があり、その際に現場用消耗品を現金購入したがレシートを紛失した」という場合には、当日の撮影スケジュール、関係者との連絡履歴、現金引出しの記録、業務メモ、購入品の使用状況などを組み合わせて、支出の存在と業務性を説明することが考えられます。スポーツ選手であれば、「試合前日に遠征先で競技用テーピングや補助器具を購入したがレシートを失った」という場面で、試合日程、遠征行程、トレーナーとのやり取り、支払時刻のメモ、チームや競技活動との関連を示す資料が補強要素になります。 6. 現金払いの経費を計上する際に帳簿へ残すべき事項 領収書やレシートがない場合、帳簿記載の精度がより重要になります。最低限、取引日、支払先、支出金額、内容、業務との関係、どの案件・どの現場・どの競技活動に対応するのかを明確に残しておくことが望ましいです。国税庁は、帳簿に記載すべき事項として、取引の年月日、相手方の名称、金額、日々の収入や経費の金額などを示しており、記帳は所得金額が正確に計算できるよう、整然かつ明瞭である必要があるとしています。 芸能人やスポーツ選手の実務では、経費帳や会計ソフトの摘要欄に「撮影用消耗品」「スポンサー案件移動費」「遠征先競技備品」「試合前現場対応費」などとだけ記すのではなく、できれば案件名、出演名、競技名、日付、場所まで入れておく方が望ましいです。領収書が紛失している場合ほど、後から第三者が見ても意味が通るように記録しておくことが重要です。税理士の立場から見ると、帳簿の摘要が具体的であるかどうかは、説明可能性に大きく影響します。 7. 経費として計上しやすいものと慎重に扱うべきもの 現金払いかどうか、領収書があるかどうかにかかわらず、支出の性質によって経費計上のしやすさには差があります。以下のように整理すると、実務上の判断がしやすくなります。 このように、領収書を紛失した場合でも、もともと業務性が強い支出は比較的整理しやすい一方、私生活と混ざりやすい支出は、証憑がないことで一気に説明が難しくなります。特に芸能人の美容費、私服と兼用し得る衣装費、スポーツ選手の健康維持費や私生活と重なるトレーニング関連支出などは、領収書が残っていたとしても慎重な判断が必要な費目です。領収書がない状態では、なおさら安易な経費計上を避ける方が安全といえます。なお、必要経費は家事関連費について業務遂行上直接必要であった部分を明確に区分できる場合に限られるため、この線引きは特に重要です。 8. 領収書紛失時にやってはいけない処理 領収書がない経費を申告する際に避けたいのは、記憶だけでまとめて金額を作ること、年末に概算で一括計上すること、同種の支出を丸めて処理すること、そして相手先や用途がわからないまま「雑費」で処理することです。とりわけ、現金払いの小口支出を後から一括でまとめて記帳すると、実際に何に使ったのか、どの取引と対応するのかが不明瞭になり、税務上の説明可能性を著しく低下させます。 また、領収書がないことを理由に、別の日付のレシートで補填したり、内容の異なるレシートを流用したりすることは、「仮装・隠蔽」とみなされる行為であり、断じて厳禁です。これらは深刻な税務上のリスクを招き、重加算税の適用を含む各種ペナルティの対象となります。 税務では、支出があったかどうかだけでなく、その支出内容と時期、相手先、金額が整合しているかが見られます。したがって、証拠が弱い場合には無理に広く計上するよりも、業務関連性が明確に復元できる支出に絞って整理する方が、申告全体の信頼性を高めやすいといえます。 9. 芸能人・スポーツ選手が日常的に整えておきたい再発防止策 領収書紛失時の対応を考えると同時に、今後同じ問題を起こしにくくする運用も重要です。現場ごと、案件ごと、競技ごとに支出を整理できるよう、財布や封筒を分ける、スマートフォンですぐ撮影する、受け取ったレシートをその場で会計アプリやメモに紐付ける、現金払いを減らしてキャッシュレス決済を活用する、日次または週次で簡単な経費入力を行うといった運用は有効です。国税庁も、日々の取引を記帳し、請求書や領収書などの書類を保存する必要があることを示しており、帳簿や書類の保存期間も定めています。 芸能人やスポーツ選手は、繁忙期や遠征、長時間拘束の現場が続くと経理処理が後回しになりがちです。しかし、後から思い出して補うほど、証拠は薄れ、説明も難しくなります。税務リスクを抑えるうえでは、完璧な経理体制よりも、まず「その日のうちに記録を残す」「案件との紐付けを消さない」仕組みを作ることが効果的です。 10. 税理士に相談した方がよい場面 領収書がない経費の問題は、単なる書類不足の問題に見えて、実際には所得区分、必要経費の範囲、家事関連費との線引き、収入との対応関係、帳簿の作り方まで関わってきます。芸能人・スポーツ選手は、給与所得、事業所得、雑所得が混在することも多く、同じ支出でもどの所得に対応するかによって整理の仕方が変わる場合があります。したがって、紛失した証憑が少額であっても、同様の支出が多い場合や、年間を通じて現金払いが多い場合には、早めに税理士へ相談し、どの程度まで代替資料で補えるか、どの項目は計上を見送るべきかを整理しておくことが望ましいです。 特に、スポンサー案件や出演案件が多い芸能人、遠征や試合関連支出が多いスポーツ選手、個人事業としての活動とチーム・事務所所属の活動が混在している方は、経費の線引きに個別判断が入りやすくなります。こうした方ほど、領収書をなくした後の対処だけでなく、なくさない体制、なくしても復元しやすい体制まで含めて設計しておくことが、長期的には最も合理的です。 11. おわりに 「領収書がない経費」は、確定申告の場面で非常に悩ましい論点ですが、重要なのは、領収書やレシートの有無だけで結論を急がないことです。税務上は、その支出が収入を得るために直接必要であったか、業務上の費用として説明できるか、そして帳簿や代替資料によって取引事実をどこまで明瞭に示せるかがポイントになります。必要経費の基本原則と記帳・書類保存の考え方を踏まえると、領収書紛失時には、証拠が弱い支出を漫然と積み上げるのではなく、業務性と再現可能性の高いものから丁寧に整理することが適切です。 芸能人・スポーツ選手は、仕事の性質上、どうしても現場優先になりやすく、経費精算や証憑管理が後回しになりがちです。しかし、税務実務では、後からの一枚より、その時点で残した一言メモやスケジュール記録の方が役立つこともあります。現金払いの経費を適法に計上するためには、領収書を受け取る習慣だけでなく、紛失時にも説明できる管理体制を整えておくことが、結果として最も確実な確定申告につながるといえるでしょう。 参考文献 [1] 国税庁「No.2210必要経費の知識」 [2] 国税庁「No.2080白色申告者の記帳・帳簿等保存制度」
- [芸能人・タレントに係るインボイス制度の影響と実務対応の要点](https://shiodome.co.jp/column/57283/) - 1. はじめに インボイス制度は、芸能人やタレントにとって、単なる請求書様式の変更にとどまらない論点です。テレビ出演、CM出演、イベント登壇、広告タイアップ、SNS案件、肖像使用、ファンクラブ運営、グッズ販売など、近年の芸能活動は収益源が多様化しており、取引先も放送局、制作会社、広告代理店、事務所、ブランド企業、プラットフォーム運営会社など複数にまたがることが珍しくありません。そのため、「自分はインボイスに対応すべきか」「登録しないと仕事に影響するのか」「登録すると税負担はどう変わるのか」といった疑問は、実務上きわめて重要です。 特に芸能人・タレントの仕事は、一般消費者向けの売上と、事業者向けの役務提供が混在しやすい点に特徴があります。インボイス制度は、買手である事業者の仕入税額控除と密接に関わる制度であるため、BtoB取引が多い芸能人ほど、登録の有無が契約条件や報酬交渉に影響しやすくなります。他方で、登録すれば自動的に有利になるわけでもなく、消費税申告の負担、納税資金の確保、請求実務の整備など、新たな管理も必要になります。したがって、芸能人インボイス制度の問題は、制度の是非を抽象的に論じるのではなく、収入構造と取引先の性質を踏まえて実務的に判断することが重要です。 2. インボイス制度の基本構造を押さえる インボイス制度は、令和5年10月1日から開始された適格請求書等保存方式であり、買手が仕入税額控除を受けるためには、原則として一定の事項が記載された帳簿と適格請求書等の保存が必要とされています。また、適格請求書を交付できるのは、税務署長の登録を受けた適格請求書発行事業者に限られます。さらに、登録を受けた事業者は、基準期間の課税売上高にかかわらず、消費税の申告義務を負うことになります。 ここで実務上重要なのは、インボイス制度が「売手のための制度」というより、「買手の仕入税額控除の前提となる制度」である点です。たとえば、広告代理店や制作会社が芸能人・タレントに出演料や監修料を支払う場合、その会社側が仕入税額控除を適切に受けたいと考えるなら、売手である芸能人側にインボイス発行事業者であることを求める動機が生じます。したがって、芸能人本人にとっては、消費税の知識が薄かったとしても、契約交渉や請求実務の現場では、インボイス対応の有無が取引条件の一部として扱われやすくなります。 また、適格請求書は「請求書」という名称に限られず、一定事項が記載されていれば、納品書、領収書、報酬明細その他これらに類する書類でも足りる仕組みです。そのため、芸能人やタレントの現場実務では、請求書発行のタイミングだけでなく、報酬明細の記載方法、立替精算書の形式、所属事務所経由の請求フローまで含めて確認する必要があります。 3. 芸能人・タレントの仕事でインボイス制度が問題になりやすい理由 芸能人・タレントの収入は、見かけ上は同じ「出演料」や「報酬」に見えても、実際には取引相手や契約形態が多様です。たとえば、テレビ番組出演、舞台出演、イベント司会、企業広告、雑誌取材、YouTubeやSNSでのPR案件、写真や映像の二次使用許諾、オンラインサロンの運営などでは、契約主体も支払主体も異なることがあります。その結果、どの取引がインボイスを求められやすいかも一律ではありません。 一般に、取引先が課税事業者であり、支払う報酬について仕入税額控除を意識する場合には、芸能人・タレント側が登録しているかどうかが実務上の関心事になります。他方で、ファンや一般消費者に対して直接提供するサービスや物販など、買手が消費者である取引では、相手方が仕入税額控除を受ける立場にないため、インボイスの必要性は相対的に低くなります。つまり、同じ芸能人であっても、広告出演や企業案件が中心の人と、一般消費者向けのライブ物販や会員サービスが中心の人とでは、登録の要否を考える前提が異なります。 このため、芸能人インボイス制度への対応は、単純に「登録するかしないか」ではなく、「どの収入が誰から発生しているか」「その相手方がインボイスを重視する事業者か」「事務所経由か本人受領か」といった収入構造の棚卸しから始めるのが実務的です。制度理解より先に取引実態の把握が必要になる点が、芸能人・タレント特有の難しさといえます。 4. どのような取引で影響が出やすいか 芸能活動における典型的な取引を、インボイス制度との関係で整理すると、次のようになります。 この表から分かるとおり、芸能人・タレントがインボイス制度の影響を強く受けるのは、主として企業や制作会社など事業者に対して役務提供を行う場面です。とりわけ近年は、テレビや舞台だけでなく、ブランド案件やSNS広告案件が増えており、事業者間取引としての性格が強い報酬が増加しています。そのため、「芸能人だから特殊」というより、「BtoB売上が多い個人事業者としてどう対応するか」という観点で整理する方が実務に沿っています。 5. 免税事業者のままでいる場合に起こり得る影響 芸能人・タレントがインボイス発行事業者として登録していない場合、自身は適格請求書を交付することができません。すると、取引先が原則どおり仕入税額控除を行うためのインボイスを受け取れないため、取引先側でコスト意識が高まりやすくなります。 このことは、直ちに「未登録だと仕事ができない」という意味ではありません。実際には、取引先の方針、契約金額、継続性、代替可能性、本人の知名度や交渉力などによって対応は分かれます。しかし、実務上は、報酬額の見直しを打診される、税込総額での固定報酬を求められる、事務所や制作会社から登録予定を確認される、登録済みの外部人材が優先されやすくなるといった形で影響が出ることがあります。 特に、企業広告や継続的なPR案件のように、発注側が制度対応を社内ルール化している場合には、芸能人・タレント本人が制度を深く理解していなくても、マネージャーや経理担当を通じてインボイス対応の要否が問われる場面が増えます。そのため、未登録を選ぶのであれば、「なぜ未登録なのか」「取引先にどう説明するのか」「報酬条件をどう設計するのか」まで含めて考える必要があります。 6. 登録する場合に生じる影響 一方、登録を受ける場合には、適格請求書発行事業者として取引先にインボイスを交付できるようになります。これは、取引先との関係維持や新規案件の受注面では有利に働くことがありますが、その反面、登録した以上は課税事業者として消費税申告を行う必要が生じます。国税庁も、登録を受けた課税事業者は、基準期間の課税売上高にかかわらず、消費税の納税義務が免除されないことを明示しています。 ここで見落とされやすいのは、インボイス登録は「番号を取るだけ」の手続ではないという点です。芸能人・タレントが登録すると、請求書や報酬明細への登録番号記載、売上ごとの消費税管理、交付したインボイスの写しの保存、消費税申告と納税資金の準備など、継続的な管理が必要になります。仕事の現場では表に出にくいものの、経理体制が弱いまま登録すると、売上規模ほど税務管理が追いつかないという事態も起こり得ます。 したがって、登録の判断は、単に取引先の要請だけで決めるのではなく、報酬水準、経費構造、事務所のサポート有無、税理士との連携状況、将来の収入見通しまで踏まえて行う方が望ましいです。芸能人・タレントの仕事は年ごとの変動が大きいため、一時的な案件対応だけでなく、翌年以降の納税実務まで見据える必要があります。 7. 芸能人・タレントが検討したい対応策 芸能人インボイス制度への対応として、実務上は三つの視点が重要です。第一に、登録の要否を収入構造から判断することです。企業相手の業務委託が多いのか、一般消費者向け売上が多いのか、事務所経由か本人直接契約かを確認し、インボイスを求められやすい売上がどれだけあるかを把握する必要があります。 第二に、契約と請求の流れを見直すことです。本人が請求主体なのか、事務所が一括請求するのか、報酬額が税抜・税込のどちらで設計されているのか、立替経費の扱いはどうなっているのかを整理しておかないと、登録後にかえって混乱しやすくなります。特に、芸能人やタレントの案件では、報酬、実費精算、移動費、衣装費、ヘアメイク費などが一体で動くことが多いため、消費税区分の整理が曖昧なままでは危険です。 第三に、納税負担の見通しを事前に作ることです。登録すると、請求時に消費税相当額を受け取っていても、それをそのまま自由に使えるわけではなく、後に申告納税が必要になります。収入変動の大きい芸能人・タレントほど、税抜ベースで売上を捉え、消費税分を別管理しておく運用が安定的です。 8. 2割特例を含む負担緩和策の考え方 インボイス制度を機に免税事業者から登録した小規模事業者については、一定の課税期間において、納付税額を売上げに係る消費税額の2割とすることができる特例、いわゆる2割特例が設けられています。この特例は、令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する課税期間で適用可能とされ、事前の届出を要しない形で申告時に適用できる場合があります。個人の場合は、現実的には令和8年分の確定申告(令和9年3月期限)が、2割特例を使える最後のチャンスになります。 芸能人やタレントにとって、この2割特例は、インボイス登録後の納税負担を見積もるうえで重要な論点です。特に、これまで免税事業者で消費税申告に慣れていなかった人にとっては、一般課税で細かく仕入税額を積み上げるより、まず特例の適用可否を確認する方が実務的な場合があります。他方で、誰でも自動的に使えるわけではなく、基準期間や特定期間の売上高、課税事業者となった経緯などにより適用できない課税期間もあるため、単に「登録したら2割特例で大丈夫」と考えるのは避けるべきです。 また、2割特例はあくまで一定期間の経過措置であり、永続的な制度ではありません。したがって、芸能人・タレントが登録を判断する際には、目先の1年だけではなく、特例終了後に一般課税や簡易課税でどう対応するかまで視野に入れておくことが重要です。 9. 所属事務所・制作会社との関係で確認したいこと 芸能人・タレントのインボイス対応では、本人単独の判断だけでは足りないことが少なくありません。特に所属事務所がある場合には、誰が契約主体で、誰が請求主体で、誰が消費税を申告するのかを明確にしておく必要があります。出演契約は本人名義でも請求は事務所、あるいは逆に案件ごとに本人受領と事務所受領が混在しているというケースでは、制度上の整理と現場運用がずれやすくなります。 制作会社や広告代理店とのやり取りでも、登録番号の通知、請求書記載事項、締日と支払日の整合、経費精算の方法などを早めに擦り合わせておく方が安全です。芸能人の現場では、出演本番までの準備が優先され、経理書類の整備が後回しになりやすいですが、インボイス制度下では請求書の要件不備がそのまま相手先の経理トラブルにつながることもあります。そのため、マネージャー、事務所経理、税理士の三者で最低限の運用ルールを決めておくことが望ましいです。 10. おわりに 芸能人・タレントへのインボイス制度の影響は、制度の名称から受ける印象以上に、契約実務、報酬交渉、請求方法、納税管理へ広く及びます。基本的な論点は、適格請求書を交付できるのは登録事業者に限られ、登録すれば消費税申告が必要になるという点にあります。そのうえで、売上の相手方が事業者中心なのか消費者中心なのか、本人請求か事務所請求か、登録後に2割特例などを活用できるのかといった事情を踏まえて、個別に判断することが重要です。 芸能人インボイス制度への対応は、登録すること自体が目的ではなく、自身の収益構造に合った税務運用を整えることが目的です。知名度や案件数が増えるほど、税務と契約実務は切り離せなくなります。だからこそ、制度の表面的な情報だけで判断するのではなく、収入の流れを整理し、必要に応じて税理士と連携しながら、無理のないインボイス対応を設計していくことが、結果として安定した活動基盤につながるといえるでしょう。 参考文献 [1] 国税庁「No.6498適格請求書等保存方式(インボイス制度)」 [2] 国税庁「インボイス発行事業者の『2割特例』適用可否フローチャート」
- [移転価格リスクはどこに潜むのか~実務対応の進め方と課税事例から読み解く本質~](https://shiodome.co.jp/column/57341/) - 海外子会社との取引を行う企業にとって、移転価格税制は避けて通れないテーマです。しかし実務の現場では、何から着手すべきか、どこにリスクがあるのかが曖昧なまま対応が後手に回るケースも少なくありません。移転価格は制度として理解していても、実務としてどう管理すべきかが整理されていないことが原因です。本稿では、移転価格対応の全体像を整理するとともに、実際の課税事例を踏まえながら、実務上どのような点が問題となるのかを読み解いていきます。 1. 移転価格税制の全体像とリスクの所在 (1)対象範囲の広がりと遡及リスク まず押さえるべきは、移転価格税制の対象範囲です。対象となるのは物品売買に限らず、役務提供やロイヤリティ、さらには貸付や保証といった金融取引まで含まれます。すなわち、海外グループ会社との取引のほぼすべてが対象になり得るという認識が必要です。 また、移転価格調査では最大7年間遡って課税される可能性があり、その影響は単年度にとどまりません。仮に年間1,000万円の利益移転と判断された場合、7年分で7,000万円が調整対象となり得ます。この遡及リスクは実務上のインパクトが大きく、初期対応の遅れが後に大きな負担となる点に注意が必要です。 (2)調査環境の変化 移転価格というと大企業の論点と捉えられがちですが、現場感覚としては明確に変化しています。数十億円規模の企業に対しても調査が行われており、親子間取引の個別論点について詳細な検証がなされるケースが増えています。 実際に、国税庁の公表データによれば、移転価格調査の非違件数は増加傾向にある一方、1件当たりの更正所得金額は小型化しています。2000年代前半には1件当たり10億円を超える大型事案が中心でしたが、近年は2~3億円台で推移しており、調査対象が大企業から中堅・中小企業へと広がっていることが読み取れます。 特に重要なのは、移転価格調査が単独で実施されるのではなく、法人税調査の延長線上で深掘りされる点です。その結果、通常の税務調査の中で移転価格の問題が顕在化するという構造になっています。 2. 実務対応の基本的な進め方 (1)いきなり文書化しない 実務でよく見られる誤解の一つが、ローカルファイルの作成から着手してしまうことです。しかし、取引の実態が整理されていない状態で文書化を進めても、形式的な対応にとどまります。まずは現状の取引を把握し、どこに利益が帰属しているのかを確認することが出発点となります。 (2)リスクの特定と方針設計 その上で、機能と利益の不一致や説明が難しい取引条件を特定し、価格設定の考え方を整理します。このプロセスを経て初めて、グループとしての方針を構築することが可能となります。その後に文書化を行い、継続的に見直していくことで、初めて実務として機能する体制が整います。 3. 課税事例から見る移転価格リスクの本質 (1)ロイヤリティ取引の問題 ある国内ビル設備関連メーカーは、海外子会社との技術援助契約に基づくロイヤリティの料率が低すぎると指摘され、4年間で計約20億円の申告漏れ、追徴税額約6億円という結果になりました。ここで問われたのは、契約の有無ではなく、利益配分の妥当性です。つまり、形式ではなく実態で判断されるという点が、移転価格税制における重要なポイントです。 (2)商品販売価格の問題 あるアウトドア用品メーカーでは、韓国の子会社への販売価格が低く設定されていたことにより、3年間で約6億円の申告漏れを指摘され、1億5,000万円余りの追徴課税を受けています。特に、長年同じ価格を据え置いている場合や、市場環境の変化を反映していない場合には、このリスクが顕在化しやすくなります。 (3)地域別取引における問題 あるスポーツ用品メーカーでは、アジアの子会社への販売価格の問題で、4年間で約11億円の申告漏れを指摘され、追徴税額は約2億円に上りました。。このことは、特定の取引類型に限らず、クロスボーダー取引である限り同様のリスクが存在することを示しています。 4. 課税事例に共通する構造 (1)利益の偏在 これらの事例に共通するのは、海外側に利益が偏っているという点です。日本側の利益が不自然に低い場合、その理由が説明できなければリスクとなります。 (2)価格設定の根拠の弱さ 社内ルールのみで価格を決定している場合や、外部データとの比較が行われていない場合には、価格の合理性を説明することが困難となります。 (3)見直しの欠如 一度設定した価格を見直さずに放置している場合、結果として市場環境との乖離が生じ、問題とされる可能性が高まります。 5. 実務対応の方向性 (1)プロセスの明確化 実務対応として最も重要なのは、価格決定のプロセスを明確にすることです。どのような前提で、どのようなデータを用いて価格を決定したのかを説明できる状態を整える必要があります。 (2)外部比較と継続的見直し 外部データとの比較を行い、その結果を踏まえて価格を設定すること、さらに市場環境の変化に応じて定期的に見直すことが不可欠です。 (3)利益水準の確認 最終的には、結果としての利益配分に違和感がないかを確認する視点が重要となります。価格が合理的であっても、利益配分に歪みがあればリスクは残ります。 おわりに 移転価格対応は単なる税務対応ではなく、グループ全体の利益設計に関わる経営課題です。実務のリアルは、意図の有無にかかわらず、結果として利益が海外に偏っていれば指摘されるという点にあります。 重要なのは、調査対応としてではなく、平時から利益配分をコントロールできる仕組みを持つことです。課税事例は過去の出来事ではなく、自社のリスクを映し出す鏡として活用すべきものです。 移転価格の問題は形式ではなく実態で判断されます。だからこそ、説明可能なプロセスを構築し、それを継続的に運用していくことが、最も現実的で有効な対応といえるでしょう。 まずは自社のクロスボーダー取引を棚卸しし、どこにリスクがあるかを把握することから始めてみてはいかがでしょうか。
- [TNFD提言の理解と実践:その4・ガイダンスに見るシナリオ分析方法](https://shiodome.co.jp/column/27986/) - 1. TNFDシナリオ分析アプローチの特徴 本コラムでは、TNFDシリーズその2で触れたもう一つのTNFDのキーワード、レジリエンスに関連し、その評価の核となる「シナリオ分析」について理解を深めていきます。これは、TNFDの柱・戦略にある開示項目の1つ「自然関連のリスクと機会に対する組織の戦略のレジリエンスについて、さまざまなシナリオを考慮して説明」に該当します。このように開示項目として企業が準備しておく要件の1つとなっている点に、まず理解が必要です。また、シナリオ分析は、LEAPアプローチの特に「評価」フェーズに主に関わるものであると同時に、LEAPアプローチの中ですべての段階に情報提供するものと位置づけられており、TNFD実施における「リスク評価」ツールの一つともなっている点に留意が必要です。 なおTNFDは、その中で言及されるシナリオ分析に特化したガイダンスGuidance on Scenario Analysis(2023, TNFD) 1を策定しています。その中で、「組織が複雑な不確実性の下で戦略を策定し、そのレジリエンスをテスト」し、「組織が自然の喪失と気候変動の可能性のある影響、政府、市場、社会がどのように対応するかに関する方法、およびこれらの不確実性がビジネス戦略と財務計画に与える影響」を捉えるためにシナリオ分析が欠かせないと提起しています。そのガイドラインの特徴として、下記のような点が挙げられます。 TCFDのシナリオ関連リソースである「非金融企業向けのシナリオ分析に関するTCFDガイドライン」(2020)をベースに作成されており、用語やアプローチは類似している一方、TCFDにおける理解をより発展的に展開している。またシナリオ分析および統合開示において、気候変動とそれ以外の自然の両方に対応するものとして位置づけられている。 特に定量化や定量モデルに急に飛びついて意思決定を行うのではなく、組織を取り巻く且つ組織の中身全体を深く理解するために、丁寧に設計された社内ワークショップ(下記参照)実施などを通して、定性的なアプローチからじっくり結論、意思決定にむけてシナリオ構築→分析へと次元を高めていく方法を推奨している。 上記を踏まえ本コラムでは、このガイダンス(下記、当該ガイダンス)を基にしながら、関連の文献や知見を併せて、TNFD対応に資するべくTNFD文脈上のシナリオ分析への理解を深めていきます。 2. シナリオ分析のポイント 当該ガイドラインをベースにTNFDの求めるシナリオ分析のポイントを、(1)分析前の段階に必要な問い、(2)ステップ、(3)留意点それぞれについて、次のように挙げることができます。 (1)シナリオ分析の前に必要な問い 当該ガイダンスではシナリオ分析の基本として、未来のシナリオを考える上で、次のような問いからスタートすることを薦めています。 今後どのような変化が起き得るか、その根拠は? 組織ビジネスモデルのレジリエンスに重大な変化をもたらし得る新たな自然関連のリスクおよび変化としてどのようなものがあるか? どのような不確実性が潜在的な変化をもたらし得るか? さらに高度なシナリオ分析をする場合、複数の重要な不確実性、推進力およびその両方を取り入れながら、たとえば、下記のようなポイントをおさえることが推奨されています。 どの物理的リスクおよび移行リスクを取り入れるか 。 自然シナリオと気候シナリオの関係はどのようなものか?単一の組織/施設/生物圏に焦点を当てた評価に留まっていないか。 事業およびバリューチェーンにおいて、複数の国や地域をどのように考慮すべきか 。 シナリオに組み込むべき定量的な変数は何か。 適切な地理的な詳細情報はどの程度取り入れられているか。 (2)具体的ステップ 【ステップ 1】関連する駆動要因の特定 最も関連性の高い不確実性を定義するため、組織はシナリオにおいて探求すべき最も関連性の高い要因を評価する必要があります。自然関連に関わる不確実性要因は、生態系から、財務、ステークホルダー、技術、経済に至るまで複数存在することが想定されます。組織は、その文脈に応じて任意の駆動要因を設定できますが、当該ガイドラインは特に下記の2点については、デフォルトの要因であるとしています。(ワークショップ用にその2つを縦軸と横軸に交差させたマトリックスも提示)。 生態系サービスの劣化(物理的リスクや気候変動に密接に関連)。 市場と非市場の駆動要因の整合性(移行リスクに関連) ここでいう「市場の力と非市場の力の整合性」とは、経済的なインセンティブ(市場の力)と、政策・規制・社会的要請など(非市場の力)が、自然資本や気候変動への対応に向けて、矛盾なく協調して働く状態を指します。 この整合性の有無は、企業にとって「トランジションリスク(移行リスク)」と深く関わっています。たとえば、炭素価格の導入や規制の強化といった政策(非市場の力)が急激に進む一方で、企業や市場の準備が追いついていない場合、大きなコストや事業リスクが発生します。逆に、市場と非市場の力がうまく整合していれば、自然や気候に配慮したビジネスへの移行がスムーズに進み、機会創出にもつながります。 この文脈でTNFDは、自然関連リスクの評価においても、こうした市場と非市場のダイナミクスのバランスが重要であると示しています。 【ステップ 2】重要な不確実性軸上のどこに現在位置しているかを特定 ワークショップを通して、その位置の特定するための議論を行い、参加者が組織の現在の状態と今後の見通しについて、広く共有された見解か、または大きく異なる見解を持っているかについても把握します。 【ステップ 3】シナリオのストーリーラインを構築 企業が選んだ「2つの重要な不確実性」を縦軸・横軸として交差させることで、4つの異なる未来のシナリオが作成されます。ここで大事なのは、「こうなってほしい未来」ではなく、「このようになる可能性もある」という視点で考えるものです。したがって、シナリオ分析を行う際には、単に「こういう未来がある」と受け入れるのではなく、「なぜそのような未来が起こるのか?」「どんな要因が積み重なった結果か?」を問い、背景にある因果関係を探ることが重要です。 【ステップ 4】組織の意思決定を明確化 ステップ 1~3を基にしたシナリオ分析を通じて得られた洞察を基に、組織の中長期的な意思決定(戦略、リスク管理、資本配分など)につなげます。まず、各部門の中堅〜上級管理職が時間をかけてシナリオワークショップを行い、その成果をもとに経営陣が戦略的な議論を進める形が推奨されています。シナリオに基づく内省的な対話により、ビジネスモデルの強靭化、新たなビジネス機会(例:ネイチャーポジティブなモデル)やTNFDに沿った開示内容の特定などが可能になります。また、「どの移行経路が現実的か」「何のデータが必要か」「さらなる分析に必要なものは何か」といった問いを通じて、より具体的な戦略選択につなげていくことが求められています。最終的には、不確実性への備えと組織レジリエンスの強化を図ります。 (3)実践上の留意点 上記を踏まえ、実践上の留意点として次が挙げられます。 ここでいうシナリオは「確率的予測」ではありません。 一般的にシナリオは、より長期的(例えば複数年)に顕在化する可能性のあるリスクを特定するためのものでもあります。そうしたリスクは、通常、複数の一見関連性のない不確実性の交点で形を成します。こうした考え方は、TNFDのシナリオの考え方の基礎となっています。 シナリオ分析は、単一のモデルの変化ではなく、複数の異なるモデルを考慮した上で行われるものです。したがって、単眼的でなく複眼的に現状を見ることが問われます。 TNFDでいう不確実性は、単に分からない、未知である、曖昧であるということではなく、「意味のある確率を付与できないリスクと機会を暗示するもの」として位置づけられています。なお、TCFDの同様のガイドライン(2020)では、不確実性の定義として、「シナリオの時間枠内で、ある要因の将来の動向や結果が予測不能な程度を指す。不確実性の指標の一つは、社内の専門家が結果について一致できない場合」といった説明に留まっていたのに対し、TNFDの当該ガイドラインの説明は、より実際に一歩踏み込んだ、且つ発展的な解釈が用いられています。 TNFDでいうシナリオは、計画者が考慮するシナリオに基づいて進める計画を表すことではなく、中・長期的という複数の時間軸から、且つ複数の角度から、組織全体のリスクと機会を見渡した上でのシナリオと捉えることができます。 自然シナリオと、気候シナリオとの対比として、次のような相違点があることにも留意が必要です。
- [有価証券報告書「サステナビリティに関する考えおよび取組」‐「指標及び目標」に関する開示ポイント‐](https://shiodome.co.jp/column/30320/) - 今回は、TCFD提言に基づく4つの開示項目のうち、最後の要素である「指標及び目標」について、その情報開示上のポイントを紹介します。加えて、この要素に密接に関連する「GHGプロトコル」についても併せて解説します。 1.「指標及び目標」に関する開示ポイント まず、「指標及び目標」では「サステナビリティ関連のリスクおよび機会に関する連結会社の実績を長期的に評価し、管理し、および監視するために用いられる情報」を記載することが求められています。開示にあたって留意すべきポイントは以下の3つです。 (1)気候変動以外の目標設定および進捗状況の開示 多くの企業において気候変動に関する開示は進んでいますが、他のサステナビリティ課題に関する「指標や目標値」も併せて開示することが期待されています。 また、目標値を示す際には、可能な限り「達成期限」や「現時点での進捗状況」を開示することも重要です。達成時期については、短・中・長期といった時間軸に分け、段階的な指標を設定することも有効です。 下記企業(図表1)は、ESGそれぞれのカテゴリーにおける指標と目標値、進捗状況(実績値)を開示しています。 (図表2)の企業も、「食品ロスの削減」「プラスチック使用量の削減」といった、社会的関心が高い課題に対して、短期・中期・長期ごとの目標値を設定していることが評価されています。 (図表1)アンリツ株式会社「指標及び目標」に関する記載 (出所)アンリツ株式会社 有価証券報告書(2023年度)より一部抜粋https://www.anritsu.com/ja-jp/about-anritsu/investor-relations/ir-library/quarterly-financial-report (図表2)株式会社ローソン「指標及び目標」に関する記載 (出所)株式会社ローソン 有価証券報告書(2024年2月期)より一部抜粋https://www.lawson.co.jp/company/ir/library/pdf/yuuka/yuuka_49.pdf (2)数値の根拠と第三者保証(検証)の必要性の高まり 「指標及び目標」として記載する数値がどのような基準をもとに算定されたかを明示することが重要です。例えば「GHGプロトコル」などの国際基準に準拠して算出している場合にはそれを明記します。仮に独自の算定方法を用いている場合であっても、その算定プロセスをできる限り開示することが望まれます。 なお、紙幅の制約などにより詳細な記載が困難な場合には、「統合報告書」や「サステナビリティレポート」へのリンク(URL)を補足情報として記載することも可能です。ただし、重要な情報そのものは、本文内に記載する必要がある点には注意が必要です。 また、こうした数値情報の信頼性を示す仕組みとして、「第三者保証(検証)」制度があります。近年、この第三者保証(検証)を付した開示を行う企業は増加傾向にあります。 下記企業(図表3)は、「ISO14064-3」規格にもとづく第三者検証を明記しており、信頼性の高い情報開示として評価されています。 (図表3)青山商事株式会社「指標及び目標」に関する記載 (出所)青山商事株式会社 有価証券報告書(2023年3月期)より一部抜粋https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS00098/8af2fb18/ffa6/4c77/a6fe/1c4e528241f4/S100TWZS.pdf (3)経営方針やマテリアリティ(重要課題)との整合性 指標や目標を設定する際には、経営方針やビジョン、中長期計画、さらにはマテリアリティとの整合性を意識することで、その妥当性や説得力が高まります。 たとえ法規制や外部要請に応じて設定する場合であっても、それらに形式的に従うだけでなく、自社の戦略的な意図と統合させた目標として説明することが重要です。 こうした姿勢は、サステナビリティ課題に対する企業の真摯な取組みとして評価され、ステークホルダーからの信頼性向上にもつながります。 2. 気候変動対応の国際的基準‐GHGプロトコル‐ 気候変動に対応する基準として、一般的に用いられているのが GHGプロトコル(Greenhouse Gas Protocol)です。 GHGプロトコルは、企業などが温室効果ガス(以下:GHG)の排出量を算定・報告・管理するための国際的な基準であり、現在、世界中の多くの企業や機関が、このプロトコルに準拠してGHG排出量の開示を行っています。 ここであつかうGHGは、二酸化炭素(CO₂)に加え、メタン(CH₄)、一酸化二窒素(N₂O)、ハイドロフルオロカーボン類(HFCs)、パーフルオロカーボン類(PFCs)、六フッ化硫黄(SF₆)など7種のガスが含まれます。 3. GHG排出源の分類‐Scope(スコープ)1.2.3 GHGプロトコルでは、企業が事業を営む中で排出するGHGの排出源を、以下の3つのScope(スコープ)に分類しています。 Scope内容(例)Scope1(直接排出)自社が保有・管理する施設や設備からの直接的なGHG排出(例:ボイラー燃焼、社用車の燃料使用に伴う排出 など)Scope2(間接排出)エネルギー由来他社から購入した電力、蒸気、熱などの使用によって発生する間接的なGHG排出(例:工場やオフィスで使用する電力による排出 など)Scope3その他の間接排出Scope1.2以外やサプライチェーン全体にわたる間接排出(例:販売した製品の使用や廃棄に伴う排出 など) さらに、Scope3は下記15のカテゴリーに分類されます。 Scope3 15のカテゴリー分類 カテゴリー事例1購入した製品・サービス調達した原材料・サービスに伴う排出量2資本財生産設備の増設や車両の購入などに伴う排出量3Scope1.2に含まれない燃料及びエネルギー活動Scope1.2以外で調達した電力や燃料の製造プロセス排出量(採掘、精製等)4輸送、配送(上流)(調達輸送)自社が荷主で委託した輸送に伴う排出量5事業から出る廃棄物社外での廃棄における輸送や処理に伴う排出量6出張従業員の出張における交通機関の使用に伴う排出量(自社所有の車両使用分などは除く)7雇用者の通勤従業員の通勤における交通機関の使用に伴う排出量(自社所有の車両使用分などは除く)8リース資産(上流)自社が賃借しているリース資産の稼働に伴う排出量9輸送、配送(下流)(出荷輸送)自社が荷主の輸送以降、倉庫での保管、小売店での販売に伴う排出量10販売した製品の加工販売した製品の加工に伴う排出量11販売した製品の使用販売した製品の使用に伴う排出量12販売した製品の廃棄販売した製品の廃棄に伴う排出量13リース資産(下流)他社に賃貸しているリース資産の稼働に伴う排出量14フランチャイズフランチャイズ加盟店におけるScope1.2の排出量15投資株式投資、債券投資、プロジェクトファイナンスなどの運用に伴う排出量 (出所)環境省HP(グリーンバリューチェーンプラットフォーム)を参考にRSM汐留パートナーズが作成https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/estimate_03.html サプライチェーン排出量のイメージ (出所)環境省HP(グリーンバリューチェーンプラットフォーム)より引用https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/estimate_03.html 4. GHG排出量の算出方法 各ScopeにおけるGHG排出量は、基本的には使用エネルギー量、燃料消費量、電力購入量などのアクティビティデータを収集・整理し、それに排出係数を掛け合わせて算出します。 なお、Scope3においては、サプライチェーン上の取引先からの一次データ(取引先からの提供データ)を用いる場合もあります。 ■Scope1の算出例 自社が直接排出するGHG排出量は、主に使用した燃料量に排出係数を乗じることで算出します。たとえば、自社保有の業務用車両Aが年間に1キロリットル(kL)のガソリンを使用した場合を考えます。ガソリンの排出係数は2.322 t-CO₂/kLとされているため、以下のように排出量を算出します。 1 kL × 2.322 t-CO₂/kL = 2.322 t-CO₂
- [移転価格対応は「仕組み」で決まる~フレームワークから運用・文書化まで一気通貫で理解する~](https://shiodome.co.jp/column/57356/) - 移転価格対応というと、ローカルファイルの作成や税務調査への対応といった個別論点に目が向きがちです。しかし実務の現場では、それらはあくまで一部に過ぎません。本質は、価格設定・運用・検証を一体として回す仕組みを持てているかにあります。 実際には、価格設定だけを整えても運用が伴わなければ意味を持たず、文書を整備していてもその前提となる方針が曖昧であれば説明力は限定的です。逆に、適切なプロセスが設計されていれば、個別の論点はその中で自然に整理されていきます。本稿では、移転価格対応を実務として機能させるための全体像を、フレームワークと現場の運用の両面から整理します。 1. 移転価格対応の4つのステップ 移転価格対応は、基本的に4つのステップに基づいて構築されます。重要なのは、各ステップを個別に捉えるのではなく、一連の流れとして理解することです。 Step1:現状分析/移転価格リスクアセスメントまずは主要な国外関連取引について現状を把握し、移転価格リスクの分析を行います。この段階では、取引の全体像を整理するとともに、利益がどのように配分されているかを確認します。単なる取引の棚卸しにとどまらず、各社の機能やリスクに見合った利益配分となっているかを検証することが不可欠です。この分析が不十分な場合、その後の対応は表面的なものにとどまり、実効性を欠くことになります。 Step2:移転価格ポリシーの構築・導入Step1で把握した分析結果を踏まえ、移転価格リスクを低減するためのポリシーを構築します。ここでは、価格設定のルールや利益水準の考え方を整理し、どの算定方法を採用するのか、どの指標を基準とするのかといった点を明確にします。さらに、それらをグループ内で実際に運用できる形に落とし込み、導入していくことが重要です。 Step3:移転価格文書(ローカルファイル)の作成各期末において、Step2で構築したポリシーに基づき、実際に採用した移転価格の妥当性を検証し、その結果を文書として整理します。ここで作成されるローカルファイルは、単なる形式的な資料ではなく、取引条件の合理性や意思決定のプロセスを裏付ける証拠資料としての役割を持ちます。したがって、ポリシーとの整合性と実態との一致が重要となります。 Step4:二国間APAの検討・活用金額的重要性が高く、かつ移転価格リスクが認められる国外関連取引については、リスク管理の一環として二国間APAの取得を検討します。税務当局との事前合意を得ることで、将来にわたる二重課税リスクを排除し、不確実性を大きく低減することが可能となります。 この一連の流れは、「現状把握 → ポリシー構築 → 検証・文書化 → リスク低減」という構造で整理することができます。この順序を踏まずに対応を進めてしまうと、例えばポリシーがないまま文書化を行うといった状況になり、結果として実態と乖離した形式的な対応に陥りやすくなります。移転価格対応を実務として機能させるためには、この4つのステップを一体として運用することが不可欠です。 2.実務における3つの作業ステップ 一方で、実際の現場では、前述の4ステップをそのまま運用するのではなく、実務の作業単位として3つのステップに整理して捉えることが有効です。この整理により、現場で何を行うべきかが明確になります。 Step1:現状分析(事実関係の整理及び移転価格ポリシーの枠組み検討)まず、グループ内取引の実態を把握し、価格設定や取引構造を整理します。具体的には、バリューチェーン全体像を把握し、各社の機能や役割、価格設定方法を確認するとともに、移転価格リスクの所在を特定します。さらに、そのリスクに対してどのような対応方針を取るべきかを検討し、ポリシーの方向性を整理します。この段階は単なる現状把握にとどまらず、今後の対応の土台を形成するプロセスであり、ここが曖昧であると後続の対応全体に一貫性がなくなります。 Step2:移転価格ポリシーの構築次に、Step1で整理した内容を踏まえ、移転価格ポリシーを構築します。ここでは、対象取引ごとに適切な算定方法を選定し、外部データを用いたベンチマーク分析を実施します。その分析結果に基づき、価格設定の考え方や利益水準の水準感を明確にし、ポリシーとして文書化します。重要なのは、単に数値を合わせることではなく、その水準を採用した理由を説明できる状態にすることです。ポリシーはグループ内で一貫した運用を行うための基盤となります。 Step3:ローカルファイル(移転価格分析レポート)の作成最後に、構築したポリシーに基づき、対象会社や対象取引を選定したうえで、実際の取引結果の妥当性を検証し、ローカルファイルとして整理します。過年度の取引についても必要に応じて遡って検証を行い、価格設定が合理的であることを示す文書を作成します。このローカルファイルは、単なる報告書ではなく、移転価格リスクの重要性が高い取引に対して説明責任を果たすための中核的な資料となります。 この3ステップは、現場における実務対応の流れとして非常に有効であり、分析からポリシー構築、そして検証・文書化までを一体として整理するための基本フレームとして活用することができます。 3. 移転価格は「作って終わり」ではない 移転価格対応において最も重要なポイントは、これが一度整備して終わるものではなく、継続的に回す管理サイクルとして機能させる必要があるという点です。 その基本形は、図に示されているとおり、Plan・Do・Seeによる移転価格リスク管理サイクルです。重要なのは、それぞれの工程を独立した作業として捉えるのではなく、一連の流れとして運用することです。 Plan:移転価格ポリシーの構築まずPlanの段階では、各取引の事実関係を整理し、移転価格リスクの評価を行います。そのうえで、利益配分に係る基本方針を設定し、適切な算定方法を選定します。さらに、それらの方針を実務で実行可能な運用ルールとして設計します。この段階は、単なる方針策定ではなく、会社の事業実態と移転価格の考え方を結び付けるプロセスであり、ここが不十分であると後続の運用が不安定になります。 Do:運用次にDoの段階では、構築したポリシーに基づき、実際の取引価格の運用を行います。ここでは、設定したルールに従って期中の価格を適用するとともに、必要に応じて期中での価格調整を実施します。重要なのは、計画と実績の乖離を放置せず、状況に応じて柔軟に対応することです。ポリシーは定めるだけでなく、実務の中で機能させて初めて意味を持ちます。 なお、ここで重要なのは、移転価格ポリシーの運用は経理・財務部門だけで完結するものではないという点です。実際に価格設定を行うのは事業部門であり、事業部門が理解し実行できるルールでなければ、ポリシーは絵に描いた餅になります。経理部門と事業部門が連携した、実現可能な運用体制の構築が肝要です。 See:移転価格文書(ローカルファイル)の作成・検証そしてSeeの段階では、期末に実績値の検証を行い、その結果を移転価格文書(ローカルファイル)として整理します。この検証は単なる報告ではなく、実際の利益水準や取引条件がポリシーと整合しているかを確認する重要なプロセスです。また、その結果を踏まえて、必要に応じて次年度のポリシーや運用ルールの見直しを検討します。 このサイクルにおいて重要なのは、「結果を確認すること」そのものではなく、「検証結果を次の価格設定に反映させること」にあります。すなわち、適宜見直しを行いながら、次年度の計画や運用にフィードバックしていくことが前提となります。 このように、Plan・Do・Seeの循環が機能して初めて、移転価格対応は単なる一時的な対応ではなく、実務として定着し、継続的なリスク管理の仕組みとして機能することになります。 4. ポリシーとローカルファイルの関係を誤解しない 実務において非常に多い誤解が、ローカルファイルを作成すること自体が移転価格対応であるという認識です。しかし、両者の役割は明確に異なります。 移転価格ポリシーは、価格の決め方を示すルールであり、将来に向けた運用指針です。一方でローカルファイルは、実際の結果が妥当であったことを説明するための資料であり、過去の検証に位置付けられます。 言い換えれば、ポリシーは設計図であり、ローカルファイルはその設計に基づいた結果の検証記録です。ポリシーが存在しないままローカルファイルを作成すると、結果に合わせて説明を組み立てる形になり、後付けの対応と評価される可能性が高くなります。 したがって、実務上はまずポリシーを整備し、そのポリシーに基づいて運用し、その結果をローカルファイルで説明するという順序を徹底することが重要です。 おわりに 移転価格対応は、単なる税務対応ではなく、グループ全体の利益設計とコントロールの問題です。重要なのは、分析し、ルールを決め、それを実行し、結果を検証するという一連の流れを仕組みとして回すことです。 この視点を持つことで、移転価格は単なる対応コストではなく、経営管理の一部として機能し始めます。個別論点に対処するのではなく、全体をコントロールする仕組みを構築することこそが、実務において最も重要なポイントといえるでしょう。 形だけの整備に終わらせず、自社の事業実態に合った仕組みを設計することが、結果として最も効率的な対応になります。
- [税務当局はどこを見ているのか?~無形資産・役務・金融取引に共通するチェックポイント~](https://shiodome.co.jp/column/57379/) - 移転価格対応において重要なのは、何をやるかだけではありません。それ以上に重要なのは、税務当局がどの視点で取引を見ているのかを理解することです。実務では、契約書を整備する、ローカルファイルを作成する、価格設定ルールを用意するといった対応が重視されがちですが、それらはあくまで手段にすぎません。税務当局が確認しているのは、そうした形式の有無ではなく、その背後にある実態と経済合理性です。 特に近年は、単に契約内容をなぞるのではなく、その取引が実際に行われているのか、誰が価値を生み出しているのか、その対価は経済的に見て妥当なのかという点を、取引ごとに多面的に検証する傾向が強まっています。したがって、実務対応としては、個別の取引類型ごとに論点を理解するだけでなく、税務当局に共通する見方そのものを押さえておくことが重要です。本稿では、無形資産取引、役務提供取引、金融取引という主要な三つの取引類型を取り上げ、それぞれにおいてどのような点が確認されるのかを整理いたします。 1. 無形資産取引 (1)本当に存在し、使われているのか ロイヤリティやブランド使用料などの無形資産取引は、移転価格上、特に厳しく見られる領域です。その理由は、無形資産が形のない資産であるがゆえに、取引の実態や価値の所在が見えにくく、利益移転の手段として利用されやすいと考えられているためです。 税務当局が最初に確認するのは、その無形資産が本当に存在するのか、そして実際に使用されているのかという点です。例えば、契約書上は特許やノウハウ、ブランドの使用許諾となっていても、現場レベルでは具体的に何が使われているのかが曖昧なケースがあります。このような場合、名称だけが存在し、実態が伴っていないのではないかという疑問が生じます。 したがって実務上は、どの無形資産が存在し、それがどの事業活動の中でどのように利用されているのかを具体的に説明できることが重要です。単に契約で定義されているというだけでは不十分であり、実際の業務プロセスや収益獲得との結び付きまで含めて整理しておく必要があります。 (2)どのような価値があり、何に使われているのか 無形資産取引では、存在していることだけでなく、その内容と価値も問われます。特許であればどのような技術的独自性があるのか、ノウハウであればどのような営業・製造上の優位性をもたらしているのか、ブランドであればどの程度の市場認知や販売促進効果を有しているのかが重要になります。 ここでのポイントは、抽象的に重要だと説明するのではなく、具体的な経済的便益に結び付けて説明できるかどうかです。例えば、ブランド使用料であれば、そのブランドが販売数量や価格維持にどう寄与しているのか、ノウハウ使用料であれば、品質向上や製造効率の改善にどうつながっているのか、といった形で整理する必要があります。 つまり、税務当局が見ているのは、支払いの名目そのものではなく、その支払いに見合う経済的価値が本当に存在するのかという点です。価値の説明が曖昧である場合、ロイヤリティや使用料は後付けの利益移転と評価されるリスクがあります。 (3)誰がその価値を生み出したのか 無形資産取引でさらに重要なのは、誰がその価値を生み出したのかという点です。無形資産は名義上の保有者と、実際に価値を形成した主体が一致しないことが少なくありません。例えば、契約上は親会社が無形資産の保有者となっていても、実際には子会社が開発や改良、維持、普及に大きく関与しているケースがあります。 このような場合、単に名義を持っているという理由だけで対価を受け取ることが妥当かどうかが問われます。税務当局は、開発、維持、保護、活用といった各局面に誰が関与し、どのような機能とリスクを負担しているかを重視します。したがって、無形資産取引への対応では、法的保有関係だけでなく、実質的な価値創造への関与を整理しておくことが不可欠です。 (4)対価は経済合理的か 最後に問われるのが、対価の妥当性です。支払者がその無形資産からどの程度の利益を得ているのか、その利益に照らしてロイヤリティ率が合理的かが検証されます。ここでは、単に他社事例に近い率であるかどうかだけでなく、自社の取引実態との整合性も重要になります。 実務では、ロイヤリティ率を定率で設定しているものの、その根拠が十分に整理されていないケースも見られます。しかし税務当局は、率そのものよりも、なぜその率なのか、その率によりどのような利益配分が生じているのかを見ています。したがって、無形資産取引の本質は、支払に見合う価値が本当に存在するかを、実態と結果の両面から説明できるかどうかにあるといえます。 実際に、ある製造業では、海外子会社との技術援助契約におけるロイヤリティ料率が低すぎると指摘され、子会社側に過大な利益が帰属していると判断されました。約20億円の申告漏れを指摘されたこの事例では、契約自体は存在していたものの、料率の設定根拠が不十分であったことが問題とされています。形式ではなく、対価の水準そのものが問われた典型例です。 2. 役務提供取引 (1)そのサービスは本当に必要なのか グループ内の役務提供取引も、実務上、頻繁に問題となる論点です。特に持株会社や本社機能を有する会社が海外子会社に対して各種サービスを提供し、その費用を配賦しているケースでは、税務当局の確認が入りやすくなります。 ここで最初に見られるのは、そのサービスが本当に経済的価値のあるものかどうかです。例えば、経営管理支援、IT支援、人事支援、法務支援などの名目で費用配賦が行われていても、それが受益会社にとって必要かつ有用なサービスでなければ、対価性が疑問視されます。単なる株主活動やグループ管理の一環である場合には、子会社が負担すべき費用ではないと判断される可能性があります。 したがって、役務提供取引では、サービスの内容を曖昧なままにせず、誰に対して、どのような支援を、どの程度提供したのかを整理する必要があります。受益会社にとって具体的な便益が確認できるかどうかが、実務上の大きな分かれ目になります。 (2)受益者は明確か 役務提供取引では、サービスの存在以上に、受益者が明確かどうかが重要です。これは実務上、非常に見落とされやすいポイントです。グループ共通の費用を一定の基準で各社に配賦している場合でも、その費用が本当に各社の便益に対応しているのかが問われます。 例えば、本社の管理部門がグループ全体のために活動していたとしても、その活動の中には個別会社が受ける便益と、株主としての管理活動が混在していることがあります。こうした場合、すべてを一律に配賦してしまうと、受益のない費用負担を子会社に課していると評価される可能性があります。 したがって、費用配賦の場面では、単に配賦基準を設けるだけでなく、その基準が受益の実態と対応していることを説明できる必要があります。受益が曖昧なまま費用だけが配賦されている場合、否認リスクは大きく高まります。 (3)報酬水準は妥当か 役務提供取引では、報酬の水準も重要な論点です。コスト配賦の基準が合理的か、マークアップの付け方が適切かといった点が検証されます。ここで税務当局が見ているのは、単に計算式が存在するかどうかではなく、その計算結果が第三者間取引として見て妥当かどうかです。 特に、コストに一定のマークアップを上乗せして請求するケースでは、なぜその率なのかを説明できなければ、形式的な設定とみなされるおそれがあります。また、逆に本来対価を取るべきサービスについて無償で提供している場合には、日本側が過度に負担している、あるいは実質的な寄附に近い状況であると判断される可能性もあります。 (4)実質的な無償支援になっていないか 役務提供取引では、表面上は役務提供であっても、実質的には一方的な支援にとどまっているケースがあります。例えば、海外子会社の立ち上げ支援や経営改善支援などで、日本側が長期にわたり人員やノウハウを提供しているにもかかわらず、十分な対価を受け取っていない場合です。 このような場合、税務当局は、それが独立企業間でも無償で行われる支援なのかという観点から検証します。受益が明確であり、経済的価値が存在するのであれば、相応の対価が発生するはずだという考え方です。したがって役務提供取引の本質は、そのサービスが本当に必要で、受益者が明確であり、かつ価格が合理的であるかにあります。 3. 金融取引 (1)条件は第三者間でも成立するか 金融取引については、近年、税務当局のチェックが明確に強化されています。金利、保証料、キャッシュ・プーリングなどは、一見すると単純な条件設定に見えますが、利益移転の影響が直接的に表れるため、重点的に確認される領域です。 ここで共通する視点は、その条件が第三者間でも成立するかという点です。グループ内だからという理由で低金利や無償保証が認められるわけではなく、独立した当事者間であればどのような条件になるかが基準になります。 (2)金利設定の合理性 貸付取引において最も重要なのは、借手の信用力に見合った金利が設定されているかどうかです。借手の信用力を評価し、その格付に対応する市場金利を参照するというプロセスが必要になります。金融機関のヒアリングだけで決めた金利や、慣行的に低めに設定した金利では、合理性の説明が難しくなります。 この点について特に認識しておくべきなのは、日本の国税当局が既に信用格付けの評価ツールおよび金利算定用のデータベースを契約・整備しているという事実です。つまり、当局側は独自に金利を算定できるインフラを持っています。企業が感覚的に設定した金利と、当局がデータベースを用いて算定した金利に乖離があれば、それがそのまま課税根拠となり得ます。 税務当局は、金利そのものよりも、その金利がどのようなプロセスで決まったのかを見ています。つまり、金融取引では結果だけでなく、算定プロセスの客観性が重要になります。 (3)保証料の妥当性 保証取引においては、保証によってどの程度の経済的メリットが生じているか、そしてそれに見合う保証料が設定されているかが確認されます。保証があることで借入条件が改善しているのであれば、その便益に対する対価が必要になるという考え方です。 実務では保証料を設定していないケースや、形式的な低率にとどめているケースもありますが、近年はそうした対応が見直される傾向にあります。保証もまた、第三者間であれば対価が発生する独立した経済取引として評価されるためです。 (4)キャッシュ・プーリングの配分 さらに、キャッシュ・プーリングのような資金集中管理の仕組みにおいても、金利差による利益配分が合理的かどうかが問題となります。資金提供者と資金利用者の間で、どの会社にどの程度の便益が帰属しているのかを整理せずに一律運用している場合、特定会社への利益偏在が問題視されることがあります。 このように金融取引では、金利、保証料、資金配分という個別論点ごとに検証されるものの、本質的には、条件設定が独立企業間価格として妥当かどうかが問われているといえます。 4. すべての取引に共通する本質 (1)実態があるか 無形資産、役務、金融取引と分けて見てきましたが、税務当局の視点には明確な共通性があります。第一は、実態があるかという点です。契約上そのように記載されているかではなく、実際に何が行われているのかが確認されます。 (2)価値があるか
- [TNFD提言の理解と実践:その5・指標とツール](https://shiodome.co.jp/column/32542/) - 本コラムTNFDシリーズでは、その1~その4まで執筆してきましたが、全体的に見てとれるように、TCFDが気候領域に焦点を当てているのに対し、TNFDは気候領域のみならず自然圏全般を対象にし、また人間社会、特に様々なステークホルダーとの関係性も重視しているなど、膨大な領域を俯瞰的にカバーしています。そのためTNFDの実践には特に、複雑なシステムを統合的に捉える力が要求され、TNFDを実践していく上では、できる限りそうした複雑性を克服していくための「指標とツール」は欠かせません。そこで本コラムでは、TNFDを実践していく上でどのような指標やツールが主に存在するのか、という観点から解説したいと思います。 1. 指標 TNFDにおいて「指標」には、「開示指標」と「測定指標」があります。実務面でみると、測定 → 特定 → 開示という流れがあり、下記のような仕分けを描いて、指標を捉える必要があります。 測定段階:物理リスクや移行リスクを科学的に定量化し、経営判断の材料にする。 開示段階:そこから重要な情報を抽出して、投資家などに比較可能な形で報告する。 まず下記では、便宜上、TNFD開示指標を概説したあと(詳細については、TNFD報告書の別紙1および別紙2を参照ください)、本コラムでは、実践的側面から、測定指標に重点を置いて、関連のツールへの理解を深めていきます。 (1)開示指標 TNFD が提言する開示指標は、企業の業種や事業の地理的特性に応じて指標を使い分けられるように、以下の2種類を設けています。 ① 中核開示指標 すべての企業・金融機関に推奨される基本指標 比較可能性を担保 例: GHG排出量(Scope 1, 2, 3) 土地使用の変化(ha単位) 自社施設の近隣にある重要生態系の数 自然関連の財務的影響額(定量評価) ② 補完的指標 業種や状況に応じて追加使用 例:農業、林業、水産業、鉱業などに特化した指標 化学肥料の使用量(kg/ha) 捕獲魚種数、漁獲量の推移 植林面積と生物多様性回復率 (2)「測定指標」 TNFD報告書によると、企業報告のための既存の自然関連の指標と測定指標に関する最初の調査では、「①すでに3,000 以上の独自の測定指標が使用されていること、②類似の指標に対して異なる定義が使われていること、③対象とする自然関連課題に一貫性がなく、対象範囲も不均一であること、④マイナスのインパクト要因に焦点が当てられていること、⑤データのギャップや投資家にとっての意思決定の有用性について懸念があること」が報告されています。このような測定指標の現状にあっても、社内の現状を把握し、社内分析し、経営判断する上では欠かせないのが、測定指標です。測定指標のための主なツール(下記2.参照)、それらを補完する代表的ツール(下記3.参照)中心に、幾つかその特徴を見ていくことにします。 2. 測定指標のための主なツール TNFDの文脈でよく活用される知識データベースとしての2つのツール「ENCORE」と「IBAT」の概要、特徴を先ず見ておきましょう。 (1)ENCORE(Exploring Natural Capital Opportunities, Risks and Exposure) https://www.encorenature.org/en 【概要】「産業セクター×自然資本要素」の関係性を定性的・構造的に把握するためのツール(提供主体)UNEP FI, Global Canopy, Natural Capital Finance Alliance(NCFA)等(対象)銀行・保険・投資機関など金融機関向けに設計(機能)セクター、サブ産業で絞り込み、生産プロセスごとに自然にどの程度依存しインパクトを与えているかを3つの切り口から確認できる。さらに、セクター、サブ産業、生産プロセスごとに自然に影響を及ぼす要因を把握できる。また、マテリアリティ(重要度)について、Very
- [カーボンクレジットと企業のESG戦略](https://shiodome.co.jp/column/32584/) - 1. ESGと脱炭素:企業の説明責任が問われる時代 気候変動への対応はもはやCSRや環境部門だけの課題ではない、という認識は年々、企業の関係者のあいだでも、拡がっているのではないでしょうか。その流れの中で、企業経営そのものの中核に入り込む課題として、カーボンクレジットへの注目が急速に高まる傾向にあります。 広く知られるように、カーボンクレジットとは、他者によるGHG削減・吸収の成果を「クレジット」として取引可能にしたものです。自社の直接的な削減だけでは限界がある中で、企業がカーボンニュートラル(実質ゼロ)を実現するための補完的手段として位置づけられています。なぜ「カーボンクレジット」なのでしょうか。 そもそもですが、カーボンクレジットへの注目は、2015年のパリ協定をはじめとするグローバルな要請からはじまりました。パリ協定では、「産業革命前の水準を基準に、世界の平均気温の上昇を2℃未満に抑える」こととし、さらに「気温上昇を1.5℃未満に抑えるための努力を追求する」ことを目標に定めてきました。特に、そのパリ協定6条で、国際的な温室効果ガス排出削減の取引の仕組み=カーボンクレジットメカニズムの基盤がつくられました。 振り返ってみると、ついこの前までは、今世紀末までに地球の気温上昇を1.5℃に抑える必要性が強調されてきました。というのも、国連傘下の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」は、1.5℃の閾値を超えると、より深刻な気候変動の影響――たとえば、干ばつや熱波、大雨の頻度と深刻度の増加――が引き起こされるリスクが高まると指摘していたからです。地球温暖化を1.5℃に抑えるためには、温室効果ガスの排出量をこれ以上増やさないようにし、遅くとも2025年までに増加を止めて減少に転じる必要があること、2030年までに排出量を43%削減しなければならないと考えられてきました。 しかし、既に今もはや2025年。様々な世界の科学的データによると、1.5℃を越えるのは時間の問題あることが確認されており、また世界の気候変動は依然として改善の兆しが見られないようです。その間に、気候変動は既に顕在化しており、IPCCが予測していたような気候変動の影響は、日々顕在化しています。 例えば、毎日異常に暑いという夏が既にはじまっています。その原因は長年人間が自然界の中に過度に介入続けてきた結果といっても過言ではありません。様々な科学の見解に基づくと、この暑さはこれからも、益々続くことになるでしょう。そうした暑さに限らず、気候変動は異常気象をもたらし、農作物に悪影響をもたらし、海水温度上昇のために魚介類をはじめ海のいきものにも影響をもたらしています。また私たちの健康状態にも影響を及ぼします。 そのようにして、気候変動によって暮らしや営みを支える生態系サービスの機能が衰え、ひいては、気候リスクが企業の財務リスクにもなり、経営にも影響を与えかねない状況にあるといえるでしょう。企業を率いる経営者の方々は、こうした気候リスクと財務リスクの関係をまず、差し迫った我が事として捉えて頂くことが不可欠になります。こうした状況が我が事になってこそ、なぜパリ協定をはじめとするグローバルな脱炭素要請があるのか、それに呼応するESG経営の本格化がなぜ要求されているのかが見えてくるのではないでしょうか。 各論(カーボンオフ・SBTi・・)と全体像を捉える 上記を前提に、我々人間の営みを大きく先導する企業がどうアプローチするかが、今後の気候変動の行く末に大きく関わるといっても、過言ではないと思われます。 企業が気候変動に対応するためのアプローチは、大きく三つに分類されます。第一に、自社内での温室効果ガス(GHG)排出削減の努力(例:製造工程の効率化や省エネ)。第二に、再生可能エネルギーの導入(例:PPA契約や自家発電)。そして第三が、カーボンクレジットの活用によるオフセット(以下、カーボンクレジット・オフセット)です。 第三のカーボンクレジット・オフセットとは、ある企業や個人が自らの活動で排出した温室効果ガス(CO₂など)を、別の場所で削減・吸収された排出量(=クレジット)を購入することで「相殺」する仕組みを指します。これに関わる仕組みがパリ協定6条に盛り込まれ、今注目されているというわけです(詳細は2.参照)。 さらに、国際的には企業の気候戦略を「科学的根拠に基づいて設定する」ことが求められています。SBTiは、その代表的な枠組みです。SBTiとは、Science Based Targets initiative(科学に基づく目標設定イニシアチブ)の略称で、2015年に発足しました。国連グローバル・コンパクト、世界資源研究所(WRI)、世界自然保護基金(WWF)、CDPによる共同イニシアチブとして位置づけられ、科学的に根拠のある環境目標を設定することを支援することを主眼に置いています。 具体的には、SBTiは、スコープ3(バリューチェーン全体)を含むGHG削減目標の明確化と、実質排出ゼロへのロードマップを企業に強く促しています。この流れの中で、カーボンクレジットの利用は「削減努力を補う補助的ツール」として慎重に位置づけられる一方、正しく使えば戦略的価値を生み出せる存在として再評価されています。 近年、ネイチャーポジティブ(自然環境の回復と共生を目指す考え方)という概念も広がりつつあります。これと連動して、TNFD(自然関連財務情報開示)のような枠組みが企業に自然資本への影響と依存を評価・開示することを求め始めており、炭素だけでなく生物多様性へのインパクトも問われる時代に既に入っています。 こうした全体像を捉えると、カーボンクレジットは単なる「排出権の購入」ではありません。むしろ、企業の脱炭素戦略と社会的信頼性を同時に支える、複合的なレバレッジツールへと変貌しています。ESG経営の文脈で、企業はカーボンクレジットの「意味」を再定義する必要がありそうです。ここに企業の説明責任が問われる時代が到来していると言えるのではないでしょうか。 2. カーボンクレジットの基本と制度~種類・信頼性・日本の動き~ カーボンクレジットを企業が戦略的に活用するためには、その種類と制度設計の違いを理解しておくことが重要です。クレジットは一見同じように見えても、背景となる制度や信頼性に大きな差があります。制度の違いを知らずに調達してしまうと、投資家や取引先からの信頼を損なうリスクさえあります。 カーボンクレジットは大きく分けて2つの市場タイプに分類されます。ひとつは、国や地域の法制度に基づく規制市場(コンプライアンス市場)です。たとえば、EU ETS(EU排出量取引制度)や、日本で始まったGX-ETS(グリーントランスフォーメーション排出取引制度)(BOX1参照)などが該当します。これらは主に対象業種が限定されており、法的義務の達成手段として使われます。 【BOX1】GX-ETS(グリーントランスフォーメーション排出量取引制度)は、日本政府が導入を進めている自主参加型の排出量取引制度で、企業が温室効果ガスの排出削減量やクレジットを「排出枠」として取引できる仕組みです。2023年度から試行的な市場が開始され、2026年度以降の本格実施が予定されています。J-クレジット(BOX2参照)や国際クレジットとの連動も想定されており、GX-ETSは企業の脱炭素投資を加速させる「炭素に価格をつける」新たな仕組みとして位置づけることができます。ESG経営を進める企業にとっては、排出量管理やクレジット調達を戦略的に行うための重要な枠組みとなっていくと考えられます。 もうひとつは、企業が自主的に脱炭素目標を達成するために活用するボランタリーカーボン市場(VCM)です。VCMは、世界中の企業や団体が自発的に取引するクレジット市場を指します。法的義務ではなく、企業が自主的な気候目標達成のために購入するクレジットの取引が行われますが、一方で信頼性や認証スキームの選定が重要となります。この市場では、企業が自主的なカーボンニュートラル目標やサプライチェーン排出削減の一環としてクレジットを購入・使用し、グローバルにはVerra(VCS)やGold Standardといった認証スキームが主流となっています。 日本国内では、環境省・経産省・農水省が共同で運営するJ-クレジット制度(BOX2参照)が代表的です。この制度では、再エネ導入や省エネ、森林吸収などのプロジェクトから発行されたクレジットを、企業が購入してカーボンオフセットに活用できます。さらに、GX-ETSと連携する形で、クレジットの流通性や価格形成の透明性が今後高まることが期待されています。 【BOX2】J-クレジット制度は、日本政府(環境省・経済産業省・農林水産省)が共同で運営するクレジット認証制度で、国内での温室効果ガスの排出削減や吸収(例:省エネ、再エネ導入、森林整備)による成果を「クレジット」として認定・取引可能にする仕組みです。企業はこのクレジットを購入・活用することで、カーボンオフセットやカーボンニュートラルの達成に資すると考えられています。ボランタリー市場向けに活用されているほか、今後はGX-ETSとの連携によりさらなる展開が期待されます。 また、グローバルな制度の中には、CDM(クリーン開発メカニズム)やJCM(二国間クレジットメカニズム)といった国際枠組みもあります。CDMは、京都議定書に基づく制度で、先進国が途上国でGHG削減プロジェクトを実施し、その成果を自国の排出削減に活用できる仕組みですが、現在は縮小傾向にあります。一方JCMは、日本が開発途上国と協力し、共同でGHG削減プロジェクトを行い、削減分を日・相手国で分け合う制度で、CDMに代わる日本独自の枠組みです。たとえば、日本と途上国の間で温室効果ガス削減プロジェクトを実施し、その成果をクレジットとして共有するといった仕組みとなっています。 さらに航空業界においては、CORSIA(国際民間航空機関の排出削減制度)が導入されています。国際航空のCO₂排出量を対象としたカーボンオフセットの仕組みです。航空会社が排出量増加分を国際的に認証されたクレジットで相殺する義務があります。特定の規格に沿ったクレジットしか利用できないといった要件もあります。 重要なのは、クレジットの「質」です。削減が本当に追加的だったのか、恒久的か、モニタリングと検証が適切かなど、クレジットごとに信頼性が問われます。これらの評価基準は、VCM市場の成熟とともに厳格化しており、企業は調達先を慎重に選ぶ必要があります。 このように、カーボンクレジットには多様な制度が存在しており、企業がESG戦略の一環として取り入れるには、その違いと意味合いを理解したうえで活用する姿勢が求められます。次に、実際の市場動向と価格の形成要因について見ていきます。 3. クレジット市場と価格:戦略的調達のために知るべきこと カーボンクレジットを活用する際に、企業が直面するのが「どのクレジットを、いくらで、どのように入手するか」という実務的な判断です。クレジットは、削減や吸収の成果を証明する証書であり、市場で価格がついて取引されています。ここでは、クレジットの価格形成と市場構造、そして戦略的な調達の視点について整理します。 カーボンクレジットの価格は一律ではありません。価格を左右する主な要因には、以下のようなものがあります。 プロジェクトの種類(森林吸収、再エネ、省エネ、メタン回収など) プロジェクトの場所(先進国か途上国か、政治リスクはどうか) 認証のスキーム(Verra、Gold Standard、J-クレジットなど) クレジットの追加性や恒久性などの質 市場の需給バランスや政策動向 たとえば、森林吸収によるクレジットは、自然共生の観点から注目される一方で、火災リスクや測定の不確実性があると価格に影響します。再エネ由来のクレジットは、比較的価格が安定する傾向にありますが、プロジェクトの「追加性」が問われることもあります。 また、近年はネイチャーポジティブやTNFDの文脈が広がり、単にGHGを削減するだけでなく、生物多様性や地域社会への貢献も評価されるクレジットが注目されています。これにより、「高付加価値型のクレジット」が生まれつつあり、価格も上昇する傾向にあります。 企業にとって重要なのは、単価の安さだけではなく、信頼性とブランドへの影響です。不適切なクレジットの使用は、グリーンウォッシュ(環境に配慮しているように見せかけて、実態が伴っていない企業の姿勢や表現のこと)の批判を招き、ESG評価やレピュテーションにマイナスとなる可能性があります。そのため、社内のガバナンス体制や調達ポリシーを整備し、「どの認証制度に準拠したクレジットを、どの目的で使用するのか」を明確にしておくことが求められます。 さらに、世界の規制や市場は日々進化しています。日本国内でも、GX-ETS制度が本格稼働し、排出量の可視化と価格の透明性が高まると、企業の間でクレジットのポートフォリオ管理という発想も広がっていくでしょう。つまり、将来的には金融資産のように、クレジットを「選び、組み合わせ、管理する」ことが企業価値に直結する時代が来ると考えられます。 このように、カーボンクレジットの調達は単なる環境対策ではなく、経営戦略の一部として設計されるべき領域になりつつあります。 4. 企業の実践事例と未来展望:ESG戦略に活かす鍵とは 多くの企業がカーボンクレジットを環境対策から戦略的資産へと捉え直しつつあります。その背景には、クレジットの活用が単なる排出削減の補完にとどまらず、企業価値や社会的信頼につながる要素と見なされていることがあります。 日本企業のあいだでも、再エネ由来のJ-クレジットを活用し、取引先や顧客に対して「見える形で脱炭素に取り組んでいる」と伝える取り組みが広がっています。最近では、サプライチェーン全体の排出を可視化・削減する中で、取引先のクレジット活用を支援する企業も増えてきました。これにより、スコープ3(他社由来の排出)への対応にも広がりを見せています。 注目されているのは、「オフセット」から「インセット」への転換です。「オフセット」は、自社外のプロジェクトからクレジットを購入する仕組みですが、「インセット」は、自社のバリューチェーン内で削減プロジェクトを実施し、それをクレジット化する取り組みです。たとえば、自社の農業サプライヤーと連携して土壌炭素を増やすプロジェクトを進め、それをクレジットとして組み込むといった戦略です。これは、事業価値と脱炭素を同時に実現する手法として期待されています。 まとめると、カーボンクレジットは今や、環境対応の埋め合わせではなく、企業戦略と連動した投資対象へと進化しつつあります。どのクレジットを選び、どう語るかが、企業の持続可能性と社会からの信頼の指標になる時代です。ESG経営を本気で進める企業にとって、カーボンクレジットは欠かせない戦略ツールとなっています。
- [EU CSRDへの対応について:日本企業の文脈で読み解く](https://shiodome.co.jp/column/32759/) - 1. ポイント 2025年3月、財務会計基準機構(FASF)内に日本のサステナビリティ開示基準を開発すること等を目的として2022年に設立された「サステナビリティ基準委員会」は、パブリックコメントを踏まえて日本初の「サステナビリティ開示基準」(SSBJ)を公開しました。 この動きは、国際会計基準財団(IFRS財団)がこれまでに「国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)」を設置し「全般的な開示要求事項(S1基準)」および「気候関連開示(S2基準)」を発表した流れを受けたものです。 SSBJは基本的にプライム上場企業の適用を想定して策定されていますが、それ以外でも推奨される動きが出てくるでしょう。また、SSBJは現時点では強制力のあるものではありませんが、金融庁のワーキング・グループを通して法改正を含めて義務化の検討が進められています(詳細下記3.および5.参照)。こうした動きは、欧州各国を中心とした海外でのISSB実施の動きに目を向けたものとなっています。ISSBおよびSSBJは、今後ビジネス界の標準の方向に進んでいくものと考えられます。 尚、ISSBまたはSSBJは基本的に、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言における4つの構成要素(ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標)を、気候から全てのサステナビリティ関連のリスクと機会に拡大するための、またこれまでのTCFDへの企業の取り組みをさらに強化するための基準と捉えることができます。 このように位置づけられる基準を踏まえると、企業が気候変動や自然資本との関わりの中で経営視点からサステナビリティをどう考えていくのか、またその考え方を、人的資本をはじめとする他の資本との関係を含めて経営の中にどう織り込んでいくのか等について、「ガバナンス」の検証が益々求められることになるでしょう。 その検証の中で、企業の見通しと、サステナビリティ関連のリスク及び機会とのあいだの「つながり」をしっかりと見据えることが一つのポイントとなっていくと言えます。 2. ISSB/SSBJの背景と目的 ISSBは、2021年11月3日、グラスゴーで開催されたCOP26において設立されました。ISSBは公益のために、投資家と金融市場のニーズに焦点を当てた、高品質で包括的なサステナビリティ開示のグローバル・ベースラインをもたらす基準を開発することを目的としています。 サステナビリティが、投資の意思決定の主流になりつつある中で、関連するリスクと機会について、質の高い、世界的に比較可能な情報を提供することを企業に求める声が高まっていました。特に、企業と投資家の双方にコスト、複雑性、リスクをもたらしている関連基準や要求事項の断片化に対処することが、強く望まれていたという背景があります。 そのようにして、ISSBは、G7、G20、証券監督者国際機構(IOSCO)、金融安定理事会、アフリカ財務大臣、40カ国以上の財務大臣、中央銀行総裁の支持を受け、サステナビリティ基準の策定に取り組んでおり、国際的な支援を受けています。 こうした背景を受け、日本においても国際基準との整合性を確保しつつ日本企業の実態に沿った開示基準を作成するために、2022年7月にSSBJが設立されました。 英国ではISSB基準と概ね同一の基準の適用が勧告されており、カナダにおいてもISSB基準に整合するサステナビリティ開示基準の最終化が公表されています。 3. SSBJの構成と適用 具体的に、SSBJの構成と適用(対象/範囲・時期・方法)の基本について、下記に見てみましょう。 【SSBJの構成】 SSBJの基本的な構成は、次のように示されています。 SSBJ基準は、サステナビリティ開示ユニバーサル基準「サステナビリティ開示基準の適用」(「適用基準」)、サステナビリティ開示テーマ別基準第1号「一般開示基準」(「一般基準」)、サステナビリティ開示テーマ別基準第2号「気候関連開示基準」(「気候基準」の3本柱で構成されている(詳細3参照)。 SSBJの「適用基準」は、ISSBのIFRS S1の基本となる事項を定めた部分に相当し、「一般基準」は、同じくIFRS S1の「コア・コンテンツ」に、「気候基準」はISSBのIFRS S2に相当する。 【適用】 適用全体の詳細については、「適用基準」を見ていく必要がありますが、ここでは適用対象/範囲、適用時期、適用方法についてのみ、端的に記しておきます(「適用基準」の詳細については、次号コラムで取り上げます)。 適用対象/範囲 SSBJの対象として、端的にいえば、基本的にはプライム上場企業を対象として策定されているものの、プライム上場企業以外の企業への適用可能性も考慮に入れられています。一方、そのいずれの対象企業について、現時点では強制的なものではありません。他方、サステナビリティ関連財務開示の対象として、報告企業自体だけでなく、「バリュー・チェーン」も対象とします。その「バリュー・チェーン」とは、「報告企業のビジネス・モデル及び当該企業が事業を営む外部環境に関連する、相互作用、資源及び関係のすべて」(適用基準第4項(12))と定義されています。したがって、製品又はサービス提供や供給、流通、消費に至るまでの、相互作用、資源及び関係、たとえば、材料及びサービスの調達、製品及びサービスの販売及び配送などについても、基準の対象として考慮が必要ということになります。 適用時期 現時点で強制適用時期は定められていません。しかし既に、2024年2月に金融審議会において「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ(WG)」が新設され、具体的な適用対象や(強制)適用時期が検討されていることに留意する必要があります。同ワーキング・グループ第4回資料によると、時価総額3兆円以上の企業には2027年3月期から義務化し、1兆円以上の企業は2028年3月期から義務化、さらに時価総額5,000億円以上の企業には、2029年3月期から義務化、2030年以降、プライム全企業適用義務化の案が明らかになっています。 適用方法 どのように適用するかについては、基準の中で下記のように定められています。 「サステナビリティ関連財務開示は、関連する財務諸表と同じ報告企業に関するものでなければならない」(適用基準第5項) 「関連する財務諸表を特定できるようにしなければならない」(適用基準第7項) サステナビリティ関連財務開示は、基本的に、「関連する財務諸表と同時に報告し(適用基準67項)、関連する財務諸表と同じ報告期間を対象としなければならない(適用基準第68項)。 4. SSBJの3本柱 前述のように、2025年3月に発表されたSSBJは次の3つの柱から成ります。ここでは、その柱3本の、キーワードになるものを示しておきます(それぞれの柱の詳細については、次号以降のコラムをご覧ください)。 柱1:サステナビリティ開示ユニバーサル基準「サステナビリティ開示基準の適用」(「適用基準」) キーワード:質的特性、つながりのある情報、リスクと機会、不確実性、ガバナンス 柱2:サステナビリティ開示テーマ別基準第1号「一般開示基準」(「一般基準」) キーワード:リスクと機会、ビジネス・モデル、バリュー・チェーン、影響、レジリエンス、評価 柱3:サステナビリティ開示テーマ別基準第2号「気候関連開示基準」(「気候基準」) キーワード:気候関連のリスクと機会、ビジネス・モデル、バリュー・チェーン、影響、気候レジリエンス、評価、TCFD、温室効果ガス排出 5. SSBJと既存の関連基準との関わり ISSBは、国際的なサステナビリティ開示基準の開発にあたり、白紙の状態から基準の開発を始めるのではなく、既存の基準やフレームワークを基礎としてきました。したがって、SSBJは既存の関連基準をバラバラではなく束ね、よりサステナビリティと経営との結びつきを強めていくための基準と捉えることができます。 SSBJとISSBとの関係について、上記に述べたことに加え、次の点に留意が必要です。 SSBJは、基準を適用した結果として開示される情報が、国際的な比較可能性を大きく損なわせないものとして策定された。 原則として、ISSB基準の要求事項がすべて取り入れられている(主として基準の読みやすさを優先して順番や用語を言い換えあり)。 したがって、SSBJ基準独自の取扱いを選択しなければ、ISSB基準に準拠したことになるように意図して作成されている(ISSB基準の要求事項に代えてSSBJ基準独自の取扱いを選択した場合、ISSB基準に準拠することになる場合もあれば、準拠しないことになる場合もある)。 6. SSBJの実施に向けて SSBJは、サステナビリティ開示基準を開発する基準設定主体であり、SSBJ基準に準拠した開示かどうかを保証する際の「保証基準」については、金融審議会を中心に検討が進められています。2022年12月公表された金融審議会ディスクロージャーWG報告では、「…企業によって社会全体へのインパクトが異なることや様々な業態があること、企業負担の観点、欧米では企業規模に応じた段階的な適用が示されていることを踏まえると、我が国では、最終的に全ての有価証券報告書提出企業が必要なサステナビリティ情報を開示することを目標としつつ、今後、円滑な導入の方策を検討していくことが考えられる」と提言がなされました。
- [バリューチェーン全体におけるサステナビリティ対応:戦略的に進めるために](https://shiodome.co.jp/column/32877/) - 1. はじめに サステナビリティへの対応は、もはや企業価値を高めるための選択肢ではなく、必然となりつつあります。人権や生物多様性といった地球規模の課題が顕在化し、国際的な規制が強まる中、ESG投資も拡大しています。こうした背景の下、企業には自社内の取組みにとどまらず、「バリューチェーン全体を通じた責任ある行動」が求められています。 ここでいう「バリューチェーン」とは、一言でいえば、企業が事業を行う上で外部と交わすあらゆる相互作用、資源、関係性の集合体を指します。そして、「バリューチェーン全体を通じた責任ある行動」とは、原材料・サービスの調達から、製品・サービスの提供、流通、消費、廃棄に至るまでの一連のプロセスに関わるあらゆる関係性と作用に、企業としての倫理的・環境的・社会的責任を果たすことを意味します。 そのバリューチェーン全体の中で、例えば「責任ある調達」や「サステナブル調達」といった個別の事業ポイントを、全体の構造との関係性の中で捉え直す必要があります。また、こうした視点は、自然環境との関係性だけでなく、人権や地域社会など、より広範な社会との関係性を統合的に捉えることを促します。 上記を前提として、サステナビリティを単なるCSR、リスク管理、または規制対応にとどまらず、戦略的かつ全体最適を見据えたバリューチェーンマネジメントをどのように進めたらいいのでしょうか。以下では、企業がサステナビリティをバリューチェーン全体で戦略的に進めるための要点を、下記に整理していきます。 2. バリューチェーンを俯瞰する視点からの戦略設計 3側面の調和 そもそもサステナビリティ(Sustainability)とは、環境・社会・経済の3側面の調和を図り、将来世代にも持続可能な価値を引き継ぐ社会を実現しようとする概念です。「持続可能性」という言葉が一人歩きしがちな中で、この3側面のバランスと相互作用を改めて中心に据え、企業活動やバリューチェーン全体を捉え直すことが必要です。 とりわけ近年では、人間の経済活動が引き起こす自然環境の劣化が深刻化し、その影響が社会的弱者や将来世代に及ぶ構造が明らかになってきました。こうした中で、サステナビリティに関する情報開示や説明責任が、企業に対してより強く求められるようになっています。 このような背景の下、企業経営においては、その場しのぎの短期的対応ではなく、中長期的な視座に立った価値創造の方向転換が問われています。サステナビリティは、リスク管理のための付属的課題ではなく、経営の根幹に関わる戦略課題であり、バリューチェーン全体の構造を俯瞰しながら、3側面の調和に基づいて意思決定を行う視点が不可欠です。 俯瞰的手法としてのマッピングアプローチ 上記を踏まえ、戦略上、まず企業に求められるのは、自社のバリューチェーン全体を「俯瞰」する視点の確立です。環境・社会面での影響を把握し、サステナビリティ対応をバリューチェーン全体で戦略的に進めていくためには、まず「何が課題で、どこに影響があるのか」を俯瞰的に整理する必要があります。ここで重要となるのが、マッピングアプローチです。 端的にいいますと、マッピングとは、サステナビリティ課題をバリューチェーン全体にわたって可視化し、構造化するプロセスを指します。これは、いわば「全体地図」を描く作業であり、どのステークホルダーに、どのような影響(リスク/機会/責任)が発生し得るかを、各バリューチェーン上の工程(調達、生産、物流、販売、使用、廃棄)に結びつけて分析します。 たとえば、温室効果ガスの排出源をScope1(自社の直接排出)、Scope2(購入した電力等による間接排出)、Scope3(バリューチェーン上の他者による間接排出)に分類し、Scope3の主要な排出項目を特定することは、脱炭素戦略を立てるうえで欠かせません。この分類をベースに、水リスク、労働環境、人権リスク、生物多様性への影響、循環経済の可能性などが、それぞれの事業活動とどのように関係するのかを整理し、課題と影響のホットスポット、またサプライヤーや消費者といった関係者との協働の在り方も見えてきます。 サプライチェーンリスク管理の視点から 特に近年では、自然災害や地政学的リスク、強制労働といった倫理的問題など、サプライチェーンに起因する事業中断リスクが顕在化しており、「サプライチェーン・リスク管理」の視点からもバリューチェーン全体の可視化と管理が重要性を増しています。なお、「サプライチェーン」とは、原材料の調達から製品の供給に至るまでの物流・取引ネットワークを指すのに対し、「バリューチェーン」は、企業活動の全体を通じてどのように価値を生み出しているかという構造を示します。サステナビリティの文脈では、サプライチェーンを「一部」として内包しつつも、バリューチェーン全体にわたる戦略的視点の確立が、気候変動対応や人権配慮、自然資本への責任を果たすうえで不可欠となっています。 SDGsの視点から 上述のようなマッピングのアプローチは、SDGs(持続可能な開発目標)の17目標・169ターゲットとの関係性を見る上でも有効です。企業のバリューチェーン上の活動をマッピングアプローチを通してSDGsとの関係性を見ることによって、企業の貢献領域やリスク対応を整理するうえで活用できます。たとえば以下のような項目が企業のバリューチェーン上の取り組みと密接に結びついています。 目標12「つくる責任 つかう責任」:製品ライフサイクル全体における資源効率や廃棄削減 目標13「気候変動に具体的な対策を」:Scope3排出量を含めた脱炭素戦略 目標8「働きがいも経済成長も」:サプライヤー国・地域での労働環境・人権配慮 目標15「陸の豊かさも守ろう」:森林破壊や土地利用に関わるサステナブル調達 企業は、自社の事業活動がどのSDGs目標にプラス/マイナスの影響を与えているかをマッピングし、戦略的な優先課題の特定(マテリアリティ分析)や、SDGsベースでの価値創造に繋げることが期待されています。 このように、マッピングは単なる分析手法ではなく、「どこから始めるべきか」「何を深めるべきか」を見極めるためのナビゲーションツールであり、バリューチェーンを軸にサステナビリティ戦略を設計する上で、極めて有効な第一歩といえるでしょう。これに加えて、社会面において人権・労働環境の適正さ、地域社会への影響、生物多様性の保全などの非財務的リスクも重要です。人権に関していえば、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則(UNGPs)」に基づく人権デューデリジェンスがバリューチェーンの一角として捉えるとことが必要な場面も増えています。今後はこうした非財務情報の開示が、企業の評価や信頼性に直接関わってきます。 3. 脱炭素とグリーン調達──Scope3排出量への対応 次に、企業がサステナビリティをバリューチェーン全体で戦略的に進めるため主局面の1つ、脱炭素とグリーン調達に焦点を当てて、解説していきます。脱炭素は、企業が2050年までに温室効果ガス排出を実質ゼロにする「ネットゼロ」目標に対応するための最重要テーマです。Scope1(自社活動)、Scope2(購入電力)に加え、Scope3(取引先や物流、使用・廃棄による間接排出)の管理が不可欠です。実際、多くの業種ではScope3が排出の大半を占めるため、真の脱炭素はバリューチェーン全体の変革なしには達成できません。 この点で、サステナブル調達(Sustainable Procurement)の考え方が重要になります。これは、価格や納期だけでなく、環境や人権、倫理に配慮した基準で仕入先を選定・管理するアプローチです。ISO20400などの国際指針に沿い、企業の調達方針に統合することで、脱炭素と倫理的責任を両立させることが可能になります。 グリーン製品(下記5.参照)の開発も、Scope3対策の重要な一環です。製品のライフサイクル全体を通じて環境負荷を最小化する「エコデザイン」や、「ライフサイクルアセスメント(LCA)」の活用が加速しています。再生材の使用や省エネ性能の高い設計は、消費者や調達先からの選好にもつながり、差別化の源泉となります。 このように、Scope3削減の鍵は、取引先や顧客との連携にあります。企業単独では達成しえないため、バリューチェーン全体での協働とインセンティブ設計が、経営の実効力を左右します。 4. 人権デューデリジェンスとCSDDD──欧州規制のインパクト サステナビリティをバリューチェーン全体で戦略的に進めるためのもう一つの主局面として、ESGの「S(社会)」における最重要テーマ、「人権デューデリジェンス(HRDD)」があります。これは、企業が自社およびサプライチェーンにおける人権リスクを把握し、予防・是正策を講じる責任ある企業行動を指します。 この取り組みは、国連「ビジネスと人権に関する指導原則(UNGPs)」に端を発し、OECDガイドライン、ILO条約などとも整合する国際的潮流です。これまでは任意的な取り組みと見なされていましたが、近年では法制化が進んでいます。その代表が、EUにおける「企業持続可能性デューデリジェンス指令(CSDDD)」です。この指令は、一定規模以上の企業に対し、サプライチェーン全体における人権・環境リスクの調査、是正、開示を義務付けるものです。違反企業には罰則が科される可能性があり、取締役にも責任が課される点が大きな特徴です。 この規制はEU域内企業だけでなく、EU市場に一定の売上規模で関与する非EU企業にも適用されるため、日本企業にも直接影響します。すでにドイツでは「サプライチェーンデューデリジェンス法」が施行済みであり、各国法制化の動きは連動しています。 経営者にとっては、単なるコンプライアンス対応ではなく、取引先の選定や調達方針、契約条件の見直し、苦情処理メカニズム(グリーバンスメカニズム)構築といった、実務的な対応が急務となります。 5. 企業戦略と連結したバリューチェーンマネジメント 上記で述べたことを踏まえ、バリューチェーン全体にわたってサステナビリティを実装するためには、企業戦略と連結したバリューチェーンマネジメントが不可欠です。そのマネジメントの鍵は、サステナビリティを一部門の管理業務ではなく、経営・購買・商品開発・営業といった中核業務の判断軸に内在化させることにあります。それには、企業全体のガバナンス体制の見直しも求められます。 責任ある調達ガイドライン そうした見直しの実務的ツールのひとつになり得るのが、「責任ある調達ガイドライン」です。これは、ISO20400(持続可能な調達のための国際ガイダンス)やOECD多国籍企業行動指針、国連「ビジネスと人権に関する指導原則(UNGPs)」などを参照し、企業が自社の調達方針においてサステナビリティリスクや人権・環境配慮の原則を明示するものです。 このガイドラインは、グローバル企業を中心に策定が進んでおり、今や上場企業や大手企業においては策定・運用が一般化しつつあります。しかし、形骸化を避け、実効力のあるガイドラインとするには、単なるルールの提示にとどまらず、サプライヤーとの双方向の対話や能力構築支援といった運用面での工夫が求められます。 つまり、「責任ある調達ガイドライン」は、企業による一方的な要求事項のリストではなく、バリューチェーンにおける透明性・説明責任を高める共通フレームワークとして捉え直す必要があります。経営戦略の中核に据え、調達部門やサプライヤーと連携しながら、サステナビリティ統合を実質的に推進するための実装基盤として位置づけることが重要です。 グリーン製品・ネイチャーポジティブ さらに、「グリーン製品」や「ネイチャーポジティブ」といった概念も、戦略に立脚するバリューチェーンマネジメントと密接に関係します。グリーン製品の開発は、設計段階からの環境配慮、原材料の選定、製造過程のエネルギー効率、流通の最適化、さらには使用後の再利用やリサイクルに至るまで、バリューチェーンの各段階における継続的な改善を求めます。単なる技術開発ではなく、全体最適としてのサステナブルなバリューチェーン設計が問われるのです。 一方、ネイチャーポジティブとは、自然資本の損失を抑えるだけでなく、生物多様性を回復し、自然との共生的関係を構築することを意味します。これは特に原材料調達や土地利用を伴う業種において重要性が高く、原産地での森林破壊回避、持続可能な農業・林業、また水資源管理などにおける企業の介入が問われます。ネイチャーポジティブなアプローチは、単なるCSR的な活動ではなく、調達先や土地管理の選定基準、製品開発時の自然影響評価など、バリューチェーン戦略と一体で設計される必要があります。 このように、グリーン製品・ネイチャーポジティブ・責任ある調達ガイドラインのいずれもが、バリューチェーンを貫く戦略の中でこそ、その意義と実効性を発揮します。このようなバリューチェーンマネジメントを促進することで、企業はサステナビリティ情報開示など単なる規制順守を超えた、真のサステナビリティ競争力を確立できるのです。 戦略的視点からみたバリューチェーンマネジメントは、単なるオペレーショナルな最適化ではなく、企業が中長期的にどのような価値を、どのように、誰と共につくるかを設計する行為そのものです。これは単に「環境配慮しているか」「リスクに備えているか」ではなく、未来に向けて自社の存在意義(パーパス)をどのように実装していくのかという問いにも直結します。 本稿が、企業におけるサステナビリティ経営の深化と実践に向けた一助となれば幸いです。
- [ESGにおけるウェルビーイングの戦略的意義](https://shiodome.co.jp/column/33162/) - 1. はじめに:ESGにおけるウェルビーイングの位置づけ 近年、ESG(環境・社会・ガバナンス)戦略における「S(社会)」の要素に注目が集まっています。その一角として、従業員や地域社会、さらには顧客やサプライチェーン上の関係者に関わる「ウェルビーイング」(Well-being)が、企業の中長期的価値創造と不可分であるという認識が広まりつつあります。こうした背景には、SDGsをはじめとした国際的潮流に加え、人的資本経営の重視、労働市場の構造変化、そしてパンデミック後の価値観の変容などが挙げられます。 本稿では、ESG戦略の中核として「ウェルビーイング」の意味と定義を再確認し、その戦略的意義を整理することで、経営者およびESG担当者に向けた実践的な視座を提供いたします。 2. ウェルビーイングの意味・定義と拡張的理解 ウェルビーイングは、「健康」や「幸せ」と訳されがちですが、今日の経営文脈ではより広い意味を持つ概念として理解する必要があります。WHO(世界保健機関)は、健康を「単に病気や虚弱でない状態ではなく、身体的・精神的・社会的に完全に良好な状態(well-being)」と定義しています(WHO憲章、1946)。この定義は、ウェルビーイングという概念が単なる健康や医療の領域にとどまらず、人間の包括的な生活の質に関わるものであることを示しています。 近年よく企業のウェルビーイング領域で言及されるOECD の「Better Life Index 」(BLI)は、物質的な生活条件と生活の質に関して、ウェルビーイングを国際的に比較するための指標ですが、WHOの定義を土台としつつも、ウェルビーイングを広義に可視化するツールとして位置づけられています。 具体的には、BLIでは、「健康」や「所得」だけでなく、「雇用」「住居」「教育」「市民参加」「安全」「ワークライフバランス」など、生活全体を取り巻く11のドメインで個人や社会の「暮らしの質(Quality of Life)」を可視化しています。つまり、心理的・身体的健康に加え、仕事の充実度、社会関係、経済的安定、環境との調和といった多次元的な要素が含まれます。 またウェルビーイングには大きく2つの側面があるとされており、主観的ウェルビーイングと客観的ウェルビーイングがあります。主観的ウェルビーイングには、精神的に良好な状態である“幸せ”、人生満足度、感情などが含まれ、客観的ウェルビーイングには、健康状態、所得、教育水準などが含まれます。企業の文脈からこの2つの側面を捉え直すと、従業員の幸福や働きがいの向上にとどまらず、地域社会への貢献、環境リスクの最小化、顧客との信頼関係など、組織を取り巻く全体的なエコシステムにおけるウェルビーイングの実現が求められることになる、と言えるでしょう。 ESGの各要素とウェルビーイングの関係性 2-1. ESGの「S」とウェルビーイング 企業において「ウェルビーイング」または「健康経営」が最近特に注目されている背景には、以下のような多層的な社会的理由があります(ESGの「S」に関連)。大きく分けると「社会的背景」「経済的合理性」「経営戦略の変化」「投資家・評価機関からの期待」の4つが挙げられます。 (1)社会的背景の変化 人材の価値観の変化:Z世代やミレニアル世代を中心に、給与や安定よりも、働きがいやワークライフバランス、精神的な充実を重視する傾向が強まっています。 パンデミック後の気づき:新型コロナウイルス感染症の影響で、メンタルヘルス、孤独、リモートワークの在り方、過労などが可視化されました。 (2)経済的合理性(健康投資は”費用”ではなく”リターン”) 健康経営=生産性向上:健康な社員は集中力が高く、欠勤や離職が減ることで企業全体の生産性と利益率が向上することが知られるようになりました。 医療費・労災コストの抑制:社員の心身の不調による医療費、休職、代替人件費などの見えないコストを削減できるということも知られるようになってきました。 (3)経営戦略としての進化 人的資本経営の中核:人材を「資源」ではなく「資本」として捉える考え方が主流になっています。 ウェルビーイングは、創造性、離職防止、ダイバーシティ推進などと直結し、経営戦略と人材戦略をつなぐ中核テーマです。 組織文化・ブランド価値の形成:「社員を大切にする会社」は社内外からの信頼を獲得し、採用・定着・顧客ロイヤルティにも好影響を与える傾向にあります。 (4)投資家・ESG評価の視点 人的資本の開示義務化:ISO 30414、SEC、ISSB、有価証券報告書などにより、企業は人材への投資状況や従業員のウェルビーイング指標の開示を求められています。 ESG評価や統合報告の観点:ウェルビーイングはESGの「S」要素として、企業の非財務的価値を裏付ける重要な情報と見なされています。 2-2. ESGの「E」(環境)とウェルビーイング 「S」以外に、ウェルビーイングはもちろん、ESGのEにも密接に関係しています。気候変動や自然災害、大気・水質汚染などは人々の健康や安全を直接脅かす要因であり、環境保全は地域住民や顧客のウェルビーイングの基盤です。また、自然と共生する働き方やライフスタイルを提案する企業活動は、従業員や消費者の内面的充足感の源泉にもなります。 2-3. ESGの「G」(ガバナンス)とウェルビーイング ウェルビーイングを戦略に組み込むためには、取締役会や経営層の理解とリーダーシップが不可欠です。企業理念や行動規範にウェルビーイングを位置づけることに加え、経営戦略、評価指標、KPI(重要業績評価指標)、人的資本開示などの中に組み込むことで、全社的な展開が可能となります。 3. 投資家・市場からの期待と人的資本開示 ウェルビーイングは、非財務情報としての人的資本の中核的要素とみなされており、統合報告書やサステナビリティ報告書の開示項目として注目を集めています。特に、ISO 30414(人的資本報告の国際ガイドライン)や、SEC(米国証券取引委員会)による人的資本開示義務、さらにはISSB(国際サステナビリティ基準審議会)による開示フレームワークの整備が進み、健康、エンゲージメント、離職率、職場の多様性、学習機会の有無などが、可視化・数値化の対象となってきました。 投資家、とりわけESG投資に積極的な機関投資家は、ウェルビーイングを単なる倫理的指標ではなく、中長期的に企業価値を支える本質的要素と捉えています。従業員の声を経営に反映させる仕組み、心理的安全性の醸成、メンタルヘルスの支援体制の有無などは、投資家とのエンゲージメントの場でも頻繁に議論される重要論点となっています。 加えて、日本国内でも2023年から有価証券報告書における「人的資本・多様性の開示」が義務化され、企業の説明責任が一段と高まっています。このような動向は、企業がウェルビーイングを戦略的課題として取り組む外部圧力を構造化することにもつながっているのです。 4. 企業事例と実践的アプローチ ウェルビーイングを戦略的に取り入れている先進企業では、個別施策にとどまらず、組織文化や事業戦略と一体化させる取り組みが進んでいます。ここでは、日本を中心に代表的な企業の事例を3社紹介します。 4-1 ユニリーバ・ジャパン ユニリーバは「人間中心の成長(Human-Centered Growth)」を掲げ、従業員一人ひとりのレジリエンス(回復力)や幸福感を高めることが企業パフォーマンスの基盤であると位置づけています。具体的には柔軟な勤務制度や、マインドフルネス・プログラムの提供、心理的安全性に関する研修制度などを通じて、ウェルビーイングの向上と働きがいの醸成を両立させています。 4-2 花王株式会社
- [財務・非財務情報の統合と非財務情報の可視化:経営戦略的視点から](https://shiodome.co.jp/column/33175/) - 1. はじめに 企業経営を取り巻く環境は、いま大きな転換点にあります。気候変動、人材、サプライチェーン、ガバナンスといった非財務領域は、もはや周辺情報ではありません。企業価値や持続可能性に直接影響を与える「本質的な経営要素」として、国内外の投資家や規制当局から、その開示と透明性が強く求められるようになっています。 とりわけ、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)やISSB(国際サステナビリティ基準審議会)といった国際的な枠組みにより、また日本でもSSBJ(サステナビリティ基準委員会)を通じて、サステナビリティ関連財務情報の標準化と義務化の動きが進んでいます。企業は、こうした動きに追随することに終始するのではなく、非財務情報と財務情報をどのように統合し、企業価値向上に結び付けていくのかを問い、経営戦略的視点からのアクションが求められるフェーズに入っています。 こうした状況下で、財務情報と非財務情報を統合し、非財務情報を可視化する「統合報告書」の重要性が高まっています。統合報告は、単なる情報開示を超え、企業の価値創造プロセスを可視化し、説明責任と経営戦略を結びつける枠組みです。特に、統合思考を軸にして、非財務情報を経営意思決定にどう取り込むかが、経営戦略上の鍵になると考えられます(詳細は2.参照)。 本稿では、財務・非財務情報の統合がなぜいま重要なのか、統合上の鍵は何かを整理した上で、特に非財務情報をどのように「可視化」し、「経営戦略に実装」していけるのか――のヒントを提示します。 2. 財務・非財務情報の統合 まず財務・非財務情報の統合の意味合いと、その統合の鍵となる統合報告書と統合思考について、その詳細を次に見ていきましょう。 2.1 財務・非財務情報の統合 企業が持続的に成長し、ステークホルダーとの信頼関係を構築していくためには、財務情報と非財務情報の統合が欠かせません。これまで財務情報は企業の短期的な業績を示す主要な指標として重視されてきましたが、近年ではESGや人的資本、知的資産などの非財務情報が企業価値に与える影響が大きくなっています。両者を統合的に把握・分析することで、企業は中長期的なリスクや機会をより的確に判断でき、戦略的な意思決定や投資家との対話の質を高めることが可能になります。財務と非財務の情報の垣根を越えた統合は、単なる情報開示の技術的な側面にとどまらず、企業経営そのものを変革するための重要なアプローチといえます。 ただし、ここでいう「統合」とは、単に財務情報と非財務情報を一つの報告書に並べることではないということに留意が必要です。本質的にはここでいう「統合」は、企業活動を全体として捉え、その成果と影響を多面的に評価・活用できるようにする枠組みを意味します。財務情報は売上や利益など数値で表される成果を示しますが、非財務情報は企業の環境配慮、人材育成、サプライチェーンの倫理性など、長期的な価値創造に資する要素を含んでいます。「統合」するということは、これら異なる性質をもつ情報を整理・関連付け、経営戦略や意思決定に活かせるように結びつけることです。具体的には、財務指標と非財務KPIの連関性を可視化したり、情報システムを連動させて経営層が横断的に把握できる仕組みを整えたりすることが含まれます。このような統合を進めることで、企業は短期的な財務成果だけでなく、社会的責任や持続可能性を踏まえた戦略的判断が可能になり、ステークホルダーに対しても透明性と一貫性のある説明ができるようになります。 上記に基づき、「統合報告書」とは、企業がどのようにして財務的成果と非財務的要素(ESG課題や人的資本、ガバナンスなど)を組み合わせ、中長期的な価値を生み出しているかを体系的に示すドキュメントを指します。ここで重要になってくるのは、経営判断や事業活動における「統合思考」です。その詳細を次に見ていきましょう。 「統合報告書」は、2010年に設立された国際統合報告評議会(IIRC)によって提唱され、2013年に国際的な統合報告フレームワークが初めて公表された、新たな企業報告の形です。その誕生の背景には、2008年のリーマンショックを契機に明らかになったように、「財務情報だけでは企業の将来リスクや持続可能性を的確に評価できない」という問題意識がありました。企業の価値は、もはや財務諸表だけで測れるものではなく、人材や知的財産、環境、社会関係資本といった無形資産(非財務資本)も含めた広い視点で把握する必要があるという認識が急速に広まっていきました。 2.2 統合報告書と統合思考 「統合報告書」は、財務情報と非財務情報を一体で捉え、企業の中長期的な価値創造ストーリーを投資家や社会に対して可視化し、説明することを目的としています。報告の中心にあるのは「統合思考」という概念であり、財務・非財務・内部・外部の情報を統合的に分析し、戦略やガバナンスと結びつけていく経営思考が求められます。報告対象となる「6つの資本」(財務・製造・人的・知的・社会・自然資本)をどのように活用し、どのように価値を創出・維持・転換しているかを明らかにすることで、従来のIR(投資家向け広報)を超えた戦略的なコミュニケーションが可能になります。 特にISSBは、この「統合思考」を重要視しており、ひいては、SSBJ基準においても、「統合思考」が組み入れられています。「統合思考」は具体的に何を意味するのでしょうか。ISSBを率いるIFRS財団の前身の1つであるInternational Integrated Reporting Council (IIRC)は、その統合思考を「組織が、そのさまざまな運営単位や機能単位と、組織が使用したり影響を与えたりする「複数の資本」との関係を、積極的に考慮すること」と定義しています。特に「資本間の関連性(connectivity)」や「長期的価値創造における戦略との整合性」を重視した考え方です。 統合思考の実践にあたっては、表面的な情報統合にとどまらず、財務と非財務の要素がどのように価値創造に影響を及ぼし合っているのかという、因果構造の理解が欠かせません。そこで重要な役割を果たすのが「システム思考」です。システム思考は、詳細と全体をつなげて捉え、複雑な構造をフィードバックループやストック・フローの視点で捉える手法であり、統合思考の実践を支えるものとして位置づけることができます。たとえば、温室効果ガス排出量の削減施策が物流コストやブランド価値にどう波及するか、人的資本への投資が離職率や業績にどう作用するかといった、複数要素間の連動を把握するには、システム思考が不可欠です。 日本においては、経済産業省が2013年以降、統合報告の意義と活用を広く発信し、上場企業を中心にその導入を後押ししてきました。特にコーポレートガバナンス・コードに対応する形で、多くの企業が統合報告書の任意開示を進めており、近年では人的資本や気候変動、自然資本などをめぐる非財務領域の充実が加速しています。 3. 非財務情報の可視化と経営戦略への実装 特に非財務情報を経営に活かすには、まずそれを「見える化(可視化)」し、次に「使える化(実装)」するプロセスが必要です。ESG、人的資本、気候変動といった情報は、従来の財務データと異なり、定義や計測の枠組みが曖昧で、部門ごとに分断されて蓄積されていることも少なくありません。そのため、経営戦略に実装するためには、情報を整理・構造化し、継続的に運用する体制が求められます。下記に、その可視化と実装について、ステップごとに深めていきます。 3.1 可視化 まず重要なのは、マテリアリティ(重要課題)の特定です。自社にとって本質的に重要な非財務テーマを明らかにすることで、取り組むべき優先領域や経営資源の集中先が明確になります。マテリアリティの選定は単なる「開示対応」のリストづくりではなく、自社の中長期ビジョンと価値創造ストーリーをつなぐ起点として機能します。 次に、特定したマテリアリティに紐づく非財務KPIの定量化が求められます。たとえば「人的資本の強化」という抽象的な目標を、「従業員1人あたりの研修時間」「離職率」「女性管理職比率」など具体的な数値指標に落とし込むことで、モニタリングや改善目標の設定が可能になります。ここでは「非財務情報は数字にできない」という思い込みを捨て、非財務であっても数値化・比較可能な資源であるという意識が必要です。 こうした定量化された非財務KPIを経営に活かすためには、可視化ツールの導入が有効です。BI(ビジネス・インテリジェンス)ツールやダッシュボードを用いれば、環境負荷、人的資本、サプライチェーンのリスクなどの情報を、部門別・時系列・地域別に直感的に把握できます。これにより、現場と経営層が共通の「数字と言葉」で会話できるようになり、非財務情報は戦略的コミュニケーションの基盤となります。 さらに、外部スコアリングの活用も有効です。第三者機関によるESGスコアや人的資本スコアは、自社の位置づけを客観的に捉える指標となります。スコアが思わしくない場合でも、それを経営改善の材料と捉えることで、社内の対話や課題整理が進みます。一方で、スコアが高評価であれば、IR活動や採用ブランディングへの活用も可能です。重要なのは、スコアを「評価」ではなく「対話の起点」として位置づける視点です。 3.2 実装 可視化された非財務情報を経営戦略に実装するには、それらを経営会議や中期経営計画に組み込み、財務情報と同等の重みで扱う構造を築く必要があります。単なる記録・報告にとどまらず、「意思決定に活かす仕組み」への進化が求められます。 最初からすべてを完璧に構築する必要はありません。まずはExcelや簡易的なダッシュボードによる管理から始め、段階的にBIツールやERPと連携し、外部ベンチマークと組み合わせていくことで、現実的かつ継続可能な運用が実現します。ここで重要なのは、技術導入の順序よりも、「何を、なぜ、測るのか」を見極める経営の視座です。 上記のようなプロセスを通して非財務情報を、経営の意思決定プロセスに直接組み込むことが、財務・非財務情報の統合または統合報告書の核心になります。 具体的にその経営の意思決定プロセスに組み込むには、以下のような統合が求められるでしょう。 経営会議や取締役会で、財務・非財務KPIをセットでレビュー 経営目標と連動する形での人材・環境・サプライチェーン施策の立案 報酬設計、資源配分、資本政策における非財務情報の活用 管理会計システム上でのESG関連指標の統合表示・分析 この段階では、非財務情報が「報告対象」から「経営資源」へと質的に転換されます。実際、統合報告書の先進企業では、財務・非財務を横断したKPIセットを経営層で定点的にレビューし、各事業の方針や投資判断に反映する動きが広がりつつあります。 とはいえ、最初から完全な統合を目指す必要はありません。まず自社の価値創造に直結するマテリアリティを特定し、そこに紐づく非財務KPIを財務指標と並列管理することから始めるのが効果的です。小さく始めて、大きく育てていくことが、非財務情報実装の現実的なアプローチなのです。 4. おわりに:未来志向の統合経営に向けて――課題と展望 統合報告書やサステナビリティ関連財務情報の開示が制度化される中、企業には今後、規模や業種に応じた段階的な開示義務や免除規定が適用される見込みです。しかし、制度対応の有無だけで企業の情報開示価値が測られる時代ではありません。むしろ、グローバル投資家が重視するのは、数字とストーリーの整合性、KPIの定量性、そしてその裏付けとなる経営の実行力であることを軸に経営を進める必要があるでしょう。 それを進める上での鍵として、統合報告の根幹にある統合思考、そしてシステム思考が位置づけられます。しかし、こうした思考方法は、一朝一夕で獲得できるものではありません。こうした思考方法を社内に根付かせるには、それなりの人材育成なども含めてプロセスが必要になります。システム思考、そして統合思考が経営に根づいたとき、財務と非財務の壁は極めて低くなり、意思決定・戦略・ガバナンスが統合されたものへと進化していく道筋がつくられるといってよいと思います。 一方、その実践にはいくつかのハードルがあり得ます。非財務データの整備が十分でない、KPIの管理が属人化している、経営層の関与に濃淡がある、報告書作成が形式的に陥っている――こうした課題は、多くの企業で共通しています。これらに対処するには、「統合報告書を経営戦略の説明書として再定義する」視点が重要です。単なる資料ではなく、経営の意思決定・資源配分・価値創造モデルを、一貫性をもって記述するドキュメントとして扱う必要があります。また、非財務KPIを財務指標と並列で定期的にモニタリングし、経営会議で議論すること。それらの情報が部門横断で共有されるための「共通言語」として、可視化ツールやダッシュボードを戦略的に活用することも欠かせません。 システム思考、統合思考を組織に根付かせながら、統合報告書の中で非財務情報を可視化し、経営に統合されて非財務情報は初めて価値になります。そのようにして、上記のようなチャレンジに向き合い克服してこそ、SSBJやISSBによる開示基準への対応に関わるプロセス自体にてついても、経営戦略的視点から企業価値に結び付けていくことができるのではないでしょうか。形式から本質へ、対応から創造へ――経営のあり方そのものが、今問われているのです。
- [統合報告書とは何か ―有価証券報告書との違いとその意義](https://shiodome.co.jp/column/33320/) - 1. はじめに 近年、上場企業におけるサステナビリティ(非財務)情報の開示は、大きな変革を迎えています。全体としてはSSBJの基準を踏まえた制度整備が進み、有価証券報告書においては気候変動対応や人的資本といった非財務情報の開示が質・量ともに強化されています。 また、統合報告書(Integrated Report)を発行する企業も年々増加しており、2024年度時点では1,000社超、上場企業全体の約3割に達しています。こうした潮流の中で改めて注目されているのが、「法定開示(有価証券報告書)」と「任意開示(統合報告書)」の本質的な違いです。 本コラムでは、今後の連載に先立ち、両者の役割と違いを整理したうえで、統合報告書に求められる基本的な考え方を解説します。 2. 有価証券報告書:法定開示に基づく制度的な情報基盤 有価証券報告書は、金融商品取引法に基づく法定開示書類であり、すべての上場企業に提出が義務付けられています。記載内容や様式は内閣府令等により詳細に規定されており、企業にはルールに則った正確かつ網羅的な情報開示が求められます。 近年では、従来の財務情報に加え、ガバナンス体制やサステナビリティに関する開示の強化が進んでいます。たとえば、気候変動への対応や人権尊重に関する方針・体制・リスク管理に関する情報に加えて、人的資本に関する定量データ――具体的には、女性管理職比率、男性の育児休業取得率、男女間賃金格差などの開示が制度的に求められるようになっています。 こうした有価証券報告書における情報開示は、主に投資家を対象としており、投資判断に資する正確性や比較可能性が重視される点が特徴です。(※制度の詳細については、別コラム 「有価証券報告書におけるサステナビリティ開示制度化の経緯と概要(2025年5月14日)」などをご参照ください。) 3. 統合報告書:価値創造を“語る”自由度の高い開示媒体 一方、統合報告書は、法的な義務を伴わない任意の開示媒体であり、財務情報と非財務情報(サステナビリティ情報など)を一体的にまとめて、中長期的な価値創造の全体像を伝えることを目的とした報告書です。厳格なフォーマットは設けられておらず、各組織の特性や状況に応じた柔軟な開示が可能です。 しかしながら、一定のルールや枠組みは存在し、たとえばIIRC(国際統合報告評議会)が提示するフレームワークでは、財務と非財務の情報を単に並列に記載するのではなく、「価値創造ストーリー」として、企業が「どのように価値を生み出し、持続的に成長していくのか」を、戦略やビジネスモデルと結び付けて一貫した物語として伝えることが求められています(※価値創造ストーリーについては別途解説)。 また、統合報告書の主たる対象も「財務資本の提供者=投資家」である点では有価証券報告書と共通していますが、より広く他のステークホルダー全般をも視野に入れた記述が想定されており、企業価値に対する多様な関心に応える媒体としての性格も有しています。 4. 統合報告書の質を高めるための5つの視点 統合報告書は、どちらかといえば、内容が網羅的で整っているかどうかという「形式面」よりも、「実質面」を重視すべき媒体であるともいえます。とりわけ、「どのような構成で、どんな情報を、どのように語るのか」といった一貫性のある内容設計が、報告書全体の質を大きく左右する重要な要素となります。 以下に挙げる視点などは、統合報告書の質を高めるうえで重要なポイントとされています。 マテリアリティ(重要課題)の設定 企業にとってなぜその課題が重要なのか、どのように取り組んでいるのか、そしてその取組みが財務・非財務の両面でどのように企業価値の向上につながっているのか――こうした点を明確に示す、説得力のある開示が期待されています。 『 価値創造プロセス』の可視化 財務資本に限らず、人的資本・知的資本・社会関係資本など、6つの資本をどのように活用し、価値創出につなげているのか―その構造を、図解やフローを用いて論理的に可視化することが求められます。あわせて、その中での自社の強みや、ビジネスモデルを明確に示すことが重要なポイントとなります。 説得力のあるトップメッセージ 経営者自らの言葉で、長期的なビジョンや現在直面している課題、そして企業としてのありたい姿を、誠実かつ熱意をもって語ることが、共感や期待感を引き出すカギとなります。したがって、一般的な表現にとどまるのではなく、経営者としての「意思」や「覚悟」がにじむ内容であることが求められています。 オリジナリティの訴求 一般的な情報を網羅的に並べるのではなく、また他社の模倣にとどまるのでもなく、自社の歴史や文化、経営課題や価値観に根ざしたストーリーを展開することが、「この企業ならではの統合報告書」としての存在感を高めます。 メリハリのある内容構成 すべての取組みや情報を均等に扱うのではなく、戦略的に重要な領域に重点を置き、強弱をつけて伝えることで、読者にとっての理解や印象が深まります。 5. 有価証券報告書と統合報告書は「補完関係」 ちなみに、有価証券報告書と統合報告書は、対立するものではありません。むしろ、それぞれの特性を活かして両立させる「補完的な関係」にあると捉えるべきです。たとえば、有価証券報告書は、制度に基づいて一定の簡潔性が求められるため、個々の情報の背景や意義までを詳述することが難しいという面があります。 一方で、統合報告書は、そうした事実やデータの背後にある企業の戦略や価値創造の道筋を「物語(ストーリー)」として丁寧に描くことができる媒体であり、読み手の理解や納得感を深める役割を果たします。 したがって、両者を組み合わせて活用することは、企業の価値創造をわかりやすく魅力的に伝えるための理想的なアプローチであり、それぞれの媒体特性を活かした情報発信は、今後ますます重要性を増していくといえるでしょう。 6. 最後に:統合報告書は「未来を語る戦略的媒体」 有価証券報告書が、どちらかといえば制度的に「現在の状況」や「事実」を記録する情報開示書類であるのに対し、統合報告書は、「未来のありたい姿」や「価値創造の道筋」を描く、戦略的かつ物語的な媒体であるといえます。したがって、企業の未来像やサステナビリティへの取組みに、読み手である投資家やステークホルダーが共感し、ワクワクできるような統合報告書が求められています。 現在、日本国内においても、「日経統合報告書アワード」やGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)による『優れた統合報告書』の選定など、企業による統合報告書の量的な普及と質的な向上を後押しする取り組みが広がっています。 こうした動きは、報告書そのものの競争力を高めるだけでなく、企業経営の透明性やサステナビリティ対応の高度化にもつながってきています。 次回以降のコラムでは、統合報告書の発行が本格化する契機となったIIRCフレームワーク(国際統合報告フレームワーク)の概要を取り上げるとともに、今回紹介した「5つの視点」などについても、実務的な観点から深掘りしていきます。あわせて「優れた統合報告書」として評価されている企業の記載内容や工夫もご紹介しながら、これからの統合報告書のあるべき姿を考察してまいります。
- [有価証券報告書「サステナビリティに関する考えおよび取組」 ‐人的資本に関する情報開示のポイント‐](https://shiodome.co.jp/column/33339/) - 有価証券報告書のサステナビリティ情報開示に関してのコラムは、今回が最終回となります。今回のテーマは「人的資本」です。近年、企業にとって人材は「資源」ではなく、「資本」として捉えられるようになっており、投資家やステークホルダーからの注目も高まっています。 1.「人的資本」とサステナビリティ 企業が持続的に成長していくためには、「人的資本」の視点は欠かせません。人材はもはや単なる「コスト」ではなく、企業の価値創造を支える重要な「資本」として位置づけられ、その活用や育成への投資は、経営の重要課題の一つとなっています。 しかし、日本においては、多様性の活用やジェンダー平等といった分野においては、依然として多くの課題が残されています。とりわけ、経済分野における女性の参画の遅れは顕著であり、世界経済フォーラムが発表する「ジェンダー・ギャップ指数」では、日本は先進国の中で下位に位置しています。 こうした状況を踏まえ、日本政府も人的資本経営の推進に向けた枠組みの整備を進めてきました。2020年には経済産業省が「人材版伊藤レポート」を公表し、人材戦略と経営戦略の統合の必要性を提起。さらに、2022年にはその発展版として「人材版伊藤レポート2.0」や「人的資本可視化指針」が示され、企業における人的資本の重要性がいっそう明確化されました。 そしてこの流れを受け、2023年の開示府令の改正によって、有価証券報告書においても、人的資本(多様性を含む)に関する情報開示が義務化されます。 2.「人的資本」の情報開示ルール概要 人的資本に関する開示は、主に二つの箇所に分けて記載します(図表1参照)。 一つ目は、「従業員の状況」項目への記載です。ここでは、多様性に関連する定量的な情報として、女性管理職比率、男性の育児休業取得率、男女間賃金格差に関するデータの開示が求められています。これらの指標は、企業におけるダイバーシティ推進の実態を示す重要な要素と位置づけられており、客観的な比較のためにも、統一された形式での開示が進められています。 二つ目は、「サステナビリティに関する考え方及び取組」への記載です。ここでは、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針、及び社内環境整備(例えば、人材の採用及び維持並びに従業員の安全及び健康に関する方針等)を「戦略」として記載することともに、その方針に基づき設定された指標の内容と目標や実績について「目標及び指標」として具体的に記載することが求められています。 (図表1)アンリツ株式会社「指標及び目標」に関する記載 (出所)サステナビリティ情報の記載欄の新設等の改正について(解説資料)をもとにRSM汐留パートナーズが作成(https://www.fsa.go.jp/policy/kaiji/sustainability-kaiji.html) 3. 従業員の状況‐多様性に関する3つの開示‐ 「従業員の状況」の項目では、これまでは主に、従業員数や平均年齢、平均勤続年数といった、組織の基本的な構成を示す情報が中心に記載されてきました。 しかし、開示府令の改正により、「女性活躍推進法」等に基づいて公表される①女性管理職比率、②男性の育児休業取得率、そして③男女間賃金格差といった多様性に関する情報の開示が新たに加えられ、企業のダイバーシティ推進の取組状況を定量的な形で示すようになりました。以下に3つの指標について、それぞれの算出方法や留意点を簡単に解説します。 なお、これらの指標の算出方法については、「女性活躍推進法」や「育児・介護休業法」に基づき、法令上で示されている算定基準に従って行うことが原則とされています。 4. ①女性管理職比率 「女性管理職比率」は以下の計算で算出します。 女性管理職比率(%) =(女性の管理職数 ÷ 管理職全体の人数) × 100 「管理職」の定義は明記しておくことが望まれます。一般的には、課長職以上の役職者が管理職に該当するとされていますが、企業ごとの役職制度には違いもあるため、算出に用いる管理職の範囲を明示することで、情報の透明性と比較可能性を高めることができます。ちなみに、「課長代理」、「課長補佐」「係長」と呼ばれている者は、それに相当する者とは見なされないとされています。 5. ②男性育児休業取得率 「男性の育児休業取得率」は、次の2つのいずれかの方法で算出します(図表2参照)。 また、いずれの方法を採用する場合でも、公表対象とするのは「公表前事業年度(=有価証券報告書を提出する事業年度の直前の事業年度)」の数値である点には留意が必要です。 (図表2)育児休業取得率の算出方法について (出所)厚生労働省HP「男性労働者の育児休業取得率等の公表」についての資料をもとにRSM汐留パートナーズが作成(https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/001029776.pdf) 6. ③男女間賃金格差 「男女間賃金格差」は、女性の平均年間賃金が、男性の平均年間賃金に対して何%であるかという視点で算出されます。算出にあたっては、「全労働者」「正規雇用労働者」「非正規雇用労働者(パート・有期社員など)」の3つの雇用区分ごとに、それぞれの格差を明示する必要があります。これにより、企業全体の傾向だけでなく、雇用形態による処遇格差の実態も把握することが可能となります。計算式は、次のとおりです。 女性の平均年間賃金 ÷ 男性の平均年間賃金 × 100(%) この値が100%に近いほど、男女間で賃金の差が小さいことを意味します。 7. その他の留意点と好事例 まず、これら3つの指標の開示は、すべての企業に一律に義務付けられているわけではありません。開示府令のなかで「女性活躍推進法又は育児・介護休業法に基づき、女性管理職比率、男性の育児休業等取得率及び男女間賃金格差の公表を行う企業は、有価証券報告書においても開示が求められる」と記載があるように、公表義務がない企業については、有価証券報告書においても記載を省略することが認められています。 また、開示対象の範囲については、連結ベースではなく、単体ベースでの開示でも問題ありません。ただし、常用労働者数が101人以上の連結子会社で、女性活躍推進法などに基づく情報公開が義務づけられている場合は、それらの子会社に関する情報についても記載が必要となります。 これら多様性に関する情報開示の好事例として紹介されているのが、積水ハウス株式会社の有価証券報告書です(図表3参照)。 ご覧いただくと分かるように、同社では3つの指標について、数値を記載しているだけでなく、その下に法令名や具体的な算出方法を注釈として丁寧に明示しています。特に「男女間賃金差異」に関しては、単なる数値だけでなく、その背景や補足説明もあわせて記載されており、開示情報の解釈を助ける工夫がなされています。 さらに、同社では「女性活躍推進」に関する経年推移データも開示されており、過去から現在に至るまでの取組の成果や、今後の目標・方向性を具体的に示しています(図表4参照)。 このように、単に義務とされている数値を開示するだけでなく、取組方針や目標、進捗状況とあわせて情報を発信する姿勢は、企業としての取組みへの本気度や、持続的な取り組みへの意志をステークホルダーに伝えるうえでも、有効なアプローチといえるでしょう。 (図表3)積水ハウス株式会社の「従業員の状況」に関する記載① (出所)積水ハウス株式会社 有価証券報告書(2025年1月期)を参考にRSM汐留パートナーズが作成(https://www.sekisuihouse.co.jp/company/financial/library/ir_document/_227230/2025_kessan/yuho_2024.pdf) (図表4)積水ハウス株式会社の「従業員の状況」に関する記載② (出所)積水ハウス株式会社 有価証券報告書(2025年1月期)より一部抜粋(https://www.sekisuihouse.co.jp/company/financial/library/ir_document/_227230/2025_kessan/yuho_2024.pdf) 8.
- [リジェネラティブ農業とは何か─ESG経営における次の一手](https://shiodome.co.jp/column/33406/) - 気候変動、生物多様性の喪失、そしてサプライチェーンの不安定化——かつてない複雑さを伴う課題が、企業経営を取り巻いています。こうした環境の中で、従来のESG実践のアプローチや手法そのものにも、変革=イノベーションが求められる時代に入ったと言えるでしょう。そのイノベーションのひとつとして注目されるのが、「リジェネラティブ農業(環境リジェネラティブ農業)」です。 本稿では、リジェネラティブ農業の概念、実践手法、周辺キーワードとの関係性、さらにはネスレ社の事例などを交えながら国際的な潮流について解説し、ESG経営の“次の一手”を検討するための視座を提供します。 1.「リジェネラティブ」農業とは 「リジェネラティブ(regenerative)」とはそもそも、破壊された自然環境や生態系を「再生」することを意味し、単に負荷を減らすのではなく、正のインパクトを与える方向性を指します。農業分野においては、土壌の健康を回復させ、炭素を蓄え、生物多様性を育む方法として「リジェネラティブ農業」が注目されています。 リジェネラティブ農業が注目される背景には、「炭素隔離(Carbon Sequestration)」という重要なキーワードがあります。これは、植物や土壌に大気中のCO₂を取り込ませて蓄積させる働きで、農業はそのカーボンシンク(炭素吸収源)としての機能を担えると期待されています。この概念を農業と掛け合わせたのが「カーボンファーミング(Carbon Farming)」です。 カーボンファーミングは、農業や林業を通じて大気中の二酸化炭素(CO₂)を土壌や植生の中に「隔離(sequester)」することを目的とした一連の実践的な取り組みで、下記1)~5)は、その代表的な手法となります。これらは自然を活用して炭素を吸収・固定し、結果的に二酸化炭素排出を削減するという点で注目されています。 リジェネラティブ農業の具体的手法リジェネラティブ農業とは概念的な用語ですが、実際には多くの農法が組み合わされて構成されています。以下に、代表的な手法を紹介します。 1) 不耕起栽培(No-Till Farming)従来の農業では、収穫のたびにトラクターなどで耕すことが一般的でした。しかし、耕すことで土壌中の微生物が死滅し、炭素が大気中に放出されてしまいます。 不耕起栽培は、土を耕さず、地表に有機物を残したまま次の作物を植える方法です。これにより土壌の構造が保たれ、水分保持力や有機物含有量が増し、土壌中の炭素固定が進みます。 2) カバークロップ(被覆作物)収穫のない期間に、土壌を裸にせず、植物(クローバーやライ麦など)を植えて地表を覆う手法です。これにより、土壌侵食を防ぐだけでなく、根圏微生物の活動を促進し、土壌の炭素固定にもつながります。さらに、害虫抑制や雑草の繁茂防止にも貢献します。 3) 輪作と間作(Crop Rotation / Intercropping)同じ作物を連作すると、特定の養分が枯渇し、病害虫の温床になります。輪作は異なる作物を年ごとに切り替えて栽培することで土壌の多様性を保ちます。 間作は、同じ畝に異なる作物を同時に植える方法で、光・水・栄養の利用効率が上がり、リスク分散にもつながります。 4) コンポスト(堆肥)の活用有機物から作られるコンポストは、化学肥料の代替となり、土壌微生物の活動を活性化させます。土壌の保水性や通気性が高まり、結果として農作物の品質向上や病害リスクの低減にもつながります。 5) アグロフォレストリー(Agroforestry)農作物と樹木を組み合わせて栽培する手法です。森林のような生態系を模倣し、日射の遮蔽、水分調整、多層的な栄養循環など、自然の回復力を農業に取り込むことができます。熱帯地域のコーヒー農園などでは、木陰のなかでコーヒーを育てることで、気温上昇の影響を緩和しつつ、生物多様性も保っています。 2. 企業の脱炭素戦略と連動 上記カーボンファーミングの様々な手法は、単体でも有効ですが、複合的に組み合わせることで、より高い炭素隔離効果と生態系回復効果が期待されます。とくに、森林は気候変動対策の柱の一つとして「自然由来の炭素吸収源」として重視されてきましたが、カナダやロシア、オーストラリアなどで相次いだ大規模森林火災の結果、何十年もかけて蓄積した炭素が一瞬で大気中に戻るという事態が相次ぎ、「森林吸収の不確実性」が増す中で、農業分野において、炭素隔離の分散化・多様化を進めながら様々なリジェネラティブ農業手法を複合的に進める、いわばカーボンファーミングの複合化が、今、重要な実践手法になりつつあります。 政策的にも二酸化炭素排出削減においてこうした分野、特に「農地・草地・土壌を利用した炭素隔離」が注目されています。国際機関(たとえばFAOやIPCC)は、土壌は世界第2の炭素貯蔵庫であり、その管理次第で巨大な炭素吸収源になり得ると指摘しています(FAO, 2020)。特に、耕地面積の多い国々では、耕作方法の見直し(不耕起栽培、カバークロップ導入、堆肥施用など)により、炭素の土壌固定が実現可能であるとされ、世界の土壌中に年間最大3〜5ギガトンのCO₂を隔離できるポテンシャルがあるとの試算もあります(IPCC Special Report on Climate Change and Land, 2019)。 カーボンファーミングは、単なる「環境貢献」の手段にとどまらず、企業にとっては「脱炭素戦略」の中核のひとつとして位置づけられつつあります。特に先進的な企業は、農業経営の持続可能性を高めながら、自社のスコープ3排出の削減や炭素クレジットの創出を通じて、ESG指標との整合性を図る動きを加速させています。具体的にどのような動きがみられるのか。次に、その先進事例を見ていきましょう。 先進事例企業がカーボンファーミングを重要視する主な背景に、スコープ3排出(間接排出)との関係にあります。たとえば食品・飲料・化粧品・繊維などの企業は、自社の温室効果ガス排出量の大部分が農業・原材料調達の段階に集中しています。こうしたスコープ3排出を「オフセット」するために、自社のサプライチェーン上でカーボンファーミングを導入する企業が増えています。 例えばスイスに本社を置くネスレ、英国に本社を置くユニリーバ、米国に本社を置くマースなどは、リジェネラティブ農業を農家に奨励し、土壌炭素の蓄積による削減量を第三者機関で検証し、企業のカーボンニュートラル戦略の一部として報告しています(具体的事例は下記参照)。 こうした取り組みはサプライチェーンの強化だけでなく、ESGにおける「E(環境)」の定量的インパクトとして、炭素排出の削減や炭素隔離などの成果の報告が可能になり、企業価値向上の文脈も含まれていると理解することができます。 ■事例:ネスレの場合ネスレは、世界有数の食品企業として、コーヒーやカカオなど農産物に大きく依存しています。そのため、原材料を安定的に確保するには、農業の長期的な持続性が欠かせません。このネスレのリジェネラティブ農業の取り組みは、温室効果ガスの排出削減ともリンクさせているのが特徴的です。実際、リジェネラティブ農業はネスレの『ネットゼロ(温室効果ガス排出量実質ゼロ)ロードマップ2023』の重要な部分を占めています。 またネスレは2022年、「Nescafé Plan 2030」を発表し、2030年までに10億スイスフラン(約1.2兆円)以上を投資する計画を示しました。この計画では、コーヒーの生産農家が土壌の健康を改善しながら収量を維持・向上させられるよう、リジェネラティブ農業への転換を支援しています。具体的には、次のような方法を採り入れて実践しています(https://www.nestle.co.jp/sites/g/files/pydnoa331/files/2022-10/20221004-nescafe-plan-2030-jp-pr.pdf) カバークロップ(被覆作物)の植え付けにより、土壌の保護を支援 土壌にバイオマスを追加することで、土壌有機物を増加させ、土壌の炭素隔離を促進有機肥料を取り入れ、土壌の健全性に不可欠な土壌の肥沃化に貢献 アグロフォレストリー(森林農法)や間作の利用を増やし、生物多様性の保全に貢献 既存のコーヒーの木を剪定、あるいは病害や気候変動に強い品種に植え替え、コーヒー栽培地の再生や生産者の収量の増加を支援 こうした動きに基づいてネスレは Nescafé Plan 2030 の進捗について、2018〜2022年にかけて14カ国の7,000名以上のコーヒー農家を対象に、Rainforest
- [統合報告書のガイドライン ― IIRCフレームワークとは](https://shiodome.co.jp/column/42504/) - 国内において統合報告書を発行している企業の多くが「国際統合報告フレームワーク(IIRCフレームワーク)」を活用しています。今回は、その概要やポイントについて解説します。 1. IIRCフレームワークが生まれた経緯 1980年代まで、企業の情報開示といえば財務情報が中心でした。損益計算書や貸借対照表といった財務諸表こそが、投資家にとって企業を評価する唯一の手がかりでした。 しかし1990年代に入ると潮目が変わります。地球環境問題や労働環境の改善など社会課題が注目され、企業にも説明責任が求められるようになりました。その流れの中「CSR報告書」や「環境報告書」が広がり、非財務情報の開示が進んでいきます。 2000年代にはさらに大きな変化が訪れます。世界的にESG投資が拡大し、投資家は環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)への取り組みを重視するようになりました。また、「知的財産」「人材」「ブランド」といった無形資産の重要性が高まり、財務情報だけでは企業の真の価値を説明できないことが明らかになってきたのです。 こうした背景を受けて、財務と非財務を一体的に示す新たな枠組みの必要性が高まります。2010年には国際統合報告評議会(IIRC、現IFRS財団に統合)が設立され、2013年には「国際統合報告フレームワーク(IIRCフレームワーク)(以下 IRフレームワーク)」が公表されます。これが統合報告の世界的な広がりを後押しし、発行企業数は急速に増加しました。さらに2021年には改訂版が発行され、現在も統合報告書作成の主要ガイドラインとして活用されています。 2. IRフレームワークのアウトライン‐「指導原則」と「内容要素」‐ IRフレームワークは、大きく二つの柱で構成されています。それが「指導原則(Guiding Principles)」と「内容要素(Content Elements)」です。(図表1参照) まず、「指導原則」とは統合報告書を作成する際に一貫して貫かれるべき考え方を示したもので、いわば全体を導く羅針盤にあたります。具体的には、戦略的焦点、情報のつながり、将来志向性、ステークホルダーとの関係といった観点が含まれます。これらの原則は、報告書を単なる情報の寄せ集めにせず、読み手にとってわかりやすく、企業の本質的な姿を伝える基盤となるものです。 一方、「内容要素」は、統合報告書に盛り込むべき具体的な情報を定めたものです。たとえば、組織概要や外部環境、ガバナンス、ビジネスモデル、リスクと機会などがあります。ただし、これらの要素を単に列挙して説明するのではなく、要素間の「つながり」や「関係性」を示すことが重要と示されています。 よって、「指導原則」は“どのように考えるか”という視点を示し、「内容要素」は“何を伝えるか”を示しています。両者が有機的に結び付くことで、統合報告書は単なる「静的な情報開示」にとどまらず、企業の未来像を「動的に描き出す報告書」となります。 (図表1) 指導原則と内容要素 区分内容指導原則(Guiding Principles)戦略的焦点と将来志向(Strategic Focus and Future Orientation)情報のつながり(Connectivity of Information)ステークホルダーとの関係(Stakeholder Relationships)重要性(Materiality)簡潔性(Conciseness)信頼性と完全性(Reliability and Completeness)一貫性と比較可能性(Consistency and Comparability)内容要素(Content Elements)組織概要と外部環境(Organizational Overview and External Environment)ガバナンス(Governance)ビジネスモデル(Business Model)リスクと機会(Risks and Opportunities)・戦略と資源配分(Strategy and Resource Allocation)業績(Performance)見通し(Outlook)基盤となる考え方(Basis of Presentation) (出所)IIRC「国際統合報告フレームワーク改訂版」https://www.ifrs.org/issued-standards/integrated-reporting/を参考にRSM汐留パートナーズが独自に作成 3.「原則主義(Principle Based)」アプローチとは IRフレームワークは、指導原則や要素項目というアウトラインを提示しつつも、あくまで「原則主義」アプローチを取ることを強調しています。この「原則主義」とは、「ルール主義」と対比される概念です。 ルール主義とは、詳細な基準やチェックリストに従って、形式的に情報を開示する方法です。たとえば「この項目を書けばよい」「この様式に従えばよい」といった、定型的で遵守的な姿勢です。 これに対し、IRフレームワークが採用する原則主義は、「最低限これを記載せよ」と強制するものではありません。むしろ「この視点を踏まえ、自社の特性や状況に応じて工夫して表現せよ」という柔軟な姿勢を促すものです。したがって、統合報告書の表現は企業ごとに異なって構わないのです。 つまり、一定の“型”は示されているものの、本当に大切なのは形式を守ることではありません。重要なのは、統合報告書の目的や本質をいかに的確に伝えられるか、そして作成を通じて企業が統合思考を経営にどう結び付けていくか――そこにこそ重きが置かれているのです。 4.「統合思考」‐6つの資本を結び付け、価値を持続的に創造する視点 ― IRフレームワークの解説書において、繰り返し登場する重要なキーワードが「統合思考」です。解説書では統合思考を次のように説明しています。 「組織が、その事業単位および機能単位と、組織が利用し影響を与える資本との関係について能動的に考えることである。統合思考は、短期・中期・長期にわたる価値の創造、保全または毀損を考慮した、統合的な意思決定および行動につながる。」 ここでいう「資本」とは、財務資本・製造資本・知的資本・人的資本・社会関係資本・自然資本の6種類を指します。つまり、企業がこれらの資本をどのように活用し、自社のみならず外部環境やステークホルダーに対して、価値を創造・維持、あるいは毀損する可能性があるのかを考えること――それが統合思考です。 例えば、人的資本への投資は新規事業の創出を促し、収益拡大へとつながります。自然資本への配慮は環境保全に寄与するだけでなく、持続的な資金調達を可能にし、中長期的には企業の信頼とブランド価値を高めます。 このように、自社とステークホルダーの双方にとって価値を生み出す仕組みを築き、その実現に向けてビジネスモデルや経営戦略を設計すること。これこそが統合思考であり、統合報告の本質的な目的であるといえるでしょう。
- [価値創造プロセスを可視化する「オクトパスモデル」](https://shiodome.co.jp/column/46868/) - 今回は、統合報告書における価値創造プロセスを視覚的に示した「オクトパスモデル」を取り上げ、その構造と意義を解説しながら、価値創造プロセスの本質について考察していきます。 1. オクトパスモデルは「価値創造プロセス」を表す代表的フレームワーク 統合報告書において「価値創造プロセス」は、企業の持続的成長を支えるメカニズムを説明する中核的要素として位置づけられています。 この「価値創造プロセス」は、企業が直面する外部環境や社会課題の中で、どのようなビジョンや経営理念を掲げ、経営戦略を策定・実行し、多様な資本を活用して、自社固有のビジネスモデルを通じて価値を創出・循環させていくのかを示すものです。 そして、その全体像を可視化した設計図が、通称「オクトパスモデル(Octopus Model)」と呼ばれる図です(図表1)。この名称は、図の形状が足を広げたタコの姿に似ていることに由来しています。 なお、IRフレームワークにおいてこの図は、あくまで例示的なモデルとして提示されているものであり、必ずこの図を用いることが義務づけられているわけではありません。 しかし、多くの企業がこの「オクトパスモデル」をベースとして自社の価値創造の仕組みを説明しており、統合報告書における代表的なフレームワークとして広く定着しています。 (図表1)価値創造プロセスの概念図(オクトパスモデル) 出所:IIRC「国際統合報告フレームワーク改訂版」https://www.ifrs.org/issued-standards/integrated-reporting/より抜粋 2. オクトパスモデルは統合報告書の全体像を示す“サマリー(要約)” オクトパスモデルを構成する主な要素は次の通りです。 外部環境 存在意義、使命及びビジョン 6つの資本 ガバナンス ビジネスモデル リスクと機会 戦略と資源配分 実績 アウトプット アウトカム お気づきの方もいるかもしれませんが、この要素は、以前のコラムで紹介した統合報告書の「8つの内容要素」とほぼ重なっています。 よって、オクトパスモデルとは、統合報告書全体を俯瞰し、その要点を一目で理解できる“サマリー”のような存在なのです。 しかし、サマリーといっても、たとえば学術論文の冒頭に置かれるサマリーが、読者に「この論文を読む価値があるかどうか」を判断させるように、統合報告書におけるオクトパスモデルも、企業の価値創造ストーリー全体の「入口」として、非常に重要な役割を担います。 したがって、オクトパスモデルをどれだけ充実した形でわかりやすく描けるかが、統合報告書全体の理解度や評価を大きく左右する――そのような重要な要素となります。 3. アウトプットとアウトカム ― 価値創造の起点となる二つの概念 ここからは、価値創造プロセスを構成する要素の中でも、重要なキーワードについて解説していきます。まずは「アウトプット」と「アウトカム」です。 「アウトプット」とは、企業の事業活動の結果として直接的に生み出される成果物を指します。たとえば、自動車メーカーであれば、自動車という製品がアウトプットにあたります。 一方で、「アウトカム」とは、そのアウトプットが社会や環境、顧客、そして自社にもたらす影響や成果を意味します。 同じ自動車メーカーの例で考えると、企業にとっては車の販売による「収益」というプラスの影響が生まれます。顧客にとっては「移動の利便性向上」や「時間の節約」といったベネフィットが生じます。 一方で、環境に対しては「温室効果ガスの排出」という負の影響が、社会に対しては「交通事故」などの課題が発生する可能性もあります。 このように、アウトカムには「正の影響」と「負の影響」の双方が存在します。 4. 経済的価値と社会的価値 ― アウトカムの二軸構造 また、IRフレームワークにおいては、このアウトカムを「経済的価値」と「社会的価値」という二つの軸で整理して捉えることが求められています(図表2)。 「経済的価値」とは、組織自身に対して創造・保全または毀損される価値を指し、「社会的価値」とは、ステークホルダーおよび社会全体に対して創造・保全または毀損される価値を意味します。 投資家は主として前者、すなわち「企業自身にとっての価値」に関心を寄せています。しかし、これからは後者である「社会全体に対しての価値」も、中長期的には決して無視はできません。 社会や環境に対する価値の毀損は、企業の信頼やブランド、レピュテーション、さらには規制リスクなどを通じて、最終的には財務的価値にも影響を及ぼしかねないためです。 この考え方こそが、統合報告書の根幹をなす視点といえるでしょう。 したがって、投資家はこれら二つの価値を統合的に捉えたうえで企業を評価する必要があります。ゆえに、企業はこの二つの価値の関係を体系的に整理・可視化し、「経済的価値(自社にとっての価値)」と「社会的価値(社会全体にとっての価値)」の両面を明確に導き出すことが求められているのです。 このように、「アウトプット」と「アウトカム」の理解は、価値創造プロセス全体を正しく示すうえで欠かせない視点であり、統合報告の本質を理解するうえで大切なポイントです。 (図表2)組織および他社に対して創造、保全又は毀損される価値 出所:IIRC「国際統合報告フレームワーク改訂版」https://www.ifrs.org/issued-standards/integrated-reporting/より抜粋 5. 資本の主体的選択と開示の重要性 次のキーワードは「6つの資本」です。一般的に「資本(しほん)」とは、事業活動の元手となる資金や資産をイメージしますが、IRフレームワークでは、資本をより広い意味で捉え、財務的な側面だけでなく、以下の6つの資本を例示しています。(図表3) (図表3)IRフレームワークが示す6つの資本
- [カーボンニュートラル時代の不動産ESG―― ZEB・ZEH、認証制度とサステナビリティ推進の方向性](https://shiodome.co.jp/column/47101/) - 本稿では、不動産業界が具体的にどのようなESG施策を実行し、そこからどのような価値が生まれているのかを、環境・社会・ガバナンスの三側面で同時に深化しつつある実装の具体像として整理していきます。 1. ESG・サステナビリティと不動産――潮流と具体的な関わり カーボンニュートラルへの転換がグローバルに加速するなか、不動産業界のESG(環境・社会・ガバナンス)に対する責任とリーダーシップは、これまでになく注目を集めています。不動産は世界のエネルギー消費の約3割、CO₂排出量の約4割を占めており、サステナビリティ課題とは切り離せない存在です。一方で、本業界は環境負荷の高い産業だという従来のイメージが、すでに過去のものになりつつあります。 実際には、不動産業界が果たしうる社会的インパクトは非常に大きく、ESG経営の潮流は業界全体に広がっています。建物の省エネルギー化や再生可能エネルギーの活用にとどまらず、地域社会との共生、ガバナンスレベルでの情報開示に至るまで、多層的な取り組みが展開されているのが現状です。こうした変化は、環境負荷の低減に資するのみならず、資産価値や賃料プレミアム、ファイナンス条件の改善といった経済的メリットにも結びついており、本業界における成長戦略の重要な要素として、ESGが位置づけられるようになってきました。 不動産分野におけるESGの推進は、単なる社会的要請の域を超え、不動産の価値創造のメカニズムそのものに構造的な変化をもたらしています。 環境面では、ZEB(ネットゼロエネルギービル)、ZEH(ネットゼロエネルギーハウス)の推進や、高断熱・高気密化、省エネ設備の導入、太陽光パネル等の再生可能エネルギーの活用、電力最適化システムの実装が進展しており、木材利用の促進や循環型建材の採用も加速しています。これらの取り組みは、CASBEE、LEED、BREEAM、WELLといった各種認証の取得と連動し、環境性能評価の向上とカーボンニュートラルへの道筋の具体化に寄与しています。環境認証が資産価値向上に結びつくという構図は、もはや市場における一般的な認識となっています(詳細は第3節で整理します)。 社会面では、地域再生に資する複合施設の開発、働き方改革を踏まえた柔軟なオフィス設計、災害対応力の高いレジリエントな建物づくりが進展しており、都市や生活者にもたらす便益が拡大しています。ガバナンス面では、ESGレポートやGRESB評価への対応を通じた情報開示の高度化に加え、SPCの活用によるリスク分散と管理強化、社内統制の整備が進み、国内外の投資家からの信頼向上に資する基盤が整えられてきています。 このように、ESGの推進は、もはや一過性の潮流やCSR活動の範疇にとどまらず、不動産会社の財務戦略、レピュテーション、そして市場競争力を支える中核的要素となりつつあります。 2. ZEB・ZEHとESG認証制度――不動産分野における環境性能向上と市場インパクト ZEB・ZEH(ゼロエネルギービル/ゼロエネルギーハウス)は、日本の不動産ESG政策を象徴する取り組みです。なぜこの二つの制度が注目されているのでしょうか。その理由は明快で、不動産業界にESGの視点を根付かせ、産業全体の行動変容を強力に促す役割を果たしてきた点にあると考えられます。 ZEB(ネットゼロエネルギービル) 経済産業省資源エネルギー庁は、ZEBを「高度な設計・技術によって、大幅な省エネルギー化を実現した上で、再生可能エネルギーを導入することにより、年間の一次エネルギー消費量の収支をゼロとすることを目指した建築物」と定義しています。参照:https://www.env.go.jp/earth/zeb/detail/01.html ZEB認証に求められる要件は年々厳格化しており、その影響は建築・設計業界にとどまらず、不動産投資、ファイナンス、賃貸運用、テナント企業のエネルギー調達戦略にまで及んでいます。ZEB認証を取得したビルは、エネルギーコストの低減、投資収益性の向上、空室率の低下などの観点から魅力が高まり、ESGに積極的な投資家を引きつける重要な要素となっています。 新ZEH基準(2027年スタート) ZEHとは、住宅の断熱性能を高め、省エネ機器によって消費エネルギーを削減し、さらに太陽光発電などでエネルギーを創出することで、年間の一次エネルギー消費量を実質ゼロに近づける住宅を指します。戸建住宅向けのZEHについては、新基準であるGX ZEHの導入により、断熱性能や再生可能エネルギー設備に関する要件が大幅に強化されます。参照:https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/general/housing/index03.html これにより、新築住宅全体の環境性能が底上げされ、関連する建材、住宅設備、施工、流通といった幅広い業界への波及効果が期待されています。家主や管理会社に加え、住宅を購入・賃借する消費者の選択基準も変化しており、ZEHに対する信頼感が不動産価値を左右する新たなシグナルになりつつあります。 不動産業界におけるESG認証制度 不動産ESG認証制度(CASBEE、LEED、BREEAM、WELLなど)が普及したことで、建築・リノベーションに関する投資判断や賃料査定に、定量的な環境価値評価が反映されやすくなりました。加えて、認証を取得した企業にとっては、資金調達コストの低減、プロパティマネジメントの高度化、IR活動や対外的な広報における優位性など、実務面でのメリットも大きくなっています。こうした変化は、不動産業界にとどまらず、金融・物流・小売など他の業界にも広がり始めています。 世界的に見ても、ESG投資の流れは不動産分野に強く向かっており、大手機関投資家やREIT各社は、対象物件のESG認証取得を投資判断や融資条件に組み込む動きを加速させています。日本の不動産市場も、これらの枠組みと歩調を合わせることで、国際競争力を維持・強化する道筋を描いていると言えます。 3. 不動産関連ESG認証制度の整理 以下の表では、不動産関連の主要ESG認証制度について、評価対象・認証名・概要・日本の取得件数を整理します。各制度の詳細な内容や最新動向については、公式サイトや有識者レポートもご参考していただければ幸いです。 参考資料 https://mec.disclosure.site/j/sustainability/activities/environment/certification/https://www.env.go.jp/earth/zeb/detail/09.htmlhttps://www3.abinc.or.jp/about/https://www.asahi.com/sdgs/article/15060909?msockid=3ac80ce45e7267502bf319165f776683https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/files/RE100_gaiyou_20250131.pdf 4. おわりに―― ESG・サステナビリティ推進における不動産業界の役割と今後の方向性 不動産業界は、ESG・サステナビリティ推進において、一般に想像される以上に強い影響力と実効性を持つ分野です。建物や都市のあり方そのものが、カーボンニュートラル、地域再生、レジリエンスの構築、人々の健康や快適性、さらには働き方・暮らし方の変革といった社会課題の解決と密接に結びついています。 認証や規制対応にとどまらず、日々の開発・運営・資産管理といった現場での実践が、そのままサステナブルな社会への移行を後押しする最大の原動力となっています。不動産業界が生み出す一つ一つの取り組みは、大きな経済波及効果をもたらし、多様な産業を牽引します。これからのフェーズでは、認証、情報開示、運用データの活用を一体的に高めることでESGの質を向上させつつ、不動産価値の再定義を進め、社会・環境・経済の好循環を実現するビジョンを描くことが求められています。お問い合わせ
- [国内外不動産企業のESG戦略――環境・社会・ガバナンスからみる共通点と相違点](https://shiodome.co.jp/column/47198/) - 1. 国内外不動産業界におけるESG取り組みの違い 近年、気候変動の深刻化、サプライチェーンにおける脱炭素要請、投資家によるエンゲージメントの強化、地域社会の課題の複雑化などにより、ESGはもはや任意の取り組みではなく、価値創造とリスク管理を同時に実現するための前提条件となっています。不動産業界は特に、建物のライフサイクル全体での環境負荷、居住者・就業者のウェルビーイング、災害レジリエンスに加え、雇用創出や文化の担い手としての役割も果たす都市の基盤インフラとして、ESGの影響が極めて大きい業界です。 一方で、ESGの基本的な方向性は世界共通であるものの、具体的な取り組み内容や優先順位には、各国・地域の制度環境、資本市場、都市構造、文化的背景に起因する違いが見られます。本稿では、日本と海外の主要不動産企業を対象に、E(環境)、S(社会)、G(ガバナンス)の三側面から、それぞれの取り組みの共通点と相違点を概観します。 2. 日本と海外の不動産企業における取り組み:E(環境) 国内大企業は、省エネ建築と再生可能エネルギー調達を両輪として脱炭素化を進めることで、エネルギーコストの削減とポートフォリオ全体の資産価値向上に加え、地域経済やテナント企業の脱炭素にも波及する効果を生み出しています。 一方、海外企業では、ポートフォリオ全体の最適化やデータドリブンな運用が特徴です。再生可能エネルギー比率の拡大、ZEB・ZEHの推進、第三者認証の取得などを通じて、環境性能の可視化のみならず、投資家評価やテナント誘致力などビジネス上のリターンも確保しています。 共通点としては、環境パフォーマンスの向上が財務面や投資家評価に直結している点です。相違点として、国内企業は地域包括支援やコミュニティ形成、居住者の健康・働き方改善など社会課題解決に波及する取り組みを重視するのに対し、海外企業はScope 3排出管理やデータ統合を通じて、投資判断の高度化や資本配分効率の最大化を志向しています。 3. 日本と海外の不動産企業における取り組み:S(社会) 国内企業は、災害レジリエンスや地域包括支援を起点に生活の質向上を目指しつつ、雇用創出や地域投資にもつなげる動きが際立っています。建設現場の安全確保、人権配慮、バリアフリー設計、ウェルビーイングの追求といった取り組みは、災害時にも機能する都市インフラとして定着し、持続的なエリア価値を支えています。 海外企業では、社会価値創出のスケール拡大と制度設計の両面を重視し、地域経済と企業価値の双方を底上げしています。標準化されたプログラムやデータに基づく展開により、国境や拠点を越えた社会的インパクトの波及を図る点が特徴です。 この部分では、国内は生活者や地域に密着した現場型、海外はデータ・指標・制度に基づくグローバル型という、アプローチの違いが浮かび上がります。 4. 日本と海外の不動産企業における取り組み:G(ガバナンス) ガバナンス面においては、日本でも海外でも、ESGを単なる公約にとどめず、実際の意思決定と資本配分を動かす経営管理指標として位置付けています。 国内企業は、地域再生やコンパクトシティ、災害レジリエンス強化などの都市運営上の目標に向け、事業・金融・開示を三位一体で活用する仕組みを構築。地域社会や居住者のウェルビーイングを統治の対象に含め、社会課題解決と投資循環の連動を実現しています。 一方、海外企業は、報酬連動や委員会設置などガバナンス制度の整備を先行させ、リスク管理精度の向上や資本コスト低減など具体的な効果につなげています。 こちらの表で見ると、国内では、事業・金融・開示を通じてコミュニティ形成支援や居住者のウェルビーイングまで統治の対象に含め、社会課題の解決と投資循環(クラウドファンディングを含む)とを結び付ける、いわばコミュニティ志向のガバナンスが重視されています。これに対し海外では、報酬連動や委員会設計など、ガバナンスの制度設計を先行して整備することで実装を加速し、リスク調整後リターンやコンプライアンス水準の底上げを図っている点に特徴があります。 5. まとめ 日本と海外の不動産企業のESG戦略は、事業・投資・都市運営にESGを組み込むという方向性では共通しています。しかし、日本は地域・生活者・災害といった文脈に基づくローカルかつ現場起点の実装、海外はデータ・指標・制度を軸としたグローバルかつポートフォリオ起点の実装という違いが際立ちます。 今後、日本企業がESGで競争優位を築くには、現場密着型・コミュニティ志向の強みを単発の好事例にとどめず、戦略とKPIに落とし込んで持続的に深化させることが不可欠です。その上で、海外企業の先行事例にあるインセンティブ設計やデータ基盤の整備も取り入れ、社会的インパクトと財務リターンの関係を定量的に示すことで、グローバル資本市場から評価されるESGストーリーとして確立していくことが求められます。
- [移転価格課税はなぜ“重い”のか~一般税務とは異なるリスクの構造を理解する~](https://shiodome.co.jp/column/57394/) - 移転価格の問題は、単に指摘されるかどうかにとどまりません。本当に重要なのは、指摘された場合にどの程度の影響が生じるのかという点です。実務の現場では、移転価格課税は一般的な税務調査とは明らかに異なる重さを持つと認識されています。それは、課税の対象範囲や影響の広がりが、通常の税務論点とは質的に異なるためです。 一般税務では、特定の費用の否認や一部の処理の修正といった形で問題が顕在化することが多く、その影響も一定範囲にとどまるケースが一般的です。しかし移転価格の場合、問題は個別の処理ではなく、取引全体の価格設定や利益配分そのものに及びます。そのため、一度指摘を受けると、その影響は金額面、時間軸、さらには経営面にまで広がることになります。本稿では、こうした移転価格課税の特徴を、実務の観点から整理いたします。 1. 調整額が大きくなりやすい構造 移転価格課税の最大の特徴は、調整額が大きくなりやすい点にあります。その背景には、対象となる取引の性質があります。移転価格税制の対象は、物品売買に限らず、役務提供、無形資産、金融取引といった幅広い取引に及びます。しかも、それらはいずれも企業活動の中核を構成する取引であることが多く、単発の例外的な処理ではなく、継続的に発生する取引です。 実際の公表事例を見ても、国内ビル設備関連メーカーで約20億円、スポーツ用品メーカーで約11億円、アウトドア用品メーカーで約6億円と、いずれも億単位の申告漏れが指摘されています。これらはいずれも上場企業の事例ですが、連結売上高が数十億円から数百億円規模の中堅企業においても、移転価格調査および課税が増加している点は見過ごせません。 さらに重要なのは、調整対象が費用ではなく利益そのものであるという点です。例えば、通常の税務調査であれば、特定の費用の否認により課税所得が増加するという構造になりますが、移転価格の場合は、取引価格の見直しを通じて利益全体の帰属が修正されます。結果として、売上や利益水準そのものが再計算されることになり、その影響は桁違いに大きくなる可能性があります。 また、移転価格調整は単年度で完結するものではありません。移転価格の除斥期間は最大7年(2020年4月1日以後開始事業年度から。それ以前は6年)と、一般の法人税の5年と比べて長期に設定されています。同様の取引が過年度から継続している場合、この期間内のすべてが調整対象となるため、累積額は非常に大きくなります。そのため、単年度では限定的に見える金額であっても、累積すると非常に大きなインパクトとなる点に注意が必要です。こうした構造により、移転価格課税は本質的に金額が膨らみやすい領域となっています。 2. 調査対応は長期戦になる 移転価格調査のもう一つの特徴は、その対応が長期化しやすい点です。通常の税務調査と比較すると、調査期間そのものが長くなる傾向にあり、場合によっては数年単位で対応が続くこともあります。その理由は、単に資料が多いからではなく、論点そのものが複雑であり、事実関係の整理と分析に時間を要するためです。 税務当局からの資料要求も広範囲に及びます。契約書や会計データだけでなく、組織体制、業務内容、意思決定プロセス、さらには事業戦略に関する説明が求められることもあります。これは、価格の妥当性を評価するためには、取引の背景にある機能やリスクの所在を把握する必要があるためです。 その結果として、企業側には大きな負担が生じます。社内の関係部門が長期間にわたり対応に追われることになり、通常業務への影響も避けられません。また、外部専門家の関与が不可欠となるケースも多く、対応コストは決して小さくありません。移転価格対応は単なる税務論点ではなく、経営リソースの配分にも影響を与える問題であるといえます。 3. 国際的な二重課税リスク 移転価格課税の特徴として、国際的な二重課税リスクが挙げられます。例えば、日本で利益が増額される調整が行われた場合、本来であれば相手国で同額の減額調整が行われることが望まれます。しかし、実務上は必ずしもそのように対応されるとは限りません。 この問題を解決するためには、相互協議と呼ばれる手続を通じて、各国の税務当局間で調整を行う必要があります。また、将来の不確実性を低減するために、事前確認制度の活用が検討されることもあります。しかし、これらの手続には時間とコストがかかり、必ずしも合意に至る保証があるわけではありません。 特にアジア諸国においては、租税条約が締結されている国であっても、相互協議の実務経験が乏しい税務当局が少なくなく、交渉が長引くケースが多い点にも注意が必要です。東南アジアに子会社を持つ企業にとっては、二重課税が解消されるまでに想定以上の時間とコストを要するリスクがあることを認識しておくべきでしょう。 つまり、移転価格課税は、日本国内で課税関係が確定したとしても、それで問題が終わるわけではないという点に特徴があります。むしろ、その後に国際的な調整プロセスが続く可能性があり、その結果が見通せないこと自体が大きなリスクとなります。このように、移転価格は国内税務にとどまらず、国際的な調整を伴う複雑な問題であることを理解する必要があります。 4. 将来にわたる影響とレピュテーションリスク 移転価格課税は、過去の修正にとどまらず、将来にも影響を及ぼします。一度指摘を受けた場合、同様の取引については価格設定の見直しが必要となり、グループ全体の取引条件や利益配分の再設計につながることがあります。これは単なる税務調整ではなく、事業運営そのものに影響を及ぼす可能性があります。 また、移転価格の問題は対外的なリスクにもつながります。多額の課税が発生した場合には、情報開示の観点からプレスリリースを行う例が増えています。実際に、近年の移転価格課税事例は時事通信やNHKなど主要メディアで報道されており、企業名とともに申告漏れの金額が広く知られることになります。上場企業にとっては株価や企業価値への影響も無視できません。特に上場企業においては、税務問題が企業価値やガバナンス評価に直結するケースも現実に見られます。 さらに、税務当局との関係性という観点からも、移転価格の指摘は重要です。一度問題が顕在化した企業については、その後の調査においても同様の論点が重点的に確認される傾向があります。つまり、単発の問題ではなく、継続的なリスクとして認識される可能性がある点にも留意が必要です。 5. 実務的に求められる対応の視点 これらを踏まえると、移転価格対応は、指摘されるかどうかではなく、指摘された場合に耐えられるかという視点で考える必要があります。そのためには、まず調整リスクの大きい取引を特定し、どの取引が金額的・構造的に重要なのかを把握することが出発点となります。 次に、それらの取引について価格設定の妥当性を事前に検証し、外部データや分析に基づいて説明できる状態を整えることが重要です。さらに、その状態を一時的なものにとどめず、継続的に管理する体制を構築することが求められます。市場環境や事業状況は変化するため、それに応じて条件を見直していく必要があります。 ここで重要なのは、移転価格対応を個別対応として捉えるのではなく、仕組みとして設計することです。都度の判断に依存するのではなく、一定のルールとプロセスに基づいて運用することで、リスクの再発を防ぐことが可能となります。 おわりに 移転価格課税は、金額が大きくなりやすく、対応に時間がかかり、さらに国際的な調整を伴うという三つの特徴を持っています。そのため、問題が起きてから対応するのではなく、問題が起きないように設計するという発想が不可欠です。 移転価格対応は単なるコストではなく、将来リスクを抑えるための投資と捉えるべきテーマです。平時から適切な管理体制を整え、説明可能な状態を維持することができれば、万一調査が行われた場合でも、その影響を大きくコントロールすることが可能となります。 移転価格の本質は、結果としての課税額ではなく、その背後にあるリスク構造にあります。その構造を理解し、適切に備えることこそが、実務において最も重要な対応といえるでしょう。 移転価格対応を先送りするコストは、対応するコストよりもはるかに大きい。この点をぜひ経営判断の材料としてお考えください。
- [ローカルファイルは“後から作るもの”ではない~日本における同時文書化義務の実務ポイント~](https://shiodome.co.jp/column/57403/) - 移転価格対応において、ローカルファイルは避けて通れないテーマです。しかし実務の現場では、調査が来てから対応すればよいという認識がいまだに見られます。この認識は、日本の制度の前提と大きくずれています。 ローカルファイルは、税務調査に備えて後から作る説明資料ではなく、平時から備えておくべき文書として位置付けられています。つまり、問題が生じた際に作成するものではなく、問題がないことを事前に説明できる状態を整えておくためのものです。本稿では、この制度の位置付けと実務上の重要ポイントを整理いたします。 1. ローカルファイルは事前作成が前提 日本では、国外関連取引を行う法人に対して、その取引価格が独立企業間価格に基づいていることを説明する文書、いわゆるローカルファイルの作成および保存が求められています。ここで最も重要なのは、その作成タイミングです。 ローカルファイルは、原則として確定申告書の提出期限までに作成または取得しておく必要があるとされています。すなわち、調査時に求められてから作成することは制度上想定されていません。この点は形式的な要件のように見えますが、実務上は極めて重要な意味を持ちます。 なぜなら、事前に作成されているということは、価格設定の段階からその合理性を意識していることを意味するためです。逆に、調査対応として後から作成された文書は、どうしても結果に合わせた説明、いわゆる後付けの整理と見られるリスクが高まります。税務当局が見ているのは、単なる文書の有無ではなく、その文書が取引時点の判断を反映しているかどうかです。 したがって、ローカルファイル対応は、文書作成という作業ではなく、価格設定プロセスそのものの整備と密接に結び付いていると理解する必要があります。 2. 同時文書化義務の免除と実務上の注意点 具体的には、一の国外関連者との前事業年度の取引金額(受払合計)が50億円未満、かつ無形資産取引金額が3億円未満である場合には、同時文書化義務が免除されます。多くの中堅・中小企業はこの免除基準に該当しますが、だからといって安心はできません。この点は制度上の重要な論点ですが、実務では誤解されやすい部分でもあります。 同時文書化義務が免除されるということは、あくまで「期限までに作成しておく義務が免除される」という意味であり、移転価格税制そのものの適用がなくなるわけではありません。したがって、税務調査においては、取引の内容や価格設定の根拠について説明を求められる可能性は依然として存在します。 ここで問題となるのは、文書を作成していない場合の対応です。事前に整理されていない状態では、調査時に必要な情報を短期間で収集し、論点を整理し、説明資料を作成することは容易ではありません。その結果、十分な説明ができないまま当局側の認識で評価が進んでしまうリスクが生じます。 つまり、同時文書化義務が免除されているからといって何も準備しないという対応は、実務上はむしろリスクを高めることになりかねません。義務の有無にかかわらず、説明できる状態を維持しておくことが重要です。 3. 提出期限は短く、事後対応は困難 税務調査においてローカルファイルの提出を求められた場合、その提出期限は通常45日以内とされています。この期間は一見すると一定の余裕があるように見えますが、実務的には決して長いものではありません。 ローカルファイルの作成には、取引内容の整理、関係部門からの情報収集、機能・リスク分析、外部データの取得、ベンチマーク分析といった複数の工程が必要になります。これらをゼロから進める場合、45日という期間では対応が間に合わないケースも十分に想定されます。 さらに重要なのは、ローカルファイルを期限内に提出できなかった場合のリスクです。この場合、税務当局は推定規定を適用し、同業他社のデータに基づいて独立企業間価格を推定することが認められています。つまり、企業側の実態に関係なく、当局が入手した同業者データをもとに課税が行われる可能性があるのです。自社にとって有利な説明の機会を失うことは、実務上極めて大きなリスクといえます。 これに加え、海外子会社との取引が関係する場合には、現地からの情報取得や英語資料の確認なども必要となり、時間的制約はより厳しくなります。したがって、実務上の前提は「提出期限内に作る」ではなく、「いつでも提出できる状態にしておく」ことにあります。 この点は、単なる準備の問題ではなく、企業の管理体制そのものに関わる論点です。平時から情報を整理し、必要な分析を更新しておく体制が整っているかどうかが、調査対応の質を大きく左右します。 4. ローカルファイルは“証拠資料”である ローカルファイルは単なる説明資料ではなく、価格設定の合理性を示す証拠資料として位置付けられます。そのため、内容には一貫性と論理性が求められます。 具体的には、取引の背景、機能とリスクの整理、採用した価格設定方法の妥当性、そして最終的な利益水準の合理性が、ひとつのストーリーとしてつながっている必要があります。個別の説明が断片的に存在していても、それらが整合していなければ説得力は限定的となります。 また、形式面においても留意が必要です。例えば、日本語以外で作成された文書については、日本語訳の提出を求められる可能性があります。翻訳対応には時間を要するため、この点も事前準備の重要性を示しています。 さらに重要なのは、ローカルファイルが「どのように見られるか」という視点です。税務当局は、その文書を通じて、企業がどのような考え方で価格設定を行っているか、どの程度整理されたプロセスを持っているかを評価します。したがって、単に項目を埋めるだけではなく、第三者が読んで理解できる構成になっているかが重要です。 5. 実務で求められる視点 ローカルファイル対応において重要なのは、単に文書を作ることではありません。むしろ、その文書が実務の中でどのような位置付けを持つかが問われます。 まず、ポリシーとの整合性が確保されているかが重要です。価格設定のルールと実際の結果が乖離している場合、ローカルファイルは単なる説明資料にとどまり、実務との連動性を欠くことになります。 次に、実態との一致です。契約書や文書上の整理が実際の業務内容と一致していなければ、税務当局は実態を優先して評価します。したがって、現場のオペレーションと文書の内容が整合していることが不可欠です。 そして、第三者に説明できるかという視点です。ローカルファイルは社内資料ではなく、外部に対する説明資料である以上、専門的な内容であっても論理的に理解できる構成である必要があります。特に、なぜその価格なのかという点について、一貫したストーリーで説明できることが重要です。 おわりに ローカルファイルは制度上の義務であると同時に、自社の移転価格の考え方を外部に説明するための基盤でもあります。重要なのは、必要になったら作るのではなく、常に説明できる状態を維持するという姿勢です。 移転価格対応においては、文書は結果であり、本質はその前提となるプロセスにあります。ローカルファイルは、そのプロセスが適切に設計され、運用されていることを示すアウトプットです。 したがって、ローカルファイルを単なる書類と捉えるのではなく、移転価格対応の完成度を示す指標として位置付けることが重要です。平時からの整備と継続的な見直しを通じて、説明可能性を高めていくことが、最も実務的かつ有効な対応といえるでしょう。 顧問税理士や外部専門家と連携し、まずは主要取引のローカルファイルの整備状況を確認するところから着手されてはいかがでしょうか。
- [日本の不動産業界におけるESGの課題と実務的対応策](https://shiodome.co.jp/column/47203/) - 1. 日本の不動産業界のESGへの取り組みの現況 不動産は世界のエネルギー消費やCO₂排出において大きな割合を占めており、ESG対応は事業継続と競争力に直結する重要なテーマとなっています。近年では、ESG対応を進めた不動産が、資金調達コストの低減や社会的信頼の向上、賃料水準の維持・向上、空室率の低下といったプラスの効果をもたらすことが認識されており、機関投資家もGRESBをはじめとする各種認証の取得状況を重視する傾向が強まっています。 一方で、横断的な課題として、ESG投資が長期的な価値創出を志向する一方で短期的な収益とのトレードオフが経営判断を難しくしていること、また災害対応やBCP設計に関する評価指標が統一されておらず、保険料や投資判断に十分反映されにくいことなどが挙げられます。 本稿では、こうした全体状況を踏まえつつ、日本の不動産業界が直面している現状とさらなる課題をESGの観点から整理し、今後期待される対策について検討します。 2. 環境(E)の現況と課題 環境面では、再生可能エネルギーの導入や高断熱・高気密化によるエネルギー効率の向上、木材利用の促進や循環型建材の活用などを通じて、脱炭素と資源循環型の建築・運営が進められています。 しかし、代表的な課題として初期投資コストの高さが挙げられます。特に老朽ストックや中小規模の物件では、投資回収期間の見通しが立てにくく、賃料への転嫁にも限界があることから、必要性を認識しながらも実行段階に踏み切れないケースが少なくありません。 もう一つの大きな論点が、GHGスコープ3の把握です。テナントが個別に契約している電力や、専有部でのエネルギー使用まで含めて定量化することは容易ではありません。データ提供に対するテナント側の負担感や業種ごとの意識差も重なり、算定範囲や精度にはばらつきが生じやすいのが実情です。さらに、建材や施工といった上流の排出まで対象を広げると、どこまで詳細に追跡すべきか判断に迷う場面が増えています。 3. 社会(S)の現況と課題 社会面では、地域再生に資する複合施設開発や、働き方改革に対応した柔軟なオフィス設計、災害対応力の高いレジリエントな建物づくりが求められています。 一方で、日本の不動産業界は、こうした良質な取り組みが十分に伝わっていないという課題を抱えています。環境配慮やウェルビーイングを意識した設計(自然光や緑地、コミュニティスペース、防災機能など)を取り入れても、多くの居住者やテナントは依然として、賃料や駅からの距離、専有面積といった分かりやすい条件を重視して物件を選ぶのが実情です。その結果、ESGや健康・快適性に配慮した設計の価値が十分に評価されず、オーナー側は追加コストの妥当性や投資回収の筋道を示しにくくなります。 また、地域との共生という観点からも、設計段階から社会的価値を織り込むことは容易ではありません。医療・福祉機能の誘致、子育て支援、雇用創出、災害時の受け入れ拠点といった役割を、一つのエリアやビルの中でどのように配置するかを検討するには、行政、医療・福祉事業者、企業、住民など多様なステークホルダーとの調整が欠かせません。投資家にとっては短期的な利回りとのバランスも課題となり、地域にもたらされる長期的な便益が、経済性の評価にどのように反映されるのかが見えにくい場面もあります。 4. ガバナンス(G)現況と課題 ガバナンス面では、ESGレポートやGRESBへの対応を含む情報開示の充実、SPC(特別目的会社)を活用したリスク分散と管理強化、そしてガバナンス体制の整備を通じて、投資家やステークホルダーに対する説明責任と信頼性の向上が図られています。 一方で、情報開示や評価の基準が過度に多様化していることが大きな課題となっています。複数の指標や認証が併存するなかで、どれを優先的に採用し、どの水準を目標とすべきかについて社内合意を形成することは容易ではありません。上場会社や機関投資家を強く意識する企業ほど、多様な指標への対応を迫られやすく、その結果、評価対応そのものが目的化し、投資家やテナント、地域にとって何が本当に有益な情報なのかが見えにくくなるおそれもあります。 あわせて、ESGデータの収集・管理にかかる負荷の高さも看過できません。建物単位だけでなく、街区やエリア単位でGHG排出量やエネルギー利用状況、賃貸契約や運営スキームの状況などを継続的に把握しようとすれば、現場・本社の双方で相応の人的リソースとシステム投資が必要となります。 5. ESG課題への対応策、そして未来への展望 不動産業界では、これまで提示してきた取り組みと課題の積み重ねの上に、いま着実な変革が起きつつあります。建物が都市や社会、環境へ与えるインパクトの大きさを踏まえれば、各企業の持続的なESG推進努力が、地域やサプライチェーン全体のサステナビリティの実現に直結することは明白です。 実際、金融スキームや各種補助制度による初期投資負担の軽減、グリーンリースや省エネ契約条項、自治体・国策との連携、ESG情報の「見える化」といった現場主導の前向きな取り組みが、徐々にですが全国的に広がっています。 たとえば環境面では、ZEH(ネットゼロエネルギーハウス)やZEB(ネットゼロエネルギービル)基準を満たすため、断熱性強化や高効率設備の導入など、多層的な技術革新が進んでいます(1)。これに対してはリフォームにも活用できる補助金制度の拡充もあり、事業者・消費者ともに導入のハードルが次第に下がってきました。 社会面においては、建物の環境性能や健康・防災機能、地域コミュニティへのメリットをデータや具体事例で可視化・訴求する流れが強まっています(2)。これにより、テナントや入居者は「目に見える」価値で物件を評価しやすくなり、投資家にとっても高性能物件への資金流入が起こっています。特に日本では、安定した資産運用や価値保全を重視する投資家が多いため、ESG指標をもとにしたデータ比較・選別が進むと考えられます。また、こうしたデータ開示は、マーケット全体の透明性向上と、長期志向の投資行動の促進にも寄与します。 ガバナンス面でも、GRESB・CASBEE・LEEDなどグローバルな評価指標と自社戦略との整合性をはかり、政府の脱炭素方針やGXリーグの要件とも連動したデータガバナンス体制を確立しつつあります。開示情報の標準化やデータ収集・管理プロセスの機能強化によって、単なる評価対応に終始せず、ESGデータをファイナンスや投資、開発、プロパティマネジメントの戦略判断に直結させる動きも活発化しています。 このように、不動産業界はESG実装を単なる社会的責任にとどめず、経済合理性や中長期的な事業価値創出と両立させる新たな段階に入っています。今後のビジョンとしては、ESGへの取組を「コスト」ではなく、成長や競争力の源泉と捉えて深化させていくことが重要です。政策・業界標準・テクノロジーを三位一体で活用しつつ、投資家・テナント・地域住民と共創する仕組みを拡げ、事業活動全体の価値向上と地域社会の持続的発展に寄与する姿勢が求められます。 様々な課題は依然として存在しますが、不動産業界が業界横断で学び合い・連携しつつ、現場での好事例や新しい知見を素早く取り入れることで、「サステナビリティを起点とした成長モデル」へと転換できる可能性は十分にあります。都市・地域インフラの担い手として、不動産業界が引き続きESG経営を進化させ、より良い未来社会の実現に貢献していくことが期待されます。 参考文献(1)「ZEH」とは?リフォームで活用できる補助金の要件やメリットを解説|サポート行政書士法人 | サポート行政書士法人(2)Residential rising: Unlocking sustainability and asset performance in a unique sector – GRESB
- [GHGプロトコル:温室効果ガス会計基準](https://shiodome.co.jp/column/54400/) - 1. GHGプロトコルの定義と目的 GHGプロトコルは、温室効果ガス排出量の測定・管理に関する基準を策定し、その活用を支えている枠組みです。その対象となるのは、民間企業だけでなく、公共部門やバリューチェーン全体、さらには各種の緩和策まで含まれています。本プロトコルは、排出管理のために包括的で標準化されたフレームワークを提供し、主な基準は以下のとおり: Corporate Standards (企業向け基準) GHG Protocol for Cities (都市向けプロトコル) Mitigation Goal Standard (削減目標評価基準) Corporate Value Chain (Scope 3) Standard (サプライチェーン基準) Policy and Action Standard (政策・施策評価基準) Product Standard (製品基準) Project Standard (プロジェクト基準) これらの基準は、企業・政府・その他の組織が、自らの使命や目標の達成を視野に入れながら、温室効果ガス排出量を適切に測定・報告できるよう設計されています。 GHGプロトコルは、世界資源研究所(WRI)と持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)の20年以上にわたる協働体制のもとで整備され、政府、業界団体、NGO、企業など多様なステークホルダーとの対話を通じて発展してきました。その結果、現在では、世界で最も広く利用されている温室効果ガス会計基準として位置付けられています。 こうした国際的に一貫した基準が求められる背景には、企業のGHG会計・報告の前提を揃えなければ、削減努力の比較や評価が難しくなるという課題があります。GHGプロトコルは、排出削減が可能な重点分野(削減レバー)を特定し、気候変動対策の実施状況を継続的にモニタリングできるようにすることで、各組織のシステム整備を後押しします。また、共通ルールに基づき測定・報告することで、セクターや国・地域を越えた結果の比較を可能にし、ESG開示基準や各国制度との接続も円滑にします。企業や組織は、この枠組みに基づいて自社およびバリューチェーン全体の排出量を可視化することで、脱炭素戦略の立案と投資家・ステークホルダーへの説明責任の双方を果たしていくことが期待されています。 2. WRI/WBCSDと協働体制 GHGプロトコルは、単一の国や機関が独自に作り上げた基準ではなく、世界資源研究所(WRI: World Resources Institute)と持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD: World Business Council for Sustainable Development)が、約20年以上にわたり共同で整備してきた国際的な枠組みです。両者はいずれも、気候変動や資源制約といった地球規模課題に対し、企業の行動や情報開示のあり方をリードしてきたプレイヤーであり、その知見とネットワークがGHGプロトコルに集約されていると言えます。 1990年代後半から2000年代初頭にかけては、各国・各企業が独自の方法で温室効果ガス排出量を計測・報告していたため、数値の比較が難しく、投資家や政策当局が十分に活用しにくいという課題が顕在化しました。そこでWRIとWBCSDは、企業、金融機関、NGO、政府など多様なステークホルダーを巻き込みながら、自社の排出範囲をどこまでとするのか、どの活動をどのスコープに区分するのかといった共通ルールの策定に乗り出しました。 こうした対話と実証を積み重ねる中で生まれたのが、現在広く用いられているスコープ1・2・3の考え方です。自社が直接排出する分(スコープ1)、購入した電力等に伴う排出(スコープ2)、サプライチェーン全体や製品使用・廃棄まで含めた間接排出(スコープ3)を分けて捉える枠組みは、企業活動を自社の境界を越えて評価するための共通言語として定着しました。その後も、企業会計版、プロジェクト版、バリューチェーン基準、都市や政策向けのガイドラインなど、用途に応じた補完的な基準が継続的に整備され、現在も改訂が続けられています。 このようにGHGプロトコルは、WRIとWBCSDが長年にわたり科学的知見と企業実務の両面から磨き上げてきた温室効果ガス会計の土台と位置付けられます。今日、IFRS S2や各国の気候関連開示制度、サプライチェーンの排出データ要求の多くがGHGプロトコルを参照しているのは、こうした長年の協働を通じて、グローバルに受容された標準として成熟してきた結果であると理解できます。 3. GHGプロトコルにおける7つの基準 GHGプロトコルには、用途や対象に応じて複数の基準が用意されています。ここでは、代表的な7つの基準について概要を整理します
- [IFRS S1・S2の全体像:概要、適用ロードマップ、組織対応の要点](https://shiodome.co.jp/column/54460/) - 1. はじめに:IFRS とは ISSBは2023年6月、初の国際サステナビリティ開示基準(IFRS Sustainability Disclosure Standards)であるIFRS S1およびIFRS S2を公表し、年次報告期間の期首が2024年1月1日以後の事業年度から適用可能としました。これらの基準は、従来の国際会計基準(IFRS)が担ってきた役割をサステナビリティ情報領域へ拡張する取り組みであり、以下の背景があります。 1990年代以降、国際資本市場の拡大に伴い、企業を公平に比較できる共通指標の必要性が高まりました。各国基準が異なる状況では、連結財務諸表の作成や上場・M&Aの手続きが複雑化し、取引コストおよび情報の非対称性が増大します。透明性と一貫性を確保するため、EUを中心に制度統合が進み、国際的に整合した基準が求められるようになりました。 さらに、無形資産の重要性増大や会計不祥事を受け、経済実態を的確に反映する原則主義の国際統一基準の整備が急務となりました。財務報告の領域でIFRSが整備され、その流れを受けてサステナビリティ開示でも国際基準の確立が求められ、IFRS S1・S2が策定されました。 本稿では、IFRS S1・S2の位置づけと目的、両基準の要点、適用ロードマップ、そして組織に求められる対応について概説します。 2. IFRS S1・S2の概要と目的 IFRSのサステナビリティ開示基準は、IFRS S1とIFRS S2の二つで構成されています。 IFRS S1は全社的な総則、IFRS S2は気候関連の開示に特化した基準であり、TCFDの提言を中核に据えることで、財務報告との接続性と比較可能性を高めます。なお、義務化の可否や時期は各国・地域の規制当局の判断に委ねられます。 S1は、短期・中期・長期にわたる重要なサステナビリティ関連リスク・機会が、企業の資源や関係性への依存・影響を通じて企業価値に及ぼす影響を投資家が評価できるように情報を体系化します。報告範囲(適用スコープ)の明確化、重要性(マテリアリティ)に基づく開示、財務報告との接続性、統制されたデータに基づく継続的な報告プロセス(データガバナンスと内部統制)の確立を柱とします。 これにより、透明性の向上と投資家の意思決定支援を実務的に実現します。さらに、業種別の開示項目・指標についてはSASB基準を参照し、その適用可能性を検討することが求められ、基準間の調和性と比較可能性の向上、国際的な共通基盤の構築に資します。 S2は気候関連のガバナンス・戦略・リスク管理・指標と目標の4領域での開示を求めます。開示の中心は、物理的リスクと移行リスク、機会の特定、移行計画、レジリエンス評価(シナリオ分析を含む)、温室効果ガス(GHG)排出量(Scope1–3)および削減目標・進捗です。 S1と併用することで、TCFDと整合した枠組みの下、比較可能性を確保しつつ、気候が財務に与える影響(資本コストや資本配分への含意)を明確化し、投資家等(投資者・債権者等)の評価と意思決定を直接支援します。 以上の概要を踏まえ、IFRS S1・S2の策定目的は次の4つに整理されます。 サステナビリティ報告の透明性向上 フレームワーク間の不整合の是正と比較可能性の確保 包括的な国際基準の確立 投資家(投資者・債権者等)による評価と意思決定の支援 これまでIFRSの概要と目的を概観しました。こうした背景を踏まえ、企業としてどの時点で何に備えるべきかを把握するために、第3節のように基準更新のタイムラインを整理しておくことが重要です。 3. IFRS S1・S2の適用ロードマップ まず、2023年6月26日にIFRS S1とIFRS S2が公表されました。併せて、業種別の開示項目・指標についてはSASB基準を参照し、その適用可能性を検討することが求められ、国際的な比較可能性を高める枠組みが示されました。 適用開始(有効日)は、企業が当該基準に基づいて報告を開始できる期の起点を指します。IFRS S1・S2は、年次報告期間の期首が2024年1月1日以後の事業年度から適用可能で、早期適用も認められています。義務化の有無や開始時期は、各国・地域の規制当局が自国制度への組込みを通じて決定します。 移行は段階的に進めることを当社の推奨方針としています。初年度は、S1の対象を気候関連に限定し、まずはS2と整合したガバナンス、リスク管理、指標・目標の開示基盤を整えることを重視します。気候はサステナビリティ全体の一部であるため、「まず気候から着実に土台を固める」アプローチを推奨しています。 2年目以降は適用範囲を広げる段階です。当社としては、S1を気候を含むすべての社会的・環境的課題へ拡張しつつ、S2では気候リスクの詳細開示を一層深めていくステップを推奨します。スコープ3排出量はこの段階では必須とはなりませんが、データ収集やサプライヤー連携の仕組みづくりを前倒しで進めておくことで、その後の円滑な移行が期待できます。 3年目には、S1およびS2の全体範囲をカバーする状態への到達を目標とします。財務報告との統合、内部統制と保証スキームの設計、KPIの継続的な改善までを含む運用サイクルを構築することが、当社としての最終的な推奨到達点です。 要するに、公表時点から3年目の姿を見据え、バックキャスティングでロードマップを描くことが実務上の要諦であり、これを当社としての基本的な移行方針として推奨します。データ整備、統制・保証、サプライヤーとの協働を早期から計画的に進めることで、比較可能性と投資家への説明力を一段と高めることができます。 4. 組織への影響 IFRS S1・S2は、サステナビリティ情報を財務情報と同等の統制環境で扱うことを前提としており、開示実務と経営管理の再構築を迫ります。制度統合が世界的に進む中、準備状況は「対応の有無」ではなく「対応の深度」が問われます。 実務上、以下の観点で現在地を把握し、移行計画を具体化することが求められます。 報告要件への準備状況のアセスメント 必要な人材・プロセス・システムの整備状況 必要なデータの所在把握とギャップ分析 GHG排出量(Scope1〜3)の測定状況
- [GRI基準の役割と実務活用:社会基準としての位置付けとIFRSサステナビリティ開示基準との補完関係](https://shiodome.co.jp/column/54394/) - 1. GRIの概要と目的 GRI(Global Reporting Initiative)は、1997年に設立された国際的な組織であり、組織の経済・環境・社会におけるパフォーマンスを測定・報告するための説明責任の仕組みを提供することを目的としています。 当初は、企業が責任ある環境行動の原則を順守しているかを検証するための枠組みとして構想されましたが、その後、人権・労働慣行・地域社会・ガバナンスなど、より広い社会課題へと対象を拡大し、今日では社会全体に向けたESG開示の基準としての性格を強めています。加えて、GRIは同業他社とのベンチマーキングを促進することも重視しています。共通の指標や開示項目に基づく比較が可能になることで、自社の取り組みの水準や課題が見えやすくなり、持続可能経営の改善サイクルが回りやすくなります。 こうした役割を担う枠組みとして成熟してきた一方で、なぜGRIが求められているのかという背景も改めて押さえておく必要があります。 その背景には、企業のESG情報が各社バラバラに開示され、社会やステークホルダーが影響の全体像をつかみにくかったことがあります。気候変動や人権、サプライチェーンなどへの懸念が高まる中、企業には財務情報だけでなく、社会・環境への正負の影響を一貫した基準で説明することが求められるようになりました。こうした要請に応えるため、社会全体に向けて責任ある行動と持続可能経営を可視化する共通言語として整備されたのがGRIであり、投資家向けの情報を重視するISSBなどの枠組みとも補完的に機能する位置付けにあります。 2. GRIスタンダードの概要 GRIスタンダードは、組織の活動がもたらす経済・環境・社会インパクトを、社会全体と多様なステークホルダーに対して説明するための社会基準であり、相互に連携するモジュール型のレポーティング・メカニズムとして設計された、持続可能経営を支える共通言語です。企業はこの枠組みを用いることで、自社の社会インパクトや地域貢献、働き方・サプライチェーンへの影響などを透明性高く体系的に可視化し、ステークホルダーに対して一貫した情報を提供できます。単なる情報開示にとどまらず、説明責任を果たすプロセスを通じて、意思決定や対話の質を高めることが期待されます。 GRIスタンダードは、共通スタンダード(1・2・3)、セクター別スタンダード(11〜)、項目別スタンダード(100・200・300・400シリーズ)という三層構造で設計されています。 まず中核となるのが、すべての組織に適用される共通スタンダードです。GRI 1は、スタンダードを利用する際の基本要件と原則を示し、何をどのような前提で開示すべきかというレポーティングの土台を定めます。GRI 2は、ガバナンス・戦略・方針・働き方など、報告組織そのものに関する開示事項を整理し、組織像を立体的に描きます。GRI3は、重要課題(マテリアリティ)を特定し、それらがもたらす社会インパクトをどのように管理しているかを開示するための指針であり、ESG上のリスク・機会と企業の責任ある行動を結び付ける役割を担います。 これに加えて、セクター別スタンダードは、石油・ガスや農業、水産養殖、漁業など、社会や環境に対する影響の大きい産業分野ごとに特有の論点を示すものです。約40の産業を対象に順次策定が進められており、各セクターに固有のリスク・機会や地域社会への影響を反映させることで、報告の質・完全性・一貫性を高めます。同じセクター内の企業が共通の観点で情報開示を行うことにより、投資家や地域コミュニティ、NGOなどはベンチマーキングを行いやすくなり、どの企業がどの程度責任ある行動を取っているかを比較しやすくなります。 さらに、項目別スタンダードは、廃棄物、労働安全衛生、税務といった個別テーマごとに、必要な開示項目とガイダンスを規定しています。各スタンダードには、テーマの背景や社会的意義に関する説明に加え、組織がそのテーマに関連する影響をどのように認識し、方針・目標・プロセスによって管理しているかを示すための項目が整理されています。これにより、職場の安全な働き方の確保や公正な税務慣行、地域社会との関係構築など、社会インパクトに直結するテーマを深掘りしながら、一貫したレポーティングが可能となります。 この文脈で特に押さえておきたいのが、近年注目を集めているGRIにおける労働分野の項目別スタンダードの改訂です。 現在進められている「Topic Standards Project for Labor」では、雇用、労使関係、労働安全衛生、多様性・非差別など既存の労働関連基準を、人権に基づくアプローチで再構成する検討が進んでいます。これは、単なる指標の見直しではなく、正社員・非正規労働者やサプライチェーン上の労働者を含め、企業が労働者に与える影響をどの範囲・どの深度で説明すべきかという考え方そのものを明確化する動きと捉えられます。 3. IFRSサステナビリティ開示基準との違い 本稿で取り上げるIFRS S1・S2は、IASBが策定する財務諸表作成のためのIFRS会計基準そのものではなく、企業のサステナビリティ要因が投資家の意思決定に与える財務的影響に焦点を当てた、ISSBによる開示基準です。しばしば比較されるGRIスタンダードと同じくサステナビリティ情報の開示を目的としつつも、その性格や主たるターゲットは両者で明確に異なります。簡潔に言えば、GRIは社会全体と幅広いステークホルダーに対する説明責任を軸とした社会基準であり、IFRSは投資家・債権者など資本市場の参加者に対する企業価値説明のための基準と位置付けられます。 GRI基準は、組織の活動が人権、労働慣行、地域社会、環境などに与える正負の影響を起点にしています。重要課題(マテリアリティ)の特定も、「社会にとってどれだけ重要な影響か」「ステークホルダーがどれだけ強い関心を持つか」が軸となり、企業価値への直接的な影響に限定されません。このため、地域貢献や働き方、サプライチェーン上の人権リスクなど、必ずしも短期的な財務数値に表れない論点も、社会インパクトの観点から幅広く取り上げることが求められます。 これに対してIFRS S1・S2は、投資家の意思決定に有用な情報を提供することを目的としています。重要性の判断は、サステナビリティ関連のリスク・機会が、資源や関係性への依存・影響を通じて企業価値にどのように作用するかという財務マテリアリティを中心に組み立てられます。開示対象も、ガバナンス、戦略、リスク管理、指標・目標といった企業価値に直結する要素が中心であり、財務報告と整合する形での情報提供が強く意識されています。 したがって、同じ気候変動や人権を扱う場合でも、GRIは社会や地域への影響を含めた広い意味での社会インパクトの可視化を重視し、IFRSサステナビリティ開示基準はそのうち投資回収、キャッシュフロー、資本コストなどに関わる部分を優先的に切り出して開示する、という役割分担になります。誰に対して、何のために、どのような意思決定を支援するのかという問いに対する答えが、両者で明確に異なることを理解しておくことが不可欠です。 4. まとめ:GRIとIFRSのコラボレーションが鍵となる 結論として、GRIとIFRSはどちらか一方を選択する対象ではなく、役割の異なる二つの基準をどのように連動させるかが重要となります。GRIは社会全体と幅広いステークホルダーに対する説明責任を果たすための社会基準、IFRS(ISSB)は資本市場との対話を支える企業価値説明の基準です。したがって、両者をマテリアリティの両輪として位置付け、GRIで広く論点を拾い、IFRSで投資家目線に精緻化する流れを設計できるかどうかが、本質的なESG開示の質を左右します。 この観点から、企業が取るべき方向性は次のように整理できます。第一に、マテリアリティ評価と指標設計を共通の土台で行うことです。GRIを用いて社会・環境への幅広い影響とステークホルダーの関心を洗い出し、そのロングリストから企業価値にとって重要な論点をIFRS S1・S2側の開示テーマにマッピングするプロセスを、明示的に設計する必要があります。そうすることで、サステナビリティレポートと有価証券報告書・統合報告書が別々のストーリーになることを防ぎ、一貫したメッセージを発信できます。 第二に、GRIとIFRSを支えるデータ基盤・ガバナンスを統合的に整えることです。KPIやデータソースを共通管理し、社会への説明と投資家向け開示が同じ数字・同じ前提に立脚する状態を目指すべきです。そのうえで、GRIは社会への説明責任を果たすための開示レイヤー、IFRSは資本市場との対話レイヤーとして役割を分担させれば、ダブルワークや矛盾を最小化しつつ、ESG情報を経営判断と資本配分に生かすことができます。 要するに、GRIとIFRSをそれぞれ個別に対応すべき基準として捉えるのではなく、共通のストーリーとデータ基盤の上に構築された二つの窓口として再設計することが、これからの企業に求められる対応方向性と言えます。
- [米国上場企業向けのSEC気候関連開示](https://shiodome.co.jp/column/54465/) - 1. SECの概要と目的 SEC気候関連開示規則は、「ESGの新トレンド」というより、米国上場企業に対して気候リスクを財務情報と一体で説明することを求めるSEC開示要件として位置づけられます。ここでいう「気候リスク」は、物理的リスクや移行リスクが事業戦略・ビジネスモデル・財務パフォーマンスに与える影響を含む概念であり、単なる環境報告ではなく、投資判断に直結する情報として扱われています。 本規則案では、温室効果ガス排出量の開示としてスコープ1・2の開示と検証(監査・保証)を求めるだけでなく、一定の場合にはスコープ3についても開示対象とし、気候関連目標や移行計画の内容、進捗状況についても説明することが想定されています。 また、SECの開示制度ではForm 10-K等の年次報告書において、取締役会・経営陣のガバナンス体制やリスク管理プロセス、シナリオ分析の結果といった定性的情報の開示が求められます。Form 10-Kとは、米国上場企業がSECに提出する年次報告書で、日本の有価証券報告書に相当するものです。なお、後述のForm 20-Fというのは、海外の企業がアメリカで上場している場合に、SECへ提出する年次報告書で、アメリカ企業向けのForm 10-Kの「海外企業版」といえます。Form 10-Kが米国企業を対象とし、原則としてUS GAAPで作成されるのに対し、Form 20-Fは米国外の企業が対象で、IFRSなど自国の会計基準も利用できる点が主な違いです。これらの開示要件はTCFDが策定したフレームワークをモデルとして採用しているため、既存の気候関連開示やISSB基準との整合性を図りやすい一方、財務諸表との接続や重要性(マテリアリティ)の判断などについて、従来以上に高度な説明責任が課される点が特徴です。 SECとしての目的は、一貫性・比較可能性・有用性を備えた情報を市場に提供し、投資家保護を強化することにあります。そのため、発行体には「どのリスクを重要と判断したのか」「どの前提やデータに基づいてスコープ1~3を算定したのか」「移行計画と資本配分がどのようにつながっているのか」を、整合的なストーリーとして示すことが求められます。裏側では、データの入手可能性や品質、内部統制・監査手続きの整備が大きな課題となり、多くの企業にとっては相応の準備期間と体制構築が不可欠です。こうした背景を踏まえると、SEC気候関連開示は、単発の開示プロジェクトではなく、中長期的な開示戦略とガバナンスの再設計を迫る枠組みであるとも言えます。 2. SEC気候関連開示の実務留意点:三つの開示区分を貫く一貫性と説明責任 SEC気候関連開示規則に対応するうえでの最大の留意点は、三つの開示区分を「バラバラの書類」として扱わず、ひとつのストーリーとして整合をとることです。 定性的開示では、企業がどのように気候リスクを特定・評価し、戦略や移行計画に落とし込んでいるのか、取締役会・経営陣がどう監督しているのかを示しますが、ここで述べた内容は、そのまま気候財務情報開示としての指標や、監査済み財務諸表注記の数字と結び付いている必要があります。 温室効果ガス(GHG)排出量については、スコープ1・2のみならず、条件に応じてスコープ3もSEC開示要件の対象となり得ます。サプライチェーン全体を対象とするスコープ3は推計に依存する部分が大きく、データの入手可能性や品質、算定方法の妥当性がしばしばボトルネックになります。ここでは、「完璧な数値」よりも、合理的な前提・方法を選択し、その限界や不確実性を含めて透明性高く説明できるかが重要な留意点となります。 さらに、財務諸表に関する指標では、気候関連の事象やリスクが減損、引当金、資本的支出などに与える影響を注記として開示することが求められます。この部分は、監査・保証の対象となるため、会計方針や重要性判断、シナリオごとの影響額について、監査人と早期に協議しながら社内エビデンスと統制を整備しておくことが重要です。定性的開示で示した移行計画や目標と、財務数値の間にギャップがある場合、その理由をどこまで説明できるかも、訴訟リスクを抑えつつ投資家から信頼される開示のためのポイントとなるでしょう。 3. SEC導入に向けた実務上の注意点と対応ロードマップ SEC気候関連開示規則の導入にあたっては、まず段階的な適用スケジュールを前提にした逆算整理が必要です。本規則案は、米国でForm 10-Kを提出する企業だけでなく、SECにForm 20-Fを提出する外国私企業(Foreign Private Issuers)にも適用されるため、日本企業を含むグローバルグループ全体での対応が求められます。とりわけ、大規模加速申告企業は他区分に先行して、スコープ1・スコープ2を中心とした気候財務情報開示を短期間で整備し、早期のロードマップ策定が重要になります。 また、提案されているSEC開示要件では、スコープ1・2排出量に関する指標が中心となりつつ、企業区分によってはスコープ3の開示も段階的に求められます。加速申告企業・非加速申告企業、小規模報告企業のいずれに属するかによって、初年度の対象会計年度やスコープ3開示の要否が異なるため、自社の区分に応じたタイムラインと準備項目の整理が不可欠です。特に、サプライチェーン全体を対象とするスコープ3は、データ収集と算定方法の妥当性が課題となりやすく、グローバル拠点・主要サプライヤーとの連携を前提にした中期的なデータ基盤づくりが求められます。 さらに、これらの気候財務情報開示は、将来的に監査・保証の対象となる可能性が高い点にも留意しましょう。会計方針や重要性判断をめぐり監査人との協議が増えることが見込まれるため、スコープ1~3の算定ロジックや前提条件、移行計画と投資計画の関係性について、早い段階から内部統制とエビデンス整備の方針を定めておくことが重要です。こうした導入プロセスを「単なるコンプライアンスへの取り組み」にとどめず、気候リスクを踏まえた中長期戦略の再点検の機会として活用できるかどうかが、SEC気候関連開示規則を競争優位につなげられるかどうかの分かれ目になるでしょう。 4. まとめ SEC気候関連開示は、もはや「ESGの一部」や自主的なサステナ報告ではなく、証券規制としての必須開示になりつつあります。したがって、対応の担い手はサステナビリティ部門やCSR担当だけでは足りず、IR・財務・法務・内部統制を含む全社的なガバナンス体制として位置づけ直すことが不可欠です。 その際に重視すべきなのは、「完璧なデータ」を目指して身動きが取れなくなることではなく、合理的なプロセス設計と一貫したストーリーづくりです。気候リスクの特定からシナリオ分析、財務影響の評価、取締役会による監督、KPI・目標設定までを、一つの筋の通った説明としてつなげられるかどうかが、投資家からの評価と説明責任の観点で問われます。 さらに、導入にあたっては、TCFDやISSB(IFRS S1・S2)、EU CSRDなど既存の枠組みとの整合と、訴訟リスクの管理が鍵となります。どこまでをmaterial(重要)と判断するのか、将来見通し情報の範囲と責任の線引きを明確にしたうえで、開示の根拠となる社内エビデンスと内部統制を整えていく必要があります。 そのための現実的な第一歩として、既存のTCFD報告書や統合報告書、ESGデータ管理の現状をSECルールやIFRS S1・S2の要求事項と比較し、改善余地を可視化するギャップ分析と、その結果を踏まえて特定の事業やテーマに絞った試行版の開示(パイロット開示)を作成し、社内レビューや監査人との対話を通じて実務上の論点や負荷感を検証するプロセスです。すでにTCFDやサステナビリティ報告を行っている企業であれば、SEC要求事項とのズレや既存データの精度・統制レベルを確認し、小規模なテスト開示を試行することで、社内の合意形成と体制づくりを前倒しで進めることができます。 SEC気候関連開示への対応は、単なる規制遵守にとどまらず、自社の気候リスクとビジネスモデルを改めて点検し、資本市場との対話力を高めるためのプロセスでもあります。今後の国際競争の中で選ばれ続ける企業となるための重要なステップとして、本稿で整理した視点を手がかりに、自社の現状と目指す姿を踏まえた「自社版ロードマップ」を描いていくことをお勧めします。
- [従業員の不安に、企業はどう向き合うべきか~福利厚生として考える防犯・安全対策~](https://shiodome.co.jp/column/55184/) - 近年、ストーカー被害や隣人トラブルなど、私生活における不安を背景とした事件が増えています。こうした問題は一見すると「プライベートな出来事」に見えますが、実際には従業員の集中力や判断力、精神状態に影響を及ぼし、仕事にも少なからず支障をきたします。警察に32年間勤務してきた立場から見ても、私生活の不安が仕事に与える影響は、企業が想像している以上に大きいと感じています。本コラムでは、企業が従業員の不安とどのように向き合うべきかを、「福利厚生としての防犯・安全対策」という視点から考えてみたいと思います。 1.「プライベートな不安」は、仕事の外に置いておけない ストーカー被害や近隣トラブルを抱える方の多くは、日常生活そのものに強い緊張を強いられています。 帰宅時に後をつけられていないか 自宅周辺で不審な気配がないか 家族や同居人に影響が及ばないか こうした不安が頭から離れない状態で、仕事に集中することは容易ではありません。 それでも多くの方は、「私的な問題を職場に持ち込むべきではない」「周囲に迷惑をかけたくない」という思いから、誰にも相談できないまま働き続けています。 その結果、判断力の低下や業務効率の悪化、体調不良、メンタル不調といった形で、徐々に仕事へ影響が表れていきます。これは個人の問題であると同時に、企業にとっても無視できない経営リスクと言えるでしょう。 2.「警察に相談すれば解決する」とは限らない現実 トラブルに直面した際、「警察に相談すればよい」と考える方は少なくありません。もちろん、警察への相談は重要な選択肢の一つです。しかし実際には、警察が対応できる範囲には法的な限界があります。明確な犯罪行為が確認できない段階では、対応が後手に回るケースも少なくありません。 その結果、 相談したものの、思うような対応を受けられなかった 「まだ様子を見るしかない」と言われ、不安が解消されなかった と感じる方もいます。 これは警察の怠慢ではなく、制度上の制約によるものですが、当事者にとっては「不安を抱えたまま日常に戻る」状況が続いてしまいます。 3.警察OBだからこそできる「寄り添い方」 私が警察に在職していた32年間、多くのトラブルや被害相談に向き合ってきました。その中で強く感じてきたのは、被害が深刻化する前の段階で、話を聞き、状況を整理することの重要性です。 警察OBという立場だからこそ、 (1) 現在の状況がどの程度のリスクなのか(2) 警察が対応できる領域と、できない領域はどこか(3) 今後、どのような行動を取ることが望ましいか といった点を、過度に不安を煽ることなく、冷静にお伝えすることができます。必ずしも問題を「解決」できるとは限りません。 しかし、「自分の置かれている状況を客観的に理解できる」「一人で抱え込まなくてよいと感じられる」ことは、当事者の精神的負担を大きく軽減します。 4.企業が従業員の不安に向き合う意味 RSM汐留パートナーズが提供する防犯・安全対策は、事業所や施設を守るためのものにとどまりません。その根底にあるのは、企業に属する「人」を守るという考え方です。 業員が安心して働くためには、制度や設備だけでなく、 何かあったときに相談できる窓口がある 専門的な視点で話を聞いてもらえる という心理的な安心感が欠かせません。 私はRSM汐留パートナーズにおいて、この取り組みを、福利厚生の一環としての防犯・安全支援として位置づけたいと考えています。企業が従業員の私生活すべてを守ることはできません。しかし、「見て見ぬふりをしない」「寄り添う姿勢を示す」ことはできます。 5.保秘の徹底 相談内容の中には、会社に知られたくないと感じるものも少なくありません。安心して相談いただくためにも、相談者のプライバシーと意向を最優先し、相談内容や個人が特定され得る情報は、相談者の同意なく第三者(会社を含みます)へ共有しないことを徹底します。 一方で、相談者ご本人が「会社にも状況を理解してほしい」「関係者と連携しながら解決したい」と希望されるケースもあります。その場合も、共有の範囲・共有先・共有方法を含めて事前に丁寧に確認し、相談者の意思を尊重したうえで必要最小限の情報共有にとどめます。いずれの場合も、相談者が不利益を被ることのないよう細心の注意を払い、安心して相談できる環境づくりに努めます。 6.防犯・安全対策は、働くための土台づくり 防犯や安全対策は、事故や事件を防ぐためだけのものではありません。それは、従業員が安心して日常を送り、仕事に向き合うための“土台”です。不安を抱えたままでは、本来の力を発揮することは難しくなります。一方で、「何かあれば相談できる」と感じられる環境があれば、人は前向きに仕事に向き合うことができます。 警察OBとして、そして防犯・安全対策に携わる立場として、企業と従業員の間にある「見えにくい不安」に光を当て、安心につながる支援を続けていきたいと考えています。
- [親子間金融取引の移転価格対応の実務~金利・保証・課税事例から体系的に理解する~](https://shiodome.co.jp/column/57410/) - 親子間の金融取引は、一見すると単なる資金のやり取りに過ぎないように見えます。しかし移転価格の観点からは、金利を低く設定すれば利益は借手側へ移転し、高く設定すれば貸手側へ集中するという形で、利益移転の影響が数値として直接表れやすい領域です。そのため税務当局は、金利、保証料、貸付期間、資金回収といった要素について、その条件が第三者間でも成立するのかという観点から、他の取引以上に厳しく検証する傾向を強めています。 実務では、とりあえず低めに設定している、金融機関へのヒアリング結果をベースに決めている、といった対応も少なくありません。しかし現在では、このようなプロセスは合理的な算定とは評価されにくく、税務上のリスクが顕在化しやすい状況にあります。従来は一定のスプレッドを上乗せするだけの簡便な対応や、金融機関の感覚的な見積りを参考にする方法も見られましたが、近年は借手の信用力の評価、市場データに基づくベンチマーク分析、客観的な金利算定がより強く求められています。重要なのは、結果としての金利水準ではなく、どのようなプロセスで決められているかという点です。 本稿では、親子ローンと保証の考え方、制度改正を踏まえた実務上の視点、さらに課税事例から見えてくる対応の方向性を整理します。 1. 親子ローンにおける金利算定の基本構造 (1)借手の信用格付の重要性 金利算定の出発点は、借手の信用格付の評価です。ここで重要なのは、グループ全体の信用ではなく、借手単体の信用力を基準とする点です。親会社の信用力を前提とした金利設定は、第三者間取引の観点からは適切とは評価されません。したがって、あくまで借手自身の財務状況や収益力に基づいて信用力を評価する必要があります。 この点は実務上、非常に誤解されやすいところです。グループ企業間の貸付である以上、親会社が存在することを前提に安全性を見てしまいがちですが、移転価格上は、もし借手が独立企業であったならどの程度の条件で資金を借りることができるのか、という視点で検証されます。したがって、親会社が有力企業であることそれ自体は、直ちに低金利の根拠にはなりません。 実務では、財務指標の分析や格付モデルの活用、外部格付手法の準用などを通じて信用格付を推定します。形式的な格付が存在しない場合であっても、例えばA相当やBBB相当といった形で一定の水準を設定することが一般的です。このプロセスを経ることで、金利算定の前提となる信用リスクを客観的に把握することが可能となります。 特に重要なのは、この信用力評価が後続するすべての分析の起点になることです。信用格付が曖昧なままでは、その後に導く金利水準も説得力を失います。逆に、信用力の評価が整理されていれば、なぜその条件になったのかを一貫して説明しやすくなります。 (2)市場データに基づく金利レンジの導出 信用格付を前提とした後は、市場データに基づいて金利水準を導出します。この際には、通貨、貸付期間、担保や保証の有無といった条件を揃えることが不可欠です。条件が一致していない比較は、実務上の裏付けとしての意味を持ちません。 例えば、同じ格付でも短期と長期では金利水準が異なりますし、USD建てか円建てかによっても前提となる市場環境は異なります。したがって、市場データを参照する際には、単に似たような事例を集めるのではなく、比較可能性を丁寧に確保することが必要です。 金融データベース等を活用し、類似条件の第三者間取引を抽出することで、金利レンジを算定します。ここで重要なのは、内部の感覚ではなく、外部データによって合理性を担保する点です。金融機関のヒアリング結果のみを根拠とする場合、証拠力が不十分と評価される可能性があるため注意が必要です。 例えば、信用格付がA相当、期間5年、無担保という条件で分析した場合、市場データからは概ね4%から5%程度のレンジが導かれるケースが一般的です。このように、具体的な条件設定とデータ抽出を通じて、初めて金利水準の合理性が説明可能となります。現在の実務では、何となく妥当と思われる水準を置くのではなく、外部比較を通じてデータで説明できることが求められています。 (3)適用金利の決定における実務判断 導出された金利レンジの中から適用金利を決定する際には、単純に中央値を採用するのではなく、レンジ内のどの位置を選択するかという判断が求められます。レンジが出た時点で分析が終わるわけではなく、そこから先に実務上の判断が残ります。 この判断にあたっては、既存の取引条件との整合性やグループ内の利益配分、税務リスクの大きさを総合的に考慮する必要があります。例えば低めの水準を採用すれば借手側に利益が偏り、高めであれば貸手側に利益が寄るため、全体のバランスを意識した設計が不可欠です。 ここで意識すべきなのは、金利設定が単なるファイナンス条件ではなく、グループ内の利益配分を決める重要な要素だという点です。したがって、金利の選定は税務上の論点であると同時に、グループとしてどのような利益構造を許容するかという経営管理上の判断でもあります。 (4)低金利設定に伴う税務リスク 市場水準と比較して著しく低い金利を設定した場合、その差額は利益移転と評価される可能性があります。特に日本側の所得が過少と認定されるケースでは、追加課税の対象となります。 仮に2.5%といった低い金利を設定した場合、市場水準が例えば4.5%前後であれば、その間に大きな乖離が生じます。この差は単なる数値の違いではなく、利益の帰属に直接影響します。結果として、借手側に利益が偏り、日本側の所得が過少と評価され、本来あるべき金利との差額が課税対象となる構造になります。 この差額は貸付額が大きいほど影響が拡大します。したがって、金利設定は単なる数値の問題ではなく、税務リスク管理そのものといえます。しかも金融取引は継続的に利息が発生するため、一度条件設定を誤ると、その影響が毎期積み上がる点にも注意が必要です。 2. 親子保証と保証料の考え方 (1)保証料の要否判断 保証料の要否を判断する際の核心は、その保証によって借手が経済的便益を享受しているかどうかです。金利の低下や資金調達の実現といった効果がある場合には、対価の設定が必要となります。 実務上は、保証料を設定していない、あるいは形式的に極めて低い料率にとどめているケースも見受けられます。しかし近年は、保証によって経済的メリットが生じている場合には対価の設定が必要であるという考え方が明確化されており、従来の取扱いは見直しが求められています。特に重要なのは、保証があることで資金調達条件が実際に改善しているかどうかという点です。 第三者間で同様の保証が提供される場合には、通常対価が発生します。この観点から、無償保証は合理性を欠くと評価される可能性が高くなります。保証は付随的な行為として見られがちですが、実務上は独立した経済取引として評価されるべきものです。 (2)信用格付の変化と保証価値 保証の価値は、保証前後の信用格付の変化として把握されます。保証があることによってどの程度信用力が向上するかが重要なポイントとなります。 親会社保証が付されることで、単体では調達が難しかった資金を借りられるようになる、あるいはより有利な条件で資金調達ができるようになるのであれば、その改善分は経済的な価値を持ちます。この価値をどのように把握するかが保証料の議論の中心になります。 この格付改善を定量的に捉えることで、保証の経済的価値を算定することが可能となります。ここでも、感覚ではなく分析に基づく評価が求められます。親会社がいるから当然に有利になるという抽象論ではなく、どれだけ改善したのかを定量化して説明することが重要です。 (3)保証料率の算定方法 実務上は、保証の有無による金利差を基礎として保証料率を算定する方法が一般的です。実務上の分析では、保証の有無による金利差を基礎とした結果として、0.6%から0.8%程度のレンジが導かれるケースもあります。このような具体的な数値レンジを把握しておくことは、料率設定の妥当性を説明するうえで重要となります。 加えて、コストアプローチやCDSベースの分析なども補完的に活用されることがあります。複数の手法を組み合わせることで、より合理的な水準を導くことが可能となります。重要なのは、どの手法を採用するかではなく、その手法が当該取引の実態に照らして合理的に説明できるかどうかです。 (4)回収可能性と実務設計 理論的に算定された料率であっても、実際に回収できるかどうかを検証する必要があります。子会社の資金繰りや収益力を踏まえた検討が不可欠です。理論上は妥当でも、実際には支払能力が乏しい場合には、設定した保証料自体の実効性が疑問視されることになります。 また、保証料の適用期間や見直しのタイミングといった運用面の設計も重要です。実務と理論のバランスを取ることが求められます。保証料を一度決めて終わりにするのではなく、取引環境や信用状況の変化に応じて適切に見直す視点が必要です。 (5)保証料未設定のリスク 保証料を設定していない場合、親会社から子会社への利益移転や無償支援とみなされる可能性があります。保証によるメリットが明らかであるにもかかわらず対価が設定されていなければ、その便益が一方的に移転していると評価されやすくなります。 さらに、分析資料が不十分な場合には、税務当局側で想定された料率が適用されるリスクもあります。自社で設計し説明できない場合、結果として当局主導で条件が決まることになるため、事前準備の有無が大きな差を生みます。 3. 制度改正を踏まえた実務上の視点 (1)従来実務からの転換 近年の制度改正や実務運用の変化により、金融取引に対する考え方は明確に変わりました。従来は、一定のスプレッドを形式的に上乗せする方法や、金融機関のヒアリングを中心とする簡便な対応も見られました。しかし現在では、借手の信用力の評価、市場データに基づく比較、客観的なロジックによる金利算定がより強く求められています。 この変化は、単に計算方法が変わったということではありません。金融取引を、グループ内の便宜的な資金移動ではなく、独立企業間価格の観点から厳密に評価する方向へ実務が進んでいることを意味します。 (2)過去取引と将来取引は分けて考える 金融取引の対応では、過去取引と将来取引を分けて考えることが重要です。過去の取引については、既存金利の妥当性を検証し、リスク評価を行い、必要に応じて条件見直しの要否を検討することになります。既に実行された取引であっても、利息の支払いや契約関係が継続している限り、調査対象となる可能性があるからです。 一方、将来の取引については、金利算定ルールや保証料算定ルールをあらかじめ設計し、移転価格ポリシーに組み込んでおくことが重要です。将来取引について最も重要なのは、最初から説明できる形で設計することにあります。金融取引は、後から説明を補うよりも、事前に設計しておく方が圧倒的にリスクを抑えやすい領域です。 4. 課税事例から読み解く金融取引の実務リスク (1)金利見直し未実施のケース 市場金利が変動しているにもかかわらず金利を見直していない場合、結果として不適切な水準と評価されることがあります。設定当初は問題がなかったとしても、その後の市場変化を反映していなければ、継続適用された条件全体が問われることになります。 金利は設定時点の市場環境に基づいて評価されるため、環境変化への対応が不可欠です。この点は、金融取引が継続する限り、最初の条件設定だけでなく、その後のメンテナンスも重要であることを示しています。
- [ESG・サステナビリティとは何か:環境(E)を手がかりに読み解く、サステナビリティと実務の接点](https://shiodome.co.jp/column/55416/) - ESG・サステナビリティの領域は、まだ一般的に十分理解されていない――私たちRSM汐留パートナーズは、最近あらためてそのことを実感しています。実際、クライアントや周囲の方から「サステナビリティコンサルタントとは、具体的にどんな仕事ですか?」と問われる場面も少なくありません。 私たちが「企業が環境・社会・地域・従業員・取引先などに与える影響を適切にマネージし、リスクと機会を踏まえた経営を進めるための助言・支援を行っています」と説明しても、すぐに業務イメージが湧かない反応をいただくことがあります。サステナビリティは、カタカナ用語が多く対象範囲も広いため、会計・税務や監査、労務といった専門業務に比べて“具体像”を描きにくいのかもしれません。 ただし本質は、“特別な取り組み”ではなく、日々の事業活動の中にすでに存在しています。そこで本稿では、まず多くの企業にとって具体化しやすい環境(E)を切り口に、サステナビリティを「実務として回る形」に落とし込むためのポイントを整理します。 1. 環境(E)は「見える化」から始めやすい 製造業、物流業、卸小売業などでは特に、環境(E)の論点が事業活動と直結しやすく、最初の一歩を踏み出しやすい傾向があります。たとえば、次のような管理項目は多くの企業で共通して登場します。 電気・燃料などエネルギー使用量の管理 廃棄物量の管理 省エネや紙使用量の削減 CO2排出量の把握・管理 ここで重要なのは、「何かやっている」こと自体よりも、経営として管理できる状態になっているかです。よくある“つまずき”は次の3つです。 データ・実績は取れているが、目標達成に届かない/改善が進まない 施策はあるが、効果が見えにくい(どれが効いたか分からない) 取り組みが特定の担当者に依存していて、継続性が弱い たとえば拠点や部門ごとに集計方法が異なる、年度で算定ルールが変わる、証跡(根拠資料)が散在している――この状態だと、継続的な改善(PDCA)が回りにくくなります。まずは「数字の取り方」を揃え、同じ物差しで追える状態をつくることが、現実的な近道になります。 2. 会計税務業務とつながる「環境(E)」の実務 サステナビリティは環境活動そのものだけでなく、今後ますます会計税務業務とも結びついていきます。ポイントは、環境の取り組みが次の流れで“経営に組み込まれていく”ことです。 測る(計測・算定) 管理する(統制・モニタリング) 開示する(報告・説明責任) 経営に反映する(投資判断・戦略) 具体的には、次のような論点が実務テーマになり得ます。 気候変動・生物多様性などに関するリスク/機会の財務影響をどう見積もるか グリーン関連の優遇制度の活用可能性(投資・税務の観点) サステナビリティ投資の予算管理・投資評価(費用対効果、回収見込み) 環境データの内部統制・内部監査(データの正確性、再現性、証跡) 環境(E)は「現場の努力」で終わらせず、数字とルールで運用できる形に整えるほど、社内外への説明がしやすくなり、意思決定にもつながります。 3. まずは公開情報の整理で、自社の現在地をつかむ 「何から始めればよいか分からない」ときは、いきなり難しい枠組みに入るより、自社の現状を整理するのが先です。社内資料が揃っていなくても、以下を確認するだけで方向性が見えやすくなります。 自社Webサイト(環境方針、取り組み、ニュース) 有価証券報告書/統合報告書(発行している場合) サステナビリティレポート(発行している場合) チェックしやすい観点は次のとおりです。 重点テーマ(マテリアリティ)、KPI、目標年次 再エネ・省エネ・資源循環・廃棄物削減・物流効率化などの重点領域 サプライチェーンや調達方針、取引先への要請への対応状況 推進体制(責任者、部門、社内ルール、教育など) 「書けていること」は強みの整理になりますし、「書けていないこと」は、社内でのデータ不足や体制不足が表面化しているサインでもあります。 4. “取り組み”を「続く仕組み」にするための着手ポイント 環境(E)の取り組みを継続的に回すには、次の3点を最小単位で整えると効果が出やすくなります。 対象範囲を決めるまずは全社一斉ではなく、主要拠点・主要工程・主要商材など、影響が大きい領域から始める。 数字の取り方を揃える集計方法・算定ルール・証跡の置き場を統一し、「毎年同じやり方で追える」状態にする。 意思決定につなげる単なる実績集計にせず、目標・投資判断・施策評価(どれが効いたか)までつなげる。 この3点が揃うと、環境(E)が“現場の努力目標”ではなく、経営管理の一部として機能し始めます。 5. まとめ ESG・サステナビリティは抽象的に見えますが、環境(E)から入ると、エネルギー・廃棄物・CO2など具体的な管理項目に落ちやすく、実務として前に進めやすくなります。大切なのは「やっているか」ではなく、データを揃え、継続的に管理し、経営判断に反映できる状態にすることです。 「社内に点在するデータをどうまとめればいいか」「どこまでを対象にするべきか」「開示や取引先要請に耐える形にしたい」など、論点整理が必要な場合は、外部の専門家を活用して効率的に“型”を作るのも有効です。
- [従業員の安全は、企業のサステナビリティの一部である~防犯・安全対策をESGの視点から考える~ ](https://shiodome.co.jp/column/55465/) - 近年、ESG(環境・社会・ガバナンス)や人的資本経営といった考え方が、企業経営において重要なテーマとして語られるようになりました。その中でも「人材の確保・定着」「働きやすい環境づくり」は、多くの企業が直面している共通課題ではないでしょうか。こうした議論の中で、見落とされがちなのが「従業員の安全」という視点です。防犯や安全対策は、事故や事件を防ぐための“守り”の施策として捉えられることが多いものの、実際には企業のサステナビリティを支える重要な要素の一つだと、私は考えています。 1.ESG・人的資本経営における「安全」という視点 ESGの「S(社会)」や人的資本経営では、従業員の働きがいやエンゲージメント、健康管理などが注目されがちです。一方で、「従業員が安心して働ける環境が確保されているか」という問いは、十分に議論されているとは言えません。安心して働ける環境とは、単に長時間労働を是正することや、福利厚生を充実させることだけを意味しません。 職場や通勤、さらには私生活を含めて、日常に過度な不安を抱えずに働ける状態こそが、その土台になります。安全が脅かされている状況では、いくら制度や理念を整えても、従業員が本来の力を発揮することは難しくなります。 2.防犯・安全対策は「コスト」ではなく「基盤投資」 防犯カメラの設置や警備体制の整備といった安全対策は、しばしば「コスト」として扱われます。しかし、警察に32年間勤務し、数多くの事案を見てきた立場から申し上げると、安全対策は企業活動を安定的に続けるための基盤投資です。 一度、重大なインシデントが発生すれば、 従業員の心理的ダメージ 職場の混乱や生産性の低下 企業イメージへの影響 といった形で、長期的な損失につながる可能性があります。 逆に、日頃から安全への配慮が行き届いている企業では、従業員が安心して働けるだけでなく、「この会社は自分たちを大切にしてくれている」という信頼感が育まれます。 3.安全対策が属人化している企業のリスク 多くの企業では、防犯や安全対策が特定の担当者や現場責任者の判断に委ねられているケースが少なくありません。担当者が熱心であれば機能しますが、異動や退職があれば、そのノウハウや意識が失われてしまいます。これは、サステナビリティの観点から見ると大きな課題です。属人化した安全対策は、持続可能とは言えません。 ESGやガバナンスの文脈で重要なのは、 (1) 誰が責任を持つのか(2) どのような体制で判断するのか(3) 定期的に見直す仕組みがあるのか といった点を、組織として明確にすることです。 4.福利厚生としての防犯・安全支援という考え方 防犯・安全対策は、施設や設備を守るためだけのものではありません。従業員一人ひとりの安心感を支えるという意味では、福利厚生の一環として位置づけることも可能です。 例えば、 不安やトラブルを抱えた際に相談できる窓口がある 専門的な視点で状況を整理してもらえる こうした仕組みがあるだけでも、従業員の心理的負担は大きく軽減されます。企業が「すべてを解決する」必要はありません。しかし、「不安を一人で抱え込ませない」姿勢を示すことは、人的資本経営の観点からも重要な意味を持ちます。 5.従業員の安全を守ることが、企業の未来を守る サステナビリティとは、単に環境負荷を下げることや、形式的な開示を行うことではありません。企業が長期的に価値を創出し続けるためには、人が安心して働ける基盤を整えることが欠かせません。防犯・安全対策は、その基盤の一部です。 目に見えにくく、成果もすぐには表れませんが、確実に企業の安定性と信頼性を支えています。警察OBとして、そして防犯・安全対策に携わる立場として、従業員の安全を「サステナビリティの一要素」として捉える視点が、より多くの企業に広がっていくことを願っています。
- [事務所・店舗・工場の安全は、誰が守っているのか~防犯対策を“現場任せ”にしないという選択~ ](https://shiodome.co.jp/column/55477/) - 企業の防犯・安全対策というと、防犯カメラの設置や入退室管理といった「設備」の話が中心になりがちです。しかし、警察に32年間勤務し、数多くの事件やトラブルに向き合ってきた立場から見ると、本当に問われるのは「誰が、どのように安全を守っているのか」という点です。 事務所、店舗、工場――。 多くの企業は複数の拠点を抱えていますが、それぞれの安全対策がどのように決められ、運用されているかを、経営として正確に把握できているケースは決して多くありません。 本コラムでは、防犯・安全対策を「現場任せ」にすることのリスクと、企業として考えるべき視点について整理してみたいと思います。 1.防犯・安全対策が「現場任せ」になっていないか 事務所や店舗、工場の安全対策について話を伺うと、次のような声をよく耳にします。 「現場の責任者に任せている」 「長年のやり方を踏襲している」 「特に大きな問題が起きていないので見直していない」 これらはいずれも、決して珍しい考え方ではありません。現場をよく知る担当者に任せること自体は、合理的に見えることもあります。しかしその一方で、防犯・安全対策が特定の個人の経験や勘に依存してしまう状態は、企業として大きなリスクを抱えているとも言えます。 2.「問題が起きていない」は、安全であることを意味しない 防犯・安全対策においてよくある誤解の一つが、「これまで問題が起きていない=安全である」という認識です。警察の現場では、「まさか自分のところで起きるとは思わなかった」という言葉を、何度も耳にしてきました。 事件や事故は、突然発生するように見えて、実際にはその前段階として、 小さなルール逸脱 見過ごされてきた違和感 誰も責任を持っていなかった領域 が積み重なっているケースが少なくありません。「何も起きていない」状態は、必ずしも「安全が確保されている」状態とは限らないのです。 3.事務所・店舗・工場で異なる安全リスク 拠点ごとに、安全リスクの性質は大きく異なります。 事務所では、 不審者の侵入 情報漏えいにつながる行動 内部不正 といったリスクが考えられます。 店舗では、 来訪者とのトラブル 万引きや強盗 クレーム対応のエスカレーション が現場の負担になりやすい領域です。 工場では、 外部からの侵入 内部関係者による不正 事故発生時の初動対応 など、人的・物理的なリスクが複雑に絡み合います。 こうした異なるリスクを、すべて現場の判断に委ねてしまうと、拠点ごとに対応水準がばらつき、企業としての統一的な安全管理が難しくなります。 4.防犯・安全対策は「運用」と「体制」が重要 防犯カメラやセキュリティシステムは、あくまで「道具」に過ぎません。それをどのように使い、異常があった場合に誰が判断し、どう動くのか。この運用と体制が定まっていなければ、対策は形骸化してしまいます。 例えば、 ・異常を誰が検知し、誰に報告するのか ・現場と本社の役割分担はどうなっているのか ・定期的に見直す仕組みがあるのか こうした点が整理されていない場合、防犯・安全対策は「あるだけ」で機能しなくなります。 これは現場の努力不足ではなく、企業としての設計の問題です。 5.第三者の視点を入れるという選択 防犯・安全対策を見直す際に有効なのが、第三者の視点を取り入れることです。現場に長くいると、「当たり前」になっていることほど、リスクとして認識しづらくなります。警察OBとしての経験を活かした防犯・安全アドバイザリーは、 現場の実態を踏まえたリスクの整理 過度に不安を煽らない現実的な改善提案 組織として運用可能な体制づくり といった点で、企業を支援することができます。 防犯・安全対策を「現場任せ」にするのではなく、企業としてどう守るのかを考えることは、結果として経営の安定性や信頼性を高めることにつながります。 おわりに 事務所・店舗・工場の安全は、特定の誰かが孤立して背負うものではありません。企業としての姿勢と仕組みがあってこそ、初めて持続的に守られるものです。警察OBとして、そして防犯・安全対策に携わる立場として、「現場任せ」にしないという選択が、多くの企業にとって現実的な一歩になることを願っています。
- [プロ野球選手における所得申告の実務と税務管理:必要経費の判断基準と社会的信用の維持](https://shiodome.co.jp/column/57467/) - 日本のプロ野球選手は、球団から多額の報酬を受け取る立場にありますが、税務上は一般的な会社員のような雇用契約ではなく、個人事業主として専属契約を締結しているケースが一般的とされています。そのため、毎年ご自身で確定申告を行い、事業所得を計算して適正な納税額を算定する手続きが必要となります。確定申告のプロセスにおいて、複雑な収入構造を正しく分類し、業務に直接関連する支出を必要経費として正確に計算することは、税負担の適正化だけでなく、コンプライアンスの観点からも極めて重要な意味を持ちます。 また、プロ野球選手は広く顔が知られた公的人物であることから、税務申告における誤りや不備が税務調査によって指摘され、それが報道されるような事態になれば、社会的信用の著しい低下やスポンサー契約の解除といった深刻な事態に直結する恐れも否定できません。 本記事では、プロ野球選手の確定申告において重要となる収入の捉え方や必要経費の判断基準、そして将来の税務調査を見据えた適切な証憑管理の実務について、税理士としての専門的な視点から詳しく解説してまいります。 1. プロ野球選手の収入構造と「公的人物」としての税務上の特徴 プロ野球選手の確定申告においてまず理解しておくべき点は、その特有の収入構造と税務上の位置づけであると考えられます。選手は所属球団と統一契約書に基づく契約を交わしますが、これは税法上、雇用契約ではなく業務委託契約に類する性質を持つと判断されるのが一般的です。したがって、球団から毎月あるいは分割で支払われる年俸は、給与所得ではなく、個人事業主としての事業所得に該当することになります。 事業所得として確定申告を行う場合、1年間の総収入金額から、その収入を得るために直接要した必要経費を差し引いて所得を計算する仕組みとなるため、経費の範囲をどのように捉えるかが最終的な納税額に大きな影響を与えることになります。 さらに、プロ野球選手は社会的な注目度が高く、高額な所得を得るケースも多いことから、税務署からの関心も集まりやすい傾向にあると言わざるを得ません。ひとたび税務調査の対象となった際には、非常に厳格な基準で経費の妥当性や収入の網羅性が審査されることが想定されます。万が一、申告漏れや過度な経費計上が指摘されれば、修正申告の手間が生じるだけでなく、ペナルティとしての過少申告加算税や延滞税、悪質な場合は重加算税が課されるリスクも存在します。 プロフェッショナルなスポーツ選手としてのレピュテーション(社会的評価)を守るためにも、単に目先の税負担を軽減することだけを目的とするのではなく、適法かつ合理的な根拠に基づいた適正な申告を行うという、高いレベルでの税務コンプライアンス体制の構築が求められることになります。 2. 年俸以外の収入をどう捉えるか―契約金、賞金、出演料、スポンサー提供物の整理 プロ野球選手の収入は、球団から支払われる基本年俸だけにとどまらず、活動の幅が広がるにつれて多岐にわたるのが特徴と言えます。確定申告にあたっては、これらの多様な収入源を漏れなく把握し、それぞれ適切な所得区分に基づいて申告することが不可欠となります。 以下に、プロ野球選手が得る可能性のある代表的な収入の種類と、その税務上の取り扱いの目安について表形式で整理いたします。 確定申告の実務において特に注意が必要なのが、現物で支給される物品の提供や、特定のサービスを無償で利用できる権利などです。これらは現金での入金がないため申告から漏れてしまうケースが見受けられますが、税務上は経済的利益として収入金額に算入すべきケースが存在すると解釈されます。これらを個人として享受した単なる贈り物と誤認してしまうと、後日税務調査において申告漏れとして指摘される可能性が高まると考えられます。 また、プロ入り時などの高額な「契約金」については、特定の年に一括して多額の収入を得る性質があるため、日本の所得税の超過累進税率の下では、その年の税負担が極端に重くなるという問題が生じます。この負担を緩和するための措置として「変動所得・臨時所得の平均課税制度」の適用が検討されるケースがあります。 契約金が「臨時所得」に該当するための主な要件は、3年以上の専属契約に基づき一時に支払われるものであること、かつその金額が当該契約による報酬の年額の2倍以上であることです。要件を満たす場合、対象となる所得分の1相当額に適用される税率で全体の税額を計算する方式により、超過累進税率の急激な上昇が緩和される仕組みとなっています。プロ野球選手の場合、入団時や移籍時の契約金が主な適用検討の場面となります。 3. 必要経費として認められやすい支出と、否認されやすい支出―用具費、自主トレ費用、身体メンテナンス費、衣装代、車両費 プロ野球選手の確定申告において最も判断が難しく、かつ税務調査において争点となりやすいのが、必要経費として計上できる支出の範囲であるとされています。所得税法上、必要経費として認められるためには、その支出が事業収入を得るために直接必要であったことを客観的に説明できなければならないと定められています。プロ野球選手の場合、身体そのものが資本であり、競技力の維持・向上が直接的に翌年以降の年俸やスポンサー収入(売上)に直結するという特殊性があります。そのため、一般的な個人事業主と比較して、より幅広い支出が事業に関連すると考えられる余地があります。しかしながら、プライベートな生活費(家事費)との境界が曖昧になりやすいため、慎重な判断が求められます。 これらの判断において極めて重要となるのは、支出と事業活動との直接的な関連性および業務遂行上必要不可欠であったことの客観的な立証であると言えます。過去の税務調査の事例等を踏まえますと、スポーツ選手の経費算入について見解の相違が生じるケースは散見され、その多くは客観的な事業専用割合の立証不足が否認の要因となっている傾向にあります。特に家事関連費(事業とプライベートの両方に関連する支出)については、業務の遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる部分に限定して必要経費に算入することが原則とされております。したがって、私的な利用が少しでも混在しうる支出については、あらかじめ専門家と協議のうえ、第三者が見ても納得できる合理的な按分基準(明確な記録に基づく割合)を設けておくことが重要となります。 4. 交際費・後援会費・ファン対応費用の考え方―私的支出との境界線と記録の残し方 プロ野球選手としての活動を円滑に進めるうえで、周囲の関係者との人脈形成や、ファンとの良好な関係維持は、長期的なキャリア形成やスポンサー獲得に寄与する不可欠な要素であると考えられます。そのため、これらに伴う支出の一部は、接待交際費や広告宣伝費として確定申告において経費計上できる余地があります。 例えば、他のチームの選手やコーチングスタッフ、スポーツ用具メーカーの担当者、メディア関係者との会食費用などは、情報交換や技術論の共有、あるいは今後の業務に関する打ち合わせという明確な目的があれば、業務に関連する交際費として処理することが可能と見込まれます。また、自身を応援してくれる後援会の設立や運営にかかる会場費や通信費、ファン感謝イベントの開催費用、応援してくれるファンへ贈るためのオリジナルグッズの制作費なども、プロ野球選手としての知名度向上や今後の収入増加に直結する事業活動の一環として、必要経費に算入できる可能性が高いと言えます。 しかし、ここで実務上の大きな課題となるのが、単なる友人や家族との私的な飲食代やレジャー費用との明確な区別です。税務調査が行われた際、飲食店での高額な領収書が多数提示された場合、それが本当に事業に関連する交際費であったのか厳しく内容を確認されることが予想されます。このような事態において経費性を適正に主張するためには、単に宛名のある領収書を保存するだけでは不十分とされるケースがあります。領収書の裏面や経費精算のシステム上に、「いつ」「誰と(相手の所属や氏名)」「どのような業務上の目的で」会食や会合を行ったのかを具体的に記録しておくことが強く推奨されます。客観的かつ詳細な記録が残っていない場合、事業との関連性を後から証明することが困難になり、結果として経費としての計上が否認される事態を招く恐れがあります。 5. SNS発信・撮影機材・ブランディング費用はどこまで経費になるか 近年、多くのプロ野球選手がYouTubeなどの動画配信プラットフォームや、各種ソーシャルメディア(SNS)を通じて自身の活動を積極的に発信し、ファンとの直接的な交流を深めるとともに、新たな収益源としての広告収入やスポンサー契約を確保する動きが一般化しています。このようなSNS発信や、選手個人の価値を高めるためのブランディング活動に関連する支出についても、事業所得の必要経費として確定申告に含めることが検討されるべき項目となります。 具体的には、高品質な動画撮影のために購入した高性能なカメラや照明機材、編集作業を行うためのハイスペックなパソコン、あるいは動画編集やサムネイル作成を外部の専門クリエイターに委託した際の外注費などがこれに該当すると考えられます。また、SNSの運用戦略を立案するために専門のコンサルタントと契約した際の業務委託報酬や、自身の公式ウェブサイトの制作・維持にかかるサーバー代、ドメイン代なども、広告宣伝費や通信費、支払手数料といった勘定科目で経費処理することが可能と思われます。 ただし、これらの機材やサービスが私的な用途、例えば家族旅行の記録撮影や、個人的な趣味としての動画鑑賞などにも使用されている場合は、取得費用の全額を事業の経費とすることは不適切であると判断される可能性が高いと言わざるを得ません。そのような複合的な用途のケースでは、業務での使用頻度、データ容量の比率、あるいは使用時間といった客観的かつ合理的な基準に基づいて事業利用割合を算出し、その割合に応じた金額のみを按分して経費計上する手続きが求められます。IT機器やデジタル関連の支出は、事業とプライベートの境界が特に曖昧になりやすい領域であるからこそ、税務調査を想定した精緻な按分基準の事前設定が重要となります。 6. 税務調査を見据えた証憑管理の実務―領収書、支払明細、利用目的、説明資料の整え方 確定申告において適法かつ適正な税務申告を行うための最大の土台となるのが、日々の継続的かつ正確な証憑(証拠書類)の管理体制であると言っても過言ではありません。いかに業務に直接関連する正当な支出であったとしても、それを裏付ける客観的な証拠書類が存在しなければ、税務署に対して経費性を論理的に主張することは極めて困難となります。 原則として、経費として計上するすべての支出について、支払先が発行した領収書やレシート、請求書、あるいはクレジットカードの利用明細などを適切に保存しておく必要があります。証憑には、宛名、発行日、金額、支払先、および購入した品物やサービスの詳細な内容が明記されていることが基本となります。単に「お品代」とだけ記載された手書きの領収書のみでは、何を購入したのかが事後的に不明確であり、税務調査において詳細な説明を求められる要因となります。そのため、購入内容の記載が乏しい場合は、購入した具体的な品目や利用目的を余白に補記しておくなどの細やかな対応が求められます。また、消費税の課税事業者である場合は、仕入税額控除の適用要件として、登録番号等が記載された適格請求書(インボイス)の受領・保存が原則として必要となるため、所得税の証憑とは別の観点からも保存実務を整える必要があります。 さらに、近年では電子帳簿保存法に関する制度改正の動きにより、インターネット経由で購入した物品の電子領収書や、メールで送付されたPDF形式の請求書などの電子取引データについては、紙に印刷して保存するのではなく、電子データのまま法定の検索要件等を満たした状態で保存することが義務付けられるようになりました。プロ野球選手はシーズン中はもちろんのこと、オフシーズンも含めて多忙なスケジュールの中で国内外への遠征を繰り返すことも多く、領収書等の物理的な管理が煩雑になりがちです。そのため、スマートフォンのカメラやスキャナを用いた即時保存アプリの導入など、クラウド型の会計ソフトや経費精算システムを活用し、タイムリーかつ確実に証憑を電子保存できる仕組みを構築しておくことが、申告漏れを防ぎ税務リスクを抜本的に低減することにつながると考えられます。 7. 信用を守るための申告体制―プロ野球選手に求められる税務コンプライアンス プロ野球選手は、グラウンド上での卓越したプレーや日々の鍛錬によって多くのファンを魅了するだけでなく、社会の一員としての高い倫理観や規範を示す役割も強く期待されている公的な存在であると言えます。そのため、確定申告や税金に関するトラブルは、単に不足していた税金や加算税といった金銭的なペナルティを支払って解決する問題にとどまりません。長年にわたる絶え間ない努力によって築き上げてきたご自身のパーソナルなブランドイメージや、応援してくれるファンからの信頼、ひいては所属球団や多大な支援をしてくれるスポンサー企業のイメージをも一瞬にして大きく損なう、極めて重大なリスクを孕んでいます。 毎年複雑化する税制のなかで、年俸、契約金、インセンティブ、メディア出演料、現物支給のスポンサー収入といった多岐にわたる複雑な収入の全容を正確に集計し、競技パフォーマンス向上に直結する用具費や身体のメンテナンス費、さらにはブランディング活動に伴う新たな形態の支出の中から、所得税法の厳密な基準に照らし合わせて適正に必要経費を算出することは、税務の専門的な知識や実務経験を持たない個人にとって非常に難易度が高い作業となります。経費性の判断に不安を抱えたまま、あるいは過去の慣例に基づく自己流の判断のみで確定申告を済ませてしまうことは、予期せぬ申告漏れや過少申告を引き起こす最大の原因となり得ます。 したがって、プロ野球選手として高い社会的信用を長期的に維持し、税務面での余計な不安を排除して安心して競技の向上に専念できる環境を整えるためには、スポーツ選手の特殊な税務実務に精通した税理士のような専門家を早期にパートナーとして迎え入れることが非常に有効かつ合理的な手段であると考えられます。専門家の客観的かつ厳格な視点を取り入れ、透明性の高い日々の経理処理のフローと適法な税務申告体制を盤石なものとして構築することこそが、真の意味での税務コンプライアンスの実践であり、プロフェッショナルとしての重い社会的責任を果たすための第一歩となるのではないでしょうか。
- [拠点が増えるほど、安全は管理できなくなる~多拠点企業に求められる防犯ガバナンスの考え方~ ](https://shiodome.co.jp/column/55485/) - 企業の成長に伴い、事務所や店舗、工場などの拠点が増えていくことは、事業拡大の証でもあります。一方で、拠点数が増えるほど、経営や本社からは「現場の実態」が見えにくくなっていくのも事実です。売上や人員、業務進捗については、数値や報告を通じて把握できていても、防犯や安全といった領域については、十分に管理できていると言い切れる企業は多くありません。本コラムでは、多拠点企業において防犯・安全対策が抱えがちな課題と、それを「ガバナンス」という視点で捉え直す重要性について考えてみたいと思います。 1.拠点が増えるほど、安全は「見えなくなる」 拠点が一つの頃は、経営者や本社が現場の状況を肌感覚で把握できていた企業も、拠点が複数になるにつれて、その把握は徐々に難しくなります。 各拠点の防犯対策がどうなっているのか 何かあった際の初動対応は決まっているのか 本社にどのような情報が上がってくるのか こうした点について、「現場に任せている」「問題が起きたら報告が来るはずだ」という認識にとどまっているケースも少なくありません。しかし、防犯・安全に関するリスクは、数値化されにくく、報告も上がりにくいという特性があります。その結果、経営として実態を把握しないまま、リスクが潜在化してしまうのです。 2.拠点ごとの“判断差”が生む防犯リスク 多拠点企業では、防犯・安全対策が拠点ごとに異なっていることも珍しくありません。 担当者の経験や意識の違い 地域特性や慣習の違い 過去のトラブル経験の有無 これらによって、同じ企業であっても、拠点ごとに対応レベルや判断基準が大きく異なることがあります。 その結果、 ある拠点では適切に対応できた事案が、別の拠点では見過ごされてしまう 本社として「どこまでが想定内なのか」が分からなくなる といった状況が生まれます。 防犯・安全対策において、このような判断のばらつきは、企業全体としてのリスクを高める要因となります。 3.多拠点企業における「防犯ガバナンス」とは 防犯ガバナンスとは、単に厳格なルールで現場を縛ることではありません。重要なのは、責任と判断の枠組みを組織として設計することです。 具体的には、 防犯・安全に関する最終的な責任はどこにあるのか どのような事象を、どの段階で本社に報告するのか 現場で判断してよい範囲と、判断を仰ぐべき範囲はどこか こうした点を明確にすることで、現場は過度に萎縮することなく、一方で本社も、必要な情報を適切に把握できるようになります。防犯ガバナンスとは、現場と本社を分断するものではなく、つなぐ仕組みなのです。 4.多拠点企業に求められる三つの視点 多拠点企業が防犯・安全対策を考える際、特に重要となる視点は次の三つです。 (1) 最低限守るべき基準の統一 すべての拠点で共通して守るべき「最低ライン」を定めることで、対応水準のばらつきを防ぎます。 (2) 情報が自然に集まる仕組み 問題が起きたときだけでなく、「違和感」の段階で情報が上がる仕組みを整えることが重要です。 (3) 定期的な見直しと更新 防犯リスクは環境や社会状況によって変化します。一度決めたルールを固定化せず、定期的に見直すことが不可欠です。これらはいずれも、現場任せでは実現しにくい領域であり、 企業としての関与が求められます。 5.第三者の視点を取り入れるという選択 多拠点企業の防犯・安全対策を見直す際、第三者の視点を取り入れることは非常に有効です。内部だけでは、「当たり前」になっている運用や、見過ごされてきたリスクに気づきにくいためです。 警察OBとしての経験を活かした防犯・安全アドバイザーは、 各拠点の実態を踏まえたリスク整理 現実的で運用可能な体制設計 過度に負担をかけない改善提案 といった形で、企業全体の防犯ガバナンス構築を支援することができます。 防犯・安全対策を「現場任せ」にするのではなく、企業として統治するテーマとして捉え直すことが、多拠点企業における持続的な成長と信頼の基盤につながります。 おわりに 拠点が増えることは、企業にとって大きな強みです。その一方で、安全を守る仕組みが追いついていなければ、その強みはリスクにもなり得ます。警察OBとして、そして防犯・安全対策に携わる立場として、多拠点企業における防犯ガバナンスが、経営の重要なテーマとして位置づけられることを願っています。
- [IPOを見据えるグロース企業のための統合報告書:基本構造と押さえるべき要点](https://shiodome.co.jp/column/55879/) - 1. 「グロース市場の上場維持基準の見直し」公表の影響 近年、日本企業における統合報告書の発行数は着実に広がりを見せています。2010年代初頭から発行され始めた統合報告書は、2023年には1,000社を超えるまでに増加しました。とりわけプライム市場上場企業では約5割が統合報告書を作成しており、もはや一部の先進企業による先駆的な取り組みという段階を超え、投資家との対話における基盤資料として定着しつつあります。 一方で、スタンダード市場やグロース市場では、作成企業数は増加傾向にあるものの、その割合は依然として限定的です。統合報告書は「大企業のもの」という印象が、なお根強く残っているのかもしれません。 そのような中、昨年2025年9月、東京証券取引所は「グロース市場の上場維持基準の見直し等について」を公表し、新たな基準を示しました。具体的には「上場から5年経過後、事業年度末日において時価総額100億円以上」という要件が、2030年3月1日以後に適用される予定です。詳細な説明はここでは割愛しますが、その趣旨は、グロース市場を「高い成長を目指す企業が集う市場」として明確に位置付けることにあります。 もちろん、この見直しは「統合報告書の発行」を義務付けるものではありません。しかし、企業の持続的成長がこれまで以上に明確に求められる事を意味します。時価総額は単年度の利益のみで決まるものではなく、将来の成長可能性に対する市場の期待などによって形成されます。そうであるならば、自社の成長の論理をいかに説明できるかは、今後ますます重要になるでしょう。とりわけ将来的にIPOを視野に入れる企業にとっては、その説明の整合性がより一層求められることになります。 では、このような環境変化の中で、IPOを見据える企業も含め、グロース市場の企業は統合報告書とどのように向き合うべきなのでしょうか。本コラムでは、グロース企業と統合報告書との関係性を考察していきます。 2. 統合報告書の本質―“持続的な成長”を語るためのツール これまでのコラムでも述べてきたように、統合報告書は「財務情報」と「非財務情報」を単に並べるための開示ツールではありません。 統合報告書の本質は、企業がどのようなリソースを活用し、どのようなビジネスモデルのもとで経済的価値や社会的価値を創造し、それを中長期の高い成長へと結び付けていくのか、その因果関係を一貫したストーリーとして示す点にあります。 すなわち、統合報告書が示しているものは「現在の姿」そのものではなく、「なぜこの企業は成長できるのか」「その成長はどのように持続するのか」という成長の論理です。 この視点に立てば、統合報告書は成熟企業のための開示というよりも、むしろ成長途上にある企業にこそ有効なツールであるともいえるでしょう。この整理は、IPO準備の過程で求められる事業理解や戦略説明の土台ともなります。その意味においては、グロース企業こそ統合報告書との親和性が高い存在であるといえるのではないでしょうか。 3. 財務数値では測れない価値をどう伝えるか また、グロース企業からは「財務数値だけでは自社の本質的な強みが十分に評価されない」という声がしばしば聞かれます。成長可能性や事業の独自性といった価値があるにもかかわらず、短期的な業績指標のみで評価されてしまうことへの違和感です。 しかし、投資家も一様ではありません。現時点の財務状況だけで企業を判断する投資家ばかりではなく、将来の成長可能性や事業の持続性、経営の質に着目する投資家も確実に存在します。 統合報告書は、こうした投資家に対して、IPO前後を問わず、現時点の財務数値だけでは伝えきれない企業の本質を示すことを可能にします。未来に向けて、どの資本を活用し、どの無形資産に重点的に投資し、外部との関係性をいかに構築しながら競争優位を築こうとしているのか。そして、その取り組みがどのように経済的価値、社会的価値の創出へと結び付いていくのか――それらを一つの一貫した物語として提示することができます。 すなわち統合報告書は、企業のポテンシャルや未来像を伝えるための戦略的なコミュニケーションツールとなり得るのです。 IPOを見据える局面では、将来像と実行体制の一貫性がより明確に問われる点でも有効といえるでしょう。 4. アウトプットであり、インプットでもある もちろん、統合報告書の作成には、グロース企業特有の難しさもあります。 経営層や実務担当者からは、「限られた人員やリソースの中で事業成長と情報開示の双方を進めるだけで精一杯であり、法的義務のない統合報告書にまで手が回らない」という声も少なくありません。現実問題として、“人的な余裕がない”という事情です。 しかし、この点については、統合報告書の作成を単なる「業務負担」と捉えるのではなく、「経営を強化するプロセス」として再定義する視点が重要です。 統合報告書の作成とは、本来、社内に点在している財務情報、非財務情報、戦略、事業計画、人的投資方針、KPI管理データなどを統合し、それらの因果関係を整理・可視化する作業にほかなりません。とりわけ事業や組織が急速に変化するグロース企業にとって、これは「自社はどこを目指しているのか」「何を競争優位の源泉として成長していくのか」「他社との差別化は何なのか」を明確にする営みでもあります。 よって、統合報告書の作成は、情報開示のためのアウトプットであると同時に、経営を再構築するためのインプットでもあります。IPO準備の文脈でも、この整理自体が大きな価値を持ちます。この点も、グロース企業が統合報告書に取り組む意義といえるでしょう。 5. 完成度よりも一貫性が問われる また、次のようなケースもあります。それは、大企業のように「ビジネスモデル」や「ガバナンス体制」、「リスク対応策」などが十分に確立していない、あるいは自社の方向性そのものが発展途上にあるという事情から、「まだ完成していないものを説明してよいのか」という迷いが生じ、結果として統合報告書の作成に踏み切れない。 しかし、そこには一つの誤解があります。それは、「最初から完璧なものを示さなければならない」という前提です。 統合報告書において重要なのは、経営の完成度の高さでも、ましてや分量や体裁の充実でもありません。問われているのは、現時点における戦略や価値創造プロセスの方向性が一貫しているかどうか、そしてその論理が説明されているかどうかです。 むしろ、背伸びをした理想像を描くよりも、発展途上であることを前提に、その時点での考え方や成長シナリオを誠実に示すことのほうが、投資家との対話においては意味を持ちます。企業がどこへ向かおうとしているのか、何を強みとして伸ばそうとしているのか。その因果関係が明確であれば、「未完成」であること自体は決してマイナスにはなりません。 注意すべきは、初回から大企業と同水準の網羅性や完成度を目指してしまうことです。 『統合報告書アワード』を受賞するような企業は確かに高い完成度を誇りますが、彼らも当初から現在の姿であったわけではありません。改善の積み重ねによって、徐々に質を高めてきたのです。 6. 統合報告書の基本構造は押さえる しかし、だからといって統合報告書としての基本内容を軽視してよいわけではありません。 繰り返しになりますが、統合報告書とは、財務情報と非財務情報を結び付け、企業がどのようなビジネスモデルのもとで経済価値と社会的価値を創造し、それを持続的な成長へとつなげていくのか――その因果関係を一貫したストーリーとして示すものです。 また、「マテリアリティ」の特定、「ビジネスモデル」の明確化、アウトプットとアウトカムの整理、「ガバナンス体制」の構築、「リスクと機会」への対応などは、その中核を成す構成要素です。 これらの基本が欠けてしまえば、たとえ「統合報告書」という名称を掲げていたとしても、実質的には「会社・事業紹介」や「サステナビリティ報告書」の域を出ないものになってしまいます。実際、グロース企業の開示資料の中にも、統合という視点が十分に整理されないまま公表されている例は見受けられます。 そのような内容では、投資家に「自社の戦略が十分に整理されていないのではないか」という印象を与えかねません。その結果、本来伝えるべき成長の可能性が適切に評価されず、かえって信頼を損なうリスクすらあります。特にIPOを検討している企業においては、開示の整合性やストーリーの一貫性が早い段階から重要になります。 統合報告書は自由度の高い開示である一方で、押さえるべき基本構造は明確です。そして、その作成にあたって拠り所となるのが、「IIRCフレームワーク」と、経済産業省による「価値協創ガイダンス」です。 7. 価値協創ガイダンスとは IIRCフレームワークについては、本コラム「統合報告書のガイドライン ― IIRCフレームワークとは」(2025年9月24日)、「価値創造プロセスを可視化する『オクトパスモデル』」(2025年10月27日)、「価値創造プロセスの『ビジネスモデル』と『マテリアリティ』」(2026年1月6日)で詳しく解説していますので、ご覧ください。 一方で、「価値協創ガイダンス」については、これまで取り上げてこなかったため、ここで少し紹介しておきます。 価値協創ガイダンスは、経済産業省が2017年に開催した「持続的な企業価値創造」をテーマとする長期投資・情報開示研究会の議論を踏まえて策定されたものです。その目的は、企業の中長期的な価値創造に向けて、経営者と投資家との間に「共通言語を形成する」ことにあります。 さらに2022年には「価値協創ガイダンス2.0」として改訂され、サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)の視点を踏まえた説明の強化や、企業と投資家との建設的かつ実質的な対話の促進が、より明確に位置付けられました。 フレームワークとして整理すれば、「IIRCフレームワーク」が、統合報告書全体の設計思想や原理原則を示す“原則ベースの枠組み”であるのに対し、「価値協創ガイダンス」は、日本企業向けに、価値創造をどのように説明するかに焦点を当てた、より具体的・実務的な指針と位置付けることができます。 したがって、日本企業が統合報告書を作成する際には、「IIRCフレームワーク」で全体構造と基本原則を押さえつつ、「価値協創ガイダンス」で価値創造の論理を具体化する――この二つを相互補完的に活用することが有効といえるでしょう。 価値協創ガイダンス 2.0 の全体像 (出所)経済産業省 「企業と投資家の対話のための価値協創ガイダンス 2.0」より抜粋
- [ESGの「S(社会)」から始める:ミドルマーケットで起きやすい主要課題と、まず着手すべきポイント](https://shiodome.co.jp/column/55943/) - ESGというと「E(環境)」が注目されがちですが、実は多くの企業にとって話題にしやすく、案件化のきっかけにもなりやすいのが「S(社会)」です。働き方、人材育成、人権、サプライチェーン、製品安全、地域貢献──Sのテーマは業種や規模にかかわらず“自社に関係する論点”が必ず存在します。 一方でミドルマーケット(中堅・中小企業)では、専任体制や情報整理の余力が限られ、対応が属人的になったり、取引先からの要請に後追いになったりしがちです。 そこで本コラムでは、S領域で頻出する主要課題を6つに整理し、ミドルマーケットで起きがちなつまずきと、最初に整えるべきポイントをまとめます。 なぜ今「S(社会)」が重要なのか Sは「良いことをしているか」という印象論ではなく、以下のような経営課題と結びつきます。 ・採用・定着:働き方、育成、ハラスメント対応、心理的安全性・取引継続:人権配慮、労働慣行、責任ある調達、適正表示・リスク低減:不祥事、品質事故、情報漏えい、コンプライアンス違反・信頼・ブランド:説明の一貫性、透明性、再発防止の実効性 特に近年は、サプライチェーン全体での人権配慮や労働慣行、情報管理、適正表示などについて、「説明できる状態(方針・運用・証跡)」が求められる場面が増えています。そのためSは、後回しにしづらいテーマになりつつあります。 企業のS領域における主要課題(6テーマ) ここでは、Sの論点を6つに整理します。まずは「自社にとって影響が大きい領域はどこか」を見立てることが出発点になります。 (1)働きやすい雇用環境・労働慣行(人的資本) 安全衛生、福利厚生、働き方など「安心して働ける環境」整備 DEI(多様性・公平性・包括性)、ジェンダー平等、育児・介護との両立支援 エンゲージメント向上、人材育成(スキル開発)、生産性向上 よくある論点制度はあるが運用が浸透していない/評価・育成の仕組みが成長スピードに追いつかない (2)人権尊重・ビジネスと人権への対応 強制労働・児童労働、差別、ハラスメント等の人権リスクの特定・管理(サプライチェーン含む) 説明責任・透明性・倫理行動・人権尊重の実践 よくある論点方針や窓口はあるが、社内外に説明できる“運用の型”がない (3)サプライチェーンの責任と透明性 調達先の人権侵害・労働問題への対応 責任ある調達、デューデリジェンス(国際規制対応含む) ESGリスクの可視化・モニタリング(地政学リスク・労働慣行含む) Scope3を含むバリューチェーン管理(気候×社会リスクの統合) よくある論点調達アンケート対応が場当たり的/サプライヤー管理が担当者依存 (4)製品・サービスの安全性と消費者保護 品質管理・製品安全、事故防止、適正表示、広告倫理 顧客データ・プライバシー保護(情報セキュリティ含む) 顧客満足度向上、苦情処理対応 よくある論点トラブル時の初動フローが曖昧/データ管理ルールが現場で統一されていない (5)地域社会との関係と社会貢献 地域社会との連携・共創(教育・文化・地域産業振興など) 災害復興・地域活性化への取り組み、社会インフラへの貢献 社会課題解決への投資(SDGsとの連動) よくある論点活動はあるが「目的・成果・事業とのつながり」を言語化できていない (6)公正な事業慣行とコンプライアンス 腐敗・贈収賄防止、公正な競争、コンプライアンス ステークホルダーの利害尊重、透明性確保 社会的影響を踏まえた責任ある経営判断 よくある論点規程はあるが教育・証跡が弱い/現場判断のブレが大きい ミドルマーケットで起きがちな「つまずきパターン」 Sはテーマが広い分、典型的に次の状態に陥りやすい傾向があります。 兼務で回しており、優先順位が決まらない(結果、後追い対応になる) 制度や方針はあるが、運用が属人的(担当者が変わると止まる) 証跡が残らず、取引先要請に回答しにくい(「言っている」だけになりがち) 社内外への説明が整理されていない(活動の意義が伝わらない) この状態を抜ける近道は、「全部やる」ではなく、重要論点を絞って“運用の型”を作ることです。 まず着手すべきポイント(3ステップ) ステップ1:論点を絞る(全部を同時に追わない) 6テーマのうち、まずは以下の観点で優先順位をつけます。 事故・不祥事が起きた場合の影響が大きい領域(品質・情報管理・ハラスメント等) 取引先要請が増えている領域(調達・人権・情報管理等) 採用・定着に直結する領域(働き方・育成・職場環境等) ステップ2:「方針」より先に「運用」を確認する 方針があっても、運用が回っていないと実効性が弱く見えます。最低限、次の3点を押さえます。 誰が責任者か(役割分担)
- [ESGの“土台”はG(ガバナンス):ミドルマーケットで起きやすい主要課題と、まず整えるべきポイント](https://shiodome.co.jp/column/55939/) - ESGというと「E(環境)」や「S(社会)」が先に話題になりがちですが、実は“土台”になるのが「G(ガバナンス)」です。ルールや体制が弱いままだと、どれだけ良い施策を打っても「続かない/回らない/説明できない」状態に陥りやすくなります。特にミドルマーケット(中堅・中小企業)では、成長スピードに対して人材・時間・予算が追いつかず、ガバナンスが後回しになりやすいのが実情です。一方で近年は、取引先(大企業)や金融機関、海外顧客からの要請が強まり、サプライチェーン全体で“証跡”や“説明責任”が問われる局面が増えています。たとえばEcoVadisのような第三者評価(サステナビリティ評価)を取引先から求められるケースも広がっています。 本稿では、ミドルマーケットで頻出する「Gの主要課題」を整理し、自社として何から手を付ければ良いかを具体的にまとめます。 1. まず押さえたい:G(ガバナンス)は「透明性」と「再現性(属人化の排除)」 ガバナンスは、立派な規程を作ること自体が目的ではありません。ポイントはシンプルで、 意思決定が透明(なぜその判断をしたか説明できる) 運用が再現可能(担当者が変わっても回る) リスクが早期に見える(問題が起きる前に気づける) この3点が揃うほど、コンプライアンス・情報管理・ハラスメント対応・事業承継など、幅広い論点が“まとめて強く”なります。ガバナンスの国際的な原則でも、透明性や情報開示、リスク管理といった要素が重要な構成要素として整理されています。 2. ミドルマーケットで起きやすい「G」の主要課題(8つ) Gの論点は広いですが、実務上つまずきやすいポイントは概ね次の8つに集約できます。 (1) 経営陣の理解不足・推進体制の未整備 ESGの目的や必要性が“体系”として腹落ちしていない コミットメントが弱く、現場への浸透が止まる 専任者/委員会がなく、テーマが宙に浮く (2) リソース不足(人材・時間・予算) 人事・労務・法務・コンプラに強い人材が限られる 推進責任者が兼務で、意思決定・実行が遅れる 外部専門家の活用に踏み切れない (3) 規程・内部統制が“整備止まり”になりやすい 規程はあるが、運用が形骸化(承認・記録・牽制が弱い) 文書はあるが、現場が自律的に判断できる状態に至らない (4) 取締役会の機能不全・独立性の欠如 同族経営等で意思決定の透明性が下がりやすい 社外の視点を入れにくく、モニタリングが弱い(上場企業向けのコーポレートガバナンス・コードでは独立社外取締役の活用が重視されていますが、未上場でも“外の視点”の重要性は共通です。) (5) ステークホルダー対話・情報開示の遅れ 非財務情報の整理・開示の勘所が分からない 取引先・金融機関・海外顧客の質問に回答しきれない (6) 仕組みが形式的で属人的になりやすい 「できる人」依存でプロセスや判断基準が標準化されない 知見が個人に集中し、事業承継リスクが増幅 サクセッションプランが不在 (7) 法改正・ガイドラインのキャッチアップ不足 労働法、個人情報、腐敗防止、内部統制などの対応が後手 “知らないうちに違反”のリスクが上がる (8) 大企業サプライチェーン要請への対応不足 CO2や人権、取引倫理、証跡、第三者評価などの要求が増加 社内に回答の根拠が散らばっており、対応が不安定になる 3. 抽象論から抜けるコツ:Gを「具体的な困りごと」に置き換える Gは抽象的に見えますが、実際の現場では次のような形で顕在化します。 社内ルールはあるが、守れているか把握できない 情報セキュリティ/個人情報/インシデント対応の型がない ハラスメント相談窓口はあるが、運用フローが曖昧 承認フローが属人的で、監査・DD(デューデリジェンス)で指摘されそう このように“困りごと”として言語化できると、優先順位付けと改善設計が進めやすくなります。 4. まず確認したい情報:社内資料と公開情報で見るべきポイント 「何から見直すべきか分からない」場合、まずは社内資料(規程・手順書・教育記録など)と、自社の公開情報(HP、統合報告書、サステナビリティ関連ページ等)をざっと見直すだけでも現状把握に役立ちます。 拾いやすい観点の例: ガバナンス体制(委員会、責任者、推進部門、方針、権限) リスク管理(情報管理、サイバー、個人情報、BCP等の位置づけと手順) 人権・労務・取引倫理(方針、通報制度、教育、監査、是正) サプライチェーンへの要請(調達方針、アンケート対応、証跡の管理方法) ポイントは「書いてあるか」よりも、運用と証跡が残る設計になっているかです。 5. 自社点検に使えるチェック項目(G編) ここでは、すぐ使える“セルフチェック”の形をご紹介します。
- [JリーグのSPL参画で加速する「プロサッカー×サステナビリティ」― プレミアリーグの先行事例から学ぶ、これからの取り組み方 ―](https://shiodome.co.jp/column/56041/) - 1. なぜ今、プロスポーツのサステナビリティが“経営テーマ”なのか 1. なぜ今、プロスポーツのサステナビリティが“経営テーマ”なのか サステナビリティは、CSR(社会貢献)として語られるだけでなく、いまや「事業継続」や「ブランド」「ファン/スポンサーとの関係性」に直結する経営課題として扱われる場面が増えています。プロスポーツは、クラブ・選手・ファン/サポーター・スポンサー・自治体・メディアなど、多様な関係者が関わる産業です。その分、取り組みが社会に与える影響も大きく、また“スポーツの熱量”が行動変容を生みやすいという特徴もあります。 こうした流れの中で、Jリーグは気候アクションの一環として、国際的イニシアティブ「Sport Positive League(SPL)」への参画を決定しました。サッカーという文化に馴染みやすい形で、環境サステナビリティを推進していく動きが始まっています。 2. Sport Positive Leagues(SPL)とは何か SPLは、サッカークラブ等の「気候アクション」を数値化し、進捗や目指すべき方向性を分かりやすく把握できる仕組みです。参画リーグの所属クラブを対象に、取り組み状況に関するデータを収集し、独自のスコアリングで分析したうえで、カテゴリ別の加重も踏まえた総合点を算出します。結果はスポーツファンに馴染みのある“順位表”の形式で示される点が特徴です。 また、JリーグのSPL解説では、評価対象として、試合会場や施設のエネルギー効率、再生可能エネルギーの利用、リサイクルや廃棄物削減、ファンや選手の移動に伴うCO2排出量の管理、ホームタウンとの連携、選手等への環境教育の推進など、スポーツ界ならではの環境パフォーマンスが挙げられています。単発の施策ではなく、「データの収集 → 可視化 → 共有 → 改善」を回す仕組みとして設計されている点がポイントです。 (ここが重要) SPL参画は「施策を増やす」こと以上に、方針・体制・運用・発信をセットで回すための“共通言語”を得ることでもあります。導入検討の場では論点が散らばりがちですが、SPLの枠組みを参照することで、エネルギー/交通(移動)/廃棄物などの運用領域だけでなく、教育やコミュニケーション等も含めて全体設計を考えやすくなります。 3. JリーグのSPL参画が示す意味(アジア初) Jリーグ公式発表によると、執筆時点でSPLには欧州の4つのプロサッカーリーグが参画しており、Jリーグは5番目、アジアでは初の参画とされています。参画に先立ち、気候アクションを後押しするための助成金制度(Jリーグサステナビリティ事業活動助成金制度)を新設し、SPL参画を推進するプロジェクトも発足したことが示されています。 これは、リーグ全体として「継続運用の仕組み」へ踏み込む意思表示とも捉えられます。今後、日本のクラブが何を、どの粒度で、どのように情報開示していくかが、より重要な論点になっていくでしょう。 4. 先行する英国:プレミアリーグの「戦略」とクラブの取り組み整理 英国では、リーグとしての方針・戦略の提示と、クラブの取り組みの可視化が進んでいます。 (1)プレミアリーグの環境サステナビリティ戦略 プレミアリーグは環境サステナビリティ戦略を公表し、「2040年ネットゼロ」を目指すことを掲げています。公表された方針では、優先領域として次の3点が示されています。 自らの事業を適応させる(2040年ネットゼロを目指す) リーグ全体の脱炭素化を支援し、競技を将来にわたって持続可能にする プログラムや発信を通じて、ファンを巻き込み行動を促す ここで注目したいのは、「削減目標」だけではなく、“意思決定や運営にサステナビリティを組み込む”という考え方が前面に出ている点です。リーグとしての方針が明確になることで、クラブや関係者(スポンサー・自治体・サプライヤー等)も同じ方向性で動きやすくなります。 (2)クラブの取り組みを整理したオープンなレポート クラブ側の取り組みについては、Sport Positiveがプレミアリーグ20クラブの活動を整理したレポート(2023/24シーズン)を公開しています。レポートは、環境サステナビリティ/気候アクションの「傾向・進捗・活動」をアクセスしやすい形でまとめたものとされ、クラブの取り組みを俯瞰する材料として参照できます。 さらにSport Positive Leaguesの説明では、このレポートがエネルギー、交通(移動)、廃棄物、水、使い捨てプラスチック、食、生物多様性といった運用領域に加え、コミットメント、ポリシーと報告、コミュニケーション、教育、調達、スポンサーシップといった戦略領域も含め、複数のカテゴリで整理していることが示されています。 つまり「現場施策(運用)」と「回し続けるための仕組み(戦略)」の両面から、クラブの活動を見渡せる形になっています。 5. 日本のクラブ・企業・ファンにとっての示唆 JリーグのSPL参画が意味するのは、単なる施策拡充というよりも、取り組みを“仕組みとして継続”させる方向性が強まることです。日本のクラブでも今後、次のような論点がより重要になると考えられます(※これは将来の方向性に関する一般的な示唆です)。 取り組みの標準化どの領域を、どの粒度で、どう測り、どう示すか 体制設計誰が責任を持ち、どの部門が関与し、外部とどう連携するか 運用の定着教育・啓発、KPI、定期レビューをどう回すか 共創の広がりスポンサーや地域と連動しやすいテーマ(移動・廃棄物など)をどう設計するか ファン/サポーター側にとっても、SPLのような枠組みは「クラブの取り組みを知る入口」になります。自分の応援するクラブがどんな方針で、どの領域に注力しているのかを知ることは、観戦行動(移動・購買・参加)を通じた貢献にもつながります。 6. まとめ:まず何から始めるべきか 最初の一歩は、難しく考えすぎなくて大丈夫です。実務的には、次の順で整理すると進めやすくなります。 現状把握(エネルギー/移動/廃棄物など、どこが課題か) 体制づくり(担当・責任・社内外連携) 方針・目標・KPI(できるところから設定) 情報発信(取り組みの見える化) 定期レビュー(継続運用の仕組み化) SPL参画は、こうした「継続運用」を後押しする枠組みとして活用できる可能性があります。まずは、リーグやクラブがどの領域を重視し、どのように可視化していくのかを追いかけること自体が、理解と実践の第一歩になります。 参考リンク ・【公式】アジア初となるSport Positive League(SPL)参画を決定(Jリーグ)・Jリーグ気候アクション:SPLとは(仕組みの解説)・PremierLeague:EnvironmentalSustainabilityStrategy(発表ページ)・PremierLeague:EnvironmentalSustainabilityStrategy(PDF)・SportPositive:PremierLeague Clubs
- [プロバスケットボール選手(Bリーガー)における確定申告の実務解説:必要経費の判断基準と適正な節税戦略](https://shiodome.co.jp/column/57736/) - 近年、日本のプロバスケットボールリーグ(Bリーグ)の目覚ましい発展と観客動員数の増加に伴い、プロバスケットボール選手を取り巻く環境は劇的な変化を遂げており、競技レベルの飛躍的な向上とともに、選手に還元される経済的な規模もかつてないほどの広がりを見せています。トップリーグで活躍するプロバスケ選手がクラブから受け取る年俸や各種報酬の額が増加していることに加え、個人でのスポンサー獲得、メディアへの出演、さらにはSNSや動画配信プラットフォームを通じた独自のブランディング活動など、収益を獲得する手段の多様化が急速に進行している状況にあります。これに伴い、プロバスケ選手個人に求められる税務および確定申告の実務は、従来と比較して格段に高度かつ複雑さを増していると言わざるを得ません。 公的な注目を集めるプロフェッショナルアスリートにとって、適切な税務処理は単なる法令の遵守という枠を超え、自身の社会的評価やパーソナルブランドを守るための極めて重要な防衛手段となります。万が一、経費算入の判断誤りや収入の計上漏れなどが原因で後日の税務調査において指摘を受けるような事態に発展すれば、不足している税金の支払いや加算税といった金銭的なペナルティが生じるだけでなく、所属クラブや支援企業との契約解除、さらにはファンからの信用の失墜といった、選手としてのキャリアそのものを揺るがす重大なリスクを招く恐れがあります。本記事では、プロバスケ選手の確定申告に焦点を当て、複雑化する収入構造の整理方法から必要経費の適切な判断基準、さらには将来を見据えた適正な税務管理体制の構築に至るまで、網羅的に解説してまいります。 1. Bリーガーが押さえるべき確定申告の全体像―個人事業主としての立場と申告の基本構造 日本のプロバスケットボールリーグにおいてクラブと契約を交わしてプレーする選手の多くは、一般企業の会社員のように雇用契約を結んで労働を提供する立場ではなく、卓越した身体能力と専門的な技能を提供する対価として報酬を得る「個人事業主」として、クラブ側と専属的な業務委託契約等のプロ契約を締結しているのが一般的です。ただし、契約形態によっては雇用契約(給与所得)となるケースもあるため、自身の契約内容の確認は必須です。クラブとの間に雇用関係が存在しないという法的な前提に立つと、クラブから毎月あるいは分割で支払われる基本報酬等の収入は、税法上の「給与所得」ではなく「事業所得」として区分されることになります。 事業所得として確定申告を行う場合における税額計算の基本的なプロセスは、1年間(1月1日から12月31日まで)に生じた総収入金額から、その収入を獲得するために要した「必要経費」を差し引き、さらに基礎控除や社会保険料控除などの各種所得控除を適用した後の残額に対して、超過累進税率に基づく所定の所得税率を乗じて算出するという構造になっております。給与所得者のように、雇用主である会社側が自動的に年末調整を行って最終的な税額を確定させてくれるわけではありません。そのため、選手ご自身が主体的な経営者として、日々の活動に伴う金銭の動きを正確に帳簿に記録し、翌年の法定期間内に所轄の税務署に対して確定申告書を提出する義務を負うことになります。 この一連の確定申告の実務においては、単なる入出金の集計作業にとどまらず、どの支出が事業の経費として法的に認められ、どの支出が個人の生活費に該当するのかという、税務に関する専門的かつ厳密な判断が常に求められることになります。したがって、プロ契約を締結してプロバスケ選手としてのキャリアをスタートさせたその日から、ご自身が一つの事業体を運営しているという認識を強く持ち、税務に関する基礎的な知識の習得と、適切な記録を残すための経理体制の構築に着手することが、適正な申告を実現するための最も重要な土台となると考えられます。 2. 収入の整理から始める申告準備―年俸、スポンサー収入、出演料、日本代表活動などの把握 適法かつ正確な確定申告を実施するためには、まず対象となる年において発生したすべての収入源を漏れなく網羅的に把握し、それぞれを適切な所得区分に従って分類することが不可欠な作業となります。現代のプロバスケ選手の収入構造は多岐にわたるため、単に所属クラブから口座に振り込まれる金額だけに意識を向けていると、予期せぬ申告漏れを引き起こすリスクが高まる傾向にあります。以下に、プロバスケ選手が得る可能性のある代表的な収入の種類と、その税務上の取り扱いの一般的な目安について整理いたします。 確定申告の準備において特に留意が必要となるのは、表の最後にも記載した物品の無償提供や、特定のサービスを無償で利用できる権利など、金銭以外の形態で提供される経済的利益の取り扱いです。これらを個人的な親交に基づく単なる贈り物と誤認し、事業収入から除外してしまうケースが見受けられますが、税務上は事業収入と判断される場合がます。また、外部のイベントや日本代表の遠征などにおいて、移動費や宿泊費に関する立て替え金と実際の報酬額がまとめて支払われている場合、実費精算に該当する部分と報酬部分とを明確に区分して記帳しておくことが、後の正確な計算を担保するうえで非常に有効であると思われます。 3. 必要経費の整理と按分の考え方―用具費、遠征費、身体メンテナンス費、家賃按分、車両費 確定申告の実務において、最も高度な専門的判断を要し、税務調査の際にも当局と見解の相違が生じやすい領域が必要経費の範囲です。ある支出を必要経費として計上するためには、その支出が事業収入を獲得するために必要であったこと、および業務の遂行上不可欠なものであったことを、客観的な証拠に基づいて説明できることが大前提となります。プロアスリートの場合、自身の身体そのものが収益を生み出す最大の資本であり、競技力の維持・向上が翌年以降の契約条件に直結するという特殊なビジネスモデルを有しているため、経費として認められ得る範囲は一般の事業主と比較して広いと解釈される余地があります。しかしながら、個人の私生活に関する支出(家事費)との境界線が曖昧になりやすいため、慎重な検討が不可欠です。 これらの支出を経費として処理する際、単に宛名のある領収書をファイルに保管しておくだけでは、客観的な立証として不十分とされる場合があります。例えば、同業者や関係者との会食等の領収書については、裏面に同席者の氏名や所属、業務上の具体的な利用目的(戦術の研究や今後のイベントに関する打ち合わせ等)を追記しておくことが有効です。とりわけ、家賃や車両費といった「家事関連費(事業とプライベートの双方が混在する支出)」を按分する項目については、税務調査を見据えて、なぜその割合で按分したのかという根拠を論理的に説明できる資料(見取り図や走行記録帳など)をあらかじめ準備しておくことが、堅牢な申告体制を築くうえで望ましいと言えます。 4. 源泉徴収税額・支払調書・帳簿の突合実務―転記ミスや漏れを防ぐチェックポイント プロバスケ選手が所属クラブやスポンサー企業等から受け取る報酬については、原則として支払いが行われる段階で一定の税率で所得税があらかじめ差し引かれる、いわゆる源泉徴収の対象となります。この源泉徴収された税金は、選手に代わって支払元の企業が国に納付している税金の前払いのような性質を持つため、確定申告を行う際には、年間の正しい所得に基づいて算出された本来の納税額から、既に差し引かれている源泉徴収税額の合計を差し引いて、最終的な精算(追加納付または還付)を行うことになります。 翌年の1月下旬頃になると、報酬の支払元である各企業から、年間を通じた支払金額の総額と、そこから源泉徴収された税額の合計が記載された「支払調書」という書類が順次送付されてくることが一般的です。ここで重要なのは、支払調書は支払者が税務署に提出する書類であり、選手本人への交付は法的義務ではないという点です。クラブやスポンサーから写しが届くこともありますが、近年は事務負担軽減の観点から送付しない企業も増えています。したがって確定申告では、届くかどうかわからない支払調書を待つのではなく、支払ごとに受領する明細書など、自身で保管する一次資料に基づいて正確な帳簿を作ることが基本です。支払調書を受け取った場合は、この支払調書に記載されている数字と、ご自身の記録している帳簿上の入金データ(売上高)および源泉徴収税額のデータとを綿密に突き合わせる作業がとても重要です。もし双方の数字に差異が生じている場合は、入金時期のズレ(例えば12月に稼働した分の報酬が翌年の1月に振り込まれたケースなど)が存在するか、あるいは交通費等の立て替え精算が報酬と合算されて処理されているなど、何らかの原因が存在すると推測されます。 このような数字のズレを放置したまま確定申告書の作成を進めてしまうと、本来計上すべき売上の漏れや、控除できる源泉徴収税額の転記ミスを引き起こす可能性が高まります。源泉徴収税額の計算に誤りが生じた場合、本来であれば還付金として受け取れるはずであった大切な資金を受け取り損ねたり、逆に過少申告となって後日税務署から修正申告を求められる原因ともなり得ます。したがって、企業から送られてくる支払調書はあくまで確認のための補助資料として活用しつつ、ご自身の銀行口座の入出金明細や発行された請求書等の一次情報に基づいて正確な帳簿を作成し、両者の整合性を一つ一つ確認していくという慎重な実務プロセスを踏むことが強く推奨されます。 5. 青色申告の活用と、日常管理の仕組み化―帳簿作成、クラウド会計、専従者給与の検討 確定申告において、適正なルールの中で最大限に税負担の軽減を図り、手元に残る資金を増加させるための最も代表的かつ効果的な制度として「青色申告制度」の活用が挙げられます。事前に所轄の税務署へ青色申告承認申請書を提出し、正規の簿記の原則(複式簿記)に基づいた正確な帳簿を作成して期限内に電子申告等を行うことで、最高65万円の青色申告特別控除を事業所得から差し引くことが可能となります。日本の所得税は所得水準が上がるほど税率が高くなる超過累進税率を採用しているため、高額な年俸を得ているBリーグのトッププレーヤーにとって、この65万円の所得控除がもたらす実質的な節税効果は非常に大きなものとなります。なお、令和8年度税制改正により、電子申告や一定のデジタル対応を条件として、令和9年分から控除額が最大75万円へ拡充される一方、書面申告は縮小される方針です。将来を見据え、今のうちからデジタル化に対応した体制を整えておくことが、さらなる手残り資金の最大化に繋がります。 青色申告を選択することによって生じるもう一つの大きなメリットが、「青色事業専従者給与」の特例を利用できる点です。これは、選手と生計を一にする配偶者や親族が、選手の事業にもっぱら従事している場合、その労働に対する適正な対価を給与として支払い、全額を必要経費に算入できる制度です。例えば、ご家族が選手の複雑なスケジュールの管理、移動や宿泊の手配、SNS等の広報業務、あるいは日々の領収書整理や経理作業などを専属で担っている場合、その業務実態に見合った妥当な給与額を設定することで、世帯全体での所得分散効果が生じ、結果としてトータルの税負担を最適化できる余地があります。ただし、社会通念上高額すぎる給与水準や、実際の業務実態が伴っていないと判断された場合は経費性が否認されるリスクもあるため、業務記録と適正な金額設定が求められます。 複式簿記による帳簿の作成や法定期間の書類保存は専門的な知識を要するため、敬遠されることも少なくありませんが、現在では銀行口座やクレジットカードの取引明細データを自動的に取り込み、AIが仕訳案を推測して提示してくれるクラウド型の会計ソフトウェアが広く普及しています。シーズン中のタイトなスケジュールの中であっても、スマートフォンのアプリを活用して移動時間や遠征先で領収書の画像を即座に保存し、クラウド上でデータを一元的に管理する仕組みを導入することで、日々の経理事務に関わる物理的・心理的負担を劇的に軽減しつつ、極めて精度の高い確定申告準備を進めることが可能となります。 6. 消費税・簡易課税・インボイス制度への対応―年収水準に応じて何を確認すべきか プロバスケ選手としてのキャリアが順調にステップアップし、基準期間(原則として前々年の1月1日から12月31日まで)における消費税の課税売上高が1,000万円を超過した場合、所得税の確定申告とは別に、消費税の納税義務者となる点に十分な警戒と準備が必要となります。消費税の納税額の計算方法には、受け取った報酬に含まれる消費税額から、経費等と一緒に支払った消費税額を実際に差し引いて実額を計算する「原則課税方式」と、業種ごとに定められた一定のみなし仕入率を用いて簡易的に計算を行う「簡易課税制度」の二種類が存在します。プロスポーツ選手の場合、多額の商品の仕入れなどを伴わない事業形態であるため、簡易課税制度(第5種事業:みなし仕入率50%)を選択したほうが、消費税の最終的な納税負担が軽減されるケースが多くなります。ただし、簡易課税制度を選択するためには、原則として適用を受けようとする課税期間の開始の日の前日までに所定の届出書を提出する必要があり、一度選択すると原則として2年間は変更できないといった厳しい制約が設けられているため、専門家による詳細なシミュレーションを経たうえでの慎重な判断が求められます。 さらに、令和5年10月より導入された適格請求書等保存方式(いわゆるインボイス制度)への対応も、今後の選手としての事業活動において避けては通れない重要な経営課題となっています。 インボイス発行事業者として登録を行った場合、年間の売上高が1,000万円以下の免税事業者であったとしても、必然的に消費税の納税義務が発生することになり、申告の手間と金銭的な負担が新たにのしかかることになります。免税事業者への負担軽減措置として、売上税額の2割を納税額とする「2割特例」が設けられていますが、これは時限措置で、令和8年(2026年)9月30日を含む課税期間までが対象です。個人事業主の場合、2026年分の確定申告(2027年3月)が最後の適用となります。また、令和8年度税制改正大綱では、個人事業主向けに令和9年・10年分の2年間限定で「3割特例」(売上税額の3割を納税額とする措置)が新設されました。そのため、ご自身の現在の報酬水準だけでなく、今後の成長見込みや取引先との力関係、さらには税負担の増加額などを総合的に勘案し、インボイス登録による影響を冷静に見極めたうえで最適な方針を決定することが不可欠であると言えます。 7. 申告後まで見据えた運用体制―還付、納税資金、税理士連携、翌年への引継ぎ 無事に期限内に確定申告書の提出を終えた後も、プロバスケ選手に求められる税務および資産管理に関する業務が完全に終了するわけではありません。源泉徴収された税額が、本来納めるべき正規の納税額を上回っていた場合、その差額が「還付金」として申告書の提出からおおむね1ヶ月から2ヶ月程度で指定した銀行口座に振り込まれることになります。この還付金は、決して想定外の臨時収入ではなく、あらかじめ過剰に前払いしていたご自身の事業資金が手元に戻ってきたものであると正しく認識し、翌シーズンのトレーニング費用や遠征費、あるいは将来に向けた資産形成のための重要な原資として計画的に管理・運用することが望ましいと考えられます。 反対に、計算の結果として納付すべき所得税や消費税が生じた場合は、定められた法定納期限までに確実な納付を行う資金計画を立てる必要があります。特に年俸水準が急激に上昇した選手の場合、翌年に「予定納税」という形で所得税の前払いが発生するほか、所得額に連動して住民税や国民健康保険料なども翌年に重くのしかかってくる傾向にあります。したがって、目先の申告手続きを乗り切ることだけで満足するのではなく、申告の完了時点でその年および翌年に発生するであろう各種税金や社会保険料の支払スケジュールを精緻に予測し、納税資金が不足する事態に陥らないよう安全なキャッシュフローの計画を策定しておくことが極めて重要となります。 プロフェッショナルなスポーツ選手という職業は、常に怪我や不調といったリスクと隣り合わせであり、第一線で競技に専念できる期間が限定されているという厳しい現実を伴います。毎年複雑化する税制やインボイス制度などの新たなルールの変更に対応し、適正な申告による盤石な社会的信用の維持と、手元資金の最大化を両立させるためには、これらすべての実務をご自身やご家族のみで抱え込むことには限界があります。そのため、プロアスリートの特殊なビジネスモデルと税務の深い関連性に精通した税理士などの専門機関と早期に連携体制を構築することが、最も安全かつ合理的な選択であると思われます。専門家の客観的な知見を活用して日々の経理の仕組みを自動化・効率化し、不安を取り除いて安心してコート上でのパフォーマンス向上に集中できる環境を作り上げることこそが、引退後のセカンドキャリアも含めた長期的な成功を支える、最大の税務戦略となるのではないでしょうか。
- [AIが企業情報を読む時代―変わり始めたサステナビリティ情報開示―](https://shiodome.co.jp/column/56317/) - いま、企業の情報開示を最初に読むのは、人間とは限りません。この1年ほどの間に、生成AIは急速に社会へ浸透しました。ビジネスや私たちの生活のあり方そのものが、大きく変わり始めています。 ビジネスの現場では、仕事の進め方や情報収集の方法、さらには意思決定のプロセスに至るまで、さまざまな場面でAIの活用が広がりつつあります。こうした変化は、サステナビリティ情報開示の世界においても例外ではありません。 これまで企業の開示情報を読み解いてきたのは、主に人間の投資家やアナリストでした。決算書や有価証券報告書、統合報告書などを読み込み、企業の成長性やリスクを評価する作業は、専門家による分析の領域といえるものでした。 しかし現在では、AIが開示情報を収集・整理し、分析の初期段階を担うケースが増えています。実際、多くの機関投資家や金融機関では、企業分析の効率化を目的としてAIを活用する動きが広がっています。大量の情報を短時間で整理し、企業間の比較を行う――。こうした作業は、まさにAIが得意とする領域です。 つまり今後は、開示情報がまずAIによって読み取られ、整理・分析され、その結果が投資家やアナリストに提示されるというプロセスが一般化していく可能性があります。このような環境の変化は、企業の情報開示のあり方にも新たな視点をもたらしています。それが「AI時代の企業情報開示」という考え方です。 AIは情報をどのように読むのか まず前提として、筆者自身はAIの専門家ではありません。本コラムの内容は、各分野の専門家による議論や指摘などを参考に整理したものです。企業の情報開示を考えるうえでの、一つの視点としてお読みいただければ幸いです。 では、AIは情報をどのように読み取っているのでしょうか。 人間が文章を読む場合、文脈や経験、感覚などを総合的に使いながら意味を理解します。一方でAIは、文章に含まれる情報の構造やパターンを分析し、統計的な推測を行うことで内容を把握しています。 そのためAIが重視するのは、主に次のような要素です。 情報の構造が整理されているか 情報が論理的に結び付いているか 同じ概念が一貫した言葉で説明されているか またAIは、文章の「骨組み」も重視します。見出しや箇条書きによって構造が整理されている文章は、内容を理解しやすくなります。特に結論が先に提示されている文章は、その後の情報を整理するうえでAIにとって扱いやすい形式といわれています。 逆にAIが苦手とするのは、「主語や目的語が省略された曖昧な文章」や「一文が極端に長い文章」、さらには「皮肉や高度な比喩表現」などです。こうした表現は、AIにとって意味の整理が難しくなるためです。 つまりAIは、巧みな文章表現を読み解くことよりも、構造的で論理的、一貫性のある文章を正確に読み取ることを得意としています。 AIは図表やイラストをどのように読み取るのか では、図表やイラストはどのように理解されるのでしょうか。 近年、AIは画像の内容を読み取る能力も向上しています。図表やインフォグラフィックからも、一定程度の情報を取得することが可能です。ただし、テキストに比べると読み取り精度はまだ十分とはいえず、誤認識が生じることも少なくありません。 そもそもAIは、人間のように図を「見て理解」しているわけではありません。基本的には、図やイラストの中に含まれる文字やデータをテキストとして抽出し、それを分析することで内容を把握しています。 例えば、統合報告書でよく見られる「価値創造プロセス」の図を考えてみましょう。人間は矢印の流れや配置、色分けなどを見ながら、全体の構造を直感的に理解します。 一方でAIは、図の中に含まれる文字情報を読み取ろうとします。これはOCR(文字認識)と呼ばれる技術によって行われます。図の中に「インプット」「ビジネスモデル」「アウトプット」「アウトカム」といった言葉が含まれていれば、それらをテキストとして抽出し、内容の整理を試みます。しかし、文字が画像として埋め込まれていたり、極端に小さかったりすると、正しく読み取れない場合があります。 また、AIが比較的得意とするのは、表形式で整理されたデータです。環境指標や人材指標などが表形式で示されていれば、そのままデータとして取り込み、企業間比較やトレンド分析に活用することができます。逆に、数値が図の中に散らばっていたり、グラフだけで具体的な数値が示されていなかったりすると、AIがデータとして利用しにくくなることがあります。 近年の統合報告書では、デザイン性の高いインフォグラフィックが多く用いられています。人間にとっては理解しやすい一方で、AIにとって必ずしも読み取りやすいとは限りません。 そのためAI時代の報告書では、図解だけに依存するのではなく、文章による説明を併記することや、表形式のデータを示すこと、図表に説明文を付けることなどが重要になります。こうした工夫は、「AIフレンドリー(機械可読性の高い)」な情報開示とも呼ばれています。 AIフレンドリーの前に重要なこと もっとも、「AIフレンドリーな情報開示」を意識する前に、そもそもの情報開示として求められている各コンテンツの質が十分でなければ意味はありません。 統合報告書を例にとれば、企業が どのようなビジネスモデルを持ち どのような社会課題に向き合い どのようなアウトプット、アウトカムを生み出し どのような戦略によって成長ビジョンや価値創造を実現していくのか こうした各要素の内容が充実しており、さらにそれらの関係性が論理的に明確に示されていることが、まず前提となります。そのうえで、それらの情報がAIにも読み取りやすい形で整理されていることが重要になります。 反対に、文章としてはAIフレンドリーであっても、肝心のコンテンツ――すなわち経営戦略やビジネスモデル、価値創造プロセスそのものが定まっていないのであれば、それはまさに本末転倒といえるでしょう。 さらに、AIに評価されることだけを目的として統合報告書を作成したり、統合報告書の作成そのものをAIに任せてしまったりすることは、本来の趣旨とは異なります。この点はあらためて強調しておきたいところです。 さいごに ―AI時代に問われる情報開示― 繰り返しになりますが、AIに読みやすい報告書を作ることが、そのまま優れた開示報告書であるとは限りません。 実際、AIとの親和性が高い統合報告書をランキング形式で評価するような試みも始まっています。しかし、その結果として上位に挙がる企業と、日経統合報告書アワードなどで投資家から高く評価される企業が必ずしも一致しているわけではありません。 当然ながら、企業価値を評価する主体はAIではありません。AIはあくまで膨大な情報を整理し、分析を補助するツールに過ぎません。最終的に企業の価値を判断するのは、投資家やアナリストといった人間です。 ただし一方で、投資判断の前提となる情報整理や比較分析の多くを、AIが担うようになってきていることも事実です。よって、せっかく丁寧に作成した開示情報であっても、AIに誤って解釈されてしまえば、その価値が十分に伝わらない可能性もあります。 だからこそ、自社の強みや戦略、そして伝えたい価値を、AIにも正確に読み取ってもらえる形で整理していくことは、これからの情報開示においては、ますます重要になっていくでしょう。 統合報告書が「人間だけでなく機械(AIを含む)も読者となる」時代において、投資家やステークホルダー、そしてAIにも伝わりやすい開示が求められています。
- [プロバレーボール選手における確定申告の基本実務と税務上の留意点](https://shiodome.co.jp/column/58099/) - プロバレーボール選手としてコートで最高のパフォーマンスを発揮するためには、日々の練習や戦術の理解、そして身体のケアに集中できる環境づくりが欠かせません。その一方で、プロとして活動の幅を広げていく以上、確定申告業務は毎年避けて通れません。 昨今、国内のバレーボールリーグ(SVリーグ)は新たな変革期を迎えています。SVリーグは2025年3月、2026-27シーズンより1クラブに所属する選手の過半数がプロ契約選手であることを必須化する方針を発表しました。これにより、プロ契約を選択する選手が今後増加していくことが見込まれ、税務上の正しい知識を身につけることの重要性はかつてなく高まっています。 特にプロバレー選手の場合、契約形態や収入源が多様化しており、それに伴って税務上の判断も複雑になりがちです。本コラムは、プロ契約により個人事業主として活動する選手を主たる対象としつつ、給与所得を得ながら副収入がある選手にも参考となる内容を含みます。本コラムでは、プロバレー選手の確定申告に関する基本的な構造から、経費のボーダーライン、そして長期的な税務管理体制を解説いたします。 1. プロバレーボール選手の契約形態と税務上の所得区分 ―個人事業主としての位置づけと、チーム所属選手ならではの特徴 日本のバレーボール界(SVリーグ)においては、チームを運営する企業に正社員として雇用されながらプレーをする社員選手と、個人事業主としてチームとプロ契約を結んでプレーをする選手が混在しています。本コラムで主に対象とするプロバレー選手は後者の形態であり、チームから受け取る年俸や報酬は「給与所得」ではなく「事業所得」として扱われるのが一般的です。事業所得となる場合、所属チームが税金の計算を代行してくれる年末調整の対象にはならないため、選手自身が個人事業主として一から確定申告を行い、一年間の収入から必要経費を差し引いた利益に対して所得税や住民税を計算し、納める必要があります。 より詳しく見ると、SVリーグの選手契約は、「プロ選手」と「ノンプロ選手」の2種類に区分されています。両者の明確な違いは、選手契約書にバレーボール活動の対価を支払う旨が記載されているかどうかという点にあります。記載があればプロ選手、記載がなく報酬を目的とせずに競技活動を行う場合はノンプロ選手と整理されるのが基本的な考え方となります。選手契約の形態は、SVリーグの規約上、次の7類型のいずれかと定められています。 ①所属クラブの正社員(無期雇用契約) ②他法人からの出向正社員(無期雇用契約) ③所属クラブの契約社員(有期雇用契約) ④他法人からの出向契約社員(有期雇用契約) ⑤個人事業主型契約(業務委託契約) ⑥雇用関係のない契約(業務委託契約) ⑦内定通知(学生)ノンプロ選手は雇用契約があることが前提となるため、契約類型は①〜④のいずれかに限られます。一方、プロ選手は雇用契約の有無を問わないため、①〜⑥のいずれの類型にも該当しうることになります。ここで押さえておきたいのは、SVリーグ規約上の「プロ選手・ノンプロ選手」という区分と、税法上の所得区分(給与所得・事業所得・雑所得)とは別々の概念であるという点です。サッカーや野球など他の競技でプロ契約を締結した選手のケースでは、「事業所得」として整理されることが一般的ですが、SVリーグのプロ選手に同様の判断基準をそのまま当てはめることはできません。この点が、SVリーグ選手の税務を考えるうえでの大きな特徴の一つともいえます。税務上の整理に進むと、ノンプロ選手の場合は、クラブから受け取る報酬は雇用契約に基づく給与となるため、税法上は原則として給与所得として扱われます。所属クラブにおいて年末調整が行われるため、副収入がない限り、選手自身で確定申告を行う必要は原則としてありません。これに対し、プロ選手の場合は、契約形態によって税務上の取扱いが分かれます。 本コラムで主に対象とするのは、⑤または⑥の業務委託契約により、個人事業主として活動するプロ契約選手です。これらの業務委託契約により活動するプロ選手については、年俸や報酬が原則として事業所得として取り扱われるため、選手自身が確定申告を行うことになります。一方、①〜④の雇用契約を維持しながらプロ選手として競技活動の対価を受け取るケースでは、給与所得を基本としつつ、選手報酬部分を事業所得や雑所得として別建てで申告できるかが論点となります。判定の目安としては、選手報酬の規模が一つの参考になります。例えば、選手報酬が給与と同等またはそれ以上であれば事業所得として整理できる可能性が出てきますが、選手報酬が給与額を下回る場合や事業規模といえない場合には所得区分の判断が難しくなるため、申告前に税理士などの専門家にご相談されることをおすすめします。 2. 年俸以外の収入をどう整理するか ―代表活動、イベント出演、スポンサー収入、物品提供、発信活動収入の捉え方 現代のプロバレー選手の収入は、所属チームからの年俸だけにとどまらないケースが増えています。日本代表に選出された際の日当や各種手当、オフシーズンを中心としたバレーボール教室の指導料、メディアへの出演料、個人で獲得したスポンサー企業からの協賛金など、多岐にわたる収入源を持つ選手が数多くいます。これらを確定申告においてどのように分類するかが、非常に重要なポイントです。 一般的に、バレーボール選手としての知名度や活動に直接付随して得られるイベント出演料や個人スポンサー収入は、主たる事業所得に含めて申告することが妥当です。また、近年では選手自身が動画配信プラットフォームやSNSを通じて発信活動を行い、そこから広告収入等を得るケースもあります。こうした発信活動による収入も、選手の競技活動と密接に結びついており、反復継続して行われているものであれば事業所得として扱われる場合がありますが、規模や実態によっては雑所得に区分される余地もあるため、活動の実態に即した慎重な判断が必要です。 さらに見落としがちな要素として、現金以外の物品提供による収入が挙げられます。スポーツメーカーやスポンサー企業から無償でウェア、シューズ、サプリメントなどの提供を受けた場合、それらは税務上「経済的利益」として課税の対象となる場合があります。提供された物品の時価相当額を一度収入として計上した上で、事業の遂行に直接必要であると認められる分についてのみ必要経費として相殺するという処理が求められることもあります。現金以外の利益についても適正に評価し、正確に帳簿に反映させることが適切な確定申告に繋がります。 3. チーム活動と個人活動が交錯する場面の税務整理 ―合宿・遠征・自主トレ・オフシーズン活動・外部案件をどう切り分けるか プロバレー選手ならではの特徴として、チームの全体活動スケジュールに強く縛られる一方で、税務上は独立した事業者として扱われるという二面性が挙げられます。たとえば、チームが提供する練習施設や移動手段を利用しつつも、個人のさらなるスキルアップや身体機能の維持にかかる費用は選手個人の自己負担となるケースも多くあります。このように「どこまでがチームが負担すべき費用で、どこからが個人事業主としての経費に該当するのか」を明確に区分することが、正確な確定申告の第一歩となります。この区分を曖昧にしたまま申告を行ってしまうと、後日行われる可能性のある税務調査において指摘を受けるリスクがあるため、契約内容に基づいた慎重な対応が求められます。 そしてプロバレー選手が確定申告を行う上で最も判断に迷いやすいのが、チームとしての活動と個人としての活動の境界線です。シーズン中の公式戦や全体練習に伴う移動費・宿泊費などはチームが負担するのが一般的ですが、それ以外の場面では自己負担となる費用が数多く発生します。 たとえば、シーズンオフに他チームの選手と合同で行う自主トレーニングや、海外の専門施設を利用した合宿費用などは、競技力の維持向上に直接寄与するものであれば、個人事業の必要経費として認められる可能性が高い項目です。しかし、その旅程の中に観光や個人的な休養の要素が含まれている場合は、全額を経費として計上することは難しくなります。このような場合には、事業に関連する部分とプライベートな部分を滞在日数や活動時間などの合理的な基準を用いて分ける「家事按分」という処理が必要になります。 遠征先などでの飲食代についても同様に注意が必要です。単なる日々の食事代は生活費とみなされるため経費にはなりませんが、外部のトレーナーや他のプロバレー選手、スポンサー関係者と競技や契約に関する打ち合わせを兼ねて会食した場合は、接待交際費や会議費として処理できる場合があります。このように、チーム活動と個人の活動が交錯する場面においては、その支出が「プロバレー選手としての事業を遂行する上で直接必要であったか」という客観的な根拠を、領収書やスケジュール帳の活動記録とともにしっかりと保存しておくことが有効です。 4. 必要経費として認められやすい支出と、ボーダーライン上の支出 ―用具費、身体メンテナンス費、遠征費、栄養管理費、衣装代、移動費の考え方 確定申告において適正に経費を計上することは、事業の利益を正確に算出し、適切な納税額を確定させるための重要なプロセスです。プロバレー選手の場合、自身の身体そのものが事業の資本となるため、一般の事業主とは異なる多種多様な支出が発生します。以下の表に、経費として認められやすい支出と、取り扱いに注意を要するボーダーライン上の支出の考え方を整理いたしました。 表に示した通り、明確に競技用と分かるものは経費としての根拠を示しやすいですが、「衣服」「食事」「一般的な疲労回復」に関する費用は、日常生活との区別が曖昧になりやすい項目です。これらについては、税務調査等の場面においても厳格に確認されることが想定されます。そのため、これらの支出がプロバレー選手としての業務にどのように不可欠であったかを、第三者に対して客観的かつ論理的に説明できる状態を保つ必要があります。 5. 青色申告と日常の資金管理をどう整えるか ―帳簿、口座分離、納税資金の確保、シーズン中の管理体制 個人事業主として確定申告を行うプロバレー選手にとって、青色申告制度を利用することは税制上の大きな利点となります。一定の要件を満たす正規の簿記の原則に従った帳簿を備え付けることで、現行制度では最大65万円の青色申告特別控除を受けられるほか、仮に赤字が生じた場合でもその損失を翌年以降に繰り越すことができるなど、事業運営を安定させるための措置が多数設けられています。なお、令和8年度税制改正により、令和9年分から青色申告特別控除の控除額とその要件が見直されます。e-Taxによる申告や帳簿の電磁的記録保存等の一定のデジタル対応を満たす場合には控除額が最大75万円へ拡充される一方、書面申告や簡易な記帳にとどまる場合には控除額が引き下げられることになります。デジタル対応の有無により実質的な税負担に差が生じるため、シーズン中からクラウド会計や電子保存を前提とした経理体制を整えておくことが、手元資金の最大化にも繋がります。 青色申告の要件を満たすためには「複式簿記」と呼ばれる方式で日々の取引を正確に記録する必要があります。しかし、プロバレー選手はシーズンに入ると試合や遠征で多忙を極め、日々の記帳作業に十分な時間を割くことが物理的に困難になることが予想されます。そこで非常に重要となるのが、日常の資金管理の仕組み化です。 最も効果的かつ基本的な方法の一つは、プライベート用の銀行口座やクレジットカードとは完全に別に、プロ活動専用の事業用口座と事業用クレジットカードを作成することです。所属チームからの年俸やスポンサー報酬の受け取り、そして業務関連経費の支払いをすべてこの事業用口座に集約することで、帳簿作成のベースとなる入出金記録が自動的に整理されます。近年普及しているクラウド会計ソフトと連携させれば、取引データの取り込みもスムーズに行えるようになり、事務負担を大幅に軽減できます。 また、所得税や住民税といった税金は、利益が出た翌年に支払いの時期が到来するという点に注意が必要です。年俸が一括や分割で振り込まれた際、その全額を生活費や自己投資等で使い切ってしまうと、後から納税資金が不足するという深刻な事態に陥りかねません。そのため、収入の一定割合をあらかじめ納税用の別口座に振り分けて計画的に確保しておくといった資金管理体制を構築することが、競技生活の精神的な安心感に直結します。 6. 現役中から考える税金対策と収入の安定化 ―平均課税の検討、所得変動への備え、副収入との向き合い方 プロスポーツの世界は、怪我や成績不振による契約解除のリスクと常に隣り合わせであり、プロバレー選手も決して例外ではありません。ある年に素晴らしい成績を残して年俸や賞金が大幅に増加したとしても、翌年には予期せぬ理由で収入が大きく減少することもあります。日本の所得税は所得が高くなるほど税率が上がる累進課税制度を採用しているため、単年で急激に収入が増加すると適用される最高税率も跳ね上がり、手元に残る資金が予想以上に少なくなる事態も想定されます。 このような急激な所得の変動に対する税負担を平準化し、過度な負担を軽減するための仕組みとして「変動所得及び臨時所得の平均課税」という制度があります。プロ野球選手等の契約金や特定分野の原稿料などが対象としてよく知られていますが、プロバレー選手であっても、複数年契約に伴う一時的な多額の契約金等が発生した場合には、この平均課税制度の適用を受けられる場合があります。ただし、制度の適用可否の判断や計算方法は非常に複雑であるため、税理士などの専門家にご相談ください。 また、将来的な収入の増減リスクに備えるためには、現役時代からスポンサー収入やバレーボール教室の運営など、年俸以外の副次的な収入源を少しずつ育成しておくことも一つの対策となります。加えて、将来の退職金代わりとして利用できる「小規模企業共済」などの制度を活用すれば、掛金を全額所得控除として差し引きながら、引退後の資金を着実に積み立てることが可能になります。活動の幅を広げたり新たな制度を利用したりすればするほど、契約書の内容確認や税務処理も複雑化しますが、税務上のリスクをコントロールしながらこれらと向き合うためには、個人の力だけでなく専門家の知見を積極的に取り入れることが重要になります。 また、個人スポンサー契約、バレーボール教室、メディア出演、SNS発信などによる副収入が拡大していく場合には、所得税だけでなく消費税やインボイス制度への対応も早い段階で確認しておく必要があります。インボイス発行事業者として登録した場合、これまで免税事業者であったとしても消費税の申告・納税義務が発生します。免税事業者から課税事業者となった小規模事業者向けの「2割特例」は、令和8年(2026年)9月30日を含む課税期間までが対象とされ、個人事業主の場合は2026年分の確定申告が最後の適用となります。その後、令和8年度税制改正では、個人事業者の令和9年分・令和10年分について、売上税額の3割を納税額とする「3割特例」が設けられています。報酬水準や取引先の要請によってインボイス登録の必要性は変わるため、現役中の収入拡大を見据え、登録の有無や簡易課税制度との比較を専門家と事前に検討しておくことが重要です。 7. 競技に集中するための申告体制と長期的な備え ―税理士連携、将来のキャリア移行、引退後を見据えた基盤づくり プロバレーボール選手にとっての最大の使命は、コート上で最高のパフォーマンスを発揮し、チームの勝利やファンへの貢献を果たすことです。確定申告や税金対策は個人事業主として事業を営む上で絶対に欠かせない業務ですが、それに時間を奪われ、コンディショニングや休息に支障をきたしてしまっては本末転倒であると言わざるを得ません。 そのため、トップレベルで活躍する多くのプロアスリートは、税務に関する日常の記帳代行や確定申告書の作成を税理士に依頼する体制を整えています。税理士と連携することで、複雑な経費の判断や青色申告の手続きを法令に則って適正に行えるだけでなく、万が一税務調査が入った際にも代理人として対応を任せることができます。専門性の高い税理士法人であれば、スポーツ選手特有の収入構造や契約慣行にも精通しているため、より実態に即した的確なアドバイスが期待できるでしょう。 さらに、プロスポーツ選手の現役生活は生涯続くわけではなく、人生の限られた期間に集中する傾向があります。引退後に指導者や解説者としてバレーボール界に残るにせよ、飲食店経営など全く別の事業を立ち上げるにせよ、現役時代からしっかりとした財務基盤と事業主としての税務知識を身につけておくことは、将来のセカンドキャリアへのスムーズな移行を助ける強力な武器となります。 毎年の確定申告を単なる「税金を計算して納めるための事務作業」と捉えるのではなく、自身の事業の実態を数字で正確に把握し、将来への備えを構築するための重要なステップとして位置づけることが、プロバレー選手として、ひいては一人の自立した事業家として成功するための鍵となります。
- [国や業界が行う建設キャリアアップシステム(CCUS)の概要と取り組みとは](https://shiodome.co.jp/column/19837/) - 1. はじめに 今回は国や業界が一体となって理解や普及を行っている建設キャリアアップシステム(以下、CCUS)の動向について説明をしていきます。CCUSとは、技能者の就業履歴や保有資格などを一元管理する、業界統一のシステムです。技能者の処遇改善や技能研鑽、工事の品質向上、現場作業の効率化を図ることを目的としています。 以下、この制度の理解・普及に向けて行われている取り組みについて紹介します。 2. CCUSの登録者 2019年の運用が始まった時には、324万人いるといわれる建設技能労働者全員に対し、5年後までにCCUS発行のカードを普及させる目標が立てられていました。しかし、2022年1月末時点では81万人の登録にとどまっており、普及率は約25%となっています。 当初は「初年度で100万人の登録、5年後に全就労者」という目標に対して利用者は少ない状態になっています。これは、普及率の問題だけでなく、システムの利用料収入の面でも大きな課題です。国は各建設業界団体に対して追加拠出を求めていることなどからも、運営状況が厳しいことが分かります。しかし、これ以上の追加拠出は難しい側面があります。また、このまま利用者が伸び悩めば制度の存続が危ぶまれてしまいます。そのため、国と業界団体とが一丸となって制度の普及に努めています。 3. CCUS認定アドバイザー制度とは? 現在、普及に向けて進められているいくつかの制度について説明していきます。最初に説明するのはCCUS認定アドバイザー制度です。これは、CCUSの登録・現場運用等に係る専門的知識を修得し、CCUSの利用者に対する適切な指導及び助言等を行うことができ得ると建設業振興基金により認められた総合アドバイザーです。建設業界に従事する方はもちろんですが、行政書士の方も多くの認定を受けています。 また、CCUS認定アドバイザーとして認められるには、一定の要件があります。建設業振興基金が実施する講義と課題を完了させ、修了考査で75点/100点を取得するという要件です。 認定を受けると、技能者登録や事業者登録や現場登録などを支援できます。CCUS認定アドバイザーの名簿は建設業振興基金のホームページに記載されており、指導や助言を求めることができます。 4. 建設業退職金共済の電子申請について 建退共とは建設業退職金共済の略称です。共済契約者となった事業主が被共済者である労働者の働いた日数に応じて掛金を納付します。それにより、被共済者である労働者が建設業界の中で働くことをやめたときに、共済から退職金が支払われる仕組みになっています。 事業主が掛金を納付する際、証紙貼付方式が採用されていました。2021年3月より電子申請方式の受付が開始され併用できるようになり、2023年度には電子申請方式に完全移行しました。 電子申請の方法を簡単に説明すると以下のような流れになります。 CCUSの就業履歴情報を下請業者がCCUSと連携している就労実績ツールで読み込む そのデータをメール等で元請業者に提出する 元請業者は就労実績報告書を作成し、建退共に電子申請する (引用:国土交通省HPより) CCUSでは作業現場にカードリーダーを設置し、カードリーダーに技能者カードをタッチすることで就業履歴を蓄積することを想定しています。しかし、実際には小さい工事現場ではカードリーダーを設置することが難しい場合もあります。そのような現場の場合、電子申請で建退共に就業履歴の登録を行なうことで、CCUSの就業履歴を蓄積することも可能になります。 5. おわりに 建設業は、技能者がさまざまな現場を渡り歩いてキャリアを形成していくという特殊な業界です。資格を除き経験や技能の証明について、業界共通で認識できる手段が今まではありませんでした。そのため、建設業界全体の待遇改善やキャリアプランの見える化を行うことで、減少が続く建築業界の担い手の維持と増加を目指すことがCCUSの大きな目的です。 その一方で、今までは無かったシステムの業界全体での導入を行ったことで費用がかさんだためか、2020年10月にも利用料の値上げが行われています。新規登録が鈍くなった理由の一つとして、利用料金も挙げられるでしょう。 現状課題が目に付きやすく、成果やメリットが実感しづらい状況では、コストがかかるばかりに思われるかもしれません。 しかし、2023年度には公共工事においてCCUSを原則化しています。国としても一層の普及を目指し検討を続けていくことでしょう。登録の時期は企業によって異なるでしょうが、目を離さずに情報を追うことをお勧めします。
- [インボイス制度の導入-小規模事業者に対する納税額の軽減制度や補助金申請のポイント](https://shiodome.co.jp/column/19282/) - 1. はじめに 今回、具体的な説明を行なう内容は次の通りです。まずは、簡易課税とインボイス制度のどちらを選択すると良いかについてです。次に、適格請求発行事業者となる場合、どのような手続きがいつまでに必要になるのかについてです。インボイス制度の導入は事業者によって事務作業や経済的な負担が増大してしまいます。そのため、令和5年度税制改革によって、小規模事業者に対して、支援措置が講じられました。まずは、その支援措置から説明します。 2. 納税額の軽減制度 令和5年度税制改正で大きく打ち出された支援策は“2割特例”です。消費税の納税額を簡便的に計算し事務負担を軽減させ、税負担も軽減させる制度です。対象者は2年前(基準期間)の課税売上が1000万円以下等の要件を満たしている事業者のみです。つまり、インボイス制度の導入がなければ消費税の納税義務が生じた事業者になります。元々消費税の納税義務者である場合はこの制度の対象とならない点に留意してください。 この“2割特例”の場合、納税額は売上額にかかる消費税の2割です。本則課税(一般課税)、簡易課税、2割特例の3つのケースで納税額がどのように異なるか以下で比較します。 例:建設業(第3業種の建設業 みなし仕入率70%)売上高700万円(税額70万円)、経費150万円(税額15万円)のケース本則課税:70万円-15万円=55万円簡易課税:70万円-(70万円×70%)=21万円2割特例:70万円-(70万円×80%)=14万円 2割特例の計算方法は、簡易課税制度のみなし仕入率が80%である場合と同様です。そのため、みなし仕入率が80%以上である第1業種・第2業種以外の場合は、2割特例を適用した方が納税額を少なくできます。建設業の場合、第3業種(みなし仕入率70%)、もしくは第4業種(みなし仕入率60%)の場合が多いため、納税額が高くなる簡易課税を選択するメリットは少ないと思います。ですので、業種によって本則課税か2割特例のいずれかの適用を検討することも重要でしょう。 3. 補助金 小規模事業者を中心にインボイス関連で申請できる補助金は主に2つあります。 ①小規模事業者持続化補助金 小規模事業者持続化補助金は賃上げ枠や創業枠等があります。これは小規模事業者が自社の経営を見直し、販路開拓や生産性向上を支援するための補助金です。今回は、特例として、この補助金に上乗せされる形でインボイス枠が設けられました。そのためインボイス事業者登録に要した費用のみを、できるだけ手間をかけずに申請したいという場合は、②で説明をするIT導入補助金の方が適切かもしれません。 詳細は全国商工会連合会のガイドブックをご参照ください。 ②IT導入補助金 IT導入補助金には複数の枠があり、インボイス制度導入の際に利用しやすい例枠としてデジタル基盤導入類型があります。ITツールやPC・タブレットが補助対象で、補助金額は次の通りです。 ITツール:~50万円(補助率3/4以内)、50万円~350万円(補助率2/3位内) PC・タブレット等:~10万円(補助率1/2以内) レジ・券売機等:~20万円(補助率1/2以内) 今回、補助下限額が撤廃されたため、中小事業者が主に利用する安価なプランも対象になりました。この補助金を申請するには、いくつかの要件があります。 gBizID(経済産業省や中小企業庁の複数の行政サービスを1つのアカウントにより利用することのできる認証システム) 「SECURITY ACTION」(独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が実施する中小企業・小規模事業者等自らが、情報セキュリティ対策に取組むことを自己宣言する制度)での宣言 「みらデジ」(中小企業庁が実施する中小企業・小規模事業者等の経営課題をデジタル化により解決することをサポートするポータルサイト)の登録と経営チェックを行うこと 申請にあたって初めて実施する要件もあるでしょうが、専門家に依頼しなくても可能な難易度の作業です。申請にかかる手間と、申請できる補助金額を鑑みながら申請を検討すると良いかもしれません。 4. インボイス制度の申請手順や申請期限 実際に適格請求書発行事業者(=インボイスを発行できる業者として登録した事業者)となることを決定した場合、納税地を所轄する税務署長に適格請求書発行事業者の登録申請書を提出する必要があります。窓口だけでなく、e-Taxや郵送でも申請可能です。 申請期限ですが、インボイス制度が開始される令和5年10月1日から登録したい場合は、令和5年9月30日までに登録申請書を提出する必要があります。申請書の提出を終え登録通知が届くまでには日数を要します。ですが、登録通知書が届いていなくても、提出が完了していれば同日から登録されたものとみなされます。 また、登録申請時点で2割特例を受けるかどうかを選択する必要はなく、申告時に選択すれば良いこととなっています。 5. 申請手続の経過措置 インボイス制度開始後の申請についても、経過措置が設けられています。 令和5年10月1日から令和11年9月30日までの日が属する課税期間中に登録申請を行うことで、提出した日から15日以降の希望の日から登録することができるという経過措置が設けられています。そして、この経過措置を受ける者が簡易課税制度を希望する場合、「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出すれば、その課税期間から簡易課税制度の適用を受けることができます。ただし、簡易課税制度は一度選択すると2年間は継続して適用されるため、翌事業年度のことも考慮して選択することをおすすめします。 また簡易課税を選択した場合も、2割特例を受けるかどうかは申告時に選択すれば良いです。 6. おわりに インボイス制度について、増税というイメージを持たれる免税事業者もいるかもしれません。ですが厳密にいうと、今まで納めるべき消費税が免除されていたところ、きちんと納めなければならなくなったというのが実態です。もちろん制度の対応に時間や費用が掛かってしまうという面もありますが、適切な価格交渉に成功すれば、自社ビジネスの価値を高める機会にできます。 とはいえ、免税事業者が適格請求書発行事業者として登録すれば納税する金額が必ず増えます。その中で、経過措置や簡易課税制度を理解することで、できるだけ納税額を少なくすることも可能になるでしょう。 税金関係の制度はわかりにくいものが多いですが、少しの手続等で納税額が大きく変わることもありますので、検討してみてください。
- [人的資本とは?中小企業及び建設業にも影響を与える人的資本に係る情報開示の動き並びに人的資本経営のメリットとしてのサステナブルファイナンス](https://shiodome.co.jp/column/19276/) - 1. はじめに 昨今、人的資本という言葉が注目されるようになりました。比較的新しい言葉であるため、研究機関等がそれぞれ異なる説明をしており、明確な定義はない新しい概念です。経済産業省では人的資本経営を「人材を『資本』として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方」としています。人的資本開示は欧米が先進していますが、日本でも昨年、人的資本の情報開示に関する大きな指針が2つ示されました。 すぐに直接的な影響があるのは大企業ですが、中小企業でも今後避けて通れない考え方です。そして、特に深刻な人材不足の問題を抱える建設業においては、今から取り組むことで人材戦略に有利に働くことが予想されます。今回は人的資本について、基礎となる考え方や求められる開示についてまとめます。 2. 人的資本とは? まずは人的資本という言葉の意味を確認します。似た言葉として、経営資源である「ヒト、モノ、カネ」の「ヒト」を指した「人的資源」という言葉があります。人的資源という言葉は、「ヒト」に係る人件費をそのまま費用と捉えて、労働力がその場で消費されていくと考える向きが強い言葉です。一方、人的資本という言葉は、「ヒト」に係る人件費を「投資対象に対する投資」と捉えて、先行投資をしたうえで、将来の企業価値向上によってリターンを得ようと考えます。 文字通り、ヒトを競争力の源泉である資本と考え、それを企業が適切にマネジメントして企業価値を向上させるというのが人的資本経営の目的です。 3. 人的資本開示の動き 人的資本に関する動きとして、昨年度は「人的資本可視化指針」の公表や、「企業内容等の開示に関する内閣府令」の改正、「女性活躍推進法」の改正がありました。これによって上場企業は女性管理職比率、男性の育児休暇取得率、男女の賃金格差等の数値に加えて「人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針」等の開示が求められることになりました。 上記が示されたことは、欧米に後れを取っている日本の人的資本の情報開示において、大きな一歩といえます。こうした世の中の流れは大きく以下の2つの動機により進められてきました。 1つ目はESG投資への関心の高まりです。欧米ではESG(環境・社会・企業統治)に関する社会的意識が高まり、投資の世界においてもESGに配慮し持続可能な発展を目指す企業に投資をするという投資家が増加しています。日本は欧米から遅れをとっていますが、この視点が浸透し始めていることは間違いありません。 2つ目は労働者からの要求です。労働人口が減少していく中、労働者たち、特に若年層は給与面だけでなく就職先の労働環境を知ることに高い関心を示しています。労働環境を改善し、その情報を開示する機運が高まっています。 中小企業において、1つ目のESG投資についてはすぐに直接的な影響はないと考える企業も多いかもしれません。しかし、2つ目については多くの企業に影響が出てくると考えられます。今後は開示義務がないからといって何の情報開示にも取り組まないことは労働環境の改善に意識が低いという印象を与え、人材採用等の場面において不利になる可能性があります。建設業においては2024年4月より時間外労働の上限規制が適用されることにより、現状よりも労働環境が改善されると考えられていますが、それだけにとどまらない労働環境の改善についても取り組む必要に迫られるでしょう。 4. 中小企業に求められる情報開示 ここからは人的資本開示の内、中小企業にも大きく関係するものを見ていきます。具体的には、中小企業に現在義務化されている事項である女性活躍推進法に基づく行動計画の策定・情報公表について整理します。ここでは101人以上300人以下の企業に要求されている事項を2つご紹介します。 ①一般事業主行動計画の策定・届出 「一般事業主行動計画」とは、企業が自社の女性活躍に関する状況把握と課題分析を行い、それを踏まえた行動計画を策定するものです。以下の4つの項目について自社の状況を把握した上で課題への取り組み内容を決定し、社内通知と外部公表を行い、都道府県労働局に届出を行います。また、その後の取組内容の効果測定も行っていく必要があります。 採用した労働者に対する女性労働者の割合 男女の平均継続勤務年数の差異 管理職に占める女性労働者の割合 労働者の各月ごとの平均残業時間数等の労働時間の状況 ②女性の活躍に関する情報公表 また、以下の項目から1項目以上選択し、求職者等が簡単に閲覧できるように情報公開する必要があります。 ※「(区)」の表示のある項目は、雇用管理区分ごとに公表が必要※「(派)」の表示のある項目は、労働者派遣の役務の提供を受ける場合には、派遣労働者を含めて公表が必要 5. 建設業界の情報開示例 建設業界の開示の事例として、従業員数が100人以下でありながら男女の賃金格差等の情報公表を行った例をご紹介します。この企業では開示によって社内風土が変化し、売上の伸長にも寄与しました。このような取り組みは簡単なことではなく、短期的にはコストや工数がかかってしまいますが、長期的には会社の成長につながるようです。人的資本への投資による長期的な企業価値の向上を果たしたという点で、まさにESG経営であるといえるでしょう。 情報公表好事例(厚生労働省HP):三承工業(建設業) 上記の事例紹介にもありますが、社内の人材だけでは難しいこともありますので社労士等の専門家に相談をするというのも有効です。 6. サステナブルファイナンス 第3節で触れたESGに関連し、ESG投資に関わる論点の一つであるサステナブルファイナンスについてもご紹介します。 サステナブルファイナンスはこれからの資金調達手段として理解しておきたい概念の一つです。全国銀行協会の定義では「環境(E)・社会(S)、ガバナンス(G)課題の解決を目指して、様々な配慮を織り込んだ投融資(ESG投資・ESG金融)、債券発行、その他様々な幅広い金融サービスを含む広い概念」です。こちらも現在は大企業を中心に金融商品が開発されていますが、サステナビリティ・リンク・ローン(CO2などの削減目標を設定し、目標を達成できた場合は金利が有利となる借入)等では中小企業に向けた金融商品も徐々に増えてきています。人的資本経営に取り組むことで、資金繰りにも有利に働く可能性があるということをぜひ知っていただきたいと思います。 7. おわりに 今回は人的資本の動向と中小企業に対する影響をご紹介しました。深刻な人材不足を抱え、それに加えて、元々女性比率が少ない建設業においてこのトレンドは非常に厳しいと感じられるかもしれません。しかし、今後は中小企業にさらに大きな影響が出てくる可能性が高いと考えられるため、影響が少ない今のうちから少しずつ取り組んでおくことをおすすめします。
- [インボイス制度の導入-消費税の基礎と建設業で簡易課税制度を選択する際のポイントとは](https://shiodome.co.jp/column/19355/) - 1. はじめに 2023年10月からインボイス制度が導入されました。今までは、売上が1,000万円以下の事業者の場合、消費税の納税義務を免除され、決算でも特に考慮の必要がない税金でした。インボイス制度の導入後も、免税事業者には消費税の納税義務が課されるわけではありません。しかし、免税事業者からの仕入を行う場合、課税事業者は支払う消費税額を控除できなくなってしまいます。 このため、免税事業者や簡易課税制度を選択している事業者など、大多数の事業者に影響があり、手取りが減少する可能性の高い制度改革になっています。建設業での一人親方や小規模工務店など、今までは免税事業者であったり簡易課税を選択したりしている事業者は詳細をしっかり確認する必要があります。そこで消費税やインボイス制度の基本的な仕組み、インボイス制度の経過措置(時限的な優遇措置)等について解説をしていきます。まずは消費税納税の基本から説明をします。 2. 消費税とは? 消費税は物品やサービスについてそれを購入・消費した消費者が負担する税金です。しかし、一般的な消費者が物品やサービスを購入するたび消費税の納税を行うのは現実的ではありません。その物品やサービスを販売した事業者が、消費者からお金を預かり、消費者に代わり間接税に該当する消費税を納税します。 消費税の納税の流れを下の図で詳しく確認します。 この図の中では、下記の手順で消費税が発生します。 A製造業者がB販売業者に商品を50,000円で販売し5,000円の消費税を預かり、納税 B販売業者はC消費者に商品を70,000円で販売し、7,000円の消費税を預かる B販売業者は自社が預かった消費税から、自社が支払った消費税を控除した後に、差額の2,000円を納税(7,000-5,000=2,000円) このように消費者は納税せず、各事業者が代わって納税するしくみになっています。また、③で売上と同時に預かった消費税額から仕入の際に支払った消費税額を差し引き、収める消費税額を算定する処理のことを「仕入税額控除」と呼びます。 3. インボイス制度とは? インボイス制度とは消費税の新しい仕入税額控除の方式です。インボイス制度の下では、適格請求書発行事業者が発行したインボイス(適格請求書)に記載がなければ仕入税額控除は行うことができません。今回の例では、A製造業者が適格請求書発行事業者として登録を行わないと、B販売業者はインボイス=適格請求書の受領ができず、5,000円の仕入税額控除を行えません。結果として、B販売業者は7,000円の消費税を納税することになります。 A製造業者は基準期間の売上高が1,000万円以下の場合、基本的には免税業者でいることはできます。しかし、B販売業者としては、免税業者であるA製造業者からの仕入では仕入税額控除ができません。そのため、仕入業者の変更を検討する可能性があります。 なぜなら、仕入税額控除ができない場合、課税事業者にはかなり大きな影響が出てしまうからです。つまり、売上高が1,000万円以下で免税業者である場合、自身の納税はしなくて良いため納税額に影響はありません。しかし、取引先の課税事業者は、免税事業者から適格請求書が発行されないため、仕入れ税額控除ができなくなります。そのため、課税事業者は仕入業者の変更を検討する可能性が高くなるでしょう。免税業者は事前に取引先と意思疎通をはかることでトラブルを防止する必要があります。 4. 簡易課税制度 消費税の納税額を計算する際、売上金額から預かっている消費税、仕入金額から仮払消費税をそれぞれ計算し、差引で納税額を計算する方法が原則です。一方で煩雑な事務作業を軽減するために簡易課税制度があります。 簡易課税制度は原則として行う仮払消費税の計算を簡便的に行なうイメージです。具体的な方法として、売上金額から預り消費税を計算し、その計算値に業種ごとに定められたみなし仕入率を乗じることで仕入れにかかる消費税のみなし計算を行います。 【原則法(本則)】売上にかかる消費税-仕入れにかかる消費税 【簡易課税制度】 売上にかかる消費税-売上にかかる消費税×みなし仕入率 注意が必要な点として、簡易課税制度利用していても、適格請求書発行業者としての登録は別途必要になります。 5. 建設業で簡易課税制度を選択する場合のポイント 簡易課税制度におけるみなし仕入率は業種によって異なっています。そして、建設業は原則として第3種の製造業として分類されていますが、全ての建設事業者が当てはまるわけではありません。消費税基本通達では以下のようになっています。 製造業等に該当する事業であっても、加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供を行う事業は、第4種事業に該当するのであるから留意する。(消費税基本通達) そのため、人工代・加工賃といったものがサービスの主である場合は第4種に区分され、仕入率は60%となります。第3種の70%に比べ低くなっているのは、人工代が主となるような事業の場合、仕入は少ないことが一般的であるからです。結果として、売上にかかる消費税から控除される金額は少なく(=みなし仕入率が低く)なります。 具体的にいうと、塗装業において、自ら材料を仕入れて施行するような場合は第3種になります。一方で、材料について支給を受けて施行のみ行うような場合は第4種になります。 いずれの事業も行っている場合には、事業ごとに計算します。ただし、1つの事業が売上全体の75%以上となっている場合には、その主たる事業のみなし仕入率を使用することができます。“できる規定”なので、どちらを選択することも可能です。 簡易課税制度の事業区分の表 6. おわりに 今回、消費税の基本的な制度とインボイス制度の概略、簡易課税制度について説明しました。インボイス制度の本格導入に備え、まずは基本的な仕組みを知っておくことが重要です。特に、簡易課税制度を選択した方が有利となる免税事業者も増えると思います。現在の取引先の状況を確認し、課税事業者になるかどうかを検討すると良いでしょう。
- [建設業における人手不足の現状並びに人手不足対応の為に活用すべきガイドライン、「ミラサポPlus」公表事例及び助成金](https://shiodome.co.jp/column/19405/) - 1. はじめに 建設業界は長い間人手不足であり、いまだ改善することができていません。日本の産業界全体で人手不足の傾向がありますが、中でも建設業では緊急性の高い課題です。すでに建設業ではコロナ前と同水準の人手不足に直面しています。 そこで、今回は人手不足の現状と、これに対する国の施策等をご紹介します。 2. 人手不足の現状 2022年7月の帝国データバンクによる調査では、人手不足だとしている企業の割合は全業種で47.7%と半数近くにのぼります。この数値はコロナ前の2019年7月の48.5%と同水準であり、コロナ流行初期での数値である30.4%から大きく上昇しています。コロナによる消費活動の停滞から回復しつつあり、旅館・ホテル、飲食業等、緊急事態宣言で人手が過剰となっていた業界で再び人手が不足しているものとみられます。 このように、コロナは幅広い業種で人材市場に大きな影響をもたらしました。建設業界で人手不足と答えた企業の割合は、コロナ前の2019年7月の調査では67.5%、2020年7月は51.9%、2022年の調査で62.7%となっており、全業種での調査とは動向が異なることがわかります。有効求人倍率についても、建設業では平均で6倍近い値となっています。この値に示されている通り、コロナによる影響はありつつも、それ以前から長期にわたって全業種平均を大きく超える人材不足が生じている状況です。 社会全体としての人手不足に加え、大企業との賃金格差や、若者の根強い大企業志向などの背景から、特に中小企業が厳しい状況です。 ステップ1.経営課題を見つめ直すステップ2.経営課題を解決するための方策を検討するステップ3.求人像や人材の調達方法を明確化するステップ4.求人・採用/登用・育成(人材に関する取組の実施)ステップ5.人材の活躍や定着に向けたフォローアップ まず、ステップ1の経営課題の見直しです。この見直しが重要なのは、経営課題が何であるかによって、必要な人材や人員数が変わるからです。 人手不足を感じる理由の1つとして、ガイドラインでは退職や離職による欠員といった純粋な従業員の減少を挙げています。従業員が減少してしまったといっても、そのまま欠けた人員を補充するのではなく、会社の方針や考え方によって補充する人材を検討する必要があります。 例えば、当該離職者の関与していた事業について検討すると、現状の業務を継続する場合と業務フロー等を見直す場合とで、採用する人材が変わることはもちろん、人材を補充すべきかどうかも変わるでしょう。 人材を補充する場合にも、離職者と同様の職能の人材の募集をするか、更なる離職を防ぐ為に人材マネジメントに長けた人材の募集をしつつ業務フローを見直すのか、といった選択があると思います。このように細かく分析・検討することで、今までとは違った人材の採用が有効だとわかるかもしれません。 また、離職者の関与していた事業の規模についてイノベーションを伴う拡大を狙うときにも、そのイノベーションを生み出すような人材はどのような人材なのか検討しなおすといったことが重要になるでしょう。 ステップ2の方策を検討する際は、どの業務で人手が不足しているかを分析し、業務の細分化・切り出しを行います。この検討では、人員の補充に加え、外部化や機械化等も考える必要があります。 ステップ3では、人員補充が必要になったとき、固定観念にとらわれない人材調達方法を検討することが重要です。今まで「フルタイム・正社員・若年層の社員」が担当していた業務も、細分化することで「時短勤務者・非正規社員」に任せられることがあります。このように採用対象を広げられないか検討することは極めて有益です。また、外部調達だけでなく、研修制度等を設けて内部調達(育成)することも手法の1つとして考えておくことが重要でしょう。 ステップ4の人材に関する取組みとしては、「働き手の目線に立った魅力発信」や「人事評価を通じた人材育成」が推奨されています。特に若手人材の採用では、SNSでの発信は大きな効果を発揮する場合があります。昨今、社内の様子や経営層が考えている将来像等を発信することは、自社の実像や魅力に気づいてもらうためにも、有効な手段として認知されてきています。他にも、社員のやる気を向上させるために人事評価制度を利用する、といった取り組みも広く行われています。 ステップ5の人材の活躍や定着に向けたフォローアップは建設業界において特に重要です。建設業の労働環境は、「きつい・汚い・危険」が3Kと総称されるなど、過酷なイメージが定着しています。社会全体として人手不足で、労働市場が売手優位である昨今では、人材の獲得・定着のために残業の有無や休暇の取得のしやすさ等の待遇を改善することが重要でしょう。また、働き手のスキルアップや働き手同士のコミュニケーションの活性化に取り組むことも人材の定着をはかるために有効な手段です。 3. 建設業での人手不足対応事例 前節ではガイドラインの内容をご紹介しましたが、実際にガイドラインのみで自社の課題に対応するのは不安があるかもしれません。そこでガイドラインと共に活用できるのが中小企業庁の「ミラサポPlus」です。ミラサポPlusでは様々な業界の人手不足対応事例が公表されています。これら事例においては取組前の状態と取組内容、取組の効果が記載されているほか、業種や人員数、資本金などでソートして検索することもできます。これにより、自社に近しい課題を解決した企業の事例を探しやすくなっています。 建設業の事例としては、長時間労働による離職に悩んでいた事業者で社内の受注基準を見直したものなどがあります。高利益・高効率な案件を選別して受注することで、少ない人員・時間で取組前と同水準の利益を実現しているとのことです。また、高齢層には紙媒体、若年層にはweb・SNS、といったように採用したい人材に合わせて調達方法を変えることで応募者が増加したといった事例もあります。 (参考:ミラサポPlus) 4. 助成金の活用 人手不足への対応に際しては、助成金の活用も有効です。目的や管轄によって条件等が異なります。管轄による違いについては、人材領域なので厚生労働省が管轄する助成金が多いものの、自治体が独自で設けている助成金制度もあります。 目的による違いで分類すると、 人材を採用するともらえる助成金 職場環境を整えるための助成金 雇用調整のための助成金 の3つに大別できます。本稿では3つの目的別に代表的な助成金をご紹介します。 ①人材を採用するともらえる助成金 中途採用等支援助成金 特定求職者雇用開発助成金 トライアル雇用助成金 ②職場環境を整えるための助成金 人材確保等支援助成金 両立支援等助成金 ③雇用調整のための助成金 雇用調整助成金 労働移動支援助成金 ここに示したものだけでなく、自治体独自のUIJターン採用に関する補助金等もあります。まずは用途を決めた上で、一度調べてみることをおすすめします。 5. おわりに 今回は建設業界の人材不足の現状と、その対策について説明しました。建設業界は他の業界と比べて慢性的に人手不足が続いています。5~10年以内に60歳以上の職人が一気に離職することも考えると、今後ますます人材不足が深刻化することは間違いありません。 ガイドラインで紹介されている現状整理や要件の再定義などは、実際にどこまで適用できるかは会社によって変わってきます。まずはミラサポPlusで自社の課題に近い事例を探すことが1つの手でしょう。それによって自社の進むべき方向性を定め、取り組みの実施検討に当たってガイドラインを参考にする、といった方法が効果的かもしれません。
- [建設業における具体的な働き方改革の支援策の紹介及びその実際の労働状況からみる支援の経緯並びにその経緯をもたらした働き方改革関連法の改正点](https://shiodome.co.jp/column/19507/) - 1. はじめに 働き方改革関連法案が2019年4月から順次施行され、“働き方改革”という言葉は広く認知されるようになりました。厚生労働省によると働き方改革は、「働く方の置かれた個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現し、働く方一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすること」を目指しているとしています。そしてこの改革の目的は、「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」「育児や介護との両立など、働く方のニーズの多様化」などの課題の解決としています。 この改革により建設業の現場でどういった変化があったのか確認します。そして、働き方改革への取り組みを支援する助成金をご紹介します。 2. 働き方改革関連法 はじめに、働き方改革関連法で改正された点を確認していきます。この改正は業界問わず適用されるため、日本の労働環境にとって基準となるものです。 ①フレックスタイム制の見直し フレックスタイム制の「清算期間」の上限を1か月から3か月に延長する。 ②時間外労働の上限規制の導入 36協定の特別条項について上限規制を設ける。繁忙期であっても年間720時間、単月100時間未満、複数月平均80時間を上限とする。これを超過すると刑事罰が適用される場合がある。 ③年次有給休暇取得の一部義務化 年10日以上の有給休暇が発生している労働者に対して、会社は必ず5日の有給休暇を取得させる義務を負う。 ④高度プロフェッショナル制度の創設 職務の範囲が明確で一定の年収(少なくとも1,000万円以上)を有する労働者が、高度の専門的知識を必要とする等の業務に従事する場合に、年間104日の休日取得や健康確保措置を講じること、本人の同意等を要件として、 労働時間、休日、深夜の割増賃金等の規定を適用除外とする。 ⑤割増賃金率の中小企業猶予措置 月の残業時間が60時間を超過した場合、割増賃金の割増率を50%以上にしなければならないという制度が中小企業にも適用となる。 ⑥労働条件の明示の方法 明示された労働条件と事実が異なるものではあってはならず、労働者が希望した場合は電子メールの送信等による明示を求めることができる。 ⑦過半数代表者の選任 36協定では労働組合がない場合、労働者の過半数を代表する者との協定が必要になるが、その選任について使用者の指名によるものではないこと等が求められる。 ⑧その他 勤務時間インターバル制度の導入や、産業医・産業保健機能の強化、取引先に対する著しい短納期発注や発注内容の頻繁な変更を行わないよう配慮すること等が定められた。 3. 実際の労働状況 これらの法改正は建設業の職場環境にどのような変化をもたらしたのでしょうか。働き方改革関連法案はさまざまな論点を含みますが、本稿では建設業において大きな問題点の一つである年間休日の少なさに注目していきます。 建設産業専門団体連合会による調査結果を下記に示します。この調査は2021年10月~11月にかけて、同連合の正会員(34団体)を対象に実施されたものです。 調査によると、就業規則で「4週6休程度」と定める企業が36%程度と最も多いことは過去3年と比較しても変わらないようです。週休6休~8休以上とする企業は2018年と比較して増加していますが、2020年とはほとんど差が見られません。 図1 就業規則等による休日設定 (出典:令和3年度 働き方改革における週休二日制、 専門工事業の適正な評価に関する調査結果) また、実際に取得できている休日は「4週8日以上」は約10%と、就業規則で「4週8日以上」と定めている企業の割合を大きく下回っています。 図2 実際に取得できている休日 (出典:令和3年度 働き方改革における週休二日制、 専門工事業の適正な評価に関する調査結果) 同連合に加入していない事業者もいて、また、休日の規定もさまざまであるため、同調査結果だけで全ての実態がわかるわけでありませんが、労働環境が著しく改善されているとはいいがたい状態です。 4. 働き方改革の支援策 これらの現状をみると、働き方改革にコミットできていない企業も少なくないようです。これから取り組もうという事業者も多いかと思いますので、働き方改革の支援策として働き方改革補助金9種をご紹介します。 働き方改革補助金 以下の取組みを行った中小企業事業主について、取組みに使った費用の一部を成果目標の達成状況に応じて支給されます。 労務管理担当者に対する研修 労働者に対する研修、周知・啓発 外部専門家(社会保険労務士、中小企業診断士など) によるコンサルティング 就業規則・労使協定等の作成・変更 人材確保に向けた取組 労務管理用ソフトウェアの導入・更新 労務管理用機器の導入・更新 デジタル式運行記録計(デジタコ)の導入・更新 労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新 (小売業のPOS装置、自動車修理業の自動車リフト、運送業の洗車機など) 詳細は厚生労働省HPでご確認ください。働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース) このほかにも各自治体で実施している補助金や助成金事業等もあります。ただ、助成金事業については予算が有限なため、申込み期限前に受付停止となることもあります。スピード感のある対応が必要でしょう。
- [インボイス制度の認知度、キーワード及び焦点並びに建設業におけるインボイス制度の諸問題及び今後のアクションプラン](https://shiodome.co.jp/column/19509/) - 1. はじめに 企業の消費税の納付額に多大な影響をもたらすインボイス制度が2023年10月より開始しました。しかし、インボイス制度に関する調査では、特に中小企業を中心にインボイス制度への認知度が高くないことが指摘されています。アンケート対象者には経理・財務担当者も多く、今後各社において急速な制度理解が求められるでしょう。 今回は、インボイス制度の基礎を振り返り、何から始めれば良いかなどのアクションプランまでをまとめます。 2. インボイス制度の認知度 インボイス制度の認知度について確認するにあたり、WEBで結果を公開している(株)TKC、フリー(株)、(株)ラクス、(株)マネーフォワード、(株)MS-Japanの行った調査についてみていきます。 以下の図は、5社の調査結果から認知度についての数値を集約したものです。 こちらの調査結果では、「部分的な理解に留まる」、「ほぼ・全く理解していない」の回答が全体の約43%に上ります。 こちらのデータだけで全てがわかるわけではありませんが、インボイス制度に不安を抱える経理・財務担当者は少なくないようです。 3. インボイス制度のキーワード まずは、インボイス制度で重要な4つのキーワードについて確認します。 ①インボイスとは? インボイスとは、改正消費税法に定められた項目を記載した請求書のことで、「適格請求書」が正式名称です。「適格請求書発行事業者」として申請・登録を受けた事業者のみが発行でき、「適格請求書発行事業者番号」の記載が必要になります。 ②適格請求書発行事業者とは? 適格請求書発行事業者とは、適格請求書を発行するために、所轄税務署長に申請し、登録を受けた事業者のことです。適格請求書発行事業者の登録を受けた課税事業者のみがインボイスを発行できます。 ③適格請求書発行事業者番号とは? 適格請求書発行事業者番号とは、登録を受けた事業者に与えられた番号です。法人の場合は「T」+法人番号13桁、個人事業主の場合は「T」+新規の番号13桁になります。インボイスには、適格請求書発行事業者番号の記載が必須です。 ④仕入税額控除とは? 仕入税額控除は、課税事業者が消費税の納税額を算出する方法の1つです。納付すべき消費税額を、売上と同時に受領した消費税額から仕入の際に支払った消費税額を差し引いて求めます。 仕入税額控除の適用については、現在ではインボイスを受領した仕入に係る消費税額のみ仕入税額控除の対象となります。つまり、インボイスを受領できない仕入の際に支払った消費税額には適用できません。 4. インボイス制度の焦点 昨今、社会的にインボイス制度が話題になっているのは、「インボイスが無い仕入分の仕入税額控除が出来ない」ためです。 前項の②の通り、インボイスを発行できるのは「登録を受けた課税事業者」のみです。そのため、免税事業者はインボイスを発行することが出来ず、免税事業者からの仕入を行った場合には、当該仕入において支払った消費税分の仕入税額控除が出来ず、納付する消費税額が増加します。 ①課税事業者への影響 インボイス制度により、課税事業者は免税事業者との取引で仕入税額控除を出来ません。そのため、免税事業者からの仕入が多い事業者ほど消費税の納付額が増加します。 特に免税事業者との継続的な取引関係がある場合、このまま取引を継続するのか、インボイスを発行できる事業者に絞って取引先を再検討するか、の判断が必要です。 この判断においては、関係性の構築、コミュニケーションのコストならびに仕入れる商品やサービスの希少性や価格なども考慮する必要があります。 ②免税事業者への影響 免税事業者においては、課税事業者へ転換するかどうかの判断が必要です。すでに関係のある課税事業者はもちろん、継続的に発生している新規の取引先とのコンペでも不利になる可能性があります。 また、課税事業者に転換する場合、①の場合と同様に自社の仕入先についても判断が必要になります。 5. 諸問題 インボイス制度と建設業 ここからはインボイスに関係する建設業の問題をまとめます。 ①一人親方問題 建設業では小規模事業者の割合が多く、その中でも2019年に国土交通省が行った調査では、一人親方が小規模事業者の45%近くを占めるとされています。 この一人親方のかなりの割合が免税事業者とされるため、取引のある課税事業者はその件数や現在の仕入税額控除における割合などを確認する必要があるでしょう。 ②偽装一人親方問題 建設業界の一部企業においては、雇用しているのと同等の関係にありながら業務委託契約としている、いわゆる「偽装一人親方」が問題視されてきました。 偽装一人親方の目的の多くは会社側による社会保険料等である法定福利費の負担逃れです。しかし、インボイス制度によって偽装一人親方へ支払う消費税の控除が不可能となります。そのため、会社側のメリットが大きく減少し、現状の是正につながる期待が持てます。 ③価格転嫁問題 価格転嫁とは、コストを適切に販売価格に反映することを指します。飲食店で各種食品の値段が上がったために販売価格を上げる、などが例として該当します。 この点、免税事業者に対する消費税分の値下げ要求の横行が懸念されます。これは下請法、独占禁止法に違反しかねない行為であり、これに関連したトラブルの増加が予想されます。 建設業では価格転嫁率が非常に低く、帝国データバンクが2022年6月に公表した調査では、41.3%に留まるとのことです。価格転嫁が困難つまり市場価格に転嫁できないであれば、下請け業者に仕入額の減額を迫ることにつながる可能性があります。そのため、免税事業者であるということを背景にさらなる値下げを要求される等のトラブルへの警戒が必要でしょう。 ④電子帳簿保存法に関わる問題 電子帳簿保存法でも改正が行われ、相手方から電子で受領した請求書は電子で保存することが義務となります。 これに伴い、取引先の取り組みの状況によっては、請求書を電子で発行するよう要請される場合があります。しかし、建設業ではバックオフィス周辺のIT化が進んでいない場合が多いとされています。そのため、インボイス制度に加えて電子帳簿保存法への対応にも苦慮する企業が多いと想定できます。 6. アクションプラン (1) 既に課税事業者の場合 ①適格請求書発行事業者の登録申請
- [建設業における工事契約及び代理人取引の収益認識基準がもたらした影響とは](https://shiodome.co.jp/column/19800/) - 1. はじめに 早期適用会社を除く会社では、2021年4月より2つの会計基準が適用されています。それは、企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」(以下、収益認識基準)および企業会計基準適用指針第30号「収益認識に関する会計基準の適用指針」(以下、収益認識適用指針)です。 手掛けている事業により影響を受ける度合は異なりますが、建設業界においても多くの会社が新たに制定された会計基準への対応を求められました。そこで、建設業界では実際にどれほどの影響を受けたのか、大手及び準大手ゼネコン(総合建設業者)が開示している情報を例に説明していきます。 2. 建設業における収益認識基準の重要な論点 各社から開示された情報を確認する前に、収益認識基準の適用によって発生する論点について説明します。この論点はA.~E.の5つあります。 A. 収益計上の方法及び時期B. 保証サービスへの収益認識C. 代理人取引に係る収益認識D. 変動対価E. 重要な金融要素 建設業は収益・費用を認識する際に、年度を跨ぐことが多いという特徴があります。そのため、収益認識基準を考える場合に切り離すことができない特徴となっています。 5つの論点の例を確認しながら、企業にはどのような影響があったのか説明していきます。なお、スーパーゼネコン、中堅ゼネコン、住宅メーカー、海洋土木系、道路舗装系、設備工事系の30社が開示している情報を比較しています。そのため、全ての建設会社を網羅し比較しているわけではない点にご留意ください。 3. 開示状況について 実際の開示状況について、上記5つの論点に沿って、順番に説明をしていきます。 A. 収益計上の方法及び時期 収益計上の方法及び時期として、建設業界においては3つポイントがあります。 工事進行基準の適用 原価回収基準の容認 代替的な取扱い この論点は、工事の収益をどのように計上するかについて定めています。 ①の工事進行基準の適用は、諸条件を満たし「一定の期間にわたり充足される履行義務」に該当すると認められる場合、当該期間にわたり収益を認識する、という工事進行基準に沿った方法で収益を認識するというものです。 ②原価回収基準の容認は、工事進捗度を合理的に見積もることができない場合、発生費用を回収することが見込まれるに際は、発生原価を期間費用として処理するとともに、当該原価の回収可能部分に対応する収益を収益計上するというものです。 ③代替的な取扱いは、以下の2点が主な内容となります。 初期段階にて進捗度を見積もることができない場合は、進捗度を合理的に見積もることができる時から収益認識する 履行義務充足までの期間がごく短い場合には一時点において収益を認識することが認められている 自社の業務や工事の実態に合わせて①~③の適用が必要となりました。 基本的に有価証券報告書の「会計方針の変更等」の開示を行っている建設業の全ての上場会社では上記の開示が行われています。 有価証券報告書の一部を引用し、事例として紹介します。 「(1)工事契約に係る収益認識 設備工事業における工事契約に関して、従来は、進捗部分について成果の確実性が認められる工事については工事進行基準を、その他の工事については工事完成基準を適用していたが、すべての工事について履行義務を充足するにつれて、一定の期間にわたり収益を認識する方法に変更している。履行義務の充足に係る進捗度の見積りの方法は、発生したコストに基づいたインプット法により行っている。進捗度を合理的に見積ることができないが、発生する費用を回収することが見込まれる場合は、原価回収基準にて収益を認識している。ただし、契約における取引開始日から完全に履行義務を充足すると見込まれる時点までの期間がごく短い工事契約については、一定の期間にわたり収益を認識せず、引渡時点において履行義務が充足されると判断し、当該時点で収益を認識している。」 引用 株式会社関電工 有価証券報告書-第108期(2021/04/01-2022/03/31) B. 保証サービスへの収益認識 工事契約では、工事が完了した竣工後の保証について定められる場合があります。 収益認識基準ではこの保証を2つに分類しています。完成物に不備があった場合無償で補修工事を行う保証(品質保証)と点検等のアフターサービスを含む保証(保証サービス)です。 このうち、工事契約において保証サービスに該当する保証が含まれる場合には、工事の完成と保証サービスの提供とを各個の履行義務として認識します。契約上の取引価格を工事の完成と保証サービスにそれぞれ配分し、同じように収益認識もそれぞれ行います。 保証の収益認識について、「会計方針の変更等」で具体的に記載している会社は比較した30社の中に存在しませんでした。その中で、住友林業は2020年3月期の早期適用時に開示を行った例があります。 これは該当する取引が無い場合や、総合的に見て重要度が低いため記載を省略している場合も考えられます。いずれにせよ、収益認識基準が与える影響はそれほど大きくなかった論点といえます。 C. 代理人取引にかかる収益認識 建設業では、建設会社が発注者から指定された協力業者を手配する取引以外にも、建築資材や機器等を販売する取引がなされる場合があります。建設会社が財やサービスを提供する当事者か代理人かを判断し、該当する立場によって異なる収益認識を行います。具体的には、当事者である場合は対価の総額で収益を認識し、代理人である場合は純額でそれぞれ収益を認識します。総額の場合は収益と費用の差額から利益を認識しますが、純額の場合は収益と費用を相殺し利益(損失)のみを認識します。 この種の取引について処理の方法を総額処理から純額処理に変更した会社は多く、この点多数の会社が開示を行っています。ここで、総額処理から純額処理に変更した場合、記載方法が変更されます。そのため、売上高には影響が出ますが、利益には影響がありません。開示を行った企業は多いかもしれませんが、損益計算書全体に与える影響は小さいとみられます。 また、代理人取引にかかる収益認識についても有価証券報告書の一部を引用し、紹介します。 「(2)代理人取引に係る収益認識 国内建築セグメントのうち商事事業に係る収益については、従来は、顧客から受け取る対価の総額を収益として認識していたが、顧客への商品の提供における当社グループの役割が代理人に該当する場合は、顧客から受け取る額から商品の仕入先に支払う額を控除した純額で収益を認識する方法に変更している。」 引用 株式会社大林組 有価証券報告書-第118期(2021/04/01-2022/03/31) D. 変動対価 工事の完成時期や性能評価の結果によって対価が変化する場合など、対価の額が確定していない状態で工事を進めるケースもあります。収益認識基準では、このような変動する可能性のある対価を「変動対価」として見積に関する取り扱いを定めています。 収益認識基準において、変動対価に該当する際の見積りは、「最も発生可能性の高い最頻値」又は「発生する額の確率を加重平均した期待値」のいずれか適切な方法による、としています。また、変動対価の不確実性が解消される際に、各報告期間末日に見積りを見直すことで収益の著しい減額が発生しないよう、変動対価の見積りに対して保守的に制限を加えています。
- [建設業における倒産状況とその背景にある諸問題とは](https://shiodome.co.jp/column/19811/) - 1. はじめに 帝国データバンクは建設業動向調査を行い、2021年の倒産件数は過去最少水準であったことを発表しています。 新型コロナウィルスが大きな影響を与えている中で、倒産件数が少ないというのは意外にも感じられるかもしれません。しかし、倒産件数が減少傾向を示しているとしても、必ずしも建設業界の見通しが明るいわけではありません。 建設業の倒産をテーマに、建設業の現状と課題を解説します。 2. 全産業の統計(2021年度) 建設業の数値を見る前に全産業の状況を紹介していきます。 東京商工リサーチが公表したデータでは、2021年度の全国企業倒産件数は6,030件となっています。2年連続で前年度を下回り、高度経済成長期以後では最低水準でした。また、倒産した企業が抱えている負債総額は7,053億5,600万円で、4年連続で前年を下回っています。最も規模の大きい倒産は(株)東京商事で、負債総額1,004億8,300万円として特別清算開始の決定を受けました。次いで電力小売の(株)F-Powerや蓄電池販売を行っているD-LIGHT(株)など、エネルギー関係の企業が倒産しています。 また、倒産している企業の中で新型コロナウィルスに関連している倒産は1,718件であったと公表されています。 3. 建設業の統計(2021年度) 帝国データバンクは、2021 年に倒産した建設業者の集計・分析を行い、その結果を公表しています。そのデータでは2021年に倒産した建設業の件数は1,066件で、前年と比べ15.8%減少しました。2000年以降では2009年と2019年以外は前年度を下回り、減少傾向が続いています。その中で、建設業者の中で倒産している業種の割合は建築工事関係の業種が上位を占めています。コロナ禍によって、新設住宅着工件数の減少や、建築資材の高騰などが影響を受けているとみられています。2021年においてこの業種が厳しい状況であった点は2020年と同様です。 負債総額も3年連続で小規模化し、金額は1,066億8600万円となっています。負債規模の大きさでいうと、富山県にある相沢建設(株)の34億3,300万円や大分県にある(株)九設の30億6,400万円といった企業もあります。しかし、全体の約6割は負債額5,000万円未満となっています。 帝国データバンクと集計方法が若干異なりますが、東京商工リサーチのデータでは、2021年度の建設業における新型コロナウィルス関連倒産は198件となっています。2020年の68件と合わせて倒産件数は累計266件で推移しています。 4. 建設業界における新型コロナウィルス関連倒産の傾向 産業界全体、建設業界どちらも倒産件数が減少しているのと同じく、倒産した企業の負債規模も縮小しています。 しかし、新型コロナウィルス関連倒産に関しては、他の業界と比較した場合、建設業界は厳しい状況といえます。建設業では、2021年度に新型コロナウィルス関連倒産をした件数は198件と、前年度の68件と比べ約3倍の数字となっています。一方で全産業では、1,718件と、前年度の843件に比べ約2倍のため、建設業の倒産の増加スピードの速さが浮き彫りになっています。結果として、2020年4月に初めて発生した建設業の新型コロナウィルス関連倒産ですが、2022年3月初旬には累計318件まで増えています。倒産した建設業での業種別件数の内訳は以下のようになっています。 (出典:東京商工リサーチHP) 新設住宅着工件数の減少以外に、「ウッドショック」や「アイアンショック」のように価格高騰が重なったことが背景にあります。また、在宅建築を中心に取り扱う建築、リフォーム、内装業者は小規模事業者が多いため、元々の財務基盤が弱いという特徴があります。価格高騰や財務基盤などの理由が重なったことが、建設業のコロナ倒産が増加した大きな要因といえます。日本政策金融公庫が公表している業種別の融資残高の推移をみると、融資残高の増加率はサービス業に続き建設業は2番目です。 (単位:億円、%) (注) 融資残高には、社債を含みます。総貸付残高から設備貸与機関貸付及び投資育成会社貸付を除いたものの内訳です。 ( )内は構成比です。 (出典:日本政策金融公庫HP) 新型コロナウィルス禍の支援策として多額の融資が実行されてきました。そのため、返済が開始されると、減収傾向が続いている状況下では過剰債務に陥り、企業は徐々に倒産の危機に晒されることが考えられます。建材価格の高騰の影響から、今後も減収が続くといわれています。本来は、上昇した仕入価格は販売価格に反映されることが自然です。しかし現状は、建材会社と施主との間で建設会社にしわ寄せが集中しています。このように、販売価格に反映されにくい背景について、詳しく説明をします。 5. 価格の反映について 帝国データバンクでは、仕入単価が上昇した企業の割合を調査しています。2021年12月時点の統計では産業全体で64.2%と、リーマンショックがあった2008年(65.5%)以来の高水準となっています。建設業に限定すると仕入単価が上昇したと回答した企業の割合は72.7%で、51業種中14番目の結果となっています。 建設業は他業種と比較しても高い割合で仕入単価が上昇しているという結果となっています。しかし、建設業で仕入単価の上昇分を販売単価に反映した企業の割合は31.1%と、適切に価格転嫁が行われているとはいえません。また木材の主要輸入相手国の一つにロシアが含まれていることも懸念の材料となっています。ウクライナ情勢不安が続く中、さらなる「ウッドショック」による価格の高騰は、当面の間継続するでしょう。 仕入単価が上昇した割合 ~51業種別、上位25業種~ 注:販売単価が上昇した企業は、仕入単価が上昇した企業のうち、前年同月と比べて販売単価が「やや上昇」「非常に上昇」した企業の合計出所:TOB景気動向調査(2021年12月) 6. 建設業の人手不足 建設業では人手の確保ができず倒産に追い込まれるケースも増加し続けています。 労働基準法の改正や36協定の締結など、どの業種でも労働環境の改善が進んできています。建設業でも、法整備だけでなく建設キャリアアップシステムなどのような新たな制度を取り入れて、労働環境や処遇の改善に取り組んでいます。しかし、その効果が出ているとは言い難く、就業者の数は減少しています。 (出典:日建連ハンドブック2021) また、人手不足を補うため外国人労働者の雇用が年々増加していましたが、コロナ禍により外国人の雇用が困難な状況となりました。新型コロナウィルス感染症が収束していけば外国人雇用も再び増加すると考えられますが、変異株の流行が続く中、それがいつになるのか不透明な状況です。 (参考:厚生労働省 外国人雇用状況の届出状況についてhttps://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/gaikokujin/gaikokujin-koyou/06.html) 7. おわりに 建設業の倒産状況とその背景にある諸問題について説明をしました。倒産件数は最低水準であることから、政府の支援策は一定の効果があったといえるでしょう。しかし、以前から懸念されていたが目立った改善がみられない人手不足等の問題に加え、コロナ禍という突発的な事情が重なり、政府の支援策を受けぎりぎりで耐えていた企業の倒産が徐々に増加するとみられています。融資のように一時的な状況の緩和ではなく、並行して原因の改善を実行されることが急務といえる状況です。
- [「建築物省エネ法」における日本の省エネ住宅の現状](https://shiodome.co.jp/column/19852/) - 1. はじめに 日本の建築物に関わる法律の一つに「建築物省エネ法」があります。この法律では、一定規模以上の非住宅建築物に対して、省エネ基準の適合義務や省エネ性能向上計画の認定制度などを定めています。 この建築物省エネ法について、国土交通省より2022年6月17日に改正案が公表されました。今後は、全ての新築一般住宅や非住宅も、省エネ基準に適合する義務付けをする対象になります。 また、令和4年度の税制改正で行われている住宅ローンの減税の見直しにも、新型コロナウィルスで落ち込んだ経済回復を目指す以外に環境性能などの優れた住宅が普及を推進させる意図があります。 「省エネ」というキーワードは、建設業界の今後を考える際に避けて通ることができないテーマです。そして、今後の住宅市場に大きな影響を与えるでしょう。今回は建築物省エネ法の内容と改正の背景に加えて、関係する税制や補助金を説明します。 2. 建築物省エネ法の概要と改正 「建築物のエネルギー消費性能の向上に係る法律(通称:建築物省エネ法)」は、平成27年に施行された法律で、建築物の省エネ基準を策定しています。影響の大きい大型建築物に省エネ基準の適合を義務化することで、建築物のエネルギー消費性能を向上させることを目的としています。 現在の建築物省エネ法では、省エネ基準適合義務対象外の住宅も2025年までに省エネ基準へ適合を義務化する方針が示されました。新しい方針について理解を深められるよう、まずは現行の建築物省エネ法を確認していきます。 現行の省エネ法は2021年4月に施行されました。改正内容を簡潔にまとめると以下の3点になります。 非住宅建築の内、300㎡以上2,000㎡未満の建築物の適合義務化 説明義務の創設と300㎡未満の非住宅建築物への説明義務の義務化 300㎡未満の小規模住宅への説明義務の義務化 この改正のポイントは、300㎡以上の建築物が適合義務とされたことです。改正前の適合義務は2,000㎡以上の大規模な非住宅建築だけでした。この改正より、法律の影響を受けるようになった事業者も少なくないでしょう。また、小規模建築では、設計者から建築主に対して省エネ性能の「説明義務」が新たに課されています。この改正を図示すると以下の通りです。 「脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会」は、脱炭素社会の実現に向けたロードマップを公表しています。その中においても省エネ適合基準義務化に言及されています。 このロードマップに則って改正がなされた場合、規模や住宅・非住宅を問わず全ての建築物が「適合義務」となり、省エネ基準への適合が必要になります。 全建築物の義務化は、ロードマップ上は2025年とされている他、適合すべき省エネ基準の内容も厳しくなることが予定されています。 また、遅くても2030年にはZEH(強化外皮基準&BEI=0.8)の基準に引き上げられる予定です。そのため、中小工務店等では省エネ基準に対応できる技術の習熟度をどのように底上げするかが課題となるでしょう。 3. 建築物省エネ法が改正された背景 建築物省エネ法の改正案や「脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会」の動きがある背景として、全世界的で環境保全活動の加速があります。 2015年12月に、COP21(気候変動枠組条約 第21回締約国会議)でパリ協定を採択しています。この目的は、全参加国が2020年以降の温室効果ガス排出削減等のための新たな枠組みとすることです。日本の「温室効果ガス削減目標」は、パリ協定を踏まえた上での目標で、中期目標として温室効果ガスを2030年度までに削減するとしています。 (出典:https://www.mlit.go.jp/common/001275971.pdf) 上記の円グラフは中期目標を具体的に示したものになります。建築工事を伴う分野における最終エネルギー消費の削減量は全体の14.4%を占めています。また、ここ数年でSDGs(持続可能な開発目標)の認知が日本でも高まったことで、「省エネ」が一層重要な問題となっています。 そのため、建築業界でも大手を中心に省エネ技術の開発が進められています。国としても、目標達成のために制度面から後押しをしていく中で、建築物省エネ法の段階的改正が進められています。 4. 日本の省エネ住宅について 省エネ住宅建設へ機運は高まっていますが、日本の住宅性能の現状はどうなっているのか見てみましょう。 国土交通省が行った調査では、平成28年度時点で、省エネ基準適合率は建築物全体では92%となっています。それに対して、住宅に関しては全体で52%と半数ほどの数値にとどまっています。 (出典:https://www.mlit.go.jp/common/001271345.pdf) 古いデータになりますが、非住宅建築物は住宅に比べ省エネ基準への適合率が高くなっています。 この要因は、日本は2021年3月まで、省エネ基準の適合義務は大規模建築物に限られていたためです。一方、欧米主要国の多くの国では全ての住宅を含めた建築物で省エネ基準の適合義務が定められています。 従来の省エネ基準において、非住宅建築物の場合でも2,000㎡未満の建築物は規制レベルとは「適合義務」の一段下である「届出義務」となっています。住宅と比較すると、省エネ適合率が高くなっています。 この点、施工を手掛ける事業者の習熟度が関係しているといわれています。住宅の施工の場合、大規模な事業者だけではなく少人数の工務店が施工を行なうケースも多いためです。企業規模が小さいほど研修などの機会は少なくなり、省エネ技術に関する習熟度が低いという実態がわかっています。そのため、省エネ基準についても小規模事業者の習熟度との相関があるとみられています。 以上のことから、省エネ適合住宅の普及を進めるには、施工者の教育や研修の制度を充実することが国に求められています。 (出典:https://www.mlit.go.jp/common/001271345.pdf) 5. 省エネ住宅支援制度 住宅についても省エネ基準への適合義務化となった場合、住宅購入者の経済的な負担が大きくなります。その経済負担を軽減するための省エネ住宅支援制度について5点紹介します。 ・所得税 まずは所得税にかかる減税について説明します。令和4年度の税制改正大綱でも注目されていたいわゆる住宅ローン減税が改正されています。この改正によって控除率は1%から0.7%に変更されています。一方で、借入限度額については環境性能に優れていない一般住宅の場合、4,000万円から上限が3,000万円に引き下げられています。ただし、省エネ基準等を満たしている場合は、性能に応じて4,000~5,000万円まで借入が可能になっています。下図に詳しくまとめています。 (出典:https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001447132.pdf) ・固定資産税 省エネ性能、耐震性、バリアフリー性および維持管理の容易さなどの要件を満たすと長期優良住宅として認定されます。この認定により、新築戸建ての場合は5年間、固定資産税が2分の1となります(一般新築住宅の場合であっても3年間の減額措置はあります)。 ・登録免許税 登録免許税の軽減措置は令和4年3月31日までの時限措置でした。しかし、令和4年度の税制改正により、その期限が令和6年3月31日まで延長されています。なお、登録免許税の軽減措置の詳しい内容は以下の図にまとめています。 住宅(新築)に関する登録免許税 ・不動産取得税 長期優良住宅の場合、課税標準からの最大控除額が一般住宅の1,200万円から1,300万円に増額されます。この軽減措置についても令和6年3月31日までに延長されています。 ・贈与税 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合、贈与税の非課税措置等があります。この点、一般住宅の非課税限度額は500万円です。一方、省エネルギー性、耐震性、バリアフリー性のいずれかを満たしている住宅の非課税限度額は1,000万円となります。結果として最大で500万円の差になります。 6. おわりに 省エネ基準の適合義務が住宅に適用されると、各種統計資料がより多く公表されるほか、税制優遇も手厚くなるなどが予想されます。
- [建設分野で注目される省エネ対策、物流インフラの整備、老朽化インフラ対策とは](https://shiodome.co.jp/column/19870/) - 1. はじめに 今回は概算要求に含まれている内容の中で、特に今後注目される点について、建設業界の動向などを踏まえ説明していきます。 2. グリーン社会の実現に向けた省エネ対策の強化 2020年10月に菅政権は「2050年カーボンニュートラル」を宣言しています。それに伴い「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を掲げました。その中では、電力部門の脱炭素化を大前提とした上で、他の産業でもビジネスモデルを根本的に転換し成長の機会とすることを目的とした枠組みを制定しています。財務省から示された「予算編成の基本的な考え方」においても「グリーン社会の実現」は重点となる項目です。 国土交通省の予算の面からも省エネ対策に関係する要求予算は増額しています。「2050年カーボンニュートラル等グリーン社会の実現に向けた施策の展開」の項目の中で、最も予算額の大きい施策に「ZEH・ZEBの普及や木材活用、ストックの省エネ化など住宅・建築物の省エネ対策等の強化」があります。ZEHはネット・ゼロ・エネルギー・ハウス、ZEBとはネット・ゼロ・エネルギー・ビルディングの略称です。 環境省ではZEH・ZEBを「快適な室内環境を実現しながら、建物で消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指した建物のこと」と位置付けています。使用するエネルギーを削減するだけでなくエネルギーを新しく生み出すことで、建物のエネルギー収支が0になることを目標としています。以下で図解しています。 (引用:環境省HP https://www.env.go.jp/earth/zeb/about/index.html) 省エネ基準に関する改正も行われています。この分野では需要拡大が見込まれますが、同時に、省エネにかかる高断熱技術など住宅メーカーの技術向上も求められます。 3. 物流ネットワークの強化 国土交通省では迅速・円滑で競争力の高い物流ネットワークの実現を目指しています。その実現のために、大都市圏環状道路等の整備やピンポイント渋滞対策等を併せて推進しています。 背景には供給連鎖がグローバル化している点が挙げられます。具体的には、円高や人件費高等の影響で企業の海外進出が進んでいます。そして、国内生産される製品も、海外から部品調達を行い国内で生産後に製品を輸出するケースが増加しています。また、急速に勢いが伸びている供給連鎖のグローバル化に対応し、海外に進出する日本の物流企業も増加しています。 その流れを受けて、物流において重要な道路ネットワークの再設定が重要な課題であるとして、国土交通省は以下の図のようなイメージを公表しています。重要な拠点間を大型車両もスムーズに移動できるよう端末のアクセスルートの整備が進められ、主要な湾岸などの拠点への移動をスムーズに行なえるよう、走行距離の短縮につながる橋梁補強などの整備が実施される予定です。 (引用:国土交通省HP https://www.mlit.go.jp/common/000987229.pdf) また、物流業界でも建設業界と同様に人材不足が切迫した問題です。2台分の荷物を運べるダブル連結トラックを使用するなど、人員を減らす取り組みも進められています。また、45フィートコンテナを積んだ車両の走行支障解消に向けた取り組みも検討されています。大型車両は橋梁に負荷がかかるため、道路の整備だけでなく、インフラ老朽化の対策も合わせて行うことが必要となるでしょう。 4. インフラ老朽化対策 国民の安全・安心を支えるインフラは、その多くが高度経済成長期以降の一定期間に整備されました。インフラの耐用年数の一つの目安は50年とされています。この点、建設後50年以上経過する施設が加速度的に増加していくことが予想できます。 (引用:令和3年版 国土交通白書 第2節 災害リスクの増大や老朽化インフラの増加) 2018年より前では、施設の機能や性能に不具合が生じてから修繕等の対策を講じる事後保全が基本でした。しかし2018年に、不具合が発生する前に対策を行なう予防保全の方が効率的であると発表されています。そこで、予防保全を基本として国土交通省所管分野における維持管理・更新費の推計結果が公表されました。 (引用:国土交通省HP https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/maintenance/_pdf/research01_02_pdf02.pdf) この推計では2044年まで予防保全費は増加していきます。発表時の2018年との比較で最大で1.4倍の7.1兆円まで増加した後、緩やかに減少へ転じると推定されています。新技術やデータを積極的に活用するなどして、実効性、持続性のあるインフラメンテナンスの実現が目指されています。 インフラ老朽化対策については、この先約25年間は手堅い増加が見込まれています。そのため、建設業界のこれからを最低限サポートする領域と言えるでしょう。 5. 今後の動向 以上のことから建設業では、カーボンニュートラルや物流ネットワークといった時代の先端テーマの対応と、各種インフラ老朽化への対応が両輪となっていくことが考えられます。特に、インフラ老朽化は物流ネットワークの構築にも関わります。これまでは統計数値でしかなかったインフラの修繕が、実際の案件として急速に明らかになっていくことが予想されています。 このようにニーズが明らかになっていくと、いくつかの問題点が浮き彫りになります。 従来からの人手不足や働き方改革 IT技術浸透の遅れ ダンピング(公正ではない取引方法)など そのため、業界のある特定の箇所にしわ寄せが偏らないよう取り組みが必要です。国や自治体だけでなく現場の個々人など立場に関係なく、今現在から行なえる取り組みを積み重ねていく必要性が増していくでしょう。 6. おわりに 今回は、建設分野で注目される省エネ対策、物流インフラの整備、老朽化インフラ対策について説明しました。 概算要求の内容を知り今後の建設業界の大きな流れを掴むとともに、予算額を比較することで注力されている度合いも掴むことができます。概算要求は毎年更新されていくため、過年度分と比較しながら目を通していくと参考になるでしょう。
- [建設業界の中小企業と脱炭素:基礎から戦略・資金調達までの全体像](https://shiodome.co.jp/column/54592/) - 1.はじめに 現在、温室効果ガスの削減に向けた取り組みは国際的な規模で進展しています。しかし、「大企業が主導して進めている取り組み」という印象が強く、中小企業にとっては実践が難しいのではないかと考える声も少なくありません。特に建設業界では、作業現場が多岐にわたることから、効果的な対策の実施は容易ではないと感じる人もいます。 中小企業にとって、温室効果ガス削減への対応はコストの観点から負担が大きいと感じられる場合もあります。しかし、その一方で、こうした取り組みには多くのメリットも存在します。本コラムでは、中小企業が進める脱炭素化への具体的な取り組みと、その効果について解説します。 2.「脱炭素」と「カーボンニュートラル」の基礎知識 まずは、「脱炭素」と「カーボンニュートラル」という2つの用語について整理しておきましょう。 「脱炭素」あるいは「脱炭素社会」とは、温室効果ガスの排出を実質的にゼロにした社会を指します。一方、カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量そのものを削減するとともに、排出された分については吸収・除去などの手段を用いて相殺し、排出量を実質的にプラスマイナスゼロにする取り組みを意味します。 なお、環境省もこの2つの用語を明確に区別して定義しているわけではなく、一般的には「脱炭素社会を実現するための具体的な手段として、カーボンニュートラルが推進されている」と理解されています。 3.温室効果ガスの役割と課題:CO₂・GHGの基本整理 次に、脱炭素社会を考えるうえで重要なキーワードである「温室効果ガス」について、基本的な仕組みを確認しておきましょう。 太陽の光によって地表は温められ、その熱は徐々に宇宙空間へ放出されます。しかし、大気中に存在する温室効果ガスはこの熱を一部吸収し、再び地表に放射する性質を持っています。 温室効果ガスが存在しなければ、地球の平均気温は約−19℃になるとも言われており、生物の生存にとって不可欠な要素です。しかし一方で、その濃度が増加することで地球温暖化などの深刻な環境問題を引き起こしているのも現実です。 温室効果ガスには、メタンやフロンガスなど複数の種類がありますが、その中でも最もよく知られているのが二酸化炭素(CO₂)です。実務や報道などの場面では、「温室効果ガス排出量」と「CO₂排出量」という表現が同じ意味合いで使われることも少なくありません。 なお、同様の文脈で「GHG排出量」という表現が使われることもあります。GHGとは “Greenhouse Gas” の略で、温室効果ガス全般を指す言葉です。GHG排出量とCO₂排出量は同義的に扱われるケースも多いものの、正確にはGHG排出量の方が対象とする範囲が広いという違いがあります。 4. 中小企業が脱炭素に取り組むべき3つの理由 中小企業における脱炭素の取り組みは、大企業と比べるとまだ十分に進展していないのが現状です。しかしながら、中小企業においても脱炭素に取り組むべき理由や動機は複数存在します。 (1)大企業によるサプライチェーン全体への脱炭素要求の拡大 大企業では脱炭素化の取り組みが着実に進展しており、今後は自社グループ内にとどまらず、サプライチェーン全体に対して温室効果ガス排出量の開示や削減を求める動きが一層広がると考えられます。代表的な事例として、Appleは2030年までにサプライチェーン全体でカーボンニュートラルを実現することを目標に掲げ、取引先企業に対して省エネルギー施策の推進や再生可能エネルギーの導入を強く促しています。 建設業界でも、スーパーゼネコンをはじめとする大企業が脱炭素化を進める動きを見せており、今後は下請け企業に対しても同様の取り組みを求める可能性が高いと考えられます。 (2)環境対応が資金調達を左右する時代へ 企業への融資において、地球温暖化対策への取り組み状況を評価対象とする金融機関が増えつつあります。積極的に脱炭素化を進める企業には、融資条件を優遇するケースも見られ、今後は対策を講じない企業が不利な立場に置かれる可能性もあります。また、時期によっては国の補助制度を活用し、利子の一部が補填されるといった支援を受けられる場合もあります。そのため、温暖化対策への取り組みは、資金調達の面でも企業にとって有利に働く可能性があります。 (3)中小企業の先行的な環境対応がもたらす効果 これまでに述べたとおり、中小企業における環境投資は依然として十分に進展していないのが現状です。したがって、現時点から積極的に取り組むことで、他社との差別化や社会的な注目を集めやすい状況にあります。特に建設業界においては、中小企業による先進的な取り組み事例がまだ多くないため、早期に着手することで得られるメリットは大きいと考えられます。 さらに、こうした取り組みを通じて企業の知名度や認知度が向上すれば、優秀な人材の採用につながるほか、既存社員の定着(リテンション)といった人事面での効果も期待できます。 5.企業の脱炭素投資を支える資金調達の重要性 脱炭素化に向けた取り組みを進めるうえで、企業が最も課題として挙げるのは資金面の確保ではないでしょうか。脱炭素化への対応にあたって、企業にとって最も大きな懸念事項の一つが資金調達です。内閣府が過去に行ったアンケート調査では、地球温暖化対策などのグリーン投資により設備投資額が増加すると回答した企業は47.0%、研究開発費が増加すると回答した企業は52.4%に達しており、多くの企業が投資負担の増大を見込んでいることが明らかになっています。特に建設業では、研究開発費の増加を見込む企業の割合が他業種よりも高いという特徴が見られます。 (出典:「我が国企業の脱炭素化に向けた取組状況 ―アンケート調査の分析結果の概要―」) 増加する投資負担を自社の内部資金だけでまかなうことは容易ではなく、多くの企業では新たな資金調達手段の確保が必要になると考えられます。一般社団法人全国銀行協会が提供する 「HYPERLINK "https://www.zenginkyo.or.jp/abstract/eco/ecomap/"全国銀行 eco マップ」では、金融機関から受けられる環境問題対策支援を検索できます。また、国からの補助金を利用できる可能性もあります。を活用すれば、各金融機関が実施している環境対策に関連した融資・支援制度を検索することが可能です。さらに、国の補助金制度を利用できる場合もあり、こうした外部支援を組み合わせることで、資金面の課題を緩和できる可能性があります。 6.おわりに 脱炭素化への対応は、社会全体で連携して進めるべき重要な課題です。個人、中小企業、大企業といった主体ごとに取り組める内容は異なるものの、資金調達の仕組みを上手く活用しながら、積極的に行動していく姿勢が求められます。
- [建設業許可の取得動向と6つの許可要件](https://shiodome.co.jp/column/23093/) - 1. はじめに 建設業界は建設投資のピークを迎えた平成4年度から投資が冷え込み、平成22年度に底を打った後、現在まで緩やかに回復してきています。一方で回復とともに、日本の社会情勢等の状況も変化しています。技能者数や日本人口の減少、建設業就業者の高齢化、働き方改革の推進、資材価格の高騰といった課題を抱えるようになりました。建設業就業者について見ると、55歳以上の割合が35.9%、29歳以下が11.7%と高齢化が進み、次世代への事業承継が大きな課題となっています。 このような中、建設業許可件数についても緩やかに回復しています。今回は建設業許可業者の現状と、今後、建設許可を取得するために必要な建設業許可要件について説明します。 2. 建設業許可業者の現状 国土交通省の発表では、令和6年3月末現在の建設業許可業者の件数は479,383業者とされています。前年同月と比べると4,435業者(0.9%)増加しています。しかし、最も建設業許可業者が多かった平成12年3月末時点と比較すると、約20%減少しています。建設業許可業者の内訳は、都道府県別の分布で見てみると東京都が全体の9.2%、次いで大阪府8.6%、神奈川県6.1%となっています。また、一般、特定別許可業者数を比較すると、一般建設業を取得している業者は454,163業者、特定建設業を取得している業者は49,029業者となっています。 業種別に比較した場合、取得している業者が多い3業種は、「とび・土工工事業」の181,234業者(許可業者の37.8%)、「建築工事業」の144,239業者(許可業者の30.1%)、「土木工事業」の131,523業者(許可業者の27.4%)です。一方で許可を取得している業者が少ない3業種は「清掃施設工事業」390業者(許可業者の0.1%)、「さく井工事業」2,261業者(許可業者の0.5%)、「消防施設工事業」15,838業者(許可業者の3.3%)となっています。また、複数業種の許可を受けている事業者の割合は53.9%と、半数以上となっています。 3. 建設業許可について 建設業法によると建設業とは、「元請、下請その他いかなる名義をもってするかを問わず、建設工事の完成を請け負う営業」を指しています。建設業を営む者は建設業の種類ごとに、国土交通大臣又は都道府県知事の許可を受ける必要があります。ただし、建築一式以外の建設工事では1件の請負代金が税込500万円未満の工事において、建築一式工事では1件の請負代金が税込1500万円未満の工事において、そして請負代金の額にかかわらず木造工事かつ延べ面積が150㎡未満の工事では許可を得ずして、建設業を営むことが可能です。 請負代金については、1つの工事を2以上の契約に分割して請け負う場合は、各契約請負代金額の合計額となります。建設業法は日本国内でのみ適用されるため、外国の工事等には適用されません。 複数の都道府県に営業所を設けようとする場合は国土交通大臣許可、1の都道府県のみに営業所がある場合は知事許可がそれぞれ必要です。営業所は必ずしも本店所在地を指すものではなく、見積や入札や契約といった請負契約の締結について実体的な行為を行う事務所をいいます。知事から許可を受けた建設業者は許可を受けた都道府県に限らず、他の都道府県でも工事を行うことが可能です。 一般建設業、特定建設業は、工事の全部または一部を下請けに出す場合の下請負契約金額によって分類されます。つまり、下請負契約金額が4,500万円以上(建築一式工事は7,000万円以上/複数の下請業者に出す場合は、その合計額)の場合は特定建設業に、4,500万円未満(建築一式の場合は7,000万円未満)または工事の全てを自社で施工する場合は一般事業者に分類されます。 4. 建設業許可の要件 建設業許可を取得するには、大きく分けて6つの要件が必要とされています。 経営業務の管理を適正に行うに足りる能力 専任技術者に関する要件 財産的基礎に関する要件 誠実性に関する要件 欠格要件等 社会保険への加入 6つの要件の中で、①②③⑥について簡潔に説明します。 ① 経営業務の管理を適正に行うに足りる能力 これまでは「経営業務の管理責任者」という要件を満たした常勤役員1名で「経営能力」を証明していました。2020年10月1日以降は、常勤役員1名での証明に加えて要件を満たした常勤役員を直接に補佐する複数名で「経営業務の管理を適正に行うに足りる能力」の要件を満たすことができる、と変更されています。常勤役員1名での証明は「常勤役員が建設業に関し5年以上の経営業務の管理責任者としての経験を有すること等」です。 また常勤役員1名に加え常勤役員を直接補佐する複数名の場合の一例としては、常勤役員1名が「建設業に関し、2年以上役員等としての経験を有し、かつ5年以上役員等または役員に次ぐ職制上の地位にある者」に加え「直接に補佐する者については財務管理経験、労務管理経験、運営業務経験について建設業者または建設業を営む者において5年以上の経験を有する者」の要件を満たす必要があります。 ② 専任技術者に関する要件 営業所に配置しなければならない専任技術者については一般建設業許可、特定建設業許可それぞれで要件が異なります。つまり、一般建設業許可、特定建設業許可ともに共通している要件としての「取得する業種について定められた資格取得者」に加え、一般建設業許可では当該業種に関する実務経験が10年以上ある者といった一定の実務経験者についても専任技術者となることが認められています。そして特定建設業許可については、一定の要件を満たした建設工事で2年以上の指導監督的な実務の経験を有する者が定められています。 ここにおいて専任技術者は、営業所に常勤して、専らその職務に従事する者のことを指します。そのため、同一法人内であっても他の営業所の専任技術者を兼任することはできません。 ③ 財産的基礎等に関する要件 【一般建設業許可の財産的基礎】 次のいずれかに該当すること。 自己資本の額が500万円以上あること 500万円以上の資本金調達能力があること 直前5年間東京都知事許可をうけて継続して営業した実績があること 【特定建設業の財産的基礎】 次の全ての要件に該当すること。 欠損金の額が資本金の額の20%を超えないこと 流動比率が75%以上であること 資本金の額が2,000万円以上であること 自己資本の額が4,000万円以上であること ここで自己資本とは、法人では貸借対照表における「純資産の部」の「純資産合計」の額をいいます。 ⑥ 社会保険への加入 健康保険、厚生年金、雇用保険など適切な社会保険の加入が建設業許可の要件となっています。 5. おわりに 建設業許可業者を取り巻く状況は、社会情勢の変化等の影響によってめまぐるしく変化しています。建設業就業者の高齢化や、高齢化による後継者不足などから業界内のM&Aや事業承継が進むため、令和2年10月1日から円滑に事業承継できる仕組みが整備されました。また「経営業務の管理を適正に行うに足りる能力」が設置された理由も、建設業界の人材不足のためであると推察されます。 建設業界を取り巻く環境では、人材不足から、「特定技能」の在留資格を取得した外国人材の雇用も促進されています。このように急ピッチで法整備も行われているなかで、有用な制度などを大いに活用することが重要となるでしょう。
- [2024年建設業法改正の背景とその内容について](https://shiodome.co.jp/column/24306/) - 1. はじめに 令和6年3月8日に、「建設業法及び公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律の一部を改正する法律案」が閣議決定されました。この改正には建設業の担い手を確保するため様々な措置が盛り込まれています。例えば、労働者の処遇改善に向けた資金の確保と下請事業者への適切な分配、資材価格の円滑な転嫁による労務費へのしわ寄せ防止、そして働き方改革や現場の生産性向上を図るといった措置です。 2. 改正の必要性と背景 国土交通省の発表では、建設業就業者は平成9年の685万人をピークに年々減少し、令和5年は483万人となっています。そして、高齢化が進み建設業の就業者に占める55歳以上の割合は36.6%と全産業の31.9%と比較して高く、29歳以下は11.6%と1割程です。高齢化が進む一方で若者のなり手が少ないという悪循環が続いています。 建設業は他産業と比べ賃金が低く、就労時間が長いことが担い手の確保の困難さに繋がっています。国土交通省が発表している、建設業と全産業の賃金と実労働時間の比較は以下のようになっています。 * 出典:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(令和4年)「毎月勤労統計調査」(令和4年) さらに、建設業就業者数と全産業に占める割合は以下の通りです。 平成9年:685万人(10.4%) ⇒ 令和4年:479万人(7.1%)*()内は割合。出典:総務省「労働力調査」を基に国土交通省算出 また、令和3年後半から原材料費の高騰やエネルギーコストの増加等により建築資材の価格高騰が続き、生コンクリート・セメントの全国的な価格の騰勢が続いています。しかし、資材高騰分の適切な転嫁が進まず、労務費を圧迫しています。詳細は国土交通省による下図を参照してください。 建設業の担い手の確保等が急務とされ、①労働者の処遇改善、②労務費へのしわ寄せ防止、③働き方改革・生産性向上への取り組みが求められています。 3. 労働者の処遇改善 改正法では、「建設業者は、その労働者が有する知識、技能その他の能力についての公正な評価に基づく適正な賃金の支払その他の労働者の適切な処遇を確保するための措置を効果的に実施するよう努めなければならない。」と規定しました。改正法は建設業者に対して労働者の処遇確保を努力義務化するとともに、国は当該処遇確保に係る取り組み状況を調査し、公表するよう求めています。 中央建設業審議会による「労務費の基準」の作成・勧告を規定することで、労務費等の確保とその適切な行き渡りを図っています。また、受注者及び注文者双方が著しく低い労務費等で見積書を作成することや変更依頼することを禁止し、併せて受注者が不当に低い請負代金で契約締結することを禁止しました。これに違反して契約した発注者には、国土交通大臣等による勧告と公表が行われます。 4. 資材高騰に伴う労務費へのしわ寄せ防止 2でも説明したように建設資材は高騰しており、その高騰分について受注者を含めたサプライチェーン全体で適切な価格転嫁を図る必要があると、国土交通省は言及しています。今回の改正事項では、資材高騰に伴う請負代金等の「変更方法」を契約書の法定記載事項とし、契約前のルールとして明確化しました。また、受注者には資材高騰の「おそれ情報」を注文者に通知する義務が課されています。そのため、契約後のルールとして、資材高騰等が顕在化した場合、契約前の通知をした受注者が注文者と請負代金等の変更を協議できるとされています。さらに、注文者には誠実に協議に応ずる努力義務が課せられました。結果、資材高騰分の転嫁協議が円滑化し、労務費へのしわ寄せが防止される効果が期待されます。 5. 働き方改革と生産性向上 これまでの働き方改革の取り組みにより、建設業の労働時間は他産業に比べ大きく減少しましたが、依然として労働時間が長い傾向になっています。 出典:国土交通省 長時間労働を抑制するため、受注者の著しく短い工期、いわゆる工期ダンピング対策を強化し、著しく短い工期による契約締結を禁止する改正がされています。 国はICTを活用して現場管理の「指針」を作成し、特定建設業者や公共工事受注者に対して効率的な現場管理を努力義務化しています。また、現場技術者の専任義務については、兼任する現場間移動が容易であること、ICTを活用し遠隔からの現場確認が可能であること、兼任する現場は一定以下であることなどを要件に合理化が図られます。他にもICT活用等を要件として、公共工事における施工体制台帳提出義務の合理化が進められています。 6. おわりに 出生数の低下による労働人口の減少は、建設業に限らず各産業でも労働者不足の問題となっています。特に建設業は、出入国管理及び難民認定法に基づく在留資格「特定技能」において人手不足の分野として制度設計されているなど、人手不足への対応が早急に求められる課題となっています。そのため、国外の労働者にも目を向け人材を確保する必要がある時代になったといえるでしょう。
- [建設業と気候変動:リスク評価と脱炭素への実務対応](https://shiodome.co.jp/column/54583/) - 1.はじめに 気候変動の影響は生活面にとどまらず、経済全体にも波及しており、そのリスクは拡大の一途をたどっています。この課題は、日本国内にとどまらず、国際社会全体で対応していく必要があり、建設業界も例外ではありません。一社単独で対応できる範囲には限界がありますが、大手ゼネコンや住宅メーカーが積極的に地球温暖化対策を進めていることから、その取引先や関連企業を含むサプライチェーン全体にとっても、看過できない重要な課題となりつつあります。 本稿では、気候変動が建設業界に及ぼすリスクと、業界全体で進められている脱炭素化の取り組みについて解説していきます。 2.建設業における気候変動リスクと対応策 地球温暖化の進行は、企業経営において無視できない重要なリスクの一つとされています。ここでは、特に建設業界において想定されるリスクの中から、1人親方や中小企業に焦点を当てて具体的に見ていきます。 最も身近なリスクの一つとして挙げられるのが、熱中症の問題です。近年、猛暑日が増えていることにより、現場作業における熱中症のリスクが高まり、作業効率の低下も懸念されています。さらに、大型台風や集中豪雨の発生によって工事が一時的に中断し、結果として工期の遅れが生じるケースも増えています。こうした気象影響は国内だけでなく、資材の輸入元にも及んでおり、その影響で建築資材の納期が遅れたり、価格が上昇したりする可能性もあります。 取り組みやすい施策の一つとして、まずアイドリングストップの徹底や、重機・車両の燃費を意識した運転が挙げられます。日本建設業連合会などでは、省燃費運転に関する講習も受講可能です。さらに、燃費改善の観点からは、使用している重機の定期的なメンテナンスや点検を実施すること、更新時に低燃費型の機器を選ぶことなども有効な対策といえます。また、現場で排出されるCO₂の約7割が軽油に起因するとされているため、バイオディーゼル燃料への切り替えによっても大きな削減効果が期待できます。加えて、小規模な太陽光発電設備を設置し、再生可能エネルギーを活用する方法も選択肢の一つです。 3.建設業のCO₂排出量の現状と大手企業の脱炭素化動向 温室効果ガスにはCO₂以外の成分も含まれますが、ここでは他の産業分野と建設業全体とのCO₂排出量を比較したデータを取り上げて説明します。 以下の表は、環境省が公表している産業部門におけるエネルギー起源CO₂排出量を業種別にまとめたものです。建設業の排出量は全体の約2%にとどまり、突出して多いわけではありません。しかし近年では、大手ゼネコンや住宅メーカーが、事業活動における電力を100%再生可能エネルギーでまかなうことを目指す国際的な企業連合「RE100」に参加したり、SBT(次項で詳述)に基づく目標設定を進めるケースが増えています。こうした動きは、サプライチェーンを通じて中小企業にも波及しつつあります。 (出典:環境省「産業部門におけるエネルギー起源CO2」) 4. SBTの仕組みと認定企業の現状:サプライチェーン全体への波及 RE100とSBTはいずれも、地球温暖化対策として国際的に進められている取り組みです。RE100は特に大企業を主な対象としているため、ここではSBTの内容に焦点を当てて解説します。 SBT(Science Based Targets)は、CDP、国連グローバル・コンパクト(UNGC)、世界資源研究所(WRI)、そして世界自然保護基金(WWF)の4つの団体によって共同運営されている枠組みです。日本語では「科学的根拠に基づいた目標設定」と訳されるほか、環境省はこれを「パリ協定で求められる水準と整合した、企業が自主的に設定する温室効果ガスの削減目標」と説明しています。つまり、SBTの認定を受けるということは、企業としてその削減目標の達成に正式にコミットすることを意味します。 2024年3月の時点で、SBTの認定を受けた企業は世界全体で4,779社に上っています。そのうち日本企業は904社と、世界的にも高い水準となっています。業種別では、建設業は電気機器業界と並んで認定企業数が多い分野の一つです。さらに、企業規模別で見ると、904社のうち704社が中小企業となっており、中小事業者の参画も広がっています。 企業が自らの温室効果ガス削減目標を対外的に掲げる仕組みはRE100にもありますが、SBTの大きな特徴は、削減の対象が企業単体にとどまらず、サプライチェーン全体の排出量にまで及ぶ点にあります。そのため、SBT認定を受けていない中小企業であっても、大企業との取引関係を通じて、排出量の算定や削減への対応を求められるケースが増えています。こうした状況を踏まえ、早い段階からSBTの必要性を認識した中小企業は、認定の取得に動き始めています。また、SBTでは「スコープ(scope)」ごとに削減目標の内容が異なります。たとえば、scope1に該当する排出については、世界の平均気温上昇を1.5℃以内に抑える水準と整合させる必要があり、温室効果ガスの排出を年間少なくとも4.2%削減することが求められます。 5.おわりに 本稿では、気候変動問題と建設業界を取り巻く現状について解説しました。地球温暖化のようなグローバルな課題への取り組みは、まず大企業から始まるのが一般的ですが、その影響は時間をかけて中小企業にも及び、今後さらに広がっていくと考えられます。小規模な事業者にとって大規模な対応は容易ではないかもしれませんが、自治体によっては補助金や支援制度を設けているケースもあるため、そうした制度を上手に活用することが重要です。 すぐに具体的な施策を実行できない場合でも、業界全体への影響や先進的な企業の取り組み動向に注目し、情報を収集しておくことが今後の対応に役立つでしょう。
- [フリーランス新法がもたらす影響 ~一人親方も対象に~](https://shiodome.co.jp/column/54577/) - 1.はじめに 近年、働き方の選択肢が広がる中で、「フリーランス」という形態も一般的になってきました。こうした背景のもと、2024年11月に「フリーランス新法」と呼ばれる新たな法律が施行されました。この法律は、一人親方を含むフリーランスにも適用されるため、特に建設業界にとっては重要な変化となります。本稿では、その概要と注意すべきポイントについて整理してご紹介します。 2.フリーランスとは フリーランス新法の内容に入る前に、まず「フリーランス」とはどのような働き方を指すのかを確認しておきましょう。法令のリーフレットでは、フリーランスは「業務委託の相手方である事業者で、従業員を使用しないもの」とされています。つまり、自身以外に雇用関係を持たずに業務を受託している個人は、この定義に該当します。このようなフリーランスは、取引の相手方に対して立場が弱くなりがちであるとされています。 ①法律による保護が限定的 労働基準法などの労働関係法令は、基本的に雇用契約に基づく労働者に対して適用されるため、フリーランスには原則として適用されません。そのため、不当な契約条件や報酬の未払いといった問題が生じた場合でも、十分な法的保護を受けにくいという課題があります。 ②交渉面での不利な立場 フリーランスは、企業などの発注者から個人として仕事を受けるケースが一般的です。そのため、契約内容や条件について話し合う際には、相手に対して十分な交渉力を持ちにくく、立場が弱くなりやすいのが実情です。 ③収入の安定性に欠ける フリーランスは、請け負った業務の成果に応じて報酬を得るスタイルであるため、継続的な収入を確保するのが難しいことがあります。さらに、病気やけがで業務ができなくなった場合には収入が途絶えるリスクがあり、加えて社会保険制度による保障の対象外となるケースも少なくありません。 ④信用力の面での課題 フリーランスは収入が安定しにくいと見なされがちなため、住宅ローンやクレジットカードの審査において不利になることがあります。さらに、一部の企業では、契約相手を法人に限定しており、個人事業主とは取引を行わない方針を取っている場合もあります。 3.フリーランス新法とは いわゆる「フリーランス新法」の正式名称は、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」です。この法律は、中小企業庁や厚生労働省によって、フリーランスとの取引における公正性の確保や、働く環境の整備を図る目的で制定されました。特に、前述の①で触れたような法的保護の不十分さに対する対策として、保護措置が強化された点が大きな特徴です。 ①書面等による取引条件の明示 書面又は電磁的方法により以下を明示する必要があります。 「業務の内容」 「報酬の額」 「支払期日」 「発注事業者・フリーランスの名称」 「業務委託をした日」 「給付を受領/役務提供を受ける日」 「給付を受領/役務提供を受ける場所」「(検査を行う場合)検査完了日」 「(現金以外の方法で支払う場合)報酬の支払方法に関する必要事項」 ②期日内の支払 発注した物品等を受け取った日から数えて60日以内のできる限り早い日に報酬支払期日を設定し、期日内に報酬を支払うことが求められています。 ③募集情報の正確な表示が必要 フリーランス向けの業務募集を行う際には、虚偽の内容や誤解を招くような表現を用いることは認められていません。募集情報は、常に正確で最新の内容に保たれていることが求められます。 ④ハラスメント防止の取り組み フリーランスが作業を行う現場において、発注側には、自社の従業員に対するものと同様のハラスメント防止措置を講じる責任があります。たとえば、方針の周知や啓発活動、相談窓口の設置、問題発生時の適切な対応体制などが求められます。 ⑤フリーランスに対する禁止行為 1か月を超える期間で業務委託契約を結んだ場合、発注者には以下の7つの行為が禁止されています。 具体的には、報酬の受け取りを不当に拒むこと、報酬を一方的に減額すること、納品物の不当な返品、著しく安い価格での契約(いわゆる買いたたき)、特定の商品やサービスの購入・利用の強要、不合理な経済的利益の提供要求、そして給付内容の不当な変更・やり直し、が該当します。 ⑥育児・介護と仕事の両立への配慮義務 6か月を超える継続的な業務委託契約を締結している場合には、フリーランスが育児や介護といった家庭の事情と業務を両立できるよう、本人からの申し出があった際には、適切な配慮を行うことが求められます。 ⑦中途解約における制限事項 6か月を超える業務委託契約を途中で解除する場合や、契約の更新を行わないと判断した場合には、原則として少なくとも30日前までにその旨を通知する必要があります。さらに、解除の通知後から契約終了日までの間に、フリーランス側から理由の開示を求められた場合には、その理由を説明しなければなりません。 この法では発注業者側の要件に応じて、課される義務が異なります。 A.発注者自身が従業員を雇っていない場合(いわゆるフリーランス同士の委託に該当) → 対象となるのは項目①のみ B.発注者が従業員を雇用している場合 → 項目①から④までが適用されます C.発注者に従業員がいて、かつ一定期間(6か月以上など)にわたる業務委託を行う場合 → 項目①から⑦すべてが対象となります 4.建設業における留意点 建設業界では、「一人親方」と呼ばれる働き方が一般的に見られます。この業種は、受注状況によって収入に大きな波があり、また天候や景気の変動にも大きく左右されるのが特徴です。そのため、たとえ労働条件や作業環境に課題があっても、やむを得ず仕事を引き受けざるを得ないケースが少なくないのが実情です。 また、「一人親方」は形式上フリーランスに該当するように見える場合でも、実際の働き方は会社員とほとんど変わらないというケースが多く、これが問題視されています。企業側は従業員を雇うと社会保険料の負担が生じますが、それを避けるため、実態としては従業員と同様の業務に従事しているにもかかわらず、フリーランス契約、つまり一人親方として業務を委託するケースが見られます。このような状況を踏まえ、国土交通省は「一人親方」と「会社員」との違いを以下のように整理しています(表を参照)。 表 1人親方と社員の違い 参考文献:国土交通省が公表した右記のページの情報をもとに作成 「一人親方と社員の違いをご存じですか?」 これらの点を踏まえたうえで、その働き方が雇用契約の締結を要するものかどうかを検討することが重要です。雇用契約を結ぶことで、労働保険や社会保険といった法的な保護を受けられる範囲が広がります。仮にフリーランスとしての契約形態が適切と判断された場合でも、今回施行されたフリーランス新法により、一定の保護が与えられる点については、発注側・受注側ともに正しく理解しておく必要があります。なお、フリーランスと雇用のいずれに該当するか判断が難しい場合には、最寄りの労働基準監督署に相談することをお勧めします。 5.おわりに
- [建設業における税務調査の意図と観点-中小企業や個人事業主が留意すべきポイント](https://shiodome.co.jp/column/27466/) - 1. はじめに 建設業界は、会計処理が複雑化しやすく、税務調査の対象となるケースが比較的多い業種の一つです。特に近年はインボイス制度の導入などにより、消費税の申告手続きがさらに煩雑になっており、意図せぬミスが発生しやすい状況にあります。 本コラムでは、こうした背景を踏まえ、建設業に従事する中小企業や個人事業主が留意すべきポイントについて解説いたします。 2. 税務調査における調査対象資料 税務調査は、適正かつ公正な課税を実現することを目的に、悪質な租税回避行為の有無を確認するために実施されるものです。本来、単なる申告ミスを摘発することが目的ではありませんが、たとえ悪意のない誤りであっても、調査の結果として修正申告を求められるケースもあるため、注意が必要です。 ここでは、税務調査の基本的な概要についてご紹介します。 一般的な税務調査は「任意調査」と呼ばれています。通常、税務署から事前に調査通知が送付され、その後に日程調整が行われるため、調査当日までに必要な準備を進めることが可能です。調査当日は、税務調査官からの質問や資料提出の依頼に対応し、後日、調査結果の通知を受けるという流れになります。「任意」という表現ではあるものの、実質的には調査を拒否することはできないと考えておくべきでしょう。 また、調査の対象となる税目については、法人であれば法人税・消費税・源泉所得税・印紙税などが該当し、個人事業主の場合は法人税ではなく所得税が対象となります。 税務調査において確認の対象となる主な証憑類は、以下のとおりです。 申告書関連書類法人税申告書、消費税申告書、決算書、給与支払報告書、源泉徴収簿など 会計帳簿類残高試算表、仕訳帳、総勘定元帳 等 原始証憑書類領収書、請求書、契約書、金融機関の通帳など 電子データ業務に関するメールをはじめとする、PC上の各種データこれらの資料は調査の際に求められることが多く、正確かつ適切に保管・管理しておくことが重要です。 3. 建設業に対する税務調査の状況 国税庁の公表によれば、法人に対する税務調査の実施割合は概ね2〜3%程度とされています。ただし、この数値に含まれる母数には、休眠状態にある法人や、そもそも調査の対象となる可能性が低い法人も含まれている点に留意が必要です。そのため、実質的な調査対象法人に限定して考えると、実際の調査実施率は公表されている割合よりも高くなると推察されます。 建設業界は、特に税務調査の対象となりやすい業種の一つとされています。国税庁が毎年公表している「税務調査における不正発見割合の高い上位10業種」の中には、建設関連の業種が常に上位にランクインしています。 具体的には、「土木工事業」「職別土木建築工事業」「一般土木建築工事業」といった区分が、直近3年間すべてで上位10位以内に含まれており(下表参照)、建設業が不正リスクの高い業種であることが統計上からも明らかになっています。 (出典:国税庁「令和4事務年度 法人税等の調査事績の概要」より) 4. 建設業の調査の観点 税務調査において調査官は、主に「売上を意図的に減少させていないか」「費用を過大に計上していないか」といった視点から、実際の利益が過少に表示されていないかを確認します。 (1 )売上に影響を与える要素 工事進行基準が適用されるケース工事進行基準とは、工事の進捗状況に応じて売上および売上原価を計上する、建設業特有の会計処理方法です。この基準には見積り要素が含まれているため、売上の進捗度を意図的に調整し、翌期に売上を繰り延べるような「期ズレ」処理が行われていないかが、調査のポイントとなります。 工事完成基準が適用されるケース工事完成基準では、工事の引き渡しが完了したタイミングで売上を計上します。そのため、工事代金の請求が期をまたいで翌期となった場合であっても、引き渡しが当期中に完了しているのであれば、売上は当期に計上する必要があります。 (2)費用に影響を与える要素 工事完成基準が適用されるケース工事完成基準では、工事が未完成の場合、その工事に関連する支出は「未成工事支出金」として資産計上されます。しかし、工事が完了していないにもかかわらず、その費用を損金として計上していると、税法上では損金算入が認められない可能性があります。このため、工事の進捗状況や支出の発生時期、関連する証憑の整備状況などを明確に把握し、適切なタイミングで売上・費用を計上していることを説明できるようにしておくことが重要です。 間接工事費の按分間接工事費は、個別の工事に直接結び付かない性質のため、社内で定めた一定のルールに基づき、各工事に按分する必要があります。この按分ルールが不明確であったり、工事ごとに基準が一貫していない場合には、意図的に費用を操作しているのではないかと疑念を持たれる可能性があります。したがって、企業としての明確な方針を定めた上で、すべての間接工事費を適切に按分することが重要です。 現金による支給一人親方などを雇用する際に、職人への賃金を現金で支給するケース もありますが、この場合は特に注意が必要です。後の調査で架空人件費とみなされないよう、可能であれば銀行振込を利用するほか、領収書や支払記録をしっかりと保存しておくことが望まれます。 外注費と給与の区分本来は給与として処理すべき支出を、外注費として計上していないかどうかも、税務調査で確認されるポイントです。給与を外注費として処理することで、社会保険料や消費税の負担を回避しようとする意図が疑われるため、実態に即した正確な区分が求められます。 5. おわりに たとえ意図的な不正がなかった場合や申告業務を税理士に委託していた場合であっても、ある契約内容とその実態が乖離するケースやある規定の解釈について双方の認識に相違が生じていると誤りが発生しやすく、結果として追徴課税を受ける可能性があります。そのため、ミスが起こりやすいポイントについては事業者自身もしっかりと把握し、日頃から正確な経理処理および適正な申告を行うよう意識することが重要です。
- [建設仮勘定の制度的意義と会計・税務実務上の対応](https://shiodome.co.jp/column/27836/) - 1. はじめに 「建設仮勘定」は自社で使用する未完成の有形固定資産に関する勘定科目であり、建設業を営む企業の経理担当者であっても日常的に扱う機会が少なく、馴染みが薄いと感じられる場合もあるでしょう。一方で、建設業者からサービスを受ける発注側の企業でも、この科目が帳簿上に登場するケースはけっして多くないことから、固定資産関連の処理の中でも特にミスが起こりやすい項目の一つといえます。 そこで本記事では、「建設仮勘定」について、会計処理および税務対応の両面から、建設業に関係の深い方々にも理解しやすい形で解説していきます。 2. 建設仮勘定の概要とその分類 建設仮勘定とは、自社での使用を目的とする建設中の建物のほかに建物付属設備や構築物、製造中の機械装置など、自社で使用する未完成の有形固定資産に関する材料費や建設のための支出を一時的に記録するための勘定科目です。たとえば、自社使用の建物などの有形固定資産を取得・建設する際には、完成前に多額の資金が必要となり、そのプロセスには相応の期間を要します。このような場合、もし支出を「前払金」といった科目で処理してしまうと、企業の資金がどのような目的で使われているのか、外部の利害関係者にとっては把握しづらくなってしまいます。一方で、「建設仮勘定」として記録することで、これらの支出が固定資産の取得に向けた投資であることを明確に示すことができます。つまり、財務諸表を通じて、支出の性質や行き先を正確かつタイムリーに示すことができ、会計上の透明性が確保されるのです。 建設仮勘定が用いられる代表的な場面は、次の2つに分けられます。 ① 固定資産の完成前に支払を行ったとき (借方)建設仮勘定 ×××/(貸方)現金預金 ××× ② 固定資産が完成したとき (借方)固定資産(建物など) ×××/(貸方)建設仮勘定 ××× 建設仮勘定の対象となるのは、自社で使用することを目的とするまだ完成していない固定資産であり、その範囲は建物や付属設備、構築物、機械装置のほか、船舶・水上運搬具、車両などの陸上運搬具、工具、器具・備品、さらには土地など、多岐にわたる有形固定資産に関係する支出が該当します。 そのため、販売を目的とした資産については建設仮勘定の対象には含まれません。顧客からの注文に基づいて建設し、完成後に引き渡す建物などに関して代金を受け取る場合には、これらの支出は棚卸資産(未成工事支出金)として処理されることになります。 なお、建設仮勘定はあくまで有形固定資産を対象とする勘定科目であるため、自社で使用するソフトウェア(無形固定資産)の開発や取得にかかる支出については、「ソフトウェア仮勘定」として無形固定資産に計上されます。 これらの仕訳は仮勘定としての処理であるため、対象となる固定資産が完成した段階で、適切な固定資産の本勘定へと振り替えを行う必要があります。 3. 建設仮勘定を処理する際の会計上の留意点 建設仮勘定を扱う際に、会計処理上で押さえておくべき主な留意点は、以下のとおりです。 Ⅰ.減価償却の対象外である 固定資産の減価償却は、実際に事業で使用を開始した日から計上されます。そのため、建設仮勘定に計上されている段階では、まだ償却の対象とはならず、損益計算書にも反映されません。 Ⅱ.減損損失の対象になる可能性がある たとえ資産が完成していない段階であっても、収益性の低下により、投下資本の回収が困難と判断される場合には、建設仮勘定に計上されている資産であっても減損の対象となります。そのため、通常の固定資産と同様に減損の要否を判定し、回収可能価額が帳簿価額を下回っている場合には、その差額について減損損失を認識する必要があります。 Ⅲ.資産除去債務の計上対象になり得る 資産除去債務とは、有形固定資産の取得、建設、開発、または通常の使用によって生じ、当該有形固定資産の除去に関して法令または契約により要求される法律上の義務、もしくはそれに準ずるものです。資産が完成する前の建設仮勘定も資産除去債務の対象に含まれます。資産除去債務が発生した場合、将来の除去費用を合理的に見積もり、現在価値に割り引いたうえで負債計上します。 Ⅳ.固定資産税の申告に関する注意点 毎年1月1日時点で未完成の固定資産については、原則として固定資産税の課税対象にはなりません。ただし、すでに完成しているにもかかわらず、適切な振替処理を行わずに建設仮勘定のままにしている場合には、課税対象とみなされる可能性があるため、十分な注意が求められます。 Ⅴ.消費税における仕入税額控除の適用時期 建設仮勘定に計上された取引であっても、他の課税仕入れと同様に、原則としてその取引が行われた日の属する課税期間において仕入税額控除の対象となります。ただし例外として、以下の方法も認められています。 「建設仮勘定として経理した課税仕入れについて、物の引渡しや役務の提供または一部が完成したことにより引渡しを受けた部分をその都度課税仕入れとしないで、工事の目的物のすべての引渡しを受けた日の属する課税期間における課税仕入れとして処理する方法」 引用元:国税庁「No.6483建設仮勘定の仕入税額控除の時期」 どちらの処理方法を採用しても差し支えはありませんが、実務上の煩雑さを避けるため、自社の運用に適した方式をあらかじめ決めておくとよいでしょう。 4. おわりに 建設仮勘定は実際に支出が発生しているにもかかわらず、費用としては認識されない性質を持つため、意図的に操作されやすいリスクがある科目ともいえます。そのため、決算時などには、費用として計上すべき支出が誤って建設仮勘定に含まれていないか、あるいは資産として計上すべき内容が費用処理されていないか、さらに固定資産勘定への振替処理が漏れていないかなどを定期的に点検することが求められます。特に、長期間にわたって建設仮勘定に残っている項目については、内容の精査が必要です。そのためには、プロジェクト単位で管理可能な台帳を整備するなど、内部管理体制の強化が重要となります。
- [建設業における下請代金支払遅延等防止法の概要と留意点](https://shiodome.co.jp/column/54532/) - 1.はじめに 近年、原材料やエネルギーにかかるコストの高騰を背景に、親事業者が下請事業者への価格転嫁を十分に行わないケースが見受けられ、これを問題視する声が高まっています。このような状況を受け、下請法の見直しに向けた検討が進められています。こうした動きに呼応するかたちで、日本建設業連合会は2025年3月、「下請取引適正化と適正な受注活動の徹底に向けた 自主行動計画」の3回目となる改定を実施しました。 本稿では、下請企業の立場を守ることを目的に策定されたこの自主行動計画について、その背景や概要を詳しく解説します。 2.「下請取引適正化と適正な受注活動の徹底に向けた 自主行動計画」の概要 「下請取引適正化と適正な受注活動の徹底に向けた自主行動計画」とは、親事業者と下請事業者との間の公正な取引を促進し、下請事業者の権利を保護するために、各業界団体が自主的に策定・実行する計画のことです。 本計画は、下請代金支払遅延等防止法(いわゆる下請法)をはじめとする関連法令の確実な遵守を図ると同時に、以下に示す多岐にわたる取り組みを積極的に展開していくことを目的としています。 下請取引における公正な関係の構築 下請代金の公正な設定と円滑な支払いの実施 不当な値引き要求や支払いの遅延を回避する取り組み 適正な費用負担のルール確立 契約内容を明確にするための書面化の徹底 公平な受注活動の積極的な推進 発注者側からの適切な契約条件による受注 原価を下回るような不当な価格での受注を防止 見積・契約における透明性の確保 働き方改革への積極的な対応・協力 労務費・原材料費・エネルギーコストなどの上昇分の適正な価格反映 約束手形の2026年以降の利用廃止に向けた準備・対応 電子化による受発注業務の効率化(電子受発注システムの導入) 本計画は、各業界が抱える固有の事情や課題を踏まえ、業界団体ごとに自主的に作成・実行される仕組みであり、その具体的な取り組み内容は業種によって異なります。 3.建設業における「下請取引適正化と適正な受注活動の徹底に向けた 自主行動計画」 内閣府の景気ウォッチャー調査によれば、景気は緩やかな回復基調にあると見られていますが、経済の好循環を中小企業にも波及させていくためには、下請企業の取引条件の改善が必要とされています。このような状況を受けて、建設業界では中核的な団体である日本建設業連合会に対し、下請取引の是正を目的とした自主行動計画の策定が求められました。これを受け、同連合会は2025年3月に当該計画の内容を見直し、改定を実施しています。 具体例として、下請企業の公正な保護と受注プロセスの透明化を図るため、次に挙げる項目が重要な焦点となっています。 ① 取引条件の適正化 元請と下請の間では、公平な契約を締結し、一方的な条件変更や不当な取引条件を排除する必要があります。とりわけ、労務費や材料費など実際にかかるコストを適切に反映させることが重要です。通常発生する原価を下回る金額で請負代金を設定しないこと、また元請が一方的に決めた金額(いわゆる指値)で発注しないことを厳守するよう強調されています。 ② 透明性の向上 受注の過程においては、発注者からの指示内容や価格の決定理由について、十分な説明責任を果たし、プロセスの透明性を確保することが不可欠です。価格交渉についても、公平で客観的な基準に基づいて進める姿勢が求められています。加えて、施工責任範囲や条件などを正確に反映した合理的な請負金額や工期の設定のためには、見積依頼時に具体的な条件を明示し、書面で提示することが推奨されています。 ③ 公正な受注活動の推進 過剰なコストカットを前提とした不適切な受注行為を排除することが重要とされています。具体的には、過大な値引き要請や現実的でない納期の設定を行わず、業務が支障なく遂行できる環境を整えることが求められています。 ④ 下請業者の労働環境整備 下請企業における職場環境の向上を図るためには、長時間労働の是正や適正な賃金の支払いを積極的に推進することが重要です。あわせて、働き方改革への対応を支援し、建設業界全体として労働環境の底上げを目指す動きが求められています。さらに、工期の設定にあたっては、十分な休日の確保も見積条件として配慮すべき要素とされています。 ⑤ 下請代金の支払適正化 下請代金は、可能な限り手形ではなく現金で決済する比率を高めることが望ましいとされています。やむを得ず手形を使用する場合でも、回収期間は60日以内に収まるよう努める必要があります。さらに、正当な理由のないまま保留金として代金の一部を長期間支払わないことがないよう、十分に注意しなければなりません。 4.公正な取引実現への取り組み 前述のような行動計画も、実際に効果を発揮しなければ現場の改善にはつながりません。こうした状況を踏まえ、中小企業庁では「下請Gメン」と呼ばれる取引調査員による実地調査を実施しています。この調査は守秘義務を前提とし、下請中小企業などを訪問して、現場の状況について直接ヒアリングを行うものです。 これまでの調査では、以下のような事例が報告されており、こうした課題を受けて改善に向けた基準の見直しが進められてきました。 「発注予定額の○○%」といった根拠のない一律の値引きを求められたケース 光熱費や原材料費の上昇分の価格転嫁を申し出たところ、「他の企業からは聞いていない」「御社だけだ」と否定的に対応された事例 金型の返却や保管費用の負担について申し入れたが、発注者側が取り合わなかった例 支払いが手形で行われ、資金の受け取りまでに数ヶ月を要し、資金繰りに悪影響を及ぼしたケース こうした実態が明らかになったことにより、制度や運用の見直しが行われてきています。 5.おわりに 近年、原材料費や人件費の上昇に伴い、最終消費者への価格転嫁が進んでいる一方で、転嫁しきれなかったコストの負担が下請企業に押しつけられるようなケースも依然として見受けられます。発注側・受注側の双方においては、業界ごとの行動計画の見直し内容などを把握したうえで、自社の取引実態や労務環境がその基準に沿っているか、あらためて点検・確認することが望まれます。
- [在留資格「特定技能」の概要とその分類である「特定技能1号」「特定技能2号」](https://shiodome.co.jp/column/23084/) - 日本の生産年齢人口の減少に伴い、深刻化する人手不足に対応するため、2019年4月に創設された在留資格が「特定技能」です。 従来の就労ビザ(「技術・人文知識・国際業務」など)では認められにくかった、いわゆる現業(現場作業)を含む分野での就労が可能となった点が大きな特徴です。本記事では、特定技能制度の全体像と、その2つの区分である「1号」および「2号」の違い、最新の動向について解説します。 1. 在留資格「特定技能」創設の背景と目的 「特定技能」は、国内の人材確保が困難な状況にある特定の産業分野において、一定の専門性・技能を有する外国人を受け入れることを目的としています。 これまでの「技能実習」が国際貢献(技術移転)を目的としていたのに対し、「特定技能」は明確に「深刻な人手不足の解消」を目的とした就労資格です。そのため、即戦力として業務に従事できるだけの技能と日本語能力が求められます。 2. 「特定技能1号」と「特定技能2号」の違い 特定技能には「1号」と「2号」の2つの区分があり、それぞれ要件や受けられる待遇が大きく異なります。 特定技能1号 特定の産業分野において「相当程度の知識又は経験を要する技能」を持つ外国人に付与される資格です。 在留期間:通算で上限5年まで。 技能水準:試験(技能試験および日本語試験)で確認 または技能実習2号を良好に修了していること。 家族の帯同:基本的に認められません。 受入れ機関による支援:義務的支援(生活オリエンテーションや住居確保の補助など)の対象となります。 特定技能2号 特定の産業分野において「熟練した技能」を持つ外国人に付与される資格です。1号よりも高い専門性が求められます。 在留期間:更新制限(上限)がありません。 技能水準:試験等で確認。 家族の帯同:要件を満たせば、配偶者や子の帯同が認められます。 永住への道:更新に制限がないため、将来的な「永住許可」の申請につながる可能性があります。 比較表:1号と2号の主な相違点 3. 対象となる特定産業分野(2024年以降の拡大) 当初、特定技能は12の分野(以前は14分野)でスタートしましたが、人手不足の深刻化に伴い、2024年には対象分野の追加が閣議決定されるなど、拡大傾向にあります。 1号の対象分野:介護、ビルクリーニング、工業製品製造業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業自動車運搬業(ドライバー)、鉄道、林業、木材産業など 2号の対象分野:当初は建設と造船・舶用工業のみでしたが、現在は介護、自動車運送業、鉄道、林業、木材産業以外の1号対象分野で2号への移行が可能となっています。(2026年1月現在) 4. 申請における主要な論点と留意点 特定技能の申請においては、外国人本人だけでなく、受け入れ企業(特定所属機関)側にも厳しい基準が課せられています。 ① 報酬額の適正性 日本人と同等額以上の報酬を支払うことが絶対条件となります。賃金体系の不備や不当な低賃金は、不許可の直接的な原因となります。 ② 支援計画の策定(1号の場合) 特定技能1号を受け入れる場合、入国から生活までを支える「支援計画」の作成と実施が義務付けられています。自社で実施することが困難な場合は、「登録支援機関」に委託することが一般的です。 ③ 転職の自由と管理 特定技能外国人は、同一の分野内であれば転職が認められています。企業側にとっては、離職のリスクを考慮した雇用環境の整備が求められます。 5. まとめ 「特定技能」は、日本で働く外国人にとっても、受け入れる企業にとっても、将来的なキャリアパスや人手不足解消の大きな選択肢となっています。特に「2号」の対象分野が拡大されたことで、長期的な雇用や家族の呼び寄せを視野に入れた運用が可能になった点は極めて重要な変化です。 ただし、制度の複雑さや頻繁なアップデートがあるため、申請にあたっては最新の法務省告示や審査要領を確認し、正確な書類作成と手続きを行うことが不可欠であると言えます。
- [新設された在留資格「特定技能」が建設業に従事する外国人労働者に与える影響-従来からの在留資格「技能実習」との相違点](https://shiodome.co.jp/column/23076/) - 従来からの在留資格「技能実習」との相違点 建設業界における深刻な労働力不足を背景に、2019年に創設された在留資格「特定技能」。特に建設分野においては、従来の「技能実習」制度に加え、新たな外国人材活用の柱として定着しつつあります。 さらに、2024年には建設分野における特定技能の対象業務が大幅に統合・拡充されるなど、制度のアップデートが続いています。本記事では、特定技能が建設業界に与える影響と、技能実習制度との主要な相違点について、最新の情報に基づき解説します。 1. 建設分野における「特定技能」の現状と業務範囲の拡充 特定技能制度は、国内の人材を確保することが困難な状況にある産業分野において、一定の専門性・技能を持つ外国人を受け入れるための在留資格です。 2024年の制度改正による変化 これまで建設分野の特定技能は、細かい区分(土木、建築、ライフライン・設備など)に分かれていましたが、実務上の柔軟性を高めるため、現在「建設」という一つの区分に統合されています。 これにより、以前よりも現場での多能工的な働き方が認められやすくなり、企業側の活用しやすさが向上したと考えられます。具体的な業務内容には、土木、建築、屋根吹き、内装仕上げ、電気通信など、建設現場における広範な作業が含まれます。 2. 「特定技能1号」と「技能実習」の主な相違点 建設会社が外国人材を雇用する際、候補となる「特定技能1号」と「技能実習」には、その目的や運用において大きな違いがあります。 3. 主要項目の比較表 大きな影響:転職(引き抜き)のリスクと可能性 技能実習と異なり、特定技能は「同一の業務区分内での転職」が認められています。労働者にとっては、より良い労働条件を求めて移籍できる権利がある一方、企業にとっては、処遇改善や職場環境の整備を通じたリテンション(定着支援)が、これまで以上に重要な課題になると考えられます。 3. 建設分野特有のルールと留意点 建設分野での特定技能の活用には、他の分野(外食や介護など)にはない独自の規制が存在します。 国土交通省による「受入計画」の認定 特定技能外国人を雇用する建設業者は、出入国在留管理庁への申請前に、国土交通省に対して「建設特定技能受入計画」の申請を行い、認定を受ける必要があります。この認定がなければ、在留資格の申請自体が受理されません。 報酬・処遇の適正化 建設分野では、外国人労働者の月給制が原則とされています。また、日本人と同等以上の報酬を支払うことに加え、公共工事の「公共工事設計労務単価」等を参考に、不当に低い賃金とならないよう厳格なチェックが行われます。 団体(JAC)への加入 建設分野の受入企業は、「一般社団法人建設技能人材機構(JAC)」に加入するか、JACを構成する建設業者団体に所属する必要があります。これにより、受入負担金の支払い義務等が発生します。 4. 将来的な展望:育成就労制度への移行 2024年6月、技能実習制度を廃止し、新たに「育成就労制度」を創設する改正法が成立しました。 この新制度は、3年間の育成期間を経て「特定技能1号」の水準まで引き上げることを目的としています。今後、建設業界における外国人材活用の流れは、現行の技能実習から育成就労へ、そして特定技能へのスムーズな移行を軸としたものに再編される見込みです。施行は2027年4月1日から運用開始予定であり、長期的な採用計画を立てる上では、これらの法改正を注視する必要があります。 5. まとめ 特定技能の創設は、建設業界にとって、即戦力に近い技能を持つ外国人材を「労働力」として正式に確保できる大きな転換点となりました。 特定技能の創設は、建設業界にとって、即戦力に近い技能を持つ外国人材を「労働力」として正式に確保できる大きな転換点となりました。 柔軟性: 業務区分の統合により、現場での幅広い作業が可能になった。 管理の厳格性: 国土交通省の認定やJACへの加入など、独自の事務手続きが必要。 技能実習制度が抱えていた「実態は労働力なのに建前は研修」という矛盾が解消されつつある一方、転職の自由という新たな側面にも向き合う必要があります。法令を遵守し、適切な労務管理を行うことが、長期的な人材確保の鍵になるといえるでしょう。
- [リモートワーク及びハイブリッドワークがアジア太平洋地域の不動産業界に与える影響と今後の展望](https://shiodome.co.jp/column/20329/) - ここ数年、世界中で不動産に複数の変化が見られました。現在ではスタンダードとなっているリモートワークは、当然のことながらこの不動産の分野に世界中で大きな影響を与えており、それはアジア太平洋地域 (APAC) も例外ではありません。リモートワークをする人が増えれば、より多くの企業がハイブリッドワークモデルを採用するため、その影響は商業用不動産と住宅用不動産の双方に波及します。新型コロナウイルスによるパンデミックの影響で、私たちの大半の生活スタイルが大幅に変わり、勤務体系も柔軟性がより求められるようになりました。ここでいう柔軟性の例として、より良いワークライフバランスやどのような場所でも仕事できる環境が挙げられます。こうした新しい暮らし方や働き方に伴い、不動産業界はこれらの変化する流れに対応するよう変革を遂げてきました。 RSM の不動産におけるプロフェッショナルは、リモートワークおよびハイブリッドワークがアジア太平洋地域の不動産市場にどのような影響を与えているか、見解を共有しています。 1. オフィススペースの需要:どの程度のスペースが過剰といえるか 2020年以前、商業用不動産は、好調な景況感を背景に、継続的かつ安定した成長を遂げていました。しかし、世界的なパンデミックとその後の法律や公式勧告により、この着実な成長は突然停止しました。 RSMシンガポールのパートナーであるデニス・リー氏は、「パンデミックは、『リモートワーク』がどのようにして可能になるのかについて再考する機会となり、その結果、稼働率の低下、大幅な賃料の改定、そして共同オフィススペースなど共有を活かすための従来のワークモデルの再構成をもたらしました。」と述べています。またリー氏は、「ここ数カ月、シンガポールの不動産投資信託でも一口当たりの分配金が減少し、全体的に家賃収益率が低下しています。」と述べています。 オーストラリアの商業用不動産市場では、依然として高級オフィススペースに対する需要が見られますが、必要とされる実際の床面積は減少しています。 RSM オーストラリアの不動産・建設担当リーダー、アダム・クロウリー氏は次のように述べています。「ほとんどの主要首都では、高級オフィススペースの需要は継続して多く、A+グレードのテナントが A+グレードのオフィススペースを探しています。しかし、A+グレードのテナントが占める床面積は減少しており、通常は高級物件を選択する大手企業や組織は、従業員の多くがハイブリッドワークモデルで稼働しているため、通常よりも少ないスペースでの賃貸契約しかしていません。」 組織が完全にオフィスに戻るのか、それともハイブリッドワークまたはリモートワークモデルを維持するのかについての議論はまだ続いています。しかし、シンガポールでは商業用不動産の需要が将来的に増加する可能性があります。 RSM シンガポールのビジネス コンサルティング ディレクター、キース・タン氏は、「『リモートワーク』に対する考え方の変化により、このような一部の落ち込みは一時的なものになると予想されます。」と述べています。「一般に、シンガポールの企業(政府機関を含む)はオフィスワークまたはハイブリッドのワークモデルに戻りつつあり、パンデミック後の回復により商業プロジェクトも軌道に戻りました。」 同様に、日本でもオフィススペースが復活するかもしれませんが、これまでとは異なる形での復活になるかもしれません。 「将来を見据えると、オフィスへの出勤率がパンデミック前の水準に戻る可能性は低いでしょう。」と RSM 汐留パートナーズのファウンダー・CEO の前川研吾氏は言います。 「その一方で、シェアオフィスやコワーキングスペースの台頭などに代表されるフレキシブルオフィスソリューションの急増が顕著です。」 2. 都市部から地方へ: 郊外の不動産 一部の国では、人口密度の高い都市部以外の住宅用不動産市場で需要が急増しています。人々が自宅で働き過ごす時間が増えるにつれ、自宅のスペースがますます必要とされるようになり、職場に近いという利便性はそれほど重要ではなくなりました。前川氏は次のように述べています。「リモートワークの増加により郊外や地方の住宅需要が高まり、通勤の選択肢が広がっています。それが進むにつれて、都市部以外の住宅やリモートワークのニーズに合わせた環境の構築への関心が今後も続くことを期待しています。」 都市中心部の商業用不動産の需要が鈍化しているにもかかわらず、明らかに「都市周縁部や特定の機能に特化した郊外のエリア内での不動産需要の再配分」が見られるとキース・タン氏は言っています。オフィススペースへの出勤率が低下する中、都市部の高額なオフィススペースの利用事例は説得力を失っています。そのため、多くの組織は、そこで働く人々と同様に、都市部での事業運営にかかるコストを回避し、より柔軟なワークモデルに対応するために、事業を都市部から郊外に移しています。シンガポールでは、「中央ビジネス地区の総床面積に対する一般的なビジネスにおける需要は、『コロナウイルス以前』のレベルと比較してほぼ20%縮小しています。」とデニス・リー氏は認めています。 「企業はオフィススペースの需要を考え直し、ハイブリッドな働き方の要件を満たすために労働力ニーズを再調整しているようです。一方で、さまざまな場所に事業を展開するために設計された特定の地域や施設が開発され、従来の事業拠点が都市部から郊外へシフトしているようです。」 3. トレンドに逆らう: 柔軟なオフィスソリューション 従来のオフィススペースの需要が減少し続ける一方で、持続的で柔軟な労働環境に対する需要の高まりにより、複合用途オフィススペースやコワーキングスペースといった新しい形態の商業用不動産が誕生しています。シンガポールのタン氏は、「不動産市場の工業用および複合用途オフィススペース部門の利回りは堅調で、賃貸指数は過去24カ月連続で上昇を示しています。」と述べています。具体的には、物流、電子商取引、ハイテク分野を成長させるというシンガポール政府の計画によって推進されています。 日本でも同様に、コワーキングスペースの導入が進んでいるようです。「様々な分野で柔軟な労働環境が必要とされるようになり、その需要に応えるための不動産事業者が急速に増え続けています。」と前川氏は言います。 「従来のオフィススペースとシェアオフィスを含むリモートワークを組み合わせた、ハイブリッドな仕事スタイルが新たな標準になりつつあります。このようなスタイルは、柔軟な作業環境を構築する企業のニーズに合致しています。その結果、商業用不動産の取り巻く環境は、柔軟性とリモートワークの統合という需要の変化に対応できるようになりつつあります。」 需要の急落の影響を受けた多くの商業施設は、より現代的なニーズに合わせて施設を変えていく検討を続けています。オーストラリアでは「高級ではないオフィススペースのオーナーや投資家は、新しいテナントを誘致するための改修に投資するか、または、多額な賃貸優遇措置を講じるか、といった選択肢を検討しています。一方、建物を他の用途に再利用する選択肢を模索している企業もあります(商業施設から住宅への転換等)。」とRSMオーストラリアのアダム・クロウリー氏は述べています。 4. まとめ アジア太平洋地域におけるリモートワークやハイブリッドワークへの労働環境の変化は、不動産情勢に大きな影響を与えています。従来のオフィススペースの需要は課題に直面している一方で、柔軟なワークモデルの台頭により、複合用途オフィスやコワーキングスペースなどの革新的なソリューションが生まれています。企業が進化する仕事のモデルに対応する中で、より多くのスペースと柔軟性への要望を反映して、郊外の住宅不動産に向かう傾向が顕著であります。これを受けて、不動産業界は変化し適応性を取り入れ、より柔軟でリモートに適した世の中への需要を満たすために、オフィススペースの従来の概念を再定義しています。
- [グリーンホライゾンを切り開く:アジア太平洋における不動産業界のESGへの対応](https://shiodome.co.jp/column/23165/) - アジア太平洋地域(APAC)の不動産業界では劇的な変化が起こっています。気候変動と持続可能性を大きなきっかけとして、開発者、建築業者、投資家は自らの役割を見直し、取り組む姿勢を変えつつあります。世界中の経済が2050年のカーボンニュートラル目標に向かって進んでいる中で、このAPAC地域でも新たな挑戦が見られます。グリーンビルディング規制から買い手の嗜好の変化、さらには金融セクターの関与に至るまで、変化は確かに感じられます。しかし、持続可能な不動産になるまでには、地域における環境への配慮を重視した取り組みへのスムーズな移行を阻む数々の課題が存在しています。RSMの不動産専門家は、世界では持続可能性を確保するための取り組みが求められており、その結果この業界がどのような影響を受けているかについて、彼らの見解を共有しています。 1. コードグリーン:持続可能性の必要性 国連環境計画(UNEP)の報告によると、世界の建物に対するエネルギー需要は4%増加しており、これは過去10年間で最も大きな増加です。さらに、CO2排出量は過去最高レベルまで急増しており、2020年から5%、2019年の過去のピークから2%増加しています。 環境の持続可能性が即時に対処すべき問題であることは周知の事実です。世界中で、ステークホルダー、投資家、政府などが、環境に配慮した未来を実現するために、より持続可能な慣行を組織に求めています。不動産および建設業界においても、この需要に応じて、持続可能な住宅、工業用、商業用開発への関心が高まっています。気候変動とその影響に対する懸念が高まり、国内外で環境問題への意識が強まっています。これにより、より持続可能なライフスタイルへの転換が進み、新たな価値観に沿った住宅の必要性が高まっています。 RSMシンガポールのパートナーであるデニス・リー氏は、「建物は我々の国の炭素排出量の20%以上を占めています。シンガポールにおける『グリーン化』への取り組みはまだ道半ばです。この分野への需要を後押しするさまざまな要因があります。世界的には、2050年までに気候変動を抑制するための国の目標があります。シンガポールでは、2030年のグリーンプランにおいて、住みやすく持続可能な住宅の提供を目指すとともに、交通、廃棄物管理、特定分野でのカーボンニュートラリティに関する国家的な取り組みも進めています。」と述べています。 2022年にRSMが不動産および建設業界のリーダーを対象に行った調査によると、オーストラリアのCEOの90%が、建設における持続可能な取り組みの欠如に“ある程度の懸念”を抱いていると回答しています。「このような感情にもかかわらず、持続可能な不動産への需要は大幅に増加しています。」と、RSMオーストラリアの不動産および建設部門のナショナルリーダーであるアダム・クロウリー氏は述べています。さらに、オーストラリアの連邦科学産業研究機構(CSIRO)が行った最近の報告では、「住宅購入者の3分の2が、選択肢がある場合にはエネルギー効率の高い住宅を好む。」と指摘されています。 持続可能な不動産の必要性は明らかであり、需要とも一致しています。では、その変化を実現するために何が行われているのでしょうか? 2. 不動産のグリーン転換:取り組みと課題 持続可能な不動産の必要性が高まる中、APAC全域の不動産市場ではサステナビリティに向けた複数の動きがあります。前述のように、シンガポール政府は2030年グリーンプランを策定しています。RSMシンガポールのビジネスコンサルティングディレクターであるキース・タン氏は、「国家開発省および他の政府機関は、2030年までに全建物の80%を『グリーン化』するという大胆な目標を達成するために連携して取り組んでいます。この取り組みは、新しい建築設計、工学、建設技術、そして最終的には資産価格に影響を与えるでしょう。私たちは、脱炭素化の推進が長期的に不動産の価値を向上させると信じています。」と述べています。 これだけではありません。リー氏は「シンガポールの不動産業界も、気候変動対策としてグリーン対策を強化しています。この動きを後押ししている要因の一つには、グリーン調達に関する政府の規制強化、グリーン開発に対するプロジェクトインセンティブ、エコフレンドリーなプロジェクトを識別するグリーンマーク認証の促進、将来的な炭素税の大幅な引き上げ、そして排出量や気候変動を考慮したグリーンファイナンススキームの広範な採用があります。」と述べています。タン氏はさらに、「シンガポールの規制当局は、ガバナンスコードと上場規則に気候変動とサステナビリティ報告の開示に関するガイドラインを取り入れており、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)やSASB(サステナビリティ会計基準委員会)に基づく報告を求めています。また、新たな統合サステナビリティ報告基準としてISSB(国際サステナビリティ基準委員会)の採用も適時計画されています。」と述べています。 日本でも同様に、政府は持続可能な建物や建設慣行を促進するための対策を講じています。政府の政策や規制が持続可能な住宅の需要を促進しており、省エネ住宅に対する補助金などのインセンティブが環境に優しい建築慣行を促しています。日本政府が取っている重要なイニシアチブの1つが、ゼロエネルギーハウス(ZEH)です。ZEHは、現場で再生可能エネルギーを可能な限り多く生み出すことで、炭素排出量を削減し、再生可能エネルギーの利用を促進することを目的としています。このイニシアチブは、2030年までにZEHを住宅建設の標準にすることを目指しています。そして持続可能な物件は、エネルギー効率の向上によるコスト削減という付加価値を提供します。これにより、太陽光パネルや断熱性能の向上など、長期的なコスト削減の可能性が買い手を引き付け、需要をさらに押し上げています。 持続可能な住宅の利点は無視できるものではなく、多くの買い手にとって主要なセールスポイントとなる可能性があります。RSMオーストラリアが行った同じ報告によると、“サステナビリティ”機能を追加した間取り図は、同じデザインの標準版と比べて8.6%高い購入希望率があるとされています。クロウリー氏は「今後、持続可能な取り組みの実践への関心が高まることが予想されます。多くのプロジェクトがグリーンスター評価を目指したり、エネルギーと環境デザインのリーダーシップ(LEED)認証を取得しようとしています。」と述べています。 しかし、需要と必要性、そして持続可能な住宅への移行に向けた取り組みが進んでいるにもかかわらず、依然として課題が残っています。クロウリー氏は「パンデミック、極端な天候、供給と労働力の不足、さらに高金利やインフレの上昇がオーストラリアの建設業界に大きな圧力をかけています。これにより、2030年までに建設業界への追加投資で50億ドル以上の投資がもたらされ、7,000人の新規雇用が創出されるはずだった持続可能な住宅への移行が大きく影響を受けています。」と述べています。 3. 不動産専門家へのアドバイス 不動産専門家がこの成長市場に参入する方法は多岐にわたります。不動産業界の企業は、持続可能な住宅の選択肢を提供し、エコフレンドリーな生活の利点について買い手に教育する必要があります。また、政府の支援を活用し、持続可能性を強調するようにマーケティング戦略を調整することで、この成長市場での機会を探ることができます。 プロフェッショナルは市場に近い立場を活かして戦略を適応させることも可能です。クロウリー氏は「彼らは将来の住宅購入者の実際の購買行動に近い関係を持っているため、持続可能な物件のマーケティングには、設備、投資リターン、市場資本、そして節約などの特徴を基にしたアプローチを取るべきです。」と述べています。 リー氏はさらに、「不動産業界の専門家が、コンサルタント業、開発、建築環境のいずれに携わる場合でも、気候変動に関する取り組みの実践やトレンドを理解し、それを活動やサービスに適用するための基準が引き上げられることを認識する必要があります。業界のロードマップやセクターの基準を利用して、自身の不動産セグメントで探求すべき共通のテーマを把握し、より広範なリスクと機会を考慮することが重要です。」と述べています。 特にシンガポールでは、「使用目的や投資グレードの資産として物件を取得しようとする企業には、ローン・トゥ・バリュー(LTV)や厳格なレバレッジ比率を考慮した特定のルールがあります。また、国内の大手三大銀行は、不動産セクターに関してグリーン目標を設定し、自らのカーボンフットプリントを削減し、持続可能なファイナンスを促進し、最終的には不動産業者に意識改革を促し、より厳格な『グリーン』基準を満たすプロジェクトを推進するよう間接的に影響を与えています。」とタン氏は述べています。 4. まとめ アジア太平洋の絶えず進化する不動産市場において、適応力はプロフェッショナルが競争力を保つために不可欠です。現在の持続可能な不動産に対する需要の急増は、業界のダイナミクスにおける根本的な変化を示しており、持続可能性は一過性のトレンドではなく、不動産業界の未来を形作る可能性のある重要な柱となるかもしれません。 持続可能な開発への注目が高まる中で、責任ある行動が求められていることがはっきりと示されています。これからの未来には、よりグリーンな不動産の風景が広がることが期待されています。プロフェッショナルはこの勢いを大切にし、持続可能性を受け入れることが、単に時流に乗るだけでなく、業界のより持続可能な未来を先導することになると認識すべきです。
- [PropTech:アジア太平洋における不動産の効率性と持続可能性の向上](https://shiodome.co.jp/column/23169/) - 不動産および建設分野において、PropTech(不動産テクノロジー)の技術革新は、アジア太平洋地域で効率性と持続可能性の新時代を切り開いています。AI(人工知能)によるサイトプランニングからIoT(モノのインターネット)を活用した施設管理まで、開発者は最先端のツールを駆使して、開発プロセスのあらゆる段階を最適化しています。オンラインツールは、閲覧、入札、取引を効率化し、アクセス性と効率を向上させます。デジタルプラットフォームは、エージェントと購入者をシームレスにつなぎ、包括的な物件リストや没入型のバーチャルツアーを提供します。紙ベースの取引に依存している地域では課題が残っていますが、3Dプリンティングやモジュール建設といった革新的な技術は、効率と持続可能性を向上させ、よりアクセスしやすく環境に配慮した不動産の未来を形作っています。 1. 購入と売却の体験を革新する PropTechは、不動産開発者と購入者のやり取りを再構築し、閲覧や入札の過程でこれまで以上に多様な方法を提供しています。RSMシンガポールのパートナーであるデニス・リー氏は「パンデミック後に導入されたPropTechは、顧客の閲覧、入札管理、取引処理、および事務手続きを支援するオンラインツールを導入しました。」と述べています。 このデジタルプラットフォームへのシフトにより、関係者全員の利便性と効率が向上し、不動産取引における大きな進化がもたらされました。インターネットとソーシャルメディアの普及により、不動産業界では強力なオンラインプレゼンスが生まれ、不動産エージェントと潜在的な購入者がデジタル広告を通じて効率的に接続できるようになりました。多くのウェブサイトやアプリが、物件のリストを写真やビデオツアーとともに提供しており、物件がオンラインでアクセスできるようになっています。多くの購入者や賃借人がすでに知っているように、近年、物件リストを提供するアプリやウェブサイトが急増し、この業界の定番となっています。これらの閲覧ポータルは、写真やビデオツアーに加え、3D再現やパノラマ画像を提供し、購入者がその場にいるかのように物件を閲覧できるようにしています。 ビッグデータ解析とAIは、膨大なデータセットと高度なアルゴリズムを活用して、物件の価格設定、マーケットトレンドの予測、潜在的な購入者のプロファイリングなどにおいて意思決定を支援しています。過去の販売データ、市場動向、消費者行動パターンを分析することで、AIは不動産専門家がデータに基づいて自信を持って意思決定できるようにします。また、購入者側においても、AIは購入者の好みに基づいて、パーソナライズされたアルゴリズムを使用して、購入者に適した物件を推薦し、彼らの独自の条件や好みに合った物件をマッチングすることができ、最終的には全体的な購入体験を向上させます。 しかし、日本では依然として不動産取引が紙ベースのプロセスに依存しており、新しい技術の採用が遅れる可能性があります。それでも、将来的にはこのプロセスをさらに効率化するための統合の可能性が期待されます。 2. 建設の革新:効率性と持続可能性の推進 PropTechは、不動産の運用を強化し、プロセスのスピードアップ、コストやリスクの削減、そしてプロジェクトの成果向上を目指す技術によって、物件の計画段階から不動産業界に変革をもたらしています。 RSMオーストラリアの不動産・建設部門のナショナルリーダーであるアダム・クロウリー氏は、「Luytenなどの企業が推進する3Dプリンティング(3DP)技術は、従来の手作業による建設プロジェクトと比較して、建設廃棄物を最大60%、生産時間を70%、労働コストを最大80%削減します。世界最大のモバイル型3DスマートAI駆動のコンクリートプリンターであるPlatypus X12(Luyten所有)は、2021年にメルボルン、ビクトリア州で南半球初の3Dプリンターによる住宅を建設しました。そして2030年までに、オーストラリアの奥地、地方、遠隔地で建設される住宅の約30~50%が3Dプリンティング技術を使用して建設される見込みです。」と述べています。 これに加えて、RSMシンガポールのビジネスコンサルティングディレクターであるキース・タン氏は、「開発者の観点から見ると、AIやIoTを利用した技術が、敷地計画、検査、調査の進め方に変革をもたらしています。地理空間イメージングも、地形の特徴、環境要因、インフラへのアクセス性などの詳細な洞察を提供することで、土地利用計画と開発戦略の最適化において重要な役割を果たしています。この技術を活用することで、開発者は開発の収益を最大化し、周辺地域への環境影響を最小限に抑え、持続可能な成長と地域の生態系との調和を確保することができます。」と述べています。 クロウリー氏は、「さらに、モジュール建設のような新技術もあり、これはオフサイトでの制御された建設を可能にし、生産時間を大幅に短縮しています。オーストラリアの建設会社ヒッコリーは、この手法を狭い土地に建設される中規模の高層プロジェクトでいち早く採用しており、2025年までにオーストラリアのプレハブ建設業界の成長が5%から15%に拡大すると予想されています。」と述べています。 3. 未来の不動産 これらの革新は、不動産と建設業界で進行中の変革のごく一部にすぎません。高度な技術により、売買体験が向上し、建設時間が短縮し、コストが大幅に削減されることで、より手頃な価格の物件が提供されるようになり、より多くの潜在的な購入者に対して機会を広げることになります。リー氏は、「施設管理の分野では、消費パターンやユーティリティ、エネルギー使用状況を監視し、臨時のメンテナンスや修理作業を計画するために、IoT機能に対応した監視機器を利用したリモートモニタリングの普及が進んでいることがうかがえます。」と述べています。 さらに、持続可能性や環境に優しい建設方法に注目することで、廃棄物を減らすだけでなく、環境意識の高い購入者に強く響きます。持続可能な材料や手法で建てられた物件への投資は彼らの価値観と一致しており、こうした物件は市場でますます魅力的になり、未来の環境に配慮した不動産業界の形成を促進します。
- [プロゴルファーにおける確定申告の実務と税務上の留意点|賞金収入とツアー転戦費用の適切な管理](https://shiodome.co.jp/column/58274/) - 2026年シーズンは、米国女子の賞金総額が1億3,200万ドル(200億円超)、日本女子が約49億円と、ともに史上最高を更新しました。米国男子も含め、日本男子を除く各ツアーが過去最高水準にあり、より大きな賞金と高い舞台を求めて海外ツアーへ挑む動きは、男女を問わず今後さらに広がっていくとみられます。 プロゴルファーは通常、会社員ではなく、独立した個人事業主です。賞金やスポンサー収入を自ら集計し、経費を差し引いて申告・納税する確定申告は、競技を続けるための土台になります。華やかな数字の裏側で、海外で得た賞金には日本と現地の双方で税金がかかり、為替が手取りを左右します。ゴルフは完全な実力主義でもあり、シードを得て活躍すれば大きな収入を得られる一方、予選落ちが続けば遠征費がかさみ、一年を通して赤字になることも珍しくありません。海外を転戦する選手ほど、また活躍する選手ほど税務は複雑になり、この収入の波に備えるうえで青色申告などの制度活用は欠かせません。本コラムでは、賞金・用具・遠征費・海外収入・キャディー報酬といったゴルファー特有の論点を、実務に即して整理します。 1. プロゴルファーの確定申告における基本構造 日本のプロゴルフ界において、ツアープロとして活躍する選手の多くは、特定の企業と雇用契約を結ぶ正社員ではなく、独立した個人事業主として活動を行っています。そのため、大会に出場して獲得した賞金は「給与所得」ではなく「事業所得」として取り扱われるのが一般的です。給与所得者であれば、所属する企業が毎月の給与から税金を天引きし、年末調整という形で一年間の税額を計算・精算してくれますが、個人事業主であるプロゴルファーの場合は事情が異なります。一年間を通じて得たすべての収入から、事業を行う上で直接必要となった経費を自ら差し引き、その利益に対して課される所得税を自身で計算して、毎年国に対して申告および納付を行う「確定申告」の手続きが必須です。 国内ツアーは、男子・女子ともおおむね春(3〜4月)に開幕し、初冬の最終戦まで続きます。夏場は海外メジャーへの遠征が重なり、秋から初冬にかけては翌季の出場権を懸けた予選会(QT=出場資格を得るための予選会)が行われます。移動と試合が連続するシーズン中は記帳の時間を取りにくく、収入も時期によって大きく変動します。 プロゴルファーの確定申告において最も特徴的な点は、一年間を通して全国各地、時には海外のトーナメント会場を転戦するという競技スタイルに由来する、経費構造の複雑さにあります。一試合に出場するためには、開催地への移動費、滞在中の宿泊費、キャディー報酬、練習費用など、多額の先行投資とも言える支出が発生します。これらを正確に把握し、ルールに沿って経費計上することが、正しい利益と適切な納税額を導く基本です。あわせて、一定要件を満たす帳簿を作成すれば税制優遇措置を受けられる青色申告制度の活用は、事業運営の安定化において非常に有効です。 2. 賞金以外の収入をどう整理するか プロゴルファーの収入は、トーナメントで上位に入賞した際に獲得できる賞金だけにとどまらないことが多くあります。確定申告を適正に行うためには、賞金以外の多様な収入源も漏れなく把握し、事業所得の総収入金額として正確に整理する必要があります。 知名度や実力が上がると、ゴルフクラブメーカー、アパレルブランド、自動車メーカーなど、様々な企業とスポンサー契約を結ぶ機会が生まれます。これらの契約金や協賛金は、プロゴルファーとしての活動に付随して得るものなので、原則として事業所得に含めて申告します。オフシーズンにおけるテレビ番組や雑誌への出演料、イベントのトークショー報酬、アマチュアへのレッスン指導料なども、反復・継続して得る収入であれば、同様に事業所得として処理します。 大会によっては、賞金とは別に自動車・金券・地域の特産品などの「副賞」が贈られることもあります。物品の副賞は、原則としてその通常小売価額の60%相当額(貴金属・不動産等は時価、商品券は券面額など)を収入金額として計上する税務上の取扱いがあります。 見落としやすいのが、現金以外の「物品提供」を受けた場合です。スポーツメーカー等から無償でゴルフクラブ・ウェア・シューズ・ボールなどの提供を受けた場合、税務上は「経済的利益」を受けたとみなされ、提供された物品の時価相当額を一度収入として計上する必要があります。そのうえで、提供品が日々の練習やトーナメントでの使用など事業遂行に不可欠と認められる分については、同額を必要経費に計上して、収入と相殺する処理が必要になる場合があります。口座に振り込まれない利益でも、その実態を正確に評価して帳簿に反映させる姿勢が求められます。 3. 国内ツアー・海外試合・プロアマ・帯同費をどう切り分けるか プロゴルファーの活動は、トーナメントが開催されるコースへの移動を中心に展開されるため、転戦型のアスリート特有の複雑な税務整理が必要です。特に判断が難しいのが、国内ツアーや海外試合への遠征費、そしてトーナメントに付随して行われるプロアマ大会などにおける費用の切り分けです。 ツアー中は開催地での連泊が基本となることから、トーナメントに出場するための移動交通費や宿泊費は、業務に直結する支出として経費性が高いと判断されます。、転戦先において自身のチームメンバー(帯同キャディー、専属トレーナー、マネージャーなど)の宿泊費や食事代などをプロゴルファー本人が負担した場合、それらの費用をどのように処理するかが課題です。契約形態にもよりますが、業務委託しているスタッフの移動・宿泊費を負担することが契約上定められいたり、それがトーナメント出場に不可欠な経費であると客観的に説明できる場合には、必要経費として認められる可能性が高い項目といえます。 契約形態によって税務上の扱いが分かれる例として、帯同キャディーへの報酬が考えられます。雇用関係にない第三者のプロキャディーへの報酬は通常、業務委託に基づく外注費として必要経費に算入され、支払う選手の側に源泉徴収の義務は原則として生じません。一方、家族がキャディーを務めるような場合は、「生計を一にするか」が分岐点となります。生計を一にする配偶者や親族への支払いは、外注費として必要経費に算入することができません。この場合は、青色事業専従者給与として事前の届出・専従要件・適正額を満たした場合に限り経費に算入できます。ただし、生計を別にする独立した親族への支払いであれば、第三者と同様に外注費として処理することも可能です。 また、本戦の前に行われるプロアマ大会は、スポンサー企業や大会関係者との重要な交流の場であり、プロゴルファーの将来のスポンサー獲得や関係構築に直結する業務の一環です。プロアマ大会に参加する際や、関係者との打ち合わせを兼ねて会食を行った際の飲食代などは、接待交際費や会議費として処理できる場合があります。しかしながら、海外試合への遠征や地方でのトーナメント出場に際して、スケジュールの中に観光やプライベートな休養の要素が含まれている場合は注意が必要です。このようなケースでは、旅程の全額を無条件に経費として計上することは税務上認められにくいため、滞在日数や活動時間などの合理的な基準を用いて、事業に関連する部分とプライベートな部分を区分する「家事按分」という手続きを行うことが不可欠となります。 4. 必要経費として認められやすい支出と、判断が分かれやすい支出 確定申告において、獲得した収入から差し引くことができる「必要経費」を正しく選別することは、税務リスクを抑えつつ適正な納税を行うための重要なプロセスです。プロゴルファーは自身の身体と道具を駆使して賞金を獲得するという特殊な事業を営んでいるため、一般的な事業主とは異なる多種多様な支出が発生します。以下の表に、プロゴルファーにおいて必要経費として認められやすい支出と、税務上の判断が分かれやすい支出の一般的な傾向を整理いたしました。 表に示した通り、ゴルフクラブや練習場の利用料など、競技にのみ使用することが明白なものは、経費としての根拠を示しやすい項目です。その一方で、日々の食事代、一般的な疲労回復を目的としたマッサージ代、私服との区別がつきにくい衣類などは「家事関連費」と呼ばれ、生活費なのか事業用経費なのかの境界線が非常に曖昧になります。税務調査等においてこれらの支出の経費性を否認されないためには、その支出がプロゴルファーとしての賞金獲得にいかに直接的かつ必要不可欠であったかを、領収書の保存に加えて、活動記録や専門的な見地から論理的に説明できる状態を平時から整えておくことが有効です。 5. 賞金・経費・源泉徴収を年間でどう管理するか プロゴルファーの確定申告において、一年間の収支を正確に計算するためには、単に収入と経費を集計するだけでなく、すでに天引きされている税金の金額を正確に把握するプロセスが不可欠となります。日本国内のトーナメント賞金やスポンサー企業からの契約金は、通常、支払者側で一定の所得税が「源泉徴収」されたうえで、手取り額が振り込まれます。 源泉徴収された税金は、あくまで仮払いの形で国に納められているものに過ぎません。確定申告の際には、一年間の総収入から必要経費と各種所得控除を差し引いて本来の税額を算出し、すでに源泉徴収されている仮払い税額との精算を行います。その結果、源泉徴収額が本来の税額を上回れば還付を受けられ、不足していれば追加で納付します。したがって、大会主催者やスポンサー企業から発行される「支払調書」や支払明細書を一年分確実に保管し、正確な源泉徴収額を帳簿に反映させることが、適正な申告の前提条件となります。 国内トーナメントと同様に、海外ツアーの賞金も、一般的には開催国で課税・源泉徴収されます。例えば米国ツアーでは、日米租税条約に基づき、その年の米国内での総収入が1万米ドル相当を超えると、米国でも課税されます。これは、恒久的施設(PE)がなくても開催国で課税される点で、一般的な事業所得とは異なります。 さらに、日本を拠点に活動するプロゴルファーは多くの場合、日本の居住者に該当します。この場合、原則として国内外すべての所得が日本の課税対象となります。したがって、米国で賞金を獲得したら、たとえ米国で申告した場合でも、日本の申告書に米国の賞金を含めなければなりません。この場合、両国での二重課税は外国税額控除で調整するため、現地の納税書類は確実に保管しておきます。 また、外貨で受け取った賞金は、受領時の為替レートで円換算して計上します。課税関係や条約の内容は国によって異なり、滞在日数によっては開催国の居住者と判定される場合もあるため、海外参戦を行う段階での専門家への相談が望まれます。 逆に、海外の選手が来日して日本の大会に出場し、税務上の「非居住者」として扱われる場合、日本で得た賞金は支払時に20.42%が源泉徴収され、原則としてこの源泉徴収で課税関係は完結します。ただし、租税条約上の取扱いは選手の居住国によって異なることや、メディア出演など賞金以外の収入が発生するケースも想定されます。このように国際的な所得が発生するケースでは、個別事案に応じた税務上の判断が常につきまとうため、国内外の税務に精通した専門家のサポートを受けることが不可欠といえるでしょう。 プロゴルファーはシーズンが開幕すると毎週のようにトーナメントが続き、極めて多忙な日々を送ります。シーズン中に領収書の整理や記帳作業に時間を割くことは物理的にも精神的にも困難です。そこで有効なのが、日常の資金管理の仕組み化です。プライベート用とは完全に分けたプロ活動専用の事業用口座・クレジットカードを用意し、賞金収入等の入金と経費の支払いをすべてそこに集約すれば、入出金履歴が自動的に整理され、後日の帳簿作成の手間を大きく減らせます。 また、個人事業主として活動するプロゴルファーにとっては、青色申告制度の活用も重要な税務対策となります。正規の簿記の原則に基づいて一定要件を満たす帳簿を作成し、期限内に申告することで、現行では最大65万円の青色申告特別控除を受けることができます。なお、令和8年度税制改正により、令和9年分からは青色申告特別控除の要件が見直され、e-Taxによる申告や仕訳帳・総勘定元帳の電磁的記録保存等の一定のデジタル対応を満たす場合、控除額が最大75万円へ拡充される方向です。全国転戦により領収書や支払明細が散逸しやすいプロゴルファーほど、クラウド会計や電子保存を前提とした経理体制を早期に整える意義は大きいです。 6. シード・出場機会・賞金変動を踏まえた税金対策 プロゴルフの世界は完全な実力主義であり、賞金ランキングによるシード権の有無が翌年の出場機会を大きく左右します。シード権を獲得して多数のトーナメントに出場し、優勝争いに加わることができれば数千万円、場合によっては億円単位の賞金収入を得ることが可能です。しかし、怪我や不調によってシード権を喪失し、予選会(QT)からの出場を余儀なくされたり、出場試合数が激減したりした場合には、収入が前年に比べて極端に減少するリスクを常に抱えています。 収入が年によって大きく変動することは、税負担の面でいくつかの注意点を生みます。第一に、日本の所得税は、所得額が高くなるほど税率が上がる累進課税制度を採用しています。そのため大活躍した年ほど税負担は重くなり、その納税は翌年に集中します。とりわけ住民税は前年の所得をもとに翌年課税されるため、収入が落ち込んだ年にも前年の高所得分の負担がのしかかる点に注意が必要です。 第二に、納税資金の確保です。急激な収入の波に備えるためには、計画的な納税資金の確保が欠かせません。獲得した賞金には通常、源泉徴収がされます。しかし、その全額を生活費や設備投資として使い切ってしまうと、翌年に確定する高額な税金を納付できなくなるという深刻な事態に陥る危険性があります。賞金が振り込まれた段階で、あらかじめ予測される税率相当額を納税準備用の別口座に移しておくなど、収入の波に左右されない資金管理が、長く競技を続けるための防衛策になります。 第三に、赤字の年の扱いです。予選落ちが続いて遠征費が賞金を上回り、その年が持ち出し(赤字)になることもあります。青色申告をしていれば、その損失を翌年以後3年間にわたって繰り越し、好成績の年の所得と相殺できます。白色申告ではこの繰越ができないため、収入の波が大きいほど青色申告の意義は大きくなります。 加えて、スポンサー契約、レッスン収入、イベント出演料、ゴルフ関連商品の監修料などが増加していくと、消費税やインボイス制度への対応も重要な論点となります。インボイス発行事業者として登録した場合、これまで免税事業者であったとしても消費税の申告・納税義務が発生します。免税事業者から課税事業者となった小規模事業者向けの「2割特例」は、令和8年(2026年)9月30日を含む課税期間までが対象とされ、個人事業主の場合は2026年分の申告が最後の適用となります。その後、令和8年度税制改正により、個人事業者の令和9年分・令和10年分について、売上税額の3割を納税額とする「3割特例」が設けられています。海外試合やスポンサーとの取引が絡む場合には消費税の判断も複雑になりやすいため、インボイス登録の要否や簡易課税制度との比較を、収入が大きく伸びる前から検討しておくことが望ましいでしょう。 7. 競技に集中するための申告体制と長期的な備え プロゴルファーにとって最大の目標は、厳しい練習を積み重ね、トーナメントの重圧の中で最高のパフォーマンスを発揮し、勝利を掴み取ることです。確定申告や税金対策は個人事業主として活動を続ける上で絶対に避けては通れない業務ですが、複雑な税務判断や領収書の整理に膨大な時間を奪われ、本業であるゴルフの練習や身体のケアに支障が出ては本末転倒です。 そのため、第一線で活躍し続ける多くのプロゴルファーは、税務に関する日々の記帳業務や確定申告書の作成を税理士などの専門家に委託する体制を構築しています。プロスポーツ選手の税務に精通した税理士と連携することで、特殊な経費の判断や青色申告の手続きを法令に則って正確に進められるだけでなく、万一の税務調査でも、専門的な見地から代理人として対応を任せることができます。これにより、選手自身は安心して競技に全力を注ぐことができる環境を手に入れることができます。 さらに、トーナメント生活は人生の一定期間に集中する傾向があります。ツアーの第一線を退いた後、レッスンプロとして後進の指導にあたるのか、ゴルフ関連の事業を立ち上げるのか、あるいは自身のブランドを展開していくのか、セカンドキャリアの選択肢は多岐にわたります。現役時代から「小規模企業共済」などの制度を活用し、掛金を全額所得控除としながら将来に向けた退職金を積み立てたり、自身の活動を多角化してスポンサーとの強固な関係を維持したりするなど、長期的な視点での財務基盤を築いておくことが非常に重要です。毎年の確定申告を、単なる税務署への報告作業として捉えるのではなく、自身のプロゴルファーとしての事業活動を数字で客観的に振り返り、将来のキャリアやブランド維持を見据えた基盤づくりの一環として位置づけることが、真のプロフェッショナルとして成功を収めるための確かな足掛かりになるでしょう。
- [競輪選手における確定申告の実務と税務上の留意点に関する包括的解説](https://shiodome.co.jp/column/58128/) - 2026年5月、平塚競輪場で開催された日本選手権競輪(競輪ダービー)において、G1レースとして史上初めて優勝賞金が1億円を超えるという歴史的な節目を迎えました。車券売上高も順調に増加を続けており、競輪はいまやプロスポーツのなかでも屈指の高賞金競技へと変貌を遂げつつあります。 プロスポーツの世界において、競輪は公営競技として極めて厳格なルールの下で運営されており、選手たちは日々過酷なトレーニングとレースに身を投じています。競輪選手として最高のパフォーマンスを発揮し、上位の級班を維持し続けるためには、競技そのものに集中できる環境を整えることが何よりも重要です。しかしながら、プロの競輪選手は税務上において個人事業主として位置づけられるため、毎年必ず確定申告という複雑な税務手続きと向き合わなければなりません。 競輪選手の場合、一般的な個人事業主とは異なり、収入の構造や発生する経費の性質が非常に独特であるという特徴を持ち合わせています。そのため、税務に関する正しい知識を持たずに申告作業を行ってしまうと、適正な経費計上が漏れてしまったり、逆に税務調査において指摘を受けるリスクを抱えたりする事態に繋がりかねません。本記事では、税理士法人の視点から、競輪選手の確定申告における基本的な構造から、特殊な経費の取扱い、そして将来を見据えた長期的な税金対策までを詳しく解説いたします。 1. 競輪選手の確定申告における基本構造 競輪選手はどのような収入構造のもとで申告を行うのか、その基本的な位置づけを正しく理解することが適正な税務申告の第一歩となります。競輪選手は公益財団法人JKAに選手登録を行い、日本競輪選手会に所属しますが、これらの団体と雇用契約を結んでいるわけではありません。税務上の取り扱いにおいては、選手一人ひとりが独立した「個人事業主」として判定されるのが一般的です。したがって、競輪選手としてレースに出場して獲得した賞金や各種手当は、給与所得ではなく「事業所得」として区分されます。 給与所得者の場合は、所属する企業が毎月の給与から税金を天引きし、年末調整によって一年間の税額を確定させてくれるため、原則として自身で確定申告を行う必要はありません。しかし、個人事業主である競輪選手は、一年間(1月1日から12月31日まで)に得たすべての収入から、事業を行う上で直接必要となった経費を自ら差し引き、その利益(所得)に対して課される所得税を自身で計算して申告・納付する義務を負います。 また、日本競輪選手会などを通じて賞金が支払われる際、あらかじめ一定の所得税が源泉徴収として差し引かれているケースが多くありますが、これはあくまで仮払いの税金であり、最終的な税額ではありません。確定申告を行うことで、すでに源泉徴収された税額と本来納めるべき税額を精算し、納めすぎている場合には還付を受け、不足している場合には追加で納付するという手続きが求められます。このように、競輪選手の税務はすべて自己責任の下で管理されなければならないという大前提を認識しておくことが極めて重要です。 2. 賞金・手当・開催ごとの収入をどう整理するか 競輪選手の収入は本賞金にとどまらず、各種手当、スポンサー収入、物品提供まで多岐にわたります。事業所得の総収入金額を正しく計算するには、これらすべての収入源を漏れなく整理する必要があります。 主な収入源は、レース参加に伴う収入です。本賞金のほか、出走手当、悪天候時の特別手当、ミッドナイト競輪の手当など、開催ごと・出走ごとに細かな収入が発生し、いずれも事業収入として計上します。JKAから支給される参加旅費も収入計上する一方、実際に支払った交通費は別途経費とします。なお、年末年始をまたぐ「またぎ開催」の賞金は、最終日が属する年の所得として申告します。通常は支払明細書等が発行されるため、これを基に正確に集計します。 トップ選手になると、自転車のフレームビルダーや部品メーカー、アパレルブランドなどから個人スポンサー契約を獲得し、協賛金を受け取るケースもあります。このようなスポンサーからの収入も、競輪選手としての活動に付随して得られるものであるため、事業所得として取り扱うことが妥当です。 また、税務上において特に見落とされがちなのが、現金以外の「物品提供」を受けた場合の処理です。スポンサー企業から競技用のフレーム、ホイール、ウェア、あるいは高価なサプリメントなどを無償で提供された場合、それらは税務上「経済的利益」とみなされ、収入計上が必要になることがあります。この場合は、提供された物品の時価相当額を収入として認識した上で、それが事業遂行に直接不可欠なものであれば、同額を必要経費等として計上します。このように現金として口座に振り込まれない提供物であっても、適正に評価して帳簿に反映させる姿勢が求められます。なお、レースの副賞については、通常小売価格の60%相当額(宝石・貴金属は時価、商品券は券面額)を計上する取扱いもあります。最後に押さえておきたいのが、選手会費と引退時に受け取る退職給付金の関係です。賞金から差し引かれる日本競輪選手会費には取り扱いが二種類あり、「甲・乙・丙会費」は支払った年の必要経費となる一方、退職給付の積立分は給付を受け取った年の必要経費となります(控除額は翌年に選手会から通知)。現役中は経費にならず受取年に初めて控除できる点、そして引退時に受け取る退職給付金等が課税所得になる点は見落とされやすい重要な論点です。なお、この退職給付金は退職所得ではなく「一時所得」に区分されます。 3. 級班・競走得点・失格リスクが税務管理に与える影響 競輪選手は、S級(S班、1班、2班)およびA級(1班、2班、3班)といった厳格な級班制度によってランク付けされており、この級班や直近の競走得点が、出場できるレースの格や収入額に直接的な影響を及ぼします。上位の級班に所属し、G1などの特別競輪に出場できるようになれば、獲得できる賞金額は飛躍的に増加します。しかし、逆に成績不振が続けば下位の班へ降格し、出場できるレースの賞金水準が下がるため、それに伴って収入も大きく減少するという厳しい実力主義の世界に置かれています。 このような収入変動の激しさは、税務管理や将来設計を行う上で非常に重要な要素となります。日本の所得税は、所得額が高くなるほど税率も段階的に高くなる累進課税制度を採用しています。したがって、ある年に飛躍的な活躍を見せて多額の賞金を獲得した場合、その年の所得に対して適用される最高税率が跳ね上がり、翌年に納付すべき所得税や住民税などの負担が想定以上に重くのしかかります。賞金の増加は選手にとっての朗報である一方、好成績の年ほど翌年の税負担が重くなるという構造から、税務管理の重要性は年を追うごとに増す一方です。 さらに競輪特有のリスクとして、レース中の違反行為による失格や、落車による大怪我のリスクが常に隣り合わせである点が挙げられます。また、近年ではドーピング検査の厳格化も増しているため、いわゆる「うっかりドーピング」、すなわち故意でない場合であっても処分対象となるため、選手は日常的に使用するサプリメントや市販薬の成分にまで細心の注意を払う必要があります。重度な違反によって長期間の斡旋停止処分を受けたり、骨折などの怪我で数ヶ月間にわたってレースを欠場せざるを得なくなったりした場合、その期間の賞金収入は完全に途絶えてしまいます。しかし、収入が途絶えた期間であっても、前年の高い所得に基づいて計算された高額な税金や社会保険料の支払いは容赦なくやってきます。 このような事態に備えるためには、単年の収入だけを見て資金を使い切るのではなく、将来的な級班の変動や怪我による欠場リスク、さらには翌年の税負担額を常に予測し、手元に十分な流動資金を確保しておくという、複数年を見据えた高度な税務および資金管理が不可欠です。 4. 必要経費として認められやすい支出と、判断が分かれやすい支出 確定申告において、事業の利益を正確に算出し、適切な納税額を導き出すためには、日々の支出の中から「必要経費」に該当するものを正しく抜き出して計上する作業が必須です。競輪選手は自身の身体能力と機材を駆使して賞金を獲得する事業を営んでいるため、発生する経費の項目も多岐にわたります。しかし、すべての支出が経費として認められるわけではなく、プライベートな生活費と事業用経費の境界線が曖昧になりやすい支出も多くあります。以下の表に、競輪選手において経費として認められやすい支出と、税務上の判断が分かれやすいボーダーライン上の支出についての一般的な傾向を整理いたしました。 表に示した通り、競技にのみ使用する機材や用具に関する支出は、業務との関連性が明確であるため、経費としての正当性を主張しやすい項目です。一方で、食事代や一般的な疲労回復費、日常的な衣類などは「家事関連費」と呼ばれ、生活費なのか事業用経費なのかの判別が非常に困難です。税務調査等においてこれらの支出の経費性を否認されないためには、その支出が競輪選手としての事業収入を得るためにいかに直接的かつ不可欠であったかを、領収書の保存とともに、客観的な記録や専門家の見解などを交えて論理的に説明できる状態を平時から整えておくことが重要です。 5. 機材投資と遠征負担をどう記録し、どう管理するか 競輪という競技の特性上、選手のパフォーマンスを直接的に左右する自転車本体やその部品への継続的な投資は、事業継続のために欠かすことのできない重要な要素です。競技で使用されるフレームは、選手の体格や脚質に合わせてミリ単位でオーダーメイドされることが多く、非常に高額な支出となるケースが多くあります。このような高額な機材を購入した場合、税務上は購入した年の経費として一度に全額を落とすことができるとは限りません。 一定の金額基準を超える高額な資産を購入した場合は、それを「固定資産」として一度帳簿に資産計上し、税法で定められた耐用年数(その資産が使用できると見込まれる期間)にわたって、分割して経費化していく「減価償却」という会計処理を行う必要があります。自転車の場合も例外ではなく、取得価額によっては複数年にわたって経費処理を行うことが求められるため、購入時の請求書や領収書を正確に保存し、それぞれの機材がいつ、いくらで購入されたものかを固定資産台帳などで厳格に管理することが必要です。また、レースや練習ごとに消費されるタイヤやチェーンといった消耗品については、購入した年の経費として処理しやすいですが、年末時点で未使用のまま保管されている在庫分に関しては、その年の経費からは除外し、翌年以降に実際に使用した時点で経費化するという細かな処理が求められることもあります。 遠征負担に関する記録管理も同様に重要です。競輪選手は全国各地の競輪場で開催されるレースに出場するため、年間を通じて多大な移動費や宿泊費が発生します。新幹線や飛行機のチケット代、ホテル代の領収書を保管することはもちろんのこと、どの開催に向けた遠征であったのかをスケジュール帳や出走記録と紐付けておくことが望ましいです。さらに、日常の練習拠点である所属バンクまでの交通費や、街道練習に向かう際の自動車のガソリン代なども経費として認められる場合がありますが、プライベートでの車の使用と混在している場合は、走行距離や使用日数などの合理的な基準を用いて、事業割合分のみを抽出する「家事按分」の手続きが不可欠となります。 6. 収入の波に備える税金対策と資金管理 競輪選手が個人事業主として持続的な活動を行っていくためには、日々の経費管理だけでなく、制度を活用した合法的な税金対策と、計画的な資金管理の実行が極めて重要になります。まず検討すべき基本事項は、青色申告制度の適用を受けることです。一定の要件を満たす正規の簿記の原則に従って日々の取引を帳簿に記録し、期限内に申告を行うことで、最大で65万円を所得から差し引くことができる青色申告特別控除を受けられるなど、多くの税制上の利点を享受できます。なお、令和8年度税制改正により、令和9年分から青色申告特別控除の要件が見直され、e-Taxによる申告や帳簿の電磁的記録保存等の一定のデジタル対応を満たす場合には、控除額が最大75万円へ拡充される方向です。一方で、紙での申告や簡易な記帳に依存したままでは、従来よりも控除面で不利になる可能性があるため、開催ごとの収入・経費をデジタルで蓄積し、クラウド会計等を活用した管理体制を早めに整備しておくことが望ましいです。 また、第3章でも触れた通り、競輪選手の収入は年によって大きく変動します。特定の年に特別競輪で優勝するなどして賞金収入が急増すると、累進課税によって税負担も大きく膨らみます。問題は、その負担が翌年にやってくる点です。獲得した賞金をすぐに生活費や機材投資に全額充ててしまうと、後からやってくる税金の支払いに窮することにもなりかねません。仮に翌年、成績不振などで収入が落ち込んでいても、前年の高い所得をもとに計算された納税が重くのしかかります。そのため、好調な年ほど納税資金をあらかじめ確保しておくことが、競輪選手の資金管理では決定的に重要になります。 具体的には、賞金が振り込まれた段階で、想定される税率分の金額を生活用の口座とは別の「納税準備用口座」へ移しておく方法が有効です。事業用資金・生活資金・納税資金を明確に分けておくことが、安定した競技生活を支える土台となります。確定申告によって税額が確定すれば、その後の納税時期と納税額をある程度見通すことができます。所得税は原則として翌年3月15日が納付期限ですが、前年の納税額が一定額を超えると、その年の所得税の一部を二回に分けて前払いする「予定納税」(7月と11月)が求められます。さらに、初夏以降には住民税の納付が始まり、課税事業者であれば消費税の納付も加わります。こうした納税スケジュールをあらかじめ書き出し、それぞれの金額を見積もっておけば、資金繰りに突然窮する事態を避けられます。 消費税については、基準期間の課税売上高が1,000万円を超える場合だけでなく、インボイス発行事業者として登録するかどうかによっても実務負担が大きく変わります。登録を行った場合、免税事業者であった競輪選手であっても消費税の申告・納税義務が生じるため、賞金やスポンサー収入の規模が拡大している選手ほど慎重な判断が必要です。免税事業者から課税事業者となった小規模事業者向けの「2割特例」は、令和8年(2026年)9月30日を含む課税期間までが対象とされ、個人事業主の場合は2026年分の申告が最後の適用となります。また、令和8年度税制改正では、個人事業者の令和9年分・令和10年分について、売上税額の3割を納税額とする「3割特例」が設けられているため、今後の課税負担を見積もったうえで、簡易課税制度との比較や届出期限の管理を行うことが重要になります。なお、簡易課税制度を選択する場合、競輪選手の賞金等は第5種事業に区分され、みなし仕入率は50%とされています。 7. 競技に集中するための申告体制と長期的な備え 競輪選手にとっての最大の使命は、日々の厳しい鍛錬を乗り越え、バンク上で最高の走りをファンに届けることです。個人事業主である以上、確定申告は避けて通れない義務ではありますが、領収書の整理や複雑な帳簿作成といった事務作業に多大な時間を奪われ、休息やトレーニングに支障をきたしてしまっては、選手としての本分を果たすことが難しくなってしまいます。 そのため、第一線で活躍し続ける選手の多くは、税務に関する日々の記帳業務や確定申告書の作成を税理士などの専門家に委託する体制を整える傾向があります。税理士と連携することで、複雑な減価償却の計算や青色申告の要件を正確に満たすことができるだけでなく、税務署からの問い合わせや万が一の税務調査に対しても、代理人として専門的な視点から対応を任せることができます。特に、プロスポーツ選手の税務に精通した税理士法人であれば、競輪業界特有の商習慣や経費の判断基準についても深い理解があるため、実態に即した安全かつ有利なアドバイスを受けることが期待できるでしょう。 さらに、競輪選手としての現役生活にはいつか必ず終わりが訪れます。引退後に指導者への道へ進むにせよ、競輪とは全く異なる新たな事業を立ち上げるにせよ、現役時代からしっかりとした財務基盤を築いておくことは非常に重要です。備えの柱の一つが、選手会の退職給付金です。ただし、かつて手厚かったこの制度は競輪業界の財政事情を背景に見直しが進み、給付の水準や要件は現役時代に見込んだ通りとは限りません。選手会給付だけをあてにするのは危険であり、自助努力での備えが欠かせません。その有力な手段が「小規模企業共済」です。個人事業主のための退職金制度で、毎月の掛金(月1,000円〜70,000円)は全額が所得控除の対象となります。現役時代の高い所得を圧縮して節税しながら引退後の資金を着実に積み立てられるため、累進課税の高い税率帯にある選手ほど効果が大きい仕組みといえます。 毎年の確定申告を、単なる「税金を納めるための煩わしい作業」として捉えるのではなく、自身の事業活動を数字という客観的な指標で振り返り、将来の安定した生活とキャリア移行への備えを構築するための重要なプロセスとして位置づけることが、プロフェッショナルな個人事業主としての成功を導く確かな道筋になると言えるのではないでしょうか。
- [プロサッカー選手(Jリーガー)における確定申告の実務:所得区分の判定から戦略的必要経費、法人化の検討に至る包括的指針](https://shiodome.co.jp/column/57478/) - 現代のプロサッカー選手は、ピッチ上での卓越したパフォーマンスを通じて多くのファンを魅了するとともに、社会的に大きな影響力を持つ公的な存在として位置づけられています。日本のプロサッカーリーグをはじめ、国内外の第一線で活躍する選手たちは、クラブからの多額の報酬のみならず、スポンサー契約やメディア出演など、多岐にわたる活動を通じて収益を得る機会が増加しています。それに伴い、選手個人に求められる税務申告の実務も年々複雑化の度合いを深めていると言わざるを得ません。 プロスポーツ選手としてのキャリアは、一般的な会社員と比較して短期間に高額な収入が集中しやすいという特殊な性質を持っています。そのため、ご自身の収入構造を正しく理解し、適正な税務・確定申告を行うことは、単なる法令遵守の観点にとどまらず、現役時代における手元資金の最大化や、引退後のセカンドキャリアを見据えた長期的な資産保全において極めて重要な意味を持ちます。万が一、不適切な処理によって税務調査で申告漏れを指摘された場合、多額の追徴課税が発生するだけでなく、選手としての社会的信用の失墜や、スポンサー契約の解除といった深刻な事態を招く恐れも否定できません。本記事では、プロサッカー選手が直面する確定申告の実務について、税理士法人としての専門的な視点から、所得区分の基礎的な考え方から必要経費の適切な判断基準、さらには法人化を視野に入れた戦略的な税務管理に至るまで、包括的に解説してまいります。 1. プロサッカー選手の契約形態と所得区分―プロ契約、雇用契約、報酬体系の違いをどう捉えるか 日本のプロサッカー界においては、選手の経験年数や実績に応じてプロA契約、プロB契約、プロC契約といった複数の契約形態が設けられていますが、確定申告をはじめとする税務上の取り扱いを検討するうえで最も根本的な指標となるのは、クラブとの間で締結されている契約が法的にどのような性質を有しているかという点に尽きます。多くのプロサッカー選手は、特定の企業に雇用されて毎月の給与を受け取る労働者としてではなく、自身の卓越した技能や労働力を提供することで報酬を得る「個人事業主」として、クラブと専属的な業務委託契約に類する契約を締結していると解釈されるのが一般的です。 個人事業主として活動していると判定された場合、クラブから支払われる基本報酬や各種インセンティブは「給与所得」ではなく「事業所得」に分類されることになります。事業所得として確定申告を行う最大の仕組みは、1年間に得られた総収入金額から、その収入を獲得するために直接要した経費(必要経費)を差し引いた残額に対して課税されるという点にあります。一方で、実業団チームに所属しつつ企業の社員として雇用契約を結んでいるアマチュア選手や、一部の特殊な契約形態の下にある選手の場合は、受け取る金銭が「給与所得」に該当する可能性も残されています。給与所得の場合、経費の範囲が給与所得控除という概算額に限定されるため、事業所得のように実際の支出を細かく経費として計上することは原則として認められません。そのため、ご自身の契約書の内容を精査し、得られる収入が税務上のどの所得区分に該当するのかを正確に判定することが、適切な申告体制を構築するための第一歩となると考えられます。 2. 年俸だけではない収入の整理―出場給、勝利給、契約金、スポンサー収入、出演料 プロサッカー選手の収入構造は、クラブから毎月支払われる基本報酬(いわゆる年俸)だけにとどまらず、試合での活躍や付随する事業活動に応じて多岐にわたる傾向にあります。確定申告において適正な税額を算出するためには、これら多様な収入源を一つ残らず網羅的に把握し、適切な勘定科目で集計することが不可欠となります。以下に、プロサッカー選手が得る可能性のある代表的な収入の種類と、その税務上の取り扱いの目安について整理いたします。 これらの収入の中で特に申告漏れが生じやすいと指摘されるのが、現物支給品やサービスの無償提供です。これらを単なる贈り物として認識し、収入から除外してしまうと、後日の税務調査で思わぬ指摘を受ける原因となり得ます。また、移籍時などの多額の「契約金」については、超過累進税率の適用によりその年の税負担が極端に重くなる可能性があるため、「変動所得・臨時所得の平均課税制度」を適用できるかどうかを事前に専門家と協議し、慎重に検討を行うことが望ましいとされます。 3. 代理人報酬・広報委託費・自主トレ費用の税務上の位置づけ 事業所得における必要経費として認められるためには、その支出が事業収入を得るために直接必要であったことを客観的かつ合理的に説明できることが前提となります。プロサッカー選手の場合、競技パフォーマンスの維持・向上や、選手としての市場価値を高めるための支出が、翌年以降の契約条件やスポンサー収入に直結するという特殊性があるため、一般的な事業主とは異なる視点での経費判断が求められます。 まず、クラブとの契約更改や移籍交渉を有利に進めるためにエージェント(代理人・仲介人)と契約を結んでいる場合、そのエージェントに対して支払う仲介手数料やマネジメント報酬は、事業を遂行するうえで直接的に必要な支出であると見なされやすく、支払手数料等の科目で全額を必要経費として確定申告の際に算入できる可能性が高いと考えられます。 また、現代のプロスポーツ選手にとって、SNSを通じた情報発信やファンとの交流は、自身のブランディングや新たなスポンサー獲得に寄与する重要な事業活動の一つとなっています。そのため、公式ウェブサイトの制作・維持管理費、SNS用の動画編集を外部のクリエイターに委託した際の外注費、専門のPR会社への広報委託費なども、広告宣伝費として経費計上できる余地が十分に存在します。 さらに、シーズンオフ期間中に行う自主トレーニングの費用についても、パーソナルトレーナーへの指導料、トレーニング施設への遠征費や宿泊費など、翌シーズンの活躍に向けた競技力向上のための不可欠な投資であると明確に説明できる範囲においては、経費性が認められる傾向にあります。ただし、家族同伴での旅行を兼ねたようなトレーニング合宿の場合、私的支出との混同を避けるため、トレーニングに専念した期間や費用を明確に区分するなどの厳密な管理が必要となります。 4. 必要経費の判断で迷いやすい支出―メンテナンス費、交際費、衣装代、遠征・移動関連費用 前述した支出に加えて、日々の生活と事業活動の境界線が曖昧になりやすく、税務調査において争点となりやすい支出項目がいくつか存在します。これらの支出については、「家事関連費」として扱われる可能性があり、事業遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる部分に限定して経費算入することが原則とされています。 これらの項目に共通して言えることは、客観的な証憑(領収書や請求書)の保存に加えて、事業との関連性を第三者に論理的に説明できる準備を整えておくことの重要性です。プライベートな支出が少しでも混在している可能性がある項目については、保守的な観点から厳格な家事按分の基準を設け、無理な経費計上を控えることが、結果として選手自身の身を守る堅実な申告体制につながると見込まれます。 5. 青色申告と資金管理の整備―現役中の手残りを高めるための基本設計 プロサッカー選手として個人事業主の立場で活動するにあたり、税負担を適正に軽減し、現役時代の手元資金(手残り)を最大化するための最も基本的かつ強力な制度が「青色申告制度」の活用であると言えます。青色申告の承認申請書を期限内に税務署へ提出し、正規の簿記の原則(複式簿記)に従って日々の取引を正確に帳簿に記録することで、要件を満たせば最高65万円の青色申告特別控除を事業所得から差し引くことが可能となります。 なお、令和8年度税制改正により、電子申告や一定のITデジタル対応を条件として、令和9年分から控除額が最大75万円へ拡充される一方、書面申告は縮小される方針です。将来を見据え、今のうちからデジタル化に対応した体制を整えておくことが、さらなる手残り資金の最大化に繋がります。 日本の所得税は所得水準が上がるにつれて税率が高くなる超過累進税率を採用しているため、トップクラスのプロサッカー選手のように高額な収入を得ている場合、この65万円の所得控除がもたらす実際の節税効果は非常に大きなものとなります。また、青色申告を選択することで、業務に使用するパソコンやトレーニング機材等を一括で経費計上できる少額減価償却資産の特例 (令和8年3月31日以前取得は30万円未満、令和8年4月1日以後取得は40万円未満、いずれも年間合計300万円が上限) が適用できるほか、万が一事業で赤字が生じた場合に、その損失を翌年以降3年間にわたって繰り越すことができるなど、多大なメリットを享受できる環境が整います。 さらに、複式簿記による厳格な帳簿作成を継続することは、単なる税制上の優遇措置を受けるための手段にとどまりません。毎月の収入と支出のバランス、資金繰りの状況をデータとして客観的に可視化することで、将来の不測の事態に備えた健全な資金管理体制の構築に直結します。クラウド型の会計システムや経費精算アプリを導入し、税理士等の専門家とリアルタイムでデータを共有する仕組みを整えることで、多忙なシーズン中であっても経理事務の負担を大幅に軽減しつつ、極めて精度の高い確定申告に向けた準備を進めることが可能となると考えられます。 6. プライベートカンパニー設立を検討すべき場面―所得水準、家族関与、引退後の事業展開との関係 選手としてのキャリアが順調に推移し、年俸やスポンサー収入等の所得水準が一定の規模(一般的には個人の課税所得が1,000万円前後を継続的に超過するような水準)に達した場合、個人事業主としての活動を継続するだけでなく、資産管理会社(いわゆるプライベートカンパニー)を設立することによる税務上の戦略的アプローチが検討される場面が生じます。 法人化を検討する最大の理由の一つは、個人の所得税における最高税率と比較して、法人税の実効税率の方が一定の所得帯においては低く抑えられているという税率構造の違いを活用することにあります。また、設立した法人の役員としてご家族を就任させ、法人の業務に対する正当な対価として役員報酬を支給することで、世帯全体での所得分散を図り、税負担を適正な水準に平準化する効果も期待できる余地があります。 ただし、プロサッカー選手が法人化を検討する際には、実務上特有のハードルが存在することに留意が必要です。リーグの規約やクラブとの契約条項により、選手としてのプレーそのものに対する報酬(年俸など)を、個人ではなく法人名義で直接受け取ることが制限されているケースが多く見受けられます。そのため、選手としての基本報酬は引き続き個人事業主として受け取りつつ、肖像権の管理業務、メディア出演、スポンサー契約に伴う広告宣伝業務、あるいは将来に向けたサッカースクールの運営といった特定の事業活動のみを法人に集約させるといった、個人と法人を併用する高度なマネジメント体制(マイクロ法人の活用など)が採用されることが一般的です。このような組織体制には、法人設立費用の発生や、社会保険料の負担増、税務申告の複雑化といったコストも伴うため、目先の節税効果だけにとらわれず、引退後の事業展開も視野に入れた総合的なシミュレーションが不可欠となります。 7. 選手寿命を見据えた長期的な税務・資産管理―引退後を見据えた制度活用と申告体制の構築 プロスポーツ選手という職業は、一般的なビジネスパーソンと比較して「稼げる期間」が限定的であり、現役を退いた後の人生(セカンドキャリア)が非常に長いという宿命を背負っています。したがって、現役時代に得られた高水準の収入を、いかにして適正な税務管理の下で保全し、将来に向けた資産として残していくかという長期的な視点が不可欠となります。 そのための具体的な手段として広く活用が検討されるのが、「小規模企業共済」や「個人型確定拠出年金(iDeCo)」といった、国の制度を活用した将来資金の積立です。これらは、支払った掛金の全額が所得控除の対象となるため、確定申告において現役時代の高い税率が課される所得を効果的に圧縮しながら、将来の退職金や年金原資を形成できるという二重のメリットを有しています。特に小規模企業共済は、事業を廃止した際(プロ選手としての引退時)に税制上有利な退職所得としてまとまった資金を受け取ることができるため、税負担を大幅に抑えつつセカンドキャリアへの移行資金を確保する有効な手立てとなります。 プロサッカー選手に求められる確定申告の実務は、単に過去1年間の領収書を集計して税金を計算するだけの事後的な作業ではありません。ご自身の収入構造の変化を先読みし、必要経費の適正な判断基準を日々の活動の中で徹底し、長期的な資産形成を見据えた制度を戦略的に活用するという、未来に向けた包括的なマネジメントのプロセスであると言えます。多岐にわたる複雑な税務判断を選手個人やご家族のみで行うことには限界があるため、プロアスリートの特殊なビジネスモデルに深い知見を持つ税理士のような専門家と早期に連携することが、結果として競技への集中力を高め、社会的信用を盤石なものとする最良の選択肢になると考えられます。
- [スポーツ選手におけるジム代・パーソナルトレーニング費用の必要経費性と確定申告上の留意点](https://shiodome.co.jp/column/57455/) - 1. はじめに スポーツ選手の確定申告では、遠征費、用具代、治療費、栄養管理費などと並んで、ジム代やパーソナルトレーニング代をどこまで経費にできるのかが悩みやすい論点です。とりわけ、競技力の維持向上と日常生活上の健康管理が重なりやすい費目であるため、「スポーツ選手ジム代経費」というテーマは、実務上も非常に判断が分かれやすい領域といえます。結論からいえば、スポーツ選手のジム代・パーソナル代が当然に必要経費になるわけではなく、競技収入を得るために通常必要であったか、私的支出と明確に区分できるか、そしてその内容を客観資料で説明できるかが重要になります。国税庁は、必要経費として算入できる金額について、総収入金額を得るために直接要した費用や、その年に生じた業務上の費用であることを基本として示しています。 この点は、スポーツ選手という職業の特殊性を踏まえても変わりません。たしかに競技者にとって身体づくりは仕事の中核であり、一般の個人事業者よりもトレーニング費用の業務性が認められやすい場面はあります。しかし一方で、ジムの利用には健康維持、体型管理、私生活上の美容・コンディショニングといった私的側面も入り込みやすく、税務上は「競技活動のための支出」であることを丁寧に示す必要があります。したがって、スポーツ選手のジム代を経費計上する際は、「アスリートだから全部経費」という発想ではなく、収入との関連性を一件ごとに整理していく姿勢が求められます。 2. 必要経費の基本的な考え方 まず押さえておきたいのは、必要経費の判断は「費用の名前」ではなく「費用の中身」で行われるという点です。たとえば同じ「ジム代」であっても、所属チームの練習とは別にオフシーズンの競技力維持のため継続的に通っているケースと、健康増進や体型維持のために一般的なフィットネスジムへ通っているケースでは、税務上の見え方が異なります。前者は競技収入との関連性を説明しやすい一方、後者は私的支出とみられやすくなります。税務では、費用が仕事に役立つかどうかだけでなく、収入獲得との距離がどれほど近いかが重視されます。そのため、競技特性、利用目的、契約内容、利用頻度、支払先、トレーニングメニューの内容などを総合して判断することになります。なお、家事上の支出と業務上の支出が混在する「家事関連費」については、業務遂行上直接必要であったことが取引の記録等により明らかに区分できる部分に限り、必要経費に算入できるとされています。ジム代やパーソナル代は、まさにこの家事関連費に該当しやすい費目であるため、後述のとおり、業務使用部分を客観的に切り分ける視点が不可欠です。 3. 所得区分によって異なる取扱い さらに実務上は、スポーツ選手の所得区分によっても考え方が変わりやすい点に注意が必要です。たとえば、スポンサー収入、出演料、指導料、賞金、個人契約に基づく活動収入などをもとに自ら事業的に活動しているスポーツ選手であれば、その活動に通常必要なトレーニング費用は必要経費として検討しやすくなります。 これに対し、チームやクラブから給与を受ける形が中心である選手については、給与所得の計算では一般に実費経費を自由に差し引けるわけではありません。国税庁は、給与所得者については給与所得控除とは別に、一定の要件を満たす「特定支出控除」があることを示していますが、その対象は通勤費、職務上の旅費、転居費、研修費、資格取得費、帰宅旅費、図書費・衣服費・交際費等の勤務必要経費などに限定されています。2このため、チーム所属のスポーツ選手が自費で支払ったジム代やパーソナル代を、給与所得に対応する形でそのまま差し引けると考えるのは慎重であるべきです。トレーニング費用が職務と深く関係していたとしても、給与所得者の特定支出控除は対象範囲が限定されており、しかも一定額を超えることや証明書類を備えることなどの条件が伴います。実務では、ジム代やパーソナルトレーニング代がこの制度にそのまま当てはまるとは言いにくく、極めて限定的なケースを除き、ジム代やパーソナルトレーニング代が特定支出控除の対象となる余地は基本的にありません。 一方で、個人事業的な要素が強いスポーツ選手については、ジム代・パーソナル代の必要経費性を検討する余地が相対的に高まります。たとえば、一定の競技成績やパフォーマンスを維持することが直接的にスポンサー契約、賞金、出演収入等の条件として組み込まれている場合、その水準維持に必要なトレーニング費用は、収入を得るために必要な経費として整理しやすくなります。また、競技種目によっては、所属先の公式練習だけでは足りず、身体能力の維持向上のために外部施設や専門トレーナーを利用することが業務遂行上必要であるケースもあります。そのような場合には、当年の競技活動収入との対応関係、費用の必要性、継続性、競技との関連性を説明できるほど、必要経費としての位置付けは強まりやすいと考えられます。 4. 実務上の判断イメージ 実務上の判断イメージは、次のように整理するとわかりやすくなります。 この表からもわかるとおり、スポーツ選手のジム代・パーソナル代を経費にできるかどうかは、競技との結び付きが具体的に説明できるかどうかで大きく変わります。とくに重要なのは、「その支出がなくても同じ収入が得られたのではないか」と見られにくい状態を作ることです。競技別の身体要件、試合成績への影響、指導者の関与、スポンサー契約で期待されるパフォーマンス水準など、支出の背景を実務的に言語化できるほど、必要経費としての説得力は高まります。必要経費の判断は抽象論ではなく、具体的事実の積み重ねで決まる傾向があります。 5. パーソナルトレーニング代の判断ポイント パーソナルトレーニング代については、ジム会費以上に内容の差が出やすい点も見逃せません。たとえば、競技復帰に向けた機能改善、試合に向けた爆発力強化、フォーム矯正、体重階級調整、競技別の身体操作の習得など、競技実務と強く結び付いた指導であれば、必要経費性を説明しやすい余地があります。これに対し、一般的なボディメイク、見た目の改善、生活習慣の改善、健康維持を主目的とする指導は、たとえアスリート本人が受けていても私的支出と評価されやすくなります。名称が「パーソナル」かどうかより、契約の内容、指導の目的、実施記録の中身こそが税務上は重要です。 6. 収入源が複数ある場合の費用配分 また、スポーツ選手は収入源が複数に分かれやすいため、費用配分にも注意が必要です。たとえば、チームからの給与のほか、スポンサー契約による広告出演料、イベント登壇料、SNS発信に基づく収入、個人レッスン収入などがある場合、ジム代やパーソナル代の全額をひとつの所得に対応させるのではなく、どの収入獲得活動に必要な支出なのかを整理する必要があります。競技活動そのものに関する費用と、タレント活動・インフルエンサー活動に関する費用が混在している場合は、目的ごとの区分が求められやすくなります。税務上は、費用の性質と収入の性質を対応させる視点が重要であり、ここが曖昧なまま一括で処理すると、後で説明が難しくなることがあります。 7. 証憑管理と説明資料の整備 確定申告の場面では、領収書を保存しているだけでは十分でないこともあります。税務署に説明する際には、「いつ、どこで、誰に、何の目的で、どのような内容のトレーニングを受けたのか」が整理されていることが重要です。たとえば、トレーナーとの契約書、請求書、利用明細、トレーニングメニュー、競技日程表、試合前後のコンディション調整記録、所属先やコーチからの指示内容、スポンサー契約で求められる活動内容などを紐付けて保管しておくと、業務関連性を説明しやすくなります。必要経費に当たるかどうかは、最終的には支出の実態に基づくため、資料の厚みがそのまま税務リスクの差につながります。また、電子帳簿保存法の対象となる電子取引の記録については、所定の保存要件に沿って管理することを忘れてはなりません。 8. 家事関連費との線引き さらに、家事関連費との線引きも見落とせない論点です。アスリートにとって身体の維持管理は日常生活とも深く重なりますが、税務上は「生活のための支出」と「収入を得るための支出」を区別する発想が基本になります。そのため、24時間ジムの会費を日常的な運動習慣としても使っている場合や、家族と共通で利用している場合、あるいはプライベートの健康目的が大きい場合には、全額を経費とする整理は慎重に考える必要があります。反対に、競技専用メニューに基づく利用が中心で、利用時間帯や内容も明確であり、私的利用が限定的であれば、必要に応じて合理的な按分を検討する余地もあります。重要なのは、按分率そのものより、その算定根拠が客観的資料に基づいて説明可能であることです。これが示せない場合は、按分計上自体が認められない点に留意が必要です。 9. 給与型選手が注意すべき点 チーム所属選手について、もう一点意識したいのは、勤務先との費用負担関係です。所属チームが本来負担すべきトレーニング環境を選手個人が任意に上乗せしている場合、その全額が税務上当然に認められるとは限りません。給与所得者については、国税庁が示すとおり、実費が広くそのまま控除できる構造にはなっておらず、特定支出控除についても対象範囲と要件が限定的なため、基本的に適用は見込まれません。したがって、給与型のスポーツ選手は、ジム代を「必要経費」と呼ぶ前に、自身の所得区分、所属契約、チームからの補助の有無、給与の支払者による証明の可能性などを整理してから判断することが大切です。 10. 個人事業型選手が注意すべき点 反対に、個人事業的な側面が強いプロアスリートやフリーランス型の競技者は、「スポーツ選手ジム代経費」の論点において、より実態重視の整理がしやすい傾向があります。もっとも、その場合でも、すべてのトレーニング費用が無条件で認められるわけではありません。競技に不可欠な費用であること、支出額が社会通念上不相当に高額でないこと、私的利用が混在していないこと、継続的な記帳と証憑保存がされていることなど、必要経費算入のための基本的な実務処理は不可欠です。確定申告実務では、単に経費に落とすかどうかを考えるのではなく、「第三者に説明しても筋が通るか」という視点で整理すると、申告の質が大きく向上します。これはスポーツ選手のように身体が商売道具となる職業であっても同様です。 11. おわりに 最後に、スポーツ選手のジム代・パーソナル代については、税務上の可否を白黒で単純化しないことが重要です。必要経費の判断基準は、収入を得るために直接要した費用か、または業務上の費用かという原則にあり、給与中心の選手については、自己負担したトレーニング費用を自由に差し引けるわけではなく、特定支出控除の枠組みも限定的です。1,2そのため、申告前に「自分の所得区分は何か」「この支出はどの収入に対応するのか」「私的利用をどう区分するか」を確認しておくことが、不要な税務リスクを避けるうえで有効です。スポーツ選手のジム代・パーソナル代の問題は、アスリート特有の事情を踏まえつつも、最終的には税務の基本原則に忠実に判断することが、実務上重要といえるでしょう。 参考文献 [1] 国税庁「No.2210必要経費の知識」[2] 国税庁「No.1415給与所得者の特定支出控除」
- [モデル・女優のエステ代・美容代に関する必要経費該当性の判断基準確定申告における適正処理の実務ポイント](https://shiodome.co.jp/column/57178/) - 1. はじめに モデルや女優の方から、「エステ代や美容代は経費になるのか」という相談を受けることは少なくありません。とくに、見た目そのものが仕事の成果や受注機会に直結しやすい職業では、美容関連支出が仕事に必要な投資であるという感覚を持ちやすい一方、税務上は日常生活上の支出との境界が非常に曖昧になりやすい領域でもあります。 所得税の実務では、必要経費とは収入を得るために直接必要な費用をいい、家事上の費用は必要経費にならず、家事と業務の双方に関わる家事関連費についても、取引記録などに基づいて業務遂行上直接必要であった部分が明らかに区分できる場合に限り、その区分額のみが必要経費になります。 したがって、モデルや女優だから美容費は当然に経費になる、あるいは逆に美容費は一律に経費にならない、といった単純な整理は適切ではありません。重要なのは、支出の名称ではなく、その支出がどの仕事の、どの収入に、どのように結び付いているかを実態に即して説明できるかどうかです。 2. 必要経費の基本原則と「家事関連費」の考え方 税務上、モデルや女優の美容費を判断する際の出発点は、必要経費と家事関連費の区別です。国税庁は、事業所得における必要経費について、総収入金額を得るために直接必要な売上原価や販売費、一般管理費その他の費用であると説明しています。他方で、家事上の費用は必要経費にならず、家事関連費についても、業務遂行上直接必要であったことが記録等から明らかに区分できる金額に限って必要経費になるとされています。 さらに、所得税法でも、家事上の経費およびこれに関連する経費で政令で定めるものは、原則として必要経費に算入しない建付けになっています。美容代やエステ代は、まさに私生活でも通常発生し得る支出であるため、税務上は「見た目を整えるために使った」という抽象的な説明だけでは足りず、仕事に直接必要であったことを具体的に示す必要があります。 この点は、一般の個人事業者が自宅兼事務所の家賃や水道光熱費を按分する場面と考え方が似ています。ただし、モデルや女優の美容費は、住居費よりもさらに私的要素が濃く見られやすいため、より慎重な整理が求められます。たとえば、日常的なスキンケア、通常の美容院代、私生活でも使う化粧品、一般的なネイルやまつ毛施術などは、たとえ職業上イメージ維持に役立つとしても、直ちに「収入を得るために直接必要な費用」と評価するのは難しいことが多いです。 これに対し、特定の撮影案件、舞台、公演、広告出演、ブランドイベントなどに対応するため、契約先や制作側の要請に基づき、または当該業務の性質上不可欠な準備として行った施術であり、その内容と案件との対応関係が証憑で追える場合には、必要経費として検討しやすくなります。ここでも鍵になるのは、「職業上役立つ」程度ではなく、「当該業務の遂行に直接必要であった」といえるかどうかです。 3. エステ代・美容代が経費になりやすい場面 モデルや女優の仕事では、外見管理が収益活動の一部であること自体は否定しにくく、実務上も美容関連費のすべてが私費になるわけではありません。たとえば、広告撮影や舞台出演、雑誌企画、ショー出演などの個別案件について、役柄、衣装、撮影コンセプト、ブランド要件、事務所や制作会社からの指定に応じて、当該案件のために行った特別な施術費用は、業務との結び付きが比較的説明しやすい支出です。ヘアメイク代、撮影当日のスタイリング費、作品撮りや本番対応のためのボディメンテナンス費用なども、案件単位で必要性が立証できるのであれば、必要経費として検討対象になり得ます。 また、国税庁はモデルに支払う報酬・料金が源泉徴収の対象となり得ること、芸能出演に関する報酬・料金も源泉徴収の対象になり得ることを示しており、モデル・女優の活動が独立した役務提供として収益化されているケースがあることは、公的な取扱いからも確認できます。3その意味でも、案件に直接対応した美容関連支出については、個別の収入との対応関係を丁寧に示すことが重要です。 以下の表は、モデル・女優のエステ代や美容代について、税務上の判断実務を整理したものです。個別事情で結論は変わり得ますが、考え方の方向性としては次のように整理しやすいです。 4. 経費になりにくい場面と注意点 一方で、エステ代・美容代が経費になりにくい場面も明確に存在します。典型例は、継続的な美貌維持、体型維持、清潔感維持、印象管理といった、職業人としては重要であっても、同時に私生活上の満足や生活維持とも重なる支出です。モデルや女優の仕事では、本人の容姿や雰囲気そのものが商品性を持つため、「仕事のためにきれいでいる必要がある」という説明はもっともらしく聞こえます。 しかし、税務上の必要経費は、そのような広い意味での有用性だけでは足りません。日常の美容代が必要経費として広く認められてしまうと、一般の生活費との区別がつきにくくなるため、税務上はかなり厳格に見られやすいのが実務です。したがって、月1回のエステ、定期的な美容皮膚ケア、通常のヘアサロン、普段使いの化粧品や基礎化粧品などは、仕事への寄与があったとしても、原則として私的費用の性質が強いと考えるのが無難です。 また、仕事用と私用が混在している支出について「全部は無理でも半分ならよいだろう」という感覚的な按分をしてしまう例もありますが、これも注意が必要です。国税庁は、家事関連費のうち必要経費にできるのは、取引記録などに基づき、業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合のその区分額に限るとしています。 つまり、按分そのものは否定されていませんが、合理的根拠のない割合計上は望ましくありません。モデルや女優の美容費についても、案件ごとの施術回数、使用日、制作指示、撮影スケジュール、業務専用のプロフィール撮影の有無など、客観資料に基づく区分が前提になります。「この職業なら美容費は経費」といった業種一括の処理は、税務上の説明としては根拠が十分とはいえず、税務調査等において指摘を受けるリスクがあります。 5. モデルと女優の報酬形態により分かれる経費の実務判断 同じ美容費を支出した場合でも、受け取る報酬の性質により税務処理の前提が異なることがあります。国税庁は、モデルに支払う報酬・料金を源泉徴収の対象として挙げている一方で、一定のファッションモデルやマネキン等について、その役務提供の状態が勤務に類似している場合には、給与等として源泉徴収して差し支えないとする取扱いを示しています。 つまり、モデル業務は、独立した役務提供として扱われる場面もあれば、勤務実態に近い給与所得として整理される場面もあり得ます。女優についても、所属プロダクション等との契約実態によっては、フリーランス的な役務提供として報酬処理される場合と、雇用に近い形で給与処理される場合とで前提が変わります。この違いは、その報酬として支払われる対価が「事業所得や雑所得」なのか、それとも「給与所得」なのかという所得区分により確定します。独立した個人事業主として「事業所得」や「雑所得」を得ている場合には、前述のような「必要経費」の算入可否が論点となります。ここでは、その美容費が業務遂行上直接必要であるか、家事費との按分が客観的に可能かという個別具体的な事実認定のフェーズに移ります。 一方、「給与所得」と判定される場合、納税者には収入金額に応じた「給与所得控除」という概算経費が適用されます。この構造上、個別の美容費を実費として必要経費に算入する余地は原則としてありません。したがって、自分の仕事が「モデル・女優」という職業名で呼ばれているかどうかよりも、まずは自身の契約実態や源泉徴収の区分を確認し、所得区分の入口を整理することが不可欠です。「給与所得」であれば処理は極めてシンプルであり、「事業所得や雑所得」であれば帳簿の備え付けと業務関連性の立証が求められるという、計算体系の違いを正しく理解する必要があります。美容費だけを切り取って考えるのではなく、所得区分全体の整理の中で位置付けることが重要です。 6. 確定申告で求められる証憑管理と実務対応 モデルや女優のエステ代・美容代を必要経費として申告する場合、最も重要なのは証憑管理です。領収書があるだけでは足りず、どの案件のための支出か、いつの仕事に対応するのか、私用部分が含まれていないか、含まれているならどのように区分したのかを説明できる状態にしておく必要があります。 実務上は、契約書、出演依頼書、撮影スケジュール、メールでの指示、香盤表、請求書、領収書、クレジットカード明細、現場写真、ポートフォリオ更新資料などを組み合わせて保存しておくと、後から説明しやすくなります。国税庁も、所得を正しく計算して申告するためには日々の取引を記帳し、帳簿や書類を一定期間保存する必要があることを示しており、青色申告では帳簿書類の原則7年保存が求められます。美容費のようなグレーになりやすい支出ほど、資料保存の質が税務上の説得力を左右します。 また、申告方針としては、経費にできそうなものを広く拾うよりも、業務との直接対応関係が明確なものから積み上げていく方が安全です。たとえば、年間を通じた定期エステ代をまとめて必要経費にするより、広告撮影前にブランド指定で受けた施術費、舞台本番のための当日ヘアメイク費、プロフィール撮影専用のスタイリング費など、案件対応型の支出を中心に整理した方が、税務上の説明可能性は高まります。反対に、仕事にも役立つが私生活でも当然に行う美容支出は、安易に経費計上しない判断が、結果として申告全体の整合性を高めます。税務調査では、個別の高額支出そのものだけでなく、申告全体の一貫性も見られるため、判断基準を自分の中で統一しておくことが重要です。 7. おわりに モデルや女優のエステ代・美容代は、仕事と私生活の境界が重なりやすいため、必要経費の判断が難しい分野です。しかし、考え方の軸は明確です。すなわち、当該支出が特定の収入を得るために直接必要であったか、私的費用と明確に区分できるか、そしてそのことを客観資料で説明できるか、という点に尽きます。見た目が重要な職業であること自体は事実ですが、それだけで美容費全般が経費になるわけではありません。 他方で、案件対応型で業務との直結性が高い支出まで一律に私費とみるのも適切ではありません。確定申告においては、美容費を「職業上必要だから」という主観的な理由で広く処理するのではなく、契約形態の確認、所得区分の確定、証憑の保存、そして正確な記帳という4つのプロセスを厳格に経ることが不可欠です。 客観的な根拠に基づき、必要経費に該当する部分だけを丁寧に積み上げることは、税務上の適法性と説明可能性を確保するだけではありません。万が一、不適切な処理が露見した際に生じるレピュテーションリスク(社会的信用の失墜)を回避し、プロフェッショナルとしての誠実さを証明することにもつながります。着実な税務対応を積み重ねることが、結果として自身のブランド価値と表現活動を支える確かな基盤となるはずです。 参考文献 [1] 国税庁「No.2210必要経費の知識」[2] e-Gov法令検索「所得税法(昭和四十年法律第三十三号)」[3] 国税庁「No.2792源泉徴収が必要な報酬・料金等とは」[4] 国税庁「事業所得と雑所得の区分について」[5] 国税庁「No.2070青色申告制度」[6] 国税庁「No.2080白色申告者の記帳・帳簿等保存制度」
- [芸能人・プロスポーツ選手等におけるマイナンバー制度の運用と確定申告時の実務的留意点](https://shiodome.co.jp/column/56357/) - 近年、日本の税務行政は急速なデジタル化を遂げており、その中核を担っているのが「マイナンバー(個人番号)制度」です。特に、多くの芸能人やプロスポーツ選手のように、個人事業主として活動し、複数の支払先から報酬を受け取る立場にある方々にとって、マイナンバーの適切な管理と運用は、適正な申告を行う上で避けては通れない重要事項となっています。 本記事では、芸能人・スポーツ選手等の方々が確定申告を行う際に直面するマイナンバー制度との関わり、実務上の注意点、およびセキュリティ対策について、専門的な見地から詳しく解説いたします。 1. 芸能人・プロスポーツ選手とマイナンバー制度の基礎知識 芸能人やプロスポーツ選手の多くは、特定のプロダクションやチームと専属契約を交わしている場合でも、税務上は「個人事業主(フリーランス)」として扱われることが一般的です。この立場において、マイナンバー制度は以下の二つの側面で深く関わってきます。 報酬の支払先(プロダクション・スポンサー等)へのマイナンバー提供義務 所得税法および番号法(マイナンバー法)に基づき、報酬を支払う側(源泉徴収義務者)は、税務署に提出する「支払調書」に受領者のマイナンバーを記載する義務があります。そのため、芸能人やスポーツ選手は、出演料や契約金、賞金等の支払いを受ける際、支払先に対して自身のマイナンバーを提示する必要があります。 確定申告書への記載 自身で所得税の確定申告を行う際、申告書に本人および扶養親族等のマイナンバーを記載することが義務付けられています。これにより、国税庁は複数の支払先から提出される支払調書と、本人が提出する申告書を正確に紐付けることが可能となります。 2. 確定申告の実務におけるマイナンバーの役割 確定申告において、マイナンバーは単なる識別番号以上の役割を果たしています。特に「マイナポータル」との連携による利便性の向上は、多忙な芸能人・スポーツ選手にとって大きなメリットとなり得ます。 e-Tax(電子申告)の推進とマイナンバーカード 現在、国税庁はe-Taxによる申告を強く推奨しています。マイナンバーカードをカードリーダーやスマートフォンで読み取ることで、本人確認が厳格かつ簡便に行われ、従来の書面提出に比べて以下のような利点があるとされています。 自動入力機能の活用: マイナポータルと連携することで、ふるさと納税、医療費、公的年金等の情報、および一部の生命保険料控除などのデータを自動で取得し、申告書に反映させることが可能です。 還付金の早期受取: 書面提出に比べ、還付金の処理が迅速に行われる傾向にあります。国税庁の指針によれば、書面提出では還付までに1ヶ月〜1ヶ月半程度を要しますが、e-Tax(電子申告)であれば3週間程度と大幅に短縮されます。 24時間提出可能: 税務署の開庁時間を気にせず、期間内であればいつでも送信可能です。 支払調書の突合精度の向上 税務当局は、マイナンバーを活用して各企業から提出される「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」を集約しています。これにより、無申告や過少申告の把握が従来よりも容易になっています。複数の媒体やスポンサーから多額の報酬を得るスポーツ選手などは、全ての所得を網羅的に把握し、申告漏れがないよう細心の注意を払う必要があります。 3. 芸能人・プロスポーツ選手特有の留意事項 特殊な就業形態を持つ方々ならではの、マイナンバーに関連する注意点がいくつか存在します。 本名と芸名・登録名の不一致 多くの芸能人や選手は、本名とは異なる名称(芸名、リングネーム、登録名など)で活動されています。しかし、マイナンバーはあくまで戸籍上の「本名」に紐付いています。 支払調書を作成するプロダクションやスポンサー企業に対しては、契約名義に関わらず、マイナンバーに紐付いた正しい氏名と住所を通知しておく必要があります。ここでの齟齬は、税務署側でのデータ突合エラーを招き、不要な問い合わせや税務調査のリスクを高める要因となり得ると考えられます。 副業・サイドビジネスとマイナンバー 近年、SNSの広告収入やYouTubeなどのプラットフォームからの収益、あるいは自身のブランド立ち上げなど、活動が多角化しています。これらの支払先に対しても、法定調書の提出基準(所得の種類ごとに定められた、一定の支払金額を超える場合など)に該当すれば、マイナンバーの提示が求められます。複数のルートからの所得を一括してマイナンバーで管理されることになるため、全ての所得を透明化して管理する体制が求められます。 専従者給与や従業員への支払い 自身の個人事務所を設立している場合、あるいは家族を専従者として給与を支払っている場合、選手や芸能人自身が「源泉徴収義務者」となります。この場合、従業員や専従者からマイナンバーを収集し、適切に管理・記載する義務が生じます。 4. マイナンバーの安全管理措置とプライバシー保護 芸能人やスポーツ選手にとって、個人情報の漏洩は極めて大きなリスクです。マイナンバーは「特定個人情報」として、厳格な管理が法律で義務付けられています。 収集時の本人確認 プロダクション等にマイナンバーを提示する際は、番号法に基づく本人確認(番号確認と身元確認)が行われます。マイナンバーカードをお持ちであれば、それ一枚で本人確認が完結します。マイナンバーカードをお持ちでない場合は、通知カード(記載事項に住民票と相違がないもの)またはマイナンバー記載の住民票により番号確認を行い、併せて運転免許証等の身元確認書類を提示するという二段階の手順が必要となります。 情報漏洩対策 自身のマイナンバーを不用意に他者に教えることは厳禁です。また、マネージャーや所属事務所に管理を委託している場合でも、どのように管理されているか(アクセス制限、廃棄のルールなど)を把握しておくことが望ましいと言えます。万が一、マイナンバーが漏洩した場合、税務上のトラブルだけでなく、なりすましによる被害等の二次被害に繋がる恐れがあります。 5. マイナンバーカード活用による申告の効率化(具体例) 多額の経費や控除が発生するプロフェッショナルの確定申告において、マイナンバーカードを活用した効率化のポイントを整理します。 【実務上のヒント】 芸能人や選手の方は、遠征やロケで自宅を空けることが多い傾向にあります。スマートフォンとマイナンバーカードがあれば、外出先や宿泊先からでもe-Taxによる申告が可能なため、多忙なスケジュールの中での期限内申告に大きく寄与します。 6. インボイス制度との関連性 2023年(令和5年)10月から開始されたインボイス制度(適格請求書保存方式)も、実務上はマイナンバーと密接に関係しています。 個人事業主が適格請求書発行事業者の登録を行う際、申請書にマイナンバーを記載します。発行される登録番号(T+13桁の数字)は、マイナンバーとは別の番号が割り振られますが、マイナンバーを基盤とした管理が行われています。消費税の課税事業者となっている芸能人やスポーツ選手は、所得税の確定申告だけでなく、消費税の申告においてもマイナンバーカードを利用したe-Taxが極めて有効です。 7. 専門家(税理士)への委託とマイナンバー 多くの芸能人やスポーツ選手は、複雑な経費精算や多額の所得管理を税理士に委託されています。この際、税理士との間でもマイナンバーの受け渡しが発生します。 税理士によるマイナンバーの収集 税理士は、クライアントに代わって申告書を作成する際、本人および家族のマイナンバーを預かる必要があります。税理士には守秘義務に加えて、番号法上の厳格な安全管理措置が課せられています。 代理送信(e-Tax) 税理士がe-Taxで代理送信を行う場合、本人のマイナンバーを申告書データに含めます。この際、本人の電子署名を省略できる仕組みもありますが、いずれにせよ税理士と本人の間での強固な信頼関係と、正確な情報提供が前提となります。
- [支配芸能法人の活用と税務戦略:芸能人・プロスポーツ選手が個人事務所を設立するメリットと留意点](https://shiodome.co.jp/column/55658/) - 芸能人やプロスポーツ選手が自身のマネジメントや資産管理を目的に設立する法人は、実務上「支配芸能法人」と呼ばれます。本人やその親族が株主となり、本人の芸能活動や競技活動のマネジメントを主軸とする「個人事務所」の実態は、この法人格を持った企業です。 なぜ、多くの一流スターやアスリートが個人事業主ではなく、法人を設立するのでしょうか。そこには、単なるイメージ戦略だけではない、緻密な税務上のメリットが存在します。 1. 会社設立が大きな節税につながる背景 かつて納税額ランキング(長者番付)が公表されていた際、誰もが知る大御所芸能人の名前が意外にも上位にないケースがありました。その背景には、報酬を個人で直接受け取るのではなく、自身が設立した法人を通じて受け取る「スキーム」の活用があります。 個人と法人の「実効税率」の格差 日本における個人の所得税は、所得が増えるほど税率が上がる超過累進税率を採用しています。 個人の負担: 所得税、住民税、個人事業税を合わせると、高所得者の実効税率は最大約55%に達します。 法人の負担: 法人税、法人住民税、法人事業税を合わせた実効税率は、30%前後に抑えられています。 近年の政策では、法人実効税率は下げ止まりの傾向にありますが、依然として個人と法人の税率差(タックス・ギャップ) は顕著です。この税率差を背景とした法人への利益留保や、法人に認められる経費算入範囲の活用は、中長期的な資産形成において極めて有効な戦略となります。 2. 支配芸能法人で活用できる主要な税務上の取扱い 法人化することで、個人事業主とは異なり、法人税法の枠組みで各種規定の活用を検討することが可能となります。 ① 役員報酬による「給与所得控除」の活用 本人の報酬を「事業所得」から「給与所得(役員報酬)」に切り替えることで、個人事業主には認められない「給与所得控除」を享受することが可能になります。法人は支払った報酬を損金(経費)に算入し、受け取る個人側では実際の支出の有無に関わらず「給与所得控除」を享受できるため、結果として所得が圧縮されることになります。 ② 他者への給与支給による所得の分散効果 親族などを役員や従業員として登用し、その職務実態に見合った適正な報酬を支給することで、本人に集中していた所得を分散させることができます。 日本の累進税率下においては、単一の個人に所得が集中する構造と複数人に分散される構造とで、世帯全体の総額が同じであっても適用される税率が異なり、結果として税負担が変わるという特徴があります。 一般的には、所得が複数の受領者に分散されることで、世帯全体として適用される税率が低くなる傾向があります。 ③ 退職所得課税の活用と生命保険の機能 将来受け取る「退職金」へ所得が振り替えられることで、分離課税の適用や、課税対象額が実質的に半分になる優遇措置の利用が期待できます。役員退職金は他の所得とは切り離して課税されるため、比較的低い税率でまとまった資金を個人に移転できるという大きなメリットがあります。 また、法人として自分や親族、従業員などを被保険者とする生命保険に加入することも有効な選択肢です。個人では「税引後の手残り」で保険料を払う必要がありますが、法人であれば課税前の利益を原資として拠出することも可能です。 これにより、万一の保障を確保しながら、法人の利益を原資とした効率的な資産形成が可能となり、最終的には低税率の退職金として取り崩す“出口戦略”も実現できます。 ④ 出張旅費規程に基づく費用処理 社内規定に基づき支給される適正な出張旅費(日当)は、法人では全額損金として計上可能です。社内規定を整備し、遠征やロケの際の出張旅費(日当)の支給を検討できます。 法人: 支給額を全額経費として計上。 個人: 実費弁償的な性格を鑑み、所得税法上「非課税所得」として取り扱われます。 ⑤ 法人契約の「借上げ社宅」制度 住居を法人名義で契約し、本人に社宅として貸し出します。税法上の計算(賃貸料相当額)に基づく自己負担分を徴収することで、賃料の大部分を法人の損金として処理し、個人の可処分所得を実質的に向上させる構造となります。 ⑥ 車両の法人所有 事業活動に使用する車両を法人の資産として管理します。減価償却費、維持費、公租公課等を法人の損金として計上できますが、適正な費用計上のためには、事業用と私用の区分を明確にすることが重要です。 ⑦ 消費税の免税メリット 新設法人を設立する場合、資本金などの一定要件を満たせば、最大で2期間の消費税が免税となります。プロ選手の報酬規模によっては、この消費税負担の免除は極めて大きな資金メリットとなります。 ⑧ 子会社設立による軽減税率と交際費枠の拡大 事業規模の拡大に伴い別法人を設立した場合、所得800万円以下の部分に対する「軽減税率」や、交際費の損金算入限度額(年間800万円)などの中小法人特例を個々の法人で重複して享受できる制度上の枠組みが存在します。 3. 運営上の留意点:事業実態を伴わない法人は否認される 法人化には各種のメリットがありますが、税務当局も厳格にチェックを行っています。 売上の計上基準:所属事務所や球団との契約主体を「法人」に切り替える必要があります。これが認められず個人契約のままだと、単なる「租税回避行為」と見なされるリスクがあります。 実態の維持: 法人が単にギャラや報酬を受け取るだけの「トンネル会社」や「ペーパーカンパニー」になってはいけません。適切なマネジメント実務や、役員としての役務提供の実態が不可欠です。 公私の峻別: 私的な支出を法人の経費に計上する行為は、税務調査において「役員賞与」と認定され、重加算税の対象となる恐れがあります。特に美容代や衣装代等については、事業遂行上の必要性を客観的に立証できる運用が必要です。適正な「節税」の範囲をしっかりと守り、「脱税」と見なされるリスクを避けるためにも、両者の線引きを明確にしたうえで適切に管理していくことが重要です。 4. 法人化を検討すべき年収の基準 法人の設立・維持には、社会保険料の強制加入や専門家報酬といった固定コストが発生します。こうした負担を踏まえると、「年収5,000万円程度」の水準を超える場合に、法人化のメリットがより明確に感じられるケースが多いと考えられます。 年収5,000万円以上: 設立コストや管理コスト(税理士報酬や社会保険料)を差し引いても、法人格を活用した十分なメリットを享受できます。 年収2,500万円前後: 管理の手間やコストを考慮すると、メリットとデメリットが相殺される「分岐点」となるケースが多いラインです。 また、年収の多寡だけでなく、その収入が数年にわたって維持される「安定性」も重要な判断基準となります。 まとめ マネジメント会社の設立は、適切に運用すれば将来に向けた資産形成の強力な武器となります。一方で、法的な合理性や実態を欠いた運用は、税務上の否認のみならず、社会的信頼(レピュテーション)を損なう致命的なリスクを招きかねません。なお、本稿で概説した税務上の諸制度は、あくまで標準的な仕組みを私見として整理したものであり、実態を伴わない租税回避を推奨するものではありません。 経験豊富な税理士のサポートを得ながら、現状の収益構造に合わせた最適なスキームを構築することをお勧めいたします。
- [次世代デジタル資産をどう実装するか?ビジネスモデルの全体像とユースケース](https://shiodome.co.jp/column/56276/) - 「ブロックチェーン」「Web3.0」「デジタル資産」という言葉の概念は理解できたものの、「では、自社のどこから着手すべきか」で足踏みしてしまう企業は少なくありません。 ビジネスを変える「次世代デジタル資産」とは?基礎知識と活用事例を解説のコラムでは基礎的な概念を解説しましたが、本稿ではより実践的なフェーズへと視点を移します。ビジネス全体の見取り図を把握したうえで、部門別の具体的なユースケースを自社の取引パターンとして棚卸しできるよう、詳細な事例とともに解説します。 1. デジタル資産ビジネスの見取り図 まず押さえるべきは、ブロックチェーン、Web3.0、そしてデジタル資産がどのように組み合わさり、ビジネスモデルを形成しているかという全体像です。ここでの重要な分岐点は、ブロックチェーンの「種類」です。 ブロックチェーンには、管理者が運用する「プライベート型」「コンソーシアム型」と、管理者が存在しない「パブリック型」があります。Web3.0とは、このうちパブリックチェーンを活用したものを指すことが多いです。 プライベート型は参加者が限定されたネットワークで運用されるため、従来のタイムスタンプ技術や共有データベースの延長として利用されるケースも多くあります。一方、パブリック型は誰でもサービスを構築できるため、イノベーションの数が増えるという特徴があります。この「誰でも参加できるオープンな基盤」という性質こそが、Web3.0の革新性の源泉です。 そして、このパブリックな基盤の上で扱われる「デジタル資産」は、ビジネスに以下の新しい価値をもたらします。 所有権の証明: NFT技術などにより、コピー可能なデジタルデータに「真正性」と「所有権」を付与します。 経済的インセンティブ: DAO(分散型自律組織)やDeFi(分散型金融)において、トークンを用いた報酬設計が可能になります。 相互運用性: ブロックチェーン上の資産は、異なるサービスやアプリケーション間でも利用可能です。 透明性担保と耐改ざん性: すべての取引が記録され、高い信頼性が担保されます。 2. Web3.0がビジネスにもたらす影響 これらの特性は、具体的にビジネスの現場をどう変えるのでしょうか。最大の影響は、セキュリティと透明性の向上、トレーサビリティの強化、そして業務自動化による「信用のコスト」の削減です。 データが分散保存されることで単一障害点がなくなり、暗号化された履歴によって経済的・技術的に改ざんが極めて困難になります。さらに、参加者全員が同じ台帳を共有することで透明性が高まり、「スマートコントラクト(条件成立と同時に支払いなどが自動実行されるプログラム)」を活用することで、検証可能な形で「信頼できる取引」を設計しやすくなります。 重要なのは、技術導入そのものではなく、「自社のどの権利・取引・証跡をデジタル化し、誰と共有し、どこまで自動化するか」を定義することです。この視点を持つことで、PoC(概念実証)の目的化を防ぎ、部門横断的な課題も整理しやすくなります。 3. 会計・税務領域の活用事例 会計・税務領域は、「証跡の確実性」と「処理の自動実行」の効果が最も分かりやすく表れる領域です。 取引情報にタイムスタンプ(電子証明)を付与して記録することで、データの改ざんが困難になり、税務調査や監査において「後から説明可能な強力な証跡」となります。さらに、スマートコントラクトを活用すれば、税務処理の一部を条件に応じて自動化する仕組みを設計することも可能です。これにより、人的ミスの削減と業務負荷の軽減に繋がります。 また、デジタルIDとアクセス権管理を組み合わせ、「誰がいつ何を操作したか」を厳格に記録するアプローチは、会計データの信頼性向上や不正抑止と非常に相性が良いと言えます。まずは既存システムを置き換えるのではなく、「どの重要な取引や証跡をブロックチェーンで保全すべきか」を切り分けるところから始めるのが現実的です。 4. 人事・労務領域の活用事例 人事・労務領域では、管理業務の効率化だけでなく、従業員体験(EX)の向上にも寄与します。 分散型ID(DID)などを活用したデジタル社員証を導入し、入退館・決済・勤怠管理を一括で処理できます。これを勤務記録と連携させることで、労働時間の自動記録まで可能にするユースケースも示されています。「本人確認」「権限管理」「ログ保存」がセットで設計される点が特徴です。 採用領域では、応募者の学歴・職歴・資格情報をブロックチェーン上で検証可能にすることで、書類偽造の防止や照合コストの削減に寄与します。また、社員同士が感謝の気持ちをトークンで送り合う仕組みのように、インセンティブ設計やエンゲージメント施策への応用も進んでいます。個人情報を扱うため、セキュリティとプライバシーの設計が鍵となります。 5. 法務・その他ビジネス領域の活用事例 法務・コンプライアンス、そして事業のフロントサイド(営業・サプライチェーン)でも活用が進んでいます。 NDA(秘密保持契約)や業務委託契約の履行状況をブロックチェーンに記録し、証拠性を確保します。また、内部監査や法令遵守状況を改ざん困難な台帳に残すことで、外部監査や規制当局への信頼性を高めます。さらに、社内プロジェクトの意思決定プロセスをトークンベースで可視化する試みも始まっています。 顧客体験(CX)の向上策として、ゲームやイベント参加に対してNFTスタンプを付与し、収集状況に応じて限定イベントへの招待や希少デジタルアートへのアクセス権を提供するモデルが想定されています。また、不動産などの資産をセキュリティトークン化(小口化)し、個人投資家へ販売する新たな金融ビジネスも代表的な事例です。 原材料の調達から製造・流通履歴をリアルタイムで記録し、トレーサビリティを確立します。これにより、インシデント時の迅速な対応や、高級ブランド品の真贋証明(NFT化)が可能になります。物流では、複数社間でのデータ共有による紙伝票の廃止が実現されています。また、カーボンクレジット領域では、クレジットのトークン化から取引・償却までをスマートコントラクトで自動化するプラットフォームや、環境配慮型プロジェクトの成果を可視化するエコシステムの構築が進んでいます。 6. まとめ ブロックチェーン・Web3.0は、事業や業務に新たな可能性をもたらす革新的な技術です。しかし、本稿で触れてきた会計・税務・法務・人事といった多岐にわたるユースケースを実務に落とし込むには、技術的な知識だけでは不十分です。進化し続ける規制環境への適応、複雑な税務処理、そして堅牢なガバナンス構築が不可欠となります。 RSM汐留パートナーズでは、バックオフィスの専門性と国際的なネットワークを活かした「ブロックチェーン・デジタル資産コンサルティングサービス」を提供しています。 私たちは、取引所、ファンド、ゲーミングプラットフォーム、マイニング事業者など、多岐にわたるクライアントへの支援実績を持ち、監査・税務・コンサルティングの枠を超えた「クロスファンクショナル」なチームで、お客様の課題を包括的に解決します。 「まずユースケースと取引パターンを整理したい」「会計・税務・内部統制の論点を専門家と一緒に検討したい」。そうした段階からでも伴走いたします。ご関心をお持ちの方は、ぜひサービスページをご覧のうえ、お気軽にご相談ください。
- [外国法人が日本に商品を輸入する場合のACP(税関事務管理人)とは](https://shiodome.co.jp/column/56446/) - 外国法人が日本市場に商品を供給する場合、日本に法人や支店などの拠点(PE:Permanent Establishment)を設けずにビジネスを行うケースもあります。例えば、海外メーカーが自ら日本へ商品を輸入し、日本企業へ販売するようなケースです。 しかし、日本に住所や事務所を持たない外国法人が日本の税関手続を行う場合には、「税関事務管理人(ACP:Attorney for Customs Procedures)を選任する必要があります。 本記事では、外国法人が日本へ商品を輸入する際に必要となるACP(税関事務管理人)制度の概要について解説します。なお、外国法人が日本に拠点を設けずに商品を輸入・販売する場合の全体像については、以下の記事をご参照ください。 →外国法人(日本にPEを有しない会社)が日本で商品を輸入・販売する場合の実務整理 1. 税関事務管理人(ACP)とは 税関事務管理人(ACP)とは、日本に住所または事務所を有する者であり、外国法人に代わって税関手続に関する連絡や書類対応を行う代理人を指します。 日本に住所や事務所を持たない外国法人が輸入手続を行う場合、日本の税関は外国法人と直接やり取りすることが難しいため、国内の代理人を通じて手続を行う制度が設けられています。 この代理人が「税関事務管理人(ACP)」です。 ACPは、外国法人の輸入手続に関する窓口として機能し、日本の税関との連絡・書類管理などを担います。 2. なぜACPが必要なのか 日本の関税制度では、輸入手続に関して税関とのやり取りを行う主体が国内に存在することが求められます。 外国法人が日本に拠点を持たない場合、次のような問題が生じます。 税関からの問い合わせに対応できない 書類の提出や保管が困難 税関との連絡体制が確保できない そのため、日本の制度では、外国法人が輸入手続を行う場合には、日本国内の代理人として税関事務管理人を選任する必要があります。 ACPは、日本の税関に対して届け出ることで正式に指定されます。 3. ACPの役割 税関事務管理人の役割は、主に次のとおりです。 税関との連絡窓口 税関から輸入に関する問い合わせや確認があった場合、ACPが窓口となり対応します。 書類の保管 輸入手続に関する書類は、一定期間保管する必要があります。ACPはこれらの書類管理にも関与します。 税関手続に関する対応 税関から追加資料の提出を求められる場合や、確認事項がある場合など、ACPが対応します。 通関業者との連携 実際の輸入申告は通関業者が行うことが多く、ACPは通関業者と連携して手続を進めます。 4. ACPと通関業者の違い ACPと通関業者は混同されることがありますが、それぞれ役割が異なります。 実務では、外国法人が日本に商品を輸入する場合、 通関業者 税関事務管理人(ACP) が連携して手続を進めることが一般的です。 5. ACPが必要となる典型的なケース ACPが必要になる代表的なケースとしては、次のようなものがあります。 外国法人が輸入者となる場合 外国法人が自ら輸入者(Importer of Record)となり、日本に商品を輸入する場合です。 外国法人→日本へ輸入(外国法人が輸入者)→日本企業または日本顧客へ販売 この場合、外国法人は日本に拠点を持たないため、税関事務管理人の選任が必要になります。 日本に在庫を保有する場合 外国法人が日本の倉庫に商品を保管し、日本国内の顧客へ販売する場合にも、輸入者が外国法人であればACPの選任が必要となります。 6. ACPの選任方法 ACPを選任する場合、税関に対して税関事務管理人の届出を行う必要があります。
- [外国法人(日本にPEを有しない会社)が日本で商品を輸入・販売する場合の消費税の取扱い](https://shiodome.co.jp/column/56444/) - 外国法人が日本市場に商品を供給する場合、日本に法人や支店などの拠点(PE:Permanent Establishment)を設けずにビジネスを行うケースも少なくありません。例えば、海外メーカーが日本に商品を輸入し、日本の販売代理店や顧客に販売するようなケースです。 このような場合でも、日本における取引の内容によっては消費税の登録や申告が必要になる可能性があります。特に、外国法人が自ら日本に商品を輸入し、日本国内で販売を行う場合には、消費税に関するいくつかの重要な論点が生じます。 本記事では、外国法人(日本にPEを有しない会社)が日本で商品を輸入・販売する場合の消費税の基本的な取扱いについて整理します。 なお、外国法人が日本で商品を輸入・販売する場合の全体像については、「外国法人(日本にPEを有しない会社)が日本で商品を輸入・販売する場合の実務整理~消費税・関税・EPA/FTA・ACPの基本~」をご参照ください。 1. 外国法人が日本で商品を輸入する場合の消費税 まず、外国法人が日本に商品を輸入する場合、輸入時に消費税(輸入消費税)が課される点を理解しておく必要があります。商品を日本に輸入する際には、日本の税関に対して輸入申告を行い、その際に次の税金を納付することになります。 関税 輸入消費税 輸入消費税は、日本国内で商品を消費することを前提とした税金であり、原則として輸入者(Importer of Record)が納税義務者となります。つまり、外国法人が自ら輸入者として日本に商品を輸入する場合には、その外国法人が輸入消費税を税関に納付することになります。 2. 輸入消費税と仕入税額控除 輸入消費税は、消費税制度上、仕入税額控除の対象となる可能性があります。例えば、外国法人が日本に商品を輸入し、その商品を日本国内の企業に販売する場合を考えてみましょう。 外国法人→日本へ輸入(輸入消費税発生)→日本企業へ販売 この場合、輸入時に支払った輸入消費税は、日本国内での課税売上に対応する仕入税額として扱われるため、消費税申告において控除できる可能性があります。ただし、この仕入税額控除を受けるためには、日本における消費税申告を行うことが前提となります。 なお、これは日本国内で商品を販売(課税売上)することを前提とした原則論です。実務上は例外として、日本国内での直接的な販売売上が発生しなくても、自社サービス(役務提供等)に使用するため、自社内での費消目的で物品を輸入するだけであっても輸入消費税の還付(控除)を受けられるケースもあります。 例えば、外国の国際航空会社が日本国内の倉庫に自社用のメンテナンス部品等を輸入・ストックし、順次費消していくようなケースです。この場合、日本国内での直接的な課税売上がゼロであっても、消費税の個別対応方式を採用し、当該輸入消費税を『課税資産の譲渡等にのみ要するもの』として区分することで、結果的に還付申告が可能となる余地があります。 3. 外国法人の日本における消費税登録 外国法人が日本で商品を販売する場合、日本の消費税法上、課税事業者として登録が必要になる場合があります。 例えば、次のようなケースです。 外国法人が日本に商品を輸入する 日本国内に在庫を保有する 日本の顧客または日本企業へ商品を販売する このような場合、日本国内における課税取引が発生する可能性があるため、日本の消費税制度の対象となることがあります。消費税の登録が必要になるかどうかは、取引の内容や売上規模などによって判断されますが、外国法人であっても日本の消費税制度の対象となるケースは少なくありません。 なお、インボイス発行事業者の登録の有無に関わらず、日本進出当初で基準期間(過去の売上実績)がない場合であっても、外国法人の資本金が日本円換算で1,000万円以上であれば、初年度から日本の消費税の申告納税義務が課されます(新設法人の特例)。外国法人の日本進出において非常に見落とされがちな留意事項であるため、事前の資本金確認は必須です。 4. 外国法人と納税管理人 外国法人が日本で消費税申告を行う場合、納税管理人(Tax Agent)を選任する必要があります。納税管理人とは、日本に住所または事務所を有する者であり、外国法人に代わって税務署との連絡や申告手続を行う役割を担います。 納税管理人の主な役割は次のとおりです。 消費税の登録手続 消費税申告書の提出 税務署からの通知の受領 税務調査への対応 日本に拠点を持たない外国法人の場合、日本の税務署と直接やり取りを行うことが難しいため、この納税管理人制度が設けられています。 5. 外国法人の消費税申告 外国法人が日本で消費税申告を行う場合、日本企業と同様に次のような申告が必要になる可能性があります。 消費税確定申告 消費税の納付 インボイス制度への対応 特に近年では、インボイス制度(適格請求書等保存方式)が導入されているため、日本国内で取引を行う場合には、インボイス制度への対応が必要となるケースもあります。外国法人が日本市場に商品を供給する場合、こうした制度への対応を事前に検討しておくことが重要です。 6. 外国法人の日本ビジネスでは税務対応が重要 外国法人が日本で商品を輸入・販売する場合、関税や通関手続とともに、消費税の対応が重要な論点となります。 特に次のような場合には、消費税の取扱いを慎重に検討する必要があります。 外国法人が日本に商品を輸入する 日本国内で商品を販売する 日本に在庫を保有する 日本の顧客と継続的な取引を行う これらのケースでは、日本の消費税制度への対応が必要になる可能性があるため、税務専門家に相談しながら進めることが一般的です。 7.
- [外国法人が日本に商品を輸入する場合の関税とEPA・FTAの基本](https://shiodome.co.jp/column/56445/) - 外国法人が日本市場に商品を供給する場合、日本に子会社や支店などの拠点(PE:Permanent Establishment)を設けずにビジネスを行うケースも少なくありません。例えば、海外メーカーが自ら日本へ商品を輸入し、日本企業へ販売するようなケースです。 このような場合、日本に商品を輸入する際には、日本の税関制度に基づき関税および輸入消費税が課されます。また、一定の条件を満たす場合には、EPA(経済連携協定)やFTA(自由貿易協定)を利用することで関税負担を軽減できる可能性があります。 本記事では、外国法人が日本に商品を輸入する場合に理解しておきたい関税の基本とEPA・FTAの仕組みについて整理します。 なお、外国法人が日本に拠点を持たずに商品を輸入・販売する場合の全体像については、以下の記事をご参照ください。 →外国法人(日本にPEを有しない会社)が日本で商品を輸入・販売する場合の実務整理 1. 日本に商品を輸入する際に課される税金 外国から日本へ商品を輸入する場合、原則として次の税金が課されます。 関税 輸入消費税 関税は、日本に輸入される商品に対して課される税金であり、その税率は商品の種類によって異なります。 輸入手続では、日本の税関に対して輸入申告を行い、関税および輸入消費税を納付する必要があります。 ここで重要なのが、誰が輸入者(Importer of Record)になるのかという点です。輸入者とは、日本の税関に対して輸入申告を行い、関税および輸入消費税を納付する主体を指します。 外国法人が自ら輸入者として日本に商品を輸入する場合、その外国法人が輸入手続を行い、関税および輸入消費税を納付することになります。 2. 関税率はHSコードで決まる 関税率を決定する際に最も重要な要素が、「HSコード(Harmonized System Code)」です。 HSコードとは、国際的に統一された商品分類番号であり、世界各国の税関で使用されています。商品はその性質や用途に応じて分類され、それぞれに関税率が設定されています。 例えば、次のような分類があります。 食品 衣料品 電子機器 化学製品 同じ商品であっても分類の仕方によって関税率が異なる場合があるため、HSコードの判断は輸入実務において非常に重要なポイントになります。 HSコードの誤りは、税関からの指摘や追徴課税につながる可能性があるため、専門家と相談しながら慎重に判断することが一般的です。 3. EPA・FTAとは EPA(Economic Partnership Agreement)やFTA(Free Trade Agreement)は、特定の国・地域間で関税を削減または撤廃することを目的とした国際協定です。 日本は多くの国・地域とEPA・FTAを締結しており、一定の条件を満たす場合には、輸入時の関税が軽減または免除される可能性があります。 例えば、日本は次のような国・地域とEPA・FTAを締結しています。 欧州連合(EU) オーストラリア ASEAN イギリス カナダ これらの協定を適用できる場合、通常の関税率よりも低い税率が適用されることがあります。 4. EPA・FTAを利用するための条件 EPA・FTAを利用して関税の減免を受けるためには、いくつかの条件を満たす必要があります。主なポイントは次のとおりです。 原産地規則 商品がEPA・FTAの対象となるためには、その商品が協定対象国で生産されたものであることを証明する必要があります。これを原産地規則と呼びます。 原産地証明 EPA・FTAを適用する場合、商品の原産地を証明する書類を提出する必要があります。 これを原産地証明書といいます。 HSコードとの整合 EPA・FTAの適用可否はHSコードとも密接に関係しています。そのため、HSコードの判断が適切であることが前提となります。 5. EPA・FTAの実務上の注意点 EPA・FTAは関税を削減できるメリットがありますが、実務ではいくつか注意すべき点があります。 原産地判定が複雑 商品の製造工程や部品の調達国などによって、原産地の判定が複雑になる場合があります。
- [外国法人(日本にPEを有しない会社)が日本で商品を輸入・販売する場合の実務整理~消費税・関税・EPA/FTA・ACPの基本~](https://shiodome.co.jp/column/56441/) - 外国法人が日本市場に商品を販売する場合、日本に法人を設立せずにビジネスを行うケースも少なくありません。例えば、海外メーカーが日本に商品を輸入し、日本企業へ販売するようなケースです。 なお、日本国内での活動内容によっては、倉庫の利用形態や日本の代理店との関係によって恒久的施設(PE)が認定される可能性があります。本稿では、日本にPEを有しない外国法人を前提として説明しています。 このようなビジネスを行う場合、日本の税務・関税・通関制度に関するさまざまな論点が生じます。特に、 日本における輸入手続 関税およびEPA・FTAの適用 消費税の登録および申告 税関事務管理人(ACP)の選任 といった点について、事前に制度を理解しておくことが重要です。 本稿では、外国法人(日本に恒久的施設(PE)を有しない会社)が日本で商品を輸入・販売する場合の実務上の主要論点について、全体像を整理します。 なお、個別論点の詳細については別記事で解説していますので、必要に応じてそちらもご参照ください。 1. 外国法人が日本に拠点を持たずに商品を販売するビジネスモデル 外国法人が日本市場に商品を販売する場合、一般的には次のような商流が考えられます。 外国法人→日本へ輸入→日本企業または日本顧客へ販売 ここで重要なのは、誰が輸入者(Importer of Record)になるのかという点です。 輸入者とは、日本の税関に対して輸入申告を行い、関税および輸入消費税を納付する主体を指します。例えば、次のようなパターンがあります。 (1)日本企業が輸入者となる場合 外国法人(輸出者)→日本企業(輸入者)→日本国内販売 この場合、外国法人は単に商品を輸出しているだけであり、日本の輸入手続は日本企業が行います。そのため、外国法人側では日本の税務対応が必要となるケースは通常ありません。 (2)外国法人が輸入者となる場合 一方で、外国法人が日本市場を直接コントロールするため、自ら輸入者となるケースもあります。 外国法人→日本へ輸入(外国法人が輸入者)→日本企業または日本顧客へ販売 この場合、外国法人は日本に拠点がなくても日本で輸入手続を行うことが可能ですが、日本の制度に基づきいくつかの対応が必要になります。 (3)外国法人が日本で輸入する場合の主な論点 外国法人が日本に商品を輸入して販売する場合、実務上の主要な論点は次の4つです。 関税 EPA・FTA 消費税 税関事務管理人(ACP) それぞれ簡単に見ていきます。 2. 関税 外国から日本に商品を輸入する場合、日本の税関に対して輸入申告を行い、関税および輸入消費税を納付する必要があります。関税の税率は、商品ごとに定められたHSコード(品目分類)によって決まります。そのため、輸入ビジネスにおいては次のような論点が生じます。 HSコードの分類 関税率の確認 原産地の判定 関税評価(課税価格) これらは専門的な判断を伴うため、実務では関税コンサルタントや通関業者と連携して対応することが一般的です。また、関税の負担を軽減できる制度としてEPA(経済連携協定)やFTA(自由貿易協定)があります。EPA・FTAの詳細については、「外国法人が日本に商品を輸入する場合の関税とEPA・FTAの基本」で解説しています。 3. 消費税 外国法人が日本で商品を輸入し、日本国内で販売する場合には、消費税の論点も生じます。主なポイントとしては次のとおりです。 (1)輸入時の消費税 商品を日本に輸入する際には、関税とともに輸入消費税が課されます。この輸入消費税は、輸入者が税関に対して納付します。 (2)国内販売に係る消費税 輸入した商品を日本国内で販売する場合、その取引は日本の消費税の課税対象となる可能性があります。 そのため、外国法人であっても、 消費税の登録 納税管理人の選任 消費税申告 が必要になるケースがあります。消費税の具体的な取扱いについては、「外国法人(日本にPEを有しない会社)が日本で商品を輸入・販売する場合の消費税の取扱い」で詳しく解説しています。 なお、例外的なケースとして、商品を販売するのではなく、自社サービス(役務提供)に使用するため自社内での費消目的で物品のみを輸入するケースもあります。この場合、日本国内での物品の販売売上は発生しませんが、輸入時に支払った消費税の還付申告を行うケースがあります(こちらも詳細は消費税の取扱いの記事にて後述します)。 4. 税関事務管理人(ACP)
- [ビジネスを変える「次世代デジタル資産」とは?基礎知識と活用事例を解説](https://shiodome.co.jp/column/56242/) - 近年、DX(デジタルトランスフォーメーション)の一環として「ブロックチェーン」や「Web3.0」という言葉を耳にする機会が増えています。しかし、「具体的に何ができるのか」「自社にどう関係するのか」がわからないという方も多いのではないでしょうか。本稿では、これからこの領域を学びたい方に向けて、基本的な仕組みから注目される理由、そして実際のビジネス活用事例までをわかりやすく解説します。 1. 次世代デジタル資産領域とは何か 「次世代デジタル資産領域」とは、ブロックチェーン技術を基盤とし、インターネット上で価値の移転や所有を可能にする新たな経済圏のことを指します。この領域を理解するためには、基盤となる「ブロックチェーン」、世界観である「Web3.0」、そしてそこで扱われる「デジタル資産」という3つの要素を整理する必要があります。 基盤技術:ブロックチェーン この領域の中核にあるのがブロックチェーンです。これは取引データを「ブロック」という単位でまとめ、鎖のようにつないで記録・共有する台帳技術です。最大の特徴は、特定の管理者が台帳を独占するのではなく、複数の参加者が同じ記録を分散して持ち合い、合意形成を行う点にあります。これにより、記録の改ざんが極めて困難であるとされており、高い透明性と整合性が保たれます。また、「スマートコントラクト」と呼ばれるプログラムを組み合わせることで、条件に応じた契約や決済の自動実行も可能です。 インターネットの変遷と「Web3.0」 このブロックチェーン技術によって実現する新しいインターネットの概念が「Web3.0」です。これまでの変遷と比較すると、その革新性が明確になります。 Web1.0(1990年代/閲覧の時代):企業が一方的に情報を発信し、ユーザーはそれを閲覧するのみでした。 Web2.0(2000年代〜/発信の時代):SNS等の普及で誰もが発信者になりましたが、データや収益はプラットフォーム企業に集中しました。 Web3.0(現在〜未来/所有の時代):ブロックチェーンにより、ユーザー自身がデータや資産を管理・所有できる分散型の世界観です。 この領域で扱われる「デジタル資産」 Web3.0の世界で取引され、価値を持つ資産の総称が「デジタル資産」です。単なる通貨の代替手段にとどまらず、あらゆる価値や権利がデジタルデータとして流通する世界が広がっています。下記にいくつか代表例を紹介します。 暗号資産(仮想通貨):ビットコインやイーサリアム(ETH)など、送金や決済、価値の保存に使われる通貨型のトークン NFT(非代替性トークン):アートや会員権などの「唯一性」を証明するデジタルデータ トークン化された資産:不動産や株式など、現実世界の資産をブロックチェーン上で表現したもの デジタルID:個人の資格や活動履歴を証明するためのデータ 従来のコピー可能なデジタルファイルとは異なり、これらの資産はブロックチェーン技術によって「データの真正性(本物であること)」と「所有権」が担保され、改ざんが極めて困難であるとされる状態で取引履歴が記録されます。この特性により、単なるデータのやり取りを超えて、企業間やサービスをまたいだ新たな経済圏(トークンエコノミー)を構築できる点こそが、ビジネスにおける最大の革新性です。 2. いま企業がこの技術を検討する理由 なぜ今、多くの企業がブロックチェーンやWeb3.0の導入を検討し始めているのでしょうか。その背景には、従来のビジネス慣習を変えるいくつかの技術的特性があります。 特定の管理者に依存しない「分散型」の信用 従来は、銀行や公的機関といった中央管理者がデータを管理することで、取引の信用を担保していました。しかしブロックチェーンは、参加者全員が取引の正当性を検証し合う「分散型台帳技術」です。これにより、特定の組織に依存せずに取引を成立させやすくなります。関係者が多い複雑な取引や、第三者に対して取引の正しさを証明し続ける必要がある場面において、この仕組み自体が持つ信用力が大きな武器となります。 データの改ざんが極めて困難 取引履歴はブロックという塊で連鎖的に記録され、世界中のコンピューターが検証し合います。そのため、悪意ある第三者がデータを書き換えようとしても事実上極めて難しいです。この「改ざん耐性」の高さが、データの信頼性を担保します。 システムダウンに強い ネットワークに参加するコンピューター(ノード)が同じ情報を共有し合うため、一部のノードに障害が発生してもネットワーク全体は継続して稼働できる設計になっています。この耐障害性の高さは、企業の業務インフラとして非常に重要な安心材料となります。 契約と処理の自動化(スマートコントラクト) 「あらかじめ決めた条件を満たすと、処理が自動実行される」というプログラム(スマートコントラクト)をブロックチェーン上に記述できます。これにより、仲介者や人為的な操作を減らしつつ、契約の履行を自動化できます。結果として透明性が高まり、監査も容易になります。 これらの特徴に加え、近年では「ゼロ知識証明(ZKP)」という、情報の詳細を明かさずにその正当性だけを証明する暗号技術の活用も進んでおり、プライバシーを保護しながら透明性を向上させる手段として検討が進んでいます。 3. ビジネスにおける具体的な活用事例 では、実際にこの技術はビジネスの現場でどう使われているのでしょうか。かつては金融やアートの分野が中心でしたが、現在ではマーケティングからバックオフィスまで、幅広い業務で活用が進んでいます。ここでは主な活用シーンを2つご紹介します。 ①顧客体験の向上と新たな投資機会(営業・マーケティング/金融) 顧客との関係性を深めるためのツールとして、あるいは新たな資金調達の手段として活用されています。 顧客ロイヤルティの向上(NFT活用) ゲームやクイズ等をクリアした顧客にデジタルのスタンプ(NFT)を付与する取り組みがあります。収集したスタンプに応じて、限定イベントへの招待や、希少なデジタルアートへのアクセス権などを提供することで、これまでにない特別なカスタマーエクスペリエンスを創出できます。 不動産投資の小口化(セキュリティトークン) マンション・物流施設・旅館などの大型不動産を有価証券としてセキュリティトークン化して発行する事例です。これにより、これまでは大口投資家に限られていた投資機会を個人投資家にも開放し、少額からの投資を可能にしています。 ②サプライチェーンの透明化と環境対応(サプライチェーン/カーボンクレジット) モノの流れや環境価値を可視化することで、ブランドの信頼性向上やESG経営に貢献しています。 トレーサビリティの確立と偽造品対策 原材料の調達から製品の製造・流通履歴をリアルタイムでブロックチェーンに記録します。これにより、万が一インシデントが発生した際に、迅速な原因特定とピンポイントな対応ができるようになります。また、高級ブランド品においては、製造・流通履歴をNFT化することで、購入者自身が「本物であること」を確認できる仕組みを構築し、偽造品対策とブランド価値の保護につなげています。 カーボンクレジットと環境価値の取引 デジタルカーボンクレジット取引プラットフォームの構築が進んでいます。スマートコントラクトを活用することで、クレジットのトークン化から取引、償却までを自動化・透明化します。また、森林再生やリジェネラティブ農業などの環境プロジェクトの成果を可視化し、独自トークンを発行・取引できるエコシステムも生まれています。 4. まとめ このように、ブロックチェーン技術は企業の「顧客接点」や「物流」といった事業活動そのものに大きな変革をもたらし始めています。しかし、こうした新しいビジネスモデルを安全かつ持続的に運用するためには、システムを導入するだけでなく、それを支える「ガバナンス」や「会計・税務」の基盤整備が不可欠です。 例えば、NFTで売り上げが立った際の計上基準はどうするのか、保有するトークンの期末評価は適切か、ブロックチェーン上の記録をどのように監査証跡として扱うか。技術的な可能性が大きい反面、実務の現場では専門的かつ複雑な課題に直面することは避けられません。導入の目的を問わず、最終的には内部統制の構築や監査への対応といった「守りの仕組み」が、プロジェクトの成否を分ける重要なポイントとなります。 RSM汐留パートナーズでは、会計・税務の専門性と国際的なネットワークを活かした「ブロックチェーン・デジタル資産コンサルティングサービス」を提供しております。デジタル資産の評価・開示に関するアドバイスから、監査法人対応まで、お客様の事業フェーズに合わせて総合的にサポートいたします。 まずは小さな範囲から検討を始める段階でも構いません。何かお困りのことがございましたら、上記サービスページをご確認の上、ぜひお気軽にご相談ください。
- [リスクからレジリエンスへ
ーエンジニアリング企業におけるAIガバナンスの確立](https://shiodome.co.jp/column/56173/) - 1. なぜ今、エンジニアリング企業にAIガバナンスが求められるのか AIは、あらゆる産業の業務プロセスを急速に変革しています。とりわけエンジニアリング企業では、設計・施工・品質管理といった公共の安全に直結する領域(構造計算、施工計画、検査記録の判定、異常検知等)でAIを活用する機会が増えており、イノベーションの推進と社会的責任の両立がかつてないほど強く問われています。 しかし、AIにはアルゴリズムの偏り(バイアス)やハルシネーション(事実と異なる内容を生成する現象)といったリスクが内在しています。こうしたリスクが顕在化すれば、公共の安全を脅かすだけでなく、法的責任の追及や企業の信用失墜につながりかねません。だからこそ、AIの導入・活用にあたっては、明確なガバナンス体制の構築が不可欠です。 本稿では、AIガバナンスを単なる「守り」から「レジリエンス」へと転換するための戦略を、体制・責任・契約・人材文化・継続運用の観点から整理します。 2. ガバナンス体制の構築 ― 誰が、何を、どう統治するか 責任あるAI活用の出発点は、監督責任の所在を明確にすることです。 その担い手は、取締役会、専門委員会、CIO(最高情報責任者)、あるいは近年設置が進むCAIO(最高AI責任者)など、組織の規模や業態によって異なります。重要なのは、法務・情報セキュリティ・品質保証・現場開発・営業・人事といった部門が横断的に関与する常設体制を設け、現場任せにしない設計を行うことです。最低限として、経営(承認)+横断委員会(審査)+現場(運用)の三層を置くと、責任分界が明確になり、現場任せの形骸化を防ぎやすくなります。 適切なガバナンスとは、ルールの集合体ではなく、その企業がAIに対してどう向き合うかという姿勢を社内外に示す基盤です。トップダウンのコミットメントがなければ、現場レベルでの安全なAI活用は実現しません。 3. 注意義務の再定義 ― AIは「便利な補助輪」であって「最終責任者」ではない AIの導入によって、エンジニアリングにおける注意義務の範囲は大幅に拡張されます。責任ある企業がAIの出力をそのまま無検証で採用することはあり得ません。 AI時代の注意義務には、出力の正確性、偏りの有無、説明可能性、データ出所の適法性、再現性、監査可能性といった観点にまで広がります。設計レビューにおいても、要件に対する妥当性だけでなく、AI出力の検証手順、検証結果の記録、異常時のフォールバック、人的承認のポイントを網羅する必要があります。 具体的には、三つの責任領域を明確にすべきです。 設計段階(Developmental responsibility)AI導入の初期段階から、倫理的リスクやプライバシー保護を要件定義に組み込みます。「何が起きうるか」を事前に想定し、予防措置を講じるアプローチです。 利用段階(Usage responsibility)AIの提案を鵜呑みにせず、必ず専門家である人間が最終判断を下すプロセスを業務フローに埋め込みます。特に構造計算や安全率に関わる数値について、すべてをAI任せにするには極めて慎重な検証が必要です。 監視段階(Monitoring processes)運用開始後も、入力データや環境の変化によってAIの精度が劣化(ドリフト)していないか、常に監視し続ける体制です。 これらの基準を遵守できなければ、公共の安全が脅かされるだけでなく、法的責任やプロフェッショナルとしての信頼失墜を招くことに繋がります。 4. 契約における義務の明確化 AIを含むプロジェクトでは、利用範囲、責任分界、成果物の定義、知的財産権、データの帰属などが複雑化しやすく、従来の契約ひな型だけでは対応しきれない場面が増えています。 エンジニアリング企業は自らイニシアチブを取り、契約書に以下の事項を明記すべきです。AIをどの工程で使用するか、AI出力が成果物に含まれるか、誤生成や偏りによる損害発生時の取り扱い、顧客データを学習に使用しないことの保証、検証記録の提出範囲、外部AIサービスの利用規約変更が与える影響などです。 日本では、文化庁「AIと著作権に関する考え方について」(1)の議論が進んでおり、AI生成物の著作権に関する法的解釈を理解したうえで契約実務に反映することが求められます。発注者と受注者の間でAI利用に関する期待値とリスク分担を事前に合意形成しておくことは、プロジェクトの円滑な遂行において極めて重要です。 5. 組織文化の醸成と導入の現実 ガバナンスは制度だけでは機能しません。現場が「AIを使うこと」だけでなく「責任を持って使うこと」を当然とする文化の醸成が、実効性を左右します。 教育は全社員向けの基礎教育に加え、職種別に深度を変えて設計すべきです。開発者にはAI出力の評価・検証手法を、運用担当者には監視とログ管理を、営業担当者には顧客への説明責任を、管理職にはインシデント時の判断基準を、それぞれ明確化する必要があります。推奨ツールの一本化、入力禁止情報の明示、利用ログの保存と監査、相談窓口の常設など、現場の速度を落とさずに事故を減らす仕組みづくりが効果的です。 「AIを使える人材」の育成は重要ですが、それ以上に「AIの間違いに気づける人材」「AIを使うべきでない場面を判断できる人材」を育てることが、組織のリスク耐性を高めます。 一方で、現実の導入にはいくつかの壁があります。効果測定の難しさは典型的な課題です。精度だけでなく、工数削減率やリードタイム短縮など、業務価値に直結する指標をベースラインと比較できる形で設計・運用することが重要です。 また、全領域を一気に整備するのではなく、リスクと重要度に応じた段階導入が現実的です。社内利用の低リスク領域から着手し、顧客提供領域へ拡大し、高リスク案件にはレビューと監査を強化するというロードマップを描きます。短期的な成果のみを追求すると、ガバナンスが形骸化し、会社が許可していないAIツールを従業員が無断で利用する「シャドーAI」のようなセキュリティリスクを招きかねません。 さらに、部門間の認識差も障壁です。法務は慎重に、現場はスピード重視に傾きやすく、議論が平行線になりがちです。共通言語となるリスク分類や承認フロー、例外申請の条件を整備し、判断基準を個人の裁量ではなくプロセスに落とし込むことが、組織のサイロ化を防ぐ鍵です。 6. まとめ:AIガバナンスを「レジリエンス」に変える AIがエンジニアリング業界に不可欠な存在となった今、企業に求められるのは技術力だけではありません。統制力――すなわち、包括的なガバナンスを経営戦略の中核に据える覚悟です。 体制の明確化、注意義務の再定義、契約上の義務の明文化、教育と文化の醸成、段階的な導入、そして継続的な監視と適応。これらを一体的に推進することで、エンジニアリング企業はイノベーションと説明責任の適切なバランスを保つことができます。 AIを恐れるのではなく、適切な統制下で活用する。その実践こそが、リスクを組織のレジリエンスへと昇華させ、次世代の競争力を決定づける要因となるでしょう。 ただし、AIガバナンスの構築には、法務、セキュリティ、技術理解といった多角的な専門知識が求められます。AIガバナンスは、データ管理・アクセス制御・ログ監査などセキュリティ統制と不可分です。当社では、企業の特性を踏まえた「情報セキュリティ支援サービス」や、経営視点でセキュリティ統括を支援する「社外CISO支援サービス」を提供しています。企業の状況に合わせたガバナンス体制の構築をサポートいたしますので、ぜひお気軽にご相談ください。 参考資料: (1):AIと著作権について | 文化庁
- [CRMが変える経営の基盤 ― Salesforce活用に学ぶ「経営のOS」](https://shiodome.co.jp/column/56120/) - 1. Salesforceとは何か ― その概要と市場評価 Salesforceは、米国Salesforce社が提供するクラウド型のCRM(顧客関係管理)プラットフォームです。営業支援(Sales Force Automation)、マーケティングオートメーション、カスタマーサポート、データ分析など、顧客との接点に関わる業務を一つの基盤上で統合的に管理できる点が最大の特徴です。 1999年の創業以来、SalesforceはクラウドCRMという市場カテゴリーそのものを切り拓いてきました。世界的なIT調査企業であるGartner社が2025年に発行したレポートにおいても、Salesforceはリーダーの象限に位置づけられています(1)。この評価は、Salesforceが提供するB2Bマーケティング基盤としての実行力とビジョンの完全性の双方で高い評価を得ていることを意味します。 日本市場においても、大企業からスタートアップまで導入が加速していますが、その選定理由は時代とともに変化しています。かつては「クラウドの利便性」が評価されていましたが、現在は「Data Cloud」によるデータ統合力、そして最新のAI技術「Agentforce(エージェントフォース)」による自律的な業務遂行力が焦点となっています。人間がデータを入力するだけの箱ではなく、AIエージェントが自律的に顧客対応やタスク処理を行う「ビジネスのOS(基本ソフト)」へと進化しています。 2. CRMを活用しない企業の「見えないリスク」 Salesforceに限らず、CRMそのものを導入していない企業は国内にまだ少なくありません。Excelや個人のメール、紙の名刺管理で顧客情報を運用しているケースは、中小企業を中心に依然として多く見られます。こうした運用が直ちに問題を引き起こすわけではありませんが、事業が成長し、顧客数や取引の複雑性が増すにつれて、いくつかの構造的なリスクが顕在化します。 顧客情報の属人化と散逸 担当者ごとにExcelファイルや手帳で顧客情報を管理している場合、その知見は個人に閉じたままになります。担当者が異動や退職をすれば、商談の経緯や顧客の要望といった重要な情報が組織から失われます。引継ぎがうまくいかず、顧客との関係が途切れるケースは珍しくありません。 営業活動の可視化が困難 案件の進捗、商談のステージ、受注確度といった情報がリアルタイムで共有されていなければ、マネジメント層は現場の状況を正確に把握できません。報告は月次の会議頼みになり、問題の発見が遅れます。結果として、対応すべきタイミングを逸し、失注や顧客離れにつながるリスクが高まります。 データに基づく意思決定ができない 過去の商談データや顧客の行動履歴が蓄積・構造化されていなければ、営業戦略は経験と勘に依存せざるを得ません。どのチャネルから質の高いリードが入っているのか、どの業種の受注率が高いのか、解約の兆候はどこに表れるのか。こうした問いに対して、データで答えられる体制がなければ、再現性のある成長は困難です。 業務効率の低下と機会損失 見積作成、請求処理、問い合わせ対応、レポート作成といった定型業務を手作業で行っている場合、本来注力すべき営業活動や顧客対応に割ける時間が圧迫されます。一件ずつは小さな非効率でも、年間で積み上げれば相当な機会損失です。 これらの課題は、企業規模が小さいうちは「なんとか回っている」状態で見過ごされがちです。しかし、事業拡大や組織の成長に伴って急速に深刻化する性質を持っています。CRM導入の検討は、問題が起きてからではなく、成長の手前で着手するのが合理的です。 3. Salesforce導入で得られる具体的なメリット では、数あるツールの中でなぜSalesforceが選ばれるのでしょうか。その理由は、単なる機能の多さではなく、「拡張性」と「信頼性」にあります。 顧客情報の一元管理と組織知化 Salesforceでは、顧客の基本情報、商談履歴、問い合わせ内容、メールのやり取り、契約状況などをすべて一つのプラットフォーム上で管理できます。情報が個人ではなく組織に蓄積されるため、担当者が変わっても顧客対応の質を維持できます。これは属人化の解消だけでなく、組織としての顧客対応力の底上げに直結します。 営業プロセスの可視化と標準化 商談のステージ管理、活動履歴の自動記録、パイプラインのダッシュボード表示など、営業プロセス全体をリアルタイムで可視化できます。マネジメント層は現場に逐一確認せずとも状況を把握でき、ボトルネックの早期発見や適切なリソース配分が可能になります。これは、属人的な「個人商店」型の営業スタイルから、チームで成果を出す「組織営業」への転換を支える基盤となります。 拡張性と柔軟なカスタマイズ Salesforceはプラットフォームとしての拡張性に優れています。標準機能だけでなく、AppExchange(2)と呼ばれるマーケットプレイスを通じて数千種類のアプリケーションと連携可能です。会計システム、名刺管理、チャットツール、電子契約サービスなど、既存の業務ツールや日本固有の商習慣に合わせたアプリを柔軟に組み込めるため、自社に最適な業務フローを構築できます。 AIによるデータ活用の高度化 前述のAgentforceをはじめ、SalesforceはAI機能の統合を急速に進めています。商談の成約確度予測、次のアクション提案、顧客の離反兆候の検知など、蓄積されたデータをもとにAIが実用的な示唆を提供します。重要なのは、こうしたAI機能がCRMに蓄積された自社データの上で動作する点です。データの質と量が整っていれば、AIの精度も自ずと高まります。CRM導入はAI活用の土台づくりでもあります。 グローバル水準のセキュリティとコンプライアンス Salesforceはクラウドサービスとして、SOC認証、ISO 27001、GDPRへの対応など、グローバル水準のセキュリティ基盤を備えています(3)。アクセス権限の細かな制御、監査ログの自動記録、データの暗号化など、企業の内部統制やコンプライアンス要件にも対応できる設計です。オンプレミス環境で自社運用するよりも、セキュリティ面で優れたケースも少なくありません。 4. RSM汐留パートナーズが提供できる価値 CRMの導入は、単なるIT投資ではありません。会計の正確性、法務の安全性、人事の効率性を高め、企業全体のガバナンスを強化するための「経営OS」の構築そのものです。 しかし、Salesforceのようなシステムは、機能の豊富さと自由度の高さゆえに、「導入したものの使いこなせていない」「設定が複雑で現場に定着しない」「結局Excelに戻ってしまった」といった失敗事例も少なくありません。ツールの導入自体と、それが組織に定着して成果を生むことの間には、大きなギャップが存在していることを改めて意識する必要があります。 このギャップを生む最大の原因は、多くの場合、システムそのものではなく「導入の前段階」にあります。自社の業務課題を正確に把握できていない、自社にふさわしいツールが選定できていない、CRM導入後の運用体制が設計されていない――こうした上流工程の不備が、後の「使いこなせない」につながります。 「SalesforceやCRMに興味はあるが、何から手をつければよいかわからない」「ベンダーの提案が適正か判断したい」といったお悩みをお持ちの際は、ぜひ一度「SaaS導入支援サービス」をご確認いただければ幸いです。経営と現場、双方にとって価値ある「経営OS」の構築をサポートいたします。 参考資料: (1)Gartner Reprint(2)世界最大級のビジネスSaaSアプリのマーケットプレイスAppExchangeへようこそ - Salesforce AppExchange(3)Salesforce セキュリティについて
- [SASB基準:その全体像とISSB統合](https://shiodome.co.jp/column/54120/) - 1. SASBの内容と目的 SASB基準は、企業が自社のサステナビリティに関する現状評価を行い、その内容を投資家に分かりやすく伝えるための実務的なフレームワークとして整備されてきました。特徴的なのは、77の産業分野ごとに、短期・中期・長期のキャッシュフローや資本コストに影響を及ぼし得るサステナビリティ関連のリスクと機会を整理している点です。単にテーマを列挙するのではなく、その産業のビジネスモデルにとって財務的に重要となり得るかどうかという観点からトピックを選定し、定性情報と定量情報(指標)の両面で開示を促しているところに、SASB基準の実務性があります。 また本基準は、証拠に基づくアプローチと市場参加者の知見を組み合わせたプロセスで策定されている点も重要です。リスクや機会の現れ方は産業ごとに大きく異なるため、産業横断で一律の指標を求めるのではなく、産業別のスタンダードとして設計されていることが、投資家にとっての実務上の使いやすさにつながっています。一方で、既存の会計基準や枠組みとの整合性にも配慮しており、追加的な開示負担を抑えつつ、コスト効率良く導入できるよう工夫もされています。 SASB基準は現在、ISSBのもとで維持・改訂が進められており、IFRS S1・S2を実務的に補完する産業別ガイダンスとして位置付けられています。その中核にあるのは、産業別のマテリアリティと指標の枠組みを通じて、投資家が意思決定に必要とする定性・定量情報を整理するという考え方です。本基準は、まさにその役割を土台としてISSB統合後も参照され続けることが想定されており、企業にとっても、自社のサステナビリティ情報をどのような軸で組み立てるべきかを考えるうえで、引き続き有力な手引きとなります。 2. SASB基準の役割:投資家が使えるサステナビリティ情報とISSB時代の活用 SASB基準の重要性は、サステナビリティ情報を単なるイメージやストーリーにとどめず、投資家の意思決定に活用できるデータへと変換してきた点にあります。企業の現状評価を行う際、環境・社会・ガバナンスに関するテーマは多岐にわたりますが、そのすべてが資本コストやキャッシュフローに直結するわけではありません。SASB基準は、産業別に財務的な影響度が高いリスクと機会を絞り込み、それぞれについてどのような定性情報を示し、どのような定量指標でトラッキングすべきかを体系的に整理してきました。その結果、投資家は企業ごとのばらばらな説明に頼るのではなく、一定の共通フォーマットに基づいて比較可能な情報を入手できるようになっています。 また、企業側にとっても自社のビジネスモデルとサステナビリティ要素との関係性を再確認するうえで有効なツールとして機能しています。どの非財務テーマが収益性や資本コストに影響し得るのかを棚卸しし、KPIとして継続的にモニタリングすることで、IR開示・内部管理・事業戦略を一体的に設計しやすくなります。こうした実務的な活用可能性を踏まえると、産業別のマテリアリティと指標群という強みは、今後も活かされていくと考えられます。企業にとっては、単に新基準へ切り替えるのではなく、SASB基準が提供してきた定性・定量の両面からの視点を取り込みながら、自社の開示と経営ストーリーを高度化していくことが、ISSB時代における重要な対応となります。 3. ISSBへの移行プロセス ISSBへの移行プロセスは、SASB基準を含む既存の枠組みを土台として、サステナビリティ開示の国際的な共通基盤を形成していく取り組みととらえることができます。背景には、投資家がグローバルに比較可能な情報を求めている一方で、企業側は複数のフレームワークに並行対応することによる負荷増大に直面しているという現状があります。こうしたギャップを埋めるために、ISSBは、SASB基準を含め、市場主導で発展してきた報告イニシアチブの成果を統合しつつ、投資家の意思決定に役立つ定性・定量情報を効率的に提供できる基準づくりを進めています。 そして、統合の対象となっているのは、SASB基準だけではありません。気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言、統合報告フレームワーク、気候関連開示基準審議会(CDSB)のフレームワークなど、いずれも資本コストやキャッシュフローに影響するサステナビリティ要因を構造的に捉えようとしてきた枠組みが含まれています。ISSBはこれらの知見を踏まえ、投資家が求める情報要件を整理し直すことで、重複を減らしつつ、企業が一本の軸で現状評価と指標管理を行えるように設計しています。この意味で、ISSB統合は、ばらばらであったルールセットを単に寄せ集めるのではなく、市場で実証されてきた要素を抽出し、再構成するプロセスだと言えます。 こうした統合の成果として公表されたのが、IFRS S1(サステナビリティ関連財務情報の一般要件)とIFRS S2(気候関連開示)です。IFRS S1は、サステナビリティ関連のリスクと機会に関する全般的な開示の枠組みを示し、IFRS S2はそのうち気候領域に特化した詳細要件を定めています。IFRS S1・S2の役割については、『ESG開示基準の一つであるIFRS S1・S2の役割』をご覧ください。SASB基準は、この中で産業別の開示トピックや指標群の参照源として位置付けられており、各企業が自社のビジネスモデルに即した定性・定量情報を選択する際の実務的なガイドとして活用されます。企業にとってISSBへの移行とは、単なるラベル変更ではなく、従来SASB基準で整理してきた産業別マテリアリティを、IFRS S1・S2の枠組みの中で再配置する作業だと理解することが重要です。これにより、開示、内部管理、戦略立案を一体のストーリーとして結び付け、投資家に対して資本コストやキャッシュフローのドライバーをより明確に示すことが求められています。 4. まとめ SASB基準は、産業別に重要なサステナビリティ要因を体系化し、投資家の意思決定に役立つ情報開示を促す実務的なフレームワークとして発展してきました。現在はISSBのもとで維持・改訂が進められており、IFRS S1・S2を補完する役割を担うことで、今後も事業モデルや産業特性に即した開示を設計するうえで有力な参照基準であり続けると見込まれます。したがって企業は、単に旧SASBからISSBへ切り替えるだけでなく、SASB基準で蓄積された産業別のマテリアリティや指標群を活かしながら、自社の開示・内部管理・戦略立案を一貫したストーリーとして再設計していく姿勢が、今後の企業価値に影響を与え得る重要なポイントと考えられます。
- [国連SDGsと2030アジェンダ――17目標の全体像と自国・自組織に求められる役割](https://shiodome.co.jp/column/54127/) - 1. 国連SDGsとは何か:2030アジェンダと17の目標の概要と目的 2015年に国連加盟国すべてが採択した「持続可能な開発のための2030アジェンダ」は、人類と地球の平和と繁栄に向けた共通の青写真であり、その中核に「国連SDGs(Sustainable Development Goals)」と呼ばれる17目標が位置づけられています。SDGsは、途上国だけでなく先進国も含め、あらゆる国に行動を求める普遍的なアジェンダであり、「誰一人取り残さない」を合言葉に、貧困撲滅、健康、教育、不平等の是正、経済成長、気候変動対策など、多様な課題を統合的に扱う点に特徴があります。 17目標の下には169のターゲットとそれを測る指標(KPI)が整理されており、各国政府や企業・自治体が自らの現状を把握し、進捗をモニタリングするための共通言語として機能しています。一方で、経済成長と環境保護、雇用創出と温室効果ガス削減のように、目標間のトレードオフや、ある国の行動が他地域に影響を及ぼすスピルオーバーといった難しい論点も内包しており、「持続可能」な発展のバランスをどう取るかが常に問われます。 本稿では、このような国連SDGsの概要と目的を起点に、17目標の全体像と相互関係を解説しつつ、ターゲットや指標を手がかりに「自国・自組織はどこに貢献し得るのか」を考えるための視座を整理していきます。 2. SDGs17目標の全体像:五つの柱と相互に結び付くフレームワーク 17の持続可能な開発目標(SDGs)は、一見バラバラなテーマの寄せ集めに見えますが、実際には「人間」「地球」「繁栄」「平和」「パートナーシップ」という5つの柱のもとに構造化された、一つの包括的なフレームワークです。貧困撲滅(目標1)、飢餓の解消(目標2)、健康(目標3)、教育(目標4)、ジェンダー平等(目標5)といった目標は、人が人らしく生きるための最低限の条件を整える「人間の基盤」に関する領域であり、他の目標に対する前提として位置づけられています。 これに対して、安全な水と衛生(目標6)、エネルギー(目標7)、働きがいと経済成長(目標8)、産業・技術革新・インフラ(目標9)、まちづくり(目標11)、つくる責任・つかう責任(目標12)は、経済システムや都市・産業構造そのものを、持続可能な方向へと転換していくための目標群です。ここでは、経済成長と環境負荷のデカップリング(切り離し)や、資源循環(サーキュラーエコノミー)の実現といった観点から、KPIや指標を通じて進捗が測定されています。 気候変動(目標13)、海の豊かさ(目標14)、陸の豊かさ(目標15)は、「地球の限界」を意識した環境目標であり、エネルギー・農業・都市政策との間にトレードオフやスピルオーバーを生じやすい領域です。一方で、再生可能エネルギー、自然再生、グリーンインフラなどを通じて、新たな雇用や投資機会を生み出すポテンシャルも持っています。平和と公正(目標16)とパートナーシップ(目標17)は、こうした全体を支える制度・ガバナンスと国際協調の土台であり、法の支配、汚職防止、資金動員、技術移転、データや統計整備などを通じて、他の16目標の実現を間接的に支えています。 SDGにおいて重要なのは、これら17目標が先進国・途上国を問わず適用されること、そしてそれぞれの目標の下に置かれた169のターゲットと指標(KPI)によって、各国が自国の状況を見える化し、優先順位づけや政策の整合性を検討できる点にあります。本稿では、この17目標を個別に暗記するのではなく、「どの柱に属し、どの目標と結び付きやすいのか」という全体像と相互関係に着目し、自国・自組織がどの目標に強みと責任を持ち得るのかを考えるための出発点として整理していきます。 3. SDGs実現に向けた実施枠組みと進捗評価 前節まででSDGsの全体像を俯瞰したうえで、本節では、SDGsがどのように実施され、その進捗がどのように評価されているのかに焦点を当てます。そもそも持続可能な開発とは、「将来の世代が自らのニーズを満たす能力を損なうことなく、現在の世代のニーズを満たす開発」という考え方に立脚し、経済成長・社会的包摂・環境保護の三要素を同時に前進させることを求めるものです。2030アジェンダの中核である17目標は、この三要素を横断的に結びつけ、貧困、不平等、気候変動、平和といった複合課題を統合的に解くための共通言語として機能しています。 もっとも、SDGs自体に法的拘束力はありません。各国が主体的に国家戦略や持続可能な開発計画へ落とし込み、政策・計画・プログラムの中で資源を動員していくことが前提となります。その際、2030年アディスアベバ行動アジェンダが示す資金動員の視点や、政府・企業・金融機関・市民社会が関与するグローバル・パートナーシップが、実装の現実解となります。実施には多額の投資が必要であり、既存資源の再配分に加え、ODAの役割も依然として重要です。 進捗は、17目標・169ターゲットを約300の指標で測る国際的枠組みに基づき、IAEG-SDGsの整理した指標体系のもとで毎年レビューされています。つまりSDGsは理念だけでなく、データと説明責任によって運用される制度設計でもあります。組織や企業にとっては、社会課題への貢献が結果的に事業のレジリエンスや競争力を高める一方、短期コストや目標間のトレードオフが生じる場面もあり得ます。だからこそ、どの目標を優先し、どの指標で成果を捉え、誰と連携してスケールさせるかを明確にすることが不可欠です。さらに気候変動は、開発成果を後退させ得る最大級の横断リスクである一方、持続可能な開発への投資は排出削減やレジリエンス強化を通じて気候対策を後押しします。こうした相互依存を理解することが、17目標を「個別施策の寄せ集め」ではなく、現実に機能する実行計画へと転換する第一歩となるでしょう。 4. まとめ 国連SDGsは、2030アジェンダの中核となる17の持続可能な開発目標で、「人間・地球・繁栄・平和・パートナーシップ」の五つの柱のもと、貧困や不平等、気候変動などを統合的に解決するための共通言語です。169ターゲットと指標により進捗が測定され、各国政府や企業は国家戦略や投資、官民連携を通じて実施を進めつつ、目標間のトレードオフや気候変動リスクを踏まえ、自らの強みと責任をどこに置くかが問われています。 国連の「The Sustainable Development Goals Report 2025」では、SDGsはこの10年で教育アクセスの拡大、母子保健の改善、デジタル・ディバイドの縮小、HIV/マラリア等の感染症負荷の低減、電力アクセスの拡大や再エネの伸長など、確かな前進を生んだと評価されています。その一方、2030年までに全目標を達成するには現状のペースがまだ不十分とも評価されています1)。 特に、利用可能なトレンドデータがあるSDGターゲットのうち、「順調または中程度の進捗」は35%にとどまり、約半数は進捗が遅く、18%は2015年水準から後退しているという厳しい見立てです1)。また現実面では、2025年時点でも8億人超が極度の貧困、世界の約11人に1人が飢餓、スラム等の非正規居住に暮らす人が約11.2億人、強制移住者が約1億2000万人とされ、進捗が「脆弱で不均等」であることが強調されています1)。 こうした状況を踏まえ、レポートは食料システム、エネルギーアクセス、デジタル変革、教育、雇用・社会保障、気候・生物多様性の6分野を優先領域として、国際協調と投資の加速を求めています。詳細は当該レポートをご参照ください。 SDGs自体には法的拘束力はありませんが、持続可能な経済環境を整える上で重要な指針となります。本稿で示した枠組みと現状認識が、自組織として取り組むべき領域を見極める一助となれば幸いです。2030年に向けて、どのような価値を創出し、どこに貢献していくのか——その次の一歩を、ぜひ主体的に描いていくことが求められています。
- [経営資産を守り抜くサイバーセキュリティの最前線 ─ CrowdStrike](https://shiodome.co.jp/column/54112/) - 企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)が加速する中、会計業界に身を置く私たちもまた、ITコンサルティングの最前線でクライアント様の経営課題と向き合っております。「会計」と「セキュリティ」。一見すると異なる領域に見えますが、どちらも企業の「資産」を守り、事業継続性を担保するという根幹において、その使命は一致しています。 こうした背景から、近年は「どのようなセキュリティ対策を選択すべきか」が、経営判断の一つとして問われるようになっています。本稿では、世界的に利用が広がるセキュリティプラットフォーム「CrowdStrike(クラウドストライク)」を題材に、同社が示す最新の脅威動向を踏まえながら、現代企業に求められるセキュリティの考え方を整理していきます。 1. CrowdStrikeとは何か、なぜ世界が熱狂的に支持するのか CrowdStrikeは、現代のサイバーセキュリティにおける世界的な標準といえる存在です。単なるウイルス対策ソフトのメーカーではなく、クラウド環境を前提に設計されたエンドポイントセキュリティプラットフォーム「Falcon(ファルコン)」を提供する市場のリーダーとして知られています。 IT業界で最も権威あるリサーチ企業の評価において、CrowdStrikは常にトップリーダーの位置を確立しています(1)。 Gartner:実行力の評価において最高スコアを獲得し、5年連続で「リーダー」に選出。 Forrester:統合型クラウドセキュリティプラットフォームとして、エンドポイントセキュリティ分野で最高評価を獲得。 IDC:エンドポイントセキュリティ市場において、トップクラスの市場シェアを維持。 「技術力の高さ」も含め、「Fortune 100」企業の多くや、各国の政府機関、金融機関がCrowdStrikeを採用しているという事実が、その信頼性を裏付けています(1)。 そしてCrowdStrikeにおける最大の特徴は、「クラウドネイティブ」です。世界中の数百万台以上のデバイスから収集される脅威データをクラウド上でリアルタイムに解析し、ある一か所で新たな攻撃手法が見つかれば、即座に世界中の全ユーザーの防御に反映されます。「集団(Crowd)の力で、攻撃(Strike)を防ぐ」。その名の通り、世界規模の集合知によって守られているのが、CrowdStrikeの強みです。 2. 2025年に向けて――現代企業と社会が直面するセキュリティの課題 そもそも、なぜ今これほど高度なセキュリティ対策が求められているのでしょうか。CrowdStrikeが公開している年度脅威レポートを読み解くと、サイバー攻撃を取り巻く環境が、質・速度・規模のすべてにおいて従来とは明らかに異なる段階に入ったことが示されています(2)(3)。もはや一部の高度な組織だけが直面する特殊な脅威ではなく、あらゆる企業活動の前提条件として捉えるべき状況に変化しています。 現代のサイバー脅威における本質的な変化は、攻撃手法が高度化したこと以上に、「人間の対応速度を前提としない攻撃設計」へ完全に移行した点にあります。その象徴が、侵入から横展開までに要する「ブレイクアウトタイム」における急激な短縮です。近年の攻撃は、侵入後から平均して1時間を切るスピードで被害が拡大し、極端なケースでは1分未満で複数のシステムに影響が及びます(2)。これは、侵入を検知してから人が判断し、対策を講じるという従来の運用モデルが限界に達している事を意味します。 さらに攻撃者は、技術的な攻撃要素の他に、ソーシャルエンジニアリングによる攻撃も巧妙になっており、音声によるなりすましや正規アカウントの悪用といった、一見すると不審に見えない手段を巧妙に組み合わせ、初期侵入の成功率を高めています(2)。生成AIの活用により、こうした攻撃は低コストかつ大量に実行可能となり、特別な技術力を持たない攻撃者であっても攻撃が容易に再現できるようになりました。もはや重要なのは「侵入を完全に防げるかどうか」ではなく、「侵入後の挙動をいかに早く検知し、封じ込められるか」という点に移っています。 従来のセキュリティ対策は、ウイルスやマルウェアを検知し、駆除することを前提に設計されてきました。しかし現在、多くの攻撃はその前提そのものをすり抜けて進行します。攻撃者は正規のユーザーIDやパスワードを窃取し、正規の社員になりすましてシステムにログインします。その後、OSに標準搭載された正規ツールなどを用いて活動を進めるため、従来型のアンチウイルスでは異常として検知されません。こうした「Living off the Land(環境寄生型)」攻撃は、正規の操作と不正行為の境界を意図的に曖昧にしています。加えて近年は、生成AIを組み込んだ攻撃活動も現実の脅威となっています。CrowdStrikeは、過去12か月間で生成AIを活用した攻撃に関連する320件以上のインシデントを調査したと報告しています(3)。これらのケースでは、攻撃者が生成AIを用いて情報収集や作業を効率化し、採用プロセスや業務フローそのものに巧妙に入り込むことで、長期間にわたり正規ユーザーとして活動していた実態が確認されています。サイバー攻撃はすでに「不正なプログラムを見つける」段階を超え、「正規の人間・正規の権限・正規の操作」を見抜けるかどうかという次元へ移行していると言えるでしょう。 こうした状況の中で、とりわけ深刻なのが中小企業を取り巻く現実です。「自社は大企業ではないから狙われない」という考えは、現在ではもっとも危険な誤解の一つと考えられます。攻撃者はセキュリティの堅牢な大企業を正面から狙うのではなく、その取引先である中小企業やサプライチェーンの弱点を踏み台として利用します。中小企業は専任のセキュリティ担当者が不在であることも多く、攻撃者にとっては低リスクかつ高い成果が見込める標的となりやすいのが実情です。ランサムウェアによって会計データや顧客情報が暗号化されれば、金銭的被害にとどまらず、信用の失墜によって事業継続そのものが危機にさらされる可能性も否定できません。 3. CrowdStrikeは、この危機的状況をどう解決するのか 前述した「超高速な攻撃」など複数の要素に対し、CrowdStrikeのプラットフォーム「Falcon」は「NGAV(次世代アンチウイルス)」と「EDR(エンドポイントでの検知と対応)」など複数のプロダクトを用いて融合的に脅威を見つけることが、メリットとして挙がられます。 侵入を防ぐだけでなく「動き」を検知する(EDRの真価) CrowdStrikeは、ファイルそのもののマルウェア判定(NGAV)に加え、パソコンやサーバー内での「挙動」を監視します(EDR)。たとえ正規のIDでログインされ、正規のツールが使われたとしても、「普段とは異なるコマンドが実行された」「不審な通信が発生した」という"振る舞い"を検知します。これにより、従来型のソフトでは見抜けない「なりすまし攻撃」や「未知の脅威」をあぶり出すことができます。 「1-10-60ルール」の実現 セキュリティ運用には「1-10-60」というベンチマークがあります。 1分で検知する 10分で調査する 60分で封じ込める CrowdStrikeのFalconプラットフォームは、この超高速対応を実現するために設計されています。AI(人工知能)による自動解析と、クラウド上の脅威インテリジェンスが連携し、侵入の兆候を瞬時に捉え、端末をネットワークから隔離するなどの初動対応を支援します。これにより、致命的なデータ漏洩が起こる前に攻撃の芽を摘むことが可能です。 エージェントの軽快さと運用の簡易化 高機能なセキュリティソフトは、パソコンの動作を重くしがちです。しかしCrowdStrikeは、極めて軽量な単一のエージェント(常駐プログラム)で動作します。導入時に再起動が不要なケースも多く、業務を止めることなく導入できます。また、クラウド管理型であるため、社内・社外・テレワーク環境を問わず、すべての端末を一元管理できます。これは、専任のIT担当者を置くことが難しい企業にとって、管理コストの大幅な削減という解決策をもたらします。 4. RSM汐留パートナーズが提供する付加価値 サイバー攻撃は、もはや「対岸の火事」ではありません。いつ、どこで、誰が被害に遭ってもおかしくない災害のようなものです。しかし、適切な備えさえあれば、被害を最小限に抑え、迅速に復旧することは十分に可能です。 RSM汐留パートナーズは、日々、お客様の「お金」という重要な経営資産、そしてその源泉となる「データ」を取り扱っています。財務データ、顧客情報、従業員のマイナンバーなど、企業にとって最も守るべき機密情報の重要性を、誰よりも肌感覚で理解しています。単にITベンダーとしてツールを売るのではなく、「経営資産を守るための内部統制の一環」としてセキュリティを捉えています。そのため、経営者の皆様に対して、技術用語ではなく「経営リスクと投資対効果」の視点から、納得感のある提案を提供いたします。 CrowdStrikeという世界最高峰の盾と、会計事務所としての誠実なサポート体制。 この二つを掛け合わせることで、お客様のビジネスを強固に守り抜くことをお約束いたします。自社のセキュリティ対策に少しでも不安をお持ちの方々は、ぜひ一度当社が提供している「サイバーセキュリティ支援」サービスをご確認していただけたら幸いです。 参考資料 (1)業界最高水準の検証結果とレビュー | クラウドストライク(2)CrowdStrikeGlobalThreatReport2025.pdf(3)CrowdStrike 2025 Threat Hunting Report
- [価値創造プロセスの「ビジネスモデル」と「マテリアリティ」](https://shiodome.co.jp/column/54107/) - 今回のコラムでは、統合報告書の価値創造プロセスを構成する要素の一つ「ビジネスモデル」について解説します。ビジネスモデルという言葉は、事業戦略や起業の文脈で広く使われていますが、統合報告書で求められるビジネスモデルは、一般的に語られる「儲けの仕組み」とは少し趣が異なります。 この違いを理解しないまま統合報告書を作成すると、内容が「単なる事業紹介」にとどまり、本来示すべき「価値創造の仕組み」が伝わりにくくなってしまいます。 本稿では、一般的なビジネスモデルと統合報告書におけるビジネスモデルの違いを整理するとともに、最後に「マテリアリティ」と価値創造プロセスとの関係についても解説を加えます。 1.統合報告書におけるビジネスモデルの定義 IRガイドラインでは、統合報告書におけるビジネスモデルを次のように定義しています。 「組織のビジネスモデルとは、組織の戦略目的を達成し、短期・中期・長期に価値を創造するため、事業活動を通じてインプットをアウトプットおよびアウトカムに変換するシステムである。」 この定義が示すとおり、統合報告書において求められるビジネスモデルとは、「企業が中長期にわたり価値を創造し続けるための構造」を示すものです。単なる収益構造の説明ではなく、企業が持続的に価値を生み出す仕組みを、戦略との整合性を踏まえて示すことが重要です。 2. 一般的なビジネスモデルとは「儲けの仕組み」 まず、一般的なビジネスモデルについて整理します。 ビジネスモデルとは、企業がどのように収益を獲得するのか――いわば「儲けの仕組み」を示す枠組みです。近年、活用されている代表的なフレームワークとして、ビジネスモデルキャンバス(Business Model Canvas:BMC)があります。BMCでは、ビジネスモデルは次の9つの要素で構成されます。 顧客セグメント 提供価値(バリュープロポジション) チャネル 顧客との関係 収益の流れ 主要活動 主要資源 主要パートナー コスト構造 これらの要素は、製品やサービスの提供先をどのように設定し、どのように届け、どのように収益化するかといった「顧客価値の創出」と「収益構造の明確化」を主眼に置いています。つまり一般的なビジネスモデルは、自社が市場でどのように稼ぐのかを可視化するためのフレームワークと言えます。 3. 統合報告書で求められるビジネスモデルは「中長期的な価値創造の仕組み」 一方で、統合報告書が求めるビジネスモデルは、「企業が中長期にわたり価値を生み続けるための構造」を示すものです。したがって、一般的なビジネスモデルとの違いは、主に次の2点に整理できます。 ① 短期ではなく「中長期的な視点」 一般的なビジネスモデルが、顧客への価値提供を通じて短期的に収益を上げる仕組みを中心に描くのに対し、統合報告書では「企業が長期にわたり持続的に価値を生み続けるための構造」を示すことが求められています。 市場環境の変化、社会課題、気候変動、人材獲得など、今後の不確実性を踏まえたうえで、中長期的に「どのように価値を創り続けるのか」を説明する必要があります。 ② 顧客価値だけでなく「社会的な価値」の視点 統合報告書では、製品やサービスが顧客に提供する価値にとどまらず、より広いステークホルダー、ひいては社会に対してどのような正負の影響をもたらすのかまで視野を広げます。 企業の持続的成長には、経済価値(売上や利益など)だけでなく、環境負荷の低減、人材育成、地域社会への貢献、サプライチェーン全体への影響など、社会的価値の創出・毀損が企業価値を左右します。 そのため、これらの活動が中長期的に企業の主要な資本(人的資本、自然資本、知的資本など)へどのような影響を与えるのかを説明することも求められます。 こうした視点が欠けてしまうと、統合報告書の読み手が重視する問い―― 「この会社は、この仕組みで長期的に価値を創造し続けることができるのか」 に十分に答えることができません。 よって、統合報告書のビジネスモデルは、単なる事業の流れ図や顧客向け価値の説明ではなく、企業の持続的成長の根拠を示す「価値創造の構造」を描くことが本質であると言えます。 4. 価値創造を伝えるためのビジネスモデル記述の要点 そのうえで、統合報告書におけるビジネスモデルを記述する際には、次の3点に着目することをお勧めします。 ◆ポイント① 主要な資本や資源要素を明確に示す ビジネスモデルは複雑になりがちですが、重要なのは価値創造の核となる資本の要素を明確に示すことです。次の点などを“デフォルメ”して整理することで、読み手にとって理解しやすくなります。 自社はどの資本を価値創造の源泉としているのか どのようなリソース(有形資産・無形資産)が価値創造を可能にしているのか (例:独自の開発技術、企業文化、人材、蓄積されたノウハウなど) ◆ポイント② ステークホルダーとの関連性を明確に説明する ステークホルダーとの関係性をどのように価値創造につなげているかを示すことも大切です。関係性が明確になるほど、ビジネスモデルのリアリティと厚みが増します。 たとえば、 パートナーとの協働がどのように競争力につながっているのか ステークホルダーとの関係性が、事業基盤や中長期戦略にどのように寄与しているのか といった「関係性のメカニズム」を描くことが有効です。ステークホルダーを単に列挙するのではなく、特に重要なステークホルダーを示し、その関係性を通じてどんな価値が生まれるのかまで示すことがポイントです。 ◆ポイント③ 自社ならではの強み(オリジナリティ)を示す ビジネスモデル記述で最も重要なのが、自社固有の強み(オリジナリティ)を明確に伝えることです。 オリジナル性を欠いたビジネスモデルは、読み手に「どの会社にも当てはまる」と受け取られてしまい、投資家の評価につながりません。 逆に、差別化できる要因を明確に示すことで、統合報告書全体の説得力は大きく高まります。 5.
- [プロスポーツ選手等の居住形態(居住者および非居住者)の判定](https://shiodome.co.jp/column/54099/) - スポーツチームで外国籍の選手・監督・コーチと契約する際、「この方は日本の所得税法上、非居住者として扱えるのか?」は実務上とても重要な論点です。非居住者か居住者かで、課税関係や源泉徴収の設計、社内オペレーションの難易度が大きく変わるためです。 ここでは、法令上の定義に加え、国税庁の考え方(タックスアンサー)を踏まえた“実務で非居住者と認められやすい要件”と、税務調査で確認されやすいポイントを整理します。 Q. チーム契約している外国籍選手・監督・コーチ等を非居住者として取り扱うための条件を教えてください。 A.法令上、次の 2つの要件を充足している者は、所得税法上の非居住者として取り扱われます。(所得税法第2条第1項第3号) 国内に住所を有しないこと 現在まで引き続いて1年以上居所を有しないこと なお、次の3つの条件を充足している場合には、外国籍選手・監督・コーチ等は非居住者として認められます。 【非居住者とされる実務要件】 ①シーズンオフに日本の居住場所を引き払う形態であること②契約期間が1年以下であること③家族の帯同がないこと ※国税庁タックスアンサーNo.2012https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2012_qa.htm 【解説】 1.非居住者とは「居住者以外の個人」をいい、居住者とは「国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人」をいいます。(所得税法第2条第1項第3号/第5号) したがって、国内に住所を有する者は「居住者」になりますが、国内に居所を有する者については、次のようになります。(所得税基本通達2-3) 【入国後の居住区分】 2.なお、国内に居住することとなった個人が、国内において、継続して1 年以上居住することを通常必要とする職業を有する場合は、その者は、国内に住所を有する者(居住者)と推定されます。(所得税法施行令第14 条第1項第1号) また、国内において職業に従事するため国内に居住することとなった者は、その地における在留期間が契約等によりあらかじめ1 年未満であることが明らかであると認められる場合を除き、これに該当するものとされます。(所得税基本通達3-3) したがって、外国籍選手・監督・コーチ等との契約が1 年以上となっている場合は、これらの者は国内に住所を有する者(居住者)と推定されます。 3.また、シーズンオフに帰国せず、現在まで引き続いて1年以上居所を有する者は居住者に該当することとなります。 【実例】 上記で記載した「国税庁タックスアンサー」で示されている3要件につきましては、実際の税務調査時には以下のような確認や判断が入る可能性があります。 1.シーズンオフに居住場所を引き払う形態となっていること ⇒所属チームで外国籍選手の住居を借り上げている場合には、毎年の帰国時に住居においてある荷物はどうしているか、鍵の引渡方法、退去後に部屋にクリーニングを入れているかなど実質面の確認がされました。 また、選手個人で車を有している場合やペットを飼っている事実がある場合には、シーズンオフになった場合にどう処理しているかを細かく確認されたケースもあります。 2.外国籍選手・監督・コーチ等との契約が1年以下となっていること ⇒1年契約となっていても、自動更新等の条項が入っている場合やプレスリリースにより前年から来年の契約が決まっていることが公表されている場合には、実質的には1年超の契約であると判断される可能性があります。 3.家族の帯同がないこと ⇒住居の賃貸借契約書等で居住者の中に家族がいないか確認されます。 たとえば子供が日本の学校に通っている場合には、バカンス時の一時滞在ではなく、一緒に住んでいるものとして家族の帯同ありと認定されてしまう可能性が高いようです。 ポイントは、「形式(契約書の文言)」だけでなく「実態(生活の本拠がどこにあるか)」が必ず見られることです。特に、住居の扱い・荷物の残し方・車やペットの保有・契約更新条項の有無・家族の同居状況(子の就学を含む)などは、税務調査で“生活の継続性”を判断する材料になりやすく、非居住者判定を左右します。 実務対応としては、非居住者として取り扱う前提であれば、①シーズンオフの退去実態が説明できる運用、②実質的に1年超と見られない契約設計(自動更新・既公表情報に注意)、③家族帯同の有無を裏づけられる資料整理までをセットで整備しておくことが、リスク低減につながります。
- [駐在員の日本入国が可能になるその他の在留資格「短期滞在」とその判断要素としての報酬の有無](https://shiodome.co.jp/column/18623/) - 1. はじめに 海外から日本へ従業員を派遣する際、一般的には「企業内転勤」や「技術・人文知識・国際業務」といった就労可能な在留資格の取得が検討されます。しかし、プロジェクトの期間や業務内容によっては、これらを取得せずとも「短期滞在」の在留資格で入国し、必要な活動を行えるケースがあります。 本記事では、駐在員等の派遣において「短期滞在」が選択肢となり得る条件と、その判断の核心となる「報酬」の考え方について、現行の法令および実務上の解釈をもとに解説します。 2. 在留資格「短期滞在」とは 「短期滞在」とは、日本の出入国管理及び難民認定法(入管法)において、以下のように定義されている在留資格です。 本邦に短期間滞在して行う観光、保養、スポーツ、親族の訪問、見学、講習又は会合への参加、業務連絡その他これらに類似する活動具体的には、日本での滞在期間が90日以内で、かつ収入を伴う事業を運営せず、又は報酬を得る活動を行わない場合に該当します。一般的に「観光ビザ」や「商用ビザ」と呼ばれることもありますが、実務上はこれらはすべて「短期滞在」の枠組みに含まれます。 3. 「商用」目的での活動範囲 企業の担当者が最も迷いやすいのが、「どこまでが商用(短期滞在)で、どこからが就労(就労ビザ)なのか」という境界線です。 「短期滞在」で認められる商用活動の例としては、一般的に以下のようなものが挙げられます。 商談・契約調印: 日本の取引先との打ち合わせや契約の締結。 市場調査: 日本市場の視察やマーケティングリサーチ。 業務連絡: 日本支店や子会社との会議、連絡業務。 アフターサービス: 海外から輸入された機械等の設置やメンテナンス(※期間や契約形態により判断が分かれます)。 これらは「業務の遂行」ではありますが、日本国内で資金を稼ぐ活動(就労)とは区別されます。この区別において最も重要な判断基準となるのが「報酬の有無」です。 判断の核心となる「報酬」の定義 「短期滞在」においては、「報酬を受ける活動」は禁止されています。ここでいう「報酬」とは具体的に何を指すのでしょうか。 報酬の発生源(どこから支払われるか) 入管法上の解釈において、日本国内の機関(日本法人や日本支店など)から報酬が支払われる場合、それは原則として「就労」とみなされ、就労ビザが必要となる可能性が高まります。 一方で、報酬が海外の所属機関(送り出し元の外国企業)からのみ支払われ、日本側からは一切の報酬が発生しない場合は、「短期滞在」での活動が認められる要素の一つとなります。 「報酬」と「実費弁償」の違い ここで注意が必要なのは、「報酬」と「滞在費(実費弁償)」の区別です。 「報酬」とは基本的には、(日本国内における)役務提供の対価という性質を有し、以下の費用については、日本側が負担したとしても「報酬」には当たらないと解釈されるのが一般的です。 日本への渡航費(航空券代など) 日本での宿泊費 滞在中の食事代や交通費などの必要経費(日当) つまり、日本側がお金を支払う事実があっても、それが「役務提供の対価」ではなく「滞在に必要な実費」であれば、直ちに就労ビザが必要になるわけではありません。 4. 短期滞在での活動が否認されるケース(不法就労のリスク) 「給与は海外の本社から出ているから、短期滞在で問題ない」という判断は、必ずしも正解とは限りません。たとえ日本側からの報酬がゼロであっても、以下のようなケースでは「実質的な就労」とみなされ、短期滞在が認められない(あるいは入国審査で拒否される)可能性があります。 日本国内の業務に従事し、その成果が日本側の利益に直結する場合 例:日本の工場ラインに入って製品を製造する。 例:日本の店舗で接客販売を行う。 例:日本のプロジェクトチームの一員として、システム開発のコーディングを常駐で行う。 滞在期間が反復・継続する場合 90日の短期滞在を繰り返し更新(いわゆるビザラン)して、実質的に長期滞在しているような場合。 特に、機械の設置や修理などの技術的な業務については、それが「売買契約に付随する偶発的なアフターサービス」なのか、「独立した建設・設置業務」なのかによって判断が分かれます。後者の場合、日本側からの報酬がなくても「短期滞在」の範囲を超える活動とみなされるリスクがあります。 5. おわりに 駐在員や出張者が「短期滞在」で入国できるかどうかの判断は、単に「90日以内か」「日本側から給料が出るか」だけでなく、具体的な活動内容や契約関係を総合的に考慮して行われます。 誤った在留資格で入国し活動を行った場合、不法就労として企業側が処罰の対象となるリスクや、当該外国人が次回以降日本に入国できなくなるリスクがあります。 判断に迷うグレーゾーンのケースについては、自己判断で進めることなく、専門的な知見に基づいた確認を行うことが推奨されます。
- [在留資格「企業内転勤」の取得及び維持に必要な海外法人と日本法人との関係性~同一会社内の移動、系列企業内の出向等及び駐在員事務所~](https://shiodome.co.jp/column/18634/) - はじめに 在留資格「企業内転勤」は、外国に拠点を置く企業などが、その社員を日本にある拠点へ期間を定めて転勤させる場合に付与される在留資格です。 この在留資格の審査においては、転勤する社員本人の経歴もさることながら、「送り出し側の外国法人(派遣元)」と「受け入れ側の日本法人(拠点)」との間に、特定の資本関係や組織上の結合関係が存在していることが絶対的な要件となります。単に「業務提携をしている」「取引がある」というだけでは、この要件を満たすことはできません。 本記事では、入管法令および実務上の運用において認められる「転勤の範囲」と、具体的な企業間の関係性について解説します。 1. 在留資格における「転勤」の定義と範囲 入管法上の「企業内転勤」における「転勤」とは、同一会社内の異動に限らず、資本関係等がある系列企業内の出向なども広く含まれます。 具体的には、以下のいずれかの関係にある事業所間での異動が対象となります。 同一会社内の異動(本店・支店間の異動)最も基本的な形態です。法人格が同一である事業所間での異動を指します。外国の本店⇔日本の支店、外国の支店⇔日本の本店、外国の支店 ⇔日本の本店 親会社・子会社間の異動法人格が異なっていても、経営権を通じて強い結びつきがある場合です。一般的に「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」における定義が参照されます。親会社 ⇔ 子会社親会社が子会社の議決権の過半数を所有している場合などが該当します。 孫会社等の系列企業内の異動親会社・子会社の関係が連鎖している場合も対象となり得ます。親会社 ⇔ 孫会社親会社が子会社を通じて、孫会社の経営を支配している場合。子会社 ⇔ 孫会社子会社 ⇔ 子会社(兄弟会社)同一の親会社を持つ子会社同士の間での異動も認められます。 関連会社への異動「子会社」の定義には当てはまらないものの、重要な影響力を与えることができる「関連会社」への異動も、対象となる場合があります。親会社 ⇔ 関連会社一般的に、議決権の20%以上を所有している場合などが該当します。子会社 ⇔ 関連会社これらは、いわゆる「出向」の辞令に基づいて行われるケースが多く見られますが、在留資格審査においては、これらの資本関係・出資比率を立証する資料(株主名簿、決算書、閉鎖事項全部証明書など)の提出が求められます 2. 駐在員事務所(Representative Office)の場合 これから日本に進出しようとする外国企業が、本格的な法人設立の前段階として「駐在員事務所」を設置するケースがあります。 駐在員事務所は、日本での登記(支店登記)がなされていないケースも多く、独立した法人格を持たないことが一般的ですが、このような拠点への転勤であっても「企業内転勤」の対象となり得ます。 活動内容の制限 駐在員事務所の主な活動は、国際税務上のPE認定の関係上、市場調査、情報収集、物品の購入、広告宣伝などの準備行為・補助的行為に限られます。 直接的な営業活動を行い、収益を上げる活動を行う場合は、支店や現地法人としての実態が必要となり、場合によっては在留資格「経営・管理」の検討が必要になることもあります。 駐在員事務所への転勤申請では、日本に法人格がないため、賃貸借契約書や事務所の概要説明書などを用いて、物理的な事業所が存在していることを丁寧に立証する必要があります。 3. 在留資格の維持と関係性の消滅リスク 「企業内転勤」の許可を持って在留している間は、送り出し機関と受け入れ機関の関係性が維持されている必要があります。 以下のような事態が発生した場合、在留資格の該当性に影響を及ぼす可能性があります。 資本関係の解消M&Aや株式譲渡により、日本法人がグループから外れ、他社の傘下に入ったり独立系企業になったりした場合、「企業内転勤」の前提となる関係性が消滅することになります。この場合、次回の更新が認められない可能性があり、速やかに「技術・人文知識・国際業務」など、他の就労資格への変更を検討する必要があります。 転勤期間の終了と完全移籍当初は「転勤(出向)」として来日していたものの、途中で外国法人を退職し、日本法人に「転籍(完全移籍)」することになった場合です。「企業内転勤」は将来的に外国の事業所に戻ることが予定されている、あるいは外国法人に籍が残っていることが前提の資格となります。そのため、完全移籍等の場合は、契約形態の変更に合わせて在留資格変更許可申請が必要となるケースがあります。 まとめ 在留資格「企業内転勤」における企業間の関係性は、単なるグループ会社という認識だけでなく、法的な定義に基づいた資本関係や支配関係の有無が厳格に審査されます。 特に、複雑な資本構成を持つグローバル企業や、これから日本拠点を立ち上げる段階の企業においては、「どの会社からどの会社への異動として申請するか」というスキーム作りが非常に重要です。申請にあたっては、最新の会社四季報や企業の年次報告書、株主総会議事録などを確認し、関係性を客観的に証明できる準備を整えることが推奨されます。
- [建設工事の分類・種類、建設業の種類~電気工事業における注意点~](https://shiodome.co.jp/column/18863/) - 1. 29種の工事・工事業 現在、以下の29種の工事・工事業があります。これから建設業の許可を受けようとする場合はそれぞれ必要な工事を選びそれぞれの要件を満たして取得することとなります。 2. 一式工事と専門工事 1の表中の土木一式工事、建築一式工事は一式工事といわれ「総合的な企画、指導、調整のもとに行う工事」と定義されています。建築一式の例でいうと例えば建築確認が必要な新築・増改築などが建築一式工事に該当します。その他の工事を専門工事といいます。一式工事をもっていればすべての工事を行えるわけではなく、例えば冷暖房設備工事など専門工事を行う場合は別途管工事の許可が必要になります(軽微な工事を除く)。 3. 電気工事業の注意点 電気工事業を自社で施工する場合は注意が必要です。この場合、500万円未満の軽微な工事を除き建設業法に基づく建設業の許可と共に電気事業法に基づく電気工事業の登録も必要になります。一方、元請けとして電気工事業を請負う場合であれば電気工事業の登録は不要です。電気工事業には①主任電気工事士が在籍していること②必要な機械器具を保有していることが求められます。扱う電気工事の種類が一般用電気工作物、自家用電気工作物によって①と②それぞれ求められる人的要件や機械器具、また登録の種類が変わります。 一般用電気工作物とは600V以下で受電する一般家庭、商店等の屋内配線設備等をいい、自家用電気工作物とは600Vを超える電圧で受電する大規模マンション、ビル、工場等の設備が該当します。 一般用電気工作物主任電気工事士の資格:第一種電気工事士もしくは第二種電気工事士必要な機械器具:絶縁抵抗計・接地抵抗計・電圧計(回路計) 自家用電気工作物主任電気工事士の資格:第一種電気工事士必要な機械器具:絶縁抵抗計・接地抵抗計・電圧計(回路計)・電流計・低圧検電器 ・高圧 検電器・継電器試験器・耐電圧試験器 一般用電気工作物のみ又は一般用電気工作物等及び自家用電気工作物を施工する場合に必要な手続きはみなし登録電気工事業者の届出です。自家用電気工作物のみ施工する場合に必要な手続きはみなし通知電気工事業者の通知です。
## プロフェッショナル紹介
- [松尾 雅和 Masakazu Matsuo](https://shiodome.co.jp/people/masakazu-matsuo/) - 大手自動車メーカーにて設計エンジニアとして製品開発に携わり、3D設計データの作成や試作・開発スピード向上のための仕組みづくりに従事した後、株式会社スマートプロセス(現RSM汐留スマートプロセス株式会社)へ入社。製品開発現場で培った実務経験と技術知見を強みに、外部パートナーとの調整・進行管理も含めたプロジェクト推進に従事。現在はPMOの一員として、製造業へのデジタル技術導入と開発プロセス改革を支援するプロジェクトに従事し、現場の効率化と働き方改善の実現に向けて幅広く貢献している。2026年7月、RSM汐留パートナーズへのグループインに伴い、マネージャーに就任。
- [二之宮 百合恵 Yurie Ninomiya](https://shiodome.co.jp/people/yurie-ninomiya/) - 大手家電量販店にてコンシェルジュとしてBtoCセールスを担当し、幅広い顧客対応を通じてコミュニケーション能力と業務遂行力を磨く。その経験を通じてBtoBセールスおよび製造業界への関心を深め、スタートアップビジネスへの参画を決意。株式会社スマートプロセス(現RSM汐留スマートプロセス株式会社)へ入社し、新たなステップを踏み出す。2026年7月、RSM汐留パートナーズへのグループインに伴いグループに参画。現在は主にバックオフィス業務全般を担当し、社内サポートを通じてチームおよび組織運営を縁の下から支えている。
- [齋藤 昴 Subaru Saito](https://shiodome.co.jp/people/subaru-saito/) - 自動車OEMにて10年以上にわたり、エンジン企画や電動車のシステム設計など自動車開発全般に携わった後、株式会社スマートプロセス(現RSM汐留スマートプロセス株式会社)へ入社。長年の製品開発経験で培った深い業界知見と技術的専門性を強みに、自動車・部品メーカーへのBOMおよびRFLP導入を中心とした開発プロセス改革コンサルティングに従事。クライアントの業務プロセス構築から現場への定着まで一貫して支援している。2026年7月、RSM汐留パートナーズへのグループインに伴い、ゼネラルマネージャーに就任。
- [青山 知弘 Tomohiro Aoyama](https://shiodome.co.jp/people/tomohiro-aoyama/) - 工学系大学院修了後、自動車OEMに入社。車両量産開発におけるエクステリア性能評価、および設計開発DX改革の研究テーマにおけるプロジェクトマネジメントに従事した後、株式会社スマートプロセス(現RSM汐留スマートプロセス株式会社)へ入社。製造業を中心に豊富な実務知見と技術的バックグラウンドを活かし、自動車OEMやサプライヤ向けの業務効率化・開発プロセス改革プロジェクトをDXコンサルタントとして牽引し、クライアントの競争力強化に貢献。2026年7月、RSM汐留パートナーズへのグループインに伴い、ゼネラルマネージャーに就任。
- [片山 和子 Kazuko Katayama](https://shiodome.co.jp/people/kazuko-katayama/) - 金融機関勤務を経てBtoC小売業を起業。その後、株式会社スマートプロセス(現RSM汐留スマートプロセス株式会社)へ入社し、製造業を中心とする企業のマーケティング戦略立案および実行支援に幅広く従事。顧客の課題を多角的に捉え、システムエンジニアリングおよびデザイン思考を活用した論理的かつ実践的なアプローチでクライアントにソリューションを提供することを強みとする。2026年7月、RSM汐留パートナーズへのグループインに伴い、ゼネラルマネージャーに就任し、組織横断的な業務推進とチームマネジメントを担う。
- [西岡 良太 Ryota Nishioka](https://shiodome.co.jp/people/ryota-nishioka/) - 工学系大学院修了後、ソフトウェア会社および自動車OEMにて実務経験を積み、株式会社スマートプロセス(現RSM汐留スマートプロセス株式会社)を設立し代表取締役に就任。製造業を中心とした開発プロセスのデジタル化や業務効率化を推進し、多くのクライアントのDX戦略立案から実装支援まで一貫して担う。新規ビジネスの立ち上げやイノベーションプロジェクトの推進・運営を得意とし、幅広い業種のクライアントの成長を支援。2026年7月、RSM汐留パートナーズへのグループインに伴い、ITコンサルティング事業部を統括するパートナーに就任。
- [丹波 栄蔵 Eizo Tamba](https://shiodome.co.jp/people/eizo-tamba/) - 大学卒業後、事業会社、社会保険労務士法人勤務を経て、2017年汐留パートナーズグループに入社。人事労務事業部にて上場会社・上場子会社・IPO準備会社等に対し労務サービスを提供。また、IPO準備会社に対する労務ショートレビュー、M&Aの局面における労務デューデリジェンスを通じて、労務リスクの把握・分析に関するサービスにも従事。社会保険労務士。
- [松本 隆平 Ryuhei Matsumoto](https://shiodome.co.jp/people/ryuhei-matsumoto/) - 不動産業界の事業会社にて営業職として従事したのち、会計事務所にて決算支援、法人税務申告、個人確定申告など幅広い業務に携わる。2021年に汐留パートナーズグループへ入社し、国際税務を中心としたクロスボーダー案件を数多く担当。会計税務事業部において、上場会社、上場子会社、多国籍企業などに対し、会計税務およびアウトソーシングサービスを提供している。IFRSと日本基準の差異を踏まえた高度な実務対応や海外本社・現地チームとの円滑なコミュニケーションを強みに、外資系クライアントの日本事業運営を総合的に支えている。 主な案件実績 国内企業(情報通信・IT) 会計支援・税務アドバイザリー 上場企業グループ(情報通信・IT) 会計支援・税務アドバイザリー 上場企業グループ(研究開発業) 会計支援・税務アドバイザリー 国内スタートアップ(飲食業) 会計支援・税務アドバイザリー 国内企業(フィットネス事業) 会計支援・税務アドバイザリー 外資系国内スタートアップ(研究開発業) 会計支援・税務アドバイザリー 外資系企業(製造業) 会計支援・税務アドバイザリー 外資系企業(ゲーム開発) 会計支援・税務アドバイザリー 外資系企業(鑑定業) 会計支援・税務アドバイザリー 外資系企業(スポーツ用品の製造・販売) 会計支援
- [真木 嵩太 Shuta Maki](https://shiodome.co.jp/people/shuta-maki/) - 大学卒業後、2022年に汐留パートナーズグループへ入社。会計税務事業部にて、英語圏の外資系企業の日本子会社を中心に、英語対応の会計システムを活用したアウトソーシングおよびコンプライアンス業務を提供。月次・年次対応や本社向けレポーティングなど幅広い実務を通じ、クライアントの円滑な事業運営を支援している。クロスボーダー案件を担える英語対応人材の育成に向けた体制づくりに取り組むほか、マニラ事務所のBPOセンター担当として現地メンバーと緊密に連携し、業務プロセスの改善・効率化を推進している。税理士。 主な案件実績 資系国内スタートアップ(配膳、配送ロボットの輸入販売業) 会計支援・税務アドバイザリー 外資系企業(化粧品の輸入販売業) 会計支援・税務アドバイザリー 外資系企業(保険業) 会計支援・税務アドバイザリー 外資系企業(人材派遣業) 会計支援・税務アドバイザリー 所属団体 東京税理士会(2025)
- [小林 暁 Satoru Kobayashi](https://shiodome.co.jp/people/satoru-kobayashi/) - 事業会社を経て、2012年汐留パートナーズグループに入所。法人設立業務、株主総会関連業務、許認可手続業務、在留資格関連業務、資金調達支援業務、不動産関連業務をはじめ幅広いコーポレート業務に従事。その後法務サービスを提供している部門を統括する。2018年執行役員に就任し法務事業部長を務める。グループ内の弁護士・司法書士・行政書士を密に連携させ、クライアントの法務関連業務をワンストップでサポート。2020年管理部長に就任。2021年取締役就任。2024年取締役CFOに就任。 所属団体 日本経営会計専門家協会
- [金森 光昭 Mitsuaki Kanamori](https://shiodome.co.jp/people/mitsuaki-kanamori/) - 事業会社を経て、2011年汐留パートナーズグループ入社。会計税務事業部で中小・中堅企業のクライアントに対するサービスに数多く従事し、また、2012年に設立された沖縄事務所の組織的運営に関する業務を担当しアウトソーシングサービスの拡大に貢献。2017年沖縄事務所長に就任。2018年執行役員に就任し品質管理室長を務める。業務効率の向上・クオリティーコントロール・ビジネスリスクへの対応等に関して組織横断的に改革を行う。2019年経営企画室長に就任。2020年取締役就任し、2023年には会計税務事業部長に就任。2024年取締役COOに就任。 主な兼職 株式会社アカネソリューションズ 社外取締役 主な案件実績 株式会社アカツキ(東証プライム:3932) 税務アドバイザリーを通じたIPO支援 中国上場子会社に対する会計/税務アウトソーシング 所属団体 日本経営会計専門家協会
- [山本 翔大 Shodai Yamamoto](https://shiodome.co.jp/people/shodai-yamamoto/) - 事業会社を経て、2018年汐留パートナーズグループに入社。社内のWEBマーケティング担当として、SEO対策、WEBサイト作成、SNS運用、その他ITをはじめとした幅広いコーポレート業務に従事。マニラ事務所のエンジニアのマネジメントにも関与し、グループ内におけるIT関連業務の内製化に貢献。その後、新たにITコンサルティング事業の立ち上げにも携わる。2023年、札幌事務所の立ち上げにも携わり、ビジネスパートナーである非営利活動法人Forestの理事に就任。ビジネスと社会貢献を結びつける重要な橋渡し役を担う。 主な兼職 特定非営利活動法人Forest 理事 主な案件実績 Microsoft365導入プロジェクト CRMシステム「Salesforce」導入プロジェクト MAツール「Account Engagement(旧:Pardot)」導入プロジェクト RPA ツール「Microsoft Power Automate」導入プロジェクト 社内サーバー移管支援プロジェクト ChatWork導入プロジェクト IT補助金導入プロジェクト Alibaba Cloud導入プロジェクト SIEMシステム導入プロジェクト Microsoft Intune導入プロジェクト WAF(Web Application Firewall)導入プロジェクト
- [伊藤 諒 Ryo Ito](https://shiodome.co.jp/people/ryo-ito/) - 通信事業者にてネットワークおよびサーバ領域の設計に携わった後、セキュリティベンダーにてセキュリティアナリスト/テクニカルコンサルタントとして脅威分析、インシデント対応支援、堅牢化に関するコンサルティング業務を担当。その後、事業会社においてJ-SOXを含むセキュリティガバナンス領域の業務に従事し、内部統制や運用プロセス構築を経験。2025年RSM汐留パートナーズに参画し、インシデントレスポンス、フォレンジック、アーキテクチャ設計、セキュリティコンサルティングなど多面的な支援を提供している。
- [小野田 准 Jun Onoda](https://shiodome.co.jp/people/jun-onoda/) - 神奈川県警察において32年間にわたり勤務し、刑事部門を中心に、盗犯捜査、組織犯罪捜査、初動捜査指揮など、幅広い実務に従事。警察署での現場経験から、警察本部における広域・組織的犯罪対応まで一貫して経験し、現場対応力と組織的な指揮・統制の双方に精通している。特に、警察本部 捜査第三課においては、暴力団やその関係者で構成された組織窃盗団や外国人グループによる組織事件の指揮を担うとともに、国際情報班長として国内外の情報を踏まえた捜査活動を統括し、広域犯罪や組織犯罪に対する戦略的な対応を行う。勇退後は防犯・安全セキュリティアドバイザーとして、企業向け防犯・安全セキュリティ支援を行う。 主な案件領域 企業向け防犯・安全セキュリティ体制の助言 事業所・拠点の防犯・安全リスク評価 従業員向け防犯・安全教育・講話 トラブル・犯罪被害予防に関する相談対応 事故・インシデント発生時の初動対応支援 関連サービス 防犯・安全セキュリティ支援
- [佐藤 幸一 Koichi Sato](https://shiodome.co.jp/people/koichi-sato/) - 1982年に国税局に入庁した後、37年間にわたって東京国税局管内において主として法人税及び審理業務を担当。調査第一部国際情報第二課課長、東京国税不服審判所管理課課長、調査第一部調査審理課課長、課税第一部国訟務官室室長等を歴任し、退官後2019年8月にRSM汐留パートナーズ税理士法人のシニアアドバイザーに就任。内資及び外資クライアントの税務調査立会、税務訴訟対応、事前確認等のサービスに従事している。税理士。 主な案件実績 複数の国税局に跨る法人間の適格合併に係る国税局への事前照会 複数の単独新設分割の適格要件該当性に係る国税局への事前照会 税務上の解釈に疑義のある案件等に係る所轄税務署等に対する事前照会 特に調査部所管法人の税務調査の立会い 更正の請求に対する理由がない旨の通知処分に係る審査請求 出版・執筆 詳解 法人税法「別段の定め」の基本(白桃書房) 複式簿記の理論とJA簿記(白桃書房) 国税速報(大蔵財務協会)「悩める若手税理士にベテラン税理士が指南!会社の税務調査対応」の連載他 月間JA JA実務講座 JA税務相談
- [水野 耕平 Kohei Mizuno](https://shiodome.co.jp/people/kohei-mizuno/) - 事業会社でのIT領域に関する豊富な経験を活かし、2016年汐留パートナーズグループに入社。社内のITセキュリティ責任者として社内システムの開発・管理、IT機器の運用・管理など幅広いコーポレート業務に従事し、社内のインフラセキュリティの整備に貢献。さらにMicrosoft365、Salesforceなどの主要なソフトウェアの導入プロジェクトにも主要メンバーとして携わり、社内におけるDX推進にも貢献する。2022年のRSMインターナショナル加盟後は、情報システムに関する責任者を務めつつ、ITアドバイザリーサービスの事業拡大、テクノロジーを活用したビジネスの拡大とイノベーションの推進に注力。
- [大城 陸 Riku Oshiro](https://shiodome.co.jp/people/riku-oshiro/) - 大学卒業後、沖縄県職員を経て、2017年汐留パートナーズグループに入社。上場会社・上場子会社・IPO準備会社・外資系企業等に対し人事労務分野のコンサルティングサービス・アウトソーシングサービスを提供し、人事労務事業部の拡大に貢献。2019年には汐留パートナーズ沖縄事務所の人事労務サービスラインの立ち上げプロジェクトに参画し、沖縄事務所のBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)センターの拡大に貢献。2021年人事労務事業部長就任。2022年BPO事業を行う汐留ビジネスソリューションズ株式会社取締役就任。 主な兼職 汐留ビジネスソリューションズ株式会社 取締役 主な案件実績 NTTソノリティ株式会社 就業規則作成支援 人事労務アドバイザリー 給与計算 Kudan株式会社(東証グロース:4425)人事労務アドバイザリー 給与計算 日本テレビグループ 人事制度アドバイザリー 労務アドバイザリー 給与計算 上場企業(東証グロース)人事労務アドバイザリー 給与計算 IPO準備企業 労務デューデリジェンス、労務アドバイザリー
- [三井 亮 Ryo Mitsui](https://shiodome.co.jp/people/ryo-mitsui/) - 都内の会計事務所を経て、2017年にRSM汐留パートナーズに入所。主に上場企業や、IPO準備会社、中小企業の会計・税務業務、経営者・富裕層の税務顧問業務、所得税申告、不動産取引の税務調査立会いに従事。経営者が直面する重要な問題を理解し、総合的な解決策を提供する。また、心理カウンセラー、経営心理士の資格を持ち、心と脳に関する知識と経験を駆使し、経営やビジネスの現場で成果をあげられるよう、事業拡大等を支援している。2019年沖縄支店長就任。2020年創立時から汐留ビジネスソリューションズ株式会社代表取締役就任。税理士。 主な兼職 汐留ビジネスソリューションズ株式会社 代表取締役 特定非営利活動法人Forest 理事 主な案件実績 株式会社ボードルア(東証グロース:4413) IPO支援 税務アドバイザリー等 株式会社バーガーキング・ジャパン 組織再編支援 税務アドバイザリ―等 国内上場(東証プライム)子会社2社 内部統制支援 税務アドバイザリ―等 国内上場(東証プライム)子会社1社 記帳代行業務 税務アドバイザリ―等 国内上場(スタンダード)子会社1社 内部統制支援 税務アドバイザリ―等 国内上場(グロース)子会社3社 内部統制支援 税務アドバイザリ―等 インド上場(インド国立証券取引所・ムンバイ証券取引所)日本子会社 税務アドバイザリー 米国上場(NASDQ)日本子会社 会計/税務アウトソーシング 税務アドバイザリー 外資系企業日本子会社等に対する会計/税務アウトソーシング JAグループ 農業協同組合監査士 法人税法 講師(2020年~) 出版・執筆 複式簿記の理論とJA簿記(白桃書房)
- [平野 秀輔 Dr. Shusuke Hirano](https://shiodome.co.jp/people/shusuke-hirano/) - 1982年昭和監査法人(現EY新日本有限責任監査法人)に入所。その後1987年から2014年までの27年間に渡り新橋監査法人代表社員を務める。2008年協同税理士法人を設立し代表社員に就任。2018年RSM汐留パートナーズ税理士法人と合併し代表社員就任。長年にわたり監査・IPO・税務の業務に関与し、併せてJAグループの資格試験委員や官庁の委員も歴任。主要著書として「財務会計 Nuts and bolts とその応用」、「管理会計と財務諸表分析 Nuts and bolts とその応用」、「ファミリー企業のガバナンス(共著:翻訳)」、「詳解 法人税法「別段の定め」の基本 第2版(監修)」、「非上場株式に関する相続税・贈与税の問題点」(以上、白桃書房)等がある。博士(学術)・公認会計士・税理士・開志創造大学大学院事業創造研究科特任教授。 主な兼職 東日本信用漁業協同組合連合会監事(非常勤)(令和3年4月~現在) 公益財団法人多田記念財団 理事 (令和4年~現在) 主な案件実績 監査監査補助者として 旧都市銀行、半導体設備メーカー、精密機械メーカー、窯業、損害保険会社、財団法人等 監査責任者として 金融商品取引法監査7社、会社法監査3社、学校法人2法人、公益財団法人1法人 IF社の株式店頭登録(その後東証1部上場) S社の株式店頭登録(その後東証1部上場) I社の株式店頭登録(その後ジャスダック上場) U社の株式店頭登録(その後東証1部上場) 税務(主に法人税務及び個人顧客の所得税・相続税の申告業務) 流通業、不動産開発業、公益法人、ハウスメーカー、海運業、流通業、不動産業、協同組合、財団法人等 アドバイザリー オーナー企業に対する事業承継・企業買収における株価算定・組織再編 農業協同組合に対する不良債権処理及び不良資産の処分に関する指導 主な委員 農林水産省無許可専従問題に関する第三者委員会 委員(平成21年4月~7月) 農林水産省職員法令遵守委員会 委員(平成21年8月~平成24年3月) 農業協同組合監査士試験 試験委員(平成12年4月~現在) 農業協同組合内部監査士検定試験 試験委員(平成16年4月~現在) 出版・執筆 「管理会計と財務諸表分析 Nuts and boltsとその応用」(白桃書房)2025年 「ファミリー企業のガバナンス~経済的および精神的な成功を極大化する~」(白桃書房)2024年 「財務会計 Nuts and Boltsとその応用」(白桃書房)2024年 「JAの財務会計と管理会計 第6版」(全国農業協同組合中央会)2022年 「新・JAの簿記会計 第4版」(全国農業協同組合中央会)2022年 「現代企業法のエッセンス」(共著:文真堂)2022年 「複式簿記の理論とJA簿記」(共著:白桃書房)2020年 「新しい加算税の実務-税務調査と資料情報への対応-」(共著:ぎょうせい)2016年 「非上場株式に関する相続税・贈与税の問題点-応能負担原則からの考察と分離型の導入-」(白桃書房)2014年 「農業協同組合の法人税と消費税」(共著:中央経済社)2004年 「企業提携の法律実務」(共著:新日本法規出版) 加除式 「こんなときどうする会社の税務」(共著:第一法規出版) 加除式 「チェックリスト税務調査と会社経理」(共著:第一法規出版) 加除式 論文 「事業の変更等に伴う事業供用要件等を満たさなくなった場合の対応
- [石川 宗徳 Munenori Ishikawa](https://shiodome.co.jp/people/munenori-ishikawa/) - 司法書士試験に合格した後、不動産登記・会社登記・相続・裁判、それぞれを得意とする複数の司法書士事務所に勤務。2015年に独立開業後、会社法人登記・会社法に関する業務に従事。2016年に汐留パートナーズグループに参画、2020年汐留パートナーズ株式会社監査役就任。司法書士。 主な案件実績 上場会社、上場子会社 登記・法務アドバイザリー 等 出版・執筆 改訂版 外国人・外資系企業の日本進出支援実務Q&A(日本法令) 外国人・外資系企業の日本進出支援実務Q&A(日本法令) 円満相続をかなえる本(幻冬舎) 所属団体 東京司法書士会
- [池田 孝太 Kota Ikeda](https://shiodome.co.jp/people/kota-ikeda/) - 大学卒業後、事業会社を経て、2017年汐留パートナーズグループに入社。法務事業部においてクライアントに対するリーガル面でのサポートを行う。その後国際コンサルティング事業部にて、多くの外国法人の日本進出、日本での許認可取得、イミグレーション(在留資格)関連業務に従事。外国法人の日本進出案件に関して豊富な知識と経験を有し、また、外国人の在留資格に関する業務についても精通している。様々な許認可に関する業務にも対応可能。申請取次行政書士。
- [佐藤 隆太 Ryuta Sato](https://shiodome.co.jp/people/ryuta-sato/) - 1981年佐藤隆太税理士事務所を開設。中小・中堅企業から上場会社を含む大企業まで数多くの企業の会計税務に関する案件に従事。2012年汐留パートナーズグループに参画し、汐留パートナーズ税理士法人代表社員に就任。その後2021年10月にシニアアドバイザーに就任。ITに対する深い理解がありクライアントのシステム導入等についても数多く実績を有する。また、事業承継・相続税案件にも精通しており、長きに渡りクライアントへ税務アドバイザリーサービスを提供している。税理士。
- [武藤 亜紀子 Akiko Muto](https://shiodome.co.jp/people/akiko-muto/) - 複数の法律事務所にて法律関連業務、コーポレート業務に従事。その後、中国留学を経てリスボン国立大学文学部留学、ポルトガル語国際検定取得。同大学文学部語学センター等での講師業に従事し12年間海外在住を経験の後、2014年行政書士法人中井イミグレーションサービスに入所。日本語、英語、ポルトガル語により、様々な外資系クライアントのイミグレーション業務に従事。東京大学でのセミナーでの講師を務める他、大学関連申請取次業務にも従事。2025年7月、行政書士法人中井イミグレーションサービスとRSM汐留パートナーズ行政書士法人の合併により、RSM汐留パートナーズ行政書士法人のマネージャーに就任。特定行政書士。
- [飯塚 悦正 Yoshimasa Iizuka](https://shiodome.co.jp/people/yoshimasa-iizuka/) - 大学卒業後、複数の会計事務所を経て2019年汐留パートナーズグループに入社。会計事務事業部にて上場会社・上場子会社・IPO準備会社等に対し会計税務分野についての広範なコンサルティングサービス・アウトソーシングサービスに従事。また、相続税・贈与税・所得税の申告を含む個人向け税務サービスについても幅広く提供。税理士。
- [景井 俊丞 Shunsuke Kagei](https://shiodome.co.jp/people/shunsuke-kagei/) - 2007年2月、行政書士・司法書士・土地家屋調査士の合同事務所に入所。建設業、宅建業等の許認可に携わるとともに申請取次行政書士として外国人の在留資格に係る申請を年間300件以上行う。独立を経て2019年1月にBIG4の行政書士法人にシニアとして入所。外国人の在留資格に関する品質管理や取次、社内教育を行うとともに、許認可を担当。在留資格においてはオリンピックやラグビーワールドカップ関連を担当。2024年4月に中井イミグレーションサービスの代表社員に就任。2025年7月、RSM汐留パートナーズ行政書士法人との合併に伴い同法人の代表パートナーに就任。行政書士。 出版・執筆 改訂版 外国人・外資系企業の日本進出支援実務Q&A(日本法令)
- [保科 英樹 Hideki Hoshina](https://shiodome.co.jp/people/hideki-hoshina/) - 大学卒業後、事業会社、複数の会計事務所を経て、2021年汐留パートナーズグループに入社。様々な領域の税法に関してサービスを提供してきた経験をベースに、会計事務事業部にて上場会社・上場子会社・IPO準備会社等に対し会計税務分野についての広範なコンサルティングサービス・アウトソーシングサービスに従事。
- [内田 砂津貴 Satsuki Uchida](https://shiodome.co.jp/people/satsuki-uchida/) - 大学卒業後、主にホテル業界の複数の事業会社を経験。その後、会計事務所を経て、2018年RSM汐留パートナーズに入社。海外在住経験、英語の堪能さを武器に、多文化環境でのコミュニケーション能力を発揮。外資系クライアントに対して会計税務に関するコンサルティングサービス・アウトソーシングサービスを提供している。米国公認会計士試験に合格しており、また、国際的な会計基準だけでなく、日本の税務実務に関しても深い知識を有している。EMBA。
- [阪本 政仁 Masahito Sakamoto](https://shiodome.co.jp/people/masahito-sakamoto/) - 事業会社で勤務した後、翻訳業や米国訴訟のeディスカバリー(電子証拠開示)業務に従事。米国LLMを取得し、2017年行政書士法人中井イミグレーションサービスに入所。日本語・英語により、様々な外資系クライアントのイミグレーション業務に従事。版画コレクターとしての顔も持ち、美術関係の翻訳も手がける。2025年7月、行政書士法人中井イミグレーションサービスとRSM汐留パートナーズ行政書士法人の合併により、RSM汐留パートナーズ行政書士法人のアシスタントマネージャーに就任。特定行政書士。
- [宮崎 真吾 Shingo Miyazaki](https://shiodome.co.jp/people/shingo-miyazaki/) - 大学卒業後、新潟県職員、事業会社勤務を経て2016年汐留パートナーズグループに入社。法務事業部においてクライアントに対するリーガル面でのサポートを行う。その後国際コンサルティング事業部にて、主に海外企業に対する日本法人設立・登記、在留資格取得、許認可取得サービス等幅広いインバウンド業務に従事。
- [西口 雅貴 Masaki Nishiguchi](https://shiodome.co.jp/people/masaki-nishiguchi/) - 大学卒業後、事業会社で営業を経験し、地方の会計事務所へ入所。建設業やNPO法人等の特殊法人を中心に、会計税務に加えクラウドツールを活用したバックオフィス体制の構築、業務フローの整備、予実管理の導入など多角的に支援。特に原価管理の適正化による数値の可視化に注力し、経営者と伴走しながら赤字企業の黒字化を支援するなど、実務に即した改善提案を行ってきた。2025年にRSM汐留パートナーズへ入社。現在は会計税務事業部で、上場子会社・IPO準備会社向けに会計税務のコンサルティングおよびアウトソーシングに携わる。
- [福本 尭 Takashi Fukumoto](https://shiodome.co.jp/people/takashi-fukumoto/) - 福岡市内の税理士事務所での実務を経て、飲食会社を創業。あわせて福岡で経理専門校を開校し、校長兼講師として数多くの経理人材の育成に従事。国会議員公設秘書として地元事務所長も務め、組織運営や広範なステークホルダーとの折衝を経験。現在はRSM汐留パートナーズにて、経営経験と教育実績を融合させ、会計・税務を含むバックオフィスの体制整備、業務設計・改善、運用定着まで幅広い支援およびアドバイザリー業務に従事。クライアントの多様なニーズに応えるべく、現場目線で課題を整理し、関係者との調整を図りながら伴走している。 出版・執筆 『経理のAI革命:2023』(Amazon Kindle)
- [井上 広志 Hiroshi Inoue](https://shiodome.co.jp/people/hiroshi-inoue/) - 事業会社で経理業務に勤務した後に、複数の会計事務所を経て2023年10月に税理士登録を行い、2025年に汐留パートナーズグループへ入社。会計事務事業部にて上場会社・上場子会社・IPO準備会社等に対し会計税務分野についての広範なコンサルティングサービス・アウトソーシングサービスに従事。税理士。
- [堀内 大誠 Taisei Horiuchi](https://shiodome.co.jp/people/taisei-horiuchi/) - 21歳で税理士試験官報合格を果たし、2019年汐留パートナーズグループに入社。会計税務事業部において多くの上場会社・上場子会社・IPO準備会社等に対し会計税務分野についての広範なコンサルティングサービス・アウトソーシングサービスに従事。持ち前のフットワークの軽さを武器に、前述の通り数多くの大企業のクライアントを担当している。税理士。 主な案件実績 上場企業グループ(人工知覚技術事業) 会計支援・税務アドバイザリー 上場企業グループ(大手建設事業) 税務アドバイザリー 上場企業グループ(大手産業用装置製造事業) 税務アドバイザリー 上場企業グループ(大手不動産事業) 税務アドバイザリー 上場企業(東証プライム)連結子会社 グループ通算対応、税務アドバイザリー 上場企業(東証スタンダード)連結子会社 会計支援・税務アドバイザリー、グループ通算制度支援 上場企業(東証プライム)子会社 税務アドバイザリー、決算支援 IPO準備会社(自動運転関連ソフトウェアの開発) 会計支援・税務アドバイザリー IPO準備会社(商品紹介ソフトウェアの運営) 会計支援・税務アドバイザリー
- [原 宗太郎 Sotaro Hara](https://shiodome.co.jp/people/sotaro-hara/) - 大学卒業後、国税調査官として関東信越国税局管内の税務署等にて法人税、消費税、源泉所得税等の調査に従事。その後、大手外資系税理士法人にて外資系クライアントの税務申告書作成業務に従事し、2019年に税理士法人東京クロスボーダーズへ入社。2025年10月、税理士法人東京クロスボーダーズとRSM汐留パートナーズ行政書士法人の合併により、RSM汐留パートナーズ税理士法人のアシスタントマネージャーに就任。税理士。
- [松生 真歩 Maho Matsuike](https://shiodome.co.jp/people/maho-matsuike/) - 独立行政法人、財団法人等で経理・総務等のコーポレート業務に従事した後、2017年行政書士法人中井イミグレーションサービスに入所。大規模なクライアントをはじめとした様々な外資系クライアントのイミグレーション業務に従事。外資系企業の日本駐在員等に対する在留資格取得に関する高品質なサービスを提供する。2025年7月、行政書士法人中井イミグレーションサービスとRSM汐留パートナーズ行政書士法人の合併により、RSM汐留パートナーズ行政書士法人のアシスタントマネージャーに就任。
- [康 俸誠 Bongsung Kang](https://shiodome.co.jp/people/bongsung-kang/) - 日本の大学に留学し、その後韓国資本の証券会社東京事務所勤務を経て、2016年行政書士法人中井イミグレーションサービスに入所。日本語・韓国語・英語により、韓国企業をはじめとした様々な業種の外資系クライアントのイミグレーションの業務に従事。2025年7月、行政書士法人中井イミグレーションサービスとRSM汐留パートナーズ行政書士法人の合併により、RSM汐留パートナーズ行政書士法人のアシスタントマネージャーに就任。
- [楊 立英 Ritsuei Yo](https://shiodome.co.jp/people/ritsuei-yo/) - 大学院卒業後、複数の税理士事務所を経て、2021年汐留パートナーズグループに入社。中国人として税理士試験に官報合格。中国法人の日本子会社等に対して会計税務分野についてのコンサルティングサービス・アウトソーシングサービスを提供している。またチャイナデスクメンバーと共に中華圏クライアントに対するインバウンド業務にも従事。税理士。
- [奥山 裕之 Hiroyuki Okuyama](https://shiodome.co.jp/people/hiroyuki-okuyama/) - 国内会計事務所、Big 4税務部門、国内大手税務コンサルティングファームでの実務経験を経て、RSM汐留パートナーズ税理士法人に入社。多国籍企業からオーナー系企業まで幅広いクライアントに対し、税務申告・税務コンプライアンスおよび税務アドバイザリーサービスを提供している。現在は国際業務を中心に、オーナー系企業およびオーナー個人に対する法人税・個人所得課税を含む税務支援を強みとし、グローバルモビリティ(海外赴任・クロスボーダー人材)に関する支援や、富裕層向けのタックスプランニングにも従事。税理士。
- [竹内 直也 Naoya Takeuchi](https://shiodome.co.jp/people/naoya-takeuchi/) - 複数の会計事務所を経て、2021年汐留パートナーズグループに入社。様々な業種のクライアントの複雑な会計税務事案をこなしてきた経験を有する。会計税務事業部にて上場会社・上場子会社・IPO準備会社の様々な業種のクライアントに対して会計税務分野についての広範なコンサルティングサービス・アウトソーシングサービスに従事。
- [谷田部 裕資 Yusuke Yatabe](https://shiodome.co.jp/people/yusuke-yatabe/) - 大学卒業後、事業会社を経て複数の会計事務所を経験。その後山田コンサルティンググループ経て2022年汐留パートナーズグループに入社。会計税務事業部にて、主に建設業、不動産業、サービス業等を扱う上場会社、上場子会社、外資系上場会社等の会計税務コンサルティングサービス・アウトソーシングサービスを提供。税理士。 主な案件実績 国内企業(建設業、サービス業、研究開発業)会計税務アドバイザリー 上場グループ会社(不動産業、サービス業、メディア) 会計税務アドバイザリー 外資系上場会社(航空会社) 会計税務アドバイザリー 外資系企業(サービス業) 会計税務アドバイザリー 上場準備会社(運送業)に対する相続支援・株価算定・税務コンサルティング 富裕層に向けた会計税務コンサルティング 医療法人(MS法人を含む)税務コンサルティング
- [フラッシャール・ベルンハルド・美智男 Bernhard Michio Flasar](https://shiodome.co.jp/people/bernhard-michio-flasar/) - オーストリアの大学および大学院を卒業後、オーストリア及び日本の事業会社を経て、2006年行政書士法人中井イミグレーションサービスに入所。日本語、英語、ドイツ語により、外資系クライアントのイミグレーションに関する数多くの業務に従事。在留資格業務についての豊富な経験・知見を有し、長年に渡りヨーロッパや日本の企業に対する完全バイリンガルかつ高品質なコンサルティングサービスに従事し、また、チームの業務を統括する。2025年7月、行政書士法人中井イミグレーションサービスとRSM汐留パートナーズ行政書士法人の合併により、RSM汐留パートナーズ行政書士法人のマネージャーに就任。
- [出口 拓矢 Takuya Deguchi](https://shiodome.co.jp/people/takuya-deguchi/) - 大学卒業後、2015年汐留パートナーズグループに入社。会計税務事業部にて上場会社・上場子会社・IPO準備会社等に対する会計税務に関するコンサルティングサービス・アウトソーシングサービスを提供。また、相続税・贈与税・所得税の申告を含む個人向け税務サービスについても幅広く提供。相続診断士。
- [宮坂 大修 Taishu Miyasaka](https://shiodome.co.jp/people/taishu-miyasaka/) - 大学卒業後、2017年汐留パートナーズグループに入社。会計税務事業部にて上場会社・上場子会社・IPO準備会社に対する会計税務サービスに従事。また、所得税・住民税を含む個人課税全体に関するアドバイザリーサービスを提供。JA(農業協同組合)で研修講師も務める。ITに関する豊富な知見を有し、2022年ICT戦略室長に就任。税理士。
- [芹沢 恵 Kei Serizawa](https://shiodome.co.jp/people/kei-serizawa/) - 大学卒業後、財閥系不動産会社に入社し、経理部にて預金管理や支払業務を中心に、日々の資金繰りや社内外の決済フローに携わる。2022年にRSM汐留パートナーズへ入社後は、支払代行グループの一員として、クライアントの振込手続き、税金・社会保険料等の税公金納付をはじめとする支払代行業務を担当。現在はキャッシュマネジメント事業部のマネージャーとして、80社以上のクライアントに対する支払代行業務全体の管理運営を担い、正確性と期限遵守を徹底しながら、業務改善や運用品質の向上にも取り組んでいる。
- [奥田 晶子 Akiko Okuda](https://shiodome.co.jp/people/akiko-okuda/) - 大学卒業後、事業会社および国内会計事務所での経験を経て、2015年に税理士法人東京クロスボーダーズ(現RSM汐留パートナーズ税理士法人)に参画。以来、国際税務を中心としたクロスボーダー案件に携わり、外資系企業をはじめとする幅広いクライアントに対して、税務アドバイザリー、申告業務、会計アウトソーシングを組み合わせたトータルサポートを提供している。
- [小島 史絵 Shie Kojima](https://shiodome.co.jp/people/shie-kojima/) - メキシコ留学後、自動車産業や半導体産業などの複数の事業会社で貿易業務や翻訳業務に携わる。ペルー勤務を経て帰国後、行政書士法人でイミグレーション関連の業務に従事。2007年行政書士法人中井イミグレーションサービスに入所。日本語、英語、スペイン語により、ホテル業界、コンサルティング業界をはじめとした様々な外資系クライアントのイミグレーション業務に従事し、また、チームの業務を統括する。2025年7月、行政書士法人中井イミグレーションサービスとRSM汐留パートナーズ行政書士法人の合併により、RSM汐留パートナーズ行政書士法人のマネージャーに就任。行政書士。
- [森重 摩耶 Maya Morishige](https://shiodome.co.jp/people/maya-morishige/) - 大学卒業後、業界をリードする企業でマーケティング、PR、広報、営業の分野において経験を積む。2016年に汐留パートナーズグループに入社し、会計税務事業部で主に英語圏の外資系クライアントを担当。その後、2020年に営業戦略室へ転属し、専門知識を活かして業務を推進。現在はマーケティング・ブランディングの責任者として、経営企画室と連携し、RSM加盟後のデザイン業務の品質管理及びRSMブランドの社内外での浸透に注力。さらに、海外在住経験を活かし、外資系クライアントに向けたワンストップサービスの窓口も務め、グローバルな視点から組織の成長に貢献している。
- [松本 さやか Sayaka Matsumoto](https://shiodome.co.jp/people/sayaka-matsumoto/) - 大学卒業後、webサービス会社や医療機関を経て、事業会社で人事労務担当として労務管理、給与計算、規程の改定・運用等の業務に従事。その後、都内の社会保険労務士法人での勤務を経て、2021年汐留パートナーズグループに入社。人事労務事業部にて外資系・国内系の様々な業種のクライアントに対して人事労務分野についての広範なコンサルティングサービス・アウトソーシングサービスに従事。社会保険労務士。 主な案件実績 外資企業(販売業) 就業規則作成支援、人事労務アドバイザリー、給与計算等アウトソーシング 国内企業(製造業) 勤怠管理システム運用支援、給与計算等アウトソーシング 国内企業(研究開発・販売業) 人事労務アドバイザリー、給与計算等アウトソーシング 国内企業(ヘルスケア業) 就業規則作成支援、人事労務アドバイザリー、給与計算等アウトソーシング 外資スタートアップ(販売業) 人事労務アドバイザリー、給与計算等アウトソーシング 外資スタートアップ(コンサル業)人事労務アドバイザリー、給与計算等アウトソーシング 国内スタートアップ(研究開発業) 勤怠管理システム運用支援、人事労務アドバイザリー、給与計算等アウトソーシング IPO準備企業 労務デューデリジェンス
- [魏 倩 Dr. Sen Gi](https://shiodome.co.jp/people/sen-gi/) - 中国政法大学民商法学院を卒業後、中国北京大学法学研究科で法学修士を取得。中国北京大学法学部および中国労働関係学院にて講師を務めた後、複数の国際法律事務所において、契約書や企業内部の管理規則のレビュー、解約交渉、労働裁判に関する法律意見の提供など、幅広い法務サービスを提供。加えて、個人情報保護に関する法律研究および実務にも注力。来日後、千葉大学人文社会科学研究科にて法学博士を取得。2023年にRSM汐留パートナーズへ入社し、中華系を含む外資系企業の人事労務対応を担当。税理士、社会保険労務士、行政書士を中心とするチームと連携し、クライアントの日本進出、労務相談、給与計算などをサポートするとともに、チャイナデスクの拡大に貢献。2025年にチャイナデスク室長に就任。博士(法学)、中国司法試験合格。
- [山村 一郎 Ichiro Yamamura](https://shiodome.co.jp/people/ichiro-yamamura/) - 事業会社を経て、KPMG税理士法人に入社。その後税理士法人トーマツを経て2019年汐留パートナーズグループに入社。国際業務に関し豊富な経験と幅広い知見を有し、数多くの日系グローバル企業、外資系企業に対して会計税務に関するコンサルティングサービス・アウトソーシングサービスを提供。2022年品質管理室長に就任。社内の品質管理の向上にも注力している。米国税理士。 主な案件実績 外資系企業日本子会社等に対する会計/税務アウトソーシング 日本在住外国人に対する税務サービス 出版・執筆 現場担当者が直面する疑問に回答! 外国人雇用の法務・労務・税務Q&A259(日本法令)
- [和久井 憲子 Noriko Wakui](https://shiodome.co.jp/people/noriko-wakui/) - 医薬品関連企業のリテール向けマーケティング部、経営企画部勤務を経て米国留学しLL.M取得。1996年ニューヨーク州弁護士登録。専門分野は知的財産権。帰国後は、米国系の映画会社、流通小売業、インターネット関連企業に法務スペシャリストとして勤務。企業法務、商品化権ライセンス契約などの業務に従事。2011年行政書士法人中井イミグレーションサービスに入所。2025年7月、行政書士法人中井イミグレーションサービスとRSM汐留パートナーズ行政書士法人の合併により、RSM汐留パートナーズ行政書士法人のジェネラルマネージャーに就任。MBA. LL.M.。
- [井上 喜一郎 Kiichiro Inoue](https://shiodome.co.jp/people/kiichiro-inoue/) - 2000年監査法人トーマツに入所。法定監査のほか、IPO準備企業の決算・内部統制整備支援に従事。2010年に退所後、事業会社の管理部門責任者として、バックオフィス業務全般を担当。2018年から2025年までデロイトトーマツ税理士法人に在籍。2025年にRSM汐留パートナーズ株式会社に入社。経理財務のBPOサービスのほか、経理財務周辺の業務プロセス改善、休職者・退職者の業務代行、管理会計構築などクライアントの経理財務をワンストップでサポートしている。公認会計士・税理士。
- [一井 大平 Taihei Ichii](https://shiodome.co.jp/people/taihei-ichii/) - 大学卒業後、関西の会計事務所を経て2017年汐留パートナーズグループに入社。会計税務事業部にて上場会社・上場子会社・IPO準備会社・外資系企業等に対して会計税務サービスを提供。マニラ事務所のマネジメントにも関与し、マニラ事務所の BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)センターの拡大に貢献。会計税務に関する広範な業務支援を行うチームの業務責任者を務める。税理士。 主な案件実績 上場企業(東証スタンダード)連結子会社 会計/税務アウトソーシング 税務アドバイザリー イタリア上場(イタリア証券取引所)子会社 会計/税務アウトソーシング 税務アドバイザリー 外資系企業日本子会社等に対する会計/税務アウトソーシング 出版・執筆 複式簿記の理論とJA簿記(白桃書房)
- [畠山 学 Manabu Hatakeyama](https://shiodome.co.jp/people/manabu-hatakeyama/) - 東北大学法学部を卒業後、1976年に法務省に入省し、多くの重要な役職を歴任。1989年3月から1992年3月まで、在ニューヨーク総領事館の領事部長を務め、海外での法務行政に貢献。帰国後は、1996年4月から1997年3月まで法務省入国管理局入国審査課の審査指導官を担当。さらに1997年4月から1999年2月まで法務省大臣官房秘書課の国際室長を務め、国際的な業務に従事。1999年3月から2000年3月まで法務省入国管理局難民認定室長を務め、難民認定に関する重要な役割を担う。その後、2001年4月から2003年3月まで法務省入国管理局参事官として、さらに2007年4月から2008年3月まで法務省入国管理局警備課長として、入国管理に関する様々な業務を遂行。2008年4月から2010年12月までは大阪入国管理局長、2011年1月から2012年3月までは東京入国管理局長として従事し、2012年3月に法務省を退職。退職後は公益財団法人国際研修協力機構、熊本駐在事務所長、名古屋駐在事務所長を歴任し、2016年9月に同機構を退職。2017年4月より行政書士法人中井イミグレーションサービスの顧問に就任し、同法人の拡大に貢献。2025年7月、行政書士法人中井イミグレーションサービスとRSM汐留パートナーズ行政書士法人の合併により、RSM汐留パートナーズ行政書士法人のシニアアドバイザーに就任。
- [中井 正人 Masahito Nakai](https://shiodome.co.jp/people/masahito-nakai/) - 商社の水産部門にて、中国、台湾、香港、インドネシア、インド、パキスタン、オーストラリアなどの地域からのエビ輸入を担当し、タイ国駐在等した後、1992年3月に外国人の入管・国籍法の専門行政書士事務所を開業。2005年6月に行政書士法人中井イミグレーションサービスに改組し、代表社員として事業拡大を牽引。Lexology(旧Who’s Who Legal)のCorporate Immigration部門では日本のリーダーに連続で選出されている。2025年7月に同法人と合併したRSM汐留パートナーズ行政書士法人のシニアアドバイザーに就任。2002年2月にテンプル大学ジャパンロープログラムにて国際法修了証を取得。イミグレーションロー実務研究会の創設者で前代表。 出版・執筆 共著書: 国際結婚実務ガイド(明石書店) 外国人と行政書士(清文社) ◎英語論文: Lexology In-Depth: Corporate Immigration Japan ICLG: Corporate Immigration Japan
- [村山 暸永 Akinaga Murayama](https://shiodome.co.jp/people/akinaga-murayama/) - 一橋大学社会学部卒(社会心理)。ITメーカ勤務(システムエンジニア)を経て、監査法人太田哲三事務所(現 EY新日本有限責任監査法人)入所。同システム監査部、国際部、コンサルティング部を経て、アーンスト&ヤング(現EY)英国ロンドン駐在、同オランダ王国アムステルダム国際税務部・代表駐在員。1998年、村山公認会計士事務所開設。2013年、税理士法人東京クロスボーダーズ代表社員就任。2025年、RSM汐留パートナーズのシニアアドバイザー就任(現職)。公認会計士・税理士。 対外活動 EDP監査人協会(現ISACA)東京支部常務理事(1986年) ドイツ連邦共和国ラインラント・ファルツ州政府経済省・運輸省・ワイン省 駐日代表(2002-2012年) 独立行政法人 中小企業基盤整備機構 国際化支援アドバイザー(2005-2014年) 日本公認会計士協会 元 租税委員会国際租税委員 東京北斗監査法人(現、仰星監査法人)元代表社員 出版・執筆 システム監査人の仕事(PMC出版) マイクロコンピュータの監査(PMC出版) イギリス予算案(国際税務) アメリカ/オランダ新租税条約(国際税務) オランダ税制の解説(国際税務) オランダ連結制度/連結納税の解説(企業情報) 実践的サプライチェーン・マネジメント(大蔵財務協会) 基礎から学ぶIFRS(法令出版)、他
- [三宅 宏史 Hirofumi Miyake](https://shiodome.co.jp/people/hirofumi-miyake/) - 大学卒業後、2014年汐留パートナーズグループに入社。多くの上場会社・上場子会社・IPO準備会社・外資系企業等に対し会計税務アドバイザリー業務を提供し、会計税務事業部の拡大に貢献。また、2019年にはマニラ事務所のマネジメント業務にも関与し、マニラ事務所の BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)センターの拡大に貢献。税理士。 主な案件実績 日本テレビグループ 税務アドバイザリー・組織再編支援 株式会社ボードルア(東証グロース:4413) IPO支援・税務アドバイザリー 株式会社スマートドライブ(東証グロース:5137) IPO支援・税務アドバイザリー Kudan株式会社(東証グロース:4425)外国子会社BPO支援 上場企業(東証プライム)連結子会社 税務アドバイザリー 外資系企業日本子会社等に対する会計/税務アウトソーシング IPO準備会社 税務アドバイザリー 出版・執筆 改訂版 外国人・外資系企業の日本進出支援実務Q&A(日本法令) 複式簿記の理論とJA簿記(白桃書房)
- [福澤 豊 Yutaka Fukuzawa](https://shiodome.co.jp/people/yutaka-fukuzawa/) - 複数の外資系企業において延べ20年以上にわたり日本法人の管理職経験を有し、2025年よりRSM汐留パートナーズに参画。ESG・サステナビリティ、コンプライアンス、リスクマネジメント、ガバナンスに加え、業務改善・標準化、品質・環境管理(ISO9000/14000)、コンサルティング、経理財務、監査など、幅広い分野において深い知見と豊富な実務経験を有する。新規事業・サービス・プロセスの立ち上げ、既存オペレーションの標準化・継続的改善、及び部門横断型プロジェクトの推進においても、数多くの成果を上げている。米国公認会計士試験及び公認不正検査士試験合格。
- [榎本 果林 Karin Enomoto](https://shiodome.co.jp/people/karin-enomoto/) - 新日本アーンストアンドヤング税理士法人(現EY税理士法人)を経て、都内の税理士法人で経験を積んだ後、2010年に税理士法人東京クロスボーダーズ(現RSM汐留パートナーズ税理士法人)へ入所。外資系企業や外国人を中心に、数多くのクライアントに対し税務アドバイザリー、申告業務、会計アウトソーシング等を提供。2024年8月にディレクターに就任。税理士として現場業務を支える一方で、法人全体の業務運営にも従事し、品質管理や人材マネジメントなど専門性と統率力を両立した実務型リーダーとして活躍している。税理士。
- [藤井 淳平 Jumpei Fujii](https://shiodome.co.jp/people/jumpei-fujii/) - 都内の複数の会計事務所を経て、2018年汐留パートナーズグループに入社。中小法人に対する会計税務業務の他に、企業オーナーや資産家に対する税務アドバイザリー、相続税申告、贈与税申告、所得税申告、未上場企業の株価評価、相続税対策、税務調査立会業務など幅広い業務に従事。長きに渡りクライアントへ税務アドバイザリーサービスを提供している。税理士。 主な案件実績 東京フットボールクラブ株式会社(FC東京)税務アドバイザリー Kudan株式会社(東証グロース:4425)税務アドバイザリー 株式会社ハウテレビジョン(東証グロース:7064)税務アドバイザリー NTTソノリティ株式会社 税務アドバイザリー 学校法人明泉学園 税務アドバイザリー JAグループ 組織再編支援・その他税務アドバイザリー 日本テレビグループ 組織再編支援・その他税務アドバイザリー 上場会社・国内大手薬局グループ(東証プライム) 税務アドバイザリー、決算支援 上場企業(東証プライム)オーナー企業グループ M&A案件税務デューデリジェンス・組織再編支援・その他税務アドバイザリー 上場企業(東証スタンダード)グループ グループ通算対応・その他税務アドバイザリー 出版・執筆 複式簿記の理論とJA簿記(白桃書房)
- [許 婧怡 Seii Kyo](https://shiodome.co.jp/people/seii-kyo/) - KPMG LLP (Columbus, OH)監査部門に入社、日系自動車メーカーを中心とした法定監査に従事。2016年KPMGメンバーファームである有限責任あずさ監査法人アドバイザリー事業部に転籍し、日系企業の中国子会社の内部統制支援業務、国際会計基準導入支援業務に従事。2020年汐留パートナーズグループに入社し、中華圏クライアントのインバウンド業務およびチャイナデスクの立上げに携わる。2021年より社長室長を務める。2022年に執行役員に就任。2024年からはチャイナデスク室長、キャッシュマネジメント事業部長も務める。2024年取締役CHROに就任。
- [山口 壮太 Sota Yamaguchi](https://shiodome.co.jp/people/sota-yamaguchi/) - 株式会社AGSコンサルティングを経て、2016年汐留パートナーズグループに入社。クライアント企業に対して、IPOコンサルティング業務、内部統制コンサルティング、内部監査コンサルティング、株価算定、財務デューデリジェンス、原価計算コンサルティング等幅広いコンサルティングサービスを提供している。上場会社・上場子会社、また、IPO準備会社に対する豊富なコンサルティング経験を有する。2020年取締役に就任し、アドバイザリー事業部長を務める。2024年取締役CROに就任。 主な案件実績 日本テレビグループ 財務デューデリジェンス・労務デューデリジェンス・株価算定・組織再編支援 株式会社ボードルア(東証グロース:4413) IPO支援 株式会社エニグモ(東証プライム:3665) 財務デューデリジェンス・株価算定 株式会社城南進学研究社(東証スタンダード:4720) 財務デューデリジェンス・株価算定・連結決算支援・開示支援・JSOXアドバイザリー 月島ホールディングス株式会社(東証プライム:6332) JSOXアドバイザリー 上場企業(東証プライム) クロスボーダーの内部監査・JSOXアドバイザリー 経済新聞社 財務デューデリジェンス・投資アドバイザリー IPO準備会社 資本政策・事業計画策定・ストックオプション設計
- [河田 誠 Makoto Kawada](https://shiodome.co.jp/people/makoto-kawada/) - 都内の司法書士事務所勤務を経て、2019年汐留パートナーズグループに入社。商業登記、不動産登記、動産・債権譲渡登記など幅広く登記業務に従事し、汐留パートナーズ司法書士法人の拡大に貢献。汐留パートナーズグループのクライアントの中でも上場会社やIPO準備会社を数多く担当し、各事業部と連携してワンストップサービスを拡充している。2022年汐留パートナーズ司法書士法人のパートナー(社員)に就任。 主な案件実績 上場会社、上場子会社 登記・法務アドバイザリー 等
- [残間 一文 Kazufumi Zamma](https://shiodome.co.jp/people/kazufumi-zamma/) - 事業会社等での人事・労務領域の業務を経て、独立開業。労務管理に関する各種相談をはじめ、労務監査、就業規則の作成、人事労務に関するコンサルティング等の幅広い業務に従事。2025年1月、RSM汐留パートナーズ社会保険労務士法人との経営統合に伴い、RSM汐留パートナーズ社会保険労務士法人のパートナーに就任。特定社会保険労務士・行政書士。
- [高橋 圭佑 Keisuke Takahashi](https://shiodome.co.jp/people/keisuke-takahashi/) - 大学卒業後、東京都内の事業会社にて人事・労務領域を中心としたコンサルティング業務に従事。その後ノータス経営労務事務所を設立し、主に人事労務、企業法務に関するサービスを提供し、数多くのクライアントの成長をサポート。2022年4月、ノータス経営労務事務所とRSM汐留パートナーズ社会保険労務士法人との経営統合に伴い、RSM汐留パートナーズ社会保険労務士法人のパートナーに就任。2024年にはRSM汐留パートナーズ行政書士法人のパートナーにも就任。社会保険労務士、行政書士。 主な案件実績 上場会社(東証グロース)労務アドバイザリー 上場子会社(東証プライム)労務アドバイザリー 上場子会社(JASDAQ)労務アドバイザリー、就業規則作成、給与計算 外資系上場企業(NASDAQ)日本子会社 労務アドバイザリー、給与計算 IPO準備企業 労務デューデリジェンス、労務アドバイザリー 厚生労働省 テレワーク相談センター 専門相談員(2012-2013) 出版・執筆 改訂版 外国人・外資系企業の日本進出支援実務Q&A(日本法令) 現場担当者が直面する疑問に回答! 外国人雇用の法務・労務・税務Q&A259(日本法令) 所属団体 東京都社会保険労務士会(2012) 東京都行政書士会(2015)
- [関口 智史 Satoshi Sekiguchi](https://shiodome.co.jp/people/satoshi-sekiguchi/) - 事業会社での業務やエンジニアを経て、2015年汐留社会保険労務士法人に入所。2016年RSM汐留パートナーズ税理士法人人事労務事業部の立ち上げに参画。2020年RSM汐留パートナーズ社会保険労務士法人を設立しパートナーに就任。上場会社・IPO準備会社・外資系企業等に対し人事労務分野の高度なコンサルティング業務を行う。社会保険労務士。 主な案件実績 WOLT JAPAN株式会社(海外市場) 労務アドバイザリー Payroll支援 外資系上場企業子会社 労務アドバイザリー 日本テレビグループ 労務アドバイザリー 労務デューデリジェンス IPO準備企業 労務アドバイザリー 労務デューデリジェンス 出版・執筆 改訂版 外国人・外資系企業の日本進出支援実務Q&A(日本法令) 現場担当者が直面する疑問に回答! 外国人雇用の法務・労務・税務Q&A259(日本法令) 所属団体 東京都社会保険労務士会(2015)
- [新地 皓貴 Hiroki Shinchi](https://shiodome.co.jp/people/hiroki-shinchi/) - KPMGあずさ監査法人を経て、2014年株式会社アカツキ入社。日常の経理業務に加えて、IPO推進チームのコアメンバーとして管理体制構築、上場審査対応などに従事。上場後は、事業計画策定、予算管理、全社決裁システムの変更、借入や社債発行など、経営管理・財務全般を担当。その後、会計事務所にて中小企業の税務業務を経験し、2020年WARC LIGHT税理士法人を設立。代表社員として、スタートアップ向けの記帳代行サービスの統括、税務顧問業務に従事。2023年1月、RSM汐留パートナーズ税理士法人との経営統合に伴い、RSM汐留パートナーズ税理士法人のパートナーに就任。公認会計士・税理士。 主な案件実績 株式会社アカツキ(東証プライム:3932)正社員として経営管理体制構築、IPO業務、子会社買収後の経理財務PMI、決済システム導入、新規事業立案支援等 多店舗展開型飲食事業会社 税務アドバイザリー 健康系D2C運営スタートアップ 経理業務設計・税務アドバイザリー D2Cアパレルブランド運営企業 税務アドバイザリー オンライン型サッカークラブ運営企業 経理・支払業務設計・税務アドバイザリー 次世代パーソナルモビリティー開発系スタートアップ 原価計算制度設計・経理業務支援 アグリテック系スタートアップ 経理業務支援・税務アドバイザリー esportsチーム運営スタートアップ 税務アドバイザリー Youtuber資産管理会社 法人設立相談・経理業務支援・税務アドバイザリー 音楽プロデューサーマネジメント会社 法人設立相談・経理業務支援・税務アドバイザリー 所属団体 日本公認会計士協会(2017) 東京税理士会(2020)
- [黒住 准 Jun Kurozumi](https://shiodome.co.jp/people/jun-kurozumi/) - 翻訳会社を経て、BDOメンバーファームであるBDO税理士法人に入社。外資系企業を中心に数多くのクライアントのコンサルティング業務及びアウトソーシング業務に従事。その後外資系日本法人であるH&M、ボルボ等の企業管理部門等で英語を基本言語とした会計税務業務及び人事労務業務に数多く従事。2012年汐留パートナーズグループに参画。国際事業戦略室長を務める。米国公認会計士。 主な案件実績 外資系上場企業子会社 会計税務アウトソーシングFP&A、ペイロール 上場会社(東証プライム) 海外進出に関するアドバイザリー 所属団体 Washington State Board of Accountancy(2015)
- [土屋明誠 Akinari Tsuchiya](https://shiodome.co.jp/people/akinari-tsuchiya/) - Deloitte Touche Tohmatsuメンバーファームである有限責任監査法人トーマツに入所し、上場企業の会計監査業務に従事。2012年PricewaterhouseCoopers Hong Kong/Chinaに入所し、日系企業事業開発部のマネージャーとして香港および中国の日系企業に対する海外進出支援業務に従事。2015年ロックハート会計事務所を設立し、日本の外資系企業に対する会計税務・人事労務サービスを開始。2016年フィリピンのマニラにアウトソーシングの拠点を設立しPresidentに就任。2019年RSM汐留パートナーズ税理士法人と経営統合し代表社員に就任。公認会計士(日本/米国)・税理士。
- [松橋 亮太 Ryota Matsuhashi](https://shiodome.co.jp/people/ryota-matsuhashi/) - 都内の会計事務所を経て、2012年汐留パートナーズグループに入社。法人税・消費税・事業税をはじめとした企業関連税務及び事業承継・相続税に関して幅広い知見を有し、マーケティング活動を通じ会計税務事業部の拡大に貢献。2018年汐留パートナーズ株式会社取締役に就任し営業戦略室長を務める。2022年汐留パートナーズ税理士法人パートナーに就任。RSM汐留パートナーズのクライアントの中でも上場企業およびIPO準備会社数多く担当しながら、営業管掌役員として組織横断的なワンストップサービスを拡充。国際税務についての実務にも数多く従事。税理士。 主な兼職 株式会社アカネソリューションズ 社外監査役 主な案件実績 日本テレビグループ M&A案件財務デューデリジェンス・労務デューデリジェンス・株価算定 株式会社アカツキ(東証プライム:3932) 税務アドバイザリーを通じたIPO支援 他 株式会社タムラ製作所(東証プライム:6768) 税務アドバイザリー 上場企業(東証プライム) 子会社 BPO支援、税務アドバイザリー 上場企業グループ(大手メディアコンテンツ) 税務アドバイザリー 上場企業グループ(大手不動産事業) 税務アドバイザリー 上場企業グループ(大手半導体事業) BPO支援、税務アドバイザリー 上場企業グループ(再生エネルギー事業) BPO支援、税務アドバイザリー 上場企業グループ(大手建設事業) 税務アドバイザリー IPO準備会社(アパレル事業) 税務アドバイザリー 出版・執筆 改訂版 外国人・外資系企業の日本進出支援実務Q&A(日本法令) 複式簿記の理論とJA簿記(白桃書房) 所属団体 東京税理士会(2022)
- [長谷川 祐哉 Yuya Hasegawa](https://shiodome.co.jp/people/yuya-hasegawa/) - 都内の会計事務所を経て、2011年汐留パートナーズグループに入社。2015年税理士登録完了と同時に、汐留パートナーズ税理士法人代表社員に就任し、その後中核部門である会計税務事業部部長を務める。上場企業やIPO準備会社に対して、連結納税支援、原価計算・管理会計導入支援、会計ソフト導入支援などの高度なコンサルティングサービスを提供している。国税三法と呼ばれる所得税、法人税、相続税の3つの税務に精通。税理士。 主な案件実績 ANYCOLOR株式会社(東証プライム:5032) 税務アドバイザリー 株式会社駅探(東証グロース:3646) 税務アドバイザリー 日本テレビグループ 会計支援・税務アドバイザリー、決算支援 上場会社・国内大手薬局グループ(東証プライム) 税務アドバイザリー、決算支援 上場会社・国内大手不動産事業グループ(東証プライム) 税務アドバイザリー、決算支援 上場会社・国内大手ゲーム・エンタメ事業グループ(東証プライム) 会計支援・税務アドバイザリー、決算支援 上場会社(東証スタンダード)グループ 会計支援・税務アドバイザリー、グループ通算制度支援 外資系航空会社(海外市場) 税務アドバイザリー IPO準備会社(自動運転関連ソフトウェアの開発) 会計支援・税務アドバイザリー、グループ通算制度導入支援 出版・執筆 複式簿記の理論とJA簿記(白桃書房) 外国人・外資系企業の日本進出支援実務Q&A(日本法令) 所属団体 東京税理士会(2015)
- [前川 研吾 Kengo Maekawa](https://shiodome.co.jp/people/kengo-maekawa/) - 新日本監査法人(現 EY新日本有限責任監査法人)監査部門にて製造業、小売業、情報サービス産業等の上場会社を中心とし た法定監査に従事。また、同法人公開業務部門にて株式公開準備会社を中心としたクライアントに対する、IPO支援、M&A関連支援、デュ ーデリジェンス等のFAS業務に数多く従事。2008年に汐留パートナーズグループを設立、代表取締役社長に就任。2009年グループCEOに就任し、公認会計士・税理士・弁護士・社会保険労務士等のプロフェッショナル集団を統括。公認会計士(日本/米国)・税理士・行政書士・EMBA。 主な兼職 株式会社ムゲンエステート(東証スタンダード:3299)社外取締役 他 主な案件実績 株式会社ボードルア(東証グロース:4413) IPO支援・税務アドバイザリー 上場会社(東証プライム) 海外進出に関するアドバイザリー JAグループ グループ幹部研修における講師(財務会計・組織経営) 上場企業(東証プライム) クロスボーダーの内部監査・JSOXアドバイザリー 日本テレビグループ M&A案件財務デューデリジェンス・労務デューデリジェンス・株価算定 株式会社アカツキ(東証プライム:3932) 税務アドバイザリーを通じたIPO支援 他 出版・執筆 改訂版 外国人・外資系企業の日本進出支援実務Q&A(日本法令) ファミリー企業のガバナンス~経済的および精神的な成功を極大化する~(白桃書房) 現場担当者が直面する疑問に回答! 外国人雇用の法務・労務・税務Q&A259(日本法令) 複式簿記の理論とJA簿記(白桃書房) 外国人・外資系企業の日本進出支援実務Q&A(日本法令) 事例解説~賃金・退職金制度(第一法規) ゼロからわかるIFRS連載(第一法規) 所属団体 日本公認会計士協会(2007) 東京税理士会(2007) 東京都行政書士会(2009) Washington State Board of Accountancy(2015) ファミリービジネス学会(2023) 慶應義塾経営管理学会(2025)
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- [RSM汐留パートナーズ・ニュースレター 2022年11月号](https://shiodome.co.jp/news/15392/) - 外国法人への支払に係る税務論点・年末調整 令和4年度の改正点・緩和された新たな水際対策 日頃よりお世話になっております。RSM汐留パートナーズです。 今月のニュースレターでは、税務より「外国法人への支払に係る税務論点」、労務より「年末調整 令和4年度の改正点」、行政書士法人より「緩和された新たな水際対策」について取り上げます。 行政書士法人にて取り上げる水際対策については、個人の外国人観光客の受け入れを含む大きな制限緩和です。円安の影響もあって、既に外国人観光客の爆買いがニュースにも挙がっていますが、具体的にどのような緩和措置となっているかについてまとめております。 労務で取り上げる年末調整に係る改正点は全ての企業に関係する内容ですし、会計で取り上げる外国法人への支払に係る税務論点に関しても商取引のグローバル化に伴って関係する企業も多い内容かと思います。本年の年末調整にむけて、是非今月のニュースレターをご活用ください。 外国法人への支払に係る税務論点 グローバル化の進展に伴う国際取引の増加 によって、外国法人(非居住者)への報酬、 配当、利子等の支払は、増加し続けています。 今回は外国法人(非居住者)に対する支払が 発生した場合の支払法人側の税務論点を見て いきたいと思います。 支払者の源泉徴収義務 外国法人(*1)や非居住者(*2)(以下、非居 住者等)に対しても、「国内源泉所得(*3)」 については、日本の所得税や法人税が課され ますが、この国内源泉所得の中でも特定のも のについては、支払者側に源泉徴収義務が課 されます。その場合、源泉所得税は、原則と して源泉徴収した日の属する月の翌月10日 までに納付する必要があります。 (*1)外国法人:国内に本店も主たる事務所も有しない法人 (*2)非居住者:国内に住所も1年以上の居所も有しない人 (*3)国内源泉所得:日本国内に、その発生源泉がある所得 源泉徴収の対象となる国内源泉所 上述通り、非居住者等に対して支払う国内 源泉所得の種類によっては、所得税(及び復 興特別所得税)の源泉徴収が必要となります が、当該国内源泉所得の種類のうち代表的な もの、及び源泉徴収税率は、以下の通りです。 源泉徴収が免除(減免)される場合 非居住者等への支払いにあたって、源泉徴 収義務が課される国内源泉所得においても、 以下の2つの場合、源泉徴収が減免されます。 ① 源泉免除証明書の提示による免除源泉徴収の対象となる国内源泉所得が、非 居住者等の日本支店などの恒久的施設に対し て支払われる場合、支払いを受ける非居住者 等が、支払者に対して「源泉免除証明書」を 提示した場合、その証明書の有効期間内に支 払う特定の国内源泉所得については源泉徴収 が不要とされます。 ② 租税条約届出書の提出による減免非居住者等が、日本と租税条約を締結して いる国又は地域の居住者であり、その租税条 約で定められた限度税率が国内法の税率より も低い(又は免税)場合には、「租税条約に関 する届出書」を、その国内源泉所得の支払者 を経由して、所得を支払う日の前日までに所 轄の税務署に提出することで、源泉徴収税率 の減免を受けることができます。 おわりに 今回取り上げた外国法人(非居住者)への
- [RSM汐留パートナーズ・ニュースレター 2022年12月号](https://shiodome.co.jp/news/15780/) - ふるさと納税制度の概要・時間外労働に対する割増賃金率の引き上げ・相続人等売渡請求 日頃よりお世話になっております。RSM汐留パートナーズです。今月のニュースレターでは、税務より「ふるさと納税制度の概要」、労務より「時間外労働に対する割増賃金率の引き上げ」、司法書士法人より「相続人等売渡請求」について取り上げます。 労務より取り上げる割増賃金率については、「月60時間を超える時間外労働」に対する割増賃金率が50%に引き上げられるものです。司法書士法人にて取り上げる相続人等売渡請求は、株主が無くなった際に相続人が承継する株式について、株式の分散等を防止するための売渡を請求することができる制度です。いずれの論点も、多くの会社に関係する論点となっておりますので、是非ご確認ください。 本年も残すところ一か月となりました。皆様には大変厚いご高配を賜り、RSM汐留パートナーズ一同、心より御礼申し上げます。年末年始で慌ただしくなるかと存じますが、是非皆様よいお年をお迎えください。 ふるさと納税制度の概要 年末が近づくと、ふるさと納税の話題を多く耳にします。ふるさと納税は、2008年に開始された制度であり、年々利用者は増加し、令和3年度のふるさと納税の受入額及び受入件数(全国)は、約8,302億円(対前年度比で約1.2倍)、約4,447万件(対前年度比で約1.3倍)に達しています(総務省|令和4年度ふるさと納税に関する現況調査について参照)。今回は、ふるさと納税の概要や手続について今一度整理してみたいと思います。 ふるさと納税とは ふるさと納税とは、自分の選んだ自治体に寄附を行った場合に、寄附額のうち2,000円を越える部分について、所得税と住民税から原則として全額控除される寄付金税制の一つです(収入や家族構成等により、控除される税額に上限あり)。ふるさと納税の魅力としては、寄付の使い道を指定できる点、実質的な自己負担2,000円で、寄付先の自治体から名産品等の返礼品が得られる点が挙げられます。 制度趣旨 地方出身者の中には、医療や教育等様々な住民サービスを地方のふるさとで受けて育ち、進学や就職を機に都会に移住し、都会で納税を行う人が多く、その場合、都会の自治体だけに税収が得られ、生まれ育った地方の自治体には税収が入らないことになります。そこで、故郷を含む応援したい自治体に、自分の意志で納税(寄付)できる制度として、ふるさと納税制度が設けられました。 ふるさと納税による税金控除の手続 税金控除を受けるためには、原則として、確定申告を行う必要があります。但し、確定申告が不要な給与所得者等は、ふるさと納税先の自治体数が5団体以内である場合に限り、ふるさと納税を行った各自治体に「寄附金税額控除に係る申告特例申請書」と本人証明書類を提出することで確定申告が不要になる「ワンストップ特例制度」の適用が可能です。ワンストップ特例制度の申請期限は、寄付をした翌年の1月10日(必着)です。この場合は、所得税からの控除(還付)はなく、ふる さと納税を行った翌年度の住民税の減額という形で税額控除がなされます。 一方、ふるさと納税先の自治体数が5団体を超える場合や、ふるさと納税の有無に関わらず確定申告が必要な場合は、確定申告にて手続を行います。この場合は、ふるさと納税を行った翌年の3月15日までに、住所地の所轄の税務署に、ふるさと納税を行うと発行される「寄附金受領証明書」を確定申告書類と共に提出します。税額控除は、ふるさと納税を行った年の所得税からの控除と、翌年度分の住民税の減額という形でなされます。 おわりに ふるさと納税は、自分の好きな自治体に納税ができ、また納めた税金の使い道を自分で指定できる数少ない納税制度といえます。今年分のふるさと納税は、年内に行う必要があります。ご不明点等ございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせ下さい。 時間外労働に対する割増賃金率の引き上げ 2023年4月1日から、中小企業の月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率が引き上げられます。今回は、引き上げ後の割増賃金や、時間外労働の考え方、代替休暇制度についてお伝えします。 引き上げ後の割増賃金率と経緯 2023年4月1日から、中小企業での月60時間を超える時間外労働に対する割増賃金率が25%以上から50%以上に引き上げられます。大企業に対しては2010年4月1日から引き上げが実施されていたものの、中小企業については適用を猶予されていました。この猶予が2023年3月末日で終了するため、中小企業においても割増賃金率の引き上げが適用されることになります。 ※中小企業の範囲中小企業の範囲については、「資本金の額または出資の総額」と「常時使用する労働者数」のいずれかが以下の基準を満たしていれば、中小企業に該当すると判断されます。なお、事業所単位ではなく、企業単位で判断されます。 月60時間超の時間外労働の考え方 労働基準法には労働時間の上限(通常は1日8時間、1週40時間)が定められており、これを超える労働時間のことを法定時間外労働といいます。法定時間外労働が月60時間を超えたとき、50%以上の割増率により割増賃金を支払う必要があります。 所定労働時間が8時間未満の場合の、所定労働時間を超えて8時間以内の部分の労働時間(いわゆる法内残業)については、1か月60時間の法定時間外労働の算定に含める必要はありません。 深夜労働や法定休日労働との関係 深夜労働については、それが法定労働時間を超えるのであれば1か月60時間の時間外労働の算定に含みます。また、深夜時間帯に月60時間を超える時間外労働を行わせた場合には、25%以上の深夜割増賃金も発生しますし、50%以上の時間外割増賃金も発生します。 一方で、法定休日労働については、1か月60時間の時間外労働の算定には含まれません。また、時間外労働が月60時間を超えていても、法定休日労働に対しては35%以上の法定休日割増賃金を支払えば足ります。ただし、法定休日以外の所定休日労働については、1か月60時間の時間外労働の算定に含まれ、50%以上の時間外割増賃金が発生することもあります。 代替休暇制度 代替休暇制度とは、月60時間を超える法定時間外労働を行った労働者の健康を確保するため、引き上げ分の割増賃金の支払いに代えて、有給の代替休暇の付与をするものです。導入にあたっては労使協定で下記事項について定める必要があります。 代替休暇の時間数の具体的な算定方法 代替休暇の単位(1日または半日) 代替休暇を与えることができる期間(60時間超の時間外労働をした月から2か月以内) 代替休暇の取得日の決定方法、割増賃金の支払日 代替休暇の時間数は次の計算式によって求められます。 代替休暇の時間数=(1か月の法定時間外労働時間数―60時間)×換算率※ ※換算率=代替休暇を取得しなかった場合の割増賃金率(50%以上)―代替休暇を取得した場合の割増賃金率(25%以上) 例えば、代替休暇を取得した場合の割増賃金率を25%と定めた場合で1か月の法定時間外労働が76時間だったとき、60時間を超える「16時間」に換算率「25%(50%-25%)」を乗じた「4時間(16時間×25%)」が、代替休暇の時間数となります。 また、代替休暇を与えられるのは、「60時間を超えた部分」に限られます。また、代替休暇を与えたとしても50%以上が25%以上になるだけで、割増賃金の支払い自体は必要となります。 なお、代替休暇は従業員の意思により取得するものであり、会社が取得を強制することはできません。通達(平成21年5月29日基発0529001号)では、「労働者の代替休暇取得の意向については、一箇月について60時間を超えて時間外労働をさせた当該一箇月の末日からできる限り短い期間内において、確認されるものとすること。代替休暇を取得するかどうかは、労働者の判断による(法第37条第3項)ため、代替休暇が実際に与えられる日は、当然、労働者の意向を踏まえたものとなること」とされています。 相続人等売渡請求 株式会社の株式は株主が所有する財産ですので、株主が亡くなったときは相続人が当該株式を承継します。株式が分散することや望ましくない人(法人)が株主になるリスクを抑えるためか、2006年に会社法が施行されて以降、非公開会社においては定款に「相続人等に対する売渡しの請求に関する定め」を置いている株式会社が少なくありません。 対象は譲渡制限株式 相続人等売渡請求の対象となる株式は譲渡制限株式に限られています。譲渡制限が付されていない株式に対しては、この請求を行うことができません(会社法第174条)。 定款の定め 相続人等売渡請求を行うためには、定款にその請求ができる旨の規定を置く必要があります。定款の内容の一例としては、全ての株式に譲渡制限が付いている会社においては「当会社は、相続その他の一般承継により当会社の株式を取得した者に対し、当該株式を当会社に売り渡すことを請求することができる」等のような記載が挙げられます。 株主が亡くなった後にこの規定を設けることも可能とされていますが、その場合は当該株主の相続人を含めた株主総会で特別決議を経る必要がありますので、導入を検討されているのであれば早めに済ませておくことが良いかもしれません。 行使期間は死亡後1年間 相続人等売渡請求権は、株式会社が当該株式会社が相続その他の一般承継があったことを知った日から1年を経過したときは行使することができません。 財源規制 相続人等売渡請求は、株式会社がその株主から自己株式を取得する手続きの一つですので財源規制(会社法第461条)があります。株主の相続人に対して交付する金銭の総額が相続人等売渡請求の効力発生日における分配可能額を超える場合、この請求を行うことはできません。 相続人等売渡請求の手続き 相続人等売渡請求を行う場合、株主総会の特別決議によって①請求をする株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)②売渡請求をする株式を有する者の氏名又は名称を定めます。この株主総会においては、上記②の株主は、当該株主以外の株主の全部が当該株主総会において議決権を行使することができない場合を除き、議決権を行使することができません。 株主総会の決議後、上記②の株主に対してその請求に係る株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)を通知します。その後、株式会社と上記②の株主の協議によって売買価格を協議することになりますが、上記②の株主は請求があった日から20日以内に裁判所に対し、売買価格の決定の申立てをすることができます。 相続人等売渡請求は、株式が分散することを防ぐことができるため便利な制度ではありますが、原則として創業者を含む全ての株主が対象であり、また、行使にあたっては財源規制や行使期間といった制限がありますので、導入・行使にあたってはそれらを検討された上で行われることをお勧めいたします。
- [RSM汐留パートナーズ・ニュースレター 2023年1月号](https://shiodome.co.jp/news/15883/) - 税制改正大綱・給与のデジタル払い・外国人留学生の新卒採用 新年、あけましておめでとうございます。旧年中の格別のお引き立てに心よりお礼申し上げると共に、本年も一層のご厚情を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。 さて、今年最初のニュースレターでは、税務より「税制改正大綱」、労務より「給与のデジタル払い」、行政書士法人より「外国人留学生の新卒採用」について取り上げます。税制改正大綱に含まれるインボイス制度に関する見直しは多くの企業に関係する論点ですし、給与のデジタル払いの解禁についても社会のデジタル化が進む中での新たな制度として注目されています。いずれも新たな制度故に様々な論点があり、特にインボイスについては年始からの課題として対応しているという企業も多いのではないかと思います。外国人留学生の新卒採用についても、管理の難しい外国人留学生のスケジュールについても確認しています。 是非本年の方針を確認しながら、各種論点をご確認ください。 税制改正大綱 2022年12月16日、2023年度税制改正大綱が公表されました。今回から2回に渡り、その中で注目度が高い論点を取り上げます。今回は法人に関わる注目論点を見ていきます。 【消費税】インボイス制度に関わる見直し ① インボイス発行事業者となる免税事業者の納税額軽減 免税事業者がインボイス発行事業者になった場合の納税額を、売上に係る消費税額の2割に軽減する措置が、2023年10月1日から2026年9月30日の3年間講ぜられます。 ② 中小事業者の少額取引に係る事務負担軽減 基準期間における課税売上高が1億円以下又は特定期間における課税売上高が5,000万円以下の事業者は、2023年10月1日から2029年9月30日までの課税仕入れで税込価額が1万円未満の取引について、インボイスの保存を不要とし、一定の事項が記載された帳簿のみの保存による仕入税額控除が認められます。 ③ インボイス発行事業者の登録申請手続の見直し 2023年10月1日からインボイス発行事業者の登録を受けるにあたって、2023年4月以降に登録申請書を提出する場合であっても、申請書に3月末までの申請が「困難な事情」を記載することが不要となりました。また申請書提出日から15日を経過する日以降の日を登録希望日として記載することで、当該登録希望日に登録を受けた者と看做されます。 【法人税】オープンイノベーション促進税制・DX投資促進税制の見直し ① オープンイノベーション促進税制 新規発行株式のみならず、発行法人以外の者からの購入により取得した特別新事業開拓事業者の株式も、その取得により議決権割合が過半数を有することとなるものについては、対象に追加され、5年以内に一定の要件を満たす場合には、特別勘定の取崩し不要となる仕組みへと見直されます。 ② DX投資促進税制 令和3年度税制改正にて創設されたDX投資促進税制において、主務大臣の確認要件が見直され、適用期限も2年間延長されます。 【国際課税】グローバル・ミニマム課税導入 グローバル企業の法人税負担の最低税率を15%とする制度が2024年度から導入されます。直前4対象会計年度のうち、総収入金額が、7.5億ユーロ(1,000億円超)以上の年度が2年度以上あるグローバル企業に属する内国法人が対象となり、進出国の法人税の実効税率が15%を下回る場合に、差額分が親会社がある本国での税額に追加されます。 おわりに 法人に関わる税制改正論点としては、その他にも、研究開発税制の見直し、スピンオフ税制の拡充、株式交付制度に係る特例の見直し、暗号資産の評価方法等の見直し、電子帳簿等保存制度の見直し等、多岐に渡ります。ご不明点等ございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせ下さい。 給与のデジタル払い 給与のデジタル払いとは、スマートフォンの決済アプリや電子マネーなどを通じて給与を支払うことをいいます。 近年、キャッシュレス決済が普及しています。経済産業省の調査によれば、2021年度のキャッシュレス決済比率は32.5%となりました。今後もキャッシュレス決済は増加していくと思われます。そのような中で、2023年4月から給与のデジタル払いが解禁されることとなりました。今回は、デジタル払いの導入方法、基本的なルール、メリット・デメリットについてお伝えします。 給与のデジタル払いの導入方法 デジタル払いを導入するためには、次の事項について記載した労使協定を締結する必要があります。 デジタル払いの対象となる労働者の範囲 取扱指定資金移動業者の範囲※ ※厚生労働大臣が指定した資金移動業者の中から選択できます。2023年4月から順次指定が行われていく予定です。 労使協定を締結した上で、実際にデジタル払いをする対象者労働者からは同意書を提出してもらう必要があります。同意書には次の事項を記載します。 デジタル払いを希望する賃金の範囲及び金額 労働者が指定する指定資金移動業者名、資金移動サービスの名称、指定資金移動業者口座の口座番号(アカウントID)及び名義人、その他口座特定に必要な情報 開始希望時機 代替口座※として指定する金融機関店舗名、預貯金の種類及び口座番号 ※指定資金移動業者口座の受入上限額(100万円)を超えたときに超過額を受け取る場合や、資金移動業者の破綻時に保証機関から弁済を受ける場合などに利用が想定されます。 また、同意書については厚生労働省から参考様式が公開されています。下記URLをご参照ください。https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001017091.pdf 基本的なルール デジタル払いの基本的なルールを列挙します。 デジタル払いへの対応は義務ではなく、必ずしも導入する必要はありません。 デジタル払いを導入する場合、労使協定が必要です。 デジタル払いは労働者が希望しない場合は実施できず、同意書が必要です。 利用できる資金移動業者は、厚生労働省が指定した業者に限ります。 現金化できないポイントや仮想通貨での支払いは認められません。 給与のデジタル払いのメリット デジタル払いは、銀行口座振込に比べて振込手数料が安くなるというメリットもあります。手数料が減ることで、例えば日雇労働者に対して、1日分の給与を即座に入金するといったことも実施しやすくなるでしょう。外国人労働者にとっては、海外の家族に送金しやすくなるというメリットもあります。 銀行口座開設が難しい労働者に対する給与支払いに活用できるとも言われていますが、前述のように代替口座を用意することが前提となっており、銀行口座を持たずにデジタル払いを利用することは、現時点では想定されていないようです。 給与のデジタル払いのデメリット 給与振込の作業負担の増加がデメリットになります。デジタル払いの対象者に対しては、銀行振込とは別に作業をしなければならないからです。 資金移動業者のツールや給与計算システムも順次対応していって、ある程度は効率的に運用できるようになるとは思いますが、解禁後からしばらくの時間を要するかもしれません。
- [RSM汐留パートナーズ・ニュースレター 2023年2月号](https://shiodome.co.jp/news/16012/) - 税制改正大綱・労働関係法令の2023年の改正・株式譲渡の一連の流れ 日頃よりお世話になっております。RSM汐留パートナーズです。今月のニュースレターでは、税務より「税制改正大綱」、労務より「労働関係法令の2023年の改正」、司法書士法人より「株式譲渡の一連の流れ」について取り上げます。 税務にて取り上げる税制改正大綱では、先月取り上げられなかった個人所得課税と資産課税に関する論点を取り上げます。また労務にて取り上げる労働関係法令の改正では、先月も取り上げた給与のデジタル払いに関するものの他、本年より適用される企業の多い「男女の賃金の差異」の情報公表の義務化や時間外労働時に対する割増賃金率、育児休業取得状況の公表義務化といった論点をまとめております。 労務のニュースレターでは義務化論点も複数ございますので、自社の該当の有無も含めて是非ご確認ください。 税制改正大綱 今回は、2023年度税制改正大綱の中で、個人に関わる項目として、個人所得課税及び資産課税における注目論点を取り上げます。 【個人所得課税】NISAの拡充と恒久化 岸田政権が掲げる「資産所得倍増」に向け、2024年1月からNISAが拡充・恒久化されます。具体的には、非課税保有期間が無期限化され、年間投資上限額が360万円(内訳は「つみたて投資枠」120万円、「成長投資枠」240万円)に拡充されます。また、富裕層に恩恵が偏らぬよう、生涯投資枠1,800万円(内、成長投資枠は1,200万円が上限)が設定されます。既に現行のNISA制度を利用している人も、新たな投資枠がゼロから得られます。 NISA概要 【個人所得課税】極めて高い水準の所得に対する負担の適正化 税負担の公平性の観点から、超富裕層への課税強化が行われます。具体的には、株式の譲渡所得のみならず、土地建物の譲渡所得や給与・事業所得、その他の各種所得を合算した所得金額(基準所得金額)から3.3億円を控除した金額に、22.5%の税率を乗じた金額が納めるべき所得税の金額を超える場合には、その超過額を追加的に申告納税することとされます(2025年分以降の所得税に適用)。 【個人所得課税】スタートアップ再投資優遇措置の創設 保有株式の売却し、自己資金による起業や、プレシード・シード期のスタートアップ企業への再投資を行う場合に、再投資した部分につき株式譲渡益に課税しない制度が創設されます。非課税の上限額は20億円とされます。 【資産課税】相続時精算課税制度の見直し 相続時精算課税制度で受けた贈与については、暦年課税の基礎控除とは別に、同水準の基礎控除(110万円)が創設されます。即ち、相続時精算課税制度選択後も、毎年110万円以下の贈与については贈与税申告が不要となります(2024年1月1日以降の贈与に適用)。 【資産課税】生前贈与加算期間の延長 現行制度上、相続開始前3年以内に贈与により取得した財産は、相続財産に加算することになっていますが、この期間が3年→7年に延長されます。また、延長した4年間(相続開始前3年超7年以内)に受けた贈与については、事務負担軽減の観点から、合計100万円までは相続財産に加算しないこととされます(2024年1月1日以降の贈与に適用)。 おわりに 2023年度税制改正大綱には、前回から2回に渡って取り上げた論点以外にも、電子帳簿保存法の見直し、防衛費財源確保のための税制措置など、他にも多くの企業が関係する項目も含まれています。ご不明点等ございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせ下さい。 労働関係法令の2023年の改正 今回は2023年に施行される予定の主な法改正情報についてお伝えいたします。 2023年に施行される法改正の一覧 ※施行は2022年ですが、2023年での実施が必要となる企業が多いため記載しています 「男女の賃金の差異」の情報公開の義務化 2022年7月に改正女性活躍推進法が施行され、従業員数300人超の企業に対して「男女の賃金の差異」の情報公表が義務付けられています。2022年7月以降に開始する事業年度について、開始後おおむね3か月以内での公表が求められています。詳細については、下記Webページをご覧ください。https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000091025.html 給与のデジタル払いの導入方法 先月のニュースレターでご案内した通り、4月から給与のデジタル払いが解禁されます。デジタル払いを導入する場合、労使協定を締結した上で、対象となる労働者の個別同意を得てから行う必要があります。 また、デジタル払いに利用できる資金移動業者は、厚生労働省が指定した業者に限られます。4月1日以降、厚生労働者による資金移動業者の審査・指定が実施される予定です。詳細については、下記Webページをご覧ください。https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/zigyonushi/shienjigyou/03_00028.html 中小企業における60時間を超える時間外労働に対する割増賃金率の引き上げ 12月のニュースレターでご案内した通り、4月からは中小企業においても月60時間を超える時間外労働に対して50%の割増率が適用されるようになります。これまでは大企業においてのみ適用されていましたが、今後はすべての企業において適用されることになります。 中小企業における時間外労働の割増率は以下の通りです。 詳細については、厚生労働省のパンフレットをご覧ください。https://www.mhlw.go.jp/content/000930914.pdf 従業員数1,000人超の企業における育児休業取得状況の公表義務化 育児介護休業法の改正により、常時1,000人超の従業員を雇用する企業に対して、育児休業等の取得情報の年1回の公表が義務づけられます。2023年4月1日以後に開始する事業年度の直前の事業年度の育児休業等の取得状況を把握し、公表する必要があります。 公表内容は、以下のいずれかを公表する必要があります。 男性の育児休業等の取得割合 育児休業等と育児目的休暇の割合 上記の計算式など、詳細については厚生労働省のパンフレットをご覧ください。https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/content/contents/001122221.pdf 株式譲渡の一連の流れ 株式会社の株主は、その有する株式を譲渡することができます。その発行する全部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について株式会社の承認を要する旨の定款の定めを設けている株式会社(いわゆる非公開会社)における売買による株式譲渡の手続きの一例は次のとおりです。後日、株式の所有権をめぐって争いとならないよう法的な手続きをしっかりと踏んでおくことをお勧めします。 株式譲渡の合意 株式を譲渡するときは、譲渡人と譲受人が譲渡する株式数や価格等について合意します。 株式譲渡の承認請求 一部のケースを除き、多くのケースでは株式の譲渡人が発行会社に対して、譲受人が株式を取得することについて承認するか否かの決定をすることを請求します。この譲渡人からの請求は、①譲渡する株式の数(種類株式を発行している会社は株式の種類及び種類ごとの数)②譲受人の氏名又は名称③譲渡を承認しない場合は指定買取人が当該株式を買い取ることを請求するときはその旨を明らかにして行います。 株式譲渡の承認の決定 株主から譲渡の承認を受けた発行会社は、株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)の決議によって譲渡を承認するか否かを決定します。定款で譲渡承認機関(代表取締役の決定等)が別に定められているときは、当該承認機関が決定します。 取締役会の決議や取締役の決定で上記を行う場合、譲渡人又は譲受人になる取締役は特別利害関係人に該当するため注意が必要です。 定款に「当会社の株主が当会社の株式を譲渡により取得するときは、当会社が承認をしたものとみなす」等の記載がある会社において、譲受人が発行会社の株主であるときは、株式譲渡の承認請求、株式譲渡の承認決定及び株式譲渡の承認通知の手続きは不要です。 株式譲渡契約の締結 株式の譲渡が承認された後に(前でも可能ですが)、株式譲渡契約を締結し、株式を譲渡します。株券発行会社においては、株券を交付しなければ株式譲渡の効力が生じませんので、株券不所持の申出等をして株券を実際には発行していない場合でも、改めて株券を発行しそれを譲受人へ交付しなければなりません。 株式譲渡の承認通知 株式の譲渡が承認されたときは、発行会社は譲渡承認請求をした者に、当該決定した内容を通知します。株式の譲渡を承認せずに、発行会社が買い取る又は指定買取人を指定した場合はそれらの手続きへと進みますが、ここでは割愛します。 株主名簿書換請求 譲渡人と譲受人が共同して、株主名簿の書換えを請求します。 株主名簿の書換え
- [RSM汐留パートナーズ・ニュースレター 2023年3月号](https://shiodome.co.jp/news/16198/) - 税制改正大綱・障がい者雇用に係る法改正・外国人高度人材の在留資格 日頃よりお世話になっております。RSM汐留パートナーズです。 今月のニュースレターでは、税務より「税制改正大綱」、労務より「障がい者雇用に係る法改正」、行政書士法人より「外国人高度人材の在留資格」について取り上げます。 税務にて取り上げる税制改正大綱では、国際課税に関わる論点を取り上げます。今回の改正ではOECD加盟国を中心に合意された、グローバルミニマム課税に関するものが盛り込まれたものとなっている為、非常に重要度の高い論点となっております。 また、行政書士法人では、外国人の高度人材に係る新たな在留資格を、労務からは障がい者雇用に係る法改正について、それぞれ取り上げます。いずれも企業における人材獲得・人材活躍に大きく関わる論点ですので、是非ご一読ください。 税制改正大綱 今回は2023年度税制改正の中でも国際課税に関わるグローバル・ミニマム課税の導入と外国子会社合算税制(CFC税制)の見直しについて掘り下げて見ていきたいと思います。 グローバル・ミニマム課税の導入 グローバル・ミニマム課税は、経済のデジタル化に伴う課税上の課題(BEPS2.0プロジェクト)において、OECD加盟国を中心に合意された二本の柱からなる基本設計のうち、「第二の柱」に位置づけられるものです。今回の税制改正で導入されるのは、「第二の柱」のうち、「所得合算ルール(IIR:Income Inclusion Rule)」と呼ばれるものであり、巨大多国籍企業グループの法人税負担の最低税率を15%に定める制度です。即ち、子会社等の税負担が最低税率(15%)を下回る場合、15%に至るまで最終親会社等の国で上乗せ課税される仕組みになります。これにより、多国籍企業グループが実効税率15%を下回る国に進出するインセンティブが失われ、国家間の税率引き下げ競争に歯止めがかかると言われています。対象企業は、直前4対象会計年度のうち、2年度以上の対象会計年度の年間連結総収入金額が7.5億ユーロ(約1,100億円)以上である多国籍企業グループ等に属する内国法人であり、適用時期は、2024年4月1日以降に開始する対象会計年度とされています。 なお、グローバル・ミニマム課税に関わる「情報申告制度」も創設され、特定多国籍企業グループ等に属する構成会社等である内国法人は、「特定多国籍企業グループ等に属する構成会社等の名称」、「構成会社等の所在地国ごとの国別実効税率」、「特定多国籍企業グループ等のグループ国際最低課税額」等を、各対象会計年度終了の日の翌日から1年3カ月(一定の場合は1年6カ月)以内にe-Taxにより、納税地の所轄税務署長に提供することが求められるようになります。 外国子会社合算税制(CFC税制)の見直し 外国子会社合算税制は、実質的活動を伴わない特定外国関係会社(ペーパーカンパニー等)を利用した租税回避に対処するために、当該特定外国関係会社の所得を内国法人等の所得と看做して合算して課税する制度です。 グローバル・ミニマム課税の導入により、対象企業に追加的な事務負担が生じること等を踏まえ、外国子会社の所得を親会社で課税するという点で類似する外国子会社合算税制の見直しが行われます。具体的には、特定外国関係会社の適用免除要件である合算対象を判定する租税負担割合(トリガー税率)を30%から27%へ引下げる措置や、外国関係会社関する書類の添付義務の緩和等の措置が講ぜられます。適用時期は、2024年4月1日以降に開始する事業年度とされています。 おわりに グローバル化が急速に進む中、国際税務の知識は今や多くの企業で必要とされています。BEPS2.0に対応するため、今後日本を含めた世界各国で、国際課税制度は大きく変動することが予想されます。ご不明点等ございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせ下さい。 障がい者雇用に係る法改正 昨年12月の臨時国会において、障害者総合支援法や障害者雇用促進法等の改正案が可決成立しました。また、今年1月18日に開催された労働政策審議会においては、障害者の法定雇用率の段階的な引き上げも決定されたところです。今回は、これらの改正等のうち、企業に影響がある部分についてお伝えします。 1.概要 企業に影響のある法改正等については以下の通りです。 短時間労働者に対する雇用率算定方法の変更 障害者雇用調整金の見直しと助成金の創設 法定雇用率の段階的引き上げ 2.短時間労働者に対する雇用率算定方法の変更(令和6年4月1日から) これまで、障害者の雇用率の算定にあたっては、週所定労働時間が20時間以上の労働者でなければ含まれませんでした。しかし、長時間勤務が難しい障害者の方も多く、週所定労働時間20時間未満での雇用を希望する方も少なくはありません。 今回の法改正では、週所定労働時間が10時間以上20時間未満の重度身体障害者、重度知的障害者及び精神障碍者に対して、就労機会の拡大のため、雇用率の算定に含めることができるようになります。これらの方は特定短時間労働者として、1人あたり0.5人として算定可能となる見込みです。障害者雇用調整金や納付金の算定にあたっても、同様の取り扱いとなります。 また、上記改正によって、週所定労働時間10時間以上20時間未満を雇用する事業主に対して支給されていた特例給付金は廃止となります。 3.障害者雇用調整金の見直しと助成金制度の拡充 一定数以上の障害者を雇用する事業主に対しては、障害者雇用の数に応じて障害者雇用調整金が支給されています。今後は障害者の雇用数で評価する障害者雇用調整金等における支給方法を見直し、企業が実施する障害者の職場定着等の取組に対する助成措置を強化することとされています。 4.障害者雇用の法定雇用率の引き上げ 事業主は、従業員数に占める障害者の割合を「法定雇用率」以上にする義務があります。現在、民間企業の法定雇用率は2.3%ですが、令和6年4月に2.5%、令和8年7月には2.7%にまで引き上げられる予定です。人数にすると、現在は44人以上の従業員を雇用している場合に障害者1名以上の雇用義務が生じるところ、令和6年には40人以上、令和8年には38人以上の事業主についても雇用義務が生じることになります。 5.おわりに 厚生労働省の調査によると、雇用される障害者の数は年々増加しており、昨年は61万人を超えています。一方、法定雇用率を達成している企業は48.3%にとどまっており、うまく障害者の活用ができていない企業も少なくありません。障害者雇用への取り組みは、多様な人材を活用できる組織作りにも繋がっていきます。上述の通り、週所定労働時間10時間~20時間の短時間労働者も雇用率の算定に含まれるようになります。まだ障害者雇用を実施していないのであれば、まずは週10時間でも良いので障害者雇用を検討してみてはいかがでしょうか。 外国人高度人材の在留資格 2023年2月17日、報道で政府は日本で働く外国人の高度人材を増やす新たな受入れ策と、世界上位の大学卒業者の日本企業への収束の促進のために在留資格「特定活動」に「未来創造人材」という枠を設けることを決定しました。今回はこの2つの施策に関する説明をさせていただきます。 高度専門職について 海外の高度人材を受け入れるための法務省の施策は段階的に行われてきました。まずは在留資格「特定活動」で当該人材を受け入れ始め、さらに高度の専門的な能力を有する外国人材の受入れを促進するため、平成24年5月から「高度専門職」という新たな在留資格を創設し、学歴や年収などの項目について一定のポイントを付与し、法務省が設定したポイント計算表において70ポイント以上を獲得した人材について様々な優遇措置を設けることにより受入れを促進することを狙いとして現在に至っております。 「高度専門職」創設から11年が経過しようとしておりますが、予測されたほど高度人材の確保は芳しくなく、他国の先進国と比べても日本の国際人材獲得は劣っており、経済協力開発機構(OECD)のランキングでは25位となっております。 今回の改正では主に年収にスポットを当てているようです。例えば修士かつ年収2000万円以上の方の場合、これのみのポイントを高度専門職1号ロのポイント計算表で見れば現行は60ポイントとなり高度専門職を取得することができませんが、改正後はこれが可能となります。また経営者においては職歴5年以上と年収4000万円以上で高度専門職が付与されることとなります。 また永住権についても緩和され、現在は80ポイント以上であれば1年、70ポイント以上であれば3年で永住権申請が可能となるところ、先にあげた2つの例であれば1年で永住権申請が可能になるとのことです。 未来創造人材について もう1つの改正が世界上位の大学卒業者の日本企業への就職促進のために設けられた特定活動「未来創造人材」というものです。本来、就職活動の目的で日本で活動を行うためには「短期滞在」という在留資格で入国し、付与される期間は原則90日となります。しかし、英国や中国の機関が出す3種類の大学ランキングのうち2つ以上で上位100位以内に入る大学を卒業してから5年以内の人を対象に滞在期間を2年に延ばし、その間「短期滞在」では認められていない日本での就労の機会を用意するとしています。 おわりに 未来創造人材について高度外国人材が日本への入国を検討し、また企業も高度外国人材をみつける良いきっかけになることでしょう。 有期労働契約で締結した後、双方の意見の相違や入社前と入社後の認識のずれなどにより契約を終結させることも可能ですし、また双方合意のもと無期に転換させることもできます。外国人材にとって2年もあれば複数企業も体験することができるでしょう。このような法改正に企業担当者が時間を割くことはコストがかかりあまりメリットがないように感じます。もし疑問等があれば是非一度弊社にご相談いただければ幸いです。
- [RSM汐留パートナーズ・ニュースレター 2023年4月号](https://shiodome.co.jp/news/16256/) - 賃上げ促進税制・インフレ手当の支給方法と注意点・一般社団法人・一般財団法人の実質的支配者 日頃よりお世話になっております。RSM汐留パートナーズです。 今月のニュースレターでは、税務より「賃上げ促進」、労務より「インフレ手当の支給方法と注意点」、司法書士法人より「一般社団法人・一般財団法人の実質的支配者」について取り上げます。 司法書士法人で取り上げる「実質的支配者」とは、法人の不正利用を抑止する観点で申告が必要になる論点です。また、税務では中小企業向け・大企業向けのそれぞれについて賃上げ促進税制について取り上げます。今年の改正はありませんでしたが、昨今賃上げに対する動きが加速しておりますので、その動きを追う前提として押さえておくことは非常に有用かと思います。労務で取り上げるインフレ手当についても、物価高による賃金への影響軽減のために注目されているものですので、是非ご一読ください。 賃上げ促進税制 昨今、近年に経験のない物価上昇が相次ぐ中、日本でも高い水準の賃上げを求める動きが広がっています。当該情勢を受け、2023年度においては賃上げを行う国内企業が増える見込みです。今回は、従業員の給与引き上げを税務面から支援する制度である「賃上げ促進税制」について見ていきたいと思います。 賃上げ促進税制とは 賃上げ促進税制は、給与等の支給額を増加させた場合に、その増加額の一部を法人税等から税額控除できる制度です。令和4年度税制改正にて内容が変更され、適用時期は2022年4月1日から2024年3月31日までの間に開始する各事業年度とされており、3月決算法人では今回の申告から適用可能となります。給与支給増加額などに対して税額控除が受けられる制度としては、従前より「所得拡大促進税制(中小企業向け)」や「人材確保等促進税制(大企業・中小企業向け)」といった制度がありました。賃上げ促進税制はこれらに代わるものであり、「中小企業向け」の要件と、大企業を含む全ての青色申告事業者が適用できる「大企業向け」の要件が分かれています。以下、「中小企業向け」と「大企業向け」に分けて適用要件や税額控除額等を見てみます。 賃上げ促進税制【中小企業向け】 ※上乗せ要件①も②も満たす場合は、「控除対象雇用者給与等支給増加額」×40% *1 全ての国内雇用者に対する給与等の支給額。但し、給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額(「雇用安定助成金額」を除く。)がある場合には、当該金額を差し引いた額。 *2 適用年度と前年事業年度の「雇用者給与等支給額」の差額。 旧制度である「所得拡大促進税制」からの主な変更点は、以下の通りです。 (出典:中小企業向け賃上げ促進税制ご利用ガイドブック) 賃上げ促進税制【大企業向け】 ※上乗せ要件①も②も満たす場合は、「控除対象雇用者給与等支給増加額」×30% *3 継続雇用者(全事業年度及び適用事業年度の全月分の給与等の支給を受けた国内雇用者)に対する支給額の合計額。 「人材確保等促進税制」と比べると、第一に、制度適用の可否を判定する給与等の支給の比較対象が「新規雇用者給与等支給額」から「継続雇用者給与等支給額」に変更されており、加えて給与等支給額の増加率や税額控除率も変更され、大幅な改定となっています。 おわりに 大企業においては、ここ数年、「賃上げ・生産性向上のための税制」「人材確保等促進税制」「賃上げ促進税制」と毎年のように制度変更があり、拾うべき数値も変更されています。中小企業においては、中小企業向け制度と大企業向け制度の両者でシミュレーションし、有利な方を選択適用することが可能です。細かい要件等、ご不明点がございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせ下さい。 インフレ手当の支給方法と注意点・一般社団法人 昨年12月の臨時国会において、障害者総合支援法や障害者雇用促進法等の改正案が可決成立しました。また、今年1月18日に開催された労働政策審議会においては、障害者の法定雇用率の段階的な引き上げも決定されたところです。今回は、これらの改正等のうち、企業に影響がある部分についてお伝えします。 昨今の物価高による実質的な賃金減少への補填として、インフレ手当を支給している企業が増えてきています。今回は、インフレ手当の概要や支給時の注意点についてお伝えします。 1.支給状況 帝国データバンクが昨年11月に実施した調査によると、インフレ手当を「支給した」と回答した企業は全体の6.6%でした。これに「支給予定」、「支給を検討中」の企業も含めると全体の26.4%になります。支給方法については、「一時金」として支給した企業が66.6%、「月額手当」として支給した企業は36.2%という結果でした。一時金の平均支給額は53,700円、月額手当は平均6,500円になっています。支給額については、勤続年数に応じて差を設けている事例もあります。 2.支給方法 インフレ手当の支給方法は、毎月の手当として支給する方法、一時金として支給する方法が考えらえます。一時金として支給する方が、企業にとって負担は少ないかもしれません。しかし、労働者からの賃上げの要求が高まっているなかで、一時的な手当だけで済ませることは難しくなっていく可能性はあります。 単に基本給を底上げすることができれば良いのですが、この場合は簡単に引き下げることはできないため注意が必要です。一旦は毎月の手当として支給しながら、様子を見ながら基本給に組み込んでいくということも考えられます。 3.就業規則への記載 臨時的な一時金として支給する場合は、就業規則への記載までは不要です。しかし、毎月の手当として継続的に支給する場合には、就業規則又は賃金規程への記載が必要になります。インフレ手当は期間限定の手当であり、支給が停止できるように設定しておく必要はあります。あらかじめ半年や1年間などで支給期間を定めておくこともできますし、消費者物価指数などに応じて支給停止の条件を定めておくことも可能です。 4.賃金計算上の注意点 インフレ手当に対しては税金や社会保険料もかかります。一時金として支給する場合には、社会保険上は賞与として考えられますので、賞与支払届の提出が必要になります。毎月の手当として支給する場合には、割増賃金の算定基礎にも含まれる点に注意が必要です。 5.おわりに 物価高の中で迎えた令和5年春闘では、労働組合の賃上げ要求に対して、大手企業では満額回答が相次ぎました。連合が3月24日に公表した第2回中間集計結果によれば、賃上げの平均月額は11,554円、賃上げ率は3.76%で、かなりの高水準となっています。今後は、基本給の底上げが求められていくと思われます。インフレ手当についても、基本給に組入れていくことを視野に入れて検討すると良いかもしれません。 一般財団法人の実質的支配者 株式会社、一般社団法人又は一般財団法人を設立するときに必要となる公証人による定款認証の際に、実質的支配者となるべき者の申告が求められます。これは法人の実質的支配者を把握することで、暴力団員や国際テロリストによる法人の不正使用を抑止するが目的とされています。 実質的支配者とは 実質的支配者とは、法人の事業経営を実質的に支配することが可能となる関係にある自然人をいいます。実質的支配者を認定するには次の4つの該当事由があり、①から順に該当する者がいるかを確認していくことになります(該当する者がいれば実質的支配者の特定は終了です)。 なお、ここでは株式会社Xを対象としており、また、実質的支配者たる自然人が「当該会社の事業経営を実質的に支配する意思又は能力がないことが明らかな場合」に該当しないことを前提としています。 ⓵ 設立する会社の議決権の総数の50%を超える議決権を直接又は間接に有する自然人となるべき者個人Aが議決権の100%を有する場合、Aが株式会社Xの実質的支配者に該当します。個人Aが議決権の51%を有し、個人Bが議決権の49%を有する場合も、Aが株式会社Xの実質的支配者に該当します。 ② 上記①に該当する者がいない場合は、設立する会社の議決権の総数の25%を超える議決権を直接又は間接に有する自然人となるべき者個人A及びBがそれぞれ議決権の50%を有する場合、A及びBが株式会社Xの実質的支配者に該当します。個人A及びBがそれぞれ議決権の30%を有し、個人C及びDがそれぞれ議決権の20%を有する場合も、A及びBが株式会社Xの実質的支配者に該当します。 ③ 上記①及び②のいずれにも該当する者がいない場合は、出資、融資、取引その他の関係を通じて、設立する会社の事業活動に支配的な影響力を有する自然人となるべき者上記のとおりですが、実務では③により実質的支配者を認定するケースは少ないかもしれません。以下、③に該当する者がいないことを前提としています。 ④ 上記①、②及び③のいずれにも該当する者がいない場合は、設立する会社を代表し、その業務を執行する自然人となるべき者個人A、B、C及びDがそれぞれ議決権の25%を有する場合は、株式会社Xの代表取締役Zが株式会社Xの実質的支配者に該当します。 議決権を間接に有する自然人 発起人に法人が含まれると少し複雑になります。株式会社Xの発起人が株式会社Yのみであるときに、株式会社Yの議決権の51%を個人Aが有する場合、Aが株式会社Xの実質的支配者に該当します。Aが株式会社Yを介して株式会社Xの議決権を間接的に有すると評価されます。Aが株式会社Yを介して株式会社Xの議決権を間接的に有すると評価されるには、Aが株式会社Yの議決権の50%超を有する必要がありますので、株式会社Yの議決権につき個人A及びBがそれぞれ50%ずつ有する場合は、上記①及び②に該当する者がいないことになり、株式会社Xの代表取締役Zが株式会社Xの実質的支配者に該当します。 自然人とみなされるもの 国、地方公共団体、人格のない社団又は財団、上場会社等及びその子会社は自然人とみなされます。上場会社の子会社が議決権の51%を有する場合、当該子会社が株式会社Xの実質的支配者に該当します。 誰が実質的支配者に該当するのか不明な場合、定款認証を行う予定の公証役場にお問い合わせいただくとスムーズかと思います。
- [RSM汐留パートナーズ・ニュースレター 2023年5月号](https://shiodome.co.jp/news/16435/) - グループ通算制度・労働条件明示のルール変更・一般社団法人・特別高度人材と未来創造人材について 日頃よりお世話になっております。RSM汐留パートナーズです。今月のニュースレターでは、税務より「グループ通算制度」、労務より「労働条件明示のルール変更」、行政書士法人より「特別高度人材と未来創造人材について」について取り上げます。 税理士法人にて取り上げるグループ通算制度は令和2年度税制改正にて連結納税制度が見直される形で移行される制度です。連結納税制度と比較して、損益通算や繰越欠損金の通算をはじめ、様々な論点で特有の扱いがなされるようになります。従来と何が異なり、どのように対応すればよいかの確認が必須となります。また、労務で取り上げる労働条件明示のルール変更、行政書士法人で取り上げる新たな在留資格についても、従来との違いを押さえる必要がある論点が多くなっております。是非今月のNews Letterをご活用ください。 グループ通算制度 令和2年度税制改正により、連結納税制度が見直され、グループ通算制度への移行が決定されました。グループ通算制度は、2022年4月1日以降開始事業年度から適用されることから、3月決算の会社を中心に当制度適用後最初の決算及び申告を迎えています。今回は、グループ通算制度の重要ポイントや留意点を今一度確認していきたいと思います。 損益通算 連結納税制度では、親法人が申告を行う一体申告方式であったため、連結所得金額を計算する過程で、所得法人の所得金額と欠損法人の欠損金額が自動的に通算されていました。グループ通算制度では、親法人及び各子法人が各々申告を行う個別申告方式であるため、①通算グループ内の欠損法人の欠損金額の合計額(所得法人の通算前所得金額の合計額を限度)を、所得法人の所得金額の比で配分し、所得法人において損金算入すると共に、②損金算入された金額の合計額を、欠損法人の欠損金額の比で配分し、欠損法人において益金算入することで損益通算が行われます(計算例として、通算制度の当初申告における損益通算の計算(国税庁)を参照)。 繰越欠損金の通算 連結納税制度と同様に、欠損金は特定欠損金と非特定欠損金に分けられ、特定欠損金は自社の所得を限度として使用可能な欠損金、非特定欠損金は通算グループ全体で使用可能な欠損金です。特定欠損金は、グループ通算制度開始前又は加入前に生じた繰越欠損金等であり、非特定欠損金は、グループ通算制度開始後又は加入後に生じた繰越欠損金等と言えます。連結納税制度からグループ通算制度に移行した場合は、特定連結欠損金個別帰属額は特定欠損金へ、非特定連結欠損金個別帰属額は非特定欠損金へ引き継がれます。繰越欠損金は、当事業年度開始日前10年以内に開始した親法人事業年度に対応する事業年度に発生した繰越欠損金について、発生年度の古い順に、また特定欠損金→非特定欠損金の順に控除計算を行います(計算例として、通算法人の過年度の欠損金額の当初申告における損金算入額の計算方法(国税庁)を参照)。 その他の論点 グループ通算制度適用にあたって特有の取扱いがなされる主な項目を以下に列挙します。 中小法人等の判定(通算グループ内の全社が中小法人等に該当する場合に限定) 受取配当等の益金不算入の負債利子控除 外国子会社配当等の益金不算入 寄付金 交際費 中小法人の軽減税率適用範囲 所得税額控除 外国税額控除(通算グループ全体での計算) 試験研究費の税額控除(通算グループ全体での計算) おわりに 個別申告方式を採るグループ通算制度ですが、損益通算や欠損金の通算の他にも、通算グループ全体での計算や判断が必要な項目も多く、グループ内での情報共有が極めて重要となります。連結納税制度との違いも含め、ご不明点等ございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせ下さい。 労働条件明示のルール変更・一般社団法人 労働基準法施行規則等の改正により、令和6年4月1日から労働条件明示のルールが変わります。今回は法改正に対応するため、雇用契約書や労働条件通知書を見直しが必要なポイントをお伝えします。 変更内容の概要 労働契約の締結または更新のとき、労働条件として明示するべき事項が新たに追加されました。変更内容は以下の通りです。 就業場所・業務の変更の範囲 すべての労働契約の締結時と有期労働契約の更新時に、就業場所や業務内容の変更の範囲について明示が必要になります。変更の範囲を明示するとは、配置転換などにより就業場所や業務内容が変更される範囲を明示することを言います。 たとえば、将来的に転勤する可能性があるのなら、就業場所の「変更の範囲」として転勤する範囲を明示しておく必要があります。 更新上限(通算契約期間または更新回数の上限)の有無と内容 有期労働契約の締結と契約更新のタイミングごとに、更新上限の有無と内容についての明示が必要になります。 以下の場合には、更新上限を新たに設ける、または短縮する理由をあらかじめ説明することが必要です。 最初の契約締結より後に更新上限を新たに設ける場合 最初の契約締結の際に設けていた更新上限を短縮する場合 無期転換申込機会・無期転換後の労働条件の明示 無期転換申込権が発生する更新のタイミングごとに、無期転換を申し込むことができる旨の明示及び無期転換後の労働条件についての明示が必要になります。無期転換をせずに有期労働契約を更新する場合には、更新のたびにこれらの明示が必要になります。 また、無期転換後の労働条件を決定するにあたって、正社員等とのバランスを考慮した事項について、有期契約労働者に説明するよう努めなければならないこととなります。 おわりに 本件についての詳細は、厚生労働省のWebページをご覧ください。モデル労働条件通知書の改正イメージなども掲載されています。 令和4年労働政策審議会労働条件分科会報告を踏まえた労働契約法制の見直しについて(無期転換ルール及び労働契約関係の明確化) (mhlw.go.jp) 特別高度人材と未来創造人材について 2023年2月17日、報道で政府は日本で働く外国人の高度人材を増やす新たな受入れ策と、世界上位の大学卒業者の日本企業への収束の促進のために特別高度人材(J-Skip)と未来創造人材(J-Trip)について新たな枠組みを設けることを決定いたしました。2023年4月21日にJ-skipについて詳細が出入国在留管理庁のHPに発表されましたのでご報告させていただきます。 高度専門職の概要 元来、高度専門職はポイント制により70ポイント以上加算される方を対象に優遇措置が与えられるものでした。J-Skipにおいてはポイント計算を使用しません。要件と優遇措置については以下の通りです。 【要件】 ①高度学術研究活動(大学教授や研究者等)及び高度専門・技術活動(企業で働く技術者等) 修士号以上取得、年収2000万円以上の者 職歴10年以上、年収2000万円以上の者 ②高度経営・管理活動(企業の経営者等) 職歴5年以上であり、年収4000万円以上の者 【優遇措置】 ①世帯年収が3000万円以上の場合、外国人家事使用人2人まで雇用可能(家庭事情等の要件を課さない)。 ②従来からの高度専門職の優遇措置である、配偶者の就労の活動範囲が拡大(従来の活動に加え「教授」、「芸術」、「宗教」、「報道」および「技能」に該当する活動についても可能になりました)。
- [RSM汐留パートナーズ・ニュースレター 2023年6月号](https://shiodome.co.jp/news/16708/) - グループ通算制度適用時の会計論点・フリーランス保護法・株式会社の取締役の任期 日頃よりお世話になっております。RSM汐留パートナーズです。今月のニュースレターでは、税務より「グループ通算制度」、労務より「フリーランス保護法」、司法書士法人より「株式会社の取締役の任期」について取り上げます。 社労士法人で取り上げるフリーランス保護法は、最近増加しているフリーランスとの取引の適正化を図る法律です。対象はフリーランス等と取引を行う全事業者で、従来下請法の対象外だった取引についても保護される形となります。フリーランスとの取引が一般化すると見られますので、多くの事業者で注意が必要な論点です。また、司法書士法人より取り上げる取締役の任期については、VC等から出資を受ける場合の外部の取締役についてや任期短縮、報酬決定についても言及していますので、是非ご参照ください。 グループ通算制度適用時の会計論点 2021年8月に企業会計基準委員会より実務対応報告第42号「グループ通算制度を適用する場合の会計処理及び開示に関する取扱い」が公表されました。今回は、実務対応報告第42号に基づき、グループ通算制度適用の際の主要な会計論点を見ていきたいと思います。 法人税及び地方法人税に関する会計処理 グループ通算制度では、各通算会社を納税単位としているため、各通算会社が当事業年度の法人税及び地方法人税を「法人税、住民税及び事業税」として損益計算書に計上し、未納税額は「未払法人税等」として貸借対照表に計上します。通算税効果額(*1)は、当事業年度の所得に対する法人税及び地方法人税に準ずるものとして取扱うこととされているため、「法人税、住民税及び事業税」に含めて損益計上し、通算税効果額に係る債権債務は、「未収入金」「未払金」等として個別財務諸表における貸借対照表に計上します(実務対応報告第42号25項)。 税効果会計に関する会計処理 グループ通算制度適用の際の税効果会計に関する会計処理は、基本的に連結納税制度における取扱いが踏襲されています。よって、住民税及び事業税は法人税及び地方法人税とは区分して税効果会計を適用し、各々適用する税率を算定します(以下参照)。 繰延税金資産及び繰延税金負債の計算に用いる税率 ※税金の種類ごとの繰延税金資産の回収可能性が異なることによる重要な影響がある場合には、その影響を考慮した税率を用いる。 法人税及び地方法人税に係る繰延税金資産の回収可能性の判断 基本的には単体納税制度の場合と同様に、企業会計基準適用指針第26号「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」に従って繰延税金資産の回収可能性を判断しますが、通算税効果額の影響を考慮する必要があります。また、繰越欠損金に係る繰延税金資産については、特定欠損金と特定繰越欠損金以外の繰越欠損金ごとに損益算入のスケジューリングを行い、回収が見込まれる金額を繰延税金資産として計上することとなります。 繰延税金資産の回収可能性の判断に関する手順 単体納税制度と同様に将来減算一時差異と将来加算一時差異の解消見込年度ごとの相殺する。 1で相殺し切れなかった将来減算一時差異の解消見込額を、通年会社単独の将来の一時差異等加減算前通算前所得の見積額と解消見込年度ごとに相殺し、その後、総益通算による益金算入見積額と解消見込年度ごとに相殺する。 2で相殺し切れなかった将来減算一時差異の解消見込額については、特定繰越税金資産として計上する。→相殺し切れなかった部分は回収可能性はないものと判断する。 繰延税金資産の回収可能性判断に用いる企業の分類 おわりに 実務対応報告第42号においては、開示(注記を含む)に関しても明記されていますので、開示書類作成時には、今一度ご確認いただければと思います。ご不明点等ございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせ下さい。 フリーランス保護法 2023年4月の国会で、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法案)」が可決成立し、同年5月12日に交付されました。今回はこの法律の概要と、会社として実施しなければならないことについて解説します。 1.法律の目的 この法律の目的は、フリーランス等との取引の適正化と、就業環境の整備が目的となっています。近年の働き方の多様化が進み、フリーランスも増加傾向にあると言われています。その中で、立場の弱いフリーランス等を保護するために制定されました。 今までも下請法の適用を受ける場合には法律による保護を受けることもできましたが、この法律ではフリーランス等と取引をする全事業主に適用されるため、より保護の幅が広がったと言えます。 2.法律の適用対象者 この法律の保護を受けるのは、従業員を雇わずに活動している個人事業主のほか、一人社長など他に役員がなく従業員も雇っていない法人代表も対象になります。これらの方々に業務委託をする場合、「特定業務受託事業者」として法律の保護を受けることになります。 この法律は特定業務受託者に対して業務委託をする全事業主に対して適用され、従業員数や資本金等による限定はありません。特定業務受託事業者との取引をしているのであれば、この法律の理解・遵守が求められます。 3.この法律で課せられる主な義務 特定受託事業者と取引をする事業主(業務委託事業者)には、以下のような法的義務が課されることになります。今まで業務委託契約書の締結をしていなかった場合は準備が必要です。 (1)取引条件の明示義務 業務委託事業者は、特定受託事業者に対して業務委託をした場合には、依頼する業務の内容、報酬の金額、支払期日その他の事項を書面又は電磁的方法により明示する必要があります。 (2)報酬の支払期日の設定 支払期日については、物品等を受領した日から起算して60日以内に報酬を支払うことが義務付けられます。業務委託事業者側で検査をするか否かに関わらず、この期限内に支払う必要があります。 (3)禁止行為 業務委託事業者には次のような行為が禁止されます。 特定受託事業者の責めに帰すべき事由がないのに、受領を拒むこと 特定受託事業者の責めに帰すべき事由がないのに、報酬を減額すること 特定受託事業者の責めに帰すべき事由がないのに、返品をすること 通常相場に比べて著しく低い報酬の額を不当に定めること 正当な理由なく、自己の指定する物の購入・役務の利用を強制すること 自己のために、金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること 特定受託事業者の責めに帰すべき事由がないのに、業務内容を変更させ、またはやり直しをさせること (4)就業環境の整備 業務委託事業者は、特定受託事業者の就業環境の整備にあたって、次の事項を守る必要があります。ハラスメント行為に係る相談体制の整備なども求められていますので、注意が必要です。 広告等により募集情報を提供するときは、虚偽の表示等をせず、正確かつ最新の内容に保つこと 特定受託事業者が育児介護等と両立して業務委託(政令で定める期間以上のもの。以下「継続的業務委託」)に係る業務を行えるよう、申出に応じて必要な配慮をする 特定受託業務従事者に対するハラスメント行為に係る相談対応等必要な体制整備等の措置を講じること 継続的業務委託を中途解除する場合等には、原則として、中途解除日等の30日前までに特定受託事業者に対し予告すること 4.違反した場合の対応 法違反がある場合には、特定受託事業者は公正取引委員会や中小企業庁長官に申し出ることができます。この申し出に基づき、公正取引委員会や中小企業庁長官は調査が行い、必要があれば勧告や命令を下すことができることとなっています。 この命令に従わなかった場合や、調査で求められた報告を怠ったり、虚偽の報告をしたり、調査自体を拒否した場合などには、罰則(命令違反及び検査拒否等に対して、50万円以下の罰金)が適用されることがあります。 5.おわりに 法律の施行日は未定ですが、遅くとも2024年11月11日には施行されます。それまでに事業主において準備が必要となることは以下の通りです。 (業務委託契約書が未整備の場合)業務委託契約書の整備
- [RSM汐留パートナーズ・ニュースレター 2023年7月号](https://shiodome.co.jp/news/17108/) - 信託型ストック・オプションの概要・年金制度の概要・在留資格のオンライン手続き 日頃よりお世話になっております。RSM汐留パートナーズです。 今月のニュースレターでは、税務より「信託型ストック・オプションの概要」、労務より「年金制度の概要」、行政書士法人より「在留資格のオンライン手続き」について取り上げます。 税務にて確認する信託型ストック・オプションについては、5月30日に国税庁が公表し、注目を集めました。信託型ストック・オプションは、会社が発行したストック・オプションを、信託銀行等を経由して従業員や役員に交付するスキームです。メリットとして、交付時点で誰にどれだけ付与するかを決定しないで良いことや、会社への貢献度を考慮して付与者を決定することができることなどが挙げられます。一方で従業員への税負担の少ない税制適格とする要件が今回の公表で定説より厳しく定義され、信託型ストック・オプションから通常の税制適格ストック・オプションへの切り替えを検討する企業も増えると見込まれています。 注目の本論点について、是非詳細をご確認ください。 信託型ストック 2023年5月30日、国税庁は「ストックオプションに対する課税(Q&A)」を公表し、ストックオプション(以下、SO)に関する税務上の一般的な取扱いについて、質疑応答形式にて示しました。その中で、信託型の税制非適格SOにおいて、権利行使時に生じた経済的利益は給与所得に該当するとの見解が示され、既に信託型SO導入済みの企業等を中心に波紋が広がっています。今回は信託型SOの概要、及び課税関係について従来の定説と国税庁の見解を比較しつつ、見ていきたいと思います。 信託型SOの概要 信託型SOとは、会社が発行したSOを、信託を経由して役員や従業員等に交付するスキームです。通常のSOでは、会社は役職員等に対して直接SOを発行し、SOを有する役職員等が権利行使し、株式を取得することになります。しかし、信託型SOでは、会社のオーナー等(委託者)が信託銀行等(受託者)に金銭を信託し、当該金銭により受託者が会社のSOを取得し、その後、会社貢献度等を考慮して指定された役職員等(受益者)に当該SOを交付することになります。SO発行時に誰にどれだけ交付するか決定する必要があり、その後の会社貢献度等をSOの交付に反映できない通常のSOの課題を解決すべく登場したのが信託型SOであり、スタートアップ企業を中心に導入企業が増加しました。 従来の定説と国税庁の見解 信託型SO(税制非適格)について従来の定説と今回の国税庁が示した見解について下表にて数値例も入れつつ、比較してみました。 発行会社の株価等SOの購入時:200SOの付与時:600SOの行使時:800(権利行使額200)株式譲渡時:1000 また国税庁の見解は、従来から変更されたものではないとされ、既に信託型SOの行使が行われ、給与所得としての源泉徴収税の納付がなされていない会社は、遡って源泉所得税を納付する必要があるとされています。但し、信託型SO導入後、未だSOの行使がなされていない場合には、一定の要件を満たすことで権利行使時に給与課税されない、いわゆる税制適格SOへの移行も可能といわれています(税制適格SOの主な要件について、ストックオプション税制(METI/経済産業省)参照)。 おわりに 国税庁は、今後税制適格SOの権利行使価額要件である付与契約時の時価の算定ルールを明確化することも公表しています。SO導入予定の企業や信託型SO導入後で税制適格SOへの移行を考慮している企業等にとっては、最新情報が気になるところです。SOの会計税務上の取扱い等、ご不明点がございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせ下さい。 オプションの概要・年金制度の概要 今回は年金制度について、公的年金である老齢年金制度の概要、在職中の老齢年金受給の在り方、公的年金以外の年金制度についてご説明いたします。 1.老齢年金制度の概要 老齢年金は、高齢者が生活を維持できるように支給されるものです。老齢年金には、老齢基礎年金と老齢厚生年金があります。老齢基礎年金は原則全員が受給するもので、老齢厚生年金は会社員などの厚生年金保険に加入にしていた方が受給できるものです。 (1)老齢年金の受給要件老齢基礎年金は、保険料納付済期間と保険料免除期間などを合算した「受給資格期間」が10年以上ある場合に受給することができます。 老齢厚生年金は、老齢基礎年金を受給できる方で、さらに厚生年金の加入期間がある場合に受給することができます。 (2)受給開始年齢基本的に65歳から受給権が発生しますが、60歳から75歳までの間で受給開始時期を調整することができます。繰り上げて受給する場合には、年金額×1か月あたり0.4%※が減額されます。繰り下げて受給する場合には、年金額×一か月あたり0.7%が増額されます。※昭和37年4月1日以前生まれの方は0.5% 2.在職中の老齢年金 老齢厚生年金を受給されている方が厚生年金保険の被保険者であるとき、受給されている老齢厚生年金の基本月額と総報酬月額相当額に応じて年金額の一部または全部が支給停止となる場合があります。 なお、平成19年4月以降に70歳に達した方が、70歳以降も厚生年金適用事業所に勤務されている場合も、支給停止となる場合があります。 (1)支給停止となる条件基本月額(加給年金額を除く老齢厚生年金の月額)と総報酬月額相当額の総額が48万円を超える場合、支給停止の対象となります。総報酬月額相当額の計算式は以下の通りです。 総報酬月額相当額=(その月の標準報酬月額)+(その月以前1年間の標準賞与額の合計÷12か月)※70歳以上の場合は、それぞれ「標準報酬月額に相当する額」、「標準賞与額に相当する額」となります。 (2)支給停止となった場合の年金支給額の計算支給停止となった場合の年金支給月額の計算方法は次の通りです。計算結果がマイナスになる場合は、老齢厚生年金は全額支給停止となります。ただし、老齢厚生年金が支給停止になった場合でも、老齢基礎年金は全額支給されます。調整後の年金支給額=基本月額-(基本月額+総報酬月額相当額―48万円)÷2 3.公的年金以外の年金制度 老齢基礎年金・老齢厚生年金といった公的年金だけでは不安と感じる方や、さらに安定した老後生活を送りたいと考える方は、保険会社の個人年金保険に加入したり、確定拠出年金制度を利用したりする場合があります。 (1)個人年金保険個人年金保険は、自己負担で積み立てを行い、将来一定の年金を受け取ることができる制度です。払込期間や年金受給開始年齢などは契約時に決定します。個人年金保険料は所得控除の対象となり、税制上の優遇があります。 (2)確定拠出年金確定拠出年金制度は、個人型(iDeCo)と企業型が存在します。いずれも、自分で積立金額や投資先を選ぶことができ、運用成果によって将来受け取る年金額が決まります。個人型は自己負担で、企業型は事業主が積立てを行うか、または事業主と従業員が共同で積立てを行います。いずれのタイプも所得控除の対象となるため、税制上の優遇があります。 4.おわりに 年金制度は、高齢になり職場を退いた後でも安定した生活を維持し、安心して晩年を過ごすための重要な制度です。従業員が安心して働ける環境を目指すため、年金制度についての理解を深め、適切な情報提供や、制度設計の検討を行っていきましょう。 在留資格のオンライン手続き 2023年3月から在留申請のオンライン手続きの運用が改正され、実際に管轄の出入国在留管理局で行う窓口申請とオンラインシステムを利用するオンライン申請を選択できることとなりました。多くのクライアントが一日でも早く在留資格の取得を希望される中、オンライン申請の活用や現在の審査期間の状況をからめてリードタイムの観点からお知らせできればと思います。 オンライン申請の利点 オンライン申請の利点は何といっても時間と工数の短縮にあるのではないでしょうか。「技術・人文知識・国際業務」の在留期間更新許可申請を例にあげてみると、行政書士が取次ぎするケースにおいて窓口申請を選択した場合、在留カードやパスポートなどの原本書類のお預かり、それに伴う預かり証の発行、申請書(申請人作成用)への署名(提出の際はその原本)が必要とされ、これらの準備には通常2日から5日程度かかることからクライアント側、行政書士側双方に工数とそれに伴う時間がかかります。これに対してオンライン申請は基本的に上記の手続きを省略できますので、申請時には2日から5日の日数の削減となり、クライアントへの負担も減ります。また、オンライン申請導入前までは申請管轄が遠方の場合、管轄の出入国在留管理局へ出張しておりましたが、オンライン申請を活用すれば出張もなくなり、今まで出張費を負担していたクライアントはコストを抑えられ、また行政書士は工数を削減でき、双方にとってメリットがあると考えられます。 現在の審査期間の状況 弊社が主に申請をしている東京出入国在留管理局は申請件数が群ぬいて多い局です。弊社の実績によるとひところはカテゴリー1、2の企業であれば「技術・人文知識・国際業務」の在留資格認定証明書交付申請は3週間前後で完了していたところ、現在(2023年6月時点)はオンライン申請の場合8週間前後かかっているところです。そのため出入国在留管理局に結果が出ない審査の進捗をお伺いすることも多いのですが回答は「現在申請が非常に混みあっている」というものに徹しております。その中でも貴重な意見として「オンライン申請の方が窓口申請よりやや遅れがみられます」との回答もいただき、事実、窓口申請の方がやや審査期間は短いということも現在点では確認されております。しかしながら、オンライン申請は前述のように申請までのタイムを削減できるメリットもありますので、その辺を加味しながらどちらかを選択することとなります。また、在留資格認定証明書は電子化され、メールでの受領となりましたが、在留期間更新許可申請などは許可のメールを受領後、その原本を出入国在留管理局に送り郵送されてくるまでの時間もかかることに注意が必要です。 おわりに 入社のスケジュール管理は会社にとって非常に大きなものである一方、申請人である外国人にとっても審査がなかなかおりないことによる不安や内定の取消しにつながりかねません。この点、オンライン申請などのツールを選択でき、審査期間の現状を熟知してる行政書士に依頼することにより、入社のスケジュール調整や申請人に対する事前説明などの対策をすることが可能となり、「まだ審査がおりないのか」という焦りを削減するお手伝いをすることが可能です。
- [RSM汐留パートナーズ・ニュースレター 2023年8月号](https://shiodome.co.jp/news/17349/) - 特定譲渡制限付株式・最近の賃金水準の動向・在留資格のオンライン手続き 日頃よりお世話になっております。RSM汐留パートナーズです。 今月のニュースレターでは、税務より「特定譲渡制限付株式」、労務より「最近の賃金水準の動向について」、司法書士法人より「特例有限会社の株主に関する留意点」について取り上げます。 日本の役員に対する報酬は固定報酬の割合が高いですが、最近では特定譲渡制限付株式を付与する事例も増加しています。 特定譲渡制限付株式は、一定期間の譲渡制限が設けられる、役務提供の対価として交付されるといった要件を満たした株式のことです。インセンティブ報酬については今後も導入が増加していくものと思われますが、そのうちの一つの手段として注目されています。所得税、法人税それぞれの取扱いについても確認していますので、ご検討されている際には是非詳細をご確認ください。 特定譲渡制限付株式 日本では、欧米と比較して役員給与に占める固定報酬の割合が高く、業績向上のインセンティブや株主目線での経営が十分に期待できないと長らく指摘されてきました。そこで、2015年以降、会社法や税法の整理、コーポレートガバナンス改革等により、株式による報酬支給を可能とする仕組みが整備され、日本においても株式による報酬支給を導入する上場企業が増加しています。今回は株式報酬の一つである「特定譲渡制限付株式(Restricted Stock)」について見ていきたいと思います。 特定譲渡制限付株式とは 特定譲渡制限付株式とは、譲渡制限付株式のうち、以下の要件を満たすものをいいます。 所得税上の取扱い 特定譲渡制限付株式に係るその役員等における所得税の課税時期は、譲渡制限期間中の処分が制限され、法人による無償取得の可能性があることに鑑み、譲渡制限解除日とされています。この際、譲渡制限解除時の株価に基づき所得税が課されます。(法人税法上の損金算入額とは一致しないことが想定される)。また、譲渡制限が、交付された者の退職に基因して解除されたと認められる場合は、退職所得になるとされています。 法人税上の取扱い 役員等に給与等課税額が生ずることが確定した日(即ち、譲渡制限解除日)に、法人は役員等から役務提供を受けたものとして、当該役員給与が損金算入されることになります。役員給与は、「定期同額給与」、「事前確定届出給与」、「業績連動給与」のいずれかに該当する場合に損金算入されるため、特定譲渡制限付株式による給与が損金算入されるためには、以下のいずれかの方法による必要があります。 なお、損金算入額は、以下の通りです。 会計上の取扱いと税務調整 特定譲渡制限付株式交付後、現物出資された報酬債権相当額(無償発行の場合は、株式の公正な評価額)のうち、役員が提供する役務として当期に発生したと認められる額を、対象勤務期間(譲渡制限期間)を基礎とする方法等の合理的な方法で算定し、費用計上します。よって、上述した法人税上の損金算入時期と会計上の費用計上時期が異なるため、税務上申告調整が必要となります。 おわりに 株式報酬を含むインセンティブ報酬の導入は、今後も増加していくでしょう。制度設計や税務・会計処理等、ご不明点がございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせ下さい。 最近の賃金水準の動向 7月28日、厚生労働省の審議会が最低賃金引き上げの目安を決め、2023年度の最低賃金が全国平均1000円を超える見込みとなりました。今回は賃金水準の動向についてお伝えいたします。 1.毎月勤労統計調査(令和5年5月)の概要(カッコ内は前年同月比) 令和5年5月の現金給与総額は284,998円(2.9%増)、うち一般労働者が370,009円(3.5%増)、パートタイム労働者が102,233円(3.5%増)となりました。なお、一般労働者の所定内給与は323,051円(2.0%増)、パートタイム労働者の時間当たり給与は1,268円(2.4%増)でした。しかし、物価変動を加味した実質賃金は14か月連続のマイナスとなっています。物価上昇に賃上げが追い付いていない状況ですが、マイナス幅は縮小傾向にあります。 2.2023年度の最低賃金 厚生労働省の審議会は、2023年度の最低賃金について、全国平均1002円に引き上げる目安額を取りまとめました。今後、都道府県ごとに地域別の最低賃金について議論されることになります。 3.賃金水準の動向について 2022年頃から物価が高騰し、現在も物価上昇率は高止まりしています。これに伴って、賃金も上昇を続けており、2023年春闘での賃上げ率は平均3.58%と高い水準となりました。これよりは下がるとしても、2024年度も例年より高い水準の賃上げ率となると考えられます。最低賃金についても大幅な引き上げが続く可能性があります。 人件費の原資を確保するためにも、適切な価格転嫁の実現などが重要になります。 在留資格のオンライン手続き 特例有限会社(以下、単に「有限会社」といいます。)とは、2006年5月より前にあった有限会社であり、2006年5月以降株式会社として存続している法人をいいます。なお、有限会社は株式会社として存続はしていますが、その商号には「有限会社」という文字を用いなければなりませんので商号を見れば株式会社か有限会社か分かるようになっています。 有限会社は現在も日本に多く存在しておりますが、その株式を保有する人が高齢の方である場合、株式の生前贈与や相続による移転により株式の保有者が変わることもあるでしょう。有限会社は、株主総会の特別決議の要件につき株式会社と異なりますので、有限会社における株式の生前対策・相続対策を検討されている方はその点を理解しておかないと、想定と異なる結果が生じてしまう可能性があります。 株式会社の特別決議と有限会社の特別決議 株式会社及び有限会社は、株主総会の特別決議によって定款の変更・増資・事業譲渡の承認・解散・組織再編その他会社の重要な事項を決定することができるところ、この特別決議の要件が株式会社と有限会社では異なります。 株式会社の特別決議の要件は、定款に別段の定めがない限り、株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2以上に当たる多数をもって行います。そのため、議決権の3分の2以上を保有している株主が株主総会で多くのことを決められる仕組みとなっています。 一方で、有限会社の特別決議の要件は、定款に別段の定めがない限り、総株主の半数以上であって、当該株主の議決権の4分の3以上に当たる多数をもって行います。 特別決議のため必要となる議決権の割合が異なる点も重要ですが、有限会社の特別決議は「総株主の半数以上」の賛成が必要となる点に特に注意が必要です。 株式を複数名に譲渡する場合 有限会社の創業者Xが株式の100%を保有しているときに、これを後継者である長男Aに90%、有限会社の経営に一切関与しない長女Bと次女Cに生前贈与または相続させとします。Aが議決権の90%以上を保有していますので、Aだけで株主総会の特別決議を通せるように見えますが、有限会社の場合は総株主の半数以上の賛成が必要となりますので、BまたはCどちらかの賛成も毎回求められます。 また、長男Aに90%、長女Bに10%を渡したとしても、この状態であればAだけの賛成で特別決議を通せますが、Bに相続が発生しBの相続人DEが株主となった後は、上記と同様にBだけで特別決議を通すことができなくなり、DまたはEどちらかの賛成も毎回求められることになります。 なお、有限会社の特別決議の要件は、「総株主の半数以上」であって「議決権を有する株主の半数以上」ではないため、議決権に関する種類株式や属人的株式を導入したとしても、この点には注意が必要でしょう。 これが株式会社であれば、株主が何名いても議決権の90%を保有するAだけの賛成で特別決議を通せるので、大きな違いと言えるでしょう。 株式会社へ組織変更(商号変更)する 有限会社の特別決議には「総株主の半数以上」の賛成要件があるため、有限会社の株式を複数の人・法人に渡したり、相続させるときはその点を考慮しておかないと想定と異なる結果が生じてしまうかもしれません。そうであれば、株主が何名いたとしても原則として議決権の3分の2以上を保有している株主だけで特別決議を通すことができる株式会社に組織変更(商号変更)しておくと、株式に関する対策を取りやすくなるためよろしいかと思います。
- [RSM汐留パートナーズ・ニュースレター 2023年9月号](https://shiodome.co.jp/news/18025/) - 居住用の区分所有財産の評価・裁量労働時間制の改正について・外国人留学生の就職先拡大 日頃よりお世話になっております。RSM汐留パートナーズです。今月のニュースレターでは、税務より「居住用の区分所有財産の評価」、労務より「裁量労働時間制の改正」、行政書士法人より「外国人留学生の就職先拡大」について取り上げます。 厚生労働省は、8月2日に裁量労働制の改正に関する公表がありました。内容としては、企画業務型裁量労働時間制に加え、専門業務型裁量労働制についても、摘要について本人の同意が必要とされました。これに関連して、労使委員会の運営規程に追加すべき事項や、改正時期、労使協定・労使委員会で協議すべき内容についてもまとめていますので、裁量労働時間制を導入している・導入を検討している場合等には、是非ご参考ください。 居住用の区分所有財産の評価 国税庁は7月21日、マンションの相続税評価額の算定方法を新たに定める「『居住用の区分所有財産の評価について』の法令解釈通達(案)」の意見募集を開始しました。当該通達案は2024年1月1日以後の相続、贈与に適用される予定です。マンションについては、現行の通達評価額と市場売買価格との乖離が大きく、相続税の節税対策として利用する事例が増え、問題視されていました。令和5年度税制改正大綱においても、評価方法の適正化を検討する旨が明示され、その後3回に渡る有識者会議を経て、通達案の公表に至りました。今回は、通達案による新たな評価額算定方法、影響について見ていきたいと思います。 通達案における評価額算定方法と影響 現行のマンション一室の相続税評価額は、①建物部分と②敷地部分に分けて計算されています。通達案による評価では、①と②各々に「補正率」を乗じることで、現行の評価額と市場価格が著しく乖離している場合に調整が行われる形となっています(以下参照)。 マンション一室の相続税評価額 「補正率」は「評価水準(1÷評価乖離率)」により、異なります。「評価乖離率」とは、次の算式により求めた値をいいます(居住用の区分所有財産の評価について(案)別紙2参照)。 評価乖離率=A+B+C+D+3.220上記算式中の「A」、「B」、「C」及び「D」は、それぞれ次による。「A」=当該一棟の区分所有建物の築年数×△0.033「B」=当該一棟の区分所有建物の総階数指数×0.239(小数点以下第4位を切り捨てる。)「C」=当該一室の区分所有権等に係る専有部分の所在階×0.018「D」=当該一室の区分所有権等に係る敷地持分狭小度×△1.195(小数点以下第4位を切り上げる。) 評価乖離率の計算には、市場価格と現行の相続税評価額の乖離の主な要因と言われる「築年数」、「総階数」、「所在階」、「敷地持分狭小度」の4つの指標が組み込まれており、築年数が浅い場合、高層なマンションである場合、所有階が高層である場合、敷地持分狭小度が小さい場合には評価乖離率は大きくなります。 評価水準に従って適用される補正率と相続評価額への影響をまとめると以下の通りです。 相続税評価額が市場価格よりも小さい場合においても、市場価格の60%未満の場合を調整対象としています。即ち、市場価格の60%に満たない評価額は60%に達するまで補正する計算になります。これは戸建住宅の市場価格に対する相続税評価額の平均が60%である現状を踏まえ、戸建とマンションのバランスを取る目的によるものといえます。 おわりに 今回の通達案により、特にタワーマンションに対しては、相続税等が大幅に増加することが予想されています。上述通り、評価乖離率には複雑な計算を要するため、国税庁から計算ツールが提供される見込みではあるものの、早急に影響額を把握したい方も多いと思われます。ご不明点等ございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせ下さい。 裁量労働時間制の改正について 8月2日、厚生労働省から「労働基準法施行規則及び労働時間等の設定の改善に関する特別措置法施行規則の一部を改正する省令等の施行等について(裁量労働制等)」とこれに関わる裁量労働制のQ&Aが公表されました。 概要 今回の改正では、専門業務型裁量労働制について本人同意が必要となり、同意の撤回についても定めることが必要となりました。また、企画業務型裁量労働時間制の労使委員会の運営規程や決議事項についての追加がありました。 本人同意・同意撤回 今回の改正により、企画業務型裁量労働時間制のみならず、専門業務型裁量労働制においても本人の同意が必要となります。同意をしなかった場合に不利益な取扱いをすることは禁止されます。また、同意の撤回の手続と、同意とその撤回に関する記録を保存することも必要です。これらについて労使協定や労使委員会の決議に定めておく必要があります。 労使委員会の運営規程への追加 企画業務型裁量労働時間制の労使委員会の運営規程に、以下の事項を追加する必要があります。 労使委員会に賃金・評価制度を説明すること 労使委員会は制度の実施状況の把握と運用改善を行うこと 労使委員会は6か月以内ごとに1回開催すること 時期について 上記は令和6年4月1日から施行されます。したがって令和6年3月末までには、上記について対応、労働基準監督署に協定届・決議届の届出を行う必要があります。 令和6年4月1日から労使協定や労使委員会で決議するべき内容 労使協定や労使委員会の決議で定めるべき事項は以下の通りとなります(下線部分が今回の制度改正による追加事項です)。 おわりに 今回の制度改正については、裁量労働制を導入しているすべての事業場で、令和6年3月末までに対応が必要となります。届出漏れがないようご注意ください。詳細については、厚生労働省の下記Webページをご確認ください。 裁量労働制の概要 |厚生労働省 (mhlw.go.jp) 外国人留学生の就職先拡大 2023年5月に一部報道で「専門学校卒の外国人留学生、就職先拡大「専攻に限定」秋にも緩和」との記事が出ました。外国人留学生を採用する企業、外国人留学生共に喜ばしい報道ですが現行のルールや緩和によりどのようになるのかを今回はみていきたいと思います。 専攻した科目と業務との関連性 現行のルールから見ていきましょう。例えば就労系の在留資格の代表格である「技術・人文知識・国際業務」において、日本で就労する外国人に求められる学歴要件の一部として大雑把に大学(学位取得)や日本の専門学校(専門士取得)の卒業を求められます。双方ともに学校において専攻した科目と日本で従事しようとする業務との関連性を求められます。一例をあげると大学でコンピューター工学を学んだ人が就職先においてプログラマーとなることです。しかしながら大学においては業務との関連性において「大学は学術の中心として、広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的及び応用能力を展開させることを目的とし、また、その目的を実現するための教育研究を行い、その成果を広く社会に提供することにより、社会の発展に寄与するとされており(学校教育法第83条第1項、第2項)、このような教育機関としての大学の性格を踏まえ、大学における専攻科目と従事しようとする業務の関連性については、従来より柔軟に判断しています(海外の大学についてもこれに準じた判断をしています。)」(出入国在留管理庁 『「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の明確化について』にあるように柔軟に判断されます。また高等専門学校においても大学に準じた判断をしております。 一方、専門学校では先行した科目と業務との関連性についてはこのような取扱いはなく、相当程度の関連性が必要とされております。ただし、関連性が認められた業務に3年程度従事した者については、その後従事しようとする業務との関連性については、柔軟に判断されます。 緩和によりどのような事が予想されるか 今までは相当程度の関連性を求められることから専門学校卒の外国人は日本で就職を希望する場合には就職先が硬直化されておりましたが、規制緩和により弾力性が生まれ、日本で就職を希望する方が一定数以上増えると思います。また人手不足が慢性化している日本社会において外国人採用を考えている企業は専門学校の卒業生もターゲットに入ってくることとなります。 おわりに 「従事する業務との関連性」という言葉を初めて聞いた方もいらっしゃると思います。単に大学を卒業していればよいという事でもなく、このようなルールがあるのです。この他、現場研修の可否など「技術・人文知識・国際業務」等の在留資格には注意しなければならない事項があります。何か気になることがあれば、些細な事でも構いませんのでご連絡いただければ幸いです。
- [RSM汐留パートナーズ・ニュースレター 2023年10月号](https://shiodome.co.jp/news/18886/) - インボイス制度のポイント・2023年10月以降の最低賃金・株主総会決議の要件と定款の定め 日頃よりお世話になっております。RSM汐留パートナーズです。今月のニュースレターでは、税務より「インボイス制度のポイント」、労務より「2023年10月以降の最低賃金」、司法書士法人より「株主総会決議の要件と定款の定め」について取り上げます。 税務では、10月1日より開始されるインボイス制度についてまとめています。社内フローや請求書のフォーマット、経過措置適用時の影響など、検討すべき事項や取引先とコミュニケーションを取るべき事項が多く、各社、対応に苦慮しているかと思います。今回、改めて主要なポイントをまとめております。また、労務にて取り上げる2023年の最低賃金についても、政府の示した目標も含めてまとめております。多くの企業に関係するものですので、今回のニュースレターを是非お役立てください。 インボイス制度のポイント 2023年10月1日より、インボイス制度が開始されました。今回はインボイス制度のポイントを改めて整理すると共に、令和5年度税制改正に伴う見直しや仕入税額控除の経過措置等、実務上影響が大きいと思われる点を再確認していきたいと思います。 インボイス制度のポイント 「インボイス(適格請求書)」とは、売手が買手に対して、正確な適用税率や消費税額等を伝えるための書類であり、従来の請求書である「区分記載請求書」に「登録番号」「適用税率」「消費税額等」の記載を追加したものをいいます。インボイス制度では、税務署長に申請して登録を受けた課税事業者である「適格請求書発行事業者」が交付するインボイス等の保存が仕入税額控除の要件となります。 令和5年度税制改正での見直し ①納税額を売上税額の2割に軽減免税事業者がインボイス発行事業者になった場合の納税額を、売上に係る消費税額の2割に軽減する措置が、2023年10月1日から2026年9月30日の3年間講ぜられます。 ②少額取引のインボイス保存不要基準期間における課税売上高が1億円以下又は特定期間における課税売上高が5,000万円以下の事業者は、2023年10月1日から2029年9月30日までの課税仕入で税込価額が1万円未満の取引について、インボイスの保存を不要とし、一定の事項が記載された帳簿のみの保存による仕入税額控除が認められます。 ③少額値引等の返還インボイスの交付免除インボイス発行事業者が、返品や値引き、割戻しなどの売上対価の返還等を行った場合には返還インボイスの交付義務がありますが、金額が税込1万円未満の場合には、交付義務が免除されます。 ④登録制度の見直しと手続の柔軟化2023年10月2日以降に登録を受ける場合、申請書提出日から15日を経過する日以降の日を登録希望日として記載することで、登録通知が登録希望日までに届かなくとも、登録希望日から登録を受けたものとされます。 仕入税額控除の経過措置 免税事業者を含む適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入については、原則として仕入税額控除を受けることができませんが、区分記載請求書等と同様の事項が記載された請求書等及びこの経過措置の規定の適用を受ける旨を記載した帳簿を保存している場合には、一定の期間は仕入税額相当額の一定の割合を仕入税額として控除できる経過措置が設けられています(下表参照)。 おわりに インボイス制度は全ての事業者に影響がある制度です。実際の業務が進む中で、気づきや疑問点が生じることもあるかもしれません。ご不明点等ございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせ下さい。 2023年10月以降の最低賃金 2023年度の最低賃金が決定しました。全国加重平均額は1,004円、昨年度からの引上げ率は4.5%、引き上げ額は43円で、過去最大の引き上げ額となっています。 1.各都道府県の最低賃金について 各都道府県で適用される最低賃金額については、厚生労働省のWebサイトで確認することができます。 地域別最低賃金の全国一覧 |厚生労働省 (mhlw.go.jp) 2.最低賃金のチェック方法 (1)時給制の場合時給制の場合は、時給額が最低賃金以上である必要があります。 (2)月給制の場合月給制の場合は、「最低賃金の対象となる賃金月額」を「月平均の所定労働時間数」で割ったものが最低賃金以上である必要があります。月平均の所定労働時間数は、「1日の所定労働時間数×年間総労働日数÷12か月」で求めることができます。また、最低賃金の対象となる賃金とは、実際に支払われる賃金から次の賃金を除外したものをいいます。 臨時に支払われる賃金(結婚手当など) 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など) 所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃金など) 所定労働日以外の日の労働に対して支払われる賃金(休日割増賃金など) 午後10時から午前5時までの労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分(深夜割増賃金など) 精皆勤手当、通勤手当及び家族手当 3.今後の動向 政府は、2030年代半ばまでに最低賃金を1,500円に引き上げることを目標とすることを表明しました。これが実現されるかは分かりませんが、現在も物価高騰が続いており、来年以降も最低賃金の大幅な引き上げが続いていく可能性があります。 4.助成金等 最低賃金引上げに向けた支援事業として、専門家による相談等支援事業や、業務改善助成金などの助成金事業が用意されています。詳細については厚生労働省のWebサイトをご覧ください。 最低賃金引上げに向けた中小企業・小規模事業者への支援事業 |厚生労働省 (mhlw.go.jp) 株主総会決議の要件と定款の定め 株式会社において、計算書類の承認、剰余金の配当、定款の変更、役員の選任・解任、募集株式・募集新株予約権の発行、組織再編行為、解散等、多くの重要な事項は株主総会の決議によって定めます。これらの決議の多くは普通決議または特別決議をもって承認されるところ、決議要件は定款に定めることにより一定数まで加重または軽減することができます。各社の状況に応じて当該定款の定めがされているか、されている場合はそれが適切かどうかこの機会にご確認いただけますと幸いです。 議決権を行使できない株主 株主総会の決議は議決権を行使できる株主及びその議決権数がポイントになるところ、特別利害関係人、無議決権株式、相互保有株式、単元未満株式、自己株式等は議決権を行使することができません。特別利害関係人が議決権を行使できないケースは、会社法第140条3項、同法第160条4項、同法第175条2項に該当する場合です。 普通決議 株主総会の普通決議は、定款に別段の定めがある場合を除き、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行います。多くのケースでは、この定足数を定款で排除しているように見受けられます。定足数を排除しておけば一定の株主が欠席したとしても株主総会の開催ができるようになる一方で、議決権の過半数を有する株主が関与しなくても普通決議が通ってしまう仕組みがある状況とはなります。 一例として、株式会社Xの株主がA(65%)B(35%)で取締役がBのとき、Aが招集通知に気付かず株主総会が開催されてしまうとBの賛成のみで決議が通すことができてしまいます。このような持株比率でAの了承を得ずに決議を進めることは稀かと思いますが、仕組みとしてそれを回避するのであれば、定足数を排除しないでおくことが考えられます。 特別決議 株主総会の特別決議は、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(下限は3分の1以上まで変更可)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2(これを上回る上限の設定可)以上に当たる多数をもって行います。特別決議においても、定足数を3分の1まで下げている定款をよく見かけるところ、定足数を3分の1まで下げると前述の株式会社Ⅹにおいて、普通決議と同様にBだけで特別決議を通せてしまう可能性が生じる仕組みとなっています。これを避けるためには定足数を下げずに過半数としておくことが考えられます。 また、特別決議では一定の数以上の株主の賛成を要する旨を定款で定めることができますので、株主が4名いるときに、特別決議の要件として議決権要件に加えて株主3名以上の賛成が必要等とすることもできます。ただし、機動性や柔軟性等の観点から、あまり複雑にしない方が運営はしやすいと思います。 特定の株主の承認を必須とする場合 特定の株主の承認がなければ株主総会の決議を通せないようにするためには、拒否権付株式(会社法第108条1項8号)や属人的株式で議決権比率を一定数まで高めておく、あるいは株主間契約で定めておく等の方法があります。前述の株式会社Ⅹにおいては定足数を過半数にしておけば(定款で軽減しなければ)株主Aの承認は必須となりますが、各社の状況に応じて適切な設計をされることをお勧めいたします。
- [RSM汐留パートナーズ・ニュースレター 2023年11月号](https://shiodome.co.jp/news/19318/) - J-CAP制度の概要・年収の壁問題への対応・在留期間更新許可申請に係る留意点 日頃よりお世話になっております。RSM汐留パートナーズです。今月のニュースレターでは、税務より「J-CAP制度の概要」、労務より「年収の壁問題への対応」、行政書士法人より「在留期間更新許可申請に係る留意点」について取り上げます。 労務からお伝えする年収の壁問題は、いわゆる「106万円の壁」と「130万円の壁」についての論点です。諸要件はコラム本文をご覧頂ければと存じますが、この壁を超えると社会保険への加入が必要になり、被扶養者から外れてしまいます。結果、手取り収入が減少するため、労働時間調整がなされたり、時給を上げるとかえって労働者が減ったりと、人手不足の遠因として問題になっています。今月のコラムでは、年収の壁問題の概要と、対策として、厚生労働省が打ち出した対応・支援強化パッケージについてまとめています。多くの企業に関係するものですので、今回のニュースレターを是非お役立てください。 J-CAP制度の概要 東京国税局は、2023年10月より、税務に関するコーポレートガバナンス(税務CG *1)の充実に向けた取組の一環として、「新規性の高い形態の取引等に関する個別確認プログラム(J-CAP制度(Compliance Assurance Program of Japan))」を開始しました。今回はJ-CAP制度の導入背景、概要、及び期待される効果について見ていきたいと思います。 *1 税務CGとは、税務について経営責任者等が自ら適正申告の確保に積極的に関与し、必要な内部統制を整備すること J-CAP制度の導入背景 従前より、大企業においては、税務CGの取組を行ってきたこと等もあり、税務に関する企業内のガバナンスを向上させるなど、自発的なコンプライアンスが維持・向上してきています。一方で、こうした大企業では、変化を続けるグローバルなビジネス環境の中で、新規性の高い形態の取引(例えば、日本と馴染みのない新興国・途上国等への進出、技術革新等により生まれた新規事業への参入、法改正や規制強化等により生じる新規取引や商流変更、ビジネスリストラクチャリング等)を行うことが多くなっています。 こうした取引において、税法の適用関係が必ずしも明確になっていないこと等もあり、税務リスク(税務調査で指摘を受ける等の可能性)を国税当局の関与なしで事前に排除・低下させていくことは、税務コンプライアンスが高い法人であっても、難しい場合があると考えられます。それゆえ、このような取引に関する税務リスク低減のための取組として、J-CAP制度が試行されることとなりました。 J-CAP制度の概要 J-CAP制度の概要は、以下の通りです。 期待される効果 J-CAP制度に期待される効果は、企業側と国税当局側の双方にあるといえます。企業側においては、J-CAP制度の導入背景にも述べた通り、税務CGの充実を図り、新規性の高い形態の取引における税務リスクを低減させることが期待されます。また、国税当局側においては、より調査必要度の高い法人に対し、調査事務量を配分することが可能となるといった効果が期待されます。 おわりに 今回取り上げたJ-CAP制度は一部の大企業向けの取組といえますが、税務CGの充実を図ることは、全ての企業にとって税務リスクを低減することに繋がります。税務CGへの取組等に関して、ご相談等ございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせ下さい。 年収の壁問題への対応 労働者が社会保険料の発生に伴う手取り収入減少を避けるため、労働時間を減らすなどの調整を行うことがあり、いわゆる「年収の壁」として問題となっております。これに対応するため、厚生労働省は「年収の壁・支援強化パッケージ」(年収の壁・支援強化パッケージ|厚生労働省 (mhlw.go.jp))を発表しました。 1.「年収の壁」問題の概要 社会保険に関しては「106万円の壁」と「130万円の壁」が問題となっています。 (1)106万円の壁106万円の壁とは、短時間労働者に対する社会保険制度の適用拡大により生まれたものです。現在、以下の条件を満たす短時間労働者は社会保険への加入が必要となり、社会保険料負担が発生します。 1週間の所定労働時間が20時間以上 雇用期間が継続して2ヵ月を超えて見込まれる 賃金の月額が8.8万円以上 学生ではない(夜間の学生などは対象) 被保険者の総数が企業規模で常時101人以上※の特定適用事業所に勤務(または任意特定適用事業所に勤務)※令和6年10月からは51人以上 月額8.8万円×12か月が105.6万円になるため、106万円の壁と言われています。 (2)130万円の壁130万円の壁とは、社会保険の被扶養者となる要件に係るものです。年収130万円を超えて働く場合は被扶養者となることはできず、国民健康保険や国民年金への加入などが必要となり、社会保険料の負担が発生します。 2.「106万円の壁」への対応 (1)キャリアアップ助成金の新コース(社会保険適用時処遇改善コース)の新設短時間労働者が新たに被保険者となる際に、労働者の収入を増加させる取組みを行った事業主に対して、一定期間の助成(労働者1人当たり最大50万円)を行うための助成金制度が創設されました。助成の対象となる取組みは、賃上げや所定労働時間の延長のほか、保険料負担に伴う手取り収入の減少分に相当する手当(社会保険適用促進手当)の支給も含まれます。詳細については、下記Webページをご覧ください。 キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)|厚生労働省 (mhlw.go.jp) (2)社会保険適用促進手当の標準報酬算定からの除外事業主は、新たに社会保険の被保険者となる労働者に対し、社会保険料負担を軽減するために「社会保険適用促進手当」を支給することができます。標準報酬月額が10.4万円以下の者に対する社会保険適用促進手当については、労働者負担分の保険料相当額を上限として、最大2年間、標準報酬月額・標準賞与額の算定には含まれないものとされています。 3.「130万円の壁」への対応 直近の年間収入が、被扶養者の認定の要件である130万円を超える見込みとなった場合であっても、過去の課税証明書、給与明細書、雇用契約書等に加えて、人手不足による労働時間延長等に伴う一時的な収入変動である旨の事業主の証明を添付することで、直ちに被扶養者認定を取り消されることはなく、総合的に将来収入の見込み額から判断し、迅速な認定を受けることができるようになりました。一時的な収入変動により年間130万円を超える見込みとなった場合のものであって、恒常的な収入増加については適用できませんのでご注意ください。 4.配偶者手当への対応 配偶者の収入増加により配偶者手当が支給されなくなることを避けるために就業調整をする場合があります。これに対応するため、厚生労働省は配偶者手当の見直しのためのフローチャートの作成や、各地域でのセミナー開催を予定しています。 在留期間更新許可申請に係る留意点 過日、東京出入国在留管理局で在留期間更新許可申請をした際に窓口カウンターで配布された書類がありました。1つは銀行口座についての注意点。また窓口申請をした際に申請受付票の裏面の注意書きが変更されており、マイナンバーに関する事項が追加されていました。今回はこの2点について注意喚起をさせて頂ければと存じます。 銀行口座について 配布された書類には「銀行口座(キャッシ ュカード・通帳)を他の人にあげたり売ったりすることは犯罪です。絶対にしないでください。」という注意喚起と共に赤枠で「住所、在留期限や在留資格、仕事先などの情報に変更があった場合は、口座を作った銀行にすぐに連絡してください。」と日本語の他、複数の言語で記載がありました。 銀行に連絡しなかった場合、具体的にはど のような問題が生じるのでしょうか。実例としては在留期間更新許可申請中、特例期間に入った場合にこれを届出しなかったためサービスの全部又は一部が停止され、給与の支払いに支障が出たケースがあります。 特例期間とは例をあげて簡潔に説明すると在留期限満了日前に在留期間更新許可申請をした場合、在留期間満了日を経過してもなお、審査が終了しない場合は在留期間満了日から2カ月間は適法に在留することができるとい うものです。 マイナンバーカードについて 申請受付票の裏面にはマイナンバーカードを持っている方むけに注意書きが追加されていました。「マイナンバーカードは有効期限が切れた時に失効します。再びマイナンバーカードが必要な方は、有料再交付(1,000円)となります。マイナンバーカードの有効期限が経過するまでに、お住いの市区町村の窓口で手続きを行ってください。」とあり、詳細を記載した出入国在留管理庁のHPのQRコー ドが記載されています。こちらも特例期間に入った場合は市区町村役場へ別途手続きが必 要なようです。詳細はご自身の住所地を管轄する市区町村役場で確認してください。特例期間に入った届出を怠り、再交付となった場合は別途1,000円の手数料が発生する恐れが あります。
- [RSM汐留パートナーズ・ニュースレター 2023年12月号](https://shiodome.co.jp/news/19634/) - 電子取引のデータ保存義務化・裁量労働制への改正対応・株主総会におけるみなし決議 日頃よりお世話になっております。RSM汐留パートナーズです。今年最後となるニュースレターでは、税務より「電子取引のデータ保存義務化」、労務より「裁量労働制への改正対応」、司法書士法人より「株主総会におけるみなし決議」について取り上げます。 税務にて取り扱う電子取引のデータ保存義務化については、電子帳簿保存法に絡み、宥恕措置によって延期されてきた義務化がついに実施されるというものです。今や電子取引に該当する取引を全く行っていない企業は少ないかと思いますので、改めて要件や社内の対応状況について確認する必要があるでしょう。 また労務で取り上げる裁量労働制に関する論点も、裁量労働制を導入している企業については、必ず対応しなければならない事項がございますので、本ニュースレターをご参照ください。 いずれの論点も、多くの会社に関係する論点となっておりますので、是非ご確認ください。 本年も一か月を切りました。皆さまにおかれましては、本年も格別のご高配を賜り、RSM汐留パートナーズ一同、心よりお礼申し上げます。ご多忙の中かと存じますが、ご自愛をお忘れなく、よいお年をお迎えください。 電子取引のデータ保存義務化 2024年1月より、電子帳簿保存法における電子取引のデータ保存の義務化が全面的にスタートします。正確には電子データをプリントアウトして紙面にて保存することを認めていた2年間の宥恕期間が2023年12月をもって終了します。今回は電子帳簿保存法について、2024年1月から変更となる点や必要な対応について、今一度見ていきたいと思います。 電子帳簿保存法の概要 電子帳簿等保存法とは、税法上原則紙での保存が義務づけられている国税関係帳簿や、決算関係書類や領収書・請求書などの国税関係書類ついて、一定の要件を満たした上で電子データによる保存を可能とすること及び電子取引情報の保存義務等を定めた法律です。 電子帳簿保存法上、電子データでの保存は以下の3種類に区分されています。 2023年税制改正(2024年1月以降適用) 「優良な電子帳簿に係る過少申告加算税の軽減措置」の対象帳簿の範囲が合理化、明確化されました。 スキャナ保存制度の要件が緩和され、解像度・階調・大きさに関する情報の保存や入力者等情報の確認要件が不要となり、帳簿との相互関連性の確保が必要な書類が「重要書類(契約書・領収書・送り状・納品書等のように、資金や物の流れに直結・連動する書類)」に限定されることとなりました。 電子取引のデータ保存については、システム対応が間に合わなかったことにつき相当の理由がある事業者等に対する新たな猶予措置を講じ、a)取引年月日その他の日付、b)取引金額、c)取引先にてデータ検索を可能とする「検索機能の確保」について、税務職員の質問検査権に基づくダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合は、2課税年度前の売上高が5,000万円以下の対象者、又は電子取引のデータを出力し取引年月日等及び取引先ごとに整理して保存している場合は不要とされました。 電子取引に関して必要な具体的な対応 2024年1月以降は、電子取引に関しては、原則として以下のいずれかの対応が必要となります(重複対応可)。 書類の発行者にタイムスタンプを付与してもらう(発行側) 規則期間(最長2ヵ月+7営業日以内)にタイムスタンプの付与を行う(受領側) データの訂正・削除の履歴が残る又は訂正・削除が不能なシステムで保管する 訂正削除防止のための事務処理規程を策定し、業務運用を行う おわりに デジタル化が進む経済社会において、電子データによる必要書類の保存は、アクセスと検索の容易さ、保存スペースの削減、データの整合性確保とセキュリティ強化など、様々な面でメリットをもたらします。また10月より開始されたインボイス制度におけるインボイス保存の場面でも電子データでの保存は役立ちます。電子化への対応が難しい場合や各種ご相談等ございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせ下さい。 裁量労働制への改正対応 令和6年4月から裁量労働制の省令・告示の改正があります。継続して裁量労働制を適用していくためには、令和6年3月末までに、改正に対応した労使協定等の締結と、労働基準監督署への届出が必要となります。 対応が必要なこと 専門業務型・企画業務型のいずれにおいても、新たな労使協定、労使委員会の決議、労使委員会の運営規程の改定などが必要になります。 ①労働者の同意を得る、同意の撤回の手続きを定める 本人同意を得ることや、同意を得なかった場合に不利益取扱いをしないことを労使協定に定める(専門業務型裁量労働制) 同意の撤回の手続と、同意とその撤回に関する記録を保存することを労使協定・労使委員会の決議に定める(専門業務型裁量労働制・企画業務型裁量労働制)労使委員会に賃金・評価制度を説明する(企画業務型裁量労働制) ②労使委員会は制度の実施状況の把握と運用改善を行う(企画業務型裁量労働制) ③労使委員会は6ヶ月以内ごとに1回開催する(企画業務型裁量労働制) ④定期報告の頻度は、初回は6カ月以内に1回、その後1年以内ごとに1回(企画業務型裁量労働制) また、労働基準監督署への届出も必要です。改正に伴って様式が変わっていますので、ご注意ください。制度の具体的な内容や、新しい様式については、下記ページのパンフレットをご参考にしてください。 裁量労働制の概要 |厚生労働省 (mhlw.go.jp) 労使協定や労使委員会の決議で定めるべき事項 労使協定や労使委員会の決議で定めるべき事項は以下の通りとなります(下線部分が今回の制度改正による追加事項です)。 おわりに 今回の改正については、対象労働者からの同意取得など、対応にそれなりの時間を要します。3月末までに対応を完了させる必要がありますので、早めに労使協定等の改定や労働者からの同意取得等に着手するようにしましょう。 株主総会におけるみなし決議 株式会社において、株主総会は会社法に規定する事項及び株式会社の組織、運営、管理その他株式会社に関する一切の事項(取締役会設置会社においては、株主総会は会社法に規定する事項及び定款で定めた事項)について決議をすることができます。株主総会は株主へ招集通知を発し、会議体として開催して決議を行う方法の他に、議決権を行使することができる株主(以下単に「株主」といいます)の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をすることにより、当該議案を可決する旨の株主総会の決議があったものとみなすことができます(以下「みなし決議」といいます)。 株主全員の同意が得られる場合に有用 株主が少数である株式会社において、全員の同意が得られることが予め分かっているような状況においては、みなし決議は株主総会の手間を大きく減らすことができるので有用です。一方で、1名でも反対する株主や連絡の取れない株主がいるとみなし決議を利用することはできません。 定款の定めは不要 定款にみなし決議を行うことができる旨の定めがなくても、みなし決議を行うことができます。 取締役会の決議(取締役の決定) 株主総会を招集するときは、取締役は株主総会の日時・場所・目的である事項等を定める必要があります。みなし決議を行う場合、「株主総会を招集するとき」に該当はしませんが、取締役会の決議(取締役の決定)によって提案すること及びその提案内容を承認しているケースが多いでしょうか。 株主による提案も可能 取締役だけではなく、株主によるみなし決議に関する提案も可能です。取締役の関与を経ずに株主だけでみなし決議を行うことができるため、取締役と連絡が取れなくなったようなケースでは特に有用です。 通知から同意までの期間の定めはない 株主総会を開催する場合、招集を発してから開催するまでの期間が会社法で定められています。一方で、みなし決議にはそのような期間がないため、提案日=同意日=みなし決議日とすることも可能です。 書面又は電磁的記録による同意 みなし決議に関する株主の同意は口頭によるものでは足りず、書面又は電磁的記録による同意が必要です。
- [RSM汐留パートナーズ・ニュースレター 2024年1月号](https://shiodome.co.jp/news/20378/) - 2024年度税制改正大綱・対応が必要となる法改正・外国人留学生の新卒採用手続き あけましておめでとうございます。RSM汐留パートナーズです。昨年は格別のご厚情を賜り、厚くお礼申し上げます。本年も変わらぬご支援を賜れますよう、弊社一同一層精進をしてまいります。 さて、今年最初のニュースレターでは、税務より「2024年度税制改正大綱」、労務より「対応が必要となる法改正」、行政書士法人より「外国人留学生の新卒採用手続き」について取り上げます。 毎年のトピックとなる税制改正大綱においては、新たに「戦略分野投資促進税制」と「イノベーションボックス税制」が創設されました。いずれも特定の領域への投資や開発を後押しする税制で、日本の競争力に関わる項目への支援が行われる格好です。昨年度までの税制改正から継続のものと合わせ、2か月に分けてお伝えいたします。社会保険労務士法人、行政書士法人で取り上げる論点についても、関係する企業様は少なくないかと思いますので、是非本ニュースレターをご活用ください。 改めまして、本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。 2024年度税制改正大綱 2023年12月14日、2024年度税制改正大綱が公表されました。今回から2回に渡り、その中で注目度が高い論点を取り上げます。今回は法人に関わる注目論点を見ていきます。 賃上げ促進税制の強化 ① 大企業原則の税額控除率を15%から10%に引き下げる一方、継続雇用者給与等支給額の増加割合に応じた税額控除率を最大30%から35%に拡大し、教育訓練費に係る上乗せ要件の緩和や女性活躍・子育て支援に係る上乗せ措置が追加されます。また、青色申告法人で常時使用従業員数2,000人以下の法人を中堅企業と位置づけ、より高い控除率を設定し、マルチステークホルダー方針の公表に係る提出義務者の範囲等が見直されます。適用期限は3年延長されます。 ② 中小企業給与等支給額の増加割合に応じた税額控除の上乗せ要件等については変更はないものの、教育訓練費に係る上乗せ要件緩和や女性活躍・子育て支援に係る上乗せ措置が追加され、最大控除率が40%から45%に引き上げられます。また控除限度超過額は5年間繰越しが可能となります。適用期限は3年延長されます。 戦略分野投資促進税制の創設 国として戦略的な長期投資が不可欠となる分野(電気自動車(蓄電池)、半導体、グリーンスチール、グリーンケミカル、SAF)に対して、生産・販売量に応じて減税を行う戦略分野国内生産促進税制が創設されます。青色申告法人で、改正産業競争力強化法の施行日から2027年3月31日までに産業競争力強化法の認定を受けた認定事業適応事業者が、産業競争力基盤強化商品の生産設備の新設等を行った場合に、認定日以後10年以内の日を含む各事業年度において、販売されたものの数量等に応じた金額と産業競争力基盤強化商品生産用資産の取得価額を基礎とした金額のいずれか少ない金額の税額控除ができます。控除上限は、DX投資促進税制・カーボンニュートラル投資促進税制の税額控除との合計額で、法人税額の40%(半導体は20%)とし、控除限度超過額は4年間(半導体は3年間)繰越可能となります。 イノベーションボックス税制の創設 青色申告法人が、国内で自ら研究開発を行った特許権やAI分野のソフトウェアに係る著作権について、2025年4月1日から2032年3月31日の間に行った特許権譲渡等取引に係る所得(当該所得に一定割合を乗じた金額と当期所得金額のいずれか少ない金額)の30%を損金算入できることとなります。 外形標準課税の対象法人の見直し ① 減資への対応前事業年度に外形標準課税対象法人であり、当事業年度に資本金1億円以下になった場合でも、資本金と資本剰余金の合計額が10億円を超える場合には、外形標準課税の対象とされます。適用時期は2025年4月1日以後開始する事業年度からとなります。 ② 100%子法人等への対応資本金と資本剰余金の合計額が50億円超の法人等の100%子法人等のうち、資本金1億円以下であっても、資本金と資本剰余金の合計額が2億円を超える法人は、外形標準課税の対象とされます。適用時期は2026年4月1日以後開始する事業年度からとなります。 おわりに 法人に関わる注目論点としては、その他、交際費の損金不算入制度の適用除外措置の拡充、中小企業事業再編投資損失準備金制度の拡充等も挙げられます。今回個別に取り上げなかった論点を含め、ご不明点等ございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせ下さい。 対応が必要となる法改正 令和6年には法改正により新たな対応が必要になるものや、これまでの対応を見直さなければならないものがあります。今回は令和6年に予定されている主な法改正についてご案内します。 法改正のスケジュール 今年予定されている主な法改正は以下の通りです。 労働条件明示のルール変更 法律により明示が義務付けられている労働条件について改正があります。令和6年4月1日からは法改正に対応した労働条件通知書や雇用契約書を用いる必要がありますので、3月までに準備をしておきましょう。 詳細については、下記ページをご覧ください。2024年4月から労働条件明示のルールが変わります ー 厚生労働省|厚生労働省 (mhlw.go.jp) 時間外労働の上限規制の適用猶予終了 働き方改革の一環として、労働基準法に時間外労働の上限が規定されました。平成31年4月から適用されていましたが、一部の事業・業務については、適用が5年間猶予されていました。令和6年4月からは適用猶予が終了し、他の企業と同様の規制が適用されることになります。適用が猶予されていた事業・業務については以下の通りです。 工作物の建設の事業 自転車運転の業務 医業に従事する医師 鹿児島県及び沖縄県における砂糖を製造する事業 短時間労働者に対する社会保険の適用拡大 現在、社会保険の被保険者数が101人以上の企業等については、週20時間以上働く短時間労働者についても社会保険の加入対象となっています。令和6年10月からは被保険者数が51人以上の企業等にまで適用が拡大されますので、該当する場合には対応が必要となります。なお、被保険者数が51人以上の企業等というのは、「1年のうち6月以上、適用事業の被保険者の総数(適用拡大により加入対象となる短時間労働者は含まない)が51以上になることが見込まれる企業等のことをいいます。 加入対象となる短時間労働者の要件は以下の通りです。 週の所定労働時間が20時間以上 所定内賃金が月額8.8万円以上 2か月を超える雇用の見込みがある 学生ではない 詳細については、下記ページをご覧ください。短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大のご案内|日本年金機構 (nenkin.go.jp) 外国人留学生の新卒採用手続き 今年、初めて外国人留学生の4月の新卒採用を決定した、もしくは検討している企業様の中には入管手続きについてお困りの方も多いのではないでしょうか。今回は外国人留学生の新卒採用に係る入管手続きについてご案内いたします。 在留資格変更許可申請を行う 現在、外国人留学生が保有している「留学」という在留資格から就労のための在留資格に変更する必要があります。この申請をするためには現在所属している大学等から卒業見込証明書を発行してもらい、管轄の出入国在留管理局へ在留資格変更許可申請の添付書類として提出する必要があります。卒業見込証明書が発行されればいつでも申請が可能かというとそうでもなく、各出入国在留管理局へ新卒採用の申請がいつから可能かを確認することをおすすめいたします。 審査から新しい在留カード受領のながれ
- [RSM汐留パートナーズ・ニュースレター 2024年2月号](https://shiodome.co.jp/news/20874/) - 2024年度税制改正大綱・2024年問題について・自社株買いの留意点 日頃よりお世話になっております。RSM汐留パートナーズです。今月のニュースレターでは、税務より「2024年度税制改正大綱」、労務より「2024年問題について」、司法書士法人より「自社株買いの留意点」について取り上げます。 労務よりお伝えする「2024年問題」は、2019年4月より適用が始まっている労働時間の上限規制に関わるものです。大企業は2019年、中小企業でも2020年から適用が開始された罰則付きの労働時間の上限規制について、適用を猶予されていた業種の猶予期限が、2024年4月1日に迫っていることから注目されています。この問題について、規制の適用に向けて対応が急がれている建設業や運送業、医療の業種ごとに規制適用に係るポイントを確認しています。直接影響のある業種は限られますが、改めて労働時間の上限規制についてご確認頂く機会になるかと思いますので、是非ご確認ください。 2024年度税制改正大綱 今回は、2024年度税制改正大綱の中で、個人所得税における注目論点を取り上げます。 所得税・個人住民税の定額減税 居住者の2024年分の所得税額から特別控除の額が控除されます。即ち、合計所得金額が1,805万円以下の納税者の所得税額から、本人及び配偶者を含めた扶養家族1人につき、2024年分の所得税3万円、個人住民税1万円の減税がなされます。給与所得者の場合の減税実施方法は、所得税は2024年6月1日以後最初に支給される給与等(賞与を含む)の源泉徴収額から特別控除の額を控除し、個人住民税は2024年6月の給与支給時の特別徴収は行わず、特別控除の額を控除した金額を11分割した金額を、2024年7月から2025年5月までに支給給与から毎月徴収するといった方法となります。事業所得者等や公的年金等の受給者の場合も同様の考えで、2024年分の納付額、もしくは受給される公的年金等の源泉徴収税額から特別控除の額が控除されます。 ストックオプション税制の利便性向上 1.株式保管委託要件の緩和非上場会社が発行したストックオプションで、権利行使により交付される株式が譲渡制限株式である場合に、証券会社等への株式の保管委託が不要となり、発行会社自身により、当該譲渡制限株式の管理が可能となります。 2.年間の権利行使限度額の限度額引上げストックオプションを行使した際の経済的利益部分で課税の繰り延べができる1年あたりの権利行使価額の限度額が、現行の1,200万円から、設立5年未満の会社は2,400万円に、設立後5年以上20年未満の非上場会社及び上場後5年未満の上場会社は3,600万円に引き上げられます。 3.新株予約権付与対象者の拡充等ベンチャーキャピタル等から最初に出資を受ける時点で、資本金の額5億円未満、かつ従業員数900人以下といった要件が撤廃され、社外高度人材の対象範囲が拡大されました。 子育て世帯支援に関する政策税制 1.住宅ローン控除の拡充子育て特例対象個人が認定住宅等の新築等をして、2024年中に入居した場合の住宅借入金の控除対象借入限度額が上乗せされます(認定住宅は500万円、ZEH水準省エネ住宅・省エネ基準適合住宅は1,000万円)。 2.生命保険料控除の拡充23歳未満の扶養親族がいる場合に、新生命保険料に係る一般生命保険料控除の適用限度額が、現行の4万円から6万円に引き上げられます(合計適用限度額は、現行の12万円から変更なし)。 おわりに 前回から2回に渡って2024年度税制改正大綱を見てきました。取り上げた論点以外にも消費課税のプラットフォーム課税の導入、国際課税のグローバルミニマム課税やCFC税制の見直し等、重要論点はあります。ご不明点等ございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせ下さい。 2024年問題について 今回は、厚生労働省が推進している働き方改革の中でも、「2024年問題」といわれている、建設業・運送業・医師等に新しく適用される時間外労働上限規制について、業種ごとのポイントを解説し、対象企業が求められる労務管理について見ていきたいと思います。 1.概要 働き方改革の一環として、労働基準法に時間外労働の上限が規定され、2019年4 月から適用されていましたが、一部の事業・業務については、適用が 5 年間猶予されていました。2024年4月からは適用猶予が終了し、他の企業と同様の規制が適用されることになります。適用が猶予されていた事業・業務は以下の通りです。 工作物の建設の事業(建設業) 自転車運転の業務(運送業) 医業に従事する医師(医療) 鹿児島県及び沖縄県における砂糖を製造する事業 バスやタクシー、トラック運転手、建設業や医師等の業種は特に、これまでにも長時間労働が問題となっており、労働者の健康と労働環境を改善すべく、政府が様々な取組みを進めています。特設サイトも開設されています。是非ご参照ください。 適用猶予業種の時間外労働の上限規制 特設サイト はたらきかたススメ|厚生労働省 (mhlw.go.jp) それでは、業種ごとのポイントをまとめていきます。 2.建設業の場合 2024年4月以降、災害時における復旧及び復興の事業を除き、時間外労働の上限規制が原則通りに適用されます。建設業はその性質上、プロジェクトの進行状況や天候などの要因により、時間外労働が発生しやすいことが問題となりますが、事業主はこれまで以上に労働時間管理や労働生産性の向上が求められます。 また、いわゆる「手待ち時間」や「移動時間」、「着替え、作業準備等の時間」、「安全教育などの時間」が労働時間にあたるのかどうか、という問題も、きちんと把握しておく必要があるでしょう。 3.運送業の場合 自動車運転者は、特別条項付き36協定を締結する場合の年間の時間外労働の上限が年960時間となります。なお、一般の労働者と異なり、時間外労働と休日労働の合計について、月100時間未満、2~6ヶ月平均80時間以内とする規制及び、時間外労働が月45時間を超えることができるのは年6ヶ月までとする規制は適用されません。 さらに、運送業の場合は「改善基準告示」も改正されるため、1年・1ヶ月の拘束時間、1日の休息期間の変更点を見直しておきましょう。詳細はこちらです。 自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(改善基準告示) |厚生労働省 (mhlw.go.jp) 4.医師の場合 医師には、以下の上限規制が適用されます。 特別条項付き36協定を締結する場合の年間の時間外・休日労働の上限が最大1860時間(※)となります。 時間外労働と休日労働の合計について、月100時間未満、2~6ヶ月平均80時間以内とする規制は適用されません。 時間外労働が月45時間を超えることができるのは年6ヶ月までとする規制は適用されません。 医療法等に追加的健康確保措置に関する定めがあります。※ 令和5年4月発行 医師の働き方改革2024年4月までの手続きガイド.pdf (mhlw.go.jp) 5.求められる労務管理 労働時間短縮のためには、デジタル化や自動化などの新しい技術を導入し業務の効率を向上させなければなりません。これまでの業務内容を見直し、さまざまな「ムダ」を1つずつなくしていきましょう。さらに、長時間労働を業界の常識と認識されている場合も多く、経営者層の労務管理に対する意識改革も求められます。 自社株買いの留意点 株式会社が発行済みの株式を株主から買い取りたい(株主が自己が保有する株式を発行会社に売りたい)というニーズがあったときに、どのような手続きが必要となるでしょうか。株式会社が、発行した株式につき特定の株主から合意により有償で取得するときは、会社法が定める手続きを踏むことが求められており、当該特定の株主との合意のみによって取得することはできません。無償で自己株式を取得するのであれば、他の株主の権利を害することはありませんので、発行会社と株主の合意のみによって取得することが可能です。ここでは、種類株式を発行していない非公開会社である取締役会設置会社が、特定の株主から有償で自己株式を取得する手続きの概要を記載しています。株主との合意に基づく取得を前提としていますので、強制的に取得するのであれば株式併合等の手続きをご検討いただくことになります。 分配可能額を確認する 自己株式の取得には分配可能額による財源規制が定められていますので、自己株式の取得をするときはその効力発生日における分配可能額を超えないよう注意が必要です。分配可能額がない場合はそもそも有償での自己株式の取得をすることができません。 定款の内容を確認する
- [RSM汐留パートナーズ・ニュースレター 2024年3月号](https://shiodome.co.jp/news/21273/) - 新NISA制度の概要・2024年10月からの社会保険適用拡大・デジタルノマドビザ 日頃よりお世話になっております。RSM汐留パートナーズです。今月のニュースレターでは、税務より「新NISA制度の概要」、労務より「2024年10月からの社会保険適用拡大」、行政書士法人より「デジタルノマドビザ」について取り上げます。 労務で取り上げる「社会保険適用の拡大」は、パート・アルバイトなどの短時間労働者の社会保険適用に関わるものです。現在は、従業員数101人以上の企業でなければ、短時間労働者は社会保険に加入する必要はありません。これについて、2024年10月以降は、従業員数が51人以上の企業は短時間労働者を社会保険に加入させる必要があります。この論点について、社会保険の加入要件や副業・兼業等の注意点などについてまとめています。 多くの企業にとって影響のある論点かと思いますので、今月のニュースレターをご確認頂き、自社の見直しにお役立てください。 新NISA制度の概要 2024年1月から新NISA制度が開始され、多くの人が税務メリットを享受しつつ、資産形成を図れるようになりました。今回は、確定申告期限が近づく中で、新NISA制度の概要や、税務メリット/デメリットについて、改めて見ていきたいと思います。 新NISAの概要 新NISAでは、非課税保有期間が無期限化され、年間投資上限額が360万円(内、つみたて投資枠が120万円、成長投資枠が240万円)に拡充されました。その上で、富裕層に恩恵が偏らぬよう、生涯投資枠1,800万円(内、成長投資枠は1,200万円が上限)が設定されています。即ち、これらの投資枠内で、新NISAで取得した株式等を売却した場合には、翌年にその売却株式等の購入時の金額分の投資枠が復活することになります。新NISAについてポイントをまとめると以下の通りです。 新NISAのポイント 税務メリット 新NISAの最大の税務メリットは、投資から得られる利益である配当金や株式等売却益が非課税になる点です。即ち、通常、株式等の配当金や売却益に対しては、約20%(所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%)の税金がかかりますが、NISA口座で受け取った株式等の配当金や売却益に対しては課税されません。また、確定申告時にこれらの利益を申告する必要がなく、手続き面でも簡素化が図られている面もメリットといえます。 税務デメリット NISA口座で損失が出た場合、その損失を、他の特定口座や一般口座の利益と損益通算(*1)することができません。よって、損失発生時には、課税口座を利用して投資した場合よりも税負担が大きくなる可能性があります。 (*1)損益通算とは、税務上、一定期間内に生じた利益と損失を相殺することができる制度を指します。これにより、全体としての納税額を減少させることが可能となります。 また、NISA口座では損失の繰越控除(*2)が認められていない点も、損失発生時に、課税口座利用時よりも税負担が大きくなる要因といえます。 (*2)繰越控除とは、損失をその年の利益と相殺しても控除しきれない場合に、翌年以降に繰り越して利益と相殺し、納税額を減少させることができる制度をいいます。株式や投資信託の損失は最大3年間繰越可能とされています。 おわりに 新NISA制度は、日本において個人の資産形成を大きく後押しするものとなるでしょう。但し、NISA口座では投資から得られる利益が非課税になる一方で、損失発生時に損益通算や損失の繰越控除ができないといったデメリットも理解しておく必要があります。これらを踏まえた上で、税務メリットを最大限に活用すべく、長期的な視点で資産運用することが重要と思われます。ご不明点等ございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせ下さい。 2024年10月からの社会保険適用拡大 2022年10月1日より「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」が施行されたことでパート・アルバイトなどの短時間労働者(以下「パート・アルバイト従業員」といいます)の社会保険適用範囲が拡大されています。2024年10月からは、社会保険に加入する対象がさらに広がり、従業員数51人以上の企業も対象となります。 今回は、2024年10月からの社会保険適用拡大について、より詳細に探っていくこととしましょう。 1.対象となる企業は従業員数51人以上 現行の法律では、従業員数(ここでの「従業員数」とは、厚生年金に加入している被保険者数のことを指します)が101人以上の企業でなければ、パート・アルバイト従業員は社会保険に加入する必要はありません。ところが、2024年10月からはこの人数要件が変更され、51人以上の企業であればパート・アルバイト従業員でも社会保険に加入させる必要があります。 従業員が51人以上かどうか、特に100人以下で51人以上の従業員がいる企業は、新しく拡大される対象事業所です。まずここが大きな区切りとなります。自社の従業員数の把握、対象労働者がいるかどうかの確認を進めましょう。 2.パート・アルバイト従業員の加入要件4つ 従業員数が51人以上の企業だった場合、次の4つの要件にすべて該当するパート・アルバイト従業員が社会保険に加入することになります。 1週の所定労働時間が20時間以上であること 賃金の月額が88,000円以上であること 雇用期間が2か月超見込まれること 学生でないこと ここで注意すべきポイントは、4つの要件「すべて」にあてはまるかどうかです。どれか1つでも該当しない場合は対象とはなりません。パート・アルバイト従業員のうち、誰が対象者となるのか、早期のチェックが必要です。 3.副業や兼業に注意 正社員のようなフルタイマーとは異なり、短時間の勤務となるパート・アルバイト従業員は、副業や兼業といった掛け持ちをしているケースも多くみられます。この場合は、「被保険者所属選択/二以上事業所勤務届」という届出が必要となります(参照 複数の事業所に雇用されるようになったときの手続き|日本年金機構 (nenkin.go.jp))。 4.対象従業員とのコミュニケーション 社会保険に加入すると、ご家族の扶養から外れてしまったり、給与から社会保険料が控除されることで手取額は少なくなってしまったりことがあることから、社会保険への加入に消極的な従業員もいるかもしれません。そのため、社会保険に加入するメリットを理解していただいたり、今後の働き方について話し合ったり(手取りが減らないように、労働時間を増やしたい、など)と、事前にコミュニケーションを取っておくことが望ましいです。 2024年10月からの社会保険適用拡大に備え、対象となる企業では即座な対応が不可欠です。パート・アルバイト従業員の労働条件の確認、対象労働者の把握や整理、どういった届出が必要になるのかなど、ステップを踏んで柔軟かつ適切な対策を進めましょう。 厚生労働省からも特設サイトが開設されていますので是非参考にしてみてください。 51ninijyou.pdf (nenkin.go.jp) デジタルノマドビザ 国際的にリモートで働く「デジタルノマド」のためのビザが創設され、3月末までに制度開始予定とされております。以前からこのようなビザの問い合わせは企業様からいただいておりましたが、適切な在留資格がなくアドバイスに窮しておりました。今回は現在まで明らかになっている事項についてご説明させていただきます。 創設の背景と各国の制度 新型コロナウイルス感染の前の世界と後の世界で劇的に変化があったものとしてテレワークの普及があります。これにより世界のどの場所にいても仕事が可能という産業や特定の人物が増えました。場所に縛られることなく、世界中を旅行しながらIT技術を活用して自分のペースで働くいわゆる「デジタルノマド」は世界全体で3500万人ほどいるとされております。このような情勢を背景に日本政府も海外企業に勤めるITエンジニアらが日本に在留しやすくなる資格の創設に至りました。一定の条件を満たせばタイは5年、スペインは1年以上滞在できるという専用の資格があり、英国、ドイツ、台湾にも類似の制度があります。 どのような要件が必要か 現在わかり得る要件としては大きく3つ挙げられております。 査証免除国かつ日本と租税条約も締結する国・地域の国籍 年収1000万円以上 民間医療保険に加入 1の査証免除国とは、観光や親族訪問など短期滞在で日本へ来るときは本来ビザ(査証)の取得を必要とされているところ、ビザ(査証)手続きが免除措置がされている国・地域のことです。日本は70の国・地域に対してビザ免除措置を実施しております。例えばアメリカもその1つでこれによりアメリカ国籍の外国人はビザ(査証)なしで日本に観光(短期滞在)に来ることができます。 租税条約とは二重課税の除去や脱税や租税回避の防止等を目的としたものです。 年収は1000万円以上とされており、民間医療保険の加入も要件とされております。また、民間医療保険に加入を条件に家族の帯同も許可される見込みです。 日本の就労ビザの多くに必要とされる日本企業との契約は必要なく、6カ月の滞在が許可される予定です。在留期間の更新が可能か否かは現時点では言及されておりません。 その他注意事項 すでに多くの企業様からお問い合わせをいただいており、関心の高さが伺えます。3月末の制度開始となりますが入管法の問題はもとより、税法や労働関係諸法令についても知識が必要なところです。当グループであれば税法、労働関係諸法令についてもグループ内の税理士法人、社会保険労務士法人でワンストップで対応可能です。
- [RSM汐留パートナーズ・ニュースレター 2024年4月号](https://shiodome.co.jp/news/21551/) - 定額減税の概要・固定残業代の有効性とポイント・非公開株式における黄金株式の設定 日頃よりお世話になっております。RSM汐留パートナーズです。 今月のニュースレターでは、税務より「定額減税の概要」、労務より「固定残業代の有効性とポイント」、司法書士法人より「非公開株式における黄金株式の設定」について取り上げます。 司法書士で取り上げる「黄金株式」は、拒否権付種類株式の別称です。これは株主総会や取締役会等において、拒否権付株式の保有者が承認しないと当該決議が成立しない仕組みを作ることが出来ます。創業者が後継者に対して発行済み株式の3分の2以上を譲渡した後も、創業者の意思を経営に反映させることが出来ます。 一方で後継者の士気に関わる可能性もありますので、取得条項の併用や属人的株式についても併せてまとめています。事業承継を検討している企業にとっては一つの選択肢となる論点かと思いますので、今月のニュースレターをご確認頂き、自社の見直しにお役立てください。 定額減税の概要 2024年度税制改正において、所得税と個人住民税の定額減税の実施が決定されました。これに伴い、2024年6月より、所得税の定額減税が実施されることとなり、企業の源泉徴収義務者は、従業員の給与等に係る源泉徴収や年末調整の事務において、特別な対応が必要となります。今回は定額減税の概要や減税方法について見ていきたいと思います。 定額減税の概要 定額減税とは、日本国内の経済状況に配慮し、国民の負担を軽減すべく、デフレ脱却の一時的な措置として、所得税や個人住民税から一律に一定額を控除する制度をいいます。 定額減税の対象者 定額減税の対象者は、日本の居住者で合計所得金額が1,805万円以下(給与収入のみの場合は給与収入2,000万円以下、子ども・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除の適用を受ける場合は2,015万円以下)の人となります。所得税は2024年分、住民税は2023年分の合計所得金額にて判定します。 定額減税額 減税は基本的に2024年分の所得税と個人住民税を対象になされます。減税額については下表の通りですが、所得税と住民税では扶養家族の範囲に違いがあります。「同一生計配偶者」とは、納税者と生計を一にしており、かつ、合計所得金額48万円以下のものをいい、「控除対象配偶者」とは、同一生計配偶者のうち、納税者の前年の合計所得金額が1,000万円以下の配偶者をいいます。 定額減税の実施方法 定額減税は所得の種類に応じて、以下の方法により実施されます。 ①給与所得者 ②事業所得者等 ③公的年金等受給者 おわりに 今回は定額減税の概要や実施方法について見てみました。6月以降の定額減税実施に際して、スムーズに給与計算等に反映できるよう、事前に必要な書類等を周知、確認することが必要です。ご不明点等ございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせ下さい。 固定残業代の有効性とポイント 固定残業代制度は多くの企業が導入を行っています。しかし、過去の裁判例からは、その有効性が十分に認められていないケースもあります。裁判所は、固定残業代制が労働基準法第37条に照らし、割増賃金の支払いとして有効かどうかを判断しますが、固定残業代制が割増賃金の支払いとして不十分であるとなれば、企業側に甚大な金銭的デメリットをもたらす恐れがあります。 固定残業代制の導入を検討している、または既に導入している企業は、法的規定や裁判例を十分に把握し、自社に見合った制度を構築することが不可欠です。 それでは、固定残業代が有効とされるためのポイントを3つ解説していきます。 対価性と明確区分性 固定残業代の金額と、何時間分に対する残業代になるのかを明確に記載している必要があります。つまり、通常の労働時間に対する賃金と、残業時間に対する賃金が明確に分かれた雇用契約内容になっているかが重要です。 次の例を見てみましょう。(1)基本給30万円(固定残業代含む)固定残業代が何時間分の割増賃金に値するのか記載がありません。 (2)基本給30万円(残業時間30時間分を含む)30時間分の残業に対して支払われるということは分かりますが、その残業代がいくらになるのかが示されていません。残業1時間に対して、いくらの割増賃金が支払われるのか、という計算ができなければ固定残業代は認められません。 このように、通常の労働に対する賃金と残業に対する賃金とが明確に区分されていると言えるためには、労働者が実際に行った残業に見合った適切な賃金が支払われているかという対価性が必要となります。 就業規則への記載 固定残業代を導入する場合は、その計算方法等について就業規則に定める必要があり(労働基準法第89条2号)、固定残業代を支払うことで一定時間分の割増賃金を支払っていることを労働者に周知させなければいけません。 事前に設定された残業時間を超えた労働を行った場合、超過分を支払っている 上記の例でいうと、残業時間30時間分に対する固定残業代であれば、仮にその月の残業時間が35時間となってしまった場合、5時間の超過分を必ず支給しないといけません。「残業代が固定なのだから、何時間でも残業をさせていい」、「残業代は固定で支払っているから追加で払う必要はない」、といった考えは禁物です。 事前に設定された残業時間が過大でないこと 労働基準法上、会社が労働者に対して36協定の範囲で残業を命じることができる上限は、原則として月45時間までとされています。したがって、月45時間を大きく上回るような残業時間で設定してしまうと、法律の趣旨に反することになり、公序良俗に反して無効と判断される可能性があります。 ここまで、固定残業代が有効と認められるための要件を解説してきましたが、そもそも残業代の計算が正しく行われているということが前提です。自社の1時間あたりの給与額が正しく算出できるかどうか、最低賃金の観点からも見直ししてみましょう。 実際に計算する場合は、次の数値が必要です。・年間休日日数(例:120日)・年間所定労働日数(365-120=245日)・1日の所定労働時間数(例:8時間)・年間所定労働時間数(例:8時間×245日=1.960時間)・月平均所定労働時間数(例:1.960÷12ヶ月=163時間) これらをすべて把握した状態で、初めて残業代や固定残業手当としていくらの支払いが必要なのか計算が可能となります。 固定残業代としての効力が否認されると、これまでの残業代を未払い賃金として支給する必要が出てくる可能性があります。固定残業代を導入している(しようとしている)場合は、十分に留意して適切に運用するようにしてください。 非公開株式における黄金株式の設定 公開会社でない株式会社(非公開会社)において、創業者等が、自身が有する株式の大部分を後継者に譲渡するのと並行していわゆる黄金株式を設定することがあります。定款に別段の定めのない非公開会社では、株主はその有する株式数に応じて株主総会における議決権を有しますので、後継者に発行済株式数の3分の2以上を譲渡すると、当該後継者のみで株主総会のほとんどの議案を決議することができるようになります。そこで、創業者等が株式の一部を譲渡した後も株主総会の決議内容をチェックすること等を目的として、黄金株式には一定のニーズがあります。 黄金株式とは 会社法には黄金株式という名前の株式はなく、主に会社法第108条第1項第8号の定め(拒否権)が付いた種類株式がそう呼ばれることがあります。拒否権が付いた株式とは、株主総会又は取締役会において決議すべき事項のうち、当該決議のほか、拒否権付株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議があることを必要とすることを内容とする株式をいいます。創業者等が発行済株式の3分の2以上を譲渡した後も、この拒否権付株式を1株保有することで、創業者等の承認がないと当該決議が成立しない仕組みを作ることができます。株主総会又は取締役会において決議すべき事項の全てについて拒否権を設定すると意思決定のスピードが落ちる、あるいは後継者の士気にも関わってくるかと思いますので、特定の事項(役員の選任、組織再編等)についてのみ拒否権を設定することも考えられます。 取得条項を併用する 拒否権付株式はそれだけで株主総会又は取締役会の決議を通さないことができるため、非常に強力な株式といえます。この拒否権付株式が誰に渡るかは会社にとって重要な事項です。そのため、拒否権付株式を有する株主に一定の事項が生じたときは、強制的に発行会社が取得できる仕組みにしておくことでリスクを軽減することできます。一例として、拒否権付株式を有する株主が死亡したとき、後見開始の審判を受けたとき、発行会社の取締役を退任したとき、拒否権付株式の譲渡承認請求を発行会社に行ったとき等に、発行会社が別に定める日をもって、無償で取得することができるとしておくことが考えられます。なお、取得対価を有償とすることも当然に可能ですが、会社が自己株式を取得するときは分配可能額の制限がありますので、取得条項の発動時において会社に分配可能額がない場合も無償であれば会社が取得することができるというメリットがあります。 属人的株式 創業者等が株式譲渡後も自身のみをもって株主総会の決議を通したいのであれば、属人的株式(会社法第109条第2項の定め)を利用することも考えられます。発行済株式100株のうち創業者が10株、後継者が90株という保有割合であっても、創業者の有する株式を1株につき議決権100個と定款に定めると、議決権は創業者1000個:後継者90個となり、創業者が議決権の3分の2以上を有する状況を作ることができます。なお、創業者が誰かに株式を譲渡すると当該株式につき1株につき1議決権に戻るという特徴があります。 拒否権付株式同様に、出口をどのようにするかは属人的株式の設定時に検討し、それも組み込んでおくことをお勧めします。
- [RSM汐留パートナーズ・ニュースレター 2024年5月号](https://shiodome.co.jp/news/21780/) - インボイス制度Q&Aの改定論点・テレワークにおける労務管理・投資に係る在留資格 日頃よりお世話になっております。RSM汐留パートナーズです。今月のニュースレターでは、税務より「インボイス制度Q&Aの改定論点」、労務より「テレワークにおける労務管理」、行政書士法人より「投資に係る在留資格」について取り上げます。 労務より取り上げる「テレワークにおける労務管理」については、テレワーク下における長時間労働を要因とする労災認定によって注目が集まっている論点です。これは、従業員が発症した精神疾患の原因がテレワークによる長時間労働であると認められたものです。新型コロナウイルス感染症にかかる「まん延防止等重点措置」の解除以来、実施率が減少傾向にあるとされるテレワークについて、労働時間の管理は勿論、コミュニケーションや人事評価など、注意すべき点があるモノですので、今月のニュースレターをご確認頂き、自社の見直しにお役立てください。 インボイス制度Q&Aの改定論点 国税庁は2024年4月8日にインボイス制度に係る「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」を改訂しました。当改訂では「お問合せの多いご質問」の内容や、2024年度税制改正内容を反映しています。今回は改訂部分の中で比較的論点になりやすいと思われる部分を厳選して見てみます。その他論点についても、適宜、インボイス制度に関するQ&Aをご参照下さい。 選定した個別論点の概要(番号はQ&A番号) ・No.8-2:課税期間の中途から課税事業者となった場合の基準期間における課税売上高課税売上高は、基準期間における課税対象となる売上高の合計額となり、免税事業者であった期間の課税売上高も含めて計算(その部分は税抜処理しない)。 ・No.66:複数の契約に係る適格請求書の交付の可否適格請求書に記載する消費税額等は、税率ごとに合計した課税対象となる取引額に、所定の割合を乗じて算出し、端数は一の適格請求書につき、税率毎に1回だけ処理。 ・No.103:高速道路利用料金に係る適格簡易請求書の保存方法利用証明書のダウンロードは不要で、クレジットカード利用明細書の保存のみで仕入税額控除を適用可能。 ・No.103-3:電気通信利用役務の提供と適格請求書の保存国外事業者が提供する事業者向け電気通信利用役務について、国内事業者はリバースチャージ方式により消費税を申告納税し、適格請求書の保存は不要。一方、消費者向け電気通信利用役務では適格請求書の保存が必要(一定規模以下の事業者の少額特例あり)。 ・No.107-2:実費精算の出張旅費等出張旅費や宿泊費など、社員に支給される経費で、通常必要と認められる部分は、帳簿のみの保存で仕入税額控除が可能(概算払、実費精算を含み、通常必要と認められる部分は所得税の非課税範囲内で評価)。 ・No.110:帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる場合の帳簿への一定の記載事項帳簿への「住所又は所在地」の記載は不要。 ・No.110-2:自動販売機特例又は回収特例における3万円未満の判定単位住所記載不要の対象となる取引(3万円未満)の判定単位について、1回の取引の税込価額が3万円未満かどうかで判定。 ・No.106:古物商等の古物の買取り等免税購入品であることを知りながら行った課税仕入れについては、古物商等特例の有無に関わらず、仕入税額控除制度の適用不可。 ・No.115:2割特例の適用ができない課税期間PEを有しない国外事業者や一般課税で金又は白金の地金等を200万円以上仕入れた事業者に対して2割特例の適用を制限。 おわりに インボイス制度に関するQ&Aは、全130問の膨大な構成となっていますが、これは実務上の迷いや問い合わせが多いことを示唆していると思います。ご不明点等ございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせ下さい。 テレワークにおける労務管理 2024年3月8日付の報道によれば、テレワークによる長時間労働が原因となり、精神疾患を発症した従業員が労災認定されました。この労災認定は極めて異例であり、テレワーク環境下での労務管理の重要性を再度浮き彫りにしました。本記事では、この事例を踏まえ、テレワークにおける労務管理のポイントや課題、そして効果的な対策について解説していきます。テレワークによる長時間労働に伴うリスクを軽減し、従業員の健康と生産性を両立させるための方法を探ります。 1.労災認定の概要 外資系補聴器メーカーの日本法人で働く50代の女性社員が2022年3月、テレワーク中に月100時間を超える残業を行い、適応障害を発症。横浜北労働基準監督署により労災認定されました。 女性社員は、2019年に入社し、2020年以降はテレワークで業務を行っていました。上司からの細かい指示や深夜の業務依頼により、労働時間が増加。所定労働時間内にも多くの指示があり、休日や深夜にも仕事をこなすことが常態化しました。女性社員は会社に改善を求めましたが実現せず、適応障害を発症し休職に至った、という事例です。 2.事業場外みなし労働時間制の適用 女性は事業場外みなし労働時間制の適用を受けていました。事業場外みなし労働時間制とは、「使用者の指揮監督が及ばないために、当該業務に係る労働時間の算定が困難な場合に、使用者のその労働時間に係る算定義務を免除し、その事業場外労働については特定の時間を労働したとみなすことのできる制度」です(厚生労働省 jigyougairoudou.pdf (mhlw.go.jp))。 厚生労働省では「テレワークガイドライン」を示しており、(1)情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態におかれていないこと、(2)随時使用者の具体的な指示に基づいて業務を行っていないこと、という条件を満たす必要があると定めています。 新型コロナウイルスの流行により、テレワークが急速に普及し、事業場外みなし労働時間制の適用事例が増加しましたが、今回の事例のように、会社からチャットやメールを通じて細かく指示をされている場合は、「使用者の指揮監督が及ばないために、労働時間の算定が困難な場合」には該当するとはいえません。労働時間はPCのログやメール、チャットでのやりとりから算出が可能で、今回のケースでも深夜にまで及ぶチャットも記録され、具体的な指示内容が残っていました。 このように、“自宅でテレワークをさせるから指揮命令下には置かれていないし、所定労働時間働いたとみなせるだろう”という判断は危険です。 3.費用負担 テレワークにおける通信費やIT関連機器の費用負担については、事前に会社が検討し、ルールを設ける必要があります。従業員がこれらの費用を負担する場合は、就業規則に明記しなければなりません。 4.人事評価 対面でのコミュニケーションが取れないがために、テレワークを行う従業員とそうでない者とで評価に偏りが出てしまうリスクについても考慮が必要です。人事評価方法についての十分な説明が行われているか、就業規則への記載も併せて確認してください。 5.テレワークをサポートするITツールの導入 今回の労災認定では、PCログやメール履歴など、客観的な記録により長時間労働が確認されましたが、テレワークにおける労働時間の適正な把握は労務管理において最重要課題となるでしょう。テレワークを行う最大のメリットは労働生産性の向上ですが、そのためにも、ITツールを効果的に活用し、従業員の健康と働きやすさを確保するための取り組みを今一度見直してみましょう。 投資に係る在留資格 政府は日本のスタートアップ企業に投資する「エンジェル投資家」を海外から呼び込む施策を2024年度にも始める方針だというニュースが飛び込んできました。これは我々実務家からすると驚くべきことで、なぜなら今まで「投資」という活動に対して在留資格(ビザ)が付与されることはなかったからです。いま現在、開示されている情報は少なくかつ不確かなものも多いですが、大まかな方針などをご紹介しようと思います。 まずは国家戦略特区でスタート 国家戦略特区とは“世界で一番ビジネスがしやすい環境”を作ることを目的に、地域や分野を限定することで、大胆な規制・制度の緩和や税制面の優遇を行う規制改革制度です。分野の1つに外国人材があり、今回は日本で不足しがちな成長資金の出し手を補うのが目的のようです。国家戦略特区は仙北市、仙台市、新潟市、東京圏(東京都、神奈川県、千葉市、成田市)、愛知県、関西圏(大阪府、兵庫県、京都府)、養父市、広島市・今治市、福岡市・北九州市、沖縄県がありますが、対象となる特区は東京、大阪、福岡、札幌などが手を挙げている段階です。特区での実績を踏まえて正式な在留資格として新設するのか検討されることになるでしょう。 どのような要件が必要か 内閣府の資料を基に現在検討されている主な要件をご紹介したいと思います。 実績要件:①②のどちらも必要①経営・管理領域での実務経験、若しくは投資家としての実績があること②スタートアップの有する技術、アイデアを目利きする能力があること 以下の経歴により判断・特定分野での実績(特定分野での実務経験、投資家経験、起業実績、研究実績)・表彰歴・知名度(受賞歴、メディア掲載実績、特定分野の協会役員等)・信頼のある人物からの推薦 その他注意事項 今まで「投資」をすることで日本で在留資格を得られないのかという問い合わせを数多く受けてきましたが、もし本制度が施行されれば多くの投資家が興味をもつことになります。弊社では確かな情報が入り次第、続報をお届けする予定です。
- [RSM汐留パートナーズ・ニュースレター 2024年6月号](https://shiodome.co.jp/news/21951/) - 新リース会計基準について・「くるみん」認定について・取締役及び会計監査人の任期 日頃よりお世話になっております。RSM汐留パートナーズです。 今月のニュースレターでは、税務より「新リース会計基準について」、労務より「くるみん認定について」、司法書士法人より「取締役及び会計監査人の任期」について取り上げます。 労務で取り上げる「くるみん」とは、次世代育成支援対策推進法に基づく、積極的な子育て支援や女性の活躍支援に取り組んでいる企業が受ける認定です。令和6年度税制改正大綱において、税額控除率の上乗せの要件として、「くるみん」認定が追加されたことで注目されています。労務では、今回より二回に分けてくるみん認定についてお届けします。活用をご検討される企業も増える制度かと思いますので、今回のNewsLetterを是非ご活用ください。 新リース会計基準について 企業会計基準委員会(ASBJ)は、日本基準と国際的な会計基準との整合性を図る取組みの一環として、リース取引について2023年5月に企業会計基準公開草案第73号「リースに関する会計基準(案)」等(以下、新リース会計基準)を公表しました。新リース会計基準では、IFRS16との整合性の観点から、借手のすべてのリースについて資産及び負債がオンバランスされることから、リースに係る会計処理及び開示の大幅な改正と幅広い業種の企業への影響が予想されています。今回は、新リース会計基準の大枠を掴むと共に、想定される税務上の論点も考えてみたいと思います。 新リース会計基準の基本方針 ファイナンスリースとオペレーティングリースの分類を廃止し、借手のすべてのリースについて資産及び負債を計上し、使用権資産に係る減価償却費及びリース負債に係る利息相当額を計上する単一の会計処理モデルを採用することが提案されています。 リースの定義・識別・リース期間 下表の通り、リースの範囲を明確にし、「リース期間=契約期間」とは限らないことが明示されています。 借手のリース会計処理 1. 当初認識(資産負債の計上額) 2. 事後測定(利息計上と減価償却) 3. 短期リース・少額リースへの例外規定以下の場合、使用権資産やリース負債を計上せず、リース料総額をリース期間に渡って原則として定額法により費用処理できます。 想定される税務上の論点 新リース会計基準の適用に伴う税制改正が見込まれます。使用権資産やリース負債が税務上の資産負債として認められるか、リース料を損金として処理していたオペレーティングリースの税務上の取扱い、リース負債に係る利息部分が税務上の利息として認められるか、使用権資産の減価償却額と税務上の償却限度額の税務調整などの論点が想定されます。 おわりに 新リース会計基準への対応にあたっては、リース契約の見直しだけではなく、関連する業務プロセスやシステムの見直しが必要な場合も考えられます。ご不明点等ございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせ下さい。 「くるみん」認定について 令和6年度税制改正大綱において、子育て支援や女性活躍の推進を強化するため、新たな税制優遇措置が導入されることが発表されました。具体的には、「くるみん・プラチナくるみん」や「えるぼし・プラチナえるぼし」の認定を受けた企業には、税額控除率に5%の上乗せが行われることになります。 「くるみん」や「えるぼし」の認定は、次世代育成支援対策推進法に基づく制度であり、企業が積極的な子育て支援や女性の活躍支援に取り組んでいることを証明するものです。政府の取り組みにより、子育てや女性の社会進出を後押しし、企業の社会的責任の一環としての活動が促進されることが期待されます。今回から2回にわたって、くるみん認定の流れについて解説していきます。 「くるみん」とは 一般事業主が子育て支援を促進するための行動計画を作成し、その目標を達成し、一定の基準を満たした企業は、厚生労働大臣から「子育てサポート企業」として認定されます。この認定を受けた企業は、「くるみん認定」と呼ばれ、その証として「くるみんマーク」を取得します。 「くるみん」認定までの流れ 行動計画の策定 公表と労働者への周知 行動計画の届出 行動計画の実施 くるみん認定・トライくるみん認定→プラチナくるみん認定 それではより詳しく見ていきましょう。 ①行動計画策定 自社の現状や労働者のニーズを把握し、仕事と子育ての両立にあたって障害となっている課題を見つけ、解決のための行動計画を策定します。これを一般事業主行動計画と呼びます。 行動計画の例は厚生労働省HPに様々なタイプのモデル計画が掲載されています。ぜひ参考にしてみてください(https://www.mhlw.go.jp/general/seido/koyou/jisedai/) くるみん認定を受けるためには、この行動計画で掲げた目標とくるみんの認定基準がリンクしている必要があるため、事前に各都道府県労働局雇用環境均等部(室)へ計画内容を確認しておくと間違いないでしょう。 ②公表と労働者への周知 行動計画を策定したら、策定の日からおおむね3ヶ月以内にその計画を一般に公表し、労働者へも周知を行います。公表の方法は自社HPへの掲載など自由ですが、厚生労働省が運営する女性の活躍・両立支援総合サイト「両立支援のひろば」への掲載も可能です。 ③行動計画の届出 行動計画の策定と並行に、策定の日からおおむね3ヶ月以内に「一般事業主行動計画策定届」を各都道府県労働局雇用環境均等部(室)に届出ます。 ④行動計画の実施 行動計画に掲げた対策を実施し、仕事と子育ての両立をめざし、目標を達成するための取組を実施しましょう。 ⑤くるみん認定・トライくるみん認定→プラチナくるみん認定 くるみん認定を受けるためには10項目の認定基準をすべて満たす必要があります。 詳しい認定基準は厚生労働省ホームページをご確認ください。https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/03page8_14kurumin.pdf 認定基準の1〜10をすべて満たしたら、いよいよくるみん認定申請です。 くるみん認定の申請は、「基準適合一般事業主認定申請書(様式第二号)」に必要書類を添付し、郵送・持参・電子申請のいずれかの方法により、行動計画を届出た労働局雇用環境均等部(室)に行います。 添付書類を抜粋します(厚生労働省「次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を策定し、くるみん認定・トライくるみん認定・プラチナくるみん認定を目指しましょう!!!(令和6年1月)パンプレットより」)。 いかがでしたでしょうか。 次回は、「くるみん」認定基準の10項目について詳説していきます。 取締役及び会計監査人の任期 定時株主総会を議案を検討するときは、役員及び会計監査人の任期を確認し必要に応じて再任の議案を盛り込みます。 ここでは取締役について取り上げますが、株式会社の取締役には必ず任期があり、その任期は「①選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで」です。この任期は定款又は株主総会の決議によって短縮することが可能です。また、公開会社でない株式会社(監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除き、以下「非公開会社」といいます)においては、定款に定めることにより取締役の任期を「選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで」伸長することができます。監査等委員会設置会社の取締役(監査等委員であるものを除きます。)の任期は①の「2年」が「1年」となり、監査等委員である取締役の任期は①の期間を短縮することができません。加えて、指名委員会等設置会社の取締役の任期は①の「2年」が「1年」となります。 株式会社の多くは非公開会社ですので、以下非公開会社を前提としています。
- [RSM汐留パートナーズ・ニュースレター 2024年7月号](https://shiodome.co.jp/news/22228/) - 役員報酬の税務上の取扱い・「くるみん」認定について2・育成就労制度に係る法改正 日頃よりお世話になっております。RSM汐留パートナーズです。今月のニュースレターでは、税務より「役員報酬の税務上の取扱い」、労務より「くるみん認定について2」、行政書士法人より「育成就労制度に係る法改正」について取り上げます。 先月より2回に渡って労務で取り上げる「くるみん認定」では、くるみん認定を取得するにあたって満たす必要のある認定基準について詳しくまとめています。 認定基準は全部で10項目あり、くるみん認定の取得を目指す上では内容を細かく確認することが必要です。基準を満たす上での注意点についても一緒に確認している内容となっていますので、くるみん認定について検討中の際には、是非お役立てください。 役員報酬の税務上の取扱い 企業の持続的な成長と企業価値向上を目的としたコーポレートガバナンス・コードの適用を背景に、日本では役員報酬の見直しが進んでいます。特に、中長期的な業績と連動する株式報酬制度の導入が増えています。今回は従来からある金銭報酬及び、昨今注目が高まっている株式報酬について、概要と税務上の取扱いを見ていきたいと思います。 役員報酬の法人税法上の取扱い 法人税法上、従業員の給与は賞与も含めて全額損金可能ですが、役員報酬は損金算入の条件が厳しくなっています。具体的には法人税法では、役員報酬は「役員給与」と呼び、次の3つのみが損金として認められます。 ①定期同額給与 ②事前確定届出給与 ③業績連動給与 株式報酬制度 上述の3パターンを含む従来からある役員報酬は短期的なインセンティブとなるものが多いですが、株式報酬は中長期の評価期間を対象とする長期インセンティブといえます。即ち、役員が株式を保有することで、会社業績や株価上昇に直接的な利害関係を持ち、企業パフォーマンスの向上や優秀な役員のリテンションに効果が見込まれます。「譲渡制限付株式(RS)」と「パフォーマンス・シェア(PS)」は代表的な株式報酬の形態ですので、以下にその特徴をまとめます。 ①譲渡制限付株式(RS: Restricted Stock) ②パフォーマンス・シェア(PS: Performance Share) おわりに 今回は、多様化する役員報酬の特徴や税務上の取扱いを見てみました。現状、日本の役員報酬水準は欧米に比べて非常に低い水準にあります。要因としては、内部昇格の役員が多い日本では従業員報酬との公平性が重視される傾向があることなども挙げられますが、中長期インセンティブの株式報酬の割合が低いことも一因といえます。企業の持続的成長のためには、役員の長期インセンティブに繋がる適切な報酬制度の設計が重要です。各報酬制度を含め、ご不明点等ございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせください。 「くるみん」認定について2 次世代育成支援対策推進法に基づく「くるみん認定」は、子育て支援に積極的な企業を評価する制度です。先月号で解説したくるみん認定の流れを踏まえ、今回の記事では、くるみんを取得するために必要な10項目の認定基準について詳しく解説します。これらの基準を理解し、子育てサポート企業PRに向け、くるみん認定を目指しましょう。 それぞれの認定基準とポイントや注意点について、順を追って解説します。 まず、認定基準1~4は、先月号で記載した「行動計画」の策定ステップ①~④とリンクしています。 認定基準1. 雇用環境の整備について、行動計画策定指針に照らし適切な行動計画を策定したこと。 認定基準2. 行動計画の計画期間が、2年以上5年以下であること。 認定基準3. 策定した行動計画を実施し、計画に定めた目標を達成したこと。 認定基準3のポイントとしては、目標を達成したことを証明する資料の添付が必要です。制度導入が目標とされている場合は、導入後の就業規則などの写しや、育児休業等取得率の数値目標を設定している場合は、実際に育児休業等をした対象労働者の情報書類を添付します。 認定基準4. 策定・変更した行動計画について、公表および労働者への周知を適切に行っていること。 次に、認定基準5では男性労働者の,認定基準6では女性労働者の、育児休業等取得率の達成が必要となります。 認定基準5. 次の(1)または(2)のいずれかを満たしていること (1)計画期間における、男性労働者の育児休業等取得率が10%以上であり、当該割合を厚生労働省のウェブサイト「両立支援のひろば」で公表していること。 (2)計画期間における、男性労働者の育児休業等取得率および企業独自の育児を目的とした休暇制度利用率が、合わせて20%以上であり、当該割合を厚生労働省のウェブサイト「両立支援のひろば」で公表していること、かつ、育児休業等を取得した者が1人以上いること。 認定基準6. 計画期間における、女性労働者の育児休業等取得率が75%以上であり、当該割合を厚生労働省のウェブサイト「両立支援のひろば」で公表していること。 認定基準5,6では、数値算出の際、認定申請時にすでに退職している労働者は含まれないことや、育児休業を分割して取得した労働者がいた場合でも、同一の子についての利用である場合は1人カウントとされることに注意が必要です。 また、労働者数が300人以下の事業主であれば、数値目標が達成できていなかった場合の救済措置もあるため、諦めずにチェックしていきましょう。 認定基準7. 3歳から小学校就学前の子どもを育てる労働者について、「育児休業に関する制度、所定外労働の制限に関する制度、所定労働時間の短縮措置または始業時刻変更等の措置に順ずる制度」を講じていること。 認定基準7では制度の導入措置が掲げられているため、行動計画に盛り込んでいる必要があります。行動計画の目標の1つにこの認定基準7を盛り込み、認定基準3である行動計画の実施、目標達成を満たすことでクリアされます。 このように、くるみん認定の流れで記載したように、行動計画の策定がとても重要となります。 認定基準8. 計画期間の終了日に属する事業年度において次の(1)と(2)のいずれも満たしていること。なお、認定申請時にすでに退職している労働者は(1)・(2)のいずれも、分母にも分子にも含みません。 (1)フルタイムの労働者等の法定時間外・法定休日労働時間の平均が各月45時間未満であること。 (2)月平均の法定時間外労働60時間以上の労働者がいないこと。 認定基準8では、残業時間に触れていますが、(1)では、全フルタイム労働者等の時間外・休日労働時間の合計数を全フルタイム労働者等の人数で除した数値がどの月も45時間未満である必要があります。また、(2)では、60時間を超えているかどうかについて、労働者ごとに1人1人チェックしていきます。 認定基準9. 次の①~③のいずれかの措置について、成果に関する具体的な目標を定めて実施していること。 所定外労働の削減のための措置
- [RSM汐留パートナーズ・ニュースレター 2024年8月号](https://shiodome.co.jp/news/22470/) - 路線価の相続税に与える影響・令和6年改正育児・介護休業法・株主資本の振替 日頃よりお世話になっております。RSM汐留パートナーズです。今月のニュースレターでは、税務より「路線価の相続税に与える影響」、労務より「令和6年改正育児・介護休業法」、司法書士法人より「株主資本の振替」について取り上げます。 司法書士法人で取り上げる株主資本の振替については、大企業が減資して中小法人化する、といったニュースでご覧になる人も多いかと思います。今回は資本金の他に資本準備金、その他資本剰余金、利益準備金、その他利益剰余金の振替について広くまとめています。 また、労務にて取り上げる、令和6年の通常国会で改正された育児・介護休業法については関係する企業が多い法律となります。新たに導入される規定に絞り、事業主が押さえるべき4つのポイントとしてまとめておりますので、今月のNewsLetterを是非お役立てください。 路線価の相続税に与える影響 毎年7月1日、国税庁は日本全国の主要な道路沿いの土地の価格である「路線価」を公表します。路線価は、土地の評価額を決定するための指標として、主に相続税や贈与税の計算に使用されます。今回は路線価を含む土地の評価方法と、路線価の相続税に与える影響について見ていきたいと思います。 路線価とその他の土地評価方法 路線価は、道路に面する標準的な宅地の1平方メートルあたりの価格を示し、土地の利用価値や立地条件、交通の便などを考慮して、国税庁が毎年公表しています。路線価の特徴を理解するには、他の土地評価方法である「公示価格」や「固定資産税評価額」との比較が有効です。以下に、各々の特徴を比較する形でまとめてみました。 ここで「市場価格との比較」の市場価格とは、実勢価格(時価)、即ち実際に不動産の売買が成立する価格のことを示しています。上表に示された市場価格との比較から、「公示価格>路線価>固定資産税評価額」といった関係になっていることがわかります。 路線価の相続税に与える影響 路線価は、相続税の計算に直接影響を与える重要な指標です。相続税は、被相続人の遺産総額から基礎控除額を差し引いた額に対して課税されます。この遺産総額には土地の評価額が大きな部分を占めることが多いため、路線価の変動は相続税額に大きく影響します。 土地の評価額は、土地の面積に路線価を掛け合わせて算出されます。簡便な例で考えると、相続された100平方メートルの土地があり、その場所の路線価が30万円/平方メートルである場合、その土地の評価額は3,000万円(30万円×100平方メートル)となります。このように、路線価が上昇すると土地評価額も上昇し、結果として相続税額が増加します。 また、適用される路線価はその年の7月1日に公表されたものです。即ち、7月1日に公表された路線価はその年の1月1日から12月31日までの相続税の計算に適用されます。 おわりに ここ数年、特に都市部や観光地での路線価の上昇が顕著であり、全国的にも路線価は上昇傾向にあります。路線価の上昇は相続税額の増加につながるため、このような状況下では早めの相続税対策が重要です。具体的な対策としては、生前贈与の活用や小規模宅地等の特例の利用などが考えられます。これらの対策を考える際には、まず現状を正確に把握することが重要です。その第一歩として、最新の路線価に基づいた評価額の算定及び相続税額のシミュレーションを行うことが必要となります。ご不明点等ございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせください。 令和6年改正育児・介護休業法 令和6年通常国会において、育児や介護休業、その他雇用に関する法律が改正されました。これにより、労働者が仕事と家庭生活を両立しやすくするための新しい規定が導入されました。今回の記事では、事業主が押さえておくべきポイントを4つに絞り、改正の概要について解説します。 ポイント1 対象労働者の範囲拡大 所定外労働(残業免除)の対象となる労働者の範囲が、現行法の3歳未満の子を養育する労働者から、小学校就学前の子を養育する労働者に拡大されます。 子の看護休暇が見直され、対象となる子の範囲が、小学校就学前の子から、小学校3年生修了までの子に拡大されます。 また、勤続期間が6月未満の労働者については、労使協定に基づき子の看護休暇の申出を行うことができる対象としないことが可能でしたが、これが廃止されます。介護休暇も同様です。 なお、子の看護休暇については、休暇の取得事由に「感染症に伴なう学級閉鎖等」、「入園式・卒園式・入学式等」が追加されました。 ポイント2 子の養育を支援する新たな給付金の創設 出生後休業支援給付 出生後休業給付金は、夫婦が共に14日以上の育児休業等を取得した場合に、休業開始前賃金の13%相当額を支給するものです。最大で28日間まで受給が可能となります。これにより、おおむね休業前の手取り額と同額の給付を受けられることになります。【内訳 既存の育児休業給付(67%)+出生後休業支援給付金(13%)】 ちなみに、14日以上の育休取得は、育休期間中の社会保険料免除要件の1つにもなっているため、育休取得日数の1つのスタンダードになりえるでしょう。 出典:概要・参考資料 (cfa.go.jp) 育児時短就業給付 育児時短就業給付は、2歳未満の子を養育するために時短勤務をしている場合に、時短勤務中に支払われた賃金の10%相当額を支給するものです。 ポイント3 事業主が措置を講ずる義務 事業主は、3歳から小学校就学前までの子を養育する労働者に関する柔軟な働き方を実現するための措置を講じることが義務付けられます。具体的には、次の中から2以上の制度を選択して措置する義務が課せられます。労働者はその中から1つを選択することが可能です。 始業時刻等の変更 テレワーク等 保育施設の設置運営等 新たな休暇の付与 短時間勤務制度 テレワークの活用推進 3歳に満たない子を養育する労働者がテレワークを選択できるように措置を講ずることが事業主に努力義務化されます。また、労使協定により短時間勤務が困難な業務に従事する労働者を適用除外とする場合の代替措置にテレワークが追加されました。 短時間勤務制度の代替措置 出典:令和5年12月26日労働政策審議会雇用環境・均等分科会報告 概要 ポイント4 個別周知、面接等の意向確認 労働者が妊娠や出産の申出を行った際や、介護に直面した旨の申し出があった時に、仕事と家庭の両立に関する個別の周知・意向確認を行うことが事業主に義務付けられました。労働者等への早期の情報提供や、雇用環境の整備(研修など)が必須となります。よりよい理解のために、まず労務担当者が知識を深めていきましょう。 いかがでしたでしょうか。これらの改正は2025年(令和7年)4月1日から順次施行されます。その他にも細かい改正点はいくつかありますが、まずはこれらのポイントを理解し、労働者の働きやすさ向上を目指していきましょう。 株主資本の振替 株式会社の貸借対照表の各項目のうち、株主資本である資本金、資本準備金、その他資本剰余金、利益準備金及びその他利益剰余金は一定の条件の下、株主総会の決議によって振り替えることが可能です。資本準備金を利益準備金に振り替えることができない等の一定の制限はありますが、資本金を資本準備金(又はその他資本剰余金)に振り替える、その他利益剰余金を資本金に振り替えるといった行為はよく行われています。以下、株主総会の決議によって振り替えることができる株主資本について記載しています。 資本金の振替 資本金の額を減少し、減少した資本金の額を資本準備金又はその他資本剰余金とすることができます。これは、事業年度末までに資本金の額を1億円以下又は5億円以下としたいケースでよく行われています。資本金の額を減少するときは債権者保護手続きが必須となりますので、手続きスタートから資本金の額の減少の効力発生まで最低でも約1.5か月程度の期間を要するため、事業年度末までに資本金の額を減少するのであれば早めにスケジュールを組んでおくことをお勧めします。資本金の額の減少のご相談をいただいたタイミングでは、事業年度末にその効力を生じさせることが間に合わないケースも少なくありません。 資本準備金の振替 資本準備金の額を減少し、減少した資本準備金の額を資本金又はその他資本剰余金とすることができます。減少した資本準備金の額を全て資本金とする場合、又は減少した資本準備金の額をその他資本剰余金とする場合であっても、定時株主総会において欠損の額として法務省令で定める方法により算定される額を超えない額を減少させる決議をしたときは、債権者保護手続きは不要です。 その他資本剰余金の振替 その他資本剰余金の額を減少し、減少したその他資本剰余金の額を資本金又は資本準備金とすることができます。また、前期末の貸借対照表が定時株主総会で承認され確定したときは、当該確定した貸借対照表におけるその他利益剰余金のマイナス額がゼロになるまでは、減少したその他資本剰余金の額をその他利益剰余金とすることができます(損失の処理)。資本金又は資本準備金の額を損失の処理に充てたい場合は、まず資本金の額又は資本準備金の額を減少し、減少した資本金の額又は資本準備金の額をその他資本剰余金とした後に、その他資本剰余金の額を減少して、減少したその他資本剰余金の額をその他利益剰余金とすることになります。 利益準備金の振替
- [RSM汐留パートナーズ・ニュースレター 2024年9月号](https://shiodome.co.jp/news/22837/) - 国外事業者の納税義務厳格化・マイナ保険証・ホテル、旅館業における在留資格 日頃よりお世話になっております。RSM汐留パートナーズです。今月のニュースレターでは、税務より「国外事業者の納税義務厳格化」、労務より「マイナ保険証」、行政書士法人より「ホテル・旅館業における在留資格」について取り上げます。 行政書士法人では、ホテル・旅館業で働く外国人でも様々な在留資格が混在していることもあり、外国人を雇う企業からどの在留資格を取得すべきかといった悩みへの一助となる情報を取り上げます。 さらに労務にて取り上げるマイナ保険証について、令和6年12月2日より健康保険証の新規発行が終了し、健康保険証とマイナンバーカードが一体化されます。これにより私たちの生活がどのように変わっていくのか、そのメリットや、準備すべき手続きについて解説していきますので、今月のNewsLetterを是非お役立てください。 国外事業者の納税義務厳格化 令和6年度の税制改正において、消費税に関する国外事業者(非居住者である事業者又は外国法人)の納税義務を厳格化するいくつかの改正が行われました。特に、国外事業者に係る免税事業者の判定が厳格化され、国内事業者との公平性を確保が図られることとなりました。当改正は、国内事業者の海外子会社が国内で事業を行う場合や、外国法人の日本子会社に大きな影響を与えるものと考えられます。適用時期は2024年10月1日以降に開始する事業年度となっていますので、このタイミングで概要を整理したいと思います。 「新設法人に適用される特例」の適用拡大 従前、基準期間のある外国法人が日本で事業を開始する場合、基準期間はあるものの、その期間に国内取引がないため、課税売上高はゼロとなり、原則として2年間は免税事業者になることができました。今回の改正により、基準期間のある外国法人にも、新設法人に適用される「免税事業者になれない特例」が適用されることになりました。 「免税事業者になれない特例」とは、「①資本金1,000万円以上、又は②課税売上高5億円超の者に支配されている法人は免税事業者になれない。」というものです。これにより、従前は有利だった基準期間のある外国法人も、新設法人と同じ基準で判定されることになります。更に、上記「免税事業者にならない特例」のうち、②の支配者要件に「総収入50億円超」が追加され、国外売上が大きい外国法人の日本子会社の免税事業者判定がより厳格化されます。 以上をまとめると、国外事業者が国内で事業を開始する際には、基準期間の有無に関係なく、以下の「免税事業者にならない特例」が適用されることとなります。 国内で事業を始めた国外事業者が免税事業者にならない特例 特定期間の判定における給与支払額の使用制限 国外事業者は、免税事業者の判定において、特定期間の課税売上高の計算に給与支払額を使用できなくなりました。特定期間の判定とは、基準期間で免税事業者となっても、特定期間の課税売上高が1,000万円を超える場合に免税判定が取り消されるもので、従来は課税売上高の代わりに給与支払額で判定することが可能でした。国外事業者は日本国内で居住者に給与を支払うケースが少ないため、この方法を認めると免税事業者になりやすい抜け穴となっていました。よって、国外事業者に対して特例が適切に機能するよう、給与支払額による判定を認めないこととされました。 おわりに 消費税制度の根幹は、国内取引を行う全ての事業者に対して公平な納税義務を課すことにあります。一方で、免税事業者制度は小規模事業者の事務負担軽減を目的としています。今回の改正は、この制度の趣旨に沿って、国外事業者に対する免税事業者判定を厳格化したものといえます。ご不明点等ございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせください。 マイナ保険証・ホテル 令和6年(2024年)12月2日より、健康保険証の新規発行が終了します。健康保険証とマイナンバーカードが一体化され、利用者に新たな形での医療アクセスが提供されることになります。この記事では、健康保険証が廃止されることで私たちの生活がどのように変わっていくのか、そのメリットや、準備すべき手続きについて解説していきます。 ①マイナ保険証とは 健康保険証を利用登録したマイナンバーカードを「マイナ保険証」といいます。 ②私たちが準備すること マイナンバーカードと健康保険証の紐づけ 健康保険証の新規発行が終了することに伴い、マイナ保険証を利用した医療機関等の受診方法へ仕組みが移行します。そのためには、まずマイナンバーカードと健康保険証の紐づけが第一優先です。紐づけ方法は、以下の3パターンがあります。詳細は厚生労働省HPを参照ください(マイナンバーカードの健康保険証利用方法|厚生労働省 (mhlw.go.jp))。 顔認証付きカードリーダーからの申請 マイナポータルからの申請 セブン銀行ATMからの申請 ③マイナ保険証が使えない場合の「資格確認書」 各保険者から順次発送される健康保険の「資格情報」のお知らせを切り取って保管をしておきましょう。事業主の皆さまは必ず従業員への配布をお願いします。 「資格確認書」には、被保険者情報、記号番号、生年月日、資格取得年月日や保険者名称などが記載されています。なお、健康保険証は令和7年12月1日まで使用することができますが、退職等で健康保険の資格を喪失した場合は、退職日の翌日以降は使用できませんのでご注意ください。 ④マイナ保険証を使用するメリットその1 マイナ保険証で受診をすることで、初めての医療機関等でも特定健康診査や薬剤・診療情報が医師等と共有され、より適切な医療が受けられると言われています。これまでの自身の健康データに基づいた適切な診断を受けられたり、投薬の重複を避けられたり、旅先での医師等の情報連携に役立つなどと言われています。 ⑤マイナ保険証を使用するメリットその2 これまでは「高額療養費制度」により「限度額適用認定証」の提示をすることで、医療機関等での窓口負担を一定額まで抑えることが可能となっていましたが、マイナ保険証で受診をすると、「限度額適用認定証」の提示が不要で、窓口負担を低減することができます。つまり手続きが大幅に簡略化され、高額療養費制度を受けられるようになります。これは大きなメリットでしょう。 いかがでしたでしょうか。2024年12月の健康保険証廃止まであと数ヶ月。今回の記事ではマイナ保険証への移行とそのメリット、準備すべき手続きについて解説しました。マイナ保険証は医療の質向上や手続きの簡略化に寄与し、より効率的な医療アクセスを実現します。早めの準備を進めていきましょう。 旅館業における在留資格 令和5年10月末時点の全外国人労働者に対する技術・人文知識・国際業務の割合は17.9%、特定技能は6.8%、技能実習は20.1%と、この3つの在留資格が実に全外国人労働者の44.8%を占めている。昨今、この3つの在留資格がリンクする職場が多く、外国人を雇う企業の方からどの在留資格を取得するべきかという悩みを多く聞くようになりました。今回はホテル・旅館業(宿泊分野)におけるそれぞれの業務を比較し理解を深めていければと思います。 技術・人文知識・国際業務 技術・人文知識・国際業務は専門的・技術的分野の業務を行う在留資格です。そのため、一定水準以上の業務を行うことが必要とされています。宿泊分野では外国人の宿泊が多いホテル・旅館にて外国語を用いたフロント業務、本国からの観光客が多く利用するホテル・旅館業にて集客拡大のための本国旅行会社との交渉に当たっての通訳・翻訳業務、従業員に対する語学の指導、宿泊客の多くを外国人が占めるホテルにおいてフロント業務や宿泊プランの企画立案業務、空港に隣接するホテル・旅館にて集客拡大のためのマーケティングリサーチ、外国人観光客向けの宣伝媒体(HP)作成などの広報業務などがあげられる。申請人である外国人には大学等での専攻や実務経験と日本で行う業務と関連性が求められます。 技能実習 技能実習は2024年6月14日の参議院議員本会議において育成就労制度に代わることが可決され、2027年までの導入が予定されております。目的が移転による国際協力の推進から特定技能1号水準の技能を有する人材を育成するとともに、当該分野における人材を確保することに改正されたことにより、特定技能1号の人材育成と人材確保のための制度と位置付けられました。 宿泊分野では以下の業務を行うこととされております。技術・人文知識・国際業務と違い単純労働に従事することができます。 一定の宿泊施設における宿泊、飲食、会合等での施設の利用客に対する、到着時・出発時の送迎 チェックイン・チェックアウト作業 滞在中の接客作業や料飲提供作業 施設の準備・整備 利用客の安全確保・衛生管理のための作業 関連業務: ポーター等玄関周辺の接客作業 客室への案内業務 客室の清掃・整備作業 周辺作業:食器洗浄作業 特定技能 特定技能は深刻化している人手不足を解消するために創設された在留資格です。相当程度の知識又は経験を必要とする技能に従事する外国人向けの在留資格です。宿泊分野における業務は以下の通りです。 宿泊施設におけるフロント、企画・広報、接客及びレストランサービス等の宿泊サービスの提供 関連業務:
- [RSM汐留パートナーズ・ニュースレター 2024年10月号](https://shiodome.co.jp/news/23117/) - 外国人旅行者向け免税制度の改正・最低賃金の過去最大の引き上げ・代表取締役等住所非表示措置の導入 日頃よりお世話になっております。RSM汐留パートナーズです。 今月のニュースレターでは、税理士法人より「外国人旅行者向け免税制度の改正」、社会保険労務士法人より「最低賃金の過去最大の引き上げ」、司法書士法人より「代表取締役等住所非表示措置の導入」について取り上げます。 税理士法人では、免税品の不正な国内転売防止を目的に、2024年度税制改正で変更された「輸出物品販売場制度」について解説しています。また、社会保険労務士法人からは、過去最大の引き上げとなった最低賃金について、その制度の概要をお伝えします。 さらに、司法書士法人では、株式会社の代表取締役等の住所を一部非表示にできる新しい措置について、その内容と留意点をまとめています。 今月のニュースレターも、是非お役立てください。 外国人旅行者向け免税制度の改正 2024年度税制改正により、外国人旅行者等向けの免税制度である「輸出物品販売場制度」に関連する仕入税額控除に制限が加えられました。この改正は、免税購入品は国外への持ち出しが前提とされているにもかかわらず、国内で転売される事例が増加していることを背景に、税の公平性を確保するために行われたものです。今回は免税品の消費税に関して従来の制度と問題点、及び今回の税制改正の内容と趣旨について見ていきたいと思います。 免税品に係る従来の制度とその問題点 「輸出物品販売場制度」とは、外国人旅行者等を対象に、特定の販売場(免税店)で商品を購入する際、消費税が免除される制度のことです。制度概要と目的は以下の通りです。 しかしこの制度により、国外に持ち出されるべき免税購入品が国内で不正に転売され、国内事業者がこれらの免税品を買い取る場合には、免税取引に該当せず、仕入税額控除の対象となり、不正な取引が助長されるといった悪循環、及び外国人旅行者が出国時に免税購入品を所持していない場合において消費税の徴収が困難となり、その多くが滞納されるといった問題が生じていました。 2024年度税制改正内容とその趣旨 2024年度税制改正では、2024年4月1日以降に国内事業者が免税購入品と「知りながら」仕入れた場合、その仕入れに係る消費税額について仕入税額控除の適用を受けられなくなります。当該「知りながら」の判断基準としては、例えば次のような状況が含まれます。 これらの状況においては、明白な証拠がなくても、取引の頻度や規模、仕入れ時の確認状況を総合的に勘案して免税品であると認定される可能性があります。 また、古物商などが免税品を仕入れる場合も、事実関係から「知りながら」仕入れたと判断されれば、インボイス制度における古物商特例が適用されていても仕入税額控除は認められないことになります。 改正の趣旨は、免税品が国外で消費されることを前提とする免税制度の本来の目的を守り、国内での不正な転売や税逃れを防ぐことにあります。これにより、国内で消費される商品に対して適正な消費税が課され、税の公平性が強化されることが期待されています。 おわりに 今回の税制改正は、免税制度の不正利用に対処するための重要な一歩といえます。国内事業者には取引時の確認作業の徹底と取引の透明性の確保がより一層求められます。更に、今後政府の免税販売管理システムの導入により、免税購入品の国外持ち出し確認が厳格化される見込みです。ご不明点等ございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせください。 最低賃金の過去最大の引き上げ 2024年8月29日、厚生労働省は、全国の最低賃金を平均51円引き上げることを正式に決定しました。この引き上げにより、全国の最低賃金平均は1,055円となり、過去最大の引き上げ幅となります。 最低賃金は、労働者が生活できる最低限の賃金を保証するために設定された制度です。毎年、労働者や経営者、政府の代表者による協議を経て、地域ごとに決定されます。今年度は全国平均で過去最大の51円アップとなり、東京都では来年にも1200円を突破する見通しとなっています。この背景には、物価上昇や労働力不足が影響しています。 今回の記事では、最低賃金とは?その決定方法などを解説しつつ、今年度の状況について触れていきます。 最低賃金は、労働者の生活を支えるために、都道府県などの地域や、特定最低賃金といって、産業別に設定される最低賃金があります。一般的に言われる最低賃金は、地域ごとに決定されるものですが、その決定プロセスは以下のように進められます。 1. 中央最低賃金審議会の提言 まず、厚生労働省の下に設置された「中央最低賃金審議会」が、全国の経済状況や物価、雇用の動向を考慮して、最低賃金の改定に関する目安を示します。この審議会は、労働者代表、使用者代表、学識経験者からなるメンバーで構成されています。 2. 各都道府県の審議会で議論 中央最低賃金審議会の提言を受けて、各都道府県に設置された「地方最低賃金審議会」が、地域の経済状況や企業の支払能力などを踏まえ、具体的な金額を決定します。このプロセスでは、地域ごとの事情が考慮され、都市部と地方で異なる最低賃金が設定されることが一般的です。 3. 改定と公示 審議会での決定後、各都道府県の知事が最低賃金を公示し、一定の周知期間を経て正式に改定が行われます。 また、最低賃金の決定には、労働者が生活できる賃金水準、企業の経済力、物価上昇率などのバランスが取られることが重要です。今年度は、物価の上昇や人手不足などの影響を受け、過去最大の引き上げとなりました。 この決定は、中央最低賃金審議会が提案した目安を基にしており、物価上昇や労働力不足が影響した結果です。新しい最低賃金は、2024年10月から全国各地で段階的に適用される予定です。 以下に、令和6年度の地域別最低賃金の答申状況URLを記載します(厚生労働省HPより)。001297510.pdf (mhlw.go.jp) 厚生労働省では、令和6年度の地方最低賃金賃金審議会の答申のポイントを次のように述べています。 47都道府県で、50円~84円の引上げ 改定額の全国加重平均額は1,055円(昨年度1,004円) 全国加重平均額51円の引上げは、昭和53年度に目安制度が始まって以降で最高額 最高額(1,163円)に対する最低額(951円)の比率は、81.8%(昨年度は80.2%。なお、この比率は10年連続の改善) 最高額の東京都(1,163円)と最低額の地域との差は約200円となり、全国で賃金格差の縮小も進んでいます。また、この引き上げによって、最低賃金が労働者の生活水準を維持するための重要な役割を果たしていることが再認識されました。 最低賃金は労働者の生活を守り、経済全体に影響を与える重要な制度です。2024年度は、全国平均で51円の過去最大の引き上げとなり、物価上昇や労働力不足といった経済的な背景がその要因となっています。この改定により、全国の最低賃金平均は1,055円となり、特に都市部では賃金が急上昇しています。 最低賃金の決定は、労働者や使用者、政府の代表者が協議を重ね、経済状況や地域差を考慮して行われます。今回の大幅な引き上げは、労働者の生活水準向上に寄与する一方で、企業側にも負担が生じるため、バランスを取ることが引き続き課題です。今一度、自社の給与体系を見直すきっかけにしてみてはいかがでしょうか。 代表取締役等住所非表示措置の導入 株式会社の代表取締役、代表執行役又は代表清算人(以下「代表取締役等」といいます。)の住所は登記事項であるため、登記事項証明書を取得すれば誰でもその住所を確認することができます。自身の住所が公開されることへの抵抗感がある等の声の高まりを受け、プライバシー保護及び起業促進の観点から、令和6年10月1日以降、代表取締役等住所非表示措置(以下「非表示措置」といいます。)を講じることを申し出ることができるようになりました。 非表示措置の対象となる法人等 非表示措置の制度の対象は株式会社のみであり、合同会社・一般社団法人・有限責任事業組合等の法人・組合は現在のところその対象ではありませんので、代表社員や代表理事等の住所を非表示にすることはできません。 非表示措置の対象となる証明書等 登記事項証明書・登記事項要約書・登記情報提供サービスに非表示措置が講じられます。 非表示措置を申出ることができる時期 非表示措置の申出はそれ単独で行うことはできず、設立の登記・代表取締役等の就任(重任)登記・代表取締役等の住所移転による変更登記・管轄外への本店移転の登記等の特定の登記申請と同時に行うことができます。 最小行政区画までは登記される 非表示措置が講じられた後も、登記事項証明書等には代表取締役等の住所の最小行政区画までは記載されますので、完全に非表示となるわけではありません。代表取締役等の住所が「東京都港区新橋●丁目●番●号」の場合、非表示措置が講じられた後は、登記事項証明書等には「東京都港区」まで記載されることになります。 過去に登記された住所は消えない
- [RSM汐留パートナーズ・ニュースレター 2024年11月号](https://shiodome.co.jp/news/23410/) - 2024年年末調整の定額減税対応・賃金デジタル払いの導入・在留申請の進捗確認不可の影響 日頃よりお世話になっております。RSM汐留パートナーズです。 今月のニュースレターでは、税理士法人より「2024年 年末調整の定額減税対応」、社会保険労務士法人より「賃金デジタル払いの導入」、行政書士法人より「在留申請の進捗確認不可の影響」についてお届けします。 税理士法人では、所得税と住民税の定額減税に関する年末調整のポイント、社会保険労務士法人では、キャッシュレス決済の普及に伴う賃金デジタル払いの導入方法、行政書士法人では、出入国在留管理庁の新通知が新卒採用などに与える影響について解説しています。 今月のニュースレターも、是非お役立てください。 2024年年末調整の定額減税対応 11月を迎え、今年も年末調整の季節が到来しました。2024年の年末調整において、特に注目されるのは「定額減税」への対応である「年調減税事務」です。年調減税事務は、年末調整時に定額減税額及び年間の所得税額を計算し、源泉徴収税額との差額を精算する手続きです。今回は、定額減税及び年調減税事務のポイントを見ていきたいと思います。 定額減税制度の概要 定額減税とは、2024年6月から1年間実施される、所得税3万円と個人住民税1万円の計4万円を一律に減税する税負担軽減措置です。対象者は、納税者本人、同一生計配偶者、扶養親族(16歳未満も含む)であり、適用要件は居住者であること、令和6年分の合計所得金額が1,805万円以下であることです。基本的には2024年6月以降に支払われる給与の源泉徴収税額から定額減税額が控除されることにより減税が行われますが(月次減税事務)、年末調整で年間の所得税額に対して定額減税の適用額を精算し、月次の源泉徴収で生じた税額の過不足を調整します(年調減税事務)。 年調減税事務の流れ ① 対象者の確認 年調減税額を控除する対象者は、原則として年末調整の対象となる人です。ただし、給与所得以外の合計所得金額が1,805万円を超える見込みがある場合は、年調減税額を控除せずに年末調整を行います。 ② 年調減税額の計算 扶養控除等申告書や配偶者控除等申告書を基に、同一生計配偶者の有無や扶養親族の人数を確認します。該当人数に3万円を乗じた金額が年調減税額となります。 ③ 年調減税額の控除 算出した年調減税額を年末調整で計算した所得税額(住宅借入金等特別控除後の所得税額)から控除し、102.1%を乗じて復興特別所得税を含めた年調年税額を計算します。そして、求めた年調年税額と源泉徴収税額を比較し、過不足額の精算を行います。 ④ 源泉徴収票への記載 給与所得の源泉徴収票には、実際に控除した年調減税額を「源泉徴収時所得税減税控除済額〇〇円」として摘要欄に記載します。 年調減税事務における留意点 国税庁が作成している「令和6年分給与所得に対する源泉徴収簿」の「年末調整」欄は、年調減税額の控除等の計算に対応していないため、年調減税額を正確に控除するためには、国税庁ホームページに掲載されている「令和6年分年末調整計算表」又は「年末調整計算シート(Excel)」を利用するとよいでしょう。 おわりに 2024年の年末調整では、今回説明した定額減税への適切な対応が求められます。給与支払者と納税者双方が正確な申告書を作成提出することで、年末調整プロセスをスムーズに進めることが可能となります。ご不明点等ございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせください。 賃金デジタル払いの導入 デジタル時代の進化に伴い、企業の給与支払い方法も変革を遂げています。キャッシュレス決済の普及や送金サービスの多様化が進む中で、2023年4月に労働基準法施行規則が改正され、モバイル決済アプリ、デジタルウォレットなど資金移動業者の口座への資金移動による賃金支払(賃金デジタル払い)が可能になりました。 労働基準法のもとでは、賃金は現金払いが原則ですが、労働者が同意すれば、金融機関の口座への振り込みが認められてきた経緯があります。キャッシュレス決済の利用が広まり、多様な送金方法の必要性が高まる中、労働者の同意を得た上で、指定の資金移動業者の口座を利用した賃金の支払いも可能になったのです。 賃金の支払い方法については、労働基準法第24条で定められており、「通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」とされています(通貨払の原則)。賃金の「通貨払い」とは、「現金」で支払うことを指しますが、多くの人は、銀行や証券総合口座への振込により、賃金を受け取っています。振込により支払う方法は、通貨払い原則の例外であるといえます。 この例外の方法については、労働基準法施行規則第7条の2において、(1)本人指定の預貯金口座も振り込む方法と(2)証券総合口座へ払込む方法が定められています。労働者からの同意を得た場合にのみ、例外方法で支払うことが可能です。 2023年4月の労働基準法施行規則改正により、(1)(2)の方法に加えて(3)「※指定資金移動業者の口座」が追加されました。2024年8月にはPayPayが資金移動業者の口座への賃金支払いについて厚生労働大臣の初の指定を受けています。 ※資金移動業者: 資金移動業者とは、銀行以外の業者で、送金や振込といった為替取引を行うことができる業者を指します。これらの業者は、資金決済に関する法律に基づいて登録され、電子マネーや送金サービスを提供することで、ユーザー間での資金移動を行います。銀行とは異なり、特定の条件の下で業務を行うことが可能です。 指定の資金移動業者の口座を利用して賃金を支払うには、以下の手順が必要です。 1. 労使協定の締結 企業は労働組合や労働者の過半数を代表する者と協議し、対象とする労働者、賃金の内容とその金額、開始時期について合意する労使協定を結ぶ必要があります。 2. 支払い口座の選択肢の提供 賃金のデジタル払いはあくまでも賃金の受取方法の選択肢のひとつであるため、資金移動業者の口座のみを案内するのは禁じられており、銀行口座や証券総合口座への支払等、デジタル払い以外の選択肢も提供しなければなりません。 3.労働者への説明と同意取得 企業は、資金移動業者のサービスが銀行とどのように異なるか、口座の上限や破綻時の保障、アカウントの有効期限などの詳細について労働者に説明する必要があります。この説明は、資金移動業者が行うことも可能です。労働者は賃金のデジタル払いの留意事項に関する説明を受け、理解をした上で使用者に同意書を提出することが求められています。デジタル払いを希望しない労働者に強制することはできません。 この手順を通じて、企業は労働者と合意の上で新たな賃金支払いの方法を導入できます。 決済サービスの多様化が進む中、賃金のデジタル払の給与に対するニーズは高まっていくものと考えられますが、賃金のデジタル払い導入には労使協定の締結など、法律や規制の理解が欠かせません。日本国内では労働基準法などに基づき、給与の支払い方法や労働者の同意が必要です。国際的にも、各国の法的枠組みに従う必要があります。企業はこれらを遵守し、各種手続きを適切に行うことが求められます。 また、デジタル支払いにおけるセキュリティとプライバシーの確保も重要な課題です。データ漏洩や不正アクセスのリスクを防ぐため、常に最新のセキュリティ技術を導入し、従業員と企業の双方にとって安全な環境を整えることが求められます。 今後、ブロックチェーン技術やAIの活用により、さらなる進化が期待されます。これら先進技術を用いることで、支払いプロセスの透明性や効率性が一段と高まり、企業の競争力強化につながるでしょう。 在留申請の進捗確認不可の影響 2024年10月16日、出入国在留管理庁から「在留諸申請を行っている皆様へのお知らせ」というタイトルで重要な案内が発せられました。内容はいくつかありますが、その中でも着目したいのは「個別の申請に関する審査の進み具合、審査終了時期や処分結果の見通しをお問合せいただいても、回答することはできません。(なお、オンライン申請の場合は、在留申請オンラインシステムにおいて、ご自身で審査の進み具合が確認できます。)」というものです。これがどの程度インパクトのあるものなのか、これから始まる4月入社の新卒採用の手続きと絡めてご紹介いたします。 審査の進み具合等が確認できない 今までは東京出入国在留管理局であればWカウンターにて直接審査の進捗を確認することができました。その際の職員の回答は「審査中」もしくは「審査が完了しました」の二通りが原則でした。それでも「同じ日に申請した別の案件も審査中ですか?」などと聞いて少しでも情報を得ることはできましたが、今後は審査の進捗が全くわかりません。出入国在留管理庁もホームページで四半期ごとの在留審査処理期間を公表してきましたが、これを受けて月1回の更新頻度になりました。ただ、出入国在留管理庁が発するものは全国の出入国在留管理局の平均であり、それぞれの管轄で審査期間は異なります。またカテゴリー別にはなっていないのでやはり精緻にそれぞれの状況に当てはめるのは難しいところです。 このため、今後は雇用開始日に至っても審査がおりず、この先の見通しも全く立たないという状況が予想されます。雇用サイドにとっては事業部との調整や申請人のケアなど、対応すべきことが多くなりそうです。また、これから新卒採用の申請時期が始まろうとしておりますが、昨年起こった問題について注意を払っていただければと思います。 昨年の4月採用申請時に起こった問題 4月の新卒採用の申請は東京出入国在留局であれば例年12月中には受付が開始されます。1月中に申請をすれば4月1日雇用開始には間に合うスケジュールです。ただ、昨年はオンライン申請を行い在留カードの郵送受領を選択した際に問題が生じました。オンライン申請をした際には許可後、在留カードを郵送で受領することができるのですが、申請件数が多く、在留カードの発行から郵送に3週間から1カ月ほどの期間を要しました。雇用開始日である4月1日には新しい在留カードを有していなければならないところ、これが叶わないという状況が生じました。また、採用遅れて申請も遅くなってしまった場合は、雇用開始日ギリギリになっても進捗確認ができませんので、新卒採用に関する申請にもインパクトがあります。
- [RSM汐留パートナーズ・ニュースレター 2024年12月号](https://shiodome.co.jp/news/23583/) - 税制適格SO制度の拡充・マイナ保険証の運用開始・非公開会社の募集株式発行と委任 日頃よりお世話になっております。RSM汐留パートナーズです。 今月のニュースレターでは、税理士法人より「税制適格ストックオプション制度の拡充」、社会保険労務士法人より「マイナ保険証の運用開始」、司法書士法人より「非公開会社の募集株式発行と委任」についてお届けします。 税理士法人では、令和6年度税制改正で拡充された税制適格ストックオプション制度と2024年12月31日適用期限の経過措置について、社会保険労務士法人ではマイナ保険証の本格運用に向けた取得方法や移行スケジュールについて、司法書士法人では非公開会社の募集株式発行における委任方法について解説しています。 今月のニュースレターも、是非お役立てください。 税制適格SO制度の拡充 令和6年度税制改正により、税制適格ストックオプション(以下、SO)制度の拡充がなされました。これに伴い、一定の要件に関しては改正前(2024年3月31日以前)に締結された税制適格SO契約でも改正内容に即した契約変更を行うことで、新しい税制が適用される経過措置が設けられています。今回は、当該経過措置の適用期限が2024年12月31日に迫る中、今一度、税制適格SOに関する令和6年度税制改正の概要及び経過措置の内容と留意点について見ていきたいと思います。 税制適格SOに係る令和6年度税制改正 令和6年度税制改正では、スタートアップ企業を中心に人材獲得力を高めるための柔軟な運用を可能とすべく、以下のような変更が行われました。 経過措置の内容 2024年3月31日以前に締結された税制適格SOの契約に対して、以下の内容の契約変更をすることにより、改正後の制度が適用されます。 年間権利行使価額限度額を、1,200万円から最大3,600万円へ引き上げる契約変更 証券会社等への株式保管委託を不要とする発行会社自身による株式管理スキームを導入する契約変更 但し、経過措置を適用するには、2024年12月31日までに契約変更を行う必要があり、この期限を過ぎると、改正後の有利な要件を既存契約に適用することはできなくなります。 契約変更の留意点 契約変更に際しては「税制適格要件とは関係のない契約事項の変更」又は「税制適格要件を満たす範囲内での変更」で、変更後の権利行使についても当初の契約に従って行われるものについては、税制適格性が維持されます。しかし、「税制適格要件を満たす範囲内での変更」だとしても、上述の経過措置に即した変更を除き、当初の契約の範囲を超える変更は、原則として税制適格性を失うことにな る点に留意が必要です。例えば、当初契約の行使期間を「3~8年」から「2~10年」に変更することは、当初契約の範囲を超えた変更として、税制適格SOとして取り扱うことができなくなります。 おわりに 令和6年度税制改正によるストックオプション制度の変更は、多くの企業、特にスタートアップ企業の成長を支援する重要な施策といえます。経過措置の適用期限が迫っているため、契約変更を検討している企業は迅速に対応する必要があります。この改正は、人材確保や企業価値向上を目指し、自社に最適なストックオプション制度を考える良い機会ともいえます。ご不明点等ございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせください。 マイナ保険証の運用開始 2024年12月2日より健康保険証の新規発行が終了し、マイナ保険証が本格的に運用開始となります。社員への周知や手続きに不安を感じている方も多いのではないでしょうか?本記事では、資格確認書の取得方法、マイナ保険証移行スケジュールと各種保険証の使用期限などを具体的に解説していきます。 1. 健康保険証新規発行対象の期限 健康保険証の発行対象は、2024年11月29日(金)処理完了分までとなっています。よって、仮に入社日が11月中旬であったとしても、処理の完了が11月29日を過ぎてしまった場合は、健康保険証は発行されません。保険証の発行基準は、入社日には影響を受けませんのでご注意ください。また、扶養家族の健康保険証や紛失時の再発行についても同様となります。 2.マイナ保険証の利用登録について マイナ保険証を利用するためには、マイナンバーカードを健康保険証として登録する手続きが必要です(会社ではなく、本人が行います)。登録方法は以下の3つがあります。 医療機関・薬局にある顔認証付きカードリーダーから申請する マイナポータルから申請する セブン銀行ATMから申請する マイナ保険証の利用登録を行っていないと、マイナンバーカードを健康保険証として利用することはできませんので、まだ利用登録を行っていない人は早めの登録をお勧めします。 3.健康保険証と資格確認書の発行 3‐1 資格確認書の発行 「資格確認書」は、マイナンバーカードを持っていない、またはマイナ保険証の利用登録をしていない場合に、保険診療を受けるために必要な書類です。 資格確認書の発行は、以下のとおりです。 新規加入者: 2024年12月2日以降、資格取得届などによる申請に基づき、事業所を経由して発行されます。新規加入時に申請がなかった場合は、申請によらず発行されますが、発行まで1か月以上かかる場合があります。 既存加入者: 2025年12月2日以降、協会けんぽが必要と判断した場合(マイナ保険証の登録がされていない場合など)に発行されます。 資格確認書は、健康保険証と同様のプラスチック製のカード型で、有効期限は4~5年です。有効期限内に退職した場合は、会社へ返納する必要があります。 3‐2 資格確認書の発行手続き 資格確認書の発行については、以下の通りです。マイナ保険証の登録がされていない場合、職権で資格確認書が発行されますが、この手続きには約2か月ほどかかる見込みです。資格取得手続き時に「資格確認書を希望する」にチェックを入れた場合、数日で発行されます。 また、もしお急ぎの場合は、現行通り年金事務所等で発行される資格取得証明書を利用することもできます。 4.マイナンバーの提出について 資格取得手続時の影響 資格取得手続きの際にマイナンバーを提出していなくても、処理側が確認できる場合は影響はありません。ただし、過去に1度も提出していない場合は確認が取れない可能性があり、影響がないとは言い切れませんので、注意が必要です。 5.マイナ保険証移行スケジュールと保険証の種類・使用期限のまとめ 以下にマイナ保険証移行スケジュールと保険証の種類・使用期限をまとめましたので参考にしてみてください。 5‐1 制度移行スケジュール 2024年12月2日: 健康保険証の新規発行終了 2024年12月2日以降: マイナ保険証が正式に保険証として機能開始。マイナ保険証を所持している人は原則マイナ保険証のみで受診可能。 2025年9月以降: マイナ保険証を未登録の人に対して、資格確認書が順次発行される予定。 2025年12月1日:現行の健康保険証の有効期限
- [RSM汐留パートナーズ・ニュースレター 2025年1月号](https://shiodome.co.jp/news/23795/) - 令和7年度税制改正・2025年施行予定の法改正・外国人留学生の新卒採用手続きのポイント 日頃よりお世話になっております。RSM汐留パートナーズです。 今月のニュースレターでは、税理士法人より「令和7年度税制改正」、社会保険労務士法人より「2025年施行予定の法改正」、行政書士法人より「外国人留学生の新卒採用手続きのポイント」についてお届けいたします。 税理士法人では、令和7年度税制改正大綱における法人課税の注目論点について、社会保険労務士法人では2025年施行の法改正(育児・介護休業法、雇用保険法など)のポイントについて、行政書士法人では外国人留学生の新卒採用手続きにおける注意点について分かりやすく解説しています。 今月のニュースレターも、ぜひお役立てください。 令和7年度税制改正 2024年12月20日、2025年度税制改正大綱が公表されました。今回から2回に渡り、その中で注目度が高い論点を取り上げます。今回は法人に関わる主要な論点を見ていきます。 中小企業者等の法人税の軽減税率の延長と縮減 中小企業者等に対する法人税の軽減税率の適用期限が2年間延長されます。具体的には、年800万円以下の所得部分に適用される法人税の軽減税率15%(本則19%)の適用期限が、2025年3月31日から2027年3月31日までに開始する事業年度まで延長されます。一方、所得が年10億円を超える事業年度については、軽減税率が17%に引き上げられ、グループ通算制度適用法人は対象外となります。これらは2025年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。 新リース会計基準に関わる税制改正 2024年9月に公表された新リース会計基準では、借手側のオペレーティング・リース取引における従来の賃貸借処理が廃止され、使用権資産とリース負債を計上する方法に変更されます。適用開始は2027年4月1日以降ですが、2025年4月1日以降に早期適用することも可能です。一方、税務上のリース取引の取り扱いには大きな変更がなく、会計と税務の間に差異が生じることから、申告調整が必要になります。具体的には、会計上は使用権資産の減価償却費やリース負債に係る利息費用を計上しますが、税務上は従来通り支払賃借料として処理されるため、この差異について申告調整が求められます。 防衛特別法人税(仮称)の新設 法人の各事業年度の基準法人税額から基礎控除額(年500万円)を引いた金額に対し、4%の税率で防衛特別法人税(仮称)が課されます。この新税は2026年4月1日以降に開始する事業年度から適用されます。 外国人旅行者向け消費税免税制度の見直し 免税制度において、新たに「リファンド方式」が導入されます。この方式では、免税店が外国人旅行者から消費税相当額を販売時に預かり、出国時に持ち出しが確認された場合に返金を行います。また、一般物品と消耗品の区分や購入上限額(50万円)や特殊包装を廃止し、金地金等の不正利用リスクの高い物品を免税対象外とします。更に、税抜100万円以上の高額商品は商品の詳細情報を国税庁に報告することとし、店舗以外からの「別送」を廃止し、店舗からの「直送」のみが継続されます。これらは2026年11月1日以降の免税対象物品の譲渡等に適用されます。 おわりに 法人に関する税制改正の主な論点としては、この他にも、中小企業投資促進税制の2年延長、中小企業経営強化税制の2年延長及び見直し(売上高100億円超を目指す企業の設備投資支援等)、法人版ふるさと納税の3年延長と寄付活用事業の透明性向上などが挙げられます。今回のコラムでは取り上げなかった論点を含め、ご不明点等ございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせ下さい。 2025年施行予定の法改正 新年を迎え、2025年に施行される法改正をおさらいするタイミングがやって参りました。特に育児・介護休業法や雇用保険法、高年齢者雇用安定法など、従業員と企業の双方に影響を与える重要な改正が予定されています。今回の記事では、2025年に予定されている法改正について、施行時期から順にご紹介します。具体的には、2025年4月施行分に15項目、2025年10月施行に3項目の細かい改正が待ち構えています。 1.子の看護休暇の見直し 子の看護休暇の取得事由を、子の入園(入学)式・卒園式等の行事参加の場合も可能とし、対象年齢が「小学校就学の始期に達するまで」から、小学校3年生修了まで引き上げられます。 また、労使協定の締結により除外できる労働者の条件が緩和され、実質的により多くの労働者が子の看護休暇(※)を取得できることとなります。 ※この改正により、「子の看護休暇」から「子の看護等休暇」に名称も変更されます。 育児負担の軽減、仕事と家庭生活の両立を目指した環境整備を後押しするための法改正となるでしょう。 2.所定外労働の制限(残業免除)の対象拡大 改正前: 「3歳に満たない子を養育する労働者」が請求することで、所定外労働の制限(いわゆる残業免除)を受けることが可能でした。 改正後: 「小学校就学前の子を養育する労働者」まで拡充され、残業免除を請求することが可能となります。 3.短時間勤務制度(3歳未満)の代替措置にテレワークを追加・育児のためのテレワーク導入の努力義務化 「3歳に満たない子を養育する労働者」がテレワークを選択できるように、一定の措置を講ずるよう事業主に努力義務化として課されることとなります。 3歳に満たない子を養育する労働者がテレワークを選択できるように措置を講ずることが事業主に努力義務化されます。 また、労使協定により短時間勤務が困難な業務に従事する労働者を適用除外とする場合の代替措置にテレワークが追加されました(参照:ニュースレター 2024年8月号 | RSM汐留パートナーズ)。 4.育児休業等取得状況の公表義務適用拡大 育児休業等取得率の公表義務が拡大され、従業員数300人超の企業に、育児休業等の取得状況を公表することが義務付けられます。 ※男性の育児休業取得率等の計算方法、公表についての詳細はこちらを参照ください(mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/000103533_00006.html)。 5.育児休業取得等に関する状況把握・数値目標設定の義務付け 従業員数100人超の企業は、一般事業主行動計画策定時に育児休業取得状況や労働時間の状況把握等が義務付けられます(従業員数100人以下の企業は、努力義務の対象です)。(参照:育児・介護休業法、次世代育成支援対策推進法の2024(令和6)年改正ポイント|育児休業特設サイト|厚生労働省) 一般事業主行動計画の策定についてはニュースレター2024年6月号を参照ください(ニュースレター 2024年6月号 | RSM汐留パートナーズ)。 6.介護休暇を取得できる労働者の要件緩和 介護休暇について、1.子の看護休暇の見直しと同様に、労使協定に基づき除外できる労働者の要件が緩和されます。 7.介護離職防止のための雇用環境整備(義務) 介護休業や介護両立支援制度等(※)の申出が円滑に行われるようにするため、事業主は以下の 1~4いずれかの措置を講じなければなりません。 介護休業・介護両立支援制度等に関する研修の実施 介護休業・介護両立支援制度等に関する相談体制の整備(相談窓口設置) 自社の労働者の介護休業取得・介護両立支援制度等の利用の事例の収集・提供 自社の労働者へ介護休業・介護両立支援制度等の利用促進に関する方針の周知
- [RSM汐留パートナーズ・ニュースレター 2025年2月号](https://shiodome.co.jp/news/24081/) - 令和7年度税制改正・介護休業制度と助成金・代表取締役の選定 日頃よりお世話になっております。RSM汐留パートナーズです。 今月のニュースレターでは、税理士法人より「令和7年度税制改正」、社会保険労務士法人より「介護休業制度と助成金」、司法書士法人より「代表取締役の選定」についてお届けします。 税理士法人では、令和7年度税制改正大綱における個人所得課税の注目論点について、社会保険労務士法人では2025年の法改正を含む「介護休業制度」と「介護休業取得応援奨励金」について、司法書士法人では代表取締役の選定に関するポイントについて、分かりやすく解説しています。 今月のニュースレターも、ぜひお役立てください。 令和7年度税制改正 今回は2025年度税制改正大綱で、主に個人所得税に関わる注目論点を取り上げます。 物価上昇時における税負担及び就業調整への対応(いわゆる「103万円の壁」への対応) ①基礎控除の引上げ 所得税の基礎控除額が、合計所得金額2,350万円以下の個人に対し48万円から58万円へ引き上げられます。但し、個人住民税の基礎控除額(43万円)は据え置かれます。 ②扶養控除及び配偶者控除要件の合計所得金額要件の引上げ 扶養控除の対象となる扶養親族及び配偶者控除の対象となる配偶者の合計所得金額要件が、48万円以下から58万円以下に引き上げられます。 ③給与所得控除の最低保障額の引上げ 所得税・個人住民税の給与所得控除の最低保障額が55万円から65万円に引き上げられます。 ④特定親族特別控除(仮称)の創設 19歳以上23歳未満の同一生計の親族の合計所得金額が123万円以下であれば、一定の控除が適用されます。 これらの改正は、2025年度分以降の所得税及び2026年度分以降の個人住民税について適用されます。 確定拠出年金制度等の見直し ①マッチング拠出の要件緩和 企業型確定拠出年金制度において、加入者掛金が事業主掛金を超えてはならないという制限が廃止されます。 ②企業型確定拠出年金の拠出限度額の引上げ 確定給付企業年金に加入していない場合は月額5.5万円から6.2万円、確定給付企業年金に加入している場合は月額6.2万円(現行:5.5万円)から確定給付企業年金の掛金相当額を差し引いた金額に変更されます。 ③iDeCoの加入対象拡大と拠出限度額引上げ 60歳以上70歳未満で、現行ではiDeCoに加入できない一部の方が加入可能となります。拠出限度額については、第1号被保険者は月額6.8万円から7.5万円へ、企業年金加入者は月額6.2万円(現行:2.0万円)から企業年金の掛金額を差し引いた額へ、企業年金未加入者(第1号被保険者及び第3号被保険者 を除く)は月額2.3万円から6.2万円へ引き上げられます。 退職所得の計算等に係る見直し 退職手当等の一時金を受け取る場合、過去に老齢一時金を受給している場合、勤続年数の重複排除調整期間が4年から9年に延長されます。また、退職所得の源泉徴収票の税務署提出義務が全ての居住者に拡大されます(現行:居住者である役員)。これらは、2026年1月1日以降の支払分から適用されます。 おわりに 2025年度税制改正大綱には、103万円の壁への対応や確定拠出年金制度の見直し等、家計に直結する重要な変更が含まれています。 この他、住宅ローン控除の延長・拡充、事業承継税制の役員就任要件および事業従事要件の緩和、グローバルミニマム課税への対応等も注目論点といえます。ご不明点等ございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせ下さい。 介護休業制度と助成金 高齢化社会が進行するにつれて、要介護者の増加、介護者の高齢化、同居介護者の介護負担の増大など介護問題が深刻になってきます。従業員が家族を介護せざるをえない状況になる機会も多くなることが想定されます。そのような状況になった従業員をサポートする制度として介護休業制度があります。 本日は、介護休業の基礎知識について解説した上で、介護のために休まざるを得なくなった従業員をサポートする「介護休業取得応援奨励金」という制度を紹介し、最後に、最新の法改正について触れていきます。 1.介護休業とは… 「労働者が要介護状態(負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態)にある対象家族を介護するための休業」のことを「介護休業」と呼んでいます(厚生労働省HP:介護休業について|介護休業制度|厚生労働省)。 ・対象となる労働者 対象家族を介護する男女の労働者(日々雇用を除く) ・利用期間と回数 対象家族1人につき3回まで、通算93日まで休業できます。 ※育児と違い、介護はいつまで続くかはわかりません。そのため、介護休業は「介護を行うための期間」ではなく、「介護のための準備期間」として設けられています。この期間中に、介護サービスの選定や手配、介護施設への入居手続きなどを行い、介護と仕事の両立を図るための生活スタイルを整えることが目的となります。そのため、93日という期間が定められています。 ・手続方法 休業開始予定日の2週間前までに、書面等により事業主に申出。 2.「介護休業取得応援奨励金」とは… 東京都公益財団法人東京しごと財団と連携し、従業員に介護休業を取得させ、職場環境を整備した都内中小企業等に対して支給される助成金です。 つまり、「会社の従業員が介護のためにお休みを取れる環境を整えた場合、東京都がその会社に助成金として支援をしますよ」というものです。 導入のメリット ①従業員が安心して働ける 「介護のために仕事を辞めなければいけない…」と悩む従業員の不安を解消できます。 ②企業イメージのUP このような助成金を導入することで、従業員にとって安心して長く働ける職場づくりができ、企業のイメージUPに繋がります。 ③介護休業制度導入のハードルを下げることができる 環境整備にかかる費用が一部補助されることで、導入を検討している事業主の後押しに繋がります。 誰がもらえる? 東京都内の中小企業。その中でも、従業員が介護休業を取りやすい環境を整えた企業が対象になります。 何をしたらいい?
- [RSM汐留パートナーズ・ニュースレター 2025年3月号](https://shiodome.co.jp/news/24298/) - 防衛特別法人税と税効果会計・高年齢者雇用確保措置・スタートアップビザの統合 日頃よりお世話になっております。RSM汐留パートナーズです。 今月のニュースレターでは、税理士法人より「防衛特別法人税と税効果会計」、社会保険労務士法人より「高年齢者雇用確保措置」、行政書士法人より「スタートアップビザの統合」についてお届けします。 税理士法人では「防衛特別法人税」の創設に伴う税効果会計への影響や適用タイミング、社会保険労務士法人では「高年齢者雇用確保措置」の概要と導入のポイント、行政書士法人では2種類のスタートアップビザの統合と経営活動に適したビザの選び方について、それぞれ分かりやすく解説しています。 今月のニュースレターも、ぜひお役立てください。 防衛特別法人税と税効果会計 令和7年度税制改正大綱において、防衛力強化のための財源確保を目的とした「防衛特別法人税」の創設が発表されました。この新たな付加税は、企業の法人税額に4%を上乗せして課税するもので、2026年4月1日以降に開始する事業年度から適用される予定です。今回は、防衛特別法人税の概要と税効果会計への影響について見ていきたいと思います。 防衛特別法人税の概要 防衛特別法人税は、各事業年度の所得に対して法人税が課される法人を対象に、以下の計算式に基づいて計算されます。これにより、多くの企業で法人税等の負担増加が見込まれます。 防衛特別法人税=(基準法人税額(*1)-基礎控除額年500万円)×4%-税額控除(*2) (*1)所得税額控除や外国税額控除等の税額控除適用前の法人税額 (*2)外国税額控除や分配時調整外国税相当額の控除、仮装経理に基づく過大申告の場合の防衛特別法人税額の控除など 防衛特別法人税の税効果会計への影響 防衛特別法人税の導入は、税効果会計に重要な影響を与えると考えられます。「税効果会計に係る会計基準の適用指針(企業会計基準適用指針第28号)」の44項によれば、繰延税金資産と繰延税金負債の額は、決算日において国会で成立している税法に規定されている方法で計算する必要があるという、いわゆる「成立日」基準が採用されているためです。 よって税制改正により税率が変更される場合、その税率変更に係る税制改正の成立日以後に到来する決算期については、改正後の税率を用いて法定実効税率を算定する必要があります。そのため、改正法案が本年3月末までに国会で成立した場合、3月決算会社であれば、2027年3月期以降に解消が見込まれる一時差異に適用される税率に影響を及ぼします。 具体的には、外形標準課税対象法人については約0.9%、外形標準課税対象外法人については約0.84~0.85%の法定実効税率の引き上げが見込まれます。 改正法案が3月末までに成立した場合、2025年3月期決算では、一時差異等の解消時期に応じて、以下の2通りの法定実効税率を適用することが考えられます。 2026年3月31日までの間に解消が見込まれる一時差異等→改正前の法定実効税率 2026年4月1日以後に解消が見込まれる一時差異等→改正後の法定実効税率 ※2については、法定実効税率の計算式の分子における法人税率に乗じる括弧書きの中に、4%を加えることになります。 おわりに 防衛特別法人税の導入は、企業の税負担増加だけでなく、税効果会計を通じて財務諸表にも大きな影響を与えることが予想されます。改正法案の成立時期を注視し、適切なタイミングで新税率を適用すること、また改めて一時差異等の解消時期を慎重に見積もり、適切な法定実効税率を適用することが重要となります。ご不明点等ございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせ下さい。 高年齢者雇用確保措置 近年、ニュースやネット上では「人材不足」という言葉が頻繁に取り上げられています。総務省の統計では、令和6年12月時点での日本の労働力人口が6800万人とされ、今後も減少が予測されています(労働力調査(基本集計) 2024年(令和6年)12月分結果)。 一方で、65歳以上の高齢者が労働力人口の約13.4%を占めており(内閣府 高齢化の状況)、2030年にはその割合が約15%に達すると見込まれています。この背景には、物価の高騰や生活の不安から働き続けたいと考える高齢者が増えていることがあります。少子高齢化が進む中、高齢者の就労機会を確保することは、労働力不足を補い、社会保障制度の維持にも寄与する重要な課題です。 高齢者の就労には健康管理やスキルの維持といった課題があるものの、企業側はこの貴重な人材を「離さず」「活躍」してもらうために、具体的な制度を導入する必要があります。今回は、「高年齢者雇用確保措置」について詳しく紹介していきます。 1.高年齢者雇用確保措置とは 高齢者が安心して働き続けられる環境を整えるための制度や施策のことを指します。主に以下の内容が含まれます。 ①65歳まで定年年齢を引き上げること②希望者全員を対象とする、65歳までの「継続雇用制度」の導入③定年制の廃止 高年齢者雇用安定法では、「高年齢者の65歳までの安定した雇用を確保」するため、定年年齢を65歳未満としている事業主に、「高年齢者雇用確保措置」として、上記の①から③のうちいずれかの措置の実施を義務づけています。 2.継続雇用制度とは 現に雇用している高年齢者を、本人が希望すれば定年後も引き続き雇用する制度のことで、次のようなものがあります。 「再雇用制度」 定年でいったん退職とし、新たに雇用契約を結ぶ制度 「勤務延長制度」 定年で退職とせず、引き続き雇用する制度 なお、本人が希望した場合は、定年後も引き続き働きたいと希望する人全員を対象とする必要があります。 3.高年齢雇用確保措置を導入するために 定年年齢を65歳未満としている事業主は、上記①~③の制度を導入するためには、(1)就業規則の変更をし、(2)労働基準監督署への届け出が必要となります。 また、導入に際し、賃金や勤務時間などの労働条件についても見直しが必要となる場合があります。年齢に基づく賃金・人事処遇制度から能力や職務などの要素を重視する制度への見直しを行い、短時間勤務制度の検討や、高齢者の意欲や能力を適正に評価する仕組みの構築を目指すことが求められています。 4.各制度のメリットや懸念点、導入のポイント 最後に、各制度のメリットや懸念点、導入のポイントについて簡単にまとめていきます。 ①定年年齢の引き上げ 従業員の定年を延長することで、経験豊富な人材をより長く活用できるメリットがあります。また、従業員にとって、定年が延長されることで長期的な雇用の安心感が生まれます。一方で、若手の昇進・採用が抑制される懸念点もあります。 導入の際は、就業規則の改定が必要となり、併せて年功序列型賃金の見直しを含め、バランスを取る必要があります。 ②継続雇用制度の導入 継続雇用制度の導入で期待される効果と懸念点は以下の通りです。 期待される効果 柔軟な雇用の継続:希望する従業員のみを再雇用することで、企業と労働者双方にとって柔軟な対応が可能となるでしょう。 賃金コストの調整:再雇用時に賃金を見直すことで、企業の負担を軽減できることになります。 経験を活かせる:高齢従業員のスキルや知識を活用しつつ、負担の少ない業務への配置転換が可能となります。 懸念点 不公平感の発生:選考基準が明確でないと、希望者全員が再雇用されるわけではないため、不公平感が生じる可能性があります。 人材確保の不安定性:継続雇用をしない選択をする人が増えると、必要な労働力を確保できないリスクがあるといえます。
- [RSM汐留パートナーズ・ニュースレター 2025年4月号](https://shiodome.co.jp/news/26630/) - 2025年3月期決算に影響する主要な税制改正・フリーランス新法・新株予約権行使価額の調整 日頃よりお世話になっております。RSM汐留パートナーズです。 今月のニュースレターでは、税理士法人より「2025年3月期決算に影響する主要な税制改正」、社会保険労務士法人より「フリーランス新法」、司法書士法人より「新株予約権行使価額の調整」についてお届けします。 税理士法人では2025年3月期決算に適用される主要な2024年度税制改正の論点、社会保険労務士法人では2024年11月に施行された「フリーランス新法」の概要、司法書士法人では株式分割後の新株予約権行使価額の調整について、分かりやすく解説しております。 今月のニュースレターも、ぜひお役立てください。 2025年3月期決算に影響する主要な税制改正 4月に入り、3月決算企業では決算・申告業務が本格化しています。2025年3月期決算では複数の税制改正の適用が始まり、税務申告や税効果会計に影響を及ぼします。今回はその中でも主要な論点を確認していきます。 賃上げ促進税制の再設計 2024年度税制改正により、企業規模に応じて再編され、賃上げの実績に加えて人的投資やダイバーシティ推進などの取り組みに応じて、最大35〜45%の税額控除が受けられる仕組みとなりました。概要は下表の通りです。 当該改正は、2024年4月1日から2027年3月31日までに開始する事業年度に適用され、実務では給与台帳、教育訓練費、認定取得証の管理が重要となります。 外形標準課税の対象拡大と税効果会計への影響 2024年度税制改正により、資本金が1億円以下でも、資本金と資本剰余金の合計が10億円超の法人は外形標準課税の対象とされます(2025年4月以降適用)。更に、資本金と資本剰余金の合計額が50億円超の特定法人の100%子法人等で、資本金と資本剰余金の合計額が2億円超である法人も、新たに外形標準課税の対象となります(2026年4月以降適用)。これらの改正により、グループ再編・減資を行った企業でも課税対象となる可能性があり、2025年3月期決算においては税効果会計への影響が考えられます。加えて、2026年度以降は、法人税額に対して4%の上乗せをする「防衛特別法人税(仮称)」の導入も予定されており、外形標準課税と合わせて、法人実効税率に影響を与えることに留意が必要です。 グローバルミニマム課税の開始 2024年4月以降、日本でもグローバルミニマム課税(日本版IIR)が適用開始となります。対象となる多国籍企業グループでは、15%未満の税率国で発生した利益に対し、日本の親会社に補足的に課税される仕組みです。これに伴い、特定外国関係会社に係る会社単位の合算課税の適用免除要件である租税負担割合の閾値が30%から27%に引き下げられました。対象企業は税率算定や追加負担の見積もりが求められます。 おわりに 今回取り上げた各論点は、単なる税負担への影響にとどまらず、企業の中長期的な経営戦略にも関わる項目といえます。制度の正確な理解と対応が求められる中、ご不明点等ございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせください。 フリーランス新法 近年、働き方の多様化に伴い、企業と雇用契約を結んで働く従業員だけでなく、‘フリーランス’として活躍する人々が急増しています。これに伴い、フリーランスと企業間の取引の適正化、またフリーランスの就業環境整備を図ることを目的とし、2024年11月1日「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(以下、「フリーランス新法」と呼びます)」が施行されました。 今回は、フリーランス新法の概略と特別加入について、最後に企業の労務担当者として気を付けるべきポイントを解説していきます。 フリーランス新法の概要 (1)適用対象 フリーランス新法では、「フリーランス」と「発注事業者」を次のように定義しています。 ①フリーランス【特定受託事業者】 「業務委託の相手方である事業者で、従業員を使用しないもの」 一般的に「フリーランス」とは法令上の用語ではなく、定義は様々ですが、フリーランス新法における定義として、「実店舗がなく、雇人もいない自営業主や一人社長であって、自身の経験や知識、スキルを活用して収入を得る者(「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」5頁)」とされています。 よって、「従業員を使用している」「消費者を相手に取引をしている」方はこの法律における「フリーランス」にはあたりませんので注意が必要です。 ②発注事業者【業務委託事業者等】 「フリーランスに業務委託する事業者で、従業員を使用するもの」 (参照:「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)パンフレット」4頁) (2)取引の適正化と就業環境の整備 また、取引を行う発注事業者(業務委託事業者等)や、仲介事業者が遵守すべき事項、禁止行為、独占禁止法・下請法・労働関係法令といった関連法とフリーランスとの適用関係について明記されています。 発注事業者に課せられた義務の例としては、「取引条件の明示」、「期日における報酬支払義務」や「ハラスメント対策に係る体制整備義務」など、全7項目にわたります。特設サイト「公正取引委員会フリーランス法特設サイト | 公正取引委員会」も是非参考にしてみてください。 フリーランスと労災特別加入 フリーランス新法の施行と同時に、2024年11月1日より特別加入制度の補償対象が広がり、特定受託事業者に該当するフリーランスも追加されました。※特別加入の制度詳細については厚生労働省HPを参照ください(労災保険への特別加入 |厚生労働省)。特別加入の対象となる事業は次のとおりです。 フリーランスが企業等(業務委託事業者)から業務委託を受けて行う「事業者間の委託取引」(業務委託) または フリーランスが消費者(業務委託事業者以外の者)から委託を受けて行う特定受託事業と同種の事業(他に特別加入可能な事業または作業を除く) よって、フリーランスが消費者のみから委託を受ける場合や、企業等からの業務委託を受けているが、当該業務とは異なる事業について、消費者から委託を受ける場合は対象とはなりません。 発注事業者として、フリーランスに対し特別加入の有無を事前に確認することも今後契約を結ぶ上で考慮すべき視点となるでしょう。 企業の労務管理とフリーランス新法 私たち企業労務担当者が注意しなければならないポイントは、フリーランスとして形式的には雇用契約を締結せず業務を行っていても、実態に基づいて「労働者」かどうかが判断されるということです。 最後に、これら「労働者性」の判断基準をまとめます。もし現在、自社にフリーランスとして契約を受けている事業がある場合、下記の基準を参考にしながら、必ず実態判断を行うようにしましょう。 (1)労働基準法における「労働者性」の判断基準 「使用従属性」 労働が他人の指揮監督下において行われているかどうか(「指揮監督下の労働」か否か) 報酬が「指揮監督下における労働」の対価として支払われているかどうか(「報酬の労務対償性」があるか否か) (2)労働組合法における「労働者性」の判断要素 「事業組織への組入れ」(例:評価制度や研修制度が設けられている、組織に業務日を割り振られるなど管理されている) 「契約内容の一方的・定型的決定」(例:契約締結や更新時に、相手方と交渉して契約内容を変更する余地が実際にない) 「報酬の労務対価性」(例:時間外手当等の支払いがある、報酬が業務量や時間に基づいて算出されている) まとめ 労働基準法をはじめとする労働法は、労働者を保護し、労働条件を改善することを目的としています。そのため、基本的に「労働者」として扱われないフリーランスについては、保護の対象外とされていましたが、働き方の多様化に伴い、フリーランスにも一定の保護が求められるようになっています。フリーランスを活用している場合は、適正な取引と就業環境が整備されているか、いまいちど見直しておきましょう。
- [RSM汐留パートナーズ・ニュースレター 2025年5月号](https://shiodome.co.jp/news/27168/) - 中小企業成長加速化補助金・出生後休業支援給付金と育児時短就業給付金・入国前結核スクリーニング制度 日頃よりお世話になっております。RSM汐留パートナーズです。 今月のニュースレターでは、税理士法人より「中小企業成長加速化補助金」、社会保険労務士法人より「出生後休業支援給付金と育児時短就業給付金」、行政書士法人より「入国前結核スクリーニング制度」についてお届けします。 税理士法人では、成長志向の中小企業を支援する新たな補助金制度と税制改正のポイント、社会保険労務士法人では新設された育児支援給付金の概要、行政書士法人では特定国籍者向けの結核スクリーニング制度について解説しています。 今月のニュースレターも、ぜひお役立てください。 中小企業成長加速化補助金 2025年5月8日より、「中小企業成長加速化補助金」の募集が開始されます。これは、売上高100億円超を目指す中小企業の意欲的な投資を後押しする新たな補助金制度です。また、令和7年度税制改正では、「中小企業経営強化税制」も、成長志向の中小企業を支援する方向で見直しが行われました。今回は、中小企業の成長を後押しするこれら2つの制度を見ていきたいと思います。 中小企業成長加速化補助金の概要 「中小企業成長加速化補助金」は、将来的に売上高100億円超を目指す中小企業の大規模な設備投資を支援し、賃上げ促進や外需獲得、地域経済活性化を促すことを目的とした制度です。 対象者は、売上高10億円以上100億円未満の中小企業で、補助率は対象経費の1/2以内、最大5億円まで補助されます。対象経費には工場・オフィスの新設・増築費用、機械装置・器具備品の購入費用、業務効率化のためのソフトウェア費、外注費、専門家への相談費用等が含まれます。これらの投資は交付決定日から24か月以内に実施する必要があります。 申請には、「100億円企業を目指す」宣言を公表していること、建物費や機械装置費等の合計が税抜1億円以上であること、補助事業終了後3年間の「給与支給総額」又は「従業員及び役員の1人当たり給与支給総額」の年平均上昇率が都道府県毎の直近5年間の最低賃金上昇率以上であること等が求められます。 第1回公募は2025年5月8日に開始、6月9日が締切です。補助事業完了期限は2029年3月31日で、申請は「jGrants」システムを利用した電子申請となります。 中小企業経営強化税制の概要と税制改正ポイント 中小企業経営強化税制は、一定の設備投資を行った中小企業者に対し、即時償却又は税額控除(10%、資本金3,000万円超の場合は7%)の適用を認める制度です。対象設備は、生産性向上設備(A類型)、収益力強化設備(B類型)、経営資源集約化設備(D類型)等で、事前に中小企業等経営強化法による経営力向上計画の認定を受ける必要があります。 令和7年度税制改正では、適用期限が2027年3月31日まで2年延長され、A類型では経営能力向上に関する指標が見直されました。またB類型では投資計画における年平均投資利益率の見込みが5%から7%以上に引き上げられ、売上100億円超を目指す中小企業に対しては対象設備に建物が追加されています。一方、デジタル化設備(C類型)の税制優遇措置は2025年3月31日に終了し、暗号資産マイニング用設備は対象外となりました。飲食業等の事業者がこの制度をワンストップで利用できる仕組みも新たに構築されています。 おわりに 中小企業成長加速化補助金や中小企業経営強化税制以外にも、近年では、デジタル化やカーボンニュートラルといった社会的要請に対応した投資を後押しする各種の補助金や税制措置が充実しています。各制度内容や申請手続き等、ご不明点がございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせください。 出生後休業支援給付金と育児時短就業給付金 2022年から順次施行された育児・介護休業法の改正により、企業には育児を支える体制整備が一層求められるようになりました。男性の育児休業取得を後押しする「出生時育児休業(いわゆる”産後パパ育休”、以下「産後パパ育休」と呼びます)」の創設、2025年からはさらに、“共働き、共育て”を推進するための新たな給付金が追加されています。 今回は、2025年4月1日より創設された「出生後休業支援給付金」と「育児時短就業給付」の概要について解説していきます。企業にとって制度理解と運用整備が急務となっている今般、年度初めのこのタイミングで、育休制度について改めて見直しておきましょう。 育児休業等給付の種類 2025年の法改正により、育児休業等給付は次の4種類に分けられます。 「出生後休業支援給付金」について 「出生後休業支援給付金」は、「出生時育児休業給付金」または「育児休業給付金」の支給を受ける者が、一定の要件を満たした場合に上乗せで支給される給付金です。 (1)支給要件(次の①および②の要件を満たす必要があります) 同一の子について、被保険者が対象期間に「出生時育児休業給付金」または「育児休業給付金」が支給される育児休業を通算して14日以上取得したこと。 被保険者の配偶者が、子の出生日の翌日において「配偶者の育児休業を要件としない場合(※1厚生労働省「出生後休業支援給付金」リーフレット2頁目参照001372778.pdf)」に該当していること、または、被保険者の配偶者が「子の出生日または出産予定日のうち早い日」から「子の出生日または出産予定日のうち遅い日から起算して8週間を経過する日の翌日」までの期間に通算して14日以上の育児休業を取得したこと。 (2)支給額(※2) 【支給額=休業開始時賃金日額×休業期間の日数(28日が上限)×13%】 ※2 事業主から出生時育児休業または育児休業期間を対象として賃金が支払われた場合はその金額に応じて減額されます(詳細は厚生労働省「育児休業等給付の内容と申請手続」パンフレットを参照ください001461102.pdf)。 「育児時短就業給付金」について 「育児時短就業給付金」は、次の(1)の要件を満たす方であって、育児時短就業中の(2)の要件をすべて満たす月について支給されます。 (1)受給資格 2歳未満の子を養育するために、1週間当たりの所定労働時間を短縮して就業する被保険者(雇用保険の一般被保険者と高年齢被保険者)であること。 育児休業給付の対象となる育児休業から引き続き、同一の子について育児時短就業を開始したこと、または、育児時短就業開始日前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある(ない場合は賃金の支払いの基礎となった時間数が80時間以上ある)完全月が12か月あること。 (2)各月の支給要件 初日から末日まで続けて、被保険者である月 1週間当たりの所定労働時間を短縮して就業した期間がある月 初日から末日まで続けて、「育児休業給付」又は「介護休業給付」を受給していない月 「高年齢雇用継続給付」の受給対象となっていない月 (3)支給対象となる時短就業(育児時短就業) 育児時短就業給付金の支給対象となる時短就業(育児時短就業)とは、2歳に満たない子を養育するために、被保険者からの申出に基づき、事業主が講じた「1週間当たりの所定労働時間」を短縮する措置をいいます。 (4)支給額(※3) 支給対象月に支払われた賃金額が、育児時短就業開始時賃金月額の90%以下の場合育児時短就業給付金の支給額=支給対象月に支払われた賃金額×10% 支給対象月に支払われた賃金額が、育児時短就業開始時賃金月額の90%超~100%未満の場合育児時短就業給付金の支給額=支給対象月に支払われた賃金額×調整後の支給率 支給対象月に支払われた賃金額と、(1)又は(2)による支給額の合計額が支給限度額を超える場合育児時短就業給付金の支給額=支給限度額-支給対象月に支払われた賃金額 (※3 詳細は厚生労働省「育児時短就業給付金の内容と支給申請手続」パンフレットを参照ください001395073.pdf) おわりに いかがでしたでしょうか。今回は2025年4月より創設された「出生後休業支援給付金」および「育児時短就業給付金」について概略を説明しました。 上記のほかにも、「育児時短就業給付金」では、フレックスタイム制や裁量労働制といった特別な労働時間制度の適用を受けている場合の取扱いや、育児時短就業給付金の対象とならないケースなどのポイントがあります。また、「出生後休業支援給付金」では、被保険者が父親か母親かにより支給要件が異なる点があるなどさらに煩雑となります。 法改正のタイミングで、もう一度支給申請の流れや手続き内容を把握しておきましょう。 入国前結核スクリーニング制度 特定の国籍保有者でかつ、日本に入国・中長期滞在をしようとする外国人を対象に結核に罹患していないことの証明書として指定検診医療機関から発行された結核非発病証明書の提出を在留資格認定証明書交付申請時等に提出することが決定しました。今回はこの入国前結核スクリーニング制度について皆さんにご説明いたします。 「背景」 出入国在留管理庁・外務省・厚生労働省が発している入国前結核スクリーニングの実施に関するガイドラインによると以下のような背景になっております。
- [RSM汐留パートナーズ・ニュースレター 2025年6月号](https://shiodome.co.jp/news/27713/) - 基礎控除等の改正・労災保険のメリット制・無議決権株式導入時の注意点 日頃よりお世話になっております。RSM汐留パートナーズです。 今月のニュースレターでは、税理士法人より「基礎控除等の改正」、社会保険労務士法人より「労災保険のメリット制」、司法書士法人より「無議決権株式導入時の注意点」についてお届けします。 税理士法人では、年末調整や源泉徴収実務に影響する税制改正のポイントを、社会保険労務士法人では、安全管理と保険料の関係性を、司法書士法人では、種類株式に関する法的留意点をそれぞれ解説しています。 今月のニュースレターもぜひお役立てください。 基礎控除等の改正 2025年4月25日、国税庁は令和7年度税制改正に伴う所得税の基礎控除や給与所得控除、扶養控除等に関する確定情報を公表しました。当該税制改正は、低所得者層への減税措置と就労インセンティブの強化を目的としており、年末調整や源泉徴収事務に大きな影響を及ぼします。今回は、令和7年の年末調整における留意点と、令和8年以降の実務対応についてみていきます。 基礎控除・給与所得控除の見直し 基礎控除額は、合計所得金額に応じて段階的に引き上げられ、令和7・8年分に限り、下表の通り、最大95万円まで引き上げられますが、令和9年分以降は132万円以下の場合のみ95万円となり、それ以外は原則58万円の控除となります(従来は一律48万円)。また、給与所得控除の最低保障額も55万円から65万円に引き上げられ、年収190万円以下の給与所得者に恩恵が及びます。 特定親族特別控除の創設と申告対応 新たに創設された「特定親族特別控除」は、19歳以上23歳未満で合計所得金額が58万円超123万円以下の親族(主に大学生等)を対象とし、最大63万円の追加控除が認められる制度です。控除を受けるには、国税庁が6月末頃に公表予定の基礎控除・配偶者控除等・所得金額調整控除・特定親族特別控除を含む兼用様式の申告書を使用し、給与の支払者に提出する必要があります。 令和7年分年末調整における実務対応 年末調整では、改正後の控除額を反映して年間の所得税を再計算し、源泉徴収済額との差額を精算します。実務上は、従業員から提出される各種申告書(扶養控除等・基礎控除・配偶者控除・特定親族特別控除)を漏れなく受理・確認し、改正後の給与所得控除後の金額表に基づき年末調整を行い、源泉徴収簿や源泉徴収票の新様式にも適切に対応することが求められます。 令和8年以降の実務対応 令和8年からは、「扶養控除等申告書」の記載内容が変更され、「源泉控除対象親族」として新たに特定親族が加わります。また、月次源泉徴収時にも特定親族特別控除が反映されるようになり、源泉徴収税額表が改正されます。このため、給与計算ソフトや事務フローの見直し、年初の申告内容の確認が重要となります。 おわりに 今回の改正は、低所得者層にとって恩恵がある一方、控除額の段階化や様式変更により、年末調整や月次事務の煩雑さが増す側面もあります。随時更新される最新情報を確認の上、円滑な年末調整・源泉徴収事務を進めていきたいところです。ご不明点等ございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせください。 労災保険のメリット制 労災保険には、労働災害の発生状況に応じて保険料率が変動する『メリット制』という制度が存在します。この制度を理解し活用することで、労働災害の防止と保険料負担の軽減を両立することを目指しましょう。本記事では、メリット制の基本を解説していきます。 メリット制とは? メリット制とは、個々の事業場における労働災害の発生状況を反映し、労災保険料率を調整する制度です。具体的には、過去の労災保険給付実績に基づき、労災保険料率を上下させる仕組みとなっています。 例えば、同じ建設業でも、労災事故が少ないA社は保険料率が下がり、多発するB社は保険料率が引き上げられます。このように、メリット制は企業の安全管理への取り組みを評価し、その結果を保険料に反映させることで、企業に対し安全対策を強化するインセンティブを与えることを目的としています。 メリット制の適用条件 メリット制は、すべての事業場に適用されるわけではありません。適用されるのは、一定規模以上の事業場、または労働災害の発生状況によって保険料率が大きく変動する可能性のある事業場です。これは、中小規模の事業場では、労災保険料率の変動が経営に与える影響が大きいためです。 メリット制の適用の対象となる事業については継続事業では「事業の継続性」と「事業の規模」を同時に満たしていることが要件となります。詳細については厚生労働省HPを参照ください(rousaimerit.pdf)。 メリット収支率 メリット制の適用を受けるためには、「メリット収支率」を計算する必要があります。メリット収支率は、連続する3年度間における保険料額に対する、同じ期間の保険給付等の額の比率を基に厚生労働省で算定します。(※ここからはすべて「継続事業(一括有期事業)に絞って記載していきます」)。なお、メリット収支率の計算式は、以下のとおりですが分子・分母等についての詳細な計算方法については上記の厚生労働省HPを参照ください。 メリット収支率(%) = (保険給付等の額) ÷ (確定保険料 × 第一種調整率) × 100% メリット制適用後の労災保険率(メリット労災保険率) メリット制が適用された労災保険率(メリット労災保険率)は、「メリット収支率」及び「収支率表」により算定されます。具体的には、 メリット収支率が 75%以下の時には、その値が小さいほど、労災保険率が低くなります。(最大 40%の割引) メリット収支率が 85%以上の時には、その値が大きいほど、労災保険率が高くなります。(最大 40%の割増) メリット収支率が 75%超え 85%以下の時には、労災保険率の増減はありません。 「メリット労災保険率」は「労災保険率決定通知書」に記載され、管轄の都道府県労働局歳入徴収官から、「労働保険年度更新申告書」に同封してメリット制が適用される事業場の事業主に通知されます。 メリット制を活かして安全な職場へ メリット制は、企業に『安全はコスト削減に繋がる』という意識を根付かせる制度ともいえます。労働災害による直接的な損害はもちろんのこと、事故対応や職場の士気低下といった見えにくいコストを削減することの重要性を再認識し、日々の業務における『ヒヤリ・ハット』やリスクに対する感度を高めることが求められています。メリット制を単なる保険料の算定制度として捉えるのではなく、安全文化を醸成する第一歩として見直し、安全投資が持続的な成長の基盤となることを再認識しましょう。 無議決権株式導入時の注意点 株式会社は、会社法第108条第1項に基づき、株主総会において議決権を行使することができる事項について異なる定めをした内容の異なる二以上の種類の株式を発行することができます。株主総会において議決権を有さない種類株式は「無議決権株式」等と呼ばれており、出資はするけれども株主総会の議決権行使や経営に興味のない(口出しをしない)出資者に対して用いられることがあります。議決権を有さない、あるいは無議決権というワードから、この種類株式を有する株主は株主総会だけでなく種類株主総会においても一切の議決権がないという誤解が生じることがあります。ここでは普通株式(株主A)と株主総会において議決権を有さない無議決権株式(議決権に関する事項以外に特段の定めなし、株主B)を発行している株式会社Xの事例を見ていきます。 無議決権株式と株主総会 株式会社Xでは、株主Bは株主総会において議決権を有しないため、取締役の選任や取締役の報酬決定、商号の変更や計算書類の承認等に係る株主総会の決議は株主Aのみで決議することができます。この状況を作るために、株式会社Xは無議決権株式を導入しているといえます。 種類株主総会の決議
- [RSM汐留パートナーズ・ニュースレター 2025年7月号](https://shiodome.co.jp/news/32480/) - 役員報酬設計のポイント・熱中症対策強化と企業の対応・永住資格取消しの概要 日頃よりお世話になっております。RSM汐留パートナーズです。今月のニュースレターでは、税理士法人より「役員報酬設計のポイント」、社会保険労務士法人より「熱中症対策強化と企業の対応」、行政書士法人より「永住資格取消しの概要」をお届けします。 役員報酬設計では、事前確定届出給与の届出と株式報酬の取扱いにおける留意点、熱中症対策では2025年施行の義務化対応、永住資格取消しでは改正入管法の新ルールと実務上の注意点をそれぞれ解説しています。今月のニュースレターもぜひお役立てください。 役員報酬設計のポイント 6月は多くの企業で株主総会が開催され、上場企業では報酬委員会制度や開示義務の影響から、役員報酬の設計に対する関心が高まっています。中でも「事前確定届出給与」は、法人税法上の損金算入を確保する上で重要な制度です。届出には期限があるため、株主総会後の7月に対応が求められる企業も少なくありません。今回は、株式報酬制度を含めた事前確定届出給与のポイントを整理します。 事前確定届出給与の概要と注意点 法人税法上、役員報酬は原則として損金不算入ですが、「定期同額給与」「事前確定届出給与」「業績連動給与」のいずれかに該当すれば損金算入が可能です。事前確定届出給与を適用するには、株主総会や取締役会で支給額・支給時期を決定し、①株主総会等の決議日から1ヶ月以内と②会計期間開始日から4ヶ月以内のいずれか早い日までに所轄税務署へ届出書を提出する必要があります。届出内容と異なる支給(支給額の変更、支給日のずれ、一部支給など)は、原則として損金不算入となるため、正確な管理が求められます。 株式報酬と事前確定給与 近年は金銭報酬に加え、株式報酬制度を導入する企業が増えています。以下では、各制度の概要と、事前確定届出給与としての損金算入可否について整理します。 RS(譲渡制限付株式) RSは、譲渡制限付き株式を役員等に交付する制度です。付与時に株式数と支給日が確定し、業績条件がない場合には、時価×株数で合理的に価額が見積もれるため、事前確定届出給与としての届出が可能です。一方、業績未達時に株式が没収される設計では業績連動給与として扱われます。 RSU(譲渡制限付株式ユニット) RSUは、一定期間経過後に無償で株式が交付される権利です。株式数が見積可能で、業績条件がなければ、事前確定届出給与の対象となりますが、業績により付与数が変動する「PSU(パフォーマンス・シェア・ユニット)」は業績連動給与として扱われます。 株式交付信託(J-ESOP等) J-ESOPは、自社株式を信託に拠出し、一定条件を満たした役員等に株式を交付する制度です。在任中に付与数が確定し、業績条件がない設計であれば、事前確定届出給与の対象となりますが、退任時給付や業績連動設計の場合は対象外となります。 税制非適格ストックオプション(SO) 非適格SOは、税制上の適格要件を満たさないストックオプションです。行使条件が固定され、権利付与時点で予約権数や行使価格が合理的に算定できる場合には、事前確定届出給与の対象となります。 おわりに 昨今、役員報酬の透明性確保やインセンティブ強化の観点から、株式報酬の導入が進んでいます。事前確定届出給与の適用には、税務上の要件に沿った報酬設計が求められます。届出期限や支給実績とのズレによるリスクを避けるためにも、関係部門が連携し、実行可能な設計・運用を行うことが重要です。ご不明点等ございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせください。 熱中症対策強化と企業の対応 夏季の気温上昇が年々深刻化する中、熱中症による死亡災害は2年連続で30人前後と深刻な状況が続いており、職場における熱中症対策の重要性はますます高まっています。こうした背景を受け、労働安全衛生規則の改正により、2025年6月1日から「職場における熱中症対策の強化について」が施行されました。今回はその概要と、企業として求められる対応について整理します。 対象となる作業と義務化の概要 今回の改正により対象となるのは、「WBGT28度以上、または気温31度以上の環境下で、連続1時間以上、もしくは1日4時間を超えて実施される作業」とされています。また、熱中症のおそれがある労働者を早期に把握、その状況に応じて迅速かつ適切に対処し、重篤化を防止するため、以下の事項が事業者に義務付けられました。①体制整備②手順作成③関係者への周知 特に屋外作業や高温環境下での作業が多い建設業、運送業、製造業などでは、対象作業が発生する可能性が高く、現場の実態に即した対策の整備が求められます。 WBGT値の測定と対応の具体例 WBGT値(暑さ指数)は、気温、湿度、輻射熱を総合的に評価した暑熱環境の指標です。対象となる事業場では、作業現場のWBGT値を定期的に測定し、その値に応じて作業時間の調整や休憩の確保、服装の見直しなどの対応が必要です。たとえば、WBGT値が28℃を超える場合は、こまめな休憩や作業時間の短縮が求められます。なお、測定機器による実測が困難な場合には、熱中症予防情報サイト等を活用して値を把握することも可能です。 教育・訓練の重要性 熱中症は予防可能な災害です。しかし、その実効性を高めるには、現場で働く従業員一人ひとりがリスクを正しく理解し、適切に行動することが重要です。このため、定期的な安全衛生教育において熱中症予防に関する内容を取り上げることが推奨されています。特に新入社員や高齢者などリスクの高い層への配慮が求められます。以下の事項についての事前教育が望まれます。①熱中症の症状②予防方法③緊急時の救急処置④過去の発生事例 おわりに 熱中症対策は、労働者の健康を守るだけでなく、業務の継続性や生産性の確保にも直結する重要な取り組みです。今回の義務化を機に、自社の対策状況を見直し、必要な体制整備や従業員への意識啓発を進めていくことが、今後の企業経営においても大きな意味を持つといえるでしょう。 永住資格取消しの概要 2024年6月時点で日本に在留する永住者数は902,203人で日本に在留する外国人3,588,956人に対し約25%を占めております。日本に在留する外国人の4人に1人は永住者ということになります。しかし、令和6年6月14日に改正された出入国管理及び難民認定法により在留資格の取消しが新設されまし た。今回はその内容について説明したいと思います。 「取消しとなる事由」 改正後は以下の事項が取消しされうる事項となります。 入管法上の義務違反 故意に公租公課の支払いをしないこと 特定の刑罰法令違反 入管上の義務違反 入管法が規定する永住者が遵守すべき義務で、退去強制事由として規定されている義務ではないが、義務の遵守が罰則により担保されているものについて、正当な理由なく履行しないことをいいます。 永住許可制度の適正化は、適正な出入国在留管理の観点から、永住許可後にその要件を満たさなくなった一部の悪質な者を対象とするものであり、大多数の永住者を対象とするものではありません。 そのため、例えば、うっかり、在留カードを携帯しなかった場合や在留カードの有効期間の更新申請をしなかった場合に、在留資格を取り消すことは想定していません。 故意に公租公課の支払いをしないこと 「公租公課」とは、租税のほか、社会保険料などの公的負担金のことをいいます。そして、「故意に公租公課の支払をしないこと」とは、支払義務があることを認識しているにもかかわらず、あえて支払をしないことをいい、例えば、支払うべき公租公課があることを知っており、支払能力があるにもかかわらず、公租公課の支払をしない場合などを想定しています。他方で、病気や失業など、本人に帰責性があるとは認めがたく、やむを得ず公租公課の支払ができないような場合は、在留資格を取り消すことは想定していません。取消事由に該当するとしても、取消しなどするかどうかは、不払に至った経緯や督促等に対する永住者の対応状況など個別具体的な事情に応じて判断することとなります。 特定の刑罰法令違反 ここで規定する刑罰法令違反は、具体的には、刑法の窃盗、詐欺、恐喝、殺人の罪などや自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律の危険運転致死傷など、一定の重大な刑罰法令違反に限られており、いずれも故意犯を対象としています。したがって、交通事故を起こして過失運転致死傷の罪で処罰された場合は、本号の対象とはなりません。また、道路交通法は、取消事由として規定された刑罰法令には含まれていませんから、道路交通法違反により処罰された場合は、そもそも対象となりませんし、処罰の内容も拘禁刑に処せられたことが要件となっていますから、罰金刑に処せられた場合も、対象とはなりません。もっとも、永住者であっても、1年を超える実刑に処せられた場合は、罪名等にかかわらず、退去強制事由に該当して退去強制される場合があります。 その他注意事項 前述の内容は出入国在留管理庁が発する永住許可制度の適正化Q&Aを抜粋したものです。詳細については当Q&Aをご参照ください。その他、本制度に関してご質問がある場合はお気軽に弊社にお問い合わせください。
- [RSM汐留パートナーズ・ニュースレター 2025年8月号](https://shiodome.co.jp/news/32934/) - 路線価上昇と相続・贈与、育児・介護休業法の追加改正、新株予約権発行の実務対応 日頃よりお世話になっております。RSM汐留パートナーズです。今月のニュースレターでは、税理士法人より「路線価上昇と相続・贈与」、社会保険労務士法人より「育児・介護休業法の追加改正」、司法書士法人より「新株予約権発行の実務対応」をお届けします。 地価上昇を踏まえた相続・贈与における制度選択、10月施行の改正育児・介護休業法への対応、さらに新株予約権発行に関する会社法上の特例制度の活用ポイントなど、実務に直結するトピックを分かりやすくまとめています。今月のニュースレターもぜひお役立てください。 路線価上昇と相続・贈与 毎年7月1日、国税庁は全国の主要道路に面した土地の価格である「路線価」を公表します。路線価は相続税・贈与税の課税価格算定に用いられる重要な指標であり、近年の地価上昇により税負担への影響も増しています。今回は、最新の路線価動向と、相続・贈与時に留意すべき制度について整理します。 路線価の概要 路線価は、毎年1月1日時点の地価を基に国税庁が評価し、実勢価格(公示地価)の約80%を目安に設定されます。これにより、全国で一律の基準に基づく土地評価が可能となり、相続税・贈与税の課税標準に用いられます。路線価は毎年7月1日に公表され、原則として翌年1月1日までの評価に適用されます。 路線価のトレンドと傾向 全国平均の動向 2025年の全国平均路線価は前年比2.7%の上昇と、4年連続のプラスとなりました。上昇率は2024年(2.3%)、2023年(1.5%)と比べても拡大し、現行調査方式(2010年以降)で最大となっています。 地域別の傾向 東京都では2025年に8.1%上昇(前年5.3%)と加速しており、大阪市や名古屋市、福岡市など中核都市でも堅調な上昇となっています。一方、人口減や経済停滞が続く地域では、横ばい又は下落傾向であり、地域間で二極化が進行しています。 相続時精算課税制度 60歳以上の親や祖父母が18歳以上の子や孫に贈与する際に選択でき、累計2,500万円までが非課税、超過分には一律20%の贈与税が課されます。2024年以降、年110万円までの基礎控除が新設され、この範囲内の贈与は申告不要かつ相続財産への加算も不要です。この制度は一度選択すると暦年課税に戻れず、「時価の固定」と「税の前払い」という特徴があるため、地価動向や資産内容を踏まえた判断が重要です。即ち、将来値上がりが見込まれる資産には有利ですが、値下がりした場合は課税負担が重くなる可能性もあります。 また、暦年課税では相続前7年以内の贈与が相続税に加算されるため、贈与計画全体の見直しも求められます。 小規模宅地等の特例 被相続人の居住用・事業用宅地について一定要件を満たせば相続税評価額を大幅減額できる制度で、主な適用区分は以下の通りです。 但し、適用要件は複雑で、共有名義・二世帯住宅、「家なき子特例」など例外も多く、事前確認が不可欠です。特例適用後に土地を売却・転用した場合は遡及取消となる場合もあるため、慎重な運用が求められます。 おわりに 路線価の上昇により、相続・贈与にかかる税負担や制度選択の重要性が一層高まっています。特例や制度の適用には慎重な検討が必要であり、早めの対策が将来の円滑な資産承継につながります。ご不明点等ございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせください。 ます。特例や制度の適用には慎重な検討が必要であり、早めの対策が将来の円滑な資産承継につながります。ご不明点等ございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせください。 育児・介護休業法の追加改正 育児と仕事の両立支援をさらに推進するため、育児・介護休業法が改正されました。本年4月1日の改正施行に続き、10月1日にも新たな改正内容が施行されます。今回は、10月施行分の改正に向けて、企業として対応が求められる具体的な実務上のポイントをご紹介します。 柔軟な働き方を実現するための措置の義務化 今回の改正により、事業主は柔軟な働き方を可能とするための制度を整備することが義務付けられました。対象は、3歳以上小学校就学前の子を養育する労働者です。企業は、当該労働者が選択できるよう、以下の5つの措置のうち2つ以上を講じる必要があります。 始業時刻等の変更(フレックスタイム制または時差出勤制度) テレワーク等(月10日以上) 保育施設の設置・運営等 新たな休暇制度(養育両立支援休暇)の付与(年10日以上) 短時間勤務制度の整備 また、これらの措置を講じるにあたっては、施行日前に、事業所単位で過半数労働組合または労働者の過半数代表者から意見を聴取することが必要です。意見聴取の記録は、書面やメールなど記録が残る方法で確実に保管することが推奨されます。 なお、各措置の詳細については、厚生労働省が公表している以下のQ&Aをご参照ください。 https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001383031.pdf 個別の意向聴取と配慮等の義務化 これまで、労働者から本人または配偶者の妊娠・出産等について申出があった場合には、育児休業等の制度に関する個別周知と意向確認が義務付けられていました。改正後はこれに加え、就業条件等に関する個別の意向聴取が義務化され、聴取した意向に対して企業側の配慮が求められることになります。 意見聴取の実施時期としては、以下のタイミングが想定されています。 本人または配偶者の妊娠・出産等の申出があったとき 子が3歳の誕生日を迎える1か月前までの1年間 育児休業後に労働者から申出があったとき(復職時など) また、前述の柔軟な働き方を実現するための措置が事業主に義務付けられることに伴い、3歳未満の子を養育する労働者に対しては、講じた措置の内容について個別周知、意向確認、意向聴取および配慮を行うことも新たに義務化されます。これらの対応も、子が3歳の誕生日を迎える1か月前までの1年間に行う必要があります。 おわりに 今回の法改正は、育児と仕事の両立をより実効的に支援するための重要一歩です。企業には、制度整備だけでなく、従業員一人ひとりと丁寧に向き合う姿勢が求められます。これを機に、自社の育児支援制度全体を見直し、誰もが安心して働ける職場環境の構築を目指しましょう。 新株予約権発行の実務対応 公開会社ではない株式会社が新株予約権の発行をするときは、その都度、会社法第238条第1項に基づき、株主総会の決議によって募集事項を定めます。この募集事項の決定は、会社法第239条第1項に基づき、株主総会の決議によって取締役会(取締役会設置会社とします)に委任することができますので、この方法を利用すると、一定の制限の下、取締役会の決議により機動的に新株予約権の発行ができるようになります。特に、数ヶ月内に複数回に分けて新株予約権を発行する場合は便利です。 1年以内という有効期限 募集事項の委任に基づく取締役会決議は、割当日が当該委任に係る株主総会決議の日から一年以内の日である新株予約権についてのみその効力を有するものとされています。 種類株主総会の要否を確認 種類株式発行会社が新株予約権の募集事項の決定又はその委任をするときは、定款に別段の定めのない限り、当該新株予約権の目的である種類の株式に係る種類株主総会が必要となります。普通株式、A種類株式、B種類株式を発行している株式会社が普通株式を目的とする新株予約権を発行するときは、株主総会の決議に加え、普通株式の株主を構成員とする種類株主総会の決議も求められます。た だし、この場合において普通株式を有する株主が存在しない場合や、定款に会社法第238条第4項の種類株主総会の決議を要しない旨を定めている場合は、当該種類株主総会の決議は不要です。 募集事項の委任の内容 新株予約権の募集事項を取締役会へ委任するときは、株主総会の決議によって、会社法第239条第1項に掲げる事項を定めます。当該事項には新株予約権の内容が含まれますので、例えば無償ストックオプションのケースにおいては、取締役会で決めることができる募集事項は新株予約権の割当日及び数(ただし、上限は株主総会で定められる)くらいとなります。行使に際して出資される財産の価 額や取得条項、行使期間や(定める場合は)行使条件等は新株予約権の内容として株主総会で定めるため、取締役会で自由に定めることができるわけではありません。なお、募集事項を取締役会へ委任する場合における株主総会で定める行使期間は、2025年10月1日から2030年9月30日までといった定め方だけではなく、「割当日から5年」や「付与決議の日後2年を経過した日から当該付与決議の日後10年を経過する日まで」といった定め方も可能とされています。 新株予約権の機動的な発行に関する制度 2024年9月から、会社法の特例として、産業競争力強化法において「募集新株予約権の機動的な発行」に関する制度が創設されました。この制度を利用すると、株主総会の決議によって取締役会へ募集事項を委任する場合において、その有効期間が1年ではなく設立から15年までとなり、権利行使価額・行使期間もその都度取締役会で定めることができるというメリットがあります。一方で、経 済産業大臣及び法務大臣の確認を受ける必要がある、割当日の2週間前までに株主に募集事項を通知する、一定の場合には株主総会の決議が求められるといった注意すべき点もありますので、この制度を利用するときはメリット・デメリットのどちらも理解した上で利用することをお勧めします。
- [RSM汐留パートナーズ・ニュースレター 2025年9月号](https://shiodome.co.jp/news/42186/) - 新リース会計基準と税務、被扶養者認定要件の改正、経営・管理ビザ要件の厳格化 日頃よりお世話になっております。RSM汐留パートナーズです。今月のニュースレターでは、税理士法人より「新リース会計基準と税務」、社会保険労務士法人より「被扶養者認定要件の改正」、行政書士法人より「経営・管理ビザ要件の厳格化」をお届けします。 新リース会計基準の導入に伴う税務上の影響、健康保険の被扶養者認定基準引き上げによる実務対応、そして「経営・管理」ビザの取得・更新における要件強化など、制度改正や実務対応に関わる重要なポイントを分かりやすくまとめています。今月のニュースレターもぜひお役立てください。 新リース会計基準と税務 企業会計基準委員会(ASBJ)は2024年9月13日、国際的整合性の確保を目的として、新リース会計基準(企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」等)を公表しました。適用は2027年4月1日以後開始の連結会計年度・事業年度の期首からで、2025年4月1日以後開始分から早期適用も可能です。これを受け、国税庁は2025年6月30日に改正法人税基本通達等を公表しました。今回は、新会計基準と改正通達の概要を、会計と税務の一致・不一致の観点から整理します。 新リース会計基準の概要 新基準では、借手の会計処理におけるファイナンス・リースとオペレーティング・リースの分類を廃止し、短期・少額のものを除き、すべてオンバランス処理(使用権資産・リース負債の計上)とします。「原資産を使用する権利を一定期間にわたり対価と交換に移転する契約またはその一部分」をリースと定義し、特定資産の有無と使用支配権の移転の有無で識別します。従来リース外であった不動産賃貸借契約や役務提供契約も実質リースとして判定される場合があります。契約にリース構成部分と非構成部分がある場合は、独立価格比率で按分します。リース期間は、解約不能期間に加え、延長・解約オプションの合理的行使見込み期間を含めます。損益計算書には減価償却費と利息相当額を計上します。 改正法人税基本通達の概要 改正通達では、新リース会計基準に基づく借手の会計処理を法人税でも原則認めつつ、区分は従来通りとしています。主なポイントは以下の通りです。 主な税務調整 新基準では原則すべてオンバランスとなる一方、税務では従来通りオペレーティング・リース取引を賃貸借処理とするため、税会不一致が生じます。会計では使用権資産の減価償却費と利息法による利息相当額(初期多額傾向)を計上し、税務では債務確定分のリース料のみ損金算入するため、期間差が発生します。調整方法は、①総額法(会計費用を加算・留保し、税務損金を減算・留保する方法)と②純額法(差額のみを加減算する方法)の2通りです。国税庁は総額法を例示していますが、純額法も認められており、会計・税務処理の流れに応じて適切に申告調整を行う必要があります。 おわりに 新リース会計基準の導入は、会計処理だけでなく法人税申告にも大きな影響を与えます。特にオペレーティング・リース取引における税会不一致とその申告調整は、実務上の重要な論点です。契約の洗い出し、リースの識別、リース構成部分と非構成部分の区分、リース期間の決定、会計と税務の乖離に応じた正確な税務調整まで、多岐にわたる対応が求められます。ご不明点等ございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせ下さい。 被扶養者認定要件の改正 2025年10月1日より、健康保険の被扶養者認定要件が一部改正されます。今回の改正は、2025年度の税制改正による「特定扶養控除」の要件見直しに合わせ、社会保険制度との整合性を図ることを目的としています。特に19歳以上23歳未満の被扶養者に関する認定に大きな影響がありますので、その概要をお知らせします。 制度改正のポイント 対象となるのは、「被保険者の配偶者を除く19歳以上23歳未満の被扶養者」です。これまで扶養認定の基準は年間収入130万円未満でしたが、改正後は150万円未満に引き上げられます。年齢の判定は従来どおり、その年の12月31日時点で行います。例えば2025年12月31日時点で20歳の方は、年間収入が150万円未満であれば扶養認定されます。 また、認定日が2025年9月30日以前であれば従来の基準(130万円未満)が適用されます。遡及認定の場合も同様で、認定日が改正前であれば新基準は適用されません。したがって、扶養追加の申請時期によって基準が異なる点にご注意ください。なお、年間収入が150万円未満かどうかの判定は従来どおり、過去の収入、現時点の収入又は将来の収入の見込みなどから、今後1年間の収入を見込むこととなります。 留意点 配偶者については従来どおり「年間収入130万円未満」が基準であり、改正の対象外です。 障害厚生年金受給要件に該当する程度の障害がある方は、引き続き「年間収入180万円未満」で認定されます。 学生であることは要件ではなく、あくまでも年齢で判断されます 「年収の壁・支援強化パッケージ」により、一定の場合には基準額を超えても事業主証明により扶養認定が継続できる場合があります。 参考リンク:日本年金機構https://www.nenkin.go.jp/oshirase/taisetu/2025/202508/0819.html 実務への影響 今回の見直しは、学生アルバイトや短時間勤務の若年層を扶養に入れているケースに特に影響すると考えられます。収入基準の引き上げにより、これまで扶養から外れていた方が認定されやすくなる一方で、認定日によって基準が異なるため、手続上の確認が煩雑になる可能性があります。従業員への案内や社内の確認体制の整備が重要となるでしょう。 おわりに 今回の改正により、若い世代が働きながら扶養に入れる範囲が広がります。一方で、認定基準が二段階に分かれるため、運用上の判断にはこれまで以上に注意が必要です。制度改正を正しく理解し、スムーズな手続きに備えておくことが求められます。 経営・管理ビザ要件の厳格化 2025年8月26日、パブリックコメントで『「出入国管理及び難民認定法第7条第1項第2号の基準を定める省令等の一部を改正する省令案」に係る意見公募手続の実施について』が発せられました。現在のところパブリックコメントの段階ですが、施行予定日が2025年10月中旬となっており、期限が迫っております。今回はパブリックコメントの内容の詳細を紹介したいと思います。 基準省令の改正について ①申請する事業の規模について 【現在】 以下のいずれかに該当すること。 ア その経営又は管理に従事する者以外に本邦に居住する2人以上の常勤の職員が従事して営まれるものであること。 イ 資本金の額又は出資の総額が500万円以上であること。 ウ ア又はイに準ずる規模であると認められるものであること。 【改正後】 以下のいずれにも該当すること。 ア 常勤の職員の数について1人以上従事すること イ 資本金の額又は出資の総額が3,000万円以上であること ②経営に従事する者の学歴又は職歴に関する基準の創設 ア 経営管理に関する分野又は申請に係る事業の業務に必要な技術又は知識に係る分野において博士の学位、修士の学位又は専門職学位を有していること。 イ (申請人が事業の経営に従事しようとする場合においても、)事業の経営又は管理について3年以上の経験(特定活動の在留資格(出入国管理及び難民認定法第7条第1項第2号の規定に基づき同法別表第1の5の表の下欄に掲げる活動を定める件で定める活動のうち本邦において貿易その他の事業の経営を開始するために必要な事業所の確保その他の準備行為を行う活動を含む活動を指定されたものに限る。)をもって本邦に在留していた期間がある場合には、当該期間を含む。)を有していること。 提出書類の改正について 「経営・管理」に係る在留資格認定証明書交付申請、在留資格変更許可申請等をする際の提出する書類について以下のとおり改正するとされております。 ①事業計画書に専門家の評価が必要になる 事業計画書について、経営に関する専門的な知識を有する者による評価を受けたものを提出しなければならないことを定めるとされております。専門的な知識を有する者が具体的にどのような人物をさすかまだ確認できておりませんが公認会計士や中小企業診断士などが想定されます。なお、現行では事業計画書の提出が必要とされているのはカテゴリー3とカテゴリー4の会社となっております。 ②事業の規模に係る提出資料について 【現在】 以下のいずれかを提出する。 ア 当該外国人を除く常勤の職員の総数を明らかにする資料並びにその数が二人以上である場合には、当該二人の職員に係る賃金支払に関する文書及び住民票、在留カード又は特別永住者証明書の写し イ 資本金の額又は出資の総額を明らかにする資料 ウ その他事業の規模を明らかにする資料 【改正後】
- [RSM汐留パートナーズ・ニュースレター 2025年10月号](https://shiodome.co.jp/news/42479/) - インボイス制度 2026年以降、2025年度最低賃金改定の対応、株主総会招集手続き 日頃よりお世話になっております。RSM汐留パートナーズです。今月のニュースレターでは、税理士法人より「インボイス制度 2026年以降」、社会保険労務士法人より「2025年度最低賃金改定の対応」、司法書士法人より「株主総会招集手続き」をお届けします。 インボイス制度の経過措置縮小に伴う実務対応、全国的に1,000円を超える最低賃金引き上げへの人事・労務対応、そして株主総会招集に関する基本手続きなど、制度改正や実務対応に関わる重要なポイントを分かりやすくまとめています。今月のニュースレターもぜひお役立てください。 インボイス制度 2026年以降 2023年10月に始まったインボイス制度は、導入から2年が経過しました。当制度は仕入税額控除の厳格化や請求書管理の煩雑化など、事業者に多くの実務負担をもたらす一方で、消費税の適正な課税関係を確保するという目的があります。現在は移行期の負担を和らげるための「経過措置」が設けられていますが、2026年10月以降はこの経過措置がさらに厳格化される過渡期を迎え、取引や契約の見直しが一層求められることになります。今回は、インボイス制度と経過措置の概要を整理し、来年以降に備えるための主な留意点を考えていきたいと思います。 インボイス制度の概要と経過措置の内容 インボイス制度では、適格請求書発行事業者として登録した課税事業者のみがインボイスを発行でき、買い手が消費税の仕入税額控除を受けるためには、このインボイスを保存することが必要となります。これにより、免税事業者や未登録事業者との取引では、原則として仕入税額控除が不可となります。但し、急激な負担増の影響を避けるため、導入から6年間は「経過措置」が設けられ、控除率を段階的に縮小する仕組みが採られています。 具体的には、2023年10月から2026年9月までは仕入税額の80%、2026年10月から2029年9月までは50%を控除可能とし、2029年10月以降は控除ができなくなります。なお、経過措置を利用するには、区分記載請求書等の保存に加え「80%控除対象」「免税事業者」など、帳簿に経過措置対象である旨の記載が必要です。 来年に向けた留意点 2026年10月以降は、控除率減少による税負担増が避けられず、特に次の点が重要です。 ①コスト負担増への対応 仕入税額控除が半減することで実質的なコストが増えるため、価格改定や契約条件の調整を検討する必要があります。 ②取引先の整理と将来対応 2029年10月以降は控除不可となるため、取引を継続するのか、取引先に発行事業者への登録を促すのか、あるいは取引先を見直すのかの判断が必要です。免税事業者側も、売上規模や主要取引先の構成を踏まえて登録を検討するタイミングと言えます。 ③経理・システム体制の整備 経過措置対象仕入には特例対象の明記が必須のため、帳簿・会計システムを点検し、正確に管理できる体制にあるか確認が必要です。 ④影響試算と社内共有 控除減少分が利益や資金繰りに与える影響を試算し、社内共有して価格戦略や取引方針に反映させることが重要です。 おわりに インボイス制度は取引の透明性や税収の適正管理を目的に導入され、経過措置はその移行負担を和らげるための仕組みです。2026年10月からは控除率が50%に縮小され、将来的には控除不可となります。こうした段階的な変化を見据え、各事業者は取引先の整理や契約内容の見直し、経理体制の強化を早めに進めることが重要です。ご不明点等ございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせ下さい。 2025年度最低賃金改定の対応 最低賃金の改定は、物価上昇や人手不足といった経済環境を背景に、近年ますます注目を集めています。2025年度(令和7年度)の地域別最低賃金は、全国平均・都道府県別いずれにおいても過去最大規模の引き上げが見込まれており、企業の人事・労務担当者にとって喫緊の課題となっています。本稿では、最新の改定状況を整理するとともに、企業が留意すべきポイントを確認します。 最新の最低賃金改定の状況 厚生労働省の中央最低賃金審議会は2025年8月に「令和7年度地域別最低賃金改定の目安」を公表しました。その内容は、全国加重平均で時給1,118円とされ、前年から63円の引き上げとなります。これは過去最大の上昇幅であり、全都道府県で最低賃金が1,000円を超える見込みです。 東京では1,226円、神奈川1,225円、大阪1,177円といった水準が示されており、従来900円台であった地方県もすべて1,000円台に移行します。なお、実際の発効は10月1日以降、都道府県ごとに告示を経て順次実施される予定です。これにより、最低賃金の地域間格差はやや縮小しつつ、全国的に高水準化が進むこととなります。(参考リンク:厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」) 企業への影響・留意点 今回の引き上げは、パート・アルバイト・契約社員を中心に人件費増加を直撃することが想定されます。とりわけ最低賃金付近で雇用している事業所では、シフトや勤務時間の組み方、固定残業代や各種手当の水準を含め、給与体系全体を再点検する必要があります。 また、全都道府県で1,000円を超えることで、これまで地域間のコスト差を背景にしてきた事業運営にも影響が及びます。人材確保や離職率への波及効果も予想されるため、単なるコスト対応にとどまらず、採用戦略や労働条件の魅力付けを含めた総合的な施策が求められます。さらに、各都道府県ごとに正式決定の時期や額が異なるため、法令遵守の観点からも決定内容を注視し、給与規程の修正やシステム対応を計画的に進めることが重要です。 おわりに 2025年度の最低賃金改定は、全ての都道府県で1,000円を超えるという大きな節目を迎えます。企業にとっては人件費負担の増大という厳しい側面がある一方で、従業員の生活安定や人材確保に資する契機ともなり得ます。企業は、自社に与える影響を早急に試算し、給与制度の見直しや採用・定着施策の再構築を進めていく必要があります。当社としても、最低賃金改定に伴う制度対応や実務面のご相談を幅広くサポートいたしますので、ぜひお気軽にご相談ください。 株主総会招集手続き 株式会社が定款の変更、募集株式の発行、役員報酬の決定等を行うときは株主総会の決議が必要となり、株主総会を開催するための招集手続きは会社法によって定められています。株主総会の決議が後から取消・無効とならないよう、その手続きは会社法に則って行うことが求められます。ここでは、非公開会社である取締役会設置会社(株主は数名から数十名程度)が臨時株主総会を招集する手続きの概要を確認します。なお、ここでは株主による株主総会の招集の請求手続きは含まないものとします。 株主総会の招集の決定 株主総会を招集するときは、取締役会の決議によって会社法第298条第1項(株主総会の日時及び場所等)の事項を定めます。非公開会社においては、書面によって議決権を行使する(書面投票)又は電磁的方法によって議決権を行使する(電子投票)ことができることとすることを定めるケースは少なく、当日出席できない株主のために招集通知と併せて委任状を発するケースが多いでしょう。 株主総会の招集期間 株主総会を招集するときは、次に掲げる日までに株主に対してその通知を発します。 公開会社又は書面投票・電子投票を認める場合:2週間前まで 非公開会社:1週間前まで 取締役会非設置会社:定款で定めた日(定款に定めがなければ1週間前まで) この招集期間は、上記2の場合、招集通知を発する日から株主総会の開催日まで中7日の期間が求められますので、株主総会の1週間前(中6日)に発したのでは期間が足りないのでご注意ください。 株主総会の招集通知の内容 株主総会の招集通知には、原則として取締役会で定めた会社法第298条第1項(株主総会の日時及び場所等)の事項を記載します。株主にWEB参加・WEB出席を認める場合は、そのテレビ会議システムのURLを記載するか、そのURLの交付を受けるための会社担当者のメールアドレスを記載するケースも増えています。 株主総会参考書類の交付 書面投票・電子投票を認める場合、議決権の行使について参考となるべき事項を記載した書類(株主総会参考書類)の交付が必要です。 株主総会の招集通知を発する方法 株式会社が取締役会設置会社である場合又は書面投票・電子投票を認める場合は、株主総会の招集の通知は書面で行います。ただし、株主の承諾を得て、電磁的方法により通知を発することも可能です。 株主総会の招集手続きの省略 株主全員の同意があるときは株主総会の招集手続きを省略することができますので、書面投票・電子投票を認める場合を除き、招集通知を発することなく株主総会を開催することも可能です。 みなし決議という方法 取締役又は株主が株主総会の目的事項を提案し、議決権を行使することができる株主全員が書面又は電磁的記録により当該提案に同意したときは、当該提案を可決する旨の株主総会の決議があったものとみなすことができます。特に株主が少数の株式会社においては、頻繁に利用されています。
- [RSM汐留パートナーズ・ニュースレター 2025年11月号](https://shiodome.co.jp/news/46899/) - 令和7年 年末調整の改正ポイント、カスタマーハラスメント対策の義務化、経営・管理在留資格の基準省令改正 日頃よりお世話になっております。RSM汐留パートナーズです。 今月のニュースレターでは、税理士法人より「令和7年 年末調整の改正ポイント」、社会保険労務士法人より「カスタマーハラスメント対策の義務化」、行政書士法人より「経営・管理在留資格の基準省令改正」をお届けします。 所得税控除制度の見直しに伴う年末調整準備、カスタマーハラスメント防止義務化に向けた体制づくり、そして「経営・管理」在留資格における新基準への対応など、制度改正と実務対応の観点で押さえておきたい主要トピックをまとめています。今月のニュースレターもぜひお役立てください。 令和7年 年末調整の改正ポイント 11月に入り、年末調整の準備を進める時期となりました。年末調整は、給与所得者の1年間の所得税を確定させる重要な手続です。令和7年の年末調整は、基礎控除や給与所得控除など所得税の制度改正が大きな特徴です。制度改正を反映すべき書類や計算処理も多く、例年にも増して慎重な対応が求められます。今回は、こうした制度改正の概要と実務上の留意点を整理します。 令和7年の改正点 ① 基礎控除の引き上げ 従来一律48万円であった基礎控除額が、合計所得金額132万円以下の場合は95万円となり、132万円を超える層についても令和7・8年の2年間限定で段階的な上乗せ控除が設けられます。控除拡大により課税所得が減少します。 ② 給与所得控除の最低保障額の引き上げ 給与所得控除の最低額が55万円から65万円に引き上げられ、給与収入190万円以下の者に適用されます。基礎控除額の最大95万円と合わせると、年収160万円程度までは所得税が課されない計算になります。 ③ 扶養親族等の所得要件の緩和 扶養控除や配偶者控除等の判定基準が、合計所得金額48万円以下から58万円以下に引き上げられます。これにより、アルバイト収入のある学生やパート収入のある配偶者が扶養対象となるケースが増えます。 ④ 特定親族特別控除の新設 19歳以上23歳未満の親族を対象とする新たな控除制度が創設されます。対象親族の合計所得金額が58万円超123万円以下(給与収入ベースで123万円超188万円以下)の場合、所得金額に応じて3万円から63万円の控除を受けられます。 これらの改正は2025年12月1日から施行され、11月までの源泉徴収事務には変更はありません。1月から11月までは従来どおりの源泉徴収を行い、12月の年末調整で新制度による精算を行う点に注意が必要です。 実務上の留意点 扶養親族等の所得要件の緩和に伴い、新たに扶養控除等の対象となる親族がいないかを確認する必要があります。該当する場合は「令和7年分給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を受領し、適用を判定します。また、「特定親族特別控除」を適用する従業員からは、新設の「給与所得者の特定親族特別控除申告書」の提出が必要です。大学生の子を持つ場合は、事前にアルバイト収入額を確認してもらうよう周知します。計算面では、改正後の「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」を使用します。さらに、国税庁が公表する「令和7年分給与所得に対する源泉徴収簿」には特定親族特別控除欄が設けられていないため、余白欄を利用するなどの対応が求められます。 おわりに 令和7年分の年末調整のポイントは、控除制度の改正対応にあります。扶養親族や特定親族の該当有無を早期に確認し、必要書類の案内・回収・計算表の更新を進めることが重要です。ご不明点等ございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせ下さい。 カスタマーハラスメント対策の義務化 お客様対応に従事する従業員が、理不尽な言動や過度な要求を受け、心身に負担を抱えるケースが増えています。いわゆる「カスタマーハラスメント(カスハラ)」は、もはや単なるクレームでは済まされない問題であり、企業としての対応が急務です。従業員の安全と尊厳を守ることは、企業の持続的成長と社会的信頼の確保に直結します。近年は法制度面でも対応強化の動きが進んでおり、本稿では企業が取るべき対応の方向性を整理します。 法制度の動向 2025年6月、労働施策総合推進法の一部改正法案が成立・公布されました。改正により、カスタマーハラスメント対策を事業主の「雇用管理上の措置義務」とする新たな規定が設けられます。施行日は「公布日から1年6か月以内」の政令で定められる予定で、2026年中の施行が見込まれています。この改正のポイントは、これまで指針やガイドラインにとどまっていたカスハラ対策が、法的義務に格上げされる点です。なお、カスタマーハラスメントの主体は、「顧客、取引先、施設利用者その他の利害関係者」とされ、顧客に限られない点にも注意が必要です。 企業への影響・留意点 制度改正を見据え、企業は早期に以下の体制整備を進めることが求められます。 1.定義・線引きの明文化 「どのような言動がカスハラに該当するか」を社内規程や就業規則に明確に定め、従業員に周知します。ガイドラインでは、顧客等の言動が「社会通念上許容される範囲を超え」「就業環境を害するもの」とされる場合に該当します。 2.相談窓口と対応体制の整備・周知 従業員が安心して相談できる窓口を設置し、相談内容の記録・報告体制を整えます。匿名相談や外部チャネルの導入も有効です。 3.調査・対応プロセスの設計 事案発生時の調査手順、被害者保護、顧客対応方針、再発防止策までを一貫して実施できるプロセスを整備明文化します。 おわりに これまでカスハラ対策は、企業の自主的な取組みに委ねられてきましたが、2025年の法改正を契機に義務化の流れが本格化します。特に東京都・北海道・群馬県など、条例で独自の対応が進む地域では、早期の準備が欠かせません。企業は、まず実態を把握し、規程整備→相談体制構築→対応プロセス策定の順で体制づくりを進めましょう。当社では、カスハラ対応規程の設計支援や対応フロー策定など、実務に即したサポートを行っております。ご関心のある方はお気軽にお問合せください。 経営・管理在留資格の基準省令改正 2025年10月16日、「経営・管理」に係る基準省令(「経営・管理」の基準を定める省令)が改正され施行されました。前回のニュースレターではパブリックコメント段階であったため、その概要についてお伝えしましたが、今回はすでに「経営・管理」で在留中の方の取り扱いについてさらに細かく説明していこうと思います。 令和10年10月16日までの猶予期間 現在「経営・管理」で在留中の方で改正された新しい基準を満たしていないは令和10年10月16日までに新しい基準を満たす必要があります。ただし3年間の猶予が与えられたといって安心してはならないようです。令和10年10月16日までの在留期間更新許可申請においても経営状況や改正後の基準に適合する見込み等を踏まえ、拒否判断を行うとされております。そのため、新基準を満たすようにロードマップを作成し計画的に増資等を行うことをおすすめいたします。 基準省令の改正のおさらい 令和10年10月16日までに満たさなければならない改正された基準は大きくわけて4点です。 ①常勤職員の雇用について 常勤職員とはパートタイマーなどとは異なります。以下、勤務時間等待遇から見た場合をご参照ください。労働日数が週5日以上、かつ、年間217日以上であって、かつ、週労働時間が30時間以上の者。 入社日を起算点として、6か月間継続し、全労働日の8割以上出勤した職員に対し10日以上の有給休暇が付与されること。 雇用保険の被保険者であり、一週間の所定労働時間が30時間以上であること(例外あり)。 上記に加え日本人、日本人の配偶者等、特別永住者、永住者、永住者の配偶者等、定住者の者を雇用しなければなりません。 ②資本金の額等について 従前の基準である資本金500万円から新基準では3000万円に変更されました。現在3000万円の資本金の場合、2500万円の増資が必要になります。増資には単純に金銭の投資を行うほか、利益剰余金や役員貸付金を増資できることもあります。また自己所有の不動産がある方は現物出資で投資することもできますが、このような増資方法をとることが認められるかは管轄の出入国在留管理局に確認が必要です。 ③日本語能力について
- [RSM汐留パートナーズ・ニュースレター 2025年12月号](https://shiodome.co.jp/news/47232/) - M&Aの代表的手法と税務上の留意点、マイナ保険証の一本化、種類株主総会が必要なケース 日頃よりお世話になっております。RSM汐留パートナーズです。今月のニュースレターでは、税理士法人より「M&Aの代表的手法と税務上の留意点」、社会保険労務士法人より「マイナ保険証の一本化」、司法書士法人より「種類株主総会が必要なケース」をお届けします。 M&Aスキームによる税務影響の違い、マイナ保険証への移行に伴う実務対応、そして種類株式発行会社における種類株主総会の要否判断など、いずれも制度理解と実務対応の双方が求められるテーマです。今月のニュースレターもぜひお役立てください。 M&Aの代表的手法と税務上の留意点 昨今、企業の成長戦略や事業ポートフォリオの再構築において、M&Aは重要な経営手段として定着しています。しかしM&Aと一括りに表現されるものの、株式譲渡・事業譲渡・合併/会社分割といった複数の形式が存在し、税務処理、リスク承継範囲、PMIの難易度やコストが大きく異なります。スキームの選択は交渉初期から検討すべき重要論点であり、判断次第で買収後のキャッシュフローや企業価値が大きく変動します。今回は税務面を中心に、代表的なM&A手法を比較・整理します。 株式譲渡 株式譲渡は、買い手が対象会社の株式を取得し経営権を取得する方法です。会社の法人格は維持されるため、許認可・契約・従業員関係が原則として維持され、手続き負担が小さく、スピード感を重視する場合に最適です。売り手側は、個人株主の場合は株式譲渡益に約20%の申告分離課税が適用され、累進課税となる事業譲渡より税負担が抑えられる場合があります。法人株主の場合は譲渡益が法人所得に含まれ、通常の法人税が課税されます。一方、買い手側では取得した株式は税務上償却できず損金算入もできないため、税務メリットは限定的です。また、対象会社の繰越欠損金は原則承継されますが、支配権の変動に伴う欠損金利用制限が適用され、実務上活用できないケースも見受けられます。 事業譲渡 事業譲渡では、承継対象となる資産・負債・契約を個別に選択できます。不要な資産や簿外債務を排除できるため、買い手にとってリスク面のメリットが大きい手法です。但し、契約承継・従業員同意・許認可の再取得など、実務負担や手続きコストが大きくなる傾向があります。税務面では、売り手法人に譲渡益課税が生じ、土地・有価証券等を除く課税資産の譲渡には消費税が発生します。一方、買い手側は取得資産を時価で計上し、発生したのれんを税務上5年間で償却できるため、節税効果が期待できます。繰越欠損金は承継できません。 合併・会社分割 合併や会社分割といった組織再編では、会社法に基づき資産・負債・契約が包括承継されます。税務面では、組織再編税制の適格要件を満たすかどうかがポイントとなります。適格組織再編の場合、譲渡益課税が繰り延べられ、資産は簿価で承継されます。売り手側(消滅会社)の繰越欠損金も原則承継可能ですが、株式譲渡と同様に、欠損金利用制限の検討が必要です。非適格組織再編の場合、資産が時価で評価され、売り手側に譲渡益課税が生じる一方、買い手側では事業譲渡と同様にのれん償却が可能となり、税務メリットが生じる場合があります。原則として繰越欠損金の引継ぎは認められません。 おわりに M&A手法の選択は税務面だけでなく、承継範囲、リスク管理、のれん償却、手続き負担、PMIの難易度など、複数の観点から総合的に検討することが重要です。具体的な事案や組織再編税制の適用についてご相談等ございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせください。 マイナ保険証の一本化 医療分野のデジタル化が進む中、企業の人事・総務担当として確実に押さえておきたいのが、マイナンバーカードを健康保険証として利用する「マイナ保険証」への移行です。従業員が円滑に医療機関を受診できる環境を整備することは、企業の労務管理や福利厚生の観点からも重要なテーマです。本稿では、制度の全体像、移行スケジュール、暫定措置、そして企業が準備すべき実務ポイントを整理します。 制度概要と移行スケジュール 2024年12月2日から、従来の健康保険証の新規発行が終了しました。今後はマイナ保険証の利用が基本となり、政府は2025年12月2日から原則としてマイナ保険証への一本化を進める方針です。ただし、健康保険証がその日をもって即時に無効となるわけではありません。現行の健康保険証は2026年3月31日まで有効とされており、実際には段階的な移行期間が設けられています。企業としては、この移行期間を踏まえつつ、従業員が混乱なく受診できる体制づくりが求められます。 また、マイナンバーカードを保有していない方や、取得が難しい事情のある方に対しては、保険資格を確認できる「資格確認書」が保険者から発行されます。これはマイナ保険証の代替手段として医療機関で利用でき、すべての加入者が受診できる仕組みを確保するための制度的な救済措置です。 企業として準備すべきポイント 1.従業員の取得・登録状況の把握 従業員がマイナンバーカードを取得しているか、またマイナ保険証利用登録(オンライン資格確認)が完了しているかを把握することが重要です。未登録の場合、医療機関での受付に時間を要する可能性があるため、登録方法の周知や申請支援を行い、スムーズに利用できる環境を整えておく必要があります。 2.入退社・異動手続きの見直し 健康保険の資格取得・喪失に伴う手続きを、マイナ保険証の運用に合わせて整理し直すことが求められます。特に退職時には、資格喪失と同時にマイナ保険証としての利用ができなくなるため、資格確認書の必要性や発行方法を丁寧に説明し、受診時にトラブルが生じないよう注意喚起することが欠かせません。 3.社内周知と相談体制 「2025年12月2日の原則一本化」「資格確認書の存在」など、制度のポイントは誤解されやすい部分が多くあります。従業員向けの説明資料やFAQ、社内通知文の整備を進め、制度の全体像を正確に伝えることが重要です。必要に応じて相談窓口を設けることも検討しましょう。 おわりに マイナ保険証への移行は、企業の労務実務に影響する重要な制度改正です。暫定期間が設けられているとはいえ、まずは2025年12月2日の原則一本化に対応できる体制づくりを早期に進めることが求められます。当社では制度対応に関する実務サポートを提供しておりますので、ご関心があればお気軽にご相談ください。 種類株主総会が必要なケース 種類株式発行会社が募集株式の発行、株式の種類の追加、発行可能(種類)株式総数の増加、株式の併合等、特定の行為をする場合において、株主総会又は取締役会の決議に加え、種類株主総会の決議がなければその効力を生じないケースがあります。そのため、種類株式発行会社においては、特定の行為をするときに種類株主総会の決議が必要かどうかの確認には気をつかうところです。ここでは、拒否権条項の付いていない普通株式及びA種株式を発行している株式会社X(非公開会社)における種類株主総会の必要なケースを見ていきます。 普通株式も種類株式の一種 普通株式も種類株式の一種であるため、普通株式に係る種類株主総会の決議を忘れやすいので注意が必要です。 実際に種類株式を発行していない場合 内容の異なる二以上の種類の株式を定款に定めている株式会社は種類株式発行会社に該当しますので、仮にA種株式を実際に発行していない(又は全て自己株式である)場合は、A種株式に係る種類株主総会は不要となりますが、普通株式に係る種類株主総会の決議が必要かどうかの検討は必要です。 募集株式の発行 株式会社Xが新たに普通株式を発行する場合、定款に別段の定めがある場合を除き、株主総会の決議に加えて、普通株式に係る種類株主総会の決議が必要です。 募集新株予約権の発行 株式会社Xが新たに普通株式を目的とする新株予約権を発行する場合、定款に別段の定めがある場合を除き、株主総会の決議に加えて、普通株式に係る種類株主総会の決議が必要です。 株式の分割、組織再編行為等 会社法第322条1項各号の事項(1号に規定する定款の変更(単元株式数についてのものを除く)を行う場合を除く)を行う場合において、ある種類の株式の種類株主に損害を及ぼすおそれがあるときは、定款に別段の定めがある場合を除きり、株主総会の決議に加えて、当該種類株式に係る種類株主総会の決議が必要です。 株式の種類の追加、内容の変更等 株式の種類の追加、株式の内容の変更、発行可能株式総数又は発行可能種類株式総数の増加に係る定款変更を行う場合において、ある種類の株式の種類株主に損害を及ぼすおそれがあるときは、株主総会の決議に加えて、当該種類株式に係る種類株主総会の決議が必要です。 取得条項、会社法第322条2項の定め A種株式の内容として新たに取得条項を定款に定めるとき、あるいはA種株式の内容として新たに会社法第322条2項の事項を定款に定めるときは、A種株主全員の同意が必要です。 全部取得条項 A種株式の内容として新たに全部取得条項を定款に定めるときは、A種株式に係る種類株主総会の決議が必要です。また、取得請求権が行使されたときに取得と引換えに交付される株式がA種株式である種類株式や、取得条項が発動したときに取得と引換えに交付される株式がA種株式である種類株式があるときは、当該種類株式に係る種類株主総会の決議も求められます。
- [RSM汐留パートナーズ・ニュースレター 2026年4月号](https://shiodome.co.jp/news/56628/) - 次世代KSKが税務調査に与える影響、2026年度の主な法改正、法務局の休日と会社設立日の新ルール 今月のニュースレターでは、税理士法人より「次世代KSKが税務調査に与える影響」、社会保険労務士法人より「2026年度の主な法改正」、司法書士法人より「法務局の休日と会社設立日の新ルール」についてお届けいたします。 税理士法人では、国税庁のシステム刷新やAI活用が税務調査に与える影響について、現状と今後の方向性を整理し、実務上の留意点を解説します。社会保険労務士法人では、2026年度施行の人事労務・社会保険関連の主な法改正を取り上げ、実務への影響と対応時の留意事項を解説します。司法書士法人では、法務局の休日を会社・法人の設立日として指定できる新ルールについて、対象範囲や手続き、事前準備の要件など実務上のポイントを整理します。 今月のニュースレターも、日々の実務にぜひお役立てください。 次世代KSKが税務調査に与える影響 最近SNSや動画サイトで「国税庁のAIが個人のSNSや銀行口座を常時監視し、自動で税務調査が来る!」といったセンセーショナルな噂を目にしたことはありませんか?結論から言えば、現段階ではこうした噂は過剰に脚色されたものであり、過度に恐れる必要はありません。 今回は、国税庁のシステム刷新(次世代KSKシステム等)とAI活用が、実際の税務調査にどう影響するのか、税務の現場の視点から実態を整理します。 現状の国税庁のAI利用状況 国税庁では現在、次世代システム(いわゆるKSKシステムの高度化)を進めており、各種データを活用した分析体制の整備が進められています。具体的には、外部データやインターネット情報、過去の調査事績などをデータベース化し、統計分析や機械学習を活用して「申告漏れの可能性が高い納税者」を抽出する仕組みの構築が検討されています。 ただし、このAIの役割はあくまで「調査対象の絞り込み」です。AIが自動的に税務調査を実施するわけではなく、最終的な判断や調査は従来どおり税務職員が行います。 また、銀行口座についても、金融機関に対する預貯金等の「オンライン照会」が拡大しているに過ぎず、国税当局が銀行システムに直接接続して常時監視しているわけではありません。SNS情報についても、AIが自動的に証拠を確定するのではなく、最終的なデータの突合やSNSの裏取りなどは、引き続き調査官が「人的」に行います。 今後想定されるAI活用の方向性 今後導入が噂される生成AI(令和10年予定)についても、「AIが自律的に納税者の非を暴き出す」ものではありません。現在想定されているのは、調査官向けの「業務効率化アシスタント(内部ツール)」です。例えば、若手調査官が「〇〇業の調査ではどの項目を重点的に見るべきか」「調査報告書はどうまとめるか」とAIに質問し、過去の判例や通達、内部マニュアルから要約を得るといったメンター的な活用が想定されています。 ただし、AI技術は日進月歩であり、将来的にはデータ突合など自動化できる範囲が拡大する可能性もあります。制度やシステムのアップデートについては、今後も注視が必要です。 おわりに SF映画のような「AIによる全自動税務調査」が今すぐ実現するわけではありませんが、油断は禁物です。調査官がデジタルツールを活用することで、情報収集は迅速化し、調査ターゲットの選定はより精密になっています。つまり、「この程度なら見つからないだろう」というどんぶり勘定は通用しにくくなっているということです。 過度に怯える必要はありませんが、AI技術がさらに進化する将来を見据え、「適正な記帳」と「証拠書類の保存」がこれまで以上に重要になるのは間違いありません。 弊社では、こうした税務行政のデジタル化の動向も踏まえ、税務調査リスクを最小限に抑えるための適正な会計処理をしっかりとサポートしてまいります。ご不明点等ございましたら、お気軽にお問い合わせ下さい。 2026年度の主な法改正 2026年4月以降、労働関係・社会保険分野において企業実務に影響の大きい制度改正が順次施行されます。本号では、特に人事労務担当者が特に押さえておくべき改正点を整理し、対応時の留意事項をご紹介します。 法改正内容 ・女性活躍推進法(4月1日施行) 改正により、常用労働者101人以上の企業における情報公表義務が拡大されます。これまで301人以上の企業に義務付けられていた「男女間の賃金差異」に加え、新たに「女性管理職比率」が必須の公表項目となります。さらに、「職業生活に関する機会の提供」または「仕事と家庭の両立に資する雇用環境の整備」に関する事項から1項目以上を選択して公表する必要があり、合計3項目以上の情 公表が求められます。また、女性の健康上の特性に配慮した取組の重要性が明確化され、法律の有効期限も10年間延長され、2036年3月31日まで継続されました。 ・雇用保険料率の改定(4月1日施行) 雇用保険料率については、労使負担分がそれぞれ0.05%引き下げられ、合計1.35%となります。 ・障害者雇用促進法(7月1日施行) 法定雇用率が現行2.5%から2.7%へ引き上げられます。これにより、従業員38名以上の企業では障害者1人以上雇用する義務が生じます。また、従業員101名以上で法定雇用率を満たさない場合、不足人数1人につき月額5万円の障害者雇用納付金が課されます。6月1日時点の雇用状況は「障害者雇用状況報告書」として7月15日までに提出する必要があるため、障害者手帳の有効期限や勤務実態の確認を行っておくことが重要です。 ・労働施策総合推進法(10月1日施行) カスタマーハラスメントへの対応として、企業に防止措置を講じることが義務化されます。顧客や取引先等からの迷惑行為により従業員の就業環境が害される事例が増えており、社外関係者による行為への対応体制の整備が求められます。方針の明確化、相談窓口の設置、対応手順の整備、従業員への周知・教育などを進めておく必要があります。 ・国民年金法(10月1日施行) 国民年金の第1号被保険者(自営業者・フリーランス等)が、子どもが1歳に到達するまでの間、国民年金保険料を免除する制度が創設されます。育児期の所得減少への支援を目的としており、所得要件は設けられていません。母が出産した場合には、従来の産前産後期間の免除に加え、出産後の一定期間も対象となります。 おわりに 春は入退社や異動に伴う手続きに加え、社会保険料率の改定対応、雇用状況報告書の作成、年度更新や算定基礎届の準備など、人事労務業務が集中する時期です。制度改正への対応を後回しにすると負担が大きくなるため、早めの確認と準備をお勧めします。本ニュースレターが、実務対応の一助となれば幸いです。人事労務に関する不明点がございましたら、お気軽にご相談ください。 法務局の休日と会社設立日の新ルール 株式会社は、その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立します(会社法第49条)。登記は法務局の開庁日の業務取扱時間にしか受付をしていないため、令和8年4月1日(水曜日)を株式会社の設立日としたい場合は、令和8年4月1日の午前8時30分から午後5時15分までに管轄法務局へ登記申請をすることが求められます。そのため、1月1日や5月5日のような祝日を株式会社の設立日とすることができない仕組みとなっていました。 土日祝日を設立日に指定する 土日祝日を設立日にしたいというニーズもあったことから、商業登記規則が改正され、令和8年2月2日以降は土日祝日(法務局の休日)を会社・法人の設立登記の日とすることができるようになりました。 対象となる会社・法人 株式会社以外にも、合同会社、一般社団法人又は一般財団法人も法務局の休日を設立登記の日とすることができます。 法務局の休日を設立日とする手続き 法務局の休日を設立登記の日とするためにはいくつかの条件があります。 一つ目は、設立日としたい日が法務局の休日である場合、その前平日の業務取扱時間に登記申請をすることです。令和8年4月25日(土曜日)を設立日としたい場合は、4月24日(金曜日)の午前8時30分から午後5時15分までに管轄法務局へ登記申請をします。法務局の休日が連続する場合、例えば5月5日(火)を設立日としたい場合は5月1日(金曜日)午前8時30分から午後5時15分までに管轄法務局へ登記申請をすることになります。 二つ目は、登記申請書の登記すべき事項に「会社(又は法人)成立の年月日」として設立日としたい日を記載し、加えて、その他の事項に登記の年月日(設立日)は登記すべき事項の「会社(又は法人)成立の年月日」に記載した日付のとおりとすることを求める旨を記載します。 登記申請日までに準備の完了 登記申請をする日までに、申請に必要な手続きが全て終わっていることが求められます。株式会社の設立登記においては、公証人による定款の認証、出資の履行、設立時役員の就任等が登記申請をする日までに済んでいなければなりません。 新設合併、新設分割、株式移転 株式会社の設立登記だけではなく、新設合併、新設分割又は株式移転といった新設型の組織再編行為において、法務局の休日を設立登記の日とすることも可能です。なお、合同会社から株式会社への組織変更のような組織変更による設立の登記、持分会社の種類の変更による設立の登記、有限会社から株式会社への組織変更による設立の登記には適用がありません。 バックデートは不可 設立登記の日の指定は申請日の翌日が法務局の休日である場合においてのみ行うことができます。そのため、過去の日を設立日として指定することはできません。平日を設立日とする場合も同様ですが、設立日をこの日としたいというニーズがある場合は、必ず特定の日の法務局の業務取扱時間に登記申請を行い、その申請が受け付けられる必要がありますので設立日に拘りがある場合はご注意ください。
- [RSM汐留パートナーズ・ニュースレター 2026年2月号](https://shiodome.co.jp/news/54620/) - 令和8年度税制改正のポイント②、女性活躍推進法の改正、減資公告時の実務対応 日頃よりお世話になっております。RSM汐留パートナーズです。 今月のニュースレターでは、税理士法人より「令和8年度税制改正のポイント②」、社会保険労務士法人より「女性活躍推進法の改正」、司法書士法人より「減資公告時の実務対応」についてお届けいたします。 税理士法人では、令和8年度税制改正大綱における個人所得課税・資産課税・相続課税の注目論点について、社会保険労務士法人では、2026年4月から適用される女性活躍推進法の改正について、企業実務に影響の大きいポイントを整理し、司法書士法人では、官報公告の申込み時点において、減少する資本金の額を確定できない場合の対処法について、それぞれ解説しています。 今月のニュースレターも、日々の実務にぜひお役立てください。 令和8年度税制改正のポイント② 今回は2026年度税制改正大綱のうち、主に個人の所得税、資産形成、相続に関わる改正点を確認します。物価上昇への対応とともに、長期的な資産形成や税負担の公平性を意識した改正が盛り込まれています。 所得税における課税最低限の引上げ 所得税では、物価上昇による実質的な税負担増への対応として、基礎控除および給与所得控除の最低保障額が引き上げられます。これにより、給与所得者の課税最低限は、従来の約103万円から約178万円へと大幅に引き上げられます。本改正は2026年分の所得税から適用され、2026年分については年末調整で反映される予定です。いわゆる「年収の壁」への影響も大きく、就業調整の緩和や可処分所得の下支えが期待されます。 通勤手当・食事支給に係る非課税限度額の見直し 長年据え置かれてきた税制上の基準額についても、物価上昇を踏まえた見直しが行われます。通勤手当では距離区分が細分化され、例えば片道65km超75km未満の場合、月額非課税限度額は45,700円(現行:55km超は一律31,600円)となります。 また、役職員に対する食事支給については、非課税限度額が月額7,500円(現行:3,500円)に引き上げられ、現金支給の場合の基準も1食650円以下(現行:350円以下)へと見直されます。 相続税における不動産評価の見直し 相続税では、不動産評価の適正化が図られます。相続開始前5年以内に取得した一定の貸付用不動産等については、原則として取得価額を基礎とした評価が行われます。不動産小口化商品も対象とされ、評価額と時価の乖離を利用した相続対策には明確な歯止めがかけられます。従来型の節税スキームについては、慎重な再検討が求められます。 NISAのつみたて投資枠の拡充 資産形成支援の観点から、未成年者を対象とするNISAのつみたて投資枠が創設されます。年間投資枠は60万円、非課税保有限度額は600万円とされ、早期からの長期・積立投資を後押しする制度設計となっています。 暗号資産の申告分離課税化 暗号資産の譲渡益については、現行の総合課税から、20%(所得税15%、住民税5%)の申告分離課税へ移行する方針が示されました。損失の3年間繰越控除も認められ、株式等との課税上の不均衡是正が図られます。ETFやデリバティブ取引も対象とされ、適用は関連法令整備後となる見込みです。 おわりに 2026年度税制改正大綱では、所得税の負担調整、資産形成の促進、相続税の公平性確保といった観点から、個人を取り巻く税制が幅広く見直されています。今後の法令化の動向を注視しつつ、早めの情報整理と対応が重要となります。ご不明点等ございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせ下さい。 女性活躍推進法の改正 女性活躍推進法について、情報公表の必須項目の拡大等を内容とする改正法が成立し、2026年4月1日から施行されます。今回の改正では、男女間賃金差異や女性管理職比率の公表義務の拡大に加え、女性の健康上の特性への配慮が法律上明確に位置づけられた点が大きな特徴です。数値の公表を通じて企業の取組状況を可視化し、女性活躍を一層促進することが目的とされています。本ニュースレターでは、企業実務に影響の大きい改正ポイントを整理します。 改正の概要 今回の改正により、従業員数101人以上の企業における情報公表義務が拡大されます。これまで301人以上の企業に義務付けられていた男女間賃金差異に加え、女性管理職比率が新たに必須の公表項目となります。さらに、「職業生活に関する機会の提供」または「仕事と家庭の両立に資する雇用環境の整備」に関する実績について、一定数の項目を選択して公表することが求められます。これらの情報は、原則として年1回以上、最新の数値を公表する必要があり、公表方法としては「女性の活躍推進企業データベース」の活用が想定されています。自社ホームページ等での公表も可能ですが、継続的な更新体制の整備が重要です。 実務上のポイント 男女間賃金差異は、「全労働者」「正規雇用労働者」「非正規雇用労働者」の区分ごとに算出・公表する必要があり、算定対象や賃金の範囲を事前に整理しておくことが重要です。また、女性管理職比率については、「課長級以上(役員を除く)」が管理職に該当する点に留意が必要です。さらに今回の改正では、女性の健康上の特性に配慮した取組の重要性が明確化され、一般事業主行動計画の策定においても、健康支援や相談体制、柔軟な働き方に関する施策を盛り込むことが望ましいとされています。生理休暇や通院への配慮、柔軟な勤務制度の整備など、既存制度の見直しも重要な検討事項となります。単に数値を公表するだけでなく、その背景にある要因や課題、改善に向けた取組内容を補足説明として示すことが、企業姿勢の発信という観点からも有効です。 おわりに 女性活躍推進法の改正は、単なる情報公表義務の拡大にとどまらず、企業の人事制度や働き方を見直す重要な契機となります。特に従業員数101人以上の企業では、早期に対象項目や算定方法を整理し、行動計画や社内データ管理の見直しを進めることが重要です。制度対応を通じて、採用力や定着率の向上につながる可能性も意識しておくとよいでしょう。当法人では、情報公表対応や一般事業主行動計画の見直し、社内周知資料の作成など、実務に即した支援を行っております。ご不明な点がございましたら、お気軽にご相談ください。 減資公告時の実務対応 株式会社が税務的な理由、会社法上の大会社となることを避ける、繰越欠損金を解消すること等を目的として、資本金の額を減少することがあります。資本金の額を減少する手続きには原則として大きく「債権者保護手続き」と「株主総会の決議」があり、「債権者保護手続き」の期間は一箇月を下ることができませんので、効力発生日の約2ヶ月前にはそのスケジュールを検討することになります。今期中に資本金の額を減少させたいという時間の制限が加わることも少なくありません。ここでは、官報公告の申込み時点において減少する資本金の額を確定できない場合の対処法について見ていきます。 官報公告の申込みと内容 資本金の額を減少するときは債権者保護手続きが必須であり、債権者保護手続きにおいては必ず官報公告をしなければなりません。官報公告を掲載するときの申込期間につき、減資公告は申込みから掲載まで5営業日程度かかり、決算公告を同時に掲載するときは申込みから掲載まで10営業日程度かかります。 減資公告には「当該資本金の額の減少の内容」を記載しますので、当該公告の申込時点において当該内容が決まっている必要があります。現在の資本金の額が3億円である株式会社X(事業年度末は3月31日)において、減少後の資本金の額を1億円としたい場合、公告する「当該資本金の額の減少の内容」とは資本金の額を2億円減少することにした旨であり、減少後の資本金の額を1億円とする旨だけでは足りません。減少する資本金の額を2億円又は2億5000万円と選択的な表現にすることもできません。 ところで、株式会社Xにおいて、3月中に投資家から出資を受ける予定ではあるけれども2月下旬に減資公告を官報に申込む時点ではその出資額が確定しないという状況もあり得ます。株式会社Xが減少する資本金の額を2億円として公告を行い、3月に6億円の出資を受けて資本金の額が3億円増加したときは、減資後の資本金の額が4億円となってしまいます(3億円+3億円-2億円=4億円)。 減少する資本金の額の記載の工夫 そのような場合、一例として「当該資本金の額の減少の内容」につき、「資本金の額を2億円減少することにした旨」及び「令和8年3月1日から令和8年3月20日までの日を払込期日又は払込期間とする株式の発行があった場合には、資本金の額を当該株式発行により増加する資本金の額と同額分減少することにした旨」等を記載することが考えられます。 新株予約権の行使についても同様 株式会社Xが新株予約権を発行しており、減資公告の申込みをした後、効力発生日までの間に新株予約権の行使により資本金の額が増加する可能性があるときは、前項同様に新株予約権の行使があった場合にはそれにより増加する資本金の額と同額分資本金の額を減少することにした旨を記載しておくのが良いでしょう。 なお、このような「当該資本金の額の減少の内容」を採用する事例も増えてきている印象ではありますが、資本金の額の減少は失敗することができない手続きですので、まだしばらくの間は念のため事前に法務局へ確認をしておくことが無難であると考えます。
- [RSM汐留パートナーズ・ニュースレター 2026年1月号](https://shiodome.co.jp/news/54062/) - 令和8年度税制改正のポイント①、被扶養者認定の新ルール、最近の入管制度の動き 日頃よりお世話になっております。RSM汐留パートナーズです。今月のニュースレターでは、税理士法人より「令和8年度税制改正のポイント①」、社会保険労務士法人より「被扶養者認定の新ルール」、行政書士法人より「最近の入管制度の動き」についてお届けいたします。 税理士法人では令和8年度税制改正大綱における法人課税の注目論点について、社会保険労務士法人では2026年4月から適用される被扶養者認定の新ルールを企業実務の観点から、行政書士法人では2025年10月の「経営・管理」に係る基準省令改正後の制度・運用の変化を踏まえた入管の最新動向について、それぞれ解説しています。今月のニュースレターも、日々の実務にぜひお役立てください。 令和8年度税制改正のポイント① 2025年12月19日、2026年度税制改正大綱が公表されました。今回から2回に渡り、その中で注目度が高い論点を取り上げます。今回は法人に関わる主要な論点を見ていきます。 特定生産性向上設備等投資促進税制の創設 企業の大胆な設備投資を後押しするため、「特定生産性向上設備等投資促進税制」が新設されます。産業競争力強化法に基づき、経済産業大臣の確認を受けた設備投資計画に従い、一定規模以上の生産性向上設備等を取得・事業供用した場合、即時償却又は税額控除の選択適用が可能となります。対象資産は、機械装置、器具備品、建物、建物附属設備、構築物、ソフトウエア等で、産業競争力強化法の改正法の施行日から2029年3月31日までの間に経済産業大臣の確認を受けた投資計画に基づくものとされています。税額控除率は、機械装置等が7%、建物等が4%で、控除限度額は法人税額の20%、控除限度超過額は3年間繰越可能です。投資規模要件は原則35億円以上(中小企業者等は5億円以上)とされ、加えて投資利益率(ROI)15%以上や取締役会等による意思決定といった要件も課されており、成長投資を明確に意識した制度設計となっています。 賃上げ促進税制の見直しと廃止時期の整理 賃上げ促進税制については、近年の賃金上昇局面を踏まえ、大幅な整理が行われます。大企業向け措置は、2026年3月31日までに開始する事業年度をもって廃止されます。中堅企業向け措置は、2026年度に限り賃金増加率要件を引き上げた上で、2027年3月31日までに開始する事業年度をもって廃止される予定です。一方、中小企業向け措置は、2026年度には制度自体は維持されますが、教育訓練費を増加させた場合の税額控除上乗せ措置については、企業規模を問わず廃止されます。賃上げ率要件のみが評価対象となる点には留意が必要です。制度適用を検討する企業は、対象となる最終年度を正確に把握する必要があります。 中小企業の少額減価償却資産特例の見直し 中小企業者等に認められている少額減価償却資産の特例については、取得価額要件が30万円未満から40万円未満に引き上げられ、適用期限が3年間延長されます。年間取得限度額300万円は維持され、物価上昇を踏まえた実務面での利便性向上が図られています。 インボイス制度に係る経過措置の見直し インボイス制度では、免税事業者からの課税仕入れに係る仕入税額控除の経過措置が段階的に縮減されます。控除割合は2026年10月以降70%、その後50%、30%と引き下げられ、2031年9月末をもって終了する方針とされました。また、年間仕入額が1億円を超える場合、その超過部分には経過措置が適用されません。経過措置に依存した取引形態は見直しを迫られる局面に入ったといえます。 おわりに 2026年度税制改正大綱では、成長投資を促進する制度と、経過措置の整理が並行して進められています。各制度の適用期限や要件を把握し、事業計画や実務対応に反映させることが重要です。ご不明点等ございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせ下さい。 被扶養者認定の新ルール 被扶養者の認定については、「年収130万円の壁」を意識した就業調整との関係から、実務上の判断が難しい場面が多く見られました。特に、時間外労働や臨時的な収入の扱いをどのように判断するかについては、企業・従業員双方にとって分かりにくい点が少なくありませんでした。こうした状況を踏まえ、厚生労働省は、労働契約内容から年間収入が基準額未満である場合の取扱いについて整理を行いました。本ニュースレターでは、2026年4月1日から適用される被扶養者認定の新ルールについて、企業実務の観点からポイントを解説します。 制度の概要 被扶養者認定における「年間収入」は、これまで過去・現在・将来の収入見込みを総合的に勘案して判断されてきました。今回の新たな取扱いでは、労働条件通知書等により確認できる賃金を基に算出した年間収入が130万円未満である場合には、原則として被扶養者に該当するものとして取り扱うことが明確化されています。この際、労働契約上あらかじめ金額を見込むことができない時間外労働に対する賃金などは、年間収入の算定には含めないとされており、被扶養者認定の予見可能性を高める内容となっています。 実務上のポイント 被扶養者認定を行う際には、労働条件通知書等の提出を受け、時給、労働時間、労働日数などから年間収入の見込額を確認することになります。また、認定対象者本人から「給与収入のみである」旨の申立てを求める運用が想定されています。さらに、労働契約の更新や労働条件の変更があった場合には、その内容に基づき、被扶養者該当性を改めて確認する必要があります。一方で、認定後に臨時的な収入が発生し、結果として年収が130万円以上となった場合であっても、その収入が社会通念上妥当な範囲にとどまる場合には、直ちに被扶養者から外す必要はないとされています。 本取扱いは、2026年4月1日以降に行う被扶養者認定から適用されます。今後は、パート・アルバイト等の雇用において、労働条件通知書の記載内容が被扶養者認定に直接影響する点に留意が必要です。また、従業員から扶養に関する相談を受けた際には、労働契約内容を踏まえた丁寧な説明が求められるため、人事・労務部門における理解と情報整理が重要となります。 おわりに 今回の見直しにより、被扶養者認定の判断基準が整理され、実務の予見可能性は一定程度高まると考えられます。一方で、労働契約管理や社内説明の重要性はこれまで以上に高まっています。当法人では、被扶養者認定に関する実務対応の整理や社内運用の見直しについてもサポートを行っております。制度対応に不安がある場合は、お気軽にご相談ください。 最近の入管制度の動き 2025年10月16日、「経営・管理」に係る基準省令(「経営・管理」の基準を定める省令)が改正されましたが、これを前後に法律や運用の変化が活発になってきております。今回は最新の入管の動向についてご紹介させていただきます。 ガイドラインの変更 出入国在留管理庁が発している「在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン」が変更され以下の文言が足されました。 長期間にわたる再入国許可による出国(みなし再入国許可による出国を含む。)がある場合についても、正当な理由がある場合を除き、消極的な要素として評価されます。 国民健康保険料など、法令によって納付することとされているものについて、高額の未納や長期間の未納などが判明した場合も、悪質なものと同様に取り扱います。 今までは在留期間中に長期に日本を不在にしていた方も許可されていたケースはありましたが、今後はますます厳しくなるようです。また、税金のほか国民健康保険料などの未納等についても消極的事由とさえることが明文化されました。 書類の簡素化 「留学」から「技術・人文知識・国際業務」又は「研究」へ在留資格を変更する場合において以下のいずれかに該当する場合、カテゴリー2と同様の書類提出が可能になりました。 本邦の大学卒業(予定)者(大学院及び短期大学卒業者を含む。) 海外の優秀大学卒業者以下3つの世界大学ランキング中、2つ以上で上位300位にランクインしている外国の大学が対象です。・QS・ワールド・ユニバーシティ・ランキングス・THE・ワールド・ユニバーシティ・ランキングス・アカデミック・ランキング・オブ・ワールド・ユニバーシティズ 「留学」から就労資格への在留資格変更を受けた者を現に受け入れている機関において就労する場合 申請人が希望する在留資格を有する外国人(「留学」の在留資格から変更許可を受けた者に限る。)が当該所属機関に現に雇用されており、同外国人が当該所属機関において就労中に少なくとも1度の在留期間更新許可を受けている場合が対象となります。 高度専門職の審査 法改正や運用の変更ではないですが、実務の現場において高度専門職の審査が厳格化されたような事例があります。例えば前職を離職して取消事由に該当しうる3か月以上付与された活動を行っていないケースや転職の際に本来なら先に高度専門職1号から高度専門職1号への変更申請を行ったあとに新しい職場で就労開始をしなければならないところ、これを怠っていたケースなどにおいて、今までは多少許容されていた部分が厳しくなりました。当然といえば当然の対応ですが、不許可事例が出ておりますので注意が必要です。 その他注意事項 2025年は経営管理の基準等の改正という大きな変化がありました。これを前後として様々な変化が起こっております。このような変化に対して機微に対応することは専門家でなければなかなか難しいところです。 当法人ではありがたいことに多くのご依頼をいただき申請を行っているため、このような変化にも気づくことができ、出入国在留管理庁と調整をとりながら対応しております。何かご質問やご依頼があれば是非ご連絡いただければ幸いです。
- [RSM汐留パートナーズ・ニュースレター 2026年3月号](https://shiodome.co.jp/news/55896/) - 令和8年度税制改正における企業グループ間取引の書類保存特例、子ども・子育て支援金制度の新設、外国人受入れ政策の重要論点 日頃よりお世話になっております。RSM汐留パートナーズです。 今月のニュースレターでは、税理士法人より「令和8年度税制改正における企業グループ間取引の書類保存特例」、社会保険労務士法人より「子ども・子育て支援金制度の新設」、行政書士法人より「外国人受入れ政策の重要論点」についてお届けいたします。 税理士法人では、令和8年度税制改正により創設される「企業グループ間取引に係る書類保存の特例」について、適用開始時期を踏まえた実務上の留意点と文書化のポイントを整理しています。社会保険労務士法人では、「子ども・子育て支援金制度」の新設に伴う制度概要と企業側で想定される対応事項を解説します。行政書士法人では、「外国人受入れ政策」をめぐる政府方針の重要論点を抜粋し、在留資格に係る今後の方向性を分かりやすく紹介しています。 今月のニュースレターも、日々の実務にぜひお役立てください。 令和8年度税制改正における企業グループ間取引の書類保存特例 令和8年度税制改正では、「企業グループ間の取引に係る書類保存の特例」が創設され、2026年4月1日以後に行われる特定取引から適用される予定です。企業グループでは、システム運用や広告宣伝等を親会社が一括して行い、費用を各社へ配賦する、いわゆる「シェアードコスト取引」が実務上一般的ですが、なぜその金額になるのかという点についての説明資料が十分に整備されないまま、運用が固定化しやすい側面があります。今回の改正は、単なる証憑の追加保存ではなく、取引内容と対価算定根拠について、第三者に対して説明可能な状態を求める点に本質があります。 制度の趣旨・背景 グループ内取引は、外部取引に比べて価格形成の過程が見えにくく、費用配賦等に恣意性が入り込む余地があります。請求書や契約書が存在していても、役務の範囲、配賦基準、算定過程が不明確な場合、税務調査において対価の妥当性を十分に確認できないケースが問題視されてきました。本制度は、国際取引で求められている移転価格文書化の考え方を、国内グループ取引にも応用するものであり、いわば「国内版・移転価格文書化」と位置付けることができます。 内容と適用時期 本特例は、内国法人が「関連者」と行う「特定取引」を対象とします。関連者は、持株関係(発行済株式の50%以上)に限らず、実質的支配関係も含まれ、国内外を問いません。また、法人規模による除外はなく、中小企業であってもグループ内取引があれば対象となり得ます。特定取引の主な例としては、工業所有権等の譲渡・貸付、研究開発、広告宣伝、経営管理等の役務提供が挙げられます。既存の取引関連書類(契約書・請求書等)に対価算定の根拠が記載されていない場合には、①取引に係る資産又は役務の提供の明細、②取引において支払うこととなる対価の額の計算の明細等を明らかにする書類を、取得・作成・保存することが求められます。単なる請求書の保存では足りない点が、これまでの実務との大きな違いです。 また、保存義務に違反した場合には、青色申告の承認取消事由に該当し得る点にも注意が必要です。金額の多寡にかかわらず、「書類がないこと」自体が税務上のリスクとなります。 適用開始は2026年4月1日であり、それまでに、①関連者・特定取引の洗い出し、②既存書類の記載内容の確認と不足分の補完、③継続的な運用を前提とした社内フローの整備を進めておくことが有効です。 おわりに 本改正は、グループ内取引を「前年踏襲」で処理するのではなく、説明可能な形で管理する体制への転換を促すものです。特に、これまで根拠の明確化が後回しになりがちだったシェアードコスト取引については、早急な見直しが必要になるケースも多いと考えられます。適用開始に向け、早期に取引の棚卸しと書類整備の方針を固めることが、税務リスクの低減につながります。ご不明点等ございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせ下さい。 子ども・子育て支援金制度の新設 2026年4月より、新たな「子ども・子育て支援金制度」が開始されます。本制度は、日本の急速な少子化に対応するため、政府が策定した「こども未来戦略・加速化プラン」の財源を安定的に確保することを目的としています。出生数は2024年に68万人を下回り、歴史的低水準となっています。こうした状況を踏まえ、子育て世帯への支援強化が喫緊の課題となっています。児童手当の拡充や育児休業支援の強化などの施策を支えるため、社会全体で負担を分かち合う仕組みとして支援金制度が導入されます。 概要 支援金制度は、医療保険料に上乗せして徴収される仕組みで、会社員等の被用者保険加入者は給与・賞与から控除され、企業と個人が労使折半で負担します。2026年度の支援金率は0.23%で、標準報酬月額に同率を乗じた額の半分が個人負担となります。さらに、制度開始後は段階的に引き上げられ、2028年度には0.4%程度が見込まれています。国民健康保険・後期高齢者医療制度でも同様に保険料に反映され、所得に応じて負担額が決まります。支援金制度では、拡充される各種子育て施策の財源として、次の取り組みが実施されます。 児童手当の抜本的拡充(所得制限撤廃等) 妊婦のための支援給付(妊娠届出時の経済的支援の制度化) 育児休業関連給付の強化 こども誰でも通園制度の創設(満3歳未満児が柔軟に保育を利用できる仕組み) 育児期間中の国民年金保険料免除等 なお、政府は歳出改革や賃上げの推進により、制度導入によって実質的な社会保険料負担が増えないよう配慮する方針を示しています。 実務上のポイント 給与実務担当者が特に注意すべき点は次の通りです。 支援金率(0.23%)の設定 給与計算・賞与計算の控除項目に新設する。項目の取り扱いについては法で定められておりませんが、退職者の社会保険料徴収額の確認作業等が煩雑になるため、支援金を独立項目として管理することを推奨します。 賞与からの控除 毎月の給与だけでなく、賞与にも同率で適用されます。また、初回控除のタイミングについては企業ごとに異なるため、自社の徴収開始月を事前に確認しておくことが必要です。さらに、制度内容は従業員の手取りに直結するため、「なぜ新たな控除が発生するのか」等の問い合わせに備え、企業としての説明体制を整えておくことも重要です。 おわりに 子ども・子育て支援金制度は、少子化対策を社会全体で支えるための新しい仕組みとして導入されるものです。一方で、給与計算や企業負担にも影響するため制度開始までに給与計算設定の見直しや従業員への周知準備を整えることが求められます。当法人では、制度の詳細説明や給与設定のサポートも行っておりますので、ご不明点がございましたらお気軽にご相談ください。 外国人受入れ政策の重要論点 令和7年11月4日、外国人の受入れ・秩序ある共生社会実現に関する関係閣僚会議が設置され、高市内閣総理大臣の指示のもと今後の外国人政策について新たな取りまとめが協議されました。今回はこの度公表された「令和8年(2026年)1月23日外国人の受入れ・秩序ある共生社会実現に関する関係閣僚会議」の一部を引用・要約し、在留資格に係る事項についていくつか今後の重要方針を紹介いたします。 「経営・管理」に係る適正化 現状と問題点: 「経営・管理」については2025年10月16日に改正が行われましたが、これ以前から事業の実態に疑いがもたれる案件が存在しており、実態調査が十分にできていない実情があります。 速やかに実施する施策: 同一のビルに小規模な事務所が集中しているケース等については、その事業実態に特に疑いがもたれることから、そのような事案に対しては実態調査等を行うことで厳格な審査を実施し、処分するように取り組むとしております。 事業実体が伴わない事案が発生したことから、経営・管理の基準省令が改正され、さらにオフィスについて同一のビルに小規模な事務所が集中しているようなケースにおいては、厳格な審査が行われることとしました。 「技術・人文知識・国際業務」に係る適正化 現状と問題点: 近年「技術・人文知識・国際業務」の在留者数が増加しているところ、派遣による就労の具体的活動内容の実態が十分に把握できないことや、認められた活動内容に該当しない業務に従事するなど、受け入れた外国人が在留資格に該当しない業務に従事する事案への対策が必要になっております。 速やかに実施する施策: 技術・人文知識・国際業務の活動の範囲外の業務に従事させている受入企業や派遣先における活動状況を調査し、厳格な運用をもとに許可の在り方を検討するとしております。またこれに付随し申請書類の見直しなど含めた運用の改善に取り組むとしております。 特定技能が導入されて以来、ホテルのフロント業務など技術・人文知識・国際業務か特定技能かで悩むケースもあり、活動範囲については専門的な知識を必要とします。そもそも技術・人文知識・国際業務の活動の範囲を理解することが重要です。 「永住」の在り方の検討 現状と問題点: 永住は許可要件そのものが緩やかであることが指摘され、かつ、在留状況が良好ではない一部の悪質な永住者を容認し続けると、大多数の永住者への偏見につながるため、永住の在り方が問題となっております。 速やかに実施する施策: 永住許可までの在留資格・在留年数などの状況を調査し、審査の厳格な運用と許可の在り方を検討します。永住許可の取り消しについてガイドラインの策定を含め、運用開始に向けて必要な準備を進めるとしています。 永住許可は法改正が行われ今まで明確にされていなかった取消事項が加わることになりました。その運用と許可基準自体の許可の在り方について検討がなされるため、今後ますます審査は厳しくなる様相です。 帰化の厳格化の検討 現状と問題点:
- [RSM汐留パートナーズ・ニュースレター 2026年6月号](https://shiodome.co.jp/news/57474/) - 今月のニュースレターは以下の通りです。 税理士法人:ミニマムタックス強化と実務上の留意点 社会保険労務士法人:労働基準法の改正論点② 司法書士法人:退職者とストックオプション 今月のサービスPickup 税理士法人では、2027年以降に強化が予定されるミニマムタックスについて、制度の概要と、M&Aや事業承継、自社株式の譲渡を検討する際の実務上の留意点をお伝えします。 社会保険労務士法人では、労働基準法の見直しに向けた議論のうち、労働時間通算ルールの見直し、法定労働時間の特例措置の廃止など、今後求められる対応の方向性と社内ルール・管理体制整備のポイントを取り上げます。 司法書士法人では、スタートアップ企業が役職員に対して新株予約権(ストックオプション)を付与した後に、当該役職員が退職したときの会社法上の処理方法について確認します。 今月のニュースレターも、日々の実務にぜひお役立てください。 ミニマムタックス強化と実務上の留意点 近年、個人所得課税において、いわゆる「ミニマムタックス(超富裕層課税)」への関心が高まっています。正式には「極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置」といい、2025年分の所得税から適用が開始されています。更に、令和8年度税制改正大綱では、2027年分以後の所得税から同制度を強化する内容が示されています。これにより、M&A、事業承継、自社株式や不動産の譲渡等を検討する個人にとって、実務上の影響がより大きくなることが見込まれます。 ミニマムタックスの制度概要 ミニマムタックスは、いわゆる「1億円の壁」を是正する目的で導入された制度です。給与所得や事業所得は総合課税の対象となり、所得が増えるほど高い税率が適用される一方、株式譲渡所得や上場株式等に係る一定の配当所得、不動産の譲渡所得などは、申告分離課税により比較的低い税率で課税される場合があります。そのため、高額所得者ほど所得全体に占める分離課税所得の割合が高くなり、結果として実質的な税負担率が低下することが指摘されていました。 現行制度では、その年分の基準所得金額が3.3億円を超える場合に、通常の所得税額と次の金額を比較します。 (基準所得金額-3.3億円)×22.5% この計算額が通常の所得税額を上回る場合には、その差額を追加で申告納税することになります。 2027年分以後は、控除額を3.3億円から1.65億円へ引き下げ、税率を22.5%から30%へ引き上げる方向で見直しが予定されています。改正後は、次の金額と通常の所得税額を比較することになります。 (基準所得金額-1.65億円)×30% この見直しにより、これまで対象とならなかった所得水準の方であっても、追加納税が生じる可能性があります。 今後の留意点 今後、特に影響が想定されるのは、M&Aや事業承継に伴い創業者やオーナー経営者が自社株式を譲渡するケース、不動産・有価証券を売却するケースです。 現行制度では、所得が株式譲渡所得のみである場合、対象となるのは概ね10億円超と考えられていましたが、2027年以降は約3.3億円超で追加課税が生じる可能性があります。 また、判定は「株式譲渡所得だけ」でなく、役員報酬、不動産所得、退職所得、配当所得など他の所得も含めて行うため、同じ譲渡金額でも他の所得の有無や発生時期により税負担額が変わる可能性があります。M&Aや事業承継を予定している場合には、事前に税負担を試算しておくことが重要です。 おわりに ミニマムタックスは、一般的な高所得者すべてに広く課税される制度ではありませんが、M&A、自社株式の売却、不動産の譲渡などにより一時的に多額の所得が発生する場合には、実務上無視できない制度です。事業承継、資産整理、株式譲渡等を検討される場合には、早い段階で所得全体を把握し、適用可能性を確認しておくことが重要です。ご不明点等ございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせ下さい。 労働基準法の改正論点② 労働基準法の見直しに向けた議論のうち、企業実務に影響し得る論点を整理し、今後求められる対応の方向性と社内ルール・管理体制整備のポイントを確認します。 1987年改正以降、労働基準法(以下「労基法」といいます。)の本格的な見直しが検討されています。2026年通常国会への労基法改正案の提出は見送られましたが、改正に向けた議論は継続しているため、現時点で報告書等に示されている主な論点を説明します。 「つながらない権利」ガイドラインの策定 デジタル技術の発達や新型コロナウイルス感染症の影響を契機として、テレワークを導入する企業が増えました。一方で、休日や勤務時間外であってもメールやチャットによる業務連絡が届く状況が生じています。フランスでは2017年に「つながらない権利」に関する制度が導入され、勤務時間外の業務連絡に応答しないことを理由とする不利益取扱いを防ぐ仕組みが設けられています。日本でも、勤務時間外の連絡への対応ルールや、労働者の休息時間を確保するためのガイドライン策定が検討されています。 副業・兼業者の労働時間通算ルールの見直し 現行の取扱いでは、労働者が複数の事業場で働く場合、労働時間を通算したうえで時間外労働の割増賃金を計算する必要があります。しかし、通算管理は企業にとって実務負担が大きく、労働者が副業・兼業を申告しないケースもあるため、副業・兼業を認める際の課題となっています。報告書では、健康確保のための労働時間通算管理は維持しつつ、割増賃金の算定については通算を不要とする制度改正が提案されています。これにより、副業・兼業制度を導入する際のハードルが下がることが期待されます。 法定労働時間の特例措置の廃止 現行法では、常時10人未満の労働者を使用する一定の事業場について、週44時間までの労働を認める特例措置が設けられています。しかし、同じ業種であっても労働者数によって法定労働時間が異なることへの公平性の問題や、実際には週40時間で運用している事業場も多いことから、特例措置の必要性は低下していると指摘されています。そのため、この特例措置を廃止する方向で検討が進められています。 おわりに 今回の改正論点は、長時間労働の抑制と、多様な働き方に対応した労働時間管理の見直しを目的とするものと考えられます。副業・兼業を選択しやすくする一方で、健康確保措置や勤務時間外の連絡ルールなど、企業側の管理体制の整備も重要になります。制度を形骸化させないためには、就業規則や社内ルールの整備に加え、従業員、とりわけ管理職への周知・教育が不可欠です。社内ルールの策定や教育体制の整備についても、お気軽にご相談ください。 退職者とストックオプション スタートアップ企業(ここでは公開会社以外の株式会社を前提とします。)が役職員に対するインセンティブとして新株予約権(ストックオプション)を発行することがあり、行使条件としてIPOすることが定められているのであれば、IPOした後に新株予約権を行使することで行使価格と株式の売却時の株価の差額を利益として享受することができます。ストックオプションの目的の多くは、役職員に対する報酬やモラル向上であることから、退職した者が(一部の例外を定めた場合を除き)新株予約権を行使することができないように設計されることが少なくありません。 役職員の退職 役職員が退職したときに、退職者が退職後も新株予約権を保有し続けるのか、発行会社が取得するのか、それとも放棄してもらうのか等、発行会社は新株予約権を管理することが通常求められます。 新株予約権の消滅 新株予約権者がその有する新株予約権を行使することができなくなったときは、当該新株予約権は消滅します。行使条件として新株予約権の行使時に役職員であることを要する旨が定められている場合、新株予約権を有する役職員が退職したとしても、復職したときは当該行使条件を(再び)クリアすることができると考えると、当該行使条件だけでは退職をもって新株予約権が消滅したと解されない余地があります。 新株予約権の放棄 新株予約権者がその有する新株予約権を放棄すると、当該新株予約権は消滅します。退職者に退職日をもって新株予約権を放棄してもらうことで、当該新株予約権が消滅したことが明確となります。ただし、自己新株予約権の取得及び消却に比べて、放棄の場合、その消滅の都度登記申請をしなければならなくなる点に注意が必要です。 取得条項に基づく自己新株予約権の取得 新株予約権の内容として、発行会社が一定の事由が生じたことを条件として新株予約権を取得することができる旨を定めることができます。新株予約権者の退職を取得条項の内容として定めている場合は、新株予約権者が退職するときに、退職者の有する新株予約権を発行会社が取得するのであれば、対象となる新株予約権者へ取得日を定めて一定の事項を通知する等の会社法の手続きを踏むことで自己新株予約権を取得します。 自己新株予約権の消却 会社法上、自己新株予約権を消却する義務はありませんが、一定の期間(3ヶ月~1年程度)ごとに自己新株予約権を消却することも少なくありません。自己新株予約権の消却は取締役会の決議(取締役会非設置会社においては取締役の決定)によって行います。 新株予約権の個数の変更と登記 新株予約権が行使不能又は放棄により消滅したとき、自己新株予約権を消却したときは、発行済みの新株予約権の個数に変更が生じますので、その変更が生じた時から2週間以内に管轄法務局へ登記申請を行います。行使不能又は放棄により消滅する度に変更登記を行うよりも、自己新株予約権としておき、一定期間ごとに消却する方が登記手続きにおけるコスト面で優位性があります。めまぐるしい改正についていくのはとても大変です。しかしながら、「知らなかった」では済まされないのが法律の世界です。もし情報整理が必要な場合や企業の対策を考えたいときは是非ご相談いただければ幸いです。 【今月のサービスPickup】 防犯・安全セキュリティ支援 拠点や店舗、従業員の安全対策は、単なる「対策」ではなく経営リスク管理の重要なテーマです。現場の実態に即したリスク評価から体制設計、規程整備、教育、改善計画の実行・定着化まで、組織の安心を一貫してサポートします。 ESG・サステナビリティサービス
- [株式会社Smart Processのグループ参画に関するお知らせ-ITコンサルティング事業部および宇都宮事務所を新設-](https://shiodome.co.jp/news/58427/) - RSM汐留パートナーズ株式会社(本社:東京都港区東新橋、代表取締役社長CEO:前川 研吾、以下「RSM汐留パートナーズ」)は、モビリティ・製造業界のプロセス改革、AI・DX推進を支援する株式会社Smart Process(本社:東京都港区海岸、代表者:西岡 良太、以下「スマートプロセス」)との資本業務提携を締結し、2026年7月1日付でグループの一員として迎えたことをお知らせします。 また、本件に伴い、RSM汐留パートナーズはITコンサルティング事業部および宇都宮事務所を新設します。 1.本件の背景 RSM汐留パートナーズは、公認会計士、税理士、社会保険労務士、行政書士、司法書士をはじめとする専門家が連携し、会計・税務・人事・労務・法務に関するアドバイザリーサービスやバックオフィス・アウトソーシングサービスをワンストップで提供してまいりました。 加えて、お客様の多様なニーズに応えるべく、ITコンサルティング領域を重点強化分野の一つと位置づけ、サービス拡充を推進してきました。 スマートプロセスは「スマートなプロセスで未来を創る」をビジョンに掲げ、モビリティ・製造業界をはじめとする国内有数の企業および研究機関に対し、開発プロセス改革、エンジニアリング、IT、AI・DX推進支援を行ってまいりました。 両社はともに、高度な専門知識と知見をもってお客様の課題に向き合うプロフェッショナルファームです。その専門性を融合することで、お客様の経営課題に対してこれまで以上に創造的かつ高付加価値なご支援が可能になると考え、今回のグループインに至りました。 2.新体制について 【社名変更】 株式会社Smart Processは、2026年7月1日付で「RSM汐留スマートプロセス株式会社」に社名を変更し、引き続き事業を継続します。 【本店移転】 RSM汐留スマートプロセス株式会社の本店所在地を、東京都港区東新橋一丁目5番2号 汐留シティセンター33階に移転します。 【人事】 西岡 良太氏は、RSM汐留スマートプロセス株式会社の代表取締役を引き続き務めるとともに、RSM汐留パートナーズに新設するITコンサルティング事業部を統括するパートナーに就任します。 【新拠点】 RSM汐留パートナーズは、サービス提供体制のさらなる強化と北関東エリアにおける事業拡大を目的として、宇都宮事務所を新設します。 所在地:栃木県宇都宮市中河原町3-19 宇都宮セントラルビル8F URL:https://shiodome.co.jp/utsunomiya/ 3.今後の展望 本件を通じて、RSM汐留パートナーズグループにおけるITコンサルティング領域のさらなる強化を図り、AI・DXを活用した業務改革、システム導入・最適化、ITガバナンスの高度化など、お客様の持続的な成長と企業価値向上に貢献してまいります。 4.各グループの概要 (1)RSM汐留スマートプロセス株式会社(旧:株式会社Smart Process) 所在地:東京都港区東新橋一丁目5番2号 汐留シティセンター33階 設立:2022年3月 代表者:代表取締役 西岡 良太 事業内容: ・コンサルティングサービス(PM・PMO支援、AI・DX戦略策定・開発プロセス標準化/再設計等) ・エンジニアリングサービス(要件定義、シミュレーション自動化、AI活用システム開発、エンジニア派遣等) URL:https://smart-process.co.jp/ (2)RSM汐留パートナーズ株式会社 所在地:東京都港区東新橋一丁目5番2号 汐留シティセンター33階 設立:2008年4月 代表者:代表取締役社長CEO 前川 研吾 事業内容: ・プロフェッショナル・アドバイザリーサービス(会計・税務・人事・労務・法務等) ・バックオフィス・アウトソーシングサービス(記帳代行・給与計算・支払代行等) ・財務コンサルティングサービス(IPO・内部統制・M&A支援・株価算定・デューデリジェンス等) ・各種ソリューションサービス(ファミリービジネス支援・ESG支援・海外進出支援等) URL:https://shiodome.co.jp/ 5.本リリースに関するお問い合わせ 本リリースに関するお問い合わせは以下までお願いいたします。 【RSM汐留パートナーズ】MAIL:inquiry-jp at rsmjapan.com (atは@に置き換えてください)
- [RSM汐留パートナーズ・ニュースレター 2026年7月号](https://shiodome.co.jp/news/58552/) - 今月のニュースレターは以下の通りです。 税理士法人:大胆な設備投資促進税制の創設と留意点 社会保険労務士法人:2026年春闘から読み解く実務的論点 行政書士法人:高度専門職の最新の注意点 今月のサービスPickup 税理士法人では、2026年5月29日に成立した改正産業競争力強化法に基づく「特定生産性向上設備等投資促進税制」について、制度概要と適用にあたっての留意点をお伝えします。 社会保険労務士法人では、2026年春闘から読み解く実務的論点についてお伝えします。2026年春闘では高水準の賃上げが続き、企業には単なる引上げ対応にとどまらず、賃金制度や評価制度、人件費構造を一体で見直す視点が求められています。 行政書士法人では、「高度専門職の最新の注意点」について高度専門職の転職時に人事の方が見落としがちなケースにおいて従来ならば許可されるところ昨今は不許可となるケースが頻出しており、弊社のケースをもとに事例を紹介いたします。 今月のニュースレターも、日々の実務にぜひお役立てください。 大胆な設備投資促進税制の創設と留意点 令和8年度税制改正において「特定生産性向上設備等投資促進税制」が創設され、その適用手続を規定する改正産業競争力強化法が2026年5月29日に成立しました。本制度は、生産性向上に資する国内投資を税制で支援し、競争力強化と国内投資促進を図るもので、いよいよ実務適用の段階を迎えます。 制度概要 青色申告法人が、改正産業競争力強化法の施行日から令和11年3月31日(指定期間)までに経済産業大臣の確認を受けた投資計画に基づき、確認日から5年以内に対象設備を取得等・事業供用した場合、即時償却又は税額控除(機械装置・工具・器具備品・ソフトウェア等は取得価額の7%、建物・建物附属設備・構築物は4%、いずれも調整前法人税額の20%が上限)を選択できます。なお、税額控除額が法人税額の上限(20%)を超える場合、一定の要件を満たす法人は翌期以降3年間の繰越しが認められます。対象設備は機械装置、工具・器具備品、建物、建物附属設備、構築物、ソフトウェアと幅広い一方、事務用器具備品・本店・福利厚生施設・貸付用資産等は除かれます。投資計画の主な要件は、①対象設備の取得価額合計が35億円以上(中小企業者等は5億円以上)、②年平均投資利益率15%以上の見込み、③取締役会等の意思決定に基づくものであることです。 適用にあたっての留意点 実務上は、投資計画全体の金額要件と、個々の設備の取得価額要件を分けて確認します。機械装置は1台160万円以上、建物は1,000万円以上、ソフトウェアは70万円以上が基準です。工具・器具備品は原則1台120万円以上ですが、1台40万円以上のものは、同一投資計画内で一事業年度の取得価額合計が120万円以上であれば対象となります。但し、投資計画に記載のない設備は合算の対象外となるため、計画への記載漏れに注意が必要です。 また、投資計画の確認を受けた法人は、計画期間内において、地域未来投資促進税制、中小企業経営強化税制及びカーボンニュートラル投資促進税制との併用ができません。但し、中小企業経営強化税制の繰越税額控除制度は引き続き適用可能です。 大企業では、当期所得が前期所得を上回る一定の場合、継続雇用者給与等支給額の前期比増加(原則1%以上)及び国内設備投資額が当期償却費総額の30%超の要件を満たさない事業年度は、特別償却・税額控除を適用できません。なお、資本金10億円以上かつ常時使用従業員数1,000人以上、又は常時使用従業員数2,000人超の大企業については、各々2%以上・40%超がその基準となります。 おわりに 本制度は国内設備投資を予定する企業にとって強力な税務上のメリットをもたらします。一方、まず経済産業大臣への投資計画の確認申請が必要であり、その準備には一定時間を要します。また、投資計画の要件・取得価額要件・他税制との適用関係を誤ると適用できない可能性があります。よって、今後の施行を見据え、早期の検討をお勧めします。ご不明点等ございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせください。 2026年春闘から読み解く実務的論点 2026年の春闘は、平均5.26%という高水準の賃上げでスタートしました。3年連続で5%を上回る結果となり、日本における賃上げは一時的な景気対応から、持続的な構造変化へと移行しつつあると評価できます。従来は賃上げの実施有無が論点でしたが、現在では賃上げを前提としたうえで、その水準や配分のあり方が問われる局面に入っています。 2026年賃上げ結果の特徴 今回の特徴は、定期昇給に加え、ベースアップ部分が約3.8%と高水準に達している点です。これは単なる賃上げではなく、賃金テーブルそのものの引き上げを意味し、従来の年功的賃金カーブにも影響を及ぼします。また、大手企業を中心に満額回答が相次ぐなど、企業側も賃上げを織り込んだ経営判断を行っている点は、実務上見逃せない変化です。人手不足やインフレ環境を背景に、「人件費=コスト」ではなく「人材投資」としての位置付けが明確になりつつあります。 一方で、実務上は複数の課題が顕在化しています。第一に、賃上げと実質賃金の乖離です。物価上昇による購買力低下が続く中、名目賃金の上昇が従業員の満足度向上に直結しないケースが増えています。第二に、企業規模間における原資確保力の差です。中小企業でも賃上げ率は5%台に到達しているものの、引き上げ額や継続性の面では依然として大企業との差が残っており、価格転嫁との連動が重要な論点となっています。 賃上げと人事制度の整合性 さらに重要なのが、賃上げと人事制度との整合性です。ベースアップが続く中で、従来の賃金カーブや等級制度を維持したままでは、人件費構造が歪むリスクがあります。特に若年層への配分強化や初任給引き上げが進む一方で、中高年層との逆転や圧縮が生じるケースも見受けられます。これらは処遇不均衡のみならず、労務リスクの温床にもなり得るため、制度全体の再設計が求められます。加えて、賃上げ後の運用管理も重要な実務課題です。固定的賃金の上昇は、割増賃金単価や各種手当の基礎額、さらには社会保険料の負担にも影響を及ぼすため、労基法対応や賃金規程の整備も含めた総合的な見直しが必要となります。単年度の対応にとどめるのではなく、中期的な人件費戦略として位置付けることが不可欠です。 おわりに 2026年は、賃上げが「例外的対応」から「制度前提」へと転換した節目の年といえます。今後は賃上げの“量”を確保するだけでなく、賃金構造の整合性や持続可能性といった“質”の観点がより重要になるでしょう。 こうした環境変化を踏まえ、自社の賃金制度や評価制度の整合性に課題を感じられている企業様も多いのではないでしょうか。賃上げ対応に伴う賃金テーブルの見直しや、等級制度・評価制度を含めた人事制度の再構築についてお悩みの際は、どうぞお気軽にご相談ください。実務と制度の双方の観点から、貴社に適した形での解決策をご提案させていただきます。 高度専門職の最新の注意点 2025年10月16日に経営・管理の基準等が改正されたのを皮切りに矢継ぎ早に出入国在留管理関連の申請の運用・ガイドラインの変更が相次いでおります。それらは令和8年1月23日の関係閣僚会議において決定された事項に基づくものですが、その決定に基づくもの以外の高度専門職に係る事項について弊社で気づいた変化について本日はお知らせさせていただければと思います。 高度専門職1号ロの方の転職について 技術・人文知識・国際業務で在留する外国人が転職する場合、在留期間が3か月以上あるのであれば外国人に法的義務として課せられている所属機関等に関する届出を提出すればよいということになっております。技術・人文知識・国際業務の就労者数がとても多いので会社の人事を任されている方は高度専門職1号ロの在留資格をお持ちの方についても同様の手続きをすればよいと誤解しているケースがいままで数多くありました。 高度専門職1号ロの方は前述の所属機関等に関する届出に加えて高度専門職1号ロへの在留資格変更許可申請が必要になります。 同じ在留資格に「変更」するという意味が分かりづらいのですが、高度専門職の方は法務大臣から指定書によって就労する所属機関が指定されています。その「変更」をする必要があるということです。 このため転職先の就労開始時期は在留資格変更許可申請後に新しい在留カードを受領し、パスポートに指定書があらたに貼られてからということになります。 いままでの運用 今までは在留資格変更許可申請を行わずに新しい転職先で就労をしてしまったパターンにおいて、気づいた時点で在留資格変更許可申請をすれば「高度専門職1号ロ」は付与されておりました。私の経験上の話になりますが、就労してしまっていた時期の長短関係なく、許可されていたと認識しております。 現在の運用 しかし、弊社の関知している限りではここ1~2年ほど前からこのような申請において不許可とされる案件が出てきました。 弊社での事例では不許可となったあと、不許可理由を伺う際に技術・人文知識・国際業務等、もととなる在留資格に変更するように指導いただき、その指導の下、再申請を行うと許可されるというパターンです。ただし、在留資格は付与されるものの在留期間は1年となります。入管に伺ったところ高度専門職に戻るにはしばらく様子を見させていただいたうえでという話でしたので、すぐに変更許可申請をしても不許可となる可能性があります。ただ、すべてがすべて不許可となるわけではなく、例えば転職先で就労してしまった期間が2か月ほどと比較的短いケースにおいてはそのまま「高度専門職1号ロ」への在留資格変更許可申請が何事もなく認められるという事例もありました。当然、当該違反事実に対して認知したこと、反省、今後の対策等を示した文書をあらかじめ作成して提出するなどの対策はしたうえでの話です。 その他注意事項 前述の事例はあくまで弊社での事例であり、他では違った扱いのケースも耳に入ってきております。このようにガイドライン等で明確に変更された以外の部分についても、注意が必要になっており、このような変化は日々入管業務に接している専門家しかつかめないものも中にはございます。もしお困りのことがあれば一度弊社にご連絡いただければ幸いです。 【今月のサービスPickup】 海外進出支援 海外進出では、市場性だけでなく、現地の法規制・税務・労務・商習慣まで幅広く見通す必要があります。戦略検討から現地法人設立、進出後のバックオフィス実務まで、クロスボーダー支援の経験を活かして一貫してお手伝いします。 就労ビザ申請代行 外国人材の雇用では、職務内容や学歴・職歴に応じた適切な在留資格の判断が重要です。在留資格ごとに要件や必要書類が異なるため、就労ビザの新規取得から更新・変更まで、行政書士が要件整理から申請対応まで丁寧にサポートします。 M&Aコンサルティングサービス 後継者問題や成長戦略、経営資源の選択と集中など、M&Aはさまざまな経営課題の解決手段となります。会計・税務・法務の専門家が一体となったワンストップ体制で、経営者の想いと企業価値を次世代へつなぐお手伝いをします。
- [レバンガ北海道と連携し、東川下小学校へのバスケットボール寄贈のお知らせ](https://shiodome.co.jp/news/58197/) - このたび、RSM汐留パートナーズ株式会社は、B.LEAGUE所属のプロバスケットボールクラブ「レバンガ北海道」と連携し、レバンガ北海道SDGsプロジェクト「LEVANGA ACTION」の一環として、北海道札幌市にある東川下小学校へ、当社ロゴ入りバスケットボール10個を寄贈いたしました。 当社は、レバンガ北海道とのパートナーシップを通じて、スポーツの力を活かした地域活性化や次世代への価値提供を後押ししてまいります。 実施の背景・目的 企業活動を取り巻く環境が大きく変化する中で、地域社会との持続的な共生や、次世代を担う子どもたちへの支援は、企業に求められる重要なテーマの一つです。当社は、ワンストップコンサルティングサービスを通じて企業の成長を支援するだけでなく、札幌事務所・釧路事務所を含む全国拠点を通じて、専門性を強みにした支援と地域に根ざした取り組みの両面を重視しています。特に、北海道を拠点に活動するレバンガ北海道の理念に共感し、スポーツを通じた地域活性化や次世代への価値提供を目指して、連携した取り組みを推進しています。 本取り組みは、レバンガ北海道が推進するLEVANGA ACTIONの一環として、学校備品購入の予算が限られている中で、子どもたちがバスケットボールに親しみ、スポーツを通じた体験機会を得られる場をつくることを目的に実施したものです。 当日の内容 2026年6月16日に東川下小学校にて、レバンガ北海道より木林優選手が訪問し、寄贈式を実施いたしました。 バスケットボール寄贈当社ロゴ入りバスケットボール10個を東川下小学校へ寄贈いたしました。 記念撮影・交流木林優選手と児童の皆さんによる記念撮影・交流が行われ、子どもたちの笑顔があふれる時間となりました。 寄贈について 今回寄贈したバスケットボールは、体育の授業や課外活動の中で子どもたちに活用していただく予定です。日々の運動を通じて、子どもたちの体力向上やスポーツへの親しみが育まれるきっかけとなれば幸いです。 今後の展望 当社は、レバンガ北海道との連携をはじめ、地域とともに歩む取り組みを今後も継続し、スポーツを起点とした体験価値の創出や、次世代支援に寄与してまいります。引き続き、プロフェッショナルファームとしての専門性と、地域社会へのコミットメントの両面から、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
- [RSM汐留パートナーズ・ニュースレター 2026年5月号](https://shiodome.co.jp/news/57296/) - トランプ関税の影響と実務上の備え、労働基準法の改正論点①、出入国在留管理の法令改正 今月のニュースレターでは、税理士法人より 「トランプ関税の影響と実務上の備え」、社会保険労務士法人より 「労働基準法の改正論点①」、行政書士法人より 「出入国在留管理の法令改正」 についてお届けいたします。 税理士法人では、輸出の有無にかかわらず国内企業に波及するトランプ関税の影響を踏まえ、今のうちに考えておきたい実務上のポイントをお伝えします。社会保険労務士法人では、連続勤務日数の上限設定や勤務間インターバルの義務化など、改正に向けた検討が続く労働基準法の主要な改正論点を取り上げます。行政書士法人では、永住許可ガイドラインの変更、在留申請手数料の改定、言語能力証明の新要件など、目まぐるしく変化する出入国在留管理の法令・運用の改正動向を整理します。 今月のニュースレターも、日々の実務にぜひお役立てください。 トランプ関税の影響と実務上の備え 「最近、なんとなく受注が減っている」―その背景には、いわゆるトランプ関税の影響があるかもしれません。ニュースでは連日のように関税が取り上げられていますが、「自社は輸出していないし関係ない」と考える方も多いでしょう。しかし実際には影響はすでに始まっており、サプライチェーンを通じて国内企業にも広がっています。今回は、複雑な関税や法律の詳細ではなく、「自社にどう関係するのか」という視点に絞って整理します。 トランプ関税の現状 トランプ関税は2025年4月に開始され、その後の交渉や裁判を経てルールが変化しています。重要なポイントは次のとおりです。 第一に、関税は形を変えて継続している点です。「最高裁が違法と判断したので終わった」と受け止められがちですが、別の法的枠組みによる代替措置が導入され、関税負担は実質的に継続しています。 第二に、対象品目によって負担が異なる点です。自動車・鉄鋼・アルミは15~25%の高関税、それ以外にも一律10%の追加関税が課されています。 第三に、この状況は当面継続する前提で考える必要がある点です。現行の10%措置は7月に期限を迎えますが、政権は別の法律による継続を見込んでおり、「いずれ元に戻る」との楽観的な見通しは適切ではありません。 輸出していないのに影響がある理由 輸出していない企業にも影響が及ぶ主な経路は以下の2つです。 一つは、取引先を通じた需要減少です。大手メーカーが米国向け出荷を減らせば、その下請け企業の受注も減少します。サプライチェーンは多層的に連なっており、自動車関連に限らず、建設機械、電子部品、化学製品など幅広い分野で影響が波及します。実際、2025年後半以降、下請け企業の受注減の動きが見られています。 もう一つは、価格環境の変化です。米国向け輸出が難しくなった製品が他地域へ流入し、競争が激化することで価格が下押しされる一方、原材料高や為替変動によりコストが増加するケースもあり、価格の見通しが立てにくい状況が続いています。 今のうちに考えておくべきこと 関税の先行きを正確に予測することは困難ですが、自社への影響は事前に想定できます。 第一に、取引先の米国依存度の把握です。直接取引がなくても、間接的に米国市場とつながっているケースは少なくありません。 第二に、売上減少時の耐性確認です。例えば売上が1割減少した場合の資金繰りを試算するだけでも、対応の選択肢は変わります。 第三に、調達・販売体制の見直しです。仕入先の分散や在庫水準、価格転嫁の方針は平時に整理しておくことが重要です。 あわせて、経済産業省の「米国関税対策ワンストップポータル」やジェトロの相談窓口など、公的情報の活用も有効です。 おわりに 関税の問題は一見複雑ですが、本質は「需要減」と「コスト増」というシンプルな問題に集約されます。まずは自社への影響を把握することが第一歩です。ご不明点等ございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせ下さい。 労働基準法の改正論点① 1987年の改正以降、労働基準法(以下労基法)の包括的な見直しが検討されています。2026年、通常国会への労基法改正案の提出は見送りになりましたが、改正に向けた検討は現在も継続しているため、現時点で報告書に挙げられている改正論点について説明します。 連続勤務日数の上限が13日に設定 連続勤務日数について、14日以上の連続勤務禁止という上限を設けることが提言されています。現行の労基法では「4週間を通じて4日以上の休日」を与えれば足りると定めており、要件を満たした場合、最大48日間の連続勤務が理論上可能な状態にあります。2週間以上にわたり休日のない連続勤務を行うことは、労災保険の精神障害認定基準の具体的な出来事の一つとして明記されており、また報告書でも36協定に休日労働の条項を設けた場合であっても、13日を超える連続勤務を認めない取扱とする旨の規程を労基法上に設けることが提言されています。 法定休日の特定の義務化 現状では、週休2日制としながらも2日のうちどちらが法定休日なのかが曖昧な企業が多く存在します。これも改正により、就業規則で法定休日を明確に特定することを義務付けることが提言されています。1か月の変形労働時間制等を適用している場合であっても、事前のシフトを設定する段階に法定休日を定めなければならず、またその旨も就業規則に明記する方向で検討が継続されています。 勤務間インターバルの義務化 終業から次の始業までの間に、休息時間として最低11時間を確保する「勤務間インターバル制度」が努力義務から法的義務に格上げされる方向で検討されています。シフト制の遅番から翌日の早番、といった連続配置のハードルが上がることが想定されています。勤怠システムでインターバル判定が行われるように今後仕様が追加されることも想定されています。 年次有給休暇取得時の賃金が通常賃金方式に統一 平均賃金や標準報酬月額の30分の1を支給する方式など3つの方式が混在していますが、今後は改正により「通常通り勤務した場合に支払われる賃金」を支払う方式に統一されることが検討されています。パートやアルバイトなどのシフトによって1日の稼働時間が変動する従業員に対しては、雇用契約書での取り決めやシフトを設定する際に調整しなければなりません。 おわりに 大きく7つの論点が検討されているうちの4つを取り上げました。労働時間の長期化に伴う労災リスクの低減や精神障害による労働力人口の低下を抑制することを目的に労基法の改正が進められている背景の一つと考えられます。労基法のある意味老朽化により、現代の多様な働き方に対して法的有効性を発揮できていないことも理由の一つに挙げられます。今後の労働政策審議会での審議を経ることで、内容が変更される可能性はあります。労基法の大規模改正については、今後も注視が必要です。 出入国在留管理の法令改正 昨今、外国人の出入国在留管理に関する法令や運用が目まぐるしく改正されております。今回は現在までに改正された運用等について整理してご説明させていただきます。 「永住許可のガイドライン」の変更 これまでは在留期間3年以上あれば永住申請にトライできましたが令和9年4月1日からは在留期間が5年以上なければ永住許可申請することはできません。また令和9年4月1日前に3年の在留期間で申請した場合、現在の在留期間中に永住許可がされれば何の問題もありません。しかし永住許可の審査中に在留期限を迎えてしまった場合、現に有する在留期間を更新する必要があり、その結果、在留期間が5年もらえなければ、基本的には永住の要件を満たすことができないとして不許可とされます。 手数料の変更 すでに手数料の上限額の引き上げが決定されておりますが、2026年4月28日の衆議院本会議で在留期間更新・在留資格変更の際に付与される在留期間ごとに手数料がかわり、3か月以下は1万円、1年の場合は3万円、3年で6万円、5年で7万円、永住許可は20万円とする出入国在留管理及び難民認定法改正案が可決されました。 これにより、外国人を多く雇用する企業は高度専門職などの在留期間が多く与えられる外国人の雇用することやグローバル企業においては1人が日本に長くいて在留期間を更新することなく、次々と新しい人材を日本に送り込み帰任と着任のペースをあげるなどの対策の検討が必要となります。 技術・人文知識・国際業務において対人業務に従事する場合の言語能力の証明 これまで技術・人文知識・国際業務において翻訳通訳など対人業務に就く場合、とくにその言語能力については証明を求められませんでしたが、2026年4月15日以降の申請において、カテゴリー3以下の会社が申請する場合においては言語能力の証明に関する資料の提出が必須になってきます。また、これは日本語に限ったことではありません。例えばホテルのフロントなどで外国人顧客にたいして英語で対応するとして翻訳通訳業務で申請する場合には英語の言語能力の証明が求められます。以下は日本語及びそれ以外の言語それぞれに求められる能力についてです。 日本語能力について JLPT・N2以上を取得していること BJTビジネス日本語能力テストにおいて400点以上を取得していること 中長期在留者として20年以上本邦に在留していること 本邦の大学を卒業し、又は本邦の高等専 日本語以外の言語能力について
- [【弁護士・コンサルタントによる実務解説】人権尊重の責任を果たすために
~中堅・中小企業が人権尊重を実務に落とし込むための仕組みと実践~](https://shiodome.co.jp/news/58028/) - 概要 本ウェビナーは、「人権尊重」を企業活動の大前提として捉え、その責任をどのように中堅・中小企業の実務の中で果たしていくかをテーマとしています。 近年、企業には「人権に配慮する」ことにとどまらず、自社および取引先を含む事業活動全体において、人権侵害を引き起こさないこと、リスクを把握し是正することが求められるようになっています。人権尊重は問題が起きた際に事後的に対応するものではなく、日々の業務や意思決定の中に組み込まれるべき前提です。 本ウェビナーでは、その前提に立ち、 人権尊重の責任とは何を意味するのか? それを実務の中でどのように具体化していくのか? 中堅・中小企業にとって持続可能な「仕組み」として、どのような工夫が可能か? といった点について、弁護士およびコンサルタントの立場から、実務目線で解説します。 人権デューデリジェンス(DD)を含め、人権尊重を理念にとどめず、持続可能なやり方で実践していくための考え方と具体例を共有することを目的としています。「何から着手すべきか分からない」「大企業向けの議論に感じてしまう」といった方にも、自社の実情に照らして考えるヒントを持ち帰っていただける内容となっています。法務・ガバナンスの観点から、人権尊重の責任をどのように仕組み化するかを整理したうえで、企業の実務運用を通じて、日々の業務の中でどのように定着・改善させていくかを解説していきます。 ウェビナー実施要領 日時 2026年7月9日(木) 13時00分~14時30分 (90分) 参加方法 MS TEAMSを使用したウェビナー形式(参加申込をいただいた後で参加方法を個別にお送りします) プログラム・スピーカー 北浜法律事務所/RSM International/RSM汐留パートナーズのご紹介 第1部(45分)「法務・ガバナンスの観点から人権尊重を具体化する」 <スピーカー>北浜法律事務所パートナー/弁護士 河浪 潤 <内容> そもそも人権尊重とは? 国内外の義務化・制度化の動向 中堅・中小企業からよく受けるお悩み 中堅・中小企業における人権尊重の仕組みー人権DD 大企業からの無茶な要求に対する交渉方法 第2部(30分)「企業の実務・運用面から人権尊重を具体化する」 <スピーカー>RSM汐留パートナーズ株式会社ESG・サステナビリティディレクター 福澤 豊 <内容> 採用・評価・労務管理への反映 取引先管理・購買プロセスへの組み込み 研修・教育の計画・実施 リスク評価・是正の運用 実際の相談・対応フロー 質疑応答・情報交換(10~15分) 主催 北浜法律事務所 RSM汐留パートナーズ株式会社 想定される参加者 <規模>中堅・中小企業 <部署/役職> 経営者・役員 総務・法務・コンプライアンス・人事・経営企画・サステナビリティ部門の役職者・担当者 取引先・金融機関から人権尊重に関する要請を求められる可能性のある企業の実務担当者 参加費 無料 定員 50名(先着順) 参加申込 お申し込みフォームはこちら 申込締切
- [2026 RSM APAC Training 参加のお知らせ](https://shiodome.co.jp/news/57783/) - 2026年5月18日(月)〜22日(金)の5日間、近年、目覚ましい経済発展を続けるベトナム・ホーチミンにて「2026 RSM APAC Training」が開催され、RSM汐留パートナーズから代表の前川が参加いたしました。 RSMのAPACトレーニングは、アジア太平洋地域のメンバーファームが集い、専門知識の共有とネットワーク強化を目的として開催される、RSMネットワーク全体における重要な研修プログラムのひとつです。今回もアジア太平洋地域各国のRメンバーファームからプロフェッショナルが一堂に集結し、1週間にわたる集中研修として、グローバルビジネスを取り巻く重要テーマについて、充実したプログラムが展開されました。 研修では、IFRS、ESG、デジタルアセット、サイバーセキュリティ、リスクアドバイザリー、国際税務・移転価格など、近年ますます注目が高まる分野を中心に、各国の制度・実務の最前線を共有し合いました。参加を通じて感じたのは、これらのテーマの学びは代表個人にとどまらず、実務の最前線を担うメンバーにこそ届けたい内容であるという強い実感です。今後は参加対象をさらに広げ、組織全体の専門性向上につなげていきたいと考えております。 特に、ブロックチェーン・デジタルアセット領域における会計・ビジネス上の論点については、デジタル経済の急速な進展に伴い、会計処理や規制対応のあり方が各国で異なる現状が共有され、実務家として押さえるべき最新の論点について理解を深めました。ESGの分野では、各国における開示規制の進展と企業への実務的な影響について議論が行われ、日本企業としての対応の方向性を考えるうえでも多くの示唆が得られました。 またサイバーセキュリティについては、デジタル化が加速する現代において、企業が直面するリスクの多様化と高度化への対応が急務であることが改めて確認され、RSM汐留パートナーズとしての支援の重要性を再認識する内容となりました。国際税務・移転価格については、RSMのグローバルな環境で各国のプロフェッショナルと議論を重ねる中で、制度や考え方が国によって大きく異なるからこそ、共通言語としてのルール理解と現場に根ざした実務感覚の双方を備えることの重要性が改めて確認されました。 特に日本企業がグローバルに事業を展開する際には、進出先の税制・規制への対応と同時に、グループ全体を俯瞰した戦略的な税務管理が求められます。本研修での学びは、こうした複合的なニーズにお応えするうえで、大きな示唆をもたらすものとなりました。 研修期間中には、RSM APACネットワークのプロフェッショナルたちとのネットワーキングの機会も設けられました。知識・専門性の向上にとどまらず、国境を越えた信頼関係の構築が、クロスボーダー案件や国際的なクライアント支援における大きな力となります。各国の専門家との対話を通じて得た知見と繋がりを、クライアントの皆様へ着実に還元してまいります。 今回の研修で得た知見とネットワークを最大限に活かし、RSM汐留パートナーズでは、IFRS・ESG・デジタルアセット・サイバーセキュリティ・国際税務・移転価格などの分野において、より一層高品質なサービスと有益な情報をご提供してまいります。引き続き、RSMネットワークの一員として国内外の専門家との連携を強化し、クライアントの皆様の持続的な成長とグローバルな事業展開を力強く支援してまいります。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
- [株式会社ワークアカデミーと共同開発した経理人材育成プログラムの開催のお知らせ](https://shiodome.co.jp/news/57774/) - 2026年、日本の労働市場は大きな転換期を迎えています。AIの進化やDXの急速な普及により、多くの定型業務が自動化される一方で、企業の「数字」を深く読み解き、経営を支えるプロフェッショナルな経理人材の価値は、むしろこれまで以上に高まっています。 「事務職や販売職として懸命に働いてきたけれど、自分にしかできない専門性があるか、と問われると自信がない。」 そうした不安を抱える20代〜30代前半の皆さんに向けて、RSM汐留パートナーズは、株式会社ワークアカデミーと連携し、国際会計ネットワーク「RSM」の日本メンバーファームとして培ってきた実務ノウハウを結集した、実践型・経理人材育成プログラムを提供しています。 プログラム開発の背景 近年、中小企業における経理・会計人材の不足は深刻化しており、企業の持続的な成長を阻む課題のひとつとなっています。経験者の採用が年々困難になるなか、未経験者を即戦力レベルへと実践的に育成するニーズは急速に高まっています。 こうした課題に応えるため、当社は長年にわたり教育事業を展開してきた株式会社ワークアカデミーと連携し、上場企業から中小企業まで幅広いクライアントへのサービス提供を通じて蓄積してきた実務ノウハウを、直接カリキュラムに落とし込みました。 本プログラムが選ばれる理由 (1)世界基準の知識を、現役プロが直接伝授 講師を務めるのは、RSM汐留パートナーズの現役税理士とプロフェッショナルスタッフです。教科書的な理論にとどまらず、現場の最前線で日々求められる「生きた実務の勘所」を直接お伝えします。 (2)「わかる」を「できる」に変える、実践7割のカリキュラム 全50時間のうち70%以上をPCを使った実務演習に充当。実際の領収書や請求書を素材としたトレーニングを積み重ねることで、受講後すぐに現場で貢献できるレベルを目指します。「簿記の資格は持っているが、実務でどう使うかわからない」という段階を確実に超えていただけます。 (3)現場で最も使われている『弥生会計』を完全マスター 中小企業・スタートアップを中心にシェアNo.1を誇る会計ソフト『弥生会計』を使用。転職市場でも直接評価されるスキルを、実践の中で身につけます。 (4)未経験者でも安心して学べる構成 会計・経理の知識がまったくない方でも、基礎から丁寧に学べる構成を整えています。前職でのコミュニケーション能力や業界知識といった既存の強みに、「経理実務力」が加わることで、市場価値は大きく向上します。 今後の展望 当社は本プログラムを通じて、中小企業における経理・会計人材の不足解消に貢献するとともに、受講生一人ひとりが自身のライフステージや働き方に合ったキャリア形成を実現できるよう、学びと就業の接続を継続的に支援してまいります。 詳細・お申し込みはこちら https://reskilling.noaplus.jp/lp-rsm-accounting/
- [レバンガ北海道と連携し、サクラ保育園上野幌への絵本寄贈イベントを実施](https://shiodome.co.jp/news/55985/) - このたび、RSM汐留パートナーズ株式会社(以下、「当社」)は、B.LEAGUE所属のプロバスケットボールクラブ「レバンガ北海道」と連携し、北海道札幌市にあるサクラ保育園上野幌にて、子どもたちを対象とした絵本の寄贈・交流イベントを実施いたしました。 当社は、レバンガ北海道とのパートナーシップを通じて、スポーツの力を活かした地域活性化や次世代への価値提供を後押ししてまいります。 実施の背景・目的 企業活動を取り巻く環境が大きく変化する中で、地域社会との持続的な共生や、次世代を担う子どもたちへの支援は、企業に求められる重要なテーマの一つです。当社は、ワンストップコンサルティングサービスを通じて企業の成長を支援するだけでなく、札幌事務所・釧路事務所を含む全国拠点を通じて、専門性を強みにした支援と地域に根ざした取り組みの両面を重視しています。特に、北海道を拠点に活動するレバンガ北海道の理念に共感し、スポーツを通じた地域活性化や次世代への価値提供を目指して、連携した取り組みを推進しています。 本イベントは、レバンガ北海道が取り組む社会貢献活動や地域との共創の一環として、子どもたちが本に親しみ、心が動く体験を得られる機会をつくることを目的に企画したものです。 当日の内容 2026年2月20日にサクラ保育園上野幌にて、子どもたちが楽しみながら参加できるプログラムを実施しました。 寄贈絵本のタイトル(合計9冊) 「ぼくとクラウンの冒険 ちからのルビー編」 (3冊) 「ぼくとクラウンの冒険 すばやさのサファイヤ編」 (3冊) 「ぼくとクラウンの冒険 たくみなエメラルド編」 (3冊) 記念撮影/ハイタッチ レバンガ北海道のマスコットであるレバードくんとハイタッチと記念撮影を行い、子どもたちの笑顔があふれる時間となりました。 絵本の読み聞かせ 保育士が寄贈絵本の読み聞かせを行い、子どもたちが物語の世界に入り込める時間をつくりました。 絵本寄贈について 本イベントを通じて寄贈した絵本は、保育園内の絵本スペースに配架され、子どもたちが日常の中で手に取れる形で活用される予定です。日々の読み聞かせや自由遊びの時間の中で、子どもたちの想像力や言葉の世界が広がるきっかけとなれば幸いです。 今後の展望 当社は、レバンガ北海道との連携をはじめ、地域とともに歩む取り組みを今後も継続し、スポーツを起点とした体験価値の創出や、次世代支援に寄与してまいります。 引き続き、プロフェッショナルファームとしての専門性と、地域社会へのコミットメントの両面から、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
- [アレックス・ラミレス氏の日本国籍取得(帰化申請)サポートについて](https://shiodome.co.jp/news/47333/) - RSM汐留パートナーズ行政書士法人(旧:行政書士法人中井イミグレーションサービス)では、2018年に、元プロ野球選手・監督として広く知られるアレックス・ラミレス氏の日本国籍取得(帰化申請)支援を行わせていただきました。 ラミレス氏はベネズエラ出身で、日本プロ野球(NPB)において長年活躍し、日本通算2,000安打を達成した唯一の外国人選手として名球会入りを果たすなど、歴史に名を刻んでいます。MVPを2回受賞するなど数多くのタイトルを獲得し、さらには8年連続100打点超えという偉業も成し遂げ、2023年には野球殿堂入りを果たすなど、日本のプロ野球史に残る類まれな実績を持つ人物です。選手・監督として多くのファンに愛され続け、日本での活動を生涯の中心に据えたいという強い想いから、同氏は日本国籍取得を決断されました。 当法人は、その長年の夢を実現するために、帰化許可申請手続きの全面的なサポートを提供いたしました。 帰化・在留資格申請における当法人のサービス内容 帰化許可申請(日本国籍取得)は、多くの外国籍の方にとって大きな決断であり、手続きも複雑かつ専門性が求められます。特に著名人の帰化許可申請においては、提出書類の正確性、生活基盤の説明、日本社会との継続的な関わりなど、細やかな準備が必要です。また最近では要件の厳格化が新聞で報じられ、法改正など最新の情報にも気を配る必要があります。 当法人では、 帰化許可申請書類の作成支援 必要資料の取得サポート 法務局への同行サポート 外国語の証明書類の翻訳 審査中の法務局との調整 許可後の必要手続きのサポート(戸籍取得等) 帰化に関する法的アドバイスといったプロセスをワンストップで丁寧に支援し、スムーズな許可取得につながるよう伴走いたします。 また、ラミレス氏のサポートにおいては、英語およびスペイン語を用いて手続き内容の説明や資料確認を行い、言語面でも安心して申請を進めていただけるよう配慮しました。 在留資格(ビザ)・永住・帰化などイミグレーション業務及び関連業務に精通する行政書士法人であるRSM汐留パートナーズ行政書士法人は、在留資格(ビザ)申請、永住許可申請、帰化許可申請など、外国籍の方々が日本で活躍するための行政手続きに高度に特化したプロフェッショナル集団です。 これまでサポートしてきた案件は、 プロスポーツ選手 芸能人 VTuber 芸術家 宗教家 弁護士 シェフ・パティシエ 教授等大学関係者 報道機関の職員 外資系・日系企業の経営者・幹部 日本企業で就労する外国人 日系外国人 ウクライナ難民 留学生など多岐にわたり、国際人材の受け入れ・活躍支援に関する豊富な知見を蓄積してきました。 今回のラミレス氏のケースは、その中でも特に象徴的な事例のひとつであり、「日本で新たな人生をスタートしたい」という想いを行政手続きの面から支えた重要な実績としてご紹介いたします。 なお、本掲載については、ラミレス氏ご本人から正式な許諾をいただいています。2018年の帰化許可申請から年月が経った現在も交流は続いており、ビジネス面での協業可能性についても意見交換を行っています。 外国籍人材の国籍取得・在留資格支援に向けた当法人の取り組み 当法人では、引き続き以下の方々に対し、国籍取得(帰化申請)、在留資格(ビザ)申請、永住許可申請に関する専門的なサポートを提供してまいります。 日本でキャリアを築きたい外国籍のビジネスパーソン スポーツ界やエンターテインメント業界で活躍する方 外国人材を採用・受け入れる企業・団体 ラミレス氏とのご縁を大切にしつつ、外国籍人材が日本で活躍するための新しい協業機会やサポートの形を創出していくことを楽しみにしております。 国籍取得や在留資格の手続きは、人生を左右する非常に大きな節目です。当法人は、そうした重要な決断に寄り添い、手続きに伴う不安を取り除く伴走者として、これからも質の高いサポートを提供してまいります。
- [RSM International加盟のお知らせ](https://shiodome.co.jp/news/14609/) - 汐留パートナーズグループ(本社:東京都港区、グループCEO:前川 研吾)である「汐留パートナーズ株式会社」、「汐留パートナーズ税理士法人」、「汐留パートナーズ社会保険労務士法人」、「汐留パートナーズ行政書士法人」、「汐留パートナーズ司法書士法人」、「汐留ビジネスソリューションズ株式会社」及び「Shiodome Partners (Philippines) Inc.」の7法人は、この度、2022年11月1日に、世界第6位(2022年2月のInternational Accounting BulletinによるWorld Survey)にランクインするグローバルネットワークであるRSM International(以下、「RSM」)に加盟することとなりましたので、お知らせいたします。 1. 加盟の背景 コロナ禍においては、多くの企業でテレワークの導入が行われ、デジタルツールを提供する外資系企業の日本進出が進んでおります。消費意欲の減退がみられた一方で、オンライン消費額が増加し、他人との接触機会を減らすためのキャッシュレス決済利用の増加もみられ、将来的な関連産業の成長が期待されることから、これらの領域に関しての外資系企業の日本進出が期待されています。この流れは、日本経済の活性化や国内雇用への対策という意味において、我が国においても重要な国家戦略の1つとなっております。 従来から当グループは、外国企業の日本への投資と事業拡大をサポートしており、日本進出のコンサルティングサービスを現在進行形で拡充しております。 同時に、我が国を取り巻く環境の変化により、日本企業の海外進出も加速しており、当グループは日本企業に対する海外進出コンサルティングサービスの拡充も目指しております。 プロフェッショナルファームには、国際的な視点に基づく会計税務・人事労務・法務サービスが求められるようになっております。当グループは、このような環境の変化に対応して、グローバル化・複雑化するお客様のニーズにお応えするため、より強大なグローバルネットワークとの連携を模索しておりました。企業の海外進出に伴い、日本の大手税理士法人の多くはすでに海外の大手会計事務所と提携しています。国内マーケットの縮小や為替変動に対するリスク回避により、クライアントの海外進出はさらに加速するため、一層強力なグローバルネットワークが不可欠と考えておりました。 2. 加盟の目的 当グループは、世界120ヶ国以上に展開するグローバルネットワークであるRSMに加盟することで、RSMを通じて日本進出を行う世界中のクライアントをサポートします。また、日本企業が海外展開を行う際に、RSMに加盟する各国の会計事務所と連携して対応することで、最先端の高度な情報に基づいた高品質かつ効率的なサポートが可能となります。各国の税制や法制度などの情報を入手することで、アドバイザリーサービスの品質も高めていく所存です。 RSMは1964年に発足した後、現在では世界約120ヶ国カ所以上に活動拠点を有しています。日本におきましては、当グループの他に、RSM清和監査法人(理事長:戸谷 英之)と税理士法人東京クロスボーダーズ(代表パートナー:村山 彰永)がRSM Japanのメンバーファームとなっております。 今後は、国内外のクライアントへより広範な領域で高品質なサービスを提供することが可能となります。 3.RSMの概要 4.汐留パートナーズの組織体制について この度、当グループは「RSM汐留パートナーズ」として、以下の5法人の社名変更を行うことになりました。日本国内においてより一層RSMブランドを周知していく所存です。 5. RSM汐留パートナーズ株式会社概要 会社名:RSM汐留パートナーズ株式会社[英文社名]RSM Shiodome Partners Limited設 立:2008年4月代表者:代表取締役社長CEO 前川 研吾資本金:5000万円所在地:〒105-7133 東京都港区東新橋1-5-2 汐留シティセンタービル33階URL:https://www.shiodome.co.jp/ 事業概要:プロフェッショナル・アドバイザリーサービス(会計・税務・人事・労務・法務アドバイザリーサービス等) バックオフィス・アウトソーシングサービス(記帳代行・支払代行・請求書発行・給与計算・社会保険等事務代行・登記サービス等) 財務コンサルティングサービス(IPO・内部統制・内部監査・原価計算・IFRS・事業承継・M&A支援・株価算定・デューデリジェンス等) 各種ソリューションサービス(ファミリービジネス支援・ESG及びサステナビリティ支援・DX支援・サイバーセキュリティ支援・海外進出支援等) 拠 点:東京・沖縄・マニラ(フィリピン)・ホノルル(ハワイ) 6.本リリースに関するお問い合わせ この度のRSM加盟により、私たちはより高品質かつ高付加価値のサービスが提供できると確信しております。国内外のクライアントに対して企業価値を最大化するためのベストプラクティスをご提案し、実現していく所存でございます。今後とも変わらぬご厚情を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。 【窓口】インターナショナル・リエゾン・パートナー 黒住准インターナショナル・リエゾン・オフィサー 許婧怡 Mail:inquiry-jp at rsmjapan.com(atは@に置き換えてください)
- [当社クライアントの東京証券取引所プライム市場への上場市場区分変更について](https://shiodome.co.jp/news/24533/) - 当社のクライアントである株式会社ボードルア(本社:東京都港区、代表取締役社長:冨永重寛 証券コード:4413)は、2025年3月10日に株式を東京証券取引所グロース市場から東京証券取引所プライム市場に上場市場区分を変更しました。 株式会社ボードルアについて 株式会社ボードルアは、ITインフラストラクチャに特化した専門技術を活かし、コンサルティングから設計、構築、マネージドサービスまで幅広いサービスを提供されている企業です。クラウドサービスの増加、DXの推進、5G通信の普及など、ITインフラストラクチャを取り巻く環境が高度化・多様化する中で、創業以来、最先端の技術を取り入れ、専門性の高い人材を育成することで企業のシステム基盤を支えています。お客様のアプリケーションに最適なソリューションを提供し、信頼性の高いITインフラを構築することで、企業のDX推進をサポートする存在として注目されています。 株式会社ボードルア 所在地:〒106-0041東京都港区麻布台1丁目3-1 麻布台ヒルズ 森JPタワー17F代表者:代表取締役社長 冨永重寛URL:https://www.baudroie.jp/ RSM汐留パートナーズについて RSM汐留パートナーズは、世界120ヶ国以上に展開するグローバルネットワークである国際会計ネットワーク 「RSMインターナショナル」 のメンバーファームです。公認会計士、税理士、社会保険労務士などの資格を持つプロフェッショナルが在籍し、グローバルなネットワークと豊富な知見を活かして、上場企業、上場子会社、上場準備企業、外資系企業などに対し、ワンストップで迅速かつ包括的なサービスを提供し、クライアントの持続的な成長を支援しています。 RSM汐留パートナーズ 所在地:〒105-7133東京都港区東新橋一丁目5番2号 汐留シティセンター33階代表者:グループCEO 前川研吾URL:https://shiodome.co.jp/ 本リリースに関する問い合わせ 本リリースに関するお問い合わせは以下までお願いいたします。 【RSM汐留パートナーズ】Mail:inquiry-jp at rsmjapan.com (atは@に置き換えてください)
- [当社クライアントの東京証券取引所グロース市場上場について](https://shiodome.co.jp/news/24598/) - 株式会社TalentX(本社:東京都新宿区、代表取締役CEO:鈴木貴史 証券コード:330A)は、2025年3月18日に東京証券取引所グロース市場に株式を公開しました。 株式会社TalentXについて 株式会社TalentXは、企業の採用活動を支援するHRテクノロジー企業です。テクノロジーやAIを活用し、リファラル採用やタレントプール採用、自社メディア採用など顧客企業の「採用活動」を「マーケティング活動」に変革する採用DXプラットフォームを提供しています。 株式会社TalentX 所在地:〒162-0825東京都新宿区神楽坂4-8 神楽坂プラザビルG階代表取締役CEO:鈴木 貴史URL:https://talentx.co.jp/ ■RSM汐留パートナーズについて RSM汐留パートナーズは、世界120ヶ国以上に展開するグローバルネットワークである国際会計ネットワーク「RSMインターナショナル」のメンバーファームです。公認会計士、税理士、社会保険労務士などの資格を持つプロフェッショナルが在籍し、グローバルなネットワークと豊富な知見を活かして、上場企業、上場子会社、上場準備企業、外資系企業などに対し、ワンストップで迅速かつ包括的なサービスを提供し、クライアントの持続的な成長を支援しています。 RSM汐留パートナーズ 所在地:〒105-7133東京都港区東新橋一丁目5番2号 汐留シティセンター33階代表者:グループCEO 前川研吾URL:https://shiodome.co.jp/ 本リリースに関する問い合わせ 本リリースに関するお問い合わせは以下までお願いいたします。 【RSM汐留パートナーズ】Mail:inquiry-jp at rsmjapan.com (atは@に置き換えてください)
- [当社クライアントの名古屋証券取引所ネクスト市場上場について](https://shiodome.co.jp/news/46593/) - 当社のクライアントであるウリドキ株式会社(本社:東京都新宿区、代表取締役:木暮康雄 証券コード:418A)は、2025年10月7日に名古屋証券取引所ネクスト市場に株式を公開しました。 ウリドキ株式会社について ウリドキ株式会社は、リユース品買取マッチングサイト「ウリドキ」及びリユース記事特化WEBメディア「ウリドキプラス」を運営し、誰もが安心してモノを売れる仕組みを提供することで、リユース市場の発展に寄与しています。 ウリドキ株式会社 所在地:〒160-0022東京都新宿区新宿1-6-3 新宿御苑フロント9F代表取締役:木暮 康雄URL:http://uridoki.co.jp/ ■RSM汐留パートナーズについて RSM汐留パートナーズは、世界120ヶ国以上に展開するグローバルネットワークである国際会計ネットワーク「RSMインターナショナル」のメンバーファームです。公認会計士、税理士、社会保険労務士などの資格を持つプロフェッショナルが在籍し、グローバルなネットワークと豊富な知見を活かして、上場企業、上場子会社、上場準備企業、外資系企業などに対し、ワンストップで迅速かつ包括的なサービスを提供し、クライアントの持続的な成長を支援しています。 RSM汐留パートナーズ 所在地:〒105-7133東京都港区東新橋一丁目5番2号 汐留シティセンター33階代表者:グループCEO 前川研吾URL:https://shiodome.co.jp/ 本リリースに関する問い合わせ 本リリースに関するお問い合わせは以下までお願いいたします。 【RSM汐留パートナーズ】Mail:inquiry-jp at rsmjapan.com (atは@に置き換えてください)
- [RSM汐留パートナーズ株式会社、プロバスケットボールリーグ B.LEAGUE 所属「レバンガ北海道」とコーポレートサポートパートナー契約を締結](https://shiodome.co.jp/news/46977/) - RSM汐留パートナーズ株式会社(所在地:東京都港区、代表取締役社長CEO:前川 研吾)は、プロバスケットボールリーグ B.LEAGUE 所属「レバンガ北海道」と2025-26シーズンのコーポレートサポートパートナー契約を締結したことをお知らせいたします。 背景・目的 RSM汐留パートナーズ株式会社は、ワンストップコンサルティングサービスを通じて企業の成長を支援するだけでなく、地域社会とのサステナブルな共生を重視しています。札幌事務所および釧路事務所を擁する当社は、北海道を拠点に活動するレバンガ北海道の理念に共感し、スポーツを通じた地域活性化を図るとともに、地域に根ざした新たな体験・価値を創出して地域住民やファンの皆さまへ届けることを目的に、本パートナーシップを締結しました。 B.LEAGUEは国内で急速にファン層を拡大し、スポーツビジネスの新たな可能性を示しています。当社はこの潮流に積極的に参画し、企業としてのESG・サステナビリティへの取り組みを一層強化していきます。 パートナーシップの概要 「コーポレートサポートパートナー」とは、クラブの運営を共に考え、実行を支える専門家として、経営・組織運営に継続的に伴走する新しい形のパートナーシップです。 当社は、クラブの経営・財務・人事・ガバナンスをはじめとした多くの領域について支援を行い、選手やスタッフの皆さまが競技に専念できる環境づくり、そしてクラブの持続的な発展を後方から支えます。 RSM汐留パートナーズの支援範囲(一例) クラブ経営:財務諸表作成支援/監査法人対応/内部統制・内部監査の整備運用/ガバナンス体制・労務管理の構築/契約選手の税務サポート/サステナビリティ経営支援 選手・スタッフ:確定申告・節税・資産形成支援/外国籍選手の国際課税対応/年金・社会保険・退職給付の最適化/在留資格サポート/相続・生前対策・遺言支援/保険・不動産・リタイアメントプランニング これにより、単なる協賛にとどまらず、クラブの持続的な発展と選手のキャリア価値の最大化を同時に実現する、「経営×人(選手・スタッフ)」起点のパートナーシップを推進してまいります。 各社コメント 株式会社レバンガ北海道 代表取締役社長 折茂 武彦 様 このたび、RSM汐留パートナーズ様とコーポレートサポートパートナー契約を締結できましたことを大変嬉しく思います。レバンガ北海道は「北海道から明日のガンバレを。」のスローガンのもと、地域とともに歩むクラブづくりを進めてまいりました。今回のパートナーシップは、単なる協賛にとどまらず、経営・財務・人事・ガバナンスといったクラブ運営の基盤強化から、選手・スタッフが競技に専念できる環境整備まで、包括的な支援で伴走いただける点に大きな意義があります。 RSM汐留パートナーズ様と共創を通じ、北海道の皆さまに新たな体験価値をお届けできると確信しております。クラブの持続的な成長と、選手・スタッフ一人ひとりの可能性の拡大をともに実現してまいります。 RSM汐留パートナーズ株式会社 代表取締役社長CEO 前川 研吾 北海道は多様な産業と人材が集まり、豊かな自然と共生する独自の文化を育んできました。私たちRSM汐留パートナーズも、札幌と釧路に拠点を構え、地域と共に歩むことを大切にしています。まだ小さなチームではありますが、専門性を生かし、一歩ずつ歩みを積み重ねてまいりました。 私たちが目指すのは、地域の皆さまと共に成長し、未来を切り拓く存在になることです。その想いは、北海道を代表するクラブであるレバンガ北海道の歩みと重なります。選手やスタッフの皆さまが安心して競技に専念できるように支えること、そしてクラブの持続的な成長・発展を共に支えていくこと。それが私たちの使命であり、北海道出身の私にとっても喜びです。これまで培ってきた北海道への想いと専門性をもって、微力ながらクラブの発展に尽力してまいります。 レバンガ北海道について 北海道札幌市を拠点とするB.LEAGUEに所属するプロバスケットボールチームです。「北海道から明日のガンバレを。」のスローガンのもと、アカデミー運営やSDGsプロジェクト「LEVANGA ACTION」などを通じ、スポーツを通じた地域活性化や次世代への価値提供を目指しています。 株式会社レバンガ北海道 所在地:〒004-0041北海道札幌市厚別区大谷地東2丁目5-60 イーグルタウン大谷地店 2階代表取締役社長:折茂武彦URL: https://www.levanga.com/ RSM汐留パートナーズについて 世界120ヶ国以上に展開するグローバルネットワークである国際会計ネットワーク「RSMインターナショナル」のメンバーファームです。公認会計士、税理士、社会保険労務士などの資格を持つプロフェッショナルが在籍し、グローバルなネットワークと豊富な知見を活かして、上場企業、上場子会社、上場準備企業、外資系企業などに対し、ワンストップで迅速かつ包括的なサービスを提供し、クライアントの持続的な成長を支援しています。 RSM汐留パートナーズ株式会社 所在地:〒105-7133東京都港区東新橋一丁目5番2号 汐留シティセンター33階代表取締役社長CEO:前川研吾URL:https://shiodome.co.jp/ 本リリースに関する問い合わせ 本リリースに関するお問い合わせは以下までお願いいたします。 【RSM汐留パートナーズ】Mail:inquiry-jp at rsmjapan.com (atは@に置き換えてください)
- [第1回 RSMジャパン主催セミナー「いま中堅企業が押さえるべきサステナビリティの要点 -GHG排出量の可視化と削減-」](https://shiodome.co.jp/news/33464/) - 東証プライム上場企業の時価総額の大きな企業から順次SSBJ基準のサステナビリティ情報開示が義務付けられ、今後、取引先企業へも温室効果ガス(GHG)削減、気候変動への取り組み、情報開示などの要請が拡がっていくことが想定されています。 当セミナーでは、GHG排出量可視化プラットフォームC-Turtle®を提供しているNTTデータ様をゲストに迎え、RSMジャパンの専門家が中堅・中小企業に与える影響と対応策を分かり易く解説していきます。 RSMは世界の会計事務所の「ビッグ4」と呼ばれる大手に次ぐ規模を持つアカウンティングファームです。メンバーファーム、コレスポンデントファームの3社で協働し、クライアント企業のみなさまに有用な情報発信を実施していきたいという想いから、第1回はGHGをテーマとして各社が今後取り組む課題を取り上げております。 講師も交えて参加者間で情報交換する時間も準備しておりますので、ご関心のある企業様は是非ご参加をご検討ください。 お申し込みはこちら 【セミナー概要】 日時 2025年10月8日(水) 15時00分~17時00分 ※受付開始14時30分 場所 東京共同会計事務所 イベントルーム 丸の内永楽ビル 23階(東京都千代田区丸の内一丁目4番1号) 会社概要 | 東京共同会計事務所 プログラム ※内容は変更になる場合がございますのでご了承ください。 開催挨拶 RSM international/RSMジャパンのご紹介 GHG排出削減に関する国内政策の動向と企業への影響について GHG排出量可視化プラットフォームC-Turtle®のご紹介(NTTD様) RSMグループのグローバル体制とESGサービス質疑応答・情報交換 情報交換会(※コーヒーとお菓子をご用意しております) 登壇者 ・RSM清和監査法人 理事長・シニアパートナー 公認会計士 戸谷英之 シニアパートナー 公認会計士 金城琢磨 ・RSM汐留パートナーズ株式会社 マネージングパートナー 公認会計士/税理士 前川研吾 ESG・サステナビリティディレクター 福澤豊 ・株式会社 NTTデータ 佐藤早映・東京共同会計事務所 代表パートナー 公認会計士/税理士 内山隆太郎 主催/共催 ■主催RSM清和監査法人RSM汐留パートナーズ株式会社 ■共催東京共同会計事務所(RSMコレスポンデントファーム)株式会社NTTデータ 株式会社東京海上日動パートナーズTOKIO 参加費 無料 定員 40名(先着順) ※定員に達した場合のみご連絡します。 参加申込 お申し込みフォームはこちら 申込締切 2025年9月30日(火) 17時まで
- [「実務経営ニュース」2023年1月号にインタビュー記事が掲載されました](https://shiodome.co.jp/news/15899/) - このたび、会計業界向け専門誌「実務経営ニュース」2023年1月号に弊社代表の前川のインタビュー記事が掲載されました。 2022年8月号にもインタビューをしていただきましたが、2022年11月にRSM Internationalに加盟したこともあり、RSMに加盟するまでの経緯や世界120ヶ国以上に展開するグローバルネットワークであるグローバルファームのメンバーとして目指す組織やサービスの展望、戦略についてお話させていただきました。 すべてのインタビューは以下リンクよりご覧いただけます。インタビュー記事(全ページ) 実務経営ニュース掲載ページ:https://bmn.jkeiei.co.jp/14697 本件に関するお問い合わせは以下までお願いいたします。 【RSM汐留パートナーズ】MAIL:inquiry-jp at rsmjapan.com (atは@に置き換えてください)
- [RSM汐留パートナーズと株式会社ワークアカデミーが経理・会計人材不足の解消に向けたリスキリングプログラムを共同開発のお知らせ](https://shiodome.co.jp/news/32590/) - RSM汐留パートナーズ(以下「当社」)は、株式会社ワークアカデミー(大阪府大阪市、代表取締役会長:大石博雄)と共同で、経済産業省「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」の一環として、未経験者を対象とした経理・会計人材育成プログラム「世界第6位の国際会計ネットワークから学ぶ!未経験から3ヵ月で経理人材を育成するプログラム」を開発し、2025年7月5日より提供を開始いたします。 開発の背景 近年、中小企業において経理・会計人材の不足が深刻化しており、企業の成長を妨げる要因の一つとなっています。特に経験者の確保が困難な中、未経験者をどのように実務に対応できるレベルへと育成するかが課題となっており、迅速かつ実践的なリスキリングへのニーズが高まっています。 このような課題に対し、当社はRSMの日本におけるメンバーファームとして、上場企業から中小企業まで幅広いクライアントへの会計・税務サービスの提供を通じて蓄積した実務ノウハウを生かし、今回、長年にわたり教育事業に携わってきたワークアカデミー社と連携し、実践力に直結した人材育成プログラムを共同開発いたしました。 プログラムの特長 本プログラムは、当社が実務を通じて培ってきた経理・会計のノウハウと、ワークアカデミー社の持つ教育手法を融合させ、未経験者であっても3ヵ月で即戦力として活躍できる人材の育成を目的としています。 (1)世界基準の知識と実践スキル 当社のプロフェッショナルが監修したカリキュラムにより、会計・税務の基礎から実務レベルのスキルまで体系的に習得できます。 (2)3ヵ月で即戦力化 実務に必要な知識とスキルを効率よく習得できるよう設計されており、短期間での実務対応力を養います。 (3)中小企業のニーズに特化 中小企業が直面する具体的な経理・会計課題に対応できる実践的内容を盛り込み、即戦力として活躍できる人材を育成します。 (4)未経験者歓迎 会計・経理の知識がない方でも、基礎から丁寧に学べる構成となっており、安心して受講いただけます。 今後の展望 当社は、本プログラムを通じて中小企業における経理・会計人材の不足解消に貢献するとともに、受講生一人ひとりが自身のライフステージや働き方に合わせたキャリア形成を実現できるよう、学びと就業の接続を支援してまいります。 また、ワークアカデミー社との協業を通じ、継続的な教育機能と人材ストックの形成を図り、企業と人材双方にとって価値あるリスキリングプログラムの構築を進めてまいります。 詳細・お申し込み 本プログラムの詳細は以下よりご確認いただけます。https://reskilling.noaplus.jp/lp-rsm-accounting/ 【株式会社ワークアカデミーについて】 関西・関東・東海にて大学・学生支援を行う教育企業。創立43年目を迎え、創業以 来「夢と勇気が人を育てる」という経営理念のもと、大学授業運営、資格講座運 営、ITビジネススクール、テキスト出版、企業研修等の教育サービスを展開。近年の主な取り組みは、大阪府のDX(IT)人材就職支援モデル事業「OSAKA若者リ・スキリング・パートナーズ」への参画、持続可能なキャリア形成をビジョンとする学び 支援ブランド「noa+(ノアプラス)」をリリースなど、自ら学ぶ若者と成長意欲の 高い企業との出会いの場の実現を目指しています。また、noa+は2023年度に経済産業省「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」にも採択されました。直近 では、noa+をより発展させ、学んだ経験・履歴を資産に変える『Learn to Earn』の 機能を実装する学びのプラットフォーム「 noa+ connect (ノアプラスコネクト) 」 をスタートさせ、学生から社会人に至るまで、幅広い年代層に、学びとキャリアの 支援を行っています。株式会社ワークアカデミーWebサイト 【RSM汐留パートナーズについて】 RSM汐留パートナーズは、世界120ヶ国以上に展開するグローバルネットワークである国際会計ネットワーク「RSM」の日本メンバーファームとして、会計・税務・人事労務・コンサルティング等の幅広いサービスを提供しています。中小企業から上場企業、外資系企業まで、多様なクライアントに対して高い専門性を持って支援し、企業の成長と課題解決に寄与しています。 本リリースに関する問い合わせ 本リリースに関するお問い合わせは以下までお願いいたします。 【RSM汐留パートナーズ】Mail:inquiry-jp at rsmjapan.com (atは@に置き換えてください)
- [RSM汐留パートナーズ・アラムナイ発足のお知らせ](https://shiodome.co.jp/news/18139/) - RSM汐留パートナーズはこれまでたくさんの従業員とその家族に支えられ共に歩むことができました。過去にご一緒した仲間とのつながりを大切にし、皆さまの新たな冒険を祝福し、共に切磋琢磨することによりお互いのWell-beingを実現していきたいと思っております。 RSM汐留パートナーズ・アラムナイについて RSM汐留パートナーズのアラムナイネットワークは、弊社より退職されたメンバーを対象に、ニュースや情報のご共有、研修やセミナーのご参加、ソーシャルイベントのご参加などを通して、メンバーの専門的成長をサポート、およびメンバー同士のネットワークを深めることを目的としています。将来的にはRSM全体のアラムナイネットワークになっていく予定です。 「RSM汐留パートナーズ・アラムナイ」にご登録いただくことにより、以下のようなことが実現できると考えております。 Connect アラムナイコミュニティを通じて、元同僚やネットワークメンバーと繋がることができる Explore イベント、セミナー、交流会等を通じ、新たな案件や多様なキャリアとの出会いを創出する Share アラムナイコミュニティのメンバー間で経験やアイディアを共有し助け合う CEOよりアラムナイへのメッセージ この度、RSM汐留パートナーズのアラムナイネットワークを発足できたことを大変嬉しく思います。RSM汐留パートナーズおよびRSMインターナーショナルの成功とその文化は、過去、現在、そしてもちろん未来のRSMメンバーにより創造されるものに違いありません。 現在RSM汐留パートナーズから離れているメンバーと共に過ごした楽しい思い出が脳裏に浮かびます。設立15年を迎えたRSM汐留パートナーズのこれまでの道のりは平たんなものではありませんでした。そのため、振り返ってみると過去多くのメンバーに苦労をさせてしまったとも思います。 再びRSM汐留パートナーズのアラムナイネットワークで皆様と繋がることができたら、必ずや双方にとって大きなメリットがあると確信しています。汐留パートナーズはお陰様で世界120ヶ国以上に展開するグローバルネットワークであるRSMインターナショナルに加盟し、日本におけるメンバーファームとなっております。今後RSMインターナショナルによるグローバルでのアラムナイ発足も予定されております。 ぜひこの機会にRSM汐留パートナーズのアラムナイネットワークにご参加ください。正式にアラムナイネットワークに参加していただき、かつての同僚と連絡を取り合ったり、また有益で楽しいコンテンツを入手して頂いたり、あるいは限定のイベントや非公開な業務のチャンスを得る機会があることでしょう。また、弊社に戻る機会に遭遇したり、他の人にアラムナイへの参加を勧めたりすることもできます。皆様が今どこでどんな活躍をしているのかぜひお聞かせください。 代表取締役社長CEO前川 研吾 今後の取り組み RSM汐留パートナーズでは、以下のURLにおいてアラムナイ専用サイトを準備し、今後アラムナイに関連する様々な活動をサポートしてまいります。https://shiodome.co.jp/alumni 各種税制・法律改正に関するセミナー等の配信 アラムナイのメンバーの交流のためのイベントの開催 ビジネス、キャリア、RSM等に関連するニュースレターの配信 再入社、業務委託、その他ジョブオファー等の機会共有 など お問い合わせ先 ご興味のある方は以下お問い合わせ先までご連絡ください。RSM汐留パートナーズ運営事務局 人事G 許 alumni at rsmjapan.com (atは@に置き換えてください)
- [RSM汐留パートナーズ、特定非営利活動法人Forestと障がい者就労支援事業に関する業務提携締結のお知らせ](https://shiodome.co.jp/news/19648/) - RSM汐留パートナーズ(本社:東京都港区、グループCEO:前川 研吾)は、多機能型就労支援事業所「Branch for pro」を運営する特定非営利活動法人Forest(本社:北海道札幌市、代表理事:小野塚 舞)と、障がい者の自立支援を目的とした分野で業務提携を締結したことをお知らせします。 1. 支援の背景 特定非営利活動法人Forest(以下「フォレスト」といいます)は北海道札幌市において就労継続支援(A型・B型)を行っている事業所を運営しています。主に精神障害(統合失調症やうつ病、躁うつ病等)のある方や、発達障害や身体障害のある方、あるいは難病を抱える方が一般就労に向けて短時間勤務で業務を行っています。 就労継続支援A型は、障がいのある方が一般企業への就職が不安、あるいは困難な場合に、一定の支援がある職場で雇用契約を結んだ上で働くことが可能な福祉サービスです。事業所と雇用契約を結んでいるため、勤務形態は基本的に一般就労と変わりませんが、1日の勤務時間が比較的短い点が特徴です。なお、就労継続支援B型では、利用者が雇用契約を結ばずに軽作業などの就労訓練を行っています。 フォレストにはWEB、デザイン、動画制作、会計等に関するスキルや資格を有する利用者(以下「メンバー」といいます)が数多く所属しています。この度の業務提携は、すでに当グループがフォレストに一部業務を委託している関係を深化させるものであり、両者の協力体制によって障がいを抱えるメンバーの一般就労支援を加速させることを目指しています。 2. 両社の概要 (1)RSM汐留パートナーズ株式会社所在地 :東京都港区東新橋一丁目5番2号 汐留シティセンター33階代表者名:前川 研吾設立年月:2008年4月法人概要:IPOコンサルティングや国際業務を軸に成長し、2022年11月には世界120ヶ国以上に展開するグローバルネットワークであるグローバルネットワークであるRSM Internationalに加盟を実現。URL :https://shiodome.co.jp/ (2)特定非営利活動法人Forest所在地 :北海道札幌市中央区南1条西7丁目12-6 PARK AVENUE 3F代表者名:小野塚 舞設立年月:2014年4月法人概要:多機能型就労支援事業所「Branch for pro」を運営し、主に障がい者の方の就労支援を行う。URL :https://forest-japan.org/、https://branch-for-pro.site/ 3. 具体的な取り組み 当グループはフォレストに所属しているメンバーが、当グループ札幌事務所にて直接就労することを目指す持続可能なプログラムを本年春頃から展開しています。主に就労継続支援A型のメンバーに業務をお願いしており、一部B型のメンバーも関与しています。 通常、就労継続支援では基本的な作業が中心ですが、フォレストの就労継続支援施設はITや会計スキルの向上を目指すコンセプトを掲げるユニークな事業所です。高い評価を受ける就労継続支援施設となっており、常にA型は定員がいっぱいの状態となっています。フォレストのA型のメンバーの中には元エンジニアや経理業務従事者も多く、ITや会計に関する資格試験にチャレンジしているメンバーもおり、社会保険労務士試験や日商簿記検定1級に合格した方もおります。 当グループはフォレストのメンバーにWEB、ITインフラ、セキュリティ、動画制作等の多様な業務を委託しています。実践的な業務経験を通じて、各メンバーのスキル向上を図り、彼らが将来的に一般就労の場を見つけるための支援をしています。 本年9月にはフォレストのメンバー1名が、当グループでの就労を実現し、WEB、デザイン、ITインフラなどの分野で活躍しております。 このような一般就労の実現は、就労継続支援施設の新たなキャパシティを生み出し、より多くの障がいを抱える方を受け入れる機会の創出につながります。これは、ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン(DEI)を基本とする持続可能な取り組みの一環です。 4. 当グループ札幌事務所の開設と今後の展望 本年6月、当グループは札幌市の中心部、交通アクセスの便利な大通駅の近隣に札幌事務所を開設いたしました。フォレストのオフィス内にある当グループの事務所の存在により、フォレストのメンバーが一般就労を果たした後も、勤務環境の大幅な変更を避けることが可能になりました。この環境は、職場の移行期間においても彼らのキャリア成長をサポートする重要な役割を果たしています。 一般就労を実現した人々が、新しい職場での適応に苦労し、また、同僚からの理解を得られずに、結果的に再び就労継続支援施設に戻ってしまうケースも稀ではありません。当グループとフォレストの連携によるこの取り組みは、一般就労後のスムーズな適応と継続を促進し、フォレストの管理者が細心の注意を払い支援を提供することによって、一般就労の定着を図る意義深いものです。 私たちは、この革新的なアプローチが、当グループにとどまらず、他の企業や組織にも影響を及ぼし、広範囲にわたる社会的変革の一翼を担うことができることを望んでいます。この取り組みを通じて、より多くの人々が、それぞれの能力を存分に発揮し、ダイバーシティを重んじる文化の中で活躍できる未来につながっていくことを目指しています。 RSMインターナショナル、そしてRSM汐留パートナーズはダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン(DEI)を大切に、更に推進していきたいと考えております。世界には様々な障がいを抱えた方々がおりますが、まだまだ多くの方は雇用機会、スキルを獲得する機会が他の労働者と比べて非常に少ない状況です。当グループはフォレストとの取り組みをサスティナブルに世の中に広げていくことが重要だと考えております。そしてそのような障がいを抱えた方でも個性を大切に仕事をしていけるようなダイバーシティ経営を今後も推進していく所存です。 5. 対談動画 当グループCEOの前川とフォレスト代表理事である小野塚氏の対談動画をぜひご覧ください。この動画では、今回の業務提携に至った経緯、その背景にある思考、そして両者に共通する北海道への深い愛着などについて幅広くお話しさせていただいております。 同じ北海道で育った両者の視点から、地域特有の課題や文化的背景に触れながら、業務提携の意義や今後の展望について深く掘り下げています。当グループとフォレストのビジョンを共有し、両者がどのようにして地域社会に対して積極的な影響を与えていきたいかについてご紹介させて頂ければと思います。そしてそのような支援の輪が広がっていくことを願っています。 【SPECIAL TALK】 RSM汐留パートナーズ CEO 前川 研吾 × NPO法人Forest 代表理事小野塚 舞 6. 本リリースに関するお問い合わせ 本リリースに関するお問い合わせは以下までお願いいたします。 【RSM汐留パートナーズ】MAIL:inquiry-jp
- [RSM汐留パートナーズ行政書士法人と行政書士法人中井イミグレーションサービスの合併のお知らせ](https://shiodome.co.jp/news/30308/) - RSM汐留パートナーズ行政書士法人は、このたび行政書士法人中井イミグレーションサービス(東京都港区芝公園2-3-1芝加賀ビル6階 代表者:景井 俊丞)と合併契約を締結し、2025年7月1日に合併いたしました。また、本合併に伴い、景井俊丞がRSM汐留パートナーズ行政書士法人の代表パートナーに就任いたします。 1. 合併の目的 RSM汐留パートナーズ行政書士法人と行政書士法人中井イミグレーションサービスはこれまで高品質なイミグレーションサービスの提供を通じて、外国人雇用のソリューションを求めるクライアントと国際社会に対し、外国人材の確保とグローバルモビリティーの推進に貢献してまいりました。今後一層充実したイミグレーションサービスを提供できる体制を強化し、クライアントの成長・発展と外国人と共生する未来の実現を目的とし、合併することといたしました。 2. 合併の要旨 (1)合併の日程 合併期日(効力発生日):2025年7月1日 (2)合併後の法人名称及び所在地等 法人名:RSM汐留パートナーズ行政書士法人所在地:東京都港区東新橋一丁目5番2号 汐留シティセンター33階URL: https://shiodome.co.jp/spg/ 3. 両行政書士法人の概要 (1)RSM汐留パートナーズ行政書士法人 所在地 :東京都港区東新橋一丁目5番2号 汐留シティセンター33階代表者名:前川 研吾設立年月:2014年6月法人概要:2014年6月に設立以来、外資系企業の日本進出を支援し、在留資格の取得や各種許認可手続きなど、イミグレーション関連業務を幅広くサポート。2022年11月には世界120ヶ国以上に展開するグローバルネットワークである国際会計ネットワークであるRSMに加盟し、日本におけるメンバーファームとして、グローバル基準のイミグレーションサービスを提供。 (2)行政書士法人中井イミグレーションサービス 所在地 :東京都港区芝公園2-3-1芝加賀ビル6階代表者名:景井 俊丞設立年月:1992年3月法人概要:1992年の創業以来、33年にわたり日本の入国管理およびビザ手続きの専門家として、年間3,000件以上の申請取次を行う。上場企業や外資系企業をはじめとする多数のクライアントに対しイミグレーション業務の支援を提供。2025年7月、RSM汐留パートナーズ行政書士法人と合併。 4. 代表パートナー略歴 景井 俊丞 Shunsuke Kagei 2007年2月、行政書士・司法書士・土地家屋調査士の合同事務所に入所。建設業、宅建業等の許認可に携わるとともに申請取次行政書士として外国人の在留資格に係る申請を年間300件以上行う。独立を経て2019年1月にBIG4の行政書士法人にシニアとして入所。外国人の在留資格に関する品質管理や取次、社内教育を行うとともに、許認可を担当。在留資格においてはオリンピックやラグビーワールドカップ関連を担当。2024年4月に中井イミグレーションサービスの代表社員に就任。2025年7月、RSM汐留パートナーズ行政書士法人との合併に伴い同法人の代表パートナーに就任。行政書士。 5.合併後の組織体制 今回の合併により、行政書士法人中井イミグレーションサービスが培ってきた経験・専門性と国内外での確かな実績に、RSM汐留パートナーズ行政書士法人の国際ネットワークと革新的ソリューションが融合し、より付加価値の高いサービスをご提供いたします。また、複雑化・多様化するイミグレーション業務にも迅速かつ的確に対応し、国内外のお客様へ質の高いサポートをお届けいたします。 デジタル化の進展が著しい現代において、私たちはテクノロジーの力を最大限に活かし、手続きの迅速化と効率化をさらに推進してまいります。また、ワンストップでのサービス提供体制を一層強化し、お客様の利便性向上を図っていきます。多国籍チームとして培った豊富な経験を基に、常にコンプライアンスを重視しながら、最新の情報管理体制を整備し、安心してご利用いただけるサービス環境をお届けします。 6. 本リリースに関するお問い合わせ 本リリースに関するお問い合わせは以下までお願いいたします。 【RSM汐留パートナーズ】MAIL:inquiry-jp at rsmjapan.com (atは@に置き換えてください)
- [RSM汐留パートナーズ株式会社、「Kan-Daiリカレント+(プラス)」に参画のお知らせ](https://shiodome.co.jp/news/42287/) - RSM汐留パートナーズ株式会社は、このたび関西大学(所在地:大阪府吹田市)と株式会社ワークアカデミー(本社:大阪府大阪市)が展開するリカレントプログラム「Kan-Daiリカレント+(プラス)」の『共創・オープンイノベーションプログラム』において、SOMPO ひまわり生命保険株式会社、株式会社りそな銀行とともに共創パートナーとして参画したことをお知らせいたします。 「Kan-Daiリカレント+(プラス)」とは 「Kan-Daiリカレント+(プラス)」は、関西大学が掲げる理念「学の実化(がくのじつげ)」を具体化したリカレントプログラムです。関西大学は株式会社ワークアカデミーと連携し、当社を含む企業との協働を通じて、より実践的で社会に役立つ学びを展開しています。大学と社会との結びつきを一層強めながら、時代の変化に応じた新しい学びのスタイルを提案しています。 「Kan-Daiリカレント+(プラス)」:https://www.kansai-u.ac.jp/recurrent-plus/index.html プログラムの背景 当社は「Kan-Daiリカレント+(プラス)」を通じ、本プログラムを通じて関わる卒業生をはじめとする受講生の金融リテラシーの向上や新たなキャリア形成を支援してまいります。特に『共創・オープンイノベーションプログラム』では、当社を含む共創パートナー企業と受講生が直接交流し、知識や経験を共有することで、新たなキャリアの可能性を切り拓くことを目的としています。 当社の役割 RSM汐留パートナーズ株式会社は、世界120ヶ国以上に展開するグローバルネットワークである国際会計ネットワークRSMの知見を活かし、「未経験から3ヵ月で経理人材を育成するプログラム」を提供いたします。中小企業の経理・会計人材不足の解消に貢献すべく、当社が培ってきた実践的な会計・税務の知見を結集し、会計・税務の基礎から実践スキルまでを短時間で習得。即戦力として活躍できる経理・会計人材の養成を目指します。https://reskilling.noaplus.jp/lp-rsm-accounting/ 今後の展望 当社は「Kan-Daiリカレント+(プラス)」の共創パートナーの一社として、関西大学や株式会社ワークアカデミーと連携し、今後も幅広い業界・企業との協力関係を築いてまいります。学びと交流の場を創出することで、受講生一人ひとりが自身の可能性を最大限に引き出し、新たなキャリアを切り拓けるよう積極的に支援していきます。さらに、「Kan-Daiリカレント+」を社会人のキャリア形成を支えるプラットフォームとして発展させ、地域社会全体の活性化に貢献していく所存です。 本リリースに関するお問い合わせ 本リリースに関するお問い合わせは以下までお願いいたします。 【RSM汐留パートナーズ株式会社】MAIL:inquiry-jp at rsmjapan.com (atは@に置き換えてください)
- [防犯・安全セキュリティサービスに関する取材記事が朝日新聞に掲載のお知らせ](https://shiodome.co.jp/news/56693/) - このたび、当社の新規サービスである「防犯・安全セキュリティサービス」に関する取材記事が、2026年3月23日付の朝日新聞に掲載されました。 本記事では、当社の防犯・安全セキュリティアドバイザー小野田准が、防犯・安全セキュリティをテーマに、刑事時代に培った経験や、防犯コンサルタントへ転身した背景について述べています。あわせて、「事件自体を発生させない仕組み」を構築することの重要性についてもお話ししています。 インタビュー記事全文は以下リンクよりご覧いただけます。 https://shiodome.co.jp/asahi202603.pdf 出所:朝日新聞デジタル、2026年3月24日掲載、承諾番号「26-0750」朝日新聞社に無断で転載することを禁じる ニュース掲載ページ:https://www.asahi.com/articles/ASV3Q3SQCV3QULOB01HM.html?ref=tw_asahicom なお、本サービスの詳細(提供内容等)については、過去にご案内しております内容もあわせてご参照ください。 https://shiodome.co.jp/news/56002/ 本件に関するお問い合わせは以下までお願いいたします。 【RSM汐留パートナーズ】MAIL:inquiry-jp at rsmjapan.com (atは@に置き換えてください)
- [RSM汐留パートナーズ(RSM Japan)、RSM Maltaとの戦略的連携を強化](https://shiodome.co.jp/news/56679/) - RSM汐留パートナーズ(RSM Japan)のCEOである前川研吾がこのたびマルタを訪問し、RSM Maltaとの様々な交流を通じて戦略的な連携を一層強化しました。今回の訪問を通じて、RSM JapanとRSM Maltaは、RSMネットワークにおける高品質なアドバイザリーサービス、国際的な連携およびグローバルなビジネス開発に向けた共通の方向性を改めて確認しました。 今回の訪問では、RSM MaltaのマネージングパートナーであるKaren Spiteri Bailey氏のもと、日本とマルタ間の成長戦略、サービス品質の向上およびグローバル市場におけるプレゼンス強化に向けた意見交換が行われました。こうした対話を通じて、相互理解と協力関係をさらに深めることができました。 訪問中の重要な機会の一つとして、マルタ商工会議所(The Malta Chamber of Commerce, Enterprise and Industry)における会議が挙げられます。本会議には、同商工会議所のPresident William Spiteri Bailey氏、CEOのDr Marthese Portelli氏をはじめ、TradeMalta、ならびにマルタの英語教育およびTEFL分野の関係者が参加しました。会議では、マルタの充実した英語教育環境を活用したエグゼクティブ向け学習プログラム、専門能力開発、国際的なイマージョン機会に加え、日本とマルタの間における若者の交流やワーキングホリデーの可能性についても意見交換が行われました。 また、RSM Maltaのチームメンバーとも直接交流し、アジア太平洋地域に関する知見を共有するとともに、RSM JapanとRSM Malta間の業務上のシナジーをさらに強化しました。これらの対話を通じて、国際志向のアドバイザリーサービス拠点としてのマルタの重要性、そしてRSMグローバルネットワークにおける連携の可能性を改めて実感しました。 RSM汐留パートナーズ(RSM Japan)は今後も、RSM Maltaをはじめとする各国のメンバーファームとの連携を通じて、グローバルな視点とローカルな専門性を兼ね備えた高付加価値のサービスを提供し、クライアントの国際的な事業展開と成長を力強く支援してまいります。
- [4月ウェビナー
人材不足時代の勝ち残り戦略
人事労務×ESGがつくる
サステナブルな企業の条件
開催のお知らせ](https://shiodome.co.jp/news/56634/) - タイトル 「人材不足時代の勝ち残り戦略:人事労務×ESGがつくるサステナブルな企業の条件」 第1部(60分)「最新人事労務リスクと人材が定着する会社のつくり方」 人事労務トラブル、コンプライアンス違反を未然に防ぐ仕組みづくり 人材不足時代における人材採用・定着・育成の実践 第2部(30分)「人事労務とESG・サステナビリティとの統合」 人的資本・人権に関する国内外の最新動向 ESG・サステナビリティとの関連性、および備えるべき実務ポイント 概要 急速に変化する労働環境や人権・人的資源に関する社会的要請は、中堅・中小企業にとっても避けて通れない経営課題になっています。長時間労働、ハラスメント、多様性のある人材の受け入れ(女性・中高年齢者・外国人・障害者等)、人権、従業員の採用・育成・定着など、会社が直面するテーマは年々複雑化しています。 本ウェビナーでは、昨今の最新動向を踏まえながら、中堅・中小企業が押さえるべきポイントを「人事労務」「人権」「人的資源」「ESG・サステナビリティ」の視点から整理し、実務に活かせる対応策をわかりやすく解説します。 経営者・管理職・人事労務・購買担当者の方にとって、リスクマネジメントと機会創出の観点から、ステークホルダー(従業員や取引先)が中長期的に、仕事しやすく、かつ成長を実感できる環境や体制を整えるためのヒントが満載の内容です。 ウェビナー実施要領 日時 2026年4月22日(水) 13:00~14:30(90分) 参加方法 Microsoft Teamsを使用したウェビナー形式 (参加申込をいただいた後で参加方法を個別にお送りします) プログラム RSM International/RSM汐留パートナーズのご紹介 第1部(60分)「最新人事労務リスクと人材が定着する会社のつくり方」 人事労務トラブル、コンプライアンス違反を未然に防ぐ仕組みづくり 人材不足時代における人材採用・定着・育成の実践 第2部(30分)「人事労務とESG・サステナビリティとの統合」 人的資本・人権に関する国内外の最新動向 ESG・サステナビリティとの関連性、および備えるべき実務ポイント 質疑応答・情報交換 参加者の個人ワークも用意しており、参加型プログラムとなっています。 スピーカー (第1部) 社会保険労務士法人 パートナー 残間 一文 シニアマネージャー 丹波 栄蔵 (第2部) ESG・サステナビリティディレクター 福澤 豊 主催 RSM汐留パートナーズ株式会社 想定される参加者 <規模> 中堅・中小企業 <部署/役職> 経営者、経営幹部、総務、人事労務、ESG・サステナビリティ推進部署の管理職やご担当者様 <以下のような状況下にある企業様> 長時間労働、ハラスメント、多様性のある人材の受け入れ(女性・中高年世代・外国人・障害者等)、人材の採用・育成・定着など、労務・人権・人的資源に関する経営課題をお持ちの企業 大企業・グローバル企業から、ESG、人権、人的資源に関する取り組みに関するアンケートや要請を受けて、対応に苦慮されている企業 ESG・サステナビリティ戦略の計画・実行についてこれから取り組まれる、または取り組んでいるがお悩みがある企業 参加費 無料 定員
- [RSM汐留パートナーズ税理士法人が「税理士紹介ナビ」に掲載されました](https://shiodome.co.jp/news/56305/) - アドバイザーナビ株式会社が展開する「税理士紹介ナビ」に、RSM汐留パートナーズ税理士法人が掲載されましたのでお知らせいたします。 今回の掲載では、東京でおすすめの税理士法人の一つとして、弊社の業務内容を中心にご紹介いただいております。東京は税理士法人・会計事務所の数が多く、企業の皆さまにとって選択肢が豊富である一方、自社に適した専門家を見極めることの重要性も高い地域です。 税理士を選ぶ際には、専門性や実績に加え、相談のしやすさ、対応領域、事業フェーズや課題に応じた支援力など、さまざまな観点から比較検討されるのが一般的です。弊社としても、今後より一層、クライアントの皆さまそれぞれの状況に応じた丁寧で高品質なサービス提供に努めてまいります。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。 掲載記事:東京でおすすめの税理士を探すには?失敗しない選び方と、誰も教えてくれない「落とし穴」
- [RSM Internationalから2025年業績報告のお知らせ](https://shiodome.co.jp/news/56194/) - RSM本部より全世界に向けて2025年度の業績に関するプレスリリースが発表されました。以下はその内容に基づく日本語要旨です。RSM汐留パートナーズは、RSMの日本におけるメンバーファームとして、RSM JAPANの一員として、グローバルの成長と提供価値の拡大に貢献してまいります。今後ともご支援賜りますようお願い申し上げます。 RSM、2025年度のグローバル収益が4%成長 RSMは、中堅企業(ミドルマーケット)向けに保証業務(Assurance)、税務(Tax)、コンサルティング(Consulting)サービスを提供するグローバルネットワークとして、2025年度の世界収益が77億米ドルに達し、前年から4%の成長を達成しました。不確実性の高い経済環境が続く中でも、各国のメンバーファームが専門性の高いサービスを提供し、クライアントの多様なニーズに応えてきたことが、この成長につながっています。 地域別の成長 2025年度は、RSMのグローバルネットワーク体制をこれまでの6地域から3地域(南北アメリカ、欧州・中東・アフリカ(EMEA)、アジアパシフィック)に再編し、地域間の連携と意思決定の迅速化を図りました。 各地域の業績は以下の通りです。 EMEA(欧州・中東・アフリカ):23億米ドル(前年比12.6%増) アジアパシフィック:11億米ドル(前年比3.0%増) 南北アメリカ:43億米ドル(前年比0.5%増) サービスライン別の業績 主要サービスライン別の収益は以下の通りで、各サービス分野において着実な成長を示しました。 コンサルティングサービス:29億米ドル(前年比7.0%増) 税務サービス:22億米ドル(前年比5.7%増) アシュランス(保証)サービス:26億米ドル(前年比0.2%増) 人員数の拡大とグローバル連携の強化 RSMのグローバルの役職員数は56,000人となり、前年から6.7%増加しました。世界各地でプロフェッショナル人材の採用・育成を進めることで、クライアントに対するサービス提供体制の強化を図っています。また、2026年1月には米国および英国のメンバーファームが中心となり、カナダ、アイルランド、インド、エルサルバドルを含むトランスアトランティック・パートナーシップを構築しました。これにより、国境を越えたクライアント支援や人材育成の強化が期待されています。 RSM International CEOコメント RSM InternationalのCEOであるE.J. Nedder氏は、次のように述べています。 「RSMは今年、現在の環境に適応するだけでなく、将来に向けてより強靭でレジリエントなネットワークの構築を進めてきました。コラボレーション、イノベーション、そしてクライアントサービスに重点を置いてきたことで、絶えず変化するグローバル市場において成長していくための基盤を築いています。国境や文化、そして多様な視点を越えてつながるリーダーシップは、これまでも、そしてこれからも、RSMとクライアント双方の成功にとって不可欠な要素です。 RSMは2026年を見据え、課題を乗り越える力だけでなく、新たな機会を捉える力についても確かな自信を持っています。2025年に築いた基盤により、メンバーファームはクライアントへ持続的な価値を提供し、持続可能な成長とソリューションを推進するための十分な体制を備えています。」 RSM汐留パートナーズは、RSMネットワークの日本におけるメンバーファームとして、今後もグローバルネットワークとの連携を通じ、クライアントに対する高品質な専門サービスの提供に努めてまいります。
- [新規サービス「防犯・安全セキュリティ支援」提供開始のお知らせ](https://shiodome.co.jp/news/56002/) - RSM汐留パートナーズは、このたび新サービス「防犯・安全セキュリティ支援」の提供を開始いたしました。 URL:防犯・安全セキュリティ支援 昨今サイバーセキュリティが高度化する一方で、事業所・店舗・工場などの拠点や、従業員・来訪者の安全を取り巻く“リアル領域”のリスクは依然として企業経営に大きな影響を与えています。防犯・安全は単なる現場対策にとどまらず、経営リスク管理とガバナンスの一部として、体系的に整備・運用していくことが求められています。また本サービスは、拠点の防犯体制に加え、ストーカーや近隣トラブル等、従業員の私生活に起因する不安に関する相談体制の整備も支援対象としています。 本サービスでは、現場の実態に即したリスク評価から、体制設計・規程整備、教育・啓発、改善計画の立案・実行支援、定期レビューまでを一貫して支援します。さらに、必要に応じて従業員の私生活上の不安やトラブルに関する状況整理・助言も含め、企業全体のリスク低減と組織の安心感向上に貢献します。 サービス概要(主な支援内容) 防犯・安全に関する相談対応(個人/組織) 従業員の私生活に起因する不安(ストーカー、近隣トラブル等)に関する状況整理・助言 事務所・店舗・多拠点企業における防犯体制/ガバナンスの整理・整備支援 拠点ごとの防犯・安全リスク評価、改善計画の立案・実行支援 防犯・安全ポリシー/規程類の整備、従業員向け教育・啓発プログラムの提供 定期的なレビューと運用改善(継続的なリスク管理の定着支援) 本サービス提供の背景(福利厚生・人的資本の観点) こうした背景も踏まえ、企業規模の拡大に伴い、従業員が私生活上の不安やトラブルを抱える場面が現実的に増加しています。こうした事案は、当事者の心理的負担にとどまらず、就業継続や職場環境にも影響し得るため、企業として「不安を一人で抱え込ませない」仕組みを整えることが重要です。 そのため本サービスは、従業員向けの相談窓口(福利厚生)として導入いただく運用も想定し、必要に応じて、社内の役割分担・連絡フロー・規程類の整備まで含めて支援します。 なお、当社ではコラム「従業員の不安に、企業はどう向き合うべきか~福利厚生として考える防犯・安全対策~」でご紹介している「福利厚生の一環としての相談窓口」の考え方を踏まえ、既に社内向けにも本取り組みを導入しており、社員が不安を一人で抱え込まないための支援体制整備を進めています。 関連コラム(背景理解・導入検討のヒント) 本サービスの背景や考え方をより深く知りたい方は、以下のコラムもあわせてご参照ください。各コラムでは、「防犯・安全」を現場対策にとどめず、経理リスク管理、ガバナンス、継続運用(レビュー・改善)の設計、福利厚生としての相談体制まで含めたポイントを整理しています。社内制度として導入する際の留意点や、組織規模・拠点数の増加に伴って顕在化しやすい課題についても触れています。 ・従業員の不安に、企業はどう向き合うべきか~福利厚生として考える防犯・安全対策~ ・従業員の安全は、企業のサステナビリティの一部である~防犯・安全対策をESGの視点から考える~ ・事務所・店舗・工場の安全は、誰が守っているのか~防犯対策を“現場任せ”にしないという選択~ ・拠点が増えるほど、安全は管理できなくなる~多拠点企業に求められる防犯ガバナンスの考え方~ ご留意事項 本サービスは、緊急対応や警備業務を提供するものではなく、状況整理・選択肢提示・体制整備等のアドバイザリー支援を中心とします。危険が差し迫る等の緊急時は、警察・緊急窓口等への連絡を優先してください。 本リリースに関するお問い合わせ 本リリースに関するお問い合わせは以下までお願いいたします。 【RSM汐留パートナーズ】 MAIL: inquiry-jp at rsmjapan.com (atは@に置き換えてください)
- [RSM汐留パートナーズとベンチャーサポート税理士法人による業務提携に関するお知らせ](https://shiodome.co.jp/news/55974/) - RSM汐留パートナーズ株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:前川研吾)は、このたび、ベンチャーサポート税理士法人(本社:東京都渋谷区、代表社員:中村真一郎)と、両法人の専門性を相互に活かしてサービスをご提供していくことを目的に、業務提携契約を締結いたしましたのでお知らせいたします。本提携は、特定の業務を一方に集約することを目的とするものではなく、クライアント一社ごとの状況や課題に応じて、より適切で、より広がりのある専門サービスを提供する体制を構築することを目的としています。今後も様々な企業との連携を通じて、クライアントへの質の高いサービスの提供に努めてまいります。 1. 業務提携の背景と目的 企業活動や個人の資産・キャリアの在り方が多様化・国際化するなかで、会計税務・人事労務・法務を取り巻く論点は年々高度化・複雑化しています。こうした環境下において、すべての領域を単独で完結させるのではなく、それぞれが強みとする分野において責任を持ち、必要に応じて専門家同士が連携することが、結果としてクライアントにとって最良の選択肢になると私たちは考えています。 RSM汐留パートナーズは、国際税務、クロスボーダーM&A、海外進出支援などの分野を中心に、一方、ベンチャーサポート税理士法人は、起業家支援(ベンチャー・スタートアップ企業支援)および相続分野において高い専門性と実績を有しています。本提携を通じて、両法人はそれぞれの専門領域を尊重しながら協働し、クライアントに対して、より安心感のある、質の高いサービス提供を目指してまいります。 2.本提携により想定される主な連携領域 本提携に基づき、RSM汐留パートナーズが提供し、ベンチャーサポート税理士法人が顧客に紹介することができる主な業務は、以下のとおりです。 国際税務に関する助言業務 英語または中国語による対応を要する業務 外資系企業・外国人に関する日本進出支援(会社設立、在留資格、各種許認可等) クロスボーダーM&Aに関する業務(税務デューデリジェンス、バリュエーションを含む) 海外進出に関する支援業務(進出スキーム検討、現地専門家との連携等) RSMネットワークを活用した各種国際業務 3. 各グループの概要 (1)ベンチャーサポート税理士法人 所在地 :東京都渋谷区渋谷1-15-21 ポーラ渋谷ビル8階 代表者名:中村 真一郎 設立年月:2003年8月 ベンチャーサポート税理士法人は、全国57拠点・1,600名体制の税理士法人です。税務代行などの基本業務に加え、節税提案、融資支援、事業計画書作成、月次レポート、各種シミュレーション、経営相談まで幅広く提供し、起業家の事業成長を支援しています。 (2)RSM汐留パートナーズ株式会社 所在地 :東京都港区東新橋一丁目5番2号 汐留シティセンター33階 代表者名:前川 研吾 設立年月:2008年4月 RSM汐留パートナーズは、会計税務・人事労務・法務等の専門家が連携し、国内外の企業および個人に対して総合的なプロフェッショナルサービスを提供しています。国際税務、クロスボーダーM&A、海外進出支援などの分野を中心に、世界120か国以上に拠点を有する国際会計ネットワークRSM Internationalのネットワークを活用し、クライアントの多様化・高度化するニーズに対応しています。 4. 本リリースに関するお問い合わせ 本リリースに関するお問い合わせは以下までお願いいたします。 【RSM汐留パートナーズ】MAIL:inquiry-jp at rsmjapan.com (atは@に置き換えてください)
- [コリアンデスク開設のお知らせ](https://shiodome.co.jp/news/55354/) - RSM汐留パートナーズ(以下、当社)はこのたび、「コリアンデスク」を開設いたしました。コリアンデスクは、韓国語・日本語・英語による対応力を活かし、RSM KoreaをはじめRSM International各国のメンバーファームと連携しながら、クライアント企業の韓国進出および韓国企業の日本進出を支援します。 コリアンデスクページURL:https://shiodome.co.jp/korea-desk/ 当社は、公認会計士、税理士、社会保険労務士、行政書士、司法書士など、バックオフィス領域に関わる専門家がグループ内で連携し、企業の経営課題に対してワンストップで支援する体制を整えてきました。 また、英語・中国語を含むバイリンガルスタッフが多数在籍し、言語面、文化面でのハードルが事業推進の障害とならないよう、実務に即した支援を行っています。 当社は、既に「チャイナデスク」および「欧州デスク」を開設しており、このたびのコリアンデスク開設により、3つのデスク体制でクライアントのクロスボーダー支援を一層強化いたします。各デスクが、対象地域の言語・文化・実務に通じたメンバーとRSM Internationalのネットワークを掛け合わせ、国境をまたぐビジネス課題に対して、より機動的かつ実務的な支援を提供してまいります。 3つのデスクの概要 コリアンデスク(新設) 日韓間の案件に特化し、韓国語・日本語・英語での円滑なコミュニケーションを前提に支援します。日韓で判断や実務がズレやすい論点を早期に整理し、関係者間の合意形成まで含めて推進します。 支援例 日本企業の韓国展開における立上げ〜運用のバックオフィスの実務支援 韓国企業の日本進出における実務設計(本社・日本側の役割分担、運用体制の整備) 日韓間取引における契約・請求・税務論点の整理(運用が回る形への落とし込み) チャイナデスク 中華圏(中国本土・香港等)の案件に特化し、中国語・英語・日本語で支援します。中華圏特有のスピード感や商習慣を踏まえつつ、日本側の実務要件とのギャップを埋める形でプロジェクトを推進します。 支援例 中華圏企業の日本進出における実務構築(会計・税務・労務・法務の運用設計) 中国本土・香港等を含むグループの日本側管理(レポーティング、ガバナンス、リスク整理) クロスボーダー取引の実務運用(契約・請求・社内プロセスの整備) チャイナデスクページURL:https://shiodome.co.jp/china-desk/ 欧州デスク 欧州圏(複数国にまたがるケースを含む)の案件に強みを持ち、英語対応を軸に支援します。国ごとに前提が変わりやすい案件でも、論点を整理し、プロジェクトを前に進めるよう柔軟なサービスを提供します。 支援例 欧州複数国を含むグループ案件の実務整理(どの国の前提で、何を統一すべきか) 欧州本社⇄日本子会社間のレポーティング/ガバナンスの設計と運用支援 欧州企業の日本進出における初期整備(バックオフィスの標準化・運用設計) 欧州デスクページURL:https://shiodome.co.jp/europe-desk/ 背景と今後の展望 国境をまたぐビジネスでは、言語面のハードルに加え、会計・税務・労務・法務・ファイナンスなど複数領域が同時に絡むことで、実務判断の難易度が高まります。当社は、各地域デスクの専門性と、RSM Internationalのネットワークを組み合わせ、企業のクロスボーダー案件をワンストップで支援する体制を強化してまいります。
- [RSM World Leadership Conference 2026 参加のお知らせ](https://shiodome.co.jp/news/55165/) - 2026年2月3日~2月5日の3日間、RSM World Leadership Conference 2026がオーストリア・ウィーンで開催されました。RSM汐留パートナーズからは代表の前川が参加してまいりました。 RSM World Leadership Conference 2026では、2025年に積み上げてきた成果を確認するとともに、今後の成長機会を見据え、次の方向性について議論を深めました。セッションでは、RSMが掲げる戦略の重点領域を軸に、デジタル・イノベーションの推進、サービスの品質向上、そしてリスクマネジメントの高度化などのテーマが多角的に扱われました。また、変化の大きい環境下でも組織としてしなやかに前進していくために、強靭で、多様性を尊重する文化(resilient, diverse culture)をどう築いていくかについても、具体的な視点が共有されました。 People(人材)の分野では、リーダーシップ人材の育成にフォーカスしました。RSMのGlobal Leadership Programme修了生が登壇し、現場での学びや実践をもとにしたインスピレーショナルな発表が行われ、参加者にとって多くの示唆と刺激のある時間となりました。 さらに、世界的に著名な研究者であり、同プログラムのチューターでもある Allyson Stewart-Allen(BSc., MBA)氏によるセッションが実施されました。カルチュラル・アウェアネス(文化理解)をテーマに、国や地域、価値観の違いを正しく理解し活かすことが、私たちの働き方や成長にどう影響するのか、そしてそれが結果としてクライアントへの価値提供にどうつながっていくのかについて、実例も交えながら示唆に富む内容が語られました。 今回の会議で得た知識や経験を生かし、クライアントの皆様にはより一層高品質なサービス、有益な情報を提供し、クライアントの皆様の持続的な成長を支援してまいります。今後ともよろしくお願いいたします。
- [「月刊実務経営ニュース」2026年2月号にインタビュー記事が掲載されました](https://shiodome.co.jp/news/55164/) - このたび、会計業界向け専門誌「月刊実務経営ニュース」2026年2月号に、弊社のインタビュー記事が掲載されました。 インタビューには、RSM汐留パートナーズ株式会社 取締役CRO/アドバイザリー事業部長の山口 壮太および、RSM汐留パートナーズ税理士法人 パートナーの新地 皓貴(公認会計士・税理士)が参加しています。 掲載記事「AIクラウドサービス『バクラク』を軸に先進のBPOを展開 RSM汐留パートナーズが描く会計・経理の未来像」では、株式会社LayerXのAIクラウドサービス「バクラク」を活用し、当グループが注力する経理BPOの考え方と具体的な進め方をご紹介しています。 単なる代行にとどまらず、業務の可視化・標準化を通じてムダや負荷を減らす“設計型”のBPOを提案していく姿勢や、バクラク利用の実務面での効果にも言及しています。さらに、ナレッジの蓄積とAI活用による品質向上、ダッシュボードによる数値の可視化を通じた“未来型の会計・経理”の展望についても取り上げています。 全てのインタビュー記事は以下リンクよりご覧いただけます。 インタビュー記事(全ページ) 実務経営ニュース掲載ページ: https://www.jkeiei.co.jp/m/news/202602-rsm/ 本件に関するお問い合わせは以下までお願いいたします。 【RSM汐留パートナーズ】 MAIL: inquiry-jp at rsmjapan.com(atは@に置き換えてください)
- [士業専門誌「FIVE STAR MAGAZINE」1月発行(第90号)に代表・前川のインタビューが掲載されました](https://shiodome.co.jp/news/47450/) - このたび、士業事務所向け専門誌「FIVE STAR MAGAZINE」1月発行(第90号)に、弊社代表・前川のインタビューが掲載されました。特集テーマ「変化の時代“前夜”に勝ち抜き戦略を考える」の中で、国際ネットワークの加盟をはじめ、AI・テクノロジーの取り組み、人材採用、ESG等の新領域におけるサービス開発についてお話ししています。 詳細は以下よりぜひご覧ください。
- [【RSM清和監査法人 新着情報】グロース市場の上場維持基準見直しによる影響](https://shiodome.co.jp/news/54136/) - RSM清和監査法人の新着情報です。詳細は以下リンクよりご確認ください。グロース市場の上場維持基準見直しによる影響
- [【RSM清和監査法人 新着情報】金融商品に関する会計基準(案)等の概要](https://shiodome.co.jp/news/54133/) - RSM清和監査法人の新着情報です。詳細は以下リンクよりご確認ください。金融商品に関する会計基準(案)等の概要
- [中国蘇州工業園区投資促進局来日座談会開催のご案内](https://shiodome.co.jp/news/16182/) - このたび中国蘇州工業園区投資促進局の職員が日本の企業と親交と交流を深めるために来日することになりました。中国蘇州工業園区は中国江蘇省蘇州市に位置する工業園区で、1994年2月26日に中国の呉儀対外貿易経済合作部部長とシンガポールの元首相リー・クアンユー氏が共同開発で合意してプロジェクトを立ち上げました。蘇州市街地の東側にあり、西側の蘇州高新区と共に国内・国外のトップ企業が多く立地しているところで園区の年度総生産値が6兆4000億円を超えています。中国で6年連続トップに君臨するビジネスパークになります。 弊社は中国蘇州工業園区投資促進局と合同で、2月24日(金)に企業交流座談会を開催することに致しました。10~15人程規模の座談会で、園区と各社の紹介と交流時間を含め、2~3時間程予定しております。中国マーケット・中国進出に興味がございましたら、ぜひご参加いただければ幸いです。 下記、中国蘇州工業園区投資促進局来日座談会のご案内です。 日時:2月24日(金)14時~場所:RSM汐留パートナーズ株式会社住所:〒105-7133 東京都港区東新橋一丁目5番2号汐留シティセンター33階 アクセス:JR線「新橋駅」汐留口(徒歩3分)東京メトロ銀座線「新橋駅」2番出口(徒歩3分)都営浅草線「新橋駅」汐留(シオサイト)方面出口(徒歩2分)都営大江戸線「汐留駅」JR・ゆりかもめ新橋駅方面出口(徒歩1分)新交通ゆりかもめ「新橋駅」(徒歩1分) 費用:無料持ち物:当日は名刺をご持参ください。申込方法:下記のお問合せ先よりお申し込みください。※申込先着順で定員になり次第締め切らせていただきます。 お問合せ先:chinadesk at rsmsp.jp (atは@に置き換えてください) 沢山のご応募がある場合、次回の開催にてご案内いたします。ご不明な点等ございましたらお問い合わせください。
- [RSM汐留パートナーズ社会保険労務士法人と檜山労政コンサルタント事務所の経営統合および新パートナー就任のお知らせ](https://shiodome.co.jp/news/23758/) - RSM汐留パートナーズ社会保険労務士法人は、このたび2025年1月1日に檜山労政コンサルタント事務所(住所: 北海道久遠郡せたな町 所長: 残間一文)と経営統合いたしました。また、本経営統合に伴い、残間一文がRSM汐留パートナーズ社会保険労務士法人のパートナーに就任したことをお知らせいたします。 1. 檜山労政コンサルタント事務所との経営統合 (1)経営統合の目的 RSM汐留パートナーズ社会保険労務士法人と檜山労政コンサルタント事務所は、これまで高品質なプロフェッショナルサービスの提供を通じて、クライアントの成長・発展を支援してまいりました。今後より一層、大規模化するクライアントに対する各種サービスを充実させ、クオリティの高いサービスを提供し続けていくことを目的とし、経営統合することといたしました。 (2)経営統合の要旨 ①経営統合の日程経営統合基本合意 2024年11月25日経営統合日 2025年1月1日 ②経営統合後の法人名称及び所在地等法人名:RSM汐留パートナーズ社会保険労務士法人所在地:東京都港区東新橋一丁目5番2号汐留シティセンター33階URL:https://shiodome.co.jp/sps/ (3)両事務所の概要 ①RSM汐留パートナーズ社会保険労務士法人所在地:東京都港区東新橋一丁目5番2号汐留シティセンター33階代表者名:関口智史設立年月:2020年9月法人沿革: 関口智史が2016年9月にSP社会保険労務士事務所を設立。2020年9月に汐留パートナーズ社会保険労務士法人へと法人化。RSM Internationalのメンバーファームとして、日本において人事労務に関する高品質なビジネスソリューションサービスを提供。 ②檜山労政コンサルタント事務所所在地:北海道久遠郡せたな町北檜山区豊岡96-17代表者名: 残間一文設立年月:2019年10月法人沿革:2019年10月、残間一文が檜山労政コンサルタント事務所を北海道せたな町に設立。主に人事労務・企業法務に関する手続き及びコンサルティングサービスを提供し、北海道南部の数多くのクライアントを支援。2025年1月、RSM汐留パートナーズ社会保険労務士法人と経営統合。 2. 新パートナー略歴 残間 一文 Kazufumi Zamma 事業会社等での人事・労務領域の業務を経て、独立開業。労務管理に関する各種相談をはじめ、労務監査、就業規則の作成、人事労務に関するコンサルティング等の幅広い業務に従事。2025年1月、RSM汐留パートナーズ社会保険労務士法人との経営統合に伴い、RSM汐留パートナーズ社会保険労務士法人のパートナーに就任。特定社会保険労務士・行政書士。 3. 経営統合後の組織体制 RSM汐留パートナーズ社会保険労務士法人は、上場会社、上場子会社、上場準備会社及び外資系企業等に対して高品質のサービスを提供してまいります。また、クロスボーダーでビジネスを展開するクライアントへのサービスを一層拡充してまいります。唯一無二のワンストップサービスを提供する専門家集団として、グローバルの思考を持ち、テクノロジーを活用し、クライアントと共に今後の激変する事業環境に柔軟に対応していく所存です。経営統合後、RSM汐留パートナーズ社会保険労務士法人は、パートナー4名体制となります。 パートナー・社会保険労務士 関口智史パートナー・社会保険労務士 高橋圭佑パートナー・社会保険労務士 残間一文パートナー・社会保険労務士 山岡正和 檜山労政コンサルタント事務所との経営統合および新たなパートナーの就任を通じ、一層クライアントの皆様から信頼されるパートナーであるよう、努力を惜しまず総力を結集していく所存でございます。皆様のご理解、ご高承を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。 4. 本リリースに関するお問い合わせ 本リリースに関するお問い合わせは以下までお願いいたします。 【RSM汐留パートナーズ】MAIL: inquiry-jp at rsmjapan.com (atは@に置き換えてください)
- [RSM汐留パートナーズ税理士法人とWARC LIGHT税理士法人の経営統合のお知らせ](https://shiodome.co.jp/news/15855/) - RSM汐留パートナーズ税理士法人は、このたびWARC LIGHT税理士法人(東京都目黒区目黒一丁目4番16号 目黒Gビル5階 代表:新地皓貴)と経営統合に関する基本合意を締結し、経営統合いたしました。 1.経営統合の目的 RSM汐留パートナーズ税理士法人とWARC LIGHT税理士法人はこれまで高品質なプロフェッショナルサービスの提供を通じて、クライアントの成長・発展を支援してまいりました。今後スタートアップ支援領域に関して一層充実した会計税務サービス提供できる体制を強化し、クオリティの高いワンストップサービスを提供し続けていくことを目的とし、経営統合することといたしました。 2.経営統合の要旨 (1)経営統合の日程経営統合基本合意:2022年12月22日経営統合日 :2023年1月1日 (2)経営統合後の法人名称及び所在地等法人名:RSM汐留パートナーズ税理士法人所在地:東京都港区東新橋一丁目5番2号 汐留シティセンター33階URL:https://shiodome.co.jp/spz/ 3.両事務所の概要 (1)RSM汐留パートナーズ税理士法人所在地 :東京都港区東新橋一丁目5番2号 汐留シティセンター33階代表者名:平野秀輔設立年月:2012年8月法人沿革:2007年前川公認会計士事務所開設。2008年4月前川公認会計士事務所が汐留パートナーズ会計事務所に改称。2012年8月に税理士法人化。2022年11月RSM Internationalに加入し、日本におけるメンバーファームとして会計税務に関するサービスを提供。 (2) WARC LIGHT税理士法人所在地 :東京都目黒区目黒一丁目4番16号 目黒Gビル5階代表者名:新地皓貴設立年月:2020年6月法人沿革:新地皓貴がWARC LIGHT税理士法人を設立。スタートアップでのIPO経験や税理士事務所での税務実務の経験を生かして、スタートアップ・ベンチャー企業に高品質な会計・税務サービスを提供。 4.経営統合後の組織体制 RSM汐留パートナーズ税理士法人は、上場会社、上場子会社、上場準備会社及び外資系企業等に対して高品質のサービスを提供してまいります。岸田内閣の掲げる「成長と分配の好循環」の連鎖を生み出していくべく、スタートアップ・エコシステムを強化することは、投資やイノベーション創出による国全体の成長と国際競争力を促していく上で極めて重要です。また、引き続きクロスボーダーでビジネスを展開するクライアントへのサービスを一層拡充してまいります。唯一無二のワンストップサービスを提供する専門家集団として、グローバルの思考を持ち、テクノロジーを活用し、クライアントと共に今後の激変する事業環境に柔軟に対応していく所存です。 WARC LIGHT税理士法人との経営統合を通じ、一層クライアントの皆様から信頼されるパートナーであるよう、努力を惜しまず総力を結集していく所存でございます。皆様のご理解、ご高承を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。 5.本リリースに関するお問い合わせ 本リリースに関するお問い合わせは以下までお願いいたします。 【RSM汐留パートナーズ】MAIL:inquiry-jp at rsmjapan.com (atは@に置き換えてください)
- [会計人コースへの記事掲載のお知らせ](https://shiodome.co.jp/news/16014/) - このたび、税理士・会計士・簿記検定の受験生向けWebメディアの会計人コースから取材をしていただきました。グループCEOの前川とRSM汐留パートナーズ税理士法人パートナーの長谷川が創業からRSM加盟に至るまでのお話や会計士・税理士受験生や若手に向けてメッセージを発信しております。 全3回のシリーズとなっております。以下リンクよりご覧いただけます。 第1回 https://kaikeijin-course.jp/2023/01/23/55601/第2回 https://kaikeijin-course.jp/2023/01/24/55604/第3回 https://kaikeijin-course.jp/2023/01/25/55608/ 本件に関するお問い合わせは以下までお願いいたします。 【RSM汐留パートナーズ】MAIL:inquiry-jp at rsmjapan.com (atは@に置き換えてください)
- [デジタルノマドに関する取材記事が日本経済新聞に掲載のお知らせ](https://shiodome.co.jp/news/22856/) - このたび、デジタルノマドに関する弊社代表の前川の取材記事が2024年8月26日付日本経済新聞に掲載されました。デジタルノマドの誘致をテーマとした内容に在留期限等についてコメントをしております。 弊社はより一層、日本進出コンサルティング、外国人の在留資格領域における高品質なサービスの提供に努めてまいります。今後ともご支援ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。 詳細は以下日本経済新聞よりご確認ください。https://www.nikkei.com/article/DGKKZO83006970V20C24A8TCJ000/ 本件に関するお問い合わせは以下までお願いいたします。 【RSM汐留パートナーズ】MAIL:inquiry-jp at rsmjapan.com (atは@に置き換えてください)
- [RSM汐留パートナーズ株式会社、RSM汐留パートナーズ税理士法人に新執行役員及び新ディレクター就任のお知らせ](https://shiodome.co.jp/news/22866/) - このたび、RSM汐留パートナーズ株式会社 執行役員に三宅宏史、RSM汐留パートナーズ税理士法人ディレクターに藤井淳平が2024年9月1日付で就任いたしましたことをお知らせいたします。 三宅は2014年に汐留パートナーズグループに入社し、約10年もの間、国内外の多くのクライアントに高品質なサービスを提供するとともに、組織横断的に改革を行うなどRSM汐留パートナーズ株式会社の拡大に寄与してまいりました。藤井は2018年に汐留パートナーズグループに入社し、高度かつ高品質な税務サービスの提供を通じて、クライアントの成長・発展を支援するとともに、RSM汐留パートナーズ税理士法人の拡大に大きく貢献してきました。 当グループは今後もより一層、各種サービスを充実させ、クオリティーの高いサービスを提供し続けてまいります。つきましては、今後ともご支援ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。 三宅 宏史 Hirofumi Miyake 【経歴】 大学卒業後、2014年汐留パートナーズグループに入社。多くの上場会社・上場子会社・IPO準備会社・外資系企業等に対し会計税務コンサルティング業務を提供し、会計税務事業部の拡大に貢献。また、2019年にはマニラ事務所のマネジメント業務にも関与し、マニラ事務所の BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)センターの拡大に貢献。税理士。 藤井 淳平 Jumpei Fujii 【経歴】 都内の複数の会計事務所を経て、2018年汐留パートナーズグループに入社。中小法人に対する会計税務業務の他に、企業オーナーや資産家に対する税務コンサルティング、相続税申告、贈与税申告、所得税申告、未上場企業の株価評価、相続税対策、税務調査立会業務など幅広い業務に従事。長きに渡り大規模クライアントに対しても税務コンサルティングサービスを提供している。税理士。
- [RSM汐留パートナーズ株式会社、新たに2名の執行役員就任のお知らせ](https://shiodome.co.jp/news/33952/) - このたび、RSM汐留パートナーズ株式会社は、2025年9月1日付で三井亮、大城陸の両名が執行役員に就任したことをお知らせいたします。 三井は2017年に汐留パートナーズグループへ入社以来、多くのクライアントに高品質なサービスを提供するとともに、子会社である汐留ビジネスソリューションズ株式会社の代表取締役として経営に携わり沖縄事務所の拡大に尽力するなど、組織横断的な改革を推進し、RSM汐留パートナーズの発展に大きく寄与してまいりました。 大城は2017年に汐留パートナーズグループに入社し、人事労務事業部長として人事労務事業部の拡大を牽引するとともに、子会社である汐留ビジネスソリューションズ株式会社の取締役を兼任し沖縄事務所の発展にも尽力するなど、多方面において組織の成長に大きく貢献してまいりました。 このたびの両名の就任により当社は今後もより一層、各種サービスを充実させ、クオリティの高いサービスを提供し続けてまいります。つきましては、今後ともご支援ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。 三井 亮 Ryo Mitsui 【経歴】 都内の会計事務所を経て、2017年に汐留パートナーズグループに入社。主に上場企業や、IPO準備会社、中小企業の会計・税務業務、経営者・富裕層の税務顧問業務、所得税申告、不動産取引の税務調査立会いに従事。経営者が直面する重要な問題を理解し、総合的な解決策を提供する。また、心理カウンセラー、経営心理士の資格を持ち、心と脳に関する知識と経験を駆使し、経営やビジネスの現場で成果をあげられるよう、事業拡大等を支援している。2019年沖縄支店長就任。2020年創立時から汐留ビジネスソリューションズ株式会社代表取締役就任。税理士。 大城 陸 Riku Oshiro 【経歴】 大学卒業後、沖縄県職員を経て、2017年汐留パートナーズグループに入社。上場会社・上場子会社・IPO準備会社・外資系企業等に対し人事労務分野のコンサルティングサービス・アウトソーシングサービスを提供し、人事労務事業部の拡大に貢献。2019年に沖縄事務所の人事労務サービスラインの立ち上げプロジェクトに参画し、沖縄事務所のBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)センターの拡大に貢献。2021年人事労務事業部長就任。2022年BPO事業を行う汐留ビジネスソリューションズ株式会社取締役就任。
- [中堅・中小企業向けESG・サステナビリティウェビナー 「GHG排出削減に関する国内政策の動向と中堅・中小企業への影響について」](https://shiodome.co.jp/news/46685/) - 2050年のカーボンニュートラル達成に向けて、昨今、日本における温室効果ガス(GHG)削減に関する政策の義務化または制度化が進んでいます。大企業におきましてはGHG削減の取り組みはある程度進んでいますが、中堅・中小企業におきましては、「GHG削減という新しい経営課題に対する情報収集が十分でない」「取引先または大企業からGHG排出量の把握・算定、具体的な削減目標やアクションについて要請があってもいったい何をどこから手を付けたらよいのか?わからない」「対応したくてもマンパワー・ノウハウ・資金が不足している」等、お悩みを抱えているかと思います。 今回、中堅・中小企業様向けに向けESG・サステナビリティウェビナー「GHG排出削減に関する国内政策の動向と中堅・中小企業への影響について」を開催することで、日本政府及び大企業におけるGHGへの取り組み状況を理解していただいたうえで、中堅・中小企業がGHG削減に向けて何をどのようにすればよいのか?を考え、行動する一助やきっかけになれば幸いに存じます。 【ウェビナー実施要領】 日時 2025年11月19日(水)13時00分~14時00分 (1時間) 参加方法 Microsoft Teamsを使用したウェビナー形式(参加申込をいただいた後で参加方法を個別にお送りします) プログラム スピーカー自己紹介 RSM International / RSMジャパン/ RSM汐留パートナーズのご紹介 GHG排出削減に関する国内政策の動向と中堅中小企業への影響について 質疑応答・情報交換 参加者の個人ワークも用意しており、参加型プログラムとなっています。 スピーカー RSM汐留パートナーズ株式会社ESG・サステナビリティディレクター 福澤 豊 共催 RSM汐留パートナーズ株式会社株式会社東京海上日動パートナーズTOKIO 想定される参加者 中堅・中小企業 製造業、建設業、卸売業、小売業、運輸業、宿泊飲食業、情報通信業など 経営者、経営企画部、経理財務部、その他ESG・サステナビリティ推進、GHG算定・削減に関わる部署の管理職やご担当者様 – プライム上場企業とのお取引がある企業– 公共入札に参加する企業– 取引先からGHG排出量の把握・算定、具体的な削減目標やアクションについて具体的な要請がある企業– ESG・サステナビリティ戦略、GHG削減戦略の計画・実行についてこれから取り組まれる、または取り組んでいるがお悩みがある企業 参加費 無料 定員 50名(先着順) 参加申込 お申込み期間が終了いたしました 申込締切 2025年11月14日(金) まで 留意事項 個人情報のお取扱いについてご提供いただく個人情報は、RSM汐留パートナーズと東京海上日動パートナーズTOKIOにおいて管理し、以下の目的で利用させていただく場合がありますので、予めご了承ください。 ご提供いただいた個人情報を、今回のセミナーのご意見・ご要望の聞き取り、または今後のサービス、セミナーやイベント開催のご案内、ニュースレターやメールマガジンの配信等の用途に使用することがございます。 各社/団体の個人情報の取扱いにつきましては、会社が掲載するプライバシーポリシーをご確認の上、ご了承いただける場合のみお申込みください。 RSM汐留パートナーズ:個人情報保護方針 | RSM汐留パートナーズ東京海上日動パートナーズTOKIO:個人情報保護方針|東京海上日動パートナーズTOKIO お申込いただいても、共催と同業の法人・個人の方、フリーメールでのお申込みは、お断りさせて頂くことがございます。
- [RSM汐留パートナーズ株式会社の取締役に許婧怡就任及び新役員体制のお知らせ](https://shiodome.co.jp/news/22247/) - RSM汐留パートナーズ株式会社は、このたび2024年7月1日付で取締役に許婧怡(きょ せいい)が就任いたしましたのでお知らせいたします。許は2020年にRSM汐留パートナーズに入社し、中華圏クライアントのインバウンド業務及びチャイナデスクの立上げに携わりました。2021年からは社長室長、2022年からは執行役員に就任し、業務効率の向上等に関して組織横断的に改革を行ってまいりました。2024年からはチャイナデスク室長、キャッシュマネジメント事業部長も兼任し、RSM汐留パートナーズの発展に大きく貢献してきました。今後はキャッシュマネジメント事業部の更なる拡大及び採用・人事体制の強化に貢献していく所存です。 新たに許が取締役に就任し、RSM汐留パートナーズ株式会社は新役員体制を発表いたします。今後の組織運営のさらなる強化を図るため、既存サービスの充実に加え、採用、組織体制の強化、経営戦略の推進を目的として、それぞれの役員がCxOポジションに就任します。新たな体制の下、各役員が専門性を発揮し、当社及び社会の持続的な成長と発展に貢献してまいります。つきましては、今後ともご支援ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。 前川 研吾 代表取締役社長CEO (最高経営責任者) 新日本監査法人(現 EY新日本有限責任監査法人)監査部門にて製造業、小売業、情報サービス産業等の上場会社を中心とし た法定監査に従事。また、同法人公開業務部門にて株式公開準備会社を中心としたクライアントに対する、IPO支援、M&A関連支援、デュ ーデリジェンス等のFAS業務に数多く従事。2008年に汐留パートナーズグループを設立、代表取締役社長に就任。2009年グループCEOに就任し、公認会計士・税理士・弁護士・社会保険労務士等のプロフェッショナル集団を統括。公認会計士(日本/米国)・税理士・行政書士・EMBA。 金森 光昭 取締役COO(最高執行責任者)会計税務事業部長 兼 経営企画室長(汐留コンサルティング株式会社 代表取締役) 事業会社を経て、2011年汐留パートナーズグループ入社。会計税務事業部で中小・中堅企業のクライアントに対するサービスに数多く従事し、また、2012年に設立された沖縄支店の組織的運営に関する業務を担当しアウトソーシングサービスの拡大に貢献。2017年沖縄支店長に就任。2018年執行役員に就任し品質管理室長を務める。業務効率の向上・クオリティーコントロール・ビジネスリスクへの対応等に関して組織横断的に改革を行う。2019年経営企画室長に就任。2020年取締役就任し、2023年には会計税務事業部長に就任。2024年取締役COOに就任。 山口 壮太 取締役CRO(最高リスク管理責任者)アドバイザリー事業部長 兼 リスク管理委員長 株式会社AGSコンサルティングを経て、2016年汐留パートナーズグループに入社。クライアント企業に対して、IPOコンサルティング業務、内部統制コンサルティング、内部監査コンサルティング、株価算定、財務デューデリジェンス、原価計算コンサルティング等幅広いコンサルティングサービスを提供している。上場会社・上場子会社、また、IPO準備会社に対する豊富なコンサルティング経験を有する。2020年取締役に就任し、アドバイザリー事業部長を務める。2024年取締役CROに就任。 小林 暁 取締役CFO(最高財務責任者)管理部長(汐留キャッシュマネジメント株式会社 代表取締役) 事業会社を経て、2012年汐留パートナーズグループに入所。法人設立業務、株主総会関連業務、許認可手続業務、在留資格関連業務、資金調達支援業務、不動産関連業務をはじめ幅広いコーポレート業務に従事。その後法務サービスを提供している部門を統括する。2018年執行役員に就任し法務事業部長を務める。グループ内の弁護士・司法書士・行政書士を密に連携させ、クライアントの法務関連業務をワンストップでサポート。2020年管理部長に就任。2021年取締役就任。2024年取締役CFOに就任。 許 婧怡 取締役CHRO(最高人事責任者)インターナショナル・コンタクト・ディレクターキャッシュマネジメント事業部長 兼 社長室長 KPMG LLP (Columbus, OH)監査部門に入社、日系自動車メーカーを中心とした法定監査に従事。2016年KPMGメンバーファームである有限責任あずさ監査法人アドバイザリー事業部に転籍し、日系企業の中国子会社の内部統制支援業務、国際会計基準導入支援業務に従事。2020年汐留パートナーズグループに入社し、中華圏クライアントのインバウンド業務およびチャイナデスクの立上げに携わる。2021年より社長室長を務める。2022年に執行役員に就任。2024年からはチャイナデスク室長、キャッシュマネジメント事業部長も務める。2024年取締役CHROに就任。
- [【新年ウェビナー】省エネ診断で、防ごう「漏エネ」、実践しよう「脱炭素」](https://shiodome.co.jp/news/47449/) - 近年、気候変動、特に地球温暖化の顕在化・深刻化に伴い、脱炭素経営の必要性が国際的に叫ばれています。日本でも2050年カーボンニュートラル達成に向けて、脱炭素への認識が急速に高まり、取り組みが着々と進んでいます。企業の取り組みにおいて、再エネ契約・証書やカーボンクレジット等を採用することで、短期的に脱炭素を進めることも可能ですが、GHGプロトコルやSBTi等の見直しが見込まれる中、今後も同様の対応が難しくなることも予想されます。 そのような状況で重要となるのは、省エネ・再エネ・エネルギー転換・技術革新など、より本質的かつ中長期的な脱炭素に向けた「実際の排出削減アクション」です。実際、省エネ診断の現場では省エネの前に、設備故障の放置による「漏エネ」状態が散見されます。今回のウェビナーでは、省エネ診断サービス、漏エネ事例、コスト削減事例を具体的にご紹介し、皆様が脱炭素経営の一歩を踏み出すことができるよう、サポートしていきたいと考えております。 ウェビナー実施要領 日時2026年1月21日(水) 13:00~14:00(1時間)参加方法Microsoft Teamsを使用したウェビナー形式 (参加申込をいただいた後で参加方法を個別にお送りします)プログラム省エネ診断で、防ごう「漏エネ」、実践しよう「脱炭素」脱炭素に関する世界と日本の動向省エネ診断の概要と事例漏エネの現実質疑応答スピーカージョーンズ ラング ラサール株式会社 エナジーアンドサステナビリティサービス事業部 事業部長 松本 仁 エナジーアンドサステナビリティサービス事業部 シニアマネージャー 西廣 隼人共催株式会社東京海上日動パートナーズTOKIO ジョーンズ ラング ラサール株式会社 RSM清和監査法人 RSM汐留パートナーズ株式会社想定される参加者製造業(機械、化学、食品、金属加工など)サービス業(ホテル、病院、商業施設など)倉庫・物流施設公共施設・教育機関:学校、大学、自治体庁舎小売・飲食チェーンIT・データセンター農業関連施設:温室、畜産施設などその他省エネ設備導入や運用改善に関心がある法人・事業所経営者、役員、総務部、不動産管理部、経理財務部、広報部、その他ESG・サステナビリティ・省エネに関わる部署の管理職やご担当者様プライム上場企業や外資系企業とのお取引がある。取引先からGHG排出量の把握・算定、具体的な削減目標やアクションについて具体的な要請がある。補助金・助成金の活用について知りたい。参加費無料定員50名(先着順)参加申込お申し込みフォームはこちら申込締切2026年1月16日(金)留意事項1. 個人情報のお取扱いについて ご提供いただく個人情報は、株式会社東京海上日動パートナーズTOKIO、ジョーンズ ラング ラサール株式会社、RSM清和監査法人、RSM汐留パートナーズ株式会社において管理し、以下の目的で利用させていただく場合がありますので、予めご了承ください。 ご提供いただいた個人情報を、今回のセミナーのご意見・ご要望の聞き取り、または今後のサービス、セミナーやイベント開催のご案内、ニュースレターやメールマガジンの配信等の用途に使用することがございます。 各社/団体の個人情報の取扱いにつきましては、会社が掲載するプライバシーポリシーをご確認の上、ご了承いただける場合のみお申込みください。JLL:プライバシーポリシー | JLL 東京海上日動パートナーズTOKIO:個人情報保護方針|東京海上日動パートナーズTOKIO RSM清和監査法人: プライバシーポリシー | RSM Japan Audit RSM汐留パートナーズ:個人情報保護方針 | RSM汐留パートナーズ2. お申込いただいても、共催と同業の法人・個人の方、フリーメールでのお申込み、必要な記入事項の漏れのある方は、お断りさせて頂くことがございます。
- [年末年始休業のお知らせ](https://shiodome.co.jp/news/47407/) - RSM汐留パートナーズ各事務所の本年度の年末年始につきましては、下記の期間休業とさせていただきます。皆様にはご不便とご迷惑をおかけいたしますが、何卒ご容赦くださいますようお願い申し上げます。 RSM汐留パートナーズ株式会社RSM汐留パートナーズ税理士法人RSM汐留パートナーズ社会保険労務士法人RSM汐留パートナーズ行政書士法RSM汐留パートナーズ司法書士法人汐留キャッシュマネジメント株式会社汐留ビジネスソリューションズ株式会社 2025年12月27日(土)~2026年1月4日(日)
- [【RSM清和監査法人 新着情報】「監査品質に関する報告書2025」公表のお知らせ](https://shiodome.co.jp/news/47228/) - RSM清和監査法人の新着情報です。詳細は以下リンクよりご確認ください。「監査品質に関する報告書2025」公表のお知らせ
- [【RSM清和監査法人 新着情報】Seiwa Newsletter 2025年11月号 「Vol.119 オーストラリアに暮らす個⼈の税⾦から⾒えるもの」を掲載しました](https://shiodome.co.jp/news/47226/) - RSM清和監査法人の新着情報です。詳細は以下リンクよりご確認ください。Seiwa Newsletter 2025年11月号「オーストラリアに暮らす個⼈の税⾦から⾒えるもの」
- [【RSM清和監査法人 新着情報】国際財務報告基準(IFRS)の動向 -2025年10月号-](https://shiodome.co.jp/news/47175/) - RSM清和監査法人の新着情報です。詳細は以下リンクよりご確認ください。RSM清和監査法人 新着情報:国際財務報告基準(IFRS)の動向 -2025年10月号-
- [「サステナビリティ情報開示入門 ~事業継続・資金調達・企業価値向上のために今、知っておくべきこと~」](https://shiodome.co.jp/news/47055/) - 近年、サステナビリティへの対応は、大企業だけでなく中堅・中小企業にも求められるようになっています。温室効果ガス(GHG)スコープ3(事業者の活動に関連する取引先・調達先等のGHG排出量の算定)に代表されるように、サプライチェーン全体での情報開示が進む中、取引先大企業・外資系企業からの情報開示要請や、金融機関によるESG評価の導入が加速しており、対応の遅れが事業継続や資金調達に影響を及ぼす可能性があります。 一方で、「ESG・サステナビリティの何から始めればよいのか分からない」「リソースが限られている」「情報開示基準のガイドラインを理解し、実行するのが難しい」といった声も多く聞かれます。本ウェビナーでは、ESG・サステナビリティ情報開示の必要性とその背景をわかりやすく解説し、実際にどのような取り組みが可能かを具体的にご紹介していきます。 ウェビナー実施要領
- [【開催レポート】RSM汐留パートナーズ株式会社、経理人材育成講座「未経験から3ヵ月で経理人材を育成するプログラム」の実施のお知らせ](https://shiodome.co.jp/news/46983/) - RSM汐留パートナーズ株式会社は、関西大学と株式会社ワークアカデミーが展開するリカレントプログラム「Kan-Daiリカレント+」にて2025年8月24日〜10月5日に関西大学梅田キャンパス(KANDAI Me RISE)にて開催された『世界第6位の国際会計ネットワークから学ぶ!未経験から3ヵ月で経理人材を育成するプログラム』において、当社の現役の税理士および実務スタッフが講師として登壇しました。 プログラムの開催概要 開催期間:2025年8月24日〜10月5日会場:関西大学梅田キャンパス(KANDAI Me RISE)講師:RSM汐留パートナーズ株式会社の現役税理士および実務スタッフ受講者層:現役大学生、経理経験者、経理未経験者など プログラム実施レポート 本講座は実践重視の設計を最大の特長とし、受講生はeラーニングで簿記3級相当の基礎を習得したのち、8月24日から対面講義に参加しました。対面講義では、経理のルーティンを超えて「経営に資する会計」の視点を重ね、実務への応用力を高めました。さらに、多くの企業で導入されている会計ソフト(弥生会計)を用いた演習を行い、中小企業の現場で即戦力となるスキルの獲得を支援しました。最終フェーズでは、決算報告までの一連のプロセスを体験するトレーニングを実施し、理論と実務の双方をバランス良く身につけることで、3ヵ月という短期間で経理実務の確かな基盤を形成しました。 参加者の声 受講者からは「最後までやり切れた」「経理職に就くことを目標にできた」「現場業務の実感を得られた」などの声が寄せられ、3ヵ月でのスキル獲得とキャリア意識の醸成に手応えが示されました。 受講生からの高い満足度と開催継続のご要望を受け、第2弾の実施が決定しました。詳細は決定次第ご案内申し上げます。RSM汐留パートナーズは今後も関西大学、株式会社ワークアカデミー、共創パートナー各社と緊密に連携し、「Kan-Daiリカレント+」の価値向上と地域社会の活性化に継続的に寄与してまいります。 本プログラムに関するお問い合わせ 【RSM汐留パートナーズ株式会社】MAIL: inquiry-jp at rsmjapan.com(atは@に置き換えてください)
- [Best Professional Firm(BPF)2024受賞のお知らせ](https://shiodome.co.jp/news/23273/) - このたび、RSM汐留パートナーズ税理士法人は株式会社MS-Japanが主催するBest Professional Firm2024を受賞いたしました。2024年9月26日に授賞式およびトークセッションが開催され、弊社からは税理士法人パートナーである長谷川が出席してまいりました。 この賞は、日本国内に登録されている約4,000の会計事務所、税理士事務所、会計系コンサルティングファームを対象に、各事務所の「ビジョン」「成長性」「業界への貢献度」「人材の質」などの観点から審査を行い、特に高い価値を提供し続けているファームに対して表彰されるものです。 授賞式当日は、多くの受賞ファームの代表者・パートナーが参加し、活気に満ちた雰囲気の中で開催されました。トークセッションや懇親会では、業界のトレンドや課題について議論を交わし、実りある意見交換が行われました。 弊社は今後もより一層ハイクオリティなサービス、有益な情報を提供し、クライアントの皆様および地域・社会に貢献してまいります。今後ともよろしくお願いいたします。
- [書籍『改訂版 外国人・外資系企業の日本進出支援実務Q&A』出版のお知らせ](https://shiodome.co.jp/news/32858/) - このたび、RSM汐留パートナーズ株式会社執筆の書籍『改訂版外国人・外資系企業の日本進出支援実務Q&A』を日本法令より出版いたしました。 近年、日本への進出をする外国人や外資系企業が増加傾向にあります。こうした外資系企業や外国人が日本で法人や支店を設立し、円滑に事業を開始するためにはさまざまな課題をクリアする必要があります。 本書では、進出形態ごとの特徴やメリット・デメリットをはじめ、日本法人や支店の設立登記、外国人および外資系企業による在留資格の申請手続き、日本での拠点設立後に必要となる会計税務・人事労務・許認可の対応まで、日本進出に伴う幅広いテーマについて、Q&A形式でわかりやすく解説しています。 本書が、日本での事業展開を目指す外国人・外資系企業の皆様、そしてその支援に携わる皆様にとって、日々の業務の一助となることを祈っております。 なお、本書の執筆者は以下の8名となります。RSM汐留パートナーズ株式会社代表取締役社長CEO:前川研吾(公認会計士・税理士)RSM汐留パートナーズ司法書士法人パートナー:石川宗徳(司法書士)RSM汐留パートナーズ行政書士法人パートナー:景井俊丞(行政書士)RSM汐留パートナーズ社会保険労務士法人パートナー:関口智史(社会保険労務士)RSM汐留パートナーズ税理士法人パートナー:松橋亮太(税理士)RSM汐留パートナーズ司法書士法人パートナー:河田誠(司法書士)RSM汐留パートナーズ社会保険労務士法人パートナー:高橋圭佑(社会保険労務士)RSM汐留パートナーズ株式会社アソシエイトディレクター:三宅宏史(税理士) 章構成 第1章 日本への進出形態第2章 日本法人の設立・日本支店の設置の共通事項第3章 日本法人設立時における特有の事項第4章 日本支店における特有の事項第5章 駐在員事務所の設置第6章 外国人の在留資格申請第7章 日本拠点設立後の手続き 本書の概要 書籍タイトル:『改訂版 外国人・外資系企業の日本進出支援実務Q&A』執筆者: RSM汐留パートナーズ株式会社(前川研吾・石川宗徳・景井俊丞・関口智史・松橋亮太・河田誠・高橋圭佑・三宅宏史)出版社:日本法令発売日:2025/7/20購入方法: https://amzn.asia/d/dMtRm9v
- [BSテレ東「日経モーニングプラスFT」に弊社代表・前川研吾出演のお知らせ](https://shiodome.co.jp/news/42388/) - このたび、弊社代表の前川研吾が、9月16日放送のBSテレ東「日経モーニングプラスFT」に出演いたしました。番組では、オルツ社の不正会計問題を取り上げ、今後のIPOや日本の新興市場に与える影響についてコメントさせていただきました。 番組内容の詳細は、ぜひ以下のテレ東BIZ公式YouTubeよりご覧ください。https://www.youtube.com/watch?v=WbfdRJ5wZL0
- [RSM Internationalから2024年業績報告のお知らせ](https://shiodome.co.jp/news/24153/) - 本日、RSM本部より全世界に向けて2024年業績報告のプレスリリースが発表されました。以下はその日本語訳です。RSM汐留パートナーズは、RSMの日本におけるメンバーファームとして、RSM JAPANの一員として、RSMの成長・発展に貢献してまいります。今後ともご支援賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。 RSM、ミドルマーケットの需要に牽引され世界売上高100億ドルに到達 RSMメンバーファームの80%が現地通貨ベースでの売上成長を達成 RSM USとRSM UK、画期的な合併を発表し、グローバルな顧客サービスを強化 中米での戦略的統合により新たな成長フェーズへ 欧州における7件の買収によりRSMの拠点拡大、地域収益8%増 ミドルマーケット向けの保証業務、税務、コンサルティングサービスを提供するRSMは、2024年12月までの12カ月間で世界売上高100億米ドルを達成したことを発表しました。この結果は前年比6%の成長を示し、RSMは世界の会計ネットワークの中で売上高100億米ドルを超えた6番目の企業となりました。 監査サービスの世界売上高は15%増の32億米ドルに成長し、税務サービスの売上高は11%増の29億米ドルとなりました。これは、2年連続の2桁成長です。コンサルティングサービスの売上高は39億米ドルで安定推移し、3年連続でRSMの最も収益性の高い事業部門になりました。 ヨーロッパでは7件の買収と同地域でのサービス需要拡大が相まって、全サービス分野で8%の成長を記録しています。RSM最大の収益地域である北米は5%成長し、66億米ドルに到達しました。 ラテンアメリカでは、6つのメンバーファームの業務統合を通じた地域協力により、13%成長である1億9010万米ドルを達成しました。アフリカでは、全事業分野で成長し、17%の売上増を記録、アジア太平洋地域は堅調な成長軌道を維持し、7%の成長を達成して売上は11億米ドルに到達しました。 中東・北アフリカ(MENA)では、38%の急成長を遂げ、2021年比で売上高が2倍となりました。これは、人材・テクノロジー・デジタルトランスフォーメーションへの戦略的投資によるものです。 RSMインターナショナルのCEOである E.J. Nedder 氏は、次のようにコメントしています。 「RSMメンバーファームの成長は、ミドルマーケットの中核を担う企業への貢献価値を証明するとともに、RSMが掲げる2030年グローバル戦略のビジョンを体現するものです。RSMのシームレスで高度な専門知識を活かした国際的なソリューションにより、クライアントは複雑な課題を克服し、新たな機会を自信を持って創出することが可能となります。本年の成果は、厳しい市場環境においてもクライアントの強さ、そしてRSMの揺るぎない価値を示すものです。2025年に向けて、私たちはこの確固たる基盤の上にさらなる進化を遂げ、RSMの提供価値を高めるとともに、クライアントと従業員が変革をリードできるよう全力で支援してまいります。」 2024年、RSM USとRSM UKは、グローバルなクライアントサービスのさらなる強化と長期的な成長を見据え、画期的な合併に向けた取り組みを発表しました。 この合併により、RSM UKおよびRSM USのクライアントは、大西洋を跨いだ財務的に統合されたパートナー所有の組織からサービスを受けることが可能となります。私たちは、成長への継続的な投資を行うとともに、RSMの2030年グローバル戦略の推進を引き続き支援してまいります。 また、E.J. Nedder氏は、この発表に際し、次のようにコメントしています。 「この戦略的決断は、RSMの共有ビジョン・目標・イニシアチブを通じた緊密な協力の促進において、重要なステップとなります。RSMでは、イノベーションと成功の追求を組織の基盤とし、それをクライアントへの価値提供に活かすことに注力しています。」 「この戦略的な取り組みは、RSMが共通の目的、取り組み、目標を通じてさらなる連携を深めていく上で、重要な一歩であると考えています。RSMにおいては、革新と成功を共に築くことが、根本的かつ不可欠な価値観です。私たちはこれらの価値を最大限に活かし、国境を越えたクライアントサービスのさらなる強化に取り組んでまいります。」 本年、RSMメンバーファームはヨーロッパ全域での成長を加速させるため、7件の戦略的買収を行いました。 オーストリアでは、Moore Interaudit Salzburgとの合併により、RSMは中堅企業および国際的なオーナー経営グループにとって主要な監査法人としての地位を確立しました。デンマークでは、グレーターコペンハーゲンでの事業基盤を強化するため、J H Revisionを買収し、統合後の年間売上は2,800万米ドルに達しました。 フランスでは、Cifalex、Sadex、CAP 21の買収を通じて、Rhône-AlpesおよびGrand Est地域における事業展開をさらに拡大しました。スペインでは、専門性の高い法律事務所Lébeqを買収し、国内でのプレゼンスを一層強化しました。 ヨーロッパ地域での事業拡大についてE.J. Nedder氏は、次のように述べています。 「RSMメンバーファームによるヨーロッパでの最近の買収は、RSMの事業基盤を拡大するだけでなく、より重要な業界における専門性とサービス提供能力をさらに強化するものです。 2024年における地域・グローバル両面での成長を踏まえ、RSMはミドルマーケット向けプロフェッショナルサービスのグローバルリーダーとしての地位をより一層確固たるものにしてまいります。」
- [中国蘇州工業園区投資促進局来日座談会を開催しました](https://shiodome.co.jp/news/16192/) - この度は、主催する中国蘇州工業園区座談会が、無事に開催されたことをご報告いたします。 座談会では、多数の企業様からご参加いただき、多くの方から貴重なご意見をいただきました。また、有意義な議論と意見交換を行い新たな視点が得られるなど、非常に有意義な時間を過ごすことができました。 中国進出する際の興味を持っていたテーマについて、参加者の方から多くの熱心な発言があり、新たな知見を得ることができました。 また、参加者の皆様との交流もとても有意義で、貴重な人脈を築くこともできたと感じております。当社は、蘇州工業園区における企業支援やビジネス展開の支援を積極的に行っております。今回の座談会を通じて、企業様との信頼関係を一層深めることができました。今後も、当社は引き続き、クライアントの皆様のビジネスの成功に貢献するため、地域の情報収集や各種サービスの充実など、より一層の努力を続けてまいります。 最後になりますが、座談会にご参加いただきました企業様に、心より感謝申し上げます。今後も、何かお力になれることがございましたら、いつでもご遠慮なくお声がけください。
- [RSM APAC2024 参加のお知らせ](https://shiodome.co.jp/news/21983/) - 2024年5月27日~5月29日の3日間、RSMのアジアパシフィック会議がタイのバンコクで開催されました。RSM汐留パートナーズからは代表の前川とインターナショナルコンタクトディレクターの許、シニアマネージャーの三宅の3名で参加してまいりました。 今回の国際会議では、「Be Compelling. Be Digital. Be Global」のテーマのもと、監査、税務、コンサルティングやグローバルでの認知度向上に関連する以下の分野に焦点を当て様々なプレゼンテーションやワークショップが行われました。 生成AI ESG&サステナビリティ サイバーセキュリティ ブランディング マーケティング コロナによるパンデミックから6年が経過し、特にテクノロジーが主要なトピックとなっておりました。デジタルトランスフォーメーション(DX)は当然のことながら、サイバーセキュリティや生成AIといった分野が急速に発展しています。これらの技術をどのように活用し、私たちの業界においてどのようにビジネスに繋げていくかが重要な課題ということを再認識することができました。 さらに、ESG(環境・社会・ガバナンス)や温室効果ガスに関連する領域も急速に拡大しており、日本においても将来的には大規模なマーケットになることが予想されることなど、プロフェッショナルファームとしての今後の取り組みの参考になりました。 また、18年もの間RSMのグローバルCEOを務めたJean Stephens氏から、新CEOに就任するErnest John Nedder氏への交代のスピーチも行われました。 Jean Stephens氏は18年の間にRSMのグローバル売上高を29億ドルから94億ドル(約1.4兆円)に、拠点数630から820に、従業員数を24,000人から64,000人に拡大するという素晴らしい功績を残されました。2022年11月にRSM汐留パートナーズがRSMのメンバーファームとして迎え入れられ、私たちは約1年半という短期間ではありましたが、彼女と共に仕事ができたことを非常に光栄に感じています。 今回の会議で得た知識や経験を生かし、クライアントの皆様にはより一層ハイクオリティなサービス、有益な情報を提供し、社会に貢献してきたいと思います。今後ともよろしくお願いいたします。
- [RSM World Conference 2024 参加のお知らせ](https://shiodome.co.jp/news/23361/) - 2024年10月15日~10月18日の4日間、RSM World Conference 2024がシンガポールで開催されました。RSM汐留パートナーズからは代表の前川とインターナショナルコンタクトディレクターの許の2名で参加してまいりました。 今回の国際会議では、世界各国のRSMメンバーファームからパートナー等が集い、最新の世界のビジネストレンドについて共有し合い、ネットワークの構築及び交流を深めることができました。 今回は「Be Global」のテーマのもと、RSMが掲げる「2030年グローバル戦略」の実現に向けて様々な議論が交わされました。未来に向けたイニシアチブを推進し、国境を越えたビジネス機会を生み出し、世界中のスキルと専門知識を最大限に活用するという協力体制のもと、私たちは引き続きこのコミットメントを確実に実行していくことを改めて共通認識としました。 具体的には、デジタル化が進む世界におけるテクノロジーの活用、グローバルな人材育成、品質の更なる向上、変化し続けるビジネス環境に適応した先進的な成長戦略の構築、そしてESGにおけるビジネスチャンスを最大限に引き出すことが取り上げられました。これらのテーマに基づき、RSMがどのように持続的な成長を実現し、クライアントに高品質なサービスを提供し続けるかについて活発な議論が行われました。 特にテクノロジー、ESGの分野は日本においても更に大規模なマーケットになることが予想されるので、プロフェッショナルファームとしての今後の取り組みの参考になりました。 今回の会議で得た知識や経験を生かし、クライアントの皆様にはより一層高品質なサービス、有益な情報を提供し、地域社会に貢献してまいります。今後ともよろしくお願いいたします。
- [年末年始休業のお知らせ ](https://shiodome.co.jp/news/23663/) - RSM汐留パートナーズ各事務所の本年度の年末年始につきましては、下記の期間休業とさせていただきます。皆様にはご不便とご迷惑をおかけいたしますが、何卒ご容赦くださいますようお願い申し上げます。 RSM汐留パートナーズ株式会社RSM汐留パートナーズ税理士法人RSM汐留パートナーズ社会保険労務士法人RSM汐留パートナーズ行政書士法人RSM汐留パートナーズ司法書士法人汐留キャッシュマネジメント株式会社汐留ビジネスソリューションズ株式会社 2024年12月28日(土)~2025年1月5日(日)
- [RSM汐留パートナーズ税理士法人と税理士法人東京クロスボーダーズの合併のお知らせ](https://shiodome.co.jp/news/42456/) - RSM汐留パートナーズ税理士法人は、このたび税理士法人東京クロスボーダーズ (東京都新宿区西新宿6-5-1 新宿アイランドタワー43階 代表者:村山 暸永)と合併契約を締結し、2025年10月1日に合併いたしました。 1. 合併の目的 RSM汐留パートナーズ税理士法人と税理士法人東京クロスボーダーズはこれまで多くの上場会社、上場子会社、上場準備会社および外資系企業等に対して高品質なプロフェッショナルサービスの提供を通じ、クライアントの成長・発展を支援してまいりました。今後はクロスボーダー取引に関して一層充実した会計税務サービスを提供できる体制を強化し、クオリティの高いワンストップサービスを提供し続けていくことを目的とし、合併することといたしました。 2. 合併の要旨 (1)合併の日程 合併期日(効力発生日):2025年10月1日 (2)合併後の法人名称及び所在地等 法人名:RSM汐留パートナーズ税理士法人本店所在地:東京都港区東新橋一丁目5番2号 汐留シティセンター33階支店所在地:東京都新宿区西新宿六丁目5番1号 新宿アイランドタワー43階URL: https://shiodome.co.jp/spz/ 3. 両税理士法人の概要 (1)RSM汐留パートナーズ税理士法人 所在地 :東京都港区東新橋一丁目5番2号 汐留シティセンター33階代表者名:前川 研吾設立年月:2012年8月法人概要: 2007年前川公認会計士事務所開設。2008年4月前川公認会計士事務所が汐留パートナーズ会計事務所に改称。2012年8月に税理士法人化。2022年11月RSM Internationalに加入し、日本におけるメンバーファームとして会計税務に関するサービスを提供。 (2)税理士法人東京クロスボーダーズ(RSM Japan Tax Co.) 所在地 :東京都新宿区西新宿6-5-1 新宿アイランドタワー43階代表者名:村山 暸永設立年月:2015年10月法人概要: 2013年4月の法人化以前より、25年以上にわたり外資系企業をはじめとする多数のクライアントに対し国際税務を中心とした会計税務サービスを提供。また、2007年来RSMメンバーファームとの緊密な連携等を通じ、顧客の国内外における事業展開を支援。2025年10月、RSM汐留パートナーズ税理士法人と合併。 4. 合併後の組織体制 今回の合併により、税理士法人東京クロスボーダーズが長年培ってきた経験・専門性と国際税務の確かな実績および国際ネットワークに、RSM汐留パートナーズ税理士法人の革新的ソリューションが融合し、クライアントの皆様にはより付加価値の高いサービスをご提供いたします。今後もクロスボーダーでビジネスを展開するクライアントの皆様へのサービスを一層拡充し、唯一無二のワンストップサービスを提供するプロフェッショナル集団として今後の激変する事業環境に柔軟に対応していく所存です。 最後に、本合併によりグループ全体の役職員数は約250名体制となりました。日本におけるRSMブランドの認知度向上にも努め、皆様からより一層信頼されるパートナーであり続けられるよう、総力を挙げて邁進してまいります。何卒ご理解とご高承を賜りますようお願い申し上げます。 5.本リリースに関するお問い合わせ 本リリースに関するお問い合わせは以下までお願いいたします。 【RSM汐留パートナーズ】MAIL:inquiry-jp at rsmjapan.com (atは@に置き換えてください)
- [札幌事務所開設のお知らせ](https://shiodome.co.jp/news/16814/) - このたび、弊グループの汐留ビジネスソリューションズ株式会社(本社:東京都港区東新橋1丁目5番2号、代表取締役:三井亮)はIT人材の確保と更なる事業領域の拡大、業務の効率化を図るため札幌事務所を開設したことをご案内申し上げます。 汐留ビジネスソリューションズ株式会社は北海道札幌市をIT拠点のハブとして、世界中のIT人材と共に強固なチームを組成してまいります。さらにRSMの日本におけるメンバーファームとして、グローバル展開しているITインフラ、プロジェクトマネージメントシステム、サービス提供のためのグローバル共通システム等を積極的に活用し、ビジネスにおける価値のあるインサイトをクライアントへ提供していく所存です。今後ともご指導、ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。 法人・事務所概要
- [税理士法人東京クロスボーダーズとの統合記念パーティー開催のお知らせ](https://shiodome.co.jp/news/46604/) - 2025年10月2日、コンラッド東京ホテルにて税理士法人東京クロスボーダーズとの統合記念パーティーを開催いたしました。RSMアジアパシフィック地域のリージョナルリーダーであるStephen Darley氏をはじめとする海外のRSMメンバーファームのパートナーの皆様、RSM清和監査法人およびRSM Japanのコレスポンダントファームである東京共同会計事務所の皆様もお迎えし、盛大に執り行われました。 統合セレモニーでは、旧税理士法人東京クロスボーダーズ代表の村山暸永氏およびRSM汐留パートナーズ グループCEOの前川研吾より、統合を迎えた喜びとともに、両法人の強みを融合させた新たな価値創出への期待が語られました。両氏は、これまで統合に尽力された関係者への感謝の意を表すとともに、今後のさらなる成長と発展に向けた決意を共有しました。 また、RSMアジアパシフィック地域リージョナルリーダーのStephen Darley氏にもご登壇いただき、統合を祝するスピーチを賜りました。今回の統合がRSMネットワーク全体の一層の発展と連携強化につながることへの期待も示されました。 旧税理士法人東京クロスボーダーズ代表 村山暸永氏 RSM汐留パートナーズ グループCEO 前川研吾 RSM APAC リージョナルリーダー Stephen Darley氏 今回の統合記念パーティーには、海外からのメンバーも多数ご参加いただき、会場は英語・日本語・中国語が飛び交う国際色豊かな雰囲気に包まれました。 また、参加者同士のコミュニケーションも活発に行われ、新たなネットワーク形成や今後の円滑な連携に向けた基盤づくりが進められ、非常に有意義な時間となりました。 このたびの統合は、多くの方々のご尽力とご支援によって実現したものであり、本パーティーを通じて皆様への深い感謝の意を改めてお伝えできましたことを、心より嬉しく存じます。 税理士法人東京クロスボーダーズとの統合を通じ、私たちはクライアントの皆様に対し、これまで以上に高い付加価値を提供するサービスを展開してまいります。また、RSMインターナショナルおよびRSM Japanの一員として、日本国内におけるRSMの認知度向上に努めるとともに、RSMネットワーク全体の更なる発展に貢献してまいります。今後とも一層のご支援ご鞭撻を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
- [RSM Shiodome Partners Leadership Conference 2025 開催のお知らせ](https://shiodome.co.jp/news/46489/) - 2025年9月26日、RSM汐留パートナーズは東京アメリカンクラブにて「RSM Shiodome Partners Leadership Conference 2025」を開催いたしました。日本全国の拠点からリーダーおよびゲストを含む70名以上が一堂に会し、盛大に執り行われました。 今回のカンファレンスでは、決算報告や事業計画の発表、そしてパネルディスカッションを通じて、多くの気づきと学びを得るとともに、会社として進むべき方向性を改めて確認することができました。 パネルディスカッションでは、RSM Japanの歴史や「2030年グローバル戦略」の実現に向けた将来像の共有、クライアント体験価値(CX)の向上を目指す「ワンストップサービスの専門性と品質」、そして「人的資本と組織マネジメント」をテーマに実施され、以下の3つのテーマに沿った意見交換と知見の共有が行われました。 RSM Japanの今とこれから~グローバルネットワークにおける私たちの立ち位置~ クライアント体験価値(CX)を高めるワンストップサービスの専門性と品質 人的資本と組織マネジメント~人を活かし、組織で成果を出す~ 登壇者は国際会議のような緊張感の中で議論を深め、参加者もその臨場感を間近で味わうことができ、非常に充実した議論と貴重な知見の共有の場となりました。 本カンファレンスでは全国のリーダーが集結したことで、部門や拠点を越えたつながりが深まり、ワンストップサービスのさらなる体制の強化へとつながる有意義な場となりました。 RSM汐留パートナーズは、今後も本カンファレンスを継続し、RSM Japanとしての結束をより強固なものとしながらクライアントの皆様へ高品質なワンストップサービスを提供してまいります。また、日本全国におけるRSMブランドの認知向上を推進し、地域社会への貢献にも努めてまいります。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
- [RSM USロサンゼルスオフィスにてセミナー実施のお知らせ](https://shiodome.co.jp/news/42399/) - このたび、弊社代表の前川がRSM USのロサンゼルスオフィスにてセミナーを開催しました。M&A仲介・アドバイザリーサービスを専門とする株式会社ストライクの皆様と複数の日本の会計事務所のリーダーの方々にご参加いただきました。 本セミナーでは、RSMのグローバルネットワークの強みを紹介するとともに、新たに施行された「One Big Beautiful Bill Act(ワン・ビッグ・ビューティフル・ビル法)」を含む米国税制や、米国M&A市場の最新動向などを取り上げました。 さらに、RSM USロサンゼルスオフィスの統括責任者であり、アシュアランス・パートナーでもあるTasos Yiangou氏より、RSM USの強みやサービスラインについてご紹介いただき、参加者にとって大変貴重な学びの機会となりました。 今後、トランプ政権下における新たな関税措置や政策転換を背景に、日米間のクロスボーダーM&Aは一層活発化すると予想されます。RSM USとRSM Japanの連携をさらに強化することで、より多くの多国籍企業の皆様がこうしたビジネス機会を確実に捉え、持続的な成長へとつなげていただけるよう支援してまいります。
- [「Measuring our Environmental Impact」第2回目の公開のお知らせ](https://shiodome.co.jp/news/33509/) - このたび、RSMインターナショナル本部より、第2回目となる「Measuring our Environmental Impact Report」が公開されましたのでお知らせいたします。 気候変動の影響がますます目に見えるものとなる中、正確なカーボン測定と果断な気候行動の必要性は一層高まっています。RSMは2024年5月から10月にかけて、第2回グローバル・カーボンフットプリント測定を実施しました。測定の対象は、当業界において最も重要なカテゴリである Scope 1(燃料・冷媒などの直接排出)、Scope 2(電力使用による間接排出)、および Scope 3 の主要項目(上流エネルギー、出張、従業員通勤)です。 今回の測定では、RSM全体の総排出量は 120,402 tCO2e と推定され、これは欧州市民約13,800人分の年間排出量に相当します。排出の大部分はScope 3に集中しており、最大の要因は従業員の通勤(33%)、次いで出張(26%)、オフィス電力(23%)となりました。 RSMは、今後もネットワーク全体でサステナビリティの成熟度を高め、各ファームが排出量削減の重点分野に取り組めるよう啓発を進めていきます。2024年の測定プログラムでは、報告範囲の拡大を検討するグローバル委員会も設置予定です。長期的な取り組みの一環として、RSMは責任ある事業活動を推進するリーダーとしての役割を果たしてまいります。 Measuring our Environmental Impactは以下よりご覧いただけます。Measuring our Environmental Impact – RSM’s second global carbon footprint report
- [【RSM主催】Webinar開催のご案内-米国関税政策の大転換とアジア企業の戦略的対応](https://shiodome.co.jp/news/32898/) - このたび、RSM主催により「国際関税政策の大転換とアジア企業の戦略的対応」をテーマとしたWebinarを開催する運びとなりましたので、ご案内申し上げます。 米国の関税政策が大きく転換する中、アジア企業はいかに影響を受け、どのように対応すべきか──。本Webinarでは、日本・中国・インドの企業に対する影響と戦略的対応について、各国のRSM専門家が多角的に解説します。RSM汐留パートナーズ代表・前川研吾も登壇予定です。 ▶ ご登録はこちら※ご登録後、参加方法の詳細が記載された確認メールが届きます。 【開催概要】 日程:2025年7月30日(水) 時間:日本時間 午後5時30分~午後7時 言語:英語 対象者:CEO、戦略/サプライチェーン責任者、CFO、税務責任者 など 【背景とテーマ】 米国は2024年、総額7兆3,010億米ドルの貿易を行い、世界最大の輸入国としての地位を維持しています。2025年4月、米国は平均2.5%の低関税体制から一転し、すべての国・品目に対して一律10%の基準関税(一部除外)を導入。加えて、最大245%に及ぶ追加関税も発表しました。この大転換は、米国向け輸出を主要収益源とするアジア企業、特に日本・中国・インド企業にとって、収益・競争力・事業継続性に直結する重大なリスクとなる可能性があります。本Webinarでは、アジア3ヶ国及び米国の視点から、関税政策の変化に対する企業の対応をRSMの専門家が詳しく解説します。 【プログラム】 開会挨拶・背景説明 Dr. Suresh Surana (Founder, RSM India) インドの公認会計士(Chartered Accountant)であり、法学士及び経営政策・経営行政の博士号を有する。クロスボーダー投資、国際税務、企業再編、事業承継を専門とし、複数の企業で取締役を務めるほか、創業者・経営陣(CXO)との関係構築にも豊富な実績を持つ。 米国の視点から見た現状と企業の戦略的対応 Mark Ludwig (US Tariff and Trade Expert, RSM US) RSM USにて通商アドバイザリー業務を統括し、企業の調達・製造・流通におけるコンプライアンスの強化と業務最適化をリード。Big4の元パートナーであり、自ら設立したコンサルティング会社を経て、25年以上にわたりグローバル企業の事業支援に従事。Bloomberg LP及びTiffany & Co.にてエグゼクティブ経験も持つ。ペンシルバニア州立大学、マイアミ大学、マドリード・コンプルテンセ大学で学位取得。米国税関・国境警備局(CBP)認定の通関士(U.S. Customs Broker)。 中国企業の戦略的対応 Frank Ji (China Practice Leader / Partner, RSM US) RSM USにて中国関連サービスを統括し、全米のChina Practiceのリーダーを務める。アジア太平洋地域における外国直接投資(FDI)案件に関する税務業務を主導し、対米進出企業への支援も行っている。ジョージ・メイソン大学ロースクールにてJ.D.(法務博士号)を取得。米国公認会計士(CPA)及びバージニア州弁護士資格を保有し、全米公認会計士協会(AICPA)に所属。 日本企業の戦略的対応 前川
- [ISMS(ISO/IEC 27001)規格改定に伴う移行対応と認証取得のお知らせ](https://shiodome.co.jp/news/27919/) - このたび、RSM汐留パートナーズ株式会社は、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS/ISO 27001)の規格改定に対応し、更新審査を無事に終え、新たにISO/IEC 27001:2022に基づく認証を取得いたしました。 今回のISO/IEC 27001:2022への移行にあたっては、情報セキュリティを取り巻く環境の変化に対応するため、管理策の構成が大幅に見直されました。具体的には、従来の114の管理策が93に統合・再編され、新たな管理策が11新設されるなど大きな変更がありました。また、リスク管理や文書化に関する要求事項も明確化され、現代の情報セキュリティ対策に即した内容へとアップデートされています。 近年の増加するサイバー攻撃に対応するため、当社では現行のセキュリティ管理をより一層厳格にし、クライアントに対してセキュリティへの強いコミットメントを示す必要があると考えています。また、社内におけるセキュリティ意識を高める文化を築くことも重要な課題です。 今回の認証取得により、最高水準の情報セキュリティ管理を実現するとともに、クライアントの皆様の信頼に応えていく所存です。 【認証登録概要】 登録組織 RSM汐留パートナーズ株式会社 東京本社 認証範囲 会計・税務(各種ビジネスソリューション、アウトソーシング[BPO])、アドバイザリー(ビジネスコンサルティング、財務コンサルティング)、グローバル・コンサルティング(入国管理・許認可申請)、キャッシュマネジメント(銀行管理・支払業務)、人事・労務(給与計算・社会保険) 適用規格 ISO/IEC 27001:2022 認証登録番号 IND.25.6030/IS/U
- [RSM APAC2025 参加のお知らせ](https://shiodome.co.jp/news/27745/) - 2025年5月19日~5月22日の4日間、RSMのアジアパシフィック会議がインドネシアのジャカルタで開催されました。RSM汐留パートナーズからは代表の前川とインターナショナルコンタクトディレクターの許、インターナショナルタックスディレクターの三宅の3名で参加してまいりました。 今回の会議には、RSMメンバーファームから200名を超えるパートナーが参加し、2030年に向けた戦略「Taking Charge of Change」のもと、アジア太平洋地域における連携の強化を改めて確認しました。また、RSMインドネシアの40周年を記念する祝賀イベントも併せて開催されました。 今回の国際会議では、中堅企業が地域経済の発展を支える重要な原動力として、いかに貢献しているかが議論されました。RSMのアジア太平洋地域における2024年の総収益は前年比7%増、特にASEAN地域では9%の成長を記録しました。さらに、主要なトレンドとして、グローバル貿易の変動、デジタル人材の急速な需要についても議論がなされました。 また、RSMが展開する「ESG APACハブ」の取り組みも紹介され、クライアントが持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けて取り組むうえで、同ハブが重要な支援機能を果たしていることが強調されました。加えて、アジア太平洋地域におけるESG(環境・社会・ガバナンス)実践の浸透状況や、IFRS S1およびS2といった国際基準の導入スピードおよび適用度合いの違いについても取り上げられました。 RSMインターナショナル CEOである E.J. Nedder氏は次のようにコメントしています。「アジア太平洋地域における当社メンバーファームの革新的な取り組みと、それがRSM全体にもたらしている大きな可能性を現地で直接確認できたことを、大変嬉しく思います。この地域でクライアントの持続的な成功を実現できているのは、当社がグローバルな戦略的優先事項に注力しているからです。具体的には、社員に一貫した体験を提供し、卓越したクライアントサービスを実現し、効率的なテクノロジーソリューションへの投資を進めています。私たちのあらゆる取り組みの基盤には、効果的なグローバル運営体制とガバナンスモデル、そして品質への徹底したこだわりがあります。」 さらに、RSMインターナショナル アジア太平洋地域リーダー Stephen Darley氏は次のようにコメントしています。「アジア太平洋地域の進化は非常に速く進んでおり、当社が支援する企業が直面する世界的な変化にも大きな影響を与えています。ESGの推進、デジタルトランスフォーメーション、クライアントサービスモデルの高度化といった分野において、RSMはESGハブの構築やAIを活用したツール、サイバーセキュリティソリューションの提供を通じて、業界をリードする存在となっています。この地域に根付く起業家精神と強固な協力体制は、私たち自身だけでなく、クライアントの未来にとっても極めて重要な要素です。」 RSM汐留パートナーズは今回の会議で得た知識や経験を生かし、クライアントの皆様にはより一層ハイクオリティなサービス、有益な情報を提供し、社会に貢献してきたいと思います。今後ともよろしくお願いいたします。
- [RSM グローバル・アニュアル・レビュー 2024 公開のお知らせ](https://shiodome.co.jp/news/27491/) - RSMインターナショナルは、「グローバル・アニュアル・レビュー 2024」を公開しました。本レポートでは、RSMが世界各地で展開するサービスや活動内容、成長の要因、ガバナンス体制、そして2030年に向けたグローバル戦略の進捗などについて紹介しています。 2024年は、4つのキードライバー(人材、顧客、テクノロジー、ソリューション)に焦点を当て、継続的な成長と変革、変化に向けた基盤づくりが進められました。RSM全体での連携と取り組みにより、グローバルでの顕著な成長が実現されています。 RSM汐留パートナーズはRSMの日本におけるメンバーファーム、そしてRSM Japanの一員としてRSMの成長・発展に貢献してまいります。 詳細は以下よりご覧ください:RSM Global Annual Review 2024(英語)
- [RSM汐留パートナーズ税理士法人、一般社団法人会計事務所連携協議会への参画のお知らせ](https://shiodome.co.jp/news/23813/) - このたび、RSM汐留パートナーズ税理士法人は2024年12月25日に設立された一般社団法人会計事務所連携協議会(略称:会計連、理事長:本郷孔洋、事務局所在地:東京都中央区)に発起人として参画したことお知らせいたします。 会計事務所連携協議会の概要 会計事務所連携協議会は、全国の会計事務所17社が発起人となり、会計事務所間の連携を強化することで、業界全体の価値向上と社会のインフラとしての役割を果たすことを目的として設立されました。 発起人一覧(17社、50音順) 税理士法人アップパートナーズ RSM汐留パートナーズ税理士法人 AGS税理士法人 OAG税理士法人 サン共同税理士法人 セブンセンス税理士法人 辻・本郷 税理士法人 税理士法人TOTAL TOMA税理士法人 トリプルグッド税理士法人 日本クレアス税理士法人 税理士法人Bricks & UK ベンチャーサポート税理士法人 税理士法人松本 ミカタ税理士法人 税理士法人 名南経営 税理士法人山田アンドパートナーズ 設立の背景と目的 近年、会計事務所業界は新型コロナウイルス禍での補助金受給支援やインボイス制度導入への対応など、各事務所がそれぞれの対応を考え実行している現状です。この現状に対し、各事務所が個別に対応するのではなく、業界全体で協力し合う必要性が高まっています。また、AIなどのテクノロジーの進化に伴い、定型業務の自動化が進む中、人材の採用・育成や業界のブランドイメージ向上も重要な課題となっています。これらの問題意識から、会計事務所間での連携を活性化させる目的で会計事務所連携協議会は設立されました。 RSM汐留パートナーズ税理士法人の役割 RSM汐留パートナーズ税理士法人は、会計事務所連携協議会の一員として、業界全体の発展とクライアント支援に貢献してまいります。当法人の専門知識と経験を活かし、発起人となる会員事務所と協力しながら、クライアントの皆様により高品質なサービスを提供するとともに、会計事務所業界全体の価値向上に貢献していく所存です。 一般社団法人会計事務所連携協議会に関する詳しい情報は以下プレスリリースをご覧ください。https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000154574.html
- [FITチャリティ・ラン2024参加のお知らせ](https://shiodome.co.jp/news/23043/) - 2024年9月16日、国立競技場において開催された第20回「FITチャリティ・ラン2024」にRSM清和監査法人、税理士法人東京クロスボーダーズとともに”RSM Japan”として参加してまいりました。 FITチャリティ・ランは2005年より開催されているチャリティマラソンであり、金融サービスや関連する会計税務・コンサルティング事業などに従事する企業の有志によって設立され、運営されています。その活動によって得た収益等は、地域社会において重要な活動している団体でありながら、認知度等の問題で活動資金を十分に確保することができていない団体への寄付を通じて社会貢献を行っております。 また、金融業界全体が一致団結して社会貢献に取り組む姿勢を示し、企業やグループ内でのチームワークを高め、業界全体の連帯感を促進することもFITチャリティ・ランの目標一つとしております。 本年度のFITチャリティ・ランは記念すべき20周年を迎え、小池百合子東京都知事からのビデオメッセージが上映され、これまでの20年間にわたる地域社会への支援活動を称賛するとともに、ボランティアの皆様に向けて激励の言葉を贈られました。さらに、ランニング競技に加え、ブラインドサッカーや車椅子バスケットボールといった、誰でも参加できる体験型のイベントも実施され、多くの方に多様なスポーツの魅力を楽しんでいただく機会が提供されました。 今年の FIT チャリティ・ランは国内外の金融機関、監査法人、コンサルティングファームなど103社からランナー、ウォーカー、ボランティアとして4,000名以上が参加し、寄付金総額55,784,810円と発表されました。(FIT2024公式サイトより) 今回RSM Japanとして2回目の参加となりましたが、来年以降も継続していければと考えております。また豊かな地域・社会の実現に貢献すべく、様々な活動を積極的に行い、多様化する社会課題への支援を継続してまいりたいと思います。 RSM汐留パートナーズとしてもかかわる全ての人が“Well-being”であることを経営の根幹とし、かつそれが、長期間持続可能な状態 (サスティナブル)である世界を目指しております。社会とともに持続的な成長・発展を実現させることを使命として日々行動してまいります。
- [書籍『 Governance in Family Enterprises: Maximising Economic and Emotional Success 』翻訳出版のお知らせ](https://shiodome.co.jp/news/22991/) - このたび、書籍『 Governance in Family Enterprises: Maximising Economic and Emotional Success 』を翻訳し、『ファミリー企業のガバナンス~経済的および精神的な成功を極大化する~』というタイトルで出版いたしました。 翻訳者は以下の3名となります。 RSM汐留パートナーズ税理士法人 マネージングパートナー : 平野秀輔(博士(学術)・公認会計士・税理士)RSM汐留パートナーズ株式会社 代表取締役社長CEO : 前川研吾(公認会計士・税理士)RSM汐留パートナーズ株式会社 監査役 : 瀬尾安奈(公認会計士・税理士) 日本はファミリービジネス大国であり、ファミリー企業が世界一多く、そして長く続いています。ガバナンスは上場会社ではなくても非常に重要であり、本書はその点についての貴重な世界のファミリー企業の事例が結集された有用な一冊になっております。 また、慶應義塾大学名誉教授ファミリービジネス学会理事奥村昭博氏に帯の推薦を頂きました。 序 章 第1部ファミリーとビジネスのための組織構造:ファミリービジネスのガバナンス 第1章 高度なファミリービジネスのガバナンスを通じて成功を極大化する第2章 ファミリー企業のガバナンスに関する課題第3章 ガバナンス、構造、システムの進化第4章 ファミリー企業における責任あるオーナーシップ 第2部ビジネスのための機関設計:ビジネスガバナンス 第5章 専門的経営者等を擁する取締役会第6章 CEOとその承継第7章 管理手法と統制システムの利点 第3部ファミリーのための組織構造:ファミリーガバナンス 第8章 ファミリー評議会および最高ファミリー責任者第9章 ファミリー慈善活動とファミリー慈善財団第10章 ファミリーオフィス、ファミリーの富と財産管理 第4部ガバナンス構造の文書化:ファミリー憲章 第11章 ガバナンス・コードを活用したガバナンスの構築第12章 オーナー一族のためのファミリー憲章:手続きと文書化第13章 ファミリービジネスガバナンスの将来 本書の概要 書籍タイトル: 『ファミリー企業のガバナンス~経済的および精神的な成功を極大化する~』翻訳:平野秀輔・前川研吾・瀬尾安奈監訳:RSM汐留パートナーズ株式会社出版社:白桃書房発売日:2024年9月17日購入方法: https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784561237945
- [書籍「財務会計: Nuts and Bolts とその応用」出版のお知らせ](https://shiodome.co.jp/news/23174/) - このたび、RSM汐留パートナーズ税理士法人マネージングパートナー平野秀輔執筆の書籍「財務会計: Nuts and Boltsとその応用」を白桃書房より出版いたしました。 同じく平野の著書「財務会計」が新たに大幅に改訂され、新しい章構成と共にリニューアルされました。本書は、財務会計の基礎から応用までを学びたい方に向けて、知識や考え方をしっかりと身につけられる内容となっています。 「Nuts and Bolts」という表現には、基本的な部分をしっかりと押さえるという意味があり、著者はその中でも「接着とは異なり、何度も締め直して強度を保てる」という特性に注目しています。これにより本書では、初めて財務会計を学ぶ方や再度学び直す方が、柔軟かつ確実に理解を深められる工夫がされています。専門用語の定義を分かりやすく示すだけでなく、理論を理解するためのアプローチについても丁寧に解説しています。 本書の概要 書籍タイトル:「財務会計: Nuts and Bolts とその応用」執筆者:平野秀輔出版社:白桃書房発売日:2024/8/17購入方法: https://www.amazon.co.jp/dp/4561352309/
- [ISMS認証(ISO27001)取得のお知らせ](https://shiodome.co.jp/news/22689/) - この度、RSM汐留パートナーズ株式会社は、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の国際規格であるISO27001の認証を取得いたしました。 ISO 27001は、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の構築、運用、および認証に関するプロセスと管理策を定めた、世界的に認められた基準です。この基準は、企業が財務情報、知的財産、従業員情報、さらには第三者から預かった情報に関するセキュリティリスクを特定・管理し、最小化するための体系的な方法と枠組みを確立していることを保証するものです。 近年の増加するサイバー攻撃に対応するため、当社では現行のセキュリティ管理をより一層厳格にし、クライアントに対してセキュリティへの強いコミットメントを示す必要があると考えています。また、社内におけるセキュリティ意識を高める文化を築くことも重要な課題です。 今回の認証取得により、最高水準の情報セキュリティ管理を実現するとともに、クライアントの皆様の信頼に応えていく所存です。 【認証登録概要】 登録組織 RSM汐留パートナーズ株式会社 東京本社 認証範囲 会計・税務(各種ビジネスソリューション、アウトソーシング[BPO])、アドバイザリー(ビジネスコンサルティング、財務コンサルティング)、グローバル・コンサルティング(入国管理・許認可申請)、キャッシュマネジメント(銀行管理・支払業務)、人事・労務(給与計算・社会保険) 適用規格 ISO/IEC 27001:2013 認証登録番号 IS 764406
- [釧路事務所開設及び釧路市へ企業版ふるさと納税の寄付実施のお知らせ](https://shiodome.co.jp/news/23847/) - このたび、RSM汐留パートナーズ株式会社は、地元IT企業との協業や、釧路市役所との連携を通じた地方創生への貢献、さらに地域ネットワークの強化と新たなビジネスチャンスの発掘を目的として釧路事務所を開設したことをお知らせします。また、企業版ふるさと納税として釧路市への寄付を行い、弊社代表の前川が1月6日に釧路市役所で行われた受納式に出席し、現釧路市長である鶴間秀典市長と会談を行いました。 釧路事務所開設の目的 釧路事務所ではITインフラ、サイバーセキュリティ、ウェブサイト、SNS運用など、多岐にわたるIT関連業務を担います。また、札幌事務所とともに北海道をハブとして世界中のIT人材と連携し、強力なチーム体制を築くことを目的としています。 会社概要 北海道釧路市への企業版ふるさと納税の実施 RSM汐留パートナーズ株式会社は、2024年11月に北海道釧路市へ企業版ふるさと納税を通じて寄付を行いました。この寄付は、主にプログラミング技術の習得を目的とした人材育成の場として設立された、全国初の官民連携IT企業「株式会社k-Hack」の運営支援を通じて、地域産業の高付加価値化や地域課題の解決を担うスタートアップ人材を継続的に育成する仕組みづくりを支援するものです。 寄付の概要 寄付先 :北海道釧路市寄付事業:「スタートアップ人材創出事業」 「観光振興イベント事業」 受納式の様子 2025年1月6日、釧路市役所にて受納式が執り行われ、受納式には弊社代表の前川が出席し、釧路市の鶴間秀典市長と会談を行いました。 今後の展望 RSM汐留パートナーズ株式会社では、地元IT関連企業や行政との連携を強化し、新たなビジネスモデルやソリューションの創出に注力するとともにIT人材育成と産業振興に貢献してまいります。地域の関係者の皆様との信頼関係を深め、釧路市における持続可能な発展に寄与してまいります。
- [RSMの外部報告書「Measuring our Environmental Impact」発行のお知らせ](https://shiodome.co.jp/news/21751/) - RSMグローバルネットワークが共同で作成した外部報告書「Measuring our Environmental Impact」の発行をお知らせいたします。この報告書は、環境へ与える私たちの活動の影響を詳細に計測し、その情報を公開することで透明性を高めることを目的としています。グローバルネットワークとしての私たちの取り組みを反映し、RSMの各国メンバーファームが一丸となって取り組んだ成果になります。日本の皆様にも、この取り組みに関する情報を広く伝え、私たちの環境保全へのコミットメントを示したいと考えています。 報告書においては、GHG(Green House Gas、温室効果ガス)とCCF(コーポレートカーボンフットプリント、企業の温室効果ガス排出量)について数多く触れていますが、これらは環境影響評価と気候変動対策の文脈で密接に関連しています。 GHGは、地球の大気中に放出されると地球温暖化の原因となるガスの総称です。これには二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、亜酸化窒素(N2O)、フルオロカーボン類(HFCs)、ペルフルオロカーボン(PFCs)、六フッ化硫黄(SF6)などが含まれます。これらのガスは、太陽からの放射エネルギーを吸収し、地球表面の温度上昇を引き起こす効果があります。 CCFは、特定の企業や組織の活動によって直接的および間接的に放出される温室効果ガスの総量を表します。これは、その企業の製品、サービス、運営が環境、特に地球の気候に与える影響の一指標です。CCFの計算には、GHGプロトコルが提供するスコープ1(直接排出)、スコープ2(間接排出:エネルギー購入)、スコープ3(その他の間接排出:サプライチェーン全体)の分類が用いられます。 GHGの概念は、温室効果ガスの種類とその地球温暖化への貢献度を広い視点から捉えるのに対し、CCFはこれらのガスが特定の企業や組織によってどの程度放出されているかを特定し、計測するためのものです。GHGが環境影響の原因となる物質を指し、CCFはその原因物質が特定の主体からどれだけ排出されているかを表す指標となります。 【GHGプロトコルのイメージ】 GHGプロトコルにおいては、スコープ1からスコープ3までの3つの区分にわけられ、これら3つを総合した排出量がサプライチェーン全域の総排出量と見なされます。 スコープ1は、企業が直接操作する設備や活動に起因する温室効果ガスの直接的な放出を示します。このスコープ内には、社内の発電設備、生産ライン、および焼却施設からの排出が含まれます。 スコープ2は、企業が使用するエネルギーを外部から購入することによる間接的な排出を指し、外部から供給される電力や熱エネルギーの使用がこれに当たります。ただし、完全に再生可能エネルギーから得られた電力や、企業が自身で生成した再生可能エネルギーはこのスコープ内には含まれません。 スコープ3は、企業の直接的な管理下にない活動から生じる間接的な排出を示し、これには企業の運営に関連するサプライチェーンや、製品の最終消費者による排出が含まれます。このカテゴリーは15の部門に分けられており、原料調達から製品の最終廃棄に至るまでの全過程、さらには従業員のビジネス旅行や通勤、企業が投資する資本財やフランチャイズからの排出も考慮に入れられます 【RSMのスコープ1、2、3に対するメソドロジー】 このように、スコープ1から3までの分類は、企業が温室効果ガス排出量を把握し、削減戦略を策定するための枠組みを提供します。それぞれのスコープは、企業が環境への影響を理解し、持続可能な運営に向けた具体的なアクションを計画する上で重要な役割を果たします。 RSMグローバルの2022年度のCCFは109,385t CO2eとして計算されました。この総量をもっと具体的な実世界のフットプリントに置き換えると、以下の排出量に相当します。 平均的なヨーロッパ市民15,642人分の年間フットプリント 非電動車で339百万km以上の距離を走行する場合の排出量 ブナの木に換算すると875万本以上の年間の炭素吸収量 【CCFの排出源別の内訳】 この報告書によって示された洞察を踏まえ、私たちは会社運営とサプライチェーン全体にわたる温室効果ガス排出の削減への取り組みをさらに進めていく必要があります。特に、電気やエアコンの使用、業務上の出張、従業員の通勤といった排出量が多い分野において、具体的な改善策を策定し実施することが求められています。 データの品質向上や特定の排出源における削減努力を超えて、年々、測定される排出カテゴリーのスコープを広げていくことを検討しています。このプロセスが徐々に容易になりつつある中で、十分なデータを提出することができるメンバーファームにとっては、特にデータ収集の手間を省き、今後の報告プロセスの効率化と簡素化を目指します。 ネットゼロ達成に向けた科学的根拠に基づく目標設定、およびそれを超えるサプライチェーンにおける軽減策を念頭に置きつつ、適切な時期にこれらが我々の包括的な気候変動対応戦略の根本的な要素となるよう努力を続けています。 私たちは長期にわたるこの旅の初めの一歩を踏み出したばかりであり、RSMの全体的な環境への影響をさらに改善するために行えることがまだ多くあります。RSMネットワークのすべてのメンバーファームの持続可能性のレベルを向上させることを通じて、組織全体が責任ある行動をとれるよう努めています。 RSMジャパンは、グローバルな視野を持って共同で作成したこの報告書を基に、持続可能な未来への道を切り開くため、国内外の関係者との協力関係を一層強化し、積極的に取り組んでまいります。 なお、報告書全文はこちらよりご確認ください。
- [RSMインターナショナルの新CEOにE.J. Nedder氏が就任](https://shiodome.co.jp/news/21769/) - RSMインターナショナルは2024年6月1日付でJean Stephens氏の後任としてErnest John Nedder氏が新たにCEOに就任すると発表しました。以下はRSM本部のプレスリリースを日本語に翻訳したものとなりますので、ぜひご覧ください。 ミドルマーケットに向けた監査、税務、コンサルティングサービス等を提供するRSMは、Ernest John Nedder氏がJean Stephens氏の後任として2024年6月1日付で新CEOに就任すると発表しました。 Nedder氏は現在、RSM US LLPのパートナー兼CSOであり、RSM USの企業戦略の開発等を主導し、DXとインサイトに基づくイノベーションを基調とした企業風土を推進しています。また、RSM Canada LLPのディレクターも務めています。 公認会計士として豊富な経験を持つNedder氏は26年にわたりプロフェッショナルとして活躍してきました。以前は RSM USの National Head of TaxとしてRSM USの税務分野の年間収益を6億ドルから10億ドルを超えるまでに成長させ、国際税務アドバイザリーのサービス拡大にも貢献しました。またNedder氏はRSM US LLPのディレクターを2期務め、2期目はチェアマンを務めました。 そのキャリアの中でNedder氏は、大規模なビジネスやDXにおけるイニシアチブを主導し、異なるサービスラインや業種、チームをまとめ上げ、米国内外でグローバルなプロジェクトに携わるなど幅広い経験を積んできました。 新しい任務と将来のビジョンについてNedder氏は次のようコメントしています。「RSMの次期グローバルCEOに抜擢され感激しております。RSMの2030年グローバル戦略はすでに実行され、私もその目標に向かって邁進しております。世界中の素晴らしいプロフェッショナル達と協力してRSMの強みを発揮し、次なるダイナミックなプロジェクトをリードできることに、期待に胸を膨らませています。」 RSM インターナショナルの Chair of the BoardであるJoe Adams氏は次のようにコメントしています。「RSMのCEO Succession Committeeは多くの優秀な候補者の中から厳正な選考を行いました。 Nedder氏は卓越したリーダーシップを持ち、人々を鼓舞し、引き付ける能力を持っています。 Nedder氏と長年一緒に働く中で彼がRSM USで大きな影響を与えてきたことを私は知っています。私は彼がRSMインターナショナルで傑出したCEOになると確信しています。」 Jean Stephens氏は2024年5月までRSMのCEOを務め、その後3年間はRSMのシニアアドバイザーとして引き続きサポートします。女性リーダーの手本となるStephens氏の功績はRSMにとって大きな財産になるでしょう。Stephens氏は次のようにコメントしています。「18年もの間、RSMのCEOを務めたことは非常に光栄であり、誇りに思っています。また、Nedder氏をRSMの新CEOとして迎えることを嬉しく思います。彼はこれまでの豊富な経験をベースに2030年、そしてその先の新たな高みへとRSMを導くでしょう。」
- [新たなビジュアル・ブランドに変更のお知らせ](https://shiodome.co.jp/news/20635/) - 本日、RSMインターナショナルは「2030年グローバル戦略」の実現に向けたブランドの再構築を目的として新たなビジュアル・ブランドを発表しました。 2015年にRSMが統一ブランドを立ち上げて以来、RSMのロゴ、カラー、そしてメンバーをメインとする特徴的なポートレイト・スタイルは世界中で認知されてきました。 新しいビジュアルデザインは、私たちのプレゼンスを更に高めるために、他社との差別化をよりよく表現しております。引き続きRSMのメンバーをメインに据えていますが、新しくミッドナイト・ブルーを背景にし、メンバーはよりカジュアルな雰囲気となり、RSMブランドとともに各人の個性を表現しています。 また、「Pattern of Progress」と呼ばれる新たなスタイルが採用されております。この左下から右上に向かって構築されている独創的なスタイルは、私たちが常に変化の中で生活しているということを表現するために、デジタルな雰囲気を醸し出すよう工夫が施されております。また、私たちがクライアントと協力し、その特有で具体的なニーズを満たすためのオーダーメイドのソリューションを開発し提供していくという決意も込められております。 このようなブランドの再構築は、常に変化する世の中に対応し、私たちのビジュアルや印象がより一層モダンでフレッシュであり続けるために、これまで以上にRSMを魅力的で、デジタルかつグローバルな組織として構築していくために重要な要素と考えております。 RSM汐留パートナーズとしても今回のデザイン変更に際しまして順次WEBサイト・SNS等を更新していく所存です。また、RSMの日本における認知度の向上に引き続き務めてまいります。
- [RSM Internationalから2023年業績報告および今後の展望に関するプレスリリースのお知らせ](https://shiodome.co.jp/news/20649/) - 本日、RSM本部より全世界に向けて2023年業績報告のプレスリリースが行われました。以下は日本語に翻訳したものになります。RSM汐留パートナーズはRSMの日本におけるメンバーファーム、そしてRSM JAPANの一員としてRSMの成長・発展に貢献していく所存です。今後ともご支援賜りますようよろしくお願い申し上げます。 RSMの世界収益が16%もの増加:94億米ドルを記録 RSMの5つのリージョンにおいて3年連続の2桁の成長を達成 RSMの全世界従業員数は13%増加し約64,000名に RSMの「2030年グローバル戦略」に向けてRSMグローバルブランドが再構築 テクノロジーとデジタルへの投資が4倍に増加 ミドルマーケット向けに監査、税務、コンサルティングサービス等を提供するリーディングカンパニーである『RSM』は本日、2023年12月までの年間全世界収益が94億USドル(約1.4兆円)となり、前年比で16%増加したと発表しました。監査業務による世界の手数料収入は15%増の36億USドル、税務サービスによる収益は大幅な17%増により26億USドルとなりました。また、コンサルティングサービスによる収益は総額31億USドルで、2022年比で16%増加しました。 また、すべてのリージョンにおいて目覚ましい成長が報告されています。ヨーロッパでは、メンバーファーム全体の持続的な発展と、ドイツにおいて「RSM Ebner Stolz」がRSM加盟したことにより、2022年比で36%の成長が見られました。RSMの最大収益リージョンである北米では、税務とコンサルティングサービス、特にITおよびESGコンサルティング関連の大幅な成長により、最新の会計年度における手数料収入が13%もの増加を記録しました。アフリカにおいては、2023年7月に南アフリカで戦略的合併が実施されたこと、また地域全体の進展などにより、29%の成長を遂げています。MENAリージョンとラテンアメリカにおいても2022年にそれぞれ30%、18%と大幅な成長を遂げています。アジア太平洋地域では8%の成長を遂げ、手数料収入が10億USドルを突破しました。 2023年初頭に発表した「2030年グローバル戦略」以降の12ヵ月で、RSMは4つのキードライバー(人材、顧客、テクノロジー、ソリューション)に焦点を当て、継続的な成長と変革、変化に向けた重要な構成要素を確立してきました。世界の従業員数を13%増加させたことからもわかるように、RSMは比類なき包括的な文化と人材エクスペリエンスの開発に専念しており、持続的な成長と豊かでパーソナライズされた顧客エクスペリエンスを実現するには人材とテクノロジーの両方に投資することが重要と確信しています。世界のテクノロジーおよびデジタルへの投資は、2022年と比較して4倍に増加しました。これは2022年にすべてのリージョンにおいてRSMメンバーファームによって行われた大規模なテクノロジー投資を上回ります。 RSMインターナショナルのCEOであるJean Stephens氏は、次のようにコメントしています。 「今年の決算の結果は、ミドルマーケットに向けたプロフェッショナル・サービスを提供する世界有数のプロバイダーとして、当社の地位をさらに強固にするでしょう。 RSMは、2030年グローバル戦略- Taking Charge of Change (変化を担う) – を原動力として、これまで以上にグローバル組織として協力し合い、国境を越えて革新し、顧客により良いサービスを提供してきました。洞察の生成と共有、サービス提供の効率と有効性の合理化、強化されたグローバルデジタルインフラストラクチャによる接続の構築に重点を置き、RSMはテクノロジーを活用した革新的で貴重な洞察を提供することに重点を置いています。」 今後の展望として RSM にとって2024年の最初の重要なマイルストーンは、進化したグローバルブランドの公開です。新しいビジュアルと再構築されたメッセージは、常に変化する世の中に対応し、私たちのビジュアルや印象がより一層モダンでフレッシュであり続けるために、これまで以上にRSMを魅力的で、デジタルかつグローバルな組織として構築していくために重要な要素と考えております。また、ブランドのメインに従業員を据えるRSMは、ロゴのDNAから得た新しい創造的なスタイルを採用しました。「Pattern of Progress」と名付けられたこのスタイルは、RSMがクライアントと協力し、その特有で具体的なニーズを満たすためのオーダーメイドのソリューションを開発し提供していくという決意も込められております。常に変化する複雑な世界における前進と将来の目標の達成を象徴しており、RSMがクライアントと人々にとって最も重要な問題に焦点を当てていることを反映しています。 現在進行中の技術開発の中で、2024年1月には、RSMのデジタル監査エコシステムである「RSM Luca」が公開されます。「RSM Luca」は、高度な技術と効率的なプロセスを統合して、クライアント固有のビジネス環境に合わせて調整された、機敏で洞察に基づく技術先進的な監査を可能にします。RSMはまた、持続可能性の枠組みとイニシアティブ、および品質と責任あるビジネス慣行を確保するための独立性システムと検査手順の進化に、年間を通じて大幅な追加投資を行うことにコミットします。 Jean Stephens氏はさらに、次のように述べています。 「2024年以降、当社はグローバルな強みを活用し、主要なステークホルダーとの関連性を最大限に高めるために、膨大な数の変革プロジェクトを実施していきます。これらの業績は、将来のさらなる成長に向けた強固な基盤を支え、RSMが自信とコミットメント、エネルギーを持って前進する中で、力をつけていくことを保証しています。」
- [弊社代表前川が中央大学商学部の授業に登壇しました](https://shiodome.co.jp/news/20425/) - 中央大学商学部のコーポレートファイナンスの授業に、弊社代表の前川が1月11日に登壇し、講師を務めました。当日の講義では、「IPO業界の過去と今後の展望~IPOの魅力と業界・株価の謎~」というテーマで、商学部の学生や会計税務業界に興味のある学生を対象に、公認会計士としてのキャリアとIPO業界の現状またM&Aをテーマに実体験を交えて講義しました。 1月11日(木)講師 :前川研吾(RSM汐留パートナーズ株式会社 代表取締役社長CEO公認会計士)テーマ:「IPO業界の過去と今後の展望~IPOの魅力と業界・株価の謎~」 IPOの概要 EXIT手段としてのIPOとM&Aの違い IPOのプロセスと準備 IPOパズル IPOトレンド・サイクル IPO事例紹介 クロスボーダーIPO 今後のIPO業界の展望 中央大学商学部には、公認会計士や税理士のほか、多様なキャリアを目指す学生が在籍しています。今回の講義を通じて、少しでも多くの学生が士業の世界に興味を持って頂けるよう、今後もRSM汐留パートナーズとして、大学・大学院などの授業において積極的に各種講師を務め、教育の側面からも会計業界や地域社会に貢献していく所存です。
- [女性のエンパワーメント原則(WEPs)署名のお知らせ](https://shiodome.co.jp/news/20280/) - RSM汐留パートナーズは2023年12月11日、女性のエンパワーメント原則(WEPs)が掲げる7つの原則に基づいた、「職場(社内)」「市場(マーケットプレース)」「地域コミュニティ(社会)」におけるジェンダー平等を推進する活動に賛同し、署名したことをお知らせいたします。 女性のエンパワーメント原則(WEPs)について 「女性のエンパワーメント原則(WEPs)」は、2010年3月に国連グローバル・コンパクトとUNIFEM(現UN Women)が共同で作成した女性の活躍推進に積極的に取り組むための行動原則です。持続可能で包摂的な経済成長に不可欠であるジェンダー平等を達成すると同時に、企業の経済的・社会的価値を高めることを目指しています。 WEPsの7つの原則 High-level corporate leadership企業トップによるリーダーシップ Treat all women and men fairly at work without discrimination職場におけるジェンダー平等 Employee health, well-being and safety従業員の健康、ウェルビーイング、安全 Education and training for career advancement女性のキャリアアップを可能にする教育と研修 Enterprise development, supply chain and marketing practicesサプライチェーン・マネージメントとマーケティング Community initiatives and advocacy社会貢献活動とアドボカシー(啓発) Measurement and reporting成果のモニタリングと報告 CEOからのメッセージ RSM汐留パートナーズは「女性のエンパワーメント原則(WEPs)」に賛同し、すべての人の声が届き、すべての才能が評価され、すべての人にチャンスが開かれている環境を育むことを誓います。多様な人種・性別・宗教・文化を受け入れた差別のない環境でこそ、個々の様々な強みが発揮され、新しい発想や継続的な成長を引き起こし、結果として真の成功に繋がると信じています。誓いの言葉に責任を持ち、社員が個性を最大限発揮できる環境を作ること、社会に大きな影響力をもたらすこと、そして社会に貢献しより良い世の中を創ることを目指して、ジェンダー平等の推進活動に積極的に取り組んで参ります。 今後の取り組み RSM汐留パートナーズにおいては、7つの原則で掲げられた行動指針のもと、継続的にジェンダー平等と女性のエンパワーメントの推進活動を行い、社員の更なる働きやすさの実現、地域コミュニティにおける啓発、SDGs達成への貢献を目指します。まずは自社の現状を把握し、WEPsと照らし合わせ活動計画を検討し、具体的な活動内容と成果を報告することで透明性を確保します。 WEPs RSM汐留パートナーズプロフィールhttps://www.weps.org/company/rsm-shiodome-partners-limited
- [年末年始休業のお知らせ ](https://shiodome.co.jp/news/20271/) - RSM汐留パートナーズ各事務所の本年度の年末年始につきましては、下記の期間休業とさせていただきます。皆様にはご不便とご迷惑をおかけいたしますが、何卒ご容赦くださいますようお願い申し上げます。 RSM汐留パートナーズ・RSM汐留パートナーズ税理士法人・RSM汐留パートナーズ社会保険法人・RSM汐留パートナーズ行政書士法人・汐留ビジネスソリューションズ株式会社2023年12月29日(金)~2024年1月4日(木) RSM汐留パートナーズ司法書士法人2023年12月29日(金)~2024年1月3日(水)
- [RSM本部からの不動産業界の現状と展望に関連する記事に弊社代表前川のコメント掲載のお知らせ](https://shiodome.co.jp/news/20099/) - この度、RSM本部からの不動産業界の現状と展望に関連する記事に弊社代表の前川のコメントが掲載されました。以下は日本語に翻訳したものとなりますので、ぜひご覧ください。 ここ数年、世界中で不動産に複数の変化が見られました。現在ではスタンダードとなっているリモートワークは、当然のことながらこの不動産の分野に世界中で大きな影響を与えており、それはアジア太平洋地域 (APAC) も例外ではありません。リモートワークをする人が増えれば、より多くの企業がハイブリッドワークモデルを採用するため、その影響は商業用不動産と住宅用不動産の双方に波及します。新型コロナウイルスによるパンデミックの影響で、私たちの大半の生活スタイルが大幅に変わり、勤務体系も柔軟性がより求められるようになりました。ここでいう柔軟性の例として、より良いワークライフバランスやどのような場所でも仕事できる環境が挙げられます。こうした新しい暮らし方や働き方に伴い、不動産業界はこれらの変化する流れに対応するよう変革を遂げてきました。 RSM の不動産におけるプロフェッショナルは、リモートワークおよびハイブリッドワークがアジア太平洋地域の不動産市場にどのような影響を与えているか、見解を共有しています。 どれくらいのスペースが過剰と言えますか?オフィススペースの需要 2020年以前、商業用不動産は、好調な景況感を背景に、継続的かつ安定した成長を遂げていました。しかし、世界的なパンデミックとその後の法律や公式勧告により、この着実な成長は突然停止しました。 RSMシンガポールのパートナーであるデニス・リー氏は、「パンデミックは、『リモートワーク』がどのようにして可能になるのかについて再考する機会となり、その結果、稼働率の低下、大幅な賃料の改定、そして共同オフィススペースなど共有を活かすための従来のワークモデルの再構成をもたらしました。」と述べています。またリー氏は、「ここ数カ月、シンガポールの不動産投資信託でも一口当たりの分配金が減少し、全体的に家賃収益率が低下しています。」と述べています。 オーストラリアの商業用不動産市場では、依然として高級オフィススペースに対する需要が見られますが、必要とされる実際の床面積は減少しています。 RSM オーストラリアの不動産・建設担当リーダー、アダム・クロウリー氏は次のように述べています。「ほとんどの主要首都では、高級オフィススペースの需要は継続して多く、A+グレードのテナントが A+グレードのオフィススペースを探しています。しかし、A+グレードのテナントが占める床面積は減少しており、通常は高級物件を選択する大手企業や組織は、従業員の多くがハイブリッドワークモデルで稼働しているため、通常よりも少ないスペースでの賃貸契約しかしていません。」 組織が完全にオフィスに戻るのか、それともハイブリッドワークまたはリモートワークモデルを維持するのかについての議論はまだ続いています。しかし、シンガポールでは商業用不動産の需要が将来的に増加する可能性があります。 RSM シンガポールのビジネス コンサルティング ディレクター、キース・タン氏は、「『リモートワーク』に対する考え方の変化により、このような一部の落ち込みは一時的なものになると予想されます。」と述べています。「一般に、シンガポールの企業(政府機関を含む)はオフィスワークまたはハイブリッドのワークモデルに戻りつつあり、パンデミック後の回復により商業プロジェクトも軌道に戻りました。」 同様に、日本でもオフィススペースが復活するかもしれませんが、これまでとは異なる形での復活になるかもしれません。 「将来を見据えると、オフィスへの出勤率がパンデミック前の水準に戻る可能性は低いでしょう。」と RSM 汐留パートナーズのファウンダー・CEO の前川研吾氏は言います。 「その一方で、シェアオフィスやコワーキングスペースの台頭などに代表されるフレキシブルオフィスソリューションの急増が顕著です。」 都市部から地方へ: 郊外の不動産 一部の国では、人口密度の高い都市部以外の住宅用不動産市場で需要が急増しています。人々が自宅で働き過ごす時間が増えるにつれ、自宅のスペースがますます必要とされるようになり、職場に近いという利便性はそれほど重要ではなくなりました。前川氏は次のように述べています。「リモートワークの増加により郊外や地方の住宅需要が高まり、通勤の選択肢が広がっています。それが進むにつれて、都市部以外の住宅やリモートワークのニーズに合わせた環境の構築への関心が今後も続くことを期待しています。」 都市中心部の商業用不動産の需要が鈍化しているにもかかわらず、明らかに「都市周縁部や特定の機能に特化した郊外のエリア内での不動産需要の再配分」が見られるとキース・タン氏は言っています。オフィススペースへの出勤率が低下する中、都市部の高額なオフィススペースの利用事例は説得力を失っています。そのため、多くの組織は、そこで働く人々と同様に、都市部での事業運営にかかるコストを回避し、より柔軟なワークモデルに対応するために、事業を都市部から郊外に移しています。シンガポールでは、「中央ビジネス地区の総床面積に対する一般的なビジネスにおける需要は、『コロナウイルス以前』のレベルと比較してほぼ20%縮小しています。」とデニス・リー氏は認めています。 「企業はオフィススペースの需要を考え直し、ハイブリッドな働き方の要件を満たすために労働力ニーズを再調整しているようです。一方で、さまざまな場所に事業を展開するために設計された特定の地域や施設が開発され、従来の事業拠点が都市部から郊外へシフトしているようです。」 トレンドに逆らう: 柔軟なオフィスソリューション 従来のオフィススペースの需要が減少し続ける一方で、持続的で柔軟な労働環境に対する需要の高まりにより、複合用途オフィススペースやコワーキングスペースといった新しい形態の商業用不動産が誕生しています。シンガポールのタン氏は、「不動産市場の工業用および複合用途オフィススペース部門の利回りは堅調で、賃貸指数は過去24カ月連続で上昇を示しています。」と述べています。具体的には、物流、電子商取引、ハイテク分野を成長させるというシンガポール政府の計画によって推進されています。 日本でも同様に、コワーキングスペースの導入が進んでいるようです。「様々な分野で柔軟な労働環境が必要とされるようになり、その需要に応えるための不動産事業者が急速に増え続けています。」と前川氏は言います。 「従来のオフィススペースとシェアオフィスを含むリモートワークを組み合わせた、ハイブリッドな仕事スタイルが新たな標準になりつつあります。このようなスタイルは、柔軟な作業環境を構築する企業のニーズに合致しています。その結果、商業用不動産の取り巻く環境は、柔軟性とリモートワークの統合という需要の変化に対応できるようになりつつあります。」 需要の急落の影響を受けた多くの商業施設は、より現代的なニーズに合わせて施設を変えていく検討を続けています。オーストラリアでは「高級ではないオフィススペースのオーナーや投資家は、新しいテナントを誘致するための改修に投資するか、または、多額な賃貸優遇措置を講じるか、といった選択肢を検討しています。一方、建物を他の用途に再利用する選択肢を模索している企業もあります(商業施設から住宅への転換等)。」とRSMオーストラリアのアダム・クロウリー氏は述べています。 まとめ アジア太平洋地域におけるリモートワークやハイブリッドワークへの労働環境の変化は、不動産情勢に大きな影響を与えています。従来のオフィススペースの需要は課題に直面している一方で、柔軟なワークモデルの台頭により、複合用途オフィスやコワーキングスペースなどの革新的なソリューションが生まれています。企業が進化する仕事のモデルに対応する中で、より多くのスペースと柔軟性への要望を反映して、郊外の住宅不動産に向かう傾向が顕著であります。これを受けて、不動産業界は変化し適応性を取り入れ、より柔軟でリモートに適した世の中への需要を満たすために、オフィススペースの従来の概念を再定義しています。
- [FITチャリティ・ラン2023参加のお知らせ](https://shiodome.co.jp/news/19898/) - 2023年12月10日、明治神宮外苑周辺道路において開催された第19回「FITチャリティ・ラン2023」にRSM清和監査法人とともに”RSM Japan”として参加してまいりました。 FITチャリティ・ランは2005年より開催されているチャリティマラソンであり、金融サービスや関連する会計税務・コンサルティング事業などに従事する企業の有志によって設立され、運営されています。その活動によって得た収益等は、地域社会において重要な活動している団体でありながら、認知度等の問題で活動資金を十分に確保することができていない団体への寄付を通じて社会貢献を行っております。 また、金融業界全体が一致団結して社会貢献に取り組む姿勢を示し、企業やグループ内でのチームワークを高め、業界全体の連帯感を促進することもFITチャリティ・ランの目標一つとしております。 今年の FIT チャリティ・ランは国内外の金融機関、監査法人、コンサルティングファームなど92 社から4,500名以上が参加し、寄付金総額53,662,400円(後日正式な金額が確定します)と発表されました。(FIT2023公式サイトより) RSM Japanからも約20名がランナー及び運営ボランティアとして参加しました。RSM Japanのメンバーの交流の場ともなり、大変有意義なものとなりました。今回RSM Japanとして初めての参加となりましたが、来年以降も継続していければと考えております。また豊かな地域・社会の実現に貢献すべく、様々な活動を積極的に行っていく所存です。 RSM汐留パートナーズとしてもかかわる全ての人が“Well-being”であることを経営の根幹とし、かつそれが、長期間持続可能な状態 (サスティナブル)である世界を目指しております。社会とともに持続的な成長・発展を実現させることを使命として日々行動してまいります。
- [弊社代表前川及び監査役瀬尾が青山学院大学大学院の授業に登壇しました](https://shiodome.co.jp/news/19707/) - 青山学院大学大学院の会計プロフェッション研究科の授業に、弊社代表の前川が10月20日、監査役の瀬尾が11月24日に登壇し講師を務めました。当日の講義では公認会計士を志す学生をはじめとした大学院生を対象に、公認会計士としてのこれまでの経験、公認会計士業界の現状と今後の展望、キャリア構築をする上での重要な考え方などについて講義しました。 10月20日(金)講師 :前川研吾(RSM汐留パートナーズ株式会社 代表取締役社長CEO 公認会計士)テーマ: 公認会計士試験の勉強 監査法人の国内監査部及びIPO事業部での経験 独立開業及び会社経営 ワンストップファーム グローバルネットワーク 11月24日(金)講師 :瀬尾安奈(RSM汐留パートナーズ株式会社 監査役 公認会計士)テーマ: 公認会計士試験の勉強 監査法人の地方事務所、国際部、国内部での経験 女性公認会計士のキャリア 語学、国際業務、海外生活 上場会社の社外役員への就任 青山学院大学大学院の会計プロフェッション研究科には、公認会計士を目指す学生が多く在籍しています。キャリアデザイン・コース2年制、キャリアアップ・コース1年半制の2つのコースがあり、いずれも「会計監査プログラム」を選択して、一定以上の単位を取得することで、修了後に公認会計士短答式試験の一部科目(企業法を除く3科目)の免除申請が行えます。 今後もRSM汐留パートナーズとして、大学・大学院などの授業において積極的に各種講師を務め、教育の側面からも会計業界や地域社会に貢献していく所存です。
- [RSM国際会議参加のお知らせ](https://shiodome.co.jp/news/19423/) - 2023年10月31日~11月3日の4日間、RSMの国際会議がスペインのバルセロナで開催されました。RSM汐留パートナーズからは代表の前川とインターナショナルコンタクトパートナーの黒住、インターナショナルコンタクトディレクターの許の3名で参加してまいりました。 この会議では世界各国のRSMからメンバーが集い、最新の世界のビジネストレンドについて共有し合い、ネットワークの構築及び交流を深めることができました。 今回はRSMの2030年に向けたビジョンを共有し、ESG、生成AIを含むテクノロジー、マネージドサービス等に関するサービス提供などについてフォーカスし、未来創造の議論がなされました。 どのセッションも内容の濃いものばかりで大変学びが多いものでした。クライアントを取り巻く経済環境やビジネス環境が大きく変化する中、その支援をするプロフェッションファームである私たちの業界も大きく変わろうとしていることを改めて実感しております。 世界各国のメンバーファームと更なる連携強化をしていく必要があること、そして私たちが自らイニシアティブを取り世界にポジティブな影響を与えていくことが使命であると感じています。また、グローバルミドルマーケットのクライアントが進めているのと同様に、私たちも積極的にテクノロジーを活用し、多様なネットワークを生かして産業にもフォーカスしたナレッジを蓄積し、クライアントに貴重な経験を提供するということを再認識することができました。 また、今回の国際会議において、RSMインターナショナルのCEOである Jean Stephens氏が2024年5月をもって退任されることが発表されました。彼女は17年という長きに渡り、明確で強力なリーダーシップを発揮し、世界各国のメンバーファームの関係構築および強化を図り続けました。彼女の在任中にRSMは、売上US$2.4bn(約3600億円)、72ヶ国、23,000人という規模から、売上US$8bn(約1.2兆円)、120ヶ国、57,000人を擁する規模へ急速に拡大するなど、多大な功績を残されました。昨年、RSM汐留パートナーズをRSMのメンバーファームに迎えていただき、私たちは短い間でしたが彼女と一緒に仕事をできたことを大変光栄に思います。 今回の国際会議で得た知識や経験を生かし、クライアントの皆様にはより一層ハイクオリティなサービス、有益な情報を提供し、より一層社会に貢献してきたいと考えております。今後ともよろしくお願いいたします。
- [弊社代表前川のインタビュー掲載のお知らせ](https://shiodome.co.jp/news/18435/) - RSMインターナショナル本部から弊社代表の前川がインタビューを受けました。以下は日本語に翻訳したものとなります。前川の自己紹介から始まり、RSM加盟の経緯、今後の展望についてなど幅広くお話しさせていただきました。RSM汐留パートナーズはRSMが掲げる『RSM 2030年グローバル戦略』のため、RSMの日本におけるメンバーファーム、そしてRSM JAPANの一員として貢献していく所存です。 RSM汐留パートナーズは、RSMインターナショナルに2022年11月に加盟した事務所です。汐留パートナーズは、2008年に前川研吾がアーンスト・アンド・ヤングの監査部門を退職した後に設立され、国際的に認知されたファームに成長しました。また、慶應義塾大学大学院経営管理研究科にてEMBAを取得。今回のインタビューでは、汐留パートナーズがRSMインターナショナルに加わった経緯、そして2030年グローバル戦略についてお話を伺いました。 自己紹介と、これまでのキャリアの道のりをお聞かせください。 北海道で生まれ、大学まで過ごしました。その後EYに入社し、約5年間、監査やIPO関連の業務に従事し、貴重な経験を積むことができました。 2008年に汐留パートナーズを設立しました。会社は順調に成長していき、サービスラインも拡大し、ワンストップで様々なサービスを提供できるようになりました。 2012年、黒住准の入社によって大きな転機を迎えました。当時、私は経営手腕には自信がありましたが、英語力が不足していました。そこで彼が率先して外資系企業へのサービス拡大を進めてくれたのです。私は国際ビジネスを成長させるチャンスを掴もうと、語学習得に全力を注ぎました。 ネットワークに加盟された経緯を教えてください。 前述の通り、黒住と私は国際ビジネスの拡大に成功し、2018年、PKFのネットワークに加盟することで第一歩を踏み出しました。このネットワークはRSMに比べると規模は小さかったものの、私たちに国際的な提案やコラボレーションの貴重な機会を与えてくれました。 その後、RSM清和監査法人の理事長である戸谷さんと再会する機会が訪れました。彼とはEY時代の同僚であると同時に友人でもありました。彼がRSM Japanとのつながりのきっかけを作ってくれました。「もっと大きな世界で一緒に活躍しませんか?」という魅力的な提案を頂き、ありがたくお受けすることとしました。 RSMについて調べていくうちに、人材、クライアント、テクノロジーを大切にしながら急成長しているネットワークであるという点に大きな魅力を感じ、RSMに加盟することを決めました。 慶應義塾大学大学院経営管理研究科でEMBAを取得されたそうですね。20年間近く公認会計士・コンサルティングのプロフェッショナルとして活躍された後、この資格を取得されたのはなぜですか? 慶應義塾大学のビジネススクールは、日本で最も歴史のあるビジネススクールです。慶應義塾大学のEMBAプログラムは、熟練したビジネスエグゼクティブのための国内有数の2年間の教育機会として高い評価を有しています。非常に優秀な教授陣が指導するカリキュラムが盛りだくさんとなっています。 公認会計士として約20年、経営者として約15年の経験を持つ私は、専門的なスキルだけでなく、多様な経営能力を身につけ、組織内の継続的な成長とイノベーションを促進するために、もっと学ぶ必要性を感じていました。 大学院と会社経営の両立は大変ではありましたが、2年間でプログラムを修了し、EMBAを取得することができました。日本とグローバルの両方で次世代をリードしたいという思いから、長期的かつグローバルな視野を持ち、ビジョナリーリーダーとして永続的なインパクトを与えることを目指しています。 RSM汐留パートナーズの新卒採用プログラムについてお聞かせください。 私たちは、経験豊富なプロフェッショナルの中途採用以外に、毎年5~10名の新卒者またはそれに準ずる若くてポテンシャルのある方を優先的に採用しています。多様な人材に対応するため、20代の従業員に必要なビジネスマナーや特定のニーズに合わせた幅広い研修プログラムを用意しています。 RSM汐留パートナーズでは、スペシャリストとしての専門性を養う一方で、より幅広いゼネラリストとしてのアプローチを受け入れる環境を整えています。当社の研修は、会計、税務、財務の専門性を高めるだけではなく、他部門のサービスや業務の理解、営業活動、業務効率化、さらにはテクノロジーやマネジメント・スキルといった分野にも重点を置いています。 キャリア形成に関しては、特定の分野に特化したい社員、ゼネラリストとして経営に興味がある社員、あるいはその両方を目指す社員をサポートしています。 新入社員研修、コンピテンシー強化研修、OJTの3つの研修体系に加え、総合的なビジネスセンス向上のための研修を提供しています。RSM Campusの研修を最大限に活用するためには、日本人の従業員の英語力が不足しているという課題を認識し、クラウドベースの研修サービスを率先して導入しました。これにより、社員は幅広いトレーニング・リソースにアクセスし、その恩恵を受けることができるようになりました。 RSMに加盟してもうすぐ1年になりますが、ネットワークに対する全体的な印象はいかがですか? まず、RSMのグローバルなブランド力は紛れもなく素晴らしいものです。グローバル・ミドル・マーケットにおける卓越したクライアントの存在から、このブランド力を日本でのマーケティングやリクルーティングに活用することに大きな可能性を感じています。RSMのグローバル・エグゼクティブ・オフィスと協力することは、日本市場でRSMのブランドを確立し、認知度を高める上で非常に重要です。 さらに、RSM の様々な国際会議に出席した後、RSM のプロフェッショナルの親切さと情熱に心を打たれました。私たちのような新しいメンバーファームとオープンに関わることで、コラボレーションの文化が育まれました。その結果、以前所属していたネットワークに比べ、協力体制が強化され、紹介件数も顕著に増加しました。 最後に、多様性を尊重し、一人ひとりが輝けるようにするRSMの姿勢に深く感銘しています。RSMのダイバーシティとインクルージョンに対するアプローチは、私の心に響き、非常にポジティブな印象を残しています。多様性を受け入れることは、クライアントに信頼されるサービスのレベルを高めるだけでなく、なにより当社の創業時の価値観にも合致しています。 『RSM 2030年グローバル戦略 』について、最も共感することは何ですか? ベトナムのホーチミンで開催されたAPAC会議でのジーン・スティーブンスCEOとのパネルディスカッションにて、私はRSM2030年グローバル戦略を読んで大変感銘を受けたことについて、最大限の敬意を表明しました。この包括的な戦略は、私たちが向かうべき方向性について、明確さを与えてくれたと思います。4つの戦略ドライバーのうち、私は”テクノロジー”と “人”に大きな関心を持っています。 労働人口が減少する日本では、テクノロジーを活用して効率化を図り、ビジネスの成長につなげることが急務となっています。また、AIをはじめとするテクノロジーの進化に伴い、コミュニケーション力や交渉力など、プロフェッショナルに不可欠なスキルの向上がますます重要になっていると感じています。 2030年グローバル戦略には、数多くの具体的な目標が含まれています。その一つひとつが優れた視点を有しており、重要な意味をもっていると考えます。私はこれらの戦略目標から学び、私たちの日々の業務に取り入れたいと考えています。 私が大きな喜びと興奮に包まれているのは、これからの8年間を私たちだけで乗り切るのではないということを実感しているからです。私たちはグローバルなRSMファミリーと連携し、素晴らしい未来を創造するという共通のビジョンに向かって共に歩むことになります。私たちは一丸となって成功するために全力を尽くすことをお約束します。 RSM汐留パートナーズの5年後の姿は? RSM汐留パートナーズは、様々なサービスを提供しておりますが、諸外国のRSMメンバーファームと比べると、まだまだ小さな事務所であると感じております。これは、日本の会計・税務業界の歴史と関係しており、お話すると非常に長くなりますので、詳細は割愛させていただきます。とはいえ、私たちは日本市場での存在感を引き続き高めていきたいと考えています。 より多くのクライアントにサービスを提供するため、マーケティング活動と営業活動に力を入れていきます。同時に、そのようなクライアントに質の高いサービスを提供できる人材を採用し教育ていきます。以上のような活動を通じて、5年後には現在の1.5倍以上の規模にしたいと考えています。 また、サービスの幅をさらに広げるため、IT コンサルティング事業も開始する予定です。テクノロジーを理解し活用することは、RSM の今後の発展に不可欠です。クライアントにITコンサルティングサービスを提供する前に、まずは自分たちが自信を持ってテクノロジーを活用できるようになりたいと考えています。 また、日本におけるRSMの認知度を向上させ、5年後には多くの企業やこの業界で働くプロフェッショナルがRSMを知るような状況を作ることにも積極的に関与していきたいと考えています。 余暇には何をするのが一番好きですか? 余暇は自分が好きな趣味の活動に没頭しています。旅行、ドライブ、ゴルフ、英会話などです。海外では「旅行&英語」、国内では「旅行&ドライブ」や「旅行&ゴルフ」など、これらの楽しみを組み合わせてリフレッシュしています。 幸いなことに、私は同僚たちと強い絆で結ばれています。私たちは一緒にいる時間を大切にし、時には一緒に余暇を過ごすこともあります。私は彼らを単なる同僚ではなく、家族だと思っています。 同僚や家族から、「研吾さんの趣味はすべて仕事につながっている」と言われることがよくあります。個人的には、「仕事に費やす時間は人生の大部分を占めるのだから、仕事自体も思い切り楽しめるようになりたい!」と思っています。
- [弊グループRSM汐留パートナーズ社会保険労務士法人使用システムにおける障害について](https://shiodome.co.jp/news/16791/) - このたび、弊グループRSM汐留パートナーズ社会保険労務士法人が給与計算・社会保険等の業務に使用するクラウドサービス「社労夢」において、同サービスを運営・管理する株式会社エムケイシステムのサーバーがランサムウェアによる第三者からの不正アクセスを受けたことにより、接続ができない障害が生じております。 現時点で明らかになっている点(6月12日12:00時点) 被害にあったサーバーには、給与計算・社会保険手続等に必要なデータが格納されているもので、その中には従業員のマイナンバーを含む個人情報が含まれています。 株式会社エムケイシステムのデータセンター上のネットワークに不正アクセスがあり、ランサムウェアが実行され、サーバーのデータが暗号化されました。 6月4日早朝時点でのバックアップデータがあり、その時点までのデータは保持され、失われていないことを確認しています。 現時点では、被害にあったサーバーのデータが外部へ流出したという確認はされていませんが、流出の可能性を考慮し、株式会社エムケイシステムにより、引き続き調査が行われています。 今後の対応について 現時点では、株式会社エムケイシステムにより、原因の特定や情報流出の有無について引き続き調査が行われております。詳細については、以下のウェブサイトをご参照ください。https://www.mks.jp/company/topics/新たな情報が判明し開示が必要な場合には、速やかにお知らせいたします。 また、個人情報流出の可能性を考慮し、個人情報の保護に関する法律の規定に基づき、個人情報保護委員会への報告対応を開始しております。 給与計算、社会保険手続等の業務については、サービスを維持できるよう、代替システムの利用等を含めた対応策を検討し、業務を速やかに平常化できるよう努めて参ります。 皆様には、多大なるご心配とご迷惑をおかけしていることを、重ねてお詫び申し上げます。
- [RSM APAC2023 参加のお知らせ](https://shiodome.co.jp/news/16750/) - 2023年5月29日~6月1日の4日間、RSMのアジアパシフィック会議がベトナムのホーチミンで開催されました。RSM汐留パートナーズからは代表の前川とインターナショナルコンタクトパートナーの黒住、インターナショナルコンタクトディレクターの許の3名で参加してまいりました。 今回の国際会議では、代表の前川がパネラーとして登壇し、CEOのJean氏、アジアトップのJames氏、リーダーのJason氏とパネルディスカッションをさせていただきました。 パネルディスカッションでは、人とテクノロジーが重要であり投資をしていくというお話をさせていただきました。そして国際感覚のある人材の採用・教育などについても議論がなされました。 また、RSM汐留パートナーズについて英語でプレゼンテーションする機会もあり、アジア各国にRSM汐留パートナーズの存在をアピールしてまいりました。 他にもアジア市場の今後の展望、ITやESGに関するコンサルティング領域など、内容の濃い会議ばかりで大変学びの多いものとなりました。プロフェッショナルファームとしての今後の取り組みの参考になりました。 今回の会議で得た知識や経験を生かし、クライアントの皆様にはより一層ハイクオリティなサービス、有益な情報を提供し、社会に貢献してきたいと思います。今後ともよろしくお願いいたします。
- [RSM汐留パートナーズ創業15周年](https://shiodome.co.jp/news/16258/) - RSM汐留パートナーズは、本日4月1日をもちまして創業15周年を迎えることとなりました。 弊社のクライアントの皆様をはじめ、従業員とその家族の皆様、そして応援をしてくださっています全ての方々に支えられ15周年を迎えることができましたことを心より感謝申し上げます。 創業以来私たちはクライアントの皆様の良きパートナーとしてクライアントが前進できるように伴走してまいりました。目まぐるしく変化する社会とビジネス環境の中、クライアントの皆様が自信を持って前進し続けられることが私たちの成長の糧となっております。 専門性、誠実性、革新性を自らに課し、クライアントの皆様へ高度なサービスを提供できるよう一層の研鑽に励んでまいります。 私たちは、「従業員とその家族の”Well-being”を経営の根幹とし、ワンストップサービスを通じてクライアントが自信を持って前進できるように努め、豊かな地域社会の実現に貢献します。」という企業理念のもと尽力してまいりますので今後とも一層のご理解ご支援を賜りますようお願い申し上げます。
- [RSM国際会議の参加のお知らせ](https://shiodome.co.jp/news/16169/) - 2023年2月1日~3日にかけて、世界中のRSMのマネージングパートナーが集う国際会議がイギリス・ロンドンで開催されました。RSM汐留パートナーズからは代表の前川が参加してまいりました。RSMのメンバーファームが実際に顔を合わせる国際会議が開催されたのは2019年11月以来約3年ぶりのことでした。 会議ではRSMの2030年に向けた8か年ビジョンを共有し、その目標の達成のためには4つのキードライバーが重要であること、そして世界中のメンバーファームが密に連携し強固な基盤を作っていくこと等について話し合いました。 また、日本の経済状況やコロナ禍の事業の伸長、現在の課題とその克服方法などについて発表させて頂く機会もありました。 RSM汐留パートナーズは2022年11月のRSM加盟後、初めての国際会議でしたが、世界中の有益な情報の共有、また世界各国とのネットワーク構築及び交流を図ることができ非常に有意義な時間となりました。 今回の会議を生かし、クライアントの皆様にはより一層ハイクオリティなサービス、有益な情報を提供してまいります。今後ともよろしくお願いいたします。
- [RSM Internationalからアジア太平洋地域の収益が10億ドルに到達のプレスリリースのお知らせ](https://shiodome.co.jp/news/16055/) - RSM本部より全世界に向けてアジア太平洋地域 (APAC) で18.5%の成長を遂げ、同地域の年間収益が初めて10億ドルを突破したというプレスリリースが行われました。以下は日本語に翻訳したものになります。RSM汐留パートナーズはRSMの日本におけるメンバーファーム、そしてRSM JAPANの一員としてRSMの成長・発展に貢献していく所存です。今後ともご支援賜りますようよろしくお願い申し上げます。 RSMのアジア太平洋地域の収益が10億ドルに到達-ネットワークの人員強化によって RSM、アジア太平洋地域で18.5%の成長を達成-同地域で過去最高の収益を記録 地域のイノベーションハブが企業投資と優秀な人材を呼び込む 第一世代のリーダーが退出を模索する中、企業の継承支援が焦点となる 業績とともに「新グローバル成長戦略」を発表 中堅企業向けに保証、税務、コンサルティングサービス等を提供するリーディングカンパニー『RSM』は、アジア太平洋地域 (APAC) で18.5%の成長を遂げ、同地域の年間収益が初めて10億ドルを突破しました。 急成長の主な要因は、企業の財務支援に加え、ITコンサルティングやリスクアドバイザリーサービスの需要が増加したことです。これにより、APACのRSMメンバーファームは過去12か月で1,600人以上の人員を増やしており、その中には日本から新たに参入したメンバーファーム「RSM汐留パートナーズ」も含まれます。 M&Aと企業間契約は、APACにおけるRSMの主要な成長源です。RSMはコーポレートファイナンスと金融デューディリジェンスサービスにより43%の成長を記録。既存のビジネスリーダーの世代が撤退を準備する中で、事業継承ソリューションの案件も増えてきました。 また、同地域におけるRSMのITコンサルティングサービスは、企業が長期的な成長と安定を促進するためにデジタルソリューションとデータ主導のプロジェクトを受け入れたことで27%の成長を記録。サイバー攻撃による脅威の増加が続く中、リスクアドバイザリーサービスについても25%の成長を遂げています。 加えて、RSMの監査サービスも19%、税務サービスは18%成長しました。 RSMのアジア太平洋地域のリージョナルリーダーであるJason Yau氏は次のようにコメントしています。 「この1年間、アジア太平洋地域の企業間で共通する1つのテーマが『変化』でした。長期的なパンデミックからの回復と成長計画の実施、この地域の新興イノベーション拠点にいる優秀な人材の確保、リーダーシップチームの強化のための事前計画など、当社のクライアントは『進化』に焦点を当て、変化によるチャンスをいかに引き出すか、最善の策を考えています。これは、企業が中国以外の国での調達や輸出の機会を求めて、地域のイノベーションと製造のハブが台頭していることと重なります。シンガポール、シドニー、インド、インドネシアなど、APACの伝統的な経済中心地から企業や人材が地域拠点に引き抜かれているのです。」 2030年に向けたグローバル戦略がRSMの新時代を築く 今月発表されたRSMの「グローバル戦略2030」は、2030年までに売上高を倍増させることを目標とした複数年にわたる大規模な成長・変革プログラムの概要を示しています。この戦略により、RSMはグローバルなデジタル・デリバリー・モデル、インサイト生成の強化、自動化、ビッグデータ、機械学習、人工知能の活用を拡大し、新しい仕事とスキルの世界を受け入れ、その変化を通して企業をサポートします。 RSMの戦略では、絶え間なく俊敏性と革新性を高めつつ、国際的な共通の方法論と構造のもとでファームをさらに統合し、サービスの質を高め、責任ある事業活動を推進していきます。成長志向が強く、国際的な視野を持つグローバルクライアントが増え続ける中、RSM は優れたクライアントサービス、テクノロジーを駆使した専門家による洞察、そして個々のニーズに合った魅力的なソリューションを提供することに引き続き注力していきます。 さらにこの戦略では、人材に多大な投資を行い、RSMをシームレスなグローバル組織へと変革します。 チーム、文化、ガバナンス、プロセスを国境を越えて積極的に連携させ、クライアントとRSMの両者が自分たちの目標を達成できるように導きます。 Jason Yau氏は次のようにも述べています。 「私たちは前例のない変化を通じてビジネスを支えているため、アジア太平洋地域における当社の急成長は、RSMネットワークの多くの部分で再現されています。私たちの新しい戦略によって、データを重視し、技術を駆使した国際的な組織への変革を継続できるようになるでしょう。」 RSM InternationalのCEOであるJean Stephens氏は、次のように述べています。 「私たちは、データドリブン型のテクノロジー製品やサービス、新しい働き方、持続可能性と目的に対する明確な焦点を特徴とする新しい変革的なビジネス時代に突入しました。私たちの成長は、このような課題に効果的に対応することによって支えられてきました。私たちの組織としての信条は「Take Charge of Change(変化を担う)」。長期にわたる深い関係を築くとともに、クライアントと従業員が自信を持って意思決定するために必要なものを提供することで彼らがより成功するためのサポートをしていきます。組織として、私たち自身の加速度的な変革は、すべてのクライアントと同僚に成功するための自信を植え付けることになるでしょう。」
- [RSM Internationalから2022年業績報告及び2030年ビジョンのプレスリリースのお知らせ](https://shiodome.co.jp/news/16022/) - RSM本部より全世界に向けて2022年業績報告及び2030年ビジョンのプレスリリースが行われました。以下は日本語に翻訳したものになります。RSM汐留パートナーズはRSMの日本におけるメンバーファーム、そしてRSM JAPANの一員としてRSMの成長・発展に貢献していく所存です。今後ともご支援賜りますようよろしくお願い申し上げます。 RSM、世界で80億ドルの収益を発表-変革をもたらす「グローバル戦略2030」の出発点 全世界での収益が3年間で41%以上増加 RSMの全リージョンにおいて2年連続で2桁成長を達成 RSM従業員数が全世界で10%以上増加し57,000人に 2030年までに「収益倍増」を目指す 中堅企業向けに保証、税務、コンサルティングサービス等を提供するリーディングカンパニー『RSM』は、本日、2022年の収益が80億ドルを超えたことを発表しました。また、変革と成長、そしてすべてのステークホルダーに対する前向きで持続的な価値の創造に焦点を当てた「グローバル戦略2030」も発表しました。 2022年、RSMは全世界で15%の成長を遂げ、すべての地域において2桁成長を達成しました。手数料収入は新興市場であるラテンアメリカ(26%増)とアジア太平洋地域(19%増)で急速に増加しました。 北米と欧州でも、それぞれ14%・17%増という目覚しい収益成長を記録し、中東・北アフリカ地域は17%、その他のアフリカ地域は10%の収益成長を遂げました。 2022年の業績 – コンサルティングサービスに対する需要が大きく拡大 RSMは世界の中堅企業向けにプロフェッショナルサービスを提供するリーディングカンパニーですが、財政や経済政策の転換を図りたい企業やサプライチェーンの混乱で困惑する企業、パンデミックによって事業やヒューマンリソースに影響を受けた企業などからの相談が拡大したことで、過去3年間の全世界収益が41.7%も増加しました。2022年、RSM のコンサルティングサービスによる全世界報酬は、 IT コンサルティングによる26%増を含め、37%増となりました。サイバー攻撃は依然として絶え間ない脅威であるため、リスクアドバイザリーによる収益も26%増加しています。 RSMはまた、会計、税務、監査の分野でも世界的に大きな伸びを示しました(会計11%増、税務8%増、監査6%増)。税務アドバイザリーサービスに対する需要は、規制の変更や税金の複雑化といったニーズに対応するために急速に増加し、監査と税務は引き続き RSMの中核的なサービスとして位置づけられます。 RSMは、他の追随を許さないインクルーシブな企業文化と従業員の成長や経験蓄積に注力していることから多くの人材を惹きつけており、過去2年間だけでも従業員数が18%増加しました。 RSMインターナショナルのCEOであるJean Stephens氏は次のように述べています。 「RSMの目的は、変化の激しい世界に自信を持たせることです。私たちの急成長は、前例のない変化と予測不可能な環境にもかかわらず、120カ国以上のクライアントの価値を引き出すために全世界のプロフェッショナルがサポートした結果です。今後も成長を続け、グローバル・ミドルマーケットの企業向けにプロフェッショナルサービスを提供するグローバルリーダーとしての地位を確固たるものにするために、私たちは魅力的な製品とソリューションとともに、私たちのビジネスをよりインサイト主導でデジタルな組織へと改変しながら将来に向けて投資をしていきます。私たちの目標は、現在の取引環境と変化する世界経済の展望に立ち向かう自信を与え、従業員、クライアント、地域社会にとって常に前向きで持続的な価値を創造していくことです。」 2023年のRSMの事業・経済見通し RSMは、2023年には税務サービスに対する需要が増加すると予測しています。これは、OECDが税務申告のデジタル化やグローバルミニマム税率を要求したものの、各国がその対応に苦慮しているためです。 同様にRSMのプロフェッショナルは、来年も世界でM&Aが増加するだろうと予想しています。この背景には、テクノロジーに特化した企業が規模拡大のための代替資金源を求めていること、プライベート・エクイティ企業が大量の資金を投入していること、ボルトオンやクロスボーダーの取引が増加していることなどが挙げられます。RSMは、スキル、サプライチェーン、エネルギー、インフレの危機による悪影響を打ち消すために、企業がM&Aを検討するケースもあると予測しています。 RSMは、今後企業が組織改革をより加速させるとともに、イノベーションにも注力し、人工知能や自動化技術の統合、チームの再教育、データ分析やビジネスプロセスのアウトソーシングの活用などを検討しつつ業績を維持・向上させると予測しています。 2030年に向けたグローバル戦略がRSMの新時代を築く 今月発表されたRSMの「グローバル戦略2030」は、2030年までに売上高を倍増させることを目標とした複数年にわたる大規模な成長・変革プログラムの概要を示しています。この戦略により、RSMはグローバルなデジタル・デリバリー・モデル、インサイト生成の強化、自動化、ビッグデータ、機械学習、人工知能の活用を拡大し、新しい仕事とスキルの世界を受け入れ、その変化を通して企業をサポートします。 RSMの戦略では、絶え間なく俊敏性と革新性を高めつつ、国際的な共通の方法論と構造のもとでファームをさらに統合し、サービスの質を高め、責任ある事業活動を推進していきます。成長志向が強く、国際的な視野を持つグローバルクライアントが増え続ける中、RSM は優れたクライアントサービス、テクノロジーを駆使した専門家による洞察、そして個々のニーズに合った魅力的なソリューションを提供することに引き続き注力していきます。 さらにこの戦略では、人材に多大な投資を行い、RSMをシームレスなグローバル組織へと変革します。 チーム、文化、ガバナンス、プロセスを国境を越えて積極的に連携させ、クライアントとRSMの両者が自分たちの目標を達成できるように導きます。 Jean Stephens氏は次のようにコメントしています。 「私たちは、データドリブン型のテクノロジー製品やサービス、新しい働き方、持続可能性と目的に対する明確な焦点を特徴とする新しい変革的なビジネス時代に突入しました。私たちの成長は、このような課題に効果的に対応することによって支えられてきました。私たちの組織としての信条は「Take Charge of Change(変化を担う)」。長期にわたる深い関係を築くとともに、クライアントと従業員が自信を持って意思決定するために必要なものを提供することで彼らがより成功するためのサポートをしていきます。組織として、私たち自身の加速度的な変革は、すべてのクライアントと同僚に成功するための自信を植え付けることになるでしょう。」
- [公認会計士ナビへの記事掲載のお知らせ](https://shiodome.co.jp/news/15928/) - この度、公認会計士のためのWEBメディア「公認会計士ナビ」に、RSM汐留パートナーズの記事が掲載されました。 昨年5月にも取材をしていただきましたが、今回の記事では、RSMへの加盟の舞台裏、今後の展望、BIG4に次ぐファームとしてのポジションの確立等についてお話させていただいております。 ぜひ以下よりご覧頂ければと思います。 掲載記事 世界第6位のグローバルネットワークへの躍進、RSM汐留パートナーズがRSM インターナショナルに加盟した狙いと舞台裏 公認会計士ナビとは? 公認会計士ナビは、公認会計士のためのWEBメディアです。国内有数の公認会計士専門メディアとして、公認会計士や監査法人に関するニュース、インタビューやコラム、キャリア・転職情報など、公認会計士や監査法人業界の「今」を伝えるリアルな情報を発信しています。 【サイト名】公認会計士ナビ【URL】https://cpa-navi.com/【運営会社】株式会社ワイズアライアンス【運営会社URL】https://wise-alliance.co.jp/
- [年末年始休業のお知らせ](https://shiodome.co.jp/news/15805/) - RSM汐留パートナーズ各事務所の本年度の年末年始につきましては、 下記の期間休業とさせていただきます。皆様にはご不便とご迷惑をおかけいたしますが、何卒ご容赦くださいますようお願い申し上げます。 RSM汐留パートナーズ・RSM汐留パートナーズ税理士法人・RSM汐留パートナーズ社会保険法人・RSM汐留パートナーズ行政書士法人 ・汐留ビジネスソリューションズ株式会社2022年12月29日(木)~2023年1月4日(水) RSM汐留パートナーズ司法書士法人2022年12月29日(木)~2023年1月3日(火)
- [書籍『現場担当者が直面する疑問に回答! 外国人雇用の法務・労務・税務Q&A259』出版のお知らせ](https://shiodome.co.jp/news/15840/) - RSM汐留パートナーズ株式会社監修の書籍『現場担当者が直面する疑問に回答! 外国人雇用の法務・労務・税務Q&A259』を日本法令より出版いたしました。 執筆者は以下の6名となります。RSM汐留パートナーズ株式会社代表取締役社長CEO:前川研吾(公認会計士・税理士)RSM汐留パートナーズ行政書士法人パートナー:景井俊丞(行政書士)RSM汐留パートナーズ社会保険労務士法人パートナー:高橋圭佑(社会保険労務士)RSM汐留パートナーズ社会保険労務士法人パートナー:関口智史(社会保険労務士)RSM汐留パートナーズ税理士法人パートナー:土屋明誠(公認会計士・税理士)RSM汐留パートナーズ株式会社シニアマネージャー:山村一郎(米国税理士) これから外国人を雇用される企業の管理部や人事労務管理を担う担当者等が、外国人雇用に関する疑問を解消したり、法務・労務・税務それぞれの分野における知識を深めることができる非常に有用な1冊となっております。 第1章 外国人雇用の法務 ~受入れ検討時~第2章 外国人雇用の法務 ~ホワイトカラー系の在留資格~第3章 外国人雇用の法務 ~ブルーカラー系の在留資格~第4章 外国人雇用の労務 ~外国人雇用に関する諸手続き~第5章 外国人雇用の税務 本書の概要 書籍タイトル:『現場担当者が直面する疑問に回答! 外国人雇用の法務・労務・税務Q&A259』執筆者:前川研吾・景井俊丞・高橋圭佑・関口智史・土屋明誠・山村一郎監修者:RSM汐留パートナーズ株式会社出版社:日本法令発売日:2022/12/18購入方法:https://www.amazon.co.jp/dp/4539729411
- [記事・動画掲載のお知らせ](https://shiodome.co.jp/news/15816/) - この度、CPA会計学院が運営する公認会計士受験生のためのWEBメディア「CPASS」に、弊社のRSM加盟についての記事が掲載され、その様子がYouTubeチャンネル「CPAくにみんチャンネル」にも掲載されました。 今回は、弊社代表の前川より、RSM加盟までの経緯と今後の展望、RSMに属するメリットや、求職者に向けて中堅ファームの魅力やRSM汐留パートナーズでの活躍の仕方いった内容が掲載されております。 ぜひ以下よりご覧頂ければと思います。 掲載記事 世界第6位RSMに加盟した前川研吾の挑戦を続ける姿勢と今後の展望!! 掲載動画 【くにみんのキャリア対談】世界第6位RSMに加盟した前川研吾の挑戦を続ける姿勢と今後の展望!!
- [RSM Internationalから世界へのプレスリリースのお知らせ](https://shiodome.co.jp/news/15430/) - 昨日、RSM本部より全世界に向けてプレスリリースが行われました。以下は日本語に翻訳したものになります。今後RSM汐留パートナーズはRSMの日本におけるメンバーファーム、そしてRSM JAPANの一員として成長・発展してまいります。RSM汐留パートナーズは、「私たちは、従業員とその家族のWell-beingを経営の根幹とし、ワンストップサービスを通じてクライアントが自信をもって前進できるように努め、豊かな地域・社会の実現に貢献します。」という企業理念のもと引き続き精進してまいります。今後ともご支援賜りますようよろしくお願い申し上げます。 日本の新しいファームがアジア太平洋地域でのRSMのサービスをさらに強化 汐留パートナーズがRSMに加わり、クロスボーダー業務支援やデジタルファーストソリューション等の需要増加に対応 2030年までに対内投資を54.5兆ドルに増加させるという日本の戦略に合致したグローバルファーム 世界の個人資産が過去最高水準に増加する中、RSMのメンバーの専門知識により、富裕層向けのサービスを拡充 グローバルミドルマーケットのクライアントに対して、プロフェッショナルサービスを提供するリーディングカンパニーであるRSMは、日本における会計税務、人事労務、法務サービスに対する需要の高まりに対応するため、日本における新しいメンバーファームとして汐留パートナーズを迎えました。 今回「RSM汐留パートナーズ」としてリブランディングをする同社の使命は、日本政府の方針と足並みを合わせて企業の成長をサポートしていくことにあります。日本政府は、2022年4~6月に国の経済が年率3.5%の実質成長率で伸長し、COVID-19対策が解除されるにつれて2023年まで成長が続く可能性が高いと発表しました。 汐留パートナーズは、14年以上にわたって国内外のビジネスサポートに関して幅広い知識や経験を有しています。東京の汐留エリアにある汐留シティセンターに本社を置いています。また、沖縄、フィリピンのマニラにもオフィスがあります。 また、中国に進出する日本企業や日本に進出する中国企業に対するコンサルティングニーズの高まりに対応するため、中国語が堪能なプロフェッショナルからなるチャイナデスクを設置しています。 汐留パートナーズがRSM JAPANに加わることで、RSM清和監査法人、税理士法人東京クロスボーダーズ、東京共同会計事務所とともに、長年にわたってプロフェッショナルによる監査、税務、コンサルティングサービスを提供してきた RSMの日本におけるプレゼンスがより一層強化されます。 汐留パートナーズは、2008年にグループCEOの前川研吾氏によって設立され、国内外のビジネス環境におけるクライアント独自の課題に柔軟に対応することで、並外れた成長を遂げてきました。高品質な会計税務、人事労務、法務のワンストップサービスをクライアントに提供し、また、クラウドアプリケーション、SaaSソリューション、ERPシステムなどのテクノロジーの力を活用して、クライアントに付加価値を提供することでこれを達成してきました。 RSM InternationalのCEOであるJean Stephens 氏は「汐留パートナーズをRSMのグローバル組織に迎えることができて光栄です。汐留パートナーズの業務品質、グローバルな成長、先進的でシームレスなソリューションなどは注目すべきで、汐留パートナーズがRSMに加盟することにより様々なシナジーが生まれます 」と述べています。 日本政府は、日本経済の成長を促すために、対日直接投資をさらに促進し、対日直接投資促進会議で採択された戦略を策定しています。この戦略は、2030年までに対内直接投資金額を80兆円(54.5兆ドル)に倍増し、GDPの12%に達することを目指しています。 Jean Stephens氏 は続けて、「グローバリゼーションに対する政府の方針とも関連して日本には大きな成長機会がある一方で 、国際危機は新たな課題を示しています。 変化の加速ペースと不安定な地政学的状況が相まって、クライアントはレジリエンスを構築し、成功を継続するために汐留パートナーズが持つ機動性、品質、信頼を必要としています。」 汐留パートナーズグループCEOの前川研吾氏 は「RSMは、クライアントのニーズを理解するだけでなく、デジタルファースト、データドリブンであり、サステナブルなソリューションを通じて変化を受け入れ、成長を推進する機会を提案することで高い評価を得てきました 。この将来を見据えたアプローチには、テクノロジーがどのようにビジネスに革命をもたらし 、クライアントに提供するサービス、経験、価値提供のレベルを向上させることができるかについての正しい理解が含まれています。汐留パートナーズでは、さらに業務の品質と効率を向上させるために、 RSMとグローバルに連携して前進していきます。」 「また、当グループは海外進出コンサルティングサービスを拡大させてきました。日本企業がアジア市場で拡大を続ける中、中国、インド、シンガポール、ベトナム、フィリピン等をはじめとしたアジア全域で、RSMの現地ファームと密に連携することで、クライアントのニーズに対応できる体制を整えています 。グローバルなRSMネットワークの力を活用して、他社とは異なる差別化されたサービスを提供できるものと確信しています。」と述べています。 汐留パートナーズは、2012年から本格的に国際業務を展開しており、製造業や日用品等の消費財(FMCG)セクターなどのセクターに関する専門知識を有しています。さらに、当グループは、強力な富裕層向けサービスの提供を通じて、各種クライアントの財務に関する課題解決に対してもサポートを行っています。 RSMアジア太平洋地域リージョナル リーダーの Jason Yau氏は「汐留パートナーズとRSMは非常に相性が良く、エネルギッシュで優秀なチームをRSMに迎えることができてうれしく思います。汐留パートナーズは、 RSM清和監査法人、税理士法人東京クロスボーダーズ、東京共同会計事務所 とともに、専門的なアドバイス、質の高い財務サービス、テクノロジーに対する需要が高まり続ける中、RSMのアジア太平洋地域における成長戦略を推進する上で重要な役割を果たすでしょう。 「日本は、世界的にも高収益な企業にとって望ましい市場の1つであり続けています。そして日本の富裕層はパンデミックの間に純資産が48%増加しているとのレポートもあります。世界的に民間の有する富は過去3年間で58兆ドル(60兆ユーロ)へと増加しましたが、一方でウクライナ戦争、インフレの加速、COVID-19の回復の遅れにより、この成長が一定程度抑制されると予想されます。 「富裕層がこれらの逆風を乗り切るためには、彼らに寄り添う経験豊富なアドバイザーの存在が不可欠です。汐留パートナーズは、富裕層向けのビジネスやグローバルビジネスで豊富な経験を有しています。 RSM は日本における新たなメンバーファームとして汐留パートナーズを迎えることで、日本で事業を行ったり、この地域への投資を検討している全世界のクライアントを、より一層サポートすることができるでしょう。」と述べています。
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