汐留パートナーズ・ニュースレター 2022年8月号

大口株主の範囲の見直し・高年齢者雇用や障害者雇用に関する事業主の義務・株式会社の決算公告

日頃よりお世話になっております。汐留パートナーズです。今月のニュースレターでは、税務より「大口株主の範囲の見直し」、労務より「高年齢者雇用や障害者雇用に関する事業主の義務」、司法書士法人より「株式会社の決算公告」について取り上げます。

大口株主については、課税の公平性が保たれていないという指摘が会計検査院からなされていた背景もあり、令和4年度税制改正で改正対象になりました。同族会社の保有株式数や個人が同族会社を通じて保有する株式の割合も関係してきますので、注意が必要です。

また、労務で取り上げる「高齢者や障害者を雇用する際の事業主の義務」や司法書士法人で取り上げる「株式会社の決算公告」については、多くの会社で関係のある論点です。

それぞれの論点について詳細に解説しておりますので、是非今月のニュースレターをお役立て頂ければと存じます。

 

はじめに

令和4年度税制改正にて、上場株式等の配当等の課税に関する「大口株主」の範囲が見直されました。今回は、当該改正内容、及びその前提となる配当所得の課税方法について、場合分けしつつ、見ていきたいと思います。

配当所得の課税方法

配当金を受け取る際には、予め所得税等が源泉徴収されています。当該源泉徴収される税金の範囲や源泉所得税率、その後の課税方式については、その配当が上場or非上場株式に対する配当であるか、上場株式の場合は、配当を受ける株主は大口株主か否か、また非上場株式の場合は、少額配当に該当するか否かによって、下表に示すように異なります。

配当を受ける株式等の区分上場株式の配当等非上場株式の配当等
大口株主等が支払を受けるものを除く大口株主等が支払を受けるもの少額配当(*1)以外少額配当(*1
源泉所得税率所得税15.315%20.42%20.42%20.42%
住民税5%0%(*20%(*20%(*2
選択可能な課税方式所得税・申告不要制度
・申告分離課税
・総合課税
総合課税・申告不要制度
・総合課税
住民税総合課税

*1 少額配当とは、1回に支払を受ける金額が「10万円×(配当計算期間の月数/12ヶ月)」以下の配当をいう。
*2 確定申告によって住民税の税率10%を負担

更に、上表における「申告不要制度」、「申 告分離課税」、「総合課税」の特徴と税率について以下の通りまとめてみました。

課税方式特徴税率
申告不要制度確定申告不要で源泉徴収で課税関係が修了所得税:一律15.315%
住民税:一律5%
合計 :20.315%
申告分離課税上場株式等の譲渡損と損益通算可能所得税:一律15.315%
住民税:一律5%
合計 :20.315%
総合課税配当控除の適用あり所得税:累進課税5~45%
住民税:一律10%
合計 :15~55%(配当控除前)

これより、申告不要制度や申告分離課税と、総合課税では税率が大きく異なることがわかります。即ち、上場株式に対する配当の場合、受け取る株主が大口株主であるか否かによって、税負担が大きく異なる可能性があります。

税制改正の内容及び趣旨

令和4年度税制改正において、「大口株主」の範囲が以下のように拡大されました。

大口株主の要件

現行直接保有の持株割合≧3%
改正後直接保有の持株割合(現行)+同族会社等を介して保有する株式の割合≧3%

従来は、持株割合について個人株主の直接保有分のみで判定していたため、直接保有の持株割合が3%未満であれば、同族会社である法人を通じた保有により、実質的に持株割合が3%以上であっても大口株主には該当せず、申告不要制度や申告分離課税の選択が可能でした。この点、会計検査院から課税の公平性が保たれていないとの指摘があり、今回の改正に至りました。なお、同族会社の定義は法人税法上の同族会社の定義と同様であり、当改正は2023年10月1日以降に支払われる上場株式等の配当等について適用されます。

おわりに

今後、大口株主の判定にあたっては、個人株主の直接保有株式数のみではなく、同族会社の保有株式数の確認も必要となります。個人株主が、同族会社を通じて上場会社の持株割合を実質3%以上保有している場合は、税負担が大幅に増加する可能性もありますので、注意が必要です。改正内容を含め、実際の各種判定など、ご不明点等ございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせ下さい。

 

高年齢者・障害者雇用の法律知識 

毎年6月から7月にかけて年度更新や算定基礎届の提出、そのほかにも従業員数が一定数以上の企業においては「高年齢者雇用状況報告書」や「障害者雇用状況報告書」の提出といったイベントがありました。今回は、高年齢者雇用や障害者雇用に関する事業主の義務についてお伝えいたします。

1.高年齢者雇用に関わる法的義務

高年齢者の方々の就業機会を確保するため、事業主には主に次のような義務が定められています。

〇60歳未満の定年禁止(高年齢者雇用安定法第8条)
事業主が定年を定める場合は、その定年年齢は60歳以上としなければなりません。

〇65歳までの雇用確保措置(高年齢者雇用安定法第9条)
定年を65歳未満に定めている事業主は、以下のいずれかの措置(高年齢者雇用確保措置)を講じなければなりません。

1.65歳までの定年引き上げ 
2.定年制の廃止
3.65歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入 

  1. 継続雇用制度の適用者は原則として「希望者全員」です。

    ※ 平成25年3月31日までに労使協定により制度適用対象者の基準を定めていた場合は、その基準を適用できる年齢を令和7年3月31日までに段階的に引き上げなければなりません(平成24年改正法の経過措置)。

  2. 〇70歳までの就業機会の確保(努力義務)(高年齢者雇用安定法第10条の2)
  3. 65歳までの雇用確保(義務)に加え、65歳から70歳までの就業機会を確保するため、高年齢者就業確保措置として、以下のいずれかの措置を講ずるように努めなければなりません(努力義務のため、強制ではありません)。

1.70歳までの定年引き上げ
2.定年制の廃止
3.70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入
(特殊関係事業主に加えて、他の事業主によるものを含む)
4.70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
5.70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入
 a. 事業主が自ら実施する社会貢献事業
 b. 事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業

なお、2021年6月時点の厚生労働省の調査によると、70歳までの就業機会の確保に対応している企業は25.6%と、約4社に1社だったようです。具体的な措置の内容としては、「継続雇用制度の導入」が25.6%のうち19.7%と大半を占めており、「定年制の廃止」が4%と続きます。

2.障害者雇用に関わる法的義務

障害者雇用については、「法定雇用率」というものが定められ、従業員が一定数以上の事業主は、従業員数に占める障害者の割合を「法定雇用率」以上にする義務があります。

〇現在の法定雇用率(令和4年7月現在)
令和4年7月現在、民間企業の法定雇用率は2.3%です。常時雇用する労働者数に法定雇用率を乗じることで、必要な障害者の人数を計算することができます。なお、小数点以下の端数は切り捨てます。

したがって、従業員を43.5人以上雇用している事業主には、1人以上の障害者雇用が義務づけられることになります。※法定雇用率が引き上げられると、43.5人未満の企業も対象となることがあります。

〇障害者雇用納付金制度
法定雇用率を未達成の企業のうち、常用労働者100人超の企業については、「障害者雇用納付金」が徴収されます。徴収金額は不足1人あたり5万円です。なお、法定雇用率を達成している場合は、調整金又は報奨金が支給されます。

〇除外率制度
障害者の就業が一般的に困難であると認められる業種については、雇用する労働者数を計算する際に、除外率に相当する労働者数を控除する制度です。

例えば、「建設業」では除外率が20%と定められています。労働者数1,000人のとき、ここから20%(200人)を控除し、800人を基準として法定雇用率を求めることができます。通常は労働者数1,000人だと23人の障害者雇用が必要なところ、建設業の場合は800×2.3%で18人で良いことになります。

ただし、厚生労働省は除外率の引き下げを検討しており、今後も引き下げが実施されていく可能性があるため、注意が必要です。

3.高年齢者雇用・障害者雇用状況等報告書の提出について

最後に、高年齢者及び障害者の雇用状況報告書の提出についてお伝えします。

事業主は、毎年6月1日現在の「高年齢者雇用状況報告」及び「障害者雇用状況報告」をする必要があります。提出期限は7月15日です。

従業員20人以上規模の事業所にはハローワークから用紙が届きますので、これに記入して提出します。また、紙ではなく電子申請での報告も可能となっています。

なお、障害者雇用状況報告は、障害者雇用の義務が生じていない場合は不要です。令和4年7月現在では、上述の通り従業員数43.5人以上規模の事業者が対象となります。

 

はじめに

株式会社は会社法上、定時株主総会の終結後遅滞なく、貸借対照表(大会社にあっては、貸借対照表及び損益計算書。以下同じ)を公告することが求められています。計算書類の公告方法が官報又は時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙である株式会社は、貸借対照表の要旨を公告すれば足りますが、計算書類の公告方法が電子公告である株式会社は貸借対照表の全文を、当該貸借対照表を承認した定時株主総会終結時から5年間、掲載し続ける必要があります。

官報に公告掲載を申し込む

貸借対照表を公告することを決算公告といいますが、官報公告によって決算公告を行う場合、決算公告は公告の原稿を作成し、官報掲載の申込みをするという2ステップで行います。

決算公告の原稿

官報で決算公告を行うときは貸借対照表の要旨の掲載で足りるところ、貸借対照表(損益計算書を含みません)の要旨は次の事項を掲載します。ここでは公告をする株式会社が非公開会社であることを前提としています。

1.資産の部(流動資産・固定資産・繰延資産)
2.負債の部(流動負債・固定負債)
3.純資産の部(資本金・新株式申込証拠金・ 資本剰余金・利益剰余金・自己株式・自己株式申込証拠金・その他有価証券評価差額金・ 繰延ヘッジ損益・土地再評価差額金・新株予 約権)
4.当期純利益(純損失)※損益計算書を公告しない場合)

1.資産の部

流動資産・固定資産・繰延資産の各項目の金額を記載します。これらの項目を更に細分して記載する必要はありませんが、任意に細分して記載することもできます。

2.負債の部

流動負債・固定負債の各項目の金額を記載します。なお、負債に係る引当金がある場合には、引当金ごとに、他の負債と区分しなければなりません。これらの項目を更に細分して記載する必要はありませんが、任意に細分して記載することもできます。

3.純資産の部

資本金・新株式申込証拠金・資本剰余金・利益剰余金・自己株式等の各項目の金額を記載します。ゼロである項目は記載が不要です。資本剰余金は資本準備金とその他資本剰余金に、利益剰余金は利益準備金とその他利益剰余金に細分して記載します。

4.当期純利益(純損失)

付記事項として、当期純利益又は当期純損失の金額を記載します。損益計算書も公告している株式会社はこの付記は不要です。

電子公告

決算公告の方法が電子公告である会社は、登記簿に記載されている当該URLに貸借対照表の全文を、定時株主総会の終結の日後5年間掲載し続けます。当該URLへ飛んだ先に直接貸借対照表を掲載しなくても、当該URLに飛んだ先からリンク等で貸借対照表が掲載されているページまでスムーズに辿り着ける設計であれば問題ありません。

決算公告の義務のない法人

株式会社、一般社団法人又は一般財団法人には決算公告義務がありますが、特例有限会社又は持分会社(合同会社、合資会社、合名会社)には決算公告義務はありません。また、株式会社であっても、金融商品取引法の規定により有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならない株式会社については、決算公告は不要です。

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