汐留パートナーズ・ニュースレター 2018年 3月号

平成30年度税制改正大綱において、個人の所得税についていくつかの改正が実施されることが明らかとなりました。なかでもトピックス性の高い項目として、「給与所得控除」と「基礎控除」についてご紹介いたします。

給与所得控除の改正

給与所得者の場合、給与収入から「給与所得控除額」を控除して所得金額を計算し、所得税を算定します。今回の改正では、この給与所得控除額が2020年より現行の制度から一律10万円引き下げられることとなります。また、給与所得控除額の上限は220万円とされていたものが195万円に改正され、850万円超の給与収入がある方においては現行の制度と比べ控除できる金額が10万円~25万円減少することとなります。

基礎控除の改正

所得税の計算上、所得金額から一定の金額を控除することができる「基礎控除」という制度があります。今回の改正では、これまですべての人が一律38万円を控除できるとされていたものが、2020年よりその年の合計所得金額に応じて控除できる金額が段階的に設定されることとなります。各合計所得金額による控除額は以下の通りです。

合計所得金額 現行 改正案
2,400万円以下 一律
38万円
48万円
~2,450万円 32万円
~2,500万円 16万円
2,500万円超 ゼロ

※個人住民税の基礎控除額はそれぞれ43万円、29万円、15万円、ゼロ。

合計所得金額が2,400万円以下の方に関しては、基礎控除額が10万円増えることとなります。一方、2,400万円を超える方については基礎控除額が減少し、これまでより所得税が増えることとなります。とりわけ合計所得金額が2,500万円を超える方に関しては基礎控除を受けることができなくなります。

給与所得者の影響額シミュレーション

給与所得のみの方の場合、給与収入が850万円以下の方においては、給与所得控除額が10万円減少するものの、基礎控除額が10万円増加することにより所得税額への影響は実質的にはありません。給与収入が850万円を超える方においては、以下のような影響があります。

給与収入 控除額の変動
850万円超 1,000万円以下 最大15万円減
~2,595万円 15万円減
~2,645万円 31万円減
~2,695万円 47万円減
2,695万円超 63万円減

おわりに

ご存知の通り、税制は毎年改正され、その時代に応じた課税がなされるよう変化していくものです。平成30年の改正に関しては今回お伝えした以外にも、法人課税や事業承継など様々な改正が行われています。現行の税制やその改正について疑問点等ございましたら、お気軽に弊社までお問い合わせください。

若手人材の確保にも効果あり! 「地域限定正社員」

◆若手人材にも人気の働き方

いわゆる「多様な働き方」の1つである「地域限定正社員」。一般的には、「勤務地を特定し、転勤の対象とならない」「通常の正社員に比べ給与水準が低い」といった条件で契約した正社員を指します(「勤務地限定~」「エリア限定~」等と呼ぶ場合もあります)。
地域限定正社員といえば、育児や介護などの家庭事情により転勤が困難な社員のニーズが高いように思われるかもしれませんが、最近では、新卒採用者や就活生にも注目されています。

◆就活生の7割、地域限定正社員に応募意向

日本生産性本部「2017年度 新入社員 春の意識調査」において、「『働き方改革』で最も関心のある勤務形態は何か?」(6項目より選択)という質問に対し、「転勤のない地域限定勤務」が27.0%で1位となりました。
また、労働政策研究・研修機構「大学生・大学院生の多様な採用に対するニーズ調査」で、「就職活動開始時の限定正社員に対する応募意向」を調査したところ、「地域限定」が72.6%となり、「職務限定」(58.0%)や「勤務時間限定」(51.8%)を大きく上回りました。
売り手市場のいま、若手の人材は自身の働き方に対して様々なニーズを持っていますが、「転勤をしたくない」というニーズはとりわけ強いようです。
転勤を必要とするような複数の事業所があり、転居を伴う異動を行う企業にとっては、「地域限定正社員」が制度化されているか、そしてそのことを募集・採用時にアピールできるかどうかが、人材確保や早期離職防止の観点から重要といえます。

◆正社員と地域限定正社員の賃金バランス

地域限定正社員を制度化するにあたって難しいのが、いわゆる正社員と地域限定正社員の給与のバランスです。両者のバランスがとれていなければそれぞれが不公平感を募らせ、トラブルのもととなってしまいます。
厚生労働省「『多様な形態による正社員』に関する研究会報告書」によれば、いわゆる正社員の賃金を100としたとき、地域限定正社員の賃金で最多だったのは「80~90未満」で29.1%、次いで「90~100未満」の22.4%となっています。
世間の相場を参考にしつつ、自社の実情(各事業所間の距離、転勤の頻度等)を十分に考慮して、両者が納得できる給与体系にしたいものです。

Q 配転命令を出したい

当社の従業員に対し、本社から支社への配転命令を出そうと考えていますが、配転命令は会社の裁量で自由に出すことができますか。拒否された場合はどうすればいいでしょうか。

A 就業規則等に規定があり、かつ、権利濫用とならないかがポイント

◆配転命令権の根拠

使用者の配転命令権は、労働者との労働契約や就業規則(以下「就業規則等」とします)にその根拠をもとめることができます。例えば、就業規則等に、「会社は業務の都合により、従業員に出張、配置換え、転勤を命じることができる。」旨の規定があれば、使用者は労働者に対し包括的に配転命令を出すことができ、労働者からの個別の同意は不要と解されています。ただし、就業規則等または採用の経緯等から、使用者と労働者の間で、勤務地や職種を限定する合意があった場合は、それを超えての配転命令は出せません。

◆権利濫用の基準

また、就業規則等で配転命令の規定があるからといって無制限に配転命令を出せるわけではなく、権利濫用として無効となる場合があります。その判断は、当該配転が業務上の必要性があるか、業務上の必要性があっても不当な動機、目的をもってなされていないか、労働者が通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を被らせるものでないかを考慮し、当該配転命令が権利濫用かどうかを判断します。
各要素について簡単に説明しますと、業務上の必要性については、欠員補充や定期的な人事異動等、比較的広く認められる傾向にあります。不当な動機、目的については、例えば報復や退職に追い込むため等のケースが考えられます。労働者が通常甘受すべき程度を著しく超える不利益については、当該労働者の生活態様(配偶者、子ども、要介護状態の家族の有無等)から具体的に判断されます。

◆対応

まず、配転命令の根拠となる規定が、就業規則等にあるか、規定があったとしても、当該労働者との間で勤務地や職種限定の合意がなされていないかどうかを確認してください。そのうえで業務上の必要性があり、不当な目的、動機がなく、労働者が被る不利益も通常甘受すべき程度を著しく超えていなければ、有効な配転命令として、労働者は拒否することができません。しかし、拒否されたからといって直ちに解雇などの措置をとるべきではなく、円滑な職場運営の観点から、労働者と話し合い、なんらかのインセンティブを与えるなどして説得を試みてはいかがでしょうか。