汐留パートナーズ・ニュースレター 2018年1月号

新年あけましておめでとうございます。本年も何卒よろしくお願い致します。今回は、個人投資家のベンチャー企業への投資促進税制である「特定中小会社が発行した株式に係る課税の特例」、いわゆるエンジェル税制についてご紹介させていただきます。

エンジェル税制とは

エンジェル税制とは、個人投資家(法人は適用を受けられない)が、一定の未上場のベンチャー企業に投資をした場合に、投資時及び株式譲渡時の2つの段階で税制上の優遇を受けることができる制度です。ここでいう投資とは、金銭の払い込みにより新規発行株式を取得した場合に限り、発行済株式を他の株主から購入する場合や、現物出資により株式を取得した場合には制度の対象とならないので、注意が必要です。
また、エンジェル税制には事前確認制度があり、ベンチャー企業は、自社が制度の対象であるかを確認し、経済産業省のホームページにて社名を公表することができます。エンジェル税制の対象企業となれば、投資家からの信用力も高まり、資金調達の面でも企業のメリットとなります。

優遇措置について

個人投資家は、投資時と株式譲渡時の2つの段階での優遇を受けることが可能です。投資時の優遇としては優遇措置A・Bがあり、いずれかの選択適用となります。優遇措置Aは、「企業への投資額-2,000円」が総所得金額から控除され(控除額の上限は、総所得金額×40%若しくは1,000万円とのいずれか低い金額)、優遇措置Bは、企業の投資額の全額を、その年中の他の株式の譲渡益から控除されます。一方、株式譲渡時の優遇措置は、対象企業の株式を譲渡した際に生じた損失を、その年中の他の株式の譲渡益から控除することができ、譲渡益から控除しきれなかった金額は、翌年以後3年間損失を繰り越すことができます。損失額については、投資時に優遇措置A・Bを適用していた場合には、その控除額を差し引いた金額となります。
なお、優遇措置A・Bについては対象要件があります。優遇措置Aについては、設立3年未満の中小企業者であること及び試験研究費等の割合や営業キャッシュ・フローが赤字であること等が要件であり、優遇措置Bについては、設立10年未満の中小企業者であること及び試験研究費等の収入金額における割合等が要件となります。

おわりに

エンジェル税制は、企業と投資家双方にとってメリットのある制度です。近年のベンチャー企業の増加と、事前確認制度によりエンジェル税制の利用実績は増加する傾向にあります。
しかし、エンジェル税制を適用するためには、企業要件と投資家要件があり、その双方を満たす必要があります。また、どの優遇を適用するか等により必要となる書類も異なりますので、煩雑な面もあります。適用の際ご不明点がございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせください。

厚労省の調査結果にみる平成29年賃金改定の実態

◆100人以上300人未満企業の賃上げ実施率は「85.6%」

厚生労働省が11月下旬に公表した「平成29年 賃金引上げ等の実態に関する調査」によれば、「1人平均賃金(所定内賃金の1人当たり平均額)を引き上げた」と回答した100人以上300人未満企業の割合は85.6%で、前年(84.4%)を上回りました。
全企業では87.8%が引上げを実施しており、こちらも前年(86.7%)を上回りました。
業種別では、電気・ガス・熱供給・水道業の97.6%が最も高く、建設業(97.1%)、製造業(95.7%)が続きます。

◆改定額は?

改定額は、企業規模によって幅があります。全企業では5,627円ですが、5,000人以上企業では6,896円、1,000人以上5,000人未満企業では5,186円、300人以上999人未満企業では5,916円と、いずれも5,000円を超えました。
100人以上300人未満企業では4,847円でしたが、前年(4,482円)を上回りました。
業種別では、建設業(8,411円)が突出して高く、不動産業、物品賃貸業(6,341円)、情報通信業(6,269円、製造業(6,073円)が続きます。

◆改定率は?

改定率は企業規模による差異は小さく、全企業で2.0%、100人以上300人未満企業でも1.9%でした。
改定率でも、改定額と同じ4業種が2.5~2.1%で高い結果でしたが、生活関連サービス業、娯楽業、医療、福祉でも2.1%となっています。

◆改定に踏み切った理由

調査結果によると、100人以上300人未満企業で賃金改定にあたり最も重視した要素は「企業の業績」(55.8%)でしたが、参考値となっている全企業の複数回答計の上位3つは、「企業の業績」(65.8%)、「労働力の確保・定着」(34.0%)、「雇用の維持」(28.5%)でした。
人手不足等により、やむを得ず賃上げに踏み切った企業もあるかと思いますが、平成30年度税制改正では、所得拡大促進税制を拡充し、中小企業が1.5%の賃上げを実施した場合に給与増加分の15%を法人税額から差し引けるようにする案が盛り込まれる見通しで、こうした施策の活用を検討する企業が増える可能性があります。

Q 病気になった従業員を休職させずに解雇したい

当社の従業員が病気になり、長期間就業できない状態になりました。当社には、傷病で勤務することができない場合、傷病の状態に応じて一定期間休職させることができる制度が就業規則に明記されています。しかし、長期間就業できないのであれば休職させる必要はなく、できれば解雇したいのですが、それは可能でしょうか。

A 復職の可能性がどれだけあるかがポイント

◆休職させずに行う解雇の有効性

従業員が傷病等により、労働能力を喪失した場合、それが就業規則上の解雇事由に該当すれば、会社は当該従業員を、傷病が業務上のものでない限り、解雇することができます。
しかし、会社が傷病による休職制度を定めていた場合、それは従業員の傷病が回復するまでの解雇猶予措置と解釈されます。したがって、このような休職制度を検討することなく行われた解雇は、客観的合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないとして、無効とされる可能性があります。一方で裁判例には、休職制度があるからといって、解雇されない利益を従業員に保証したものではなく、会社には解雇するか休職させるかの裁量があるとし、休職させずに行った解雇を有効としたものがあります。
これらのことから、当該従業員の労働能力回復の有無やその見込み等から、復職可能性がどれほどあるか等を検討し、休職させずに解雇することが相当かどうかを検討することになると思われます。

◆復職の可能性

労働能力が回復し、復職できるかの基準については、従前の職務を通常の程度に行える健康状態になったかどうかと言われます。さらに、労働者が職種や業務内容を限定せずに雇用契約を締結している場合は、休職前の業務について労務の提供が十分にできるほどには健康状態が回復していなくても、労働者の地位・経験等の事情や使用者の規模・業種等に照らして配置替え等により、現実に配置可能性のある他の業務があり、その業務について労務の提供を十分にできる程度まで健康状態が回復している場合も、労働能力が回復したと言われています。

◆本件の検討

以上から、会社としては当該従業員の業務が限定されていたかを確認し、限定されていない場合には、配置換えが可能な他の業務があり、休職制度で定められた休職期間にそこでの労務提供を十分にできる程度まで回復する見込みがあれば、解雇せずに休職させるべきです。