汐留パートナーズ・ニュースレター 2018年4月号

日ごとに暖かくなり、すっかり春らしい季節になってきました。皆様はいかがお過ごしでしょうか。今回は、平成30年度税制改正大綱から、目玉である減税措置について、重要度の高いものを紹介していこうと思います。

はじめに

今回の改正には、企業に対する減税措置が数多く盛り込まれました。その背景としては、企業の税負担を減らし、浮いた資金が再投資に回る「経済の好循環」につなげ、GDPを回復させる。延いては、2019年10月の消費税増税のショックに備えるといった意味合いがあります。一方で、今回の改正は企業減税が目玉ですが、優遇一辺倒ではなく、同時に、賃上げや設備投資に動かない企業は法人税の優遇措置から外して、増税となるといった「アメとムチ」からなる、珍しい促進策となっています。これは、法人実効税率を引き下げたにも関わらず、浮いた利益を内部留保として積み上げ、賃上げが広がっていないことに対しての直接的な策となっています。安倍政権の掲げる「3%の賃上げ」の達成は、この減税策にかかっているでしょう。その中でも、特に重要な税制措置である「所得拡大促進税制」の改正について、以下でご紹介致します。

所得拡大促進税制の改正

こちらについては、平成25年から施行されている税制になりまして、簡単に説明すると、給与等の支給総額を基準年度と前年度より一定数増加させた場合に、その増えた給料額の10%を法人税から控除できる制度です。控除には税額の10%という限度があります。ちなみに基準年度とは、平成25年4月1日以後に開始する各事業年度のうち、最も古い事業年度の直前事業年度をいいます。
では、この税制の何が改正されたのか。大企業に絞って説明致します。給与に関する適用要件のうち、二つが廃止され(有利)、かつ、適用を受けるために必要な増加割合が「2%以上」から「3%以上」に引き上げられました(不利)。なお継続雇用者の範囲も絞られました(不利)。さらに、国内設備投資額が減価償却費の総額の90%以上であることという要件が加わり、賃上げにプラスして、一定規模以上の国内設備投資が求められることとなりました(不利)。控除される税額は、給与支給額の増加額に対して10%から15%になっています(有利)。控除限度額は変わらず、法人税の10%が上限となります。国内設備投資額の増加は、ハードルの高い要件だと思うので、totalでみると要件は厳しくなっているように感じますが、クリアすれば控除額は増える可能性があるといったところでしょうか。

おわりに

平成30年度税制改正大綱は、それほど目新しい改正項目はありませんでしたが、賃上げや設備投資に関しては、ほぼ全ての企業に関わりがある項目だと思います。適用できそうであれば、積極的に適用して、メリットを享受しましょう。
詳しい税務上の取り扱いについて気になる方は、ぜひ弊社までお問合せください。

「女性管理職」の実態と管理職に対する女性の意識

◆割合は過去最高…だがまだ少ない

厚生労働省の調査によれば、課長級以上の管理職に占める女性の割合が前年比0.3ポイント増の9.6%となり、過去最高を更新したそうです。
それでも他の主要国に比べると、まだまだ女性の管理職が少ないということは各メディアでもしばしば取り上げられているところです。
太陽グラントソントンが昨年11月~12月に実施した、非上場企業を中心とする中堅企業経営者(従業員数100人~750人)の意識調査によると、日本の中堅企業における「経営幹部の女性比率」は約5%で、調査対象国の中で最下位となっているそうです。
また、この数字は2004年の調査開始時の数値(約8%)を下回る数字となっており、世界的な女性管理職割合の増加傾向(世界35カ国「経営幹部の女性比率」の平均は24%)とは、大きく差が出る結果となっています。

◆女性管理職は今後増えるのか?

中小企業における女性管理職の割合は、上記調査よりもさらに少ないことが予想されますが、国も雇用制度改革の1つとして「女性の活躍推進」を掲げており、女性管理職の登用拡大に向けた働きかけを行うことを明言しています。
今後は、管理職として女性を視野に入れていなかったような企業でも、女性管理職を積極的に登用しようという意識が働くかもしれません。

◆管理職になりたくない社員が増加

一方、最近はそもそも「管理職になりたくない」という若者が増えているという現状もあります。
リクルートマネジメントソリューションズが3年おきに実施している「新人・若手の意識調査」によれば、「管理職になりたい」「どちらかといえばなりたい」と回答した割合が、2010年の新人では55.8%だったのが、2016年の新人では31.9%となり、減少傾向が続いているようです。
また、電通が働く女性を対象に実施した調査によると、「9割以上に管理職志向なし」という結果も出ています。

◆“変化の時代”に求められる人材を育成する

上記のように、マネジメント職への意識が高いとは言えない中で、今後は、女性の管理職に限らず、管理職となるべき人材を企業として意識的に育成するための体制を考えていくことが必要になるでしょう。
管理職に対するマイナスイメージを払拭しつつ、“変化の時代”に求められる人材を育成していくことが必要でしょう。

Q 犯罪なのに…

当社は,一昨年以来,経営刷新を図るため,全従業員に対し,職場諸規則の遵守,信賞必
罰の趣旨を徹底してきました。ところが,そのような中,当社従業員Aは,昨年,住居侵
入罪を犯し,罰金2500円の刑に処されました。そこで,当社は,就業規則(懲戒事由
として「不正不義の行為を犯し,会社の対面を著しく汚した者」との規定があります)を
適用して,Aを懲戒解雇としました。
しかし,当社は,このたび,Aから訴訟を提起され,この懲戒解雇が無効である旨主張
されています。当社の判断には問題があったのでしょうか。

A 犯罪≠懲戒解雇事由,という点に留意が必要です

◆ 私生活上の非行

多くの会社では,就業規則上,懲戒事由の1つとして会社の信用毀損行為を掲げています。しかし,会社は従業員の私生活全般を規律できる権限を有しません。そこで,このような就業規則を私生活上の行為に適用する際には,極めて厳格な審査に服することになります。
裁判例については,当該非違行為の性質のほか,当該従業員の社内における役割や職種,会社の事業内容や規模等を考慮のうえ,会社の社会的評価に相当重大な悪影響があるといえるような場合でないと懲戒解雇は有効と認められない傾向にあるなどと一般に説明されております(もっとも,そのような場合といえるかどうか自体が大問題ではありますが)。

◆ Aの場合

本件と類似の例において,懲戒解雇を無効とした判例があります。同判例は,私生活上の行為であることや罰金2500円にとどまったこと,当該従業員が社内において指導的地位にはなかったことなどを考慮して,「会社の対面を著しく汚した者」とまでは評価できないと判断しております。他方,会社が懲戒解雇の措置をとったことにも無理からぬ点があると判示しておりますので,微妙な判断だったともいえそうです。
ちなみに,鉄道会社の従業員が他の鉄道会社の電車内で痴漢行為を行ったという事件に関し,当該従業員の懲戒解雇が有効とされた裁判例も存します。しかし,犯罪とはいえ簡単には懲戒解雇を認めないのが裁判例の傾向です。そのような処分を出す際には,先例を十分に調査のうえで慎重に判断したいところです。