汐留パートナーズ・ニュースレター 2018年6月号

はじめに

昨今、少子高齢化により国民年金制度への不満は高まるばかりです。現在の公的年金制度は価値の目減りを防ぐため、現世代の人が支払う保険料を財源として年金が支払われるという、極めてアンバランスな形をしています。もはや公的年金のみを頼りにすることは難しく、個人で資産形成をし老後に備えていくことが大切になります。

iDeCoとは

今回は個人の資産形成の手段の中でも、昨年対象となる条件が緩和されたことで全国民が加入できるようになったiDeCoについてご紹介させて頂きます。iDeCoは個人型確定拠出年金と呼ばれるものであり、税制面で優遇されているため人気商品となっています。
iDeCoは証券会社を中心に毎月一定額を積立て、用意された金融商品の中から自分で好きなものを選び運用することで、その成果を60歳以降に年金または一時金で受け取ることができます。掛金は5,000円から積立ることができ、休止・再開はいつでも可能です。     以前は自営業や退職金制度のないサラリーマンなどに限定されていましたが、平成29年の税制改正によって、日本在住で20歳以上60歳未満であれば原則誰にでも入ることが可能となりました。
iDeCoとの比較対象として、保険会社に支払う個人年金がありますが、こちらも誰でも加入可能という面では同じものの、税制面では圧倒的にiDeCoのほうが有利と言えます。

税務面での大きな優遇

iDeCo積立金受取りまでの流れは
①積立→②運用→③一時金又は年金として受取りとなり、税務面の優遇としては、
①で積立金全額が所得控除となり所得税の節約。
②の運用益は非課税となり所得税が課せられない。
③で公的年金等控除又は退職所得控除となり所得税の節税。
以上となり、積立金に上限はあるものの税務面でとても優遇されていることがよくわかります。

中小事業主掛金納付制度

これまで個人での加入についてご説明してきましたが、一定の要件(従業員が100人以下、企業年金がない等)を満たしている中小事業主であれば、従業員のiDeCoの毎月の積立額に上乗せして積立てることが出来ます。つまり、従業員が個人的に支払う積立額の一部を事業主が給与に代えて負担することで、従業員の手取りは変わらず、かつ事業主は給与に掛かる社会保険料を減らすことができます。

終わりに

全国民を対象とし、これだけの税制優遇があることから国が個人の資産形成に力を入れているのが伺えます。ただし、職業によって掛金の上限が決まっていたり、退職金が多く支給される予定の方などは税制優遇を受けられないケースもありますので、検討される場合は是非弊社までご連絡頂ければ幸いです。

若年性認知症への会社の対応は準備していますか?

◆若年性認知症に関する調査

65歳未満で発症した認知症を「若年性認知症」と呼びます。有名なアルツハイマー型だけではなく、脳血管の障害や頭部外傷によっても発症したり、その原因は多様です。働き盛りの現役世代が認知症を発症すると、仕事に影響を及ぼし、会社を辞めることになった場合には、経済的困難に直面し、生活設計が崩れるなど大きな影響があります。
若年性認知症について、企業と団体を対象に実施したアンケート調査(認知症介護研究・研修大府センター;2017年)の結果から、次のようなことが明らかになりました。

◆発見の経緯は職場での受診勧奨が最多

会社が若年性認知症の人を把握した経緯として「会社からの受診勧奨」が最も多くなっています(約5割)。その他は、「本人からの相談・申告」が約4割、「家族からの相談・申告」が約1割となっています。企業等に勤めている人では、家庭よりも職場での気づきが重要なようです。

◆会社としての対応状況

会社の対応としては、約6割で「他の業務・作業に変更した」としており、配置転換による就労継続を図っています。次いで、「労働時間の短縮・時間外労働削減」、「管理職業務からの変更」が行われています。報酬・雇用については、「作業能力低下でも報酬を維持した」が最も多く6割以上となっており、本人の会社に対するそれまでの貢献を考慮している会社が多くなっています。一方で、症状の進行状況によっては合意退職も行われているようです。

◆対応の検討が必要

最近では、障害者雇用については認知度が高まっているようですが、それは身体障害に偏っているようです。若年性認知症の人の多くは精神障害者保健福祉手帳を取得していることから、身体以外の障害についても一層の理解が求められるとともに、会社としての適切な対応についても理解を深めることが必要でしょう。
若年性認知症は早期発見・早期治療が重要とされています。貴重な人材に力を発揮し続けてもらうためにも、受診勧奨、休職・復職、職務変更に関する規定の整備や相談先に関する情報提供など、該当する従業員が現れた場合に会社が適切な対応を取れるよう、検討しておく必要があるでしょう。

Q 求人票ってそんなに重要ですか?

当社は,経理部門の管理責任者を募集するため,平成26年1月10日,ハローワークに求人を申し込みました。そして,この求人にかかる求人票には,雇用期間の定めなし,定年制なし,と記載していました。Aさん(当時64歳)は,この求人票を閲覧のうえ,当社の求人に応募してきました。Aさんは,当社における面接の際,定年制の有無を質問しましたが,面接担当者は未定と回答していました。なお,その際,雇用期間の有無や始期についての話はなされておりません。
当社は,Aさんを採用後,特段の説明なくAさんに労働条件通知書を示しておりますが,Aさんはこれに署名押印しております。そこには,定年制あり(65歳),雇用期間1年(平成26年3月1日~平成27年2月28日)と記載されております。その後,当社は,平成27年2月28日経過をもってAさんとの雇用関係を終了させる取扱いをしました。しかし,Aさんは求職票を根拠としてこの取扱いに異議を述べています。当社の取扱いに問題があったのでしょうか。

A 重要です

◆ 求人票の意味

雇用関係は,契約書がなくても成立しえます。もっとも,契約書がない場合は雇用関係の内容が不明確となってしまいます。しかし,
求人票が存する場合はこれが手がかりとされます。すなわち,求人票を見て応募してきた求職者を採用したときは,別段の合意がない限り,求人票記載の労働条件が労働契約内容となると理解されています。Aさんの場合も,別段の合意の成否が問われることとなります。

◆ 合意の成否

Aさんは,求人票と異なる内容の労働条件通知書に署名押印しています。では,これにより通知書どおりの合意が成立したといえるでしょうか。合意は自由意思に基づく必要がありますが,判例上,重要な労働条件については労働者側の同意が慎重に認定されています。当時64歳のAさんにとって,定年制の有無は重要な条件といえるうえ,65歳を定年とする条件は,定年制なしとの条件に比しAさんにとって不利益な内容です。しかし,Aさんが署名押印した段階ではすでに雇用がスタートしておりますので,署名押印拒否を十分に期し難い状況にあったといえ,署名押印にあたり十分な説明協議が行われていない事情も併せて考えると,合意成立と認められない可能性が高いと思われます。会社としては,自由意思を担保しうる条件が確保されているのかについて,慎重な検討が求められることに留意したいところです。