汐留パートナーズ・ニュースレター 2018年8月号

はじめに

今回は身近にあって、会社にも個人にも関係がある源泉所得税について「いつ」「誰が」「何に対して」「いくら」納税する制度なのか、順に見ていきます。

源泉所得税のスケジュール「いつ」

会社や個人事業主などは、原則として源泉徴収した(給与等の支払いをした)月の翌月10日までに、源泉徴収金額を納付しなければなりません(但し、従業員が10人未満で「納税の特例」の承認を受けた場合は、7月と1月の年2回のみの納付とすることが可能)。
しかし通常、毎月源泉徴収した総額と1年間の給与等支給総額に基づいて計算される確定税額は一致しません。これを調整する手続が年末調整であり、通常12月に行われます。

源泉所得税の徴収義務について「誰が」

源泉徴収すべき者(源泉徴収義務者)=給与等の支払をする者となります。よって納付期限までに適切な納付がなされなかった場合は、源泉徴収義務者に対して延滞税や不納付加算税が科されます。源泉徴収義務者になる者は、会社や個人だけではなく、 給与等の支払をする学校や官公庁、人格のない社団・財団なども含まれます。

給与以外の源泉所得税について「何に対して」

源泉所得税の代表例は給与等ですが、給与等以外にも利子・配当、退職金、年金や弁護士・税理士等の専門家への報酬などに対しても源泉徴収義務が発生します。なお、源泉徴収の対象となる報酬については、所得税法第204条1項にて列挙されています。

給与の源泉所得税の計算方法「いくら」

給与の源泉所得税の金額は、毎年国税庁が公表する「給与所得の源泉徴収税額表(以下、「税額表」)」に基づいて決定されます。
税額表は①社会保険料等控除後の給与等の金額と②扶養親族等の数による税額を示しています。
②の数え方は、給与所得者本人の所得金額、配偶者の所得金額、障害の有無や寡婦(寡夫)、勤労学生の状況によります。特に平成29年度税制改正において、配偶者控除及び配偶者特別控除の見直しが行われたことに伴い、当該数え方に変更が生じている点に留意が必要です。具体的には(1)配偶者が「源泉控除対象配偶者」に該当する場合には扶養親族等の数がプラス1となる、(2)「同一生計配偶者」が障害者に該当する場合には扶養親族等の数がプラス1となる点が変更となっています。(1)の「源泉控除対象配偶者」とは所得金額が900万円以下の給与所得者と生計を一にする所得金額が85万円以下の配偶者をいい、(2)の「同一生計配偶者」とは、給与所得者(年収制限なし)と生計を一にする所得金額38万円以下の配偶者をいいます。

おわりに

今回は源泉所得税の概要を説明しました。特に源泉所得税の計算については、上述通り平成30年度分より変更点があるため、判断に迷う場合があるかもしれません。その際には弊社までお気軽にお問い合わせください。

加速する「副業・兼業」容認

◆副業にまつわる2つの最新動向

いわゆる「多様な働き方」の1つに、「副業・兼業」(複数の企業と労働契約を結ぶ働き方)があります。今年6月、この副業にまつわる動きが2つありました。

◆副業する人の労災問題、議論開始

1つめは、厚生労働省の労働政策審議会が、副業する就業者の労災について議論を開始したことです。その主な論点は以下の2点です。

・労災保険給付……本業先・副業先の賃金の合算分を基にした給付額とするかどうか
・労災認定……本業先・副業先の業務上の負荷(労働時間等)を合わせて業務起因性の判断するかどうか

労災は、副業を容認するにあたり、どの企業も直面しうる問題です。議論の経過が注目されるところです。

◆国家公務員の副業も容認へ

2つめは、国家公務員の副業が一部容認されることです。
6月15日に閣議決定された「未来投資戦略2018」において、「国家公務員については、公益的活動等を行うための兼業に関し、円滑な制度運用を図るための環境整備を進める」と明記されました。ここでいう「公益的活動等」とは、特定非営利法人(NPO)等による、環境保護、教育、地方活性化等の仕事を指します。
従来、国家公務員は国家公務員法や通達により、「職務に支障が出ない活動」(大学の教員、本の執筆等)しか認められていませんでした。同様に地方公務員も、神戸市や生駒市等、認めてられている例はごく一部でした。
今回の方針決定により、公務員が副業を行うことも一般化していくかもしれません。

◆副業容認は制限とセットで

報道によれば、副業をしようとする国家公務員は、各省庁の人事担当者に届け出る必要があります。また、「副業は休日に行う」「長時間労働にならない」「副業先が政府と利害関係のある団体ではない」といった制限が設けられる見込みです。
厚生労働省「モデル就業規則」最新版(今年1月公表)においても、「労務提供上の支障がある場合」や「企業の利益を害する場合」等には、会社は副業を禁止または制限できると規定されています。
企業が副業を許可制・届出制とするにあたっては、上記のような制限を就業規則に規定しておくことが重要です。

Q 別商号の会社に対する請求でも…

当社は、A社に対し、貸金債権を有しています。しかし、A社の事務所には、連日、多数の債権者がおしかけているほか、A社の財産に対する差押えも多数実行されている状況です。

このような状況下において、ある休眠会社が「Y」社と商号変更しました。その後、A社の全事業がこのY社に譲渡されてしまいましたので、A社は蛻の殻の状態です。さらに、「Y」という名称は,A社がかねて自社の英語表記の略称として用いていた語として同一業界内で広く浸透しておりました。また、A社は「Y」の最初の一文字を裏返したデザイン文字(標章)をかねて利用してきており、この標章は、著名ブランドとして一般に通用していることには疑いがありません。また、Y社はこの標章をホームページや従業員の名刺などに広く用いて事業を行っています。

 当社としては、A社とY社は実質的に同一であるから、A社に対する貸付金の返還をY社に請求すべく検討しております。このような請求は、法律上可能でしょうか。

A 可能性は十分にあります

◆商号続用責任

代表権のない取締役が勝手に会社を代表して契約を締結しても、その契約の効果は、原則として会社には帰属しません。

◆表見代表取締役

事業譲渡の場合、譲受会社が譲渡会社の商号を続用(引続き使用すること)するときは、譲受会社も譲渡会社の当該事業上の債務を履行する責任を負います。このようなときは、債権者にとって事業主体の交替を把握することが難しいので、会社法上、債権者保護が図られているのです。しかし、事業主体の交替を把握し難いという状況は、商号続用の場合に限られません。そこで、この会社法のルールは同様の状況が認められる場合にも類推して適用されてきました。たとえば、屋号やゴルフクラブの名称の続用事例についても、類推して適用された例があります。

◆Y社の責任

Y社の場合、A社とは商号が異なるので、事業主体の交替を把握することが不可能とまではいえないかもしれません。しかし、「Y」はA社の略称であるうえ、Y社の続用標章はA社の象徴として世間に受け止められている標章といえそうです。そして、一般に、標章には商品や役務の出所を表示して品質を保証し、広告宣伝効果を高める機能を有するといますが、この点では商号と類似します。そうなると、A社という事業主体がそのまま存続しているとの外観があるといえそうです。
現に、類似の事案でA社の事業上の債務につきY社の履行責任を認めた裁判例があります。以上のとおりY、社に対する請求は認められる可能性が高いものと考えらます。