汐留パートナーズ・ニュースレター 2018年9月号

はじめに

近年、世界的に環境問題への取り組みの重要性は増しています。日本国内でも二酸化炭素排出の抑制や省エネルギー設備、再生可能エネルギー設備導入の拡大のため、環境に配慮した投資に対して様々な税制優遇措置が図られています。今回はこのようなエコな税制についていくつかご紹介したいと思います。

エコカー減税・グリーン化特例

「エコ」と聞いて、まず身近に思いつくのはエコカー減税ではないでしょうか。エコカー減税及びグリーン化特例は排出ガス性能及び燃費性能に優れた自動車に対して、自動車に係る税金を免除又は軽減するものです。エコカー減税は自動車取得税と自動車重量税を免税又は軽減、グリーン化特例は自動車税を軽減するとともに、新車新規登録等から一定年数を経過した燃費の悪い自動車に対しては自動車税を重課することとしています。
エコカー減税については2017年度、2018年度と見直しがなされており、対象車種と減税率の基準は段階的に厳しくなっています。自動車購入の際には車種、排出ガス性能、燃費基準の達成率を最新の基準に照らし合わせて確認する必要があります。

省エネ再エネ高度化投資促進税制

①省エネ高度化投資促進税制及び②再エネ高度化投資促進税制は、いずれも対象事業者が対象設備を取得等し、事業の用に供した場合に、①30%の特別償却又は7%の税額控除(中小企業のみ)、②20%特別償却の税制優遇を受けることができるものです。適用年度2018年4月1日から2020年3月31日までとなっています。両制度共に対象事業者と対象設備については厳密な規定があることから、大規模・高度な省エネ投資や先進的な再エネ設備導入予定の会社は具体的な適用要件に留意しつつ、当制度採用の検討をされてはいかがでしょうか。

東京都中小企業者向け省エネ促進税制

東京都では、低炭素型都市の実現に向け、中小企業者が地球温暖化対策の一環として省エネ設備及び再エネ設備を行った場合、法人事業税・個人事業税を減免しています。対象者は「地球温暖化対策報告書」を提出している資本金1億円以下の法人又は個人事業者です。対象設備は環境局が導入推奨機器として指定したもののうち、要件を満たすものに限ります。減免額は設備取得価額(上限2千万円)の2分の1であり、法人事業税は平成33年3月末まで、個人事業税は平成32年12月末までの間に設備取得及び事業の用に供した場合に適用されます。

おわりに

今回はエコな税制として、環境に配慮した投資に対して適用される税制優遇措置を取り上げました。各々の制度には厳密な適用要件が定められており、それも取得時期によって変化し得るものであるため、適用前には最新情報を確認することが重要です。適用の是非など、判断に迷う場合は、弊社までお気軽にお問い合わせください。

従業員の健康情報取扱規程の策定が必要になります

◆働き方改革法で規定

働き方改革法成立を受け、主に労働時間に関する改正が話題になっています。しかし、この法律によって変わるのはそれだけではありません。
労働安全衛生法改正により産業医や産業保健機能の強化がなされ、労働基準法改正による長時間労働抑制と両輪となって労働者の健康確保が図られるようになるのです。
具体的には、労働安全衛生法に第104条として「心身の状態に関する情報の取扱い」という規定が新設され、会社に従業員の健康情報取扱規程策定が義務づけられます。

◆規程の内容等は指針で明らかに

厚生労働省の労働者の心身の状態に関する情報の取扱いの在り方に関する検討会では、4月下旬から事業場内における健康情報の取扱いルールに関する議論を行い、7月25日に指針案を示しました。
案では、個人情報保護法の定めに基づき、事業場の実情を考慮して、(1)情報を必要な範囲において正確・最新に保つための措置、(2)情報の漏えい、紛失、改ざん等の防止のための措置、(3)保管の必要がなくなった情報の適切な消去等、について適正に運用する必要があるとして、規定すべき事項を9つ示しています。

◆衛生委員会等での策定が必要

指針案によれば、「取扱規程の策定に当たっては、衛生委員会等を活用して労使関与の下で検討し、策定したものを労働者と共有することが必要」としています。共有の仕方については、「就業規則その他の社内規程等により定め、当該文書を常時作業場の見やすい場所に掲示し、又は備え付ける、イントラネットに掲載を行う等により周知する方法が考えられる」としています。
なお、衛生委員会等の設置義務のない事業場については、「関係労働者の意見を聴く機会を活用する等、労働者の意見を聴いた上で取扱規程を策定し、労働者に共有することが必要」としています。

◆平成31年4月1日までに準備を進めましょう

この健康情報取扱規程策定義務については、平成31年4月1日施行と、比較的準備期間に余裕がありますが、その分見落としがちとも言えます。心配だという場合は、その他の改正と併せて行う就業規則等の見直しと一緒に準備を進められないか、専門家に相談してみるのもよいでしょう。

Q 別商号の会社に対する請求でも…

当社は、A社に対し、貸金債権を有しています。しかし、A社の事務所には、連日、多数の債権者がおしかけているほか、A社の財産に対する差押えも多数実行されている状況です。

このような状況下において、ある休眠会社が「Y」社と商号変更しました。その後、A社の全事業がこのY社に譲渡されてしまいましたので、A社は蛻の殻の状態です。さらに、「Y」という名称は,A社がかねて自社の英語表記の略称として用いていた語として同一業界内で広く浸透しておりました。また、A社は「Y」の最初の一文字を裏返したデザイン文字(標章)をかねて利用してきており、この標章は、著名ブランドとして一般に通用していることには疑いがありません。また、Y社はこの標章をホームページや従業員の名刺などに広く用いて事業を行っています。

当社としては、A社とY社は実質的に同一であるから、A社に対する貸付金の返還をY社に請求すべく検討しております。このような請求は、法律上可能でしょうか。

A 可能性は十分にあります

◆商号続用責任

代表権のない取締役が勝手に会社を代表して契約を締結しても、その契約の効果は、原則として会社には帰属しません。

◆表見代表取締役

事業譲渡の場合、譲受会社が譲渡会社の商号を続用(引続き使用すること)するときは、譲受会社も譲渡会社の当該事業上の債務を履行する責任を負います。このようなときは、債権者にとって事業主体の交替を把握することが難しいので、会社法上、債権者保護が図られているのです。しかし、事業主体の交替を把握し難いという状況は、商号続用の場合に限られません。そこで、この会社法のルールは同様の状況が認められる場合にも類推して適用されてきました。たとえば、屋号やゴルフクラブの名称の続用事例についても、類推して適用された例があります。

◆Y社の責任

Y社の場合、A社とは商号が異なるので、事業主体の交替を把握することが不可能とまではいえないかもしれません。しかし、「Y」はA社の略称であるうえ、Y社の続用標章はA社の象徴として世間に受け止められている標章といえそうです。そして、一般に、標章には商品や役務の出所を表示して品質を保証し、広告宣伝効果を高める機能を有するといますが、この点では商号と類似します。そうなると、A社という事業主体がそのまま存続しているとの外観があるといえそうです。
現に、類似の事案でA社の事業上の債務につきY社の履行責任を認めた裁判例があります。以上のとおりY、社に対する請求は認められる可能性が高いものと考えらます。

Q 会社の繁忙期に従業員から有給休暇の申請がされたら

当社の従業員から、有給休暇を取りたいとの申請がありました。しかし、その従業員が有給休暇を申請した期間は、当社にとって一年で一番業務が忙しい時期だったため、別の期間に変更するようその従業員に求めましたが、応じませんでした。その場合、当社としては、申請された有給休暇の期間を変更することは可能でしょうか。

A 当該期間に有給休暇を与えることが業務の正常な運営を妨げるかがポイント

◆有給休暇の性質

労働基準法39条は、一定の要件を満たした労働者に対して、一定日数の有給休暇を取ることを認めています。そして同条5項は、「使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。」と定めています。
有給休暇は、勤務日数など労働基準法の要件を満たすことによって、労働者に当然に発生する権利であり、加えて、労働者はその具体的時期を特定するための時季指定権があるとされています。
このように、労働者は、原則的に自己の権利として自由に有給休暇を取ることができるのですが、前述の通り、「事業の正常な運営を妨げる場合」には、使用者側がその時季を変更することができます。

◆「事業の正常な運営を妨げる場合」の具体的判断

「事業の正常な運営を妨げる場合」とは、当該労働者の有給休暇期間における労働が、当該労働者の課や係などの単位の業務の運営にとって不可欠で、代替要員を確保するのが困難であるような場合をいうと解釈されています。
最高裁も、使用者が通常の配慮をすれば、勤務割を変更して代替勤務者を配置することが客観的に可能な状況にあるにもかかわらず、使用者がそのための配慮をしないことにより代替勤務者が配置されないときは、必要配置人員を欠くものとして事業の正常な運営を妨げる場合とはいえない旨、示しています。

◆結論

したがって、当該従業員が有給休暇の申請をした期間が単に忙しいというだけでは、会社はその時季を変更することはできず、代替要員が確保できるか努力をして、それが不可能な場合に時季の変更が可能となります。