汐留パートナーズ・ニュースレター 2018年10月号

はじめに

今回は身近にありつつも具体的な制度内容については不明点が多いであろう印紙税について見ていきたいと思います。

課税文書とは

印紙税は課税文書に対して課税事項が記載されている場合に課されます。課税文書とは種々の契約書、手形、株券、領収書、通帳など、印紙税法別表第一(課税物件表)に掲げられる20種類の文書のことをいいます。但し、契約金額が1万円未満の契約書(一部を除く)や、受領金額が5万円未満の領収書など、金額が少額なものは、課税対象から除かれます。

身近な第17号文書について

印紙税法別表第一(課税物件表)の第17号文書とは、いわゆる「領収書」のことです。ここにいう「領収書」とは金銭等の引渡しを受けた者が、その受取事実を証明するために引渡者に交付するものであり、「受取書」や「レシート」、また請求書や納品書に「代済」「了」「相殺」といった記載がなされているものを含みます。

こんなときどうする?

① 消印について
印紙税は原則として文書に収入印紙を貼り、消印することで納付がなされます。よって消印を失念すると、納付したと認められない点に留意が必要です。この消印目的は印紙の再使用防止にあるため、消印は文書と印紙の彩文とにかけて、判明に行う必要があります。
② 領収書を再発行した場合
前述通り、領収書は受領事実を証明するために作成、交付する証拠証書であるため、再発行の場合であっても、その目的で作成される限り、印紙税の対象となります。
③ 消費税が区分されている場合
印紙税額は文書に記載された金額に伴い決定します。即ち、消費税が区分記載されている場合は、税抜金額が課税対象金額となり、区分記載されていない場合と比べ、課税対象金額が小さくなるため、節税につながります。
④ 過怠税について
印紙税を文書作成時までに納付しなかった場合には過怠税が課せられます。過怠税は、原則として納付しなかった印紙税の3倍(最低1,000円)となります。また消印がなかった場合は、印紙額面金額に相当する金額の過怠税が課されます。
⑤ 貼り忘れを申請した場合
自ら収入印紙の貼り忘れに気が付き、「印紙税不納付事実申出書」を税務署に提出すると、過怠税は印紙税相当額の1.1倍になります。
⑥ 誤った金額を貼った場合
誤った金額の収入印紙を貼った場合、当該文書と「印紙税過誤納確認申請書」を文書作成日から5年以内に税務署に提出すれば、還付を受けることができます。

おわりに

印紙税は適用範囲が広いため、文書作成の際には今一度、課税対象となるか確認すべきと思われます。判断に迷う際には、弊社までお気軽にお問い合わせください。

「健康保険法及び厚生年金保険法における賞与に係る報酬の取扱いについて」の一部改正

◆平成27年改正による「賞与に係る報酬」

厚生労働省の通知「健康保険法及び厚生年金保険法における賞与に係る報酬の取扱いについて」の中で、報酬と賞与の取扱いが定められています。大まかに言って、年間を通じて支払い回数が3回までのものは「賞与」、4回以上のものは「報酬」とされています。それぞれ「標準賞与額」、「標準報酬月額」として保険料算定の基礎にされます。
しかし、事業者の中には保険料を安くするために、特殊な賞与の支払い方をする例がありました。例えば、年間100万円の賞与を⒉回にわけて支払うと標準賞与額100万円として保険料が算定されますが、100万円を12分割し、6月と12月だけ多く支払い、その他の月は500円支払うとします。そうすると、その賞与は「報酬」になり、かつ「随時改訂」の規定により算定され、年間の保険料は標準賞与額によるものより安くなります。「随時改訂」が3カ月平均で求めることを逆手に取っているわけです。
これを防ぐため、平成27年改正により、1年間を通じ4回以上支払われる賞与は「通常の報酬」ではなく「賞与に係る報酬」として、1年間の支払い合計額の12分の1を報酬額とすることとされました。

◆今般の改正による「通常の報酬」、「賞与に係る報酬」、「賞与」の明確化

平成30年7月30日に出された通知によると、上記の通知に下記の2点が加わりました。
① 通知にいう「通常の報酬」、「賞与に係る報酬」及び「賞与」は、名称の如何にかかわらず、二以上の異なる性質を有するものであることが諸規定又は賃金台帳等から明らかな場合には、同一の性質を有すると認められるものごとに判別するものであること。
② 通知にいう「賞与」について、7月2日以降新たにその支給が諸規定に定められた場合には、年間を通じ4回以上の支給につき客観的に定められているときであっても、次期標準報酬月額の定時決定(7月、8月又は9月の随時改定を含む。)による標準報酬月額が適用されるまでの間は、賞与に係る報酬に該当しないものとすること。
厚生労働省の示すQ&Aによると、本通知の趣旨は、従前の通知に示す取扱いをより明確化し徹底を図ることです。具体的には、
①については、諸手当等の名称の如何に関わらず、諸規定又は賃金台帳等から、同一の性質を有すると認められるもの毎に判別するものであること
②については、諸手当等を新設した場合のような支給実績のないときに、翌7月1日までの間は「賞与」として取り扱うものであることとされています。
本通知は、周知期間を確保するため、発出から半年の周知期間を設けていますが、本通知の適用日以降に受け付けた届書から本通知による取扱いを適用することとされており、適用日前に受け付けた届書の内容を見直すことは要しないとされています。

Q 反社会勢力であっても…

当社は,A建設会社からの依頼を受け,B社からの借入金1億円につき,支払を保証する旨の保証契約を締結しました。また,その際,A建設会社が反社会勢力ではないことを保証理由のひとつとして明示のうえ,保証契約を交わしております。ところがその2年後,警視庁は,国土交通省関東地方整備局に対し,A建設会社につき,暴力団員Xが同社の代表取締役を務めているとの理由により,公共工事の指名業者から排除するよう求めるという事態が生じました。
現在,当社は,B社から,保証契約を根拠として,1億円の支払を請求されています。しかし,当社は,保証に際し,A建設会社が反社会的勢力ではないことを保証理由として明示していたはずです。本件の保証契約は,無効とはならないのでしょうか。

A 無効とは限りません

◆ 錯誤無効のルール

民法上,重要部分に関する錯誤によって締結された契約は,原則として無効となる旨定められています。そして,判例上,契約締結の動機部分に錯誤があるにとどまる場合も,一定の条件の下,重要部分に錯誤があるものとして無効と取り扱われてきました。本件の場合も,この判例のルールが妥当するのかが問題となります。

◆ 本件の保証契約について

通常,契約当事者は,相手方の取引理由を
全て知りうるわけではありません。それゆえ,
契約締結後に,「実は動機に錯誤があって…」などという事情で契約が無効となってしまっては,安心して契約することができません。
しかし,契約の動機が明示されていた場合は,必ずしもそうとは限りません。本件でも,A建設会社が反社会勢力でないことを保証理由として明示しているという事情があります。
この点が問題となった本件と類似の事件において,最高裁は,動機が表示されていただけでは,当然には錯誤で無効と取り扱われるわけでない旨判示しています。そこでは,表示された動機が契約内容に組み込まれたものと認められない限り,錯誤による無効とならないとの指摘がされています。本件でも,反社会勢力排除の要請と保証責任の否定は必ずしも直結せず,A建設会社の属性が保証契約の内容となったとまでは認められない可能性が高いと思われます。本件は,保証理由の明示だけでなく,保証契約上,免責の約定を工夫するなどの対応が必要であった事案と考えられます。