汐留パートナーズ・ニュースレター 2018年12月号

はじめに

 消費税率10%への引上げまで1年を切り、国税庁は11月2日に「平成31年(2019年)10月1日以後に行われる資産の譲渡等に適用される消費税率等に関する経過措置の取扱いQ&A(以下、Q&A)」を【基本的な考え方編】と【具体的事例編】に分けて公表しました。今回の消費税率引上げは軽減税率の導入を除けば、基本的に前回の消費税率5%→8%の引上げ時と同様の考え方で対応することになります。しかし、前回引上げ時に一部混乱を招いた部分などについて、Q&Aにて具体的に説明が追加された項目があります。今回はQ&Aに追記されたもののうち、関係する会社が多いであろう「施行日を跨ぐ役務提供に係る適用税率」についてみていきたいと思います。

前提

 消費税引上げ施行日(2019年10月1日)前の2019年9月1日に同日から1年間の役務提供を行う契約を締結すると共に、1年分の対価を前受けしているケースを、以下の3パターンに分けてみていきます。

原則(Q&A【基本的な考え方編】Q6本文)

 前提より、その役務提供の全部が完了するのは施行日以降の2020年8月31日となります。役務提供についてはその役務の全部を完了した日をもって資産の譲渡等の時期とされていますので、施行日以降に役務提供の全部が完了する当該ケースでは、新税率10%が適用されます。

例外(Q&A【基本的な考え方編】Q6但書)

前提に加えて、以下の2要件を満たす場合は、当該役務提供につき、旧税率8%を適用できるとされています。
① 契約上、中途解約時に未経過期間分の対価の返還の定めがない。
② 経理上、受領者が継続して1年分の対価を受領した時点で収益計上している。

役務提供が月々完了の場合((Q&A【具体的事例編】Q2)

 前提に加えて、以下の3要件を満たす場合は、施行日前に役務提供が完了する部分については旧税率8%を、施行日以後に役務提供が完了する部分については新税率10%が適用されます。
① 契約上、月極め(月額〇〇円)の条項がある。
② 契約上、中途解約時に未経過期間分の対価の返還の定めがある。
③ 経理上、受領者は一括で受領した対価を各月で按分し、毎月収益計上している。

おわりに

今回は、消費税10%への引上げが目前に迫ってきた中で、前回の税率引上げ時に疑義が生じた「施行日を跨ぐ役務提供」についてみてみました。公表されたQ&Aには、この他にもトピックになり得る論点(各種経過措置の説明や具体例)が数多く記載されています。他の論点についても疑問点等がございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせください。

平成30年就労条件総合調査の結果より

◆平成30年就労条件総合調査

厚生労働省は、平成30年就労条件総合調査の結果を公表しました。この調査は、企業における就労条件の現状を明らかにすることを目的として実施されているもので、今回公表されたものは、平成30年1月1日現在の状況等について1月に行われた調査結果です(調査対象:常用労働者30人以上の企業6,370社(有効回答3,697 社))。

◆平成29年の年次有給休暇の取得率は51.1%

調査によると、平成29 年(または平成28会計年度)1年間の年次有給休暇の付与日数は18.2日(平成29年調査18.2日)、そのうち労働者が取得した日数は9.3日(同9.0日)で、取得率は51.1%(同49.4%)となったそうです。付与日数、取得日数共に、企業規模が小さいほど下がる傾向にあります。年休の取得については2019年4月施行の労基法の改正事項もありますので、気にしていきたいところです。

◆勤務間インターバル制度の導入状況

また、政府が導入を推進している勤務間インターバル制度については、導入状況別の企業割合をみると、「導入している」が1.8%(平成29年調査1.4%)、「導入を予定または検討している」が9.1%(同5.1%)、「導入予定はなく、検討もしていない」が89.1%(同92.9%)となっています。昨年より若干増加していますが、まだ普及は進んでいない状況のようです。
また、1,000人以上規模の企業では導入割合は5.1%であるのに対し、30~99人規模の企業では1.4%と、母数が小さいながらも差が大きくなっています。導入しない理由として「当該制度を知らなかったため」との回答が3割近くもあることから、制度の周知も求められるところでしょう。

◆退職給付(一時金・年金)制度

退職給付(一時金・年金)制度がある企業割合は80.5%となっています。企業規模別にみると、1,000人以上が92.3%、300~999人が91.8%、100~299人が84.9%、30~99人が77.6%となっています。退職年金制度がある企業について、支払準備形態(複数回答)別の企業割合をみると、「厚生年金基金(上乗せ給付)」が20.0%、「確定給付企業年金(CBPを含む)」が43.3%、「確定拠出年金(企業型)」が47.6%となっており、平成25年の調査と比べると、厚生年金基金の割合は半分未満となり、その分、確定給付企業年金、確定拠出年金の割合が増えています。
平成30年就労条件総合調査の結果は、厚生労働省のホームページにも掲載されています。会社の状況と比べながら、会社が全体でいまどの位置にいるのか把握してみるのもよいでしょう。
【厚生労働省「平成30年就労条件総合調査」】

Q 固定残業代を支給したものの…

 当社は,従業員Aの給与を年俸制により支給しておりました。年俸額は1700万円です(内訳は,本給月額86万円,諸手当月額
34万円1000円等,賞与本給3か月分)。また,法定労働時間超過分の残業代については,給与規程上,実働時間を対象として管理
責任者の認定により支給するとのみ定められています。
 さて,当社は,現在までAさんの残業代を,残業時間数を問わず年俸額に含まれるものとして取り扱ってきました。ところが,この度,Aから,年俸支給とは別に残業代を支払うべきとして,直近1年分の残業代を別途支給するよう請求されております。当社の取扱いには何か問題があったのでしょうか。

A 不足分の追加支給が必要です。

◆ 固定残業代制度

 固定残業代制度と呼ばれる給与制度があります。残業時間数にかかわらず,定額の残業代を支給する制度です。この制度を設けている会社は,相当数見受けられます。
 法律上,固定残業代制度を設けること自体には問題ありません。しかし,この定額分が実際の残業時間に相当する賃金を下回るときは,差額を追加支給する必要があります。
残業代請求の訴訟では,往々にしてこの点が問題となります。会社側は,固定残業代制度を設けているので,残業代も含めて賃金を支給済みであると反論するのが常です。実際に,給与が極めて高額で裁量度が高い業務に従事していた従業員にかかる事件で,この反論が認められた例もあります。
そのような状況のなか,近時,本件と同様の給与制によっている使用者が,Aさんのような主張に基づき残業代請求される訴訟事件が起こりました。

◆ Aの残業代

 この件で,第1審は,当該従業員の業務が自らの裁量で律することができたものであることや給与額が相当高額であったことなどを指摘したうえで,残業代が年俸に含まれる合意があったと判示しました。しかし,最高裁は,この判断を覆しています。通常の労働時間に相当する賃金と残業代を判別できる制度になっていないときは,残業代も基本給に含める固定残業代扱いによることはできないと明確に判示したのです。
 したがって,Aさんに対する取扱いも,高額年俸であるとはいえ,法的に正当と認められない可能性が非常に高いといえます。固定残業代制度を導入するにあたっては,職種や給与額を問わず,基本給と残業代を明確に判別できるような仕組みとなるよう十分に留意したいところです。