汐留パートナーズ・ニュースレター 2019年02月号

はじめに

今年も確定申告の時期がやってきました。年末調整にて税金は精算されたという方も、①高額な医療費を支払った人(医療費控除)、②ふるさと納税を行った人(寄付金控除)、③家を購入して1年目の人(住宅借入金特別控除)、④災害の被害を受けた人(雑損控除)などは確定申告により、還付金がもらえます。今回は平成30年分確定申告における変更点及び留意点についてご説明したいと思います。

配偶者(特別)控除の適用範囲の変更

①合計所得金額が1,000万円を超える所得者は、配偶者控除及び配偶者特別控除の適用を受けることができなくなりました(従来:給与所得者の合計所得金額の制限無)。
②配偶者特別控除の対象となる配偶者の合計所得金額が38万円超123万円以下とされました(従来:38万円超76万円未満)。

e-Taxが「マイナンバーカード方式」と「ID・パスワード方式」の2択に

マイナンバーカード方式とは、従来からある方法でマイナンバーカードやICカードリーダライタを利用してe-Taxを行う方法です。
ID・パスワード方式とは、税務署等で職員と対面による本人確認を行った後に発行される「ID・パスワード方式の届出完了通知」を利用してe-Taxを行う方法です。事前に「ID・パスワード方式の届出完了通知」の取得は必要ですが、マイナンバーカードやICカードリーダライタが不要な点で、初めてe-Taxを行う方には始めやすい方法といえます。但し、この方法はマイナンバーカード方式が普及するまでの暫定的な対応とされています。

スマートフォンからの申告が可能に

年末調整済みの給与所得者(1ヶ所からの支払いのみ)で、医療費控除やふるさと納税などの寄附金控除の還付申告を行う人はスマートフォン専用画面から確定申告が可能となりました。この場合は、e-Taxの「ID・パスワード方式」を利用することになります。

医療費控除における領収書の提出が不要に

平成29年分確定申告から、領収書の提出の代わりに『医療費控除の明細書』の添付が必要となりました。但し、税務署から提示又は提出を求めれる場合があるため、5年間は領収書を保存する必要があり、2019年分までの確定申告については、従来の領収書の添付又は提示による申告も可能です。またセルフメディケーション税制を適用する場合は、医療費控除の適用はできません(選択適用)。

ふるさと納税のワンストップ特例

もともと確定申告が不要な給与所得者等のための制度で、ふるさと納税時に自治体に申請書を送ることで、6自治体まで確定申告をせずに寄付金控除を受けることができます。

おわりに

今回は確定申告を目前に、主な変更点や留意点を取り上げました。確定申告においては、その他疑問点も多いと思いますので、その際にはお気軽に弊社までお問い合わせください。

「過半数代表」に注意!~労働政策研究・研修機構の調査より

◆労使協定と過半数代表

労働組合の組織率は年々低下傾向にあるようですが、働き方改革法の成立・施行に伴い、労使協定の重要性が増す中、「過半数代表」については注意が必要です。36協定等の労使協定を締結する場合は、その都度、過半数組合か、過半数組合がない場合は過半数代表者との書面による協定が必要ですが、この度、「過半数労働組合および過半数代表者に関する調査」((独)労働政策研究・研修機構)の結果が公表されました。

◆「労働組合は1つ」が9割以上

この調査に回答した7,299事業所のうち、労働組合のある事業所(全体の12.6%)の93.8%は、組合が1つでした。2つ以上と回答したのは6.1%です。また、過半数組合があるのは65.5%となっています。

◆「過半数代表」の選出状況

調査によると、過去3年間に、「過半数代表者を選出したことがある」事業所は43.1%、「過半数代表者を選出したことがない」事業所は36.0%、「不明(選出したことがあるか分からない)」が10.1%であったとのことで、中には問題があるケースもありそうです。
「過半数代表(事業場における過半数労働組合または過半数代表者)」が「いる」のは全体の51.4%、「いない」が36.0%。事業所規模別にみると、「過半数代表」がいる割合は、「9人以下」35.7%、「10~29人」69.5%、「30~99人」85.5%、「100~299人」92.7%、「300~999人」94.3%などと、やはり規模が小さいと割合が低くなっています。

◆選出方法にも問題が…

過半数代表者を選出したことがある事業所における選出方法についての回答は、「投票や挙手」が30.9%となる一方、「信任」22.0%、「話し合い」17.9%、「親睦会の代表者等、特定の者が自動的になる」6.2%、「使用者(事業主や会社)が指名」21.4%などとなっており、問題のある事業所があるようです。過半数代表者は、労使協定の締結等を行う者を選出することなど、その目的を明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続きにより選出された者である必要があります。
また、過半数代表者の職位について、「課長クラス」、「部長クラス」、「工場長、支店長クラス」、「非正社員」といった回答があり、こちらも問題があるようです。過半数代表者は、監督または管理の地位にある者でない必要があるからです。
適正な過半数代表者を選出していないことが労働基準監督署の調査などで判明すると、締結した労使協定等自体が無効なものとされてしまい、是正勧告や訴訟に大きな影響があります。今後、労働基準監督署によるチェックがさらに厳しくなることは確実と思われますので、再確認しておく必要があるでしょう。

【(独)労働政策研究・研修機構「過半数労働組合および過半数代表者に関する調査」】

Q 退職金不支給と定めていますが…

当社従業員Aは,退職までの20年間,いちども懲戒処分を受けたことがないうえ,営業成績が極めて優秀でした。営業成績については,幾度も社内表彰を受けております。ところが,Aは,一昨年,強制わいせつ致傷の嫌疑により逮捕の後,起訴されました。この裁判においては,昨年,懲役3年,執行猶予5年との有罪判決が出ております。なお,被害者との間では,示談が成立しております。
当社は,この事件を理由として,判決後,Aを懲戒解雇としました。また,当社就業規則(「懲戒解雇となった場合は,退職手当を支
給しない」との定めがあります。)に基づき,Aに対する退職金を不支給としました。 さて,当社は,この度,Aからこの不支給決定が不服であるとして,退職金全額を請求する訴訟を提起されております。Aの主張は就業規則に反しているのではないでしょうか。

A 文字通りにはいきません。

◆ 退職金不支給規定の効力

本件と同内容の退職金不支給規定は多くみられます。しかし,裁判所においては,その効力につき限定的に理解されるのが通例です。一般に,退職金の性質については,賃金としての側面のみならず,功労報償(業績へのご褒美)としての側面があると理解されております。そこで,裁判所は,本件のような退職金不支給規定につき,この功労を抹消してしまうほどの事由がある場合に不支給とする趣旨であると限定的に理解したうえで,適用するのです。

◆ Aの請求の当否

そうなると,本件でも,功労を抹消するほどの事由があったのかが争点になると予想されます。たしかに,Aの行為は社会上決して許されるべきものではありません。他方,それゆえに有罪判決という制裁を受けていること,業務上の行為ではなく私生活上の非行であることや,幾度も社内表彰を受けるなど,これまでの社内業績が決して小さくないといえることも考慮されるべきでしょう。また,Aによる犯罪の直接の被害者は会社ではないこと,直接の被害者との間では示談が成立済みであることも重要です。
訴訟では,このようにAに有利となる点も考慮されることとなる結果,功労がすべて抹消されたとまでは認定されず,請求額の何割かは認められる可能性が十分にあります。
就業規則というのは,その性質上,文字通りに適用されないことが多い点に留意したいところです。