汐留パートナーズ・ニュースレター 2019年04月号

はじめに

今回も前回に引き続き、平成31年度税制改正大綱の中から、企業への影響が大きいと思われる中小企業に関わるトピックについて見ていきたいと思います。

中小企業者の法人税率の軽減特例の延長

現行の法人税率は23.2%でありますが、中小法人(資本金1億円以下の法人)については年800万円以下の所得金額に対する税率は19%、更に租税特別措置法により15%に軽減されています。中小企業者の経営基盤を引き続き強化するため、当該適用期限を2019年3月31日から2021年3月31日へ2年間延長することとされています。

中小企業者の設備投資を支援する税制措置の延長等

中小企業者の設備投資を支援する税制措置としては、中小企業経営強化税制、中小企業投資促進税制、商業・サービス業活性化税制といった制度が設けられています。各々、適用条件を満たす設備投資を行った場合には、特別償却や税額控除が認められるといった優遇措置を定めた内容の制度です。これらについても適用期限は2019年3月31日までであったものを2021年3月31日までと2年間延長することとされています。また中小企業経営強化税制については、その適用対象に、働き方改革に資する設備(休憩室に設置される冷暖房設備や作業場に設置されるテレワーク用PC等)も含められることが明確化されました。

中小企業における防災・減災設備の特別償却制度の創設

昨今の頻発する自然災害により、中小企業が災害対策強化のために設備投資を行うことを促進するため、防災・減災設備に対して特別償却を講じる制度が創設されました。具体的には、青色申告書を提出する中小企業者が、中小企業等経営強化法の改正法の施行日から2021年3月31日までに防災・減災設備を取得し、事業供用した場合には、取得価額の20%の特別償却が認められることになります。事業者は「事業継続力強化計画(仮称)」を策定し、経済産業大臣への申請及び認定を受けることが適用要件となります。対象資産としては、自家発電機、排水ポンプ等の機械装置(100万円以上)、制震・免震ラック、衛星電話等の器具備品(30万円以上)、止水板、防火シャッタ、排煙設備等の建物附属設備(60万円以上)などが挙げられます。

おわりに

今回は税制改正大綱のうち、企業への影響が大きいと考えられる中小企業に関わる項目について取り上げました。中小企業に対しては様々な税制上の優遇措置があります。利用できるものは積極的に活用することで税務上のメリットを享受できます。一方で、税制改正により、変更されることも多いので、各々の税制措置の変更点には十分に留意してください。ご不明点等ございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせください。

気になる!企業のソーシャルリスク対策の実態

◆従業員の不適切動画投稿問題で改めて問われる企業の対策

飲食店やコンビニの従業員が投稿した不適切動画問題が、企業の評判に悪影響を及ぼしかねない事件が、立て続けに起こりました。

対応については、従業員に損害賠償請求訴訟を起こす決定をした企業、全店休業して社員研修を行う決定をした企業と様々ですが、SNSを活用する企業も個人も増えている中では、いつ問題に巻き込まれても不思議はありません。

まだ社会人としての自覚に乏しい新入社員の入社も近づくこの時期は、自社の対策を確認しておくべき時期とも言えるでしょう。

◆多くが何らかの対策を講じており、4割が研修を実施

ウェブサイトやアプリのユーザーサポート等を行うアディッシュ株式会社が、2018年12月に行った調査によれば、ソーシャルリスク対策について「未実施。今後も実施なし」と回答したのは5.2%で、多くの企業が対策を行っています。

具体的な内容を実施率で見ると、「研修の実施」39.1%、「ガイドライン作成」37.2%、「マニュアル作成」30.9%が上位に入っています。 しかしながら、従業員数別に見ると100人以上300人未満の研修の実施率が50%であるのに対し、100人未満では19.1%と、十分な対策が取られていない可能性があります。

◆雇入れ時に自筆の誓約書を書かせるのも有効?

人事コンサルタントの増沢隆太氏によれば、研修の実施や朝礼時の啓発を継続的に行うとともに、雇入れ時に、自筆で、バイトテロを起こした場合の損害賠償を約束させる誓約書を取り交わすのが望ましいそうです。例えば、店舗普及に必要な清掃や消毒、商品の廃棄や巷間、休業補償などを当事者負担で行うことを明文化しておくのだそうです。

用意された誓約書にサインさせるのではなく、従業員自身に内容を書かせることが、バイトテロ行為を行うことのリスクを自覚させるのに有効だということです。

◆未実施の場合は早急に対策を検討しましょう

不適切動画を投稿した本人による「せいぜいクビになるだけ」という趣旨の発言が報道にもありましたが、不適切動画の投稿はスマートフォン1台あれば簡単にできますし、投稿する従業員自身も社会問題に発展しかねないリスクを自覚していない可能性があります。

新入社員だけでなく、既存の従業員も対象に、一度研修の実施を検討してはいかがでしょうか。

Q 株主が株主総会で議決権の代理行使を要求してきたら

当社で今期開催する定時株主総会において、ある株主が、代理人を株主総会に出席させて議決権を代理行使したいと要求してきました。

当社としては、この代理人による出席と議決権の代理行使を認めなければならないでしょうか。

A 株主総会が攪乱されるおそれがあるかどうかがポイント

◆議決権行使の代理人を株主に限定する旨の定款の規定

多くの会社では、定款で、株主総会における議決権の代理行使をしようとする場合には、その代理人を株主に限定する旨の規定をおいています。

株主総会が会社の最高意思決定機関であることや、会社法でも議決権の代理行使は認められていることから、株主の議決権の代理行使を一切認めないとすることは許されません。

それでは、上記規定のように、議決権行使の代理人を株主に限るとする旨の定款の規定は許されるでしょうか。この点については、株主総会が株主以外の第三者によって擾乱されることを防止し、会社の利益を保護するという合理的理由による相当程度の制限ということができるため、有効であるとする判例があります。

◆代理人が株主ではない場合

 それでは、議決権代理行使の代理人は株主でなければならない旨の定款の規定があった場合、当該代理人が株主ではないとしたら、議決権の代理行使を全て拒否できるでしょうか。前述の判例によると、議決権代理行使の代理人を株主に限定する旨の定款の規定が許される根拠は、株主総会が株主以外の第三者によって擾乱されることを防止し、会社の利益を保護するという合理的理由があるからということでした。そうすると、株主総会が代理人よって擾乱されるおそれがなければ、株主以外の者が代理人となった場合でも、議決権の代理行使を許さなければならない可能性がありそうです。

実際、下級審の裁判例で、代理人として弁護士が選任された場合、株主総会を混乱させるおそれがあるとは一般的には認め難いため、特段の事由がない限り、これを拒否することは違法と判断したものがあります。

したがって、代理人が株主でない場合でも一律に議決権の代理行使を拒否すべきではなく、総会攪乱のおそれがないかを具体的に判断する必要があります。