汐留パートナーズ・ニュースレター 2019年12月号

はじめに

今年も早いもので、12月となりました。12月を過ぎると所得税の確定申告に忙しくなる方も多いと思います。今回は、特に個人事業主の方に関係しますが、2020年分の確定申告から変更となる青色申告特別控除額と基礎控除額について見ていきたいと思います。

給与所得者の場合

前提として、平成30年度税制改正のうち、個人の所得に関わるものとして、まずは給与所得のみのケースを考えてみます。収入金額が850万円以下の場合は、給与所得控除が10万円減少するものの、基礎控除が10万円増加することにより、結果として所得税額への影響はありません。一方、収入金額が850万円を超える場合は、介護や子育て世帯などを除き、増税となります(2018年 3月号参考:https://shiodome.co.jp/news/2200/)。

個人事業主の場合

(1)基礎控除 
上の給与所得者の場合で述べた通り、現行38万円から改正後48万円へと増加します。
(2)青色申告特別控除
現行65万円から改正後55万円へと減少します。但し、①e-Taxによる電子申告又は②電子帳簿保存を行うことで、引き続き65万円の青色申告特別控除が受けられることになります。ここで①e-Taxによる電子申告は想像つきやすいと思いますが、②電子帳簿保存とは、 帳簿書類を電子データのままで保存できる制度で、この制度の適用を受けるには、帳簿の備付けを開始する日の3か月前までに税務署に申請し、承認を受ける必要があり、相応の要件を満たしていることが求められます(http://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/index.htm)。また 課税期間の途中から適用することはできません。経過措置として、2020年度分については2020年9月29日までに申請書を提出し、同年中に承認を受け、12月31日までの間に、仕訳帳及び総勘定元帳の電磁的記録による備付け及び保存を行うことで、65万 円の青色申告特別控除を受けることができます。この点、現在e-Taxを利用していない人にとっても、②電子帳簿保存の条件をクリアするよりも、①e-Taxによる電子申告を行う方が、ハードルが低いと言われています。
(3)結論
現在青色申告特別控除65万円を受けている方は2020年度以降は以下の2パターンになります。
1⃣e-Taxによる電子申告又は電子帳簿保存を行う方➡青色申告特別控除65万円+基礎控除48万円=合計113万円の控除(10万円UP)
2⃣e-Taxによる電子申告も電子帳簿保存も行わない方➡青色申告特別控除55万円+基礎控除48万円=合計103万円の控除(影響なし)

おわりに

現在、電子申告を検討中の方は、e-Taxの利用の有無で控除額に差が出る来年度を見据えて、今年度から開始すると良いかもしれません。ご不明点等がございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせください。

若手が求めるやりがいとパワハラ防止へのコミュニケーションの重要性

◆若手のやりがい、求められるコミュニケーション

マンパワーグループが行った、入社2年目までの若手正社員(22~27歳)を対象とした調査によると、仕事に「やりがいを感じている」割合は約70%だということです。やりがいの中身(複数回答可)では、上位から順に「仕事の成果を認められる」が37.6%、「仕事をやり遂げる」が34.7%、「自分の成長を感じる」が34.7%、「新しい仕事にチャレンジする」が33.2%、「お礼や感謝の言葉をもらう」が31.4%となっています。
また、若手正社員が取り入れてほしいと考える勤務制度への回答では、多いほうから順に「フレックス制」36.8%、「在宅勤務」33.3%、「モバイルワーク」30.8%が目立つ一方、「ない」との回答も37.5%ありました。
上記の結果を「コミュニケーション」という視点から見ると、認められたい・コミュニケーションをとりたいという希望がある一方、勤務制度についてはコミュニケーションがとりづらい方法の希望があるようです。

◆コミュニケーションとパワハラ

パワハラの防止対策を企業に義務付けるパワハラ防止法の施行を来年6月(中小企業は2022年4月)に控え、現在、パワハラ防止ガイドランの素案が公表されており、年内には正式に決定・公表される見込みです。
パワハラ予防のためには、職場のリーダーは部下を指揮する一方、部下から必要な情報が上がってくるようにして適切なコントロール(指揮・統制)をしなければなりません。昔のようにリーダーからの一方的な指揮・統制では仕事は回らなくなっています。
つまり、部下の話を聞いてあげて、部下のほうからのコミュニケーションを増やすよう、意思疎通を良くしなければならないのです。例えば、業務時間中に部下の話を聞く機会を増やしたり、部下が考えて意見を言えるように質問型マネジメントをしたりする等が必要です。
実際、上記調査でもコミュニケーションがとりやすい社内ツールとして、メール(55.3%)、電話(50.0%)に次いで「対面」(48.0)%も回答が多くなっています。社内SNS等も発達してきていますが、やはり人間同士、電話・対面といったアナログなコミュニケーションも重要なのだと思われます。

◆中小企業もスケジュールは考えておく

パワハラ防止のカギはコミュニケーション、といってしまえば単純なようですが、管理職・一般社員への研修一つとってもポイントなる部分を押さえる必要がありますし、法施行日までにやることは他にもたくさんあります(就業規則改訂、相談窓口設置・担当者の決定、従業員アンケート…etc)。中小企業には多少猶予期間がありますが、今からスケジュールだけでも考えておく必要はあるでしょう。

Q 従業員が社用車で起こした事故の修理費を請求したい

当社の従業員が、業務中、社用車で事故を起こしました。この事故で社用車が破損したため修理しましたが、事故を起こした従業員がこの修理費全額を負担すべきだと思います。従業員にかかった修理費全額を請求することは可能でしょうか。

A 従業員の過失の程度、業務内容、労働条件、損害発生に対する会社の寄与度等を考慮して、どこまで従業員に損害を負担させるのが公平かを判断します。

◆債務不履行・不法行為責任

原則として、労働者が、労働契約上の義務に反して使用者に損害を与えた場合、労働者は債務不履行責任として使用者が被った損害の賠償義務を負います。また、労働者が不法行為により使用者に損害を与えた場合にも、同様に使用者に対して損害を賠償する義務を負いますし、労働者が第三者に損害を与えて、使用者が使用者責任に基づき当該第三者に損害の賠償をした場合、労働者は使用者に対して求償義務を負います。

◆責任の公平な分担からの修正

しかし、損害賠償の原因となった労働者の債務不履行ないし不法行為は、もともと使用者の業務に起因するもので、また、労働者は使用者の指揮命令に従って業務を行い、使用者はこれにより利益を得ているので、労働者が業務を行うにあたり発生した損害を、全て労働者の責任とすることはあまりに不公平となります。そこで、責任の公平な負担という観点から、使用者から労働者に対する損害賠償請求や求償請求は制限されると考えられています。
裁判例では、 事業の性格、規模、施設の状況、被用者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防若しくは損失の分散についての使用者の配慮の程度その他諸般の事情に照らし、労働者の責任の範囲を判断しています。具体的には、労働者に重大な過失がなかったため、使用者から労働者への損害賠償請求が認めなかった裁判例や、労働者に居眠りという重大な過失があっても、深夜労働中の事故であることや使用者が保険に入っていなかった事実等を考慮して、労働者の責任を4分の1まで軽減した裁判例があります。
したがって、本件でも労働者の過失の程度、社用車の使用が事業にとってどのような位置を占めるか、車両保険の加入の有無等の事情を考慮することになりますが、上記の通り、労働者に重過失があった場合でも、4分の1程度の請求しか認められていない可能性があります。