汐留パートナーズ・ニュースレター 2020年3月号

はじめに

今回も前回に引き続き、令和2年度税制改正大綱の中から、法人課税で注目度が高い「オープンイノベーション促進税制」の創設について見ていきたいと思います。

概要

既存企業が従前の閉鎖的でコストの高い自己開発にこだわることなく、新たな分野に投資するなど自ら事業革新を進めるために、ベンチャー企業と協働し、オープンイノベーションを促進する観点から、事業会社から一定のベンチャー企業への出資に対して、一定額の所得控除を認めるオープンイノベーション促進税制が創設されます。

対象法人

対象法人は、「青色申告書を提出する法人で、特定事業活動を行うもの」とされています。ここに「特定事業活動を行うもの」とは、自らの経営資源以外の経営資源を活用し、高い生産性が見込まれる事業を行うこと又は新たな事業の開拓を行うことを目指す株式会社等のことをいいます。

適用要件

適用要件としては、以下の3点が挙げられます。

  • 2020年4月1日から2022年3月31日までの間に特定株式を取得
  • 特定株式を取得した日を含む事業年度末まで保有
    特定株式の取得価額の25%以下の金額を特別勘定の金額として経理処理

ここに「特定株式」とは、産業競争力強化法の新事業開拓事業者のうち、同法の特定事業活動に資する事業を行う内国法人(既に事業を開始しているもので、設立後10年未満のもの)又はこれに類する外国法人の株式のうち、一定の要件を満たすことにつき、経済産業大臣の証明があるものをいいます。この一定の要件としては、資本金の増加に伴う払込みにより交付されるものであること、払込金額が1億円以上(中小企業者にあっては1,000万円以上、外国法人への払込みは5億円以上)の大規模出資であること等があります。

具体的な税制措置

特別株式として経理した金額を、その事業年度の所得金額を上限として、損金算入することができます。この点、特定株式の取崩事由が生じた場合、取得から取崩しまでが5年内の場合は、その事由に応じた金額を「特別勘定」から取り崩し、益金算入しなくてはならない点に留意が必要です。

おわりに

オープンイノベーション促進税制は、要件をクリアすれば、ベンチャー企業の株式を取得・保有するだけで、一定額を損金算入できるといった期間限定の極めて異例な措置といえます。ベンチャー企業への出資を考えている企業には、ぜひ検討頂きたい制度と思います。その際に、具体的な制度内容や適用要件などについて、ご不明点等ございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせください。

2020年度の身元保証契約は要注意

素性や経歴を保証するとともに、従業員が会社に何らかの損害を与えた場合に連帯して賠償してもらうため、入社時には身元保証人を立ててもらっている、という会社は多いのではないでしょうか。そのような会社では、この春、「身元保証書」の見直しが必要です。
2020年4月より、「個人保証人の保護の強化」を目的として、極度額(上限額)の定めのない個人の根保証契約は無効とされます(改正民法465条の2)。入社時の身元保証契約は、従業員が会社に損害を与えた場合に本人と連帯してその賠償を行うという連帯保証契約であり、保証人にとっては、従業員が、いつ、どのような責任を負うのかを予測することができないことから根保証契約に当たります。そのため、身元保証契約を締結する際には、賠償の上限(極度額)を定めておかなければなりません。

極度額の定め方

極度額の定め方については、例えば次のように、これまでの身元保証書に極度額を追加することが考えられます。
「同人の身元を保証し、同人が貴社に損害を与えた場合、貴社が被った損害を賠償する旨確約します(極度額○○○○円)。」
なお、実務上は、「極度額をいくらにするか」が問題となります。損害に対するリスクヘッジという観点からは、あまりに低額とすると実効性がなくなりますし、一方であまりに高額としてしまうと、連帯保証人が躊躇する等で手続きが進まないおそれもあります。
具体的に金額を明記する(「極度額は1千万円とする。」など)のがベストですが、例えば「極度額は従業員の月給の○○か月分とする。」などと定めることも考えられます。

「身元保証契約」締結の見直しも……

身元保証を求める会社は多いですが、実質的に形骸化しているケースも多くあります。対応を求められていることを機に、会社にとって身元保証契約を結ぶことが本当に必要であるのか、再検討してみましょう。

定時株主総会と取締役・監査役の任期

株式会社の取締役・監査役には任期があり、任期が満了すると退任します。
その任期は会社法上、「選任後○年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで」となっており、○の部分につき取締役は「2」、監査役は「4」の数字が入ります。
なお、非公開会社においては、定款に定めることにより○の部分を「10」まで伸長することができますので、取締役が1名の株式会社や、家族で運営されている株式会社は、役員の任期を10年まで伸長しているところも多いでしょう。

定時株主総会の開催

事業年度を終えると、そこから2~3ヶ月後に決算を承認するための定時株主総会を開催することになります。事業年度が12月末までの株式会社であれば翌年の2月~3月頃に、事業年度が3月末までの株式会社であれば同年の5月~6月頃に、定時株主総会が開催されるかと思います。

定時株主総会と取締役・監査役の選任

取締役・監査役の任期は、ある「定時株主総会の終結の時まで」ですので、もし今年の定時株主総会の終結の時にその任期が切れるのであれば、新たに役員を選任することになります。もちろん、従前の役員がそのまま役員を継続しても問題ありません(むしろ、そのケースがほとんどです)。
従前の役員がそのまま役員を継続する場合でも、株主総会で再度役員として選任する必要があります。

権利義務役員

任期が切れた役員は退任します。なお、役員が任期満了によって退任した結果、役員が0になってしまう場合又は会社法若しくは定款で定めた役員の員数が欠けた場合には、当該役員が、新たに選任された役員が就任するまで、なお役員としての権利義務を有することになっています。
これを権利義務役員といいますが、任期が切れた役員をそのままにしておく状態は、早急に解消することをお勧めします。ケースによっては、取締役として現在も活動している人の任期が切れていて、権利義務役員にも該当せずそもそも取締役としての権限がなかった、ということもあり得ます。

役員選任と登記

役員を選任し、その役員が就任を承諾したときは、その時から2週間以内に管轄の法務局へ登記申請をしなければなりません。任期が切れた役員を再任した場合も同様です。役員の再任し忘れや、登記をせずに放置しておくことは、期間が長く経過すると過料の対象となり、ある日裁判所から過料の通知が送られてきて、代表取締役個人がその過料を支払うことになります。
今年の定時株主総会で役員の任期が切れるのかどうか、確認してみてはいかがでしょうか。