汐留パートナーズ・ニュースレター 2020年9月号

先が読めない厳しい時代の中、”100年企業”を目指すための「事業承継」とは?

7月、8月に続き、まだ暑さが残る9月。新型コロナの感染防止のために「新しい生活様式」の一環としてマスクの着用が義務付けられていますが、マスク着用による熱中症のリスクが高まる恐れがあると言われています。特に外出時などは環境省が発表している暑さ指数などを参考に、熱中症対策として水分をこまめに取っていただければと思います。先が見通しづらい状況ではりありますが、引き続きご自愛ください。

現在、日本を支える多くの中小企業は、経営者の高齢化に加え、新型コロナによる経営難に直面しています。しかし、このように経営環境という外的要因で苦しむ中小企業が今後も永続的に経営ができるよう、政府は「事業承継」を支援するために総額100億円もの予算を投入し、国をあげて全面的なサポートをするインフラを整えています。そのため、”今”が正に中小企業にとって事業承継をするには絶好のタイミングとなっているのです。

今回は、コロナ禍というマイナスの状況下でも希望を捨てずに行動し続けている皆さまに、汐留パートナーズの3事業部からこの「事業承継」に関するお役立ち情報をご紹介させていただきます。

 

はじめに

新型コロナウイルスの影響により、事業環境が悪化する中で、中小企業を中心に事業承継に対する動きが高まっています。日本において全企業数の99%以上を占める中小企業では、オーナーの高齢化、後継者不足といった問題に直面しています。よって従前から、円滑な事業承継を行うことは、日本経済の維持・発展のための重要課題とされており、昨今の事業承継ニーズの高まりの背景となっています。それではなぜ、コロナ禍の中で事業承継への動きが活発化しているのでしょうか。

事業承継とは

事業承継とは、経営権や経営資源、資産・負債など、事業に関する全てのものを後継者へ引き継ぐことをいいます。承継する資産の中には会社経営を支えるための事業基盤となる自社株式があります。特にオーナー企業の場合は、株式は安定的な経営のための重要な基盤といえ、自社株式の承継(株式承継)は、事業承継上、非常に重要な要素といえます。

株式承継における株式評価額

株式承継を考える上で、最大の課題はそれに係る資金負担を極力軽減することにあります。即ち株式評価額が低いほど、コストを抑えることができます。この点、上場株式の場合は、証券取引所にて日々取引されている市場価格があるため、株式評価額は容易に把握できます。一方、多くの中小企業の株式は非上場株式であり、市場価格はないことから、その株式評価額は、株式の保有目的(経営への影響力)や会社の業種や規模、業績や純資産など様々な要素を考慮して、決定されます。株式承継の場合の非上場株式の評価方法とその概要は、以下の通りです。

  • ① 類似業種比準方式:業種が類似する上場会社の株価に、配当・利益・純資産の3要素を比準して評価する方法。
  • ② 純資産価額方式:1株当たりの純資産額をベースとして評価する方法。
  • ③ ①と②の併用(折衷方式)

会社の規模により、適用する評価方法が異なり、大会社の場合は①(又は②)、中会社/小会社の場合は③(又は②)となります。一般に、純資産価額方式は類似業種比準価額方式に比べて株式評価額が高くなる傾向にあります。また、いずれの評価方法によっても、不況下の株価下落や、業績悪化は株式評価額を引き下げる要因になるといえます。

おわりに

冒頭に述べた、コロナ禍の中で中小企業の事業承継の動きが高まっている原因としては、コロナショックにより株価下落が生じ、株式承継の資金負担が軽減することが挙げられます。株式承継は事業承継の一部であり、事業承継の本質は「経営」自体の承継にあることから、コスト面だけでなく、後継者育成が最重要であることは言うまでもありませんが、株価下落が事業承継の追い風となっていることは確かです。円滑な事業承継にあたっては、様々な視点からの考察が必要であり、専門的知識も有します。事業承継を検討される場合には、弊社までお気軽にお問い合わせ下さい。

はじめに

近年は、中小企業における事業承継が問題となっています。後継者のいない中小企業では、事業承継問題の解決策としてM&A(企業の合併や買収)を活用することも増えてきました。M&Aにおいては労務に関わる調査も実施されるようになっています。未払賃金問題など、労務管理上のリスクを抱えている場合には、当然マイナスの評価となってしまうでしょう。M&Aの実施後にトラブルが発生してしまうことも考えられます。スムーズに事業承継を進めるには、あらかじめ自社の労務管理の状況を確認し、できる限り整備しておくことが必要です。今回は、未払賃金など特に問題になりやすい労務管理上の留意事項について説明します。

未払賃金に関する事項

もっとも問題になりやすいのが未払賃金に関する問題です。表面上は未払賃金がないと思っていても、適切な労働時間管理ができておらず残業代の未払問題が生じている場合も少なくありません。
事業譲渡や会社分割のときに未払賃金の債務を承継しないという方法も法的には可能ですが、実際には買主企業が対応せざるを得ないことがありますから、事業承継においてはリスクとして認識されます。
未払賃金(多くは残業代の未払い)が発生する原因には、次のようなものがあります。

  • ●労働時間管理が適切に行われていない
    ・労働時間を正確に記録していない
  • ・本来は労働時間となるものを労働時間外としている
  • ・1日の残業時間について切り捨て処理をしている(1ヶ月単位であれば30分未満を切り捨て、30分以上を1時間に切り上げることは可能)
  • ・みなし残業手当を支払っていることを理由にして、時間外労働時間を把握していない
  • ・労働時間の算定が難しくはないのに、事業場外みなし労働時間制を適用している

●時間外割増賃金の計算が適切に行われていない
・割増賃金の基礎なる賃金に、対象とするべき手当を含めていない
・みなし残業手当や固定残業手当を支払っている場合で、決められた残業時間を上回った分の時間外割増賃金を支払っていない
・実質的に管理監督者ではない者を管理監督者として、残業代を支払っていない

●勤怠控除時に、実際の不就労時間分を超える給与が控除されている

上記に加え、現在は同一労働同一賃金の実現が求められるようになっていますから、正規社員と非正規社員との不合理な待遇差も問題となることが増えていくでしょう。不合理な待遇差による未払賃金問題というのも発生することがあります。

社会保険に関する事項

社会保険に加入させるべき社員の未加入問題や、保険料算定のミスのために、社会保険料の未納問題が潜在的に発生していることがあります。従業員からの希望で社会保険に入らないという場合も多いですが、会社としては要件を満たす従業員は加入させる義務があります。各保険の加入要件を確認し、要件を満たす社員は加入させるか、労使相談の上で働き方を調整するなどの対応が必要です。
保険料の算定にあたって、本来は算定基礎に含めるべき手当を含めていないために、保険料の未納問題が生じることもありますので、注意が必要です。

おわりに

今回は未払賃金問題を中心に解説しましたが、他にも就業規則の整備状況や、労使間のトラブル発生状況、偽装請負問題など、様々な事項について問題となることがあります。
スムーズに事業承継を進めるためには、まずは自社が抱える潜在的なリスクについて把握することから始めましょう。その際には、社会保険労務士など専門家の活用も是非検討してみてください。

事業承継と種類株式

社長が保有している株式を少しずつ後継者に移していくときに、社長の影響力を残すために種類株式が利用されることがあります。このときに利用される種類株式は「黄金株」と呼ばれています。黄金株という単語は会社法に規定はありませんが、黄金株とは主に拒否権条項付株式(会社法108-1-8)のことを指すことが多いのではないでしょうか。

拒否権条項付株式

拒否権条項付株式とは、株主総会や取締役会において決議すべき事項のうち、当該決議のほか、拒否権条項付株式を保有している株主を構成員とする種類株主総会の決議も必要となる株式のことをいいます。拒否権条項付株式を保有している株主がNOと言えば対象の決議を通すことができなくなるため、とても強力な株式と言えます。この特徴を利用して、例えば事業を承継したいと考えている社長が自分の保有している株式を後継者に移していきつつ、一方で全ての株式を後継者に移してしまうのは、後継者の経験不足等により不安という場合に、社長が黄金株1株だけ保有しておくケースがあります。社長の座を譲った後や、株式の大部分を移してしまった後も、黄金株を保有しておくことで影響力を持ち続けることができます。後継者に任せても大丈夫と判断できた段階で、黄金株を普通株式に転換して後継者に渡してしまったり、会社が取得して消却する等することになるでしょう。黄金株で拒否権はもう行使することはないから、といった口約束だけをして黄金株を前経営者に持たせたままにはせず、最後までしっかりと処理をすることをお勧めします。黄金株は非常に大きな権限を有しているためです。

黄金株の出口

黄金株は非常に強力なものですので、出口もしっかり設計しておいた方がいいでしょう。譲渡制限を付けておくのは当然のこと、後見開始の審判を受けたときや死亡したときに会社が取得できるように取得条項を付けておく、あるいは遺言で黄金株が遺産分割協議の対象とならないようにしておく等、黄金株が原因で紛争が起こらないよう黄金株の導入時に検討してみてください。

取締役の任期

後継者候補を取締役に選任するときは、取締役の任期にも着目してみてはいかがでしょうか。取締役の任期は、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで(会社法332-1)ですが、非公開会社においてはこれを10年以内に終了する~まで変更することが可能です。後継者候補として実力を測りたい人に、取締役を最初から約10年も任せるのは長いかもしれません。取締役ごとにその任期を設定することも可能とされていますので、まずは1-2年任せてみて様子を見るという方法も考えられます。なお、任期の途中で取締役を解任することもできますが、正当な理由がない場合、損害賠償の対象となります。

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