汐留パートナーズ・ニュースレター 2020年12月号

リモートワークを外国人や国境を跨いで活用する場合について

2020年もあと1ヶ月を切りましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。コロナウイルスの影響で未だ社会的な不透明感が強いまま、慌ただしい時期に入ります。体調にも敏感になる時期かと思いますので、皆さまに置かれましては、是非ご自愛くださいませ。

2020年は、コロナウイルス感染爆発により、リモートワークが著しい速度で認知度を高めました。ビジネスのグローバル化が進展する中で、感染防止の意味合いの強いリモートワークの普及となった為、日本で雇用した外国人や海外に出張した日本人などについて、国税庁・入管などから措置や取扱い方針が発表されています。

今回は、汐留パートナーズの3事業部から国を跨いだリモートワークについて、着眼点をご紹介いたします。

 

はじめに

国税庁は10月23日に「国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ」を更新しました。ここではGoToキャンペーン事業に係る給付金が一時所得に当たること、コロナ禍での海外移動制限によるリモート勤務の課税関係、マスクやPCR検査等の費用の医療費控除関係が明示されました。今回は、その中で国境を越えたリモート勤務の課税関係について見ていきたいと思います。

居住者と非居住者の区分と課税対象の範囲

海外赴任等、海外が絡む給与を考える際には、前提として、その給与所得者が日本の「居住者」に該当するか否かの判定が必要です。所得税法では、「居住者」とは、①国内に住所を有し、又は②現在まで引き続き1年以上居所を有する個人をいい、「居住者」以外の個人を「非居住者」とされています。当該判定の上で、「居住者」の場合は国内外を問わない「全世界所得」が、「非居住者」の場合は「国内源泉所得」のみが課税対象の所得となります。

国境を跨ぐリモート勤務の課税関係

海外が関連する給与の課税関係を判断するには、給与所得者が居住者or非居住者か、国内or国外での勤務か、給与が国内払いor国外払いかという点が重要となります。以下、FAQにて追加されたQ&Aに沿って整理します。

【問11】日本から出国できず、日本にて海外の業務に従事する場合:給与所得者は国内に住所を有する居住者であるが、給与支払者は外国法人(日本に拠点なし)であり、国外払いのため、源泉徴収は不要。但し、課税対象の所得であるため、確定申告が必要。
【問11-2】海外から受け入れた従業員が、海外にて日本の業務に従事する場合:給与支払者は内国法人であるが、給与所得者は日本国内に住所等を有さない非居住者であるため、非居住者が海外で行う勤務に対する給与は、国内源泉所得に該当せず、所得税の課税なし。
【問11-3】一時出国していた従業員が日本に帰国できず、海外にて日本の業務に従事する場合:給与所得者は一時的に海外に滞在しているが、国内に住所を有する居住者であり、給与支払者も内国法人であるため、源泉徴収が必要。
【問11-4】海外に出向していた従業員が、一時帰国し、日本にて海外の業務に従事する場合:給与所得者は一時帰国中で国内に住所等を有さない非居住者であるが、国内での勤務に対する給与のため、国内源泉所得に該当。よって、①内国法人からの留守宅手当は、国内払いのため、源泉徴収が必要。一方、②外国法人(日本に拠点なし)からの支給の場合、源泉徴収不要だが、原則、確定申告が必要(「短期滞在者免税」の要件を満たせば課税なし)。

おわりに

海外が絡む給与の課税関係を考える際には、その他、相手国との租税条約の有無、給与所得者が従業員か役員か、日本国内への拠点の有無、といった要素も勘案し、総合的に判断する必要があります。ご不明点等ございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせ下さい。

はじめに

近年は事業のグローバル化に伴い、海外への出張や出向、テレワークを活用した海外在住者との雇用契約を締結するケースが増えています。また、コロナウイルス感染症の影響により、海外から帰国できないというケースもあるかと思います。今回は、海外勤務者に対する労務管理のポイントや注意点などを解説いたします。

海外勤務者に対する労働関係法の適用

海外勤務者に対する日本の労働基準法の適用については、個別のケースごとに判断する必要があります。海外出張であれば、日本にいるときと変わらず日本の労働基準法が適用されます。仮に出張が長期であっても、指揮命令や雇用管理をしているのが日本国内の事業場であれば、原則として日本の労働基準法が適用されます。海外勤務者が現地の事業場からの指揮命令を受けて働く場合には、原則として海外の労働法が適用されますが、労働契約において準拠法を日本法に指定することも可能です。例えば、日本法人の海外支店に出向している海外勤務者に対して、労働契約において日本法に準拠する旨を定めることは可能です。

海外勤務者の労災保険・雇用保険

労災保険については、国内の事業場に所属し、国内の事業主から指揮命令を受けている場合は、労災保険は引き続き適用されます。海外の事業主から指揮命令を受けて働くような場合には原則として日本の労災保険は適用されませんが、特別加入の手続きにより適用を受けることはできます。
雇用保険については、日本の事業主との雇用関係が存続している限りは日本の雇用保険に引き続き加入することができます。転籍などにより国内での雇用関係が終了して海外の事業主との雇用契約を締結するような場合には、日本の雇用保険は適用されません。

海外勤務者の社会保険

日本の適用事業場に雇用されている場合、例えば海外出張や在籍出向であれば、引き続き日本の社会保険制度が適用されます。転籍出向のように、雇用関係も指揮命令関係も海外の事業場に移る場合には日本の社会保険制度は原則として適用されません。
一方で、海外に居住している場合には、日本の事業主に雇用されていたとしても、原則として海外の社会保険制度に加入しなければなりません。日本と社会保障協定を結んでいる国に居住するのであれば、どちらか一方の国の社会保険制度に加入すれば良いことになっており、5年未満の滞在であれば日本の、5年以上の滞在であれば海外の制度に加入することになります。社会保障協定を結んでいない国に住みながら日本の企業に雇用されながら働く場合には、海外と日本の社会保険制度に二重に加入しなければならない可能性があるので注意が必要です。

その他の労務管理上の留意点

(1)時差への配慮
日本国内と海外勤務者と共同して仕事をする場合、過重労働防止や健康被害防止のためにも、日本との時差に留意しなければなりません。日本では午前中であっても、海外では夜中ということもありますから、時差に配慮したコミュニケーションをとるようにします。電話やウェブ会議はリアルタイムでなければ難しいですが、メールやチャットなど文字でのコミュニケーションであれば時差があっても問題ありません。必要に応じてコミュニケーション手段を使い分ける工夫をしましょう。

(2)海外勤務に伴う諸費用の発生
海外勤務に伴い、業務に必要な費用を事業主が負担するのはもちろんですが、私生活上の費用の発生についても留意する必要があります。特に会社の命令によって海外勤務をさせるような場合には注意が必要でしょう。

住居を移す場合には引越代や家賃購入費、家賃がかかります。生活するのに車が必要な地域であれば車両費や保険料も必要となります。日本にいるときと労働条件が変わらないのであれば、従業員は海外勤務をすることで損をしてしまう可能性もあります。できるだけ従業員の負担を増やさないように、生活費についても補助を検討したほうが良いでしょう。

はじめに

新型コロナウィルス感染症により働き方に大きな変革が訪れ、在宅勤務などいわゆる「リモート」による勤務スタイルが台頭しております。出入国管理及び難民認定法(以下、「入管法」という。)の観点から日本で就労する外国人の方に「リモート」がどのような影響を及ぼすのかを新型コロナウイルス感染症に対する出入国在留管理庁(以下、「入管」という。)の措置を交えながらお伝えいたします。

就労場所について

「リモート」ができる業務といえばホワイトカラーの業種を想像しますが、その在留資格の代表格である「技術・人文知識・国際業務」について特に就労場所について入管法に規定はなく、申請書に記載する「主たる勤務場所」等で入管は申請人の勤務場所を把握する事となります。そもそも入管もこのような状況を想定しておらず、コロナ下では「リモート」により「主たる勤務場所」が自宅になってしまったとしてもこの点を問題視される可能性は非常に低いと考えられます。また高度専門職1号ロは法務大臣が指定した契約機関以外の「本邦の公私の機関との契約に基づく活動」を含めていないため、転職した場合は「技術・人文知識・国際業務」と違い、在留資格変更許可申請が必要になりますが、「就労場所」まで指定されているわけではなく、「技術・人文知識・国際業務」同様と考えられます。

入管の措置等について

技能1号(調理師)のように、その業務の性質上「リモート」で働けず、新型コロナウイルス感染症の影響による雇用状況の悪化により会社都合で自宅待機を余儀されなくなっている外国人の方もおります。この点において懸念されるのが入管法22条の4に規定されている在留資格の取消しです。在留資格の取消事由の1つとして「入管法別表第1の上欄の在留資格をもって在留する者が、当該在留資格に係る活動を継続して3か月以上行わないで在留していること(当該活動を行わないで在留していることにつき正当な理由がある場合を除く。)」という規定があり、自宅待機が3か月以上になればこの規定の対象となってしまうことが懸念されます。しかし入管は「技能」に限らず就労を目的として在留する者が「雇用先から待機を命じられた方で復職を希望する方」他、一定の事項に該当するれば、現に有する在留資格のまま在留が認められるとしています。また雇用先企業の都合により当該状況にあることを証する文書を提出して資格外活動の許可も可能です。さらに「雇用先から待機を命じられた方で復職を希望する方」他、一定の状態のまま在留期間を迎える場合は就職活動を目的とする「特定活動」への在留資格の変更も可能としております。

おわりに

昨今の傾向により「リモート」での勤務形態はより一般的になりつつありますので、前述の記載内容に加え、今後の入管の動向に対して機微に適応していくことが必要になります。ご不明な点等がございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせください。

最新情報

  • 中小企業庁「M&A支援機関登録制度」への登録について

    この度、汐留パートナーズ株式会社は、中小企業庁が公募する「M&A支援機関登録制度」に申請し、M&A支援機関として登録されたことをお知らせいたします。 本登録制度は、中小企業が安心してM&Aに取り組める基盤を構築することを目的に中小企業庁が創設したものであり、所定の要件を充足す...

    続きを読む
  • 汐留パートナーズ・ニュースレター 2021年10月号

    IPOに関わる論点について 季節もすっかり秋めいてまいりましたが、皆様お加減にお変わりはございませんでしょうか。 今月のニュースレターでは「IPOに関する論点」について取り上げます。株式上場は、会社の信用力・知名度の向上、資金調達、優秀な人材獲得など、会社にとって非常に多くのメリットがあります。 一...

    続きを読む
  • 新役員体制のお知らせ

    汐留パートナーズグループ(グループCEO:前川研吾)は、9月1日付の新役員体制についてお知らせいたします。 詳細は以下のとおりです。     汐留パートナーズ株式会社 代表取締役社長兼グループCEO 前川 研吾 取締役経営企画室長 金森 光昭 取締役アドバイザリー事業部長 山口 壮太 取締役管理部長...

    続きを読む
  • 汐留パートナーズ・ニュースレター 2021年9月号

    副業人材について 残暑も厳しい中、季節の変わり目が近づく季節となりましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。 今月のニュースレターでは「副業人材」について取り上げます。コロナ禍をきっかけとして、昨年来副業が大きなブームとなっています。 副業人材と企業をマッチングするプラットフォームの増加・成長や、大手...

    続きを読む
  • 越境ECに関する欧州連合の付加価値税の取り扱いに関する変更、及び米国の売上税対応についてのご案内

    汐留パートナーズ株式会社より、2021年7月に変更が行われた越境ECに関する欧州連合の付加価値税の取り扱いに関する変更、及び米国の売上税対応についてご案内させていただきます。 <輸入ワンストップショップ制の導入(欧州連合)> 欧州連合では7月1日から欧州以外の国から電子商取引(EC)サイト経由で個人...

    続きを読む