汐留パートナーズ・ニュースレター 2021年1月号

2021年(令和3年)に予定されている法改正について Vol.1

新年、あけましておめでとうございます。新しい一年の初めを、どのように迎えられましたでしょうか。汐留パートナーズグループ一同、一層の精進を重ねて参りますので、本年も何卒よろしくお願いいたします。

新年を迎えたということで、今回より2回に分けて、2021年(令和3年)に予定されている法改正についてご紹介いたします。税務からは2020年12月10日に公表された税制改正大綱より「DX投資促進税制」や「カーボンニュートラルに向けた投資促進税制」などの論点、労務からは「同一労働同一賃金の法制化」法務面では会社法において予定されている「成年被後見人と取締役」「株主提案権の個数制限」などの論点を、それぞれ取り上げます。

法人にとって大きく影響する改正点も多くなっておりますので、是非2021年の大まかな改正の要点を押さえて頂ければと思います。

 

はじめに

2020年12月10日、令和3年度税制改正大綱が公表されました。今回の税制改正大綱では、ウィズコロナ・ポストコロナの新しい社会の中での経済再生、デジタル社会の実現、グリーン社会の実現等に向け、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進、脱炭素化、M&Aの促進等に関わる税制優遇措置が注目されています。多岐に渡る改正項目のうち、今回は法人課税の中で、DX投資促進税制、カーボンニュートラル投資促進税制、繰越欠損金の控除上限の特例について取り上げます。これらは、いずれも産業競争力強化法の改定及び同法の計画認定が前提となるものです。

デジタルトランスフォーメーション(DX)投資促進税制

デジタル技術を活用した企業変革(DX)を進める観点から、産業競争力強化法の「事業適応計画(仮称)」の認定を受けた青色申告法人が、改正法の施行日から2023年3月31日までの間に、当計画に従って実施される「事業適応(仮称)」の用に供するためのソフトウエア(クラウド型システム等)の取得等をした場合、取得価額の30%の特別償却、又は3%(グループ外の事業者とデータ連携をする場合には5%)の税額控除の選択適用ができます。設備投資額の上限は300億円です。

カーボンニュートラルに向けた投資促進税制

「2050年カーボンニュートラル」の目標に向けて、産業競争力強化法の「中長期環境適応計画(仮称)」の認定を受けた青色申告法人が、改正法の施行日から2024年3月31日までの間に、当計画に基づき、生産プロセスの脱炭素化に寄与する設備や、脱炭素化を加速する製品を早期に市場投入することでわが国事業者による新たな需要の開拓に寄与することが見込まれる製品を生産する設備の取得・事業供用した場合、取得金額の50%の特別償却、又は5%(温暖化ガスの削減に著しく資するものは10%)の税額控除の選択適用ができます。設備投資額の上限は500億円です。
この点、税額控除の場合の控除税額の上限は、上述のDX投資促進税制の控除税額との合計で当期法人税額の20%とされています。

繰越欠損金の控除上限の臨時措置

産業競争力強化法の「事業適応計画(仮称)」の認定を受けた青色申告法人に対し、コロナ禍による欠損金について、DXやカーボンニュートラル等、事業再構築・再編に係る投資に応じた範囲において、2年間に生じた繰越欠損金額(特例対象欠損金額)を翌期以降最大5年間に限り、最大100%の控除を可能とします。当該特例対象欠損金額については、欠損金の繰越控除前の所得の金額の範囲内で損金算入できるものとされます。

おわりに

法人課税の改正項目には、その他、中小企業M&A促進税制、研究開発税制の見直し、賃上げ・投資促進税制等の見直し、株式対価M&Aに係る課税繰延など、重要性が高いと思われる項目があります。ご不明点等ございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせ下さい。

はじめに

2021年には、同一労働同一賃金関連法の中小企業への適用開始をはじめ、育児介護休業法、障害者雇用促進法、高齢者雇用安定法の改正など、いくつかの法改正がありますので、2回に渡ってご案内します。今回は、企業にとって影響の大きい同一労働同一賃金について解説いたします。

同一労働同一賃金とは

2021年4月1日より、中小企業を対象として「同一労働同一賃金」を定める法律が施行されます(大企業には2020年4月1日から施行済)。同一労働同一賃金は、同一企業・団体における正規労働者(無期雇用のフルタイム労働者)と非正規労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)との間の、不合理な待遇差の解消を目指すものです。同一労働同一賃金の考え方には、「均等待遇」(職務内容や職務内容・配置の変更範囲が同じ場合の差別的取扱い禁止)と「均衡待遇」(職務内容、職務内容・配置の変更範囲、その他の事情の相違を考慮して不合理な待遇差を禁止)があります。同一労働同一賃金を実現するためには、同一労働同一賃金ガイドラインおよび裁判例を参考にして、不合理な待遇差を無くしていくことが求められます。

裁判例の動向

同一労働同一賃金については、すでに裁判でも争われてきました。簡単に判例をご紹介します。正規労働者と非正規労働者との待遇差がどこまで許容されるかは、個別具体的に判断する必要があり、一般化することができません。ある判例では賞与の不支給が不合理では無いとされていたとしても、不合理と判断される可能性がありますので注意が必要です。

(1)待遇差が不合理では無いと判断されたもの
「賞与」(大阪医科大事件)や「退職金」(メトロコマース事件)については、不合理では無いと判断されました。非正規労働者と正規労働者の業務内容や配置転換の有無や範囲に相当の差があったことや、賞与や退職金が正規労働者となる人材の確保や定着を目的としている点から、不合理とまでは言えないと判断されたようです。ただし、業務内容が同一であれば、不合理となる可能性があります。

(2)不合理であると判断されたもの
 各種手当や福利厚生については、不合理と判断されているものが多いです。「通勤手当」、「給食手当」、「作業手当」、「無事故手当」、「皆勤手当」(ハマキョウレックス事件)および「扶養手当」、「年末年始勤務手当」、「祝日割増賃金」、「夏季・冬季休暇」、「病気休暇」(日本郵便事件)などの待遇差が不合理と判断されています。

同一労働同一賃金への取組み

(1)現状把握
まずは、社内の雇用区分と待遇を整理して、雇用区分ごとに待遇差をまとめてみましょう。雇用区分とは、正社員や契約社員、パートタイマーなどです。待遇は賃金(基本給、各種手当、賞与、退職金)のほか、福利厚生(休暇、休職制度、施設の利用など)も含みます

(2)待遇差が合理的かの判断
待遇に差がある場合、それが合理的かどうかを検討します。手当や福利厚生の趣旨や、職務内容(業務内容と責任の程度)や職務内容・配置の変更範囲、その他の状況の違いに応じて必要な待遇差なのかを考えましょう。判断基準としては判例のほか、同一労働同一賃金ガイドラインやパンフレットなどが参考になります。

(3)不合理な待遇差の改善
不合理な可能性の高い待遇差を把握し、改善に向けて取組みを進めましょう。正規労働者に合わせる形での改善ができれば簡単ですが、それが難しい場合には手当や福利厚生の見直しも必要となる場合もあります。いずれの場合も、使用者が一方的に決定するのではなく、できるかぎり労使で協議するようにしましょう。

おわりに

今のところ同一労働同一賃金違反に罰則はありませんが、労働者から訴えられるリスクはあります。不合理な待遇差がある場合には放置せずに、労使で協議をしながら改善に向けた取組みをすることをお勧めします。

はじめに

2019年12月4日に成立した改正会社法が、2021年3月1日に施行されることが決定しました。改正の内容としては、①株主総会に関する規律の見直し、②取締役等に関する規律の見直し、③社債管理等に関する規律の見直し等が含まれています。ここでは改正会社法の概要のうち一部を紹介いたします。改正内容の全てを紹介しておりませんことにご留意いただければと思います。

成年被後見人と取締役

現在の会社法では、成年被後見人や被保佐人は株式会社の取締役になることはできません(会社法第331条2項)。改正会社法では、当該規定が削除されることにより、一定の条件の下、成年被後見人や被保佐人が取締役や監査役に就任することが可能となります。一定の条件とは、成年被後見人や被保佐人が取締役や監査役への就任するときに、その成年後見人の同意(後見監督人がある場合にあっては、成年後見人及び成年後見監督人の同意)あるいは保佐人の同意を得なければならないということです。
なお、2021年以降、例えば現在取締役となっている者が成年被後見人に該当することになった場合、そのことだけをもって退任することにはならないと思われますが、取締役を継続することにつき成年後見人等の同意が必要となるかどうかについては、特段の規定がありませんので今後の運用について注視する必要があるでしょう。

株主提案権の個数制限

株主には議題提案権と議案の要領の通知請求権があり、取締役会設置会社では総株主の議決権の100分の1以上の議決権または300個以上の議決権を有する株主のみが行使することが可能です。公開会社においては、6か月前から上記要件を満たしている必要があります。改正会社法においては、この議案の要領の通知請求権(会社法第305条1項)につき、当該株主が提出しようとする議案の上限数が10個となりました。改正会社法施行後は、ある株主から10個を超える議案の提案があった場合は、会社はその要領を株主に対して通知することを要しません。

取締役等の責任を追及する訴えに係る訴訟の和解

株式会社が、当該株式会社の取締役(監査等委員及び監査委員を除く)、執行役及び清算人並びにこれらであった者の責任を追及する訴えに係る訴訟における和解をするには、次の者の同意を得なければならないことになりました。
・各監査役(監査役設置会社)
・各監査等委員(監査等委員会設置会社)
・各監査委員(指名委員会等設置会社)

おわりに

会社法は数年に一度改正がされており、今回も複数の点で改正がされることになりました。特に、上場会社や大会社に影響のある改正となっておりますので、会社に携わる方は改正内容をチェックいただければと思います。

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