汐留パートナーズ・ニュースレター 2021年4月号

ストックオプションについて

いよいよ本格的な春到来といった気候になってきましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。

今回のニュースレターでは、「ストックオプション」について取り上げます。昨今、役員・従業員への報酬制度として大企業のみならずIPOを目指すベンチャー企業でも導入が広がっているストックオプションは、従業員へのインセンティブプランとして有用である一方、いざ導入しようと思うとそのハードルは高く、会社法、金融商品取引法、税制など、様々な専門知識が必要になります。

今回は汐留パートナーズの3事業部からストックオプションについて、税務、労務、会社法の基礎論点をお届けします。導入を検討されている企業様は是非ご参考にしてください。

 

はじめに

会社の業績と連動してキャピタルゲインが見込めるストックオプション(以下、SO)は、社員のモチベーションアップの目的からも、近年、日本でも利用度が高まっています。今回はSOについて、概要、種類、税務処理及び会計処理について見ていきたいと思います。

SOとは

SOとは、将来の一定期間内(権利行使期間)に、事前に決められた価格(権利行使価額)で会社の株式を取得することができる権利(新株予約権)のうち、自社の従業員や取締役に対して付与されるものをいいます。

SOの種類

SOのうち、有償で発行されるものは「有償SO」、無償で発行されるものは「無償SO」と分けられます。また無償SOは、税制適格要件を満たす「税制適格SO」とそれ以外の「税制非適格SO」に分けられます。税制適格要件の主なものとしては、①付与対象者が、発行会社及びその子会社の取締役、執行役、使用人、その相続人であること(大口株主〈上場会社の場合は発行済株式の1/10超を保有する株主、非上場会社の場合は発行済株式の1/3超を保有する株主〉やその特別関係者を除く)、②権利行使価額が発行時の時価以上であり、年間権利行使額が1,200万円未満であること、③権利行使期間が、付与決議から2年後~10年後の8年間であること、などがあります。

SOの税務処理(取得者側の税金)

SOを付与された役職員への課税は、当該SOが、税制非適格SOの場合、①権利行使時に「権利行使時の株式の時価-権利行使価額」を給与所得等として課税され、②株式売却時に「株式売却価格-権利行使時の株式の時価」が譲渡所得として、課税されます(計2回課税)。
一方、税制適格SOの場合は、権利行使時の課税はなく、株式売却時に「株式売却価格-権利行使価額」が譲渡所得として課税されるのみであり、税務上優遇されています。なお、有償SOでも、税制適格SOと同様、株式売却時に譲渡所得としての課税のみがなされます。

SOの会計処理(発行会社側の処理)

第一に、SO発行時は、SOの公正な評価額を対象勤務期間(権利行使が制限されている期間)に渡って「株式報酬費用」として費用計上すると共に相手勘定として「新株予約権(純資産)」を計上します。なお、未公開企業では、行使価額が株式の評価額以上の場合は、費用計上は不要となります。第二に、権利行使時は、新株予約権金額と行使時の払込額の合計を、資本金勘定に振り替えることになります。最後に、行使期間満了時には、新株予約権のうち失効分は「新株予約権」から「新株予約権戻入益(特別利益)」に振り替えられます。

おわりに

SOの税務・会計処理については、税制適格要件の確認や、SOの費用計上金額及びタイミングなど、税務・会計上の専門知識が必要な場面もあります。ご不明点等ございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせ下さい。

はじめに

ストックオプションとは、会社の従業員・役員が、あらかじめ設定された価格(権利行使価格)で、所属する会社の自社株式を購入できる権利のことを言います。今回は、ストックオプションを導入した場合の労務管理上の留意点や社会保険の取扱いなどについてお伝えします。

1. 労務管理上の留意点

(1) ストックオプションは賃金に該当しない

ストックオプション制度では、労働者自身が権利の行使やその時期を決定しますから、原則として労働基準法上の「賃金」(労働の対償として支払われるもの)には該当しません。
通達においても「ストックオプションの付与は労働基準法第11条の定義する「賃金」には当たらず、その付与によって就業規則に定める賃金の一部の支払をするのは労働基準法第24条の違反となる」とされています(平9.6.1基発412号)。
※ ただし、所得税法においては、ストックオプションは「給与所得」に該当することとなっています(アプライドマテリアルズ事件最判平17.1.25)。


(2) 就業規則等への記載が必要

ストックオプションは賃金ではありませんが、労働条件の一つとはなります。したがって、労働基準法第89条第10号の適用を受け、就業規則への記載が必要になります。
上記通達においても、「ただし、ストックオプションを労働者に対して制度として実施する場合には就業規則に記載するべき」とされています。

2. 社会保険上の取扱い

ストックオプションについては、権利付与時も権利行使時もともに、原則として社会保険料の算定の対象とはなりません。経済産業省が発行している『「攻めの経営」を促す役員報酬~企業の持続的成長のためのインセンティブプラン導入の手引~』のQ&A(Q13)にも、「ストックオプションについては、自社株をあらかじめ定められた権利行使価格で購入する権利を付与するものであり、権利の付与自体は社会保険料を徴収すべき報酬に該当しないとされています。また、権利行使による株式取得も社会保険料の対象とならないとされています」と記載されています。
※ただし、株式報酬(リストリクテッド・ストック、パフォーマンスシェア)については社会保険料の対象となります。

3. ストックオプションのメリット

(1) モチベーションの向上を期待できる

自社の株価が上昇すると、ストックオプションの行使により得られる利益も上がることになりますから、役員や従業員のモチベーションが上がることが期待できます。制度がうまく運用されれば、優秀な人材を定着させるのにも役立つでしょう。ただし、自社の努力だけでは株価の上昇が難しい環境にある場合には、あまり効果は見込めないこともあり、モチベーションの低下を招く可能性もあります。

(2) 社会保険料の節約

前述の通り、ストックオプションの付与・行使に対しては社会保険料がかかりませんので、同程度のインセンティブ報酬を支払う場合よりも役員や従業員の手取り額を増やすことができます。


(3) 財務的な余裕がなくても活用できる

現時点では高い報酬を支払うことができないとしても、ストックオプションを付与することにより、将来的に企業価値が上昇した場合に多額の報酬を与えることができます。
ストックオプションには現金は必要ありませんから、企業にとっては、現金を支払わずに優秀な人材を確保するための手段の一つとして活用することができます。

はじめに

新株予約権とは、株式会社に対して行使することにより当該株式会社の株式の交付を受けることができる権利をいい、インセンティブ報酬として会社から役員や社員へ付与されるときに用いられる場合、ストックオプションと呼ばれています。

ストックオプションの内容

ストックオプションを発行するときは、その内容を決定します。その内容とは会社法第236条第1項に列挙されており、行使価格をいくらにするか、行使条件をどうするか等は専門家に相談されることをお勧めします。会社法的にはこれらの内容を定めれば足りますが、この他に、税制適格ストックオプションの要件を満たすようにストックオプションの内容を設計したり、インセンティブ報酬として誰に何個付与することが適切なのか検討します。

ストックオプションの発行手続き

ストックオプションを発行するときは、会社法で定められた手続きを踏まなければなりません。会社の機関構成等によって手続きは異なりますが、ここでは「公開会社以外の会社」「取締役会設置会社」を前提とします。ストックオプションを発行することを取締役会で決めた後に、株主総会の特別決議によってその募集事項を決定します。
次に、ストックオプションの引受けの申込みをしようとする者に対して募集事項等を通知し、その者から引受けの申込みを行います。その後、申込者の中から誰に何個割り当てるのか、取締役会の決議によって決定し、割当日の前日までに申込者へ通知します。なお、総数引受契約によって行うときは、上記申込+割当ては不要となりますが、その場合、取締役会の決議によって当該契約の承認を受けなければなりません。割当てを受けた者や総数引受契約によってストックオプションを引き受けた者は、割当日に新株予約権者となります。

ストックオプションの消滅

ストックオプションは行使することができなくなったとき、行使期間が経過したとき等に消滅します。また、会社が取得した自己新株予約権は、取締役会の決議によって消却することができます。

ストックオプションの行使

ストックオプションの行使は、行使するストックオプションの内容、数及び行使する日を会社に通知し、当該ストックオプションの行使に際して出資される財産の価額を払い込む方法によって行います。割当契約書等で行使方法が定められている場合はそれに従います。なお、ストックオプションの行使条件を満たしていないと行使できません。

おわりに

ストックオプションを発行するときは、内容をよく検討し、また後日その発行が無効とならないように会社法で定められた手続きをしっかり行うようにしましょう。

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