汐留パートナーズ・ニュースレター 2021年5月号

組織再編の実務

蔓延防止等重点措置が各地で発出され、昨年に引き続き落ち着かないゴールデンウィークとなった方も多いかと思いますが、いかがお過ごしでしょうか。

コロナウイルスの影響によりこれまでとは違う生存戦略の選択を迫られた企業も少なくないかと思います。その中でもM&Aを含む組織再編は、従来以上に選択肢に入れた企業が多いのではないでしょうか。合併、分割、事業譲渡などその方法は様々ですが、不採算事業を売却したい企業と多角化したい企業とのニーズの一致など、自社のみにこだわる企業戦略では得難いメリットをのぞめます。 一方で、組織全体に影響する施策であるため、様々な論点が複雑に絡み合う点やステークホルダーからの理解など難しい論点が多いのも事実です。

そこで、今回から2回に分けて「組織再編」を深堀していきます。今回は税務、労務、法務のそれぞれの視点から組織再編における実務面の解説をお届けします。導入を検討されている企業様は是非ご参考にしてください。

はじめに

組織再編には、合併、会社分割、株式交換、 株式移転、事業譲渡といった様々な手法があ ります。そして会計処理については「企業結 合に関する会計基準」や「事業分離等に関す る会計基準」に従う必要があります。会計基 準上、企業結合は「取得」「共同支配企業の形 成」「共通支配下の取引等」のどれに該当する のか、事業分離は、投資が「清算」されたか 「継続」しているかといった観点で区分され、 各々会計処理が定められています。今回は、 組織再編の会計処理の大枠を掴むべく、組織 再編を手法別ではなく、会計基準適用上の類 型に沿って会計処理の概要を見ていきます。

企業結合→「取得」「共同支配」「共通支配下

「取得」とは、ある企業が他の企業又は企 業を構成する事業に対する支配を獲得するこ とをいいます。例えば、M&Aにより他社を買 収する場合などが該当します。また、「共同支 配企業の形成」とは、複数の独立した企業が 契約等に基づき、当該共同支配企業を形成す る企業結合をいいます。例えば、A社とB社 が共同でC社を設立する契約を結び、合弁事 業を行う場合が該当します。最後に、「共通支 配下の取引」とは、結合当事企業(又は事業) のすべてが、企業結合の前後で同一の株主に より最終的に支配され、かつ、その支配が一 時的ではない場合の企業結合をいいます。親 子会社間の合併や会社分割などが該当します。

企業結合の会計処理ポイント

企業結合の会計処理のポイントは受入資産 を時価評価するか簿価で引き継ぐかです。上 記分類を基に、下表のように整理できます。

起業結合の類型 支配獲得の有無 会計処理ポイント
【受入資産・負債の測定】
取得 支配獲得する 時価評価し、取得原価との差額をのれんとする
共同支配企業の形成 支配獲得しない 適正な帳簿価格
共通支配下の取引等 変化なし 適正な帳簿価格

 

事業分離の分類と会計処理ポイント

事業分離において、投資が「清算」されたか「継続」しているかを判断する際には、①対価の種類(現金、株式など)と②事業分離後の分離先企業との関係(子会社や関連会社となるか)が考慮されます。ここでの会計処理のポイントは事業分離に際して「損益を認識するか否か」です(下表参照)。

①対価の種類 ②事業分離後の分離先企業との関係 投資が継続 or 清算 会計処理ポイント
【移転損益の認識】
現金等、移転した事業とは明らかに異なる資産 子会社や関連会社以外 清算 する
子会社や関連会社
分離先企業の株式のみ 子会社や関連会社以外
子会社や関連会社 継続 しない

おわりに

組織再編の会計処理は、①組織再編の手法の種類だけでなく、②会計基準上のどの類型に当てはまるのかといった、2つの観点から決定づけられます。よって検討の際には、どの手法を利用するかと同様に、会計上の類型も考慮する必要があります。また今回は会計面から組織再編を見てみましたが、組織再編を検討の際には、当然、税務や手続面も加えた総合的な観点からスキーム立てることが必要です。経営資源の選択と集中の手段として、近年、大企業のみならず、中小企業でも組織再編の利用は定着しています。ご検討の際には、弊社までお気軽にお問い合わせください。

はじめに

合併・分割・営業譲渡などの組織再編の件数は、コロナウィルスの影響のあった昨年を除いて増加し続けており、今後も増加してくと思われます。今回は、吸収合併・新設合併時における労務実務についてご案内します。

1. 吸収合併・新設合併の際の労働契約の承継及び就業規則の統一

吸収合併・新設合併のいずれの場合も、合併により消滅する会社の権利義務は、合併後に存続する会社又は新設される会社に包括承継されます。消滅会社と労働者との間で結ばれていた労働契約や就業規則に定められている労働条件は、合併後にもそのまま引き継がれるということです。
そうなると、1つの会社で2つの異なる就業規則が併存することになってしまいます。それ自体は法律的に問題があるというわけではありませんが、同じ組織にいるのに賃金や福利厚生に違いがあると不公平が生じてしまい意欲低下に繋がりかねませんし、組織としての統一性に欠けてしまいます。これらの問題を解決するために、就業規則を統一することをお勧めします。
就業規則の統一によって従業員に不利益が生じる場合には、就業規則の不利益変更の問題も考慮しなければなりません。合併前から就業規則の統一案を作成し、不利益変更が生じる部分については、合併前にあらかじめ同意を得ておくと良いでしょう。

2. 吸収合併・新設合併の際の保険関係の手続き

合併に際しては、労働保険・社会保険関係の手続も必要となります。やや煩雑な手続となりますので、事前に必要な手続を確認して準備しておくことが必要です。社会保険労務士にアウトソーシングすることも検討してみましょう。必要となる手続の概要について、労働保険・雇用保険と社会保険に分けて説明します。

会社合併時の労働保険・雇用保険手続

合併に伴う異動(転籍)により、雇用保険の資格取得・喪失の手続が大量に発生することが考えられますが、雇用保険では「新旧事業実態証明書」で新旧の事業主が同一であることの認定を受けるによって、被保険者資格の取得・喪失手続を省略することができます。 被保険者資格に関わる手続のほか、適用事業所の設置・変更・廃止に伴う手続も発生することがあります。
新設合併の場合は、新設会社の「労働保険成立届」、「概算保険料申告書」、「雇用保険適用事業所設置届」といった、会社設立時において通常必要な手続が発生します。
消滅会社の事業所を物理的に廃止する場合には、「雇用保険事業所廃止届」、「労働保険確定保険料申告書」など、労働保険の廃止に必要な手続が発生します。一方で、消滅会社の事業所が支店として存続する場合などは、「各種変更届(名称変更)」を提出します。

会社合併時の社会保険手続

社会保険については、転籍する従業員の被保険者資格に空白が生じないように、合併日に資格喪失・取得を行うことになります。雇用保険とは違い、通常の入退社時と同じように資格取得・喪失手続を行います。
消滅会社では「被保険者資格喪失届」及び「適用事業所全喪届」の提出をします。資格喪失手続の際には保険証の回収も必要です。
存続会社では「資格取得届」及び「被扶養者(異動)届」の提出をします。また、新設合併の場合には「新規適用届」を提出して、新設会社において社会保険の適用を受ける必要があります。

はじめに

組織再編による合併、分割または事業譲渡(以 下、「事業承継」という。)により発生する問 題の1つとして許認可の承継があります。許 認可の承継が円滑に行われなければその業を 行うことができない、いわゆる空白期間が生 じてしまいます。このような事態を避けるた め許認可の事業承継においては主に行政書士 が企業と協力して手続きに当たることが通例 です。今回は令和2年10月1日より始まっ た、建設業許可に関する事業承継および相続 に関する制度(事業承継等に係る認可の制度) についてご案内させていただきます。

従来の問題点

事業承継等に係る認可の制度が導入される以 前を吸収分割を例にみてみると、分割効力発 生日前に建設業を譲渡す会社側で建設業の廃 業届出をします。そして専任技術者等の人の 異動と共に即、譲受会社の方で建設業の新規 の許可申請を行い効力発生日には許可を有し ている状態にし、建設業を承継します。この 時に廃業届と提出してから新規の建設業許可 を受けるまでの間、許可がない空白期間が生 じてしまいます。この間の工事について建設 業法は「(前略)建設業の許可を取り消された 場合にあっては当該処分を受けた者又はその 一般承継人は、許可がその効力を失う前又は 当該処分を受ける前に締結された請負契約に 係る建設工事に限り施工することができる。 この場合において、これらの者は、許可がそ の効力を失った後又は当該処分を受けた後、 二週間以内に、その旨を当該建設工事の注文 者に通知しなければならない」とし、条件付 きではあるが空白期間においても工事を継続 することが出来るとしています。しかし、効 力発生日以後に人的異動が多い吸収分割にお いて工事を継続する例は多くないと考えられ ます。

事業承継等に係る認可の制度について

今回の改正建設業法では、事業承継を行う場 合はあらかじめ事前の認可を受けることで、 空白期間を生じることなく、承継者(譲り上 認、合併存続法人、分割承継法人)が、被承 継者(譲受認、合併消滅法人、分割日承継法 人)における建設業者としての地位を継承す ることが定められました。申請の受付は承継 予定日の開庁日を含まない前日の2カ月前か ら閉庁日を含まない25日前までとされてお りますが、相談は4か月前から可能です。制 度が開始された昨年10月1日から年明けま ぐらいまでは都庁においては実績もなく、運 用が固まっていないように思われましたが、 現在は事例も増えているようで運用が固まっ てきた印象があります。とはいえ、事業承継 自体二転三転することが多いので、早めに相 談に伺い許認可が無事に承継されるように適 切な方向を確認することが重要です。

おわりに

都庁においては現在では事例も増えてきたと いいましたが、それでも制度としては運用が 開始されてからまだ6か月ほどで黎明期とい えます。場合によっては従来の廃業届と新規 の建設業許可取得で進めた方が安全な場合も ございます。ご不明な点等がございましたら、 弊社までお気軽にお問い合わせください。

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