汐留パートナーズ・ニュースレター 2021年6月号

組織再編の個別論点

コロナ関連で慌ただしい中、熱中症の心配も出てくる季節となりました。皆様におかれましては、是非ご自愛をお忘れなくお過ごしください。

さて、今月のニュースレターでは、先月に引き続き「組織再編」について取り上げます。
社会変化の激化に伴い組織再編の有効性が中小企業にも認識され、企業戦略の選択肢として自然なものとなっています。しかし、企業を取り巻くルールは複雑に絡み合い、多くの企業が苦労する論点も複数存在しています。
今回は組織再編に関わる論点のうち、税務、労務、法務の3つの領域の、重要な個別論点にフォーカスして解説します。

組織再編に際してどのような論点が課題となるかを認識するのは、組織再編によって目標達成を見据える企業に大きなメリットがありますので、是非今回のニュースレターを一つの参考にしてください。

はじめに

平成13年度に導入された組織再編税制は、組織再編を税務の観点から検討する際の重要な判断基準となるものです。組織再編税制では一定の要件(税制適格要件)を満たした組織再編行為を税務上優遇しており、税制適格要件の判定は組織再編税制の肝ともいえます。

組織再編税制とは

一般に資産を移転する際には、移転資産の譲渡損益に課税するのが原則です。それゆえ、組織再編においても、原則として移転する資産・負債は時価評価され、課税されることとなります。しかし全ての組織再編において時価評価に伴う課税がなされた場合、多額の税金が発生し、適切な組織再編行為が阻害される恐れがあります。それゆえ、組織再編税制により、税制適格要件を満たす組織再編については、資産・負債を簿価で引き継ぎ、課税が生じないよう優遇措置が取られています。ここに税制適格要件を満たす組織再編を適格組織再編、満たさない組織再編を非適格組織再編といいます。適格組織再編に対する取扱いは、組織再編の前後で経済実態に実質的な変更がない、即ち、移転資産に対する支配が再編後も継続していると認められる場合には、移転資産の譲渡損益の計上を繰り延べるべきという考え方に基づいています。

適格組織再編 非適格組織再編
移転資産・負債の評価 帳簿価格 時価
移転時の課税関係 生じない 生じる

資本関係別に定められた税制適格要件

税制適格要件は、組織再編を実施する会社間の資本関係に応じて異なります。即ち、①完全支配関係(100%グループ内再編)、②支配関係(50%超グループ内再編)、③共同事業(持分割合が50%以下の法人間再編)の3パターンに分け、各々で異なる適格要件が定められています。①→③と資本関係が薄くなるにつれて、要件が増え、複雑化し、税制適格へのハードルは高くなります。

税制適格要件の内容

上記3分類に分けた上で税制適格要件の内容を以下にまとめました。なお、この表では、合併、会社分割など組織再編のスキーム毎にケース分けしていないため、要件については一般化した言い回しと内容としています。

税制適格要件 ①完全支配関係 ②支配関係 ③共同事業
100%支配関係の継続 必要
50%超支配関係の継続 必要
金銭等の支払いがない 必要 必要 必要
主要な資産・負債の移転 不要 必要 必要
移転事業従業員の概ね80%が
移転先事業に従事
不要 必要 必要
移転事業の継続 不要 必要 必要
事業の関連性があること 不要 不要 必要
発行株式の80%以上が継続保有 不要 不要 必要
事業規模が概ね5倍以内、
または特定役員への就任
不要 不要 必要

おわりに

組織再編における税務上の取扱いは、場合によって組織再編のスキームを左右するほどの影響力があるものです。今回は税制適格要件についてみてみましたが、繰越欠損金の引継制限・使用制限、特定資産譲渡等損失の損金算入制限といったその他の重要論点にも配慮することが必要です。ご検討の際には、弊社までお気軽にお問い合わせください。

はじめに

組織再編が行われた場合、元々の労働契約や就業規則はどうなるのかという問題があります。今回は、合併や会社分割時における労働契約の取り扱いや、労働条件の統一方法についてお伝えします。

労働契約の取り扱い

組織再編を行ったとしても、労働契約や就業規則に定められる労働条件は従来のままで、自動的に労働条件が統一されることはありません。したがって、合併や会社分割の場合には同じ組織内に異なる就業規則が存在する状態になります。

合併の場合

合併により複数の会社が1つになったとき、労働契約は包括承継され、労働契約や就業規則の内容は維持されたままとなります。そのため、合併後の組織内には異なる就業規則が併存することになります。組織の公平性を保つために、就業規則の統一を行ったほうが良いでしょう。

会社分割の場合

会社分割の場合、分割される事業に主に従事している労働者は強制的に転籍されます。しかし、この転籍によって労働契約の内容は変更されず、従来の労働契約や就業規則が承継されることになります。合併の場合と同様に、就業規則等の統一が課題となります。

株式移転、株式交換の場合

株式移転や株式交換の場合は、労働契約の承継や転籍はありません。各会社において労働契約が存続します。組織が統合されるわけではないので、労働条件を統一する必要性はそれほど高くはありません。

就業規則統一の方法

前項の通り合併や会社分割の場合、組織再編後の組織内で不均衡を生じるリスクがあることから、就業規則等を統一していく必要があります。労働者の有利に変更する場合にはほとんど問題は生じませんが、不利な内容に変更する場合には、労働者の同意や合理的理由等が求められるので、注意が必要です。

労働者の個別同意による不利益変更

就業規則の不利益変更については、労働者の個別の同意を得ることができれば問題無く実施できます。個別同意を得ることが可能である場合には、個別同意を得た上で就業規則の変更をすることが最も安全です。

合理的な理由による就業規則の不利益変更

就業規則の変更が合理的であるかどうかは、以下の事情を総合的に勘案して判断されます。

1. 労働者の受ける不利益の程度
2. 労働条件の変更の必要性
3. 変更後の就業規則の内容の相当性
4. 労働組合等の交渉の状況
5. その他の就業規則の変更にかかる事情

判例では、「会社等が合併した場合に、労働条件の統一的画一的処理の要請から、旧組織から引き継いだ従業員相互間の格差を是正し、単一の就業規則を作成、適用しなければならない必要性が高い」(大曲市農業協同組合事件 最高裁昭和63.2.16)とされているように、合併等における就業規則統一の必要性は認められると考えられます。
不利益の変更が大きくならないように調整したり、代償措置を講じたり、労働組合等との協議を重ねて納得を得られるように努力したりすることで、合理性が認められやすくなります。

はじめに

組織再編(合併、会社分割、株式交換・株式移転)をするときは、想定している効力発生日に効力を発生させられるようスケジュール管理が重要です。会社法には、組織再編をするときに行わなければならない手続きが定められており、また、いつまでにその手続きを行わなければならないという期限が定めれている行為があります。ここではその一例をご紹介します。なお、ここでは非公開会社である株券不発行の株式会社で、かつ、簡易・略式型の組織再編ではないことを前提としております。

事前備置書類

組織再編をする会社は「備え置きの開始日」から、組織再編の効力発生日から6ヶ月を経過する日(吸収合併消滅会社にあっては効力発生日)までの間、吸収合併契約書等の一定の書類を本店に備え置かなければなりません。「備え置きの開始日」とは、債権者保護手続きを開始した日、吸収合併契約等を承認する株主総会の日の2週間前の日等の会社法の定める日のうち、いずれか早い日です。

事業承継等に係る認可の制度について

今回の改正建設業法では、事業承継を行う場 合はあらかじめ事前の認可を受けることで、 空白期間を生じることなく、承継者(譲り上 認、合併存続法人、分割承継法人)が、被承 継者(譲受認、合併消滅法人、分割日承継法 人)における建設業者としての地位を継承す ることが定められました。申請の受付は承継 予定日の開庁日を含まない前日の2カ月前か ら閉庁日を含まない25日前までとされてお りますが、相談は4か月前から可能です。制 度が開始された昨年10月1日から年明けま ぐらいまでは都庁においては実績もなく、運 用が固まっていないように思われましたが、 現在は事例も増えているようで運用が固まっ てきた印象があります。とはいえ、事業承継 自体二転三転することが多いので、早めに相 談に伺い許認可が無事に承継されるように適 切な方向を確認することが重要です。

債権者保護手続き

組織再編をするときは、原則として債権者保護手続きを行わなければなりません。
債権者保護手続きは、官報公告+知れている債権者への個別催告により行い、この期間は1ヶ月を下ることができません。定款で定める公告方法が日刊新聞紙又は電子公告である会社の場合は、官報公告+定款で定めた公告(日刊新聞紙又は電子公告)をすることにより、各債権者への個別催告を省略することが可能です。ただし、この方法でも吸収分割をする場合における不法行為によって生じた分割会社の債務の債権者に対しては個別催告を省略することはできません。債権者保護手続きが必要なケースにおいては、上記のとおり官報公告が必須となり、官報に公告が掲載されるには申込みから掲載まで約2週間程度かかることがあるため、スケジュール管理においてはここが大きなポイントになるかと思います。
なお、組織再編のうち債権者保護手続きが不要な場合の一例は次のとおりです。

■会社分割、新設分割において承継会社、新設分割設立会社が承継する債務を、分割会社が全て重畳的に債務引受又は連帯保証をする場合(分割型分割を除く)
■株式交換、株式移転において完全子会社の株式だけが完全親会社に移転し、対価が完全親会社の株式だけである場合

株主への通知

組織再編をするときは、効力発生日の20日前までに、組織再編をする旨並びに相手方の商号及び住所を株主に対して通知しなければなりません。

株主総会の決議

組織再編をするときは、合併等の効力発生日の前日までに、株主総会の決議により、合併契約等の承認を受けなければなりません。

効力発生日

新設合併、新設分割及び株式移転は、その登記をした時に効力が発生します。吸収合併、吸収分割及び株式交換は、契約で定めた日に効力が生じます。なお、どちらも所定の手続きが終わっていないと行うことができません。

 

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