汐留パートナーズ・ニュースレター 2022年5月号

外国人の所得税・外国人採用における注意点・上陸拒否の解除

日頃よりお世話になっております。汐留パートナーズです。早くも2022年の3分の1が経過しましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

今月のニュースレターでは、税務より「外国人の所得税」、労務より「外国人採用における注意点」、行政書士法人より「上陸拒否解除」について取り上げます。

外国人を雇用する際には、日本人を雇用する場合とは違った注意事項が多数あります。在留資格の確認はもとより、給与の支払いにおいては居住者であるかどうかや非永住者にあたるかどうかによって、所得税の課税対象や税率も異なります。

また文化的な方面では、労働に関する制度・文化の違いがあるため、配置転換等の可能性がある場合にはその旨を明示するなど労働条件の提示の仕方に注意が必要です。言語的な壁については業務遂行のほか、安全管理においても配慮を欠かすことはできません。

外国人の雇用を検討している企業様は、是非今月のニュースレターをご参考頂ければと思います。

 

はじめに

外国人の新規入国制限が徐々に緩和される中、今後外国人労働者の雇用の増加が見込まれます。今回は外国人を雇用した際の所得税 (住民税)について見ていきたいと思います。

居住者(非永住者・非永住者以外)と非居住者の区分及び課される税

外国人にも、基本的には日本人と同様に所得税が課せられますが、日本国内における住所の有無や在住期間によって、課税対象となる所得の範囲や税率が異なります。即ち、その外国人が日本の「居住者」に該当するか否か、更に「居住者」でも「非永住者以外の居住者」か「非永住者」かにより、課される税金が異なります。「居住者」とは、日本国内に住所があるか、又は現在まで引き続いて1年以上居所がある個人とされています。所得税法における「住所」とは生活の本拠のことをいい、客観的事実によって判定され、「居所」とは、生活の本拠というまでには至らないものの、相当期間継続して居住している場所をいいます。以下に、居住者・非居住者の区分と定義、及び課税対象となる所得の範囲、税率、住民税の有無についてまとめてみました。

個人の区分とその定義
居住者 非居住者
「日本国内に住所を有する」又は「日本国内に現在まで引き続き1年以上居所を有する」個人
居住者以外の個人
非永住者以外の居住者 非永住者
居住者のうち、非永住者(右記参照)以外の者 居住者のうち、「日本国籍を有していない」かつ「過去10年以内において、日本国内に住所又は居所を有していた期間の合計が5年以下である」個人
課税所得の範囲 全世界所得(国内外で生じた全ての所得) 全ての国内源泉所得及び国外源泉所得で日本国内において支払われ、又は国外から送金されたもの 国内源泉所得
税率 日本人と同様の所得税率(累進課税) 一律20.42%
住民税 支払われた所得に対して住民税が課税。日本人と同様の税率。 住民税の課税なし

外国税額控除制度と短期滞在者免税制度

居住者である外国人は、国外源泉所得が外国所得税の課税対象となる場合に、日本と外国で二重に所得税が課税されることがあります。このような国際的な二重課税を調整するために設けられたのが、「外国税額控除」です。 具体的には「所得税の控除限度額(以下①)」を限度として、外国所得税額をその年分の所得税額から差し引くことができます(外国所得税額>所得税の控除限度額の場合や詳細はNo.1240 居住者に係る外国税額控除|国税庁参照

①所得税の控除限度額=その年分の所得税の額×その年分の国外所得金額/その年分の所得総額

非居住者に対しても、租税条約を締結している国とは「短期滞在者免税」の適用により、日本での課税が免除される場合があります。適用条件は、国ごとの租税条約の内容によって異なりますが、例えば、「①滞在期間が183日以内である、②報酬を日本以外の企業から受けている、③日本の恒久的施設から報酬を受けていない」といった条件があります。

おわりに

コロナ禍で一時鈍化していた外国人雇用ですが、今後は確実に増加するでしょう。まずは最新情報に基づいた入国に必要な要件や各種手続を確認することが第一ですが、晴れて入国できた際に、その後の雇用に伴う税務論点についても予め確認しておくことは重要です。ご不明点等ございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせ下さい。

 

外国人採用における注意点

日本では少子高齢化や労働力不足の問題に直面しており、外国人労働者の活用が重要となっております。年々外国人労働者は増え続け、10年前には68万人程度だった外国人労働者が、現在では172万人強にまで増加しています。2019年には特定技能の在留資格が創設され、より幅広い領域で外国人労働者が活用されていくことでしょう。今回は、外国人を採用する際に気をつけるべきポイントについて解説します。

1.必ず在留資格を確認すること

まず、募集職種で働くことの出来る在留資格をもっているかを確認しなければなりません。適法な在留資格の無い外国人を雇用してしまうと、不法就労助長罪(入管法73条の2)に問われる可能性がありますので、必ず確認が必要です。

既に在留資格をもっている外国人を雇入れるときは、在留カードの写しをもらって、確認するようにしましょう。

在留資格をもっていない外国人を採用しようとする場合は、在留資格の取得を条件に採用を進めることになります。学歴や職歴を確認し、在留資格を取得できるか確認しましょう。

2.労働条件は明確に記載すること

外国人向けの求人票、労働条件通知書、オファーレターなどに記載する労働条件については明確に記載しましょう。日本人にとっては常識で通じることが、外国人にとっては常識ではないこともあります。

例えば、日本人にとって時間外労働や配置転換は当たり前のように感じられるかもしれませんが、外国ではそうとは限りません。外国人労働者から残業命令や配置転換を拒否されてしまったという話も珍しくありませんから、雇入時には明確にしておくべきでしょう。

また、社会保険制度、保険料や税金の控除についても日本独自の制度ですから、説明したおいたほうが良い事項です。

3.日本語が苦手な方への配慮

日本語が堪能な外国人であれば問題ありませんが、日本語が不得手な外国人労働者に対しては配慮が必要です。労働条件通知書や就業規則については、問題無く理解できるように、できれば母国語で提示してあげたほうが良いでしょう。日本語がよく理解できなかったことで労働条件を理解できず、後々トラブルになることもあります。

もちろん、雇用したあとも配慮は必要です。日本語が理解できないことで機械の操作を誤り労働災害が起きてしまい、使用者責任を問われることがあります。実際、外国人労働者は日本人労働者よりも労災件数が多くなっており、特に製造業や建設業では注意が必要です。

4.差別の禁止・プライバシーへの配慮

外国人に限った話ではありませんが、従業員の募集・採用にあたって、人種や国籍・年齢・性別などで差別を行うことは禁じられています。中国語を話せる人を雇いたいときは、「中国人」というのではなく、「中国語を話せる方」のように、能力を基準として募集しましょう。

また、業務に関係の無いプライバシーに関わる事項(人種、出身地、結婚の予定、性的指向、思想、宗教、病歴など)については聞かないようにしましょう。仮にこれらの事項で差別的取扱いをしなかったとしても、その疑念を抱かれかねません。

5.労働関係法の遵守

当然ですが、外国人に対しても日本人と同じように労働基準法や最低賃金法などが適用されます。特に技能実習生に対しては、最低賃金を支払わない、残業代を支払わないなど、違法な働かせ方をして検挙される事例が少なくありません。技能実習生の失踪が問題視されていますが、こういった劣悪な労働環境が大きな要因になっていると思われます。日本人労働者に対するのと同様に、少なくとも労働関連法規を遵守する必要があります。

決して「安い労働力」として酷使するのではなく、大切な人材として迎え入れるようにしましょう。

 

はじめに

4月上旬、外国人の入国制限に関する水際対策について「上陸拒否解除」という見出しがメディアにも取り沙汰されました。これにより入国制限が解除され、外国人の出入国がコロナ前に戻るものと考えた方も多いと思いますが、現実は違いました。なぜ「上陸拒否解除」という措置がとられたのに今までと変わらないのかを現在の措置を確認しながら説明させていただきます。

令和4年4月8日午前0時

そもそも外国人が新規入国できない根拠は大きく2つあり、そのうちの1つが出入国管理及び難民認定法(以下、「入管法」という)による上陸拒否です。入管法第5条第1項第14号に基づき、日本上陸14日以内に政府が指定した国・地域に滞在歴がある外国人は、当分の間、「特段の事情」がない限り、上陸を拒否することとしています。「特段の事情」とは中長期在留者が再入国許可(みなし再入国も含む)する場合、日本人・永住者の配偶者又は子、定住者の配偶者又は子で、日本に家族が滞在しており、家族が分離された状態の者、家族離散状態で家族統合の必要性が認められる者で、「家族滞在」又は一定の「特定活動」の在留資格を有する者、「外交」又は「公用」の在留資格を取得する者、新たな措置(27)に基づいて入国する者その他人道上配慮すべき事情がある者や、公益性があるときといった個別の事情が認められるものなどがあげられます。

この上陸拒否として指定されていた国・地域のうち106か国が令和4年4月8日午前0時をもって指定を解除されたというのが今回のニュースの内容です。解除された国にはア メリカやヨーロッパ主要国も含まれております。

全世界を対象に査証(VISA)発給制限

外国人が新規入国できない根拠のもう1つが現在、全世界を対象に在外日本大使館/領事館で行われている査証発給の制限措置がなされていることです。この措置が現在も解除されていないため、上陸拒否が解除されても入国の手続きに必要な査証が発給されず、事実上入国ができないこととなっております。

ただし、原則として先ほど挙げた「特段の事情」と同様の事情がある者については査証発給がなされております。また査証免除国についても査証申請が必要となっております。入管法に基づく上陸拒否は解除がされましたが、そもそも入国のために必要な査証の発給が全世界で制限されているため、結局のところ以前と変わりないように見えます。しかし中身を見ると少しずつ、段階的に全面解除の方向へ向かっていると私見ですが感じております。

おわりに

新型コロナウイルス感染症に対して各国様々な措置を講じる中で日本の水際対策は法務省、厚生労働省、外務省が関与する法律、措置によって運用されている、極めて複雑な措置となっております。新たな措置(27)に基づいて入国するためには厚生労働省へERFSのシステムを使って受付済証の申請を事前に行うこととなっており、申請主体である受入責任者には誓約事項が課せられます。お困りの際は弊社へご連絡いただければと存じます。

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