司法書士 石川宗徳の相続コラム

被補助人、被保佐人、成年被後見人が相続放棄をする方法

相続放棄をすると、最初から相続人ではなかったことになります。

そのため、被相続人に債務(借金)が多いときは相続放棄をするというのも選択肢の一つとして挙がってきます。

相続放棄をするには行為能力と意思能力が必要とされていますが、成年後見制度を利用されている方は相続放棄をすることができるでしょうか。

このコラムでは、成年後見制度を利用されている方の相続放棄について紹介しています。

成年被後見人等と相続放棄

被補助人、被保佐人、成年被後見人(ここでは便宜上、併せて成年被後見人等といいます)が相続放棄をするときは、本人が相続放棄をすることができるかどうか確認をしなければなりません。

相続放棄をするには、意思能力行為能力が必要とされているためです。

具体的には、成年被後見人等が相続放棄をする場合、後見人が代わりに相続放棄の申述をしたり、保佐人の同意が必要となります。

相続放棄とは

相続放棄をすると、その相続に関しては、初めから相続人ではなかったものとみなされます(民法第939条)。

相続放棄にはその申立ての期限があり、自分のために相続が開始してから3ヶ月以内にその申立てをしなければなりません(民法第915条)。

相続財産が借金ばかりで一切相続をしたくない、あるいは人間関係から相続に一切関わりたくないという場合、相続放棄が選択されることが少なくありません。

被補助人とは

被補助人とは、精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分な方で(民法第15条)、家庭裁判所より補助開始の審判を受けた方のことをいいます(民法第16条)。

被保佐人とは

被保佐人とは、精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分な方で(民法第11条)、家庭裁判所より保佐開始の審判を受けた方のことをいいます(民法第12条)。

成年被後見人とは

成年被後見人とは、精神上の障害により事理を弁識する能力が常に欠いている方で(民法第7条)、家庭裁判所より後見開始の審判を受けた方のことをいいます(民法第8条)。

 

成年後見の申立てをしたときに、被補助人、被保佐人、成年被後見人のいずれに該当するのかは、家庭裁判所の判断により決定されることになります。

被補助人の相続放棄

被補助人の方は、被補助人自身が相続放棄の申述をすることができます。

しかし、被補助人に対して、一定の行為について補助人の同意を要する旨の審判がされることがあります(民法第17条1項)。

補助人に上記の同意権が付与されている場合は、相続放棄をするときに補助人の同意が必要となります。

被保佐人の相続放棄

被保佐人の方は、被保佐人自身が相続放棄の申述をすることができますが、保佐人の同意が必要となります(民法第13条1項6)。

成年被後見人の相続放棄

成年被後見人の方は、成年被後見人自身で相続放棄の申述をすることはできません。

成年被後見人の方が相続放棄の申述をするときは、成年後見人が代理人として相続放棄の申述をすることになります(民法第859条)。

成年被後見人の相続放棄と熟慮期間

相続放棄は、自分のために相続が開始したことを知ったときから3ヶ月以内にその申立てをしなければなりません。

この3ヶ月の期間のことを熟慮期間といいます。

成年被後見人の熟慮期間の開始は、成年後見人が成年被後見人のために相続が開始したことを知った時から始まるとされています。

意思能力が不十分だが成年後見制度を利用していない人

相続放棄の申立てをするには、当該相続人に意思能力行為能力が必要です。

意思能力が不十分だけれども成年後見制度を利用していない方が相続放棄をするには、成年後見の申立てを行い、成年後見人が選任されてから、その成年後見人が本人のために相続放棄の申立てをすることになります。

相続放棄と利益相反

相続放棄を代理人が行うときは、利益相反に注意しなければなりません。

利益相反行為に該当するときは、当該代理人は本人を代理することができず、別の代理人(特別代理人)を選任しなくてはなりません。

利益相反となる場合

成年被後見人と成年後見人が同時に相続人であるときに、成年被後見人のみ(成年後見人が代理して)相続放棄を行うと、成年後見人の相続する財産が増えるケースがあります。

例えば、相続人が配偶者と子1名であるときに、子が被相続人の配偶者の成年後見人となっているようなケースです。

このとき、成年被後見人(被相続人の配偶者)が相続放棄をすると、成年後見人の相続分が増えるため、成年後見人が代理して成年被後見人のみの相続放棄を行うことができません。

 

成年後見人が成年被後見人同時に相続放棄

上記のケースにおいて、成年後見人(子)が成年被後見人(被後見人の配偶者)と同時に相続放棄をするときは、利益相反に該当しないため、成年被後見人を代理して相続放棄の申立てをすることができます。

利益相反と特別代理人

利益相反のために成年後見人が成年被後見人の代理人となれないときは、家庭裁判所に対し、成年後見人に代わる(成年被後見人の)代理人の選任の申立てを行います。

この代理人のことを特別代理人といいます。

特別代理人が成年被後見人に代わり、成年被後見人の相続放棄の申立てを行うことになります。

後見監督人がいる場合

相続人が配偶者と子1名で、当該配偶者が成年被後見人、子がその成年後見人であるときは、成年後見人が成年被後見人たる(被相続人の)配偶者を代理して、成年被後見人のみの相続放棄をすることができないことは前述のとおりです。

このとき、後見監督人として第三者が選任されているときは、成年被後見人に代わり相続放棄の申立てを行うことができますので、特別代理人の選任は不要とされています。

後見監督人は、成年被後見人と成年後見人との利益が相反する行為について、成年被後見人を代理することができるためです(民法第851条4)。

この記事の著者

司法書士/相続診断士
石川宗徳

代表司法書士・相続診断士 石川宗徳 [Munenori Ishikawa]

1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士・相続診断士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)

2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。

2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。

また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。

東京汐留相続サポートセンターでは
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