司法書士 石川宗徳の相続コラム

認知症の方が遺留分減殺請求権を行使する方法

配偶者、第1順位相続人及び第2順位相続人には遺留分が留保されています。

遺留分が侵害されたときは、遺留分減殺請求権を行使することができ、遺留分に相当する相続財産を取得することが可能です。

このときに、遺留分を侵害された相続人が認知症であった場合はどうなるでしょうか。

このコラムでは、認知症の方が遺留分減殺請求権を行使する方法について紹介しています。

遺留分減殺請求と意思能力

第3順位相続人以外の法定相続人には遺留分があります。

法定相続人の遺留分を侵害する内容の遺言も有効であり、例えば親族以外の第三者へ相続財産全て遺贈する内容の遺言もそれ自体何の問題もありません。

遺留分のある相続人が、侵害された遺留分を請求するには、遺留分減殺請求権を相手方へ行使しなくてはなりません。

遺留分減殺請求権の行使は法律行為に該当しますので、遺留分減殺請求権を行使するには意思能力行為能力が必要です。

遺留分とは

遺留分とは、一定の相続人が最低限相続することができるとされている財産に対する権利のことをいいます。

遺留分については、こちらのページをご参照ください。

遺留分についての解説ページ

意思能力とは

人が契約の締結等の法律行為を行うときは、行為者が自分の行為及びその結果を理解して、自ら判断できる精神的な能力を備えていることが当該法律行為が有効となる条件の一つとされています。

この精神的な能力のことを意思能力といいます。

意思能力が無い人(例えば乳児)が行った法律行為は無効です。

重度の認知症である方は、意思能力が無いと判断される可能性は高いといえます。

行為能力とは

未成年者や成年被後見人等は、自分だけでは第三者との契約締結のような法律行為を行うことができません。

年齢や制度によって、単独で行う行為が制限されている人を制限行為能力者といいます。

法律行為を行うには行為能力が必要とされています。

家族が勝手に代理人となることはできるか

父が亡くなり、相続人である母が重度の認知症であるときに、(成年後見人ではない)その子が母の代わりに遺留分減殺請求権を行使することはできるのでしょうか。

結論としては、勝手に遺留分減殺請求権を行使することはできません。

「代わりに行う」という代理行為は、あくまで母からの委任があることが前提となりますが、委任という法律行為を母が行うことができない可能性が高いためです。

認知症の方が遺留分減殺請求権を行使する方法として、成年後見制度を利用する方法があります。

成年後見制度を利用する

成年後見制度とは、認知症や精神障がい、知的障がいなどの理由により判断能力が不十分な方々を保護・支援する制度のことをいいます。

成年後見申立ての手続きをすると、本人の判断能力の状況に応じて成年後見人、保佐人、補助人が選任されます。

成年被後見人、被保佐人、被補助人が遺留分減殺請求権を行使するには次の方法によることになります。

成年被後見人と遺留分減殺請求権の行使

成年被後見人は意思能力が不十分であるため、本人が単独で遺留分減殺請求権を行使することはできません。

本人に代わり、成年後見人が遺留分減殺請求権を行使することになります。

 遺留分減殺請求権の行使と利益相反

遺留分減殺請求権の行使の相手が後見人であるときは、当該後見人は本人(被後見人)との関係で利益相反に該当することになるため、本人が遺留分減殺請求権を行使するときは成年後見監督人が成年後見人の代わりに、行使することが考えられます。

被保佐人と遺留分減殺請求権の行使

被保佐人は遺留分減殺請求権の行使をすることができます(訴訟をする場合は保佐人の同意が必要)。

ただし、代理権付与の審判により保佐人に代理権が付与されているときは、保佐人においても被保佐人のために遺留分減殺請求権の行使をすることができます。

被保佐人が遺留分減殺請求権の行使をするのが難しいのであれば、当該行為につき代理権付与の審判を経て保佐人が行使することも考えられます。

被補助人と遺留分減殺請求権の行使

被補助人は遺留分減殺請求権の行使をすることができます(訴訟をする場合に補助人の同意が必要なケース有り)。

ただし、代理権付与の審判により補助人に代理権が付与されているときは、補助人においても被補助人のために遺留分減殺請求権の行使をすることができます。

被補助人が遺留分減殺請求権の行使をするのが難しいのであれば、当該行為につき代理権付与の審判を経て補助人が行使することも考えられます。

遺留分減殺請求権の消滅時効

遺留分減殺請求権には消滅時効があります。

消滅時効が成立してしまうと、遺留分減殺請求権を行使することはできなくなってしまいます。

遺留分減殺請求権の消滅時効は次のとおりです(民法第1042条)。

相続の開始+減殺すべき贈与・遺贈を知った時から1年

相続が開始したこと及び、自分の遺留分が侵害されていて、その減殺すべき贈与あるいは遺贈があったことを知った時から1年を経過した後は、遺留分減殺請求権を行使することができなくなってしまいます。

相続発生後は色々な手続きがあるため、1年という期限はあっという間に過ぎてしまいます。

遺留分減殺請求権を行使するのであれば早めに弁護士へ相談することをお勧めします。

成年後見人選任の申立てと消滅時効

認知症等により判断能力を欠く状況にある人は、成年後見人が就職してから6ヶ月を経過するまでの間は、時効は完成しないとされています(民法第158条)。

この点、平成26年3月14日最高裁第二小法廷判決によると、

  1. 被相続人の死亡
  2. 成年後見人選任の申立て
  3. 被相続人が死亡してから1年経過
  4. 後見開始の審判

の順のように、1年の消滅時効の経過前に成年後見人選任の申立てをすれば、1年の消滅時効の経過後に後見開始の審判がされた場合でも、1年の消滅時効は完成しないとされています。

なお、このケースにおける消滅時効は、成年後見人が就職してから6ヶ月を経過するときまでとなります。

相続開始の時から10年

相続が開始してから10年が経過すると、遺留分減殺請求権は時効により消滅します。

この10年の消滅時効は、相続が開始したことや、遺留分が侵害される贈与・遺贈があったことを相続人が知らなくても消滅時効が完成してしまいます。

この記事の著者

司法書士/相続診断士
石川宗徳

代表司法書士・相続診断士 石川宗徳 [Munenori Ishikawa]

1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士・相続診断士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)

2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。

2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。

また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。

東京汐留相続サポートセンターでは
相続手続き遺言成年後見など、
相続に関する様々なサポートを行っております。


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