相続と裁判手続き(2)

   

Case3.家の貸主に相続が発生(誰が訴える?)

Q3.

父が亡くなりました。

父はアパートを一棟所有していて、部屋を貸していました。

貸し借りの管理は不動産会社に頼んでいます。

先日その不動産会社の担当者と話をしていて、一部屋、賃料が支払われなくなり困っているということを知りました。

賃料の未払いは父の生前から続いているそうで、父とも何度も話し合いを重ねていたそうです。

どうしたらよいのでしょうか。裁判するしかないのでしょうか。

不動産管理会社に任せておけば、裁判などもやってもらえるのでしょうか。
 

A3.

まずは内容証明郵便を送り、支払いを求めたり、賃貸借契約を解除したりすることから始めるのが望ましいように思います。郵便が届いているのにも関わらず、反応がない等、話し合いで解決できなければ、仰るとおり、裁判での解決に向けて動く必要があるでしょう。

裁判は、原告(訴える人)と被告(訴えられる人)が当事者です。

原告になれるのは、不動産の所有者であったり、不動産の賃貸借契約上の貸主です。お話を伺うには、お父様が所有され、貸していらした、どちらもお父様で、今はその地位を承継された相続人が所有者・貸主ですので、不動産管理会社が当事者になることは有り得ません。

もちろん、裁判を弁護士・司法書士に依頼される場合には、間に入って、上手く導いてもらえることはあるかもしれません。

しかしながら、あくまでも、訴訟の当事者は、所有者・貸主です。弁護士・司法書士に訴訟を依頼するとき、委任状を書くのも所有者・貸主です。

任せておいて完結するものではないことは、ご理解いただくのがよろしいと思います。

Case4.家の貸主に相続が発生(登記はいらない?)

 
(Case3.の続き)

Q4.

相続人が原告になって裁判、ということは理解できました。

私は、母と弟がいますが、父は不動産は私にという自筆の遺言を残していました。「相続させる」とありました。

これについて賃貸借契約があれば、その賃料を受け取る権利も私にと書かれていました。なので、私が相続人として原告になるということですね。

父の不動産の名義は父のままなのですが、変更の登記などはあとでゆっくりすることにして、裁判をおこしたらよいのでしょうか。
 

A4.

相続人の理解はそのとおりです。

公正証書遺言ではないようなので、裁判所の検認を経るなどの必要はありますが、問題がなければ、遺言の内容のとおり、貴方に不動産や貸主の地位が承継されます。

不動産の名義は、訴訟を提起する前に変更するのが望ましいでしょう。一般的にはそうします。

相続登記の手続きにおいては、法務局に遺言書も提出しますので、しっかり内容を確認されて、相続の登記がなされます。裁判所も、その登記簿を見ただけで、貴方がお一人で相続した不動産であることがわかります。

お一人で相続したことを明らかにするために、相続の登記をしておくことをお勧めします。

Case5.家の貸主に相続が発生(裁判手続き中)

Q5.

父が亡くなりました。

父はアパートを一棟所有していて、部屋を貸していました。

一部屋、賃料が支払われない月が続いたことから、建物明渡訴訟を提起したと聞いています。

その後、3か月分の賃料が支払われたようですが、未払いも3か月分ほどあり、解決に至っていません。私は、またいつ未払いになるかもわかりませんし、生前に父が話してくれた気持ちと同じで、すぐに出ていってほしいと思っています。

相続人は私だけです。

どうしたらよいのでしょうか。
 

A5.

被相続人(お父様)の裁判上の地位は、そのままの状態で、当然に相続人に引き継がれることになります。

裁判所に対して、「訴訟手続受継の申立書」を提出し、貴方が裁判手続きを引き継ぐことになります。

申立書の内容は、「原告(お父様のことです)は令和○年○月○日に死亡したが、原告の子である以下の者が被告を相続したので、同人に対し、上記訴訟手続を受継させるよう申し立てる。」というような内容です。

口頭弁論が終結するまでの間に訴訟当事者(原告や被告)が死亡した場合には、原則として訴訟手続きはその進行が中断します。そして、相続人が訴訟を受継することにより、再び進行することとなります。

この点、すぐにでも出ていってほしい、というお気持ちはとてもよくわかりますが、もとの当事者が死亡してから3か月間は受継することができない、という決まりがあります。

亡くなってから3か月間は、相続人は相続放棄ができる期間であり、誰が相続人になるのか確定しません。

このことから、このように決められているのです。よって、再び訴訟が進行するまでにはある程度の時間がかかってしまいます。

3か月分の賃料が支払われたという点は、これこそ、訴訟が長引く大きな理由です。

まず、原告は、請求の減縮を申し立てる必要が生じます。

例えば6か月分の賃料を請求していた訴訟で、一部である3か月分の支払いがあった場合、一部を受け取っている以上、6か月分の支払いを求め続けることには理由がないからです。

裁判期日はおおよそ1か月後に指定されることが多いですが、それまでに減縮の申立をするように求められ、原告は申立書を作成し、提出する、このような流れになることが多いように思います(もちろん、これに限りません)。

もともとは、建物明渡訴訟は、被告が答弁書(被告の言い分が書かれた文書)を出すこともなく裁判を欠席し、そのまま、原告の請求が認められることが多い訴訟です。

しかしながら、このように、出ていきたくないと争ったり、その気持から、そのような主張をするだけでなく、一部を入金したりする被告も一定数存在します。

訴訟の前に賃貸借契約を解除していると推測しますので、未払いのうちの一部の入金がされたのも解除後、と推測します。

このような事情(解除後に一部入金がなされる等の事情)があっても、解除の効力は消えません。そのため、賃貸借契約は終了していて、存在しません。

ではどのように裁判が解決するか・・、当然に出ていってもらえるのか・・、裁判所の判断で、出ていくよう求める判決がでることもあれば、裁判官から、被告が住み続けられる方向での和解を勧められることもあります。

この和解の場合は、原告・被告の間で賃貸借契約を新たに締結するなどの合意がなされ、被告が住み続けられるようになります。

裁判官の和解の勧めには、当然、応じないこともできますが、これらの過程で、当然に、訴訟は長引いてしまうのです。

※ 訴訟手続きは、途中から代理人に委ねることも問題なく可能です。不安に思うことがあれば、専門家に具体的な相談をなさることをお勧めします。

佐藤知江
 

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佐藤知江

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