金融資産の相続手続きを自分でするか、専門家に依頼するか、迷ったときに

   

問いかけてみることの勧め -向いている?向いていない?-

身近なひとが亡くなり、生活そのものや気持ちが落ち着いたころ、資産の相続手続きのことを考え始めるのではないかなと思います。

金融資産の相続手続きについて、自分でするか、専門家に依頼するかを迷ったときには、手続きを面倒に思う気持ち、煩雑な手続きを不快に思う気持ちがないか、問いかけてみることをお勧めします。

これまで金融資産の相続手続きをご依頼いただき、代理人の立場で手続きに携わり、金融機関の担当者と接する中で、相続人の立場で手続きをしていてこのようなことを言われたら、戸惑ってしまうだろうな、本来は必要のないことでも従うしかないのだろうな、などと感じる場面がたくさんあったからです。

このように感じたとは言え、この手続きは、間違いなく、専門家に依頼せずとも問題なく終わらせることができる手続きです。

基本的には、各金融機関の求めている書類を集め、各金融機関の所定の届出書等に記入をし、提出すれば、粛々と手続きは進んでいきます。そして、金融資産の承継がなされます。専門家が携わっても、そうでなくても、全く同じ結果が得られます。この意味で、自ら進めることにおける不利益は無いと考えます。

この反面で、金融機関にもよりますが、初めて訪れた日に手続きが進まなかったり、窓口に何度も足を運ぶことになったりする可能性はありますので、誰にとってもストレスなく、簡単に終えられる手続き、とは思えません。

このような考え・気持ちから、ゆったりと構えることができる方、そして一つ一つの細かな確認などにも前向きな気持ちで向き合うことができる方にとっては、あまり心配のない手続きなのではないかな、と考えています。

ちょっとしたアドバイス

これまで手続きに携わったなかで、戸惑ったこと、戸惑いつつもそれまでの経験があったために切り抜けられたことなど、少しご紹介したいと思います。

こんなこともあるかもしれない、と、少しだけ構えて臨んでいただければ、冷静にいられるのではないかなと思い、その意味で役に立てればという気持ちでこのコラムに残しました。

①「今日は無理です。予約してください。」

ある日、銀行の相続手続きの所定の届出書や手続き案内の文書を求めて、銀行の支店を訪ねました。求めに従い通帳を提示し、口座の停止の手続きを終え、近日中に相続手続きに訪れることを伝えて支店を後にしました。

その翌日、書類が揃い、相続手続きのためにその支店を訪れたとき、「今日は無理です。予約してください。」という言葉をかけられ、予約のための案内をされたのです。そして予約の可能な日は、最短で、1週間以上も後でした。

この相続手続きでは、この銀行口座の解約の手続きと併せて証券口座の解約や不動産登記の手続きもご依頼いただき、全ての相続手続きをなるべく早く終わらせる段取りで動いていました。しかしながら、戸籍謄本等の相続を証する書面は各1通をお預かりすることにしていましたので、1週間後には戸籍謄本等は法務局に送っていて、おそらく手元にないだろうという状況。さて・・・

「前日の手続きで予約の案内などなかったのに・・・」という気持ちはあるものの、金融機関の人手などの関係で物理的に無理なのであれば、交渉も無意味、というような考えのなかで思いついた提案は、手続きの一部だけでも終わらせてもらいたい、という気持ちからのものでした。

これよりも前の別の相続手続きで、相続手続きのメインの部分は相続センターを通じておこなうけれど、戸籍謄本類の原本確認だけ支店で先に済ませてもらうことで、戸籍謄本の原本はそれ以降不要になり、相続センターにそれら原本を送る必要がなくなる(他の手続きに戸籍謄本を使用することが可能になる)、という手続きの一部を経験していたので、これを提案したのです。

このときは、金融機関の担当者もこれに応じてくださり、無事に手続きの一部(戸籍謄本等の原本確認)を終えることができました。

※これは、金融機関や支店のそのときの規則・運用によるものと考えます。私自身、ときと場合によるものだと思っており、このコラムは、決して、この手続きができる可能性があることをお伝えしようという趣旨ではありません。

今日手続きを終わらせよう、という気持ちでいても必ずしもそうはならないことがありますので、気持ちに余裕を持っていただければ、という想いと、冷静にお願いしてみると少しは進ませられることもあるかもしれない、という気持ちからの、ちょっとしたアドバイスです。

②残高証明書の発行は相続手続きの一部ではない?!?

相続時の残高証明書は、相続税の申告の手続きに必ず要する書類です。

それであれば、相続手続きをすれば相続時の残高証明書の発行も自然になされる、とは思いませんでしょうか。私は、昔は、そう思っていました。

しかしながら、実際は、相続の手続きとは別に残高証明書の発行も依頼をしなければ、残高証明書の発行はなされません。

この発行の依頼は、相続人の一人が、他の相続人の同意などは無しに一人でおこなうことができます。ただし、相続人の一人であることの証明を、戸籍謄本などを提出してしなければなりません。

一度相続手続きのときに提出をしていても、残高証明書の発行の手続きは別の手続きとのことを理由に、改めて提出を求められるのです。

相続手続きが無事に終わったとほっとしたあとで、残高証明書がないと気づくことも、往々にして起こりうることです。

個人の方がなさる手続きでは、金融機関の担当者が特に気をつけてくださるのではないかなと思いますが、金融機関や支店によっては、或いは担当者によっては、そうでないことも考えられますので、頭の片隅においておくとよいのではないかなと思います。

※相続税の申告が不要であれば、必ずしも要する証明書ではありません。お手続きの前に、相続税の申告の、要・不要のご確認をなさることをお勧めします。

③どうして相続人の印鑑証明書がいるのだろう・・・

遺言執行者の立場で金融資産の相続手続きに携わったときの戸惑いです。

このときは、遺言書で遺言執行者として指定されていましたので、被相続人が亡くなったことを知り、その遺言執行者に就任しました。

遺言執行者は、代理人ではなく、当事者として、手続きに関与します。

この前提がありますので、金融機関の所定の届出書には、遺言執行者自らの実印で押印をし、その印鑑証明書を添えて届け出をしました。

それにも関わらず、相続人の印鑑証明書を求められたのです。相続人の印などどこにも押していないのに、です。

このときは、最終的には、金融機関の担当者が上席者に代わり、相続人の印鑑証明書を提出することはせずに、手続きを完了させることができました。

さらには、金融機関はいくつもありましたが、このような要求をされたのは、1社だけでした。

もちろん、金融機関によって求められる手続き書類は異なります。また細かな規定は当然に異なるものと理解しています。

しかしながら、印鑑証明書などのとても大事な書類こそ、当然に、要求するのにはそれなりの理由が必要ではないでしょうか。

提出することによって何を証明しようとしているのか、金融機関の担当者と話を詰められたのは、普段からこのようなことを考えている専門家であるから、かもしれません。

これについては、ちょっとしたアドバイス、というよりも、金融機関の対応が改善されていることを願うばかりです。

最後に

金融機関には、相続手続きを専門におこなう部門(相続センターなど)が置かれていることが多いように思います。

そうでなくても、手続きのことをよく知る担当者から丁寧な案内を受けることができるはずなので(本来、そうあるべきという願いもこめています)、気持ちや時間に余裕があれば、相続人の皆さまでご協力されて、一つずつご対応なさることで、無事に終わらせることのできる手続きだと考えます。

このような考えを有しながらも、やはり、馴染みの無い手続きには違いありませんので、心の余裕を無くしてしまいがちであったり、あっという間に時間を消費してしまいがちであったりする手続きの一つなのではないかなと思います。

その意味で、無理してご自身でなさらなくても、と考える手続きの一つです。

例えば、不動産の名義変更を依頼するのに際して、併せて金融資産の相続手続きの話も聞いてみるなどはいかがでしょうか。

いろいろと気になる点を尋ねてみることで、経験の多さもなんとなくお分かりになるのではないかなと思います。

そして、話してみて安心できるようであれば、この手続きの依頼を選択肢の一つに加えてみたらよいのではないかなと考えます。

また、不動産・預金・証券など多くの機関で手続きを予定されているのであれば、「法定相続情報証明制度」を活用することも相続人の皆さまの利益になるのではないかなと考えます。

これも、気になる方は、ぜひ尋ねてみていただけたらと思います。

※法定相続情報証明制度は、法務局に、戸籍謄本等の一式と、併せて相続関係を一覧に表した図(法定相続情報一覧図)を提出し、申し出ることで、登記官の認証文の付された一覧図の写しの交付を受けることのできる制度です。

この制度が始まる前は、相続手続では、戸籍謄本等の一式を、各金融機関等に何度も提出する必要がありました。

現在は、この制度を利用すれば、戸籍謄本等に代えて、法定相続情報一覧図(1枚)を各金融機関等に提出すればよく、手続きの煩雑さが和らいだように思います。

佐藤知江
 

このコラムを書いた人

 

佐藤知江

ご相談・お問い合わせはお気軽にどうぞ

お電話はこちら

03-6264-2820

受付時間 9:00〜18:00

〒105-0004 
東京都中央区銀座7丁目13番8号 
第二丸高ビル4階

銀座線銀座駅 徒歩5分、浅草線東銀座駅 徒歩4分、
JR新橋駅 徒歩7分、大江戸線築地市場駅 徒歩6分

関連記事

  1.    相続と裁判手続き(1)
  2.    <平成29年5月スタート>法定相続証明情報制度を解説します!
  3.    相続対策として、生命保険信託という選択肢を知っておいても損はありません。
  4.    相続した不動産の中に登記簿の存在しない未登記の建物がありますが、、、
  5.    父の遺産は不動産(自宅)と少しの預金です。どのような分け方がありますか?
  6.    遺留分ってなに?
 コラム一覧
PAGE TOP