子どものいない夫婦が遺言について一度は検討をした方がいい理由と対策

   

子どものいない夫婦の相続において、多くの人が誤解をしていることがあります。

それは、「夫の財産は全て妻が相続する」と思っていることです。

その誤解を抱いたまま、対策を何もせず夫が亡くなってしまうと、最悪の場合、妻が自宅を出て行かなければならないという事態も生じ得ます。

このコラムでは、子どものいない夫婦の相続におけるリスクと、その対策について紹介しています。

法定相続人を確認する

人が亡くなったとき、亡くなった人(「被相続人)といいます)の財産に関する権利義務を相続人が承継します。

財産に関する権利義務とは、自宅や預貯金等のプラスの財産だけでなく、借金等のマイナスの財産を含みます。

法律上、誰がどのような割合で被相続人の財産を相続するかは定められており、この被相続人の財産を相続する人を「法定相続人」といいます。

子のいない夫婦の相続人

誰が法定相続人になるのでしょうか。

まず、被相続人の配偶者は必ず相続人となります(民法第890条)。

次に、被相続人に子がいる場合は子が、子がいない場合は親が、子も親もいない場合は兄弟姉妹が相続人となります。

つまり子どものいない夫婦において、例えば夫が亡くなった場合は、その相続人は①妻と②夫の兄弟姉妹ということになります(夫の両親、祖父母が既に他界している場合)。

民法に定められている法定相続人と法定相続分は、次のとおりです。
 

配偶者配偶者は、常に相続人となります。配偶者と子のときは2分の1
配偶者と直系尊属のときは3分の2
配偶者と兄弟姉妹のときは4分の3
第1順位
直系卑属
子、子が死亡しているときは孫が相続人となります。配偶者がいるときは2分の1
第2順位
直系尊属
第1順位の相続人がいないときは、父母や祖父母が相続人となります。配偶者がいるときは3分の1
第3順位
兄弟姉妹
第1順位の相続人も第2順位の相続人もいないときは兄弟姉妹が相続人となります。配偶者がいるときは4分の1

見落としがちな、兄弟姉妹が相続人となる事実

子どものいない夫婦が、40年一緒に生活していると、当然に相手(夫・妻)の財産は自分が全て相続するものだと思いがちです。

子どももいなければ親も既に他界している、そのような夫婦で見落としがちな問題は、相手の兄弟姉妹も相続人となる、という事実です。

夫婦で築き上げた財産を何もしていない兄弟姉妹が相続することに、感情的に納得がいかない人もいるでしょう。

また、何十年も連絡をしていない相手の兄弟姉妹と、遺産について話し合いをするなんて絶対嫌だ、という人もいるかもしれません。

後に記載をしていますが、これらは生前に対策をすることによって、回避することが可能です。

孫や祖父母、甥姪がいる場合

被相続人に第一順位から第三順位相続人まで全ていない場合は、何をしなくても配偶者が被相続人の財産を全て相続します。

しかし、以前夫婦の間には子がいたけれども既に他界している、両親は既に他界している、兄弟姉妹はいたが既に他界しているケースでも気を付ける点があります。

子が先に他界していても孫がいる場合、両親が先に他界していても祖父母がいる場合、兄弟姉妹が既に他界していても姪や甥がいる場合は、相続の順位に応じて、配偶者以外の者も相続人となる点です。

相続において、「相続人が誰であるか」は重要な事項ですので、特に注意をしましょう。

相手に連れ子がいる場合

夫婦の間には子どもがいないけれども、相手に先妻・先夫との間に(先妻・先夫が引き取った)子どもがいるケースではどうでしょうか。

このケースでも、配偶者だけが相続人になるわけではありません。

先妻・先夫の子どもも相続人となるためです。

配偶者だけに財産を相続させる方法

夫の財産は全て私が相続すると思っていたのに、夫が亡くなるとその兄弟姉妹と遺産分割協議をしなければならないことを知りショックを受けている、、、。

このようなケースは事実、起こっています。

夫の財産を全て妻に相続させるには何か方法はあるのでしょうか。

その方法の一つが「遺言」を残しておくことです。

遺言を残す

遺言を残しておくことにより、夫の財産は全て妻に相続させることが可能となります。

被相続人は、遺言で、共同相続人の相続分を定めることができるとされているためです(民法第902条1項)。

夫が遺言を残していなければ、その財産につき妻が4分の3、兄弟姉妹が4分の1ずつ相続するところ(夫に子も親もいないが兄弟姉妹がいる場合)、妻に全て相続させる旨の遺言を残しておけば、その財産の全てを妻が相続することができることになります。

妻からすると、これは非常に助かる制度の一つではないでしょうか。

兄弟姉妹には遺留分がない

少し相続について調べている人は、遺言で妻に全てを相続させたいが、他の相続人には「遺留分」があるため財産の全てを特定の相続人に相続させるのは難しいのでは?と思われるかもしれません。

しかし、兄弟姉妹にはその遺留分がありません。

法定相続人が夫の妻と、夫の兄弟姉妹というケースにおいては、妻に全て相続させる旨の遺言を残しておけば、夫の兄弟姉妹は夫の財産について手を出せないということです。

遺言は公正証書遺言がお勧め

遺言には主に、自筆証書遺言と公正証書遺言という2つの方式があります。

お手軽で費用のかからない自筆証書遺言でとりあえずいいや、とお思いになる方も少なくないかもしれません。

しかし、私は公正証書遺言をお勧めしています。

なぜなら、自筆証書遺言は成立するための要件が複数あり(捺印が必要、日付が必要等)、また紛失してしまうリスクも付きまとうためです。

遺言は、何か不備があったとしても遺言者の死亡後に直すことができません。

多少の費用や手間がかかったとしても、遺言が無効となるリスクがより低い公正証書遺言での作成をご検討ください。

遺言は愛情表現?

子どものいない夫婦において、夫が自分の財産の相続につき、妻と自分の兄弟姉妹が遺産分割協議をする、、、それは妻にとって大変だと思う人(夫)いるでしょう。

また、妻からすると、自分と夫が築いてきた財産を夫の兄弟姉妹に一部渡さなければならないとなると、それは嫌だと考える人は少なくないはずです。

加えて、夫がいない中、夫の兄弟姉妹と遺産分割協議なんてしたくない、という人(妻)も同様です。

(妻に財産の全てを相続させたい人は)妻へ財産の全てを相続させる旨の遺言を残しておくこと、それ自体が妻への愛情表現であり、妻への恩返しとなり得るのではないでしょうか。

石川 宗徳
 

このコラムを書いた人

 

司法書士石川 宗徳

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