外国人労働者受け入れ拡大で社会保険制度はどう変わる?

◆治療のために来日する医療保険のただ乗り問題

日本の医療保険は「国民皆保険制度」といって、保険証があれば誰でも1~3割の自己負担で受診できる手厚い制度です。ところが昨今、留学や技能実習制度を利用して、治療のためだけに来日する外国人の問題が指摘されています。低額な自己負担で、がん治療など高額な保険給付を受けようというのです。また、国内に住む外国人労働者の保険証について、母国の家族が来日し、本人と偽って利用する「なりすまし受診」も報告されています。来年4月から外国人労働者の受け入れを拡大するなかで、こうした外国人の医療保険の不正利用をどうすべきかが議論されています。

◆医療保険で母国の家族を除外

現在、日本に住む外国人労働者が生計を支える3親等以内の親族については、日本に住んでいなくても扶養家族として扱われます。母国で医療機関を利用した場合でも、申請すれば、医療費は協会けんぽや健康保険組合など日本の医療保険者が負担します。
政府・自民党は、外国人労働者の受け入れ拡大にあたり、膨らむ医療費を考慮して、この仕組みを改める方針を固めました。日本で働く外国人が母国に残した家族について、日本の公的医療保険制度の適用対象から原則として除外するのです。ただ、外国人に対する差別的な取扱いにならないよう、日本人労働者の家族が生活拠点を海外に移して日本国内に生活実態がない場合、扶養家族から除外することも検討しています。

◆社会保険料を長期滞納する外国人の在留を認めない方針

また、政府は外国人労働者の受け入れ拡大で、国民健康保険や国民年金の滞納を警戒しています。保険に加入しないまま病院で受診し、医療費を踏み倒すなどの事態が想定されるためです。そのため、政府は社会保険料を長期滞納している外国人の在留を認めない方針を固めました。法務省と厚生労働省が保険料滞納に関する情報を共有するほか、法務省が在留を許可するにあたっての運用指針で、社会保険料をきちんと支払っていることを新たな要件として追加する方針です。

◆年金でも第3号被保険者に国内居住要件

政府は、年金についても医療保険と取扱いを合わせる必要があると判断しました。現在、厚生年金の加入者が扶養する配偶者(国民年金の第3号被保険者)は、自身が保険料を納めていなくても年金を受け取れますが、年金の受給資格を得るには国内の居住を要件とする方向で検討に入りました。2019年度中にも、国民年金法を改正する方針です。これにより、海外で生活する外国人労働者の配偶者には年金が支給されなくなりますが、日本人の従業員の配偶者が海外に住んでいる場合の対応が、検討課題になります。