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AI導入成功への道標:準備度チェックリストで自社の課題を見える化

AI導入成功への道標:準備度チェックリストで自社の課題を見える化

テクノロジー
2025年12月11日 3 min. read

AI(人工知能)の導入は、競争力を維持するために不可欠な要素となりつつあります。世界的に見ても、企業のAI活用は急速に進展しており、ビジネスのあらゆる領域でその影響が顕著になっています。しかし、多くの経営者は、AIのユースケースをテスト段階から抜け出すことができず、規模拡大、ガバナンス、ビジネスインパクトの測定方法が分からずに苦戦しているのが現状です。 

こうした状況を踏まえ、本稿ではAI導入に向けた準備状況を評価するためのチェックリストをご紹介します。このチェックリストは、ビジネスと戦略、プロセス、技術アーキテクチャ、データ、人材とスキル、ガバナンスとポリシー、セキュリティとリスク、組織の連携という、AI導入において重要な8つの側面から準備状況を評価するものです。現状を正しく理解し、具体的なアクションプランを策定するための羅針盤として、ご活用していただければ幸いです。

総務省「情報通信白書」(令和7年版)によれば、AIの導入・活用はグローバル規模で見ると米国が先行し、中国が猛追している状況です(1)。 日本国内においては、AIの導入・活用は諸外国に比べて遅れているものの、近年その動きは加速しており、特に大企業を中心に業務効率化や顧客サービス向上を目的としたAI導入が進んでいます。 

しかしながら、中小企業においてはAI導入に必要な知識・スキル、コストなどが障壁となり、導入が進んでいないのが現状です。 実際、中小企業全体の6割以上(64.4%)が生成AIとの付き合い方に悩んでいるというデータもあります(1)。AI導入の効果を最大限に引き出すためには、データ利活用体制の整備、セキュリティ基盤の強化、初期導入コストの抑制などが不可欠ですが、これらは日本企業全体が抱える課題と言えるでしょう(1)。 

人工知能は、組織の運営方法を大きく変革する可能性を秘めています。 行動すべきかどうかではなく、組織が自信を持って行動できる準備ができているかどうかが、AI導入の成否を分けると言えるでしょう。 

以下に、AI導入の準備状況を評価するためのチェックリストをご紹介します。 各項目の質問に答えることで、現状を把握し、改善すべき点を見つけることができます。 

A. ビジネスと戦略の準備状況
  • AI戦略は、組織全体のビジネス戦略と合致していますか?
  • 貴社の業界および事業部門に関連するAIのユースケースを特定しているか?
  • AIに関するアイデアを評価し、優先順位を付けるための正式なプロセスを設けているか?
  • 価値を予測し、経営層の賛同を得るために、ROI(投資対効果)分析を実施しているか?
  • AIの機会を、測定可能な生産性の向上または収益への影響に関連付けることができているか?
  • AI導入を、全体的なビジネス戦略に沿って進めるためのロードマップがあるか?
B. プロセス準備状況
  • タスクを自動化し、AIで強化するために、主要なプロセスが十分に文書化、標準化され、理解されているか?
  • 主要なプロセスをマッピングし、文書化しているか?
  • これらのプロセスは、事業部門全体で標準化され、再現性があり、一貫性があるか?
  • 根本原因において、問題点と非効率性を特定しているか?
  • これらのプロセスの意思決定の複雑さと、インテリジェンスのニーズを理解しているか?
  • AIの実現に必要な、データの依存関係と可用性を評価しているか?
C. 技術アーキテクチャの準備状況
  • 現在利用している機器や環境はAIソリューションを満足に利用できるスペックを有しているか?
  • 現状のシステム構成・利用状況を把握しているか?
  • 統合機能(例:ETLツール、API、データレイク)は整備されているか?
  • AI利用における規程等を整備しているか?
D. データ準備状況
  • 意思決定にあたり、各AIツールのクオリテイ評価を実施しているか?
  • AIのニーズに合致する、明確なデータモデルとスキーマがあるか?
  • データフロー、系統(リネージ)、依存関係をマッピングしているか?
  • システム全体で単一の信頼できる情報源を維持しているか?
  • AIに必要なデータ品質、可用性、アクセシビリティに対処しているか?
E. 人材とスキルの準備状況
  • ビジネス全体でAIを効果的に構築、管理、使用するための適切な人材構成になっているか?
  • 必要なAI技術スキルセットを備えた内部スタッフがいるか?
  • 各事業部門のリーダーは、人工知能の機会を認識し、評価するためのトレーニングを受けているか?
  • 従業員向けのトレーニングまたはスキルアッププログラムを整備しているか?
  • スキルが不足している場合は、マネージドサービスまたはアウトソーシングを検討しているか?
  • Iの構築、保守、使用に関する役割と責任が明確になっているか?
F. ガバナンスとポリシーの準備状況
  • 倫理、コンプライアンス、変更管理を網羅するAIの使用に関する明確なガードレールと説明責任があるか?
  • AIおよび自動化ガバナンスポリシーを確立しているか?
  • AI監督委員会(IT部門、人事部門、コンプライアンス部門を含む)を設置しているか?
  • AIリスクに対応するために、セキュリティおよびプライバシーポリシーを更新しているか?
  • AI導入のための変更管理およびコミュニケーション計画があるか?
  • 偏り、公平性、透明性に対処するために、倫理的な使用ガイドラインを作成しているか?
G. セキュリティとリスク
  • 機密データと知的財産を保護するための、AIシステムのセキュリティリスク評価を実施したか?
  • 認証、承認、暗号化のための堅牢なセキュリティ対策を実装したか?
  • AIシステムへの不正アクセス、改ざん、悪用を防ぐためのインシデント対応計画はあるか?
  • AIシステムに対するセキュリティの脆弱性を特定して対処するための、定期的なセキュリティ評価と侵入テストの計画はあるか?
  • AIセキュリティ脅威の潜在的なビジネスへの影響を理解し、軽減するために必要な専門知識はあるか?
H. 組織の連携状況
  • 生成AIを導入し、従業員を増強し、企業の優先事項に合致させるために、事業部門全体で幅広い賛同と文化的な準備ができているか?
  • AIイニシアチブに対する経営層の支持を確保しているか?
  • 事業部門全体の利害関係者がAIの目標について連携しているか?
  • 人工知能の役割は、仕事を奪うのではなく、増強することであることを明確に伝えているか?
  • 生成AIを中心に、実験とイノベーションの文化を構築しているか?
  • AIイニシアチブを、企業の優先事項(例:事業運営、成長、企業保護)に関連付けているか?

上記チェックリストの結果、課題が明確になった場合、どのように対応すれば良いのでしょうか。 企業がAI導入を成功させるためには、さまざまな側面からのアプローチが必要です。 以下では、チェックリストの項目ごとに、当社が提供できる課題解決を支援するサービスをご紹介します。


A. ビジネスと戦略の準備、B.プロセス準備に関する課題:業務DXサービス、SaaS導入支援  

AI導入の成否は、明確な戦略と、それを支える業務プロセスの最適化にかかっています。AI戦略がビジネス戦略と整合しているか、具体的な目標が明確に定義されているか、既存の業務プロセスがAIの統合に対応できる状態にあるかなどを確認し、課題があれば、以下のサービスが有効です。

  • 業務DXサービス: 独自のITシステム診断表「ITヘルスチェック」により、業務課題だけでなくITインフラ基盤の課題まで網羅的に抽出・可視化します。経営者のコミットメントを支援し、まずはできるところから始めてDXの成功体験を積み重ね、社内の理解と推進力を高めます。オフィス移転やレイアウト変更などの大規模な変革プロジェクトにも対応可能です。 
  • SaaS導入支援サービス: 会計・経理、人事・労務、法務に関する豊富な専門知識と実務経験を基に、最適なSaaSを提案し、計画~導入~運用~定着化まで一貫して支援します。5~10年後の成長を想定しながら、現在だけでなく未来の価値創出を共に考えます。 


C. 技術アーキテクチャ、D.データ準備に関する課題:MS Power Platform導入・運用支援サービス、ERP導入支援サービス 

AI活用には、AIシステムを支える強固な技術基盤と、高品質なデータが不可欠です。 スケーラブルなインフラストラクチャが整っているか、AIモデルのトレーニングに必要なデータが揃っているかなどを確認し、課題があれば、以下のサービスをお勧めします。 

  • MS Power Platform導入・運用支援サービス: Power Platformは、ローコード開発で業務効率化とデータ活用を促進する統合ツールです。アプリ開発、自動化、データ分析を容易にし、データと情報を最大限に利用することで企業全体の生産性向上につながります。Power Platformコネクタで数多くの既存システムと接続することも可能で、ビジネス全体のデジタル変革を加速します。 
  • ERP導入支援サービス: 業界・業務ごとに異なるプロセスや商慣習などを深く理解し、それぞれの業界・業務特性に応じた最適なERP設計を支援します。ERPシステムの導入を単なる「仕組みの導入」ではなく「経営・業務改革の共創」と位置づけ、クライアント主体の共創型アプローチで支援します。 


E. 人材とスキル、F.ガバナンスとポリシーに関する課題:情報セキュリティ(ISO/IEC 27001:2022認証取得)支援サービス 

AIを安全かつ倫理的に活用するためには、組織全体のAIリテラシー向上と、適切なガバナンス体制の構築が不可欠です。 AI関連タスクを実行するために必要なスキルを習得できるよう、AIトレーニングプログラムがあるか、データプライバシー、セキュリティ、コンプライアンスに関する要件を遵守するためのAIガバナンスフレームワークがあるかなどを確認し、課題があれば、以下のサービスが対応できます。 

  • 情報セキュリティ(ISO/IEC 27001:2022認証取得)支援サービス: 情報セキュリティリスクを経営リスクと捉え、まずはクライアントの情報セキュリティ体制の現状を客観的に評価する『ISMSアセスメント評価サービス』から始めます。アセスメントを通じて、潜在的なリスクやISMS規格要求事項とのギャップを正確に洗い出し、その結果に基づいて、企業の情報資産を守るための最適な仕組み(ISMS)の構築と継続的改善を包括的に支援します。 


G. セキュリティとリスク、H.組織の連携に関する課題:サイバーセキュリティ導入支援サービス、デジタルゲートウェイ(戦略的WEB・SNS制作)支援サービス 

AIシステムのセキュリティ対策は、企業の信頼を維持するために必要です。 また、AI導入を成功させるためには、組織全体の連携と協力が不可欠です。 AIシステムへの不正アクセスを防ぐためのインシデント対応計画があるか、AI戦略とイニシアチブについて組織全体で合意形成ができているかなどを確認し、課題があれば、以下のサービスがサポートできます。 

  • サイバーセキュリティ導入支援サービス: サイバーセキュリティリスクを経営リスクと捉え、クライアントの情報セキュリティとも連動して、IT資産を守る仕組みを構築し、継続的改善を進め、リスクを軽減するためのサポートをします。サイバー攻撃の高度化、クラウドサービスの増加、リモートワークの普及などによる情報漏えいのリスクに備え、ゼロトラストセキュリティとの統合も重要だと考えています。 
  • デジタルゲートウェイ(戦略的WEB・SNS制作)支援サービス: 企業のフィロソフィー、ブランディング、マーケティングを一貫・統合した戦略的なWEB・SNS制作を支援することにより、差別化戦略を実現します。企業のフィロソフィーを正しく理解し、WEB・SNSのデザイン、ビジュアル、コンテンツに反映することで、ターゲットユーザーの共感度を高め、ブランドロイヤリティを高めることができます。 

AI導入は、ビジネスの未来を切り拓くための強力な武器となりえます。 しかし、その力を最大限に発揮するためには、周到な準備が不可欠です。 本稿でご紹介したチェックリストは、そのための第一歩に過ぎません。 

AI導入に向けて何から始めれば良いのか、どのような課題があるのか、迷われている企業もいらっしゃるかもしれません。 そんな時は、ぜひご相談ください。 多様な課題に対応できる専門知識と豊富な経験を持つ私たちが、個々の状況に合わせて最適なソリューションをご提案し、AI導入の成功を全力でサポートいたします。
 

参考資料: 

(1)総務省|令和7年版 情報通信白書|企業におけるAI利用の現状 

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