昨今のビジネスシーンにおいて、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」や「業務効率化」は避けて通れない課題となっています。しかし、多くの企業が人材不足やITコストの増大といった壁に直面し、思うように改革が進まないのが実情です。
そうした中で、世界中の先進企業が導入を進めているソリューションがあります。それが、Microsoft社が提供するローコードプラットフォーム「Microsoft Power Platform」です。
本記事では、Power Platformが現在どれほど評価されているのか、導入していない場合に生じる組織的課題、そして具体的な活用メリットについて解説します。さらに、単なるツール導入に留まらない、データを競争力に変えるための当社の支援アプローチについてもご紹介します。
1. はじめに:Power Platformとは何か?
Microsoft Power Platformは、プログラミングの専門知識をほとんど必要としない「ローコード」技術を用いて、アプリケーション開発、業務自動化、データ分析、AIチャットボット構築などを実現する統合プラットフォームです。
主に以下の製品群で構成されています1)。
Microsoft Power Apps
業務アプリの作成
Power Automate
業務プロセスの自動化(RPA/DPA)
Power BI
データの可視化・分析
Power Pages
ビジネスWebサイトの構築
Microsoft Copilot Studio
AIアシスタント・チャットボットの作成
その評価の高さは、単なる評判だけでなく、客観的な経済効果としても証明されています。 世界的なITアドバイザリー企業であるForrester Consulting社が2024年に発表した調査レポートでは、実際に本プラットフォームを導入した企業の意思決定者への詳細なインタビューを実施し、その財務的影響を複合的に分析しました。この調査により、複合組織(モデル企業)において以下の劇的な成果が得られることが明らかになっています1)。
224%の投資対効果(ROI): 導入から3年間で、投資額を大きく上回るリターンを達成。
6ヶ月未満での投資回収: システム導入にかかったコストを半年足らずで回収するという驚異的なスピードを実現。
最大80%の開発コスト削減: 従来のプロコード開発や外部委託と比較し、1年目に40%、2年目に60%、3年目には80%まで縮減。
さらに、Fortune 500企業の97%がPower Platformを採用しているという事実2)は、このプラットフォームが一部の先進企業だけのものではなく、ビジネスの現場における「世界標準」であることを裏付けています。
2. 現状業務・業界が抱える「見えない損失」
では、Power Platformのような統合プラットフォームを導入していない場合、企業はどのような課題に直面し続けることになるのでしょうか。多くの日本企業が抱える「現状の課題」を3つの視点から浮き彫りにします。
① 「データのサイロ化」と意思決定の遅延
多くの現場では、データが散在しています。会計システム、SFA(営業支援システム)、そして個人のPC内にある無数のExcelファイルなど、これらが連携されていないため、経営層がレポートを求めた際、担当者が手作業でデータを集計・加工することになります。 結果として、リアルタイムな状況把握ができず、意思決定のスピードが鈍化します。いわゆる「データはあるが、活用できない」状態です。
② アナログ業務による「2025年の崖」と人材不足
紙の請求書処理、メール添付ファイルの転記、システム間のコピーアンドペースト作業……こうした定型業務に多くの時間を割いている企業は依然として少なくありません。 労働人口が減少する中、こうした低付加価値な作業に貴重な人的リソースを消費することは、企業の競争力を著しく低下させます。また、レガシーシステム(古い基幹システム)がブラックボックス化し、新しいビジネスモデルへの対応を阻害する「2025年の崖」問題も深刻化しています。
③ 「シャドーIT」のリスクと開発のボトルネック
現場部門が業務改善を求めてIT部門にシステム開発を依頼しても、IT部門はリソース不足で対応に時間がかかるというケースは珍しくありません。待ちきれない現場が、独断でセキュリティの弱い無料ツールや個人のスクリプトを使い始めると、「シャドーIT」となり、情報漏洩のリスクが高まります。 「現場のスピード感」と「ITガバナンス」のバランスが取れていないことが、多くの組織が共通する悩みです。
3. Power Platformにできること・活用のメリット
Power Platformを導入することで、前述の課題はどのように解決されるのでしょうか。最大の特長は、「データの収集・統合・分析・アクション」を一気通貫で実現できるエコシステムにあります2)。
① ビジネスユーザーを「開発者」へ:IT部門待ちの解消
従来のシステム開発では、現場が要望を出してからIT部門の実装を待つまでに数ヶ月かかることが一般的でした(ITバックログの問題)。 Power Platformは、ドラッグ&ドロップの直感的なインターフェースで、プログラミング経験のないビジネスユーザーでもアプリ作成やレポート生成を可能にします。 これにより、現場はIT部門に頼りきりになることなく、自らの手で課題を解決できるようになります。
② 市場投入までのスピード(Time to Market)を劇的に短縮
従来「数ヶ月」かかっていた開発期間を「数日」に短縮可能です。 豊富なテンプレートやコンポーネントがあらかじめ用意されており、それらを組み合わせることで迅速にソリューションを展開できます。変化の激しいビジネス環境において、アイデアを即座に形にできるアジリティ(俊敏性)は大きな競争力となります。
③ 1,000種類以上のコネクタで「定型業務」を完全自動化
Power Platformは、承認フロー、通知、データ入力、レポート作成といった「退屈で反復的な定型業務(Mundane Processes)」を自動化します。 1,000種類以上のコネクタが用意されており1)、Microsoft製品だけでなく、SalesforceやSAP、Googleサービスなど、あらゆるデジタルエコシステムとシームレスに連携可能です。これにより、従業員はより創造的な業務に集中できるようになります3)。
④ コスト削減と開発の内製化
外部ベンダーへの委託や、プロの開発者によるフルスクラッチ開発に比べ、ローコード開発はコストを大幅に抑えることができます。品質を犠牲にすることなく、非開発者がソリューションを構築できるため、組織全体のITコスト削減に寄与します。
Power Platformは特定の部署だけでなく、全社的な業務改善に貢献します。以下は代表的な活用シーンです2)。
| 部門 | 活用事例(Use Case Example) |
|---|---|
| 営業 (Sales) | リード管理の効率化: Dynamics 365やOutlookとシームレスに連携するリード追跡アプリを構築。顧客情報の引き継ぎを円滑にし、フォローアップを高速化。 |
| 人事 (HR) | オンボーディングの自動化: 入社手続きに関する一連のワークフローを自動化。担当者の時間を節約しつつ、対応漏れを防ぎ一貫性を担保。 |
| 経理・財務 (Finance) | 予算承認と可視化: 予算承認プロセスをデジタル化し、Power BIダッシュボードでリアルタイムな予実管理を実現。 |
| 運用・製造 (Operations) | 資産・在庫管理: 資産追跡や在庫管理を行うアプリを開発。モバイル端末から現場で入力可能にし、正確性と効率を向上。 |
| カスタマーサービス | AIチャットボット導入: よくある質問(FAQ)に24時間自動応答するボットを展開。オペレーターの負担を軽減し、顧客の待ち時間を短縮。 |
4. RSM汐留パートナーズが提供する付加価値
Microsoft Power Platformは、DXを「絵に描いた餅」で終わらせないための強力な武器です。しかし、市場には多くのツールベンダーが存在しますが、単にPower Platformのライセンスを購入し、ツールを導入するだけではDXは成功しません。「誰が作るのか?」「データはどう整備するのか?」「ガバナンスはどうするのか?」という運用面の課題が必ず発生するからです。RSM汐留パートナーズは、単なるシステム導入支援に留まらず、「データを競争優位性へと変換する組織能力の構築」をご支援します。
現代のビジネスにおいて、データは資産です。しかし、多くの企業は「活用」の前段階である「収集・整形」で躓いています。 私たちは、以下の4つのプロセスを統合的に支援できる稀有なパートナーです。
1. 収集・整形 (Power Query)
散在するデータソースから情報を吸い上げ、使える形にクレンジングします。
2. アプリケーション基盤 (Power Apps)
きれいになったデータを入力・活用するための、使いやすい業務アプリを整備します。
3. 自動化 (Power Automate)
アプリやシステム間のデータ連携を自動化し、人の手を介さないプロセスを構築します。
4. 分析・意思決定 (Power BI)
最終的に集まったデータを分析し、経営判断に資するインサイトを提供します。
この一連の流れ(データサプライチェーン)が途切れないよう設計することで、部分最適ではない、企業全体の生産性向上を実現します。私たちのゴールは、私たちが居なくなったらシステムが動かなくなる状態ではありません。クライアント企業様自身が、Power Platformを使いこなし、自律的に業務改善を継続できる組織になっていただくことです。詳細は弊社のMicrosoft Power Platform導入・運用支援のサービスページをご確認していただければ幸いです。
参考資料:
