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山本 翔大 Shodai Yamamoto

この記事の著者

山本 翔大 Shodai Yamamoto

アシスタントマネージャー

Power Automateで変わる経営現場–競争力強化と業務自動化のDX戦略

2025年11月26日

はじめに:Power Automateとは何か?

Microsoft Power Automateは、ビジネスプロセスを自動化するためのクラウドサービスです。以前は「Microsoft Flow」という名称でしたが、現在はPower Platformの一部として提供されています。このツールを使用すると、プログラミング知識がなくても、ドラッグ&ドロップの直感的な操作でワークフローを作成し、業務を自動化することができます1)。

Power Automateには大きく分けて二つのバージョンがあります。クラウドベースの「Web版」と、デスクトップアプリケーションとして提供される「デスクトップ版(Power Automate for Desktop)」です1)。Web版はクラウド上のサービス間連携に特化しており、コンピュータを起動せずとも、自動化の処理が実施可能です。一方、デスクトップ版はWindows PC上で動作し、RPAに対応していないソフトウェアの操作を自動化(RPA:ロボティック・プロセス・オートメーション)することが可能で、プログラミングの知識がないユーザであっても、比較的容易にプログラムを開発することができます。

特徴としては、Office 365やDynamics 365だけでなく、他社製品であるSalesforce、Google サービス、X(旧Twitter)などの外部サービスと連携できる点が挙げられます。これらの連携は「コネクタ」と呼ばれる機能を通じて実現されます。そのまま使用できる認定コネクタは、1400種類以上用意されています1)。ただし、一部の高度なプレミアムコネクタは有料ライセンスが必要となる点には注意が必要です。また、利用できるフローの数やAPIコール回数(実行回数)にも、ライセンスによって制限があります1)。

業界のアナリストからも高い評価を受けており、Forrester Consultingの調査によれば、Power Automateを導入した企業は平均で388%のROI(投資収益率)を達成し、自動化されたプロセス1件あたり平均26,100ドルのコスト削減を実現しています。さらに、3年間の総経済効果は9,010万ドルにのぼるとされています2)。特に注目すべきは、Power Automateを活用した企業57社では、従業員一人あたり年間約26,660時間 の作業時間を削減できたという点です4)。これは、単純作業の自動化により、従業員がより創造的で価値の高い業務に集中できるようになったことを示しています。また、自動化によりミスや再作業が77%減少したという調査結果も出ており、業務の品質向上にも大きく貢献していることがわかります2)。

DX推進に悩んでいる日本企業の現状と課題

中小企業白書2025によれば、日本の中小・中堅企業におけるDX推進の最大の課題は「ITに詳しい人材の不足」と「導入コストの負担」となっています3)。特に業務プロセスの自動化については、売上が10億円以下の企業の中に「取り組んでいる」と回答したのは全体の1.5%のみで、デジタル化の遅れが顕著です3)。また、同白書では中小企業の経営者の高齢化や後継者不足も指摘されており、業務ノウハウの属人化が進んでいる現状も浮き彫りになっています3)。

日本企業特有の課題としては、白書が指摘する「前例踏襲の企業文化」や「変化への抵抗感」も自動化ツール導入の障壁となっています3)。結果、限られた人材が単純作業に追われ、人的ミスの発生、データ連携の不足による意思決定の遅れ、業務の属人化によるノウハウ流出リスクの増大など、多くの問題が生じています。Power Automateのような低コストで導入できる自動化ツールの活用は、これらの課題解決の有効な手段となり得ます。

Power Automate活用のメリット

Power Automateの導入により、上記の課題を効果的に解決し、様々なメリットを得ることができます。以下では業務の具体例を挙げながら、そのメリットを詳しく説明します。

まず、業務プロセスの自動化による時間短縮が挙げられます。Power Automateを活用することで、繰り返し行われる定型業務を自動化し、社員の作業時間を大幅に削減できます。これにより、より創造的で付加価値の高い業務に集中することが可能になります。

次に、システム間のシームレスな連携が実現します。異なるシステム間でのデータ連携を自動化することで、情報の分断を解消し、組織全体でのデータの一元管理が可能になります。これにより、迅速で正確な意思決定をサポートする基盤が整います。

また、手作業によるデータ入力やファイル管理を自動化することで、ヒューマンエラーを大幅に削減できます。これにより、業務の品質と信頼性が向上し、ミスによる損失を防ぐことができます。

さらに、Power Automateはノーコード/ローコードのプラットフォームであるため、IT専門知識がなくても、直感的な操作で業務自動化のフローを作成できます。これにより、業務部門の担当者自身が必要な自動化を実現できるようになり、IT部門への依存度を下げることができます。

【具体的な活用例】

1. 会計税務での活用

Power Automateの活用により大幅な効率化が期待できます。例えば、請求書処理の自動化では、受信した請求書のPDFからOCR技術を用いてデータを抽出し、会計システムに自動入力することが可能です。承認ワークフローも同時に自動化できるため、処理時間の短縮とミス防止につながります。

決算業務においても、月次や四半期の決算において複数システムからのデータ集計や仕訳作成を自動化し、作業時間を大幅に削減できる可能性があります。税務申告書類の作成においても、会計システムからのデータを自動的に税務申告書フォーマットに変換し、申告書作成作業を効率化することが可能です。

2. 人事労務業務での活用

採用プロセスでは、Power Automateを通して応募者からのエントリー情報を自動的に人事システムに取り込み、選考ステータスに応じた自動メール配信を行うことで、採用担当者の負担を軽減し、応募者への迅速な対応が可能になります。

社員オンボーディングプロセスでは、新入社員の入社手続きにおいて必要書類の作成や関連部門への通知、アカウント発行依頼などを自動化し、スムーズな入社プロセスを実現します。また、人事評価プロセスにおいても、評価時期になると自動的に上司に評価依頼を送信し、提出された評価データを人事システムに自動登録することで、評価業務の効率化と正確性向上に貢献できます。

3. 法務業務での活用

契約書管理の自動化では、契約書の作成依頼から、テンプレートを用いた自動生成、承認プロセスの管理、期限管理までを一貫して自動化することがPower Automateを活用することで実現できます。これにより、契約業務の迅速化とコンプライアンスの強化を同時に実現できます。

法的リスク監視においては、関連法令の改正情報を自動的に収集し、影響を受ける可能性のある社内規定や契約書を特定して担当者に通知する仕組みを構築できます。コンプライアンス報告業務では、各部門からのコンプライアンス状況報告を自動的に集約し、定型レポートを作成することで、報告業務の負担を軽減できます。

RSM汐留パートナーズが選ばれる理由

当社は、Microsoft Power Platform全体( Power BI, Power Apps, Power Automate, Power Pages, Microsoft Copilot Studio )の導入・運用支援サービスを展開しており、データ分析から業務アプリ開発、業務プロセス自動化まで一貫したサポートが可能です。Microsoft 365(Outlook、Excel、SharePoint、Teamsなど)との連携が可能なPower Automateを活用することで、スモールスタートでの成功体験を積み重ね、社内の理解と推進力を高めながら、業務改革を着実に進めていくお手伝いをします。さらに、会計税務、人事労務、法務の国家資格を持つプロフェッショナル集団として、テクノロジーを活用しながらクライアントの本質的な経営課題を解決します。

RSM汐留パートナーズの支援は、単なるツール導入で終わりません。初期の課題ヒアリングから、経営判断に直結する情報基盤の完成まで、構想から定着までの全プロセスを一貫してサポートします。私たちの最終目標は、クライアント様がデータに基づいた的確な意思決定を迅速に行い、持続的な成長を実現できる「データ活用型の組織文化」を定着させることです。専門的知見とテクノロジーを融合させた当社ならではの、一歩先を行くデータ活用支援を提供します。

具体的な支援内容は、ぜひMicrosoft Power Platform導入・運用支援サービスをご覧ください。また、Power BI(データ分析・可視化)、Power Apps(業務アプリ開発)、Power Query(データ変換・整形)に関する専門コラム記事も公開していますので、各ツールの活用方法や導入事例についてさらに詳しく知りたい方は、ぜひそちらもご覧ください。

参考資料

1) Microsoft Power Automate – Process Automation プラットフォーム | Microsoft

2) The Total Economic Impact™ Of Microsoft Power Automate

3) 中小企業白書 | 中小企業庁

4) Power Automateの経済的影響全体

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