ホーム/コラム/会計・税務/「連結納税制度」から新制度「グループ通算制度」へ移行した背景と双方の相違点
シェア
長谷川 祐哉 Yuya Hasegawa

この記事の著者

長谷川 祐哉 Yuya Hasegawa

パートナー  / 税理士

「連結納税制度」から新制度「グループ通算制度」へ移行した背景と双方の相違点

2023年10月7日

令和2年3月に交付された「所得税法等の一部を改正する法律(令和2年法律第8号)」において、これまで実施されてきた「連結納税制度」を見直し、グループ通算制度に移行することが決まりました。令和4年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。

本記事では、グループ通算制度になった背景やグループ通算制度の概要等について詳しく説明します。

連結納税制度からグループ通算制度へ

令和4年4月1日以後に開始する事業年度より、連結納税制度ではなく、グループ通算制度が適用されます。これまで連結納税制度を活用していた方、もしくは今後連結納税制度を利用しようとしていた方は、グループ通算制度について理解を深める必要があります。

ただし、名前が変わったからといって制度の中身が大きく変わったわけではありませんので安心してください。

グループ通算制度移行の背景とは?

そもそも連結納税制度とは、平成14年に創設された制度で、グループ全体の損益を通算することで納税額の削減ができるというものでした。しかしながら複雑な手続きが必要となることから、利用している企業は有価証券報告書提出会社のうち約2割にとどまっています。

この現状を改善するべく打ち出された制度がグループ通算制度です。グループ通算制度は、結納税の損益通算という目的は維持しつつ、複雑な手続きを除外したものです。そのため、しっかりと理解して利用すれば、連結納税制度と同様のメリットを、以前よりも簡単に受けられます。そのため、しっかりと理解し、積極的に活用していくことをおすすめします。

グループ通算制度の概要

まずグループ通算制度の基本として、すでに連結納税制度を利用している企業では、令和4年4月1日移行に、自動的にグループ通算制度に移行されます。もし連結納税制度を維持したい場合は特別の手続きが必要になるため注意してください。

グループ通算制度の適用範囲や各種条件は以下の通りです。連結納税制度の条件についても同様に記載します。

グループ通算制度連結納税制度
適用法人内国法人及び当該内国法人との間に当該内国法人による完全支配関係がある他の内国法人
(一定の法人は除外)
内国法人及び当該内国法人との間に当該内国法人による完全支配関係がある他の内国法人
(一定の法人は除外)
納税主体親法人及び各子法人がそれぞれ納税主体
※親法人も子法人も相互に連帯納付責任
親法人がまとめて納税
※子法人は連帯納付責任
事業年度親法人の事業年度
(みなし事業年度規定について一部連結納税制度と異なる)
親法人の事業年度
中小法人判定グループ内のいずれかの法人が非中小法人である場合は全ての法人が非中小法人となる親法人の資本金額による
開始/加入時の時価評価・繰越欠損金時価評価と繰越欠損金の取扱いについて組織再編税制と同様の制限(親法人にも制限が及ぶ)親法人…時価評価せず、繰越欠損金も切り捨てない
子法人…特定連結子法人に該当しない子法人は資産を時価評価し、繰越欠損金は切り捨て
損益通算欠損法人の欠損金額の合計を所得法人の所得金額の比で按分し、所得法人において損金算入し欠損法人で益金参入個別所得または欠損金額を合算して連結所得を算出
投資簿価修正離脱子法人の簿価純資産価額を株式投資簿価とする離脱子法人の連結期間中の利益積立金変動額を投資簿価に加減する

納税主体については、連結納税制度では親法人への負担が大きくなっていましたが、グループ通算制度では親会社と子会社がそれぞれ納税主体となります。親会社の負担は少し減りますが、その分子会社もグループ通算制度について理解を深める必要があります。

開始/加入時の時価評価・繰り越し欠損金については、グループ通算制度でも大枠としての仕組みは残ります。ただし、時価評価対象となる法人は以前より限定的になったといえます。

損益通算は、今回の制度移行を受けて大きく変更されました。連結納税制度では個別に計算された所得金額を合算する方法で連結所得金額が算出されていましたが、グループ通算制度では欠損金額を所得法人の所得金額に応じて配賦する方式がとられています。

おわりに

連結納税制度は手続きが複雑であるため、事務等のコストを考えた上で採用を断念していた企業も多いと思います。しかし、今回グループ通算制度に移行したことで、より多くの企業が導入しやすくなりました。

とはいえ、グループ通算制度を適切に運用するためには専門的な知識が必要です。もしグループ通算制度の利用に関してお困りでしたら、弊社までお気軽にお問い合わせください。

お問い合わせ