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労務デューデリジェンス(労務DD) | RSM汐留パートナーズ

労務デューデリジェンス(労務DD)

労務デューデリジェンス(労務DD)は、企業合併・買収(M&A)、株式公開(IPO)の局面において、対象企業に属する「人」に関連する項目を調査することをいいます。労務デューデリジェンスでは、従業員の勤務形態及び労働時間管理、就業規則類と労働法関係の手続き、労働債務、労務トラブル、労働安全衛生、労働基準監督署関連事項等について調査を行います。近年、従業員の労働条件や勤務形態に関する問題が、企業の合併や買収、株式公開における重要ポイントとして認識されるようになっています。これには、長時間労働や未払い残業代、労使間の対立などが含まれます。

例えば、企業買収後に未払い残業代の問題が発覚した場合、買収した企業に重大な財務的負担をもたらすことがあります。また、過重労働や労働災害のリスクを見落とすと、買収後の対象会社の経営に大きな影響を及ぼすことがあります。労務デューデリジェンスは、財務的な側面だけでなく、人事戦略や従業員のスキルと処遇の評価にも重要な影響を与えます。適切に行われない場合、買収後の人材活用が難しくなり、新たな労使トラブルの原因となることもあります。

経営資源としての「人」にフォーカスして、M&AやIPOの成功をサポートするためには、人に関わる定性的な項目の洗い出しを「人事デューデリジェンス(人事DD)」、定量的な項目の洗い出しを「労務デューデリジェンス(労務DD)」として、それぞれの重要性を理解し対応することが不可欠です。なお、人事DDについては「人事デューデリジェンス(DD)」のサービスページにてご紹介しております。

近年、労務デューデリジェンスは企業の労働環境や雇用関係に関する問題点やリスクを把握するため欠かせないプロセスとなっております。労務デューデリジェンスは、M&AとIPOの際に重要な役割を果たしますが、それぞれの状況において若干異なるポイントを有しています。これらについて以下ご紹介させて頂きます。

M&A(企業合併・買収)で必要となる労務デューデリジェンス

M&Aの局面では、買収対象企業の労務状況を詳細に調査しますが、このプロセスにおいては、例えば、労働契約、労働条件、給与体系、福利厚生、労働紛争、労働法遵守の状況などを検討します。特に重要なのは、未払残業代などの潜在的な労働債権の調査です。これらは簿外債務として存在し得るため、発見された場合、買収後の財務状況に重大な影響を与える可能性があります。したがって、M&Aの局面では、これらの潜在的なリスクを特定し、計算の上で金額的評価を実施することも重要です。そのため財務デューデリジェンスと労務デューデリジェンスがセットで行われる場合も多くあります。

M&Aの局面における労務デューデリジェンスの目的

M&Aの局面における労務デューデリジェンスでは、買収対象会社における人事労務管理体制の整備状況について、会社として取り組まなければならない課題事項を明確にすることを目的としています。特に財務面に影響する簿外債務や偶発債務につながる項目を中心に調査を行い、運用上の課題についても検討を行います。

労働関係諸法令を遵守した適切な人事労務管理体制が整っていない場合には、会社の財務面に影響を与える労務リスクを内在している状態が存在します。多くの労務リスクを抱えている場合には、その評価が企業価値に大きくマイナスに影響する可能性があります。

M&Aの局面における労務デューデリジェンスの調査対象項目

M&Aの局面における労務デューデリジェンスの調査対象項目は、採用、退職、労働時間、休日、休暇、賃金、安全衛生、労働保険・社会保険等のうち、主に簿外債務及び偶発債務につながる事項です。

主な調査対象項目内 容
人事採用、試用期間、人事異動、出張、休職、退職、解雇に関する事項
服務規律出退勤、遅刻・早退、副業・兼業、損害賠償、ハラスメントに関する事項
労働時間労働時間の把握・管理体制、労働時間制度、休日、休憩、管理監督者の適用範囲に関する事項
休暇年次有給休暇、育児・介護休業に関する事項
賃金賃金の支払い、割増賃金の計算、欠勤等控除の計算、賞与、退職金に関する事項
安全衛生長時間労働、健康診断、安全衛生管理体制、災害補償に関する事項
懲戒懲戒、表彰に関する事項
就業規則・労働契約就業規則(附属規程を含む)、労使協定、労働契約に関する事項
労働保険・社会保険労働保険、社会保険に関する事項
各種労働法パートタイム・有期雇用労働法、障がい者雇用、外国人雇用、労働者派遣に関する事項 など

IPO(株式公開)で必要となる労務デューデリジェンス

IPO準備の際には、労務状況を短期間で評価する「ショートレビュー」という形で労務デューデリジェンスを行います。そのためIPOで必要となる労務デューデリジェンスをショートレビューと呼ぶことも多いです。この過程では、各種労働関係諸法令の遵守が重要な焦点となります。

特に、2020年4月1日から施行された労働基準法の改正により、賃金請求権の消滅時効期間が5年に延長されたことは、企業にとって非常に重要です。すべての賃金が新たな消滅時効期間の対象となるため、過去の賃金支払いの記録や遵守状況を詳細に検証する必要があります。IPO準備の過程では、これらの法的要件の遵守が上場審査に直接影響を与えるため、初期において厳格な調査が求められます。

上述の通り、IPOの局面においては、「ショートレビュー」と呼ばれることも多いため、「労務監査・ショートレビュー」のサービスページにて、株式上場における3つの基本的視点、労務コンプライアンス必要性の根拠を含めて解説をしておりますので合わせてご覧ください。

IPOの局面における労務デューデリジェンスの目的

株式上場申請においては、労働基準法をはじめとする労働関連諸法令の遵守状況を含む人事労務管理体制の整備状況、すなわち労務コンプライアンスが厳しく審査されます。労働関係諸法令を遵守した適切な人事労務管理体制が整っていない場合には、会社の財務面に影響を与える労務リスクを内在している状態となります。労務リスクが顕在化することより、「財務面への影響」「企業のイメージダウン」「株価への影響」につながる可能性があります。

IPOの局面における労務デューデリジェンスでは、人事労務管理体制の現状を把握し、会社として取り組まなければならない課題事項を明確にすることを目的としています。労働関係諸法令の遵守状況について、運用面も含め総合的な観点から網羅的に調査を行います。労務リスクは、M&Aの局面における労務デューデリジェンスの箇所においてご説明したとおりですが、労務デューデリジェンス実施時点での簿外債務及び偶発債務の特定は原則として行いません。なお、労務に関する簿外債務を解消(治癒)すべく、過去の未払残業代などの計算を別途行う実務があります。

IPOの局面における労務デューデリジェンスの調査対象項目

IPOの局面における労務デューデリジェンスの調査対象項目は、簿外債務及び偶発債務につながる事項に関わらず、採用、退職、労働時間、休日、休暇、賃金、安全衛生、労働保険・社会保険等の労働関連諸法令コンプライアンス全般について全網羅的に確認をします。

M&AとIPOにおける労務デューデリジェンスの比較

M&AとIPOにおける労務デューデリジェンスは、対象企業に属する「人」に関連する項目を調査するという点では共通していますが、M&AとIPOの違いから派生する異なるポイントを有しています。M&Aでは、組織再編後の労務管理と従業員の権利移行が中心で、IPOでは、労務管理体制の最適化とリスクの最小化が重視されます。

着眼点M&AIPO
調査の目的企業価値算定の参考指標法令違反となる事項の有無を全網羅的に確認
金融機関からの融資を受けるための資料
調査対象範囲簿外債務及び偶発債務に係る労働債務の範囲労働関連諸法令コンプライアンス全般
簿外債務・偶発債務の特定行う原則として、行わない
特定方法労働時間特定期間についてサンプルチェックを行い、時効年数換算

※雇用形態別・職種別・労働時間制度別で各3名程度

特定時間のサンプルチェックにより労働時間の集計に誤りがないか確認

※ 雇用形態別・職種別・労働時間制度別で各3名程度

割増賃金支給控除一覧表で割増賃金及び社会保険料の計算誤りがないか確認支給控除一覧表で割増賃金及び社会保険料の計算誤りがないか確認
社会保険加入対象者の社会保険加入状況の確認

年度更新・算定・月変・賞与支払届の手続き面の確認

加入対象者の社会保険加入状況の確認

年度更新・算定・月変・賞与支払届の手続き面の確認

労務デューデリジェンス(DD)の流れ

一般的に、労務デューデリジェンスは以下の流れで実施します。

STEP1: 労務デューデリジェンスに関する契約の締結

プロジェクト開始に先立ち、労務デューデリジェンスの目的、範囲、および期待される成果物に関して、関係者の間で正式に契約を締結します。これにより、すべての関係者が労務デューデリジェンスの枠組みと責任を明確に理解し、適切な準備を行うことができます。

STEP2: キックオフミーティングの実施

プロジェクトのキックオフとして、関係者全員が参加するミーティングを開催します。ここでは、労務デューデリジェンスの進行計画、コミュニケーションの方法、および各ステークホルダーの役割と責任について確認し合います。

STEP3: 依頼資料の準備・送付

労務管理の現状を把握するため、就業規則をはじめとした規程類、労働契約書、タイムカードなど必要とされる法定帳簿や書類のリストを作成して依頼します。

STEP4: 依頼資料の確認

提供された資料を基に、労働時間、休日、休暇の管理実態などの運用状況について詳細な検証を行います。これには、諸規程との適合性評価、給与計算の正確性、社会保険制度への加入状況の検証が含まれます。

STEP5: 人事労務担当者へのインタビュー

組織の人事労務管理の実態をより深く理解するため、人事労務担当者に対してインタビューを実施します。労使関係や人事制度の運用に関する直接的な情報についても収集します。

STEP6: 確認事項等の回答・報告書の作成

資料検証やインタビューを通じて明らかになった問題点や課題に対する質問に答えます。また、発見された問題に対する初期の改善策もこの段階で提案されることがあります。また、労務デューデリジェンス報告書の作成を行います。

STEP7: 報告会の実施

全ての調査と分析が完了し労務デューデリジェンス報告書を作成した後、関係者に報告する報告会を実施します。ここでは、問題点や課題、検討された改善策、今後の行動計画についても議論します。

【労務デューデリジェンスの流れ】

Labor-Due-Diligence-Process

労務デューデリジェンスの後の流れ(PMI)

M&Aの局面については、労務デューデリジェンスの結果、残業代を含む未払い賃金や退職金等の簿外債務が明らかになることがあります。その場合、同時に実施している財務デューデリジェンスや株価算定に定量的な情報を連携し、企業価値に与える影響を評価する必要があります。

労務デューデリジェンスを実施した後には、改善コンサルティング、規程整備、アドバイザリーというフェーズがあります。以下の図では、労務デューデリジェンス及びそれに関連する活動を4つのフェーズに分けて説明しています。フェーズごとの支援契約イメージ、具体的なスケジュール、実施される主な業務内容を示しています。

PMI

第1フェーズ:労務デューデリジェンス【スケジュール: 1カ月〜2カ月】

人事労務管理体制に関する現在の状況を把握します。通常労務デューデリジェンスでは簿外債務及び偶発債務の金額計算までは行いませんが、ご要望に応じてサービス提供しています。

第2フェーズ:改善コンサルティング【スケジュール: 1カ月〜6カ月】

労務デューデリジェンスにより抽出された課題について、改善コンサルティングを実施します。適宜、人事制度(等級・賃金・評価)の見直しを逐次実施します。

第3フェーズ:規程整備【スケジュール: 1カ月〜3カ月】

課題改善に関する内容を規程に反映し、人事制度(等級・賃金・評価)の見直しを逐次実施します。

第4フェーズ:アドバイザリー【スケジュール: 1年〜】

日常的に発生する人事労務に関する相談に対応します。

RSM汐留パートナーズの労務デューデリジェンス(DD)サービスの特徴

① M&Aや組織再編に精通したメンバーが多数在籍

RSM汐留パートナーズはこれまで数多くのIPO、M&A、組織再編の案件に携わっております。財務関連のアドバイザリーサービスはもちろんのこと、IPO、M&A、組織再編の局面における労務周りの課題の把握や改善提案を行える社会保険労務士等が多数在籍しております。必要に応じて公認会計士・税理士等と連携し労務デューデリジェンスサービスを提供します。

② フットワークが軽くスピード感をもったご支援が可能

RSM汐留パートナーズは、フットワークが軽く行動力のあるメンバーが集まっています。労務デューデリジェンスサービスにあたってスピードは極めて重要です。労務デューデリジェンスを得意とする社会保険労務士をはじめとしたメンバーによるプロジェクトチームを結成し短期間で事前調査、実地調査、分析、レポーティングのプロセスについてスピード感をもってご支援することをお約束いたします。

③ 顧問・社会保険事務代行・給与計算サービスとの連携によるワンストップサービスも可能

M&A等のシチューエーションにおいて労務デューデリジェンスをご依頼いただくクライアントは、その調査で把握された問題点の改善等に対して強い関心をお持ちです。そのようなクライアントに対して買収後のPMIと相まって労務顧問・社会保険事務代行・給与計算サービスをご提案させていただき、ワンストップで課題解決をご支援させて頂いております。

④ 在留資格(ビザ)業務に精通する行政書士による外国人雇用関連サービスも充実

外国人を雇用している会社は外国人労働者の在留資格(ビザ)の管理等についても留意しなければなりません。RSM汐留パートナーズでは社会保険労務士と入管業務に精通した行政書士が連携して、外国人雇用管理に関するサービスをワンストップでご提供することが可能です。労務デューデリジェンスの実施にあたっても、外国人雇用・在留資格関連の状況について検討を行うことが可能です。

⑤ 労務DDに加え人事DDもご提供可能

定量的な性格の項目についての調査が中心となる労務DDに加えて、定性的な性格の項目についての人事DDもご提供可能です。労務DDと人事DDを合わせて行うことにより自社あるいは対象会社の人事労務項目ついて多面的に検討を行うことが可能です。人事DDについては「人事デューデリジェンス(DD)」のサービスページにてご紹介しております。

今後の流れ

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お問い合わせ

本ページ下部からお気軽にお問い合わせください。

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対面又はオンラインにて、課題やスケジュール、その他ご希望などを広くヒアリングさせて頂きます。

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労務デューデリジェンス(労務DD)の料金体系

労務デューデリジェンス(労務DD)の料金体系については想定業務範囲に基づく想定工数から算出した定額方式又はタイムチャージ方式にてお見積をさせていただいております。ご相談事項によっては、定額方式でのご支援が難しい場合もございますが、RSM汐留パートナーズはクライアントのご予算内で費用対効果抜群のサービスをご提供させていただくことをミッションとしています。まずはお気軽に当社コンサルタントまでご相談ください。