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RSM汐留パートナーズ・ニュースレター 2022年12月号

2022年12月1日

ふるさと納税制度の概要・時間外労働に対する割増賃金率の引き上げ・相続人等売渡請求

日頃よりお世話になっております。RSM汐留パートナーズです。今月のニュースレターでは、税務より「ふるさと納税制度の概要」、労務より「時間外労働に対する割増賃金率の引き上げ」、司法書士法人より「相続人等売渡請求」について取り上げます。

労務より取り上げる割増賃金率については、「月60時間を超える時間外労働」に対する割増賃金率が50%に引き上げられるものです。司法書士法人にて取り上げる相続人等売渡請求は、株主が無くなった際に相続人が承継する株式について、株式の分散等を防止するための売渡を請求することができる制度です。いずれの論点も、多くの会社に関係する論点となっておりますので、是非ご確認ください。

本年も残すところ一か月となりました。皆様には大変厚いご高配を賜り、RSM汐留パートナーズ一同、心より御礼申し上げます。年末年始で慌ただしくなるかと存じますが、是非皆様よいお年をお迎えください。

 

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はじめに

年末が近づくと、ふるさと納税の話題を多く耳にします。ふるさと納税は、2008年に開始された制度であり、年々利用者は増加し、令和3年度のふるさと納税の受入額及び受入件数(全国)は、約8,302億円(対前年度比で約1.2倍)、約4,447万件(対前年度比で約1.3倍)に達しています(総務省|令和4年度ふるさと納税に関する現況調査について参照)。今回は、ふるさと納税の概要や手続について今一度整理してみたいと思います。

ふるさと納税とは

ふるさと納税とは、自分の選んだ自治体に寄附を行った場合に、寄附額のうち2,000円を越える部分について、所得税と住民税から原則として全額控除される寄付金税制の一つです(収入や家族構成等により、控除される税額に上限あり)。ふるさと納税の魅力としては、寄付の使い道を指定できる点、実質的な自己負担2,000円で、寄付先の自治体から名産品等の返礼品が得られる点が挙げられます。

制度趣旨

地方出身者の中には、医療や教育等様々な住民サービスを地方のふるさとで受けて育ち、進学や就職を機に都会に移住し、都会で納税を行う人が多く、その場合、都会の自治体だけに税収が得られ、生まれ育った地方の自治体には税収が入らないことになります。そこで、故郷を含む応援したい自治体に、自分の意志で納税(寄付)できる制度として、ふるさと納税制度が設けられました。

ふるさと納税による税金控除の手続

税金控除を受けるためには、原則として、確定申告を行う必要があります。但し、確定申告が不要な給与所得者等は、ふるさと納税先の自治体数が5団体以内である場合に限り、ふるさと納税を行った各自治体に「寄附金税額控除に係る申告特例申請書」と本人証明書類を提出することで確定申告が不要になる「ワンストップ特例制度」の適用が可能です。ワンストップ特例制度の申請期限は、寄付をした翌年の1月10日(必着)です。この場合は、所得税からの控除(還付)はなく、ふる さと納税を行った翌年度の住民税の減額という形で税額控除がなされます。

一方、ふるさと納税先の自治体数が5団体を超える場合や、ふるさと納税の有無に関わらず確定申告が必要な場合は、確定申告にて手続を行います。この場合は、ふるさと納税を行った翌年の3月15日までに、住所地の所轄の税務署に、ふるさと納税を行うと発行される「寄附金受領証明書」を確定申告書類と共に提出します。税額控除は、ふるさと納税を行った年の所得税からの控除と、翌年度分の住民税の減額という形でなされます。

おわりに

ふるさと納税は、自分の好きな自治体に納税ができ、また納めた税金の使い道を自分で指定できる数少ない納税制度といえます。今年分のふるさと納税は、年内に行う必要があります。ご不明点等ございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせ下さい。

 

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中小企業の月60時間を超える時間外労働に対する割増賃金率が引き上げられます

2023年4月1日から、中小企業の月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率が引き上げられます。今回は、引き上げ後の割増賃金や、時間外労働の考え方、代替休暇制度についてお伝えします。

引き上げ後の割増賃金率と経緯

2023年4月1日から、中小企業での月60時間を超える時間外労働に対する割増賃金率が25%以上から50%以上に引き上げられます。大企業に対しては2010年4月1日から引き上げが実施されていたものの、中小企業については適用を猶予されていました。この猶予が2023年3月末日で終了するため、中小企業においても割増賃金率の引き上げが適用されることになります。

1か月の法定時間外労働
(法定労働時間を超える労働時間)
60時間以下60時間超
2023年3月31日まで25%25%
2023年4月1日から25%50%

※中小企業の範囲
中小企業の範囲については、「資本金の額または出資の総額」と「常時使用する労働者数」のいずれかが以下の基準を満たしていれば、中小企業に該当すると判断されます。なお、事業所単位ではなく、企業単位で判断されます。

業種資本金の額又は出資の総額常時使用する労働者数
小売業5,000万円以下50人以下
サービス業
(サービス業・医療・福祉等)
5,000万円以下100人以下
卸売業1億円以下100人以下
その他の業種3億円以下300人以下

月60時間超の時間外労働の考え方

労働基準法には労働時間の上限(通常は1日8時間、1週40時間)が定められており、これを超える労働時間のことを法定時間外労働といいます。法定時間外労働が月60時間を超えたとき、50%以上の割増率により割増賃金を支払う必要があります。

所定労働時間が8時間未満の場合の、所定労働時間を超えて8時間以内の部分の労働時間(いわゆる法内残業)については、1か月60時間の法定時間外労働の算定に含める必要はありません。

深夜労働や法定休日労働との関係

深夜労働については、それが法定労働時間を超えるのであれば1か月60時間の時間外労働の算定に含みます。また、深夜時間帯に月60時間を超える時間外労働を行わせた場合には、25%以上の深夜割増賃金も発生しますし、50%以上の時間外割増賃金も発生します。

一方で、法定休日労働については、1か月60時間の時間外労働の算定には含まれません。また、時間外労働が月60時間を超えていても、法定休日労働に対しては35%以上の法定休日割増賃金を支払えば足ります。ただし、法定休日以外の所定休日労働については、1か月60時間の時間外労働の算定に含まれ、50%以上の時間外割増賃金が発生することもあります。

代替休暇制度

代替休暇制度とは、月60時間を超える法定時間外労働を行った労働者の健康を確保するため、引き上げ分の割増賃金の支払いに代えて、有給の代替休暇の付与をするものです。導入にあたっては労使協定で下記事項について定める必要があります。

  • 代替休暇の時間数の具体的な算定方法
  • 代替休暇の単位(1日または半日)
  • 代替休暇を与えることができる期間(60時間超の時間外労働をした月から2か月以内)
  • 代替休暇の取得日の決定方法、割増賃金の支払日

代替休暇の時間数は次の計算式によって求められます。

代替休暇の時間数=(1か月の法定時間外労働時間数―60時間)×換算率※

※換算率=代替休暇を取得しなかった場合の割増賃金率(50%以上)―代替休暇を取得した場合の割増賃金率(25%以上)

例えば、代替休暇を取得した場合の割増賃金率を25%と定めた場合で1か月の法定時間外労働が76時間だったとき、60時間を超える「16時間」に換算率「25%(50%-25%)」を乗じた「4時間(16時間×25%)」が、代替休暇の時間数となります。

また、代替休暇を与えられるのは、「60時間を超えた部分」に限られます。また、代替休暇を与えたとしても50%以上が25%以上になるだけで、割増賃金の支払い自体は必要となります。

なお、代替休暇は従業員の意思により取得するものであり、会社が取得を強制することはできません。通達(平成21年5月29日基発0529001号)では、「労働者の代替休暇取得の意向については、一箇月について60時間を超えて時間外労働をさせた当該一箇月の末日からできる限り短い期間内において、確認されるものとすること。代替休暇を取得するかどうかは、労働者の判断による(法第37条第3項)ため、代替休暇が実際に与えられる日は、当然、労働者の意向を踏まえたものとなること」とされています。

 

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はじめに

株式会社の株式は株主が所有する財産ですので、株主が亡くなったときは相続人が当該株式を承継します。株式が分散することや望ましくない人(法人)が株主になるリスクを抑えるためか、2006年に会社法が施行されて以降、非公開会社においては定款に「相続人等に対する売渡しの請求に関する定め」を置いている株式会社が少なくありません。

対象は譲渡制限株式

相続人等売渡請求の対象となる株式は譲渡制限株式に限られています。譲渡制限が付されていない株式に対しては、この請求を行うことができません(会社法第174条)。

定款の定め

相続人等売渡請求を行うためには、定款にその請求ができる旨の規定を置く必要があります。定款の内容の一例としては、全ての株式に譲渡制限が付いている会社においては「当会社は、相続その他の一般承継により当会社の株式を取得した者に対し、当該株式を当会社に売り渡すことを請求することができる」等のような記載が挙げられます。

株主が亡くなった後にこの規定を設けることも可能とされていますが、その場合は当該株主の相続人を含めた株主総会で特別決議を経る必要がありますので、導入を検討されているのであれば早めに済ませておくことが良いかもしれません。

行使期間は死亡後1年間

相続人等売渡請求権は、株式会社が当該株式会社が相続その他の一般承継があったことを知った日から1年を経過したときは行使することができません。

財源規制

相続人等売渡請求は、株式会社がその株主から自己株式を取得する手続きの一つですので財源規制(会社法第461条)があります。株主の相続人に対して交付する金銭の総額が相続人等売渡請求の効力発生日における分配可能額を超える場合、この請求を行うことはできません。

相続人等売渡請求の手続き

相続人等売渡請求を行う場合、株主総会の特別決議によって①請求をする株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)②売渡請求をする株式を有する者の氏名又は名称を定めます。この株主総会においては、上記②の株主は、当該株主以外の株主の全部が当該株主総会において議決権を行使することができない場合を除き、議決権を行使することができません。

株主総会の決議後、上記②の株主に対してその請求に係る株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)を通知します。その後、株式会社と上記②の株主の協議によって売買価格を協議することになりますが、上記②の株主は請求があった日から20日以内に裁判所に対し、売買価格の決定の申立てをすることができます。

相続人等売渡請求は、株式が分散することを防ぐことができるため便利な制度ではありますが、原則として創業者を含む全ての株主が対象であり、また、行使にあたっては財源規制や行使期間といった制限がありますので、導入・行使にあたってはそれらを検討された上で行われることをお勧めいたします。