低価格戦略への警鐘

大好きな稲盛さんの言葉に「値決めは経営」というのがあり創業時は常に心がけていました。

職員が増えると低い報酬でも、受注することを優先して低利益で数だけ増えていきました。

その時は辛かったかもしれません。でもあの時期があったから今があるかもしれず。やはり値決めは難しいと感じます。

しかし本来、士業事務所では価格が理由でコンペで勝ってもそれは喜ばしい事ではありません。安価で良いサービスをすると職員に負荷がかかります。にも関わらず職員に還元できず、結果サービス品質が悪化します。誰も幸せになりませんので、受注率自体にはあまりこだわらず常にベストプライスを提示していきます。

また「上下の関係」を度外視して事務所経営をしています。報酬と労働は等価交換であり、お金を払っている方が偉い事はありません。我々が顧問先にサービスを提供する際も同じ考え方です。等価交換の原則が崩れると関係も崩れます。

昨今少しずつインフレが浸透してきた世の中においても、士業の世界では安価にプロフェッショナルサービスを提供する事務所がまだとても多いように感じています。

これは所長1人で自宅などでやると決めた場合にはいい方法だと思います。自分の見きれる範囲で直接対応し、高クオリティのサービスをリーズナブルに提供し、顧客と信頼関係を築き追加の仕事を受注する。受けきれなくなったら職員を採用するのではなく、値上げをお願いしたりお断りする。

ですが職員を1人でも採用する場合、一気にいい方法ではなくなってしまいます。所長と比較して生産性や品質が低いメンバーが入ることにより、当初の所長の目論見が崩れてきます。十分ではない待遇や教育や福利厚生も相まっての職員の離職、そして新規採用活動により非常にストレスフルな状況になります。

ただし、もっと視座を上げるなら、果てしなく高い志、あるいは、大きな資本力がありスケールメリットを出すまでやり遂げるならば、これはまたいい方法だと思います。例えば1000人の事務所を作るまでとことんやる、最初から5億円以上投資できるetc. 顧客が増えて一斉に値上げやクロスセルで追加サービスの提案など攻め手が増えます。

テクノロジーを利用して低価格で高品質なサービスを…という世界は非常に理想的なのですが、個人的な経験ではそこにビジネスチャンスと成長するマーケットがあれば、巨人が参入してくると感じています。

最近ではBPaas(BPOとクラウドコンピューティングを組み合わせ)に関しても巨大資本の参入が始まっているので、舵取りは極めて重要だなと感じる日々です。

一方で「ここ2年値上げがなかったので」値上げさせてという理由は日系企業では簡単には受け入れられないかもしれませんが、経済成長やインフレを感じ経営している国の会社であれば十分に受け入れ可能。日本企業が企業努力で解決するのだという精神が、世界競争において裏目に出てしまっていることを強く感じます。

海外の会議に参加すると、皆人手不足とは言いつつも、高単価の案件をいかに大量に獲得するかという視点が相当強いです。つまり、それが昇格や昇給のために重要な要素になっているということなのでしょう。

Share:
前川研吾 X(旧Twitter) RSM汐留パートナーズ 採用X(旧Twitter)
Scroll to Top