一人士業の魅力と、持続可能な事務所のかたち
「一人士業の事務所」のあり方について考えてみました。もし私がもう一度独立するとしたら、次は「一人士業」という形態を選ぶかもしれません。実際には生涯をかけてRSMの日本代表を務め、RSMと共に歩んでいく決意ですので、あくまで仮定の話ではありますが(笑)。
私見ですが、一人士業の定義とは「完全に一人」であるか、あるいは「フルタイムの有資格者は所長一人で、数名のスタッフを雇用して運営している」状態を指すのではないかと考えています。
完全に一人で実務を行う道は、雇用の苦労や責任から解放される生き方です。これはまさに「自由な経営」と言えるでしょう。信頼できる外部協力者と連携しながら、目の前のお客様に全力で向き合うことができます。
一方で、自分の目が届く範囲でスタッフを採用するという考え方もあります。規模としては10名程度、売上高でいえば1億円前後が一つの目安でしょうか。 実際、契約・請求事務、入金確認、記帳、給与計算、書類作成といった業務を分業化したほうが、事務所全体の生産性は向上しますし、その枠組みの中で全員が豊かになれます。
例えるなら、所長は獲物を捉える「狩猟民族」であり、スタッフはお米を育てる「農耕民族」。お肉とご飯の組み合わせが最高であるように、この両者が揃うことで、非常にバランスの良い組織となります。
しかし、有資格者が複数になり法人化が進むと、時に揉め事が生じることもあります。本人だけでなくスタッフもストレスを抱えてしまい、結果として組織を解散し、個人事務所に戻っていかれた方を私は多く見てきました。
「私がいなくなればこの事務所は解散するか、どこかに合流する」という前提をあらかじめスタッフと共有しておく。これもまた、一つの「サステナブル(持続可能)な形」かもしれません。その方針を理解した上で入所していただくということです。
この規模を超えて拡大を目指すなら、それはもはや「士業」というより「経営者」の領域です。世の素晴らしい経営者たちと同じ土俵で競い、スタッフもまたリーダーとしての背中を期待する。そこには、厳しくも刺激的な世界が広がっています。
一人士業は、時に孤独や寂しさを感じることもあるでしょう。しかし、そのスタイルが性に合っている人にとっては、まるで「タレント」のように自分自身を軸とした職業人生を歩める、とても素敵な選択肢だと思うのです。
大切なのは規模の追求ではなく、自分が納得できる「あり方」でいられるかどうか。一人ひとりの士業が自分らしく輝ける場所を見つけられることを、心から願っています。
成長途上ならではのRSM Japanの魅力
- 2026.04.25
- ビジネスの話
RSMはグローバルの規模に対して、RSM Japan(RSM汐留&清和)は規模も歴史も、世界と比べればまだ発展途上だと言わざるを得ません。日本におけるRSMは、これからさらに存在感を高めていく段階にあり、まさに成長の途中にある組織だと思います。
しかし、だからこそ面白いのです。完成された組織に合流するのではなく、これから伸びていく組織を、自分たちの手で形づくっていける余白があります。すでに整いきった環境では味わえない、試行錯誤しながら未来をつくっていく実感がある。そこに、日本のRSMならではの醍醐味があると感じています。
入社したばかりのメンバーがこんなことを言ってくれました。「海外が大きいのに日本がまだ小さいのは、ものすごいチャンスですよね!伸びしろしかないじゃないですか!だから応募したんです!」
この言葉は本当に嬉しかったですし、私自身もまったく同じ想いでRSM汐留パートナーズを率いています。グローバルの看板や基盤は確かに心強いですし、それ自体が大きな強みであることは間違いありません。しかし、日本の成長は“誰かが用意してくれるもの”ではなく、私たち自身が一つひとつ積み上げてつくっていくものだと思っています。だからこそ、そのプロセスに主体的に関われることに、大きな価値があるのです。
正直、この「ギャップの魅力」をお伝えしても、すぐにはピンとこない方もいらっしゃいます。安定や完成度を求める方にとっては、まだ整っていない部分や、これからつくっていく余地があることに、不安を感じるかもしれません。けれど、この面白さがわかる方には、きっと強烈に刺さるはずです。「今、ここから一緒に歴史をつくれる」。その手触りを持てる環境は、実はそう多くありません。
グローバルな巨人を背景に、日本でベンチャーする。大きなネットワークと、成長途上のフィールドならではのダイナミズム。その両方を同時に味わえるのが、いまのRSM Japanです。そしてこの環境こそが、挑戦したい人にとって、他にはない魅力になるのではないかと思っています。

マルタ訪問を通じて感じた、日本・マルタ間の新たな可能性
先月、マルタ共和国にてRSM Maltaのマネージングパートナー、Karen Spiteri Bailey氏とお会いしました。日本・マルタ間の成長戦略やサービス品質の向上、さらにはグローバル市場におけるプレゼンス強化に向け、多角的な意見交換をさせていただきました。そして、現地のチームメンバーとも直接交流し、RSM JapanとRSM Malta間の連携をさらに強化しました。今回の交流は、RSMグローバルネットワークにおける連携の可能性、マルタが持つアドバイザリー拠点としての重要性を再認識するよい機会となりました。
また、マルタ商工会議所では、同会議所メンバーや英語教育・TEFL分野の関係者との会合に出席しました。マルタの優れた教育環境を活かしたエグゼクティブ向けプログラムや専門能力開発、国際的なイマージョン学習の機会に加え、日本・マルタ間における若者の交流やワーキングホリデーの可能性についても議論を深めることができ、大変有意義な時間となりました。
日本とマルタは国交樹立60周年という節目を迎えました。EU加盟国としての機動力、英語環境、そして多様な人材というこの国の強みは、日本企業にとっても多くの示唆に富んでいます。
特に印象的だったのは、「パスポート=移動の自由」に留まらず、「どの経済圏に属するか」が個人や企業の選択肢を劇的に広げるという視点です。EUという枠組みの中でビジネスを展開する意義を、改めて実感できました。
グローバル展開が前提となる時代において、地理的条件や制度をどう戦略的に捉えるか。日本国内に留まっていては見えにくい視点を、現地の体験を通じて得ることができました。この知見を今後の自社戦略やクライアント支援に最大限に活かしてまいります。

加速する会計事務所のロールアップ買収:グローバルトレンドと戦略的選択肢
2015年から2025年にかけて、世界では177件のプラットフォーム投資を端緒に875件のロールアップ買収が行われ、累計1,052件の会計事務所取引に波及しています。現在、会計業界ではPE主導による業界再編が着実に進み、その動きは年々存在感を増している状況です。
この潮流は米国や英国を中心に広がってきましたが、足元では欧州、豪州、さらには新興国を含む多国間へと波及しています。先日、懇意にさせていただいている経営者の方との情報交換の中で、日本市場における同様の打診についても伺いました。具体的な進展には至らなかったようですが、PEがどのようなスキームで参入を画策しているのか、その動向を把握しておくことは極めて重要だと感じます。
プロフェッショナルファームの成長を考えるうえで、外部資本の活用は今や一つの現実的な選択肢になりつつあります。もちろん、すべての法人に適した手段であるとは限りませんが、こうした世界的なトレンドを正しく理解し、自らの経営のあり方と照らし合わせて捉えることは、今後の経営戦略を構築する上で欠かせない要素と言えるでしょう。
一方で、急進的な利益追求の影で、不正やハラスメントが社会問題化している現実も見過ごすことはできません。成長のスピードや規模だけが評価されるのではなく、その過程において組織の健全性や倫理観が保たれているかどうかも、これまで以上に問われる時代になっているように思います。単なる数字上の成長にとどまらず、ステイクホルダー全員のウェルビーイングが確保された、真に健全な業界の発展を願ってやみません。
資本の力と人の心が調和する、新しい時代のプロフェッショナルファームのあり方を、これからも丁寧に模索し続けていきたいと考えています。

意思決定の解像度が変わる。MBAで得た「経営の視座」
働きながらMBAに通って一番良かったこと。それは、公認会計士・税理士としての「士業の視点」に、「経営者としての視点」を掛け合わせることができた点にあります。
財務や税務という武器に、戦略、組織、マーケティング、リーダーシップといった経営のフレームワークが加わったことで、意思決定の解像度が大きく上がりました。2年間、必死に食らいついて海外のトレンドやESG、ファミリービジネスなども学びました。正直、車が買えるくらいの投資でしたが、海外MBAに比べれば安価ですし、それ以上のリターンがあったと感じています。
最近、知人の税理士がKBS(慶応ビジネススクール)に、部下がWBS(早稲田ビジネススクール)に合格しました。これは本当に嬉しいことです。MBAは「誰と学ぶか、誰から学ぶか」がとても大事。仕事と勉強の往復は簡単ではありませんが、あの時踏ん張ったからこそ、今の自分があります。
ESG、国際、AIなど、経営課題はますます複雑になる昨今ですが、大きな責務こそ成長のチャンスになります。「あの人には専門知識では勝てない」と思うような、キレキレの同業者は世の中にたくさんいます。しかし、専門性だけで勝負し続けるのは、クライアントのレベルが上がるほど難しくなるのも事実。
だからこそ、教育やチームビルディング、あるいは「経営者の良き理解者」といった、少し違う領域で自分の価値を出したい人にとって、MBAは最高の選択肢になります。私自身も、かつては同じ悩みを持っていました。
監査法人や中小企業向けの事務所にいると、大企業の人との繋がりは限定的になりがちです。MBAに行けば、一流企業のリーダー候補たちと最高の関係が築けます。これは一生の宝物です。これからもおすすめしていきたいと思います。

独立した立場の重責。社外役員は「時間の切り売り」ではない
- 2026.03.15
- ビジネスの話
昨今、公認会計士や弁護士の間で「社外役員」は人気のポジションとなっているようです。しかし、その重責をしっかり果たせる人材はいまだ不足しているのが実情です。一方で、税理士やその他の士業にとっては、門戸が十分に開かれているとは言い難い現状もあります。
背景には、会社法や金融商品取引法への対応、ガバナンスやリスク管理、国際ビジネスといった高度な専門性への需要があります。取締役会の機能強化が求められる中で、監査・法務のプロが重宝されるのは必然と言えるでしょう。
もっとも、たとえ打診があったとしても、安易に引き受けるべきではないと私は考えています。軽々しく引き受けてしまうことは、会社にとっても個人にとっても望ましい結果にはつながりません。
一方、非常勤という立場では、得られる情報に限りがあります。しかし、負うべき法的責任がそれに比例して軽くなるわけではありません。「報酬が低いから投下時間も少なめに」という理屈は通じても、リスクは時間に比例してはくれないのです。
何より、「時給が良いから」といった発想は論外です。社外役員の本質は時間の切り売りではなく、独立した立場から経営判断に関与する重い責任にあります。極論を言えば、24時間その会社のことを考え抜く覚悟が必要な職責なのです。
私自身、これまで上場企業3社で社外役員を務め、うち2社では社外監査役としてIPOも経験しました。現在は1社で社外取締役を拝命していますが、経験を重ねるほどに、この役割の重みと、引き受ける際の慎重さの重要性を強く感じています。
もちろん、社外役員を専業として数社を掛け持ちする道もあります。それは一定の経験を積んだ上で、プロの社外役員として「全力で振り切る」という立派なキャリアの形であり、今後さらに注目される生き方になるのではないでしょうか。

中堅ファームが日本を牽引する。ミドルマーケットを健全な成長の舞台へ
- 2026.03.05
- ビジネスの話
米国において、ミドルマーケットは極めて明確なセグメントとして確立されています。売上高3,000万ドル〜10億ドル(約45億~1,500億円)規模の企業が12万社以上存在し、米国全体の売上の約3分の1(約16兆ドル)を占め、5,000万人超の雇用を支えているのです。日本人の感覚からすると、これらは十分に「大企業」と呼べる規模感かもしれません。
特筆すべきは、この層に特化したサービス提供者が最適化されている点です。米国では、大企業(Large Enterprises)、中堅企業(Middle Market)、中小企業(SMEs)の各レイヤーごとに担い手が分かれており、提供価値・価格・スピード関与の深さが非常にクリアです。
これはミスマッチを避けるための極めて合理的な仕組みといえます。企業と士業のミスマッチは、双方が不幸になる結果を招きます。支払う側は「これほどの報酬を払っているのに」と不満を抱き、受け取る側は「この報酬では割に合わない」と疲弊してしまうからです。
対して日本では、こうした階層別の最適化が十分に進んでいるとは言えません。あえて厳しい意見を述べるならば、成長が停滞し、国内ビジネスが主軸である時価総額数十億円規模の上場企業に対し、Big4による監査は「オーバースペック」となっているケースも見受けられます。
また、欧米のプロフェッショナルは、どのレイヤーであっても自らが提供すべき価値を明確に定義し、そこに誇りを持って取り組んでいます。「誰に、何を、どこまで提供するか」が整理されていることが、結果として経済活動全体の効率化にも繋がっているのでしょう。
今後、人材の流動化やテクノロジーの進化、PEファンドの台頭を背景に、日本でも「企業のフェーズに合った価値提供」がより強く求められるはずです。この変化が自然に訪れるのを待つのか、それとも中堅・中小ファームが自ら牽引していくのか。私は、間違いなく後者でありたい、後者にしていくべきだと考えています。
ミドルマーケットは、決して経済の「周縁」ではありません。ミスマッチを解消し、企業とプロフェッショナルの双方が健全に成長できる「主戦場」です。その一端を担い、日本の経済活性化に貢献できるよう、今後も邁進してまいります。

プロ野球選手の確定申告や税金について
- 2026.02.24
- ビジネスの話
日本のプロ野球では開幕に向けて各球団の春季キャンプも一区切りし、いよいよシーズンが本格的に動き出す時期になりました。加えて、今年はWBCも控えており、例年以上に注目が集まる一年になりそうです。選手、球団関係者の皆さまにとっては、開幕に向けて、日々の調整や準備の精度を一段と高めていく時期かと思います。
一方で、オフの間に整理しておきたいテーマとして「確定申告」や「税金」のご相談も毎年多く寄せられます。最近も、プロ野球選手の確定申告についてホームページからお問い合わせをいただく機会が増えております。
実際に、以下のようなご相談をいただくケースが多いです。
- プロ野球選手は個人事業主として確定申告が必要か
- 球団から受ける報酬は「事業所得」か「給与所得」か
- 契約金の税務上の取り扱い
- 確定申告の基本的な進め方(手順)等
RSM汐留パートナーズでは、プロスポーツ選手や芸能関係の方々に向けて、確定申告サポート、税務顧問、マネジメント会社の設立支援など、活動スタイルに合わせた実務支援をご提供しています。税務・会計面等でお困りのことがございましたら、お気軽にご相談ください。

「自由と責任」を両立させる、自律型組織のためのハイブリッドワーク
- 2026.02.18
- ビジネスの話
「リモートワーク」という言葉が世に出て久しい昨今、私は「ハイブリッドワーク」には多大なメリットがあると考え、一貫してその体制を推進しています。
具体的には、ハイブリッドワークには以下の8つの利点があると考えています。
①自宅とオフィスの利点を状況に応じて選択できる
②通勤時間を削減し、集中しやすい環境を確保することで業務効率を高める
③対面が必要な局面でチームが集まり、密なコミュニケーションを図る
④仕事と私生活の調和を図りやすい
⑤居住地に縛られず、広範な地域から優秀な人材を確保できる
⑥高い自己管理能力が求められ、主体的な働き方が促進される
⑦オフィス維持費を抑制し、成長分野への投資に充当できる
⑧地方創生に寄与し、多様な地域との繋がりを強化できる
現在は東京のほかに、札幌、釧路、仙台、名古屋、大阪、広島、福岡、沖縄と拠点があり、フルリモートのメンバーも多く在籍しています。ハイブリッドワークの良さをさらに引き出すため、今後もさらに全国に拠点を拡充していく計画です。
ただし、この働き方において「自由と責任」は表裏一体です。メンバー一人一人が数値を含む成果に対して明確な責任を持つこと、そして行動指針(フィロソフィ)が組織に深く浸透していることが不可欠です。決して楽な道ではありません。
私自身、創業から今に至るまでずっと役員としてこのハイブリッドな働き方を実践し続けてきました。タフな制度ではありますが、自走できる人材にとってはこれ以上ない環境であり、今後もこの体制をさらに磨き上げ、推進していく所存です。

進む会計事務所の二極化。生き残るための「規模」と「責任」の再定義
- 2026.01.30
- ビジネスの話
会計事務所業界の変化は凄まじく、正直なところ先行きは不透明です。この不確実性の高い時代においては、「雇用を最小限に抑えた個人事務所」か「規模を徹底的に拡大する大規模事務所」か、その二極化が加速していくように感じます。
PEファンドや上場企業などの資本参入を肌で感じる今、小規模な事務所が職員の雇用を守り続けるのは、もはや容易なことではありません。「もし私がもう一度独立するなら、雇用を限りなくゼロに近づけた少数精鋭でやる」と公言している理由は、まさにそこにあります。
ただ、これはあくまで私の「来世」の話。現実の私は、しっかりと規模拡大を図り、大切な仲間たちの雇用を守る責務を負っています。しばらく忘れていたようなプレッシャーを再び感じ始めていますが、これは自分自身でかけている期待の裏返しかもしれません。
AIに仕事が奪われるといった短絡的な懸念はしていません。しかし、外部環境が激変することだけは確実です。監査法人、税理士法人、そして全ての士業事務所。この不確実極まる5年間で、経営者としての真価が問われることになるでしょう。
変化は望むところ。不確実な未来を、最高の仲間たちと切り拓いていくことに、これ以上の喜びはありません。

