意思決定の解像度が変わる。MBAで得た「経営の視座」
- 2026.03.20
- ビジネスの話
働きながらMBAに通って一番良かったこと。それは、公認会計士・税理士としての「士業の視点」に、「経営者としての視点」を掛け合わせることができた点にあります。
財務や税務という武器に、戦略、組織、マーケティング、リーダーシップといった経営のフレームワークが加わったことで、意思決定の解像度が大きく上がりました。2年間、必死に食らいついて海外のトレンドやESG、ファミリービジネスなども学びました。正直、車が買えるくらいの投資でしたが、海外MBAに比べれば安価ですし、それ以上のリターンがあったと感じています。
最近、知人の税理士がKBS(慶応ビジネススクール)に、部下がWBS(早稲田ビジネススクール)に合格しました。これは本当に嬉しいことです。MBAは「誰と学ぶか、誰から学ぶか」がとても大事。仕事と勉強の往復は簡単ではありませんが、あの時踏ん張ったからこそ、今の自分があります。
ESG、国際、AIなど、経営課題はますます複雑になる昨今ですが、大きな責務こそ成長のチャンスになります。「あの人には専門知識では勝てない」と思うような、キレキレの同業者は世の中にたくさんいます。しかし、専門性だけで勝負し続けるのは、クライアントのレベルが上がるほど難しくなるのも事実。
だからこそ、教育やチームビルディング、あるいは「経営者の良き理解者」といった、少し違う領域で自分の価値を出したい人にとって、MBAは最高の選択肢になります。私自身も、かつては同じ悩みを持っていました。
監査法人や中小企業向けの事務所にいると、大企業の人との繋がりは限定的になりがちです。MBAに行けば、一流企業のリーダー候補たちと最高の関係が築けます。これは一生の宝物です。これからもおすすめしていきたいと思います。

独立した立場の重責。社外役員は「時間の切り売り」ではない
- 2026.03.15
- ビジネスの話
昨今、公認会計士や弁護士の間で「社外役員」は人気のポジションとなっているようです。しかし、その重責をしっかり果たせる人材はいまだ不足しているのが実情です。一方で、税理士やその他の士業にとっては、門戸が十分に開かれているとは言い難い現状もあります。
背景には、会社法や金融商品取引法への対応、ガバナンスやリスク管理、国際ビジネスといった高度な専門性への需要があります。取締役会の機能強化が求められる中で、監査・法務のプロが重宝されるのは必然と言えるでしょう。
もっとも、たとえ打診があったとしても、安易に引き受けるべきではないと私は考えています。軽々しく引き受けてしまうことは、会社にとっても個人にとっても望ましい結果にはつながりません。
一方、非常勤という立場では、得られる情報に限りがあります。しかし、負うべき法的責任がそれに比例して軽くなるわけではありません。「報酬が低いから投下時間も少なめに」という理屈は通じても、リスクは時間に比例してはくれないのです。
何より、「時給が良いから」といった発想は論外です。社外役員の本質は時間の切り売りではなく、独立した立場から経営判断に関与する重い責任にあります。極論を言えば、24時間その会社のことを考え抜く覚悟が必要な職責なのです。
私自身、これまで上場企業3社で社外役員を務め、うち2社では社外監査役としてIPOも経験しました。現在は1社で社外取締役を拝命していますが、経験を重ねるほどに、この役割の重みと、引き受ける際の慎重さの重要性を強く感じています。
もちろん、社外役員を専業として数社を掛け持ちする道もあります。それは一定の経験を積んだ上で、プロの社外役員として「全力で振り切る」という立派なキャリアの形であり、今後さらに注目される生き方になるのではないでしょうか。

中堅ファームが日本を牽引する。ミドルマーケットを健全な成長の舞台へ
- 2026.03.05
- ビジネスの話
米国において、ミドルマーケットは極めて明確なセグメントとして確立されています。売上高3,000万ドル〜10億ドル(約45億~1,500億円)規模の企業が12万社以上存在し、米国全体の売上の約3分の1(約16兆ドル)を占め、5,000万人超の雇用を支えているのです。日本人の感覚からすると、これらは十分に「大企業」と呼べる規模感かもしれません。
特筆すべきは、この層に特化したサービス提供者が最適化されている点です。米国では、大企業(Large Enterprises)、中堅企業(Middle Market)、中小企業(SMEs)の各レイヤーごとに担い手が分かれており、提供価値・価格・スピード関与の深さが非常にクリアです。
これはミスマッチを避けるための極めて合理的な仕組みといえます。企業と士業のミスマッチは、双方が不幸になる結果を招きます。支払う側は「これほどの報酬を払っているのに」と不満を抱き、受け取る側は「この報酬では割に合わない」と疲弊してしまうからです。
対して日本では、こうした階層別の最適化が十分に進んでいるとは言えません。あえて厳しい意見を述べるならば、成長が停滞し、国内ビジネスが主軸である時価総額数十億円規模の上場企業に対し、Big4による監査は「オーバースペック」となっているケースも見受けられます。
また、欧米のプロフェッショナルは、どのレイヤーであっても自らが提供すべき価値を明確に定義し、そこに誇りを持って取り組んでいます。「誰に、何を、どこまで提供するか」が整理されていることが、結果として経済活動全体の効率化にも繋がっているのでしょう。
今後、人材の流動化やテクノロジーの進化、PEファンドの台頭を背景に、日本でも「企業のフェーズに合った価値提供」がより強く求められるはずです。この変化が自然に訪れるのを待つのか、それとも中堅・中小ファームが自ら牽引していくのか。私は、間違いなく後者でありたい、後者にしていくべきだと考えています。
ミドルマーケットは、決して経済の「周縁」ではありません。ミスマッチを解消し、企業とプロフェッショナルの双方が健全に成長できる「主戦場」です。その一端を担い、日本の経済活性化に貢献できるよう、今後も邁進してまいります。

プロ野球選手の確定申告や税金について
- 2026.02.24
- ビジネスの話
日本のプロ野球では開幕に向けて各球団の春季キャンプも一区切りし、いよいよシーズンが本格的に動き出す時期になりました。加えて、今年はWBCも控えており、例年以上に注目が集まる一年になりそうです。選手、球団関係者の皆さまにとっては、開幕に向けて、日々の調整や準備の精度を一段と高めていく時期かと思います。
一方で、オフの間に整理しておきたいテーマとして「確定申告」や「税金」のご相談も毎年多く寄せられます。最近も、プロ野球選手の確定申告についてホームページからお問い合わせをいただく機会が増えております。
実際に、以下のようなご相談をいただくケースが多いです。
- プロ野球選手は個人事業主として確定申告が必要か
- 球団から受ける報酬は「事業所得」か「給与所得」か
- 契約金の税務上の取り扱い
- 確定申告の基本的な進め方(手順)等
RSM汐留パートナーズでは、プロスポーツ選手や芸能関係の方々に向けて、確定申告サポート、税務顧問、マネジメント会社の設立支援など、活動スタイルに合わせた実務支援をご提供しています。税務・会計面等でお困りのことがございましたら、お気軽にご相談ください。

「自由と責任」を両立させる、自律型組織のためのハイブリッドワーク
- 2026.02.18
- ビジネスの話
「リモートワーク」という言葉が世に出て久しい昨今、私は「ハイブリッドワーク」には多大なメリットがあると考え、一貫してその体制を推進しています。
具体的には、ハイブリッドワークには以下の8つの利点があると考えています。
①自宅とオフィスの利点を状況に応じて選択できる
②通勤時間を削減し、集中しやすい環境を確保することで業務効率を高める
③対面が必要な局面でチームが集まり、密なコミュニケーションを図る
④仕事と私生活の調和を図りやすい
⑤居住地に縛られず、広範な地域から優秀な人材を確保できる
⑥高い自己管理能力が求められ、主体的な働き方が促進される
⑦オフィス維持費を抑制し、成長分野への投資に充当できる
⑧地方創生に寄与し、多様な地域との繋がりを強化できる
現在は東京のほかに、札幌、釧路、仙台、名古屋、大阪、広島、福岡、沖縄と拠点があり、フルリモートのメンバーも多く在籍しています。ハイブリッドワークの良さをさらに引き出すため、今後もさらに全国に拠点を拡充していく計画です。
ただし、この働き方において「自由と責任」は表裏一体です。メンバー一人一人が数値を含む成果に対して明確な責任を持つこと、そして行動指針(フィロソフィ)が組織に深く浸透していることが不可欠です。決して楽な道ではありません。
私自身、創業から今に至るまでずっと役員としてこのハイブリッドな働き方を実践し続けてきました。タフな制度ではありますが、自走できる人材にとってはこれ以上ない環境であり、今後もこの体制をさらに磨き上げ、推進していく所存です。

進む会計事務所の二極化。生き残るための「規模」と「責任」の再定義
- 2026.01.30
- ビジネスの話
会計事務所業界の変化は凄まじく、正直なところ先行きは不透明です。この不確実性の高い時代においては、「雇用を最小限に抑えた個人事務所」か「規模を徹底的に拡大する大規模事務所」か、その二極化が加速していくように感じます。
PEファンドや上場企業などの資本参入を肌で感じる今、小規模な事務所が職員の雇用を守り続けるのは、もはや容易なことではありません。「もし私がもう一度独立するなら、雇用を限りなくゼロに近づけた少数精鋭でやる」と公言している理由は、まさにそこにあります。
ただ、これはあくまで私の「来世」の話。現実の私は、しっかりと規模拡大を図り、大切な仲間たちの雇用を守る責務を負っています。しばらく忘れていたようなプレッシャーを再び感じ始めていますが、これは自分自身でかけている期待の裏返しかもしれません。
AIに仕事が奪われるといった短絡的な懸念はしていません。しかし、外部環境が激変することだけは確実です。監査法人、税理士法人、そして全ての士業事務所。この不確実極まる5年間で、経営者としての真価が問われることになるでしょう。
変化は望むところ。不確実な未来を、最高の仲間たちと切り拓いていくことに、これ以上の喜びはありません。

女性が「組織の顔」として輝く会計の世界へ
- 2026.01.20
- ビジネスの話
国際会議に足を運ぶと、大手組織のパートナーや代表が女性であることは、今や世界では珍しいことではありません。日本初の女性首相が誕生し、社会のあり方が大きく変わろうとしている今、会計士(JCPA/USCPA)のキャリアについて改めて考えてみました。
日本では依然として男性比率の高い会計業界ですが、世界に目を向ければ女性が第一線で活躍している国は数多く存在します。特に英語を武器にできる女性会計士は、キャリアの選択肢を劇的に広げることが可能です。
1.「英語×専門性」が生む高い付加価値
国際税務、海外進出支援、国際監査といった英語を要する案件は、専門性が高く、それに比例して報酬水準も上がります。特にスピーキングやリスニングのスキルがあれば、国内案件では出会えないようなグローバルなプロジェクトに携わることができます。
2.「公私のバランス」を尊重するグローバルな職場文化
欧米の会計業界では、ワークライフバランスを重視する文化が根付いています。リモートワークでも成果で正当に評価されるため、ライフステージの変化に柔軟に対応しながらキャリアを継続できます。英語ができれば、日本にいながらにしてこうしたグローバル基準の働き方を享受できるチャンスが広がります。
3.語学への適応力という強み
言語学の研究によれば、音声や語彙の記憶といった言語習得において、女性は高い適応力を示す傾向があると言われています(例:英国ケンブリッジ大学言語学部の研究では、言語習得における「音声・語彙記憶」の面で女性が優位という結果)。この潜在的な強みは、グローバルに活躍する上で大きなアドバンテージとなります。
4.リーダーとして輝く世界の女性会計士たち
米国公認会計士協会(AICPA)の統計では、女性のパートナー・ディレクター比率は約30%に達します。英国勅許会計士協会(ICAEW)でもメンバーの半数近くが女性であり、管理職登用も一般的です。「専門性×英語」という両輪を持てば、日本においても同様のキャリアパスは確実に拓けるはずです。
英語は、女性会計士にとって可能性を最大化させる最強の味方です。働く場所、関わる人、そして報酬。それらを自分の意志で選択し、自由な生き方を手にする。世界で活躍するリーダーたちのように、日本でも「会計×英語」を武器に輝く女性がますます増えていくことを確信しています。
日本の会計業界が、多様な個性がより自由に、より力強く羽ばたける場となることを願ってやみません。

2026年仕事始め:プロフェッショナルサービスファームとしての生存戦略
- 2026.01.05
- ビジネスの話
本日が仕事始めです。政治やビジネス環境の不確実性が加速する中、「いかに生き残るか」は経営者にとって避けて通れない命題です。2026年のスタートにあたり、改めて私たちの在り方について整理してみました。
私なりに考え得る生存戦略の方向性は、大きく分けて以下の3つに集約されます。
①政治の世界に参入し、ルール形成に関与する
②大資本の企業グループ傘下に入り、庇護を受ける
③社会の変化に左右されない「不変の構造」を構築する
①と②は、自らが「ルールを作る側」に回るか「強者のルールに適応する側」に回るかの選択であり、有力な手段ではあります。しかし、中堅企業の経営者である私にとって、現時点で最も追求すべきは③であると考えます。この「構造による耐性」を学ぶべく、この2年間はMBAで集中的にインプットを続けてきました。
重要なのは、単なる保守的な「守り」ではなく、株価、為替、地政学リスク、技術革新といったあらゆる変数がどう動いても揺るがない設計です。
- 影響を極力受けない仕組み(リスクの極小化)
- 影響を受けても他要素で相殺できる仕組み(ポートフォリオの分散)
- 変化をむしろ追い風に変える仕組み(レジリエンスの強化)
例えば、1ドル=250円という極端な円安下でも外貨収入で中立化を図る、あるいは特定の地域に依存せず地政学リスクを分散するといった「事業上の多角化」です。これは単なる経営戦略ではなく、従業員の雇用を守るという経営者としての「責務」であると考えています。
短期的な合理性だけを追うのではなく、環境が激変しても「この会社は生き残る」と言い切れる状態をつくること。人材流動化が進む現代において、こうした「大家族経営」的な発想は古く見えるかもしれません。しかし、長期で人を預かる覚悟なしに、持続可能な組織は成り立たないと信じています。
プロフェッショナルサービスファームとして変化し続ける世界に必要とされ続けるために、2026年も広い視野を持ち、思考を止めることなく邁進してまいります。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

就職氷河期の監査法人、内定の記憶
- 2025.12.22
- ビジネスの話
Big4監査法人の内定に関する投稿が話題になる季節になりましたね。内定を得た方々の喜びのニュースを目にするたび、昔を思い出します。
私の場合は、合格発表日と内定日がまさかの同じ日。人生でとてつもなく大きな出来事が重なった一日でした。とにかく嬉しくて、今思えばずいぶん浮かれていた気がします。当時SNSがなくてよかったかもしれません(笑)。
2003年は、監査法人の就職氷河期でした。年齢が少し上、就職活動のスタートが少し遅い、ただそれだけで全体の約2割が大手監査法人に進めなかった、そんな時代です。そんな中で私は本当に幸運だったと思います。
履歴書を2枚書き、SとCの監査法人に持って行くつもりで朝一番で面接会場に向かいました。Sの面接会場に滑り込み、列に並び、面接までたどり着きました。最後に面接官のパートナーからこう聞かれました。
「他は受けるの?」
「このあとC監査法人に行きます」と、田舎から出てきた私が正直に答えた瞬間、返ってきた言葉は衝撃的でした。
「じゃあ、ここで内定を出すから、そっちは行かなくていいかな?」
私は「はい、もちろんです!」と、反射的に答えていました。
記憶の片隅にあるのは、やけに仰々しいぶ厚い紙の内定通知書です。そこに書かれていた月額給与は305,000円(大都市手当込)。社会に出る前の自分には、現実味のない数字でしたが、ただただ幸せの絶頂でした。
そんな経験があるからでしょうか。私は今でも「内定は、できるだけ早く出してあげたい」と思ってしまいます。あのときの安堵や高揚感は、22年経った今もどこかに残っているのかもしれません。
あまりにも内定を急いで出すと、「この事務所は大丈夫なのか?」「深く検討していないのではないか?」「相当人手不足なのか?」と思われるかもしれないので、最近は弊社もしっかり対応しているようです(笑)。
だからこそ、候補者の安心と納得を何より大切にしつつ、「早く伝えるべきことは早く伝える」採用で、出会ったご縁を丁寧につないでいきたいと思います。

活躍する人に共通する、感覚のバランス
一定規模以上の事務所の代表と話すと、皆さん本当に、人望や人間力、信義則、そして何よりバランス感覚を備えていると感じます。最近ご一緒させていただいている先生方も例外なく魅力的で、学ぶことが多く、できることならずっとご一緒したいと思うほどです。
その延長で思うのが、会計士CEOや会計士CFOの皆さまが活躍されている理由です。並外れた士業としての能力というより、ビジネスマンとしての総合力と感覚のバランスが際立っている。ここが大きな差を生んでいるように見えます。
何事にも両方の側面があります。10点取っても11点取られれば試合に負ける。勝ちにいくとは、どこか一つを突出させるだけでなく、全体の最適を見て配分できることでもあります。そうしたバランス感覚は、組織においても個人においても重要な要素だと思います。
同じことは、対人関係やビジネスの現場でも当てはまります。権利主張が強すぎると、長期的な信頼関係を築くうえでは不利に働くことがある。二者間において、それが個人同士であっても、法人と個人であっても、良好な関係を長続きさせるには、ギブ・アンド・テイクの精神とバランス感覚が欠かせません。
監査法人の世界でも、この傾向はよりはっきりしてきたように思います。昔は一芸に秀でた人でもパートナーになれましたが、今は総合力が求められ、優れた感覚バランスを持っている人でないと昇進が難しい時代です。加えて英語力や人格まで求められる。だからこそ、仕事でBig4の若いパートナーに会うと、自然と尊敬の眼差しになります。
一芸の鋭さにバランス感覚が加わることで、ビジネスマンとしての総合力が増し、信頼が長続きしていくのだと思います。
