若さは何にも替えがたい武器
私が修了考査を終了した日は、2006年12月24日クリスマスイブでした。当時25歳、同期と盛大にお疲れパーティーをしました。
そして、会計士の修了考査に合格し昇給することを見込んで、汐留のタワマンに引っ越しました。家賃は当時で1LDK 20万円超えだったのでなかなかの野心家だったかもしれません。結果その部屋の一室で創業したので”汐留パートナーズ”という社名になりました。
その後、監査法人を退職して1年後にオフィス(現 近鉄銀座中央通りビルⅢ)を借りました。新橋駅徒歩5分、35坪で家賃60万円弱、敷金12か月。不安と興奮が入り交じった工事着工前、背水の陣の例です。
貯金がなくなっても後悔はなかったですが、よく考えれば顧客も人員も増えていく前提の攻めた意思決定でした。若いからできることというのもあると思うので、若さは何にも替えがたい武器だと今も思っています。
このビルは大きな交差点の角にありとても見栄えはよく、非常に薄長い建物なのですが見方によっては後ろまで空間がありそうで、オフィスの格を3倍くらいに見せハッタリを利かせることができたので良かったです。
若さゆえの勢いと覚悟で踏み出した挑戦が、今の礎となりました。これからもその原点を忘れずに、挑戦し続けていきます。
中堅事務所が更なる飛躍のために意識したいこと
中堅事務所の一角となり売上と利益を上げ続けるためには、当然ながらブランディング、そして、ブランドを守るための品質向上のためのIT活用とサイバーセキュリティ対応が今後の成功の鍵であるように感じます。中小事務所が更なる飛躍をする上で意識していくべきことの1つです。
そのために経営者は、企業が当然に取り組んでいることを理解しつつ、自らも組織としてそれを実行していかねばなりません。今後士業経営者にはITに関する鋭い感覚がより一層求められます。そしてそれは士業経営者だけでは不可能でもあります。
具体的には
- インフラクラウドツール(Microsoft 365, Google Workspace)
- 業務管理システム(CRM, ERP)
- AIツールの活用(ChatGPT, Copilot)
- 業務効率化ツール(専用アプリ, RPA)
- データセキュリティ(情報漏洩防止策)
など時代に合わせたIT活用が生き残りの鍵。
選択や設計を間違えるとリカバリーが非常に難しい点に注意が必要です。特に、クラウドツールや業務管理システムの導入、データセキュリティ対策は慎重に進めるべき。経営者の正しい判断が業務効率や信頼性を大きく左右しますね。そのためプレッシャーがあり学びが不可欠です。
私も自己研鑽を続けていこうと思います。
士業のコミュニケーションスキルの重要性
士業にとって、コミュニケーションスキルは本当に重要です。場合によってはこれで自身の評価の多くが決ってしまうかもしれません。できていると勘違いし一方的に話しすぎてしまう人もいます。耳は2つあり口は1つなので、まずは自分が話す2倍以上は相手の話に耳を傾けることから始めたいです。これにより、仕事を獲得できたり、良好な関係を継続できたり、社内で昇進できたり、より多くの機会に恵まれると思います。
先日の税理士サミットで登壇者が「これからの税理士はコミュニケーション力が必要だ。顧客に寄り添う存在にならなければ」とお話してくださいました。大人になるまでにある程度形成されているので面接時にそのポイントを重視して採用し、会話が盛り上がらないと採用しないという話も聞きました。私は個人的には後天的にでも一定レベルに達すると考えています。
そんな士業のためのソフトスキルの学びの機会があればとずっと考えています。
- 話し方
- 気配り
- メール文面
- 身だしなみ
- 適切な距離感
- 距離の縮め方
- 期待値コントロール
- 失礼に当たる事例集
など。これらを学ぶことで総合力が劇的にアップするのではと思います。
コミュニケーションスキルの研修自体はたくさん世にはあります。本当に苦手な方は損をしていると思うので、1つでも2つでも受講してみることをおすすめしたいと思います。
士業としての専門知識に加え、これらのコミュニケーションスキルを磨くことで、顧客や同僚からの信頼を高め、仕事の幅を広げる大きな一歩となるでしょう。目の前の一歩が未来を変える可能性を信じて、まずは実践してみることが大切です。
長期安定経営を目指すファミリービジネスについて
日本は世界的にもファミリービジネスが多く成功している事例も数多くあるといわれます。驚くほど古い会社も多いですし。ファミリービジネスの研究が遅れていて相続税も高すぎるのに、日本にはこんなにもたくさんの100年以上や200年以上の会社があるなんて非常に興味深いと思います。ですが寄付税制がさえないこと、富裕層に対する妬みからの同族会社嫌悪など、独特なものが多いので時間はかかることでしょう。
ファミリービジネスは、概ね30年毎に経営者が交替しますので長期安定経営です。サラリーマン経営者のように四半期や年度決算または自らの在任期間の数字にこだわるという視点がそこまでないため長期目線での投資ができます。出光興産創業者の出光佐光が 「資金調達は容易だが利潤の追求を第一に考えなければならず営利のために経営は傾いていく、経営も人も金や物に支配されてしまう」 と頑なに非公開を貫いたこと。エージェンシーコストがない又は少なく、経営者が長期的視点で経営できるので非常に利益率が高くサステナブルになりえます(大失敗事例も多いですが…)。
一方で、トップが優秀でなければ残念な結果になります。そして2代目3代目の役割こそ大変です。最初のリーダーの仕事は企業文化を作ること。次のリーダーの仕事は企業文化を改良し守り承継すること。ファミリービジネスを研究する中で思うのですが、利己的であったり自己保身であったり他責志向でそれに値しないリーダーは上に立ってはいけないですね。
世界に目を向けると、日本ではファミリーオフィスやファミリー憲章のようなものがあまり広がってはいませんが、ヨーロッパではこの研究がかなり進んでいます。日本でもファミリーがオーナーに徹して、プロ経営者に経営を任せるということが今後は広がっていくべきだと考えてもいます。グローバルにはRSMでも”ファミリーオフィスサービス”が広がりつつあるので、税理士としての税務視点の相続や事業承継支援から、もう少し高い視座で顧客を導いていける存在になれればと思います。
末筆ながら、『Governance in Family Enterprises: Maximising Economic and Emotional Success』という海外の書籍を翻訳いたしました。『ファミリー企業のガバナンス~経済的および精神的な成功を極大化する~』というタイトルにしました。
ガバナンスは上場会社だけではなくてもとても重要であり、本書はその点についての貴重な世界のファミリー企業の事例が集まっています。
https://hanmoto.com/bd/isbn/9784561237945…
※Amazonなどから購入できるようなのでもしご興味がございましたらよろしくお願いいたします
グローバル会計ネットワークのランキングと日本での提携状況 2024
世界の会計税務サービスを提供する主要な国際会計ネットワークについて、そのランキングと日本における提携事務所の関係性を改めて整理し、最新の業界勢力図をお伝えします。それぞれメンバーファームである監査法人及び税理士法人を記載しています。
【会計ネットワークランキング2024】
1Deloitte(デロイト)
有限責任監査法人トーマツ/デロイトトーマツ税理士法人
2PWC(プライスウォーターハウスクーパース)
PwC Japan有限責任監査法人/PwC税理士法人
3EY(アーンスト・アンド・ヤング)
EY新日本有限責任監査法人/EY税理士法人
4KPMG(ケーピーエムジー)
有限責任あずさ監査法人/KPMG税理士法人
5BDO International(ビーディーオー)
BDO三優監査法人/BDO税理士法人
6RSM(アールエスエム)
RSM清和監査法人/RSM汐留パートナーズ税理士法人/税理士法人東京クロスボーダーズ
7Grant Thornton(グラントソントン)
太陽有限責任監査法人/太陽グラントソントン税理士法人
8HLB International(エイチエルビー・インターナショナル)
明誠有限責任監査法人/協立監査法人/税理士法人髙野総合会計事務所
9Crowe Horwath(クロウ・ホーワス)
東陽監査法人/税理士法人渡邊芳樹事務所
10Baker Tilly International(ベーカーティリー・インターナショナル)
監査法人日本橋事務所/監査法人グラヴィタス/清陽監査法人/監査法人薄衣佐吉事務所/千代田国際公認会計士共同事務所/如水監査法人/ベーカーティリージャパン税理士法人/BTJ税理士法人/クリフィックス税理士法人
11Moore Global(ムーア・グローバル)
Mooreみらい監査法人/Moore至誠税理士法人
12Forvis Mazars(フォーヴィス・マザー)
Forvis Mazars Japan有限責任監査法人/Forvis Mazars税理士法人
13Nexia International(ネクシア・インターナショナル)
仰星監査法人/仰星税理士法人/GYC税理士法人
14Kreston Global(クレストン・グローバル)
アーク有限責任監査法人/八重洲監査法人/クレストン・プロワークス税理士事務所
15ETL Global(イーティエル・グローバル)
【出典】
World Survey global fee and staff 2024 – International Accounting Bulletin
RSMは、現在世界120カ国820以上の拠点、そして64,000人以上メンバーで、クロスボーダーサービスを提供しています。我々、RSM汐留パートナーズも日本そしてグローバルにRSMの一員として責任を持って活動していきたいと思います。
RSM World Conference2024 in Singapore
- 2024.10.20
- 公認会計士・税理士, いい話・格言・理念, 会食・交流会・セミナー, ビジネスの話
2024年10月15日から10月18日にかけて、シンガポールで開催されたRSM World Conference2024に参加しました。
世界各国のRSMメンバーファームからパートナーなどが集い、最新の世界のビジネストレンドについて共有することで、ネットワークの構築および交流を深めることができました。
この国際会議では、「Be Global」をテーマに、RSMが掲げる「2030年グローバル戦略」の実現に向けて、 持続的な成長をどのように実現し、クライアントに高品質なサービスを提供し続けるかについて活発に議論されています。
デジタル化が進む世界におけるテクノロジーの活用、グローバルな人材育成、品質のさらなる向上、変化し続けるビジネス環境に適応した先進的な成長戦略の構築、そしてESGにおけるビジネスチャンスを最大限に活かす方法といったテーマが中心です。特に、テクノロジーやESG分野は日本においても今後さらに大規模なマーケットになると予想されており、プロフェッショナルファームとしての今後の取り組みにおいて大いに参考なりました。
議論を通じて、未来に向けたイニシアチブを推進し、国境を越えたビジネス機会を生み出し、世界中のスキルと専門知識を最大限に活用する協力体制を改めて確認しました。
今回の会議で得た知識や経験を生かし、クライアントの皆様にはより一層高品質なサービスや有益な情報を提供し、地域社会への貢献を続けてまいります。
BPOのグローバル化
日本の人口は減り続けますが、世界の人口は増え続けます。グローバルでは専門家のサービスの一部がものすごい勢いでインドにアウトソーシングされて分業されています。テクノロジーの利用もさることながら、大きな案件では単純な人件費の面での価格競争力が入札においては重要だと感じます。
RSMUSもインドにBPOセンターがあり、弊社もフィリピンにBPOセンターがあります。語学の壁さえ超えられれば国境を超えてリソースをシェアできるはずです。テクノロジーの進化とその活用により活路を見出していきたいです。
しかし客観視して考えると、我々中堅ファームにはBIG4ほど複雑な国際税務案件やグローバルモビリティ案件がたくさんあるわけではありません。コンプライアンス業務やBPO業務とセットでお受けするので難易度はBIG4ほどではなく、案件は安定的かつ長期に渡って続いていきます。
その中で外資系企業の支援をするようになって発見したことや驚いたことはたくさんあるのですが、その中でも支払業務(キャッシュマネジメント業務)のアウトソーシングのニーズが多いというのは重要な気付きでした。
個人的な感想として、日本企業は外資企業と比べアウトソーシングが苦手ですが、内資企業も経理/人事/総務に関連するBPO化が進んでいると感じます。そして少子化により労働人口が不足する中で外国人雇用が不可欠となり、日本人と同じような感覚で外国人を雇用する時代が近いと思います。外国人雇用に関する手続/管理等をアウトソースする企業が増えている感覚です。
こうした変化の中で、我々はクライアントのニーズに応じた柔軟かつ先進的なアウトソーシングサービスを提供し、日本企業の持続的な成長を支援していくことが重要であると考えています。
成長するBPO
アウトソーシング(BPO)は華やかな印象がないかもしれませんが、市場は着実に成長しています。ここ数年で、有報など開示書類の作成や、JSOX/内部監査など、これまでコンサル領域だったものが、BPOへと移行している流れを感じつつあります。BPOは安定した成長性があり、IT活用との親和性も高いです。ただしITを活用したBPOには大きな資本の企業参入があるため、戦略や領域選定がとても重要です。
一方で今後非IT分野のBPOも市場が拡大していきます。それゆえプロフェッショナルファームもアドバイザリーに特化しないのであれば、1つの戦略としてBPOに取り組んでいく必要があります。そのためには一定の事業規模拡大が必要になってまいります。
またBPOは、BtoCだけでなくBtoBにおいても経理業務や人事労務業務は会社内に部署を設け「所有」するのではなく、アウトソーシングし「利用」する、から市場が拡大しています。
こういったBPOは弊社ワンストップの強みが発揮できている領域であり、実際に最近アウトソーシングのお話を頂くことが多いですが、やはり肝になるのは、BPOを通じてクライアントの信頼を勝ち取ることです。
しかし、単純に気合で記帳代行や給与計算をこなしても幸せはありません。
テクノロジーや多言語対応など差別化をする事により
①クライアントに価値提供をしながら
②メンバーに物心両面満足いく状態を提供
したいと思います。同時に追求したいです。
個人的にもBPOはおすすめなのですが、一つ問題としてアウトソースする部分としない部分の切り分けで合意できないことが多い印象です。
以上の点を踏まえ、クライアントと共に柔軟な解決策を模索し、BPOの真価を最大限に引き出すことが、私たちの目指すべき方向でしょう。
大阪事務所開設のお知らせ
この度、RSM汐留パートナーズ株式会社は大阪事務所(梅田)を開設しました。
大阪は経済規模、交通アクセス、人材の供給、行政サポートの観点から、関西圏における最適な拠点となると考えたため、最初の西日本進出の拠点として決定しました。
大阪事務所の開設は、
①西日本におけるRSMブランドの認知度向上
②リクルーティングの強化
③従業員リテンション効果
④顧客基盤の拡大
を目的としています。
大阪事務所の開設により、これらを希望する方々が地元で安定した職を得ることができ、地方経済の活性化に寄与します。また、リモートワークやハイブリッドワークの普及に伴い、多様な働き方が可能となります。地方拠点での勤務は、従業員一人ひとりのライフスタイルに柔軟に対応する手段となり、ワークライフバランスの向上に繋がると考えています。
このように、新拠点の開設は、単なる事業拡大に留まらず、雇用の安定性とサステナビリティに繋がる重要なステップだと考えています。関西エリアの皆様との協力関係を深め、共に成長していけるよう尽力してまいりますので、何卒よろしくお願いいたします。
USCPAの日本における活躍の場
会計士や税理士業界は英語を使える人が少ないため、英語と会計のスキルで国内にいながら外貨を稼ぐことも魅力だと思います。USCPAの方々は、日本の公認会計士が持たない経験やスキル、視点を有しており、多くの気づきを与えてくれます。USCPAの皆様にも思いっきりご活躍いただきたいと思います。
USCPAは米国で仕事をしない限り、スペシャリストというよりはゼネラリストとして業務をしています。取得すると活躍の場は広がります。
- 外資系企業の会計責任者(CFO/子会社CFO)
- グローバル企業日本法人に対するBPO
- クロスボーダーM&AのFA/DD/株価算定
- 日本企業に対する海外進出コンサル等
時々「USCPAのみ保有者だったら何をしますか?」と質問を受けます。USCPAはグローバルライセンスで、海外では認知度が高いと言えます。プロマネとしてローカル資格者を束ねクロスボーダー案件をこなせば、非常に高いバリューを発揮できるのではないでしょうか。
また日本人USCPAが米国で勝つのは至難の業ですが、以下のスキルがあると日本では高いプレゼンスを発揮できます。
①リーディング&ライティング
②日本の会計実務
③日本の税務実務
④スピーキング&リスニング
⑤営業力&交渉力
⑥US会計税務実務
①は必須
②と③があると良く
④と⑤までできると無敵
⑥は+α
これらのスキルを磨き上げ、日本国内でも高い価値を提供できるUSCPAとして、さらなる飛躍を遂げていただきたいと思います。