USCPAの日本における活躍の場
会計士や税理士業界は英語を使える人が少ないため、英語と会計のスキルで国内にいながら外貨を稼ぐことも魅力だと思います。USCPAの方々は、日本の公認会計士が持たない経験やスキル、視点を有しており、多くの気づきを与えてくれます。USCPAの皆様にも思いっきりご活躍いただきたいと思います。
USCPAは米国で仕事をしない限り、スペシャリストというよりはゼネラリストとして業務をしています。取得すると活躍の場は広がります。
- 外資系企業の会計責任者(CFO/子会社CFO)
- グローバル企業日本法人に対するBPO
- クロスボーダーM&AのFA/DD/株価算定
- 日本企業に対する海外進出コンサル等
時々「USCPAのみ保有者だったら何をしますか?」と質問を受けます。USCPAはグローバルライセンスで、海外では認知度が高いと言えます。プロマネとしてローカル資格者を束ねクロスボーダー案件をこなせば、非常に高いバリューを発揮できるのではないでしょうか。
また日本人USCPAが米国で勝つのは至難の業ですが、以下のスキルがあると日本では高いプレゼンスを発揮できます。
①リーディング&ライティング
②日本の会計実務
③日本の税務実務
④スピーキング&リスニング
⑤営業力&交渉力
⑥US会計税務実務
①は必須
②と③があると良く
④と⑤までできると無敵
⑥は+α
これらのスキルを磨き上げ、日本国内でも高い価値を提供できるUSCPAとして、さらなる飛躍を遂げていただきたいと思います。
若い士業の方々は今後何をすべきか
若い士業の方々から自分は今後何をすべきか相談を受けることがあります。そんな時私は英語や国際ビジネスを学ぶことをおすすめしています。世界は広く、私も30代でこれらに触れ人生観が大きく変わりました。
グローバルで考えるとマーケットはどんどん拡大しています。業務を部分的にみるとテクノロジーのお陰で、人間とAIとの間で仕事の代替が行われています。
これから外資や外国人向けにサービスを提供する会計士や税理士は増えていくかもしれません。 正直な所どの事務所も受けられないくらい人材不足の状況です。報酬は数倍レベルで外貨獲得モデルでありチャンスでもあります。
例えばUSやUKは賃金は高いが物価も高いです。一方で日本はそれよりは賃金も低いが物価も安いです。
であれば、USやUKから業務を受注し日本からサービス提供できれば、メンバーのウェルビーイングを大切にしていくことができるのではないか?という気がしています。
実際のところ、こんなに真面目に仕事をしてくれて、手先も器用で細かい作業もできる、おまけに賃金もとても安い日本人最高!ということで、外資系企業の工場がどんどん増加… RSM汐留パートナーズとしては日本進出支援や会計税務や在留資格関連でビジネスチャンスになるはずですが、個人としては複雑な気持ちです。
そんな弊社も、英語で会計税務サービスを提供し始めた時「バイリンガルサービス」と銘打って+1万円~で受注。これが苦難の始まりでした。外資系企業向けサービスを提供しているBig4税理士法人の調査をすれば良かったと思います。リサーチ不足からの経営判断ミスは多くのメンバーに苦労を掛けることになります。
理解が不足していたのは
- 外国人個人出資の日本法人
- 外資系企業の日本法人
の違いです。求めているサービスが大きく異なりました。加えて親法人がどの国にありどの程度大きな企業なのかのリサーチも大切でした。
苦しみながら学びメンバーの頑張りによって何とか乗り越えました。
個人の国際関連の税務相談のお話を頂くことが多くありますが、弊事務所は基本的にBtoB向けサービスなので、事業承継や相続対策と関連する部分のみでの支援となります。そのため手がまわらず富裕層以外はお受けできないのが実情です。
個人で海外に資産を少し持っていたり海外に移住するというようなご相談や、外国人個人からの日本や母国と関連する税務相談(+英語)などの業務については、一定程度の難易度があり語学の障壁もあったり、お受けしている事務所が少ないのではと思います。
個人向けの国際税務関連は報酬水準の設定が難しいとは思いますが、税務×英語の領域としてホームページを作成し集客すると比較的ライトにはじめられる領域かもしれません。現時点では適正な税務処理ができていない方も多いのではと思います。
今後クロスボーダーに人が行き来する時代なのでその領域のニーズは増加することは間違いなさそうですが、うまくマネタイズできるか、組織として取り組んでいけるのかという所がポイントになりそうですね。
低価格戦略への警鐘
大好きな稲盛さんの言葉に「値決めは経営」というのがあり創業時は常に心がけていました。
職員が増えると低い報酬でも、受注することを優先して低利益で数だけ増えていきました。
その時は辛かったかもしれません。でもあの時期があったから今があるかもしれず。やはり値決めは難しいと感じます。
しかし本来、士業事務所では価格が理由でコンペで勝ってもそれは喜ばしい事ではありません。安価で良いサービスをすると職員に負荷がかかります。にも関わらず職員に還元できず、結果サービス品質が悪化します。誰も幸せになりませんので、受注率自体にはあまりこだわらず常にベストプライスを提示していきます。
また「上下の関係」を度外視して事務所経営をしています。報酬と労働は等価交換であり、お金を払っている方が偉い事はありません。我々が顧問先にサービスを提供する際も同じ考え方です。等価交換の原則が崩れると関係も崩れます。
昨今少しずつインフレが浸透してきた世の中においても、士業の世界では安価にプロフェッショナルサービスを提供する事務所がまだとても多いように感じています。
これは所長1人で自宅などでやると決めた場合にはいい方法だと思います。自分の見きれる範囲で直接対応し、高クオリティのサービスをリーズナブルに提供し、顧客と信頼関係を築き追加の仕事を受注する。受けきれなくなったら職員を採用するのではなく、値上げをお願いしたりお断りする。
ですが職員を1人でも採用する場合、一気にいい方法ではなくなってしまいます。所長と比較して生産性や品質が低いメンバーが入ることにより、当初の所長の目論見が崩れてきます。十分ではない待遇や教育や福利厚生も相まっての職員の離職、そして新規採用活動により非常にストレスフルな状況になります。
ただし、もっと視座を上げるなら、果てしなく高い志、あるいは、大きな資本力がありスケールメリットを出すまでやり遂げるならば、これはまたいい方法だと思います。例えば1000人の事務所を作るまでとことんやる、最初から5億円以上投資できるetc. 顧客が増えて一斉に値上げやクロスセルで追加サービスの提案など攻め手が増えます。
テクノロジーを利用して低価格で高品質なサービスを…という世界は非常に理想的なのですが、個人的な経験ではそこにビジネスチャンスと成長するマーケットがあれば、巨人が参入してくると感じています。
最近ではBPaas(BPOとクラウドコンピューティングを組み合わせ)に関しても巨大資本の参入が始まっているので、舵取りは極めて重要だなと感じる日々です。
一方で「ここ2年値上げがなかったので」値上げさせてという理由は日系企業では簡単には受け入れられないかもしれませんが、経済成長やインフレを感じ経営している国の会社であれば十分に受け入れ可能。日本企業が企業努力で解決するのだという精神が、世界競争において裏目に出てしまっていることを強く感じます。
海外の会議に参加すると、皆人手不足とは言いつつも、高単価の案件をいかに大量に獲得するかという視点が相当強いです。つまり、それが昇格や昇給のために重要な要素になっているということなのでしょう。