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山本 翔大 Shodai Yamamoto

この記事の著者

山本 翔大 Shodai Yamamoto

アシスタントマネージャー

Power Queryで整える中堅企業におけるデータ活用の第一歩

2025年12月4日

Power Queryとは:データ変換の革新ツール

Microsoft Power Queryは、ExcelやPower BI、Power Platformに統合されたデータ収集・変換・整形のためのツールで、近年のデータ活用において欠かせない存在となっています(1)。2010年代初頭にExcelのアドイン(追加機能 )として登場し、現在ではMicrosoft製品群全体に幅広く組み込まれており、専門知識がなくても複雑なデータ処理が直感的な操作で可能となりました。Power Queryの最大の特徴は、プログラミングの知識を必要とせずに、ドラッグ&ドロップやメニュー操作を通じてデータの整形や結合、抽出などを自動化できる点です。一度作成した処理手順は「クエリ」として保存され、データ更新時には同じ手順が自動的に適用されるため、日々繰り返される定型作業の効率化に大きく貢献します。また、処理手順が明確に記録されることから、再現性のある安定したデータ処理が可能であり、担当者が変わっても同じ成果を得られる点も重要です。

さらに、Power Queryは多様なオンプレミス・クラウドのデータに接続できる点も特筆されます。ExcelやCSV、テキストファイルといった一般的な形式に加え、SQL Server、Oracle、SharePoint、Microsoft社以外が提供する製品(Salesforceなど )へのデータベースやクラウドサービスへ接続することが可能です。さらにはWebページやJSONファイルにも対応しており、異なるシステムやサービスによって異なるフォーマットを一元的に収集・統合できるため、分析基盤の構築が容易になります(1)。特に、中堅企業では複数システムから出力されるデータの形式が異なることが多く、手作業での統合作業に多大な時間がかかっていましたが、Power Queryを活用することで、こうした課題を解消し、業務担当者自身が迅速にデータを整備できるようになりました。

アナログによる業務現場の課題

総務省「情報通信白書2025」や中小企業白書など各種調査によれば、多くの中堅企業では依然としてExcelを中心とした手作業のデータ処理が行われており、業務担当者は日々のルーティン作業に多くの時間を費やしています。特に、複数システムから出力されたデータを統合する際の作業負荷が高く、月次決算や予算実績管理の度に手作業で調整するケースが少なくありません(2)(3)。

具体的には以下の課題があります。

  1. データ形式の不一致
    会計システム、販売管理システム、在庫管理システムなど、複数のシステムから出力されるデータのフォーマットが異なるため、手作業で列の並べ替えや書式調整を繰り返す必要があります。結果として、データ統合にかかる時間が月次や四半期ごとに膨大となります。
  2. データクレンジングの負荷
    空白や重複、入力ミスの修正、表記ゆれの統一などが必要で、特に複数担当者が関わるデータ入力では「株式会社」と「(株 )」や全角半角の混在などの表記揺れが頻発します。この整理に多くの人的リソースが割かれ、分析に回せる時間が減少しています。
  3. 属人化と再現性の欠如
    データ加工のノウハウが特定担当者に集中し、手順が文書化されていない場合、担当者不在時に作業が滞るリスクがあります。また、手作業では処理手順が記録されず、監査対応や後からの検証が困難です。特に財務データや規制対象データを扱う業務では、コンプライアンス上のリスクになります。
  4. 意思決定の遅延
    データ処理に時間がかかることで、分析や意思決定のスピードが低下します。結果として、ビジネスチャンスの逸失やリスク対応の遅れが生じる可能性があります。
    これらの課題は単なる作業効率の問題に留まらず、企業の競争力に直結する重大な経営課題となっています。

これらの課題は単なる作業効率の問題に留まらず、企業の競争力に直結する重大な経営課題となっています。

Power Queryにできること

Power Queryを活用することで、中堅企業が抱えるデータ処理の課題を効果的に解決し、業務効率とデータ活用の質を大幅に向上させることができます。まず、クエリを設定しておけば、データ更新時に同じ手順が自動的に適用されるため、月次決算や予算・実績分析などの定期作業にかかる時間を大幅に削減できます。これにより、担当者はルーティン作業から解放され、より戦略的で創造的な業務に時間を割くことが可能となります。また、処理手順がすべて記録されるため、誰が作業しても同じ結果を得られ、業務の属人化を防ぎながら、再現性のある安定したデータ処理が実現します。

実務における活用例としては、会計・財務部門では、異なるシステムから出力されたデータを自動的に標準形式に変換し、統合することで決算作業や差異分析の効率化が図れます。マーケティング部門では、CRMやWebアクセスログ、SNSデータを統合することで、顧客行動分析やキャンペーン効果測定を迅速に行えます。また、人事部門では、勤怠・給与・人材管理データを統合し、部門別の残業時間分析や採用活動の効果測定、従業員満足度と業績データの複合分析などが可能です。このように、Power Queryは多様なデータを統合し、自動化、標準化、透明性を確保することで、データ活用の幅を大きく広げ、業務全体の生産性向上に直結するツールとして中堅企業における第一歩を支える存在となっています。

RSM汐留パートナーズが提供できる付加価値

当社の「データ取得・整形支援サービス(Power Query)」は、単なるツール導入にとどまらず、クライアント企業のデータ活用全体を最適化するソリューションです。会計税務・人事労務・法務などの専門知識を持つコンサルタントが、業務特有のデータ処理課題を深く理解し、業種や業務に最適化されたデータ変換フローを構築します。

特に、当社では、初期要件定義からデータ変換ソリューション設計、実装とテスト、そして知識移転までの一連のプロセスを体系的にサポートします。具体的には、ビジネス要件とデータ分析目標の明確化から始まり、最適なデータ変換フローの設計、Power Queryエディタでの実装と検証、そして詳細なドキュメント作成まで、データ活用の基盤構築をトータルに支援します。

当社のアプローチの強みは、単なる技術支援を超えた「業務理解に基づくソリューション提供」にあります。例えば、会計データの処理においては、単に技術的なデータ変換だけでなく、会計基準やコンプライアンス要件を踏まえた適切なデータ処理手法を提案します。また、データガバナンスやセキュリティ面でのベストプラクティスも併せて提案し、安全かつ効率的なデータ活用環境の構築をサポートします。

「データ取得・整形支援サービス(Power Query)」の詳細については、当社が提供しているMicrosoft Power Platform導入・運用支援サービスページをご確認ください。また、Power BI(データ分析・可視化)、Power Automate(業務プロセス自動化)、Power Apps(業務アプリ開発)に関する専門コラム記事も公開していますので、統合的なデータ活用についてさらに詳しく知りたい方は当社のコラムをぜひ随時ご覧になってください。

参考資料:

  1. Power Query とは – Power Query | Microsoft Learn
  2. 総務省|令和7年版 情報通信白書|PDF版
  3. 中小企業白書 | 中小企業庁
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